沙衣「できたよ盛本くん。委員長が百合になる薬だ」 (88)

カガクチョップSS。沙衣と蓮のカプ流行れ

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A組


蓮「ふぅ……」

蓮「やっと終わった……!」ノビー

蓮「委員長の仕事も楽じゃないわね」

蓮「ま……だからこそやりがいってのがあるんだけどね。ふっふっふ」

蓮「……結局遅くなっちゃった」

蓮「実験に付き合うって約束してたのに」

蓮「ふわぁー……」

蓮「あふぅ」

蓮「……さて、科学室に」

ガラッ

「長倉さーん」

蓮「ん?」


蓮「盛本さん」

雨柚「クラス委員長のお仕事ですか?」

蓮「ええ、丁度今終わったとこ」

雨柚「お疲れさまですー」

蓮「これから科学室行こうと思ってたの」

蓮「あ、もしかして迎えに来てくれたの?」

雨柚「はいっ」

雨柚「なかなか来ないからどうしたのかなって思って、来ちゃいました」

蓮「そう?何かごめんね。一言言っておけばよかったわね」

蓮「よいしょ……じゃ、行きましょうか」

雨柚「…………」

蓮「ん?どうしたの?」


雨柚「長倉さーんっ」

ギュッ

蓮「きゃっ!?」

雨柚「うーん、温いです」

蓮「い、いきなり抱きついてくるなんて……」

蓮「どうしたの?」

雨柚「寂しかったんです」

蓮「寂しい?」

雨柚「だって部長、長倉さんが来て実験するまで別の研究してるって……」

雨柚「だから私暇で暇で」

蓮「そうなの?」

蓮「もう、沙衣ったら、盛本さんをほったらかすなんて……ほんと勝手なんだから」


雨柚「部長はマイペースな方ですから」

蓮「まったく……」

雨柚「寂しいと死んじゃうんです。モルモットだけに」

蓮「それウサギよね」

蓮「でもまさかいきなり抱きついてくるなんてね」

蓮「盛本さんってそんな甘えんぼな人だったっけ」

雨柚「えへへ……なでなでしてください」

蓮「ほんとにどうしたの盛本さん」

蓮「まあ、いいけど……よしよし」ナデナデ

雨柚「えへー」

蓮「それじゃ、行きましょうか」

雨柚「はいー」


蓮「…………」スタスタ

雨柚「♪」トコトコ

蓮「…………」

雨柚「?」

蓮「……なんか近くない?」

雨柚「腕組みますか?」

蓮「いや、あの……」

雨柚「長倉さん、いいにおいがします」

蓮「へ?」

雨柚「ふふ」

蓮「……?」

蓮「…………」


科学準備室


蓮「入るわよー」

雨柚「戻りましたー」

沙衣「やあ、来たね」

沙衣「遅かったじゃないか。委員会の仕事?」

蓮「まあね、遅くなってごめんね」

沙衣「いや、こっちこそ忙しいところ悪かったね」

沙衣「来たところ悪いが、少し歯切れが悪いな……科学室にいるから、もうちょっと待っててくれ」

蓮「うん」

雨柚「長倉さん長倉さん」

蓮「何?」

雨柚「紅茶飲みますか?」

蓮「あ、いいの?ありがとう」


蓮「でも紅茶なんてどうしたの?」

雨柚「お菓子に合うんですよ」

蓮「盛本さんよく食べてるものね」

雨柚「はい、どうぞ」コト

蓮「ありがとう」

雨柚「ごめんなさい、カップは私と部長のしかなくて……これ、私のです」

蓮「ん?別にいいけど……」

蓮「じゃあ今度持ってこようかしら」

蓮「それじゃ、いただくわね」

蓮「……ん?」コクリ

蓮「何か……ん?」

雨柚「……変ですか?」

蓮「いや……変というか……」


蓮「何か入れた?」

雨柚「紅茶にイチゴジャムを入れるとおいしいって聞いたんです」

蓮「へー、紅茶にイチゴジャム……」

雨柚「でもジャムなんてなくて、部長に話したらイチゴ味のシロップをくれたんです」

雨柚「それで、入れてみました」

蓮「ジャムとシロップは違うんじゃ……」

雨柚「入れてみたけどあんまり好きじゃなかったです」

蓮「お、おいしくなかったのに飲ませるの?」

雨柚「もしかしたら長倉さんは気に入るかなって思って……」

雨柚「どうでした?」

蓮「うーん……初めての味でちょっとビックリしたけど、嫌いじゃないわね」

蓮「飲み慣れたら気に入るかも?」

雨柚「なるほど……」


蓮「……うん」

蓮「シロップってどれくらい入れたの?」

蓮「もし砂糖も入ってるとしたらカロリーが……」

雨柚「……」ジー

蓮「……あれ、どうしたの?」

雨柚「あの……」

雨柚「一口、貰ってもいいですか?」

蓮「ええ、盛本さんが入れたんだもん。もちろん」

雨柚「ありがとうございます」

雨柚「……」クピ

雨柚「……うーん?」

蓮「……あまり無理して飲むこともないと思うけど」


雨柚「どうもです」スッ

蓮「うん」

蓮「…………」

蓮「ふぅ……」

雨柚「…………」ジー

蓮「……ん?」

蓮「今度は何?」

雨柚「…………」

蓮「……?」

雨柚「……間接キス」ボソッ

蓮「!?」


蓮「ごふっ!げほっ!」

雨柚「わあ!な、長倉さん!」

蓮「へ、変なこと言わないで……!ごほっ!む、咽せちゃった」

雨柚「あぅ……」

蓮「げほっ、げほげほ!」

雨柚「ご、ごめんなさい!私、そ、そんなつもりは……」

蓮「う、ううん……ちょっと……ビックリしちゃって……」

蓮「私こそごめんね。机拭かなくちゃ……」

雨柚「……長倉さんの口から出た紅茶」

蓮「……ん?」

雨柚「い、いえ!何でもないです!布巾持ってきますね!」

蓮「え、ええ……」

雨柚「部長ー!」


ガチャ

蓮「あーあ……」

蓮「…………」

蓮(……盛本さん)

蓮(さっきから、何か……)

蓮(何というか……)

蓮「…………」

蓮(……私、疲れてるのよね。うん)

ガチャ

沙衣「やあ」

蓮「あ、沙衣」

沙衣「……これはまた随分と盛大にぶちまけてくれたね」

蓮「そ、それは……」


蓮「そ、それよりも!」

沙衣「ん?」

蓮「盛本さんの様子がおかしいの!」

沙衣「盛本くんの?」

沙衣「おかしい……と、言われても漠然としていて何とも」

沙衣「例えば?」

蓮「た、例えば……!?」

蓮「そ、その……急に……」

蓮「だ、抱きついてきたり……甘えてきたり……」

蓮「さっきだって……か、間接キスがどうとかって……」

蓮「いつもより……かわいい」

沙衣「へぇ……」

蓮「はっ!」


蓮「そ、それよりも!」

沙衣「ん?」

蓮「盛本さんの様子がおかしいの!」

沙衣「盛本くんの?」

沙衣「おかしい……と、言われても漠然としていて何とも」

沙衣「例えば?」

蓮「た、例えば……!?」

蓮「そ、その……急に……」

蓮「だ、抱きついてきたり……甘えてきたり……」

蓮「さっきだって……か、間接キスがどうとかって……」

蓮「いつもより……かわいい」

沙衣「へぇ……」

蓮「はっ!」


蓮「そ、それで!ビックリして吹いちゃったのよ!」

沙衣「ふむ、盛本くんがキミに甘えてきたのか」

蓮「そ、そうよ!」

沙衣「元々人懐っこいけどな。盛本くんは」

蓮「そうじゃなくって……!」

蓮「アンタ盛本さんに何したのよ!」

沙衣「強いて言えば実験かな」

蓮「実験……!」

蓮「盛本さんの甘えっぷりと関係あるわけ!?」

沙衣「……多分ね?」

沙衣「そうそう、盛本くんが飲んだのはこの新発明の薬だよ」

蓮「薬はやめろって言ってるじゃないの!」


沙衣「害になるような物質は入ってないって」

沙衣「これを、キミと盛本くんに飲んでもらおうと思ってたんだ」

沙衣「しかしキミが遅いので、盛本くんに先に飲んでもらったわけだけど」

蓮「何なのよこの薬……」

蓮「…………」クンクン

蓮「何か甘い匂いね」

沙衣「イチゴ味」

蓮「イチゴ味!?」

沙衣「正確には赤色二号という着色料と香料の味だね」

沙衣「知ってるかい?一般的によく使われているコチニールという着色料はカイガラムシという……」

蓮「ぎゃー!やめろ!」

沙衣「普段口にしてるものだろうに」


蓮「んなことよりも!」

蓮「その変な薬は何の薬なのよ!」

沙衣「ああ、これね」

沙衣「とある依頼で作った……えっと」

沙衣「あ、名前はまだ決まってないや」

蓮「名前なんてどうでもいいから」

沙衣「要するに『媚薬』だね」

蓮「……へ?」

沙衣「媚薬」

蓮「…………」


蓮「何作ってんのよ!?」

沙衣「だから、媚薬だって」

蓮「そ、そ、そんな風紀を乱すようなHなもの!委員長として見逃せないわ!」

蓮「っていうか飲まされかけたの!?私媚薬を!」

蓮「それ以前に盛本さん媚薬飲んじゃったの!?」

沙衣「落ち着きなよ」

沙衣「媚薬というのも、あくまで定義の上でそう呼んでいるに過ぎないよ」

沙衣「キミは……とても口で言うには憚れるようなことになる薬だと思っていることだろうが、これは違う」

沙衣「特定の相手の体臭……フェロモンと言った方が聞こえはいいかな?」

沙衣「そのフェロモンにちょっとした興奮を及ぼす薬に過ぎない」

沙衣「そしてそのちょっとした興奮は……所謂『ときめき』だと思うようになる」

蓮「と、ときめき?」

沙衣「そう。だから実質のところ『惚れ薬』と呼ぶのがわかりやすいかな」


蓮「ほ、惚れ薬……!?」

沙衣「うん。正確にはキミが好きになる薬」

蓮「わ、私を……!?何で私!?」

沙衣「消去ほ……あ、いや、まあそこはいいじゃないか」

沙衣「で、フェロモンとは言ったけど……まあ、そんな感じの話だよ」

沙衣「もっとも、人の場合フェロモンの受容器は退化してしまっているらしいけどね」

沙衣「で、盛本くんがキミのにおいという特定条件でときめく薬、というわけさ」

蓮「わ、私のにおい……」

蓮「…………」クンクン

蓮「私……臭い?」

沙衣「キミは私の話を聞いていたのかい?」

蓮「と、とにかく!」

蓮「何でそんなの作っちゃうのよ!」


沙衣「だから依頼を受けたんだって」

沙衣「それに、純粋に興味もあったんだ。科学で人の心を操るということにね」

蓮「何にしても女の子の恋心を蹂みにじるような卑怯な薬じゃない!この淫魔!」

沙衣「失礼な。卑怯かはともかく、私だって常識的かつ理性的に、そんな淫猥な発明はしないさ」

蓮「よく言うわよ!」

沙衣「私にだって倫理観というものがある。技術者倫理というものだね」

沙衣「この薬は同性同士にしか効かないんだ」

蓮「は!?」

沙衣「異性にも効果がある薬を依頼されてたら断っていたよ」

蓮「断るポイントおかしいでしょ!」

沙衣「つまり百合になる薬だよ!」バーン

蓮「もっと問題あるわよそれ!」

沙衣「でもそういう依頼だし」

蓮「どんな依頼なのよ……」


蓮「とにかく!」

蓮「そんな発明委員長として見逃せないんだから!」

沙衣「まあ話を聞いてくれ」

沙衣「どっち道盛本くんにはもう飲ませてしまったんだから今更どうしようもないだろう」

沙衣「それに特定の相手って言っただろう?それに好きになるのには同性であるのに加えてもう一つ条件があるんだ」

沙衣「無差別に、無秩序に興奮させるような薬ではない」

蓮「……どういう条件よ」

沙衣「まあ、単純なことさ」

沙衣「どこかの国に、意中の相手に自分の脇の汗が染みこんだリンゴを食べさせる……というような昔話があるそうだ」

蓮「何それキモい」

沙衣「同性相手にフェロモンというのも変な話だけど……そういうことなんだ」

沙衣「つまり、そういうことさ」

蓮「……まさか」


沙衣「似たようなものだね」

沙衣「この間、キミ、宿題をやると言ってここで居眠りしていただろう?」

沙衣「涎垂らして」

蓮「…………」

沙衣「もらった」

蓮「ひ、人の涎を採集してんじゃないわよ!」

沙衣「女子高生の唾液となると何かと使えるかと思ってね」

蓮「発想がゲスい!」

沙衣「というのは冗談で、こうして実際使える時が来たじゃないか」

沙衣「体液をあれ程集めるのは任意でない限り何気に難しいんだよ」

蓮「どんだけ涎流したのよ私は……」


沙衣「で、キミの唾液を薬に混ぜて、できた試作品を盛本くんに飲んでもらったのさ」

沙衣「だから盛本くんはキミのフェロモンに夢中になったという訳さ」

沙衣「まあ、その効果も一時的なものだけどね」

蓮「……え、混ぜちゃうの?」

沙衣「だからそう言ったじゃないか」

蓮「……じゃあ何?」

蓮「盛本さん……私の涎飲んだわけ?」

沙衣「遠回しに言えばそうなるね」

蓮「…………」カァァ

沙衣「紅くなる意味がよくわからないんだがね」

蓮「も、盛本さん……わ、私の涎……そ、そんな……」


沙衣「それくらいで紅くなられたら盛本くんが部室でやってたことを報告できないね」

蓮「え゙」

沙衣「キミの体臭が好きになると言っただろう?」

沙衣「そこで、こっそりとくす……もとい拝借したキミのハンカチ」スッ

蓮「ああ!落としたのかと思ってたら!」

沙衣「キミが更衣室に忘れていったんだよ」ヒラヒラ

蓮「くすねたって言いかけたくせに!」

蓮「っていうか返せ!」バッ

沙衣「まぁまぁ」

沙衣「で、そのハンカチに盛本くんは……」

蓮「や、やめろー!」

沙衣「マタタビを与えた猫を思い出したね」


沙衣「で、どうだい?飲んでくれるかい?薬と盛本くんの唾液」

沙衣「お互いに薬の効果を受けたらどうなるのか知りたくてね」

蓮「飲むわけないでしょ!」

沙衣「盛本くんはキミの唾液が入っていることを理解して飲んでくれたのに」

蓮「そ、そうじゃなくて!そんな怪しい薬飲めるかって言ってんの!」

沙衣「盛本くんの唾液を飲むこと自体には」

蓮「そ、そこで否定したら盛本さんに悪いじゃない……って何言わせんのよ!」

沙衣「別にいいじゃないか。効果も一時的だし、キミ達仲良いじゃないか」

蓮「な、仲が良くったって……!そ、そんな同性だし……」

蓮「そ、そりゃ、盛本さんに甘えられるのも悪くないけど……」

蓮「だからってそんなの!」

沙衣「…………」

沙衣「やれやれ、しょうがないね」


沙衣「わかったよ。とりあえず、相思相愛の実験は保留としよう」

蓮「保留どころかその薬を封印しなさいよ……!」

沙衣「こっちも研究費がかかっているんでね」

沙衣「……しかし残念だな」

沙衣「唾液が入ってるとなると抵抗感があると思ってね」

沙衣「折角味にも気を遣ったっていうのに」

蓮「…………」

蓮「……ん?」

蓮「ちょ、ちょっと、待って」

沙衣「ん?」

蓮「味って……」 

蓮「イチゴ味……って言ったわよね?その薬」



沙衣「ああ、イチゴ味だよ」

沙衣「正確にはイチゴシロップの味。果汁ゼロパー」

沙衣「着色料と香料については何でもよかったんだ。メロンでもブルーハワイでも……」

沙衣「味の好みが?」

蓮「そ、そうじゃなくて……」

蓮「えと……」

沙衣「?」

蓮「……や、やっぱ、な、何でもない」

沙衣「そう?」

蓮(イチゴ味の……惚れ薬)

蓮(そして……あの紅茶……)

蓮(も、盛本さん……紅茶にイチゴシロップ入れたって……)

蓮(ってことは……!ま、まさか……!?)


ガチャ

雨柚「あー!部長!」

蓮「!」ビクッ

沙衣「盛本くん、布巾は見つかったかい?」

雨柚「あ、はい」

雨柚「あ、長倉さん、そのハンカチ……」

蓮「え?」

雨柚「…………」ポッ

蓮「!?」

雨柚「……ぶ、部長!」

沙衣「うん」

雨柚「長倉さんと何を話してたんですかっ」

雨柚「長倉さんを独り占めしないでください!」ギュッ

蓮「!!」


蓮(わ、わ……)

蓮(も、盛本さんに腕を……)

蓮(柔らかい……温かい……!)

蓮(……盛本さん……媚薬飲んだ……のよね……)

蓮(ってことは……私のこと……)

蓮(しかも、私のリボンを……私のにおいを……!)

蓮(そ、それで、私……)

蓮(も、盛本さんに……紅茶に……その薬盛られて……!)

蓮(私……盛本さんのことが好きになっちゃうの……!?)

蓮(あ、ああ……!も、盛本さん……!)

蓮(な、何だか……何だか、い、いいにおいが……する、ような……!?)


沙衣「別に独占するつもりなんてなかったんだけどね」

雨柚「むー」スリスリ

沙衣「猫みたいだね」

雨柚「にゃあ」

蓮(……盛本さん)

蓮(私の涎入ってるって知ってて飲んだんだよね……ってことは……)

蓮(……って、何を考えているのよ!私は!)

蓮(そんなの、沙衣が無理矢理飲ませたか、飲ませた後か最中に言ったに違いないんだから!)

沙衣「それよりも拭こうか。テーブルと床」

雨柚「あ、はい」

蓮「……あっ」

蓮「盛本さん、私が……」

蓮「……!」


蓮(っていうか、薬を盛ったってことは……)

蓮(この紅茶……盛本さんの……唾とかが……!?)

蓮「う……」

雨柚「長倉さん?」

蓮「な、何でもないわ!か、貸して」

雨柚「いえー、私が拭きますよー」

雨柚「私が変なこと言って吹き出させちゃったのがいけないんで……」

蓮「そんなことないわっ!いいから、いいから貸してっ」

雨柚「あっ」

沙衣「…………」

沙衣「何でもいいけど、盛本くん」

雨柚「はい」


沙衣「悪いけど、例の薬の実験は中止にするよ」

雨柚「えーっ、何でですか?」

沙衣「うん、彼女が薬飲みたくないらしくてね」

蓮「…………」

雨柚「そう……なんですか」

沙衣「モノがモノだから強制もできないしね」

雨柚「そ、そうですよね」

雨柚「ちょっと……残念ですけど……」

蓮「!」

蓮(も、盛本さん……なんか残念そうな顔……)

蓮(そうか……盛本さん、薬で私が好きになってるから……)

蓮(も、もし薬でお互いが好きになってたら……ど、どうなっちゃってたの!?)


蓮(でも……何でだろう)

蓮(そんなの……そんなの許されないのに……)

蓮(……ちょっと、心痛い)

雨柚「じゃあ私どうしたらいいですか?」

沙衣「今は特に付き合ってもらいたい実験もないし……オフだね」

雨柚「はーい」

蓮「…………」

蓮「……拭き終わったわ」

沙衣「ああ、うん」

雨柚「……?」

雨柚「あの……長倉さん?」


蓮「な、何?」

雨柚「何だか……顔が紅いですよ?」

蓮「え!?」

沙衣「おや、本当だ」

雨柚「え!」

蓮「いや!そ、そんな……!」

雨柚「長倉さん!」ピトッ

蓮「ふぁ!?」

雨柚「うーん」

蓮(おでことおでこをくっつけるアレ……!)

蓮(も、盛本さんの顔が近い……!)


蓮(あ……や、やば……!)

蓮(薬が……効いてきたかも)

蓮(か、かわいい……盛本さん……)

蓮(それに、甘いにおいがする……ような……)

蓮(目が、唇が……きれいね……)

蓮(どうしよ……ど、ドキドキしてきた……!)

雨柚「!」

雨柚「大変です!とっても熱いです!」

蓮「……へ!?」

沙衣「おや、それは大変だね」

沙衣「体調が悪いのに付き合わせてしまったかな」


蓮「あ、いや……その……」

雨柚「具合が悪いなら保健室に……!」

蓮「だ、大丈夫だから!」

蓮「ちょ、ちょっと……その……えっと」

蓮「熱い紅茶を拭くのに……ちょっと、う、動いたから……暑くなった?っていうか……」

雨柚「?」

蓮「と、とにかく大丈夫だから!暑いだけ!そう、ちょっと暑いだけだから!」

雨柚「そ、それならいいんですけど……」

沙衣「なら、窓でも開けようか」

沙衣「あ、でも虫が入ってきたら……うーん」

雨柚「今日は風が涼しいですよ」ガラッ

沙衣「ああっ」


沙衣「……それじゃ、私は研究に戻るが……キミ達はどうする?」

沙衣「見てもらいたい発明も今のところないし、ハッキリ言って暇だよ?」

雨柚「じゃあ私、少し時間を潰してからお先に失礼します」

蓮「…………」

蓮(……帰りたい)

蓮(薬の効果は一時的)

蓮(だから……帰りたい!)

雨柚「長倉さんは?」

蓮「……私も、盛本さんと一緒で」

蓮(なのに……何だか、盛本さんの側にいたい気分……)

蓮(うぅ……このジレンマ!)

雨柚「わーい」



沙衣「うん」

沙衣「さて、と……」

ガチャ

蓮「…………」

雨柚「…………」

雨柚「…………」チラッ

蓮「…………」チラッ

雨柚「…………」ニコッ

蓮「!」

蓮「…………」ソワソワ

雨柚「?」


蓮(き、気まずい……)

蓮(どうしよう……!どうしよう……!)

蓮(何で私、盛本さんに緊張しちゃってんのよ……!)

雨柚「……とりあえず、座りましょうか?」

蓮「そ、そうね……」

雨柚「♪」

蓮「え?」

蓮「……隣?」

雨柚「隣がいいです」

蓮「いつも、向かいなのに」

雨柚「……ダメですか?」

蓮「べ、別に……いいけど……」


蓮「……近くない?」

雨柚「近くがいいです」

蓮「いや、そうじゃなくて……」

蓮(変な薬のせいで、盛本さんが……)

蓮(小動物系!)

雨柚「えへへ」

蓮(でも、そんな盛本さんでも、私に……)

蓮(私に、紅茶に、薬を盛った……!)

雨柚「?」

蓮(小悪魔系!)

蓮「…………」


雨柚「そうだ、長倉さん」ゴソゴソ

蓮「?」

雨柚「じゃんっ」

蓮「お菓子?」

雨柚「新しい味ですー」

蓮「盛本さんって本当にお菓子好きね」

雨柚「おいしいですからー」

蓮「……え、何その味」

雨柚「部長はこの味あまり好きじゃないみたいでした」

蓮「まあ……結構なイロモノな……」


雨柚「おいしいのに……」

蓮「おいしいんだ」

蓮「味が全然想像できないわ……」

雨柚「長倉さんもどうぞ」

蓮「え、ええ……ありが……」

雨柚「どうぞ」

蓮「……うん?」

雨柚「はいっ、長倉さん♪」

蓮「……へ?」

雨柚「あーん」

蓮「!?」


雨柚「あーん」

蓮「え、ちょ……!」

蓮「べ、別にそんなことしなくても、普通に……」

雨柚「別にいいじゃないですかー、あーん」

蓮「は、恥ずかしい……」

雨柚「あーんっ」

蓮「うぐ……あ、あー……」

雨柚「えへへ」

蓮「……へ、変な味ね」

雨柚「長倉さんまでそう言うんですか……」ムスー

蓮「!」


蓮(お菓子を差し出す盛本さんの笑顔……)

蓮(そして、頬を膨らます盛本さん……)

蓮(かわいすぎでしょ!)

蓮(薬のせいで……変にドキドキしちゃうし……)

蓮(そのせいで味も全くわかんないし……)

雨柚「でも、食べ慣れたら気に入るかもですね」

雨柚「もう一本」

雨柚「あーん」

蓮「!?」


蓮(た、ただでさえ今の一本でかなりのダメージだったのに……)

蓮(これが……何本も続くようなら……私……!)

蓮(ぐ、ぐぬぬ……!)

蓮(……もう!)

蓮(どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないのよ!)

蓮(何もかもあの変な薬のせいよ!)

蓮(あの薬のせいで、私は、盛本さんが……)

蓮(まぁ……元々盛本さんはかわいいし、いい子だけど……)

蓮(って……そう思うのも薬のせいなんじゃないかって、疑ってちゃうわ……)

蓮(そんなの……イヤ)


蓮(……何とかしなくちゃ)

蓮「ちょっと、いい?盛本さん」

雨柚「?」

蓮「沙衣に、ちょっと話が……」

雨柚「部長に?」

蓮「す、すぐに終わるからね」

雨柚「はーい」

蓮「…………」

蓮(待ってて……盛本さん)

蓮(私に理性が残っている内に……)

蓮(薬による呪縛を解いて見せるわ!)


科学室


バタン!

蓮「沙衣!」

沙衣「ん?どうかしたかい?」

蓮「あんたに聞きたいことがある!」

沙衣「私に?勉強のことかい?」

蓮「ち、違うわよ!」

蓮「あの薬のこと!」

沙衣「ああ……惚れ薬」

沙衣「それが何か?」

沙衣「あ、やっぱり飲むかい?」

蓮「飲まないわよ!」


蓮「あの薬をなんとかしなさい!」

沙衣「何とかって……」

沙衣「今更断れないよ」

蓮「そうじゃなくて!」

蓮「解毒剤はないの!?」

沙衣「解毒剤?」

沙衣「まあ、そういう薬だからね」

沙衣「事故を防止するために効果を打ち消す薬も用意してある」

蓮「本当!?」

沙衣「そっちは健康に気を使ったケール味」

蓮「ケール味?」


沙衣「要するに青汁の味だね」

蓮「げ……飲みたくない……何でそんな味に……」

沙衣「何となく」

沙衣「で、それが?」

蓮「それを寄越しなさい」

沙衣「ん?何で?」

蓮「何でって……!」

沙衣「キミは飲んでないし、盛本くんも……」

蓮「飲んじゃったからよ!」

沙衣「え?」

蓮「薬飲んじゃったのよ!」


沙衣「……ごめん、言っている意味がよくわからないのだけれど」

蓮「私、盛本さんを見ると……胸がどきどきしちゃって……」

沙衣「はい?」

蓮「盛本さんに、紅茶に混ぜて盛られちゃったのよ」

沙衣「……薬を?キミに?」

蓮「だから効果を消して!」

沙衣「それはおかしいな……盛本くんが私の薬をくすねるなんて……」

沙衣「しかも、その効果は……」

ガチャ

雨柚「部長!」

蓮「……も、盛本さん!」



雨柚「長倉さぁん!」

ギュッ

蓮「ひい!」

雨柚「すぐ終わるって言ったのにー!」

沙衣「…………」

雨柚「寂しいと死んじゃうんですー」

蓮「だからそれはウサギ……は、離して盛本さんっ」

沙衣「本当に仲良しだね」

沙衣「で……盛本くん」

雨柚「はい?」

沙衣「とりあえず、片方の証言だけで物事を進めるのはよくないからね」

雨柚「?」

蓮「……ねぇ、盛本さん」

雨柚「はいっ」


蓮「私ね……アナタのこと、とってもいい子だと思ってる」

蓮「健気だし……明るいし……愛らしいし……」

雨柚「てへぇ」

蓮「ちょっと……いや、ぶっちゃけ結構抜けてるところはあるけど……」

蓮「素敵な人だって、私思ってるわ」

雨柚「……長倉さん?」

蓮「でも……だからこそ、信じたくないし、思いたくないの」

蓮「だけど……実際に、こうして、私は……」

蓮「…………」

蓮「……紅茶に、薬入れたよね」

雨柚「……へ?」

蓮「私に……あの薬、そして、盛本さんの……つ、唾……」

蓮「入れたでしょ!?」


雨柚「……えええ!?」

雨柚「く、薬ってあの薬ですか!?」

沙衣「彼女はそう言ってるんだけど」

沙衣「盛本くん、冷蔵庫の野菜室のフラスコに触った?」

蓮「そんなとこにしまってんの?」

沙衣「あれ?そこだったっけ……ちょっと確認してくるよ」

雨柚「く、薬なんて触ってませんし入れてませんよ!」

雨柚「ど、どうしたんですかいきなり……」

蓮「いいえ、入れたわ!」

蓮「だって……あの薬は、イチゴ味だった……」

蓮「それで、紅茶……」

雨柚「…………」

雨柚「……あ!」


雨柚「い、いや!そ、それは……」

雨柚「う、疑わしいことしちゃいましたけど……違います!」

雨柚「紅茶にイチゴジャムの話をしてたら、部長が薬を作るのに余ったからって、くれたんです!」

雨柚「それで、紅茶にそのシロップを入れたんです!」

雨柚「と、とにかく!私は薬なんて入れてません!」

蓮「そんなはずないわ!」

雨柚「ほんとです!信じてください!」

蓮「盛本さん、薬のせいで私のことが好きで……」

蓮「それで、だから私にその薬を……」

雨柚「う……た、確かに私、長倉さんのこと……」

雨柚「で、でもっ、そんな卑怯なことしません!」

蓮(盛本さんにまで卑怯呼ばわりじゃないの。あの薬)


蓮「入れた!」

雨柚「入れてません!」

雨柚「証拠はあるんですかっ!」

蓮「だって!」

蓮「だって、こんなに……」

蓮「こんなに、アナタを思うとドキドキするんだもの!」

雨柚「ええ!?」

蓮「アナタのことが……かわいくて、かわいくて……」

蓮「それに、いいにおいに感じるし……」

蓮「そんなの、おかしいわ!」

蓮「いきなりアナタのことが……す、好きになるなんて!」

雨柚「!」

蓮「好きって思われてるって、知っている上で……あんな、甘えられたら……」


雨柚「そ、そんな……な、長倉さん……」

雨柚「わ、私ほんとに入れてませんよ!だって、私間違えたら怖いから、そういう薬触りませんもん!」

蓮「……沙衣に入れろって言われたんじゃないの?」

雨柚「だっ、だからっ!入れてないですって!」

雨柚「た、確かに、私……長倉さんのこと好きです!大好きです!」

蓮「っ」

雨柚「私のこと気遣ってくれてやさしいですし……」

雨柚「いいにおいだし、よく構ってくれますし……とってもかわいいと思います」

雨柚「部長の薬で、相思相愛になれるんだって思うと、本当、ドキドキして楽しみで、仕方なかったくらいです」

雨柚「薬のせいでそう思ってるんだって、わかっていても……とっても、とっても嬉しくて、嬉しくて……」

雨柚「実際にはそれはできませんでしたけど……だからって、そんな卑怯なやり方でそんなことしません!」

蓮「で、でも……!」


蓮「盛本さん!」ガバッ

雨柚「きゃっ!」

ギュッ

雨柚「な、長倉さ……!きゅ、きゅ、急に……!」

蓮「……わかるでしょ……!私、こんなにドキドキしてるのよ……」

蓮「アナタを抱きしめて……こんなに嬉しい気持ちに、なるなんておかしいわよ」

蓮「同じような事を……アナタは私に薬を盛って、私をイジめたのよ?」

蓮「すぅ……はぁ……」

蓮「アナタのにおいが……とても……癖になりそう……」

蓮「おかしいわよ……そんな絶対に……」

蓮「何が……何が百合になる薬よ……!」

雨柚「…………」

雨柚「……長倉さん」


雨柚「長倉さんは……」

雨柚「私のこと……嫌いですか?」

蓮「え……?」

雨柚「……私のことが好きなの、そんなにイヤなんですよね」

蓮「そ……そうとまでは……」

雨柚「こんなに……こんなに長倉さんのことが好きなのに!」

雨柚「長倉さんが好きで好きしょうがないのに!」

蓮「そ、それは薬のせいで……」

雨柚「だからって……ぐすっ、どうしてそこまで否定するんですか……!」

雨柚「えぐっ、うぅ……そ、そんなに拒絶することないじゃないですか……!」

蓮「も、盛本さん……」

雨柚「わっ、私、薬なんて、入れて、ないのに……」

雨柚「意味が……意味がわかりませんよ……ひぐっ」

蓮「…………」


雨柚「もう長倉さんなんて知りませんっ!」

蓮「も、盛本さん!」

雨柚「帰ります!絶交です!」

蓮「ま、待って!」ガシッ

蓮「……こ、ごめん!ごめんなさい……!」

蓮「そ、そんな、つもりはなかったの……!でも……」

蓮「自分でも……自分でもどうしたらいいのかわかんなくて……」

雨柚「…………」

蓮「…………」

蓮「……好き」

雨柚「…………」

蓮「ごめんなさい……好きなの、盛本さんのこと……」

蓮「好きすぎて……どうしたらいいのかわからないの」


蓮「でも……薬のせいなの……」

蓮「同性愛なんて……そんなの絶対おかしいもの……」

雨柚「…………」

蓮「…………」

雨柚「……キス」

蓮「……へ?」

雨柚「……キスさせてください」

蓮「……ええ!?」

雨柚「させてくれたら、許します」

蓮「そ、そんなの……!」

蓮「そんなのダメよ!」


蓮「そんなことしたら……私達……!」

雨柚「イヤです。私はしたいです」

蓮「だ、ダメ……ダメだって……」

雨柚「長倉さん……」

雨柚「じゃあ……こうしませんか?」

蓮「へ?」

雨柚「私……ゆっくり顔に近づけます」

雨柚「それで……長倉さん」

雨柚「どうしてもイヤなら……避けてください」

蓮「え、ちょ、そ、それって……」

雨柚「私は、近づけるだけですから」

蓮「も、盛本さん……」

雨柚「……行きますよ」

蓮「ちょ、ま、待っ――」


雨柚「…………」

蓮「あ……ああ……あ……!」

蓮(も、盛本さんが……盛本さんの顔が……)

蓮(目を閉じて、ゆっくりと……)

蓮(……か、かわいい)

蓮(かわいすぎる……)

蓮(唇も……ぷにってしてそうで……)

蓮(紅いほっぺが……柔らかそうで……)

蓮(それでいて……潤んだ目元が……ほっぺを伝ってる涙が……)

蓮(……ど、どうしよ)

蓮(さ、避けなくちゃ……じゃ、じゃないと、私の、私のファーストキスが……)



蓮「ん……!」

雨柚「んむ……」


蓮「んぅ……」

雨柚「…………」

蓮「…………」

雨柚「……ぷは」

蓮「はぁ、はぁ……」

蓮「…………」

雨柚「…………」

雨柚「……しちゃい、ましたね」

蓮「……うん」


蓮「……初めて、だったのに」

蓮「ひどいわ……そんな、無理矢理……」

雨柚「長倉さん……避けなかったじゃないですか」

蓮「で、でも……!」

雨柚「……媚薬のせいです」

蓮「え?」

雨柚「私、覚えはないけど……長倉さんに盛っちゃったんだと思います」

雨柚「私、そんなことしちゃうイケナイ子になっちゃいました」

蓮「…………」

蓮(盛本さんと……)

蓮(……キス、しちゃった)

蓮(すごく、柔らかくて、温かくて……)

雨柚「……長倉さんも、イケナイ子ですよ」


雨柚「私をイジめたのが悪いんですもん」

雨柚「好きって知っていながら私に抱きついてきたり……」

雨柚「抱きしめても怒らないし、頭撫でてくれたり……」

雨柚「乙女心を弄んだ罰です……自業自得です」

蓮「…………」

雨柚「…………」

蓮「…………そう、ね」

雨柚「…………」

蓮「……薬のせいだもんね」

蓮「仕方……ないわね」

雨柚「……はい、仕方ありません」


蓮「……ねぇ、盛本さん」

雨柚「……はい」

蓮「その……」

蓮「もう、一回……」

蓮「……する?」

雨柚「……はい、したいです」

蓮「うん……」

沙衣「…………」

雨柚「…………」

蓮「…………」

雨柚「!?」

蓮「!?」


沙衣「……ん?」

沙衣「ああ、別に続けてもらっても構わないけど」

雨柚「ぶ、ぶ、部長……!」

蓮「な、なんで……何でいんのよ!」

沙衣「何でって……例の薬を確認して……」

雨柚「い、いつから……」

雨柚「いつからいたんですか!?」

沙衣「ん?んー、キミが盛本くんに冤罪かましたところかな」

蓮「え、冤罪?」

沙衣「ああ」

沙衣「一切減ってなかったじゃないか」

蓮「…………え?」


沙衣「間違いは誰にでもあるから責めはしないけど……迷惑な話だよ」

蓮「じゃ、じゃあ……も、もしかして……!」

蓮「あの紅茶……ほんとに……!?」

雨柚「……そう言いましたもん」

蓮「じゃ、じゃあ!じゃあ……私は……!?」

蓮「あ、あぅ……ま、まさか……私……素だったんて……」ガクッ

雨柚「うふふふ、かわいかったですよ。長倉さん♪」

蓮「も、盛本さん……」

沙衣「あ、そうだ。それと盛本くん」

雨柚「はい?」

沙衣「キミに対する薬の効果ならとっくに切れてると思うよ」

雨柚「…………え?」

蓮「……なんですって?」


蓮「…………」ジトー

雨柚「うっ……!?」

雨柚「部長!そ、そんなはずありませんよ!」

雨柚「だ、だって!こ、こ、こんなに長倉さんがかわいいんですよ!」

雨柚「あんなにいいにおいするし、ドキドキするし……」

雨柚「薬!薬のせいです!」

沙衣「効果は一時的なものって、説明したよね?」

雨柚「まだ続いてました!絶対に続いてましたって!」

沙衣「それはないよ。キミには薄めて飲ませたからせいぜいもって三十分さ」

沙衣「プラシーボ効果というものかな?」

雨柚「…………」

蓮「…………」

雨柚「」ポフンッ

蓮「…………」カァァ

沙衣「おお真っ赤だ」


沙衣「しかしキミ達、見せつけてくれたもんだね。ハハハ」

沙衣「この様子じゃ、どっちにしてもキミ達で惚れ薬の実験をしても意味はないようだ」

沙衣「っていうか、何かい?キミ達。接吻し終わるまでずっと私の存在に気付かなかったのかい?」

沙衣「それはそれで疎外感が……」

蓮「…………」ワナワナ

雨柚「…………」プルプル

雨柚「ぶ……」

雨柚「部長のえっち!」

沙衣「え!?」

蓮「で、出てけー!」

ポーイ

バタン!


沙衣「……理不尽だ」


蓮「……まったく」

雨柚「……もうっ」

蓮「……さ、沙衣も変なこというわよね」

蓮「ふ、二人とも、媚薬飲んじゃったのにね……?」

雨柚「……そ、そうですね。薬のせいだから、こうなっちゃってるんですもん。仕方ありませんよね」

蓮「…………」

蓮「……ねぇ、盛本さん」

雨柚「はい」

蓮「私達さ……その」

蓮「お互い……薬切れたら……どうなっちゃうのかしら」

雨柚「…………」

雨柚「……そうですね」

雨柚「……今の内に既成事実作っちゃいますか?」

蓮「何の既成事実よ……」


雨柚「あはは、冗談ですよ」

蓮「もう……」

蓮「……切れてから考えましょう」

雨柚「……はい」

蓮「…………」

蓮「じゃあ……盛本さん」

蓮「……しよっか」

雨柚「……はい」

雨柚「今度は、長倉さんからしてください」

蓮「うん……いいわよ」

雨柚「えへ、嬉しい……」

蓮「それじゃ……盛本さん」

雨柚「…………」


雨柚「……雨柚」

蓮「え?」

雨柚「雨柚って……呼んでください」

蓮「……ええ」

蓮「じゃあ……いくわね」

雨柚「はい……」

蓮「雨柚……」

雨柚「……蓮さん」

蓮「……好きよ」

雨柚「私も……」

雨柚「大好きです」


科学準備室


沙衣「…………」

沙衣「…………」

沙衣「…………」

沙衣「…………」

沙衣「…………」

沙衣「…………」



沙衣「……美しい」


――沙衣が何かに目覚めました。

これで終わり。三人の百合物に期待してます

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