須賀京太郎「できたぜ優希! 押すたびに俺の存在感が希薄になっていくスイッチだ!」 (217)

優希「おおっ! サンキューだじぇ京太郎! これで念願のタコス食べ放題にまた一歩近づいたじぇー」

京太郎「ははっ、そんなに喜んでくれたなら、こっちも作った甲斐があったってもんだ」

京太郎「おっと、それよりいいのか? もうこんな時間だぜ?」

優希「あっ、こりゃまずいじぇ! 早く部室に行かないと! じゃあこのスイッチ、大事に使わせて貰うからなー」

京太郎「おう、くれぐれも悪用するんじゃねえぞー」

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<清澄高校 麻雀部>

和「ゆーき……大丈夫なのでしょうか」

咲「優希ちゃん、どうして何の連絡も入れずに学校を休んだりなんか……」

和「家にもいないらしいですし……親御さんもとても心配していらしてるそうです」

京太郎「あいつ、一体どこをほっつき歩いてんだか……」

まこ「こがぁなこと今まで一度もなかったけえ、心配じゃのお」

ガラガラッ

一同「!」

久「あら、皆居たのね……いろんな人から話を聞いてみたけど、何の収穫も無し」

和「部長の方もやっぱり駄目でしたか……さっきから何度も携帯にメールしたりかけたりしているのですが、こちらも反応はなしです……」

まこ「携帯は持ち歩いていないと見て間違いないのう」

久「まいっちゃうわね……あの子がいないと、なんだかこの部室もさみしく見えるわ」

久「……何か、あったのかしら」

京太郎「あの元気ハツラツタコス娘に何かあったなんて思えねえけど……でも、学校にも来ず家にもいないってなると、もう誘拐とかしか考え……」

和「っ! そんな、誘拐だなんて縁起でもないこと言わないで下さい! もし本当にそんな事が起こってしまったらどうするんですかっ!」

京太郎「……っ、悪い」

まこ「今わしらにできるのは、優希の無事を祈ることくらいかのお」

和「ああああ……ゆーき、あなたがいなくなったら、私はどうすればいいのですか……」

久「和……」

咲「和ちゃん……」

京太郎「和……」

京太郎「……やっぱり、じっと待ってるだなんて悠長なことしてられねえ! 部長! 俺、あいつが行きそうな所全部探し回ってきます。このままじゃ夜も眠れそうにありませんから」

久「す、須賀君?」

和「え? ま、待ってください須賀君! そ、それなら……私も……私も行きます!」

咲「ふぇ? あっ、わ、私も! 私も二人と一緒に行くよ! 友達として放ってなんておけないもん!」

京太郎「そうだな、人手は多ければ多いほどいい。ただなあ、方向音痴の咲じゃあ、助けになるかどうか……」

咲「もう! こんな時にまでからかわないでよ、京ちゃん!」

京太郎「ははっ、悪い悪い。でも実際、お前が迷子になりやすいのは確かだろ?」

咲「うっ、それは……」

優希「……? 皆いったいどうしたんだじぇ? そんなに目をぱちくりさせて……」

和「ど、どうしたもこうもありませんよ! ゆ、ゆーき! 今まで一体どこに行っていたんですか!」

優希「え? どこって……普通に学校だけど」

和「そんな筈ありません! あなたは今日、学校を無断で休んだじゃないですか!」

優希「のどちゃん、なんかちょっと怖いじぇ……。それに、私が学校を無断で休んだってどういうことだ?」

京太郎「お、お前本気で言ってるのか?」

優希「う、うん。嘘は言っていないじぇ。普通に家を出て、学校で授業を受けて、ここに来たじょ?」

和「そんなの、信じられるわけ……!」

久「でも、冗談を言っているようには見えないわね……」

咲「はい……でも、優希ちゃんが今日学校を休んだのは間違いないことですし……」

久「……そうね。それは私たちどころか、この学校の全員が証明できることだわ」

まこ「全員はちといいすぎじゃあないかの?」

和「あああああ、もうっ! こんなに心配をかけさせて……ゆーきはばかですっ! ばかっ!」ダキッ

優希「うおっ、の、のどちゃん!? ほんとにどうしちゃったんだじぇ!?」

和「ばかっ……し、んぱいしたんですよ……」ギュゥゥゥゥ

優希「の、のど、ちゃん。しまっ、しまってる、しまってる……じぇ」

和「あっ! ご、ごめんなさい!」

優希「あ、危うくのどちゃんのおっぱいで圧死するところだったじぇ……」

京太郎「はははっ。まあ、何があったかは分からねえけど、ともあれお前が無事でよかったよ、優希」ポンポンッ

優希「なあっ!? き、京太郎の癖にご主人様の頭を気安く撫でるんじゃないじぇ!」

京太郎「俺はペットかなにかか」

優希「そうだが?」

京太郎「おいおい……」

アハハハハハ

京太郎「ははは……あ、んじゃあ、俺は先生達にこのことを報告してきますね」

久「ありがとう、お願いするわ」

ガラガラッ

和「あああああ、もうっ! こんなに心配をかけさせて……ゆーきはばかですっ! ばかっ!」ダキッ

優希「うおっ、の、のどちゃん!? ほんとにどうしちゃったんだじぇ!?」

和「ばかっ……し、んぱいしたんですよ……」ギュゥゥゥゥ

優希「の、のど、ちゃん。しまっ、しまってる、しまってる……じぇ」

和「あっ! ご、ごめんなさい!」

優希「あ、危うくのどちゃんのおっぱいで圧死するところだったじぇ……」

京太郎「はははっ。まあ、何があったかは分からねえけど、ともあれお前が無事でよかったよ、優希」ポンポンッ

優希「なあっ!? き、京太郎の癖にご主人様の頭を気安く撫でるんじゃないじぇ!」

京太郎「俺はペットかなにかか」

優希「そうだが?」

京太郎「おいおい……」

アハハハハハ

京太郎「ははは……あ、んじゃあ、俺は先生達にこのことを報告してきますね」

久「ありがとう、お願いするわ」

ガラガラッ

優希「うーん……なんかしっくりこないけど、私が今日学校に来なかったのは事実なんだな?」

和「そうですよ。とても心配したんですからね?」

咲「でも、一体優希ちゃんに何があったんだろう。いわゆる記憶喪失ってやつなのかな……? 私が読むような小説には結構、優希ちゃんみたいな体験をした登場人物が出てきたりするんだけど、その原因の大

半はごく短期的な記憶喪失なんだよね」

優希「小説の登場人物と私を一緒にしないでほしいじぇ、咲ちゃん……」

咲「あっ。ご、ごめんなさい」

和「でも、今日の朝から今にかけてまでの記憶が全く別のものに置き換わっているところを見ると、咲さんの言うように記憶喪失か、それに近い他の何かと考えるのが自然でしょうね」

まこ「そうじゃのお。ま、こればっかりはわしらがあれこれ考えてもしょうがない。きちんとした病院に行って診てもらった方がええ」

優希「そこまでじゃないとは思うんですけど……」

久「いいえ。優希、今日はもう帰った方がいいわ。まこの言うように病院で診てもらわないと。もしかしたら深刻な病気の前兆かも知れないし」

和「そうですよ? 練習よりも優先すべきことはあります」

優希「むー……分かったじぇー」

ガラガラッ

京太郎「戻りましたー。優希の親御さんがもう直ぐ迎えに来るそうですよ」

久「そう、よかったわ! じゃあ優希、迎えが到着するまでここで待っていなさい。私は少し先生達と話してくる」

優希「うーん……なんかしっくりこないけど、私が今日学校に来なかったのは事実なんだな?」

和「そうですよ。とても心配したんですからね?」

咲「でも、一体優希ちゃんに何があったんだろう。いわゆる記憶喪失ってやつなのかな……? 私が読むような小説には結構、優希ちゃんみたいな体験をした登場人物が出てきたりするんだけど、その原因の大

半はごく短期的な記憶喪失なんだよね」

優希「小説の登場人物と私を一緒にしないでほしいじぇ、咲ちゃん……」

咲「あっ。ご、ごめんなさい」

和「でも、今日の朝から今にかけてまでの記憶が全く別のものに置き換わっているところを見ると、咲さんの言うように記憶喪失か、それに近い他の何かと考えるのが自然でしょうね」

まこ「そうじゃのお。ま、こればっかりはわしらがあれこれ考えてもしょうがない。きちんとした病院に行って診てもらった方がええ」

優希「そこまでじゃないとは思うんですけど……」

久「いいえ。優希、今日はもう帰った方がいいわ。まこの言うように病院で診てもらわないと。もしかしたら深刻な病気の前兆かも知れないし」

和「そうですよ? 練習よりも優先すべきことはあります」

優希「むー……分かったじぇー」

ガラガラッ

京太郎「戻りましたー。優希の親御さんがもう直ぐ迎えに来るそうですよ」

久「そう、よかったわ! じゃあ優希、迎えが到着するまでここで待っていなさい。私は少し先生達と話してくる」

優希「はーいだじぇ」

ガラガラッ

優希(……ん? 何か忘れてるような……)

優希「……あ、そうだじぇ!」

ガサゴソ

優希「あった! おい、きょーたろー! こっちにこい!」

京太郎「ん……? なんだなんだ、その金色のスイッチは」

優希「おう、聞いて驚くがいいじぇ京太郎! これはな! これは……」

京太郎「ど、どうしたんだ?」

和「ゆーき?」

優希「これは……これは……」

優希(……)

優希「……だじぇ」ポチッ

京太郎「うぉぉっ!?」シュウウ

咲「え? あれ? 京ちゃん? なんか、今薄くなったような……」

京太郎「えっなっ? えっ?」

優希「……だじぇ、だじぇ」ポチッポチッ

京太郎「うおおおおおおお!?」シュウウウウ

咲「ま、また、また、今薄くなった! 京ちゃんが、う、薄く!」

和「ゆーき! あなたいったい何をしたんですか!」

まこ「こ、これはいったい……!?」

優希「だじぇ、だじぇ、だじぇ! だじぇ! だじぇ!! だじぇ!!!」ポチポチポチポチポチッ

京太郎「うお、うわああああああああ!」シュウウウウウウウウウ

咲「京ちゃんが、京ちゃんの色が見る見るうちに薄くなっていくよお!」グスグス

和「やめなさい、ゆーき!!」ガシッ

優希「だじぇだじぇだじぇだじぇだじぇだじぇ!!!」ポチポチポチポチポチポチ

和「なっ、なんて力……!?」

京太郎「うおあ、あおあうおあああ!?」シュウウウウウウウウウ!

咲「あ、あうあうあう」オロオロ

まこ「わ、わしはわかめじゃったのか……!?」タジタジ

優希「だじぇだじぇだじぇダジェダジェ、ダジェエエエエエエエエエエエエ!!!」ポチポチポチポチポチッッッ!!!

京太郎「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」シュウウウウウウウウウ!

カッ!

京太郎「おおおおおおお、おお、お?」

咲「あれ……?」

和「……?」

まこ「おろ?」

優希「……」

京太郎「なんとも、ない? いったい何だったんだ……おい優希! これはどういう――」

咲「ね、ねえ、和ちゃん。私たち、今まで何をしてたんだっけ?」

和「さ、咲さんも覚えてないですか? 実は、私も分からないんです。部長が出て行ったのを見送ってからの……記憶が」

まこ「わしもじゃ。何かとてつもない事実に気付かされた気がしたんじゃが……思い出せん」

京太郎「え? え? お前ら何言ってんだよ? 優希が変なスイッチ押しまくって、それで俺がおかしくなって……」

優希「……なあ、皆。この部に、男子部員っていたっけか?」

和「ゆーき、いきなりどうしたんですか? そんなの――」





和「居ないに、決まってるじゃないですか」






京太郎「……え?」

優希「……」ニヤッ

京太郎「お、おい、和? ははは、流石にちょっと冗談がきついぜ。……なあ? 冗談なんだろ?」

咲「そ、そうだよ! どうしたの? いきなりそんなこと言うなんて」

京太郎「だ、だよな咲! ったく、まさか和がこんな冗談を――」

咲「だって……私が入部したときからずっと、この部には男子部員なんていないのに」

京太郎「……!」

まこ「ほうじゃのう。そもそもこの部に男子が入部したことはない」

まこ「優希、やはり今日のおんしはどこかおかしいぞ? 大丈夫とは言うが、その調子じゃあ信用することはできんの」

和「そうですよ。今日は早く帰ってゆっくり休むことに専念した方がいいです」

和「……もっとも、自分の身を心配するべきというのは私たちにも言えることですが」

京太郎「み、皆……本気なのか? 本気で俺のことが見えてないのか? 本気で俺の事を忘れちまったのか?」

咲「うん……なんだかすごい疲れちゃったなあ。優希ちゃんが記憶喪失したと思ったら、今度は私たちなんだもん」

和「ですね。もしかしたら、大会前ということで皆気をやってしまっているのかもしれません」

和「私はあまり緊張していないつもりでしたが……やはり潜在的にはいろいろと疲れを感じてしまっているのでしょうね」

京太郎「あ、あああ……誰も、聞いてくれねえ……」

京太郎(こんなに声を大きくして言ってるってのに、どうして……ああくそっ!)

京太郎「なあ、咲! お前が麻雀部に入るきっかけを作ってやったのは誰だ? 俺だろ?」

咲「うー。それにしても、記憶喪失なんて初めて経験したなあ」

和「それはそうでしょう。むしろ、経験したことある人の方が少ないはずです」

京太郎「聞こえてるんだろ? こんな近くで喋ってるんだ。聞こえてない筈がないよな、咲ぃ!」

咲「えへへ、だよね。なんか、少しだけだけどわくわくしちゃうなあ。小説とかでしか起こらないと思ってたような事を体験したんだから」

まこ「これ、不謹慎じゃろ。現に優希がそれのせいで危うい目にあいかけたんじゃから」

咲「あ、ご、ごめんなさい」

まこ「……ま、とはいうものの、確かにさっきまでわしらが何をしていたのかは気になるがのう」

咲「染谷先輩の方は確か、何か重要なことに気付かされた気がする……んでしたっけ? 気になりますよね」

京太郎「っっ! ンな事どうでもいいだろ、無視してんじゃねえよ!!」ガシッ

咲「ひゃううっ!?」

和「咲さん!?」

まこ「どうしたんじゃ?」

咲「い、いや、なんか今、誰かに掴まれたような感覚が――」

京太郎「なああ! お前が、こいつらと! 今、楽しく喋れてんのは誰のお蔭なんだよ! ああ!?」ユッサユッサ

咲「あ、あうあうあ、なに、何がおこってえええ!?」ユッサユサ

和「だ、大丈夫ですか!?」

京太郎「咲ぃ! 返事をしろよおおおおお!!」ユッサユッサ

咲「と、透明な誰かがああ! 私の事をゆさぶってえええ!! た、たすけ」ユッサユッサ

まこ「と、透明な誰か!? それはつまり透明人間がこん部屋にいるってことけえ!?」

和「なっ! 透明人間だなんて、そんなオカルトありえません!」

和(い、いえ……でも、咲さんの様子を見るに嘘を言っているようには……)

咲「い、いいから早く助けてよおおお」ユッサユッサ

和「ハッ! ま、待っててください、今助けます!」

和「えいっ!」ポカッ

和「このっ! 咲さんからっ! 離れなさいっ!」ポカッポカッ

京太郎「邪魔だ、和! 俺は今、咲と話してるんだよ!!」ゲシッ!

和「きゃあっ!? そ、そんな……まるで効いていないなんて!」

咲「和ちゃああん! 怖いよおおおおおおおおお」ユッサユッサ

和「くうっ……ならばもう一度!」

まこ「いや、和は下がっておいた方がええ」

和「まこさん!? でも、早く咲さんを助けないと!」

まこ「だからこそじゃ……わしがやる!」

まこ(何故だかは分からんが、気力が体中からあふれ出てきておる……これならいける!)

まこ「咲……じっとしておれ。すぐに終わる……!」

京太郎「さきいいいいいいい! なあさきいいいいいい!!!!!」ユッサユッサ

咲「じ、じっとなんてできません!!」ユッサユッサ

まこ「あ、いや、そのままでええってことじゃよ。ええっと……」

まこ(気を背中に集中させればええのか? よし……)

まこ「はああああああああああああああああっ……!」

京太郎「さきいいいいいいい! さきいいいいいい!!!!!」ユッサユッサ

咲「あうあうあうあうあうあうあう」ユッサユッサ

和「」ドキドキ

まこ「はああああああああああああああああっ……!」

京太郎「さきいいいいいいい! ああああああああ!!!!!」ユッサユッサ

咲「あうあうあうあうあうあうあう」ユッサユッサ

和「」ドキドキ

まこ「はああああああああああああああああっ……!」

京太郎「さきいいいいいいい! ああああああああ!!!!!」ユッサユッサ

咲「あうあうあうあうあうあうあう」ユッサユッサ

和「」ドキドキ

まこ「はああああああああああああああああっ……!」

京太郎「ああああああああああああああ!!!!!」ユッサユッサ

咲「あうあうあうあうあうあうあう」ユッサユッサ

和「……」

まこ「はああああああああああああああああっ……!」

京太郎「さきいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」ユッサユッサ

咲「あうあうあうあうあうあうあう」ユッサユッサ

和「ま、まだなんですか!?」

まこ(今じゃッッ!!)

まこ「くらえッッ!! 鉄! 山! 靠!」ドガァッ!

京太郎「ギョヘエッ!?」ドガッ!

ドンガラガッシャーン

まこ「ふう……悪は潰えたのお」

咲「あ、ああ。助かった、の……?」

和「咲さん! 大丈夫ですか!?」

咲「う、うん。ちょっと頭は痛いけど、特に怪我とかは無いみたい」

咲「それより染谷先輩……助けてくれてありがとうございます!」

和「私からもお礼を言います。さっきの技、すごかったですよ。まこさんが武術に通じた人だとは思いませんでした」

まこ「いや、わしも驚いておるところじゃ……武術なんて、触ったこともないはずなんじゃがの」

ガサガサッ

京太郎「いってえ……何が起きたんだ……?」

京太郎(って? あれ……俺は今まで何を……)

まこ「っ! どうやら、悪はまだ潰えていなかったようじゃな」

咲「こ、こわいよ、和ちゃん……」

和「大丈夫ですよ、咲さん。私がそばにいますから。今度は絶対に守り切って見せます」ギュッ

まこ「悪よ。わしの声は聞こえておるんじゃろう? ならば、そこを動いたりはしない方がええと忠告しておく」

京太郎「え、染谷……先輩?」

京太郎(悪って、もしかして俺のことか……?)

まこ「下手に動かれたら狙いが外れて、思わぬところに攻撃が当たってしまう。そうなれば、おんしを無駄に苦しめてしまうことになりかねんからのお」

京太郎「は? 一体何を言って――」

まこ「忠告を受け取ったくれたものと取る。それじゃあ、行かせてもらうかのお!」

まこ「出でよ、ワカメ・クリムゾン!!」

ギャアアアアアアアン

和「えっ!?」

咲「ふえっ!?」

京太郎「そんなバナナっ!?」

 まこが叫ぶと同時にまこの背後に現れたのは、メイド服を着たもう一人のまこ。
 
 ワカメのような色の髪にかかったワカメ状のウェーブ、あと色々。

 どこをとってもまことそっくりなまこは、その眼鏡の奥にある双眸が無機質な光を放ってさえいなければ、まこ本人と区別がつかないほどにまこであった。

まこ「ふむう。どうやらこれは、『スタンドもどき』というものらしいの……なぜもどきがつくのかは知らんが」

まこ「まあとにかく、このワカメ・クリムゾンが強大な力を秘めておるのは見ればわかるじゃろう? 安心せい……さっきも言うたが、じっとしておれば一瞬で終わる」

京太郎「な、嘘……だろ? やめてくださいよ、染谷先輩! 俺達仲間じゃないですかあ!」

まこ「覚悟をきめい! 行けっ、ワカメ・クリムゾ――」





優希「もう……やめるじぇ? こんな茶番」




一同「!?」

優希「さっきから聞いてれば……よくこんな下らない事でわーわーと騒げるもんだじぇ」

まこ「ど、どうしたんじゃ?」

優希「透明人間? そんなの別に珍しいもんでもないじぇ」

優希「能力覚醒? それも大して珍しいことじゃないじぇ」

優希「どちらも『この世界じゃよくあること、よくあるもの』のうちの一つにしか過ぎないんだじぇ?」

和「そ、そんなオカルト……」

優希「流石ののどちゃんでも認めざるを得ない筈だじぇ。麻雀というフィルターを通してないオカルトを直に目の当たりにしてしまったらな」

優希「ま、だからどうだって話なんだがな! とにかく、京太郎を傷つけるのはもうやめるじぇ。これ以上は意味がない」

咲「え、京太郎?」

優希「そう、京太郎……そこでかわいそうに横たわってる透明人間のことだ。咲ちゃん達はもう覚えてないだろうけど、私たちをずっと裏で支えてくれてた大切な仲間なんだじぇ?」

まこ「仲間じゃと? それでもう傷つけるなと? どがぁな事だかはよう分らんが……優希、おんしがこれらについて色々と知っとるっちゅうのだけはわかった。わしらに事情の説明をしてもらえんか?」

優希「染谷先輩……いきなり冷静を装った風をしたって無駄だじぇ。私は身動きの取れない中、染谷先輩が年甲斐もなくはしゃぎ回るのをずっと見ていたんだからな……」

まこ「はしゃいでおったつもりはないんじゃがな……後輩を守るためにやったことじゃ。おんしに責められるいわれはない」

優希「勿論、咲ちゃんを守るために鉄なんたらを京太郎にぶち当てた事まで責め立てるつもりはないじぇ。でも、どうしてそこで終わりにしなかったのか?」

まこ「……なんじゃと?」

優希「あの鉄山靠が類をみないほど強力なものであったのは、先輩自身が一番よく分かっている筈だじぇ」

まこ「まあ、確かにのう。自分の身から繰り出されたものとは思えんほどの威力を持った技じゃった」

優希「そう。そして論理的に考えれば、それを食らった京太郎にもう動けるほどの力が残っていないことなんて、すぐに分かる筈だじぇ」

優希「だったら、不必要に追撃なんかしないで、普通に縄で縛るなりなんなりの平和的手段を用いればよかったんだじぇ」

まこ「まてまて。少し言いがかりが過ぎる」

まこ「わしは当然、これまでの人生で透明人間なんて見たことはない。おんしがいくらそれを『よくあるもの』じゃと主張しようとも、わしらにとっては未知の存在にであることに変わりはないんじゃ。そうであるなら、念には念を入れるのはあたりまえじゃろう」

まこ「いくらわしの鉄山靠が強力なものであったとはいえ、それが未知の相手にどれだけ通用するか何ぞわしには分からん。それなら、殺すまでは行ってはならんものの、動けなくなるまで一応攻撃の手はやめてはならん筈じゃ」

まこ「第一、どこにいるのかも正確に分からん相手を縛ったりできるとは思えん。不用意に近づいて、逆にとらえられる羽目になったら目も当てられんじゃろ」

優希「ええ……? いや、どう思い返してもそんな事まで考えて行動していた風には見えなかったんですが」

優希「それに、殺す気満々のセリフを吐いといて、よく『殺すまでいってはならんものの』なんて言えたもんだじぇ」

優希「さらに言うなら、そのセリフの内容だって陳腐極まりないものだったじぇ。やれワカメ・クリムゾン! だの、やれ悪はなんたら! だの、まるで小学生のお遊戯会をほんのちょっとだけ進化させた何かを見ているようだったじょ。ふざけんなや!!」

まこ「……」

和「えっと……その……」

優希「……咲ちゃんとのどちゃんに至っては、よく分からないちょいゆりワールドを繰り広げていちゃいちゃしてる始末」

咲「え、えっと……ちょい、ゆり? いちゃいちゃ?」

和「……確かに、緊急時においてああいう風な態度を取るのはあまり褒められたことではありませんが。それでも私たちの関係を考えるなら、多少そうなってしまうのは仕方ないでしょう」

咲「えっ? 私は別にそんなつもりは無かったんだけど……」

和「え……?」

咲(何でそんな絶望したような表情を見せるの、和ちゃん……)

優希「ん、んん?……まあいいか。何にせよ、京太郎はもらっていくじぇ? 答えは聞かないけどな!」

京太郎「ゆ、優希……? って痛っ!?」

京太郎(やべえ……動こうとすると体中に激痛が走りやがる。染谷先輩、幾らなんでもやりすぎだろ……)

優希「っ! 京太郎! 大丈夫か!?」ダダッ

咲「えっ!?」

京太郎「うおっ。びっくりした」

京太郎「い、いや、そりゃ体中は痛えし頭はガンガンするけど、なんとか命は落とさずに済んだみたいだ。ただ、当分は満足に動けねえな、こりゃ」

優希「そうか、よかったじぇ……ごめんな、すぐに助けてあげられれば……」

京太郎「別に気にすることはねえよ、暴走したのはこっちだしな」

優希「本当にごめんだじぇ……」

咲(え……会話……してるの? でも、優希ちゃんの声以外は何も聞こえない)

京太郎「いいって。なあ、それよりどうしてこんな事をしたんだ? 俺を不幸にするため……って訳じゃないみたいだが」

優希「そんな、私が京太郎を不幸にする筈なんかない! これには……大きな理由があるんだじぇ」

京太郎「理由……?」

優希「説明したいが……ここじゃだめだじぇ、話せない。第三者の目と耳があるこの場所で、これを話すわけには行かないんだじぇ」

京太郎「じ、じゃあ、どこならいいんだ?」

優希「一緒に来てほしい場所がある。そこで、ことのすべてを話すと約束するじぇ」

咲(やっぱり……独り言を言ってるようには思えないし、優希ちゃんにだけ透明人間さんの声が聞こえてるのかな……? でもどうして)

咲「え、えっと……」

優希「咲ちゃん……私はこれから京太郎と一緒にある場所に行ってくるじぇ。でもこのことは誰にも言わないでおいてくれないか?」

咲「ええっ!? でも……」

優希「あ り が と う だ じ ぇ 咲 ち ゃ ん?」

咲「わ、分かりました!」

優希「どもだじぇ……よし、じゃあ京太郎! 私の肩におぶされ!」

京太郎「お、おう。でも、お前の力じゃ俺を持ち上げるのはきつくねえか?」

優希「そりゃ前の私には無理だったろうけど、今なら余裕だじぇ。なんてったって、タコスの加護がついているんだからな!」

京太郎「わ、わっけわかんねえ」

京太郎「……なあ、一体どうしちまったってんだよ。記憶喪失になったと思ったらいきなり発狂し出して俺のことを透明人間にしやがるし、しばらく何も喋ってないかと思えば、皆のことを罵倒し出すし……かと思えば俺に優しくするし……」

優希「べ、別におかしくなった訳じゃないんだからね! それについてもちゃんと説明するから、どうか今は……!」

京太郎「……今は、ねえ。ま、話を聞く限りだと、どうやら俺を想っての行動らしいしな。いいぜ、信じてやるよ」

優希「きょ、京太郎……!」

京太郎「それに、お前のそんな顔見てたら疑う気も起きなくなるってもんだ。じゃ、何だかわかんねえけどある場所とやらに案内してくれよ」ポンポン

優希「ふぇっ……お、おう、まかせろだじぇ! じゃあ、ゆっくりと私の背中におぶさるんだじぇ……よい……しょっと」

京太郎「うぉっ! 痛てて……ホントに持ち上げられてるな……すげえ」

優希「ふふん、どんなもんだじぇ!」

優希「……じゃあ咲ちゃん、お願いしたじぇ?」

咲「う、うん……」

ガラガラッ

咲(行っちゃった……)

まこ「」ブツブツ

和「」ジーッ

咲(どう説明すればいいんだろ……この状況)

~謎の廃墟~

優希「ついたじぇ、京太郎」
 
 優希におぶさられつつ移動すること数十分。森の中にひっそりと佇む、錆びついた廃墟の前に着いた。

 見たところ元は中規模の総合病院だったようで、その廃墟は相当の大きさを誇っていた。玄関口からおよそ50Mは離れたここから見ても、その全貌を視界で捉える事はかなわない。

 おそらく白く塗られていたであろう外装は完全にはがれ、灰色のコンクリートの下地が露になっている。

 またそこら中に蔦類の植物が巻きついており、最早自然と同化していると言っても過言ではなかった。

 しかし、俺にはそれがただの廃墟であるとは到底思えなかった。人の目を欺くがために、仕方なくそういった風貌をしているのだと語りかけられているような、不思議な感覚に包まれたのだ。

京太郎「なあ、優希。ここは一体?」

優希「お! その口ぶりだと、ただの廃墟じゃないってことには気づいたようだな! ま、当たり前か。ここはお前のために存在するような場所なんだからな」

京太郎「俺のために……か。ここにお前の秘密が隠されてるんだな?」

優希「そういうことだじぇ! ま、お前にとって最早それは秘密でも何でもないがな。よし、先に進むじぇ?」

 そう言って、優希は軽快な足取りで玄関の中に入っていった。道中、ずっと俺をおぶさっていたにも関わらず、優希の顔は平然としていた。まるで、疲れという概念が優希の中から出て行ってしまったかのようだ。森の中なんて、雑用で鍛えられた俺でさえただ歩くだけでも疲れるというのに。

 玄関を抜けると、開けたエントランスルームにでた。空間の大半は味気の無い長椅子で占められており、奥には受付口が並んでいる。部屋の左右からは、診察室やそれぞれの病室に行くための廊下が続いている。

 何と言うか、俺の学校の近くにある総合病院にそっくりだ。長椅子の種類も、受付口の形も。その病院の内装を廃墟風にしたら、ちょうどこう言う風に……

 いや、おかしい。あまりにも同じ過ぎる! この場所、どこからどう見たって、清澄病院そのものじゃねえか……! 

 外面も、思い返してみれば清澄病院のそれだった。ただ、外の方は廃墟化の具合が内部よりも進行していたため、気づくことができなかった……。

京太郎「な、なあ。優希、ここって……」

優希「おお、早速これにも気付いたか! さっすが京太郎、それでこそ私の婿だじぇ!」

京太郎「じゃあ、やっぱり……清澄病院なんだな、ここは?」

優希「うーん……いや、正確には清澄病院そのものではないんだけどな。言うなれば、それの模型だじぇ。ちょっと手は加えてあるケド」

京太郎「模型……手を加えた? まさか、これ全部お前が作ったのか!?」

優希「本当に私“だけ”で作ったかって言われるとちょっと苦しいけど、まあおおむねそんな感じだじぇ」

京太郎「ちょっと苦しいって……協力者がいるのか?」

優希「来れば分かるじぇ。んふふ、言っただろ? もはや秘密は秘密でなくなったって」

 不気味な、何か意味を含んだような笑みを浮かべながらそう言うと、優希は歩き出した。

 玄関から見て右の廊下をしばらく歩くと、左の方に不自然なスペースの開いた行き止まりに当たった。

 ……おかしい。俺の記憶の中の清澄病院には、こんな形をした行き止まりは無かったはずだ。

京太郎「なあ、こんな行き止まり、清澄病院にあったか?」

優希「ないじぇ。そりゃ、この先には模型なんかじゃない正真正銘のオリジナル……この場所の本当の姿があるんだからな! 言うなればここはその入り口だじぇ」

京太郎「えっ? 本当の姿?」

優希「言うに及ばず、見るが易し、だじぇ! ……開け、タコスの国!!」

 優希が大きな声をあげると同時、それに呼応するかのように、行き止まりの壁から眩い光が発せられた。

 そして次の瞬間、優希が消えた。というよりも、いつの間にか俺が一人光の中で浮かんでいる状態になっていた、といった方が正しいか。

 おぶさられていたのだから、優希が消えたら俺は地面に落下している筈である。しかし、何の衝撃も痛みも訪れないまま、俺はそこに浮かんでいた……。まるでもともとそうしていたと言わんばかりに。全て

の過程は消し飛ばされたといわんばかりに。

 いきなりの事に呆然としていると、ようやく自分の体の違和感に気付いた。

 俺は今の今までかなりの傷を負っていた。それこそ、優希の歩行中のわずかな体の揺れさえも、直に骨に響いてきてしまうほどに。
 
 だというのに、いつの間にかその痛みがどこかへ消え去ってしまっているのだ。まるで俺の体が一瞬の内に元に戻ったかのようだった。……いや、現実元に戻っている。さまざまな部位を動かしてみるが、先ほどはあった痛みはやはり感じられない。擦り傷などもキレイに治ってしまっている。

 そこでふと、俺はある事に気付いた。この光の空間の奥に、特に眩く光る何かがあることに。そして、その何かが急速な勢いで大きくなっていることに。

 二倍、三倍と大きくなっていくその何かは、数秒後……俺の全身を包みこんだ。

~謎の場所~

???「京太郎、京太郎!」

京太郎(あれ、この声……優希か? 俺を心配してくれてんのかな)

???「だいじょうぶか、京太郎!」

京太郎(早く答えてやりてえけど、体を動かせねえどころか、瞼さえも開けねえ。全身が麻痺してしまったみてえだ)

???「うー、タコス光明神の間は私と京太郎にだけは無害なはずなのに……いや、もし失敗してたなら京太郎は今頃粉々になってるはずだじぇ……大丈夫」

京太郎(ん? 何か今、不穏な言葉が聞こえた気がするんだが……)

???「乱暴な事はしたくないけど、しょうがないじぇ……すぅ~……はぁ~……よし!」

京太郎(いったい、今度は何をするつもり――)

優希「おっっっきろおおおおおおおおおおおおお!!!! いぬうううううううううう!!」

バチィィィィィィン!!
 
京太郎「うおおおおおおおお!? 痛ってえええええええ!?」

優希「あっ! ……よかったぁ……!」

京太郎「な、なにしやがんだコイツっ! ……ってあれ? 起きたのか、俺? あっ、いつつつ……」

京太郎(体も動かせる……優希のビンタで制御が戻ったのか)

優希「ごめんな、ごめんな? でも、これしか起こす方法が思い浮かばなくて」

京太郎「うん、まあ、それは分かるし、元に戻してくれたことには感謝するけどよ。もうちょっと優しくはできなかったんかい!」

優希「えへへ、ごめんだじぇ。半端な加減をして、何度も京太郎をぶつような事はしたくなかったからな! 苦しいからこそ一発で決めにいったじぇ!」

京太郎「な、なんじゃそりゃ……まあいいや。……で、ここはどこなんだ?」

京太郎(さっきの廃墟とは打って変わって、なんだか超最新の研究所! って感じだけど……)

優希「おう! よくぞ聞いてくれたじぇ! こここそが私たちの最終目的地! タコスの国の叡智の結晶! その名も……」

優希「『かたおかゆうきのオカルトけんきゅうじょ』だじぇ!」

京太郎「ほお、おお? へえ……? ん? ええ……?」

京太郎「ちょ、ちょい待ってくれ。オカルト研究所……って」

優希「ん? その名の通り、この世に存在するオカルトを研究する場所だじぇ?」

京太郎「いやいやいや、そうじゃなくてだな……何から言えばいいのか……」

優希「質問か? ならどんとこいだじぇ! 時間はたっぷりあるから、お前の全ての疑問それぞれに真摯に向き合って答えてやる!」

京太郎「お、おう。んじゃあさ……オカルトっていわれてもぴんと来ねえんだけど……具体的にはどんなもんを研究してるんだ?」

優希「うーん。そうさな……ずばり、麻雀にまつわるオカルト(超常現象)、だじぇ」

京太郎「ま、麻雀にまつわるオカルトォ!? んなもんある筈……あっ」

優希「思い当たる節がばりばりあるって顔だじぇ。まあ、日常的にあんなもの見てたら感覚が麻痺するのも無理はないけどな」

京太郎「いやいや、俺からしたらお前も同じだからな? いや、そうか……でも、あんなのどうやって研究するって言うんだよ」

優希「うーん、そのあたりは実際に見てもらった方が早いじぇ。ついてきてくれ」

 そう言うと、優希はかわいらしい足取りで奥に歩いて行った。俺はその後をついていきつつ、道の左右にびっしりと置かれている様々な研究装置らしきものを眺めていく。

どれもSF映画に出てきそうな程未来的な形をしており、その構造の一端さえも俺には理解できそうにない。なんだよあの中に浮いた赤いボール状の液体は。赤色物質か何かか。

 そんな俺の困惑を察したのか、道中優希がそれらの装置について色々と説明してくれた。例えば、あの赤いボール状の液体は衝撃を与えられると一時的にではあるが大規模のブラックホールを発生させるらしい。

やっぱり赤色物質じゃないか……というか、なんでそんな危険なものを作る必要があるんだ。

 だが、優希の説明を聞いても理解できない事は多かった。というより、説明が俺向きに作られ過ぎているのだ。とても分かりやすいが、その分深くを知ることはできない。何だか、化学の実験についてやさしく手ほどきを受けている小学生の気分になってしまう。悔しいが……きちんとした説明を聞いて理解できるとも思えない。

どれだけのプライドが俺の中にあろうと、ここにおいては、俺は無知な小学生と何ら変わりないのだ。

 そんなこんなで歩いていると、直ぐに目的の場所についた。いや、直ぐに、とはいっても小一時間は歩いたのだろうが、何せ未知の体験が道中に溢れていたのだ。時間の間隔が短く感じられてしまうのも無理はない。

~謎の部屋~

京太郎「で……この部屋がそのオカルト研究における要って訳か。確かに異様な雰囲気だな。」

優希「そうだじぇ。外の装置じゃできることは限られてるからな。あいつらじゃ精々、銀河数個滅ぼすのが限界だじぇ」

京太郎「はあっ!? 銀河数個って……おいおい……。しかも、それでまだこの部屋の装置よりは劣ってるのかよ」

優希「ふふん、驚いたか?」

京太郎「言葉が出ねえよ……科学なんかより全然すごいじゃねえか」

優希「まあ、タコスの国の叡智は地球の科学のそれとは全く異質のものだから、単純な比較はできないんだけどな」

京太郎「ほえー、どこが違うんだ?」

優希「んー……その違いを分かりやすく言うなら……科学は物質を使用するのに対し、タコスの国の叡智は精神を使用する、って所だじぇ」

京太郎「せ、精神? それって心とか、そんなんか?」

優希「その認識だと、ちょっとした齟齬が生じるな。世間の常識として存在する精神と、私の言う精神はかなり違うじぇ。えっと……先ず、精神は全ての物質に等しく含まれている、ということを分かってほしいじぇ」

京太郎「はあ? すべての物質って……つまり土とか石とか、そう言うのも精神を持ってるってことか?」

優希「そうだじぇ。あ、物質って括りにするとちょっとわかりづらいかもな。どこまでが物質で、どこまでが物質でないのかという疑問を抱かせてしまうかもだじぇ」

優希「もっと分かりやすく言うなら、原子のレベルで精神は存在するんだじぇ」

京太郎「はあ!? い、いや、わっかんね~~~よ! どういうことだそりゃあ!」

優希「だから言ったんだじぇ。精神イコール心だという認識を持ってると齟齬が生じるってな」

京太郎「ん、んじゃあ、精神って一体何なんだよ。そう言われると見当もつかねえな……」

優希「まあ、精神、なんて普段は抽象的にしか捉えられてないものだからな。こう言う風に具体的な話になってくると混乱するのも無理はないじぇ」

優希「そうさな、精神は言うなれば内的なエネルギーなんだじぇ」

京太郎「内的?」

優希「そう。といっても、物理的な『内』とは違うじぇ。原始を切り開いてみればそこから精神エネルギーがあふれ出す、だなんて単純な話だったら、人類は今頃、現在の百万倍進んだ文明の中暮らしてるだろうじぇ」

京太郎「そ、そんなにか……じゃあ、その内的なエネルギーってどういうものなんだ?」

優希「これにはもう気付いてるかもしれんが、外的なエネルギーとは物理エネルギー……科学者たちが、この世全てを支配しているものと信じて止まないエネルギーの事を指すじぇ」

優希「それらはすべて法則という名のレールに沿って、『外側』に出発していく。故に外的なエネルギーなんだじぇ」

京太郎「法則に沿って……だから外的なエネルギー……か。あっ、という事はつまり」

優希「気づいたようだな! そう、精神エネルギーは法則に“従う”のではなく“逆らう”エネルギーなんだじぇ。つまりそれは、法則の内側に入り込んでいくエネルギーと表現することもできる……故に内的なエネルギー」

京太郎「レールに従うか、逆らうか……その違いって訳か」

優希「その通りだじぇ。内的エネルギー……なんて言うと、少し弱そうに聞こえるかも知れないけど、その本質は『法則の改変』というとてつもないものなんだじぇ」

京太郎「そんなハチャメチャなもんが俺達の中にあるってのかよ……信じられねえな」

優希「その気持ち、よくわかるじぇ。私も正直、しばらくは信じきることができなかったからな……」

京太郎「だろうな……。ん? 信じきることができなかったって……それってつまり、お前も精神エネルギーについて誰かに教えてもらったってことなのか?」

優希「そうだじぇ。ある日のこと……私がいつもどおりタコスをほお張っていた時、ふと頭の中に誰かの声が響いたんだじぇ」

京太郎「……誰かの、声……」

優希「その誰かが、私に全てを教えてくれたんだじぇ。タコスの国のこと、内的エネルギーのこと、そして……」

優希「京太郎、お前のことをな」

京太郎「えっ、お、俺……? な、なんでそんな奴がお前に俺の話をするんだよ」

優希「私も最初は混乱したじぇ……でも、その声の話を聞いていくうちに、だんだんと事の重大さが分かってきたんだじょ」

京太郎「事の重大さって、そんな大層な……」

優希「京太郎!」

京太郎「うぉっ」

優希「茶化すな! 私は真剣なんだじぇ」

京太郎「わ、悪かった……」

優希「……ふう。怒鳴ってすまんかった。でもこれは、この大いなる話は……私よりもむしろ、お前が知っておくべきものなんだじぇ。ただ、その声の主はタコスとの共鳴を行えないお前の頭にまで干渉することが出来なかった。だからこそ、一番近しい人間であり、かつタコスとの共鳴が可能な私に、メッセンジャーの役割が与えられたんだじぇ」

優希「これまで以上にとんでもない話になる。タコスの国も、オカルト研究所も、全部がちっぽけなことに思えるほど。でも、心して聞いてほしいじぇ。お前がこれを理解してくれるか否かで、その後は大きく変わっていくからな」

京太郎「ゆ、優希……?」

 優希はその表情を真面目なものに変え、じっとこちらを見据えた。眼光は鋭く、唇はしっかりと閉じられている。少し中心に寄せられた眉も相まって、なんだか怒っているようにも見える。言うなれば、「有無を言わさない顔」だ。

 俺はこんな表情の優希を見たことがなかった。普段の優希はおちゃらけていて、その顔には常に活発な笑みを浮かべている。それ以外だと、時たま悲しそうな表情を見せたりすることがあるくらいだ。

 そんな優希がこうして表情を改めたのだ……おそらくここから「本題」に入っていくのだろう。これまでも衝撃の連続だったが、それさえも小さく思えるほどの何かがこの先にあると優希は言う。俺なんかの頭では予想することさえ出来ない、とんでもない何かが。

 俺の心が、不安で震えた。

優希「…………」

京太郎「…………」

優希「…………」

京太郎「…………?」

優希「……そ」

京太郎「そ?」

優希「そんなに見つめないで欲しいじぇ……」ポッ

京太郎「……えっ?」

優希「おほん。で、では、話を戻すとするじぇ」

京太郎「お、おう……」

優希「……何か文句でも?」

京太郎「い、いやいやっ! 何でもねえよ、ホントに! いやー、続きが気になってしかたがねえなー? 優希が一体どんなすげえ話をしてくれるのか、楽しみだなー?」

優希「そ、そうか……? えへへ……ならよし!」

京太郎「……」

京太郎(シ、シリアスな空気が一瞬にして消滅しちまった……何なんだよホント……)

京太郎(いや、まあその方が気を楽に出来るしいいのかもしんねえけど……なんか納得いかねえ)

優希「それでだな、先ずはこの世界……タコスの国の世界について説明していくじぇ」

京太郎「俺にまつわる話ってのも……そのタコスの国に深く関わってくるもんなのか?」

優希「そうだじぇ。じゃなきゃ、態々こんな回りくどい真似はしないじぇ(嘘)。ついさっき私が、京太郎の理解がこの先に重要に関わってくるって言ったのは覚えてるか?」

京太郎「ああ……俺がこの話を理解するか否かで、その後が大きく変わってくるとか何とか……」

優希「よしよし。ちゃんと聞いてくれているようで何よりだじぇ。それは比喩でも何でもない、純粋な事実なんだからな」

京太郎「話の内容の実践とかじゃなくて、ただ理解することが重要ってのがなんだかしっくりこねえけど……多分あれだよな。そこで精神エネルギー? が関わってくるんだよな」

優希「ご明察だじぇ! さっすがは私の婿! これまでもいい加減な説明しかしてやれなくて、お前が付いてこれてるかどうかが心配だったケド……杞憂だったようだじぇ」

優希「精神エネルギーはあらゆるものの『内部』に存在するというのはさっき話したばっかりだけど、その時は原子をあたかもその『あらゆるもの』の最小単位であるかのように言ってしまったじぇ」

京太郎「おう、確かにそう聞こえたな」

優希「でもそれはただの説明不足というか……。実際には、精神エネルギーは人間の思念にさえ含まれているんだじぇ。この場合、『精神エネルギー』という言葉がその字面通りに使われているな!」

京太郎「へえ、やっぱそうなのか。それで、『俺の理解』が重要になってくると」

優希「そうだじぇ!」

優希「っとと、話がいつの間にか逸れてたじぇ。それでだな、タコスの国っていうのは……」

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 優希の話はとても興味深いものだった。

 タコスの国はこの世にタコスが生まれる前から存在していただとか、タコスの国の住民は皆タコスの形をしているとか、タコスの国に生息する動物は一種類(なんでもそれは、羽を生やしたカピバラだそう。肉を食わないタコスの国の人々にとって、その羽カピバラは皆の癒しになったり、移動手段になったりしてくれる大切な友達であるとのこと)だとか。

 映像を交えた親切な説明も助かって、俺はその内容の殆どを理解することが出来た。

 が、正直俺とは全く関係ない話ばかり。確かにこれまで普通の世界に住んでいた俺にとっては、どれも十分に非現実的だったが、かといってとんでもない衝撃を俺にもたらしたかというと、そうではない。

 これ、本当に知っておかなきゃいけないことか? と幾度も質問したが、優希は顔を逸らして話を続けるばかりだった。

 まあつまりだ。肝心の話を聞くことは、まだ出来ないでいるということで……

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優希「――以上がこの世界の背景知識みたいなものだじぇ。大分長くなっちゃったけど、どうやら理解してくれたみたいだじぇ?」

京太郎「おう。完璧よ」

京太郎(む、無駄に長かった……。タコスの国についてだけで2時間。その他で3時間。計5時間か……)

京太郎(でもまあ……)

京太郎「これでやっと、本題に入れるんだよな」

優希「そうだ。何度も言うように、これから話すことの内容はとんでもないものだじぇ。ハッキリ言って、その衝撃でお前の心臓が破裂してしまう可能性だってある。お前に覚悟を決めるよう偉そうに言っておいてなんだけど、私も非常に躊躇してるんだじぇ?」

優希「……でも、こればっかりは避けられない。それに私は……京太郎、お前に賭けたんだからな。苦労をかけることになるけど、許してくれな……」

京太郎「……おうよ。正直よく分からないうちに巻き込まれた形になっちまったけど、お前が俺の為に色々犠牲にしてやってくれてたってのはよく分かったからさ」

京太郎「それなら、俺もお前の助けになってやらないとおかしいってもんだろ。……それにまあ、そもそもだ。親友を助けるのに理由は要らないしな……」

優希「……ありがとうだじぇ」

優希「じゃあ、言ってもいいか?」

京太郎「おう! バッチこい!」

優希「覚悟を決めるじぇ!?」

京太郎「とっくに決まってるぜ!」

優希「言ったな!? 絶対だじぇ!? あとでゴメンやっぱ無理とかナシだかんな!?」

京太郎「あたぼうよ!!」

優希「よぉぉおーしよし……ふぅ、ふぅ……よし、よし……」

優希「うん、大丈夫、大丈夫だじぇ……」

優希「いけるいける……おっけ、はいおっけおっけ。あーはいはい、そんなかんじね、うん。はいはいおっけ」

優希「……」フウ

優希「京太郎……心して聞いて欲しい」

京太郎「」ゴクリ

優希「この世界は……いや、私たちのいる世界も、タコスの国の世界も、その他の次元に存在する世界も全て、もうすぐ……それこそあと、数ヶ月以内に」





優希「滅亡を迎えるじぇ」



京太郎「ん、なっ……」

京太郎「ナ、ナンダッテー!!」

ここまで

再投稿です

修正

>>40

×優希「ご明察だじぇ! さっすがは私の婿! これまでもいい加減な説明しかしてやれなくて、お前が付いてこれてるかどうかが心配だったケド……杞憂だったようだじぇ」

○優希「ご明察だじぇ! さっすがは私の婿! これまではいい加減な説明しかしてやれなかったから、お前が付いてこれてるかどうかが心配だったケド……杞憂だったようだじぇ」


×優希「精神エネルギーはあらゆるものの『内部』に存在するというのはさっき話したばっかりだけど、その時は原子をあたかもその『あらゆるもの』の最小単位であるかのように言ってしまったじぇ」

○優希「精神エネルギーはあらゆるものの『内部』に存在するというのはさっき話したばかりだけど、その時はあたかも原子がその『あらゆるもの』の最小単位であるかのように言ってしまったじぇ」

>>42

×優希「――以上がこの世界の背景知識みたいなものだじぇ。大分長くなっちゃったけど、どうやら理解してくれたみたいだじぇ?」

○優希「――以上がこの世界の背景知識みたいなものだじぇ。大分長くなっちゃったけど、その顔を見る限りだと、どうやら理解してくれたみたいだじぇ?」

京太郎「お、おいおい優希! それって一体――」グラッ

ゴゴゴゴゴゴゴ

京太郎「お、おい! なんだ、この揺れ」

優希「京太郎!! いいから話を受け入れろ!! 『理解』するんだじぇ!!」

京太郎「えっ、『理解』……あっ!」

京太郎(そうだ……俺がこの話を『理解』しなきゃトンでもねえことになるんだ……!)

京太郎(世界の滅亡……それも、俺達のいる世界だけじゃない。他の全ての世界まで滅亡しちまう……)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

優希「きょうたろぉッッ!!」

京太郎(世界がヤバイのを今優希が伝えたってことは、つまりまだ打開策があるってことだ)

京太郎(呑まれるな……壮大な話に聞こえるけど、実際はそんなでもねえって……そう思い込め……)

京太郎(俺がちょっと介入するだけでどうにかなるんだ……俺がちょっと思い込むだけで、『理解』するだけで……)

京太郎(そう、ちょっとでいい……!)

京太郎(ちょっとでいいんだっ……!!)

京太郎(俺にっ……力をっ……!!!)

ドムムムムムムムムムムスムムムムムムムムムムムムムムコムムムムムムムムムムムムムイムムムムムムムム

優希「ああっ、もうだめだじぇ……! 荷が重すぎたのか……。京太郎!! せめて死ぬ時は一緒――」

京太郎「――いや、その必要はねえぜ。優希」

優希「――え? きょうた、ろぉ……?」

京太郎「耳、澄ましてみろよ」

シーン・・・

京太郎「もう、何も聞こえねえだろ?」

優希「え? ……あれ、揺れが……? も、もしかして?」

京太郎「おう。『理解』できたぜ、全てな。ハラハラさせて悪かった。でも、もう安全だ」

優希「きょ、京太郎……! や、やったじぇ!! すごいじぇ!!!」ピョンピョン

京太郎「ハハハ……」

優希「……む。なんだ、随分と余裕のある笑みだな」

京太郎「ん? そうか?」

優希「うん。なんか京太郎、この一瞬で随分と雰囲気が変わったじぇ。『理解』を経たからか?」

優希「仲間が苦戦しているところにちょうど良く助けに来た、修行を終えたばかりのイケメン主人公みたいな……そんな感じの雰囲気を纏ってるじぇ」

京太郎「ハハハ。それはちょっと言い過ぎだろ。別に俺は何も変わっちゃいねえよ」

京太郎「ハハハ」

京太郎「ワハハ」

優希「?」

京太郎「ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

優希「きょ、京太郎っ!?」

京太郎「ワハハー、撃ち落せばいいんだろー、かぜこっここここっこおおおおおおおぉおおぉおぉぉぉぉお!!!!!(咆哮)」

優希「京太郎が壊れたじぇええ!?」

優希「し、しっかりしろ京太郎!」

京太郎「ヴォー」

優希「くっ……」

優希(そ、そうだ。こんな時はアレを使って……)

優希「京太郎!! こっちを見ろ!!」ガシッ

京太郎「う、うむ。私なりに精一杯」グイッ

優希(よし! 京太郎の目は確かにこっちに向ている……いける!)

優希「穢れの巣食う心を洗い清めよ……」

優希「『神眼・タコス』!!!」カッ!

京太郎「お?」

京太郎「おお?」

京太郎「おおお……」

京太郎「ぐぉぉぉおおおおおおおおお!!!!???」シュウウウウウ

優希(成功だじぇ!!)

京太郎「……っく!? ガハッ……」ドサッ

優希「京太郎! 大丈夫か!?」

京太郎「……っ。ん……ゆ、優希か?」

優希「そ、そうだじぇ! よかった、意識はあるな……」

京太郎「……あれ? 俺、今まで何を……」

優希「えっと……。お前が話を『理解』したのまでは良かったんだケド、やはり強烈な話だった分、お前の体にも負担がかかりまくったみたいでな……」

優希「今の今までお前、訳の分からないことを口走りながら発狂してたんだじぇ」

京太郎「ま、マジかよ……。まったく思い出せねえ……」

京太郎「世界が滅亡するってのをきちんと『理解』できたっていうのは覚えてるんだけど……そっから先の記憶が全くねえな」

優希(ふむ……となると、修行を終えたばかりの主人公モードに入った時にはもう既におかしくなってたってことか……)

優希「それも無理はないじぇ。あれは相当脳に負担のかかる行為だからな。むしろ、『理解したこと』まで頭の中から消え去っていないだけ、めちゃラッキーとさえ言えるじぇ」

優希「でも、しばらくは休んだ方がいいじぇ。あまり無理しすぎて体を壊しちゃったら、元も子もないからな! この話の続きは、また明日にでも……」

京太郎「……いや、大丈夫だ。続けてくれ」

優希「なっ! でもだな……」

京太郎「すまねえな、優希。でも、数ヵ月後に地球が崩壊するって聞かされて……更にそれを『理解』しちまったんだからさ。居ても立ってもいられない、だろ?」

優希「……それは、まあ……」

優希「そう、だな。覚悟が出来てなかったのは、むしろ私のほうかも知れないじぇ。すまん」

京太郎「俺を心配してのことだろ? 謝ることはねえよ」

京太郎「それに、現に俺は一回失敗しかけたわけだしな。不安に思うのは当たり前だ……でも、もう大丈夫」

京太郎「アレだけの話を『理解』出来たっていう事実が……俺に自信以上の何かをもたらしたみたいだ」

京太郎「さっき説明してくれた内的エネルギーについて……こう、頭を働かしてさ……思い浮かべてみると……」

ポンッ

優希「!?」

京太郎「ほら。これが内的エネルギーの具現化体なんだろ?」

優希「そ、そんな馬鹿な……」
                    ※  
優希(タコスとの適正がバリバリ高い私が、サルサとチーズの部屋で5年の修行を経てようやくたどり着けた領域……)

※現実世界よりも時の流れが遅い部屋。現実の一時間は、こちらでは10年。ただし、四兆年に一度しか使えない上、部屋の中はサルサとチーズで埋め尽くされている。ちなみに優希はその貴重な使用権を、いつも見ている番組が始まるまで30分間暇だからという理由で行使したのだった。

優希(そこに、わずか数時間で至るなんて……。あの話が本当だっていうのはきちんと分かってるけど……こう、間近でその証拠を見せ付けられると……)

京太郎「こうやってエネルギーを具現化させるのって多分、結構難しいことなんだよな? それこそ、俺みたいな奴じゃ一生かかっても出来ないような」

優希(なんていうか……その……)

京太郎「でも、今俺はそれをしてる……。これは、あの話の『理解』が俺に力を与えてくれたってことに他ならないはずだ。そうだろ?」

京太郎「……優希?」

優希(惚れ直しちゃうじぇ~!!)ポワポワ

優希(やっぱり京太郎がナンバーワンだじぇ!)

優希(他の追随を許さぬ格好良さに加えて、優れた知性……更に強大な才能まで持ってる……)

優希(それでいて、傲慢になることなく。皆に優しくて……)

優希(こんなのどうしろっていうんだじぇ!? もう収まりきらない、この気持ち……どこにぶつけろっていうんだじぇ!?)

優希(って、いかんいかん……今重要なのは私の気持ちをぶつけることじゃなくて、あれを話すこと……)

優希(もちろん不安はあるし、正直言ってまだ京太郎の力を信じきれてない……)

優希(京太郎は多分もう、どんな話だって『理解』できる。エネルギーの具現化に成功できたことが、それを何よりも保証してるじぇ)

優希(けど、いくらエネルギーの具現化を達成したから、話を『理解』したからといって、それが世界を救うことに真に直接繋がるわけじゃない。あくまで前提条件としてそれがあるというだけのこと)

優希(具現化の先の先の先のステージへと進まないと、世界の救済は決して叶わないじぇ。そして、京太郎がそこまで到達できるかは、まだ分からない……)

優希(私の最大の不安はそれだじぇ。この話の続きを語ることで、京太郎は更なる重荷を背負うことになってしまう)

優希(京太郎にそんな先の見えない戦いに身を投じさせるくらいなら、残りの時間を静かに、穏やかに過ごしてもらった方がいいんじゃないかって思ってしまう私がいる……)

優希(……)

優希(でもそれとは裏腹に、京太郎の可能性に夢を見て止まない私も居ることも事実だじぇ……)

優希(そして多分、その私が本当の私……)

優希(信じよう、そう決めました、今ここで)

優希(だったら……答えは一つだじぇ!)

京太郎「ちょ、優希? どうしたんだよ一体……まさか、俺がこれをしたことでまた何か――」

優希「京太郎。もう、前置きはしないじぇ」

京太郎「えっ」

優希「話すじぇ。事の真相を……全て!」

京太郎「えっ? ちょっ」







優希「先ず聞いて欲しいのは、京太郎……お前の存在が世界の消滅の引き金となる、ということだじぇ」

京太郎「お、俺の存在が……一体どういうことだ?」

優希「ああ。お前は日頃常に……自らの『存在力』を放出し続けている状況にある」

京太郎「存在力を放出……それってつまり、時間が経てば経つほどにどんどん影が薄くなっていくってことか?」

優希「そうだじぇ」

優希「そして、存在力が完全にゼロになった瞬間……『京太郎』という存在は完全に消失するじぇ。そうなればもう、私の記憶にさえ残らない。タコスぢからの領域さえもはるかに超えた先に、お前は行ってしまう」

優希「でも、一番の問題はそこじゃないじぇ。……まあ、もし事の優劣の基準が私の考えにあるのなら、一番の問題はまさしくお前の消失で、他は二の次になっていくケド……それは置いておくとして」

京太郎「お、おう」

優希「えっと。その一番の問題ってのは、お前が完全に消失したその瞬間に放たれると予想されるエネルギー波……それなんだじぇ」

京太郎「エネルギー波……それが世界崩壊の原因になるんだな? 俺の消失がそこまで途轍もないエネルギーを生み出すだなんて、ちょっと信じきれねえな。いや、『理解』はできるけどさ」

優希「それが原因になる、というのはちょっと違うじぇ」

京太郎「え?」

優希「なあ、京太郎。誰かが死んだ時、その人の存在力は一体どこに行くと思う?」

京太郎「え? えっと、そりゃあ……そのままその人の元にあり続けるんじゃねえのか?」

優希「そう! 存在力は内的エネルギーの一種で、例え死んだ人間にあっても、それが無くなる、ゼロになるってことは有り得ない」

優希「だからお前は、おそらくこの銀河が誕生してから始めての事例なんだじぇ」

優希「ケド……幾ら存在力の消失が有り得ないことだからって、それが多次元世界を含む全てを崩壊させるようなものを直接生み出すことは先ずない」

京太郎「そうは言うけどよ。なら、真の原因になりうるものってのは一体何なんだ?」

優希「京太郎……お前はよく自分のことを才能が無い奴だとか言ったりするけど、それは実のところ全くの的外れなんだじぇ」

京太郎「え? い、いやいや、流石にそれは信じられないぜ。確かにエネルギーの具現化はできたけどさ、それは『理解』の助けがあったからで……」

優希「それだじぇ! 何も『理解』は人を改造するようなものじゃない。言うなれば、数学の1+1なんだじぇ」

優希「内的エネルギーを扱う上での基本中の基本……。さっきの話の『理解』だって、あくまでそれを大きくしたものに過ぎない。言うなればそっちは1000+1000」

優希「幾ら大きな数の足し算ができるからって、乗算や割り算までできるとは限らない……。たとえ簡単なものであっても」

優希「なのにお前は、知識がゼロなのにも関わらずそれらをやった……成し遂げた。ハッキリ言って、とんでもない事だじぇ」

京太郎「……」

優希「そして京太郎。お前の中にある才能……強大過ぎるほどの力が、世界を崩壊させるんだじぇ」

京太郎「俺の、力が……?」

優希「正確に言えば……お前の力と、存在力の消失とが合わさって……世界を崩壊させるエネルギー波が生み出される」

優希「さっき、存在力の消失が崩壊の直接の原因となる訳じゃないって言ったのはこのためだじぇ」

優希「多分、何の力も持たない一般人の存在力が消失したところで、無くなるのはせいぜい一軒家一つ分くらいの範囲くらいだじぇ」

優希「でも、お前の場合はそうは行かない……。それほどに強大すぎる……いや、超☆強大すぎるんだじぇ、お前の力は」

京太郎「成る程、な……」

優希「例えば、平均的な一般人の存在力は150万。他人に認識されないくらい影が薄い東横さんさえも、149万9999の存在力を有しているじぇ」

優希「咲ちゃんやのどちゃんなんかでも150万1……こう考えると、どれにも数値上では大した違いは無いと言えるじぇ」

優希「ケドそれに対して、お前の現在の存在力は……」

京太郎「」ゴクリ

優希「5デシリットル、だじぇ……!」

京太郎「ご、5デシリットル……!!」






京太郎「……」

京太郎「ん?」

京太郎「5デシリットル?」

京太郎「え、どういうことですそれ?」

京太郎「え? え? 何、なんなの。なんでいきなり単位とかでてきちゃったの?」

京太郎「そこは5って言うべきところなんじゃないの? なんでいきなり単位とかでてきちゃったの?」

京太郎「他の人たちの場合は普通に『150万』とか『160万』とかじゃねーか。なんでいきなり単位とかでてk」

優希「いいから」

京太郎「で、でm」

優希「いいから」

京太郎「はい」

京太郎「でもなんでよりによって、数ある単位の中でも特に影の薄いデシリットルなんだ……。せめて、0.5リットルと言ってくれた方がよかったよ……」

優希「存在力の単位はデシリットルだけだからな。そこにおいてリットルって単位は存在しないじぇ。理由は知らん」

優希「あと、どこからデシリットルでどこからがデシリットルじゃないかっていう厳密な事もよく分からんケド、まあとにかく今相当ヤバイ状況にあるってことだじぇ」

京太郎「ああ、そうすか……」

優希「むっ! 何か冗談みたいに思ってるみたいだけど、実際本当にヤバイんだじょ?」

京太郎(説明がいきなり極限まで適当になったから、こういう態度を取ってるだけだっつの……)

優希「京太郎が今、こうして普通に喋ったりできるのは、ひとえにその超☆強大な力のおかげなんだじぇ。皮肉にもな」

優希「もし普通の一般人が5デシリットルまで存在力を削られたら、その時点で誰の記憶からも消失し、更には自身についてのことを一つとして思い出せなくなり」

優希「挙句手足を動かすことさえもできない、只の棒のような存在になってしまう……」

優希「のに留まらず宇宙との調和を果たして完全に無となってしまう、ということを考えると、むしろ未だに凡人程度の存在感放っちゃってる京太郎がやばすぎるとさえ言えるじぇ」

京太郎「ま、マジかよ……。じゃあつまり、俺の中に眠る力ってのが、存在力の不足分を補ってるってことなのか」

優希「そうだじぇ。でも、京太郎の力が存在力の代替品となれるのは、『存在力がゼロになるその瞬間』までなんだじぇ……」

優希「存在力のタンクが底を尽きた瞬間、京太郎の超☆強大な力が、『存在力がゼロになったことで生み出されるエネルギー波』に乗って放出される」

優希「その威力は正直、計り知れないじぇ。計り知れなさ過ぎて、むしろ簡単に計れるんじゃないかって錯覚してしまうレベルだじぇ」

優希「だからこそ今、世界は窮地に立たされてるんだじょ」

京太郎「成る程……。これまでは俺の何よりの助けとなっていたものが、あと数ヶ月も経たないうちに、全てに対して牙をむくやべーシロモノへと変わるってことか……」

京太郎「そ、それで? 何か助かる方法はねえのか? 何もねえのならこの際、俺を犠牲にするってのも――」

優希「それはダメだじぇ!!」

京太郎「うぉっ!」

優希「世界の為に京太郎が犠牲になる……? んなの言語道断、愚策もいいところだじぇ」

優希「それに、京太郎が犠牲になれば世界が救われる、なんて保証はどっこにも存在しないじぇ。むしろ、京太郎の力の解放が早まってしまう可能性すらある」

京太郎「じゃ、じゃあ……一体どうしたら……」

優希「……一つだけ、ある」

京太郎「え?」

優希「一つだけあるじぇ。全てを救う方法が……!」

今日はここまで

なんかよく分からないんだがこれはどういうジャンルなんだ・・・

これはいい京タコ…京タコ、なのか?(困惑)
しかし低すぎるスペックが特性で補われて普通程度にやってけるって仮面ライダージョーカーみたいやな

>>65
ファンタジーなんでしょうかね。正確なところは僕にもちょっと

>>67
ロマンですよね

ちょっとですが投下します

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<清澄高校 麻雀部>

咲「……」

和「……」

久「……」

まこ「……」

咲「……えっと。あれからまた1日が経っちゃった訳ですけど……」

和「……ですね」

まこ「……ほうじゃの」

久「……そうね」

咲「ど、どうします? 麻雀でも打ちます?」

和「……いえ、ちょっと今日は……」

まこ「……そんな気分じゃあ、ないのお……」

久「……そうね」

咲「あ、あはは。です、よ、ねえ……」

久「……そうね」

久「……」

久(昨日、ウキウキしながら職員室から戻ってきた私の目に映ったのは、なんとも奇妙な光景だった)

久(下を向きながら延々と独り言を呟くまこ、じっと咲の方を見つめる和、そしてビクビクしながら何故か私に『おはようございます』と挨拶をする咲)

久(彼女たちの様子のどれもが私にとって理解の範疇を超えるものだったけど)

久(何よりもおかしかったのは、その場に優希の姿が見当たらなかったこと。そして……謎の喪失感が、私の心に直接ぶちあたってきたこと)

久(しばらく3人の姿に困惑してた私だったけれど、その事実に気付いてようやく冷静さを取り戻すことができた)

久(そして使い物にならなそうな二人を置いて、咲に事情の説明を求めた)

久(でも咲は、無理して場を持たせようとするコミュ障のように、意味の無いうわ言ばかりを口から出すのみだった)

久(それがずっと続くものだから、流石の私もイラついちゃって……つい、咲の胸倉をつかんでしまった)

久(怯える咲の顔が面前いっぱいに広がるのも気にせず、私は脅しをかけるつもりで再度事情の説明を求めようとした、んだけど……)

久(その時、修羅の如き表情を浮かべた和が横から襲い掛かってきて……)

久(取っ組み合いの喧嘩になって……)

久(そこから先は、よく覚えてない。ただ、気付いたら自宅で今日の朝を迎えてたわ)

久(だからもう、何が何だか分からないというか……)

久(優希が無事だって分かった矢先、またどん底へと叩き落されてしまった優希の親御さんと比べれば、こんなのなんてこと無いって思うようにしてるけれど……)

久(どう足掻いても訳わかんないわやっぱ。何これ)

和「えっと……では、今日はお開きにしましょうか……?」

まこ「ほうじゃの。優希が居ないまま部活動を続けるっちゅうわけにもいかんじゃろ」

咲「私はそれで良いですけど……。えと、部長はどうします……?」

久「……そうね」

久「私も同意だわ。こんな状況じゃあ、練習にも身が入らないってものよね」

久「それじゃあ今日は、この辺りで――」


ガララッ


久「――えっ!?」

咲「あ、あ……あれは!」

まこ「またこのパターンけぇ」

和「ゆっ……ゆ……」





一同「優希(ちゃん)!!」

優希「おっす、皆! 片岡優希、遅ればせながらただいま参上、だじぇ!!」

久「遅ればせながらただいま参上って……そんな冗談言ってる場合じゃないでしょ!」

久「あんった……一体いままでどこに……!」

優希「すまんぶちょー。今、それを話している暇は無いじぇ」

和「なっ! ゆーき、それはどういう――」

優希「京太郎! そのスイッチの裏にある赤いボタン……それを押すんだじぇ!」

まこ「は? 京太郎って……おんしまさか、あん透明人間をここに――」



ポウン!!

咲「!?」

咲(ゆ、優希ちゃんの後ろからいきなり煙が漏れ出してきた!? これって……?)

優希「これで、京太郎の消失(仮)は解かれたじぇ。もう安心して良いじょ、京太郎」

咲(……え!?)

京太郎「えと、ほ、本当にこれでいいのか? み、皆、俺のこと見えて――」

和「ひっ!? ゆ、ゆーきの後ろからいきなり金髪の男の人がぁっ!?」

まこ「ひゃー……こりゃあ驚いたのお。京太郎が普通の人間っちゅうのは本当だったんか……」

久「……!?」

久「……」

久「!?」

久「え? 何、なんなのこれ? 京太郎? あれ、ちょっとまって訳がわからない……」

久(……でも、京太郎って聞くと……何だか凄く、心が温まるわね……)

京太郎「あれ? ど、どういうことだ? まだ皆俺のことを忘れてるっぽいけど……。一応、説明しといた方がいいんじゃ……」

優希「皆まだ頭が混乱してるんだろうじぇ」

優希「説明なんかせずとも、あと数秒もすれば記憶の再生が始まるじょ」

京太郎「記憶の再生? それって――」

咲「うっ……あ、頭がッ!!」ピキッ

和「あた、まが、痛いッ!?」ピキッ

まこ「やけつくようじゃあっ!!」ピキッ

久「え? 何々皆どうし――」

久「あがあッ!! ず、ずつ、う……!? ううぅ」ピキッ

京太郎「なっ!? 皆っ!?」

優希「大丈夫、心配は要らないじぇ。むしろ、今止めようとするほうが危険だじょ」

京太郎「え? じゃあ、これが……」

優希「そう、記憶の再生だじぇ」

咲「う、ぐぅ……」

咲(な、何なの一体!?)

和「があ、あぁっぁ」

和(きお、くが……頭の中になだれ込んで……)

久「いだ、いだぃぃ……」

久(もういや……なんなのぉ……訳わかんないわよぉ……)

まこ「んっ……んあっ……」

まこ(この感覚、ちょっと心地ええのぉ……)



カッ!

京太郎「うぉっ!? まぶしっ!?」



咲「……あれ? きょ、きょう、ちゃん……?」

京太郎「さ、咲!? ……お、思い出したのか!?」

咲「う、うん……そうみたい」

和「す、須賀君……そうです、うちの唯一の男子部員……」

久「あー……私も思い出したわ。須賀君……何で忘れてたのかしらね……」

まこ「んっ……ん? もう終わりけえ」

まこ「おー、京太郎。なんじゃ随分と久しい感じがするのお」

京太郎「皆も!!」

優希「よし、成功だじぇ!」

咲「こ、これは一体……」

和「私からも事情の説明をお願いします。まだ少し頭は混乱してますが……ゆーき、貴女の行動が原因でこうなったというのは、もうきちんと思い出せますからね?」

まこ「ほうじゃのう。いまさら関係ないといっても、そうはいかんけえの」

久「私は皆みたいに現場を見てなかったから詳しいことはよく分からないけど……」

久「私が須賀君のことを忘れてしまった原因はあなたにあるってことだけは理解したわ。どういうことなの、優希」

優希「ん。皆が混乱するのも無理はないじぇ……。私もいきなりすぎたと反省してるじぇ」

優希「でも、きちんとした事情があってのことなんだじょ」

和「だから、それを説明してくださいと言っているんです! 今日のゆーきは、発言が一々回りくどいです!」

優希「す、すまんじぇ。……ちょっと、皆には信じられない事かもしれないケド……これから話すことは全て事実だじぇ」

優希「心して聞いてくれ。先ず――」

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咲「京ちゃんが世界を滅ぼす……精神エネルギー……」

久「和じゃないけど、そんなオカルトありえません、って叫びたくなっちゃうわね……」

和「私もですよ……。というより、普段なら私も即、ありえないものと断定しているところです……が」

まこ「わしも和も咲も、そのありえんことを身を以って体験してしもうたからのお」

久「私はそこに居合わせなかったけどね」

久「でも、須賀くんがあんなものを出すところを見ちゃったら、流石に信ざるを得ないわよ……はあ……」

京太郎「な、なんかすんません。俺のせいでこんな面倒を……」

咲「きょ、京ちゃんは悪くないよ! 今までは何も知らなかった訳だし……」

久「確かにね。訳の分からないうちに透明人間にされたり、まこにぼこぼこにされたり……」

まこ「そりゃ混乱もするっちゅうもんじゃ。むしろ一番の被害者は京太郎といっても差し支えはないと思うがのお」

和「ええ。謝るべきなのはゆーきです! 幾ら世界を救うためとは言え、もうちょっとやり方というものがあったでしょう!」

優希「う、それは……」

久「まあいいわ」

久「それで、須賀くんが透明にされた理由っていうのをまだ聞かされてないんだけど……そこのところはどうなの?」

咲「あっ! そういえば確かに……」

京太郎「あ、そうそう! 実は俺もまだそれを聞いてねえんだ!」

優希「ん……といってもまあ、うすうす感づいてる人も居るとは思うケド」

優希「単純に言えば、京太郎の消滅する時期を引き延ばすため、だじぇ」

京太郎「俺の消滅する時期を……? 俺を透明にすることが、どうしてそれに繋がるんだよ」

優希「京太郎の存在力が漏れ出す原因の一つに、『京太郎が誰かに認識されること』というのがあるんだじぇ」

優希「それは、誰かが頭の中で京太郎を思い浮かべても同じなんだじぇ。だからこそ、誰の目にも、誰の記憶にも、京太郎が存在しない状態を作らなきゃならなかった」

優希「かといってまあ、私にさえ認識されなくなっちゃったら元も子もないから、そこらへんはきちんと調節したけどな」

咲「ず、ずる……じゃなくて。そうすることで、京ちゃんの存在力の漏洩を極限まで抑えたってことなんだね」

優希「そうだじぇ!」

久「成る程ね。それは分かったわ……」

久「じゃあ次。どうして今私たちの記憶を元に戻したの? 須賀くんが誰の記憶からも消えている状態がベストっていうなら、事態が解決するまでそうしておけばよかったじゃない」

京太郎「たはは……」

久「あ、ち、違うのよ? 別に、あなたが消えてるのが私にとっていいことっていうわけじゃないから、ね?」アセアセ

京太郎「大丈夫ですよ。きちんと分かってます」

久「そ、そう? ふふ、ならいいけど……」

優希「」ムッ

優希「……。事態が解決してないのに皆の記憶を戻したって言うよりは、事態を解決するには皆の記憶を戻さざるをえなかった、といった方が正しいじぇ」

咲「え、それって……」

和「私たちの力が必要だった、とかそういう感じなのでしょうか?」

優希「ずばりだじぇ。タコスの国にはある逸話があってな……」

優希「それは、ある1人の勇者が5人の従者を引き連れ、冒険の末にタコス大魔神を倒す……というものなんだじぇ」

優希「私の頭に響いた声は、それをヒントにこの先行動しろと言っていたから……恐らくこの先、京太郎には私以外にも4人仲間が必要になると推測したんだじぇ」

久「その4人の仲間ってのが私たちね?」

優希「そうだじぇ」

優希「……どうか、お願いするじょ……。皆! 京太郎を助けるため、そして世界を救うため、私に力を貸してくれ!!」ドゲザ

京太郎「優希……!」

京太郎「お、俺からもお願いします!! 俺を助けるため、っていうのがイヤなんだったら、それでいい! でも、世界を救うためには皆の力が必要なんだ……!!!」ドゲザ

咲「きょ、京ちゃん……優希ちゃん……」

和「……ふう。全く、そんな答えの分かりきった頼みに態々土下座なんて……」

まこ「ほうじゃの。ちょっとやりすぎってもんじゃ。もうちぃと簡潔に頼めんのか?」

久「あなたたちが困ってるって言うのに……それを助けないなんて、部長失格だわ」

優希「え、じゃあ……!」

久「ええ。勇者須賀くんのパーティに、私たちも入れさせてもらうことにするわ」

久「それで良いわよね、皆?」

咲「はい!」

和「もちろんです」

まこ「じゃな。わしのワカメ・クリムゾン……今度は、京太郎を救うために使わせてもらうとするかのお」

京太郎「み、皆ァ……」ウルウル

京太郎「ありがとう! ありがとう!」ウワァァァ

久「ふふ。何も泣くことはないじゃない」

咲「あはは。京ちゃんがこんなに泣くところを見るの、私初めてだよぉ」

優希「ぶっさいくな泣き顔だじぇー!」

京太郎「う、うる゛ぜぇっ!」グスグス

アハハハハ……

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今日はここまで

こっから新規です

パーティ結成乙
レズっ気があって尚且つ咲の矢印が京ちゃんに向いてるのに、京ちゃんの事をちゃんと仲間だと思ってるげな和って何か珍しい気がしてきた
でもそれが普通なはずなんだよなぁ
いやまぁまだ人物相関図は明確では無いかも知れんけど

カバー裏みたいな凄い展開で混乱しちゃったけど…
とりあえず>>1が仮面ライダージョーカーにロマンを感じているってことで良いかなぁ…ほら京太郎と翔太郎って一字違いだし(混乱)

>>85
このssの原村さんにも一応、少しだけサイコレズ成分は入ってます。

>>87
実際、このssの元ネタはカバー裏物語ですしね
仮面ライダーで見たことあるのはキス魔の怪人が出てくる回だけです(半ギレ)


投下します

 こうして俺達はまたひとつ、絆を深めることができた。

 部長の冗談に染谷先輩が突っ込みを入れて、咲と和はその様子を笑って、そして優希が何故か俺をからかう。

 皆には大会の練習があるから邪魔しちゃいけない、と最近は部の輪に入ることを遠慮していたものだから、皆が出すその暖かい空気が余計に、俺の心に染み渡った。

 世界が滅亡しかけてるこの時になってようやくか、って考えるとちょっと苦笑いがでちまうけど、まあそれはそれ、これはこれ。別に気にすることはないだろう。

 

 部室での事情の説明が終わった後、俺達は優希に連れられてタコスの国に訪れた。

 部長達は案の定、ここに初めて来た時の俺みたいに、口をあんぐりと開けて驚いていた。

 本人達からしたら冗談ではないってことは俺もよく分かってるけど、やっぱりその様子はどこかおかしくて。思わず何度か噴出してしまった。

 その度に突き刺さる和の恨めしそうな視線さえ、今の俺には何だか心地よかった。ああ別に、俺がMになったって訳じゃないからな? 本当だぞ?

 道中での優希の説明によると、俺達『勇者のパーティ』はこの先にいるタコス光明神に会わなくてはならないそうなのだが、それには先ず、幾つかの試練を乗り越える必要があるとのこと。

 それがどのような試練なのかは優希にも全く検討がつかないらしい。

 ただ、どれも一筋縄じゃいかないものばかりだっていうのは、説明を受けるまでもなく分かる。多分、部長達もそれは悟っているだろう。

 色々と不安はあるけど……でもそれ以上に、清澄高校麻雀部の皆が味方でいてくれてるってのが頼もし過ぎた。

 だから多分、道中の俺の顔は暗く染まってはいなかっただろう。



 試練についての説明が終わり、優希によるタコスの国観光案内もまたひと段落着いたところで、俺達は大きな扉の前にたどり着いた。

 タコスの形をした紋章が中心にでかでかと描かれた、両開きの石扉だ。

 顔を大きく上に向けなければ全貌を知ることもできないほど巨大で、正に全ての存在を見下すかのように聳え立っているその扉の両側からは、物々しい石壁が生えており、それが扉の先とこちらとを完全に隔てている。

 俺は直感的に悟った。

 この扉の先に、試練が待ち受けているんだと。

 自然と顔の筋肉が引き締まっていくのを感じつつ、俺は皆と共に歩を進めていった――

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<試練の扉前>

京太郎「これ、が……試練の扉」

咲「や、やっぱり凄い威圧感だよ……」

和「これがとても大きいというのは遠くからでも分かりましたが……こう、間近で見るとやはり圧倒されてしまいますね」

久「ええ。な、何だかゾクゾクしてきちゃったわ」

まこ「こりゃ。わりゃあ何を口走っとんのじゃ……」

久「でも、まこだってかなりキてるんでしょ? 表情を見れば分かるわよ」

まこ「ふふ。まあの……」

優希「染谷先輩のワカメ・クリムゾンがあれば百人力だじぇ!」

まこ「んー? あれをありきたりなもんってバカにしたんは、どこの誰じゃったかのお?」

優希「うっ……。そ、それについては何度も謝ってるはずだじぇ……。皆の注意を京太郎から引き離すために、あえてやったって……」

優希「でも、例えそうだとしても、言ってはならないことを言ってしまったっていうのはきちんと自覚しているつもりだじぇ。染谷先輩が許してくれるまで、何度だって謝るつもりだじょ」

優希「本当に、ごめんなさいだじぇ」ペッコリン

まこ「ははは。冗談じゃ、冗談。あん程度で後輩を恨むほど、わしも心の狭い人間じゃあないけえのお」

優希「せ、せんぱぁい……」ウルウル

まこ「ほれほれ。泣いとる暇があるなら、この扉をどうやってくぐりゃあいいのかを教えてくんさいな」ナデナデ

優希「うっ……うん」ゴシゴシ

優希「えっと……この扉はメチャ堅牢な作りをしてて、殆どの攻撃を全く通さないじぇ」

優希「それこそ京太郎の力を全部解放するでもしない限り、ぶち破ることはできないんだじぇ……」

久「へえ。見た目以上の防御力を誇ってるって訳ね」

優希「でも、安心して欲しいじょ。『声』はきちんとこのことについても説明してくれていてな」

優希「『声』によれば、『勇者のパーティ』全員で一斉にある言葉を唱えれば、この扉は開かれるそうだじぇ」

咲「へー! 秘密の呪文かぁ……なんだか本当に小説の世界に入り込んだみたいだよ」

和「その感想はちょっと今更な気がしますけどね……」

久「それで、その言葉って言うのは……?」

優希「その『声』によると……確か」

優希「『開けタコス』だった筈だじぇ」

京太郎「……ん? 『開けタコス』……? え、それで全部なのか?」

まこ「こりゃまたずいっぶんと安直な呪文もあったもんじゃのお……」

咲「う、うーん……何だかちょっと残念な気はするけど……」

久「あははっ。でもまあ、なんだかユルくっていい感じじゃない? 私達らしい、というか」

和「ふふふ、ですね」

優希「えへへ。気に入ってくれたようだじぇ? なら、早速だけど始めるとするじょ」

優希「皆、準備はいいか?」

京咲和ま久「おー!」

優希「よおし、じゃあ……せーのでいくじぇ」


優希「せーーーーーのっっ!!!」







一同『開けっっ!! タコス!!!!』


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


京太郎「うぉっ、ひ、開いた!」

まこ「ま、マジでこれで良かったんか。半信半疑じゃったけど」

優希「むっ、いくらなんでも嘘をついたりはしないじぇ!」

まこ「わ、わーちょるわーちょる」


ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


久「あ、見て見て皆。扉の先が見えてきたわよ……って、あら」

和「い、入り口全体が濃い霧で覆われていますね」

咲「ほ、本当だ。すっごい濃い霧……ほんのちょっと先も見えないや……」


ゴゴゴゴ……ズゥン

京太郎「扉は開き終わった、けど」

優希「霧は相変わらずそこにあるまんまだじぇ」

まこ「のお、優希。この霧について、何か『声』から聞かされとることはないんか」

優希「いや、私が聞くことができたのは扉を開く方法までだじぇ……」

久「じゃあつまり、この霧も試練の一環ってワケね……」

咲「こっからはもう試練……。な、なんだか怖くなってきちゃった……」

和「大丈夫です。何があっても、私が咲さんを守り抜いてみせますから」ギュッ

咲「ふぇっ? あ、うん……」

咲(の、和ちゃんも十分怖いけどね……)

京太郎「でも確かにこの霧、得体が知れねえな……足を踏み入れた瞬間にはもう死んでました、ってなっても不思議じゃないっていうか……」

咲「し、死っ!? あわ、あわわわわわわ……」ガタガタ

和「す、須賀くんっ! あ、あなたはどうしてそう、縁起でもないことばかりいうんですかっ!!」

京太郎「あ、す、すまん……」

優希「えっと、盛り上がってるところ悪いケド……そこらへんは安心するといいじぇ。先ず間違いなく、この霧を通っても死ぬことはないじょ」

まこ「ん? どうしてそう言い切れるんじゃ? いんやもちろん、死なないに越したことはないんじゃが」

優希「これは悪魔からの試練じゃない。タコス光明神からの試練なんだじぇ?」

優希「タコス光明神は誠実な心を持った人にはとことん優しいことで有名でな」

優希「人を計ることはするだろうけど、『殺す』ことは無いはずだじょ。特にそんな、『霧をくぐった奴を片っ端から死なせる』みたいな初見殺し染みた真似をすることは決して無いと言えるじぇ」

久「へえ。なら、もう答えは決まったも同然ね!」

咲「え、えと……もう入るん、ですか……? この霧の中に……」

和「やっぱり不安ですか?」

咲「う、うん……。ご、ごめんね、部室ではあんな風に偉そうなこと言っちゃったけど……」

咲「死って言葉が絡んじゃうと……どうしても、足が竦んじゃって。優希ちゃんの言う通り死ぬことは絶対に無いって、そう思い込もうとしてるんだけど……」カタカタ

京太郎「咲……。すまん、俺があんなこと言わなきゃあ……」

咲「ううん。京ちゃんのせいじゃないよ。怖がりな私が悪いだけ……」

和「大丈夫ですよ、咲さん……私も、皆も、貴女と一緒に入ってあげますから」

咲「の、和ちゃん……」

和「このまま何もしないでも、どうせあと数ヶ月後には世界は滅亡してしまうんですよ?」

和「数ヵ月後も今もそんなに変わらない、といえば嘘になってしまいますけれどね」

和「世界を救うことを諦めて死ぬか、世界を救おうとして死ぬか……」ビーム

咲「っ?」チクッ

和「どちらかと言えば、後者の方がロマンチックじゃあありませんか?」

咲「……」クラクラ

和「それに、万が一咲さんがここで死ぬ運命にあるのだとしたら……私達だって同じです」

和「死なばもろとも、ですよ?」フフッ

京太郎(おー……すっげえ)

優希(やっぱりのどちゃんはいいお嫁さんになるじぇ……)ウンウン

優希(京太郎は死んでも渡さんケドな!)キッ 

久(うーん。女の私でも惚れ惚れしちゃうわね、あの健気さには)

まこ(喰らえや、ワカメ・クリムゾン!! ……いや、微妙じゃな。もうちっとこう、インパクトのある感じで……)ウーン・・・

咲「……」クラクラ

咲「!」ピクッ

咲「そう、だね……。ごめんなさい。私、ちょっと我侭になりすぎてたみたい」

咲「皆が死さえも恐れずに、危険へと飛び込もうとしているにも関わらず……」

咲「私だけは自分の身を案じ、更に浅ましくも悲劇のヒロインを演じていた」

咲「この世全てが混沌の内へ飲み込まれようとしているこの時になってさえ、なお」

京太郎「ん、んん……?」

久「は?」イラッ

和「咲さん……」

優希「咲ちゃん……」

まこ「咲……」

咲「でも、もう大丈夫! 和ちゃんの激励が、私の胸に消えることの無い紅蓮の炎を灯してくれたから」

咲「和ちゃん、この手をとって!」スッ

和「は、はい……」ウルウル

和「はいっ……!!」ギュッ

咲「ふふ。よし、じゃあ行こうか……一緒に飛び立とう……この、無限の大空へ!!」

和「はいっ、はいっ!!」コクコク

京太郎「入るのは霧の中にってことはきちんと覚えてるか?」

優希「……なあ、京太郎」

京太郎「ん?」

優希「私、咲ちゃんのこと正直侮ってたじぇ」

京太郎「え?」

優希「この戦い、小心者なところがある咲ちゃんにはすこし荷が重過ぎるんじゃないか、と常々思ってたんだじぇ」

優希「莫大なタコスぢからを持つ私にとってさえ、達成率0.001%の使命だからな」

優希「……でもどうやら、それは杞憂で終わってくれたようだじぇ。数瞬前まで、咲ちゃんは誰よりも心に不安を抱えていたにも関わらず……」

優希「ほら、今ではもう」

咲「」キラキラ

優希「あんなに顔を輝かせてるじぇ……!!」

優希「これが咲ちゃんの心根の強さがなした業なのか、それとものどちゃんと咲ちゃんのゆうじょ、じゃない愛が成した業なのか、そこまでは分からない」

優希「ケド、のどちゃんは咲ちゃんの嫁になるべき……これだけはハッキリと言えるじぇ……」

和「ゆ、ゆーきったら……」ポッ

京太郎「そ、そうか……」

京太郎(イキナリ何言ってんだよこいつ……)

久「ま、こんな茶番はとっとと終わりにして、早速実行に移すとしましょう」

久「咲、もう大丈夫なのよね?」

咲「はいっ! まだちょっと不安はありますけど……でも」チラッ

和「……」コクリ

咲「和ちゃんと一緒ならどk」

久「はいはい」

久「よし、皆手をつないでー! あ……咲と和は二人だけでのほうがいいわね」

久「じゃあ須賀君を中心にして、それを私とまこが挟むような形で行きましょう。優希はまこの空いたほうの手を握ってちょうだい」

京太郎「え? あっ、は」

優希「は? なんでそこで私が一番後に回されなきゃいけないんだじぇ?」

京太郎「ゆ、優希?」

久「あら? ダメだったかしら。同意が得られなくて残念だわ……。
  でもね、優希。何事においても、目下の者には目上の者の顔を立てる義務が発生するのよ? 年長者は敬うべきって、そう習わなかった?
  それくらいの社会常識くらい、あなたなら持ち合わせていると思ったんだけど……」

優希「長々と何言ってんだこいつ。後輩の顔を立てるってこともできないポンコツに言われたかないじぇ」

久「んん? もういっか――」

まこ「まーまー。落ち着きんしゃい二人とも。下らんことで争いなさんな」

優希「で、でも……」

まこ「わしは別に京太郎の隣なんざ欲しゅうないけえのお。わしを一番後に回せばいいんじゃよ。つまり、部長と優希で京太郎を挟んで、わしが部長の空いたほうの手をとればいいっちゅうことじゃ」

優希「そ、それなら良いじぇ! それが良いじょ! 完璧! 天才!!」

まこ「ん。部長も、それでいいじゃろ?」

久「むー……まこがいいなら、ね」

まこ「いやいいも何も本当に、わしは京太郎の隣が欲しいわけじゃあない。勝手にわしを争奪戦のメンバーに加えるのはやめえ」

まこ「この取って付けた様な修羅場展開は何なんじゃ」

まこ「ワケが分からん」

久「愛、かしらね」

まこ「は?」

優希「えへへー、京太郎ー! 一緒に入るじぇー!」ギュッ

京太郎「おう……じゃあ、部長も」スッ

久「ん、ありがとう」ギュ

久「……まこ」スッ

まこ「ほい」ギュッ

和「私達もいきましょう、咲さん!」

咲「うんー!」


久「じゃあ、清澄高校麻雀部……」

久「再度出発進行よ!!」


一同「オーー!!」


ザッザッザッ(大行進)




咲「ん、ん……?」

咲(……あれ? 私今まで何を)

咲「って、え? 霧!? うそ――」


コオオオオオオ……

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___________

<第一の試練の間>

京太郎「こ、ここは……?」

優希「随分と華美な装飾がなされた広間だじぇ……」

咲(あ、あれ? なんだったんだろ今の……)

咲(でも、皆なんともなさそうでよかったよぉー)ホッ

和(……)

久「見たところ、ここも試練に関係してる場所っぽいわね」

まこ「じゃのお。いかにもそれっぽい感じじゃあ」

咲「――っ!」ハッ

咲「あそこ……誰かいる!」

京太郎「え?」チラッ



??×5 ゴゴゴゴゴ



京太郎「うぉっ! ま、マジだ」

久「もしかして……門番みたいなものかしら」

??1「ふっふっふ……よー来たな、清澄の!」

??2「ご推察の通り、私らがここの守護者や」

??3「こっから先に行くには、私達を倒さなきゃならんのよー」

??4「あんたらがタコス光明神に謁見するにふさわしいかどうか、私らがここで見定めたる!!」

??5「……。あの、はい。特に言うことはありまへんけど、うちも一応守護者です」

京太郎(な、何だあのダッサイフード……トルティーヤ色、っていうのか?)

優希(おいしそうだじぇ……)ジュルリ

久「へえ、あなた達を倒す……?」

まこ「そりゃあつまるところ、あんたらをぼこぼこにすりゃええっちゅうことか?」

??1「ず、随分と物騒なやっちゃな。いんや、そうやない。倒すっちゅうのはつまりやな……」

??4「お姉ちゃん、お姉ちゃん。説明の前に先ず、私らの自己紹介をせな」

??1「あっ! せやったな。こりゃ失敬失敬……」

??1「おう、清澄の! 試練の説明は後や! 先ずはうちらの名前をその胸に刻みこんどきぃ!」

??2「やっと、このアホダサいフードを脱げるんやな……」



バサッ!!



清澄勢「!!」

久「ちょっ!? う、嘘でしょ。あれって……」

(??1改め)愛宕洋榎「さんころりー」バン!

(??2改め)末原恭子「デコに油性マジックやー」バン!

(??3改め)真瀬由子「のよー」バン!

(??4改め)愛宕絹恵「お姉ちゃーん」バン!


バーーーーーーーz_________ン



(??5)上重漫「あれ、うちは……?」




久「め、名門姫松高校!?」

京太郎「え、姫松? ま、ま、まま、マジかよ!! あの、全国常連校の!? あの人たちが守護者……ってそんなバナナ!」

優希「ぶったまげたじぇ……」

咲「な、なんでそんな……」

和「にわかには信じがたいですね……。まさか、こんなところで会うことになるとは」

まこ「お、おう……。わしもあやつらと会うことになるのは全国大会で、とばかり思っちょった」

洋榎「ふふーん。その様子を見る限りやと、どうやらうちらの自己紹介はわざわざせんでもええみたいやな!」

久「あ、愛宕、洋榎……。エースまで居るなんてね……」

絹恵「おおー。やっぱりお姉ちゃんは有名人さんやなあ」

洋榎「ぬふー。せやろー? 流石やろー?」

由子「調子に乗りすぎるんはよくないんよー」

恭子「ま、どうやらあの人たちも麻雀部みたいですからね。名前を知られてるんは主将だけに限った話やないでしょう」

漫「!」

漫「な、なあ、そこの茶髪のおねーさん! うち、うちのことも知っとるか!?」

久「え? 私? え、ええ。上重漫さん、よね?」

漫「そ、そうですそうです!! よ、よかったぁ……うちの名前もちゃあんと知ってくれとる人が居て……」

恭子「何言うとんのや。漫ちゃんかてうちのレギュラーとして十分やってくれとるやないか。名前知られてへんっちゅう方がむしろ不自然なくらいやで」

漫「す……」

漫「末原せんぱぁあああああああい!!!」ダキッ

恭子「おっとっと。しょうがない子やなー、漫ちゃんは……」ナデナデ

洋榎「あー……ほんまに恭子の『漫ちゃんラヴ』っぷりは凄まじいなー」

洋榎「……ま、漫が調子乗り過ぎん程度に抑えるんなら、別に甘やかそうが文句言ったりはせんけどな……」

恭子「はいはい」

漫「末原せんぱーい、もっと撫でてぇな……」スリスリ

>>112 訂正

恭子「ま、どうやらあの人たちも麻雀部みたいですからね。名前を知られてるんは主将だけに限った話やないでしょう」

漫「!」

漫「な、なあ、そこの茶髪のおねーさん! うち、うちのことも知っとるか!?」

久「え? 私? え、ええ。上重漫さん、よね?」

漫「そ、そうですそうです!! よ、よかったぁ……うちの名前もちゃあんと知ってくれとる人が居て……」

恭子「何言うとんのや。漫ちゃんかてうちのレギュラーとして十分やってくれとるやないか。名前知られてへんっちゅう方がむしろ不自然なくらいやで」

漫「す……」

漫「末原せんぱぁあああああああい!!!」ダキッ

恭子「おっとっと。しょうがない子やなー、漫ちゃんは……」ナデナデ

洋榎「あー……ほんまに恭子の『漫ちゃんラヴ』っぷりは凄まじいなー」

洋榎「……ま、漫が調子乗り過ぎん程度に抑えるんなら、別に甘やかそうが文句言ったりはせんけどな……」

恭子「はいはい」

漫「末原せんぱーい、もっと撫でてぇな……」スリスリ

恭子「おーおー、よしよし」ナデナデナデナデ

漫「ふわぁ……」

洋榎「ったく……」イライラ

絹恵「……」ウズウズ

洋榎「……ん? 絹、どうしたんや。さっきからえろうせわしな――」

絹恵「お、お姉ちゃーーーんっ!!!」ダキッ

洋榎「うへえっ!? き、絹!?」ドサッ

絹恵「す、末原先輩が『漫ちゃんラヴ』なら、私は『お姉ちゃんラヴ』や!!」

絹恵「お姉ちゃん、最近は『練習』ばっかで私に全然かまってくれへんかったやろ?」

絹恵「だから、私えらい寂しくて……」

絹恵「でもあんまわがまま言うてお姉ちゃんに迷惑かけるんもあれや思うて、ずっとガマンしとったんや……」

洋榎「絹……」

絹恵「だけど、あの二人の様子見てたら、なんだか抑えがつかんくなってしもうて……」

絹恵「だからな……お姉ちゃん? 末原先輩が漫ちゃんにやってあげとるみたいに、私のこと……なでなでしてくれるか……?」

洋榎「……なんや。そないなことか……」ゴゴゴ

絹恵「お、お姉ちゃん……?」

洋榎「そんなん……そんなん……!」グワッ!

絹恵「え、おね――」

洋榎「ええに決まっとるやろがぁあああああああああ!!!!」ナデナデナデナデナデ

絹恵「ふわぁっ!?」

洋榎「すまんなぁ、すまんなぁ! 絹がこんなにも苦しんでたっちゅうのに、うちはそれに気付きもせんかった……」ナデナデナデ

洋榎「姉、失格やぁあああああ!!」ナデナデナデナデナデナデ

絹恵「お、おねえちゃぁん……ちょ、ちょっとやりすぎぃ……」ヘナヘナ

洋榎「わっ!? き、絹!? しっかりせえ! きぬぅうううううう!!!!」ユサユサ

絹恵「ゆ、揺らさんといてぇー……」

絹恵(でも、何だか幸せやぁー……)ポワポワ

由子「ほらほら四人とも。惚気るのはそこまでにするのよー」

洋榎「お……? なんや由子。いくら由子と言えど、うちら姉妹の団欒を邪魔するんはゆるさんでー!」

恭子「主将の言う通りや」

由子「いやいや。あそこ、見てみるのよー」ビシッ

洋榎「……ん?」



清澄勢「……」ポカーン



洋榎「あっ」

恭子「あ、あー、完全に忘れとったわ……」

漫「せんぱぁい……?」

恭子「あっ! す、漫ちゃん! 堪忍な……。うちらにも守護者言う立場があるんや……」

漫「うぅ……」

恭子「す、漫ちゃん……」ダキッ

絹恵「おねぇちゃーん……?」

洋榎「絹ぅ! ……あああああ! やっぱり無理や! 耐えられんわこんなん!!」ナデナデナデ

由子「ちょ……」

由子「あの、清澄さん達。も、もうちょっとだけ待ってて欲しいのよー……」

京太郎「は、はあ……」

久「真瀬さんも苦労してるのね……」

まこ「何が“も”じゃ何が。あんたは苦労をかけるほうの人間じゃろ」

~10分後~


洋榎「んっふっふ! 待たせたな清澄の!」

絹恵「私達のボルテージはマックス! もはや隙はありゃしませんでー!」

由子「絹恵ちゃん、いつに無くテンション高いのよー」

恭子「いや、何かほんますんません清澄さん。私、漫ちゃんのこととなると周り見えなくなってしまうもんで……」ペコ

漫「うちも、末原先輩に撫でられるといつも意識が朦朧としてしまって……抑えが効かんくなるんです。ほんま、すんません!」ペコリ

京太郎「い、いえいえ。お構いなく」

優希「良いもん見せてもらったからな! オアイコってやつだじぇ」

咲「あ、あれって良いものだったのかな……?」

和「それより、早く試練とやらを始めましょう。私達にはもう、あまり時間が残されていないので」

洋榎「ん、せやな」

洋榎「よっしゃー! お前ら心して聞いとけやー! うちらが課す試練……それはっ!」



バッ!

京太郎(えっ!? い、一斉に制服を脱いだぁっ!?)

咲「えぇぇ!?」

久「ちょ、これマズいんじゃあ――」







洋榎「ヘイ!」バン!

由子「ヨー」バン!

恭子「チェケ!」バン!

絹恵「ラッ」バン!

漫「チョー!」バン!






京太郎「……って、あれ?」

久「裸にはなってない……? っていうか、何アレ!? ラッパー!?」

咲「な、なんかよく分からないけど、姫松の人たち皆、いつの間にかヒップホップ系の服着てるよ……」

和「えっと……。どこから突っ込めばいいのか分からないんですけど……。制服を着ている時よりも圧倒的に肌面積が狭まっているってどういうことなんですか? SOAですか?」

まこ「もうわけわからんわ……。流石に泣きたい」

優希「ま、ここタコスの国だし。何でもありだじぇ」

洋榎「ちゅーわけや……」

洋榎「うちらからの試練はラップバトル♪」

恭子「泣く子も、黙るラップバトル♪」

絹恵「死にに行く準備はちゃんとできとる?♪」

漫「全てはここに、ラップバトルー!♪」

由子「のよー♪」

京太郎「え、ええぇ……」

久「予想の斜め上なんてレベルじゃないでしょうこれ……」

咲「えっ、そ、そんな……私、ラップなんてやったことないよ……」

和「わ、私もですよ」

まこ「ほんにふざけとるのぉ、この世界は……」

優希「何でもありだからな。正直、こんな感じのことになるのは予想してたじょ」

優希「ま、まあ、だからって何の疑問も無く受け入れられるかって言ったらそれは違うけどなっ!」ガタガタ

洋榎「ルールは簡単や。先ず始めにお互いのチームの代表者同士でジャンケンをする」

洋榎「勝った方のチームが後攻、負けた方のチームが先攻、や。まあ、先攻やろうが後攻やろうがあんまり変わりはせんけどな」

洋榎「んで勝負の形式やけど、チームのメンバー全員が順番にラップを歌っていく感じになる」

洋榎「その順番っちゅーのはそっちで好きに決めてええ。大会のオーダー順、とかおもろいかもな」

洋榎「最終的な評価はあそこにある……」


ドン! タコスマシン ドン!


洋榎「タコスマシンが出してくれる。チームの総合点で勝敗が決まるから、一人だけ突出したラップを歌っても勝つことは出来んで」

洋榎「ま、うちからは以上や。質問は?」

京太郎「い、いえ、大丈夫っす」

久「私もよ。他の皆は? 大丈夫?」

咲和優「「「はいっ!」」」

まこ「おうッ! もうヤケクソじゃあ!」

洋榎「よしよし。じゃあ、そっちの代表者を決めえ」

久「えっと、私でいいわよね?」

優希「異存はないじぇ」

京太郎「お願いします!」

久「よーし、任せて! 絶対に後攻を取ってやるわ!」グルグル

まこ「んー……まあ確かに、手本を見せてもらってからの方がやりやすいかもしれんのお。頼んだわ」





洋榎「さいしょは」

洋久「グー!」

久「じゃん、けん!」



洋榎「ポンッ!」パー
久「ポンッ!」チョキ

久「よしっ! 狙い通りっ!」

咲「す、すごい!」

京太郎「流石は部長だぜ!」

優希「よっ! じゃんけんの天才!」

久「あなたたち、遠まわしに馬鹿にするのは止めて頂戴ね?」

洋榎「ほぉ、なかなかやるやないか……」

洋榎「ま、それが吉となるかはまだ分からんけどな」

恭子「ええ。後攻を取ってしまったことを後悔させたりましょう」

絹恵「私達のラップで、清澄さんたちの意思を萎縮させたるでー!」

由子「抗おうとする気持ちさえもすべて消し去ってやるのよー」

漫「な、なんや随分物騒ですね」

バンッ

バンバンッ


久「おっ? へー、ナイトクラブって感じの照明……。こんな機能もあるのね」

京太郎「な、なんか緊張しますね」

咲「私達もやるんだって思うとね……」

和「まあ、ここは相手の技をコピーすることに専念しましょう。相手の力を借りるんです」

優希「私ものどちゃんの胸を借りたいじぇー。あわよくば揉みたいじぇー」

和「そんなこと、微塵も思ってないでしょう?」

優希「まあな」

チャカポコチャカポコ…


京太郎「あ、なんかバックミュージックっぽいのが流れ始めましたね」

久「さぁ、見せてもらいましょうか……! 姫松のラップとやらを!」



洋榎「ん……もういつでも始められるで」

恭子「オーケーです。『練習』の成果、今こそ見せる時……」

由子「私もオッケーなのよー」

絹恵「私も大丈夫やで、お姉ちゃん!」

漫「私もです」

洋榎「よぉし! じゃあ……」





洋榎「ミュージック、スタートや!!!」

ズン、チャ ズンズン、チャ ズン、チャ ズンズン、チャ

咲(ゴクリ・・・)

ズン、チャ ズンズン、チャ

ズン、ズン、チャ


洋榎「スゥー」

洋榎「うちら、姫松高校! ま・あ・じゃ・んぶぅー!♪」

久(!?)


洋榎「言っとくけどな! 最強やから! そっこんとこ、よろしくな!♪」

洋榎「ん、何? あんまし強そうやない? いらんお世話やほっちっちー♪」


ズン、チャ ズンズン、チャ ズン、チャ ズンズン、チャ


久(お、思ったよりも子供っぽい歌詞だったわね……)


ズン、チャ ズンズン、チャ

ズン、ズン、チャ


由子「のっよー! のよのよー、ののよののよー!♪」

優希(おっ)

咲(え)


由子「のっよののよの、のっよのっよー!♪」


由子「のよ! っののよ! ののよのののよ! ののよのーよ、のーのーのーよー♪」


ズン、チャ ズンズン、チャ ズン、チャ ズンズン、チャ


優希(単純ながらもどこか美しいラップだったじぇ……)

咲(い、今のラップって呼んでいいのかな……)


ズン、チャ ズンズン、チャ

ズン、ズン、チャ

絹恵「そこで配ってるビラを受け取り!!」

京太郎(えっ)


絹恵「四人五人と騙されるモンキー!!」


絹恵「『繰り返すだけでいーんですかホンマに!? マジで言ってます? Oh,really?』♪」


ズン、チャ ズンズン、チャ ズン、チャ ズンズン、チャ


京太郎(な、なんか今の聞いたことがあるような……)


ズン、チャ ズンズン、チャ

ズン、ズン、チャ

恭子「うちの漫ちゃん かわいい漫ちゃん 美人な漫ちゃん “でっかい”漫ちゃん♪」

まこ(……)


恭子「世界は君の掌の上で 踊り、続けてるだけの様で♪」


恭子「その内に潜む巨大なエネルギー 向かう敵を全て消し炭に♪」


恭子「一度ついたら、導火線 決して誰にも止められん♪」


恭子「任せたで漫ちゃん!」パチン


ズン、チャ ズンズン、チャ ズン、チャ ズンズン、チャ


漫「すぅー……はぁー……」


ズン、チャ ズンズン、チャ


ズン、ズン、チャ


漫「」キッ!













漫「ブッパ! ブッブッパ! ツッツッパ! ツツッツツッパ!」


清澄一同「!?」

洋榎「は?」

恭子「……え?」

絹恵「え?」

由子「よー?」


漫「ブパッ! ブッパ! プポポ スゥー(ブレス) ポッ! ブピッ!!」


漫「ボッ!!!!(マイクのノイズ)」


洋榎「おい、やめえや」



漫「ブブポ! ブブポッポ! ピャポッポ!」

洋榎「おい!」



漫「ボ……ボピュ! プパッパピョプ! ブピッピー!」

洋榎「おい!!」



漫「ブッパ! ブッブッパ! ツッツッパ! ツツ――」

洋榎「オイコラ漫ぅうううううう!!!!! やめろっつってんやろぉがぁああああああ!!!」
 
漫「ピャァアアッ!?」ビクゥゥ!

恭子「しゅ、主将!?」

洋榎「おいお前なにやっとんや……。練習ん時と全然ちゃうやんけ、ああ!? これはラップバトルやぞ? なのになんでそないワケの分からんボイパ聞かされなあかんねん。なあ?」

漫「え、で、でも……。ボイパでラップ表現するんも、え、ええかなって……」

洋榎「あーあー、成る程なあ。ま、メチャ上手くボイパ出来る奴なんやったらそれも許されたんやろうけどな」

洋榎「でもなぁ……! おまえのボイパは屁のラッパなんじゃぁあああ!! 寝言も大概にせえや!!」

漫「ひ、ヒィッ!! す、末原せんぱぁーい!!」スタコラ

恭子「す、漫ちゃん……」ダキッ

恭子「ちょお、主将! いくらなんでもそれは言い過ぎやと違いますか!?」

洋榎「あああ……まーた恭子は『漫ちゃんの味方』かいな。普段は頭ええくせに、ちぃとばかりでも漫がかかわるとすぐこれや」

恭子「んなっ! 別に漫ちゃんを贔屓しとるわけやありません。ただ客観的に見て、主将の漫ちゃんに対する態度はおかしいや思うただけです」

洋榎「あー?」

漫「す、末原先輩……」タジタジ

絹恵「お、お姉ちゃん! 末原先輩も抑えて……!」オロオロ

由子「あ、争うんはやめよー」ノヨノヨ

ギスギス…

>>130 訂正

恭子「ちょお、主将! いくらなんでもそれは言い過ぎやと違いますか!?」

洋榎「あああ……まーた恭子は『漫ちゃんの味方』かいな。普段は頭ええくせに、ちぃとばかりでも漫がかかわるとすぐこれや」

恭子「んなっ! 別に漫ちゃんを贔屓しとるわけやありません。ただ客観的に見て、主将の漫ちゃんに対する態度はおかしいや思うただけです」

洋榎「あー?」

漫「す、末原先輩……」タジタジ

絹恵「お、お姉ちゃん! 末原先輩も抑えて……!」オロオロ

由子「あ、争うんはやめよー」ノヨノヨ

ギスギス…







優希「な、なんだかヤバヤバな雰囲気だじぇ」

久「んー……。なんだか文化祭の出し物で争う高校生って感じね。見てらんないわ……」

まこ「ああいうの、痛々しゅうてしゃあないけえのお……。ガラスの心が壊れる……」

京太郎「ええ……。でも、ああいうのも青春の一つなんだろうなって……そう思います」

京太郎「酸いも甘いも経験してこそ高校生……。今はああして争ってますけど……多分2、3日も経てばケロッと仲直りしてますよ」

京太郎「まあもちろん、あの5人の間に切っても切れないほどの絆が存在するなら、の話ですけどね……」

久「その通りね。文化祭の出し物で争うのも、いわば一つの青春……。成長する上で避けられない、人間関係のこじれ」

久「人はああして大人になっていくのね……」シジミ

まこ「ちょっと調子良すぎやせんかの?」

ガチャッ


咲「――あれ? ねえ、京ちゃん! あれ……扉の方、見て!」

京太郎「え? ――開いてる!? み、皆! よく分かんないけど次の間への扉が開いたぞ!」

和「い、一体どうしてでしょうか?」

久「私達のラップはまだ始まってもいないのに……」

優希「……多分、タコス光明神のご意志だじぇ」

京太郎「タコス光明神のご意志……?」

京太郎「あっ、そういうことか」

久「彼女達に守護者たる資格は無いっていうタコス光明神からの通達ってワケね。うーん……」

まこ「ま、ちとばかし罪悪感はあるが、ここはしゃあない。向こうの都合で足止めを食らうわけにもいかん。静かに立ち去らせてもらうかのぉ……」

京太郎「ですね……」

優希「じぇ……」

咲「……」コクリ

和「全く以って同意です。こんな場所からはとっととおさらばしましょう」

久「じゃ……いきましょうか」


タッタッタッ……


優希「……」チラッ


モウエエ、モウエエワ! オマエラトハゼッコウヤ!
アー、ソウデスカ! カッテニシテクダサイ!
オネエチャ・・・ ノヨー・・・ センパイ・・・


優希(大丈夫だろ多分……)


タッタッタッ……

今日はここまで

<第二の試練の間>

ガチャッ

久「えっと……誰か居ますかー?」

咲「あれ? 今度は守護者さん居ないんですかね……?」


??1「いや、それは違うね!」

咲「――えっ?」

??2「フフフ、ミナサン! ヨウコソシ……シ……」

??3「『試練の間』、ね……」

??2「ソウ! シンレノマヘ!」

??3「ダル……」

??4「あなた達がここまで来てくれて、ちょーうれしいよー」

??5「うん! どうでもいいけど、早く終わらせよう!」

久「わっ! ひ、一人だけ異様に大きい人が居るわね……」

咲「す、すごい……」

京太郎「ほ、本当っすね……。俺よりもでけえ……マジかよ」

京太郎「え、えっと……。とりあえず自己紹介からいきます?」

??1「ん? ああ、そうだね。それがいいかな」

??1「そっちの名前は全部頭に叩き込んでるから、私達の紹介だけしておこうか」

??4「私、自己紹介するのちょーすきだよー!」ワクワク

??5「トヨネは知ってもらいたがりだかんねー」

??4「あっ! く、くるみ! 名前ばらしちゃやだよー」

??5「トヨネだってばらしてるじゃん、私の名前!」

??4「え? あっ、本当だ……」

??1「あはは。どっちもどっちだね」

久「トヨネ……豊音?」

久「岩手の代表校にそんな名前の選手が居たわね。姉帯豊音……だったかしら」

久(あー、言われてみれば確かにあの背丈、姉帯選手と同じくらいね……)

??4「わ、わー! ど、どうしよー! 私、もう既に名前知られちゃってたよー!」

??3「よかったじゃん……」

??4「うんっ! ちょーうれしいよー!」

和「あの。そろそろそのフードを取ってもらいたいのですが」

??4「え? あーっ! 原村さんだ! すごい、ホントに来てくれたよー!」

??2「ホンモノ!」

??1「あはは、まあまあ。向こうも困っちゃってるからさ」

??1「えっと、何かごめんね? 心配しなくても今取るから――さっ!」



バッ!



(??1改め)臼沢塞「ん、初めまして。私は臼沢塞」

(??2改め)エイスリン「My name is Aislinn Wishart!」

(??3改め)小瀬川白望「小瀬川……」

(??4改め)姉帯豊音「改めまして。姉帯豊音、だよー」

(??5改め)鹿倉胡桃「鹿倉胡桃!」

塞「全員そろって、全国大会岩手県代表、宮守女子高校麻雀部です!」

塞「んでもって、私達からの試練は……」




バッ!




塞「ヘイ!」バン!

エイスリン「ヨー!」バン!

白望「チェケ……」バン!

胡桃「ラッ」バン!

豊音「チョー!」バン!



塞「そう! ラップバトル!」


咲「えっ?」

京太郎「ほ?」

和「これは……」

まこ「なんちゅうこっちゃ……」

久「ちょ……」


豊音「ちょーたのしい、ラップバトルだよー」

白望「ダルいだけだって……」

エイスリン「……」カキカキ…

エイスリン「ン!」バッ! ←シロがラップの練習に励む様子を描いた絵

白望「あー……ダル」カァァ

胡桃「あはは! エイちゃんうまい!」

塞「シロも練習がんばってたかんねー」

優希「あ、あんたら、それまじでいってるんか?」

エイスリン「?」

塞「マジで言ってるかって……どういうこと?」

白望「ダル……」

京太郎「い、いやその……」

京太郎「えっと……」

咲「きょ、京ちゃん! 言っちゃっていいのホントに!?」ボソボソ

京太郎「で、でもよ」ボソボソ

豊音「?」ハテナ

塞「えっと、なんかよくわかんないけど、勝負に関係あることなら遠慮せずに言っちゃって構わないよ」

エイスリン「ウェルカム!」

京太郎「わ、分かりました」

京太郎「あの、ですね。俺達がさっき受けてきた第一の試練……」

京太郎「その内容も……」

塞「うん?」



京太郎「ラップバトル……だった、んすよ……」

塞「へー、そうなん……え?」

エイスリン「エ?」

豊音「 え っ 」

シロ「……」

シロ「……ダル……」カタカタ

胡桃「あちゃー……」




















塞「えっ?」

__________________


________________


___________

京太郎「な、何だか申し訳ないですね」

まこ「まー、向こうが通ってええっちゅうたんじゃけえ、それに甘えさせてもらうことにしようや」

咲「で、でも……豊音さんなんて半分泣いてましたよ」

久「う、うーん……。なんか半端じゃない位グダってるわねこの試練。ホントにこれで世界が救えるのかしら……」

優希「流石の私もちょっと不安になってきたじぇ……」

和「まあ、何とかなるんじゃないでしょうか? タコス光明神とやらも居ることですしね」

優希「のどちゃん、なんか荒れてるじぇ?」

和「全ての事が私の理解の範疇を超えてるんです。荒れたくもなりますよ、そりゃ……」ハァ

和「それに……」チラッ

咲「っ!?」ビクッ

和「……ふう」

和「いえ、何でもありません」

京太郎「ま、まあ。結構順応性高いつもりでいる俺でさえ最初はめちゃめちゃ驚いたわけだしな」

京太郎「オカルト嫌いの和ならなおさらそうだろ。その心労は察しますよ……」

和「ありがとうございます。でも、心配されるほどのことではありませんから」

京太郎「そ、そうか? 悪かった」

和「いえ……」

久「え、えっと……」

久「と、とりあえず今は急ぎましょう! どうあれこれしか方法は無いわけだし!」

まこ「ほうじゃのお。この試練がどれだけぐだってようが、今のわしらには関係ない。世界が救われると信じて、先を突き進むだけじゃあ」

優希「うん……」

__________________


________________


___________

今日はここまで
ありがとうございました


何か思ってたよりサクッと進みそうな予感と同時に逆にどこまでもgdりそうな予感もするじぇ

>>146

もうすぐ終わります

少しですが投下していきます

そして、その後も俺達は――

<第3の試練 「出来るかな? 日本語学者の娘としりとり対決!」>

京太郎「えっと……じゃあ、『しりとり』のりから始めますね?」

衣「うむ。衣はそれで構わない」

京太郎「分かりました。んー……『リス』」

衣「『朱雀』」

京太郎「えっと、『熊』」

衣「『枕返し』」

京太郎「んー。『指令』」

衣「『遺物』」

京太郎「つ……つ……。つ、『継歯』?」

衣「『ハミレス』」

京太郎「す……す? え、ハミレスって……もしかしてそれ、『ファミレス』なんじゃないっすかね」

衣「む? どういうことだ」

衣「こ、衣は何か間違いを犯してしまったのか……?」オロオロ

京太郎「い、いえ……その……」

透華「ちょっと、アナタ!!」ズカズカ

京太郎「うぉっ! りゅ、龍門渕さん!?」

透華「そんな細かいことはどうでもいいじゃありませんの! そうやって 一々 ぐちぐち 口 を出すのは三流のやることですわよ! みっともない!」

京太郎「あっはい。すんません……」

京太郎「あ、あの、天江さん。ちょっと俺の勘違いがあったみたいで」

透華「衣は何にも気にしなくていいですのよ? 全て、この三流金髪男が悪いんですから」

京太郎(あなたも金髪じゃないっすか……。いや、そこは問題じゃないのか)

衣「む。そうなのか? なら、心配は要らないな。続けるとしよう!!」キャッキャッ

京太郎「は、はい。えっと、『姿』」

衣「『タルタル』」

京太郎(突っ込まんぞ)

京太郎「えっと、『ルーマニア』」

衣「『阿闍梨』」

京太郎「り、り……『リップ』」

衣「プリンッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」クワッ

京太郎「!?」ビクッ
透華「!?」ビクッ

ブッブーー

衣「ああっ。し、しまった!!」

優希「っしゃぁぁぁあああああ!! さっすが京太郎だじぇぁええあぁああああああ!!!!!(咆哮)」

咲「す、すごい。衣ちゃんにしりとりで勝つなんて……」

和「中々やるじゃないですか」

久「さすがね、須賀君」

まこ「まさか一発目でクリアするとはのお。流石に見直さざるをえんな」

京太郎「あ、ど、どうもっす」

京太郎(え? こ、これは勝ったって言えるのか? 天江さんが自爆しただけじゃあ……)




衣「う、ううー……。つい、願望が口から出てしまった……。真剣勝負の真っ只中だというのに」

衣「衣は卑しい子だ……」

京太郎「天江さん……」

透華「仕方ありませんわ、衣。最近、大好きなプリンを全然食べられていませんでしたものね」

透華「ずっとずっと抑圧されていれば、無欲な人でも欲を出してしまうというもの。だから、衣は全然卑しい子なんかではなくてよ」

衣「トーカ……」

一「今度、また一緒にファミレスにいこうよ」

純「んで、そこで目いっぱい食ってやろうぜ。店が傾いちまうくらい、プリンをさ」

智紀「名案……」コクリ

衣「一……純……智紀……!」パアア

透華「さ、そうと決まったら早速プランニングですわ! こんな意味の分からない所からはさっさと出て行って、屋敷に帰るとしましょう!」

衣「うんっ!」

ワイワイ……

咲「な、なんだか置いてけぼり感が凄いね……」

久「しょうがないわよ。あの人たち、絆の強さで言えばそこらの家族を優に上回っちゃってるんですもの」

和「私と咲さんのようですね……」

まこ「ま、わしらの入り込む隙は無いと言ってもええ。ほんに、家族のようじゃのお」

優希「……あの人たちの笑顔を守るためにも……」

京太郎「ああ。この使命、絶対に果たさねえとな……」

<第4の試練 「あの顔を歪ませるのはあなた」>


咲「え、えっと……。こ、このボウリング女っ!!」

灼「煩わし……」

和「私の後釜を狙おうとでもしたんですか? でも、残念ですね。貴女みたいなぽっと出のダサ女じゃあ、それを叶える事は永久に出来ませんよ(笑)」

灼「煩わし……」

優希「クール気取ってキャラ付けか? 随分と必死だじぇ」ペッ

灼「煩わし……」

久「ウジウジシテテキモイネー クスクス」

灼「煩わし……」

まこ「いやーそれにしてもわりゃあ、見れば見るほどこけしに似とるのぉ」

灼「煩わし……」

京太郎「……」

京太郎「あー……」

京太郎「な、なあ、皆。あそこに居る赤土晴絵って、正直さ……」

京太郎「見てて、痛いよな」

灼「わずら……」





灼「!?」
晴絵「!?」

晴絵「え、え。あれ? 私?」

京太郎「な、何ていうか、行動全部が空回りしてるっていうか」

京太郎「自分の夢を阿知賀の皆に託すー、とか本気で思ってそう」

京太郎「何かそれってすっげえ……痛くね?」

灼「は?」

灼「はあ?」

灼「はああああああああああ?」

灼「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?!?!?」

京太郎「!?」


灼「お゛ま゛え゛に゛ばる゛ぢゃん゛の゛な゛に゛が゛わ゛がる゛って゛い゛う゛ん゛だよ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」


灼「な゛ん゛に゛も゛じら゛な゛い゛お゛ま゛え゛がどう゛し゛て゛そ゛ん゛な゛ごどい゛え゛る゛ん゛だよぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」


灼「ばる゛ぢゃん゛がい゛だい゛びどだな゛ん゛で、どう゛じでい゛う゛ごどがでぎる゛ん゛だよ゛ぉ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」


灼「ぴゃぁああああああああああああああああ!?(発狂)」


ブブー!!

勝負あり!

WINNER:清澄高校麻雀部!

優希「や、やったじぇ!」

久「まーた須賀君の手柄かぁ」

咲「何言っても鷺森さん全然動じてくれないから、もうここで終わりなのかなって思っちゃったけど……。やっぱり京ちゃんってすごい」

和「ま、まあ。ちょっとは認めてあげなくもありませんよっ?」

まこ「なんじゃあ、そのキャラは……」


穏乃「そ、そんな……。灼さんが負けるなんて」

憧「ゆっだんしてたわ……。あの須賀って奴、どうやらかなりの実力者だったみたいね」

憧「この僅かしか与えられてない時間の中で、灼さんの唯一の弱点が『赤土晴絵』であると見抜いた……」

玄「あと、そこはかとなくおもち好きのオーラを漂わせてるね……。きっと同志ですのだ」

宥「あったかくない……」カタカタ

灼「あ、ああ……ああああ、ああ……」ガタガタ

晴絵「灼……」

京太郎「……」

京太郎「さ、鷺森さん!」

灼「あ、あああああ!?」

京太郎「ほ、本音をぶちまけちゃうとっすね……。赤土さんはぜんっぜん痛くなんかないっす!!」

灼「あ、あ?」

晴絵「え?」

京太郎「むしろ、めちゃくちゃすげえ人だって思います」

京太郎「自分のことよりも何よりも、教え子達のことを優先して……」

京太郎「一人一人に合った練習方法を実践してる。そして、自らの叶えられなかった夢を、その教え子達に『押し付ける』んじゃなくて、『託す』……」

京太郎「それって言うのは簡単だけど、実際にはすげえ難しい事なんだろうなって、そう思います……」

京太郎「だ、だから……あの、ホントは赤土さんのこと、このすげえ指導者だなって尊敬してるってことっす。あんな酷いこと言っておいて何を今更って、そう思うかもしれないですけど……」

灼「……」

京太郎「さ、鷺森さん……?」

灼「……」

灼「ん……まあ」

灼「分かってるなら良……」ニコッ

京太郎「鷺森さん……!」

京太郎「あっ! 赤土さんも……」

晴絵「え?」

京太郎「いくら世界を救うためとはいえ、酷いことを言ってしまって……。本当に、申し訳ありませんでした……!」ペコッ

晴絵「えっ? ああ。あはは、私はこれっぽっちも気にしちゃいないよ」

晴絵「君が言った以上の悪口だって、これまでに何度も聞かされてるんだよ? だから、そう簡単にめげるようなメンタルを持ち合わせてるつもりはないっ!」

晴絵「それに、須賀君のフォローのおかげで……むしろここに来た時よりも胸がすっとしてる。感謝したい……くらいかな?」

京太郎「赤土さん……」

晴絵「晴絵……」

京太郎「え?」

晴絵「晴絵、でいいよ。」

京太郎「え……はい! じゃ、じゃあ……晴絵さん?」

晴絵「ん。よろしいっ!」

灼「じゃあ、私のことも灼で良……」

京太郎「え? でも……」

灼「いいから」

京太郎「は、はいっ! なら……灼さん、ですね?」

灼「ん」

京太郎「あっ、じゃあ。二人も俺のことは京太郎って呼んでくださいよ! それなら公平でしょう」

晴絵「ああ、それもそうだね。私らだけってワケにもいかないし。じゃあ……『京太郎』君」

灼「京太郎……ん、まあ、いい感じ」

京太郎「へへへ。何か変な感じっすね」

玄「じゃあ、私のことはおもちマイスターって呼んでね! 私も須賀君のことを同志と呼びますのだ!」

京太郎「はいっ! ……って、え!?」

優希「むー、何だかいい雰囲気だじぇ」

久「ふふ。赤土さんも鷺森さんも、須賀君にすっかり魅了されちゃったみたいね。二人とも『女の目』をしてるわ……」

まこ「どこがじゃ」

憧「こりゃ、あの二人にも春がきちゃった感じかなー?」

和「あ、憧まで何を言ってるんですかっ!」

穏乃「あははっ! 和の突っ込みっぷりは相変わらずだなー!」

穏乃「あ、じゃあさ! あれ聞かせてよ、あれ!」

和「あ、あれとは?」

穏乃「『そんなオカルトありえません!』ってやつ! 私、あれ結構好きだったんだよね!」

和「もう! からかわないで下さい!」

穏乃「そんなに怒るなってー」

宥「あったかーい」ポワポワ

ワイワイ




咲「……」ポツーン

咲「……ふぇ……」ウルウル





京太郎「あっ、そうだ! 晴絵さんに見てもらいたい奴が居るんすよ!」

晴絵「見てもらいたい奴……?」

京太郎「はい。ほら、あそこにいる小動物系の女子っす」

晴絵「んー、彼女か。うん、もちろん構わないよ」

京太郎「ありがとうございます! おーーい咲ーーー! ちょっとこっちこい!!」

咲「……?」ウルウル

京太郎「晴絵さんがお前のことをちょっと見てくれるそうだ!」

灼「あんまり過度な情報は貰わないでね」

灼「試合は誠実に行きた……」

晴絵「分かってるって。さ、宮永さんもこっちにおいで! 私が見てあげよう!」

京太郎「ほら、早くしろー!」

咲「……う」



咲「うんっ!」タッタッタッ

<第5の試練 「激闘! センリューブラザーズ」>


池田「鄙の外
    揺れる城並み
         薺かな」



文堂「池田先輩、大分攻めましたね」

キャプ「ええ……。でも、この場合では最良の選択と言えるわ。あとは、相手の出方次第……」

深堀「自分ならここで守りに入りますけど……。保身に入らずグイグイいくのは、華菜さんらしい……」

未春「華菜ちゃん……。頑張って……!」

久保「池田ァ!」



京太郎「……! 池田さん、見かけ通りのアタッカーでしたね」

久「県大会でその『諦めの悪さ』と『積極性』を見せてくれた彼女だけど、センリューバトルでもそれらは健在な様ね」

まこ「あやつの『本質』っちゅうもんがそこにあるんじゃろうな。なかなかやるの」

和「相当高い点数になると予想されます。ゆーきがどこまで抵抗できるか、ですね……」

咲「あっ、優希ちゃんのターンがくるよ!!」

優希「オホン」

優希「タコスだじぇ
      全てはタコス
          タコスだじぇ」



文堂「っ!? こ、これは……」

文堂「同じ単語を全ての拍に織り込むという超高難易度の技……『トライデントアロー』!」

文堂「まさかこんな所でお目にかかれるなんて……!」

文堂「ただ、幸運と言うべきなのか……。トライデントアローはテクニック系の技術」

文堂「池田先輩の様なアタッカータイプのセンリュイストには効果は薄い筈……。それでも危険であることには変わりありませんが……」

キャプ「つまり、拮抗状態にあるというわけね。この勝負の行く末……私の『右目』でも視えない……」

深堀「自分ならここで諦めてタコス食いに行きますけど……」

未春「華菜ちゃん……」

久保「池田ァ……」

池田「ふん、清澄のタコス娘! なかなかやるし!」

優希「イケダこそ、中々のお手前だじぇ」

池田「どっちが高い点数となるかは、流石のカナちゃんにも予想がつかない……。ここはおとなしく、結果の発表を待つし」

優希「おう……!」





デン!




一同「!」



ドルドルドルドルドルドル…

イチ…ジュウ…ヒャク…セン…マン…ジュウマン…




一同「……!」ドキドキ







カッ!!








バーーーーーーーz_________ン


池田:5点


片岡優希:∞点


バーーーーーーーz_________ン



池田「んにゃぁああああああ!?」

優希「よっし!! やったじぇ!!」

キャプ「華菜……」

文堂「くっ……」

久保「池田ァ……!」

未春「い、一体どうして!?」


咲「やった!」

久「よし! 流石は優希ね!」

和「ゆーき……凄いです!」

まこ「タコスの申し子の名は伊達じゃないのお」

京太郎「あ、評価の詳細が出ますよ!」






~詳細~

池田:意味が分からん

片岡優希:タコスは真理



池田「クソォ……クソォ……」ポロポロ

優希「イケダ……。そう、メゲるな。すげえいい勝負だったじぇ? 敵ながらアッパレって感じだじょ」

池田「しょ、勝者にそんなこと言われても嬉しくないし……」

池田「……」

池田「ほ、本当か?」

優希「おうっ! タコス神明に誓って、メチャいいバトルだったじぇ!」

池田「そ、そうか……。ありがとう、だし……」

優希「えへへ」ニコッ



池田「おい! 清澄共! あたしの顔に泥を塗らないためにも、この先絶対にしくじるんじゃないし!」

キャプ「うふふ。こうは言ってますけど、華菜も心配しているんですよ」

キャプ「もちろん私達風越麻雀部一同も、あなた方の御武運を願っています。どうか、頑張って」

文堂「頑張ってください!」

未春「頑張って下さいね!」

久保「まぁ、一応私も応援しといてやる」

深堀「飯食いに行っていいすか……」


久「ふふ、ありがとう。あなた達の声援、確かに受け取ったわ」

京太郎「あの、絶対に世界を救ってみせますんで! 皆さんは安心して待っていてください!」

キャプ「ふふ。はいっ」

優希「じゃーーなーー! イケダ! また一緒に麻雀しようじぇーー!」

池田「おーーう! またボコボコにしてやるから、覚悟しておくしーーー!!」

今日はここまで

ありがとうございました

<第6の試練 「どっちに子犬ショー!」>


久「く、くぅ……」プルプル

睦月「む、むう……」プルプル



ゆみ「津山! 諦めるな!」

モモ「むっちゃん先輩すごいっすー!」

蒲原「わっ。モモ、居たのかー」ワハハ

佳織「あ、あんな危険なこと……。津山さん大丈夫かな……」アワアワ



優希「部長がんばれー!」

咲「が、頑張ってくださーい!!」

まこ「ほれほれ、津山さんにまけちょるぞー!」

和「もっと足を踏ん張ってください」

京太郎「え、えっと、頑張れー!」

京太郎(部長と津山さんは今、その背に巨大な石を乗せながら、じっと踏ん張っている)

京太郎(そしてあの二人はこのまま、いつかも分からない『ある時』まで、ずっと石を持ち続けていなければならない)

京太郎(これが、第6の試練の内容らしい)

京太郎(で、その『ある時』っていうのが……)


ゆみ「……ん? 来たぞ!」

モモ「ようやくおでましっすね……」








子犬「クゥーン」プルプル

一同「ワンちゃん!」





京太郎(そう、ご覧の通り『子犬が来る時』だ)

京太郎(けど、これで勝負が終わったわけではない。むしろここからが本番……)

京太郎(この戦いで勝利を得る為には……)

京太郎(あの子犬に選ばれなければいけねえんだ)

子犬「クゥーン」ヨチヨチ

睦月「……む」ニコッ

久「!」プルプル



蒲原「よーしよし。子犬はどうやらむっきーを選んだようだなー」

佳織「睦月さんすごい……」

ゆみ「ふっ、流石だな、津山。私が選んだだけの事はある」

モモ「むっちゃんせんぱーーい! そのままぱくっといっちまえっすーー!」



優希「ま、まずいことになったじぇ」

和「あの子犬が津山さんのことを選んだら……」

まこ「その時点でゲームセット。世界は滅亡、じゃな」

咲「そ、そんな……」

京太郎「マジかよ……。部長っ……!」

子犬「……」

睦月「……」ニコニコ

子犬「……」

睦月「……?」ニコニコ

子犬「ペッ!!」

睦月「!?!?!?」ベチャッ



モモ「――え?」

佳織「津山さん!?」

蒲原「ワハ? 犬ってあんな風につばを吐くのかー。ああやって友好を示す犬もいるもんなんだなー」ワハハ

ゆみ「い、いやそれはない。恐らく……」

睦月「!? ……!?」

子犬「クゥーン」ヨチヨチ

久「はいはい。怖かったわねー。さ、お姉さんのところにいらっしゃい」

子犬「キャンキャン!」タッタッタ

子犬「クゥーン……」スリスリ

久「あはは、くすぐったい! くすぐったいってば、もー!」


ブブー

勝負あり!

WINNER:清澄高校麻雀部!


睦月「そ、そんなっ!」パリンッ

久「よっし!」パリンッ


優希「ぶっちょー! 最高にイカしてるじぇー!」

京太郎(岩って割れる時にあんな音出すのか?)

咲(岩って割れる時にあんな音出すものなのかな?)

和「よかった……。流石です、部長」

まこ「ふう……。一安心じゃのお」

ゆみ「負けてしまったな。そちらの久はやはり心の強い女だ。うちの津山も相当やる奴の筈なんだがな……」

モモ(むっ! また久って……)

優希「ふっふっふ。自慢の部長だじぇ!」

京太郎「でも確かに、津山さんも滅茶苦茶すごかったよな。部長は岩を持つだけで限界、って感じだったけど、津山さんはかなり余裕そうだったし」

咲「うん……。岩を持つだけの勝負だったら、流石に部長も負けてたかも……」

まこ「じゃな。あれほど忍耐力のある女子高生、わしも見たことはない……」

子犬「クゥーン」スリスリ

久「よしよし。私を選んでくれてありがとね」ナデナデ

睦月「む、むう……」ショボン

久「ふふっ。ごめんなさいね。津山さん」

久「でも、いい勝負だったわ。お互い、よくあの岩を持って耐え続けられたものよね?」

睦月「む……。私なりに精一杯、やりましたからね」

久「精一杯、ね……。そう思えるなら十分よ。この勝負、正直どっちが勝つかなんて分からなかったし」

久「ただ私がちょっとだけ『悪待ち』に慣れてた……それだけのことなのよ」

久「だから、そんなに落ち込まないでちょうだい。後腐れなく、心地よく、ここを去れるようにしましょう、ねっ?」

睦月「……はいっ!」


数々の試練を乗り越え

<第7の試練 「刹那の果し合い」>


まこ「……で。本当にわしがおんしらと闘りあってしまっていいんじゃな?」

智葉「ふむ……」

優希「そ、染谷先輩……本当に大丈夫だじぇ?」

久「やっぱり、考え直すべきじゃ……」

まこ「いんや。ここまでロクな働きもしとらんからのお。せめて殴り合いの勝負くらい、部長らの手を煩わせずに終わらせたいんじゃ」

京太郎「先輩……」

ガシャン!

まこ「!」

京太郎「えっ!?」

咲「か、壁!? 染谷せんぱ――」

ズゥン!

まこ(石の壁がせり上がってきおった……。どういう仕組みかは知らんが、部長らの声すらも聞こえなくなったところを見ると……この壁も常識の範囲外にあるものっちゅうわけか)

まこ(まあ、こうして部長らとわしとの分断をはかってきたっちゅうことはじゃ……)

まこ「5対1の件、聞き届けてもらえたっちゅうわけじゃな」

智葉「……ああ。本来ならこれは5対5の勝負なんだが……。そちらの希望とあれば仕方ないだろう」

明華「要望は聞き届けなければなりませんからね……」

慧宇「ただそちらからの提案である以上、いくらこちらに数の利があると言えど、決して容赦はしません」

ネリー「お願いだから、後で泣き言言ったりはしないでねー」

ダヴァン「ニホンのハタシアイには前々から興味持ってまシタ」

ダヴァン「このワクワクはチョット抑えきれそうにありまセン……ですから、手加減しろというのは無理な相談となりまスネ」

まこ「ほいほい。やってもおらん内に手加減云々言うんはあんま好かんけえ、そこいらはどうでもええ」

まこ「とは言えまあ、おんしらも間違いなく全国常連の強者……。そう思いたくなる気持ちも痛いほどよお分かる。単純に言えば、おんしらはわしに『舐められてる』と感じとるんじゃろ?」

智葉「そうだな……。ま、そう感じている部分も無くは、ないだろう」

ネリー「あなた、サトハのドス一発にさえ耐えられそうにないって感じなのに……。ネリーが出る必要性があるのかって話なんだよね」

まこ「ははは、まあ安心せえ。おんしも含めた全員をきちんと喜ばせられる程の切札を、わしは持ってるけえのお……!」

まこ「出でよ、ワカメ・クリムゾン!!」

ギャアアアアアアアン

 まこが叫ぶと同時にまこの背後に現れたのは、メイド服を着たもう一人のまこ。ワカメのような色の髪にかかったワカメ状のウェーブ、あと色々。
 どこをとってもまことそっくりなまこは、その眼鏡の奥にある双眸が無機質な光を放ってさえいなければ、まこ本人と区別がつかないほどにまこであった。

智葉「なっ、そ、それは……!?」

智葉「め、メイド……? クッ」

智葉「プックク……。あ、ああいや、すまない。失礼を詫び……クッ!」

明華「えっと……? これは日本式の冗談か何か……なのでしょうか?」

慧宇「……」ジト

ネリー「それがキリフダって奴? んー……」

ダヴァン「Oh... なんと……。もう少しやり様というものは無かったのでしょウカ」

まこ「なんじゃと? ったく……。これだから見た目で判断する奴らは……」

まこ「このワカメ・クリムゾンの強さは闘ってみりゃあイヤでも分かるけえのお。今は黙っとくとええ」

智葉「……ほう」

智葉「その目……どうやら本気で言っているようだ。それを笑うのは余りにマナーに欠けた行為だな。すまない」

智葉「安心してくれ。戦闘では決して手を抜かないことを約束する」

まこ「それはさっきから何度も聞いちょるけえ……」

まこ「ま、無駄話もここまでに、そろそろおっぱじめるとするかのお」

智葉「ああ、そうだな。そのメイド人形……このドスの錆にしてやろう」チャキ

明華「頑張ります」スッ

慧宇「中国拳法ウン千年の歴史……その全てが詰まった私の技、とくと見せてあげましょう」スゥ……

ネリー「お金が絡まない勝負事やってあげるっていうんだから……せめて、楽しませてねー」ゴッ!!

ダヴァン「このラーメンの渦に飲み込まれて、生きて帰ってきた者は居まセン……」ズズッ



見合って見合って……


智葉「……」スゥ…

明華「……」ポケー


はっけよ~い……


慧宇「……」コオォォォ

ネリー「……」グッ

ダヴァン「……」ズズ


のこッたッッッ!!


まこ「っ! さァ、行けや!! ワカメ・クリムゾンッッッ!!!!! 奴らをぶっ潰せ――」

~5秒後~



智葉「ぐっ……。くそっ! 私達の負けだ……」ボロッ

明華「」キュー

慧宇「ま、まさかそんな……」ボロボロ

ネリー「オ……カネ……」ガクッ

ダヴァン「ら、ラーメン……ラーメンを無くした私に、どうしろというのでショウ……」



まこ「……」

まこ「え、なんじゃこれは」

まこ「……」

まこ「え、なんじゃこれは」

ガシャン!

ガラガラガラ……ズゥン!

久「え? あっ……まこ!」

優希「染谷先ぱ――って、ありゃ?」

咲「臨海の人たちが膝をついてる……ってことは」

京太郎「か、勝ったのか! すげえや、やっぱり染谷先輩がナンバーワン!」

和「でも、随分と早い勝利でしたね……。壁がせり上がってから1分も経っていないのでは」

まこ「あ、ああ……。それがのお、なんかは知らんがこいつら、ワカメ・クリムゾンのパンチ一発でぶっ倒れおったんじゃ」

京太郎「わ、ワンパンってことすか……。どんだけ強力なんだよ、ワカメ・クリムゾン」

咲「も、もしあの時京ちゃんがワカメ・クリムゾンのパンチを食らってたら……どうなってたんだろ」ゾォ

京太郎「こ、こわい事言うなよ……。想像しちまったじゃねーか」

優希「ミンチより酷いじぇ……」

京太郎「ヤメロォ!」

臨海勢「」ボロッ

和「えっと……彼女達のことはどうしたら。放っておいてもいいのでしょうか?」

咲「あのままだとかわいそうだし、せめて手当てくらいはしてあげた方がいいんじゃないかな?」

和「咲さん天使! いえ、その慈愛の深さ……最早女神です!」(そうですね。咲さんの言うとおり、流石にあのまま、というのは……)

咲「ふぇっ!?」

和「あ。……オホン」

和「咲さんの意見に賛成します」

咲「あ、はい……」





優希「大丈夫だじぇー? ドスのお姉さん」

智葉「ああ、すまない。おかげで助かった」

まこ「すまんのお。まさか、わしのワカメ・クリムゾンがあそこまでやばいシロモンじゃとは思いもせんかったわ」

慧宇「いえ。私達の修行が足りなかった、というだけのことです。あなたが謝る必要はありませんよ」

慧宇「手当てまでしてもらって……。試合においても勝負においても完敗してしまいましたね」

久「まこの一撃、相当痛かったでしょ? あなた、体がそんな丈夫そうじゃないから心配だわ……」

明華「もうどこも痛くはありませんから、恐らく大丈夫かと……」

和「全く……。染谷先輩も少し加減と言うものを知るべきですね。どこか痛むところはありませんか?」

ダヴァン「いエ……。おかげで完治したみたいデス。ありがとうございマス、ジャパニーズピンクオモチガール」

和「そ、その呼び方は止めていただけませんか……」

ネリー「ああー! い、痛い、そこ痛いよサキ!」

咲「えっ!? あ、ご、ごめんなさい!」

京太郎「あーあー。ほんと、お前は不器用だな。すんません、ネリーさん……」

咲「ううー……」

<第8の試練 「麻雀」>

咲「カン」

玉子(ふむ……ここで大明槓であるか。こやつの性質上、嶺上開花はもうすでに“できあがっている”と見て間違いない……)

玉子(あの牌を捨てたのは余……つまりここは余の責任払いか。ロンをしなかったあたり、なにかイジメ的なアレを感じるのである)

玉子(恐らくまあまあの痛手となる筈である、が……)チラ

タコス魔人1「タコス?」

タコス魔人2「タコゥス!」

玉子(この謎生物共をカモにすれば直ぐに取り戻せる点数ではあるだろうことは、余の灰色の脳細胞が導き出している! よきにー)

咲「もいっこカン」

玉子(む?)

咲「もいっこカン!!」

タコス魔人2「タ、タコ?」

タコス魔人1「タコゥタコゥ!?」

玉子(――え?)




咲「――ツモ」

玉子「!」


咲「清一……」


咲「対々三暗刻」


咲「三槓子」


咲「赤一」


咲「――嶺上開花。32000です!!」


玉子「なっ……なあ……」

玉子「の」

玉子「ノォォである~~~!!!」シュウウウウウ

咲(!? 消滅した!?)

タコス魔人1「タコォ……」ガクッ

タコス魔人2「タコゥス(ネイティブ)」パチパチ

咲「あ、ありがとうございます……」

久「うん。まあ、これは予定通りね」

まこ「まあの。とは言え、あの再現をみれるとは……」

京太郎「やっぱすっげえなあ、あいつ……」

和「咲さん……!」ジュン

優希「のどちゃん……」ドンビキ

ここまで
臨海勢の口調再現にかなり自信がありません

<第9の試練 「ネトマ」>

和「……」ポチポチ

久「おー、流石はデジタルの申し子ね」

和「……」ポチポチ

京太郎「すげー……」

和「……」ポチポチ

優希「お、ここでこうくるか……」

和「……」ポチポチ

まこ「ふーむ……」

和「……」ポチポチ

咲「和ちゃんすごい……」

和「……」ピクッ

和「……」ポチポチ

…………

和「はい。勝ちました」

久「よっし! さすがね、和!」

京太郎「な、なんか凄い淡々と進みましたね」

まこ「ネトマじゃからの。致し方なしじゃ」

優希「でも何気に、試練の難易度自体は結構高い方だったじぇ。相手方もめっちゃ強いデジタル派だったし。のどちゃんが居なかったら負けてたかも」

咲「うん。あの人たちにネトマで勝つのは私にはちょっと無理かな……。やっぱり和ちゃんはすごいよ!」

和「えっ? あ、ありがとうございます……」テレ

そして遂に、タコス光明神の間にたどり着くことができたのだった

<タコス光明神の間 扉前>

優希「つ、ついに来ちゃったじぇ……」

京太郎「ここがタコス光明神の間か……。なんつーかやっぱ、神々しさに溢れてるな」

久「これまでの試練の間が随分と無骨な感じだったから、こういう煌びやかさが余計に新鮮に見えるわね」

和(結婚式はこういうところで挙げたいですね)

咲「……!?」ゾクッ

咲(い、今のは一体?)

まこ「して、この扉はどうやって開けりゃいいんじゃ? さっきからワカメ・クリムゾンに押させとるが、うんともすんともせん」

京太郎「……えっ? ワカメ・クリムゾンの姿なんてどこにも見えませんけど……」
まこ「実体化を解いての使用も可能じゃからな」

久「へえー。便利なんてレベルじゃないわね、それ。……あら、じゃあつまり」

咲「これまで試練の間の扉が勝手に開いたりしたのって……」

まこ「ん。まあ、わしの仕業じゃな」

和「成る程……。でも、それって大分拙いことなのではないでしょうか? 第一の間は実質、試練を受けないで通過したわけですし」

まこ「あー、それだけはわしはやっとらん。あれは勝手に開いたんじゃあ」

和「ほ、本当ですか……?」

まこ「う、うたがっちょるな……。いや、流石に後に響いてきそうなことはやっとらんよ。わしだってそこらはきちんと理解しとる」

優希「実際、間の扉は試練をクリアしなきゃ決して開かない仕組みになってるからな。幾ら染谷先輩の力が強くても、無理やり開けるのは不可能だじぇ」

京太郎「ま、そうだよな。じゃあ、この扉も何かしなけりゃ開かないってことなのか? 霧のとこの扉の時みたいに呪文を唱えるとか……」

優希「いや、何もせずとも、もうじき開くじぇ。――ほら」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

久「ほ、本当だわ」

咲「綺麗……扉の先、光で覆いつくされてる……」

和「見とれてしまいますね……」

ズゥン

京太郎「この先が、タコス光明神の間か……」

優希「そうだじぇ。あと、光明神の間に入る前に、一つだけ注意しておくことがあるじぇ」

京太郎「え?」

優希「光明神の間ではな……決して『嘘』をつくことが許されないんだじぇ」

ひっさ「嘘……? それって、嘘を心の中で思うだけでだめってこと?」

優希「いや、あくまで『嘘』を口に出したらだめ、ってだけで、心の中では何を思おうが勝手だじぇ」

咲「あ、よ、よかった……」

京太郎「えっと……で、ちなみに、嘘をついたらどうなっちまうんだ?」

優希「死ぬじぇ」

京太郎「えっ?」

優希「死ぬじぇ」

咲「え、ええっ!?」

まこ「ま、マジけえ……。そういう大事なことはもうちと早めに言って欲しかったのお」

優希「……いや、ホントにそう思うじぇ。でも、私もたった今思い出したばっかりなんだじょ」

京太郎「ってことはアレか? 優希の記憶に何かしらの封印がかけられてた……ってことか?」

優希「そう思って間違いないかと……。はあ、意地悪なことするじぇ……」

和「とにかく、嘘をつきさえしなければいいのですよね? それ以外に何かルールがあるのなら言って欲しいのですが」

優希「いや、恐らくこれだけだじぇ」

京太郎「ま、まあそれなら大丈夫か……」

咲「死にたくはないよぉ……」

まこ「そりゃ、だれでも同じじゃあ」

京太郎「えっと、そろそろ行くか」

優希「そうだな」

久「とっとと行って、とっとと戻ってきてしまいましょ」

京太郎「なんも起きないといいんっすけどね……」

まこ「それ、フラグじゃよ」

京太郎「よし、じゃあ――」

 
 俺が扉の先へ一歩、足を踏み入れたその時だった。
 音も無く現れた巨大な手のようなものが、俺の体を掴み、光明神の間の奥へと連れ去っていく。その「手」はとても早いスピードで移動しているのか、猛烈な風が俺の頭を揺らし、目の端では光が幾筋もの帯を形作って
いる。唐突の事態に頭を困惑で埋め尽くされながらも、俺は、高速で過ぎ行く光の風景の中に皆の姿は無いかと、もがきつつ必死にさがした。しかし、どこにも見当たらない。この無限大に広がっているように見える光の空間
には、どうやら俺と「手」しか存在していない様だった。
 皆への心配で胸が張り裂けそうになりながらも、この場で下手に抵抗するのは得策ではないと判断した俺は、ただ、静かに皆の無事を祈った。





 それから暫く経って……身に当たる風の勢いが極端に落ちたと思ったその瞬間。俺は……そして、清澄の皆も……巨大なタコスの座する広間に「立っていた」のだった

<タコス光明神の間>

京太郎「あ、ああ……! み、皆!? よかった、無事だったのか!」

咲「き、京ちゃんこそ。何ともなさそうでよかったよ……」
 
優希「まったく。京太郎が連れ去られた時は、一体どうなるかと思ったじぇ」

和「ええ……。あの『手』、一体なんだったんでしょうね」

京太郎「あれ、じゃあ……。皆もあの『手』に?」

久「ええ。私達の場合は5人纏めて一気に、だったけれどね」

まこ「どうして京太郎だけが1人連れ去られたんかは甚だ謎じゃが……その答えは、あそこの大きなタコスさんに聞きゃあ分かるじゃろ」


巨大タコス「――ほっほ。わしが生き物であることには流石に気付いておったか」

京太郎(まあ、タコス魔人とか既に見ちゃってたからなあ……)

巨大タコス「それに、その強気な発言……。あれだけのことをされた直後だと言うに、まだそこまで言う気概を持っておるか。流石は勇者のパーティ、と言ったところじゃな」

まこ「……」

優希「えっと、おじいちゃんがあの、タコス光明神様だじぇ?」

巨大タコス「うむ。いかにもだ、タコスの申し子よ」

(巨大タコス改め)タコス光明神「わしこそがこのタコス世界の主……タコス光明神者である」

タコス光明神「先ずは、長旅実にご苦労じゃった。皆それ程に若くして、この過酷な試練を乗り越えられる程の心の強さを持ち合わせておる。流石のわしも、手放しに賞賛せざるを得んな」

久(過酷な試練……? そんなのあったかしら)

京太郎「あ、ありがとうございます……」

タコス光明神「うむ。だがしかしじゃな……心苦しいことに、お主達には一つだけ残念な知らせを伝えなければならんのじゃ」

咲「え?」

和「ざ、残念な知らせって……。まさか、須賀君を助けることはできない、なんて言うつもりではありませんよね」

タコス光明神「うむ、勿論じゃ。そこの金髪の少年を助けることは可能である。知らせはそれとは関係ないものじゃ」

まこ「んじゃあ、その知らせってのは一体なんなんじゃ」

タコス光明神「……試練」

久「え?」

タコス光明神「これからお主達には、正真正銘……最後の試練を受けてもらう」

咲「ま、また試練……?」

まこ「なんてこった……」

タコス光明神「うむ。困惑するのは分かる。これまでもお主達は、必死の思いで試練を乗り越えてきたのじゃからな」

タコス光明神「しかし……それでもやはり、この試練を受けてもらわねばならない。それが必要なのじゃ」

和「そう言われましても……。ど、どうしましょう?」

京太郎「受けるしか、ねえだろうな」

まこ「まあ、これまでの経験上、大した試練にはならんじゃろ……」

久「いえ。油断はできないわよ……。何ていったって相手はあのタコス光明神。とんでもない試練を言い渡してくるかもしれないわ」

京太郎「でも、俺達のこれまで受けてきたあのよく分からない試練を、『過酷な試練』って言っちゃうくらいだしなあ……」

咲「うん。この間では嘘をつけないわけだし、それがお世辞だったりってことは無いはずだもんね。だから何というか……意外と簡単な試練とか出してきてくれそう……」

優希「とにかく、私達には決定権はないじぇ」

京太郎「だな。ここは受けることにしよう」

優希「よし」

優希「タコス光明神様! その試練……是非受けさせてもらうじぇ!」

タコス光明神「うむ。良い返事を聞けてわしは嬉しい……」

タコス光明神「では早速、その試練の内容を発表しよう!」

清澄勢「」ゴクリ

タコス光明神「お主等に課す最後の試練……その内容は!!」










タコス光明神「ラップバトルじゃ!」

清澄勢「!?!?!?」

タコス光明神「わしからの試練はラップバトル♪」

タコス光明神「泣く子も、黙るラップバトル♪」

タコス光明神「死にに行く準備はちゃんとできてる?♪」

タコス光明神「全てはここに、ラップバトルー!♪」

タコス光明神「タコスー♪」

久「え? えっ?」

まこ「まさかのまさか過ぎる」

京太郎「こ、ここに来てラップバトルかよぉ……」

和「は?」

咲「流石にドンビキだなあ……」

優希「た、タコス光明神様……」





タコス光明神「――ほっほ」

久「な、何笑ってるのよ……」

タコス光明神「いや、失礼失礼。すまんの、今のは冗談じゃ」

京太郎「え? じょ、冗談……?」

タコス光明神「わしも長らくここに居るからのお。少し茶目っ気を出してしまいたくなってしまったのじゃ」

タコス光明神「真なる試練はラップバトルではなく……お主等の絆の強さを計るものじゃ」

タコス光明神「これまではその道に秀でた者が一人代表となり、挑戦すると言う形式の試練がほとんどじゃった。まあ、ラップバトルも一応はチームワークが主体となる試練だったが」

タコス光明神「しかし、この試練で必要になるのは真なる『絆』。ラップバトルでの『チームワーク』なぞとは、ハッキリいって比べ物にならぬ」

タコス光明神「……さて、長話もここまでにして。その試練の内容を話していくとしよう……ん?」


タコス光明神「……」

タコス光明神「あれ? ヤバくね?」


カッ!!


タコス光明神「ぐぉおおぉおおおおおぉおぉおぉぉぉお!!!?!???!?!?!??!?」シュウウウウウウ

優希「た、タコス光明神様ぁー!?」

久「こ、こいつ何なのよ!?」

まこ「か、勝手に冗談言って勝手に自滅しおった……!」

タコス光明神「んぎゃぁぁああああああぁぁぁああっぁぁぁぁぁあぁぁあああ!!!!!???!?!?」シュウウウウウウ

咲「あわわわ」

京太郎「お、おいこれ大丈夫なのか!?」

優希「い、幾らタコス光明神といえど、部屋のルールは絶対……。もうじき死に至るはずだじぇ」

久「は、はあ!? じゃあ……どうすればいいのよ!?」

優希「わ、分からないじぇ……。京太郎を助けるためには、聖なる神であるタコス光明神の力が必要……」

優希「これでもし、タコス光明神が死ぬようなことがあれば……詰み、だじぇ」

まこ「嘘じゃろ……!」


タコス光明神「んほぉぉぉぉおおおおおぉぉぉぉぉおぉおおおおぉぉぉぉぉおおお!!!!!!???!???!?」シュウウウウウウ

京太郎「が、頑張ってください!!」

優希「踏ん張るんだじぇぇええええ!!」

久「勘弁してよもう……」

まこ「きばりんさい!! 神なんじゃろぉお!!」

咲「が、頑張ってー!!」

和「え、えっと……あれ?」

タコス光明神「うきょぉぉぉぉおおおおおおおぉおおぉぉぉっぉぉぉぉ!!!!!????」シュウウウウウ

優希「タコス光明神様ぁあああ! ……って、のどちゃん!? どうしたんだじぇ、早く声援を……」

和「い、いえ……あの、タコス光明神のレタス付近の生地の辺り……よく見たら、何か紋章のようなものが描かれているんです」ウーン

久「ん……? ああ、本当ね。なんだか、蝙蝠を描いたような感じの紋章だけれど……」

優希「蝙蝠!? 嘘嘘……って、本当だじぇぇ!? そ、そんな馬鹿な……」

京太郎「ど、どうしたんだよ、優希」

優希「あの蝙蝠の紋章は、タコス暗黒神の紋章なんだじぇ!! タコス暗黒神はタコス光明神と対を成す存在……」

優希「今回の事態の黒幕は、タコス暗黒神と言ってもいいんだじぇ! 今思い出した!!」

優希「京太郎の存在力を吸い取り続け……世界を崩壊に導こうとした存在!!」

優希「何故、タコス光明神にその邪神の紋章が……」

久「ね、ねえ。そのタコス暗黒神っていうの、タコス光明神と見た目の上での違いはあるのかしら?」

優希「ん? いや、見た目はおそらくどっちも変わらんはずだじぇ。言うてタコスだからな」

久「えっと……じゃあ、あそこで今死に掛けてるタコス光明神って……実はタコス暗黒神なんじゃないの、かなー、なんて……あはは……」

優希「え?」

京太郎「あっ……」

まこ「のお。タコス暗黒神ってのを倒せば、京太郎は救われると見て間違いはないんかの?」

優希「え? あ、ああうん……100%の確立で世界も京太郎も救われるじぇ」

清澄勢「……」

タコス光明神?「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃ!!!!!!」シュウウウウウ

京太郎「とっととおっ死ねやぁぁあああああああ!!!」

まこ「Foooooooooooooo↑↑!!!!!」

咲「散々私達の事を振り回して……許せない!! 貴方の行動は万死に値するんだよぉぉぉぉおおお!!」

和「そのまま跡形も無く消え去ってください!! 消え去ってください!!!!!!」

久「ア~~~~ッハッハッハッ!!! 惨めねえ!? 『偉大なる』神の癖にこんな下らないことで死んじゃうなんて、本当惨めよねぇぇええええ!!??」

優希「くったばるといいじぇこんのくそったれめがぁぁぁぁああああああああぁぁぁおぉぉぉっぉおあああ!!!(咆哮)」



タコス光明神?「ご、ごごごおごごおおおおおごご……」シュウウ





タコス光明神?「ぐぉぉぉおおおおお……」シュウウ…

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<現実世界>

 こうして、なんだかよく分からないうちに世界は救われた。
 
 俺と優希だけでは決して達成することのできなかった使命……

 それさえも、清澄高校麻雀部の絆の前ではどうってことのないものだった。

 ありがとう、皆。ありがとう、優希。ありがとう、タコス暗黒神……

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 そして今、俺達は高校生麻雀の全国大会の舞台……東京へと来ている。

<東京>

京太郎「うわーっ! すっげえ……。これが東京かあ」
  
優希「タコスの国がゴミのようだじぇえ……」

和「咲さん……ここで、私達の決戦が開かれるのですね」ギュッ

咲「う、うん……そうだね」

咲「ここに全国の学校から凄い人たちが集まってくるんだね……。試練で知り合った人たちにも再開出来るといいなあ」

久「できるわよ、きっと」

まこ「姫松や宮守の人らがあん後どうなったかも気になるしのお」

京太郎「ハハハ、ですね……。愛宕さん達、仲直りできてるといいんですけど」

優希「いや、あの様子だとそこらへんは問題ないだろうじぇ」

久「あはは、そうね。もうとっくのとうに仲直りなんて済ませちゃってて、私達のことも忘れちゃってたりしてね」

咲「え、ええ!?」

アハハハハハ

京太郎(世界を滅亡の危機に追いやったこの事件……)

京太郎(初めは、何巻き込んでんだよはた迷惑だなくそったれって……そう思ってた)

京太郎(まあ、当たり前だよな? ある日突然透明人間にされて……しかも、自分が世界の存亡に関わってる、だなんて言われたら誰しもそうなっちまうよな? な?)

京太郎(でも、終わってからこうして振り返ってみると、むしろこの事件のお陰で俺達の絆は一層深まったようにも思えるんだ)

京太郎(結局俺の『存在力』は元には戻らず……。未だに力を使ってそれを補うような形になってるけど、まあそこは問題ない)

京太郎(また俺の『存在力』が漏れ出したりしない限り、世界に破滅がもたらされることもないんだから)

京太郎(俺達の『戦い』はこれで終わり……)

京太郎(でも、皆の『闘い』はむしろここからが本番だ)

京太郎(俺はそれを縁の下で支えてやろうと思う)

京太郎(皆が、全国大会で優勝できるように――)


カンッ

終了です
意味分からんssでしたけど、何とか完結の目処を立たせる事ができました
ありがとうございます

依頼出してきます

乙です

>>213 修正

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___________



 そして今。
俺達はインターハイの舞台……東京へと来ていた。

<東京>

京太郎「うわーっ! すっげえ……。これが東京かあ」
  
優希「タコスの国がゴミのようだじぇえ……」

和「咲さん……ここで、私達の決戦が開かれるのですね」ギュッ

咲「う、うん……そうだね」

咲「ここに全国の学校から凄い人たちが集まってくるんだね……。試練で知り合った人たちとも再会出来るといいなあ」

久「できるわよ、きっと」

久「と言うより、再会出来なきゃ駄目よね。宮守も姫松も阿知賀も、きっとこのインハイで上に登り詰めてくる」

久「そんな彼女達と再会出来なかった、なんて、私たちは速攻で敗退しましたって言ってるようなものじゃない」

京太郎「ハハハ、ですね。ブロックが違う、何てことがなければ、あの人たちは確実に、途中で皆の壁として立ち塞ってくるはず」

まこ「じゃのお」

和「穏乃や憧や玄さん、そして赤土さんも、今ここに来ているのでしょうか……。これは一層、気を引き締めていかなければなりませんね」

優希「まーそれに、姫松宮守の人たちがあの後どうなったのかも気になるしな!」

京太郎「だな。特に姫松! ちゃんと仲直り出来たんかね……」

まこ「ま、出来とるじゃろな」

久「そうねぇ……。とっくのとうの仲直りは出来てると思うわよ、彼女達。もしかしたら、私たちの事ももう忘れてたりしてね?」

咲「え、ええ!?」

アハハハハハ

>>211 修正

京太郎(世界を滅亡の危機に追いやったこの事件……)

京太郎(初めは俺も、何こんな危険な事に俺を巻き込んでんだよ迷惑だなくそったれって……そう思ってた)

京太郎(まあ、当たり前だよな? ある日突然透明人間にされて……しかも、自分が世界の存亡に関わってる、だなんて言われたら、誰しも悪態の一つや二つつきたくもなっちまうよな? な?)

京太郎(でも、終わってからこうして振り返ってみると、むしろこの事件のお陰で俺達の絆は一層深まったようにも思えるんだ)

京太郎(仲の良さでは他のどこの麻雀部にだって負けない皆が、また更にもう一歩、お互いに歩み寄った)

京太郎(その点についてだけはまあ、今回の事件にも感謝しないといけないかもな)

京太郎(結局俺の『存在力』は元には戻らず……。未だに力を使ってそれを補うような形になってるけど、まあそこは問題ない)

京太郎(別に俺は強大な力を欲しがっている訳じゃないし、俺の『存在力』がまた漏れ出したりしない限り、世界に破滅がもたらされることもないんだから)

京太郎(俺達の『戦い』はこれで終わり……)

京太郎(でも、皆の『闘い』はむしろここからが本番だ)

京太郎(俺はそれを縁の下で支えてやろうと思う)

京太郎(皆が、このインターハイで優勝できるように――)


カンッ

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