ジェラート「デス…ノート?」 ソルベ「何だそりゃあ?」 (272)

――死神界


死神リューク「…………そろそろ行くか」

死神デリダブリー「ん? どくに行くんだリューク」

死神グック「ここ(死神界)はどこに行ったって不毛だぜ、ヒヒ」

死神リューク「デスノート落としちまった」

死神デリダブリー「ノートを? ギャハハ、今度はまたすげードジしたな」

死神グック「何処に落としたかわかってるわけ?」


死神リューク「ああ……下界(人間界)だ」 バサッ


死神デリダブリー「え!!? あ……行っちまった」

死神グック「…………おいおい、シドウに続いてリュークもかよ」





――イタリア


ジェラート「ン? 何か落ちてきたな」

ソルベ「黒い……ノート?」

ジェラート「そのようだな。なぜイタリアの街中にノートが……」

ジェラート「…………拾ってみるか」



ある日、人間界に一冊の『ノート』が舞い降りた。

それは魔性のノートである。

A4サイズの黒い表紙、一見普通の大学ノートに見えるが……



ジェラート「何々……『DEATH NOTE』? 直訳で死のノートか」

ソルベ「ぷっ、思春期の中学生かよ? イタリア人はいつからこんな根暗になったんだ」

ジェラート「『HOW TO(使い方)』……全て英語で書いてあるな」

ソルベ「へェ、どんな事が書いてある?」

ジェラート「そうだな、最初に書いてあるのは……」





            『このノートに名前を書かれた人間は死ぬ』





この物語は……


死を操る『死神のノート』を手にし始まる、パッショーネ暗殺チームの戦いの物語である。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1396073379

『書く人物の顔が頭に入っていないと効果はない』

『ゆえに同姓同名の人物に一編に効果は得られない』


『名前の後に人間界単位で「40秒以内」に死因を書くと、その通りになる』


『死因を書かなければ全てが心臓麻痺となる』


『死因を書くと更に6分40秒、詳しい死の状況を記載する時間が与えられる』



ジェラート「……子供のイタズラにしては、中々手が込んであるじゃあないか」

ソルベ「ははは。これがもし『本物』なら、暗殺チームのトップになれるな」

ソルベ「おい、ちょっと誰かの名前を書いてみようぜ」

ジェラート「……さっきは根暗な事と、馬鹿にしていなかったか?」

ソルベ「これを作った奴の事を言っただけだ。書き込むのは別の話さ」

ソルベ「それになんだかんだ、ジェラートも試してみたいだろ?」

ジェラート「まぁ、そうだな…………この手の込みようだからか?」

ジェラート「正直に言えば、一度書いてみたくはある」

ソルベ「ほらな、善と暗殺は『急げ』だ」

ジェラート(いや、善でも暗殺でもないが……)


ジェラート「……まぁいい。それじゃあ今回の暗殺ターゲットの名を書いてみるか」

――1週間後


ここは暗殺チームが拠点に使用しているホテルである。

リーダーである『リゾット』の名(偽名)で複数の部屋を契約しており、

ある程度の時期がくればその場所を移す。


暗殺という仕事柄、拠点を特定させないようボスがそう計らっていたのだ。

そして今一つの部屋に、メンバー全員が集まっている。



リゾット「ソルベ、ジェラート」

リゾット「ブルガリア、西ロドピ地方での組織単位での暗殺……ご苦労だったな」

リゾット「たった一週間での迅速な任務達成に、ボスも喜んでいるそうだ」

プロシュート「近頃パッショーネの中で、オレたち暗殺チームの存在が軽んじられつつあったようだが……」

プロシュート「二人の活躍が、チームの地位向上にプラスの影響を与えることだろう」

イルーゾォ「オレたちも溜飲が下がる思いだぜェ~~」

ソルベ「そりゃ良かった……グラッツェ(ありがとう)」

ギアッチョ「で、今回はどういう方法で殺したんだ?」

ジェラート「…………まぁ、いつも通りさ」

ペッシ「やっぱりソルベとジェラートはスゲェーやッ!」

メローネ「ハハッ、人を殺したことのないママっ子野郎(マンモーニ)のペッシとは大違いだな」

ペッシ「む……」

ホルマジオ「おいおい……今は二人を称賛しようじゃあねェか、なぁイルーゾォ?」

イルーゾォ「その通りだ。二人がスタンド無しでどう殺してるのか、是非ご教授願いたいぜ」

ジェラート「あぁ、今度な。それじゃあオレたちはこれで……」

スタスタスタ… バタン…ガチャ




自室へと移動し、鍵を閉める二人。

二人だけが抱えるこの『秘密』は、未だ他のメンバーには話せずにいた。

完全にノートのことを把握したわけではないからだ。


『名前を書くだけで人を殺せる』

これだけ都合の良い物を使って、リスクがないわけがない。そう思っていた。


ソルベ「…………」 ジェラート「…………」

ソルベ「『ノート』で殺してますなんて言っても、あいつらは信じるかな?」

ソルベ「オレは……正直に言うとまだ信じられねェーぜ……」

ジェラート「…………ソルベ、これは天啓だと思うか?」

ソルベ「天啓? いや、どっちかっつーと……悪魔の導きだろ」

ソルベ「こんな大量殺人ノートなんてモンは……」




「『悪魔』か…………惜しいな」

ソルベ「ス、スタンドか!!?」 ジェラート「!!?」


『彼』を見て、ソルベとジェラートは瞬時に警戒態勢をとった。



ぎょろりと開いた眼、分厚い唇から見える牙。

猫背で腕が長く、髪は逆立っており、髑髏のアクセサリーをいくつも纏っている。


一言で言えば、それはまさに『死神』――




ジェラート(い、いや……スタンドなら、何故オレたちに見える!!?)


死神リューク「スタンド? なんだそりゃあ?」

死神リューク「おれはそのノートの落とし主、『死神のリューク』だ」

死神リューク「どうやら、それが『普通(ただ)の』ノートじゃあないと……」

死神リューク「既にわかっているみたいだな」


ジェラート(喋った!? し、死神だと!!?)

ソルベ「ク…クソがああああアアァァッ!!」 ズンッ!!

ソルベが切り付けたナイフは、確かな手応えと共に、リュークの首にその刃を埋めた。


しかし……



死神リューク「……無駄だ、人間に死神は殺せない」

ジェラート(き、効いていない……!?)

ソルベ「ば、化け物め!!」

ソルベ「ノートの『リスク』が……まさか死神だとは……!!」

ジェラート「待てッ!! ノートに名を書いたのはオレだ、ソルベは関係ない!」

ジェラート「奪うなら、オレの魂だけを奪うんだな……!!」


死神リューク「……何だそれ? 人間の勝手に作った死神の空想(イメージ)か?」

死神リューク「安心しろ。オレはおまえたちに……何もしない」


ソルベ「!?」 ジェラート「!?」


死神リューク「ノートが人間界の地に着いた時、そのノートは人間界のモノとなり……」

死神リューク「地に着いたノートを『拾った者』が所有者となる」

死神リューク「つまり、そのノートはもうおまえの所有物(モノ)だ」



リュークが指し示したのは、『ジェラート』だった。



ソルベ「…………」

ジェラート「オレの…モノ……?」

死神リューク「ノートに触れた者にしか、おれの姿は見えない」

死神リューク「おまえもノートに触ったな? 所有権はそいつにあるようだが……」


ジェラート「…………」

ソルベ(敵意は……ないようだな)

ソルベ「…………死神リューク、なぜジェラートを選んだ?」

ソルベ「数多いる人間の中で……」

ソルベ「ジェラートがデスノートの持ち主に相応しいと判断した理由があるのか?」


死神リューク「理由はない。たまたまだ」

死神リューク「たまたまイタリアに落ち、たまたまおまえが拾った。それだけの話だ」

死神リューク「だから人間界で一番ポピュラーな英語で説明をつけたんだぜ」

死神リューク「誰が拾っても良いようにな」


ジェラート「……では何故ノートを落とした?」

ジェラート「誰でもいいと言うなら、そのノートを落とす必要すらなかったんじゃあないのか?」


死神リューク「何故かって?」




死神リューク「……『退屈』だったから」

ジェラート「?」 ソルベ「な、なんだって?」


死神リューク「今の死神ってのは暇なんだ。やることと言えば……昼寝か博打をうってるか」

死神リューク「デスノートに人間の名前なんて書いてるとな」

死神リューク「他の死神に『何ガンバッちゃってるの?』と笑われる位でね」

死神リューク「こっち(人間界)に居た方が面白いと、おれは踏んだんだ」


ソルベ「そ、そんな理由で……」

ジェラート(他にも死神がいる……ということは……)

ジェラート「人間界にあるデスノートは、これだけではないのか?」


死神リューク「ん? ああ、その可能性はあるが……」

死神リューク「自分で言うのもなんだが……そんな『変わり者』は、中々いないぜ」

死神リューク(……あれ、そういえば『シドウ』も人間界にいるんだっけ? まぁ…………いいか)

死神リューク「さて、ノートをどれくらい使っているのか……」 パラ

死神リューク「おッ、中々の人数を書き込んでいるな」

死神リューク「ククッ……普通ならビビッてこんなに名前は書けない」

死神リューク「かなりの精神力を持っているようだな」


ジェラート「…………」

ジェラート「オレたちは……『舐められている』んだ」

死神リューク「?」



ジェラートは思い返していた。自分たちの受けている『不条理』な待遇、その現状を……。



ジェラート「オレたちの所属するチームは、『暗殺』をするために作られたチームだ」


死神リューク「暗殺……」

死神リューク(……なるほど。『殺し』を生業にしているとは……動じないはずだ)

死神リューク(ククッ、面白そうな奴に拾われた)


ジェラート「暗殺という任務は中々に過酷でね、ターゲットもただで死んではくれない」

ジェラート「多くの場合、抵抗をしてくる。こちらの命の危険もあるわけだ」

ジェラート「だがそんな危険と犠牲の伴う仕事の割に、収入といえば『ボスからの報酬』だけ……」

ソルベ「…………」

ジェラート「ボスは『麻薬』の縄張りを支配していて、莫大な富を得ている」

ジェラート「オレたちは実力がある。もっと収入をもらってもいいはずだ。なのに……」


死神リューク「……その『ボス』に反感を抱いているのか」

死神リューク「じゃあノートに名前を書けばいい。簡単だ」

ソルベ「ボスを始末し、麻薬の縄張りを支配したい」

ソルベ「それはチーム一丸の願いだ。オレたちは『栄光』を掴みたい。だが……」

ジェラート「……ボスの『正体』がわからない。『顔』も、『名前』もな」


死神リューク(組織の長の『名前』すらわからないのか……警戒心の強い人間もいるものだな)


ジェラート「だから、まずはその正体を突きとめる」

ジェラート「ボスはおそらく『スタンド使い』だ、生半可な覚悟じゃあその正体は探れないだろう」


死神リューク「ン?なんだ? さっきも言っていたその『スタンド』というのは……」


ソルベ「人間界には、様々な『超能力』を持った生物がいる、それが『スタンド使い』だ」

ソルベ「例えば、老いさせたり、凍結させたり、生物等を小さくさせたり……」

ソルベ「オレとジェラートは、そういった能力を持ち合わせていないがな」

ジェラート「顔と名前がわかればそいつを殺せる、それ程の他を超越した『力』……普通は対抗できない」

ジェラート「しかし、そんな『力』を持っている人間が、この世界には他にも存在する」


死神リューク「それが……『スタンド使い』という奴らか」


ジェラート「その通りだ。スタンド使いと戦うには……」

ジェラート「敵のスタンド能力を掻い潜り、先に名前と顔を知り……」

ジェラート「ノートにその名を書き込まなければならない」

ジェラート「それは、容易ではないだろう」

デスノートを手にした人間は、どういう形であろうと、結局は自身の『欲』に身を委ねていく。

嫌な奴を殺したり、金儲けをしたり、自尊心を満たしたり、

または、世の中を変えようとしたり……



手にしたノートの『他者を殺せる』という『優位性』が、そうさせるのだ。



だが、二人は違った。ボス、そしてスタンド使いという言葉を口にし……

『覚悟』を決めた目をしていた。

殺そうとするということは、逆に殺されるという危険もあるという『覚悟』



リュークは遊び盛りの子供のように、頭の中でイメージを膨らませていた。

『スタンド』とは、果たしてどのような能力があるのか……


デスノートに名前を書かれた人間の中で、死神に抵抗できた者はただの一人もいない。

『一方的』。そう……一方的な殺ししか、リュークはしていないし、見てきていないのだ。


しかし、もしもデスノートに対抗できる力があれば……

デスノートを手にした者でさえ、命を奪われる危険があるとすれば……



死神リューク(おれはデスノートで『一方的』に人間を殺してきた)

死神リューク(しかしこれからこいつらがやろうとしている事は……)

死神リューク(『スタンド 対 デスノート』の、『対等な殺し合い』だ)



リュークは、笑った。



死神リューク(ククッ、『スタンド使い』か…………面白!!!)

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。

――さらに二週間後


ジェラートたちがリュークと出会い、二週間が過ぎた。

二人がデスノートの効力を『テスト』している一方、リュークは……



暇を持て余していた。




『これでここ一ヶ月内に心臓麻痺で死んだ犯罪者の数は、ユーロ圏内だけで23名にのぼります』

『全て心臓麻痺……か』


シャリシャリ…


『ええ。心臓や大動脈の破裂、冠状動脈の閉塞、心筋炎など』

『起因したと思われる症状でいえば、バラバラではありますが……』


シャリシャリ…


『……新種のウィルスが要因でしょうか?』

『それはないでしょう。イギリス、イタリア、フランス、ドイツ……サンマリノにフィンランド』

『そしてアメリカや中国、日本やインドと世界中で心臓麻痺が起こっている』

『ただのウィルスなわけがない』

『その通りだ。ヨーロッパだけではなく、世界中の犯罪者が刑務所の『牢屋の中』で死んでいる』

『そんな所にまで特定のウィルスが移動し、感染できると思うか?』

『それは……確かにあり得ないな』

『では大規模な組織的犯罪とでも言うのか……?』

『いや、各国にここまで根回しができる組織があるわけがない』

『では一体……』


シャリシャリ… ゴクン


『皆様、こちらをご覧ください』

『今回ある刑務所で死亡した2名の犯罪者については、死ぬ前にこのような奇妙な行動をとっています』

『奇妙な行動?』

『血で壁に絵を描いていた者と、遺書らしき物を書いていた者……こちらがその映像です』

『…………これは何か意味があるのか?』

『脱走し、トイレで死んだ者もいるそうだ』

『まったく……謎が尽きないな』

『この件に関しては、インターネットで……』


シャリシャリ…


ソルベ「…………なるほどな、こういう事だったのか」

ジェラート「ああ。デスノートでどの程度『死の前の行動』を操れるか、試してみたんだ」

ソルベ「この『操作』を使って……」


シャリシャリ…


ソルベ「……って、さっきからうるさいぞリュークッ!!」



死神リューク「ン?」

ソルベ「リンゴを食うなとは言わん……」

ソルベ「だが耳障りな音を出すんじゃあない! オレはその『硬い音』が嫌いなんだッ!!」


死神リューク「意外と細かい奴だな」

死神リューク「第一、その『ボス』とやらを殺す為に何かするのかと思いきや……」

死神リューク「中々行動に移さないじゃあないか。おれは『スタンド使い』同士の戦いが見たいんだ」


ソルベ「それとリンゴの食い方は関係ないだろうがッ!!」

ジェラート「……ソルベ、落ち着いてくれ」

ジェラート「ついでだ、リュークにも話しておこう。この二週間の『テスト』の意味と結果を……」

ソルベ「む……」 死神リューク「なんだ?」



ジェラート「5名、死の状況を書き込んだ。まずは『成功』した例だ」


① 一人は指定したトイレに行き、そこで心臓麻痺

② 一人はオレがノートに書いた絵と同じ絵を壁に描き、その後心臓麻痺

③ 一人はオレがノートに書いた文章と同じ文章を書き、その後心臓麻痺

ジェラート「次に『失敗』した例」


① 二日後、アメリカ自由の女神像の展望台に行き、そこで心臓麻痺

② 刑務所の壁に、ボスの名前とそっくりの似顔絵を描き、その後心臓麻痺



ジェラート「失敗例の二人は、具体的な行動を起こすことなく『ただの心臓麻痺』で死んだ」

ジェラート「失敗例の①は、刑務所から脱走しアメリカに向かうことができず……」

ジェラート「②はそもそもボスの顔も名前も知らず……それぞれ実行には至らなかったと思われる」

ジェラート「つまり……いくらデスノートであっても、ありえない事はできない」

ジェラート「しかしその人間がやってもおかしくない範囲の行動なら……」

ジェラート「いくらでも動かしてから死なせる事ができる」

ジェラート「……これでボスの正体を探れるはずだ」


死神リューク「…………」 シャリシャリ… ゴクン

死神リューク(地道に殺してるなとは思ったが……色々と試していたわけか)


ソルベ「だが……メディアで『特番』を組まれるとはな。少し大々的になり過ぎた」

ソルベ「本来は『国際警察(インタポール)』のデータにハッキングして……」

ソルベ「どのように死んだか確認するつもりだったんだろう?」

ジェラート「いや、これでいいんだ」

ジェラート「見ろ……この一連の心臓麻痺事件は『キラ』の仕業ではないかと、ネットで言われている」

                   『救世主キラ伝説』


         世界の犯罪者が次々と消えているのは、キラ様が復活なされたからです。

           キラ様とは世の悪を絶対に許さない地獄よりの使者です。


          キラ様の復活を信じる者のみ、この入り口からお入りください。


                     [ENTER]



ソルベ「キラ……?」

ジェラート「ああ。殺し屋(キラー、Killer)から来ているようだ」

ジェラート「新聞や今のようなテレビでは、まだ『凶悪犯罪者の相次ぐ変死』くらいにしか公表されていない」

ジェラート「だが民意は違う。この事件を……正義の裁きをする者がいると感じているんだ」

ソルベ「んん? 『正義の裁き』……?」

ソルベ「ジェラートは、犯罪者のいない綺麗な世の中でも造りたいのか?」

ジェラート「ハハハ、そんなわけないだろう。このノートを手にする遥か前から、オレたちは『犯罪者』……」

ジェラート「そんな住みづらい世の中なんて、願い下げだ」

ジェラート「……いいか、こうやって犯罪者が次々に心臓麻痺で死んでいく」

ジェラート「そしてその中にボスもいたとする。民意はどう思うか」

ジェラート「パッショーネのボスは、『汚い事をやっていたから死んだんだ』と、考えるはずだ」

ソルベ「なるほど……ボスを殺した場合、それを架空の『キラ』という者にせいにするということか」

ジェラート「そういうことだ」

ジェラート「そしてオレたちが組織のトップに立ちキラに殺されなければ……」

ジェラート「この人たちは『善』の人物だと、民意は判断する」

ジェラート「その方が、何かと都合も良いだろう」

――別室


メローネ「『キラ』……ねェ。ネットではこんなのが話題になってんのか」

リゾット「…………ホルマジオ、どう思う?」

ホルマジオ「ン? そうだな……こいつは厄介な『能力』だぜ」

メローネ「能力? キラはスタンド使いということか?」

ホルマジオ「ああ、その可能性が高いな。殺された人間たちから推測するに……」

ホルマジオ「『顔と名前がわかる人間を心臓麻痺にできる』スタンド能力だ」

プロシュート「確かに、一般に名前が公開されていない犯罪者は殺されていないようだが……」

ホルマジオ「まぁ偶然の可能性もあるがな。それに……」

ホルマジオ「刑務所内だけで起きていることから、これ以外にも発動条件がいくつかあるのだろうが……」

プロシュート「…………だがそれでも危険な能力には変わりないな」

メローネ「能力もそうだが、こいつは何で急に犯罪者を殺し始めたんだ?」

リゾット「単に最近覚醒した能力者だから、能力を試しているといったところなのだろうが……」

リゾット(ソルベとジェラートのブルガリアでの暗殺任務……)

リゾット(一応ターゲットの死因を調べてみたが、そのほとんどが『心臓麻痺』だった)

リゾット(任務以降、オレたちのスタンドが『見える』素振りはなかったはずだが……)



リゾット(まさか、な……)

……


ジェラート「少し逸れたな……話を戻そう」

ジェラート「まずは幹部の誰かを操り、そこからボスへの手掛かりを掴む」

ソルベ「誰がいいか…………おッ、そうだ。『ペリーコロ』なんかいいんじゃあないか?」

ソルベ「いつ死んでもいい程に、ボスに狂信的な恩義を感じていたはずだ」

ジェラート「なるほどな……ペリーコロなら操った後に自殺させても、不自然ではないか」

ジェラート(『検死』で自殺と判断されれば……さすがのボスもその死に疑いは持たないだろう)

ジェラート(事故死や他殺だとボスの調査が入る。自殺の方がより確実だな)

ジェラート「よし、決まりだ。さて、後はどのように書くかだが……」


『そういえば、数は多くありませんが……』

『数ヶ月前に脱獄した重犯罪者の何人かが、再収監後に謎の死を遂げています』

『心臓麻痺ではなく発狂死だったようですが……これも何か関係が……』

『心臓麻痺でないなら、関係はないでしょう』

『そうですよ、それでは何でもアリになってしまいます』

『脱獄者の何人かはまだ行方不明でしたよね? そっちが優先じゃあないんですか?』

『…………話題がずれていますよ。今はこの心臓麻痺事件について、です』


ジェラート「…………」

ソルベ「テレビは何にでも関連付けるな……」

ソルベ「オレたちとは全く関係ねェーってのによォ」

ジェラート(デスノートなら……心臓麻痺以外でも殺すことは『できる』)

ジェラート(それは既に試してある。メディアでも普通の報道しかされていない『事故死』の人間たちだ)

ジェラート(この発狂死はスタンド能力によるものか?偶然か? それとも……)

ジェラート(!!?)


ジェラート(ま、まさか……やはり『他の』デスノートが……)



実は……ジェラートのこの推測は当たっていた。

現在人間界にデスノートは『二冊』存在する。



スタンド使いとスタンド使いが引かれ合うように。

二冊のデスノートは、これから互いが互いを引きつけ……交錯していくのだ。


そしてもう一人の持ち主は……

――イタリア、ローマ市内


数ヶ月前に起きた犯罪者たちの集団脱獄事件。


この事件の最も奇妙な点は……

犯罪者が『複数の刑務所』で『同時に』脱獄を実行した点にある。


事件は『デスノート』により誘発されていた。そのデスノート所有者は……『彼』である。

彼はキラ事件に、嫌悪の感情を抱いていた。



「この心臓麻痺の一連の事件……『キラ』とか言う奴。間違いないな」

「『デスノート』を使って、殺しのテストをしている」

「……こいつは許せん。犯罪者を殺すとは、目に余る行為だ」


死神シドウ「目に余る……? 犯罪者たちを『あんな風』にしてたのに……」


「だからこそ、だ。犯罪者を殺されることは、わたしにとっては『損』なことだ」

「…………」 カタカタカタ…

「…………」 カタカタカタ…

「この……一つ一つ試しているやり方、こいつはまだ『初心者』だな」

「ならば直近で心臓麻痺で死んだ人間……そいつが所有者へのヒントに繋がるはずだ」

「つまり、この刑務所内で死んだ犯罪者どもではなく……」


「ブルガリアで死んだこのマフィアたちから、犯人の目星をつけれる可能性がある」

男はさらにパソコンを動かし、このマフィア組織の情報を一通り確認した。


「……ほう、これは偶然だ」

「この組織は……一度わたしにもボスから『依頼』があった組織だ」

「その時は面倒だったので断ったんだが……」

(…………)

(ということは……わたしの後に依頼を受けたであろう、『うち』の暗殺チームが殺したのか?)

(だとすれば暗殺チームにデスノートがあることになるな。面白い……)

「……まぁ、誰が相手だろうが構わん」

「このデスノート所持者を見つけ、殺すぞ」


死神シドウ「他のデスノート所有者を殺す!?」

死神シドウ「デスノート持ち同士でそんな……」


「……なんだ? シドウ」 ギロリ


死神シドウ「!!? ははっ……い、いや何でも……」

死神シドウ(こ、こいつ人間なのに……やっぱり怖ェ~~~)



現在34歳、元医者。

我々は、デスノートを携えたこの男を知っている。


この男の『狂気』を知っている。



チョコラータ「シドウ。まずは暗殺チームについて調べておけ」

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。

――三日後



チョコラータは……各国の『死刑制度』に『反対』だった。

なぜなら、凶悪犯罪者を殺すということは『勿体ない』と考えていたからである。


数ヶ月前にデスノートを手に入れてから、重犯罪者を五十人ばかり脱獄させた。

脱獄した囚人はそのほとんどが警察に捕まり……発狂死したり、自殺していったりしたが……

何人かだけはチョコラータの元へ辿り着いた。

チョコラータは既に彼らの名前をデスノートに『書き込んでいた』


操った囚人を、チョコラータは観察した。

『死』や『痛み』の表情を観る為である。

罪人の穢れた魂には強いパワーが宿る。

それら囚人たちの死の間際の表情や絶望の表情は、チョコラータの『好奇心』を一層満たした。


チョコラータは、そんな貴重な罪人を殺してしまう死刑制度のことを憎んでいたし、

今またデスノートを使って犯罪者を裁く『キラ』のことを、忌み嫌っていた。



チョコラータ「暗殺チームの『顔写真』はないのか?」

死神シドウ「えっ……顔写真は……ないみたい、です」


チョコラータ「ない……?」

チョコラータ(……初めからないのか? しかし、名前は探し出せた)

チョコラータ(写真だけがどこを探しても見つからないのは……)

チョコラータ(既に奴らが始末した可能性が高い。キラ対策にデータを削除したのか……?)

チョコラータ(それにしては対応が的確だし……何よりも判断が『早過ぎる』)

チョコラータ(…………)

チョコラータ(ボスがそういう人物だからか、パッショーネは情報を全てデータで管理するが……)

チョコラータ(チッ、『一手』遅かったか……)


チョコラータ「だが逆に、奴らがノートを所持している可能性が高まった」

チョコラータ「セッコ、行ってくれるか?」

セッコ「うお!! うおッ!!」

チョコラータ「このノートの所有者は『テスト』を怠らない程の慎重な性格で……」

チョコラータ「そして『賢い』。スタンド能力もあるだろう」

チョコラータ「おまえのオアシスなら……『デスノート』に対しての相性は最高だが、無茶はするな」

セッコ「ふおっ、うおお!!」

チョコラータ「よし……期待している。頼んだぞ」

チョコラータ「あとはシドウ、拠点の場所をプリントアウトしておけ」


死神シドウ「それはいいけど……『何個』くれるの?」

死神シドウ「三日間も色々調べたのに、まだもらってない……」

チョコラータ「2個だ」

死神シドウ「えっ!? も、もう少し欲しい……」

チョコラータ「嘘だよ、5個やろう」

死神シドウ「5個も!! やった!!」



ガリガリガリ…



死神シドウ「角砂糖……って美味しい。おれ、頑張るぞ」

……


ペリーコロ 自殺


2001年3月5日より23日間のうち

外出した際、誰にも気づかれない場所、怪しまれない行動範囲の中で、

自分のボスが活動拠点にしているであろう住所を書き、封書の手紙で差出人名は書かず、

ローマ市の ○○△△Hotel 1011号室の Filone Albedine 宛に出す。

活動拠点の推測がつかない場合は、自身の活動拠点の住所を、その旨も加えて書き記す。

そしてこの事は誰にも言う事無く 2001年3月27日午後11時59分、拳銃で頭部を撃ち抜き死亡。




ジェラート「……書き込みから三日が経った」

ジェラート「封書が届くなら、そろそろだろうな」

ソルベ「ソルベ、おまえ最近眠れているのか? 夜中もパソコンで何かやっているようだが……」

ソルベ「犯罪者殺しも程々にすればいいだろうに」

ジェラート「それだけじゃあない。オレたちチームの顔写真を、組織のデータ上から全て削除しておいたんだ」

ジェラート「これが中々に大変だった、ハッキングにかなり手間取ったからな」

ソルベ「写真を消す……? 一体、何の為に?」

ジェラート「念の為に、だ。他にデスノートの所有者がいる可能性があ……」

ソルベ「む、待て……誰か来た」



コンコン… ガチャ



ペッシ「わりィ、取り込み中ですかい?」

ソルベ「いや……大丈夫だ、どうした?」

ペッシ「1011号室宛ての封筒がきてたもんで、持ってきたんです」

ペッシ「これです。宛名が書いてないんだが……」


ジェラート(…………来たか)

ジェラート「ありがとう、わざわざすまないな」

死神リューク「どれどれ……」

ジェラート(早速中身を確認して………………クソ、やはりボスの拠点は知らなかったか)

死神リューク「ククッ、残念だったなジェラート」

ソルベ「ハズレだったか…………ン?」

ジェラート(まぁ……幹部の一人『ペリーコロ』の正確な活動拠点が知れた)

ジェラート(情報はいくらあっても困ることはない。何かしらの役には立つだろう)

ソルベ「…………」

ジェラート「? どうしたんだソルベ。怪訝な顔をして」

ソルベ「…………おいペッシ、おまえ今『ビーチボーイ』は使ってないよな?」

ペッシ「え? ああ……別に使ってませんが……」

ペッシ「それが一体どうしたってんです?」


ガ…ボ…


ソルベ「『音』だ……何かが『水を進むような音』が聞こえる」

ソルベ「いや……釣り針が水に落ちて出る音とは比較にならねェ。もっと…………『でかい』」

ソルベ「だがこれをオメーのスタンドが出している音じゃねェってんなら……」



ガボ…ボボボ…



ソルベ「このコンクリートのホテルの中でッ! これは何が出している『音』なんだッ!!?」

ガボオオォォォッ!!


泥化したホテルの壁を進んできた『彼』が、部屋内に姿を現した。



セッコ「…………おまえら、『暗殺チーム』だよな?」

セッコ「Filone Albedine(パン、白)……『リゾット・ネエロ(リゾット、黒)』の偽名……」

セッコ「その偽名で契約してある部屋だ。暗殺チームで当たり……だろ?」



ペッシ「壁から……!? い、いきなりなんだテメェーはッ!!?」

ソルベ(こいつ……『能力者』か、このスーツは何だ?)

ソルベ(ギアッチョのように、非スタンド使いにも『見える』スタンドなのか……?)

死神リューク(おおッ! こいつは『スタンド使い』か!?)

ジェラート「…………そうだ、暗殺チームの者だが……おまえは何者だ?」


セッコ「オレはセッコだ……『親衛隊』のセッコ」

セッコ「……おまえら暗殺チームの誰だ?『名前』はなんつーんだ?」


ペッシ(なァんだ、同じパッショーネの…………しかも親衛隊だったのか)

ペッシ「ああ、オレの名は新入りの……」

ジェラート(待て……『名前』だと!!?)

ペッシが名乗ろうとしたその瞬間、ジェラートの『用心深さ』がそれを遮った。


ジェラート「待てッ!! 自分のものも、そしてオレたちのものもそうだ」

ジェラート「『名前』は…………こいつの前でまだ言うんじゃあない」

ペッシ「え……!?」



セッコ(へェ……こいつ、『名前』に警戒したのか?)

セッコ(いきなりビンゴかもな……。オレの『勘』は……よく当たるぜ)

セッコ「……名乗りたくねェなら別に構わねェ」

セッコ「同じ組織の者同士、当然の礼儀とも思うが…………まぁ、いい。構わねェ」

セッコ「ところでよォ……」

セッコ「オレは『パソコン』が苦手でな。機械音痴ってやつなんだが……」

セッコ「これ……なんつーんだっけ? キーボードをカタカタやるやつ」


ペッシ「…………?」

ソルベ「…………?」


セッコ「こう、カタカタっと打つやつだよ。わかんないか?」


ジェラート「…………タイピングか?」


セッコ「おッ!そう!! それだよ、タイピングだ」

セッコ「教えてもらいてェーんだよなぁ。パソコンが『得意な奴』はいねーか?」

セッコ「タイピングとか……」



セッコ「『ハッキング』とかができるような……そういう奴は……よォ」

ソルベ「…………」 ジェラート「…………」


セッコ「画像を消したりできる、そういうハッキング技術がオレにもあればなァ~~~」

セッコ「便利だよなァ~~~組織にある不要な『写真』とか……消せるもんなァ?」

セッコ「ところで…………おまえらはできるかい?」


セッコ「『ハッキング』を……よ」


ソルベ「…………」 ジェラート「…………」

ペッシ(な、なに言ってんだこいつ……だ、だが……)


セッコ「あっあ~~~。別にこれも答えなくていいぜ」

セッコ「それが……『答え』だからな」


ペッシ(この空気感……表面ではおちゃらけているが……な、なんだ……なんなんだこの殺気は……!?)

ジェラート(…………コイツ) ソルベ(…………チッ)

ジェラート(『隠した素顔』、『名前を聞き出す為の誘導』)

ジェラート(さらには組織のデータを『ハッキング』し、顔写真を消したことを知っている)

ジェラート(間違いない、こいつはデスノートを……)


セッコ(…………チョコラータの読みは当たりだな。名前も何も答えねェ。そして……)

セッコ(オレの勘が『そうだ』とも、言っている)

セッコ(間違いねェ……こいつらデスノートを……)




ジェラート(『知っている』ッ!!)  セッコ(『知っている』ッ!!)

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。

この部屋にいるのは……


ジェラート、ソルベ、ペッシ、セッコ、そして死神のリュークである。



リュークがセッコを攻撃することはない。

ジェラートたちを妨害することもない。リュークはあくまで戦いの……そしてこの物語の『傍観者』である。


つまりジェラートたちは、スティッキーフィンガーズをも上回るスペックの『オアシス』に対し……

まだ人を殺したことがない新入りのペッシの『ビーチボーイ』と、『デスノート』で戦うしかないのだ。


しかし……



死神リューク「ククッ……ジェラート、どうするつもりだ?」

ジェラート(あのスーツ……素顔が見えないのは厄介だな)

ジェラート(『目』の取引をしたところで、これでは名前が読み取れない)



顔が隠れたスーツ状スタンドである『オアシス』を前に、デスノートは無力化していた。

セッコ(デスノートを知っているなら……)

セッコ「話は早ェ……!!」 ダッ!


ソルベ(!! 向かってくる……ということは)

ソルベ(こいつのスタンドは『近距離タイプ』か!?)

ソルベ「ちィッ!!」 バッ


ソルベは咄嗟に両腕を十字に構え、防御の姿勢をとった。


非スタンド使いである彼が、長年暗殺チームで活躍できた理由の一つに……

『身体能力の高さ』が挙げられる。


単純に『強い』のだ。しかし、今回ばかりは…………相手が悪過ぎた。



ドゴォァッ!!



ソルベ「ぐッ!!? が…がはッ……!!?」

ジェラート「!?」 ペッシ「は、速い!!?」

ソルベ「ぐ……」 ドサッ…


悶絶したソルベは、そのまま力なく膝をつき、気絶してしまった。


ペッシ「し、しかも……一撃で!!?」

ジェラート(馬鹿な!? ソルベをこうも簡単に……なんというパワーだ……!)


セッコ「おい……早く出せよ、てめーらの『スタンド』と……『ノート』をよ」

セッコの目的は、『デスノート』の存在確認と、存在した場合はその『奪取』である。

その目的を達する上で最も重要な点は、相手の『スタンド能力』の把握。


セッコ(オレがノートで殺される心配はない。『スタンドだけ』に気を付ければいい)

セッコ(こいつらの『能力』は……何だ?)


ペッシ「あ、あああぁ……」

ペッシ(や、やべェ……なんでオレたちがいきなり襲われてんだ!?)

ペッシ(ボスへの不満がバレて、粛清されるってことか!!?)

ペッシ(オ、オレはどうしたら……プロシュート兄貴ィ…………) ブルブル…


セッコ(…………)

セッコ(いや……違うな。こいつ『ら』じゃあねェ、『こいつ』だ)

セッコ(この新入りはビビっちまってる、マンモーニ野郎は問題にならねェ)

セッコ(もう一人のこいつがどう出るか……)


ジェラート(オレがどう動くか…………とでも考えているのだろう)

ジェラート(セッコはオレの動向にだけ注視している。となれば、ここで取るべき手段は……)

ジェラート(奴の『油断』を誘う。一人殺すリスクはあるが……動かすしかない……!!)



ババッ!



ジェラート「……『セッコ』と言ったな、その名をノートに書き込ませてもらうぞッ!!」

セッコ(おおッ!あれは……『デスノート』か!! だが……)


セッコはノートが『存在した』ことに一瞬喜びを感じたが……

ソルベのこの行動を見て、即座に軽侮の念を抱いた。


セッコ「…………ハンッ。おまえバカか?」

セッコ「オレの『素顔』がわからずに名前を書いても……意味ねェだろうが」


ジェラート「…………」 ガリガリガリ…

それでもジェラートは、一心不乱に書き込みを加え続ける。


ペッシ(さ、さっきから……ジェラートは何をやってるんだ!?)

ペッシ(奴も『ノート』がどうとか……)


セッコ(…………)

セッコ(チョコラータはこのデスノート所有者のことを警戒していた)

セッコ(『賢い奴』だとか、『危険な敵』になり得るだとか……)

セッコ(だが現実はどうだ?)

セッコ(仲間はやられ、新入りはビビり上がり……そして本人は意味のない行動を繰り返している)

セッコ(ハハッ、無駄にノートに書き加えてやがるぜ)

セッコ「最初の名を書き始めてから、もう40秒が過ぎているが……」

セッコ「オレは一向に心臓麻痺にならないぜ? どうしたんだろうなァ~~~?」

セッコ(顔は見えねェ、さらにセッコという名も偽名かもしれねェのに……全く無駄なことを)

セッコ(…………そろそろノートを奪い、こいつらを殺すか)


死神リューク「お、書き終わったようだな。だが……書いた中身は見てねーぜ」

死神リューク「それ見ちゃうとつまんないからな。まさか『セッコ』とだけ書いたわけじゃあないんだろ?」

ジェラート(…………『策』は終わった)

ジェラート(後はただ『待つ』しかない。だが…………まだ時間がかかる、ペッシの力も必要だ)


ジェラート「…………いいか、よく聞くんだ」

ジェラート「このノートは、名前を書き込むと『人を殺せるノート』だ」

ペッシ「!!? な、なんだって!?」

ジェラート「これは本当の話だ。近頃話題になっている殺人鬼『キラ』は…………オレのことだ」

ペッシ「……!!?」

ジェラート「セッコはこのノートを奪いにきている」

ジェラート「このノートはオレたちが『栄光』を掴む為の希望だ、断じて渡せん」

ジェラート「なんとか奴の『素顔』を晒したい、素顔が見えないとノートの効力がないかもしれんからな」

ジェラート「新入りのおまえに頼むのは酷かもしれないが……オレにはできない」

ジェラート「頼む。おまえしかいないんだ……奴の素顔をおまえの『能力』でなんとか曝してくれ……」

ジェラート「おまえならできる。その気になれば……」



ジェラート「おまえの『ビーチボーイ』は誰にも負けないはずだ……!!」



ペッシ(だ、誰にも…………負けない? ジェラート……)

ペッシ(オレなんかを、そこまで頼って……)



ペッシはチーム内で『マンモーニ(ママっ子)』と蔑まれたことがある。

まだ人を殺したことがないチンピラ同然の自分には、お似合いな侮蔑だ。

そう思っていた。



しかしこの追い詰められた状況でジェラートは……そんな自分を、『頼ってくれた』

人は誰でも、誰かに『認められたい』と思っている。


ペッシの心の奥底にあったその承認欲求と……

そしてジェラートの眼差しは、その真剣さは…………怯えがちなペッシの心を動かした。


ペッシ「…………わかりましたぜ。チームの為、仲間の為……」

ペッシ(そして、ジェラートや兄貴も言っていたオレたちの『栄光』の為に……)

ペッシ「やってやる」


人は、こんな時に成長するのだろう。

やるべきことが明確になり、そこへ向かう覚悟を決める。


進むのが困難な荒野だろうが、それを『希望の道』とペッシは決めたのだ。



セッコ(こいつ……少し雰囲気が変わったか?)

セッコ「面白ェ……かかってきな、『マンモーニ野郎』」


死神リューク(おお、ついにスタンド使い同士が戦うのか……!!)


ペッシ「だが、奴の『素顔を晒す』って任務。申し訳ありませんが……」

ペッシ「それは『お断り』させていただきます」


そう。ペッシの決めた道のりは、セッコの素顔を晒す事ではない。

『暗殺チーム』の一員として、あくまでセッコを……




ペッシ「オレは、これからこいつを……『ブッ殺す』ッ!!」

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きは日を改めて書かせて頂きます。

それではまた。

>>17>>21
入団時の24時間ライター守り通せたと思えば、まあ保管できる
それよりも気になるのはキラの復活ってとこだけど、設定は月の死後の世界なの?

>>62
月の死後の世界ではありません。

原作『DEATH NOTE』で月がノートを拾ったのは2003年11月28日。
このSSは>>41にあるように、2001年3月頃の物語です。
デスノートの時系列で言えば、月はまだ中学三年生です。


>>28にある救世主キラ伝説の書き込み内容については、これは原作通りです。
原作にも『復活』と書かれています。
デスノート一巻をご覧頂くか、ネットで『救世主キラ伝説 画像』と検索し、ご参照ください。

セッコ「ハンッ。このオレを『ブッ殺す』……だァ?」

セッコ「そんな台詞は実際に殺してから言うもんだぜ……」

セッコ「やってみろよ、マンモーニくゥゥゥゥ~~~ン」



ドボォォォォン!



ペッシ「ホ、ホテルの床に……も、『潜った』!!?」

ジェラート「これが奴の『能力』か……!!」


セッコは今、『スタンド能力だけ』を警戒している。

その警戒心があったからこそ真正面から戦わず、泥化した床に潜るという『安全策』をとったのだ。


それは決意を固めた敵を前にし、慎重になったが故の選択でもあった。

しかし、それはペッシの前では……


ペッシ(むしろ好機……! 隠れる敵……こういうのは『得意』だ……釣り上げてやるぜッ!!)

ペッシ「『ビーチボーイ』ッ!!」

ペッシの投擲した釣り針が床に潜る。


セッコ「ン!? 今…………『音』だ。何かの『音』がしたな……」

セッコ「……奴らの能力か? 何かを投げ入れたのか?」


オアシスの弱点……それは、地中にいる際は『視界が利かない』ことである。

ゆえに普通の人間であれば、地中に放たれたビーチボーイに気付くことはできない。


だがセッコはその欠点を、原始的な才能と鋭敏な聴力で補っていた。



セッコ「これは……なんだ? 『釣り針』か何かか?」

セッコ「横から『来る』……5メートル……3……1…………そこだッ!!」



バシィッ!!



ペッシ「!!? そ、そんな……まさか!?」

ジェラート「どうした!?」

ペッシ「ち、地中でビーチボーイの針が掴まれ…………ハッ!!?」

ズブ…ズブズブ……ズズズズズ!!


ペッシ「オ…オレの足元が沼みてーにッ!!?」

ペッシ「うおおおおお!!? ひ…引きずり込まれる!!?」 バッ!


セッコ「……オレの『オアシス』は触れたものを泥化させる」


ペッシは泥化した床に引き込まれ始め、慌ててその場所を移動した。

それがセッコによる『誘導』とも知らずに……


ジェラート「それは奴の罠だ!! そっちに行くんじゃあないッ!!」

ペッシ「!?」



セッコ「だがオレの身体を離れた泥は……『再び固く』なるッ!!」



ポイントへ導かれたペッシ目がけ、セッコの口から泥槍がいくつも吹き出された。

ドスッ! ドスドス!!


ペッシ「ぐ、ぐああああ!!?」

ペッシ(い、痛ェッ!!? だ…だが!来るなら来やがれ……! 肉を切らせて……骨を断ってやる!!)


セッコ「こいつでとどめを刺してやるぜッ!!」 ダッ!



ペッシ(!! 来たな……この距離……この近距離なら……)

ペッシ「オレのビーチボーイだってなああああアアアァァァッ!!」 パキョオオォォァァーン!!



近付く敵へ釣り針を投じる。距離よし、さらに……『闘志』よし。

ペッシは最高の場面で、過去最速のスピードと正確さで針を投げることができた。


並のスタンド使いでは、これを回避することは到底できないだろう。



だが……

セッコ「…………フン」 バシィッ!


ペッシ「!!?」

ペッシ「そ、そんな……オ、オレの最高の一投が…………み、見切られた!!?」


セッコ「…………遅ェな」

セッコ「よぼよぼの爺さんくらいにしか、通用しないんじゃあねーのか? フハハッ」

セッコ「じゃあな。中々に楽しかったぜ…………『新入り』」




セッコ「オアアァアアアシスーーーッ!!!」 ドゴドガドコバキドガァッ!!




ペッシ「ごぼゲッ!!? ガ…ガハッ!!?」

ペッシ(ダ、ダメだ……こいつにはか…勝てな……い…………)

ペッシ「ジェ…ラ…………」 ドサッ…

スタンド使い同士の戦い。リュークが待ち望んでいたその戦いに、決着がついた。

しかしリュークは……ひどく落胆していた。



死神リューク(…………なんてこった)

死神リューク(ペッシが何をやってたか、全然わからん)

死神リューク(あ、そういえば……)

死神リューク(一般的には、『スタンド』は『スタンド使い』にしか見えないんだっけ)

死神リューク(それじゃあおれは何も楽しめないじゃあないか……) ハァ…


そしてリュークの『面白くない』という落胆にはもう一つ理由があった。

それは……追い詰められた『ジェラート』のことである。


死神リューク(…………それにジェラートも追い詰められてるしな)

死神リューク(大した抵抗もできずにここでこいつも終わりか。随分と早かっ…………ン?)

死神リューク(……なんだ? ジェラートのあの余裕の表情は……?)


だが、ペッシが時間を稼いだことにより……


セッコ「さて、初心者野郎。てめーだけになったな」

セッコ「ノートは使えねェ。スタンドも…………ねェんだろ?」

セッコ「つまり打つ手なしだ。潔く……ノートをよこしな」


……ジェラートの『策』は既に、成っていた。


ジェラート「『初心者』……ね。まぁ確かにその通りだが……」

ジェラート「一つ、言っておこう」

ジェラート「今回のおまえの『敗因』は、そうやってオレを侮って……」



ジェラート「『ノート』を使わせたことだ」

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きは日を改めて書かせて頂きます。

それではまた。

セッコ「素顔の見えないオレにデスノートは通じない……」

セッコ「これが理解できないおまえをナメるのは当然だろうが。え?」


ジェラート「では……見てみるか? オレがどう書き込んでいたか……」


セッコ(見る必要すらないぜ。どうせオレの名を何度も何度も……)

セッコ(!!? ち、違う……!!?)


そこには『セッコ』の名は一つも書き込まれていなかった。

書き込まれていたのは……




セルヴィス 自殺


ローマ市の ○○△△Hotel 701号室の イルーゾォに

「1011号室でジェラートらがスタンド使いに襲撃されている。至急助けに行ってくれ」

と伝えたのち、自身が行う最も自然な自殺方法だけを考え、72時間以内に実行し死亡。




セッコ「な……!!? セルヴィス……誰だ!?」

セッコ「い、いや……それよりもその『名前』……その名前は確か暗殺チームの…………」




「『身体半分だけ』入るのを許可するッ!!」

セッコ「!!? な…何が起きた……身体が……う、動かねェッ!!?」



黒髪おさげのその男が、セッコにゆっくりと近付く。


イルーゾォ「おまえの身体も……そして纏っているスタンドも同様だ」

イルーゾォ「半分だけ入る事を許可し、半分だけ出る事を許可する」

イルーゾォ「おまえもスタンドも、そこから動くことはもう……できない」


イルーゾォのいる701号室に伝言を告げた『セルヴィス』とは……このホテルのただの従業員である。

ジェラートは、敵襲等の有事の際に『操ることができるよう』……

その日勤務しているホテルマンの顔と名前を、全て記憶していた。


イルーゾォ「おまえらが偽名ではなく『本名』や『スタンド使い』という言葉を従業員に教えるってことは……」

イルーゾォ「それ程の『危機』だということだ」

ソルベ「」 ペッシ「」

イルーゾォ「…………どうやらその通りだったようだな」



そして、ジェラートが『イルーゾォ』を呼び寄せたのには理由があった。

部屋が近いリゾットでもギアッチョでもなく……なぜイルーゾォなのか。


それはセッコを、殺さずに『捕縛』しようと考えたからである。

イルーゾォ死んじゃう…?フルネームじゃないから大丈夫か?

ジェラートは考えた。

今回の襲撃は、『デスノート』を所持している人間が引き起こしたものだ。

セッコ単体で計画したわけではない。セッコが殺されたことを仲間が知った場合、その報復に来るかもしれない。

デスノートなら……『死神の目』でなら、その人間が生きているか死んでいるかが『わかる』


それにセッコを殺さず捕えれば、正体のわからない敵の情報が得られるかもしれない。


セッコの捕獲が最善と考えた時、相手を殺さず『捕縛』するには……イルーゾォが適任だと、そう判断したのだ。


イルーゾォ「おいジェラート。二人はこいつにやられたんだな? こいつは何者だ?」

ジェラート「……こいつはセッコ。パッショーネの組員で……ボスの親衛隊だ」

イルーゾォ「何……組織の!!?」


セッコ「て、てめェ……『ジェラート』っつーのか……!!」


ジェラート「ああ、そうだ。だが名前を知ったところで……おまえにはもうどうすることもできん」

ジェラート「だからノートの書き込みを見せたのだ。『マンインザミラー』は完全におまえを捕縛した」

イルーゾォ「こいつはどうするんだ? 殺すのか?」

ジェラート「いいや、ここからは……」 スッ…



ジェラート「…………拷問の時間だ」

イルーゾォ「ジェラートの……『拷問』……」

イルーゾォ(ああ~あ。こうなったジェラートはやべェぞ……しばらく止まらねェ)

ジェラート「何故オレたちがノートを持っているとわかったのか、差し金は誰か……洗いざらい話してもらう」

イルーゾォ「……ジェラート、とりあえず二人が回復してからでいいから、状況は説明してくれよ」

ジェラート「ああ、わかった。話すことが少し多いが、な……」


セッコ「クソが……!!」

セッコ「てめーッ!! オレがそう簡単にゲロるとでも……」

ジェラート「まずは……そうだな。視覚を奪わせてもらおうか」 ザシュッ!

セッコ「ぐ、ぐおおおああ……!!?」


ジェラートはそう言うと、ナイフでセッコの片目を抉った。


ジェラート「もう一つも」 ザシュッ!

セッコ「!!? ぐ、ぐ、ぐぎぎぎぎ……!!!」



『視覚』。人間が外部から得る情報の割合、その八割以上は『視覚』が占めている。

その情報源である目を失うと、普通の人間は抵抗力を著しく失う。


ゆえに拷問や尋問を行う際は、猿ぐつわ等よりも目隠しをした方がより効果が高い。

ジェラートはセッコの視力を奪うと、やんちゃな子供をあやす様に、優しく落ち着いた声で囁き始めた。


ジェラート「…………おまえは地中から迫る釣り針を把握する程、『耳が良い』ようだな」

ジェラート「偶然だが、あそこで倒れているオレの親友もそうなんだ」

ジェラート「そういう人間の方が、視力をなくして聴力が敏感になると……」

ジェラート「更に恐怖に過敏になるらしい。暗闇が想像力をかきたて、一層の恐れを生むのだろう」

ジェラート「君はどうだ? セッコ。その暗闇で……抵抗する意味があるのか?」

ジェラート「今なら、君はまだ自分の『生死』を自分で選ぶことができるが……どうだ?」

セッコ「な、何ィ……!?」


セッコはこの言葉にドキリとした。

『選ぶことができる』…………自分はまだ、生きることを自らで選択できるのだ。

だが逆に言えば、選択を誤ることはすなわち……


ジェラート「目は失ったが、その自慢の耳……そして、『その先』まで失うのは嫌だろう?」

セッコ「…………!」

ジェラート「情報を差し出すんだ。その後は『解放』すると……約束しよう」

……セッコは早々に観念することを選んだ。抵抗は無駄だと悟ったのだ。


セッコ「…………チッ」

セッコ「わかった。オレにもプライドはあるが……目も見えない中……全てを失っても意味はねェ」

セッコ「ノートの在り処も、何でおまえらがノートを持っているかわかったのかも……全部話してやる」


ジェラート「そうか、おまえが賢い奴で良かった」

セッコ「だが……」

ジェラート「ン?」

セッコ「だがあと半日、待ってくれ。半日の間、これ以上おまえらがオレに何もしなければ……」

セッコ「オレもおまえらのことを信用し、全てを話してやる」

セッコ「逆にその間オレに危害を加えるようなら……オレは決して喋らねェ。死を選ぶ」

セッコ「本当に無事解放してもらえるか……まだ信じられねェからな」

ジェラート「…………なるほど」

ジェラート「オーケー、取引成立だ。半日……そしてその後も含め、これ以上危害は加えない」

ジェラート「おまえが攻撃した二人の遺恨も忘れよう、情報提供後はちゃんと解放する。安心するといい」

セッコ「…………ああ、約束だぜ」


ワインと博愛か、銃と博愛か。

優しい言葉に銃を添えれば、優しさだけの時よりも、更に多くのものを得ることができる。


ジェラートを前にセッコは観念したのだが……だがそれは、情報を『喋る為』では断じてない。


セッコ(こいつは……拷問慣れしてやがる)

セッコ(抵抗力の削ぎ方、そして甘い言葉と条件……ああいうタイプには抵抗しても無駄だ)

セッコ(そして奴はああ言ったが、ノートのことを知っているオレを生かす意味がない)


セッコ(だから……これでいい。半日だ)

セッコ(半日もあれば、電話に出れないこの状況を……チョコラータならきっと察してくれる…………はずだ)

――イタリア、ローマ市内



チョコラータ「…………」

死神シドウ「ないね。折り返しの連絡」

チョコラータ「…………」

死神シドウ「ねェ、セッコに何かあったんじゃない?」

チョコラータ「…………」


チョコラータ(……依然としてセッコから連絡がない)

チョコラータ(しかしセッコの顔写真には『寿命』も『名前』も見えている)

チョコラータ(つまり……セッコはまだ生きている)

チョコラータ(暗殺チームに捕えられた可能性が高いな。ならば……)

チョコラータ「…………行くぞシドウ」

死神シドウ「え? 行くっていうと、もしかして……」

チョコラータ「ああ……奴らの拠点だ」



しかし、『ゲス野郎』の代名詞ともいえる彼がこの後に呟いた言葉は……

『セッコを助けに行くぞ』では…………なかった。

――そして、セッコ襲撃から半日の時が経過した。







イルーゾォ「さて……ペッシやソルベも十分回復した。そろそろいいだろう……何から聞かせてもらおうか」

ペッシ(ああ、まだ痛ェ……) ソルベ「…………」

ジェラート「…………そうだな、話すことは主に二つある」

ジェラート「①奴(セッコ)は何者か?」

ジェラート「②そして……『ノート』とは一体何なのか?」

イルーゾォ「まぁ、聞きたいのはそんなところだな」

ジェラート「セッコは本人曰く、ボスの『親衛隊』だ」

ジェラート「オレたちを襲ったのはボスの命令か、それとも個人での行動か……」

ジェラート「それはまだわからないが、追撃がこないところをみるとボスの命令ではなさそうだ」

イルーゾォ「じゃあ何をしに奴はおまえらを襲ったんだ?」

イルーゾォ「オレたちが持つ『ボスへの反感』に対しての粛清かと思っていたんだが……」



ジェラート「奴はこの……『デスノート』を奪いに来たんだ」

ソルベとジェラートは、イルーゾォとペッシに『デスノート』についての話をした。

入手した経緯、様々なルール、そして『死神の目』について等……


ペッシ「す、すげェ……そんなノートが……」

ジェラート「そしてノートに書き込んだ『セルヴィス』とは、このホテルの従業員」

ジェラート「セルヴィスの名をノートに書き操り、イルーゾォに救援を求めたというわけだ」

ジェラート「こういう時に備え、一応ホテル内全従業員の名前と顔を把握してある」

イルーゾォ「なるほどな…………ん?」

イルーゾォ「だが待て。どうやってセッコは、ノートが『ここにある』ことを知ったんだ?」

ジェラート「おそらく……オレが暗殺チームの顔写真をハッキングし、削除したことがキッカケだろう」

ジェラート「さらには近頃の『キラ』のニュースが言うように、オレたちは明らかにノートを『試していた』」

ジェラート「その二点から、新たにノートを所持した者が『暗殺チームにいる』と推測したのだ」

イルーゾォ(ハッキング……そんなことまでやっていたのか)

ジェラート「ここで重要なのは……」

ジェラート「奴の仲間が、『他のデスノート』を所持しているという点だ」

ジェラート「これらの推測を作り上げる土台には、ノートの情報が必須となるからな」

ジェラート「もし敵が襲ってきた場合は……」

ソルベ「……今度はノートの所有者で、さらに『死神の目』を持っているかもしれない」

ジェラート「その通りだ。ギアッチョのように顔が隠れるスタンド能力なら、まぁ安全ではあるが……」

ジェラート「そうでないなら、敵に顔を見られたらアウト(死)だと思った方がいい」

イルーゾォ「なるほど、早目に知れて良かった。どいつが敵かもわからねェ……対策が必要だな」

イルーゾォ「…………だからいつもより『控え目』な拷問だったわけか」

ジェラート「そうだ。セッコから引き出す『情報』は重要だ。敵の数すら、こっちはわからないんだからな」

ソルベ「もうそろそろ約束の時間だ、セッコはいるか?」

イルーゾォ「ああ、そこだ」

ソルベ(さて、ジェラートが上手く聞き出してくれるといいが……)

ソルベ(そしてその後は、リゾットたちにも『ノート』のことと……)

ソルベ(既にオレたちがボスの正体を探っていることを話す。協力してくれるとは思うが……)

ジェラート(敵の持つノートも手に入れ、二冊のデスノートがあれば……)

ジェラート(そしてチーム全員でなら、ボスをきっと……)


セッコ(チョコラータ……)

セッコ(角砂糖を投げて遊んでくれるし、預金もいっぱいあるし……とても強い。そして……)

セッコ(『頭も良い』。それも抜群に……)

セッコ(オレの状況に気付かないはずはない……チョコラータに何かあったのか?)

セッコ(ハッ!!? も、もしかして……)

セッコ(オレみたいな負け犬に、チョコラータの『好奇心』は刺激されねェってことなのか……!?)

セッコ(オレはもう……オレはもう…………『用済み』ってことなのか!!?)


ジェラート「さて、いくつかの質問に答えてもらうぞ……セッコ」

ジェラート「それが終われば、約束通りおまえを解放しよう」

ジェラート「まず一つ目だ。おまえの仲間の……」




「キャアアアアアァァァーッ!!!!」

ペッシ「お、女の……」 ソルベ「悲鳴!!?」

ジェラート「部屋の外……ホテルの廊下かッ!!」 ガチャ!



四人は部屋の扉を開け、悲鳴の発生元を確認した。

そこには下半身が崩れ落ちた男性と、悲鳴を上げた女性がいる。


女性「あ、あんたの身体が……カ、カビみたいなのが吹き出して…………こ、来ないでッ!!」

男性「なああァァァー、こっちに来て助けてくれよ。オレ……動けねェーんだよォ~~」

女性「う、ああああああ!!!」 ダッ!


女性は男性を振り切り階段を『降りた』。すると……



ボン!ボ!ボボンッ!!



女性「あ、あ、あ……あたしの身体にもオオオオォォォォーーーーッ!!?」

イルーゾォ「何者だ……カ、カビが生えてきている!!? む、無差別に殺る気かッ!?」

ソルベ「まさか、これは……」

ジェラート「セッコの仲間……か!?」


セッコ(『カビ』……って言ってたな!? チョ、チョコラータの『グリーンディ』だッ!!)

セッコ(やったぞ!! オレを助けに来てくれたんだッ! うあははははーッ!!!)



チョコラータは来た。しかし……

目的はセッコの救出では『ない』、むしろその…………『逆』だった。





――ホテル、最上階


チョコラータ「悲鳴が聞こえた。カビは広がったようだな……そろそろ行くぞ」

死神シドウ「なんだかんだ言って、結局セッコを助けに行くんだね」

チョコラータ「ンン? 『助ける』……? 何か勘違いしているなシドウ」

死神シドウ「え?」

チョコラータ「人間は、希望から『絶望』に状況が変わった時……」

チョコラータ「そいつはどんな表情をすると思う?」

チョコラータ「私はな…………単にそれが『見たい』だけだ」

死神シドウ「え……そ、それって……」

チョコラータ「グリーンディを放ったのは、セッコに『助けが来た』と『希望』を抱いてもらう為で……」

チョコラータ「そして私が直々に赴いたのは、そのセッコを自らの手で『殺す』為だ」

死神シドウ「!!?」

チョコラータ「そうすれば極上の……」



チョコラータ「『絶望した表情』を見れるだろうからなァァァァ~~~」

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。

ちなみにセルヴィスは、イタリア語で『接客』の意味です。英語で言うサービスですね。

続きはまた日を改めて書かせて頂きます。
それでは。


>>82
書き込まれたのはセルヴィスという人物なので、イルーゾォがノートの効力を受けることはありません。

ジェラート(セッコの仲間……だとすると、デスノートを所持している可能性が高い……)

ジェラート(まずいな……リゾットたちはノートの存在をまだ知らない)

ジェラート(もし先に敵と鉢合わせてしまったら……)

ジェラート(そして、敵が既に『目』を持っていたとしたら……)


ジェラート「だが……ノートもそうだがまずは……」


男性2「お、おおおああああ!!?」

女性2「きゃああああ!!?」


ソルベ「このカビの『スタンド』を何とかしねェと……!」

イルーゾォ「オレもいつの間にか……少しカビを付けられちまった!? クソッ!!」

ペッシ「こ、これ……ホテル中に広がってるんじゃあ……一体どんな能力なんだ!?」

ジェラート「…………わかったぞ」


ジェラート「このスタンドには……おそらく『攻撃のきっかけ』がある」

……


ホルマジオ「マズイ……敵襲だッ!!」

ホルマジオ「何者かわからんが、オレたちを狙ってると見て間違いないだろう!」

リゾット「…………」

ホルマジオ「急げリゾット!! まずはエレベーターで降りて、このカビの射程外から出るんだ!」

リゾット「…………ああ、そうだな」

リゾット(このスタンドの『発動条件』は何だ?)

リゾット(このまま逃げていいものか…………ン?)



男性3「あ、ああああああ!!?」



リゾットとホルマジオの目の前には、カビが全身に広がり階段を崩れ転げる男性の姿があった。


リゾット(あの男……階段を『転がり降りた途端』にさらにカビが広がった。これはもしや……)

ホルマジオ「クソ、マジで何者だ……よし、エレベーターは閉まった! 下に行……」

リゾット「待てホルマジオ!! エレベーターを止めろッ!」

リゾット「『低い位置』だ!! 自分の身体より低い位置に移動すると、カビが襲ってくる!!」

ホルマジオ「え?」

リゾット「止めろ!! このままエレベーターで下がったらオレたちは……」

ホルマジオ「!!? カ、カビだらけで死んじまうってことか!!?」

ホルマジオ「だが……もうボタンじゃあ反応しねェ!? こ、このオンボロがッ!」

ホルマジオ「強硬策だッ!! 『リトルフィート』!!」 ドガドゴォッ!


ホルマジオがリトルフィートでエレベーター内の壁を殴りつける。しかしエレベーターは止まらない。


ホルマジオ「ダ、ダメだ!!? も、もう下がり始める!!」

ホルマジオ「こ…こんなところで…………チクショウ!!」



ウィ…ウイイィィィ……イィ…………ン

しかしエレベーターは、止まった。



ホルマジオ「お、おお!!? と、止まった……リゾットか!?」

リゾット「……『メタリカ』は既に、電源主回路を故障させ接触不良を引き起こしている」

リゾット「らしくなかったなホルマジオ。扉を開けろ……敵を探すぞ」

……


メローネ「『低い位置に移動する』とカビが襲ってくるわけか……」

ギアッチョ「だが所詮は生物のカビ、超低温の『ホワイトアルバム』を纏うオレには生えねェ」

ギアッチョ「よし……オレが敵を探し出して、始末してくるぜ」

メローネ「頼むぞギアッチョ。敵はおそらく『一階』にいるはずだ」

ギアッチョ「…………何で一階なんだ?」

メローネ「考えてもみろ。こちらは今より低い位置にいけない、下階は絶対なる安全領域だからな」

メローネ「普通なら、そうやって安全圏から確実に相手を殺すだろう」

ギアッチョ「なるほどな……さすがはメローネ! 一階だなッ!!」 ダッ!


だがメローネは……この時一つのミスを犯した。

自身のスタンドはベイビィフェイス。

『安全な場所』からスタンドを自動遠隔操作し、敵を攻撃する能力である。


安全な場所にいるはずだ。

『自分ならそうする』……敵も同じだと思っていた。


しかし、敵の『性格』が、メローネの予測を上回っていた。

チョコラータ(…………)

チョコラータ(あの男、メローネと一緒にいたということは暗殺チームの人間なのだろうが……)

チョコラータ(カビが生えないな、なぜだ? それにあのスタンドスーツ……『顔』も見えん)

チョコラータ(蛇にとってのマングースや、コガネムシにとってのツチバチのような奴だ)

チョコラータ(しかし……どうやら賢くはないようだな)

チョコラータ(大方、わたしの能力を察し……)

チョコラータ(『敵は安全圏である下階にいる』とでも考えたのだろう)

チョコラータ(フン、このわたしが見上げることを……好むわけがない)



単純な理由である。チョコラータは、絶望した表情を……『見下ろす』ことを好む人間だった。



チョコラータ(さて……『メローネ』の名前は書き終えた)

チョコラータ(見せてもらおうか。死の間際の瞬間、その表情を……)


なお、『死神の目』を有した人間は……人間界レベルで『3.6以上』の視力を得る。

遠くの物陰から観察していたチョコラータがゆっくりと立ち上がり、メローネへと歩みを進め始めた。

自身の姿をメローネに晒すことに抵抗はない。


なぜなら、『40秒』のカウントダウンは始まっているからだ。

メローネ(ン? なんだあのバイキンマンみてェな髪型の男は……このホテルで見たことない奴だ)

メローネ(こんな時に『ハンディカメラ』を持って……撮影してやがる。ディモールト……怪しいな)

メローネ(…………一応だ。索敵に出しているベイビィフェイスを戻しておくか)

メローネ「聞こえるか、一度戻ってこい……『最上階』だ」 ボソッ


チョコラータ「最も気を付けなくちゃあいけないのは……その『瞬間』を見逃すことだ」

チョコラータ「ゆえに、時間は正確に把握していなければならない」

チョコラータ「あと30秒……」


メローネ「あ?…………なんだてめェ」

メローネ「オレになんか用でもあるのか?」


チョコラータ「フフ……『生ハムメロン』ってあるよなァ」

チョコラータ「以前、日本で食べたんだが……イタリアのものと味が違い過ぎてな」

チョコラータ「日本のものは生ハムの塩分が薄いうえに、メロンの甘みや香りが強い」

チョコラータ「普通マスクメロンなんか使うか? イタリアのものを食べればすぐわかることなのに……」

チョコラータ「敬意がないよなァ。イタリア料理店と銘打つなら、その程度は知っておいて欲しいものだ」

チョコラータ「無知ってのがムカつく。そう、ムカついて……殺したんだ、その料理人」



チョコラータ「…………『心臓麻痺』でな」

メローネ「心臓麻痺……だと!?」


チョコラータ「『メローネ』…………イタリア語で『メロン』の意味だったな」

チョコラータ「生ハムの『プロシュート』ら、仲間はどこにいる?」


メローネ「な…なんでオレらの『名前』を知ってるんだ貴様アアアァァァーーーッ!!?」

メローネ「い、急げベイビィフェイスッ!! 敵だ!!」


チョコラータ「急ぐのはおまえだ。もっとだ……もっと『絶望』しろ」

チョコラータ「なぜなら…………あと五秒でおまえは死ぬ」

チョコラータ「死因は『心臓麻痺』だ」


メローネ「ど、どういう……こ……」



ドクンッ!

ここまでご覧頂きありがとうございました。


ご指摘頂いているイルーゾォとジェラートの名がノートに書かれていた点について
(該当箇所>>80

安易に『イルーゾォ』、『ジェラート』と名前を書くべきではありませんでした。
セルヴィスに対する命令の一部分として、この二名には効果を及ぼさないという解釈でお願いします。


今後は慎重に書き進めてまいります。
ご指摘点等ございましたら、またお教え頂ければ幸いです。

それでは。

メローネ「!!!? う…うぐ……ッ!!?」

メローネ「そ、そうか……!! お、おまえがキ、『キラ』……!」

メローネ「ま、まだ……だ……ッ! まだ死ぬわ……けに……」

メローネ(いや……み…見つけた…………んだ……な?)

メローネ(さ、さすが息子だ…………ディ…モールト……よく……やっ…………) ドサッ…


チョコラータ「死んだな。いくらもがこうと無駄だ……デスノートに狂い無し」

チョコラータ「だが『キラ』……だと? わたしをあの程度の奴と間違えるとは……」

チョコラータ「チッ、それにしても良い表情で死んでいかなかったな。物足りん」





……


プロシュート「ン、あれは……」


ヨロ…ヨロヨロ…


ベイビィフェイス「み、見つけた……ぜ。最じょ…うかい……」

ベイビィフェイス「敵……は、キ…ラ……だ…………」 ドサッ…

シューシューシュー…


プロシュート「こ、これは……!!? メローネの『ベイビィフェイス』が……」

プロシュート「…………」



メローネは……死んだ。



消えゆくベイビィフェイスを目の当たりにしたプロシュートは……そう悟った。


プロシュート(だが……ベイビィフェイスは最期に、『キラ』を見つけたと言った)

プロシュート(このカビのスタンド使いの仲間に……キラがいるのか?)

プロシュート(それとも、キラの能力も持ち合わせているのか?)

プロシュート(いずれにせよキラであれば、『顔と名前』等の条件から心臓麻痺を誘発する)

プロシュート(だがメローネともあろう者が、安易に名前を教えてしまうとは考えにくい)

プロシュート(……キラは『顔だけ』で心臓麻痺を起こさせることができるのかもしれん)


プロシュート「ならば……オレ以外のメンバーも含め、『顔』を変えてしまえばいい」

プロシュート「老死する程の老化は起こさず……だが、誰かわからない程度には老いさせる」

プロシュート「コントロールするしかない……!」



シュー…シュー…シュー……



プロシュート「『ザ・グレイトフル・デッド』」

プロシュートは少量の老化ガスを散布。老いによる変化で、キラの能力から逃れようと考えた。


しかしこれが敵に通用するとは限らない。

顔を変化させようが、能力を防げる保証はなく……


プロシュート「ならば……攻勢に出る。その為の情報をメローネは残してくれた」

プロシュート「見分けろ……その為の『老化』だ」





……


老婆「うっうっ……ああああああ!!? あたしの赤ちゃんんんんんん!!?」

老赤ん坊「マッ、ママぁあああああああ!!」


チョコラータ「…………わたしを含め、無差別に『年をとっている』」

チョコラータ(まぁ無差別なら……ホテル内に仲間もいる。老死する程の老化までは起こらないだろうが……)

チョコラータ「誰の能力だ? いや、それよりも……老化の進行に差があるのは何故だ?」

チョコラータ「そしてこの能力で、こいつは一体何をしようとしているのだ?」

老人「あんたあああ、い、一体何が起こってるんだ」

老人「カビが襲ってきたと思ったら、今度は目もかすんで…よ、よく見えないんだよオオオォォォ~ッ」


チョコラータ「なんだ貴様、わたしに触るんじゃあ…………ハッ!!?」

チョコラータ「い、いや……その『名前』は!!? まさか!!?」 バッ!



チョコラータに近寄って来た老人。チョコラータはその老人を一蹴しようとしたが……

その『名前』を見た瞬間にその手を振り払い、後ろへ遠のいた。



老人「『カビ』、そして『老化』。普通の奴ならあそこの老婆のようにパニックになっているだろう」

老人「だがしかし、おまえはその中で『冷静過ぎた』」

老人「わかっていたんだろう。カビは自分には無害……」

老人「そしてこの老化の能力は、他にチームの『仲間』がいるから死ぬまでの被害にはならない、と」


老人が喋り出す。緊張感からか、チョコラータの額から汗が垂れ流れた。

チョコラータ(この名は暗殺チームの……!! しまった……『見分け』られていたのか!?)


チョコラータの見たその老人の名は……『プロシュート』


プロシュート(『カビの男』か?『キラ』か?)

プロシュート(先程の『その名前は!!?』という反応からすると……)



プロシュート「なるほど、おまえが『キラ』か…………メローネの仇だ、覚悟しな」

チョコラータ「キ、キラだと……!? どいつもこいつも……わたしはキラごときではないッ!!」

チョコラータ「『目』も持っている、貴様なぞすぐに殺してくれる……!!」


『老化』の影響。

ナランチャが『庭』の本を見てうっとりし始めたように、チョコラータは老化により憤りやすくなっていた。

ペンと『ノートの切れ端』を取り出し、続けて叫びをあげる。


チョコラータ「ここに名前を書けば、それで貴様は終わりだ……!!」

プロシュート「!!」

プロシュート(あの切れ端に名前を書くことが、キラの能力発動の条件か……!) ダッ!

プロシュート(奴の背後には下階へ降りる階段もある、間に合うか……!?)

チョコラータ「無駄だッ!! 貴様の名を書くだけ……この距離に間に合うわけが……」

チョコラータ「ム、ムゥッ!?」


だがチョコラータの書き込みが中々進まない。

その間にもプロシュートはどんどん接近してきており……もう時間の猶予はない。


プロシュート「…………おまえ、手先は器用な方か?」

プロシュート「だとしたら同情するぜ。指先……随分扱いにくくなっているだろう」

プロシュート「それが『老化』というものだ」



チョコラータ「こ…こんな単純な……か、書きづらい……ッ!!?」 プルプル…

チョコラータ「ま、マズイぞ……ッ、下階に逃れなくては!!」 バッ!


チョコラータは階段を降りた。これにより、プロシュートは直接攻撃ができない。

グリーンディのカビがあれば下階へ降りることはないだろう、そう考えていた。


チョコラータ「ハハ、ハハハハハッ!! カビをばら撒け『グリーンディ』ッ!!」

チョコラータ「この距離、ここを降りれば貴様が死ぬだけだッ!」

チョコラータ「見上げるのは癪だが……だがもうゆっくりでいい。名前を書き上げれば、わたしの勝……」


しかし、チョコラータは知らなかった。

プロシュートという男のことを……


プロシュート「スタンド能力は、一人につき一つだけ」

プロシュート「何故『カビ』と『キラ』の能力の二つを持っているのか知らないが……」

プロシュート「おまえを始末することに変わりはない」 バッ!!



プロシュートは躊躇なく、階段から飛び降りた。

チョコラータ「バ、バカなッ!!? 死ぬつもりか貴様!!?」


プロシュート「死ぬつもり? おまえが相手にしているのは、長年殺しをやってきた『暗殺チーム』だ」

プロシュート「オレには無いと思ったか? 『決死の覚悟』とやらが……」



カビがプロシュートを襲う。

降下に合わせ、下半身から始まりあっという間に全身に広がっていく。

普通の人間であれば、死の恐怖が何度も脳裏をよぎるだろう。

だが、プロシュートは一向に怯まない。


奴にスタンドを叩き込むと『決めた』のだ。怯むはずが……ない。



プロシュート「心の中でそう思ったなら、その時スデに行動は終わっている」 ガシィッ!

チョコラータ「や、やめッ……!!?」

プロシュート「グレイトフルデッド……『直触り』だ」 ズギュアアァァンンンッ!!




チョコラータ「おおおおおごおおあああああッ!!!?」

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。





チョコラータ「…………」

セッコ「…………」


捕えられた二人の前には、メローネを除いた暗殺チームのメンバーが揃っていた。


ペッシ「兄貴、血はもう大丈夫で……?」

プロシュート「ああ……痛みはあるがこれくらいで文句は言えん」

プロシュート「奴がカビのスタンドを解除していなかったら……さすがに死んでいただろうからな」

ギアッチョ「こいつ……この野郎が……」

イルーゾォ「メローネを……」

ホルマジオ「…………」

ソルベ「…………」

ジェラート(間接的にではあるが……こいつがオレたち暗殺チームの、元凶といったところか)



……数か月前、ボスはチョコラータの『ガス抜き』ついでに、一件の暗殺任務を依頼した。

難度は非常に高く、最悪殺しさえすれば……『暗殺』ができずとも構わないとさえボスは思っていた。


だがチョコラータは、その暗殺任務を軽々とこなした。


『デスノート』を使ったのである。

ボスはそれを機に、暗殺チームに任せるはずの任務を数件……

チョコラータに依頼した。そして受託した全ての任務を、チョコラータは迅速に遂行した。


結果、チョコラータの評価は上がり……暗殺チームの評価が相対的に下がることとなる。

暗殺チームが軽んじられていた要因は、ここにあったのだ。



リゾット「プロシュートによると……顔を見れば、それだけで名前がわかるそうだな」

リゾット「だが一応名乗っておこう。オレは暗殺チームリーダーの『リゾット』」

リゾット「そして名を名乗ったからには、おまえたちを生かして帰すつもりはないと理解しておいてもらおう」

リゾット「つまり苦痛で死ぬような、非道な拷問も厭わない」

リゾット「……質問には迅速に答えた方がおまえらの身の為になる、ということだ」


チョコラータ「…………」

チョコラータ(ボスは……わかっているのか?)

チョコラータ(裏切られた時のことを想定し、暗殺チームに縄張りを与えないのはまだいい)

チョコラータ(だがこいつらの力を『侮っている』のであれば…………裏切られた時、足元を掬われるぞ)

セッコ「…………」

セッコ(チョコラータまで……捕まっちまったのか……)

死神リューク「なぁシドウ、前に死神界から見たぞ。何おまえ人間に使われてんだよ。馬鹿じゃねーの?」

死神シドウ「だって、こうしないとノートが……」

死神リューク「……まぁいいや、今からこいつらが二人を殺すだろうから……」

死神リューク「そうしたらノートの所有権はなくなる。そのノートをおまえが一番最初に手にすれば……」

死神リューク「それでノートはおまえに戻る。死神界に帰れるぞ」

死神シドウ「あっ、そうだな…………おお」


チョコラータ(これまでだな。どの道利用され殺されるだけだ……ならば……)

チョコラータ「…………頼みが一つだけある」


ギアッチョ「……ああ? てめェメローネを殺しておいて……」

リゾット「待てギアッチョ。内容次第だが……頼みとは何だ?」



チョコラータ「『おまえら』にじゃあない。わたしを……殺せ、『シドウ』」

死神シドウ「お、おれ?」

チョコラータ「おまえはノートを拾ったわたしの最期を見届ける為にいただけ」

チョコラータ「もう十分だ、わたしの持つ『切れ端』を使い…………わたしを殺せ」

セッコ「オレも……オレも殺せッ!!」


ホルマジオ「こ、こいつら……」

ギアッチョ「何だってんだ? シドウとか殺せとか……何を言ってるんださっきから?」

プロシュート「まだ仲間がいるとでも言うのか?」

ペッシ(シドウというのはきっと……)

イルーゾォ(……『死神』のこと、だな)


死神リューク「どうするんだ?」

死神シドウ「まぁ別にやってもいいけど……人間同士がノート使うくらいなら、死神が使うのが普通だし」

死神シドウ(あと、おれもそろそろ寿命をもらっておかないと死んじゃうし……)

死神シドウ(あっ、それにここでチョコラータとセッコが死んだ方が……)

死神シドウ(セッコは裏切られた事実を知らずに死ねるし、その方がセッコは幸せかな? まぁそれはどーでもいいけど)

死神シドウ「……わかった、二人の名前を書く」 ガリガリガリ…


ソルベ「自ら死を望むとは……」

ジェラート「…………そうまでして情報を話したくないのか?」


チョコラータ(デスノートの所有権を持つ者は、『名前しか』見えない)

チョコラータ(こいつが『キラ』か……)

チョコラータ「わたしは貴様のような人間が嫌いでな、ジェラート」

チョコラータ「…………いや、ここは『キラ』と呼ばせてもらおうか」

ソルベ「…………」 ジェラート「…………」

チョコラータ「『死神の憑いた人間は不幸になる』」

チョコラータ「ジェラート、貴様の寿命が見えないのが残念だ……」

ソルベ「…………」 ジェラート「…………」

チョコラータ(…………時間だな)

チョコラータ「わたしはわたしの欲望の赴くままに生きた」

チョコラータ「『次』があるなら……更なる高みから、絶望の表情を見下ろしてやるぞ……」



ドクンッ! ドクン!



チョコラータ「!!? グッ…………」 ドサッ…

セッコ「!!? う…おおおおッ…………」 ドサッ…


チョコラータ、次いでセッコは、心臓麻痺によりこの世を去った。




死の『次』……

チョコラータは、死神シドウからこのような話を聞いていた。


『デスノートを一度でも使った人間は、天国にも地獄にも行くことはできない』


死神は生殖行為を行わない。さらには諸々の条件により、死神も『死ぬことがある』

つまり、死神の数はいつかはゼロになるはずだが……

しかし、実際にそうはならない。なぜか?

何故だかはわからないが、死神はその数を『増やしている』のだ。


チョコラータはその理由をこう推測していた。




『デスノートを使った人間が、死後に死神として転生する』……と。

天国でも地獄でもなく『死神界』に転生する。この可能性は十二分にあるのではないか。


果たしてその考え通りの転生が行われるかは、まさしく死神のみぞ知るということではあるが……



死神リューク「行くのか、シドウ」

死神シドウ「うん。誰かにノートを持たれたら、所有権とられちゃうからね」

死神シドウ「あ、そうだリューク。一つオススメの情報」

死神リューク「ん、何だ?」

死神シドウ「リンゴもいいけど……『角砂糖』も美味しいよ」

死神リューク「角砂糖ォォォ~~~~?」

死神シドウ「ガリガリってやるのが良いんだよ。それじゃあ……」



バサッ!



シドウはチョコラータたちの拠点へと飛び立っていった。ノートの所有権を得る為に……



だが……

そこでシドウがデスノートの所有権を手にすることは『なかった』



シドウよりも、先にノートを手にした者が現れたのだ。

――チョコラータとセッコの拠点



「定期連絡がねェから調べに来たが……二人共いねェ」

「どんな奴らか見たことねェが…………小人ってことはないだろうしよォォー」

「ったく、どこに行ったんだか……『ガス抜き』にでも行ったのか?」

「お…………なんだこれ?」

「黒いノート……『DEATH NOTE』?」

「『HOW TO(使い方)』か、英語で色々と…………ン?」

「ここに書かれている『名前』……これは確か……ボスがチョコラータに依頼した……」


「とおるるるるるるるるるる」

「とおるるるるるるるんるん」


「!? おおッ、小型電話がこんなところに……」

「はい…………もしもし、ドッピオです」


『ドッピオ、急げ。あの二人を呼び出すのだ』

「? す…すみませんボス、呼び出すってのは一体誰の話ですか……?」



『暗殺チームの二人……』

――翌日



リゾット(昨日、ソルベとジェラートにデスノートについて話を聞かせてもらったが……)

リゾット(『チョコラータたちのノート』をどう探すべきか、結論が出ていない)

リゾット(死神の掟。『自分の落としたノート以外のノートに関する事は人間に話してはならない』)

リゾット(これがあり、死神リュークもノート探索の協力はしないと言っている……)

リゾット(あのまま死神シドウが手に取り、死神界へ帰ってくれてるといいが……どうすべきか…………ン?)

ギアッチョ「…………」 プロシュート「…………」

イルーゾォ「…………」 ホルマジオ「…………」 ペッシ「…………」

リゾット「ソルベとジェラートはどうした?」

イルーゾォ「おッ……そういやまだみたいだな」

ホルマジオ「ソルベはともかく、ジェラートがミーティングの時間に遅れるとは珍しい」

ペッシ「オレ、部屋まで行って二人を呼んできます」







イルーゾォ「遅いなペッシの奴、何かあったのか?」

ギアッチョ「お、廊下を走る足音が……」

タッタッタッ……ガチャ、バン!


ホルマジオ「うるせェーぞペッシ! それでソルベとジェラートはいたのか!?」

ペッシ「ハァハァ……い、いねェ!! ホテルの…………どこにもッ!!」

プロシュート「? どうしたペッシ、何をそんなに慌てている?」

ペッシ「こ、これ!! これ見てくだせェッ!!」

ペッシ「ジェラートたちの部屋にあったんだ! まだ内容は見てないが……ぜ、絶対おかしいぜ!」

ペッシ「只事じゃあねェッ!! だって……『これ』を置いていくなんて!!」

プロシュート「これは……」

リゾット「まさか……」


ペッシは二つの『物』をメンバーに差し出した。

一つは『手紙』である。ジェラートの字で書かれた便箋。そしてもう一つは……




黒いノート。

すなわち、『デスノート』である。







それは……

日時と場所の指定された『招集』だった。ただしチーム全員ではない。『二人だけ』である。


そしてその二人はたった今……その指定の場所に到着したのだ。





――ヴェネツィア、『サン・ジョルジョ・マジョーレ島』


ジェラート「…………あそこだな」

ソルベ「…………」

ジェラート「たった一つの『教会』のみがあるこの島(ラグーン)」

ジェラート「そこの大鐘楼(塔)……あの塔の上だ」

ソルベ「ああ……そうだったな、『ボス』に指定された場所は……」



ジェラート「覚悟はいいな? ソルベ」

ソルベ「そんなもの……とっくに出来てるぜ」

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。

ちなみにサン・ジョルジョ・マジョーレ島は、原作でジョルノ達がトリッシュを護衛し連れていった場所です。
ブチャラティがボスに致命傷を負わされたり、フーゴと別れたりしたあの島です。

塔に階段は一つもない。

だが一機あるエレベーターで、塔上に登ることができる。

これから向かうべき場所を確認した二人は、ボートを陸に近付け上陸の準備に入っていた。


ジェラート「…………リューク」

死神リューク「なんだ?」

ジェラート「さっき話した通りに……頼むぞ」

死神リューク「あぁ。確か……」

死神リューク「次に『捨てる』と口にした時は『ノートの所有権を放棄する』」

死神リューク「だったな?」

ジェラート「そうだ……万が一は想定しておかなければならない」

ジェラート「ここからはリュークとの会話も控えよう」


ソルベ「よし……行くぞ」

――塔内エレベーター


ソルベ「ボタンは『一階』と『塔上』の二つだけ」

ジェラート「直通で、他に降りる『階』はないようだな」


ウイイイィィィィィ…


エレベーターはゆっくりと上昇を始めた。

階層を示す矢印が、右側にある『塔上』の印に振れていく。




昨日……ソルベとジェラートの部屋にあるグラスの中に、小型の耐水性『DISC』が入っていた。


ボスであろうと、暗殺チームの『誰がどの部屋に泊まっているか』はわからない。

しかし『トーキングヘッド』が、その部屋に泊まる人間の特徴をホテル従業員から聞き出し……

サメ型スタンドの『クラッシュ』がジャンプをし、DISCを二人の部屋に持ち込んだ。

差出人は勿論ボス。対象者はソルベとジェラート。

そして、DISCに保存された命令は……このようなものだった。



①この指令を他言してはならない。

②3月10日の午前8時に、サン・ジョルジョ・マジョーレ島の塔上に二人だけで来ること。

③その際はナイフ、銃、携帯電話等、あらゆる物の所持を禁止する。

ただし、この『発信機付のDISC』と……



『デスノート』だけは必ず持参すること。

この命令を見て、ジェラートたちは悟った。


既にボスは『デスノート』を所持している……と。


おそらくチョコラータが持っていたノートだ。

ノートを手に入れたボスは、ルールや効果等をここ一ヶ月のキラ事件と照らし合わせ……

ブルガリアでのマフィア組織壊滅を行った二人が『ノート』の所有者と断定したのだ。


そして何らかの手段を用いて(当然スタンド使いだろう)オレたちの部屋を特定し……

さらにはこのDISCを、気付かれることなく持ち運んだ。



ウイイイィィィィィ…


ソルベ(…………オレたちはもう『後には引けない』)

ジェラート(『死神の目』も手に入れた、それに……『書き込み』もした)

ジェラート(ボスは……必ず倒す)


ウイイイィィィィィ……ン


ジェラート「よし……着いたぞ、『塔上』だ」

ソルベ「…………ンン?」

ジェラート「? どうしたソルベ?」

ソルベ「いや……なんだ、極度の緊張か? 足が……動かねェんだ」

ソルベ「でもそれにしちゃあおかしい……い、一歩も……か!? う…動けねェ!?」

ソルベ「ま、まるで足がエレベーターの床に『固定』されちまったみたいに……!!?」

ジェラート「!!? オ…オレもだ。ソルベだけじゃあない……オレも足が……!?」

その『スタンド使い』はデスノートにより、既に操られていた。



サーレー 心臓麻痺


サン・ジョルジョ・マジョーレ島の塔上にエレベーターが昇ってきた際

そのエレベーターを『スタンド能力』で固定し、乗り合わせた者たちの足を止める。

そしてこの事は誰にも言う事無く、本人さえもこの島で見聞きした情報は忘れ

2001年3月10日午後11時59分、心臓麻痺で死亡。




そしてサーレーの隣に、一人の少年が近付いてくる。

覇気がなく気弱そうな、髪の毛を束ねた少年。

ジェラートはサーレー、次いでその少年に視線を合わせるが……



ジェラート(!!? この少年の『寿命』が…………見えない!!?)

ジェラート(つまり……つまりあの少年が、ノートの所有者で……)

ジェラート「ソルベ、あの少年で間違いない……!!」

ソルベ「!!? ま、まさかあんなガキが組織の……」



ジェラート「……おまえがボスだな? 『ヴィネガー・ドッピオ』」

ドッピオ(ボスの計画通りだ。あとはこの『文章』の上にあいつらの名と時間を……) ガリガリガリ…


ドッピオはその問いには答えず、ソルベとジェラートの顔を確認。

二人の名と時間をノートに書き込み始めた。

それを見たソルベとジェラートは、動揺を『始める』


ソルベ「あれはまさか……!?」 ジェラート「デスノートか!?」


だがその様子を見て、逆にドッピオは怪訝な表情をしていた。

ドッピオ(…………意外だな)

ドッピオ(ノートに書き込んでいるのは『わかっている』のに……それを止めようとはしないのか?)

ドッピオ(ボスはもう少し抵抗してくると予想していたが……)


二人はエレベーターの床に『両足』を固定されてはいるが、両手や口等は問題なく動かせる。

つまりノートの切れ端を取り出し、ドッピオの名前をそれに書きこむこともできるのだ。


ドッピオ(相討ち覚悟でノートにオレの名前を書く……それすらもしないのには違和感を感じるが……)

ドッピオ(まぁ……一瞬でオレの名を書きこめるわけがないし)

ドッピオ(奴らが不審な動きを始めたら、この『キングクリムゾンの腕』で……対処すればいい)

ドッピオ(最優先は奴らを『操ること』だ。できるかどうかは……わからないが)



ドッピオ「…………よし、書き終えた」

ソルベ「オレたちの名前を…………書いたのか?」

ドッピオ「その通りだ。デスノートは『絶対』……あと数十秒でおまえらは……」

ジェラート「……心臓麻痺になる、ということか」

ドッピオ「心臓麻痺? いいや……違う。それだけで終わると思うか?」



それは……ただの『死』よりも残酷な『命令』だった。




ソルベ ジェラート 自殺


2001年3月10日 午前8時3分

自身の持つデスノート、もしくはその切れ端、それらがなければ別のデスノートを使い……

同じチームのリゾット・ネエロ、プロシュート、ギアッチョ、ホルマジオ、イルーゾォ、ペッシ

以上6名の顔を頭に浮かべながら、該当者の名前を書き込む。

その後自分が考えられる最大限の遺体の発見されない自殺の仕方だけを考え行動し、24時間以内に死亡。




ソルベ「……!? オレたちを操り、仲間を殺させる……こんなことが可能なのか!?」

ジェラート「わ、わからない。だがもし出来るとすれば……」


死神リューク(つくづく面白い、『計画通り』だな)

死神リューク(それにしても…………こんなことをしたのは、おまえらが『初めて』だぜ)


ドッピオ「他にデスノートを知る人間はいてはならない」

ドッピオ(……ですよね、ボス?)



ジェラートは腕時計で時間を確認する。あと10秒で…………『午前8時3分』を迎える。

デスノート通りであれば、あと10秒で彼等は操られ始めるのだ。


だがソルベとジェラートの呼吸に、一切乱れはなかった。

デスノートに書き込まれた命令に無理がある場合だろうと、心臓麻痺で死ぬ。

操ることができなかろうが、こいつらの生はもう尽きる。

ドッピオも腕時計で時間を確認した。残り7秒、6秒、5秒、4秒、3秒、2秒……


『勝った……』 ドッピオがそう呟きかけたその時……



ここで突如ジェラートが、ノートの切れ端を取り出し、そこに書き込みを始めた。



ドッピオ(……今更?今更オレの名を書くつもりか? だが……無駄だ、デスノートはもう発動する)

ドッピオは、午前8時3分を目前に書き込み始めたジェラートのこの行動を……無視した。

どの道デスノートが発動し操られれば、書き込みは中断する。自身に害を及ぼすことはない。


デスノートの効果は『絶対』だからだ。



だが、ボスの考えは違った。

『ジェラートたちの策』を…………瞬時に理解したのだ。



『!!? ドッピオッ!! まずい……ジェラートの書き込みを阻止しろ!!』

ドッピオ「え……? お言葉ですがボス……もう『時間』になりました」

ドッピオ「奴らがオレに害を及ぼすことはありません。奴らは既にデスノートで操られて……」

『…………いや、違う。それは違うぞドッピオ。見てみろあいつらを……』

ドッピオ「え……な!!!?」

ドッピオ「い、いや……そ、そんなバカなッ!!!?」

ガリガリガリ……ガリ


しかし、ジェラートとソルベは……『操られていなかった』

そして書き込みを終えたのだ。デスノートの切れ端に『ヴィネガー・ドッピオ』の名を……


ジェラート「オレも……書き終えたぞ、ドッピオ」

ソルベ「オレたちの『覚悟』の勝利だ。おまえは40秒後に…………『心臓麻痺』で死ぬ」



デスノートに関して言えば……二人には『一日の長』があった。


第三者を直接死亡させるような命令はデスノートでは効力がなく、ただの心臓麻痺となる。

すなわち、ドッピオの書き上げたリゾットらを殺させるような命令が実行されることはない。

二人はわかっていた。わかっていたが……


わからない『フリ』を、していた。



ドッピオ「な…なんでだ!!!? デスノートが失敗に終わるはずはない!!?」

ドッピオ「ボ、ボス!! オレには一体何が起こったのか……」

『…………今考えれば、奴らのあの行動は不自然だった』

『奴らは碌な抵抗をしてこなかった。しかしそれはただの「演技」だったのだ』

『ドッピオがデスノート発動の瞬間に「油断」することを想定して……全てをこの一瞬に賭けていたのだ』

ドッピオ「わ…わざと慌てたフリをしてたってわけですか!!?」

ドッピオ「で、でもボス!! 奴らには何でデスノートが効かないんだ!!?」

『いや……デスノートが効かないわけではない』



『逆だ。「既に」……効果を及ぼしているのだ』

この展開映画デスノートのパクリじゃ

……


ソルベとジェラートの『手紙』の内容……その要点はこうだ。



チームの皆、そしてメローネに迷惑をかけたことへの謝罪から始まり……

二人がボスからの招集を受けたこと。ボスはデスノートを手に入れたであろうこと。

これから二人はボスと対峙し……おそらく殺されるだろうということ。

だがただで死ぬつもりはなく、ボスと『刺し違える』つもりだということ。


そして、デスノートはリゾットらに託すから…………『栄光』を掴んでくれということ――






……デスノートの一つのページに、次の二人の名前が書かれていた。



リゾット「…………」

ペッシ「こ、これ……こんなことって!!!?」

ギアッチョ「あいつら、確かに…………『刺し違える』つもり、だな」

プロシュート「ここまでの……これ程の『覚悟』を……」




ノートに書かれていた『二人の名』は……




              ソルベ ジェラート 心臓麻痺

             2001年3月31日 午後11時59分死亡

……


ドッピオ「『既に』……? そ、それはどういう……」

『デスノートのルールの一つに……』



『2冊以上のデスノートに、同じ人間の名が記された場合は……』

『死亡時刻に関係なく「一番先に記されたもの」が優先される』



『…………こういうものがある』

ドッピオ「そ、それってつまり……」

『信じられんが、そうとしか考えられん』

『このデスノートが通用しなかった理由。それは、ドッピオが書き込む前に……』




『奴らは既に自らの手で……デスノートに自分たちの名前を書き込んでいたのだ……!!!』





死神リューク(『初めて』だぜ…………ジェラート、ソルベ)

死神リューク(『自分の名』を自ら、ノートに書いた人間は)

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それでは。


>>149
タイトルだけでも教えてください。確認してみます

>>152

デスノート the last name だった気がする

>>153
確認しました。
Lが事前に別のデスノートに名前を書いておき、ライトに名前を書かれてもその場では死なない。

全く同じ展開ですね。なんか恥ずかしい……お教え頂きありがとうございました。

それを『策』と呼ぶには……あまりにも代償が大き過ぎた。

しかし、ジェラートがこの方法しか思いつかなかったのも事実。


日時と場所の指定された中、相手は未だ組織の誰にも正体を明かさないボス。

自分たちはスタンド能力すら持ち合わせておらず……勝ち目はなかった。

ボスの指令に背き、リゾットらに協力を求めることも考えたが……

敵に有利な条件(日時や場所)にわざわざ乗ることで、全滅の可能性もある。


そして元々、ボスの正体を探り始めたのは自分たちだ。

その責任があるし……メローネのこともそうだ。ならば……


決着は、自らの手でつける。



その確固たる『覚悟』の心が、暗闇の道に一筋の輝きを生み出した。

ソルベ「決着はオレたちの手でつける。だから『神』よ……邪魔はしないでくれ」

その『神』とは、ドッピオのノートの元々の所有者である『死神』だ。


死神リューク「……大丈夫だ、シドウももう人間の手助けはしない」

死神シドウ「うん」

ジェラート「デスノート発動まで油断はするな」

ジェラート「約半月後オレたちも死ぬが…………ここでやられるわけにはいかない」


ドッピオ「ボ…ボス!! ノートにオレの名前を書かれちまった……!」

ドッピオ「オ、オレはどうすれば!!!?」


『あと十数秒で死ぬ』

勝利を確信したソルベとジェラートとは対象的に、ドッピオは冷静さを失っていた。

が……しかしこの男は違った。この男もまた…………『自らの勝利』を確信していたのだ。


『落ち着けドッピオ……わたしのかわいいドッピオよ』

『初めから言っていただろう? 姿を晒しても……何も問題はないと』




『今……出て行くぞ』




それは、起死回生の……『彼にしかできない』回避方法だった。

ギギ… ググ…



ソルベ「な、何の音だ……?」


その違和感を感じたのは、聴力の優れたソルベだった。

ドッピオという名のこの少年が、ノートの『所有権』を所持しているのは間違いない。

ジェラートの『死神の目』で見ているのだ、それは間違いない。


だから、このドッピオが『ボス』だと二人は思っていた。

自分たちと同じように慌てた『演技』をして、隙を探しているのだと思っていた。

だが、その考えは誤りだった。


今ソルベは……

『ギギギ…グググ…』といった、筋肉や骨格が変化する『音』を聞いていた。

そしてドッピオ……いや、その『男』の顔を見ていたジェラートの表情が青褪めていく。


ジェラート「う、嘘だ……そ、そんなバカなことがッ!!!?」

ジェラート「こ…この顔は……そ、その『名前』は…………!!!」


その『瞬間』……『対象』への効力が失われた。





ディアボロ「『キング・クリムゾン』」

時は消し飛んだ。

その世界を自由に動けるのは……ディアボロただ一人。


ディアボロ「貴様らに……敬意を表そう」

ディアボロ「自らの命すら費やした捨て身の策で……このわたしの正体に辿り着くとはな」

ディアボロ「しかし残念だが、『わたしたち』にデスノートは通じない」

ディアボロ「キングクリムゾンは……」

ディアボロ「運命に従って流れるこの世界を、わたしだけが一切の干渉を受けることなくその時間を消し飛ばす」

ディアボロ「全方位からの弾丸だろうと、デスノートによる心臓麻痺だろうと、その瞬間を『消し飛ばせば』……」

ディアボロ「それらは『結果』しか残らない。わたしが回避したという結果だけだ」


ディアボロはそのまま二人の死角へ回り込む。


ディアボロ「ジェラート……貴様には『わたしの名』が見えていただろうが……」

ディアボロ「だが死にゆく貴様には、それは意味をなさない」

ディアボロ「未来にポッカリと開いた落とし穴……それに落ちるのはわたしか? 貴様らか?」


ディアボロ「……頂点はこのディアボロだッ!!!」



時が刻み始めた瞬間……キングクリムゾンの強烈な一撃が、二人を襲った。

二人は短い時間ではあるが気を失ってしまう。


その間に……ジェラートは布きれで猿ぐつわをつけられ、両手足を拘束されていた。



対してソルベは……

ソルベ「ジェ、ジェラート……」

ジェラート「ん……?」


ディアボロ「……中々早いお目覚めだな、ジェラート。猿ぐつわの調子はどうだ?」


ジェラート「!!? ん…んんんん……!!?」


ディアボロ「『道具の使用』は……生物の頂点である我々人間と、他の動物との明確な差異だ」

ディアボロ「それと同様に、我々スタンド使いはエネルギーのビジョン『スタンド』を扱える」

ディアボロ「さらに『デスノート』を持ち……そしてそれすらも制した……」

ディアボロ「わたしこそが『頂き』に相応しい。そうは思わんか?」


ジェラート(クソ……ッ!! 今度は足だけじゃあない……完全に拘束されている……!?)

ジェラート(しかもノート所有者であるオレが死神とやり取りできぬよう、猿ぐつわまで……!?)


ディアボロ「貴様たちにはメッセンジャーとなってもらおう」

ディアボロ「……最後に、荘厳なる城の礎となって死ぬがいい」


ジェラート(メッセンジャー……どういう意味だ…………ハッ!!?)


ここでジェラートは、自身とソルベの『最期』を理解した。

自分たちの『死体』だ。それを使って……『ディアボロ』は暗殺チームに理解させるつもりなのだ。


ボスの正体を調べる者……つまり『裏切り者』が、どういう終焉を迎えるのかを……



ディアボロ「まずはソルベからだ……輪切りにさせてもらう」

ザグ! ドズ!


ソルベ「ウギャアアアアアアァァァァーーーッ!!!?」

ジェラート「ッ!!!?」

ジェラート「んんんんんんんーーーッ!!!?」

ディアボロ「察しの通りだ……いや、さすがに動転しているかな?」

ディアボロ「おまえらの死体を元に、暗殺チームへ『メッセージ』を送る」

ディアボロ「裏切り者の末路を、理解させておきたいのでな」



ドズン! ザグッ!



ジェラート(ソルベ……ソルベエエエエェェェェーーーッ!!!?)

ジェラート(やめろ……やめてくれ…………)



ジェラート(ディアボロオオオオォォォォォォォーーーーーッ!!!!!)



ジェラートの叫びは届かない。

猿ぐつわをされ、手足を拘束され、為す術は…………なかった。




         ザグッ!!!   ゴグッ!!!




…………そしてソルベは、輪切りにされ続け、ついに絶命した。

ジェラートは、猿ぐつわを『喉の奥まで飲み込んで』……息絶えた。





二人の『死体』を暗殺チームが確認したのは、二人が殺されて五日間が過ぎた頃だった。

ここまでご覧頂き、また、コメントを頂きありがとうございました。
いつも励みにしております。続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

所用の為、次回投下は2~3週間後となります。最後までお付き合い頂ければ幸い。
それではまた。

       ___
     /×( ゚Д゚)
     |×( ´∀`)     キンクリさん!!!!!
    ⊂××××つ
     |××××|         
     | ××× ノ
     |×| ̄|×|
      (__) (__)



>>186
いいですね、かわいいw


それでは本日分投下していきます。

ソルベ、ジェラート死亡から五日後――



暗殺チームはボスへの裏切りを決意、既に拠点を移した後だった。

ボスの指定した拠点を放棄した、明らかな反逆行為。

だが……一向にボスからの追手がこない。


『死神の目』を持つリゾットが、写真に写るソルベとジェラートを見る。

二人の寿命と名前が『見えない』

これは二人が、既にこの世を去ったことを表している。


二人はボスと相討ちになったのか? 結末はどうなったのか?

『死神リューク』に聞いても、『あいつらは死んだよ』としか喋らない。

とにかく情報が欲しい。そう思っていた暗殺チームは、手掛かりを探しにジェラートの自宅を訪れた。

そこで……自宅のソファの上にころがる……



『ジェラート』の死体が発見された。



死因は心臓麻痺ではなく窒息死。布きれを『喉の奥』深くにつまらせて死んでいた。

外傷はないが……衣服に『罰』と書かれた紙が貼り付いている。



ジェラートは……ボスに敗北したのだ。

この『罰』の紙一つで、十二分にそれは伝わった。


この時、暗殺チームが微かに抱いていた

『ソルベとジェラートがボスを倒したのでは……?』という淡い期待は、完全に消え去った。

だが一方で、彼の親友である『ソルベ』は一体どうしたのだろう?


自宅を探索していると……別の部屋に大量の小包を発見した。その数は36。

開けてみると、それは薄いガラスケースに『何か』が入っている『美術品』らしきものだった。

不思議に思ったメンバーは、その美術品を並べていく。


そしてリゾットたちが美術品を全て開封した頃、『それ』が何かやっと気が付いた。

それは美術品ではない。そんなものでは……断じてない。



『ホルマリン漬け』にされた……『輪切りのソルベ』だった。



ボスに捕まったソルベは、足のつま先から順に……生きたまま輪切りにされていった。

そして目の前で輪切りにされる親友を見て……

ジェラートは自ら猿ぐつわを飲み込み……死んでしまったのだ。



この『死』には『無言のメッセージ』が刻まれていた。

ボスのあまりにも巨大であまりにも残忍で、しかも計算された冷徹さを演出するメッセージ……

ホルマジオ「ジェラートは目の前で輪切りにされるソルベを見て……」

ホルマジオ「恐怖と絶望とショックのあまり、自ら猿ぐつわを飲み込んだ…………そんなところか」

ペッシ「う、ううう……ソ…ソルベとジェラートがこんな……」

プロシュート「…………」


こんな神にも匹敵する程の所業をされて、誰がまだ恐れずにボスの縄張りを乗っ取ろうと考えるだろう。

ペッシは怯え竦み、あのプロシュートですら言葉を詰まらせている。

命を賭して挑んだ二人がこのような末路を辿った事実は、メンバーの心に深い爪跡を残していた。


リゾット(…………何か、何かが『おかしい』)

リゾット(あれだけの覚悟をしていたジェラートが、いくら目の前で親友を輪切りにされようと……)

リゾット(自ら窒息死することを……はたして選ぶだろうか?)

ギアッチョ「リゾット……ボスからの『手紙』だ。小包の中に手紙も入っていた」

リゾット「ボスからの……『手紙』……」



そしてその心情を予想して、ボスは次のような書面を添えていたのだ。

怯えた心を優しく包む、邪悪なる包容である。

――有能なる我がパッショーネ暗殺チームの面々よ……


日頃の任務遂行、誠に感謝している。君たちはまだまだ組織に不可欠な人材だ。

たとえわたしに『ノート』があろうとも……その事実は変わらない。わたしは君たちを必要としている。

だが今回、君たちは『知り過ぎた』。知る必要のないものを、知り過ぎたのだ。



よって……次の指令を与える。

ノートに関する記憶を捨て、改めて組織に忠誠を誓え。



その方法は、ノートの所有権を順に所有し、それを各自放棄するだけで良い。

もしくは死神による記憶消去でも可とする。



『忠誠を誓う者』は、記載された住所に自身の顔写真と君たちの所有しているデスノートを送付せよ。

その者にだけ、後日改めて招集をかける。繰り返すが……

わたしは君たちを必要としている。



これからも共に歩もうではないか。良い返事を、期待している――

ホルマジオ「『顔写真』と『デスノート』を送れ……だと?」

ホルマジオ「ナメやがって……オレたちが本気で投降するとでも思ってんのか!?」

プロシュート「…………」

プロシュート「しかしボスが、オレたちの行動を『見透かしていた』のは間違いない」

プロシュート「そうでなければ、ジェラートの自宅に二人の死体と『手紙』を運んだりはしないからな……」

ペッシ「た、確かにそうだ……オレたちは……オレたちは踊らされているんだ。ボスの掌の上で……」

イルーゾォ「…………」

リゾット「…………」

ギアッチョ「……ヘッ、だが『それだけ』だ。行動を予測されただけ……」

ギアッチョ「ボスもまだオレたちを殺せてはいねェ……そうだろ?」

イルーゾォ「…………ああ、そりゃ……そうに違いないが……」

ペッシ「なぁ……オ…オレたちに……勝ち目はあるのか?」

ギアッチョ「ペッシ……てめェまたそんな臆病風に……!!」

ペッシ「!? い、いや違うって! だがよく考えてみてくれよ!ボスの『正体』がわからないんだぜ!?」

ペッシ「『メローネ』もいねェのに、どうやってその正体を探れば……」


ボスの正体を探る事は無理なのではないか?

だが、投降することは……デスノートを持つボスに、命の手綱を握られることになる。

投降はできない。だがどうする? どうやってボスの正体を探ればいい?


浮足立つチームを前に、ある一つの微かな『噂』に……目をつけた男がいた。


ホルマジオ「…………『ある』」

ペッシ「え……?」 ギアッチョ「?」

ホルマジオ「勝ち目はある。そしてボスの正体を探る方法も……な」

リゾット「……言ってみろ、ホルマジオ」



ホルマジオ「ドナテラの娘……『トリッシュ・ウナ』。こいつを攫う」





ドナテラは、カラブリアという町の病院で、二か月程前に病死した女性だ。


彼女は死ぬ何日か前に、昔付き合った男……『ソリッド・ナーゾ』という名の男を捜させ始めた。

それは独りになってしまう『トリッシュのため』であり、父親を捜してやりたい、という想いからの行動だった。

しかし……ナーゾという男は一向に見つからない。


それもそのはず、その名は『偽名』だったからだ。ナーゾという男はこの世に存在しない人間だった。



……その『ナーゾ』こそが……ボスなのではないか?

このドナテラの娘は、ひょっとするとボスの子なのではないか……?


そんな噂が組織内の一部で流れ始めていた。



その微かな可能性を元に、暗殺チームはトリッシュの暮らす家近くまで来ていた。





イルーゾォ「あそこだな……トリッシュって奴がいる家は」

ギアッチョ「ホルマジオが自信満々に『勝ち目はある』と言ってたが……」

ギアッチョ「ボスの娘『かもしれない』程度なんだろ? 確信じゃあなくよォ~~」

ホルマジオ「まぁ…………そうだな」

リゾット「だが今はそれに賭けてみるしかない。その情報だけがひとまずの希望だ」

ペッシ(スタンド能力があるのかもしれねェが、所詮は女……)

ペッシ(オレたち暗殺チームを前にしたらひとたまりもねェだろう…………イージーだな)

プロシュート「…………」

プロシュート「…………いいかペッシ」

ペッシ「? なんですかい兄貴?」

プロシュート「デスノートにやられぬようオレたちは『変装』を施してはいるが……」

プロシュート「次の瞬間に組織の『スタンド使い』が、予期せぬ能力で襲ってくる可能性もある」

プロシュート「ただの人攫いという任務だが……警戒を怠るな」

プロシュート「『さっきみたく』…………甘く見てるんじゃあねェぜ」

ペッシ(ゲェッ……み、見透かされてる……!?)

ペッシ「りょ…了解ですぜ、兄貴ィィッ!!」


リゾット「突入する。頼むぞイルーゾォ」

イルーゾォ「ああ…………『マンインザミラー』ッ!!」




……暗殺チームの面々は、トリッシュを攫うべく家に乗り込む。

しかし、そこにトリッシュの姿はなかった。

数十分前にこの家を脱出。ペリーコロにより保護されていたのだ。




ペッシ「どうやら…………家の中にはいないようですぜ」

プロシュート「荷の多くはそのまま残っている。一歩遅かったか……」

ホルマジオ「…………しかし、これでトリッシュが『ボスの娘』だという確証が手に入った」

ホルマジオ「そうでなければ、ただの女を保護に踏み切るはずがない」

リゾット「その通りだ……『ボスの娘』は確かに存在したようだ。よし……一旦態勢を立て直すぞ」

……


ドッピオ「トリッシュは無事、ペリーコロが保護しましたが……」

ドッピオ「それと入れ違いで『何者か』がトリッシュ宅に侵入しました」

ドッピオ「おそらく、暗殺チームの『裏切り者』たちかと……」


『…………どう思う? ドッピオ』

『奴らは仲間の死に憤り、この選択をしたと思うか?』


ドッピオ「ええ、おそらくは」


『人間に自尊心が無ければ……それはサバンナに生息する獣と何ら変わらない』

『だがトリッシュを狙ったことといい、何らかの能力で姿を隠し捜索を行ったことといい……』

『奴らは冷静に行動をしている』

『……怒りに任せた決断ではない』

『暗殺チームは「覚悟」を決めて、この選択をしたと考えるべきだ』


ドッピオ「覚悟……ですか?」


『そうだ。「何があろうと成し遂げる」という、決意の心……実に厄介な感情だ』

『しかしそれさえも、トリッシュがこの世から消え去れば…………わたしを脅かすことはなくなるだろう』


ドッピオ「…………」


『ペリーコロとポルポの名はデスノートへ記している』

『暗殺チームがこの二人を操ることはできない……』

『ポルポを護衛に付かせろ。一瞬の判断が結末を左右するぞ、急がせるのだ…………ドッピオ』


ドッピオ「はい、ご命令通りに…………ボス」

……


ギアッチョ「う…うんメエエェェェーーーッ!!」

イルーゾォ「おい……もうちょっと忍んで食えよ」 パクパク

ホルマジオ「いや、ここまできたらビクついてコソコソしてもしょうがねぇだろ」

ホルマジオ「今は堂々と食おう」 ムシャムシャ

イルーゾォ「……そりゃそうだな、よし食おう」 パクパク


リゾット「『ブルガリアのヨーグルト』が世界的に有名になったのは、『コレラ』がキッカケだった」 パクッ

プロシュート「コレラ……?」 パクパク

リゾット「1882年、南フランスを中心にコレラが流行した際……ある二人の学者が現地へ赴いた」

リゾット「二人はコレラ菌を飲み、一人は発病したが……もう一人は発病しなかった」

リゾット「学者はこの要因を、腸内に棲みついている細菌叢(腸内細菌叢)の違いなのではないかと考えた」

ペッシ「…………」 モグ…モグ

リゾット「そして学者は老化の原因を、『腸内にある腐敗菌が出す毒素』だと結論付け……」

リゾット「1907年。ブルガリア桿菌と命名された乳酸菌を摂取することが、長寿の秘訣であるとし……」

リゾット「『不老長寿論』を発表した」

リゾット「これが元となり、ブルガリア菌を使ったヨーグルトのメーカーが世界的に増えたのだ」

プロシュート「へェ……ブルガリアのヨーグルトにはそういう歴史が……」

リゾット「オレとジェラートは多少ブルガリアに縁があり、その地理や歴史に明るい」

リゾット「その縁でこんな話もしたなと、少し思い出してな……」

ペッシ「…………」 プロシュート「…………」

イルーゾォ「そういや夕方4時くらいになると、ヨーグルトを職場で食べる女がけっこういるよな」

ホルマジオ「ああ、そういやいるな。おやつ休憩ってやつだろ?」

ギアッチョ「他の国でもそういう文化があるもんなのかねェー」


リゾット(ム……)

リゾット(……このベリーとヨーグルトの組み合わせは…………ディモールト良いな) モグモグ

ギアッチョ「ところでよォ、一体『誰』がトリッシュを保護したんだ?」

ホルマジオ「ボスの娘の保護、そんな重大な仕事を受けるのは『幹部』で間違いないだろうが……」

プロシュート「この辺りは『ペリーコロ』の縄張りだ。おそらくは奴だろう」

ギアッチョ「だとすると……ペリーコロの名はジェラートが一度ノートに書いちまってる」

ギアッチョ「奴を操って、トリッシュを攫うことはできねェな」

イルーゾォ「早く見つけないと護衛をつけられる、まずいぞ……」

ホルマジオ「護衛するのは……おそらく『ポルポ』だろう。幹部でスタンドを使える奴は他にいないはずだ」

イルーゾォ「牢屋の中にいるあのデブか。おそらく遠隔操作の能力なんだろうが……」

イルーゾォ「メローネじゃああるまいし、遠隔ならさすがにパワーは落ちるだろう」

ホルマジオ「…………リューク、『スタンド』をデスノートで操ることはできるのか?」

死神リューク「わからないな。正確なスタンド名を把握していれば、できるのかもしれないが……」

ホルマジオ「まぁ、そうだろうな……」

ギアッチョ「ポルポは……ノートで操ろうとしても、物理的に不可能な命令として結局心臓麻痺になりそうだぜ」

ペッシ「確かに……。このまま手探りで捜索を続けるしかねェわけか……」

リゾット「親衛隊等の追手も来るかもしれん。オレたちも慎重にトリッシュ捜索を続けるぞ」







そして二日の時が流れた。

暗殺チームは、未だにトリッシュやペリーコロを見つけられずにいたが……


『ある情報』が暗殺チームにも伝わることとなる。


プロシュート「ペリーコロめ…………さすがは幹部の一人といったところか」

イルーゾォ「マズイな、手掛かりが何も…………ン? これは……」

ホルマジオ「お…おい、これ……パソコンのこの画面を見てくれ!!」




□ ネアポリス刑務所で

  本日午前9時25分 ポルポが死亡。

  死因は拳銃による自らの頭部損傷。

  ――――自殺

リゾット「ポルポが死んだ……しかも自殺だと!?」

ギアッチョ「ボスがデスノートで殺ったんじゃあねェのか……マジに自殺なのか?」

イルーゾォ「いや……案外こいつらが殺したのかもしれんぞ。幹部の『枠』を空ける為にな」

プロシュート「こいつら……?」

イルーゾォ「ああ。組織の『人事』が久しぶりに更新された」

イルーゾォ「ポルポの後釜、新幹部に……『ブローノ・ブチャラティ』が昇進した」

ホルマジオ「ブチャラティ……ポルポに気に入られてた、ネアポリスのチンピラか」

リゾット「奴も『スタンド使い』だという噂がある……とすれば、こいつらが娘を護衛している可能性が高いな」

イルーゾォ「既に組織の全組員の『顔写真』がデータから消えていたが……」

イルーゾォ「だが……ブチャラティなら、街の住人に媚びを売って地位を作ったあの男のものなら……」

イルーゾォ「地元界隈の誰かが、奴の写真を持っているはずだ」

ペッシ「データにはなくとも、『人気者』の奴なら……ありえる」

ギアッチョ「もし写真があれば……そうすりゃあ、ブチャラティをノートで操ってトリッシュをゲットできる」

ホルマジオ「……ブチャラティの縄張り……『ネアポリス』か。行く価値は有るな」

リゾット「よし、ギアッチョとホルマジオ……そしてペッシの三人で行ってくれ」

リゾット「オレたちは引き続き、ペリーコロとトリッシュの行方を追う」

ペッシ(兄貴と別行動……オレの力が試されるぜ……!)

リゾット「それといいか。もし誰かが『捕まった』としても、そいつを助けに戻るような真似はするな」

リゾット「相手にデスノートがある以上、捕まった時点で操られ……殺される可能性が出てくる」

リゾット「場合によっては非情な判断になるだろうが、その覚悟だけは忘れずに任務に臨んでくれ」

ギアッチョ「ああ、了解したぜ」

ホルマジオ「承知した。だがトリッシュもペリーコロも見つけられずいよいよダメかと思っていたが……」


ホルマジオ「これは……オレたちにも『運』が向いてきたのかもしれねェな……」

……


『ポルポが死んだのは…………問題ではない』

『その後だ、そのブローノ・ブチャラティ……』

『信用はできそうなのだな? ドッピオ』


ドッピオ「はい。ブチャラティは12歳の時に父の為に殺人を犯し……」

ドッピオ「それ以来彼と父親は、組織により『安全』を保障され続けてきました」

ドッピオ「今回の『6億』の献金からも……組織への莫大な恩は、揺るがぬものとして残っていると思われます」


『ブチャラティの部下もスタンド使い……そして暗殺チームと違い……』

『既に「顔も名前も」こちらで把握している。一人ジョルノとかいう新入りが入ったようだが……』

『いいぞ……「運」が味方してきたようだな』





……


ペリーコロ「ボスからの指令は『二つ』。一つは先程も言った『トリッシュの護衛』じゃ」

ブチャラティ「…………」 ジョルノ「…………」 ミスタ「…………」

アバッキオ「…………」 ナランチャ「…………」 フーゴ「…………」


ペリーコロ「そしてもう一つは……『裏切り者』をこれから罠に嵌める」

ペリーコロ「それを組織の『スタンド使い』と協力し……捕えるんじゃ」



ジョルノ(いずれ正体を突き止めて倒そうと思っているボスの『娘』……その護衛)

ブチャラティ(『運』が……オレたちに巡ってきたようだな)

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きは日を改めて書かせて頂きます。

それではまた。

ペリーコロ「第二指令の詳しい内容は、ボスからの通信で知らされる」

ペリーコロ「わしには『スタンド能力』はない。役に立てるのはここまでじゃ……」







ボスからの第二指令、つまり暗殺チームに仕掛ける罠の概要はこういうものだった。



まず、ブチャラティが幹部に昇進した情報を『流す』

定石では……娘の護衛をするだけであれば、その情報を流さない方が不要な危険を避けられる。


だがその情報を流すことで、裏切り者の行動を『誘導』する。

幹部昇進の情報から、奴らは『ブチャラティ』が娘を護衛していると考えるだろう。


そしてブチャラティの『情報』を手に入れる為に『ネアポリス』近辺に出現する可能性が高い。

そこで組織の『能力者』と合流し、ブチャラティの情報を得ようとする者共を生きたまま捕えよ。



だが同時に娘の護衛もこなさなければならない。人選はブチャラティに一任する。

ミスタ「誰がネアポリスに行くんだ? 一人?それとも二人か?」

ブチャラティ「護衛の方になるべく人員を割いておきたい……ここは一人だな。だが……」

アバッキオ「…………何か妙じゃあないか?」

ジョルノ「そうですね……ボスは『何か』を隠している」

ブチャラティ「アバッキオたちもそう思うか?」

ナランチャ「? どこが妙なんだ?」

フーゴ「不思議に思いませんか? なぜ敵が危険を冒してまで『ブチャラティの情報』を調べに来るのか」

フーゴ「『トリッシュがネアポリスにいる』から襲撃しに来る…………これならまだわかりますが……」

ジョルノ「なぜこれで裏切り者たちを誘導できるのか……」

ナランチャ「だがまぁ、行くしかねェーんだろ?」

ミスタ「ナランチャの言う通りだ、考えててもしょうがねェ」

ミスタ「よし、ネアポリスにはオレが行こう」







こうして、ネアポリスにはミスタが赴くこととなった。

まず向かったのは、ブチャラティチームがよく利用していたレストラン。

ここには……『もう一人』のスタンド使いが派遣されていた。


ミスタの能力は銃弾を用いることもあり、殺傷能力は高いと言えるが……

逆に言えば人質をとるのに不向きな能力である。

ただし、合流する『能力者』は…………人質をとるのに、『最適任』のスタンド使いだった。



「イタリア料理ってのはなんでこう……滅多に『砂糖』を料理に使わねェーんだ?」

「デザートくらいじゃあオレには足りねェっつーのによオオォー」

ミスタ「そりゃ西洋料理全般に言えることだろう」

「…………ン」

ミスタ「待たせちまったようだな、あんただろ?……『マリオ・ズッケェロ』は」

ズッケェロ「そうだ。ってことはおまえがミスタか?」

ミスタ「ああ……共同戦線ヨロシク頼むぜェーッ」

ズッケェロ「『共同戦線』?……そりゃダメだ、奴らを獲るのはオレだ……オレが仕切る」

ミスタ「…………あ?」

ズッケェロ「仲良しクラブじゃあねェーんだ。おまえとオレは同じ目的。『ただそれだけ』の仲さ」

ミスタ「フン…………勝手にしな」

ミスタ「だが忘れるな。ボスからテメーの『能力』は聞いている……」

ミスタ「銃は剣よりも強し、だ。あんま図に乗ってっとよォ~~~それを身に染み込ませてやるぜ」

ズッケェロ「…………任務が終わったら、いくらでも付き合ってやるよ」


ズッケェロ(ボスの情報によると……『サーレー』は暗殺チームに殺された)

ズッケェロ(許せねェ……店の中だとか船の上だとか……そういう限られた空間ならオレの独壇場だ)

ズッケェロ(『ソフトマシーン』の妙味を…………味わわせてくれるぜ)


「ズッケェロの机ノ上ノ『黒い鞄』……アレ……トイレでオッサンガ宝石ヲ入レテタ……アノ鞄ダヨナ?」

「オオ、ホントダ。ッテコトハ中ニハ……」

「ン……? アレハ…………ミスタ! イ、イマアソコに『人影』ガ!」

ミスタ「人影……? あんな隙間にか?……ネズミか何かじゃあねェーの?」

「アノ机ノ下ダロ? オレも見タゼェーーーッ!」

「……ボクハ見テナイケド」

「ソリャスグニ姿をカクシタカラナッ! ダガ蜘蛛トカジャア断ジテネェーッ!小人ミテーダッタ!」

「オレモ見タゼ! 眼鏡とパイナップルが見エタ!」

ズッケェロ(これがミスタのスタンド能力。何かを見つけたようだが……)

ズッケェロ(『スタンド使いは引かれ合う』。まさか、裏切り者は既に……)

ズッケェロ(ならば……!)

ミスタ「オーケーピストルズ、わかった……。『何か』がいた……それだけで十分だぜ」



ミスタ「あとは……ぶちかまして確かめるッ!!!」

ドガガガガガガガッ!!!



レストラン内だろうと躊躇せず、ミスタは撃った。

このレストランをはじめ、ネアポリスの至る所に組織の息がかかっており……

この銃撃が大きな騒ぎになることはない。


ピストルズの跳弾により放つ銃弾が、机の下を攻撃する。

そこにいた三人は、能力により『小さくなっていた』暗殺チームの……


ホルマジオ「な…なんだああああアアアァァァァッ!!?」

ギアッチョ「う、うおおおおッ!!? だ…弾丸……しかも実弾だと!?」

ペッシ「やべェ!!? オ、オレの能力じゃあ銃弾は…………グッ!!?」



ズブ…ズンッ!



ペッシ「!!? ホ…ホルマ……」 ガオン!


ホルマジオ「ペッシ!!? ペッシが……」

ホルマジオ「そこのくぼみに……『引きずり込まれた』!!?」




ズッケェロ(こいつら……『小さくなる』能力者でもいるのか?)

ズッケェロ(だがわざわざこうやって身を隠すってことは……暗殺チームに違いねェ。まずは一人『確保』だ)

ズッケェロ(きゃはははアアアアァァーーッ!!)

ギアッチョ「クソ……ペッシには悪いが後だホルマジオッ!! 弾丸が捌ききれん……!」

ギアッチョ「この小さくなったサイズじゃあ『ジェントリーウィープス』でも弾ききれねェッ!!」

ホルマジオ「オレに掴まれギアッチョ!!」

ホルマジオ「ボールペンを元の大きさに戻し……その時生まれる『瞬発力』で、安全圏まで吹っ飛ぶ」

ホルマジオ「リトルフィィィィート!!」



『リトルフィート』は……縮める時には時間がかかるものの、元の大きさに戻す際は特に時間を要しない。

一瞬で終えることができる。

その元の大きさに戻る際に生まれる瞬発力。それにより吹っ飛ばされた二人は、別の机の下へ移動していた。



ギアッチョ「さすがだぜ……機転が利いたなホルマジオ……!」

ギアッチョ「だがまさか、ペッシが……」

ホルマジオ「そして……『またもや』…………だ。またもやボスに行動を予測されていた」

ホルマジオ「ブチャラティの幹部昇進は、ボスの『罠』だったわけだ……」

ホルマジオ「オレたちを釣り出す為のな……!」

ギアッチョ「…………」

ホルマジオ「『ブチャラティ』がよく利用するレストラン……そこにオレたちが現れることまで……全て予測されていた」

ホルマジオ「敵は備えをしている、とすれば街の誰もが写真を処分しているだろう。ここは退いた方が……」


ギアッチョ「!!? ホ、ホルマジオ……アレは……!?」

「オイイイイィィィィッ! コッチジャアねェカッ!?」

「コッチコッチッ! 探セ野郎ドモッ!!」


ホルマジオ「!!? あいつらがオレたちを索敵していたのか……面倒くせェ奴らだ……!!」

ホルマジオ「クソッ! もう一度ボールペンで飛ぶしか……」

ギアッチョ「いや……それをやるのは『おまえだけ』だ」

ギアッチョ「おまえはもっと『小さく』なって、あいつらを避けつつ情報を探ってみろ」

ギアッチョ「敵はオレが相手をする」

ホルマジオ「な…何を言ってるんだギアッチョ!?」

ギアッチョ「気になるのはあの『黒い鞄』だ。もしかすると、何かしらの収穫があるかもしれねェ」

ホルマジオ「馬鹿な……襲撃が読まれていたんだぞ!?」

ホルマジオ「あの施錠された鞄にオレたちの求めるものがあるはずがない、無意味だ!」

ギアッチョ「意味なんてないかもしれねェ。だが、ここで手掛かりを得られなければオレたちは……」


ギアッチョ「ボスを完全に見失っちまう」


ギアッチョ「それにどの道あいつらは……簡単に逃がしてはくれないだろう」

ホルマジオ「そ、それならオレも一緒に戦った方が……」


ガシッ!


ギアッチョはホルマジオの両肩を掴み、怒鳴り声を上げる。

ギアッチョ「賢いオメーが何言ってんだ!? オメーのその能力でッ!!」

ギアッチョ「あの銃弾の雨をどんだけ避けられるっつーんだ!? 奴らは遊びで撃ってるんじゃあねェ!」

ギアッチョ「オレたちを殺す気で撃ってきてるんだ! それに……オレたちの目的はわかってるだろうが!!」

ギアッチョ「ブチャラティの情報を得に来ている、ボスに続く情報を得に来ている!」


ギアッチョ「それを達せずして、オレたちに栄光が掴めるわけがねェ!!」


ホルマジオ「クッ……」

ホルマジオ「確かにここで何の収穫もなしに戻っても……オレたちに未来はない……!」

ギアッチョ「……わかってるじゃあねェーか。なら早いとこ『オレだけ』を元のサイズに戻せ」

ギアッチョ「そして情報を探し出したらそのまま単独で脱出しろ。オレもそうするから……よォ」

ホルマジオ「…………ああ、わかった」



ギアッチョは……一人で戦う決断を既に下している。

それはホルマジオが足手まといになる、という理由からではなく……

彼を『信頼している』からこそだった。


ホルマジオ「暗殺チームの一員のくせに……情報収集に徹することになるとは……」

ホルマジオ「皆も言うように……本当に『くだらねェ』能力だぜ…………オレのリトルフィートはッ!!」

ギアッチョ「だが、頼りにしている。情報は『必要』だ…………頼んだぜホルマジオ……!」



ミスタ「おッ! 出てきやがったな……戻れピストルズッ!!」

ズッケェロ「おい……おまえ暗殺チームだな? いつからそこにいた?」

ズッケェロ「それにもう一人いるだろう? そいつはどこにいる?」


ギアッチョ「おいおい……『1対2』だろ? わかりやすいじゃあねェーか」

ギアッチョ「…………疑問質問、ギャングらしくその答え……吐かせてみろよ」

ホルマジオ(何かの手掛かり……情報を……果たしてそれがあるかもわからないが……オレが見つけるしかない)

ホルマジオ(オメーまでやられるんじゃあねェーぞ…………ギアッチョ!!)



ミスタ「『スタンドを身に纏う』……あんなタイプは初めてだな」

ズッケェロ「…………おい、あとは任せたぜ」

ズッケェロ「『隙を作れ』、一度だけ……一瞬でいい。その一瞬の隙にオレが奴を仕留める」 スッ…

ズッケェロはミスタをその場に残し、その姿を眩ませた。


ミスタ「はァ……本当に勝手な奴だぜ。だが……」

ミスタ(その『能力』は頼りになる……なんとか隙を作らねェーとな……)

ミスタ「よし……まずはくらいな、『ピストルズ』をッ!!」 ドンドンドドンッ!!

銃弾がスタンドにより反射され、ギアッチョを四方から襲う。だが……



ボコボゴボゴォッ!!



ミスタ「な…なにィッ!!? 銃弾が……止まった!?」

ギアッチョ「…………弾丸の無駄だな」

ギアッチョ「オレの能力『ホワイトアルバム』は、低温で空気中の水分を凝結させて装甲のように身に纏っている」

ギアッチョ「弾丸ごときが撃ち抜くことはできねーほど、強力なパワーで固定している」

ミスタ「い、一体どんな温度で冷やせば、弾丸でぶち抜けない程の氷を纏えるんだ……!?」

ミスタ「クソ……こいつは分が悪い、走るしかねェッ!!」 ダッ!

ギアッチョ「……隣の店に逃げるつもりか?」

ギアッチョ「易々と逃がすわけがねェろうがッ!!」

ギアッチョ(…………ここは酒屋か?)


ミスタ「チッ……来るんじゃあねェッ!!」

ミスタ「うおおおおおおッ!!」 バッ、バババッ!

ミスタは手当たり次第に、様々な『物』を投げつける。


バゲッド、サラミ、ワイン瓶、そして……『缶ビール』



ギアッチョ「おい……往生際が悪いぜ」

ギアッチョ「勝ち目がないと悟っているのは、お利口さんだけどよォー」


その時、ギアッチョの予期せぬ方向から『音』が鳴り響いた。



パァンッ!!

自身に銃弾は『効かない』

それはわかりきっている事であるが……ギアッチョは思わずその銃声のような音に反応してしまった。

檻にいる動物が噛み付いてこようとする時、咄嗟に反応してしまうように……音の方向に目をやったのだ。


ギアッチョ「な、なんだ今の銃声はッ!?」

ギアッチョ「さっきのもう一人の野郎か!!?」


ギアッチョの答えは……半分が当たりで、半分がハズレだった。

音の正体は……


ミスタ「違うぜ、今のはただの『破裂音』だ。炭酸を冷やすと……」

ミスタ「水が固体になり体積が増える。すると溶け込んでいた二酸化炭素が気体に戻り……缶が膨張する」

ミスタ「そうして起こった破裂音だ。缶ビールを冷凍庫で冷やし過ぎてなるアレさ」

ミスタ「だがおまえの『急速冷凍』なら……それが短い時間で起きる。そして……」


ミスタ「『隙はできた』ぜ。ズッケェロ」



ズンッ!!

ギアッチョ「!!? な……!?」


ギアッチョの首筋の『空気穴』に剣先が突き刺さる。

ズッケェロのスタンド『ソフトマシーン』のレイピアである。

自身を空気の抜けたゴム風船のように萎ませ、配管からギアッチョの背後に回り込んでいたのだ。


ズッケェロ「一刺し……一刺しで十分だ、オレのソフトマシーンならな」

ズッケェロ「おまえはこれから『仮死状態』となる。そして……拷問されるわけだ」

ズッケェロ「本当は……今すぐブッ殺したいところだがなァ……!!!」


ギアッチョ「き、きさ……ま…………い…意識……が…………」

ギアッチョ(ホ…ホルマ……ジ…………)




ギアッチョは……そのまま意識を失い、ペッシ共々二人に捕えられてしまった。




一方ホルマジオは……


ホルマジオ(……『鞄』は無事回収した。しかしやはり……それ以外に情報は何もない)

ホルマジオ(ギアッチョの姿がないが…………先に脱出し、撤退したのか?)

ホルマジオ(ならば……オレも撤退するとしよう)



……解錠できない『鞄』を携え、ホルマジオは拠点へと帰還していった。

……


ホルマジオ「……ギアッチョがまだ帰っていないだと!!!?」

イルーゾォ「ああ……ということは……殺されたか、捕まったかだが……」

リゾット「写真に名前と寿命が映っている。ギアッチョもペッシも、まだ生きてはいるようだ」

プロシュート「ということは捕まったのか…………まさかギアッチョともあろう者が……」

イルーゾォ「……そしてオレたちはボスへの手掛かりを完全に失った、ってわけだ」

プロシュート「この後はどうする? 何か策はあるのか、リゾット」

ホルマジオ(オ、オレの責任だ……オレがギアッチョを見捨てて……)

リゾット「……策とはとても呼べん。リスクもあるが……ホルマジオの持ち帰った『6億』」

リゾット「これを使う」

ホルマジオ「6億を……?」

イルーゾォ「? 一体、何に使うんだ……?」


『6億』……そう、ホルマジオが持ち帰った『鞄』の中身は……

ブチャラティが組織に献金した6億の価値がある宝飾品だった。

ペリーコロはボスの指令を受け、ズッケェロにこの鞄を預けていた。


それはボスが、ブチャラティへのトリッシュ引き渡しの任務完了の時点で、ペリーコロを殺そうとしていたからである。

娘の正体を知る者は生かしておけない。

ペリーコロを殺すから、金の回収は他の者にさせよう。こう考えていた。


そのボスの判断が……



自身の正体を晒す、次の危険へと繋がっていた。



リゾット「『探偵』だ。探偵を使って……ドナテラとトリッシュ、この二人を徹底的に調べる」

リゾット「ボス自身ではなくこの二人なら、有力な情報を掴めるかもしれない」

イルーゾォ「『探偵』……? そんな有能な奴いたっけか?」

プロシュート「なるほど……金だけで動くあの探偵か……」


リゾット「そう、世界三大探偵の一人…………『エラルド・コイル』」

……


『L、探偵のエラルド・コイルの所に……急を要する身辺調査の依頼が……』

『それなりのエージェントを二人通して依頼人がわからない様工作してありますが……』

『依頼主はパッショーネ暗殺チームの「ホルマジオ」と突き止めました』

『前金で10万ドル、成功報酬140万ドル』


L「……よく調べてくれましたワタリ。それで調査対象の人物は?」


『故人「ドナテラ・ウナ」と、その娘「トリッシュ・ウナ」です』

『ドナテラは……二ヶ月程前、「ソリッド・ナーゾ」という男の調査を依頼してきた人物です』


L「なるほど、わかりました」

L(最近……キラによる殺人は著しく減少している)

L(これは気まぐれではないだろう。考えられるのは……)

L(①殺せる状況でなくなった ②殺す必要がなくなった ③殺すことよりも優先順位が高い事態が起きた)

L(おそらくは③……)


L(キラの能力は心臓麻痺で人を殺す事。そして一ヶ月程前に壊滅したブルガリアのマフィア組織の組員は……)

L(ほとんどが心臓麻痺で死んでいる。その組織と対立していたマフィアの一つが『パッショーネ』だ)

L(ボスの正体は一切不明。だが……『ナーゾ』がボスの可能性があると、一時噂されていた)

L(そのボスの正体を調べる為に、母娘を調査する。それも緊急性が高いということは……)


L(暗殺チームは現在、ボスに反旗を翻している可能性が高い)


L(組員のチョコラータ、セッコ、サーレー、さらに暗殺チームのメローネも……全て心臓麻痺)

L(見えてきた……この『ボス 対 裏切り者たち』の戦いの最中で、キラの殺人は起こったのだ)

L「……ホルマジオの『依頼』で、確信が持てました」



L「『パッショーネ』の誰かが…………いや、おそらく『ボス』が『キラ』です」

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きはまた日を改めて書かせて頂きます。

それではまた。

ああ本編の展開はこっちとは関係ないのか
なんか事故解決出来た

>>222
自己解決、恐縮の至り。メルシーボークー。

ただ一応話をしておきますと、このSSはリュークが月にデスノートを与える『前』の話として書かせて頂いています。
つまりLは、デスノートについての予備知識は一切無し。まぁ彼は公式チートなので何とでも……

一日後――


ここはサン・ジョルジョ・マジョーレ島の地下『納骨堂』

ブチャラティが組織に反旗を翻し、今まさに……ボスと対峙している瞬間である。


無知なる者を、自分の利益だけの為に利用する『吐き気を催す邪悪』


ボスをその邪悪と認識したが……だがブチャラティは知らない。

その邪悪は、彼の想像を超えた邪悪であることを……



『最後に……理由を聞いておきたい』

『せっかくおまえは任務を無事果たしたばかりだというのに……信じられない行動だ』

『何が望みなのだ? 幹部になったのが嬉しくってもっと縄張りがほしいと欲が出たのか?』

『それとも自分の実力を過大に評価し、わたしを追い越せるとうぬぼれたのか?』


ブチャラティ「トリッシュが目を醒ましたのなら、父親など最初からいなかったと伝えておこう……」


『…………トリッシュだと? トリッシュがなんだというのだ?』

『娘の事はおまえにはなんの関係もないッ!』


ブチャラティ「きさまにオレの心は永遠にわかるま……」



ドクンッ!



ブチャラティ「い……!!!? こ…これ……は……」

ブチャラティ「ば…馬鹿……な…………」 ドサッ…


『…………ククッ、思わず笑い声が零れてしまうな』

『ブチャラティ……おまえのトリッシュ護衛の任務は……』


『これにて終了だ』

……


Lが『ボス』が『キラ』であるとなぜ判断したのか、その要因はパッショーネの歴史にあった。


『マフィア』という言葉は元々肯定的な意味で使用されており……

『名誉ある男』という意味でも使われていた。

その名誉ある男が行うビジネスとして御法度とされているのが、『売春と賭博』である。


マフィアの主な活動の一つである『麻薬取引』を長年行わなかったパッショーネは、マフィアとしては実は健全であった。


L(売春と賭博は当然として、麻薬にまで長年手を出さずに組織を拡大…………随分クリーンだったようだ)

L(だからこそ、こういった『キラ』の能力がなければ……)

L(短期間にここまで組織を大きくは出来なかっただろう)

L(国やメディアに圧力をかけれる程の組織には……な)

L(だが近年『欲望の白い粉』に手を出し……その莫大な利益を求め、組員たちの裏切りが起こった)

L(シナリオとしては、おそらくこんなところだろう)


L(…………しかし調べれば調べる程に……『謎』だ)

L(ドナテラとナーゾが1985年にエメラルド海岸で出会ったという情報は得た)

L(この『ナーゾ』は一体誰なんだ? まさか……こいつが本当にボスだというのか?)

L(何か……何か一つの情報で、ピースは組み上がるはずだが…………ン?)

L(この小さな村の『火災事件』……)

L(原因は不明。死者数7名。身元不明者もいた)

L(亡くなったのは……神父や……その息子『ディアボロ』…………か)


Lがこの『名』を目にしたその瞬間……『何者』かによる逆探知が行われた。


彼は待っていた、再起不能となってから……ずっと。

彼は待っていた、その希望の『矢』を守りながら。

ディアボロの『スタンド能力』の秘密と、その矢に『秘められた叡知』を、新たな希望に託す為に……

彼はディアボロに敗れた後も、ただ待っていたのだ。


そしてついに待ち望んだ人物が現れた。彼は喜び勇み、画面越しに声をかける。



『待ッテイタゾッ!! コノ男ヲ必死ニ調ベヨウトスル!君のヨウナ者ガ現レルノ……』



しかし……


ブツンッ

……Lの判断は早かった。それはLにとっては『当たり前』の行動。

逆探知に対し……発信元を突き止めさせることなど、させはしない。



L「やれやれ、逆探知か……このボス、抜け目がなさ過ぎる」

L(だが、このなんてこと無い事件を調べている際に逆探知とは……)

L(わたしは自分が思っている以上に、真実に近付いているのか……?)


L(まぁいい……ここまでの情報で、キラを絞りこむ『策』はある)





……


ポルナレフ「き…切られた……回線を切られた!!?」

ポルナレフ「『ディアボロ』を捜す者が……折角いたというのに……」

ポルナレフ「『矢』の真の力なくして、キングクリムゾンは攻略できないのに……」


ポルナレフ「希望は……ないのか…………」

……


ここはある倉庫。ここにはミスタ、ズッケェロ……そして捕えられたギアッチョとペッシがいる。

ギアッチョが拷問を受け始めてから、既に丸一日が経過していた。



ズッケェロ「おい……オレは言ったよな?」

ズッケェロ「喋っていいのは『仲間の在り処』だけだと」

ズッケェロ「黙るか……それ以外の言葉を言った場合」

ズッケェロ「一言につき『一枚』……爪を剥がすと…………そう言ったよなァ!!?」


ギアッチョ「…………」

ペッシ(ギ…ギアッチョ……オレを庇って……)


ズッケェロ「だがもう……手も足も、おまえから剥ぐ爪がねェ……」

ズッケェロ「全身に刻んだナイフによる傷痕も、涙目のルカの後遺症どころじゃあねェ……」

ズッケェロ「感覚が狂ってんのか? 頭がイカれてんのか?」

ズッケェロ「それとも……オレたちに『殺す命令』が出てないからって、ナメてんのかアアアァァッ!!?」


ギアッチョ「…………フン、霜焼けの方がまだ痛ェーぜ」


ズッケェロ「殺すぞコラアアアァァーーーッ!!!」

ミスタ「……ズッケェロ、交代しろ」

ミスタ「おまえは血気が盛んでいけねェ、ここはオレに任せな」

ズッケェロ「クソが……! オレはボスに報告をしてくる!!」

ズッケェロ「ついでに……てめェらを殺していい許可をもらってきてやるぜ!!」

ギアッチョ「……………」 ペッシ「…………」


ミスタ「……カエルってよォ~~~意外にも肉食なんだよな」

ミスタ「小さいヘビやネズミなんかも食っちまうらしい……知ってるか?『ベルゼブフォ』ってカエル」

ミスタ「大昔に絶滅した巨大ガエルなんだが、ボーリングの玉程の大きさを誇り……」

ミスタ「『恐竜の子供』を喰らったとも一部で言われている」

ミスタ「自然界には……そういう『下剋上』がある」

ミスタ「蛇に睨まれたカエルが、蛇を捕食して生き残ることが…………ある」


ギアッチョ「……………」 ペッシ「…………」


ミスタ「…………おまえらは、何故ボスを裏切った?」

ミスタ「ボスの正体を探り……生き残った者はいない」

ミスタ「このイタリアという国自体が、おまえらの味方をすることがもうないからだ」

ミスタ「電話、郵便、交通、マスコミ、警察、政治……この社会全てがおまえらを孤立させる」

ミスタ「それでも勝つ見込みがあるっつーのか?」


ギアッチョ「…………ある」 ペッシ「……!」


ミスタ「へェ……そうかよ、呑気言ってんな」

ミスタ「…………まぁオレもよ、今まで楽観的な生き方をしてきたんだ」

ミスタ「だが17歳の時、正当防衛を『懲役30年』と判決され……オレの青春は終わったと思った」

ミスタ「さすがに頭を抱えたぜ、冤罪なんかでよ……」

ミスタ「最悪の中の最悪、まさにそれだった…………だがその時だ。そこでオレは『ブチャラティ』と出会った」

ミスタ「ブチャラティは、この誰もがすぐに忘れるであろう事件に疑問を抱き、オレを救ってくれた」

ミスタ「オレの人生の恩人だ。だからといって……今でも楽観的な性格は変わってねェがな」

ミスタ「だが……ついさっき、一つ『なくなっちまったんだ』」


ギアッチョ「……?」 ペッシ「?」


ミスタ「さっき、本当についさっきだ……」

ミスタ「オレの『生きる理由』の一つが……なくなったんだ」



ミスタ「ブチャラティが…………『死んだ』」

ミスタ「ボスの娘であるトリッシュを護衛し、ボスに引き渡した直後……」

ミスタ「娘共々……『何者か』に殺されたらしい」

ミスタ「これもおまえら『暗殺チーム』の仕業だっつーのか?」


ギアッチョ「…………」 ペッシ「…………」


ミスタ「いいや……そんなわけねェ。ボスに殺されたんだ……口封じにな」

ミスタ「オレたちはこの『組織』無しではもう生きられない、それは十分理解している」

ミスタ「…………だが、ここからが本題だ。おまえらを……『試したい』」


ギアッチョ「試す……? 何を試すというんだ?」


ミスタ「このリボルバー拳銃……装弾可能数は『6発』だ」

ミスタ「その中に1つ、実弾を込める。いいか? 6分の1だ」 スッ……ガチャリ

ミスタ「これから『3度』……引き金を引く」

ミスタ「もしおまえらが『運良く』死ななかったとしたら……おまえらを逃がしてやる」


ギアッチョ「……逃がしてどうする? ボスを倒してくれってか?」

ギアッチョ「それでおまえは満足なのか? 仇なんだろう?」


ミスタ「その通りだ……おまえらにとっても、オレにとっても仇なんだ。だからこれで決める」

ミスタ「おまえらと『共に行くか』どうかをな……」


ギアッチョ「共に行く? おいおい……映画みてーな展開を期待してんのか?」

ギアッチョ「オレたちはさっきまで殺し合いをしてたんだ。昔からの鹿狩り仲間じゃあねェんだぜ」

ギアッチョ「仮にそのロシアンルーレットの賭けに勝ったとして……おまえと一緒に戦う理由がない」

ギアッチョ「ボスが共通の敵ってだけで、そう簡単に……」


ミスタ「だから『一蓮托生』だ。オレも……参加する。ギアッチョ、ペッシ、そしてオレ……各1発だ」

ミスタ「6分の1で死ぬ。狩られる側に回るってのは気分が悪いが……おまえらと同じ『側』に立つ」


ペッシ「い、意味わかんねェ……なんでわざわざ自分まで死ぬ可能性のあることを……!?」

ギアッチョ(…………こいつは、今オレたちを殺せる立場にある)

ギアッチョ(だがそれを放棄してでも、オレたちを仲間に引き込みたい……というわけだ)

ギアッチョ(オレたちを引き込む為の賭け、ベットは自分の『命』……)

ギアッチョ(ただのチンピラと思っていたが、いい覚悟をしやがる)


ミスタ「どうだ?乗るか……? え、ギアッチョ」

ギアッチョ「…………ベネ(良し)、その賭け乗ったぜ」

さらに一日後――


『L、依頼主だけではなく……』

『パッショーネ全体に情報を流すということで、よろしいですか?』


L「はい、それでお願いします」

L(未だボスが『キラ』だという証拠はないし……そもそもボスの正体がわからない)

L(そう……ボスの正体がわからないのは、わたしだけではない)

L(暗殺チームをはじめとした裏切り者たちも、正体がわからない。『だから』この策は成り立つ)

L(このタイミングで、情報を『パッショーネ内全体』に流出させる)

L(これでボスも……裏切っている者たちも、全員が…………『サルディニア島』に現れる)

L(キラの能力は危険だ。だが顔を隠す等の対策さえ打てば……問題はない)

L「行きましょうワタリ、わたしたちもサルディニアへ」


『かしこまりました、L』


L「あなたの『スナイパー』としての腕前にも……期待していますよ」





……


イルーゾォ「これが150万ドルで得た、二人の情報か……」

イルーゾォ「何々……トリッシュ・ウナ。1986年4月19日、カンパニア県イスキア生まれ……」

イルーゾォ「血液型はA型、身長163cm、ペリエや酸っぱいサラダ、カニが好きで……」

プロシュート「イルーゾォ、ここだ。ここを見てみろ」

イルーゾォ「ン? ……こ、これはッ!!?」



母ドナテラは、このナーゾと呼ばれる男と『サルディニア島』にて出会った。

その時期は1985年の6月下旬。その場所は……『カーラ・ディ・ヴォルペ(キツネの尾)』――



プロシュート「サルディニア北部、エメラルドのように青い海岸……『カーラ・ディ・ヴォルペ』か」

ホルマジオ「もしかして、そこにボスへの手掛かりが何かあるんじゃあねェーか?」

リゾット「ああ…………決まりだな、サルディニアへ向かうぞ」

……


ドッピオ「ボ…ボス!! た、大変だ……パッショーネ全体に流れちまってる!!?」

ドッピオ「な、なんでこんな情報が……誰がボスの過去をッ!!?」


『落ち着け……ドッピオ。この情報の発信元は必ず突き止めるが……』

『だがそれよりも、この情報をわたしたちが「利用」するのだ』

『姿を隠している裏切り者共も、この情報に飛び付くはず……』

『絶頂だ…………ここで全てにケリをつけ、わたしは絶頂で有り続ける』


ドッピオ「そ、それじゃあサルディニアには……」


『当然、おまえが行くんだ。わたしのかわいいドッピオ……』

『おまえだけだ。おまえだけを……信じているぞ』


『ン…………フフ、これはグッドニュースだ。この情報に早くも食いついたようだな』


□ 変装をした暗殺チームらしき団体を発見

  マルコ・ポーロ空港へ向かっている模様

  攻撃を仕掛けますか?

  ――――スクアーロ、ティッツアーノ



『ドッピオ、空港にはカルネを向かわせろ。奴の能力なら…………最も確実だ』

……


フーゴ「お、おまえら……本当に行くのか!!?」

フーゴ「どうかしてる……正気じゃあない!完全に孤立するんだぞッ!!」

フーゴ「それにただの噂かもしれない……ガセネタかもしれない……」

フーゴ「ボスの手掛かりが本当にサルディニアにあるかわからないだろう……!!?」


アバッキオ「可能性の話をしてるんじゃあねェ……」

アバッキオ「オレの心の拠り所を奪った……その裁きは誰が下す? 警察か?国家か?」

アバッキオ「違うな……裁くのはオレ自身だ」

ナランチャ(怖い……怖いよ、だけどブチャラティ…………オレに勇気をくれ……!)

ナランチャ(あんたの仇は……必ずオレたちが……!!)

アバッキオ「ジョルノ、ミスタとは直接現地で落ち合うんだったな?」

ジョルノ「はい。ミスタも既に向かっているそうです……『サルディニア』に」




かくして、サルディニア島にて決着をつけるべく……

四つの陣営がそれぞれ、進路を向けた。



キラを捕まえようと画策する『L』

ボスの過去を探ろうとするリゾットたち『暗殺チーム』

裏切り者たちを始末しようとする『ボス』

ボスを倒そうとするジョルノたち『旧ブチャラティチーム』




サルディニアの空は…………静かに震え始めていた。

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きは日を改めて書かせて頂きます。

それではまた。


フーゴがディストーションひっさげて再登場に花京院の魂をかけるぜ

――空港


スクアーロ「……変装しているようだが、やはり間違いない」

スクアーロ「裏切り者の暗殺チーム……ボスはなんと返事を?」

ティッツアーノ「ああ。『巻き込まれないよう』、撤退しろとの命令だ」

スクアーロ「巻き込まれる……?」

ティッツアーノ「そうだ、既に『カルネ』が刺客として……送り込まれているそうだ」

スクアーロ「カルネ……執念のエネルギーで動く…………あのスタンドか」





ここはヴェネツィアのマルコ・ポーロ空港。


暗殺チームはジェット機を得る為にここへ来たのだが……

彼らには当然『ムーディーブルース』はない。

彼らはジェット機を操縦する為に、どのような手段を用いるのか?

……答えは簡単である。


『金』で買収したのだ。

『エラルド・コイル』に支払った分を差し引いても……まだ四億以上が残っている。


リゾット「…………というわけだ。行き先はサルディニア」

リゾット「そこまで連れて行ってくれれば……これ以上の報酬を出そう」

リゾット「やってくれるか?」


自家用機のパイロットの答えは……当然イエスである。


パイロット「こ…こんなに!!? はいいイイィィィィ~~~ッ」

イルーゾォ「……リゾット、左前方から何者かが向かってくるぞ」

リゾット「組織の追手か?…………オレが始末しよう」

リゾット「プロシュート、離陸準備を急がせてくれ」

プロシュート「ああ、承知した」


リゾット「止まれ。この滑走路から消えるんだ……さもなくば命を落とすこととなる」

リゾット「『カルネ』、貴様に言ってるんだ。3秒待つ……」


カルネ「…………」 ザッザッザッ…


リゾット「……3秒、覚悟を決めていると…………見做した。『メタリカ』ッ!!」


カルネは、死への行進を止めない。

彼は『死ぬ為』にここに来たのだ。




ドブシュッ! スバァッ!!




カルネの頭部が、メタリカにより切り飛ばされた。

カルネ「」


イルーゾォ「即死だな……一応脈も確認したが、完全に停止している」

イルーゾォ「そして他に敵は見当たらない、どうやらここには一人で来たみたいだな」

プロシュート「離陸準備ができた!! 戻れリゾット、イルーゾォ!」

リゾット「ああ、今行く…………ン?」

死神リューク(なあ~~~んか、嫌な感じだぜ……)

死神リューク(あいつ……自分から『死にに来た』ような感じだった)

リゾット「…………」

ホルマジオ「さすがだリゾット、敵ははるか『格下』だったようだな」

リゾット「…………いやに呆気なかったのが逆に気掛かりだが……」



ただ『呆気なく死んだ敵』だと、この時は思っていた。

ここにいる四人全員が、そう思っていた。


リュークの予感は……そしてカルネの死体に『触れた』というイルーゾォの後悔は……

ティレニア海上『高度一万二千メートル』で体感することとなる。







パイロット「高度一万二千まで上昇…………安定飛行に入ります」

リゾット「これで……着陸までは神経を使わなくて済むな」

ホルマジオ「組織全体に『カーラ・ディ・ヴォルペ(キツネの尾)』の噂が流れている」

ホルマジオ「ボスも当然、オレたちの向かう先がそこだと予測しているはずだ」

ホルマジオ「一刻も早く、ボスの過去をつきとめなくては……」

プロシュート「オレの考えでは……ボスも昔は『まだ』、正体を隠すようなマフィアではなかった」

プロシュート「過去……ボスの過去を調べることができれば、必ず正体に繋がるヒントがあるはずだ」


リゾット(…………『ジェラート』)

リゾット(あいつの死に方は、やはり不自然だった)

リゾット(もしもあの死に、ジェラートからの『ヒント』や『メッセージ』が込められていたとしたら……)

リゾット(ボスにはわからず、そしてオレたちにだけはわかるような何かの意味が……)

リゾット(…………いや、考え過ぎか)

リゾット(サルディニアにはボスが現れるかもしれん……いや、おそらく自ら来るだろう)

リゾット(ここまで騒ぎが大きくなったのだ、部下には任せていられないだろう)

リゾット(今の内だ。休息は…………必要だ)



カリ…カリカリ…


イルーゾォ「…………?」

イルーゾォ(な、なんだ……その『戸棚』…………妙な『音』がする?)

プロシュート「どうした、イルーゾォ」

イルーゾォ「いや……あの戸棚から音が聞こえた気がしてな」

イルーゾォ「時速800km、高度は一万メートル以上……遠隔操作のスタンドなんていやしねェ……」

イルーゾォ「そんなスタンドなんて……あるわけねェーのに……」

イルーゾォ「何かがあの中に潜んでいる。そんな気がしてな……」

プロシュート「……その戸棚、開けてみろ。念の為だ……スタンド攻撃の準備はしておく」

ガパァ! カリカリ……カリ…カリカリ……


イルーゾォ「…………戸棚は冷蔵庫で、製氷室の『氷』の音だったのか……」

イルーゾォ「なんだよ、こんなモンにオレはビクついて……」

プロシュート「おい……。な…なんだそれは……『指』…………か!?」

イルーゾォ「……『指』?」

イルーゾォ「!!? こ、これは一体……!?」

プロシュート「濡れている……血がまだ『新しい』……人間の指だ……!!」

プロシュート「おいパイロット!! なんでこんな物を冷蔵庫に入れているッ!!?」


パイロット「……こんなもの? いや、氷以外のモンは何も入ってないはずですが……」


プロシュート「!! ちょっと待て……今あの指『何本』あった!?」

イルーゾォ「ふ、増えてる……!?」

イルーゾォ「これは……もしやリゾットがブッ殺した野郎の指なんじゃあねェーのか!!?」


死神リューク「おい……あっちが何か騒がしいぜ?」

リゾット「……おまえら、どうかしたのか?」


イルーゾォ「い…『異様な物』だ……確かに三本から四本に増えたように見えた……!」

プロシュート「リゾット、その冷蔵庫に……」



その時、ホルマジオが『イルーゾォ』の異変に気付き、叫び声を上げた。



ホルマジオ「う…腕だイルーゾォッ!! おまえの右腕が……」

ホルマジオ「『喰われている』ぞオオオオォォォォーーーッ!!!」

イルーゾォ「な…なんだこりゃああああアアアァァッ!!?」


グジョ…グジョグジョ……


プロシュート「右腕に『指』が憑りついて……しかもどんどん大きくなっている!!?」

イルーゾォ「こ…こいつ! オレの体を喰って大きくなっているんじゃあ……!?」

ホルマジオ「このままじゃあいずれ全身が喰われる……マズイ、マズイぞ!!」

リゾット「仕方ない……メタリカで右腕を切り離す」

リゾット「やるぞイルーゾォ。痛みは…………我慢しろ」

イルーゾォ「あ、ああ!! 早く……早く全身に広がる前にこの腕をッ!!」



バギバギッ… ドバァ!!



メタリカで作り出した大型の『ハサミ』が、イルーゾォの右腕を切り離す。

イルーゾォ「!!? ぐ…うううおおあ……!!!」

イルーゾォ「こ、こォれしきィィイイの事オオォォッ!!」


パイロット「な…なんだ……あんたら……一体何をやっているんだ!!?」


片腕を失ったイルーゾォと流れ出る大量の血を見て……パイロットは思わず叫んだ。

騒がしい様子を不審に思い、航行を『自動操縦システム』に任せ、機内の様子を見に来たのだ。


リゾット「こいつを片づけたら説明する、少し黙っていろ」

リゾットは周囲の鉄分から複数のナイフを生成。

イルーゾォの腕を喰らい成長した肉片に向かい、それらを一斉に放った。


リゾット「切り刻む……くらえッ!!」

バシバシ! バシバシィッ!


しかし、ナイフが肉片に直撃することはなかった。

肉片は迫りくるナイフの動きを正確に捉え、それを自身に取り込む。


リゾット「な……!!?」

ホルマジオ「ナイフが全て……捉えられただと!!?」

リゾット「この動き……見えているわけではない。こいつは『何か』を探知している……!?」


パイロット「……ひ…ひいいいィィィィイイイッ!!?」 ダッ!

パイロットは目の前から突如現れ、そして消失するナイフを見て……その場から『走り出した』

それにより肉片は、ターゲットをこの男に変えることとなる。


パイロット「な…なん……うおおああああああアアアァァァーーーッ!!!?」


プロシュート「!!? オレやリゾットを飛び越して……パイロットに!?」

リゾット(こいつはカルネのスタンドだ……脈を確認したイルーゾォに憑りつき……)

リゾット(機内に侵入したのだ……! そして……『何か』を区別して攻撃してきている)

リゾット(ナイフ、そして走り出したパイロット…………ハッ!!?)


リゾット「そうか、わかった……わかったぞ、こいつの探知しているものがッ!!」

リゾット「全員、指先一本動かすなッ!!」

リゾット「あの肉片は……『動いている物』に反応し、それを最優先に攻撃してくる」

リゾット「スピードが早ければ早い程、それと同じスピードで追跡してくる……!」


パイロット「あぐ……が…ば…………」


ホルマジオ「クソ……パイロットが喰われちまった……!」

プロシュート「なるほどな……『早い動き』を優先するのはわかった。確かにオレたちに攻撃をしてこない」

プロシュート「だがイルーゾォの腕の治療も必要だ、いつまでもこのままではいられんぞ……」

イルーゾォ「う……ぐあ……」

リゾット「問題はない、こいつの動きを封じる。封じるには……オレのスタンドが『最適』だ」

リゾット「この場から一歩も『動くことなく』、メタリカであの肉片を囲む『箱』を作る」



パイロットを喰らい続ける『ノトーリアスB・I・G』

その周辺にメタリカが壁を作り始めた。


ノトーリアスBIGはそれに気付かない。

磁力操作に、スピードは必要ない。

リゾット「動くものを追い続けるようだが……」

リゾット「だが四方を動かないものに囲まれた場合はどうなる?」

リゾット「おそらく、そこから抜け出ることはできない。どんな能力にも弱点はあるッ!」


そう、リゾットの予測は当たっていた。

ノトーリアスBIGは、静止中の物体に自分から衝突した場合はダメージを受ける。

よってこのスタンドを無力化するには、現在リゾットがとっている手段こそが最善なのだ。


徐々に……徐々に……

徐々に周辺に壁が作られ……


ノトーリアスBIGを閉じ込めた『鉄の箱』が、出来上がった。



リゾット「捕獲…………さて、イルーゾォの治療に移るぞ」





イルーゾォ「ありがとよ、片腕がなくとも能力は使える。もう……大丈夫だ」

イルーゾォ「それよりすまねェな。オレが奴の『死体』を調べなければ、こんなことには……」

プロシュート「気にするな。『死んで発現する能力』なぞ、誰も予想できない」

ホルマジオ「航行も『自動操縦システム』がある、着陸まで何も問題はない」

イルーゾォ「そうか……それなら良かったぜ」

リゾット「そろそろサルディニアの島土が見えてくる頃だ……」



ズズン……!!



ホルマジオ「!!? な…何だ……今の音は……!?」

プロシュート「エ…エンジントラブルか!!? 高度がどんどん落ちて行っている!?」

プロシュート「高度6000……5800……ど、どうにもならんッ!!?」

イルーゾォ「!!? ち、違う……こ…これは……」


リゾット「プロシュート……降下の原因はわかった」

リゾット「だが……どうしろと……いうのだ?」


リゾット「これを……こいつを……一体どうすればいいというのだッ!!?」

鉄の箱内にいるものとは別、冷蔵庫の中に残っていた……ノトーリアスBIGのほんの小さな欠片。

それが現在はジェット機の後方の大部分を包む程に巨大化している。


この肉片はゆっくりと取り込んでいたのだ。ジェットエンジンの『エネルギー』を……




ノトーリアスBIG「GYYYYYAAHHHHHHHHHーーーッ!!!!」




ホルマジオ「ふ、不時着だ……海に不時着するしかない……!!」

リゾット「そうするしかない……だが仮に無事海面に着陸できたとして……」

リゾット「そのあと……オレたちはこいつを振り切れるのか?」

リゾット「こいつは無敵だ……生きてはいないから『老い』もしない」

リゾット「触れれば吸収される為……小さくすることもできない」

リゾット「そしてこの大きさ……オレのメタリカも通用しない。どうする……どうすれば……」


波風が優れた航海士の味方であるように、危機を逆手にとりいくつもの修羅場を乗り換えたリゾット。

しかしそんな彼でさえ……この無敵のスタンドを相手に、打開策を見つけられずにいた。

リゾット「どうする……考えろ、考えるんだ……!」


イルーゾォ「…………この旅はよ、短い間だったが……楽しい旅だったなァ」

イルーゾォ「戦いが終わったらよ、ボッタルガのスパゲッティを食ってみたかったぜ……」


プロシュート「……動くなイルーゾォ、奴に襲われるのもそうだが……傷口が広がる」

イルーゾォ「傷口? ああ……そりゃ問題ない。オレにはもう治療は……『必要ねェ』からな」

リゾット「!? 何を考えている、イルーゾォ……!」

イルーゾォ「今度は完璧に閉じ込めてやるのさ……『鏡の中』にな」

リゾット「鏡? 馬鹿な……『マンインザミラー』で引きずり込むには、おまえが鏡の中に……」

リゾット「!!? ま、まさか……」

リゾット「あのスタンド諸共、ここで……!」

イルーゾォ「いいかリゾット……当たって砕けろってやつだぜ。オレの『責任』……なんだからな」

リゾット「『当たって砕けろ』……だと? そんな生易しいものではない」

リゾット「『鏡の中の世界』の物体は、おまえかマンインザミラーしか動かすことはできない」

リゾット「おまえ以外に動くものが存在しない鏡の中では……」

リゾット「あのスタンドは『おまえだけ』を追跡してくる、間違いなくおまえは死ぬんだぞッ!!」

イルーゾォ「……命なら、いつだって賭けてきた」

イルーゾォ「ソルベもジェラートもそうだった、オレも同じというだけのこと」


イルーゾォ「だからこの策を取りやめることは……リーダー命令だろうとも『許可しねェ』」

イルーゾォ「『これしきの事』だ…………無敵のマンインザミラーならなんとかなる」


……それは虚勢だった。なんとかなんて、なるはずが『ない』

そんなことはイルーゾォが一番…………誰よりもよくわかっている。

しかしこれしかないのだ。イルーゾォは……


『仲間』を想い、その決意を固めた。



イルーゾォ「…… I'm going to make him an offer he can't refuse(心配するな)」



イルーゾォは『マンインザミラー』を発動した。

鏡の中に消えていくイルーゾォの唇が……『アリーヴェデルチ』と呟いたように見えた。


ホルマジオ「イ、イルーゾォ……」

プロシュート「カッコ……つけやがって…………」

リゾット「…………」


イルーゾォはノトーリアスBIGを引きずり込み、一枚の『鏡』と共にサルディニアの空へ消えていった。

そのガラスはゆっくりとティレニア海へ落ち、その身を青い海原に沈ませる。

しばらくすると、波しぶきを追い続けるノトーリアスBIGの姿だけが……そこにはあった。


イルーゾォは、死んだ。



リゾットは唇を噛み締めながら、イルーゾォが飛び降りたであろう扉を閉めた。

プロシュートはただただ黙っていた。

ホルマジオは海ではなく……サルディニアの空をいつまでも眺めていた。



一度力を失ったジェットエンジンが再起することは叶わず、ジェット機はそのまま高度を落とし続け……

サルディニア島北東沖、約50キロ地点で墜落。



三人は組織の追撃を振り切り、この後……無事サルディニア島の大地を踏みしめた。

ここまでご覧頂き、ありがとうございました。
続きは日を改めて書かせて頂きます。次回投下は2~3週間後を予定。
またもや期間が空き申し訳ないです。

それではまた、続きもご覧頂ければ幸い。

>>241
す、すまない……花京院。恥パはこのSSに組み込む予定がないのです。

えー期日を設けていましたが……すみません。書けていません。
このSSを書き上げるという覚悟が足りなかったのか……

情けない話ですが、次回投下未定です。気長にお待ち頂ければ幸いです。

申し訳ありませんがHTML化依頼をしてきます。

ここまでご覧頂きありがとうございました。

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