リーネ「基地に幽霊が出るって噂知ってるかな?」サーニャ「……」 (70)

食堂

リーネ「はむっ……」

サーニャ「はむっ」

リーネ(昼食の時間なのに、どうしてサーニャちゃん以外いないんだろう)

サーニャ「おいしい」

リーネ(芳佳ちゃんは今、バルクホルンさんと飛行訓練中だったけど、他の人はどうだったかな)

サーニャ「はむっ」

リーネ「サ、サーニャちゃん、エイラさんはどうしたの?」

サーニャ「エイラは今、ペリーヌさんと哨戒任務についているはずだけど」

リーネ「そ、そうなんだ」

サーニャ「うん」

リーネ「そっか……ペリーヌさんと任務中なんだ……」

リーネ(どうしよう。私、サーニャちゃんとは二人きりになったことなんてないし、何を話していいか……えーと……えーと……話題……話題……)

リーネ「そ、そうそう。サーニャちゃん、基地に幽霊が出るって噂知ってるかな? この前、ペリーヌさんから聞いたんだけど」

サーニャ「……」

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リーネ「怖いよねー。私、オバケとか怖い話とか苦手なの。サーニャちゃんはそういう話、得意?」

サーニャ「……」

リーネ「……」

リーネ(あれ……。なんだろう……悲しい目をしてる……。もしかして、苦手だったのかな!?)

リーネ「ご、ごめんなさい!! こんな話、食事中にすることじゃないよね! だ、黙って食べるね! ごめんなさい!!」

サーニャ「……その幽霊の話」

リーネ「え?」

サーニャ「多分、私のこと」

リーネ「……」

サーニャ「はむっ……おいしい……」

リーネ「あ、あはは。サ、サーニャちゃんって冗談とか言うんだね。知らなかったなぁ……」

サーニャ「冗談じゃないの」

リーネ「いや、でも、サーニャちゃんは幽霊じゃないし……」

サーニャ「ペリーヌさんがいう幽霊はきっと私のことだから」

リーネ「ど、どうして、ペリーヌさんがそんなこと言うの?」

サーニャ「いるのかいないのか分からないからって。存在感が殆どないからかも」

リーネ「そんなことないよ。サーニャちゃんは可愛いし」

サーニャ「ありがとう……。でも、私は気にしてないから」

リーネ「サーニャちゃん……」

サーニャ「はむっ」

リーネ(気にしてなかったらあんなに悲しい目になるはずは……)

シャーリー「やぁーっとメシだぁー」

ルッキーニ「はやくたべよぉー」

リーネ「あ、シャーリーさん、ルッキーニちゃん。遅かったんですね」

シャーリー「納得のいく調整ができなくてさ。手間取ったんだよ。なぁ、ルッキーニ?」

ルッキーニ「どったー」

シャーリー「リーネとサーニャは予定よりも早く休めたのか?」

リーネ「私はハルトマンさんと訓練していたんですけど、ハルトマンさんが用事があるということで早めに終わりました」

シャーリー「そうなのか。サーニャは?」

サーニャ「昼食に合わせて起きただけです」

ルッキーニ「シャーリー、もってきたー」

シャーリー「お、サンキュー。リーネ、あとでハルトマンのところにいっとけよ」

リーネ「どうしてですか?」

シャーリー「訓練サボってるのがバレたら中佐に怒られるぞ? ハルトマンと口裏合わせといたほうがいい」

リーネ「わ、私、サボってなんかいませんよ!?」

シャーリー「リーネはそうでもハルトマンは違うからな。連帯責任ってやつだよ」

リーネ「そ、そんなぁ」

ルッキーニ「リーネ、ごしゅーしょーさまぁー」

リーネ「うぅ……」

サーニャ「ご馳走様でした」

シャーリー「サーニャ、これからトレーニングか?」

サーニャ「はい。少しだけ仮眠を取りますけど」

シャーリー「そっか。おつかれー」

サーニャ「はい。失礼します」

リーネ「……」

ハルトマンの部屋

リーネ「ハルトマンさーん」

エーリカ「んー? なんだ、リーネか」ガチャ

リーネ「あ、お休み中、すみません。えっと……あの……」

エーリカ「どうしたの?」

リーネ「あのぉ……シャーリーさんに言われて……あの……ハルトマンさんが訓練をサボっていたら、大変だからって……」

エーリカ「失敬だなぁ。なんで私が訓練サボってることになるの?」

リーネ「ごめんなさい!! やっぱり、なんでもないです!!」

エーリカ「サボってないよ。ちょっと疲れたから用事を思い出しただけだって」

リーネ「えぇ……?」

エーリカ「ミーナになんか言われたらこういっとけばいいよ。リーネが優秀すぎてハルトマンが匙を投げたってね」

リーネ「そんなこと言ったらハルトマンさんが怒られちゃいますよ?」

エーリカ「だいじょーぶだって。いつものことだし」

リーネ「ハルトマンさん……」

エーリカ「話はそれだけ? それじゃ、あと90分寝るから」

リーネ「あぁ……はい……。おやすみなさい」

リーネ(本当にいいのかなぁ……)

サーニャ「あ、リーネちゃん」

リーネ「サーニャちゃん。どうしたの? 仮眠を取るんじゃ……」

サーニャ「その前にハルトマンさんとお話しようと思って」

リーネ「そうなんだ。サーニャちゃんはハルトマンさんとよくお話するの?」

サーニャ「ええ。時々。私は殆どハルトマンさんの話を聞くだけなんだけど」

リーネ「へぇ……」

サーニャ「……」

リーネ「あ、ご、ごめんなさい! 私、もう行くから!」

サーニャ「……ごめんね」

リーネ「ううん! こっちこそ、邪魔したみたいになってごめんね!」

サーニャ「そんなことないわ」

リーネ「ま、またね」

サーニャ「うんっ」

格納庫

リーネ「うーん……。やっぱり、あれは気にしてると思うけど……」

芳佳「リーネちゃんっ」

リーネ「芳佳ちゃん! 訓練終わったの?」

芳佳「うん! 食堂に行ってもリーネちゃんが居なくて、さがしちゃった」

リーネ「少しハルトマンさんの部屋に行く用事があったの」

芳佳「ハルトマンさんに? 訓練で何かあったの?」

リーネ「ううん。大丈夫だよ。もう解決した……と思うから」

芳佳「解決したんだ」

リーネ「多分」

芳佳「それなら何が気にしてると思うの?」

リーネ「え? き、聞いてたの?」

芳佳「ごめん。聞こえちゃって」

リーネ「実は、サーニャちゃんのことなの」

芳佳「サーニャちゃん?」

芳佳「――そっかぁ。そういえば私もその話聞いたなぁ」

リーネ「芳佳ちゃんも?」

芳佳「ほら、前に私が夜間飛行専従班に選ばれたときがあったでしょ。そのときにサーニャちゃんが言ってたんだ」

芳佳「幽霊みたいって」

リーネ「それペリーヌさんに?」

芳佳「うん。サーニャちゃんは気にしてないって言ってたけど」

リーネ「……」

芳佳「やっぱり、気にしてるのかなぁ」

リーネ「私、ペリーヌさんに聞いてみようかな。私に話してくれた幽霊の話はサーニャちゃんのことなのかどうか」

芳佳「それでサーニャちゃんのことだったら、どうするの?」

リーネ「そのときは……」

芳佳「そのときは?」

リーネ「そのとき!」

芳佳「よし、私もいく!!」

リーネ「ありがとう、芳佳ちゃん!!」

>>9
芳佳「ほら、前に私が夜間飛行専従班に選ばれたときがあったでしょ。そのときにサーニャちゃんが言ってたんだ」

芳佳「ほら、前に私が夜間飛行専従班に選ばれたときがあったでしょ。そのとき聞いたの。サーニャちゃん、言われたんだって……」

通路

美緒「私も夜は巡回があるからな。お前の話を夜通し聞いてもやりたいが難しいな」

ペリーヌ「そ、そうですか……。残念ですわ……。色々と聞いてほしいこともあったのですが」

美緒「はっはっはっは。夜は無理だが、それでも暇な時間は必ずある。そのときを利用して色々と聞いてやろう」

ペリーヌ「はぁい! そのときはよろしくお願いしますわ!」

美緒「ああ。ではな」

ペリーヌ「ありがとうございます、少佐!」

ペリーヌ「はぁぁ……少佐はやはりお優しいですわぁ……」

リーネ・芳佳「「ペリーヌさんっ」」

ペリーヌ「あら、どうかされまして?」

リーネ「あの。聞きたいことがあるんですけど」

ペリーヌ「なにか?」

リーネ「この前、話してくれた幽霊の話なんですけど……」

ペリーヌ「あの話? それがどうかしまして?」

リーネ「はい。率直に訊ねますけど、その幽霊ってサーニャちゃんのこと、なんですか?」

ペリーヌ「……そういえば、そういうことも言ったかもしれませんわね」

リーネ「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「で、でも、リーネさんに話したこととは別ですわ」

リーネ「別!?」

芳佳「そ、それって基地に幽霊がいるってことなんですか!?」

ペリーヌ「そうよ。いくらわたくしでもサーニャさんと幽霊を見間違えることはありませんもの」

リーネ「基地に幽霊が出るのは本当で、サーニャちゃんのことを幽霊って言ったのも本当のことなんですか……」

ペリーヌ「し、仕方ないでしょう。サーニャさん、いつも夜から明け方にかけて基地の中を歩いているのですから」

リーネ「サーニャちゃん、とても悲しそうな顔になってましたよ?」

ペリーヌ「そ、そんなの知りませんわ」

リーネ「……」

芳佳「あのぉ、幽霊でるんですか、この建物……」

ペリーヌ「間違いなく。出ます」

芳佳「リーネちゃぁん……今日から一緒にねよぉ……」

リーネ「え!? 私は別にいいけど、きっと怒られちゃうよ!?」

ペリーヌ「話は終わりですか? これから訓練があるので、失礼しますわ」

リーネ「あ、ペリーヌさんっ」

芳佳「幽霊こわいよぉ」ギュッ

リーネ「芳佳ちゃん……。そ、それよりこれからどうしようか?」

芳佳「どうするって?」

リーネ「私、サーニャちゃんとは殆ど話したことがないし、サーニャちゃんも私のことなんてあまり気にしてはないだろうけど……で、でもね……」

リーネ「サーニャちゃんがあんなに悲しそうな顔をするのは見たくないの」

芳佳「そんなに悲しそうだったんだ」

リーネ「うん。あのときは幽霊って言葉を聞いたからなのかもしれないけど、もしかしたらふとしたときに思い出していることもあるかもしれないし」

芳佳「そうだね。サーニャちゃんは一人でいることが多いもんね」

リーネ「何かできないかな?」

芳佳「できることかぁ……」

リーネ「やっぱり、ダメかな。私じゃなにも……」

芳佳「リーネちゃん! 諦めちゃダメ!! まだ何も考えてないじゃない!!」

リーネ「よ、芳佳ちゃん……ごめんなさい……」

芳佳「私も協力するから! 私もサーニャちゃんを笑顔に出来るなら、なんでもする!!」

リーネ「うんっ。ありがとう」

芳佳「よーしっ! 考えるぞー!!」

リーネ(芳佳ちゃんはすごいなぁ。こういうところに憧れる)

芳佳「うーん……! うーん!!」

リーネ「……」

芳佳「そうだ!! エイラさんに相談してみよう!!」

リーネ「エイラさん?」

芳佳「サーニャちゃんのことならエイラさんしかいないよ!!」

リーネ「そうだね。それが一番かも」

芳佳「いこっ。リーネちゃん。エイラさんならきっといい方法を考えてくれるよ!」

リーネ「うんっ」

芳佳「ペリーヌさんがサーニャちゃんに謝ってくれるのがいいんだけどね」

リーネ「それは無理そう……」

芳佳「うん」

エイラ「あぁ? サーニャとペリーヌを仲直りさせるって?」

リーネ「はい。きっとそうしたほうがいいかなって」

エイラ「悪いけど。それはムリダナ」

芳佳「ど、どうして!?」

エイラ「サーニャはそもそもペリーヌのことはなんとも思ってないんだ。サーニャは優しいからな」

リーネ「でも幽霊って言われたことは気にしてます、よね?」

エイラ「多分な。だからってペリーヌが素直に謝ったところで、何も解決しないぞ」

リーネ「そうか。サーニャちゃんは幽霊といわれてしまった自分を気にして……」

エイラ「そういうことだ。ペリーヌに対して腹を立てているなら分かりやすかったんだけどな」

リーネ「……」

エイラ「悪いな。サーニャのこと心配してくれたのは嬉しいけど、こればかりはどうにもならないんだ」

芳佳「だけど、ペリーヌさんが一言謝ってくれたら、少しは違うんじゃ……」

エイラ「あのツンツン眼鏡が謝るわけないだろ」

芳佳「どうしたら謝ってくれるのか考えましょう!!」

リーネ(確かに、サーニャちゃんは自分のことを存在感がないって……)

エイラ「もういいから、あまりサーニャのことを穿ろうとしないでくれ。サーニャもいい気はしないだろうからな」

芳佳「でもぉ……」

エイラ「ありがと、宮藤、リーネ。その気持ちだけもらっとくから。じゃな」

芳佳「あぁ、エイラさーん!」

リーネ「……」

芳佳「はぁ、どうしようか、リーネちゃん?」

リーネ「ハルトマンさんにも話を聞きに行こう」

芳佳「え? ハルトマンさん? どうして?」

リーネ「時々、サーニャちゃんはハルトマンさんと話をしてるって言ってたから」

芳佳「そうなの? うん! ハルトマンさんなら何か良い案を出してくれるかも!!」

リーネ「うん! きっと出してくれるよ!!」

芳佳「よーし! ハルトマンさんのところにいこー!!」

リーネ「おー」

芳佳「ハルトマンさーんっ」

リーネ(でも、ハルトマンさんもきっと……)

エーリカ「そっとしておけば?」

芳佳「えぇぇ!?」

リーネ「あはは……」

エーリカ「サーにゃんは気にしてないって言ってるんだろー? だったら、外野がとやかくいうこともないじゃん」

芳佳「でも!」

バルクホルン「ハルトマン!! 何をしているんだ!! 行くぞ!!」

エーリカ「はぁーい。じゃ、任務あるから」

芳佳「ま、まってください!!」

リーネ「芳佳ちゃん、邪魔しちゃダメだよ」

芳佳「で、でも……」

リーネ「ごめんなさい、ハルトマンさん」

エーリカ「別に構わないよ」

バルクホルン「早くしろ!!」

エーリカ「今いくってー」

リーネ(ハルトマンさんやエイラさんの言うとおり、サーニャちゃん自身が気にしていないって言っている以上、何もしないほうがいいのかもしれないけど……でも……)

食堂

芳佳「もうだめぇぇ……」

リーネ「……」

芳佳「サーニャちゃんを笑顔にできないのかなぁ」

リーネ「……」

ミーナ「あら、二人とも。訓練はどうしたのかしら?」

芳佳「ミーナ中佐!」

リーネ「い、いえ。まだ、時間じゃないだけです」

ミーナ「うふふ。知っているわよ。でも、リーネさんは午前の訓練をサボったらしいわね?」

リーネ「……!」ギクッ

芳佳「そうなの?」

リーネ「ち、ちがうよ」

ミーナ「リーネさん。相手が上官だからって不正を黙認することはないわ。というかハルトマン中尉に対してなら多少厳しくいってくれてもいいわよ。隊長が許します」

リーネ「ど、どうも……」

ミーナ「まぁ、リーネさんでは難しいかもしれないけれど」

芳佳「ミーナ中佐は今から休憩ですか?」

ミーナ「それなら良かったのだけどね。今は施設内の巡回中なの」

芳佳「夜にバルクホルンさんや坂本さんがしているのは知っていますけど、昼間にもしているんですか?」

ミーナ「一応、定期的にね。軍の施設だから何かと神経質にならざるを得ないところもあるのよ」

芳佳「そうですか。よくわかりませんけど」

リーネ「……あの!」

ミーナ「なに?」

リーネ「へ、変なこと聞いてもいいですか?」

ミーナ「へ、変なことって……な、内容にもよるわよ?」

リーネ「この基地に幽霊が出るって噂、ミーナ中佐は知っていますか?」

ミーナ「幽霊?」

リーネ「はい。飽くまでも噂を耳にしただけなんですけど……」

ミーナ「……そうね。全く噂が無いわけでもないわね」

芳佳「えぇぇ!? や、やっぱり、いるんですかぁ!?」

リーネ「そ、それって、どんな噂ですか……?」

ミーナ「詳しい話は夜間巡回をしているバルクホルン大尉や坂本少佐に聞いてみるといいと思うわ」

芳佳「坂本さん?」

ミーナ「私はその二人からそういった話を聞いたことがあるだけだから」

リーネ「例えば、どんな話ですか?」

ミーナ「……聞きたいの?」

リーネ「……はい」

芳佳「えぇ!? 私はあまり聞きたくないけど……」

ミーナ「そうね。最初に聞いたのは、食堂に出る幽霊かしら」

芳佳「食堂!? ここじゃないですか!?」

ミーナ「丁度、キッチンのところで人影のようなものを見たって言っていたわ。でも、キッチンのほうへ行ってみても誰もいなかったの」

芳佳「まさしく幽霊だよぉ……リーネちゃん……」ギュゥゥ

リーネ「そうだね……」ギュゥゥ

ミーナ「他には夜に格納庫から聞こえる謎の金属音とか、個室トイレから轟くうめき声とか。そういう話は多いわね」

芳佳「リーネちゃん!! もう私、リーネちゃんと同じベッドじゃなきゃ眠れない!! 夜、トイレも一緒にいこう!!」

リーネ「よろこんで!」

ミーナ「とはいえ、恐らくは何か原因があると思うわ」

リーネ「原因ですか?」

ミーナ「ええ。幽霊が本当にいると思う?」

芳佳「いますっ!!」

ミーナ「ふふっ。なら、いるかもしれないわね」

芳佳「こわいよぉ」ギュゥゥ

リーネ「……」

ミーナ「リーネさん?」

リーネ「は、はい!」

ミーナ「何かの参考になったかしら?」

リーネ「なったかもしれません」

ミーナ「それなら良かったわ。いけない。巡回しないと」

リーネ「ありがとうございました」

ミーナ「また聞きたくなったらいつでも言ってね」

芳佳「もういいです!!」

リーネ「……芳佳ちゃん」

芳佳「なぁに?」

リーネ「私、幽霊を探してみる」

芳佳「えぇぇ!? なんのために!?」

リーネ「怖いけど、サーニャちゃんを元気づけることができるかもしれないから」

芳佳「サーニャちゃんを?」

リーネ「だから、幽霊を探してみる」

芳佳「リーネちゃん……。なら! 私も協力する!!」

リーネ「いいよ。芳佳ちゃんに迷惑はかけられないから」

芳佳「そんなことない! リーネちゃんだけに怖い思いはさせられないから!!」

リーネ「うれしい……」

芳佳「数珠とか色々用意しなきゃ! 坂本さんなら持ってるかも!! 私、ちょっと行って借りてくるから!!」

リーネ「あ、う、うん。おねがい。ジュズがなにかよくわからないけど」

芳佳「悪霊からリーネちゃんを守ってみせるよ!!」

リーネ「……私も行かなきゃ」

バルクホルン「怪談か」

リーネ「はい。出来る限り詳しい話を聞きたくて」

バルクホルン「何故だ?」

リーネ「原因、分かってないんですよね?」

バルクホルン「検討はついているがな」

リーネ「私が調べようと思って……。ダメですか?」

バルクホルン「調べてくれるのはありがたいが、一人でか?」

リーネ「サーニャちゃんも一緒に」

バルクホルン「夜間哨戒があるサーニャとか。中々無謀なことを言ってくれるな」

リーネ「ごめんなさい……」

バルクホルン「ハルトマンから少し聞いたが、サーニャのことが気になっているらしいな」

リーネ「……はい」

バルクホルン「いいだろう。食堂の怪から話すとしようか」

リーネ「お願いします」

バルクホルン「あれは午前1時ごろだったか……」

夜 廊下

サーニャ「ふわぁ……」

リーネ「サーニャちゃん、おはよう」

サーニャ「おはよう、リーネちゃん」

リーネ「あの、夜間哨戒があって大変なのは分かっているんだけど、私のお願い聞いてくれないかな?」

サーニャ「なに?」

リーネ「今日、私と深夜の基地探検しない?」

サーニャ「……なんのために?」

リーネ「幽霊」

サーニャ「……」

リーネ「この基地ね、幽霊がたくさんでるみたい」

サーニャ「そう……」

リーネ「でもね、あの、幽霊なんてきっといなくて、何か原因があると思うの」

サーニャ「原因?」

リーネ「そう! その原因を一緒に調べてほしいなぁって……」

サーニャ「リーネちゃん、怖い話とか幽霊は苦手って言ってたのに」

リーネ「怖いよ。怖いからこそ、原因を調べたいの。正体がわからないままだとそれこそ本当に幽霊だからか」

サーニャ「……」

リーネ「ええと、あの……なんていったらいいのか……だから……とにかく、私と深夜に基地の中を探検してください!」

サーニャ「……うん。いいよ」

リーネ「ホント!?」

サーニャ「リーネちゃんのお願いなら、断れないもの」

リーネ「そんな。あまり話したこともないのに……」

サーニャ「たくさん話したことがあるから友達なの?」

リーネ「え……。違うと思う」

サーニャ「なら、どれだけ話したことがあるかなんて関係ないわ」

リーネ「サーニャちゃん……」

サーニャ「0130時に一度戻ってくるから、そのときに探検しましょう?」

リーネ「うん! ありがとう!」

サーニャ「ううん。私も楽しみ」

>>25
リーネ「怖いよ。怖いからこそ、原因を調べたいの。正体がわからないままだとそれこそ本当に幽霊だからか」

リーネ「怖いよ。怖いからこそ、原因を調べたいの。正体がわからないと幽霊のままだから」

美緒「リーネ!」

リーネ「あ、坂本少佐。あの、今夜は……」

美緒「話は聞いた。本当に任せてもいいのか?」

リーネ「はい。是非、調査をさせてください」

美緒「うむ……。本来なら大尉以上の士官がするべきことだが……」

リーネ「すみません。でも……」

美緒「サーニャのためだろう? 宮藤もそのことを言っていた」

リーネ「はい」

美緒「サーニャのこと頼むぞ」

リーネ「え?」

美緒「流石にエイラとばかりではサーニャも成長できないからな」

リーネ「そうなんですか?」

美緒「多くのウィッチと交流があるほうがいいに決まっているだろう? 心の支えにもなる」

リーネ「私はそこまでは……。ただ、サーニャちゃんの悲しそうな表情を見たくないからで……」

美緒「そう考えてくれる友人がエイラ以外にもいる。それはサーニャにとって何よりも嬉しいことだと思うぞ」

リーネの部屋

芳佳「あくりょ~たいさ~ん! あくりょ~たいさ~ん!!」バサッバサッ!!

リーネ「よ、芳佳ちゃん、なにしてるの?」

芳佳「扶桑でよくやる魔除けの儀式だから!! 気にしないで!!」バサッバサッ!

リーネ「その白い紙がたくさんついた棒を振ると幽霊が寄ってこなくなるの?」

芳佳「多分!!」

リーネ「そうなんだ。なら、お願い」

芳佳「まかせて!! あくりょ~たいさ~ん!! あくりょ~たいさ~ん!!!」バサッバサッ!!!

リーネ(芳佳ちゃん、すごく心配してくれてるんだ。嬉しいな)

芳佳「よし。次ね」

リーネ「次もあるの!?」

芳佳「塩、まくから」

リーネ「ちょっと、まって!! それは!!」

芳佳「リーネちゃんのことは私が絶対に守るから!!」バッバッ!!

リーネ「きゃ!? ……しょっぱい」

数時間後

リーネ「そろそろサーニャちゃんが戻ってくる時間……」

芳佳「すぅ……すぅ……リーネちゃん……まもる……からぁ……」

リーネ(ありがとう、芳佳ちゃん。たくさん勇気をもらったよ)

リーネ(芳佳ちゃんのおかげで今は全然怖いないよ)

リーネ「よし」

コンコン

リーネ「ひゃっ」ビクッ

バルクホルン『リーネ、起きているか?』

リーネ「バ、バルクホルンさん?」

バルクホルン『サーニャが戻ってきた。すぐに格納庫へ行け』

リーネ「了解っ」

バルクホルン『出るといいな、幽霊』

リーネ「そうですね……」

バルクホルン『しっかりな』

格納庫

サーニャ「リーネちゃん」ブゥゥゥン

リーネ「おかえり、サーニャちゃん」

サーニャ「ただいま。リーネちゃん、大丈夫? 寝てないんじゃ……」

リーネ「少し寝たから平気だよ。私のほうこそ、我侭に付き合ってもらってごめんね」

サーニャ「いいの。こういうこと初めてでドキドキしてる」

リーネ「ええと、私たちは今から基地内で起こっている怪奇現象の調査をします」

サーニャ「はい」

リーネ「1時間後にはまたサーニャちゃんは夜間哨戒に出なきゃいけないから、とりあえず0230時までを目処にします」

サーニャ「それ以上の調査はしないってことですね?」

リーネ「はい。サーニャちゃんの負担も大きくなりますから」

サーニャ「了解、リーネ隊長」

リーネ「た、隊長?」

サーニャ「ダメ? 探検隊の隊長はリーネちゃんだから」

リーネ「……うんっ。サーニャちゃんがそう呼びたいなら、それでいいよ」

廊下

リーネ「サーニャちゃん、私から離れないでね」ギュッ

サーニャ「ええ。離さないわ」

リーネ「まずは食堂にいくから」

サーニャ「了解。食堂に幽霊が出るの?」

リーネ「うん。バルクホルンさんと坂本少佐から聞いたから、間違いないよ。ただ、最近は見なくなったって」

サーニャ「そうなんだ。なら、今日出るかどうかはわからないのね」

リーネ「実はいうとそうなの。でも、今日出なくても明日があるから」

サーニャ「もしかして原因がわかるまで、続けるの?」

リーネ「あ、えっと、サーニャちゃんが嫌っていうなら……」

サーニャ「そんなことないわ。むしろ、毎日してもいいぐらい」

リーネ「ま、毎日はちょっと、大変だと思うけど」

サーニャ「……着いた。夜の食堂は少し不気味かも」

リーネ「サ、ササ、サーニャちゃん、私につ、つ、ついてきてね」ギュゥゥ

サーニャ「了解」

食堂

リーネ「ど、どう……キッチンのほうに人影はある……?」ギュゥゥ

サーニャ「……」ピコンッ

リーネ「サーニャちゃん……? どうかし――」

サーニャ「隠れて」グイッ

リーネ「え? な、なに?」

サーニャ「しっ。誰かが食堂に近づいてきているみたい」

リーネ「それって巡回中の坂本少佐かバルクホルンさんじゃ……」

サーニャ「……」

リーネ「うぅ……」ギュゥゥ

「にゃはー。おにゃかすいたー」

リーネ「おばけ……!」

サーニャ「リーネちゃん、落ち着いて。幽霊じゃないわ」

リーネ「ホントぉ?」

サーニャ「ほら、ちゃんと影があるから。幽霊じゃないと思う」

「今日はどれにしよーかなー」

サーニャ「食料を物色してるみたい」

リーネ「だったら、止めなきゃ!」

サーニャ「行きましょう」

リーネ「うん!」

サーニャ「誰!?」

「あにゃ!?」

リーネ「勝手に食べ物を――」

サーニャ「あれ……? 誰もいないわ」

リーネ「で、でも、食材を漁った跡があるし……」

サーニャ「……」

リーネ「サ、ササ、サーニャちゃん……!!」ギュゥゥ

サーニャ「リーネちゃん?」

リーネ「おぼけ……おばけだよ……」

サーニャ「オバケ……」

サーニャ「……」ピコンッ

リーネ「人だったら消えることなんてできないよぉ……。もう芳佳ちゃんと一緒じゃないと料理できない……」

サーニャ「リーネちゃん。リーネちゃんはよく料理作ってるから、知っていると思うけど」

リーネ「え? なに?」

サーニャ「人一人が入れるぐらいの収納スペースはある?」

リーネ「あ、あるけど。でも、入れるっていっても精々ルッキーニちゃんぐらい……」

サーニャ「うん」

リーネ「……まさか!!」パカッ!!

ルッキーニ「バレたぁー!!」

リーネ「ルッキーニちゃん!? なにしてるの!?」

ルッキーニ「あははは……ここでよく寝てるのー……なんて……」

サーニャ「……」

ルッキーニ「ごめんにゃさい……夜、おなかすいて……それで……それで……」

リーネ「食堂に出る幽霊はルッキーニちゃんだったんだ……はぁ……」

ルッキーニ「幽霊? あたし、幽霊だったの? なんかかっちょいー」

リーネ「――食堂の幽霊はルッキーニちゃんでした」

美緒「やはりか。犯人の目星はついていたのだが、いつも逃げられてしまっていてな。まさかあんな狭い場所に隠れていたとは」

ルッキーニ「にゃはー」

美緒「ルッキーニ少尉……」

ルッキーニ「てへっ」

美緒「ふんっ!!!」ゴンッ

ルッキーニ「いたぁぁい!!! うえぇぇぇん!!!!」

リーネ「あの、穏便に……」

美緒「ご苦労だったな。感謝するぞ、二人とも」

サーニャ「いえ」

美緒「まだ調査のほうは続けるのか?」

リーネ「勿論です。次は格納庫のほうへ行ってみます」

美緒「そうか。無理はするなよ」

サーニャ「はい、心得ています」

美緒「それならいい。また幽霊の正体がわかれば報告してくれ」

リーネ「次は格納庫から聞こえてくる謎の金属音だけど……」

サーニャ「リーネちゃん」

リーネ「疲れちゃった? 今日はやめておく?」

サーニャ「いえ。疲れを忘れるぐらい楽しいわ。ありがとう」

リーネ「そうなんだ。私はもう心臓が痛くて大変……」

サーニャ「どうして私を誘ってくれたの?」

リーネ「どうしてって……」

サーニャ「リーネちゃんは芳佳ちゃんやペリーヌさんと仲がいいから、わざわざ私を誘う必要もないもの」

リーネ「……サーニャちゃんがね、幽霊って言われちゃったのにはきっと訳があるんじゃないかって思ったの」

サーニャ「それは私の存在感が薄い過ぎるから」

リーネ「それだけじゃないよ!」

サーニャ「……!」

リーネ「さっきのルッキーニちゃんみたいに、きっと何かあったんだと思うの。サーニャちゃんがどうとかじゃないよ」

サーニャ「……そうだといいな」

リーネ「きっとそうだよ。サーニャちゃんはこんなに可愛いのに見た目や雰囲気で幽霊なんて言えないよ、絶対」

>>29
リーネ(芳佳ちゃんのおかげで今は全然怖いないよ)

リーネ(芳佳ちゃんのおかげで今は全然怖くないよ)

>>37
サーニャ「それは私の存在感が薄い過ぎるから」

サーニャ「それは私の存在感が薄過ぎるから」

サーニャ「リ、リーネちゃん……そんな可愛いなんて……」

リーネ「私はそれをわかってほしくて――」

カーン! カーン! カーン!

リーネ「ひっ!?」ビクッ

サーニャ「格納庫から音が……」

リーネ「ポルターガイストぉ……?」ギュゥゥ

サーニャ「私が見てくるわ」

リーネ「ま、まって!」

サーニャ「え?」

リーネ「わ、私のあとについてきて……」ギュゥゥ

サーニャ「でも、リーネちゃん、こんなに震えてるし、腰もひけてるから」

リーネ「隊長だから……がんばるっ」

サーニャ「……」

リーネ「い、いい、行きますっ」

サーニャ「了解っ」

格納庫

リーネ「……」ソーッ

カーン! カーン! カーン!

リーネ「誰かいるのかな?」

サーニャ「こっそり近づいていかないと逃げられるかも」

リーネ「う、うん。そうだね」

サーニャ「……リーネちゃん、あっち」

リーネ「い、いた?」

「……」カーン!カーン!カーン!

サーニャ「せーのっで行きましょう」

リーネ「りょ、了解」

サーニャ「――せーのっ」

リーネ「やぁー!!」バッ

サーニャ「捕まえましたっ」ギュッ

シャーリー「ぉわ!? なんだよ!? って、リーネとサーニャか。こんな遅くまでなにしてんだ?」

リーネ「シャーリーさん!? シャーリーさんこそなにしてるんですか!?」

シャーリー「ユニットの調整だけど? いやぁー。どうしても満足できなくてさぁ。昼からずーっと気になってて。で、今やってた」

リーネ「何もこんな遅い時間にしなくても」

シャーリー「気になると眠れないんだ」

サーニャ「さっきの音はなんですか?」

シャーリー「音? これか?」カーンッ

リーネ「それです」

シャーリー「これ、私の悪い癖なんだ。どうにも行き詰ると工具で壁とか軽く叩いちゃうんだよ」

サーニャ「それでおかしな金属音が……」

シャーリー「工具が傷むからなるべくしたくないんだけどさ。気づいたときに鳴らしてるんだ」

リーネ「バルクホルンさんや坂本少佐に怒られたことはないんですか?」

シャーリー「ないなぁ。見回りの時間は把握してるから。今日は完全に想定外だったけどね」

サーニャ「ルッキーニちゃんと同じ……」

リーネ「見回りの人が来たら隠れていたわけですか」

シャーリー「違う違う。見回りが来る前には終わるんだ。そんなギリギリを楽しむような真似はしないよ」

バルクホルン「話は聞いた」

シャーリー「文句でもあるのか?」

バルクホルン「あるに決まっているだろう!!! お前は消灯時間が過ぎているのにも関わらず何をしているんだ!! 貴様は立場というものがわかっていないのかぁ!?」

シャーリー「お、おぅ……」

バルクホルン「お前は大尉になったのだぞ!? 大尉だ!! 大尉!! お前は私と並ぶ階級なんだぞ!? その階級の重みが何故理解できない!!! シャーリー!!!」

シャーリー「……」

バルクホルン「こたえろぉ!!!」

シャーリー「もうしない」

バルクホルン「反省していないだろう!!」

リーネ「バルクホルンさん。静かにしてください。こんな夜にそんなに叫ぶと起きちゃう人もいるかもしれませんから」

バルクホルン「ぐぅぅ……。ともかく、この件は明日だ。もう部屋に戻れ!!」

シャーリー「はぁーい」

バルクホルン「シャーリーめ……。リーネ、サーニャ。すまなかったな。音の正体は分かっていたのが、いつも巡回するときには隠れていて捕まえられなかったんだ」

リーネ「そんなl。今日は偶然ですから。偶然」

バルクホルン「助かった。感謝するぞ」

リーネ「あははは……。幽霊の正体ってやっぱり案外こういうのなんだね」

サーニャ「うん」

リーネ「ね? だから、違うよ」

サーニャ「え?」

リーネ「サーニャちゃんが幽霊って言われてたのは、絶対に違う理由があるんだよ」

サーニャ「そうね。そうかも」

リーネ「サーニャちゃんは夜に基地の中を移動しているから、勘違いされちゃったとかそういうことのはず」

リーネ「間違ってもサーニャちゃん自身が幽霊っぽいなんてないはずだから」

サーニャ「私もそう思えてきた」

リーネ「うんっ。それじゃ、最後の怪奇現象を解決しにいこっ」

サーニャ「最後はどこ?」

リーネ「個室トイレから轟く呻き声」

サーニャ「こわそう……」

リーネ「心配ないよ。芳佳ちゃんが魔除けの儀式もしてくれたから、私には幽霊が近づいてこれないの。だから、私についてきて」

サーニャ「了解」ギュッ

トイレ

リーネ「……きき、きこえる?」ギュゥゥ

サーニャ「何も」

リーネ「今日は、いないのかも……お、おわろうか……ササ、サーニャちゃん……」ギュゥゥ

サーニャ「リーネちゃんは早く寝ないと明日に支障が出るかも」

リーネ「うんうん」

サーニャ「戻りましょう?」

リーネ「うんうん!」

サーニャ「また明日もできるね」

リーネ「ト、トト、トイレは怖いね……やっぱり……」ギュゥゥ

サーニャ「そうね」

「うぅぅぅううう……ぅぅうぅうううう……」

リーネ「ひぃ!?」ビクッ

サーニャ「……!? リーネちゃん、下がって」

リーネ「だだ、だめ……ササ、サーニャ、ちゃ、ちゃんが……う、うしろに……」ギュゥゥ

サーニャ「この個室から聞こえる」

リーネ「サーニャちゃん、どうするの……?」

サーニャ「……」ピコンッ

リーネ「呪われちゃうよ? やめようよぉ」

サーニャ「……大丈夫。幽霊じゃなさそう」

リーネ「本当に?」

サーニャ「ええ。――すみません」コンコン

「だ、だれ!?」

サーニャ「サーニャです」

「サーニャさん!? な、なぜここに……!?」

リーネ「あれ、もしかしてペリーヌさん、ですか?」

「リーネさんまで!? なんですの!?」

サーニャ「出てきてもらえますか?」

「え、ええ……」

リーネ(ペリーヌさん、何してたのかな……?)

ペリーヌ「……どうも」

サーニャ「何をしていたんですか?」

ペリーヌ「なんでもいいじゃありませんか。貴方たちこそなんですの? サーニャさんは夜間哨戒がありますでしょう?」

リーネ「ペリーヌさん、知らないんですか?」

ペリーヌ「はい?」

リーネ「個室トイレには幽霊がいるって噂があるんですよ」

ペリーヌ「な、なんですって!? ゆ、幽霊がぁ!?」

サーニャ「はい」

ペリーヌ「そ、そういう情報は共有してくださいな!! 全く!! 気の利かない人たちですわ!!」ギュゥゥ

サーニャ「苦しい……」

リーネ「いえ、多分、幽霊はペリーヌさんじゃないかと……」

ペリーヌ「はぁ!? な、何故わたくしが幽霊なんですの!? はっ! 気づかぬうちに戦死していたとか……!!」

サーニャ「それはあり得ません」

ペリーヌ「本当ですの!?」

サーニャ「そんなに悲しいことがあったら、私はこうしていることができませんから」

ペリーヌ「サーニャさん……あなた……」

サーニャ「きっと泣き崩れていると思います」

リーネ「私もです。ペリーヌさんがいなくなったら……なんて、考えたくもないです……」

ペリーヌ「そ、そう……」

サーニャ「はい」

ペリーヌ「それで、どうしてわたくしが幽霊になっているんですの?」

リーネ「バルクホルンさんと坂本少佐から聞いたんです。トイレから轟く呻き声がするって」

ペリーヌ「呻き声……」

サーニャ「ペリーヌさん。力んでいた、わけじゃないですよね?」

ペリーヌ「何を下品なことを訊くのですか!! まったくもう!!」

リーネ「毎回、同じ時間、同じ場所で声がしないと噂にはならないから、単純にトイレを利用していたとも考えられないし……」

ペリーヌ「うぐっ……」

リーネ「いつもここで何をしていたんですか?」

サーニャ「ペリーヌさん。教えてください」

ペリーヌ「ちょっと!! 顔を近づけてこないでくださいな!! 説明しますから!!」

ペリーヌ「……毎日、というわけでもありませんけど、時々こうして待っていたんです」

リーネ「待っていた?」

ペリーヌ「サーニャさんがここを利用するのは知っていましたから。待っていたんです」

サーニャ「……なんのためにですか?」

ペリーヌ「な、なんのためって……それは……だから……」

サーニャ「……?」

ペリーヌ「謝りたく……て……」

サーニャ「あやまる?」

リーネ「ほら、サーニャちゃんに向かって幽霊って言ったことじゃないかな?」

サーニャ「……」

ペリーヌ「そうですわよ! 文句でも!?」

リーネ「それなら別にトイレで待ち伏せしなくても呼び出したり、手紙を書いたりしたらよかったんじゃないですか?」

ペリーヌ「それも考えましたけど、エイラさんがいつもいつもわたくしを睨んでいて、機会がなくて……」

サーニャ「ごめんなさい。エイラに悪気はないんです」

ペリーヌ「いえいえ。謝るのはわたくしのほうですわ」

リーネ「ペリーヌさん……」

ペリーヌ「申し訳ありませんでしたわ。幽霊なんて言ってしまって」

サーニャ「全然、気にしてませんよ」

ペリーヌ「わたくしは気にしていました」

サーニャ「ありがとうございます」

ペリーヌ「調子が狂いますわね」

リーネ「それは分かりましたけど、どうして呻き声を?」

ペリーヌ「呻き声をあげていたつもりはないですが、無意識に声は出していたかもしれませんわね」

リーネ「声、ですか?」

ペリーヌ「どう謝ろうか、シミュレーションをいつもトイレに入ってからしていましたの。でも、どれもこう、しっくりこなくて。考えれば考えるほど、おかしなことになって……」

ペリーヌ「結局、謝れない場面しか浮かんでこなくて……それで……」

サーニャ「なるほど。だから、呻き声が聞こえていたんですね」

ペリーヌ「しかし、坂本少佐にも聞かれていたのなら、恥ずべきことですわね」

リーネ「……」

ペリーヌ「明日からどんな顔で少佐に挨拶をしたらいいのかわかりませんわー!! あぁー!!」

サーニャ「私のことでそんなに悩んでくれていたんですね」

ペリーヌ「心にもないことを言ってしまって、サーニャさんを傷つけてしまったのではないかと思って……」

サーニャ「確かに幽霊といわれてショックでした」

ペリーヌ「まぁ、そうですわよね」

サーニャ「でも、私はペリーヌさんのこと信頼していますし、尊敬もしています」

ペリーヌ「そ、そんなこと真顔でいわないでくださいな!」

リーネ「よかったね、サーニャちゃん」

サーニャ「うんっ」

ペリーヌ「もういいでしょう!? わたくしは部屋に戻ります!!」

サーニャ「おやすみなさい」

ペリーヌ「ふんっ!! おやすみっ!!」

サーニャ「……リーネちゃん」

リーネ「終わったね。これで全部解決だよ」

サーニャ「そうね。楽しかったわ」

リーネ「あははは。あ、どうしてペリーヌさんがサーニャちゃんのことを幽霊って言ったのか理由を聞くの忘れちゃったね」

サーニャ「もうそんなことどうでもいいわ」

リーネ「でも……」

サーニャ「きっと私が暗い場所を歩いていたから、不気味に見えちゃっただけだと思う」

リーネ「うん。私もそう思うよ。サーニャちゃんはどの角度から見てもお人形さんみたいで――」

サーニャ「リーネちゃんっ」ギュッ

リーネ「なに?」

サーニャ「元気がでたわ」

リーネ「ホント? それなら嬉しいな」

サーニャ「今度、オラーシャの料理作るから、食べてほしい」

リーネ「作ってくれるの!? やったぁ、楽しみ」

サーニャ「……ありがとう」ギュッ

リーネ「サーニャちゃん、くるしいよぉ」

サーニャ「うふふ……」スリスリ

リーネ「くすぐったいよぉ」

「おぉぉおぉおおぉ……!!!」

サーニャ「誰!?」

リーネ「ひぃ!? ま、まだ幽霊が……!!」

「おぉおおお……サーニャぁぁ……!!」

サーニャ「私……!?」

リーネ「サ、サーニャちゃん、下がって!!」

サーニャ「でも!」

リーネ「だ、誰ですか!?」

「おぉぉおお……なにしてんだぁ……真夜中のトイレでぇぇぇ……!!」

リーネ「なにって言われても……」

サーニャ「……」ギュゥゥ

リーネ「サーニャちゃんは私が守るから」

サーニャ「こわい……」

「あぁぁあああ!!! 離れろぉぉぉ!!!! こらぁぁぁ!!!」

リーネ・サーニャ「「きゃぁああああ!!!!」」

美緒「――どうした!? お前は!! エイラ!! 何をしているんだ!!!」

エイラ「うぐっ……だってぇ……サーニャがぁ……リーネとぉぉ……」

サーニャ「エイラ、あの、違うの。リーネちゃんは私のために色々とね」

美緒「そうか。ペリーヌだったか。なるほどな」

リーネ「あの、坂本少佐は呻き声がペリーヌさんだって気づいていたんじゃないんですか?」

美緒「ん? さぁ、どうだろうな」

リーネ「もしかして、今回のこと全てわかった上で……」

美緒「少なくともルッキーニを捕まえられた。私はそれだけで満足している」

リーネ「……すみません。いつも少佐の力ばかりお借りしてしまって」

美緒「私は何もしていないさ。サーニャにはそろそろもう一人ぐらい通じ合える者が必要だろうと思っていただけだ」

リーネ「それは芳佳ちゃんが……」

美緒「宮藤とハルトマンは元より数に入っている。しかし、二人だけではな。なにせ501にはサーニャ以外に10人もいるのだからな」

リーネ「そうですね」

美緒「リーネ。これからもサーニャの支えになってやってくれ」

リーネ「はいっ。出来る限り、がんばります」

美緒「ご苦労。もう休め。明日が辛くなるぞ」

エイラ「リーネぇ! サーニャとなにしてたんだぁ! ことと次第によっては許さないかんなぁ!」

リーネ「な、何もしてないですよぉ」

サーニャ「エイラ、落ち着いて」

エイラ「サーニャぁぁ……」

美緒「ふっ……」

バルクホルン「上手くいったようだな」

美緒「ああ。リーネのおかげだ」

バルクホルン「貴方のことだ。わざと幽霊たちを放置してきたのではないか?」

美緒「ルッキーニとシャーリーは偶然だ」

バルクホルン「そうか」

美緒「もうサーニャは問題ないな。宮藤とリーネが来てからは明るくなってきているし」

バルクホルン「ハルトマンが役立たずだっただけか」

美緒「そんなことはない。サーニャはここへ配属されたときに比べ他人と接することにはかなり積極的になっている。それはハルトマンがいたからこそだ」

バルクホルン「それは過大評価だ、少佐」

美緒「そんなことはないと思うが……」

格納庫

サーニャ「それじゃあ、行ってきます」

リーネ「がんばって。こんなことしかいえないけど」

サーニャ「ううん。嬉しい。ありがとう」ブゥゥゥン

リーネ「ふわぁ……。安心したら眠たくなってきましたね」

エイラ「……」

リーネ「エイラさん? まだ怒って……?」

エイラ「おい、リーネ」

リーネ「な、なんですか?」

エイラ「……サーニャとこれからも仲良くしてやってくれ」

リーネ「え?」

エイラ「おやすみ」

リーネ「はい! おやすみなさい!」

エイラ「……でも!! これ以上仲良くなったら、許さないからなぁ!!!」

リーネ「えー!? 私、どうしたらいいんですかぁ!?」

リーネの部屋

リーネ「あぁ……ねむたい……ねよう……」ガチャ

芳佳「リーネちゃぁぁん!!!」

リーネ「きゃぁああ!? 芳佳ちゃん!?」

芳佳「よかったぁ!! 無事だったんだぁ!!」ギュゥゥ

リーネ「ど、どうかしたの?」

芳佳「起きたらリーネちゃん居なくなってて、心配したんだよ!?」

リーネ「ごめんね。サーニャちゃんと基地に出る幽霊を調べてたから」

芳佳「帰ってきてくれて安心したよ……」

リーネ「私はこの通り、なんともないよ。芳佳ちゃんの儀式が効いているんだと思うな」

芳佳「やっぱり、お払いがきいたんだね!!」

リーネ「きっとそうだよ!」

芳佳「……ところで、リーネちゃん。あの……悪いんだけど……」モジモジ

芳佳「一緒に、トイレいこ?」

リーネ「よろこんでっ!」

翌朝 食堂

芳佳「オバケでる?」ギュゥゥ

リーネ「出ないよ。食堂のオバケはルッキーニちゃんだったから」

サーニャ「おはよう」

芳佳「あ、サーニャちゃん!」

サーニャ「もうすぐできるから、待ってて」

リーネ「もしかして、オラーシャ料理?」

サーニャ「ええ。昨日のお礼」

リーネ「夜間哨戒明けなのに無理しなくても」

サーニャ「平気よ。リーネちゃんにはたくさん元気もらったから」

リーネ「それならサーニャちゃんに甘えちゃおうかな」

サーニャ「うんっ」

芳佳「わー。おいしそー。サーニャちゃん、私の分もある?」

サーニャ「もちろん」

芳佳「ぅわーい。やったー。サーニャちゃんの手料理だー。たのしみぃー!」

サーニャ「召し上がってください」

シャーリー「悪いなぁー。私たちの分まで作ってもらって」

ルッキーニ「おいしぃー」

エーリカ「サーにゃん。何かいいことでもあった?」

サーニャ「はい。とてもいいことがありました」

エーリカ「そっか! よかったね!」

サーニャ「はいっ」

エイラ「だいたいさー、お前がサーニャのことを幽霊とか言わなきゃ、こんなことにはならなかったんだからぁ」

ペリーヌ「だーかーらー! 昨日、全て謝罪したといっているでしょう!?」

エイラ「で? なんでサーニャのこと幽霊とか言ったんだ?」

ペリーヌ「で、ですから、いるのか、いないのか、はっきりしないかたで……」

エイラ「その前に何かみたから幽霊っていったんだろー?」

ペリーヌ「それは……ト、トイレで手を洗っているときに……サーニャさんがいつの間にか後ろに立っていたのが……すごく怖くて……つい……」

エイラ「チキン眼鏡」

ペリーヌ「はぁ!? 今、なんとおっしゃいましたぁ、エイラさぁん!!!」

エイラ「お前なんてサーニャの手料理を食う資格ないんだー!!」グニーッ

ペリーヌ「ふぁふぇふぇふぉふぁふぇふぉふぇふふぁー!!!」ジタバタ

バルクホルン「食事中だぞ!!! 静かにしろぉ!!!」

ミーナ「賑やかね」

美緒「はっはっはっは。これぐらいが心地良い!」

リーネ「おいしい。サーニャちゃん、あとでレシピおしえてくれる?」

サーニャ「それなら今度一緒に作りましょう」

リーネ「あ、それいいね! そうしようよ!」

サーニャ「よかった。私もリーネちゃんや芳佳ちゃんと一緒に料理作りたかったの」

芳佳「そんなの言ってくれればいつでも作ったのに」

リーネ「遠慮なんてしないでいいよ。私たちは親友だから」

サーニャ「親友……!」

芳佳「今更だけどね」

サーニャ「ふふっ。幸せ……」

リーネ「えっと、サーニャちゃん。おかわり。いいかな?」

数日後 廊下

芳佳「今日の晩御飯はどうしよう?」

サーニャ「私は扶桑の料理でいいと思うな」

リーネ「美味しいもんね」

芳佳「サーニャちゃん、扶桑料理好きなんだ」

サーニャ「ええ。好きよ」

芳佳「なら、今日は扶桑の料理で決定」

リーネ・サーニャ「「おー」」

芳佳「そういえば、聞いた? また新しい幽霊が出るようになったんだって……」

リーネ「ま、またぁ!?」

サーニャ「どんな幽霊?」

芳佳「それがね。個室トイレでサーニャちゃんのことをずーっと呼ぶ自縛霊なんだってー。もう私、トイレにもいけないよー」

リーネ「サーニャちゃん……」

サーニャ「今から添い寝してくる」

リーネ「そうしてあげて」


おしまい。

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