【上条×オティヌス】壊れた世界の迷い人 (99)
タイトル二人の掛け合いで送るコメディだったりシリアスだったりするお話です。
それっぽい感じはありますが18禁シーンははありません。
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天も地もあやふやで、何もかも虚ろなただ黒だけの光景。
地平線の先まで漆黒で塗りつぶされた空間に、上条当麻は独り立っていた。
瞳を爛々と輝かせて、油断なく周りを見渡しているその姿は餓えた獣のようだ。
何かに気付いたのか、鈍く光を放つ視線が離れた、或る一箇所を睨みつける。
「……どうしたオティヌス。俺はまだ終わっちゃいないぞ」
言葉に呼応したかのよう、ただ黒だけを映していた瞳の先へと色彩が浮かび上がり
瞬きをする間もない一瞬に、オティヌスは現出していた。
「呆れたものだ。お前のしつこさにはいい加減飽いてくる」
「なら早く世界を戻して終わらせろ。俺は絶対に諦めない」
少女の姿をした魔神の表情には、ほんの少しだが疲れの色があった。
あらゆる責め苦を与えられ、血も肉も心も、切り刻まれてすり潰されているはずの
上条の精神を、どうしてもオティヌスは折る事ができていなかったのだ。
繰り返される位相を挟まれた世界は、百を越え、千を渡り、万に届いてもなお、少年は健在であった。
オティヌスは上条を見つめる。
張り詰めている表情は精神的に参っていないはずもない。
けれども、瞳には強い意思が溢れており、燻っている炎が燃え上がるのを待ちわびているかのよう。
その双肩に、幾つも重なった螺旋の世界を乗せて、立ち上がり続けていた。
オティヌスが痛苦を生み出す何万もの手管を用意していたとしても。
いや。用意して実行しているからこそ、徒労を感じるのはしょうがなかったかもしれない。
「……お前にはいい加減アプローチを変える必要がありそうだ」
「どういう意味だ?」
疑問をあげながらも上条は油断せず、オティヌスの動きを見ている。
唐突に始まる世界の変遷に、人の身で対応できるはずもないが
それでも食らいつこうとするのが上条当麻という少年だ。
だとしても見えなかった。
魔女の帽子だけが視界に在ると気付いた瞬間、オティヌスが眼前なんて生温いほど近く低い距離へと踏み込んでいたのだ。
(殺られる……!?)
上条は身じろぎもできない。
魔神の動きにはやはり反応しようがない。
幾多も受けた苦痛を思い返し、その先へと至る覚悟を決める。
「そう震えるな」
「なっ……」
だが起きた事は、その全ての経験が意味を為さない予想外のもの。
人を文字通りの意味で容易く折り砕けるオティヌスの両腕が、ただ上条を抱きしめたのだ。
首元に頬が触れるほど近く、まるで恋人を抱擁するかのように。
上条は動けない。
攻撃できるチャンスなんてすら思えない。
拳を握る事もできず、両腕を左右に広げたまま戦慄で固まっているだけだ。
「オティヌス……何を企んでやがる……!?」
「企んでいる、と問われればそうなのだろうな」
視線が交差しあう。殺意や憎悪は感じられない。
オティヌスの見上げている瞳にはどこか面白そうな笑みが含まれていた。
「アプローチを変えると言っただろう。お前に幾ら苦痛を与えても無駄なようだ。
ならば苦痛に耐えれたとしても、その逆はどうなのだ?」
「うっくっ……」
抱きしめる力が増し、上条に緊張が走る。
けれども潰されるなんて事はなく、ほっそりとした肢体がより密着しただけ。
水着よりも露出のある肢体や胸が上条へと押し付けられた形になる。
「歴史に残る聖人や罪人をも上回るだろう苦痛を受けたお前は、快楽にも耐えられるのか?」
オティヌスの手が上条の腕や身体に触れ優しく撫でる。
そうして頤をあげて、上条へと少しずつ近づいていって
「ふざけるな……!」
怒声と否定の腕がオティヌスを押し退けた。
「そんな事、お前になんかされても苦痛と変わらない!」
断固とした上条の拒否。
上条当麻にとって、味方と敵はその時その場面での状況次第という事は多々あるものの
オティヌスは現状紛れも無く敵に位置している。
和解というならば胸襟を開けるだろうが、突然の無礼無遠慮な行動を受け入れられるはずもない。
まあ、もし敵ではなかったとしても、上条は拒否していただろうが。
「……これでも魅力には自信はあったのだがな。私では不服か?」
オティヌスの冷たい瞳を上条は見返した。
なるほど、少女の姿をした魔神は美しいと言ってもよいだろう。
金を溶かして糸にしたような、一切のくすみない金髪は黒の空間で一際の輝きを放っている。
見せ付けるような裸体に近い白い肌には染み傷一つなく、均整のとれた肢体は芸術家が理想の美を彫り込んだ彫像のよう。
眼帯で隠れているはいえ、整った顔立ちは上条の知る少女らに勝りこそすれど劣るものでもない。
けれどもその内に秘められたものは、残酷で冷徹な、人を省みない悪神そのものだ。
世界に災厄をばら撒き、目的のためなら人も生命も世界すらも意に返さない。
上条にとってのオティヌスはそのような存在であり、概ね間違いではなかった。
「……魅力とかそういう問題じゃない。お前とは御免と言っているんだ」
「だとしてもだ。私がそう決めたのならお前が拒否できるとでも?」
「……なにをする気だ」
じりりと、黒の空間では音もしないが上条は後ずさる。
オティヌスは棒立ちしているようだが剣呑な目をしているし、前例の通り上条では手も足も出ない。
(こ、これは真剣に貞操の危機……なのか……?)
なにやら雲行きの怪しさと想定外の事態に、上条の額から一筋の汗が流れた。
今まで女性らににちょっかいをかけられた経験は何度かあるが、真剣に襲ってきたわけでもないので初めての経験だ。
このまま、ヒャッホゥッ美少女とエロエロ三昧だぁとか喜ぶには、相手が悪すぎる。
「なーに。天井の染みでも数えていればすぐに……そういえばないな。代わりにこれでも数えてろ」
ぱっと灯りがついたかのように、数え切れないほどの星々が見渡す限りに散りばめられる。
ただ黒だけの空間が、幾億を越えるだろう宝石に彩られて、幻想的でロマンチックな光景へと早変わりする。
つい綺麗だなーとか思いつつも、にじり寄ってくるオティヌスを見て上条は慌てて我を取り戻した。
「まてまてまて、なんか違う! なんでそんな俗っぽい慣用句知ってるんだよ!
もっとこう…………殺るか殺られるかってシリアスな雰囲気だっただろ!?」
「お前が殺られていただけだがな。何度も言わせるな。アプローチの変化だ」
「アプローチどころかキャラが違う! なんなの!? 見かけどおりオマエ痴女だったの!?」
「痴女言うな」
「ごっ……があぁぁぁぁっ……!?」
小宇宙をバックに繰り出される神速のアイアンクロー。
ギリギリギリと頭蓋骨が軋み割れる圧迫に襲われる。
加えて子供がぬいぐるみを振り回すかのよう、全身ごとグルングルンと振り回された。
遠心力と加圧で意識と共にトマトソースが飛び散りそうになる直前
手が離されて上条は黒い地べたで、びたんびたんと怖いくらいに痙攣していた。
「人ごときが神を侮辱する罪を知れ」
「うごおごっ、ぐぐぅっ………だって……最初はそういう霊装と思ったけどさ……」
腕ぶった切られたり、戦いの連続だったり、死んだり生き返ったりしてたせいで
つっこむ暇もなかったが、オティヌスの格好はアレだと心の片隅では思っていたので、つい出てしまったのだ。
パーツを継ぎ合わせて作ったような、下着とも水着ともつかない衣装。
街を歩いていると外見年齢と相まって補導でもされそうである。
これに比する格好となると堕天使エロメイドかサーシャのベルト拘束服か。
奇人変人揃いの魔術師をよく知っている上条でも中々思い当たらないだろう。
「……そんなに変か?」
「ぶっちゃけ通販とかで売ってる怪しいエロ下着みたいです」
「む……」
立ち直った上条の返答を受け、魔神さんは腕組みで胸を隠すようにして悩み始めてしまいました。
顔色こそ変わらないものの、どこか気恥ずかしさのようなものが垣間見えた気がした。
今の内にと、そろそろ上条が下がりはじめたものの
「つまり性的な魅力は感じているのだな」
「わーぅ」
あっさり掴まれてしまう。
「なら問題あるまい。着替えはまた後でいい」
でも迷い無いようで、若干気にしているらしい。
「お前が童貞なのは調べがついている。猿のように盛らせてやるよ」
「なんで知ってるんだちくしょう! 調べるってグレムリンどんだけ暇なんだ!」
「私に知らぬものなどない。神たる私が初めてを貰ってやろうと言うのだ。光栄に思えよ」
「思えるか! 今の今まで戦ってた奴とそんな気分になれるかよ!」
がーっと吠える上条をオティヌスは不機嫌そうに睨んだ。
「あくまで身を許す気はないと」
「あったりまえだ! こんだけ無茶苦茶されて平気で、はいそうですかなんて言うわけない!」
「なら改めて無茶苦茶にしてやっても構わんが、それでは今までと同じか」
オティヌスが思案の表情を見せて、流れが変わりそうな雰囲気に、上条は心中胸をなでおろす。
金髪美少女から逆レイプと聞けばちょっとした男の夢かもしれないが、それも時と場合と相手にもよる。
快感による屈服という狙いも上条相手には的を射ているのかもしれない。
苦痛ならば耐えれる。
そう言い切れるものではないが、その逆の行為に対しては対策も何も、発想すら浮かび上がらないからだ。
(それはそれでおかしいよな……潤いが欲しい……)
オティヌスの策は、上条が気の抜けた思考に至っている時点で成功してると言えただろう。
「……ならば、私とお前が敵ではないとしたらどうだ」
身構える暇もない。
言葉と共に、刹那の単位で上条はどこかへと移動した。そのように感じた。
黒と星々は晴天の青空へと変わり、見渡せば自宅と学校を繋ぐ馴染み深い通行路。
登校時刻らしく周りには生徒らが歩いていて、空に昇ろうとする陽が、暖かく人々を照らしていた。
平和そのものの光景だが、位相を挟まれた世界を体験し続けている上条は、今度こそ油断なく身構える。
(敵じゃないってどういう意味だ……?)
今まで戦った魔術師のように、和解できるのなら快楽どうこうは置いといて文句はない。
しかし、依然として世界は壊れていて、オティヌスが介入した世界がここに在る。
戦いを通じて分かり合えたという訳でもない。
今までとのパターンの違いに上条の混乱は続いていた。
そんな思考の中、たったったっと足音が後ろから近づいてくるのに振り向こうとして
「ごっ……がああぁぁあっ…………!?」
受けた衝撃で、何かの冗談のように上条は吹き飛びくるくると舞い上がる。
受け身も取れず、ずじゃじゃじゃっと擦過音を響かせ、土煙を撒き散らしアスファルトに転がり続けて。
「おはよう上条当麻。そんな所で寝ていると遅刻するぞ」
車にでも衝突されたかのような威力と痛みにふらふらしながらも立ち上がり声のほうを見る。
「は……?」
苦痛の表情が呆けたものへと一瞬に変わった。
なにやら、とある高校の女生徒制服を着ているオティヌスが、何故かトーストを片手に立っていたのだ。
上条は口を半開きにして呆然とした表情のまま、オティヌスも何かを待つように止まり長い沈黙。
(敵じゃないからって同級生……?)
思いつき、上条の表情に理解の色が浮かぶと口がへの字を作り、目を半眼に細め
「無理があるわ!!!」
怒鳴った。
「む、駄目なのか」
「駄目とかそういう問題じゃねえ! 世界弄くれる魔神様と早朝衝突イベントやっても萌えねえよ!」
「いやしかし、こういうのがギャップ萌えという奴なのだろう?」
「きゃぁー!? 偏ったカルチャーワードを魔神様が!?」
「それはほら、私は全知みたいなものだし。先程お前の近しい友人から情報収集を……
おかしいな……土御門元春はいいとして青いのの名前がわからんぞ」
「そんなん全知じゃねえし、収集相手が間違ってる! ぬぐっ、それにさっきので肩が外れてるじゃねえか! てりゃ」
ぐあぁーと両手で頭をかき毟ろうとして、右肩が動かないのに気付くと事も無げに左手で嵌め直した。
随分と逞しくなったものである。
「とにかくアウトだアウト! 上条さんはそんなんじゃ萌えませんし認めません!」
「そんな事を言って、少しはグっときたのではないか?」
「こねえ!」
「むぅ……えり好みの激しい男だな……」
どことなくしょぼんとしている様子に、上条はなんだか悪い事を言った気分になった。
制服を着ているオティヌスは、金髪のためか地味な鼠色の冬服が目立って見えるぐらいには存在感がある。
大きな眼帯を相変わらずつけているのでミスマッチなのだが、普段の格好より随分と親しみやすくもあった。
言わば日常系魔神ヒロイン。
たまに世界を壊したり直したり位相を挟んだりするのがチャーミングポイント。
案外そこらにいそうなヒロイン像である。
「……あー、まあなんでしょうか。さっきよりはいいと上条さんは思います」
「そ、そうか。うむ。人の身を包む衣服であっても、神の美は損なわれないな」
考えつつもつい慰めると、なんだかよくわからない返答。
若干嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。
「なら了解を得たということでイベントに移るぞ」
「え、まだなんかやんの? もういいだろ。世界戻して終わりにしようぜ」
「そうはいかん。……ええとだな。設定によると、私はお前の幼なじみだが留学して何年も
会っていなかったらしい。それから生徒会長になった私と一緒に生徒会へ入ってる最中
私がお前の父親の隠し子と発覚して、幼なじみではなく妹だったと気付くのだ」
「設定盛りすぎだ! 人の家族関係ぶち壊しつつ土御門の趣味も入れてんじゃねーよ!」
「友が考えてくれたものだ。喜べよ」
「本当に考えてそうなのが憎い……! とにかく! 駄目なものは駄目!」
やはり拒否られて、不服そうにオティヌスは口を曲げる。
「そうはいかん。まだお前を屈服させていないだろう。神の沽券に関わる」
「青髪ピアスから情報収集してる時点で、沽券も糞もないと上条さんは思うんですよ……」
「ちっ……しょうがあるまい。ならば次の世界だ」
「えー」
疲れてそうな、はぁーとした溜息を聞きオティヌスはまた思案している様に見える情報収集を始めた。
どこかで鴉の鳴き声が聞こえるが何か呆れているような響き。
「しかしお前の友は妙にデータが豊富だな。何故こんなにも男女が乳繰り合うための状況と方法を知っているんだ?」
「くぅっ……! 偏っているのはあいつ等のせいなのに、なんだか俺が恥ずかしい!」
神代から生きているだろう魔神様に、未成年がプレイしちゃいけないゲームとかの説明をできるほど上条は心強くない。
親友らが面白おかしくシチュエーションをオティヌスに伝えている光景を幻視して、なんとなく肩を落とす。
「時間がかかりそうだ。これでも食って少し待っていろ」
「むぐっ……あ、何か食べたのすげぇ久しぶりかも……」
口に突っ込まれたまだ暖かいトーストを美味しそうに食べ始める上条。
もぐもぐと味を楽しみながら、素直にオティヌスを待っていた。
着々とオティヌスの懐柔策が通じている様子だが、場の空気が変わりすぎてて気付いていないらしい。
「ふむ……お前にはあまり複雑じゃないほうがいいらしいな。ではいくぞ」
「むぐっ、も、もうかよ! せめてもう一口……」
と、言っている最中にテレビのリモコンを押したかのように視界が切り替わり
見覚えの有り過ぎる病室のベッドで上半身だけを起こしていた。
制服も患者用の衣類へと変わっていて、いかにも入院中といった風体だ。
「……上条さん、すご~~く予想がついてきたんですが……」
トントンとドアからノックが聞こえてきて開かれる。
「目覚めたか上条当麻」
「すみません、もう泣いてもいいですか……」
「神の顔を見るなり無礼な奴だなお前は」
予想通り、ナース服のオティヌスが現れて上条はがくりと頭を落とす。
「だってだってだって! 上条さん必死だったんですよ!?
負けるもんかって耐えに耐え抜いた先で、コスプレ見せられてもどうすればいいかわからないじゃない!」
「意図しない方向で折れられてもな……」
なんだか口調が変わっている上条の叫びに、オティヌスも少々困惑の色があった。
「それにお前絶対騙されてるよ! ナース服ってホントはそんなんじゃないから!」
「そうなのか? 違いがよくわからないな」
白衣というとこは同じなのだが、胸元は妙に深く開いており、黒のブラを僅かに覗かせている。
太腿がほとんど見えるほどスカートが短くて、フロントにはスリットが入っていた。
仕事着は仕事着でも夜のお仕事用といった有様。
相変わらず付けている眼帯が、それっぽい雰囲気も感じさせる。
上や~ん、なんも知らん女の子にコスプレさせるのってエロくね?
とかそんな声が聞こえた気が上条にはした。
「くぅぅ……! 世界を戻す前に倒さねばいけない男が現れた!
オティヌス! 青髪ピアスの所へ連れてってくれ! その後お前と決着をつけてやる!」
「いや待て。そんな事よりも今度はどうなんだ?」
「へ?」
「だから、お前が言ったのだろう。別の格好がいいと」
そんな事を言った記憶はないのだが、オティヌスがどことなくポーズを
とっているようで鈍い上条にもなんとなく思い当たる。
ナース服の感想はないのかと。
「……その、……案外似合ってる……?」
「そうかそうか。癒されるか」
「言ってねえよ」
つい突っ込むが、あんまり聞いていない様子。
「では同意という事で、快楽治療を施してやろう」
「いやいやいや、適当過ぎる流れで無茶言ってるんじゃありません!」
「……お前は本当に強情な奴だな。それとも被虐嗜好なのか。
苦痛が欲しくて欲しくてまだまだ嬲られ足りないとでも?」
「んなわけねえ! 我慢するけど二度と御免だ!」
我慢という単語が、およそ常人とはかけ離れている所にある上条だが自覚はないよう。
「ならば受け入れろよ。この私がお前を楽しませようとしてるのだぞ。それに私もこんな茶番が存外楽しくなって―――」
「な、なんだよ」
言葉の途中で止まったオティヌスを上条は訝しげに見た。
オティヌスは何かに驚いているよう、瞳を見開いている。
その表情がゆっくりと笑みを象っていき、上条の視線と絡み合う。
「……そうだ。私は楽しくなってきている」
ギシリと病室のベッドが揺れ軋む。
オティヌスが膝をつき、二人分の体重を支えた音だ。
「なあ。もっと顔を見せろよ上条当麻」
「うわ、くっ……!?」
身体を寄せてきたオティヌスが、そっと頬に触れた。
手は少しだけ冷たく小さく、そして柔らかい女の子の手だ。
その手で引き裂かれた経験があるため、身を縮める上条だが、ただ撫でるだけだった。
「わかるか。私が楽しいと思うのがどれだけ久方ぶりのものか」
「し、知るもんかよ……」
「そうだろうな。人が理解するには図りかねるほど遠い過去なのだから」
「…………」
いまいち話が通じないと上条は思ったが、らしくないほどに熱を持つオティヌスの言葉に圧され返答できなかった。
視線はじっとりとこびり付く様に上条を捉えていて、思わず俯けば、開いた胸元が白い肌を覗かせている。
「ん? なんだ上条当麻。私の身体が見たいのか?」
「ち、ちがう……」
顔を逸らしたみえみえの態度に、オティヌスは面白そうに問うた。
以前ならば上条も動揺しなかっただろうが、オティヌスと他愛も無い会話を
していたせいで、厚く纏っていた精神的な防護が薄くなっている。
それもオティヌスの計算なのだろうか。
上条当麻は明確に敵意を見せない相手に、敵意をぶつける事はできない。
オティヌスから被った被害を考えればお人よしなんてものではないが、それが上条当麻という少年だ。
「私はお前の顔をもっと見たいんだよ」
「な……!」
近い。
ほとんど寄り添うようなオティヌスから甘い匂いが漂ってくるのを感じる。
どこかで嗅いだ事のある匂いは、ある種の危険を含んでいるようにも思えた。
「私はお前を苦しめるために、数えるのもくだらない手段方法を取った。
だがお前は全てに耐え抜いた。だから私は考えた。考え抜いたよ。
お前をどうすれば屈服させれるのかとな。それこそお前が耐えるのと同じくらいにだ」
言葉だけ聞けばあまりに酷い、人を人と思わない所業だろう。
けれども違う。
人間は、虫や獣を苛め痛めつけはしても、そこまでの労力をかけてまでは行わない。
児戯混じりに、退屈を紛らわせるためだけだろう。
そんな事に頭を絞ってまで、実行するとしたならば、それは同じ人にだけ。
では、神にも等しいオティヌスにとって上条はなんなのか。
飽きるほどに冷めていたはずのオティヌスの瞳は熱を放ち、頬に当たる指の動きは優しく慈しむようだ。
「そうしてるうちにだ。私はお前の苦しんでいる顔以外を見たくなった。
ただ飽きていたのか。それとも自分で思うほどに嗜虐趣味ではなかったのか。
私も不思議なんだよ。その右手の付属物でしかないお前をどうしても変えたくなった。
抱きついた後のお前は本当に愉快だったぞ? ついはしゃいでしまったよ」
死にそうなアイアンクローを受けた時を思い出し、上条は額から汗を流す。
それをオティヌスが指で拭くのを止めようとは思いつかない。
「お前が驚いて、呆れ、怒鳴るのも何故か心地がよかった。
世界から幾千幾万の苦痛を浴びせられているお前の顔を見ているよりも
私自身でお前の表情感情を変えたと、実感できたのが―――そう、楽しかったのだ。
だから、私はお前の異なる顔を見たい。苦悶でも懊悩でも怨嗟でも絶望でもない、もっと別の何かをだ」
もうオティヌスは、上条に抱きついているも同然なほど密着している。
けれども上条は、先程のように拒否し押し退ける事ができなかった。
目の前の少女から伝わってくる執着に圧倒されているのだ。
上条を追い詰めるための演技というには真に迫っている。
「そ、そんなの信じられるかよ……だって……お前からすれば俺なんて、軽く潰せる虫みたいなもんだろ……」
それでも上条はオティヌスをそっと押し返し首を振った。
嘘とは思えなかったが、ぶるってしまっているのだ。
地獄を何度も味わっただろう少年は、魔神からぶつけられた強い感情に腰が引けてしまっている。
「……そうだな。私にとって人も虫もたいして変わらない存在だ」
「だったら―――」
「けれども上条当麻。お前はそうではないと示したんだ。お前は特別だと私に証明した」
「な――」
上条の脳裏に、自分ではない『上条』という誰かが上条当麻の役を演じていたのが浮かぶ。
オティヌスから、代えの利くどうでもいい人間だと突き付けられた世界。
「お前の言いたいことはわかる。お前がただの男であるなら、あれは間違ってはいなかった。
しかしだ。私はお前をずっと見ていたんだぞ。
お前の精神力はただの人間をとっくに超越している。お前はお前以外の何物でもないよ」
「……俺がそんな大層なもんなわけがない」
賞賛するオティヌスとは裏腹に、上条の声には力がない。
まだ混乱している。
危機的状況への順応の早さに比べ、このような状況ではどうすればいいのかわからないのだ。
「お前がどう思うと、私はお前を認める。
そんなお前が私に迫られるだけで、びびっているのも楽しいぞ」
「……なんだよ。やっぱサディストじゃねえか」
ニヤリと笑うオティヌスに、上条は初めて苦笑を返す。
オティヌスがそれを見て、どこか柔らかく微笑んで長い沈黙が降りる。
見つめ返す上条も落ち着きが戻りつつあった。
精神的にも物理的にも、高みから見下ろし見下ろされていたような魔神と人とが
ベッドの上で対等に視線を交し合う。
「なあ、本当に俺なんかを見ていたいのか? 俺を騙そうとしているんじゃないのか?」
「信じられないのも無理はないか。なんならお前が気の済むまで私を切り刻んでもいい。
病院にはそのためのものが大量にある」
「いやいやいや、そういうホラーチックなのは……」
オティヌスが指を鳴らすと、病室の片隅に手術器具にしてはごつい刃物がずらずらと並ぶ。
どちらかといえば、マーダーな肉屋が月の無い夜の街を徘徊するのに使いそうな品々だ。
「まあこんなものでは私は傷つかないのだが」
「じゃあ出すなよ」
「ではお前の友らが勧めるものが」
「だからそいつら参考にしないでください!」
別の場所へ何かが雪崩落ちる音がして、大人の遊びに使うための玩具も現れる。
未成年に見せただけで捕まりそうな品々だ。
「これも駄目か。ならば」
「うわ、わっ……」
上条は慌てつつ息を呑んだ。
オティヌスが手を取ってきて、開いた胸へと触れさせてきたのだ。
黒く色っぽいブラジャーが半ばずれた心臓の位置。
「わかるか? 私もそう平静ではないのだ」
「わ、わかったから……!」
言うとおり、鼓動が早鐘を打っているのが伝わってくる。
柔らかな胸の感触に触れていられず、慌てて手を引いた。
「やはり服装を工夫するより効果があるようだな」
「そういうのがさ、うーん……」
唸りつつも疑いはほとんど消えていた。
神たる少女が気安くも身体に触れる事を許したのだ。
こうまでされれば否定もできない。
コスプレする時だって、演技らしいものはできていなかったのだし。
それも含めてという可能性もあるかもしれないが、陥れるというには迂遠過ぎる策に上条は思えた。
「じゃあ、世界を戻してくれと言ったら聞いてくれるのか?」
「お前が私の望みに応えてくれるなら考えよう」
「う……」
上条は真正面から見つめてくるオティヌスの言葉に唸り黙る。
「別に私はこのままでもいいのだぞ。お前を尊重したい感情もあるのだが
お前とならば桃源郷で快楽と怠惰の極みを尽くすのも悪くない」
「そんなの駄目人間になっちまう」
「ふむ……腐り行くお前を見るのもまた一興。されどそうしたくはない感情もある。
ふふふ。全知と言うには、私は私をよくわかっていないようだ」
そんな風に微笑むオティヌスはただの少女のようで、少しだけ可愛いと思えた。
「……そういうのは人と変わらないんだな」
身体もあんまり変わらなかったみたいだし、なんてことをちらっと思ったりする上条である。
「無礼者め。……だが人も神も迷走しているのは変わらないのかもしれんな。
なあ上条当麻。私がどうして世界を壊し、作り変えようとする理由がわかるか?」
「それは―――」
上条は初めて気付いた。
オティヌスが力を持っているのは知っていても、そうしようとした原因までは知らない事に。
「私の話をしよう」
照明を切ったようにと世界がまた黒く染まり、漆黒の空間へと舞台を移す。
上条も制服へと変わり、オティヌスも露出の高い水着にも似た衣装へと戻る。
ただベッドは中世風天蓋付きのやたらと豪奢なものへと変わっていて、やはり二人の距離は近い。
「上条さん、展開についていけないんですが」
心地よさそうなふかふか具合だが、必然性とか身の危険とかで首を捻っている。
「サービスという奴だ。私はな、お前が住んでいた世界をすでに作り変えている。
お前が生まれるよりもはるか昔、私の思うがままに世界は在った」
「……そうなのか?」
「ああ。私に取って世界とは、言うならば子供が粘土を弄って何かを作るようなものだろう」
オティヌスが指を向けた先で、土くれでできた子供サイズの人形が浮かび上がる。
地球を模したらしい水色の玉も現れ、子供の手によって歪み引っ張られて茶色が混じっていく。
「そうして世界で遊び更けて、ある日私は気付いたのだ。
私が介入していない、私にとって本当の世界がもうわからなくなっている事に。
世界という粘土を、元の形へ幾ら戻そうとしても不完全にしかできないという事に。
私にとって世界とは、私が適当に捏ねた紛い物でしかない」
「……無茶苦茶な言い分じゃねえか。好き勝手しておいて、偽物だから何をしてもいいっていうのか」
「ああ。なにせ子供だからな。遊びに飽きたら放り捨てるものさ」
水と大地で出来た球を投げ捨てて子供がどこかへ消える。
その球へと、土ではないもっと小さな小人達が近寄っていき、形を整えたり
手を突っ込んだり、転がそうとしたりと遊び始めて玉と一緒にまた去っていく。
「でもな、捨て切れなかったよ。とっくに諦めていたつもりだったのに、私は本物が欲しくなったんだ。
まがい物なんかじゃない、私がいた本当の世界へ帰りたかった」
「……だとしても世界を滅茶苦茶にしやがって。ホント勝手な奴だな」
「覚えておけ。神なんてものはな、好き勝手を通せるからこそ神なのだ」
また小人と地球が現れて遊び始める所へ、子供が突然飛び出て地球を奪うように蹴り上げリフティングを始める。
「おっと」
軽く蹴り飛ばされた地球が上条の手元へ飛んできて右手に触れると、ガラスが割れるような音と共に消滅する。
と、思ったら地球と子供が十数体現れて
「え……うぉぉおぉっ!?」
上条へと投石器のように玉を蹴り飛ばし始めたのだ。
さながら豪華なベッドはPKのゴールポスト。ただし狙うはキーパーの上条当麻。
ドドドと、やたらと正確で襲いくる弾の暴力を右手ではカバーしきれず、上条はあえなく崩れ落ちた。
なおオティヌスはマントで土の欠片を綺麗に払い落としている。
「なんだなんだ! やっぱ俺を騙してたのか! 不意打ちで仕留めるつもりなのか!?」
「いや、いい加減話だけでは退屈だろうと思ってな」
「ナニその気の使い方! 神のおもてなし方どうなってんのよ!」
「とまあこんな風に、お前の右手は世界の基準点となっているのだ」
「基準点だとしても幻想殺しにボールを集める機能はない!」
「ジョークはさておいて」
「神様ホント好き勝手過ぎるー!?」
オティヌスは土っぽくなったベッドと上条を、軽く払っただけで綺麗にすると立ち上がった。
「この世界を戻し帰りたいというのが私の目的であった。それは変わらない」
「スルーしてシリアスに入られても上条さん納得いかないんですが」
きっと睨まれて、はいはいとばかりに上条は頷き、できるだけ真剣な表情を作る。
お茶目な魔神と付き合いのいい少年であった。
「……そうしたら俺が居た世界はどうなるんだ」
「わからんな。私は99%、それに小数点を幾つも付け加えるほどには世界を戻せていただろう。
けれども、私の故郷とも言える完全な世界が、現在どのように影響するかは未知だ。
地殻変動が起きて世界そのものが変わっているかもしれない。
世界の変化は過去まで遡り、お前の友が生まれていないかもしれない。
人間以外の知的生物が世界で当たり前のように暮らしているかもしれない。
蝶の羽ばたきで嵐が起こる、なんてもので済めばいいだろうな」
「バタフライエフェクトかよ。魔術でそんなの気にしないといけないのか」
「それでも、お前の意思と右手の協力があれば私の望みは叶うというわけだ」
「う……」
そう言ってオティヌスは右手を握り、真摯な瞳で上条を見つめる。
上条一人ならば応じていたかもしれない。
しかし世界全てを背負ってとなると、あまりに責任が大きすぎた。
右手を握られたままベッドに座っているだけで答えが出せない。
「けれどもう一つ望みができた。お前となら新たな世界を行くのも悪くない」
「新たな……?」
「考えてみろ。私と主神の槍。お前と幻想殺しがあれば世界を意のままにできるのだぞ」
「なんだよ、今時ラスボスが世界の半分を渡してくる展開か? レトロを通り越して化石になってるじゃねえか」
「はっ、みみっちい。世界なんぞ半分とは言わずダースでくれてやるよ」
「わ、わかったからボールはストップ!」
ザザッと土人形達がボールと一緒にあらゆる球技のポーズでスタンバるのをオティヌスの陰に隠れる上条。
若干情けないなコイツ、みたいな目でオティヌスは上条を見ているが言葉を続ける。
「お前が世界を支配したいなどとは言わんのはわかっている。
私が言っているものはだな。
お前が憎み、右手で殴りつけていた不条理を真の意味で消し去って、不幸に嘆く人々全てを救えるという事だ」
「は……?」
間抜けな声を上げて、上条の思考が止まる。
「お前が望んでいたものはそういうものなのだろう?
人の身で、たいした力もないのに私の元へ辿り付き戦おうとする、聖人にも劣らぬ善性の塊のような奴だ。
ならばこそ世界にユートピアを築ける最初の救世主にお前はなれる。
裏切られ丘で磔にされた男なぞ比べるべくもない本物の救世主だ」
「い、いや……待ってくれよそんな……」
それ以上の言葉が出てこない。
肯定も、否定も、できなかった。
それは素晴しいことなのだと、頷いていいのか
間違っていると、首を振るべきなのか
判断がつかない。
魔神がこんなにエロエロな訳が無い
「世界を救いたいわけではないのか」
「そ、それは……」
「私と共では世界を救いたくないとでも?」
「そ、そういう訳じゃない。そりゃお前は世界を目茶苦茶にしてるし許せない。
けどその力をいい方向に使ってくれるんならなんの文句も無いし、手伝えるものなら手伝いたいよ」
「ならばどうして悩む。二つ返事で受け入れれば、誰もが幸せになれる世界を創造できるのだぞ。
なに難しいものではない。ただお前は私に従えばいい」
声の響きには、ほんのわずかだが緊張が含まれている。
もしオティヌスをよく知っている者がいれば気付けたかもしれないが、生憎その誰かはいない。
繰り返される世界で、一番長く接していただろう上条も、流石に気付けてはいない。
全知などと嘯いてはいるオティヌスは、上条当麻という人間を理解しているようで、できていなかったのかもしれない。
知ってはいても、超人的な精神力を持つ神に立ち向かう人間というフィルターを通して見ていたのかもしれない。
「違うんだ……俺は世界を救いたいわけじゃない。ただ帰りたかったんだ」
だから、上条の発した言葉に大きく瞳を揺らした。
「不幸なんてあってほしくない。悲しんでいる人の顔は見たくない。
誰もが笑って暮らせる世界があれば嬉しいし、そうあってほしい。
そんな世界に生きて行けるなら俺も幸せだと思う。
けれど、救世主なんてものになった俺は本当にそこへいられるのか?」
「……世界を調整するのは私の力だ。お前はその世界で幸せを謳歌し、たまに私の元へ来てくれればそれでいい」
譲歩どころではない。上条に取って最良とも言える結末だろう。
しかし首を振る。
「そんな片手間で救世主なんてできるわけがない。
幾らお前が神に等しい力があるからって、世界全てを幸せにしようとするのなら
俺が死に続けた世界よりずっと、何時までも何時までも何時までも世界を観ている必要があるはずだ」
「造作もない事だ。人の視点で神を図ろうとするな」
それは真実だ。オティヌスならばその手で生命の一粒、涙の一滴すら逃さず救い上げるだろう。
「けれど、俺を殺し続けるだけで飽きてきたんだろ。世界人口の六十億人全てを観ているなんてできない。
不幸なんてものはそれこそ星の数ほどあるんだから」
「……しつこいぞ。あまり私を怒らせるなよ」
言葉ほど反論には力がない。オティヌスの力とは別に、上条の言葉が事実だと言うのも認めているからだ。
オティヌスが人間に意味を感じているのは唯一上条だけ。
そんな神が人を救い続ける事にどれだけの価値を持つのか。
世界を救う事はできても、救い続ける事はできやしない。
「魔神のオティヌスなら大丈夫かもしれない。でも俺が耐えられないよ。
もし世界管理ステーションみたいなのがあって、そこでお前が必死に世界の誰かを観て
助けてくれてるのに居合わせたら、俺は出来る限り手伝うよ。
手伝って、手伝って、手伝って、手伝い続けて、帰れなくなる。
俺がいるだけで誰かを救えるかもしれないんだ。眠ってる暇もないし食事をする暇もない。
俺は不幸を無くしたいのに、人の不幸を探し続けるんだ。
―――――そうしてきっと壊れる。
助けようとした人達の顔もわからなくなり、人に価値を感じなくなってしまって
どうして助けたかったのも覚えていられなくなる。
残るのは、飽きて助ける事を忘れてしまった俺だったものか。
それとも不幸を潰すだけの機械のような俺になるのか。
どちらにしろ俺は俺じゃなくなる。
……俺はそれが怖い。
俺は学園都市の家でインデックスに飯を作ってあげて、みんなと馬鹿やって学校行って、ただ普通に暮らしていたいんだ。
人を助けれるものなら助けたい。
でも、世界全てを救うなんて、俺にできるわけがない。見込み違いなんだよ」
そこまで言い切って、俯いた顔を上げて立ち上がり、オティヌスを見据える。
「それに世界を救うという重荷を誰かがずっと支えているんなら、その誰かは不幸って言うんだ。
俺もお前も不幸になって、それが世界を救うという事なら、俺はそんな幸せはいらない。
世界のみんなが欲しがっても、世界のみんなが正しいと言っても、くれてやらない。
そんな犠牲を認めたら、俺がやってきたことまで無駄になる。だから世界は救わなくてもいい」
沈黙。
聞き終えてオティヌスは歯を噛み締め立ち上がる。
「では私はどうすればいいのだ……?」
冥府から這い上がるかのような響きは、裏切られたかのように低く重く哀切に満ちていた。
「最善でなくとも! 次善であったとしてもお前とならば構わないと私は思った!
人を救う行為に、意味も価値も感じなくとも、お前とならばやってもいいと思えたのだ!
それを否定されて! お前が諦めるまでまた殺し続けろとでも言うのか!」
もう沢山だと。
泣き出す手前の子供のような表情で怒り怒鳴る。
その素顔はこれ以上なく人間らしく、弱々しい。
ある意味勝負はついている。もうオティヌスに上条当麻は殺せない。
殺す事は容易くとも精神が耐えられない。
「そうじゃない。そんなんじゃ誰も救われない。
救うのも、救われるのも、俺や世界じゃなくて、お前なんだよオティヌス」
オティヌスの表情が泣きそうなまま止まった。
何を言っているのかと、理解できないとでも言うように。
それとも。
その言葉が信じられないとでも言うように。
「私が……救われる、だと……?」
「そのままの意味だよ。
俺はお前に抗ってきたけど、そうしないと世界が取り戻せないと思ったからだ。でもそうじゃなかった。
方法はどうあれ、お前の本当の目的がわかったんだ。
さっきは答えれなかったが今なら答えれる。
世界がどうなったとしても、お前が元に戻したいんだったら協力する」
「……いいのか? 世界はどのように変わるかは私にだってわからない。
世界の誰もが気付かなくとも、お前だけは世界の差異に気づき、その違和感は一生お前を苛む事になるぞ」
望んでいた言葉だろうに、オティヌスはまだ恐る恐ると確かめているよう。
上条はそれを聞き苦笑いしながら髪をグシャグシャと掻いた。
「それでもいい。お前は俺なんかのために世界を救うとまで言ってくれたんだ。
……でもそれが本当にできたとしても、やっぱりその世界はお前にとって偽物なんだろう。
それじゃダメだ。……それに俺は神様じゃない。
世界よりも、目の前の誰かがそんな顔しているほうが嫌なんだ」
「む……」
オティヌスは自分の顔を手で隠す。
感情が高ぶっていたのに今更のように気づいて、無表情を形作る。
ただ上条から見ても無理があるように思えた。
「どうすりゃいいのかわからないけどさ、俺の右手を使ってくれよ。
第二希望なんかほっぽいて、第一希望を選んでくれ。
それで世界がどうなったとしても、お前が納得するのなら俺も納得できる」
「…………」
言葉を反芻するように目を瞑り、そして開いて。
オティヌスはゆっくりと笑みを浮かべた。
「……くっくっ。お前こそ自分勝手もいいとこだな。世界よりも自己の基準が優先か。
それは聖人の行いではない。私の見込み違いだったようだ」
「ああ。神様に誘われる価値もない男だよ」
「だからこそ、第二希望も案外よいと思えてきたよ」
「へ?」
あれっと首を傾げる上条。
そんな流れではなかったはず~? といった表情だ。
しかしオティヌスの表情は意地悪げな笑みへと変わっていて。
「わかっているのか上条当麻? 先ほどお前は私へプロポーズしたということに」
「は!?」
理解不能と言わんばかりに、上条が今までで一番呆然とした顔になる。
「つまりはだ。私が世界を救おうとする限り、お前は自己を喪い発狂してでも
一生をかけて私についてくると言っていたのだぞ。神への生贄にしても殊勝な心がけじゃないか」
「ちょ、ま、待てっ。俺はそんなつもりじゃ……!」
「神たる私の心を動かすとはなかなかの口説き文句だ。仲間が女ばかりなのも理解できる。
私もちょっくら世界でも救ってみたくなろうというものだ」
素の表情を見せてしまった仕返しなのか、オティヌスは上条を嬲るように弄ぶ。
一種の照れ隠しなのかもしれない。
「しなくていい! お前が世界救ってくれるんなら俺はなーんもしないで平凡で
面白おかしい学生生活を満喫しますからー!」
「ふむ、なら軽く試してみるか。上条当麻が誰も救わない世界というのもある意味楽しめそうだ。
主役がいない舞台が喜劇か悲劇か、私が観てやろう」
どこからともなく主神の槍を取り出すオティヌス。
「待て待て待て!」
「お前は本当に馬鹿な人間だ」
「……わわっ」
慌てて、でも右手は使わないよう止めようとする上条をオティヌスは受け止め抱きしめた。
上条に顔を見せないよう、皮肉も嘲笑もなく微笑んでいる。
「きっと後悔するぞ」
「……だとしても今、後悔するよりはマシだ」
「そうか……右手を出せ」
オティヌスは幻想殺しを自らの中心に抱きとめ、残った腕で主神の槍を携える。
上条も慣れてきたのか、オティヌスに抱かれているような姿勢でも平気そうにしている。
あくまで見かけだけの話ではあったが。
「少々時間がかかりそうだ」
「ああ」
世界の基準点となる幻想殺しを扱っての魔術は、オティヌスにとっても初めてで一瞬とはいかないようだ。
オティヌスの体温か、それとも魔術的な何かなのか、酷く右手が熱い。
「準備はできた。……ついて来てくれるか?」
「もちろんだ」
その熱が当たり前に感じるほどの時間が経ち、オティヌスが告げる。
おお……これは期待ッ!!
「……すまなかった。そしてありがとう上条当麻」
「なんだよ。お別れみたいな事言うなよ」
「世界が戻ってどうなるのかわからないからな。感傷的にもなる」
一息つきオティヌスは言葉を続ける。
「今ならわかる。私は何百年も前からそう在りたかったんだ。
世界よりも、共に歩きたい誰かがいてほしかった」
「俺でよければ幾らでも付き合ってやるよ」
「……では行こう」
上条とオティヌスを中心に黒の空間に光が満ちていく。
「うわっ……」
「目を瞑っていろ。すぐに終わる」
目も開けれないほどの眩さは二人の姿だけではなく、地平の果てまで覆って白く染めていく。
(歩きたい誰かか……)
オティヌスは自らの代わりを務めた老人の箴言を思い出し軽く息をついた。
(―――昔は私も若かった。一人で旅をし道に迷った。
人に会えたとき、自分が豊かになった気がした。人は人にとって喜びなのだ。
…………なんとまあ。仮にも神の写身だろうにあまりに惰弱な教訓よ)
けれど否定はできなかった。
誰よりも、独りであった魔神の少女がその言葉の正しさを知っているから。
代わりでしかないはずの存在が、自分よりも深い真理を知っているような気すらした。
(だがな。私は欲深い神なのだ。友だけでは満足できん)
オティヌスは目蓋を閉じている上条へとそっと唇を寄せていく。
光を遮っていた影がより深く重なっていき、魔神の少女と少年は完全な世界へと帰還していったのだった。
終了
上条×オティヌスというより、オティヌス→上条だった気もします。
こんなオティヌスと上条さんの関係もいいなと思って書きました。
沢山の乙 ありがとうございますー
時間かかると思いますが、次からはオティヌスが性的な意味で上条さんに接近する
エロルート分岐のほう書いていきます。
ナース服辺りからの派生で。
オティヌスの性的な経験がどうなってるかわかりませんが、基本オティヌス攻め上条さん受けな流れで。
まだまだかかりそうなので、前半部分だけ投下します。
イメージ的には>>8-10辺りで分岐してエロルートに入った雰囲気です
「いい加減観念して治療を受けるがいい」
「お前がやろうとしているのは絶対治療じゃない!」
病室で威嚇するよう睨みあう上条とオティヌスは、この世界の設定である患者衣とナース服の格好をしていた
けれど、とても治療をするという雰囲気ではない。
上条の顔をじっとオティヌスが見つめていたかと思えば、なにやら迫ってきて逃げた所なのだ。
「仕方があるまい……この手は使いたくなかったのだが……」
「な、なんだよ」
「……実はだな。こんなとこもあろうかと、先程のトーストに薬を仕込んでおいた」
「え」
オティヌスが指でばきゅ~んっと可愛く撃つ仕草をすると、上条がうっと屈んだ。
心臓辺りが酷く熱く感じられ、その熱が腹のほうへと伝わっていっているのがわかる。
不可思議な手管により、上条の股間の物が自身の意思と関係なく自己主張をし始める。
「な、ななな……」
「ふん、神が寵愛を授けようというのにこうも逃げ回るとはな」
全く手間をかけさせやがって。そんなに嫌がられるといい加減傷つくだろうが。
などと、ぶつぶつ呟いていて案外メンタルが弱い。
「……うぅ……どうなってるんだよこれ……」
「くっくっくっ、抵抗するお前が悪いんだからな」
タチの悪いストーカーみたいな事を言いながらにじり寄るオティヌス。
上条はついさっきまで、なんともないとまではなかったにしろ、劣情を感じてはいなかったのだが、今は酷く苦しい。
薬で無理矢理に昂ぶらされて、敵であるはずの目の前の少女に強く興奮してしまっている。
結局の所、上条はオティヌスの術中に嵌っていたのだった。
じりじりと後ずさりする上条と、近寄っていくオティヌスの距離が縮まっていく。
膝裏がベッドの縁に当たり、倒れるように上条は布団へと沈む。
「なあ、もっと顔を見せてみろよ」
「……うっく」
二人の体重で簡素なスチールパイプのベッドが軋み、下がろうとする上条の背が壁へとついた。
寄せてきた身は近すぎて、少年の胸板に少女の胸は今にも触れようとしている。
呼吸をすれば、甘く蕩けるような匂いが鼻腔を満たした。
(くそっ、薬だかなんだか知らないんが、吐き出しちまえばいいんだ。魔術なら消せるはず!)
眼前のオティヌスを振り払うように、右指を伸ばして口へ入れようとするが
「だから抗うな。お前も欲しいのだろう?」
「わ、うぅ……!」
動きは鈍く、あっさりと止められた。
上条の右手を取ったオティヌスが自身の胸へと寄せてきて
五指のうち二つが硬さのあるブラジャーに、三つが素肌へと触れる。
事故や勘違いでもなく、導かれて女性に触れる初めての行為に上条の顔がみるみる赤くなった。
「っあぁ、はぁっ……男に肌を許したのは久方ぶりだ……」
しっとりとした肌は少しだけ汗ばんでいて、指が吸い付くよう。
柔らかな胸からは強く早い鼓動が伝わってきて、オティヌスの溜息を色っぽく感じてしまう。
「どうだ……私の身体は?」
「ど、どどうもこうもあるかよ! やっぱ痴女じゃねーか!」
幾万もの地獄を耐え切った上条といえど、それとは全く逆の感覚に襲われてはなんの抵抗もできていない。
むしろ地獄が長かったぶんだけ、魅惑的な肢体はその効果を発揮していたと言えよう。
その証拠に。
「おいおい、無礼なのは口だけにしておけよ。なんだこの手は」
「う、わぁっ、あ……ち、違うんだっ」
知らず知らずの内に右手がオティヌスの胸をまさぐっていたのだ。
ブラジャーのパッド越しからでも、内に秘められた柔らかさが伝わってきて、心地がいい。
そう。心地がいいと思ってしまっている。
「っうん……はぁっ……ふふふ、薬でお前の劣情を煽ったとしても右手だけには効果はないのだかな」
「な……!」
つまりそれは上条の意思でそうしてる事他ならない。
「逃げるなよ」
羞恥で上条は俯き、今度こそ手を引っ込めようとするが、やはり迫りくるオティヌスに止められた。
「……今のお前もなかなかいいぞ。ガキはガキらしくないと可愛げがない」
「うぅっ……くそぉっ……」
経験の無い責めに翻弄されて、ちょっぴり涙目の上条。
魔神の少女が、途方もないほどの年を重ねているのはわかっているが
同年代か下にも見えるオティヌスに弄ばれる恥辱に参っている。
「ぅあっ……!」
「お前の身体は細いようでなかなか逞しいな……引き裂き潰していたのが勿体無く思えるよ」
その代わりとでも言うように、上条の患者衣の隙間へ指が忍び寄って撫でてくる。
胸板や脇腹、優しい動きはそんな場所ですら快感を伝えてきて、ムチに慣れた身体はアメに屈してしまっている。
「こっちを向け」
「はぁ、はぁっ……」
命令のまま、顔を向ければ欲情で爛々と光る翠の瞳。
そこに映る上条もまた、同じ顔をしていただろう。
掻き抱かれるよう、頬を両手で押さえられ引き寄せられた。
理性や常識では在り得ない相手だとわかってはいる。
しかし、肉の欲求はそんなもので止められるわけもなくて。
ゆっくりと寄せてくるオティヌスに、上条も応じて、唇を重ねた。
最初は軽く触れるように。
少し離れて吐息だけを感じ、もう一度。
柔らかい。最初にそう思った。
知らず目を瞑っていて、唇の感覚だけに集中する。
「……ん、れろっ……ふふっ、それでいいのだ上条当麻……」
「うっ、はぁはぁっ…………」
十数秒ほど経った後、唇を舐めてオティヌスはキスを止めた。
満足げなオティヌスとは裏腹に、上条のほうは息を止めたままだったので苦しげだ。
そして苦しさを上回る疑問で頭の中が埋め尽くされていた。
(な、なんで……嫌じゃ……ないんだよ……!?)
目の前の少女は敵で、しかも襲われてるも同然にキスをされた。
少しばかり会話を重ねたからと言っても、好感度を上げるにはあまりにハードルが高すぎる相手だ。
けれども触れ合う肌には情欲だけではなくて、安寧と暖かさも感じてしまう。
数万回にも及ぶ地獄には無かった、優しい抱擁に心揺らされている。
「気持ちがいいんだろ? お前のだらしない顔を見ていればわかる。もっと甘えてもいいぞ」
「…………こんなの……おかしい……だろ……」
「何もおかしくはない」
「うわ……」
上条は思わず驚きの声をあげた。
オティヌスが指の一振りで上条と自身の服を消し去ってまた、抱きしめてきたのだ。
素肌と素肌の触れあい。
有る意味麻薬などよりも中毒性がある。
こうしているだけで硬くささくれていた心のどこかが溶かされるよう。
上条は三千世界の地獄を経て忘れていたのだ。
人は、人の体温を感じるだけで、こんなにも心落ち着き安堵を得れるという事に。
「……くそっ! こんなのっ……ずるいに決まってる!」
「くっくっくっ、なかなか素直じゃないか」
ついに上条からも抱きしめ返してしまう。
とんだマッチポンプ。
自分で苦しめ、自分で癒し、上条へと踏み入ってくる。
冗談染みたナース服を着ていたのもそのつもりだったのだろうか。
そうとわかっていても、肉の繋がりはあまりにも魅惑的で抗いようがなかった。
細い癖にどこもそこも柔らかい身体へと、縋り付くように抱きしめる。
抱いた手で背や尻をまさぐって触り心地のよさを味わう。
金の髪に顔を埋めれば香にも似た甘い匂いに陶酔する。
「顔を上げてみろ」
「なん……だよ……」
オティヌスが命令し、じっと見つめてくる。
「……いいぞいいぞ。私に欲情してるだけじゃないな。
迷子の子供が親を見つけたばかりという顔をしているぞ」
「な……!」
愉快そうに笑われて、上条は頬を赤らめた。
恥辱を感じていても離れられない。
強く抱きしめたままの腕は、言うとおり子供が不安と恐怖を抱擁で払拭しているかのようだ。
「くくくっ、苛めすぎていたか。……ほら、ママのおっぱいをくれてやるよ」
「うあっ……」
胸の中へと顔だけを抱きしめられる。感じた事のない柔らかく暖かな感覚。
大きいというほどでもないが、決して小さいわけでもない美しい双丘に埋もれる。
続けてツンとした二つの感触が、頬の端に触れた。
上条はゾワリとした欲が腹の底で持たれ上がるのを感じた。
餓えにも似たソレはオティヌスへと向けられたものだ。
(な、に……考えてるんだ俺は……?)
在り得ない。コイツは敵なんだ。彼女でもなきゃ駄目だ。
否定する材料は幾らだってある。
けれども、それ以上に欲求がどんどんと膨らんでいく。
今すぐ、尖りのある乳首へと吸い付きたいだなんて。
「……辛いだろう。我慢せず甘えてもいいんだぞ」
その葛藤を察しているかのよう、優しく囁かれ、優しく頭を撫でられて。
もう抗することはできなかった。
それがオティヌスの演技だとしても、本気だとしても、判断できる余裕はない。
上条は決壊した理性に誘われるがまま、音が響くほど強く吸いついた。
「あっん、あっ……! 可愛らしいなお前は……!」
オティヌスは声をあげながらも、上条の頭を掻き抱き撫でる。
上条は唇で挟んだそこをじゅじゅっとストローでジュースを飲むように吸い付く。
柔らかさと固さを併せ持つ乳首を舐めて舌の上で転がす。
いい匂いをしているせいか、どこか甘いとすら思う。
「くっ、はぁはぁっ、じゅちゅっ、ちゅぶぶっ……!」
安息と興奮という相反する感情をぶつけ上条は猛っていた。
上条にとってオティヌスは、魔神で在る前に一人の人間であり少女であり母でもあった。
「く! んぅっ……! はぁっはぁっ……赤ん坊そのものじゃないか上条当麻……」
むしゃぶりつく様に乳房の先を含むと、オティヌスの呆れたような声。
左胸へと吸い付きながら右胸に手を滑らせると、乳首が凝り固まっているのが伝わってくる。
「ひゃっ、んんっ……!」
今度は右胸の登頂へと吸い付いた。小粒なそこは吸うと更に固くなった気がする。
甘噛みしながら強く吸えば1オクターブ高くなったオティヌスの喘ぎ。
聞いた事もない少女の響きが更に上条を高ぶらせたのか、唾液で濡れた左の乳房を存分に
揉みしだき、空いた左腕でオティヌスの腰を抱いて、身体を寄せていく。
「うあっ……!」
いや、そうしようとして上条が悲鳴をあげ止まった。
授乳にも似た未熟な性衝動が、オティヌスの動き一つで中断を余儀なくされたのだ。
「……甘やかしてやれば調子づきやがって……私にも楽しませろよ」
そそり立つ無防備なモノを握られる刺激。
上条より幾分か小さな手は少し冷たくてしっとりと柔らかい。
ただ触れられただけでも、高まっていた上条には十分な快感があった。
「童貞の癖になかなかいいモノだ……もうお漏らししているぞ」
言葉の通り、先端から発射の準備ができていると言わんばかりに先走りが零れている。
一度も触れていないのに、ここまで高まっているのだ。
オティヌスへの行為を続けていれば、それだけで射精に至ったかもしれない。
「う……! ぁ、はっ……うぅ……!」
上条はオティヌスに抱きつこうとする直前の体勢のまま、手コキで責められた。
ぬちゃぬちゃと、先走りを纏わせた手が上下へと動いた。
幹の根元から半ばまでを扱いたり、指だけで撫でるように擦る。
触られ始めたばかりなのに、ビクンビクンとオティヌスの手の中で跳ねる。
「元気がいいな……もっとしてほしいか?」
「あ、ぅあ……」
「ちゃんと返事をしろ」
「ぐぅぅあぁっ……!?」
睾丸を強めに握られて上条は悲鳴をあげた。
「おいおい、痛くしているのに気持ちよくなってるのか。とんだマゾ野郎だな」
「ち、ちがっ……」
細い可憐な指先が袋の部分に沈んで、玉を摘みコリコリと擦り弄んでいる。
ゆで卵が崩れるぐらいの力でそうされると、痛み以外の感覚もあるのだ。
たっぷりと精が詰まっているだろうそこをマッサージされて、上条のモノは
先走りが飛び散るほどに暴れていた。
「違うのならば言うべきことがあるだろう。早くしないと潰すぞ」
「うぐぅっぅっ……!」
ぎゅっと五指の間で二つの玉が握られ、今度は痛みだけがあった。
「き、気持ちよくしてくれ……!」
圧迫感が少しずつ増しててきて思わず叫んだ。
苦痛に幾ら強くとも、一度溶けた緊張は元通りにはならない。
「お・ね・が・い・し・ま・す、は」
「ああ、ぅぐぐっ! き、気持ちよくしてください! お願いします!」
「よろしい」
力は弱まってソフトタッチへと変わる。
そうまでされてるというのに、上条はオティヌスの肩へ額をつけて息を荒げているだけ。
離れるのはもっと辛いとでも言うようにもたれかかっている。
(くぅ……なさけねえ……)
そのような感情があっても、オティヌスに触れたいのだ。触れてほしいのだ。
原始の本能がオティヌスという女性の身体を求めてしまっている。
「躾というやつだが、あまり従順になられてもつまらないな」
「ぁっくぅ……」
そう言われても扱かれれば、反応せざるを得ない。
痛いぐらいに張り詰めた肉は虐められても、その大きさを維持している。
「まあいい、そんなお前も悪くない。羞恥を感じつつも欲情にまみれた雄の顔だ。
安心しろ。軽くイカせてやるよ」
「う、ああぁっ……!」
上条は思わず、すがりつくようにオティヌスを抱きしめた。
遠慮のない男をイカせるためだけの手淫が襲いかかってきたのだ。
竿全体をしっかりと右手で握りつつ上下に擦り上げる。
指先をカリの所へ引っ掛けるように擦られ、ビクビクと跳ねる。
先走りが滝のように溢れ落ちては手で撹拌されて、ぐじゅぐじゅと淫らな音を立てながら泡立つ。
その手の動きだけに上条は支配されて、頭をあげ仰け反ったり手の動きに合わせるように腰を振ったりしている。
そうあってもオティヌスへの抱擁は続けている。
「ほら、イってしまえ!」
「あ、ああ、出る……! うあぁぁっ……!!」
上下に扱かれつつ、尿道を親指で何度も擦られて、頂点へと至る。
液体というよりは固体染みた、濃い白濁の液が亀頭の先から噴出していく。
扱いている指が押し流されそうなほどの激流で、白い肌を汚れた白へと染めていく。
オティヌスは、心臓がもう一つあるかのように脈動し精を放つ肉棒を更に擦り絞り上げ、射精を促していく。
上条は目が眩みそうな快感にされるがまま、オティヌスの手の中へと欲を吐き出し続けていた。
「気持ちがよかったか」
「…………ぅっく、はぁはぁはぁっ、ふっ、う、はぁっ……」
抱きつきながら手コキされていた上条は息を荒げながらオティヌスの肩へと額をつけ首肯した。
言葉を出さなかったのは、せめてもの反抗という訳ではない。
女性に初めて導かれての快感が強すぎて口が回らなかったのだ。
「……んっ……ほらお前も舌を出せ」
顎を上げるように促されてキスをされる。
優しくも官能的な口付け。
今度は疑問を浮かべる事もなく、舌を受け入れ絡ませ合い、濡れた舌の感触を気持ちいいとまた思う。
魔神の体質なのか、上条の意識の変化のためか、吸い付く唾液を甘く美味しいと感じてしまう。
重なる初めての行為に酔いしれ、ぬめる柔らかな粘膜を何度も擦れ合わせて
舌を伸ばし、お互いの口内を何度も味わい合ってから、ようやくのようにキスを終えた。
「まだまだ元気だな」
触れられて、びくんと上条の身体が震える。
出し切ったかのように思えた肉棒は、キスをしているうちにまた漲ってきているのだ。
「続きをしたいだろう?」
ごくりと上条が唾を飲み込み喉を鳴らす。
自慰ならば一度出してすっきりとなるかもしれないが、肌の触れあいはただそれだけとはいかないよう。
「オティヌスとやりたい…………」
「ふふっ……可愛い奴だ。次は共に楽しむとしよう」
答える上条にオティヌスは身体を重ねると、二人で白いベッドへ沈み込んだ。
中断
あんまりエロの内容は考えてないですが、ノーマルなエロをこなしつつもちょっぴりハードにしていきたいです。
中編投下します
視界が黒と星が散りばめられた光景へと変わる。
瞬時にして、元いた空間に舞台を移し、中世風の豪奢な天蓋付きのベッドで横たわっていた。
ふかふかとしたベッドは二人分の体重をおおらかに受け止めていて、先程よりずっと寝心地がよさそうだ。
精液で汚れていた身体も綺麗になっていて匂いの残滓すら感じれない。
「オティヌス……」
世界の変化を気にもせず、気にも出来ずに自分の胸板で寝そべるオティヌスを上条は抱きしめた。
もっともっとオティヌスに触れたくてしょうがないのだ。
もしこの光景を上条の友人が見たとしたならば、驚き戸惑うに違いない。
裸のまま、情愛と思慕に満ちた表情で魔神の少女を抱きしめている様は
二人が恋人か、それ以上の深い関係だと確信せざるを得ないだろう。
誰にも見せたことも作ったこともない表情で、上条はオティヌスを見つめていた。
オティヌスは上半身を起こし上条に跨ったまま満足げに微笑む。
上条は少しでも触れていたいのか、口をあっと開いて寂しげに眉を顰める。
「案ずるな。このほうがお互いに楽しめる。さてどうしてほしい」
そう言って悪戯と挑発を含む視線で上条を見つめてくる。
純金で織ったかのような一切のくすみないブロンドをなびかせて、胸を軽く手で持ち上げたり
横向きになって均整のとれた脚を伸ばし太腿を見せ付けたりしてくる。
透き通りそうな白磁の肌艶は染み傷一つもなく、可憐さと優美さを併せ持つ肢体は
文字通りの意味でオティヌスが神であると伝えてくるよう。
しかし目の前の少女は天上に鎮座するだけの存在ではない。
悪夢染みた黒の世界の中で、生々しいほどの熱と匂いを伝えてくる。
今の上条には、少女だけが現実なのだ。
「凄くオティヌスに触りたいんだ……」
「ぁんっ……ふふっ、やっぱりか……おっぱいがまだまだ恋しいのか」
「うん……」
乳房に両手を宛がって、頷く。
「ふふふっ、はなっからそんなに素直なら、私ももう少し優しくできたかもしれんな。あ、んんっ……」
そう言って、触りやすいように身体を屈めてくれるオティヌスの胸へと触れた。
抵抗なく指が入り込み、マシュマロを摘んだかのような感触が気持ちよかった。
柔らかさをもっと味わおうと、上条が指を沈めるとまた違う感覚がある。
魔神の少女の実年齢は不明だが、肉体は外見通りの成長途上で止まっているのか
柔らかな乳房の中にほんの少しの硬さがあった。
しこりにも似たそこへと伝わるように強く力を入れると、びくっとオティヌスの身体が揺れる。
「んっ……そこは敏感なんだ。もう少し優しくしろ」
「ぁ……わ、わるかった……こんな感じでいいかな……?」
注意されたので、緩めて撫でるようにすると
「それでいい……ん、ふぁ……」
鼻にかかった声で感じているというのがわかり、嬉しくなってきて更に動きを変えた。
双丘の付け根へ、両手の中指と親指を宛がったまま擦るように手を回すとプルプルと胸が揺れる。
今度は力を入れすぎないように揉むと、いつまでもこうしていたいぐらいの幸せな感触がある。
擦り、撫でるように手をかき混ぜれば、しっとりとした肌触りがあって、小粒の乳首が掌で弾けた。
触れる事に、白い肌がうっすらと赤らみ色づいていく。
「くっんぅ……童貞にしてはなかなかだぞ……あ、んんっ……」
感じやすいのか、オティヌスが触られながらも褒める。
頬も朱に染まってきていて、元々の白い肌と相まって薄紅の桜にも似ていた。
「ご褒美をくれてやる」
「うっあぁ……!」
上条は新たな刺激に悲鳴をあげた。
オティヌスが上条の腰に跨ったまま、真上にそそり立ったモノを太腿で挟んだのだ。
女の子座りをしているオティヌスの白い脚の間から、亀頭がはみ出ているのが上条には見えた。
「あっ、んっくぅ……こら、優しくと言っているだろう」
やたらとすべすべしている柔肌がぎゅっと圧迫してきて、思わず胸を握り締めるようにしてしまう。
「ふふん、お前がちゃんとできないのなら私が楽しむまでだ」
「うわっ、あ、すげぇ……締まる……!」
オティヌスが太腿を押し付けるように上条のモノを摩擦し始める。
眼前にある膝頭が交互に前に出て、その度太腿が纏わりつく。
胸板に置かれた手を支点にオティヌスが身体を揺らせば、むにゅむにゅっとした
柔らかな腿肉が、幹の根元から先までを握るように扱いていく。
「なんてだらしない顔をしてやがる……そんなに気持ちがいいのか?」
「あ、はぁはぁ、う、きもちい……」
ろくに言えていない。
ただ、もっとしてほしいと主張するように、オティヌスの脚を撫で擦って揺らすのを手伝っている。
「ならば、こういうのはどうだ?」
「は、うぅっ……!」
ぐちゃりとしたぬめりと、本能に響くような柔らかさに襲われた。
オティヌスが身を乗り出して、肉棒そのものに跨ったのだ。
「これは私も……あ、っぅん……気持ちがいいな……」
お互いの性器の表面だけを擦れ合わせる擬似的な性交。
すでに濡れている二人のそこはくちゅくちゅと湿った音を立てている。
「……おい、あまり見るなよ」
「そ、そんなこと言われたってさ」
上条が見つめるオティヌスのそこは無毛で、薄く口を開いているようだ。
縦の割れ目が浅黒い肉棒を挟むように食んでいて、腰が前後に揺れる度ぐじゅぐじゅと絡み合っている。
幼さの残るそれは艶かしくもツヤツヤとぬらつき、自身と擦れる様を見ているだけで、ビクビクとモノが震える。
「ぅくっ……暴れ過ぎだ……」
きっとオティヌスも感じているのだろう。
上条が揺れに合わせて腰を動かせば、冷徹さや余裕の仮面が剥げ落ちた、内の表情が垣間見える。
隠し切れない恥ずかしさや性感の戸惑いを覗かせている。
そんな顔をもっと見たいし、もっと繋がりたいと、そう思う。
上条にとってオティヌスはもうそういう対象で、それを受け入れているのだ。
「……そろそろ我慢できないか?」
「う」
見透かしたようなオティヌスの問い掛け。
言う通り腰が無意識に動いていて、亀頭の部分を割れ目へと押し付けるようにしている。
ほんの少し位置を調整すれば、挿入できるだろう。
「ふふん、童貞はせっかちだな」
「しつこく言わないでくれよ。オティヌスとやりたいんだ」
ものほしそうに見上げる上条の視線を受けてオティヌスは肉食獣の笑みを浮かべる。
頑固や我慢強いを通り越している上条に、そうまで言わせた事実に満足感を覚えている。
「いやらしいな上条当麻……私もじゃれているだけでは物足りなくなってきたところだ」
腰を上げると、擦れ合わせていた性器はねちゃりと糸を引くほどに濡れていた。
見える薄い襞は、色素が薄いのか白とピンクの中間の色をしていて酷く生々しく映る。
そして体重で潰されていたモノは、真上を向くほどに屹立して準備万端と主張しているようだ。
「では共に楽しむとしよう……く、んぅ……!」
「うあぁぁっ……!」
騎乗位の体勢で、ゆっくりとオティヌスは腰を下ろしていきモノが少しずつ飲み込まれていく。
柔らかいのにきついという矛盾。
つぷつぷと亀頭の先まで入り込んでいく最中
「やばいっ……で、でるっ」
「な……んっ、あぁっっ……!」
あっさりと上条は絶頂してしまう。
すでに昂ぶっていた性感は初めての刺激に耐え切れなかったのだ。
「…………おい貴様」
「うぅ……でちまった……」
「顔を隠すな。乙女かお前は」
恥ずかしいのか、寝た姿勢のまま顔を両手で隠している上条。
オティヌスは先端だけをまだ入れたまま、呆れ顔で見下ろしている。
ちなみに文字通り先走った白濁の液は膣口辺りから、だらだらと垂れ落ちていた。
「ちっ、早漏が……さきっちょだけ童貞捨ててそれで満足か?」
「だあぁあぁっ! 言わないでくれ!」
「……まったく。台無しだ。共に楽しむといったばかりだろうが。だが……まだできるようだな」
勃起したモノはまだ硬いままで、真上の角度を維持している。
「次はちゃんと我慢しろよ」
「あ、ああ……」
そして今度こそオティヌスの中へと、上条のモノが導かれていった。
「くぅっ、ん、あっ……!」
「うっくぅっ……」
オティヌスは仰け反るように顔を上げ甲高い声をあげる。
上条も、初めての女性の中の感覚を受けて苦しみにも似た呻き声をあげた。
「動くなよ……私がしてやるから……」
しばしの時間を経て、オティヌスが繋がったまま上条の腹に手を当てつつ、中腰の姿勢から腰を下ろしていく。
暖かく包まれる感覚に上条は息を吐いた。
気持ちがいい。
肉棒が半ばほどまで入っていき、きゅんきゅんと痛いくらいに締め付けられる。
ぐじゅぐじゅに濡れた膣内が、進むたびに纏わりついてくる。
ゆっくりと、焦らすようなオティヌスの動きが、更に快感を高めているようにも感じる。
「ふっ、んぅ、ふぅぅっ……どうだ、私の中は?」
「すげぇ気持ちいい……最高だ……」
根元まで肉棒が飲み込まれていて、お互いの股間が完全に密着しているのがわかる。
オティヌスの美しい肢体を見上げて、モノがまたも勝手にビクつく。
「くぅっん……元気過ぎるぞ……動くなと言っているだろ……」
「む、無理だって……」
入れているだけでも気持ちがよくて疼くのだ。
命令されていなければ、乗っているオティヌスを下から突き上げていたに違いない。
「私が可愛がってやると言っているんだ。いいから受け入れろ」
「うぁっ……!」
オティヌスが腰を浮かせると、ぐじゅるっ! っと濁った音が結合部から響いた。
次は腰を沈ませて、ドロドロに濡れた性器がオティヌスへ飲み込まれていく。
腰から性器の先までが、暖かな肉に吸われているような感覚。
手や太腿で扱かれるのとは全然違っていて、包まれたまま溶けてしまいそうだ。
リズムよくそれが何度も何度も襲い掛かってきて、上条は鈍く呻いた。
「いいぞ……可愛らしい顔で喘ぎやがって……」
オティヌスが腰の動きを変えないまま、覆い被さってきて上条の頬や唇へキスの雨を降らす。
舌を伸ばして舐めあって、唇と性器で粘膜を擦れ合わせる快楽に酔いしれる。
「うっくぅっ……」
キスを止めれば、オティヌスが腰の動きを変えて上下動だけではなく捻りを加えてきた。
見上げる胸が軽く揺れていて、引き締まった腹が捻りと腹圧で窪み中を締め付けてくる。
かと思えば、腰をゆっくりと動かすようにしてきて、時折気持ちよさそうに
吐息を零しながら、うっすらとした笑みを浮かべている。
「まるで……食べられてるみたいだ……」
「くくくっ、あながち間違いじゃない。神に供されるのはよいだろう?」
「うん。また……いっちゃいそうだ……」
いやらしく笑い、腰をくねらせる少女を味わって、味わわれて、もう射精が迫っていた。
「早いぞ……お前だけ何度もいきやがって。私ももう少しだから奉仕しろ」
そう言いながら、上条の手を握って自身の乳房へと押し当てる。
喜んで、撫で擦るように胸を弄くり感じさせようとする。
「あ、はんっ……強くしてもいいぞ……あくぅっ……!」
大きく腰を揺らすオティヌスの言葉に従うと甲高い声が返ってきた。
柔らかい胸をぎゅっと握るようにすれば、刺激が強いのかオティヌスの中もぎゅっと強く締め付けてくるようだ。
「んぁっ……あ、あまり暴れるな……!」
「もっと奉仕したいんだ……」
気付けば上条のほうも下から腰を使いオティヌスを突き上げていた。
動いてくれる時とはまた違った当たり方に、快感の質も変わる。
してくれるのもよいが、上条は自分からするほうが好みのよう。
いってしまいそうになるのを堪えつつも行為を続けていく。
胸を揉みほぐすようにして、張りのある肌を両手全体で味わう。
軽い身体を腰だけで持ち上げ、膣内を掘り進める。
「んっくぅ、はぁっ、困った奴だ……大人しく丸呑みされていればいいものを」
言いながらもリズムを合わせて腰を押し付けあい、お互いに快楽を与え合い貪り合う。
魔神であろうとも人間であろうとも、快感そのものは変わらない。
導き導かれるがまま、ただただ到達点へと二人向かっていた。
「で、でそうだ……!」
「あっ、あっ、い、いいぞ……わ、たしも……!」
じゅっじゅっじゅっじゅっと、縦の動きが小刻みに速くなっていく。
上条のモノは脈動して、オティヌスの中が収縮し締め付けていく。
少年も少女もそれを感じあって更に昇りつめていく。
「っぅっあっ……!」
「くふぅっ、んんぅっっぅっっ……!」
音がしそうなほどの勢いで精液が膣内へと放たれた。
どくんっどくんっと撃ち出すかのごとく、少女の膣内を雄のエキスが満たしていく。
オティヌスの中がきゅうきゅうと絞り上げるように締め付けてきて
ポンプにでもなったかのように中へと吐き出していく。
ぼやけた瞳で見上げれば、仰け反ったオティヌスの首筋から汗が流れて
噛み殺しきれていない喘ぎが口元から零れるのがわかる。
身悶えしながら上条の腕に身体を預けていて、感じているのが伝わってくるよう。
上条はそれを手助けするように、最後の最後まで精を注ぎ続けていた。
「……一体どれだけ出すつもりなのだ……お前は……」
「はぁはぁっ……う……」
射精を終えた後も繋がったまま、オティヌスが口を開いた。
絶頂したばかりのためか、抑揚ない喋りでどこか疲れているようだ。
「だが……よかったぞ。私の世界にはお前も連れていってやる……
くっ、んんんっ、しかし……今すぐ魔術を使うのは難しいな……」
けだるさに包まれた身体と手には力が入らず、思考もおぼろげだ。
あまりに永い期間受けていなかった感覚に、魔神の少女といえども強い疲労を感じていた。
「ひゃぅっ!?」
その少女が聞いた事もないような突拍子のない声をあげる。
繋がった姿勢から、緩やかに腰をあげようとしたオティヌスを上条が引き戻したからだ。
「な……お、おまえ……」
信じられないと驚いているオティヌスを上条が見上げる。
その瞳は黒目がうっすらと縮まっていて獲物を見つけた獣を彷彿とさせた。
「世界とか、魔術とか、どうでもいいんだ……
今はもっと、もっと、もっと、オティヌスを愛したい」
身を起こし、逆にオティヌスをベッドへ押し倒した。
中断 上条さん攻めオティヌス受け展開で最後になります
フェラチオとかアナルとか書きたいですが。オティヌスの胸でパイズリはできないかな?
すみません、今月半ばから後半ぐらいになりそうです
新刊試し読みのオティヌスちゃんは想像以上にエロい話が苦手そうでエロ展開悩みますね
実は数千年間処女だったりしそう
遅くなりましたが後編投下します。オティヌスの独自設定が若干あります。ほとんどがエロシーンです
「ん、ぅぁ……! ふ、ふざけ……くぅんっ……い、いったばかりでまだ敏感……ふぁっ……!」
上条はその勢いのまま、硬い肉をオティヌスの中へ深く突き込んだ。
それだけでまた射精してしまいそうなほど気持ちがいい。
「我慢してくれ」
「し、しつこいぞっぁ、んっんんっ……!」
ぐちゅぐちゅとした音と、ぱんっぱんっと拍手にも似た音が唱和する。
それが何度も響き渡る。
オティヌスの開かれた太腿を掴み下半身を持ち上げるようにして、腰を使い続ける。
「出る!」
「ふぅっぁあぁぁぁ……!」
股間がぴったりと密着するほど深く繋がったまま、お互いの体液でぐちゃぐちゃになった膣内へとまた射精をする。
何度も何度も、壊れた水道管のごとく噴出す精を、少女の中へと叩きつける。
オティヌスもまた至ってしまったのだろう。
きゅんきゅんと纏わりつく膣が、追加された精を搾り取っていく。
余裕のない、苦しそうなオティヌスの表情を上条は初めて見た。
「……はぁはぁ、っんはぁっ…………いい加減気が済んだ―――ひぐぅっ!?」
「……ごめん、本当に足りないんだ」
快感で頭が眩みそうになるが、それ以上の欲求に誘われるがまま、オティヌスの中を抉る。
何度射精しても、上条のモノはいつまでも大きく硬く、女を犯す形をして張り詰めている。
オティヌスは上条当麻という少年を見誤っていたのだ。
幾多の死を耐え切る精神力に、幻想殺しの特異性。類稀なヒーローの素養。
どれもが上条を象徴するものであっても、その地金にあるものは、人並み外れた生命力。
あらゆる状況を潜り抜け、走り続ける生命としての強さが上条の根源。
それをオティヌスが性行為という形で開放してしまった。
加えて仕込んだ薬によって精力と情欲を限界まで高められている。
記憶を失うほどの死の経験は、生を望む本能を知らず知らずのうちに焚きつけている。
幾万幾億の死の数だけ、雄の性衝動は満ち満ちて雌へと向かうのだ。
すなわち。
まだ喘ぎ動けない眼下の少女へと。
「っ……ぅああああぁぁあぁっっ……!」
星々が照らす、黒い宙の中心に浮かぶベッドの上で魔神の少女は大きく悲鳴をあげた。
抱き上げられ座ったままの挿入。
対面座位の体勢で、身体が浮かぶほどに脚から腰のバネで突き上げられる。
オティヌスはその衝撃に、息を止め真上を向くほど仰け反った。
騎乗位の時は加減しながら動いていたので、体重がかかるほどの勢いはなかったのだ。
身体が浮き沈みする激しい抽送で揺らされて、膣壁が広がってしまわないか心配になるぐらい肉棒が暴れ回る。
ぎゅぎゅっと、強く痕がつきそうなぐらい尻を揉み込まれるのすら、敏感になっている身体は快と受け取っている。
(に、人間の分際で……!)
そうオティヌスが考えていても、身体はまるで抵抗できていない。
荒ぶる上条にされるがまま、嵐と船の関係は変わらない。
「ふっ、ん、んんっ……! や、やめ……はぁ! あっんぁっ……!」
それどころか首筋を舐められただけでも反応してしまう。
キスで啄ばまれ、れろれろと味わうように舐め回される。
腰を使われながらもじゅじゅじゅっと強く吸われて、高い声をあげる。
「ひぅっ、ああぁぁぁあぁっ!」
そうしてまたも中出しされた。
すでに白濁で染められている膣内へと、漆を上塗りするように精液が覆い尽くす。
どろりとした熱い精が自身を埋めていくのがオティヌスに伝わってくる。
ずるりとモノが引き抜かれれば、白く濃い粘った液が膣口から零れ溢れた。
「こ、この野郎……! 好き勝手しやがって……! ん、ああぁっ……!?」
言葉を無視した上条が胸へと手を伸ばし揉み始めた。
優しくと言われていたのを忘れてしまったのか、焼成前のパンの生地を捏ねるかのように力強い。
五指の間から肉が圧力ではみ出て、成長途上のしこりがぎゅぎゅぎゅっと押し潰される。
「あ、ああっ……ぃや、や、やめ……! んぅっんんっ……!」
そんな乱暴な動きでもオティヌスは感じ、身を震わせている。
実の所、さっき上条を制していたのは感じすぎないようにしていたからだ。
強すぎる魔神の身には、それぐらいが丁度いいのかもしれない。
「はぁっはぁっはぁ……あぅっ!?」
胸を揉みながらも上条がオティヌスの背後へと回った。
今度は背後から抱き上げ、仰向けに倒れる勢いのまま挿入する。
膣の入口から半ばまで、ぐりっと入り込んだ亀頭で擦り刺激していく。
もちろん胸を思う存分に揉みほぐしながらだ。
「あ、くぅっ……お前……! この……私を……あ、あっああっ……!」
抗議はすぐ喘ぎへと変わってしまう。
背後から両方の乳首を強く摘まれて引っ張られたのだ。
そのまま人差し指と中指で擦り合わせたり潰したりと、何かの玩具でも扱うよう好き勝手に弄くられる。
残りの指で乳でも搾り取るように、ぎゅぎゅっと胸を握られればあげたくもない悲鳴が勝手に出る。
「ふぁっ……! そこは、やめっ……んっ、あっ、くぅんっ……!」
胸と一緒に膣も責められていた。
体勢上、若干入りづらいのか浅い抜き差しが続いており、そこは重なる行為で特に敏感になっている。
膣口からクリトリス裏側にかけてを、異様なほど硬い肉棒が速い速度でピストンしグリグリと擦られる。
強すぎる刺激に頭の中で火花が飛び散りそう。
今のオティヌスは、上条の手と肉によって喘ぎ歌わされる楽器にしか過ぎなかった。
「ぐっ、んっ、はぁっ! あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……」
上条の速度は増していき、リズムに合わせるようオティヌスは声をあげ続けた。
浅い所を擦られて、抽送の度に膣口がくちゅくちゅと音を響かせる。
背後から揉みしだかれる胸がじんじんと疼く。
眼を瞑り、上条の上で身悶えしているオティヌスもまたいきそうになっている。
「……うあぁっ!」
「っ……! あっああっぁあぁぁっ…………!」
強い脈動を内で感じながら、オティヌスも一緒に絶頂を迎えた。
上条のモノは六度目の射精でも勢いは変わっていない。
むしろ強くなっているかのように欲望の塊を放っていく。
それを感じ取る度、オティヌスの手足がビクッっと震えては伸びきって、柔らかなベッドを何度も掻き泳ぐ。
赤く色づくほどに強く握られた胸も気持ちがよかった。
与えられる快感に惑い、蕩けた瞳が天の星々を虚ろに映していた。
(な、なぜだ……? なぜ私がこうも好きな様にされる……?)
ようやくの時間をかけての射精が終わり、最初に浮かんだものは疑問。
どんなに感じやすくなっていても、全く身動きができないというほどでもない。
減じていても、一割どころか一分一厘の力で上条を制す事ができるだろう。
上条の胸板の上で喘ぎ息を切らしていたとしても、オティヌスは依然として絶対者のはずだ。
けれども上条が身を横にずらし、背後から覗き込むようにキスを迫ってくるのを
抵抗もせず、それどころか顔を横に向けて受け入れた。
舌が口内をねぶってくるのを好きなようにさせて、それどころか自らも舌を絡ませ、心地よさを感じてしまう。
未だ情欲の焔を宿す瞳に見つめられれば、身体がゾクゾクと震えてしまう。
肉体の奥深くに根付いた所が、上条当麻に反応してしまっている。
初めはからかいと懐柔策であったかもしれない。
段々と本気になってきて、精神力とは裏腹に性に未熟な少年へと夢中になっていたのも確かだ。
それがあまりに簡単に逆転されて。逆転を許してしまって。
今やまったく逆の立場になっているのが、オティヌスには何故なのかわからなかった。
しかし諦観していても上条は止まらない。
身を起こすと、寝ているオティヌスの顔へと跨り、勃起したものを見せ付ける。
天を突くように反り上がっていて、凶悪なほど張り詰めている。
「舐めてくれよ」
「……お前……まだこんなに……、んっむぶっ……」
「共に楽しむって言っただろ。今度はオティヌスの番だ」
何度も射精したためか幾分か理性は戻ってきてはいるが、それは餓えた獣が
より研ぎ澄まされた狩猟者へと変貌しているに過ぎない。
オティヌスという獲物をしゃぶり尽くそうとしているのは変わらない。
上条は股間を寄せて、オティヌスの頬や唇へ肉竿を擦り付けた。
二人分の体液の混じった生臭さや酸味のある匂いがむわっと鼻腔を満たしてくる。
どろどろの液が先端から唇を伝い口内へと垂れ落ちてくる。
(私を犯すように抱くだけでは飽き足らず、奉仕までさせようとしている……)
ぶるりとまた身が震えた。
まるでそうされるのを心のどこかで喜んでいるよう。
事実、今の今まで身を貫いていたモノは、オティヌスをこれ以上なく悦ばせていた。
片目しかない視界のさらに半分が肉竿で隠されて、その向こうに見える上条の表情を見て知らず喉がこくんと動く。
逡巡していると、痺れを切らしたのか上条がオティヌスの頭を右手で浮かせてくる。
「ちっ……しょうがあるまい。確かに言ったな……神が約を破るわけにはいかないか……」
まるで言い訳するように呟く声には、どこか嬉しそうな響きがあって頬が少し緩んでいる。
主導権を完全に握られたまま、或いは握られないように、差し込まれる肉を唇で受け止め舌を這わせはじめた。
「んっ、れろっ……ちゅぅっ、ん、れっ……」
オティヌスは仰向けで頭だけを起こした姿勢のまま、舌を伸ばし亀頭を何回も舐め上げる。
首を傾け下側の尿道付近に舌をくっつけてから、れろ~っとゆっくりカリの太まった所まで登っていく。
上条が腰を突き出せば、アイス棒でも舐めるように舌が先端から根元のほうまで流れた。
「いいぞオティヌス……」
「暴れるな……ちゅぅるっ……ふぅぅ、んぉっ……舐めにくいぞ……」
ビンっと弾性のある針金のごとく竿が跳ねる。
金髪と眼帯に先端が触れて汚すが、オティヌスは舐めるのに夢中で気にしていない。
幹へと、横笛を吹くのに似たやり方で唇を挟み、体液を舐め取っていく。
赤みが差している唇がぬめりで艶めいて、そこから伸ばされた薄桃色の舌が浅黒い肉棒へと這わされていく。
半開きになった唇で亀頭を優しく食み、濡れた舌で穴の所を丹念に舐め溶かしていく。
舐めているうちに片目の翠眼はとろんと揺らめいていて、緩んだ頬で薄く笑みを浮かべるほど熱中している。
嬉しさと、愛しさすら伝わってくる表情でフェラチオを続けていく。
「んぷぁ……ん、ど、どうした……?」
口奉仕の最中、上条が身を引くとオティヌスがものほしそうな眼差しで見上げた。
「オティヌスってさ、実はエロい意味でMだったりするんじゃ?」
「な……! 何をたわけた事を……!」
「んー、さっきまでいっぱいいっぱいで気付かなかったけど、俺を責めてた時よりも
責められたり奉仕してくれてるほうが、なんか嬉しそうに見える」
「勘違いだっ……! お前があまりに乱暴だから、戸惑っていただけだ!」
「乱暴ってこんな感じ?」
「んぶっ……! んんっ、ちゅぶっ、んぉっ……!?」
掴まれた頭が引き寄せられて亀頭がずぶりと口内に入り込む。
硬さも大きさも、初めての時より幾らか増していると感じさせるモノが口内を占領していく。
「こういうの好きなんじゃないの?」
上条が口から引き抜き、改めて問う。
「…………何を馬鹿馬鹿しい事を……都合のいい妄想もほどほどにするのだな……」
憎まれ口を叩き、頬を嘲笑で歪めようとしているが、表情は緩みほとんど毒気がない。
それに強がっていても、いってから数分ほどしか経っていない身体はまだまだ鈍く
四肢の端々が余韻で、ぴくぴくとたまに痙攣している。
凄みも何もない虚勢にしか見えなかった。
「じゃあちょっと試してみるということで」
「む、おぉっ……ん、んんっ! ちゅぶぶっ……!」
宣言した上条が頭部を抱え腰を使い始める。
ぬめった舌を亀頭でぐりぐりと押し潰すように擦り付ける。
抵抗するように、それとも歓迎するかのように、弾力ある舌が押し返してくるのを味わう。
「噛まないようにしてくれよ」
「んっぐ、んぶっ……! れろるぅ……んぉっんぉっ、んっ、んんんっ……!」
両手で小さな頭をがっしりと掴み小刻みに揺らし無理矢理に肉竿を摩擦させる。
口が丸の形に開かれて、その中へと肉棒が何度も入り込んでは引き出される。
挿入の度、亀頭の膨らみが唇の端を押し広げ、何かを頬張っているように膨らませる。
ちょっとと言う通り、若干加減しているようだが、勢いは少しずつ増しているようにも見えた。
(あぁっ……神たる私の口を……こいつは奉仕をさせるどころか犯してくるというのか……)
上条は細い両肩の横に膝を乗せて跨って、口内深くへと肉竿を押し付けてくる。
文字通りの意味で、世界最高最強の魔術を紡ぐだろう女神の唇と舌は、高校生の少年によって好きなように使われていた。
「気持ちいい…………やっぱり、すげぇエロい顔してる……」
「むぅっ、んっ、んふぅー、んっふー……ふ、ひゃけ、る、にゃっ……んぇっ……」
オティヌスの様子はも数時間前とはあまりに違ってしまっていた。
細く整った輪郭は肉で膨らみ歪まされてハムスターが餌を蓄えているよう。
白磁だった頬も林檎のごとき色合いを見せ、舐めれば甘く溶けてしまいそうだ。
鋭さのあった緑の瞳は潤み、物欲しそうに瞬いていて、星の光が滲んだ燐光を映し返す。
頭を掴まれたまま揺さぶられているというのに、飴のように蕩けた表情でされるがまま。
たまにぐりりっと喉を突かれても、瞳を細め嬉しそうにすら見えた。
その癖じっと視線を合わせれば恥じるように目に力が入って、ほどなくして緩むを繰り返している。
「勝手な想像かもしれないけどさ、オティヌスは強すぎて自分を知らなかったんじゃないか」
「……っぷはぁ、あっ……はぁはぁ、ぅっ……どういう意味だ?」
ずるりと肉棒が抜き出されて、唇と亀頭が粘性のある涎で糸を引く。
舌を犬のように晒け出し荒い息を何度もついた。
「強くて、誰も並べないぐらいに強すぎて。周りにも俺にもそう見せてたのに
実は苛められるのが好きだってことに、ずっと前から気付かなかったんだ」
「な……!? そ、そんなわけがないだろうが!」
「だったら。何万何億と繰り返したように今すぐ俺を殺しちまえばいい。
腕一本動かせば俺を吹っ飛ばすぐらいできるはずだ。そうすれば神様が人間なんかに犯される屈辱は終わる」
まるで、先程の疑問を見透かしたような言葉。
オティヌスは首を振って冷たく睨み返す。
「ふんっ……殺さないでおいてやったのは、人間がどこまでやるか見届けてやっていただけ。
…………だが、こうも見縊られるのは不敬を通り越し、もはや冒涜だ。よかろう。望みどおり地平の彼方まで送ってやろう!」
「おちんちんを前にラスボスっぽく凄まれてもなぁ」
「くっ……! う、うるさいっ! いい加減に、そこをど―――ひゃぅんっ……!?」
と、言葉の途中であられのない声をあげてしまう。
上条が後ろに手を伸ばして、クリトリスの辺りを擦ったのだ。
不意の刺激でまたオティヌスの身体からくたりと力が抜ける。
「俺ので凄いぐちゅぐちゅになってるな。うわっ溢れてくるっ」
「ず、ずるいぞ! 私にここまで言わせておいて、そんな……!」
「いやぁ、マジで反抗されても上条さん困っちゃいますから」
乳首にも似た固さを持つクリをこりこりと弄り回し指で擦る。
膣口に入れた指からは、オティヌスの体温でまだ暖かい精液が溢れでる。
指がくにくにと内側を引っかいてきて、腰が浮き太腿を擦り合わせる。
収縮する膣口から濁った音と共に精が漏れ出し、オティヌスは羞恥に目を伏せる。
なのに精液が掻き出されると喪失感すらあった。
身体はもっと欲しいと訴えているとでもいうのか。
(く、んぅっ……これでは本当にこいつの言うとおりではないか……
神たる私が……男に無理矢理抱かれて悦んでしまうなぞ、ありえるのか……)
「別にいいじゃねえか。新しい自分を見つけれて」
「…………ぬ! 何をお前……」
若干涙目になっていたオティヌスは、思考を読まれたかのような上条の台詞に目を見開いた。
「オティヌスは自分で思ってるよりも顔に出てるからバレバレなんですー」
「な、な、な……」
ふふんと得意げに笑う上条に壊れた蓄音機のごとき反復。
「神、神言ってるけどすげぇ人間臭いんだよ」
そして止めの一押しに絶句した。
酸欠や性感ではなく、恥ずかしさでオティヌスの顔が真っ赤になっていく。
アイデンティティが上条によって崩されていく。
「く、ぐぅっぅぅ…………お前に私の何がわかるというのだ! 知った風な口を利くんじゃない!」
「わかるって。殺されてばかりだったけどさ、どれだけ俺がオティヌスとやりあってたと思ってんだ」
「う、ううぅっ……」
殺伐としてたとはいえ二人の過ごした時間はもう誰よりも永いだろう。
そんな上条に断定されて、オティヌスは言葉を出せない。
完全に上条に飲み込まれてしまっている。
さらけ出した恥ずかしさや不安で、オティヌスの表情は外見相応の少女の顔をしていた。
しばらく見つめ合ったままでいて。
「あー……そんな可愛い顔してちゃもう我慢できねえ」
「え」
「正直まだ全然やり足りてないんだ」
意識から外していた肉の竿がぴきぴきぴきっと主張している。
「ちょっと待て、おまえっ……んっあぁっ……!」
「あそこだけじゃなくて口の中もいっぱい出してやるから」
白濁塗れの膣口を軽く弄り、膨れ上がったものをオティヌスの口へと差し向ける。
(……くそぅっ、私はもうこいつに逆らえないのか………………)
自嘲しつつも、上条のモノを受け入れていく表情。
それはずっと背負っていた重荷を投げ捨てたような、それとも永い待ち人に出会えたような
そんなどこか清々しさのある柔らかい面立ちだった。
「んううぅっ……んふうううんっ……!! んんぅっ、んーっ……!」
遠慮呵責のない動き。
喋っている間も性欲を滾らせていたのか、上条はオティヌスの口腔を性器のように扱っている。
両手をウェーブのかかった柔らかな金髪に沈めて、頭蓋をしっかりと掴む。
手で引き寄せ、腰を押し付け、上向きにされた鼻が上条の股間に密着するほどに突き入れる。
「ぐふぅっ! んぶぅっ、んんーっ……! んぢゅぅっ、ぢゅぷぅっ……!」
突き捏ねられた口内からは涎がしとどに溢れ出し、じゅぶじゅぶと濁った水音を響かせる。
唇の端からは涎と体液の混合液が零れおちて喉元をねっとりと汚す。
当然オティヌスにはそんな事を気にする余裕はない。
ガンガンと喉を叩いてくる肉棒の暴虐に耐えるばかりだ。
(苦しい……はぁっ……そんな感覚も、新鮮で、なんだか心地いいな……)
ただ意識的なのか無意識なのか、荒ぶる肉塊を咥えながらもごもごと舌を動かしている。
オティヌスでなければ、失神してもおかしくないだろう口凌辱を受け入れ、上条へと奉仕している。
被虐の悦びで慄いている。
「オティヌスは口の中も気持ちがいいぞー」
「んんーっ、んぶぅっ、んっむぐっ! んぇっ……」
上条は脳天気な声を出しながらも口内の隅々まで犯す。
腰の向きをずらすと、オティヌスのほっぺがぽこりと亀の形に膨らんだ。
ぐりぐりと腰を回すようにして内頬の粘膜を肉棒でこそぎ回す。
腰を振れば頬が内側から何度も盛り上げられいびつに歪む。
上条は押し付けたまま、盛り上がる頬へ指を押し当てて頬肉越しに擦った。
「もっと咥えてくれ」
「むぁっ……!? んっぶ! んっぶ! んごぉっ……!」
少女の声が低く濁る。
大きすぎる肉棒が口蓋垂を押し潰し、喉深く食道に入り込むほどに迫ったのだ。
カリの部分が喉粘膜を擦り、上条がピストンするたびにぐぽっと食道を押し広げていく。
頭をぎゅっと掴んだまま、腰を強く振ってオティヌスの顔をオナホールのごとく使っていく。
押し込まれた肉棒は唇が根元まで触れるほど深く突き入れられて、引き抜けば大量の涎を撒き散らし二人の身体を汚した。
そんな風に虐げられているのに、オティヌスの苦しげな表情はより艶を帯びていくよう。
口腔を犯され性の道具にされてなお感じている。
触れられていない膣までもがきゅんきゅんと疼いている。
「そろそろだ……」
「んっ、んっ、ぶぶぅっ……! んくっ、んんっ、んぐぅっ……!」
潤むオティヌスの瞳が期待に輝いた。
亀頭の部分が喉にめり込むように押し当てられる。
そのまま速く小刻みに動き喉肉の柔らかな部分で扱くようにする。
上条は身体を前面に倒しベッドに手をついた姿勢で、ほとんど真上から犯しにかかる。
「……出るっ!」
「んっごっ、ぶぶっ……! んぉおぉっぉっ……!」
粘性のあるものが口内へと広がった。
舌の根元付近にどくどくと噴き出して、熱くて苦くて生臭い味と匂いが味覚を乱暴に刺激する。
(なんて味だ……! それに多すぎる……! なのに……何故美味いなどと思えてしまうのだ…………)
耐えるように目を瞑りながらも、舌の上で脈動する肉竿をしゃぶっていく。
吐き出される欲望を、言われずとも従順に、或いは悦んで飲み込んでいく。
「んぉっ、ん、んんー……んっぐぅっ……」
食道へと注ぎ込むように押しこんできて、おこりのように震える肉棒を喉越しで味わされる。
そんな嚥下する喉の動きすら摩擦し扱くための材料となって、精を胃の腑へと送り込んでいく。
「んじゅじゅっ……んぇ……んっく、んく……んっぶぐ!」
飲みきれない白濁液が唇から零れ落ちてベッドを濡らした。
少女の小さな口内には量が多すぎるのだ。
「……よし」
「んっはぁっ……んぁ、あぁぅっ、んぐっぁ……」
ようやく射精を終えて引き抜けば口内は白濁に染まっていて、ピンクの舌が白濁の泉の中でゆらゆらと揺れていた。
「全部飲んでくれ」
「んぅっ……ぐっ、こくっ! ぅあ、はぁ……んぅ、ごくっ……! ……うぁはぁっ……はぁはぁ……」
唇を閉じ頬を膨らませて舌で塊のように濃いものを解きほぐし飲み込む。
喉に引っかかるそれは一度や二度では飲み込めるものではなく、何度も繰り返し嚥下していく。
全部飲み込み、荒く息をつけたのは数十秒も経ってのことだった。
「よしよし偉いぞオティヌス」
「あっ、ふぁ……気安いぞ人間……私は犬猫では、くふぅんぅ……ない、のだ……」
頭を撫でられ、蕩けた顔で反論しているオティヌスはいやらしくも可愛らしい。
どれだけ感じ入っているのか、顎を伝う零れた液を指ですくって口元に持っていけば、舐めてちゅちゅっとしゃぶっている。
金の毛並みを持つペットに餌でもあげているように上条は思えた。
「ちゅっ、るるっ……ん、はぁっ……じゅっじゅじゅっ……」
ついでにと差し出された肉竿もおしゃぶりし、へばりついた白いモノを啜り取った。
「綺麗になった所で、もう一回いくぞ」
「あ……」
上条がトンと軽く押しただけで抵抗もなく倒れるオティヌス。
顔にはもう隠しきれていない悦びがあった。
そのまま無意識に両手を伸ばし歓迎しようとしてる途中で、はっと気づいたかのように
自分は何をしているのかと留まった。
たっぷりと犯されイカされても、まだ自身の在り方に戸惑いがあるようだ。
「ほら後ろ向いて」
「な、なにをするつもりだ」
上条は中途半端に伸びた手を掴み、仰向けからうつ伏せへと転がした。
「オティヌスの身体はどこも綺麗だなーって思ってさ」
「ふぁっぅ……つ、つよく触るな……もう少し優しくしろ……」
ぎゅぎゅっと形いいお尻を両手で強く揉まれ、若干の本音が漏れる。
オティヌスが何か抵抗するように上条の手首を後ろ手で握るがこれと言ってなにもしない。できない。
「上条さんは平等なのが好きだから。分け隔てなく愛してあげないといけないのです」
「……?」
お尻を撫で触りながら喋る上条の真意がわからず疑問を浮かべるオティヌス。
「なのであそこやお口だけじゃなくてお尻にもいっぱい出してあげます」
「ひぐっ!?」
尻肉が割り開かれ、ぐちゅりと指が尻穴へと沈み込んだ。
「どどどどどこに指入れてやがる!」
「あれっ? こっちは経験無いの?」
「あるわけないだろ! 弄るなっ、あ、やめっ……」
「……神様はお尻の中まで綺麗なんだな」
汚れも匂いもない排泄口を嬉しそうにほじる上条に、オティヌスは身悶えする。
色素が薄く白が強い薄桃色のそこが、指で押し広げられて赤みを増した。
「くぅ、んんっ、だからやめろ……こ、のっ! 変態野郎!」
「おかしいな。なんだか経験豊富そうにしてたのに。もしかしてそうでもない?」
ぎくぅっ!とか、そんな音がしそうなほどオティヌスの動きが止まった。
「ふんっ、なななななにをたたたたわけた事を」
「声震えてっぞ。久しぶりとか言ってたけど、どれぐらいやってなかったの?」
例え上条でなくとも、オティヌスの表情に焦りがあるのがわかっただろう。
迷いと葛藤、恥ずかしいのか耳まで赤くなっている。
「早く」
「や、やめろ! 言うから入れるな! ……………………だ」
「ん?」
少しの間があって、諦めの表情で小さく呟いた。
聞き返す上条を力ない瞳で見つめ返して。
「二千年ぐらい前で最後だ……」
「ほとんど紀元前じゃねーか! つーかそんなんじゃ未経験と変わらないだろ!」
「うぅっ……」
言葉に詰まるオティヌス。そしてぴこーんと思い当たった上条。
「のわりには感じやすかったし。もしかして女神様は二千年間お一人で……」
「うるさいうるさいうるさい黙れ。私は魔神オティヌスだぞ。そんなものとは無縁極まりない戦争の神なのだ」
「はいはいわかってるよオナ……じゃなかったオティヌスちゃん」
「~~~!!!」
逆鱗に触れたのか、きしゃーと飛び掛ってくるオティヌスを上条が迎え撃つ。
例によって身体を色々と触られ、借りてきた猫のようにおとなしくなる。
「オティヌスちゃん寂しかったんだよね。わかる。わかりますよ。俺もそうだったし」
「だからちゃん付けはやめろ! お前は調子に乗ったらどこまでも厚かましいな!」
怒声を上げても、うんうんと頷いている上条はほとんど聞いていない。
頷くたびにモノが魚が獲れた瞬間の釣竿のように跳ねるのが気持ち悪い。
「俺も甘やかしてもらったし、うーんと甘えていいよ」
「だったら何故のしかかってくる。やめろ、尻に当ててくるな、あ、ダメだ。ダメだって」
じたばたとベッドを這いずるオティヌスがまたも組み伏せられ背後を取られた。
どうであれ上条は自分を突き通す。ただ今回は舞台がベッドの上なだけだ。
「大丈夫。彼氏いない暦二千年のオティヌスちゃんは俺が慰めてあげるから」
「よりにもよってそんな不名誉な物言いを!? あ、ぃや、ああ、あああっうぅぅぅんっ!!!」
反論は猛々しい肉棒によって封じられた。
上条は後背位の姿勢のまま、尻へと挿入したのだ。
「すげぇきつきつであったかいぞ」
「あ……く、あっ……はぁ……強引過ぎる……ぞ……」
「いっぱい愛してあげないといけないだろ」
「んぐぐっ、くうぅぅ……」
理論展開は不明だが、上条に止まる気がないというのだけはオティヌスに伝わった。
文字通り、初めての感覚で白い背中にぞわりと鳥肌が立った。
大きな異物で腸内を塞がれて、心臓まで圧迫されているような感覚すらあった。
「く、くるし……」
その感覚がどんどんと強まっていく。
ずずずっと重いものを引きずるかのように、ゆっくりとゆっくりと亀頭が全部入り込み、幹がオティヌスの中へと埋め込まれていく。
「はっ、ひぃ、くぅ、おあ、おぁお……!」
上条が少し腰を戻せば腹の内側から引っ張られるような、味わった事のない激感に襲われる。
それは排泄に酷似した開放感による快感だ。
ぞくぞくぞくっ! とオティヌスの全身が震える。
(な、なん、だ……これ……は……!?)
オティヌスは人から魔神と化してからの永い期間、その感覚を忘れていたのだ。
生理現象も生命維持も自由自在なほぼ不老不死の肉体。
食事は好みで摂取しているが、老廃物の完全な消滅と分解が行えて排泄の必要は全くなかった
だから、無理矢理に腸粘膜をこそぎ上げられて思い知らされたのだ。
本来排泄は快感の一つと言ってもいいほどに、気持ちのいいものだという事を。
「ま、まて……! あくぅ、ああっ、と、とまって、くれ……! たえられな……!」
「無理だって。オティヌスもよくなってきたんだろ」
声音や顔色だけで察したのか、上条の動きがだんだんと速度を増していく。
身体が受け入れているのだろう、湿り気のある音が少しずつ大きくなっていく。
「ほら、さっきより濡れてきてる」
「くぅっ、んんっく、あふはぁっ……!」
上条が行為を続けながらも、右手で秘部を撫でた。
時間が経って精液は大分流れ落ちているが、それ以上の蜜が溢れて太腿から膝まで濡らしている。
それをすくってモノに塗って、きつい腸内の潤滑を高める。
挿入がスムーズになるほど、刺激も増え愛液の分泌も多くなる。
まるで連動しているかのような二つの性感帯を上条は責めていく。
「あっくぐぅぅっ……ふ、ふかぃ……」
肉棒の半分以上が飲み込まれていって、圧迫感で串刺しにでもされているようだ。
目をぎゅっと瞑り、唇を引き結んで激感を堪えた。
「ふぁっ、あ、はあぁぁぅふうぅーっ……」
ゆっくり引き戻されれば、堪らないほどの開放感で身体が軽くなっていく気すらした。
翡翠色の瞳は靄がかかったようにとろめき、陶酔の吐息を零す。
魔神の少女は獣の姿勢による排泄穴の性行為によって、紛れも無い悦楽を感じていた。
「少し速くするぞ」
「んんん、あ! ま、まだ、慣れてないんだ……! 優しくしろ……!」
聞き入れず、じっとりとした動きが少しずつ速度を増していく。
圧迫感も開放感も堪能する暇もなく、二つの感覚がオティヌスを責め立てていく。
挿入すれば膣内まで圧迫されて、精液と愛液が混じったものが膣口から吹き出した。
「入れる時にお尻がくにゅくにゅと潰れるのがエロいなぁ」
「くっあぁ、い、いやらしい事を、ふ、んぐぅっ! いうなぁ……」
結合部からじゅくじゅくとした音。ぱちぱちと肉と肉がぶつかる響き。
星と黒だけの世界で、二人の息遣いと触れ合う肌が楽音を奏でる。
高まっていく性感は、腸内を膣とほとんど変わらないほどに潤わせていて、腰の速度がどんどん増していく。
押しこむ度、果実のような曲線を持つ尻たぶが上条の腹筋に潰され、官能的な柔らかさを伝えてくる。
きつきつとした締め付けも段々とこなれてきたのか、包み込むようなまろやかさもあった。
「はぅ、んぁ、そこ、は弱い、んだぁ……んっくぅ……」
上条は覆い被さるようにして、金髪から覗かせるほんのりと赤らんでいる耳へ舌を滑らせる。
「凄く鳥肌立ってておっぱいも立ってる。気持ちいいってのがわかるぞ」
「ひっぁ……! あんんっ、くふっ、摘まむなぁ……ひぅあぁ、ぃゃぁ……」
まさぐる手の平にマシュマロの柔らかさとゼリーのしっとりとした感触が伝わってきて
ツンと固くなっている乳首を指先でこねるように弄んだ。
乳房の中のしこりを揉みほぐすようにすれば、甘い嬌声が零れ落ちる。
「そろそろだ……」
「あぁ……また、か……い、今出されたら……私まで……」
上条だけではなく、オティヌスも絶頂が近い。
どこもかしこも感じてしまい、快感のあまり視界は涙で滲み、チカチカと点滅するように白んできている。
「んっっあぁ……!」
いよいよ上条が射精するためだけの動きへと変わった。
オティヌスの両手を握り、後ろ手に引っ張って上体を反らさせてから激しく犯し始める。
無理な姿勢がオティヌスの腹圧を強めて、ぐいぐいと握るように締め付けてくる。
「あ、ぃやっ……! そ、こは、あっ、あっ、あっ、あっ、ああっ!」
リズミカルに出し入れされる肉が腸の腹側辺りをぞりぞりと削った。
薄い腸粘膜越しに、亀頭が子宮の裏側を擦り衝撃を伝え、ノックを繰り返す。
排泄の快楽と子宮責めの合わせ技で、オティヌスの丹精な顔がだらしなく緩んでいく。
じゅくじゅくっ、ぐちゃぐちゃ、じゅぽじゅぽっ、ぐちゅぐちゅっ。
いやらしい性交の音が尻穴から響き渡っているが、オティヌスにはそれを気にする事も恥ずかしがる余裕もない。
引っ張られた手と結合部を支点に、仰け反るよう弓なりに身体が引き絞られる。
背中のラインが優美な曲線を描き、金の髪が激しく乱れて汗まみれの身体へ纏わりつく。
「あっ、ふっ、あっ、ふ、ふっ、お、おまえもいき、ふっ、ううっ、そうなんだな……だんだん、わかって……ふぁっ……!」
抜き差しする肉の竿が痙攣しているのが伝わってくる。
何度も何度も味合わされたものが、また溢れ出そうとしている。
「いくぞ……!」
「う……あっ! うっんあぁぁぁぁぁ!」
熱い濁流を注ぎ込まれオティヌスは吠えた。
(あぁ……口から飛び出そうだ……)
限界まで反らされた背中。上条の全身をバネにしたかのような深い撃ち込み。
身体の奥深くまで穿たれたかのように、快感が頭の先まで通り抜けていく。
びくんびくんと肉竿の脈動に合わせてオティヌスの身体も悦びで打ち震える。
「はぁっ、はぁっ、ん……ふっ、んんっ! あぅっ、んぁっ……!」
叫びが途切れ、息を整えようとするが甘い嬌声へと塗り潰された。
上条が射精しながらも、支えにした腕をゆすってくるのだ。
腸粘膜を勝手に使われるようにモノを扱かされて、ドロドロの欲望のエキスが更に吐き出される。
先ほどの言葉の通り、オティヌスの中をいっぱいにするまで射精を続けていた。
「ふう……よかったぞオティヌス」
「…………あふぅ……」
上条がようやくと言ってもいいほどの時間をかけて、引き抜き握っていた手を降ろすと、くたんとオティヌスの身体が崩れ落ちた。
尻は突き上げるように高くて、頭はベッドに沈み込んで伏せている姿勢になっており
魔神の威厳などもうどこにもなくて、自身の状態を気にする余裕もない。
「あれ、どうした?」
返事はない。
何度絶頂を迎えたかもわからないぐらいイカされており、意識は飛んでしまっている。
「まあ寝ててもいいんだけどさ、もっかいいくぞ」
「ひやぁっ……!」
不意にお尻へまた挿入されて電気ショックでも浴びせられたかのように、身体が跳ねた。
「ま、まだ……やるの……か……?」
泣きそうな、いや泣いていて目に涙を溜めたままオティヌスは問う。
「いっぱいって言っただろ。お尻だけ一回なわけがない」
「一回ってまさか……」
今まで上条に抱かれたというか犯され、射精を受けた回数を考える。
それと同じ回数するということは。
「ま、まて、ダメだ、そんなにされたらもたない壊れちゃう」
「百回とか千回とか万回まではしないから多分大丈夫」
「お前根に持ってるな! もうしないから! 世界も戻す! だからやめ―――――」
絶望と官能に満ちた悲鳴が黒の空間へと広がり消えていった。
・
・
・
・
・
・
「はっ……一体俺はなにをしていたんだ」
気がつけば上条当麻はベッドの上で仁王立ちをしていた。
酷く疲れているのにやたらとすっきりした気分。
足元に熱を感じて視線を下へと向けてみると
「うわぁ……」
オティヌスが裸を隠す事もなく横たわっていて、ぐったりとして動いていなかった。
身体中余すところなく白濁したものがこびり付いている。
胸は上下していて息はしているが、眼差しはレイプ目になっていて虚ろに輝いていた。
例えるなら、数十人の男達とか特定目的用スライムとか触手生物とかに
ぐっちょんぐっちょんにされたらこうなってしまうだろう光景であった。
当然ながら、そんなものはいないので全てが上条の仕業である。
そういえばお口も一回しかやってなかったなーとか、胸で挟めるかなーとか
やってるうちにあそこの回数が少なくなってる気がしたぞだとか、それはもうオティヌスを味わい尽くしてしまったのだ。
そうして薬の効果が抜けて今に至っていた。
「えーっと……起きれますでしょうかオティヌスさん」
「…………っ」
そろりと手を伸ばせば虚ろな表情ながら、何かを呟いているのがわかる。
「……やめてくれ…………もうしないで……たすけて…………」
「ちょ、ちょっとまって、そういう心にくるのやめて!」
誘惑されてやってしまったこととはいえ、この状況でその言葉は精神的ダメージがある。
薬が抜けたものの記憶まで抜けたわけではないのだ。
上条はあわあわざくざくと罪悪感に打ち震えた。
「むりだ……まくらは入らない……」
「どんなプレイだ!」
「……んんぅ」
それはそれとして、思わず頭をぺちんっと叩くと悩ましげな声をあげ、目の焦点が合ってきた。
ちなみにベッドに置いてある枕は余裕で三人分の頭が置けるだろう抱き枕のごときものである。
「はっ……私は一体……そうか、私は負けたのか……」
「戦いに負けて気絶してたみたいに言われても。
っていうかオティヌスの頭ん中で俺はどんなキャラになってんの」
「……意識の無い私を組み伏せて欲望の限りを尽くしたというわけか。見下げ果てたものだな人間」
「そんなキャラか! なんで被害者ぶるんだよ! 誘ってきたのはオティヌスじゃねえか!」
「ふんっ、なんのことだかわからんな」
ぷいっと寝たまま顔を反らすオティヌス。
「じゃあ俺が悪くてもいいからさ、いい加減世界を戻してくれよ」
「な……! き、貴様! あれだけ人の身体を貪っておいて私を捨てようというのか!」
「えー? なんか話が違うような」
若干めんどくさい女神様のようであった。
まあ神話にあるとおり、神様は大抵不条理なものなのだが。
わなわなぷるぷるしているオティヌスを見て、上条は言葉を重ねる。
「捨てるつーか、お前も来るんだよ。ここまでしちゃったんだ。責任は取る」
「…………! 本気……なの、か?」
「成り行きとはいえ女の子を抱いたんだ。そうするのが普通だろ」
成り行きなんてもので済まない状況だが、上条にはそれが当然のことのよう。
「で、でも私が戻れば世界から狙われる身だぞ。私に付き合えばお前も巻き込まれる」
「そういえばそうか。……でも関係ない。俺がみんなに話しを通す。殺させたりなんてさせない」
「本当にわかっているのか? 私は世界を混乱に陥れたのだぞ。お前一人の一存でどうこうできるものではない」
「お前に罪があるのはわかっているよ。けど罪は償えるんだ。
寂しくならないようにいつでも会いにいくから。お爺ちゃんになっても、いつまででも待つさ」
オティヌスは唖然とした顔で上条を見た。
「お前は世界を意のままにできる私へ、言うに事欠いて監獄に入れと?
説得とすら言えないだろうそんなものは」
「説得じゃなくてお願いだよ。無罪放免というわけにはいかない。俺がそうしてほしいんだ」
「……単なるお前の都合ではないか」
「色々あったけどさ、オティヌスに抱きしめられた時、やっぱり嬉しかったんだ俺は」
何を言っているのかと表情が歪む。何もかもさらけだした今、仮面は外れている。
「あれは私がお前の苦しみにつけ込んだものだ。お前は極限状態に追い込まれ勘違いをしているだけだろう」
「……それは否定できない。誰かが聞いても同じ事を考えるかもしれない。
けれど寂しくて人恋しかったのはお前も同じなんだろ? だから求めてきたんだ。
俺は一夜の出来事なんかで済ませたくない。まっさらなまま一緒にいたいよ」
そこに愛情があったかと言えば違うのだろう。
されども何も生まれなかったのかと問われれば、それもまた違うのだ。
「……ちっ、今更強がってもお前には無駄か………………」
頭痛でもあるかのように額を押さえて溜息。そして頷いた。
「ああそうだ。私は誰かと共にいたい。その誰かはお前がいいよ」
「へへっ、デレたな」
「うるさい、これからが大変なんだぞ。オッレルスの妖精化で力はほとんどない。
そして私の敵は多い。こうなってはグレムリンのメンバーすら敵だ。投降なぞ許してもらえると思うなよ」
「なんとかしてみせる」
「全くお前という奴は。……まあいい。善は急げだ。世界を戻してやる」
「ああ」
どこからともなく主神の槍を現し差し出した。
「これを右手で壊せ。後は自動的にお前を基準点として世界が在りし姿を取り戻すだろう」
「わかった。…………でもそのまえに」
「ん? なんだ?」
「オティヌスさ、滅茶苦茶べたべたしてて精液臭いし、一度シャワーでも浴びたほうが」
あっけらかんと笑いながら槍へと右手を伸ばし、オティヌスの額でぶちんっとゴムが切れるような音が聞こえた気がした。
「おっまっえっがっ! やりたい放題したんだろうが!」
幻想殺しが槍を砕くと同時に、神速の右ストレートが上条を打ち砕いた。
「うわぁっ!? ……あ! 戻ってる!」
尻餅をついた上条は無限の世界に入る直前の場所、壊れた船で作られたような島のサルガッソーにいるのに気付いた。
目の前には呆れた顔をした、いつもの服装で綺麗になっているオティヌスもいる。
「とりあえずアレを防げ」
「ん……!?」
人差し指を上へ向けるオティヌスの視線の先を追う。
攻撃魔術らしき何かの光が幾つも二人の頭上へ降ってきている。
慌てて立ち上がりオティヌスを庇って、流星を受け止め消していく。
「おい、これはどういうことだ」
上条へと誰かが声をかけたのは防ぎ終えた後のことだ。
起伏のある地形を乗り越え、四人の少女達が姿を現す。
「何故お前がオティヌスを守っている?」
「っていうかあれ抱き寄せていますよねえ」
「はぁ? どうなってんのよ」
「とうま! その人は敵なんだよ!」
バードウェイ、レッサーと出てきて美琴とインデックスが混乱している。
「みんな……!」
酷く懐かしい気分に囚われながらも、オティヌスを横目で見て言葉を続ける。
「色々と訳ありなんだ! 戦うんじゃなくて話を聞いてくれ!」
「まずそいつから離れろ。奴を滅ぼした後なら幾らでも聞いてやる」
バードウェイが上条の後ろのオティヌスを睨み付けた。
戦場の真っ只中で油断など一切ない。そして会話をする余地もなさそうだった。
「だから待ってくれ。オティヌスと交渉したんだ。こいつはもう戦わない」
「交渉って何話したって言うのよ。アンタが先に行ってから一分も経ってないじゃない」
「それは……くそっ、なんて言えばいいんだ」
挟まれた無限の世界とベッドでの行為。
思い返して上条の額に汗が流れる。
そもそも説明するにしても不適切極まりない出来事というのを今更のように思い出す。
上条が困った顔でちらりとオティヌスのほうを見た。
助けてという視線を半眼で睨み返して、今度はオティヌスが前に出る。
「では私から説明してやろう。今の私には戦う理由も主神の槍も無くなった。
予定とは違うが目的は果たしている。よってお前たちと戦う必要も無いという事だ。以上」
「いや、それはちょっと……」
「ふざけるなよ。世界を相手取って今更命乞いか?」
「この局面で和解なんて、裏があるに決まっていますねえ。何かの時間稼ぎでしょうか」
説明というか一方的な停戦宣言に、上条は焦り少女らは疑心に溢れる。
オティヌスもオティヌスで交渉の余地がなさそうだった。
「命乞い? 時間稼ぎ? くっくっくっ、私が譲ってやっているのだ。
余計な事に頭を回す暇があるのなら控えていろよ」
「お前全然交渉する気ないだろ!」
「アンタこそいい加減にしなさいよ。コイツ全然おとなしくなってないじゃない」
つっこまれて上条がまた困りだす。
上条自身、和解交渉をする理由が自分の我儘というのを理解している。
それだけにオティヌスの協力が不可欠なのだが、生憎折れてくれる気が全然しない。
「いいか、交渉というものは弱みを見せたら負けだ。そしてあいつらの弱みは私の手にある」
「へ?」
オティヌスがおもむろに上条を抱きしめた。
少女らが警戒する。色っぽいものではなく人質にする気なのかという意味でだ。
その予想は直後に裏切られた。
「聞け! 私の停戦条件との引き換えは上条当麻だ!
私は上条当麻のもので、上条当麻は私のものだ! 今その証拠を見せてやる!」
居丈高な物言いと行動を止める暇もない。
オティヌスが上条にいきなりキスをしたのだ。
「―――!」
言葉もなく固まる少女達。
比喩ではなく空間に電光が瞬き、形になっていない魔力が空気をかき乱す。
そんな中でも、ちゅちゅっぴちゃぴちゃっと湿った音が響き、舌を絡ませあうほど深く二人はキスをしていた。
もっともオティヌスだけが舌を使っているのだが。
(う、うごけない)
ちなみに上条のほうはというと、がっしりと身体も頭も抑えられていて、身動き一つできていなかった。
さながら本物の熊にベアハッグでもされているかのような圧着感だ。
ひとしきりオティヌスにねぶられてから、がくんと膝を落とした。
「……と、まあ見ての通りだ。こいつを私が頂く代わりに世界は平和になる。これ以上ない好条件だろう?」
聞いたっきり、しばらくの間止まっていた少女ら。
しかし呆然とした表情にどんどんと怒気が溜まっていき、反比例するように上条が青ざめていく。
「…………あーね……つまりそういうことね。美琴さんとあろうものが騙されちゃったわー
シリアス展開と思ってたのに、アンタはいつもどおり桃色ってたわけだったのね」
「違うよ! めっちゃ頑張ってたんだよ! 半分ぐらい説明させてよ!」
「短髪の言うとおりかも……むしろ今回は戦う前に仲良くなっちゃってて…………
とうまはいっつもいっつも女の子にはやりすぎかも!」
「可愛い嫉妬ならともかくとして、歯剥き出しでぐるぐる言わないで!」
「私はまあ……あなたの重要性を加味した感情しか持っていませんが。
……人をあっさり袖にしておいて、別の女になびくのを許せるわけないですよねえ…………」
「言いながら包丁刺すみたいに霊装用意してるっ!?」
「……つまりなんだ。あれだろ。お前たちは前から繋がっていて、私達を謀っていたんだろ。
わけがわからないがそれなら理屈は通る。私としては問答無用でこいつに人道的拷問を施して、全てを吐かせるつもりだが皆はどうだ?」
『『『意義なーし!!!』』』
「全件一致! なにこれ! 俺どうなっちゃうの!」
上条は忘れていたのだ。
女神様に限らず、概ね女の子はみな面倒だということを。
そして審判が下された。
美琴の前髪が、バリバリと鳴って。レッサーとバードウェイが霊装を携えて詠唱する。
凶暴なイカズチや紅蓮の炎が絡み合い目標へと一直線に突き進む。
もちろん対象は上条当麻だ。
「だー! 今、絶対殺意あったよね!? 俺じゃなかったら死んでるよ! ってひぃ~」
そんな攻撃を打ち消しながらも一番上条がブルっているのは、ガチンガチンっと響くエナメル質とは思えない音。
インデックスがどんな猛獣でも食らいついたら離さないトラバサミみたいに歯を噛み鳴らしているのだ。
「うーむ。がつんと言ってやったが逆効果だったようだな」
「絶対わざとだろ! どうすりゃいいのこの状況! 世界で紛争が絶えない理由がなんかわかっちゃったよ!」
「立場をわからせてやらないと逆に可哀想だろう? もう芽がないということをな。
お前たち知っているか? こいつはベッドの上だと可愛い顔で喘ぐ癖に、本気を出すととても激しいのだぞ」
「「「ぶっ殺す」」」
「挑発しないで!」
インデックス以外が宣言して、インデックスの歯の根が金版加工用の工作機械染みた音を打ち鳴らす。
がくがくぶるぶるしている上条を尻目に、オティヌスがわざとらしく恥ずかしそうなそぶりで腕を組んだ。
「なーに私には骨船がある。一回こっきりだがここから立ち去るぐらいお手の物だ」
「逃すな! 上条当麻を殺せ!」
「完全に目的がすり替わってる!?」
「くっくっくっ……ではハネムーンと洒落込もうか」
たっぷりのヘイトを掻き集めて、オティヌスはとても嬉しそうに笑ったまま
上条はデスマスクでも作れそうなぐらい悲痛な顔のまま、少女達の前から消えた。
実現困難な道筋は、他ならぬオティヌスの行動によってハードモードとなって上条を出迎えるのだった。
終了 これで終わりです。
実際のとこ、普段からR-18ばかり書いていたので、タイトルの話自体こういう流れで終わる予定でした。
途中まで書いていたらエロないほうが綺麗に終わりそうだったので、壊れた世界の迷い人ができた感じです。
また何かしたら書けたらスレ立てると思います。
オティヌスの多元世界はなんでもありなので、他ヒロインと絡んだり
初心なオティヌスに饅頭こわい理論でムチャぶりするゲス条さんとか
妖精プレイとか、グレムリン一党によるオティヌスバッドエンドとか妄想だけは色々とあったりします。
乙 ありがとうございます
この話の変化が今のところ思いつかないので、やっぱり別のシチュエーションでの話になると思います。
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