小杉「なんだそのチラシ・・・小学生早食い静岡大会?」(107)

学校


まる子「うん、今週末に清水で予選があるらしいよ。この近くだしあんた出てみない?」

小杉「マジかよ。ただでうまいもんいっぱい食えるんだろ?絶対出てやるぜ!」

まる子「あれ、賞品もあるみたいだね」

小杉「なになに…本選優勝者にはグルメカタログから選べるお食事券10万円分だって!?」

小杉「これは優勝するしかないぜ!」

たまえ「ハハハ。小杉なら優勝も夢じゃないかもね」

まる子「がんばりなよ~小杉」

小杉「おう、任せとけよ!どんな料理が出ても食いつくしてやるぜ!」


永沢「ふんっ。小学生大会ってことは高学年も参加するんだろう?」

まる子「んーと、参加資格は小学1年~6年になってるね」

永沢「やっぱりな。いくら大食漢の小杉君でも上級生を相手にするのは無茶だね」

永沢「3年生が6年生に勝てっこなんてないさ」

小杉「何だと永沢!俺が食い物で負けるって言うのかよ?」

永沢「ああ、出るだけ無駄だね。君もそう思うだろ藤木くん」

支援

もしかして多作品のキャラも出るとか?

>>4
2作品の予定です

藤木「えっ…ぼ、僕は別に」

小杉「」ギロッ

藤木「ひいっ…」

藤木「(急にふらないでくれよ永沢くん…)」

藤木「(うっかり“うん”なんて言ったら小杉くんに何されるか分かったもんじゃないよ…)」

藤木「(小杉くんは食べ物のことになると怖いからなあ…)」

たまえ&まる子「(藤木…唇が真っ青だよ)」

永沢「まあ、とにかく絶対無理だね」

永沢「何なら君が優勝できない方に賭けをしたっていい」

小杉「賭けだと?」


永沢「ああ賭けさ」

永沢「もし小杉くんが優勝できたら、クラス替えの時まで僕の給食のデザートを毎日君にくれてやるよ」

小杉「ほ、ほんとか!?」

永沢「ほんとだよ。その代わり優勝できなかった場合には…」

永沢「そうだな。給食にプリンがでたときは、君の分を全て僕に譲ってもらおうか」

小杉「くっ…(俺の大好物のプリンだと…永沢のやつ痛いとこ突いてきやがって)」

小杉「(まあいいか、優勝すればいいだけの話だ。そうすれば永沢のデザートは全て俺のもの…)」ニヤリ

小杉「わかったぜ!その賭け乗ったぜ!」


永沢「ふんっ。まあせいぜい頑張ってくれよ」

永沢「行こう藤木くん」タッタッ

藤木「あ、待ってくれよ永沢くん」タッタッ

たまえ「なんだか大事になってきたね、まるちゃん」

まる子「そうだね~小杉がんばりなよ。応援してるから」

小杉「おう!ありがとよ、さくら」

小杉「(俺のプリンがかかってるんだ…死んでも負けられないぜ!)」

そして週末
予選会場


ワイワイガヤガヤ

司会「さあ、清水会場予選も大詰めを向かえてきました。予選を突破できるのはたった二人だけです! 」

司会「いったい誰が決勝への切符を手に入れるのでしょう!」

参加者A「」モグモグ

参加者B「」ムシャムシャ

小杉「」バクバクバクバク

観客「あのデブちんすげえな…本当に3年生かよ」

観客「ほんとだぜ。周りは高学年だらけなのに一際抜きん出てるよな」

参加者C「もうギブ…」ウプッ

参加者D「」オエー

小杉「」バクバクバクバク


司会「しゅ~りょ~!そこまで!!お皿の計測に入ります」


司会「枚数の計測が終わりました!予選を突破したのは…」

司会「13皿を完食した6年生の○×△くんと…同じく13皿を平らげた」

司会「なんと…3年生の小杉太くんです!」

観客「オー」パチパチパチパチ

司会「この二人が来週浜松で開催される決勝へ参加します!」


観客席後方


藤木「小杉くん予選突破したね」

永沢「ああ、まだ予選だからね。きっと決勝では惨敗して痛い目に合うさ」

永沢「見物も終わったしそろそろ行こうか藤木くん」

藤木「うん…」

同日
静岡市駿河区


歩美「動物園すごかったね~」

元太「そうだな!ホッキョクグマとかバイソンがでっかくてかっこよかったぜ!」

歩美「小さくてかわいい動物もいーっぱいいたよ」

灰原「それにしてもラッキーだったわね」

灰原「あの博士が日本平動物園のファミリーチケットを福引券で当てるなんて」

コナン「ま、来たのはファミリーじゃねえけどな」

灰原「あらあら。珍しい爬虫類に小学生みたいに夢中になってたのは誰だったかしら」

コナン「小学生みたいで悪かったな」チッ

阿笠「まあまあ…」


元太「」ギュルギュルル

灰原「」クスッ

歩美「アハハ」

コナン「(すげえ音だな…)」

歩美「もう元太くんったら、お腹鳴ってるよ」

阿笠「そう言えば昼食がまだだったのう」

元太「博士、早くどっかに食いに行こうぜ!もう腹ペコで歩けねえよ」

阿笠「そうじゃのう…どこかそこらへんの店にでも寄るとしようか」


歩美「美味しそうなお店ないかな~」

歩美「あれ…あそこに人がたくさん集まってるよ?」

灰原「そうね。何かイベントでもやってるのかしら」

元太「おい、見に行ってみようぜ!」ダッダッ

灰原「あ、ちょっと小嶋くん」

コナン「ったく…あの野郎」

コナン「俺たちも行こうぜ」

タッタッタッタッ


受付「間もなく小学生早食い大会駿河予選の受付を締め切りまーす」

受付「参加希望者はお急ぎくださーい」

コナン「小学生早食い大会…?」

灰原「ちょっと工藤くん」ヒソヒソ

灰原「まさか高校生の貴方が小学生の早食い大会に参加する気?」ヒソヒソ

コナン「バーロー…ちょっと気になっただけだ」ヒソヒソ

元太「俺は参加するぜ!」

歩美「あゆみも!」

コナン「(おいおい…)」

阿笠「哀くん、新一」

阿笠「悪いが歩美くんたちが終わるまで、わしらはここで待っておろう」

灰原「ええ」コナン「わーったよ」

同日夕方
米花町への帰り道


コナン「それにしても、まさか元太が予選通過するなんてな」

灰原「ほんとね。1年生が上級生を軒並み蹴散らしていくからギャラリーも驚いていたわ」

コナン「元太、おめーどんな胃袋してんだよ」

元太「だってよ、あの“生しらす丼”ってのがすげえうまかったんだぜ!」

元太「なあ歩美!」

歩美「うん!あゆみは1杯しか食べられなかったけど」

歩美「お魚がプリプリでとっても美味しかったよ!」

灰原「たしかに駿河湾でとれるシラスは国内でも屈指の美味しさと聞くわね」

コナン「にしても丼10杯は食い過ぎだっつーの…」


灰原「博士、早食い大会の決勝は浜松であるみたいだけれど」

阿笠「みんなすまんのう…」

阿笠「来週末は用事があって連れて行ってあげられないんじゃよ…」

コナン「じゃあ、おっちゃんに頼んで連れて行ってもらおうぜ」

歩美「探偵団のみんなで元太くんの応援だね!」

灰原「そういえば円谷くんは、まだ?」

コナン「ああ、おたふくが悪化して入院してるみたいだから、暫くは無理そうだな」


米花町内病院


光彦「」ヘクシュ

光彦「あれ…風邪でも引きましたかね?」ジュルル

早食い大会決勝前日
放課後


小杉「なあ、永沢」

永沢「何だい?小杉くん」

小杉「賭けのプリンのことなんだけどよ…」

永沢「まさか君、今更あの賭けをなかったことにしようなんて言うんじゃないだろうな」

小杉「うっ…」ギクッ

永沢「直前になって約束を反故にしようなんて、卑怯者の言うことだからね」

小杉「はは…そ、そうだよな」


小杉「あ、そうだ永沢」

小杉「これ、うちのトーチャンから貰ったんだけどよ」

小杉「いらねーからお前にやるよ」ササッ

永沢「ん?何だいこれ?」

小杉「日焼け止めクリームと整髪剤らしいぜ」

小杉「俺は食えねえものには興味ねえからな。良かったらもらってくれよ」

永沢「そうかい。じゃあ遠慮せずにいただいておくよ」

永沢「そういえば、明日が決勝だったね」

永沢「まあ精々がんばってくれよ小杉くん。それじゃ」

小杉「おう、またな」

小杉「……」

夕刻
永沢家


永沢「ふぅ…宿題も終わったし、小杉くんから貰ったものでも見てみるか」

ガサゴソ

永沢「なになに…」

永沢「ヒアルロン酸配合でスベスベの
潤いモテ肌に…メンズ用日焼け止めクリーム…」

永沢「えっと、こっちは何だ」

永沢「ツヤツヤでワイルドにきめる…メンズ用モテ髪ワックス…」

永沢「ふんっ馬鹿馬鹿しい」

永沢母「君男、そろそろご飯よー」

永沢「わかった、今行くよ母さん」


キートン「後半へ続く」

翌日
浜松・早食い大会会場


藤木「おーい、永沢くーん」

永沢「やあ、藤木くん。やっぱり君も見に来たのかい」

藤木「うん、特にすることもなかったからね」

永沢「そうかい。君はいつも暇そうだね」

藤木「はは…ま、まあね…」

藤木「あれ…?永沢くん」

藤木「顔と頭がベタベタだけどどうしたんだい?」

永沢「ふんっ。これだから藤木くんは」


永沢「これはヘアワックスとサンスクリーンと言ってね、男の流行の最先端なのさ」

永沢「ま、僕は人から貰ったものが余ってたから、しょうがなく使っただけだけどね」

藤木「誰から貰ったんだい?」

永沢「小杉くんだよ」

藤木(なんで小杉くんがこんなもの持ってるんだろう…)

藤木(まあいいや…どうせ食べ物とでも間違えたんだろう)

藤木「そう言えば、今朝の天気予報で見たけど台風が近づいてるみたいだね」

藤木「今日はまだ大丈夫みたいだけど心配だなあ」

永沢「僕も見たよ。静岡県に強風注意報が出てたね」


ミーンミンミンミンミーン

藤木「あ、セミだ」

永沢「もうセミが鳴いてるのか。今日は暑いな」

藤木「そうだね。夏休みももうすぐだから段々と暑くなってきたよ」

永沢「ところで藤木くん、今日は手ぶらで来たのかい?」

藤木「そうだけど、どうかしたのかい?」

永沢「良かったら僕の手提げカバン少し持っててくれないかい?」

永沢「浜松に来る途中の電車の中でずっと持ってたから、少し手が疲れちゃったんだ」

藤木「僕は別にいいけど」

永沢「ありがとう、それじゃ頼むよ」ホイッ

藤木「うん。うっ…重い…!一体何が入っているんだい?」


永沢「貯金箱だよ」

藤木「え…貯金箱かい?」

永沢「前に家が火事になったときに全財産をなくしてしまったからね」

永沢「それ以来、出かけるときは常に持ち歩くようにしてるんだ」

藤木「学校にもかい?」

永沢「ああ、それくらいしとかないと心配だからね」

永沢「藤木くん、君も火事には気をつけた方がいいよ」

藤木「うん…」

藤木(いくらなんでもやり過ぎだよ永沢くん…)

会場近辺


灰原「結局、浜松まで子どもたちだけで来ることになったわね」

コナン「ああ、おっちゃんも蘭も博士も用事があるみたいだからな」

コナン「今日一日、何も起きなきゃいいけどな」

灰原「そうね」

コナン(事件があった時に麻酔銃で眠らせる相手がいねえからな…)

受付「本選参加者の方はこちらで受付をお願いしまーす」

コナン「お、あそこが参加者受付みたいだぜ」

元太「俺はそろそろ行ってくるぜ!また後でな!」

コナン「おう!」

歩美「元太くんがんばってね!」

灰原「くれぐれも無理はしないようにね」

灰原(帰りが大変だから…)

元太「じゃあな、おまえら!」ダッダッ


歩美「元太くん優勝できるかなあ?」

灰原「どうかしらね」

コナン「ま、アイツならなんとかなるだろ」

コナン「俺たちも観客席の方に行こうぜ」

歩美「うん!」灰原「ええ」


ワイワイガヤガヤ

歩美「うわあ、すごい人だね!」

灰原「おまけにテレビ局まで撮影に来ているわ」

コナン(たかが早食い大会ですげえ盛り上がりだな…どんだけ平和なんだよ)

早食い大会会場


ザワザワザワザワ

司会「皆さんようこそお集まりくださいました。まずは早食い大会本選のルールを説明したいと思います」

司会「今日出場するのは、浜松・駿河・清水・富士の各予選を突破した8名の猛者たちです」

司会「まずはこの8名で決勝進出をかけて予選を戦ってもらいます」

司会「そして予選上位2名だけが決勝に進出し、決勝で直接対決の二番勝負を行います」

司会「そこで勝利した選手が静岡小学生早食い王者の称号、並びに…」

司会「高級グルメカタログのお食事券10万円分を手にすることができるのです!」

ウオオオオオオオオオオオ


司会「それでは早速予選に参りましょう。最初の料理は静岡県富士市発祥のご当地グルメ…」

司会「“つけナポリタン”です!」

コナン「つけナポリタン…?」


灰原「あら、知らないの工藤くん?」

灰原「つけナポリタンと言えば、トマトソースにコンソメ、ブイヨンなどを加えた特製スープに」

灰原「麺を浸して食べる、つけ麺風のパスタ料理のことよ。グルメ通の間では常識ね」

灰原「名探偵のあなたなら当然知っているものと思っていたけれど」

コナン「んなもん知るかよ、悪かったな」チッ

灰原「工藤くんでも知らないことがあるのね」クスッ

コナン「ったりめーだ…」

司会「この料理を制限時間内により多く完食した上位2名が決勝進出です」

司会「準備はいいですか?」

元太(やってやるぜ!)

小杉「…」ゴクッ

司会「それでは予選スタート!」

序盤こそ横一線のスタートだったが、
中盤には元太が他を一歩引き離す展開に

元太(このスパゲティうめえな!)ズルズルッ

元太(何皿でもいけるぜ!)ズルズルッ

藤木「あの体格の良い子すごいなあ」

藤木「あれでまだ1年生だなんて信じられないや」

永沢「確かに君の言う通りだよ、藤木くん」

永沢「とても僕たちより年下とは思えない食いっぷりだね」

一方、小杉は8人中7位と出遅れる

小杉「」ツルツルッ

小杉(くそっ…麺がつるつるで箸が滑って食いにくいな)

そして予選も終盤へ

元太「」ズル…ズルッ

灰原(小嶋くん、さすがにペースが落ちてきたわね)

灰原(前半飛ばしすぎたのかしら)

歩美「元太くんがんばれー!」

コナン「あと少しだぞ、元太!持ちこたえろ!」

元太「」ズルズルッ…

小杉「」チラッ

小杉(まずい…みんなかなり食ってるな…このままじゃ負ける…)

小杉(でも俺のプリンがかかってるんだ…負けるわけにはいかねえんだよ!)


小杉「うおおおおおおおおお!!」

ガツガツガツガツ

小杉「おかわり!」ゴクッ

ガツガツガツガツ

小杉「おかわり!」ゴクッ

コナン「あいつ素手で料理を貪り食ってやがる…」

灰原「それもナポリタンを、まるで飲み物のように流し込んでいるわ…」

歩美「あの人、お猿さんみたいだね…」


粘る元太
怒濤の追い上げを見せる小杉

司会「そこまででーす!それではお皿の枚数の計測に入ります」


司会「集計が終わりました。決勝へ進むのは…」

ザワザワザワザワ

司会「3年生の小杉太くんと、1年生の小嶋元太くんです!」

オオオオオオオォ

司会「決勝戦は昼休憩を挟んで午後から開始します」


歩美「元太くん、なんとか予選突破したね!」

灰原「1年生の彼がここまで健闘するなんて大したものね」

コナン「後半はかなりキツそうだったけどな…」

コナン「昼だし俺たちも何か食べに行こうぜ」

歩美「あゆみ、あそこの屋台行きたいな~!」

灰原「あら、いいわね。たまには出店で食べるのも悪くないわ」

コナン「おーし、じゃあ決まりだな」

予選直後
会場ステージ付近


藤木「小杉くん、やるじゃないかい!」

永沢「君がまさか決勝まで進むなんてね」

小杉「ヘッ俺を誰だと思ってるんだよ」

小杉「ただのデブちんじゃねえぜ。ヤるときはヤる男だからな!」

藤木(今日の小杉くんは頼もしいなあ)

永沢「すごい自信だね、小杉くん。
まあ、決勝でも精々がんばってくれよ」

永沢「君のプリンのためにもな」

小杉「…」


小杉「あ、そうだ。お前ら昼は何食べるんだ?」

藤木「えっ、まだ特には決めてないけど…」

小杉「だったら、あそこの富士宮焼きそばの屋台に行くといいぜ」

小杉「B級グルメの代表格だけあって、かなりうまいらしいからな」

小杉「それにあそこなら、決勝のステージも良く見えるだろ」

藤木「富士宮焼きそばかあ…美味しそうだなあ」

藤木「ありがとう小杉くん、行ってみるよ」

永沢「フンッ。君は食べ物の事だけは、やたらと詳しいんだな」

永沢「その才能をもっと他のことにも回したらどうだい」

小杉「ハッ余計なお世話だ」

永沢「じゃ僕たちは行こうか、藤木くん」


小杉「あ、永沢」

小杉「おまえ、頭に蜂が止まってるぞ」

永沢「は、蜂だって…!?」

永沢「と、と、取ってくれ!」

永沢「早く…早く!!」ガタガタ

小杉「じっとしてろよ」ササッ

小杉「よし居なくなったぞ、永沢」

永沢「ありがとう…」ブルブル

藤木「永沢くん、震えてるけど大丈夫かい?」

永沢「蜂は本当に苦手なんだ…」

永沢「行こうか…藤木くん」

藤木「うん…」

藤木「じゃあね小杉くん。がんばってくれよ」

小杉「おう、また後でな。藤木」

昼休憩後
決勝ステージ


司会「いよいよ小学生早食い静岡大会も決勝戦を向かえます」

司会「小杉選手vs小嶋選手の一騎討ちの闘いです!」

司会「ルールは簡単。これから二人には二種類の料理を食べてもらいます」

司会「そして完食した分のお皿の枚数の、“合計数”が多かった方が優勝となります」


灰原「小嶋くん大丈夫かしらね。単純に力任せの戦いになりそうだけれども


コナン「いや、それは違うぜ…」

コナン「この対決方法には必勝戦略があるんだ」

灰原「…どういうことかしら?」


コナン「考えてみろよ。二種類の料理の合計数ってことは」

コナン「例えば、灰原がステーキ100皿、俺がサラダ100皿食っても」

コナン「両者が引き分けになるってことだぜ」

灰原「あっ、そうか…!」

灰原「つまり、よりお腹にならない料理で枚数を稼いだ方が有利になるってことね」

コナン「そういうことだ」

コナン「そして、恐らくあの小杉ってやつはそれに気付いてやがる」

小杉「」ニヤリ

コナン「元太はそこまで頭が回らねえだろうけどな…」

元太「」ボケー

灰原(小嶋くん…)


司会「それでは早速決勝戦二番勝負、最初の対決に参りましょう」

司会「一皿目の料理は、ここ浜松市のご当地グルメ…」

司会「“遠州焼き”です!」

コナン「…」

灰原「遠州焼きは一見すると、ただのお好み焼きに見えるけれど」

灰原「一口食べてみれば、その違いは歴然」

灰原「お好み焼きのソース、紅生姜、青海苔の柔らかい風味の中に」

灰原「細かく刻まれた、たくあんのパリパリっとした弾力のある食感が広がるの」

灰原「その独特の食べごたえの良さから、市外県外にもファンが多いと聞くわね」

コナン「だから、誰もおまえに聞いてねーよ」

灰原「あら、あなたが教えて欲しそうな目をしてたから説明してあげただけよ」

コナン「ったく…灰原のやつかわいくねーな…」ブツブツ


司会「対決スタート!」

ガブリッ

小杉(遠州焼きか…中身はほとんどお好み焼きみたいなもんだな)

小杉(カロリーはありそうだが、大きさは小さめ…)

小杉(次の料理は何が来るか検討もつかねえからな…)

小杉(もしかしたら超ヘビー級のものかもしれねえ)

小杉(よし、ここは初めの料理で勝負を決めてやるぜ!)

小杉「うおおおおおお!」バクバク

コナン(やはり仕掛けてきたか…)

コナン(次の料理が何か分からない以上、手ごろな料理が最初にくれば)

コナン(それに賭けるのが最も妥当な選択と言える)

コナン(アイツはなかなか手強そうだ…)


元太「」ムシャ…

元太(やべぇ…もうお腹いっぱいだぜ)

元太(予選で食い過ぎちまったな…)

歩美「元太くん顔色良くないね」

灰原「そうね。食べるスピードもすごくゆっくりだわ」

コナン「さすがの元太でも、予選であれだけの量を食えばな…」

灰原「それにパスタのような麺類は、お腹の中で水分を吸って膨張するから」

灰原「なおさらキツいでしょうね」

小杉「」バクバクバクバク

灰原(あの子は一体どんな胃袋をしているのかしら…)


司会「終了でーす!一戦目を終えての途中経過を発表します」

司会「小嶋選手3皿、小杉選手8皿です!」

司会「10分後に決勝二番勝負、最後の対決を開始します」



屋台前

藤木「小杉くん優勝しそうな勢いだね」

永沢「ああ。正直、彼のことを少し見くびっていたよ」

永沢「小杉くんはとんでもない大食い野郎だね」

藤木「永沢くん、君はいいのかい?」

藤木「前に小杉くんが優勝したら、デザートを全てあげるって約束してただろ?」

永沢「フンッ、別に構わないさ」

永沢「僕はデザートのひとつやふたつぐらいで、文句を垂れるような男じゃないからな」

藤木(永沢くんかっこいいなあ…)


藤木(あれ…前に立ってる女の子、横顔が笹山さんにそっくりだなあ)

藤木(さっきまでずっと前向いてたから気づかなかったよ)

藤木(かわいいなあ…)ニヤニヤ

ビューーーーーーーーン

藤木&永沢「うわっ!」

女の子「きゃ!」

ヒラヒラヒラヒラ

藤木(あ…!風で前の女の子のスカートが…)

藤木(もう少し…もう少しで…!)

ヒューーン…

藤木(…)

藤木(はぁ…あと少しだけ強く吹いてれば見えたのに…)


藤木「永沢くん、今のすごい突風だったね」

永沢「藤木くん」

永沢「さっき突風が吹いている時に、前の女の子のスカートの辺りを凝視していなかったかい」

藤木「…」ギクッ

永沢「まさか君、突風に乗じて女の子のパンツを見ようとしてたなんてことはないだろうな?」

藤木「そ、そんなわけないだろう…永沢くん」

藤木「ぼ、僕はただ前を見てただけだよ…」

藤木「ほ、ほら…何か物が飛んできたら危険だからね…」

永沢「そうかい、なら別にいいんだ」

永沢「ん、唇が真っ青だけど、どうかしたのか?」

藤木「ど、どうもしてないよ永沢くん…」ハハッ

藤木(…)

藤木(ふぅ…危ないとこだったなあ…)

10分後
決勝ステージ

司会「お待たせしました。決勝二番勝負、二皿目の対決に参りましょう」

司会「早食い大会のラストを飾る料理は…」

司会「静岡県浜名湖産の最高級ウナギを使用した、“うな重”特盛です!」

ウオオオオオオオオオオ

小杉(やはりそうきたか…)

小杉(最初の遠州焼きで枚数を稼いどいて正解だったぜ)

小杉(現時点で、俺と小嶋とかいうデブとの枚数差は5枚だ)

小杉(あれだけボリュームのあるうな重で、この差をひっくり返すのは不可能…)

小杉(優勝は俺が貰ったぜ!)ニヤリ

元太「う、うな…」ジュルリ

灰原「小嶋くん、明らかに顔つきがさっきまでと変わったわね」

コナン「ああ、最終戦はあいつの大好物のウナギだからな」

コナン(優勝するには恐らく、小杉の2倍以上食う必要がある…)

コナン(元太…逆転できるか…)


司会「それではスタート!」

ガツガツガツガツ

元太「うんめーーーーーーーーー!」ビュルビュル

元太(こんな旨いうな重食べたの初めてだぜ!)

元太「おい、おかわり!」

小杉(ば、ばかな…もう既に一杯食べただと…)

小杉(こいつ、どこにそんな力残してやがった…)

バクバクバクバク

元太「うんめーーーーーーーーー!」ビュルビュル

元太「おかわり!」

元太(やっぱウナギは別腹だぜ!)

歩美「元太くん…」

灰原「…」コナン「…」


司会「試合終了でーす!」

司会「それでは最終結果を発表します」

司会「小杉選手、前半8皿・後半3皿の計11皿」

司会「そして小嶋選手、前半3皿・後半10皿の計13皿です」

司会「なんと…優勝したのは小学1年生の小嶋元太選手です!」

ウオオオオオオオオオオ

司会「小嶋選手には、高級グルメカタログから選べるお食事券10万円分が授与されます」

パチパチパチパチ


コナン「あいつ、やりやがったな…」

灰原「ウナギのことになると、恐ろしいわね…あの子」

ビューーーーーーーーーン

コナン「うわっ!」

灰原&歩美「きゃ!」

灰原(今日は突風が多いわね…)

灰原(そう言えば台風が近づいているって、朝の天気予報で言っていたかしら)

???「ぎゃあああああああああああああああ!!」

藤木「うわあああああああああ!」

観客「大変だ!人が燃えてるぞ!」

コナン(何だって…!)

コナン「おい灰原!至急、救急車と警察を呼んでくれ!」

灰原「わかったわ!」

コナン(屋台の方か…!)

タッタッタッタッ


???「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!」ジタバタ


コナン「誰か消火器を!」

観客「持ってきたぞ!」

プシュ

プシャーーーーーーーーーーーーー

コナン(くそっ…!どうして消えないんだ…)

プシャーーーーーーーーーーーーー

プシャーーーーーーーーーーーーー


プシャーーーーーーーーーーーーー

シュワアアアア

???「…」

観客「消えたぞ!」

コナン「」ササッ

コナン「…」

コナン「ダメだ…亡くなってる…」

キャアアアアアアアアアアアア

藤木(そんな…嘘だろ…)

事件現場付近


高木「えー、亡くなったのは清水市に住む小学三年生の永沢君男くん9歳」

高木「死因は焼死と見られますが、現場検証が終わりしだい鑑識で調査する予定です」

静岡県警警部「なるほど…事故当時は浜松近辺で強風が吹いていたと聞いたが?」

高木「はい、浜松気象台に問い合わせたところ」

高木「ちょうど火災が起こった14時頃に、浜松市で風速15メートル以上を記録しているようです」

警部「それで被害者は火を扱っていた屋台のすぐそばにいたそうだな?」

高木「はい、恐らく鉄板を熱するのに使われていた火が強風によって被害者に着火したかと」

警部「そうか…これは事故で決まりだな」

コナン(いや、これは事故なんかじゃない)

コナン(事故に見せかけた殺人事件だ!)


高木「あれ、コナンくんじゃないか」

高木「どうしてここにいるんだい?」

コナン「早食い大会に元太が出場しててみんなで応援に来てたんだー」

コナン「高木刑事こそ、どうして浜松にいるの?」

高木「実は米花町からスピード違反の車両を追って浜松まで来てたんだけどね」

高木「途中で事件が発生したから応援に向かうように指示されてここに来たんだよ」

コナン「へえ~そうだったんだね」

コナン「それで事件については何か分かったの?」

高木「うーん。今回の火災は事件性も薄いみたいだし、たぶん不慮の事故だと思うよ」

高木「もう少しで警察の現場検証が始まるから、コナンくん達は早く帰るんだよ」

コナン「はーい」

コナン(まずいな…このままじゃ事故にされちまう)

コナン(何か手がかりを見つけねえと)


コナン(確か被害者はこの辺りで転がり回ってたよな)

コナン(ん、あの小さい破片のようなものは何だ?)

コナン(これは…)

コナン「なあ、灰原。これって」

灰原「ええ。これはピン型の小型自然発火装置ね」

灰原「家庭用の打ち上げ花火を遠くからでも見ることができるように開発された商品だったかしら」

コナン「確か付属のスイッチを押せば着火するみたいだが、スイッチの方は見つからねえな」

灰原「おおかた、これが今回の事件の凶器ってとこかしら」

コナン「ああ、間違いねえ」

コナン(だが、被害者はなぜあんなに激しく燃えていたんだ…)

コナン(消火器もなかなか効かなかった)

コナン(この程度の発火装置ならあそこまで燃えることはないはず)

コナン(なにかトリックがあるはずだ…)


コナン(ちょっと、被害者の状態を見に行ってみるか)

コナン「」キョロキョロ

コナン(よし、誰も見てねえぞ)

ガバッ

コナン(全身に渡って黒焦げだな…特に頭部の損傷がひでえ)

コナン(ん、この後頭部についてる茶色っぽい粉みたいなのは何だ…)

コナン「」ペロッ

コナン(こ、これは…)

コナン(静岡産“桜エビ”と“ドウマン蟹”の殼!!)

コナン(でも、どうしてこんなものが頭に…)

鑑識「コラッ!坊主何してる!ここは立ち入り禁止だぞ」

コナン(ヤベ…)


コナン「あはは…ごめんなさーい。ちょっと探偵ごっこしてて」

鑑識「ここは子どもの遊び場じゃないんだぞ。分かったら早く出ていけ」

コナン「はーい」

コナン「あ、そうだ鑑識さん」

コナン「これ、あそこの刑事さんが現場付近で拾ったから鑑識に回すようにだってさ」

鑑識「ん、なんだこれ」

コナン「あと被害者の後頭部に付着してる茶色い粉の正体も至急調べるようにって言ってたよ」

コナン「それじゃあね」

タッタッタッタッ

鑑識「あ、おい!」

鑑識(何だったんだあの坊主…)

鑑識(あの刑事さんも、あんなガキに伝言頼まずに直接言えばいいのに…)


コナン(まだ事件解決への糸口が足りねえ…)

コナン(そう言えば被害者は同級生と一緒にここに来てたって高木刑事が言ってたな)

コナン(その同級生ってのは確か消火活動の時に傍にいた背の高い男の子だったはず)

コナン(何か手がかりが分かるかもしれねえ…ちょっと話を聞きに行ってみるか)




藤木「永沢くぅん…」

藤木「なんで君が…」ヒックヒック

コナン「ねえ、ちょっといいかな?」

コナン「被害者の同級生ってお兄さんだよね?」

藤木「ん…君はあの時の…」ヒックヒック

藤木「すまないけど、今は一人にしてくれないかな…」


コナン「…」

コナン「友人が殺されて悔しいんだろ?」

藤木「こ、殺され…えっ…!?」

藤木「あれは火災事故だったんじゃないのかい?」

コナン「違うよ。彼は殺されたんだ」

藤木「な、なんだって!?」

藤木「でも一体だれがそんなことを?」

コナン「まだわからないんだ」

コナン「だから話してくれないかな、君が知ってること」

コナン「事件解決に協力してほしいんだ」

藤木「わ、わかったよ…」


コナン「なるほど…」

コナン「君はここに来てから今日一日、被害者とずっと行動を共にしてたんだね」

藤木「うん…そしたらあんなことになったんだ」

コナン「永沢くんだっけ…何かいつもと変わったところは無かった?」

藤木「えーと…変わったところかい?」

藤木「あ…そう言えば今日は髪とか顔に何か変なもの付けてたなあ、永沢くん」

藤木「確か…わ、わ…何とかって言ってたような」

コナン「わ…?」

コナン「もしかしてワックス?どんなもの付けてたか分かる?」

藤木「うーん…」

藤木「あ、そう言えば永沢くんのカバン預かったままだったんだ」

藤木「もしかしたら中に入っているかも知れないよ」


コナン「じゃあちょっと中見せてもらうね」

ガサゴソガサゴソ

コナン(おっ…あったあった、これか)

コナン(ヘアワックスと日焼け止めボディクリームねえ)

コナン(んっ…!?)

コナン(これは…)

コナン(フッ…そういうことか)

コナン「ねえ、お兄さん」

コナン「これって永沢くんが自分で持ってきたの?」

藤木「そうだよ。確か小杉くんに貰ったって言ってたなあ」

コナン「小杉ってもしかして早食い大会の決勝に出てた人?」

藤木「うん。小杉くんも僕たちと同じ小学校のクラスメイトなんだ」

コナン「そうなんだー」


コナン「ねえ、お兄さんは永沢くんとずっと一緒に居たって言ってたよね」

コナン「もしかして永沢くん、予選が終わってから小杉くんと会ってなかった?」

藤木「うん、3人で会って話してたよ。少しの間だけだけどね」

藤木「その時、小杉くんが富士宮焼きそばの屋台が美味しいって勧めてくれたから」

藤木「予選が終わってから僕たちはそこへ行ったんだ」

コナン「そうだったんだ」

コナン「お兄さん、話してくれてありがとう」

コナン「それじゃ僕はこれで」


藤木「どこへ行くんだい?」

コナン「うん、ちょっと確かめにね」

藤木「…」

藤木「永沢くんが殺されたのなら…」

藤木「僕は…僕は…許せないよ」

藤木「永沢くんは確かにちょっと嫌味な奴だったけど…」

藤木「それでも…」

藤木「僕のたった一人の大切な親友だったんだ…!」

藤木「だから僕も事件解決の力になれるなら協力したいんだ!」

コナン「ありがとう、お兄さん」

コナン「でも大丈夫だよ。刑事さん達がきっと解決に導いてくれるさ」


コナン(さてと、まずはあれを聞きに
行かなきゃな)


調理場近辺


コナン「料理人さーん」

シェフ「ん?何だい坊や?」

コナン「今日の早食い大会に出された料理っておじさんが全部作ったの?」

シェフ「そうだよ。どれも美味しそうだっただろう?」

シェフ「全て静岡産の食材を使ったご当地料理だったからね」

シェフ「でも、それがどうかしたかい?」

コナン「じゃあさあ、もしかして予選の料理に……」ゴニョゴニョ


シェフ「おっ、何で坊やがそれを知ってるんだ?」

シェフ「隠し味に使ったんだけどね、あれを付け足すことで」

シェフ「海の幸の風味が増して、料理がさらに美味しくなるんだよ」

コナン(やはりか…)

コナン「そうなんだー」

コナン「ありがとー、おじさん」

コナン(よし、あとは俺の記憶が正しければあそこに決定的な証拠が…)

ステージ付近


コナン「あ、おねーさーん」

カメラマン「あら、どうしたの君?迷子かな?」

コナン「ち、違うよ」

コナン「おねーさんってテレビ局のカメラマンさん?」

カメラマン「そうだけど?」

コナン「じゃあさあ、今日の大会の模様って全部録画してたの?」

カメラマン「ええ、予選開始から優勝セレモニーまでバッチリとね」

カメラマン「でもさすがに、大会後の火災事故の様子はあまりうつせなかったけど」

コナン「そのビデオ少し見せてくれない?」

コナン「刑事さんに頼まれたんだー」


カメラマン「えっ、刑事さんに?」

コナン「うんっ」ニコッ

カメラマン「それならいいけれど…どの辺りからかしら」

コナン「予選の時の映像が見たいんだー」

カメラマン「わかったわ、巻き戻すからちょっと待っててね」

ピッピッピッ

カメラマン「はい、ここからが予選スタートよ」


ビデオ再生中


コナン「…」

コナン「…」

コナン(フッ…やはりな)

事件現場付近


灰原「どこをうろついていたのかしら、名探偵さん」

コナン「ちょっと聞き込みにな」ニヤ

灰原「…?」

灰原「まさかもう?」

コナン「ああ」

コナン「謎は全て…解けたぜ!」


屋台店主「は、離してください!」

店主「何で私が警察に連れて行かれなきゃ…!」

警部「今回の火災事故、あなたに責任が無いとでも?」

警部「確かに直接的には、強風が原因で起こった不幸な事故ですが」

警部「火を扱う屋台の店主であるあなたには、監督責任があったのではないですかな?」

警部「たとえ、非意図的に起こってしまった事故だとしても…」

警部「無過失責任が問われるケースがあるのですぞ!」

店主「っく…」

店主「わかりました…」


灰原「工藤くん」

コナン「ああ」

コナン(って、おっちゃんも博士もいないんだったな)

コナン(ここは高木刑事を時計型麻酔銃で眠らせて…)

ピュッ

高木「うわぁ」ツルッ

藤木「あひっ」

藤木(あ、あれ…)

藤木(何だか急に…い、意識が…)

ドサッ

藤木「」zzz

高木「いてて…」

高木「誰だ?こんなところにバナナの皮なんて捨てたのは…」

コナン(やっべ外した…)

灰原「…」


コナン(仕方ねえ…あの子の声はさっき話した時に聞いて覚えてるから)

コナン(この蝶ネクタイ型変声器のダイヤルを合わせて…)

カチッカチッ

警部「あ、君」

警部「現場付近にいて足止めしていた人達に、もう帰っていいと伝えてくれ」

高木「承知しました、警部!」

警部「さてそれじゃ、あなたには署まで来てもらおうか」

店主「…はい」




藤木『ちょっと待ってください』


警部「ん?何だね君は?」

藤木『その人は今回の“殺人事件”とは無関係です』

警部「はぁ?殺人事件だと?」

警部「おい坊主。冗談も休み休み言えよ」

警部「あれはどうみても事ko」

鑑識「警部!鑑識の方の結果が出ました」

警部「ん?何の鑑識結果だ?」

鑑識「あれ?ご存知ないですか?」

鑑識「あちらの刑事が調査するようにと指示したそうですが…」

高木「えっ!?僕がかい?」

高木(あれ…そんなこと言ったかな…)


藤木『』ゴホンッ

藤木『まあ、とにかく話を聞きましょう』

鑑識(誰だこのガキ…?)

警部「そうだな。話してくれ」

鑑識「は、はい」

鑑識「火災現場付近で見つかったピン型の小型発火装置についてですが」

鑑識「焼却痕跡から判断して、今回の火災の出火元と見て間違いないようです」

警部「な、何だと!?」

警部「ということは、彼は…」

高木「事件とは無関係のようですね」

店主「」ホッ


警部「しかし、誰がこんなものを」

藤木『それなら既に分かっています』

警部「…!」

高木「君は確か被害者の友人の藤木くんだったよね」

高木「本当かい?」

藤木『はい』

藤木『でも、犯人を突き止める前に、まずは事件を整理してみましょう』

藤木『被害者である永沢くんが突然燃えだしたのは』

藤木『ちょうど優勝セレモニーが終わり、突風が吹いた時でした』

藤木『その後すぐに、コナン君や観客数名が消火活動にあたったわけですが』

藤木『不可解な事がひとつあったんです』


警部「不可解な事…?」

藤木『ええ』

藤木『被害者に着いた火がなかなか消えなかったんです』

藤木『小型発火装置により体に着火したとしても、普通あそこまで激しくは燃えません』

藤木『それに、火が身体中を瞬く間に覆い尽くしていました』

藤木『まるで身体全体に油を塗りたくっていたかのようにね』

警部「油だと?」

藤木『実際、彼は身体中が油でギトギトだったんです』

藤木『そうだよね、小杉くん』

小杉「」ビクッ


小杉「ふ、藤木…急におどかすなよ」

小杉「俺が何だって言うんだ…?」

藤木『警部さん』

藤木『被害者の所持品のカバンの中身は見ましたか?』

警部「まだ見ていないが?」

高木「警部!これが被害者のカバンです」

警部「どれどれ」

ガサゴソガサゴソ

警部「貯金箱以外に、特に怪しいものは入っていないが…」

藤木『その中にヘアワックスと日焼け止めクリームがありませんか?』

ガサゴソガサゴソ

警部「おお、あったあった」

警部「ん…これは!」


高木「警部、どうしたんですか?」チラッ

高木「…!」

高木「[馬油99%配合]メンズ用モテ髪ワックス…」

高木「[馬油90%配合]メンズ用モテ肌日焼け止めクリーム…」

警部「そういうことだったのか…」

藤木『そうです』

藤木『被害者は純粋な油に近い化粧品を身体中に塗りたくっていたために』

藤木『消火器でもなかなか消せないくらいに激しく燃えてしまったのです』

藤木『そしてこの化粧品を事件前日に被害者に渡したのは…』

藤木『小杉くん、君だよね?』

小杉「…」


小杉「ああ、確かにそれを永沢にあげたのは俺だ」

小杉「だけど、それだけじゃ俺が犯人ってことにはならねえだろ!」

藤木『うん、確かにそうだよ。でも…』

鑑識「警部!もうひとつの鑑識の結果が出ました」

警部「ん?今度は何だ?」

鑑識「あれ?ご存知ないですか?」

鑑識「これもあちらの刑事の指示だと聞いたのですが…」

高木「えっ!?また僕かい?」

高木(あれれ…おっかしいなあ…)

藤木『』ゴホンッ


藤木『それで、結果は?』

鑑識(何様なんだ、このガキ…)

鑑識「は、はい」

鑑識「被害者の後頭部に付着していた茶色い粉末の正体についてですが」

鑑識「鑑識の結果、静岡産の桜エビとドウマン蟹の殻が焦げたものと判明しました」

警部「エビとカニの殻?」

警部「しかし何でそんなものが頭に…」

藤木『それは今日の早食い大会に使われていた食材だったからですよ』

藤木『そうですよね、料理人さん』

警部「本当かね?」

シェフ「はい」


シェフ「確かに予選の料理の、つけナポリタンに」

シェフ「桜エビとドウマン蟹の粉末をふりかけとして使用していました」

警部「ふむ」

警部「…そうか!」

警部「犯人が被害者の後頭部に小型発火装置を取り付ける際に」

警部「手をきちんと拭いていなかったために」

警部「誤ってエビとカニの粉も一緒に後頭部に付着させてしまった」

警部「そして、その粉に触れる機会があったのは大会出場者の…」

小杉「ちょ、ちょっと待ってくれよ!」


小杉「それなら予選に出てた他の7人と、この怪しそうなシェフにも犯人の可能性があるだろ!」

シェフ「…」グサッ

藤木『それは違うよ!』

藤木『小杉くん』

藤木『君は予選の時、料理を素手で食べていたよね?』

小杉「」ギクッ

小杉「知らねえな…」

小杉「しょ、証拠があるのかよ?」

小杉「俺が素手で食べて、他のやつは素手で食べてないって証拠がよ!」

カメラマン「証拠ならあるわよ、ここにね」


小杉「あんた誰だ…?」

カメラマン「テレビ局のカメラマンよ」

カメラマン「今日は大会の様子を撮影しにここへ来ていたの」

小杉「ま、まさか…」

カメラマン「さっき眼鏡の坊やに言われて予選のシーンを何度も確かめたの」

カメラマン「つけナポリタンを素手で食べていたのは…」

カメラマン「小杉くん、あなただけよ!」

小杉「くっ…」


藤木『小杉くん』

藤木『今日会場へ来てから永沢くんが焼死するまで、僕は彼とずっと一緒にいたんだ』

藤木『その間、彼は僕と君以外には誰とも会っていなかった』

藤木『他の大会参加者や料理人さんとも、もちろんね』

藤木『つまり、君以外に発火装置を永沢くんに取り付けれた人物はいないんだ!』

藤木『およそ、頭にゴミか何かが付いているとでも言って』

藤木『隙を作って発火装置を取り付けたんだろう』

小杉「…」


藤木『君は予選が終わった後、僕と永沢くんにこう言ったよね』

藤木『富士宮焼そばの屋台が美味いから行くといい』

藤木『あそこなら決勝のステージもよく見えるだろうってね』

藤木『そうやって言葉巧みに僕たちを屋台の近くに誘導して』

藤木『突風が吹いたタイミングに合わせて小型発火装置のスイッチを押したんだ』

藤木『全ては殺人事件を偶然の火災事故に見せかけるためにね!』

藤木『これが君の仕掛けたトリックだ』

藤木『違うかい、小杉くん』

小杉「…」

小杉「ああ…そうさ」

小杉「永沢を焼き殺したのは俺だ!」


小杉「でもよ、あいつが…あいつが悪いんだ…」

小杉「俺のプリンを奪おうとしたあいつが!」

藤木『それは違うよ!』

藤木『永沢くんは別に小杉くんのプリンなんて欲しくなかったんだ』

小杉「で、でもあいつは俺が優勝できない方に賭けてただろ!」

小杉「優勝できなかったらプリンをよこせって…」

藤木『彼がそれを本心で言ったと思うかい?』

回想
___

藤木「永沢くん、君ってプリンが好きだったのかい?」

永沢「は?どうしてだ?」

藤木「だって小杉くんとの賭けでプリンを…」

永沢「フンッ、僕は別にプリンなんてどうでもいいね」

永沢「小杉くんが負けたとしても、彼からプリンを奪う気なんてさらさら無いさ」

藤木「えっ?」

藤木「じゃあ、どうして賭けなんてしたんだい?」

永沢「小杉くんは面倒くさがりの性格だからな」

永沢「だから食い物を賭けでもしないと本気にならないと思っただけさ」

藤木「永沢くん…まさか君は小杉くんのことを想ってあんな賭けを」

永沢「…もうその話はどうでもいいだろ」

永沢「帰ろう藤木くん」

藤木「あ、待ってくれよう永沢くーん」
___


小杉「永沢がそんなことを…」

小杉「嘘…だろ…」

藤木『全て真実さ』

藤木『永沢くんは…』

藤木『彼は、誰よりも小杉くんのことを心から応援していたんだよ!』

藤木『じゃなきゃ、わざわざ君を応援しに始発で浜松まで来たりなんかしない!』

小杉「…!」

小杉「永沢…俺は…俺はなんてことを…」

小杉「ながさわああああああああああああああぁ!!」

藤木『…』


藤木『小杉くん、君は殺人というとんでもない罪を犯した』

藤木『それも、化粧品を付けて少しでもお洒落をしたいという』

藤木『思春期の純情な心を利用した卑劣な犯罪をね!』

小杉「うぅ…」

藤木『でも…まだやり直せるさ』

藤木『少年院でしっかりと己の罪の深さを反省することだね』

藤木『それが天国へと行ってしまった永沢くんへの…』

藤木『せめてもの償いになるんじゃないかな』

小杉「…」

小杉「藤木…ありがとよ」


警部「おい、立てるか?」

小杉「はい」

警部「続きは署の取調室で聴かせてもらおうか」

小杉「取調室…!?」ゴクリ

小杉「警部さん」

小杉「取調室行ったら…俺…俺…」

警部「ん?」

小杉「カツ丼食えんのか!?」

高木「」ドテッ

灰原「…」

コナン(だめだこいつ…)

ED

カーカー

藤木(んっ…)

藤木(あれ…僕は確か…)

藤木(急に眠くなって意識が…)

藤木「ってうわあ!さ、笹山さん!?」

笹山「藤木くん…」

城ヶ崎「やっと目を覚ましたわね」

藤木「それに城ヶ崎さんまで!」

藤木「君たちどうしてここにいるんだい?」

城ヶ崎「どうしてって、私たちも早食い大会を見に来てたからに決まってるじゃない!」

藤木「そうだったのかい?全然気づかなかったよ…」


笹山「さっきの藤木くん…」

笹山「まるで名探偵みたいでかっこよかったわよ…」

藤木「」ポッ

藤木「えっ…さ、笹山さん…」

藤木「一体なんのことだい?」

城ヶ崎「もう、なにとぼけてんのよ!」

城ヶ崎「殺人事件を藤木の推理で解決に導いたじゃない!」

城ヶ崎「ちょ、ちょっとだけ…あんたのこと見直したわよ…」

藤木「えっ!?」

藤木「ぼ、僕の推理で…?」


藤木(はっ…もしかして!)

藤木「ごめんよ!」

タッタッタッタッ

笹山「あっ…藤木くん」

城ヶ崎「ちょっと、急にどこ行くのよ!」

城ヶ崎「…」

城ヶ崎(何なのかしら、藤木のやつ…)



藤木「」ハァハァ

藤木(まだ、あんまり遠くには行ってないはずだ…)

テクテクテクテク

灰原「工藤くん、事件を解決したのは良いけれど」

灰原「小学生を麻酔銃で眠らせるなんて、あなた悪趣味過ぎるわよ」

コナン「ばっ、あれは事故だったんだよ…」

灰原「へえ」

コナン「おめえ信じてねーな」


藤木(あ…いた!)

藤木「おーい!待ってくれよう!」


コナン(…ん?)

灰原(あれは、さっきの)

藤木「」ゼェゼェ

コナン「あれれー」

コナン「お兄さん急いでどうしたの?」ニコッ

藤木「ひ、ひとつだけ教えてくれないかい?」

藤木「君はいったい何者なんだ…?」

コナン「」フッ







コナン「江戸川コナン。探偵さ」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年09月23日 (火) 20:34:58   ID: WKEHv86h

続きは?

2 :  SS好きの774さん   2014年10月21日 (火) 13:03:56   ID: DSm82Qzp

面白かった(^∇^)

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