橘ありす(12)
http://i.imgur.com/Cy8pZAP.jpg
佐々木千枝(11)
http://i.imgur.com/MgsFGco.jpg
結城晴(12)
http://i.imgur.com/YEPk31w.jpg
赤城みりあ(11)
http://i.imgur.com/RYa1zh5.jpg
市原仁奈(9)
http://i.imgur.com/V1KlDKh.jpg
公園
ありす「みなさん遅いですね。せっかくいい場所を見つけたというのに」
晴「オレらが早すぎたんじゃねーの。ふああ~、眠い、ラジオ体操出るんじゃなかったぜ」
千枝「でも、朝早い方が涼しくていいよ。紫外線こわい時期だし」
仁奈「ふぁ~ひつじの気持ちになるですよ……Zzz……」
みりあ「ああっ、仁奈ちゃんが着ぐるみを寝袋っぽくして寝てる~!」
ありす「どうしてそんなに眠いんですか。確かにいつもより少し早いですけど、学校行く時みなさん早起きしないんですか?」
晴「色々あんだろ? テレビ見たり、意味も無く夜ふかししたりすんの。夏休みなんだからよ」
千枝「そうだねー、電話でおしゃべりしたりしてたら遅くなっちゃうよね」
ありす「私はなるべく早く寝るようにしていますよ。人間は睡眠時に成長するそうですから」
千枝「あはは、流石ありすちゃん」
ありす「とはいえ、みなさんが揃うまで練習ができませんね。まあ、誰もこんな時間に公園を使わないでしょうが。計算して、余裕を持ったスケジューリングをしていて正解でした」
みりあ「うわぁ、デキる女っぽい~!」
ありす「これしきのこと当然ですが……ふふん」
晴「おい、デキる女さんよ。すけじゅーりんぐはありがたいんだけど、誰か公園に入ってきてっぞ」
ありす「えっ」
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志狼「なっ! ここいいだろー!? それなりに広いし、木陰もあって涼しいし、ここでなら思う存分特訓できるぜっ!」
直央「ほんとだ、いいところだね」
かのん「れべるあっぷ、だよっ!」
橘志狼(11)・岡村直央(11)・姫野かのん(9)
http://i.imgur.com/vqmZLcD.jpg
ありす「なっ!」
志狼「んじゃ、荷物を置いて始めっぞー!」
直央「うん。木陰に置いとこっか……」
かのん「ふわぁ、朝すずしくて、いーねー」
志狼「まずはストレッチで体ぐにゃぐにゃにしとけっ!! それが終わったら――」
ありす「すいません。立ち退いていただきたいんですが」
志狼「うおっ! なんだお前?」
ありす「この公園の使用に先約を入れていたものです。私達が使おうとしているのに、横から場所を取られると困ります」
志狼「あん? なんだそれ?」
直央「さ、先に公園使おうとしてたんだって……」
志狼「公園はみんなのものだろ? なんでオレらが使うのダメなんだよー。ってかお前誰?」
ありす「……橘ありすと申します。呼ぶなら、橘と」
志狼「ふーん。そんでありす、オレらも公園使いたいんだけど」
ありす「っ! 橘と呼べと言ったでしょう……? 聞いてなかったんですか」
志狼「だってよーオレも名字橘だからよー、わけわかんなくなるじゃん」
直央「あっ、そうか、同じだ」
志狼「だからありすって呼ぶ」
ありす「勝手に決めないでくださいっ」
志狼「なんでだよー、いい名前じゃん。お前もオレを志狼って呼んでいいぜー」
ありす「誰があなたの名前を聞いたんです……!」
千枝「あの、ありすちゃん……」
晴「名前の話で盛り上がってんなよ。どいてもらうんじゃなかったのかよ」
ありす「……そうです。別に忘れていませんよ。説得の第一段階のあいさつを済ませただけですから」
晴「それなら、いいんだけどよ」
志狼「なんか仲間が増えたぞ」
ありす「おほん、話を戻しましょう。ともかく、この公園は私達が先に使おうと思い、あなた達より先に来て、場所を取っていたんです。残念ですがあなた方は」
志狼「どくのヤダぜ」
ありす「……言ってもわかりませんか」
直央「ね、ねえ、譲ってあげても……」
志狼「いーやっ、ヤダねっ!! こっちだって使いたいのに、場所取りしてたからどいてくださいなんて言われて納得できるかよ。公園は仲良く使うもんだろー?」
みりあ「そうだよね、そう思うよね……ありすちゃん、交代で使おうよっ」
ありす「いえ、大丈夫です。これしきの侵略者に折れることはありません」
千枝「えっ?」
ありす「ふぅ、朝から論破をすることになるとは思いませんでしたね…………えっと、志狼さんでしたか? 私達はですね、この公園を『実効支配』していたのです」
志狼「なにーっ!! じっこうしはいだとーっ!!」
かのん「わー! かわいい着ぐるみっ!」
仁奈「もふもふしてーですか?」
かのん「うんっ、もふもふもふ……っ!」
仁奈「おー、これはいいもふもふでごぜーます! さては使い手でごぜーますな?」
志狼「ってじっこうしはいってなんだ?」
直央「わからずに驚いたの!?」
ありす「実効支配とは、実態上支配しているということです」
志狼「うっ、じったいじょう……!?」
ありす「この公園が誰のものでもない、あるいは行政の管轄下にあるとの主張は、その厳然たる現実の前では意味を為さないのです」
ありす「それが実効支配――――『理論はことごとく現実の前にかしずくべし』ということなのです」タブレットスッスッ
志狼「うおおっ、なんてこった……!!」
ありす「ふっ、最近勉強中の概念が役に立ちました。論破完了です」
晴「それちゃんと正しいのか?」
直央(はわわ、歴史的根拠もなく所有権を主張されてもそれは実効支配じゃなく単なる不法占拠だよ……しかも支配してるって割には簡単に公園に入れたし……でもそんなこと言えない空気……)
志狼「くそーそれじゃあオレ達は……」
ありす「ええ……そうです。取るべき道は一つしかありません」
志狼「支配に抗うしかねーな! 勝負だっ!!」
ありす「なんでそうなるんですか!」
晴「おっ、中々熱いセリフ吐くじゃん。マンガの主人公みてー」
志狼「そうか? にししっ」
ありす「漫画脳でしたか……!」
みりあ「勝負ってなにするの? ケンカはしたくないよー」
志狼「そうだなー……あ、お前、サッカーボール持ってんじゃん! それ使おうぜ!」
晴「え! サッカーすんのか? お、オレは、べつに、いいけどっ!?」
千枝(すごい嬉しそうな顔してる……)
志狼「あーでも、人数差あんなー。代表3人がPKして決めるってのはどうだ?」
ありす「却下ですっ」
晴「まぁ、待てよ! 練習前のウォーミングアップもかねてちょっとやってみようぜ!」
ありす「私はやりませんよ」
志狼「じゃ、まずは1on1でいいか。パス出しからスタートして、ボールを奪い合いながら先にゴールした方が勝ち」
晴「そんなとこだな。ペットボトル二本置いとくから、その間がゴールな。パス出しはそこのメガネくん、やってくれ」
直央「え、僕ですか?」
志狼「フェアにやれよ! んじゃ、ライン簡単に引くぜ。ピッチの広さはどーする?」
晴「ハーフコートのちょっと狭いぐらいってとこだろ。この公園なら」
千枝「わースイスイ決まってく。休み時間の男子が遊び方を決めているみたい……」
かのん「かのんも着替えてきたよ~っ」モッコモコ~
仁奈「おおお、これは、しょーどーがおさえられねーですっ」モコモコモコモコモコモコ
かのん「あはは、くすぐったいよぉ~!」キャッキャッ
志狼「よし、準備かんりょーっ! 負けないぜ……えっと、お前なんていうんだっけ?」
晴「結城晴。ま、オレはあっちのやつと違って名前で呼ばれてもかまわないぜ」
ありす「私のことを心が狭いように言われるのは心外なんですが……」
志狼「そうかよ。じゃ、晴。男同士、正々堂々とやろうぜっ!」
晴「オレは女だっ!!」
千枝(ふふ、まだ大人の階段を上ってないから女の子だよ、晴ちゃん)
直央「ボールをそっちに向かって蹴るだけでいいんだよね? じゃ、じゃあいくよ。――えいっ!」ドカッ!
晴「おらあああっ!!」ダダダッ!!
志狼「うおおおおっ!」ダダダッ!!
みりあ「最初のボールの奪い合い……! 勝つのはどっち!?」
志狼「すらいでぃーんぐっ!!」ズザーッ!!
晴「ちっ! 取られたかっ!! 迷いなくスライディングしやがって!」
千枝「が、がんばってー!」
ありす「もう……結城さんなにをやっているんですか」
晴「抜かせないぜ志狼っ!!」ディーフェンスッ! ディーフェンスッ!
志狼「ぐっ! こいつプレッシャーすげー!?」
志狼(ここは、そう、事務所の兄ちゃん達のアドバイスを思い出すんだっ!!)
――――
――――――
蒼井享介「えっ、サッカー教えてくれって?」
志狼「ああ、サッカーうまいやつってカッコいいじゃん!」
蒼井悠介「そうだな。とりあえずご飯はたらふく食べて体作りが基本だな、俺らはそんなガタイ良くなかったから苦労する場面多かった」
志狼「え、飯?」
享介「後は密度の高い練習かな。どっかのジュニアユースに入るのがいいけど、メニューならオレも考えられるから、作ってあげようか?」
志狼「いや、そういうんじゃないんだけど」
蒼井悠介(18)・蒼井享介(18)
http://i.imgur.com/9gS7lJW.jpg
悠介「コツっていってもサッカーはチームプレイだよ?」
享介「とりあえずどんな選手になりたいかぐらいは決めておいたらいいよ」
悠介「享介、試合録画してたよな。見せてあげれば」
享介「おっけー! いやー、未来の日本代表を志す子どもが増えてくれるのは嬉しいな」
志狼「えー……」
――――
志狼「…………サビア……ロボ……船山……」ブツブツ
直央「動きが止まってる!?」
晴「もらったーっ!」ズバッ!
志狼「ありっ!?」
みりあ「わ、すごい! 取った!」
晴「ゴールはもらったーっ!!」
志狼「く、くそっ!」
志狼(まだだっ! また兄ちゃん達が教えてくれたことを思い出せっ!!)
――
――――
志狼「なー、ボクシング教えてくれよー」
大河タケル「……強くなりたいのか?」
志狼「ああっ! 強い男ってかっこいーじゃんっ!」
タケル「ああ。男は強くなくちゃ駄目だ。いいぜ、教えてやる。……最強の格闘技をな」
牙崎漣「ああっ、なァにヌカしてやがるチビども! ボクシングが最強~!? あんま笑かすんじゃねーぞっ!」
タケル「ち、お前か。下がってろ。入ってくるなよ……」
漣「誰がテメーらの輪の中に入りたいつった? 最強を取り下げりゃいつでも消えてやるよ。ま、取り下げなきゃ……そっちに消えてもらうがよ」
円城寺道流「おー最強議論か、若いねぇ」
大河タケル(17)・円城寺道流(24)・牙崎漣(18)
http://i.imgur.com/xMdo2Rk.jpg
漣「いいか、11歳チビ。こっちの17歳チビの格闘技には蹴り技がねーんだ。魅力ねーだろ?」
道流「……そう思っていた時期が俺にもありました」
漣「黙ってろラーメン屋!」
志狼「あー、キックもカッコいいよな!」
タケル「……必要なのは拳のみだ」
漣「ハッ、負け犬の遠吠えかそれはよ、あァ~ン!? 11歳チビ、一つテメェに蹴り技伝授してやる。オレ様直々だ、光栄に思いやがれ」
志狼「え、必殺技か!?」
漣「まァ、見栄えがする技だな――」
――――
志狼「うおおっ!!」
直央「前に回り込んだっ」
千枝「志狼君を越えた先にゴールがある……!」
晴「志狼、テメーを抜くぜっ!」
志狼「せんっ――!!」ズザァー!!
晴「またスライディング――!? だが浮かせば関係ないぜっ!」フワッ!
千枝「やった! ボールを浮かせて避けたー!」
志狼「――きゅう――」
晴「このまま……ん?」
志狼「たーいっ!!」ドシュッ!!
晴(こいつっ! 足を真上に突き出してボールをっ!!)
【穿弓腿】
中国拳法、蟷螂拳における蹴り技の一つ。
図 (私はユンよりアレックスが好きです)
http://i.imgur.com/ENOPPFl.jpg?1
ドカッ!
志狼「よっしゃぁ! 当たった!」
みりあ「わぁ! すっごーい! 空中でボールを弾いたっ!」
直央「あ、でも引いたラインを出そう……」
晴「まだだっ! ボールはまだ――」ダダダッ!!
志狼「生きてるっ!!」ダダダッ!!
ありす「なんですかそのノリは……体育の授業でのゲームに熱くなりすぎる男子ですか」
晴「負けるかよっ!」
晴(競争に、勝つ……! その方法、オレだって事務所のみんなから教えてもらってるんだ!)
――
――――
礼子「惜しみなく奪いなさい。――真に手に入れたいものならば」
晴「え……礼子さん、オレは勝つための心構えを聞いたんだけど……」
礼子「そうよ。だから答えたの。躊躇は乙女の花を容易く手折るものだから……」
晴(違う、この記憶じゃない)
――留美「勝負に先んずるにはどうすればいいか? そうね、料理という武器を持つのは早い方がいいわ」
晴(これも違う!)
――瑞樹「色を知る年、か……いいわ。外堀の埋め方――――わからせるわ」
晴(これも! っていうかなんで訳わかんないことばっかみんな言うんだよ!?)
http://i.imgur.com/7GW9vOV.jpg
http://i.imgur.com/DRp1pMF.jpg
http://i.imgur.com/xsp1cmz.jpg
晴(えーっと、えーっと、こんな時に役立つアドバイス……!!)
志狼「取った!! シュートっ!!」ドカッ!!
晴「あっ、しまった! 考えてる隙に!」
みりあ「ああーっ! ボールがゴールに一直線っ!」
千枝「これで決着――」
ありす「…………!!」
千佳「まー♪ じー♪ かー♪ るー♪――――クリアー!!!」ボールドカーッ!
志狼「あーっ! なにしやがるっ!! ゴール入るとこだったのに!」
千枝「千佳ちゃん!?」
舞「ごめん、遅れちゃったよー」
ありす「……ナイスクリア」ボソッ
直央(うぅ、また女の子が増えた。ちょっと居心地悪いな……)
横山千佳(9)
http://i.imgur.com/aoz0AWf.jpg
福山舞(10)
http://i.imgur.com/Mhb2tQr.jpg
千佳「えー楽しそうに遊んでたからつい? てへっ」
志狼「ふざけんなっ、フリーキックよこせフリーキック!」
ありす「いえ遊びはこれまでです」
晴「え、まだ決着はついてないぞ!」
ありす「私達は、練習するためにここにいるんですよ? 忘れたんですか。メンバーがそろった以上始めないといけません」
志狼「んだよそれー! 休み時間終わって席付いてなかったら怒る学級委員みたいなこと言いやがってー!」
ありす「それはあなたが悪いと思いますが……!」
仁奈「もふもふともこもこで、はー、幸せでごぜーます……」
かのん「えへへ、やっぱり、かわいいかっこっていいよね!」
志狼「せっかく燃えてきたところだったのによっ」
晴「おい、お前の予定教えてくれよ。オレも決着つけたい」
ありす「あの、再戦の約束とかそういうのは後にしてください……そして男子は早急に立ち退いてください」
直央「ええっ」
千枝「ご、ごめんね……? ありすちゃん真面目だから……」
志狼「なんだよー、さっきから命令ばっかだなありすは」
ありす「だから、た、ち、ば、な! です!」
志狼「俺もた、ち、ば、な! です!」
ありす「っ!?」
直央「ぷっ」
千佳「あははははっ!」
ありす「~~っ! またからかって、だから男子は……単細胞で下品で非論理的で共産主義で……!」
志狼「あのさぁ、ありす。お前そっちの女の子には名前呼ばれてたじゃん。それはいいのかよ?」
ありす「そ、それは……ゆ、友人ですから構わないんですっ」
千枝「ありすちゃん……」ジーン
志狼「しょうがねえ。じゃあ、ありす、俺と友達になってくれ」
ありす「な……な、なっ!?」
志狼「オレは橘志狼。いずれビッグなアイドルになる男だ! 特技はブレイクダンス、好きなライダーはオーズだ。よろしくな!」
晴「お~い、自己紹介されてるぞ?」
ありす「な、なぜあなたと友達にならなければいけないんですか。必要性を感じません」
志狼「オレがお前のことをありすって呼びたいからだよ」
ありす「わ、私は呼ばれたくありません! 名前で呼ばれるのは嫌いなんですっ!」
千枝「……ご、ごめん。名前で呼んじゃって……」
ありす「あ、いや! 友人から呼ばれるのは許せますからっ!」
直央(友人は名前を呼べる、だから友人になりたい。でも名前を呼ばれたくないから友人にしたくない……ぐるぐる理由と理由が回ってる……)
かのん「わーこの着ぐるみいいねっ! もっふもふにされてるよ~! すっごくいいかんじっ!」
仁奈「仁奈のもふもふとそちらのもこもこ、ユニフォーム交換でごぜーますっ!」
千佳「そっかー志狼くんっていうんだねっ、あたしは横山千佳だよっ! 好きな魔法少女はね……えへへっ、ラブリーチカ!」
舞「千佳ちゃん、ダメだよ。二人の話に横入りしちゃあ」
千佳「えーだってこの子おもしろいんだもーん」
ありす「二人の話じゃありません。私はこんな男子と話したいとも思いません!」
志狼「なんだよっ! ありすお前オレのこと全然知らねーだろ!」
ありす「ま、また名前で――っ!」
晴「面倒くせえな。いっそのこと橘・女、橘・男って呼び合えばいいんじゃねーの?」
千枝「そっか。それでどう? 橘・男くん……? 橘・女ちゃんも」
橘・男「おい、橘・女それでいいか?」
橘・女「は!? どうして私が橘・男という人のためにそんな呼ばれ方をしなければいけないんですか! 納得できません」
かのん「ひつじの気持ちになっちゃうねー……」
仁奈「この格好は、仁奈をもっこもこにしやがります~」
千佳「そっかー。『タチバナ・オンナ』はダメかー」
舞「なんかポケモンのオス・メスみたいになっちゃうもんね」
晴「じゃあ、あれだ。女の方は『橘・タブレット』で」
橘・タブレット「名前の響きの問題じゃありません! 橘・タブレットってなんですか! どうして付属品の方に本質が移っているんです!」
みりあ「えっと……じゃあ、『橘・論破』っていうのは、どうかな? この言葉気にいってるみたいだし……」
橘・論破「ろ、ろんぱ……」
直央(うわぁ、この子たち悪気は無いんだろうなぁ……)
千枝「あ、あーちゃん……」
千佳「え、千枝ちゃん、なになにっ?」
千枝「橘・あーちゃんっていうのは、どうかなって……」
橘・あーちゃん「えっ」
志狼「ありすだからあーちゃんか。かっこいいなっ!」
千枝「えへへ……」
あーちゃん「…………みなさんはありすでいいです。暫定的に。『あーちゃん』という呼び方は、既に未央さんが藍子さんに使用していて既出ですし……」
志狼「なんだよー結局ありすでいいのかよ」
ありす「あなたには許可してませんっ!! 最近は思うところあって名前呼びにこだわるのはやめようと思っていましたが、あなたにはまだ許しません!」
志狼「うへぇー、ガンコな女」
直央「ねえ、ここらへんにしといたほうが……」
晴「だな。ありすイライラしてるし」
ありす「好きでイライラしていませんよ……!」
千枝「…………落ち着こ?」
みりあ「ふーっ……」
舞「…………」
「「「………………」」」
仁奈「……」モッフモフー
かのん「……」モッコモコー
・・・・・・・・・・・・。
志狼「――――で、これから何して遊ぶ?」
ありす「遊びませんっ!!!!!!」
ありす「私達は練習があるんです! そうです早くどいてください! 来たるイベントに向けてみんなで練習を行うんです! あっちこっちに話題を飛ばしてグダグダにしないでくださいっ!!」
志狼「あぁ? そっちが公園占領しようとしたんじゃねーかっ! オレらを悪いみたいに言うなよっ」
ありす「そっちが悪いんでしょうっ! さっきから私をからかってばかり! ……あ、あれですか。ひょっとして私のことが好きなんですか? だからからかうんですか?」
志狼「はァ!?」
ありす「あー男子はそういう矛盾した行為をしばしば行いますよね。わかりますよ。でも私は子どもには興味ないんですっ。残念でした」
志狼「だ、誰が……!」
千佳「きゃーっ! 志狼くんありすちゃんが好きなんだーっ!」
舞「でもいじめちゃ駄目だよー?」
直央(うわぁ、こういうの苦手だなぁ……)
志狼「…………」
ありす「黙りましたね。では、あなたに関わっている暇は無いので、出ていってください」
志狼「………………う~ん」
晴「ん、どうした?」
志狼「オレとありすが結婚しても名字変わんねーんだよな。結婚したあとも『橘と呼んでください』って言われたらめんどくさいなって思って」
ありす「けっ、こんっ!?」
かのん「あっ、ちょっと服が乱れてるっ! 直してあげるっ」
仁奈「毛づくろい、まことに至福でごぜーます……」
志狼「ほら結婚指輪に名前彫ったりするじゃねーか。その時も、『名前は“TACHIBNA”と彫ってください』とか言われたらなんか冷めるぜ」
ありす「なっ……!」
みりあ「結婚指輪にもそう彫られちゃったら、なんかさびしいねー」
志狼「そのくせ、ありす意外と自分の子どもに変な名前付けそうなんだよなー。ほらなんつったっけ?」
直央「キラキラネーム?」
志狼「そうそれだ。画数とか文字の意味とか調べまくって、最後にはなんかズレた名前をドヤ顔で提案してきそう」
晴(……やべぇ、ありそう)
ありす「そんな想像力を働かせないでくださいっ! セクハラで訴えますよっ! 私が結婚するのは頭が良くてカッコよくてしっかりした人がいいんです!」
志狼「まあ、名前は橘・汰武烈斗(たぶれっと)とか付けなきゃいいか」
ありす「さっきの! ネタを! ひっぱるなっ!」
志狼「なんだよお前、怒りっぱなしだな。シワが増えるぞ」
ありす「増えませんっ! コラーゲン摂ってますし、紫外線に気をつけてますし、何より私はまだ若いんですっ!! アンチエイジングなんてまだ必要無い齢なんですっ!!」
千枝「あーちゃん、あっちがう、ありすちゃん、落ち着いてぇ!! いつものクールでレディなありすちゃんはどこにいったの~!?」
志狼「暑くてイライラしてんのか? ほら、ドリンクやるよ」
ありす「いりません!! 誰のせいだとっ!!」
亜里沙「あら~、練習していると思ったんだけど、みんなどうしたの~?」
千佳「あっ、せんせいっ! おはよー!」
亜里沙「はい、チカちゃん、おはよう。元気のいいあいさつは大事よ?」
舞「おはよーございますっ」
持田亜里沙(21)
http://i.imgur.com/Sw6JzLi.jpg
直央(今度は大人の人が来た……)
ありす「あ、亜里沙先生…………私達練習をしようとしてるんですけど、この男子が邪魔をしてきて……!」
亜里沙「ケンカしちゃダメよ~。仲良くね」
志狼「あ、先生にウソ言うなよっ! 先生、オレらは悪くねーぞっ! こっちだってありすのせいで練習出来てないんだっ!」
亜里沙「あら、それじゃあ先生どっちを信じればいいのかしら~。ウサコちゃんどうしよう? (どっちにしても仲良く譲り合うのが大切ウサー!)」
かのん「あっ、ウサギさん!」トテトテ
仁奈「せんせーはウサコの気持ちが分かるのでごぜーますよ」トテトテ
亜里沙「あら~カワイイかっこねぇ、二人とも。仁奈ちゃんその子はお友達?」
仁奈「ソウルフレンドでごぜーますっ!!」フンスッ
かのん「えへへ……姫野かのんです。よろしくね」
亜里沙「ほら、ありすちゃんもそっちの男の子も、見習って仲良くしなきゃダメよ?」
ありす「……で、でも! 練習しないと、いけないからっ!」
亜里沙「そう……わかった。使用権で揉めているのね。じゃあ、じゃんけんしなさい」
ありす「えっ! 先生……こっちの味方ではないんですか……」
亜里沙「あなた達がね、ケンカしてるの見ると悲しくなっちゃうの。恨みっこなしでどっちが使うか決めた方がいいわ~」
千枝「そうだね……ケンカするよりは」
志狼「ちぇっ、後から来たくせに」
ありす「私たちの方が先に来てましたからね」
晴「サッカーで決めるのもいいんじゃねえか?」
ありす「あなたも、サッカーから離れてください……!」
千佳「じゃあ、代表で、千佳がじゃんけんするーっ!!」
ありす「ま、待ってくださいっ! そんな軽率に決めては! こうしましょう……女子の陣営でまず2・2・3に分かれ、そこでのじゃんけんの勝者3人がファイナルステージで代表を決定するのです」
みりあ「一番じゃんけんが強い人を選ぶんだねっ!」
晴「意味あんのか? それ」
志狼「そんじゃオレらも、代表決めるかー」
ジャンケンポンッ! アイコデショ! …―
――
――――
千枝「わ、私が代表……!」
千佳「ちえちゃん、あたしのマジカルパワーを託したからねっ! 大丈夫。マジックフォースの存在を信じるのっ!」
直央「ぼ、ボクが代表でいいの!?」
志狼「お前が勝者だからしょうがーねーじゃん。大丈夫勝てるっ!」
ありす「頼みました……」(一回戦負け)
舞「一回勝負ね!」
千枝「あ、の……よろしく」
直央「う、うん……」
志狼「相手ビビってる! ヘイヘイヘイっ!」
ありす「汚ない野次は禁止ですっ。退場させますよ!」
千枝「じゃあ……しよっか……」
直央「うん、よ、よろしくお願いします……」
千枝「あ、はい。こちらこそ……せぇの――あっ、どうしよう。最初はグーの方がいいのかな……」
直央「そうしましょう……リズムが合いますし」
晴(なんだこのぎこちなさ)
志狼「お見合いじゃねーんだぞっ! もっと相手をアットーしろ!」
直央「勝ったら、ゴメンね……?」
千枝「うん、大丈夫……こっちも同じだから」
「「――最初は、グー」」
直央「じゃん、けんっ」
千枝「ぽんっ!」
直央【パー】
千枝【パー】
千佳「あいこだぁああああああっ!!!」
舞「ひゃっ!? 千佳ちゃん、いきなり叫ばないで~!」
ありす「仕切り直しですか……」
志狼「おいおい、負けんなよ!? ゼッタイ勝てよお前!」
直央「はぁ、はぁ……う、うん……」
直央(ううっ、プレッシャーがすごい……!)
みりあ「大丈夫? 顔色悪いよ」
亜里沙「大変。熱中症かも……君、ちょっと木陰へいらっしゃい」
直央「はい、すいません……」
志狼「……おいおい、大丈夫か?」
晴「勝負はどうすんだ?」
春名「お、いたいた。おーいっ、チビッ子たち。練習してるって聞いて差し入れ持ってきたぜー」
隼人「朝からがんばるよなぁ」
志狼「あっ、軽音部の兄ちゃんたちっ!」
かのん「くんくん、どーなつの香りっ!」
夏来「どうしたの……気分、悪い? ポカリ飲む?」
直央「あ、ありがとうございます」
舞「わわわ……男の人がいっぱいきた……!」
旬「この女の子達はなんです?」
隼人「ま、まさかっ、合コンってやつか!? そんな、小学生に先を越されるなんて……!」
四季「おお、ハヤトっちが焦ってるっす」
秋山隼人(17)・冬美旬(16)・榊夏来(17)・若里春名(18)・伊勢谷四季(16)
http://i.imgur.com/5wy9XoB.jpg
亜里沙「合コンではないですよ~、たまたま公園で会ったんですって」
隼人「あ、そうなんですか……」
四季「それでそのまま遊んでるんスか?」
春名「若い子は良いねぇ、すぐに仲良くなれて」
ありす「ち、違います……! 仲良くなっていません」
晴(この兄ちゃん達サッカーやってくんねぇかな)
一時中断します
春名「まぁ、いいや。ほらドーナツあげるぞー。女の子達の分もあるから」
四季「えっ、それオレらの分もあったんじゃないっすか!」
春名「俺らの分はまた買えばいいじゃん。なっ、ジュン!」
旬「やれやれ、春名さんこういう時ばかりアテにしないでくださいね」
ありす「くぅ、高校生を呼んでくるとは……卑怯な……!」
千佳「ありすちゃん、ドーナツ食べないの?」モグモグ
みりあ「おいしーよ?」ムグムグ
志狼「へへっ、俺らんとこの兄ちゃん達いいだろー!」
晴「ああ、ちょっとうらやましいよ。居心地よさそうで」
ありす「なにを……! こっちだって誇れるお姉さんたちがたくさんいます!」
かのん「ね、ね、交換しない?」
仁奈「はんぶんこしやがりますか? ミルキーストロベリーとチョコクラウン、二つの味が楽しめる、これすなわちサイキョーでごぜーます!」
志狼「ふーん、どんな姉ちゃんたちなんだよ?」
ありす「そうですね、例えば……クールで、仲間思いで、シンデレラガールな」
凛「――――ねえ、なにやってんの? こんな大勢で」
ありす「そうこんな…………えっ、凛さん!?」
凛「うん」
未央「やっほー、様子見に来たよー」
卯月「なんでドーナツ食べてるの?」
奈緒「…………おい、っていうかこの男子たちはなんだ」
加蓮「奈緒ー、私の影に隠れてないで出てきたら?」
渋谷凛(15)・島村卯月(17)・本田未央(15)・北条加蓮(16)・ 神谷奈緒(17)
http://i.imgur.com/IJtdqbr.jpg
http://i.imgur.com/CGFx5rj.jpg
隼人「うわ、わわ、女子高生が……こんなに……!」
四季「いざ女子を目の前にすると、固まっちゃうんスね」
ありす「そ、そうです! これが私が尊敬するお姉さん達です!」
志狼「くそー! 対抗された」
未央「おっ、なになに? ソンケーしてくれてんのっ?」
卯月「あはっ、なんか照れるね!」
志狼「負けるかよ! えっと……! こっちの春名兄ちゃんは高校五年生なんだぞっ! すげーだろ!」
春名「おうっ!? ハートにナイフが突き刺さってきたっ!! 差し入れしに来ただけなのに予想外の攻撃!」グサーッ!
ありす「高校生なのに五年生……な、なんと矛盾した存在! くっ、こっちの未央さんだってなっかなか芽が出なくて不遇の時期が長かったんですよ! ラジオのレギュラーもひとりNGから脱落してますし!」
未央「ぐはぁ、癒えたと思った傷がぁっ!」グサーッ!
凛「大丈夫っ!? 未央!」
夏来「ハルナ……大丈夫。このさい後1年ダブれば、オレ達といっしょに卒業できる……」
志狼「逆境にめげずに頑張ってるなら、隼人兄ちゃんもすげーぞ! 女にもてるために部活始めたのに、入ってきたのは犬みたいな四季兄ちゃんだけなんだぞっ! 意味ねーだろっ!」
隼人「うおぅ! それを言うなぁ……!」
四季「オレもとばっちり喰らってるんスけど!?」
ありす「そ、そんなの……こっちの奈緒さんに比べればなんてことありませんっ!! 奈緒さんはいまいち威厳が無くて隙だらけですから、いつまでもいじられ続けているんですよ!」
奈緒「お前、本当にあたしを尊敬してるのか!?」
志狼「えーっと、じゃあ……旬兄ちゃんなめんなよ! 『そうしろというなら言われたことはこなしますよ』とか、未だにちょっと痛いこと言い続けてるんだからな!」
ありす「凛さんの方がその点については上手です! 『好きな色は……蒼、かな。……そう、青じゃなくて蒼……空の蒼穹』とか中々言えるもんじゃないです!」
旬「そう見えてるのか…………知らなかった」
凛「ちょっと、ありす……、それ以上は禁止だよ……っ」
ありす「最後は……加蓮さん。そうです! 加蓮さんですっ! 不治の病を奇跡的に治して、今は元気いっぱいにトップアイドルを目指してる加蓮さんはすごいんです!」
志狼「なにーっ! そりゃスゲー!!」
加蓮「不治の病って訳じゃないよ……話、大きくなってる」
卯月(あれ、私ナチュラルに省かれた?)
夏来「病気や傷は治る時が……くる。そうなのか……なら、いつかジュンも……」
志狼「でもそんな元気いっぱいに見えねーんだけど」
加蓮「え、そうかな……? 今日は調子いい方なんだけどな」
ありす「そうです元気なんです!! シャトルラン90回は余裕です!」
志狼「まじで!?」
加蓮「え、ちょっとそれは厳しいよ」
ありす「え、で、できないんですか……?」
みりあ「やっぱり、体わるいの……?」
加蓮「いや、体は大丈夫だけど90回は…………」
ありす「……!」ジーッ
志狼「……」ジーッ
加蓮(こ、この目は……私に期待している目……ッ!!)
加蓮「で、できるよっ!? 見せたげよっか!」
奈緒「お、おいっ!?」
凛「加蓮!? 無茶だよ!」
加蓮「大丈夫だよ……多分。かわいい妹分にカッコいいとこ見せないと。私もちょっと自分の限界知りたいし……」
奈緒「でも、20mシャトルランだろ? 女子で90回なんて」
未央「しまむー、何回いけた?」
卯月「えーっと、がんばって50回だったかな」
未央「女子高生の平均は50回だってさ」
奈緒「ほら、ダメだって! 普通のヤツより40回も多くやるんだぞ!? やめとけ無理だ!」
加蓮「……むっ、奈緒は心配し過ぎ。やるだけやってみたいの」
卯月「私、物差し?」
凛「加蓮……わかった。止めないよ」
加蓮「凛……!」
奈緒「おい、いいのか?」
凛「その代わり――危なくなったらすぐやめさせるよ」
春名「陸上部の男子でも100回いけない奴いるよな?」
夏来「大丈夫、かな……?」
――
――――
ありす「えっと……シャトルランの音源は……あった。この動画です」タブレットスッスッ
『――このシャトルランテストは設定された電子音に合わせてできるだけ長く20mのシャトルランを走り続けるものです……』
みりあ「わー……この説明聞くだけで緊張するんだよねー」
千枝「うん、わかる。やる前から怖くなっちゃうよね」
『――テスト終了後はすぐに立ち止まったり座り込んだりせずに……』
奈緒(やべっ、こっちの方がなんか焦る……)
『――テストを開始するのでスタートラインに並んでください』
加蓮「よし、行こう」
凛(加蓮……)
春名(なぁ、どうしてこんなことになってんだ?)
四季(ワカンねっス。ノリなんじゃねースか?)
『――もう一度確認しますが、最初は非常にゆっくりとしたスピードに設定されています……』
卯月「あー、直前でもう一回念押しの説明入るんだよね」
ありす「90回いったらこっちの勝ちで、公園を使わせてもらいますよ」
志狼「おうっ!」
『――スタート』
加蓮「いくよ!」ダッ!
千佳「どーれーみーふぁーそーらーしーどー♪」
未央「最初のうちは余裕なんだよね」
四季「オレなんか調子に乗ってスキップでいったっスよ」
旬「四季くん、体育の授業は真面目に受けなさい」
――♪・♪・♪…………
『2』
『3』
『4』
・
・
テレレン♪
『10』
加蓮(あれ……10なのにもう、結構速い気が……!)ダダダッ
『15』テレレン♪
春名「またレベルアップの音したな」
奈緒「こんなにうれしくないレベルアップはないけどな」
加蓮「――!」ダダダッ!
凛(加蓮の顔が真剣そのものに……がんばって)
隼人「ここらへんからもうみんな笑ったり喋ったりしなくなるんだよな」
『19……20……21……22……23』デデドン♪
加蓮「はっ……ふっ……!」
志狼「姉ちゃん、がんばれーっ!」
ありす「もうちょっと(あと22回)で半分です!」
『30』
『31』
『32』
合図音と回数を告げる声だけが淡々と、この公園に響いていく。
未央「シャトルランってさ、最後らへん結局根性だよね」
奈緒「加蓮……お前の根性は知ってるから、無理すんな……!」
『35』
『40』
『45』
加蓮「はーっ! はぁっ! はぁっ!」ダダダダダッ!!
みりあ「うわーすごく苦しそう……!」
舞「でも、もう45回!」
夏の午前の公園で、加蓮はひたすら20mを往復していった。
ありす(あとこの倍ですか……それもスピードはどんどん上がっていく……)
ありす「90回は言いすぎだったかもしれません……」
志狼「なに言ってんだ姉ちゃんを信じろ! お前の誇りなんだろ!?」
『48』
『49』
『50』
加蓮「――――!」
加蓮(がんばらなきゃ、強くなったんだから……元気になったんだから……これくらいっ!)
加蓮(がんばら……)
――♪
加蓮(なきゃ……)
――♪
加蓮(奈緒を見返してやんなきゃ……凛の信頼に応えたい……みんなに、元気な私の姿を……見せたい)
――
――――♪
加蓮(あれ…………今、何回だっけ…………?)
凛「ここまでっ!! 終わりだよっ!!」ガバッ!!
加蓮「あっ、凛……!?」
凛「目が虚ろだったよ。お疲れ様、加蓮。60回いったよ」
卯月「すごいすごい!」
加蓮「え……ま、まだいけたよ!」
奈緒「はいはい、でも凛が無理そうだって判断したんだ。従えよな。……すごかったぜ加蓮」
加蓮「……まだ、いけた」
奈緒「そうだな。これからも元気な姿見せてくれよ? ほら、とりあえず歩いて息整えろ」
隼人「おおー女の友情だ」
春名「いいもんだねぇ」
夏来「ドリンク、差し入れてくる……」
ありす「すいません、私のせいで。大丈夫ですか……」
加蓮「平気だよっ! ごめんね、90回無理だった」
ありす「そんなっ! ……心配しないでください。後30回は」
ありす「私が引き継ぎます」
みりあ「えーっ!! ホンキ!?」
ありす「あんなに頑張ってくれたのに……当事者の私が出なければ間違っているというものでしょう」
ありす「それでも構いませんね?」
志狼「おうっ、いいぜ! カッコいいなお前!」
直央「二つ返事……」
未央「いやー熱いねぇ」
奈緒「大丈夫か……?」
ありす「30回ぐらいやったことあります。60回の所で音声は止めてありますので私が位置に着いたら再開してください」
千枝「う、うん……わかった……」
志狼「待てよ。オレもいっしょに走るぜ!」
舞「えっ?」
志狼「これは男と女の公園争奪戦だろ? 女だけに走らせちゃあ、勝負でもなんでもねーじゃん! オレも走る! それで30回走ったらお前の勝ちでいいぜ!」
晴「志狼、お前走りたいだけじゃねーの?」
奈緒(この男子……ちょっとバカだ)
千枝(でも気持ちのいいおバカさんだよ……)
奈緒(千枝ちゃんよ、お前同年代だろ。なんだその子供を慈しむような眼は)
かのん「赤勝て白勝てーっ!」
仁奈「どっちも負けるなでごぜーますよ!」
千枝「じゃあ、再開するよー―――す、スタートっ!」
ありす「――!」ダダダッ!!
志狼「うらぁ!!」ダダダッ!!
春名「がんばるなぁ」
四季「オレもあんな時代があったっス」
千佳「ありすちゃんファイトーっ!」
未央「女子のメンツが懸かってるんでしょ! 負けるなー!」
加蓮「……」ゴクゴク
凛「加蓮回復した? はい、タオル。ドリンクまだある? 買ってこようか?」
加蓮「まぁね……タオル、ありがと。ドリンクはいい」
志狼「おらぁっ!」ダダダダダッ!!
ありす「はぁはぁ!」ダダダダダダッ!!
直央「いきなり速いスピードからなのに、二人ともすごい……」
千枝「ありすちゃん……」
ありす(加蓮さんの頑張り、無駄にはしませんっ!)
志狼(オレは風)
ありす(ゼッタイにこの勝負……私が取るっ!!)
志狼(あっでもバイクの方が速そう。オレはバイク)
ありす(後、20回――!)
志狼(ぶおーんぶおーん)
亜里沙「二人とも表情が真剣そのもの……!」
千佳「どれみふぁそらしど、どしらそふぁみれど、どれみふぁ……わー! はやいよー!」
晴「ありす、もうありゃ意地だな……あんな熱い一面あったんだ」
卯月「あれ、でも今ありすちゃんふらつかなかった?」
『76』
ありす「…………!」ダダダダダッ
『77』
ありす「……ふっ!」ダダッ、ダッ、ダダッ
みりあ「あれ確かに体ががくっ、て」
凛「……? ありす……」
怒り、感情を高ぶらせて話し、体力を使っていた。
そしてドーナツを食べてエネルギー補給をしなかった。
ドリンクも飲まず――言い争い、タブレットを操作し、自分のために走る加蓮をずっと緊張し続けながら見守っていた。
そして朝とはいえ、夏の公園でありすはそのように体力を落としながら、いきなり走り始めたのだった。
その帰結は――――
ありす「うっ……」バタッ
千佳「わー!? ありすちゃんっ!」
亜里沙「どうしたの!? まさか、熱中症!?」
志狼「おおっ、どーしたありすっ!?」
直央「わわわ……っ」
未央「大変っ! 救急車!」
ありす「…………」クキュ~
舞「え?」
ありす「おなかが…………すいて…………動けません」
晴「……は?」
仁奈「腹ペコなのでごぜーますか……?」
かのん「あれれ……」
――
――――
――――――
幸広「お待ちどうさま。パンケーキと当店自慢の苺フェスティバルパフェでございます」
ありす「あ、ありがとうございます……」
志狼「お前、腹いっぱいにしてから練習に来いよー」
千枝「朝ごはんに苺【あまおう】を5つ食べたきりだなんて」
ありす(予定より起きるのが遅れてしまって食べるヒマがなかったんですよ……)
咲「しろーが女の子おんぶして入ってきた時はビックリしたぞ☆」
巻緒「それでおなか空いてる女の子がいるんだー! こいつにパンケーキを食べさせても構いませんねっ! って言われて……あはは」
アスラン「無垢なる子羊よ! 我が生み落とせし鮮烈なる誉れを受けよ!」
巻緒「あ、新作も試食していいんだって」
ありす「…………あの人の喋りかたデジャヴを覚えますね」
千枝「……うん、そっくり」
ありす「大人だと、なんというか痛さが一段階上に感じますね。救いようのなさの次元が違うというか」
千枝「ありすちゃん……もう、そこらへんにしとこ?」
荘一郎(あんなけったいな話し方する人、他にいるもんなんですね……)
神谷幸広(21)・東雲荘一郎(21)・アスラン=BBⅡ世(26)・卯月巻緒(18)・水嶋咲(18)
http://i.imgur.com/u5i2OZ1.jpg
ありす「もぐ―――――あ、おいしい……」
志狼「へっへ~ん! うまいだろ~?」
咲「しろーがナンデ威張ってるのかな~?」
ありす「倒れてからの記憶があいまいなんですが……公園の使用は、どうなったんですか……?」
志狼「ああ、女子が使ってるって」
ありす「なっ! いいんですか!?」
志狼「オレとありすは二人とも途中リタイアで相打ちじゃん」
千枝「それで私が、ナオ君……あっ、神谷奈緒さんの方じゃないよ? あのメガネの男の子の直央君とね、じゃんけんして、勝ったの」
幸広(ほぅ、同じ名字がいるのか)
千枝「それで、使用権、げっと? えへへっ、食べ終わったら練習に参加しようね?」
ありす「…………それでいいのですか」
志狼「あー、いいんだ。ダンスレッスンは軽音部の兄ちゃんといっしょにやることにしたからよ」
ありす「……すいません。では使わせてもらいます………」
志狼「ま、オレは負けたと思ってねーからな! ここは汗だくになってまでふんばったありすに免じて、女子に譲ってやるのが男ってもんだろ~! はっはっは!」
ありす「汗……っ! せっかく殊勝な態度を示したのに……あなたという人は……!」
ありす「……友達になれると思ったのが間違いでした」
志狼「なんだぁ、ありす! なに怒ってんだ?」
ありす「近づかないでくださいっ!!」
志狼「はぁ!? なんだよ、さっきまでお前を運んだのはオレだぜ!?」
千枝「うーん、志狼くんはもう少し勉強が必要かな」
志狼「意味わかんねー!」
咲「しろーしろー」
志狼「ん、なんだよ?」
咲(これ、プレゼントしてあげて☆)
志狼(んだよこれ、スプレー? なんでプレゼントなんか)
巻緒(いいから、いいから)
志狼「おいっ、ありす!」
ありす「名前で……はぁ、もういいです。なんですか?」
志狼「よく分かんねーけど、これ使えよ」
【8×4(エイトフォー)】ドンッ
ありす「……………………」
千枝(うわぁ……!)
ありす「志狼くん」
志狼「うん?」
ありす「ここに座りなさい」
志狼「おう」ストン
ありす「――――あなたの、方が、汗臭い、でしょうっ!!」シュー!! シュー!!! シュー!!!!
志狼「うわぁぁあ!!! 何しやがる!? 急にスプレー怪人になるなよ!?」
荘一郎「なにやってるんですか……」
咲「ありゃりゃ、もうちょっとさりげなく渡すぐらいの知恵はあると思ったんだけどな~」
千枝「志狼くんストレートしか投げれない人ですよ……今日でわかりました!」
ありす「このっ! このっ!!」シューシュー!
志狼「やめろこの、橘・スプレー乱れ撃ち!!」
ありす「変な名前をつけないでください!!! この橘・単細胞!!」
千枝(とある夏に出会った少年との思い出は、苺と汗とエイトフォーの香り…………うーんいまいちロマンチックじゃないなぁ)
ありす「あなたなんか、大っきらいです!」
志狼「こっちのセリフだー!」
完!
終わりっ!
モバマスとエムマスとボーイミーツガールが好きで書きました! 以上!
このSSまとめへのコメント
W橘シリーズめっちゃおもろい