紬「アンナ!」よしみ「マーニー!」 (45)

思い出のマーニーのネタバレはありません
予告編を元に作っています

砂原よしみ…3年2組20番 通称…地味子

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1408288662

和「……琴吹さん。……琴吹さん。……琴吹さん。……ということで、マーニー役は琴吹さんに決定しました」

パチパチパチ……

紬「えっ……ええっ!?」

唯「おお、すごい!ダントツでムギちゃんに票が入ったよ」

律「そりゃぁなぁ、見た目からしてピッタリすぎだし」

澪「ムギ、よかったな。おめでとう」

紬「えっ、えっ……でも!私、脚本が……」

和「それは他の人に任せてもいいんじゃないかしら。せっかく皆に選ばれたんだし、ね」

紬「う、うん……」

和「それでは、次にアンナ役を決めようと思います。立候補してくれる方はいますか?……」

和「……ないようですね。それでは、推薦はありますか?」

圭子「……」クルッ

紬「……どうしたの圭子ちゃん?」

圭子「……えっとね、私個人的にはさ……砂原さんがいいと思うんだけど!」

よしみ「……え?」

圭子「ほら、ちょうどムギちゃんと隣同士だし、見てよ!なんかぴったりだと思わない?」

エリ「あ、確かに似合ってるかも?」

三花「うん、なんかミステリアスな感じがアンナっぽいかも!」

よしみ「え、えっと……」

圭子「でしょ?どうかな、推薦しちゃダメかな?」

和「推薦ということでよろしいですか?もし砂原さんがそれでいいなら、決定にしますけど……」

よしみ「……」チラッ

キミ子「……」ニコッ

響子「……」ニコッ

よしみ「……わかりました。やります」ニコッ

和「それでは、アンナ役は砂原さんに決定しました」

パチパチパチ……

圭子「ありがとう、急に無茶言ってごめんね」

よしみ「いいえ。ちょっとびっくりしただけ……あ、でも私、衣装をやろうと思ってたんだけど」

和「そうですね。では衣装係は……」

さわ子「はいっ!!私がやります!」

和「……先生?でも先生にそんなことをやっていただくなんて」

さわ子「いいのよ、悪いようにはしないから……ふふ」チラッ

律「あー……こりゃあの二人すごいことにされそうだなー」

澪「確かに……」

和「それでは、引き続き他の役を……」



よしみ「琴吹さん」

紬「は、はいっ!?」

よしみ「……よろしく」ニコッ

紬「!!」ドキッ

よしみ「……ん、どうかしたの?」

紬「……ご、ごめんなさい!よろしくね、砂原さん。がんばろうね」

よしみ「ええ」

……………………
部室

梓「……そうなんですか。おめでとうございます、ムギ先輩!とっても似合ってますよ」

紬「ありがとう……でも私、ちゃんとできるかな……まさか私がヒロインをやるなんて思ってなかったから」

律「ムギならだーいじょぶだって、澪じゃあるまいし!」

澪「どういう意味だ律っ!」ゴチン

律「でっ!?」

唯「ムギちゃんホントにマーニーそっくりだしねぇ」

紬「そうかしら……髪の色は似てるかもしれないけど」

唯「それだけじゃないよ、おっとりぽわぽわしてるところとか~」

梓「アンナが療養先で出会った不思議な少女っていう設定ですよね?ムギ先輩、ぴったりだと思います!ミステリアスなところもあるし……」

紬「ミステリアスかぁ……」

澪「ふふ、そういえば、砂原さんもミステリアスって言われてたな」

律「ちょっとムギとは違うタイプのミステリアスだけどな~」

唯「かわいいよねぇ~よしみちゃん」

梓「唯先輩は誰に対してもそう言ってる気がしますけど……」

紬「私、砂原さんとは隣の席なんだけど……まだそんなに話したことなくて……」

梓「え、そうなんですか?」

律「砂原さんはミステリアスだからな~」

澪「何でもかんでもミステリアスで片付けるなよ……砂原さん、普段は物静かだからな。私もまだほとんど喋ったことないし……」

唯「えーでも話しかけたらすごい笑顔でお話ししてくれたよー?姫子ちゃんも『話してみたら意外と面白いよ』って言ってたし」

梓「なるほど……一見、話しかけにくそうだけど実はよく喋るタイプですか」

律「そんな感じだな。ほーらムギ、これを機に砂原さんに急接近しちゃえよ」

紬「う、うん……がんばる……!」

澪「あはは……役よりもそっちの方が頑張りどころになってるな」

……………………
教室 練習第一回目

紬「……ねぇお願い、約束して……私達のことは秘密よ……」ブツブツ

律「よっ、ムギ。順調か?」

紬「うん、台本はまぁ何とか覚えてこれたかな……」

律「さっすがだなー、ムギは。これがもし澪だったらと思うと……ぷーくすくす」

澪「何か言ったか律?」

律「いいえ何もっ!!」

澪「ムギ、今日は非番なのか?」

紬「うん。マーニーは最初からは登場しないから。今日は自分の練習と、あと……見学!」



信代「じゃぁ頭からやってみようか。砂原さん、準備はいい?アンナの語りからだけど」

よしみ「うん、いいよ」

潮「え、他に誰も登場人物いないのにソロで語り?大丈夫?さすがに恥ずかしかったら他のシーンからでも……」

よしみ「ふふ、大丈夫……やります」

信代「じゃぁ……3,2,1,どうぞ!」

よしみ「……」スゥ…


澪「……」ジーッ
律「……」ジーッ
紬「……」ゴクリ ?


よしみ「……この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間」

よしみ「でも……そんなのは、どうでもいいの」

よしみ「私は……私が嫌いっ……」ギリッ…


信代「……お、おお~っ」パチパチ

ちか「す、スゴイ……」パチパチ

潮「……う、上手いよ!っていうか、なんか迫力あった!!」パチパチ

よしみ「……ふふ、そうかな?」



律「……すご、似合い過ぎててむしろ怖かったぞ今」

澪「気合い入ってるな……きっとたくさん練習したんだな」

紬「……」ポカーン

律「どうした相方さん」

紬「へっ……相方!?」

澪「そうだよ、アンナの相手役だろ、ムギ」

紬「私が、相方……頑張らなきゃ!!」

……………………
練習第二回目

信代「今日はマーニーとの出会いのシーンから練習するよ。ムギ、セリフは大丈夫?」

紬「うん、大丈夫!覚えてきた!」

よしみ「……」ジーッ

律「いよっ、ムギ頑張れ~!!」

潮「それじゃぁ、アンナが舟を漕いできたところにマーニーが駆けつけた後のセリフからだね……はい、どうぞ!!」


紬「……だ、だい、じょうぶ?」

よしみ「……?」


信代「カット!!ムギ、緊張しすぎだよ」

紬「ご、ごめんなさい」

ちか「ここ、戸惑うアンナをマーニーが優しくリードしてあげるところだよ?」

潮「落ち着いて、いつもの琴吹さんの雰囲気でやればできるから!」

紬「うん。もう一度、お願いします!」フンス

潮「じゃぁ……どうぞっ!」


紬「……大丈夫?」

よしみ「……」ジーッ

紬「……え、えっ?」テレテレ


律「カーット!ムギが照れてどうする!!」

よしみ「……ここ、私がマーニーに見惚れてしばらく見つめるところだよ、琴吹さん」

紬「あ、そうだった……ごめんなさい、緊張して頭真っ白になっちゃって……」

信代「あはは……ムギは慣れるまでちょっと時間かかるかもね」

ちか「しょうがないよ、今日初めての演技だもんね」

潮「他のシーン先にやろっか?」

紬「うん、ごめんね……ちょっと、練習してくる」

信代「よーし、んじゃ私のとこやろっか!療養先のおばさんとの会話シーン」

よしみ「うん、よろしく」





律「……ムギ、意外だな。ライブのときは堂々としてるから演技なんて余裕だと思ってた」

紬「大丈夫だと思ってたんだけど……やっぱり、自分が重要な役をやるとなると違うね……緊張しちゃって」

澪「わかるよムギ……脇役とかなら、まだマシなんだけどな。自分に注目が集まってると考えるだけで……うぅ」

律「……って、澪まで緊張してどうする!」

紬「それに……なんだか砂原さんが目の前にいると……」

律「え?」

紬(妙に緊張するというか、ドキドキするというか……あの子、まっすぐな眼差しでこっちを見てくるから……)

紬「……れ、練習しなきゃ!りっちゃん、アンナ役やってくれない?」

律「ええっ、なんで私!?」

紬「立ってるだけでいいから!」

律「まぁ、それなら……」

澪「笑わずにじっとしてろよ律」

律「それぐらいできるわい!ほら、ムギ」

紬「ありがとうりっちゃん。じゃぁ……」

紬「……大丈夫?」

律「……」

澪「……ぷぷ」

律「……!(こら澪、笑うなっ!)」

紬「……約束して?私達のことは秘密よ、永久に……」

律「……!」ドキッ

澪「できてるじゃないか、ムギ!」

律「あー、正直ドキッとしたわ……結構役に入りきってるな」

紬「ほ、ほんと?よーし……」

信代「ムギー、いけるー?」

紬「あ、うん!大丈夫!!」





信代「んじゃ、さっきのシーンをもう一回」

潮「いくよー……どうぞっ!」


紬「……大丈夫?」

よしみ「……」

紬「……」ドキドキ

よしみ「あなたは本当の人間?私の夢の中に出てきた子にそっくり……」

紬「ゆ……夢?夢じゃ、ないわ……」

信代「カット!惜しいね~」

よしみ「落ち着いて、琴吹さん。さっき田井中さんとやってた時は出来てたじゃない」

紬「み、見てたの!?」カアッ

信代「あっはっは、律相手なら緊張しないってかい!」

澪「ぷっ……」

律「な、なんでいっ!?私の扱いなんなの!?」

よしみ「ふふ……」クスクス

紬「あはは……」

……………………
後日 放課後

姫子「え?よしみ?」

紬「うん……」

唯「ムギちゃんがね、よしみちゃんがどんな子なのか知りたいんだって」

姫子「本人と喋ればいいじゃない……ってわけでもなさそうだね」

紬「なんか恥ずかしくなっちゃって……」

姫子「そっか。まぁあの子、どストレートだからね」

唯「サラサラヘアーだよね~」

姫子「そうじゃないよ、唯。あの子、芯が通っててどストレートって意味。見た目大人しいと思ってるとちょっとびっくりするかもね」

紬「そう、そうだよね……すごくまっすぐに見つめられちゃって、恥ずかしくなっちゃったの」

唯「なら、負けじと見つめ返すんだよムギちゃん」

紬「見つめ返す……?」

姫子「まぁその通りかも?ビビる必要はないよ。こっちもストレートで行けばまっすぐ受け止めてくれるから」

紬「わかった、ストレートね!ありがとう姫子ちゃん!」

……………………
練習第三回目

紬「……大丈夫?」

よしみ「……」ジーッ

紬「……」ジーッ

よしみ「……」ジーッ

紬「……」ジーッ

信代「……?ムギ、見つめ合ってないでセリフを……」

紬「はっ!!ごめんなさい……」

よしみ「……ぷ、ぷふふ、あっははははははは!あはははは!!琴吹さん、面白いね……あは、あははは!!」



キミ子「あーあ、よしみちゃんのツボにはまっちゃった……こりゃしばらく収まらないね」

響子「結構いいコンビになれそうだね、あの二人……ふふ」

唯「お!やっぱりそう思う~?ムギちゃんとよしみちゃん、お似合いだよね」

キミ子「唯ちゃん……うん、そうだね、私もそう思う」

響子「よしみ、アンナ役に決まってから結構琴吹さんのこと気にしてたよ。人間観察とか言って」

……………………
部室

紬「はあ……」

梓「む、ムギ先輩……大丈夫ですか?」

律「……こら梓、今ムギは気になるあの子の前で失敗しちゃって凹んでるんだよ」ヒソヒソ

梓「ええっ!?む、ムギ先輩に好きな人が……!?」

澪「話をややこしくするな!!」ゴチン

律「だっ!?」

唯「ムギちゃーん、大丈夫~?」

紬「はあ……アンナ……」

梓「役に入りきってる……?」

律「これもある意味現実逃避か……」

澪「痛いほど分かるよ、ムギ……」

……………………
後日 練習

紬「ねえお願い、約束して?私達のことは秘密よ、永久に」

よしみ「うん……秘密だよ。永久に……」

信代「そこで手を繋いで!」

紬「……」パシッ
よしみ「……」パシッ

潮「おお……なんか見てるこっちがときめいちゃうかも」

信代「だいぶ安定してきたね、ムギ」

紬「えへへ……よかった」

よしみ「ふふ……」

ちか「じゃぁ、この調子でちょっとクライマックスやってみない?」

潮「いいね!」

信代「セリフは大丈夫?」

よしみ「うん、大丈夫」

紬「覚えてはいるけど……」

信代「じゃ、ちょっとやってみようか。砂原さん、『どうして私を置いていってしまったの』からいけるかい?」

よしみ「了解。いくよ?」

紬「……うん」


よしみ「……どうして私を置いて行ってしまったの!?どうして私を裏切ったの!?」

紬「……ア、アンナお願い、許してくれるって言って!!」

よしみ「……もちろんよ、許してあげる!……あなたが好きよ、マーニーっ!!!」

紬「……ええっ!?」ボフン!! ドサッ

信代「ちょっ、ムギ大丈夫!?」

よしみ「……え?琴吹さん!?」

紬「」プシュー

……………………
保健室

紬「あれ、私……」

唯「ムギちゃん!大丈夫~?」

律「起きたか……」

澪「よかった……」

和「ムギ、なんともない?」

紬「うん……あれ、私練習してたはずじゃ」

和「練習中に倒れたって聞いたけど……疲れてたんじゃないかな」

律「ちょうど私ら見てなかったから何があったのかわかんないけど……ムギは覚えてないのか?」

澪「貧血とかかな?」

紬「ええと……確かアンナのセリフを聞いて……あっ!!」ボフン!!

唯「わっ、またムギちゃん真っ赤になった!!」

律「ははーん……こりゃアレだな」

和「アレって何よ、律?」

律「その……アレだよ……アンナのセリフのさ……」

唯「あなたのことが好きよ~、マーニー~!」

律「そ、そうそれっ!」

澪「今更だけど中々恥ずかしくなる脚本だよな……女の子同士だし」

紬「ちょっと役に入りすぎたかしら……好きよ、って言われたら急に恥ずかしくなっちゃって」

和「確かにそうね……でもこの脚本やりたいって言ってたのムギじゃない」

紬「そ、それはそうだけど!やっぱり自分でやるってなると……」

律「ぷぷ……ムギ、いつもは他の女の子同士が仲良くしてると目を輝かせてるのにな」

紬「んもう、りっちゃん!からかわないでよ」プー

律「ごめんごめんって……お?」

コンコン

律「お姫様の登場だな」

澪「王子様かもな?ほら行くぞ、唯」

唯「へ?何で?」

和「いいから。じゃ、お大事にね、ムギ」

紬「え?ええ、どうしたの急に」



律「ムギなら今起きたぜ~」ガチャ

よしみ「本当?よかった」ガチャ

紬「!!」



よしみ「琴吹さん、大丈夫?」

紬「う、うん……ごめんね、練習中断させちゃって」

よしみ「いいよいいよ。むしろ私のせいかな、ごめんね」

紬「そんなことないわ!すごく気持ちのこもった演技で……本当にアンナかと思ったの。だから……」

よしみ「ありがとう。琴吹さんこそ、本当にマーニーみたいだよ。優しくて、包み込んでくれるような感じ」

紬「ありがとう……」

紬(……ストレートに、ストレートに……)

紬「……ねぇ、砂原さん……あの……お友達に、なってくださいっ!!」

よしみ「……へ?」

紬「あ……えっと」

よしみ「……ぷ、ぷははは!!あはははっ、あっはっはっは!!やっぱり、琴吹さん、面白いね。うん、喜んで、こちらこそ、ぷふふ、お友達になってください」ニコッ

……

紬「そんなに笑わなくてもいいのに……」プー

よしみ「ごめん。ツボに入ると止まんなくなっちゃって……」

紬「……ふふふ。こうやって、ゆっくりお話しするの、初めてね」

よしみ「うん、隣の席なのにね。でも、私は琴吹さんのことよく見てたよ」

紬「本当……?」

よしみ「うん。髪の色が綺麗だから……どんな服が似合うかな~とか、考えるのが楽しくて」

紬「服を?」

よしみ「うん、私、服とかデザインするの好きなの。将来、そういうのやりたいと思ってる」

紬「そっか、それで衣装係をやろうとしてたのね!」

よしみ「そう。でも主役に選ばれちゃったからね、せっかくだしこっちをやることにしたの。私がまさか主役なんて考えたこともなかったからびっくりしたけど」

紬「私もよ……」

よしみ「琴吹さんはもう始めからマーニーで決定だと思ってたけど」

紬「もう、みんな髪の色だけで選ぶんだから……」

よしみ「そんなことないと思うよ。琴吹さん、優しいし芯がしっかりしてて、中身もマーニーにぴったり。どこかのお嬢様みたいでミステリアスなところもね」

紬「そんな、芯がしっかりしててミステリアスなのはむしろ砂原さんのほうでしょう?」

よしみ「私達似たもの同士?」

紬「うふふ、そうかもね」

よしみ「マーニーとアンナも似てるところあるよね」

紬「うん、確かに私もそう思った」

よしみ「ねぇ……友達になったのなら、下の名前で呼んでもいい?」

紬「うん!ムギ、って呼んでね」

よしみ「んー、つむぎ」

紬「!?」

よしみ「いい?」

紬「……い、いいわ!じゃぁ、私も呼び捨てでいい……?」

よしみ「全然いいよ」

紬「……よ、よしみ!」

よしみ「はい。なんでしょうかお嬢様」

紬「……もう、茶化さないでよ……ふふ」

よしみ「ふふ……」

紬「……不思議。今日初めてゆっくりお話ししたのに、もう昔からの友達みたい。よしみってまるでマーニーのようね」

よしみ「つむぎこそ、今日までずっと緊張してたのに、やっと自然に笑ってくれたね。まるでアンナみたい」

紬「私達、逆よ」

よしみ「そうかも」

紬「……そうだ!ねぇ、よしみ」

よしみ「ん?」

紬「……私達がお互いに呼び捨てで名前を呼んでいることは……秘密よ、永久に」

よしみ「……うん、秘密だよ……永久に」

また明日書き込みます

……………………
さらに後日 練習

紬「……秘密よ、永久に。ねぇ、ここの手の繋ぎ方、こうでいいかな?」

よしみ「うん。両手で繋ぐのがいいよ。こう……秘密だよ、永久に……ってね」



澪「いつのまにかムギが砂原さんと打ち解けてる……」

律「こないだ私達がいなくなったあと何があったんでしょうねぇ奥様」

エリ「えー、なになに、何かあったのあの二人?」

アカネ「何かある日突然仲良くなったよね!」

律「そうそう、実はな……」

紬&よしみ「「田井中さん?」」

律「は、はいっ!!何でもございませんですことよ!!」

澪「ムギに名字で呼ばれると怖いな……」



紬「よ……砂原さん。もし時間あったら、休日練習しない?」

よしみ「うん、いいよ」

信代「もう心配いらなそうだね、二人とも」

ちか「アツアツう!」

潮「完成が楽しみだな~!」

……………………
休日 教室で二人きりの練習

よしみ「……ふう。だいぶ良くなってきたね」

紬「うん。あとは実際に大道具が出来てから確認、かな?」

よしみ「休憩しようか」

紬「ええ。あ、そうだ!軽音部の部室に来て?」

よしみ「え、いいの?」

紬「いいの。お茶しましょう?」

……………………
部室

紬「……はい、どうぞ」

よしみ「ありがとう。これが噂の軽音部のティータイムかぁ」

紬「そんなに有名?」

よしみ「そりゃぁもう。クラスで知らない人はいないと思うよ……あ、おいしい」

紬「よかった……お菓子もあるの、食べてね」

よしみ「ありがとう。マーニーの家に来たみたい」

紬「本当?じゃぁ、アンナとマーニーの秘密のお茶会ね」

よしみ「そんなシーンないけどね、ふふ」

紬「ふふ……ねぇ、よしみ」

よしみ「ん?」

紬「よしみって……すごくストレートで……」

よしみ「あ、もしかして姫子に聞いたの?」

紬「! うん、そうなの……よくわかったね」

よしみ「よく言われるもん。意外と感情表現が直球だねって。やっぱり意外かな?」

紬「うーん……確かに、すごく大人しい子なのかなって思ってた」

よしみ「そうだよね……」

紬「ごめんなさい、私変なこと聞いちゃったかな」

よしみ「いいよ。ねぇ、つむぎ。私、何でアンナに選ばれたと思う?」

紬「それは……アンナにぴったりだから?大人しくて、ミステリアスで……あっ」

よしみ「そうだよね。周りの輪に溶け込めなくて、変わった子だなって周りから思われてて」

紬「そ、そんなつもりで言ったわけじゃ……」

よしみ「いいよ。ありがとう。でもね、その通りだと思うんだ。正直、アンナって主役だけど……ちょっとひねくれてる性格だし、配役を選びにくかったと思う」

紬「……」

よしみ「推薦で私に決まって、良かったと思うよ。多数決になってたら、『アンナっぽい子』が、黒板に書き出されることになるんだから。嫌な思いをする子もいるかもしれない」

紬「よしみは、嫌じゃなかったの?」

よしみ「うん、別に。気にしてない。その通りだな、とは思ったし。いい意味でも悪い意味でもね。そのいい意味の方を受け止めて、前向きにやろうと思った」

紬「……強いのね……」

よしみ「私……人とはちょっとズレた感覚を持ってるみたいで、昔からなかなか人の輪に入れなかったんだ」

紬「……」

よしみ「ズレてるから、誤解を招くことも多いし。またみんなに変な子だなって思われてるんじゃないかって、怖かった時もあった」

紬「……うん」

よしみ「でも段々バカらしく思えてきて。そんなことを気にするのがね。だから、もう私は怖がらないで気持ちをまっすぐ表現しようと思ったの」

紬「……うん」

よしみ「ズレてるのはもう分かってるからさ。私はオープンですよ、って。別に裏で何か考えたりしてないですよ、って」

紬「……うん」

よしみ「そしたら、結構分かってくれる人は増えたし……まぁ未だに基本1人行動だけどね。それは別にいいんだ、性に合ってるし」

紬「自分に対してみんながどう思っているかを全部受け入れて、進んでアンナ役をやることに決めたのね……すごいよ」

よしみ「そうかな?」

紬「うん。とっても。自分のことをみんなが悪く思っているなんて想像したら……私なら、周りのみんなが怖くなってしまいそう」

よしみ「私だって、ああ言ったけど未だに少しは怖いよ……?つむぎ、あなたにだってどう思われてるのか……気になってた」

紬「私はあなたが大すきよ、よしみ!!」ガタッ

よしみ「うわ!?ちょっと、なに突然恥ずかしいことを……」

紬「あ、ごめんなさい、つい……でも、本当よ。素直で、素敵だと思う」

よしみ「……ありがとう……でも」

紬「なぁに?」

よしみ「……なんでもない」

……………………
校門にて

紬「今日はたくさん練習して、お茶会もして楽しかったね」

よしみ「……うん。楽しかった。またね、つむぎ」

紬「またね、よしみ!」


よしみ「……」クルッ スタスタ

……………………
部室

よしみ「……」ガチャ

梓「あ……」

よしみ「あ、ごめんなさい、お邪魔します」

梓「あ、いえ……あの」

よしみ「もしかして、私達がいたから待っていたの?」

梓「え、えっと……お気になさらないでください!」

よしみ「ごめんね、練習の邪魔をしちゃって……あなたは、軽音部の2年生の」

梓「中野梓といいます。もしかして、ムギ先輩と劇で共演するっていう……」

よしみ「そう、砂原です。よろしくね」

梓「は、はい、よろしくお願いします!」

よしみ「……早速だけど、邪魔しちゃ悪いから……さようなら」

梓「え?いえ、何かご用があったんじゃないんですか?」

よしみ「……んー、まぁ……」

梓「……?」

…………

よしみ「琴吹さん……つむぎって、どんな人?」

梓「どんな人、ですか……。ムギ先輩は、優しくて、おっとりしていて……いろんなことに興味津々で……謎も多くて……」

よしみ「うん。後は……?」

梓「あ、でもすごくしっかりしてるところもあります。たまに、ズバッと意見を言ったり」

よしみ「ライブのときは?」

梓「すごく楽しそうです。ちょっと興奮しすぎちゃうこともあるかもしれません」

よしみ「……そっか。うん」

梓「……あの、どうしてそんなことを?」

よしみ「……それがみんなに知られている、軽音部のムギちゃんの姿なんだね」

梓「……え?」

よしみ「うん、ありがとう、中野さん。つむぎは本当にいるんだなぁって思っただけ。お邪魔しました。またね」ガチャ

梓「え……はぁ。また……」


梓「……どういう意味だろう……やっぱり、ちょっとミステリアスな人だなぁ」

……………………
後日 練習

ちずる「できたよ、大道具!」

律「いよっ!待ってました!!」

潮「すごーい、マーニーのお家だ……」

信代「湿地っぽい草も完璧だね。せっかくだし、盛り上がるシーンやってみる?」

ちか「いいねいいね、雰囲気が出そう!」

律「ムギ、あのマーニーの部屋の窓から顔出してみなよ」

紬「よいしょ……こう?」

澪「すごい……似合ってるよ、本当にマーニーみたいだ」

紬「うふふ……じゃぁ、セリフいくね?砂原さん、いい?」

よしみ「……うん、いいよ」

紬「……アンナ!大好きなアンナ!!」

よしみ「……どうして私を置いて行ってしまったの!?どうして私を裏切ったの!?」

紬「アンナお願い、許してくれるって言って!!」

よしみ「……もちろんよ、許してあげる……あなたが………………好きよ……マーニー……」

信代「ん?」

律「あれ?」

紬「……よ……砂原さん?どうしたの?」

よしみ「……ごめん、ちょっと調子悪いかな。うまく気持ちを込められなくて。せっかく大道具作ってくれたのに、ごめんね。次は、ちゃんとやるから」

ちずる「う、ううん、いいよ!体調が大事だよ!」

よしみ「ちょっと休んできます。ごめんね」

信代「大丈夫?無理しなくていいよ」

よしみ「うん、ありがとう」ガチャ


潮「どうしよう……」

ちか「他のところ、やろっか……」

紬「……私、行ってくる!!」ガチャ

…………
廊下

紬「……よしみ!」

よしみ「つむぎ……」

紬「大丈夫?」

よしみ「うん」

紬「……体調が悪いわけじゃないの?」

よしみ「……うん」

紬「……」

よしみ「ねぇ、つむぎ。つむぎが見ているのは、本当に私?」

紬「えっ……」

よしみ「つむぎって、ちょっと世界に入り込みすぎて舞い上がっちゃうところがあると思うんだ」

紬「……う……」

よしみ「私、アンナじゃないよ」

紬「!!そんな、そんなつもりじゃ……!」

よしみ「アンナじゃなくても、アンナのような誰かというか……」

紬「……」

よしみ「怖くなっちゃったんだ。私達、まるでマーニーとアンナみたいだから」

紬「……うん」

よしみ「お互いに、作り上げた空想の人物と会話しているんじゃないかって、不安になっちゃって」

紬「……」

よしみ「この劇が終わったら、私達はどうなるのかな」

紬「……ごめんなさい。私、役に入りきりすぎたのかもしれない。劇を通してよしみと仲良くなれたから、それに酔っていただけなのかも」

よしみ「……」

紬「だから、この劇が終わってしまったら……お互いにアンナとマーニーでなくなったら……以前の関係に戻ってしまうのかな、って考えると、怖い」

よしみ「……うん。大すきなつむぎはもういない。つむぎは軽音部のムギちゃんに戻って、私は置いていかれるんじゃ……そう考えちゃった」

紬「そんなことないわ!!ねぇ、よしみ。これからも、友達でいて。軽音部のみんなも大切な友達だけど、あなたも大切な友達なの」ギュッ

よしみ「ありがとう……」ギュッ

紬「……劇が終わったら……次の日、私達の軽音部のライブ、見に来てほしいな」

よしみ「うん。絶対行く」



唯「おお、廊下なのにムギちゃん大胆……」

澪「抱きつき魔のお前が言うなよ……」

姫子「よしみがあんなに取り乱してるの初めて見たけど……何とかなったみたいだね」

律「ふーむ、やるなムギ」

……………………
部室

律「おいーっす」

澪「梓、遅れてごめんな」

梓「あ、みなさん!いえ、大丈夫で……」

唯「あずにゃーん久しぶり~!」ダッ

梓「そうはさせません!」ベチン!

唯「ぶえ!?あずにゃんしどい……」

梓「まったく……あ、ムギ先輩はやっぱりまだ練習ですか?」

律「そ。ムギがいないからここんとこしばらくティータイムお預けだな~」

澪「中々全員揃って練習できなくてごめんな、梓」

梓「いえ、いいんです。忙しいのにみなさん来てくれてますから。それにムギ先輩はヒロインですもんね。ほとんど来れてないけど……仕方ないです」

律「まぁ私と澪は特に忙しい仕事ないからな。唯は草だし」

梓「草……?」

唯「そう!草Gだよ!!」

梓「Gって……草そんなに要るんですか?」

澪「湿地帯が舞台だからな。結構草が生えているんだ。舟が起こす波に合わせて揺れたりするから結構動くんだよ」

唯「そうなんです!ゆらゆら~、ゆらゆら~」

梓「は、はぁ……」

律「ま、そんなこんなで私らはなんとか抜けて部活来れるんだけど。ムギはちょっと無理かな~」

梓「そうですね。お茶もないことですし、早速練習しましょう!」

律「う、ちょっと休憩してから……」

澪「ダメだ、時間ないんだからやるぞ!」

唯「ゆらゆら~、ゆらゆら~」

澪「ほら、唯もいつまでも練習してないで……」

紬「みんなっ!!」バタン??

律「ムギっ!?」

梓「ムギ先輩!!」

唯「おお、ムギちゃん!」

澪「ムギ……練習はいいのか?」

紬「……よしみがね、軽音部も大切にしなきゃダメだよ、って。だから練習しましょう?」

澪「……わかった。よし、練習するぞ!」

梓「……はい!久しぶりに全員ですね!」

律(ん……?今よしみって言ったか……?)

唯「りっちゃん、ほら行こうよ!」

律「お、おう!よっしゃー、今日で仕上げんぞっ!!」

……………………
文化祭当日 教室

さわ子「じゃじゃーーん!!!」

紬「えへへ……」

一同「「おおーーっ!!」」

ちか「マーニーだぁ~!」

圭子「かわいい~!!」

しずか「かわいい……」

和「先生……被覆室にこもってずっと作ってたんですか?」

さわ子「そうよ。ちょっと今回手を広げ過ぎちゃって……この後もまたこもらなきゃ……」

潮「先生すごーい!!」

さわ子「うふふ……私だけの力じゃないわよ。ね、アンナ。ほら、いらっしゃい」

よしみ「……」

圭子「アンナだ!かわいいね~!!」

よしみ「もともと地味だけどね」

さわ子「それは確かに残念だけどね。でも、その分砂原さんには衣装をたくさん手伝ってもらったんだから。特にムギちゃんの衣装」

紬「え、そうだったの、よしみ?」

よしみ「そう。今回自分の服は普通だから、その分つむぎのは頑張ろうと思って」

紬「ありがとう!大好きなアンナ!!」

ちか「ひゅーひゅー!」

信代「お熱いね、二人とも」

よしみ「ちょっと、恥ずかしいからやめなよ……ふふ」



さわ子「……ちょっとムギちゃんいい?はい、これ」

紬「……リンドウのお花」

さわ子「ナマモノよ。アンナの衣装がちょっと物足りないから、せめてお花だけでもと思って」

紬「ありがとうございます、先生!」


美冬「……みんな、そろそろ舞台袖に集合しよう!」


よしみ「行こう、つむぎ」

紬「うん!!」



キミ子「よしみちゃん生き生きしてるね……」

響子「何か少し変わったよね……」

……………………
講堂

梓「すご……」

純「もう席いっぱいじゃん」

憂「座れるかな?」

さわ子「梓ちゃん!みんな、ここ空いてるわよ」

梓「あ、はい!」

純「やった、ラッキー!」

憂「もう始まっちゃうね、間に合ってよかったぁ」

……

美冬「みんな。今日のために頑張ってきたんだから、悔いの残らないように精一杯やりましょう!」

美冬「準備はいい?」

紬「うん!」

よしみ「……うん!」

美冬「それじゃ、頑張ってこーう!!」

一同「「おーー!!!」」

……

純「舞台裏から掛け声が聞こえてきた!」

憂「いよいよ始まるって感じだね……」

梓「先輩方……きっと今日のためにたくさん練習してきたんだなぁ……楽しみ」

さわ子「始まるわよ」

……


よしみ「……この世には目に見えない魔法の輪がある。輪には内側と外側があって、私は外側の人間」

よしみ「でも……そんなのは、どうでもいいの」

よしみ「私は……私が嫌いっ……」



梓(すごい……砂原先輩、こんなに演技うまかったんだ……)

……

……

ちずる「……ない!!」

美冬「どうしたの?」

ちずる「ないの!舟が!アンナが漕いで行く舟が!!」

律「な、なんと!?あんなでっかいモンどこに忘れたんだよ!?」

ちずる「おかしいな……オールはちゃんと持ってきたのに……」

美冬「そんな……舟がないと、この話、始まらないわ!すぐ探しに行かなきゃ!!」

澪「私、クラスに戻って探してくるよ!」ダッ

唯「わ、私も!」

律「唯はこの後草があるだろっ!しょうがないな、私は他のクラスに聞いてみる!」ダッ

和「何か、変わりになるものはない?それも同時に探しておいたほうが……マーニーの出番、すぐに来ちゃうわよ」

美冬「舟を取り扱ってるクラスなんてあったかな……」

しずか「……確か、オカルト研の展示に舟があったような……私、オカルト研に友達いるから聞いてくる!」

ちずる「あっしずか、出番は!?」

しずか「唯、まかせた!」ダッ

唯「任されたー!……って、えっ、えっ?ののの和ちゃん、セリフ!台本見せて!!」

和「落ち着いて、唯」

美冬「大丈夫、セリフはないから。草Hだよ」

唯「おお!助かった……」

……

純「すごい、マーニーのお屋敷クオリティ高っ」

梓「窓の中にムギ先輩が……まだ後ろ姿しか見えないや」

憂「あっ、お姉ちゃんだ!」

梓「えっ?……ほんとだ……」

純「草……あれ顔出す必要あんの?」

さわ子「そこはつっこまないであげて……」

……

しずか「はあ、はあ……」

オカ研左「これは旧約聖書の『創世記』に登場する大洪水にまつわる、ノアの方舟の縮小模型。中は居住区が再現されているので乗ることはできない」

オカ研右「でも……使えるのなら、喜んで」

しずか「あ……ありがとう!すぐ返すからね!」

オカ研右「それは木製なので重量は数十kgはある。私達も顧問の先生に手伝ってもらって運んだ」

しずか「う……確かにとても1人2人じゃ無理かも……応援呼んでくるね!」

紬「大丈夫!運べるわ!!」

しずか「む、ムギちゃん!?マーニーは!?いいの?」

紬「はあ、はあ……だって、この舟がなきゃ私、登場できないもの!!一緒に運ぼう?」

しずか「でも、これすごく重くて……」

紬「大丈夫!いくよ、せーのっ、えいっ!!」

しずか「えいっ!!す、すごい……持てた……力持ちなマーニー……」

……

律「だーめだ、どこにもそれっぽいのない!」

澪「教室にもなかった……途中に落ちてもいなかったよ」

和「困ったわ……もうすぐムギの出番なのに……」

しずか「借りてきた!」

紬「はあ、はあ……」

律「おお、ナイスしずかっ!って、すげー模型だな……」

澪「ムギ、汗だくじゃないか!一回メイク直してもらった方が……」

紬「う、うん……そうする、みんなこれお願いね!」

美冬「よし、みんな手伝って!運びましょう!!」

ちずる「うん!」

……

よしみ(何この舟、模型……!?中に入れないんだけど……しょうがない、舟の後ろに座ってれば乗ってるようには見えるかな)



純「舟……なんかゴツくない?」

憂「そういう時代設定なのかな?」

梓「それより、唯先輩がまた草で……見ててハラハラする」

さわ子「……しっ、ほらムギちゃんがあの門から出てくるわよ」

キイ……

紬「……こっちよ!!」


おおお……
かわいい……
ハーフかしら……?

梓「ムギ先輩、きれい……」

純「どよめきが起こったよ……」

憂「すごい、かわいいなぁ……」

さわ子「ふっふっふ……」



紬「……大丈夫?」

よしみ「……」

紬「うふふ……」

よしみ「あなたは本当の人間?私の夢の中に出てきた子にそっくり……」

紬「夢?夢じゃないわ」



憂「2人ともきれい……」

梓「そうだね……だからこそ、ハラハラする……草が」



唯(ゆらゆら~、ゆらゆら~)

紬「ねえお願い、約束して?私達のことは秘密よ、永久に」

よしみ「うん……秘密だよ。永久に……」

……

美冬「なんとかごまかせてるみたい、あの舟」

和「客席からは細かいところは見えてないみたいね」

しずか「よかったぁ……」

……

紬「……はい、アンナ」

よしみ(……!リンドウのお花、これ、本物?)

よしみ「……マーニー……」ジーッ

紬(……え?そんなに見つめるシーンじゃ……)カアッ




純「……なんか、見ててドキドキしてきたんだけど……」

さわ子「美しいわ……グッジョブムギちゃん、そして私!」

……

律「よーし、これで舟のシーン終わり!何とか乗り切ったな」

和「ええ。早速だけど、それオカルト研に返してきてくれないかしら」

律「りょーかい!澪、手伝ってくれ」

澪「わかった。せーのっ」

律「せーのっ、ぐえっ!?」

澪「重っ!?」

律「しずか……これ本当に2人で運んだのか!?」

しずか「うん……ムギちゃんがほとんど頑張ってくれたけど」

澪「どれだけ怪力なんだ、ムギ……」

……
美冬「次、クライマックスシーンよ!入れ替え、素早くね」

よしみ「……終わっちゃう」

紬「よしみ……?」

よしみ「つむぎとの楽しかった日々が」

紬「お、終わらないわ……!約束したじゃない、明日……」

よしみ「わかってる……わかってる……」

美冬「準備完了?……アンナ、マーニー、入って!」

紬「は、はい!」

よしみ「……うん」

……

憂「いよいよだね……」

梓「ああ、こんな重要な場面でまた草……!」

純「しかも波が激しいから結構動いてるし……」



唯(ゆらゆら~!ゆらゆら~!!)

よしみ「……ひどいよ……ひどいよ
……ぐすっ……マーニーっ……ひっく」

紬(えっ、よしみ……本当に泣いてるの!?)

よしみ「あぁぁ……マーニーっ……!!」

紬(……っ!!)バタン??

紬「……アンナっ!大好きなアンナ!!」

よしみ「……マーニーっ!!どうして……どうして、私を置いて行ってしまったの!?どうして私を裏切ったの!?」

紬「そんなこと……しないわ!!だって、あなたのことが大好きだものっ!!これからも、ずっとよ!!アンナお願い、許してくれるって言って!!」

よしみ「……!!」

よしみ「……もちろんよ、許してあげる!あなたが……あなたが好きよ!!……マーニーっ!!」

紬「アンナ……」ニコッ

よしみ「……」ニコッ

唯(……)ポカーン



梓(すごい……)

憂(うぅ、涙が……)

純(今本気で言ってたよね……)

さわ子(唯ちゃんの草が止まっちゃったけど……むしろいい演出かも?)

……
終了後舞台袖

紬「……ぷはっ」

よしみ「終わったぁ……」

美冬「お疲れ!すごかったよ!!」

信代「どうしたんだい、あのアドリブ!本物のアンナとマーニーが乗り移ったのかと思ったよ」

紬「あはは……気持ちが入っちゃって」

澪「圧倒されちゃったよ……」

唯「あわわわわどうしようごめんなさいごめんなさい!!私動くの忘れちゃったよ~!!」

律「いや、大丈夫大丈夫!むしろ良かったぜ、二人の迫力の演技で時が止まったみたいになって」

和「確かに、そのほうがよかったかもね」

唯「ほえ?ほんと?」

ちずる「うん!すごかったねー、お客さんみんな口ぽかーんと開けてたもん」

よしみ「……ああ恥ずかしい」ダッ

紬「あっ、どこ行くの!?……もう」

しずか「……やっぱり、本音だったのかな」

紬「……!」カアッ ダッ

しずか「あっ、ムギちゃんまで!?」

……

よしみ「はあ、はあ……」

紬「……よしみ!」

よしみ「……」

紬「……えへへ、ちょっと役に入りすぎちゃったかな」

よしみ「……うん。つむぎ、あのアドリブのセリフはちょっと本来とは意味ズレちゃってたよ?」

紬「そ、そうよね……ごめん」

よしみ「私は嬉しかったけど」ニコッ

紬「……よかった」

よしみ「明日、楽しみにしてるね。さ、もう戻ろう、片付け手伝わなきゃ」

紬「……うん!」

……

よしみ(今日でこの劇は終わり)

よしみ(つむぎと一緒に主役ができて、本当に良かった)

よしみ(でも明日から、マーニーとアンナではいられない)

よしみ(前へ進まなきゃね)

よしみ(どうなるのかな……わからない。でもきっと大丈夫)

よしみ「つむぎ」

紬「なぁに?」

よしみ「よろしくね」ニコッ

紬「ええ!」ニコッ




おわり

おわりです。

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