美緒「501に新人が研修に来るのでよろしく頼む」 (106)

ミーナ「名前は服部静夏軍曹。14歳。現在も扶桑皇国海軍兵学校に所属している士官候補生よ」

芳佳「へー。凄い人なんだぁ」

リーネ「友達になれたらいいね」

芳佳「そうだね」

美緒「研修期間は二週間。その間、先達の者として、またはウィッチの先輩として恥ずかしくない行動を心がけるようにな」

バルクホルン「お前のことだぞ、ハルトマン」

エーリカ「なにが? 私のどこがウィッチとして恥ずかしいの? このスーパーガール、エーリカ・ハルトマンをつかまえて」

バルクホルン「ルッキーニ少尉もだぞ!」

ルッキーニ「にゃはぁー」

シャーリー「気にするな、だってさ」

バルクホルン「くぅぅ……!! こいつらはぁ……!! いいか!! お前たちの緩みきった行動一つで我々の印象を悪化させることになるんだぞ!!」

ペリーヌ「そうですわ。しっかりしてもらわないと501の品位が下がるというものですわ」

エイラ「品位だって。笑っちゃうよな、サーニャ?」

サーニャ「別に面白くないけど?」

エイラ「ダナ。別に面白くないヨナ」

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美緒「お前たち、変に取り繕おうとしなくてもいいぞ」

バルクホルン「しかし、少佐。その新人に501の現状を正直に見せるというのはどうだ? 世界中のウィッチを落胆させるかもしれないぞ」

美緒「服部とは面識があってな。お前たちのことは色々と話している。故に無理に体裁を整える必要などない」

バルクホルン「な、なんだ。そうなのか」

ミーナ「服部さんの研修です。基本的には私か坂本少佐が服部さんを教育、指導することになりますが、貴方たちも何か聞かれたら応えてあげてください」

シャーリー「りょーかぁい」

ルッキーニ「なるべく聞かれないようにしよーっと」

芳佳「えー、どうして? ルッキーニちゃんは話しかけやすいし、きっと色々質問されちゃうんじゃない?」

ルッキーニ「だってぇー。どうやって教えていいのかわかんないもん」

シャーリー「ルッキーニは教えることに関して絶望的だからなぁ」

ルッキーニ「そうそう。ぜーんぜんだめー」

リーネ「そうなんですか?」

シャーリー「天才故の欠点さ。ルッキーニ自身、どうやっているのか説明できないんだ。理屈じゃなくて本能で動いてるようなものだからね」

リーネ「次元が違う……」

ルッキーニ「だから、おしえてーって言われも困るしぃ。隠れてよっと」

バルクホルン「隠れているのならまだいいがな」

エーリカ「別にいーじゃん。少佐が私たちのことを教えているって言ってるんだし。自然体でいようよ」

バルクホルン「だからってなぁ」

サーニャ「坂本少佐。服部さんにはどんな風に伝えたんですか?」

エイラ「お。それいい質問だな。私も知りたい。かっこよく伝えてくれたのか?」

美緒「無論だ。サーニャはナイトウィッチの中でも屈指の天才であり、常に神経を研ぎ澄ませた眼光をもつ一寸の隙もないウィッチだと伝えた」

サーニャ「……え?」

美緒「エイラは世界の中でも指折りの才能を有するウィッチであり、口数も少なく、凛々しい。寡黙であるが実直なウィッチだと言ってある」

エイラ「……」

ペリーヌ「少佐! わ、わたくしのことは?」

美緒「ペリーヌは確か……。才能溢れるウィッチで、統率力に最も優れている。また高貴で慈愛に満ちたウィッチだと説明したはずだ」

ペリーヌ「あ、ありがとうございます!」

エイラ「統率力に優れている?」

ルッキーニ「慈愛に満ちた?」

美緒「無論、それ以外のことも私は語ったはずだが、如何せんよく覚えていなくてな。とにかく多くのことを語ったのは間違いない」

エーリカ「ハードル、上がってるなぁ」

シャーリー「おいおい。服部って新人がどんな印象持ってるのか聞くのが怖いな」

バルクホルン「ふっ。いいことだろう。新人が想像する501は素晴らしいものになっているはず。私たちはそれを裏切らないようにすればいい」

エイラ「ムリダナ」

サーニャ「うん。私、眼光とか鋭くないもの」

エイラ「私も……ああ、私は凛々しいし寡黙ダナ」

エーリカ「誰のこと? それ私でしょ?」

芳佳「さ、坂本さん!! 私のことは!?」

美緒「宮藤か。宮藤のことは本当に多く語ったぞ。実力、才能共に完璧なウィッチで、幾度と無く501の危機を救ってきたとかな」

芳佳「そうでしたっけ!?」

美緒「空を飛ぶ姿はまるで鷹のように荒々しく、ときには燕のように繊細で……」

芳佳「そんなに私ってすごいんですか!?」

ミーナ「ちょっと、坂本少佐!? そこまで評価しているのはいいけど、それを何も知らない新人に伝えるのはどうかと思うのだけど……!!」

美緒「いやぁ、私も悪いとは思ったのだが、服部の奴が宮藤のことを話して欲しいとせがんできてな。それで話をするうちに内容を盛ってしまったんだ。はっはっはっは」

ミーナ「はぁ……」

芳佳「どうしよぉ……私、そんな実力も才能もないのにぃ……」

リーネ「きっと私も似たようなことを……」

美緒「リーネは、指揮官としての才能が――」

リーネ「きこえない……きこえない……」

美緒「何故耳を押えているんだ。褒めてやっているのに」

シャーリー「褒めすぎじゃないですか?」

美緒「そうか?」

バルクホルン「お前たち。少佐は私たちのことをここまで高く評価してくれていたことは事実なんだ。それに応える努力をしようとは思わないのか?」

エイラ「努力っていってもなぁ?」

サーニャ「ふんっ」キリッ

エイラ「おっ。サーニャ、眼光が鋭いぞ」

サーニャ「……ダメ。10秒ももたないわ」

エイラ「サーニャはいつも眠いもんな。仕方ないな」

美緒「まぁ、そういうわけだ。新人は3日後に到着するだろう。よろしく頼むぞ」

シャーリー「あー。大変だなぁー」

食堂

芳佳「リーネちゃん、坂本さんに聞いておいたほうがよくないかな? 服部さんがどんなイメージを持っているのかぐらいは分かってないと困るような気がするし」

リーネ「聞いても私にはどうしようもないと思うよ。指揮官の才能に恵まれているなんて、初めてきいたぐらいだから」

バルクホルン「規律を遵守し、軍人として当たり前の行動をしていれば何も問題はない。怯えすぎだぞ」

芳佳「だ、だって」

エーリカ「まぁまぁ。別に絶対に期待に応えなきゃいけないってわけでもないだろ?」

バルクホルン「ハルトマン。いいのか? 服部軍曹は501に編入されるわけではないんだぞ。おかしなイメージを持って帰国してしまったらどうなるか、わかるな?」

エーリカ「理想と現実は乖離するものでしょ? 大体、少佐が話を膨らませたのが原因なんだし、実際はこうだーって見せ付けるのもまた優しさだと思うけど?」

シャーリー「演技するのが面倒なだけだろ?」

エーリカ「まぁね」

バルクホルン「ハルトマンはまず部屋の掃除から始めろ! 万が一、あの部屋を目撃されでもしたら大事だ!!」

エーリカ「えぇー? もーいーじゃーん」

バルクホルン「いい機会だろうが!!!」

シャーリー「どうするかなぁ。私もイメージを崩さないようにさせたほうがいいのか?」

ルッキーニ「あたしはいつもどーりにしとくけどー」

ペリーヌ「ハルトマン中尉、ルッキーニ少尉。それからエイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉」

エイラ「なんで私だけフルネームなんだ」

ペリーヌ「服部軍曹が501に対して抱いているであろうイメージを崩させないように!! 501の悪評が広まりかねませんわ!!」

エイラ「そんなこと言ったって、研修は二週間もあるんだ。どんなにがんばってもボロは出るって」

ペリーヌ「たった二週間でしょう? それぐらい我慢なさい」

エイラ「なんだと、このやろう」

芳佳「やめてくださいよぉ」

リーネ「そうですよ。落ち着いてください」

バルクホルン「ペリーヌの言うとおりだな。堕落している様子をわざわざ見せる必要性はない。服部軍曹には想像通りの501を見てもらい、帰ってもらう」

シャーリー「無理だろうなぁ」

バルクホルン「シャーリー!! よく半裸でうろついているが、研修期間中は絶対にするな!! そういうところだと思われるからな!!」

シャーリー「へいへい」

バルクホルン「本当に分かっているのか。全く」

ルッキーニ「ねえねえ、シャーリー」

シャーリー「ん? なんだ?」

ペリーヌ「ともかく!! 服部さんがここへ来たときから、今現在蔓延している弛緩しか雰囲気は捨てて、もっと厳粛な部隊にしますわよ!!」

エーリカ「やだぁー」

ペリーヌ「なんですって!?」

バルクホルン「ペリーヌ。ハルトマンのことは私に任せてくれ。お前は宮藤やリーネのことを頼む」

ペリーヌ「はい。バルクホルン大尉、貴方だけが頼りですわ」

バルクホルン「それは私も同じだ」

エーリカ「あーあ。こりゃ、ダメだ」

エイラ「何を思って少佐は私たちのことを持ち上げたんだろうなぁ」

エーリカ「服部が幻滅しないようにじゃないの? 501の活躍は新聞にのってるぐらいだし、私たちのイメージが一人歩きしてもおかしくないもの」

芳佳「そんなことになっているんですか?」

エーリカ「少佐が宮藤のことを多く喋りたくなったってのは分からなくもないかな。宮藤のことに関しては語られてないことだって山ほどあるからね」

芳佳「はぁ……。なんだか、照れちゃいますね」

サーニャ「ふんっ」キリッ

エイラ「お。サーニャ、隙がないぞ」

サーニャ「……はぁ、ダメ。やっぱり10秒以上はできないわ」

ブリーフィングルーム

ミーナ「私の事も色々と大袈裟に言ったのかしら?」

美緒「ミーナのことを大袈裟に言う必要はない。事実が既に嘘のようなことばかりだかな」

ミーナ「あのね」

美緒「気にすることはない。服部は真面目な奴だが、実態を知ったぐらいで困惑するようなこともあるまい」

ミーナ「そんなに柔軟な人なの?」

美緒「ポテンシャルの高さは折り紙つきだ」

ミーナ「はいはい。貴方から見れば、期待の新人はみんな才能溢れるウィッチなんでしょう?」

美緒「そうだが?」

ミーナ「それはそうと研修中の予定はどうなっているの?」

美緒「ネウロイの襲撃等で変更がやむを得ない場合を除き、事前に出した計画通りに進めるつもりだ」

ミーナ「午前は私が座学をして、午後は宮藤さん、リーネさんと共に訓練を行うわけね」

美緒「多少、バルクホルンやシャーリーとの交流もあったほうがいいと考えているが。二週間は長いようで短いからな」

ミーナ「そうね。できれば服部さんにはみんなと仲良くなって帰ってほしいわね」

美緒「現実はいつも理想通りにはいかないものだがな」

3日後 滑走路

静夏「……」

静夏「ここが憧れの第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ基地……」

静夏「お父様……私は今、感動で手足が震えています……」

静夏「……」

静夏「おかしい。予定では坂本少佐が迎えにきてくれているはず……」

静夏「そうか。少し早く着きすぎてしまったから誰も――」

ルッキーニ「なんかきてるー?」

エーリカ「輸送機だね。あれ、誰?」

静夏「丁度、良かった。坂本少佐がどこにいるのかわかりますか?」

ルッキーニ「少佐? 少佐なら向こうにいるけどー?」

静夏「そうですか。では私は急ぐので」

エーリカ「誰かな?」

ルッキーニ「さぁ」

エーリカ「あ。もしかして……研修生の服部か?」

格納庫

静夏「広い基地……。あ、ストライカーユニット。これは扶桑のものですね……。もしかして宮藤軍曹の……」

シャーリー「あー。今日もあっついなぁ、マーリン?」

静夏「なっ!?」

シャーリー「ん? だれだ?」

静夏「あ、あなたこそ!! 何て格好をしているのですか!!!」

シャーリー「え? ああ、これ? 暑いからなぁ」

静夏「ここは名誉あるストライクウィッチーズの基地です!! 早く服を着なさい!!」

シャーリー「いいだろー。このほうが涼しいんだからさぁ」

静夏「整備班ならそれなりの作業着というものがあるはず!! 貴方は風紀を乱しているという自覚はあるのですか!?」

シャーリー「整備班……!?」

静夏「ええと……。ああ、あった。これ!! これを着なさい!! 今すぐに!!」

シャーリー「い、いや……」

静夏「早く!! そんな姿で英雄であるウィッチたちのユニットを整備するなんて言語道断です!! 恥を知りなさい!!」

シャーリー「はい。ごめんなさい」

静夏「全く……!!」

シャーリー「で、お前は誰なんだ?」

静夏「私は本日から二週間、ここで研修を行うことになっている服部静夏というものです」

シャーリー「ああ。お前が服部か。話は聞いてる」

静夏「私のユニットもあるのですから、整備するときはきちんと服装を正してからお願いします」

シャーリー「あ、えっと、私は整備班じゃないんだけど」

静夏「坂本少佐はこの奥にいるのですか?」

シャーリー「少佐? 少佐ならさっき宿舎のほうへ戻っていったけど?」

静夏「宿舎ですか……」

シャーリー「ここで待っていればいいんじゃないか? 輸送機も滑走路に止まってるんだし、そのうち中佐も来ると思うよ」

静夏「そうですね。では、そうしましょう。ところで……」

シャーリー「なんだ?」

静夏「このユニットは誰のものなのですか?」

シャーリー「これはシャーロット・E・イェーガー自慢のユニットだよ」

静夏「こ、これが!? あの音速のウィッチ、シャーロット・E・イェーガー大尉の……!! すごくすごいです!! もう少し見てもいいですか!?」

シャーリー「それぐらいなら全然いいよ」

静夏「これでイェーガー大尉は大空を駆けているのですか……」

シャーリー「ユニットのこと分かるのか?」

静夏「当然です。これでもウィッチを志す者ですから」

シャーリー「へぇ。そっかそっか」

静夏「あぁ、早くイェーガー大尉から直接お話を聞きたい」

シャーリー「何の話が聞きたいんだ?」

静夏「勿論、音速を超えたときの話に決まっています」

シャーリー「ああ。あのときは本当に凄かったんだ。なんていっても――」

静夏「貴方には聞いていません!! 私はシャーロット・E・イェーガー大尉から直接お話を聞きたいんです!!」

シャーリー「ああ、そのシャーロットじゃなくて、シャーリーでいいぞ?」

静夏「何をいっているのですか!? あの英雄をそんな軽々しく呼んでいいわけがない!! 貴方は何を言っているんですか!?」

シャーリー「そうなのか? みんなそう呼んでいるんだけどなぁ」

エイラ「ふわぁぁ……。ねむいなぁ」

ペリーヌ「輸送機が到着したということは服部軍曹も既に到着しているということですわよ!! ほら、その緩んだ顔を引き締めてくださいな!!」

静夏「あれは……」

エイラ「なんだよ。うるさいなぁ。どーせ、すぐバレるんだし、いいじゃないか」

ペリーヌ「何を言っていますの? 服部軍曹が到着したらどうするかは散々話し合ったでしょう」

エイラ「私は承諾した覚えがないけどなー」

ペリーヌ「なんですって!? 貴方みたいな人がいるから風紀が乱れるんですのよ!?」

エイラ「いい加減にしろよ、朝から耳元で怒鳴って。やるか?」

ペリーヌ「望むところですわ!」

エイラ「おーし、こい」

ペリーヌ「ふんっ。わたくしが勝ったら素直に言うことを――」

静夏「貴方たち!!」

エイラ「え?」

ペリーヌ「は、はい!!」ビクッ

静夏「ここは501のウィッチが利用する場所です。大声で怒鳴りあって見っとも無いと思わないのですか?」

エイラ「あぁ……うん……私は怒鳴ってないけど……」

静夏「口答えですか? 今、私は貴方を注意しているんですよ? それがわかっていないのですか?」

エイラ「うぇ……」

静夏「何か言うことは?」

エイラ「ごめんなさい」

静夏「貴方もです」

ペリーヌ「は、はいぃ……」

静夏「ここにはあのペリーヌ・クロステルマン中尉もいらっしゃるんですよ? その人が今の光景をみたら、私を同じことをしているはずです」

エイラ「そうなのか?」

ペリーヌ「何もいえませんわ」

静夏「そうです。クロステルマン中尉はそういうかたのはずです。ここにいる衛兵なら、それぐらい知っているはず。もしかして、配属されたばかりですか?」

エイラ「衛兵……」

静夏「常日頃からネウロイと戦い、心身を磨耗させている人たちに余計な心労を与えないように」

ペリーヌ「はぁ……」

静夏「分かったのですか!?」

エイラ「りょ、りょうかいっ」

ペリーヌ「は、はい! わかりました!」

>>19
静夏「ここにはあのペリーヌ・クロステルマン中尉もいらっしゃるんですよ? その人が今の光景をみたら、私を同じことをしているはずです」

静夏「ここにはあのペリーヌ・クロステルマン中尉もいらっしゃるんですよ? 中尉が今の光景をみたら、私と同じことをしているはずです」

静夏「よろしい。そもそも英雄に迷惑をかけるなんてことあってはならないですから」

ペリーヌ「と、ところで、そのぉ、貴方は……?」

静夏「失礼しました。私は本日より二週間、ここで研修を行うことになっている服部静夏といいます」

エイラ「あぁ、お前が」

静夏「私に注意を受けることがないようにしてください」

ペリーヌ「き、気をつけます」

静夏「ここの衛兵たちはなっていませんね。バルクホルン大尉やハルトマン中尉がそうした人たちに対しては厳しく当たっていると聞いたのですが……」

芳佳「わーい!! 輸送機がきたんですかー!!」テテテッ

リーネ「芳佳ちゃーん、まってー」

サーニャ「ねむいぃ……」

芳佳「どこかなー? 服部さんはもういるのかなー?」

静夏「ここに居ます」

芳佳「あ、貴方が服部静夏さん?」

静夏「服部静夏軍曹です」

芳佳「よろしく、服部さん! 私は――」

静夏「貴方、階級は?」

芳佳「え? ぐ、軍曹です」

静夏「同じですか。今後はきちんと階級をつけて呼ぶように」

芳佳「えー? でも……」

静夏「それが軍規、規則なんです。貴方は坂本少佐やバルクホルン大尉に対しても同じように接しているのですか?」

芳佳「そうだけど?」

静夏「な……!? なんですって……!?」

芳佳「えへへ」

静夏「あ、あなた!! どういうつもりなのですか!?」

芳佳「え? な、なにが?」

静夏「よ、よりにもよってあの扶桑とカールスラントの大英雄を……!!」

芳佳「でも、何も言われないですし」

静夏「それはそうでしょう!!! あの二人はとても心が広いんです!! あなたのような人が階級をつけずに呼んでも腹など立てないでしょう!! しかし!!!」

リーネ「ま、まって! あの、坂本少佐もバルクホルンさんも――」

静夏「あ、貴方まで!! 組織を崩壊させたいのですか!?」

サーニャ「落ち着いてください」

静夏「落ち着いてなどいられません。貴方も貴方でなんですか?」

サーニャ「え?」

静夏「そんな眠そうな顔をして。サーニャ・V・リトヴャグ中尉がいれば殺されてもおかしくないですよ」

サーニャ「そうなの?」

静夏「そうです。あの人はそういった腑抜けた兵士を鋭い眼光で睨みつけ、萎縮させると聞いていますから」

サーニャ「そうだったんだ……」

エイラ「なに言ってんだ、こいつ?」

シャーリー「少佐から聞いたイメージなんだろうな」

静夏「いいですか! 優しいウィッチたちに甘やかされているのかもしれませんが、私はそういうことは一切しません!!」

芳佳「ごめんなさい」

リーネ「あぅぅ……」

バルクホルン「騒がしいな。輸送機が来たのか?」

ミーナ「予定よりもかなり早いわね」

美緒「おーい、服部ー。もう到着したのかー」

静夏「坂本少佐!! お久しぶりです!!」

美緒「ああ。元気そうでなによりだ」

静夏「ええと……。もしかして、隣にいるのが……」

美緒「ミーナ中佐とバルクホルン大尉だ」

静夏「あ、あなたたちが……!!」

ミーナ「よろしくね、服部さん」

バルクホルン「よろしくな」

静夏「か、感激です! あのカールスラントの英雄にお会いできるなんて!!」

ミーナ「ありがとう。私も会えて嬉しいわ」

静夏「は、はい!!」

ルッキーニ「あ、中佐だー」

エーリカ「おーい。ミーナぁー。服部きたよー」

静夏「な!? あなた!! ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐を呼び捨てにするとはどういう了見ですか!?」

バルクホルン「服部。気にしなくていい」

静夏「バ、バルクホルン大尉まで何を言っているのですか!? これは立派な軍規違反です!!」

バルクホルン「ハルトマンとミーナは長い付き合いだからな。今さら注意したところで階級をつけるわけがない」

静夏「え?」

美緒「シャーリー大尉。その作業着はなんだ? いつもの制服はどうした」

シャーリー「あ、すみません。服部に着ろって言われて。きがえまーす」

静夏「え?」

ペリーヌ「シャーリーさんのことですから、半裸のままユニットの整備でもしていたのではありませんの?」

シャーリー「実はそうなんだよ」

バルクホルン「はぁ……。最初から501の実態が晒されてしまったか」

ペリーヌ「あぁ……。折角、バルクホルン大尉と綿密に話し合ったというのに」

バルクホルン「すまないな、ペリーヌ」

ペリーヌ「いえ」

静夏「え?」

エイラ「だから言っただろー。すぐにバレるって」

ペリーヌ「それもこれもエイラさんが余計なことをいうからですわ!」

静夏「え?」

リーネ「ケンカはダメですよぉ」

芳佳「そうですよ。服部さんの前で」

ペリーヌ「宮藤さん、リーネさん。そうはいいますけど、そもそもエイラさんは非協力的だったんですのよ? 知っていますでしょう?」

静夏「宮藤……リーネ……」

サーニャ「服部さん、どうかしましたか?」

静夏「あ……あの……貴方は……」

サーニャ「あ、ごめんなさい。私はサーニャ。サーニャ・V・リトヴャク中尉です」

静夏「……」

ミーナ「どうやら、みなさん自己紹介は済んでいるようね」

美緒「では改めて紹介しておこうか」

ミーナ「そうね。彼女が二週間、ここで研修を受ける扶桑皇国海軍兵学校所属の服部静夏軍曹です」

美緒「皆、よくしてやってくれ」

芳佳「はいっ!」

エイラ「しゃーねーなぁー」

静夏「……」

シャーリー「よろしくなぁ、服部ぃ」

静夏「あ、あの……その……」

シャーリー「どうした?」

ルッキーニ「うにゃー」

静夏「……あなたは?」

ルッキーニ「あたし? あたしはフランチェスカ・ルッキーニだよっ」

静夏「……」

ルッキーニ「そうそう。あたしは何も教えられないから。ごめんね」

静夏「なっ……なぁぁ……!! や、やはりお、おこって……」

シャーリー「こら、ルッキーニ。そんなこと言うなって」

ルッキーニ「だってぇ。色々聞かれても困るじゃん」

静夏「あ……あぁ……」

ミーナ「とりあえず、基地の中を案内してあげないとね」

芳佳「はい! 私とリーネちゃんで案内してもいいですか?」

ミーナ「いいの? 助かるわ。それでは宮藤さん、リーネさん。お願いね」

芳佳「それじゃ、行きましょうか」

静夏「あ、の……」

リーネ「私たちじゃ嫌ですか?」

芳佳「やっぱりシャーリーさんやバルクホルンさんのほうがいいかな?」

静夏「い、いや!! そんなことはありません!! わたくしは!! 宮藤軍曹とビショップ曹長に出会えたことを心より感動していますから!!!」

芳佳「そんなぁ。そんなに立派なウィッチじゃないけど」

リーネ「あまり期待はしないでくださいね」

静夏「あ、はい!!」

芳佳「そうはっきり言われちゃうと落ち込むなぁ」

リーネ「あははは。それじゃあ、まずは……」

静夏(まずい……。わたしは……なんてことを……)

サーニャ「……」

静夏「……!?」

サーニャ「ふんっ」キリッ

静夏(なんて睨み……!? こ、殺される……!? お、おとうさま……私は罪深い娘です……ゆるしてください……)ウルウル

エイラ「おっ。サーニャ。ネウロイも退散しそうな睨みだな」

サーニャ「……ふぅ。これ、やっぱり疲れるわ」

エイラ「夜間哨戒明けだし仕方ないな」

ペリーヌ「今更、虚栄をはっても意味はないように思いますけど」

バルクホルン「いや。悪いことではない。稀にだらけてしまうだけいうことにしてしまえばいい」

シャーリー「おいおい。無理する必要なんてもうないだろ。私なんてしょっぱなから服部に怒られちゃったしさぁ」

ルッキーニ「にゃははははー! かっこわるーい」

シャーリー「だって、予定よりも一時間ぐらい早かったし、油断もするだろ」

バルクホルン「日ごろ、どれだけ怠けているのか露呈したわけだな」

シャーリー「それはいうなって。仕方ない。服部に迷惑がかかるっていうなら、気をつけるか」

エーリカ「えー、ホントにネコかぶるの? メンドーだなぁ」

エイラ「でも、年下の後輩に怒られるのは嫌だしな」

ペリーヌ「そうですわ。本当に恥ずかしいんですから」

ミーナ「怒られたって。貴方たち、服部さんに怒られたの?」

美緒「はっはっはっは。服部はそういう奴だ。バルクホルンと気が合うはずだ」

宿舎 通路

リーネ「この部屋ですね」

芳佳「ここが服部さんの部屋になるから」

静夏「こんな立派な部屋を私なんかに?」

芳佳「いや、でも服部さんはお客様だから」

静夏「あの!!」

芳佳「な、なに?」

静夏「怒ってください!! 叱ってください!! いえ、いっそのこと銃殺してくれても構いません!!」

リーネ「ど、どうしたの?」

静夏「知らなかったとはいえ!! 私は世界の救った英雄たちに万の言葉を用いても表せないほどに失礼なことをしてしまいました!!」

芳佳「気にしなくてもいいよ。そんなことで怒るような人はいないから」

静夏「そんなわけがない!! 現にサーニャ・V・リトヴャク中尉は怒髪天をついていました!!!」

芳佳「えぇぇ!? サーニャちゃんなんて一番怒らないよ!?」

リーネ「そ、そうですよ。むしろサーニャちゃんだけは怒りませんから」

静夏「ですが……ですが……!!」

芳佳「大丈夫だから。服部さん、落ち着いて」

静夏「ルッキーニ少尉も私には教えることはないと……辛らつな言葉を……」

リーネ「それはルッキーニちゃんが教えるのが上手くないからで」

静夏「おわりです……私は……もう……。二週間の研修で……みなさんから色々と教わりたかったのに……これでは……」

芳佳「本当に誰も怒ってないから」

リーネ「そうですよ、服部さん」

静夏「宮藤軍曹……ビショップ曹長……」

芳佳「あ、その階級で呼ばれるのは慣れてないから、宮藤か芳佳でいいよ?」

リーネ「私も。リーネって呼んでください」

静夏「それは私に死ねと言っているようなものですが」

芳佳「そんなことないよ! 私も静夏ちゃんって呼びたいから、そう言ってるだけで」

静夏「宮藤軍曹は好きに呼んでください。豚でもいいですよ」

芳佳「その呼び方はちょっと」

静夏「雑魚でもなんでもいいですから、私をそう呼んでください。でないと私の気が治まりません」

リーネ「無理です! 絶対!」

食堂

芳佳「ここが食堂。そういえば、静夏ちゃん。朝ごはんはもう食べたの?」

静夏「いえ。まだです」

リーネ「よかった。それなら朝食にしませんか?」

静夏「え? 私にエサを与えてくれるのですか?」

芳佳「静夏ちゃん、本当に、ほんとーに、気にしてないから。そんなに畏まらないで」

静夏「しかし、ここにいるみなさんは英雄です。しかも階級も勿論上です。宮藤軍曹は同じ階級ですけど、先任ですから私の上官になります」

芳佳「えー? そうなんだ?」

リーネ「うん、一応ね。でも、そんなのあのバルクホルンさんでも何も言わないですから」

静夏「私の問題なんです!!」

芳佳「困ったなぁ……」

静夏「だれか……私を……怒ってください……」

芳佳「わかった! 怒ればいいんだよね!?」

静夏「え?」

芳佳「私が怒るから! だから、元気になって! 静夏ちゃん!!」

美緒「あいつら、どこを案内しているんだ?」

ミーナ「そろそろ座学の時間だから案内もほどほどにしてくれないと……」

芳佳「こら!」

美緒「宮藤か?」

ミーナ「食堂にいるみたいね」

美緒「宮藤、そろそろ案内は――」

芳佳「上官に向かって偉そうにしないでっ」

静夏「……」

芳佳「わかった?」

静夏「はい」

美緒「何をしている?」

リーネ「坂本少佐。色々ありまして……」

美緒「あの宮藤が上官らしいことをしているとはな」

ミーナ「やっぱり後輩ができると人は変わるわね」

芳佳「あ、坂本さん。どうかしましたか?」

ブリーフィングルーム

ミーナ「では、午前は私の座学を受けてもらうわね」

静夏「了解」

ミーナ「よろしい。手元の資料を見てもらえるかしら?」

静夏「……」ペラッ

ミーナ「それは以前、ネウロイと交戦したときの――」

静夏(宮藤軍曹とビショップ曹長は本当に何も気にしていないようだった。でも……だからこそ……心が苦しい……)

ミーナ「服部さん!」

静夏「あ! はっ!! な、なんでしょうか!!」

ミーナ「その資料。裏よ。何か書いてあるかしら?」

静夏「あ!? し、失礼しましたぁ!!」

ミーナ「心ここにあらずね。私の座学が退屈なのかしら?」

静夏「め、滅相もありません!! 女侯爵とも呼ばれる中佐からこうして直接ご指導を賜れるなんてウィッチにとって最高の誉れですから!!」

ミーナ「悩みなら聞いてあげるわ。言ってみて」

静夏「そんな……中佐の耳を汚すだけですから……」

ミーナ「ダメよ」

静夏「え?」

ミーナ「ここに来た以上、貴方は501の一員として扱います」

静夏「そんな恐れ多い!!」

ミーナ「だからもう家族の一員なのよ」

静夏「か、家族ですか……?」

ミーナ「そうよ。ほら、何かあったの? なんて、想像はついているけれど」

静夏「な……」

ミーナ「到着早々、シャーリーさんやペリーヌさんを一喝したそうね」

静夏「あぁ……あの……」

ミーナ「中々できることじゃないわ」

静夏「申し訳ありません!!! 私!! そんなつもりは一切なくて……!!!」

ミーナ「ちょ、ちょっと。ああ、嫌味に聞こえた? そうじゃないの、純粋に褒めたつもりで……」

静夏「すみません! すみません!!」

ミーナ「服部さん、顔をあげて。貴方のことを悪くいうような人はいないから」

静夏「いえ……ですが……リトヴャグ中尉には強く睥睨されてしまいましたので……」

ミーナ「サーニャさんが? 最もありえない名前が挙がったわね」

静夏「宮藤軍曹にも言われました。リトヴャグ中尉こそ怒らない人であると」

ミーナ「そうよ。何をすれば怒るのか分からないぐらいだもの」

静夏「でも、坂本少佐の話を聞く限りではリトヴャグ中尉は私のような者を絶対に許すはずがないんです!!」

ミーナ「違うの。それは坂本少佐が話を盛ってしまっただけで」

静夏「それにハルトマン中尉もそうです!! 気に入らない者に対しては一切の会話もしないという話も聞いています!!」

ミーナ「ないです」

静夏「本当ですか?」

ミーナ「本当よ。誰も無視なんてしないし、怒ってもいません。反省していたぐらいですもの」

静夏「……」

ミーナ「私の言葉は信じられないかしら?」

静夏「断じてそんなことはありません!!」

ミーナ「はい。なら、気持ちを切り替えてね。落ち込むのは分かるけれど、ずっとその調子だと本当に嫌われるかもしれないわよ?」

静夏「は、はいっ! 了解!!」

食堂

ミーナ「すぐに昼食になるから、ここに居て。午後の予定は分かっているかしら?」

静夏「はい。1300時、滑走路に集合といわれています」

ミーナ「正解っ。またあとでね、服部さん」

静夏「ありがとうございました!!」

静夏「ふぅ……」

静夏(中佐の言葉を信じよう……。今の私にできるのはそれぐらいしかない……)

静夏「……」

ルッキーニ「ごっはん! ごっはん!」

エーリカ「おなかすいたぁー」

芳佳「すぐにつくりまーす!!」

リーネ「芳佳ちゃん、まってー」

静夏「あ! お、お疲れ様です!!」

エーリカ「お。服部軍曹、お疲れさまであります」

静夏「私に労いの言葉をかけてくださり、ありがとうございます!! ハルトマン中尉!!」

ルッキーニ「服部ぃ」

静夏「な、なんでしょうか!!」

ルッキーニ「お前、肉は好きにゃのか?」

静夏「に、肉ですか? はい! 好きです!!」

ルッキーニ「好き嫌いはあるかぁ?」

静夏「あ、ありません!! 軍人は体が資本ですから!!」

ルッキーニ「そうかぁ。わかったぁ。すわってよーし」

静夏「はい!!」

エーリカ「……」キリッ

静夏(流石、ハルトマン中尉。こんなときでも姿勢を崩さないなんて……)

芳佳「リーネちゃーん、こっちおねがーい」

リーネ「はぁーい」

静夏「あ、あの!! 私もお手伝いします!!」

芳佳「え? いいよいいよ。静夏ちゃんは座ってて」

静夏「そ、そういうわけにはいきません!! お手伝いさせてください!!」

エーリカ「服部軍曹。上官の命令に逆らうのか? それは感心しないな」

静夏「え……!?」

ルッキーニ「にゃはー。おこるぞー?」

静夏「も、もうしわけありませんでしたぁ!!!」

エーリカ「そうだ。そうしていろ」

静夏「了解!!」

シャーリー「あー。ハラへったー」

ペリーヌ「あら、もうみなさんお集まりですの」

エイラ「みやふじー。今日はなんだー?」

芳佳「肉じゃがですよー」

バルクホルン「そうか。楽しみだな」

ペリーヌ「あら、服部さん?」

静夏「は、はい!」

ペリーヌ「ただ座っているだけなのも退屈でしょう? どうです、わたくしと一緒に宮藤さんとリーネさんの手伝いをするというのは」

静夏「いえ!! 遠慮しておきます!!」

ペリーヌ「そ、そう……。なら、仕方ないですわね……。宮藤さん。わたくしに手伝えることはありませんか?」

芳佳「それじゃあ、お皿だしてくださーい!!」

ペリーヌ「わかりましたわ」

静夏「……」

シャーリー「手伝ったほうがよくないか?」

静夏「え?」

バルクホルン「私もそう思うが」

静夏「で、でも……あの……」

シャーリー「ああ、いや。絶対にそうしろってわけじゃないけどな。私も滅多に手伝わないし」

バルクホルン「お前が厨房に入ればかえって食事の時間が遅延するからな」

シャーリー「なんだと!? そんなわけないだろ!!」

バルクホルン「いつも缶詰で片付けようとするお前では足手まといになると言っている!!」

シャーリー「なんだと!? 本当のことを言わなくてもいいだろ!!」

静夏「あ……あの……」オロオロ

エイラ「やめろ、こらぁ。服部の前ダゾー」

バルクホルン「ちっ。そうだった」

シャーリー「自分からボロ出してたら世話ないな」

バルクホルン「やるか?」

シャーリー「おう、いいぞ。何で勝負だ?」

エイラ「落ち着けってー」

芳佳「ケンカはやめてくださいってばぁ」

エーリカ「バルクホルン大尉もシャーリー大尉もなっていませんね。新人の前で恥ずかしくないのでしょうか?」

ルッキーニ「全くだ」

バルクホルン「くっ……!! ハルトマン……!!」

シャーリー「悪い悪い。早くメシにしよう」

リーネ「いま、持って行きますねー」

ペリーヌ「はい、どうぞ。服部さん」

静夏「あ、ありがとうございます」

ペリーヌ「いえいえ。宮藤さんは料理の腕だけは確かですから、食べても大丈夫ですわよ」

芳佳「ペリーヌさん!! それどういう意味なの!?」

ペリーヌ「そのままの意味ですわ」

芳佳「ひどーい!! あ、でも、その通りか。なら、仕方ないか。もっとがんばろう」

リーネ「芳佳ちゃん……」

静夏(わ、私、上官であるクロステルマン中尉に給仕をさせてしまった……!! こ、こんなことあっていいわけが……!!)

エーリカ「いっただきまーす」

ルッキーニ「まーすっ」

静夏(そうか……。ハルトマン中尉とルッキーニ少尉による、報復……。二人は私の事を……)

サーニャ「ふわぁ……」

エイラ「サーニャ。もう起きたのか?」

サーニャ「ええ」

芳佳「おはよう、サーニャちゃん。はい、どうぞ」

サーニャ「ありがとう……。あ、服部さん」

静夏「ど、どうも……」

サーニャ「ふんっ」キリッ

静夏「……!?」

滑走路

美緒「よし。全員、集まったな」

芳佳・リーネ「「はいっ」」

静夏「……」

美緒「服部!!」

静夏「あ!? は、はい!!」

美緒「気合が足らんな。移動の疲れもあるかもしれないが、甘えは許さんぞ?」

静夏「そんな!! できる限り私を扱いてください!!」

美緒「ほう? いい覚悟だな。お前たちも服部を見習え」

芳佳「えぇ……」

リーネ「うぅ……」

美緒「なんだ!? 嫌なのか!?」

芳佳「全然!! 坂本さんの訓練はたのしいですっ!!」

リーネ「右に同じ!!」

美緒「ならばウォーミングアップからいくぞ!! 基地の周りをランニングだ!! 走れ!!!」

シャーリー「ええと……」ゴソゴソ

ルッキーニ「シャーリー、これはー?」

シャーリー「使えそうだな。それも持っていってくれ」

ルッキーニ「はぁーい」テテテッ

芳佳「はぁ……はぁ……」

静夏「……」

リーネ「いちっ、にっ、いちっ、にっ」

シャーリー「おー。みんなして訓練か? がんばれよー」

芳佳「ありがとうございまーす」

リーネ「はぁーい」

静夏「……」

シャーリー「はっとりー!!」

静夏「は、はぃ!?」

シャーリー「がんばれよー」

静夏「了解!! がんばります!!!」

芳佳「静夏ちゃん?」

静夏「な、なんですか?」

芳佳「元気ないけど、まだ今朝のこと気にしてるの?」

静夏「い、いえ……」

リーネ「誰も怒ってないですよ」

芳佳「そうだよ。食堂でもあんなに和気藹々としてたし」

静夏「や、やめてください!!」

リーネ「え?」

静夏「わ、わかっていますから……。私は嫌われています」

芳佳「ど、どうして!?」

静夏「ハルトマン中尉とルッキーニ少尉には嫌がらせをうけ、怒らないはずのリトヴャグ中尉にはずっと睨まれる始末……」

リーネ「そ、そうだったかな?」

芳佳「サーニャちゃんはずっと眠そうにしてたような」

静夏「私はもうダメなんです!! 宮藤軍曹やビショップ曹長に優しくされればされるほど、苦しいんです!!」

リーネ「静夏ちゃん……」

滑走路

美緒「――本日はここまで! 解散!」

芳佳・リーネ「「ありがとうございました」」

静夏「……ありがとうございました」

芳佳「静夏ちゃん……あの……」

静夏「……」

リーネ「芳佳ちゃん。いこっ」

芳佳「う、うん。静夏ちゃん、晩御飯も私とリーネちゃんが作るから、楽しみにしててね」

静夏「はい」

美緒「……服部?」

静夏「坂本少佐」

美緒「宮藤とリーネから話は聞いた。ハルトマンとルッキーニには私から言っておこう。ただサーニャだけはどうしても信じられないのだが」

静夏「……」

美緒「分かった。サーニャにも話をしておく。今日は疲れただろう? ゆっくり休め」

静夏「はい。ありがとうございました」

服部の部屋

静夏「……」

静夏「お父様……私は今、恐怖と後悔で手足が震えています……」

静夏「このままでは扶桑の魔女として祖国の土を踏むことができない」

静夏「はぁ……」

芳佳『静夏ちゃーん』

静夏「宮藤軍曹!?」

芳佳『ごはん、できたよー』

静夏「は、はい!」ガチャ

芳佳「あ、よかった。ほら、いこっ」

静夏「……宮藤軍曹」

芳佳「どうしたの?」

静夏「こんな私に優しくしてくれて、本当に感謝しています」

芳佳「なにいってるの? 静夏ちゃんとはもう友達なんだし、困ってたら助けたくなるよ」

静夏「み、みやふじ……ぐんそう……」

食堂

エーリカ「そもそも少佐が話を盛ったりするから、私やサーにゃんに変なイメージ持ってるんだろ? 私は悪くない」

美緒「そうか。そういったことも伝えていたな。はっはっはっは」

ミーナ「……」グイッ

美緒「いっ!? ミ、ミーナ! 耳を引っ張るな!!」

ミーナ「何か言うことは?」

美緒「……すまなかった。お前たちのことをよく見せようとしてしまったんだ」

サーニャ「私、服部さんに怖がられてるなんて……」

エイラ「可哀相なサーニャ」

サーニャ「ふんっ」キリッ

エイラ「うわー、サーニャこえー」

サーニャ「これがいけなかったのね」

バルクホルン「私たちが服部のイメージ通りに演じると、服部が苦しんでいるわけか」

シャーリー「なら、もうネコ被るのやめたほうがいいな。窮屈だしさ」

バルクホルン「シャーリーは今日一日普段通りだったがな!」

ペリーヌ「よろしいのですか? いつもの私たちだと……その、世間一般のイメージというのも……」

ルッキーニ「そんにゃの静夏優先でいいじゃん」

リーネ「私もそう思います。このままのほうが悪い印象を与えるだけですし」

ペリーヌ「そ、そうですわね……」

バルクホルン「服部も居心地が悪いだろうからな」

エーリカ「それじゃあ!」

バルクホルン「……今からいつも通りにしよう」

エーリカ「やったー! ゴロゴロしてもいいんだー!!」

ルッキーニ「にゃはー!! もうあたしはゴロゴロしちゃうけどー!!」ゴロゴロ

エーリカ「わたしもー」ゴロゴロ

バルクホルン「度を越えた行動は控えろ!!! 子どもかお前たちはぁ!!!」

シャーリー「子どもだろ」

エイラ「私の事も服部は怖がってるのか。心外にもほどがあるな。こんなに優しいウィッチいないのにさ」

ペリーヌ「自分でいいますか、それを」

サーニャ「もう鋭い眼光は封印しなきゃ」

芳佳「お待たせしましたー」

静夏「……」

美緒「おぉ。服部」

静夏「あ……ぅ……」

ミーナ「ごめんなさいね。貴方がイメージする501を出来るだけ崩さないように振舞っていたつもりだったのだけど、却ってあなたを困惑させたみたいで」

静夏「いえ、私のほうこそ、ご迷惑ばかりをおかけしてしまって」

バルクホルン「ほら、服部。これを見ろ」

静夏「え?」

ルッキーニ「にゃはー」ゴロゴロ

エーリカ「ごはんまだー? ごはんごはーん!」ジタバタ

サーニャ「エイラ、見て。星が綺麗」

エイラ「サーニャのほうが何倍も綺麗なんだな」

静夏「な、なにをしているのですか?」

バルクホルン「これが本当の姿だ。恥ずかしい限りだが、毎日緊張感の欠片もなく皆は生活している」

静夏「そう、なのですか」

ペリーヌ「服部さん。失望も幻滅もしてくれて構わないですが、一つ約束して欲しいことがありますわ」

静夏「なんですか?」

ペリーヌ「わたくしたちのことを嫌いにはならないでください」

静夏「え……」

リーネ「嫌いになられちゃうと、その私たち本当にどうしていいのかわからなくなりますから」

静夏「それは……」

シャーリー「まぁ、服部が私たちのことを嫌いになっても、私たちはお前を仲間の一人として扱うけどな」

ルッキーニ「そうだよー」

静夏「みなさん……わたし……あの……」

美緒「まだ初日だ。色々と分からないこともあるだろうし、私たちのことを全て理解しろとは言わん。だが、忘れないでくれ」

静夏「はい……」

美緒「お前は私たちの家族だ。それは間違いない」

静夏「うっ……はい……うれしいです……うれしい……です……とても……」

芳佳「静夏ちゃん! ごはんたべよ!」

静夏「はいっ! いただきますっ!!」

エーリカ「……もらいっ」ヒョイッ

バルクホルン「なー!? お前!! 返せ!!! それは私が最後までとっておいた芋なんだ!!」

ルッキーニ「やったー。食べないならもらおーっと」ヒョイッ

バルクホルン「のわぁー!!! 何をする!!! ルッキーニ少尉ぃ!!!」

芳佳「おかわりはたくさんありますからぁ」

ペリーヌ「お静かに!! 食事中ですわよっ!!」バンッ

エイラ「お前もうるーせよな」

ペリーヌ「エイラさん!! いちいちあげ足をとらないでください!!!」

サーニャ「服部さん、服部さん」

静夏「なんですか!?」

サーニャ「私も服部さんのこと静夏ちゃんって呼んでもいい?」

静夏「は、はい!! 好きに呼んでください!! リトヴャグ中尉!!」

サーニャ「私のことはサーニャって呼んで」

静夏「サ、サーニャさん……ですか?」

サーニャ「これで友達っ」

エイラ「こらぁ、服部ぃ。私の許可無くサーニャと仲良くすんなぁ。ぶっとばすぞぉ」

静夏「す、すみません!!」

サーニャ「エイラ。ダメよ」

エイラ「私のこともエイラさんって呼べ!」

静夏「りょ、了解! エイラさん!!」

エイラ「よーしっ。許してやる」

芳佳「静夏ちゃん、私のことも名前で呼んでー」

静夏「そ、それはむ、無理です!! せめて、宮藤さんで!! 宮藤さんでお願いします!!」

芳佳「えー? サーニャちゃんとエイラさんは名前で呼んでるのにぃ」

静夏「わ、私にとって宮藤さんはその、すごくすごい英雄なんです!! 扶桑の誇りなんです!!」

芳佳「そうなの? てれちゃうなぁ」

リーネ「芳佳ちゃんは赤城を守ってるもんね」

静夏「そう! それです!! そのことが私にとってはとても――」

ミーナ「元気になったみたいでよかったわ」

美緒「はっはっはっは。まぁ、こんな賑やかな連中に囲まれては落ち込むほうが難しいだろうがな」

宿舎 通路

芳佳「それじゃあ、静夏ちゃん。おやすみ」

静夏「はい。今日は本当に多大なご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」

芳佳「迷惑なんて少しも思ってないよぉ。明日からまた訓練、一緒にがんばろうね」

静夏「はい!! よろしくおねがいします!!」

芳佳「うんっ。それじゃ」

静夏「――宮藤さん!!」

芳佳「どうしたの?」

静夏「501にこれたこと、本当に嬉しく思います!! 今日ほど私がウィッチを目指して良かったと思えた日はありません!!」

芳佳「あははは。ありがとー」

静夏「宮藤さん!! 感謝しています!!」

芳佳「わたしもー! 静夏ちゃんと会えてうれしいよー!!」

静夏「宮藤さーん!!」

芳佳「静夏ちゃーん!!」

バルクホルン「お前たち!!! 騒がしいぞ!!! 何時だと思っているんだぁぁ!!!」

翌日 ブリーフィングルーム

ミーナ「連絡事項は以上です。何か報告することがあれば言ってください。……なさそうですね。それでは解散」

バルクホルン「さてと、ハルトマン。行くぞ」

エーリカ「はぁーい」

サーニャ「あぁ……」フラフラ

エイラ「サーニャ、部屋でゆっくり休もうな」

サーニャ「う……ん……」

静夏「サーニャさん、大丈夫ですか?」

サーニャ「ふんっ」キリッ

静夏「……!」ビクッ

エイラ「心配するなってさ」

静夏「そうですか。わかりました」

リーネ「よかった。静夏ちゃんが笑ってる」

芳佳「うん。ホントに」

ルッキーニ「リーネ、芳佳ー。ちょっとちょっと」

ミーナ「――今日の座学はこの辺にしておきましょうか」

静夏「ありがとうございます!!」

ミーナ「いいのよ。ふふっ。それにしても、昨日とは打って変わって明るいわね」

静夏「え? あ、その、うるさかったでしょうか? 昨晩もバルクホルンさんには怒られてしまって……」

ミーナ「いいえ。服部さんは大人しいぐらいよ」

静夏「それはよかったです」

ミーナ「でも、変な影響だけは受けないようにしてね」

静夏「気をつけます」

ミーナ「またあとでね」

静夏「はい!」

静夏「はぁー……」

静夏(早く、食堂に行こう! 今日は宮藤さんのお手伝いをしなければ!!)

静夏(盛り付けぐらいならできるはず!!)

静夏「待っていてください!」タタタッ

ミーナ「あらあら、本当に昨日とは別人みたい。うふふ」

食堂

静夏「宮藤さん!!」

芳佳「あ、静夏ちゃん。お疲れさまー」

静夏「何か、お手伝いさせてください!!」

芳佳「いいから、座ってて」

静夏「いえ!! そういうわけにはいきません!! 今日は手伝います!!」

芳佳「そ、そう? なら、頼んでもいい?」

静夏「喜んで!! 何をしたらいいでしょうか!?」

芳佳「えーと、それじゃあ、これの味付けをしてくれるかな? 塩とコショウをつけるだけでいいから」

静夏「はい!」

リーネ「芳佳ちゃーん。こっちできあがったよー」

芳佳「はーい。今いくぅー」

静夏「えーと……これとこれを……まぶすだけ……」

静夏(大丈夫。これぐらいなら造作もないこと……)

静夏「儘よ!」パッパッ

ルッキーニ「あま……」

シャーリー「なんで魚がこんな甘いんだ?」

エーリカ「うぇー」

エイラ「誰が作ったんだ、これー!? 料理長をだせー!!」

静夏「……」

エイラ「服部がやったのか?」

静夏「……はい」

ペリーヌ「砂糖と塩でも間違えたの?」

静夏「……はい」

シャーリー「服部。私も何度か同じミスしたことあるよ」

静夏「……っ」

バルクホルン「シャーリー。それはフォローになっていない」

シャーリー「そうか?」

芳佳「静夏ちゃん、次同じ失敗しなければいいだけだから」

静夏「……はい。すみません」

滑走路

静夏「……」

美緒「服部!! お前の番だぞ!! 飛べ!!」

静夏「あ!? す、すみません!!」ブゥゥゥン!!!

美緒「昼の一件を引き摺っているのか」

リーネ「張り切っていた分、随分と落ち込んでいるみたいで」

美緒「浮き沈みが激しいな。そういうタイプではないと思っていたのだが」

リーネ「私もがんばってお手伝いしたのに失敗したら、静夏ちゃんみたいになると思います」

美緒「そういうものか。――服部!! コース通りに飛べ!! ずれているぞ!!」

静夏「はい!!」ブゥゥゥン

リーネ「あ、危ない!」

芳佳「わぁ!? 静夏ちゃん!! よけてぇ!!」

静夏「な……!!」ドガァ

美緒「……味方と衝突してどうする」

リーネ「芳佳ちゃーん! 静夏ちゃーん! 大丈夫ー!?」

通路

静夏「はぁ……」

静夏(今日は散々だった……。何故か空回りしてばかり……。これでは宮藤さんたちにとって疫病神以外の何者でも……)

ルッキーニ「おととと……」フラフラ

静夏「ルッキーニ少尉!」パシッ

ルッキーニ「おぉー。ありがと、静夏ぁ」

静夏「いえ」

ルッキーニ「でも、少尉は余計」

静夏「で、ですが、流石にその、ルッキーニちゃ……んは……」

ルッキーニ「別に気にしないって」

静夏「そ、それよりその大きな箱はなんですか? かなり重そうですね。よければ私が持ちます」

ルッキーニ「いいからいいから」

静夏「そ、そうですか?」

ルッキーニ「うんっ。じゃねー」

静夏「はい。お休みなさい」

翌日 格納庫

エイラ「これは、このパーツでいいんだろうけどさぁ。そうすると加速が悪くなるだろ?」

シャーリー「確かになぁ。でも、今はこれしかないし。代替部品で妥協するか?」

エイラ「それもなぁー。絶対、しっくりこないだろうからなぁー」

シャーリー「そうだ。ここをこうしたらどうだ?」

エイラ「ん? おぉー。なるほどなぁ。だったら、ここはこうしたらどうだ?」

シャーリー「おぉ! その手があったかぁ。これなら最高速度も上がるな」

静夏「……」

リーネ「静夏ちゃん、どうしたの?」

静夏「あ、いえ……なんでもありません」

芳佳「エイラさんとシャーリーさんは時々ああしてユニットの調整してるんだ」

静夏「へぇ……」

リーネ「シャーリーさんもエイラさんもユニットのことをよく知っているから」

静夏「なるほど」

芳佳「いこっ。坂本さん、待ってるよ!」

別の日 滑走路

バルクホルン「ハルトマン!! 高度を上げるぞ!!」

エーリカ「りょうかーい!!」

静夏「……」

ルッキーニ「しーずかっ!」ギュッ

静夏「きゃぁ!? ル、ルッキーニさん! な、なんですか、いきなり!?」

ルッキーニ「なにみてるのかなーって」

静夏「あの二人の飛ぶ姿を見ていました。こうして地上から眺めているだけでも学ぶことが多いですから」

ルッキーニ「ふぅーん」

静夏「早く、あの人たちのように上手く飛ぶことができるようになりたい」

ルッキーニ「なれるといいね!」

静夏「はい! ありがとうございます!」

ルッキーニ「それよさぁ、静夏ぁ。暇なら一緒にあそぼっ」

静夏「え? あ、遊ぶって……」

ルッキーニ「こっちこっち! かっちょいい虫みつけたんだー!」

ブリーフィングルーム

芳佳「どう思います?」

美緒「そうだな……」

ルッキーニ「しょーさー!」

美緒「ルッキーニか。どうした?」

ルッキーニ「静夏が、バルクホルン大尉みたいに飛びたいってさー。なんとかしてあげてー」

美緒「そうか」

芳佳「やっぱり、次の週からはバルクホルンさんとシャーリーさんに頼んでみましょうよ」

美緒「それも服部のためか」

芳佳「静夏ちゃんもそのほうが喜んでくれるはずです!!」

美緒「分かった。話しておこう」

芳佳「わーい! 坂本さん、ありがとうございます!!」

美緒「お前のことではないだろうに」

芳佳「それでも嬉しいんです! ね、ルッキーニちゃん!」

ルッキーニ「あい!」

食堂

静夏「え……?」

シャーリー「だから、研修二週目は私とバルクホルンでお前のことを鍛えてやるから」

バルクホルン「覚悟しておけ。服部が血反吐を吐いても私はやめないからな」

静夏「し、しかし! 研修中は坂本少佐とミーナ中佐に指導を受けることになっています!」

シャーリー「変更だよ。変更」

静夏「で、ですが、これ以上私のためになんて……」

シャーリー「なんだぁ? 嫌なのかぁ? ええ?」

バルクホルン「嫌でも既に決まったことだ。逃げられはしないぞ、服部」

静夏「い、いえ! こちらこそ!! よろしくお願いします!!」

シャーリー「ユニットのことは私とエイラが担当するから、どんなことでも聞いてくれ」

バルクホルン「航空戦術については私とハルトマンが請け負う」

静夏「は、はぁい!!」

シャーリー「じゃ、メシにするかぁー」

静夏(こんなに幸せでいいんでしょうか……わたし……!!)

通路

静夏「あぁ……坂本少佐とミーナ中佐にも教えてもらえて、次はあのシャーリーさんとバルクホルンさんに色々……」

静夏「私は今、世界で最も幸せなウィッチなのかもしれない……」

ルッキーニ「芳佳、こっちこっち」

芳佳「うん」

静夏「あれは……。宮藤さーん!! ルッキーニさーん!!」

ルッキーニ「あにゃ!? 静夏ぁ!?」

静夏「何をしているのですか?」

芳佳「えぇと……あの……」

静夏「どうしました?」

ルッキーニ「静夏には関係ないことだからー」

静夏「そ、そうなのですか?」

芳佳「そうそう!」

ルッキーニ「またね!! 静夏っ!!」

静夏「あ、はい……」

別の日 格納庫

シャーリー「で、これを外すと……。中はこうなってる」

静夏「なるほど……」

エイラ「どこを弄ればユニットの速度が変わるのかは知ってるか?」

静夏「はい。それはここです」

エイラ「お。なんだ。あまり教えることないな」

静夏「そ、そんなことはありません!! もっと教えてください!!」

シャーリー「こうなったら残り一週間で服部がユニットを自由に改造できるぐらいにしてやろうか」

エイラ「シャーリーのそれは常人にはムリダロ」

シャーリー「そんなのやってみないとわかんないだろー?」

静夏「……ん?」

芳佳「これでいいかな?」

リーネ「大丈夫だと思うよ」

サーニャ「芳佳ちゃん、もってきたわ」

静夏「……」

空中

バルクホルン「服部!! なんだその軌道は!!! しっかり体勢を整えろ!!」

静夏「は、はい!!」

エーリカ「すきだらけー」スガガガガッ!!!

静夏「なぁ……!?」

バルクホルン「服部!! もう一度最初からだ!!」

静夏「は、はい……」

バルクホルン「聞こえないぞ!!! やるのか!? やらないのか!?」

静夏「やりまぁす!!!」

バルクホルン「貴様のために時間を割くのが馬鹿らしくなる前に、さっさと結果を出せ!! 子どもの遊戯に付き合うほど私もハルトマンも暇ではないんだ!!!」

静夏「はぁい!! すみません!!!」

バルクホルン「いけっ!!」

静夏「くっ……!!」ブゥゥゥン

エーリカ「なんだそれ? やる気、だせよー。ほらほらー。またトゥルーデに怒られるぞー?」

静夏「すみません!!」

滑走路

静夏「ごほっ……おぇ……」

バルクホルン「この程度か。期待の新人というには程遠いな。お前はただのヒヨッコだ」

静夏「ぐぅ……」

エーリカ「いきてるかー?」

静夏「はぁ……ぃ……」

バルクホルン「行くぞ、ハルトマン。こんな奴、放っておけばいい」

エーリカ「そうだね」

静夏「うぇ……ごほっ……」

静夏(ここまでとは……。坂本少佐から聞いていた以上に辛い……)

静夏「で、でも……私は……この程度では……」

芳佳「リーネちゃん!! 見つかった!?」

リーネ「それがまだ」

芳佳「買ってくるしかないかなぁ」

リーネ「そうだね……」

静夏「宮藤……さん……」

芳佳「静夏ちゃん!? ど、どうしたの!?」

静夏「ぐっ……何を、しているのですか……?」

リーネ「あ、えーと……」

芳佳「そ、それより立てる!?」

静夏「大丈夫です。立てます……。それで、お二人は何をさがして……? よければ私もお手伝いを……」

芳佳「あ……うん……」

静夏「宮藤、さん?」

リーネ「静夏ちゃん……」

静夏「リーネさん? なにを……して……」

芳佳「ご、ごめん! 静夏ちゃん!!」

静夏「え……?」

リーネ「ごめんね!」タタタッ

芳佳「静夏ちゃん、ごめんなさーい!!」タタタッ

静夏「み、みやふじ……さ……」ガクッ

食堂

ペリーヌ「今日の味付けは若干濃いですわね」

エイラ「文句あんのかぁ?」

サーニャ「美味しいわ、エイラ」

エイラ「だよなぁ。だよなぁ?」

ペリーヌ「別に不味いとは言ってないでしょう?」

静夏「あの」

ペリーヌ「あ、あら。服部さん。なにか?」

静夏「宮藤さんとリーネさんが何かを探しているようなのですが、知りませんか?」

ペリーヌ「さぁ? ズボンでもなくしたのではなくて?」

静夏「エイラさん」

エイラ「……」プイッ

静夏「……サーニャさん?」

サーニャ「ふんっ」キリッ

静夏「……」

宿舎 通路

静夏(何かした……? 心当たりが多すぎてよくわからない……)

静夏「馴れ馴れしくしすぎたとか……? そもそも私の場合は第一印象が最悪の極みだったから……」

静夏「はぁ……」

ルッキーニ「にゃにゃーん」

静夏「ルッキーニさん!」

ルッキーニ「わぁ!? 静夏ぁ!?」

静夏「あの!! 教えてください!! 数日前から何かをしていますよね!?」

ルッキーニ「いやーきのうせいじゃないですかー?」

静夏「私の目を見てください!!」

ルッキーニ「急いでるから!! またね!!」

静夏「ルッキーニさん!!!」

静夏「……」

静夏「き、嫌われた……」

静夏「うっ……うぅ……」

翌日 格納庫

ミーナ「えーと。補給物資は……」

静夏「……」

ミーナ「服部さん? 何をしているの?」

静夏「ミーナ中佐……」

ミーナ「そろそろ座学の時間でしょう?」

静夏「私、調子に乗りすぎたのかもしれません」

ミーナ「どういうこと?」

静夏「宮藤さんやリーネさんに良くしてもらったのに、ここ数日はバルクホルンさんやシャーリーさんとばかり話をしていました」

ミーナ「それは仕方なのないことでしょう」

静夏「でも!! 私はお礼もいわずに、ただただ憧れの人から指導を受けられることに浮かれてしまって……」

ミーナ「服部さん……」

静夏「きっと、宮藤さんたちは怒っているんです……。あんなに優しくしてくれたのに……私は何も返していませんでしたから……」

ミーナ「……」

静夏「私は最低のウィッチなんです……」

ブリーフィングルーム

ミーナ「限界です」

芳佳「やっぱり、露骨すぎたかなぁ?」

リーネ「でも、ああでもしないとバレそうだったし……」

美緒「メンタルの問題だ。服部がここまで精神的に弱いとは思わなかった」

ミーナ「そうねぇ……」

バルクホルン「私の特訓にはついてきているし、戦闘に関しては申し分ないはずだがな」

サーニャ「憧れの人に嫌われたと感じたら、どんな人でもショックを受けると思います」

ペリーヌ「そうですわね。わたくしも少佐に嫌われたら、食事もできなくて餓死するかもしれませんわ」

シャーリー「私とエイラで気を惹かせても効果ないだろうな」

エーリカ「もうやっちゃえば? 最終日なんてまってられないじゃん」

エイラ「それがいいな。今晩ぐらいどうだ?」

芳佳「賛成です!! 坂本さん!!」

美緒「……予定を変更するか。服部の士気に関わることだからな」

ルッキーニ「にゃはー!! じゃ、準備してくるー!!」

海岸

静夏「このまま扶桑に帰ることになる……。お父様……私は今、悲しみで手足が震えています……」

静夏「こんな馬鹿な娘で申し訳ありません……」

静夏「宮藤さん……一番嫌われたくなかったのに……」

静夏「私は……大馬鹿者です……」

静夏「あと三日。無心で過ごすしか自我を保て――」

芳佳「静夏ちゃん」

静夏「み、宮藤さん!?」

ルッキーニ「静夏、なにしてるの?」

静夏「あ、あの……なにか?」

芳佳「ごはん、一緒に食べようよ」

静夏「もう、そんな時間ですか? わかりました」

ルッキーニ「こっちこっちー」グイッ

静夏「え? ど、どこにいくのですか!?」

ルッキーニ「いーから、いーからぁ」

滑走路

シャーリー「おーし、それじゃ、やいてくぞー」

エーリカ「お肉、おおめで!!」

バルクホルン「バランスよく食べろ」

エーリカ「えー!? おにくー! おにくー!!」

バルクホルン「……シャーリー、肉を多めで頼む」

シャーリー「はいよー」

ルッキーニ「もうはじまってりゅー!!」

静夏「こ、これは?」

ルッキーニ「バーベキュー大会ー」

静夏「ば、ばーべきゅー?」

芳佳「ルッキーニちゃんとシャーリーさんがね、静夏ちゃんの研修最終日ために考えていたことなんだ」

静夏「え……でも、私はまだ、三日ほど……」

ルッキーニ「だって、静夏。すんごいしょんぼりしてるんだもん。これ以上隠してたら、どうなるかわかんないじゃん」

静夏「私の……ために……」

エイラ「サーニャ、お肉たべるか?」

サーニャ「エイラも食べて」

ペリーヌ「なんて気品の欠片もない食事なんですの?」

リーネ「でも、美味しいですよ?」

ペリーヌ「不味いとは言ってません」

美緒「はむっ! うむ! うまい!!」

シャーリー「焼けたぞー! とってけよー」

芳佳「はい。静夏ちゃん」

静夏「宮藤さん。私、また……」

芳佳「ごめんね。下手に隠してたせいで、静夏ちゃんを不安にさせて」

静夏「……」

ルッキーニ「静夏ぁー。たべよー」

静夏「ルッキーニさん……」

ルッキーニ「どったの?」

静夏「どうして……私にここまで……?」

ルッキーニ「だって、私静夏ににゃーんにもしてあげられないから」

静夏「え……?」

ルッキーニ「せめて、静夏が楽しくお別れできるようにしたいなーって、考えてて」

静夏「ルッキーニさん……そんな……私なんて……ずっと、誤解していて……」

ルッキーニ「おぉ!? 静夏ぁ!? ごめんごめん。びっくりさせようとしてただけなの。怒らないでぇ」

静夏「おこってません……どうして、怒らないといけないんですか……」

ルッキーニ「ふぃー。よかったぁ」

シャーリー「ルッキーニは最初からこういうレクリエーションを考えてたんだ。新人に何もしてあげられないのが我慢できなかったんだってさ」

静夏「そうなのですか」

サーニャ「私も静夏ちゃんには何も教えてあげることができませんでした……」

美緒「そんなことはない。明日から二日間、サーニャには夜間飛行の心得を服部に叩き込んでもらうからな」

サーニャ「がんばりますっ」

エイラ「サーニャ、がんばれー」

サーニャ「ふんっ」キリッ

エイラ「おっ。気合十分だな、サーニャ」

エーリカ「ふぁーふぁふぇふぁふぉふぇー」

バルクホルン「食べながら喋るな」

エーリカ「ルッキーニが一番、服部のこと気にしてくれてたのは確かだね」

ルッキーニ「そんなことないって。芳佳とリーネだって、ずーっと静夏静夏っていってたもん」

芳佳「だって、私にとってははじめての後輩だし……」

リーネ「わ、わたしも……」

静夏「みなさん……」

ミーナ「服部さん?」

静夏「は、はい」

ミーナ「精神的に未熟な面があるのは仕方ないかもしれないけど、幾らなんでも脆弱すぎるわね」

静夏「はい……」

ミーナ「もっと仲間を信じなさい。あと、自分に自信を持ちなさい。あなたは才能があるんだから」

静夏「はいっ」

美緒「服部、肉焼けたぞ。食え」

静夏「はい! いただきますっ!!」

シャーリー「でも、明日から服部が夜間飛行訓練をするなら、まともに会話できるのは今日で最後になるか」

エイラ「そうだな。まぁ、無理すればなんとかなるかもしれないけど」

サーニャ「私が静夏ちゃんを立派なナイトウィッチにします」

美緒「それは困る」

サーニャ「え?」

ルッキーニ「ごめんね、静夏。私も本当は教えてあげたかったんだけどー」

静夏「気にしないでください!! ルッキーニさんからはすごくすごい大事なものを戴きましたから!!」

ルッキーニ「そなの?」

静夏「はい! こんなに温かい想いを……」

ルッキーニ「静夏がそれでいいなら、いいんだけど」

芳佳「静夏ちゃん、野菜もやけたよー」

静夏「私ばかりいけません!! 宮藤さんも食べてください!!」

芳佳「静夏ちゃんが食べてたべて」

静夏「いえいえ、宮藤さんがたべてください」

エーリカ「私がたべるっ!」パクッ

別の日 夜 空中

サーニャ「夜は視界も悪くなるから、こうして常に神経と研ぎ澄ませて……」キリッ

静夏「なるほど」

サーニャ「静夏ちゃんもナイトウィッチになれるはずだけど、坂本少佐に止められたから……」

静夏「そこまで評価してくれて恐縮です、サーニャさん」

サーニャ「もうすぐ、お別れですね」

静夏「……楽しかったです。とても。すごくすごい楽しかったです」

サーニャ「私もよ」

静夏「サーニャさん」

サーニャ「この二週間、とても楽しかったわ」

静夏「あの、昼頃に起きてこられたのって……私のため、ではないですよね?」

サーニャ「……」

静夏「あぁ!! サーニャさん! どう感謝していいのかわかりません!! とにかくありがとうございます!!」

サーニャ「私が静夏ちゃんと少しでもお話したかっただけだから」

静夏(ここまでされて何もお返しをしないというのは、ウィッチとして、人として間違っている。でも、私に何ができるだろう……)

最終日 宿舎 通路

ルッキーニ「ふわぁぁ……」

静夏「ルッキーニさん!!」

ルッキーニ「静夏? どうしたの?」

静夏「二週間、お世話になりました!」

ルッキーニ「私が一番お世話してないけど。嫌味?」

静夏「そう思うのなら、教えてください!!」

ルッキーニ「え?」

静夏「ルッキーニさんの技術を吸収してからでないと扶桑には戻れません!!」

ルッキーニ「えぇ? ホンキぃ? 絶対にむりだってぇ」

静夏「私にできる恩返しはこれぐらいなんです!!」

ルッキーニ「どういうこと?」

静夏「みなさんから教えてもらったことを今後に活かし!! 立派なウィッチになる!! これが私にできる唯一の恩返しですから!!」

ルッキーニ「ふぅーん。がんばってね」

静夏「だから、行きましょう!! ルッキーニさん!!」グイッ

滑走路

芳佳「シャーリーさーん!!!」

シャーリー「よぉ、宮藤ぃ」

芳佳「ルッキーニちゃんが静夏ちゃんに直接指導してるってきいて……!」

シャーリー「上だ」

芳佳「え?」

ルッキーニ「だからね、こうバーっていって、ガーッときて、ザザーンって感じだってば」

静夏「え、えーと。あの……」オロオロ

ルッキーニ「むぅ……」

静夏「こ、こうですか?」フラフラ

ルッキーニ「ぜんぜん、ちがう!!」

静夏「す、すみません!!!」

芳佳「あぁ……ルッキーニちゃんが、怒ってる……」

シャーリー「ルッキーニは指導には向いてないんだよなぁ」

芳佳「あははは……」

ルッキーニ「もう、なにいってもダメじゃん」

静夏「すみません」

ルッキーニ「ね? わかったでしょ? あたしじゃ、静夏を強くしてあげられないんだ。ごめんね」

静夏「ルッキーニさん、そんなことは」

ルッキーニ「いーの、いーの。ありがとう、あたしになんかに気を遣ってくれて」

静夏「私の実力が不足していたばかりにルッキーニさんの技術を一割も理解できませんでした」

ルッキーニ「ちがうって。あたしじゃ誰でもそうなるの」

静夏「ルッキーニさん!」

ルッキーニ「にゃに?」

静夏「いつか、貴方の教えを理解できるほどの実力をつけてきます」

ルッキーニ「なら、私が教えることないじゃん」

静夏「い、いえ!! ルッキーニさんに教えて欲しいんです!!」ガシッ

ルッキーニ「そ、そうなのかぁ?」

静夏「はいっ!!」

ルッキーニ「わ、わかった。そのときはまた教えてあげる。静夏だけ特別だよ?」

夕方 滑走路

静夏「短い間でしたが、皆様には本当にお世話になりました。時に厳しく、時に優しく、こんな私を家族のように接してくれたこと、嬉しく思います」

静夏「このご恩は一生忘れません!」

バルクホルン「服部。この花は501全員からだ。受け取ってくれ」

静夏「ありがとうございます!!」

シャーリー「少し寂しくなるな。良い感じで馴染んできたところだったのにさ」

エイラ「だよなー。服部ー。またこいよー」

静夏「はい!! そのためにも扶桑に戻って、鍛錬を重ねます!!」

ペリーヌ「貴方が私たちの部隊に来る日を楽しみにしていますわ」

リーネ「元気でね、静夏ちゃん」

芳佳「また会おうね! 扶桑に戻ったら、絶対に会いに行くから!」

静夏「楽しみにしています!」

サーニャ「さようなら。体には気をつけてね」

静夏「サーニャさんも」

美緒「服部、時間だ。乗れ」

エーリカ「じゃーねー」

ルッキーニ「バイバーイ!! 静夏ぁー!!!」

静夏「またいつか会いましょう!!」

ミーナ「ええ。必ず」

静夏「宮藤さーん!! 扶桑に戻ってきたときは一報をお願いします!!」

芳佳「うん!!」

静夏「リーネさん!! 扶桑に遊びにくることがあれば、是非私のところへ!!」

リーネ「はーい!!」

静夏「ペリーヌさん!! いつかガリアに招待してください!!」

ペリーヌ「はいはい」

静夏「バルクホルンさん!! 今度会えたときはロッテを組んでください!!」

バルクホルン「そのときがきたらな」

静夏「それからえーと……」

美緒「さっさとのれぇ!!!」ドガッ

静夏「あぁ……」

芳佳「いっちゃったぁ……」

リーネ「色々あった二週間だったね」

芳佳「うん。とっても楽しかった」

バルクホルン「しかし、あの精神力の弱さは不安要素でしかないな」

エーリカ「場数を踏めばどうってことないよ。きっと」

ミーナ「そんなに単純なことでもないと思うけど」

サーニャ「うぅ……」フラッ

エイラ「サーニャ!? どうした!?」

サーニャ「眠気が……もぅ……だめ……」

エイラ「少佐。サーニャを寝かしたいんだけど、いいか?」

美緒「すぐに連れて行ってやれ。最終日だからと一日中起きていたのだろう」

シャーリー「はぁー。明日からは通常通りかぁ。なんか、祭りが終わったあとみたいで物悲しいなぁ」

ルッキーニ「……シャーリー」

シャーリー「なんだ?」

ルッキーニ「頼みたいことがあるんだけど」

数日後 滑走路

シャーリー「おーい。ルッキーニ、いくぞー」

ルッキーニ「あーい!!」テテテッ

ミーナ「ルッキーニさん、士官教育受けるつもりなのかしら?」

美緒「最近は指導力を高めようとしているようだな」

ミーナ「服部さんのおかげかしらね」

美緒「かなり強く頼み込まれたらしいからな。やはり後輩というのは人を変える」

ミーナ「そうね」

バルクホルン「こらぁ!! ハルトマン!!! まだランニングはすんでいないぞ!!!」

エーリカ「もーあきたぁー」ゴロゴロ

バルクホルン「それでもカールスラント軍人かぁ!!!」

ミーナ「後輩がいても変わらない人もいるけれどね」

美緒「はっはっはっは。それも個性だろう」

ペリーヌ「坂本少佐ー。通信がありまして、坂本少佐とミーナ中佐に代わってほしいと」

美緒「そうか。わかった。また上層部の小言でも聞かされるのか……?」

ブリーフィングルーム

美緒「先ほど、軍上層部より連絡があった。一ヵ月後、一般向けの見学会を行うそうだ」

ミーナ「501の日常を体験してもらい、どのような活動をしているのか知ってもらうのが目的だそうよ。広報活動みたいなものね」

バルクホルン「そんなことをしなくともウィッチを志願するものは多いはずだ」

美緒「もう決まったことだ。諦めろ」

ペリーヌ「今度こそ!! みなさんにはビシっとしてもらいますわよ!!!」

バルクホルン「そうだな。特にハルトマン!!! もう甘えや妥協はしない!!! 覚悟しておけ!!!」

エーリカ「なんで、私ばっかりぃ」

芳佳「一般向けなんて、ドキドキするよぉ」

リーネ「私も。恥ずかしいよね」

美緒「ちなみに見学に来るのは扶桑の者になってるな」

シャーリー「また扶桑か。たまにはリベリオンからきてもいいと思うけどなぁ」

美緒「えー、参加者の中には山川美千子の名前もある」

芳佳「みっちゃん!?」ガタッ

美緒「宮藤、よろしく頼むぞ。連絡事項は以上だ。それでは解散!」


おしまい。

>>99
バルクホルン「そうだな。特にハルトマン!!! もう甘えや妥協はしない!!! 覚悟しておけ!!!」

バルクホルン「そうだな。特にハルトマン!!! もう甘えや妥協は許さない!!! 覚悟しておけ!!!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月21日 (水) 02:35:34   ID: HXho3G16

サーニャちゃんに鋭い眼光で睨まれたい

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