元太「何だこれは?」コナン「ウナギのスープだ」 (28)

とある海の見えるレストラン

阿笠「ここは海鮮料理で有名なところじゃ!」

歩美「わーい楽しみ!」

灰原「博士は食べすぎちゃだめよ」

コナン「まあまあ今日は細かいこといいっこ無しだ!」

元太「海鮮ってウナギもあるのか!?」

阿笠「もちろんじゃよ!それどころかこのレストランの名物は…」

阿笠「ウナギの海鮮風スープなんじゃよ!」

ボーイ「お待たせしました。当店自慢のウナギの海鮮スープです」

阿笠「ほほほ!では頂こうかの!」

歩美「頂きまーす!」

コナン「へえ!流石の味だぜ!」

灰原「まあ悪くないわね」

元太「へへへ!どんな味がすんのかな!」ズズー

元太「………?」

元太「え……?」ズズー

元太「………………な、なんだこれ?」

コナン「どうした元太?」

元太「な、なあ!店員さん!」

ボーイ「どうかされましたか?」

元太「このスープって本当にウナギのスープなのか!?」

ボーイ「え、髪の毛でも入っていましたか!?それとも味がおかしくなって…」

元太「いや、何も入ってないしまずくもないけど……本当にウナギなのかこれ?他の何かは混ざってないか?」

ボーイ「…はい。間違いなくウナギを使用したスープです」

ボーイ「厳重に整備された養殖場、それもほぼ自然に近いところで丁寧に育てられたウナギの肉と卵を具にして、」

ボーイ「ミネラルたっぷりの深海の深層水とウナギの骨でスープのベースを整えました」

元太「……そ、そうなのか」

ボーイ「お口に合いませんでしたら別の物にお取替えしますが?」

元太「い、いや…いいよ。うまいぜこのスープ。流石名物だな。騒いでごめんな」

ボーイ「いえいえ、ありがとうございます」

コナン「なんだよ元太ややこしいことするなよ!」

歩美「いくらうな重好きだからって店員さん困らせちゃダメだよー」

阿笠「ほほほ…元太倶楽部ってやつかのう」

灰原「所詮美食家なんて芸術作品にいちゃもんつける評論家ね」

コナン「……わ、悪かったな!」

ハハハハ…


元太「……………」

数週間前

阿笠「クルーザーを造ったぞい!みんなで船出にでも行かんかのう!」

コナン「よっしゃ!大海原に繰り出そうぜ!」


太平洋沖・船上

ヴァーーーーーーーーーーー

コナン「いやっほー!海風が気持ちいいぜ!」

歩美「きゃあああ!潮の香りだーいすき!あ、イルカさんもいるー!」

元太「なあウナギ釣ろうぜ!獲れるかな?」

灰原「まあこの辺ならいるかもしれないわね」

光彦「いやー日光浴は最高です!ん?」

阿笠「むっひょぉぉおおおおおおぉぉぉぉおおおおぉおおい」


歩美「いやー!博士スッポンポンになって何してるの!」

阿笠「そりゃ裸踊りに決まっとるじゃろう!クルージングと言えば裸踊りじゃ!」ヤンヤヤンヤ

コナン「なんでだよ…わざわざ風呂桶まで用意して両手に持ちやがって」

元太「博士のあそこウナギみたいで美味そうだな!」

灰原「博士のシラウオが何ですって?」

阿笠「うっほほおおおおおおおい!ブレイクダンスからのおおおおぉぉおおおぉおおおぉおお!」グルグルグル

阿笠「光彦君にヒッププレスじゃあああああああ!」バヒュン

光彦「うわあああ!危ない!」ヒョイ

阿笠「バ、バカモン!避けたら…うぎゃあああああ!!!」

ドガーーーーーーーーン!!!

コナン「博士が船底に突っ込んだ!大丈夫か!」

阿笠「駄目じゃああああ!穴が空いてこのままじゃ沈むぞい!」

歩美「なんですってえええええええええええええええええ」

元太「助けろおおおおおおおおおおおおおお」

灰原「一体どうしたら…いやあああああ!甲板に水が!」

光彦「皆どうか無事…ごぼぼぼぼぼぼぼ!」


……………………

無人島

阿笠「どうやらみんな泳ぎ切れたようじゃの」

コナン「クソ……なんでこんな目に」

歩美「もうおウチ帰れないのかな…」

元太「腹減ったぜ…この島何かないのかよ?」

灰原「そうね、ざっと調べたけど、この島には植物も動物もいない。食料も水も確保できないし、日差しを凌ぐ木陰もない、文字通り砂や岩以外何もない島よ」

コナン「じゃあ俺達死ぬんじゃねえか!」

阿笠「クソ…光彦君があの時避けてしまったから…」

歩美「どうしてくれるのよ光彦君!」

コナン「責任とれよな!」

光彦「わ、わかりましたよ~なんでもしますから許して!」

1週間後

コナン「もう……ずっと何も食べていない……」

歩美「お腹……すいた…」

元太「うな重…うな重…」

灰原「もうこのまま共倒れなの……?」

阿笠「ほげ…ほげげげ…」ヤンヤヤンヤ

コナン「夢の中で裸踊りか博士……本当に…この島には何もないな…」

コナン「あるのは…博士が裸踊りで持ってきた風呂桶5つだけ…」

光彦「本当に…乾いて…飢えて…死にます…」ガジガジ

コナン「光彦……自分の腕を噛んで血を飲んで渇きを癒そうってか……まるで自分を食べて…」

コナン「ん?おい、光彦?」

光彦「はい?」

コナン「おい、光彦を殺して食うぞ!」

光彦「えええええええ!」

阿笠「うむ、そうしよう!」

歩美「しょがないね…」

灰原「賛成よ。それ以外にどうしようもないわ」

光彦「えええええええええちょっと!」

コナン「うるせえ!責任とるつったろ!」

光彦「でも~」

元太「俺は……食わねえぞ!」

コナン「な…元太!」

阿笠「元太…君!」

元太「いくら飢えて死にそうでも光彦を食うなんて考えられねえ!食うぐらいなら……死んだ方がいい!」

光彦「元太君…」ウルッ

コナン「意地を張るな元太…」

歩美「そうよ!我慢しなさいよ!」

元太「何なら…海で魚でも獲って…」

灰原「もう散々調べたわよ。この島周辺と海には生物はほとんどいないの」

元太「クソ……じゃ、じゃあ……死ぬしか……ないじゃ…ねえか…」ガク

阿笠「げ、元太君!しっかりせい!元太君……げん…くん…げ…ん…ん………」

元太「ん……俺は…どうして…」

阿笠「目が覚めたかの元太君」

元太「は、博士!」

コナン「おはよう元太。さあ、これでも食うんだ」

元太「な…いやだ!光彦は食えねえ!」

灰原「小嶋君。あなたの言う通り…最後の力を振り絞って海を探ってみたの。そしたら…」

元太「そしたら?」

灰原「ウナギがいたのよ。ほら?船に乗ってた時のこと覚えてる?ウナギいるかなあって。一匹獲れたのよ!」

元太「や、やったあ!」

歩美「これは私達を助けてくれるきっかけをくれた元太君へのお礼だよ。ウナギのスープ!」

元太「へへ!ありがとうなみんな!」ズズズー

阿笠「ほほほ、食べ過ぎてむせんようにの」

元太「うめえ…うめえよ!ところで光彦は?」

阿笠「ああ…光彦君はウナギ獲りを一番頑張ってくれたからのう…スープを飲んだら疲れて寝てしまったわい」

元太「そうか!うんめえ~!」ズズズー

元太「その数日後…俺達は博士が持っていた、研究所へテレポートするスイッチで無人島から脱出した。パンツの中に入れていたのを忘れていたらしい」

元太「無人島で食べたウナギのスープと、今日レストランで食べたウナギのスープの味は違った…」

元太「そして何より最近光彦を見かけない……」

元太「まさか…まさか…」

翌日

元太母「元太ー!早く起きなさーい!いつまで寝てるのー!」

元太母「今日の朝飯はウナギだよー!食べちゃうよー!」


元太「…………」



元太は、自室で首を吊って死んでいた。机には遺書が残されていた。

みんなへ

俺は光彦を食べてしまった。光彦を食べて生きながらえてしまった

俺はそれをとても後悔している。とても耐えられない

なぜなら、俺はあの汚らしい光彦の肉を食べてしまったからだ

光彦の肉が俺の体に取り込まれ、血となり肉となり……汚染されていく

こんな呪われた体ではお前たちに合わせる顔がねえ

皆が俺を死なせまいと光彦を食わせてくれたことには素直にありがとうって言いたい。皆も光彦を食べた

なのに俺だけが死んだら、自分の体が汚れたからと死んだら、皆俺のことを嫌うかもしれない

でも構わない。俺のことを恨んでいい。恨んでもいいから、

俺の分まで生きて欲しい

二度と悲劇を繰り返すな

小嶋元太という名のウナギを糧にして、人生という大海を渡って行け


さよなら




終わり

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