勇者「みんな死んだ」(35)

※世界観はドラクエ3になると思います

勇者「俺は、俺達4人は魔王に挑んだ」

勇者「負けた」

勇者「戦士は文字通りに八つ裂きにされた」

勇者「僧侶は木っ端微塵になった」

勇者「魔法使いは消炭になった」

勇者「俺は、最後に、仲間の死に様を見せられてから、呆気なく心臓を貫かれた」

勇者「目が覚めたら、俺は教会にいた」



勇者「俺しかいなかった」

勇者「肉体を修復不能にされた3人は生き返らせる事が出来ないらしい」


勇者「俺は心臓を貫かれただけ」


勇者「死ぬなら俺で良かった筈だ」

勇者「なんで元々一般人だったあいつらなんだ」

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チュンチュン

勇者「…………」

勇者「……嫌な夢だ」

勇者(……俺は、立ち直れない)

勇者(魔王は全く本気じゃなかった。その魔王に俺達は歯が立たなかった)

勇者(怖い物知らずだった俺達。ドラゴンだって、巨人だって敵じゃなかった)

勇者(魔王は…格が違った)

勇者「……朝食でも取ろう」

商人「あのぅ…昨日のお酒の代金がまだ未払いでして……」

勇者父「あぁ?あの勇者の父親に店の商品を売れねぇってのか?」

商人「め、滅相もありません!すぐにお持ちします!」

勇者父「客に失礼な態度を取ったらそれ相応の補償はするもんだよなぁ……今日な、勇者の事で王様と会食するんだ。城下街の酒屋の一つや二つ簡単に……」

商人「も、勿論お代は要りません!無料で差し上げます!」

勇者父「あぁ、それが当然だよな。……お、勇者。起きたのか」

勇者「うん……父さん、朝食ある?」

勇者父「街で適当に食べてこい。金なら腐る程あるからな、お前のお陰で」

勇者「……そう」


勇者「…………」スタスタ

勇者母「あら~?勇者じゃない、どうしたの~?」

勇者「あ、母さん……また朝まで飲んでたの?」

勇者母「ちょ~とお友達とね~。うふふ、見て見て、似合う?」

勇者「また宝石買ったんだ……うん、似合うよ」

勇者母「でしょう?お友達もそう言ってくれたわ~。じゃ、待ち合わせしてるから」

勇者「うん、気を付けて」


勇者(……母さんから、男物の香水の匂いがした)


勇者「……」モグモグ

店主「これはこれは勇者様、旅は順調ですか?」

勇者「……それは、俺達が全滅したのを知って聞いてるのか?」

店主「いーえ?そのようなつもりは。ですが、勇者様の補助の引き換えに私達に多額の税が……」

勇者「……もういい、金はここに置いておくから」

店主「お帰りですか。またのお越しを、勇者様」

勇者(……昔はこの人も良い人だった。変わらないのはしょぼくれたサンドイッチの味だけ)

「おいおい聞いたか?勇者様ご一行が魔王に負け帰ってしたんだとよ」

「情けねぇなぁ。俺達の税金まで使っておいてそのザマかよ」

勇者「…………」スタスタ

「お?あれって噂の勇者様じゃねぇの?」

「呑気に散歩かぁ?さっさと魔王倒して世界を平和にしてくれませんかね~?」

「ぷふ、止めとけよ聞こえるって」

勇者「…………」スタスタ

勇者(なんで俺が勇者なんだよ……)

勇者(精霊の御告げなんか知ったこっちゃない、俺はもっと平和に暮らしたかった)

勇者(死ぬ程訓練して、色んな魔法や剣技を習得してもこのザマだ)

勇者(どうしろって言うんだ……)


子供「あ、ゆうしゃさまだー」

勇者「……?」

子供「ゆうしゃさま、負けちゃったのー?」

勇者「……あぁ」

子供「そっかー。じゃ、これあげるー」

勇者「これは……花?」

子供「うん、ゆうしゃさまがかてるようにまほーをかけたお花だよー」

勇者「……ありがとう、大切にする」

子供「うん!頑張って~!」

勇者(……押し花にするか。やり方なら魔法使いに教えてもらえば……)

勇者(…………)

勇者(そう、だったな。俺以外、みんな死んだんだった)

勇者(いい仲間だったなぁ……気さくで、頼りになって……俺なんかよりよっぽど立派な仲間だった)

勇者(……僧侶、戦士、魔法使い……お前等の死を無駄にしない為にも、俺は立ち止まらない)

勇者(俺は……勇者だから)

勇者「……立ち直った。色々あったけど、やっぱり世界を平和にしてやる」

勇者「となると……仲間を探さないと」

勇者「……一人じゃ、絶対に魔王に勝てない。でも、もう死なせたくない……」

勇者「……取り敢えず、酒場に行って手練れを探そう」

酒場

勇者
「…………」

ガハハハハ!イイゾモットヤレ!
カワイイワネアナタ。オネーサントイイコトシナイ?
アッハッハッハ!

勇者(……ダメだ、全員俺より弱い。昔はもっと強い人がいた筈なのに……)

勇者(……いや、俺が強くなったのか。自惚れじゃなくて)

「マスター!お酒お酒!」

店主「アンタはツケを払い終わったら売ってやる」

「えー!ケチケチすんなよクソがー」

店主「全く……こんなのが賢者とは、世も末だ」

勇者「え、賢者……!?」

賢者「ん?誰かアタシを呼んだか?」

勇者「賢者って、あの賢者?」

賢者「いや、そーだけども……アンタ誰?」

ゆう

勇者「賢者って、あの賢者?」

賢者「いや、そーだけども……いきなりなんだよ」

勇者「信じられない……賢者は、魔法を極め、厳しい修行を耐え抜き、悟りを開いた者だけがなれるって……」

賢者「あー違う違う。アタシは遊び人からの賢者」

勇者「……はぁ?遊び人?」

賢者「そーだ。凄いだろ?」フンスッ!

賢者「カジノでボロ負けして、人生八方塞がりになった訳よ。んで、その反動で賢者への悟りを開いたって訳だ」

勇者「意味が分からないって。賢者ってそんな、そんな低俗な……」

賢者「うっせーな。稀にいるんだってよ、アタシみたいのが。ダーマのおっちゃんが言ってた」

勇者「……本当、世界は不思議だなぁ」

賢者「不思議だ不思議。で、何の用なんだ」

勇者「あっ、その……」

中略

賢者「……そか、それで仲間を探してるんだな」

勇者「……不甲斐ない」

賢者「んにゃ、お前は悪くねぇよ。戦いもしねぇで文句を垂れてる奴よりよっぽど懸命だ」

勇者「はは、ありがとう。それでさ……良かったら仲間に」

賢者「金」

勇者「えっ、金?」

賢者「契約金、一ヶ月に1000G。それで天下の賢者様が魔王討伐のお供になってやる」

勇者「いや……契約金は払えるよ。でもさ、さっきも話したけど危険な旅で……」

賢者「うっせーな。せっかくの賢者なんだ、金も稼ぎつつ名声も欲しい」

勇者「うわ、動機がゲスい」

賢者「と に か く!契約成立だ。いつ出発する?」

勇者「うーん……この街で君以上に強いのはいないだろうし、明日の朝には出発しようと思う」

賢者「分かった。なら、明日の6時に城下の門に集合しよう」

翌朝 集合時間

勇者(……母さんも父さんも帰ってこなかった。二人ともが遊び歩く…俺が勇者になってからだ)

賢者「おっす、勇者。何シケたツラしてんだよ、もっと明るく行こうぜ」

勇者「え、あ……そうだよな、再出発だし」

賢者「分かればいい、笑えー!」グィー

勇者「いたたたたた!いひゃいいひゃい!引っ張るな!」

賢者「はははは!さぁて、明るい始まりになった所で、出発だ!」

勇者「騒がしい旅路になるな、これは」

今更ですが、ルーラ無しでお願いしますm(_ _)m



賢者「いかにも魔物が出そうな場所だな!」

勇者「なんで嬉しそうな顔をしてるんだ……」

賢者「昔から冒険が好きでよ、だからカジノで大冒険を……」

勇者「っと、魔物だ」

賢者「あ?スライム二匹にドラキーが一匹……よし、アタシがスライムをやるから勇者はドラキーを」

勇者「ギガデイン」

ズバァァァア!!

賢者「……なぁ、アタシ必要か?会って二秒で消炭になったぞ」

勇者「ここら辺の魔物は大したことない。さ、先を急ごう」

賢者(……やっぱ勇者だな。強い)



賢者「ん~~……結構歩いたけど、勇者のギガデイン見てビビったのか、魔物が全然出ねぇな」

勇者「だな。日も暮れて来たし……ここで野宿か」

賢者「おう、野宿初体験だ。ワクワクするぜ」

勇者「やってみると案外地味、焚き火するから枝とか集めて来て」

賢者「あいよー」

勇者「さてと……干し肉に薬草、黒パンと。薬草と干し肉でスープでも作ろう」

勇者(賢者の好み聞くの忘れた……まぁ、いいか。なんでも食べそうだし)

賢者「薪、集めてきたぞー。よいしょっと……」

勇者「ありがとう。火、お願い出来るか?」

賢者「余裕余裕、メラ!」

ボウッ!

勇者「後は水を張った鍋を置いてと。あ、ここら辺に川あったか?出来るならこまめに補充しときたい」

賢者「んー……一応あるとは思うけど、街までそんなに無いんだろ?大丈夫じゃねぇのか?」

勇者「いーや、念の為に補充するべきだって。朝、汲みに行こう」

賢者「真面目だねぇ……分かった、賛成。それより飯ー」

勇者「分かった分かった……」

勇者「…………」コトコト

賢者「……」

勇者「…………」グツグツ

賢者「……遅ーよ!なに料理人みたく真剣に料理してんだよ!」

勇者「なっ、どうせ食べるなら美味しい方がいいだろうが」

賢者「いーや!飯なんざ腹に溜まればいいんだよ!」

勇者「あーお前、人生の6割損してる。残りの4割はその堕落した生活」

けん

勇者「…………」コトコト

賢者「……」

勇者「…………」グツグツ

賢者「……遅ーよ!なに料理人みたく真剣に料理してんだよ!」

勇者「なっ、どうせ食べるなら美味しい方がいいだろうが」

賢者「いーや!飯なんざ腹に溜まればいいんだよ!」

勇者「あーお前、人生の6割損してる。残りの4割はその堕落した生活」

賢者「むきーっ!つまり10割損じゃねぇか!」

勇者「はいはい、絶対美味いって言わせてやるから、黙って待ってなさい」

賢者「む、むぅ……不味かったら承知しねぇかんな」



賢者「……美味いな」モグモグ

勇者「だろ?食事を疎かにするのはその料理に使った食材にも失礼だからな、俺達は命を食べてる訳で」

賢者「いちいち真面目だねぇ……おかわり」

勇者「ん、パンは?」

賢者「パンもおかわり」

賢者「ふぅ……腹一杯だ。ごちそーさん」

勇者「お粗末様でした。皿と鍋を洗うから手伝ってくれ」

賢者「えー……だりーよ……」

勇者「馬鹿、働かざる者食うべからずだ。さっさと立つ」

賢者「ホントにオカン気質だなおい……はいはい、わかりましたよーだ」

勇者「ほら、持て」

賢者「っ、とと…人使いが荒い、こういうのって男が持ってくれるもんだろーが」

勇者「女扱いして欲しかったら女らしくしてほしいな」

賢者「ぐぬぬ……」

勇者「ほれ、無理だったら川までシャキシャキ歩く」

賢者「くそぅ……」

賢者「ふぁあ……」バシャバシャ

勇者「眠いのか?」ゴシゴシ

賢者「ちょっとな……ホントは身体を洗いたいけどな」

勇者「あー……町まで我慢してほしい。水浴びはある意味寝てる時より無防備だからなぁ」

賢者「おう……よし、洗えたぞ。戻ろうぜ」

勇者「お疲れ。見張りは俺がやっとくから気にせず寝てくれ」

賢者「ありがとな~……」スタスタ

賢者「すぅ……くぅ……」

勇者「気にするなとは言ったけど、呑気だなぁ……」

勇者「……普通にキャンプみたいで楽しかったな、今日」

勇者「夜明けまで6時間、暇になった……」

賢者「んっ、んん……」

勇者「…………」

勇者(……一瞬、一瞬だけ。本当に一瞬だけ色っぽく……)

勇者(いやいやいや!冒険再出発初日の夜に俺は何を……はぁ、眠気が飛ぶのはいいけども、なぁ……)

翌朝

賢者「んっ~……なんて清々しい朝。酒を飲まなかった次の日の朝ってのはこんなに爽快なのか」

勇者「……おはよう」

賢者「おう、おはよう……って、お前、寝てないのか?」

勇者「これぐらい、普通普通……あー…いつもより疲れたけど」

賢者「うっ、やっぱり魔物と戦ってたのか?なんで私を起こさない……」

勇者「いや…魔物は一匹も見てない。けど戦ってた」

賢者「……はぁ?」

勇者(欲望と理性の戦い……欲望の強さが凄かった……)

数十分後

勇者「じゃ、街に向けて出発」

賢者「この距離なら昼までに着きそうだな、個人的には風呂に入りたい」

勇者「ズボラなクセに綺麗好きだな……」

賢者「女として最低限の嗜みだ、タコ。さっさと行くぞー」

勇者「ちょ、待てって。なんでそんなに大股なんだ」

賢者「おせーよ、早く歩きやがれー」

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