真美「reunion」 (73)

オフィス街の喧騒から逃れるように、ぽつり離れて佇む豪壮な建物。

その大きさとは対照的に探さなければ見つける事が出来ないほど、控え目な看板。


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『765 PRODUCTION』


そう書かれた文字を指でなぞりながら昔を思い出す。

ここに移転したのは五年ほど前だったかな?

それにしても暑いね……。

こんな所に突っ立ってても仕方ないから取り敢えず建物の中に入ろう。

いつも紳士的に出迎えてくれる自動ドアに敬意を表しつつ
開放的なロビーを差し足で進む。


受付と書かれた大理石の机の横を通った時、背中越しに声を掛けられた。


「あれっ?もしかして真美?」


振り向くと大きな買い物袋を両手に抱え、オレンジ色の事務服に身を包む、懐かしい顔を見つけた。


「やよいっちじゃん!おひさー!」


まだ、あどけなさの残る笑顔にノスタルジックな感情がうずき、
年甲斐もなく笑顔を返してしまう。


ちかたないね。


大人になってもやよいっちは天使なんだもん。



「真美と会うのは、三年ぶりかな?あ……立ち話もなんだから事務室で話そっ!」


頷きながらやよいっちの荷物を持ってあげようとしたけどやんわり断られた。


やよいっちの後ろをついて行くと、豪勢な作りのドアの前で止まり、
器用にお尻を使って開けたので思わず吹き出す。


はてな顔のやよいっちのさらに後ろ。
ドアに貼られた白いプレートの文字が見えた。


[総務室]


うん。事務室じゃないじゃん。

心の中で静かに突っ込み、お邪魔しますと部屋に入った。


ソファに座っててと言われたので命じられたまま、
ソファに腰を落ち着ける。


暫くするとやよいっちが馴れた手付きで冷たいお茶を出してくれたので
お茶を口に含みつつ、その一分の隙も無い動作に感心した。


「今日は竜宮のライブだったよね?真美も行くって聞いてたんだけど……なんでここに?」


やよいっちの首を傾げる仕草が凄く懐かしくて思わず声を失う。


「あ、えっと、昔の事務所が取り壊される前にもう一度だけ見ておきたくてさ。鍵を借りにきたんだよ」


「あー。あと1ヶ月で壊されるもんね。じゃあちょっと待ってね」


やよいっちはジャラジャラと束になった鍵を選って、一本の鍵を手渡してくれた。


「それが前の事務所の鍵だよ。スペアがあるから返すのはいつでも良いからね」


恩に着るぜやよいっち。


「あ、時間があるなら響さんと真さんに会って行けば?今レッスンスタジオに居てるよ?」


「えー、邪魔しちゃ悪いから遠慮しとくー」


「響さんも真さんも、きっと喜ぶよ?」



「いやでも─────」


────防音ドアの向こうから少しだけ音楽が聞こえる。


ガラス越しにまこちんとひびきんが見えた。


断り続けたはずなのに、気づくとレッスンスタジオの前に居る状況。



やよいっち恐るべし。


やよいっちが重いドアを開けると大音量のダンスミュージックが
辺りいっぱいに鳴り響く。

小気味良く鳴るバスドラムのリズムがお腹に響いたので
少し離れた所で待つ事にした。

暫くするとまこちんとひびきんが走って出てきた。


「わぁーっ!久し振りだなー!自分、真美に会えて嬉しいぞ!」


ひびきんは相変わらず、なんか可愛い。


「ほんと!いつぶりかな?三年前の同窓会以来かな?」


まこちんは相変わらず、なんかカッコ良い。


「うん。ふたりのご活躍は、いつもテレビで拝見しておりますぞー」


「うぎゃあぁぁ。なんか恥ずかしいぞ……」


うん。可愛い。


「僕も。なんか真美に言われると照れるね」


うん。カッコ良い。


「じゃあ、真美は、これで失礼しま……」

さっと上げた手をやよいっちに掴まれ、まぁまぁ、となだめられながら
気づくと自動販売機の前でジュースをご馳走してもらっていた。


やよいっち恐るべし。


「ひびきんとまこちんは今度海外公演があるんだよね?」

「お!良く知ってるな!ブロードウェイだぞっ!」


「本場アメリカでどこまで通用するか……考えただけでワクワクするよ」


「真さんと響さんなら、大成功間違い無しかなーって!」


こんな風に会話をしていると釣られるように寄ってくるのは懐かしい顔。


「おや……?双海真美ではありませんか」


ひょっこり顔を出したお姫ちんは可愛い。
異論は認め無い。


「お姫ちん!久し振りだね!元気にしてた?」


「はい。双海真美も、他の皆も、お元気のようで何より」


お姫ちんは、ますますミステリアスに磨きが掛かっている。


「今度の主演映画、期待してますぜ」


「ふふっ。ありがとうございます。わたくしも乾坤一擲の心構えで挑んでおりますので宜しければ御拝見頂けますか?」


「モチのロンだよ!」


それにしても、よく、スラスラと難しい言葉が出てくるもんだね。
お姫ちん凄い。


「あ、みんなも竜宮のライブ観に行くの?」


「今日は竜宮にとって大事なライブだからな!当然だぞ!」


「僕も当然。貴音とやよいも行くんだよね?」


「えぇ。この後の仕事が終わり次第向かいます」


「私も、五時になったらばばばーって走って行きます!」


タクシーを使わない辺り、流石やよいっち。


「んじゃ、真美そろそろ行くね。またあとでね~」


みんなの笑顔を久し振りに見れてほっこりできた。

どことなく足取りも軽くなった気がする。

途中でタクシーを拾い、運転手のおじさんに旧事務所の場所を説明する。


ざっくり説明しただけで、あぁ、はいはい。
って遮られたんだけどホントに大丈夫なの?


20分ほど走った所でタクシーは止まった。

ガラス越しに見えたのは旧事務所が入ってるビル。

運転手のおじさん凄い。


お金を払って肩掛け鞄に財布を仕舞い、変わりにさっきやよいっちから預かった鍵を取り出す。


ドラ○もんの声帯模写をしながら。


事務所のあった階を見上げると、ガムテープを貼って作られた
『765』の文字は剥がされて無くなっていた。


裏手のドアを開け、ゆっくりと階段をのぼる。

まだまだ、若いつもりだったけど少しキツく感じた。


まだ24歳だけど。


13歳の頃から、のぼってた階段。

所々ひび割れた手すり。

踊場の掲示板は、やっぱり画鋲だけが刺さってる。

目的の階に着くと、ひとつ深呼吸して息を整える。

十年前と変わらないドア。


このドアを開けるとアイドルに戻れそうな気がした。


鍵を差し込み捻ると、懐かしい音がする。


息を止めて、そっとドアノブを回す。

少し埃っぽいけど、懐かしい匂い。

ほとんどそのままの状態で残ってた。

机の上は綺麗さっぱり何も無いけど。

スケジュールが書き込まれてたホワイトボードにはたくさん思い出がある。

落書きしてよく、りっちゃんに怒られたり。

兄ちゃんが来てからちょっとづつホワイトボードにスケジュールが書かれていって。

黒くなっていくホワイトボードを見てワクワクした。



感慨深いね。


いつもミキミキが寝ていたソファにそっと腰掛ける。

良く見るとだいぶ、くたびれていた。

なぜか分からないけど、無意識のうちに溜め息が出て驚く。

もひとつオマケに溜め息をついて立ち上がると、いきなり事務所のドアが開いた。


「真美!久し振りっ!」


「え……あっ……え?………あ……はるるん?」


リボンを装着して無いから分からなかった。


「元気にしてた?わっ!真美が着てるその服かわいいねー!今はそんなのもあるんだ!へー!」


おぉふ……。

バラドルに転向してから、はるるん強い。


「真美ちゃん久し振りだね」


はるるんの後ろから雪ぴょんが出て来た。

え、雪ぴょんテレビで見るより十倍くらい綺麗なんですけど。

なにこれ怖い。


「さっきまで雪歩と一緒にロケだったんだけどやよいが電話くれて……ね?」


「はい!みんな真美ちゃんとゆっくりお話ししたって聞いたから私達もお話ししたくって」


まぁ、半ば強引だったんですけど。


くたびれたソファに座り直すと、はるるんと雪ぴょんは向かいのソファに座った。

そこからは質問責め。

今、何してるの?とか、その服どこで買ったの?とか、そんなの。

でも、なんか嬉しかった。

少し日が傾きかけた頃、事務所のドアがそっと開いた。


「あら、みんな。こんな所で何してるの?」


「ち、千早ちゃんこそどうして、ここにっ!?」


流石はるるん。 
バラエティで鍛えたレスポンスの早さは折り紙付きだね。


ハリウッドに行きっぱなしだった千早お姉ちゃんまで来るなんて……奇跡みたい。



「千早お姉ちゃん久し振り~!」


両手を振ると千早お姉ちゃんは少し驚いたみたいだけど、すぐ優しく笑った。


「久し振りね、真美。すっかり大人っぽくなって……」


千早お姉ちゃんこそ、凄く大人の色気が醸し出てるよ?


「ち、千早ちゃんはさっき日本に帰ってきたんですか?」


んふ。なんで雪ぴょんが緊張してるのかな。


「えぇ。最後に、ここの屋上からの景色を見ておこうと思って」


「じゃあ、みんなで屋上に行こうよ!ねっ?」


んふふ。こーゆー時のはるるんって可愛い。

なんか昔に戻ったみたい。

みんなバラバラに活動するようになったけど、
まだちゃんと繋がってるんだね。

はるるんと雪ぴょんが手を差し伸べてくれる。

アイドルに戻ったみたいな感覚。


変だね。変だけど心地良い。


ゆっくり屋上に上がると、すっかり夕方になっていた。

夕焼け空の中、昔を思い出す。


真美が居て、亜美が居て。

兄ちゃんが居て。

みんなが居て。

毎日楽しくて。

今だからこそ分かる。


あの時、真美はアイドルとして煌めいていたんだ。


「あと1ヶ月で無くなっちゃうんだね」


誰かがそう言った。

ひょっとしたら真美が言ったのかもしれない。


みんな夕焼け空の彼方を見ながら目を細めていた。


「新しいビルを立てるんだって。お父さんが言ってました」


流石雪ぴょんのパパ。


「寂しいけど、仕方の無いことなのよね……」


千早お姉ちゃんが言うと余計に寂しく聞こえる。

その言葉に続くようにはるるんが呟いた。



「だけど……思い出は、私達の胸の中に残ってるもん……」




「…………………」



「「「…………ぷふっ」」」


はるるん以外、みんな噴き出した。


「あはははは。もん……って!」


「真美ちゃん……笑う…なん……て、あんまり……だと思……ふぶっ……」


「ふふふ。……春香は、やっぱり春香ね」


「千早ちゃん、それフォローになって無いよっ!?」


みんなでひとしきり笑ったあと、千早お姉ちゃんが言った。


「でも、社長がずっと家賃を払ってくれてたから最後に来れたのよね……」


「そうだね。ちゃんとみんなでありがとうって言わないとね」


雪ぴょんの言葉にみんな頷く。


「あっ!そろそろライブ会場行かないとダメじゃないかなっ!?」


そうだった。


「春香!私、タクシー呼んで来るから事務所の鍵、お願いね?」


「分かった!雪歩は真美をお願い!」


「はいですぅ!」


いや、子供じゃないんだから、ひとりで大丈夫だよ?


みんなで慌ててタクシーに乗り込みライブ会場へと急ぐ。


時刻は18:00。

竜宮のライブが始まるのは18:30。
ギリギリ間に合いそうで、ほっと胸を撫で下ろす。

ちょっとだけ渋滞に捕まったけどそれでも、15分で着いた。

タクシーを降りると雪ぴょんが手を繋いでくれる。

はるるんと千早お姉ちゃんは正面から入るって言うから会場前で別れた。


スタッフパスを見せて裏口から会場に入る。

せめて、亜美に頑張れってだけは言わないと。

楽屋に向かうと丁度ステージ衣装に着替えた、いおりんが出て来た所だった。


「いおりんっ!」


久し振りの生いおりんは、すっかり女王様って感じだった。
ツンデレの中のツンデレ。


「ま、真美と雪歩。アンタ達、まさか走って来たの?」


「そんな事より亜美は!?」


「そんな事よりって……」


「ま、真美ちゃん落ち着いて……」


雪ぴょんがわたわたしてる。
それを見て少しだけ冷静になれた。

ありがとう雪ぴょん。

いおりんの後ろからあずさお姉ちゃんが出て来た。

あずさお姉ちゃんはもう、フェロモンばりばり。

男の人なんか側に近付くだけで倒れちゃうんじゃないかな?


「あら、真美ちゃんお久しぶりね~」


「あ、あずさお姉ちゃんおひさー!……じゃなくて亜美は?」


今度は、律っちゃんが出てきた。
りっちゃんは、すっかり出来る女になってた。


「あら、真美じゃない、久し振りね……」


「んもー!律っちゃんの事は呼んで無いよ!今は亜美を探してるのっ!」


「なっ……何よ、その不躾な態度は!アンタって子は十年経っても変わらないわねっ!」


「あらあら、まぁまぁ、律子さんも落ち着いて…」


「そ、そうですぅ……みんな落ち着いて下さいぃ……」


「亜美なら先に舞台袖でスタンバってるはずだけど?」


いおりんが見かねたように溜め息を吐きながら左手を腰に当て、教えてくれた。


「ありがと、いおりん!雪ぴょんもありがと!」


「走っちゃダ……メ……って言っても聞かないわよね……もうっ」


五段ほどの階段を駆け上り暗幕を捲る。


「亜美っ!?」


「わっ!?びっくりした!ど、どうしたの?そんなに慌てて」


「ライブ頑張って!」





「………へっ?それだけを言う為に走って来たの?」


どうも、温度差があったみたいだね。


「それだけ……って。今日が亜美の最後のライブじゃんか!」


感情のままに吐き出した言葉。
亜美は一瞬苦しそうな顔をしたけど、にっこり笑った。


「そうだね……。ん。頑張るよ!ありがとね、真美」


暗幕から律っちゃん達が顔を出した。


「そろそろ時間よ?」


「オッケー律っちゃん!」


「竜宮最後のライブ。最後の円陣を組むわよっ!」


いおりんの掛け声にみんなが円になる。


「真美ちゃん……真美ちゃんもこっちに来て?」


あずさお姉ちゃんが優しく手招きする。


「え……いや、真美は遠慮して……」


「せっかくだから入りなさいよ」


「いや、真美は……」


「あれ、もしかして照れてんの?」


うるさい。その言葉を目線だけで亜美に送る。


「あーもうっ!さっさと入りなさい。真美が入らないとライブ始められないじゃない?」


「わ、わかったよぉ!」

いおりん、亜美、あずさお姉ちゃん、律っちゃん、真美。

五人で円になる。


ふと、竜宮小町が結成された時を思い出した。


亜美だけが竜宮に入った事が不満で、亜美に辛く当たった事もあった。


アイドルを辞めてから竜宮小町に入るとは思わなかったよ。




「竜宮小町!ファイトーっ!!」



「「「「「おぉ───────っ!」」」」」



五人で掲げた右手は。





まるで花が咲いた瞬間みたいだった。



最初の一曲目だけを舞台袖から見守る。

二曲目が始まった時、振り返るとすぐ後ろに雪ぴょんがいて驚いた。


にっこり笑って、また手を差し伸べてくれる。


昔から雪ぴょんは優しくて、いっつも手を差し伸べてくれた。

手を引かれるように、二階の指定席に行くと
765プロのみんなが揃っていた。

もちろん兄ちゃんも。


通路側の一番手前にピヨちゃん、その横にミキミキが座ってた。

ピヨちゃんがこっちに気付いて手を振るから顔の前で小さく両手を振り返す。
ピヨちゃんに近付くと笑顔で席を譲ってくれた。

二階席は暗くて気付かなかったけど、ピヨちゃん凄い。

最初に会った時とほとんど変わってない。
もう、ずっとこのままなのかもしれないね。


ミキミキの横に座るとこっちを見て凄くびっくりした顔してた。

会場全体に大音量で鳴り響くフォービートの中、大きめの声でミキミキと会話する。


『元気だった?』


『うん。ミキミキ主演の月9ドラマ毎週観てるよ!』


『ありがとうなの!ところで……』


「赤ちゃんいつ産まれるのーっ?」



ミキミキがそう叫んだ瞬間に丁度、暗転して曲が終わった。

シーンとした会場にミキミキの声がこだましたけど、何事も無かったように、すぐ三曲目が始まった。

鬼のような律っちゃん軍曹の顔が思い浮かんで、ミキミキとふたりで苦笑しあう。

兄ちゃんもこっちを見て睨んでいる。

冷たい目で訴え返す。
元はと言えば兄ちゃんが悪いんじゃない?


ミキミキ以外のみんなには、毎日のように真美の写メ見せてるじゃん?

なんでミキミキには見せてなかったの?

これは浮気もありえるんじゃない?

あとで問い詰めてやるかんね。


ライブは中盤を迎え、タイムテーブルはMCに入った。

スポットライトだけがステージの竜宮小町を照らす。

舞台袖に捌けていく、あずさお姉ちゃんをスポットライトが追い掛ける。

あずさお姉ちゃんはカートに載った大きなケーキを運んでくると、お決まりの伴奏が流れる。




───Happy birthday to you.

  Happy birthday to you

Happy birthday, dear『亜美ちゃん』

   Happy birthday to you,─────。




亜美が24本の蝋燭を吹き消すと皆が一斉に拍手と声援が会場全体を包む。

もちろん765プロのみんなも。


心の中で亜美、お誕生日おめでとう。って呟く。


アンコールも含めて全ての演目を終えた竜宮小町のライブ。

竜宮メンバーを労うために、みんなで楽屋に押し掛ける。
みんなで今までお疲れ様でしたって言ったら律っちゃんが泣いちゃって大変だった。
みんなで釣られ泣き。

そのまま、みんなで打ち上げ。



海沿いにある小さなライブハウスを借り切って、みんなで騒いでた。
皆が、お互いに懐かしみ、思い思いに話す。

ぽつ、ぽつ、と人が減ってきたのに気づいて腕時計を見ると23:20。

兄ちゃんを見ると律っちゃんとあずさお姉ちゃんに絡まれてぐでんぐでんに酔っ払っていた。

亜美と目があったのでアイコンタクトで、外に出た。


火照った頬に夜風が当たって気持ち良い。
月明かりを頼りに亜美とふたりでゆっくりと海岸沿いを歩く。


少しだけ酔いが覚めた頃。
亜美が話しかけてきた。


「もうすぐ、赤ちゃん産まれるんだよね?」


「あと、3ヶ月かな」


「双子なんでしょ?」


「そだよ。プロデューサーさん、奇跡ですよ!奇跡!」


「はるるんの物真似とか、久々に聞いたなぁー」


「真美も超、久し振りにしたよ」


「ふふっ」


「ねぇ、真美。ずっと兄ちゃんと幸せで居てね?」


「それは、兄ちゃん次第かなーって」


「物真似は、もう良いから」


「亜美は、これからどうすんの?アイドル続けるの?」


「んー。………わっかんない」


「そっか」


「亜美も結婚しようかなー」


「え!?相手居るの!?」


「居るわけない」


「そ、そっか」


「亜美の分まで幸せになってね?」


「うん」


「………………」


「………………」


波の音だけが聞こえる砂浜。


今まで、竜宮小町お疲れ様でした。

……とか。

今日は、たくさんの人達が亜美の誕生日をお祝いしてくれたね。

……とか。

……とか。

生まれる前から真美の隣りには亜美が居てくれて、それが凄く嬉しかった。

……とか。


……とか。



……とか。


色んな言葉が口から飛び出したがったけど無理矢理飲み込んだ。


二人で見つめ合う海岸沿い。
亜美も何か考えてるみたい。
波の音が心地良い。


想いを伝えるなら、一言で充分。



「「 誕生日、おめでとう 」」





きれいにユニゾンした、ふたりの言葉が心を揺らす。

思いもよらず重なった言葉が、涙腺を刺激した。

恥ずかしさを誤魔化すように子供の時の笑い方を記憶の隅から引っ張り出す。


「「んっふっふ~っ」」


再び言葉は重なる。
まるで子供時代に戻ったみたいに二人で笑った。



「真美ね。一番最後の亜美へのおめでとうは真美が貰おうって決めてたんだ」



「亜美も!やっぱり双子は、同じ事思うんだね」


────どれだけ離れても同じように互いを想い。


これからもきっと、変わらない想い。



             おしまい─────。


一日遅れの亜美真美誕生日おめでとう。


くそぅ。

間に合わなかった………。

すまん。


来年こそは……頑張る。

見てくれた人いたら、ありがとうございました。

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