荒巻「そうだ。今回の任務はそいつの確保だ」
バトー「確保って、殺すなってことか?」
荒巻「できる限りな。最悪の場合、射殺しても構わんそうだ」
トグサ「構わんそうだ、って、誰かからの命令ですか?」
荒巻「いや、ワシの古い友人からの依頼でもあってな。そいつがスカウトしたいと言っている」
バトー「スカウト?」
素子「ふぅん。9課が知らない情報を持っているなんて、さぞかしお偉いさんなんでしょうね?で、そのテロリストの特徴、どこまでわかってるの?」
荒巻「うむ。対象のテロリストの名は神隼人。武装革命集団を名乗るグループのリーダーだ」
バトー「武装革命集団?えらく直球な名前だな」
荒巻「その通り、武力で革命を目論む旨の声明を出している。陸自の兵器格納庫に、直筆の書き置きでな」
トグサ「兵器格納庫?」
荒巻「ちょうど五日前、そのテロ集団が陸自の兵器格納庫に侵入し、アームスーツ二機を奪って逃走した」
バトー「おいおい生身でやったってのか?」
荒巻「うむ。取り巻き数人は部分部分義体化していたようだが、神隼人本人は一切義体化していなかったという分析結果が出たそうだ」
バトー「本当かよ」
素子「奴等の手口はわかってるの?」
荒巻「いたって単純だ。目標施設周辺にジャミングをかけると同時に、有線の通信ケーブルを全て切断。外部への連絡を取れなくして混乱状態に陥ったところを襲撃。物理的にな」
荒巻「三日前には海自の兵器格納庫、昨夜は政府の極秘研究施設で同様の襲撃があった」
イシカワ「海自の方はやはりアームスーツが?」
荒巻「うむ。海自の時は陸自から奪ったものと思われるアームスーツも確認された。そして奴等は新たに海自のアームスーツ二機を奪って逃走した」
バトー「電脳無しでアームスーツのプロテクトを解除したのか」
トグサ「グループの中に凄腕のハッカーがいるんじゃないのか?」
イシカワ「それでも電脳戦に長けてるわけではなさそうだがな」
素子「昨夜は何が盗まれたの?」
バトー「そうだ。そもそも何の施設だ?」
荒巻「昨夜の事件については監視カメラの映像が施設側から提供された」
バトー「陸自と海自からは提供無しってか」
素子「メンツを保つことしか頭に無いのよ」
荒巻「これだ」ピッ
敷島研究所、22時32分
トグサ『敷島研究所?確か、世界で初めて義体に兵器を搭載することに成功した施設だよな?』
バトー『ああ。責任者の敷島博士は相当の過激派研究者だった。搭載実験に成功した後、その技術を求める国や民間企業に簡単に提供し、瞬く間に世界に普及させた。その後は危険人物と認定された敷島博士の事故死と同時に、主要な研究者は別の研究所へ異動。以降ろくな成果はあげられていないそうだ』
素子『敷島博士が何者かによって暗殺されたことは明白だけど、今の問題は何故今更そんな研究施設に奴等が来たのかね』
ドガァァン
「!?…襲撃か!?」ガチャ
サイトー『そんな施設に警備サイボーグか…』
ボーマ『今の爆発、奴等結構な量の爆弾使ってないか?』
「うおおおおおお!」ドガガガガ
「ぐぅっ…!」ドガガ
「アームスーツ、前進しろ!」
ギュイン ギュイン
ドガガ ドワッ
「うぁ!?」
ドゴン
「…制圧!」
「次、そこの扉だ!」
バトー『流石にアームスーツが四機ありゃな』
ガシュ
ドガガガガ
「うぎゃあ!」ドサッ
「あああ!」ドサッ
「う、うわぁあああ!」ダッ
イシカワ『実質的な研究員は3名か。残りは例のごとく、自動化か』
「へへっ…逃がすかよ」ジャキッ
シュッ ザクッ
「なんで…」ドサッ
「ひっ…」
「データまで吹き飛ばす気か?」
トグサ『おい、仲間を殺したぞ』
荒巻『そいつが神隼人だ』
隼人「お前たちは奪取経路の確保を!」
「「はっ!」」
隼人「パスワードを教えてくれないか?」
「ひ…ひぃ」
隼人「秘密兵器の管理データのな…」ガッ
素子『秘密兵器?』
荒巻『この施設は、表向きは敷島研究所だが、実態は政府の特殊兵器管理センターだ』
トグサ『特殊兵器管理センター?』
荒巻『極秘に研究・開発されている兵器のデータを管理する施設だ』
バトー『噂は耳にしたことはあるが、実在していたのか』
素子『非人道的な兵器を開発していたりしない?』
荒巻『あったとしても、今はそれを確実に悪用する者の確保が先だ』
ドガッ
隼人「痛い思いはしたくないだろ!」ギギギ
「C…U…T…I…E…H…」ゴホッ
隼人「…」ピッピッ
「O…N…E…Y…」
隼人「…」ピッ
ピピッ
ACCESS
隼人「ヒッ…」ニヤッ
グシャッ
「」ドサッ
バトー『…今何しやがった?』
素子『片手で首をへし折ったように見えたけど』
隼人「…」カタカタカタ
「神さん!こいつ、逃げようとしやがった!」ドン
「うっ…!」ドサッ
隼人「…」カタカタカタ
「も、もう嫌だ俺は!た、大義も糞もねえじゃねぇか!」
隼人「…邪魔をするな…」カタカタカタ
「これじゃあただの狂った集団だ!」 ムクッ
スタスタ
隼人「…邪魔すんじゃねぇ!」ズバッ
「ぎゃあああ!…目!目がぁああ!」
隼人「耳だ!」ズバッ
「ぎゃあああ!」ドサッ
トグサ『うっ…』
「た、助け…」
「ひっ…」
ガッ
隼人「ふんっ」ドガッ
ブシュッ
隼人「このっ」ドガッ
ブシュッォ
バトー『こいつは…』
素子『…』
ドガッ
ブシュッ
バキッ ベキッ
隼人「ヒヒヒヒ…」ドガッ
隼人「ヒャーッハッハッハハハハ!」バキッ
荒巻『…』ピッ
素子「完全に精神異常者ね」
バトー「…本当に奴は義体化してねぇのか?」
荒巻「信じられんことにな」
バトー「分析ミスだろ。殴られた相手はいくらか義体化してたんだぞ?」
荒巻「文句は分析した奴等に言え」
トグサ「生身の爪って、あんなに切れ味良くなるのか?」
ボーマ「俺に聞くなよ」
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