女騎士「黒パン固ぇwww」 (977)

女騎士「う~っし、魔獣がひ~ふ~み~、まぁいいや大量ってことだな」

近隣の村を襲っていた魔物の討伐依頼があり、女騎士は住処と思われる洞窟に入り、囲まれた。

だというのに、女騎士は余裕綽々といった感じで、腰に差している小型の、鈍い白色の美しい斧を抜いて構えた。

女騎士「腹へんのはわかんだけどさ~、人のもの勝手に奪っちゃだめなんだぜ? 自分がそうだったから、あんまり強く言えないんだけどさwww」

当然、女騎士の声は取り囲んでいる魔物には意味が分からないものだ。

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それでも、獣だからこそバカにされたことはわかり、それが引き金となって一斉に襲いかかってきた。

女騎士「ありゃ~、穏便に済ませたかったんだけどなぁ」

先頭で飛び込んできた魔獣の鼻っぷしを殴りつけ、続く後方の二体について、右は顔を半分に割り、左は空いている左手で顔面を鷲掴みにして、そのまま首をひねる。

その仲間を助けようとして、左腕にかみついた魔獣は、噛みついたまま壁に背中からたたきつけられ、隙をつこうとして背後から迫った魔獣は、頭上から振る踵に気づかず頭蓋が粉砕した。

時間にして数秒の内に仲間がいともたやすく絶命していく。

女騎士「まだやる~? ぶっちゃけ村を襲いさえしなきゃ、どうでもいいんだよな~」

力の差は歴然としていた。しかし、縄張りを荒らされ、仲間を容易く殺した女騎士に対して、魔獣達は恐怖よりも怒りが勝ってしまった。

咆哮をあげ、第二陣が女騎士に迫る。

女騎士「しゃあないかぁ」

女騎士も斧を構え直し、今度は自らその群の中に突入していった。

その後に聞こえたのは、悲しい獣の、鳴き声だけだった。

女騎士「終わったぞ~、そんちょ~」

「おぉ、女騎士様、ご無事でしたか!」

魔獣の巣の、気の乗らない後始末も済ませて、被害報告があった村に女騎士は戻る。

それを気が気でなくいたのだろう、この村の村長が女騎士が戻るのを待っていた。

「それで、例の魔物は?」

女騎士「ん~と、巣はちょっと行くと三本の大きい木があるだろ? あそこの崖近くが洞窟でそこにいたわ。中にいたのは、まぁ、全部始末したよ」

「ありがとうございます、ささ、どうぞこちらへ。おもてなしいたします」

女騎士「いいねいいね、なんにしても腹減ったよ」

「では、食事の用意をさせていただきますね」

女騎士「お~、何があるかな~、楽しみだな~www」

家に招かれた女騎士が、椅子に座って待っていると、出された食事は黒パンと雑穀スープだけだった。

「すいませぬ、知っての通り食糧難にあの魔物達で、振る舞える食事がこんなものでございまして…」

女騎士「黒パン固ぇwww」

スレタイ回収早かった

「も、申し訳ありません!」

女騎士「へぇ? なんで謝るんよ」モギュモギュ

心底不思議そうな表情で、女騎士は村長を見る。

「その、パンが堅いと言うことでして、王都では白いパンが主流とはいえ伺ってますが、その」

女騎士「あ~、別に懐かしかっただけだよ~。最初っから貴族の生まれとかじゃないし」

「は、はぁ」

女騎士「そもそも皆食えない中で、食わせてもらってるんだから、感謝してるよ?」

「そんな、感謝なんて、こちらはこんな辺境まで来ていただけるだけでも、有り難いことなのです」

女騎士「それも気にしなくていいよ~。好きでやってることだから」

少しばかり、村長に面倒くさそうにしながら、女騎士は食事を続ける。

女騎士「そういやさ、行く前話したけど、ここらで病とか怪我とか、まぁ、なんでもいいけどそういうのに効くものってある?」

「わずかながら御座います。ただ王都に卸させていただく、怪我に効くオベロ草で、珍しいものではありません」

女騎士「そりゃあ確かに珍しくないな~」

当てがはずれたという様子で、女騎士は反応する。

>>6
だって深い意味ないもの。多分。

「申し訳ありません、お役に立てず」

女騎士「良いってことさ~、後は頑張って村の皆が飯食えるようにしてな~」

「はい!」

女騎士「食事ありがとね、これ駄賃」

そういうとチャリンと金貨二枚を、テーブルに女騎士は置いた。

「こ、こんなにいただけません!」

女騎士「畑耕す動物が喰い殺されたり、追い返したときに使った農具が滅茶苦茶なんだろ~? まぁ、動物は厳しいにしても、道具は新しいのそれで揃えて、後は今しばらく耐えるための保存食でも買っときな~」

「何から何まで…、ご配慮頂き、本当に、ありがとうございます」

女騎士「民のために出来ることをするのが騎士だって、父様がいうからそうしてるだけ~。じゃあ帰るとしますかねぇ」

「あ、はい。出来れば村のもの全員で見送らせて欲しいのですが、宜しいでしょうか」

女騎士「いいんだけど、出来れば早くね~」

村長は気付いていないが、女騎士は堅苦しさにげんなりしていて、慌てたように村長が飛び出していくのを見ながら、このまま出てしまおうかなと考え始めていた。

『ありがとうございました~!』

村人全員から見送られ、お礼を言われ、女騎士は堅苦しさから解放されるなとホッとしながら、帰路に就く。

振り返ると未だに村人が手を振っていたので、仕方なく振り替えして、もう後ろは見ないことに決めた。

女騎士「しかし、久し振りに食べたなぁ、黒パン」

家ででる白いパンも柔らかく、それがジャムとなじんで美味しいが、あの固さを噛みしめてから、スープを飲むのも美味しい。

女騎士「むぅ、食べたのにまたお腹が、急いで帰ろっと」

整備されてない道を足早にかけ、女騎士は王都を目指す。

女騎士「将軍、只今戻りました」

あの後、三日ほどかけて王都に辿り着いた女騎士は、そのまままっすぐ将軍の執務室へと報告に向かっていた。

将軍「ご苦労、首尾はどうであった?」

女騎士「は! 獣型の魔物が洞窟に巣を作り繁殖し、それが村を襲っていたようです。巣にいた魔物は一匹残らず排除いたしました」

将軍「ふむ、しばらくは問題は無さそうか?」

女騎士「…残念ながら、彼等は援助がなければ今後立ちゆかないと思われます」
真剣に女騎士は語る。

将軍「というと?」

女騎士「畑の様子を見ましたが、荒れ地と変わらず、今年中に何らかの作物が出来るとは思えません。しかも、現在畑になっている場所以外は、豊穣な大地はなく、森と切り立った崖に囲まれています」

将軍「それだけに支援が必要だと提案するわけだな」

女騎士「あの村は、北方三国に隣接する場所です。戦略的な価値から見ても捨て置くには惜しいかと思われます」

すらすらと毅然と話すその姿は、村に居た時とはまるで別人のようだ。

将軍「わかった、政務官等に話はしておこう」

女騎士「は! 報告は以上となります!」

将軍「本日は特にこなさなければならない任務はない。自宅に戻り休養するといい」

女騎士「は! ありがとうございます!」

女騎士は深々と礼をして、執務室を出る。

女騎士「(さ、こんな堅苦しいとこさっさと出て、家でゴロゴロしよう)」

頭に音符が飛び出ているのが見えそうなほど、楽しそうに女騎士は宮殿を後にした。

女騎士「ゴロゴロ~ゴロゴロ~♪」

メイド「女騎士様、淑女として慎みある行動をしてください」

女騎士「なんだよ~、久し振りの自分のベッドでゴロゴロしてるだけじゃないか~」

メイドの小言に、女騎士はむくれている。

メイド「それだから婚期も逃すのですよ」

女騎士「父様以上の男がいないのが悪い!」

メイド「あの方以上を望むと、それこそ王家の方々しかおりませんよ」

女騎士「あんななよなよ坊ちゃんとか、頼まれてもやだなぁ~」

相変わらずベッドにゴロゴロしながらそう言い、そしてガバッと飛び起きて。

女騎士「父様の匂いだ!」

そういって部屋を全力で飛び出し、閉められなかった扉がキィと鳴る。

メイド「…この様子じゃ、ご結婚のお話自体、無理ですね」

はぁとメイドはため息を吐くしかなかった。

そんなメイドのことなどつゆ知らず、女騎士は、大広間から二階から一階に飛び降りて、玄関を開けてはいる人物に。

女騎士「お帰りなさい、父様!」

といって抱き付いた。

将軍「うむ、ただいまだ、我が娘」

そういって将軍は優しく女騎士の頭を撫でた。

そろそろ眠いのでここまで、変わり種女騎士を書きたかっただけなんだけど、どうだろうねぇ?

で?くっ殺はまだ?←

もう少し続きを

>>19
そのテンプレをなぞる女騎士だといいねぇ


>>22
続きは書くけど、まぁ夜だね。あと、書きためてないから遅いと思う


それじゃあかったるい仕事に行きますかぁ

女騎士は将軍との楽しい夕食を済ませて、湯浴みした後、屋敷の離れへ足を運んでいた。

女騎士「いよ~、元気してたか~」

部屋の主は応えないが、気にする様子もなく職人のあしらった椅子を主の側に運び置いて座る。

女騎士「あたしなぁ、今回の任務でまた困った人達助けてきたんだぞ~」

そして語る。辺境にあるが故に、道が整備されてないと愚痴ってみたり、村の人達の様子を肩が凝ったと困った様子で言ったり。

それでも、部屋の主は応えない。

女騎士「それでさ、そこでの食事で黒パンが出たんだ~。懐かしかったなぁ、お前は食べたことないだろ? 固いんだぜ。まぁ、切ってスープに浸して食うのが正しいんだけど、昔そんなもんなかったからなぁ」

それでも女騎士は楽しそうに今回の任務のことを話す。

いつか、応えてくれると、信じているから。

女騎士「お前も、起きたらさ。騎士に復帰してあたし、ううん、父様みたいな立派な大将軍になるんだから、こういうことコツコツやらなきゃだめなんだぞ?」

女騎士「でも今回は当てが外れてさぁ、辺境ならではの薬やらがあると思ったんだけどさ、なかった。ごめんなぁ、姉ちゃん役立たずで」

話していて、少し沈んだ気持ちを奮い立たせるように、強引に笑って。

女騎士「お前、今姉ちゃんが悲しそうだと思ったろ? 姉ちゃんなめんな~? これでも聖騎士の名誉職なんだから、これぐらいでへこたれる訳ないだろ~? ……、だからさ」

部屋の主、溺愛している弟の手を握り。

女騎士「お前が目を覚ますって、皆があきらめても、あたしは信じてっからな。お前はあたしの弟なんだから」

女騎士「お前はさ、無理してさ、神様みてぇなやつが、ちょっと休めっていって寝かされてんだろ? 」

ギュッと、信じるために弟の手を力強く握り。

女騎士「起きたら、身体鈍ってるだろうから、訓練付き合ってやる。一からしごいてやる。約束だからな」

誰のための約束なんて、自分のためだなんて、女騎士もわかりきってる。

女騎士「ぜってぇ、起こしてやっから、あたしバカだけど、ぜってぇ、家族は見捨てねぇ。あたしとお前は姉弟なんだから」

例え血が繋がっていなかったとしても、拾われた孤児だったとしても。

女騎士「皆、心配してんだぞ。家族心配させんなバカ」

女騎士はこの家の他人(かぞく)を愛している。

泥を啜るようなスラム街、自分の出生も不明で、日々生きるために、食料を、黒パンにかじりついた。

幼子にさえも容赦のない理不尽が降り注ぎ、表の街路を睨んだ日々。

それを終わらせてくれた、とてもとても大切な人達。

自分を認めてくれた、とても優しい家族(ひとたち)。

だから、女騎士は、それに報いたくて、ただがむしゃらに生まれもった強靱な体をバネに、騎士になった。

女騎士を拾った将軍に、三人の子供が居る。

女騎士からすると、執政官になった兄と、宮廷魔術師になった姉、そして騎士見習いだった眠る弟。

兄は口が悪かったが、落ち込んだ時にさりげなく助けてくれた。姉は教養がない自分に、じっくりと腰を据え向き合ってくれた。弟は孤児の自分を素直に受け止め、姉と慕ってくれた。

弟が騎士を目指したのは、ひとえに女騎士が騎士となり活躍したことでの憧れからだった。

しかし、よくある話で魔物討伐任務に就いた弟は、目を覚まさずに屋敷に帰ってきた。

原因は同期の騎士をかばい、深手を負ったこと。傷は癒えたにも関わらず、目を覚まさないのは、その魔物の毒素。あるいは呪物に使われる魔物だったため、なんらかの魔術的、魔法的な要素が働いているためと、医師は言った。

たやすく言うなら、原因不明。

烈火のごとく怒り狂った女騎士は、その魔物を一匹残らず叩き潰し、収まらない怒りをその同期の騎士にもぶつけた。

弟とも仲が良く、その関係で付き合いも深かった騎士だが、だからこそ女騎士の怒りは止まらなかった。

女騎士『何故貴様ではなく弟が――』

弟もそう責めるのを望んではいない。

女騎士『返せ! あたしの大事な弟を――』

女騎士はわかっていた。

女騎士『貴様が変わりに――』

だから、取り返せないことも知っている。

女騎士『死ねばよかったんだ!』

知っている、知っていた。騎士が誰よりも自分を責めていることなんて。

それからは、女騎士は隊長の座を離れ、孤独に人々を救う任務に就くようになる。

自分が騎士にならなければ、こんなことには。

自分が冷静であればあんな発言は。

そもそも、自分が拾われなければ。

そうやって女騎士は任務の最中、自問する。答えはないスパイラルの中で延々と。

だから、弟が目覚めたを誰よりも待っている。

その時に、答えが出るような気がしているから。

女騎士「ふぅ、話しすぎたな。また明日から任務だから、しばらく会えないな」

>>33の訂正

それからは、女騎士は隊長の座を離れ、孤独に人々を救う任務に就くようになる。
自分が騎士にならなければ、こんなことには。

自分が冷静であればあんな発言は。

そもそも、自分が拾われなければ。

そうやって女騎士は任務の最中、自問する。答えはないスパイラルの中で延々と。

だから、弟が目覚めを誰よりも待っている。

その時に、答えが出るような気がしているから。

女騎士「ふぅ、少し話しすぎたな。また明日から任務だから、しばらく会えないな」

部屋を出るとすぐ近くにメイドが待機していた。

メイド「お疲れ様です」

女騎士「ただ喋るだけなのに、なんで疲れるんだwww」

空元気、メイドはわかっていながらも。

メイド「そうですね、ただ夜更かしは肌に触ります。お休みになりませんと」

女騎士「そうだな~、明日も早いし寝るかぁ」

いつものように、振る舞い続ける姿に、メイドは心を痛めていた。

さてと小休止。

これから家に帰ってシャワーと飯だ~



草は敢えてなのかな

>>37
あえてな気もするし気まぐれな気もするし



さて書くべな~

辺境都市ロイデヤ。王都から南南西に位置し、そこから迫り来る蛮族や魔物の進軍を防ぐために建てられたら砦と壁が中心として、発展した都市である。

現在は国交を結ぶ南方二国との交易の場であり、賑わいを見せる。それだけに。

女騎士「あ~、も~、何人憲兵に引き渡せばいいんだ、めんどくせ~」

往来する商人隊を襲う事件は、後を絶たない。

「流石でございますな、女騎士様」

女騎士「こんな雑兵に手こずるなんて、豪商の名が泣かねぇか?」

「耳が痛いところですな、ただ、今息子が大きな取引のため遠方に向かっていて、腕利きは出払っている始末でしてな」

女騎士「なるほどなぁ、そりゃ言い方が悪かった。すまねぇ」

「なんの、きっちりとした仕事いただいておりますので」

女騎士「民の役に立つのが騎士だからな。おらぁ、てめぇらキビキビ歩け! 脳天たたきわんぞ!」

両手を縄で縛った盗賊達に、女騎士は怒声を浴びせ、統一をとらせる。

女騎士「おっと、あの壁はロイデヤだな。やっと着いたぜちくしょ~」

「いやはや、三度も襲撃があった時は、いささか肝が冷えましたな」

女騎士「しっかし、噂にゃ聞いてたが、前に比べて静かだな。壁の外にもうざったく売り子が取り巻いたもんだが」

女騎士の今回の任務は、このロイデヤ付近で発生する盗賊討伐だ。

この商人隊については、途中で寄った街で困り果てていたのを見て声をかけ、ついでと引き受けたいつものお人好しである。

「なんてお礼を申し上げれば宜しいやら、こちら少ないですが手間賃です」

女騎士「いらねぇよ。言ったろ、民を助けるために騎士が居るんだから、その通りにしただけ。じゃ元気でな、おっさん」

「畏まりました。しかし、いつかお返しさせていただきますよ」

女騎士「堅苦しいな~まったく。じゃあ今度会ったら飯でも食わせてくれじゃあな……、おらぁ! キビキビ歩けないなら今この場で縛り首にするぞてめぇら!」

商人に軽く手を振りながら、女騎士は捕らえた盗賊を憲兵詰め所へと連れて行った。

女騎士「やべぇ、鶏肉の香草焼きうめぇwww」

憲兵に盗賊を引き渡すと、女騎士はそのまま食事処に向かい、遅いランチを楽しんでいた。

女騎士「やっぱこの街きたらコレ喰わないとなwww」

南方で採れる香草と、この地方で育てられた地鶏の組み合わせでシンプルに作られた料理だが、この街での名物料理だ。

女騎士「しかし、あたしなんかが喰ってもいいのか、マスター」

「女騎士さんには世話になりましたからね、ちょっと値は張らせてもらいますけど」

今や、その料理は無くなろうとしていた。

理由はごくシンプル、件(くだん)の盗賊のせいで、南方の香草が届かなくなり、貴重になったせいで値も張り、頼まれなくなったそれは一件また一件とメニューから消えていった。

作らなくなったわけではないが、たまたま材料が揃っている時でないと食べられず、平均銀貨五枚で取り引きされ、庶民は簡単に手が出せる代物ではなくなっていた。

女騎士「しかし、この街の郷土料理が、こんな高価になるなんてなぁ」

「女騎士さん、バクバク食べてましたからねぇ」

女騎士「う~、折角たくさん食べるの楽しみにしてたのに~。盗賊どもめ、許せねぇ」

「本当にウチらも困ってますよ。香草もですが、日に日に交易来る商人がへって入って来るものも少なくなって、このままじゃあおまんまの食い上げですわ…」
女騎士「心配すんな、そのためにあたしがきてんだし、もうそうそうでけぇ面はさせねぇよ」

食事後に出された水を、女騎士は一気に飲み干す。

女騎士「しかし、ここに車で商人隊を護衛してきたが、三回も襲ってきやがった。随分と多いのか?」

「話しよると、王都近くで暴れてたやつらが、立ちゆかなくなって、他の盗賊どもをまとめてこっちに来たとか」

女騎士「詳しいんだな」

「商売柄ですよ、ここでの会話は嫌でも耳に入る」

女騎士「たく、偵察してる野郎がいるかもしれねぇのに、皆口がゆるいな」

もう心底嫌そうに、女騎士は盛大にため息を吐く。

「まぁ、基本は街人の他愛のない噂話ですから」

女騎士「それが噂話で終わりゃいいがね。ご馳走さん、駄賃はここ置いてく」

「またいらしてください」

女騎士「あいよ~」

そして女騎士は自分の足で盗賊の情報を集めるに、人の集まる広場へと向かった。

よし、眠いから寝る。続きは明日や


鶏肉の香草焼き…香辛料しか思いつかなんだ

>>50
現代で作るなら、タイム、オレガノ、白ワイン、ニンニク当たりでツケダレ作って、鶏肉を漬けて焼けば自分がイメージしたものにはなる

付け合わせは、いも、トマト、アスパラ当たりが妥当かな

なんか筆が乗らないので、気まぐれに今思いついてる設定でも書きなぐる。

ちなみに私は面白くなると思ったり、つまらなくなるなと思った瞬間設定後付け、削除を本編で書いてなければ躊躇なくするので、まぁ参考程度にどうぞ。

女騎士

主人公。前作書いてる時に、いきなり頭にタイトル通りの台詞が降ってきた。

基本、バカ。愛すべきバカ。


バカハホメコトバダゼ


家族が帰ってくる度に○○の匂いがすると走って抱きつくのは日課です。

恋人欲しいけど、自分にそんな権利ないと言っている。ただ、最低限身内ぐらいの魅力がないととも言っているが、その身内が大体優秀な事実が婚期を遠ざける。


ナンデ、トウサマ、ニイサマ、スクナクトモ、オトウトグライノヤツガイナインダ


戦闘は長期戦も可能なタフなアタッカータイプ、特注の小型の斧(約一メートル弱)を鎧とか盾とか粉砕しながら叩きつける。

魔法の素養はなく、魔術も焚き火の火種程度の炎しか出せない。本人談では姉様にマンツーマンで教えられたけどよくわからなかった、とのこと。

食べることが大好き、これは孤児だった時代の影響。食えるイコール幸せの単純だが、理由の根はちょい重い。

身長は158cmでやや小さい。体重は頭かち割られるので聞け(きめ)てません。胸は程良くあグヘァ。

ヘンナコトイウトマップタツニスルカラナ


…、髪はセミロングで基本ポニテでまとめてます。基本、よく笑うスポーツ少女なイメージ。


こんなもんかな。うん。

前作って?

将軍

女騎士を拾い育てたお義父さん。

未だに女騎士を溺愛しており、本来の息子達から差別だと文句ついでにからかわれている。


アノトシデイマダニ、アアヤッテアマエラレルト、ツイ、ナ


若い時にあった大戦でメキメキ頭角を現し、地方の領主の息子ではあったが、ほぼノンキャリで大将軍という全軍の指揮権を持つトップ座についた苦労人。

今は各部門の将軍達に全権を任せ、内政に従事している。


ショウジキ、ダイショウグンモインタイシテ、ノンビリツリデモシテスゴシタイ。


扱う武器は三メートルほどの巨大な戦斧。それで単身、百騎近い騎馬隊と、支援する弓兵部隊を殲滅したことは、当時の同僚の間では語り草になっている。

当然この影響を受けて、女騎士も斧を扱っている。


トウサマガソウダッタカラ、キシノブキハ、オノダトオモッテタ

タシカニ、サイショニオシエタノハ、オノダッタ。


性格は厳格者なのだが、女騎士の前だとちょっと甘いお父さんになる。

容姿はヒゲもっさ~な渋いおじさんです。


こんなところかねぇ。

>>54
これ

男「いざ尋常に」 女「勝負!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1407084929/)


ちなみに今作とはまったく関係ないやつ。たんに終わり間際に次回作どうすっかな~って考えたら出てきたって話ね

メイド

女騎士がとある所から雇った(拾った)メイドさん。

家に来て三年ぐらいなので、不慣れなことはあるが、基本的なことは一通りこなせる。

雇用主は女騎士になるので、女騎士の世話がメインになるが、普段女騎士が遠方に出ることが多いので、あまり関係はなかったり。


シカタナイデスネ


出生は女騎士と似たようなもので、他の家の者といるより、女騎士と居る方が気楽だったりする。


トウサマタチガ、ナニカイッテルノカ?

イエ、ヨクシテイタダイテマス


今気がかりなのは、女騎士の結婚についてであり、このことはまるで小姑のように説教している。


ホントウ、ハヤクミヲオチツカセテクダサイ

メイドハウルサイナ~


身長は164cmで、体重は■■検閲済み■■で、胸はあるよ。


オモイダケデス

アタシハ、タタカウカラ、コレグライチョウドヨカッタ


容姿のイメージは、教会のシスターにメイド服着せた感じ。あと髪は赤。


こんなところかねぇ。

良くある魔法と魔術の違い。


この世界では、魔法は超能力、魔術は学問という区分です。

わかりやすくいうと、基本的な制限なしに行使できるが、特定の種類しか扱えないのが魔法。

基本的な制限があるが、覚えてしまえば多岐に扱えるのが魔術。

という括り。


基本的な制限というのは、それを使う際に、魔術本を使う、魔力の封じた宝石を使う、術式を詠唱または記述するのどれか(あるいは複合) をしなければならないこと。


基本的にそんなの出来ないという否定が無意識にあると、魔法、魔術にしろ永遠に使えない。


なお、後天的に、魔法として魔術が使えることはある。

こんなとこかな、とりあえず設定煮詰めてくるわ~


三メートルのハルバードが得物とかつよい(確信)

実は香辛料ってラノベのほうなんだ
解説してもらってなんだけども

>>60
ぶっちゃけ、三メートルの戦斧振り回すって、どんだけ力があればええんだろね?


さて、とりあえず行き当たりばったり書くかぁ

女騎士の集めた情報によると、少なくともこの一月で20を越える商人隊が襲われたということだ。

しかも真正面からではなく、多くは夜営の警戒が緩くなった隙に、少数人数でめぼしいものを強奪、気づいた時には逃走という流れだった。

女騎士「(変に死傷者がでてねぇのはこのせい、そいや、あたしん時も基本夜に襲われたっけな)」

借りた宿で羊毛紙にそれらの情報を女騎士はまとめていた。自分に何かあった時のための手記だ。

女騎士「ん、この匂いはまさか」

ガチャリと、女騎士が泊まる部屋の扉が開けられる。

女騎士「兄様~♪」ダキッ

兄「ええい、離れんか!」

女騎士「嫌です~」スリスリッ

兄「せめて中に入れろ、中!」

女騎士「は~い、ではどうぞこちらへ」

突然現れた身内に動じることもなく、いつものように女騎士は振る舞う。

女騎士「それで、どうされたのですか兄様。宮殿でのお仕事などはどうされたのです?」

兄「あぁ、お前が就いてる任務について、実態調査が必要になってな」

適当に空いている椅子に兄は座る。

女騎士「そんな、兄様の手を煩わせなくとも、自分が請け負います」

兄「この件、王家も憂慮されている。主要な貿易の一つであるこの都市の機能が停止しているようなものだからな」

女騎士「えぇ、ここの名物料理、鶏肉の香草焼きもなかなか食べられないようになっています…」

兄「お前は…」

呆れた様子で、兄は頭を抱えた。

女騎士「どうしました、兄様」

兄「お前らしいなというだけだ。まったく」

女騎士「ならいいのですけど…」

これはあにさま?それともにいさま?結構大事よこれ

兄「お前のことだ、すでに情報は集めているんだろう?」

女騎士「はい、こちらに」

女騎士は先ほどまでそのことを書いていた羊毛紙を手渡す。

兄「ふむ、こちらが抑えている情報とほぼ相違はないな」

女騎士「あまりお役に立てませんでしたか」シュンッ

兄「あ~…、落ち込むな」

まるでこの世が終わったような表情をしている女騎士を、兄はフォローする。

>>66
>>53のキャラ説に地味にあるけど、にいさま

兄「本当に聞きたかったのは、ここに来た時に賊を憲兵引き渡しただろう?」

女騎士「えぇ、何かわかるかと思いましたので」

兄「あの手の輩は、拷問にかけてもなかなか口を割らん。利用価値はあるがね。今はそれは置いておこう」

女騎士「はい」

本題に入るのを感じて、より真剣に女騎士は構える。

兄「あの族は、複数回に渡って襲撃したのは間違いないか?」

女騎士「えぇ、護衛を依頼された商人隊を狙って、三度もです」

>>68
本当だ
にいさまか…あにさま派だった…

よし、腹減った。ご飯食べてくる

>>70
女騎士の年齢的にアニサマは幼すぎてね…

???「あにさま!あぶなーい!」

>>73
ごめん、元ネタわかんねぇ

>>74
チャイカだと思われ

兄「お前も知っての通り、商人隊は危険を回避する為、運搬ルートを複数持つ」

女騎士「そうなんですか?」

兄「そうなんだ馬鹿者。今後のために覚えておけ」

女騎士「わかりました」

兄「でだ、話を戻す。通常で考えれば、襲撃があればその都度近郊の状況を調べ、運搬ルートを変更する。お前が護衛した商人隊はやり手だ、その点抜かることはないだろう」

そういえば、地図を出して商人のおじさんが忙しそうに指示してたなと、女騎士は思い出す。

>>75
ありがとう、ラノベ含め小説読まないからわかんないんだよなぁ

アニメもみないし、最近のはよくわからんよ

女騎士「そういえば、地図開いてわたわたやってました」

兄「それがきっと、ルート確認だったんだろう。襲撃の度にそんなことはしてたか?」

女騎士「そういえば、有り得ないなとか、あの噂とか、ブツブツ言いながらやってました」

兄「噂、か」

その言葉を聞いて、兄は深く考え込む。何か不機嫌になること言ったかと不安に泣きそうになりながら、女騎士は黙って待つ。

兄「状況からして、有り得るのはそれぐらい…か……、ど、どうした、泣きそうな顔をして」

女騎士「いえ、気にしないで下さい。いきなり考え込まれたので、不機嫌にさせてしまったか不安になっただけです」ウルウル~

兄「まったくお前は、昔から泣き虫だな」

ヨシヨシと、兄は女騎士の頭を撫でる。

確かに、最初拾われてきた時は、いろいろなことが重なり、邪険に扱ってしまった。

それでも兄と慕う女騎士に、何度か救われた。嫌えるわけがない。兄はそう思っている。

女騎士「落ち着きました、ありがとうございます」

兄「とりあえず、ただの盗賊騒ぎとは思えない。そういう話だ」

女騎士「兄様の話だと、その場で変更したのに、待ち伏せされたのが変だってことでいいんでしょうか」

兄「なんだ、わかってるじゃないか」

女騎士「大将軍の娘ですから、これぐらいわかりますよ~」エヘンッ

何故か胸を張って偉そうにする女騎士を見て、兄は少しだけ笑う。

女騎士「良かった、兄様の笑顔、久し振りに見れました」

兄「そうか? ……いや、そうか。最近は帰っても食事と睡眠だけだったからな」

女騎士「大丈夫ですか? お手伝いできることなら何なりと申しつけてくれれば…」

兄「残念ながら、執政官は、筆と口での戦争だからな。お前には向かんよ」

あの大将軍の息子のクセに文官とはと、揶揄されることは多々ある。

最初は武の才のない自分を呪ったが、家族には出来ない戦い方を知った時、兄はこの文の才を誇りに思っている。

兄「それに、私にあまり負担をかけたくないなら、必要以上に暴れなければ、尻拭いせずに済むんだがな?」

女騎士「も、申し訳ありません」

兄「安心しろ、そこまで気にしてない。かわいい妹の為だからな」

女騎士「そ、そんな…、恥ずかしいです」

兄「お前が困った顔も久し振りに見たな、ではそろそろ戻らねば、失礼する」

出て行こうとする兄に慌てて。

女騎士「あ、はい! ご足労ありがとうございます!」

と敬礼し、兄を見送った。

女騎士「(わ~い、兄様にかわいいっていってもらえたぞ~)」ニヤニヤ

よほど嬉しかったのか、そのままベッドに飛び込み、そこでゴロゴロし始める。

女騎士「(兄様は格好いいし、頭もいい。たまに話わかんないけど大好きだ~)」ニヤニヤ

ゴロゴロと布団を抱き枕のようにして回る。

女騎士「(兄様はやくご結婚されないかな~。兄様の子供産まれたら、いっぱいお世話してあげなきゃ)」

任務のことなど頭から消え、まだ未確定な未来の妄想を、その夜女騎士は延々としていた。

小休止。しかし、女騎士がなんかやたらかわいい子になってる。不思議。

女騎士「ライーダマクズヴェル、ここだな」

翌日、女騎士は面倒なのでテキトーな商人隊を尾けて、盗賊が襲撃したところをひっつかまえ、口を割らせるつもりで出発準備を整えていた。

そこに兄が寄越した使者が入ってきて、預かっていた書状を渡された。内容は盗賊討伐に関しては指示あるまで待機とかかれ、正式な書状の後ろに、この店の鶏肉の香草焼きが旨いらしいぞとメモ書きがあった。

その店が、このライーダマクズヴェルだ。

中に入ると、昨日の店とは違って人で込み合っている。この状況で繁盛しているというのは、女騎士でもなかなかのやり手な店だとわかる。

女騎士「(まぁいい、そんなことより鶏肉の香草焼きが食えるのかってことだかんな)」

そのまま足を踏み入れると接客係がやってきて、空いてる席に案内された。

「ちゅうも――」

女騎士「鶏肉の香草焼きで」

「か、かしこまりました」

喰い気味の返答に接客係は戸惑いながらも、厨房に新たな注文が入ったことを伝えに行った

女騎士「うめぇうめぇwww」

しばらくしてから届いた鶏肉の香草焼きを当てに、ホフ酒を呑む。苦味と炭酸の爽やかなのど越しが堪らない。

女騎士「あ~、この為にここにきたみたいなもんよ~www」

もちろん、将軍に騎士道を叩き込まれた女騎士が任務を忘れることはないが、すっかり待機命令を休暇手当として扱っている。

「ね~ちゃん、良い呑みっぷりだな」

女騎士「当たり前じゃ~www」

「どうだ? 俺と呑み比べしねぇか? 負けた方が全部奢りってことで」

女騎士「そうだなぁ、あたしが負けた時はそれでかまわねぇが」

「かまわねぇが?」

女騎士「あんたが負けた時は、いろいろタダで聞かせてもらうぜ?」

「ほぅ、久し振りに負けられねぇな。おい、兄ちゃんホフ酒まずは10杯持って来いや!」

女騎士「あ~、面白くなってきた~www」

「嘘だろ…?」

「あれ、一樽分は呑んだんじゃ…」

「人間じゃねぇ…」

女騎士「あっはっはっはっ、あたしにぃ、飲み比べ挑むなんざぁ。100年はええぞばかやろ~www」ヒック

とうに勝敗はついているのだが、残っていたホフ酒が入ったジョッキを飲み干し、テーブルに叩き置く。

女騎士「はっはっはっ、あ、接客係の兄さん、ちょいときて」

「な、なんでございましょう?」

女騎士「酔っ払って頭回らなくなるうちに、お代渡しとくわ、足りる?」

「だ、大丈夫でございます」

女騎士「そっかぁ、あ、釣り面倒だからいらない。あんたのチップにして、そのままもらってな~、騒いでごめんな~www」

「あ、お気になさらず、どうぞごゆるりと」

女騎士「さて、と。兄ちゃん、起きろとっとと」

そう言って勝負を仕掛けてきた男の頭を小突く。

「うぅ、もう呑めねぇよ…」

「情けねぇなぁ、あと10杯はいけんだろ? 父様と姉様はこの倍は少なくとも呑むぞ?」

「人じゃねぇって、それは」

女騎士「あたしも二人に付き合うと酔いつぶれちまうからなぁwww」

「いったいどんな家族だ…」

女騎士「で、兄ちゃんさ、約束守ってもらうぜ? 出来ねぇってなら、情報屋ギルドにたれ込む」

その一言を聞いて、男はビクリと震える。

「もしやとお聴きしますがね…、そのあの王都で初めて女性で聖騎士になられた、女騎士様で?」

女騎士「おう、聖騎士にゃ程遠いがな」

「これは知らぬとはいえ、大変しつれぇなことしちまいまして、そのあの…」

女騎士「約束守りゃあ長(おさ)にゃいわねぇよ」

「わかりました、それさえわかればお話させていただきやす」

女騎士「おぅ、最近の盗賊騒ぎの件で、なんかきな臭ぇ話とかねぇか?」

「これというのはありやせんがね、最近商人ギルドのトップが入れ替わった件は気になりますがね」
女騎士「どう気になるんだ」

情報屋の答えを催促する。

乙かな?
ピンポイントで知ってただけだが正直すまんかった

女騎士可愛い
「でりゃ」も読んできた
女可愛い
後で続きも読んでくる

>>93
? 別に謝ることでもないんやない?

>>94
ありがとう。まぁ、大した作品でもないから、まったりとどうぞ。


あ~、仕事行きたくないんじゃ~。ちなみに昨日の分は寝落ちじゃ~。

>>90
わかるとは思うけど、最後の台詞修正


女騎士「情けねぇなぁ、あと10杯はいけんだろ? 父様と姉様はこの倍は少なくとも呑むぞ?」

「そこらは別の場所で…」

女騎士「おう、しかしお前歩けんのか」

「う、察しの通りで…」

仕方ないなとボヤキながら、女騎士は耳元で。

女騎士「…場所は知ってる、今日の暗号だけ教えろ」ボソボソッ

「…香草の香りはいかが? です」

女騎士「ありがとよ。ま、ちゃんと相手選んでカモるんだな」

「うっぷ、そうします」

多分、あのまま潰れるだろうなと思いながら、店を後にした。

辺境都市ロイデヤは、先ほど訪ねた店や女騎士が止まっている商業区を中心に、南に兵士詰め所と憲兵詰め所といった、言わば南部防衛拠点が、西にこの街に根を下ろす商人とその家族が暮らす住宅区が、東にこの街を統一するための議会所や魔術ギルド、市民の依頼を取り扱う斡旋所などがある。

女騎士が訪れているのは、その東にある斡旋所である。

「ようこそ、この度はどのようなご用件でしょうか?」

女騎士「…香草の香りはいかがかなと思ってな」

「かしこまりました。香草に関してのお話はこちらで伺います。ついてきてください」

女騎士「おう」

少し、面倒くさそうな顔で、女騎士は受付嬢の後ろをついて行く。

その受付嬢は、物置のような部屋に入り、女騎士が入ったのを確認した後、扉を閉める。そしつ木箱をあけるとその中は階段になっており、ラタンに火を点けると、そのまま降りていき、それに女騎士もついていく。

降りた先は洞窟で木の柱なとで、整備されている。

女騎士「別にさぁ」

「なんでしょうか?」

女騎士「ここいらで話してもよくねぇか、長さんよ」

長「誰も聞いてはないけれど、歩きながら話して貴女が理解できるかしら?」

女騎士「自信はねぇけど、こっから住宅区まで歩くのかよ」

心底げんなりして女騎士は愚痴った。

vipツクスレの紅白にADV投稿してた人に作風が似てるな

長「貴女は信用できるけれど、我々の存在は公にしてはいけない。当然の処置ですよ」

女騎士「私は話聞いてとっとと部屋で待機したいんだよ」

長「あら? 私の部下を酔い潰さなければ済んだけのことですよ」

女騎士「30分ぐらい前のことをよくもまぁ…」

伊達や酔狂で情報屋ギルドを名乗ってはいないのをあらためて理解する。

このギルドにとって、今日何の密談があるとか、とある執政官の性癖やら、下手すりゃそこら中の街娘の下着すら把握するのはたやすいことだ。とこの長が言っていたのを思い出す。

女騎士「(密談はともかく、そんなおっさんの性癖とか、パンツの事を知って、嬉しい奴がいんのか?)」

などとどうでもいいことに考えてしまった。

長「貴女が考え事なんて珍しい。なにか御座いましたか?」

女騎士「とくにねぇよ。なんか今回、素直に暴れられそうにねぇから、面倒な気分なだけだ」

長「頭を働かせなければならない事態なのは、間違いありませんよ」

>>100
そんなんあるんやね。

作風は、昔に比べごまんと創作して発表する人多いからかぶるよなぁと、最近思う

ダメだ、眠気強いから今日はもう寝るでや

少し余裕があるので、出てきたこの人の設定おば




女騎士の義理の兄。執政官として従事し、日々書類と格闘している(プラス女騎士の尻拭い)

武術に関してはからっきしで、大将軍の息子と言うこともあり、周囲の期待とは外れたため、それでいろいろ陰口を叩かれ、一時期かなり荒れていた。


アノコロハワカカッタナ


その代わりに文官としての才には恵まれ、女騎士と接しているうちに、これが自分の役割なのだと悟る。


ブッチャケアソコマデ、トビヌケタノミウチニイタラアキラメル

エヘヘ。デモトウサマノオシエガ、ヨカッタダケデス


また、実は魔法の才もあり、宮廷魔術師の道もあったが、それもまた実の妹が優れていた。


ミウチガユウシュウスギテナケル

ニイサマモユウシュウデスヨ!


女騎士については、すでに義妹という認識はなく、大事な家族として陰ながら見守っている。

ちなみに、メイドは兄にもまだ婚約されないのですかと、言われていたり。


ホントウニココノオヤシキノヒトタチハ…(ブツブツッ

ナクゾソロソロ

ニイサマヲイジメルナ!

アナタモデス、オジョウサマ

アウ


……とまぁ、こんな感じ。

女騎士「盗賊だけでなく、糸引いてる連中も炙り出すってんだろ?」

長「あら、貴女にしてはらしくない正しい見解ですね」

女騎士「兄様がこの件に絡んだ時点で、めんどーにしてただ暴れられないのはわかったぞ流石に」

長「身内が絡むと本当に頭の回転早いわね」クスクスッ

女騎士「そうか?」

よくわからないという様子だったが、女騎士は。

女騎士「そんで、そっちは幾らつかんでるのよ」


長「具体的な証拠は掴めていませんが、状況証拠はいくつか、ですね」

女騎士「ふ~ん?」

長「まず、商人ギルドのトップが代わったのは、存じてますね?」

女騎士「そいや、長の部下がんなこと言ってたな」

長「その長の名はリアン=ファブ。ここ最近で力を一気に蓄え、トップの座を強奪した」

長はそういいながら、懐から小さめの羊毛紙を一枚手渡す。

そこに写っていたのは、思っていたよりは若い男性、こざっぱりした人間が見えた。

女騎士「投影石か、高価なもん使ってんな」

長「富の独占は、我々ギルドにとっても死活問題ですからね」

土壁の様なところを長がノックすると、少しして燕尾服を着た初老の男性が向こう側から扉を開けた。

長「ありがとう」

「いえいえ、女騎士様もどうぞ」

女騎士「あたし、おまえの家に、一回も正門から入った記憶ねぇんだけど」

長「気のせいだと思いますよ」

そう言い合いながら中にはいると、統一された気品ある調度品の数々がある屋敷にたどり着く。

女騎士「ごちゃごちゃしてんなぁ…」

長「そうでしょうか?」

女騎士「少なくとも、父様の家はこんなに調度品はねぇからな」

長「武家の家と、貴族の家の違いだと思いますね」

そのまま長の部屋に招かれる。中もまた豪勢なベッドから色々あり、女騎士に気分を憂鬱にする。

長「そこにおかけ下さい、爺が紅茶をもって参ります」

女騎士「しかし」

長「なんです?」

女騎士「こんな家に住む人間が、斡旋所の受付嬢やってるとは誰が思うんだろな」

長「だからこそ、ではありませんか?」

身分を誤魔化すことが必要なことは女騎士もわかる。が、面倒にしか思っていない。

しばらくして、執事が紅茶を運び、そのまま一礼して部屋を出ていく。

取り扱う情報によっては、知っているだけで身の危険を招くものもある、長なりの配慮だ。

女騎士「そんで、言ってた状況証拠ってのは?」

長「まず、貴女が今日行かれたお店は、表向きリアンの店とは別経営ですが、裏では繋がっています」

女騎士「ふ~ん」

長「また、商人隊の襲撃に関してはリアン管理の商人隊に被害は出ていません。襲撃自体にはあっていますが、白昼堂々に襲われ、見事撃退という流れです」

さて、小休止。風呂やら行ってくる


自分が不勉強なだけかもしれんが羊皮紙の間違いかな?

>>114
ファンタジーは西洋だし、羊皮紙が正しいんじゃないかな

昔、漢の時代に羊毛紙が出来たときいて、シルクロード通してその技術が流れてもおかしくないか~って思ってあまりこだわってないかな

その他の情報としては、リアンに主だって敵対していた商人への襲撃が目立っていることや、彼の系列店がこの状況により廃業に追い込まれた店を乗っ取っていることが挙げられた。

女騎士「そんな目立ってるなら、ギルドの商人達が黙ってないんじゃないか?」

長「状況証拠だけでは、動きようもないのです。だから、我々と同じように水面下で探りはいれているようですけれど」

女騎士「ギスギスしてんなぁ、めんど~くせ~」

長「貴女らしい感想ですね」

長「被害にあった商人達の眼をごまかすため、さっき言った店のように表向きは系列店ではない店を繁盛させて、裏で管理していたり、被害にあった商人を手厚く援助して、手駒として手中に収めたりと、なかなか喰えない人間のようです」

女騎士「とりあえず、そのリアンってヤツをぶん殴りゃすむんじゃないか?」

長「そう簡単に面倒臭がらないで下さい」

女騎士「それなら、私は盗賊を残らず全部ひっ捕らえる方が楽なんだけど」

つくづく脳筋なんだなと長は呆れる。

長「場当たり的にそうするのも手でしょう。しかし、再度同じ事態を招く恐れがあるなら、同時に取り除く必要があります」

女騎士「…とりあえずわからないことはわかった」

何もいえなくなった長はわざとらしく溜め息を吐いた後。

長「とにかく、情報はお伝えしました。貴女のお兄様に宜しくお伝え下さい」

女騎士「わかった。後、追加で情報入ったら、よろしく」

紅茶を煽り飲み、席を立って扉を開けようとした女騎士が思うだしたように。

女騎士「そういえば兄様といつ婚姻されるんだ?」

と言い放った。

なん……だと

長「唐突に何を言い出すんでしょうか」

いぶかしむように長は両腕をくむ。

女騎士「帰ってくる兄様から、よく長の匂いがしてるぞ? よく会うんだろう?」

長「まさか、この街と王都は、往来するだけで何日かかるかと」

女騎士「兄様が転移魔法を使えることぐらい、知らない訳ないだろ? それに、長に会った時も兄様の匂いがしたし」

キョトンと、何故うそをつくのかという態度で女騎士は聞き返す。

長「あの人からよく、抱きつかれるとは聞いていましたけれどね…」

女騎士「ダメだったか? 週一ぐらいなら兄様に抱きついていいか?」

長「いや、家族なので気にはしません。好きにして下さい」

女騎士「良かったぁ…、それでいつ婚姻するんだ?」

グイグイと、女騎士は悪気なく迫る。

長「無理ですよ、立場の問題があります」

女騎士「どうしてだ? 長は綺麗だし、頭もいいし、美男美女の夫婦になれるじゃないか」

>>120
そう……なの

長「ですからそこではなくてですね?」

女騎士「乞食から聖騎士になれる国なんだ、立場なんてどうにもなるぞ?」

長「貴女と一緒にしないで下さい」

女騎士「なんだ、じゃあ兄様じゃ不満か、それは怒るぞ!」

長「そんな訳ないじゃないですか!」

思わず大声を出してしまい、慌てて口に長は手を当てる。

長「ごめんなさい」

女騎士「ビックリした。でも、嫌いじゃないのがわかったから、あたしは嬉しいぞ?」

長「えぇ、愛していますよ。あの人も愛してくれてるのはわかります、ただ…」

女騎士「まさか、地方貴族で、こんな変なギルドやってるから負い目だ~、なんて言ったら、それも怒るぞ?」

長「え?」

女騎士「長は王都に来ても、充分やれる。むしろ、王都出身の貴族だからと言ってる連中、基本何もしないから、才も何もない。はっきり言えばクズしかいない」

長「…」

女騎士「それを言ったら、女相手に決闘だ! って喧嘩売って三秒で負けて泣いて帰るぐらい情けない奴らばかりで」ブツブツッ

長「女騎士、さん?」

明らかに方向が違うところで、イライラし出したのを感じ、長は声をかける。

女騎士「あ、悪い。とにかく、長なら着たらすぐにリアンとか言うやつより手早く、王都の貴族を手中に収められるぞ」

長「買いかぶりすぎですよ」

女騎士「友達を買いかぶって悪いのか? それに、長がいいなら兄様と結婚してほしい。そして子供を産んでくれ、あたしがお世話するんだ」

長「いえ、世話は自分でちゃんとやらせていただきます」

女騎士「」

女騎士「どうしてだ!? 兄様の子供、しかも長の子供でもあるなら、あたしがしっかりとお世話をだな」

長「そういうのは、人任せには出来ませんよ。ちゃんと自分でお世話をいたします」

女騎士「そんなぁ…う~」ションボリ

長「もし、あくまでもしですよ。あの人と婚姻でき、子供が出来た時、たまに二人きりで過ごしたい時は、お願いするからもしれません」

女騎士「そうか! 夫婦水入らずは大事と父様が言っていたからな、是非そうしてくれ!」

長「ですから、あくまで過程の話ですからね」

女騎士「二人の子供かぁ、格好いいかなぁ、可愛いかなぁ、楽しみだなぁwww」

長「…まったく人の話を…、少し気は晴れましたけどね」

女騎士「ん? 何か言ったか?」

長「いえ、しかし、そろそろ戻らないとまずいのでは?」

女騎士「おっと、こんな時間か、ではまたな」

今度こそ出て行った女騎士を見送り。

長「貴女が正門から入れる日は、きっと」

とボソリと呟いた。

女騎士「以上が確認できた情報になります」

兄「ふむ、ある程度は想定内か」

あの後、そのまま真っ直ぐ宿泊している施設に戻り、情報をまとめた後、訪問してきた兄に報告した。

女騎士「それで、私はいつまで待機をすれば宜しいのでしょうか」

兄「しばらくはまだだな。お前が盗賊を手当たり次第に潰してもいいんだが、根まで滅ぼさなければならない」

女騎士「…はい」

兄「とりあえず、兄貴を信じろと言う話だ」

女騎士「わかりました」

出された茶をすすり、兄は一息つく。

兄「私自身が直接ギルドの人間に関われればいいのだが、いかんせん執政官の立場があるからな」

女騎士「そうなのですか」

兄「そうなんだ。表向きであるかないか関係なしに、権力者の繋がりがあれば、ギルド内の均衡が崩れることになり、結果国としては不利益になり得る」

女騎士「(…長はこの話を聞いて身を引いてるのか!)」

恐らく兄のことだ、知的な長といろいろ話して、余計なことをいっているのだろうと女騎士は考えた。

女騎士「兄様」

兄「ど、どうした?」

いつになく真剣な様子に、兄が驚きながら言葉を待つ。

女騎士「いつ婚姻されるのですか?」

兄「何を言い出すんだ、はははっ」

女騎士「帰られた時、たまに女性の匂いがしているのですよ?」

兄「え?」タラーッ

今更ながら、女騎士は鼻が利くことを兄は思いだし、嫌な汗をかき始める。

兄「いや、べつに、隠していたとかじゃなくてな?」

女騎士「兄様のことですから、ちゃんと脇を固めてから話すことはわかっています、聞きたいのは、本当に婚姻されたいのか、この一点です」

まるで剣を首筋に当て、そのまま突き刺そうとするがごとく追い込む。

兄「それはだなぁ、その、な? わかるだろう?」

女騎士「こればかりは兄様からの口から聞かない限りわかりません」ズズィッ

兄「あ~…ん~、じゃあな。女騎士、約束は出来るか?」

女騎士「聖騎士の名(めい)の誇りにかけて、お約束いたします」

兄「そこまでかけんでいい。とりあえず、姉(いもうと)にはまだ言うなよ?」

女騎士「姉様にですね、かしこまりました」

その意味は女騎士もすぐに理解した。姉は人格者ではある、しかしややブラコンかつシスコンで、兄弟に恋人がいるとなると悪い方向で暴走しがちなのだ。

兄「お前は知らないだろうが、この都市にいる令嬢の方でな、気さくで頭も回る。話をしているといろいろな発見をさせてもらう内に、その、惚れたわけだ」

女騎士「ほほう、それで転移魔法を使ってまでお会いしていたと」

兄「うぐ、なぜそれを」

女騎士「姉様が誰かが転移を使った名残があると言っている日に、兄様が帰ってくると女性の匂いがしましたから」

女騎士の言葉に嘘ではないが、このことはさっき長と話している時に気づいたことだったりする。

女騎士「匂いの回数からして週に二度はお会いしてますよね? そこまで頻繁にお会いされているなら、なぜ踏み切らないのです?」

兄「それとなくは言っているのだが、煮え切らない様子でな」

女騎士「煮え切らないのは兄様かもしれません」

兄「え?」

女騎士「ズバッと婚約も申し出ればいいのです。兄様が回りくどかったり、すべて受け止めるとかストレートに言わないから、女は迷うのですよ!」

わりと痛いところを突かれ、兄はぐうの音も出ない。

女騎士「とにかく、次にお会いしましたら、バシッと言ってください」

兄「いや、しかしだな…」

女騎士「私も聖騎士の位をかけて、約束をお守りすると宣誓したのです。兄様もそれに応えていただきます」

兄「…、あ~、わかったよもう。はぁ、なんて言おうか…」

根負けした兄は、愛の告白の内容を考えている間。


女騎士「(やったあ、これでお二人の子をお世話できるぞお!)」

と、女騎士は喜んでいた。

眠いから寝る~

しかし、この女騎士はどこに向かう気なんだろうね?


長も兄様もいいね

>>138
兄のへたれ具合が加速してる気はするけどね


仕事じゃあ、いやじゃあ、寝たい~

頑張れ

>>140
頑張らん!

>>141
いや、頑張れよwwww

さて、昼休み(?)になったから、この人の設定おば




非公式ギルド、情報屋ギルドを取り仕切るトップ。本部がロイデヤで、各都市に拠点を持ち、非公式ではあるが有力者には有名な組織。

前任である長の父が引退したことにより、その座につく。高い情報分析力と、貴族としての人脈を駆使してギルドを牽引しており、部下からの信用も厚い。

情報はリーズナブルなものから法外なものまで、基本的にその情報が持つ危険性やかかった経費によって長と各支部長が決める。

ただ、ギルドにとって優位に動いてもらうための情報は、対価を求めないことが多い。


ソノケッカガ、ワレワレヘノシハライトカンガエマス


性格は気さくで優しくはあるが、冷酷な判断も下せる指揮官タイプ。


ツメタイノカ

トキトバアイ、デス


ただ、ひょんなことから知り合った兄に対して、複雑な気持ちを持つちゃんとした乙女でもある。


ハヤクコンヤクスルンダ!

スコシ、ダマリマショウカ

ブ~ブ~


身長は高め172cm、体重は■この内容の閲覧は有料です■で、胸は、な――


ツキヨノナイバンガ、タノシミデスネ

キニシテル?

……フゥ

ゴメン


とまぁ、こんな感じ。

>>142
じゃあ、ちょっとだけ頑張る


さてと戻るかぁ

>身長は高め172cm、体重は■この内容の閲覧は有料です■で、胸は、な――

情報料なら払うから見せてくれ!

>>145
本編にもあったとおり、下着に限らずその手の情報は売っていて、貴族としての顔がある長も、当然売り出されている

庶民は平均銅貨10~20枚、貴族になると立場によって平均銀貨15~50枚、最高金貨1枚で取り引きされる。

長の場合、大体銀貨35枚で取り引きできるけれど、どう言うわけか、あいつは変態だという噂が流布されるのでオススメはしない

あと、簡単な貨幣の価値について

銅貨:約三百円or約百円
銀貨:約二千五百円金貨:約十三万円

銅貨は大小の二種類あるため、価値が異なるが、大抵の銅貨一枚の意味は三百円の方を指す。

都市の庶民の平均収入は銀貨四枚程度、物語の香草焼きが銀貨五枚、元々郷土料理がこの価格になるという異常事態がこれでわかると思うよ

(日本で言えば10kgが2万ぐらいで扱ってると思えばよろし)


ちなみに、長の部下が飲み勝負挑んだのもこの背景から(こいつ金あるからたかろうってことね)

>>147
どうでもいい設定を修正するという愚行

(日本で言えば米10kgが2万ぐらいで扱ってると思えばよろし)

兄から出された待機命令から数日間、女騎士は退屈を謳歌していた。

女騎士「ヒマヒマヒマヒマヒマ…」ブツブツッ

メイド「お仕事なのですから、我慢いただきませんと」

女騎士「せっかく着てくれたのに、説教か。いい加減にしないとあたしはふてくされるぞ」

メイド「はいはい、あなたが暴走しないよう、兄(しっせいかん)殿から言いつけられましたので、お付き合い致しますよ」

女騎士「じゃあ遠慮なく」ダキッ

メイド「子供ですかあなたは」

やれやれとメイドは呆れながら、女騎士を抱きつかせた。

女騎士「…、よし充電完了」

メイド「兄(しっせいかん)殿に頼めばよろしいのでは?」

女騎士「兄様は忙しい身の上だからな。用もなく会えないし、迷惑をかけられない。今はメイドで我慢する」

メイド「ついでですか、まったく」

メイドは右手に持った大きめの鞄を部屋の隅に置き、ベッドに腰掛ける。

メイド「わかっているかとは思いますが、買い出し、言いつけでの外出以外に関する、屋敷外の行動ついては、勤務外時間となります。世話の当てはしないでくださいね」

女騎士「勤務外なのにあたしに付き合うのも、物好きだと思うぞ?」

メイド「雇用関係を抜かせば、友人であると認識していますので」

女騎士「あたしも友人だと思っているし、嬉しいんだが、兄様の言いつけで出来たんだろう?」

メイド「言葉の綾ですよ。雇用主はあくまであなたであり、それ以外の方の命令はただのお願いに過ぎません」

女騎士「何にしてもあたしは嬉しいぞ。父様や姉様に、変わりはないか?」

メイド「数日しか経ってないんですから、変わりはありませんよ」

女騎士「そうか~、ならいいんだ」

メイド「(弟〔おぼっちゃま〕のことは、聞かれないのですね)」

聞かれないのはわかっていたが、それはそれでメイドは心を痛める。

メイド「そういえば、そんなに退屈なさらなくても、ヒドいことになっているとは聞いてますが、ここは観光都市でもあります。巡ったりはしないのですか?」

女騎士「年に数回も来る場所だぞ? 今更何を見るんだ。鶏肉の香草焼きも安定して食えないのに…」

メイド「食べられないのはどうでもいいのですが、なら私をガイドして下さいませんか?」

女騎士「ガイド?」

キョトンとした顔で、女騎士は聞き返す。

メイド「先ほど聞いた通り何度も訪れる場所なのでしょう? それなら大抵の場所はご存知でしょうし、私は見て回りたいですから」

女騎士「…このまま、悶々と部屋にいるよりはマシか。んじゃあ、出掛けるか、どこがいい?」

メイド「この都市ならではの場所、ですかね」

女騎士「もちっと具体的にないのかよ」

メイド「あえて、ですよ。がんばって考えて下さい」

少しだけ意地悪く、メイドは笑う。

女騎士「ここだとは思うぞ」

メイド「なるほど、そうでしょうね」

女騎士が考え抜いた上で、この都市の市場にメイドを連れてきた。

辺境都市ロイデヤの南に位置するこの場所は、この街でもっとも古い歴史を持つ。砦と壁が建設が開始された頃に、貿易の拠点となると踏んだ先見の明がある商人が露天を開いたがきっかけで、兵以外の人間も集まり、結果都市になる理由を作った始まりの場所。

今となっては、大きな商売は商業区に移ってしまったが、庶民などが規定の参加料を払うことで一定期間出店できることもあり、あらゆるものが販売される掘り出し物の宝庫として、始まりの血は色濃く残っている。

メイド「食べ物屋、雑貨屋、衣料店、装飾屋。見るだけでも飽きない場所ですね」

女騎士「ただ、きぃつけないといけないのが」

さっきメイドとすれ違った男の手をガシッと掴むと。

「な、何すんだ!」

女騎士「こういうスリ野郎の被害にあうってことだな」

素早く男の懐から布袋を取り出し、メイドに投げ渡す。

「てめぇ、俺の金を返しやがれ!」

女騎士「ほぅ、貴様は我が一族の家系の者か? あの布袋に描かれている印は、大将軍の血筋、または関係者であることを示す。当然、その言葉に異であるなら、貴様は大将軍を侮辱したとして…」

掴んでいた腕を放し、今度は右手の小指を握りしめ。

女騎士「このようなことが出来ぬよう、一本一本丁寧に、指をねじ切らせてもらうが、かまわないな?」

慈悲などないことをわからせるほど、冷淡な口調で言い放った後、折れるギリギリの所まで手に力を込めた。

「す、すいません。許して下さい! 出来心だったんです!」

女騎士「出来心であそこまで綺麗に盗めるなら、まさしく天性だな。今回は友人を連れている、だから見逃すが、今度でくわしたら、楽しみにしておけ」

「は、はいいいぃぃぃ」

指から手を離してもらった男は、まさしく脱兎の勢いで逃げ出していく。

「女騎士ちゃん、甘いわよぉ。あいつ、結構やらかしてるんだから」

顔馴染みなのだろう、近くの露天の女店主からそう声をかけられた。

女騎士「わかってるよ~、聞いていたと思うけどさ、今日この友達ときてんだよ」

「そちらの可愛い方ね。良かったら見ていかない?」

女騎士「この店は間違いないぞ」

メイド「そうですか。ふぅ、さっきの件もあって面食らってました」

女騎士「警備してないわけじゃないが、こういう場所だからな」

メイド「そうですか、これ、綺麗ですね」

模型と液体が入った瓶を、メイドは手に取る。

女騎士「メイド、それはマナー違反だ」

メイド「え?」

女騎士「さっきもいった通り、ここは治安がいいとは言えないんだ。だから、店の利益を守るため、品物は支払いされるまで触れない」

メイド「そうなんですか? も、申し訳ありません!」

「女騎士ちゃんのお友達だから気にしてないわよ。ただ、他の店では気をつけた方がいいわね、それで難癖付けて買わせるから」

女騎士「たちが悪いところだとそのようだな。顔が知られてるあたしが側だから、そんな無茶はしないだろうけど」

メイド「なかなかスリルのある場所みたいですね。でも、これ綺麗だなぁ」

瓶を軽く振ると、白く細かい砂が水中を舞い、幻想的な景色を描いている。

メイド「コレ欲しいです。おいくらですか?」

「銅貨五枚ってとこだけど、女騎士ちゃんの友人だから三枚でいいわよ」

メイド「ありがとうございます。じゃあこちらを」

「はいはい、毎度ありがと。また来てくれると嬉しいわ」

メイド「はい、ご機会あれば是非」

メイドは買ったその瓶を嬉しそうに振る。

メイド「綺麗です」

女騎士「…」

瓶の中を舞う白い砂、雪を模したそれが漂うのを見て女棋士は。

メイド「綺麗ですよね、女騎士様…、女騎士様?」

女騎士「あ、あぁ、そうだな」

何かが思い出されそうなところで、思考が止まってしまう。

メイド「何かございましたか?」

女騎士「いや、気にするな。多分ボ~っとしていただけだ」

メイド「そうですか。あ、あそこに鳥の丸焼きが売られてますよ。行きましょう」

女騎士「香草焼きのが…」

メイド「今は食べられないんですから、諦めて下さい」

女騎士「う~」

女騎士もいつの間にか、何か思い出しそうだったことを忘れた。

さて、今日はここまで。

サクッと終わらせるつもりだったけど、なんかかなり長編になりそうです。どうすっぺ、そこまでのネタあるかな。


あ、明日は帰省の準備なんかで、たぶん執筆しません。仕事の合間に設定チロッと書くかもしらんけど

誤字で思ったけど、女騎士の将棋とか戦略ボードゲームは得意なのかな?

お帰りですか?
お気をつけて

>>166
じゃあそれで小ネタ

女騎士「対城壁兵器(カラルダ)隊、射出準備開始、4分消費。補助、魔術師隊による投石を魔力石に変異術式開始、同6分消費。行動終了」

兄「計六分、北西城壁弓兵隊、内2小隊西方城壁移動開始、2分消費。同弓兵隊、対城壁兵器隊へ攻撃、同4分消費。攻撃判定、シュート」

判定、4

兄「成功。損害判定シュート」

判定、7

兄「損傷軽微。対城壁兵器1、魔術師隊1、行動不能。城壁魔術師隊移動、消費二分、板状より視認不可」

女騎士「投擲開始、城壁損害判定シュート」

判定、2

女騎士「魔力石発動判定シュート」

判定、8

女騎士「合計10、城壁攻撃成功。損害判定、魔力石による効果シュート」

判定、4

女騎士「投石攻撃判定シュート」

判定、5

女騎士「合計9、城壁消滅まで2。突撃隊、城壁前移動消費3分。行動終了」

兄「ふむ、詰みか。流石に城壁へ最大クラスの損傷では手の打ちようがない」

女騎士「…ダメです」

兄「ん?」

女騎士「手加減されての勝ちなどつまりません!」

兄「いやな、そろそろ私も寝たいんだ」

女騎士「次、次で終わりにいたしますから!」

兄「勘弁してくれぇ」


できるけど、兄が強すぎて手加減されてないと勝てないというオチ

ちなみに実際にあるストロングフォールドというボードゲームがモチーフ。

>>168
帰るよ

でも気をつけてもらうのは使うJRさんなのよねぇ

帰省前日、仕事中夏風邪発症、節々鈍痛。

ふぁっく

お盆の日曜の23時に仕事?
まじか

お疲れ様っす…

>>172
昔はそうだった(真顔)

今は昼出勤で、帰る間際に夏風邪発症しただけさ


>>173
ありがとう。



さて、まだのど痛いし、節々も若干怪しいけど列車に揺られるぞ~(空元気)

市場を一通り見回った二人は、そのまま商業区の外れに訪れていた。

メイド「こんなところに何があるんです?」

女騎士「巷で噂になっている、正体不明の占い師がいる。言っていることは大抵当たるんだとさ」

メイド「…、胡散臭さがありません?」

女騎士「占いってそんなもんだろ? と言うわけで、これもってけ」

女騎士は懐から紋章が描かれた札を手渡した。

女騎士「占い師が気に入ったヤツに配る、無料チケットみたいなもんだ」

メイド「自分が使っていいのですか?」

女騎士「あたしからの紹介って言えば使えるよ。もっとも、嘘をつけばすぐ気づくヤツだから、それも不要だろうが」

メイド「女騎士様が占いをされるなんて、珍しいですね」

女騎士「いや、強引にここに連れられたんだよ。その占い師にな。貴方には強い運命がある、是非占わせて欲しいってな」

メイド「…そうなのですか」

占い師の言うことは、メイドには何となくわかる。

女騎士には、言葉では表せないが、何かに護られ、そして祝福されている。そう思わせることが多々ある。

孤児が軍のトップに拾われ、その家系の者として育ち、騎士の最上位に当たる聖騎士の称号を、最年少かつ初めて女性で授与した。

そのことは現実ではある。しかし、本来は起こり得ることはない奇跡だ。

メイド「そう言えば、占いさせられたんですよね?」

女騎士「そうだぞ?」

メイド「なのに、なんでよく当たるらしい、なんですか?」

女騎士「私は視えないんだどさ」

メイド「見えない?」

聞き返され、女騎士は頭をポリポリ書きながら。

女騎士「あたしもよくわかんねぇけど、運命が濃すぎて、光しか見えないんだと。だから、見えるようになるまで、たまに来て欲しいんだとさ」

メイド「嫌そうですね」

女騎士「噂じゃ金貨の価値がある占いらしいが、そもそも興味がないからな」

と、悪態をついた。

女騎士「そんで、このやや廃屋っぽいここがそこだ」

女騎士が指差したそこにあるのは、人が住まなくなり、後は朽ちるのを待つような一軒家だった。

メイド「…大丈夫、ですよね?」

女騎士「前は商業区のメインストリート近くの路地裏でやってたらしいが、噂が立ちすぎて、仕方なくここでやってるんだと。中は普通だぞ?」

メイド「ならいいんですが…、あれ、女騎士様はやっぱり入らないんですか?」

女騎士「悪いが先に入っててくれ、少し一人で寄りたいところがある」

返事を待たず、そのまま女騎士は歩き去っていった。

うん、列車動き始めたから寝る

おやすめ

それでも占い師さんなら
占い師さんなら「このくらいなら見えるのですよ」(ガシッ)してくれると信じてる

>>180
女騎士「真っ二つや~」

占い師「占い師は自分は占えないか、ぐふっ」

でいいかな?

女騎士「おい、藪医者はいるか?」

午前の診療を終え、準備中となっていり診療所の裏口から入り、開口一番そう言った。

医者「あんたの眼がしっかり機能してるか、診断すりゃいいかね?」

女騎士「300m先ぐらいなら、遠視機無しでも見えるぞ?」

医者「ふむ、いつも通り真に受けおるか。いつもの用かぬ」

女騎士「あぁ、何か見つからないか?」

女騎士はそのまま中に入り、扉をしめた後、壁により掛かる。

医者「ない」

女騎士「そう、か」

医者「あんたの弟さんは普通の怪我じゃない。一歩間違えば、あんたも同じ道を辿ったんだぞ」

全く、命をなんだと思っておると愚痴りながら、医者は煙管に煙草をいれ火を点ける。

女騎士「あたしの命は、大将軍の一族に捧げている」

医者「王家ではなくか」

女騎士「王家に救われた覚えはないからな」

医者「ふん、お前らしい」フーッ

医者は煙管の灰をトンと薬皿に落とす。

医者「まぁ、儂にはどうでもいいことだ。患者を救うことが役目じゃからな」

女騎士「…あの時渡した魔物の死骸、役にはたたなかったのか?」

医者「話したと思うが、あれはこの世界にいる魔物と、どの類とも一致しない。召喚された類(たぐい)だとは思うが…。故に人体へ魔物体液などが、噛みつき、ひっかきで入った時に、どのような作用が発生するかなど、まずそこからの研究から始めねばならない」

>>184
気に食わないところもあり、修正


医者は煙管の灰をトンと薬皿に落とす。
医者「ふん、まぁよいか」

女騎士「しかし、まだ見つからないのか? 魔物の死骸も運んだというのに」

医者「話しただろう。あれはこの世界にいる魔物と、どの種類とも一致しない。召喚された類(たぐい)ものと思う、とな。故に人体へ魔物の体液などが、噛みつき、ひっかきで入った時に、どのような影響がでるかも未知。暗闇の中を手探りで歩いているようなものじゃ」

女騎士「なんでもいい、今時点で何かないのか。ほんの少しのことでいいんだ」

医者「それも話したとおり、召喚した魔術師を探した方がいい。そいつが持ってる魔術書などに魔物について書いてあるかもしれんからな」

女騎士「…、またあの地方いくしかないか…」

医者「(可哀想な娘じゃな…)」

女騎士との付き合いは、医者は長いものではない。

女騎士の必死さに、医者は哀れみを感じている。

くそう、一人で墓参りいったり、地元の友人に顔だけ出したり、親戚のよくわからん話聞いたり、ゆっくりできん!

ていうか豪雨の墓参りとか勘弁してくれやお天道様

医者「時にだ、腐れ騎士」

女騎士「なんだ、藪医者」

医者「あんたは大将軍の一族に命を捧げたといったな」

女騎士「そうだ」

医者「命を救われただけで、なぞそこまで大層なことを守る?」

医者は、当然多くの命を救ってきた。その重さも十分知っている。

しかし、救った命が無惨にも散っていたことを何度も知っている。

女騎士「あたしの命は、もう亡いのと同じだからな」

医者「ない?」

その答えが、どこか的を得ず、医者は聞き返す。

女騎士「あたしは本当なら、あのスラム街で肉塊になっていた。生きてるのは、気紛れみたいなものだ」

医者「気紛れ、な」

医者「それが大将軍、いや、父様から命を貸していただけたのだ。だから、返さなければならない、利子をつけた上でな」

医者「それだけか?」

女騎士「それだけだ。年を取るといろいろこじつけなければ納得できなくなるものなのか?」

少し嫌みを含めて、女棋士は問う。

唐突の「いつもの用かぬ」で笑った
棋士になるのは検索かけてるからだろうか

>>190
oh....

携帯しか今ないから、予測変換使ってる。で、よく見ないで勢いで書いてるから誤字ると

まぁ、キニスルナ!

医者「そういう訳では…、いや、そうかも知れんな。あーだこーだ理由をつけて、それらしく振る舞う。年寄りはそんなもんかもしらん」

女騎士「そんなもんか」

医者「そんなもんだ。まぁ、お主は聞かんのは承知だが、医者としての老婆心から言う。ほとんど休まずに今まで辺境の地と王都を往復していたんだ。身体は休息を求めている。自覚はないだろうがな」

女騎士「あぁ、ピンピンしている。待機命令がなければ、他の地に解決策を探しに行くのだが…」

医者「無意識の声を聞け、あんたが倒れたら、それこそ誰が弟さんを救うんじゃ」

女騎士も、どこかでわかっている。自分が無茶をして倒れた時、一番悲しむのは何より優しい弟だと。

女騎士「…、ありがとうと礼は言う。しかし、養生してる暇はない」

医者「ふぅ、頑固者。確実にあやつに似たな」

女騎士「…、何か知ってるのか?」

医者「知っているのはあんたの育ての親だけじゃ。まったく、強情なやつじゃったよ…」

少しだけ目を閉じると当時のことが、ありありと浮かんできた。今はそれも、遠い彼方に行ってしまったなと、医者は思う。

女騎士「想像できんな」

医者「ふん、どうでも良い話じゃ。ほれ、これでも持って行け」

薄い濁った緑色の液体が入った、蓋がされた試験瓶二本を、医者は女騎士に手渡した。

女騎士「なんだこれは」

医者「栄養剤じゃよ。身体をごまかして動かしたい時に使えるな」

女騎士「それは栄養剤なのか?」

医者「身体中に栄養を取り込ませるという意味ではな。あと、連続で服用はするな。いくらあんたでも倒れるだろう」

女騎士「なるほど、一つ聞くが」

チャプンと試験管を揺らしながら。

女騎士「一般人が服用したらどうなる?」

医者「まぁ、男なら腹上死というところか。女は知らんが、どちらにせよ有り余るエネルギーが暴走するだろ」

女騎士「まったく、人に劇薬飲ませて楽しいのか?」

医者「それが良い効果で表れる奴が、何言っとるんじゃ」

と悪びれもなく医者は言い放った。

実家から帰って疲れてるので今日はこれまで

黒パンツに見えて迷い込んできました

>>196
酷い間違いだ

『黒パンスト固め』
パンストに包まれた魅惑の脚で挟まれることで、魅惑の環境から逃げる意思を奪い身動きを封じる技
あと掛けられたほうが男の場合、某所が硬くなるのでそういう意味も含む

>>196
>>198
女騎士「最近この界隈で変態がでると聞いたが、貴様等か。抵抗しろ、躊躇なく二つにしてやる」

>>197
女騎士「情報提供にご協力感謝する」


さて仕事だぁ

>>199
こう言うの寒いよ
黙ってかいた方がいいよ

>>200
こう言うの寒いよ
黙って帰った方がいいよ

>>200
>>201
もっと熱くなれよおおおおお!


まぁ、このスレ(SS?)主はこんなノリだからまったりしてや

と言うわけで、いつもの設定集


医者

魔法治療、錬金治療、精霊(信仰)治療が主体だった時代に、医者として、科学(いりょう)で世の中に喧嘩を最初に売った人。

各国で功績を挙げながらも、宗教教団と喧嘩してたら、入国即死刑になる国が多数ある。


アッチガケンカ、フッカケテキタンジャガナ


比較的宗教活動が緩い、今の国に流れ着いて、最終的に医療に使う薬草類が手に入りやすいロイデヤに定住。


スミヤスイバショジャ、ウリコガウルサイコトイガイハナ


かなりのご高齢、宗教教団と喧嘩してたこともあり、かなり取っ付きにくいが、倒れてる人を見つけると、悪態をつきながら治療を施す根っからの医者。


サイキンノワカイヤツハ、ジブンノチカラヲカシンシテ(ブツブツ

タイヘンダナ、ヤブイシャ

フンッ


女騎士の弟の治療も手がけたが、肉体自体は何ら問題ないが、意識を司る部分に起きている作用を取り除かなければ、完治はしないと診断している。


こんなところかね

女騎士「相変わらず胡散臭いところだな」

医者のところから真っ直ぐ占い師の家に戻り、中に入って室内の薄暗さと家具類を見てボヤく。

女騎士「(大体これぐらいで終わるはずなんだが…)」

メイドが待合室にいないので、そのままずけずけと入っていくと。

何かが床に倒れる音が響いた。

その瞬間、身体は一瞬にして戦闘状態に切り替わり、自然に静かに斧を手にする。

音の場所は近い、客を占う小部屋当たりからだ。

「うあっ!」

また床に何かが転がる音と、短い声。女騎士は一気に距離を詰め、小部屋を開けた。

女騎士「ほぉ?」

女騎士の目の前に映ったのは、メイドに覆い被さる占い師の姿だった。

女騎士「胡散臭いヤツと思っていたが、これが本性か」

占い師「女騎士殿? その、何か勘違いされてませんか?」

女騎士「見たままの通りだろう?」

占い師「事実は奇なりと申しましてね? ただ、倒れてしまったこの方を起こそうとしたのですが、慌てていて、裾を踏んで自分も転んでしまいましてね」

女騎士「言い訳は神にすればいい」

スッと斧を振り上げる。

占い師「しゃ、洒落になりませんよ!」

そのままブンと振り下ろした。

振り下ろされた斧は、占い師の眼前すれすれで止まる。

占い師「あうあうあう」

女騎士「ふむ、お前に指摘された遊び心がないというのを参考にしたんだぞ?」

占い師「しゃ、洒落になってないジョークは、止めましょう…?」

女騎士「まぁ、本当にそういう状況だったならば、二度と無いように、男としての部分を切断するがな」

占い師はどちらにせよ、笑えないジョークだと思いながら苦笑いする。

女騎士「立てるか? あたしが触れると大変なのだろう?」

占い師「なんとか…、ではなくこの方は大丈夫なので!?」

女騎士「いつもの発作みたいなもんだ、ベットか何か借りられるか?」

そう言いながら、女騎士はヒョイとメイドを両手で持ち上げた。

女騎士「ひとまずこれでいいな」

占い師「先ほど、発作と仰ってましたが、もしや」

女騎士「あぁ、視たなら早い。メイドは聖女(まじょ)なんだ」

占い師「…、やはり」

聖女、救いの手として神の使いともてはやされたり、生命の理(ことわり)から外れるとして悪魔とされたり、地域により意味合いが異なる。

大抵の場合は、聖女を嫌う宗教教団が、自身の布教の妨げる存在として、悪魔に祭り上げ迫害されてきた存在だ。

聖女の多くは、病気治療、物理治療、精神治療といった治癒に関する魔法を得意とする。

古来にあった魔術都市アーベが滅んだ際、先に脱出を指示された宮廷治療隊の祖先が聖女のルーツなのではないかと、言われているが、真相は定かではない。

わかるのは聖女の多くは、悲劇の元で生涯を終えると言うことだ。

メイドも、聖女の母の元に生まれ、迫害の目に遭い、奴隷として買われていた経緯を持つ。

聖女自体も知識の向上や普及、魔法、魔術の一般化など、様々な要因により迫害される、ということは多くはなくなった。

しかし、土着信仰のある地域や、発展に遅れがある国の実権を宗教教団が持っている場合などでは、現在も迫害があるのは事実だ。

占い師「治癒はどの系統の魔法、魔術でももっとも高位で負担がかかると聞きます。それだけに、奇跡であり、皮肉にも聖女と呼ばれているわけではありますけれど」

女騎士「精霊治療として、多額の寄付を募っていた宗教教団からすれば、邪魔者には違いないからな」

優しくメイドの頬を撫でながら、女騎士は穏やかな表情をしている。

女騎士「治癒魔法がなければ、こんな風に倒れたり、あんな目にあわなかったのかな…」

占い師「…、人の運命はたかだか一つの才覚で、全ては決まりませんよ」

女騎士「占い師がそういうのを言っていいものなのか?」

占い師「駄目でしょう。しかし、多くの運命は変えられるのは、間違いありません」

占い師は知っている。持っているからこそ招き、決まる運命があることと、それとは別にどこからともなくやってくる白い運命があることを。

さて、まだ完全じゃないからそろそろ寝るでや

しかし、話が進まん


日常のシーンが長く続いた後、急展開があると人はより強く恐怖や面白さを感じるらしいよ?
日常はキャラの性格把握するのにも貢献するし

>>212
なんか聞いたことはあるねぇ

まぁ、おいらが単純にサクサクあっさり進めたがるだけだから意味はないのだけれど

と言うわけで、本編主人公ばりのラッキースケベだった人


占い師

ロイデヤでひっそり(当人曰く)占い業を営む青年。

普段から深いローブを纏い、手も白い手袋を着用。素肌が見えるのは顔の部分だけ。その目もいろいろな色に反射する虹の眼。


カメンモカブッテイタジキモアリマシタ


占いと称しているが、人の運命を見通す力を持っていて、それをそのまま占いとして利用しているに過ぎない。

視るだけでも大体見通せるが、接触するとより鮮明な運命を見通すことができる。


キシドノヨウナ、ツヨイウンメイヲオモチノカタハ、フレルトシッシンシタリシマス

メンドウダナ

ウマレツイタウンメイ、デス


自身のことはあまり語らず、出生など細かいことは不明。聞いてもそれとなく、うやむやにされる。

オシエロ!

ツキッキリデ、ウラナワセテイタダケルナラ

ヤダ


とまぁ、こんなところ。

まぁ、このウィスキーのウィスキー割でも呑んで落ち着いてくれ

いやぁ、昨日ものんびり投稿しようとは思っていたんだ

しかし、足がだね。馴染みにしている店に向かってしまってだね。まぁ、したたか呑んだわけだ

かえってシャワー浴びて、気づけばソファーの上で、次に朝日を浴びていたさ


さて書こう

女騎士「それで、あたしの運命とやらは視えそうなのか?」

ずいと、占い師に女騎士は近付いてから、占い師が纏うローブの奥に光る、虹色の瞳を覗く。

占い師「あまり近づかないでいただけると助かります」

女騎士「なんだ、あたしが嫌いか?」

占い師「言ったでしょう。あなたは強い運命に生きている。事前の構え無しにあなたを近くで視ると、失神しかねません」

そう言いながら、占い師は腕で顔を覆う。

女騎士「なんだか嫌われているみたいで、腑に落ちない」

占い師「メイドさんの発作と同じですよ。自分ではそれを制御できないのですから」

女騎士「…離れるぞ。それと、申し訳ない」

すっかり落ち込んだ表情で、女騎士は占い師から離れる。

占い師「いえ、女騎士殿が悪いという話ではありませんからね」

女騎士「あたしはその綺麗な目を見たかっただけなんだがなぁ」

占い師「そんないいものでもありませんよ」

女騎士「あたしみたいなのを視ると、失神するからか?」

占い師「そういうことです」

女騎士「不便なんだな」

占い師「特別な力を持つための、代償みたいなものですよ」

そういいながら、ふと望まずに持つ力で、起きる代償は、いったい誰に責任があるのだろうと、占い師は思った。

メイド「…ん」

女騎士「起きたかメイド。身体は問題ないか?」

メイド「あ、れ。女騎士様…、ここ、は」

女騎士「こいつの居住エリアで、寝床を貸してもらったんだ」

メイド「いろいろすいません。長旅で、疲れていたみたいです」

女騎士「メイドは軟弱だな」

占い師「女騎士(あなた)に比べれば、どんな女性も軟弱でしょう」

女騎士「丈夫なのが騎士に必要な資質だからな」エヘンッ

メイド「…褒めているかは別ですからね。女騎士様」

少し驚いた顔を女騎士はして。

女騎士「そうなのか?」

占い師「褒めていますよ?」

占い師は平然を装いつつ、メイドが占い通り、実はうまく嘘をつけないことを思い出した。

嘘といっても、不当に利益を得ることだけではない。

場に合わせた嘘、気遣いの嘘、厳しさゆえの嘘。メイドはそういったものも含めて、嘘が得意ではない。

女騎士も正直者だが、嘘をつくことが苦手というわけではない。悲しさ、苦しさ、怒り、そういった負の感情を、親しい人間ほどわからないように嘘をついて笑うことができる。

だからこそ、二人は気が合うのだろうと、占い師は思う。

方向は違うとはいえ、二人は正直者同士で、気兼ねない関係なのだから。

メイド「…、なんにしても助かりました。占い師さん」

占い師「私は何も。気づけずにすいません」

メイド「気付く間もなく倒れてしまうので、きになさらないでください」

占い師「そうなのですか。ただ、何にしてもご養生を。そうそう、今回全てを占えたわけではありません。良ければまた来て下さい。滞在はいつまでなのですか?」

メイド「女騎士様の任務次第ですからなんとも…」

占い師「そうですか。女騎士殿、滞在は…、女騎士殿。どうされたんです?」

占い師は、ジッと二人の会話を見ている女騎士に声をかけると。

女騎士「うん、占い師、メイド、おまえ等の式はいつにする?」

さて、ここらで小休止~

手当たり次第かwwwwww

>>223
今は知らんけど、やたらお見合い勧めてくるおばちゃんってこんな感じなのだろうか

占い師&メイド「え?」

女騎士「何も考えていなかったが、こうやってみると二人はお似合いだな。うん」

占い師「あの~、女騎士殿? 何をおっしゃられているので?」

一人、うんうんと納得している女騎士に、占い師は問いかける。

女騎士「言っただろ? 二人の婚姻の話だ」

メイド「…気が早いかと」

占い師「え?」

メイド「あ、あはは、すぐそうやって言い出すのは、どうなんでしょうかということですよ」

占い師「あ、あぁ。なるほど」

女騎士「二人の子供なら、きっと優しくて勘が鋭い子が生まれるな」ウキウキ

メイド「妙に具体的ですよね、そういうことを言う時」

女騎士「なんとなくわかるものだろう? 兄様は……、うん、相手を見たことはないから。うん、ちょっとわからないな」

兄と長の子供は、勇気に満ちた人を惹きつける子だろうな、と言おうと思ったが、二人が公にするのを避けていたことを思い出し、女騎士はうやむやにした。

占い師「…、いろいろと不思議な方だ、あなたは」

女騎士「そうなのか?」

占い師「私が運命を視ることができない、その時点で不思議なことですから」

女騎士「ふ~ん? そうなんだな」

メイド「ゴホン、とにかく私はもう大丈夫なので、そろそろ行きましょう」

女騎士「ぬ、婚姻の話―」

メイド「行きましょう?」

女騎士「あう」

メイドの希薄に圧倒され、女騎士はたじろぐ。

メイド「それに、私のことより、ご自身の婚姻を考えられては?」

女騎士「ぬぐぐ」

メイド「ふぅ…、占い師さん、お世話になりました」

何がびっくりって、寝落ちして起きたら、額にガラケーが刺さったみたいになってて、ユニコーンかいな、みたいな


さて書こう

占い師「えぇ、またいらしてください」

メイド「機会がありましたら是非、占い抜きでお話ししましょう」

占い師「えぇ、お待ちしております」

女騎士「ではまたな、占い師」

占い師「またお会いしましょう」

店の外に出ていく二人を、占い師は見送る。

占い師「やはりあなたは、不思議ですよ。女騎士殿」

視える運命を、眺めながら呟いた。

女騎士「ったく、兄様の命令じゃなければ、こんなところ…」ブツブツ

華やかな広間、豪華な食事、行き交う着飾った人々。今宵、盗賊討伐で話に出ていた、リアン主催のパーティーが盛大に行われていた。

女騎士は、こういう場は苦手だ。誰も彼もが着飾りすぎて、その装飾品と話している気分になるからだ。

女騎士「(こんな時は、隅でごちそうを食べるに限るな)」

場はわきまえているので、女騎士は下品にならない量の食べ物と酒を手に取り、隅へ移動する

女騎士「うまいうまいwww」

流石に贅を尽くした食材で作られた料理で、味は絶品だった。

女騎士「(これが、人から奪ったものからってんじゃなきゃ最高なんだが)」

もぐもぐと肉を噛み締めながら、そんなことをぼんやりと会場を眺める。

楽しげに談笑しているが、次回の商談に備えたものだったり、政略結婚の類だったり、女騎士にはため息しか出ないほど、ただ話に来る人間はいなかった。

女騎士「(ん、あいつは…)」

見覚えのある顔が、会場の真ん中を歩いている。あれは投影石を複写した羊毛紙で見た。

女騎士「(リアン=ファブか)」

羊毛紙で見たとおりやや若い。新進気鋭の成り上がりのようだが、金に浮かれた緩い顔つきはなく、やり手のようだ。

女騎士「(兄様達が証拠を集めるのに苦労するわけだ)」

そう思いながら、また食事を再開する。

女騎士「(終わるまであと何時間だろうな?)」

食事を終えた女騎士は、そう考えながら。壁を背に突っ立っている警備に。

女騎士「もし? 本日のパーティーだけれど、終わりはいつ頃になりそうかしら?」

「まだ暫くは続きます。ゆっくりご歓談ください」

女騎士「ありがとう。あと、お手洗いはどちらかしら?」

「広間の出口を出ましたら、右手の廊下奥に婦人用のお手洗いがございます」

女騎士「ご丁寧にどうも。では、失礼致しますわ」

そのまま、いったん会場を後にした。

ガツガツ食べて折り詰めにしてもらうような残念騎士じゃなかったか

>>235
騎士として教義は将軍から、社交場の振る舞いは姉から、軍略や政治は兄から叩き込まれてる。

ちなみにその教えの理解度は将軍<姉<兄

途中で送信しちまったい

>>235
騎士として教義は将軍から、社交場の振る舞いは姉から、軍略や政治は兄から叩き込まれてる。

ちなみにその教えの理解度は将軍<姉<兄で理解してない。

女騎士「(さてと)」

屋敷の中を見られる範囲で、確認する。正面は各部屋にアクセス出来るようになっており、玄関から見て正面に、二階へ続く階段と先ほどまで居た会場の広間の出入り口。左右に応接間などに続くと思われるドアが一つと、左奥に小さなドアが一つある。

警備に聞いたとおり、長い廊下を歩く。左手に窓で右手は壁が続き。

女騎士「(この匂い、香草?)」

香水とは違う、わりと良く嗅いだことのある香りが、わずかだけ女騎士の鼻をくすぐった。

パンツ固いに見えた俺は手遅れ

周囲には少しだけ貴婦人の姿は見えるが、その誰からもその匂いはしない。

女騎士「(確か、香草を使った料理がそこそこあったな)」

敵対商人への権威の主張に作られたものなのだろうと感じ、美味しそうではあったが、手を出すのをやめたのを思い出して、このパーティーに居ることが更にゲンナリと女騎士はしてきた。

女騎士「(しかし、折角の機会ってことになる。兄様もそれが理由で参加させたんだろうから、見れる範囲の屋敷の構造ぐらいは、探らないとな)」

女騎士はお手洗いの扉に手をかけながら、これからのプランを考えることにした。

女騎士「ふぃ~…」

入れる範囲を歩いた後、二階のテラスでぼんやりとしながら、頭の中で見取り図を描(えが)く。長方形型の屋敷で、真ん中が中庭、玄関側にパーティー会場に使われてる広間や応接室。その反対側が言わばプライベートエリアで寝室や厨房、そういったものがあるように見受けられた。

ここに来る機会があるかは分からないが、とりあえず女騎士は記憶に留めることにした。

女騎士「(早くパーティー終わらないかな~)」

今後のため、リアンとは顔なじみになりたくはないが、そそくさと逃げ出して変な勘違いをされても困る。女騎士のゲンナリ感は最高潮に達しかけている。

>>239
大丈夫、>>196という先輩が居る。

女騎士「安心しろ、同じ牢に入れてやる」

女騎士「しかし、静かだ。広間の喧騒が嘘みたいに聞こえねぇ」

警備に疲れたので、静かに過ごせる場所はないかと聞いたところ、この場所に案内されている。

パーティーで急病があった際に、簡易な治療室とする場合があり、一応ここも立ち入り可能場所の一つだ。

女騎士「そんな場所だっつ~のに、こんなに華美な装飾ねぇ。長んとこは、まだかわいげがあったけど、ここはただひたすらに権威の主張品だな」

違う意味で、また気疲れしそうだなと女騎士は思った。

「失礼致します」

その声と同時に扉が開けられ、溌剌とした年頃の男性が入ってくる。

女騎士「あら、医師の方ですか?」

「いえ、ここの来賓客の一人ですよ」

女騎士「そうでしたか。貴男も体調が優れませんので?」

「いいえ、貴女にお話がございまして、女騎士様」

左手を右腕の裾に、自然な形で持っていく。いつでも仕込んでおいた小さめのナイフを取り出せるように。

女騎士「あら、どこかでお会いいたしましたかしら?」

「私自身はお会いしておりません。父がお世話になり、そのお礼を申し上げたくて」

女騎士「お父様が…、とするとこの間の商人隊のご子息様かしら?」

「えぇ、そうです。いやぁ、良かった。人間違えでしたら失礼でしたからね」

安堵の表情を見せる、あの商人の息子と名乗る男に対して、女騎士はわからないように警戒を続ける。

女騎士「お礼とのことでしたが、騎士としての役目を果たしたまでです。お気になさらないで下さいませ」

「いえいえ、誰も護衛役になってくれない中、一人で三度の襲撃を凌ぎ、しかも全て賊を捕らえたというのですから。素晴らしい活躍と言うべきです。聖騎士の名は伊達ではないとあらためて思い知りましたよ」

女騎士「私(わたくし)など、これまでの聖騎士の方々からすれば、末席に居させてもらっているにすぎませんわ」

「ご謙遜なさいますな。少なからず、今居る騎士の中で、貴女に敵う者はいないでしょう」

女騎士「これはまた、返答に困りますことを…、少なくとも大将軍には敵いませんと、申し上げます」

騎士の中の騎士、そう呼ばれた義父に、いつ自分はたどり着けるのか。女騎士は、時折そう思う時がある。

「確かにあの方を越えるのは、全ての騎士の目標と言われていますからな。確かに、勇ましい方だった」

女騎士「とう…、大将軍様をご存じなのでしょうか?」

「…、昔、父が献上品を届けに伺いました際、私も同行し拝見いたしました。その時、訓練所に伺ったのです、お嬢様に武術の手ほどきをされていました。そのお嬢様は幼子にも関わらず、同じ血筋と見間違えるほどの斧捌きは、今でも思い出せるものです」

過去のセピア色の記憶を、女騎士は静かに紐解いていく。

女騎士「…、あ」

その日、訓練中やけに義父が嬉しそうにしていたことを女騎士は思い出す。

そう、その日は親子がやってきて、丁寧な装飾がされた長方形の箱を、その親は大事そうに抱えていて、跪いて義父に手渡した。

義父は堅苦しいのは良いと言いながら、その箱を開け、満足そうに蓋を閉めて受け取り、労いの言葉をかけていた。

女騎士は、どんなものが入っているのだろうと気になりながら、言いつけ通り訓練を続けていると、義父に呼ばれ。

その箱を渡されてあけて見ろと言われ、ズシリと両腕に重量が感じられた箱の中には。

鈍い白色の美しい斧が、入っていた。

「思い出されましたかな?」

女騎士「え、えぇ。あの時はお見苦しいところを…」

あの時、嬉しさの余りにいつもの斧を振り回してしまったことも思い出し、女騎士は言葉に詰まる。

「気にしておりません、むしろ商人としての喜びというものを、理解させてもらいました」

女騎士「商人の喜び、ですか」

「そうです。大将軍様に、美しく戦闘にも耐えられる斧を作って欲しいとご依頼頂きまして、職人に依頼して作ったのですが、最初の斧は大将軍様に納得いただけませんでした」

女騎士「納得されなかった。それはなぜでしょう?」

「当初、女騎士様への贈呈品ということもあり、金や銀などで煌びやかな装飾を施した斧だったのです。戦闘にも耐えられる、というのは緊急時に武器として一時的にでも使えるという意味と、父は受け取っていたそうです」

女騎士は自身が使っている斧を思い出す。小型のわりに重量があり、むちゃな戦いの時ですら、凹みも歪みもしない。見た目に反し、かなり強固な斧だ。

「しかし、大将軍様は本当に言葉のまま、美しく戦闘にも耐えられる斧を希望されていたのです。父は、骨が折れたと笑っていましたよ」

女騎士「良い作りをした斧でございます。私もあの斧以外を使うと、あまりしっくりきません」

「父も腰にある斧を見て、女騎士様と気付いたそうです。そして今でも大切に使われているのがわかり、珍しく酒を嗜みながら私に話してくれました」

女騎士「そうでしたか。それはよかった」

「おっと、そろそろ戻らなければ。何にしても、護衛の件誠にありがとうございました」

差し出された手を握り、女騎士は強く握手した。

そしてサロンから去ろうとする男に。

女騎士「そういえば、商人の喜びとは、いったいなんだったのですか?」

「お客様の笑顔ですよ。女騎士様の、無邪気な笑顔を見て、そう思いました」

男は、そういってニコリと笑う。

女騎士「そうですか。あぁ、そういえばお名前を伺ってませんでしたね」

「ルカソンヌの商人、でございます」

丸の中に十字が入ったシンボルが刻まれたネックレスを見せながら、商人はそういった。

女騎士「商人さん、またその内にでも、お会いできるといいですね」

商人「えぇ、その時は食事をご馳走させていただきます。それでは」

ヒラヒラと手を振りながら、商人は今度こそテラスを後にした。

う~む、これでもかというペースでキャラが増えていくのう

ていうか、このスレでこのSS終わるんかいな


気分転換にツンデレでも書きたくなってきたよ

別に2スレ以上使ってもええんやでニッコリ


partスレ化とか気にせず、好きに書くのが一番いいと思うよ

>>254
そこまでのネタがね~です

>>255
楽しんではいるのだけどねぇ、広げすぎてる風呂敷が閉じない悪寒

てか、これを書いてる時に委員長系ツンデレとか、前々作のクラスメート(女)のネタも浮かんでて、わたしゃ浮気しそうだよ

兄「久し振りの休暇はどうだった?」

女騎士「退屈でした」プス~ッ

兄「そう腐るな、そろそろ盗賊狩りは解禁だからな」

女騎士「もし嘘だったら四六時中抱きつきますからね」

兄「お前も年頃の娘だろうに…」

パーティーから数日、ようやっと準備が整ったのか、兄は女騎士が宿泊する一室に来ていた。

メイド「…ふぅ」

女騎士「どうした、溜め息を吐いて」

メイド「いえ、本題に外れることが、口から出かけましたので、堪えただけです」

兄「助かる、お小言は後で聞くとして当面の女騎士の動きについてだ」

女騎士「自分の動き、ですか」

兄「知っての通り、お前が来たことで、王都も腰を入れて盗賊対策に乗り出したと、皆期待している」

女騎士「私もそのつもりでしたよ?」

兄「まぁ、待て。そして、盗賊達もそれを知って動きを止めた。だから、お前に待機依頼を命じた。あくまでお前は休暇できていて、もし私に何かあった時のバックアップとしてロイデヤに居るという状況にするためにな」

そこまで聞いて、首を傾げる女騎士に。

メイド「つまり、賊に動いてもらうため、女騎士様には黙ってもらっていたということです」

女騎士「兄様、それだと民が困るではないですか」

兄「言うとおりだ。だがこちらも動きを見せて貰わないと、盗賊を操る元凶を捕らえることができない。幸い、命を奪わない相手だからこそできた、苦肉の策ではある」

女騎士「…、わかりました。それで、私はどう動けばいいのですか?」

兄「しばらく、北東方面の盗賊を捕らえてもらう」

兄は懐から地図を取り出し、大まかな位置を指で示す。

女騎士「なるほど、ここの兵を部下を率いて、大掛かりに賊狩りですか」

兄「いや、お前一人だ」

女騎士「…、あまりにも時間がかかりませんか?」

兄「言ったろう、お前は今、世間ではパーティーに行くほど、時間を持て余した休暇中の人間なんだ」

何ともいえない笑みをしながら、困惑する女騎士をよそに兄は続ける。

兄「だが、なんの動きも見せない不甲斐ない兄に怒り、ここに私を呼びだして情報を聞き出し、勝手に盗賊討伐に、お前は乗り込むということさ」

メイド「なるほど、世間でも女騎士様は困った人を見ると、勝手に動き回る方という認識が御座いましたね」

兄「メイド、確かに、そうなんだが…。まぁ、いい。とにかく、女騎士、お前が勝手に動いている、これが重要になる」

女騎士「兄様の命令ではない。ということが、ですか」

兄「あぁ、出なければますます奴らは動きを見せないだろうからな」

女騎士「わかりました、最善を尽くします」

兄「頼む。お前の今後の動きは、私とは別に盗賊討伐に当たる、それだけだ。大掛かりな仕掛けの準備ができるまでは、使者を含め接触はしない。わかったか?」

女騎士は返答の代わりに、敬礼で返した。

兄「後は、まぁ、怪我だけはするなよ。ではな」

女騎士はまた返答はせず、敬礼の姿勢のまま、出て行く兄を見送った。

さてと小休止、ようやっと物語が少し動かせるねぇ

かさかさと話す草の音、時折どこかへ急ぐように抜ける風、世界の体臭を思わせる土臭さ。

漆黒の森がそれらで自分に語りかけているかのように、女騎士の五感を刺激する。

闇に紛れるため、小さな銀の胸当てと、音を立てないために皮のブーツを着用し、全身を覆う黒いローブを纏って、眼だけ外にでている。

女騎士は、聖騎士と賞される騎士に間違いはない。しかし、女騎士が真価は、単独でゲリラ戦を仕掛ける時に光る。

何故なら、騎士という固定概念に、縛られてはいないからだ。

だから容易に騎士の正装を捨てることもできるし、密偵の真似事もできる。騎士だからこそ、高貴であるとか、そういったプライドはない。

あるのは、騎士は民のために存在することだけ。そのために泥を被ることはいとわない。

そんな女騎士がすっくと立ち上がる。とはいえ、この闇しかない森の中で気づける者はいない。

それが、ガサガサと不用心に枝を降り、雑草を踏みしめて歩く集団ならなおのこと。

>>266
の訂正


だから容易に騎士の正装を捨てることもできるし、密偵の真似事もできる。騎士だからこそ、高貴であるとか、そういったプライドはない。

あるのは、騎士は民のために存在することだけ。そのために泥を被ることはいとわない。

そんな女騎士がすっくと立ち上がる。とはいえ、この闇しかない森の中で気づける者はいない。

それが、ガサガサと不用心に枝を折り、雑草を踏みしめて歩く集団ならなおのこと。

女騎士は夜闇に慣らした目で、数を確認する。

商人から盗んだ品を運ぶ二人を中心に、前に三人、後ろに二人。女騎士はまずは後ろから切り崩すことにした。

素早く静かに後ろの二人に近寄り、右の人間の首筋を強打し、振り向こうとした左の人間の鳩尾に、左手をねじ込む。

倒れた音がしないよう、二人の首ねっこをつかんで、地面にゆっくり下ろす。

気付かれない内に、近くに転がっていた手頃な石を、集団の先頭、やや左の木の幹に向かって投げつけると、カンという短い音が周囲に広がった。

音に反応して、集団が止まり、前方の一人が音がした、木の幹の近くへ歩み出す。

また素早く右側面から集団に近づいた女騎士は、右にいた人間の頭を左手で鷲掴みにして、自分の上げた右膝めがけ叩きつける。

咄嗟のことに反応できない中央の人間に右足で側頭部を蹴り上げ、そのまま頭を打つ形で倒れる。

事態に気づいて、木に近づいた人間はこちらに戻ろうとし、品を持っていた二人は得物を構えようと手を離した瞬間、女騎士はその二人の頭を鷲掴みにして、そのままぶつけ合わせた。

気付けば一人になった残りは、慌てて逃げだそうと走り出したが、背中に強烈な衝撃がはしり勢いよく転倒した。

痛みと重さで身体をぐるりと回すと、背中から転がってきたのは、小型の盾の直径はある大きい石だった。

女騎士「良かったな。こういう時に投げるのは普段なら斧なんだ」

いつの間にかすぐ横でしゃがみ込んでいた女騎士が、淡々と話す。

どこか魔物の類に襲われているのでは、と違う恐怖を覚えていたその人間が最後に見たのは。

自分の顔に、拳が突き刺さる映像だった。

女騎士「か~、なんとまぁ、張り合いのねぇ連中だな」

全員倒し終えた後、そう言って愚痴る。

もちろん、奇襲を仕掛けた訳なのだから、その点は仕方ないとは思いつつも、最近の休暇で鈍った体を刺激するほどの殺意を、女騎士は求めていた。

女騎士「ま、しゃあねぇわな。村に火を点け回って、強奪してるヤツらって訳じゃなし」

手早く全員縛り上げた後、賊が落とした品を見ると、箱の中央に見覚えるのあるシンボルが焼き付けられていた。

女騎士「(こりゃあ。ルカソンヌのとこのヤツか)」

円の中に十字が入ったシンボル。あの時見せたネックレスのものと同じだった。

女騎士「(しゃあねぇ、品物は面倒だったから置いてくつもりだったが、運ばせていくとするか)」

自分の愛用する斧を調達してきたところだ。それぐらいはしないとバチが当たるなと、女騎士は思った。

後はひとまず、賊が全員眼を覚ますまで、近くの幹に腰掛け見張ることに女騎士はした。

よし、寝るでや。

ロイデヤもそろそろ終わるかな?

女騎士「憲兵、こいつらを頼む」

「はっ! さぁ、全員大人しくこちらに来い!」

捕らえた賊を引き渡し、女騎士は一息つく。

「まさか、素手で全員捕らえてくるとは…」

「ここの牢が満杯になる時が近いな」

「先輩、女騎士様かっこいいっす!」

「お前にゃ到底敵わんな」

憲兵が思い思いに話すのを、涼しい顔で流しながら、回収した品を運ぶ憲兵に近づき。

女騎士「それはルカソンヌの店の品だ。回収しに来るように、店に連絡してきてくれ。中身の確認も必要だろう、私が預かっておく」

「お疲れでしょう、そういう細々としたことは我々が致します」

女騎士「この程度で休みが必要なほど、ヤワじゃない。それに、任務は最後まで自分でこなすものだ」

「は! 失礼しました。早速伝令に参ります!」

女騎士「そう肩肘張るな。では任せた」

伝言を頼まれた憲兵は敬礼し、そのまま走り去っていく。

その姿を見守る女騎士は、騎士隊の隊長であった頃を思い出していた。

女騎士「(昔を思い出しちまうとは、歳かな)」

やれやれと軽く首を振る。

そして気配を感じ、そちらに目をやると。

「じ、自分は172期生、憲兵見習いの女憲兵と申します!」

女騎士「女憲兵か、ふむ、どうした?」

女憲兵「ぶ、無礼は承知です! その、握手していただけませんか!」

なぜかすごい勢いで頭を下げられながら、懇願され女騎士は少し呆気にとられた。

女騎士「ふむ、とりあえず落ち着け。握手ぐらいしてやる」

女憲兵「本当ですか? やったぁ!」

女騎士「ほれ、手を出せ」

女騎士が差し出した左手に、女憲兵は両手でつかみぶんぶんと振る。

女憲兵「わ~わ~! やったやった、あくしキャン!」ドサッ

「目~離すとこれか。まったく」

先輩と思われる、これまた女の憲兵が、青筋を立てながら、女憲兵の前を仁王立ちする。

女憲兵「う~、先輩憲兵、ひどいっす」

先輩憲兵「仕事を抜け出し、聖騎士様に会いに来たヤツに、手加減する気はねぇからな?」

女騎士「まぁ、そういうな。ふむ、先輩憲兵だったか、許してやれ、悪気はない」

先輩憲兵「は! お見苦しいところを失礼しました!」

倒れた女憲兵の手を、女騎士は握って引き起こす。

女憲兵「あ、ありがとうございます!」

女騎士「まぁ、職務は忘れんようにな」

こくこくと笑顔で頷く女憲兵を見て、女騎士は多分わかっていないなと心の中で苦笑いする。

先輩憲兵「さぁ、聖騎士様の邪魔になる。行くぞ!」

女憲兵「え、ちょ、引きずらな、あ、聖騎士様またお会いしましょ~!」

女騎士「あぁ、機会があればな」

ジタバタ暴れる女憲兵と、それを引きずる先輩憲兵を見送り。

女騎士「しかし、騒がしい新人が入ったようだな。苦労していそうだな、あの先輩憲兵は」

と呟いた。

「お取り込み中でしたかな?」

女騎士「あぁ、商人さん。お待ちしておりました」

商人「荷を回収いただきありがとうございます。流石のお仕事ですね」

女騎士「当然のことをしたまでです。この品に不足がないか、確認いただけますか」

回収した荷の蓋を開け、商人に中身を確認させる。

商人「大体は無事ですが、香草は無いようですね…」

苦々しく商人はそう言った。

商人「南方の香草は長持ちはしますが、やはり、新鮮なうちの方が高価に取り引きされます。恐らく、香草だけより分けて、売り払った後なのでしょう」

さて小休止

今度は一気に二人出たよ。今後でるんかなこの二人

組み合わせとしては好きなコンビだけど


是非出して欲しいな

>>283
え。


………………、うん。考えとく。



ソモソモキャラ、ランリツシスギテコノコタチイガイモ、マタデテクルカワカランノヨネ(ブツブツ

そういやこの人書いてなかったなと


商人

王都より西に位置する、貿易都市カランカの支部長を務める商人(本店は辺境都市ロイデヤ)。

溌剌とした好青年で、普段は交易船で各地を回る。今回は商人ギルドのトップが代わったこともあり、その集まりの関係で本土に戻っていた。


パーティーニデルダケダトオモッタラ、コッチノシゴトモテツダワサレテマス、ハハハッ


異国の地の興味が強く、今後異国への出店も検討しているやり手。

荒れ狂う海を渡り歩いているので、身体は自然と鍛え込まれている。

今回の盗賊騒ぎについて、かなり被害を受けていることや、生まれ故郷を荒らされることもあり、女騎士の活躍を期待している。


イリヨウナモノハ、ゼヒオコエヲ、セイキヨリヤスクオロサセテイタダキマス

ソコハショウバイニンナノダナ


とまぁ、こんな所。この人も今後出るのかな?

急いで出さなくても大長編にすれば自然に出番がやってくるんだぜ

>>286
長編できるほど、プロット組んでないです ^q^

商人が出る状況って、その船使って遠征するとかじゃないですか

そんで、そこの遊牧民としっちゃかめっちゃかして、とりあえず女騎士が活躍する訳じゃないか。

当然、新キャラ出来るから、掘り下げていかなきゃならないわけで

………、マエムキニケントウイタシマス。

てなわけで、この人も書くでや


女憲兵

女騎士に憧れ、強い女になろうとして、何故か騎士ではなく憲兵になっていた。いわゆるどこか間違ってる人。

箱庭娘として育っているので、どこか世間に疎いところがあり、トラブルメーカーだが、幸運全振りレベルで大抵の事態は乗り切る。


スーパーレディッス

ダマレシンマイ

センパイ、ナンデオコッテルンスカ

まだまだひよっこで、実力はない。ただ憧れの聖騎士様のようになるため、訓練は欠かさない。

基本的に物怖じしない性格なので、牢にいる囚人ともよく話す。それがキッカケで立ち直る者や、うっかり白状する者もいるため、規則違反ではあるが黙認されている。
(もちろん、女憲兵は楽しく話したに過ぎないが)


とまぁ、こんなところ。

女騎士「そんなに早く売りさばけるものですかね?」

商人「……、ここだけの話です。商人ギルドの人間達は、身内が仕掛けた騒ぎと考えてます」

女騎士「ほぉ…」

知ってはいるが、女騎士は驚いた仕草を取る。

商人「誰かは……、ではないか、であれば既に当てはいるのですが、尻尾は掴んでいませんし、状況証拠だけです」

女騎士「なるほど」

商人「その疑惑の商人に、結託した盗賊が売り渡しているなら、可能です。今、不審な香草を出回っていないことを考えると、なおのこと」

女騎士「ふむ…」

女騎士も、以前長から聞いた情報で香草自体に関わる内容がなかったことを思い出す。

商品は盗品の疑いがあるものは、正規の商売人が取引することはない。リスクが高すぎるからだ。

あるとすれば、市場のような自由出品の店だが、この街の市場は当日に簡単な検査が実地される。結局、他の都市で売りさばくしかないが。

商人「香草は基本、このロイデヤを経由して、各都市に持ち運ばれます。わずかな量ならともかく、大量の香草を持ち運べば、賊であると疑われます」

女騎士「各都市に持ち運ばれた話はないので?」

商人「こんな事態です。香草に関する取引は、各商人ギルド間で情報のやりとりはしています…、が、めぼしい情報はありません」

商人の溌剌としている表情も、やはりこの話に関しては暗く沈む。

商人「何にしても、商品が戻ったことを今は喜ぶべきですな。もし入り用なものがございましたら、是非我が店へ。無料に、とは出来ませんが安く卸させていただきます」

と無理やり商売人としての営業的な笑顔に、切り替わった。

女騎士「えぇ、もし何かありましたら、お伺いいたします」

商人「しかし、パーティーでお会いした時と、雰囲気が違い、少しお声をかけるのを躊躇致しましたよ」

女騎士「今の商人さんと同じ、私も場によって猫をかぶるだけです」

商人「これは…、はは、まいったな」

女騎士「思うことはいろいろあるでしょう。私もこの件は尽力を尽くします。民のためにあるのが騎士。ですから、何かあればご相談を、あまり自身でため込まれない方がいい」

商人「…、えぇ、お気遣いありがとうございます。ではこれにて」

商人は、後ろに控えていた部下に指示し、品を持たせて去っていく。

商人「(…、あの方が、聖騎士と呼ばれる理由。理解できたかも知れないな)」

その後ろ姿を、女騎士は見送った後、次なる盗賊狩りのための準備に戻った。

さて小休止。

この盗賊騒ぎは■■■の予定なんだ

女騎士が盗賊狩りを始めて、早一週間が経過していた。

その総勢52人を捕縛し、牢に叩き込んだことにより、ロイデヤ北方方面の治安は、通常に戻り始めている。

民達は流石聖騎士様と讃え、このまま盗賊騒ぎが終わることを望んでいた。

長「あまり喜んでないみたいね、女騎士」

女騎士「今できるのは限定的な盗賊狩りだからな、民の期待には応えられねぇと思うと。少し滅入る」

長「貴女らしいわね」

めぼしいエリアの盗賊を狩ったこともあり、何か別の盗賊情報はないか、女騎士は長の元を訪ねていた。

女騎士「北東方面の盗賊は、あらかた捕まえたんだが、何か情報はねぇか?」

長「いいえ。わかるのは貴女の働きによって、今回の件に関わってる盗賊の一味は大ダメージを負ってる。そろそろ、部下の抑えも聞かなくなる頃でしょうね」

女騎士「ん、つーと、どういうことだよ」

長「今回の盗賊達は捕らえてきた貴女がわかるように、かなりの大所帯。50人以上捕らえられたにも関わらず、まだ動きが散発してあるということは、かなり組織だった連中」

そこまで言って、長は紅茶を一口呑んで間を置く。

長「恐らくは、地域ごとに簡易な支部を設け、本部ですべて管理しているのでしょう。この場合の本部の意味合いは、お分かりですよね?」

女騎士「リアン=ファブか」

長「御名答、彼も貴女が休暇で来ていると思っていたのでしょう。まさかここまでの掃討を始めるとは、思わず対応が遅れてしまった」

女騎士「時間はあったと思うがなぁ」

長「貴女のお兄様が常時の厳戒態勢をひかせています。わずかでも不審な者は中には入れず、随時情報のやり取りができなくなったリアンからすれば、不幸が重なった形でしょう」

女騎士「…なんか楽しそうだな、長」

妙にクスクス笑う長に、女騎士は聞く。

長「敵が思うつぼに入るのは、楽しいものです」

女騎士「ムカついてたのか、今回の件」

長「少なくとも、パーティーにお招きいただけなかったのは、残念でしたかね」

女騎士「…なるほど」

貴族としてのプライド、というやつなんだろうなと、女騎士は心の中で答えを出す。

女騎士「大したものでもなかったぞ。あそこは、俺がすげぇぜって、ガキが騒いでるような場所だった」

思い出し、そして嫌気がさし、女騎士はゲンナリとした。

長「そういえば、貴女は行かれたんでしたね」

女騎士「兄様の命令でだぞ。じゃなきゃ、あんなとこいかねぇよ」

長「貴女らしいというかなんというか」

女騎士「兄様と長の婚姻パーティーなら、是非いくぞ?」

長「気の早い話を…」

あまり言うと、長々とその事を話さなければならないことを思い出し。

長「とにかく、今のところは北東方面における盗賊はいないということです」

女騎士「ん、あ、そうなのか」

女騎士も考えていたことと違う内容で、慌てて返事をした。

よし、寝るでや

おつ
面白いね
人物紹介は読んでないよ

まー本編以外の気に入らない所は飛ばせばいいしね
でもやる気削ぐ可能性のあるような事は言わない方が賢いぞ

>>304
ありがとう

設定はおまけの袋とじみたいなやつだからご自由に


>>305
本編に関係ないから読まなくても問題はないさな~

長「これからは、南方方面を担当している盗賊達が、貴女の陰におびえることになる。何せ、北東方面は全滅したのは貴女のせいとわかっていても、リアンに接触することはできず、商人隊の搬送経路のみならず、対策できる情報は遮断されている」

女騎士「まぁ、夜闇に紛れて品物だけ盗んでたのが、白昼堂々になってるみたいだしな」

長「彼らは今、自身が生んだ疑念から、恐怖を感じているところでしょう。わかりやすく言うなら、貴女の望みの大暴れも、そろそろということです」

見る人が見れば、背筋が凍るような笑みを、長は浮かべた。

女騎士「ふむ。そいやさっき言ってた抑えがきかねぇってのは、今言った恐怖とやらか?」

長「えぇ、縛り首が明白な以上、脱走や反乱は起きかねない。組織とは言え、元はならず者です。一度崩れた均衡を立て直せる人間は、いないでしょう」

女騎士「それが二人の目論見ってやつか」

長「目論見というほどのものではありません。当然の結果、というものです」

いつも通り、自信に満ちた表情で長は言いきった。

長「後は、リアンの動き次第です」

女騎士「動きねぇ…、あぁ、そうだ。ルカソンヌのとこの商人が言ってたが、リアンが盗んだ香草を回収してんだろ?」

長「えぇ、他で香草を取り扱えている店はわずかですからね」

女騎士「普通、盗んだ香草は、いくらリアンでも売れるもんなのか?」

長「帳簿を誤魔化せばいくらでも、と言いたいところですが、全ては無理でしょう。半分以上はどこかに隠しているでしょうね」

女騎士「商売はよくわかんねぇけどさ、それは利益ってやつになるのか?」

そう聞いて長は首を左右に振る。

長「盗賊達は強欲です。二束三文で買い取らせはしないでしょう。それが今の価格高騰に繋がっていると見るのが自然です」

女騎士「意味あんのかね?」

長「…、これが香草の独占を目的にしているなら、効率がいいとは言い難いです」

女騎士「ふぅん」

わかったような、わかっていないような表情をする女騎士を見て、長は。

長「香草の卸し先を独占した方が手っ取り早いでしょう。商人ギルドのトップなら、その程度の無茶はできるし、何より仕入れた香草を全て正規品で販売できる」

と続けた。

女騎士「そんなこと、できんのか?」

長「一介の商人ではないリアンなら、今回の騒動を起こすより、そちらの方が現実的です。ならず者を囲うこともなく、商人ギルドのトップとしての強権も使え、かつ揉めたところで商人ギルド内の話として、行政が絡んでくることもない」

女騎士「長にはわりぃけど、そのなんだ。とりあえず、何したいかわかんねぇってことだな」

長「貴女の理解はそんなもので良いかと」

長は少しだけ苦笑いした。

女騎士「ま、当人に聞きゃ、はえーだろうな」

長「そうですね、そのことは私もそれらしい情報はありません」

女騎士「とりあえず、なんか他に盗賊のアジトでもねぇか。探ってくるわ」

長「あぁ、それならいいものが、少しお待ち下さい」

長が立ち上がり、化粧台の棚を引き出して、一枚の羊毛紙を取り出す。

女騎士「そこ、普通化粧品いれるんじゃねぇか?」

長「ここは貴女のようなお客様を招く部屋、本当の寝室は別ですから」

そう言いながら手渡してきた羊毛紙には、北東方面のもので、いくつかの印が記入されている。

長「すでに襲撃した場所もあるでしょうが、参考にはなるでしょう」

女騎士「助かる。じゃあまたな」

長「はい、ではまた」

長が扉をノックすると、控えていた老執事が入ってくる。

長「女騎士様がお帰りです。丁重にお願いね」

「畏まりました。女騎士様、どうぞこちらへ」

女騎士は相変わらず肩の凝る対応と思いながら、老執事の案内の元、屋敷を出た。

さて、小休止。

個人的香鶏肉の香草焼きからここまで伸びるとは思わんかった

うん、浮気はしないとか言っておきながら、別作品書いていたんだ。

まぁ、息抜きがてらだから、こっちメインで進めますがの。

女騎士「寂れた教会ね。信仰を忘れた奴らが、ここをねぐらにするとは、あまり思わないだろうな」

壊れかけた正門をあけて、女騎士は中に入る。

小さな教会の中は、簡易な寝床や、今まで商人から盗んだであろう品物が、一カ所にまとめて置かれ、帳簿すらある。

長が組織だった連中と言っていたことの証明になるであろう、帳簿を女騎士は手に取る。

中は商人が記すように、卸した品、量や個数、金額が細かく書かれている。

女騎士「(見ても頭がいてぇだけだな)」

帳簿を閉じようとした時、異様な金額が目に入った。

女騎士「(エナセア…、これだけ他の香草に比べても、高値に取り引きされてる)」

この香草は、女騎士も聞いたことのあるものだった。

女騎士が少女と大人の中間にいた頃、この国で質の悪い疾病が流行った。その時に効果があるとされたのが、エナセアだった。

王は、商人にエナセアを仕入れるようおふれを出し、それで豪商になった者もいるほど、高値で取り引きされた。

女騎士「(けど、悪質な商人が出てきて、その処理に兄様が頭を悩ませてたはず)」

今回の件が可愛いほどに、その時はエナセアの価格は、金塊と変わらない扱いになるほど高騰した。

一部の商人が、仕入れの手段を選ばなくなり、かなり大問題になっていた。

疾病が去った以降は、目を見張る速度で医療、魔術、錬金術が発展したこともあり、軽い疾病が流行っても、そんな事態は起こらなくはなってきているが。

女騎士「(また、質の悪い疾病でも、流行ろうとしてんのか?)」

最悪な未来を想像するなら、どこかの魔術師とリアンが手を組み、病気を流行らせ溜め込んだエナセアを売りさばく。

そんな事態であれば、盗品かなんて確認も行われもせず、更に仕入れ額よりも高く卸せる。

女騎士「(今、香草が売りさばけないなら、売りさばける状態を作ればいいからな)」

思いつきではあるものの、こんな事態を引き起こすヤツなら、ないとは言い切れないはず。

女騎士「うし、とりあえずこれも含めて、それっぽい資料目を通すか」

女騎士は適当に近くにあった長椅子に座り、帳簿に目を通すことにした。

夜の空気は、肌になじむ。女騎士は、そんなことを思っていた。

息を殺し、暗闇の隙間から世界を覗いていた日々は、悪夢の日々ではあったものの、気怠い懐かしさを残してくれ、自身を戒める糧になる。

その日々と似たように、暗がりから獲物を待つ。手はず通りなら、もうそろそろ人影が見えてくるはず。

女騎士「(来たな)」

何かに怯えるように走る陰、距離はあるのに、荒い息が聞こえてくるようだ。

女騎士はゆっくり暗がりから出て、気付かれないように背後から着いていく。

陰はロイデヤの南方面から、商業区の裏路地を経由して、西の住宅街に入る。女騎士は、汗一つかかずに、その陰を慣れた様子で見つからずに追跡を続ける。

そして、陰はそのままとある一軒家に入っていくのを見届けた。

女騎士「(ふぅん、なるほどね)」

近くには見覚えのある屋敷が建っているのを見た後、音を立てないように、少し間を置いてから一軒家に入る。

視認できる範囲では、一通りの家具は置いてあるが、生活の匂いはしない。

女騎士「灯火(我抱く、空想を実現せよ)」

短く呪文を唱え、指先から小さな火を灯す。ラタン程度の明るさを確保し、室内を探索する。

台所に入ったところで、カタンと足で何か蹴る。床に灯りを向けると、慌てて入ったのだろうフタがしっかりとはまっておらず、それを蹴ってしまったようだ。

女騎士「(何にせよビンゴだ。ここから向かったのは間違いない)」

フタをどかし、かけてある梯子を足をかけて、そのまま降りていく。

降りきった先には通路があり、それはまっすぐと続いていた。

まっすぐ続く通路の反対側にはドアを開けると、地下室のような場所にたどり着く。右手には点けっぱなしのラタンが置かれた簡素な椅子とテーブル。左手には心地よい匂いが漏れる大きめな箱が幾つか。

女騎士「消去(実現せし空想を無へ)」

指に出した火を消して、正面にある階段から音を立てずに上がっていくと。

「…にが………!」

声がどこからか漏れ聞こえてきた。

少し急いで階段を上りきった場所にも、沢山の木箱が置かれ、むせかえるほどの匂い。あらゆる香草のものが鼻孔を刺激した。

「………た。…の……だ」

「……な!」

徐々に聞きとれるようになった声は、どうやら、上がった階段の斜め向かいにある扉からしているようだ。

女騎士はその扉に近づいて、耳をそばだてる。

「ふざけてはいない。そもそも、連絡がとれない事態には、動くなと言ったはずだが?」

「香草は根こそぎ奪えと命令したのは、てめぇだろうが!」

「所詮はならず者か、仕方ない。少し待て」

「何を待てってんだ」

「君に良い物をやろう」

扉越しな、カツカツと歩く音がした後。

「な、なんの真似」

「六連装クロスだ、見たことはないか?」

「お、俺を殺してなんになる!」

「口封じ、いや、牢から逃げ出した囚人がここに居ては困るのでな。処分だよ」

「や、やめろ」

バンと扉を開け放つと、矢が逃げ出した賊に迫るところで、女騎士は賊の前に立ち、矢を腰の斧を取り出しと同時に払う。

>>326の修正

「所詮はならず者か、仕方ない。少し待て」

「何を待てってんだ」

「君に良い物をやろう」

扉越しに、カツカツと歩く音がした後。

「な、なんの真似」

「六連装クロスだ、見たことはないか?」

「お、俺を殺してなんになる!」

「口封じ、いや、牢から逃げ出した囚人がここに居ては困るのでな。処分だよ」

「や、やめろ」

バンと扉を開け放つと、矢が逃げ出した賊に迫るところで、女騎士は賊の前に立ち、矢を腰に斧を取り出すと同士に払った。

リアン「ふむ、やはりか」

女騎士「驚きはしないんだな」

リアン「ここの憲兵達が優秀なのは知っている。なのに一人だけうまい具合に、囚人が逃げ出してくるなど、都合が良すぎるからな」

女騎士「違いねぇ、流石、今回の件の黒幕っつ~ところか」

「な、な…」

二人の様子と、この状況についていけない賊は一人混乱している。

女騎士「さてと、ちょっと面倒だから、寝てろ」

そう言って、賊の首根っこを掴み、女騎士は思い切り頭突きをかますと、何もいわず賊は倒れた。

リアン「聖騎士らしからぬやり方だな」

女騎士「周りがそう言ってるだけだからな、そんでどうする。明らかに通常の取引の範囲を超えた香草が、あんたを犯人の証拠の一つに出来るし、抵抗しとくか?」

リアン「そうしよう」

連続して矢が放たれ、それをスレスレで避けながら、女騎士は突撃していく。

リアン「素晴らしい。ならばこれはどうだ」

懐から取り出した宝石を指の間に挟み。

リアン「光球(破壊する光の球、放たれよ)」

その宝石から色とりどりの光の球が射出され、女騎士に迫る。

豪雨のようなそれは、女騎士の身体に降り注ぎ、動きが止まった。

リアン「…、聖騎士も意外と他愛ないな」

そういって輝きを失った宝石を、無造作に投げ捨てる。

女騎士「あっれ~? 昔はもう少し痛かったんだがなぁ」

リアン「な?」

すっとぼけたような声が聞こえ、驚愕の声をリアンはあげる。

女騎士「あぁ、あたしに魔術、魔法の類は無意味だぜ? 姉様いわく、無意識に否定してるから、効かないんだ」

その代わり、魔術は使えないんだよなぁと、続けてボヤいた。

リアン「…、作用の問題か」

女騎士「どんな絵空事さえも、実現できると信じることで、使える奇跡だからな。私にできるのは、小さい火を出すことだけ、普通は簡単な魔術なら皆大体覚えられるのに、あたしは無理だった」

リアン「その代わりに、魔術、魔法の影響は受けない」

女騎士「そういうこと、私を倒したいなら物理的にやるか、伝説にある魔術当たりをぶつけるしかない」

そして、女騎士は斧をリアンに向けながら。

女騎士「それじゃあ大団円に洒落込もうぜ?」

と、ニヤリと笑う。

リアン「まだそれには早い」

懐から小さな笛と宝石をを取り出し、小さなを吹くと、甲高い音が屋敷中に広がった。

リアン「では女騎士様。二階の書斎でお会いしましょう。転移(我が肉体は想像の場所に移動する)」

女騎士「ち、めんどくせぇヤツ」

バンと扉を開けると、そこはパーティーの際に通った廊下に出た。

女騎士「(あん時の匂いはこれが理由か)」

窓の外を見ると、恐らく先ほどの魔術の騒音が聞こえたのだろう、待機していた憲兵隊が屋敷に入ってくるところだった。

ロイデヤ編も佳境だけど、眠気に勝てそうにないから、続きはまた後で。

お休み

おやすみ

おは。続き支援

>>335
おはよう

>>336
おはよう。支援ありがとう

女騎士はなだれ込んできた憲兵隊に手で合図する。

先輩憲兵「憲兵隊、到着致しました!」

女騎士「ご苦労、件(くだん)の香草はこの中だ。リアンは転移魔術で逃走した」

先輩憲兵「どこへ行ったか検討は?」

女騎士「私に二階の書斎に来いと、挑発してきた」

クンと、女騎士の鼻孔が何かを捉える。

女騎士「ち、厄介なヤツを飼ってたみたいだな」

女憲兵「な、なにをですか聖騎士様?」

女騎士「全員構えろ。死にたくなければな」

甲高い声と共に、廊下奥の右手から、人型、かつ羽の生えた魔物が姿を現した。

先輩憲兵「ち、マジで厄介なヤツを、しかもこんな街中で出しやがりやがって!」

女憲兵「あ、あれはなんですか!?」

先輩憲兵「悪魔系統の魔物、名はガーイル。普段は石像に擬態し、隙をついて襲いかかる」

女騎士「そして、その堅さは城壁並とも言われている。先輩憲兵、口振りから戦ったことはあるようだが…」

先輩憲兵「えぇ、二度だけですが」

女騎士「なら、合わせろ。皆の者、狩り方を教える。命惜しければよく見ておけ!」

二人は、迫り来る魔物に対し、それぞれの得物、斧と剣を構える。

アツいねぇ

女騎士「私が足を止める。一撃はお前に任せる」

それだけ言って、先んじて女騎士が前に出る。

魔物もそれに反応し、2m以上ある巨体とは思えない鋭さで、拳を振り下ろす。それを斧の柄で受け流した後、突進の勢いのままに、右膝に斧を叩きつけた。

通常の武器では傷がつかないと言われるその魔物の膝に、斧は深々と突き刺さる。

「ガアアアアァァァァ!

女騎士「止めたぞ、殺(や)れ!」

先輩憲兵「は!」

後ろで待機していた先輩憲兵はかけ走り、女騎士が両手で構えたそこを足場に一気に飛び跳ね。

叫び声をあげる魔物の口に剣を滑り込ませた。

剣はそのまま魔物の後頭部を貫通すると、魔物は後ろに倒れかかり、先輩憲兵は倒れる瞬間に剣を引き抜きながら飛び降りた。

先輩憲兵「ふぅ。流石ですね」

女騎士「ありがとう。だが油断するな、この調子だと後2~3体は居るだろう。皆の者に説明するが基本的に、足を止め、口や目などの柔らかい部分を狙うのが鉄則だ。電撃の魔術か魔法が得意な者が先手を行え、通常武器は歯が立たん。この足の止め方は私だからできる方法だからな」

斧を引き抜いて、女騎士は戦闘態勢を整える。

たまに本当に通常の武器では傷がつかない設定のやつあるじゃん
あれ凄いアタマに来るんだよねプンプン
そいつが絶対にどかせない数十トンの普通の岩塊で押し潰したくなる

女憲兵「じ、自分が魔術得意です!」

女騎士「そうか。ならば見たとおりに動きは鈍重ではない。機敏な方だ。羽を使い空も飛ぶことができ、室内では縦横無尽に動く。魔術で狙う時は当てるのではなく、次の動きを予想して放て」

先輩憲兵「こ…、女憲兵は初陣です。後方に」

女騎士「貴殿が育てた新兵なのだろう」

女騎士は暖かい微笑みを浮かべながら。

女騎士「育てた部下を信じろ。そうしなければ、部下は成長しない」

また、獣の彷徨が屋敷に響く。今度は両端の廊下から同種の魔物が顔を出す。

>>344の修正

×また、獣の彷徨が屋敷に響く。今度は両端の廊下から同種の魔物が顔を出す。

○また、獣の咆哮が屋敷に響く。今度は両端の廊下から同種の魔物が顔を出す。

>>340
更に熱くはなるよ

>>343
どっかの神話の神様は、なにしても傷付かないヤツがいたねぇ。

ヤドリギ突き刺さってお亡くなりになったけど。

あと、言ってる方法を試すなら、表面は傷付かないだけで、内部はダメージいくんでないかね。だから、中身『だけ』は潰れるかと。


さて、かなり遅いけど夕食作ってくる

女騎士「こちらは私一人でやる。反対側は任せた」

女憲兵「ひ、一人で大丈夫なのですか!?」

女騎士「あの程度の魔物を一人で倒せるから、聖騎士と呼ばれている。心配するな」

先輩憲兵「(ガーイルを、この程度扱いか。まさしく先にいる人だな…)」

女騎士「さぁ、相手は戦闘態勢に入ったぞ。皆の者、かかれ!」

女騎士と憲兵隊を挟み込む形で、魔物二体が迫ってくる。

先輩憲兵「女憲兵! 言われたとおりだ、よく見て狙え!」

女憲兵「は、はいっす! 雷撃(稲光よ、敵を貫きなさい)」

女憲兵の身体から放たれた雷は、魔物が飛び跳ね後ろの壁に直撃した。

女憲兵「あ!」

先輩憲兵「バカやろう! 後方支援しろ!」

避けられることを想定していなかった女憲兵は、そのまま滑空して蹴りを放ってきた魔物に反応できず、先輩憲兵が抱き付いて攻撃を横に逃れた。

憲兵隊も魔術が使える者が各々得意とする魔術を放ち、魔物を牽制する。

女憲兵「すいませんっす…」

先輩憲兵「都合のいい予想はするな、常に最悪を想定して、身体を動かせ」

さぁ、もう一度だと、そのまま先輩憲兵は女憲兵を抱き起こす。

先輩憲兵「生憎私も魔術は不得手だ。この中で、魔術の威力が格段に高い、貴様に頼るしかない」

女憲兵「今度はちゃんとやってみせるっす。私はスーパーレディっすから!」

先輩憲兵「こんな時にすら…、まったく、合わせるぞ、やれ!」

女憲兵「雷撃(稲光よ、今度こそ敵を貫け)」

憲兵隊の牽制で、注意が散漫になっている魔物は、雷撃を浴び、跪く。

先輩憲兵「ハアアアアア!」

そのついた足を使って飛び上がり、先輩憲兵は先ほどと同様に、剣を目に滑らせた。

「グガアアアア!!」

先輩憲兵「ガハッ!」

剣が奥に進もうとしていた時、痺れから回復した魔物が思い切り腕を払い、先輩憲兵を吹き飛ばした。

「隊長!」

女憲兵「先輩憲兵!」

先輩憲兵の身体は、壁に埋め込まれるように叩きつけられた。

先輩憲兵「なに、をして…いる。敵は目の前だ、ぞ。街の敵を、排除するのが…我ら、の役割。はや、く攻撃しろ!」

女憲兵「…、雷撃(稲光よ、地面より空へ、魔物へと降り注げ)」

床から複数の雷が現れ、屋根へと向かう。魔物も、女憲兵から放たれるものと思っていたため、もろに雷を喰らう。

女憲兵「…、先輩憲兵が言ってたこと、今更ちゃんとわかったっす。私も、皆を護れるようになるために」

新兵として、武器を持つことができない女憲兵は、警備用の身長大の棒を構え。

女憲兵「私は、次に女で聖騎士になる人間っす! お前ごとき魔物に遅れはとらないっす!」

そういって、単騎魔物へ突撃した。

「てめぇら! 女憲兵を援護するぞ、続けぇ!」

憲兵隊も女騎士の気迫に押されるように、魔物への突撃を始めた。

「グオオオオオォォ!」

魔物もその呼応に反応するように、鋭い拳を女憲兵に振り下ろす。

女憲兵「あうっ!」
避けたものの、足下がふらつき地面へと倒れ込んだ。

女憲兵「まだっすよ!」

それでも倒れた勢いを利用して素早く立ち上がり、魔物の足に触れ。

女憲兵「雷撃(稲光よ、手のひらに集まり、ふれる者を破壊しなさい!)」

>>341の訂正
×2m以上

○4m以上

「ガギャアアアアア」

バリバリという音が発せられ、魔物は激しく体を痙攣させる。

「ガアアアア!」

女憲兵「くっ!」

苦し紛れの拳が女憲兵に迫る。

「初陣にしては、上出来な動きだ」

そう言った誰かはその拳を切り流し。魔物身体をよじ登ると。

「貴様で終わりだ!」

女憲兵「聖、騎士様…」

美しい斧はそのまま魔物の顔面をなぞり、女騎士が地面に着地したと同時に、魔物は後ろにゆっくり倒れていった。

女騎士「あいつの代わりに代弁しよう。良くやったな」

女憲兵「…、ひっぐ、うぇぇぇぇ!」

心の膠着が溶けた女憲兵は、座り込んで泣き始めた。

女騎士「どうした?」

女憲兵「先輩憲兵が、先輩憲兵が~」エッグエッグ

先輩憲兵「まさか、死んだとかは、いわねぇだろうな」

なんとか壁から抜け出し、弱々しい足取りだが、こちらに向かってくる先輩憲兵の姿があった。

女憲兵「あ、う。先輩憲兵~!」

先輩憲兵「いたたた、抱きつくな。怪我人には変わりないんだ」

女憲兵「う、すいませんっす」グスッ

「隊長、ご無事で」

先輩憲兵「皆、心配かけた。すまない」

女騎士「ガーイルは恐らくこれで全部だろう。屋敷にでる前で良かった」

先輩憲兵「そうですね…、お怪我は?」

女騎士「ない、ガーイル二体を相手にしただけだしな」

先輩憲兵「(まったく、その一体に我々はてこずったというのに。末恐ろしい話だ)」

先輩憲兵もかなりの実力者ではあるが、目の前の人間が更に先の域にいて、苦笑いするしかなかった。

女騎士「お前達は屋敷内外の偵察を頼む、これ以上はいないだろうが、まだ魔物潜む可能性はある。警戒は怠るな」

女憲兵「聖騎士様は?」

女騎士「そろそろ招待されたパーティー会場にいかねばならん。挨拶に伺わなければな」

先輩憲兵「お気をつけて」

女騎士「あぁ、後は任せた」

背を向けながら憲兵隊に手を振り、女騎士は書斎へと向かった。

上質の扉を開けると、その中にリアンが大きな窓から街の景色を見つつ、香りよい何かを飲んでいた。

女騎士「随分と余裕だな」

リアン「そう見えるか?」

持っていたカップを、リアンは近くのデスクに置いてあったカップ皿の上に置く。

女騎士「少なくとも、そんな風にのん気にハーブティーを飲むのは、安全地帯で貴族ぶってる無能な指揮官ぐらいだ」

リアン「ふん、そうかもしれないな」

女騎士「何か語ることでもあるか?」

リアン「その様子だと、調べはついたのだろう?」

女騎士「おおよそのことはな」

リアンは静かに目を閉じ、何かを思い出しているかのようだった。

リアン「長かった、中途半端に終わることが、心残りではある」

女騎士「あのガーイル達は、ロイデヤそのものを潰すために用意したものか」

リアン「あぁ、最終的にはそれが目的だったからな」

女騎士「一都市潰すか、商人が抱く野望ではまずないな」

リアン「私は商人ではないからな。今回の目的のため商人になっただけのこと」

女騎士「しかし、商人ギルドを掌握し、目的の店舗も買い取り、そして破綻させたなら、それで終わりではないか?」

リアン「足りんな、故郷も奪いさってこそ、今回の目的は達し得る」

女騎士はやれやれと首を振る。

女騎士「なかなかの強情だ。それで万を越す命を奪うつもりだったのか?」

リアン「なんの問題がある? 街の人間は無関係だと?」

女騎士「もういい、お前を捕らえて、後は司法が裁くだけだ」

リアン「それは、無理だろうな」

強く、リアンがせき込むと大量の血を吐き出した。

女騎士「…、そんな気はしていた」

リアン「どの道、死ぬつも、りでやってきたこと。なら、死ぬ時、も自分の手……、で」

ドサリと、デスクに覆い被さるようにリアンは倒れた。

女騎士は、斧を腰に差し込んで、静かにリアンの冥福を祈る。

後に残ったのは、ハーブティーの香りだけだった。

女騎士「身体に問題はないか、先輩憲兵」

先輩憲兵「えぇ、メイドさんの治癒魔法もあってすぐに」

女騎士「それはよかった」

リアンが自殺して数日、残った盗賊も捕らえて、晴れて女騎士の任務は終わりを迎えていた。

女憲兵「聖騎士様は、この街をもう出られるのですか?」

女騎士「あぁ、任務も片付いた訳だから、ここにいる理由がないからな」

女憲兵「そうですか。今度はちゃんとお役にたってみせます!」

女騎士「あぁ、楽しみにしている。では」

去っていく女騎士を二人は見守っていると。

女騎士「女憲兵、聖騎士になるのだったな?」

女憲兵「はい、聖騎士様の次に聖騎士になる人間です」

女騎士「それはいい。なら、一つだけアドバイスしてやろう。聖騎士は、聖騎士になろうとしてなるのではない。いつの間にか、なっているものだ」

女憲兵「? どういうこと、ですか」

女騎士「わかる頃には、お前も聖騎士だ。先輩憲兵、しっかり指導してやれ。頼むぞ」

先輩憲兵「は!」

ヒラリと軽く手を振った後、女騎士は今度は振り返ることなく、去っていった。

商人「そうですか、寂しくなりますね」

女騎士「商人はしばらくこの街に残るのですか」

商人「何せ商人ギルドのトップが死んでしまいましたからね。また、トップを決めるために調整しなければなりませんし、壊された商業機能の復興もいたしませんとね」

しかし、商人の浮かべる表情は、面倒さより晴れ晴れとした笑顔だった。

女騎士「忙しくなるでしょうが、頑張ってください」

商人「なぁに、この街は強い。すぐに復興して、楽ができますよ」

女騎士「そうでしょう。それにあなたもここではなく、他に任されている支部の仕事もされたいでしょうし」

商人「はは、その通りです。なんと言っても海運業もありますから、あまり離れても居られなくてね」

女騎士「では、あまり私に時間を割かさせる訳には行きませんね。ではまたいつか」

商人「えぇ、またいつか。入り用な物がございましたら、是非ルカソンヌをご利用くださいませ」

やれやれ、最後まで商売人かと苦笑しながら、女騎士は商人と別れた。

ぬぅ、眠い。ロイデヤのエピローグは、起きたら書く

ヨイヨヨイヨー

>>366
ツヅキカクヨー

女騎士「いるか、藪医者」

医者「なんだ腐れ騎士。毎度毎度裏口から入りおって」

女騎士「貰った栄養剤だが、返しに来たぞ」

医者「ふむ、使わなかったのかね」

女騎士「無用な休みをもらったものでな」

懐から医者からもらった栄養剤を取り出して、女騎士はデスクの上に置いた。

医者「無用か、何度も言うが、あんたには必要なものだ」

女騎士「なら、休暇をもらい休んだ以上、今は不要だな?」
医者「まったく強情な奴じゃな」

女騎士「知っての通り、あたしは頑丈にできてる。心配自体が無用だ」

医者「そうやって無茶をし、何人もの馬鹿者を診てきた。別格なのは認める、だが過信しすぎないことだ」

女騎士「…、すまないな」

医者「…、ふん。へんなとこで素直になりおって。頼むから、あんたも儂の患者にはならんでくれよ」

やれやれと呆れたようにしながら、医者は返された栄養剤を試験瓶をいれる容器に移した。

医者「もう発つのか?」

女騎士「あぁ」

医者「なら、何かわかったら早馬を渡す。ほれ、帰った帰った」

女騎士「ではな」

軽く例をして、女騎士は裏口から去った。

女騎士「邪魔するぞ」

いつもの薄暗い室内に入ると、何か話し声が聞こえてきた。

女騎士「(占い中か?)」

不躾だなと思いながら、中に入っていくと占い用の小部屋は空いていて、中には誰もいない。

客人を招いているとは珍しいなと女騎士は思いながら、プライベートエリアに顔を出すと。

女騎士「…ふ~ん」

メイド「あ、女騎士様」

占い師「ははは、どうも」

紅茶を呑みながら、談笑している二人がいた。

メイド「女騎士様」

女騎士「どうした?」

メイド「婚姻の話をしたら怒りますからね」

女騎士「」

メイド「そんな何故わかったという顔をしなくても」

女騎士「式の話を――」

メイド「してません。友人としてお話していただけです」

女騎士「いずれするんだろう?」

メイド「はぁ、ややこしくなりそうだから帰りますね。いずれまた」

占い師「はい、楽しみにしております」

立ち上がったメイドは、女騎士の襟首を掴み、強引に玄関まで引っ張っていく。

女騎士「あたしも占い師にさよならをだな? メイド、怒ってるのか? あ、占い師、また今度会おう!」

占い師「はい、またお会いしましょう」

バタンと玄関が閉められた後、ギャーギャーと言い合う声がして、遠ざかっていった。

さて夕飯準備じゃ

過労で腰や関節痛めたけどその度に一週間位軟骨大量に食ったら治ったぜ
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兄「女騎士、ご苦労だったな」

女騎士「いえ、お役に立てて光栄です」

兄「屋敷からは大量の香草と、盗賊のやりとりの帳簿が見つかった。首謀者死亡で今回は終わりになるが、これでロイデヤも平穏に戻る」

女騎士「そうですか」

兄「…、どうした。怒ってるのか?」

女騎士「気になさらないでください」

兄「そ、そうか」

何故、女騎士が怒っているのかわからず、兄はどきまぎする。

メイド「それで、結局リアンの目的はなんだったのですか?」

兄「あぁ、商人ギルド前トップへの復讐だな」

メイドは少し、怪訝な顔をしながら。

メイド「復讐ですか」

兄「そうだ。リアンの経歴を追うと、ヤツは香草を扱う農家の人間だった」

メイド「今回の件と関わりがあるのですね」

兄「あぁ、もしかするとメイドは知らんかもしれんが、かなり前に我が国ではとある疾病が流行った」

>>373
メイド「というチラシが入ってました」

女騎士「入ってたと言われてもな」

メイド「軟骨料理でも作ります?」

女騎士「好きにしてくれ」

メイド「そんなことがあったのですか」

兄「多くの民が倒れ、その深刻さは甚大だった。その時の疾病に効果があったものが、香草のエナセアだった」

メイド「エナセア、最近でも病に効くと言われていますね」

兄「そうだ。効果があるとわかり、王は商人達にエナセアを集めるようおふれを出した。緊急事態ということもあり、国庫の資金にも糸目はつけなかった」

おかげで、復旧資金の資金繰りに苦労させられたよと、兄は静かに愚痴る。

兄「結果、我が国でのエナセアの価値は高騰、エナセアの根一つで金塊なんていう馬鹿げた事態を招いた」

メイド「本当に馬鹿げてますね」

兄「当時、敵対する国からの侵略も考慮せねばならない状況もあった。焦った王が暴挙にはしってしまったのさ。私も当時は口を出せる立場ではなかった。だからこそ口惜しい」

苦々しい思い出なのだろう。兄は顔には出さないものの、当時のいらだちが口に出ていた。

兄「だが、その悲惨な状況をよそに、商人の一部はそれで富を築き豪商になった。その中に商人ギルド前トップが含まれる」

メイド「そのリアンからも、エナセアを二束三文で買い占めたのですか?」

兄「いや、燃やし尽くした」

メイド「え?」

想定していない答えに、メイドは戸惑う。

兄「取引に来た前トップから、エナセアが効果があることを知ったリアンは、それを断った」

メイド「どうしてまた?」

兄「リアンの住む村もまた、疾病が蔓延していたのさ。だからリアンは、自分の育てたエナセアで村人を救おうとした」

メイド「優しい人だったんですね」

兄「…、だからこその今回の凶行なんだろうが。今は置いておこう。前トップは成金特有の万能感に浸っていた時期だ、プライドをいたく傷つけられたのと、価値を知ったリアンがそれで成り上がろうとしていると思ったんだろう」

メイド「それで火を」

兄「リアンの手記にはそうあるだけで、証拠はない。しかし、状況からして前トップがしでかしたと見るのが普通だろうな」

メイド「それで村は?」

メイドが答えはあるが、あえて聞いているように見え、兄は。

兄「全滅した、生き延びたのはリアンだけだ」

とそのまま答えた。

メイド「そうですか…」

兄「皮肉にも、リアンはエナセアをハーブティーとして常飲していたそうだ。だから彼だけ疾病の時も平気だったんだろう」

メイド「皮肉ですね、自分は生き延びてしまうなんて」

兄「辺境の地、そしてエナセアを育てていたこともあり、支援が遅れてその村はなくなった」

女騎士「そうか」

今まで話に入ってこなかった女騎士が、口を開く。

兄「どうした?」

女騎士「ヤツは、故郷を奪いさってこそ、目的を達すると言っていました」

兄「…、なるほどな。ロイデヤそのものも潰す気だったのか」

メイド「それこそ本気で馬鹿げてます」
兄「どうだろうな。確認されたガーイルの他に、巨兵ゴレンも用意するつもりだったようだ」

メイド「巨兵ゴレン、ですか?」

何かわからない、というようにメイドは聞く。

兄「魔術と錬金術の複合技術で作られる魔動兵器さ。魔術回路を書き込め、かつ強固な鉱石を錬金術で精製。それを魔術で加工して動かす、自立式の巨大な兵。魔術論理と錬金術理論を100%実現できるなら、その一体で国を守護できるとさえ言われている」

メイド「現実的な計画なのですか?」

兄「実用されているものでも、一体あれば簡単な街は破壊できる。用意に時間はかかるだろうが…、できるだろうな、リアンという人物なら」

女騎士も、その言葉には同意する。

メイド「…、規模が違いすぎます」

兄「それだけ、憎んでいたのだろうさ」

メイド「そういえば、その前トップはどうしているのですか?」

兄「変死していた」

メイド「それはなんでまた?」

兄は懐から、一枚の羊毛紙を取り出す。

兄「リアンが徹底して盗賊に襲わせていたのは、前トップの経営する店。この羊毛紙に書いているが、その店の一覧だ。全てリアンは破綻後に権利を買い占めている」

メイド「都落ち、というやつですね」

兄「そうだな。前トップが見つかった時、浮浪者同然の姿で、横には大量の安酒の瓶が転がっていた。それが原因で死んだのだろう」

メイド「寂しい最期ですね」

兄「あぁ、引き取り手も現れず、静かに葬られたよ」

まぁ、それが本当の悪人らしい最期かもしれないのだがなと、兄は呟いた。

メイド「前トップはリアンのことに気づいてはいたのですか?」

兄「具体的に知っていたという証拠はないが、住処にしていたテントの中に、あの時のヤツがというような内容のメモはあった。リアンはわからせるために、わざわざ香草を狙っていたようだし、気付いてはいただろう」

兄「香草を奪い、郷土料理を消し去ることも、前トップから故郷を奪う一つだったみたいだな」

メイド「徹底してますね…」

兄「……、優しさの暴走はいつもこんなものだ。その人間が優秀であればあるほどな。どちらにしても、今回の件は終わりだ」

出されていた紅茶を、兄は一口を呑む。

女騎士「兄様、任務が終わりましたので、一つお願いがございます」

兄「うん? どうした」

女騎士「ひと月ほど、休暇をいただきたく存じます」

女騎士は休みを貰いたいと言う割に、目は真剣そのものだった。

兄「…、ならん」

女騎士「どうしてです? いつも休めと仰るのは兄様ではないですか」

兄「本当に身体を休める休暇、ならな」

女騎士「今回の任務で充分身体は休まりました。そもそも、私はこの任務、最初からロイデヤに居る必要はありませんでしたよね?」

普段、家族を怒ることはない女騎士が珍しく兄に噛みつく。

兄「任務上必要だった」

女騎士「嘘です! 明らかに北東方面の討伐が必要な時に呼び出せばいいだけです。リアンを油断させる必要は、明らかになかった。あいつは、そもそも油断するような人間ではないのですから」

兄「女騎士…」

女騎士「私を休ませるために、わざわざ最初からロイデヤに来させ、待機命令を出したのでしょう? 申し訳ありませんが、要らぬ気遣いです」

メイド「女騎士様」

女騎士「なん、うっ」

激昂する女騎士を、メイドは頬をはたいた。

女騎士「…、何をするんだメイド」

メイド「少し頭を冷やしてください。あなたの兄(おにいさま)も、あなたを思ってしたことです。その怒りは、甘えでしかありません」

女騎士「…、すまない。兄様も申し訳ありません」

兄「いや、私の勝手だ。謝る必要はない」

女騎士「兄様のご好意で身体を休めることができました。ですので、休暇をいただきたい」

兄「本当にお前は頑固者だな」

女騎士「許可いただくまでは、私は動きません」

兄「…、ひと月は認められん。半月までだ、いいな」

女騎士「ありがとうございます!」

そう言って満面の笑みで、女騎士は兄に抱きつく。

兄「うわぁ、いきなり抱きつくな!」

女騎士「兄様、大好きです~♪」

兄「わかったわかった。たくもう、とりあえず離れなさい」

女騎士「はい」

抱きつきによって乱れた衣装を兄は整えた後。

兄「それでどこに行く気なんだ? もしものために、行き先はちゃんと言ってもらうぞ」

女騎士「…北方の地のコルサカです」

兄「……、そうか、あそこは今時期でも冷える。暖かい格好をしていくように」

その場所が、何であるか、兄は充分知っている。

そこは、今も眠る弟が討伐に向かい、そして倒れた土地なのだから。

女騎士「えぇ、ちゃんと支度した後、向かいます」

いつもの笑顔が、兄には悲壮な決意の表情にしか、見えなかった。

はい、これにてロイデヤ編終了。

次回はコルサカに続くと、いいね



ネタオモイツイテナイヨ…ドウスッペ

>女騎士「兄様、大好きです~♪」
萌えた
おれも女騎士に抱きつかれたい

僕は女憲兵ちゃん!

>>392
バックブリーカー! 死ねぇぇぇなことになるかと

>>393
多分、かけ走ってきて転けた時に。はなっぷしを思いっきりヘッドバッドかな


しかし、コルサカ編どうしようなぁ

満月が村を淡くおぼろげに照らし出す。

「やめろ…、来るな」

人々は、当たり前のように次の朝日を見るまで、けだるい夢に支配される。

「…………」

早く夢から覚めるにはどうすればいいのだろう。己の意志か、それとも最初から寝なければいいのか。

「がああああ! いたい、いだいいぃぃぃ!!」

目が覚めた頃に、全てが終わるなら、そもそも目が覚めない方が幸せなのか。

「…………」

その答えは、遠吠えだけが知っている。

女騎士「(数年ぶり、ぐらいか)」

そう思いながら、女騎士は周囲を見渡す。何らかの目的の為に置かれていた魔術陣の石などは、風化したように原形は留めてはいなかった。

女騎士「(……、弟じゃなく、あたしが来ていれば)」

自責の念にとらわれ、静かに歯を食いしばる。

女騎士「(今はそんなことを考えてる場合じゃないな。とにかく、この付近で役立ちそうな情報を集めるとするか)」

女騎士は次の行き先を決めるため、地図を取り出すことにした。

北方の地、コルサカ地方は雪山に近く、短い夏場にしか地面を現すことはない。近隣の村々は主に狩猟をして生活の糧としている。

また、雪山近くの山岳地帯には大きな銀山が多数存在し、その開発も盛んに行われている。

銀は強力な魔術の媒体に適した素材であり、辺境の地にも関わらず魔術ギルドの支部も存在しており、女騎士もその支部に訪れていた。

女騎士「ふぅ」

召還魔術に関する資料を読みあさり、女騎士は少し休憩をとっていた。

「根(こん)を詰められてはいけませんな」

女騎士「あぁ、賢者。無理を言って済まなかった」

賢者。聖騎士が騎士の最上位とするなら、あらゆる魔術師、魔法使いの高位に立つ存在、それが賢者に当たる。

賢者「いえいえ、女騎士様がされていることは、魔術ギルドにとっても重要なこと。協力は惜しみません。しかし」

女騎士「少し休みなさいか。そう言われるのも、少し疲れるな」

ため息を漏らしながら、女騎士は座る椅子の背もたれに身体を預け、天井を仰ぐ。

賢者「皆、貴方のことを心配されているのですよ。もちろん私もです」

女騎士「少し一人にしてくれないか? すまないが、今誰かといることに気が滅入る」

賢者「…畏まりました。夕餉の準備が出来ましたら、お呼びいたしますよ」

女騎士「すまないな、頼む」

気遣いに苛立ちを覚えるようになったのは、何時からだろうと女騎士は思う。

自分のしていることを無碍(むげ)にされているような、愚かと言われているような、自己嫌悪に近いそんな苛立ち。

渦巻く黒い感情が、透明な液体に落ちて、マーブル状になっていく感覚に、女騎士は心底疲れている。

女騎士「うめぇうめぇwww」

あの後、夕食の準備ができたと呼び出され、女騎士は賢者と食事をとっていた。

賢者「……」

女騎士「…、どうした賢者。あたしの顔に何かついてるのか?」

賢者「いえ、そういうわけではありません」

女騎士「なら、いいんだけどさ」

賢者には楽しんで食べている女騎士の様子が、先ほどのこともあり、誰にも心配させないための演技にしか見えなかった。

女騎士「ふ~、食べた食べたwww」

賢者「今日はギルド内に泊まられますか?」

女騎士「あ~、宿も決まってないし、頼めるか?」

賢者「畏まりました。空き部屋がいくつもありますので、適当にお使いください」

女騎士「助かるよ」

食後の茶を、二人はゆっくりと嗜む。パチパチとなる暖炉の焚き火の音が、緩やかな時間を感じさせる。

女騎士「しかし、空き部屋ね。前はギッシリとギルド員がいなかったか?」

その言葉に賢者はピクリと反応した。

今日は軽くここまで。おやすみ

賢者「まぁ、例の一件以来、このギルドの風当たりが悪くなりましたから。致し方ないのですよ」

女騎士「…、しばらくここに滞在するんだ。言わなければ、多分他で聞くか気づくと思うぞ」

賢者「…………、ワールフという魔族はご存知でしょうか」

女騎士「聞いた程度だな。戦ったことはない」

ワールフ、灰色の短毛に覆われた魔族。人型で言葉や文字を理解できる知能を持ち、独自の集落を作って生活していると言われる。人間が領地とする地域にはほとんどいないため、細かな生態は判明していない。

賢者「話によると、一部のワールフは人間と姿形は同じそうです」

女騎士「…、わりぃが回りくどいのは苦手なんだ。単刀直入に頼む」

賢者「畏まりました。その人間のフリをしたワールフが、近隣の村に入り込み、人々襲っているというのです」

女騎士「実際に死者は出てるのか?」

一番気になるところを女騎士は聞く、迷信や噂の類なのかはっきりさせたかったからだ。

賢者「目立つのは若い女性や子供ですが、男性でも犠牲も少ないわけではありません」

女騎士「王都へ早馬は出してないのか?」

賢者「二度ほど兵を出していただけましたが、その時に限って手は出さず。死者の数から悪戯ではないと判断され、小隊程度は駐屯いただいている状態です」

女騎士「だが被害は出続けている、と」

賢者「女騎士様が来られる前々日前にも、男性が一人殺されました。今や村の人々は、隣人すら疑うほどの疑心暗鬼に囚われています」

本当に悲しいことですと、賢者は呟く。

女騎士「それで、ここの連中がいないのも関わってるのか」

賢者「えぇ、我々も魔術で対抗できますから、自警団として護衛させていただいてます」

女騎士「普通、魔術ギルドの人間と小規模とはいえ兵がついてりゃ見つかりそうなもんだがな」

賢者「我々の隙をつくように、事を起こし、そして姿を消す。かと思いきや堂々と姿を現し、逃げられたかと思うと、他の場所でも現れ凶行を行う」

魔術ギルドとして不甲斐ない。賢者はそう思っている。

女騎士「そうか、めぼしい人物は見つかってないのか?」

賢者「仲間の一人が犯人ではないかと言っている人物はいます」

女騎士「そいつは?」

賢者「獣使い、とあだ名で呼ばれている人です。村には住んでおらず、森の中にあると思われるねぐらを転々としているようです。いつの頃からかいるかはわかりませんが、少なくとも事件発生よりもだいぶ前からは確認されていて、はっきりしてるのは獣の言葉を理解し、彼らを従わせて猟をして生活しているようです」

女騎士は首を傾げながら。

女騎士「確か、ワールフが村の中に紛れて襲っているといったな。そいつは村には住んでないんだろ?」

賢者「仰るとおりです。ただ、全ての事件に共通していることがあります」

女騎士「なんだ?」

賢者「獣の遠吠えです。事件が起きた村で必ず聞こえてくるのだそうです」

女騎士「…、犯人として仮定するなら、孤独に生きている割にはずいぶんと目立ちたがり屋になるな」

賢者も静かに頷き。

賢者「私もそう思います。何か知っていることは確かでしょうけどね」

女騎士「そうか。ちなみにここに来てる兵は、どこを駐屯地にしてるんだ?」

賢者「コロニアという、この地域では大きい村に滞在しています」

女騎士「なるほど。明日あたり行ってみるか」

茶を飲み干し、空いたカップをそのままテーブルに置いて、女騎士は立ち上がり。

女騎士「少し疲れた、今日はもう休む。おやすみ」

賢者「はい、おやすみなさい」

賢者は食堂から出て行く女騎士を見守った後。

賢者「…、負担をかけさせたくはなかったのですが…、申し訳ありません」

と小さく謝った。

さて、今日はこんなとこかな

女騎士は翌日、賢者に聞いたコロニアという村に足を運んでいた。村に入るとあまり人影はなく、どこかどんよりとした空気さえ漂っている。

女騎士「こりゃあ、相当だな」

自分を見る村人も目は疑念で満ち溢れていて、下手をすればかみつかれそうな雰囲気さえある。人づてで駐屯地を探そうと思っていたが、仕方なくそれらしい場所を歩いて回ることにした。

「そこの者、止まれ!」

背後からやや殺意をまとった言葉をかけられ、ゆっくりと女騎士が振り返ると。

「あ…、これは聖騎士様。申し訳ございません!」

女騎士「良い、事情は魔術ギルドの者から聞いた。ご苦労」

数名の兵が女騎士に気づき、深々と頭を下げ、それを労う。

女騎士「お前たちと話がしたかった、駐屯地にしている場所に案内してくれるか?」

「は! こちらです、ついてきてください」

女騎士「あぁ」

兵の様子からしても、ここでも抜き差しならない状況に陥っていることを、長年の経験で女騎士は察した。

「……という現状でございます」

兵の隊長が今までの事件の経緯を聞き、さすがの女騎士も厳しい表情をしていた。

女騎士「このままでは一つの村がなくなりかねんな」

「おっしゃる通りです、この周囲にはここを含めて計5つの村がありますが、コボロという村がもっともひどい被害を受けています」

女騎士「気になるのは、貴様らが1つの村でワールフを発見し、追跡中にほかの村にもワールフが現れたという点だな」

「我々も複数いる可能性を含め、4つに分けて警護を続けていますが、尻尾をつかめていない状況です」

ここにきている小隊は全部で25名、5~6人で警護を続けるとしても疲労はピークに達しているだろうなと、女騎士は考える。

女騎士「身体は休めているか? この状況ではそれも無理だろう」

「おっしゃるとおりです、何度か王都に増員を呼びかけているのですが、取り合っていただけない状況です」

女騎士「……、それは私がどうにかしよう。馬を出せるなら4日ほどでわずかだが人員は増やせるはずだ」

「4日ですか?」

女騎士「顔は広い方だからな。部下に伝令を頼むことになるから、私が代わりを引き受けよう」

「よろしいのですか? 休暇で来られていると伺いましたが…」

女騎士「私に休暇はない。名目状もらっただけで、すべきことをしにきただけだ」

「かしこまりました」

女騎士「令状を書く時間がほしい、その間に早馬の用意をしておいてくれ」

「は、では失礼いたします」

準備のため、部屋から出る兵を見送った後、懐から紫色の宝石を女騎士を取り出す。

女騎士「解放(宝石に眠る術式よ、起動せよ)」

こんなに早くこの宝石を使うことになるとはなぁと思いながら、解放した宝石を懐にしまうと。

兄「…どうした、本当に呼び出してくるとは、がふっ」

女騎士「うふふふー♪」ガシッ

兄「…このために呼び出したなら、さすがに怒るぞ?」

女騎士「そんなわけありませんよ。公私はわけておりますよ」

いつも通り抱きついたところで、ゆっくりと女騎士は離れた。

女騎士「というのが、この地域での現状です」

兄「なるほど、根回しをしてくれということか」

女騎士「えぇ、どうも王都でこの件、門前払いしているようなので」

兄「さすがにこの話だけではな、お前を疑ってるわけではなく、頭の固い連中を動かすためにはそれなりの資料が必要だ」

どうしたものかと、兄は思案した後。

兄「仕方ない、投影石を準備する。お前はワールフの姿や、被害者の死体をそれで写すんだ」

女騎士「手っ取り早い方法ですね。わかりました」

兄「すぐに準備できるものではないが、明日までには用意しよう。昼以降、問題なければその宝石で呼び出してくれ」

女騎士「はい。あと、もう1つお願いがございます」

兄「どうした?」

女騎士「どうもこの件、魔法使いか魔術師かの匂いをうけます。姉様をおよびできないかと」

兄「お前からのお願いなら、二束三文でも飛んでくるだろうさ」

女騎士「だとは思うのですが、宮廷魔術師のお仕事がありますから」

兄「許可状を発行すればすぐだ。それにあれもよくできた妹だからな、うまくやってくれるだろうさ」

女騎士「ご無理を言い、申し訳ございません」

兄「いつものことだ。それに、お前は正しいことをしている、気にするな。ではな」

転移魔術で去る兄に、女騎士は無言で敬礼して見送り。

女騎士「やっぱり兄様はかっこいいなぁ」

とぼそりとつぶやいた後。

女騎士「(さて、まだ1つ対応しただけ。もう1つの方にも取り掛からないとな)」

近くにあったペンと羊毛紙を手に取り、サラサラと令状をしたためながら。

女騎士「(あの者達なら来てくれるだろう。なんにしても当面の人員確保が急務だからな)」

そんなことを考えていた。

さて、終電なくなるから帰るー

半月にかかる細い雲が、どこか憂いを感じさせる。それでなくても冷えるこの地域で、この時間は自分をはっきりさせるように、冷たさが全身を覆う。
女騎士は昼間、兄が調達してくれた投影石を持ち、被害が最も多いコボロの村を警護のため、村の中を歩いている。村の人間は、自分が噂の聖騎士であると知り一定の信頼を得ることはできたが、それでも村自体にただようギスギスとした空気を、払拭するには至らなかった。

女騎士「(それだけ、この件は根が深いのだろう)」

この地域は王都と離れ、厳しい環境下に置かれていたことや、国境付近ということもあり、国とは違う文化が育まれている。ロイデヤも国境付近で独自の文化はあるが、抗争が激しい地域だったこともあり、国で管理されている側面が強く、この地域よりも独立性は低い。

本国では神聖イマキルペセという宗教が主流だが、この地域では、正グリド教という北方の北国で主流の宗教を信仰するものが多い。

正グリド教、神を信仰するわけではないため、宗教というべきではないのだが、一般的に宗教の1つとして認識されている。

教義は、人は欲により多数の苦しみを背負う、故に欲を切り捨て必要なものだけを得、不要なものは手放して生きるべきであるというものだ。

信仰している者の多くは、猟師などの自然と密接に関わって生きる人間たちだ。厳しい環境下に身を置き、わずかな食料を元に一族を繁栄させていく。彼らにとって神のご加護を待つのは、時間がかかりすぎる。だからこそ、自分の手で生き延びてきたという自負が強い。

女騎士も彼らの考え方は共感が強い。元々孤児であった彼女にとっても、救ったのはあくまで大将軍であって神ではない。そして、聖騎士にまでたどり着いた過程も、周りの助けは合ったが自身の実力で勝ち得たものと考えているからだ。

だが、この地域もそうだが、最近の技術革新に伴い、各地域の交流はかなり激しくなっており、この地域にも神聖イマキルペセの普及がそれなりに進んでいる。

そのため、目立った2つの宗教が混在するようになり、その考えの違いから前々から若干の対立めいたいざこいが絶えなかったところに、この事件が発生している。誰が敵で、誰が味方なのか、隣人はおろか親しい友人すら疑わなければならない状況に陥ったのだ。

女騎士「(王都の連中も、ワールフなどではなく、その対立の悪化としか捉えていないだろうからな)」

それだけに、初動のうちにワールフがいるという確固たる証拠は抑えなければならない。根底的な解決とはならないのは事実だが、民を救う騎士として何もしないというわけにはいかない。

火種はけして小さくはない。そのことを女騎士は確信している。

女騎士「!」

夜の空気を切り裂くように、距離はあるが遠吠えが聞こえる。賢者の話を思い出し、駆け足で村の中をめぐる。

女騎士「臭う、あそこか」

バンと民家のひとつの扉を開けると、中は血だまりになっていた。そしてそこには、話に聞いていた血に染まる獣人がたたずんでいる。

女騎士「解放(宝石に眠る術式よ、起動せよ)」

投影石をすばやく取り出し、被写体を捉えて術式を開放する。まばゆい光が室内を覆う。

「ガウウウッ!」

その光に過剰に反応した獣人は、腕で目を覆う。その隙に、女騎士は斧を取り出して叩きつけようとしたが。

女騎士「ち」

すばやく横に飛び跳ねられ、そのまま獣人はテーブルの上に乗る。動きは予想通り機敏なようだ。間髪いれずに、攻撃を加えるが、そのまま出入り口に飛びこむように出て行く。

女騎士「逃がすか!」

それを追うように女騎士も民家を飛び出す。

女騎士「(いない!?)」

すぐに飛び出したはずだが、獣人の姿はもう見えなかった。いくら機敏でもこんなにすぐ見失うはずはない。

まだ、地面に雪は積もっていない。足跡から追跡することは現段階不可能だ。

「いましたか!」

遠くから魔術ギルドの人間が走りよってくる。

女騎士「いや、逃がした。そちらのほうで見かけなかったか?」

「いえ、こちらに来る時には人影もありませんでした」

女騎士「そうか、君の名は?」

従者「賢者様の付き人をさせていただいている、従者と申します」

女騎士「中は血だまりだ。生存者がいるとは思えないがな。治癒魔法は使えるか?」

従者「申し訳ありません、自分は不得手でございます。お怪我をされたのですか」

首を横に振りながら。

女騎士「いや、もし生存している者がいれば、治療を施してほしかっただけだ」

従者「そうでしたか…」

女騎士「この辺りは平原が多い、身を隠すとするなら村の中だろう。周辺を警戒するぞ、ついて来い」

従者「はい、わかりました」

斧を手にしたまま、隠れられそうな場所を探る。

女騎士「(特に何も臭わない、か)」

嗅ぎ取れるのは、先ほどと変わらず、例の民家からの鉄くさい血の臭いだけだった。

従者「もう、さすがに遠くへ逃げたのではないですか」

女騎士「……、だとしたら合点がいかないな」

従者「どういうことです?」

女騎士「そこまで知性がある生き物には見えなかった。人と見れば誰から構わず襲いそうな、飢えた獣が私を見ただけで逃走するものか、とね」

多くの魔物や魔族と戦ってきた女騎士にとって、それが一番不可解であり。

女騎士「(ワールフの仕業であれば、楽だったんだが)」

元々最初に抱いていた懸念の事態だとすれば、やはり人員を確保しなければならないなと、女騎士は考えていた。

結局、被害者は老婦人の1人だけで、遺体は食い散らかしたように内臓をメインに散らばっていた。投影石でその状況を映したものと、ワールフを映した投影石を兄に手渡して王都の説得を任せることにした。

それからはワールフが襲撃することもなく、三日ほど経った今、女騎士は今回の件に関わりそうな資料を魔術ギルドで読み漁っていると。

女騎士「…この匂いは」

「女騎士ちゃーん、ここに。あら、うふふ」

女騎士「姉様~♪」ダキッ

姉「元気にしてたみたいねぇ、よかったぁ」ナデナデ

女騎士「えへへ、姉様も元気そうで何よりです!」

援軍を依頼していた姉が到着し、女騎士は嬉しそうに抱きついた。

姉「さて、お話聞かなきゃだめだから。座りましょうね」

女騎士「はい。すいません、ちょっと資料を漁ってたので本が散乱してます」

姉「女騎士ちゃんは熱心ねぇ。よいしょっと」

二人は対面する形で椅子に座る。

姉「とりあえず、王都での話を聞きたいかしら?」

女騎士「はい」

姉「女騎士ちゃんの映した投影石、ちょっと困ったことがあってねぇ」

女騎士「といいますと?」

姉「映ってなかったの、そのワールフが」

言われて、女騎士は驚くような素振りは見せなかった。

姉「…、わかってたって顔ねぇ」

女騎士「遭遇する時は気づけませんでしたが、そのワールフから生き物の匂いがしませんでした」

姉「となると、女騎士ちゃん。ちょっと待ってねぇ。閉鎖(空間独立、遮断外界)」

女騎士「ありがとうございます」

姉「女騎士ちゃんが私を呼んだ時点で、兄さんも私も予想してたことだからねぇ」

相変わらずニコニコと、姉は笑みを崩さない。

姉「やっぱり、私と同じような人が犯人だと思ってるの?」

女騎士「無差別に襲っているにも関わらず、我々の警備を隙を突き犯行を行ったり、同時にワールフが目撃されていたりなど、不可解な点が見受けられます」

姉「魔術は奇跡を起こすものだからねぇ」

女騎士「辻褄が合わないことが発生した場合は、真っ先に魔法、魔術を疑えと叩き込まれましたから」

姉「だから私たちみたいな人は、肩身が狭いのよねぇ」

まったくやんなっちゃうと、少しふてくされた様子になった姉を見て。

女騎士「あ、いえ、姉様がそうだなんて思ってません!」

姉「大丈夫よぉ、そういう意味じゃないからぁ」

女騎士「それならよかったのですが」

姉「となると、敵の内になるこの場所にいるのもそれが理由かしら?」

女騎士「はい、それが近道だと思いましたから」

魔術師が関わっている。それが今現在出ている答えだ。

姉「今のところ、それらしい人は見つけたの?」

女騎士「賢者は除外していますが、それ以外のメンバーは当日警護している時の動きが不透明ですね」

姉「兵と違って自警団だし、私達って徒党を組んだりしないからねぇ。ちなみに賢者さんはなんで除外なの?」

女騎士「彼は転移魔術や精神魔術が不得手です。今回の件、同時期にワールフが確認された件と、投影石に映らなかったワールフが幻覚の類であると仮定した時、その2つが使えることが前提になりますから」

姉「そうねぇ。複数犯というのは、考えてないの?」

女騎士は首を横に振り。

女騎士「複数犯ならもっと大規模に動けるはずです。同時期にワールフが確認されたのも一度だけ、複数いると思わせるために一度危ない橋を渡ったと見たほうがいいでしょう」

姉「身内に魔術の波紋を感じさせないためね」

女騎士「幻覚の魔術なら、入った際に術式を開放するだけで、事前に準備できます。転移魔術は移動の波紋が残りますからね。ワールフが同時に発見された2つの村は、魔術ギルドからはだいぶ離れていることから、それを懸念してと思われます」

姉「じゃあ、この地域の状況から見て、かなーりまずいということよねぇ」

女騎士「単純にワールフが犯人であるなら、気楽です」

姉「はぁ…。うまーく矛を収めてもらえればいいのだけれど」

女騎士「そのために、兄様には動いてもらわなければなりません」

姉「最悪は私と女騎士ちゃん、そしていらっしゃる兵の方々で、抑えるしかないのねぇ…」

女騎士「その点は万全とは言いませんが、腕利きに着てもらえるよう早馬は出しました」

どういうことという雰囲気で、姉が首をかしげたのを女騎士は見て。

女騎士「何も、王都だけに出兵の依頼をしなければならないわけじゃありません」

姉「あぁ、そういうことねぇ。女騎士ちゃん顔が広いからねぇ」

女騎士「そういうことになりますね」

姉「いつごろにその方たちは着てくれるのかしらぁ」

女騎士「早ければ本日ぐらいにはくるのでは」

「――――聖騎士様ー! どこっすかー!」

女騎士「思ったより早かったのか。姉様、空間閉鎖を解いてください」

姉「はいはーい。消去(術式消滅)」

姉が術式を開放したのと同時に、バタンと大きく扉が開けられ。

女憲兵「172期生、ロイデヤ憲兵見習い女憲兵! ただいま参りまきゃう!」

先輩憲兵「無作法にもほどがある! あとで話をするからな! ……、コホン。お見苦しいところを失礼いたしました。ロイデヤ第3憲兵隊。参上仕りました」

姉「あらあら、元気な人達ねぇ」ニコニコ

女騎士「ははは…、遠いところすまなかったな」

苦笑いしながら立ち上がり、女騎士は先輩憲兵と握手を交わす。

先輩憲兵「いえ、ロイデヤの件について、こう早く恩返しできるとは思いませんでした」

女騎士「そう言ってくれると助かる」

女憲兵「う~…、先輩憲兵ひどいっす…」スック

先輩憲兵「貴様は…。小言は後だ。女騎士様、我々はどこで待機すれば良いのでしょうか」

女騎士「コロニアという村に、王都の兵達の駐屯場所がある。そこに合流して、彼らと警備を変わってやってくれ、連日休みなしの警備で疲れきっているからな」

先輩憲兵「かしこまりました! さぁ、いくぞ女憲兵!」

女憲兵「え、あ、私聖騎士様にちゃんと挨拶、あ、失礼します! またお会いしましょう聖騎士様ー!」

ふぅと軽くため息をつく女騎士に。

姉「面白いお二人ねぇ」ニコニコ

と、能天気な言葉を姉はかけた。

さて、ここまで。今日続きは、気が向いたらかな。

さて、ここまで。今日続きは、気が向いたらかな。

早く気が向く様に

早速2人を再登場させてくれるとは、>>1に感謝!!

乙乙!
毎回楽しみだー

エラーったから、再投稿したら重複ですか


>>445
急いては事を仕損じるらしいよ?

>>446
何故か人気のこのお二人。憲兵ってなんだっけ?

>>447
ありがとう。




とりあえずネタの神下りてこねぇかなぁ。ついでにパソコンも落ちてねぇかなぁ

やっぱ女騎士可愛い

>>449
女騎士「可愛いって言われたぞ、メイド」ニコニコ

メイド「社交辞令ですよ」

女騎士「そうなのか…」シュン

メイド「…言われるだけ幸せですよ」

女騎士「?」

メイド可愛い!

>>451
女騎士「可愛いっていってくれたぞ?」

メイド「……それこそ社交辞令ですから」

女騎士「そういう風にいうから言われないんじゃないか?」

メイド「…所詮小姑ですよ、私は」

女騎士「?」

姉「ここが最近の襲撃された現場ねぇ」

女騎士「遺体以外はそのままの状態で残しています」

姉「……ふぅん、血痕はわざわざ派手にやってるのねぇ」

女騎士「というと?」

姉「気にならない~? 内臓を食い荒らされたとしても、残念ながら急所じゃない限り人は『生きてる』のよ?」

いつも微笑を絶やさない姉が、冷酷とも取れる冷めた目で現状を見回す。

姉「おびえ、恐怖し、例えそれが年老いた女性だとしても、死の際に起こす行動はありえないことを引き起こす、それが人間よねぇ」

女騎士「…なるほど。家具類は確かにそのままですね」

姉「寝室には血痕の類は見当たらないみたいだし、襲われたのはこのキッチンとリビング兼用のここと断定して、投影石を見る限り、急所に外傷が見当たらなかった」

女騎士「なら、必ず抵抗したはずということですか」

姉「後、女騎士ちゃんが聞いたのは遠吠えだけでしょう? 不思議よね、だーれも悲鳴すら聞いてない。すべての件でだーれもねぇ」

女騎士「被害者自身も魔術的な何かを施された、ということですね」

姉「そうねぇ。遠吠えだけが教えてくれるなんて、ある意味ロマンチックだけど。最初からこのワールフの件、追ったほうがよさそうねぇ」

手をあごに当て、こつこつと姉は室内を歩き回る。

姉「……ここに魔術の名残がある。女騎士ちゃんの見た幻覚魔術はこれのせいね」

そういって、玄関の出入り口部分を指差す。

姉「類からいって、何かが接触した時に、その人間がイメージすることを具現化する魔術ねぇ」

女騎士「なるほど」

姉「ここを見ていえるのは、1、老婦人は魔術で意識のないまま解体された。2、遠吠えは何らかの魔術の解除。というところかしらねぇ」

女騎士「……、話したと思いますが、私は例の獣使いを追ってみたいと思います」

姉「そうねぇ、私はちょーっと今までの目撃者の方達に『お話』を聞いてくるわぁ」

女騎士は少しぞわりとする。姉が、この件について今静かな怒りを沸かせていることを認識したからだ。

消えてしまいそうな三日月が射すわずかな光が、寒さを注いでいるような森林の中、女騎士は黒いローブで全身を覆い自然と一体になりながら周囲を警戒していた。

賢者『獣使いは人との接触は極力避けています。話したようにねぐらは転々としていて、ごく稀に狩猟しているところを目撃される程度。どのような人間かもわかりませんが、言えるのはこの周辺の森林地帯は獣使いにとって庭であるということです』

女騎士「(そう言っていたことからすれば、恐らく私の侵入にも気づいているだろうな)」

女騎士は全身の感覚を鋭敏にし目を閉じている、聴覚と嗅覚で周囲の変化を探る。わずかを感じ取るために。

経過する時間の感覚は長い、まるで数日間経過したような気分になりながらも、ただひたすらに周囲を探り続け。

女騎士「(そこか)」

立つと同時に森林の中をかけ走る。

女騎士「(距離としてはおおよそ1キメルほど先だな)」

暗闇の森林を疾走する。植物が育たない地域と、平坦な大地であることが幸いし、追いかけるのには苦労はしない。

しかし、それは言い換えれば逃げるほうにとっても行動しやすい地形ということだ。

女騎士「(匂いを捕らえたが、遠ざかっているな。感づいたか)」

森林を庭にしている人間からすれば、気配も消さずに一目散に自分に向かってくる存在に気づくのはたやすいだろう。更に足を速め、急速に距離をつめようとするが。

女騎士「(早いな、さすがに獣と一緒に狩をするだけある)」

 身体能力が高い自負がある女騎士にとって、単純な負けず嫌いでそれに負ける気はなかった。

女騎士「ち」

 匂いからして2メルほどに迫ったところで、殿(しんがり)を務めるであろう四足歩行の獣が飛び掛ってくる。

 噛みつきを体勢を低くしてかいくぐり、更に足に力をこめて高くジャンプする。

 そして、そのまま人影に飛び掛り、そのまま羽交い絞めにした。

「がはっ!」

女騎士「お前が獣使いだな?」

 抵抗できないよう地面にたたきつけ、腕を拘束する。

「お前、なんだ」

女騎士「一介の騎士だよ」

「いっかいのきし?」

女騎士「乱暴な方法で悪いが、話を聞きにきた。敵意はない」

「話? てきい?」

 どこか、話し方がたどたどしい。そう思いながら、女騎士は抵抗がないのを確認して、拘束を解く。

「乱暴、ひどい」

女騎士「人を見ると逃げると聞いたのでね」

「俺、人、苦手」

女騎士「人と一緒に暮らさない人間だから、そんな気はしてたがな」

「……、なんで、俺、話したい?」

女騎士「とりあえず、獣達に敵じゃないといってくれないか? こう唸られては話もできない」

獣使い「皆、大丈夫。座れ」

 その言葉を聞いて、獣たちは獣使いの近くにより、体をこすらせ愛情の意を示す。

女騎士「お前、最近付近の村で起きていることを知っているな?」

獣使い「知ってる」

女騎士「お前が犯人か?」

獣使い「俺、皆に知らせてる。それだけ」

女騎士「知らせてる?」

 女騎士は腕を組み、獣使いの言葉を待つ。

獣使い「最近、村が変。森、ざわめいてる」

女騎士「そうなのか」

獣使い「ひどい、血の匂い。狩、そんな匂いしない」

女騎士「そうだな」

獣使い「だから、血の匂い。嗅いだら、鳴く。こいつらに言った」

 獣の頭を撫でながら、つたない言葉で獣使いは伝える。

女騎士「なんで皆に知らせてるんだ?」

獣使い「子供、たまに会う。怖がってた。だからそうした」

女騎士「子供?」

獣使い「昔、森、迷子。助けて、会うようになった」

女騎士「……、そうか。その子供はなんていうんだ?」

 少し考えた様子をした後。

獣使い「ロド。そういった」

女騎士「そうか」

獣使い「いい子。怖がらせるやつ、腹立つ」

女騎士「お前、魔術は使えるのか?」

獣使い「魔術? 食べ物か?」

 とりあえず、こいつが直接的な犯人ではないなと確信して。

女騎士「不思議なことを起こす方法だよ」

獣使い「不思議? よくわからない」

女騎士「気にするな。とりあえず、侘びとしてこれでも食うといい」

獣使い「干し肉。嬉しい。皆食え」

 女騎士から渡された干し肉を、獣使いは獣達に振舞った。

 

獣使い「お前、乱暴。でも、良い奴」

女騎士「その村のことで、お前自身何か知らないのか?」

獣使い「俺、村いない。わかるの、血の匂い」

 少し当てが外れたなと女騎士は考え始めた時。

獣使い「でも、血の匂いをする者を、運んでる奴は知ってる」

女騎士「血の匂いを、運ぶ?」

獣使い「狂って、笑う。怖い奴」

女騎士「そいつはいつ見たんだ?」

獣使い「村、血の匂いした後」

 事件に共通するのは、内臓が散乱していることだったが、もしかすると何かを切り取っているのを誤魔化す為。状況から、そういうことになるのかと、女騎士は考える。

女騎士「そいつはいつもどこにいくんだ?」

獣使い「怖い。逃げる。わからない」

女騎士「……、そうか」

獣使い「人間じゃない。きっと化け物」

女騎士「……、狂ってても人間はワールフじゃないさ」

獣使い「…、そうだな。俺と、皆。違う」

 寂しそうに獣使いは笑った。

女騎士「そうか? お前も同じだろう?」

獣使い「なんでもない。今度、見たら、お前、呼べばいい?」

女騎士「そうだな、頼めるか?」

獣使い「あいついる。子供、怖がる。なら、協力する」

女騎士「それはありがたいな。獣を使いに出すのか」

 そう聞いて、獣使いは指差して。

獣使い「その布、寄こせ。皆、匂い、覚えさせる」

女騎士「わかった」

 まとっていたローブを脱ぎ、獣使いに手渡す。

獣使い「皆、嗅げ。こいつ、仲間」

 その言葉に従い、獣たちが次々とローブの匂いを嗅ぎ始める。

獣使い「すぐ、覚えない。少し、借りる」

女騎士「構わないぞ」

獣使い「うん。俺、そろそろ、寝る。今度、普通に会う」

女騎士「安心しろ、手荒な真似は今回だけだ」

獣使い「そうか。いくぞ、皆」

 そういって、獣使いは森の奥へと入っていった。

女騎士「……、さて、内臓なんて集めてどうする気なのか。姉様に聞いて見当をつけないとな」

 事態は否応に重くなることを感じながら、女騎士も森林から出るために、歩を進め始めた。

ふいー、今日はここまでじゃー。

ていうか、途中獣使いって入れるの素で忘れてた。まぁいいか。

一夜開け、コロニアの駐屯地に女騎士はいた。会議室として設けた一室に、駐屯地を預かる部隊長、ロイデヤ第3憲兵隊隊長先輩憲兵、この地方の魔術ギルド責任者賢者、宮廷魔術師姉、そして女騎士が集結している。

姉「さてと、お話します前に準備しますねぇ。閉鎖(空間独立、外界遮断)」

先輩憲兵「ただの魔族狩りの話にしては、ずいぶん物々しいことを致しますね?」

女騎士「魔族狩りではないからな」

「どういうことです?」

女騎士「部隊長、結論から言うならワールフなど存在しないのだよ」

その言葉の反応は、部隊長はうろたえ、賢者はやはりかという顔をし、先輩憲兵は表情は変えなかった。

「どういうことです? 我々が虚偽の報告をしていたとでも言うのですか?」

女騎士「いや、貴様等は忠実に任務をこなしていた。それは間違いない。しかし、それ自体が偽物だったのだ」

姉「ワールフ目撃地点には、いくつかの魔術が施されてたわぁ。それも幻覚の類のねぇ」

「なんと、しかしそれでは」

言葉にはしなかったが、部隊長の視線は賢者を捉えていた。

女騎士「彼は違うぞ。専攻は治癒魔術で精神系魔術に当たる幻覚魔術は不得手ということだ」

先輩憲兵「賢者様でないにしても、魔術ギルド内に犯人がいる。その可能性が高いと言うことですね?」

女騎士は全員を見てゆっくり頷き。

女騎士「これまで、人員不足とは言え、七十名近く動員していたにも関わらず、被害は一向に収まらない。このこと自体が、不思議な話ではないか?」

賢者「その為、身内に犯人がいても、おかしくは。いや、その方が自然と言うことですね」

姉「そうよぉ。辻褄を合わせるなら、それが無難な答えになるわぁ」

女騎士「無論、部隊長の兵達は除外だ。基本集団行動で、日ごとメンバーも入れ替わっている。それだけに、どうしても単独で動いていた魔術ギルドの人間に、疑念を向けなければならない」

先輩憲兵「話しぶりから、単独犯という話に捉えていますが、具体的な理由はあるのですか?」

もっともな疑問が、先輩憲兵から出され、姉が。

姉「魔術使用の範囲から推測すると、集団にしては規模が小さいわぁ」

と答えた。

うん、寝落ちそうだからこれまでや

先輩憲兵「それを理由にするのは、いささか強みがないかと思いますが」

姉「当然の意見ねぇ、その当たりは女騎士ちゃんから興味深い話が聞けるわぁ」

女騎士「獣使いから聞いたことだが、村の襲撃があった後、笑い狂いながら血の匂いがするものを運ぶ人間を見るそうだ」

「信用できるのですか?」

女騎士「少なくとも、嘘を言うのを得意とするヤツではない。もちろん鵜呑みにしてもいけないがな」

姉「全ての被害者は内臓をえぐり出されていた。それは間違いないんでしょう、部隊長さん」

「間違いありません」

姉「我々には、あまり関わりのないワールフの仕業にしておけば、内臓の一部が無くなっても、食いちぎったと勝手に私達が想像する。なくても不思議じゃないから、そんなことを気にもとめない。犯人の狙いの一つだと思うわぁ」

賢者「なんともおぞましい発想をするものです…」

姉「そう? 私が犯人ならそうするわぁ」

姉のたたえる微笑みは、どこか現実離れしていて、集まった人間に静かな恐怖感をあおる。

女騎士「問題は、内臓を集めて何をするのかと言うことだ。魔術に関わるなら償還の供物ともいえるし、観点を広げるなら錬金術の為の素材集めの可能性すらある」

賢者「あの事件の再来、ですか」

それを聞いて、女騎士は言葉を失う。

先輩憲兵「あの事件?」

姉「…、この地では数年前に、償還された魔物が人々を襲う事件が起きたの。我が騎士団にも多大な被害者を出し、当事者とされた魔術師は姿を消した」

先輩憲兵「その魔術師はいったい何を目的としたんです?」

姉「さぁ…、ただ償還された魔物達は、誰にでも喚び出せる類のものじゃなかった。だから、召還魔術について、屈指の腕を持つ魔術師が犯人とされただけ。そうよねぇ、賢者」

笑ってはいない鋭い視線を投げかけながら、姉は賢者に話をふる。

賢者「えぇ、我がギルドに在籍していたその魔術師は、その事件発生と共に姿を消して…、自室にあった手記にこれは解放だ。とだけ書かれていました」

先輩憲兵「もしや、そいつが舞い戻ったと」

姉「どうかしらぁ、賞金首としては、破格な金額も付いてるし、貴女もその顔は覚えはあると思うわ」

先輩憲兵は、詰め所などに貼られているお尋ね者の情報を記憶から掘り起こし。

先輩憲兵「それは、あの――」

姉「ね? 事件を知らない人間でも、顔を知ってる有名人。容易くこの国には入れないわ」

女騎士「…、あるとすれば模倣犯、ということにはなってくるか」

姉「言い出せばキリはないわねぇ。私には正直村の人間すらも、怪しく感じているから」

女騎士「どういうことです?」

姉「目撃者一人一人に話を聞いたけど、共通するのはワールフだけ。悲鳴の話をしたら、思い出したように悲鳴を聞いたと言う者がいたり、触(ふ)れなければ静かな夜で物音を聞いただけと言う者もいたり。それだけならまだしも、追及すれば話が二転三転、矛盾が蔓延る。本当に目撃者がいるのかしらねぇ」

先輩憲兵「というと?」

姉「深い意味はないわよぉ? 幻覚魔術を得意とする相手ですもの、感じたこと全てまやかしで記憶させられてる。そんな気がするのよねぇ」

女騎士「なるほど。さて、皆に留意してほしいのは、この地域は長く正グリド教を主体とする地域だったことだ。神聖イマキルペセを信仰する者が増え、そのことで軋轢が生じている。この状況下で、ワールフ以外の存在が犯人とは知らせたくない。下手をすれば村そのものが暴徒になりかねんからな」

「話してはならぬ、と言うことですか」

女騎士「今は我々の間だけの共有事項だ。犯人をあぶり出す為にもな」

姉「あとは、賢者。悪いんだけど、ギルド員の調査をお願いねぇ。やり方は任せるわぁ」

賢者「畏まりました」

女騎士「現段階の状況をまとめるぞ。今回の件はワールフ以外の魔術師関連の人間が犯人。また、この情報我々以外に漏らしてはならない。という内容だけだが、何か個々で気になる情報はないか」

全員がゆっくりとそれぞれのタイミングで首を振った。

女騎士「では、本日はこれまでとする。各自、対応を頼む」

そういって女騎士は、集会を締めた。

よし寝るでや

お疲れなサイ
ありがとウサギ
さよなライオン

>>481
うん……うん?

少し告知

今回のコルサカ編が終わった後、少しテコ入れしたいなと考えていて、女騎士以外の外伝でも書く予定。

まぁ、どれがちょうど良さそうかということで複数簡単に書いてみて、これは安価ででも決めてもらおうかと。今のところ

医者
先輩憲兵

占い師

の四人が候補。安価はコルサカ終わった当たりになるので気長にどうぞ。

コロニアから魔術ギルドに向かう道中、女騎士はロイデヤ第三憲兵隊を引き連れて歩いていた。

憲兵隊は駐屯地の兵との顔合わせは済んではいたが、魔術ギルドのギルド員とはまだ顔合わせをしていないため、会議の後にその予定が組み込まれていたためだ。

女騎士「部下には一人にならぬよう、伝えておいたか?」

先輩憲兵「えぇ、人に化ける恐れありとして、最悪でも二人一組になるよう指示してます」

女騎士「妥当な理由だな」

女憲兵「何、話してるんすか?」

先輩憲兵「普通、上官同士が話していたら、首を突っ込まないものだぞ」

女憲兵「だって、今回ここにきた女の人はこの三人だけなんすよ。先輩憲兵だって、自分から離れるなっていったじゃないっすか!」

女騎士「まぁ、話は終わった。気兼ねなく話していいぞ?」

憧れの存在にそう言われると、どんな話題を振っていいかわからず、女憲兵は少し固まった後。

女憲兵「何話せばいいかわかんないっす」

と素直に答えた。

先輩憲兵「素朴な疑問だが、聖騎士様の姉君を含め、女は四人じゃないか?」

女憲兵「あれ? そんな人いましたっけ」

先輩憲兵「お前が魔術ギルドに勝手に入って、聖騎士様を探し回った時に、一緒にいらっしゃった方だ」

女憲兵「……、なんか笑ってた人っすね!」

両手を叩いて頷き、とりあえず女憲兵は姉について思い出したようだ。

先輩憲兵「しかし、聖騎士様、あの方はどのような方なのですか?」

聞き方にとげのようなものを、その言葉から女騎士は感じ取った。

投下に向けて待機(服脱ぎ棄て

>>490
書くから服は着よう、風邪引くで

女騎士「それはどういう意味だ?」

いつもの口調、いつもの様子。だが、自分だけに向けられた敵意を、先輩憲兵は長年の経験から察する。

先輩憲兵「不愉快にさせてしまったのなら、お詫びいたします。ただ、単刀直入に申し上げるなら、あの方に得体の知れない部分を感じてしまった、それは事実なのです」

怖じ気付く様子もなく、堂々と返された言葉に、女騎士からは敵意が消える。

女騎士「私も言い方が悪かったな。詫びよう」

先輩憲兵「いえ、お気になさらず」

女憲兵「???」

言葉を解さない、そのやり取りに女憲兵は一人取り残される。

女騎士「実のところ、姉様を説明するのは、私も苦手だ」

女憲兵「どうしてっすか?」

女騎士「あの方は二面性が強すぎる。二重人格、または腹黒いという意味ではなくな」

どう説明すべきかなと呟き、女騎士は頭を悩ませた後。

女騎士「普段は温和な方なのだが、内に苛烈さを潜めている。例えるなら、流れる川。普段は穏やかだが、雨の日は激流に変わる。そんな人だ」

先輩憲兵「……(賢者様が居たから、か)」

理由は全く知らないが、姉の賢者への態度は、明らかな敵意を見て取れた。

あの場に賢者がいたから、女騎士がいう苛烈さが、表に出ていたのかと、先輩憲兵は答えを出す。

女憲兵「なんか付き合いづらそうっす。聖騎士様の姉(おねえさん)」

先輩憲兵「言っておくが、宮廷魔術師の身分の方だから、通常お目通りすら叶わない人物だぞ?」

女憲兵「うええ、超エリートじゃないっすか! すごいっす」

女騎士「そうだ、姉様もすごいぞ」

身内がすごいと言われ、女騎士は嬉しそうに言う。

女憲兵「それに女騎士様も聖騎士ですし、すごい姉妹っす」
先輩憲兵「まさか、お前何も知らないのか?」

女憲兵「何をっすか?」

先輩憲兵「聖騎士様は、父に大将軍様、兄(おにいさま)は執政官を勤められてるんだぞ?」

女憲兵「」

驚きすぎた女憲兵は固まってしまう。

先輩憲兵「有名な話だと思ったんだがな」

女憲兵「ぜ、全員遙か彼方にいるっす…」

女騎士「そう見えるかもしれないな。しかし、父様も元々辺境の領主の息子で、戦で武功を積み上げたから今の立場に御成なのだ。兄様も同様だ。お前も幸い、努力すれば成り上がれる立場。後は頑張り次第だな」

女憲兵「が、頑張るっす!」

先輩憲兵「私の時もそれぐらい、素直に指示をきいてくれると助かるのだがな」

女憲兵「す、すいませんっす」

女騎士「苦労していそうだな、先輩憲兵?」

先輩憲兵「えぇ、とても」

女憲兵「う~、二人ともひどいっす~」

二人にそう言われ、女憲兵はしょんぼりとしている。

「…あいつ、大物だよな」

「上官、それも一人は聖騎士様だぜ。あんな絡めねぇよ普通」

「あいつ、天然だからなぁ」

「しかし、あいつ含め、目の保養になるな」

『うん』

後方でかしましい様子を見ていた憲兵達は、そんな風につぶやいていた。

今日は一応ここまで。



あと、下のも宣伝しとく

のび太「ドラえも~ん」

のび太「ドラえも~ん!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1411743015/)

完結済みすっごい短いよ、暇つぶしにどうぞ

おつ
2次はいいや
俺には女騎士さえいれば

風邪ひいた、更新乙です!

やはり先輩憲兵さんが最高にべネww

>>498
メイド「愛の告白ですよ?」

女騎士「いや、流石のあたしもあれはジョークだとわかるぞ?」

メイド「ジョークじゃなかったら?」

女騎士「そうだなぁ、千の騎兵を、単騎で壊滅できるヤツなら考える」

メイド「皆貴女と同じではないですよ?」

女騎士「?」


>>499
先輩憲兵「私のどこがいいんだろうな?」

女憲兵「先輩憲兵もかっこいいっすからね!」

先輩憲兵「それもまた少々複雑な心境だな」

女憲兵「じゃあ、なんて言われたいんすか?」

先輩憲兵「さて、訓練を始めるぞ」

女憲兵「なんでそうなるんすか…」

先輩もかわいいよね(棒)

>>501
先輩憲兵「ふむ、好意として受け取ろう」

女憲兵「…、先輩憲兵、クールっすね」

先輩憲兵「好きでもない人間に言われてもな」

女憲兵「なるほどっす」

無事に魔術ギルドへ辿り着いた一行は、女騎士を除き、ロイデヤ第三憲兵隊と魔術ギルドの顔合わせを行(おこな)っている。

女騎士「暇だな」

用意された一室に戻り、呟く。一通りの調べ物も終わり、犯人のおおよそに検討がついた今、女騎士にすべき事はない。

あるとすれば、事件発生時に不審点がありそうなギルド員の取り調べだろうが、それも賢者がやる予定だ。

女騎士「(身内同士になるから、避けるべきところだと思うが)」

姉に何らかの考えがあってなんだろうなと、いうことに女騎士はした。

女騎士「(獣使いに会いに行くか、それとも村を回ってみるか)」

考えを巡らせてみるが、あまり良い案は浮かばない。

そうしているうちに、不意に扉がノックされる。

「女騎士様、いらっしゃいますか?」

女騎士「あぁ、入ってかまわないぞ」

扉が開けられる、見えた姿は従者だった。

従者「失礼いたします」

女騎士「ふむ、私が初めてワールフにあった時以来だな」

従者「えぇ、お顔は拝見しておりましたが、お話しできる機会はございませんでしたね」

女騎士「それで何用かな」

従者「我々は警護の他に、村人の精神的ケアも行っています。皆様が来られてから、以前と比べるまでもなく、ワールフの被害は静かになっております」

女騎士「しかし、村人の間での疑心暗鬼は無くならないと」

従者「口惜しいことに、ワールフ自体を討伐出来ておりませんからね」

従者は首にかけた、盾をモチーフにしたロザリオを握り静かに目を閉じる。

そのロザリオは、神聖イマキルペセを信仰する者の証だ。

女騎士「それで、そのケアとやらに付き合えばいいのか?」

従者「えぇ、このような言い方は失礼かもしれませんが、民救う女騎士様の名声は、皆様に効果があると思うのです」

女騎士「そんなものか?」

従者「女騎士様がいらっしゃる時は、皆様穏やかな顔をしておりますよ」

にこやかな、人の良さそうな笑みをたたえながら、従者はそういう。

女騎士「やることもなくなってきたからな、構わない。付き合おう」

従者「ありがとうございます」

従者「皆さん、ご存知の通り神は皆様を見捨ててはおりません。民を救う聖騎士様が参られ、遠い地からも仲間が助けに来ております。我々もワールフに関し、追求の手を弱めず見つけ出す所存です。どうか、気を安らかに。神は皆様を見捨ててはおりません」

女騎士「…(魔術ギルドに所属しているから、魔術に熱心かと思ってたが。どちらかというと、布教に熱心みてぇだな)」

従者に付き合い、村を訪れていた。従者は村人を集め、教えを説くように、大丈夫だと説得する。

しかし、その言葉にはあえて神を使い、あたかも神聖イマキルペセによる導きと、言うような口振りだった。

村人の手前、無表情を貫くが、胸くそ悪い気分で、女騎士はいっぱいだった。

「またあんたか、いい加減みんな集めてこんなことすんな」

狩りから帰ってきた様子の村人が、従者を見るなり嫌そうに言った。

従者「どうしてでしょう?」

「お前みてぇのが来るようになってから、前から争いが絶えなくなっちまったんだ。出ていかねぇなら追い出すぞ」

スッと、従者と言い争いをする村人の間に、女騎士は入る。

女騎士「今回の件、私が非礼を申し上げよう。事件がほとんどなくなったとは言え、ワールフ自体を拿捕できてない今、村人達も不安な夜を過ごしているのは、承知のこと。それだけに、お前達と話して、少しでも気を紛らわそうと思っていたのだが……」

チラリと従者を視線で追った後、そこから女騎士は村人に視線を戻す。

女騎士「このような形になってしまい、申し訳ない」

村人「いんや、女騎士様が悪い訳じゃあ」

女騎士「そういってもらえると助かる。今日はもう、戻るとする。皆すまなかったな」

キリッとした女騎士ちゃんも素敵

>>510
女騎士「騎士は凛々しいものだからな」キリッ

メイド「またのせられて…。まぁ、屋敷に居られる時は、おてんばな少女がそのままに成長した感じですけどね」

女騎士「違うぞ、屋敷にいる時も規律正しく」アタフタ

メイド「えぇ、そうですね」シラー

女騎士「メイドが最近冷たい」イジイジ

司会と体温を奪うブリザードが、小高い丘を登る夫婦にまとわりつく。

夫婦は、厚い外套を着てはいるが、長時間この外気にさらされ続け、疲労の色は隠しようもない。

何より、男の懐に大事に抱かれる幼子も、寒さで徐々に動きが鈍い。

「大丈夫か?」

「大丈夫です。早く、向かいましょう」

女の手を取ろうとしたその時、後方で爆発が起き、それに巻き込まれる形で三人は吹き飛ぶ。

「見つけたぞ!」

そこにいたのは見たこともない魔族の姿だった。

「あなた、先に行ってください」

「ダメだ、お前も来るんだ」

「ここで希望を失うわけにはいかないのです。もう、私は動けない、だからあなたが…!」

「……、すぐ戻る!」

女は魔法を放つ。いつもなら強力なそれは、雑兵クラスの魔物を足止めするぐらいの威力しか、持ち合わせていなかった。

肉に刃物が突き刺さる音と、断末魔はブリザードに紛れて聞く者もいなかった。

「幼子のお前に大役を押し付け、本当に申し訳なく思っている」

その謝罪は誰に向けているのか、当人も実のところわかってはいない。

しかし、そう言わなければ、親として何かが潰れてしまいそうだった。

「先に行った仲間達に助けて貰って生き、そして大役を果たしてくれ」

男は木の枠に、幼子を入れ、手を離した。そして、一歩後ろに動いた時、胸部から槍がつきだした。

「お、そ……ぁ」

何か言い残すこともできず、そのまま男は倒れた。

>>512
×司会
○視界

女騎士が目を覚ますと、仮眠を取る前よりも多い布団がかけられていた。

姉「あ、女騎士ちゃん。起きた~?」

女騎士「はい。姉様ですか。この状態になったのは」

姉「女騎士ちゃんが、寒い寒いって言ってたからねぇ」

女騎士「そうでしたか。多分、夢のせいでしょう」

布団どけて、女騎士は上体だけ起こした。

姉「どんな夢を見たの?」

女騎士「ブリザードの中にいたとしか、あまり覚えてはいないです」

姉「そう、とりあえず体調悪かったら言ってねぇ?」

女騎士「わかりました」

ベッドから降り、女騎士は全身を伸ばす。太陽はまもなく消え、夜を招く準備を始めている。

姉「今日も警備にでるのぉ?」

女騎士「えぇ、敵を捕らえているわけではありませんからね」

姉「女騎士ちゃんは真面目ねぇ、たまには一緒にお茶しない? こうやって過ごせるのも久しぶりなんだからぁ」

女騎士「スゴく嬉しいお誘いですけど、それで被害者を出すわけにはいきませんよ」

姉がつまらないわぁとふてくされるのを見て、女騎士は少し慌てる。

女騎士「けして姉様をないがしろにしてるわけではありませんよ。その、今は難しいだけです」

姉「冗談よぉ。でも、あんまりほうっておかないでね~」

女騎士「わかってますよ。では失礼します」

扉を開け室内から出る。ひんやりとした外気が身を包み、おぼろげになったあの夢を思い出す。

取り留めもないそれは、何かの答えにもならず、いつしか考えることすらやめていた。

その間も足は自然とギルドの玄関口へと向かい、そのまま外に出ようとした時だった。

「女騎士様、今よろしいですか」

呼び止められ、振り向いた視界に映ったのは、少しげっそりとした賢者の姿だった。

女騎士「どうした?」

賢者「はい、私も村に私用ができまして。向かう村とは別ですが、途中まで同道させていただいてよろしいですか?」

女騎士「そんなことか。構わないぞ」

賢者「助かります。では参りましょうか」

どこかほっとした後、賢者は女騎士の近寄り、二人は外へと出た。

ギルドを出てから十数分、半月が現れ太陽の代わりに地面を照らし出していた。

賢者「今回の状況を起こせる者をピックアップし、該当者は11名。内、ワールフが2ヶ所で確認された件などの、特徴がある事件に全て該当した者は3名でした」

女騎士「それで話はしたのか?」

賢者「いえ、まだです。出来れば女騎士様も交えて行いたかったものですから」

女騎士「私はかまわないぞ?」

言われなければ、姉に相談してそうするつもりだった女騎士にしてみれば、その提案は渡りに船だった。

賢者「ありがとうございます」

女騎士「気にするな…、しかし、やつれたな賢者」

賢者「………また、支部から罪人がでるかと思うと、気が重いのですよ」

弱音。彼もまた若くして賢者の座を手に入れた。しかし、それだけに敵対するギルド内の派閥を生み出し、例の事件の後強烈なバッシングを招いた。

賢者「私は、人を束ねるのには、向いていないのかもしれませんね」

女騎士「……、それに関しての答えは持ち合わせていない。ただ」

賢者「ただ?」

女騎士「お前が優秀ということは、変わらない」

賢者「ありがとうございます」

ホッとした訳ではなく、かといって喜んでいる様子もないが、少し弛緩した空気が賢者から流れてくるのを、女騎士は感じ取っていた。

女騎士「それに今回の件は魔導がらみとは、違う匂いがする」

賢者「といいますと?」

女騎士「目的のために魔術を使っているだけな気がする。集められたとする内蔵も、18人から抜き取っているなら、魔術、あるいは錬金術の材料には十分なはず。なのに、ワールフ以外の事は起こらない」

賢者も静かに頷いた後。

賢者「そう言われればそうです」

女騎士「となれば、内臓は戦利品なのかもしれない。サイコな人間特有のコレクションとでもいうか」

賢者「更におぞましい話になりましたね」

女騎士「最悪は村人を殺すことだけが目的になっているかもしれないしな」

そうだとすれば、今は無理矢理欲求を押さえている可能性が高く、いつ爆発するかわからないなと、女騎士は思う。

賢者「………、それでは私はこれで、元々報告だけでしたから」

女騎士「わかった、気をつけて帰れよ」

離れていく賢者に軽く手を振った後、女騎士は目的の村へと前進を続けた。

今日はここまで

夜間の警備を終えた女騎士は、村人の行為で貸してもらったベッドで仮眠をとった。

その後、外に出て空気を肺に入れる。寒くそして自然に囲まれる地域特有の鮮烈なそれが身体を満たしていく。

良い日差しだ、流れる時間も牧歌的に見えなくもない。この事態がなければ、しばし過ごしたい地域ではある。

女騎士「さて、戻るか」

村を出ようと歩を進める。聖騎士と知られてからは、村人の悪意に満ちた視線がなくなり、周りを気にしなくても良くなった。

最も、事態の収拾が長引けば、保証の限りはない。

「女騎士様、出かけられるのですか」

呼びかけに振り向くと、幼い少年が走り寄ってきた。

女騎士「そうだ、君は?」

ロド「ボク、ロドって言います」

女騎士「そうかロド、何かあったのか」
女騎士はしゃがみ、ロドと名乗る少年の目線の高さに合わせながら話す。

ロド「お母さんが、これを女騎士様に渡してきなさいって」

ロドは懐から、小さい布袋を取り出して渡した。

開いてみると中に入っていたのは干し肉だった。

黒パン固かったのは最初だけか
肉と肉と肉ばっかりで腹減るなおい

>>529
仕事中にタイトルが頭に落ちてきたから、深い意味がないんよ


今回の地域は北方だから、イモと干し肉が主流の設定なんだけど、ヨーグルト系の発行乳製品とかあとはニシンなんかもだそうかと思った。

でもそれ説明しだすと食い道楽に来てるんかい話になるから深くは触れず。

あ、今の思ったが芋のポタージュとかもいいよね。それに黒パン絡めたらある意味タイトル通りかも


んで、腹は減った?

女騎士「ありがとう、道中食べさせてもらおう」

ロド「はい、行ってらっしゃいませ!」

女騎士「あぁ、行ってくる」

小さな子供の見送りを受けながら、女騎士は村を後にする。

今日すべきことは今のところ無い。しかし、何もせずに過ごし続けるのはけして有意義とは言い難いだろう。

女騎士「獣使いにでも会いに行くか」

あの時から一度も会う機会はなく、何かあれば獣を寄越すと言っていたがそれもない。

何らかの噂は聞かないが、念のために会いに行くことに女騎士は決めた。

俺の腹を減らしたかったらその3倍は持ってこい!

名作は食い物をしっかり描写している

>>532
じゃあこんなのはどうだろう

1、ご飯に最も合うおかずを答えなさい
2、味噌汁に最も合う具を答えなさい
3、おにぎりに最も合う具を答えなさい
4、寿司に最も合うネタを答えなさい
5、餃子は焼きか、蒸しか、茹でか
6、ラーメンは塩か、醤油か、味噌か、豚骨か
7、トーストにはイチゴ、ブルーベリー、バター(あるいはその他)か
8、焼き鳥はねぎまか、鳥精か、豚精(あるいはその他)か
9、トンカツにはソースか、辛子ソースか、おろし醤油(あるいはその他)か
10、焼き肉は塩かタレか

なんてのはどうだろうか。うん、何スレだここ。

>>533
カリオストロの城とかいい描写よね

まぁ、おろそかにしてるつもりはないけど、名作とは言い難いし、まぁまったり面白いようにはがんばるけども



あとどうでもいいけど、>>534の餃子、揚げ入れ忘れた。ファック

コルサカの地の木々は高く生え、密集している。それだけに、地理感がない者が入れば、迷子になることは容易い。

そんな複数の森を庭のように歩き回る獣使いを探し出すのは、困難な話ではある。

だが、環境変化に優れた反応できる獣使いにとって、森に侵入してくる者の察知は簡単なこと。

だからこそ、獣使いから様子を見に来ると踏み。女騎士は彼がやってくるのを待つことにした。

女騎士が森には行ってから数十分が経ち、女騎士の耳は、遠くからわずかだが足音と衣擦れの音を捉える。

視線を動かすと、獣達に囲まれた獣使いが、恐らくあちらもこちらを伺うようにしている姿が見えた。

女騎士「私だ、会いに来たぞ」

かなりの距離があるが、隣にいる人間に向かって話す声量で女騎士は言う。

獣使いも誰であるのか認識した様子で、その場にしゃがみこんだ。女騎士が来るのを、そこで待つためだろう。

しばらく歩いてから、獣使いが座る丸太の前まで女騎士はやってきた。

女騎士「そちらから来てくれてもいいんじゃないか?」

獣使い「お前居た場所、森でれる場所。俺、目立ちたくない」

女騎士「まぁ、こんな所帯なら仕方がないか」

この間は夜闇で正確に把握してなかったが、昼間の今見ると16頭の獣が、獣使いを中心にして座っている。

獣使い「借りた布、取りに来たか」

女騎士「そうではない。元気か顔を見に来ただけさ。布もお前がそのまま使えばいい」

女騎士も、獣使いと対面する形で地面に座る。

女騎士様のペロペロ成分が足りない

>>1の数行挟まるメシ描写が、簡潔ながらしっかりイメージを想起させてくれるよ
黒パンもだけど干し肉とかホフ酒とか素朴な描写が逆に似合って

要は夜に見ると大変腹が減って困るww

名作は飯の描写をおろそかにしないわけだ

>>539
女騎士「どうしてこういう輩は後を絶たないんだろうな?」

メイド「殿方の思考はそんなものです」

女騎士「父様や兄様は絶対ないぞ。まったく」

メイド「……、胸は勝ってるのになぁ」

女騎士「?」

>>540
ありがとう。まぁ、名作には程遠いけれども。

どこかで五感刺激する小説は、良い作品だと聞いて、食事のシーンをあえて短めに、ざっくりした情報にしてる。

その方が読み手が味を想像してくれるからね。

獣使い「そうか、布。このまま使わせてもらう」

 女騎士が使っていた黒いローブを、頭から覆うように獣使いは羽織っていて、見えるのは両目だけだ。

女騎士「そんなに冷える日じゃないが、体の調子でも良くないのか?」

獣使い「…。そうだ」

女騎士「まぁ、あまりは無理はするな。そうだ、お前の言っていたロドという子供から干し肉をもらった。食べるか?」

獣使い「ロド、会ったのか。元気か」

女騎士「あぁ、元気そうだった。ほれ」

 もらった干し肉が入った袋を、獣使いに投げ渡すが、獣使いは受け止める動作はせず、胸に当たってそのまま地面に落ちる。

女騎士「大丈夫か?」

獣使い「気にするな」

 どうも様子がおかしいが、そのことに触れてくるなという様子を感じ取り、女騎士は気に留めないことにした。

女騎士「あれから変なやつはいたか?」

獣使い「皆、見回りする。けど、見てない」

女騎士「そうか」

獣使い「血の匂いもしない。でも、森のざわめき、消えない」

 それもそうだと、女騎士は思う。事件発生そのものを防いでいるだけで、事件そのものを解決には至っていない。

獣使い「今度、見かけたら、追いかける」

女騎士「どんな手段を持っているかもわからない。それは私に任せろ」

獣使い「大丈夫。皆、強い」

女騎士「その考えが、仇になるんだ」

 どんなに優秀な人間も、驕った瞬間に雑兵と成る。戦場で嫌になるほど見てきたことだ。そう、勝利を重ねた部隊ほど、ある日壊滅するというのは、ザラな話なのだから。

獣使い「あだ?」

女騎士「お前ならわかるだろう。必ず、絶対、そんな言葉が頭をよぎった時、死が待っている」

獣使い「……。わかった、従う」

女騎士「頼むぞ」

 村の人間より、色濃く生死の世界を生きる獣使いも、それだけ危険な相手なのだと考えを改める。

女騎士「それより、お前に頼みたいことがあるんだ」

獣使い「なんだ」


女騎士「血の匂いをするものを運んでいる。そう言ったな?」

獣使い「あぁ」

女騎士「恐らくだが、その人間は一箇所にそれを集めているはずなんだ」

獣使い「保存食か」

女騎士「それとはもっと別な理由、だろうがな」

 そういわれて、獣使いは不思議そうな顔をする。血の匂いは彼にとって狩猟を意味していて、食べ物を持っているという発想だ。それを食べない理由で集めるということは、想像が出来るはずもない。

獣使い「やっぱり、変」

女騎士「私もそう思う。だが、言い換えれば、まだ辿れるかもしれない」

獣使い「血の匂いをか」

女騎士「そうだ。お前が協力してくれるなら、辿れるはずだ」

獣使い「皆なら、大丈夫」

 周りの獣達に、指示するように獣使いは目配せする。

女騎士「それと、お前も鼻は利くだろうが、動くな」

獣使い「なぜだ?」


女騎士「少なくとも、人の目を気にしている。獣達ならごまかしも聞くだろうが、お前は殺しにかかるだろう」

獣使い「そうか」

女騎士「それに、そいつにワールフ以外の存在を疑っていると気づかれたくない」

獣使い「わからない。皆だけ、探せばいい?」

女騎士「それだけの理解でいい。当然危なくなったら逃げろといってくれ」

 獣使いは頷く。

獣使い「それで、ロド。泣かないなら」

女騎士「そうだな、ロドもきっと泣かないさ」

獣使い「頑張る」

女騎士「頼む。見つけたら獣をよこしてくれ」

獣使い「わかった」

 用件を伝え終えた女騎士は立ち上がり、服の汚れを払う。

女騎士「私はこれで戻る。気をつけてな」

獣使い「わかった。気をつけて」

 手を軽く振り、女騎士は森の出入り口に歩を進める。解決に向けて動きを見せているにもかかわらず、気持ちは鬱屈して沈んだままだった。

 女騎士は魔術ギルドに戻ると、早速賢者と共にピックアップした人間と話をしていた。

女騎士「初めまして」

「初めまして、フィリアと申します」

 ローブをまとう、少しカールした長髪の女魔術師が、緊張の面持ちで女騎士と対面する形で座り、その側面に賢者が居る。

賢者「女騎士様が、ワールフの件で聞きたいことがあるそうなんだ」

フィリア「といいますと?」

女騎士「今回のワールフの件、我々の知っているワールフの情報からすると奇妙なことがある」

 一枚の羊皮紙をフィリアに女騎士は手渡した。

フィリア「これは、この周辺の地図ですね」

女騎士「そうだ。ワールフが一度に二箇所目撃された村の場所なんだが、発見のタイミングから見て、かなりの距離がある。君は確か、コボロの村で目撃したと聞くが間違いないか」

フィリア「はい、そうです」

女騎士「目撃して追跡した後、逃走するワールフが民家の陰に隠れてそこに向かうと、すでにいなかった」

フィリア「間違いありません」

 淡々と確認する女騎士に、フィリアは更に緊張を隠せず、声が上ずっていく。

女騎士「そこでなんだが、消えた時に何か魔導の名残のようなものは感じられなかったか?」

フィリア「え?」

女騎士「我々はワールフのことはあまりよく知らない。もしかすれば、魔導を使えるかもしれないと考えている」

フィリア「なる、ほど」

 その時の状況を思い出すように、フィリアはしばし黙した後。

フィリア「いえ、私も魔術を志す者です。そのようなものは感じられませんでした」

女騎士「そうか。君の見解を聞きたいのだが、ワールフは複数だと思うかね?」

フィリア「単独だとは思うのですが、こうも我々の眼をかいくぐっていることを考えると、複数は捨てきれないとは思います。ただ、あの理性の無い凶暴な様子を思うに、知能を持ちえているようには思えず、わからないと答えるしか…」

女騎士「同感だな。私もよくわからない」

 わずかに、女騎士は口角を片方だけ上げて笑い、その様子にフィリアは少しだけ安堵した様子を見せる。

女騎士「ワールフが人間に化けて、コミュニケーションを取れるとは、その様子だと思ってはいないな?」

フィリア「はい。村の中に化けている、というのは私は考えられません」

女騎士「ならばやはり外部からか…。もういいぞ」

賢者「すまないが、次はミーシャ君を呼んできてくれないか」

フィリア「あ、はい。わかりました。失礼します」

 女騎士は、出て行くフィリアを視線だけ追った後、次に来る魔術師の情報を確認する。

 賢者も静かに黙り、室内は沈黙に包まれている。女騎士が要求したことだ。この確認の際に、賢者は基本的には沈黙を守ってほしいと伝えている。賢者がフォローをいれることで、記憶に不純な何かが生まれること避けるためだ。

「失礼します」

 次に扉を開けて入ってきたのは、少し年をとった男魔術師だった。ひげを蓄え、魔術師にしては体つきも鍛えられた様子が伺える。

賢者「そこにかけてください。ミーシャ君」

ミーシャ「はい、それで話とは。やはりワールフの件ですか」

女騎士「ご名答。今回のワールフは、我々が知っているワールフの情報とはかけ離れている」

ミーシャ「はい、私もそう思います」

 フィリアとは違い、どっしりと腰を構えた様子で話す。こういうことには場慣れしている雰囲気がある。

女騎士「そこにある羊皮紙、見てもらえればわかると思うが、この周辺の地図だ」

ミーシャ「そのようですね」

女騎士「以前、一度に二箇所ワールフが目撃された村の場所なんだが、かなり距離がある。君はコロニアの村で目撃したそうだな」

ミーシャ「間違いありません」

女騎士「一つ、ワールフについて我々が疑っていることがある」

 その言葉に、ピシリと空気が緊迫するのを女騎士は感じた。

ミーシャ「そのご利用は何ですかな」

女騎士「聞いた情報をまとめると、コボロの村でワールフが目撃、そして見失った後にコロニアの村で目撃されていることになる。君はワールフを追跡したのだったな」

ミーシャ「えぇ、自然魔術をもって攻撃を試みましたが、素早く避けられてしまい、森の中へと消えていきました」

女騎士「君が目撃した段階で構わない。何か、魔導の名残のようなものは感じられなかったか」

 緊迫した空気に緩みは無い。

ミーシャ「…、いえ。特にそのようなものは」

女騎士「そう、か。ワールフそのものが魔導を使えば説明がつく気がしたのだが」

ミーシャ「それこそまさかでしょう。魔術ギルドの人間が気づかれないよう魔導を使えるなど……」

 何かを思い出した様子で、ミーシャがわずかに言いよどむ。

女騎士「どうした」

ミーシャ「…、いえ。思い違いかと」

女騎士「そうか。もし、心当たりがあれば後でもいい、話してくれ」

ミーシャ「畏まりました」

 わずかにだが、何かに気づいた様子のミーシャに、女騎士は深く追求をするのを避けた。

女騎士「後はそうだな。ワールフは複数居ると思うか?」

ミーシャ「私は単独を推します。あの凶暴性を考えると、群れて生きるのではなく、単独で生活するタイプに見えました」

女騎士「なるほどな。奴を目撃した私もそう思う」

 やれやれという様子で、女騎士は軽く頭をかいた後。

女騎士「ミーシャ、君はこのことに慣れているであろうから問おう。君の見解を聞かせてほしい」

ミーシャ「そうですね…。やはり獣使いに疑いを持っています。彼が襲われていないのは、ワールフ自身であれば説明はつきます。もっとも、彼が目撃されて数年、このような事件は起きなかった。それに彼自身森の中を熟知していることも踏まえると、うまく逃げているとも言えますが、どちらも断定することはできません」

女騎士「私もそう思うな。彼はあくまで疑いの線だ。確証がなさ過ぎる」

ミーシャ「女騎士様は、彼を疑っていて?」

女騎士「可能性としては、だがな。しかし、接触して話もできていない相手をそうと決める気は無い」

 その言葉を聴いて、ミーシャは一つ提案するように。

ミーシャ「それなら、ロドという少年にお会いするといい。コボロの村にいる子供で、獣使いと接触したことのある者です」

女騎士「ほう、それなら今日あったな。なんだ、子供だからと話を聞かなかったのは誤算か」

 女騎士の反応の仕方が、あまりにも自然すぎ、ミーシャは本当に知らないと勘違いした。賢者も、それを悟らせないように、無表情と動作を取らなかったことも大きい。

女騎士「良い情報をありがとう。明日にでも会いに行くかな」

ミーシャ「その方がよろしいかと。獣使いが犯人と疑われてから、彼はそんなわけがないとだけ泣き喚き、皆も詳しく聞けていませんからね。女騎士様のように、事件の途中から来た方なら、話してくれやすいと思います」

女騎士「そうか。確認はこれで以上だ」

賢者「ミーシャ君。次は従者を呼んできてくれませんか」

ミーシャ「承知いたしました。それでは、これにて」

 淡々とした様子で、扉を開けて出て行くミーシャに目もやらず、女騎士は従者の情報を読み漁り始める。

 例の一件のこともあり、聞き方によっては情報を引き出せない可能性もある。その可能性をつぶすために、入念な確認をしていた。

女騎士「……(宗教が絡むと、恐らく全うな話はできないだろうな)」

 女騎士が神を信じていないとは気づいてはいないものの、もしそれを気取られれば話自体ができないだろう。そして何より。

女騎士「……(あたしがもっとも嫌う宗教狂いと、なんで話さなきゃならないかね)」

 という、少し愚痴っぽい気持ちも沸いていることもあり、早めに切り上げられるようにしたいというのが、実際のところの本音だ。

これまで。さすがに三作品6時間近くぶっ通しで書き続けるのは疲れたわぁ・・・。

今3作品も書いてんのか

犯人わからんわぁ…

はんにんはヤス

>>554
犯人はまぁ、深く考えなくていいかと


話した作品は下ね。前にも話した奴と、完結させたのだけど。

委員長「ほんとにもう…」
委員長「ほんとにもう…」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1409421260/)

兄「風邪だ!」ゴホゴホッ 完結済み
兄「風邪だ!」ゴホゴホッ - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1412443536/)

>>555
君は嘘が下手だな

「失礼いたします」

ノックとその声がした後、扉が開けられ従者が入ってくる。その様子はいつも通りに見えた。

賢者「そちらにかけてください。従者君」

従者「畏まりました」

促され静かに椅子に腰掛け、穏やかな様子で女騎士と対面する。

従者「それで、なんの話でございますでしょうか」

女騎士「当然、ワールフについてだ。事件発生を未然に防いでいる今の内に、捕らえたいと考えている」

従者「なるほど、ご協力できることであれば致しましょう」

女騎士は、先ほどから置きっぱなしになっている羊皮紙を、手の平で指しながら。

女騎士「ワールフが一日に二度目撃された時の話だ。君はコロニアの村で、ミーシャがワールフを追跡するところを発見した」

従者「そうです。彼の魔術の波動を感じ駆けつけてみると走る彼を見つけました。そしてその先にはワールフらしきものをみたのです」

女騎士「らしきとは?」

従者「彼を見つけた段階でかなり距離が離れていたことや、ほとんど新月の夜でしたから、影しか見ていないような状態です」



姉さんハァハァ

>>562
姉「あらあら、物好きもいたものねぇ」

メイド「お綺麗ですからね。仕方がありません」

姉「まぁ、折角だから魔導技術の実験にご協力いただきたかったんだけど」

女騎士「あ、姉様。不埒な輩は拘留して参りました」

姉「そう。じゃあ三人でお茶にしましょうねぇ」

女騎士「そう、か」

その言葉に納得とも疑いとも取れない微妙な反応を女騎士は返した。

従者「何かございましたか?」

当然、従者も気になり問う。

女騎士「いやなに、君の前にも二人ほどな話を聞いているんだが…。村人よりは信用できそうな君達でさえも、ワールフの話は不確かに感じてな」

従者「ほぉ」

女騎士「君はどうおもう?」

従者「これだけ多数被害や目撃者が居て、はっきりではないものの私も見ています。居ないわけがありません」

女騎士「それもそうだな。知りたかったのはそれだけだ。時間をとらせてすまない」

従者「いえ、お気になさらず。失礼いたします」

賢者「従者君、悪いがロベルを呼んできて貰えるかな?」

従者「畏まりました。それでは」

女騎士は従者が出て行ったのをみた後、静かにため息をついた。

その後は、疑いはないものの、特徴的な事件に関わっている者達と女騎士は面談が続けられた。

女騎士「(収穫はあったな)」

使った書類をまとめながら、女騎士はそう考えていた。

賢者「どうでしたか?」

女騎士「そうだな、ある程度は掴めてきてはいるが、ワールフそのものは闇の中だな」

話しながら、女騎士は賢者にアイコンタクトする。意味が分かった彼はそのあとワールフについて聞いてくることはなかった。

残念ながら、犯人がここにいる可能性が高く、何が仕掛けられているかわからない以上、安易にワールフについては話さない。それも事前に賢者へ要求されていた。

その後、女騎士は部屋に戻り聴取した内容を纏めていた。

はっきり見たとする人間から聞き出した情報で、基本的に共通しているのは、凶暴な獣人であるということだが、どういうわけか特徴が一致しない。長い耳があった、赤い眼をしていたとそれぞれだ。

女騎士「(つまり、例の魔術に接触した、それぞれがイメージするワールフを、見せられていたということだな)」

姉の現場検証の話を合わせれば、納得できる話になる。

「失礼いたします」

ノックの後、そう言ったと同時にフィリアが入ってきた。

女騎士「君は……、フィリアか。どうしたんだ?」

フィリア「少しお話が、座ってもよろしいですか?」

女騎士「構わない。それでどうしたんだ?」

先ほどの聴取とは違い、フランクな態度で女騎士は接する。

フィリア「その、女騎士様は我々を疑ってるんでしょうか?」

女騎士「? どういう意味だ?」

フィリア「あ、いえ。深い意味はないんです。ほかの方も呼び出されたと聞いて、ギルドが疑われているかと思いまして」

両手をパタパタと振り、取り繕うように振る舞う。

ここまでかな。

あと、どこかに新作も転がってるよ


委員長も好きです♪

このスレの読者拘留されすぎてもういないんじゃねーの?ww

乙、まとまった量の投下ありがたいです



何度拘留されようと
何度実験のモルモットにされようと

何度でも
姉さぁぁぁん!!



紳士的に先輩憲兵を応援する俺に死角はなかった

>>570
両方見てるのか、ありがとう

>>573
書き溜めしてないから、バラつきあるけどねぇ

>>571-572
「またお前等か」

「う~っす、世話んなります」

「またハァハァやらかしたんだろ? いい加減懲りろよ」

「反省してま~す」

「とりあえず明日には出すから、静かにしてろよ」

「そんで看守さん」

「うん?」

「そろそろ新作の春画まだ?」

「最近忙しい。お前等が大人しくなりゃ時間もとれるが」

「へ~い。皆寝るべ寝るべ」

「……(これバレたら、首跳ねられるかな)」カリカリ

>>574
姉「ふぅ」

女騎士「疲れた様子ですが、何かありましたか」

姉「いえねぇ、検体に率先してくれる人がいるんだけど。変わり者でねぇ」

女騎士「といいますと?」

姉「実験後、他の人は大丈夫なんだけど、その人だけはセクハラまがいになるのぉ。変な話でしょう?」

女騎士「な!? よろしければ私が直々に説教を」

姉「いいのよぉ、今度はある実験に協力してもらうから」

女騎士「それは?」

姉「欲望を全て無欲にさせる実験」

女騎士「……、ちゃんと戻せますよね?」

姉「大丈夫よぉ……。多分ね」ボソリ

女騎士「?」

>>575
女憲兵「先輩ばっかり人気。何が足りないんすかねぇ」

先輩憲兵「頭じゃないか」

女憲兵「私バカじゃないっすよ!」

先輩憲兵「それは耳を疑う言葉だ」

女憲兵「意地悪っす、皆嫌いっす」イジイジ

先輩憲兵「この程度で拗ねてどうする。そんなんじゃ聖騎士の位も夢のまた夢だぞ」

女憲兵「わかりました。聖騎士になるため、モテる女になるっす」

先輩憲兵「やっぱりお前はバカだ」

女憲兵「う~」イジイジ





いや、酒飲んでる間に、今までにないコメ数で焦ったよほんと。

さて書き始める前に訂正を。

>>352の訂正
×憲兵隊も女騎士の気迫に押されるように、魔物への突撃を始めた。

○憲兵隊も女憲兵の気迫に押されるように、魔物への突撃を始めた。


見直したら出てきたよ。ちくせう。

女騎士「フィリア、取り繕わなくていい。君の心配はよくわかる」

フィリア「……」

女騎士「私は外部から今回の件に関わった者だ。それだけに、目の前に提示されている情報だけを鵜呑みにするわけにはいかない。調べられる情報をすべて洗い出し、起きている事件に対処するのも騎士の役割だからな」

フィリア「はい」

女騎士「そのためには、今回の防衛をかってくれている魔術ギルドの者にも、話を聞く必要はあった。たまたま、今回は事件発生が下火になり、時間を取る余裕もあっただけのことだ。いらぬ心配は必要ない」

 諭すように優しい言葉を意識して、話しかける。フィリアも、それを静かに聞いている。

女騎士「……、ただ、君がそうやって私に話へ来たということは、何か思い当たる節がありそうだね」

フィリア「あ、いえ」

女騎士「こういうと悪いだが、君はあまり嘘を得意とはしていないだろう?」

フィリア「あ、その、えと」

 自身にも自覚はあったのだろう。そう言われると、フィリアは俯いてしまった。

女騎士「……、外に出ようか?」

フィリア「はい…」

 女騎士は立ち上がり、行こうと手でジェスチャーする。フィリアもそれに従う形で、部屋の外に出る女騎士の後ろを着いていく。

 日はやや傾きかけ、吹く風もこの地域に冬をもたらすように、肌寒さを感じる。穏やかでありながら、厳しい自然はざわめく心を平坦にする。

女騎士「ここまで来れば、聞く者もいないだろう。ここいらで落ち着くとしよう」

フィリア「女騎士様、その」

女騎士「ゆっくり、何を話したいのかまとめるといい。私は待つ」

フィリア「すいません…」

 話すべきかの葛藤があることを見抜き、フィリアの心がまとまるのを女騎士は待つ。

フィリア「……。本当のことを言うと、私はギルドの皆さんを疑っています」

女騎士「その理由は?」

フィリア「女騎士様が言った、ワールフが魔導を使えるんじゃないかって話。最初は私ももしかしたらそう思って…、いえ、そう思いたかったんです。でも、ワールフの聞いてることを自分なりにまとめると、自分が見たワールフはそんなことができるようなタイプじゃないし、それならもっとも答えに近いことと言えば…」

女騎士「身内、だな」

フィリア「でも理由がわかんないんです。これが村同士のいさかいならわかります、今まで神聖イマキルペセと正グリド教の争いが絶えなかった。そのことにここの魔術ギルドとして関与してません。だって、近郊の銀山から取れる上質な銀を、加工して各支部へ搬送するのが、ここの任務で…」

 わかんないんです。もう一度そういった後、フィリアの顔には暗い影が落ちた。

女騎士「ここに生活する者ではない以上、どういうこの事件が起きる前、どのような状態であったかはわからない。しかし」

フィリア「しかし…?」

女騎士「どんな理由があれ、もうこの件に弁明の余地はない。いわばこれは大量虐殺だ。力を持たぬ民に、残虐な方法を用いて殺害を続けた人間が、普段どんなに優しい人間であったにしても、裁かなければならない。それによって、どんな結果を招いたとしても、私はこの事件を解決する義務がある。ただ、言えることはある。何が起こったとしても、フィリア、君は何も悪くない。君が、村の人間を守るために動いていた事実は、どうして変えられるというんだ?」

フィリア「女騎士様…」

女騎士「最善は尽くす」

 そう言って、ポンとフィリアの肩に手をやり。

女騎士「背負い込むな、魔術ギルドの誰かが犯人だとしても、それ以外の人間が常駐してる兵と同等に命を張っていることは、私が保証する」

フィリア「ありが、とう。ございま、す」

女騎士「泣くな。私も女の涙は姉様から武器だと聞いている。なら、それは必要なときに、使わないとな」

 優しく、すべてを包み込むような母のような包容力で、女騎士は慰める。

フィリア「すい、ません。こんな、たかが一介の魔術師にそのような言葉を、かけていただいて」

女騎士「その言い方は私は嫌いだな。魔術ギルドに入ることも、騎士になることと同様厳しい道だと聞く。自信を持つんだ、君は間違っていないのだからな」

フィリア「はい」

 それでもこぼれ続ける涙が収まるのを、女騎士は静かに待つことにした。

女騎士「落ち着いたか?」

フィリア「はい、ありがとうございます」

女騎士「それはよかった…。では、悪いが話を続けよう。君の迷いは、疑っている人間によるものと思うが、誰だと思っているんだ?」

フィリア「………、賢者様、です」

女騎士「それはどうしてまた?」

 想定はしていなかった人物だけに、素直に疑問が口に出た。

フィリア「賢者様は治癒魔術を専攻されています。しかし、他の魔術が我々より劣っているというわけではありません。この事件は、きっと幻覚や転移に該当する魔術が使われていると思います。ただ、それだけで私達の目をごまかせるとも思えない…、ならすべて総合して使いこなせる賢者様なら、きっと…」

女騎士「なるほどな。確かに彼は調べるには値する理由もあるということか」

フィリア「賢者様は多忙ですから村の警護の任は外れています。それは、アリバイも存在しないことになって、しまいます」

 こんなことは言いたくない。それでも、言わなければならないという悲痛な様子でフィリアは言葉を続ける。

フィリア「ありえないって思ってるんです。思ってても、でも、該当しそうな人間といったら、賢者様ぐらいしか…」

女騎士「ありがとう。確かに、この件でトップを務める者達は考慮に含んでいなかったことも事実だ。認識は改める必要はある」

フィリア「もし、もし、賢者様が犯人だったら。賢者様はどうなるんですか」

女騎士「それは誰でも結論は変わらない。調書が行われたうえ、斬首に処されるだろう」

 グッと、フィリアは唇を噛んだ。

女騎士「フィリア、君の発言で全て決まるわけじゃない。意見を言っただけのことで、賢者が犯人であると決まったわけでもない。可能性が出てきただけに過ぎないのだからな」

フィリア「はい」

女騎士「正直、私は賢者は犯人ではないと思っているよ。少しばかり付き合いがある者だからな」

フィリア「そうなのですか…?」

女騎士「…あぁ、だから賢者の人となりは知っているつもりだ」

 だからこそ、賢者の疑いも最初からありえないと、会議の際に女騎士は説明している。

フィリア「…。優しい方です。何よりも、誰よりも」

女騎士「そうだな。だから君のように今回の件、心を痛めているようなやつだ。それがあんなことをしでかすとすれば、賢者なりの相当な理由がなければならないだろうな」

フィリア「相当な理由ですか」

女騎士「そうだな。これはあいつを脅して動かすとすれば、身内でも人質に取るだろう」

 笑わずに、冗談交じりにそう言った女騎士に対し。

フィリア「……。賢者様ならそうでしょうね」

 本当にそう思うフィリアは、寂しげにつぶやいた。

女騎士「……。重い話が続くのはなんだ。フィリア、何か今回の件以外で話そうじゃないか」

フィリア「あ、はい」

女騎士「では、単刀直入に聞くが、賢者のことが好きなのか?」

フィリア「え、へ?! 突然なに聞くんですか!」

 思った以上の同様に、女騎士も少し動揺する。

女騎士「え、違うのか?」

フィリア「ちち、いや、そうじゃなくててですね」

女騎士「なんだ、お似合いだと思っていたのに」

フィリア「お似合いとか、そうじゃ、え、お似合い!?」

女騎士「そうだぞ?」

 パニック状態のフィリアをよそに、女騎士は何を当たり前なという態度を取る。

フィリア「そんな、その、立場違います」

女騎士「好きになることに、立場は関係あるのか?」

フィリア「ありますよ! 自分なんかが、その」

女騎士「二人の子供は、苦労性だけれど才に恵まれた万能型な子が生まれるだろうなぁ」

フィリア「話が飛躍しすぎですよ!」

 子の話にまだ進み、フィリアは顔をこれでもかというぐらいに顔が真っ赤になっていく。

>>588訂正

×子の話にまだ進み、フィリアは顔をこれでもかというぐらいに顔が真っ赤になっていく。

○子の話にまで進み、フィリアは顔をこれでもかというぐらいに顔が真っ赤になっていく。

女騎士「私でよければ、式の段取りなど立ててやろうか?」

フィリア「からかってますよね? 女騎士様からかってますよね!?」

女騎士「なんでからかう必要があるんだ。本当にお似合いだと思うから、話しているのに」

フィリア「今日、会ってばかりなのに、なんでそう思えるんですか!」

女騎士「さぁなぁ。強いていうなら勘ではあるが。好きなのは間違いないんだろ」

 断定的な物言い、しかし言い当てられていることにフィリアは言葉を失ってしまう。

女騎士「その様子だと成就は難しそうだな」

フィリア「あの、ですね。その、好きですけど…」

女騎士「そう素直に言えば、賢者も受け止めると思うがな。あいつは言わないとわからないタイプだ」

フィリア「それも、その…。知ってはいますけど」

女騎士「ライバルでも多いのか? まぁ、多そうなやつではある。気づいてはまずいないだろうけど」

フィリア「…はい」

 隠し立てもできなくなったフィリアは、恥ずかしそうに俯いている。

女騎士「まぁ、何にしても私は君を応援するとしよう。うまくいったら話してくれると嬉しいかな」

フィリア「こ、ここだけの話にしてくださいよ?」

女騎士「君が望むならそうしよう。冷えてきたな、戻ろうか」

フィリア「あ、はい。わかりました」

 魔術ギルドに戻るため、歩き出した女騎士に、フィリアは着いていく。

女騎士「(これで楽しみが増えたぞ~♪ この二人ならうまくいくだろうしな)」

フィリア「(なんでわかったんだろ。いや、確かに疑ってるという話の時に泣いちゃったけど、でもそれって信頼する部下の涙に見えなかったのかな。う~)」

 ただ、帰る道中にそれぞれ思うことは、もはやワールフのことなどなかったかのようだった。

今日はこんなとこかな。重い話はどこいったんだろうね。

順調な旅で何より

女騎士優秀過ぎワロタ
頑張るからペロペロさせてくんないかな

女騎士のすぐ誰かと誰かをくっつけたい症がほっとけないレベルなので僕が女騎士とくっつきたいです

>>593
水戸黄門みたいな道中記といえば、旅かもしれない

>>594
メイド「戦いは大将軍(だんな)様、戦術や政治を兄(おにい)様、社交や教養を姉(おねえ)様。以上、各部門でトップクラスの人間に教わった訳ですから、自然と優秀ですよ。女騎士様は」

大将軍「珍しく彼女を褒めるね、メイド」

メイド「優秀ですが、ハァハァやらをされたら拘置所で毎度毎度説教するのは、どうかと」

大将軍「優しいからな。ハァハァなどしているぐらいなら、出来ることをしろと言いたいのだろうさ」

メイド「今回は頑張ったらペロペロさせろと言われて、無言で腰を掴んで後ろに投げた後、引き続きなにも言わず引きずっていきましたよ」

大将軍「そう、か(何か逆鱗に触れたんだな)」

>>595
女騎士「すまないが、君との子はあまり優秀にはなれそうにない。残念だがお断りさせてもらう」

メイド「前から思ってたんですが、具体的な子の話をされますよね」

女騎士「見ていればわかるだろう?」

メイド「わかりませんよ」


女騎士「?」

>>585の訂正
×女騎士「ここに生活する者ではない以上、どういうこの事件が起きる前、どのような状態であったかはわからない。しかし」

○女騎士「ここに生活する者ではない以上、この事件が起きる前、どのような状態であったかはわからない。しかし」




寝落ちしなければ書くやも。残業続きで疲れてて保証無いけど

おつかれさま!

>>600
ありがとう。意識あるうちに書こう。

二時間空いたら寝落ち

フィリア「(眠れない)」

女騎士とギルドに戻り、一通りすませてからベッドに潜り込んだが、フィリアの目はさえていた。

フィリア「はぁ」

それもそうだ。ここのギルドに来てすぐ、賢者に一目惚れした彼女は、立場を考えて誰にも話さず胸の内に秘めていた。

なのに、今日本当にあったばかりの女騎士に見抜かれたことが、何より彼女を動揺をさせた。

フィリア「聖騎士の位は、伊達じゃないってことかな」

女騎士は有名人だ。魔術ギルドの人間もたまに噂話に出るほどに。

魔導を目指す者からすれば、それを使うことが出来ない女騎士は興味の対象にはなりえない。

しかし、女騎士が持つ圧倒的なほどの対魔導耐性は別の話だ。

フィリア「(魔術〔きせき〕を無意識レベルで否定しているからこその、本当の奇跡)」

人間は誰しも奇跡を信じる。だから、そこらの人間でも、使い方さえ習えば、程度はあるが使用できる。

教えても出来ないということは、奇跡というもの自体が、その人間とって有り得ないことという認識しているということ。

現実を厳しく見据えているそんな人間ということになる。

フィリア「(だからこそかな。魔術に頼らなくても、人を見抜く力に長けてる)」

魔導の力は、間違いなく強力だ。しかし、頼り切ることで魔導、特に魔術に『呑み込まれる』者は、後を絶たない。

一定レベルを越えると、魔導は姿を変える。使い手を補助するものではなく、使い手を強力な力で誘惑してくる。

その果てにあるのは、自身が持つ許容量を越えた魔導の使用による、廃人。

だからこそ、女騎士の持つ対魔導耐性は、魔導が持つ副作用や反動に対して有効な対策になり得ると、考えられている。

その為、その協力をする代わりに、各魔術ギルドの資料を閲覧できたり、施設の利用を女騎士は許可されている。最も、魔術ギルドの命である資料に関しては読まれても使うことができない、というのもあるのだが。

フィリア「…よくよく考えれば、ものすごい人に話しに行っちゃったな」

魔術ギルドの用語で言うなら、研究対象Aクラスに匹敵する人物。普通、そういう研究対象は下級ギルド員はお目にかなうことすら難しい。

フィリア「(女騎士様は良い方で助かったけど、普通なら無礼扱いだよなぁ)」

そう考えると、大変なことをしたと思い、フィリアの目はますますさえていった。

フィリア「ダメだ、食堂で何か飲んでこよう」

ベッドから出て、寝間着の上からストルを羽織り、部屋を出る。

フィリア「(そういえば賢者様は、街にでかけられたんだっけ)」

賢者の部屋の前を通ると、いつもは遅くまで研究していて灯りが漏れているのだが、暗いことでそのことを思い出す。

フィリア「(確か、各支部への通達だったかな。怖いから早く戻ってきてほしい)」

フィリアが、このワールフの件に協力しているのも、賢者のために他ならない。

それだけに不在である今は、心細かった。

フィリア「ふぅ」

冷えた水を飲み干す。緊張で火照る身体に、冷気が流れ混ざっていく。

フィリア「(戻ろう)」

少しだけ気分転換になったおかげか、気は落ち着いてきた。

食堂を出て、玄関ホールの近くに来た時、わずかな声が、フィリアの耳に届いた。

フィリア「(こんな時間に、誰だろう)」

聞こえた感じからして、玄関の入り口付近のようで、パタンと戸が閉められる音も聞こえた。

窓からフィリアが外を覗くと。

フィリア「(ミーシャさんと……、え?)」

そこには、ミーシャと居ないはずの賢者が、一緒にギルドから離れていくところを、彼女は目撃した。

今日はこんなもんかなっと

フィリア「朝、か」

二人を目撃した後、フィリアは自室に戻っていた。

フィリア「(…ミーシャさん、険しい顔をしていたし、何かあったのかな)」

追いかけたい気持ちはあった。しかし、追いかけてどうすればいいかもわからず、悶々と一晩を過ごした。

フィリア「いけない、今日は資材確認のチェックの当番だ!」

慌てて寝間着から着替え、魔術師用のローブを羽織り、自室を慌てて飛び出す。

フィリア「(ね、眠い)」

ほとんど一睡もしていなかったフィリアは、フラフラとしながら資材確認を行う。

資材の多くは銀、目的に応じ加工した銀が、無断で持ち出されていないか、劣化していないかの重要な仕事となる。

従者「大丈夫ですか、フィリア」

フィリア「あ、申し訳ありません。従者様」

従者「何かありましたかな?」

フィリア「いえ、昨日の呼び出しの件が気になって…」

その言葉に嘘はない。だから従者は信用したように。

従者「まぁ、気分が良いものではありませんでしたからね」

と言って、視線を落とした。

フィリア「女騎士様は良い方みたいですが…」

従者「そうですね。ん、これは…」

何かに気づいて加工した銀を手に取り、従者は何かの魔術を使用した。少しだけまばゆい光が銀から発せられ、すぐに元に戻る。

従者「劣化していますね」

そう言ってフィリアに銀を手渡す。見ると少し黒ずんでいるところがあった。

フィリア「本当ですね」

従者「ここの保管状態が悪いのか、加工班の作業が雑になっているのか。最近多いですね。とりあえず、私が修復しておきます」

受け取るように手を出してきた従者に、フィリアは銀をそこに乗せて返した。

従者「だいたいの確認は終わりましたし、フィリアはもう戻って休みなさい」

フィリア「すいません」

従者「気を安らかに。神のご加護があらんことを」

印を軽く切った従者に、同様の動きでフィリアも返して部屋の外に出る。

フィリア「従者様の言うとおり、少し休もう」

そのまま自室に向かおうとすると、ギルドのメンバーが慌ただしく走り回っている。

「あ、フィリア! 従者様は資材室!?」

フィリア「えぇ、さっきまで、一緒に資材確認してたけど」
「ありがと!」

フィリア「何かあったの?」

「ミーシャさんが殺されたんだ!」

それを聞いて、フィリアの頭に、あの時見た二人が流れ込んだ。

こんなとこかなっと

姉「背中から心臓部分を狙って一突き、ねぇ」

フィリアがギルド員から場所を聞き出し、急いで走って向かうと姉が現場の検証を行(おこな)っているところだった。

フィリア「ミーシャ、さん」

地面に突っ伏した形で倒れているミーシャを見て、フィリアは言葉を失う。

姉「ギルドの方かしら?」

フィリア「…、はい」

姉「お悔やみ申し上げるわ。しかしこの方は、なんでこんな所にいらしたのかしらねぇ」

その言葉に、フィリアはわずかに反応した。

寝てしまった。余裕あれば、夜ぐらいに少しだけ更新予定

おつかれさま
楽しみにしてます

>>627
ありがとう

姉「…、失礼だけれど、お名前を伺ってもよろしいかしら」

フィリア「フィリアと申します」

姉「そう。フィリア、彼がここにいる理由。何か知ってる?」

フィリア「い、いえ。わからないです」

本来なら昨夜見たことを話すだけでいい。しかし、あの賢者がこんなことをするとは信じられないフィリアは、言い出すことは出来なかった。

姉「まぁ、いいわ。事実はその内明らかになるでしょうからね」

手を口にやり、何かを探すかのように現場をゆっくりと姉は歩き回る。

姉「……は……。……り………か」

フィリアは歩き回る姉を不安げに伺う。

宮廷魔術師は魔導及び魔導技術の研究の他に、貴族が暗殺された場合などの重大事件に出動し、魔導用いて現場の検証を行う調査官の役割もある。

当然、フィリアはその事を知ってる。だからこそ、賢者に関わるものが見つかったら、そんな思いでいた。

姉「うん?」

死体のそばにあった林に近づいた時、何かに気付いたようにしゃがみこむ。

姉「ふぅん、これが凶器ね」

そう言って小さい布を取りだし、持ち上げたそれは。

賢者が使っていたペーパーナイフだった。

姉「血のりと砂がベットリね。証拠品入れなんて持ってきてないし、どうしたものかしら」

慣れた様子で凶器と思われるそれについて、姉はどうするか悩んでいた。

姉「仕方ないわ。現場保存で元の位置に戻しましょう」

フィリア「……」

どう声をかければいいか、フィリアはわからなかった。

女騎士も言っていたが、自分も嘘が得意じゃないのはわかっている。そして、目の前の相手は現場検証に慣れた、敬愛する賢者よりも優れた魔術師。

昨夜見たことを悟られないようにするにはどうすれば、そのことに思考が空回りし、ギルドへ戻るという選択肢すら浮かばなくなっていた。

姉「フィリア?」

フィリア「は、はい!」

いつの間にかそばにいた姉が、間近で自分の顔を覗いている。

それは、仲間が殺されたことに同情しているというより、疑いを持って注視している表情に、フィリアには見える。

姉「ねぇ、フィリア。何か知っているのかしら」

フィリア「何を、です?」

姉「ミーシャが殺された、その理由かしら」

フィリア「わ、わかりません。気難しいところは御座いましたが、恨みまで買うような人じゃ…」

それに、賢者がミーシャを殺したとするなら、理由が浮かばない。

二人が犬猿の仲、というわけでもなかったのだから。

姉「ふぅん。では女騎士がギルドの方々と話をした後、変わった様子はなかった?」

フィリア「私が知る範囲では、ないです。でも、状況が状況で、皆変だったと言えばそんな気はしてきます」

フィリアも心配になり、女騎士に直談判したほどだ。皆が変だったと言える。

姉「それも言えるわ。ただ、だからこそ厄介なことにはなりそうね」

フィリア「厄介なことってどういうことですか?」

姉「…、答えはその内やってくるわ。考えれば、すぐに辿り着く解よ」

そう言った後、考えるような仕草を取り、姉は沈黙した。

姉「女騎士ちゃんもしばらく戻らないだろうし、しばらく現状維持ね」

そう言いながら、懐から製本を取り出して。

「召喚(強制召集)」

魔術を唱えながら製本、いや魔術本を振ると紙が一枚フワッと飛び出し。

「はむは?」

姉「事件現場維持活動をお願いね。助手」

助手「ほむはないふ」

姉「せめて口のパンを外してから、話せないかしら?」

何故か気付いたように、助手と言われた男はパンを手に取り。

助手「折角の休日なのに、いきなり呼び出しとかやめてくださいよ。しかも高価な魔術本使ってまで!」

と不満を口にした。

フィリア「(なんだか、この2日間頭がついていかないことばかり)」

対象者の許可なく召喚する魔術は、両手に収まるぐらいの人間しか扱えない。

フィリア「(それに、飛び出た紙には何も書かれてなかった)」

膨大な魔力を数十人の魔法使い、魔術師がそそぎ込むことで出来る白紙の魔術本は、さっきの一枚だけで金貨5枚分の価値がある。

通常、魔術本や宝石は事前に封じ込めたあるいは記述した魔術を起動するものに過ぎない。

しかし、その欠点は魔術を組み込んだ時点で封じ込めた魔力しか力を発揮しないことにある。

魔力の量は、当然多ければ多いほど効果の度合いを高める。しかし、同時にそのコントロールは難しさを増し、暴発、暴走、果ては魔力が自身に流れ込み廃人と化す。

魔力だけ込められたら純粋な魔術媒体は非常に強力だが、扱える者はごくわずかだ。

フィリア「(当たり前みたいにやっていたけど、私がやったら間違いなく…)」

ありきたりな未来を予想し、フィリア少しだけ身震いした。

助手「で、ここの現場維持ですか」

姉「そ、女騎士ちゃんにも見せなきゃならないからね」

助手「妹思いなことで。まったくかったりぃなぁと。じゃ、愚痴はここまでで、仕事しますか。凍結(――イメージキャプチャ、――イメージアウトプット、――スタート)」

助手「現場維持の手配は完了ですよと」

姉「ありがとう」

助手「それでつかぬことを聞きたいのですがね?」

姉「ここはコルサカよ」

何を聞かれるかわかっていたように、姉は答える。

助手「でしょうねぇ、姉(しゅにん)研究ほっぽいてここにいらっしゃるわけですから」

姉「あら、正式な要請でここにいるんだけれど」

助手「女騎士ちゃんに会うの~って、楽しそうに言われて信じられますかってんです」

姉「被害妄想は良くないわよ?」

助手「じゃあ、早く現場にお戻りくださいやがれ」

姉「それはゆっくり考えるわ」

助手「絶対考える気、ないですよね」

二人のやりとりを見ながら、どうすればいいか考えてるフィリアに。

姉「ごめんなさい、フィリア。この方は私の仕事サポートしている助手よ」

フィリア「よ、よろしくお願い致します」

助手「あ~、堅苦しいのは面倒なんで、かしこまらないで欲しいかな」

姉「あと、ナンパが趣味だから気をつけてねぇ」

助手「悪意のある補足、ありがとうです」

>>638
訂正

×助手「じゃあ、早く現場にお戻りくださいやがれ」

○助手「じゃあ、早く研究室にお戻りくださいやがれ」



そしてさすがにもう寝るよ…

早朝までおつかれさまでした!

>>634
修正

×魔術を唱えながら製本、いや魔術本を振ると紙が一枚フワッと飛び出し。

「はむは?」



○魔術を唱えながら製本、いや魔術本を振ると紙が一枚フワッと飛び出し。

「はむは?」

一瞬まばゆい光を放った後、紙の代わりにパンを咥えた男が現れた。

>>640-642
ありがとう


また新キャラ出たよ。処理しきれるんかこれ。

>>645
じゃあこれの解を頼む

□+□-□+□+□□+□+□+□-□=2

□に入るのは整数一桁のみ

助手「それで、後はなにすりゃいいんですかね」

姉「今はこれだけよ?」

助手「今って、じゃあとで何がありやがるんですか」

姉「正確に言うなら、女騎士ちゃんが戻るまで、現場管理してもらうだけね」

助手「はっはぁ、この寒空でですか。クソッタレ」

口調はかなり悪いが、表情に怒りは見えない。どちらかと言えば、いつものことのようにしている感じではある。

姉「頼むわね、腕利きの貴男なら間違いないでしょうから」

助手「へいへい、都合がいい時は褒めるんだからな、まったく」

姉「じゃあ、戻りましょうかフィリア」

フィリア「よろしいのですか?」

姉「彼のことなら心配ないわ。ウチの研究所の荒事担当だからね」

なんの荒事か、と聞こうとしてフィリアは口を閉じた。

宮廷魔術師はその仕事の性質上、その内容は極秘なものが多い。

彼等が国の技術発展の一端を担っていることは間違いなく、それだけにその情報を敵国は狙う。

言わばそういう密偵に対しての対応をする人間なのだろうと、フィリアは察する。

フィリア「(つまり、現場に犯人が来た時に、捕まえる気なんだ)」

犯人、フィリアの中では凶器を含めた情報全てが、賢者が犯人であることを示していた。

誰よりも信じている賢者が、そんなことをするはずがないと思いつつも、心の片隅でそうなんじゃないかという気持ちも、フィリアには芽生え始めていた。

姉「フィリア、体調でも優れないのかしらぁ?」

フィリア「あ…、その、ここのところ寝不足で、こんな事態もあって」

姉「なるほど。なら戻ったらすぐ休むといいわぁ」

フィリア「はい、そうします」

けれど、戻って眠れる気がフィリアはしなかった。

今日はここまで

女騎士「お悔やみ申し上げる」

額に手を当て、ミーシャの亡骸へ静かに頭を下げた。

姉「優秀な人材だったようねぇ、嘆く人が多いわぁ」

女騎士「面談した時も、実力者であることはわからせる方でした。それに、何かに気づいている様子もありました」

姉「そう、危険に晒さないため聞かなかったのが、仇になってしまった訳ねぇ」

女騎士「はい。それに関しては判断を誤りました」

苦々しげな表情が、女騎士の心中を表しているように、姉は感じる。

姉「もう必要もないかもしれないけど、情報が一つ。凶器のペーパーナイフは、傷口の状況から見て、ミーシャ自身が無理やり引き抜き、残った力で林に投げたものと思われるわぁ」

女騎士「なるほど、それなら合点がいきますね」

姉「えぇ、刺しっぱなしにした方が好都合でしょうからねぇ」

女騎士「裏取りは彼にも協力してもらい、確認できました。行きましょうか」

姉「あ、その前にちょっと待ってねぇ」

姉は懐から小さなベルを取り出し、チリンと鳴らした。

すると、空間がゆがみそこから現れたのは。

助手「まふは」

今度は干し肉にかじり付いている助手が現れた。

姉「食べてないでいきますよ」

女騎士「姉様の護衛を頼みます」

助手「はいはい。てか姉(しゅにん)に護衛必要ありますかね?」

姉「あら、レディを放って危険に向かいなさいと?」

助手「あ~、わかりましたわかりました。俺がわるぅございました」

当然まったく悪いという態度ではないが、姉は咎める様子はない。

女騎士「では参りましょうか。兄様も手はずは整ったと伺ってますからね」

姉「えぇ、後は大団円と洒落込みましょうか」

助手「(しかし、この一家を敵に回すとは、相手さんもついてないねぇ)」

女騎士を先頭に、三人は室内を出、ある人物の元へと向かうのだった。

サラッとここまで


犯人は意外なあの人です(棒読み)

おつおや~

犯人は誰だろ?

女騎士は可愛いなあ

まだー?

>>658
多分、素直にその人です。


>>660
まぁ、この熊ごろしでも呑んでまったり待ってくれ


なんせ、最近取りかかろうとする頃に寝落ちしてるんだ

>>659
女騎士「可愛いと言われました」

姉「女騎士ちゃんは可愛いじゃないのぉ」

女騎士「そろそろ可愛いと呼ばれる年齢かが微妙です」

姉「可愛い娘は、いつまでも言われるものよ」

女騎士「ならいいのですが」

姉「ちょっとでかけるわねぇ……。女騎士ちゃんに相応しいか、ご協力いただかないとね」ボソッ

女騎士「? いってらっしゃいませ」

従者「ふぅ…」

フィリア「従者様」

従者「フィリア…、十分休めましたか?」

フィリア「えぇ、大丈夫です」

何か言いにくそうな雰囲気を、従者は察知して。

従者「どうしたんです? また、何かあったのですか?」

フィリア「そのミーシャさんのことでお話が…」

従者が静かに目をつむり、何か考えたそぶりをした後。

従者「聞きましょう」

優しげなまなざしでフィリアに答えた。

フィリア「実はその、昨日の晩にミーシャさんがギルドから出るのを見たのです」

従者「なるほど。しかし、それはどちらかと言えば、女騎士様達に伝えるべきではありませんか?」

フィリア「それは、その」

言葉を濁すフィリアが、理由を答えるのを従者は静かに待つ。

フィリア「…、一緒に賢者様もいらっしゃったんです」

従者「それはおかしいですね。賢者様は今ギルドを離れられています」

フィリア「見間違えだと、私も思いたいのです」

従者「それ以外にも何かあったのですか?」

フィリア「はい、現場に、その、賢者様が使ってるペーパーナイフが落ちて、いました」

フィリア耐えきれなくなったように、自分抱きしめるように腕を組み。

フィリア「私は、どうすれば良いのでしょう」

従者「……、酷な話ではありますが、やはり女騎士様にお話しした方がいいでしょう。あの方なら、尽力していただけると思いますよ」

フィリア「…………、わかりました。ありがとうございます」

従者「あえて私からは伝えません。フィリア、あなたからお伝えしなさい」

トンと、慰めるように従者はフィリアの肩を軽く触れた。

女騎士「ふむ、少し失礼する」

その様子を見ていたかのような態度で、女騎士は声をかけてきた。

フィリア「女騎士様……!」

従者「これは、どうされましたか女騎士様」

女騎士「野暮用でな。ギルド員に聞くと、従者、お前がこの時間帯よくこの崖にたたずんでると聞いてな」

従者「えぇ、ここからの眺めが好きなんです」

崖の方を向き、山に消える夕陽を見て従者は目を細めた。

寝落ちた。

多分明日当たりに続き

女騎士「フィリア、後ろに下がっていろ」

フィリア「は、はい」

女騎士からの険しい口調に、隠し事をしていたことを怒っているのだと感じ、武器は静かに従った。

女騎士「さて、従者どこから話すべきかな?」

従者「さぁ、私は女騎士様が何を言おうとしているか、生憎見当がつきませんので…」

女騎士「そうか、では端的にみこの度の騒動、犯人は貴様だな」

それを聞いた従者は、眉一つ動かさず、聞いていた。

>>668
訂正

女騎士からの険しい口調に、隠し事をしていたことを怒っているのだと感じ、武器は静かに従った。

女騎士からの険しい口調に、隠し事をしていたことを怒っているのだと感じ、フィリアは静かに従った。


携帯の予測変更って、怖いね

従者「そうですか、私が犯人であると。そのご理由は?」

女騎士「私はこの事件に関わった時点から、魔導に関わる者の犯行だと考えていた」

従者「なるほど」

女騎士「ワールフは人間に擬態するという噂があったにも関わらず、魔術ギルドの人間は単独で警備を行っていた。私はわからないが、魔力の波動は個々に違うから、擬態されても見誤ることはないということだが、そもそも、如何に個人主義が多い魔術師でも安全性は考慮するだろう?」

従者「えぇ、言われてみればそうですね」

あくまで、自分は違うという様子で従者は受け答える。

女騎士「単独で警備するのを、誰が決定したか定かに記憶した者はいなかった。しかし、ある程度こういうことに指示が出来る実力者であれば、その提案をひっそり通すことは出来る。個人主義、実力主義の魔術師達にしても、誰かと協力しあうという発想はあまりなく、プライドも傷つけることはない」

従者「いい考えですね。それだけ見れば私はだいぶ不利と言えます」

女騎士「ふむ。いつから疑っていたか気になっているだろうから言おう。会った当初からだ」

従者「それはどのようなことでですかな?」

あくまで淡々と、従者は尋ねた。

女騎士「あの晩、私がワールフを目撃し、お前に会った晩は半月だった」

従者「確か、そのはずですね」

女騎士「私は居もしないワールフを追いかける為に飛び出して、周囲を確認している時にお前は『いましたか!』、と遠くから声をかけてきたな?」

従者「えぇ、そうです」

女騎士「それが、お前を疑った理由だ」

スッと従者を腕組み、その動作が終わったのを見てから、女騎士は続けた。

女騎士「半月、確かに暗くはない。50メルほど離れた位置からでも、誰かいるのは見える。しかし、誰かを判別出来るわけではない」

従者「……」

女騎士「つまり、言い換えれば人間か、ワールフかの判断はつかない。その上、私は家を飛び出していて、かつ先ほども述べたようにワールフは議題する疑いもあった。だからこそ、どちらかであるかも判断できない状況で、安易に声をかけることは出来ない。無論、全てを企てていた犯人は、別だがな」

>>673
修正

×女騎士「つまり、言い換えれば人間か、ワールフかの判断はつかない。その上、私は家を飛び出していて、かつ先ほども述べたようにワールフは議題する疑いもあった。だからこそ、どちらかであるかも判断できない状況で、安易に声をかけることは出来ない。無論、全てを企てていた犯人は、別だがな」

○女騎士「つまり、言い換えれば人間か、ワールフかの判断はつかない。その上、私は家を飛び出していて、かつ先ほども述べたようにワールフは擬態する疑いもあった。だからこそ、どちらかであるかも判断できない状況で、安易に声をかけることは出来ない。無論、全てを企てていた犯人は、別だがな」

従者「確かに、言われてみればあれは不用心だったかも、しれませんね」

自分は犯人ではない、という態度を従者が崩す様子はない。

女騎士「先ほども触れたが、今回の件にワールフは関わってはいない。目撃されたワールフは、幻覚魔術によるものだ」

従者「そうだったのですか」

女騎士「では従者、君の証言の確認だが、ある日二つの村で同時期にワールフが目撃された日、お前は亡きミーシャがワールフと思われる影を追いかけていたと答えたな?」

従者「間違いありません」

女騎士「だとすれば矛盾があるんだ。この幻覚魔術は、一定のエリアに接触した者に発動して、その対象がイメージするワールフが見える魔術。お前が影であれ何かを見たというのはおかしいことになり、本来であれば、ミーシャは何もいないところに向かって走っていた。という証言が正しい」

従者「……」

女騎士「それと、確認できる範囲で、犠牲者を調べたところ、無くなっている部分は心臓であることも確認した」

よし、船こいでたから今日はここまで

さあ盛り上がって参りました!

俺の股間もmおいなにをするやめろ

女騎士様、不届き者は私が始末しますのでご心配なく
いえいえお礼なんて、傍に居られればそれで十分です キリッ

>>678-679

女騎士「そうか>>679、留置場にそいつの移送を頼んだぞ」

メイド「彼も同類の匂いがしますけどね」

女騎士「紳士には紳士だろう?」

メイド「変態という名の紳士って言葉もありますよ」

女騎士「?」

従者「心臓ですか」

女騎士「あぁ、堕ちた錬金術師や、召喚魔術を扱う魔術師には垂涎の素材になる。今回の件、言ったように魔導に関わるものだから、収集しているのかと思ったが、違ったよ」

従者「違うと申しますと?」

力強い動作で女騎士は従者を指差し。

女騎士「お前が信仰、いや盲信している神聖イマキルペセは、魂は胸、心臓に宿るとされる。昔、異教徒の兵との戦いの折、死んだ敵兵の心臓をえぐり、神聖イマキルペセの刻印を焼き付けた記録もある」

女騎士「そしてとある協力を得て、その心臓は朽ち果てた小屋の中に集められていた。そこは、簡素な祭壇があり、台座に神聖イマキルペセの刻印が全ての心臓になされていた」

従者「……」

女騎士「そして今までの犠牲者は全て、正グリド教を信仰し、貴様の布教に文句を付けたことのある人間だった。そう、貴様は犠牲になった村人を、異教徒として葬ってきたのだ。この推察に、まだ誤りがあるというなら、申し開きを聞こう」

腕を戻し、女騎士は従者の動向を注意深く窺う。

>>682
いろいろ無茶苦茶なので訂正

×女騎士「そしてとある協力を得て、その心臓は朽ち果てた小屋の中に集められていた。そこは、簡素な祭壇があり、台座に神聖イマキルペセの刻印が全ての心臓になされていた」

○女騎士「そしてとある協力を得て、その心臓を集められていた場所を見つけた。朽ち果てた小屋に集められ、そこは、簡素な祭壇があり、台座に神聖イマキルペセの刻印が全ての心臓になされていた」

短いけどここまで。

さて、コルサカ編もそろそろ終わりかねぇ

女騎士様と個室に二人きりなんて
従者うらやま

>>685
メイド「女騎士様と2人っきりになりたくて、皆さんあんなことするんですかね?」

占い師「私にはわかりかねますが…、そうでしょうね」

メイド「説教される時に2人っきりではありますから。良い手段とはいいかねますけど」

占い師「あれです。子供の頃、好きな教師にかまって欲しくて、悪さする心理ですよ」

メイド「したんですか?」

占い師「生憎教育課程は受けてません」

従者「ふぅ、参りましたね。今までの情報だけでも、十分裁判へ送ることができる」

女騎士「そうだな」

従者「しかし、ミーシャが殺された前夜、フィリアが賢者様といるところを見たと言っていましたよ?」

まだあがく様子に、女騎士は往生際の悪さを感じながら。

女騎士「それは私がギルド員に行った聴取で、危機を感じたお前が打った手に過ぎん」

従者「なぜそう言い切れます?」

女騎士「この時期に賢者がギルドから離れ、各支部に回ったのは、お前の情報を仕入れるよう指示したのが私だからだ」

従者「ほう」

女騎士「先ほど述べたことで貴様が犯人と断定し、その上でこの犯行の理由を確認する必要があった」

従者「それは何故です?」

女騎士「さてな、私の悪趣味ということにでもしてくれ」

一歩前に出て、女騎士は尋ねる。

女騎士「――さぁ、大人しく捕まってくれるな?」

いや、それはどちらかと言えば、命令とも言えたかも知れない。

従者「お断りしますよ。神に刃向かう異教徒よ」

女騎士「ではお前は神に責任を押しつけ、正当化する狂人。というところかな」

微量な電気が流れるような感覚が、場を支配していく。

従者「今宵は良い満月です。魔力が充ちていく」

その言葉に促されるように、女騎士は腰につけた斧を手にする。

従者「逃げさせていただきますよ。解放(眠れる信仰よ、今が目覚めの時)」

女騎士は有無をいわさず切りかかるが、同時に転移魔術も行使していて、すんでのところで逃げ切られた。

女騎士「ちっ、姉様を指揮をお願いするのではなく、補佐してもらうべきだったな」

女騎士は素早く緑色の宝石を取り出し、起動する。魔力の波紋を視覚で認識出来るようになり、その先に続くのは。

女騎士「コボロ、か」

そう言って、波紋を追って走り出した。

女憲兵「皆、どうしちゃったんすか!」

先輩憲兵「くそ、聖騎士様の読みがイヤな形で当たったな」

ロイデヤ第三憲兵隊は、コボロの村人と対峙している。

村人達の目には精気はなく、夢にとらわれているようにフラフラとしながらも、武器を持ち集団で歩み寄る。

女憲兵「皆目を覚ますっす!」

先輩憲兵「無駄だ。完全に操られて意識はない。ヤツの意のままと言うことだな」

憲兵隊は全員長い棒を構えている。無駄な死人を出さないためのものだ。

しかし、村人は操られているとはいえ、農具などの武器になるものを持っているため、緊張がはしる。

姉「布教として教えを聞かせると同時に、無防備な村人に催眠魔術をかける。この布教方法、昔は流行ったせいで大聖堂戦争を招いた禁術なのにねぇ」

先輩憲兵「少々気分が悪い話ですね」

女憲兵「とりあえず最悪なのはわかりましたっす!」

姉「そうねぇ。こんなツマらない児戯、終わらせないといけないわね」

姉が魔術を詠唱しよいとした、その時だった。

「――(神の試練)」

二匹の蛇を思わせる炎が、一直線に姉に飛んでくる。

それに気づいた姉は、炎に対して左の手のひらを出し。

姉「防御(障壁展開)」

身体を覆う光の壁に蛇は衝突し、消えた。

>>691
訂正

×姉が魔術を詠唱しよいとした、その時だった。

○姉が魔術を詠唱しようとした、その時だった。



休みだから本腰入れられるかと思ったけど、あんまし進められんかった

やっぱり四作品も平行してる場合やないな…

姉「野良犬風情が、私に魔術で挑むなんて、笑えないわねぇ」

従者「信徒達を拐かすの止めて頂きたいですね。彼等は望んで、神聖イマキルペセを信仰されているのですから」

女憲兵「ふざけるなっす! 正しく幸せに生きるのが、信心だって母さんが言ってったっす! これがそんな風に見えないっすよ!」

姉「同感ねぇ。貴方が正グリド教を憎むのは勝手だけど、人の意志をねじ曲げていい道理になると、貴男の教典には書かれてるのかしら?」

前に出ようとした女憲兵を制すように腕を出し、姉は自分の後ろに下げさせた。

従者「あなた方は何もわかっていない。世に異教が蔓延る限り、人々に平穏はないのです。私は、全ての人が幸せになるため、布教しているに過ぎません」

姉「狂信者もここまで行けば立派ねぇ。憲兵隊の皆さん、悪いのだけれど村人達を抑えていて、私が片をつける」

先輩憲兵「は! 畏まりました。お前達、死ぬ気で抑えろよ!」

女憲兵「あの人キチッととっちめてくださいっす! 行ってくるっす!」

憲兵隊から姉は離脱し、従者に優雅に歩み寄る。まるでこれから、舞踏会の相手を選ぶかのような仕草で。

姉「さぁ、大団円と洒落込みましょう?」

そう言って従者に向けて伸ばされた両腕から、色とりどりの宝石のような光弾が放たれた。

叩き込まれた光弾が土埃をあげ、満月で照らされ視界を遮る。

姉「感知(認識拡大)」

強化魔術で辺りを探る。どの道見ていた従者も、幻覚魔術の類だろうと判断し、あえて砂埃を起こし、互いの視界を遮った。

認識力を強化したことで、正面やや右手側に生命(魔術)の波紋をとらえる。動きは見せていない。

姉「攻撃(展開・光速の槍)」

唱えたと同時に、姉を中心に光の槍が円上に広がりながら降る。

従者「くっ!」

後ろから苦々しい声を聞き取り、姉が振り向くと魔法障壁で光の槍を受け止める従者の姿があった。

姉「何故、貴男が幻覚魔術を得意とするか、理解したわ」

従者が防御している様子を、我関せずといった様子で。

姉「貴男自身が、虚像なんだもの。取り繕いたくもなるわよね」

従者「ふ、ざけるなぁ!」

光の槍を弾き飛ばし。再度二匹の蛇を模した炎を放ち、姉に襲い掛かる。

姉「魔導同士の戦いは不慣れかしら。一度難なく防がれた魔術は、ただ魔力を消費するだけよ。反撃(反射光壁)」

姉は再度、今度は光の壁を前面に作り出し、それにぶつかった炎の蛇は、今度は従者に向かって襲いかかった。

今日はここまで

おつ
ねえちゃんかっけぇ

>>698
女騎士「姉様はかっこいいぞ!」エヘンッ

兄「かっこいい、うん、どちらかと言うと怖い部類だが」

女騎士「そうですか?」

兄「家族思いの妹ではあるが、時折度が――」

姉「度が、何でしょうか。お兄様?」

兄「……逃げ――」

姉「妨害(非魔導空間)」

兄「」

姉「聞かせていただけますよねぇ?」

女騎士「……(姉様怖い)」

姉と従者じゃ格が違いすぎるな

>>701
最上位職と、クラスチェンジしたばかりの上位職ぐらいに差はあるね

従者「く!」

従者は跳ね返ってきた炎の蛇をしゃがみ込んでかわす。

従者「流石です、宮廷魔術師は魔術ギルドにいる魔術師全員が、憧れと憎悪を抱くだけはあります」

姉「貴男にそれはないわね。そもそも魔術師ではなく、宣教師な訳なんだから」

従者「素晴らしい、そこまでこの短期間で調べ上げましたか」

姉「えぇ、でも安心して。私はね、いくら頭が理解してるとはいえ、こういうやり方をする人間は、やはり嫌いなの。兄様や女騎士ちゃんみたいに、手緩く生け捕りなんてしないわ。殺して、あげる」

ゾワリと、今まで感じたことがない恐怖が、従者の身体に染み込んできた。

しかし、従者は無意識にそれを恐怖とはいえ認めなかった。畏怖するのは神だけであり、それ以外は自分を含めとるに足らない存在。だからこそ、魔術によるプレッシャーと自身を誤認させた。

姉「範囲攻撃(光弾・衝撃変異)」

姉は狙いをすますように、右手人差し指を従者に伸ばし、赤色の光の弾が射出された。従者もそれに対応して、対魔術障壁を展開するが、無駄だった。

従者「な?!」

光属性の特徴は、どの魔導よりも速く、相手に衝撃を与えるのが一般的だ。

しかし、姉はその性質を一部変異した光弾を放つ。

すなわち、対象に接触した瞬間。光弾は爆ぜた。

>>704
訂正

×しかし、従者は無意識にそれを恐怖とはいえ認めなかった。畏怖するのは神だけであり、それ以外は自分を含めとるに足らない存在。だからこそ、魔術によるプレッシャーと自身を誤認させた。

○しかし、従者は無意識にそれを恐怖とは認めなかった。畏怖するのは神だけであり、それ以外は自分を含めとるに足らない存在。だからこそ、魔術によるプレッシャーと自身を誤認させた。

対魔術障壁は、魔術によって起きる結果を、無効化あるいは軽減するものだ。

しかし、発動時にその属性特有の特徴を防ぐようイメージするため、それ以外の結果が発生した場合、わずかに軽減されるだけだ。

従者は想定外の衝撃波に身体が宙を舞い、受け身もとれずに地面に転がっていった。

姉「あら、まだ生きてるのね。死ねば、神の元へ逝けるというのに、この世に何の未練があるのかしら」

爆ぜた音を間近で聞いた従者に、その声は聞こえていないし、うつ伏せで起きあがれない状態で、姉の姿も確認できていない。

しかし、感じたことのない存在感(プレッシャー)が迫ることだけは、触れているように感じ、ようやっと自身が恐怖していることを、認めた。

従者「あ……、ぐ」

恐怖に押され、身体を無理やり起こすと、この村から少し離れたところで、ぽつんと生える木の側に小さな人影が見えた。

従者「(……神様、貴方の思し召しに感謝いたします)」

静かに気取られぬよう、歪みよどむ頭を無理やり強制するようにイメージを整えていく。

姉「範囲攻撃(光弾・衝撃変異・二連弾)」

今度は両手の人差し指を使って、従者を狙い撃つ。言葉の通り、生かすつもりはない躊躇なき攻撃。

従者「―――――――!」

そして二つの赤い光弾は、設置と同時に爆ぜ、先ほどとは比べものにならない衝撃が足下をはしり、砂埃が舞い上がった。

今日はここまで

>>707
訂正

×そして二つの赤い光弾は、設置と同時に爆ぜ、先ほどとは比べものにならない衝撃が足下をはしり、砂埃が舞い上がった。

○そして二つの赤い光弾は、接触と同時に爆ぜ、先ほどとは比べものにならない衝撃が足下をはしり、砂埃が舞い上がった。




最近誤字多いなぁ

砂埃の中を姉は歩く。着弾の瞬間に感じられた魔導の軌跡を追って、先ほど従者が見た木まで歩いていく。

姉「ふぅん。随分と堕ちたものね」

そこには、あのロドという少年の首筋にナイフを当て、人質にしている従者の姿があった。

従者「は、はは。流石に罪なき子供を見捨てられないでしょう?」

姉「どうして? その子は私には縁(ゆかり)がない。死なれたところで、なんの感情も湧かないのだけれど」

狂信者の彼ですら、当たり前の顔をしている姉の表情を見て、息を呑む。

どこからか遠吠えが聞こえ、遠巻きに村人を抑える憲兵隊の怒号が響く。

いつも仮面のように張り付いた落ち着いた態度はなく、今更人間らしい焦りが額ににじむ汗と共に溢れ出す。

従者「貴方は…」

言葉が出ない。今更正気かと言える立場ですらない。

抑え込まれたロドは、恐怖で暴れることも、叫ぶこともなく固まっている。いっそ、目の前の存在が最悪だと泣き叫んでくれれば、従者の心に余裕もできただろう。

姉「ごめんね坊や。出来れば苦しくないように、するから」

今度は両手を合わせた状態で、人差し指が従者を狙う。

間違いなく、姉は少年ごと自分を殺す気なのだと、従者は感じた。

従者は予感している。爆破に対する対魔術障壁を展開したところで、質が違いすぎることを。

物理的に少年を盾にすることも考えたが、結論は無意味と断じる。

それならば、素早く移動して回避するしかない。従者は、それには邪魔な少年を投げ飛ばし、詠唱(イメージ)しようとして。

姉「――嵌めるのは得意でも、嵌められるのは、苦手かしら。精密攻撃(光弾・速度強化)」

姉が魔術を発動したと同時に、光弾は従者の肩を貫いて、そのまま後ろに倒れさせた。

更に素早く懐に入れた白紙の魔術書を取り出し、魔術を発動して、少年、ロドを自分のそばに召還させる。

ロド「あ……、う」

姉「怖がらせてごめんなさいねぇ。あぁしないと、あのおじちゃんが貴男を離してくれそうなかったからぁ」

そう言いながら、ロドの頭を、姉はまるで母のような笑みでたたえながら撫でた。

その後、同じ笑みを浮かべているのは確かだが、再度従者に向けられたそれは、舞踏会で不気味な笑みを浮かべるマスクのように、肩を抑えながら立ち上がる従者の目には見えた。

女憲兵「もう限界っす、先輩~!」

先輩憲兵「口を動かしてないで集中しろ! 姉(あのかた)がヤツを捕らえるまで、持ちこたえさせるんだ!」

女憲兵「うわ~ん、皆もとっとと目を覚ませっす~!」


遠くからは、憲兵隊の泣き言が聞こえてくる。

>>714
訂正

×姉「怖がらせてごめんなさいねぇ。あぁしないと、あのおじちゃんが貴男を離してくれそうなかったからぁ」

○姉「怖がらせてごめんなさいねぇ。あぁしないと、あのおじちゃんが貴男を離してくれそうになかったからぁ」

姉「あちらも大変そうねぇ。それでは従者さん、この宴はもうそろそろおしまいに致しましょう?」

従者「…、ふざけるな。ふざけるなあ! ここの連中に、正ギルド教の連中に、罪を認めさせるまで、死ぬわけにはいかないんだ!」

恐怖を吹き飛ばすように、声を荒げる。

従者「神よ! 神聖イマキルペセ以外の異教徒に、その威光を示すため、我に力を、我に力を与えたまえ!」

そしてその言葉に呼応するように、従者の魔力は全身を駆け巡る。

従者「炎(神に仕えし二体の蛇)」

今までとは比べものにならない。まさに大蛇と言える炎が、姉に迫り。

姉「愚かな人……」

そう呟く姉を飲み込んだ。

今日はここまで


姉さんがジト目だった場合ドストライクな我

>>719-720
基本に大まかなイメージだけ決めてて、細かい容姿は考えてないのよね
(理由あって目立つ部位つける以外は)

なので基本は読者のイメージに任せてる。

ちなみに姉のイメージはほんわりふんわり怖い

数秒間姉が居た位置を、灼熱の二体の蛇がなぞる。

全身に溢れる魔力に身を包む従者の顔は

――憎しみに歪む。


女騎士「ロド、姉様、ご無事ですか」

姉「ありがとう、女騎士ちゃん。でもあの程度の魔術なら、貴女が盾になるまでもなかったわよぉ?」

女騎士「いえ、何かあったでは困ります」

姉「女騎士ちゃんは優しいわぁ。貴男、ロドという名前だったのねぇ、怪我はないかしら?」

ロド「だ、大丈夫です」

二人の無事を確認し、女騎士は従者に向き合う。

女騎士「魔術による村人の扇動、最悪通りの筋書きを実行してくれるものだ」

従者「全ては神聖イマキルペセによる、幸福を全ての民に分け与えるた――」

女騎士「テメェの自分勝手な恨みに神を巻き込むんじゃねぇ!」

従者の狂気にはらんだ目が、一瞬だけ正気の光を宿す。

女騎士「あたしはテメェみたいな宗教狂いが、いっちばん嫌いなんだ。幸せを語って善人面をしやがり、そのくせ自分達に沿わない者を排除する時、神を口にして免罪符にしやがるが。全部、テメェの意志だってことから逃げやがるその姿勢が、反吐が出るんだよ!」

従者「貴様に何がわかる! 貴様に、何が!」

女騎士「たかだかガキの頃に、村から追い出されたぐらいで、こんなくだらねぇ真似しやがる野郎の気持ちなんざわかるか!」

従者「そんなことがなかった人間には、わかるまいな!」

女騎士「ハン、あたしは気付いた時から、本当の家族もいないし、裏路地で生きてたよ。別れるまで、のうのうと家族と食事して、一緒に寝て過ごしたヤツに、あたしの気持ちもわからんだろうさ!」

どちらが不幸な境遇であったか、それはどうでもいいことだ。

しかし、似たような境遇であったにも関わらず、志が違うのは、従者には宗教しか残されていなかったということなのかもしれない。

女騎士ちゃん… ホロリ

>>725
メイド「……」

女騎士「どうした。ジッと見て」

メイド「いえ、私達は似た者同士なんだなと」

女騎士「そうだな」

メイド「……、お茶淹れましょうか」

女騎士「頼む」

激昂する二人を引き留めるかのような、遠吠え、いや咆哮が村全体に響き渡る。

全員が動きを止め、それが聞こえた方に向かって視線を向けると。

銀色の毛が、突き当たりが反射する。美しきワールフが、複数の獣とこちらへ走ってくるのが見えた。

女憲兵「ウソ、ワールフは居ないんじゃなかったんすか!?」

先輩憲兵「私にもわからん、少なくともイレギュラーであるのは確かだ」

憲兵隊に同様がはしり。

従者「何故だ、貴様は私が用意した偽りの存在なのに…!」

この事件の当人すらも、その光景を理解できずにいた。

>>727
訂正。う~。

×憲兵隊に同様がはしり。

○憲兵隊に動揺がはしり。

ロド「来ちゃだめだよ! 獣使い!」

姉「え?」

女騎士「あいつが、獣使い?」

女騎士は獣使いに会った時を思い出すが、最初に会った時は普通の人間で。

ロド「皆が怖がるよ! ダメだよ!」

少年の制止も虚しく、獣使いは従者に飛びかかる。

獣使い「お前か。ロドを怖がらせていたヤツは。許さんぞ」
鋭い爪が従者に迫り、寸前で避けた従者の頬をかすめ、わずかに血が流れる。

従者「これは貴方が仕組んだものか、姉!」

姉「いいえ? 貴男の嘘が、ただ本当だったというだけみたいね。それに、幻覚魔術で怪我を負うことはない。貴男がよく知ってると思うけれど」

その言葉に嘘はない。従者はそう考えるしかなかった。

女騎士「ロド、なぜあいつが獣使いだと?」

ロド「満月が近づくと、毛だらけになっちゃうらしいんです…」

女騎士の脳裏に、二度目会った時に、ローブで身体を覆っていたことを思い出す。あの日は、そろそろ満月になろうとしていた時であったはず。

女騎士「合点がいった。しかしまずいな」

獣使いは興奮した様子で、従者に攻撃を続けている。

従者は動揺していたとはいえ、元々冷静な人間、神からの威光を思うことで限界以上の魔力と、戦いに集中する事で獣使いを牽制している。

従者「野良犬が、魔術師に敵うと思うな!」

全力の魔力がそうさせるのか、彼がひた隠していた気持ちがそうさせるのか、赤からどす黒い紫に変わった火球が獣使いに降り注ぎ、彼はそれを両腕で防御し受け止めきる。

獣使い「…我が血筋をも侮辱したな。パントヴォルフ家の名にかけ、貴様を処刑する」

女騎士「やめろ、獣使い!」

姉「女騎士ちゃん、急いでその方を止めて!」

女騎士は急ぎ、獣使いを止めようと走り出し。

従者「貴様ごときにわ、ゴホッ! ゴホッ!」

姉「きたわね。魔力、命を代償に自分の分を超えた魔術を行使し続けたですもの。当然の結果…」

愚かと姉は呟いたそれは、魔術師が持つ破滅をまた目の当たりにしたからだ。

魔術は本来、自身を補助する奇跡にとどめなければならない。どうしても、補助ではすまない魔力を行使する時は、姉が持つような白紙の魔術など、魔導媒体に魔力をため込んだものを併用することが望ましい。

だが、従者のように自身の魔力だけで魔術を行使しすれば、最終的に源である命そのものを消費しなければならない。

そして、消費し尽くした場合どうなるか。

従者「そ…な、か、ま」

一瞬にして、人生を生ききるかのような速度で、従者の老化してしまう。

獣使い「愚かな男よ。さぁ、皆、夢から覚めるとしよう」

獣使いは干からびたように軽くなった従者の両肩を持ち上げ。

女騎士「待て!」

制止を聞かず、そのまま従者の首に噛みつき、そのまま引きちぎった。

>>732
訂正。いろいろひどい

×一瞬にして、人生を生ききるかのような速度で、従者の老化してしまう。

獣使い「愚かな男よ。さぁ、皆、夢から覚めるとしよう」

獣使いは干からびたように軽くなった従者の両肩を持ち上げ。

女騎士「待て!」

制止を聞かず、そのまま従者の首に噛みつき、そのまま引きちぎった。



○一瞬にして、人生を生ききるかのような速度で、従者のように老化してしまう。

獣使い「愚かな男よ。さぁ、皆、夢から覚めるとしよう」

獣使いは干からびたように軽くなった従者の両肩を掴んで持ち上げ。

女騎士「待て!」

制止を聞かず、従者の首に噛みつき、そのまま引きちぎって頭と身体を分離させた。

首から吹き出した血は、銀色の毛で覆われた獣使いを染めていく。そのせいで、月夜に映し出される彼は、残酷、背徳的でありながら美しいワールフとして、正気を取り戻した村人達の目に、入る。

「ワ、ワールフだ!」

「兵隊さん達、何してんだい。私らじゃなくて、あいつをどうにかするんだよ!」

獣使いはその声を聞いて、もう一度つんざくような咆哮をあげてから、後ろに待機させていた獣達と共に、森の方へと駆け出した。

女騎士「追います」

姉「えぇ、気を付けてね」

言葉短く、駆け出した女騎士を、姉は見送った後。

姉「ロド、後でお話があるけれど。その前に一つ約束して欲しいことがあるの」

ロド「なんですか」

姉「今まで見たことは、誰にも話してはいけないわ。後は私達が、何とかしてみせる」

ロド「獣使いは…?」

姉「……」

答えない姉に、ロドは追求できず、口を閉じた。

従者が死に、本当のワールフを村人が目撃した夜から三日後、捕らえられたワールフは、コルサカ地方の村人達が見守る中、処刑された。

その光景を村人達は歓びの声をあげ、今まで隣人すら疑っていたのが嘘のように、抱き合っていた。

その光景を、姉は淡々とした様子で、女憲兵は腑に落ちない様子で、先輩憲兵はいつも通りの様子でそれぞれ眺めていた。

しかし、なぜか女騎士と魔術ギルドの人間の姿が、この場所には見当たらなかった。

ここまで。後はエピローグやね

>>731
訂正。もういやや

×魔術は本来、自身を補助する奇跡にとどめなければならない。どうしても、補助ではすまない魔力を行使する時は、姉が持つような白紙の魔術など、魔導媒体に魔力をため込んだものを併用することが望ましい。


○魔術は本来、自身を補助する奇跡にとどめなければならない。どうしても、補助ではすまない魔力を行使する時は、姉が持つような白紙の魔術本など、魔導媒体に魔力をため込んだものを併用することが望ましい。

>>727
訂正。もうなんか、ダメやな


×銀色の毛が、突き当たりが反射する。美しきワールフが、複数の獣とこちらへ走ってくるのが見えた。

○銀色の毛が、月明かりに反射する。美しきワールフが、複数の獣とこちらへ走ってくるのが見えた。

いつも楽しく読んでます乙です
話のテンポが良くてあまり誤字は気にならないような

突然ですが、宣伝です!




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なんと!つまらないと今話題のこのSSスレが…

とうとう宣伝用のスレになってしまったぁ!





文句があればこのスレまで

P「俺が…タイムスリップ?」
P「俺が…タイムスリップ?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367720550/)

獣使い…

>>739
ありがとう

勢いで書いてるからか、読み直しても頭の中では正しい文章なのよねぇ…


>>741
………

女騎士「ご苦労だったな」

賢者「しなければならなかったことです」

女騎士「そう言ってくれると助かる。協力してくれた魔術師達にも、よろしく言っておいてくれ」

賢者「えぇ、もう発つのですか?」

女騎士「申請した休暇期間はとっくに過ぎているからな」

久し振りに、自然な笑みを浮かべる女騎士を見て、賢者は少しだけ安堵したような空気が流れる。

女騎士「これからまた、この支部も大変になるだろうが、頑張ってくれ」

賢者「はい。ありがとうございました」

女騎士から差し出された手を、賢者は握りかえし、出て行く彼女を見送った。

フィリア「女騎士様!」

女騎士「フィリアか、どうした?」

フィリア「はい、この度の件、女騎士様がいらっしゃらなければどうなっていたか…。お礼を申し上げたくて、ありがとうございました」

女騎士「騎士としてすべきことをしたまでだ。礼はいらない」

深々と頭を下げるフィリアを見て、女騎士は当たり前のように話す。

女騎士「わかっていると思うが、この件は内密にな。いっそ忘れてもいい」

フィリア「…、そうですね」

女騎士「私としては、今度来た時にでも、子の顔を見れると嬉しいぞ」

フィリア「あ、う。も、もう女騎士様、からかわないでください!」

赤くなるフィリアを見ながら、真面目に話してるのになと、女騎士は思った。

フィリア「と、とりあえず、お引き留めして申し訳ありませんでした。またお会いできることを祈っております」

女騎士「あぁ、それではな」

そのまま振り返ることなく歩き出す女騎士に、フィリアは見えなくなるまで手を降り続けた。

帰路。ロイデヤ憲兵隊所有の馬車に揺られ、それぞれ本来いるべき場所へと戻る。

女騎士は、馬車を引く先輩憲兵の横に座り、ぼんやりとこれから長い冬が始まるコルサカの大地を眺めていた。

その女騎士に不機嫌そうな顔で、馬車の中から女憲兵が顔を出す。

女憲兵「聖騎士様」

女騎士「どうした女憲兵」

女憲兵「本当にこれでよかったんすか? あのワールフさんは何にもしてないっすよ」

先輩憲兵「それは私が説明した通りだ」

女憲兵「あの説明では納得したくないっす…」

先輩憲兵は女騎士に目配せし、それを女騎士は目で答える。

女騎士「いいだろう。今回の結末について、女憲兵が納得するとは思っていないだろうとわかっていたから、この馬車に乗っているのだしな」

女憲兵「結末?」

女騎士「そうだな、ワールフ、獣使いを私が追いかけたところから話そう」

淡い光に照らされた、幻想的な森の中を走りつづける。

以前は追い付けたはずの獣使いは、それよりも早いペースで走り、距離が離れる。

女騎士「待つんだ獣使い!」

制止の声も届かず、獣使いと獣はどんどん奥へと消える。

罠かもわずかに疑ったが、彼等から敵意も何も感じない。目的のためにある場所へ向かっているような、そんな様子だ。

女騎士「(どこに行こうっていうんだ?)」

疑問がわきながらも、追い続けると唐突に彼らは消え、驚いている間に、そのまま森の外に出た。

森を抜けたと思ったそこは、木々に囲まれた広場のように開けた場所だった。月明かりもあいまって、童話の世界に紛れ込んだような空間だ。

「人間とは思えない運動神経だな」

流暢な声がした方を向くと、獣使いとは別人とさえ思える、血を浴びたワールフが立っていた。自分が見た幻覚のワールフとは違い、知的な光が瞳に宿っている。

女騎士「獣使い、で間違いないんだな?」

獣使い「そうだな、そう呼ばれるようになってしばらく経った。今ではそちらの方が自然だ」

女騎士「いつぞや、自分は人と違うというのは…」

獣使い「見ての通り、私は人間から見て魔族にあたるワールフの一族だ」

女騎士「そうか、ワールフは我々には馴染みがなくてな。もし無礼なことをしていたら詫びよう」

獣使い「気にするな、高貴な人間の騎士よ」

労いをかけた後、獣使いはその場に座り。

獣使い「良いところだろう。子供達もここが気に入ってる」

女騎士「子供? お前の子供達なのか」

獣使い「いいや、血筋は同じだが我が子ではない。もっとも、ワールフは自分の一族の子であれば、我が子も同じだがな」

女騎士「しかし、子供達はその姿にはならないのか?」

獣使い「子の間は獣の姿でしかない。大抵は成人する手前ぐらいでこのような身体に変わる」

その言葉を聞いて、女騎士は少し考えてから。

女騎士「しかし、貴様は人間になっていたが、あれはなんだ?」

と訪ねた。

獣使い「私は一族の中で擬態、つまりある程度身体を変容させることができる」

女騎士「なんでまたそんなことを、獣姿でいればよかったのではないか?」

獣使い「今、子供達は狩猟を学ばせているところだが、ここのように人間が統治する場所が近い場合、害獣として襲われる場合がある。そのため、人間により管理された獣であると誤魔化す必要があった。力を消費する分、本能よりになるデメリットもあるがな」

女騎士「なるほどな」

あのたどたどしい話し方は擬態のせいだったのかと、女騎士は納得する。

女騎士「しかし、なんでまたお前が従者を手に掛けたんだ、あれでは…」

獣使い「ロドという少年に、子の一人を助けてもらったからな」

女騎士「あの子が?」

獣使い「自分が森で迷子になっているにも関わらず、はぐれ怪我をしていた一族の子を手厚く介抱していた。この地に住む子供らしく、処置も手慣れたものだった」

まるで、自分のことのように誇らしくロドのことを獣使いは話す。

女騎士「そうか。しかし、貴様が村人の前であんな光景を見せた以上、お前は追われることになるぞ」

獣使い「そうだな、覚悟はしていたことだ。それに、考えがなかったわけではない」

女騎士「考え?」

獣使いは頷き、続けた。

獣使い「そろそろ成人の儀を行うため、里に戻る時期だった。その折り、この事件が起き、少年は怯えるようになり、子を救った礼のため、犯人を殺し、私がその汚名を被るつもりだった」

女騎士「どうしてまた、そんなことを考えたんだ」

獣使い「ロドからは、それと同時に宗教による争いも聞いていたからな。少なくとも、原因がそれではなく、本当にワールフの仕業にすれば、そのこともある程度は解消できると考えていた」

女騎士「なるほど、貴様からすれば同族がいないのはわかることで、原因はそこだとすぐ気が付けたわけか」

獣使い「そういうことになる」

ゆっくりと獣使いは夜空を見上げた。

いったんここまで

くっ…殺sじゃなかった
良いところで…

>>745
訂正。も~

×その女騎士に不機嫌そうな顔で、馬車の中から女憲兵が顔を出す。

○その女騎士に、馬車の中から不機嫌そうに顔を出した女憲兵が話しかける。

>>753
酒飲みにいってたんだ。すまんの。

女騎士「貴様の考えはわかった。しかし、そのワールフを逃がしたとなっては、例え事が起こらなくなっても、村人達の疑心暗鬼は自動的に爆発してしまう」

獣使い「ふむ、私を捕らえようというのか?」

女騎士「そんなことをすれば、間違いなく処刑せねばならない。罪もない貴様をそんな目に合わせるわけにはいかない」

どうしたものか、思案する仕草をとり、女騎士はウロウロと歩き回っていると。

姉「女騎士ちゃん、大丈夫?」

女騎士「姉様、来られたのですか」

姉「各村の暴動処理が終わったからねぇ」

しかし疲れたわぁと、手で口を隠しながら小さく姉は欠伸をした。

それでも姉ちゃんなら
姉ちゃんならなんとかしてくれる
俺の姉ちゃんだから

>>757-758
姉「良い嫁ぎ先が見つからないものねぇ」

メイド「姉(おじょう)様は、仕事柄貴族の家柄にはお会いしそうですが、違うのですか?」

姉「日々研究研究だものぉ。他の方も異性には興味ない根っからの研究家ばかりでねぇ」

メイド「そうでしたか。それでも社交界にはよく顔を出されてますが、それも出会いとは違うのですか」

姉「ほとんど仕事で伺ってるだけねぇ。研究資金の援助申し立てや、研究自体の依頼を受けにいってるみたいなものよぉ」

メイド「お疲れ様です。紅茶、お注ぎしますか?」

姉「お願い。出来ればお茶請けもいただけるかしらぁ」

メイド「畏まりました」

女騎士「という事情だったとのことです」

姉「なるほどねぇ」

女騎士「当人を前に言うことではありませんが、もし仮に彼を処刑する自体に陥れば、ワールフとの間に亀裂が生じます」

姉「そうねぇ、でも非常に単純な話だと思うけどぉ?」

姉が何をいいたいかわからず、女騎士は首を傾ける。

姉「嘘の平和的利用よぉ」

女騎士「嘘……、つまりは」

姉「まぁ、この方にはちょっと手伝って貰わなきゃいけないけどねぇ。構わないわよねぇ?」

獣使い「内容次第だが、聞かせてもらおう」

そして、三人はこれからの事を話し合う。平和な嘘を吐くために。

翌日、犯人のワールフは女騎士の手によって捕まったと各村に話が流れ、女騎士を讃える声と、喜びの声が上がった。

その夜は今までの陰惨な空気を追い出すように、酒が出され村人は他の村を問わずに肩を抱き合った。

次の日、ワールフ、獣使いは檻に傷を追った様子で中に入れられ、村人達に公開された。

溜まりに溜まった憎悪を、村人達は口から吐き出す。石などを投げようとする者がいたが、それはロイデヤ憲兵隊によって制止され、あまりの殺到に公開は中止に追いやられ、そして処刑の日になった。

広場には、ワールフによって家族を、友人を失った者が集まり、皆、眼に強烈な殺意を宿していた。

昨日の件もあり、村人達は全員身体検査を受けさせられ、武器になるような物は回収されていた。万一投擲などでワールフが逃げ出す事態を防ぐためと、ワールフを捕らえた女騎士が強い口調で説得され、村人達は渋々従っていた。

件(くだん)のワールフが運ばれてくる。わずかに余力はあるのか、抵抗する様子に、少しだけ村人に恐怖が混じった。

台座代わりの大きな箱にワールフは乗せられ、執行人が罪状を読み上げた後、ワールフの首は切り落とされた。

女騎士「が、それは知っての通り、嘘だった訳だ」

女憲兵「でも、ワールフさんをあんなに痛めつけなくても、良かったんじゃないっすか?」

女騎士「あぁ、あの怪我か。あれは姉様が施した幻覚魔術だよ。本人はピンピンしてた」

女憲兵「へ? でも、最初の公開はあんなにグッタリしてたっすよね」

女騎士「あれはアイツの演技だよ。昔、行き倒れに偽装して、獲物がかかったところで全員で襲う狩猟方法の応用らしい」

女憲兵はその狩猟方法がよくわからず、顔全体に疑問が湧いていた。

女憲兵「でもいつから幻覚魔術だったんすか?」

女騎士「箱に乗った段階からだな。獣使いはそのまま箱の中に入って、魔術が終わった後にひっそり運ばれた」

女憲兵「そうっすか。それにしても、結構な数の魔術師さんが必要になるんすね」

姉「かなりの数の人間に、共通の幻覚を見せることになるからねぇ。あれでも少ない方よぉ」

馬車の中から、話を聞いていた姉が、眠るロドの頭を撫でながら答えた。

女憲兵「その子も可哀相っすね。アイツの幻覚魔術にかかってれば、真実を知らなくて良かったのに」

姉「そうねぇ。この事は口外させる訳にはいかないから、親元に居させられなくなってしまったわねぇ」

女憲兵「その子は、今後どうなるんすか?」

姉「幸い、この子には強い魔導耐性の持ち主のようだし、王営の魔導機関で過ごすことになりそうねぇ」

女憲兵「本来は喜ぶことっすね…」

姉「この子はそういう運命の下に生まれた。そう思うしかないわねぇ」

姉のロドを見る目はどこまでも優しい。それはどこか、少年を哀れむ母のように、女憲兵は見えた。

先輩憲兵「ところで、獣使いとやらはこれからどうされるので?」

女騎士「獣、子供達の成人の儀の為、あそこを離れ里に戻るそうだ。それに、嘘ではあるが、ワールフが処刑されたことが事実になっていることの、真実の報告も兼ねてな」

姉様ならやってくれると信じてた!
ロド、姉様の元で立派になるんやで

先輩憲兵「これで四方、丸く収まったと」

女騎士「結果的にな。あのまま従者が捕まえた場合に備え、兄様に軍の呼び出しをお願いしていたが、必要なくなってよかった」

先輩憲兵「まぁ、そうしなければならない状況でもありましたからな」

女騎士「何にせよ、大団円には違いない。そして疲れた」

全身を伸ばし、背もたれになる部分に女騎士は寄りかかる。

女騎士「少し寝る」

先輩憲兵「中の方がよろしいのでは?」

女騎士「良い風が流れているんだ、ここでいい」

先輩憲兵「畏まりました。ごゆっくりと」

女騎士はまぶたを閉じる。優しい陽の暖かさと、さわやかな風が流れ、意識が淡い闇に沈むのは、そう遅くはなかった。

そして、淡い闇の中で見た景色は、獣達が童話の広場で戯れて、遊んでいるところだった。

大きな獣がやってきて、大切そうにくわえた牙を、手渡してくる。

ありがとうと返すと、また会おうと言われてすぐに、今度は淡い闇から深い闇に沈んだ。

ガタンとわずかに馬車が揺れて、女騎士とロドの首から、獣の牙に紐を通しただけのネックレスが、少しだけ衣服からのぞいた。

ここからはただの昔話。

ある北方の大地に少年はいた。貧しいが家族と共に過ごす日々は、少年にとって安らかな日々だった。

しかし、その年は獣の数や、夏時期の作物も少なく、村は全滅の危機に瀕した。

村人達は、この時期になると神聖イマキルペセの巡礼者が、近くの道を通るのを知っており、このまま全滅の可能性がある村にいるよりは、そう考えて子を手放すことを渋る両親達を説得し、少年を含む複数の子供は、村から出て行くことになった。

少年は巡礼者がその道を通ることを知らずに拾われ、神が自分を見捨てなかったことに感謝して、敬虔な神聖イマキルペセの信徒となった。

心に、暗い歪みを抱えたまま、少年、彼は天使を見た。

一人の信徒が、ジョークでかけた幻覚魔術だったが、彼の心は奪われた。

いつしか幻覚魔術を研究するうちに、彼は魔術師になっていた。そして、その幻覚魔術で神や天使に会い、その光の中で暗い歪みは大きく広がり。

――後はすでに見た、結末を迎える。

コルサカ編これにて終了。

わかる人はわかると思うけれど、下火になった人狼がモチーフです。

なんでまぁ、推理ものっぽくもなったけど、追求の感じが古畑さんみたいな感じだったね。

もう少し従者やロドを掘り起こして書いた方がいいんだろうけど、テンポの関係でこんなもんです。何より一番ひどいのは助手さん、出したはいいけど、本当に使いパシリなってただけという。

個人的にフィリアが扱いやすくて、今回限りのつもりがそのうち出てきそうな雰囲気。
(人気次第だけども)

とまぁ、いろいろ言いたいコルサカ編ですが、お目汚しも甚だしいのでここまでに。

なお、>>483ぐらいで言ってましたが、次回は外伝の予定。安価とその内容はその内告知しますんで、ご興味ありましたらよろしくどうぞ。

>>766
ロド「僕は、もう村には戻れないのですか?」

姉「たまには帰せるわぁ。ずっと、は申し訳ないけれどできない」

ロド「……」

姉「私を恨んでも構わないわ。それで、貴男がやっていけるなら。でも、約束して欲しいの。女騎士ちゃんは、最善を尽くした。それはわかってほしいの」

ロド「…、はい」

姉「ありがとう、貴男は本当に、優しい人間なのね」

乙です
汝は人狼なりや?でしたっけ

卓上ゲーム界隈では、まだ人狼のカードセットが新しく販売されてたりしますよ

人狼ってそんなに下火かな?
なんにせよ乙

姉様の支援絵かこうかなぁ…

乙でした!! 今日も先輩憲兵さんが見られたので幸せです


救いようのない奴だったが、黙祷の1つでもくれてやろうかねえ

>>773
それだね

そういうの集めてるから、いろいろ出てるのは知っとるよ。名前忘れたけど、死んだ側サイドも討論できる亜種が気になってる。


>>774
世間的には下火だと思う。やる人の間では定例なとこあるから、流行ってる気はあんまりしないけど

絵の支援は歓迎しとるよ。言われれば、一応のイメージは伝えるでや


>>775
なんで先輩ばっかりと悶える女憲兵の姿が見えた。

まぁ、しいて言うなら。故人は純すぎた。それだけかな。

先輩憲兵「(懐かしい夢を見たな)」

もう数年も昔のこと。自分がこのロイデヤにいるきっかけになった、あの事件。

自分は次期当主の従兄を追いかけ、ここまできたが、足取りはここで消えう。

路銀も無くなり、その時募集されていた憲兵の仕事をこなすうちに、隊を任されるようになってしまった。

本来次期当主を追い続けなければならないのだが、情報が見つからない今、人の出入りが多いこの都市で、それらしい情報を漁るのが精一杯だった。

寝間着から着替え、寝ぼけた身体を起こすために、柔軟を行ってから身支度を整える。

隊長職は何かと忙しい、部下の管理や勾留所に投獄した者のレポート、隊の武具のチェックなど多岐にわたる。

早々に食事を終わらせて、それらの確認のために自分の執務室に向かう。

執務室という大仰だが、中は使い回された大きめのデスクと椅子。ペンと書類用の羊毛紙などがあるだけだ。

(安価見逃して悲嘆にくれてたけど)先輩憲兵さんの話聞けるんですかやったああああァァ!!!!

いろいろひどい訂正

>>787
×自分は次期当主の従兄を追いかけ、ここまできたが、足取りはここで消えう。
○自分は次期当主の従兄を追いかけ、ここまできたが、足取りはここで消える。

>>788
×執務室という大仰だが、中は使い回された大きめのデスクと椅子。ペンと書類用の羊毛紙などがあるだけだ。

○執務室というと大仰だが、中は使い回された大きめのデスクと椅子。ペンと書類用の羊毛紙などがあるだけだ。

>>791
うん、なんだろね。

とりあえず落ち着こうか。

夕刻、夜勤の兵士が交代に起きてくる時間だ。先輩憲兵は勤務の人間の出勤を確認した後、巡回するルートなどを指示して一息つく。

執務室に戻る際、何かが入っている長細い布袋と、道具が入った通常の布袋をもって入る。

これ以降はある程度自由がきく時間になる。先輩憲兵は自分に与えられた刀を手入れするために持ってきた。

布袋から抜き取り、鞘から刃を引き出す。ランタンの光が反射する刃はどこか怪しい雰囲気さえ漂わせていた。

手慣れた様子で道具を取り出し刀を整備する。ざわめく心を統一するようなこの作業が、先輩憲兵にとって豊かな時間と思えている。

しばらくして、ドアがノックされる。入れ、と彼女が言った後に開けられたドアの向こうには、一年ほど前に入隊した若者が居た。

「夜勤の者との完全交代が終わりましたので、ご報告いたします!」

先輩憲兵「ご苦労。今日はもう休め」

「はっ!」

切れの言い声だったが、何故か去る様子はなく、先輩憲兵はちらりと若者を見た。

先輩憲兵「お前は見るな」

整備を終えた刀を鞘に収めながら、そう言う。パチンと完全に収まった後、若者は我に返ったようになり。

「も、申し訳ございません」

先輩憲兵「あぁ、怒った訳じゃない。この刀という剣はな、人を選ぶんだ」

「人を、選ぶ?」

怪訝そうな顔をする若者を気にする様子もなく、布袋に刀を収めてデスクの上に置く。

先輩憲兵「吸い込まれるようだったろう?」

「はい…」

先輩憲兵「斬ることに特化した刀は、ある種の美しさがあるからな」

先輩憲兵「だが、剣の技量を持たない者には、その美しさが毒になる。これで斬ったらどうなるか、とね」

若者は心を見透かされたように、ビクリとする。

先輩憲兵「それだから見るなと言ったんだ。君は良くやっているが、武器を扱ってよくなったのは最近なんだからな」

「面目ありません…」

先輩憲兵「まぁ、そう気にするな。それに刀に限った話ではない。良い武器ほど人を選び、選ばれなかった人間はその武器に滅ぼされる。肝に銘じておくといい」

わかりましたと大きな返事をした後、失礼しますとドアを閉めて若者は去っていった。

先輩憲兵「(従兄は、刀に魅せられてしまったのだろうか)」

自分が言ったことを踏まえ、消えた次期当主について考えていた。

今日はここまで

乙です!

先輩憲兵かっこよくてつい興奮してしまった

>>776 ちがうんです、誤解だぁ(泣)

>>800
女憲兵「誤解じゃないならなんだっていうんすか」

先輩憲兵「……、落ち着け女憲兵」

女憲兵「私も人気出て、主役になりたいっす」

先輩憲兵「メタなことを…、少なくとも男性陣よりは人気はあるんじゃないか?」

女憲兵「女性陣の中で人気を上げなきゃダメなんすよ!」

先輩憲兵「聖騎士様への道のりは、二つの意味で大変そうだな」

女憲兵「うぅ、私頑張ってるっすよ~…」



メイド「………、マスター、キツいのもう一杯ください」

「大丈夫か?」

メイド「えぇ、大丈夫です。私からすれば、本編で活躍できてる方の愚痴は耳に毒です。聞き流せる程度にお酒がほしいので」

「ほどほどにな」

先輩憲兵「またあいつか…」

そんな生活を続けていた先輩憲兵にとって、一つ悩みの種があった。

ラトキズと名乗る盗賊が、名のある商人や貴族からのみ盗みを働き、それを貧乏人に分け与えていた。

義賊、そう呼ばれてロイデヤの平民には親しまれている。

街の平和を守る憲兵として、義賊であろうと犯罪行為ならば捕らえねばならない。

先輩憲兵「(問題は、こいつがなかなか尻尾を出さないということか)」

ここまで大暴れしてる盗賊ではあるが、一向に証拠らしい証拠は押さえられてはいない。

真っ黒な装いをし、鼠の仮面を被り、性別も不明。軽やかな身のこなしで、商人等が雇った用心棒やお抱えの警備、そしてロイデヤ憲兵隊も翻弄されている始末だ。

魔導を使っている形跡はなく、純粋な体術で盗みに入る。先輩憲兵から見てもまさしくプロと言える相手だ。

ただ、少なくとも噂に聞く盗賊ギルドの一員ではないだろう。そのギルドが存在すると仮定した場合、聞く情報では目立つ行為は避けている。

つまり、一匹狼の盗賊というところだ。

また、盗みに入られた商人、貴族は元々いい噂を聞かない人間ということもあり、先輩憲兵自身も好意的には受け止めている。

「なぜ貴様等、こんな子鼠一匹捕まえられんのだ!」

責任者会議にて、部隊長が先輩憲兵を含めて出席した全員を怒鳴りつける。

「申し訳ございません。しかし、我々も素性不明だけでは、追いようがなく」

先輩憲兵「それなら、発生当時の市民及び観光客、とにかく都市に当時居た全員の発生時の動向を調べてこい!」

当然、そんなことは不可能だ。調べている間に、また新たな窃盗被害が起きるだろう。

そのまま、なんらかの具体的な案が出るわけではなく、責任者会議は終了し、各自解散となる。

先輩憲兵「(最近は、部隊長のストレス発散の場になりつつあるな)」

当然、このことで一番苦情を聞いているのは、部隊長自身になる。なのに現場が一向に結果を出せなければ、あの怒りは仕方がないとは言えた。

それに、ロイデヤ憲兵隊に所属する中に、貧困層も含まれるため、そういった者がラトキズを真剣に追っていないことも、事実ではある。

今日はこんなとこかな

義賊ってのは難しいよな
おつつ
先輩憲兵結婚してください

>>811
女憲兵「……」 orz

先輩憲兵「いくら何でもへこみすぎじゃないか?」

女憲兵「活躍の場を、活躍の場を!」

先輩憲兵「お前、このままだとネタキャラ一直線になるぞ」

女憲兵「うわ~ん」



メイド「…………………」

>>808
先輩憲兵、まさかの無茶ぶり(訂正)

×先輩憲兵「それなら、発生当時の市民及び観光客、とにかく都市に当時居た全員の発生時の動向を調べてこい!」

○「それなら、発生当時の市民及び観光客、とにかく都市に当時居た全員の発生時の動向を調べてこい!」

「申し訳ありません隊長、有力な情報は得られておりません」

先輩憲兵「仕方ないな。大抵の市民はラトキズの味方だ、知っていても有力なことは話すまい」

「えぇ、そうですね」

会議の後、隊としての体裁を取り繕いため、何人か信頼できる部下に、事件発生時近隣に住む人間などに話を聞きに生かせたが、予想通り無駄骨に終わる。

「どうしますか? このままだとまた部隊長の雷が落ちますよ」

先輩憲兵「あの人も苦労人だからな。今日、呑みにでも誘ってガスを抜かせるさ」

「……頼みます」

「俺が若い頃はな、身を粉にして、市民を守ったもんだ。だというのに、お前等は子鼠一つ捕まえられんで…」

先輩憲兵「申し訳ございません」

これまた予想通りに、愚痴をくどくどと聞かされていた。しかし、先輩憲兵にはそれに対して嫌悪感はない。

口がうるさいのは間違いない。しかし、それを上回る指揮能力や武術に優れた上官だ。

そういった相手に敬意を持って、接する生活を送ってきた先輩憲兵には、大したことではなかった。

「しかしだな、まぁ貴様は異郷の国の者なのによくやっている」

先輩憲兵「ありがとうございます」

「女でなければ、ウチの娘の婿にと頼みたいぐらいだ。まったく、あいつはいい歳をして…」

これまた部隊長の悩みの種である、娘の話に切り替わっていく。

どんな愚痴を言っていても、最終的にその話をするあたり、娘を溺愛している当人も、結婚できない理由を作っているのではないかと、先輩憲兵は感じている。

もっとも、それを伝えることはしないが。

先輩憲兵「少し飲み過ぎたか」

酔いつぶれた部隊長を家まで運び、先輩憲兵は帰路についていた。

今日は三日月がでて、程よい風も流れ火照る体に心地よい感覚を与え、先輩憲兵もその感覚に浸っていた。

ふと、通りの向こう、人気(ひとけ)が薄い十字路に人影が見える。

先輩憲兵「(妙だな)」

憲兵、そして剣士としての勘が、その人影に目を向けさせた。

わずかに何かを伺うようにした後、十字路の左手に消えていった人影を、先輩憲兵は気配を消してソッと追跡を開始した。

ここまで

人影に気取られぬよう、先輩憲兵は視界にだけ入れるようにして追いかける。

走るにしても、わずかだが周りに不審な人影以外にも通行人がいる。その人間達にも不審さを感じさせれば、追跡出来なくなる恐れがある。

つかず離れず、不自然ではないように歩いていると、貧民街についた。

他の都市に比べれば、豊かではあるロイデヤの貧民街は、治安はいい方だ。だが、それはあくまで、他の貧民街に比べてであり、他の区域よりは夜で歩くには危ないところでもある。

先輩憲兵「(我々のような憲兵か、貧民街の住民が呑み散らかして帰る以外、人通りはない場所だが)」

わずかに見えた装いは、憲兵でもないし、そこまで貧しそうなものでもなかった。

一般的な市民は、昼間通ることはあるだろうが、夜間通る場所ではないのは確かだ。

明かりが他の区域にない場所だけに、人影はすでに見失っている。

当てもなく歩くには、護身用の短剣では心許ない。そう考えた先輩憲兵は、本来帰る通りに戻ろうとした時のことだ。

暗闇に、金属音が響き渡る。

「さぁ、てめぇら! 太って肥えた野郎共の贅肉だ! 早いもん勝ちだぜ!」

今度は煽るような文句も聞こえてきた。

上を見上げると、民家の屋根に、何かの箱を抱えた黒装束の姿が見え、その顔には。

先輩憲兵「鼠の仮面…!」

先ほどの人影がそうだったのかはわからない。しかし、先輩憲兵も、盗難予告があった屋敷を警護している時に何度か目にした仮面がそこにはあった。

素早く短剣を抜き、空き箱や塀などの段差を使って屋根に駆け上る。

ラトキズは、屋根と屋根を飛び移りながら、銅貨、銀貨、金貨を貧民街に撒き散らす。

すでにひっそりと近付くにはバレバレな状況、先輩憲兵も小細工なしで最短距離でラトキズに駆け寄る。

当然、ラトキズもそれに気付いていて、文句を言う余裕はない様子だが、貴族かどこからか盗んだ金を撒きながら逃げる。

「なんだい、うるさいね!」

二人が屋根を走る音や、金属音で誰かがそう叫ぶ。いつものラトキズの文句がないから、気づけていないのだろう。

最後に、箱が投げられてガシャンと壊れたであろう音が聞こえ、貧民街の騒音は止む。

ラトキズは先輩憲兵の方を振り返る。仮面で表情はまったくわからないが、敵意のようなものは感じられない。

「ふ~ん、あんたかい」

先輩憲兵を知るような口調。

先輩憲兵「お前のような小悪党と、知り合いだった記憶はないな」

それに答えるように、短剣の切っ先をラトキズに向けた。

「小悪党、そうだろうなぁ。あんたらが警護してた奴らに比べりゃ、大したことはやってない」

先輩憲兵「が、それも累積すれば別。善意でも犯罪を容認すること、すなわち市民の安全を脅かすことに他ならない」

二人の間に、電撃が流れるようなはじきあうような空気が流れ始める。

とりあえずここまで

外伝微妙
そもそも憲兵ってMPのことでしょ
やってることただの兵士

俺は先輩好きだから楽しい

設定練ってない感じ

突然ですが、宣伝です!




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なんと!つまらないと今話題のこのSSスレが…

とうとう宣伝用のスレになってしまったぁ!





文句があればこのスレまで

P「壁ドン?」
P「壁ドン?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417545001/)

>>827 >>829
目的がキャラの掘り下げだけで、物語部分は練ってるとは言い難いからねぇ。

憲兵は国によっていろいろあるらしいけど、武力行使が可能な警察の位置付けで扱ってる。
(無論、兵士でもあるけど)

なんで、刑事として怪盗を追うイメージで書いてたけど、兵士ぽかったか…


>>828
ありがとう。


もしかしたら、ちょいと練るために、時間もらうやもね~

そのキャラ好きでなくても、ある程度は楽しめる程度のネタでも仕込むわぁ

こちらは短剣で相手は無手、ねじ伏せるのは容易なはずだが。

先輩憲兵「(………隙がないな)」

不遜な態度でこちらに対峙するラトキズは、一見隙だらけのようでいて、こちらの初動を待ち、受ける姿勢だ。

こうなると、リーチが短いこの剣では深く攻めいるのは難しい。しなやかなあの身体使いを知ってるだけに、先輩憲兵も迂闊に踏み込めないでいる。

「あぁ、懐かしいねぇこの感覚」

先輩憲兵「……?」

「何、気にしなくてもいい。独り言だからな」

スッと懐に手を入れながら、ラトキズはそう答えた後。

「じゃあな、また会おう」

何かを天井に叩きつけると、破裂音の後に大量の煙が辺りを覆う。咄嗟に服で口を塞ぎ、煙が晴れるとラトキズの姿は無くなっていた。

先輩憲兵「……、馴れ馴れしいヤツだったな」

もう少し、深追いしても良かったが、相対して実力を認識したことや、突発的な遭遇だったこともあり、先輩憲兵はそうしなかった。

先輩憲兵「(…それに、ヤツが言う懐かしさ。私もなんとなく感じていたが……)」

その得体の知れない感覚に、答えは出なかった。

翌日、ラトキズがまた現れた話で街中は賑わっていた。

「まったく、実力がありながら、おめおめ鼠を逃がすとは」

先輩憲兵「言い訳は致しません。相対した時に、奴の強さを感じ斬り出すことが出来ませんでした。己の未熟です」

「……、貴様が言うならそうなのだろうな。俺も奴に対する認識を改めるか」

部隊長は実力を認めた者の発言については、あまりとやかくは言わない。それをわかっているので、先輩憲兵も素直に話すことが出来ている。

先輩憲兵「今回も住宅区、それも貴族ばかりの住むあのエリアがやられたと聞きましたが」

「それがどうした?」

先輩憲兵「以前から気にしていましたが、何故第一の奴ら、他の隊に協力を積極的にしないのです?」

ロイデヤの憲兵隊は、区域により部隊が異なる。貴族などが住む住宅区は第一、壁などの町の外を第二、先輩憲兵が所属する第三は商業区を担当する。第四も存在するが、元兵士などの腕に覚えがある市民が自主的に登録し、有事等の駆り出される為、普段は機能していない。

第三は商業区がメインだが、住宅区以外の区域の警備も務めるため、一番所帯が多い隊になり、他の隊から人員の補助を求められるのは良くあることだ。

「面子、といいたいが、それは俺も同じ意見だ。前は情けないぐらい助けを求めてきてたのにな」

先輩憲兵「……、奴ら臭いませんか?」

「……、出身が貴族が主体の連中だからな、骨が折れるぞ」

先輩憲兵「でしょうね。しかし、職務を忘れ、悪事を働いている、それを対処するのが我ら憲兵の役割かと」

部隊長はやれやれと首を振り。

「『まだ』悪事をしているかは、決まってないぞ」

先輩憲兵「申し訳ありません」

「これは、噂話だが、前々から住宅区は密売などの温床だった。それは第一の奴らが、立場を利用して身内の商売を補助している、なんてのはあったな」

先輩憲兵「それは、愉快そうな噂話ですね。では、私はそろそろ戻らせていただきます」

「わかった。あくまで今は鼠を追うが…、憲兵しての仕事が発生したら、勝手にやってかまわんぞ」

先輩憲兵はそれにはあえて答えず、敬礼を返して部屋から出た。

とりあえずここまで

先輩憲兵「調べはついたか?」

「ここのところ、ラトキズに派手にやられてるのが、サトリロの一派ですね」

サトリロ、争いがあれば現れ、見境なしに武器を卸しているいわば死の商人と呼ばれる連中だ。

本店は南方にあるハルドゥムという小国にあり、辺境都市ロイデヤにあるのは系列店になる。

異国の商店ではあるが、あらゆる人種や国のものが行き交うロイデヤではそう珍しい話ではない。

先輩憲兵「元々きな臭い連中か」

「自分が調べたところでも、住宅区貴族連盟に力を入れていて、発言力は強い方ですね」

先輩憲兵「第一に息がかかってそうなのは、いくらぐらいいる?」

部下の一人がファイルを出して。

「コイツとコイツがリーダー格で、その二人の後ろにざっと十名ずつ程度いるようです」

なかなかの大捕り物になりそうだなと、先輩憲兵は少しほほえみ、部下達もそれを見て笑う。

先輩憲兵「あとはラトキズが、この一派にどう絡んでるか、だな」

「どうします? 第四にいるあいつに探らせますか?」

先輩憲兵「そうだな、我々が主だって動いてつまらん横槍が入るとたまらないからな。伝言を頼む」

わかりましたと部下の一人が敬礼した後、そのまま会議室を出て行った。

とりあえずここまで

大雑把なイメージは出来てきたけど、終着点がボヤケてて進めるのは遅め

「第一の連中は我々の動きに感づいてますかね?」

先輩憲兵「腐っても憲兵だ、そろそろ動き出すのは予想しているだろう」

「俺達に支援要請しないのも、それが理由ですかね?」

先輩憲兵「そこの判断が難しいな。感づかせないための線だろうが、油断して尻尾を踏むわけにはいかない」

先輩憲兵は少し思案する。ラトキズのことだ、あの馴れ馴れしい様子がどうにも気になり、もしかしたら自分に親しい者と、関わりを持つ人間な気がしている。

おつかれさま!

>>856
ありがとう

会議を終了させた後、私服姿で先輩憲兵は商業区を歩く。

あらゆる人種が行き交い、人口は王都に次ぐほどに多い。それだけに、起きるいざこざに関してはどうしても、ここにいる憲兵だけでは手が回らない。

先輩憲兵「マヤラいるか?」

特にノックもせずに、集合住宅の一角にある部屋の扉を開ける。

マヤラ「なんですか、隊長さん。まったくマナーがなってませんよ」

先輩憲兵「単刀直入に聞くが、ラトキズに関わりはあるか?」

マヤラ「本当に単刀直入ですね。あるわけないでしょう」

そんなこともあり、情報部ギルドには属さない、野良の情報屋から事件に関することを聞き出すことは多々ある。

マヤラ「ラトキズについては、第一の奴らが追ってるのでは?」

先輩憲兵「勤務時間外だった時、ラトキズに接触した。どうも口振りから私をしっているようだった」

マヤラ「つまり、最近あなたの情報を聞き出した奴はいないかと、残念ながらいません」

先輩憲兵「そうか…」

当てが外れたような態度に、マヤラは。

マヤラ「料金を頂けるなら、追いますが?」

と続けた。

先輩憲兵「いくらだ」

マヤラ「前金で10銅貨。後は成功払いで結構です」

無言で懐からポケットマネーを出し、マヤラの側にある机に前金になる銅貨を置いた。

先輩憲兵「頼む。いろいろと楽しそうになりそうな案件でな」

マヤラ「その分、割高になるかもしれませんね」

先輩憲兵「必要なければ、聞かなければいいからな」

前金にはその意味も含まれる。依頼者が知りたい情報を別に追い、先に調べ上げられて経費だけが浪費する恐れもあるからだ。

先輩憲兵「さて、用はこれだけだが」

マヤラ「なんです?」

先輩憲兵「少しは女らしい装いをすべきだな」

マヤラ「……、報酬は楽しみにしてますよ」

何ともいえない笑みを浮かべた彼女を見てから、先輩憲兵はゆっくりと部屋から出て行った。

とりあえずこんなとこかな

おつかれさま!

>>862
うん、ありがとう

裏路地を歩いて通りに出ようとした時。

「なかなか強い運命をお持ちですね」

裏路地の脇に座っていた占い師に、そう声をかけられた。

先輩憲兵「そうやって客を作っているのか?」

占い師「いえ、私は修行中の身、代金は頂いておりませんよ」

赤いローブを深くまとい、顔は見えない。

先輩憲兵「そうか、代金をとっていないというなら、ここで許可なく商売してるのは見逃してやろう」

胡散臭さはあったものの、他に用事があった先輩憲兵はそう言って会話を終わらせようとした時。

占い師「ラトキズは、その内貴方の前に現れますよ」

と告げた。

瞬間、先輩憲兵は身体をこわばらせ、自然に短剣に手を添えていた。

占い師「お待ちください。私は敵ではありません、ただそのビジョンが見えたのをお伝えしただけです」

先輩憲兵「未来が見える、とでもいうのか?」

占い師「どちらでもありません。そのように感じた、というのが正しいでしょう」

しかし、そういう割には、目の前の占い師は間違いないというような態度だった。

先輩憲兵「お前、何者だ?」

占い師「しがないただの占い師ですよ」

野暮なツッコミだが
楽しそうになりそうな、はちょっと違和感
楽しくなりそうな、ではないだろうか

>>866-867
なんとなく、先輩憲兵ならこんな言い回しかなと思った感じなのよねぇ。それに、台詞は正確性より気ままに話させてるし。

一応間違って入れた訳じゃないけど、違和感あるならお手数ですが脳内で修正しといてくださいな

凄く更新が遅くなった上に
女騎士ちゃんがぜんぜん出てこない
悲しい

女騎士の話じゃ無いから私は飛ばしてる

俺は読んでる

>>872
遅くなったね。言い訳はせんよ。

まぁ、外伝後の本編のネタも思いついたし、
終わったらある程度は戻るかと。

もともと外伝自体が、本編の時間稼ぎだったし(ボソッ


>>873
一向に構わん!


>>874
ありがとう。


こっちはいろいろ難産中で、殊勝にも待ってる人にはいろいろご迷惑おかけしますが、よろしくお願いいたします。

第三憲兵隊が、第一憲兵隊を裏取りを進めて数日。先輩憲兵はいつもどおり執務室で仕事をこなしていた。

先輩憲兵「思っていたより早かったな」

彼女しかいないはずにも関わらず、そう言葉を発すると暗がりになっている場所から少し薄汚れた装いの男が、すっと現れる。

「いやはや、姐さんには敵わないね」

先輩憲兵「裏取りは取れたか、密偵」

密偵「大方。ラトキズの関係だけが不明ってだけですがね」

先輩憲兵「構わない。どうせ、強欲な商人の泡銭を奪ってるに過ぎないし、この捕り物の後も盗みを続けるようならこちらが拿捕するまでだ」

密偵は大げさに両手を軽く上げ、首を振った後。

密偵「やれやれ、姐さんに睨みをつけられるとは、かわいそうなやつ」

先輩憲兵「仕事だからな。次の裏取引はいつごろだ?」

密偵「明後日の晩、住宅区エリアのサトリロ所有の屋敷…。と言っても、普段は使用人が家を守るだけの、言うならそのためにだけに用意した家。面倒になる一般人はいませんな」

先輩憲兵「わかった。下がれ。引き続き監視してくれ」

密偵「はいはい、金は貰ってますからしっかり働きますよっと」

密偵はそう言ってまた闇に消えていった。

そこからの先輩憲兵の動きは早かった。突入のための人員の確保のため、部隊長への打診と該当する屋敷の間取り図の手配、それらをその日のうちに手配する。当然、第一に気取られないように内密に。

先輩憲兵「(あとはラトキズが当日、乱入しないことを祈るだけだが)」

当然、ラトキズもこのことを知っている可能性は高い。今回は奴が来る前に事を済ませないとならない。それでなければ、重要な証拠を押さえられない可能性が出てくる。

とはいえ、ラトキズ自身のことを追えなければ、それを未然に防ぐことは難しい。

先輩憲兵「(そもそも奴は私と同じくこの街の出身ではないだろうからな)」

あの身のこなしであれば、かなり名の通った人間であることが想像できるのに、該当する人間の多くは当日のアリバイが存在している。ならば、無名ではあるがそういった荒事に慣れている密偵のような者も予想できるが、彼女の勘はそれを否定する。

それは、対峙した時に身のこなしだ。明らかにこの地域ではあまり見受けられない身体の捌きだった。

重い鎧と武器を主体とするこの地域では、単純に言えば力強い身体の運びをするが、ラトキズはどちらかというと素早い身体の運び。その点で言えば先輩憲兵に近い、体術系統になる。

先輩憲兵「(西方特有の動きというべきかもしれないな)」

西方の民はどちらかというと土着している。その大地に生き、そして共に朽ちる。敵を向かい討つ時は、一族郎党、それこそ女子供を含め、敵がいなくなるまで討つ。

今でこそ、この国を含め、その他の地域にも交友を持っているが、他の国々から見ても閉鎖的な地域ではある。

先輩憲兵「(……、今はいい。第一憲兵隊とそれに癒着する商人の拿捕。これが第三憲兵隊として実行しなければならない急務だ)」

考えを止め、サトリロの裏取引に考えを戻す。当日は第二憲兵隊とも連絡を取り、街から脱出をさせないよう手はずも進めなければならない。彼女にはまだやるべきことが多々残っているのだから。

慌しい時間はあっという間に過ぎ、気づけばサトリロの屋敷に突入する日を迎えた。作戦は少数で屋敷に潜入し、残りは合図が出次第屋敷を包囲して一網打尽にすると言う内容だ。

先陣を切って潜入するのは先輩憲兵を筆頭に、彼女が信用する腕利きを五名ほどだ。

「なんだ、貴様らは」

「第三憲兵隊だ。今夜この周辺でラトキズが盗みを働くと予告があってな…。聞いてないのか?」

「そんな話は知らんぞ。ここは大丈夫だ、帰った帰った」

屋敷を警備する第一憲兵隊に、嘘の情報で部下達が話しかけるのを先輩憲兵は確認する。

「いいのか? ここのところお前ら、あの盗人に煮え湯を飲まされてるのだろう? また盗まれて赤っ恥かかなきゃいいがな?」

「貴様、我々を侮辱しているのか」

「まさか。ただ、貴様らが手をこまねいていると、我々の評判も落としかねんのでな」

あえて挑発するように、部下が話し続けるのを見て、先輩憲兵は目で部下に合図して裏口から潜入を開始する。

「無礼な奴らだ、ここがどこの住居であるか知ってのことか!」

「おいおい、折角情報を持ってきたのにその言い草はないだろう。まったくこれだからお坊ちゃまは…」

「いい加減にしなければ、憲兵といえどたたっきるぞ!」

程よく騒ぎになりつつあるのを横目で見ながら、先輩憲兵達は屋敷の中に潜入していった。

「何の騒ぎだ?」

「どうも、第三憲兵隊がここの辺りに、例の盗賊が現れると聞いて周辺を調べているようです」

その騒ぎに気づいたサトリロの商人が、部下に状況を確認する。

「おい、大丈夫なのか?」

「ふん、どちらをだ?」

「どちらもだ! 第三憲兵隊なら第一の奴らでどうにかなるとはいえ、ラトキズはここのところ、我々をたやすく襲撃しているだろう!」

「もはや、そんなことはできんよ。奴の住居は割れた、あとは苦しめて殺すまでよ」

サトリロの商人は、心配そうにする貴族をよそに、余裕を持った態度でそう話し。

先輩憲兵「それは興味深い話だな。ぜひ聞かせていただこうか」

扉を開け見張りをしていたであろう番兵を投げ入れながら、先輩憲兵は中に入りながらそう言った。

「な!」

先輩憲兵「なかなか面白い帳簿を見つけましてね。少しお話をさせていただきたいのですが、宜しいですか?」

その帳簿の一部を開き、中にいた人間に見せつけながら。

先輩憲兵「わが国には理由なしに持ち込みしてはいけない兵器、その部品がこの中に書かれています。おかしなことに、この部品、我々が品を検閲させていただく際に記入する資料には記載がありません。ご説明いただきたくお伺いにさせていただいた次第です」

反論の余地を残させない態度で、先輩憲兵は詰め寄る。

「話が違うではないか!」

「まさか、こんなに早く…」

答えにならない、狼狽した言葉が漏れる。

先輩憲兵「お答えはいただいたようです。皆のもの、こいつらを捕らえろ」

「く、むざむざと捕まる者か! 貴様らはこいつらを殺せ!」

「商人、どこに行く!」

「捕まってたまるものか! 逃げるまでよ!」

サトリロの商人は部下に先輩憲兵達を攻撃するよう指示し、逃亡を図る。

「隊長!」

先輩憲兵「貴様らはここを頼む、あいつは私が追う。合図を出せ、全員逃がすなよ!」

部下の一人が宝石に封じ込められた術式を開放し、屋敷の内外で怒号が響き渡るようになる。先輩憲兵はその中で、逃げた商人を追いかけて走り出した。

「はぁ、はぁ、ここまでくれば…」

サトリロの商人は屋敷に作った隠れ通路を使い外に出る。辺りには誰もいない。

「しかし、通路が見つかるのも時間の問題だ。急がなければ」

「そうは問屋が降ろさないってもんだぜ?」

黒の装束、鼠の仮面。それはまさしく。

「ラトキズ、貴様…!」

「憲兵隊に動いてもらうために、義賊の真似ぇさせてもらったが、その必要もなくなったな。奪った刀、返してもらおうか」

「何を言う、あの刀を奪ったのは…!」

「そんなことは関係ねぇっての、さぁ、とりあえず吐いてもらおうか」

ラトキズは鋭い拳をサトリロの商人の腹部に突き立てると、商人は嘔吐しながら地面に伏せる。

「本当の意味で吐けなんていってねぇんだがな?」

「ごぼっ、が! は、っは」

次に倒れた商人にめり込んだのは、再度腹部への蹴りだった。

「があ! あぐ、あ」

地面に転がるサトリロの商人を見る、ラトキズの目はどこまでも冷めたものだ。

先輩憲兵「ラトキズ…!」

そして、その場に居合わせた先輩憲兵は、その状況を見て剣を抜いた。

「よう、また会ったな」

先輩憲兵「貴様、何を企んでる?」

「企んでいるも何もな、俺達にとって重要なものを取り返すために動いてただけだぜ?」

先輩憲兵「俺達、だと?」

その言葉を聞いて、まだ気づいてないのかと言う素振りの後、ゆっくりとラトキズは仮面を外した。

先輩憲兵「…従兄」

従兄「久しぶりだな、親父が俺を追えって言われたからここにいるんだろ?」

先輩憲兵「貴方がなぜここにいるのです!」

従兄「自分の不始末をつけるためだな、苦労をかけて悪ぃ」

少しだけ、罰が悪そうに従兄は髪をかく。

先輩憲兵「不始末? 貴方はあの刀を持って飛び出していっただけでしょう!」

従兄「そうなるよな。いや、伝言残す余裕もなくてさ。正しくは、こいつらに奪われた刀を追ってたんだ」

考えてもいなかった事態に、先輩憲兵は言葉を失う。

従兄「サトリロとは名乗ってなかったが、俺がいなくなる数日前、護衛の依頼が来ていただろう?」

先輩憲兵「えぇ、貴方を含め数名の腕利きが商人の護衛についたと」

従兄「それ自体がこいつらの罠だったのさ。狙いは俺達が代々引き継ぐあの刀、仲間達と依頼の商人は待ち伏せしたこいつらに殺された」

先輩憲兵には、従兄が嘘を言っているようには見えなかった。その時を思い出す表情が、いつも快活であった従兄に暗い影を落としていたからだ。

従兄「理由は深く知らねぇが、どうも、一族がこの地にいた頃に関わる因縁のものだったらしい。ずっと、虎視眈々とこいつら狙ってやがったんだよ」

先輩憲兵「あの刀は、ずっと我々が引き継いでいたものでしょう?」

従兄「俺もそう思ってたんだが…。とりあえず、こいつらからすると、俺達は盗人で、それを奪い返したのに過ぎないらしい。だろ?」

「そうだ! あの刀は貴様らのものではない!」

従兄「そして、今、貴様の手元にはねぇってところか」

その言葉に、サトリロの商人は息を呑んだ。

従兄「なら、用はねぇよ」

今度はサトリロの商人の首筋に蹴りを入れると、そのまま気絶した。

従兄「後頼む、こうなればハルドゥムってとこに殴りこむしかなさそうだなぁ」

先輩憲兵「お待ちください。その話、本当であるなら当主に報告が先です」

従兄「今更どの面下げていくよ? どんな処罰が待つにせよ、あの刀がなけりゃ戻る気はねぇ。あの刀は、一族の誇りなんだからな」

固い決意を背負った様子で、従兄はこの場を去ろうとする。

先輩憲兵「お待ちください! それに、なぜこのような義賊の真似事を」

従兄「当然、刀を盗むつもりだったが、騒ぎにしてサトリロの連中の足止めもある。それに、憲兵の中にお前もいたからな、うまく動いてくれることも期待した」

先輩憲兵「なぜ、ご相談していただけなかったのですか」

従兄「独断なら、お前に迷惑はかからねぇだろ。それでなくても血縁、変な疑いもかけたくなかったしよ」

先輩憲兵は思う、あぁ、この人は確かに、こんな人だったと。

それから、サトリロ一派とそれに関与した貴族の大捕り物となり、ロイデヤの噂もラトキズからそのことで持ち切りになっていた。たまに、部隊長があの子鼠はまだ捕まえられないのかと吼えるが、姿を消したラトキズについて捕まえようもなく、形式上のものではあった。

今でもラトキズの賞金首として、憲兵隊詰め所に鼠の仮面をつけた従兄の姿が載ったものが、張られている。

本来であれば、首根っこを捕まえてでも先輩憲兵は従兄を当主の下に連れて帰るべきだった。しかし、彼女は彼の言うことを信じることにした。いつか刀を取り返し、ここに戻ってくるまで彼女はここで憲兵を務めることになる。

「172期生、ロイデヤ憲兵見習い女憲兵! ただいま着任しましたっす!」

事が終われば、新しいことが始まる。新兵がまた第三憲兵隊に配属されてくる。溌溂とした元気のよさそうな若い女だ。

先輩憲兵「あぁ、よろしく頼む」

これから、二人が女騎士と会い、共に戦うことになるのは、半年後のことである。

というわけで、外伝 先輩憲兵編終了となります。

うん、難産だった。おととい辺りに、頭の中で一気にネタが着たからよかったけど、
それなかったらいまだに鈍行だった気がする。

次回からは本編に戻ります。外伝として医者を書く予定だったんだけど、ぶっちゃけ
本編に絡めたほうが面白そうだったので。
(それに女騎士様みたいという声も多いしねぇ)

次回メインになるのは、その医者と、出番ないといってたあの人ですよ。

外伝おつかれさまでした!


外伝でちゃんと人物像が深まるのスゲェな

乙!!

外伝楽しかった!! 先輩憲兵さんのカッコいいところも見れて幸せだぜえ!!

一気にまとまったな乙
面白い

>>888
うん、疲れた。ありがとう。


>>889
もともと深めるのが目的だからね。そう言ってもらえるなら、一応の目的は達成かな。


>>890
女憲兵「今度は私の外伝っすね!」

先輩憲兵「特になくて本編いくらしいぞ?」

女憲兵「こうなったらそっちでも大暴れを!」

先輩憲兵「毎回毎回、隊を街以外から動かせるか馬鹿者」

女憲兵「畜生っすー!!」


>>891
ありがとう。

もともと30レスぐらいでまとめるつもりだったからねぇ。
広げすぎてどうなるか心配ではあったけど。まぁ、これでいいかな。

医者「すまぬ……」

うわ言。自分に架された罪の意識が夢となって、具現化される。

医者「儂は、儂は…!」

言い訳のような何かを言葉に出そうとする。でも、それ自体が、どこかしてきた事を否定するようで、発することさえも出来ない。

医者「………、ハァ、夢、じゃったか」

顔中に脂汗をにじませ、呼吸もやや荒い。彼にとって、今し方見た夢はそこまで自身を追いつめるものだった。

彼が眠るベッドの横に置かれた小さな棚の上に、投影石を刷り映した写真立てがあり、それに彼は視線を落とした。

そこに写っているのは複数の男女、若き日頃の自分に大将軍も居り。

「アメリア…」

その大将軍に肩を抱かれる女性の名を、彼は呟いた。

女騎士「あの宗教都市にいけと?」

大将軍「そうだ」

コルサカから戻った女騎士は、相も変わらず、辺境の地に周り弟の目を覚ます方法を探す日々を送っていた。

そんなある日、義父である大将軍から、宗教都市ディルムンに発生した問題を解決せよと、直接の命(めい)が下される。

敬愛している義父からの命(めい)であるため、表面上嫌な表情を出さないよう女騎士は取り繕う。

大将軍「なんでも、怪我や病気が治らないという奇妙な現象が発生しているそうだ」

女騎士「ふつうには考えづらい現象ですが…」

頭によぎるのは、魔法、魔術類による仕業。女騎士はそう考える。

大将軍「気になるのは、司教達が得意とする精霊魔術が効いていないということだ」

女騎士「それもまた考えづらい事態ですが…」

大将軍「そうだな…。今回は、市民が王都へ無謀にも直談判してきてな。それで発覚した、だいぶ状況は深刻らしい」

女騎士「それは想像に難くないことです」

医療という認識は生まれつつあるものの、この国での治癒は魔導を使うのが一般的だ。それが効かないとなれば、由々しき事態を招くだろう。

女騎士「この任務、慎んでお受けいたします。ただ、一つだけ要望を聞いていただきたい」

大将軍「なんだ?」

女騎士「辺境都市ロイデヤにいる、医者という人物を連れて行きたいのです」

それを聞いて、少し大将軍は逡巡した後。

大将軍「わかった、手はずしておこう」

女騎士「…は! 失礼いたします」

その間に女騎士も気になったものの、追求はせずに、そのまま応接室を出て行った。

大将軍「……あれから、もう何十年も経つのだな」

大将軍のデスクにある写真立て、その中には医者の部屋にあったものが、入っていた。

ここまで~、とりあえず今日の目的の次章プロローグまでは書けたか。

>>893の訂正

×彼が眠るベッドの横に置かれた小さな棚の上に、投影石を刷り映した写真立てがあり、それに彼は視線を落とした。

○彼が眠るベッドの横に置かれた小さな棚の上に、写真立てがありその中に投影石を刷り写したものが入っている。それに彼は視線を落とした。

女騎士「行きたくない~行きたくない~」

メイド「女性として慎み有る態度をお願いします。女騎士様」

大将軍からの通達を受けた後、女騎士は屋敷に戻り、ベッドの上で子供のようにジタバタとしていた。

女騎士「なんであたしが聖イマキルペセが支配する場所に、行かなきゃならないんだ~」

メイド「それも騎士の務めでしょう?」

女騎士「はぁ、父様のからの命令じゃなきゃ、拒否してるのに」

メイド「……、はぁ、貴女という人は」

そう言って、メイドはため息をつく。

女騎士「しかも多分また、魔導がらみのやっかいな件だぞ。たまには大暴れしたい」

メイドのそんな態度も意に介さず、今度はベッドをゴロゴロと女騎士は回る。

メイド「治癒ができないという現象ですか。少々疑問ですが、自然に治癒はされないのですか?」

女騎士「しない訳じゃないみたいだけどな、ただ教会に治療を求める奴なんて大抵重度だろ」

メイド「確かにそうですね」

つまり、魔導が効かないだけなのかと、メイドは考えた。

メイド「そうなると、私の力も役には立ちそうにありませんね」

女騎士「いや、今回は同行してもらうぞ」

メイド「何故です? 治癒魔法が効かないなら、意味はありませんよ」

女騎士「解決した後なら治療できるだろ? そんな状態なら、たくさんそんな奴がいる訳だし、教会だけじゃ間に合わないだろうし。それに、聖女(まじょ)嫌いな聖イマキルペセのことだ。自分達以外の力は試してないだろうさ」

宗教団体と聖女の確執は深い。だからこそ、女騎士はメイドを連れて行こうと決めていた。

女騎士「連れて行こうとする身が言うのもアレなんだが、あたしからは離れるなよ?」

メイド「言われなくてもそのつもりです」

当然、事態によってはメイドの身に危険が及ぶことも考えられる。その事を起こしているであろう人間だけではなく、聖女をよくは思わない宗派の人間からもだ。

しかし、女騎士は聖女の立場向上の、絶好の機会だとも思っていた。もし、聖女の力を持つメイドの治癒魔法が効果があれば、民衆はその存在を認めてくれるだろう。聖イマキルペセが、更に頑なな態度にはなるだろうが、宗教嫌いな女騎士にとっては、面子を潰せるならそれでいいと考えている。メイドは自分が守ればいいのだから。

とりあえずここまで

久しぶりのメイドさんprpr

>>906
メイド「う~ん」

女騎士「どうしたんだ?」

メイド「prprの意味が掴めなくて」

女騎士「喜びとかじゃないのか?」

メイド「そうなのですかね」

宗教都市ディルムンに向かう馬車内、女騎士、メイド、医者。それと案内人が乗っていた。

「女騎士様、このような任務をお受けいただきありがとうございます」

女騎士「状況はヒドいのか?」

「えぇ、教会の魔術は一時的には効くのですが、しばらくすると傷口は開き、病は元通りの始末です」

それを聞いていた医者が。

医者「しかし、その多くは信徒じゃな。聖女や医療を信頼して貰えるのか?」

「今は藁にもすがる思いで皆います。根っからのヤツは、拒否するでしょうが…」

その点について、案内人は言いづらそうに言葉を濁した。

メイド「あまりお役に立てそうにはありませんね」

女騎士「まぁ、希望する奴だけ治療すればいい。無理に治療すれば、民が不信になる」

真面目な話をしているところではあるが、メイドはぼんやりと、やはりこういう時はちゃんとした話し方や態度をするんだなと考えていた。

女騎士「聞いてるか、メイド?」

メイド「すいません、少し考え事を」

女騎士「そうか、とりあえず二人は私から離れないように、必要であれば人員は呼ぶから我慢してくれと言う話だ」

メイド「わかりました」

素直に、メイドはうなづいた。

prpr=ピロピロー

>>910
女騎士「だそうだぞメイド」

メイド「余計わからなくなりましたね」

女騎士「試しに言ってみたらどうだ?」

メイド「え…、えと。ぴろぴろ~」

女騎士「…………、謎が深まった」

メイド「ですね」

女騎士「しかし、藪医者。まさか二つ返事で来てくれるとはな」

医者「ふん、儂も聖イマキルペセには幾らか苦汁を飲まされた身だ。奴らが困る面を見れるなら、それに越したことはないわい」

女騎士も、弟の件で医者の存在を知った時に、宗教と真っ向と戦った人間であることは知っている。

ただ、普段会う時に宗教を嫌う発言はなく、どちらかと言えば。

医者「それにじゃ。誰かでしか救えない魔導など、価値などないのじゃよ」

それが、彼の口癖のようなものだ。

魔導は確かに誰でも使える奇跡ではある。しかし、治療の魔導は最上位に入るほど、会得するには時間がかかり、結果的に一部の者しか使えない状況にある。

それだけに、多くの宗教は精霊魔術として扱い、それによって多額の寄付金を得てきた。当然、それの邪魔でしかない医療や聖女の存在は、彼等にとって容認できるわけもなかった。

メイド「……」

医者「気に障ったか、メイドさんとやら」

メイド「いえ」

医者「ただの頑固なジジィの戯言じゃよ、ま、気にしないことじゃ」

そう言って、医者が外に視線を向けると、宗教都市ディルムンのシンボルである、大教会の鐘が見えた。

医者「(……、お前が呼んだんじゃろ、アメリア)」

ディルムンに着き、早速三人は大教会に足を踏み入れると、怪我人と病人が、区画分けされ、修道士に治療されている光景だった。

メイド「……ひどいですね」

医者「そうじゃな」

その光景に、その言葉しか二人は出なかった。

女騎士「さて、まずは司教に会いに行くか」

表情にありありと嫌悪を示しながら、女騎士はそういい、近くの修道士に司教の居場所を聞き始めた。

メイド「あの人の宗教嫌いは相変わらずですね…」

医者「何か知っておるのか?」

メイド「さぁ…、あの人は自分語りはしませんから」

それが寂しくも思う、とはメイドは口にしなかった。

修道士の案内で、応接用の部屋に三人は通される。

三人が沈黙を守り、待っていると扉が開けられ、司教が中に入ってくる。その司教が三人を一瞥すると。

司教「貴様…、医者!」

医者「ふん、久しいな」

司教「何故貴様がここにいる!」

明らかに血を頭に昇らせ、激昂し始める司教と冷ややかな目線を送る医者の間に女騎士が入り。

女騎士「司教、彼を呼んだのは私です」

司教「なんだと!?」

女騎士「今回の件、聞き及ぶには貴方がたの魔術による治療は効果を発揮しないとのこと。それなら当然、それ以外の方法による治療を手配するのが普通では?」

女騎士は堂々と、反論はさせないという態度で説明する。

司教「貴様…」

女騎士「何にしても、我々は詳細は知らない身、お話を伺いたく参りました。どうぞお座りを」

冷静さは少し戻ったようだが、明らかに怒り心頭といった様子で向かい合わせの形で座る。

女騎士「まず、この自体はいつ頃からなのです?」

司教「……認知されるようになったのは、ひと月ほど前だ。しかし、話を聞く限りではだいぶ前からこの現象は起きているらしい」

女騎士「そうでしたか。確認したいのですが、全ての人間にこの現象は発生しているのですか?」

司教「どういうことだ?」

女騎士「失礼、試した方が早そうですな」

そう言って懐からナイフを取りだし、自身の指を軽く切る。血がジワリとあふれ出てくる。

女騎士「メイド、頼む」

メイド「はい」

メイドが目を閉じ集中すると、彼女自身から鈍い光が発せられる。そしてその光は右手に集まり、それを女騎士が切った指にかざすと、ゆっくりと傷口が閉じていった。

女騎士「とりあえず、必ずしも全員がそうではないということですね」

司教「……、よりによって聖女(まじょ)まで…」

司教は今見させられた光景の方に頭がいき、女騎士の声は届かなかった。

メイド「(一時的には魔導は効くのですし、一部がそうはならない証明にならないのでは?)」ボソッ

女騎士「(まぁ、頭に血がわいて、正常に理解できない内にしたいことがあるのさ)」ボソッ

ニッと笑ったあと、事務用の顔に戻ると。

女騎士「つきましては司教、現在および亡くなられた方に関わる人物の情報を調べさせていただきますが、よろしいですな」

司教「調べるのは勝手で構わんが、なぜ聖女を連れてきた!」

女騎士「従者の者を連れるのが不思議ですかな、ではこれにて失礼を、調査進めさせていただきます」

そう言って二人も出るよう合図し、司教が何か言い出す前にそそくさと部屋を出ていった。

メイドさんの従者になって酷使されたい

黒パン・・堅い・・・・ノーラか?

>>920
メイド「私の専属の部下、ですか」

女騎士「志望してきたが、どうする?」

メイド「私は女騎士様の専属です。一人で事足りるかと」

女騎士「そうか。不採用と伝えておくぞ」

メイド「お願いします」


>>921
調べた。ゲームか。黒パンで殴り合うのかな?

女騎士「ふぅ、流石に目が疲れたな」

大教会の中にあった、ここ一連の報告書を見終わった女騎士は、それを座っている長椅子の横に置き、立ち上がって体を伸ばした。

彼女がいるのは入ってきた際に通った怪我人なとで区分けされたあの場所。本来そのような場所で報告書を読むものではないが。

医者「まずはこれを飲め。身体の熱を下げる薬だ。後は、一時間毎に水を飲め、でないと中の水が足りず、更に弱るからな」

メイド「傷はここですね。今、塞ぎますからお待ちを」

二人が熱心に治療を始めたため、やむを得ないというところだった。

女騎士も修道士達に詳しく話を聞いているうちに、日が沈もうとする時間になっていた。

メイド「ふぅ、疲れました」

女騎士「ご苦労。どんな様子だ?」

メイド「なんとも言えません。私には特殊な怪我には見えませんでした。医者さんなら何かわかるかもしれませんが」

そう話していると、医者も一段落ついたのか、二人に近付いてきた。

女騎士「どんな具合だ?」

医者「そうだな。確かにどちらの症状も特別なことはないんじゃが…、どこか生命力に欠けておる印象じゃな」

女騎士「生命力、か」

何かヒントになりそうな言葉に、女騎士は反応した。

その場ではそれ以上のことは聞かず、兄が手配していた宿に三人は向かった。

中に入ると、女騎士には顔に覚えがある人間が何人かちらほらと宿の食堂で食事をしているのが見えた。

女騎士「(あの者達も、兄様が手配してくれたんだな)」

宗教都市ディルムンは、王の権威よりも聖イマキルペセの方が力を持っている。この宗教にとって不利なことは、静かにもみ消されることも珍しいことではなく、今回の任務についてもその危険がはらんでいる。

女騎士「(だからこそ、父様は私を任命したのだろうけど)」

味方がはっきりしない。その事実に、女騎士は辟易し始めていた。

女騎士「ふむ」

司教とあった時に切りつけた傷は、塞がっていた。メイドが治癒したとはいえ、元々自然治癒能力が高い女騎士にとっては不思議な事態というわけではない。

メイド「さすがに、疲れました」

女騎士「悪いな。信徒とはいえ、民は民だし。困っているなら、騎士として救わきゃいけない」

メイド「別にかまいませんよ。私は貴女の従者でもあるのですから」

女騎士「あたしは友達だと思ってるんだけどなぁ」

その発言にクスリとメイドは笑う。

女騎士「なんか変なこと言ったか?」

メイド「いいえ、貴女らしいなと」

女騎士「あたしはたまにお前がよくわからないぞ」

クスクス笑い続けるメイドに、首をかしげながら女騎士はそう言った。

そんな二人がいる部屋がノックされ、扉が開かれる。

医者「ふむ、談笑中じゃったかな」

いつも通り気難しそうな顔をしながら医者が入ってきた。

女騎士「どうした?」

医者「今回の件の見立てを聞きたくないというなら、自室に戻るぞ腐れ騎士」

女騎士「その見立てに自信がないならいいぞ、藪医者」

医者「まったく貴様という奴は…」

そういわれては引き下がれなくなった医者は、近くの椅子に腰かけた。

医者「単刀直入にいうなら、さっきも言った生命力、人自身が本来持つ回復力が弱まっておる」

女騎士「しかし、魔導で怪我を治療した時に、元に戻るのはどういう理屈になる?」

医者「いくら魔導が奇跡の源だとしても、対象の力が弱まっていれば、強制的に治したものがほつれてしまうだけじゃよ」

だからこそ、かなり厄介なのじゃがと、医者はぼやく。

女騎士「その見立てが正しいとしてだ、どうすれば生命力は元に戻る?」

医者「外的要因が影響するなら、当然それを排除すればいいじゃろう。そもそも、生命力が弱まる事態など、厄介な伝染病が蔓延した時ぐらいしか考えられん。人為的とみてよいな」

女騎士「ということは、今回の件も魔導がらみか」

頭をかきながら、面倒そうな表情で女騎士は考える。

医者「のう、腐れ騎士。こんなに大規模に、魔導が行使されているにもかかわらず、具体的な対応を今まで奴らがしてこなかった…。そのことには気づいているのじゃろう?」

女騎士「父様が私をここに派遣した時点で薄々な。聖イマキルペセは、他国にもその信徒がいる宗教だ。下手な国よりも知識も武力も持つ連中が、ただ手をこまねいているなど考えづらいからな」

医者「それがわかっていればよい。根は深そうじゃぞ」

だから面倒だと思ってるんだがなと、ため息を吐きながら女騎士はつぶやき。

女騎士「今回の件、早々に二人は戻ったほうがいいかもしれないな」

医者「ふん、この程度で戻る気はないぞ」

メイド「私も一人では戻れませんからね。それに、今回の件、私も気になってますから」

女騎士「……、本当に危険になった場合には、すぐ帰ってもらうぞ」

明日からは忙しくなりそうだなと、女騎士は感じていた。

翌日からは女騎士は慌ただしく調べ回っていた。何せ、この事件の発覚が聖イマキルペセの傲慢より、遅らせられた状態なのだ。最初にこの症状が発生した者の生死確認から始まり、数ヶ月のうちにこの症状が発生して入る者や、死んだ者の共通点など膨大な量を調べなければならない。

女騎士「(それでなくても、大々的に王族の配下になる騎士が動き回るのを、気にくわない連中だからな)」

王位より上の神を信仰している。その思いがどこかにある司教達は、どこか自分達が支配者であるという認識を持つ。そんな中で女騎士が、通常通りに調査を出来るのも、王家からの任命の他に、神に愛されし者として聖イマキルペセから認定されて、はじめて聖騎士を認められるからだ。当然、大将軍はこのことも考慮に入れ、女騎士を派遣している。

女騎士自体は、位に誇りはあるが、神からの認可されたという点は苦々しく思っている。

続き来てた!
諦めませんなんでもします、メイドさんの従者にしてください

女騎士「ふぅ、骨が折れるな」

小休止がてらに、大教会に寄る。中は相変わらず、修道士達が看病している状態だ。その中には、医者やメイドの姿がある。

「あんた、聖女(まじょ)じゃろ。汚らわしい、触らんでくれるか」

メイド「構いませんよ。そのまま血が無くなって死にたいんですよね?」

「な…!」

メイド「おじいさん、貴方が思っているより身体は弱ってる。命の波動があまりに微弱で、これ以上出血すれば、間違いなく死にます。それでいいなら、離れますよ」

修道士はまず言わない状態を、まっすぐ相手の目を見据え、丁寧に説明された老人は、動揺する。

「嘘じゃ、そんなわけありゃあ……」

強気には言えない。そもそも、傷口が塞がらなくなって一週間以上経ち、血はその間も流れ続けていたことを、嫌でも思い出させられたからだ。

医者「ふぅ、次はこやつか。メイドさんや、縫合するまでもうしばらく頑張るんじゃ」

メイド「わかりました」

その様子を知ってか知らずか、医者は有無をいわさず、簡易に麻酔を施した後に縫合を始める。

「止めろ!」

「動くな! 傷口を閉じて出血を緩やかにするのが目的じゃ。しっかり縫合出来なければ傷口が開く、いい歳なんじゃから黙って動くんじゃないわい」

メイド「医者さんもいいお歳ですよね」

医者「……お前さんも少し黙っておれ」

ため息をつきながら、医者は縫合を再開する。

医者「これで良かろう。痒くなってもかくなよ、傷口が悪化し最悪感染症で死ぬからの」

メイド「終わりましたか、少し休憩に――」

言い終わる寸前に、メイドは前のめりに体が崩れ落ち。

女騎士「そんな気がしたぞ、バカ」

友人のわずかな異変に気づき、倒れる数瞬前から近寄ってきていた女騎士が、抱き止める。

医者「発作か」

女騎士「いや、魔法行使の疲れだな。それでなくても、身体に負荷がかかる」

医者「そうか…。あんた、こんなになるまで献身的に治療に当たってくれた者を、まだ聖女(まじょ)と侮辱するなら、ワシはお前さんをもう診る気はないぞ。さて、次はどいつじゃ?」

医者は次の患者を探し、女騎士は無言でメイドが休める場所を探しに行き、二人に治療された老人は、ただ無言で簡易ベッドの上で佇んでいた。

>>933
女騎士「というわけで、例のヤツがもう一度きたが、どうした?」

メイド「とりあえず、力仕事役が欲しいとメイド長さんが言ってましたので、任せました」

女騎士「お前の専属だろう?」

メイド「専属ですから出来ないことを代わっていただいたんですよ」

女騎士「言いようだな」

メイドさんに酷いことさせない!
俺が護る!

メイドさんや女騎士様にめいわく

>>938-945
女騎士「とりあえず>>945連絡ありがとう」

メイド「皆さんの謎の暴走でした」

女騎士「まぁ、生き残った一人が、メイドに求婚しても面白そうだったが」

メイド「はぁ……、楽しそうに」

女騎士「どうせ、メイドは断るだろう?」

メイド「えぇ」

女騎士「だからだよ」

修道士の配慮で空いている部屋を借り、メイドをそこにあるベッドの上に横にさせた。

メイドは静かに呼吸し、胸はわずかに上下している。

女騎士「(しかし、メイドの治癒魔法でも、改善にいたらずか)」

もしかしたら、メイドの魔法なら通用するのではないか。そう思っていた女騎士の当てが外れた。

当然魔導の疑いがあるこの件は、魔法を被せたところで解決するなら、事件にはなりはしない。むしろ、精霊魔術得意とする聖イマキルペセが、これぞとばかりに神の奇跡を謳うのは目に見える。

メイド「……ん」

女騎士「起きたか」

身体をゆっくり起こし、メイドは周りを見てから、息をゆっくり吐いた。

メイド「また、倒れましたか」

女騎士「そのようだな。身体に異常はないか?」

メイド「少し気だるいですね」

力もなく、メイドは笑う。

女騎士「……もしかしたら、何らかの影響を受けてるかも知れない。メイドはしばらく宿で休め」

メイド「今回は、やっぱりお役に立てなさそうですね」

女騎士「気にするな」

何かの役に立てること。メイドがそのことに静かに固執しているのは、女騎士は理解していた。

とりあえずここまで。

本当に次スレが必要になってしまうとはなぁ。

医者「メイドさんの体調はどうじゃ」

扉を開け、そう尋ねながら医者が部屋に入ってくる。起き上がり、少しだけボーッとしているメイドを見て。

医者「ふむ、失礼するぞ」

メイド「はい」

そのままメイドに近付いて、目や口の中を確認し、胸に手をやり心臓の鼓動を触診する。

医者「やや、生命力の戻りにかげりがあるのう」

女騎士「例の症状か?」

医者「そうじゃ、まだ来たばかり。まぁ、魔法を行使し続けていたとはいえ、すぐにこうなった以上、戻った――」

メイド「嫌です」

毅然と、メイドはそのことを拒否した。

医者「わからん訳ではなかろう。ここに居続けるのが、どういう意味か」

メイド「……、聖女の名にかけ、救いを求める人を見捨て、自身だけ助かるわけにはいきません」

驕りでもなく、意地でもなく、その血に誇りを持つメイドの眼は、曇り無き光を持ち、その言葉も力ある意志からもたらされていることは、想像に難くなかった。

医者「ふぅ、まったく。従者は主に影響を受けるとは言うがな?」

医者は視線だけ、女騎士に向ける。

女騎士「メイドと私は、主従関係にはないぞ。彼女は私の友達だ」

医者「だとすると、面倒な似たもの同士というわけじゃな、まったく」

ため息はつくが、医者はどこか嬉しそうな表情をしていた。

メイドさんの胸に手…だと?
私がメイドさんの専属医師になりまぁす!



どんなに長くなろうとも、
ワタシは完結まで付き合うでよ b

>>1も、身体には気を付けてくれよな

>>955-956
メイド「確かに、女騎士様には専属医師は不要ですね」

女騎士「私だって怪我はするぞ?」

メイド「以前、1ヶ月安静の怪我を負って、一週間後には走り回ってた人には不要でしょう」

女騎士「あれは不覚だったな…」

メイド「そう言う問題ですか。そう言えば、私を診るときていた医師は?」

女騎士「拘留所で説教しておいた」


>>957
なんとまぁ、殊勝なことで。のんびりやらせてはもらいますがね。いつ終わるのやら。

風邪は大丈夫だけど、仕事が忙しくなるから更新遅くなるやも

夜は更け、都市が寝静まる中を女騎士は歩く。周りに誰もいない。

女騎士がたどり着いたのは、昼間はこの都市の観光スポットにもなっている公園で、聖イマキルペセの主神が彫られた大きな石像が噴水の真ん中に鎮座し、その他のオブジェもすべてそれに関連するものばかりだ。

女騎士「(……気が滅入る)」

神を信じられなくなったのはいつ頃からなのか、そんなことをふと彼女は考えて。

「お待ちしてました」

その考えは、その声かけに中断されてしまう。

女騎士「貴様が、密偵か」

密偵「ふふ、そうです。先輩憲兵からは噂はかねがね……、そういう世辞は嫌いでしたかね?」

女騎士「好かんな。しかし、主でもない私に依頼を受けてもらうのは助かる」

密偵「なぁに、先輩憲兵(あね)さんから、女騎士様がお困りの時は、協力するようお達しいただいてるだけです」

どこか卑屈な笑みを浮かべる男だが、女騎士は嫌悪感は沸かなかった。どちらかというと、この態度さえ、この人間のかりそめの姿だなと感じられたからだ。

密偵「調査は例の精霊魔術が効かない件ですね?」

女騎士「あぁ、頼めるか。ここだと情報屋ギルドも身動きができない」

密偵「神秘(ひみつ)主義の聖イマキルペセを探る、か。ふふ」

一瞬だけ、目に光が宿るのを女騎士は気付いたが、触れることはない。

女騎士「すぐにでも取りかかれるか?」

密偵「すでに動いています。めぼしいことはその内に」

女騎士「わかった。ではまたな」

別れを告げ、元の道で帰路につこうとして数歩進んでから、何気なく女騎士が振り向くと。

女騎士「さすが、というとこか」

数秒にも満たない時間で、密偵は闇と同化したように、もう姿は見えなかった。

黒パンツスレかと

>>963
女騎士「男はパンツが好きなのか?」

メイド「それは、そうなんじゃないかと」

女騎士「だから姉様の勝負パンツをもってるのか」

メイド「女騎士様はないので?」

女騎士「あるぞ、戦いが想定される時に、動きやすいものが」

メイド「…そうですか」

メイド「(勘違いされてますね、いろいろ)」

拙者もwwwwww闇に同化してwwwwwwwwメイド殿をwwwwwwwwwwwwコポォwwwwwwwwwwwwwwwwww

如何にして女騎士ちゃんの戦闘後のパンツを手に入れるか…
命懸けのミッションだが
不可能ではないはず

>>965
女騎士「暗殺者にしては騒がしい奴だったな…」

メイド「ふぅ、助かりました」

女騎士「大方、どこかの宗教連中が雇ったのか? まぁ、部下に吐かせるとしよう」

メイド「……、たぶん暗殺者ではないかと」

女騎士「どうしてだ?」

メイド「暗殺者がまず最初に下着を盗もうとします?」

女騎士「……ふむ」


>>966
女騎士「…今日は疲れた」

女騎士「メイドが準備してくれたから、湯浴みして休もうっと」

女騎士「ふんふ~ん♪ さて入るかー」

メイド「…どうせ脱ぎ散らかして入ると思いましたよ。まったくもう」

女騎士が宗教都市ディルムンに着てから3日ほど経過した。大教会は相変わらず、病人と怪我人が詰め寄り、自力で快復できなかったものは、そのまま墓石の中に眠る日常が続いている。

女騎士「(しかし、なぜこんなに溢れかえる?)」

医者の話では、人間自体の生命力が弱まっている。それは事実なのは間違いない。しかし、だからといって病人が怪我人が増えるかといえばそれは違う。

宗教都市の人間達も、この事態を知っていて、いつも以上に健康や怪我ないように努めているにもかかわらず、誰かしら大教会に訪れているような状況だ。そのことに、女騎士は違和感を感じていた。

女騎士「(夜の見回りもしたが、衛兵が見回っているぐらいで市民の姿を見ることすらない。病気は仕方ないにしても、怪我については、いつの間にか負っているという証言ばかりだ)」

このままでは、宗教都市ディルムンがその機能を果たさなくなる。

女騎士「(司教達も、他の教会から支援を求めていて、手を貸してもらっているようだが…、あまりにも場当たり的過ぎるからな)」

いろいろ考えた結果、大教会にある司書室を訪れていた。聖イマキルペセに関わることや、この都市の歴史に参考になるものがないか、確認するためだ。

女騎士「(聞いて答えてくれるタイプではないが、司教も忙しい身だ。できることは、自分でだな)」

ぺらぺらとめくられる分厚い聖イマキルペセの教えを流し読みしながら、女騎士は答えを探す。

司書室にある資料の量は膨大で、そしてその一冊一冊が分厚い。

女騎士「まったく、いちいちくだらないことを、大げさにくどくどと書けるな」

しかし、その中身は女騎士からすれば、余分な肉がついた文章にしか見受けられなかった。それでなくても時間がない今、神の教えを一から聞いている余裕は、民にはないのだから。

女騎士「これは外れか」

聖イマキルペセに関する経典を棚にしまい、今度はこの宗教都市に関する歴史書を手にする。最初は、この都市に聖イマキルペセの神が舞い降りという長々しい文章に、更にへきえきとし始めたが、それ以降は通常通りこの都市の発展について綴られていた。

女騎士「……(これは)」

今回の件には関係あるかはわからないが、神はいつの日かくる崩壊の時に備え、それに対抗しうる者をその地に送ったという記載があった。

女騎士「…それが、メイドだったら気楽だったんだが」

人としての生命が弱まりが、ある意味では崩壊の時とも言えなくはない。メイドの魔法に効果があれば、対抗しうる者として聖女として扱われたのでは、そんな想像を女騎士はした。

女騎士「……これっぽいな」

歴史書が3冊目になったところで、昔ここの民が神の怒りを買い、奇跡を受けることができなくなったという記載があった。そして、それは位が高い神官が生贄となることで、その怒りを鎮めて再び奇跡を受けることができるようになった。という内容だ。

女騎士「…、メイドは戻すべきかも知れないな」

この手の歴史書は、教会が隠匿すべき情報として民には伝わっていない情報ではある。しかし、教会の関係者は別だ。ある程度の立場になれば自由に閲覧もできる。もし、このことを思い出した誰かが、メイドを聖女として祭り上げ、生贄として利用しようと考えても不思議ではない。

なぜなら、これは神の怒りを静めるための神聖な儀式であり、犠牲になることは誉れなのだから。

女騎士「(そこまで古臭い思考を持つ奴が、今時期いるとは思いたくはないが)」

だが、窮地に追込まれつつある人間は違う。そして、かつ、その事態から逃げ出すことが許されないとなれば、当然だ。

女騎士「宿に戻ろう」

その言葉を呟く前に、すでに足はメイドのいる宿へと向かっていた。

さて、きりもよく970コメまで言ったので、新規に2スレ目作ったよ。思いっきり、>>1のコメ間違ってるけど、キニスルナ。
2スレ目で終わるかなぁ。

女騎士「黒パン固ぇwww」 2本目
女騎士「黒パン固ぇwww」 2本目 - SSまとめ速報
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