ハセヲ「親知らずが生えてきてな」 (28)

アトリ「え?」

ハセヲ「だから、親知らずが生えてきたみたいなんだよ」

アトリ「はあ、それで最近元気がなかったんですね、ハセヲさん」

ハセヲ「ああ、ここんとこずっと何をしてても集中できなくてな」

ハセヲ「何しろ肉を割きながら生えてくるわけだから当然痛えし」

ハセヲ「ちょっと舌を動かすだけで患部に触っちまうし」

ハセヲ「もう気になって気になって」

ハセヲ「ゲームどころじゃねえ!っていうか」

アトリ「そうだったんですか」

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ハセヲ「それと、これは昨日気づいたんだが」

アトリ「なんですか?」

ハセヲ「恐ろしいことにな、どうもその生えかけの親知らずを舌で触った感じ…」

ハセヲ「つるつるしてんだよ、表面が」

アトリ「はい?」

ハセヲ「まあわかんねえか、あのな」

ハセヲ「奥歯ってよ、食いもんをすり潰す部分はこう、ざらざらっつうかデコボコしてんだわ」

ハセヲ「これはわかるな?」

アトリ「はい」

ハセヲ「で、側面の部分はつるつるしてる」

ハセヲ「そうだろ?」

アトリ「そうですね」

ハセヲ「以上のことを踏まえるとだ」

ハセヲ「本来生えてきたばかりの俺の親知らずにもこう、おうとつがなければならないわけだ」

アトリ「なるほど」

ハセヲ「しかし、俺の親知らずにはそれがない、どころかつるつるしている」

アトリ「ふむふむ」

ハセヲ「ということは導き出される結論は一つ」

アトリ「むむ…」

ハセヲ「俺の親知らずは…」

ハセヲ「横向きに生えている」ズーン

アトリ「そんな!」

ハセヲ「俺も信じたくはなかったんだが、そうこれが真実だ」

アトリ「…」

ハセヲ「ただでさえネットで治療の体験談とか読むと怖くなってくるってのに」

アトリ「ハセヲさん」

ハセヲ「…手術中は麻酔が効いてるから痛くないってのは本当なのかよ」

アトリ「ハセヲさん?」

ハセヲ「でも麻酔が切れると地獄の苦しみだとか」

アトリ「あの、ハセヲさん?」

ハセヲ「抜歯後に空洞ができてそこに食い物のカスが溜まってとれなくなるとか…!!」

アトリ「え~っとぉ…」

ハセヲ「ちくしょー、悪い考えばかりが頭ンなかをぐるぐる回っていやがる」

ハセヲ「はははっ!PKK『死の恐怖』のハセヲ様がこんなことでビビってるなんてよ、笑えるよなww」

アトリ「…」

アトリ「ハセヲさん!」

ハセヲ「っ!」

アトリ「あの!!」

ハセヲ「…なんだよ」

アトリ「今さらなんですけど!!」

ハセヲ「おう」

アトリ「おやしらずってなんですか?」

ハセヲ「今さらかよっ!!」

ハセヲ「おせえよ!今までの会話の9割意味わかってなかったのかよ!!」

アトリ「ごめんなさい」

ハセヲ「やれ歯がつるつるだとか、ざらざらだとか言ってた俺が馬鹿みたいじゃねえかよ!!」

アトリ「それで、おやしらずってなんですか?」

ハセヲ「…」ハア

ハセヲ「もういいよ面倒くせえ、ってかそのくらい自分でぐぐれよ」

アトリ「…」

ハセヲ「あ~ったく、歯並びにも影響あるって言うし、やっぱ早めに抜いてもらうか」

アトリ「…」

ハセヲ「アトリ?」

アトリ「…」

ハセヲ「おい、おい!アトリ!」

アトリ「…」

ハセヲ「どうした?返事しろ、アト…」

アトリ「大変じゃないですか!!ハセヲさん!!」

ハセヲ「うぉ!?」

ハセヲ「なんなんだお前は!」

アトリ「?ハセヲさんに言われた通りグーグルで検索してきたんですけど」

ハセヲ「…ああそうかい」

アトリ「そんなことより、大丈夫なんですか?親知らずの方は」

ハセヲ「だから痛えって言ってんだろ!」

アトリ「じゃあ歯医者さんに行きましょう!今すぐ!」

ハセヲ「今すぐってお前、そりゃ近いうちに行くつもりだけどよ」

アトリ「駄目ですよハセヲさん!現代の日本人は顎が小さく、親知らずが生えるための十分なスペースがないことが多いんです。このため、横向きに生えたり傾いて生えてきたりする場合があるんです。このような場合は歯ブラシが入りにくく、虫歯や歯肉炎になりやすいんですよ!!(ウィキペディアより抜粋)」

アトリ「これ完全に今のハセヲさんの事じゃないですか!」

アトリ「虫歯はとっても怖いんですよ!?」

ハセヲ「わかってるよ」

アトリ「わかってません!!ハセヲさんにもしものことがあったらと思うと私、私…!」

ハセヲ「アトリ…」

アトリ「…」

ハセヲ「アトリ?」

アトリ「…」

ハセヲ「おい?アトリ!また調べもんか?」

―アトリがログアウトしました―

ハセヲ「寝落ちかよ?このタイミングで」

ハセヲ「まあいいか」

ガスパー「あ!ハセヲ!こんなところでなにしてるんだぁ~?」

シラバス「最近ギルドに全然顔出してくれないじゃないか」

ハセヲ「おお、お前らこそなにやってんだよ、こんな低レベルのエリアで」

シラバス「何って、初心者支援ツアーだよ、カナードのギルド活動!」

ハセヲ「ああ、あったなそんなの」

シラバス「一応BBSで参加者を募ってたんだけど、誰も来ないからもう帰るところだったんだ」

ハセヲ「そうか、そりゃ、お疲れ様だな」

ガスパー「それで、ハセヲはこんな所で何してたんだ~?」

シラバス「ハセヲがΔサーバーにいるなんて珍しいよね」

ハセヲ「それは、その」

シラバス「もしかして、最近噂になってる初心者狙いのPK狙い?」

ハセヲ「ぁ…まあそんなとこだな」

ガスパー「さっすがハセヲ!カッコいいんだぞ!」

シラバス「なんだ、てっきりアトリちゃんとデートに来てたのかと思ったけど、そんなわけないよね」

ハセヲ「あ、あたり前だろ」

ハセヲ「ところでお前ら、その、最近歯医者って行ったりしたか?」

シラバス「歯医者?なんで急に、それってリアルの話?」

ハセヲ「あ、ああ」

ガスパー「歯医者ならオイラ先週行って来たぞ!奥歯にでっかい虫歯ができてたんだ!」

シラバス「ははは、歯磨きはちゃんとしなきゃだめだよ、ガスパー」

ガスパー「む…おいらちゃんと磨いてたぞ!奥の方だからしょうがないねって先生にも言われたんだ」

ハセヲ「そうか、そりゃ大変だったな」

ガスパー「ひょっとして、ハセヲも虫歯になっちゃったの?」

ハセヲ「いや、俺はその、親知らずが、生えてきて」

シラバス「あー!ハセヲもかい?僕もちょっと前に生えてきてさ」

ハセヲ「本当か!?」

シラバス「うん、歯医者さんに行ったら綺麗に生えてきてるからそのままでいいよって」

ハセヲ「チッ」

シラバス「舌打ちされた!?」

ハセヲ「あー駄目だ、お前らじゃ参考にならねえ」

ハセヲ「もっと他に参考になりそうな奴は…」

クーン「おーい、遅れてごめんなー」

クーン「ってあれハセヲ?なんだお前も来てたのか」

ハセヲ「クーン!!」

クーン「うお!っなんだよ」

ハセヲ「単刀直入に聞くぞ!!お前、親知らずは生えてるか!?」

クーン「いきなり変なことを聞くやつだな」

ハセヲ「いいから答えろ!!頼む!」

クーン「…4本生えてたけど、全部抜いたよ」

ハセヲ「おお!!で、どうだった!?」

クーン「どうって、おいシラバス、ガスパー、こいつどうしたんだよ?」

ガスパー「ハセヲは親知らずが生えてきちゃったらしいんだぞ」

シラバス「どうも治療の参考に話が聞きたいらしいんです」

クーン「へー、なるほどね」

ハセヲ「それで、どうだったんだよ!」

クーン「あー、俺の場合は普通に生えてたから別に抜く必要はなかったんだけどな」

クーン「ただそこの女医さんが綺麗だったもんで、せっかくだから下から順に処置してもらったよ」

ハセヲ「なるほど、抜く時はどうだった?」

クーン「ん?ああ、こっちの口の中をのぞき込む度に胸が当たってな、正直最高だった」

ハセヲ「女医の話じゃねえ!!抜歯の時痛かったって聞いてんだよ!!」

クーン「はいはい、まあ麻酔の注射に多少痛みはあったが、それだけだったな」

クーン「そんなビビるほどのもんでもないさ」

ハセヲ「べ、別にビビってるわけじゃねえよ」

クーン「ま、早めに医者に診てもらうんだな、素人の感想なんか当てになんかならないって」

ハセヲ「…そうかもな」

キャー!!

ハセヲ「!!」

初心者「た、助けてください、私が何をしたっていうんですか!?」

ボルドー「くっくっく、バァカ!意味なんか無いんだよ、とにかくお前はここでゲームオーバーだ!」

初心者「そ、そんな無茶苦茶な…」

ガスパー「あー!!PCが襲われてるんだぞぉ!!」

シラバス「ハセヲ!あれ」

ハセヲ「わかってる!」

ハセヲ「おい!そこのお前!!」

ボルドー「ああん!?なんだてめえ…ってハセヲ!?」

ハセヲ「今時まだPKなんて暇なことしてる奴がいるとはな」

ボルドー「うるせえこのチート野郎!てめえこそまだPKKなんかしてやがんのか!」

ハセヲ「俺はもうそんなんじゃねえよ…ていうか、誰だっけお前?」

ボルドー「ボルドーだよ!!ケストレルのボルドー!!」

ハセヲ(覚えてねえ)

ハセヲ「まあいい、お前に一つ聞きたいことがある」

ボルドー「ああ?またトライエッジか?」

ハセヲ「いや、そうじゃねえ…」

ハセヲ「お前、親知らずって生えてるか?」

ボルドー「…?」

ボルドー「いや、生えてねえけど」

ハセヲ「そうか、じゃあ用はねえ」

ボルドー「は?」

ハセヲ「あばよ」

バキュン…!

ボルドー「!!」

ボルドー「んな!?たった一発でHPが5%程に!?」

ハセヲ「失せろ、今日は見逃してやる」

ボルドー「くそっ!覚えとけよ!!」

ハセヲ「もうPKなんてすんじゃねーぞー!」

クーン「さすがだな、よっ!死の恐怖!」

ハセヲ「よせよ、俺はもうそんなんじゃ」

初心者「あ、あの…」

ハセヲ「ん、大丈夫だったか」

初心者「はい、助けて貰って、ありがとうございました」

ハセヲ「いいんだよ、見たとこ初心者みたいだけど、ネトゲにはたまにああいうのがいるから気をつけな」

初心者「は、はい!」

初心者「それで、あの…良かったらメンバーアドレス、交換してもらえませんか?」

ハセヲ「?別にいいけど、俺最近あんまインしてないから戦力としちゃ微妙だぜ?」

初心者「そ、そんなの全然!構いませんから!」

ハセヲ「わかったよ、やり方はわかるか?」

初心者「はい、そのくらいならなんとか」

クーン「…あーあー、さっそく女の子を誑かして、アトリちゃんや揺光やエンデュランスが泣くぞ」

ハセヲ「そんなんじゃねえよ、っていうかエンデュランスをそこに含むんじ…あー!やっぱりまだゲームしてましたね!!」

クーン「?」

ハセヲ「もう、ゲームなんてしてる場合じゃないでしょ!三崎くん」

クーン「おい?どうした、ハセヲ」

ハセヲ「く!日下っ!?お前どうしてうちに!?実家千葉だろ!?どうやってここまで!!愛の力です!納得できるか!!」

シラバス「ど、どうしちゃったの?ハセヲ」

ガスパー「ハセヲがバグったんだぞお!?」

ハセヲ「とにかく!一刻も早く歯医者さんに行って診て貰いましょうね!うわバカやめ…!」ブツン

―ハセヲがログアウトしました―

クーン「…?」

クーン「ああ、アトリちゃんか」

シラバス「どういうことです?」

クーン「治療しに行ったんだろ、親知らずの」

ガスパー「ふーん」

クーン「あー、俺も彼女ほしー」


終わり

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