千奈美「ようせいさんとおねえさん」 (659)

・デレマスSS
・事務所は複数

――――

志保「あ、次のフェスのユニット? フライヤー見せてー……うわっかわいい!なにこれ可愛いよ千奈美ちゃん!!」

千奈美「……」

志保「……ふ、不機嫌?」

千奈美「ぷぷっ」

志保「え」

千奈美「くふふふ…… あはははっ、お、おねえさん!!とか!」

志保「あー」

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千奈美「ひーっ! アヤが! おねえさん! お、ね、え、さ、ん!!」

志保「ち、千奈美ちゃんウケ過ぎだよ!?」

千奈美「ようせいさんと お ね え さ ん」

志保「アイドルがしちゃいけない感じの顔してる!」

千奈美「おwwねwwえwwさwwんww」

志保「アイドルがしちゃいけない感じの顔してる!」

千奈美「ひー、最高にウケるーーーwww」

志保「しっかりして千奈美ちゃーん! そのようせいさん、もうすぐこっち来るよ? お客様だよ?」

千奈美「え、何、拉致?」

こずえ「ふぁー… おじゃましますー…」

志保「いらっしゃいませ♪ 久しぶりだね、こずえちゃん」

アヤ「随分派手に笑ってくれたなッ、聞こえてンぞ千奈美ィィ!」

千奈美「あらあら、おねえさん(笑)」

アヤ「ムカつく! すっげえムカつく!」

こずえ「ちなみ、おもて、でろー…でろよー…」

志保「出ちゃいけないタイプの影響出てる!?」

千奈美「まあいいわ。志保、飲み物出してよ。私エスプレッソね」

志保「切り替え早い! いいよ、淹れるけど!」

アヤ「カフェラテ」

こずえ「しほー、おまえもかー…」

志保「……え?? えっ?」

千奈美「アイドルがしちゃいけない感じの顔してる」

アヤ「カフェモカだってさ」

志保「えっ? あ、もか……モカね?」

こずえ「しほのこーひー、のんでみたいー……」

志保「うん、ありがとー! 愛情たっぷりで淹れてくるね♪」

アヤ「下行くなら、ついでに顔出してくれよ」

志保「カフェに? そっか、こずえちゃんのマネさん来てるの?」

アヤ「ああ。お土産にお茶菓子貰っちゃったから、サービスしといて」

志保「アヤちゃん行かないの?」

アヤ「アタシさっきドリンク奢ったよ。レモネード」

志保「はーい。じゃあケーキとコーヒーかな。行ってきます♪」


千奈美「志保って、あれで抜け目ないわよね。私たちの宣材ブロマイドとチェキ持っていったわよ」

アヤ「売り込む気満々じゃねーか」



こずえ「しほは、かわいくて、しっかりものー」

アヤ「まあ、アタシや千奈美に可愛げはねーな」

千奈美「そうね、私たちにはない雰囲気よね」

こずえ「しほは、あかるくて、やさしいー。すきー」

千奈美「べた褒めね。志保に聞かせてあげようかしら」

こずえ「あやが、いってたー」

千奈美「志保に聞かせて来よう」

アヤ「んんんんん」


千奈美「……何してるの」

こずえ「あや、ねむいのー? くっしょん、いいにおい…?」

アヤ「違うんだ、こずえ……アタシは大丈夫だから……だから千奈美やめろー」

千奈美「アヤ」

アヤ「……んだよ」

千奈美「顔真っ赤」

アヤ「んんんんんんん」

こずえ「あや、やっぱり、ねむいのー? でも、じたばた… くっしょん、すごくいいにおい…?」

アヤ「ち、が、う、けど」

千奈美「あ、やっと顔真っ赤になった」

アヤ「んんんんんんん!!」


千奈美「いった! 痛い! いくらクッションだって、アンタの力でぶつけたら痛いわよ!?」

アヤ「最初に真っ赤ッつったの嘘かよ!?」

千奈美「何が悪いのよ!」

アヤ「お前ッ!? 100%お前悪いだろ! お前、お前なッ!? ああもうー!」

こずえ「あやー」

アヤ「止めないでくれ、アタシは今、千奈美を叱らなくちゃいけないんだ」

こずえ「あやも、かわいいよ?」

アヤ「」

千奈美「おぉ……助かったわ、ありがと、遊佐ちゃん」


アヤ「ぐぐぐ。レッスンで疲れてるのになんでこんな目に」

こずえ「あや、がんばってたー」

千奈美「ある程度の努力は当然よ。で、お土産のお茶菓子は…… ご、ゴディバの大箱!?」

アヤ「え。それ高いんだよな」

千奈美「どんなに安くても3000円ってことはないわね」

アヤ「……うちじゃ買えない……」

こずえ「こずえ、これ、すきー… じむしょに、ときどき、おいてある…」


志保「お待たせー、チェキもサービスしてきちゃっ…… どうしたの二人とも?」

千奈美「……事務所の格差が何だっていうのよ。余裕よ、余裕」

アヤ「……フェス、ちょっと気合い入れていくわ」

こずえ「ふぁー… ふたりとも、たべないのー? しほ、どうぞー… おみせのひとにも、どうぞー…」

志保「ありがと、こずえちゃん♪ って、わ、うわ! ゴディバのグラン!? これ確か8000円くらいするよ!!?」

アヤ「は、はっせ……!?」

千奈美「想像を飛び越えてきた……!」

志保「私、ここの初任給で買ったよ。実家に贈る分と、自分一人で食べる分」

千奈美「想像を飛び越えてきた……!」


こずえ「あいどるは、ひとのめに、とまるしごとだから… みえも、だいじー…」

アヤ「あぁぁぁ耳が痛いぃぃぃ」

こずえ「れいこが、いってた…」

千奈美「これが大手と弱小の差……! マネージャーや事務員が高級店で手配してくれる事務所と、所属アイドルが通販サイトで業務用を発注する事務所の差……!」

志保「生々しいよ? やめようよ?」

アヤ「あ、思い出した。ヌーブラ欲しい」

千奈美「どういうタイミングで思い出してるのよ」

アヤ「通販サイトのくだりで……」


こずえ「つうはん… ぐっずに、さいんしてる… ときどき、おてがみもかく…」

アヤ「こずえのサイン可愛いよなあ」

志保「あ。そうだよアヤちゃん千奈美ちゃん、うちわにサインしてよ」

千奈美「何枚?」

志保「二人で200ずつ。フェス公式と事務所が半々」

アヤ「事務所のサイン入り余ってたろ。200も増やしたら、また余るんじゃねーの……」

志保「足りなくて買えないファンが出ちゃうよりはいいよ! 余ったらカフェで配ろう!」

千奈美「身も蓋もないわね」

こずえ「ふぁー…? こずえ、ごひゃくまい、さいんしたよー…、あまるのー?」

千奈美「……遊佐ちゃんは余らないんじゃないかしら」

アヤ「アタシだったら五枚買う」

志保「こんな太いファンが欲しいです」

千奈美「私たちじゃ、よっぽどアピールしないと作れないわね」


こずえ「あやたちのじむしょは、ふしぎ…」

志保「確かに、カフェ経営してるのは変わってるかも?」

こずえ「ひろくないけど、ひろーい…」

千奈美「人がいないものね」

こずえ「あやと、しほと、ちなみと、しょちょうさん」

アヤ「そう。あとはカフェのバイトさんが数人」

こずえ「かふぇ、きれい… ふく、かわいい…」

志保「えへへ、でしょー?」

こずえ「あやとちなみは、きないの?」

千奈美「そうね、夜入ってる。お茶終わったら着替えるわ」

アヤ「アタシは、今日はシフト入ってないんだ」

こずえ「あやは、きないのー…?」

アヤ「……あー、うん。着るよ。見せるだけだよ、今だけな?」

志保「アヤちゃん、こずえちゃんには甘いんだね。いいなぁ♪」


こずえ「あらーむ、なってるー…」

アヤ「もうそんな時間か。じゃあこずえ、マネさんとこ行こう」

千奈美「私たちも挨拶しておきましょ」

志保「はーい。あ、お返しはもうお渡ししたから大丈夫だよ」

千奈美「どれにしたの?」

志保「パウンドケーキ一本」

こずえ「けーき…? ありがとう、ございます…」

アヤ「今日はありがとうな、こずえ。礼子さんたちにもよろしく」

こずえ「こんどは、さんにんで、あそびにきてー…」

千奈美「ええ、是非。フェスが終わってからかしらね」

アヤ「じゃあアタシ、こずえのマネさんと軽く次回の打ち合わせしてから戻るから」

こずえ「ようせいさんとおねえさんを、よろしく…」

千奈美「ぷふっ」

アヤ「千奈美ィ!」


千奈美「あー笑った笑った。それにしても、アヤがあの遊佐ちゃんと組ませてもらえるとはね」

志保「うちみたいな弱小、フェスのメインMCだけでも大仕事なのに」

千奈美「メインMCはいいのよ。事務所間で持ち回りなとこあるから、競争率は高くなかった」

志保「そうは言っても、うちはさ、その……政治力? あるわけじゃないもの。そこは千奈美ちゃんの実力だよ」

千奈美「ありがと。ま、MCにもステージあるから。チャンスだと思って、しっかりアピールしてくるつもり」

志保「千奈美ちゃんが歌うの夜なんだよね。青リウム物販に入れておかないと」

千奈美「赤は?」

志保「入れないつもり。アヤちゃんも今回は青い衣装だし、そもそも明るいうちしかユニットでの出演ないし」

千奈美「遊佐ちゃんの都合ね」

志保「小学生だから……」


千奈美「ま、昼間でも振りたい、買いたいファンがいてくれることを期待して、青を少し多めに持っていけば」

志保「そうするー。もらった名刺しまっちゃうね」

千奈美「遊佐こずえ担当マネ。裏書きオッケーよ」

志保「日付抜けてるよー。んー、ジューシーパーティさん、知り合い増えてきたね」

千奈美「今のところいちばん多い? ……まあ、お世話になりっぱなしだわ」

志保「仕事だけじゃなくてプライベートでも声かけてもらえて。高橋様々、あい様々だよ……」

千奈美「それにしても、遊佐ちゃんがジューシー所属ってのは意外よね」

志保「それ、初めてこずえちゃんのプロフィール見たときも言ってたよ?」

千奈美「そういえば、そんな話したわね。『遊佐ちゃんと相性いいみたいだし高橋さんとはコネありでしょ』って」


志保「こ、コネ……」

千奈美「プロジェクト初期にユニット組ませてもらった縁を今まで引っ張ってるんだから、コネでしょ」

志保「私もバリ島とかメイドとかでお世話になってます!」

千奈美「私は違うけどね」

志保「ぶーぶー! 嘘だー、浜川さんジューシー所属でしょー!」

千奈美「アレはコネじゃありませんー! 偶然共演してから仲良くなったんですー! ぶーぶー!」

志保「それコネじゃないですかーーー! やだー!」

千奈美「そんないっぱいコネあったらもっと売れてますー!」

志保「……うん」

千奈美「……」

志保「……そう、そうだよねえ……」

千奈美「……休憩、終わりましょ。ディナーシフトの準備するわ」

志保「……私、水出し器片付けてくるね」

――――


レギュラーはアヤ志保千奈美です。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、リクエストとは関係ない話を書いたりします。

千奈美「おはよう」

志保「おはようございます♪」

久美子「おはよ。今日は槙原さん付き添い?」

千奈美「いや、私一人よ」

志保「私はこれから委員会の最終確認会です! 物販担当なので」

久美子「え、所長さんじゃないの?」

志保「これが、所長は委員で裏方なんですよね……」

久美子「あぁ、その……大変ねえ……」

千奈美「人少ないってのはそういうことだから、慣れっこよ」

志保「物販さばくのは得意ですから!」

千奈美(……アイドルがそれはマズい気がするけど……)


久美子「変なこと聞くけど、貴方たちのところ、物販の準備できてるの?」

志保「任せてください♪ もう、売り物もアルバイトも手配済みですよ」

千奈美「余裕よ。私たち、これでやってきてるんだから」

久美子「まあ、そうなんだけど。そもそも外野が言うものでもないし」

千奈美「じゃ、行きましょ。私たちも今日でラストよ」

久美子「そうね…… それじゃ、槙原さん。次は現場で」

志保「はーい、いってらっしゃいませ♪」

――――

響子「おはようございます!」

久美子「おはよう、響子ちゃん」

千奈美「おはよ。……あら、マネージャーさんは?」

響子「私だけ置いて、とんぼ返りです。今回のフェス、うちの事務所すっごく忙しいみたいで……」

千奈美「今回も、な気がするけど。出演10人だっけ?」

響子「えーっと……9人ですね!」

久美子「多いわよねぇ。そのトップに名前が挙がってるんだから、プレッシャーだったりする?」

響子「最初聞いたときは、やっぱり。でも、三人でやらせてもらって、楽しかったです」

千奈美「『楽しかった』は本番まで取っておきなさいよ」

響子「そっか、そうですよね。まだまだ楽しみますね!」


千奈美「そう、笑顔でね。それじゃ、スタジオ入りする前に、変更された振り付けおさらいしちゃいましょ」

久美子「オープニングとエンディングのシークエンスも、ちょっと変わるって聞いたけど?」

千奈美「それ影響するのほとんど私だから、通すときに見てくれればいいわよ。最初の立ち位置変わるだけだし」

響子「私たちの入りは変わらないんですね」

千奈美「そういうこと。それより振り付け大丈夫? Bメロのリズム難しいのに、無茶言ってくれるわよね」

久美子「私は手のフリ少し変わっただけだから、もう平気よ」

響子「私も、ステップ変わらないので、一週間で何とかできました」

千奈美「……今日足引っ張ったらごめんね」

響子「だ、大丈夫ですよ!?」

久美子「弱気? らしくないんじゃない? ふふふっ」

千奈美「うわっ、カチンと来たわ。やるわよ」

響子「えっ、えっ!?」

千奈美「ああ、もちろん響子には感謝してるわよ? このユニットのセンターができてよかった、って思わせてあげる」

響子「よかった! 頑張りましょうね♪」


――――

久美子「はぁー…… これで、後は本番を残すのみ、なのね」

響子「ライブの本番前って、いつもドキドキしますよね。同じくらい楽しみですけど♪」

久美子「いちばん注目されてる当人がこれなんだから、敵わないわ」

千奈美「大舞台の経験の差かしら? ま、楽しみましょ。ファンのためにもね」

響子「え、えへへ…… 支えてくれた皆さんに恥ずかしくないように、頑張りますね!」

久美子「あっ、まぶしい……!」

千奈美「……ピュアさが違う……!」


――――

響子「マネージャー、迎えに来られるのちょっと遅くなるって。移動してもいい、とは言ってますけど」

久美子「あら。じゃあどこかでお茶でもして待つ? 千奈美ちゃんは?」

千奈美「私事務所戻らないといけないのよね。久美子は?」

久美子「私は直帰。んー…… 響子ちゃん、一緒に千奈美ちゃんたちのとこ行かない?」

千奈美「今日のディナープレートはインドネシア風です」

響子「どうしよう、行きたいけど逆方向だし…… 寮の門限はマネージャーさんに言えば大丈夫なんですけど」

久美子「きっと今日なら千奈美ちゃんがサービスしてくれるわよ!」

千奈美「無責任なことを。ま、多少はね」

響子「うぅん。……電話してきます!」


――――

千奈美「ま、こうして電車乗ってるだけだと、ただの大学生ね」

久美子「どっちかっていうと、高円寺辺りのアパレル店員みたい」

千奈美「実際はカフェ店員の勤労学生なんだけど」

響子「そこはアイドルって言ってください!?」

千奈美「もちろん、自覚はあるわよ。服のグレードは上げたし、姿勢は意識するようになった」

久美子「そうそう。“24時間365日、誰に見られてもアイドルたるべし”ね」

千奈美「シンデレラガールズ宣誓条文。第何条?」

久美子「えっと…… わ、忘れちゃった」

千奈美「自覚が足りないわね」


久美子「……答えは?」

千奈美「……」

響子「……あの。それ、前文です」

千奈美「自覚が足りなかった……」

久美子「……ぐうの音も出ない……」

響子「あっ、えっ、その……!? そ、そうだ、私もこの間『もっとイイところの服着なさい』って言われました!」

久美子「むむっ。じゃあ本番跳ねたら銀座にでも行ってみる? まだ夏休みだし」

響子「わ、行ってみたいです! 私一人じゃ行くに行けないですし、久美子さんたちにレクチャーしてもらえるなら心強いです」

千奈美「私も付き合いたいな。いいわよね?」

久美子「最初からそのつもりよっ」

――――

久美子「事務所が駅近物件って、いいわよね。羨ましい」

千奈美「急行止まらない駅だから安いんじゃない?」

響子「そんなに違うんですか?」

千奈美「今のマンション借りる時調べたけど、一万円くらい違ったわよ」

響子「千奈美さんって、ルームシェアしてるって言ってましたよね」

千奈美「そうよ。アヤと志保とね。響子はガールズの共営寮でしょ? ……他事務所の人と毎日会うってのも何だか落ち着かなくない?」

響子「あはは…… もう慣れました。事務所は違っても、仲間で同僚でライバルですから」


久美子「いいなあ、寮とかルームシェアとか。楽しそう」

千奈美「入ればいいじゃない」

久美子「ピアノがないと物足りないの。寮だと自分のピアノは持てないでしょ?」

千奈美「贅沢な悩みね……」

響子「防音スタジオにはありますけど、誰かしら、歌とか楽器とか練習してますね…… と、着きましたー!」

千奈美「はい、いらっしゃいませ。私、二階に顔出さないといけないから。注文は自分でしてね」

久美子「適当だわー。適当ー。フェスの二日間を、一緒に過ごすっていうのにー」

千奈美「アイドルがしちゃいけない棒読み!」

久美子「それじゃ、お邪魔しまーす」

響子「お邪魔します♪」

――――

アヤ「いらっしゃいませ、お客様。お二人様ですか?」

久美子「はい、二人で。桐野さん、お久しぶり」

アヤ「あれ、松山さんと五十嵐さんか。わざわざ寄ってくれたんですね、ありがとうございます」

久美子「最後のレッスン終わったから、本番前の景気付け、ってところかな」

アヤ「アタシは今日はこの通り店番なんで、あんまり話せないですけど。ゆっくりしてってください」

久美子「そうさせてもらうわね。ディナープレートセットのAでお願い」

響子「私、メニュー見て選ばせてもらっていいですか?」

アヤ「勿論。お席ご案内しまーす」


――――

千奈美「はーい、お疲れ様。二人のオーダー、なんだって?」

アヤ「プレートAとミネストローネセット。お前どうすんの。賄いプレートで持ってく? ナシチャンプルだけど」

千奈美「何だったっけ…… あ、インドネシアの混ぜご飯ね。じゃあ作って持っていくわね」

アヤ「ところで何探してんだ。なんかサービスしたいの?」

千奈美「よし、どうぶつクッキー残ってる」

アヤ「げ。それ出すの? お客さん普通に入ってんのに! 身内だけじゃないのに!」

千奈美「『アヤちゃん手作りの、どうぶつクッキーのサービスです』ってお客さん全員に配ればいいわよ」

アヤ「カタチ悪いんだけど! 熊だかタヌキだかわからなくなっちゃってるけど!」

千奈美「それも手作り感の演出になるじゃない。ガタガタ言わないで作っちゃってよ」

アヤ「やだよー うわー」


――――

久美子「ナシゴレン美味しい!」

千奈美「アヤが珍しく拘ってるから。みんなが作れるようにレシピ起こしたのは志保だけどね」

響子「ミネストローネも美味しいですね。参考になるなあ……」

千奈美「多分所長のレシピかな。後で送ろうか?」

響子「わ! 嬉しいです!」

久美子「この間のあんかけスパゲッティは?」

千奈美「あれは私」

響子「じゃあ、このパンケーキプレートは?」

千奈美「志保ね」

久美子「煮込みハンバーグ、ハヤシライス」

千奈美「所長か厨房のバイトさんだと思う」

響子「……味噌カツサンドってもしかして」

千奈美「私」

久美子「肉団子スープの麺も出してたわよね?」

千奈美「アヤが担当したときね」


久美子「なんか解ってきた…… このタワーパフェシリーズは槙原さん?」

千奈美「正解。所長が『現役アイドルが働いてるカフェなんだから、キャラクター性出したほうが絶対いい』って」

久美子「千奈美ちゃんがいちばん迷走してる気がする……」

千奈美「別にみゃーみゃー言わないわよ? それ言ったらアヤなんて大変だったんだから」

響子「え。どうだったんですか?」

千奈美「筑前煮とか棒ラーメン? とか。そんなのしか思い付かないって」

久美子「えっ…… 何それ……」

千奈美「九州ではメジャーなインスタントラーメンなんだって」

響子「筑前煮は美味しいと思いますけど、こういうお店には、ちょっと……」

千奈美「で、苦心惨憺の末に東南アジア系に行き着いた感じ」


久美子「アイドル、アイドルって何かしら……」

千奈美「朝仕込みしながらモーニングの店番して、大学行って、レッスンか現場かカフェでお仕事」

響子「は、ハード、ですね……!?」

千奈美「悪くないわよ。変な話、生活の心配しないでアイドル活動できてるんだから」

久美子「あー…… そっか、就職も考えなくていいから、三年四年でもじっくり単位取れるのね」

響子「アイドルとしての拠点があるって、なんだかいいな……」

千奈美「守るばかりで攻められていないのも、事実だけど。現に、シンデレラガールズ内での注目度はそんなに高くない」

久美子「うーん…… まあ、そうねえ……」

千奈美「ましてや、響子みたいなトップグループにはとてもじゃないけど及ばない」

響子「え、いや、そんな……」


久美子「……下手に謙遜しないほうがいいわ。人気は水物っていうけど、上下は確実に出来ちゃうんだから」

千奈美「それでも足繁く来てくれるファンもいるし、この店で私たちのファンになってくれた人もいる」

響子「……」

千奈美「まだまだこれからだし、もっと走りたい、って思ってるのよ。だから、今度のステージ、凄く楽しみ」

響子「! はい、そうですよね!」

久美子「危なかったー、折角の景気付けのつもりだったのに、キツめの話に終始したらどうしようって」

千奈美「雰囲気くらい察してるわよ。覚悟を見せておきたかったの」

響子「……ありがとうございます。お二人に脇を固めてもらって。なんて言ったらいいかな。……うん。嬉しい、です」


――――

千奈美「すっかり話し込んじゃったわね。マネージャーさん来るまで気付かないなんて不覚だったわ」

響子「うわぁ、仕事以外で門限こんなに超えたの久しぶりです……」

久美子「半分くらいは仕事扱いでもいいと思うんだけど…… 大丈夫なのよね?」

響子「はい、そこは平気です。またお邪魔させてください。……いつになるか解らないですけど」

千奈美「いつでもいいわ。仕事で来てくれてもいいのよ?」

響子「なるほど、その手がありますね!」

久美子「ふふっ、楽しみが増えたじゃない。それじゃあ、みんな。次は本番で!」

響子「はい! お疲れ様でした! 本番も頑張りましょうね!」

千奈美「お疲れ様、今日はありがと」

響子「あと、桐野さんにもお礼伝えておいてください。猫ちゃんのクッキー、可愛かったし美味しかったです♪」


――――

千奈美「ですって」

アヤ「……あれ、熊なんだけど……」

千奈美「あっはっはっはっは」

アヤ「笑うなよ!? つーか暇してんならクローズ手伝えー!」

千奈美「手伝ってるじゃないの。ところで志保は?」

アヤ「お前が遊んでる間に、二階で所長と書類やっつけて帰ったよ」

千奈美「あれ、じゃあ所長まだ上?」

アヤ「さっき賄い持ってったらビール飲んでた。チキンサテ投げつけてきた」

千奈美「全部ひどい」

アヤ「んで、所長は泊まるとさ。明日のオープンとモーニング任せていいらしいぞ」

千奈美「へぇ。それじゃ、ありがたくゆっくり来させてもらいましょう」

アヤ「だなー。……うし、終わり。水出し器セットして終わりだから頼んでいいか?」

千奈美「はいはい。着替えてらっしゃい。帰りにコンビニ寄りましょ、スイーツ買いたい」

アヤ「志保に確認しとけよ? まーた被るぞ!」

千奈美「『冷蔵庫の棚が一段スイーツで埋まってるのってさ、なんか凄いよね! ロックじゃない!?』」

アヤ「それこないだの合同レッスンのときのだりーなじゃねえか!! ロックじゃねえよ!?」

千奈美「あはは……   ねえ、アヤ」

アヤ「ん?」

千奈美「フェス、楽しみね」

アヤ「……ん。楽しみ」

――――


レギュラーはアヤ志保千奈美です。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、リクエストとは関係ない話を書いたりします。


――――

志保「……千奈美ちゃん、大丈夫かな」

アヤ「……アタシが知るかよ」

志保「そういう言い方って!」

アヤ「じゃあどうしろってんだ!」

志保「……どうしようもなくても、心配くらいしないの?」

アヤ「してるに決まってるだろうが! 現場見てたのアタシだっつーのに!」

志保「う、うぅ」

アヤ「……ガヤガヤ言うことじゃないんだよ」

志保「だとしてもさ……やっぱり、先に帰って千奈美ちゃんの様子……」

アヤ「一人にしてくれ、って言ってたの聞いたろ」

志保「……うん。……あのさ、アヤちゃん」

アヤ「ん」

志保「収録は問題なく終わった、って。所長から聞いてたんだけど」

アヤ「表向きはな」

志保「詳しく聞かせてもらっていい?」



“サイレントウィンド”の二人とは、実質初めて一緒に仕事したんだけど、千奈美が、その片方を知ってたんだよ。

梅木音葉。松山さんと同じ大学で、シンデレラに参加する前からピアノでも歌唱でも賞取りまくってたらしい。

それが何で、コーラスに千奈美を名指ししたのか、結局アタシも、直接は聴けてない。……でも察した。

うん。収録で何があったか、だよな。結論から言うと、普通に収録しただけなんだけど……


――――

アヤ「背の高いほう、梅木さん? すげー声量だな。鷺沢さんの声と被せたら消えないか、あれ」

千奈美「いや、声質が噛み合ってるから、却って通るんじゃないかしら。調整らしき相談はしてたけど」

アヤ「で、千奈美はどうよ」

千奈美「……どうかしらね」

アヤ「んん? いつもみたいに『余裕よ、余裕』って言わないの?」

千奈美「……」

アヤ「……黙らないでくれよ」

千奈美「……読めないのよ。どういうつもりなのか」

アヤ「ディレクターとか梅木さんとかに聞けばいいだろ」

千奈美「私のデモ音源聴いて、バックコーラスに置いた上にいつも道理に歌って欲しいとか。意味解らないんだもの。主張強くてコーラスには合わないことくらい簡単に想像できるのに」

アヤ「なんか思うとこあるんじゃねえの?」

千奈美「そんなの解ってるわよ。それが読めないから困惑してるのよ」


音葉「……小室、千奈美さん」

文香「お疲れ様です……」

アヤ「おぅ? ああ、お二人さん、お疲れ」

千奈美「同い年でしょ、さん付けは要らないわ。私もそうするから」

文香「私にとっては……これが自然体です…… 千奈美さん。コーラス、私のことはお気になさらなくて、構わないですから……」

音葉「……貴方の奏でる旋律、期待してる」

千奈美「元よりそのつもりよ。音響さんからも貴方たちのプロデューサーからも、全力でいいって聞いてるから」

アヤ「はい、そろそろ休憩終わるぞ。準備しときなよ」

文香「そうみたい、ですね…… それでは」

音葉「また、後で……」

アヤ「はいよー。……お前ホント遠慮ないね」

千奈美「仕事一緒にやるんだもの、ましてや歌よ。そうでないならもう少し様子見るわ」

アヤ「ホントになー。んじゃ、アタシも向こうでPV撮影の打ち合わせしてくるから。また後で」

千奈美「はいはい。よろしく。……ま、要求通りにやってみましょ」


――――

アヤ「で。これが件の音源」

志保「うわあ、本当に特筆すべきことは起きてなかった!」

アヤ「中に秘密が隠されているのだのだのだ……」

志保「一人エコー?」

アヤ「ホラーっぽくない?」

志保「聴いていい?」

アヤ「だいたい1分からが千奈美のバックコーラス入り。前メロの40秒くらいからだと解りやすい……ほれ」

志保「うん、うん…… …………」

アヤ「それ、ノイズキャンセルかけただけのノーカットだぞ。ほぼ録って出し」

志保「……? ……?? ……うん、凄くいいコーラスになってるよ? 千奈美ちゃんの歌声、尖るのにね」


アヤ「録って出しって言っただろ。千奈美の歌声、音量調整以外の加工されてないんだよ」

志保「え? えっ、嘘でしょッ!? これ…… え、これどうやったの? 梅木さんの歌??」

アヤ「多分。千奈美のガツッとした歌い方がコーラスになるように合わせてきた、んじゃねーかな」

志保「……向こうの巧さを引き立てる当て馬?」

アヤ「そういうこと考えるなよ。悪意はない、悪意はないんだ。出来るからやってみた、だけのはずだ」

志保「うぅ…」

アヤ「……千奈美が悔しがったのは、力不足を感じたから。それだけ」

志保「当人たちはそうかもしれないけど……」

アヤ「そうだって、思っとこうぜ。ただのチャレンジだったんだろ」

志保「最初からこう作るつもりでゴーサインを出したんだとしたら、ディレクター? プロデューサー? は、あんまり……」

アヤ「そこはなぁーーー…… 趣味がいいとは、言えない、のかな……」

志保「……あ、なんか私も悔しいかも」


アヤ「仕事には真摯だったぞ。実際、PV撮影は楽しみな感じになったしなー」

志保「そうだね……お店も私たちも使ってもらえるんだもんね。間違いなくチャンスだよね?」

アヤ「そうそう。チャートインしたらTVで流れたりする!」

志保「地上波! 地上波! 動画チャンネルじゃない! んんー、がんばるぞー! 見返すぞー!」

アヤ「……二年目はもっと増えるといいな」

志保「増やしたいよね。……一緒に頑張ろうね」

アヤ「うん。……さっきキツく当たってごめん」

志保「へっ? えへへ、もう忘れちゃった」


アヤ「そか。ありがと。……千奈美、晩メシ持って帰ったら食うかなあ」

志保「どっちみち、明日は定休日だもん。仕込みの余り持って帰らないと」

アヤ「あんまり残ってない」

志保「所長がほとんど抑えてるね。職権濫用だあ」

アヤ「食ってやろうか」

志保「泣くんじゃないかな?」

アヤ「泣かせてやろうか」

志保「そんな悪い子だったなんて。明日デートにお誘いしようと思ってたのに?」


アヤ「三人で出掛けてデートもないもんだ。……三人だろ?」

志保「三人でしょ? スイパラ行こうよスイパラ」

アヤ「お前、昨日も今日もパフェ試作とか言って食ってただろ……」

志保「パフェとケーキと和菓子は、それぞれ別腹だよ!」

アヤ「どれだけ胃多いんだよ! 草食動物かよ!!」

志保「きゃっ、食べられちゃうー♪」

アヤ「がうがうー。がぶー。ほれ、馬鹿やってないで帰るぞ」

志保「……千奈美ちゃん、泣き止んでるかな」

アヤ「あー… 一応連絡しといて」

志保「はーい。……三人で住んでて、よかった、って思うよ。私」

アヤ「面倒臭いこともいっぱいだけどな」

志保「……照れ隠し?」

アヤ「……違うよ」

志保「……そっか♪」

――――

レギュラーはアヤ志保千奈美です。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、リクエストとは関係ない話を書いたりします。

アヤ「誰かー! 化粧水と乳液どこー!」

千奈美「使い終わったーはいどうぞ」

志保「朝ご飯お店でいいんだよね? コーヒー入れてるよ」

千奈美「所長がお店で準備中よ」

アヤ「あれ? 眼鏡、誰かドレッサーに戻してくれた?」

千奈美「靴箱の上に置いてたでしょ。ちゃんと決めた場所に戻しなさいよ」

アヤ「むむむ」

千奈美「なにがむむむよ」


志保「アヤちゃんシュシュとかんざしどっち?」

アヤ「んんー、今日はかんざし! 志保もう化粧水と乳液終わった? 片付けていい?」

志保「終わってる! 私もかんざしにしようかなー。あ、千奈美ちゃん炭酸出してー」

千奈美「はいはい。ゲロルもう切れるわよ。はい、これ志保。こっちアヤ」

アヤ「あいよー。ッんぐ……あー渋ッ…… 通販注文しとくけど、他に何かあるっけ?」

志保「ホワイトボードに全部書いたはず!」

アヤ「おっけー。……うぉッ、多いよ!! これと、これと、これと……」

千奈美「んくんく…… っぷは。あと、歯ブラシと歯磨き粉もよろしく」

アヤ「多いっつってるだろ! そんなの帰りにドラッグストア寄れよ!」

志保「寄れる時間に帰れない」

千奈美「その歯磨き粉置いてあるドラッグストア、この辺で見たことない」

アヤ「でっすっよっねェーーー。ぽちっ」


志保「コーヒー入りました♪」

千奈美「ありがと」

アヤ「さーんきゅ。……お、今日の朝メシは干物定食だってさ」

志保「また、カフェの仕込みに繋がらない料理を……」

千奈美「いいじゃない、味噌汁」

志保「カフェでお味噌汁はどうかなー!?」

アヤ「しかも景気付けとは言え、赤出汁だもんな」

志保「ん? お味噌汁は赤だよ?」

千奈美「赤に限るわね」

アヤ「所長すら押し切るんだから、ホント東海の人間どうかしてる」


――――

アヤ「朝メシ旨かったーーー」

志保「アヤちゃん、所長のご飯だと大概言ってないかな?」

千奈美「そうよね。私たちのときは普通に食べて終わり」

アヤ「……刺々しくない?」

志保「知ーりーまーせーんーー。ぷいっ」

千奈美「私、上で化粧してきちゃうから。食洗機任せていい?」

志保「うん? 今メイクするの?」

千奈美「軽めにね」


アヤ「めっずらしーーー。スタイリストさんに任せねーの?」

千奈美「電車移動なのよ? 人の目に入るでしょ。貴方たちも、目元くらい引いときなさいよ」

志保「この時間だと、現地着くまでずっと通勤ラッシュかなあ。私、帽子にマスクのつもりだったけど」

千奈美「サボりすぎ!!」

アヤ「志保の帽子可愛いと思うけど」

志保「アヤちゃんの眼鏡も可愛いよねー?」

千奈美「そういうことじゃなくてね?」

アヤ「まあ、アイラインとリップくらいにさせてよ。撮影でどのくらい塗られるかわからん」

千奈美「屋外だから、それもそうなんだけど、ナメられないくらいにはしないと。じゃ、片付けだけよろしく」

志保「わかったよー。でも、10分の電車乗るから、間に合うようにしてね?」


――――

千奈美「はぁ。後期始まったら、またこのラッシュに埋もれるのね……」

アヤ「前期始まる前も同じこと言ってたろ。原チャとか買えばいいんじゃねーの」

千奈美「そういうキャラじゃないでしょ。そもそも原付でもちょっと遠いわよ。自動車あったらどうかってとこだけど」

志保「愛知県民は、二十歳の誕生日に親御さんから車プレゼントされるものだと思ってたのに……」

千奈美「愛知県民なんだと思ってるのよ。それなら三重だってどっこいどっこいじゃない」

アヤ「ひどい」

志保「仕方ないよ。むしろ今回は、乗り換え一回で現地に行けることを感謝しようよ」

千奈美「事務所から気軽に車出せる身分になりたいわね」

アヤ「ロケバスに事務所の近くまで来てもらえる身分でもいいな」

志保「世知辛いね…… ん、朋ちゃんから連絡来たー」

アヤ「無事着いたか。よしよし、迎えに行こう」


――――

朋「あやちなしほー、おはよー」

志保「わー朋ちゃーん! 今日はよろしくー!」

千奈美「久しぶり、といってもフェス以来ね。さ、乗り換え行くわよ」

アヤ「おっす。お、そのターバン可愛いな」

朋「ふふ、今日のラッキーカラーはすみれ色でね、これ巻いてきたら電車スムーズに動いてくれたのよ!」

千奈美「そ、そう、よかったわね……えっと、マネージャーさんは別ルートなのよね?」

朋「そ。遅れて来るって。気にしないで」

志保「一人で来られて偉いねー♪」


朋「同い年でしょ!? ……この間のフェスの打ち上げじゃあんまり話せなかったから、今日、みんなと一緒に行きたかったのよ」

アヤ「アタシも顔出しただけだし、千奈美しかマトモに出られなかったもんな」

志保「確かその日はミニコンサート。サイリウムはないけど歌のお仕事~♪」

朋「最近、志保ちゃんたち以外のライブとかコンサートとか、お店でやってないの?」

千奈美「先月は多かったわ。今月も土日は埋まってたくらい。来月からは通常営業多いかな。大学始まっちゃうし」

アヤ「大学始まったら、店と学校の往復だからな」

志保「外でのお仕事とか、シンデレラの合同トレーニングとか、もっと出たーい」

千奈美「小さい仕事は、いくつか入れようとしてくれてるみたいだけど」


朋「でも、所長が一通りのトレーニング見てくれるんでしょ? いいじゃない!」

アヤ「ボイスとダンスと基礎体力な。フィジカルは見てもらってる。お店もかなり任されてるけど」

朋「うーん。お客さん相手にして、歌って、体力つけて……?」

志保「食事とおうちとトレーニングが保障されてるアイドル生活、って感じ」

千奈美「ま、恵まれてはいるんでしょうね。問題は、外での仕事が少ない」

アヤ「朋ぉ、多分アタシらの毎月の手取り聴いたらヒくぞー?」

朋「い、嫌よ、そんな闇覗きたくない!?」

志保「朋ちゃんは、発注見積チェックしたり注文書にサインしたり領収書切ったりしたことないんだよね……ふふふ……」

朋「それはそもそもアイドルとしての活動じゃないでしょ!!?」

アヤ「……」

志保「……」

朋「……あっ。……あの……」

千奈美「はいはい。次の急行乗るわよ。そしたらロケバスだからもう一頑張りー」


――――

アヤ「おはようございます。オフィス・グラジオラスの……はい、そうです。桐野と槙原、あっちが小室です」

朋「ツキアカリの藤居朋です。はい、劇団ツキアカリ。このロケバス乗るのは私だけです」

志保「今日はよろしくお願いします♪ 千奈美ちゃーん、先に乗ってるよー」



千奈美「先日以来ね。収録ではどうも」

音葉「…貴方の声、とても鋭くて、力強くて… 描いていた通りに…独特のコンチェルトを奏でられた…」

千奈美「……そう」

音葉「貴方の声を、奏楽に交えること… 良い経験に、なったわ…」

千奈美「……今日は、音録りないから。ま、適当にね」

音葉「ええ…よろしく」



朋「……千奈美ちゃん、音葉さんと話してたけど。何かあったの?」

アヤ「あー……あんまりつつかないで置いてやってくれ」

朋「ふーん。そうそう、さっきスタッフさんが、アイドルはこれで全員だって。遅刻ゼロ、幸先いいじゃない!」

志保「あれ? でも鷺沢さん来てないね。現地合流なんだ」

アヤ「主役なんだけどな。いいのかな」


――――

アヤ「広ッ。でかい公園だなー……」

志保「今日の撮影スケジュール! 何と私たちバックダンサー組が最初」

アヤ「ていうか、こんなに撮るカット多いんだ。想像以上だ」

千奈美「これ半日で済ますんだ」

朋「カツカツね、そりゃ朝から動くわけよ」

志保「あ、鷺沢さんだ。……さすが主役。梅木さんもだけど、待遇が違う」

千奈美「そりゃそうでしょ。それより、着替えてベースメイクやるわよ」

アヤ「衣装はこちらでございます」

朋「いやー! 超カッコいいじゃない!」

アヤ「レンタル費用結構掛かってそうでな…… 持って来るときにまじまじと見ちゃった」

志保「あんまりそこ気にしちゃうと、リアルに見積もりできちゃうからやめよう」


千奈美「着替えたら、ケープつけてファンデ塗っといてよ」

朋「はーい……っあ、忘れた……」

千奈美「まあ、そういうこともあるわよ。スタイリストさんから借りてきなさいよ」

朋「おっけー。ついでに水もらって来るわね」

アヤ「そうだ、上着は本番まで着ないでくれって。羽根が散るらしい」

志保「……? なんか、所長が、着替えたら写メして、だって」

アヤ「乙女か」

朋「じゃあ三人揃ったら撮ってあげる」

志保「わー朋ちゃん大好きー」

朋「棒読みじゃないの!? 安い大好きね!?」


――――

志保「終わったぁー……」

朋「はぁー、アンタ達がいてくれて助かったわ。合同練習、フェスついでの一回しかできなかったけど、何とかなるものね」

千奈美「私たちが毎日やれてるから、まあ何とかね。それほど難しくもないし」

アヤ「所長入れて四人で練習できてたのは大きかったなー」

朋「でもさ、桐野様様だったわ! 私、5テイク、10テイクくらい掛かるんじゃないかって不安だったもの!」

アヤ「アタシ? なんかした?」

朋「私の振り付け、全部覚えてくれてたでしょ」

アヤ「あー。まあ、合同でも同じとこでずーっと引っかかってたし。一応な」

千奈美「所長に物凄いスパルタされてたけどね」

志保「『別パートの振りなんて、全部振付師の人に任せるか、完璧に覚えるか。やるかやらないかの二つしかない』って言われて」

千奈美「やります、って即答してた」

アヤ「……」

朋「あ、結構本気で感激してるかも」


アヤ「……早くメイク落として寝たい……」

志保「この後、カフェでお仕事だよ? 先にお着替えしてー、すぐ車出してもらうんだからねっ」

朋「え。なーんだ、一緒に帰れないの?」

千奈美「ごめんなさいね。私たちの分まで撤収手伝っておいてくれたら、今度カフェでサービスするわ」

朋「そう? それならバッチリやっておくわ。任せてよ」

アヤ「怪我したり壊したりすんなよ。志保、メイク落としここ置くぞー」

志保「んんんー ……うわ、ホコリ凄ッ!?」

朋「ひぇー!? 私も今、こんななのね……」

千奈美「屋外撮影はこれがね…… あ、衣装どうしたらいいか聞いた?」

朋「座席にまとめといて、スタッフに伝えておけばいいんじゃない? 私からも伝えておくから」

千奈美「よろしく。私、あっちの水道で顔洗ってくる」

アヤ「ついでに、ADさんに車お願いしといてくれー。アタシたちも後で洗いに行くー」


――――

千奈美「……お疲れ様」

文香「……」

千奈美「……ちょっと、文香。お疲れ様」

文香「…あぁ、はい、すみません、私、でしたか… 気付きませんでした… 書に、耽っていましたもので…」

千奈美「はぁ。別にいいけど。明後日、またよろしく。うちのカフェ、雰囲気はいいから。この曲にも合ってると思うし、期待してていいわよ」

文香「…雰囲気、ですか… 私、そういった感性は… スタッフさんにお任せしていて…その、あまり…」

千奈美「……べ、別にいいけどね……」

文香「…うちのカフェ、と、いうのは…?」

千奈美「……え、あ、私たちの事務所がカフェ経営してるのって」

文香「…浅学にして、存じませんでした…」

千奈美「いいわよ別に畏まらなくて。……それでも、リテイクそんなに出さなかったんだから、ま、立派なもんよね」

文香「…私は… プロデューサーさんに託された、目の前の仕事を… ただ一つ一つ積み重ねるだけで…」

千奈美「畏まらなくていいってば。とにかくまた明後日。私たち先に帰るから」

文香「はい、それでは…」

千奈美(……やりにくいわね、音葉とはまた違った感じで)


――――

アヤ「――ろ。起きろ、千奈美」

千奈美「ふにゃっ」

アヤ「着いた。出れ」

千奈美「ふぁ、あ。ありがとうございました……」

志保「荷物は下ろしたよ。忘れ物なーい?」

千奈美「ん、う、ない。ないはず」

志保「サングラス」

千奈美「え、っと、胸ポケット」

志保「はい、よくできました♪」

アヤ「ADさん、わざわざありがとうございました。これ、食べながら帰ってください」

志保「今日はお世話になりました♪ また明後日、よろしくお願いしまーす!」


千奈美「……あれ? 何で店なの? 車で送ってくれたの?」

アヤ「ディレクターの厚意でな。今日は良い画が撮れました、明後日のカフェでの撮影も頑張りましょう、だってさ」

志保「褒められちゃったー♪ 頑張ろうね、千奈美ちゃん、アヤちゃん!」

千奈美「え、ええ……そうね……」

アヤ「千奈美。お前の顔、完全に寝起きでフワッフワしてる」

千奈美「……乗ってすぐ寝た?」

志保「寝たね」

千奈美「……洗ってくる……」

アヤ「そもそも、全員着替えないといけないからな。ほれ、入った入った」


千奈美「あ゛ー、まだボーっとしてる……」

アヤ「よっぽど疲れてたんだな。ADさんに見せていい感じの顔じゃなかったぞ」

千奈美「うぅ」

志保「……やっぱり、サイレントウィンドの二人相手だと、緊張した?」

千奈美「……まぁ、そうなんでしょうね。そういえば、帰りの車に乗ったらガクッと疲れた記憶あるわ」

アヤ「向こうは気にしてる様子ゼロだから、余計な。ぶっちゃけ、アタシですらそれなりにショックだったよ」

千奈美「……」

アヤ「それがさ、当の千奈美が表に出してなかったんだから。偉いなーって」

志保「……よく頑張ったね、千奈美ちゃん。もう大丈夫だよ。それと、ありがと」


千奈美「……あのさ、頭撫でるとかなら笑って返せるけど。しみじみと言いながらハグするのやめない?」

アヤ「泣きそう?」

千奈美「……やめない?」

志保「そういうことならやめなーーい」

アヤ「いいなー千奈美は癒してもらえていいなー。あやかりたいなー」

志保「じゃあ、家帰ったらアヤちゃんね?」

千奈美「……なんかいかがわしくない? ほら、準備しよ。準備」

アヤ「お前ら仲良いなあ」

志保「どの口が言うんだろう」

――――

レギュラーはアヤ志保千奈美です。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、リクエストとは関係ない話を書いたりします。


アヤ「打ち上げた気がしない」

千奈美「凄かったわね…… 最終的に何人になったの?」

志保「50人超えたよー」

千奈美「ごじゅう…… 関係者集まりすぎでしょ、本当に」

アヤ「さっき見た限りだと、冷蔵庫ほとんど使い切ってたよな。何残ってる? 朝メシ作れる?」

志保「フレンチトーストとハムサラダの材料は確保してるから、持って帰るね♪ 褒めてくれる?」

アヤ「そうだねー偉いねェーよしよし。んじゃ帰るか。あ、付箋だけ貼っとこ。『発注まだです』」

千奈美「ねえちょっと二人とも。……この子どうするの?」



朋「うー。う? あれ? ……まねーじゃ? ここどこ?」


アヤ「忘れかけてた」

志保「ひどい!」

朋「……あれ? おみせ?」

千奈美「そうよ。マネージャーさんはとっくの昔に帰ったわね」

朋「ひろい! わらしどうするのー、ちなみんたちにさらわれうー」

アヤ「うちに泊まるッつってたじゃねーか! だーからってハメ外して呑みやがって!」

朋「だってぇー はたちになって、はじめてのぱーりーだもーーーーん 楽しかったんだもーん」

千奈美「ドリフェスのアフターがあったじゃない」

朋「ううう。目、覚めてきた…… あの時はマネージャーいなかったし、海ちゃんまだ未成年だから、私が酔っ払ったら大変だろうなーって……」

志保「はい、朋ちゃんお水」


朋「ごくごくぶはー。……うー。寝所を失った哀れな占い師にございます、よろしければ泊めてくださいませ」

志保「どうでもいい小芝居なのに、妙に巧い……」

アヤ「……立てるか?」

朋「……あ、これダメなヤツだわ。……ごめん、どうしよ……?」

アヤ「所長どこまで送っていったのかな…… 戻ってきたら車借りられるか? アタシ呑んでるから……志保と千奈美は?」

千奈美「明日は定休日だし、車は使えるはずだけど。……残念ながら、付き合いでカクテルを二杯」

志保「私呑まなかった! 褒めてくれる?」

アヤ「そうだねー偉いねェーよしよし」

志保「5時間ずーっと、お給仕とかバーテンとか厨房とかやってて、完全に接待する側だったんだもん」

アヤ「……う、ホント悪いけど、運転お願いする、よ?」

志保「大丈夫、任せて!」

朋「三人、明日は夕方から仕事なんだよね?」

千奈美「ここでインタビュー受けるだけだから、あんまり気にしなくていいわ」


――――

朋「相変わらず広ぉい!」

千奈美「いいから! さっさとシャワー浴びて寝るわよ!」

朋「ええー。みんなでお風呂は? ガールズトークは? だって全員ハタチの乙女よ?」

アヤ「お前どれだけルームシェアに夢見てんだ」

朋「辛辣! 女子寮だと、誰かの部屋でガールズトークとか結構あるわよ」

アヤ「め、面倒臭そう……」

志保「お土産と荷物片付けといてね。朋ちゃん、歯ブラシとかパジャマとか使う?」

朋「お泊りセット持って来てるから大丈夫、言われてたコップも買ってきた! ラッキーカラーの青よ!」

志保「はーい。自分のって解るようにしといてね」

朋「絵描いちゃお。じゃーん」

千奈美「……ペンギン?」

朋「違う違う! 幸運の青い鳥よ!」

アヤ「幸運の青い鳥…… にしては、い、インパクトが……」

朋「……なんか、やりとりにデジャ・ヴュを感じるんだけど……」

志保「みんなー シャワー浴びてよー?」


――――

アヤ「前に泊まりに来たのいつだっけ?」

朋「フェスの少し前よ。朗読会のポスター貼らせてもらったとき。ありがとーね」

千奈美「ああ、あれね。途中にあった、詩の暗唱? あれ凄かったわ」

志保「そうそう! ……今もできる?」

朋「え。覚えてるかな……


『思いがけず、狂気に囚われ獣に身を落とした。災いであり病であり、避けようもなかったのか――



――――


――今宵、山々を照らす月明かりを見上げる。私は詩を詠うこともできず、ただ哀しみに吼えるのだ』」


千奈美「……うーん」

志保「出来たね……」

朋「出来たわね」

アヤ「チケット代の元取れるパフォーマンスだと思うけど、それアイドルなのかな」

朋「ひきだし増やすのも必要よ!?」

千奈美「まあ、憑依型って言われてるものね」

朋「初耳なんだけど」

志保「うちのお客さんで見に行った人が、演技の良さを熱く語ってたよねー」

朋「え、そうなんだ。えへへへ…… いやー、やってみるものねー!」

アヤ「ところで、時間ヤバいぞ」

志保「ん? きゃっ、お肌にダメージが! おやすみなさい!!」


――――

「「「「いただきまーす」」」」

朋「フレンチトーストとハムサラダ! 寮の朝ご飯と比べて確実にお洒落!」

志保「ほら! アヤちゃん!」

アヤ「えー……」

朋「あむ…… しかも美味しい!」

志保「ほら! ほーら! アヤちゃん、こうだよ! こういう反応をしてほしいの!」

アヤ「うう、めんどくさいよ……志保はどうしてこうなっちゃったの……」

千奈美「はっ、小倉あん出し忘れてた」

アヤ「東海人ホント我が道だな」


朋「毎日楽しそうよね、羨ましい」

アヤ「よく考えろ、毎日だぞ? ほぼ四六時中一緒だぞ。仕事場まで同じなんだからな」

朋「おっ。それじゃ、あたしと代わってみない?」

アヤ「え、いや、それは嫌だな……」

志保「……むふふー。んふふー。いいでしょ朋ちゃん! この仲は裂けないんだからー!」

千奈美「……志保」

志保「え、ふぇっ?」

千奈美「使う? 小倉あん」

志保「……えぇ…… 今それ言うかなあ…… 使うけど……」


――――

朋「お風呂広すぎるでしょ。あー楽しかった、朝風呂最高だわー!」

千奈美「ホントに入ってくると思わなかったわよ。だいたいなんでアヤたちまで来るのよ」

アヤ「だって朋がゴネるから……」

志保「熱意に負けたんです!」

アヤ「面倒臭くなったんです!」

朋「えっ、ひどくない…」

千奈美「まあ、いいけど。たまにはね。たまには」


アヤ「一緒に風呂入るなんていつ振りだ?」

志保「暮らし始めた最初のほうは、面白がって時々やってたから…… 半年? 一年は経ってないくらい?」

千奈美「当時から、バスタブ二人までだねって言ってたじゃない」

朋「楽しかったけど、こう、物悲しいよね。目の当たりにしちゃうと」

志保「……どうかした?」

朋「……」

千奈美「……胸が有ったって、それだけで簡単に仕事増えるわけじゃないわよ?」

朋「グワーーーッ! サヨナラーーー!」

アヤ「髪の毛濡れたままソファに倒れ込むなーーー!」


――――

アヤ「車、店に戻してくるわ。んで発注してくる。なんかある?」

志保「使い欠けのホイップクリーム残ってたと思うから回収しちゃって! 発注はクリームチーズ多めで」

アヤ「個人的趣味?」

志保「個人的趣味~♪」

千奈美「10月からのメニューの仕入れ、忘れないでよ」

アヤ「あいよー大丈夫ー行ってくるー。なんかあったらメールして」


朋「……なんか、圧倒されるなあ」

千奈美「何が?」

朋「三人とも、デキる女、って感じする」

志保「それは所長かな。私たち、カフェの仕事も自主トレも所長に教えてもらっただけだよ」

千奈美「実際、こればっかりは巡り合わせよ。もしかしたら朋がここにいたかもしれない」

朋「私は、事務所入ってからガールズに所属したから、それはないかな……」

千奈美「そういえばそんな話聞いたわ。……あれ、練習生やってたの私だけ?」

志保「私は元々ここの社員だったからね」

朋「ん、練習生周りの話って実はあんまり聞いたことない! その辺ちょっと興味あるかも!」

千奈美「大した話じゃないわ」


――――

言ったかな。私、高校生のときから通信教育受けてたのよ、ポップス系の。


勿論、歌いたかったからよ。単純に歌うのが好きで、当然、それで生きていくんだって思い込んでた。


歌と作詞作曲だけじゃなくて、ファッションも勉強したな。学校に隠れてバイトして。


でも、いざ歌手になるにはどうしたらいいんだろう、って考え始めたのが高校三年の夏休み前。


私がやってた通信教育も協賛してたのよね。『プロジェクト:シンデレラガールズ 始動のお知らせ』とかいう手紙だったはず。


もう必死よ、手紙とチラシ片手に親説得して。とりあえず受けるだけ受けてみればいい、ってとこまで漕ぎ着けて。


夏休みの初日にオーディション行って…… そう、補欠合格。練習生。


『参加してる事務所や制作会社からの誘いは今のところないけど、一定の水準は超えています』


『定例の合同トレーニング等に参加していいですよ、仕事は中央事務局預かりのエキストラとかですよ』


……諦めたら終わりよ。良い思い出にするには早すぎるわ。


癪だったから、補欠合格の通知が来たその日に事務局に問い合わせて。三日くらい後から、トレーニングに参加した。


夏休みの間、毎週通って…… ある時、トレーナーさんのうちの一人に、声を掛けてもらったの。


――――

千奈美「あ、ちょっと待って。これ以上喋ると、夕方のインタビューのネタかなり話すことになりそう」

朋「えええええ、そこで切るの!? そこで!? ここからやっと練習生時代の話じゃない!」

千奈美「インタビュー、取材受けてるとこ見ててもいいんじゃないかしら」

朋「……門限あるから帰るよ…… フリだけで終わっちゃったよ……」

志保「残念だねー。ここからが面白いのにね、千奈美ちゃん♪」

朋「き、気になる!?」

千奈美「雑誌じゃなくてネットだから、すぐ見られるでしょ」

朋「いじわる! いーじーわーる!」

志保「こら朋ちゃん! あんまりぶーぶー言うとおやつ抜きですよ!」

朋「もう何も信じられない、アヤが帰ってくるのを震えて待つしかない」


――――

うーん。インタビューねぇ……


連載見てる限り『ガールズに入った経緯』『生活がどう変わったか』『目標』辺りはみんな訊かれてるんだよな。


あれ、所長おはようございます。はい、アタシは発注と昼メシの買い物に。


……持ってっていいんですか? ありがとうございます。クラッカーとトルティーヤチップ買って帰ろうっと。


ジムなら夜行きますよ。先輩も来るっていうんで。はい。所長も行くんですか? じゃあ仕事終わったら一緒に。


そうですね。悩むっつーか、何話したらいいのやら…… 一応、これまでの連載は読んで予習はしたんですけどね。


……もっとインタビュアーに任せたほうがいいですか、やっぱり。


自然体でいい…… まあ、そうですよねー。理解はしてるンですけど。ちょっと構え過ぎてたかな。


一応、先輩にはメールで訊いてるんですけどね。こないだインタビュー載ってたし、感想だけでも。


――――

アヤ「ただいまー。志保、荷物持ってきたぞー。こっちは買い物」

志保「アヤちゃんありがとうー愛してるー」

アヤ「はいはいアタシもだよー。……あれ? 朋は? 帰った?」



朋「……」



千奈美「ソファの影にいるわよ」

アヤ「何してんだ」

朋「千奈美ちゃんが…… フリだけ聞かせてオチを教えてくれない…… 志保ちゃんも意地悪……」

アヤ「……何してんだ……」

朋「お願い、解って! 貴方だけが、私の心を救えるの! 貴方だけが、私を解き放ってくれる!」

アヤ「アボカドディップ食べる?」

朋「わーい食べる」


千奈美「そのとっ散らばった小芝居、もう少し片付けなさいよ……」

志保「たまねぎ、ピーマン、ベーコン、マカロニ…… これは!」

アヤ「千奈美よろしく。ところで朋、ブルーレイ借りてきたんだろ? 見ようよ」

朋「そう、そうよ主目的を忘れるところだったわ!」

千奈美「何?」

朋「765さんのアリーナ」

千奈美「ちょっと待って、すぐ作るから待ってて」


――――

朋「千奈美ちゃんの料理も美味しい。ナポリタンとか久しぶりに食べたわ!」

アヤ「口にケチャップ付いてる! ほれ、拭くから」

千奈美「鉄板で食べたい」

志保「所長に断られたでしょ…… エスプレッソ淹れるよ。カプチーノにする人ー」

「「「はーい」」」

志保「全員だった」

千奈美「じゃあ見ましょ。朋、円盤頂戴。アヤ、アンプ繋いでもらえる?」

朋「ははーどうぞ」

アヤ「メシ作ってる間にやっといた」

朋「これ、特典から見たほうがいいんだって。密着ドキュメンタリーとメイキング」

千奈美「へえ? じゃ先にこっちからね」


――――

アヤ「……やべ、ティッシュどこ」

朋「……は゛い゛」

志保「……」

千奈美「……」

朋「……」

アヤ「……言葉がねーな……」

志保「765さんの曲、ガールズのライブで歌ってる人あんまり見ないね。折角ライセンス借りてるのに」

千奈美「単純にハードル高いんでしょ。これ見たらキツイと思うわよ、もう技術じゃないところにあるもの」

アヤ「……かがやいたー すてーじに たーてばー……」

朋「……立ちたいなー……」


志保「……わ、私は頑張るよ!? ほら、これ! ライブのタイトル!」

アヤ「『輝きの向こう側へ』?」

志保「私は、その輝きだって、まだ見たことないからね! 憧れと情熱しかないもん!」

千奈美「私は、夏フェスのエンディングアクトで。最初に見たドキュメンタリーで言ってた……光の海? 見ちゃったからな……次はセンターね」

朋「センターから! いいわよね、憧れちゃう!」

アヤ「……何にせよ、まだまだ走らないとだなあ」

志保「……えへへ」

アヤ「なんだよ」

志保「いいもの見たね」

千奈美「そうね」

志保「……私たちみたいな立場でも、まず何より最初に感動できるのが、凄いなって」

朋「それだけ言われると、借りてきた甲斐あったわ!」

アヤ「お礼言っといてー」

朋「ていうか、手間賃にお土産要求されてるからよろしくね」

志保「そんな話聞きたくなかった!」


――――

千奈美「で、まずは目の前の仕事ね」

志保「私たちの紹介記事と、インタビュー! 店の宣伝もしちゃう!」

千奈美「食べてもらうメニューは全部仕込んであるから、あとはライターさんの段取り次第で」

志保「店長がやってくれましたーわーい」



アヤ(先輩には連絡が付かなかった)

アヤ(というかメールの返事がなかった)

アヤ(アレで連絡はきっちりする人なんだけどな)

アヤ(先輩のインタビュー記事でも読んでおくか)


アヤ「…… ……あぁッ!?」


志保「えっ」

千奈美「何?」

アヤ「いや、こっちの話。道場の先輩に、インタビューの様子聴こうと思ったんだけど、メールの返事なくて」

千奈美「道場って、総合格闘技の?」

アヤ「そうそう、中高のときのな。先輩、今ちょうど海外ロケ中行ってるんだった…… インタビュー見て思い出した」

志保「ん? ……おおお、香港!」

アヤ「日程カツカツってことだから、忙しいんだろ」

――――

続きますが、量が多い&キリがいいので小休止です。

――――

『インタビュー ウィズ シンデレラ Vol.XX』


『プロジェクト:シンデレラガールズ(以下、プロジェクトCG)』に名を連ねるアイドルの皆さんに、

様々なお話を伺う、インタビュー・ウィズ・シンデレラ。

今回は趣向を変えて、『カフェ&バー グラジオラス』からお送りすることになった。

このカフェは、プロジェクトCGに参加している芸能事務所『オフィス・グラジオラス』の直営で、所属アイドルも、店員として働いている。

まず、先日のドリームLIVEフェスティバルにおいて、メインMCの大役を果たした小室千奈美さんに、お話をお聴きした。


Case.1 オフィス・グラジオラス所属 小室千奈美

愛知県出身の小室さんはデビュー二年目。いくつかのイベントで、その確かな歌唱力を発揮している。

8月のドリームLIVEフェスティバルではメインMCに抜擢され、堂々とした振舞いで注目を浴びたが、

今回は、そのプロ意識に根差す想いやそこに至るまでの経験、今を取り巻く環境など、6月に20歳の誕生日を迎えた小室さんに、つぶさに伺った。


▼「喜びと悔しさが原動力」


――アイドルを目指したきっかけは?

「アイドルを目指した、というか、気付いたらこうなってしまった、というか……

 シンガーソングライターになりたくて、高校に通いながら作詞作曲や歌を勉強してたんです。

 ところが、どうやったら世の中に出られるのか解らなくて。途方に暮れちゃったんです。

 そのタイミングで、使っていた通信教育からプロジェクト始動のお知らせが来まして。それが直接のきっかけでしょうか。

 これだ、と親を説き伏せて、何とかオーディションを受けました。高3の夏休みでした」


――高校三年生の夏。一般的には将来を決める時期でしょうが、その辺は。

「一応、大学は選んでいましたが、勉強は二の次でした…… 今思えば恐ろしく無謀ですね。

 これを読んでいるアイドルに憧れる子たちがいれば、真似して欲しくはないかも(笑)」


――オーディションの結果、練習生の特待枠に採用されました。

「逆に言うと、オーディションの時点では、どの事務所ともご縁がなかったんですよ。

 シンデレラガールズとしては補欠扱いでした」


――結果を受け取ったときの気持ちは?

「能力的に認めてもらえた喜びと、じゃあどうして採用されないんだ、という悔しさが半々でした。

 喜びと悔しさの勢いで、合格通知が届いた三日後には、合同トレーニングに参加していました。

 それから毎週、愛知から東京に通いました。あの夏休みはキツかったです、練習はハードでしたし、電車代のためにバイトも増やしました」


――その苦しい夏休みに、大きな出会いがあったとお聞きしました。

「目をかけて、色々と見てくださった方がいらっしゃったんです。トレーナーとして招かれていた木場(※木場真奈美さん:オフィス・グラジオラス代表)さんですね。

 自分の技術の元が通信教育だったので、体験して初めて解ること、巧くいかないこともたくさんあったんですが、プライベートを割いてまでフォローしてくれました。今も頭が上がらないです」


▼「大学に進学して『生活に芯を入れる』」


――木場さんとのご関係についても、後ほど改めて掘り下げさせていただきますね。

  続いて、特待生になってからデビューまでの約一年についてお伺いします。

  特訓期間とも言える夏休みが終わってからは?

「春から東京の学校に通うために、受験勉強してました。親は喜びましたね、週末のレッスンの電車代を出してくれるくらいに(笑)。

 これも、木場さんが助言をくれました。『上京するなら、生活に芯を入れたほうがいい。言葉なり文化なり、歌に繋がる勉強はたくさんあるから』と。

 そう言ってくださった木場さんは、秋にはまた渡米してしまっていたんですが、励みになりましたね。

 夏が終わってから巻き返すのは大変でしたが、ここを耐えればきっと良い方向に転がると信じていました」


――練習生になって、残り半年の高校生活に影響はありましたか?

「……本当に最初のうちだけ、いくつか訊かれましたが、練習生では大した話はできないので、すぐに収まりました。

 バイトを辞めて、その殆どを受験勉強にスライドしたし、情報も慌てて集めたので、意外なことにクラスメイトとは話す機会が増えたくらいです」

>>1もしかしてアイドルメーカーの人?


――その間も、レッスンはしっかりと。

「特待生という立場を意識すると、手は抜けませんでした。でも、却って受験勉強への不安も解消できていた気がします。

 集中の仕方や切り替え方も意識できましたし、元来歌が大好きだった自分を見詰めなおす期間にもなりました」


――そうしてオーディションから半年。大変な日々を乗り越えて受験を終え、無事に上京を果たしたわけですね。

「はい。アイドルとして、やっと一歩……いや、練習生なので半歩くらいですけど。進んだ実感はありました。

 参加できるレッスンは増えましたし、現場見学を兼ねた仕事も体験できました。

 スタッフロールに名前が出ないのでアイドルデビューとしては数えていないんですが、最初はエキストラ出演……ドラマのモブですね」


▼「シンデレラを目の当たりにしたシンデレラ練習生」


――昨年の夏にネット配信していた、ホラー短編オムニバス『銀靴学園百物語』(※今年で公開された『聖靴学園の七不思議』のプロトタイプ。『聖靴』DVD&BDの特典として全話収録)ですね。

「これが夏休み前後の学園を舞台にするので、全編半袖だったんですけど、収録は5月ですからね。

 『怖くないのにしょっちゅう鳥肌立って辛かった』というのは、今でも覚えてます」


――お疲れ様です。撮影時は、どなたが一緒でしたか?

「エキストラ部分だけまとめ撮りだったので、複数の話で使われているんですけど、同時に撮影していたのは、中盤の高垣楓さんと高森藍子さんが主演の回でした」


――印象に残ったエピソードがあればお願いします。

「高森さんの長台詞と、高垣さんの無言の演技は圧巻でしたね…… ステージパフォーマンスとは違うけれど、ああやって人の感情を揺り動かすのもアイドルなんだな、という一つの答えが見えた気がしました」


――特に高森さんは芸能関係の前歴がない方です。まさにオーディションひとつで輝くアイドルへの道を歩み始めた形ですよね。

  そんな方が活躍する現場を見て、決意を新たに?

「それは新たにしますよ。現実に、違うレベルに至った人を見てしまったら、もう温いことは考えていられませんでした。

 そのすぐ後、6月に帰国していた木場さんから連絡を頂いて、事務所を立ち上げるからついてこないか、という話をされたんです。

 嬉しかったですね。すぐに話を聴きに行きました」


――久しぶりにお会いした木場さんから、どんなお話を受けましたか。

「呼び出されたのが、この店でした。看板を見て、事務所の副業かな、と思っていました。

 確か、今座っているテーブルの隣で……向かいに、木場さんと志保(※槙原志保さん)が座っていました。

 同い年くらいの子が、実際同い年なんですけど、バイトの面接担当みたいな顔して座ってるんですよね。

 何だろう、と思ったら、カフェの店員を兼ねることを提案されたんです」


――アイドルが働いていることを推すコンセプトカフェ等も少なくはないですが、

  そういったケースで、店舗と事務所に直接の関係があることは稀です。

「直接の関係どころか、店員をアイドルにしようという話ですからね」


――カフェ店員には、やはり戸惑いがありましたか。

「はい。でも、木場さんに指導してもらえることのメリットや、いつでもステージを作れる環境の魅力、に惹かれて。

 結局、話を聴きに行ったその日に、契約していました。

 両親に報告したら、素っ頓狂な声上げて呆れられましたが、それ以上に笑って励ましてくれました」


▼『予想もつかない 素敵な運命』


――そうして、晴れてオフィス・グラジオラス所属となった小室さんの、アイドルとしての初仕事をお聞かせください。

「正式なデビューは、その年の8月のガールズパーティー(※初期に頻繁に開催されていたミニライブ)です。横浜でしたね。

 演目は『Nation Blue』と『お願い!シンデレラ』でした」


――松永涼さんと同日デビューでしたね。『Nation Blue』のデュオは息がぴったりで、デビューとは思えない力強いステージでした。

「一年前の小さなライブですよ!?」


――レポートを書かせていただいたので、覚えていました。

「やだ、緊張してきちゃいましたよ!」


――昔の仕事は、突然掘り起こされると少し気恥ずかしかったりしますよね。

  さて、そんなデビューを果たしてから一年余りが経ちました。

  他に、今までで印象に残っているお仕事はありますか?

「そう言われるとたくさんあります。近いものだと、先日のドリフェスのMCですね。

 トップ集団の一員といえる五十嵐さん(※五十嵐響子さん)、プライベートで付き合いのある久美子(※松山久美子さん)とのユニットで、オープニングとエンディングまで務められたのは、感慨深かったです。

 それと、昨日PV収録が終わったんですが、“サイレントウィンド”の2ndシングルにコーラスで参加しています。……良いものになったと、思います」


――ドリフェスでは二人を押し上げる、鋭いリードボーカルを披露していました。

「タイプの違う三人ですから、最初は調和だけを考えていましたね。

 ところが私の歌に違和感が拭えなくて…… プロデューサー、ディレクター、ユニットの二人と相談して、私が引っ張る形になったんです。

 必死に着いて来てくれる二人の優しさとひたむきさは、身に染みました」


――事務所は違っても同じシンデレラガールズですね。絆を感じます。

「プライベートでも遊びに行ったりして、良い関係を築けたのが大きいかな、と思っています」


――ところでコーラス参加というのは意外に思えますが、これは出来上がりを聴けば解る感じでしょうか。

「そう、そうですねー……聴いてもらえれば、驚いてもらえると思います」


――驚くほどの楽曲ですか。最終的な仕上がりに期待大ですね。

  では、最後に今後の目標と、自身への期待を。

「やっぱり歌がいちばん好きなので、まずは自分のCDを出したいですね。

 カバーは何曲か配信させてもらってますけど、根っこに歌手としての憧れはありますから。

 ただ、それを願うだけなのは嫌ですし、アイドルが楽しいので、色々取り組んでみたい気持ちもあります。

 『止まるよりも 進むのが好き』ですから」


――『海原を休むことなく 泳ぎ続ける魚みたい』ですね。

「よかった、伝わった!(笑)」


――今、今晩の作業用BGMが決まりました。お話、ありがとうございました。

「とても楽しかったです。次にバトンタッチしますね」


――――

次のアイドルにインタビューしてくるので少し待ってください。

>>126
期待してたら申し訳ないですが、違います。

>>138
山月記の中にでてくる漢詩でないかな。


Case.2 オフィス・グラジオラス所属 槙原志保、桐野アヤ

前回の小室千奈美さんに引き続いて、オフィス・グラジオラスの槙原志保さん、桐野アヤさんにお話をお聞きした。

同日デビューであり、活動二年目を迎えたお二人は、デビュー前から共に歩んできたという。

快活ではあるもののタイプの違う二人を相手にしたインタビューは、終始楽しい雰囲気で進んだ。


▼「本当に聞いてなかった」


――まず、お二人が何故アイドルを目指されたのか、というところからお聞きしたいと思います。槙原さんは、どのような経緯でアイドルに?

槙原さん:
「東京の大学に進学することを、当時のバイト先の喫茶店に報告したら、東京でのバイト先として、(去年の)6月にオープンするカフェを紹介されました。

 それがグラジオラスでした」


――最初はカフェ店員のつもりだった?

槙原さん:
「最初は。でも、そのつもりだったのは私だけだったみたいで……店長さんが紹介してくれたんですが、後から聞いたらグラジオラスが芸能事務所を兼業する予定だったことも知ってました」

桐野さん:
「何度聞いても、そのくだりおかしいよ(笑)」

槙原さん:
「本当に聞いてなかったんだよ、知らなかったの!(笑)」


――では、木場さんと初めてお会いしたときのことを、覚えてらっしゃる範囲で。

槙原さん:
「受験の結果が出てすぐですね。2月だったと思います。

 電話で、開店準備からよろしく、とは話してもらっていたんですが、一応面接のようなものをしようということで、リフォーム中の店舗の下見を兼ねて、木場さんとお会いしました。

 そのときにで『大学には確認してあるから』とか『レッスンは厳しいけど、無理はないように努める』とか言われたんです。

 レッスンって何のことだろう、とぽかーんとしてたら、しれっと『あの店の宣伝動画を見て一目惚れしたんだけれど、聞いてない?』って」


――テイクアウトされてしまったわけですね。

槙原さん:
「そうですね、予定してなかったのに、サービスしちゃいました(笑)」

桐野さん:
「サービスしたのは前のバイト先じゃないの?」

槙原さん:
「あー……そういうことになる? 私、取引された?」


▼「貴重なアイドルのデビュー前動画」

――ちなみに、こちらがその宣伝動画です。

槙原さん:
「うわああああ!?」

桐野さん:
「黒髪おさげで和風メイド!?」

槙原さん:
「も、もう公開してないですよね!? 何で持ってるんですか、しかも高画質!」


――木場さんが前のお店に問い合わせて、譲っていただいたそうです。槙原さんがお店を離れた際に、サイトからは削除されてますね。

桐野さん:
「これ、いつ頃? 可愛いなー」

槙原さん:
「た、確かこれは初めて撮った動画。高一の秋かな…… 四年前?」


――はい。四年前ですね。季節ごとに撮られていたそうで、他にもあります。

槙原さん:
「わああ! 何で何で!?」

桐野さん:
「見ましょう」


――そうしたい気持ちもありますが、これ以上この場で見ると、槙原さんが喋れなくなってしまいそうなので。

桐野さん:
「解りました」

槙原さん:
「始まったばっかりなのに、体力消耗しちゃった……」


――地元で喫茶店に勤められていた頃から、看板娘として評判だったんですね。

槙原さん:
「常連のおじいちゃんおばあちゃんには覚えてもらってて、話もよくさせてもらってましたけど、看板娘……だったのかな?」

桐野さん:
「私に聞くな!(笑)」


▼「『キラキラした姿が見たい』の一言で乗り越えられた」

――そうして、木場さんにスカウトされる形でカフェ店員兼所属タレントになるに当たって、迷いや不安はありませんでしたか?

槙原さん:
「『厳しいレッスン』だけは不安でしたけど、あんまり迷いはありませんでした。

 アイドルできなかったらクビ、ガールズになれなかったらクビ、とかそういう話ではなかったので、あの綺麗なカフェで働けるならいいや、と(笑)

 ……レッスンは本当に厳しかったですね!」

桐野さん:
「志保の場合は、まず体力作りからだったね」


――木場さんとお話をされた時点では、まだオフィス・グラジオラスもカフェ・グラジオラスも営業していませんでした。

  カフェも事務所も6月から開業したわけですが、それまでの槙原さんは?

槙原さん:
「木場さんが日本とアメリカを往復していたので、ネットや対面でのミーティングでカフェのマニュアルを作ったり、トレーニングメニューを消化したり、です。

 ハードでした。アヤちゃんが一緒でなかったら、アイドルは諦めてたかもしれません」

桐野さん:
「『無理だよもうやだ』って泣いただろ」

槙原さん:
「あの一回だけだよ!」


――その一回は、どう乗り越えられたんですか?

槙原さん:
「『アタシは志保がキラキラしてるとこ見たい』って言われて、やる気になっちゃったんですよね。

 ……あっ、一目惚れしてたのかもしれません!」


――今の槙原さん、キラキラしてますよ。

槙原さん:
「えへへ」

桐野さん:
「え、これ私どうしたらいいんですか」


▼「総合格闘技→アイドルレッスン」

――続いて桐野さんに伺います。アイドルを目指した経緯をお願いします。

桐野さん:
「えっ、不意打ちじゃないですかそれ!?

 ……私はあんまり面白いことないかも。千奈美や志保と同じように進学して上京して、ジムに通い始めたら、そこで木場さんに会いました」


――上京してすぐジムに通い始める辺りは、中々興味深いお話ですが。理由を聞いてもいいですか?

桐野さん:
「そうですか? 中学から高校と、総合格闘技の道場に通ってたんです。

 総格って言っても体操の延長みたいな面が強くて、身体動かすのが習慣になってました。

 そういうわけで、格闘技系のプログラムができるジムに通うことにしたんです」

槙原さん:
「格闘技やってたんだよね。顔、綺麗なままでよかったねえ」

桐野さん:
「女子部は、顔面への打撃禁止だったから(笑)」


――すぐにスカウトされたんですか?

桐野さん:
「出会ったその日、というほど早くはないですけど、充分早かったんじゃないかと。

 何度か一緒にトレーニングしたりプログラムやったり、打ち解けてきたところで切り出されました。

 正直、何で自分なの、この人のセンス大丈夫かな、とも思いましたけど(笑)」

槙原さん:
「そんな言い方すると所長に絞られるよ?」


▼「『キラキラした姿が見たい』の一言でイチコロ」

――それから槙原さんとのご対面になったわけですね。出会ってから、カフェのオープンがあり、イベントデビューがあり。槙原さんも交えて、改めて流れをお話しいただけますか?

桐野さん:
「はい。最初に会ったのがゴールデンウィーク辺りだっけ?」

槙原さん:
「木場さんが6月に帰国で、その前に紹介されたからね。アヤちゃんと毎日トレーニングするようになって、木場さんが帰ってきて、それから千奈美ちゃんが来た」

桐野さん:
「紹介されて、トレーニングの管理というか監視を任されました。

 私が元々体力ある方で、あとから加わるもう一人は既にシンデレラガールズの練習生(小室さん)だったので、志保の基礎体力を引き上げる必要があるね、と」


――桐野さんは、スカウトされたとはいえアイドルになることに疑問や迷いはありませんでしたか。

桐野さん:
「えーと、そのくだりは……(槙原さんのほうを見る)」

槙原さん:
「それ、さっきの、私が頑張ることにした話の続きになるんですよ。

 アヤちゃんが『アイドルなんて言われてもよくわからない』って言うから、同じ言葉言ってあげました!」


――キラキラしてるところを見たい。

槙原さん:
「イチコロだったよね、アヤちゃん」

桐野さん:
「すみません、話続けましょう」


――イチコロですね。

桐野さん:
「あーッもう恥ずかしい!? か、カットしてください!」

【※このくだりは、取材後に改めて掲載許可を頂きました】


▼「実質素人(桐野さん)」「一人だったら大変なことになってたかも(槙原さん)」

――さて、トレーニング漬けの日々を過ごす中、所長が正式に帰国されて、カフェと事務所が開業します。

  槙原さんと桐野さんは、所属タレントとしてシンデレラガールズに登録、正式メンバーに名を刻むことになりました。

槙原さん:
「これ、オーディションの話していいんですよね?」

桐野さん:
「公開応募のオーディションと、プロジェクト内のオーディションって、少し違うんです。

 勿論、フリーで受けたことはないので、実際どんなものかは知らなくて聞いただけですけど」


――公募は、自分で選んだ一曲、台本の朗読、面接及び自己PRとなっています。これは要項が公式サイトに公開されています。

  事務所推薦のオーディションでは、朗読が読み合わせに代わる他、中央事務局から課題曲を指定されるそうですね。

桐野さん:
「読み合わせは、その場で短い台本もらって役柄振られて、セリフを交わしていくんです。死ぬほど緊張しました。

 他の人と、一応相談はするんですけど……劇団出身の人とかもいる中、私たちは実質素人ですからね」

槙原さん:
「二人で『滑舌大事』『普段より二割遅く』『本だけ見ない、相手を見る』って。トレーニングでの助言を復唱してました(笑)

 一人で焦ってたら、呼吸や視線一つでも演技が変わってくることも気付けなかったと思います」


――指導の賜物ですね。他の項目ではどうでしたか?

槙原さん:
「課題曲は、参加者全員が同じ振付でやるんですけど、私とアヤちゃんが前列になっちゃって!」

桐野さん:
「メジャーな曲だし、難しくはなかったんですけど、十人ちょっとですからね。

 その分ミスると目立つんじゃないかな……正直、自分よりも志保が心配でした」

槙原さん:
「案の定、少し間違っちゃいましたね。でも『ミスを怖がって小さくなるより全力で踊る方が良く見える』と言われてたので、落ち込まずに済みました。

 それに、アヤちゃんがかなりフォローしてくれてましたから。一人だったら大変なことになってたかも」

桐野さん:
「自由曲では間違わなかったよね」

槙原さん:
「ね♪ デュエットでした。アヤちゃんのサポートのお陰で、楽しくできたと記憶してます。

 765さんの『The world is all one!!』を歌わせてもらったんです。もっと演りたいんですけど、改めてアイドルの肩書を持っちゃうと、ちょっと……ね?」

桐野さん:
「恐れ多いというか、特別扱いになってます。あと、振付が結構恥ずかしいんですよね……気合い入れたイベントのときにしかできてないです(笑)」

槙原さん:
「デュエット用にアレンジしましたけど、手繋いだり顔を見合わせたりするところは残してます♪

 最初はアヤちゃんが赤面して大変でしたね」


▼「明らかに差がついたらそれは悔しい」

――それは是非大きなステージで拝見したいですね。お二人は大変仲が良いとは聞いていましたが、苦楽を共にされているだけに絆の強さが見えるようです。

槙原さん:
「現場で助けてもらってるのは私の方です。いつも頼りにしちゃってますね」

桐野さん:
「カフェだと志保がチーフですよ。細かいところに気を回すのも志保や千奈美ですし」


――なるほど、常々助け合って、支え合っているんですね。同じアイドルではあっても、ライバルという感覚はあまりない?

桐野さん:
「ああ、でもそれはまた別の話ですよ、確かに強く意識はしないですけど」

槙原さん:
「えっ」

桐野さん:
「私たち三人はスタンスも得意分野も被らないから、仕事の取り合いにはならないんです。

 そもそも偏りが出るほどの量でもないですし。でも、もし明らかな差がついたらそれは悔しいだろうな、って。想像はします」

槙原さん:
「そうだったんだ…… あんまり考えたことなかったかも」


――デビューも一緒で、去年の8月、原宿での『ミッドサマーナイトドリーム』でした。

桐野さん:
「はい。二ヶ月の突貫でユニットに組まれたときは無茶苦茶だなーって……」


――イベントのメインユニットの一つ、レッドバラードとしてデビューされましたね。『SMOKY THRILL』を歌われる中、客席では赤いサイリウムが振られている光景が新鮮でした。

桐野さん:
「やっぱり見てたんですか!?」


――やっぱり見ていました。

槙原さん:
「すっごく綺麗でしたよね!」


――解ります。槙原さんは進行も務められていました。

槙原さん:
「はい。演者としては最後に『お願い!シンデレラ』を歌っただけでした。

 『The world~』を歌うかどうかって話もしたんだよね?」

桐野さん:
「私の出番がキツイのと、やりたいと言った子がいたのでなくなった」

槙原さん:
「で、進行ですよね。トークを回すのは緊張しました。

 進行ってもっと台本通りかと思ったんですが、結構皆さん振って来て。

 でもいい体験でしたね、『もっと思い切っていいんだ』って確信できました」


▼「伝説の『舞台裏でパフェおかわり』」

――では、デビューから今まで一年を超えましたが、その『思い切ってやってみた』エピソードで何か一つ。

槙原さん:
「……バリ島かな?」

桐野さん:
「参加させてもらったねー。……志保、ライブの直前にパフェ食ってたんですよ!」

槙原さん;
「体力補給だよ!」

桐野さん:
「百歩譲ってそうだとして、おかわりはおかしいだろ! あれもうホントびっくりした! なんなの!?」


――舞台裏でパフェを食べていたお話は、他の共演者の方からも噂だけは伺っていますが、この際詳しくお願いします。

桐野さん:
「いやもう、本当にひどくて。演者は、出番が近づくと、控え室出て舞台袖とか裏とかで待つんです。

 そこでケータリングスタッフからグラス受け取ってて。水とかジュースとかかと思ったら、パフェおかわりですよ」

槙原さん:
「控え室で食べたら美味しかったから、フルーツ増しで頼んじゃった♪」

桐野さん:
「こっちが気合入れて『こんなステージで二人でやれるなんて嬉しい、しっかりやろう』みたいなこと言って振り向いたら、パフェおかわりですよ」

槙原さん:
「またあんなツアー行きたいよね」


▼「四人でドラマに出てみたい(槙原さん)」「思うままやるのも一つの形(桐野さん)」

――えー、桐野さんが机に突っ伏してしまったので、槙原さんから。最近の仕事を踏まえて、今後の目標や自身の展望などを。

槙原さん:
「メイド系のイベントにはだいたい呼んでもらえてますけど、最近は少し演技のお仕事が増えました。

 私たち三人…… いや、所長も含めて四人ですね! 四人でドラマに出てみたいです。

 あとは歌とダンスですよね。カフェでの定期ステージもありますし、バリエーション増やしたいです。

 夢はオリジナル曲! ……ですけど、こればっかりは争奪戦なので(笑)」


――夢は大きく、ですね。桐野さんはどうでしょうか。

桐野さん:
「最近、高橋さん(※高橋礼子さん)からの縁で、遊佐こずえちゃんと一緒の仕事が何件かあって。

 一応、子役で新人なので面倒を見る体ではあるんですが、私のほうがよっぽど得るものあった気がします。

 自分が、アイドルとしてどうなのかなって考えることもあるんですが、こずえちゃんを見てると、思うままやるのも一つの形なんだな、と。

 思いっ切りやって、ファンの皆さんが笑顔になってるの見ると、悩みなんて全部吹き飛びます。

 だから、今は歌も踊りも演技も何でもやりたいし、カフェでの活動も大事にやりたいです」


――ファンの笑顔で元気を得られるのなら、それはアイドルとしてとても素敵なことかもしれませんね。

  では最後に、ファンの皆さんにメッセージを。

桐野さん:
「ファンのみんなをキラキラした気持ちにさせるのが、アタシたちの役目だと思ってる。

 元気になりたかったら、心にキラキラが欲しかったら、ここに来なよ!」

槙原さん:
「ファンの皆さんと直接触れ合える今のスタンス、今のこの場所が、

 私にとって凄く大切な、アイドルとしての原点です。

 私たちグラジオラスの面々と、『カフェ&バー グラジオラス』を、どうぞよろしくお願いします♪」


――セールストークにも余念がありませんね。流石です。

  グラジオラスの四人が、揃って躍進されることを期待しています。今日は本当に、ありがとうございました。

槙原さん&桐野さん:
「ありがとうございました!」


――――

【追記】

尚、今回『カフェ&バー グラジオラス』で頂いたメニューは下の二種類。

・ハヤシライスセット(1000円/サラダ・スープ・コーヒー付)

・ケーキセット/抹茶のシフォン(700円/コーヒー付)

珈琲はコク深い水出し、薫り高いエスプレッソの二種類を堪能させていただいた。


フード、ドリンクとも季節や仕入れ状況、気まぐれ等で変わるということだ。

ティータイム以降はアルコール類も出しているので、改めて足を運びたい。

また、ライブとは違った、シックな雰囲気のステージも度々開催されている。


純粋に、雰囲気、料理、ドリンクとも良質のカフェで、満足度は高かった。

今回インタビューさせていただいたお三方と木場真奈美さんのファンであるなら勿論、

シンデレラガールズファンなら、足を運んでおきたい店舗と言えよう。

――――

レギュラーはアヤ志保千奈美です。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、リクエストとは関係ない話を書いたりします。

だけど許されるなら、インタビューはもうしばらくやりたくない。

>>141
そのレスは、我が友、CuPではないか?(正解です。ありがとうございます)

>>105
【修正】
× ジムなら夜行きますよ。先輩も来るっていうんで。はい。所長も行くんですか? じゃあ仕事終わったら一緒に。

○ ジムなら夜行きますよ。先輩も来るはずなんで。はい。所長も行くんですか? じゃあ仕事終わったら一緒に。


アヤ「どう?」

志保「大丈夫、綺麗だよー」

アヤ「志保は…… ん、だいたい平気か。背中見るから髪の毛上げて」

志保「先々週エステ行ったから大丈夫だと思うけど。くくっちゃお」

アヤ「はいよ。そうだね、綺麗なもんだ」

志保「アヤちゃん、いつ見ても腹筋綺麗だよねー」

アヤ「絞れって言った手前、サボれないからな。でも志保はここまでやらないほうがいいと思う」

志保「そうなのかな。……これなら、どこに出しても恥ずかしくない?」

アヤ「恥ずかしくない恥ずかしくない」

志保「わー、ありがとー♪」


千奈美「ただい…… ……私お邪魔だった? もう少ししてから帰ってきたほうがいい?」

志保「きゃっ♪」

アヤ「おかえり。風呂はあるよー。晩メシ食った?」

千奈美「報告ついでに食べてきたわよ。そっちは明日の撮影のチェック?」

志保「水着グラビアだし。こないだメイクさんが『お手入れ日ごろから丁寧なの助かるー』って言ってたから」

千奈美「季節感ゼロね」

アヤ「屋内プール施設のプロモーションだからな」

千奈美「ところで、下着でベタベタしてたら、イチャついてるようにしか見えないわよ」

アヤ「ベタベタまではしてないし、イチャついてもいねーよ!」

志保「そうだそうだ! ベタベタとかイチャイチャっていうのはこういうのを言うんですー!」

アヤ「え? あっ、わーッ!?」

千奈美「……お風呂入って来よ」


――――

千奈美「脱衣所にいるの、アヤ?」

アヤ『そうだよー洗濯機回すー』

千奈美「よろしく。明日、結局どういう予定なの? 夕方からでしょ?」

アヤ『志保もアタシも、大学から現場に直行。終わりがわからんから、店は休んでいいって』

千奈美「お疲れ様ね。二人で大丈夫そう?」

アヤ『所長が途中で顔だけ出すって言ってたから、まあ平気だろ。中央からも数人来るっていうし』

千奈美「珍しいわね。急な話だったしあんまり話聞けなかったんだけど、何かあったの?」

アヤ『単純に中央直轄の仕事なのと、あとはフリーとか個人事務所とか多いからじゃねーかな』

千奈美「ふーん…… まあ、うちも個人事務所みたいなものだわね」

アヤ『あひたのひへふぁん、よほひうー』

千奈美「歯磨き終わってから喋りなさいよ…… あ、私の歯ブラシ頂戴」

アヤ「ん」

千奈美「ありが…… いつまで下着でいるのよ!!?」

アヤ「っぺ…… ブラトップは寝間着だろー」

千奈美「下!」

アヤ「う。ちゃんと履くよー。んじゃ明日の店番よろしく」

千奈美「はいはい……」


――――

志保(アヤちゃんは少し遅刻。学校の都合じゃしょうがないよね。一人で行くのは久しぶり)

志保(現場には連絡したって言ってたけど、早めに行って、私からもスタッフさんには謝っておこう)

志保(メンバーは……名前しか知らない子もいるなあ。……これだと、編集さんが和菓子持ってくるかな?)

志保(ライターさんも初顔だ。名刺は…… ある。アヤちゃんの分もある。お店の新しいパンフとイベントのフライヤーもある)

志保(さて。水着撮影だし、ピンあるよね。それだと時間かかりそうだし、差し入れ持ってもいいか。メールしてみよっと)


――――

To:アヤちゃん のりかえるー [お土産何にしよ? 多分和菓子は持ってくる人いるね(・ω・)]

To:槙原志保 Re:のりかえるー [菓子なら屑の落ちないやつ プールだから]

To:アヤちゃん するどい [さすがーあいしてるー! プリンにしようそうしよう♪(・ω・)]

To:槙原志保 Re:するどい [スプーンもらえよ あと油性ペンとかウェットティッシュとかおやつ用の小物も補充しときな]

To:アヤちゃん なんで [油性ペン? ペンケースにあるけど(・ω・)なんでー]

To:槙原志保 Re:なんで [名前書くだろ]

To:アヤちゃん おお [さすがはお姉様です!(・ω・)]

To:槙原志保 Re:おお [ウェットティッシュはいつも持ってる小さいのでいい わざわざボトルまではいらん]

To:アヤちゃん はーい [ボトルのは現場にあるよね。。(・ω・)]

To:槙原志保 Re:はーい [だね それじゃまたあとで]


――――

志保「おはようございます、オフィス・グラジオラスの槙原です」

ちひろ「おはようございます。グラジオラスの槙原さん…… ああ、欠員補充で来てくれたんですね、助かります」

志保「お互い様ですから♪ 補充で来ておいて申し訳ないんですが、桐野が少し遅れます。連絡は来てます?」

ちひろ「ええ、いただいてますよ。今日は撮影人数少し多いですし、まだ準備中なので、多少遅れても問題ないですから、ご心配なく」

志保「すみません、ご迷惑かけます。木場も後で来ますので。これ、お土産です」

ちひろ「あら、ありがとうございます♪ 今アシスタントさん来ますから、中に持って行ってあげてくださいな」


――――

みく「ウチのカバンに おひさんひとつ~♪ ……うにゃっ、オハヨーゴザイマスにゃ?」

志保「はい、おはようございます♪ ……まだあんまり来てないですね」

みく「そうにゃね。……初めて会うにゃ?」

志保「ん……そうですね。でも私はみくにゃんさん知ってます!」

みく「むむっ、ちょっと待つにゃ、みくも知ってるにゃ! 木場チャンのところの…… どっちだっけ…… こないだインタビュー読んだ……」

志保「うふふ。……んんー、このクーラーボックス使っていいのかな? プリンお土産に持ってきたんですよ」

みく「ん? プリン…… あっ、パフェ食べるほうだにゃ! 槙原志保ぉ!」

志保「正解です! ちゃんと読んでくれてるんですね♪」

みく「そりゃ、同僚で商売敵だからにゃ。情報くらい抑えておくもんだにゃ」

志保「それは光栄ですねー。お礼にプリンどうぞ」

みく「何が光栄なんだにゃ。プリンは貰うにゃ、後で食べるにゃ」

志保「だって、あのみくにゃんに名前覚えてもらってて、商売敵って言ってもらえたらやっぱり嬉しいですよ」

みく「……」

志保「……?」




みく「……それで喜んでるようじゃ、少なくとも志保さんが勝つ目はないですよね」



志保「……?」

みく「……な、なんでそこで首傾げるんだにゃ!!?」

志保「……?」

みく「え、えぇー……」

志保「ところで、プリン何味にします? バニラにチョコ、バナナにマロン」

みく「思いっきりスルーされたにゃ……!? んー、どれにしようかにゃ……」

志保「あ、みくちゃんはこっちのほうがいいですか? おやつ小魚」

みく「ふぎゃーーーッ!! みく イズ フィッシュ ノーサンキュー にゃ!!」


――――

渚「うおッ、志保さん脱ぐと凄いッ……!」

仁美「うーん、プロポーションはちょっと負けてるかな?」

翠「数値上は数cmずつなんですけどね……数値以上の差がある気がします」

仁美「大丈夫っしょ! それだけでアイドルらしさが決まるわけじゃなし! どーんとひっくり返して見せようじゃないの!」

翠「どうやって逆転します?」

仁美「……なんか、画期的な、すごい知略? 一夜城みたいな?」

渚「なんら具体性がないよッ!?」


――――

志保「お疲れ様です♪ 久しぶりですね」

翠「お久しぶりです。名古屋で会って以来ですか?」

志保「はいっ。そうだ、後でいいんですけど、マネージャーさんかプロデューサーさんにも挨拶させてもらいたくて」

翠「プロデューサーならまだいるはず…… あっちで編集さんと話してますね。マネージャーは入りと出だけ来るって」

志保「ちょっと前に、うちでトークショーやりたいって言ってくれたから、案内も渡したくて♪」

翠「そうでしたね。まずは一度、客としてお伺いしたいです」




渚「あァッ、前川さんも凄いよ!」

仁美「小兵ながら、大振りの見事なものを持っておるのう……! 敵ながら天晴よ!」

渚「その表現はアイドルとしてどうかと思うよッ!?」

仁美「しかもあの顔! きっと『野良犬相手に表道具は用いぬ』って考えてるね……」

渚「えっ……えっ?」

仁美「いやーほら、自信満々じゃない? 私たち三人とか、眼中にない感じする」

渚「はッ! これは負けられないね!」

仁美「よし。渚っち、脱ごう」

渚「えっ……えっ、私も仁美ちゃんもそういうキャラじゃないよね?」



志保「なんだか、凄いですね」

翠「……お恥ずかしい……!」

志保「そ、そうじゃなくって! ……ちゃんと見てるんだなーって」

翠「見てる……?」

志保「今、仁美ちゃんに言われて気付きました」

翠「……? ……」

志保「……脱がないですよ?」

翠「……お恥ずかしい……!」


――――

アヤ「お疲れ様でーッす、スタンバイできましたーっ。……って、志保撮ってるんだ」

周子「おっ。桐野ぱいせん、おっつおっつばっちしー。相変わらず隠れ巨乳だねー」

アヤ「塩見さんもお疲れ」

周子「いやーホント疲れちゃったなー、ついさっきまで編集さんと喋ってたから、疲れちゃったなー」

アヤ「んんんーーーー…… 疲れてるってんなら、付き合う?」

周子「ヨガ?」

アヤ「そんな感じ。ストレッチともいう」

周子「そこまでじゃないかなー」

アヤ「そっか。その和菓子は?」

周子「編集さんの差し入れよん。働かずに食べる水まんじゅうは最高に美味しいよねー。好みもばっちり押さえてくれるしー」


アヤ「よ、余裕だなあ……」

周子「まあ、今日のグラビアのメインはみくにゃんだからさ。あたしは後でチョイチョイッと」

アヤ「ちゃんと撮っとかなくて大丈夫かぁ?」

周子「編集さんもカメラさんもお得意様だからねー。あたしがツーと言ったらスリーと返してくれる仲なのさー」

アヤ「……ツッコんだほうがいいの?」

周子「どっちでもー。まあそんなわけで、シューコさんと編集さん達の間には、強いシンライカンケーがあるのです」

アヤ「事務所の関係で?」

周子「いやいや、これはシューコちゃんのミリキとプロデューサー殿のジンリョクですよー」

アヤ「……ふーん」

周子「桐野パイセン達も、ご贔屓が見つかるといいねー」


――――

真奈美「お久しぶり」

みく「木場チャン! 久しぶりにゃっ」

真奈美「顔見せ、様子見だけだがね。さっき、写真見せてもらったよ。可愛く撮れてるじゃないか」

みく「ふっふーん。そう言ってもらえると、ライターさんに売り込んどいた甲斐があったにゃ」

真奈美「相変わらず、一人なのかい」

みく「マネジメントはお願いしてるよ?」

真奈美「セルフプロデュースなんて、高校生には茨に過ぎると思っていたが」

みく「みくは、なりたい自分になるの。前も言ったにゃ」

真奈美「そうだったな。今日はキミが主役だ、立派なものさ」

みく「随分褒めるにゃあ…… 今日はみくを口説きに来たにゃ?」

真奈美「いや。今は特にその気はない。未練がないかというとまた別だけどね」

みく「そういう大人の言い方をするのはズルいにゃ」

真奈美「フフ…… さて、もう少し挨拶してくるよ。また機会があったら」

みく「にゃ。……ッあ、待つにゃ!」


真奈美「うん? どうした」

みく「チケット買って欲しいにゃ。来月末の市立小ホール単独ライブ。キャパ250、日曜昼で一枚2000円」

真奈美「何枚ある」

みく「20くらい買ってくれたら嬉しいにゃ」

真奈美「馬鹿言うんじゃない。5だな」

みく「25!」

真奈美「増やすな」

みく「じゃあ15でいいにゃ」

真奈美「……10買い取り、10預かりで。そのくらいなら、うちの客からも行く人いるだろうさ」

みく「もっと来ると思うよ? 今をときめく猫チャンアイドルのみくだよ?」

真奈美「キミがうちの所属なら、100でも200でも500でも営業してやるさ。はい、料金」

みく「ぶーぶー。毎度ありがとうございますにゃ。こっちが預け分で」

真奈美「……ん、10枚ずつ確かに。それじゃ、改めて、また」


――――

志保「思ってたよりは早く終わったね♪」

アヤ「ん。ところで店に連絡したら、びっくりするほど暇なので、客を連れて来ないならアタシたちは遊びに来るなと」

志保「あらら。じゃあのんびり帰ろーう」

アヤ「そしたら、ちょっと買いたいものあるなー」

志保「水着?」

アヤ「なんでだよ! 撮影に使ったヤツ貰っただろ! ……ビキニとか、仕事でしか着ないけど」

志保「そもそも今年は、水着を仕事でしか着ていないような……」

アヤ「いやいや、ジムで着てるだろ」

志保「あれはスイムウェアって感じ! カワイイが足りない!」

アヤ「ジムのプロモーションとかしたいな」

志保「木場さんがやってたね」

アヤ「もう先任がいたかァー」


――――

志保「渚ちゃんたちと話できた?」

アヤ「少しね。水野さんが大変そうだったな…… トークショーって言ってたけど、テーマどうするんだ?」

志保「仁美ちゃんが回していくんじゃないかな」

アヤ「それもう話題が迷子になるの目に見えるぞ」

志保「でも、仁美ちゃん、あれでよく見てるみたい。私、見ない振りしてたかなー」

アヤ「何が?」

志保「みくにゃんさん」

アヤ「あー。……シンデレラになってすぐくらいの合同練習で一緒の班だったよな?」

志保「そうだね。でも、みくにゃんは私たちのこと覚えてなかった。初めまして、だって」

アヤ「……眼中になかったとか、印象に残らなかったとか」

志保「同じこと、仁美ちゃんも言ってた。『みくにゃんは自身満々で、私たちのこと眼中にない顔だ』みたいなこと」

アヤ「悔しい?」

志保「そう思うことから、目を背けてたかも、って。……みくにゃんさんとは立場が違い過ぎて、解らないんだ」

アヤ「しょーがねーだろ。一人で上京してセルフプロデュースでアイドルやるだけでもネジ飛んでる」

志保「ネジ…… た、確かに高校生がやることじゃないけど……」

アヤ「高校生じゃなくたって厳しいよ。アタシ達ですら、四人で相談してるのに」

志保「水野さんたちやしおみーさんには、プロデューサーさんついてるしね」


――――

アヤ「そういえばさ、今日の撮影」

志保「うん?」

アヤ「抱き合って撮るのは、あれは需要あるのかな……」

志保「しおみーさんと? かっこよかったねー」

アヤ「あれは…… 抱き合うっていうかくっ付いて、だな。髪の毛とか顔立ちとか対比になるからいいんじゃないの?」

志保「カメラさんと編集さん、しおみーさんと仲良いからね」

アヤ「やっぱそうなの?」

志保「旅ロケとか一緒に行ったって聴いたよ。やっぱりさ、選ぶ段階でも現場でも『知り合いかどうか』って決め手になるのかな?」

アヤ「そりゃあ…… 店でもそうだろ。知り合いが来てればサービスしてもいいかなって思うし」

志保「そうだよね、そうなっちゃうよね。……製作側へのパイプ、かあ」

アヤ「ゼロではない……と思いたいけど。具体的に出てこないなー」


――――

アヤ「あ、なんか話題摩り替わってたよ。抱き合って撮った話。志保とだよ!」

志保「楽しかったよ?」

アヤ「だから、需要があるのか、って話をだな」

志保「私にはあるよ!」

アヤ「……」

志保「うわーっ無言で距離を取らないでー」

アヤ「いいんだけど。いいんだけど……なんかさ!?」

志保「捕まえたっ」

アヤ「えー…… 腕組むのー……」

志保「アヤちゃんが私の腕に捕まる?」

アヤ「じゃあいいです…… ……うぉいっ、指! 指!」

志保「恋人握りー」

アヤ「……志保はどうしてそうなっちゃったの……?」

志保「あんまりべたべたしたら千奈美ちゃん怒るかなあ」

アヤ「あいつあれですげぇマイペースだぞ」

志保「そうだよね。よし、今日はギリギリまでデートするよー!」

アヤ「……せめてアタシの買い物だけ先にさせてな……」

――――


レギュラーはアヤ志保千奈美です。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、リクエストとは関係ない話を書いたりします。


真奈美「アヤと志保。少し先だが、私と一緒に収録が入った。『おしえて!ティーチャー☆ミズキ』のワイド特番だ」

千奈美「ああ。だから見ておいて、って言ってたんですね。よかったわね。凄いじゃない」

志保「……えっ? うわっ、地上波!? えっ!??」

アヤ「所長も一緒…… ゲスト解答者チームとか? え、なんで?」

真奈美「パネラーではない。改変期用の特番だから、ゲストは基本的に番宣だよ」

アヤ「ですよね。……ってことはゲストコーナーか何かですか?」

真奈美「ご名答。ワイド特番だと、話題の飲食店をスタジオに招いて立食パーティするコーナーがあるだろう?」

志保「あ! 『給食』ですか!」


真奈美「そこに加えて貰う事になった。出演というよりは出張かな。担当はデザートとドリンクになる」

千奈美「あれって、名店とか単価高い店舗多かったと思いますけど」

真奈美「インパクトがある、メニューとして目立っているのはそういう店だが、そればかりでもないよ」

アヤ「共演は?」

真奈美「番宣枠にはガールズ以外もかなりいるな」

千奈美「765さんもいますね。オールスターズ映画で一枠、あとゴールデンのドラマのチームに一人混じってる」

志保「わ、わ。大御所の女優さんとか冠持ちの芸人さんとかいる!」

真奈美「加えて、通常版のレギュラー陣が、パネラーではなくアシスタントやコーナー担当に回る。まあ、知っての通り、CGジュニアクラスの子たちだ。売り出し中だとか売れっ子だとか、そういうランクのな」


アヤ「うわー。……メニュー決めてあるんですか?」

真奈美「ソフトドリンクは一通り。デザートは、制作さんを招いて一度試食会を開くが、ミニパフェ、揚げバナナ、マンゴープリン、あとはケーキを二、三種類かな」

志保「……それだと、パフェだけほとんど仕込めないですよね?」

真奈美「志保が作ってる姿を撮ってもらいたいんだ」

志保「きゃー!」

千奈美「何食くらいいるんですか?」

真奈美「出演者は50人超だが、全種類100食程度は準備するように依頼されてるね」

アヤ「え、えーと…… 必ず全員に行き渡るように、と言ったって多過ぎないですか」

真奈美「スタッフや関係者は出演者より多い。余ることは心配しなくていいとさ。ミニかハーフで出すとして、50か60人分くらい作っていくことになるかな」


志保「仕込み凄いことになる……!」

真奈美「というわけで二人。今週と来週の土日に、中央のワークショップに顔を出してくれ。何人かと面通しをしてもらう」

志保「なるほどー。ジュニアクラスの子たちは接点ほとんどないですよね」

アヤ「了解です」

真奈美「報告は以上だ。それでは、二人はキッチンとフロアのクローズを。千奈美は上で伝票を手伝ってくれるかな」

千奈美「はい。レジ閉じたら上行きますね」

真奈美「よろしく。今日は発声の日か。終わったら軽く流そう」


――――

千奈美「私は、出演ではないんですよね。……店番ですか?」

真奈美「難しいな。臨時休業になるんじゃないか」

千奈美「じゃあ、私の予定は?」

真奈美「未定だ」

千奈美「三人出るなら、付いていくことになるかも?」

真奈美「そうなるかもしれない。もちろん別の仕事が入るかもしれないし、前日までの仕事の兼ね合いによっては、オフにしてもいい」

千奈美「なるほど、未定ですね」

真奈美「出たいなら、交渉するが」

千奈美「別に、そういうわけではないです。別の仕事が入れば、それはそれでいいでしょうし」

真奈美「……ふむ。解ったよ。ではいつも通りでよろしく」

千奈美「よろしくお願いします。あとこれ、発注確認終わりました」

真奈美「ありがとう。こっちももうすぐ終わるから、着替えて、二人と交代してやってくれ」


――――

志保「お店の宣伝出来るね!」

アヤ「そうだな。……嬉しい?」

志保「えへへ♪ お客さん増えるかな、忙しくなっちゃうかな?」

アヤ「そうだな」

志保「そうだよ! ……嬉しくない?」

アヤ「嬉しい。と思う」

志保「ん。水出し仕込む?」

アヤ「明日の朝でいいんじゃね。あとで聞けばいいよ」


――――

アヤ「――♪  ―――♪」

真奈美「OKだ。今日はこのくらいかな。アヤは相変わらず歌い出しが安定してないぞ」

アヤ「……」

真奈美「対策は色々あるさ。それと、肺活量は充分だからブレスのタイミングを考えて。声は出てるしリズムも取れてる」

志保「……♪」

真奈美「志保、リズムが難しくなると声がフラフラし出す。また改めて練習しよう」

千奈美「……」

真奈美「千奈美は…… 基本的な問題は特にない。表現の幅は広げてもいいかと思うが、どうだ」


千奈美「そうですね、レパートリー増やせたら嬉しいです」

真奈美「ミンミンミン ミンミンミン」

志保「えっ」

アヤ「えっ」

真奈美「冗談だ」

千奈美「こわい」


――――

志保「地上波のお仕事させてもらえるんだー♪ 嬉しいなー!」

千奈美「本当にね。頑張ってよ」

志保「ツアーのセレクションとか番組アシスタントのオーディションとか、軒並み落ちちゃったからねっ」

アヤ「今月、外で何やったっけ…… 千奈美が音楽サークルのボーカル、アタシと志保がエスニックフェスでトークゲスト?」

志保「それだけだったんだ。お店忙しかったから気付かなかった」

千奈美「私は即売会にも出るわよ。サービスだけど」

アヤ「同人即売会ってやつだろ? コスプレとかすんの?」

千奈美「……しないわよ」


志保「ちなみんパワーでメルヘンチェンジ……?」

千奈美「しないわよッ!?」

アヤ「キャハッ☆ って」

千奈美「しない!!」

志保「今のかわいい」

アヤ「手と顔の角度は、こう。キャハッ☆」

志保「キャハッ☆」

千奈美「……いや、しないわよ?」


――――

志保「ワークショップ、いつ以来だろう……?」

アヤ「アタシは夏前に来たッきりだな」

志保「あれ? フェスのときは?」

アヤ「委員会主催の合同練習は何回か行ったけど。逆に基礎トレなんて来てる暇なかったぞ」

志保「それもそっか。ねーね、ちょっと緊張しない?」

アヤ「そうか?」

志保「だって、中学生と話すなんて、この業界入らなかったらレア体験だよ?」

アヤ「接客は?」

志保「接客と会話は違うものです」

アヤ「だな。まあアタシも、とんと話した記憶がない。……だーいじょうぶ、五つちょいしか変わらねー」

志保「そわそわしてきた」


――――

幸子「グラジオラスの、槙原さんと桐野さんですよね? お話は伺ってます。輿水幸子です」

アヤ「初めまして。学級委員長」

幸子「『フフーン! 今日もカワイイボクと一緒に、先生のご指導を賜りましょうね!』」

志保「すごい」

幸子「素人さんじゃないんですから、いきなり振らないでくださいよ! モチロン、ボクは応えますけどね!」


――――

美玲「おーっす、さち…… ……ハジメマシテ」

幸子「おはようございます、美玲さん。ご紹介しますね。こちら、早坂美玲さんです」

美玲「お、おぅ…… 早坂美玲、です」

アヤ「桐野アヤです。よろしく」

志保「アヤちゃんと一緒に、今度の『ティーチャーミズキ』の特番で共演させてもらいます。槙原志保です。よろしくね、早坂さん」

美玲「あー、インディヴィのプロデューサーから話聞いてる。トレーニングのアシスタントさんかと思った」

幸子「ちょっと美玲さん! 同じシンデレラガールズですよ!? すみません、うちの早坂さんがとんだ失礼を!」

アヤ「あはは…… 気にしないでよ。ガールズ自体人数が多いし、ジュニアとは接点ないし。ましてアタシたち、露出も少ないほうだから」


幸子「共演者だと、今日はボクの142'sと美玲さんのインディヴィジュアルズは集まりますね! あとはお聞きしてないですが」

美玲「ウチのリーダーがユニット掛け持ちだからな、ワークショップはだいたい五人揃って参加だぞッ」

志保「やっぱり、ユニットで活動すると、基礎練習も一緒にやるものなの?」

幸子「ボクは、土日しか東京でのアイドル活動が出来ないので、自然とそうなりますね。貴重な時間は効率よく使わないと!」

美玲「ウチなんかは上京してきたけど、幸子と乃々は実家だからな! 遊ぶ時間もいっぱいいっぱいだ」

アヤ「へー。実家どこなの?」

幸子「甲府です」

アヤ「……え、あれ? どこだっけ、群馬?」

志保「振っといて解らないのやめようよ! 山梨だよ!! だとすると、新幹線で通ってるんだよね?」

幸子「そうです! よくご存知ですね!」

志保「大変だねー!?」


――――

志保「中高一貫! どうしようアヤちゃん、すっごいお嬢様だよ!?」

幸子「たまたまそういう家柄に生まれついただけですよ。ボクがカワイイのと同じように、環境がそうだったんです」

アヤ「う、うん…… でもさ、受験勉強要らないけど結局こっちには住めないわけだろ? ……アイドル続けるの?」

幸子「モチロンです! 最初に相談したんですが、皆さん快諾してくれて、協力してくれていますからね! ボクは幸せ者ですよ!」

美玲「それ、幸子のプロデューサーに言ってやればいいのに」

幸子「嫌ですよ!!? ……そ、そういうのは自然と伝わるものです。両親とも話してますし」

志保「ふふ、幸子ちゃんはテレビで見る様子とあんまり変わらないんだね」

幸子「そうですよ? ボクは作ったりはしないのです! ……勿論、仕事中かどうかで意識は変わりますけど」


――――

美玲「うーん、喜び、怒り、哀しみの演技…… どうすんだ、わかンないぞッ!?」

輝子「フ、フヒ。落ち着こう、落ち着こう……」

乃々「即興劇は苦手なんですけど…… 思い付かないんですけど……」

輝子「あ。フヒヒ、思いついたぞ…… 乃々が最近読んでるっていう漫画。お姫様と、首なしの王子様の話」

乃々「え、好きですけど…… どうしました?」

輝子「あれ、私も買ったぞ」

美玲「ウチに見せてくれたアレか! 面白かったな!」

輝子「そ、そう。それ。……あのセリフ、引用してみよう」

乃々「それなら、出来るかもしれないですけど……」


小梅「……しょーこちゃん、頼りにされてる……」

幸子「フフーン! さすがボクたちのお姉さんですね!」

志保「ところで、良かったの? 行き掛かり上とはいえ、私たちと同じ班で」

小梅「だ、大丈夫…… リーダーの方針、だから」

幸子「リーダーのボクがフォローしてみせます!」

志保「二人とも、ありがとうございます♪」

アヤ「演技も一応レッスン受けてるけど、また感覚違うなあこれ」

幸子「どんな話にしましょうか? あんまり即興にしちゃうと、小梅さんに偏りが」

小梅「つ、ついつい、ホラー映画の台詞使っちゃう、から…… ふふふ……」

志保「どんな状況からも一寸先が闇に! ……それはそれで面白いかも?」


――――

アヤ「森久保さん、お疲れ様。スポドリでいいかな。……今度の特番で一緒になる桐野アヤってんだ」

乃々「はい、さっき美玲ちゃんから聞きました。森久保乃々、ですけど……知ってるんですね」

アヤ「そりゃ、ガールズでも有名だからね。よろしく。実家から通ってるって聴いたけど、大変じゃない?」

乃々「愛知なので、新幹線で二時間ですけど…… 来年からはこっちの高校なので、もう少しだけですけど」

アヤ「愛知かー。ああ、高校はこっちに通うんだ」

乃々「寮生活が不安…… というか何もかも不安ですけど…… そもそも今度の特番が不安ですけど……」

アヤ「レギュラーと違うから、かい?」

乃々「……受験を控えたもりくぼは、今度の特番で、いったん番組を離れるのです……」

アヤ「心残りを作って離れたくない?」

乃々「……本当に、よろしく、お願いします。こういうの、子どもが出しゃばるの、良くないかもですけど……」


アヤ「アタシたちは、一コーナーしか出番ないけど。そこはちゃんとやるよ。わざわざ伝えてくれて、ありがとう」

乃々「……もりくぼは、まだアイドルやってての、怖いので……」

アヤ「そうか、怖いかァ」

乃々「……」

アヤ「新幹線で片道二時間かけて、大人に振り回されるんだからな。楽しめる子がタフなんだよ、恐れがあって普通さ」

乃々「……説得もしないんですか?」

アヤ「もっと頑張れるよ、楽しいよ、って?」

乃々「……」


アヤ「森久保さんの背景が解らないからなあ。とりあえずあの四人とは仲が良いんだな、ってことしか」

乃々「確かに、仲は良いですけど……」

アヤ「じゃ、折角だし遊んできたら?」

乃々「……はい。ありがとうございます」

アヤ「んーと。アタシの事務所、カフェやっててさ。森久保さんの地元みたいなメニューも出来るよ」

乃々「それは…… ちょっと、気になりますけど……」

アヤ「友達とかご両親とか事務所の人とか、一緒に来てくれたら嬉しいかな?」

乃々「……はい。わざわざ声掛けてくれて、ありがとうございます。あと、飲み物も」

アヤ「また今度、ね」


――――

アヤ「ということがあってだな」

千奈美「収穫あったのなら、よかったじゃない」

志保「で、千奈美ちゃんはこれからオーディション? なんでしょ?」

千奈美「急な話になっちゃったけど、帰ってきてくれて助かったわ」

アヤ「みんな昼過ぎから仕事だってことでなー。まあ、そりゃそうなるよ」

志保「撮影とか収録とか。土日も遊べないんだねー、大変」

千奈美「忙しいだけなら私たちも忙しいじゃない。それじゃ、行ってくるわね」

アヤ「おう、頑張ってな」

――――


レギュラーはアヤ志保千奈美です。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。

真奈美と千奈美が会話に並ぶと目が滑る、ということに書いてて気付きました。

(乃々は神奈川だよ)

>>223
指摘ありがとうございます。これはなんらかのケジメがひつようです。

まずは下記に訂正。


>>218

アヤ「そりゃ、ガールズでも有名だからね。よろしく。実家から通ってるって聴いたけど、大変じゃない?」

乃々「橋本なので、ちゃんと電車乗れれば一時間半ですけど…… 来年からはこっちの高校なので、もう少しだけですけど」

アヤ「えーっと、神奈川だっけ。高校からは寮使うの?」

乃々「毎日ではないですけど、寮生活が不安…… というか何もかも不安ですけど…… そもそも今度の特番が不安ですけど……」


>>219

アヤ「片道一時間半かけて来たら、大人に振り回されるんだからな。楽しめる子がタフなんだよ、恐れがあって普通さ」


>>220

アヤ「んーと、番組から聴いてるとは思うけど、アタシの事務所、カフェやっててさ。良かったら来てよ。サービスする。かも?」



To:小室千奈美 おめでとう [先日のオーディション、合格しました。詳細は明日のモーニングで話します]


――――

志保「はいっ♪ というわけで、ドラマの話に移っちゃいたいと思います!」

美里「お願いしまぁす」

志保「今回、お三方が出演されたように、アイドルメインのドラマは、本人のキャラクターをそのまま使うものが多いですよね。ここ3、4年からの流行だったと記憶してるんですけど、印象に残っているものはありますか?」

法子「名前そのままの役柄ですよね。765さんとかで流行ったんですよね!」

美里「そうそう~。うんうん、やっぱりお客さんにも見てる人いますよねぇ。ファンタジーとか特撮とか色々ありましたけどぉ、私は『眠り姫』かなぁ」

法子「私も『眠り姫』は見ましたね! 言ってもあたし中学生だし、ドラマはあんまり見てないんですよ。『キサラギ』は一応ちょっと見たけど…… あ、『スペースウォーズ』は見ました!」

志保「ワイヤーアクションなんかもあって、本格的でしたよね! 財前さんは、何か見てましたか?」

時子「……『雷王学園生徒会』は見たわよ」


法子「Jupiterさんかー! 色々面白いって聞いたから、DVD借りたことありますね!」

美里「参考に私も見たなぁ。時子サマは、リアルタイム派だったんですかぁ?」

時子「そうなるかしら。ニュースのまましばらく点けっぱなしにしてたら始まっただけで、偶然ね。ま、いい暇つぶしにはなったわ」

美里「その時は、まさか自分が学園物のドラマやるなんて思いませんよねぇ」

時子「そもそもアイドルなんて想像もしてなかったわよ」

法子「まさかセーラー服着るなんて?」

時子「……スプモーニ! スプモーニを持ってきなさい! 五秒で!」


法子「はいっ。撮影の日程って、関わる人のスケジュールも場所の手配もあるから結構カツカツで、全然話の順番通りにならないんですよね」

時子「私たちには当たり前のことだけど、下僕どもにはピンと来ない連中もいるかもしれないわね」

法子「その日は学校借りてて、校庭と教室で撮影の予定だったのに、朝からざあざあ降ってて。止まないし次に校舎使える日までは待てないし」

美里「法子ちゃんの大事なシーンだったものねぇ。一応先に教室だけ撮ったんだっけぇ?」

時子「そうだったわね。よく覚えてるじゃない。誉めてあげるわ」

法子「で、結局その日はもう雨のまま撮るしかない、ってことで脚本を直してもらって撮ったんだけど、直した後のほうがドラマチックになっちゃったねーって!」

美里「脚本さんと演出さんが柔軟な人で良かったですよねぇ。きっちりやるのが悪いわけでもないんですけど」

時子「……あの場では良かったんじゃないの。貴方の泣く演技、本当にダメだったもの」

法子「そうなんだよねー! だから、雨で髪の毛とかぐしゃぐしゃになってるほうが雰囲気あったの!」

美里「小説版だと晴れてるのは、そのせいらしいんですよねぇ」


――――

志保「トークショーも佳境に入りまして、チャリティオークションのコーナーです! 売り上げは、シンデレラ基金を通じて子どもたちのために使われます。まずは椎名さんからお願いします!」

法子「はーい! あたしは実際にドラマでつけてたシュシュとヘアピン! これは何話だったかな……たぶん最後のほう!」

時子「ちょっと見せなさい。……9話よ」

法子「解るの!? その手帳? スマホ? 凄いね時子さん!?」

美里「衣装とか現場とか、小まめに撮ってましたよねぇ、マネージャーさんが」

法子「手帳にも台本にもいっぱいメモしてたし!」

時子「そんな話をする許可、与えた覚えはないわよ」

美里「凄く真面目に取り組んでたよねぇ、っていう話ですよぉ」

時子「……カーディナル! カーディナルを持ってきなさい! 五秒で!」


法子「っと、では9話にあたし演じるノリコが付けてたシュシュとヘアピン二つです! ……じゃあ3つだし300円から?」

美里「私が仕切っていいんですかぁ? はいはぁい、それじゃあ300円から、スタートでぇす」

\500円!/ \900円!/ \1000円!/ \3000円!/

\4000円!/ \8000円!/ \イチマ\15000円!/

\20000円!/

\25000円!/

美里「はい、25000円、他にいないですかぁ?」


\30000円!/


美里「30000円! いいですかぁ? ……いいみたいですね、30000円でぇ、ハンマープラぁイス!」

法子「え、えぇ!? い、え、いいの!? シュシュとかですよ!? 駅ビルの雑貨屋でも似たようなのありますよ!?」

時子「いいのよ。くくっ、豚はそういうのが喜びなんだから、せいぜい笑ってやりなさい!」

法子「う、うわぁありがとうございます! ……じゃああの、真奈美さん! 色紙とペンありますか? わーどうもどうも。サインつけますね。お名前は?」


――――

美里「それじゃ、私ですねぇ。……同じく小道具なんですよねぇ。眼鏡なんですよぅ」

法子「あ、しかも壊れてるほうだ」

美里「そうなの、6話で踏まれて壊れちゃった方の眼鏡でぇす。ケースも付けちゃいまぁす。ケース代くらいかなぁ、1000円からでいいですかぁ?」

志保「はいっ、では財前さん、よろしくお願いします!」

時子「さぁ、豚ども! せいぜい高い値をつけて、どうでもいい小物を無様に有難がりなさい!」

\3000円!/

\10000円!/

時子「ハッ、随分飛ばすわね、辛抱のない! ……ほら、もっと良い声で鳴く豚はいないの?」

\12000円!/ \15000円!/ \20000円!/


\22000円!/


時子「22000円? もうお終い?」


\25000円!/


時子「25000円。25000円、これで決まりかしら。……ハッ、いないようね。そこ! そこのお前のモノよ。受け取りに来なさい」

美里「はぁい、ありがとうございますぅ。じゃあ桐野さん、チェキ貸してくださぁい。サイン、色紙とチェキの両方につけちゃいますねぇ」


――――

時子「私ね。……これよ。第一話の」

志保「台本! しかも付箋もメモ書きもびっしりじゃないですか! いいんですか?」

時子「撮影中になくしたと思って、新しいのを貰った次の日に見つけたのよ。同じものが二冊有っても邪魔なだけだわ」

法子「うわぁ、赤とか注意書きとかすっごい、すっごい……! これあたし欲しいくらいだよ?」

美里「法子ちゃんは自分の持ってるじゃなぁい」

時子「そこまで言うなら、客席に並んでみたらどう?」

法子「いや、えっ、お客さんみんな落札する気マンマンですよ! 邪魔したくないのでいいです!」

時子「なら法子。貴方が最初の値段を決めなさい」

法子「いいんですか!? えー、じゃあ……2000円?」


――――

志保「お疲れ様です♪ サラダとスープお持ちしました」

法子「ありがとうございます! んー、緊張したー!」

アヤ「楽しんでたように見えたけどな。飲み物出しますよ、何にします?」

法子「じゃあ…… ハニーレモネードで!」

時子「レッドアイ」

美里「私、グレープフルーツジュースでお願いしまぁす。どうでしたかぁ? 真奈美さんいた方が回るのになぁ、って思ってたんですけどぉ」

真奈美「客席は君たちのほうがよく見えてただろ。良かったよ。ステージが大きくないから、座ってのトークショーだと、メイン三人に袖で司会が立ってるくらいでちょうどいいさ」

法子「ドラマのプロデューサーさんは、あたしが出られなかったら真奈美さんにするつもりだった、って言ってましたよ」

真奈美「時間帯が夜だったら、私が出ることになったんだろうがね。現役中学生がトークショーに参加できる機会も中々ないからな。私が司会って柄でもないし、今回はこれでよかったのさ」

時子「フン、遠慮してるつもりだったら余計なお世話よ」

真奈美「まさか。ファンにとっては、この店なら今日に限らず話を聞けるかもしれない私より、法子のほうがプレミア感は高いだろう? プロデューサーと相談した結果だよ」

美里「なるほどですねぇ」

真奈美「それでは、我がカフェ・グラジオラス自慢のディナーを振舞うとしよう」


――――

志保「お待たせしました♪ 椎名さんのハヤシオムライス、間中さんがディナープレート、財前さんがインディアンスパゲッティですね」

法子「うわぁ、そのスパゲッティ、ほんとにカレー味なんだ……!」

時子「……取り皿、こっちによこしなさい」

法子「わぁい! ありがとう時子さん!」

アヤ「今日って、ドラマスタッフはさっきの広報さんと営業の人くらいしか来てないんですね」

美里「そうですねぇ、今回はシンデレラとしてのイベントなので、ドラマの制作側さんからすると、一応知ってる、みたいな感じですねぇ」

志保「チケット倍率凄かったみたいですよ。『このチケットはお店に来ても買えません』って、すぐにツイッターにもblogにも告知したけど、問い合わせ来ましたね……」


時子「LIVE配信してたんでしょう?」

志保「はい♪ カメラは固定ですけどね。ちゃんと時子さんの『無様ね』もいただきましたよ!」

アヤ「中央から、チケット倍率高すぎるから配信してくれない?って言われて、とりあえず手配してもらったけど……」

志保「来るものだね……」

法子「あ、前川のみくにゃんとか凄いですよ! 有料配信が活動資金源だって豪語してました!」

美里「ガールズでも、何人かは自分のチャンネル持ってるんでしょう? 時子サマとか、やらないんですか?」

時子「は? そんなことしなくても、仕事のほうから寄ってくるわよ。……そもそも面倒だわ」

法子「時子さん、機械あんまり得意じゃないよね。写真撮ってなんやかんややるときも、だいたいマネージャーさんだよね」

時子「……ブラッディマリー! ブラッディマリーを持ってきなさい! 五秒で!」


――――

志保「デザートでーす♪ リング型ではないけど、ドーナツの盛り合わせですよ♪」

法子「やっっっっったーーーーー!」

アヤ「あ、間中さんと財前さんはこっちです。ミニケーキの盛り合わせ」

美里「法子ちゃんの皿、一人で私たち二人分の倍以上あるわねぇ」

時子「もう慣れたわ」

法子「プレーン! バナナ! チョコ! ココナツ! スノウアイシング! 凄いよ志保さん! 幸せが盛り沢山!」

志保「ホイップクリームと小倉あんもどうぞ♪ いっぱいあるから、女子寮に持って帰ってくれてもいいですよ♪」

時子「……うぇ」

美里「いつ見てもいい食べっぷりだけどぉ、胸焼けしちゃいそうですよねぇ」

志保「……パフェ食べたくなってきた」

アヤ「勝手に食えよ!!?」

法子「むむっ。ケーキパフェならぬドーナツパフェはどうですか?」

志保「いいかも! あっ、皆さん食後のドリンクはどうします?」


――――

志保「ゴミ、裏に置いてきたよー。楽しかったね」

アヤ「ん。……財前さんたちもお客さんも盛り上がってたな」

志保「キッチンはもうクローズ終わるって。フロアは…… まあ100人以上立ち見入れたら足跡だらけだよね……」

アヤ「イベントの後はなぁ、これがなー…… ま、使ってもらえるだけ有り難いか」

志保「そうだと思うよ。私、水回り掃除してくる。終わったら手伝うね」

アヤ「司会疲れたろ。程々でいいよ」

真奈美「二人ー。残念だが今日は賄いはない」

志保「えっ! も、もう帰って作る気力ないですよぅ!?」

アヤ「死ぬのか……」


真奈美「千奈美が現場でご馳走になってくるらしいから、我々も食べに行こう」

志保「……♪」

真奈美「……ああ、うん。上目遣いしなくても、私が出すから」

アヤ「焼肉」

志保「賛成!」

真奈美「強気に出たな」

アヤ「だってさっき、千川さんから連絡来てたじゃないですかー」

志保「あれ、もしかしてキャッシュバックの話ですよね……!」

真奈美「目聡いな。そうだよ、正解だ。ついでに、時子のマネージャー氏から三人分のフルコースとお土産代をもらっている。ほら」

アヤ「封筒ですか。……えっ、これ、えっ!?」

志保「今日のって、コースだとしても、一人3000円くらいですよね……?」

真奈美「他事務所のタレントの分まで出す上に、チップのほうが多いなんてな。私も、こういう気概を持ちたいね」


志保「……チャリティオークションといい、チップといい、金銭感覚狂いそう」

アヤ「志保」

志保「うん」

アヤ「肉を食おう」

志保「食べよう」

真奈美「明日オフだからって、油断してるだろう君たち」

アヤ「もつ鍋も食べたいです」

真奈美「学校は行くんだぞ」

志保「任せてください! お肉を食べましょう!」

――――


レギュラーはアヤ志保千奈美です。が、たまには出ないこともあります。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、全然関係ない話を書いたりします。


幸子はきっとあずさやかいじで通ってますね。

出生地と出身地とスカウト時の住所と現住所は、
その都度、納得できるような補足をしていけたら、と思います。


――――

真奈美「お疲れ様」

志保「お疲れ様です♪ あれ、千奈美ちゃんは?」

真奈美「練習に早出したよ。会場は開いてるからって、誘われたんだとさ。いいことだよ、熱意があるのは」

志保「そうだったんですか! よーし、それじゃあ私は店番頑張っちゃいますね♪」

真奈美「頼もしいな。そこのケーキ、今日のサービスで出すから。試食していいぞ」

志保「わーい♪ チーズケーキ、チョコブラウニー、フルーツパウンド、紅茶のシフォン……」

真奈美「ニューヨークチーズケーキがいちばん評判良かったかな」

志保「でも、特番で出せます? 焼いて持っていくならパウンドとブラウニーが楽だと思うんですけど」

真奈美「他の店の都合もあるから、私たちの出番の時間がズレることはまずないさ。スタジオに冷蔵ショーケースも入れてもらう」

志保「冷蔵ショーケース! 欲しい! それなら大丈夫ですかね。お客さんの反応も見て考えましょ♪」


――――

アヤ「お疲れ様ーっす。……もしかして暇です?」

真奈美「お疲れ様。ま、忙しくはないよ。アヤが入ってくれるなら、様子を見てバイトくんは早上がりかな」

アヤ「了解です。メシ食いました?」

真奈美「そこのサービス用のケーキくらいなら」

アヤ「もごもご。パウンドケーキ美味いですね」

真奈美「コーヒー置いておくぞ」

アヤ「ありがとーございまーす。そいやメール見ましたけど、今日は千奈美遅そうっすね」

真奈美「何と言っても、シンデレラだからな」

アヤ「ん?」

真奈美「0時回らないと帰ってこない」

アヤ「なるほど。……真奈美さんが魔法使い?」

真奈美「意地悪な継母かもしれないぞ」

アヤ「それ、アタシと志保が意地悪な姉じゃないですか……」

真奈美「フフ…… ほら、着替えておいで」

アヤ「はーい」




To:所長 アヤ 志保
 すみません
[練習終わった後、呑みに行くそうです。店が大丈夫なら一緒に行きたいんですが、どうですか?]





To:小室千奈美
 了解した
[平日で暇だから構わないよ。きちんと交流しておくといい。帰りは連絡するかタクシー使うように。]



――――

アヤ「発注終わったー」

志保「クローズ終わり♪ 所長は今日もお泊りなんですか?」

真奈美「はい、お疲れ様。作業済ませてから考えるよ、千奈美を迎えに行くかもしれないし」

アヤ「なるほど。……最近家帰ってます?」

真奈美「今日だって家から来たぞ」

アヤ「そうだけど! そうですけど!」

志保「試食会近いですし、体には気を付けてくださいね?」

真奈美「心配するほどは頑張ってない。そもそも二階だって、事務所とは名ばかりの居住空間だ」

志保「晩御飯と明日の開店準備はしましたから、ちゃんと休んでくださいね!」

アヤ「千奈美にはタクシー使うように言っておきますから」

真奈美「……分かったよ。ありがとう」


――――

千奈美『もしもし、しょちょう、ですか』

真奈美「……千奈美か。終わったのか?」

千奈美『ついさっき、にじかいが。……きもちわるいです』

真奈美「今どこだ」

千奈美『しぶや』

真奈美「タクシーには乗れそうか?」

千奈美『のったら、はくかも』

真奈美「誰か一緒か?」

千奈美『やまとさん』

真奈美「電話代わって」


亜季『こちらコード・オータム。どうぞ』

真奈美「……こちらはコード・ファング。確保したターゲットのコンディションはどうだ」

亜季『べろべろであります。水の代わりにウォトカ呑んでるロシアの赤鼻のほうが、まだマシであります』

真奈美「見張りを続けてくれ。どうぞ。……いや、済まない。二時過ぎか……どうするかな」

亜季『正直、一回吐かせたほうが楽にはなると思います』

真奈美「任せる。ブドウ糖とアミノ酸を摂取できれば、いくらか楽になるはずだ。成分表見て、選んでやってくれるか」

亜季『さっき本人から要求されましたよ。甘い炭酸とスポドリを与えてあります』

真奈美「助かる」

亜季『一応、スタッフ殿からタクシー代を多めに頂いておりますので、千奈美殿を送り出すことはできますが…… 一人で乗せたくはありませんな』

真奈美「キミに時間があるなら、少し様子を見て欲しいな。一緒に乗れるようなら、千奈美を置いてから私の家に来てくれ。泊めよう。できそうか?」

亜季『それなら大丈夫でしょう。了解であります』


――――

亜季「お疲れ様であります」

真奈美「何から何まで助かったよ。明日の予定は?」

亜季「仕事も学校もありません。Vチェックしてジムに行こうと思っていた程度です、のんびり帰りますよ」

真奈美「それならよかった。……随分呑まされたんだな、千奈美は」

亜季「珍しくドラマのプロデューサー殿が来られまして。千奈美殿を気に入っておられたようで、ずいぶん呑ませておりましたよ」

真奈美「……あー」

亜季「頑なに『明日も授業があるしルームメイトが心配するから帰りますよ』と。立派なもんです」

真奈美「……ありがとう、助かったよ」

亜季「ノリノリでついていくようなら放っておくつもりでしたが、そうでないなら護りましょう」


真奈美「今回の現場はシンデレラだけじゃあないからな。少し不安もある。厚かましい話だが、助け合っていってくれると嬉しい」

亜季「真奈美殿には義理も有りますので、出来る範囲でお応えしますよ」

真奈美「シンデレラ以外が噛んでる企画は、チャンスもリスクも大きいからな。いい経験にさせたいのさ」

亜季「……私は、プロデューサーでもカントクでも大御所でも、権力持ってる男のお気に入りになるのは、有力な選択肢だと思っておりますよ?」

真奈美「亜季は興味ないのか」

亜季「一応、アイドルですからね。今その手の話題が出たら、ファンがごっそり減って、そのままフェイドアウトでしょう」

真奈美「土壌とターゲット層に因るが…… まあ、日本だとそういうケースはそれなりに多いか」

亜季「アイドル引退して、本格アクション女優にでも転向すれば変わってくるでしょうが。……全ては実績です、いつになるやら」


――――

千奈美「うぅ……」

志保「おはよう、かな。寝ててもいいよ?」

アヤ「キツそうだな。酔い覚ましにミックスジュースでも作るか」

志保「炭酸入れよう。しゅわしゅわだよー♪」

アヤ「子供か」

千奈美「うぅぅぅ……」

アヤ「うっうー?」

志保「うっうー! 朝ごはんの前に、フルーツミックスソーダですよぉー!」

アヤ「似てるな……」

千奈美「まぶたを開けて…… さわやかお目覚め…… 無理……」

志保「私たちはこれ飲んだらお店行くけど、寝てていいからねー」

アヤ「動けるようになったらメールかLINEしといて」


――――

志保「アヤちゃんキッチンとフロアどっちにする?」

アヤ「んじゃフロアで。……あれ? 鍵開いてる」

志保「え? ……まさか!」

真奈美「おはよう」

志保「おはようございます♪ ……何でいるんですか!」

アヤ「あーあ。休んでくださいって言ったじゃないですか、昨日だってあんな時間に起きたのに」

真奈美「亜季がいるから、朝食の蓄えが心許なくてな。食材を確保したら、君たちが学校行くまで二階で寝てるよ」

志保「んむむむ。そういうことならわかりました。あ、ゆでたまご作ってある。ありがとうございます!」

アヤ「そっちの分けてあるボウルが、二人分の朝食ですか」

真奈美「起きたらフルーツ食べて炭酸飲んで、トレーニングしてから食べる」

アヤ「ほぼアスリート食ですけど、所長、仕上げなきゃいけないような仕事入ったんですか?」

真奈美「いや、特にはない。亜季に付き合おうと思ってな」


志保「ゆで卵、サラダチキン、レタス、キュウリ、トマト、リンゴ、バナナ……」

真奈美「雑穀米も食べるぞ」

志保「あああああスイーツ食べたいよぅぅぅぅぅ」

アヤ「いけない! 集中トレーニングのときのトラウマが! 大丈夫だぞーアタシたち今は食事制限ないぞー」

真奈美「まあ、平常時までカツカツに制限する必要はないが。自覚は持ちなさい」

志保「ココロエテ オリマス」

アヤ「亜季さんは制限中なんですか?」

真奈美「ワイヤーと長尺の殺陣がある上に素肌も出すから、二の腕、腹、太ももはカットしておきたいと言ってた」

アヤ「完全にガチのやつじゃないですか…… 千奈美に台本見せてもらおう」

真奈美「アヤが休みなら付き合わせるんだがね」

志保「……」

真奈美「志保はちゃんと体型維持するんだぞ。サプリも飲むんだぞ」

志保「やってます! ふ、太ってもいないし筋肉も落ちてませんよ!」

アヤ「そこは大丈夫です、保証します」

真奈美「そうか。見張りご苦労。さて、私は少し休むよ。モーニングはよろしく」


――――

志保「所長、私たち学校行きま……あっ! トレーニング用の機材増えてる!?」

アヤ「チンニングスタンドじゃねーか! ベンチ買うの止めたらあれか!」

真奈美「みんなが使えるようにガレージに置いたぞ」

志保「すっごくイイ顔してる……」

亜季「おっ! アヤ殿、と、志保殿! これは! 捗り、ます、よッ!」

アヤ「すっごくイイ懸垂してる……」

真奈美「亜季、勢いでやるなよ。勢いは付けず、まっすぐ、ハーフレンジで10回3セット」

亜季「畏まり、ました、ッ!」


アヤ「プッシュアップバーも結局買ったんだ……」

真奈美「今日はプッシュアップもダンベルも使わないがな」

志保「……あの、これ。ダンベルのおもり、買い足しました?」

アヤ「あぁもう…… フルで片腕30kgとか、プロレスラー並じゃないですか!!」

亜季「ふぅ…… ん、男子プロレスラーなら40くらいですかね」

真奈美「さすがに、きちんとは上げられないぞ。まだ重すぎてトレーニングにならん」

志保「ここはもうダメだよ、行こうアヤちゃん」

アヤ「そ、そうだな……」

志保「あと、言うけど8kgのダンベルをちゃんと扱えるアヤちゃんも、普通の女の子の範疇じゃないと思う」

アヤ「はっ」

志保「私が3kgのを上げ下げするまでに、どのくらいかかったか覚えてる?」

アヤ「感覚が…… 麻痺してるかもしれない……」




To:所長 アヤ 志保
 起きました
[学校行きます。帰りは19時過ぎくらいだと思います。また連絡します。]



千奈美(間に合う時間だ。学校行こう)

千奈美(だいぶマシだけど、さすがにまだ頭痛い)

千奈美(……ドラマのプロデューサーさんからメール来てる)

千奈美(昨日はありがとうございました。無事帰れました。色んなお話聴けてよかったです。またよろしくお願いします。と)

千奈美(みんなに心配かけたし、授業終わったら帰りに何か甘いもの買って来よう)

千奈美(イヤホン…… あ、ジャケットのポケットだ。何再生してたかな)



千奈美(仕事に練習 寝る間惜しんで 学校勉強ほどほどに)


千奈美(クラスの友達 思い出せない 彼氏も出来ない)


千奈美(……)

千奈美(……負けるか)

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、全然関係ない話を書いたりします。


――――

アヤ「うおッ、すげー…… 機材と材料入ると違うなー」

志保「ビュッフェですよ、ビュッフェ!」

真奈美「写真は後にしなさい。動線の確認するぞ、撮影も入りながらの対応になるからな。……ええ、よろしくお願いします」

アヤ「カメラさんはどの辺から? あー、まあそうすね。流れで変わるか」

志保「なら、コールドテーブルの周り、もう少し広くなりませんか? 撮ってもらうには狭そう」

アヤ「オーブンちょっとずらしてもらったほうがいいかな。ショーケースの陳列は……」

真奈美「カメリハの後でいいだろう。……まあ、だいたいこんなものか」

アヤ「この後はカメリハだけですよね?」

真奈美「一応、プロデューサーとディレクターが改めて挨拶することになってるが、堅いものじゃないとさ」

志保「2スタのリハ終わって帰っちゃった人もいますものね。お弁当貰って来ようかな……」


アヤ「ん、千奈美が稽古終わったって。浜川さんと会ってから帰るーってさ」

志保「む。合流しないんだ……」

真奈美「寂しい?」

志保「うーん、基本的に毎日顔合わせてるから、寂しいのとはまた違うんですけど」

アヤ「この二か月くらいか、生活時間ちょっとずつズレてるな。ほら、稽古優先でシフト減らしたから」

真奈美「まあ、それはそうなるだろうが」

志保「……前よりも、話してないなーって?」

アヤ「……これまでが、べったり過ぎたんじゃねーかな」

真奈美「外での仕事が増えれば、そういうこともあるだろうさ」


――――

志保「……所長はああ言ってたけど」

アヤ「ああ、って?」

志保「仕事が増えれば、すれ違うことも増えるよ、ってこと」

アヤ「……ま、そうだろ」

志保「……そんなに増えた?」

アヤ「千奈美の仕事が増えたな」

志保「増えたね」

アヤ「流れで、アタシたちもカフェ忙しくなってるし」

志保「私たちはともかく、千奈美ちゃん、大学大丈夫なのかな?」

アヤ「一応サボってる様子はないし、何とかはするだろ」


志保「……卒業したら、どうなるんだろう」

アヤ「当面はグラジオラスじゃねーかな」

志保「アイドルは?」

アヤ「今日だって仕事したろ? カメリハ、NGなしで抜けられたし」

志保「明日は本番ですよ、本番♪」

アヤ「随分張り切ってるなあ……」

志保「緊張で死にそうだから誤魔化してるだけだよ」

アヤ「自分から言っちゃダメだろ!?」


志保「……アヤちゃん、サンドイッチ半分食べない?」

アヤ「くれ」

志保「どうぞー…… あれ? 貰ってこなかったの?」

アヤ「貰ったけど、開けてない。志保が残すと思ったから、もらおうと思って」

志保「……ありがと」

アヤ「ん。……スープ、うちのが旨いな」

志保「そうだね」


――――

愛結奈「やった、ワタシの勝ちィ!」

千奈美「ぐくくく。一本足りない……! 先攻有利を活かしたカタチになったわね……」

久美子「言っても、一番手は私だったんだけどな……」

愛結奈「ふふふ、次もクリケット? いいわよーワタシ二番手で」

千奈美「ノースコアクリケットやってみない? 1から20まで最初に埋めた人が勝ち。同ラウンドで追い付いたらサドンデスで決定ね」

久美子「賛成ー」

愛結奈「異議なし」


――――

愛結奈「奢りで呑むお酒は美味しいわね!」

千奈美「くっ」

久美子「珍しく、負けたねー」

千奈美「家で練習できてなくって。トレーニングとか役作りとかあるのよ」

愛結奈「ドラマ用に声と身体作ってるって言ってたわね。どのくらいツメてるの?」

千奈美「稽古は多くて月に二回だけど、時間できたらジム行ってる。あとは中央の合同トレーニングね」

久美子「木場さんに見てもらえるんじゃないの?」

千奈美「それはそうだけど、時間あるときだけよ。店見るほうが優先に決まってるでしょ」

愛結奈「中央行くならジムもそっち使えばいいじゃない」

千奈美「学校帰りに寄ってるわよ。安いし」


久美子「ファンに見付かるかもしれないから、じゃないんだ……」

千奈美「気付かれて困るほどの知名度なんて…… シンデレラだって何人いるのよ?」

愛結奈「気付かれるだけなら意外といるんじゃない? それでパニックになるような人は少なそうだけど」

久美子「少なくとも私は、大学以外のプライベートで声掛けられたことないわね」

千奈美「私もない」

愛結奈「ワタシもこっちだと気付かれたことないかなー。スカウトには声掛けられたこと何度かあるけど」

久美子「あるある! 『間に合ってます!』って答えちゃう」

千奈美「……それすら、ないんだけど」

愛結奈「千奈美、一人だとキビキビ動くからね。声掛ける隙がない上に、声掛けられたことに気付かなそう」

千奈美「えっ…… それはそれでひどくない?」



――――

久美子「元アイドルの音楽教室で芸能界にコネがある、って触れ込みならそれなりに忙しくなりそうじゃない?」

千奈美「堅実、なのかしら」

愛結奈「アリだとは思うけど、それってまず維持できそうなコネが必要よね。音楽プロデューサーとか、大手局のディレクターとか、制作会社の営業とか?」

千奈美「現場の音響監督とか、作曲家の先生なんてのもあるわね」

久美子「そうなのよね……一応、大学の繋がりもあるし、マネージャーとも相談はしてる」

千奈美「……せっかく歌上手いんだから、コネ作るだけに腐心しないでよね」

愛結奈「でも、実績的にはアレよ。ピアニストの仕事、たまにやれてるんでしょ?」

久美子「それ、現役アイドルだから有り付けてるだけだと思うな…… 私より上手いのに、音楽関係の仕事就けなかった人いっぱいいるし」

愛結奈「そういうの、やったもん勝ちって言うの。若さと見た目で仕事が取れるなら取っときゃいいのよ、今しかないんだからさ」


久美子「そういう愛結奈ちゃんの将来は?」

愛結奈「乗馬クラブ開設?」

千奈美「貴方も大概ロマンチストじゃない!?」

愛結奈「現実的じゃないのは解ってるわよ。だいたい馬飼うのって大変なんだから? 力仕事ばっかりだし土地も必要だし」

千奈美「土地ねぇ。古着屋のバイトじゃ、資金にはならないでしょう」

愛結奈「それ以前に、やらないと生活困るのよね。社長は、こっちに集中してくれたら仕事増やせるって言ってくれるけど」

久美子「それ、目途はついてるの?」

愛結奈「何の見込みもなく言ってる人だったら、今これだけ人ついてきてないでしょ。多分あるんじゃない?」

千奈美「専業、できるんだったらやったほうがいいんじゃないの? それだって『今しかない』んだから」


久美子「千奈美ちゃんはダーツショップだっけ?」

千奈美「まぁ、ねえ。実際にやれそうな範囲なら、チェーン店のオーナーが関の山でしょうね。オリジナルのフライトとか商品にできたらいいかなぁ」

愛結奈「ホントにそれやりたい?」

千奈美「……帳面とにらめっこするよりは、歌ってたいかな」

久美子「現状、専業にいちばん近いのは千奈美ちゃんじゃないかしら」

千奈美「……制服着るのはともかく、掃除したり伝票切ったりするのが専業アイドルだと思うならね」

愛結奈「最近少し減らしたんでしょ? ドラマのお稽古とかボーカルレッスンとか。どう?」

久美子「そうよ、今度の仕事、歌もあるって言ってた。何、やっとオリジナル曲?」

千奈美「劇中歌だし、シンデレラの管轄じゃないから…… シングルカットとか単独配信とかはないと思うわ」


――――

千奈美「今日はありがと」

愛結奈「楽しかったわよ。やっぱり、前もって言っておいてくれると集まり易いわね!」

久美子「私は急に呼び出されたんだけど?」

愛結奈「ワタシの独断で呼んだもの」

千奈美「そうなの?」

愛結奈「そうよ。……あ、呼んだ理由忘れるとこだった。礼子さんが、今度のレッスンの後呑むから空けておいてね、って」

久美子「今度? ビューティーアリュールの?」

愛結奈「そうそう。来月頭のね。千奈美もご指名よ」


千奈美「ふぅん? プロデューサーのご指名なら勿論空けるけど。うちの店で深夜押さえればいいわね」

愛結奈「いや、お店は決めてるとかって。なんか行きたいところあるみたい。ま、奢りだろうしありがたく、ね」

久美子「反省会の延長には…… ならないか、高橋さんなら」

千奈美「それより絶対終電なくすコースじゃないのよ…… アヤに迎え来てもらえるかな……」

愛結奈「そういうことなんで、よろしくね。それじゃ、ワタシはこれで。まったねー」

久美子「ん、私も地下鉄だから。それじゃレッスンで」

千奈美「はーい、よろしくねー」


――――

千奈美「ただいまー」

アヤ「あ。おかえり」

志保「おかえりなさい♪ お風呂沸いてるよ」

千奈美「助かるー。一緒に入る?」

アヤ「……」

千奈美「いや、ヒくの止めてよ」

アヤ「ヒいてるっていうか…… 珍しい冗談だなって」

千奈美「なんか、ノリで……?」

志保「む。千奈美ちゃん、機嫌よさそう」

千奈美「友人と会って遊べば、そりゃまあ?」

アヤ「志保、アタシたちは友人じゃないらしいよ」

志保「冷たい!」

千奈美「友人っていうか、ほぼ家族でしょ」

アヤ「……お、おう」

志保「暖かい……」


――――

アヤ「千奈美ーぃ」

千奈美「んー?」

アヤ「アタシたち、明日本番だからもう寝るな」

千奈美「そうよね。お疲れ様」

アヤ「朝からいないから、洗濯と掃除はよろしく頼む」

千奈美「朝ごはんどうするの?」

アヤ「店で食べる。そっち一応休みだろ、寝てていいよ。メッセージか何か入れとく」

千奈美「わかった。大和さんと中央行く予定だから、適当に連絡するわね」

アヤ「任せる」

千奈美「はい、おやすみ。明日はしっかりね」

アヤ「おう。ありがとな、おやすみ」


――――

志保「家族」

アヤ「同い年だけどな」

志保「……お姉ちゃん♪」

アヤ「二十日しか違わないだろ……」

志保「双子の姉かな?」

アヤ「千奈美とだって二ヶ月しか違わないんですがそれは」

志保「頼りにしてるんだよ?」

アヤ「……明日本番なんだからさ。寝るよ」

志保「はーい、お姉様♪」

アヤ「はいはい。洗濯機タイマー掛けたから寝室ー」




千奈美(せめて寝室でやりなさいよなんでバスルームの近くでやるのよ聞こえるでしょ恥ずかしいなあもう)


千奈美(だいたい。双子って。どんなよ。別にアンタ達、顔は似てないでしょ)


千奈美(……)


千奈美(『目に見えるコトは似てない』『ぶつかる日もあるけど』)


千奈美(……友達だし、家族のつもりよ)


千奈美(『おそろいの場所を目指す』 ……のよね?)



ぴったり一ヶ月開いてた。
代々木に心を囚われていましたが、やっと取り戻してきました。

ちょっと環境変わったため遅筆をこじらせていますが、まだ生きてます。


レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

ふわっとした設定はあるので、適当に出していきます。
リクエストを受けて書いたり、全然関係ない話を書いたりします。


――――

千奈美「……え」

アヤ「……」

志保「あっはは、まいっちゃうね……」

千奈美「ちょ、ちょっと待って、今ので出番終わり?」

アヤ「……そうだよな、これ」

志保「説明してたとこ、ざっくりカットされたね……」

千奈美「メニューの紹介とかパフェ盛り付けとか撮ってもらったんでしょう?」

志保「したよ?」

アヤ「リテイクもした」

千奈美「……メニュー紹介も自己紹介も、ワイプすらなし? テロップだけ?」

志保「……尺少し長いかな、とは言ってたけど。まさかのほぼ全切り~♪」

アヤ「あ、実家からメール来た」

千奈美「そうよねぇ、あれじゃ説明も要求されるわね」

志保「私も釈明しておこう。電話してくる」


――――

アヤ「所長、びっくりするくらい優しかったな」

志保「アヤちゃん、まだショック?」

アヤ「んー、今はもうそんなに」

千奈美「え、私割とショックなんだけど」

アヤ「出てねぇじゃん」

千奈美「だからよ。アヤと志保が地上波で見られるなーって。うちの親も残念がってた」

志保「ひえぇ、期待を裏切ってしまった……」

アヤ「地上波か…… 次、いつになるかな…… 配信とかケーブル局とかならともかく、地上波じゃな」

千奈美「いや、そこはもぎ取りにいく心意気を見せなさいよ」

アヤ「ぐうの音も出ない」

志保「もぎ取った人の言葉は重い!」


――――

アヤ「はー。帰省か……」

志保「帰らないの? うちに来る?」

アヤ「無理だろ、木場さんがチケット持ってるんだぞ」

志保「両親に挨拶しに来てくれないの?」

千奈美「身元引受人?」

志保「結納?」

アヤ「ていうか、あの特番の体たらく見られた直後で、志保の親御さんになんて顔すればいいのさ」

千奈美「芸能側の仕事もないし店も閉めるのに、残ってどうするのよ……」

アヤ「……自主トレ?」


志保「せめて友だちと過ごすとかないの!」

アヤ「二人とも帰るだろ」

志保「私たち以外の友人を……」

アヤ「作る時間がない。……さておき、フジトモも帰るって言ってたし。大和先輩は、まあ」

千奈美「同郷だものね。あれでしょ、向こうで遊ぼうくらいの話に?」

アヤ「そうなんだよなあ」

志保「学校始まっちゃったらまた忙しくなるから、ちゃんと帰っておこうよ」

アヤ「……まあ、一応な」

千奈美「そんなに帰りたくないの?」

アヤ「うーん。そこまでじゃないんだけど。……今の状況イロイロ、ちくちく刺してくるからさあ」


千奈美「具体的に」

アヤ「……親と一緒に選んだ部屋、半年経たずに引っ越したこととか」

志保「あー」

アヤ「ルームシェアなんて本当に大丈夫なのか、とか。……父親がカタくて」

志保「そこは…… 私たちがどう言っても難しそうだね」

アヤ「あと、大学生のはずが、既に正社員扱いで働いてるとか。これは学校ちゃんと行ってるからほとんど言われないけど」

千奈美「そうねえ」

アヤ「んー…… まあ、そんなところ」

志保「うーん。……踏み込んだ言い方になるけど。仲悪いわけじゃないよね?」

アヤ「全然。だから、帰るしおせちも手伝うよ」

志保「……心配になってるだけ、だと思う」




アヤ(確かにな。心配にもなるさ、やっと出られた地上波で、出番ばっさり切られりゃ)



志保(……はっきり言わなくても、わかっちゃうんだろうな)



――――

千奈美「足代にお土産まで、本当によかったんですか?」

真奈美「帰って英気を養うことも大切さ。そもそも、君達の親御さんに、出来る限り毎年帰省させるように約束している」

志保「ふふっ、ありがとうございます。年明けには、お土産持って帰りますね♪」

真奈美「ああ、よろしく。それじゃあ、私たちも行こうか、アヤ」

アヤ「うーっす。それじゃ、また来年な」

千奈美「またね」

志保「淋しいよーアヤちゃーん。またねー」

アヤ「言ってろ。土産よろしくな」


――――

真奈美「忙しくなければ車でも良かったんだがね」

アヤ「アタシは飛行機のほうがいいですよ。だいたい、車じゃ丸一日かかるんじゃ?」

真奈美「そうだな、後ろフラットにすれば交代で寝られるから、だいたい16時間くらいか?」

アヤ「八時間一人で運転するのは嫌だな……」

真奈美「西海岸なら普通だぞ」

アヤ「……ニューヨークって東海岸ですよね?」

真奈美「拠点はそうだったが、そこそこ周ったよ」

アヤ「じゃあ、西海岸の八時間ドライブは?」

真奈美「二回……かな?」

アヤ「リアルに少ない」

真奈美「楽しいぞ。でかい車で、ただ舗装してあるだけのだだっ広い道を、スピード見ないで飛ばすんだ」

アヤ「どのくらい飛ばすんです?」

真奈美「約500キロを三時間程度じゃないか? 詳しくは覚えてない」

アヤ「怖!!?」

真奈美「ま、しばらくはあっちで運転することもないだろうさ。安全運転に勤めるよ」


――――

志保「名古屋ついたらちょっと寄り道しない?」

千奈美「お茶くらいならね」

志保「はーい。休み結構長いよね、予定空いてるなら、栄とか行こうよ」

千奈美「初売りとか? 親族の集まりがどうなるか次第だけど、行ってもいいわよ」

志保「じゃあ、その辺のチェックも兼ねて、コーヒーでもいただきましょ♪」

千奈美「そうしましょ。乗ったらちょっと寝るわ」

志保「私も少し休むね。アラームつけておくから」

千奈美「うっ、トラウマが……」

志保「米原を出ますと、次は、京都に停まります」

千奈美「寝過ごし……!」


――――

アヤ「はい、お茶とケーキ」

  「ん。……よう帰らしたな。忙しかとやろ」

アヤ「忙しかけど、所長がちゃんとスケジュール組んでくれてるから」

  「……学校はちゃんと行っとぉと」

アヤ「うん。大丈夫。成績表も見ただろ」

  「大学出ても、アイドル続けよるとか」

アヤ「……多分」

  「お前ももうハタチやけん。将来ば、ちゃんと考えんばぞ」

アヤ「考え……っ。……うん」

  「お母さんと婆ちゃんのおせち作っとると、手伝って来んね」

アヤ「行ってくる」


――――

アヤ「筑前煮となます終わり」

  「はーい。じゃ、残りはお母さんがやるから、お茶……いや、コーヒーにしようか」

アヤ「アタシ淹れるよ」

  「おっ、プロの業?」

アヤ「プレッシャー! 普通にドリップでいいか」

  「おばあちゃんにも一口淹れてあげてね」

アヤ「はいよ。……部屋の荷物、少し東京に運ぼうかな」

  「お人形? 乾燥剤取り替えればいいっていうから、お母さんやってるわよ」

アヤ「帰ってくること、減ると思うから。向こうでトランクルーム…… 小さい貸倉庫をさ、借りようと思って」

  「気にしなくていいのに。いつ帰って来てもいいんだからね」

アヤ「……うん」


――――

   「お爺ちゃんがね、最近ちょっと」

千奈美「……どこか悪いの?」

   「逆よ。元気も元気。部屋見た? 超でかいテレビとスピーカー買ったのよ。映画とかアイドル番組とか見てる」

千奈美「は」

   「あと、パソコンも新調してた。千奈美のインタビュー記事、プリントして綴じてたわ」

千奈美「ジョギングも続けてるんでしょ? 元気ね…… 集まったらまた何かやってーって言われるのかな」

   「おねシン歌って踊ってれば、満足すると思うけど」

千奈美「そういうのってだいたい『もっと!』ってなるやつよね……」

   「まあまあ。お爺ちゃん孝行しておきなさいな」

千奈美「体のいいこと言うんだから。ま、いいけど」

   「レコーダーの使い方も一生懸命調べてたわ。春には使いこなさなきゃ、って張り切ってる」

千奈美「ぼちぼち80でしょ!? よくやるなあ」

   「千奈美だって、にやにやしちゃって」

千奈美「そりゃ、嬉しいに決まってるわよ」


   「お仕事と大学、両方で続けられそう?」

千奈美「続ける。……練習生の間、毎週東京に送り出してくれたこと、無駄にしたくないし」

   「そっかぁ」

千奈美「お金は、少しずつ返すから」

   「え、大丈夫よ」

千奈美「でも、半年間ほぼ毎週新幹線乗せてもらって、今の大学の学費だってあるし、向こうで暮らし始めたときの支度金も」

   「学費は、四年で出てくれたらいいわよ。それ以上は貸しにするけど」

千奈美「うぅ」

   「支度金っていうのは、一人暮らしの費用?」

千奈美「そう。安くなかったんだな、ってのは実感したから」


   「もう一年以上経ったし、貴方もアイドルとして仕事貰えてきたみたいだから白状するけど…… 木場さんから返してもらってるから」

千奈美「は」

   「『折角お選びになった物件から、こちらの都合で引越していただくようなものですから、お詫びも兼ねて』って。まぁ、お釣りが出るくらいはね」

千奈美「……」

   「ポンと大金はたいて高いマンションに住まわせるくらいには、貴方に期待してるんでしょう」

千奈美「……聴いてなかった」

   「まあ、そのうち気付いたんじゃない? しっかりやりなさいね」

千奈美「じゃあ、レッスンの新幹線代は?」

   「……千奈美の子供の頃のお年玉とかお祝い金とかの貯金、結構あったのよねぇ」

千奈美「えっ……ひどくない……?」


――――

志保「♪~」

  「コーヒー淹れてもらうのも久しぶりね~♪」

志保「パパ、淹れてくれないの?」

  「淹れる度に『しーちゃんのコーヒーのほうが美味しい。さみしい』って言うから最近やらせてない」

志保「パパ……」

  「またライブとか舞台とかあるようだったら、チケット送ってあげて」

志保「はい♪ ……電話でも言ったけど、この前は、ごめんね。テレビ、ちゃんと映れなかった」

  「謝ることなんてないのよ。人いっぱいだったものね、そういうこともあるって」

志保「パパが、がっかりしただろうなぁって」

  「大丈夫。少しだけだったけど、可愛かったわ♪」

志保「ママは心配しないんだね」

  「しーちゃんが元気ならそれでいいのよ」


――――

   「姉ちゃん、ちょっとこれ」

真奈美「ん、どうした」

   「こんなメール来た」

真奈美「ふむ」

   「何て返す?」

真奈美「明日行く。出る前に私から連絡する」

   「そしたら、姉ちゃんのメルアドあっちに送っとこうか」

真奈美「よろしく」


――――

千奈美「はぁい」

志保『おつかれー』

千奈美「はいはい。で、いつこっちに出て来るの?」

志保『元日と二日のどっちかがいいな。三日に親戚の集まりだから』

千奈美「じゃあ二日の午前でいい? 午後うちに寄ってくれたら、帰り送るわ」

志保『それでいいよー♪ ……あ、サイレントウインドだ』

千奈美「ん、シンデレラチャンネル?」

志保『ううん、『ミュータミ』。シンデレラのカウントダウンライブの特集してた』

千奈美「そっか、一部中継あるんだっけ」

志保『バックダンサーのオファーなかったね』

千奈美「そうね。別に私たち、バックダンサーが本業じゃないし」

志保『そうだねー……』

千奈美「……」

志保『……うぅむ、やっぱり歌上手い』

千奈美「そりゃまあ、そうよ」


――――

アヤ「お邪魔しまーす」

亜季「はい、スリッパ」

アヤ「ん。……この年の瀬に良かったの?」

亜季「両親は二人で食事に行かして、兄は妹の保護者兼財布にされとる。一人でプラモ作るのも飽きたばい」

アヤ「道場は……掃除終わったから閉まってるか」

亜季「やね。四日の餅つきは顔出したかけど」

アヤ「いつ東京戻る?」

亜季「六日に撮影あるけん、五日の昼に帰ってジム行くばい。千奈美さんから聞いとろう」

アヤ「じゃあ、それまでには博多弁抜かないと」

亜季「貝の砂抜きみたいな……」

アヤ「部屋に閉じ込めて標準語の番組見せる、とかそういう感じ?」

亜季「一晩置いとくと、吐き出された訛りが床に散らばっとぉとね」

アヤ「吐き出したのを飲み込まないように、換気と掃除が要る」


――――

亜季「アヤはほとんど訛り出らんね」

アヤ「ちょっとだけかな。母さんがこっち地元じゃないし」

亜季「ウチは帰ったらすぐ出よるばい」

アヤ「それでよくアイドルやりよる」

亜季「だからこんな言葉遣いになるのであります」

アヤ「普通に標準語は?」

亜季「んんっ…… あんまり自然に出て来ない、んだよね」

アヤ「練習せんの?」

亜季「ラジオで、軍人喋り? が定着したから、今更普通に喋ると、キャラが迷走しそう」

アヤ「厄介だなあ」

亜季「んんっ…… まあ、お陰様で専らアクションの仕事が定着しております」

アヤ「モデラー系アイドルとか言ってなかった?」


亜季「本ッッッ当にデビュー当時だけでありますな。というか、そっち方面がコケたからアクションに絞っているのです」

アヤ「世知辛いなぁ。でもツイッターじゃ好評じゃん、プラモ」

亜季「プラモデル関係の仕事が来ないものかと、事務所に振るための下積みであります」

アヤ「でもまあ、アイドルで食えそうな目途、立ってきた?」

亜季「……新卒で働くとは諦めたけん。食えなかったら路頭ば迷う」

アヤ「そこそこ稼いでるんだから、単位揃えて休学にしたら?」

亜季「それは結局、アイドルと普通の仕事のどっちを選ぶかを先延ばしにするだけですな。今しかできないからアイドルを選ぶのでしょう」

アヤ「将来は?」

亜季「なるようになればいいのであります。歓声を受ける喜びを知った以上、そう簡単にはやめられないものです」

アヤ「それは…… わかる、けどさ。応援してもらえるのって、笑ってもらえるのって、すげー嬉しい」


亜季「アイドルになること、ひいてはエンターテインメントに身を置くことは、一種の沼でありますよ。……受け売りですがね」

アヤ「……アタシは、どうなるんだろ」

亜季「どうなったって、友人とは変わらんばい。もう良かやろ。食わんね」

アヤ「いただきまーす。うおー、やっぱモツすきうめー」

亜季「いただきます。……あれ、二人で食事って、東京いるときもあんまりせんやった?」

アヤ「アタシが一人暮らしほとんどしてないもんな。アタシが東京出て半年で、今のとこに引っ越しちゃった」

亜季「一緒に暮らしとっと、ホイホイ遊びに出るわけにもいかんっちゃろ」

アヤ「そうだなあ、お陰で彼氏も作れない」

亜季「欲しかと?」

アヤ「いや、別に」


――――

アヤ「ただい…… 何してんの」

志保「おかえりなさい♪ それと、あけましておめでとうございます♪」

アヤ「あけましておめでとうございます。今年もよろしく。……で、テーブルどかして何してたの」

志保「そうそう、そうだよね。んーと、ステップの練習」

アヤ「急に、なんでまた」

志保「千奈美ちゃんと初売り行った帰りにね、そのままお邪魔したんだけど」

アヤ「言ってたな」

志保「親戚の皆さんもいらっしゃってて。千奈美ちゃんとおねシン歌ったの」

アヤ「えっ。……大丈夫だった?」

志保「大丈夫、って?」

アヤ「アタシもだけど、志保のこともアイドルって知ってる人いなくないか?」


志保「そもそも、千奈美ちゃんがシンデレラガールズって知らない親戚さんもいたよ」

アヤ「まあ、アウェーなのはだいたいいつものことだけど」

志保「そうそう。それに、千奈美ちゃんのご家族は私のことも知ってくれてるから、大丈夫♪」

アヤ「お疲れ様。で、それがどうして練習に?」

志保「千奈美ちゃんのほうが上手だったから。横に立つと、わかっちゃう」

アヤ「あー……」

志保「だから、せいいっぱい、ね」

アヤ「……『小さな 一歩だけど』?」

志保「そうそう! 『キミがいるから』!」

アヤ「アタシもやる。ここじゃ音響いて迷惑だし、店のフロア使おう」


――――

生きてます。
主に2ndライブとアニメの影響で遅筆がますますこじれましたが、生きてます。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。

もう折り返したものだと信じたい。

――――

真奈美「連絡。今日からバレンタインのサービスを始めるから、ミニサイズのブラウニーを忘れずに提供すること。私からも言うが、バイトの子にもよろしく」

志保「出した数、伝票ベースでいいんですよね」

真奈美「クローズしてから、サービスとメニューでそれぞれいくつ出たか記録する。今日は、私が多分一日中ここにいるから、やっておこう」

千奈美「分かりました」

真奈美「それと、ディナーに予約が二件。あとはクローズ後にジューシーの高橋さんが来る」

アヤ「礼子さん?」

真奈美「私と呑みたいだけらしいから、構わなくていいぞ。というわけで今日は恐らく上に泊まる」

志保「分かりました。でも、ちゃんと休んでくださいね」

真奈美「そうだな。明日の朝はよろしく。それから、来月のプロジェクト側の仕事。私と千奈美が、最初の定休日に仮歌収録。その次の定休日に、その曲の振付サンプル動画撮影」

千奈美「はい」


真奈美「それとは別に、千奈美は月初にビューティーアリュールのレッスン。私はフェスの稽古が残り一回で、第一金曜にリハ、その後の土日に本番」

アヤ「はーい」

真奈美「アヤと志保は第二週にイベントのアシスタント。土曜日に横浜と渋谷、日曜に越谷とさいたま」

志保「わかりました♪」

真奈美「開始前のフライヤーと終了後の記念品配布、それと前説の予定。資料は郵送したとのことだから、受け取った人は私に言うように」

アヤ「了解です」

真奈美「最後に全員。今月の店内ライブのソロ曲を決めること。今回はレッスン時間少ないから、新しい曲は避けてくれ。以上だ。何かあるかな。……それでは、今日もよろしく」

  「「「よろしくお願いします」」」


――――

アヤ「仮歌、振付サンプル、アシスタント」

志保「ドラマのエキストラ、バックダンサー、コーラス」

アヤ「トークイベントの司会」

志保「3Dモデルのモーションキャプチャ」

アヤ「それ面白かった」

志保「私、ダンスでしか撮ったことなーい。アヤちゃんはゲームの撮ってたよね」

アヤ「アイドルらしい仕事とは、何か」

志保「顔と名前が出ればいいんじゃないかな?」

アヤ「今挙げたやつだと、どっちかしか出ないじゃん……」

志保「そうかも」


アヤ「ライブとか、グラビアとかかなぁ。やっぱり」

志保「合同ライブとかフェスとかなら、時々呼んでもらえてるよ?」

アヤ「じゃあ、アタシと志保だけでやるって言って、どのくらいのハコだよ」

志保「毎月の店内ライブなら、立ち見出ることもあるもん」

アヤ「やっと、な。それだって、基本的には4人揃ってるしお土産もつけてる」

志保「つまり、私たち二人で、お店使わずに……?」

アヤ「そう。アタシたちだけで、外で。どのくらい呼べるか」

志保「ファンレターとか差し入れとかくれる人が、ひのふの……」

アヤ「店内ライブ常連さんが一致してるのが、いち、にー……」

志保「……」

アヤ「……」


志保「い、いいんです! ファンレターもらうなんて、普通の生活してたら得られない経験だよ? 数じゃないよ!」

アヤ「売れてるかどうかは、数だろ」

志保「……ここ、嫌?」

アヤ「それは…… 楽しいけど。みんな盛り上がってくれるし」

志保「私は楽しいよ、ファンの人たちと直接話せるのもここだけだから。大事にしたい」

アヤ「でも、もう一年半やってる」

志保「そうだね」

アヤ「……これから、増やせるのかな」

志保「月二回とか」

アヤ「外でやろうとかは考え…… いや、費用がなあ……」

志保「実際には、外だとスタッフ手配する必要あるから、途端に大変になるって」

アヤ「今だって、警備は最低限だし、段取りもお客さんの厚意に甘えてる」

志保「……所長がどう考えてるかは、わからないけどね」


――――

志保「バレンタインパフェ二つ出まーす、これでオーダー消化♪」

真奈美「私が出してくる」

志保「お願いします♪」

千奈美「山越えたかな。アヤ、手空いたら炭酸ちょうだい」

アヤ「ほい」

千奈美「ありがと。レモネード作るけど飲む?」

アヤ「飲む。木場さんの分も作っといてよ」


千奈美「はーい。今フロアどのくらい?」

アヤ「三組。コースのお客様は全部終わり。一組はさっき出した二名様。一組はいつものファンの人たち」

志保「追加ありそう?」

アヤ「もうボトル空いてるしデザートも終わったから多分…… はい! お会計ですね。それと月末のチケット。はい、かしこまりました」

志保「ありがとうございました♪ ……わっ、お土産ですか! いつもありがとうございます、嬉しいです♪」

千奈美「私、見送ってくる。ついでに外の様子見てくるわ」

志保「気を付けてね」


――――

真奈美「はい、お疲れ様。コーヒー淹れてきたぞ。お土産、何だったんだい」

千奈美「チョコみたいですよ。ヘンリ……る、ルークス?」

志保「それフランス語だよ。アンリって読むの。どこかで見たなあ……」

真奈美「仏語の講義で出てきたのかい」

志保「それもそうですけど。学校じゃないですね…… そうだ、デパ地下で見たんだ。高級チョコのブランド」

アヤ「へーっ。千奈美のファンの人だったよな」

千奈美「そうね。……高いんでしょ?」

志保「確か2000円か3000円くらいだったよ」

アヤ「生々しい……」

千奈美「ありがたくいただきましょ」


志保「あんまりありがたそうじゃない……?」

千奈美「いや、嬉しいわよ。でも、不思議だな、って」

真奈美「何がだい」

千奈美「プレゼントって、だいたい手紙ついてるじゃないですか」

真奈美「そうだな。あぁ、今のも中身チェックしたから読んでいいぞ」

千奈美「はい、ありがとうございます。……プレゼントも嬉しいんですけど、手紙はより嬉しいんですよね」

アヤ「そりゃ、市販品と違って、一回こっきりだからな」

志保「そのために手間掛けてくれてると思えば、嬉しくもなるよね」

真奈美「……私から言うことは無さそうだな。さ、掃除だけしたら帰っていいぞ。キッチンは私がクローズしておく」

アヤ「挨拶くらいしたかったんですけど、また来るの夜中なんですかね」

真奈美「早くて23時は過ぎると言っていたな。……食洗機だけ動かしたら、私はひと休みするよ」

千奈美「……ぱーっと片付けて帰りましょうか」

志保「賛成」


――――

礼子「二人っきりなのは、いつぶり?」

真奈美「日本に帰ってきてからは、初めてじゃないですか」

礼子「ニューヨークが懐かしいわねぇ」

真奈美「仕事ばかりでしたがね」

礼子「もう懲り懲り、って顔」

真奈美「そうですか? 仮歌もコーチングも続けますよ。テキーラ、どれにします」

礼子「ゴールド何か入ってるなら、それで」


真奈美「どうぞ。ライム足りなかったら自分で切ってください」

礼子「なーに、酔っ払いに刃物使わせるの?」

真奈美「……わかりましたよ」

礼子「かんぱーい。……ゴーストシンガーはもういい?」

真奈美「……そっちは懲り懲りです。あんなことで、こんなに稼いだのが間違いなんです」

礼子「それでも、アルバム二枚は作ったんでしょ」

真奈美「投げ出したら、いちばん泥かぶるのは私を紹介した礼子さんじゃないですか」

礼子「ありがと」

真奈美「人真似で歌うのは面白かったですし、技術にもなりましたが」


――――

礼子「サングリータ足りない」

真奈美「はいはい、ただいま。どうぞ、自分で注いでください」

礼子「態度悪くない?」

真奈美「私の客ではあっても、店の客ではないでしょう」

礼子「アヤたちにクレームつけよう」

真奈美「叩き出しますよ」

礼子「むぇー(`3´)」

真奈美「可愛くないです」

礼子「似てるでしょ?」

真奈美「似てますけど、可愛くないです」


――――

真奈美「はい、ワカモーレとコロナ。……ペース早くないですか?」

礼子「まだ三杯目よ。これでしばらく粘ればいいでしょ」

真奈美「分かっているでしょうし、構いませんがね」

礼子「それに、社長はケチケチしないものよ」

真奈美「パソコンくらいしか設備投資の必要がないそっちと、一緒にしないでください」

礼子「よく言うー! ちょいちょいイベント入れて儲けてるの知ってるんだからね」

真奈美「そりゃあ、アイドルプロデュースの店なんですから。ニーズに合わせますよ」


礼子「あっちで稼いだ分、いくら残ってるの?」

真奈美「オフィスの開業資金に使ってからは、あまり手を付けないようにしてます」

礼子「ケチくさいことしてるんだから」

真奈美「若い女の子の人生預かるんです、備えは必要でしょう」

礼子「よく言う」

真奈美「今日は随分突っかかりますね」

礼子「……あーた、あの子たちどうしたいのよ」

真奈美「どう、とは」


礼子「所属は真奈美も含めて四人よね。芸能の仕事で、いちばん売り上げ出てるの誰?」

真奈美「……"All alike"ですよ。イベントの助っ人が主な仕事ですから」

礼子「似たり寄ったり、ねぇ。歌唱指導だのイベントマネージメントだの、裏方を含めたら真奈美?」

真奈美「そこは、まあ。本当なら、裏方以外は全部あの子たちに回したいです」

礼子「でも、あの子たちには任せられない?」

真奈美「……そういうわけでは。ただ、私に来たオファーに対して……」

礼子「代わりに推薦できるほどの実力が、あの子たちにないって?」

真奈美「端的に言えば、そうです」


礼子「そんなのゴリ押ししなさいよ。『シンデレラガールズのメンバー使いたいだけだったら、こっちでも対応できるから充分だろぃ』ってさ」

真奈美「そんな無茶苦茶な」

礼子「的外れなとこ推したら共倒れだけど、多少のズレなんてフィットさせてくわよ」

真奈美「無理をさせても……」

礼子「アンタねー。あの子たちだってプロの端くれだし、営業や現場はもっとキャリアのあるプロよ?」

真奈美「……む」

礼子「あんた、こないだフェス呼ばれてたわね。千奈美は今撮影だっけ?」

真奈美「はい。枠は小さいですが2クールです」

礼子「そうね。その仕事は次に繋がるの? 夢の続きを用意できるの?」


真奈美「……ドラマのプロデューサーには、気にかけてもらっているようですが」

礼子「ふぅん。で、後の二人は。川島の冠番組の特枠、コケたんでしょ」

真奈美「少しは出ましたよ」

礼子「あの子たちを主役にする気あるの?」

真奈美「そういう聴き方されれば、答えはひとつです」

礼子「"Yes, of course"って? じゃあ、見込みはどうなの。主役にしてやれる見込みは」

真奈美「……」

礼子「中央にぶら下がってる仕事拾って渡すだけで、そう簡単に成長しないんだからね」


――――

アヤ「おはよーございまーっす。お、キッチン片付いてる」

志保「んん、フロアも片付けてあるよ」

アヤ「……でもこのヒール、礼子さんのだな」

志保「やっぱり泊まったんだ」

アヤ「様子見てくる。ダメそうだったら着替えだけ持ってくる」

志保「はぁい♪ 仕込み始めてるね」


――――

アヤ「……こりゃ、ダメかな。制服だけ失礼して……」

礼子「……ぅ。……アヤ?」

アヤ「ありゃ、おはようございます。大丈夫ですから、寝てていいですよ」

礼子「おはよ……まだ7時前か。んー…… もうちょっと寝るけど、一回シャワー浴びるわ」

アヤ「何か飲んだり食べたりします?」

礼子「ミネラルウォーター置いてるから平気よ」

アヤ「そすか、それじゃごゆっくり」


礼子「……ね、アヤ」

アヤ「はい?」

礼子「今、楽しい?」

アヤ「そりゃまあ、続けてるわけですし」

礼子「……」

アヤ「……な、なんですか」

礼子「いや、今はいいわ。眠くてしんどいし。お仕事頑張って」

アヤ「は、はぁ」

礼子「はぁい。おやすみ」

アヤ「……あの、礼子さん」

礼子「ぅん?」

アヤ「……辛いと思ったことは、ないですよ」

――――

昔は私も無課金だったが、上位に軍曹が来てしまってな。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
多分真奈美さんもレギュラーです。


伊吹「んじゃ、XX年組初の呑み会を祝して! かんぱーい!」

「「「かんぱーい」」」

朋「椿ちゃん、日本酒なんて呑むの?」

椿「ゆっくり、ですけどね」

伊吹「適当にやればいいよ、アタシもサワー二杯で終わるつもりだし」

千奈美「えっ」

アヤ「えっ」

志保「えっ」

朋「あんたたちがおかしい」

伊吹「アタシたちまだハタチだよ? ていうかさ、アヤたちが酒慣れ過ぎなんじゃない?」

千奈美「余裕よ、余裕」


朋「XX年組っていうけど、あたし小松さんとプライベートで会うの初めてだよね?」

伊吹「多分。あんまり合同トレーニングも一緒にならないよね」

アヤ「そうな。来てないけど新田美波さんとか鷺沢文香さんとかも同年だけど、接点ないな」

朋「あの辺もかー、そういえば。売れ過ぎてて全然同い年の感覚じゃないわ!」

伊吹「正直、グラジオラス組来なかったらさみしいことになってたよね」

アヤ「そりゃ、三人じゃ格好つかねーなぁ。つーか、どの範囲に声かけたんだ?」

伊吹「櫂は予定合わず。あとは、まあ、ほら…… さっき言ってた人たちよ」

朋「新田美波さんとか」

伊吹「そうそう。あと鷺沢さんのサイレントウィンドとか、宮本フレちゃんとか。その辺アタシ話したことないし、声かけていいレベルじゃなくない?」

千奈美「文香と音葉なら、たまにメールしてるわよ? たまにね」

伊吹「え! すッごい! 藤居さんは?」

朋「サイレントウィンドの二人なら千奈美たちと一緒に仕事で会ったことはあるけど。話した記憶はないわね! 話せる感じしなかったし」

アヤ「まー、キャラ作り殆どなしにアレだったからなー」


朋「で、新田さんとかフレちゃんさんか。仕事すら一緒してる人いるかどうかわかんないわね。椿ちゃんもない?」

椿「ないです。二人とも寮生でもないので、プライベートも接点ないですね」

志保「グラジオラスから離れられない私は、もちろんありません♪」

朋「これは……実在していないかもしれない?」

伊吹「おーいっ! テレビで見てるじゃーん!」

朋「あたしたちにとっちゃテレビ番組なんて幻よ!」

椿「そ、そこまでは……」

志保「テレビ番組もピンキリだけど、キー局ゴールデン、とか言われちゃうと、さすがに幻かな?」

朋「志保ちゃんたちが出たやつ、実際幻になっちゃったもんね」

志保「……」

アヤ「朋さー、お前割と軽率に刺すよね?」

朋「うわっごめん、そんなに!?」


志保「くすん。アヤちゃーん、朋ちゃんがいじめるよー」

アヤ「あー、はいはい。アヒージョお食べ」

志保「『こんばんは! ぼく、エリンギです! オイルで煮られて、とっても美味しいよ!』 もぐもぐ」

朋「意外と似てる」

椿「志保ちゃん、酔ってる……?」

アヤ「酔ってることは酔ってる、と思うけど……」

朋「その二人がベタベタしてんのは平常運転」

志保「むぐぐぐー!」

アヤ「飲み込んでから話そう」

志保「んく。……朋ちゃんがいじめるよー!!」


伊吹「久しぶりに見たけど、仲良いの通り越してない?」

志保「家ではダーリン、ハニー、と呼び合う仲です♪」

アヤ「ん゛、ん゛っ、げほっ、げほげほげほ」

朋「え、ガチなの……?」

アヤ「げっほ……ち、違うからな?」

志保「家族だから似たようなものだよ」

椿「ま、まあ、その…… よほど仲がいいか干渉しないタイプでないと、一緒に住むのは難しいですよ」

朋「寮だとどんな感じ? お風呂と食堂一緒なんでしょ?」

椿「そうですねぇ。そこはやっぱりグループありますよね」

アヤ「学校みてーだな……」

千奈美「中高生ばっかりならそんなもんでしょ」


椿「あんまり仕事関係なく仲良しグループ作られてますけど、たまにグループ内で一緒の仕事とかあると、ちょっとヒヤヒヤする……」

志保「うまくいけばいいけど、ミスとかいざこざとか持ち帰られちゃうと大変?」

椿「そうなんですよね。だから『喧嘩するなら周りから見えないところでやれ』みたいなルールもできてて」

朋「へー。あたしどっちかっていうとミスする側だから、身につまされるー」

アヤ「軽いな! ホントかよ!」

朋「ほんとだよー。ねーねー、あんたたちはどのくらい喧嘩するの?」

千奈美「……もう殆どしないわよね?」

アヤ「最初のほうに、アタシと千奈美がちょっとしたことあるけど。あとは所長様様、志保様様だなー。超フォローされてる」

志保「へっ?」

アヤ「感謝してるよ、いつもな」

朋「っかー! いちゃいちゃするなら見えないところでやってよ!」

アヤ「えっ、ひどくない……?」

伊吹「振っといてそれ!? 自分から振っておいて!?」


アヤ「そーいや伊吹さぁ、寮入るかもーって話。どうしたの?」

伊吹「いったん止めた。フツーに通えるし。都内の仕事がもっと増えたら、また考えるかな」

千奈美「先行きは?」

伊吹「今やってる情報番組のアシスタントが、来期も続投あーんど枠増加」

朋「凄いじゃない! おめでとー!」

伊吹「ローカルの帯番だけどね、週一だったのが週三に。おかげで地元からはますます離れられない!」

千奈美「へぇ。一人で三日出るの?」

伊吹「今期までは五人が日替わりで一人ずつ。来期からは四人の中から二人がローテーション」


朋「そっかー、一人蹴落としたのねー」

伊吹「アタシは何もしてない!? 降ろされたんじゃなくて降りた、とは言ってた。グラビア行きたかったらしいけど……まあ、詳しいことはわかんない」

アヤ「その子、シンデレラガールズ?」

伊吹「違うよ、その番組じゃアタシだけ。その仕事もガールズ関係ないとこで受かったし」

志保「伊吹ちゃん、結構外の仕事多いよね?」

伊吹「むしろ芸能活動だけなのアタシだけじゃない? 実家暮らしだから生きていけるけど」

志保「それもそうだね…… そうだ、椿ちゃん内定もらったって聞いたよ」

椿「プロジェクトからの斡旋で、撮影所の契約社員です。これで大学も普通に卒業できる……」

アヤ「おめでとー。……朋、大丈夫か?」


朋「あああああ…… あたし卒業したらどうしよう…… 仕送り断たれる…… アルバイトしかないか……」

千奈美「一旦実家帰ってもいいんじゃない?」

朋「嫌よ!! アイドル続けられるかもわかんない上に、舞台立てなくなる!!」

伊吹「お、好きなんだ」

朋「好きよ。劇団に入ったのは大学入ってからだけど、最高に楽しい」

椿「劇団に入ってから、シンデレラガールズになったんですよね?」

朋「順番はそうね。実際には、団員にシンデレラガールズが欲しくて、あたしを勧誘したみたい」

アヤ「高校で演劇やってたんだっけ」

朋「そうよ。高校で入った占いサークルに演劇部員がいて、そのままずるずる。最終的には占いサークル自体が演劇部に吸収された形みたいになってた」

伊吹「じゃ、演劇が面白くなったから大学でも続けよう、って?」

朋「なんだけど、大学の演劇サークルがもう全然ダメで! その中で唯一マトモな先輩が劇団員で勧誘してきた、と」

千奈美「それ、一歩間違ったらマルチとか自己啓発とかじゃないの!」

朋「……あっ!? あたしツイてた!?」


椿「みんな苦労してるんですよねぇ」

朋「椿ちゃんは?」

椿「……私は、ほら。アイドルでもあるけど、まず学生ですから。……このまま、撮影関係の仕事にシフトするのかな……」

志保「もったいないよ?」

椿「卒業まで、あと一年以上だから。まだ考えていられますよ。……撮影技術で身を立てるのか、アイドルにしがみつけるのか。でもこの二つなら、どっちにしろ、幸せかなって」

朋「あたしは選ぶまでもないなあ。とにかく舞台やりたいし、アイドルも続ける。……親は怒るのかな……」

アヤ「そりゃ、安心はしねーだろ」

朋「……軽々しく刺すのはお互い様じゃない?」

千奈美「でも、そうよね。今しかできないことをやる。そういう道を選ぶ行為って、きっと価値のあることよ」

椿「今しかできない……」


伊吹「思うにさ」

千奈美「何」

伊吹「アタシたちって、オーディション受かったじゃない」

朋「そうね。あたしは事務所推薦枠だけど」

千奈美「っていうか一般公募で受けたのが私と椿だけよ。回は違うけど」

椿「みんな推薦枠なんですね」

伊吹「それそれ。オーディションの倍率、どのくらいなんだろう」

千奈美「うーん。一般は書類と写真で一次選考して、二次が歌、朗読、面談……だっけ?」

椿「確かそうです。一次は解りませんけど、二次は、私のときは200くらいでしたかね。大会議室だった気がします」


伊吹「で、数人しか合格してない?」

椿「はい。補欠合格を含めても一割足らずで…… その中でもちゃんとシンデレラガールズとして事務所に入れてデビューできたのが、さらに半分、みたいな感じですよ」

伊吹「つまり、数百、数千、もしかしたらもっとたくさんの破れた夢の上に、アンタたちは立ってるわけだよね」

千奈美「……」

アヤ「事務所推薦のアタシたちも、変わらないけどな」

朋「そっか、スカウトされる幸運だって、そのたくさんの夢敗れた人たちは持ってなかったもの、なのよね」

伊吹「……あのさ。親元で暮らしてるアタシに言えた義理じゃないかもしれないけど」


伊吹「やり切りたいよ。走り切りたい。アタシたちの今は、他の誰かの夢なんだよ」

朋「……やるよ。やるよね?」

椿「はい。しがみつくとかじゃなくて……頑張りたい、ですね」

千奈美「いいじゃないの、やりましょ」

アヤ「環境だけならいちばん恵まれてるはずだもんな、アタシたち」

志保「Zzzzzzzz」

伊吹「うわぁ」

アヤ「うわぁ」

――――

4月8日は桐野アヤの誕生日です。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。

真奈美「一つ目、ここの拍が取り難い気がするが……まあこのまま出そう。二つ目はBメロが浮いてる」

千奈美「……くっ」

真奈美「サビが仲間を意識しているのに、Bメロは孤独を肯定するような内容に読める」

千奈美「AメロとBメロの連続性は気にしたつもりなんですけれど……」

真奈美「なら、展開する方向が上手くいってないんだ。これはサビ有りきなんだろう?」

千奈美「そう……ですね」

真奈美「それなら、サビにフィットさせていかないと。シフト終わったら少し相談しよう」

千奈美「はい…… ライブ感、ってよくわからないんですよね。今更ですけど」

真奈美「うーむ。レトリックを求め過ぎてるんじゃないかな」

千奈美「言葉を飾り過ぎ?」

真奈美「もっとストレートに書いてみたまえ。テンション上がってる状態で耳に入っても、歌詞が理解できるくらいに、簡単な言葉でいい」

千奈美「その上で、掛詞になったり韻を踏んだり……」

真奈美「そこはまあ、そうだ。三年以上勉強してたんだからな」

千奈美「むむっ。がんばりまーす」

真奈美「ん。曲はOKが出てアレンジャーに発注が行ったそうだから、来週には戻るんじゃないかな。もう少しだ」

千奈美「分かりました。……三つ目は?」

真奈美「三つ目か。それは、えー…… ちょっと、その……空回ってる。ダサい、というか……」

千奈美「」

真奈美「一定層に媚び過ぎだな。何でもカタカナにしたらキャッチーなわけじゃないし、リズム感のために小難しい単語や日頃使われない言い回しを詰め込むのは、それこそ生きた歌詞じゃない」

千奈美「……くっ!」

真奈美「こういうのも、需要はあるだろうが…… キミ達に歌わせたくはない。初のオリジナルでこれをやったら、戻れなくなる」

千奈美「……歌詞を三パターンは大変です。見てもらえることは凄くありがたいですけど」

真奈美「まあ、三つ目は今回の企画とは別口で添削してもらうよ」


――――

志保「お茶出すついでに覗いてきたけど、大変そうだった」

アヤ「だな。……作詞作曲かー」

志保「所長、やったことあるのかな?」

アヤ「ちゃんとしたのはない、って言ってた」

志保「それで教えるんだ……」

アヤ「教えるっていっても、具体的にどうしろって言ってないし?」

志保「言われてみれば、外れてるところを指摘してる、って感じだったかな」

アヤ「ほらあれだよ、前に木場さんが審査の仕事やってた歌詞のコン…… コン……?」


志保「コンコン。おきつねさんどすえー」

アヤ「ちげーよ!」

志保「コンペティション?」

アヤ「それ。一次審査くらいだったらできるんだろ」

志保「なーるほど。こんこん」

アヤ「だいたいさ、作詞作曲までやってるプロデューサーがどれだけいるよ?」

志保「こんこーん。確かにー」

アヤ「いつまでキツネなの」

志保「お店に和風の小物飾って、制服は袴にエプロン、キツネのお面ってどうかな♪」

アヤ「どうかな♪ って言われても…… 可愛いけどさ……」


――――

アヤ「まあ、そんな話をだな。次の企画にどうか、って」

千奈美「キツネはどっちかっていうとアヤでしょ。志保は……タヌキ?」

志保「えっ、ちょっ…… それディスってない!? それ!?」

千奈美「褒めてる褒めてる。垂れ目だし、お尻大きいし」

志保「わーい、褒め…… 褒めてる? 褒めてるのかなぁー?」

アヤ「雑! じゃあ千奈美はどうなんだよ、動物」

千奈美「……ジャッカル?」

志保「……オオカミみたいなやつ?」

千奈美「……さあ?」


アヤ「お前さぁ、お前適当言ったろ!!?」

千奈美「とりあえず出すだけ出しておけば? 私は犬とか狼とかでいいわよ」

アヤ「適当だなぁー!?」

千奈美「いやもう、ホントに全然余裕ないもの」

志保「作詞?」

千奈美「作詞。やー、勉強してたときの書き溜めなんてね。数年経ったら使えないもんだわ」

アヤ「はー。大変だなァ」

千奈美「やり切りたいから、ちょっと負担かけるかもだけど」

志保「大丈夫だよ。支えるくらいしか手伝えないんだから、そこは頼って!」


――――

志保「お疲れ様です♪ コーヒーお持ちしましたよ。合同アルバム、どんな感じですか?」

真奈美「ありがとう。……わからん」

志保「えっ」

真奈美「結局、私がディレクションすることになりそうだ」

志保「アルバムのプロデューサー、この間お会いしましたよね?」

真奈美「ミニアルバム四枚、ユニットにして20組同時進行だ。コンセプトを共有するだけでも一仕事だろうさ」

志保「確か、どういう組み合わせで収録するかも決まってないって」

真奈美「選抜投票のことがある。現状である程度は予想がつくよ。……それとなく聴いたしな」

志保「あー、選抜……」


真奈美「ニュージェネや142's、双葉杏みたいな、単独で出しても6ケタ見えるようなのがいるんだ。……わざわざ潰し合いにはしないだろ」

志保「う。……あの、出来レースだったりします?」

真奈美「……不正はまず有り得ないぞ。今回みたいに複数の事務所での共同作業となると、根回しは厳しい」

志保「でも、売れっ子を分けるんだから…… ある程度結果が見える組み合わせになります、よね」

真奈美「そこはなぁ。未来ある若い子を本気で潰し合わせたって、誰も得しないさ」

志保「……うーん。勝てないのが分かってても、やる……」

真奈美「数万枚は売れる、聴いてもらえるんだ。チャンスには違いない。それに、選抜枠7つのうち二つ三つくらいは、正直読み切れてない。プロモート次第かな」

志保「その中に、千奈美ちゃんが滑り込めるように?」


真奈美「だな。そうなんだが…… 編曲と歌詞の添削は手配できたが、ディレクターの空きが見付からない」

志保「で、所長が」

真奈美「そういうことだ。何とかするさ」

志保「……頑張ってください。もし、私にできることあったら、何でも言ってくださいね♪」

真奈美「助かる。店はよろしく頼むよ。クローズとオープンは私がやるから」

志保「今日もお泊りなんですか?」

真奈美「ちょっと、あれのリハビリしておきたいからな。マンションだとよろしくない」

志保「アコースティック! エレキじゃないんですね」

真奈美「エレキとキーボードなら家でも出来るよ。まあ、作曲のサポートだから、ピアノでもキーボードでもエレキでもいいんだが……」


志保「どうしてアコギ?」

真奈美「今後のためだ。いちばん手早く使えるから、千奈美の鼻歌を拾うのにいいかな、と」

志保「なるほどぉー。編曲さん用の音源になるんですね♪」

真奈美「いや、仮の記録用だよ」

志保「仮の記録」

真奈美「発注で渡すのは鼻歌」

志保「鼻歌」

真奈美「鼻歌」

志保「……鼻歌が、あんなかっこいい曲に……」

真奈美「向こうはその道のプロだから」

志保「わ、私たちも頑張らないとですね……!?」


――――

To:文香 深夜にごめん [作詞のコツって何かある?]

To:小室さん 眠いです [商売敵に臆面もなく聞く……]

To:文香 Re:眠いです [詰まっちゃったから…]

To:小室さん いいですけど [私も実質一曲しか書いてませんよ。そのときは、テーマと全く関係ない本を読んでから書きました。引き摺られないように。]

To:文香 Re:いいですけど [両方とも文香じゃなかったっけ?]

To:小室さん 一応 [名義上はそうですが、カップリングのほうは八割書き直されましたし。]

To:文香 そういえば [聞いた気がする。やっぱりサラサラッとは行かないんだ。]

To:小室さん (無題) [それは勿論です。特に心の準備がなってなかったんでしょうね。真摯に向き合うよう言われました。]

To:文香 Re: [なるほど…とりあえず本読んでみる。ありがと、今度奢るわ。]

To:小室さん Re:Re: [来週どこか、中央のワークショップ行きませんか。本貸しますよ。]

To:文香 Re:Re:Re: [わかった。そのときに奢る。]

To:小室さん それでは [おやすみなさい。頑張ってくださいね。見せてくれてもいいですよ。]

To:文香 おやすみ [お断り!]


アヤ「……まだ起きてんの」

千奈美「ん。もう寝る」

アヤ「別に明日休みだし、その辺は自由でいいけど」

千奈美「いや、もう今日はいい」

アヤ「おぅ。筆進まない?」

千奈美「ダメね。深夜にウンウン考え込む感じじゃないわ」

アヤ「お疲れ。昔からやってたんだろ、前もそうだった?」

千奈美「……昔はもっと書けたかな、そういえば」

アヤ「そっか。無理すんなよ」

千奈美「気を付ける」

アヤ「んと、さ。『支えるくらいしか手伝えないんだから頼って』ってこと」

千奈美「……うん」

――――

4月27日は槙原志保の誕生日でした。
こっちは間に合わなかったけどパフェは食べました。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。

筆が滞った上に、コミケ合わせの作業があって放置してますが、完結の意志はあります。


千奈美「おはよ」

文香「…おはようございます」

千奈美「柔軟手伝うわよ」

文香「……はい」

千奈美「午前中の用事って、やっぱり学校?」

文香「はい、提出するものが少々……」

千奈美「そ。ランチはまた次回ね」

文香「そう、ですね……」

千奈美「たまに夜中まで課題やってるみたいだけど。学校どんな感じ?」

文香「今のところは…… 一通り、いい成績を付けて頂いている、ので……」

千奈美「忙しいだろうに、よくやるわねー」


文香「そんな、多忙さなら、千奈美さんも… 私は、今はバイトもしていませんから……」

千奈美「そうね、古本屋のバイトなんてもうできないでしょ。接客業は大変よね」

文香「……千奈美さんのカフェは、どうなんですか?」

千奈美「そりゃ来るけど。そもそもアンタほどファン多くないし、こっちは公開情報だもの。来てくれるような人は、ちゃんとお客さんとして来てくれてるわよ」

文香「そうですか……」

千奈美「ところで、柔軟やらないの?」

文香「……してます」

千奈美「え」

文香「……限界です」

千奈美「え、いやぁ…… 硬すぎでしょ…」


文香「いたたたたたたい」

千奈美「ふざけてないわよね?」

文香「……代わります」

千奈美「はい」

文香「……押す必要が、ありませんね」

千奈美「5年くらいかな? ずっとやってればね、余裕よ」

文香「ぐにゃってして気持ち悪い」

千奈美「爪先に届かないほうがヤバイわよ」

文香「……」

千奈美「……」

文香「……深刻、でしょうか」

千奈美「だから毎回振り付け少ないんでしょ?」

文香「なるほど…… 配慮があったのですね……」

千奈美(大事にされているのか、逆にそこを期待していないからなのか)


――――

千奈美「おつかれー。新宿辺り寄ってく?」

文香「書店に、寄らせていただけると」

千奈美「いいわよ。私もCD見てこ。……初めてのCDって、何枚くらい買った?」

文香「……? 事務所から貰いましたから、買っていませんが……」

千奈美「うぬぬ」

文香「……そもそも、お店に何枚か並べているのではないですか?」

千奈美「今回は置いてない。チャートのこともあるし、あとはプロデューサー様の意向ね」

文香「そうでしたか…… 何かあるのでしょうか、投票のこととか」

千奈美「不正なんてやりようがないわよ、レコードショップ行けば買えるもの。単純に流通の作法らしいわ」


文香「なるほど。……メイク、直したので。行けます」

千奈美「はーい。……え、その帽子」

文香「はい」

千奈美「日除けにしたってちょっと無いわ。それじゃお金だけあるオバサンよ」

文香「えっ…」

千奈美「どうせ新宿ついたら地下しか通らないから、帽子なしでいこう。駅まではタクシーね」

文香「その、顔隠すように、と言われて…」

千奈美「騒ぎにならなきゃいいんでしょ」


――――

文香「…視線を感じるのですが…」

千奈美「そりゃまあ、顔出してるからね。正直言うと、多分気付いてる人ちらほらいる」

文香「!?」

千奈美「でも堂々としてたら、あんまり声掛けてくる人なんていないものよ。高橋さん見てて分かった」

文香「そ、そういうもの、でしょうか」

千奈美「それより、マキシのワンピにチューリップハットなんて幼稚園児みたいな服装でバレるほうがキツい」

文香「……うぅ」

千奈美「気付いちゃったら、それがその人にとっての『いちばん近くで見た鷺沢文香』になるもの。それがダサい恰好してたらどう?」

文香「……それは、少し…… 申し訳ない、気分です」

千奈美「演じたり、ステージみたいなメイクしたりは必要ないと思うけど、ね」

文香「服は…… 一人暮らしを始めるまで、親と一緒にしか買っていなかったもので……」

千奈美「高校時代に何してたの!? ……本屋のバイトか」

文香「はい… ファッションには、興味を向けていませんでしたね…」

千奈美「まあ、今はさ。スタイリストさんにも聴けるでしょ。マネージャーさんとか音葉とかも」

文香「……善処します」


――――

千奈美「おぉ、コーナー出来てる。サイレントウィンドも平積みじゃない、POPも」

文香「あまり、現場見に来たことないので…… 気恥ずかしい、ですね」

   『サイレントウィンド 3rdCD 発売中!』

   『ドラマ「幻想レギオン」新OP “フラッシュバック”』

   『2作目から一転、強烈な疾走感のロックチューンで登場!』

   『二人のハーモニーは更に深みを増して、聴き応えも抜群!』


文香「伏せておきましょう… SSS、随分売れてるみたいですね」

   『Summer Star Stories 4作同時発売中! 週間チャート 全作TOP10入り!』

   『プロジェクト:シンデレラガールズがこの夏繰り出したのは、ユニットミックスアルバム』

   『Vega  高垣楓、D.E.W.、他二組』

   『Altair  ニュージェネレーションズ、めもりあ☆、他二組』

   『Antares  双葉杏、ダークイルミネイト、他二組』

   『Deneb  142s、Pinky×Pinky、他二組』

   『貴方は誰押し? アルバム参加メンバー選抜の投票期間は来月まで!』


文香「…そういえば、双葉さんばかりです」

千奈美「ダークイルミ、まだ高校生だからね。あぁ、でもインタビューとかあったな。いいこと言ってたわー」

文香「パラッとは見たのですが…」

千奈美「意訳すると『これまで自分たちの一方的な表現を受け入れてもらった分、ちゃんとファンの皆さんの顔を見て応えたい』みたいな」

文香「……反省します。少しだけ」

千奈美「反省も分かるけど、それだけじゃなくて…… 大事なのは何を見せたいか、何を表現したいか、どういう自分になりたいか、じゃない?」

文香「……」

千奈美「ほぼ請け売りだけど」


――――

千奈美「お疲れ様」

アヤ「おう、お帰り」

千奈美「休憩中?」

志保「お客さんひと段落したから、ディナータイムの前にね」

千奈美「フロアは」

アヤ「バイト」

志保「あ、お客さん来た。三名様と二名様」

アヤ「うおー。いいや、アタシ出る。志保それ食ってからでいいよ。千奈美は…… シャワー浴びるよな。18からキッチン入れる?」

千奈美「2時間もいらない」


アヤ「んじゃ様子見てよろしく」

志保「よろしくねーっ。千奈美ちゃんゼリーとシューアイスのどっちにする?」

千奈美「高そうなほう」

志保「はい、ゼリー。所長が自治会の役員さんから貰ったって」

千奈美「いいじゃない、美味しそう。いただきまーす」

志保「さすがにスーパーで88円のゼリーとは違うよね」

千奈美「ところで、なんでもらったの?」

志保「さっきメッセージ送ったよ」

千奈美「見てなかった。何々」




『自治会の夏祭りでステージの依頼が来たよー くわしくは業後だって!』



志保「自治会なので、ノーギャラです♪」

千奈美「……いいのかな、それ」

志保「贈り物受け取った時点で断れないやつだよね」

千奈美「いいのかな、それ!」

志保「いいんじゃない? 地域貢献大事だよ。イベントありの飲食店なんて、ご近所と仲良くしないと白い眼で見られちゃう」

千奈美「実体験?」

志保「…と、思います♪ 開業前に、中央事務局のコンサルタントさんっていうのかな、相談してくれる人から話聴いたの」

千奈美「ふぅん。所長がゴーサイン出したならね、いいけど。実際、事務局への申請どうなるんだろう、ノーギャラって」

志保「さあ…… その辺の手配は木場さん任せ?」

千奈美「ま、ガッツリ絞ってキメようじゃない」

志保「え、絞るの……?」

千奈美「夏は代謝落ちるから、油断すると体脂肪増えるわよ?」

志保「あーそれは聞きたくない情報です! 頑張ろうね千奈美ちゃん!」


――――

真奈美「ん。はい、それじゃあ。明日送るよ。おやすみ」

アヤ「お疲れ様ーっす。レジと伝票おねーっす。…と、電話?」

真奈美「終わったところだ。そっちもお疲れ様。晩御飯はどうした? 夏祭りの話だけしておきたいんだが」

志保「途中で軽く食べてます」

千奈美「私はキッチンだったから結構食べちゃったかな。仕込んだ分に手付ければ、すぐ晩御飯に出来ますよ」

真奈美「ふむ。それならファミレスでいいか。レジ締めしてるから、順番にシャワー浴びてきたまえ」

千奈美「私最初ね」

志保「はーい。冷しゃぶサラダと60cmタワーパフェかなー」

アヤ「絞るっつって…… いや、サラダだからセーフなのか?」

真奈美「まあ、アウトかセーフなら、アウトかな」


――――

6月9日は小室千奈美、8月8日は木場真奈美の誕生日です。
ごめん、千奈美。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
準レギュラーに木場さん。

>>407の次、2レス抜けてます。
慌てて投稿するものではありませんね。




文香「他二組……」

千奈美「ま、ここからよ」

文香「……もう持ってるのに、買われるんですか」

千奈美「陳列見ちゃうと、つい、ね。文香もいる?」

文香「先々週に、写メ、送ったと思いましたが……」

千奈美「フラゲ報告ね、見た見た。わざわざありがと。で、おかわりいる? アンタレスだけでも」

文香「先に、行きますよ……?」



————

文香「幻レギ…クランクアップだと、伺いました」

千奈美「こないだ追加の歌シーンとナレ録って終わり。いやー、楽しかったわよ」

文香「評判も、上々のようで…… 最終回、楽しみです」

千奈美「打ち上げで見られる気がする」

文香「参加できるよう、マネージャーには、調整をお願いしています」

千奈美「ガールズ、私と大和さんだけだから、来てくれると助かるわね」

文香「……千奈美さんの、最近のお仕事は」

千奈美「アルバムのプロモが何回かあるかな。生配信とかラジオとかだけどね、地上波は双葉杏ばっかり」

>>408

――――

  「ご注文承りました。少々お待ちください」

真奈美「はい、よろしく」

志保「で、夏祭りですよ、夏祭り♪ ステージやるなら、出店は厳しいですね」

真奈美「まあ、そうなる」

千奈美「ステージ、これ駅前通りの入り口ですか?」

真奈美「そうだ。当日は車両通行止めで、14時と19時にやらせてもらえる」

アヤ「でも、ギャラはないんですよね」

真奈美「……中央通すとギャラ高くなるからな。地域貢献というやつだ」

アヤ「嫌とは言わないすよ、ステージ自体は好きだし。嫌じゃないけど……」

千奈美「また焼肉?」

アヤ「また、って! でもまあ、何か美味しいものくらい食べたくない?」

志保「じゃあお寿司でいいです」


真奈美「“で”じゃないだろ。あー、駅向こうのフレンチでどうだ」

千奈美「行ったことないです」

アヤ「すげー高いんですよね。前に誰かが行ったって言ってたな…」

真奈美「コースのみ、というところで推して知るべし、だ。紹介で色々口利きしてもらえるんだとさ」

志保「じゃあフレンチで… じゃなかった、フレンチにしたいです♪」

千奈美「なんか、その…… 女子会みたいね?」

志保「違うの?」

アヤ「違…いや違わない? ……なんか反応し辛い……」

真奈美「キミ等なぁ、アイドルなんだぞ」

千奈美「いついかなる時もアイドルですよ。注文だっていかにもそれらしく」

アヤ「ヒレカツ御膳は、アイドルらしいメシなの…?」

千奈美「チャーハンに唐揚げ6個付けるよりは女子っぽいでしょ」


――――

志保「お先にいただきまーす」

アヤ「あいよー。あぁ、さっきのステージなんですけど。あれサイズうちの店とだいたい同じですよね」

真奈美「そうだな、大差ない。音響はまあ、お察しの通りだ。出し物用のレンタルだし、そもそも野外だからな…」

千奈美「転がし四つ付いてるだけでも御の字じゃない?」

志保「んぐんぐ」

アヤ「飲み込んでから喋れよ…… 耳が何だって? イヤモニ欲しいって話?」

志保「ん」

真奈美「あんまりやりたくないんだが……うちから持っていって飛ばすか」


千奈美「やりたくないっていうのは?」

真奈美「店の機材に合わせてあるから、後が少しばかり面倒なんだよ。屋外で使うことを基本的に想定してないしな」

アヤ「……声入りの音源作って、リップシンクでダンスだけ、って手もありますけど」

真奈美「それ、やりたいか?」

志保「んーん」

アヤ「歌わないのはちょっと。まあ、ポリシーとか、プライドとかの問題だよな」

志保「ん。んぐ。……歌なしじゃ、所長の方針に反すると思いまーす♪」

千奈美「ま、音響の件は追々ですね。初のオリジナル歌えるわけですし、できるだけいい形でいきたい」


――――

伊吹『いーじゃん、夏祭り! アタシもいくつか仕事あるよー』

アヤ「マジかよ。どんなの?」

伊吹『まあ普通に取材だよね。踊り? ダンス? のパレードとかあるから、ゲスト参加もするよ。花火大会も行く』

アヤ「仕事で?」

伊吹『この流れでプライベートの話してどーすんの』

アヤ「そらそうだ」

伊吹『プライベートはねー、ない!』

アヤ「いや、ないってことないだろ。……ないだろ?」


伊吹『アイドルと店員と学生兼ねてるアンタたちほどじゃないけど、忙しいよ』

アヤ「うっそだー」

伊吹『ゴメン、ウソじゃないけどちょっと盛った。単純に休みが地元の連中と合わなくて、遊ぶ予定があんまり入らない』

アヤ「うち遊び来れば?」

伊吹『んじゃ明後日』

アヤ「はえーよ!! 多分大丈夫だけど」

伊吹『櫂とか朋とか来ないかなあ』

アヤ「好きにしてくれ。決まったら電話……いやメッセかメールで残してくれたほうがいいや」

伊吹『はーい』


――――

To:桐野(グラジオラス) つかまえた [櫂だけあいてた 夕方合流できそう]

To:小松伊吹 Re:つかまえた [了解 朋来ないのか]

To:桐野(グラジオラス) なんかね [木場さんと話したいことあるけど無理とか]

To:小松伊吹 Re:なんかね [へー 夕方なら私は店 誰かは家にいるかも]

To:桐野(グラジオラス) ひさしぶりに [お店お邪魔するかも 買い物次第かな]

To:小松伊吹 Re:ひさしぶりに [そっか あとは流れで]


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千奈美「いいんだけどさ。……ヒマね、アンタたち」

櫂「ほらー、この言い方だよ、せっかくお土産あるのに!」

志保「わー、お土産ー…… っ、神戸チョコとか、これこっちのスーパーでも売ってるやつだー!?」

伊吹「大阪限定品やないんかーい! って?」

櫂「いい! いいよーノッてくれたね伊吹ちゃん!」

志保「あ、ちゃんと下にあった。しかもたくさん。あとでコーヒー淹れますね♪」

櫂「鼻眼鏡とかも入れといたほうがよかった?」

千奈美「いやいや、おかしいでしょ。ところで、帰ってくるの早くない? 学校休みでしょ」

櫂「まあ、お墓参りはできたし、いいんだよ! 明日から仕事だしね!」

志保「え、明日? 大丈夫?」

櫂「夕方から打ち合わせなだけだから平気平気! 海でグラビアだよ? 楽しみでさ!」

伊吹「じゃ、荷物置いたらご飯行こうよ」


――――

アヤ「いらっしゃいませ。あれ、来たんだ」

櫂「4名で予約してた西島です」

アヤ「してないよね?」

櫂「してないよ」

アヤ「そちらのテーブルお二つお使いください」

伊吹「いえーい」

志保「こっちでくっつけておくから大丈夫だよ」

アヤ「任せた。……それと、あちらのお客さん。差し入れもらった」

千奈美「ん。ありがとうございます、ごゆっくり」

志保「あら、いつもありがとうございまーす、いらっしゃいませー♪」

伊吹「…本当、マメな店員さんだよね」

志保「……お客様あっての、ファンあっての私たちですから♪」


――――

伊吹「ただいまー」

櫂「ただいまー。…ただいま? まいいか。お酒、冷蔵庫入れていい?」

志保「お願いします♪」

櫂「はーい…… うぉわっ!?」

千奈美「何」

櫂「え、これ納豆多過ぎない!?」

志保「所長の言い付けで、家でお米食べるときは出来る限り納豆も食べなさいって……」

千奈美「身体作りの一環だってさ。常に備蓄してる。伊吹の家と同じくらいじゃない?」

伊吹「茨城県民馬鹿にしてるよね!?」

志保「だいたい毎日食べてるって言ってなかった?」

伊吹「…まあ、そうだけど。母親いないと、納豆たまごご飯だけで朝済ませたりするけど」


櫂「じゃあ、明日の朝ごはん?」

千奈美「別にいいけど。櫂、納豆平気なの?」

櫂「おっ、大阪への偏見かな? 中学の合宿で克服した!」

伊吹「あー、水泳?」

櫂「そう! 肉に魚に納豆にプロテイン」

志保「うっ、食事制限……!?」

千奈美「トラウマスイッチが」

志保「うぅっ、集中練習時はお手製お菓子1個…… コンビニスイーツは一週間に1個……」

伊吹「…いつもスイーツ複数食べてて、そのスタイル維持できる志保が不思議でならないよ…」

志保「ふふん。やっぱりね、アイドルとしての責任がありますから」

千奈美「キリッとして言うけど、それサプリと所長のトレーニングメニューのおかげじゃないの」

櫂「あたしも、メニュー今のままでいいか明日聴いてみよ……」


――――

櫂「そーいえばさ、お店でご飯食べたときに、ファン? お客さんに挨拶してたじゃない」

千奈美「うん」

櫂「いつもなの?」

志保「接客業ですから、多少は?」

千奈美「……アンタレスをね、5枚だったかな。買ってくれてたの」

伊吹「SSS? 5枚?」

千奈美「そう。他は1枚ずつで。写メをツイッターに上げてるの見ちゃって」

伊吹「実は、杏ちゃんとかダークイルミとか目当てだったりして」

志保「それなら、グラジオラス推しを公言しながらは上げないと思うんだよね」

櫂「なるほどねー、嬉しい話だ。…でも距離感には気をつけてよ?」

伊吹「あれだ。アイドルとしての責任」

千奈美「……それは、確かに」

志保「……意識、薄い、かも?」


――――

志保「……家でね、そういう話してた。あ、そっちの荷物持つよ」

アヤ「ありがとー。……そうは言っても、アタシたちこれで二年やってきたぜ」

志保「そのうち、お店で、ファンの皆さんの相手、できなくなるのかな」

アヤ「……もっと増えなきゃ、わかんないことだよ」

志保「……わかるときが来るのかな?」

アヤ「それは、仕事とファンを引っ張ってこないと」

志保「やっぱり売り込みとフリー仕事かな…… 最近営業さんとか企画さんとかに挨拶できてないよね」

アヤ「だいたい、所長名指しの仕事を交渉して振ってもらってるって時点でな」

志保「それは… そうなんだけど」


アヤ「アンタレスに千奈美入れるのも、かなり無理やり突っ込んだみたいだし」

志保「……ネットの評判見た?」

アヤ「アンタレス? まあ、一応」

志保「そもそも千奈美ちゃん知ってる人が全然いない」

アヤ「……でも、覚悟してたよりは全然叩かれてないよ。割と好意的だろ、あれ」

志保「思ってたよりは、聴いてもらえてた」

アヤ「千奈美と木場さん、だいぶ詰めてたからな」

志保「……夏祭りで、ファン、増やそう」

アヤ「身近なところから、だな」


志保「出来ることをね」

アヤ「一歩ずつ、と」

志保「ねえ、アヤちゃん」

アヤ「……うん?」

志保「目指す夢は?」

アヤ「……はは、今言うの」

志保「こらっ」

アヤ「……トップアイドル」


――――

なんか忘れてると思ったら鳥つけてなかった。ここでつける。

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
準レギュラーに木場さん。

ゲストを含めてもデレステに出てる人少なすぎて、ちょっと申し訳ない。

――――

   『シンデレラの無銭イベうめえwww昼からビールうめえwwwww』

   『イベ乞食うぜえ』

   『ビールもタダ?』

   『無銭なんてあったん?』

   『ビールは無銭じゃねーし 実家の近くの夏祭りで30分くらいのミニステージ』

   『30分…4曲くらいかな?』

   『誰くんの?』

   『小室千奈美と桐野アヤと槙原志保』

   『確かにギャラ安そうな… ちなみんの生歌聴けるなら行きたい… 行きたくない?』


   『は? 微妙くない?? 知らんやついるんだが???』

   『ぐぐった グラジオラスやんけ! あの店ガチでアイドル働いてたの(震え声)』

   『知らんとか病むわー しね くんな』

   『アンタレスに入ってるよ 結構ガチよ』

   『持ってるし クロックワークボイジャーやろ 何時からよ』

   『14時と19時。なんか保育園のお遊戯とかダンスサークルのパフォとか地元めいた中に混じってる』

   『通報』

   『余裕やな よっしゃいくわ ライト赤青黄?』

   『しね くんな 色はあってる 普通の夏祭りだからガチ勢やっていいのかわからん。一応持って来たけど』

   『地元ファンいないの?』

   『いるっぽいけど、地元だから紛れててどんくらいかはわかんね』


――――

アヤ「お、地元の常連さん以外も来そうだぞ。エゴサ引っ掛かった」

志保「ほんとだー。宣伝しなくても来る人いるんだね、やっぱり」

椿「そういえば、ツイッターにもblogにも告知してなかったですね」

千奈美「地域の人へのご挨拶みたいなものだから。仕事じゃなくて悪いけど、今日はよろしくね」

椿「気にしないでください、練習も兼ねさせてもらうわけですし」


――――

志保「はい、みなさんこんにちはーっ♪ プロジェクト:シンデレラガールズ、グラジオラスの槙原志保です♪」

アヤ「桐野アヤです」

千奈美「小室千奈美です」

志保「今日はよろしくおねがいしまーす♪ と、言っても、突然制服来たウェイトレスが出てきて何だかわからないお客様も多いと思いますので!」

アヤ「はい。軽く説明を。私たち、駅前通り商店街の奥にあります『カフェ・グラジオラス』の店員なんですが、兼業アイドルでもあります」

志保「高垣楓さん、ニュージェネレーションズやD.E.W.、双葉杏さんなんかはご存知の方も多いかと思います、シンデレラガールズの一員、末席に付かせてもらって…… はーいありがとうございまーす♪」

アヤ「最近はグラビアとか、あとはシンデレラガールズチャンネルのバラエティにたまに出てます。良かったら入会してくださいな。あとは、こちらの千奈美さんが先日、ガールズの企画アルバムに参加しましたね」

千奈美「はーい。SSSのアンタレスで、作詞作曲からやらせていただきました」

志保「おおっ。わざわざ持ってきてくれた方、結構いますね、ありがたーい! で、千奈美ちゃん、他には?」

千奈美「そうですね、地上波のドラマに出てます。もう少しで終わっちゃうんですが『幻想レギオン』でフレイヤ役を演ってます」

志保「あれドラマっていうくくりなの? ドラマバラエティ? ……おぉー、見てくれてる方もいらっしゃいますねー」

千奈美「深夜帯としてはかなり評判いただいてて。最終回前に全話配信があるので、そちらもよろしくお願いします」

アヤ「ま、あんまり宣伝で引っ張ってもしょうがないので、この辺で一曲…… はい、準備OKだって」

志保「はいっ、では一曲目は『お願い!シンデレラ』」


――――

椿(結構お客さん見てくれてますね)

椿(……あの辺がシンデレラガールズのファンかしら)

椿(コール入れないのは、周り見てくれてるんでしょうか……?)



椿(やっぱり、ソロ締めるのは千奈美ちゃんなんですね。歌上手いですしね)

椿(でも、振り付け大きいところになるとアヤちゃんのほうが歌えてる、かな?)

椿(志保ちゃん、いっつもニコニコしてる。凄いなあ、撮ったのほとんど笑顔だ)


――――

アヤ「ありがとうございまーす、一曲目はお願い!シンデレラ、でした」

志保「……」

アヤ「ちょっと志保、なに真っ先に水飲んでんだよ!」

志保「暑いもん! はいアヤちゃんもどうぞ」

千奈美「観客の皆さんも、水分欠かさないでくださいねー。で、今日のこのお祭りなんですが、通り沿いの出店は、地元のお店が多く出てます。どちらか寄られました?」

志保「いっぱい立ち寄って、美味しいものたくさん覚えて帰ってくださいね♪」

千奈美「私たちのお店、グラジオラスも出してますので、寄って行ってくださったら嬉しいです。それじゃ、次ね。二人OK?」

アヤ「OK」

志保「はーい♪」

千奈美「それでは、ここは桐野アヤと槙原志保の二人がお送りします。『We're the friends!』」


――――

   『無料のミニライブなのに厄介いないとか、神イベかな?』

   『セトリは、おねシン(三人)、We're the Friends(桐野、槙原)、Clockwork Voyager(小室)、Orange Sapphire(三人)』

   『ズッ友さん! 好きなのにライブやフェスでは影が薄いズッ友さんじゃないか!』

   『三曲目がわからん。SSSに入ってるやつか。あれ生で歌ったの?』

   『夏祭りの野外ステージとかいうお察し環境だけど歌はよかったよ』

   『はーーー夜の部行くかーーーーー』


――――

あい「お疲れ様。なかなか盛り上がったようだね」

真奈美「なんだ、客席にいたのか? お早いお着きで」

こずえ「みてたよ。アイスカフェオレ、おいしかったー…」

あい「出店も見てきたよ、揚げバナナを頂いてきた。中々の集客だったね」

真奈美「そりゃどうも。……夜まで品物足りるんだろうか…」

こずえ「アヤたちは?」

真奈美「あの子たちなら店に戻ってシャワー浴びてる。もうすぐ来るぞ」

こずえ「……今日はもう、かわいいふく、きない…?」

真奈美「私は裏方だからな。三人用の着替えはここにあるが」

こずえ「よかった。…のど乾いたから、見てくるね」


あい「君ならTシャツにジーンズでもステージ映えするんじゃないかな」

真奈美「裏方がいればな」

あい「……写真も、撮ってたのサードアイの江上君だろう」

真奈美「練習のていで来てもらった。ノーギャラだとカメラマン雇うには厳しいしな」

あい「……もう、今の体制では限界じゃないのかい。所長と三人だけで何でも賄うのは、現実的ではないよ」

真奈美「なんでもではないぞ、できることだけだ。礼子さんは夜か?」

あい「そうだね。まあ、19時には間に合うだろうさ」

こずえ「…のみもの、買ってきた。二人にも」

あい「…これは、何だい」

こずえ「炭酸とコーヒー、どっちも好き、だよね?」

真奈美「よくそんなもの売ってたな… もちろん、私にスポドリは正解だ」

こずえ「きょう暑いから。今飲んでるそれも、もうすぐ空っぽになりそうだし」

真奈美「助かるよ。…よく見てるな」

あい「何だい、これは…」


――――

 "旅の終わりなんて まだ見えないけれど キラキラのミライに たどり着く日が来る"

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――――

千奈美「小室千奈美で『Clockwork Voyager』でした。ありがとうございました」

志保「はーいどうもー、拍手ありがとうございます♪」

アヤ「お疲れ様ー。や、ありがたいよねー、お客さんの拍手」

千奈美「いやもう、本当に。特にこの曲は、お店のイベントでは歌ってるんですが、それ以外だとほとんど機会がないので」

アヤ「アタシたちのこと初めて見る人も多いからね。皆さん、楽しんでもらえてますかー?」

志保「わ、反応いいですよ♪ ぜひぜひ、私たちのこと、少しでも覚えて帰ってくださいね♪」

千奈美「でも、まずはこのお祭りですか。すっかり日も落ちて、一部の人はこれから夏祭り本番だったりしますよね?」

志保「はーいお返事ありがとうございまーす♪ ビールとかお酒呑んでる人、いっぱいいますね! 楽しみましょーう!」

アヤ「アタシたちも残り一曲、ばっちり楽しんでいきたいと思いますんで、よろしくお願いします! では『Orange Sapphire』!」


――――

こずえ「おつかれさまー。はい、タオル」

アヤ「ステージから見えたよ。来てくれてありがと」

こずえ「あんまりライトはなかったけど、キラキラだった?」

アヤ「そうだな、お客さんの笑顔も見えたよ」

礼子「おーつかれーかんぱぁーーーい」

千奈美「うわっ礼子さんもう出来上がってる!」

あい「いいステージだったね」

志保「わ、ありがとうございます! もっと歌いたかったなぁ♪」


真奈美「お疲れ様。…どうする、店で休んでてもいいが」

アヤ「礼子さんたちは?」

礼子「少し休憩したらお店行くわよー」

真奈美「私は撤収の手伝いがあるから、東郷さんたちと一緒に店に行っててくれるか」

志保「はぁーい、わかりました。椿ちゃんまだかな?」

千奈美「うち来るか帰るか、聴いておきますね」

真奈美「よろしく」


――――

椿「お疲れ様です、こっちも終わりましたよ」

志保「お疲れ様でした♪ どうだった、練習になりました?」

椿「はい、いい笑顔、撮れたと思います」

千奈美「それは何より。これからお店で軽く打ち上げだけど、まあ泊ってもいいし帰っても」

椿「写真見てもらいたいし、とりあえず行きます。いろいろ聞きたいこともあるから」

千奈美「それじゃ、道すがら出店見て帰りましょ。礼子さんがケバブ買っておいてって言ってたわね」

椿「アヤさんと東郷さんは?」

志保「先に戻ってるよ。飲み物は… まあお店の飲んでもいいし、流れで?」


――――

礼子「真奈美ぃ」

真奈美「はい」

礼子「盛り上がったわね」

真奈美「そうですね、思っていた以上に」

礼子「次どんなハコでやるのよー教えなさいよー」

真奈美「まだ考えてませんよ、定例ライブはありますが」

礼子「嘘でしょー考えくらいあるでしょー例えばー?」

真奈美「……せいぜい、区の小ホールくらいじゃあないですか。200程度かな」

礼子「シリーズ4本で10万以上売れたアルバムに参加してるのに?」

真奈美「あの子だけの力ではないですからね」

礼子「……真奈美ぃ」

真奈美「はい」

礼子「……あの子たち頂戴よ」

真奈美「またそういうことを」

礼子「じゃあ訂正。四人頂戴」

真奈美「……酔って絡むの、やめましょう」

――――

レギュラーはアヤ志保千奈美です。
準レギュラーに木場さん。

デレアニを自主的に再放送する日々が続いてます。
まだ終わってないんだ。

明けまして今年は完結させたいです。

真奈美「アルバム選抜投票の結果は…… まあ、知ってるか」

千奈美「結果には納得してます」

志保「でも所長、曲的には負けてないですよね?」

アヤ「厳しいよなぁ… 先月なんて、D.E.W.とPinky×Pinky、テレビにすげー出てたし」

千奈美「止めて」

アヤ「う……」

真奈美「露出の差は、事務所の力もあるから、主に私の責任だ。だが、それを投票に繋げたのは、彼女たち自身の功績だ」

志保「うぐ」

千奈美「色んな形がある。評価を集めたのが選抜上位7組だった。私はそれに敵わなかった。この結果を次の機会に生かそう。それだけの話」

志保「うぅう… 千奈美ちゃぁん……!」

アヤ「……ゴメン。そうだな、考えすぎるより、前見ないとな」


真奈美「ん。その話はこれで終わりだ。で、今千奈美が言った『次の機会』だ。千奈美とアヤにオファーが来た」

千奈美「はい」

アヤ「お?」

真奈美「ジューシーホーリーナイトパーティ。ジューシーパーティさんのところの、クリスマス合わせのライブだ」

アヤ「お、開催決まったんだ」

真奈美「正式告知は来月かな。うち以外にもゲストの交渉があるから、それが粗方決まったら、だと」

志保「やったねー二人とも! ハコ決まったんですね。どのくらいなんですか?」

真奈美「……プリンセスセントラルアリーナ」

千奈美「えっ」

アヤ「え、でかくないですか?」

志保「……5000人超えてません?」

真奈美「座席フルに出すと12,142席」

志保「ひ」

アヤ「……」

真奈美「それだとステージほとんど組まないことになるから、実際にはステージや機材の配置なんかで変わるが。……まあ、うん」

アヤ「でか、い……」

真奈美「この前の『シンデレラガールズ:スーパーサマーライブ』が、2Daysで述べ20000人超えだな」

千奈美「にまんにん……」

アヤ「にまんにん……」

真奈美「アヤはサポートメンバーになるかゲストになるかは未定。少なくとも遊佐こずえの持ち歌には入る」

アヤ「こずえ、今二曲持ってて来月一曲増えるんだけど……!?」

志保「大丈夫だよ、一万人規模なら一応立ったことあるでしょ、フェスとか!」

アヤ「いやいや、屋外フェスで賑やかしみたいな扱いとワケが違うぞ…… い、今から緊張してきた……」

真奈美「千奈美はゲスト扱いで、ビューティーアリュールの一人としての出演だが……」

千奈美「…だが?」

真奈美「先方の。まあ礼子さんだな、強い要望があった。クロックワークボイジャーはソロでフル尺入れたい、と」

志保「凄い!! 大抜擢じゃないですか!?」

千奈美「……それ、いいんですか?」

真奈美「仮のセトリ組んでて、入れたくなったらしい」

アヤ「おぉ……」

志保「……千奈美ちゃん、大丈夫?」

千奈美「……」

志保「千奈美ちゃん?」

千奈美「……えぇ、うん。余裕よ、余裕」

真奈美「怖気づいたか」

千奈美「怖気…… いや、まだ、ですね。実感がないです」

真奈美「無理もない」

千奈美「そもそも高橋さんには、クロボのステージング、まだちゃんと見てもらったとは思えてなくて」

志保「夏祭りで見てもらったでしょ?」

真奈美「定期ライブとプロモーションイベントで歌ったときの動画は見せたぞ」

千奈美「……うーん」

アヤ「……逆かも。『ちゃんと見たい』から呼ばれたんじゃねえの?」

志保「ビューティーアリュールのこともあるから、どうせ呼ぶならやらせよう、的な?」

アヤ「礼子さん、いっつも欲張るからな」

真奈美「なるほど、有り得る。勿論、そういう浅いところだけでもなく、思惑はあるんだろうがね」

千奈美「思惑とかは、私にはいいです。じゃ、改めて。やらせてください」

真奈美「了解した。さて、所長としては、そうだな…… 月並みだが、これから大変になるぞ。頑張っていこう」

千奈美「楽しめるように、ですね」

アヤ「アウェイ感あるけど…… やるっきゃねーもんなぁ」

千奈美「ファン増やすチャンスじゃない。こんなの、断ったら絶対後悔するわよ」

真奈美「よし、いいぞ。五千人だか一万人だかはまだ分からんが、根こそぎ引っ張ってくるつもりで行ってこい」

志保「そんなに来たら、お客様があふれちゃいますね♪」

アヤ「まあ、リアルな話、外部イベントに出た後って、少し増えるけど」

真奈美「今回は、店の宣伝は流石にできないからな。千奈美を見て覚えてうちの店まで辿り着く、という猛者がいったいどれだけいるのか。ふふ」

千奈美「ステージそのものじゃなくて、お店の存在でプレッシャー掛けるのやめませんか」

アヤ「予想できない…… どうなるんだろ?」

志保「アヤちゃん」

アヤ「うん」

志保「考えすぎるより、前を見るんでしょ?」

千奈美「……ホント、私たち志保にフォローされ過ぎね」

真奈美「ところで志保、ライブまで、店のことでいちばん忙しくなるのは君だぞ」

志保「あぁっ、急に前が見えなくなりました!」


――――

みく『木場さん』

真奈美「こんな遅くにどうした。寮はもう消灯だろう」

みく『ちょっとだけ、ちょっとだけ相談したいんです』

真奈美「ホーリーナイトパーティーのことかな。確か呼ばれてたな」

みく『……はい。高峯さん。高峯のあさんって、知ってますか』

真奈美「ああ、ジューシーの?」

みく『はい。その高峯さんの要望で、ジューシーパーティーさんから、みくにオファーがあったの』

真奈美「ふむ、そういう経緯なのか」

みく『継続することを前提に、ユニットを組みたい、って』

真奈美「…ほう?」

みく『今は、クリスタルステアにマネジメントお願いしてるんですけど』

真奈美「そうだね」

みく『ジューシーパーティーに来てくれ、って』

真奈美「ジューシーの正所属に? いい話じゃないか」

みく『いい話だとは、思うんだけど…… そんな、スパッと乗り換えていいのかな……』

真奈美「それを私に聴くのかい。所属を誘ってた私に」

みく『え、あっ、いや、その…… 木場さんが、いちばん、みくの…… 私の話を聞いてくれたから』

真奈美「……」

みく『せめて、木場さんには話を通さないと、なんか、よくないな、って…… 筋が、通らない? っていうのかな……』

真奈美「……まあ、先方には、今まで世話になった礼は言うべきだな」

みく『それはもちろん』

真奈美「それから先は、全く別の話だ。まして、君が世話になっていたのはスケジュール管理だけだろ」

みく『……クリスタルステアさんには、それで、いいかもしれないけど』

真奈美「……私の許可が欲しいのかな」

みく『っ……』

真奈美「大人げないことを言うなら、心配だし、悔しい。結局のところ、事務所の大きさの差なんだな、と思ってるよ」

みく『……それ、は』

真奈美「でも、私はアイドル前川みくに期待している一人の人間でもある」

みく『う……』

真奈美「オフィス・グラジオラスの所長としては寂しいところだが、木場真奈美としては応援するよ」

みく『……』

真奈美「私を振るんだから、今以上に活躍してくれ」

みく『木場チャン……』

真奈美「泣くようなことじゃないだろう。今後、いくらでも一緒に仕事をすることはあるんだ」

みく『……うん、うん。みく、頑張るから』

真奈美「親御さんとも、しっかり相談するんだよ」


――――

礼子『セトリ、まだ全然仮組みだけど。見た?』

千奈美「はい。四曲ですよね。これなら基本の振りは全部入ってます」

礼子『あれ、ゴキゲンPartyNightやったことある?』

千奈美「定期ライブでやってますね。本番でやったことあるのはBパートだけですけど」

礼子『助かるわ。アヤが入るこずえの新曲二曲、先に振り付けの動画送って宿題にするから。フォローしてやって』

千奈美「見るくらいしかできないですよ」

礼子『それで充分よ、とりあえず動きの流れさえ入れば、後はもうトレーナー任せで』

千奈美「……うぇえ。キツそう」

礼子『キツイでしょうねー。私もう基本的に踊らないんで気楽だわー』

千奈美「あぁ、膝ですか」

礼子『そうそう。一応負担掛けないように振りを変える、ってのもあるけど、時間的に厳しいし』

千奈美「完治、待ってますから」

礼子『あは、ありがと』

千奈美「社長譲るっていう話はどうなったんです?」

礼子『あれね。結局、もう社長っていったら事務所の方針決めるとこだから、譲れないなーって』

千奈美「欲張りですねえ……」

礼子『まあ、企画屋とかプロデューサーとか雇うのも手なんだけどさ』

千奈美「まだ自分が決めたい?」

礼子『そうそう。欲張りなのよ』

千奈美「身体には気を付けてくださいね?」

礼子『膝以外は健康よ』

千奈美「本当に、完治、待ってますからね」

礼子『……ありがとう』

――――

レギュラーはアヤ志保千奈美です。

自分でもびっくりするくらい書き進められてないけど頑張ります。
もう下向かないって決めたから。

保守です

加蓮「あ、小室さん。と桐野さん」

アヤ「お疲れ。北条さんはお疲れ様?」

加蓮「こっちはアガりでーす」

千奈美「北条さん、今日レッスンあったの?」

加蓮「時間が空いたから、新しいレッスン靴の慣らしがてら、奏とちょっと合わせに来たんだ」

アヤ「あー。ユニット合わせに?」

千奈美「モノクロームリリィ、久しぶりよね」

加蓮「そうだよー。本番前とあと一回しか予定入れられなくてさー。今日はたまたま時間空いたから寄ってみたんだ」

千奈美「じゃあこれから別件」

加蓮「そ。次はトラプリで。んもー、お腹空いたぁー!」

アヤ「靴買うよりメシ食うべきだったのでは……」

千奈美「お疲れ様。気を付けてね」

加蓮「だって奏とダンスするの楽しみだったからお洒落したかったのー! はーいそっちもお疲れー」


――――

アヤ「トラプリって、トライアドプリズム? だっけ」

千奈美「トライアド“プリムス”、よ。あんたそれSNSとかでやったら大炎上だからね」

アヤ「こえー!! オーバーロードの渋谷凛とやってるユニットだろ」

千奈美「あと、ハヤブサプロの神谷奈緒ね」

アヤ「……あれ、神谷奈緒って確かさっきニュースで見たぞ」

千奈美「え」

アヤ「そうそう、これ。ハヤブサからオバロに移籍だって」

千奈美「……北条さんもジューシーから移籍するのかな」

アヤ「二年やればそういうこともあるだろ」


――――

奏「聞いてないわね」

千奈美「まあ、そうよね」

奏「一応、ジューシーはオーバーロードと業務提携してるから。敵対的っていうのかしら、突然の引き抜き? みたいなのはないはずよ」

アヤ「本人が言ってたの?」

奏「ちょっと前に、社長が」

アヤ「あ、アテになんねーーー!!?」

千奈美「アンタね…… 礼子さんが聞いたら怒るわよ」

奏「怒るような人かしら?」

千奈美「どっちかっていうと、同意すると思う」

奏「散々な言われようね…… あれでも私尊敬してるんだけどな」

アヤ「あれでも、って」

奏「あれ」

千奈美「……奥? もう来てるの?」


アヤ「寝てるな」

奏「付き合いで朝方まで呑んでたんですって」

千奈美「レッスンどうするのよ……」

奏「課題は聞いてるんでしょ。東郷さんと高峯さんは、定刻通り来るっていうから平気じゃない?」

アヤ「まあ、そうな。NationBlueとエージェントの合わせ。…北条さんだけ二回なんだ?」

奏「いつものポジションだから大丈夫、とはご本人の弁よ」

千奈美「速水さん、何時までいられるの?」

奏「一応、名目上は20時までになるわね」

アヤ「了解。あいさんと高峯さん、あと北条さん、速水さん、千奈美だろ? Nationならまあ平気か」

奏「エージェント夜を行くは?」

千奈美「自分のところでやったことあるから、多分平気」

アヤ「もらった振り付け、少し新しくなってたな。ま、このくらいならすぐ修正できるんじゃね」


奏「簡単に言うわね… 加蓮がセンター右だから、代わりよろしくね」

アヤ「あんな可愛くできねーけど、立ち位置とかはまあ心配要らないはず」

奏「小室さん、Day of the futureやるんでしょ? 見たいなあ」

千奈美「アリュール合わせのレッスン見に来れば見られるけど。それか本番?」

アヤ「その前にゲネで見るだろ。何なら、今アタシが合わせてもいいけど」

奏「え、桐野さん、できるの?」

千奈美「え、できるの?」

アヤ「ふふん。千奈美がいない間に志保と二人で覚えた。デイオブだけじゃなくてTRIAL DANCEもできるぜ」

千奈美「TRIAL DANCE…… 貴方どころか私も歌わない曲覚えてどうするのよ……」

奏(……振りのVもらってから一週間経ってないわよね? 一週間足らずで新曲三つ……?)

アヤ「あいさんと高峯さんの手伝いくらいにはなるかなって。あと、ダンス覚えるの最近好きだし」


のあ「話は聞かせてもらったわ」

あい「その曲でステージに立ちたいなら、私たちを倒すことだな」

アヤ「えっいやそんなつもりは」

のあ「勝者だけが…… 舞台に立つ資格を得る……これもアイドルの宿命……」

アヤ「えっ、えっ」

千奈美「……練習しましょうよ」

あい「私もそう思うよ」

のあ「十全ね」

奏(……私、まだ自分の曲の振り付けでいっぱいいっぱいなのにね。みんな余裕じゃない)




礼子「うぉあ!?」



あい「……だ、大丈夫かい。礼子さん」

礼子「……大丈夫じゃない」

のあ「焦燥が見えるわ」

礼子「はい、焦ってます。……奏」

奏「……はい?」

礼子「加蓮が怪我して、今病院行ってる」

奏「は?」

礼子「今電話が来た。トラプリのレッスン中に変に足首ねじったって」

奏「……容体は?」

礼子「本人とは話してないからマネージャーからだけど、とりあえず今は歩けないって」

あい「……ライブは?」

礼子「病院次第。踊れなくても立てるまで回復したら検討、かな。ポジション変えあるかもね」

千奈美「え、じゃあ、練習は……」

礼子「今日はそのまま続けて。蓋開けたら、ライブまでには余裕で治るような軽傷かもでしょ」


――――

礼子「高橋でー。……うん、そっか、わかった。加蓮は? え、代わる? いやいい……」

加蓮『……礼子さぁん……』

礼子「ん。お疲れ様」

加蓮『骨、なんで、折れ…… 手術、レッスン、できな』

礼子「……ちゃんと治そう。私の膝みたいになったら、ほんと嫌だから」

加蓮『ライブ、ある、っ、レッスン、したい、のに』

礼子「……気持ちは解った。うちのは何とか調整する。加蓮には出てもらう。全部じゃなくても、モノクロとか五人のNationとかは調整する」

加蓮『ごめ、ごめなさっ、……うぅぅっ……うぁあぁっ…… 奏、なんて、言ったら、ぅぅぅ…… 久しぶり、なの、に』

礼子「……奏はもう帰っちゃったから、私からも後で伝えておく。加蓮からはね、日を改めて連絡すればいいから」

加蓮『凛、と、奈緒、ごめん、ね、って…… 両親、も、オバロの、プロデューサーさんとかも』

礼子「そっちもちゃんと話つけるから。大丈夫よ。うん。親御さんにもね、私からもお話するから。……もうすぐ親御さんそっちに着くでしょうから。ゆっくり休みなさい」


礼子「んおああああああ…… 歩けるまで二か月…… 冗談キツイ……」

アヤ「今めっちゃいい保護者だったのに、切った第一声がそれ!?」

礼子「感情的なところはともかく、理屈上はヤバイのよ。ステージ自体はギリ間に合うけど、ダンス曲やらせるわけにいかないでしょ」

千奈美「……セットリストも変更になりますか?」

礼子「なるわね。とりあえず加蓮はステージ移動なし、ダンスも手の振りだけ、の前提で」

あい「こっちもちょっとした手術だね。ま、対応してみせるさ」

のあ「問題ないわ」

千奈美「うーん、細かい話ですけど、今日だとNationBlueどうします?」

礼子「なんなら私入るわよ。それより曲目足りなくなるかもなのよね…… アヤ、あんたちょっと増やすかも」

アヤ「えっ」


礼子「……アヤと同じくらいに踊れる子…… うちだと高峯ちゃん?」

のあ「既に背負うものがある私に、これ以上の要求を? 所長が望むのなら、吝かではないが」

礼子「無理でしょ。前川ちゃんとアナスタシアさんのリーディングに専念で」

あい「アヤくんとなら、私が何とかならないこともないが?」

礼子「レッドバラードでやるのは二曲だけって決めてるから却下。……誰か呼ぶかー」

アヤ「えっ……えぇ……?」

千奈美「誰か、今から呼んでそのレベルで踊れる人心当たりあるんですか?」

礼子「今のところ、ない」

あい「むむ……」

礼子「ねーねー、誰かいない?」

千奈美「ざ、雑……!!」


――――

志保「二人ともおかえりー。お風呂も甘いものもありますよっ♪」

アヤ「……おう……おう」

志保「大変だったよね。せめてリラックスしてね♪」

千奈美「……食べるわよ、アヤ。来月には甘いもの断ちなんだから」

志保「私も食べない! 協力します!」

アヤ「ありがと」

志保「……きっと、楽しいと思うんですよ。乗り越えちゃえば」

千奈美「確かに、今までそうだったからね」

アヤ「……まーな。ビビッたら箱が小さくなるわけでも、怪我が完治するわけでもない」

志保「私、頑張ってね、とは言わないよ?」

アヤ「なんでさ。いいけど」

志保「だって、私たちいつも頑張ってるもん。やり切らなかったら、心残りになるって」


千奈美「……そう、ね」

志保「アヤちゃんと千奈美ちゃんの夢なら、私の夢だよ。だから、一緒に走るよ」

アヤ「……」

志保「って、前の同い年呑みで聴いた」

アヤ「お前! 割と肝心なとこで寝てたろ!!」

千奈美「そうだ」

アヤ「あ?」

志保「うん?」

千奈美「アヤ以上にダンス得意で、無茶振りどんと来いな友人、いたわ」

アヤ「……!!」


――――

To:アヤ (無題) [よよよい なんかジューシィの高橋さんからオファー来たんだけどアヤの差し金?]

To:小松伊吹 Re: [差し金てお前]

To:アヤ Re: [いえーい 毎週東京出ちゃうよーんやったね☆]

To:小松伊吹 Re: [ダンス強い子紹介してくれっていうからね 頼りにしてるんだよ]

To:アヤ Re: [頼りにしてきたか! 万超えの箱でライブとかめっちゃアガる!↑↑]

To:小松伊吹 Re: [よく言うなー かかってこい、的な?]

To:アヤ Re: [的なね 寝るねおやすみZzz]

To:小松伊吹 Re: [おやすみー]





アヤ(……え、マジで寝たの!? 軽!!?)


――――

レギュラーはアヤ志保千奈美伊吹です。

アヤにSR二枚目が追加されて、これで全アイドルSR二枚以上になりましたね。


礼子「サンプル動画見たわよー。このレベルで踊れるとは知らなかったわー」

伊吹「どーもどーも。お褒めに預かり光栄でーす。よろしくお願いしますね!」

志保「あの……よ、よろし、く……?」

礼子「なんでキョドってるのよ」

志保「え、アヤちゃんと伊吹ちゃんと一緒にって…… 無理が……?」

礼子「やる前からビビッてどうするの」

伊吹「まー平気平気! 本番なんて一回しかないんだから! 練習よりキツイことなんて何もない!!」


志保「え、えぇ……」

礼子「軽くヒくくらい、滅茶苦茶ポジティブね」

伊吹「実体験ですよ。収録だって本合わせがいちばんしんどいし、ダンスも練習がいちばん辛い」

礼子「場数もそれなりなんでしょ?」

伊吹「ローカルテレビですけど、一応レギュラー持ちです。全国区は全然ですけど」

礼子「じゃ、今回で風穴開けてちょうだいよ」


――――

千奈美「木場さん、大丈夫ですか?」

真奈美「ん? 何がだ?」

千奈美「シフト、私たち三人とも結構抜けてますけど……」

真奈美「そうだな、バイトの子には少し多く来てもらうことになる。君らが心配することじゃないさ」

アヤ「一応アタシら正社員ですよ?」

真奈美「芸能活動も立派な仕事だよ。……というか本来はそっちに注力させなければならないんだが」


千奈美「そう言ってくれるなら、遠慮なく出ますけど」

アヤ「早!?」

真奈美「ふふ、それでいい。それより、ディナーまで客足落ち着きそうだし、アヤ先に上がっていいぞ」

アヤ「はーい。そしたら早めに向こう行きますわ」

千奈美「高橋さんと伊吹によろしく」

アヤ「ていうか伊吹うちに泊るんじゃねーかな」


――――

志保「…え、えっと、ここがこうで……」

伊吹「そうそう」

志保「回って、ここで……こう……? ん、なんか違う……?」

伊吹「あー」

礼子「なるほどー」

志保「え、どうなってました?」

礼子「回るときのステップがおかしい」

伊吹「三回目の終わりの右足、左に半歩ずらしてみなよ。そのまま出してるから、勢いつけようとして横にブレてる」


志保「え、こうの、こうで、右足半歩…あ、ほんとだ! だからキックしてるみたいな感じになってたんだ…」

礼子「伊吹ちゃん良く見てるわねー」

伊吹「一応、前職みたいなもんですし。トレーナーのバイトもしてましたからねー」

礼子「頼りになるわー」

志保「ワン、ツー、スリー、出す、ターン。……おお、ずれない!」

礼子「なんやかんや、志保ちゃんも飲み込み早いし」




――――

アヤ「え、もう二人ともほとんど振り入ったの?」

伊吹「ふふん。半日あれば充分だよ」

志保「な、なんとか……」

礼子「だいたい伊吹ちゃんのおかげだわ」

アヤ「おー」

志保「そうだね、凄くお世話になった」


伊吹「……でもなあ」

礼子「ん?」

伊吹「そのー、言いにくいんですけど。……実際は、歌が入ってもダンスに集中しちゃうんですよね」

アヤ「え、マジで」

礼子「どのくらい?」

伊吹「……バミとかカメリハだとあんまりプロンプ出さないじゃないですか」

礼子「そうね」


伊吹「だいたい歌詞飛ばすか間違えます」

アヤ「おい!!?」

伊吹「大丈夫だよ! プロンプ見られればちゃんと歌詞つながるから!」

礼子「……歌もしっかりね。二人もサポートよろしく」

志保「任せてください」

アヤ「うおー、超がんばるぞー」


――――

礼子「伊吹ちゃんはさ、ダンス本業でしょ」

伊吹「そうですねー。動画でも見てもらったブレイキン、ブレイクダンスが本業ですけど」

礼子「あれ凄くない? 片手で逆立ち? するやつ」

伊吹「マックスですか? ほいッ」

礼子「おおー! 意外とサラッとやるのね…」

アヤ「実際には倒立とは微妙に違うんすよ。……よッ!」


礼子「惜しい!」

志保「ほぼ出来てるような?」

伊吹「もっと勢いつけて振り上げれば出来るよ。ていうかアヤ、チェアーできるんだから筋力的には充分だよ」

礼子「チェアー?」

伊吹「両脚を地面から離して止める技ですね。アヤ見せてあげなよ」

アヤ「アタシかよ。いいけど……ふッ」


礼子「え、アヤあんたそんなのできたの!?」

アヤ「喋るの無理す」

伊吹「志保もステップだけなら覚えてる?」

志保「ええ、今すぐ…… どうかな……」

礼子「見たーい」

伊吹「高橋さんもやります? 教えますよ!」

礼子「あ、私は膝に爆弾あるから無理」


――――

千奈美「別に私たちはブレイクダンスチームではないんだけど?」

伊吹「高橋さん凄いグイグイ来てたよー、めっちゃ聞かれた」

アヤ「やばそうだぞ。……何かやらかすときの顔してた」

伊吹「何かって」

志保「やらかすって」

千奈美「ほとんど決まったようなものでしょ」

アヤ「……やっぱそう思う?」


伊吹「??」

千奈美「今練習してるの、マリオネットの心よね」

志保「うん」

アヤ「多分これ、もう一曲何かやれって話になるんだろう、ってこと。しかもブレイキンで」

伊吹「マジで! やったぁー!」

アヤ「まだ決まってない! そもそももっと深刻に考えて!」

志保「やだぁぁぁ、私ブレイクダンスなんてステップくらいしかできないよぉぉぉ」

千奈美「……どうなるのかしら、ライブ」


――――

志保「伊吹ちゃん、電話鳴ってる」

伊吹「ん? ……高橋さんだ」

アヤ「おわーこの時間にかよ……」

伊吹「はーい小松伊吹でございまーす」

礼子『高橋だけどー、ねーねー伊吹ちゃん』

伊吹「はいこんばんはー」

礼子『こっちから曲指定して、振り付け作れる?』

志保(ほんとに来た……)


伊吹「おっ、出来ますよ。やっぱり次のライブの?」

礼子『そうそう。こずえが歌ってみたいかも、って言ってたんだけど、アナタたち三人も主役くらいに踊ってほしいのよ』

アヤ(……何考えてんの)

伊吹「曲は決まってます?」

礼子『うちの雰囲気だと歌いにくいけど、アナタたちと一緒だったら雰囲気的に有りじゃない?ってのがね』

伊吹「はぁ」

礼子『ビジョナリー』


――――

アヤ「で、昨日言ってたビジョナリー。伊吹わかる?」

伊吹「聴けば思い出すと思うけど」

志保「えーっとね……これー」

伊吹「……あ、ああ! これか、これかぁー……」

千奈美「まあ楽しい曲よね。ジューシーっぽくはない、てのもわかる」

志保「どうですか、伊吹センセイ」


伊吹「これはいけませんよ」

アヤ「何がだ」

伊吹「アタシたちがガチでやればやっただけ、こずえちゃんのギャップで面白くなる」

千奈美「嫌なの?」

伊吹「にひひー。大好物! さー、振り付け作るぞー!」

志保「765さんの曲でブレイクやったことあるの?」


伊吹「アドリブでも全然やるよ。ていうか、ステップ教えたとき乙女を大志を抱けだったじゃん!」

アヤ「だな。言われてみれば伊吹って割と『急がばまっすぐ進んじゃおう』だよな」

伊吹「『一石二鳥じゃ物足りない』し! あの曲好き!!」

千奈美「私たちに足りないの、それね」

志保「ところで、振り付けどうやって作るの?」

伊吹「ま、仕事あるから今日は実家戻るし、アタシが持ち帰るよ。次回をお楽しみに♪」

アヤ「……志保」

志保「う、うん?」

アヤ「腹を括ろう」


――――

レギュラーはアヤ志保千奈美と伊吹です。

4/8は桐野アヤの誕生日でした。
総選挙は、出来る範囲で満遍なく投票する予定です。

板分割ってなんだ…

連休中に投稿予定です。

――――

  「……はい、ステージ側オッケーです! ステージ裏どうですか?」

  「問題ありませーん! 出演者の皆さん撤収できまーす!」

礼子「はい了解。大丈夫ね、スタッフの皆さんお疲れ様、ゲネ終了でーす!」

  「「「「お疲れ様でーーーす!!」」」」

礼子「出演者、並びにスタッフの皆さん。明日はよろしくお願いします!」


――――

あい「出演者各自! 衣装さんがシャワールームの前にいるから、衣装と小物預けること!」

のあ「メイク落としは各々で……シャワー待ちの間に」

あい「……え、もう終わったのかい」

アヤ「早くないっすか」

のあ「造作もない……舞台はけて直行した」

あい「身も蓋もないなあ。アヤくんたちは?」

アヤ「今日はもう終わってますけど、明日はどうするかなあーって」


のあ「何を、迷って……?」

アヤ「アタシたち、こずえの都合もあるから出番終わるの早いじゃないすか。その間にシャワー浴びればいいんだけど」

あい「そうだね」

アヤ「……見ときたいんですよね。もちろん千奈美のソロも、他のみんなも」

のあ「そうするべきだと思うなら、そうなさい。すべては、自由だから」

アヤ「千夏さんたちどうするんだろ…聴いときゃよかった」

あい「メールなりなんなり、軽く聞いておけばいいのではないかな」

アヤ「そーします」


――――

久美子「ああああ愛結奈ぁぁ千奈美ぃぃぃトチッちゃったぁぁああぁあぁあぁぁ」

愛結奈「まあ、あのくらい平気でしょ。よくやるし」

千奈美「よ、よくやるかどうかは置いといて、ソロさえ飛ばなきゃ何とかするわよ」

愛結奈「ダンスできてるから大丈夫よ。ほらほら、さっさとシャワー行こ」

久美子「メイク拭く……」

千奈美「私もちょうだい」

愛結奈「ワタシも。んんー、明日で終わりかー。楽しみたいよねえ」

千奈美「今だって楽しいから、きっと平気よ」


――――

加蓮『お疲れー、今終わったって? こっちは今帰宅』

奏「ええ。…足は大丈夫?」

加蓮『いや、そりゃ大丈夫じゃあないでしょ。さっき痛み止め切れたよー。歩けるけどじんわり痛いね』

奏「じゃ、訂正。ゲネの間は平気だった?」

加蓮『うん! これなら明日も、本番中は充分イケそう』

奏「そう。よかった。…あんまり話せなかったから、心配したのよ」

加蓮『あはは。…明日も話せそうな時間はないんだよねー』

奏「入りギリギリまで遅らせて痛み止め打って、出番終わったら撤収、だものね」

加蓮『……頑張るよ。ガラじゃないけどさ』

奏「そうね、ガラじゃない。でも、私だってそのつもりだから」

加蓮『ふふっ。……おやすみ。また明日ね』

奏「ええ、また明日」


――――

伊吹「コーラおいしい」

志保「アイスクリーム食べたい」

アヤ「お前ら……」

飛鳥「…油断が過ぎるんじゃないかな、来訪者諸君は」

アヤ「返す言葉もない……」

志保「私食べてないよ、考えてるだけだよ!」

伊吹「二宮さんもさっきコーラ飲んでたじゃん」

飛鳥「……正論は強いな。言葉を失うよ」

アヤ「返す言葉もない!!」


志保「でも、ちょっとくらい自分にご褒美したい気持ちわかるよ」

飛鳥「……?」

志保「だって、こずえちゃんと二宮さんだけでしょう、最後までステージに出られないの」

飛鳥「表現そのものにおいては、年齢は障壁じゃない。……今はそれでいいのさ」

伊吹「壁っていうか、まあルールだからね。もう21時過ぎるけど、寮帰らなくていいの?」

飛鳥「交通手段の都合でね、みんなと一緒のバスに乗ることになったよ」

アヤ(……マネージャーさんに「みんなと一緒に帰りたい」って言ってたけどな)


志保「夜遅いと、明日に響きますよ!」

飛鳥「何、案ずることはない、夜はボクの時間だ…… と言いたいところだが。今日は素直に寝るよ」

伊吹「あたしなんて、既に眠いけどね」

志保「小学生かな?」

アヤ「二宮さん夜更かし好きなのー? 程々になー。お茶とかコーヒーとか飲んだり?」

飛鳥「えっ、いや、そういうのは」

志保「…そういうのは?」

飛鳥「……苦いの、苦手で」


伊吹「今度、グラジオラスでカフェオレでも入れてもらうといいよ。美味しいから」

飛鳥「覚えておこう。…さて、そろそろバスで待機するとしようかな」

アヤ「あいよ。アタシたちも行くかー」

志保「はーい。千奈美ちゃん声かけてこようか?」

アヤ「浜川さんたちと一緒だし、今日はいいだろ」

志保「そっか。メールだけしとこ」


――――

真奈美『お疲れ様です』

礼子「はいお疲れ。こっちはつつがなく終わったわよ」

真奈美『それは何より。こっちも差し入れ準備終わりました』

礼子「ありがとー。何時頃来るの?」

真奈美『メイク始まる前には行きたいですね。昼前には』

礼子「出迎え出来るかわからないから、パスは忘れないでね」

真奈美『心しておきます』

礼子「よろしくね。……あの子たち、頑張ってるわよ」

真奈美『そうですか。……褒めてやってください』

礼子「もちろん」


――――

千夏「ん、おはようございます」

真奈美「おや、おはよう」

千夏「……凄い荷物」

真奈美「差し入れだよ。こっちが終演後用のパックマスク、これはおやつのコーヒーゼリー」

千夏「いいわね、美味しそう」

真奈美「ケータリングルームにおいておくから、どうぞ。それにしても、ゆっくりだね」

千夏「そうね、ワンタイム二曲だけだから」

真奈美「そりゃそうだが。……サプライズ枠っていうのは、勝手が違いそうだな」


千夏「どうなのかしら。出て、歌って、MC挟んでもう一曲やって終わり」

真奈美「まあ、なあ。言葉にしてしまえば、そうだけれども」

千夏「……本当はね」

真奈美「うん」

千夏「ここしばらく役者の仕事ばかりだったから、本格的に歌うのは半年ぶりで。ちょっと緊張してたの」

真奈美「過去形?」

千夏「……ガチガチの千秋見てたら、どうでもよくなったわ」


真奈美「黒川さんも久しぶりのステージングか… 彼女は大丈夫なのか、それ」

千夏「あの子はちょっと緊張してるくらいが丁度いいのよ。そのほうが可愛いんだから」

真奈美「なるほどなあ」

千夏「それより、アヤさんのこと。……正直に言っていい?」

真奈美「この文脈で『正直に』と付けられるのは怖いがね。聞こう」

千夏「もっと、出来ないと思ってた。最初そう思ってたことを、木場さんに謝っておきたくて」

真奈美「……ずっと、現場にいるようなものだからな」


千夏「報われると、いいわね」

真奈美「私が、そうしてやらなきゃいけないのさ。本当は」

千夏「それなら、今回はチャンス?」

真奈美「そうかもしれないな。……彼女たちには、そのつもりでいるように教えているつもりだけど」

千夏「伝わってるんじゃないかしら」

真奈美「今日の今日では、もう祈るしかできないね。…あの子たちは控室こっちか」

千夏「それじゃあ、また後で。 Je vous souhaite une bonne journée.」

真奈美「ああ……え、あ?」


――――

レギュラーはアヤ志保千奈美と伊吹です。

お客さんの前で歌って、踊って、視線と歓声を受け止める。

言葉にすればそれだけのことだけど、それだけじゃない。


前には一万人を超えるお客さんがいて、みんながみんな、それぞれに想いと期待を持ってくる。

後ろには何十人ものスタッフ、そしてそれ以上の数の関係者がいて、やっぱりそこにはみんな誇りや願いを持ってる。


そんなに大きくないカフェで働きながら、月に一回、数十人のお客さん相手にライブをしている店員だって、

ローカルテレビ番組のMCが主な仕事のダンサーだって、全国ネットのレギュラーを持ってる現役女子高生だって、

最新シングルが数万枚売れたユニットに所属してたって、銀幕で大活躍の新進気鋭の女優だって、

古着屋のバイトだってピアニストだって事務所の社長だって。


ステージに立って、お客さんの熱気に晒されたら、大した違いはないんだ。


「……吐きそう」


ドレスルームからステージへの通路の脇、いくつかある控えスペースの片隅で、アタシは一人座り込んでる。

客観的な自分が、今の自分を指差して笑ってる。椅子に尻がへばりついたみたいだ。


声が出ない。膝が震えてる。

せいぜい百人程度しか相手にしてなかった、場末のアイドル崩れが、一万人を相手にできるかよ。

馬鹿言うなよ。自嘲が胸の中で膨らんでいく。


「……むーりぃー、って顔」


志保が、しゃがんで覗き込んで来る。アタシと同じ立場のはずなのに、笑ってる。


「なんで、そんな笑ってられんの」

「うーん。そうするしかないから、かな?」


かすれ声のアタシの質問に対し、首を傾げて眉を顰め、舞台上の振る舞いみたいに考え込む―遠慮なく言えば、わざとらしい―素振りを見せる。


「それとも、そうしたいから、かな。どっちだろ?」


志保は、答えを出しては来なかった。表情をコロコロ変えてから、結局笑顔に戻る。立ち上がり一歩離れると、屈伸、伸脚。


「よし」


それから重心を落として、膝でリズムを取り始める。

ゆっくりと腕を回しながらステップを刻み出した志保の足元から、キュキュッ、とリノリウムの床にソールをぶつける小気味良い音がする。


「ほら、アヤちゃん。ウォームアップしましょう♪」

差し出されたその白い左手を見つめたまま、仕方なしに腰を上げ、手を伸ばす。瞬く間に指を絡め取られて、強く握られる。


「……志保」


少し低い体温とわずかな汗、それと小さな震えが、指を交わして繋がれた掌を通じて、アタシの右手に伝わる。
視線は所在なく、志保の短くて綺麗な爪に漫然と留め置かれる。


「……不安だし、緊張はしますよ。解ってます」

「うん」


アタシと志保は、だいたい同じくらいの背丈、視線の高さだ。今覗き込めば、どんな顔をしているかはわかる。
だけど、わずかに動く志保の指先から視線を移すことは、しない。

だって、アタシたちは。


「だって、私たちは。同じじゃないですか」


そう、同じだから。どんな顔してるかなんて見なくてもわかる。そんなに見られて嬉しくはない顔だ。
だから、あんなに笑って、あんなに楽しそうに見せて、あんなに空回りして。自分を、鼓舞するんだ。

「でも、笑いますよ。私。……チャンスだもん、飛び込まなきゃ」


ほんの少し上擦った声。
……演技指導のレッスンで、こんなのやった気がする。不安なとき、緊張するとき、プレッシャーを感じているとき。


「笑うしか、ない、か」


ふと漏れた自分の呟きは、プレッシャーを処理し切れていないことが明確だった。
アタシたちは、向き合って顔を伏せたまま、しばらく黙り込んでいた。沈黙に寄り添うように、ゆるりと右手が解放され、自然、お互いに棒立ちになる。

が、棒立ちは一瞬で。


「……え。……え?」


急に、志保は両手でアタシの顔を挟んで、真正面に捉えてきた。


「アヤちゃん」


不意打ちに泡食ったアタシの顔に、ぐっ、と志保の顔が近づく。


「私、アヤちゃんに言ったよね」


少し垂れ気味の大きな目。いつもはよく笑う口は、次のことばに力を籠めるように引き絞られて。

「……?」

「あれが、私たちのはじまりなんだよ」

「……はじま……あ、ッ、え!?」


ああ。思い当たるセリフがある。
何考えてるんだ。ばーーーーっ、と耳の奥で音がした。血液が身体を走り回った音。

もうダメだ。体温が上がったのを自覚する。特に顔がひどい。


「『私、アヤちゃんがキラキラしてるところを見たいよ』」

「そ」


胸の奥が熱くなる。詰まって、言葉が上手く出てこない。口の中が渇いてる。


「ぅ……水、飲ませて」


どうにか一言だけ捻り出して、水のボトルを手にする。


「……うん」


中身を半口ほど含んで、こくりと喉を鳴らして嚥下する。
からだのまんなかに滑り落ちていくぬるい水が、体温を少しだけ吸収してくれる。

たっぷり深呼吸する。もどかしくてはずかしくて、ドキドキしている。……ちょっとだけな。


「……そ、れを今言、う……?」


何とか紡いだ言葉。志保は変わらずアタシを正面から見つめる。やっぱりくりっとしてて大きな目だ。
……アタシがここで目を反らしたら、それはまあ、何というか。裏切ることになる、気がするから。見詰め返す。


「……今言う、ことば、なんだよ」


そう言った志保の顔は、真っ赤で。だから、アタシたちは同じなんだろう。


「だから!」


……聴こえないフリ、忘れたフリしたいけど。真正面から言われた後にそれはないよな。
緊張とか不安とか全部吹き飛ばすために、自爆覚悟かよ。


「アヤちゃんも! 言え!!」

「……えぇ……」

「……言って、ください。私、ちゃんと笑いたいから」


ああ。大舞台も何もあったもんじゃない。これより恥ずかしい、緊張することなんて、そうはないよ。

――――

小松伊吹、趣味は恋愛映画鑑賞です。現在、ユニットメンバーとの合流のタイミングを失って、パーティションの陰から様子を伺っています。


「何あれ映画のワンシーンか。……千奈美大丈夫?」

「……いや、もう、なんか……身内の恥を……ごめん……」


こちらの椅子に突っ伏しているクールビューティは、先ほどまで声出しをされていた小室千奈美さん、向こうで赤面し合ってる二人の同僚です。
まあ、今はアタシとも実質同僚みたいなもんか。


「あーもう……こっちまで恥ずかしい…… しっかし、伊吹はあんまり緊張してない?」

「一応してる」


本心です。アタシからしたら、千奈美のほうが緊張してないように見えるんだけどね。


「緊張はあるけどさ、ダンスはアイドルやる前から本業だし、コンクールやオーディションと違って勝敗があるわけじゃないし。歌うのは気を遣うなー、ってくらい。そっちはどうなの?」

「もう飲み込めた、はず」

「なーに、手とか握る?」


ひらひらと手を差し出してみるけど、千奈美は肩を竦めて笑う。


「余裕よ、余裕。……礼子さんたちと一緒にオープニング出られるから、かえって自分の中でのスタート切り易いのかもね」


そうなのだ。事務所単独主催のライブなら、オープニングナンバーはその事務所の所属メンバーだけ、というのが通例(というかファン心理的にはそれが筋だよね)のところ、今回は千奈美も参加する。

北条さんが怪我の影響で動きの制限があるから、バランス取りに補填された形ではあるものの、結構珍しいケースだ。


「なるほどねぇ。……あ。じゃああっち行こう、アタシの声出しとウォームアップに付き合ってよ」

「いいけど、一緒に出ないでしょ。何やるの?」

「何でもいいけど。ウィアフレでいい?」

「伊吹、それ好きよね」

「そうだよ。アタシは好きにやりたいって、いつも言ってる」


にかっ、と笑ってみせると、小さく微笑んで、軽く握ったグーを差し出してくる千奈美。なんていうんだっけ……


「そうだ、フィストバンプ。なんか、アヤみたい」

「一緒にいるんだから。似るところだってあるわよ」


こつん、と拳をぶつける。


「同じじゃ、ないけどね」

――――

『真奈美。直前でごめんねー。ちょっと頼みあるんだけど。全体の香盤表持ってる?』

「そりゃまあ、三人出してますから持ってますよ」

『OK、第三控え行って、前川ちゃんとアーニャちゃん見ててくれる? 高峯ちゃんが衣装トラブっちゃって、オープニング終わるまで戻れないっぽいのよ』

「了解」

『千奈美は問題なし、こっちに任せてくれていいから、途中でアヤたちの様子もよろしく』

「元より」

人遣いの荒いことだ。数年前を思い出す。礼子さんと二人であっちへ行ってこっちへ行って、言われるまま仕事をこなす。


「アヤ、志保、伊吹。入るよ」


でも、あの時とは違って、ここには私の意思があり、別に誰に押し付けられているわけではない。


「お疲れ様でーす」

「お疲れ。すまんが、私はオープニング終わるまで第三控えにいる。君たちの出番にはステージ裏に付くから安心していい」


手短に用件を伝える。伊吹はドリンクを片手に。アヤと志保はプリンをつついて。
ふむ。三人とも思ったより緊張してないな(ところで、そのプリンは私もまだ食べていないぞ)。


「ありゃ。まあ、こっちは大丈夫っすよ」

「もぐもぐ。ごくん」


まあ、安心したよ。


「もっと青い顔でもしているかと思ったが、出来そうかな」

「どんなに緊張したって焦ったって、舞台が変わるわけじゃないですよ。……やれます、大丈夫です」

「うふふふふ。そうだよね♪」

「ん、そうか。そうだな。君たちが……うん、楽しんでくれれば。何よりだ」


今回はチャンスだ。呑まれるんじゃないぞ。……とは、言わない。そう。どうやるか、どうしたいかなんて、究極的には己のものだ。

そう、誰に押し付けられるものでもないんだ。

――――

「あれ、木場さん。どしたの?」


三人を激励してから第三控室に入った私のあいさつに、みくはきょとんとした表情を返す。そしてもう一人。


「ドーブラエ ウートラ。お疲れ様、です。おひさしぶり、ですね。キバさん」

「高峯さんが衣装トラブルで、オープニング終わるまでこっちに来られないそうだから、代理でね」


落ち着いた声で挨拶を返したアナスタシアは、みくと共にウォームアップを終えたのか、
ほんのりと頬に赤みを挿していて、上手く緊張感と折り合いをつけているように見える。


「ルームスタッフさんから聴いたし、用事も聞いてもらえるから大丈夫ですよ。でも、わざわざありがと」


予備のパイプ椅子を広げて、みくの近くに席を定める。


「何か手伝うことがあれば、と思っていたけど心配要らないかな。しかし、トラブルね」

「スカートのファスナーが噛んじゃったんだって。……私たちと出るときに一回着替えるから、その間に何とかするんじゃないかな」

「そこまで聞いてたのか。参ったな、私が特にすることなんてないじゃないか」

「アー…… 大人のひとが、いると。……ウスポカイヴァツシャ、落ち着き、ますね」

「……そう、だよ。だから、木場さん。ありがとう」


苦笑いする私に、アナスタシアが、文字通り言葉を選んで呟くと、みくは頷いて同意を示した。
そうだな、君たちは少女で、私は大人だ。


「ふむ」


そして、そんな大人ならではの悪戯心が首をもたげる。みくが手に持ったままの猫耳カチューシャを拝借する。


「何、大人らしく役目を果たしているだけなのにゃあ」


にゃあ。にゃあにゃあ。みくがステージ上でよくやる、ねこぱんちのポーズ。


「礼は要らないさ、仕事なのだにゃあ」


顔の前で猫の手を作って構えて見せる。意外と楽しいな。
あっけにとられた二人のうち、みくがハッと我に返って、私の頭からカチューシャを取り去り、自分の頭に付け直す。


「……ハラショー! キバさん、それ、とても、楽しいです!」

「そ、それ絶対ステージの上でやらないでよ!? みくたちの面目丸つぶれにゃあ!」

「アー… メンモク? ですか?」

「ふふ、そうだな。隠し芸にしておくよ」

「ホントにやめてにゃ!!? いくら木場さんでも……」


釘を刺してくるみくを尻目に、タイムキーパースタッフの声が飛ぶ。


『開演5分前、注意事項アナウンス入りまーす』


「……始まるよ」

会場内モニターに目を運ぶ。追って、二人の声が止む。視線がモニターに注がれたのだろう。
ライトが揺れる客席の照明が落ちて、歓声が上がる。


『本日は、スペシャルライブ“ジューシーホーリーナイトパーティ”にお越しいただき、誠にありがとうございます。

 開演に伴いまして、お客様に安全にライブをお楽しみいただくため、いくつか注意事項をお伝えいたします――

――――

 ――以上、ビューティーアリュールの松山久美子がお送りいたしました! それでは間もなく開演です!

 みんな、楽しんでいってね!!』


アナウンスが終わると、再びの歓声と久美子の名前を呼ぶ声援、そして拍手喝采。

そのまま、ジャズ調のBGMとスクリーン演出が始まると、拍手は手拍子に替わり、ボルテージがみるみる高まっていく。


『遊佐こずえ』『二宮飛鳥』『浜川愛結奈』『東郷あい』『高峯のあ』『北条加蓮』『速水奏』


加蓮のカットが出た際の歓声は一際大きいものだった。無理もない、怪我を押しての登壇だ。


『高橋礼子』『And More...!!』


最後、ゲスト陣のシルエット映像がきらめく光の粒になって消え、全ての演出が終わり。


『お願い! シンデレラ』のイントロと共に、幕は上がった。

――――

レギュラーはアヤ志保千奈美と伊吹です。

地の文はフォーマットが難しいですね。

アヤ志保は「夢だよねー」と言ってはいたけど、
現状楽しんでたしあんまり上に行くことを意識してこなかったから、
いざ初めての大舞台を前にビビってた感じかなあ。

千奈美は結構しっかり「でっかくなるんだ」って思ってる節があったし、
何度か壁にぶつかってたから、その辺で意識違う気がする。
礼子さんに見込まれてるのも自信になってるのかね。

…すまない…好きな話なので、このままでは長文になってしまう…
とても全ては書ききれない…本当にすまない…

――――

『はぁーい! 皆さん、こんばんはーーッ!!』


歓声を一身に受け、笑顔で答える礼子さんがMCを進めていく。


『始まりました、“ジューシーホーリーナイトパーティ”! オープニングは“お願い!シンデレラ”を聴いていただきまして。いやあ……広いわね!!』

『全くです。礼子さんは勿論でしょうが、私たちも感慨深いですよ』

『そうでしょそうでしょ~ ほら凄い歓声! じゃあ、今このタイミングで、メンバーに自己紹介をしてもらっちゃおうかな! まずは、東郷さん!』


客を煽ってノせていきながら、東郷さん、高峯さん、愛結奈さんと順に自己紹介を促していく。


「礼子さん、楽しそう」


呟くみくの声には、少し微笑みが混じっていた。


「みくも、楽しくやらないとね」

「ダー。ウルィプカ…笑顔、大事にします」

「ああ。笑っていれば、だいたい何とかなるさ」


そう言って、みくとアーニャに目を向けると、視線に気づいて合わせてくる。


「アイドル、なんだから。笑おう」


満面の笑みを見せてやった。


どんな時でも笑うのさ。アイドルだから。

――――

この一年で、遊佐こずえの評価は随分と変わった。


曰く『神秘的な雰囲気がなくなった』。

曰く『コメントが上手くなった』。

曰く『歌唱力が上がった代わりに世界観が変わった』。


多分、どれも当たりだ。

約二年前、デビュー当時は、本当に天才性を露わにしていて、鈴のような歌声も、風に舞う鳥の羽と評されたダンスも、わずかな表情の変化だけで現場を呑み込む演技力も、

露出は多くなかったけれど、表に出れば確実に爪痕を残した。

『何考えてるかわからないのがいい』『歌もダンスも他のアイドルにはない雰囲気がある』なんて評価も頷ける、いわゆるユニーク―他にいない、という意味―な、オンリーワンのアイドルの一人だった。

でも、今はそういう評価は付かない。

実際には、歌なら声量が上がったし、ダンスならスタミナがついて正確になったし、演技力だって色んな形の表現を身に付けて幅が広がっている。

二年前に出来たことのうち、出来なくなったことはない。

それでも、遊佐こずえは、ユニークではなくなったんだ。


「アヤ」

「おう」

「スタンバイだよ」

「そうだな。大丈夫?」

「平気。アヤたちは?」

「平気さ。志保も伊吹も、準備できてる」

「ん。いくよー」

「「「おーっ!」」」


だけど、それこそが、あたしにとって『成長する』ということなんだ。

あたしの中から、『子どもらしさ』が零れていくのを、毎日、感じている。

背が伸びる度に、新しいことができるようになる度に、頭の中で言葉を整えるのが早くなる度に、あたしは成長という単語の意味を噛み締める。


あたらしいこずえを、11さいのこずえのことをすきだったふぁんが、どうおもうかは、わからない。


だけど、13歳のあたしは、出来ることを全部ぶつけたい。


全力でやってやる。アイドルだから。

――――

「こずえちゃん、ノッてるにゃあ……!」


モニターを見つめるみくの、感心と驚嘆と、わずかな焦燥を孕んだ声。


「羨望……いえ、対抗心?」

「もっちろん! 頑張るからね!! うう、緊張してきたぁ……!」


言葉ほどは緊張した様子もなく、ストレッチにも余念がない。良い傾向だわ。


「適度なストレスは、パフォーマンスを向上させる。推奨するわ。アーニャ。ペアでストレッチを」

「タカミネさん… よろしく、お願いします」

「名前でいいわ。貴女たち二人とは、長く組むつもりだから。対等でありたい。それと、ストレッチの前に」


自分でも、気難しい雰囲気のある外見だとは自覚している。そしてその第一印象に連なる性質は(全てではないが)事実だ。

だが、年下の少女二人に、ゲストというプレッシャーを負わせる私が、歩み寄らないわけにはいかない。


「それほど多くの交流もなかった貴女たちに、ユニットの結成を依頼しておいて、事前練習もライブ告知の仕事も少なくて」


深く、深く頭を下げる。


「……集合する機会を、相互理解の時間を、潤沢に用意できなかったこと。本当に……償いの言葉もないわ」


私が忙殺されていたこと。二人の学校のこと、アーニャの事務所のこと。そんな建前は関係ない。成すべきことを怠った、それは私の責任だ。


「え、ええっ!? そ、そんなに、謝らないで、くだ、さい……?」

「ニェット… 謝る、しなくても大丈夫です。私、楽しみにしていました! 前のお仕事でも、とても、親切にしてくれました」


しゃがみ込み、顔を覗き込んでくるアーニャ。にっこりと笑って私の手を取った。


「タカ…… ンー…… ノア、が。仲良くしようと、してくれているの。わかりましたから」

「そ、そう! 大丈夫ですよ! ぁぁいや、ですよじゃなかった…… だッ、大丈夫だよ!!」


みくは、猫の手を作って私の肩をつつき、空いていた左手を取る。徐に顔を上げた私の視線に入ってきたみくの表情は、やはり笑顔。


「みくたちとのあにゃんは、そう、トモダチなのにゃ!!」


両手の先にいる友人たちに向けて、私は口の端を上げながら、意思を伝えた。


「ありがとう」


友人二人は、顔を見合わせてもう一度笑った。


「ストレッチが終わったら、笑顔の練習もしてみるといいにゃ」

「ダー。ステージでは、笑顔、大事です!」


……やはり笑顔も必要だろうか。アイドルだから。


――――

「みくもアーニャも、あんなにやるんだ。また、ライバル増えちゃうなー」


肩を竦めて笑うけど、言葉の割に穏やかな笑顔。


「そうね。加蓮は、どんな気持ち?」


わざわざ見せてる矛盾なら、つついてあげないとね。


「うーん。……どう見える?」


質問で返すの、好きね。でも、そういうときに私がどう答えるか、わかりそうなものよね。


「嫌ではなさそうだけど」


まあ、解ってて振ってきたのかな。


「嫌ではないなー。そんなに嬉しくもないけどね」

「ふぅん? どうして?」

「そりゃまあ、特に同年代だと。被ることもあるし」


それはそうね。至極もっともな意見だと思うわ。


「あと、同僚だからって、友達になれるかどうかはね。また別だし」

「それはそうだけど。気にしてるの?」

「今はまだ、何とも思ってないよ」


事務所が違うアナスタシアさんはともかく、所属になる前川さんにこの態度は、少しだけ心配もあるけど、私が気に留めるのは…… 今はまだ、おこがましいかな。


「……ねえ、奏」

「何?」

「“Monochrome Memory”と“Nobody Knows”。どのくらい好き?」


私たち二人のユニット、モノクロームリリィの代表曲。今日の演目にももちろん含まれている。そんな二曲への思い入れを問うなんて。唐突な質問に、思わず口から言葉が洩れる。


「……変な質問」


苦笑してから、目を伏せて、心の中から言葉を摘み取る。嘘にならないように、大事に、大事に。


「どっちも、大事な。私たち二人の歌よ」


視線を、加蓮の双眸に絡ませて。


「それ以上の意味が必要?」

「……要らない」


しばしの無言。恐らく、私の言葉を待っている。同じ質問を。儀式みたいなもの、なのかしら。


「加蓮は?」

「比べたくないよ」

「“Trancing Palse”も。私は、好きよ」


さっ、と加蓮の頬に紅が挿す。


「……それは、アタシのほうが好きだよ」

「解ってる」


私は視線を外して、ボトルのストローから水を一口。


「比べないでいてくれて、ありがとう」


椅子を立って、加蓮に手を差し出す。手を取って立ち上がる加蓮に寄り添って、脚の負担を助ける。


「今日ね、二人、呼んだんだ」

「知ってる。差し入れ、来てたわね」


渋谷凛と、神谷奈緒。二人名義のスナック菓子の差し入れが、ケータリングスペースに並んでいたことを思い出す。


「絶対に、負けたくない」


加蓮はぼそりと呟いて、私が離そうとしたその手を強く握った。


「……誰に?」

「わかんないけど。負けたくない。……多分、礼子さんにも、みくにも、奏にも、凛にも奈緒にも、他の誰にも、他の何にも、どんなものにも」


ああ。そういうことよね。怪我を押して、曲も振付も減らして、それでもファンの前に立つ。私たちは、戦ってるんだ。


「……大丈夫。あなた自身が育てたアイドルよ」


気休めに聴こえたならごめんなさい。でも、速水奏の、数少ない本音よ。


「……アタシだけが、アタシを育てたわけじゃないよ」


ようやく私の手を離して、クスリと笑った加蓮の顔は、いつもより神々しくさえ見えて。


「大丈夫。あなたが育てたアイドルだよ」


そう言って、移動に付き添うスタッフに掴まってスタンバイ位置に向かう加蓮に、私は言葉を返せなかった。

私だけが、貴女自身だけが、貴女を、私を育てたわけじゃない。貴女も私も解ってる。

今までの全てが私たちを築いてきたんだもの。私たちはいつも、全てを懸けてる。


私たちは戦う。アイドルだから。


――――

モノクロームリリィ。憧憬の形を示せ、というなら、ボクにとっての答えは彼女たちだ。

伝説の……とまでは行かないが、ボクがプロジェクト:シンデレラガールズを知った切っ掛けのユニット。

当時は、自分があんな煌びやかな世界に並び立とうとするなんて、露ほども思っていなかったけれど。

二人がいなければ、ボクはこの運命の糸を手に取ることはなかっただろう。

何者でもなかったボクが、外界にボクを示すための『何か』をカタチにするために。

強く、強く輝く彼女たちに、ボクは憧れた。

ボクは、きっと彼女たちに追い付きたいんだ。


「ちょっと見たことがないくらいの気迫だね」


東郷さんは、モニターを見つめて息をついた。


「奏くんか、それともトライアドプリムスか。……はたまた、怪我か。何が彼女を、加蓮くんを変えたんだろうね?」


北条さんを評する内容は、息を呑んで言葉を継げないボクの心を代弁するようだった。

モニターの向こうからでも理解する。客席は静かで、エメラルドグリーンのライトの動きも大きくない。それは北条さんのパフォーマンスに圧倒されていることに他ならない。


「何の喩えも見つからない。これを、煌きと呼ぶんだね。……感服してるよ」


これまでボクが蓄えてきた語彙は、今のボクの心情を表すのに、何の役目も果たそうとはしない。

ただ、心のいちばん外側ににじみ出た、何の飾りもない言葉だけが、ボクの感情の波形を外界に示す。

乱れに乱れた波形。速水奏と北条加蓮の表現を目の当たりにした二宮飛鳥の、悔しくて、嬉しくて、楽しくて、苦しい、ぐちゃぐちゃになったこころのかたち。


「ボクは」

「…?」

「ボクは悔しい」

「どうしてだい」

「……単純に、CDの売上だけなら負けてないのに」


数ヶ月前、『Summer Star Stories』という企画に参加した折の話だ。ボクが参加した『Antares』と『Milky Way』は、今年度のセールスランキングでも上々で、担当曲については単独配信の話も上がっている。

翻って、モノクロームリリィだ。この一年、ユニットでの新作のリリースはなく、過去の実績も、活動において右肩上がりのボク(正確にはダークイルミネイト)にとって、それほど高い壁と捉えるほどではない。

順調に数値を伸ばせば―そして、順調に伸びるだろう―比肩できる実感がある。それでも。


「敵わない。敵う気がしない。加蓮さんの気迫にも、奏さんの存在感にも。説明もできないのに」


東郷さんは何も言わない。

ボックスティシュを差し出されて、雫がいくつも頬を伝っていたことに気付く。


「……恥ずかしいところを見せたかな」

「目。こすらないようにするんだよ」


忠告を守り、瞼や頬をティシュで柔らかく抑えれば、涙の跡がぽつぽつと刻まれる。


「……彼女たちは、真のアイドルになったんだなあ」


目を細めた東郷さんは、モニターから視線を外さないまま、溜め込んだ考えを少しずつこぼすように、丁寧に、ゆっくりと呟く。


「誰かの憧れになることは、きっと、アイドルとしての目標の一つだから」


東郷さんが、そっと、ボクと同じように目尻を抑えたように見えたのは、錯覚だったのだろうか。


「私も、君を……いや、誰かを泣かせるようなパフォーマンスを、したいね」

「……ボクもだ。負けたくない」


ボクの発した言葉は、東郷さんには、対抗心や誇りのように聞こえたかもしれない。


「いい言葉だね。さ、出る前にメイクさんに確認してもらうんだよ」

「……そうするよ」


何に『負けたくない』のだろう。東郷さんに?

……多分、事はそう単純でもない。自分への宣誓でもあるんだろう。


憧れも夢も、一種の闘争だ。なればこそ、諦観はしないさ。アイドルだから。


――――

「ヤバくない!? あれ」


愛結奈のテンションが若干おかしい。

とはいえ、この大きさのハコで、事務所のオンリーフェスだ。無理もない。

それに何より……


「うん……モノクロームリリィの二人も相当だったけど……二宮さんも入り込んでるなあ」


久美子の言う通りで、出演者のギアの掛かり方が中々尋常じゃない。ピンでモニターに抜かれたときに解るんだけど、眼力ね。

目に現れる力の入り方が、明らかにいつもと違うのよね。


「私たちもアゲていかないとね。礼子さんには恥かかせられないし、そもそも私たちのためにね」

「ん、良い顔してるじゃない」


愛結奈も、軽い緊張感と高いテンションを保った表情だ。


「ワタシ、今回って結構決意表明みたいなところあるからさ」

「決意…… えっ、移籍でもするの?」


久美子のそれはボケのつもりなのかしら……


「むしろ逆! ……バイト辞めたのよ。もう、アイドル一本よ」


愛結奈の返答に、驚愕する久美子。私は、バイトの話しなくなったから、何となく予想は付いてたけど。


「貯金が出来たから?」

「それもあるけど。まあ、礼子さんとガッツリ話させてもらってね」


「え、えぇ……今になってそんな重大なこと……」


久美子のショックが大きい。軽く背中をさすってやる。


「社長が、本当に、今回のライブと…… あと事務所をね、大事にしてるって解ったワケ」

「それは解るけど」

「だから、ワタシも礼子さんのコト、ちゃんと支えたい、と。思ったのよ」


頷く私。の横をすり抜けて、久美子が愛結奈の手を取る。


「愛結奈」

「う、うん?」

「私、私っ…… やる。やるわ。任せて。貴女の覚悟を台無しになんて、絶対しない」


熱っぽく語る久美子の目は、燃えていた。そう、意外と熱血タイプというか、根が単純というか。


「それに、気付いたのよ。練習で、あんなに無様を晒したんだから、もう怖くないわ。キレイな私を見せてやるんだ」

「フフッ、ありがと。……千奈美は、何か誓いの言葉みたいなもの、ないの?」


話題を振られた。一つ首を傾げて考えてみる。


「余裕よ……ってことは、ないか」

「ないの!?」

「でも、ま。やってみせるわよ。無様を晒したくはないし、それに……私をここに立たせてくれた人たちに、その選択の正しさを示したい」

「いいわね。それでこそ、ワタシのパートナーたち! ……なんてね♪」


っていうか、負けず嫌いなのよ。アイドルだから。


――――

着替え、ヘアセット、メイク直し。全て終わって第二控室に入ったアタシを迎えたのは、一年半ぶりのメンバー。


「お疲れ様。遊佐さんとのステージ、よかったわよ」

「あれは、こずえの仕事ですよ」


声を掛けてくれた千秋さんは微笑んで、目を細めた。


「そういうことにしておくわね」

「泣いたわよ、って。言わなくていいの?」


千夏さんの横槍。アタシは思わず、えっ、と変な声を上げて千秋さんの顔を見直す。


「ッッ、そ、それは…… その…… ええ。はい。どうしてかしらね、遊佐さんと二人で、笑顔で顔合わせてるところを見たら。何故か」


千秋さんの素直な評。同じアイドル、しかも自分のデビュー当時の同僚が、今の自分のステージで泣いた、という。ファンが泣いた、のとはワケが違う、気がする。


「……あ、ありがとう……?」

「なんでおっかなびっくりなのよ」


苦笑いする礼子さん。……トレーナーさんが、膝のテーピングを直してる。


「いや、なんか……慣れなくて。礼子さんは、膝、どうですか」

「幸い、今日のところは痛みはないわね。ま、有ろうがなかろうが、ここからは全部やるわよ」

「正直、無理はさせたくないんですけど」


アタシの遠慮がちなつぶやきに、あいさんが横で肩を竦めた。


「みんなそう思ってるよ。だけど、多分、我慢させるほうが、無理なのさ」


礼子さんは、憂慮を払いのけるように手をひらひらと仰ぐ。


「流石に今回は許してよ。まあ、ほら。このステージはね、私の夢なのよ」

「夢」


その言葉は、礼子さんにとったら、どんなに重いだろうか。


「無茶苦茶なオファーもあって、でもお金とコネが欲しくてガンガンやってさ」


木場さんとアメリカを仕事で駆け回り、帰国するやジューシーパーティの社長として旗印となった人。


「会社作ってからも、いーっぱい色んな仕事して。私だけじゃなく、みんなにも色んな仕事してもらって。泣かれたこともあったなあ」


色んな願いや想いを背負ったり選んだり、たくさんの人と出会って別れてぶつかり合って、たくさんの取捨選択を繰り返して。


「でも、泣いたり怒ったり、そういうのをしたりされたりして、それでも私が振り続けた旗の下、やっとこのハコを埋めるに至ったわけよ」


プロジェクト:シンデレラガールズが興る前から走ってきた人にとって、その“夢”は、どんなに重いだろうか。アタシは何も言えない。


「まだまだ、たくさんの夢があるし、それがどうなるかは解らないけどね」


顔を上げて、モニターを見据える礼子さんの目は、とても穏やかだ。


「でも、今、カタチになったこの夢のひとつを、フワッとした感じで終わらせたくないのよ」


みんなの視線が集まる中、礼子さんは改めて視線を自分の膝に落として、そっと、テーピングでガチガチになったそれを撫でる。


「どうせ夢を見るなら、全部投げ出して、全身全霊で夢を見たい」


衣装さんが、テーピングを隠すための黒タイツを履かせると、膝の古傷は、まるきり無いものとして姿を隠す。本当は、そんなことないのに。


「三十路もとっくに過ぎたって、社長の肩書があったって、膝が壊れてたって、私は」


四人と、そこに居合わせたスタッフたちの顔を見渡した礼子さんは、静かに、諭すように言葉を紡ぐ。


「アイドルだから」



アタシは、本番前だっていうのに、涙が止まらなかった。



『全部投げ出して、全身全霊で夢を見る』

そんなこと、アタシは考えたことがなかった。

今の生活が楽しくて、不満はなくて、不安もそんなになくて。

叶いそうもない大きな夢は、見上げるだけにしておいて。

小さな夢に軽く触れて、満たされたような気分を味わうだけで、その終わりへと漫然と歩んでいたんだ。


礼子さんは、速水さんは、北条さんは、この事務所のみんなは、礼子さんが見込んだ人たちは、違う。

壁を恐れない。不可能を恐れない。戦うことを恐れない。

夢が叶うか叶わないかは結果論だけど、夢を持つことを否定したりはしないんだ。


燃え上がる心を、自ら抑えたりは、しないんだ。

夢を見ることを、恐れたりは、しないんだ。


アタシの流れる涙は、止まらない嗚咽は、きっと情熱が燃え上がる証だ。

今、はっきり思った。

この胸の、真っ赤に燃える熱い炎を、全力でステージに、ファンに、アタシ自身にぶつけたい。

そうだよ、アタシだって。ただの喫茶店の店員じゃないんだ。



アイドルだから!!!


――――

レギュラーはアヤ志保千奈美と伊吹です。

……今回、志保と伊吹が3分の1行しか喋っていない……? レギュラーとは……?

【補足】
インタビューで「昨年の8月にデビューした」という発言と、
「8月のイベントでMCをした(=最初話していた仕事)」という発言をしています。
その後、年末年始の帰省、夏祭り等を経て今回のクリスマスライブなので、
開始時点でデビュー(初期設定年齢)から一年以上、劇中では一年半ほど経っていることになります。

長くなってしまって、時系列や関係性を読み取りにくい部分や、矛盾している部分があると思います。
不明な点や解釈に迷うところ等、ご質問には答えられる(≒考えてある)範囲でお答えします。

保守です。
月産のつもりで書いてたけど間に合わなかった。

新宿地下のデレステ展示、ホテムンの背後が木場さんとアヤ(と亜季さん)だったんですよ。(グラジオラスちしき


「いっぱい踊って、いっぱい歌って。楽しかったなー」


とっくに出番が終わっていた伊吹ちゃん。もう、シャワーも着替えも全部終わり、ケータリングから回収してきたコーラにストローを立てて、ぼんやりとモニターを眺めてる。


「まだだろ」


ついさっき、レッドバラードとしてのパフォーマンスで今日のお仕事が終わったアヤちゃんは、まだバッチリキメキメのままだ。

タオルを首にかけて、真剣な顔でモニターを見つめる。


「千奈美ちゃんが、いるからね」


そして、伊吹ちゃんと一緒に出番が終わった私は、というと。シャワーを浴びたりメイクを直したりという時間は惜しくて、汗の始末だけして、ライブTシャツに袖を通している。プリン美味しい。


「お疲れ様」


控室に来たのは、黒川さんと相川さん。私物だというアクセサリのいくつかを外しただけで、アヤちゃんと同じようにまだ臙脂色のドレス(レッドバラードの衣装だね)を着たまま。


「お疲れ様です! かっこよかったですよ♪」

「ありがとう。槙原さんたちもね。ソファ、座らせてもらうわね」


そう言った相川さんは、飲み物のボトルとコーヒーゼリーをガラステーブルに置いて、革張りの椅子に腰掛けた。


「始まる」


モニターの向こう。MCが終わり、ステージの照明が一度落ちる。客席では、次の曲を期待しているのだろう。コンサートライトがさざめく。

もちろん、私たちは知ってる。千奈美ちゃんにとって…いや、私たちにとって、因縁の曲だ。


「……見に来たのかな」

「確認はしてないけど……来てくれてるといいね」


アヤちゃんの言葉に、私は小さく頷いて返す。

モニターに映るステージでは、千奈美ちゃんをセンターに、浜川さんと松山さん。三人のシルエットが伸びる。

艶っぽく鳴るエレキギターのメロディと、軽快さを意識してジャジーに弾むドラムワーク。

三人のコケティッシュなダンスと同時にステージを切り裂くのは、青系のライトを中心にした、クールで切なげな演出。


「あれ? 持ち歌じゃないわよね? どこかで聞いたことあるんだけど……」


黒川さんが首を傾げる。そうですよね、さすがにレッスン見る時間ないですよね。


ステージの上の三人が、見事なダンスと歌唱で客席にどよめきを広げていく。

浜川さんの強さを押し出すキレのあるダンス、松山さんの繊細で美麗な表現。

そして千奈美ちゃんの、二人を引っ張り上げながらアリーナ全てを薙ぎ払う、強烈な圧の歌声。


「……“夜明けのハイペリオン”」

「誰の曲?」


意外なことに相川さんが曲名を答えてくれて、黒川さんがもう一度質問を乗せて来る。


「“サイレントウィンド”です」


モニターから片時も目を離さないアヤちゃんが答えた。


「“サイレントウィンド”の2ndシングルのA面。一年半前、あいつが初めて制作に関わった楽曲で」


アヤちゃんは涙声で続ける。


「あいつが、千奈美が、歌の仕事で、正面から負けて、悔しくて一晩泣いてた」


堪え切れない様子で、何度か鼻をすすって。……アイドルのする顔じゃないね。


「でも、今日は……今日は、さぁっ、笑顔、で、かっこよくって」


ぐずっ、と声を詰まらせたアヤちゃんは、伊吹ちゃんに、ぽん、と背中を叩かれ、言葉が途切れた。

もう、言葉を紡ぎ出すには限界みたいで。涙を溢れさせながらも、口を真一文字に結んでモニターを見詰めているのは、全て見届けてるために崩れてしまわないよう頑張っているから、なんだろう。

代わって、伊吹ちゃんが口を開いた。


「今日の千奈美、今まででいちばんキラキラしてる」


そうだね。キラキラしてて。

私たちが知ってる千奈美ちゃんじゃ、ないみたい。


――――

To:小室さん 今日は [お呼びいただいてありがとうございました。クロックワークボイジャー、素敵でした。あと、カバーでハイペリオン来るとは思ってなかったので、本当にびっくり。音葉さんなんてあのあと「なまらびっくりした」って言ってました。ひみつですよ。]

To:小室さん 追伸 [今度また一緒に歌の仕事したいです。事務所に掛け合ってみますね。次はあんな騙し討ちしませんし、させません。     一年半前は、ごめんなさい。]


――――

To:グラジオラス小室 (無題) [お疲れ様です。お招きいただきありがとうございました。ハイペリオン、楽しそうに歌ってもらえて。なんというか、とても嬉しかったです。文香さん共々、控室に挨拶行けなくて申し訳ありません。またいずれ。   OTOHA]


――――

愛結奈「終わったーーーッ!」

久美子「愛結奈、千奈美、お疲れ様!! キレイだったわよ!!」

愛結奈「久美子のおかげよ! さーてと乾杯のビール貰ってくるわねーー!」

久美子「はーい私カシオレでよろしく…… 千奈美?」

千奈美「……うん」

久美子「……千奈美っ」

千奈美「ん? え、なに?」

久美子「大丈夫?」

千奈美「え、う、うん。終わったんだな、って、なんか……終わっちゃったんだーって……」

久美子「感慨に浸る感じ?」

千奈美「……かな。お客さん、凄かった。まだ席にたくさんいるし」

久美子「そうね、すぐ出られないくらいだもんね」

千奈美「終わったんだー……」

久美子「……お疲れ様。三人でステージに立ててよかった。あなたのソロ、裏で観られてよかった。……宝物だわ」

千奈美「え、あ、ありが、あ、あれっ、あれあれ」

久美子「えっ、ちょっとなんでこのタイミングで急に泣くのっ、わータオルタオルー! キレイなメイクが台無し!」

愛結奈「ただい…… わーお。早めにシャワー浴びといでね。……改めて、二人とも、お疲れ様」


――――

加蓮『お疲れ。今日のパフォーマンス凄くよかったよー過去イチじゃない? で、無事に終わった?』

飛鳥「……整理しよう。まずはお疲れ様、そしてありがとう。最後の質問については、どうしてボクなんだい」

加蓮『奏が着替え中だったら電話掛け損じゃない』

飛鳥「なるほど、とっくに自らの役目を果たし終えたボクならば、夢想を脱ぎ捨て、さりとて現実に還るでもなく、狭間に漂っているだろうと。その予測は正しかったわけだね」

加蓮『そっちの様子どう?』

飛鳥「先程、舞台の裏でささやかな乾杯を捧げたところさ。大人たちの多くは退廃に身を任せているよ……ボクは林檎ジュースだがね」

加蓮『退廃って。ぐでんぐでんなわけじゃないでしょ』

飛鳥「そ、そりゃそうだけど。……ああいやそれは置いておこう。時に北条さん、脚の傷が疼くようなことはないかい」

加蓮『もしかして心配してくれてる? 今日のことは特に影響なし、だってさ』

飛鳥「貴方は……ボクにとって、尊敬に値する人だからね。刹那の輝きのために、傷をより根深くしたなら…… それは悲しいことだから」

加蓮『そっか、そうなんだ。なんか照れちゃうかも。でもこれでまた、ちょっとダンスはお預け』

飛鳥「影響がなかっただけでも、充分に幸運さ。ボクは安堵してる。速水さんも、安心しているんじゃないかな」

加蓮『ライバル増えちゃうのに、嫌だなあ』

飛鳥「…ライバル?」

加蓮『ライバル。奏も飛鳥もだし、みくとかアナスタシアとか、あと凛とか奈緒とか、他にもたくさん』

飛鳥「……なら、ボクは歩みを止めずにいるよ。先に行く」

加蓮『ふふっ、負けないよ。さて、そのためにアタシは寝ます!』

飛鳥「安らかな眠りを…… ああ、その、北条さん」

加蓮『ん?』

飛鳥「今日のボクの表現がこれまでで最高だったというなら、それはあなたのおかげでもあります。ありがとうございます」

加蓮『……こちらこそ、ありがとう』


――――

礼子「テキーラガンガンいっていい?」

あい「営業と総務と経理に怒られるよ」

のあ「先んじて営業部長とマネージャーに確認してある。所長については、明日明後日は実務もアイドル業もオフ、完全オフ日で構わない、との事。……前後不覚になるリスクを容認するかどうかね」

礼子「前後不覚って!」

あい「調子に乗ったときは、前後不覚になるまでいっている、よね?」

礼子「……はい……」

のあ「近日、所長は充分に張り詰めていた。今日ばかりは、私は反対しない」

あい「まあ、私も強くは反対しないよ。……ただし、ホテルに戻ってからだ」

礼子「! 話わかる! それじゃ一足お先に~♪」

のあ「……機を見るに敏、ね」

あい「元気な人だなあ、本当に」

のあ「だからこそ、興味深い人よ。……貴方も、彼女たちの元には行かないの?」

あい「……酒入れて話すようなことじゃないよ。私にとっては、特にね」

のあ「カクテル一杯でふわふわするものね」

あい「言わないでくれ」


――――

みく「木場さんん」

真奈美「お、着替えてきたのか。お疲れ様」

みく「アーニャちゃん、入れ替わりで着替えに行っちゃったから。話し相手になって」

真奈美「随分率直に来たな」

みく「……アーニャちゃんとのあさんと、やっていけるかなあ」

真奈美「考えて決めたんじゃないのかい」

みく「考えたつもりだよ、たくさん」

真奈美「お客さんの反応は、どうだった?」

みく「めっちゃよかった!! 盛り上がってくれた! …と思う」

真奈美「それなら、レッスンは辛かったかい」

みく「うーん? いつもと勝手が違うから、大変ではあったけど……辛くはなかったよ。新しいこといっぱいで、楽しかった」

真奈美「その二つの気持ちは、信じてもいいんじゃあないか」

みく「……うん」

真奈美「何、上手くいきそうになかったらいつでも相談に乗るぞ。うちに来てもいい」

みく「はっ! みくを誘い込もうって魂胆だね! そうはいかないよ! ……いつもいつも、ありがと」

真奈美「ふふふ。こう見えて、アイドル前川みくに期待しているうちの一人だからね」


――――

奏「小松さん、ひとり?」

伊吹「ひとり。二人ともシャワー行っちゃったから暇になっちゃったよー。さっき千奈美も行っちゃったし木場さんはあっちだし」

奏「それじゃ、独り者同士で乾杯しましょ」

伊吹「はいよ。悪いねーこっちだけアルコールで」

奏「気にしないで。こんな想いもあと一年だけよ」

伊吹「そだね、乾杯。……Hotel Moonside、よかった。凄くよかった。アタシもあれで踊りたいなあ」

奏「踊ったらいいわ。誰も邪魔なんてしないから」

伊吹「じゃあ、速水さんが焦るくらいにカッコよくキメてみるかなーははっ」

奏「小松さんの本気のダンスじゃ、私では流石に太刀打ちできないかな」

伊吹「ダンスだけならね。でも、あの曲は速水さんの曲だからさ」

奏「やめておく?」

伊吹「歌も含めて練習しとく」

奏「期待してる、って言えばいいのかな。それとも……」

伊吹「待っててよ」

奏「……待ってるわ。気が変わらないうちに、よろしくね」

伊吹「任せて! 今までの、ローカルテレビだけで満足していた小松伊吹はおしまいなんだからね!」

奏「命短し 輝け乙女 …なんてね」


――――

アヤ「……終わったなー」

志保「終わっちゃったね」

アヤ「思ってたより、いっぱい泣いちまったなあ」

志保「頑張ったもんね」

アヤ「自分のことだけじゃなくて、な」

志保「千奈美ちゃん、凄かったなあ」

アヤ「うん。それが、嬉しかった。別に、もう鷺沢さんたちに変な感情なんてないけど…やっぱりさ」

志保「あの時を思い出した?」

アヤ「…どうなんだろう。あの時から今まで引っかかったままだったものを、飲み込めた? 気がする」

志保「よかったね。……あとはね、観てたお客さんの反応だと思うんですよ」

アヤ「歓声、裏まで聞こえたしな」

志保「お客さん、ほんとに、たーーーーーッくさん! だったよね」

アヤ「…でかいハコってすげーな。みんな、あんなに笑顔で観てくれるんだ」

志保「私、たくさん目合わせたよ! …お客さんも、みんな楽しそうな顔してた」

アヤ「ファンの顔なァ……キラキラしてたよ。アイドルかよ! ってくらいにな。嬉しかったなぁ」

志保「うん」

アヤ「店もいいんだけどな。こういうところ、また立ちたいなあ……」

志保「そっかあ……」

アヤ「こずえが、言ってたんだ」

志保「うん?」

アヤ「『遊佐こずえはもう、あのふわふわした“ようせいさん”の小学生じゃなくて、成長期の中学生なんだよ』ってさ」

志保「……」

アヤ「『だから、ステージに立てる日は、“今のあたしの全部”だと思って演ってる』って」

志保「……うん」

アヤ「でさ。『アヤたちは?』とも」

志保「私たちかあ」

アヤ「……どうなのかな。今日はさ、そりゃ全部出したつもりだけど」

志保「そんなの。“明日がどんな日になるかは誰だって解らない”ですよ♪」

アヤ「あ、いいこと言っ…… ん? 受け売り?」

志保「…えへへ♪」

アヤ「まあ、合ってるけどさ。先に出て髪の毛乾かしてるから」

志保「はーい♪ ♪~~」


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千奈美(遊佐さん、そんなこと言ってたの)

千奈美(ああ、そうか。今日が、今までの全部だから、明日は、今日までの全部)

千奈美(そうだった。前に、観たじゃない)

千奈美(……夢を初めて願って、今日までどのくらい……?)


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千奈美「もしもし、千奈美です。お休みのところすみません。折り入って、お話があるんですけれど」

真奈美『電話は珍しいな。今大学だろう?』

千奈美「二人がいないタイミングで聴きたかったので、この時間になりました」

真奈美『なるほど。……早い方がいいか。明日は学校なかったね?』

千奈美「明日は…… はい、大丈夫です」

真奈美『解った。今日のシフト後、事務所で待っててくれ。私は夕方ちょっと出て深夜戻りだから、寝ててもいいぞ。仮眠室は……うん、シーツは代えておく』

千奈美「わざわざありがとうございます」

真奈美『それじゃ、残りのコマもしっかり。……ライブの疲れは、抜けたか?』

千奈美「流石に三日もあれば余裕です。それじゃあ、お店で。お疲れ様です」


――――

アヤ「フロアのクローズチェックしたよ」

志保「キッチンは…… 換気扇のスイッチ、オッケー。はい終わり!」

千奈美「お疲れ様」

アヤ「あいよ。じゃあ先帰ってるから」

志保「明日、朝ごはんこっちに食べに来ますね♪」

千奈美「材料あるのよね。じゃあ伝えとく」

アヤ「そんじゃなー。所長によろしく」

千奈美「ええ、気を付けて。おやすみ」

志保「おやすみなさーい♪」


――――

真奈美(薄々察していたが、いざ、となると。……素直に受け入れるのは、難しいものなんだなあ)



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レギュラーはアヤ志保千奈美と木場さんと伊吹です。

千奈美のデレステ実装とどっちが早いでしょうね(たのしみ

保守だけさせてくださいまし

報告までに

生きてます
爆死もしてません
フランメ三人のデレステSRは無事入手できました

ほ し ゅ

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