ほむら「ゲッターロボ!」 (204)

原作版ゲッターロボとまどかマギカのクロスです。


「まどマギでやる必要があるの?」の最たる内容ですが、自分がまどかとゲッターが好きと言う理由のみでクロスさせて見ました。

ノンビリいきますが、よろしければお付き合いください。

なお、地の文が多めになってしまいましたが、その手のが苦手な方はご注意ください。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1400685545

ほむら「ゲッターロボ!」第一話


・・・
・・・


幾度目かのワルプルギスの夜


私はワルプルギスの夜との戦いに傷つき、持てる力を全て使い果たし・・・そして、今。

瓦礫に挟まれるように、ボロキレのような身体を横たえていた。


ほむら 「どうあっても、勝てない・・・」


絶望で心が黒く染まりそうになる。

そんな時だ。


まどか 「ほむらちゃん」


私の横に、まどかが降り立ったのは。

凛とした顔で。

魔法少女の衣装に身を包んで・・・

ほむら 「まどか・・・その姿・・・」

まどか 「ウェヒヒ、ごめんね。私、キュウべぇと契約しちゃった・・・」

ほむら 「まどか、どうして・・・こんなの、だったら、私は今まで何のために・・・」

まどか 「ほむらちゃん、ありがとう。ほむらちゃんが今まで、私のために頑張ってくれた事、すっごくすっごく感謝してるよ」

まどか 「だけど、だからね。もう良いんだよ。ほむらちゃんはもう、一人で頑張らなくってもいいの」

ほむら 「まどか・・・」

まどか 「あとは私が何とかするから。だから、ほむらちゃんは安全なところまで逃げて?」

ほむら 「だめ・・・それじゃだめだよ!まどかが戦ったら、たとえ勝てたって・・・っ」

まどか 「私は平気。ほむらちゃんを置いて、絶対に負けたりなんてしないから。だからね、ほむらちゃん・・・」

ほむら 「・・・」

まどか 「私が帰ってきたとき、笑顔で迎えてくれたら嬉しいなって」

ほむら 「っ!」

まどか 「じゃ、行ってくるね、ほむらちゃん!」

ほむら 「ま、待って!行っちゃだめ!これじゃ、あいつの思うつぼよ!」

ほむら 「・・・くっ、まどか一人を戦わせたら、まどかは魔翌力の消費に耐えられずに、魔女に・・・」

ほむら 「そんなのダメ・・・私も行かなきゃ!まどかと一緒に戦わなくちゃ・・・っ!」


ほむら 「・・・でも」


ほむら 「もう・・・なにも無い。武器も弾薬も、私自身の魔翌力も・・・」

ほむら 「戦えない・・・これ以上わたしにはできることがない・・・まどか・・・」

ほむら 「救いたいのに・・・あなたを助ける私になりたかったのに・・・」

ほむら 「まどか・・・まどかぁ・・・」


ほむら 「まどかぁあああーーーーーっ!!」

・・・
・・・


ほむら 「また、だめだった・・・」


何度も何度も同じ時間を繰り返し、私は時の迷宮を彷徨い続けてきた。

たった一人の大事な人を救うために。

まどかの幸せを守る。

たったそれだけのために。


だけれど、そんなささやかな願いにすら、私の手は届かない。

同じ時を繰り返えし、そのたびに、まどかの人生はいつも無残に踏みにじられる。

それを私は阻止する事ができない。


ほむら 「あと何度、あと何回繰り返せば、まどかを救う事ができるの・・・?」


誰に問うでもなく吐いた言葉に、もちろん答えは返ってこない。

今回も・・・

まどかは、ワルプルギスの夜との戦いで窮地に陥った私を救うために、インキュベーターと契約を交わしてしまった。

そして魔法少女となったまどかは、ワルプルギスの夜を一撃で屠った後・・・

私の目の前で・・・

魔女に・・・成り果ててしまったのだ。


キュウべぇ 「やれやれ、見事なものだね」

ほむら 「インキュベーター・・・」

キュウべぇ 「彼女は最強の魔法少女として、最大の敵を倒してしまったんだ。もちろん後は、最悪の魔女になるしかない」

キュウべぇ 「とはいえ、ここまで強大凶悪な魔女になるなんて、僕の予想を遥かに超えていたよ」

ほむら 「よくもぬけぬけと・・・お前のせいでまどかは・・・まどかはっ」

キュウべぇ「彼女は自らの望みで君を救うために魔法少女になったんだよ。僕を責めるのはお門違いというものじゃないかな」

ほむら 「・・・くっ」

キュウべぇ 「それで、暁美ほむら。君はこれからどうするんだい?」

ほむら 「・・・決まってる。私は何度でも繰り返す」

キュウべぇ 「・・・?まどかとは戦わないのかい?」

ほむら 「いいえ、私の戦場はここじゃない」

キュウべぇ 「・・・暁美ほむら、君は」


奴の問いかけには答えず、私は魔翌力を左手に装着されたバックラーに集中させる。

時を逆戻すため。新たな時間軸へと旅立つために。

何度でもやり直し、まどかを救うために。

ほむら 「でも・・・」


また、同じ事の繰り返しになるのではないだろうか。

不安が黒い霧となって、私の心を覆いつくそうとする。

一体どうすれば、まどかを救うことができるのか。私には皆目見当がつかない。光が見えない。


色々な方法を試してきた。

思いつく限りの様々な手段を。しかし、それらは一つとして実を結ぶ事はなかった。

まどかはどの時間軸においても、ただの一回たりとて救われる事は無かったのだ。

ほむら 「それは・・・私に力が足りなかったから」

キュウべぇ 「・・・力?」

ほむら 「そう、力・・・力が、力があれば」


ワルプルギスの夜を凌駕し、まどかしてを戦わせる必要の無い力を私が持つことができていたなら。


ほむら 「今日だってあそこで、まどかを契約させる事もなかった」

キュウべぇ 「・・・」

ほむら 「なぜ、私には力が無いの・・・?ほかの魔法少女のように、魔翌力に裏打ちされた力が・・・」

>>12

訂正


ほむら 「なぜ、私には力が無いの・・・?ほかの魔法少女のように、魔翌力に裏打ちされた力が・・・」


失礼しました。

あれ?訂正できないな。

気にせず先に進みます。

美樹さやかの持つ剣のような。

佐倉杏子の槍のような。

巴マミのマスケット銃のような。

・・・まどかが放った矢のような。


ほむら 「力っ、力が欲しい・・・っ。彼女を守る私であるための力が・・・っ」

ほむら 「力がっ!!」


その時だった。

私を取り巻く空間全体が、眩く光ったのは。

ほむら 「っ・・・?」

キュウべぇ 「!?」


辺りがまるで、フラッシュを焚かれたかのように、真っ白に染まる。

目に突き刺さるような強烈な閃光に、私は瞼を閉じずにいられない。


ほむら 「なに、なにが起こったの!?」

キュウべぇ 「わからないけれど、攻撃の類ではないようだね」

ほむら 「お前達が何かを仕組んだんじゃないの?」

キュウべぇ 「僕たちの理解の範疇を超える出来事も、起こりえるっていうことだよ」

ほむら 「・・・」

そして。

数秒の後。


キュウべぇ 「・・・暁美ほむら。目を開いて、あれを見てごらん」


感情を持っていないはずのキュウべぇが、珍しく声に驚きの色をのぞかせながら私の名を呼ぶ。


キュウべぇ 「あれは、なんだと思うかい・・・?」

ほむら 「あれ・・・?」


その声に誘われるように、恐る恐る開いた私の瞳に映ったものは・・・


ほむら 「・・・え?」


巨大な人型の”何か”だった。

メール欄に半角でsagaって入れれば魔力ってなるよ

それは赤い体躯に、二本の角を生やしたような特徴的な頭部を持つ”何か”。

ワルプルギスの夜に匹敵する巨体を誇るかのようにそびえ立ち、私たちを睥睨していた。


ほむら 「これって、まるで・・・」

キュウべぇ 「ロボットだね」

ほむら 「ロボット・・・?」

キュウべぇ 「そうとも。まるで君たち人間の子供が好んで見る、アニメに出てくるロボットに瓜二つじゃないか」

>>18

ご丁寧にありがとうございます。

助かりました。

ほむら 「言われてみれば・・・でも、そんな物がどうして」


なりはああでも、魔女の一種なのだろうか?


キュウべぇ 「それは無いようだ。あれには魔女の持つ特有の、呪いの波動が感じられない」

ほむら 「それじゃ、一体・・・」

キュウべぇ 「ぼくにも分からないよ。こんな現象、この星に来て初めてお目にかかるしね。だけれど・・・」

ほむら 「なに・・・?」

キュウべぇ 「・・・あのロボット、あれはもしかして、同じ・・・」

ほむら 「え・・・?」

>>1

メール欄にsagaって入れておくと
魔力
とか
殺す
とか、普通に出るようになるからやってみ

キュウべぇ 「感じるんだ、あのロボットから。あれは・・・僕たちと同じ・・・」

ほむら 「同じ?・・・それって、どういうk


ここまでだった。

私の意識は暗転する。

バックラーに充填された魔力が発動し、私は新たな時間軸へと意識を飛ばされたのだ。

あのロボットの正体。

最後にキュウべぇが何を言おうとしたのか。

謎は全て、もう二度と戻ることのない時間軸の壁の向こうへと、置き去りにする他にはなかった。


そして、もう幾度繰り返したか分からない。

まどかで出会う”運命の日”が、また訪れる・・・

>>22

22さんもありがとう。

勉強になりました。

・・・
・・・


3月25日



見滝原中学校 二年生の教室
 


和子 「今日は皆さんに大事なお話があります。心して聞くように」

和子 「目玉焼きとはっ!固焼きですか!?半熟ですか!?はい、中沢君!」

中沢 「あ・・・ええと・・・い、いやぁ、僕は・・・ちょっとよく分からないです・・・」

和子 「ハッキリしない男性は嫌われますよ!では、(きょろきょろ)流君っ!」

竜馬 「んぁ?」

和子 「目玉焼きとはっ!固焼きですか!?半熟ですか!?」

竜馬 「そんなん、どっちでも良いんじゃないですかね?出されたなら俺は、どっちもありがたく頂きますよ」

和子 「その通り、どっちでもよろしい!たかが卵の焼き加減なんかで女の魅力が決まると思ったら大間違いです!」

竜馬 「でもまぁ、先にどっちを食いたいか聞いてくれたら、その時の気分で食いたい方を選ばせて貰いますけれどね」

和子 「え・・・あ、ああ。な、なるほど」

竜馬 「もう、座っていいっすか?」

和子 「そうね・・・確かにそう。あの時私が卵を割る前に、一言でも声をかけていたら・・・あんな行き違いも無かったはず・・・」

竜馬 「せんせー・・・?」

和子 「あ、はい。流君、座ってよろしい。えー、女子の皆さんはくれぐれも、卵の焼き加減にケチをつけるような男とは付き合わないこと。男子の皆さんは、そのような大人には決してならないように」

和子 「あと私は、もう少し段取りと言うものを勉強してみたいと思います。人間、幾つになっても学ぶと言う姿勢を失ってはいけませんね」

さやか 「な、何の話なんだろう・・・?」

まどか 「さぁ・・・うぇひひ・・・」

和子 「さ、て。あとそれから、今日は皆さんに転校生を紹介しまーす」

さやか 「そっちが後回しかよっ!」

和子 「暁美さん、入ってらっしゃーい」


ほむら 「・・・」がらっ


ざわざわ・・・


竜馬 「・・・っ!」

さやか 「うわっ、すげー美人!」

和子 「はーい、それじゃ自己紹介、いってみよー」

ほむら 「・・・暁美ほむらです。よろしくお願いします」

和子 「はーい、はくしゅー。暁美さんは心臓の病気で長く休学していたの。久しぶりの学校で戸惑う事も多いでしょう。皆さん、力になってあげて下さいね」


はーい


ほむら 「・・・」じっ

まどか (う、なに・・・??なんか私、睨まれてる!?)

ほむら (まどか・・・今度は。今度こそ、あなたを救ってみせる・・・)

見慣れた風景。見慣れたやり取り。

そして、見慣れた面々・・・

何度も繰り返した”転校初日”という特異な体験の中にあって、私はふと違和感を覚えた。


ほむら (なんだ・・・?)


違和感の先へと視線を走らせる。すると、一人の男子生徒と視線がかち合った。

いや、視線が合うと言うよりも・・・


ほむら (・・・睨まれている)

クラスの視線を一身に浴びている今にあって、ひときわ強い視線を彼から感じる。

それは他のクラスメイトの好奇に満ちた眼差しとはまったく異なり、刺すような、えぐるような力強さを持って私に投げつけられて来る。


竜馬 「・・・」

ほむら (あの男子生徒・・・誰?見ない顔・・・少なくても、今までの時間軸でのクラスでは見たことが無い顔だ・・・)

竜馬 「・・・」

ほむら (ただの視線じゃない。この投げつけられてくる、むき出しの感情は・・・そう・・・戸惑いと、もう一つ・・・)


・・・敵意だ。

和子 「じゃ、そうねー・・・暁美さんの席はっと。・・・流君の隣が空いてるわね」

ほむら 「ながれ・・・くん?」

和子 「ええ。はい流君、挙手ー」

竜馬 「・・・」すっ

ほむら (あの男・・・流と言うのか・・・)

和子 「彼の隣に座ってくれるかしら。流君も彼女が困っていたら、いろいろ助けてあげてくださいね」

竜馬 「・・・ぅす」

ほむら 「・・・よろしく」

竜馬 「ああ」

ほむら 「・・・」

竜馬 「・・・」

・・・
・・・


昼休み。


私は好奇心旺盛なクラスの女子に囲まれ、質問攻めにあっていた。

転校初日の通過儀礼。


「暁美さんって、前はどこの学校だったの?」

「前は部活とかやってた?文科系?運動系?」

「すごくきれいな髪だよね~。リンスは何を使っているの?」


投げかけられる質問はあらかじめ分かっている。

だから私は、悪印象を与えない程度に、当たり障りの無い答えではぐらかす。


? 「ロボット、見たことがあるか?」


そこに唐突にも、耳慣れない質問が飛び込んできた。

ほむら (ながれ・・・りょうま?)

竜馬 「ロボットだよ。でかい奴だ」

ほむら 「いきなり何の話?」

竜馬 「具体的に言わないと分からないか?じゃあ、全長は38メートル。重量は220トン。機体のメインカラーは赤で・・・」

ほむら 「ちょ、ちょっと・・・」

竜馬 「頭部には角のような突起がついている」

ほむら 「っ!」

竜馬 「心当たり大有りって顔だな、ええ?」

ほむら 「あなたはいったい・・・」


? 「暁美さん、ちょっと良いかな?」


竜馬 「・・・」

ほむら 「あ・・・」

まどか 「暁美さん、保健室行かなきゃならないんでしょ?場所、分かる?」

ほむら (まどか・・・)「い、いいえ・・・」

まどか 「じゃ、案内するよ。私、保険委員だし。みんな、ごめんね。暁美さん、休み時間は保健室でお薬飲まないといけないんだ」

「あー、そうなんだ。ごめんね、暁美さん」

「またあとでねー」

まどか 「流君も、ごめんね?」

竜馬 「別に」

まどか 「じゃ、行こうか」

ほむら 「ええ・・・」

・・・
・・・


廊下


まどか 「ごめんね、みんな悪気は無いんだけれど、転校生なんて珍しいからはしゃいじゃって」

ほむら 「いえ」

まどか 「流君も。口が悪くってぶっきらぼうだから、ちょっと怖いけど。根は悪い人じゃないと思うんだけれどね」

ほむら 「・・・」

まどか 「あ、ごめんね。私ばっかり話しちゃって。て、なんか私、謝ってばっかりだね。うぇひひ・・・」

ほむら 「・・・」

これも恒例行事。

だけど、私にとっては特別な意味を持つ行事。

この時間軸におけるまどかとの出会い。

私は何度となく繰り返した、まどかとの”最初の出会い”で、心に秘めたとある決意を新たにする。

今度こそ、まどかを救ってみせる、と。

その決意、想いだけが、たった一つ。私に残された道しるべだから。

・・・だけれど。


まどか 「そういえば、自己紹介まだだったよね。私は」


せっかくのまどかとの出会いなのに、今の私はほんの少しだけ上の空だった。


ほむら 「・・・」

まどか 「え、えっと・・・あ、暁美さん?」


それは、あの男の言っていた言葉。

頭に角のような突起を持つ、赤い色のロボットの事。

確かに私には見覚えがある。


ほむら (だけれど、それはこの時間軸での出来事じゃない・・・)

まどか 「うぇひ~・・・暁美さんったらぁ・・・」


どうしてあの男がロボットの事を知っているのか。

ありえない。たんなる偶然?

でも、だとしたら、どうして私にそんな話を・・・


まどか 「暁美さんったら!」

ほむら 「っ!」

まどか 「ねぇ、ボーっとしちゃってだいじょうぶ?具合でも悪いの?」

ほむら 「あ、ご、ごめんなさい・・・ちょっと考え事をしていて」

まどか 「どうしたの?心配事?」


まどかを不審がらせてはいけない。

今はまどかとの時間に集中しよう。


ほむら 「ううん、なんでもないわ。それで、なんだったかしら」

まどか 「うん。自己紹介がまだだったなって。うぇひひ・・・私の名前はね」

ほむら 「まどか」

まどか 「え・・・」

ほむら 「鹿目まどか・・・さん、でしょ」

まどか 「う、うん・・・あれ、もう自己紹介しちゃってたっけ???」 

ほむら 「ううん」


まどか・・・まどか・・・

もう幾度繰り返したか知れない自己紹介を、この新しい時間軸でも繰り返し、何回口にしたか覚えていない「はじめまして」を、再び言の葉に乗せる。

願わくば、この「はじめまして」が。

最後の「はじめまして」となりますよう・・・


ほむら 「・・・」

まどか 「え、えっと・・・あの・・・暁美さん・・・???」

ほむら 「ほむらで良いわ。はじめまして、鹿目さん」

まどか 「あ、う・・・ほ、ほむ・・・ら、ちゃん・・・?は、はじめまして・・・」

次回に続く!

乙、批判、ご教授、いずれもありがとうございます。

ありがたいです。では、再開します。

・・・
・・・


放課後

教室内


まどかは美樹さやかたちと連れ立って、すでに教室からは姿を消していた。

彼女達はこの後、ショッピングモール内で軽食を取るつもりだろう。そしてその後・・・


ほむら 「・・・」


私は手早く机の中のものを鞄に詰め込むと、椅子を蹴るように席を立った。

彼女たちの後をつけ、監視しなければならない。

いつもの時間軸通りなら、間もなく彼女達は魔女の結界に囚われることになる。


竜馬 「待てよ」


すでに人影の絶えた教室。

残っていたのは私一人だけだったはずなのに、声の主はいつの間にか私の背後に忍び寄り、不意に声をかけてきた。

この無遠慮な声色は・・・


ほむら 「・・・流、君?」

竜馬 「ああ。ちょっと時間を取らせて貰えねぇか。話がある」

ほむら 「私もあなたに確認したい事がある。けど、今はダメ」

竜馬 「急ぎの用でも?」

ほむら 「ええ」

竜馬 「悪いが、無理やりにでも相手をしてもらうぜ。俺はこの一月、訳の分からない場所に訳の分からない状況で放り込まれたんだ。そんな中でやっとあんたと言う、手がかりになりそうな奴を見つけたんだからな」

ほむら 「・・・」

竜馬 「もう待てねぇ。これ以上は俺がもたねぇ」

ほむら 「・・・話を聞かないとは言っていないわ。ただ、今は忙しいと言っているの」

竜馬 「そうかい。だが、悪いな。ここは俺の都合を優先させてもらうぜ」ぎりっ

ほむら 「・・・っ」


またあの敵意。

ただの中学生では出しえない、修羅場を潜った者のみが出せる、えもいわれぬ圧迫感。

そんな物をこの男からは感じられる。


ほむら (こいつ、何者なの)

なんにせよ・・・


ほむら (逃がす気は無いと言うわけね・・・魔法を使ってどうにかするのは簡単だけど、事を荒立てたくない・・・)

ほむら 「分かったわ。ただ、私は本当に急いでいるの。だから、歩きながらでも良ければ。それなら話を聞くわ」

竜馬 「・・・ああ、それで良い」

・・・
・・・


下校途中

ショッピングモールへと続く道


ほむら 「それで、話と言うのは?」

竜馬 「ああ。朝も少し話したが、ロボットの件だ。でかくて赤くて・・・」

ほむら 「頭に二本の角がある・・・」

竜馬 「・・・やはりあんた、ゲッターに見覚えがあるんだな?」

ほむら 「ゲッター?ロボットの名前?」

竜馬 「そうだ、ゲッター。ゲッターロボだ」

ほむら 「ゲッターロボ・・・」


そんなロボットの名前には聞き覚えが無いけれど。

だけれど、やっぱり間違いはないようだ。

この男は、私が前の時間軸で見たのと、同じロボットの事を言っている。

ゲッターロボとは、あのロボットの名前なんだろう。

でも、何故?

今の時間軸の人間であるはずの彼が、私が前の時間軸でロボットを”見た”という出来事をどうして知っているの?

ほむら 「・・・ふふっ。ロボットなんて、見たことがあるわけ無いじゃない」


私はカマをかけてみることにした。


竜馬 「なっ・・・?」

ほむら 「でかいとか赤いとか、テレビかアニメの見過ぎなんじゃないの?」

竜馬 「さっき、頭に角があるとあんたも・・・」

ほむら 「それは朝方に流君が自分で言ったことじゃない。私はちょっと話に乗ってあげただけ」

竜馬 「どうあっても、しらばっくれるつもりか」

ほむら 「しらばっくれるも何もないわね。そもそも、なぜ私にロボットの話なんかするのかしら」

竜馬 「いたからだよ」

ほむら 「・・・?」

竜馬 「お前がロボットを見ていた場に、俺もいたからだよ」

ほむら 「・・・」 


あの場にいた?

まどかが魔女へと成り果ててしまい、私が一つの時間軸を切り捨てる決意をした、あの忌まわしい場所に・・・

この男もいた?

ほむら 「そんな・・・」


だって、ありえない。

あの場所にいて、私がロボットを見ていたのを知っているのは、ほんの限られた者のみ。

私自身。それにキュウべぇ。

あとは・・・


ほむら 「あ・・・」

竜馬 「そうだ」


あと一人。

あの場にいて、ロボットと私の邂逅を見ていた者。

それは・・・


竜馬 「俺だ」

ほむら 「あなた、が・・・?」

竜馬 「そうだ、俺だ!」


竜馬 「俺が、ゲッターロボだ!」


あのロボット自身だ。

・・・
・・・


ショッピングモール内のファーストフード店


さやか 「自己紹介もまだなのに、まどかの名前を知ってたって?」

まどか 「そうなの・・・なんでなのかな」

さやか 「してたんじゃないの?自己紹介。まどかが忘れてるだけでさ。まどかって、どっか抜けてるところあるから」

まどか 「うう、ひどいよ・・・私、まじめに悩んでるのに」

仁美 「それにしても・・・今回の暁美さんと言い、この前の流君と言い、転入生はお二人とも、なんと言うか、個性的な方でらっしゃいましたね」

さやか 「だねー。この時期に転入だなんておかしな話だし、二人ともなにかイワクでもあるのかもね」

仁美 「イワク?」

さやか 「前の学校で、転校せざるを得ない、なにかをしちゃったとかぁー・・・」

まどか 「もう、さやかちゃん。やめなよ」

さやか 「冗談だって。あ、でも。そういえばあの時、流が転校生に何だかからんでたよね?」

まどか 「うん。ちょっと変な雰囲気だったから、割って入ったつもりだったんだけど・・・」

仁美 「冗談抜きで、あの二人には何か繋がりがあるのかも知れませんわね」

さやか 「・・・」

まどか 「・・・」

仁美 「・・・あ。もうこんな時間?ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

さやか 「今日はピアノ?日本舞踊?」

仁美 「お茶のお稽古ですの。はぁ、もうすぐ受験だって言うのに、いつまで続けさせられるのか・・・それでは、また明日」

さやか 「うん」

まどか 「がんばってね」

・・・
・・・


ショッピングモール

CDショップ内


さやか 「じゃ私、恭介にあげるCD選んでくるから。悪いけど適当に曲でも聞いて、待っててくれる?」

まどか 「分かったよー」

まどか 「ふんふーん♪」きょろきょろ

まどか 「・・・あ、これ今月の新譜。うぇひひ、ちょっと視聴してみようかなぁ」(ヘッドホン装着)

まどか 「~~♪」


(まどか)


まどか 「・・・?」


(まどか)


まどか 「え・・・っ」(ヘッドホン外し)

まどか 「なに、今の声・・・」


(まどか、まどか)


まどか 「うぇひっ!?ヘッドホン外したのに!?CDの音じゃない・・・?」

(まどか、僕の声が聞こえるかい?僕、君に話があるんだ)


まどか 「頭の中に直接・・・?誰、誰なの?」きょろきょろ


(こっちだよ)


まどか 「・・・」とことこ


・・・
・・・


さやか 「おまたせー、まどか!」

さやか 「・・・まどか・・・いない?」

・・・
・・・


ショッピングモール

非常階段


(まどか、まどか)


まどか 「・・・どこに、いるの?あなた誰?」

? 「ここだよ、まどか。来てくれてありがとう」ひょこっ

まどか 「わ・・・え?ね、猫?ウサギさん・・・?あなたなの、私を呼んだのは」

キュウべぇ 「そうだよ、まどか。僕の名前はキュウべぇ。よろしくね」

まどか 「よ、よろしく・・・」

私は少し離れた場所で、キュウべぇとまどかが出会うのを見ていた。


ほむら 「ちっ」


思わず舌打ちが出てしまう。本当なら、二人が出会う前に手を打ちたかったのだけれど。

私の後ろでは、流竜馬が怪訝な顔で私を覗き込んでいる。


竜馬 「お前の用事って、これなのか・・・?」

ほむら 「まぁ・・・」


あいまいに答えておく。正直今は、彼の事が少し忌々しい。

彼のおかげで、貴重な時間を費やされたのは事実なのだ。

・・・話の内容は、それは私にも確かに興味があることだったのだけれど。

竜馬 「あそこにいるの・・・同じクラスの鹿目・・・まどかといったか。あの子、何をしているんだ」

ほむら 「ここからは、あなたには関わりのない事よ。話の続きは、また時間を作るわ。とっとと帰ってくれるかしら」

竜馬 「つーか、鹿目の前にいる動物、あれはなんだ?猫・・・とはちょっと違うようだが」

ほむら 「・・・聞こえなかった?邪魔だから帰れと言ったの。あなたには無関係・・・」


・・・ん?今、彼、動物って言った?


竜馬 「あんなすごい耳毛のある動物、そうそういないよな」

ほむら 「・・・」

竜馬 「ん、どうした?」

ほむら (あんぐり)

竜馬 「とんびに油揚げさらわれたような顔をしてるぜ」

ほむら 「・・・見えるの?」

竜馬 「は、なにが?」

ほむら 「キュウべぇ・・・あそこの白い生き物・・・」

竜馬 「・・・?見えるも何も、あそこにいるだろ。当たり前だ」

ほむら 「・・・どういうこと?」

竜馬 「・・・ん、待てよ。あの白いの、お前と初めて会ったあの日にも見たような・・・」

ほむら 「・・・」

竜馬 「そうだ。確か、お前の足元に小さな動物がいたな。あれ、あいつじゃないのか」


・・・この男は。

こんな短い間に、いったい何度、私を驚かせれば気が済むのだろう。

間違いない、流竜馬にはキュウべぇが見えているのだ。

と、言うことは。


ほむら 「流君、ちょっと質問なんだけれど。あなたが私をはじめて見たという日、他に見えた物は無かったかしら」

竜馬 「ああ・・・あの、馬鹿でかい化け物みたいな奴の事か?」

ほむら 「・・・見えていたのね、まどかの事を」

竜馬 「まどか?鹿目にもなにか関わりがあるのか?」

ほむら 「・・・」

竜馬 「・・・まぁ、いい。その化け物、俺達が戦っていた”敵”かと思ってな。突っ込もうとした矢先に・・・」

ほむら 「どうなったの?」

竜馬 「・・・わからねぇ」

ほむら 「分からないって・・・」

竜馬 「そっから先の記憶がはっきりしねぇんだよ。ふいに意識が遠のいて、気がついたら・・・」


キュウべぇ 「まどか、君には今、何か叶えたい望みはあるかい?」

まどか 「望み・・・?」

キュウべぇ 「そうだよ。君が望む事があれば、僕がなんだって叶えてあげる」

まどか 「え、ええ・・・??」

キュウべぇ 「その代わり、君にお願いしたい事があるんだ」

まどか 「なんなの・・・?」


しまった!

もう、猶予はない。

私はまどかと、奴。インキュベーターの元へと駆け出した。

竜馬 「俺は・・・て、おい!話の途中だぞ!」

ほむら 「・・・」


流竜馬の呼びかけはこの際無視し、私は意識をソウルジェムに集中させる。

途端に眩い光が私を包み・・・


竜馬 「!?」


一瞬の後。

光が収まった後には、魔法少女姿へと装いを新たにした私が現れた。


竜馬 「な、なんだ・・・変身、しやがったのか・・・?」

間髪をいれず、左手のバックラーから小銃を取り出す。

が、そこで一瞬、私は動きを止めてしまう。ざらついた感覚が、バックラーから伝わってきたからだ。


ほむら (バックラーの中に違和感・・・?)

ほむら (ううん、今はそれどころじゃない。あいつにこれから先を話させちゃいけないんだ)


躊躇はない。

疑問は後回しに追い出して、狙いを定め、撃つっ!


キュウべぇ 「僕と契約して、魔法少女になっt(ぱんっ!)

キュウべぇ 「う・・・」どさっ

まどか 「・・・え、え。ほ、ほむらちゃ、ん・・・・ひっ!?」


突然現れた私と横たわるキュウべぇを、何が起こったか分からないといった顔で見比べていたまどかだったが・・・


まどか 「ひ、い、いやあああっ!?」


無残にも朱に染まったキュウべぇを見て、つぼみの様な唇から悲痛な叫びが上がった。

驚愕と恐怖をない混ぜた両の瞳が、私を凝視している。

あの眼差しは、何度向けられても胸が痛む。


ほむら 「鹿目まどか・・・」


だけれど。

これは誰のためでもない。まどか自身のためなんだ。

・・・まどかのためだったら、私はどう思われたっていい。


ほむら 「そいつから離れて」

次回へ続く!

1です。


このSSでの竜馬は石川賢氏の漫画版を元にしています。

性格がチェンゲ寄りなのは、自分がダークヒーローな竜馬が好きなためで、自然と書いているうちにこうなってしまいました。

混乱させたら、申し訳なかったです。

いつの時代の竜馬かというのは、ちょっと話にも絡んでくることなので、わざとぼかしました。


それでは再開します。

まどか 「ほ、ほむらちゃん、なんで!?どうしてこんなひどい事を!!」

ほむら 「あなたには関係ない。良いから離れなさい」

まどか 「だってこの子、怪我してる・・・」

ほむら 「・・・」(ちゃっ)


私は応えず、銃口をうずくまって震えているキュウべぇに向けた。


キュウべぇ 「う・・・うぅ・・・まどか、僕を助けて・・・」

まどか 「だ、だめっ!」がばっ

ほむら 「まどか、どきなさい」

まどか 「ダメだよ!酷い事しないで!」

ほむら 「言ったはずよ。あなたには関係ない」

まどか 「だって、この子、私を呼んでた!今だって、助けてって・・・!」


ここで、まどかと問答をする気はない。

私はただ、自分の成すべき事を成すのみ。


ほむら 「そう・・・」

まどか 「っ!」

ほむら (キュウべぇに覆いかぶさって・・・これじゃ撃てないわ)


引き剥がすしかない。

そう思って、私がまどかへ手を伸ばそうとした刹那。

その腕が強い力で掴まれた。


ほむら 「っ、流竜馬!」

竜馬 「お前・・・なにやってるんだ?」

ほむら 「あなたには関わりがない。何度言わせるの?」

竜馬 「そうはいくかよ。こんな小さな生き物に銃口向ける女なんざ、野放しにしておけるはずがいだろ。おい、鹿目!」

まどか 「は・・・え?な、流君・・・?」

竜馬 「ここは任せて、そいつを連れて逃げろ!」

ほむら 「ちょっ」

まどか 「だ、だって、ほむらちゃん、鉄砲もって・・・」

竜馬 「心配いらねぇから、早く行け!」

まどか 「う、うん!」たたたっ

ほむら 「まどか、待って!くっ、離してったら!」

竜馬 「お前が持ってる物騒なもの、先に手放したら離してやっても良いぜ」

ほむら (埒が明かない。かといって、手を掴まれている以上、時間停止でやり過ごす事もできない)

ほむら 「仕方がないっ!」


私は自由になる方の手。つまり、銃を持っている手を流竜馬へと向けた。

銃口が彼の眉間を狙い定める。


竜馬 「・・・何の真似だ?」

ほむら 「至近距離。撃てば絶対に外さない」

竜馬 「ほぉ・・・」

ほむら 「その手を離して。さもなくば・・・」


この男には聞きたい事が山ほどある。

しかし、今はまどかを追う事が何よりも優先されなければならない。

間もなくこの辺り一帯は、魔女の結界に取り込まれることになるのだから。


ほむら (早く追いかけて、まどかを護らなくてはいけない。そのためだったら・・・)


聞きたいことを聞けず、謎を謎のままで終らせてしまうことも私は躊躇わない・・・

ほむら 「撃つわ」

竜馬 「やってみろよ」

ほむら 「・・・」

竜馬 「撃ってみろと言っているんだ」

ほむら 「あなたも見ていたでしょう。この銃から出るのは実弾。玩具じゃないわ。それに私は、目的のためなら人ひとり、殺す事になんの躊躇もない」

竜馬 「だろうな。お前の目を見ていれば分かる」

ほむら 「え?」

竜馬 「お前、数え切れないほどの死を置き去りにして、今のこの場所に立っているな」

ほむら 「・・・」

竜馬 「お前と同じ目をした奴を俺は知っているんだよ。だから分かる」


・・・こいつ、自分の事を言っている?


ほむら 「・・・そう。だったら私が本気だと言うことも分かるのでしょう?」

竜馬 「ああ」

ほむら 「離して」

竜馬 「撃てと言っている。俺には当たらん」

ほむら 「・・・」

竜馬 「・・・」


まどか 「きゃーーーーっ!?」


ほむら・竜馬 「!!」

・・・
・・・


まどか 「はぁはぁ・・・思わず逃げてきたのは良いけど、どこに行けばいいんだろう」

キュウべぇ 「と、とにかく・・・さっきの子の目の届かない場所に・・・もう少ししたら、僕の友達が来てくれるから・・・」

まどか 「友達?う、うん、分かったよ。なるべく遠くまで行こう」


・・・
・・・


まどか 「はぁはぁ・・・こ、ここまで来れば・・・」

まどか 「・・・」

まどか 「・・・あれ、非常口は・・・え、え?どこ、ここ!」

まどか 「周りの景色が歪んで・・・なにこれ・・・私、悪い夢でも見てるの・・・?」

キュウべぇ 「気をつけて・・・どうやら僕達は魔女の結界に飲み込まれてしまったようだ・・・」

まどか 「魔女・・・?キュウべぇ、なにを言ってるの?」

キュウべぇ 「ぜぇぜぇ・・・」

まどか 「キュウべぇ、痛いの?しっかりして!」

まどか 「・・・」

まどか 「な、なにか・・・いる?」


使い魔たち 「キキキキ・・・」


まどか 「っ!?な、なにあれ?なんなの!?」

キュウべぇ 「あれは魔女の使い魔・・・まどか、危ない。早く・・・に、逃げるんだ・・・」

まどか 「逃げろたって、どこに!?私たち、囲まれちゃってる!」

使い魔たち 「キキ・・・」

まどか 「いや・・・嫌だよぉ・・・い、いや・・・」


使い魔たち 「キキーーーーッ!」

まどか 「いやあああああああっ!!」

竜馬 「おらあああああっ!!」ドガガッ!!!

・・・
・・・


まどかの悲鳴と竜馬の雄たけび。二つの叫びがほぼ同時に、魔女の結界内を震わせた。

そして、蹴散らされてゆく使い魔たち。


ほむら 「使い魔を倒している・・・」


魔法少女でもない流竜馬が。

しかも、素手で。


竜馬 「なんだ、こいつら!」どかっ!

竜馬 「しかも、なんだよ、ここは!さっきとはまるで別の場所じゃねぇか!」ばきっ!

竜馬 「おい、鹿目!怪我はないか!?」どががっ!!

まどか 「な、流くん・・・?う、うん・・・」

竜馬 「そいつか良かった!おい、暁美!」

ほむら 「え・・・」

竜馬 「呆けてるんじゃねぇよ、一時休戦だ!あんな物騒な得物を持ってるんだ、戦えるんだろ!?」

ほむら 「ええ・・・」

竜馬 「ならば、後でいろいろ聞かせて貰おうじゃねぇか。さっきの話の続きもな」

ほむら 「わかった・・・!」


まずはまどかの安全を確保する。

今はその事にのみ、集中しよう。

・・・
・・・


竜馬 「・・・終わりか?」

ほむら 「ええ、もう使い魔の気配は感じない」


辺りを見回して、それから視線を足元に落とす。

おびただしい、使い魔の死体の山。そのほとんどは流竜馬が素手で倒したものだ。


ほむら (それなのに・・・)

竜馬 「鹿目、終ったようだぜ。良かったな、間に合って。死なずに済んだものな」

まどか 「あ、ありがとう・・・流君こそ、怪我してないの?」

竜馬 「そんなへましねぇよ」

ほむら (無傷どころか、息すら上がっていない。どれだけタフだって言うのよ。化物なの?)

竜馬 「お・・・周りの景色が歪む・・・?」

ほむら 「この結界内の使い魔を全て倒したから。結界が解かれて、通常の空間に戻るのよ」

まどか 「きゅ、キュウべぇも言ってたけど結界って・・・?」

ほむら 「・・・まどか、もう安全よ。ひとまずはね」つかつか

まどか 「うぇひ?」


私はまどかに近づくと、その腕の中で丸くなっているキュウべぇをひょいと摘み上げた。


まどか 「あっ、キュウべぇ!キュウべぇを返して!」

ほむら 「悪いことは言わない。今日の出来事と、こいつの事は忘れてしまうことね。さもないと」

まどか 「さ、さもないと・・・?」

ほむら 「再びまた、悪夢のような出来事に巻き込まれる事になる。何度も何度も、そう・・・」


ほむら 「死ぬまでね」


まどか 「そんな・・・」

竜馬 「おい」

ほむら 「後で話の続きをしましょう」

竜馬 「そんな事より、そいつを」

ほむら 「良いの?」

竜馬 「・・・あ?」

ほむら 「私の邪魔をするということは、私と敵対すると言うこと。あなた、私に聞きたい事があるんじゃないの?」

竜馬 「・・・てめぇ」

ほむら 「あなたとは出切る事なら穏便に付き合って行きたいと思っているわ。私だって、流君には聞きたい事が幾らでもあるんだから」

竜馬 「・・・」

ほむら 「話は向こうで。それじゃ、まどか。また学校でね」

まどか 「ま、待って!」


追いすがろうとするまどかを振り切り、私はショッピングモールを後にする。

為すすべ無しといった体で後を追う、流竜馬を従えて。

・・・
・・・


廃ビルの敷地内。


ほむら 「ここなら人目にもつかないわね。落ち着いて話ができる」

竜馬 「・・・」

ほむら 「さて・・・」


私はポイっとキュウべぇを地面へと投げ捨てた。ゴム鞠のように数度弾んで地に墜ちる。

あいかわらず苦し気な息を吐きながら、身体を震わせている、その姿が白々しい。


ほむら 「もう良いんじゃない?ここにまどかはいないし、いい加減にそのわざとらしい演技は終わりにしたら?」

キュウべぇ 「・・・」

竜馬 「おい、動物相手に何を言って・・・」

キュウべぇ 「やれやれ」ひょこっ

竜馬 「!?」

キュウべぇ 「別に演技していた訳じゃないんだけれどね。僕だって生き物だから、痛くて苦しいのは事実だし」

竜馬 「しゃ、喋りやがった」

ほむら 「そう。そして・・・」


ぱんっ


キュウべぇ 「きゅっぷぃ!」ばたっ

竜馬 「お、お前!なに、いきなり撃ち殺してるんだよ!」

ほむら 「落ち着いて、流君。すぐに分かるわ」

竜馬 「分かるって、何が・・・」


ひょこっ


竜馬 「え・・・」

ほむら 「ほら、ね」


どこからともなく現れた、もう一匹のキュウべぇ。

そいつは何事もなかったかのように私たちの前を素通りし、今しがた撃ち殺したばかりのキュウべぇの死骸へと歩を進める。

そして・・・


キュウべぇ 「むしゃむしゃむしゃ・・・ごくん。キュっプイ」

竜馬 「・・・死骸を食ってる」

ほむら 「ね?こいつを殺す事なんて、不可能な事なのよ」

キュウべぇ 「だからといって、僕をむやみに潰すのは感心しないね。代わりはいくらでもいるけど、もったいないじゃないか」

竜馬 「喋るわ、殺しても代わりの奴が出てくるわ、死体を食っちまうわ・・・いったい何がどうなってるんだ」

キュウべぇ 「ところで君は魔法少女だよね。名前は・・・?」

ほむら 「暁美ほむら・・・」

キュウべぇ 「暁美ほむら、か。おかしいな、僕には君と契約した記憶がないのだけれど」

ほむら 「私のことなんか、どうだって良い。それよりも」


私とキュウべぇ。二つの視線が流竜馬を捉える。


竜馬 「あ?」

キュウべぇ 「・・・彼には君以上に驚かされたよ」

竜馬 「いや、俺の方がさっきから驚きっぱなしなんだが」

キュウべぇ 「君には僕の姿と声が認識できているらしいね」

竜馬 「頭がおかしくなったんじゃなければな」

キュウべぇ 「意志の疎通はできている。だいじょうぶ、君の精神は正常だ。正常だけれど、なぜこんな現象が起こっているのか、それが僕には分からない」

ほむら 「ええ、あなたなら何か知ってる事があるかと思って。それで、話のできる場所へ連れてきたのだけど」

キュウべぇ 「だとしたら悪いけれど、君の期待には応えられないな。暁美ほむら、正体の分からない君もイレギュラーだけれど、こっちの彼・・・えっと?」

竜馬 「流・・・竜馬、だ」

キュウべぇ 「竜馬の存在は、それをはるかに突き抜けている。とびっきりのイレギュラーだよ。まったく訳が分からないよ」

竜馬 「訳の分からないのは、お前達の方だと思うがな・・・ええと、お前、名前はなんだったっけ?」

キュウべぇ 「僕の名前はキュウべぇ。よろしくね、竜馬。君は僕がこの星に来て、初めて言葉を交わした人間の”男性”だよ」

次回へ続く!

少しだけ再開します。

ペースが遅くて申し訳ありません。

・・・
・・・


竜馬 「つまり、お前は魔法少女になって、魔女って敵と戦っているってことか」

ほむら 「ええ、ここにいるキュウべぇに、上手いこと言いくるめられてね」

キュウべぇ 「言いくるめるとは人聞きが悪いな。僕は何も、事実と違うことを君達に言ったことはないはずだよ」

ほむら 「そうね。私たち魔法少女はキュウべぇに願い事を一つだけ叶えてもらい、その対価として魔女と戦う宿命を負った」

キュウべぇ 「契約は君達の意志によって為された。僕は何も強制していない。負った宿命だって覚悟の上だったはずだよ?」

ほむら 「最も重要な事を、意図的にぼかしておいて、よくもまぁぬけぬけと・・・」

キュウべぇ 「・・・君は何をどこまで知っているんだい?」

ほむら 「いちいち説明する義理はないわ」

キュウべぇ 「・・・そうかい」

竜馬 「その、魔女って言うのは、いったいどういった輩なんだ?」

キュウべぇ 「魔法少女が希望から生まれるのなら、魔女はその対極、絶望の呪いから生まれるんだ」

ほむら 「奴等は人の世にこっそり忍び寄り、虎視眈々、獲物である人間を狩ろうと狙っているわ」

ほむら 「結界と言う蜘蛛の巣に絡め取られた、哀れな獲物を、ね」

竜馬 「結界・・・そういえばお前、さっきの変な場所でも、そんな事を言っていたな。じゃあ、あれが・・・」

ほむら 「そう。ただし、あそこには魔女はいなかったけれど」

竜馬 「いきなり襲いかかって来た、あの化け物たちは魔女とは違うのか?」

ほむら 「あれは魔女に使役されている使い魔に過ぎない。本当の魔女の厄介さは、あんな奴らの比じゃないわ」

竜馬 「まぁ、確かに手ごたえのない奴らだったしな」

ほむら 「・・・」

キュウべぇ 「・・・」

竜馬 「な、なんだよ」

キュウべぇ 「普通の人間はね、魔女の結界に踏み込んだが最後、まず生きては出てこられないんだ」

ほむら 「腕っ節の強さとか、そんなのは関係なくね。なぜだか分かるかしら」

竜馬 「何が言いたい・・・?」

ほむら 「普通の人にはね、見えないのよ。魔女や、使い魔の姿が」

竜馬 「はぁ・・・?」

キュウべぇ 「さらに言えば、僕の姿もね」

竜馬 「・・・??」

キュウべぇ 「僕や魔女、使い魔の存在が認識できる者はね。ほんの一握りの限られた人間だけなんだ」

ほむら 「私のような魔法少女か・・・あるいは・・・」

キュウべぇ 「魔法少女になる素質を持った者か、だね」

竜馬 「は、はは・・・バカ言うなよ。じゃあ、お前等の言うことが本当なら、俺は・・・」

ほむら 「流君には魔法少女としての素質があるって事になるわね」

竜馬 「やめろ、気持ちが悪い!」

ほむら 「まったくだわ、吐き気がする」

竜馬 「・・・ぐっ」

キュウべぇ 「暁美ほむら。それは言いすぎじゃないかな。竜馬が少し、悲しそうな顔をしているよ」

竜馬 「してねぇよ」

キュウべぇ 「まぁ、ともかく。だから、さっき言ったじゃないか、流竜馬。君はとびっきりのイレギュラーだと」

竜馬 「お前、俺が初めて言葉を交わす男だって言ったな」

キュウべぇ 「そうだよ。なにせ魔法少女は女の子しかなれないからね。必然的に僕の事を認識してくれるのは、少女だけってことになる」

キュウべぇ 「僕がこの星に来てかなりの年月がたつけれど、今日みたいな日は初めてだ。流竜馬、君は実に興味深い存在だよ」

竜馬 「俺が魔法少女、か・・・」

キュウべぇ 「試しに契約してみるかい?」

ほむら 「やめて、本当にやめて。あなたの運命も、視覚的にも、ろくなことにならないから」

竜馬 「さっきからお前、ちょっと酷いんじゃないか」

竜馬 「とはいえ。俺だって、自分の女装なんざ見たくもないがな」

ほむら 「賢明だわ」

キュウべぇ 「まぁ、無理強いはしないよ。でも、叶えたい望みができたら声をかけてね」

竜馬 「覚えてはおく・・・」

キュウべぇ 「・・・」

竜馬 「ん・・・待てよ。確かさっき、鹿目はお前の事を暁美から庇っていたよな。つまり、あいつはお前が見えてたって訳だ」

キュウべぇ 「それはそうだよ。だって僕は、まどかに魔法少女になってくれるよう、お願いしにきたんだからね」

竜馬 「なるほど、鹿目も魔法少女になる資格があるって事か」

ほむら 「・・・そうね」

竜馬 「暁美はそれを、阻止しようとしていた」

ほむら 「・・・」

竜馬 「なぜだ?」

キュウべぇ 「それは僕からも聞きたいね。君はどうして、僕を殺そうとしてまで、まどかが魔法少女になることを阻もうとするんだい?」

ほむら 「・・・答える必要はないわ。それよりも、流君」

竜馬 「・・・」

ほむら 「魔女の事。私たち魔法少女のこと。こちらは色々と語らせてもらったわ。次はあなたが語る番」

キュウべぇ 「そうだね。僕も興味があるな」

ほむら 「あなたはいったい、何者なの?」

竜馬 「・・・俺は」

・・・
・・・


竜馬 「俺の話をする前に、一つだけ答えて欲しい。お前達、恐竜帝国って知っているか?」

ほむら 「きゅりゅう・・・って、あの恐竜?」


竜馬がこくんと頷く。


ほむら 「いいえ、聞いたこともないわ」

竜馬 「キュウべぇ、お前は?」

キュウべぇ 「さて・・・帝国と言うからには、それはどこかにある国なのかい?僕が知る限り、そのような国が存在したという話は知らないなぁ」

竜馬 「で、ゲッターロボも知らないと。そんなの、ありえねぇ事なんだがな」

ほむら 「ありえないと言われても・・・どういうこと?」

竜馬 「恐竜帝国は人類共通の敵だ。奴等は連日、世界中のあちこちに現れては、人々を襲い続けていた」

竜馬 「毎日毎日・・・どこかの街が襲われ、多くの人の血と涙が流される。まさに人々の生活は、生と死の背中合わせだったのさ」

竜馬 「それが、俺の生きてきた日常・・・のはずだった」

ほむら 「・・・それで、ゲッターロボと言うのは?」

竜馬 「ゲッターロボは、恐竜帝国から力なき人々を守るために建造されたスーパーロボットだ。恐竜帝国に対抗できる唯一の力・・・」

竜馬 「堅牢なる人類の盾。それが俺達ゲッターチームと、ゲッターロボなんだ」

キュウべぇ 「チームと言うからには、君の他にもゲッターロボにはパイロットがいるということかい?」

竜馬 「ああ・・・」

ほむら 「?」


竜馬が一瞬だけ目を伏せた。まつげの下に覗く、彼の瞳に宿った影。

寂しげな眼差しだと、なぜだか私には感じられた。

けれど、すぐに鋭い眼光を取り戻した竜馬は、話を再開する。

竜馬 「ゲッターチームは三人。それぞれが操縦する三機のマシンが合体し、ゲッターロボは生まれるんだ」

ほむら 「合体ロボ・・・ますますアニメの世界の話ね」

竜馬 「そうさ。悪の侵略者に正義のスーパーロボット。そいつらが戦いを繰り広げる、アニメのような世界さ」

竜馬 「だが、巨大な力のぶつかり合いは、当然周囲にも被害をもたらす。今まで人が生活を営んできた街は破壊され、巻き添えを食った人々が命を失っていく」

竜馬 「アニメのように綺麗に事はすすまねぇ。向けられる怨嗟。浴びせられる冷たい視線。だが、それでも戦いを止めることはできねぇ。生きるために。人類を滅ぼさないために・・・」

ほむら 「・・・」

竜馬 「それが俺たちの日常だったのさ」

ほむら 「流君・・・」

竜馬 「な。だから俺の常識として、ゲッターや恐竜帝国を知らない奴なんて、いるはずがねぇんだよ」

ほむら 「だけれど、私は本当にそんなもの、聞いたことも無いのよ・・・」

竜馬 「お前以外にも何人かに聞いてみたが、誰に聞いてもそう言われたよ」

竜馬 「放課後は新聞やテレビのニュースに噛り付いてもみた。だが、何を見たってゲッターのゲの字も出てきやしない」

ほむら 「・・・」

竜馬 「実際、あんなに頻繁に現れていた恐竜帝国も、なりを潜めたかのように姿を現しゃしないしな。だから、俺は・・・」

ほむら 「・・・?」

竜馬 「俺は、自分がおかしくなってしまったのではないかと・・・」

ほむら 「流君、それは・・・」

竜馬 「ゲッターのことなんざ知らない周りこそが正しくて、俺は今まで夢か幻の世界で戦っていたのではないかと、本気で疑い始めていた」

ほむら 「・・・」

竜馬 「だが、お前は俺の前に現れてくれた。暗闇の中に一点、灯った明かりを見つけ出した気分だったぜ」

キュウべぇ 「そこら辺のことを、もう少し詳しく話してもらえるかい?」

竜馬 「・・・あの日」

・・・
・・・


恐竜帝国の本拠地を探り当てた俺達は、雌雄を決する為に奴らの元へと向かっているところだった。

だが、後もう少しで敵の本拠地へ辿り着こうというところで、謎の現象に俺達は襲われた。

いきなり、眩い閃光がゲッターロボを包んだんだ。

周囲は真っ白に染まり、目は眩んで何も見えない。

どういったわけかゲッターのコントロールも利かなくなり、計器類に目を走らせたが眩しくって何も見えやしない。

・・・どれくらい、その状況が続いただろう。俺にはとてつもなく長い時間に感じたが、実際はほんの一瞬の出来事だったのかもしれないな。

ともかく。

謎の光が収まり、やっと視界を取り戻した俺達の眼に映ったのは。

破壊されつくした、しかし見覚えのない街並みと、超巨大な謎の化け物の姿・・・



ほむら 「・・・」

竜馬 「そして、お前だったって訳だ」

次回へ続く!

再開します。

・・・
・・・


私があの時。前の時間軸の最後で経験した出来事と符合する。

やはり流竜馬は、あの時現れたロボットに間違いなく乗っていたんだ。

そのロボットこそ、彼の言うゲッターロボなのだろう。

竜馬の話を聞いて、私は確信を強くした。

しかし、それからの事が分からない。時間遡行が発動し、私が前の時間軸を離れた後。

彼に何が起こったのか。


ほむら 「それで。それからどうなったの?」

竜馬 「先刻も言ったと思うが、それからはわからねぇんだ。今度は不意に意識が遠くなり、次に目覚めた時には・・・」

キュウべぇ 「どうなっていたんだい?」

竜馬 「見滝原中学の転入生って事になっていた」

ほむら 「え・・・」

竜馬 「全てのお膳立ては済んでいた。俺は俺自身が理解できないままに、この街の住人として迎え入れられたって訳だ」

キュウべぇ 「君一人がかい?」

竜馬 「ああ。一緒にいた仲間も、俺たちが乗っていたはずのゲッターすらも、目が冷めた時には影も形も無くなっていた」

ほむら 「そんな事が・・・」

竜馬 「嘘だと思うか?なら、ちょっと聞くが、俺って何歳くらいに見える?」

ほむら 「え・・・何歳って・・・同じ年なんだもの。13歳か、14・・・」


彼の顔を見ながら言いかけて、思わず私は言葉を失ってしまう。


竜馬 「気づいたか?」

ほむら 「あなた、いったい何歳なの・・・?」

竜馬 「当年とって18歳。れっきとした高校三年生だ」

ほむら 「・・・っ!」

なぜ、今まで疑問にも思わなかったんだろう。

流竜馬の体格、顔つき、声に至るまで・・・どれをとっても同年代の男の子より遥かに大人びている。

中学生なんかには絶対に見えないのに、今の今まで、まったく違和感を感じる事がなかったなんて。


ほむら 「ど、どうして・・・」

竜馬 「それは俺が聞きたいくらいだ。俺が今まで生きてきた人生、経験や経歴、年齢や家族にいたるまで、俺はこの場所に何一つ持ち込めなかった」

竜馬 「恐竜帝国もゲッターも存在しない。俺の生きてきた証も何も無い。ここは・・・俺の知っている世界じゃない」

ほむら 「・・・」

違う世界からの来訪者・・・

彼の言うことが全て真実なら、そういう事になるんだろう。

違う時間軸から来た私もある意味で、別の世界の住人と言えない事もない。

しかし、流竜馬のそれは、まったく桁の違う話だ。


ほむら 「・・・私、流君は私の事を突き止めて、見滝原中に入り込んだんだと思っていたわ」

竜馬 「自分がまともかどうかすら疑わしかったんだ。そんな余裕は無かったさ。だが、お前が現れたお陰で、俺の記憶の正しさは証明された」

ほむら 「・・・」

竜馬 「・・・礼を言うぜ」


言い放った竜馬の眼光が、鋭く私を射る。

初めて会った時にも向けられた視線だ。

敵意。

その意味を私は知った。


ほむら 「私が、あなたをこの状況に追い込んだ張本人だと、そう思っているのね」

竜馬 「確信は無かったが、魔法少女とかいう妙な力と、そこの喋る動物・・・常軌を逸した存在である事は疑いねぇ。なにか、絡んでると見るのが自然だろ?」

ほむら 「そんなの、見せられる前から疑っていたくせに」

竜馬 「まぁ、勘だな」

ほむら 「・・・」

キュウべぇ 「ここでいがみ合っていても埒が明かないよ。それで竜馬、君は僕達がこの場所へ来る事になった原因だとして、どうしたいんだい?」

竜馬 「どうもこうもねぇよ。元の場所へと戻る方法を是が非でも聞きださせて貰う。俺は何としても、あの時、あの場所へと戻らなくちゃならねぇんだ」

キュウべぇ 「恐竜帝国とやらと、戦うために?」

竜馬 「それだけじゃねぇ・・・」 


再び竜馬の表情に影が射す。が、それも一瞬。


竜馬 「暁美っ!」

ほむら 「!?」


不意に竜馬が飛びかかってきた!

意表を突かれただけじゃない。人間離れした彼の敏捷さに、私はまったく反応ができない・・・!


ほむら 「あぅっ!?」


竜馬の当身を喰らい、吹っ飛ばされる私。

その直後だった。


ぱーんっ!


一発の銃声が、周囲を振るわせたのは。


ほむら 「え、な、なに!?」


身を起こした私の目に映った物は、何かの大きな力を喰らい、抉れ返った地面の様相。

さっきまで、まさに私が立っていた場所だった。


ほむら 「これは・・・?」

ほむら「まどか!」

まどか「ほむらちゃん大好き!」

ほむら「私もよ結婚しましょう」

まどか「しよう!」

竜馬 「おい、そこの!いきなり問答無用でぶっ放すとは、良い性格をしているな!」


竜馬の視線の先を追う。

廃ビルの屋上。人影が一つ。

逆光で陰になって良く見えないが、私には分かる。

あの銃声。この威力。こんな事ができるのは、彼女しかいない。


ほむら 「巴、マミ・・・」

竜馬 「なんだって?」

人影 「・・・私の事をご存知のようね」ひゅんっ

竜馬 「っ飛び降りた!?」


屋上から飛び降りた人影は、くるりくるりと身を躍らせながら、華麗に地面へと降り立った。

そして着地と同時に、手にしたマスケット銃の銃口をこちらへと向ける。

その、流れるような身のこなしには、さすがの竜馬も呆気に取られたようだ。


竜馬 「おいおい、嘘だろ・・・屋上からここまで、何メートルあると思ってるんだ・・・ていうか、あいつも・・・」

ほむら 「ええ。私と同じ、魔法少女よ」

マミ 「聞いたわよ。私の友達をずいぶんといたぶってくれたようね」

キュウべぇ 「マミ」

マミ 「キュウべぇ、無事だった?怪我は?」

キュウべぇ 「何とか平気だよ。それよりもよくここが分かったね」

マミ 「ええ・・・」


巴マミが、廃ビルの敷地入り口へと目を向ける。

そこには、物陰に隠れるようにこちらを伺う、もう一つの人影が。


ほむら 「まどか・・・つけてきてたの・・・?」

まどか 「うぇひっ・・・だ、だって、キュウべぇが心配だったから・・・」


そうか。あのあと、いつもの時間軸通りに現れた巴マミが、一人でいたまどかと接触。

事の次第を聞いて、まどかと一緒に私たちを探し当てたってところかしらね。


まどか 「ほむらちゃん。キュウべぇ、その人のお友達なの。ひどい事しないで、返してあげて・・・」

ほむら (その様子では、私がキュウべぇを撃ち殺したところは目撃されていないようね。なんにせよ・・・)

ほむら 「巴マミ。その物騒なもの、こちらに向けないでもらえるかしら」

マミ 「大切な友達を傷つけられて、そんな言い分が通ると思って?」

ほむら 「友達、ね」


思わず苦笑が漏れる。それを嘲笑と受け取ったのだろう、巴マミの顔がにわかに朱に染まった。


マミ 「何がおかしいの!?私、本当に怒っているんだからね!」

ほむら 「気に触ったら、ゴメンなさい。ただ、真実から蚊帳の外に置かれたあなたが、多少滑稽だっただけだから」

マミ 「っ、真実って何のこと!?」

ほむら 「言ってもあなたは理解しない。話したところで納得しない」

マミ 「何を言ってるの・・・!?」

ほむら (そして、理解できた時、あなたは壊れる・・・)

次回へ続く!

でもその親友無傷なんだよな

再開します。


>>171

・・・あ。

キュウべぇがいたぶられている事をまどかから聞いているので・・・
ということで、何とか納得して頂ければと・・・

竜馬 「・・・おい」ひょいっ

キュウべぇ 「きゅっぷい」

竜馬 「何だかややこしい事になってるようだが、お前、説明してやれよ」

マミ 「!?」

キュウべぇ 「説明?何をだい?」

竜馬 「撃たれても、別になんでもなかったんだろ?その事、この芝居じみた動きの姉ちゃんに教えてやれって言ってんだ」

キュウべぇ 「何のことだい?僕には竜馬の言ってることが、まったく理解できないよ」

竜馬 「・・・こいつ」

マミ 「きゅ、キュウべぇを摘み上げてる・・・」

竜馬 「ん?」

マミ 「あなた・・・この子の事が見えてるの?」

竜馬 「あ、そうか。本来俺は、こいつが見えてちゃおかしいんだったよな」

ほむら (巴マミの意識が、逸れた・・・!)

マミ 「キュウべぇ、こっちへ・・・」

キュウべぇ 「わかったよ」


竜馬の手を振りほどき、キュウべぇがマミの胸へと飛び込む。

再び自分の元へと戻ったキュウべぇを抱きしめながらも、マミは竜馬から視線を外す事ができないようだ。

声が、動揺で震えている。


マミ 「この子が見えている、あなたはいったい・・・何者・・・?」

ほむら「私と嫁のまどかよ」

まどか「ほむらちゃん大好き」

ほむら「私もよ」

竜馬 「俺は・・・」

ほむら (今だ・・・っ)


巴マミの意識が、流竜馬へと逸れた今が好機だった。

意識をバックラーへと集中させる。

時間停止の魔法が発動し、私以外の全ての者の時が止まった。

耳が痛くなるほどの静寂が今、私を包み込んでいる。


ほむら 「今のうちに、巴マミの目の届かないところに行ってしまわないと・・・」

ほむら 「だけど・・・」ちらっ

竜馬 「」

マミ 「」


石像のように固まり、身じろぎ一つしない二人。

私が今、突然に姿を消し、流竜馬が一人マミの元に残されたら・・・

彼は一人、マミの追及を逃れる事ができるのだろうか?


ほむら 「平気よ平気・・・だいじょうぶ、だとは思う、けど・・・」


先ほど目の当たりにした、竜馬の身体能力。生半可な事では、彼に生傷一つつけることも難しいと思う。

だけれど、巴マミだって幾つもの修羅場を潜り抜けてきた、歴戦の魔法少女。

もし・・・

もし二人がこの後、戦うような事になったら・・・

どちらかが。あるいは二人とも。

傷ついて、互いにただでは済まないかも知れない。


ほむら 「・・・」

ほむら 「~~~」

ほむら 「~~・・・っ、もう!」


しばしの逡巡の後、竜馬の手をとる私。

彼をこのまま、この場に置き去りにする気には、どうしてもなれなかった。

竜馬 「俺の名前は流・・・あれ??」


私と接触する事で、竜馬の時間が再び動き出す。


竜馬 「おい、あんた・・・マミって言ったか?何を固まってるんだよ・・・」

ほむら 「・・・」

竜馬 「それで俺は、いつの間に暁美と手を繋いでたんだ?」

ほむら 「流君、私について来て。手は絶対に離してはダメ」

竜馬 「なんでだよ?ていうか、なんだか周りの様子が変だぜ。キュウべぇまで石みたいに固まっちまってる」

ほむら 「説明は後でするわ。良いから来て!」

竜馬 「な、なんなんだよ」


駆け出す私。不平を言いながらも、それに続く流竜馬。

私たちは廃ビルの敷地を抜け、そのまま街中へと向かった。

・・・
・・・


走る。

ひたすら走る。

行くあては、特に定まっていない。

ただ、少しでも遠くに。巴マミの目の届かないところまで行かなくては。

今の状況で彼女と敵対しても、私にはなんらメリットは無いのだから。


ほむら 「・・・」

竜馬 「これも魔法少女の力って奴なのか?」

ほむら 「・・・」

竜馬 「行きかう全ての奴らの動きが止まってやがる。人だけじゃねぇ。車や信号機みたいな機械までもだ」

ほむら 「・・・」

竜馬 「まるで、時間そのものが止まっちまってるみたいに、な」

ほむら 「・・・」

竜馬 「だんまりかよ」

ほむら 「・・・流君」

竜馬 「ん?」

ほむら 「さっき、どうして助けてくれたの?」

竜馬 「なんだ、さっきって」

ほむら 「巴マミ。彼女が私を狙って撃った弾丸よ。当たれば死なないまでも、大怪我は免れなかった」

竜馬 「ああ、あれ、な」

ほむら 「私はあなたにとって、こんな訳の分からない状況に追い込んだ、憎むべき相手じゃなかったのかしら。だったら・・・」

竜馬 「目の前で撃たれそうになってる奴を助けるのに、いちいち理由が要るのか?」

ほむら 「・・・」

竜馬 「それにな、話してみて分かったよ。お前、本当にゲッターの事を知らないみたいだな。そんな奴が、俺をどうこう出来るはずもない」

ほむら 「私の話、信用して良いの?」

竜馬 「嘘を言ってるかどうか。そんなのそいつの口ぶりや目を見ていれば分かるさ。それに俺はこうも言ったろ?感だって」

ほむら 「・・・案外、人が良いのね」ぽそっ

竜馬 「聞こえてるんだよ」

竜馬 「まぁ、お前がゲッターに細工したんじゃなくとも、あの場にいた以上、何らかの係わり合いがあるのは事実だ」

ほむら 「そうね。きっと、そうなのでしょうね」

竜馬 「だったら怪我されて、話ができなくなっても困るんでな」

ほむら 「・・・ありがとう」

竜馬 「らしくねぇな、どうしたんだ?」

ほむら 「信じてもらえた事が、少しだけ嬉しかったから」

竜馬 「?」


”あの時の彼女達”にも、今の竜馬のように言ってもらえてたら・・・

そんな詮無い想いが、空しく私の胸の内を吹き抜けていった。


竜馬 「案外、しおらしいところもあるのな。驚いたぜ」ぽそっ

ほむら 「きこえているわよ」

・・・
・・・


マミ 「・・・消えた?」

まどか 「ほむらちゃん・・・いったいどこにいっちゃったの・・・?」

マミ 「鹿目さんといったかしら。さっきの子たち、見滝原の制服を着ていたけれど。あなたの知り合いなの?」

まどか 「あ、はい。二人とも、私のクラスメートなんです・・・」

マミ 「そう・・・キュウべぇ」

キュウべぇ 「なんだい?」

マミ 「あの男の子、あなたの事が見えていたようだけれど、それについてなにか思い当たる事は?」

キュウべぇ 「さて。僕にもさっぱり、訳の分からない事だらけだよ」

マミ 「魔法少女でもないのに、キュウべぇと話したり触れたりできる。なぜ・・・?私たち以外で、そんな事ができる者がいるとしたら・・・」

マミ (・・・魔女?)

まどか 「あの・・・?」

マミ 「あ、ううん。なんでもないの。鹿目さん、あなたもキュウべぇや使い魔が見えてるのね」

まどか 「あ、はい・・・」

マミ 「じゃあ、改めて自己紹介しておかないとね。私は巴マミ。あなたと同じ見滝原中学の3年生。そして、キュウべぇと契約した魔法少女よ」


キュウべぇ (本当に訳の分からないことばかりだ。特に流竜馬。彼の事はおざなりにはできないね)

キュウべぇ (最優先で監視しなくては。そして、僕たちの計画に役立ってくれるようだったら、やがていずれは・・・)

・・・
・・・


次回予告


互いの思惑を異にしながらも、共闘を開始するほむらと竜馬。

片やまどかを守り、彼女の願いを叶えるため。

そして、己のいるべき場所へと戻るため、その方法を探るために。

そんな中、ほむらは謎の魔力の消耗に悩まされていた。

たちまち黒く濁るソウルジェム。焦るほむら。彼女の身に、いったい何が起こったのか?


次回 ほむら「ゲッターロボ!」第二話にテレビスイッチオン!
 

>>189

一部、文章が抜けてました。訂正します。

失礼しました。


<訂正>


・・・
・・・


次回予告


互いの思惑を異にしながらも、共闘を開始するほむらと竜馬。

片やまどかを守り、彼女の願いを叶えるため。

そして片や、己のいるべき場所へと戻るため、その方法を探るために。

そんな中、ほむらは謎の魔力の消耗に悩まされていた。

たちまち黒く濁るソウルジェム。焦るほむら。彼女の身に、いったい何が起こったのか?


次回 ほむら「ゲッターロボ!」第二話にテレビスイッチオン!

ありがとうございました。

二話以降もお付き合い頂けたら嬉しく思います。

真ゲもいいけど初代もかっこいいから楽しみだ
>>1はダイノゲッター見た?

1です。

次回予告の件ですが、これはテレビ版「G]の予告を参考にしました。
とは言っても自分もリアルゲッター世代ではないので全部を確認したわけではないのですが、自分が見た限りでは

無印 「次回、○○にご期待ください」

G  「次回、○○にテレビスイッチオン!」

と、違いが有りまして、以前書いたゲッター物のSSでは無印の予告を参考にしたので、今回はGの物をと・・・
あまり深い意味はありません。

あと、作中のゲッターの時代ですが、パラレルと言うことで好きに書いていますので、原作とは乖離している部分も多々あり・・・ そこら辺は寛容的に見ていただければ大変ありがたいです。

二話投下は、もう暫しお待ちください。

>>197

不覚にもダイノゲッターの存在自体知りませんでした。早速読んできましたよ。
亡き石川御大のタッチを上手に継承している雰囲気で、この後が楽しみです。
教えていただき、ありがとうございました。

1です。

次回予告の件ですが、これはテレビ版「G]の予告を参考にしました。
とは言っても自分もリアルゲッター世代ではないので全部を確認したわけではないのですが、自分が見た限りでは

無印 「次回、○○にご期待ください」

G  「次回、○○にテレビスイッチオン!」

と、違いが有りまして、以前書いたゲッター物のSSでは無印の予告を参考にしたので、今回はGの物をと・・・
あまり深い意味はありません。

あと、作中のゲッターの時代ですが、パラレルと言うことで好きに書いていますので、原作とは乖離している部分も多々あり・・・ そこら辺は寛容的に見ていただければ大変ありがたいです。

二話投下は、もう暫しお待ちください。

>>197

不覚にもダイノゲッターの存在自体知りませんでした。早速読んできましたよ。
亡き石川御大のタッチを上手に継承している雰囲気で、この後が楽しみです。
教えていただき、ありがとうございました。

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