大和ゆら「ストライクウィッチーズ……」 (45)

坂本「うむ。正式名称は第501統合航空戦闘団。世界でも指折りのウィッチが集まった組織だ」

ゆら「どうしてスカウトなんか……私、ウィッチなんて目指してません」

坂本「実は今、我々501はある危機に直面している。『不和』という重大な危機にな」

ゆら「……それだけですか?」

坂本「それだけと言うが、当事者の私に言わせれば今の501は空中分解も目前なんだぞ」

坂本「情けない話だが、もう私たちには手の打ちようがなくて、ここらで新しい風を取り入れようと隊長が判断したんだ」

ゆら「……そういうことなら、多分力になれません。私、人付き合いって苦手で」

坂本「そのようだな」

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ゆら「知ってたんですか? なら、私に用なんて――」

坂本「いや、待ってくれ。君をスカウトに来たのはもうひとつ目的があって……私にとってはこちらが本命なんだが」

坂本「正直に話そう。私は、ウィッチを育てたいんだ。これからの扶桑を担うウィッチを」

ゆら「どういうことです?」

坂本「かつて、この扶桑はネウロイに侵攻されかけた。そのときは辛くも退けたが」

坂本「私はもうウィッチとして先が見えている。次にネウロイが現れたとき、私は戦えないかもしれない」

坂本「だから、君たちに託したい。扶桑を、ひいては人類の未来を守るために、私の知る限りの技術と知識を受け継いでほしい」

ゆら「……」

坂本「もちろん、戦う理由はそれぞれだがな。名誉のため、ネウロイを滅ぼすため、給金のため、それから……家族や友人のためとか」

ゆら「私、友達いないんです」

坂本「……と、とにかくだ。君わこのまま見逃すのは、あまりに惜しい」

坂本「私に着いてこないか、大和」

ゆら「……どうして私なんですか? 坂本さんだって、今まで一人も後輩を育ててこなかったわけじゃないですよね?」

坂本「ああ。しかし彼女たちは皆私の下を離れて、別な部隊に配属されてしまった」

坂本「その点ストライクウィッチーズなら、新人でも異動の心配がない。1から10まで余すとこなく、きっちり教え込めるわけだ」

坂本「それに……」

ゆら「?」

坂本「自分では気づいていないようだが、君にはウィッチとしての才能がある」

ゆら「そんな出任せ……」

坂本「悪いが、学校の成績や生活態度を担任を通じて調べさせてもらった」

ゆら「……あまりいい気分はしませんね」

坂本「申し訳ない。しかし収穫はあったぞ。まず――」

ゆら「あの」

坂本「うん?」

ゆら「もう、勘弁してもらえませんか。私はウィッチになるつもりなんて、ありませんから」

坂本「どうしてもか?」

ゆら「……」

坂本「そうか……分かった。ただ、もうひとり、私が目星を付けている候補がいる。彼女と話をしてくれないか」

ゆら「え」

坂本「名は宮藤芳佳。君のひとつ年下の学生だ」

ゆら(やだな……知らない人と話すの、苦手なのに)

トントン

ゆら「はっ、はい!」

「宮藤です。坂本さんに言われて……」

ゆら「ど、どうぞ」

スラッ

芳佳「はじめまして。宮藤芳佳です」

ゆら「や、大和ゆらです。どうも」ペコ

芳佳「えっと……」

ゆら「……」

芳佳(気まずい……)

芳佳「あっ、そうだ。大和さんも、ウィッチの候補なんですよね?」

ゆら「そう、だよ」

芳佳「じゃあ、坂本さんと一緒に欧州に……」

ゆら「……私は行かない。そう伝えたんだけど」

芳佳「え、そうなんですか」

ゆら「うん。てことは、宮藤さんは……」

芳佳「えと……私も、ウィッチになるつもりはないんです。今のところは」

芳佳「ただ、私のお父さん……亡くなったはずのお父さんから、手紙が届いたんです」

ゆら「え、何それは」

芳佳「その手紙と一緒に送られてきた写真には、ちょっと昔の坂本さんがお父さんと並んで写っていたんです」

芳佳「坂本さんは、お父さんの生死は分からないってお話ししてましたけど……」

芳佳「とにかく今何が起きているのか確かめたくて、とりあえず坂本さんと一緒に欧州に行くことにしました」

ゆら「そっか……」

ゆら「その後は?」

芳佳「帰ってきて勉強を続けます。お医者様になるのが夢なんです」

ゆら「……すごいね、宮藤さんは」

芳佳「大和さんは、どうしてウィッチになりたくないんですか?」

ゆら「ん……まあ、いろいろね」

芳佳「……」

芳佳「大和さん」

ゆら「な、何」

芳佳「私と一緒に、欧州、行ってくれませんか?」

ゆら「ええっ!?」

ゆら「どうしてそうなるの」

芳佳「その……正直私一人だと不安で、見知った人がいてくれると心強いっていうか……」

ゆら「……宮藤さんはしっかりしてそうだし、坂本さんだっているんだから」

ゆら「私なんかいなくたって、平気だよ」

芳佳「……わかりました。すみません、変なことお願いして」

ゆら「ううん」

ゆら(私なんかいなくたって……)

―数時間後―

ゆら(……あ、ウィッチだ。横須賀から飛んで来たのかな)

ゆら(カッコいいなぁ。私とは大違いだ)

ゆら(いつか見た映画、『扶桑海の閃光』……周りのみんなはあれに触発されて、自分もウィッチになりたいって騒いでたけど)

ゆら(私は逆だった。あんなに勇敢で、綺麗で、強くて、誰からも愛されるウィッチなんて、私じゃなれっこないって分かったんだ)

ゆら(私みたいなのに限って魔力が発現したと思ったら、今度はみんなに疎まれて友達もなくしちゃうし)

ゆら(どうしたらいいんだろう)

ウウウウウウウーーーーウウウウン……

ゆら「っ!」

ゆら(このサイレン、空襲警報!)

ゆら「まさか、そんな」ダッ

バキバキバキ…

ゆら「――ネウロイ!」

ゆら「あんな近くに……ど、どうしよう。逃げなきゃ……」

ビッ

ドドドドドド

ゆら「きゃあああ!」

ゆら「っ……はぁ、はぁ……ま、まだ生きてる……」

ゆら「ウィッチは、ウィッチはまだ来てないの? さっき飛んでたのに……でも、丸腰だったのかな……」

ゆら「……あれ、ちょっと待ってよ。あのネウロイの進行方向には――」

ゆら「学校が……」

ゆら「っ……」

ダッ

ゆら(逃げよう……!)

ゆら(ストライカーも武器も無い私が戦えるわけないし、みんなきっと避難してるよ、うん……)

ゆら(ここから一番近い防空壕は……あっちだ)


――


ゆら(……まだ暴れてる。ウィッチは来てくれないの?)

「大和さん!」

ゆら「み、宮藤さん!?」

芳佳「はぁ、はぁ……」

ゆら「ど、どうしたの、そんなに息切らして……」

>>3
×君わこのまま見逃すには
○君をこのまま見逃すのは

寝落ちしたせいで変なところで区切れて申し訳ない

ゆらも天才ではあるし対ネウロイでキリングマシーンになれたら民衆からは普通に感謝されそう
仲間からは仲間顧みないで駆逐する様子からまるで死神ねとか言われてそう

>>21
ろくに運動してなかっただろうに
C3部入ってすぐカリラとかそのらに付いていけるってすごいよな

芳佳「ごめんなさい、大和さん! 私、行きます! 皆を守るために!」

ゆら「……」

ゆら「なにも出来ない私が、誰かを助けるためには」

ゆら「私と、同じ……」

ゆら「……だったら」

ゆら「だったら、私だって!」

ゆら「宮藤さん! 私も行くよ! 何が出来るかわからないけど、私にも手伝わせて!」

芳佳「え……」

ゆら「あれ……もしかして、邪魔かな……?」

芳佳「いえ、そうじゃなくて、いいんですか? 壕までもうちょっとなのに」

ゆら「宮藤さん一人だけ行かせられないよ。私でも囮くらいにはなるから」

芳佳「囮って……分かりました。お願いします! 急ぎましょう!」

ゆら「うん!」

芳佳「はぁはぁ……」

ゆら「! 宮藤さん、あそこに!」

「あぅぅ……」

芳佳「あれ……みっちゃん!?」

ゆら「知り合いなの?」

芳佳「友達です! みっちゃ……」

ゆら「だめ! 今出ていっても、ネウロイのいい的だよ」

芳佳「じゃあどうすれば」

ゆら「……私が隙を作る。その間に宮藤さんは、あの子を安全な場所に連れていって、手当してあげて」

芳佳「隙って……ど、どこ行くんですか?」

ゆら「ネウロイの正面に迂回して誘導する。十分に距離がとれたらあの子を治療して」

芳佳「……気をつけて下さい。大和さんまで怪我したら、元も子もないですからね」

ゆら「大丈夫だよ、大丈夫……うん」

ガサガサ

コツン

ネウロイ『!』

ゆら「こっちだ、ネウロイ!」

ネウロイ『――』キュウウウン

ビッ

ゆら「っ!」

ドォン

ゆら(あ、危なかった……ビームが直撃した木が蒸発してる。あんなのがかすりでもしたら……)

ゆら(……た、立ち止まるな私! 怖がるのは後でいい。今は、あの子からネウロイを引き離す!)

ゆら「着いてこい!」ダッ

ネウロイ『――』

ギギギギ……

ズドォン

ゆら「乗ってきた!」

ズドォン

ゆら「そんなスピードじゃ、私に追い付けっこないぞ!」

キュウウウン

ゆら「あっ……」

ビッ

ゆら「うわぁぁぁ!」

ゆら「うっ……あ、はぁ、こんなの……大したことない!」

ゆら(宮藤さん、そろそろ出てきてもいいと思うんだけど――)

――


芳佳「――みっちゃん! しっかりして!」

美千子「……ぅ」

芳佳「ひどい傷痕……待ってて、今すぐ治すから!」ピョコン

芳佳「生きなきゃだめだよ、みっちゃん!」

芳佳「出血が……お願い、止まってぇっ……!」


――

ゆら「っ……くぅ……」フラフラ

ゆら(さ、流石に、そろそろしんどいかな……)

ゆら「でも……私が、やらなきゃ」

ドォン

ゆら「うあああっ!!」ズザァァ

ゆら「っ……」ムクリ

ゆら「これが……わ、私に、出来ることだから……なるべく遠くに、ネウロイを……」

ゆら「……くそぉ、もう、足が……」

キュウウウン

ゆら「……うぅ」

ゆら「いやだ、死にたくない……死にたくないよぉ……!」



「死なせはしない! でやぁぁぁっ!」



ゆら「!」

バキィィン

ネウロイ『――!?』

坂本「すまん! 出撃に手間取った!」

ゆら「さかもとさん……?」

坂本「大和! 下がっていろ、直に救護班が来る!」

ゆら「……あ」

ゆら(よくわかんないけど……もう、安心していいのかな……)

坂本「眠ったか……よくやったぞ」

坂本「あとは我々の仕事だ。ネウロイに反撃の隙を与えるなよ! 攻撃!」

――



ザァァァァ……

ゆら「……」パチ

ゆら「あー……」

ゆら「……! ネウロイっ……あれ?」

坂本「終わったぞ、大和」

ゆら「さ、坂本さん」

坂本「ご苦労だった。よく持ちこたえてくれたな」

ゆら「……ふぁぁ、良かったぁ……みんな無事だったんですね」

坂本「……」

ゆら「……え?」

坂本「お前たちの活躍のお陰で、被害は……」

坂本「……『最小限の犠牲』に留まったんだ」

ゆら「ど、どういうことですか。みんな助かったんじゃ……」

うわぁぁぁん……

ゆら「!」

ゆら「この声、宮藤さん……?」

ザァァァァ……

芳佳「みっちゃん! みっちゃん! 起きてよぉ!」

ゆら「!!」

芳佳「ほら、もう傷はふさがったんだよ。ネウロイだっていなくなって、みんなみっちゃんを待ってるんだよ……」

ゆら「そんな……」

坂本「……私の責任だ。もっと早く対応出来ていれば、こんなことには!」

ゆら「……」

芳佳「魔力があれば、私でも誰かを守れるって思ってた……でも、でも……!」

芳佳「ごめんね……やっぱり私なんかじゃ、友達一人助けることも出来ないんだ……」

芳佳「ぐすっ……うええーん、みっちゃぁん! ごめんなさい、みっちゃん!」

ゆら「……」

ゆら(こんなの間違ってる。あんなに頑張ってた宮藤さんが報われないなんて)

ゆら(もう終わったことだから、どうしようもないのは分かってる。それでも)

ゆら(こんな結末、私は絶対に認めたくない……! こんな終わりかた、私は望んでない!)

ゆら(私は……!)



ドギュウウウン

――



芳佳「うっうっ……みっちゃん……」

芳佳「……お願いします、みっちゃんを病院へ……あれ、誰もいない……?」

ゆら「宮藤さん」

芳佳「……大和さん。私、何も……」

ゆら「違うよ、宮藤さん。『これから』始めるんだ」

芳佳「え……でも」

ゆら「落ち着いて。私の魔力を使って、この子に命を吹き込むの」

芳佳「何を言って」

ゆら「今ならまだ助かる。さあ、早く」

芳佳「は、はい……」

ゆら「大丈夫……細胞のひとつひとつに魔力が馴染むように、ゆっくりだよ」

芳佳(なんだか大和さん、さっきと雰囲気が違う……?)

ゆら「……頑張って、もうちょっとだから」

芳佳「はいっ……」



ドクン


芳佳「!!」

ゆら「やった……」

ドクン、ドクン……

芳佳「う、動いてる……みっちゃんの心臓が、さっきまで止まってたのに!」

美千子「……よし、か……ちゃん?」

芳佳「……うう」

芳佳「みっちゃぁーん! 良かった……ほんとに、ほんとによかったよぉ……」

ゆら「……」




ドギュウウウン

多分C3部のアニメ未視聴の人は何が起きてるのかわからないと思う
ここワカンネってとこあったら指摘してほしい

アニメではゆらのオカルトパワーで歴史を改編(自覚なし)したり全校生徒をサバゲーマーにしたりしてたので
このSSでも妄想を現実にする固有魔法的な感じで使おうと思います
便利過ぎるので何かしらの制限は設けます

ほんへ投下は木曜までには……

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