4月1日
きょうは道を歩いていたら、いじわるな男の子たちにかこまれてしまいました
わたしはすごくこわくて、からだがふるえて動けませんでした
わたしはこれからどうなっちゃうんだろうって思ったら、急に男の子のうちの一人がふっとんじゃいました
わたしはびっくりしちゃってめをぱちぱちしていたんだけど、そのあいだにほかの男の子たちもどんどんたおれていきました
男の子たちは覚えてろー、と言いのこしてすたこらさっさとにげていっちゃいました
わたしはしばらくぼーとしていました。すると、男の子がはなしかけてきました。その子はわたしをかこんだなかにはいなかった男の子だって気づきました
だいじょうぶ?けがはない?と聞いてきたので、だいじょうぶよぉありがとぉっていいました
すると、その子はにっこり笑いました
わたしはどうしてかわからないけどとてもどぎまぎしてしまって、とても熱かったです
でも、せめて、なまえは聞きたいなって思って、がんばってなまえをききました
あなたはだあれ?ってきくと、その男の子は、おれは、かみじょうとうまっていうんだって言いました
その子のなまえはかみじょうとうまっていうんだ、とわたしはおもいました
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とうまさんってよんでもいい?と聞くと、いいよ、とうまさんは言いました
わたしはなんだかとてもうれしくて、すごくよろこびました
とうまさんは言いました
おまえのことはなんてよべばいいって言いました
わたしはなまえを言いました
わたしはしょくほうみさきっていうのよぉって言いました
とうまさんは言いました
じゃあみさきってよぶ!よろしくなみさき!って言って、笑いました
わたしはとってもとってもうれしくって、うれしくってにこにこ笑ってました
とうまさんはばいばいしながら、また明日、っていって走って行きました
わたしもばいばいしながら、また明日、って言いました
4月2日
きょうは、とうまさんをさがしていました
とうまさんはきのう、また明日、って言っていたので、きっときょうも会えるんだろうなっておもってさがしました
でも、歩いても歩いても、とうまさんはみつかりませんでした
どうしていないんだろう
わたしはすこし、ほんのちょっぴりだけ泣きながら、とぼとぼ家に帰ろうとしていたら、おーいって、うしろから声をかけられました
わたしはふりかえりました。すると、わたしにむかってはしってくる男の子がいました
わたしはその子のかおを見たしゅんかん、とってもえがおになりました
その子は、とうまさんだったからです
とうまさんは、りゆうは分からないけど、とってもきずだらけでした
どうしていっぱいけがしてるのぉ?ってわたしは聞きました
とうまさんはこまったように目をきょろきょろさせながら、ころんだんだよって言いました
わたしはふうせんみたいにぷくーってほっぺたをふくらませました
とうまさんがうそをついているなっておもったからです
わたしはうそをついたらだめなのよぉってとうまさんにぷんぷんです
とうまさんはまたまた目をきょろきょろさせて、ごめんな、でも、だいじょうぶだから、って言いました
とうまさんがだいじょうぶって言うのなら、きっとだいじょうぶなんだろうなぁっておもって、わたしはそれいじょうなにも言いませんでした
でも、それでも、とうまさんに会えてよかったです
きょうは少ししか話せなかったけれど、とうまさんはきょうも、また明日、って言ってばいばいしました
だから私も、また明日、ってばいばいしました
また明日もとうまさんとおはなししたいなぁ
続きます
投下します
4月3日
とうまさんはとってもやさしいです
わたしがこうえんのすなばでひとりであそんでいると、とうまさんがやってきたのです
とうまさんは、おれもいっしょにあそんでもいい?ってにこにこでたずねてきました
わたしはなんどもうなずきました。うれしくてしかたありませんでした
とうまさんは意外と器用で、おっきなおしろができあがりました
わたしは、こんなにおっきなおしろを作ったのははじめてだったので、とっても笑顔になりました
あんまりうれしかったので、ついとうまさんにだきついてしまいました
でもとうまさんはしっかり受け止めてくれて、よろこんでくれてよかったって言いました
とうまさんに出会ってからまいにちがたのしいです
4月5日
きょうもこうえんにあそびに行ったけど、とうまさんはいませんでした
しょんぼりしていたら、ぽつぽつ雨がふってきました
ぬれるとかぜをひいてしまうので、わたしは急いでちかくの大きな木の下に行ってあまやどりをしていました
わたしはそのときはひとあんしんしていたけれど、このままだとかえれないなぁって思いました
そうしたら、小さなかさを持った男の子がとおりがかりました。わたしはあっ!ってこえを出しました
とうまさんだったのです
とうまさんはここから少しはなれたところだったけど、すぐにわたしに気付いてくれました
そうしたら、急いではしってきて、わたしにかさをくれました
かぜ引くなよ、って笑いかけて、そのまま雨の中をはしっていってしまいました
とうまさんはとってもやさしいです。でも、こういうのはあまりすきじゃないです
わたしといっしょに帰ればよかったのになぁ
4月7日
きょうはこうえんでとうまさんと待ち合わせしました
とうまさんを待っていたけれど、なかなか来ませんでした
わたしはまだかなーって思ってずっと待っていたら、気が付いたらおひさまが沈んでしまっていました
そしたらとうまさんがとてもつかれたような顔ではしってきました
ごめんな、って言いながら、すごく汗だくでした
わたしは、どうしておくれたのぉ?って聞きました
とうまさんはすこし考えたあとに、うちゅうじんにおそわれちまったんだ、って笑いながら言いました
しばらくの間、とうまさんといっしょにいてわかったことがあります
とうまさんは、うそをつくのがとってもへたです
とうまさんにはあまりうそをついてほしくないと思いました
どうしてかというと、うそをつくのはいけないことだからです
それに、とうまさんのうそはあんまりおもしろくないからです
あと、気になることがもうひとつあります
とうまさんは会うたびにきずがふえてるなぁとわたしは思います
でもわたしのかんちがいかもしれないので、それいじょうはなにも聞きませんでした
4月11日
きょうもとうまさんい会いたくてしかたがなかったので、わたしは出かけようとしました
でも、止められてしまいました
かみじょうとうまとあそんじゃいけませんって言われました
とうぜん、急にそんなことを言われたわたしはぷんぷんです
どうして?って聞きました。とうまさんはとってもやさしいのよぉ?って言いました
せいかくのもんだいじゃない、と言われました
しんぱいしてるんだ、きけんな目に合うかもしれないんだよと言われました
あの子は『やくびょうがみ』なんだ、と言われました
わたしにはそれがどういう意味なのかよくわかりませんでした
だけど、とにかく、とうまさんは良いひとなのです
それはぜったいまちがいなんかじゃないってわたしは思います
わたしはこっそりぬけだしてお外へ出かけました
もちろん、とうまさんと会うためです
とうまさんと会えると思うと、わたしはうれしくってるんるんです
4月18日
きょうはとうまさんといっしょにあそびました
いつものようにたのしくおはなししていると、わたしはふと思い出しました
とうまさんはこんなにやさしくておもしろいのに、どうしておとなは近付いちゃだめ、なんて言うのでしょう
どうしてもなっとくがいかなくて、とうまさんにそのことを伝えました
わたしの家の人が、とうまさんに近付いちゃだめ!って言ってたのよぉ、と言いました
そしたら、とうまさんは、とってもとっても悲しそうな顔をして、そうなんだ、って言いました
かまわずに、わたしは、笑いながら言いました
わたしは、とうまさんとずっといっしょにいるからね
そう言いました
とうまさんといっしょにいると、わたしはとっても楽しいのよぉ
そう言いました
だから、そんな顔しないで、笑っていて
そう言いました
とうまさんはとつぜん顔をくしゃくしゃにして、わんわん泣き始めてしまいました
かなしいのかな、と思ったけど、そうじゃありませんでした
とうまさんは、泣いていたけれど、ありがとう、って言っていました
なんどもなんども、ありがとう、って言っていました
わたしはちょっぴりおどろいたけれど、とてもぽかぽかしたきもちになりました
わたしでもとうまさんのことをよろこばせられるんだなぁとうれしくなりました
続きます
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5月1日
もうとうまさんと出会ってからひとつきがたちました
まいにちのように会っているけれど、わたしはぜんぜんあきません
さいきんとうまさんは、前よりもよく笑うようになりました
とうまさんが笑うとわたしも笑います
わたしが笑うととうまさんも笑います
なんだかとってもしあわせなきもちになります
でも、とうまさんはとっても『ねがてぃぶ』だなぁとわたしはおもいました
とうまさんのことはだいすきだけど、それは直さないとだめだなぁとおもいました
5月10日
きょうはとうまさんのおうちにあそびにいきました
とうまさんはあまりわたしをおうちにつれていきたくなさそうでした
でもわたしは、とうまさんの住んでるおうちにとてもいってみたかったのです
わたしはとうまさんに、どうしてもお願い、と言いました
とうまさんはあきらめたように、わかったよ、と言いました
とうまさんのおうちにおじゃましました
とうまさんのおとうさんとおかあさんがいました
とうまさんのおとうさんとおかあさんは、わたしをみてとってもよろこんでいました
とうまとなかよくしてくれてありがとう、と言われました
わたしは言いました
とうまさんはとってもやさしくておもしろいのよぉ、と言いました
とうまさんのおとうさんは、すごくうれしそうなかおをして
そうだろう?とうまはじまんのむすこなんだ、と言いました
とうまさんはすこしうれしそうなかおでした
とうまさんのおうちにはへんなおきものがたくさんありました
とうまさんのへやで、へんなおきものはなんなのぉ?とわたしは聞いてみました
そしたらとうまさんはあんまりおもしろくなさそうなかおをして
とうさんがいろいろなところからグッズをあつめてるんだ、と言いました
どうして?って聞いたら、とうまさんは目をそらしながら
おれが『ふこうたいしつ』だから、と言いました
おれのまわりではふこうなことばかりおきるんだよ、と言いました
おれの『ふこうたいしつ』をすこしでも良くしようって思ってるんだろうけど、おれはきっとずっとふこうなままだよ、と言いました
わたしはそれを聞いてとってもかなしくなりました
かなしくてかなしくて大声で泣きました
とうまさんはすっごくあわてて、どうした、だいじょうぶか?、と言ってせなかをさすってくれました
だけど、わたしはとってもとっても泣いていたので答えられませんでした
しばらくして、すこしだけおちついたけれど、まだまだなみだは止まりそうにありませんでした
とうまさんは心配そうにわたしを見つめてきました
わたしはしゃっくりしながらゆっくり言いました
とうまさんにとってはわたしもふこうのひとつなのぉ?って聞きました
とうまさんはびっくりしたように目をぱちくりしました
とうまさんは言いました
みさきは、まいにちがふこうだったおれの中で、たったひとつのしあわせなんだ
そう言いました
どうやらわたしのかんちがいだったようです
わたしはまちがえたのがはずかしくて顔がまっかになってしまいました
でもとうまさんが、ありがとう、って言ってあたまをなでてくれたのでけっかおーらいだとおもいました
続きます
漢字変換とか適当なんですいません
今更直すのも面倒なんで気になる方はそっ閉じ推奨
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月 日
さいきんとうまさんと会うことができません
もう5日は会えてないです
とうまさんをおとといも、きのうも、きょうもさがしたけどぜんぜんみつかりません
わたしはかなしくてかなしくてどうしようもないです
とうまさんと会えないとぜんぜんおもしろくないです
月 日
きょうも会えませんでした
とうまさんに会えなさすぎてさいきん手がふるえます
このにっきをかくのもめんどうになってきました
とうまさんに会えないとなにもかくことがないのです
月 日
きょうはおとなのひとのないしょ話を聞きました
すると、とんでもないことがわかりました
とうまさんはほうちょうで刺されたらしいのです!!
刺されたらきっとぜったいいたいです!!
どうしてそんなひどいことをするんだろうとわたしはおもいました
とうまさんはきっといたいおもいをしているんだろうなってかんがえたら、なみだがとまりませんでした
月 日
きょうはとてもひさしぶりにとうまさんに会いました
とうまさんはとうまさんのおとうさんとおかあさんにつれられていました
どうやらきょうが『たいいん』のひだったようです
わたしがかけよっていくと、とうまさんはうれしそうに、でも、ちょっぴりさびしそうに笑いました
とうまさんは言いました
会いにいけなくてごめん、と言いました
とうまさんらしいことばだなぁとおもったけれど、もっとほかに言うことはなかったのかなっておもいます
こういうところはきらいです
わたしは聞きました
からだはもうへいき?もういたくない?、と聞きました
とうまさんは言いました
うん、もうだいじょうぶだ、しんぱいしてくれてありがとう、と言いました
わたしはとってもほっとしたのでこしをぬかしてしまいました
でもとうまさんがさっとかけよって手をにぎっておこしてくれました
ひさしぶりにとうまさんと手をつなぐことができてすごくうれしかったです
だけどとうまさんは、どうしてかわからないけど、すこしさびしそうなかおでした
月 日
さいあく
ほんとさいあく
ほんとにほんとにさいあく
きょうとうまさんにはっきり言われました
おれは『がくえんとし』に行くことになったんだって言われました
わたしととうまさんはもうきがるに会いにいけないらしいのです
わたしはあたまのなかがまっしろになりました
月 日
きょうもとうまさんとあそびました
だけど、わたしはいちども笑えませんでした
とうまさんがそう遠くないうちに『がくえんとし』にいってしまうことがあたまからはなれないからです
そうおもったら、とても笑うことなんてできないとおもいました
とうまさんはそんなわたしをみて、すこしさびしそうなかおをしたけれど、どうしてもわたしは笑えませんでした
月 日
きょうはとうまさんと会いませんでした
そのせいでとてもいちにちじゅう心がまっくらだったけど会いませんでした
わたしはいろいろかんがえました
ひとりで、いろいろ、かんがえました
わたしはおもいました
どうしてもとうまさんとはなれたくない、とおもいました
だから、わたしはおもいました
わたしも『がくえんとし』にいこう
そうおもいました
そうすれば、またとうまさんといつでもあそべます
そうすれば、またとうまさんといつでも笑い合えます
3月20日
きょうでとうまさんは『がくえんとし』にいってしまいます
わたしはとうまさんをみおくりに行きました
とうまさんはわたしをみてとってもとってもうれしおうなかおをしました
とうまさんは言いました
みおくりありがとう、来てくれてほんとにうれしいよ、と言いました
わたしは言いました
来るにきまってるじゃない、あたりまえよぉ、って笑いながら言いました
そして、わたしは言いました
笑いながら、言いました
わたしも『がくえんとし』に行くから、だから、待っていて
そう言いました
とうまさんはえがおで言いました
ああ、待ってる
そう言いました
そう言って、去っていきました
続きます
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4月1日
きょうははじめてとうまさんと会った日です
だけど、とうまさんはもうここにはいません
とってもさびしくてしょうがないです
でもわたしはきめたのです
ぜったいに『がくえんとし』にいくんだって
そうきめたのです
月8日
わたしが『がくえんとし』にいって、とうまさんと会えたときはなにをしてあそぼうかなぁ
はやくとうまさんに会いたいです
やっぱりとうまさんがいないとなにもかくことがないです
4月8日
わたしが『がくえんとし』にいって、とうまさんと会えたときはなにをしてあそぼうかなぁ
はやくとうまさんに会いたいです
やっぱりとうまさんがいないとなにもかくことがないです
5月1日
とうまさんにむねをはって会えるように、べんきょうをがんばろうとおもいます
とうまさんはきっと『がくえんとし』でがんばってるはずなのでわたしもがんばります
はやくとうまさんに会いたいです
10月20日
私はすごく勉強しました
漢字もずいぶん書けるようになりました
これならとうまさんに胸を張って会うことができます
周りの大人からは、「君はとても頭が良い、天才だ」と口々に言われるようになりました
でも別に、大人たちから言われても嬉しくも何ともありません
とうまさんに褒めてもらえたら嬉しかったと思います
早くとうまさんに会いたいです
3月20日
月日は流れ、ついに私も学園都市に行く日になりました
どうしてこの日を選んだか、というと、それはもちろん、とうまさんが3月20日にここを去っていったからです
だから、私もとうまさんと同じ日である3月20日に、ここを去りたいと思ったのです
私の胸は高鳴っていました
学園都市に行けば、またとうまさんと会えます
もうすぐなのです
3月21日
学園都市に着いてからはすぐに色々なことをされました
少し怖かったけれど、きっととうまさんもこれを乗り越えたに違いありません
そう考えれば不思議と大丈夫な気がしました
一通り終わった後、白衣を着た男の人は、私に向かって言いました
「君は非常に素晴らしい!素晴らしい力だよ、食蜂操祈さん!」
一体何が凄いのか私にはよく分かりませんでしたが、どうやら私は『素晴らしい力』を持っているようです
3月27日
私は学園都市に来てからずっと研究所に連れて行かれてばかりです
私は研究所の人達に言いました
「私は一刻も早く会いたい人がいるのよねえ」
「こんなんじゃ、何のために学園都市に来たのか分からないわよぉ」
研究所の人達は
「その人に会いたいならまずは課題をクリアすることです。そうすればきっとその人に会えますよ」
そう言いました
3月31日
私はこの学園都市に来て特別な力を手に入れていました
他人の精神に干渉する力です
でも今はまだ不安定で、うまく扱えない時もありました
研究所の人達は演算の補助としてリモコンをくれました
リモコンのおかげでかなり演算が楽になりました
私は疑問に思ったことをぶつけてみました
「私は本当に凄い力を持っているのぉ?」と聞いたら、
「ええ、断言します。あなたの力は非常に素晴らしい。あなたはこれから人の上に立つ存在となるのです」と言いました
人の上だとか、そんなのは私はどうでもいいのです
私がもしこの人の言うとおりに凄い力を手に入れて、とうまさんに伝えたら、きっととうまさんは私の頭を撫でながら
「すごいぞみさき!よくやったな!」って自分のことのように喜んでくれるはずです
それが楽しみで楽しみで仕方ありません
早くとうまさんに会いたいです
続きます
投下します
5月9日
あの日以来、抜け殻のようになってしまった私に女の研究員が話しかけてきました
「そろそろ何があったのか話してくれてもいいんじゃない?」
私は何も言いませんでした。研究員は肩をすくめると、
「上から通達があってね。あなた、上がるそうよ」
そう言いました。上がる、というのはきっとレベルのことでしょう
あの一件で、私の力は強まりました
それと引き換えに何よりも大切なものを失っってしまったけれど
5月10日
私はレベル4になることが決定しました
しかし、そんなの全然嬉しくありませんでした
私はただ、とうまさんの隣で歩いていることができれば、それで良かったのに
どうしてこうなってしまったんだろう
もう一度、あの頃に戻れたのなら……
そこまで考えて、やめました
6月3日
研究員の一人が私に話しかけてきました
「4月の後半くらいから、あなたの居場所を聞きまわっている子供がいるそうだけど」
私は目を大きく見開きました
心臓が爆発しそうでした
「…………男?女?」
正直、聞くまでもありませんでした
それが誰なのか、もう分かっていたからです
「ツンツン頭の男の子よ」
「会ってあげないの?」
「…………会えないわぁ」
「…………会えるわけないもの」
私はそう呟きました。そう、会えるわけがないのです
私はもう失望されていて、嫌われていて、顔も見たくはないでしょう
これ以上失望されたくない……
6月15日
とうまさんは今もまだ私を探し続けているという話を聞きます
でも、私は、無理です
とうまさんに会いたいのに
恐くて、怖くて、足がすくんでしまうのです
このままずっと逃げて、逃げて、逃げて、それから……
私はどうすればいのでしょうか
7月1日
どうして
どうしてとうまさんは私を探し続けているのでしょうか
あれからもう三ヶ月……どうして……?
私を探し当てて、何を言いたいのでしょう
少し考えて、すぐに答えが分かりました
きっと私への怒りが収まらないのでしょう
それで、直接絶交を言い渡したいのでしょう
今でさえ私の心は壊れそうなのに、とうまさんから直接そんなことを言われたらきっとショックで死んでしまいます
だから私は逃げ続けます
とうまさんが諦めるその時まで
私は私を守ることで思い出を守り通すのだと
そう決めました
――――――――――――――
―――――
ガバッ
食蜂「……まだ深夜の2時…」
食蜂「最近、あの頃のことをよく夢に見るわねぇ……」
食蜂「……とうまさんと過ごした日々のことを…」
食蜂「あの頃の私はまだ幼くて、無邪気で……」
食蜂「そして、とうまさんと幸せそうに笑って過ごしていたわぁ……」
食蜂「あぁ…………」
食蜂「……少し、気分転換に風に当たって来ようかしらぁ」
食蜂「…………」スタスタ
食蜂(あの日から……とうまさんと学園都市で出会ってから、もう8年……)
食蜂(すっかりとうまさんが私を探し回っているなんて噂は聞かなくなったわねぇ)
食蜂(学園都市第五位……『心理掌握』…)
食蜂(こんな地位よりも、私は……)
食蜂(ただ……あなたのそばで笑っていたかった…………)ポロッ
食蜂「………………あらぁ?最近……あの頃の夢を見続けていたせいかしらぁ?」
食蜂「…もう枯れ果ててしまったとばかり思っていたのに………まだ、流せたのねぇ…」ポロポロ
食蜂「本当に…………参っちゃうわねぇ…」
「何に参るって?」
食蜂「っ!?」クルッ
上条「よぉ、みさき」
上条「やっと……見つけたよ。ずっとずっと探してたんだ。8年の間、ずっと…………」
食蜂(どうして……あなたが……ここにいるの……?ここは、男の人は入っちゃいけないのに……)
上条「最近常盤台のビリビリ中学生と知り合ってさ。そんでお前がここに居るって分かったんだ」
声が出ない。あまりに驚きすぎて、これが夢なのか現実なのかの区別がつかない
そんな私に、とうまさんが語りかけてきた
上条「ここのセキュリティはビリビリに頼んで一時停止してもらったんだ。しばらくすれば復旧するだろうから、長くは話せないけど」
上条「ビリビリからは『何でも私の言うことを聞く』って条件でやってもらったから、この後が大変そうだけどな。……でも」
上条「これで、もう一度お前と話せる」
私は思わず後ずさりした
これが現実だとすれば、とうまさんが私に何の用で来たのか分かっているからだ
食蜂(言われる……!!とうまさんの口から、直接……!!)
私は、あまりの恐怖で逃げ出した
絶交の言葉なんて聞きたくない
私は本当に生きていけなくなってしまう
上条「みさき!待てよおい!話がしたいんだ!」ダッ
食蜂「げほっ!はぁっ……はぁっ!」
私は必死で逃げた
なりふりかまわず逃げた
会いたかった。本当に、会いたかった。それでも逃げなくてはいけなかった
食蜂「はぁ……はぁ……!」
私は『学舎の園』を抜け、外へと抜け出した
正直もう身体は限界だった。走りつかれた私は道路の真ん中にもかかわらず膝をついてしまった
食蜂「げほげほ……はっ……はっ……」
上条「逃げんなよな……はぁ……はぁ……」
上条「みさき、お前、相変わらず体力ないんだなぁ」ハハハ
食蜂「…………私は……もう、あなたの知ってる『みさき』じゃないわぁ」
食蜂「学園都市第五位……心理掌握………食蜂操祈よぉ……」
上条「それが何だよ。俺は、お前という一人の女の子と話すために8年間ずっと探してたんだ」
続きます
最終投下行きまーす
食蜂「………………」
上条「ずっと話したかった。ずっとだ」
私はきつく瞼を閉じた。ついにこの時が来てしまったのだと、そう思った
8年もの間逃げ続けてきた現実を、ついに突きつけられてしまう
私は道路の真ん中で惨めに体育座りし、膝に顔をうずめた。しかしとうまさんはかまわず話し始める
上条「お前のしたことはどう転んだって絶対に良い事じゃない。正直言ってあれは人としてやっちゃいけない行為だ」
もう終わりだ。とうまさんから完全に拒絶される時が来てしまったのだ
しかし、とうまさんは次に驚きの言葉を口にした
上条「でも、俺も悪かった。頭に血が上って、お前の事情も聞かずに、お前を一方的に拒絶しちまった……」
上条「みさき、ごめん!」ガバッ
一瞬、とうまさんが何を言ったのか理解できなかった
どうして……あなたが謝っているの……?
食蜂「どうして……私を探し続けていたの……」
上条「………………」
上条「…………お前は気付いてないかもしれないけどさ」
上条「お前は、不幸のどん底に居た俺を救ってくれた恩人なんだ。お前の笑顔に一体どれだけ救われたか……」
上条「そのお前が俺の友達を能力で支配しているところを見て、どうしても納得がいかなかったし、失望した」
上条「でもそれは、俺の勝手な独りよがりだったんだ。それまで『食蜂操祈』って人間の本質を見てなかった」
上条「だから8年間ずっと探してたんだ。もう一度、お前と話すために」
………………、
私は……この8年間、一体何をしていたんだろう
とうまさんが私を探していたのは、直接絶交を言い渡すことだとばかり思っていた
でも、まるで違う
私とは、考え方も器も違う
これが、『上条当麻』という人間なんだ
私の想像の範疇に収まるような代物じゃなかった
もっと優しくて、温かい……
そんなあなただから……私は……
膝にうずめていた顔を上げて、目の前のとうまさんを見上げた
その顔は、とても優しい
食蜂「私……あなたに褒めてほしくて……ただ、それだけで……」
食蜂「とうまさんを喜ばせようって……それで……研究所で教わった通りに……あなたの友達を……」
震える声でそう言う私の顔を、とうまさんはじっと見つめていた
私は思わず言葉に詰まった。今から言おうとしている言葉は、8年間逃げ続けてきた全てを否定し、正反対の道へ進もうとする言葉だ
言わなくちゃならない。言わなくちゃ、先へは進めない
食蜂「ごめん…なさい……とうまさん…………」
今まで逃げ続けてきたものと向き合って
逃げることしかできなかった弱い自分と向き合って
私は、とうまさんに頭を下げた
とうまさんは、道路に座り込んでいる私の目線に合わせるようにしゃがみ込み、私の頭にポン、と手を置いて、にっこり笑った
上条「よし、許す!」
私は、一瞬、耳を疑った
とうまさんは今、許すと言った?
こんなにもあっさりと?こんなにも笑顔で?
上条「俺ともっと話をしよう。上辺だけじゃない、本当のお前を知りたいんだ」
上条「あの時、お前をもっとちゃんと分かっていりゃこんなことにはならなかった」
上条「だから、もうすれ違わないように、きちんと話そう」
上条「今まで出来なかった分も含めて、な」ニコリ
いつの間にか、自分でも気付かないうちに涙がこぼれていた
言葉では言い表せないような温かなものが、心の中を満たしていく……
食蜂「私も……」
食蜂「私も、とうまさんと…………ずっと、話したかった……!!」
私はぴょん、と勢いよくとうまさんの胸に飛びこんだ
そして、小さな子供のようにわんわん泣いた
とうまさんは最初こそ硬直していたけれど、すぐに優しく抱きしめてくれた
とても、とても温かい………
この温もりは、私が世界の何よりも欲しかったものなんだ
もう二度と手放したくないと……手放すものか、と
強く、強く、想った
―――――――――――
―――――
上条「あの……腕、痛いんですけど……」
食蜂「……」ギュー
上条「お前、力強くなったのな……ま、当たり前だよな。あの頃とは全然違うに決まってるもんなぁ」
上条「昔はあんなに小さかったのに、今ではこんなに大きくなっちまって……」
食蜂「……小さい方が、とうまさんは好き?」
上条「ん?いや、俺は身長とかあんまり気にしないけど」
食蜂「え?なぁんだ!身長の話だったのぉ?」
上条「何だと思ってたんだ……?」
上条「うーん……それにしても、今頃ビリビリのヤツすっげえ怒ってんだろうなぁ……」
上条「後始末も全部アイツ任せだし、悪いことしたな……」
食蜂「とうまさん、さっきから言ってたけど、ビリビリってだぁれ?」
上条「んーと、みさきは多分知ってると思うけど。御坂美琴って名前だ」
食蜂「はぁ?御坂美琴ですってぇ?」
上条「何だよ、そんな怖い顔して……」
食蜂(私のせいでとうまさんが御坂さんに弱みを握られてしまうなんて……)
食蜂(でも……この状況は、あの人のおかげでもあるのよねぇ……むぅ……)
食蜂「御坂さん一人じゃ大変だろうしぃ……私も手伝ってあげようかしらねぇ」
上条「おお!ありがとなみさき。俺にもできることあれば言ってくれよ」
食蜂「いいのよぉとうまさんは」
上条「そういうわけにはいかないんだよ」
食蜂「おせっかいなのは相変わらずなのねぇ……安心したわぁ」ニッコリ
上条「さて、そろそろ着くぞ」
食蜂「…………ねぇ、とうまさん」
上条「ん?何だよ」
食蜂「私達は……私は、またあの頃みたいに笑えるかしら……」
食蜂「私は……もうあの頃のような純粋無垢な子供じゃないわぁ。色々と世の中の汚いところも知っているし、汚いこともやってきた」
食蜂「それでも、また、あの頃のように笑えるかしらぁ……」
上条「歳を取りゃそんなの当たり前だろ。笑えるはずだ。あの頃よりも、もっと」
食蜂「……そうよねぇ。とうまさんが笑わせてくれるものねぇ」クスッ
上条「はは、お手柔らかに……」
上条「お、着いたな」
食蜂「さて、後始末しなきゃねぇ。私の改竄力の見せ所かしらぁ」
食蜂(あっ……とうまさんの前で、まずかったかしらぁ……)
上条「あんまりやりすぎんなよ?」
食蜂「!」
食蜂「…………怒らないのぉ?」
上条「怒らねえよ。お前が頑張って身に付けた立派な能力を、俺なんかが批判していいわけねえんだ。あの頃はそれすら考えられなかったけどさ」
食蜂「とうまさん……!!わ、私、張り切って後始末してくるわぁ!!」
上条「あまり相手に害が無いようにしてくれよ?」
食蜂「うんっ!」
――――――――――――
―――――
食蜂「もう終わったわよぉとうまさん」
上条「お疲れ様。ごめんな、迷惑かけて」
食蜂「いいのよぉ、これくらい。大した手間じゃないしぃ」
上条「そういえばビリビリは?」
食蜂「知らないわよぉ?」
上条「あれ?おっかしいなー……探さないと」
食蜂「…………」チッ
上条「さて、今日はもうこんな時間だし、ビリビリも探さなきゃだし、また今度改めて話をしような。お前と話したいことがまだまだたくさんあるんだ」
食蜂「ええ。私もいっぱいあるのよぉ。ずっとずっと話したかったことが、いっぱいあるんだから」
上条「…………みさき」
食蜂「なあにとうまさん」
上条「今更だけどさ」
上条「俺と出会ってくれてありがとう」
上条「俺は……お前と出会えたことが、何よりの幸せだよ」
上条「8年ぶりに会えた今だからこそ、伝えたかったんだ」
上条「本当にありがとう」
食蜂(…………なによぉ……それぇ…)ポロッ
食蜂「と、とうまさんのばかぁ……!!私を……私を嬉し泣きさせて、どうしようって言うのよぉ……!!」ビエーン
上条「えっ、いや、そんなつもりじゃ……」
食蜂「うえええん……わあああん……」
―――私は、本当に幸せな気持ちに包まれていた
何度も何度も思い描いていた、幸せのカタチを
私はやっと手に入れることができたんだと
私は世界で一番の幸せ者だと
心から、そう思った
7月19日
この日記を書くのも実に8年ぶりだ
8年前の7月1日からこの日記は白紙のままだった
しかし、今日はどうしても書きたいことがあったのだ
まだ日が変わって間もない、午前2時に
とうまさんと再会した
とうまさんはあの頃と変わらず優しくて、温かい人だった
そして、私ともっと話したいと言ってくれた
こんな私に、出会ってくれてありがとう、と言ってくれた
私と出会えたことが何よりの幸せだと言ってくれた
私は、今日という日を一生忘れることはないだろう
たとえ明日世界が終わってしまっても、私は絶対にとうまさんのそばを離れない
もう絶対にあの手を離さない
とうまさんのそばでずっと生きていきたい
それだけが、私の生きる道だ
7月20日
END
読んでくれた人ありがとうございました
このSSまとめへのコメント
途中表示されてなくね?不具合か?
確かに表示されてない
一気に100レス近く飛んでるわ
管理人しっかりしろ
そして次に見つけたときはとうまさんは記憶が無くなっていましたとさ
ないねそれw