綾崎ハヤテ「へえ~、ここが幻想郷ですか」 (192)





天の声「長~~~い夢から覚めたら、そこには見知らぬ天井があった

……なんていうありがちな導入」






SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1404650596


――???――


ハヤテ「う~ん……あ、あれ?」

ハヤテ「ここは……?」

ハヤテ(どうやら何処かのお屋敷の中のようだけど……見覚えが無いな)

ハヤテ(ステンドグラスの天窓が見えるってことは……教会?)

ハヤテ(それにしてもこの暖かさは……床暖房完備?)

ハヤテ(そしてこの広々として、色彩豊かな内装……)

ハヤテ(三千院家にも引けを取らない……あるいはそれ以上のお金持ちの邸宅だったりして)

ハヤテ(おっと……このまま床に寝転がっていても埒があかないし)

ハヤテ(とりあえずこの建物の中を歩き回ってみるかな……)

ハヤテ(さすがにこれだけの屋敷、無人ではないハズ)

ハヤテ「ん?」

ハヤテ(階段の上の方からこっちに向かって……人影が)

ハヤテ(女の子? お嬢さまと同じくらいか……いやもう少し幼そうな)

さとり「……」

ハヤテ(いや、それよりも)

ハヤテ(何か目玉おやじみたいなのが触手的な管に繋がって肩口にぶら下がってる……)

ハヤテ(ヘビメタなコスプレ? ちょっと違うか)

さとり「……」

ハヤテ(……あれ、気のせいか今目玉おやじにガン飛ばされたような)

ハヤテ(いや絶対睨んでる! ガ○アのガンQみたいに!)

ハヤテ(もしや一体化型のス○ンド能力か!?)

ハヤテ(でも僕スタ○ド使いじゃないし、普通は見えないはずだろ?)

さとり「はぁー……」

ハヤテ(? なぜか物凄く呆れられたような溜息を……)

ハヤテ(これ、僕からまず何か話しかけた方がいいんじゃ?)

ハヤテ(とりあえず話を進めないと、この先の展開が難しくなるし……)

さとり「とりあえずお茶でも淹れましょうか?」

ハヤテ「あ、いえお構いなく……」

ハヤテ「むしろそういうのは僕の仕事というか」

さとり「……」

ハヤテ「……」

ハヤテ「えー、ところで」

ハヤテ「なぜ僕はいきなりこんなところに……?」

さとり「私に聞かれても困るんですが」

ハヤテ「ていうか、あなたは誰なんですか?」

さとり「相手に名を尋ねるときは、まず自分からでしょう?」

ハヤテ「……、僕は」

さとり「『僕はサンゼンイン家の執事をしているアヤサキハヤテといいます。両親に1億5680万4000円の借金を背負わされて云々』」

ハヤテ「な、なんでそのことを知っているんですか!?」

さとり「高度な読唇術です」

ハヤテ「まだ何も言っていないんですけど……」

さとり「エスパーですから」

ハヤテ「はい?」

さとり「私の第三の目(サードアイ)を前にしては、貴方の考えていることなど全てお見通しよ」

ハヤテ「あのー、もしかして中二病とか患ってます?」


さとり「なるほどね。よく分かったわ」

ハヤテ「いや、僕にはさっぱり状況が飲み込めないんですが……」

さとり「いわゆる外来人ね、貴方」

ハヤテ「外来人?」

さとり「まともな人間が地上からこんなところ……地底まで辿り着ける筈がないもの」

ハヤテ「えっ」

ハヤテ「地底って……もしかして」

さとり「『ここはついに完成した帝○の地下王国なのか?』ですって?」

ハヤテ「違うんですか?」

さとり「違います。意味がわかりません」

ハヤテ「あれ、となるともしかしてコレって」

さとり「夢オチでもありません、現実ですね。ある意味夢と地続きのようなものかしら」

さとり「ここは地底世界の一角にある旧地獄、かつての灼熱地獄の真上に建つ館、地霊殿の中」

さとり「より広く言うなら、幻想郷という常識の結界によって外部から隔離された山奥の土地の一部……ということになるわ」

さとり「外来人っていうのは、結界の外にある外界から」

さとり「何らかの原因によってこちら側に迷い込んできた者のことを指しての呼称よ」

ハヤテ「なるほど……説明臭いセリフですが何となく分かった気がします」

さとり「頭ではあまり理解できていないようね」

ハヤテ「あ、はい……スミマセン」

こいし「ちくわだいみょーじん」

ハヤテ「って! やっぱりあなた、さっきから僕の考えていることを」

さとり「私は、地霊殿の主・覚(さとり)。人の心象を読み取ることができる妖怪」

ハヤテ「妖怪さんなんですか……?」

さとり「ええ。幻想郷は読んで字のごとく、外界では空想(幻想)上の生き物とされる妖怪や妖精、心霊などが暮らす郷……」

さとり「驚いた?」

ハヤテ「いやぁ……」

ハヤテ「僕が元々いた世界にも、妖怪退治や除霊をする陰陽師的な方がいますし」

ハヤテ「人語をしゃべるトラとか、ダメ人間な神父の地縛霊とか宇宙人とかもういろいろと……」

ハヤテ「それに時を駆けたりとかも経験してるんで、割とこういう非日常も慣れている感じで」

さとり「嘘は言っていないみたいね」

ハヤテ「そんなことより」

さとり「?」

ハヤテ「こんな可愛い女の子が妖怪だったなんて、びっくりしちゃいましたよ~」

さとり「……」

こいし「うわー。気持ち悪ーい」

さとり「よこしまな考えが見えます」

ハヤテ「ぶっ……違いますよ!? 全然ヘンな意味は含まれてませんから!」

ハヤテ「ていうか、妖怪なら普通人間を襲って来たりするんじゃ……?」

さとり「襲われたいんですか?」

ハヤテ「え、いや……」

さとり「確かに好戦的な妖怪も多々いますが」

さとり「私は強盗でもないのに理由なく普通の人間を嬲るような趣味はありません」

さとり「勿論貴方が喧嘩を売るつもりなら、買ってあげますよ」

さとり「まずは恐怖の記憶(トラウマ)を引き摺り出して……!」

ハヤテ「えっと、僕レイ○ンとか撃てないし鬼の手や獣の槍も装備してないんで……遠慮しときます」


ハヤテ「う~ん……」

さとり「『ここがどこかは分かったけれど、これからどうすればいいんだろう。とにかく元の世界に戻るための方法を見つけないと!』」

ハヤテ「便利ですねー、その能力」

ハヤテ「ギャンブルだとか探偵業とか、交渉事なら何でも上手く行っちゃいますね」

ハヤテ「羨ましいですよ~」

さとり「……」

さとり「羨ましい……ね……」

こいし「人のこころの中なんて見えてもいいことないよ」

こいし「こころの声に振り回されて誰も信じることができなくなっちゃうもん」

こいし「だからいつも、ひとりぼっち」

ハヤテ「……」

ハヤテ「あ、……何か、スミマセン」

ハヤテ「僕は普通の人間ですから、人の心の中なんて読めないし」

ハヤテ「もしそれができたら、あの時もっと上手くいったかも」

ハヤテ「なんて、考えたりしちゃうんですけど」

ハヤテ「実際にそれが出来たら、いいことだけじゃなく……イヤのことも沢山あるのかも知れません」

さとり「……」

ハヤテ「そういうこと、何も考えずに……暢気なことを言ってしまって」

ハヤテ「ほんと……ごめんなさい!! 僕デリカシーなくて……」

さとり「……バカ正直な人間ねぇ、貴方は」

さとり「相手をするのに疲れたわ」

さとり「そろそろお引き取り下さい」

ハヤテ「ええっ……でも、ここから何処に行けばいいのか」

さとり「地上を目指すといい」

さとり「幻想郷から貴方が元いた世界に戻る方法は……幻想郷と外界とを隔てる結界を管理している者に接触すること」

ハヤテ「結界を管理……? そんなことをしている人がいるんですか?」

さとり「ええ」

さとり「“境界”を操ることのできる妖怪も存在しますが……アレを探し出すのは雲を掴むようなもの」

さとり「確実に元の世界に帰りたいのなら、この地底から這い上がって、(博麗)神社に向かいなさい」

さとり「そこの巫女に頼めば、元の世界に返してもらえると思うわ。たぶんね」

ハヤテ「なるほど!……ありがとうございます」

ハヤテ「いきなり押しかけてきたのに、助けてくれて」

さとり「あ、言い忘れていたけれど」

さとり「地霊殿の周りにはうちのペットとか怨霊とかがうろついているわ」

さとり「道中で人喰い妖怪に襲われたりするかもね」

さとり「地上に出ても神社に向かうのに獣道を避けられないしアクセスは最悪よ……人間にとってはね」

ハヤテ「……」

さとり「『ご都合主義展開なら案外あっさり辿り着けるんじゃ?』って? 世の中そんなに甘くはないわ」

さとり「ちなみに、外来人の死体は無縁塚に埋葬されるとか……」

さとり「もっとも地底で息絶えた場合は、たいてい別のルートで処理されることになるけれども」

さとり「……これだけ説明すれば、もう十分よね?」

ハヤテ「……そ、そうですね。ちょっと言葉攻めされたような気分ですがありがとうございました」



天の声「この時ハヤテは直感的に思った――

今日はここまで普段よりも不運な目に見舞われていない

ぶっちゃけこの後、割と殺戮的な形で生死の境を彷徨ったりするんじゃね?

だがしかぁし!

執事とはすなわち戦闘執事(Combat Butler)

超必殺技を繰り出す程度の能力を備え、どんな困難もスマートに乗り越えて当然なのである!」

ハヤテ「なるほど確かに、前途多難な気はしますが」

ハヤテ「僕はもう行きますね、地上に」

こいし「わー。おサイフの中、12円も入っているのね」

こいし「でもコレ使えるのかしら?」

ハヤテ「僕がどうして幻想郷(ここ)に来てしまったのかは、まぁ良く分かりませんが」

ハヤテ「僕は一刻も早く、元の世界に戻らなくちゃいけないんです」

さとり「ふーん。どうして?」

ハヤテ「僕には……守らなければならない、大切なひとがいるから」

さとり「……」

ハヤテ「だから、僕は絶対に元の世界に戻らなきゃいけないんです!」

――――

ハヤテ「短い間でしたが、お世話になりました」

さとり「もう二度とこんなところに迷い込んではダメよ」

ハヤテ「分かりました。それでは、……お2人とも」

こいし「……」

ハヤテ「お元気で」

――――

こいし「行っちゃった」

さとり「……、そうね」

こいし「あれ、こんなところにおサイフが落ちてる? 誰のだろう?」

さとり「……こいし、それはさっきあなたが」


さとり「……」

さとり「もう何処かに行ってしまったのね」


さとり(さてと)

さとり(読みかけになっていた本の続きを)

さとり(……)

さとり(大切なひと……ねぇ)

お空「さとり様ー」

さとり「あら、おくういたの?」

お空「ちょっと前からさとり様の後ろの方に」

お空「何だか難しい話をしてたんで声かけづらくてー」

さとり「……そんな難しい話はしていなかったと思うけど」

さとり「……」

さとり「あ、気付いていたわけじゃないのね」

お空「うにゅ? 何の話ですか?」




天の声「てな感じのノリで、地霊殿編はこれにて終了

ぶっちゃけ初期のギャグっぽい路線なんで、あまり詳しい設定準拠は期待できないかもしれない

が、とりあえず旧都編に続く(予定)」






天の声「非日常体験は

だいたい一番最初に出会った相手によって

その後の展開が大いに左右されたり、されなかったり」



――迷いの竹林――


理沙「なあ、ここ数年我々の出番がめっきり減ったとは思わないか」

美希「そうだな。ぶっちゃけ読者に存在忘れられてたりしてな」

泉「えー? それはさすがにないと思うけれど……」

理沙「まあ、ソ○ーも没落したし仕方ないか」

美希「泉、家の方は大丈夫なのか?」

泉「ちょー! その話は関係ないでしょー」

美希「まあ、時間軸的にはまだ2005年だもんな」

理沙「で、ここはどこなんだ?」

美希「竹林だろ」

理沙「ということはパンダだな。上野動物園かな」

美希「案外高尾山あたりじゃないのか」

泉「うえ~ん、また迷子になっちゃったよー……」

??「やれやれ」

泉「あ! ミキちゃんリサちん、あっちに人がいるよ!」

理沙「おお、確かに人がいるな」

美希「きっと迷子だろうな」

妹紅「こんなところを丸腰でほっつき歩いて、怖いもの知らずの人間もいるものねぇ」

妹紅「……他にも結構いるけれど」

理沙「迷子ちゃんじゃないアピールに必死らしい」

美希「それよりこれだけ竹が多いと、どこかに光ってる竹でもありそうだ」

泉「あ、それかぐや姫のお話の? 何か神秘的だよねー」

妹紅「貴方たち、人の話は聞きなさいよね……」


――地底のどっか――


猫「ニャー」

ハヤテ「普通の猫もいるんだ。可愛いなー」

ハヤテ「さて……ちょっとカッコつけて館をあとにしたわけだけど」

ハヤテ「道順を、聞いてから出るべきだった……」

ハヤテ「何かもう地底世界(ここ)とてつもなく広いみたいだし……」

ハヤテ「今いったいどの辺にいるのか……第一地上に繋がってる穴とかはあるんだろうか?」

ハヤテ「まぁそれはともかく、今のところは無事に先に進めているな」

ハヤテ(しかしここに来るまでにライオンとか黒豹とかコモドオオトカゲとかいろいろいたなぁ……あとヨ○ワルっぽい怨霊とか)

ハヤテ「これぐらいなら手懐けられそうだし大丈夫だけれど」

ハヤテ「……、やっぱり一人で歩いてるだけじゃ独白が多くて面白みがないな」

ハヤテ「襲われたくはないから、誰が親切に道案内してくれるひととかに会えれば最高なんだけど」

ハヤテ「ていうか、幻想郷の世界観から考えるに……この辺で伊澄さんあたりが登場してもいいんじゃないか?」

ハヤテ「ぶっちゃけ僕一人では心細いし……」


天の声「ブラーンブラーン……。ゴソゴソ……」

 
ハヤテ「お、噂をすればさっそく物音が! もしかして伊澄さ」

桶「しくしく……しくしく……」

ハヤテ「……」

ハヤテ(何か上の方から大きな風呂桶みたいなのが……)

ハヤテ(あ、今僕の目と鼻の先まで降りて来た……)

キスメ「おどおど……」

ハヤテ(あー、何か桶の中で女の子が引っ込み思案な雰囲気を醸し出しつつこっちを見てる……)

ハヤテ(多分妖怪だよな? 死装束みたいなの着てるし)

ハヤテ(でも見るからに怯えてるような感じだし、おとなしい子みたいだ)

ハヤテ「えーと、きみ……大丈夫? 何か困ったことがあるんだったら僕が相談に乗っても……」

キスメ「キシシ」

ハヤテ「へ?」

キスメ「お前の落とした生首はこれかい?」

ハヤテ「がはっ!?」

ハヤテ(何か投げつけられた!? 割と重みがあって丸っこい感じの……これって)

赤蛮奇「ゆっくりしていってねー」

ハヤテ「……」

ハヤテ「って、何で首だけで立体駆動しちゃってるんですか! そういうの普通はろくろ首でしょ!」

キスメ「……何そのつまらない反応」

赤蛮奇「……非力な人間の癖にガッカリよ」

ハヤテ「いやー、いきなりアドリブ求められてもちょっと」

キスメ「仕方ないからお前の首を頂くよ」

ハヤテ「ちょっ……うわああ!?」

――――

キスメ「逃げられた」

赤蛮奇「意外と足速かったわね」

キスメ「軽い致命傷は与えたしまあいいか」

赤蛮奇「それよりあんた、毎度毎度私の頭を地底に持ち去るのやめてよ」

キスメ「イヤ」

――――

ハヤテ「ふう……どうやら追ってこないみたいだ」

ハヤテ「ちょっと油断したせいで、肩のあたりに赤い液体が滴ってるなあ……」

ハヤテ「まあこれくらいなら止血しておけば大丈夫……」

ハヤテ(序盤の敵クラスっぽかったし、全力で戦えば何とかなったかも知れないけど)

ハヤテ(何しろ先が見えない状況だし……出来るだけムダな争いは避けて……)


ハヤテ「避けて……!」

ヤマメ「おお? 血腥いニオイがすると思ったら人間じゃないかい」


ハヤテ「ちょっと……もう新手ですか!?」

ハヤテ「エ○ァの使徒みたいにブランクを明けてから出現してくださいよ!」

ヤマメ「そう言われてもねぇ」

ハヤテ「さっきだって、桶の妖怪とかに襲われて」

ヤマメ「桶……ああー、キスメのことだね」

ヤマメ「あれは内気な妖怪だからね、人間を見つけるとつい襲(や)っちゃうのさ」

ハヤテ「それ矛盾してませんか?」

ヤマメ「ヤンデレってやつなんじゃないのかい」

ハヤテ「いやデレ要素ないんじゃ。そもそもフラグ立ってないし」

ハヤテ「う……ムダに雑談してたら傷が疼いて……」

ヤマメ「あらあら」

ヤマメ「ところであんたは、祭りは好きなのかい?」

ハヤテ「祭り……? まあ別に嫌いではないですけど」

ヤマメ「やっぱり人間は祭りが好きだねぇ。それで地底に来たんだろう?」

ハヤテ「え、いや……僕は」

ヤマメ「今日は地底に縁のある連中が集まって酒盛りしているよ」

ヤマメ「間欠泉の一件以来、地上の連中ともちょくちょく行き来する機会が増えてねぇ」

ハヤテ「あ、あのっ……」

ヤマメ「ついてきな。こっちだよ」

ハヤテ「いや、だから……」

ハヤテ(!?……何だろう、急に悪寒が……。何か熱っぽいし……節々の痛みも……)

ヤマメ「タダで連れて行くってのもあれだしねぇ」

ハヤテ「……こ、これはまさか、あなたの能力で!」

ハヤテ「く、あなたも好戦的……というより凶暴な妖怪なんですね!」

ヤマメ「そんなことはないよ。私はむしろ友好的な方だし」

ハヤテ「だったら……何でこんな」

ヤマメ「別に捕って喰おうなんて言ってるんじゃない。ちょっと味見でもしようかなってことよ」

ハヤテ「それって意味一緒じゃないですか!?」

ハヤテ(マズイ……このままだと襲われてしまう!)

ハヤテ(こうなったら……!!)


??「ちょっと待ちやがれ! それは、オレの獲物だ!!」




天の声「多分この辺でAパート終了、旧都編(後編)に続く」



――地底のどっか――


ハヤテ「! そ、その声は……!」

虎鉄「こんなところで逢うとは奇遇だな……綾崎」

ハヤテ「って~!! 何でよりにもよってあなたが出てくるんですか!?」

虎鉄「さあな。山手線で時刻表を見ていたら、気がつくとここにいた」

虎鉄「だが、お前の気配を感じて……それを頼りに探し出したまでだ」

ハヤテ「犬か何かですかあなたは?」

虎鉄「犬ではない。泉(お嬢)の実の兄にして瀬川家の執事、そしてお前の運命の相手だ」

ハヤテ「『誰だっけ?』って思っている人のためにわざわざ説明するのはいいですが最後はの一文は間違ってますから」


ヤマメ「あんたたち、ごたくはいいから勝負するならかかってきなよ」

虎鉄「ふ、当然だ。オレの嫁は誰にも渡さん」

ハヤテ「ちょっと! 戦うって言っても相手は妖怪ですよ?」

ハヤテ「虎鉄く……いや、虎鉄さんは木刀1本持ってるだけじゃ」

虎鉄「安心しろ。さっきからこれにその辺の妖気とかが集まってきて斬○刀化してるからな」

ハヤテ「何ですかその無理矢理な展開は! てか原理的におかしいでしょ!?」


虎鉄「さあ、来いっ!」

ヤマメ「罠符『キャプチャーウェブ』」


ハヤテ「相手の指先から念弾みたいなのがこっちに向かってくる!」

虎鉄「お前は弱っている、下がってろ!」

虎鉄「この程度の弾数なら、まとめて弾き返す!」


ハヤテ(ってホントに弾き返した!?)


ヤマメ「油断しちゃダメだよ」


ハヤテ「!……弾き返した弾幕が波打つように連なって虎鉄さんの頭上に!」

ハヤテ「そしてさらに次の弾幕が指先から……危ない! 挟まれますよ!!」


虎鉄「――執事とは常に主の一歩手前をゆき、先回りして敵を粉砕するもの」

虎鉄「そうだろう、綾崎ッ!!」

ヤマメ「おおー」

ヤマメ「四方を囲まれる寸前に眼の前の弾幕を一閃で蹴散らして強行突破してきたか」

虎鉄「これでこっちの射程距離に入ったぞ」


ヤマメ「瘴符『フィルドミアズマ』」

虎鉄「瀬川流奥義・虎徹斬撃剣ッ!!」




ハヤテ(何かバトル漫画っぽいことやってる……設定とか描写とかガバガバだけど)

ハヤテ(あれ……そもそも何でこの人達戦ってるんだっけ?)



天の声「そしてふと気付く真実」



ハヤテ(ちょっと! これどっちが勝っても僕が襲われるんじゃないですか!!)

ハヤテ(かくなる上は……)

ハヤテ(このドサクサに紛れて逃げるのみ……!!)

ハヤテ「ハァ……ハァ」

ハヤテ(上手く逃げ切れたはいいけど、流石に体が……)

ハヤテ(てか今になって思うと……虎鉄さんほっといて良かったのか?)

ハヤテ(う……止血した部分からまた血が流れて、傷口が)

ハヤテ(それと明らかにインフルエンザっぽい高熱……)

ハヤテ(そういえばこっちに来てから水一滴口にして……)



天の声「ふらりとその場に倒れるハヤテ

しかも地底に空はないのに雪が降りだす、なんとな~く既視感のある光景」



ハヤテ(あ、これヤバイわ……だんだん眠くなってきた)

ハヤテ(多分パトラッシュが迎えに来る……)

ハヤテ(こんな……ところに……)

ハヤテ(……さんみたいな優しい人が……現れるわけ……)


猫「にゃーん!」


ハヤテ(猫?……お前、確かさっき地霊殿の近くに……い、た……)

――――

ハヤテ「ん……ぐ……うぐ……はっ!」

ハヤテ「ここ、は……?」

お燐「ここは旧地獄街道沿いにある休憩所みたいなものさ」

お燐「あの土蜘蛛が建てたものだよ。さっきお兄さんに病原菌を撒いた奴」

ハヤテ「なるほど、そうなんですか」

ハヤテ「って!……じゃああなたが僕を助けてここまで運んでくれたんですね?」

お燐「そうそう。あたいはお燐。お兄さんが死体になったらサクッと持ち去ろうと思っててさ」

お燐「死相もみえるしねぇ」

ハヤテ「え」

お燐「ほら、お兄さんがうちの主人とあれこれ問答してたの耳に入ってたから」

お燐「猫の姿のまま後をつけていたんだよ」

お燐「ありゃりゃ、どうしたんだい? 顔色悪いよ」

ハヤテ「つ、つまり僕は既に……死んでしまっていて……」

お燐「生きてるじゃないかい。自分の胸に聞いてみなよ」

ハヤテ「あ、ホントだ……! ていうか傷の手当ても完璧に……!」

お燐「病気の方はどうなんだい?」

ハヤテ「いやーもうピンピンしてますよ! 僕、学校を出停にならずに自然に治るタイプなんで」

お燐「それって誰かにうつしてるだけなんじゃ……?」

ハヤテ「え、でも……それじゃあお燐さんは、どうして僕のこと……」

お燐「あたいが死体を持ち去るのは、死体や霊と会話するのが好きだから」

お燐「けれども、妖怪に殺された死体や霊との会話ってちっとも楽しくないんだよ」

お燐「でもってさとり様がわざわざ助けてあげた人間が、こんなところで逝っちまっちゃあ味気ない味気ない」

ハヤテ「!……だから僕をここに連れて来て介抱してくださったんですね!」

ハヤテ「ありがとうございます……お燐さん」

お燐「連れて来たのはあたいだけれど、介抱したのはお兄さんのお伴侶さんだよ」

ハヤテ「え……今何て……?」

お燐「生きている人間にゃキョーミなくてね!」

――――


天の声「がやがや……

がやがや……」



虎鉄「おお、綾崎目が覚めたか! オレの迅速な救護措置がグボアアァ!!?」

ハヤテ「人が寝込んでる間にナニやってんですか!!!」


勇儀「おうおう、若い衆は活きがよくていいね!」

萃香「でもあんた、助けてもらった相手なんだからさ。まず一言いるよね?」

ハヤテ「あ……」

ハヤテ「……えっと、虎鉄さん……今回は助けていただいて、ありがとうございました」

虎鉄「それはお互い様だろ? それぞれ主に仕える執事同士……共闘するときは助けあいだ」

ハヤテ「虎鉄さん……」

虎鉄「そういうわけで、ついでに共同生活も始めねーか?」

ハヤテ「やっぱり少しでもあなたを見直した僕が馬鹿でした」


パルスィ「わざわざ人前で見せつけて……妬ましい」

一輪「御仏を信じないからそういう邪念に取りつかれるのよ」

雲山「……」

魔理沙「そういや入道もお前も門徒なのに酒飲んでいいのかよ?」

村紗「私は船長ですから問題ありません」

ハヤテ「……」

ハヤテ(あ、結局成り行きで祭り……というか酒場に来ちゃったけど)

ハヤテ(酒臭すぎる……ここ!!)

ヤマメ「まあまあ、適当に座んなさいな」

ハヤテ「は、はい……ってうわっ! さっきの!!」

ヤマメ「そんなに気にするんじゃないよ。あんたがここに来た理由は地霊殿の火車に聞いたからさ」

ハヤテ「火車って……えー、もしかしてお燐さんのことで?」

ヤマメ「地底から出たいんだろう? 抜け道があるから、後でそこの橋姫に案内してもらいな」

ハヤテ「そこのって……」


パルスィ「ああ妬ましい妬ましい。私の出番がこれだけなのもなおのこと妬ましい……」


ハヤテ(うわー、なんか……)

虎鉄「そういうことらしい」

ハヤテ「あ、虎鉄さんも今の状況については」

虎鉄「お前が寝ていた間にだいたいのことは聞いている」

ハヤテ「あ、ところで……さっきの勝負は……」

虎鉄「大事なのは勝敗じゃなくて勝ちたいという気持ちの強さだ」

ヤマメ「まぁイージーモードだからね」

ヤマメ「ま、折角来たんだから。土産話に宴会にも参加していきな。誰も襲いかかったりしないから」


ハヤテ「……、そうですね。まあ、いろいろありましたけど……結果的にはお世話になったんで」

ハヤテ「三千院家の執事流のお酌をさせてもらいますよ」




天の声「ちなみにハヤテはその後

『虚弱なヤツは気に入らない』という不条理な理由で鬼に純米大吟醸を一気飲みさせられたり

坊主に新興宗教施設にて年中無休&無給で庶務全般のバイトをしないかと勧誘されたり

舟幽霊の冗談を真に受けて血の池地獄に飛び込む羽目になったり

普通の魔法使いと弾幕ごっこをしたりと経験値を積んで

無事にまだ見ぬ幻想郷の地上へと足を踏み入れることとなる!

そんなこんなで旧都編(後編)完」







・前半終了です

・後半の予定:人間の里編→妖怪の山編→EX(博麗神社+エピローグ)

・キャラ崩壊や独自解釈多くてスミマセン

・要望通りゆうかりんどっかで出します



すみません冥界のみょんな庭師もお願いします




天の声「>>56おk

ところ代わってこっから先は地上のお話」



――地上のどっか――


ハヤテ「いや~もう久しぶりにおいしい空気を吸ったような気がするなあ」

虎鉄「ああ。地底はどうもジメジメしていたしな。住人はからっきし元気な連中だったが」

ハヤテ「それにしても僕、地上に来るまでにもう5、6回くらい死んだような気が……」

虎鉄「オレのハニーがそんなに簡単に死んだら困るからな。オレが」

ハヤテ「ホンットそれさえなけりゃ結構まともな話し相手なんですが……もうどっか行ってくれませんか?」

虎鉄「そうはいかないな。オレだって元の世界に戻る必要がある。目指すところは同じだ」

ハヤテ「ですよね。お嬢さま達を放っておくわけにはいかないし」

ハヤテ「まあ、命蓮寺のバイト募集のチラシは一応受け取っておきましたが……」

虎鉄「ところで綾崎」

ハヤテ「? 何ですか」

虎鉄「ここにはオレ達を縛る堅苦しい法律は存在しないらしい。いっそ人間の里とやらに行って晴れて結婚……!!」


天の声「カキーン」


ハヤテ「思いっきりさっきの発言と矛盾してるじゃないですか……まったくあの人は」

ハヤテ(……適当な方向にぶっ飛ばしたけど、まあ虎鉄さんはムダに強いから何とかなるだろ)

ハヤテ(僕は僕で、先を急ぎますか)

ハヤテ(えーと……神社ってどっちだ?)


――人間の里――


泉「ほえ~。なんだかすっごい田舎町に出て来たよ」

理沙「はぁはぁ……とてつもない長旅だったな」

美希「ああ、地球を三周ぐらいした気分だな……」

妹紅「半里(2km弱)も歩いてないよ? しかも5回くらい休憩入れたし」

泉「案内してくれてありがとう、モコちゃん!」

妹紅「礼には及ばない」

理沙「いや~、もこっちに会えなかったらどうなっていたか」

美希「もこっちは頼りになるなあ」

妹紅「その呼び方は止めて……何となく嫌だわ」

妹紅「じゃ、私はこれで」

泉「え~、もう行っちゃうの?」

妹紅「魑魅魍魎が跋扈する幻想郷といえども、ここはとても安全さ」

妹紅「後は自分たちの頭で考えて、外界に戻るんなら戻ればいい」

美希「私達にそんな高度なことができると思っているのか?」

理沙「ここまで案内しておいて後は勝手にしろとは何と薄情な……見損なったよもこたん」

妹紅「……ある意味肝が据わっているね……お前たちは」

妹紅「私は暇というわけではないし、それに……」

妹紅「私は1人でいるのが落ち着くことができていい。あまり馴れ馴れしくしないで欲しいわ」

ハヤテってまだ連載してるん?

理沙「1人でいるのが好きなんて、カッコつけしーのセリフだろ?」

美希「1人で家で泣いてみたら、おそらくドツボにはまると思うぞ?」

妹紅「……」

泉「ねぇねぇ、一緒に遊ぼうよー!」

妹紅「え……あ、遊ぶ?」

泉「だって、私達折角出会ったんだから、これだけでお別なんて何だか寂しいよぅ」

理沙「そうそう、泉の言うとおりだ」

美希「ついでに元の世界に帰らせてくれ、手っ取り早い方法でな」


妹紅「……はぁー」

妹紅「まったく……仕方ないね。特別だよ?」

妹紅「貴方たち、放っておいたら物凄く危なっかしそうだしね」

妹紅「博麗神社にまで案内……」


美希「よし、さっそく観光でもするか」

理沙「カード使えるかな?」

泉「ねー見て、あっちにお花屋さんがあるよ!」

美希「向こうの霧雨魔法店ってのはどうだ? パク○ィオカードとかソウル○ェムとか売ってそうだ」

理沙「まずはそっちの蕎麦屋に行って腹ごしらえしないか?」


妹紅(だから最後まで聞きなよ話を)

>>62 まだしてるよ、まあ一応


――地上のどっか――


ハヤテ「あのー、そこの木に逆さでぶら下がってる人、ちょっといいですか?」

??「誰だお前?」


ハヤテ「ちょっと聞きたいことがあって……」

正邪「だから誰だよ?」

ハヤテ「……ちなみにあなたは悪い人とかじゃないですよね?」

正邪「さあね。いいヒトに見える?」

ハヤテ「ええ、何となくいい人かなー……と」

正邪「……」

正邪「幻想郷中のお尋ね者さ」

最近は盛り返してない?

同人編もきらいじゃないけど

ハヤテ「なるほど!」

ハヤテ「それじゃ、そのお尋ね者さんにお尋ねしたいんですが……神社の場所ってどっちですかね?」

正邪「神社?」

ハヤテ「えーとですね、確か結界を管理してる巫女さんがいるという……」

正邪「あー、それならあっち……」

正邪「……」

正邪「いや、そっちだね。あっちかそっちかと言われたらむしろそっち!」

ハヤテ「なるほど、そっちですね!……ありがとうございました」

正邪(馬鹿なニンゲン、そっちは妖怪の山だろーが)

>>66 うん
同人誌編もまあだいぶ長かったからだれたという感じかなあ  


――紅魔館――


咲夜「お嬢様、敷地内で侵入者を発見しましたので連れてきました。念のため」

レミリア「どうしてわざわざ私の前まで連れてくる必要があるのよ?」

咲夜「人間としてのカンかしら。あまり無碍に扱わない方がいい気がして」

レミリア「門番は何しているの。また昼寝?」

咲夜「サボってどっか行ったみたいですね」

レミリア「即刻連れ戻しなさい。八つ裂きにしていいわよ」

咲夜「分かりました」


レミリア「で、私の城に何しに来たのよあなたたち?」

レミリア「紅魔館に手ぶらで乗り込むとはなかなか度胸があるじゃないの」

ワタル「度胸もクソもねーよ!! 気が付いたらココにいたんだよマジで!!」

咲夜「ホンマそれや!! しかも何でウチがよりにもよってコイツとセットやねん!?」

ワタル「は!? それはこっちのセリフだろーが!!」

咲夜「うっさいはアホ! 自分さっきから何やビビリまくっとるやないか! 足がガクついとるで!」

ワタル「ふ、震えてなんかねーし! 全っ然怖くもなんともないね!」

咲夜「だったらボーっと突っ立っとらんと、さっさとそこの小っちゃいのんに事情聞かんかい!」

ワタル「聞くも何もこんな小っちゃいのに聞いても話になんねーだろーが!!」


レミリア「あんたたち……本気で殺すわよ……?」

咲夜「なんや、物騒なこと口走っとるで?」

ワタル「過激な深夜アニメとかの影響受けてるんじゃね?」

ワタル「最近はネットで見放題だから小学生とかも手出ししやすいし」


レミリア「あーもう、うるさいからお黙りなさい!」

レミリア「私を何処の誰だと思ってそんな軽口を叩いているんでしょうね?」


ワタル「子どもだろ」

咲夜「子どもやん」


レミリア「殺す」

レミリア「……と言いたいところだけれど、私はそんなに短気ではない」

レミリア「伊達に500年以上生きてきたわけじゃないわ。命拾いしたわね」

レミリア「紅魔の吸血鬼を知らぬ者が、この幻想郷の住人であるはずがない」

レミリア「ここは外来人(よそもの)が立ち入ってよい場所ではないの」

レミリア「即刻、この館から立ち去りなさい。そうしたら、今回は見逃してあげるわ」


ワタル「……」

咲夜「……」

ワタル「ぷっ……あはははははは!!」

ワタル「何だ……こいつ……! この若さで重度の中二病って!」

ワタル「もうスゲー最っ高に面白れぇ!!」

咲夜「あははっ! ホンマもうっ……自分天才やわ! そんなぶっとんだギャグ普通思いつかへんで!」


レミリア「……」


天の声「500歳児のカリスマの威厳ある発言は、一般人には実に大ウケだったという」


レミリア「前言撤回やっぱコロス今すぐコロスっ!!」


??「あのー、それは困りますから」

レミリア「!? 誰よ」


伊澄「名乗るほどの者ではないのだけれど」

ワタル「い、伊澄!」

咲夜「伊澄さん!」

伊澄「咲夜、それとワタルくんも。ようやく見つけたわ」

ワタル「ようやく見つけたって……どういうことなんだよ……?」

咲夜「何か知っとるん? ここはどこで、そこの小っこい子が何モンなのか……とか」


レミリア「この私を差し置いて勝手に話を進めないでくれない!?」

伊澄「詳しいことはまたあとで。すぐにこの場から立ち去った方がいい……とても危険だから」

ワタル「危険!?」

咲夜「歩いてか?」

伊澄「私の術を使いましょう。瞬間移動で」

咲夜「伊澄さんそんなんできたっけ?」

ワタル「移動先がいきなりガケの上から落下とかじゃねーよな!?」


レミリア「ちょっと待ちなさいよ!」


伊澄「あ。それから、吸血鬼さん」


レミリア「何よ」


伊澄「カリスマは、あんまりブレイクしないほうがいいわ」

天の声「再びもとの静寂を取り戻した紅魔館……」


レミリア「……」

咲夜「お嬢様、今戻りました」

咲夜「美鈴は夜雀の移動屋台で油を売って……」

咲夜「あら、さっきの連中はもう帰ったようね」

咲夜「お嬢様?」

咲夜「どうかなさいました?」

レミリア「んもぉー!! なんなのよ~っ!!!」


――地上のどこか――


天の声「ドサッ……!」


虎鉄「痛つつ……まったく綾崎の奴、手加減なしにぶっとばしやがって」

虎鉄「まぁ、これも愛情の裏返しだと思えば納得できなくもないか」

虎鉄「ん……」


天の声「見渡せば、そこは一面向日葵畑」


虎鉄「こんな所もあるのか……辺り一面綺麗に咲いて」

虎鉄「しかし……地下では確か雪が降ってたような」

虎鉄「だが向日葵は夏の花だろ? 地上と地下で季節が違うのか?」

虎鉄「っと、んなことは今は重要じゃあないな」

虎鉄「さっさと綾崎の奴に追いついて……」


??「あら、この素敵なお花畑のことを……『んなこと』なんて言葉ひとつで片づけるおつもり?」




天の声「人間の里編なのに他所のシーンが多いのは……まあ些細なことなのよ

人間の里編(後編)に続く」



――太陽の花畑――


虎鉄(……人間か? いや)

幽香「もしも一年を通して花が満開だとしたら、貴方はどう思う?」

幽香「どう思うって聞くのも、おかしいかも知れないわね」

虎鉄「……」

幽香「貴方は人間のようだし。おかしいと思うに違いないわ」

幽香「だって、人間には寿命があるでしょう?」

幽香「生れ出づるものはいつか必ず死を迎える、それは花とて同じ……大地に芽を吹き、いつか枯れてその生涯を閉じる」

幽香「それが常識であると……」

幽香「ね? そうよね」

虎鉄(……回りくどいな。何を言いたい?)

幽香「いつか枯れる……それは決まりきったことだとしても」

幽香「天寿をまっとうするか……それとも若くしてその生涯を閉じるのか」

幽香「それもまた、花と人とで大した差はないのではなくて?」

虎鉄「……、それはまあそうかもしれませんね」

幽香「そう、だったら……」

幽香「貴方が今、無残にも踏み倒した向日葵の死と……」

幽香「貴方に今ここで償いとして与えられる死も……さほど変わらないということね?」

虎鉄「はあ……、……はッ!?」



天の声「要するに、『私の花畑をよくも土足で踏み荒らしたなブッ殺すぞ』ってな感じ」



チルノ「あの人間、終わったね」

大妖精「そうだね……」

虎鉄「い、いや! 私は決して悪気があったわけでは……!」

幽香「殺すつもりで弾幕を当てられて死ぬのと、たまたま流れ弾に当たって死ぬのと……」

幽香「結果に大差はあって?」

虎鉄(……ん、何かヤバくないか? さっきから相手のオーラ量がハンパないような気が……)


チルノ「幽香(アイツ)は怒りによってよーりょく(妖力)が⑨倍に上がるんだ……」

大妖精「え、そんな設定あった?」

チルノ「もっとも、常時フルパワーでサイキョーであるあたいには遠く及ばないがね」

大妖精「チルノちゃん、そんなこと言ってると流れ弾に当たっちゃうよ(大丈夫だけれど)」



??「下がってください」

虎鉄「!……その声は?」

伊澄「この妖怪(ひと)には、あなたの力では対抗できないわ」



チルノ「ほう……少しは骨のあるやからが現れたようだね」

ワタル「おい、そこのにーちゃん! 早く、こっちに避難しろよ!」

咲夜「せやせや! 何やよう分からんけど相手はS級クラスっぽいで!」

大妖精(え……誰? この人達)



天の声「ランダムなワープによってたまたまこの辺に出現した人達」



幽香「あらら、私はそこの木偶の坊と会話しているのだけれど」

伊澄「生憎ですが、この人ではちょっと……そちらも物足りないと思いまして」

幽香「貴方なら物足りるというのかい?」

伊澄「……少なくともこの人よりはマシですね。こっちの方面では」

虎鉄「……」

チルノ「でくのぼーがスゴスゴ引き下がっていくよ」

ワタル「おいおい……伊澄のやつ……マジで勝負するのか?」

咲夜「心配せんでええって。お互い本気でやるんやないやろ」

ワタル「確かに、こういうの本気でやったらむしろ外野が荒れるしな。いろいろと」

ワタル「艦○れの模擬戦みたいなもんだよな」

大妖精(何の話なのかな……)



チルノ「おっぱじまったみたいだね!」

咲夜「おおー、キレイやな。花火みたいやん」

ワタル「つーかむしろ、この戦闘でなぎ倒される花のが多いんじゃね?」

大妖精(……あれ、さっきからチルノちゃん、この人達と自然に会話してる)

虎鉄「私は用があるから行くと伝えてくれ」

大妖精「あっはい……分かりました」


咲夜「お、伊澄さんの反撃や!」

ワタル「やったか!?」

チルノ「いや、あの程度でしずめられる相手じゃないさ」

大妖精(あ、さっきの人……この人達に対する伝言を頼んだみたい。何で私に? 普通に見えて?)


咲夜「わ! 流れ弾がこっちに来るで!」

ワタル「危ねえ、避けろ咲夜!」

チルノ「あたいの後ろに隠れるんだ!」

大妖精「ちょっとチルノちゃん!?」

ワタル「ふー、危なかったな!」

咲夜「もうちょい距離とったほうがええんとちゃう?」

チルノ「ふ……殺されるのが妖精(あたい)で良かった……」

大妖精「……」


ワタル「そういえば、あのにーちゃんはどこ行ったんだ?」

大妖精「あ、あの人なら用があるからどこかに行くとか……」

ワタル「え、誰?」

咲夜「いつからそこにおったん?」

チルノ「誰だいあんた?」

大妖精「さっきからずっと!……ってチルノちゃんまでからかわないでよー!」


ルナサ「……何この茶番?」


――人間の里(移動屋台)――


理沙「ついさっき、ふたつ隣の席に座っていた客が一瞬のうちに連れ去られたな。全身に純銀のナイフを浴びて」

美希「スタン○使いの仕業かもな」

理沙「たぶんDI○だろうな」

美希「後ろ姿はメ○ドガイかフレ○ムヘイズだったぞ」


??「あれはお約束みたいなものなのさ」


理沙「私の隣にいる人が話しかけてきた」

美希「そのお約束というのは何なんです?」

小町「お約束はお約束だよ。仕事をサボったら天罰が下るってこと」

理沙「なるほど、大人のお約束というやつですか」

美希「ちなみにあなたはお仕事とか大丈夫なんですか?」

小町「あ、あたいは大丈夫さ。有給取ってるし」

理沙(今つっかえたよな)

美希(分かりやすいフラグだな)


泉「人間の里って変わったお店が沢山あって楽しかった~! 何だか独特の雰囲気があって凄く新鮮だし」

妹紅「そうかい。それは良かった(私はちょっと疲れたよ……)」


ミスティア「お金がない奴ぁ~オレんとこに来い~♪ オレはあるけど貸してはあげない~♪」

ミスティア「妹紅が慧音以外の(半)人間と連立ってくるなんて珍しいね」

ミスティア「ああ~、別に人間に限らないか」


妹紅「……まあ、成り行きでね」

小町「人間の里(ここ)の人間ではなさそうだね。外から来たのかな?」

泉「そうなんですよー。初めはどーなっちゃうんだろうって思ってたけど……モコちゃんが助けてくれて」

小町「ほうほう」

妹紅「……」

美希「お二人は知り合いなんですか?」

小町「知り合い?……ま、“知ってるだけ”か?」

妹紅「長い時間を過ごしていると……な。幻想郷は言っても狭い社会だからね」

理沙「長いとはどれぐらいで?」

妹紅「……、……永遠くらいの長さ、かな」

小町「生憎あたいの職業柄、そこの“人”は“食えなくて”困る」

美希「その職業って……?」

小町「知らない方がいいさ。先が見えない方がいい場合もあるんだよ」

泉「ふぅん」


ミスティア「うちのウナギ丼はどうだい? 旨いかい?」

理沙「うーん、普通かな」

美希「まあ食べられないことはないかな」


ミスティア「あァ!? お前ら喰っちまうぞ!」


理沙「」

美希「」

泉「ぴええええー怖いよ~!!」

ミスティア「なーんてね♪ ジョーダンだよジョーダン」

理沙(冗談言ってる目じゃなかった……)

美希(目が本気だった……)

小町「あははは! あんまり妖怪を侮っちゃダメだよ~」

泉「ふぇぇ……怖かったよー……」

妹紅「まあ、……もう泣くな」

美希「やっぱり幻想郷(ここ)って怖い所だったんだな……」

理沙「妖怪○ォッチのイメージで歩いていたら危ないな……」

泉「ううー……早くお家に帰りたいよ~」

妹紅「……だから帰れるように案内するって最初に言っただろう?」

泉「やっぱり今すぐ帰りたいかも……」

理沙「そうだよもこたん! 今すぐ帰らせてくれ!」

美希「VI○Aカードあげるから!」

妹紅「……うーん、そうしてあげたいところだけれど」

妹紅(もうじき日も暮れる。いくら私が付き添うとしても……夜の獣道を歩くのは)

妹紅(それにこの娘達の運動神経を考えるとなぁ……)



天の声「ま、3人を抱えて空を飛んだりするくらいのことは何となくできそうだが

それだとあっさり過ぎるので却下ってことで」

泉「やっぱり怖いところよりもヒナちゃんとかハヤ太くんとかがいて安全な世界がいいよ~」

理沙「そうだそうだ!」

美希「やっぱりヒナのいない世界線なんて考えられない……!」



??「そう? 嬉しいこと言ってくれるじゃない、あなたたち」


美希「!」

理沙「その声は!」

泉「ヒナちゃん!!」


ヒナギク「……まったくもう、随分探したのよ。あなたたちのことも」


妹紅「……貴方は?」

小町「おやー、新手の迷子さんかい?」

ヒナギク「いえいえ……私は迷子ではないですよ。目的を持って幻想郷を駆け巡っているので」


泉「ヒナちゃんも迷子なの!?」

理沙「良かった、やはり私達は同じ穴のムジナだな」

美希「ああ、そうだなムジナだな!」


ヒナギク「だから迷子じゃないって……それとそのことわざの意味ちゃんと分かってる?」


泉「ねえねえ聞いてよ! 私達ね、モコちゃんとお友達になってさ~!」

美希「ああ。もこたんはシャイだが凄くいい人だ」

理沙「うむ、何だかんだで凄くいい人だ」

ヒナギク「はいはい。お土産話はまた後でね」

ヒナギク「……私はもうちょっと野暮用があるから。悪いけど……あなたたちには先に帰っていてもらうわ」

ヒナギク「安全で、確実な方法でね」

理沙「安全で?」

美希「確実な?」

泉「ひょ!?」



天の声「シュルルルルン……なんかそんな感じの効果音とともに、生徒会3人娘はフェードアウト」



ミスティア「生れた愛は優しい羽音(ブーン)~♪ 傷つけたいし突き離したい~♪」

ミスティア「逮捕してよ何度でも~♪ 巡り合うのは多分運命~夢で時を越えてゆけ~♪」


小町「おやあ……今のはアレのようだねぇ。どういうコトなんだか」

ミスティア「便利すぎる能力者は序盤に出したら話があっさり幕を閉じちゃうもんね」


ヒナギク「ええーと、モコさんでしたっけ?」

妹紅「あ、ああ」

ヒナギク「どうやら、うちの生徒達がお世話になったようで……」

ヒナギク「大変だったでしょう?」

妹紅「……、いや」

妹紅「少し疲れたけれどね。その分……少し楽しかった……気がする」

ヒナギク「……そうですか。改めて私からお礼を言わせていただきます」

ヒナギク「ありがとうございました」

妹紅「……」

妹紅「貴方は急いでいるようだから、早く行った方がいいわ」

妹紅「私に構わずにね。時間が惜しいでしょ? もうじき黄昏時よ」

妹紅「私はただの健康マニアの焼き鳥屋だ。いつまでも“今、ここ”にいる」

ヒナギク「分かりました。『もしまた機会があれば、私の所に遊びに来てもいいよ。来れたならの話だが』ってことですね」

ヒナギク「あの子達に伝えておきます。それでは……私はこれで」

――――

小町「ふふ、何だか妙にしんみりしちゃったじゃないか」

ミスティア「そうねえ」

妹紅「……、うん」

ミスティア「ところで妹紅」

妹紅「……何?」

ミスティア「お前さんは本当に焼き鳥屋なんかやってるの?」

妹紅「え……いや、それは……」

小町「にしてもさっきの子はやたら察しが良かった。まあ、あたいの方がもっと鼻が聞くけどね!」

??「あらそうなの? じゃあ、この後の展開も……もう察しがついてるわよね」

小町「きゃん!? 映姫様!……すみませんすみませんもうサボりませんからー!!」

映姫「まったく、小町はまったく!」


天の声「フラグは最終的に、だいたい回収されてしまうもの

勿論フラグを立てたことを忘れて、そのままなかったことにされちゃう場合もしばしば有り」

――――

ヒナギク「これで大方……幻想入りしちゃった人達は帰還できたはずね」

ヒナギク「まあ、鷺ノ宮さんと会って確認する必要はあるけれど」

ヒナギク「……それにしても鷺ノ宮さん、何処行っちゃったのかしら」

??<案外ミイラ取りがミイラになっていたりしてね>

ヒナギク「いや……さすがにそれはないと思いますけれど」

ヒナギク「と言いますか……あなたが本気を出したら、わざわざ私達が迷い人探しをしなくても……」

紫<何言ってるの? それじゃ、1レスでお話が終わっちゃうでしょ>

ヒナギク「それはそうですが……」

紫<妖怪退治をするのが人間の仕事であれば、外来人を連れ戻すのは外来人の仕事であってしかるべきじゃない?>

ヒナギク「……その表現、全然論理的じゃないですよね」

ヒナギク「無理なこじつけ……それこそご都合主義のたまもののような」

紫<非論理的、道理が引っ込み無理が通る……そういう言の葉は私に対する最高の褒め言葉になるわよ>

紫<あいにく今回の事態は“異変”というほどのレベルのことじゃないし>

紫<博麗の巫女は基本不熱心で無関心だから、この件に関わるつもりはない様子。今のところはね>

紫<ただお参りしてお賽銭でも入れれば、手を貸してくれるかも知れないけれど>

ヒナギク「……いえ、もう終盤戦なのでこのまま私達が動きます」

紫<そう、じゃあ頑張って。私もヒマではないから、そろそろお暇するわ>

ヒナギク「ヒマかどうかはあなたの能力の性質上あまり関係ないのでは?」

紫<ま、とにかく後は貴方たちで後始末して頂戴。くれぐれも、私に迷惑をかけたりしないように! じゃ、バイビ~>


ヒナギク(……、行っちゃったわね、紫さん。バイビーって……)

ヒナギク(……まあ、もともとそのつもりだったからいいけれど)

ヒナギク「さてと……」

ヒナギク「多分残るはハヤテくんあたりね。確信があるわけではないけれど……まだ面倒事に巻き込まれてそうだわ」

ヒナギク「さて、どの方面に向かうか。ここは直感的に行くしかない……か」

ヒナギク「何となく……ほんと何となくだけれど」

ヒナギク「ちょっと厄介で、面倒くさそうな雰囲気を醸し出している場所」

ヒナギク「――あの山の頂上」



天の声「その瞳が捉える先にあるものは」


――守矢神社――


??「早苗ー、ちょっと夕ご飯の買い物に行ってくるね」

??「早苗、ちょっと間欠泉(地下センター)の上にあるスパでくつろいで来るから留守番頼んだよ」

??「はーい、いってらっしゃいませ。諏訪子様、神奈子様」


早苗「ふふ、今日も素敵な一日でした」

早苗「妖怪の山の衆生の厚い信仰を一心に受けて、ますます守矢神社への信望が高まっています」


早苗「さて話は変わりますが、バトル漫画ってやっぱり最後に大きな山場がないと盛り上がりに欠けると思いません?」

早苗「ですから! 妖怪の山(わたしたち)が文字通り最後の山になっちゃいましょう!」

早苗「侵入者、進入者、参拝客、幽鬼人妖を問わず誰でも大歓迎~」

早苗「うーん、相手が人間だったらちょっと……って気も心の片隅にありますが」

早苗「まぁ、たまにはいいですよね! 容赦なくぶっ飛ばしちゃいましょう!」

早苗「というわけで、ご来訪された方には洩れなく幻想郷流の丁重なおもてなしをさせていただきます」

早苗「それでは、お待ちしていますね」


椛「……誰に向かって話をしているのです? あちらの方ですか?」


天の声「普通だが何かずれている人がそこにいた」


――妖怪の山のどっか――


ハヤテ(ふー、やっぱりさとりさんが言っていた通り道なき道が続くな)

ハヤテ(でも、今のところは手強そうな妖怪とかとは鉢合わせになってないし……ていうかこれまで大勢遭遇し過ぎたし)

ハヤテ(この調子で無事に神社を発見できれば……)

??「久々に家から出てみたら……いきなり不法侵入者を発見してしまったようね?」

ハヤテ(って言った側からこれですか……)

ハヤテ「あの、僕もうジョ○ョ並に奇妙な冒険をしてきたんで……今回は見逃してもらえませんかね?」

はたて「そうなの。だったらまずは貴方の冒険譚とやらを、取材してあげましょうか?」


天の声「┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨」


ハヤテ(こうやって見ると……結構この手のネタ多いなあ)

天の声「妖怪の山編(前編)に続く」

・今更ですが、最初はハヤテ1人で進めようかと思っていました。が、そうするとどうも話が単調になりそうだったので、テコ入れみたいな形で何人か登場させています

・幻想郷側はもともと舞台になっているのでキャラを出しやすいんですが、入ってくる側のキャラは多くなると収集がつかなくなりそうなので、随分限られています

・そのため登場するキャラに随分偏りが出ていますが、そこは本当に勘弁してください


――妖怪の山――


天の声「本当に取材でした」


はたて「えー! 地底から上がってここまで来たの!?」

はたて「しかも地霊殿から出発して……よくここまで生きてこれたわね」

ハヤテ「ええまあ……自分でも不思議なくらいで」

ハヤテ「その道中でも、もういろいろと経験して……」

はたて「ふむふむ……」

はたて「私は基本現地取材はしないのだけれど、ナマの体験ってのも真に迫るところがあるわね」



天の声「あっさり誤解が解けました」


ハヤテ「ええ!」

ハヤテ「結界を管理してる神社ってのはこっちには無いんですか!?」

はたて「そうよ。誰にも聞いてないの?」

ハヤテ「……いやー、聞いたんですけど……どうやら騙されたみたいで」

天の声「共通の話題がありました」


ハヤテ「へえー、念写能力ですか。つまり隠○の紫ですね」

はたて「携帯は壊さないけどね。はいこれ、博麗神社の外観」

ハヤテ「ありがとうございます! 綺麗に撮れてますね~」

ハヤテ「僕カメラとかに結構興味あるんですよ~」


天の声「何かコギャルでした」


ハヤテ「写真だけで作った新聞ですか」

ハヤテ「何だか新鮮味があっていいですね」

はたて「そうよね、そう思うわよね! 購読料を払ってでも読みたくなるでしょ?」

ハヤテ「はい、そう思いますよ」


天の声「そして意外と親切でした」


はたて「うちの新聞を取ってくれるお礼に博麗神社まで案内してあげてもいいわよ」

はたて「私も久しく行ってないけど、道中の画像検索をしていけば大丈夫だと思うし」

ハヤテ「本当ですか! 凄く助かりますよ……日も暮れてきてどうしようかと思ってたんで」

――――

にとり(今日は厄日だ……何で外来人に出くわしたりするんだよ)

虎鉄「道案内してもらえると有難いんだが」

にとり「イヤだね、通行料及び手数料を払いな。キャッシュで」

虎鉄「いいだろ、いくらでも出す」

にとり「どうぞどうぞお通りくだ……ってダメだね!」

にとり「私の光学迷彩スーツを見破ったことは褒めてあげる」

にとり「けれどね! ここから先に人間を通すわけにはいかないから。危ないし」

にとり「この場で撃退させてもらうよ!」

虎鉄「そっちにも都合があるとは思うが、私はこの先に進まなければならない」

にとり「あっそ……一応、理由だけは聞いておこうか」

虎鉄「私はある男を探している。綾崎(あいつ)を探し出して……共に元の世界に帰」


諏訪子「ああ、それならあっちの神社に向かう必要があるね」


虎鉄「誰だ、あの妙な帽子を被った子供は?」

にとり「おいお前、『誰だ』とは失礼だろうが!」

諏訪子「妙かな、これ?」

虎鉄「また妖怪の類か……?」

諏訪子「ちょっと口を慎みなさいな。私は通りすがりの神様よ」

――――

椛「すみませんね。妖怪の山は閉鎖的な社会でして……余所者の方の侵入は基本お断りしています」

ヒナギク「ごめんなさいね。でも私はここを踏み荒らしたりするつもりはないのよ?」

椛「そう言われましてもね……」

椛「ここで貴方を通してしまえば、後のち責任問題になりかねません」

ヒナギク「そこのところ……何とかならないかしら?」

椛「うーん、私としてもそこは辛いところでして」

椛「始末書は書きたくないですし……それに私、あの文様(上司)はちょっと苦手なので……」

ヒナギク(う~ん、困ったわ)

ヒナギク(こんな可愛い子と闘うのは気が引けるし……かといって引き下がるわけには……)


神奈子「別に通してやっていいんじゃないかい?」


椛「あっ……神奈子様」

ヒナギク「ええっと、あなたは……」

神奈子「通りすがりの山の神だよ」

神奈子「見たところ山を荒らしに来た賊ってわけでもないようだし」

神奈子「用事だけ済ましてとっとと帰るんなら、そんなに問題はないだろう」

神奈子「頂にはうちの神社があるから参拝して信仰心を養いな」

ヒナギク「はい。どうもご親切に……ありがとうございます」

天の声「それから暫くの後、妖怪の山の麓にて」


虎鉄「おおー! 綾崎ッ!!」

ハヤテ「げげ……虎鉄さん。まだその辺をうろついていたんですか」

はたて「知り合い?」

にとり「そうらしいね。やれやれ……これだから外来人(よそもの)は面倒くさい」

虎鉄「やはりオレ達は運命の赤い糸で結ばれていたというわけか」

ハヤテ「いっそあなたこのまま幻想郷に取り残されてくださいよ」

にとり「おまけに……わざわざ向こうの神社まで連れてってやれって言われるし……」

にとり「ま、縁日の件で霊夢さんと会って交渉するつもりだったから……結果的には手間ではないか」

はたて「ふーん」

にとり「で、そっちも絡まれたわけなんだ? それにしても珍しいね、外出するなんて」

はたて「たまにはね。外に出るのもいいかなーって、思っただけよ」


――守矢神社――


早苗「ふふふ……ついに現れましたね。侵入者さん」

ヒナギク「生憎だけれど、一応許可は頂いているわ。山の神という方に」

早苗「あら、神奈子様からですか? それでは尚更丁重におもてなしをしないと」

ヒナギク「神社を参拝して行ってもいいけれど……まずはあなたに尋ねたいことがあって」

早苗「そうですか。では早速拳で語り合いましょうか」

ヒナギク「……え?」

早苗「貴方の身につけているその木刀……これもなかなか使えそうでは有りますが」

早苗「私と一戦交えるのなら、その身に封じられたる剣を召喚したほうがいいですよ」

ヒナギク「……あなた、今会ったばかりなのに何でそんなことを?」

早苗「貴方のヒミツを見抜くくらいの簡単な奇跡。なーんて造作もないこと!」

早苗「だと思いますね。これくらい出来ますよね?」

ヒナギク「……何の確認ですか?」


早苗「それでは、始めましょう!」

早苗「秘法『九字刺し』」



ヒナギク「ッ! ちょっといきなり!?」



――博麗神社――


文「いやー、霊夢さん随分肩凝ってますね」

霊夢「妖怪(あんた)達のおかげで、こっちは気苦労が絶えないのよ」

霊夢「で、何でわざわざ私の肩なんか揉んでるの? 目的は何?」

文「目的といいましても……最近記事にするのにいいネタがあんまり上がっていないので」

文「いい話があったら是非とも、と」

霊夢「そうねえ……あ、いいネタがあるわよ。異変と言ってもいい」

文「! それってどういう?」

霊夢「ここ半年くらい……誰一人としてうちに参拝客が現れていないわ。勿論人間の、ね」

文「それは異変じゃなくて平和な日常におけるありふれた光景……」

霊夢「お賽銭箱の中身もスッカラカンよ。誰が盗んだんでしょうね?」

文「もともとカラだったんでは? 第一霊夢さん、裕福なんだからそんなにガメつかなくても」

霊夢「別にガメついわけじゃないんだって。信仰の厚さってのは結局集まるお金の多さなんだから」

霊夢「もっとも私には、信仰が厚いか薄いかなんてそこまで重要なことだとは思えない」

霊夢「とりあえず神社が存続できる程度の信仰さえ集まれば、それで充分なのよ」

文「そんなものでしょうかねー?」

文「……でもカラッポってことはその程度の信仰も集まっていない証拠では?」

霊夢「うるさいわね」


――守矢神社――


早苗「どうです? そろそろやる気も出てきましたか?」

ヒナギク「……あなたねぇ。いつもこんな手荒い歓迎をしているの?」

ヒナギク「それにあなた巫女なのよね?」

ヒナギク「その服装はちょっと風紀的に……」

早苗「風紀的に何です? この幻想郷にあって風紀なんて言葉……果たしてどれほどの意味をなすのか」

ヒナギク「……それは確かに、そうでしょうね」

早苗「あ、そういえば歓迎について話してましたね」

早苗「いつもってわけじゃないですよ。今日は特別です」

早苗「私は妖怪退治をするのがお仕事ですからねぇ」

早苗「あ、勿論風祝としてやることもちゃんとやってますよ」

ヒナギク「それならば、これまで妖怪以外の人間にこういう挨拶代わりの喧嘩を吹っ掛けたことは?」

ヒナギク(ハヤテ君が、もしこの神社に辿り着いていたとしたら)

早苗「喧嘩という言い方はちょっと語弊がありません?」

早苗「ですが、これまでにもありますよ(霊夢さんに対して)。あの方は強い人です」

ヒナギク(強い人……もしかしたら、もしかするかも知れない)

ヒナギク「それじゃあ、その人が一体誰で今どこにいるかについて……あなたはご存じ?」

早苗「それは当然、知ってますよ」

ヒナギク「だったら、教えてもらえたらこっちは助かるのだけれど」

早苗「別に構いませんが……無償で、というのも難ですから」

早苗「1つ条件があります」

ヒナギク「『私を倒すことができたら教えてやってもいい』ってところかしら」

早苗「ご名答。では、再開といきましょうか!」

ヒナギク「もう分かりやすいからそれに乗っかるわ。望むところよッ!」


天の声「絶対に負けられないというほどではない

ナンセンスな戦いがそこにはある」


――博麗神社――


霊夢「ちょっと文、山の上の方を見てみなさいよ」

文「おやぁ……あれは蛍火ですかね。風情ある情景で」

霊夢「あんた鳥目?」

霊夢「たぶんあれよ。ちょっとした行き違いがきっかけでノーガードの殴り合いってやつ」

文「はぁ……何を根拠に?」

霊夢「とりあえず向こうは天狗(あんたたち)の管轄なんだから、さっさと行って誤解を解いてきなさいな」

霊夢「いい頃合いを見計らってね」

文「……何だか腑に落ちない気もしますが。面倒事になる前に鎮火して来るとしますか」

霊夢「行ったわね、文」

霊夢「で、あんたたちは何の用なの?」


萃香「何だい霊夢? 私が来たからには、もうそれと決まっているじゃない」

萃香「今宵もいい酒が呑めそうだよ」


霊夢「そっちの方は?」


こいし「神社破りかなー」


霊夢「はい早速駆逐するから、表に出なさい」


こいし「あ、思い出した!」

こいし「大切なものを、返しに来たのだったわ」




天の声「次回・実質最終回

妖怪の山編(後編)に続く」



――守矢神社――


ヒナギク「はぁ……はぁ……」

早苗「おやー、もう息が上がってきました?」

早苗「乱れ飛ぶ弾幕を避けてばかりいれば……無駄に体力を消耗するだけですもの」

早苗「肉を斬らせて骨を断つ。多少のケガは省みず、もっと前進して押していかないと!」

早苗「私達の戦いはこれからが本番です!」

ヒナギク「あなたねー!」

ヒナギク「そっちはこんなメルヘンみたいな世界の能力者なんだから、地の利もあるし」

ヒナギク「“弾幕勝負”にも慣れてるんでしょうけど」

ヒナギク「こっちはあくまで一般人よ。いくら白桜(王の剣)という特別な力が備わった剣があっても」

ヒナギク「あなたと同じ土俵で戦えるってわけじゃ……!」

早苗「いいえ」

早苗「きっと戦えますよ、要はあなたの気持ち次第で」

ヒナギク「? 私の気持ち……?」

早苗「だってここは常識なんて通用しない幻想郷ッ!」

早苗「あなただって今こうやって常識では測れないことが起こりうる世界に足を踏み入れている」

早苗「あなたがそのモヤモヤとした気持ちを振り払って、心を整えられたならば」

ヒナギク「モヤモヤって私は別に……目的を達成しようと」

早苗「そうです、その目的に関してなんですよ!」

早苗「あなたは、その強い人(霊夢さん)を探し出したい。ということなんでしょう?」

ヒナギク「ええ、それはそうよ。だからあなたから手掛かりを得ようと……」

早苗「じゃあ、どうしてその人(霊夢さん)のことがそんなに気になるんです?」

ヒナギク「ど、どうして!? ってそれはその……」

ヒナギク「その人(ハヤテ君)は……その……」

早苗「『その』……何でしょう」

ヒナギク「だから! その人(ハヤテ君)は私にとって……う、ううん」

ヒナギク「皆(ナギとかマリアさんとか天王洲さんとか、歩とかもう沢山の人達)にとっても大事な人だから!」

ヒナギク「早くその人に会って(一緒に元の世界に帰りたいのよ! 勿論、鷺ノ宮さんとも合流してね!)」

早苗「なるほど、よく分かりました」


早苗「貴方、その人(霊夢さん)のことが好きなんですね!」

ヒナギク「なな!? 何言って!!……べ、別にそんなハッキリと口に出すようなことじゃ……!」

早苗「ということは、否定はしないと?」

ヒナギク「……う……っ……いや、だから……」

早苗「もー、表情(かお)に出ちゃってますよー」

早苗「私だって普通の女の子なんですから。これくらい察しはつきます」

早苗「ふふ、そういうことだったんですか。でもご安心を。ここは文字通り常識が覆る幻想郷」

早苗「頑張って猛アプローチしていけば、きっと奇跡を起こせますよ(霊夢さんとお付き合いできますよ)!」

ヒナギク「んもうっ……! あなた、何を知ったようなことを言って……!」

ヒナギク(あっ! もしかして、この人私が考えていることを……読んでる? サイコメトラー!?)

ヒナギク(でも有り得ないことはないかも……神社の風祝だったら、それくらいことできそうな気がする)

早苗「確かにあの人、(妖怪の)皆にも何だかんだで結構好かれてますし……これってやっぱり主人公の特権なんですかね」

ヒナギク「……そうね。確かにね」

早苗「かく言う私も、あの人(霊夢さん)のこと……案外好きなのかもしれません」

ヒナギク「っ!!?」

早苗「何と言いますか、肉体言語を通して……ライバルとしての友情をはぐくんだといいかすか」

早苗「……う~んでも、向こう(霊夢さん)のほうはどう考えているかは分かりかねますけど」

早苗「これからもお互い(妖怪退治とかで)切磋琢磨して、いい(感じに緊張感のある)関係を続けていければなー……って」


早苗「あれー、参拝客さん?」

早苗「どうしたんですか、急に黙り込んで」

ヒナギク(……え、え、え?)

ヒナギク(まさかハヤテ君が……この人とそんな関係に……!?)

ヒナギク(いや、でも有り得る……! ハヤテ君なら十分ありうる……!)

ヒナギク(いきなり知らない世界に飛ばされたとしても……)

ヒナギク(その辺で出会った女の子と、何か睦まじくなっちゃうようなこと!)



ヒナギク「なるほどね……要するにあなた……ううん、あなたも私の……ライバルみたいな感じなのね」

早苗「うーん、そうなりますかねー?」


ヒナギク「いいわ。だったら私はここであなたを倒して、あなたには諦めてもらうわよ!!(ハヤテ君のことを)」

ヒナギク(流石にこの幻想卿の人達にまで、天然ジゴロのせいで迷惑を掛けられないから!)

ヒナギク(この人の気持ちを踏みにじることになってしまうのは悪いけれど、ここは心を鬼にする!!)

早苗「ええ?」

早苗「貴方、そんなにもあの人(霊夢さん)のことが好きなんですか! 独占欲が強いんですね」

ヒナギク「独占欲が強いとか……これはそういうのじゃなくて!」

ヒナギク「あなたの為でもあり(どうせハヤテ君は元の世界に帰ってしまう)、幻想郷のためでもあるの(紫さんに面倒事を残さない)」

早苗「なるほど、幻想卿の安定のためには(博麗の巫女と守矢の風祝は)親しくしないほうがいいと」

早苗「ですが……それってある意味、あなたの主義主張を無理矢理押しつけようとしているだけですよね?」

早苗「そのような身勝手な押しつけを甘んじて受け入れたりしたら……私は守矢の二柱に顔向けできません!!」

ヒナギク「だった――もう言葉なんかいらないわ」

ヒナギク「あなたを倒す!!」

早苗「どうやら、とうとう全力で向かってくるみたいで」

早苗「その剣は、あなたの心の赴くままに……更なる力を発揮してくれることでしょう!!」

早苗「それこそ、奇跡的なチカラを……!!」

早苗「そのチカラは、果たして私の能力を凌駕できるでしょうか?」



早苗「奇跡――『ミラクルフルーツ』」




天の声「誤解に誤解が上乗せされて

いつのまにか、ただの喧嘩が警察沙汰になってしまうことも

まあたまにあること」


――人間の里――


ハヤテ「へぇ~、ここが人間の里ですか……」

はたて「そうよ。ここは割と安全なところなの」

にとり「この里を抜けて獣道を超えれば、めでたく博麗神社にご到着。ミッションクリアだね」

虎鉄「山あり谷ありの長旅だったが……最後は随分とすんなりゴールに辿り着きそうだな」

ハヤテ「そうですね」

ハヤテ「それにしても今更ですが……虎鉄さんの木刀、何で斬○刀になったんでしょう?」

虎鉄「唐突な伏線回収だな。そういえば、オレが1人で地底を彷徨ってたときに」

虎鉄「どっかから飛んできたお札みたいなのが張り付いて……急に」

ハヤテ「あー……何となく分かったような」

はたて「急速な付喪神化を促進したような感じ?」

にとり「もともと地底(あそこ)はいろんなモノが漂っていて……妖怪が生まれやすい下地があるしねぇ」

ハヤテ「まあそれはともかく、何より安心してゲームをクリアできるのはいいですね」

虎鉄「……だが、お前のことだ。これは嵐の前触れという可能性も……」

ハヤテ「止めてくださいよ……もう最終回なんだし、このまますんなり行かないと……」


??「ん、そこにいるのははたて……それと河童のエンジニアですか?」


虎鉄「ん、何かが薄暗くなった空から降りてくるぞ?」

ハヤテ「蝙蝠の妖怪でしょうか……?」

文「誰が蝙蝠ですか誰が。蝙蝠が見たいなら紅魔館に行ってくださいよ」

虎鉄「は? 高麗(こま)駅と真菅駅の間がどうしたって?」

ハヤテ「どう考えてもそんな聞き間違いできないでしょ。しかも後者は『ますが駅』ですよ」

はたて「世間話はいいから、どうかしたの文?」

はたて「急ぎの用っぽく見えるけれど……相変わらずムダに足を使ってるわね」

文「使っているのは足じゃなくて翼ですけれどね」

にとり「もう尺もあんまり残ってないし、手短にやってよ天魔様の手先さん」

文「貴方ねぇ、私だって断然格上なんですからもう少し態度をわきまえなさいな」



文「じゃ、簡潔に説明しますけど……妖怪の山の山頂というか守矢神社でドンパチやってるみたいなんで」

文「一緒に見に行きますか? 賑やかし程度でいいですから」


ハヤテ「いやぁ……僕達そっち側からここまで歩いてきたし、また引き返すのはちょっと」

ハヤテ(てかそれ、行ったら確実に面倒事に巻き込まれそうだし)

虎鉄「綾崎がそういうなら、俺も行くつもりはない」

文「そうですか。ではもう一つ聞きますが……この人達は?」


はたて「実はかくかくしかじかなのよ」



文「なるほど。つまり山頂でドンパチやってるのは侵入者の撃退とかそういうのではないんですね?」



にとり「たぶんね。侵入者なんて他に見てないし」

はたて「貴方達の知り合いが他にも妖怪の山界隈で迷っていたりはしない?」

ハヤテ「たぶん、それはないと思いますが……僕、ここに来てから虎鉄さん以外の元の世界の人には会ってないですし」

虎鉄「そうだな、オレも綾崎以外はほとんど眼中にない」


天の声「なお、伊澄他3人と一応すれ違っているが

本人にとっては割と些細なことなので忘れてしまった模様」

文「そうですか、分かりました。では詳しい取材はまた後で、博麗神社にてゆっくり覗いますね!」



ハヤテ「って飛んでいくの早いですね!」

虎鉄「……ロケット○レッドより早いんじゃないか? あれは列車というよりミサイルみたいなもんだが」

にとり「へぇ、そのミサイルみたいなのっていつ頃幻想入りしそう?」

はたて「私達は私達で、さっさと先に進みましょ。もう暗いし」





天の声「ズゴォォォオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!」




――妖怪の山(中腹)――


椛「あ、夕飯の買い物を終えてお帰りの途中である諏訪子様」

諏訪子「説明はいいから」

諏訪子「今何だか……爆発音みたいなものがしなかった?」

椛「はい、しましたね」

椛「どうやら、……守矢神社のあたりで弾幕勝負が行われているようで」

椛「あれは早苗様と、相手の方は、……あ」

諏訪子「まあ、大したことじゃないだろうけど。少し急ぎで帰ったほうがいいかな」

諏訪子「そっちはそっちで、念のため上司の指示を仰いでおきなさいよ」

椛「は、はい……そうします」


――間欠泉(地下センター)の上のスパ――


神奈子「はぁー、……いい湯だわ」

神奈子「と、このまま暫く寛いでいるわけにもいきなさそうだね……」


お空「うにゅー、どうしてですか?」


神奈子「そういや何であんたがここでまったりしているんだい? 地下で機器の調整をしてなよ」


お空「それが、地下行きのエレベーターの位置を忘れてしまって」


神奈子「そんなことはさて置き。さっき聞こえただろ、山の上から轟音が」

神奈子「万が一のことだけど……侵入者が神社を襲撃に来たってこともありうる」

お空「襲撃……誰か心当たりでも?」


神奈子「そうだね、例えば」

神奈子「……以前から警戒していたが、近頃勢力を伸ばしている命蓮寺あたりが」

神奈子「我々の動きを牽制する目的で挑発行為に出てきた……とかね」


お空「そういうのってむしろ守矢の方がやりそうな」


神奈子「お黙り、バカ鴉……じゃなくて八咫烏」

神奈子「念のためだ。様子を見に行くからついてきな」


お空「えー? でもそういうのはさとり様の許可が……」


神奈子「誰がお前に神の力を分け与えてやったと思っている? どうせ大したことはないんだから、事後報告でいいじゃないかい」

お空「はーい」


――博麗神社――


アリス「何だかさっきから、山の上の蛍火が鬼火にかわってきていない?」

魔理沙「線香花火が打ち上げ花火になっただけじゃねーのか?」

愛沢咲夜「花火大会か何かやっとるん?」

アリス「割とよくやっているとは思うけど……今日はなかなか豪勢な感じかしら」


ワタル「おーい、そこの3人もちゃんと手伝ってくれよ。もうすぐ宴会始まるんだろ?」

霊夢「やれやれ、『準備して』って頼んだら鬼も覚妖怪(亜種)もどっか行っちゃうんだから」


霊夢「それにしてもあんたたちは運が良かったわね」

霊夢「適当に強制転移の術式を発動して、たまたま博麗神社(ここ)に辿り着いたー、だなんて」

ワタル「ほんとそれだよ! 花に日傘のねーちゃんが結構本気(マジ)でさ。危機一髪って感じ」

霊夢「で、その強制転移って回数制限とかないの?」

ワタル「さ、さあ……その辺はご都合主義なんじゃ」

愛沢咲夜「そんで、ほんまにウチらを元の世界に返してくれるの?」

霊夢「その点は気にしないで。ここまで来たからには、ちゃんと返してあげるわよ」

霊夢「特にあんたはうちに大金を寄付してくれたから尚更大事に扱うわ!」

愛沢咲夜「は、はぁ……(そんなに大金やろか、あれで?)」

霊夢「そっちのチビはせっせと手伝いなさいよ。うちは時給安いから」

ワタル「くそっ……ファンタジー世界に来ても結局金かよ!」


愛沢咲夜「あれ、そういや伊澄さんはどこいったんや? また迷子かいな」

レミリア「『まだもう一仕事残しているから、私のことは心配しないでいい』と言って山の方角へ向かったわ」

愛沢咲夜「そうやの? ってうわさっきの吸血鬼!!」

レミリア「無知なる人間、無垢なる人間……まあこういうお酒の席だし」

レミリア「先刻のことは大目に見てあげるわ。私は誇り高き紅い悪魔なのだから」

ワタル「こいつ、いつもこんなこと言ってんの?」

十六夜咲夜「お嬢様のカリスマは異変発生時にこそ発揮されるのよ」

魔理沙「でも日光浴びればイチコロなんだぜ、こいつ」

レミリア「イチコロじゃないわよ、ちょっと肌が焦げるだけ。日傘をさせば平気」

ワタル「DI○より高性能なんだな……」

アリス「それで、今回の宴には何人くらい出席する予定なの?」

霊夢「そうねえ、まだ結構……萃(あつ)まってきそうだわ」

愛沢咲夜「けど、宴っていうからにはお酒の席やんな?」

愛沢咲夜「立食パーティーとかにはよく出とるけど……うちら未成年やし」

美鈴「まあまあ、無理に飲まなくてもいいんですよ」

十六夜咲夜「あら、来たの? 門の前であのまま寝ていても良かったのに」

美鈴「いやー咲夜さん、流石にそれじゃあ私の扱いひどすぎるじゃないですか……」

ワタル「まあそれ聞いて安心したよ」

レミリア「何言ってんの? あんたは飲むのよ」

ワタル「え……」

レミリア「嫌なら別にいいのよ? 代わりに私が飲んであげるわ――あんたの生き血をね」

ワタル「わ、……わかり……ました……の、のみます」

十六夜咲夜(あらあら、まだ根に持っているのね)

愛沢咲夜「頑張りやー自分、ええ飲みっぷり見せたりーな!」

霊夢「ちょっと魔理沙、白玉楼の庭師を呼んで来て頂戴」

魔理沙「何でだよ」

アリス「今回の話に冥界って一切関わってないじゃない。わざわざ呼ぶ必要があるの?」

霊夢「オチ担当ってことで一発芸でもやってもらおうと思って」

魔理沙「アリスの方こそ全然関係ないのになんでちゃっかり参加しているんだよ?」

アリス「失礼ね。私も関係していたのよ、魔法の森でのシーンが全カットされただけで」


13号「どうも、メカ執事人形13号です。今ではアリス嬢の忠実なる下僕です」

ワタル「え、何これ。人造人間?」

愛沢咲夜「またえらい懐かしいモンを……覚えとる人おるんか?」


アリス「魔法の森の中で見つけた人形よ。少し手を加えたらオート○ータ化したわ」

霊夢「そう。後でお焚き上げ供養してあげるから納屋にでも放り込んどいて」

霊夢(にしても遅いわねー、文)

魔理沙「おーい、何処行くんだ? 霊夢」

霊夢「ちょっと境内に出て――軽く素振りでもしてくるわ」



天の声「後編と言いつつ終わらなかったんで今回は中編が終了ということに

今度こそ、妖怪の山編(完結編)に続く」



――守矢神社――


天の声「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……」



早苗「危なかったですね。貴方、今本当なら腕一本喪ってましたよ?」

早苗「幸運なことに制服の袖が破れて四散する程度に留まったようですが」

ヒナギク「……まったくあなたみたいなノースリーブになっちゃったじゃないの」

ヒナギク「でも、そっちだってスカートの裾がちょっと破れてるわよ」

早苗「あら。……それじゃ、お互い様ですね」



文(まったく、実際現場に駆け付けてみれば……明らかに侵入者が絶賛神社破り中じゃないの)



ヒナギク「七閃(のような剣捌き)ッ!」

早苗「! 米粒状の連弾の軌道を読み切った上で俊敏に交わして被弾を回避ッ!」

早苗「からのー猛烈な連続斬り!」

早苗「一振り一振りの威力もさながら、こちらが斬撃を食らえば食らうほど蓄積するダメージがネズミ算的に増えてゆく!」

早苗「やるじゃないですか!」

文「はいはいお二人さん、事情は後でよく聞かせてもらうとして……とりあえずお遊びは中断してください」



ヒナギク「最初にあなたが繰り出した秘法『九字刺し』……あれをよく観察していたおかげで」

ヒナギク「回避スペースの活用方法や交差弾の不規則だけど規則的な動きを瞬時に見抜けるようになったわ」

早苗「むむ!」

ヒナギク「一見たじろいで避けどころがないと感じた弾幕の動きも、的確に把握することができれば逆に敵機(あなた)に不利に働くことになる!」



文「って聞いてないし……」

文「私はあまり好戦的ではありません。こういう火種はやはり平和的な解決が一番だと思うんですよ」



早苗「! 弾幕の嵐の中に見え隠れする僅かなスキマ……!」

ヒナギク「それよ。そのスキマがあなたに向けて一直線に道を開くその瞬間に……!」

ヒナギク「あなたにトドメの一撃を与えるわ!」



文「あまり派手なことをやられて……事が一大事になったりすると」

文「私も困るんですよねぇ……タテ社会で暮らす者としては」

文(まぁ、今回は危険な侵入者の立ち入りを許してしまったということで)

文(キチンと見張り役としての仕事を全うできなかった白狼天狗に責任をとってもらいますか)

文(トカゲのしっぽ切りならぬ犬のしっぽ切りってところで)

早苗「残念ですが、そんなスキマをあなたが見抜くその前に!」

早苗「私は新たなスペルカードを発動させてもらいます!!」

ヒナギク「いいわよ! そろそろ来ると思っていたわ!」


文「えーと、白熱しているところもうしわけないんですが」

文「いい加減戦闘を止めてもらえないと、いくら私と言えどもちょっと怒っちゃいますよ? 激怒プンプン丸ですよ?」

文「今から私が3つ数える間に、各自武器を手放して仲直りの握手でもしてくださいね」

文「3、2、1、……ゼーロ」


ヒナギク「ならばこちらは……今までに試してみたことはないけれど!」

早苗「神徳――『五穀豊穣ライスシャワー』」

ヒナギク「二刀流で応戦するわよッ!!」




文「あややや……すっかりバトル漫画っぽいラストバトルになっちゃってますね」

文「やはり、言葉だけで解決することは容易なことではありません。戦争がなくならないのもそれがゆえ」

文「仕方がありませんね――私が武力介入するとしましょう! この戦いを終わらせるために」

早苗「何だか楽しくなってきましたね! そう思いません?」

ヒナギク「楽しいってあなた……この戦いの意味を分かって言ってるの?」

早苗「勿論分かっていますよ。恋も弾幕もガチンコ勝負!」

早苗「とりあえず倒しちゃえばいいんですよ。そして、その後でお話すればいいんです!」

ヒナギク「変わってるわ、貴方。変わっているけれど……少しだけ」

ヒナギク「あなたの言いたいことも理解(わか)るような……そんな気がする」

早苗「“変わって”なんかないですよ。自分で自分を“変えた”んですから」

ヒナギク「自分で、変えた……?」

早苗「幻想郷(ここ)に来る前も来た後も、最初は神奈子様や諏訪子様の仰せの儘にやってきました」

早苗「けれども、今は違います。ちゃんと自分で考えて、自分のやることに意味を見出して」

早苗「目標に向かって日々精進している、……そんな感じ」

早苗「貴方、外から来た人でしょう? 私もおんなじですよ。外の世界からこの幻想郷にお引っ越してきたんです!」

ヒナギク「ええっ!?」


天の声「というような感じで

バトルを通して少年漫画っぽい友情が育まれつつあるような

そんな感じにある、その時!」



文「――『無双風神』」


ヒナギク「なっ!? 後ろから!」

早苗「危ない! 参拝客さん!!」






天の声「ド―――――――――ン!!」





文(……いきなりルナティックは少々やり過ぎでしたかね?)

文(でもこれでひとまずお二人も落ち着いて……)




??「「ダブル執事キ―――――ック!!!」」


文「な……!!」



虎鉄「ち、さすがに早いな! 完全に捉えたと思ったが間一髪のところで避けやがった」

ハヤテ「さすがは天狗さんですね……でも僕達もいろいろ鍛錬を積んできましたから」

ハヤテ「簡単には負けませんよッ!」



ヒナギク「!……その声は、ハヤテ君っ……!!」

早苗「新しい参拝客さんですか。今日は賑やかでいいですねー!」

ヒナギク「えっ!? 新しい参拝客って……あなたハヤテ君のこと……し、知らないの?」

早苗「はい? 今お目にかかったばかりですけど」

ヒナギク(あれ……私何だか……重大な勘違いをしていたんじゃ? でもどこから……)



ハヤテ「ヒナギクさん、お久しぶりです! ちょっと“虫の知らせ”を聞いて、妖怪の山に引き返して来たんですよ」

虎鉄「正確には、『制服姿に紅い髪、“ヒナ”と呼ばれる外来人が人探しをしていた』という話をだな」

ハヤテ「偶然通りかかった移動屋台のおかみさんにお聞きしましてね」

ヒナギク「……ふーん、そうだったのね」

文「ちょっと待ってくれません?」

文「貴方達、どうしてさっき清く正しく美しい新聞記者である私に攻撃を仕掛けたんです?」




ハヤテ「だってあなた、ヒナギクさんに背後からいきなり襲いかかってたじゃないですか!!」

ヒナギク「そういえば……奇襲を掛けられて危なかったわ。神社の巫女さんが助けてくれたからケガはないけれど」

虎鉄「そして、綾崎の敵はオレの敵でもある」



文「ちょっと待って下さい、誤解ですよ~」

神奈子「どこに誤解があるんだい? 早苗と参拝客に向かって背後から襲いかかったじゃないか」

早苗「あ、おかえりなさいませ神奈子様、それに諏訪子様も!」

諏訪子「私もこの目ではっきり見たよ。早苗に手を出したとなっちゃあ、こっちも黙っていられない」




文「だから誤解なんですってば~」




お空「あれー、そういや私はどうしてここに来たんだっけ?」

伊澄「おそらく……誰かを倒しにでも来たんじゃないですか?」

ヒナギク「伊澄さん!!」

ハヤテ「伊澄さん! やっぱり幻想郷のどっかで迷子になってたんですね!!」

伊澄「皆さん……無事で何よりでした」

伊澄「そして、どうやらあの天狗さんがラスボスのようね」



文「いやいやいやだから違いますよ! 誰か一部始終見てなかったんですか?」

こいし「あの天狗、ゲスでタチの悪いブン屋なのよ。私はずっと見ていたわ」

虎鉄「どうやら確定のようだな」

お空「こいし様がそういってらっしゃる。つまり貴方が諸悪の根源なのね」

伊澄「オシオキの時間です」

神奈子「守矢神社を荒らした犯人はまさかの鴉天狗に確定……っと」

諏訪子「さてさて……大天狗に代わって軽く教育(私刑)してあげようね」




文(あやややや……これはもう収集つきませんね)

文「助けてー、霊夢さーん!」





天の声「そして近くの物陰に潜みつつ

意気揚々としているもう1人の鴉天狗と

青白い顔をして佇むその部下の白狼天狗」



はたて(詳しい事情は飲み込めないけれど、これはきっといや絶対スクープよスクープ!!)

はたて(しかもこれは雰囲気的に文の大失態に違いないわ……!)

はたて(やった! 文より先にスクープ写真を撮った! たぶん文の弱みを握った!)

はたて(文に勝った! やったね、はたてちゃん!!)


椛(私があの人間の通行を許可したばっかりに……文様が……こんなことに……)

椛(せ、切腹の準備をしなければ……)


――博麗神社――


美鈴「あ、誰かと思ったら河童職人さんね」

にとり「どーもどーも。それより霊夢さんが、何か境内(そっち)で神主打法やってたけど」

十六夜咲夜「どうやらこれから一仕事、片をつけるようね」

にとり「ふーん、何かあったの?」

ワタル「見ろよ、あの山の上……何かスゲーことになってるだろ」

にとり「山……ひゅいっ!? 山ってうちの山じゃん!」

レミリア「複数の弾幕やら見たことも無い閃光やら何やらが飛び交っているけれど、原住民と守矢との間で内戦でも起こったの?」

にとり「さ、さあ……私は知らないなぁ」

愛沢咲夜「自分もあの山に住んどるんやんな?」

にとり「まー、あの近くの水辺に……ってここにも人間がいるっ!? こいつらももしかして外来人?」

十六夜咲夜「ここにもって……他にも知っているの?」

にとり「いやーその、かくしかでさ。鴉天狗(はたて)さんと他の黒服の2人は山の方に引き返しちゃって」

ワタル「……その2人ってのはどんな感じの?」

にとり「ボンビーなツラした髪の白いヤツと、何かそいつを捕食しようとしていたオスの人間」

ワタル「ああ……何となく分かった。たぶん知り合いだわそれ」





天の声「ギュォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」





十六夜咲夜「あらあら、無数の弾幕が上空で飛び交って……段々一固まりの球体になっていくわね」

ワタル「何つーか元○玉みたいな……!」

愛沢咲夜「何なんやろ……中でメルトダウンでも起こってそうな感じやな」

レミリア「実際起こっていそうね」

にとり「ちょっと勘弁してくれよ!! あれが弾けて山中に飛び火したら……」

にとり「私の研究所が被害を受けるかもしれないじゃん!!」

美鈴「山全体の心配をしてもいいんじゃないですか?」

十六夜咲夜「でも大丈夫ね、もうそろそろ完結してもいい時間よ」

ワタル「確かにバトル漫画の場合、最後にああいう巨大なエネルギー体が発生して」

ワタル「それを皆で力を合わせてふっとばしてめでたしめでたし……ってパターン多いもんな」

愛沢咲夜「そんなん多い? むしろコレって普通に爆発オチやないの?」

にとり「それは困るから! 冗談抜きで笑い話で済まないって!!」

美鈴「やっぱり誰かが犠牲になって、あの元○玉を吹き飛ばすしかないんでしょうか。ギャグみたいですが……」


レミリア「それでいいんじゃない、もともと最初から滑稽話(ギャグ)だったでしょう?」

レミリア「ほら、境内に目を移しなさいな。最後の最後の局面で――真打ち登場よ」


――博麗神社・境内――


13号「では、逝って参ります……アリスお嬢様」

アリス「ちょっと待ってよ13号……何で貴方が犠牲になる必要があるの?」


霊夢「……」

魔理沙「……」


13号「……何故でしょうか。いいえ、答えはもう出ているんです」

13号「僕は原作において、自然に登場機会を失って……皆から忘れ去られ、こうして幻想郷入りするにいたりました」

13号「既に壊れてしまっていた僕に、貴方はあろうことか、“魂”を吹き込んでくれたんです」

アリス「魂って……違うわよそんなの。私は貴方を修理して、私の命令通りに動く自律人形にした。それだけのことなのよ?」

13号「いいえ、それだけのことじゃなかったんですよ」

13号「僕は元の世界においては、最後まで人間の感情――嫉妬心(ジェラシー)――を理解することはできなかった」

13号「なぜなら僕は“人間のような感情”をインプットされた、単なる人形(ロボット)だったから」

13号「ですが……アリスお嬢様に操ってもらうことによって、僕は……」

13号「とうとう“人間としての感情”を会得することができたんです」

アリス「……人間としての感情?」

13号「はい、僕は今……嫉妬(ジェラシー)を感じているんですよ。そこにいる黄色い魔法使いの方に」

アリス「それって……」

13号「あの方が……アリスお嬢様にとって、とても大切な存在(ひと)であることに……僕は嫉妬しているんです」


魔理沙「……」

霊夢「……」


13号「人の形をした物には心が宿る」

13号「どうやら僕は、魔法の森での経験を通じて……ただの“人形”から“異形”の物に変わってしまったらしい」

アリス「そんなことって……」


霊夢「アリス、もう分かったんじゃない? あんたがただの操り人形だと思っていた“物”は」

霊夢「あんたの気のつかないうちに、“物の怪”に変化してしまっていたのよ」

魔理沙「……だからさ。そいつにはもう帰る場所(元の世界)がないんだ」

アリス「そんな……! 別に、無理に元の世界に帰る必要なんてないんじゃないの?」

アリス「妖怪になってしまったのならば……このまま、幻想郷に残れば」


13号「申し訳ありませんが、僕はもう、逝かなければなりません」

13号「僕に感情というものを与えてくれたアリスお嬢様のために、そして幻想郷のためにも」

13号「僕が犠牲となって、あの元○玉を吹き飛ばし……この“異変”を、解決してまいります」




13号「さようなら、お嬢様――魔理沙さんとお幸せに」






天の声「カキーン」





――――

霊夢「やれやれ。夢想封印を応用してバット化してふっ飛ばしたけど、どうやら上手くいったみたいね」

霊夢「あの人形、元○玉と一緒に無事に成層圏を出たみたいよ」

魔理沙「もうほんと滅茶苦茶で投げやりな解決方法だったな」

霊夢「きっとネタが尽きたのよ……仕方ないでしょ」

霊夢「別にあのまま守矢神社が焼失しても、私は一向に構わなかったけど」

霊夢「万が一うちの神社まで飛び火したらこっちが困るもの。ついでに人形供養もできたから一石二鳥だわ」

魔理沙「お前、本当にいい性格してんな……」


アリス「バカっ……13号のバカ……」

魔理沙「アリスも迫真の演技だったぜ……ってもう泣かなくてもいいだろ」

魔理沙「ところで、何で最後に私の名前が出て来たんだ?」

――――

レミリア「くっさい芝居だったわね」

ワタル「え、今の芝居だったの?」

十六夜咲夜「どうやら今の人形の殉死によって、山の上のドンパチも収まってみたいね」

愛沢咲夜「あ、ほんまや……すっかり山際が暗くなってもうた」

にとり「えー、本当に今のが効いたの?」

美鈴「どうなんでしょうね、お嬢様」

レミリア「……まあ、そういうことなんじゃないの」

ワタル「何か格好良かったぜ……人造人間」

愛沢咲夜「アニメ1期のラストとまんま同じだった様な気もするけどなー……」

美鈴「月まで飛んで行っちゃいましたねー」

十六夜咲夜「やめなさい……変なフラグを立てるのは」


レミリア(実際のところは、事態を見かねた山の元首領(ボス)が……イザコザを仲介しに行ったんでしょうね)

レミリア(何せあの鬼は、事の一部始終をずっとどこかから眺めていたんでしょうし)

レミリア(さっさと、脇役達(エキストラ)を萃めてこないと、大好きな酒宴を始めることができないのだから)



天の声「すべてを察していた紅魔の主だが

あえてそれを口に出すことはなかった」



――博麗神社の参道――



天の声「そして、それから暫くの後」



ハヤテ「いやー……ホント、一時はどうなることかと思いましたよ……」

早苗「ごめんなさいね……私がカン違いをしてしまったばっかりに」

ヒナギク「ううん、早苗さんは悪くはないわ……全部私が言葉足らずだったから……」

虎鉄「……ところで、その勘違というのは一体?」

ヒナギク「……」

早苗「いやーそれは……」


??「話したくはないみたいよ。無理に追及しなくてもいいんじゃない?」

ハヤテ「あ! その声は!!」

ハヤテ「さとりさん!!」


さとり「こんばんは……また会ったわね」

さとり「今度は日の当たる地上で、だけれど。いいえ、もう深更だから……暗いのは地底と同じかしら」


ヒナギク「えっと、……知り合いなの?」

虎鉄「地底の妖怪か? 私は会った覚えはないが」

早苗「貴方も宴会に? 珍しいですねぇ……そもそも誘われること自体」


さとり「ええ。何の計らいなのかは知らないけれど……今日は珍しく地霊殿(わたしたち)も呼ばれたの」


早苗「本当にどういった風の吹きまわしなのかしら」

ハヤテ「……でも、もう一度さとりさんに会うことができて、僕ホントに嬉しいですよ」

さとり「……」

ハヤテ「さとりさんが親切に道案内をしてくれなかったら……僕、本当にどうなっていたか」



早苗「みなさーん、博麗神社の鳥居が見えてきましたよー」

虎鉄「誰かが待っているようだが、あれが博麗の巫女とやらなのか?」

ヒナギク「ちょっとハヤテ君! 妖怪や神様の皆さん、もう集まって待っているそうだし」

早苗「そうですよ! 積もる話はまた後で……EXでやってくださいね」



ハヤテ「はーい、分かりました。それじゃ、僕らも行きましょうか」

さとり「……ええ、そうね」

天の声「そして」




霊夢「いらっしゃーい」


霊夢「遠路はるばる良く来たわね」


霊夢「みんな待っているわよ。歓待してあげるからお入りなさいな」




霊夢「ついでに、拝観料(おさいせん)も入れくれたら。なおのこと嬉しいわ」













                                   (本編・完)



・以上で本編は終了となります

・いろいろと突っ込みどころはあったとは思いますが……まあギャグなので大目に見てもらえたら……

・というか最後まで読んでくれた人がいましたら、本当にありがとうございました。






・残るEXでは……博麗神社→お察しの通り宴会です

・それから……エピローグ→①現実世界で出番の無かった人たちの一部救済、②白玉楼の庭師がキレのいい一人前なオチをつけてくれるハズ



――博麗神社――



天の声「がや……がや……」



文「はぁー、まったく……ひどい目に会いましたよ」

文「危うく明日の一面で『集団レ○プ!生贄と化した美人記者』なーんてタイトルで被害者デビューするところでした」

文「いったいどう責任とってくれるんですか?」


ハヤテ「え……僕の責任なんですか? ていうか女の子がそういう言葉を使うのは良くないと思うんですが……」

はたて「文は口汚くて歯に衣着せないタイプだからね」


文「はい? あなた人のことを言えますか?」

文「第一私が絶対絶命のピンチに陥ったというのに……なんで貴方は隠れて写真なんか撮ってたんです?」

文「普通助けに入るでしょ?」


はたて「報道関係者(マスコミ)として当然のことでしょ。火事が起きたら消すより前にまず現場の写真を撮らなきゃ!」

椛「ま、まあまあお二人とも……あまりこういう場で言い争いは……」

ハヤテ「そうですよ……もう少しなごやかに。あ、この瓶空っぽになったんで僕代わりをとってきますね」

萃香「おうおう頼むよ。気がきくねぇ」

萃香「でもさ、久々にいい運動ができて案外楽しかったんじゃないの」

文「いやいや……本当に一時はどうなることかと思ったんですよ」

文「貴方もずっと見ていたんならもう少し早く仲裁に来てくれれば……」

萃香「ほう? あんた、私が妖怪の山に行ったら天狗達が慌てるからダメだって言ってたじゃないか」

文「まあ、確かにそれはそうですが……今回はそれとこれとは話が別といいますか……」


はたて「それにしても……結局貴方が責任を取らされることにならなくてよかったわね、椛」

椛「は、はい」

――――

ワタル「っぷ・・・・伊澄ぃ!! オレ、お前のことが好きなんだあっ!!!」

レミリア「あらそうなの。言っておくけれど私はそのイスミとか言うのじゃないわよ?」


ワタル「いや・・・でも、やっぱりサキも! お前どこも行くなよぉ? 行くんじゃねーぞ!!!」

十六夜咲夜「あら、二股なの? 罪な子ねぇ」


美鈴「すっかりデキちゃってますねー、彼」

美鈴「でも当の伊澄さんっていうのはここにいないんでしょう? 私は面識もないですけど」

愛沢咲夜「あははは。でもまあ……かえっておらん方が良かったような気もするわー」

美鈴「どうして?」

愛沢咲夜「いやー原作ではぼちぼち決着が……」


ワタル「おいナギぃ! いい加減この前貸したキル○キルのBD返せよなぁー!!」

レミリア「今度は誰の話なのよ……」

ワタル「それとなぁ・・・・咲夜ぁ・・・・!」


十六夜咲夜「あら?」

美鈴「おやおや?」

愛沢咲夜「……何やねん」


ワタル「何でもねーよぉー!!!」


レミリア「……だそうよ」

十六夜咲夜「酔っていてもヘタレなのね」

美鈴「残念でしたねー」

愛沢咲夜「からかわんといてよー美鈴さん! コイツはこーいうやつやから、見ていておもろいねん」


ハヤテ「咲夜さん達、何だか盛り上がってるようですね」

愛沢咲夜「おー、借金執事やないか! ホンマ自分、よく生き残ったな」

ハヤテ「ええ、まあ……何とか」

美鈴「おや? その手に持っている真っ赤な飲み物は?」

ハヤテ「ああ、こちらですか。レミリアお嬢さまに是非味わっていただきたいと思いまして、お持ちしました」

レミリア「何、あんたの鮮血? 私はB型が好みよ」

ハヤテ「はは。まあお召し上がりになったら分かりますよ」

レミリア「そうなの? ……、……うぇ、何よこれ……トマトジュース?」

十六夜咲夜「ああ、ブラッディー・マリーね」

ハヤテ「その通りです」

愛沢咲夜「何なんそれ、カクテルかいな?」

十六夜咲夜「ベースはウォッカ。別名“血塗れのメアリー”なんて呼ばれているわ」

レミリア「でもまあ、咲夜が淹れる“珍しい”紅茶よりは幾分マシだわ」

ハヤテ「……お褒めに預かり光栄です」

美鈴「咲夜さんって福寿草のお茶とか普通に淹れますもんね」

愛沢咲夜「福寿草って確か毒あるんやないの?」

美鈴「毒草も上手く扱えば良薬になるんですよ」

――――

早苗「折角再会できたというのに、一緒にお話しないでいいんですか?」

ヒナギク「うん、いいのよ。どうせまた帰ったら話す機会はあるだろうし」

ヒナギク「それに彼、忙しそうだから……」

早苗「執事さんって皆さん優秀なんですね。あっちの同性愛者の人も、テキパキ雑用をこなしてますし」

ヒナギク「うーん、あっちの人はそういうのじゃなくてハヤテ君にだけ特別というか……」


ハヤテ「え、僕のことがどうかしましたか?」


ヒナギク「わっ、ハヤテ君! 急に後ろから声かけないでよ、びっくりするじゃない!!」

ハヤテ「あ、すいませんヒナギクさん……ちゃんと気遣いできなくて……」

早苗「いえいえ、ハヤテさんは充分お気遣いできてますよ」

早苗「今もあんまりお酒の飲めない私達のために、烏龍茶を用意して持ってきてくれたんですよね?」

ヒナギク「え、そうだったの?」

ハヤテ「あ、はい……そうですね」

早苗「私、元々お酒は強くなくて……幻想郷(ここ)の人達は酒豪な方が多いんですけどねー」

ヒナギク「そういえば早苗さんって、年齢的には私達と同じ高校生なのよね?」

早苗「ええ、そうですよ(幻想郷に来た頃は)」


ハヤテ「早苗さんって、何だか同年代とは思えないくらい大人びて見えて……凄くキレイですねー」

神奈子「おやおや、向こうの席では微妙に不穏な空気が流れているねぇ」

諏訪子「青い春ってやつだね」


虎鉄「失礼します、どうぞ」


神奈子「おう、そっちも気が利くじゃないかい」

諏訪子「私の盃にもお願いするよ」


にとり「あんたもまともに給仕ができたんだね。タダの野獣じゃなかったんだ」

虎鉄「当然だろう、私は野獣で有る前に執事なんだからな」

虎鉄「無論、綾崎の前では執事で有る前にひとりの婚約者だが」

にとり「やっぱり飢えた狼だね」


諏訪子「それにしても……ほんのちょっとした誤解であんなに大事になるとはね」

神奈子「そうだね。まったくとんだ人騒がせだったよ」


にとり「でも今回の一件って」

にとり「勝手に余所者が山に入る許可を出した上に、危険な制御棒を連れて来た八坂様に一番の非が」


神奈子「おーい、ちょっと酒の肴にカッパの味噌漬けでも用意してくれないかな?」

虎鉄「はい、仰せのままに」

にとり「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

諏訪子「冗談に決まってるじゃないの」

――――

魔理沙「なーアリス、さっきの……」

アリス「んもう、別にいいでしょ。もう終わったことなんだから」

魔理沙「あ、そういや庭師を呼べって霊夢が言ってたな」

魔理沙「アリスー、一緒に行くか?」

アリス「何で私まで……1人で行ってきなさいよ」




――――

さとり「……」

お燐「さとり様ー、1人酒に耽ってないで他のみなさんともお話しましょうよ」

お燐「あたいが誰か呼んできましょうか?」

さとり「別にいいわ……もともとそんなに乗り気だったわけじゃないのよ」

さとり「部屋でゆっくり小説でも読んでいた方が……むしろ良かったかも知れないわ」


ハヤテ「それでも、来たんでしょう?」

さとり「……」


お燐「おやぁー、借金執事のおにいさん」

お燐「……向こうの方の火種はちゃんと消し止められたのかい?」

ハヤテ「はは、いやまあ……何とか」

ハヤテ「そう言えば……お空さんは?」

お燐「地下センターでお仕事中だよ。あれはキチンと管理していないと……取り返しのつかないことになるからねぇ」

ハヤテ「そうなんですか……それは残念でしたね」


ハヤテ「あ、さとりさん。こちらをどうぞ、僕特製の健康志向な野菜ジュースですよ」

さとり「……、どうして野菜ジュースなの」

さとり「『妖○ウォッチに出てくるさとりちゃんの好物が野菜だから』……?」

さとり「相変わらず意味が分からないけれど、これが貴方らしい考え方なのかもね」

ハヤテ「ははは……」

さとり「あ、そうだ」

ハヤテ「? 何ですか」

さとり「貴方、地霊殿(うち)に忘れ物をしていったのよ」

ハヤテ「え……忘れ物ですか? えーと、一体何を?」

さとり「それは……」


??「はい、これは貴方の忘れ物だったのね」


さとり(……こいし)

ハヤテ「え……貴方は……って、それ僕のサイフ!」

こいし「そうよ、貴方のおサイフよ」

ハヤテ「ありがとうございます……わざわざ届けてくれて……」

ハヤテ「ところであなたは……」

さとり「私の妹の、こいしよ」

さとり「ほら。貴方が地霊殿を出てここに辿り着くまでに……ずっと貴方のことを見守ってくれていたじゃない?」

ハヤテ「……」


天の声「普段は天然ジゴロのハヤテも

このときばかりは、何となく察しがついたという」

ハヤテ「……そうでしたね。今まで見守ってくれて……ありがとうございました」

こいし「うん」

こいし「あれー。でも、どうして私……貴方のことを覚えていたんだろ?」

こいし「……あ、そうか」

こいし「貴方に伝えたいことがあったんだった」

ハヤテ「僕に……伝えたいこと?」

さとり「……」

こいし「大切なひとのこと――ちゃんと守ってあげるのよ」

ハヤテ「……」

こいし「私も――大切なお姉ちゃんのこと、ちゃんと見守ってあげるから」

さとり「……」



ハヤテ「はい――わかりました!」



天の声「たったそれだけのことを言い残し

次の瞬間にはどこへともなく姿を消してしまったが

こころを閉ざした覚妖怪(いもうと)のたったそれだけの言葉は

ハヤテのこころにも、たったひとりの姉のこころにも深い余韻を残していった」


――――

霊夢「……」

萃香「どうしたの、霊夢。中で一緒に呑まないのかい?」

萃香「それとも、何か感傷的な気分になっているの?」

霊夢「別に」

霊夢「私はいつも、なんにも考えてなんかいないわ」

霊夢「何でも勘に頼ってまっすぐに一直線に動いていたら」

霊夢「いい方に向かって事が運んでいた、それだけよ……無意識のうちにね」

萃香「……そういうのを感情が豊かだって言うんじゃないの」


早苗「霊夢さーん、みんな盛り上がってますよー。霊夢さんも一緒に飲みましょう!」


霊夢「だから、あんたはお酒が苦手なんでしょうが」

萃香「いいのさいいのさ、飲めようが飲めまいが」

萃香「今、ここでこうやって、時間を共有していること……それだけで十分なのさ」




天の声「今ここで行われている宴会は誰にとっても一生に一度の体験

それはつまり何度宴会を繰り返そうとも

まったく同じ宴会は二度と繰り返されないということ 

人生でたった一度の宴会を終えたハヤテたちは

たった一度の経験を終え

二度と再び来ることはないであろう

幻想郷を後にした――」                     

                                 (EX・博麗神社 終)




【エピローグ】


――現実世界――


ハヤテ「ただいま帰りました、お嬢様! 僕がいない間、無事に……」


ナギ「ハーヤーテー……!」

マリア「ハヤテくーん……?」

アテネ「全部……見ていたのよ……?」

歩「……いったい何人の女の子と懇ろになったのかな? かな?」


ハヤテ「え……何で皆さん怖い顔をしてるんですか?」

ハヤテ「ていうか、アーたんが普通に元に戻ってるんですが……一体どういう時間軸なんでしょう?」


アテネ「この際細かいことは気にしないでいいでしょう、ハヤテ」

ナギ「ヒロインである私の出番がまったくないとは一体どういうことなのだ!?」

歩「ヒナさんや生徒会の人達には出番があったのに……どうして私はハブられちゃったのかな?」

ハヤテ「いやー、それは……どうしてでしょう?」

ハヤテ「ていうか僕、何度も死にそうになって……もうホント危険の連続って感じで!」

ハヤテ「全然女の子と懇ろになったことなんか……!」


マリア「証拠はあがっているんですよ? ハヤテ君が持ち帰った物が何よりの証拠です」



ハヤテ「え!? 僕何か持ち帰ってましたか!?」

ナギ「まずはこの“命蓮寺バイト募集”とかいうチラシの裏にこんなメッセージが残っているのだ」

ナギ「『貴方の一身を投げ打つような覚悟を持った行動には心を揺さぶられるものがありました』」

ナギ「『煩悩に悩まされた時には、是非命蓮寺の門戸を叩いてくださいな』」

ナギ「『愉快な仲間達が貴方をお待ちしております 雲居一輪』」


ハヤテ「え、それは単なるバイトの勧誘文句で別に深い意味では……」


アテネ「次はこちら。“花果子念報”という得体の知れない写真集の間に挟んであった1枚のメモ書き」

アテネ「『私の作った新聞のことを評価してくれてありがとう』」

アテネ「『継続購読してもらえないのは残念だけれど、貴方に会えて本当によかったわ!』」

アテネ「『姫海棠はたてより・ハートマーク』」


ハヤテ「いや……それも単に感謝されてるだけで深い意味では……」

ハヤテ「というよりハートマークなんてついてないでしょ!?」

歩「そして……この……“文文。新聞”っていう新聞の購読勧誘のチラシの裏に……」

歩「『毎度お馴染みの射命丸です』

歩「『寂れた神社の境内で貴方に突然襲われたことは一生忘れません』

歩「『責任を取って私の新聞を取ってください 射命丸文』……」

歩「どういうことなのハヤテくん!?」


ハヤテ「ちょ!? 射命丸さん、何誤解を招くような表現をしてくれちゃってるんですか!?」


マリア「そして、決定的な証拠がこれです……ハヤテ君のサイフの中に入っていた小さな石ころ」

マリア「この小石から……可愛らしい女の子のニオイが漂っていますわ!!」

ハヤテ「嘘でしょー!!?」



天の声「この後の展開は

まあ皆さんのご想像にお任せします」



――幻想郷(白玉楼)――


伊澄「……綺麗な桜」

幽々子「綺麗な桜……貴方には見えるの?」

幽々子「西行妖(この桜)が満開に花を咲かせている姿が」

伊澄「……いいえ、この目ではっきりと見ることはできませんが」

伊澄「それでも、今この目に確かに映っているわ」

伊澄「あなたはもう、気付いていらっしゃると思うけれど」

幽々子「さあねぇ……どうなのかしら」



妖夢「あのー……幽々子様。その隣にいるのは何者なので」

幽々子「……さてと、そろそろ妖夢がオチをつけてくれる頃合いよね。ねぇ、紫」

紫「さてさて、一体どんなオチを用意してくれたのかしら?」

伊澄「わくわく……」


妖夢「ええっ……どうして紫様まで現れて?」

神父「実は私もいるのだがな」

妖夢「何奴っ!?」

神父「>>9でさりげなく言及されていた神父の姿の亡霊だが何か?」

妖夢「ひっ!?」

神父「あれは漆黒の闇に包まれた巨大な地下迷宮の奥深く……」

神父「私は自分で作ったトラップにかかって毒矢で頭部を貫かれ……」

妖夢「やめてよー! 私そういうの苦手なんだからー……!!」

伊澄「こんなところにいるのに……この人幽霊が苦手なのね」

幽々子「そうなのよ。面白いでしょ?」

紫「幽霊と亡霊とは、正確には違うものなのだけれど、ね」


妖夢「幽々子様、コレ斬っていいですか?」

神父「コレとは失礼だろう、君」


幽々子「それより妖夢、早くオチをつけて頂戴」

紫「そうよ。私もそろそろ冬眠したい気分なのよね」

伊澄「私もそろそろ、お暇したいので」


妖夢「え……」

妖夢「えっと……」

妖夢「その……」

幽々子「……」

紫「……」

伊澄「……」

神父「……」





妖夢「き、斬れぬものなど――あんまり無い!!」





伊澄「さて、それでは失礼しますね」

紫「またね、幽々子。最後の仕事を片付けてくるから――」

幽々子「ごきげんよう」



妖夢「……」

神父「オリジナリティのない決め台詞でその場をやり過ごそうとする」

神父「……そんなだから君はいつまでも半人前なのだ」

妖夢「ほっといてよ!!」

紫「そちらの神父さんは……結局どうするつもりなの?」

伊澄「ご心配なく。私が責任を持って“成仏させました”から」

紫「……」

紫「……ああ、なるほどね」


神父「え?」



天の声「シュルルルルンというような効果音……以下略」



幽々子「いっちゃったねー、妖夢。それと神父さん」

神父「え? なんで? 私も一緒に返してくれるんじゃ?」

妖夢「……ああっ!!」

妖夢「これが……オチなんですね?」

妖夢「閻魔の裁判を終え、成仏又は転生が決まった霊が……それを待つ間過ごす場である冥界」

妖夢「ここに、この亡霊神父を置き去りにするということが……」

妖夢「さっきの人が言っていた“成仏させた”という発言の真意だったんですね!?」

幽々子「ぴんぽーん、大正解~」


神父「私は認めんぞ! そんな長ったらしく説明しないと分からないオチなんて断じて認めん!!」


幽々子「まあまあ神父さん」

幽々子「枯れ木も山のにぎわいっていいますし……」

幽々子「お互い、長い“余生”をゆっくりと過ごしませんか?」

神父「……」

妖夢「……」





神父「嫌だぁぁぁあああああああああああああっ!!」

神父「私はメイドさんに対する未練が残っているんだぁぁぁあああああっ!!!」

妖夢「だったら紅魔館にでも行ってしまえぇぇぇえええええええっ!!!!」




天の声「こうして無事にオチのついた

ハヤテと他数名のエキセントリックな冒険は……曲がりなりにも綺麗に幕を閉じたのである」







                                     (おしまい)

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