ヒロイン「俺がファンタジー系乙女ゲーの主人公だぁ?」(148)

チュンチュン…チュンチュン…

母「いい加減起きなさーい! ヒロイン! いつまで寝てるのー!」

ヒロイン「…っち、うるせーな。どこのババアだよ朝っぱらから」

ヒロイン「こっちは明け方までバイトで眠たいってのに。ったく…」モゾモゾ…

ピンポーン

ヒロイン「あ? 誰だ? ってかウチのインターホンってこんな音だったか?」

母「はいはい。今開けるからねー」

ヒロイン「はぁ!? 俺は男一人暮らしだぞ? 誰だこの声は!」ガバッ

イケメン青「おはようございます」

母「いつもごめんねー青くん。ヒロイン、まだ寝てるのよー」

イケメン青「あいつの寝坊は今日に始まったことではないですから。慣れてます」

母「いつもながら性格まで良い男ねー。さ、上がって。朝ごはん食べてくでしょ?」

イケメン青「頂きます。しかし、やはり朝食代はお支払した方が…」

母「いーのよ、変な遠慮なんかしないで! その代わりにウチの娘貰ってくれればそれでいいから!」

イケメン青「……ありがとうございます」

母「それにしても本当に遅いわね。いつもなら青に変なこと言わないでよーって降りてくるのに」

【鏡の前】

ヒロイン「な、なんだこれは……女? それに部屋の内装が…窓からの風景も…」

ヒロイン「胸…」モニュ

ヒロイン「本物だ…アソコも女のそれになってやがる…」

母「ヒロイーン! そろそろ朝ごはん食べないと遅刻よー!」

ヒロイン「ヒロイン…それがこの子の名前か」

ヒロイン「あーくそ! とりあえず何か着るもの!」

ヒロイン「これ制服か? ああ、もうこれでいい!」ヌギ

ヒロイン「くそ、オカマにでもなったみてーだ」ヒラヒラ

ヒロイン「……」ドタドタ

母「やっと降りてきたみたいね」

ヒロイン「ここか!」バタン

イケメン青「ヒロイン…寝ぼけてるのか?」

ヒロイン「あん? うわ、髪の毛の色がおかしいイケメンがいる…」

イケメン青「? とりあえずおはよう、ヒロイン」

母「まったくこの子は…本当にさっきまで寝てたのね。髪がぐちゃぐちゃじゃない」

母「ほら、こっち来なさい。整えてあげるから」グイッ

ヒロイン「は? あ、ちょっと…」

イケメン青「ヒロイン、急がないと時間ないぞ」

ヒロイン「だ、だからちょっと待てって…いたたたっ」

母「髪型はどうする? いつもみたくポニーテール?」

ヒロイン「い、いーよ。それよりちょっと聞いて欲しいことがあんだけど…」

TV『──この中華王国の反応に対し、アマリカのオバム大統領は…』

ヒロイン「……中華王国? アマリカ?」

ヒロイン「なぁ、今日ってエイプリルフールだっけ?」

イケメン青「とっくに済んでる。今日は4月12日だ」

ヒロイン「4月12日…? 昨日まで7月だったよな?」

イケメン青「寝坊助も大概にしておけ。ほら、早く朝食食べて」

ヒロイン「いやいや、それどころじゃ…」グー

イケメン青「それどころじゃない?」

ヒロイン「……メシ食ってからだ」

【玄関前】

母「いってらっしゃい! いくら近いっていっても走らなきゃ間に合わないわよー!」

イケメン青「いってきます。ほら、ヒロイン」

ヒロイン「だから待てって! 話したいことが…」

イケメン青「急ぐぞ」グイッ

ヒロイン「あー! 説明する暇がねぇー!」

タッタッタッタ…

【教室】

ヒロイン「はぁ…はぁ…あ、朝っぱらから走らせやがって…」

イケメン青「相変わらず体力ないな、ヒロインは」

ヒロイン「青みたいな完璧超人と一緒にすんな!」

ヒロイン「……あれ?」

イケメン青「ようやくいつもの調子に戻ってきたな」ナデナデ

ヒロイン「てめ…頭なでてんじゃねぇよ青頭野郎が!」バシッ

親友「青頭野郎って…今日はずいぶんと口が悪いのね」オハヨー

イケメン青「おはよう親友さん。今日はこいつ、朝からこんな感じなんだよ」

ザワ…

女子生徒「きゃー! 朝からだって!」ヒソヒソ

女子生徒「やっぱり青くんとヒロインさんって付き合ってるのかな?」ヒソヒソ

女子生徒「あーあ、せっかくのイケメンが…」ヒソヒソ

親友「青くんは今日もイケメンだねぇ。よっ、この幸せもの!」パシッ

ヒロイン「……っち、何で俺がまた学校なんかに」ブツブツ

親友「……俺?」

親友「いま俺って言ったよね? 青くん、この子ホントどうしちゃったの?」

イケメン青「多分、昨日日曜ロードショーでヤクザ魂って映画を観ていたからだと思う」

親友「あーそれで。ヒロイン、何にでも影響されやすいもんねぇ」

ヒロイン「そうだ! 教科書!」ゴソゴソ

ヒロイン「日本史か? これでいいか」ペラ…

ヒロイン「……」ペラペラ

ヒロイン「大魔王織田ノブナガはナガシノの戦いにて1000人の魔法士を登用するなどして武田軍に圧勝する…」

ヒロイン「はぁ? なんだこれ…」

親友「あれ、予習してんの? って、今日はジャパン史ないでしょ」

ヒロイン「ジャパン史? 日本史じゃなくて?」

親友「日本? それよりいつまでその男口調続けるつもり?」

ヒロイン「……」

親友「一限は魔法学だから、予習するならそっちにしとけば?」

ヒロイン「魔法…学…?」

親友「あれ? もしかして教科書忘れちゃった?」

ヒロイン「……」

ヒロイン「……」ゴソゴソ

『基礎魔法学Ⅰ』

ヒロイン「……ある」

【一限目】

ヒロイン(どうなってんだよ。女になるわ、歴史がおかしいわ、魔法なんてもんが存在してるらしいわ)

ヒロイン(ここぜってー地球じゃねぇよ)

ヒロイン(でもなんで俺がこんなことになってんだ?)

イケメン黄先生「…イン」

ヒロイン(あーもう意味わかんねー!)

イケメン黄先生「ヒロイン!」

ヒロイン「……」ブツブツ…

イケメン黄先生「……ヒロイン?」テクテク

イケメン黄先生「どうした? 体調が悪いのか?」ポン

ヒロイン「……え? いや、俺は(金髪の教師…)」

イケメン黄先生「俺?」

ガタンッ

イケメン黄先生「……どうした、急に立ち上がって」

眼鏡女「……」

眼鏡女「……いえ」

イケメン黄先生「では授業中は静かに」

眼鏡女「はい」

カタン…

イケメン青「ヒロイン」

ヒロイン「……」

イケメン青「ヒロイン」ユサユサ

ヒロイン「? あぁ、俺のことか。何だよ」

イケメン青「さすがに黄の授業でふざけるのは止めておいた方がいい」

ヒロイン「……」

イケメン青「お前もこの前怖がってただろ? 黄のこと」

ヒロイン「……ああ。そうだな」

ヒロイン「私。これでいい?」

イケメン黄先生「もういいか」

イケメン青「! はい」

イケメン黄先生「ではヒロイン、お前たちがこの一年で学ぶことになる魔法の数を答えてみろ」

ヒロイン「んなこと言われたって……えーと、10?」

イケメン黄先生「そうだな。週二回の授業数ではそれくらいが妥当だろう」

イケメン黄先生「つまり魔法学の授業では、だいたい一月に一度魔法の実技テストがあるというわけだ」

エー メンドクセー

イケメン黄先生「いつまでも中学生気分でいるなよ。では教科書6ぺージ」

キーンコーンカーンコーン

イケメン黄先生「では本日はここまで。課題は次回までに必ず提出するように」

ガラガラ…ピシャ

女子生徒「はー。しんどかった」

女子生徒「でもかっこいいよね、黄先生」

男子生徒「あの人国家魔法士の資格もってんだろ?」

男子生徒「ああ。すげぇよな」

ワイワイ ワイワイ

ヒロイン「……」

ヒロイン「はぁ。俺はどうすればいいんだ…」

イケメン青「……ヒロイン」

ヒロイン「ん?」

イケメン青「お前──」

イケメン緑「こんにちはー! このクラスにヒロインちゃんって子いるー?」

ヒロイン「ん?」

イケメン青「……緑、先輩」

イケメン緑「おお、青! 久しぶり、元気に…って発見!」ダッ

ヒロイン「なんだ?」

イケメン緑「ひっさしぶりー! ヒロインちゃん!」ギュッ

ヒロイン「!」

キャー! イケメンノセンパイガ! ヒロインサンヲ!

親友「きゃー! さすがヒロイン!」

イケメン青「緑! ヒロインから離れ──」

ヒロイン「気安く触ってんじゃねぇぞこのホモ野郎がァ!」パリン

ドゴォッ

イケメン緑「ごはぁ…!」

親友「えええええええええええええええ!?」

イケメン青「……えっ」

ナ、ナグッタ… ヒロインサン… イケメン…

ヒロイン「っち」ゲシッ

イケメン緑「」ゴロ…

親友「ちょ、ちょっとヒロイン!」

ヒロイン「あん?」

親友「そ、その人って緑さんでしょ? あんたの従兄妹の!」

ヒロイン「え…」

イケメン青「……気絶してるな」

イケメン青「ヒロイン、緑先輩と喧嘩でもしてたのか?」

ヒロイン「い、いや。なんつーか…」

ヒロイン(ど、どうしよう。完全に変態野郎だと思って撃退しちまったじゃねーか!)

ヒロイン「わ、私もお年頃? っていうかさ…」

親友「いや、恥ずかしかったからって従兄妹相手にこれはやりすぎだよ」

イケメン青「…そうだな。俺は緑先輩を保健室まで運んでくる」

イケメン青「ヒロイン、あとでちゃんと謝るんだ」

ヒロイン「わ、わかってる。咄嗟に手が出ちゃったんだ。悪かったと思ってるよ」

イケメン青「それならいいんだが……よっと」

眼鏡女「……」ジッ…

イケメン青「ん?」

眼鏡女「……」フイ

イケメン青「? じゃあ運んでくるから」

【昼休み】

親友「ヒロイーンお弁当食べよー」

ヒロイン「ああ…」

ヒロイン(っち。何で俺が学生ゴッコなんか…)

親友「ふんふんふ~ん」パカ

親友「わーいから揚げー」パクパク

ヒロイン「……」パカ

ヒロイン「……」モグ…

ヒロイン(うまい)

ヒロイン「……」パクパク モグモグ

親友「おお。いい食べっぷり」

ヒロイン「……ああ。まぁ、うまいから」ゴックン

親友「ふーん。なるほど…」キラン

親友「ではその美味そうな卵焼きを貰ったー!」

ヒロイン「……」

ヒロイン「……」ヒュッ

親友「ふはははは! は…あれ?」

ヒロイン「……」ムグムグ

親友「ない…掴んだはずの卵焼きが…いや、それどころか私のから揚げさえ…!」

ヒロイン「濃口の味付けだ。私の好みにピッタリだな」ニヤリ

親友「な、なんだとー!」

親友「うわーん! ミスどんくさいにお弁当のおかずを取られたー!」

ヒロイン「人のものを盗ろうとするからだ」

ヒロイン(ミスどんくさいねぇ…)

親友「ふん、いいもんね。から揚げくらい餞別にくれてやる」

親友「なんたってヒロインには、これから緑先輩への謝罪会見が控えてるからねー」

ヒロイン「まぁそれについては私も悪いと思うが、あっちも急に抱きついてきたんだ」

親友「何言ってんのよ今更。そんなのいつものことなんでしょ?」

ヒロイン「は?」

親友「あんた従兄妹の緑先輩に会うたび抱きつかれるって愚痴ってたじゃない」

ヒロイン(あれ、もしかしてあの緑頭彼氏だったのか?)

ヒロイン(……ほんと、一刻も早くこのわけのわかんねぇ状況から抜け出さねぇと)

【2年5組教室前】

ヒロイン「ここか…」

イケメン青「ああ。緑先輩は三限には気が付いて授業に戻ったらしい」

親友「え…一応病院とか行った方がいいんじゃ…」

イケメン青「あの人のことだからできるだけヒロインが責任を感じないようにしたんだと思う」

親友「ほほぉ。それじゃ、ほらほら。早く済ませてきちゃいなよ」ツンツン

ヒロイン「ま、そだな」ガラッ

親友(うわ、上級生の教室に躊躇なく入った)

二年男子「ん?」

ヒロイン「すいません。緑先輩って人います?」

二年男子「ああ、君が緑の奴をノシちゃったって一年の女子?」

二年男子「お! この子?」

二年男子「ははは! 一年の癖にやるなぁ!」

ワイワイ ワイワイ

親友「うわぁ、凄い騒ぎになってる」

イケメン青「……」スタスタ

親友「青くんも入るの? そりゃ入るよねー」

親友「うーん…」

親友「私も行くか」スタスタ

ワイワイ ワイワイ

二年男子「ねぇ、どうやってあいつの結界抜いたの?」

ヒロイン「は?」

二年男子「緑の防護結界だよ。あいつのすっげぇ硬いのに」

ヒロイン「知らない」

二年男子「気ぃ強いね、君」

ヒロイン「いいから緑は?」

イケメン桃「……へぇ。俺、緑がこの子気に入ってるわけわかるわ」ズイッ

ヒロイン(髪の毛ピンク…)キモ…

イケメン桃「なぁ、緑なんか振っちゃってさ、俺と付き合おうよ」カタダキ

ヒロイン「は?」イラッ

ヒロイン「ありえねーよ。触んな」パシッ

オオー! ピンクガフラレタ! イイゾー!

ワイワイ ワイワイ

イケメン桃「……」

イケメン桃「…てめぇ一年がァ」

アレ、ピンクキレテネ? ヤベエナ… 

イケメン桃「チョーシ…」

ヤバイ! ミドリヨベ! ミドリー!

イケメン青「……!」

親友「え? なに?」

ヒロイン(なんだ…?)

イケメン桃「こいてんじゃねーぞコラァ!」

ゴオオオオオオオオオ!

ヒロイン(ピンクの炎!? ホントに魔法実在すんのかよ!)

イケメン桃「こいつを真ん丸にかためてぇ…!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

イケメン青「まずい! ヒロイン!」ダッ

イケメン桃「オラァ! 喰らえクソアマ!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!

ヒロイン(あ、遅いわ)ヒョイ

みんな「逃げ…ええええええええええええええ!?」

イケメン桃「アッサリよけたあああああああああああ!?」

ヒロイン「死ねクソピンク!」ブンッ

イケメン桃「!! 結界!」

パリン

イケメン桃「なっ!? ごはっ…!」

イケメン「」バタン

シーン…

ヒロイン「ふん」ドガッ

イケメン桃「」ゴロゴロ

トドメ… トドメサシタ… ピンク…

ヒロイン「誰かロープ……は燃やされるか。仕方ない」ヨイショ

親友「え…ね、ねぇヒロイン、その先輩の腕を持ったりしてどうしたの?」

ヒロイン「何って。骨折るんだよ」

ザワ…

ウソダロ… ホネ… オルッテ…

親友「だ、駄目だよ! そんなことしたら!」

ヒロイン「は? でもこんな危険人物を…」

親友「ちょっと驚かされたくらいでそんなことしちゃ駄目!」

ヒロイン「いやちょっとじゃねーだろ。死ぬとこだったんだぞ、こっちは」イライラ

イケメン青「ヒロイン!」

ヒロイン「あ?」

イケメン青「学内での俺たちの安全は学園結界によって守られている」

ヒロイン「……学内結界?」

イケメン青「学園の敷地内にいる限り、俺たちが魔法の力で傷つくことはない。そうだろ?」

ヒロイン「……へぇ。ふーん、知らなかった」ポイッ

イケメン桃「」ダラン…

ジラジラシイ… シラナイッテ… ソンナワケナイノニ…

ザワザワ… ザワザワ…

親友(他クラスから生徒が集まってきてる…)

親友「と、とりあえず後は先生方に任せよう。昼休みも終わりだし。今回の件はどう考えても悪いのこの先輩だし」

イケメン青「そうだな。緑先輩への謝罪は明日に回すといい」

ヒロイン「はいはい」

ヒロイン(明日ね…やっぱり明日もこのままなのかなぁ…)

ヒロイン(それは勘弁して欲しいよな…)テクテク

ババッ

二年男子「おお、人垣がモーゼの如く…」

二年男子「これは…学園に新たな勢力が生まれるな」

二年男子「入学一週間で二年の実力者二人を下す一年か…」

ザワザワ ザワザワ

ヒロイン「はぁ、早く元に戻りたい」

今日は以上です。

明日か明後日に続き書くかも。

【翌日】

チュンチュン… チュンチュン…

ヒロイン「……ふぁ~」

ヒロイン「……」ボー

ヒロイン「……」モニュ

ヒロイン「戻ってねぇ…」

ピンポーン

アオクンオハヨウ! オハヨウゴザイマス…

ヒロイン「はぁ…てか俺はこの子のことなんか知ったこっちゃねぇし」

ヒロイン「別に学校とか行かなくてもいいだろ」ゴロン

母「ヒロイーン! 青くん来たわよー!」

ヒロイン「…無視無視」

母「ヒロイン! 朝よー!」

ヒロイン「……」

母「ヒロイーン!」

ヒロイン「ああもう!」ヌギヌギ

ヒロイン「行かねぇ方が面倒なことになりそうだ。制服制服…」

ガチャ

イケメン青「ヒロイン、起こしに…き…」

ヒロイン「あ?」

イケメン青「…た」

ヒロイン「っち、朝っぱらからラッキースケベかましてんじゃねぇぞタコ」

イケメン青「す、すまん」カアー

バタンッ

ヒロイン「ラブコメしやがって。こいつら毎日えっちーばかーとかしてんのかよ」

ヒロイン「にしてもあの無表情野郎、顔真っ赤にして傑作だったぜ」ヒャハハ

ヒロイン「ま、スカしてるよりかはよっぽど好感持てるがな」

ヒロイン「しかしあの焦りよう…」

ヒロイン「ははぁん」ニヤリ

【朝食】

母「まったくアンタは毎日毎日ギリギリなんだから」

ヒロイン「んー」モグモグ

母「少しは青くんのこと見習いなさいよ!」

ヒロイン「あー」モグモグ

母「ちょっと聞いてるの?」

ヒロイン「はいはい」(おしゃべりな母親だな)

イケメン青「……」モグモグ

ヒロイン(こいつは無言だし)

ヒロイン「ねぇ、青っていつから一緒に朝ゴハン食べてんだっけ?」

母「さぁ? 中学あがったころからじゃなかったかしら」

母「アンタたちずーっと仲良かったもんねぇ」

ヒロイン「ふーん」(幼馴染ってやつか)

イケメン青「……」モグ…

【通学路】

スタスタスタ

イケメン青「ヒロイン」

ヒロイン「あん?」

イケメン青「今朝、すまなかった」

ヒロイン「ああ、興奮した?」

イケメン青「おい、そういうことは…」

ヒロイン「したんだろ?」

イケメン青「……してない」

ヒロイン「へぇ」ニヤニヤ

ヒロイン「私のこと好きなのに?」

イケメン青「!」

イケメン青「好きじゃない」

ヒロイン「嘘つけ。今ビクッってなったろビクッて」

イケメン青「なってない」

ヒロイン「なったよ。認めろ。このヒロインちゃんに恋しちゃったんだろ~」

ヒロイン「ほら告れよ。振ってやっから」ケラケラ

イケメン青「……俺が好きなのは」

ヒロイン「お?」

イケメン青「『ヒロイン』じゃない」

ヒロイン「……」

イケメン「先行く」スタスタ

ヒロイン「……」

ヒロイン「まさか気づいてんのかアイツ、俺が別人だって」

ヒロイン「いや、それなら何とか追い出そうとするだろ、俺を」

ヒロイン「この子に惚れてるならなおさら…」

ヒロイン「ブツブツ…」

ヒロイン「あーめんどくせぇ! もういいや、気づいてないってことにしとこ」

ヒロイン「どうせ俺が元に戻れば全部解決だろ」スタスタ

【校門】

ヒロイン「家から歩いて五分ってとこか。ホント近いな」テクテク

ザワッ

男子生徒「あ…! ほら、あの子だよ」

男子生徒「へぇ、そうは見えないけど」

女子生徒「すごーい」

ザワザワ

ヒロイン(何だ? やけに視線が向けられてるような…)

ヒロイン「さっさと教室いこ」スタスタ

イケメン黒「待て」

ザワッ

男子生徒「一年の黒だ…」

男子生徒「ああ、優秀な魔法士を輩出し続ける名門一家のサラブレットだ」

女子生徒「きゃー黒くーん!」

ザワザワ

ヒロイン「何?」

イケメン黒「お前、一年のヒロインだな」

ヒロイン「違う。私は二年のヒロコだ」

イケメン黒「なに…?」

イケメン黒「見え透いた嘘をつくな。タイのラインが一本だろう」

ヒロイン「え、これって学年表してんの? ってことは進級するたびに買い替えんのかよ」モッタイネー

イケメン黒「ふん、嘘だ。ラインは二年も三年も一本で変わりない」

ヒロイン「……」イラッ

イケメン黒「そちらが先に虚言を吐いた。俺もそれに倣ったまで」

ヒロイン「っち。で、何の用だよ」

イケメン黒「俺と決闘しろ」

ヒロイン「死ね」スタスタ

ザワ…
ケットウ… コトワッタ… シネッテ…

イケメン黒「ふん…」

イケメン黒「わかった。確かに了承を得たぞ」

ヒロイン「あぁ? お前耳は大丈夫か?」

イケメン黒「ふん、俺の決闘の申し込みに対し、お前は「死ね」と返した」

イケメン黒「これは「ぶち殺してやるから首を洗って待っていろ」という了承の意に他ならない」

ヒロイン「はぁ?」

ソウダッタノカ… サスガ… ヒロインサン…

イケメン黒「お前たち! 決闘の時刻は本日午後五時! 場所は第三訓練場だ!」

オオオオオオオオオ! スゲー! ケットウダー!

ヒロイン(こいつギャラリーを味方につけやがって…)

ヒロイン「そもそも決闘ってなんだよ、ガキか。ゴッコ遊びなら幼稚園のお友達とでもしてろ」

イケメン黒「ふん、しらばっくれるな。この学園の入学試験に受かったのなら知らないはずがないだろう」

イケメン黒「ここキラメキ学園は、全国でも数少ない魔法学を必履修科目に入れている高等学校だ。よってその校風も異色」

イケメン黒「キラメキ学園学生規則第二十三条、本学生徒間において決闘が成立した場合、必ずこの決闘は実行されなければならない!」

ソウダー! イイゾー! クロクーン!

ヒロイン「っち…」(どんな学校だよ!)

ヒロイン「私はするなんて言ってない! 決闘は成立してない!」

イケメン黒「いいや、確かに合意は得たぞ。なあ、お前たちも聞いていただろう?」

キイタゾー! ヤルキマンマンダッター! ケットウダー!

ヒロイン「クソが! とにかく私はやらないからな、そんな面倒なこと──」

黒髪ロング「とか言って黒くんにやられちゃうのが怖いだけなんじゃないですかー」

ヒロイン「……あ?」ギロ…

黒髪ロング「き、きゃーこわーい。でもビビッてるんでしょ、ホントは大したことないですよーコイツ」

ザワザワ…

男子生徒「確かに一度受けた決闘を断るなんて…なぁ?」

男子生徒「いや、普通にキラメキ学園の生徒として恥ずべきことだろ」

男子生徒「やっぱりそうだよな…」

イケメン黒「……」ニヤリ

黒髪ロング(あの子怖っ)ダラダラ

ヒロイン「てめぇ…誰がビビッてるだ?」

黒髪ロング「あ、あなたですよ。やーいビビリー、弱虫ー」

ヒロイン「」プチーン

ヒロイン「おっけー、いいよ。おい色白野郎」

イケメン黒「…なんだ?」

ヒロイン「決闘受けてやるよ。その変わり…」ビシッ

黒髪ロング「えっ、な、何ですか」

ヒロイン「私が色白野郎に勝ったら次はコイツと決闘だ」

黒髪ロング「は、はぁ!? あたしは無関係でしょ!?」

ヒロイン「嘘つけ。サクラとはいえ、私をコケにしやがった罪は重い」

黒髪ロング(バレてる…)

ヒロイン「ほらよ、私はビビりじゃねぇって証拠を示した。次はお前の番だぜ色白野郎」

ヒロイン「てめぇが私に負けたら、てめぇの彼女の顔面を陥没させる。それでもやるか?」

黒髪ロング「ええええええええ!?」

イケメン黒「別に彼女ではない」

黒髪ロング「ちょ、く、黒!? あたし黒のためにこんなに怖い思いしてるんだよ!?」

イケメン黒「安心しろ、お前は必ず俺が守る」ボソボソ

黒髪ロング「ふあっ」カアー

イケメン黒「いいだろう。では俺が勝利すれば……ヒロイン」

ヒロイン「あん?」

イケメン黒「お前には俺の作る勢力に加わって貰う」

オオオオオオオ! アノイチネン! ジブンノセイリョクヲツクルツモリカ!

ヒロイン「は? 勢力?」

ヒロイン「ああ、つまり手下になれってことか? いいぜ。決闘は五時に第三訓練場だったな」

イケメン黒「ああ」

ヒロイン「それじゃあ色白野郎……「ぶち殺してやるから首を洗って待っていろ」」

ヒロイン「俺の言葉をこう解釈したことを後悔させてやるぜ。じゃーな」スタスタ

イケメン黒「……ふん、威勢の良い女だ」ニヤッ

黒髪ロング「何アレ? ナマイキだよねー」

イケメン黒「ククク…」

黒髪ロング「黒に勝てる訳ないのにね。ねっ」

イケメン黒「ああいう女ほど屈服させたあと楽しめる…」

黒髪ロング「えっ…あ、あの。黒…ごほうび…」トントン

イケメン黒「ほら」パシッ

黒髪ロング「いたぁっ! ちょっと! 頭ナデナデでしょ!」

イケメン黒「……」スタスタ

黒髪ロング「うわーん! 返事しろー!」タッタッタッ


今日は以上です。
次は明後日かな?

やっぱりあと少し


【1ーB教室】

親友「ちょっとヒロイン! あんたがあの黒くんと決闘するって話題になってんるんだけど!」

ヒロイン「ふーん」ペラ…

親友「ふーんて…まさか本当なの?」

ヒロイン「ああ」ペラ…

親友「た、大変じゃない! もしかして、俺の勢力に入れ! とか言われた!?」

ヒロイン「うん」ペラ…

親友「きゃー! さすがヒロイン! 高校でも次々とイケメンたちにフラグを立てていくのねー!」キャッキャ

ヒロイン「……」ペラ…


親友「って、さっきから魔法学の教科書読んだりしてどうしたの?」

ヒロイン「予習だよ」

親友「いや、今日は魔法学ないでしょ。次は木曜だよ」

ヒロイン「決闘の予習だよ。どうせあの色白野郎、魔法とか使ってくんだろ?」

親友「色白野郎って……そりゃエリート様だしねぇ。ナンバークラスの三年でも使えないような魔法をバンバン使ってくるよ、きっと」

ヒロイン「ふーん……ん? ナンバークラス?」

親友「もーあんたって子は…ホント忘れっぽいんだから」ハア…

親友「ヒロイン、私たちのクラスは何組?」

ヒロイン「えーと…B組?」

親友「よろしい。じゃあ昨日行った緑先輩のクラスは何組だった?」

ヒロイン「確か二年五組……アレ? B組と五組?」

親友「おかしいでしょ? キラ学は普通科がアルファベットクラス、魔法科がナンバークラスに分けられてるのよ」

ヒロイン「へぇ」

親友「ナンバークラスは完全な実力制。学業の成績が悪くても魔法の力が強い生徒が固まって編成されてる」

親友「だからナンバークラスの中でも強いクラスと弱いクラスがキッチリ別れてて…」

ヒロイン「色白野郎は一番優秀なクラスってわけか」

親友「そっ。一組が一番下で五組が上ね」

親友「しかも黒くんは五組のクラス代表だよ。つまり一年生で一番魔法が上手いってこと」

親友「普通に考えてアルファベットクラスのあんたが勝てるはずない……って言いたいんだけど」

ヒロイン「ん?」

親友「昨日のヒロイン見てたらわかんなくなっちゃった」

ヒロイン「あー。緑もピンクも二年五組だもんな」

親友「うん。特に緑先輩は防護結界っていう凄い魔法を使えるらしくて、二年じゃ無敵だったんだって」

ヒロイン「へぇ…」


親友「で、ヒロインは昨日、その無敵の緑先輩を気絶させちゃった。しかもその後のピンク先輩で駄目押し」

ヒロイン「緑の方は不意打ちだったし勝ったとは言わないだろ」

親友「うん。でも重要なのは周りがそう思ってるってことなんだよ」

親友「知ってる? ヒロインの噂、昨日の今日なのに凄い勢いで学内を駆け巡ってるよ」

ヒロイン「あー。さっき凄い見られた」

親友「でしょ? つまりさ、もし今回も上手く勝ちを拾えたりしたら…」

ヒロイン「……」

親友「ヒロインは一年の四月にして、二学年の間で最大の勢力を作り上げちゃうってこと」

親友「……に、なるのかな?」

ヒロイン「……おいおい。ちょっとドキッてしちゃったじゃん」

親友「だって私もまだ入学して数日だし。勢力とか何かもわかんないし」アハハ

ヒロイン「ったく…」ペラペラ

親友「でも、全校生徒から一身に注目を集めることになるのは確かだと思うよ」

親友「そしたら、ヒロインが望んでたのんびりとした学園生活は絶対に送れなくなっちゃうね」

ヒロイン「へー」ペラペラ

親友「……」

親友「……勝つなら慎重にね。ヒロイン」

【昼休み】

ヒロイン「ふーん。魔法って呪文とか唱えなくてもいいんだ」モグモグ

ポッチャリ男子「う、うん。トリガーをちゃんと自分の中で定めて、それを引くことができれば…」

ヒロイン「なるほどね。で、魔力ってのはMPってことでいいの?」モグモグ

ポッチャリ男子「ヒロインさんってゲームとかやるんだ……。うん、それであってるよ」

ヒロイン「バイキルトとかピリオムみたいな魔法はある?」ゴクン

ポッチャリ男子「あはは。うん、あるよ。でも運動能力を引き上げる魔法だから」

ヒロイン「全部いっぺんに上がっちゃうわけか。ありがと。わかりやすかったよ」ガタン

ポッチャリ男子「あ、あの。ヒロインさん」

ヒロイン「ん?」

ポッチャリ男子「お、俺はずっと魔法に憧れてて……ナンバークラス狙って勉強してきたんだけど…駄目で…」

ポッチャリ男子「だから…えっと、これからも魔法のことについて何かわからないことがあれば、その、教えるよ」

ポッチャリ男子「実技はまだまだだけど、知識はあるつもりなんだ」

ヒロイン「あー。まぁ、そのときはよろしく」スタスタ

ポッチャリ男子「け、決闘頑張って! 応援しに行くよ!」

親友「ねぇヒロイン。クラスで一番魔法に詳しいやつって聞かれたから答えたけどさ…」

親友「青くんも緑先輩もいて、あんなマシュマロくんと一緒にお昼食べる、フツー?」

ヒロイン「いいだろ別に。これで魔法への理解は随分と上がったぜ」

親友「男子の人気もねー。噂の怪物一年は誰とでも分け隔てなく接する可愛い女の子なんだってさ」

ヒロイン「あ? 何それ?」

親友「昼休みの間、ずーっとひっきりなしに人が来てたでしょ」

ヒロイン「ああ。すげーこっち見てたな」

親友「そりゃあみんなヒロイン目当てだからね」

ヒロイン「はぁ…何でこんな大事になってんだよ」

親友「言ったでしょ、噂が駆け巡ってるって」

ヒロイン「でも私魔法なんて使えないんだぞ? あれ、使えないよね?」

親友「自分のことでしょうが」

ヒロイン「まぁそうなん──」

眼鏡女「ヒロインさん」

ヒロイン「ん?」

親友「えーと、眼鏡さん?」

眼鏡女「ちょっと着いてきて欲しいんだけど」

ヒロイン「何で?」

眼鏡女「……あの黒って人に関して有益な情報が」

ヒロイン「ふーん」

眼鏡女「一応クラスメイトだし、教えておこうかなって」

ヒロイン「……」

ヒロイン「ま、いいや」

親友「行くの?」

ヒロイン「ああ」

眼鏡女「じゃあヒロインさん、こっちよ」

親友「いってらっしゃーい」

【空き教室】

ヒロイン「で、何の用だ?」

眼鏡女「……」

ヒロイン「早く言えよ。何の用で呼び出した?」

眼鏡女「……フフ、なんだと思う?」クスッ

ヒロイン「はぁ……わぁすごくミステリアスでかっこいいなー」

ヒロイン「これでいいか? 早くしろ」

眼鏡女「……いいわ。せいぜい驚かないことね」ムカ

眼鏡女「……」フサァ

眼鏡女「──ドキドキ魔法学園☆キラメキのマジカルプリンス」

眼鏡女「フフ…」ドヤ

眼鏡女「そう、貴女だけが特別──未来を知っているわけじゃないのよ」フサァ

ヒロイン「あ? 何? アニメか何かか?」

眼鏡女「……」

眼鏡女「この期に及んでシラを切るなんて往生際が…」

ヒロイン「ふん」

ボカッ

眼鏡女「痛っ! え、ちょ、ちょっと!」

ボカッ ドスッ 

眼鏡女「い、痛い! やめてよ!」

ヒロイン「お前向こうの世界の人間か? さっさと知ってること全部吐け」

ドガッ バシッ

眼鏡女「は、吐く! 吐くから殴るのやめて!」

【数分後】

ヒロイン「ここがゲームの世界だと?」

眼鏡女「そ、そうよ。本当に知らなかったの? 非オタアピールとかじゃなくて?」

ヒロイン「知らねーっつてんだろ。そもそも俺は男なんだよ。男と恋愛するゲームなんて誰がするか」

眼鏡女「男? サバサバ系女子アピールじゃなかったの?」

ヒロイン「アピールアピールうるせーな。お前人の目とかすげー気にするタイプだろ」

眼鏡女「……」ムカッ

ヒロイン「で、このゲームの世界から脱出する方法が…」

眼鏡女「……おそらく、ゲームのエンディングを迎えることだと思うわ」

ヒロイン「おいおい、恋愛ゲームのゲームクリアっていったら…」

眼鏡女「赤ルート、青ルート、緑ルート、黒ルート、黄ルート……フフ、より取り見取りね?」クスクス

ヒロイン「どれもお断りだ! 気持ちりぃ!」

眼鏡女「こ、個人的には青くんルートだけは止めといた方がいいと思うわ」

ヒロイン「ゲームキャラに惚れてんじゃねーぞブス」

眼鏡女「は、はぁ!? 惚れてないんだけど!? ブスでもないし意味わかんない!」

眼鏡女「…そんな態度をとるなら教えてあげないわよ?」

ヒロイン「あ?」

眼鏡女「フフフ…」

眼鏡女「……」フサァ

眼鏡女「──『十一番目のバッドエンド』」

眼鏡女「そう、これが『あなた』がこの鳥籠から解放される唯一の方法──」ドヤァ

ヒロイン「いちいち勿体ぶって大物アピールしてんじゃねぇよ。お前はただのオタクだろうがブス」

眼鏡女「っ! あ、貴女も今アピールって言ったじゃない! やーい人の目気にしてる! だっさ…いたたたた!」ギリギリ

ヒロイン「で、その十一番目のバッドエンドってのは?」

眼鏡女「こ、このゲームには全部で七つのハッピーエンドと十つのバッドエンドがあるわ」

ヒロイン「ふーん。で?」

眼鏡女「ハッピーエンドの内約は、攻略キャラそれぞれと恋人になる純愛エンドが五つ」

眼鏡女「全ての純愛エンドをクリアするとフラグが立つハーレムエンドが一つ」

眼鏡女「そしてだれとも恋人にならないでゲームクリアまで生き残る、いわゆる独身エンドが一つ…となっているわ」

ヒロイン「生き残る?」

眼鏡女「バッドエンド=死なのよ、このゲーム」

ヒロイン「物騒だなオイ」

眼鏡女「だから貴女には、乙ゲーなのに誰とも添い遂げないハッピーエンド…十一番目のバッドエンドを目指してもらうわ」

眼鏡女「そうすれば恋人を作らないでもゲームをクリアできるでしょう?」

眼鏡女「これが今のところ、男性の貴女が元の世界に帰ることができる唯一の方法じゃないかしら?」

眼鏡女「私もゲームがクリアされたら元に戻れると思うし、協力は惜しまないつもりよ」フサァ

ヒロイン「……」

ヒロイン「……はぁ。何で俺がこんなことになってんだよ」

眼鏡女「知らないわよ。まぁ、とりあえず目下の問題は今日の決闘ね」

ヒロイン「ああ。何だ、負けろってか?」

眼鏡女「今更シナリオ通り動こうとしても無駄よ。本当はこれ、青くんと黒が決闘するイベントだったんだから」

ヒロイン「青と黒が?」

眼鏡女「青くんって本当は一年生の中では黒に次ぐ魔法の力を持っていて、黒はそこに目を付けるのよ」

ヒロイン「ああ、勢力がどうとか。それで緑と桃を倒した俺が決闘を挑まれたのか」

眼鏡女「そうよ。ゲームではヒロインの戦闘シーンなんて数えるほどしかないんだけどね」

ヒロイン「ふーん。で、青は負けるのか?」

眼鏡女「そうよ。ヒロインが二人の間に入って決闘を止めようとして、それを庇うの」

ヒロイン「へぇ。青のやつ、なかなか根性あるじゃねーか」

眼鏡女「そ、そうよね! やっぱりマジプリで一番かっこいいのは青くんよね! ちょっとヤンデレなところもあるけどそれがまた良いって言うか…」ハァハァ

ヒロイン「いきなり興奮しだすなよ気色悪い」

ヒロイン「あ、そういやその青に俺のことバレたっぽい」

眼鏡女「はぁ!? なんで!」

ヒロイン「口調とか雰囲気とかじゃねぇの? 俺が好きなのは本物のヒロインなんだーみたいなこと言われた」

眼鏡女「え、なんだ。じゃあそれは貴女の取り越し苦労よ」

眼鏡女「だって青くんは四月の時点ではヒロインに対して幼馴染以上の感情は抱いていないはずだもの」

ヒロイン「そうなのか? でも確かに…」

眼鏡女「私はゲームのテキストで心理描写まで読んでいたのよ? 間違えるはずがないじゃない」

眼鏡女「青くんはね、ヒロインがキラ学でたくましくなっていくにつれ、だんだんと惹かれていくのよ」

ヒロイン「んー…気のせいではないと思うんだがなあ…」

ヒロイン「ま、いいだろ。それで結局決闘は勝てばいいのか? 負ければいいのか?」

眼鏡女「どっちでもいいわよ。貴女が攻略キャラたちと同じ勢力に入って、対校戦に出場できれば問題ないはずだし」

眼鏡女「むしろ勝ってボスになっておいた方が、色々と修正がきいてゲームのストーリーに大筋を合わせやすいかもしれないわね」

ヒロイン「じゃあ勝つぜ」

眼鏡女「……一応ヒロインにはバリアを壊す魔法が先天的に使えるっていう設定はあるけど…それで勝てるの?」

ヒロイン「ほう、バリアを壊す魔法ね。十分だ。俺、喧嘩で負けたことねぇし」

眼鏡女「なによ。貴女DQN?」

ヒロイン「は? ドキュ…?」

ヒロイン「ま、俺があの色白野郎をボコボコにする瞬間をちゃんと見てろよ」

眼鏡女「はいはい。負けても大して問題はないし気楽にやりなさい」

キーンコーンカーンコーン

眼鏡女「キリよくチャイムが鳴ったわね。教室へ戻るわよ」

ヒロイン「ああ」

ヒロイン(……まさかゲームの世界とはな。しかしこれでようやく、このおかしな状況から脱出できる方法が見つかったぜ)

ヒロイン(あの眼鏡のことをまだ完全に信用したわけじゃないが、元に戻るための手掛かりはアイツだけなんだ)

ヒロイン(気に食わなくても、多少は言うこと聞かなきゃな)メンドクセー

【放課後】

担任「えー、では連絡事項は以上とする……ヒロイン!」

ヒロイン「あん?」

担任「決闘、頑張れよ! 先生も応援に行くからな!」

ヒロイン「は?」

女子生徒「ヒロインさん頑張って!」

男子生徒「1-Bは総出で応援するから!」

女子生徒「見て見てー! 旗作ったよー!」

ワイワイ ワイワイ

ヒロイン「盛り上がり過ぎだろ…」

ピンポンパンポーン

校内放送『HR中に失礼します。決闘執行委員会です』

ヒロイン「決闘執行委員会?」

親友「へーそんなのもあるんだねー」

校内放送『本日十七時より、一階、第三訓練場で今期初の決闘が行われます』

校内放送『一年五組黒VS一年B組ヒロイン。アルファベットクラスの生徒の決闘は二年ぶりとのことです』

校内放送『新一年生のみなさんは決闘がどのようなものなのかをよく知るためにも、是非見学にいらして下さい』

校内放送『決闘執行委員会でした』

ピンポンパンポーン

ヒロイン「……どんだけ大々的なんだよ」

親友「ヒ、ヒロイン、私緊張してきちゃった」

ヒロイン「なんでだよ。お前関係ないだろ」

ポッチャリ男子「うおおおおおおおお! ヒロインさん頑張れええええええ!」

ヒロイン「うるさっ」

オオー! イイゾーポッチャリー! ヤルジャネーカ!

ヒロイン「っち、いいや。五時まで時間潰してくる」

担任「何を言ってるんだ! バトルスーツに着替える時間があるんだ、のんびりなんてしていられないぞ!」

ヒロイン「は? バトルスーツ? 冗談だろ?」

ガラッ

巨乳委員「し、失礼します。決闘執行委員会です。あの、ヒロインさんは…」

担任「おお、この生徒だ! 案内してやってくれ!」グイグイ

ヒロイン「あっ、てめぇ! 押すんじゃねぇ!」

担任「頑張れよー!」

クラスメイトたち「ヒロインさん頑張れー!」

コチラデス! ジブンデアルク! ヒィ!

親友「えーと、どうしよ。ついていってあげた方がいいかな」

イケメン青「あとは委員会の人が上手くやってくれるだろう」

親友「それもそっか」

【第三訓練場・女子更衣室】

巨乳委員「ヒ、ヒロインさんのバトルスーツは予め先生から預かっておきました。こちらです」

ヒロイン「なんだこれ。白地に赤いラインの入ったオールインワンの服……随分硬い手触りだな」ダセェ…

ヒロイン「これ本当に着なきゃだめなの?」

巨乳委員「は、はい。学園結界内でも擬似的に魔法で戦闘訓練ができるよう開発されたスーツです。決闘には必須ですよ」

ヒロイン「はいはい」ヌギヌギ

ヒロイン「結構ピッチリだな。コスプレでもしてるみたいだ」キュッ

巨乳委員「では次にこちらのアーマーを」

ヒロイン「へー、シルバーの鎧か」ガチャガチャ

巨乳委員「お似合いです!」パチパチ

ヒロイン「ああ。ふふん、カッコイイじゃねーか」

巨乳委員「あとはこのフェイスシールドとブーツを着用して、アナウンスのあとに訓練場へお越し下さい。それでは」タタタッ

ヒロイン「はいよー」

ヒロイン「……」

ヒロイン「フェイスシールド…」カポッ

ヒロイン「すげーなこれ、ライダーみてぇ。ハハッ」クルクル

キュイイイイイイイイン

ヒロイン「……ん? 何だこの音? ってあれ」

ヒロイン「視界の端に……『100%』? フェイスシールドに表示されてんのか?」

ヒロイン「……」

ヒロイン「ま、いいや。知らね」

アナウンス『四時五十分になりました。ヒロインさんは訓練場へ向かって下さい』

ヒロイン「やっとかよ」スタスタ

【第三訓練場】

ヒロイン「……」ガチャ

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!

ヒロイン「あぁ?」

ガンバレヨー! アルファベットクラスガンバレ! ヒロインチャーン!

ヒロイン「……すっげぇ人数。どんだけ来てんだよ」スタスタ

イケメン緑「ヒロインちゃん!」

ヒロイン「あ? ああ、緑…先輩」(殴っちまった人だ…)

イケメン緑「……緑先輩、か。ミドくんとはもう呼んでくれないんだね…」

ヒロイン「ったりめーだろ気持ちわ…」

──攻略キャラとは仲良くしなさい

──わかったわね

ヒロイン「……も、もう高校生だし恥ずかしくてさ」

ヒロイン(何で俺がこんなこと! クソ眼鏡が!)

イケメン緑「そっか…そうだよね。ヒロインちゃんも、もう高校生なんだもんね…」

イケメン緑「昨日、突然抱きついちゃってゴメン。しかもそのせいでこんなことになって…」

イケメン緑「ヒロインちゃんが決闘なんて…こんなことに…」

ヒロイン「あー、まぁ気にしないでよ。先輩のせいじゃないからさ」

イケメン緑「……あはは、うん、ありがとう。ヒロインちゃんはどんなときでも自分より他人を気にかけて……うん。何も変わってないじゃないか」

ヒロイン(何言ってんだこいつ)

イケメン緑「いいかい、決闘中はスーツと結界で守られているとはいえ、攻撃を受けた時の衝撃なんかは伝わっちゃうんだ」

イケメン緑「ヒロインちゃんは女の子なんだから、HPが0%になる前にギブアップしても恥ずかしいことなんてないんだよ」

ヒロイン「はいはい。あ、昨日殴ってゴメン」

イケメン緑「ううん、気にしないで」

ヒロイン「わかった。じゃ」スタスタ

イケメン緑「あっ……行ってしまった…」シュン

ヒロイン(いいこと聞いたな。これHPだったのか)チラッ

『100%』

ヒロイン「やっぱ攻撃受けたら減るんだろうな。ゲームみたいで緊張感とかないけど。しかしこれで本当に訓練になるのか?」

イケメン黒「ふん、まるで実戦を経験した熟練の魔法士のような言いぐさだな」

ヒロイン「……!」バッ

キャー! キター! クロクーン! カッコイイー!

ヒロイン「ハッ、よぉ色白野郎。今朝と変わらず顔色が悪いな。緊張のし過ぎで腹でも壊したか?」

イケメン黒「フェイスガード越しからどうすれば俺の顔色がわかる。色白野郎と呼ぶのを止めろ」

ヒロイン「やだねー色白色白色白。軟弱青瓢箪のインドアお坊ちゃんサラブレット(笑)」ケラケラケラ

イケメン黒「…ふん、では俺が勝ったらその呼び方は改めろ」

イケメン黒「俺は自分より劣った生き物から侮辱されるのが大嫌いなんだ」

ヒロイン「へぇ、いいよ。その代り私も勝利報酬を一つ追加させて貰うからな」

イケメン黒「なに?」

ヒロイン「……スゥー」

ヒロイン「黒!! 私が勝てば!! お前は私の勢力に入ってもらうっ!!」

ザワ…

イケメン黒「お前…!」

ウオオオオオオオオオオオオ! 

イイゾー! ヤレー! マケナイデークロクーン!

イケメン黒「……っち、朝の意趣返しのつもりか?」

ヒロイン「ははは、すげー不満顔! そうこなくちゃ!」ケラケラケラ

アナウンス『間もなく五時になります。両プレイヤーは訓練場の中央へ移動して下さい』

イケメン黒「せいぜい最後まであがけよ」

ヒロイン「それ、漫画じゃ大抵負ける奴のセリフだぜ」

イケメン「ふん」スタスタ

ヒロイン(勝っても負けてもいいんだから気楽なもんだ)

ヒロイン(ま、ぜってー勝つけどな)ニコォ

黒髪ロング「ひぃ!」コッチミタ…

黒髪ロング「く、黒ー! がんばってー! 絶対勝ってよー!」ガタガタ

決闘委員長『みなさんこんにちは! 今決闘の審判と解説を務めます、三年決闘執行委員会委員長の決闘委員長と…』

イケメン赤『三年、生徒会長の赤です。どうぞよろしくお願いします』

キャー! セイトカイチョウー! カッコイイー!

決闘委員長『生徒会長、この今期第一回目の決闘の舞台に立つ生徒が両者ともに一年生ということなんですが…』

イケメン赤『素晴らしいことですね。新入生ながらキラメキ学園の校風をよく理解しているなと感心させられます』

決闘委員長『なるほど。しかも女子生徒の方はアルファベットクラスだそうですね』

イケメン赤『勇気のある生徒です。彼女には頑張ってもらいたいですね』

ウオオオオオ! ヒロインサンガンバレエエエエエエエ!

決闘委員長『なるほどなるほど。それでは決闘開始三分前になりましたところでルール確認と参りましょう!』

決闘委員長『勝負は一本勝負! 時間制限は無し! プレイヤーの勝利条件は…!』

ブンッ

決闘委員長『相手に攻撃をヒットさせ、このスクリーンに表示されている敵HPを0にすること!』

決闘委員長『片方のHPが0になった時点で試合は終了となります!』

決闘委員長『学園結界により怪我をする心配はありませんので、両者思う存分魔法の腕を振るって下さい!」』

決闘委員長『また、決闘は非常に激しいものになることが予測されます!』

決闘委員長『観客の皆さんは決闘執行委員の誘導に従い、どうか十分に距離をとって観戦をお楽しみ下さい!』

ハーーーーーーーイ!

【観衆】

親友「うわー! すっごい盛り上がってる! ヒロイン大丈夫かな!?」

女子生徒「きっと大丈夫よ! きゃー! ヒロインさん頑張ってー!」

女子生徒「でも黒くんも頑張ってー!!」キャッキャッ

女子生徒「バトルスーツ姿もカッコイイ~!」キャッキャッ

親友「こらー! 気持ちはわかるけど今回はヒロインだけを応援しなきゃダメでしょ!」

親友「頑張れーヒロイーン!」

ワー ワー

イケメン青「……」

イケメン青(あいつの武器は一つだけだ)

イケメン青(結界崩し。結界を破壊する、ただそれだけの魔法……)

イケメン青(到底黒に太刀打ちできる代物じゃない。しかし、昨日からのお前は別人だ。そう、まるで別人のように……)

イケメン青(見せてくれ、俺に……お前の強さを!)

決闘委員長『それでは決闘開始五秒前! 四! 三!』

ウオオオオオオオオオオオ! クロクーン! ヒロインサーン!

決闘委員長『ニ! 一!』


決闘委員長『はじめ!!』

今日は以上です

次は多分明日


ヒロイン「っ!」ダッ

イケメン黒「!」

決闘委員長『先行は1-Bヒロイン! 小柄な体躯をさらに縮めて低く低く駆け…速い!』

イケメン赤『へぇ、効率の良い体の動かし方を熟知している…そんな動きですね』

イケメン黒「……ふん」パチンッ

ヒロイン「オラァ! 喰らえ雑魚がァ!」ブンッ

影人形「」バシッ

ヒロイン「! 魔法か!」

決闘委員長『これは!』

イケメン赤『傀儡の魔法です。人形を作り出し自在に操ることができる高等魔法ですね』

決闘委員長『さすがサラブレッド! 初手から一年生離れした素晴らしい魔法です!』

ヒロイン「……ハッ、生徒会長様がベラベラ解説してくれるからありがてぇぜ!」

イケメン赤『……』フフ…

イケメン黒「ふん、しかしこの魔法の効果を知り得たところで対処まではできまい」パチンッ パチンッ

影人形「」ズズズズズ

影人形「」ズズズズズ

ウオオオオオオオオオオオオオ! クロスゲー!

ヒロイン「っち、うっとうしい! 男ならテメェの拳で戦いやがれ!」

イケメン黒「ふん、とても女の吐く台詞ではないな。聞くに堪えん……行け!」

影人形「」ダッ

影人形「」ダッ

影人形「」ダッ

ヒロイン(速い! でも…!)

ヒロイン「動きが直線的過ぎんだよ!」ヒュッ ヒュッ ヒュッ

決闘委員長『おーっとヒロイン! 人形三体がかりの攻撃を次々と避けていく!』

ヒロイン「よし抜けたァ!」タタッ

イケメン黒「ふん」パチンッ

──ヒュゴ゙ッ

ヒロイン「は、うおおっ!?」バシンッ

決闘委員長『ヒット! 指パッチンと共に繰り出したのは見えざる攻撃!』

イケメン赤『収束砲ですね。黒くんの場合、風を固めたものを打ち出したのでしょう。一年後期で習う魔法です』

決闘委員長『1-5黒! 底の見えない一年です!』

ピピピピ

ヒロイン・85%

ヒロイン「HPが…!」

イケメン黒「あがけと言ったはずだぞ!」パチンッ パチンッ パチンッ

ヒロイン「連射! っく!」

イケメン黒「ふん、よく避けた。しかし何か忘れていないか?」

影人形「」ブンッ

ヒロイン「誰が忘れるかよ──がっ」ドガッ

ヒロイン(バカな、確かに人形の攻撃は避けたはず…! 今のは収束砲か!?)

イケメン黒「ああ、すまん。指を鳴らすのを忘れていた」ククッ

ヒロイン「て、てんめぇ…!」ブチッ

ピピピピ

ヒロイン・71%

ヒロイン「舐めてんじゃねぇぞ!」ダッ

イケメン黒「ふん、収束砲八連射…避けれるものなら避けてみろ」パシュン パシュン パシュン

影人形「」ブンッ

影人形「」ブンッ

影人形「」ブンッ

ヒロイン「一度見た攻撃は当たらねぇよ!」ヒュヒュン

決闘委員長『ヒロイン! 収束砲と人形の攻撃を避ける避ける! バトルスーツってパワーアシスト機能ありましたっけ!?』

イケメン赤『はははっ、凄まじい体捌きですね』

ヒロイン「届く!」ブンッ

イケメン黒「ふん、良くやった……しかし甘い! 結界展開!」

ヒロイン「ハン!」ニヤッ

ヒロイン「甘いのはテメェだあああ!」

パリンッ

イケメン黒「何っ! ぐっ…!」ドゴッ

決闘委員会『ヒ、ヒットォォォォォ!! アルファベットクラスがナンバークラスに攻撃を当てましたっ!』

ヒロイン「まだまだァ!!」グルンッ

イケメン黒「!」

ドガガガガッ

決闘委員会『ヒロイン! なおも追撃の手を緩めない! 凄まじい連続蹴りです!』

イケメン黒「~~!!」

影人形「」ブンッ

影人形「」ブンッ

ヒロイン「っち」ヒュッ

決闘委員会『両者、一旦距離をとります!』

ピピピピ

黒・92%

ヒロイン「九発当ててこれっぽちかよ!」

決闘委員会『1-Bヒロイン、身体強化を覚えていないのが痛い!』

決闘委員会『しかし生徒会長、ヒロインはナンバークラス……それも学年代表を相手に素晴らしい健闘ですね』

イケメン赤『はっはっはっは! ぜんぜん魔法使ってねー』

決闘委員会『いつも冷静な生徒会長が爆笑しています!』

イケメン黒「き、貴様ぁ…!」

ヒロイン「おら! ドンドン行くぜ!」ダッ

イケメン黒「影人形!」

影人形「」ズズズズズ

影人形「」ズズズズズ

影人形「」ズズズズズ

影人形「」ズズズズズ

ヒロイン「ハッ! んな木偶の坊如きいくら出しても無駄だぜ!」

ヒロイン「まとめてぶっ飛ばして、今度は1000発叩き込んでやる!」

イケメン黒「俺に…舐めた口をきくなァ!」パシュン パシュン パシュン

ウオオオオオオオオオオオオオオ! ドッチモスゲエエエエエエエ! オオオオオオオオ!


・・・・・・


【放送ブース】

イケメン赤「はっはっは!」

イケメン赤「はーっ、いやぁ…」

イケメン赤「あの子いいねぇ…」ニヤリ

ここまで

【第三訓練場】

ワアアアアアアアアアアアアアアア!

決闘委員長『よ、予想外の展開が続いています! あのエリート一族のサラブレットが──!』

ヒロイン「おら!」

ドガガガッ

影人形「」 影人形「」 影人形「」

ヒロイン「くらえ!」

ドガガガガッ

影人形「」 影人形「」 影人形「」 影人形「」

ヒロイン「そしてテメーは死にさらせぇぇぇぇえ!!」

パリンッ ドガガガガガガガガガカッ

イケメン黒「…がっ、あ…」

ピピピピ

黒・70%

決闘委員長『まさかの防戦一方! そしてついに逆転を許してしまいました!』

イケメン黒(どうなっている…)

ヒロイン「シッ」バシッ

ピピ

黒・69%

イケメン黒(一体お前は…)

ヒロイン「はァ!」ドスッ

ピピ

黒・68%

イケメン黒(一体お前は何者なんだ! ヒロイン!)

イケメン黒「……っ! 身体強化!」ギュオッ

イケメン黒「ハァ!」ブンッ

決闘委員長『1-5黒、肉弾戦に出ます!』

ヒロイン「……ふっ」ヒョイ ドガッ

ピピ

黒・67%

イケメン黒(カウンター! 強化のされていない肉体で!)

イケメン黒「っおおお!」ビュオンッ

決闘委員長『黒、気合の雄叫びと共に渾身の回し蹴り!』

ヒロイン「……」ピョン クルンッ

決闘委員長『しかしヒロイン跳んで避ける! そしてそのまま一回転して──』

ヒロイン「ラァ!」

パリンッ ドガァッ!

決闘委員長『かかとォーーー!!』

ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

ピピピピ

黒・64%

イケメン黒「──が」

イケメン黒(馬鹿な…)

【観客】

ワアアアアアアアアアアア! スゲエエエエエエエ! ヒロインサアアアアアン!

親友「うわ、うわ、ヒロイン凄い! ハリウッディ映画みたい!」

女子生徒「ねぇ親友、ヒロインさんって何かの達人とかなの?」

女子生徒「動きが一般人のそれじゃないんだけど」

女子生徒「さっき一度見た攻撃は当たらないとか言ってなかった?」

親友「あはははは! やれー! そこだ! 殺せー!」

男子生徒「し、親友さんが影響を受けて…!」ガーン

ポッチャリ男子「すげえええええええ! 格闘戦かっけええええええ!」

男子生徒「ポッチャリ、お前確か魔法が好きなんじゃ?」

イケメン青「は、はは…」

イケメン青「はははははははは」

イケメン青「すごい。すごいよヒロイン」

イケメン青「強い。一昨日までとは丸っきり別人だ」

イケメン青「そして……綺麗だ」

イケメン青「あぁ。とても、とても綺麗だ…」ウットリ…

男子生徒「おい、隣のイケメンくんの様子がさっきからおかしくね?」

男子生徒「いや、俺も気持ちわかるよ……う、うおおおおヒロインさん美しいいいいいいい!」

眼鏡女「」ポカーン

決闘委員長『さぁ、決闘もついに佳境にさしかかろうとしています!』

ヒロイン「だらァ!」ヒュヒュッ

イケメン黒(く、フェイント! どっちが…!)

ヒロイン「顎がら空き!」ゴスッ

ピピ

黒・19%

イケメン黒「クソ、収束ほ──」

ヒロイン「そこ!」ドガッ

イケメン黒(! こいつ、また魔法が完成した瞬間を狙って!)

ヒロイン「はっ! どうやら魔法ってのは集中力が途切れれば消えちまうもんらしいなァ!!」ドスッ

イケメン黒「ぐっ!」

ヒロイン「大口叩いてた割には随分とお粗末だな! どこがサラブレッドなんだか、一山幾らの凡屑じゃねぇか!」バキッ

ミス
>>128の前にこれ


イケメン緑「あ、あのヒロインちゃんが…」

イケメン桃「ひゃははは! すっげぇ! 見ろよアレ! 何神拳だよ!」ゲラゲラゲラ

イケメン緑「ちょっと黙ってろ!」ゴスッ

イケメン桃「…おぐっ」バタッ

キャー! モモクーン

イケメン緑「ヒロインちゃん……君は…」

ピピピピ

黒・11%

決闘委員長『黒、完全に沈黙! 対してヒロインは当初の下馬評をひっくり返し、圧倒的な力を見せつけています!』

赤イケメン『魔法というより闘いの才能があるんでしょうね、彼女には』

ドガッ

ピピ

黒・9%

決闘委員長『おぉー! 黒のHPが遂に一割を切る! 神童が今、入学一か月を待たずして敗れ去ろうとしています!』

赤イケメン『しかしヒロインさんには依然攻撃力が欠けていることも事実…』

赤イケメン『少しでも天秤が傾けば……まだ勝負がどちらに転がるかはわかりませんよ』ニヤリ

イケメン黒(なぜだ……俺はなぜ無様に膝をついている…)

『9%』

イケメン黒(9? あとこれだけしか残っていないというのか?)

イケメン黒(……努力はしてきたつもりだ。名門の出と期待され、妬まれ、それらに屈しないよう修練を積んできた)

イケメン黒(ではこの女の言うように才能の問題か? いや、それこそありえない。優秀な兄弟の中でも神童と持て囃され、それ故に疎まれてきた俺が非才の身など…あるはずがない)

イケメン黒(わからない……なぜ俺がこうも追い込まれているのかが。高度な魔法や卑怯な手段を使われたのなら納得できた。しかし──)

ヒロイン「ははっ、ふっ、シッ!」ゴスッ ドガッ バキッ

イケメン黒「くっ…!」ゴロゴロ…

イケメン黒(こいつはただ、素の身体で殴っているだけだ!)

ピピピピ

ヒロイン・60% 黒・2%

ヒロイン「60? 何度かカスっちまたか……ま、問題ない」スタスタ

決闘委員長『倒れ伏す黒に悠々と歩み寄っていくアルファベットクラスのヒロイン! いまここに、下剋上が成ろうとしています!』

ウオオオオオオオオオオオオオ イケーヒロイン ヤッチマエー キャー クロクンガンバッテー タッテー

イケメン「くっ…」

ヒロイン「カッコわるー」

イケメン黒「貴様…!」ギッ

ヒロイン「睨むなよ。だってさ、自分で売った喧嘩に負けることほどダセェことはない……そうだろ?」

イケメン「……」ギリッ

イケメン黒(……そうだ。俺が売り、この女に無理やり買わせた)

イケメン黒(恰好悪い。そうだろうな。このような無様な姿を衆目の元に晒しているのだから)

イケメン黒(そして今まさに、敗北に喫しようとしている…)

ヒロイン「ぶっざまー」ニヤニヤ

イケメン黒(……)

イケメン黒(……終わりたくない)

イケメン黒(ここで終わるわけにはいかない。そうだ。凡屑などと思われたまま……)

ヒロイン「だんまりかよ?」

イケメン黒(この女に、そう見下されたまま終わってたまるかッ!)ギュッ

ドクン ドクン ドクン ドクン

イケメン黒(心臓が早鐘のように鳴っている……ああ、この胸の奥から沸沸と湧き上がってくる熱い想いは何だ?)

イケメン黒(神童、名門の出、周囲の期待……今まで圧し掛かってきていた様々な重荷が、すべて陳腐なガラクタになって俺の中から消えていく。体が軽くなっていく)

イケメン黒(勝ちたいと、純粋にそう思える。勢力のためではない。学園を総べるためではない)

イケメン黒(俺は──)

ヒロイン「じゃ、もう絡んでくんなよ」ヒュッ

イケメン黒(ヒロイン! ただ、お前に勝ちたい!)

ガキィン

ヒロイン「……!」

イケメン黒「……ぐっ」

決闘委員長『ガード! 1-5黒、初めて結界でのガードに成功しました!』

キャー クロクーン ガンバッテー

決闘委員長『しかしなぜ……生徒会長、ヒロインは結界崩しを失敗してしまったのでしょうか?』

イケメン赤『……いや。正しくは競り負けた、ですね』

決闘委員長『と言いますと?』

イケメン赤『特別な魔法や技術ではありません』

イケメン赤『結界を何重にも重ね、破られた瞬間に別の結界を張る。ヒロインさんが結界を崩す際に要すほんの数瞬を、黒くんは連続させているわけです』

決闘委員長『そ、それはまた力技といいますか…』

イケメン赤『ええ。サラブレッドらしくない、スマートでない戦い方ですね。しかしサラブレッドのままではあの瞬間に負けていた…』

イケメン赤『彼はサラブレッドという名の殻を破り、この戦いの中で成長したんですよ』

パパパパパパパパパパリンッ

ヒロイン「通ったァ!」ブンッ

影人形「」ガッ

ヒロイン「! ちっ、防がれたか!」

イケメン黒「収束砲!」パシュン

ヒロイン「今更!」ヒュッ

決闘委員長『ヒロイン二つの魔法をすり抜けて黒に迫る! 今度こそ決着か!?』

イケメン黒「おおおおおお!」パシュン パシュン パシュン パシュン 

影人形「」ブンッ 影人形「」ブンッ 影人形「」ブンッ

ヒロイン「……っ!」

決闘委員長『しゅ、収束砲の弾幕! 凄まじい数です! そしてその隙間を縫って襲い掛かる人形たち!』

イケメン赤『素晴らしい。結界も合わせれば三十ほどの魔法を同時に制御していることになりますね』

ピピ

ヒロイン・55%

ヒロイン(! 少しカスった……クソ、また胸かよ!)

イケメン黒「スーツには慣れていないようだな、ヒロインッ」パシュン パシュン パシュン

ヒロイン(慣れてねぇのはこの体だよ!)

影人形「」ブンッ 影人形「」ブンッ

ヒロイン「あークソ! 人形操ったり小さい攻撃連打したり……やることが一々雑魚っぽいんだよテメェは!」

イケメン黒「──ではこれならどうだ?」フッ

ヒロイン「なに…!?」

ドガッ

ヒロイン「ぐっ、お前、今どこから…!」

決闘委員長『ヒット! 強化された黒の拳がヒロインの脇腹に突き刺さりました!』

ピピピピ

ヒロイン・39%

影人形「」ユラッ

ヒロイン「!! そうか、人形をスクリーンにして!」

イケメン黒「おおおおおお!」パシュン パシュン パシュン パシュン パシュン

ヒロイン「くっ…!」ヒュヒュッ

決闘委員会『ヒロイン! 至近からの連打を難なく避ける!』

ピピピピ

ヒロイン・28%

ヒロイン(ちっ、四発カスった!)イライライラ

ヒロイン「クソが!」ブンッ

イケメン黒「多重結界!!」

パパパパパパパパパパパパパパリンッ

決闘委員長『抜いたぁ!』

ヒロイン「死ねえええええええ!」ブンッ

イケメン黒「おおおおおおおお!」ブンッ

ドドッ…

ヒロイン「……っ」

イケメン黒「……ぐ」

決闘委員長『クロスカウンター! 勝敗は!?』

ピピピピ

ヒロイン・9% イケメン黒・1%

決闘委員長『まだついていません! 黒、首の皮一枚!』

ヒロイン「ちっ、でも次で……ぐ!?」

影人形「」ガシッ

決闘委員長『あぁー! ヒロインが背後から拘束されているー!』

イケメン黒「う──おおおおおおおおおおおおおおおお!」

ドガァッ!

ヒロイン「……ぐっ!」

決闘委員長『回し蹴り一閃! クリーンヒット! 勝負ありました!』

ピピ

決闘委員会『勝者は……』

ヒロイン・7% イケメン黒・1%

決闘委員長『!! これは! 身体強化した回し蹴りのダメージがたったの2%!』

ヒロイン「……」

イケメン黒「……」

イケメン赤『ふふ……無理もない。あれだけ魔法を連発すれば……ほら』スッ

イケメン黒「」ダランッ

ヒロイン「……」トサッ

決闘委員長『く、黒がヒロインの体に寄りかかるようにして気絶しています!』

ザワザワ ヒロインサンノムネニ… キャー ケシカラン

イケメン赤『あの回し蹴りが当たる直前に魔力が底をついたのでしょう。そのせいで身体強化の魔法が解除されてしまった……ということです』

決闘委員長『なるほど。だから黒の攻撃は決定打とならなかったのですね。それではこの試合は』

イケメン赤『ええ』

決闘委員長『……両者それまで! 黒の戦闘不能を確認! 勝者、1-B、ヒロイン!!』

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアア スゴイケットウダッタゾー ヒロインサーン スゲー

イケメン黒「」ダラン…

ヒロイン「……」

イケメン黒「」

ヒロイン「……ちっ」ダキッ

キャアアアアアアアア ヒロインサンガ ダキツイテル… イヤ、ハコンデルンダロ

ヒロイン「……はん。まぁ、凡屑ってのは撤回しといてやるよ、黒」

イケメン黒「」スゥ… スゥ…

ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア パチパチパチパチパチパチパチ

今日は以上

次は多分明日

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月22日 (日) 15:35:42   ID: _YRh_Ui6

面白かった

2 :  SS好きの774さん   2016年08月19日 (金) 05:08:54   ID: FHex8uEv

面白い…のに。
続きが……………

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