ホワイトアルバム2 『誕生日プレゼント~夢想』(冬馬かずさ誕生日記念) (33)





ホワイトアルバム2 

『誕生日プレゼント~夢想』(冬馬かずさ誕生日記念)







作:黒猫










2009年5月28日木曜日






窓から吹き抜ける風が心地いい。

朝の空気を部屋にくぐらせると、夜中に充満した甘い空気が薄まっていく。

そんな朝と夜が混じり合ったけだるい空気を肺に充満させ、

今日一日のスケジュールを頭の中で確認する。

少し時間に余裕があることを確認すると、ベッドに再び潜り込み、

朝の新鮮な空気を嗅ぎつけて寝がえりを打つかずさの寝顔を堪能する。



今日も絶好の学校日和で、かずさが通う大学まで送っていく道のりも楽しくなりそうだ。

新緑が茂り、草木も夏の準備を始めている。少し暑がりなかずさも少し早い初夏の

装いになり、白い肌を覗かせるたびにどぎまぎしてしまう。

それをかずさもわかっていて、わざと見せつけるのだけはやめてほしい。




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かずさ「だって、春希が見たそうにしていたから。」

春希「まあ、それは認める。」

かずさ「正直でよろしい。そういうところが、かわいいな。

    でもさ、いつも体の隅々まで見てるだろ?」



俺に鞄を押しつけ、数歩俺の前まで踊り出ると、華麗なターンを披露する。

からかうように体を回転させ、俺に体を見せつけてくる。

風にのって鼻をくすぐるかずさの香りが、いっそう俺の体温を上昇させた。

ふわりと舞ったスカートから除く陶器のような脚に目を奪われてしまう。

俺の視線の先を素早く察知したかずさは、俺の腕に再び腕をからませ、

耳元に甘い誘惑をささやいてきた。



かずさ「見てるだけでいいのか?」

春希「だから、朝から誘惑するのだけはやめてくれ。」

かずさ「そうなのか?」



本気で心外だという顔を見せるかずさは、どこまで本気なんだろうか?

どこで覚えてきたのかわからないけど、

実際使う人がいるのかわからない台詞を言い放つ。



かずさ「でもさ、春希。春希の言葉を信じればいいのか、それとも、

    春希の体を信じればいいのかわからないなぁ。」

春希「あぁっ、もう! 本当にやめてくれ。ここは公共の道なんだぞ。」



みごとにかずさの術中にはまり、体が反応してしまう。

だから、それを隠すためについ声が大きくなってしまった。

さすがにやりすぎたと思ったかずさは、耳としっぽが垂れ下がり、しょんぼりしている。

かずさの歩く速度が遅くなるにつれ、俺の腕に絡まった腕も徐々にずり下がる。

ついには手が離れそうになったところでかずさの手を掴む。





春希「だから・・・・、せめて家の中だけにしてくれると助かる。

   それと、綺麗なかずさを皆に見せびらかしたい気持ちもあるけど、

   それ以上に、誰にも見せたくない独占欲もあるんだ。

   ・・・・その辺を考慮してくれると助かる。」



下を向き、とぼとぼ歩いていたと思ったら、俺のはずかしい台詞で見事復活したかずさは

しっぽを振りながら俺の腕に再び腕からませ、所有権を主張するようにすり寄ってくる。

あとになって、俺も恥ずかしいセリフを言ってしまったことに気が付き、

授業中だというのに一人身悶えてしまった。




そんなふうに毎日の通学も大切な時間となっている。

ただ、今では、俺もかずさの大学の有名人の一人になってしまったことだけは

失敗だった。

かずさは、冬馬曜子の娘というだけでなく、実力も兼ね備えたピアニスト。

しかも、誰もが認める美貌とくれば、注目を集めるてしまう。

その美人ピアニストを毎日送ってくる男がいれば、在校生が見逃すわけもなく。

大衆の監視がきびいしくても大学までかずさを毎日迎えにもいきたかったが、

こればっかりは時間割の影響で断念せざるをえなかった。

それでも、毎日のようにかずさの練習を聴きながら予習復習・レポートと、

自分の勉強をしている。

大学で会えない時間を埋めるために、わずかな時間でもかずさと触れ合っていたかった。





大学2年生になった俺たちは、今日も講義がある。

でも、今日だけは自主休校を余儀なくされた。

なにせ今日の主役であるかずさが、誕生日くらい一日中一緒にいたいとのことで。









俺も含め峰城大学附属高校の大部分の生徒は、そのまま峰城大に進学したが、

かずさだけは如月音楽大に一人進学した。

かずさを一人、別の大学に行かせるのは、いろんな意味で心配したが、

その心配通り、1年の夏季休暇まで友達ができなかった。

それでも、今では家に遊びに来る友人が二人ほどできたのだから、

おおいに進歩したといえよう。

ただ、夏季休暇中に、俺と一緒の時に偶然その二人に出くわさなければ、

後期日程も一人だった可能性も低くなかったと思えるが、

そんなこと考えても仕方がない。

きっかけは俺だったかもしれないけど、そのチャンスをものにしたのは

まぎれもなくかずさ自身なんだから。





そんなこんなで色々あったけど、充実した大学生活を送っている。

しかし、今なら笑い話にできるけど、できれば去年の誕生日のことは思い出したくない。















2008年5月28日水曜日







太陽の光が降り注ぎ、テーブルを埋め尽くす彩り華やかなケーキが輝いている。

これから食事だというのに既に胸やけを起こしていた。

今日の主役がうれしそうにテーブルを眺めているのを横目に

自分が食べられそうなものにチェックを入れる。

ほんのお飾り程度に添えられているサンドウィッチは食べられそうだ。

そう安心しきっていたが、手に取ってみるとフルーツと生クリームが

たっぷりのものだとあとになって気が付き、心が折れたことは省こう。







なにせ主役のかずさがこんなにも楽しそうにしているのだから。

もちろんケーキだけでかずさが喜んでいるわけではない。

かずさの誕生日に合わせて帰国した曜子さんが目の前にいることが

一番の要因だって思う。

口では悪く言ってるけど、本当は母親思いで、仲がいい親子なんだから。

その曜子さんに食事の準備を任せたのは失敗だったが。



曜子「どう? 美味しそうでしょ。

   私が日本に来たら食べたいケーキを片っ端から取り寄せたわ。」



曜子さんが目を輝かせながら、ケーキの特徴を紹介してくれるが、

俺は適当に相槌を打つしかない。

けれども、かずさは口角が上がりっぱなしで、くいるように聞きいっている。

さすが親子だと納得してしまう。



かずさ「あたしの誕生日ケーキなんだからな。

    母さんは、あたしに優先権があることを忘れるなよ。」



優先権がなくても、これだけの量があれば関係ないって言いたい。

そんな突っ込みを胸に押し込めつつ、俺が用意した平凡なイチゴのケーキに

ローソクを立てていく。

今日の為にあらかじめケーキを予約していたが、

曜子さんもケーキを用意するんなら、

キャンセルもできたのでいらないんじゃないかって言ったのが数日前。

それでも、二人で選んだケーキは外せないとのことで、

先ほど俺が受け取りにいってきたものだ。








春希「ほら、かずさ。ローソクに火をつけるぞ。」



ライターでローソクに火を付け、かずさをケーキの前に連れてくる。



曜子「やっぱり、誕生日の歌、歌わないといけないのかしら?」

かずさ「いいよ。恥ずかしい。」

曜子「そうは言ってもねぇ。」



曜子さんは俺の方を見ながら、テーブルの下からなにやら取りだす。



曜子「ギター君。はいこれ。」

春希「アコギですよね?」

曜子「そうよ。じゃあ、弾いてね。歌は、・・・・・あってもなくてもいいわ。」



曜子さんが突き付けるアコギは、どう見ても最高級品の一つだと思えた。

俺なんかが使っても、その性能の1割も発揮できない自信がある。



春希「いきなり言われても。」



援軍を求めて、かずさを見てみると、



かずさ「弾けよ、春希。久しぶりに春希のギター聴きたいな。」
    
春希「久しぶりだし、うまく弾けるかどうか・・・。」

かずさ「だったら、歌はいいよ。ギターだけでさ。」





主賓の希望に逆らえるはずもなく、曜子さんから渋々ギターを受け取る。







椅子に座り、ギターを試しにかき鳴らしてみても、

素人の俺には音の違いなんてわからなかった。

ピアニストを前にして、しかも、世界で戦う一流のピアニストを前にして

緊張すると思ったが、そんなこともない。

二人が俺にうまい演奏なんか求めてないって、初めからわかってるから。

つなたいながらも、かずさの為に、かずさを想って弾くことが大事だって

かずさに教えられてきた。

いつもかずさが俺のためにピアノを弾いてくれるように、

俺もかずさを想って演奏を始める。





二人とも真剣なまなざしで俺を見つめる。

曜子さんは一緒に歌ってくれるかもって、淡い期待としてたけど、

予想通り歌うことはなかった。



なんとかミスをしないで弾き終えた。簡単な曲だから当然なんだけど。

二人が俺に拍手をしてくれるが、俺にじゃなくてかずさにでは?と思ったが、

尊敬するピアニスト二人に誉められるのは、悪い気がしなかった。



かずさがローソクの火を消そうとケーキに顔を寄せる。

ローソクの火がかずさに反射して顔が赤くなっているが、

実際に照れて赤くなっていることに俺は気が付いていた。

微妙な違いを見分けないと気がつかないようなことだけど、

それに気がつくってことは、俺たちの親密さが深まったって喜ぶできなんだろう。






曜子「おめでとう、かずさ。」

春希「おめでとう。」

かずさ「ありがとう。」



俺は、曜子さんに感謝したかった。

かずさを産んでくれて。

まだ面と向かって言うことはできないけど、いつか言える日が来るんだろうか?

これからも、何度もかずさの誕生日を祝うんだ。

きっと、いつの日か言える日が来るんだろう。









食事が進み、話題の中心はいつしか俺のバイトについてに移っていく。

さすがに俺はケーキは一切れで遠慮して、冷蔵庫にある材料でパスタを作った。

二人にも一応食べるか聞いてみたが、食べるとのこと。

今も、ケーキとパスタを交互に食べるという離れ業を披露してくれている。



曜子「春希君、バイト増やすの?」

春希「はい。塾の講師の空きがあるそうで、それを紹介してもらおうかなと。」

曜子「へぇ~。春希君らしいバイトね。先生かぁ・・・。似合いそうね。」



どんな先生の姿を想像してるんだろうか?

おそらく俺の想像とは、かけ離れているに違いない。



春希「はは・・・・。ありがとうございます。」

曜子「春希くんのことだから、親身になって教えるんだろうなぁ。

   でも、かわいい生徒に手を出しちゃだめよ。浮気は許さないからね。」



やっぱり想像とは違った。

曜子さんが、かずさを横目で見ながら俺に笑いかけてくる。



やめてほしいのは、その挑発のほうです。

俺の浮気なんかより、よっぽどたちが悪いです。








あれ? 

なんか胸に雪でできたクギが突き刺さる痛みを感じる。

4本のクギが次々に突き刺さっていき、目の前が真っ白になりそうだった。



しかし、その痛みは一瞬のことだったので、痛みを押しのけて

かずさのフォローに走る。



春希「そんなこと絶対にないからな。

   そんなことしたら、塾の評判も下げてしまうし、バイトもクビになる。」

かずさ「わかってるって。いつもの母さんの安い挑発だろ。」



口では納得してるって言ってくれてるが、顔が引きつってるのだけは隠せてはいない。

みごとに挑発にのってるって言ったら、火に油を注ぐだけだろうな。



曜子「でも、なんでバイト増やすの?

   今もファミレスのバイトしてるんでしょ。」

春希「そうなんですけど、塾講師のほうが時給もいいですし。」

曜子「じゃあ、ファミレスはやめるの?」

春希「いいえ。それも続ける予定です。」

曜子「ふぅ~ん。」









曜子さんは納得してない様子で、俺の顔を覗き込む。

曜子さんの視線から逃げようとかずさの方を向くと、



かずさ「一人暮らしするためだろ?」



見事に仲間だと思ってた援軍から攻撃を受けてしまった。



曜子「へぇ~。なんか、そういう態度をとるところをみると、いやらしいわね。」



身をよじる曜子さんからは、色気が漂ってきたが、それに反応したら命が危うい。

自分の膝を力いっぱいつかみ、自制心を保ちながら否定する。



春希「そんなことは全然ないです。ただ単に、家を出たかっただけです。」



最後までは、曜子さんを見て話すことはできなかった。

下を向く俺に対して、曜子さんは少しだけ申し訳なさそうに謝罪してきた。



曜子「ごめんなさいね。」






ただ、そのわずかながらのしんみりさも一瞬のことで、



曜子「それなら、ここに引っ越してきなさいよ。」



爆弾発言を投下してくれた。

冬馬邸に俺が住む話は、3月にも一度あり、そのときは丁重にお断りしている。

親公認の仲とはいえ、俺自身、心の準備ができていなかった。

それに、高校の時の出来事も消化しきれていないっていうのが

主な原因だけど、それは、かずさも理解してくれている。


春希「それは一度お断りして・・・。」

曜子「うん、それはわかってるわ。でもね、

   この子ったら、大学で友達作れてないでしょ。その辺がちょっと心配で。」



全然心配しているようには見えない。

むしろ大学の級友なんて、教授も含めて、

みんな蹴散らしちゃえって思ってるようにさえ見える。

冗談はさておき、









春希「それは、俺も心配してるんですけど、

   俺が直接乗り込むわけにもいかないですし。」

曜子「でしょう。だったら、家で寂しくしているかずさを慰める相手が

   必要じゃない? 心が癒されず、やさぐれたまま大学に行っても

   友達なんてできやしないでしょ?」

春希「それはそうかもしれないですけど。」



かずさを見ても、自分には関係ないとばかりに美味しそうにケーキを食べている。

今日何個目のケーキか数えるのを途中でやめてしまったが、

仮にケーキが残ったとしても心配することもなさそうだ。



曜子「それに、年頃の女の子が一人暮らしっていうのも。

   普通の子だったらいいんだけど、

   私が有名すぎて、この子も目立っちゃうでしょ。」

春希「ええ、まあ。できる限りのサポートはさせていただいてます。」

曜子「でもねぇ、家までのりこまれてしまうかもって考えてしまうと・・・・。」

春希「それは・・・・。」







今度ばかりは助けてくれよと、かずさに「援軍頼む」と視線を送る。

かずさは俺の視線に気がつくも、それを無視して次に食べるケーキの物色を始める。

ここで重大な勘違いに気がつく。

かずさは、味方ではなかった。

最初から、曜子さんの仲間だったんだ。

どうもこの話はうまく進みすぎている感じがする。

バイトの話から、一人暮らしの話へ。

かずさと曜子さんが、あらかじめ準備していたのかもしれない。



力が体から抜けていくのを感じつつ、曜子さんとかずさをもう一度見る。

この顔は・・・・・・・・、

やはり、グルだった。

この瞬間、俺は敗北を認めた。







春希「わかりました。ここに引っ越させてください。」

曜子「そうしてくれると、助かるわ。」

かずさ「今日から、よろしく頼むな。春希。」

春希「ああ、よろしく頼むよ。・・・・・・え? 今日から?」



思いがけない台詞に心臓が跳ね上がる。

恐る恐るかずさの様子を確認すると、どうやら決定事項らしい。

その笑顔が物語っている。



曜子「安心してね。荷物の方は、今日春希君が家を出た後に業者がここに

   運ぶ手はずになってたから。

   今頃梱包が終わって、運んでいるころかしら?」

春希「はぁ~!?  家の鍵はどうやって?」

曜子「先日、お母様には挨拶に伺ったわ。とっても話がわかる方でよかったわ。

   今度食事に行く約束もしたのよ。楽しい方だから、仲良くなれそうね。」






素早い。

迅速すぎる。

俺が関与できないうちに、全てを手早く処理している。

もう詰んでしまった。

朝この家に上がりこんだときには、全てカードがそろっていたんだ。



それにしても、母さんまで巻き込まれているとは。

何年ぶりになるか覚えていないけど、一度話あったほうがいいかもしれない。

お互い興味がないと言っても、曜子さんが関わってしまっているんだ。

なにかしら手を打っておかないと、気がつかないうちに結婚式の準備が

完了しているかもしれない。

結婚するのが嫌なのではなく、むしろ結婚したいけど、

かずさと二人で話し合いながら、新しい家庭を一つ一つ作り上げていきたい。








春希「もう降参です。すべて受け入れますから、

   まだ隠していることがあるんなら話してください。」



全面降伏の白旗を上げてもなお、最後の抵抗はしてみる。



春希「でも、光熱費・食費・家賃がわりのお金は払いますからね。」

曜子「わかってるわ。そのことも考えているから。」



俺が降伏条件を出すことさえも予想していたなんて。

曜子さんの手のひらの上で躍らせれてしまっている。





曜子「悪いけど、塾講師のバイトは諦めてちょうだい。」


春希「わかりました。」



もはや敗残兵にできることはない。



曜子「やってもらいたい仕事は二つ。」

春希「二つかけもちですか。」

曜子「一つ目の方は、今は仕事が多くないの。だから、2つ目の方がメインかな。」

春希「わかりました。」

曜子「一つ目は、日本にあるうちの事務所スタッフ。

   そして、2つ目は、開桜社っていう出版社の編集サポート。」

春希「出版社なんて、簡単にバイトできるんですか?」

曜子「その辺は大丈夫。ちゃんとコネがあるから。」







一人ヨーロッパで勝ち残ってきた凄味がある人だ。

今は欧州がメインだけど、日本にも深い人脈があるんだろう。



曜子「で、一つ目から説明していくわね。」

春希「わかりました。」

曜子「うちの事務所は、私がヨーロッパメインだから、それほど仕事はないわ。

   それでも、美代ちゃん・・・・、うちのスタッフね。

   美代ちゃんの下について、かずさがこれからどんな世界に挑もうとしているか

   知ってほしいの。

   もちろん、春希くんの将来は強制しないわ。

   将来、春希君にかずさのサポートをしてもらえたら、頼もしいけど、

   それを強制することはできない。だって、春希くんの人生なんだもの。」

春希「・・・・・・・・・・・・。」




わかってますと視線を送り、話の先をうながす。






かずさのサポート。何度も考えてきた仕事の一つではある。



曜子「それでもね、クラシックの世界をもっと知っておいてほしいの。

   どのような将来があるにせよ。

   でね、二つ目の開桜社なんだけど、

   これはマスコミを知ってほしいってことかな。」



たしかに、これだけの美貌をもってすれば、実力との相乗効果で

マスコミもほっておくこともあるまい。

ましてや、日本のマスコミだったらと思うと、想像をぜっする過熱ぶりをうかがえる。



俺が先走った想像をして、げんなりした顔を見せると、

曜子さんは俺の想像に気がついたようで、






曜子「そんな顔しないで。マスコミとは、うまく付き合っていかないと

   生き残れないのよ。」



マスコミが、どのように評価するにせよ、

かずさを売り込むにはマスコミは不可欠である。



曜子「アンサンブルっていう音楽雑誌の編集長と仲が良くてね。

   そのつてで開桜グラフに潜り込めそうなのよ。」

春希「なんか、コネ入社みたいで、気がひけますね。」

曜子「それは大丈夫よ。

   もし使い物にならないようだったら、叩き潰してでも使えるように

   鍛えなおしてほしいって注文しておいたから。」







笑いながら話す内容ではなかった。

にこやかにほほ笑む曜子さんが悪魔にみえる。

「叩き潰してでも」って、それはすでにアウトだろ。



曜子「風岡さんっていう、若いけど優秀な人の下で働く手はずになってるわ。

   今度面接があるから準備しておいてね。」

春希「面接ですか。」

曜子「顔見せと、仕事の説明を兼ねてのミーティングみたいなものだから、

   安心して。」

春希「わかりました。」






このときは、知る由もなかった。

顔見せという軽い言葉は存在しないって。

昼ごろ面接に行き、家に帰るのに翌日の始発を利用するなんて。

もちろんかずさには遅くなるって連絡していたが、

寝ずに待っていたかずさによる眠気が吹き飛ぶような出来事が待ち構えていた。

それは、また別の話だが・・・・・。








曜子「それじゃあ、もう少ししたら、引っ越し業者が来ると思うから、

   その時は春希君お願いね。

   部屋は、かずさと同じ部屋を使ってね。」

春希「え?」



まだ爆弾を隠していたとは。

油断していた。

いや、もっと早く気付くべき内容だったのに。

しかも、わざとこの話を最後にとっておいたみたいだ。

曜子さんの意地悪そうな笑顔が、さらに輝いている。







曜子「最初は、寝室は同じでも勉強部屋は別に用意しようと思ってたんだけど、

   かずさがねぇ。」



曜子さんが、この引っ越しの真の首謀者に視線を送る。



かずさ「母さん! って、もうばれてるだろうからいいか。」



今まで自分には関係ないって顔をしてケーキを食べていたかずさがついに顔を上げる。

悪びれる様子もなく、初めからこうなるの筋書きだと言わんばかりだった。



曜子「これね、私からの誕生日プレゼントだったの。」

春希「やはりそうでしたか。」





苦笑いさえできそうになかった。

ただただ策士たちを誉めたたえたい気持ちでいっぱいだ。



かずさ「母さん。

    春希。

    誕生日プレゼント、ありがとう。」



こんな笑顔を毎日みられるんなら、俺の気苦労なんて安いものだ。

かずさに家事なんて任せられないし、料理のレパートリーももっと増やしたい。

今でも夕食は毎日俺が作ってるけど、大学にもっていくお弁当にも挑戦したい。

やるべきことはたくさんある。

だけれども、かずさと一緒なら、

その全てが楽しいイベントになってしまうことだけは確信できた。












終劇














あとがき





かずさ誕生日記念作品です。

リクエストで夢想が人気あったので、夢想を題材に書いてみました。

といいましても、IC夢想で雪菜との決着がついていないので

今回雪菜は登場させることができませんでした。

なにせ、雪菜登場させたら、話が長くなる・・・・・。

とまあ、ここからは、まじの謝罪。

この作品、

実は・・・・・・・・・・、前編です。

この話のあとにくる話が最初に作ろうとした話で、今回のは前振りみたいなもので。

書いてみたら、思ってた以上の分量になってしまった・・・・orz

前編・後編(仮)合わせて5000字くらいの容量を予定してたのに

なんでこうなったんでしょうか?

しかも、書いているうちに、追加エピソードフラグまで立ちまくりで、

『世界中に向かって叫びたい』の続編もにおわせておきながら

申し訳ありません!

後編(仮)ですが、また機会があったら書いてみようと思います。




cc~coda編ですが、cc編は、あらすじだけなら全部できてます。

coda編も、なんとなく道筋できています。

でも、実際書くとなると、書いても書いても終わりませんorz

毎回言い訳してる気が・・・・・。




つたない文章ですが、読んでくださると、大変うれしいです。

それでは、次回・・・・・・・・、どの作品なんでしょうか?

いやまじで、cc編書きすすめます。








黒猫 with かずさ派














黒猫--アップ情報




WHITE ALBUM2


『ホワイトアルバム 2 かずさN手を離さないバージョン』長編
(かずさNのIFもの。かずさ・春希)

『心はいつもあなたのそばに』長編
(かずさNのIFもの。かずさ・曜子・春希)

『ただいま合宿中』短編
(かずさ編・雪菜編)

『麻理さんと北原』短編
(麻理ルート。麻理・春希)

『世界中に向かって叫びたい』短編
(かずさT。かずさ・春希・麻理)

『誕生日プレゼント~夢想』短編
(夢想。かずさ・春希・曜子)






やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。


『やはり雪ノ下雪乃にはかなわない』短編
(由比ヶ浜誕生日プレゼント後あたり。雪乃・八幡)









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