ディオ「ジョジョがラスボス」(297)


ジョナサン「うおっおおあああーーッ!!!」フワァァゴォ

ディオ「!?」

ジョナサン「」ドサッ

SPW「じょ……! !?」

SPW「ジョースターさあああああん!!!」

SPW「さ、刺された! ジョースターさんがァー!」

SPW「追い詰められたディオに、最後の情けで手錠をかけようとしたその瞬間、
隠し持っていたナイフで卑劣にも刺されちまったぁぁー!」

SPW「くそッ! このおれがついていながら……! 予想はできたはずだ!
だがあまりにも優しすぎた、あのヒトが! 呑まれちまった! 大丈夫だと思ってしまった!」

警官A「やつ(ディオ)を射殺しろッ!」

SPW「そんな場合か! 医者だァ! すぐ医者を呼べ!」

ジョースター卿「ジョジョ……そんな……」フラッ

警官A「犯人を逃がすな!」

警官B「大人しくしろ!」ガッシ

ディオ「ぐ……!」


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ディオ(クソッ、追い詰められたとはいえ……やはりこうなるのがおれの定めか。あのクズのような父親のように……)

ディオ(しかし、ジョジョも滑稽に死んだものよ。
もがき苦しんで壁の仮面にブチ当たり……偶然にもそれをかぶるような形になっている)

ディオ(だがあの仮面……ジョジョがかぶったとき、一瞬光ったようにも見えたが……
まさかな、おれはこんな時に何を考えている……)

ジョナサン「」ピクッ

ディオ「……」

ジョナサン「」グググ…

ディオ「……!」

ジョナサン「……」

ディオ「……まさか」

警官B「何だ!? 黙っていろ!」

ジョナサン「……」

ディオ「じょ……」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ


ジョナサン「……」スゥー…

ディオ「ジョジョ……!?」



SPW「おお! 生きている!」

警官の旦那「ジョースター卿!」

ジョースター卿「おお……!」

ディオ(馬鹿な! 無事なはずはない! 確かに急所を刺した!)

ジョースター卿「ジョジョ……肝が冷えた……しかし、生きていて良かった……!」

ジョナサン「……」

ディオ(それに、さっきおれを見たヤツの冷たい目は何だ!? ありえん! 何かわからない! だがすべてがおかしい! 間違っている!)

ジョースター卿「ジョジョ……」

ディオ「!」

ディオ「わからんのか馬鹿が! そいつに近寄るんじゃあないーー!!」

警官S「!」

SPW「!」

ジョースター卿「ディ……!?」ドスッ

ジョースター卿「じょ、ジョジョ……?」

ジョナサン「……」


 ズギュン ズギュン ズギュン


ジョースター卿「」ドサァッ



警官S「うわあああああ!!?」

SPW「なにィ!?」

SPW「ど、どうなって……! ジョースターさんがジョースター卿の首に指を突き刺したように見えた……
そして、あっという間にジョースター卿がミイラみてえに……」

ジョナサン「う……」

ディオ「ぐ……ぐ……!」ブルブル

ジョナサン「UREEYYYYYYYYYYYYY!!!!」

『うわああああああああっ!!!』


ディオ(頭……頭が混乱しているッ! 
『ナイフ』……『ジョージ・ジョースターのミイラ』……『血』……『石仮面』……『血』……光った! 仮面が! 
『石仮面』! 『ジョジョのノート』! 『脳』! 『未知の能力』! 『未知の力』!)


ディオ(まさか……ジョジョは……)

ジョナサン「KUAA……」ギロ

ディオ「ハッ!」

ディオ「離せ! 痩せぎすのカスが!」バシッ

警官B「ま、まてきさドスッ

警官B「え……?」

ジョナサン「……」


 ズギューーンッ


警官の旦那「うわあああああ!!?」

警官A「うわああーっ!!」

警官CDEF「うわーっ!!!!」

SPW「ま、また! ジョースターさんが触れた途端ミイラに!」



ディオ「おい貴様、撃て!」

警官の旦那「何を馬鹿な……」

ディオ「馬鹿は貴様だ! 死にたいのかマヌケがーッ!」

ジョナサン「」ジロ


 ブオン 
 

警官S「ぐべっ」ボンボンボンッ

警官の旦那「ひいいいい!!!」

SPW「死体、ジョースターさんが投げた死体に当たって……警官どもがグチャグチャに……」

SPW「あ、ありえねえ……いくらジョースターさんが身長195cmの巨漢だろーと、できるわけがねえ……! 人間にこんなことが……!」

ディオ「撃てーッ!!」

警官の旦那「あ、あわわ」

ジョナサン「」ズオオオ

ディオ「撃つんだ! 死にたいのかーッ!」

警官の旦那「おお……! 神よ……!」ジャキッ

SPW「! ま、待てー!!」


 ドォーン


ディオ「……うっ」

警官の旦那「あ、あっ……」

ジョナサン「……」

SPW「し、死なねえ! 頭を撃たれたのに……おれにはわからねえ……今……何が起こっているのかさっぱりわからねえ」

ジョナサン「……」

ジョナサン「……ディオ」

ディオ「なんということだ……」



ジョナサン「渇く……体が渇いて仕方がない……きみの血を飲みたい……ディオ」

警官B「ガヴォ、ガヴォ~……血……ガヴォ~~」

ジョースター卿「オゴゴォオオーッ……」

SPW「ジョースターさんに、ミイラにされた二人が!? 生き返っている! な、なんなんだよ、これぁよぉ……!」

警官の旦那「ひいー! ひいー!」ドンドンッ

警官B「うゴッ」

ジョースター卿「アガッ」

警官B「……うおォォ~~?」

ジョースター卿「アア~~……」

SPW「うおおおお! やっぱり死なねえー! こっちも不死身か!」

ジョナサン「ディオ!」

ディオ「もういい! もう十分! 大体のことは理解した!」ドンッ

警官の旦那「えっ?」ドサッ

警官B「ウがァァー!」

ジョースター卿「ア゛ア゛~~……」

警官の旦那「ぎゃああー!」ムシャムシャ

SPW「ひ、ひでえ! あの野郎、サツの旦那を囮に! 二階へ逃げていく!」

SPW「だが上は行き止まり! 自ら追い詰められにいったようなもんだぜ! てめーも死ぬ! 全員死ぬ! じたばたしても末路は同じだー!」

ディオ(やかましい……カスが。そんなことは百も承知よ……)

ディオ「ランプだ!」

ジョナサン「……!」


 ガシャァァンッ


ジョナサン「」メラメラ

SPW「ランプを上から投げつけて! な、なるほど……やつの閃きを認めるのは癪だが、火ならジョースターさんを止められるかも知れねえ!」

ジョナサン「フッ」シュゴォ

SPW「燃えてもなお!? い、いや違う……
燃えているが肉体がそれ以上の速度で再生しているんだ! 銃で撃っても死なない理由はこれかッ!」



ジョナサン「……痛くない。何の感覚もない……」

ジョナサン「父さんは死んだのか? しかし……ぼくは悲しくない……」

ディオ(火が燃え広がっていく……おれの思ったとおりに……クソッ! そうだ、燃えろ! おれの欲しがっていたこの屋敷を燃やせ!)

ジョナサン「」シュウウ

ディオ「上がってこい、ジョジョォ!」

ジョナサン「」ドゴーンドゴーンドゴーン

ディオ「階段でなく壁に脚をつきたてて!?」

ディオ「エイイッ! どこまでも化け物よ!」

ディオ「よかろう! そうやっていい気になっていろ、おれがもっと上に行くまでゆっくり来るがいい!」





SPW「おおあああッ!」


 グワシャァァッ


警官B「オゴ、ゴォ……」ピクピク

SPW「や、やった! 頭を潰したら何とか殺せた! しかし……」

ジョースター卿「」

SPW「……クソッ」

SPW「いったい何が起こったんだ……ジョースターさんの身に、何が……」


ディオ「ぐ、はあ、はあ……!!」

ディオ「や、屋根に上った……なんとかたどり着いた……クソが、パワーはジョジョの分野だろう……!」


 ビキビキビキ…


ディオ「……来る」


 ゴバッ


ジョナサン「URRRRRRRRR!!!」

ディオ「オオオオオーーッ!!」


 ゴシャァ!
 ガラガラガラ…


ディオ「え、煙突を脚の一蹴りで……よけて正解といったところか……!」



ジョナサン「ディオ……悲しいことだが、ぼくはきみを殺したいようだ」

ディオ「ハン、貴様がか?」

ジョナサン「あの石仮面は人が扱っていいものではなかったらしい……
ぼくはもうちょっと根気よく研究を続けるべきだった……それか、壁にかけ戻すべきではなかった……君の言うとおり、今のぼくは心身ともに化け物だ」

ジョナサン「ぼくはきみを殺せるし、実際殺す」

ディオ「フ……フフ、フッフッフハハ……」ダラダラ

ジョナサン「逃げるな」

ディオ「ハ、ハーハハハハッハ!! ジョジョォ! 言っておくがな、このおれは別に逃げる気などないのだ!」

ジョナサン「……」

ディオ「たとえだ! ここで命からがら逃げ出せたとしても、それはこの先一生を貴様に怯えて暮らすことになるということだ」

ディオ「暗闇の奥にいるかどうかもわからぬ化け物に、おどおどしながら暮らすなどまっぴら御免よ!」

ディオ「今! ここで貴様を始末せねばおれの安心は永遠に失われてしまう!」


SPW「ぐう!」ガシャーンッ

SPW「ふうーッ、危うく火に呑まれて死ぬところだったぜ」

SPW「だが気がかりなのはジョースターさんとディオだ……」

SPW「ディオ! ヤツは一体ェ何を考えてるんだ?」


 ゴオオオオオ…


SPW「この火力……あのランプの火とは比べ物にならねえ……ハッ!?」

SPW「まさか、あの野郎……!!」


 ドッガァァンッ


ジョナサン「!」

ディオ「おれの体当たりで! ジョジョもろとも火に突き落とす!」

ジョナサン「ディオ! きみは!」

ディオ「貴様に怯えて死ぬくらいならば! 怯えて殺されるくらいならば! こうやったほうがマシだァァー!!」



SPW「一か八かで焼き尽くすつもりかーッ!!」



ジョナサン「きみが死んでしまう」

ディオ「黙れィ! もはやおれのプライドの問題よ!」


――瞬間! ディオの脳裏には彼自身の青春が思い出されていた!


ディオ(このディオの青春はジョジョとの青春! 青春時代から続く因縁に、決着を付けてくれる!)

ディオ(欲しかった屋敷は燃えている。財産も……名誉も何もない。このディオにはもはや……)

ディオ(この意地しかないのだ!)


 メキャン


ディオ「ごおお!!?」

ディオ(こ、こいつ、落ちながらにして蹴りを! グゥ……アバラの5・6本も折れた音! 目がかすむ!)

ディオ「だが!」

ジョナサン「……!」

ディオ「離さん! 貴様のようなお坊ちゃん育ちの覚悟とは違うのだこのマヌケがァー!!」

ディオ「このナイフはッ!」

ディオ「うおおお! このナイフはッ!」

ディオ「このナイフは! おれが貴様を殺したナイフだァーッ!!」ドズゥッ

ジョナサン「URYYYYY!!!!」クワッ



 メギ マギ


ディオ「ぬうう!」ボオッ

ディオ(両腕をメチャメチャに砕かれ、背中には多分火がついている! 
だがおれと貴様は共に猛火に飛び込むのだ! 既に決まっている! 共に死ぬのだ、ジョジョ! ジョジョ! ……)

ディオ「とも、に……?」

ジョナサン「……」

ジョナサン「……わかった。一緒に行こう」

ジョナサン「もしかして、ぼくは死ねないかもしれないが……」

ディオ「……る、……か」

ジョナサン「?」

ディオ「このディオが貴様と引き分けるなど! あってたまるかァァーー!!」



――叫び! 無心の叫びッ!

――その叫びが神か悪魔に届いたのかッ! それともディオの明晰な頭脳が無意識のうちにジョースター家の構造を理解し利用したのか!!

――蹴った! 壁をッ!!

――蹴った先にはッ!!



ジョナサン「ジョースター家の……! 慈愛の女神像……!」


 ドスゥッ


ジョナサン「ギャヤヤアアア!!!」




SPW「や……邸が!」

SPW「邸が崩れるッ!! このままでは二人とも……!」

SPW「そんな馬鹿な……ジョースターさん……そんな馬鹿なあああああ!!!」


 ガァシャアアアッ


SPW「ハッ!?」

ディオ「」ゴロゴロ ドサッ

SPW「ディオ……」

SPW「お、おい! おい貴様! ジョースターさんはどうした! あのヒトは!」

ディオ「……ち……だ……」

ディオ「勝ちだ……おれの勝ちだ……ジョジョ、ジョジョ……」

ディオ「……っ」ガクッ

SPW「……ジョースターさん」

SPW「ジョースターさああああああああああん!!!」


 ゴオオオオオオ…







 TO BE CONTINUED⇒






ここまで



 バアアアーー


看守「ブランドー……おい、ブランドー……ブランドー!」

看守「ディオ・ブランドー・ジョースター!! 返事をせんかぁー!!」ガシャァァッ

ディオ「……うるさいな……傷が痛むんだ……」

ディオ「貴様のその無駄にでかい声が怪我に障る。静かにしてくれないか」

看守「ケッ! 放火魔の殺人鬼が! 偉そうに軽口を叩くんじゃあねえ!」

ディオ「ぼくが殺人鬼ですって? 看守さん」

看守「おお、そうとも! てめーのやったことが警察に伝わってないとでも思ったか! 父親に毒を盛るたぁー! 
その上ジョースター邸での皆殺し事件! この恩知らずのろくでなし野郎め!」

ディオ「フンッ、なら証拠はあるのか?」

ディオ「おれが義理の父に使ったとかいう毒薬は? おれがジョースターの人間を殺したのを見た人間は? 毒を売った売人は、一度でも証言台に立ったのかい」

看守「……ムウ!」

ディオ「あれは不幸な事故だった。何度もそう言ったはずだぜ」

看守「フン! いいか! てめーはもう生きてここからは出られねえ! 必ず証拠はある! 絶対ェ絞首台に送って……」

ディオ「それともうひとつ!! ブランドーの名でこのおれを呼ぶのはやめろ……虫唾が走る」ギンッ

看守「ううッ?」ビクッ

看守「……チッ、まあいい、面会だぞ、ディオ・ジョースター」

ディオ「……面会?」


 コツ コツ コツ


ディオ「! お前……いや、きみは」

エリナ「お久しぶりです……ディオ」




ディオ「……まさか」

看守「あ~~……ミス・ペンドルトン。あまり近づかないように。性根の腐ったヤツです、何をするかわからん」

エリナ「ええ。彼のことはよく知っています」

ディオ「……やはりエリナ、きみか」

エリナ「」ニコ

エリナ「本当に、しばらくです。七年ぶりでしょうか」

ディオ「きみは遠くに引っ越したと聞いたが?」

エリナ「父の仕事の都合で。でも、最近ここに戻ってきたのです」

エリナ「私も聞きましたわ……ジョースター邸での痛ましい事件のことは」

エリナ「そしてジョジョも……まさか……帰ってきた途端、こんなことを知るなんて……」

エリナ「ジョジョ……!」ポロポロ

ディオ「……」チッ



エリナ「私がここに来たのは、聞かせて欲しいと思ったから……真実を、あなたの口から」

エリナ「ディオ……私は七年前のあなた方しか知らない。けれど、それで十分だとも思っています」

エリナ「あなたがやったのですか? ディオ……あなたが、ジョジョを?」

ディオ「……」

ディオ「事故だ」

エリナ「神かけて?」

ディオ「おれは誰も殺さない」

エリナ「ごまかさないで。誓ってください」

ディオ「おれが殺したのは、人の形をした化け物だけだ!!」

エリナ「誓いなさい、ディオ!」


看守「な、なんだきさ……ギャーー!!!」


ディオエリ「!」

??「ディオ・B・ジョースター君……そして隣はミス・エリナ・ペンドルトン」

??「よく生き残れたものだ。あの『石仮面』の力から」

??「だが生きているぞ、『石仮面』の男も!」

エリナ「……!」

ディオ「き、貴様いったい何者!?」


 カァシャアアッ


ディオ「牢の鍵!」

??「出てきなさい。遠からず刺客が来る。それに殺される前に」

ツェペリ「わたしはツェペリ男爵だ。根性だけじゃあ『石仮面』の力には勝てんよォー」

ディオエリ「……!?」



 パウ


ディオ「うげえー!」ビシビシ

エリナ「!」

ディオ「な、なんだ? ツェペリに胸の下を突かれた途端、骨折したはずの両腕が……!」

ディオ「痛くない! 何事もなかったかのように動かせる!」

エリナ「……信じられないわ」

ツェペリ「私はさっき君の横隔膜を指で突き、君の呼吸をわたしのように特別なものへ調整した。
特別な呼吸が起こす、特別な『エネルギー』……東洋では『仙道』と呼ばれている」

ディオ「『センドー』……?」

ツェペリ「もっと興味深いものを見せてあげよう。こちらに来なさい」

ディオ(なんだ? 池の中に入っていくぞ……?)

ツェペリ「るオオオオオ!!!」

ディオ「か、カエルを!」

エリナ「きゃあああ!」


 メメタァ

 ポチャン スイィー


ディオ「ば、馬鹿な! カエルを殴ったのに、カエルは傷一つなく、その下の岩だけが真っ二つに……!」

ツェペリ「『呼吸』には『血液』が! 『血液』には『酸素』が! 血液中の『酸素』には『体細胞』が関わっている!
『体細胞』イコール『肉体』! つまり! 水に波紋を起こすように呼吸法によって肉体に波紋を起こし、エネルギーを作り出す! 
わたしの『波紋エネルギー』はカエルの肉体を『波紋』となって伝わり、岩を砕いたのだッ!」

ツェペリ「ディオくん……きみは事件の後すぐ牢にブチ込まれたから知らんだろう。あの屋敷の残骸からは、数人の警官隊の遺体しか見つかっていない。
『石仮面』も! 『石仮面の男』ジョナサン・ジョースターも忽然と姿を消してしまっている!」

ディオ「何だと? 何が言いたい貴様?」

ディオ「ジョジョが生きているだと!? い、いや……そもそも、なぜ関係のない貴様があの事件のことを知っている!?」

SPW「おれが喋ったのさ」

ディオ「ヌム!」バッ

ディオ「貴様あの時の……スピードワゴンとかいうカスか」

SPW「ケッ、カス具合は似たようなモンよ」ペッ




ツェペリ「ディオくん、きみはさっきわたしを『関係ない人間』と言っていたが、そうではないのだ。わたしは『石仮面』を探している……何年も何十年も。『石仮面』を破壊するためにッ!」

ツェペリ「わたしは知っている。『石仮面』のパワーとこの『仙道エネルギー』は『表』と『裏』なのだ」

ツェペリ「石仮面の力による超人的なパワーは人間がどんなに努力しても太刀打ちできん! だからわたしはこの仙道を研究し体得した。石仮面をかぶったものを倒すためにッ!」

ツェペリ「きみもこの力を学ばなければならない! さもないと死ぬッ! きみもこの全人類もッ! きみはもう既に石仮面と戦う運命にあるッ!」


ディオ「……何ィ~~…………!!?」

エリナ「ディオ……なんのことです? あの人は一体」

ディオ「うるさい黙っていろ! おれもまだ整理がついていないのだ!」

エリナ「……」

ディオ(『石仮面』……『仙道』だと? だが両腕が治ったのは奇怪だが事実! スピードワゴンのカスのようにおれに敵意を持っているわけでもなさそうだな……)


ディオ「わかった。もっとよく教えてくれ……おれも命は惜しい」

ツェペリ「嫌だと言っても無理やり教えるわ! もう時間がないぞ!」

ツェペリ「ジョジョは動き出す。石仮面の目的……自分の仲間を増やし、世界の帝王になるためにな! まずディオくん、きみが狙われるはずだ!」



ディオ(そしておれはツェペリと共に波紋呼吸の修行に入った)

ディオ(ツェペリが長年石仮面を追っているというのは真実らしく、彼はおれの知らぬ様々なことを知っていた)

ディオ(太陽の光と『仙道』……『波紋』エネルギーの関係性。なぜ石仮面で吸血鬼と化した人間が太陽光で死ぬのか。波紋と波紋は打ち消しあう……)

ディオ(しかし、そもそもなぜツェペリは石仮面を追っているのか? おれがしつこく尋ねると、やつは渋々口を開いた)

ディオ(なんと石仮面はもともとツェペリの発掘したものだったというのだ。それが回りまわってジョースター家に買い取られた)

ディオ(やつは責任を果たそうとしているのか……)

ディオ(だが、だからといっておれもまた責任感からこんな修行に明け暮れていると思ってもらっちゃあ困るのだ。
おれはただ、安心を手に入れたい。ジョジョにいつ殺されるか、ガタガタと震えながらすごすよりも、こっちの方が数倍マシというだけなのだ!)



 ――そして、数週間が経った!





 コツ コツ コツ


エリナ(ディオ……あの不思議な男爵の下に行ってもう随分と経つわ)

エリナ(脱獄して、警察はずっと大慌てだけれど……)


??「……きみ」ズオオオオオ

エリナ「……」

??「こんなところで、こんな遅い時間に何やってるんだ? 危ないじゃあないか、女の子が一人で……」

エリナ「ご忠告ありがとう。でも、父の仕事を手伝いに行く途中なので」

??「こんな遅くに?」

エリナ「医者ですの。時間は関係ないわ」

??「ああ、なるほど! だがやはり危なっかしいね。最近は新聞の『あいつ』のようなヤツもいるし」

エリナ「『あいつ』……? 『切り裂きジャック』? でも、あれはロンドンでのことでしょう」

??「わからないよ……なにか、用事があって場所を変えるかも」

エリナ「……」

??「……」

エリナ「……わたし。行かなければ……患者様が」

??「まあ待てよ……待て、話をしよう……待て!」

エリナ「!!」ダッ

??「待てと言ってるだろーが! この男のように仕事する身の程知らずの女がァーッ!!」

エリナ「……ああッ!」


 ブギャアアッ


??「ぐぎゃああああ!!!」

エリナ「ハッ!?」



ツェペリ「ふうー……怪我はないかな。ミス・ペンドルトン」

エリナ「男爵!」

??「か、顔が! おれの顔がァー!」ダッ

エリナ「ああ! 逃げていくわ!」

ツェペリ「ペンドルトン嬢。どうぞ、お手を」

エリナ「男爵……逃げていくわ。彼はジャックだったのです、切り裂きジャック……」

ツェペリ「ああ、知っておるよ。だがヤツは、もはや警察の手には負えん」

エリナ「……?」

ツェペリ「もっと適任を、この先に置いて来た」





男「……」スッパァァー

男「ふう~……あの娼婦め。足の間になんか挟みやがって……うっかり騙されるところだったじゃあねーか」


 ドドドドドド


ジャック「くそ、くそー!」ダダダダ

男「……?」

男(なんだありゃあ……あったかくなると妙な奴が沸くモンだよなぁー)

男「ん……?」スウー

男「なんだぁー? おれの手に横線みてーなモンが……呑みすぎななななぐべっ」グチョォッ

ジャック「くそーッ! よくもあいつら! かならずブッ殺す! かならずこまぎれにして食らってやるぜぇーッ!!」ダダダダダ



SPW「おいディオ」

ディオ「なんだカス」

SPW「てめえ! 二度とおれをそう呼んでみろ、ブッ殺してやるぜ!」

ディオ「静かにしていろ。もともと貴様はくっついてきただけに過ぎんのだ」

SPW「ぬう~~……!」

ディオ(チェッ! ツェペリのやつめ、こんなものとおれを一緒に置いていくとは!)

ディオ「……」



ツェペリ『この腐り水のようなにおい……間違いないぞ。<屍生人>だ』

ツェペリ『人間を食らって永遠の生命と力を与えられ、しかし吸血鬼の思いのままに操られる肉人形……痛みは感じず、その肉体は腐りながらも生きながらえる一方』

ツェペリ『元は人間だが気にせず思いっきり……とはいっても、きみはそーいうこと気にするよーな性格じゃあなかったの』

ツェペリ『さて、わしが奴なら……これは大事なものの考え方じゃぞ……もし自分が敵なら? と相手の立場に身をおく思考』

ツェペリ『わしが奴なら、主から与えられた大切な仕事だ……きっと恐らく、<腹ごしらえ>して万全な体調の元挑もうとするはず!』

ツェペリ『そこを突く! 先手を打つのだ……』

ツェペリ『その後の仕上げは教えたとおりお前がしろ。奴を倒せんようなら、ジョジョとは戦えん』



 ダダダダダダダダ


SPW「足音!」

ディオ「来たか……ハッ!?」

ディオ「おい! 明かりを消せ!」

SPW「何ぃ? この暗闇でかよ」

ディオ「この暗闇だからこそだ、マヌケめッ! 奴に居場所が分かる! 奴はさっきまで、『腹ごしらえ』のためにうろついていたんだぞー!」


 グオオオオ


ディオSPW「!」


 ボットォーンッ


SPW「な、何ぃー!? 死体が降ってきた!? ううっ、しかも首から下が輪切りになって……!」

ディオ「違う、見るのはそっちではない! 『やつ』が上から来る!」

ジャック「ウッシャアアアアア!!」

 

 ブアボッ


SPW「うおおおお!? 奴の全身からメスが!」

ディオ(! あの量は避けられん!)

ディオ「そもそもが貴様のせいだ! 男を見せろよスピードワゴン!」バッ

SPW「おおっと!」ヒョイ

ディオ「!」

SPW「マヌケはてめーだぜ! サツの旦那と同じ手が食うか! ワンパターンなんだよぉー!」

ディオ「ちいっ!」



 ツェペリ『戦いの思考その2だ。ノミっているよなあ……あれは自分より遥かにデカイ人間に立ち向かう。恐れ知らずなノミの行動は果たして勇気か?』

 ツェペリ『ノミどものは勇気と呼べんなあ。ではディオくん、勇気とは何か?』

 ツェペリ『勇気とは怖さを知ることッ! 恐怖を我が物とすることじゃあッ!』

 ツェペリ『恐怖を支配した時呼吸は乱れん! 波紋法の呼吸は勇気の産物!』



ディオ(恐怖を直視する! 『死』への恐怖をッ! どうすれば生き残れるッ!)

SPW「うおおおおッ! 肩が!」スパアッ

ディオ「」ビチャアッ

ディオ(……血ッ! これか!)

ディオ「コオオオオオ……!」

ディオ「食らえ! 足底突波紋疾走(ソールオーバードライブ)!!」ゲシッ

SPW「イデエー! なにしやが……うおおおお!? なんだ、急に出血があー!?」ブシュオオオッ




 キン キン キィンッ


ジャック「!」

SPW「な、なんだ今のメスの動きは! 不自然ッ! まるでおれたちを避けるように軌道がグイッと変わったぞ!?」

SPW「それに、さっきまで血がドバドバ出てたおれの肩の傷が……塞がっている! なんだこれは、ディオは一体何をやった!?」

ディオ「ツェペリの奴は言っていた! 水は通常より何倍も波紋を通す!」

ディオ「おれはスピードワゴンの肉体に波紋を流し、血管を一時的に膨張させ血を吹き出させた! 
空中に撒き散らされた血液は波紋入りッ! おれの生半な波紋パワーでも倍加すれば刃物の切っ先を逸らすくらい出来る! いわば血のシールドよッ!」


ジャック「!」バッ

SPW「逃げた!? いや……」

SPW「いったん身を隠したのか……だが、認めるのは嫌だが、助かったぜ、ディオ」

ディオ「フハハハハッ、屍生人といえどこんなものか! 貧弱、貧弱ゥ!」

SPW「……」




 キラッ


SPW「ハッ!? やつのメス!」

ディオ「ヌウッ!?」スパアッ

SPW「刺さったか!?」

ディオ「かすっただけだ! 馬鹿めが!」

ジャック「……チッ」スウ…

SPW「攻撃と共に退避……どうやら奴は一撃離脱戦法を取るようだぜ、ディオ!」

ディオ「……」ドクドク

ディオ「チンケな屍生人ふぜいが……このディオに傷を負わせたなァ……!」ギンッ


ジャック「……フシュゥゥ~……」

ジャック(『ふつう』じゃあ悲鳴を上げて縊られるだろーおれの急襲を回避した。その上あのバリヤー……おれの顔を溶かしやがった野郎は仲間だな、妙な技使いやがって)

ディオ(チッ、暗闇に目が慣れん……やつはどこだ? 今度はどこから奇襲してくる?)

ジャック(だがわかるぜ~、てめーらの位置が。臭うぜ! 血の臭い! あったけー血の臭いだ、距離まで分かるぜ)


SPW「おいディオ……」

ディオ「いったん大通りに出る……この狭い通路は奴にとって都合が良すぎる場所だ」

SPW「ああ、それなら方向はわかる。あっちを3メートルほど行けばすぐだぜ」

ディオ「おい、おれと背中を合わせるんじゃあない……まるでおれとお前が仲間みたいに見えるだろうが」


ジャック(そうだ! こい! もっと近づいてこい! あと1メートル!)

ディオ(戦いの思考その1……『敵の立場で考えろ』。奇襲は二度失敗した。おれなら三度目はしない)

ジャック(頚動脈に噛み付いたままピーンと引っ張ってやる! そう! もう少しだ! そこのカドまでこいッ!!)

ディオ(戦いの思考その2……『恐怖を我が物に。そのとき呼吸は乱れん!』)

ジャック(早くこォいッ!! ベロベロ吸ってやるぜ!)


ディオ「……」



ディオ「スピードワゴン……無駄におれに身を摺り寄せてくるんじゃあない」

SPW「うるせえ、てめーこそ早く行けよ!」

ディオ「お前、今すぐにでも逃げ出したそうな顔をしているな、何故だ」

SPW「に、逃げ出したいわけじゃあねえ……ただ、精神がおっつかねえだけだ。こんなエグイ死体とは、一秒でも早く離れて、あっちの広い通りに行きたいぜ」

ディオ「死体……」

男「」



 ツェペリ『戦いの思考その3じゃ。北国ノルウェーにこんな諺がある』

 ツェペリ『<北風が勇者バイキングをつくった>!』



ディオ「……!」グオオオ




 バッ


ジャック(人影! 濃いー血の臭い! きた! これだぜー!)

ジャック「馬鹿がー!! てめーの熱い血をおれの顔面にぶちまけろォォーーッ!!!」


 ズババァッ


ジャック「プワアァァ~~!! これだ! このあったけー血! ベロベロベロベロしてぇ~……」

ジャック「ああ? 待てよ、妙だ、手ごたえが『小さすぎる』……」

ディオ「貴様の負けだ、吸血ゾンビ」ザンッ

ジャック「え!?」

ジャック「馬鹿な! なんでテメーがこんな近く、確かにさっき切り刻んで……え!? じゃあおれの刻んだのは……」

ジャック「し、死体ー! おれがさっき投げ入れた!」

ディオ「随分と汚い『食い残し』だ。吐き気がする……それを拾って投げるのだけでも相当気が滅入る作業だったぞ」

ディオ「だが、残虐性ならこのディオの方が上だ!」

ジャック「き、貴様ァー!」

ディオ「無駄無駄無駄無駄無駄ッ!」


ディオ「奴の浴びた血を伝われ! 波紋! 『仙道波紋オーバードライブ』ッ!!」

ジャック「ホゲェーーッ!!」

ジャック「くるゃああ~~~っ!」ギャルルンッ


 ボシュウウッ


SPW「や、やった!」

ツェペリ「フム、どうやら『風はバイキングをつくった』ようだな」

エリナ「……!」


ディオ「……フ」

ディオ(ジョジョの奴もこうなるということか……フン! 楽しみになってきたじゃあないかッ!!)



 ――翌日。


SPW「おいディオ!」

ディオ「なんだカス」

SPW「ブッ殺す!」

ディオ「やってみろ薄汚い阿呆がァ!」

ツェペリ「キミ達ぃ~……せっかく同じ目標があるんだからもーチョット穏やかにやってもいいんじゃあないのかな」

SPW「おれとこいつが同じ目的だと!? 冗談きついぜツェペリのオッサンよぉ!」

SPW「おれはジョースターさんを助けるつもりだが、こいつは殺すつもりでいる!」

ディオ「善人ぶるなよスピードワゴン……救いだろーが殺意だろーが、やつが始末されることに変わりはないのだからな」

SPW「なんだとォ!? そもそもてめーが!」

ツェペリ「スピードワゴン君! それで? 何をしに慌てて駆けてきたのかね、君は」

SPW「お、おう。それが……」

SPW「ジョースターさんの居場所がわかった」

ディオツェペリ「!」

SPW「エリナさんの知り合いが遠くに問診へ行って……偶然見つけたらしい! ジョースターさんにそっくりな顔をした、若い男をよー!」

SPW「場所はロンドンの更に南! 南の片田舎『ウィンドナイツ・ロット』だ!」









 TO BE CONTINUED⇒





ここまで

個人的には
ジョセフ「なにこれすごい! すごい波紋っぽいし波紋でいいや!」
アヴドゥル「DIOはスタンドって呼んでましたよ」
ジョセフ「マジで!? わし波紋かと思ってた!」
アヴドゥル「精神エネルギーらしいですよ」
ジョセフ「マジで!? でも波紋っぽいから幽波紋って当て字付けちゃおう!」
花京院「当て字かっこいい」 →そして誤字へ…
という経緯だと嬉しい



 ――ロンドンから馬でまる一日……
 ――1本しかない馬車街道を行くと、500年前以上も前に掘られたと記録されるトンネルがある。
 ――そのトンネルを抜けると『風の騎士たち(ウィンドナイツ)』と呼ばれる小さな『町(ロット)』があるッ!
 ――三方を険しい岩山に囲まれ、残る南の一方は断崖絶壁の海!!
 ――これからこの町は消失するッ!!





 ヒウウウウウ…


女「ひ、ひぃ……ひイイイイ……!」

ジョナサン「……気の毒だ」

女「? ……!?」ハアハア

ジョナサン「いや本当、すっごくカワイソウだと思っているんだ。きみはなんていうか、今は食べ残しのチョコみたいな存在なんだよ。
目の前にあるから食べるみたいな……ちょっと違うかな?」

女「ああ、あああ……!」

ジョナサン「そう思うなら助けてって顔をしている。ぼくもそうしてあげていいと思っている。きみは若いし未来があるし……婚約者もいるって話だ」

ジョナサン「そうだね、確かに……きみは生きていたほうがいい人間だ」

女「あああ……」

ジョナサン「でもやっぱり、何となく嫌だな」グッシァァッ

女「」ドサッ

ジョナサン「さっきは気の毒だと言ったけれど、それはうそなんだ」

ジョナサン「ぼくにはもう、ふるえるほどの心は残っていない。悲しみも熱さもない」

ジョナサン「……ディオ!」

ジョナサン「正直ぼくは彼を恨んではいない……恨むほど彼は大きくない。この世は全てちっぽけだ。ぼくだけだ、ぼくだけが大きい!」

ジョナサン「生き血こそ力! 永遠こそ望みッ! ぼくの『生』はこのためにある!」

ジョナサン「」ピクッ


 ズル…ズル…


ジャック「……ジョ……さま……」

ジョナサン「……ジャック?」

ジョナサン「きみは切り裂きジャックだね? どうしたんだ! こんな酷い……溶けている!」

ジャック「ぐ……ギィィイイイイ……」シュウウ…

ジョナサン「……気化してしまった」

ジョナサン「ディオ! 彼だな、彼がやったのか? ……だがどうやって……どこからこんな力を……?」

ジョナサン「……」



 ガラガラガラガラ


ディオ「風の騎士たちの町……ウィンドナイツロットか」

SPW「裏の世界にも手を回して、確認はとった。墓地の傍の館に、病気の療養で引っ越してきた男がいるらしい」

SPW「相当酷い火傷を負っていたが【最近とてもよくなってきた】そうだぜ。ジョースターさんはやはり、生きてその町に潜んでいるのか……」

ツェペリ「しかし! こんなにも早くジョジョの情報が手に入ったのは幸運だったな。相手が『波紋法』の存在を知らぬなら先手必勝で倒す隙を作れる」


 ギイーーッ


御者「旦那方、着きましたぜ。ウィンドナイツロットでさぁ」

SPW「……!」

ツェペリ「覚悟はいいな」

ディオ「言われるまでもない」


 フアアアアア…


ツェペリ「予定通り、まだ日の昇っている間に到着できたのーッ。ジョジョが何の策もなくここにいるとは考えにくいが……果たして楽に倒せる相手か」

SPW「あのよう、ツェペリのおっさん……なあーっ! ツェペリのおっさんよォ!」

SPW「あんた、さっきからしきりと『倒す』『倒す』と言ってるがよぉ、あの人が元のままだったとしてもそーするのかい? 
『元』ってぇのはつまり、『元』の通りの善人だったらってことだがよ」



ツェペリ「ウム……きみには残酷な話だが、ありえんな」

SPW「なぜだ?」

ツェペリ「『石仮面』はかぶった人間を邪悪そのものへ導く。
吸血鬼は人を殺さねば生きていけない! だから【そのような存在になった者に人としての心は残らない】」

ツェペリ「わたしの父は息子のわたしをちゅうちょなく殺そうとした。ジョジョも……もはや肉親への情など持ってはいないだろう」

ディオ「確かにな。やつは父親を殺した」

SPW「う、うう……!」

ディオ「フン、戦う気がないなら帰っちまっても構わんのだぞ」

SPW「馬鹿を言うんじゃあねえぜ! あの人は立派な紳士だった! おれは人間としてあの人を尊敬していたんだ! 道を踏み外そうとしてんなら、正してやるのも友情だぜ!」

ディオ「……勝手にしろ」


ディオ(ジョジョ……おれの知る奴はどこまでも鼻の先に青臭い正義をぶらさげて平然としている奴だった)

ディオ(いやむしろ、正義こそが奴の生きる目標だったのだ。それを根こそぎ奪われたら人はどうなる。カラッポの無気力状態に陥ってくれるのなら嬉しいが……)

ディオ(奴の実直な正義がそのまま悪へと向かった場合ッ! ものすごい大悪党か、心を持たぬ悪魔かが生まれるだろう。果たしてジョジョは……)


ディオ「はっ!」カッ

ツェペリ「気をつけろッ! 何者か襲ってくるぞッ!」


 バッキューーン


ポコ「いっただきだぜーーっ!! ウスノロどもォ!!」ドボン

SPW「ひ、ひったくりぃ!?」





ツェペリ「うむ、子どものひったくりのようじゃ! しかし要領のよいやつ! ロープであちらの崖からこちらの池へ! 
飛び移る最中にカバンをひったくるとは。盗みがそのまま逃走につながっておる!」

SPW「おっさん! 何トローッとしてんだよぉ! あのカバンには旅費の全財産が……」ハッ

ディオ「貧乏人のクソガキがァ~~……!!」ザワワワッ

ツェペリ「う~~む、ディオくん、あまり強い波紋を出してはいかんよ」

ディオ「水中のための【青緑波紋疾走<ターコイズブルーオーバードライブ>】ーーッ!!」

ツェペリ「聞かんな。きみは」

ポコ「ビリッときたあああああーー!!」

ポコ「」プカァー

ツェペリ「ん! いかん、水の中で気絶してしまったぞ」

ディオ「放っておけ。それよりカバンだ」

SPW「このひとでなしめ! しょうがねえ、おれが助けに行ってやる!」ザブン

SPW「おーい坊主! 大丈夫か、しっかりしろー!」ザボンサボン

ツェペリ「きみこそ大丈夫か、スピードワゴンくん。すごい泳ぎ方しとるよ」

SPW「浮けりゃあいんだよこんなもんは! ハッ!?」

SPW「うわあああ!? ツェペリのおっさんが水の上を立っている!? そんな馬鹿なあああ!?」

ディオ「ほーう、水の上を立つのがそんなに珍しいか?」

SPW「ディオ!? 膝の上ぐらい辺りまで中途半端に沈んでいる! だが浮いている! どうなってんだこりゃあ!?」

SPW「ハッ!? まさかこれはッ!」

ディオ「そおうだッ! 『波紋』だよォ! このマヌケがぁーー!!」

ツェペリ「ディオくんはまだ波紋エネルギーの蓄積が甘いな」

ディオ「……ム」

ツェペリ「水面に起こした波紋エネルギーと体内の波紋エネルギーを、あたかも磁石の同極同士が反発するがごとくやらなければいかんのだ。膝まで濡れるようではまだまだじゃな」

ツェペリ「さて、そうこう言っている間に子どものところに着いた……カバンは、どうやら向こう岸まで流れて行ったようだな」

ディオ「チッ」ザボザボ

ディオ「このクソめ! せっかくの着替えが濡れちまったじゃあないか!」

ツェペリ「まあまあディオくん。とりあえず、彼に町の案内を頼むことにしよう」

SPW「おい坊主、目を覚ましな」

ポコ「う……ハッ、あ、あんたたち誰?」

SPW「おい、様子が変だぞ。てめーの波紋のショックなんじゃあねえのか!?」

ディオ「馬鹿が、手加減ぐらいは……」

ツェペリ「いや! おかしいのは少年だけじゃないぞ! 周りを見ろ」

ディオSPW「!」




 モコモコモコ
 ザバ ガバッ ゴバ


SPW「ぞ、ゾンビ! しかもこんな大量の!」 

ディオ「……墓地ッ」

ツェペリ「その通り。どうやら池の向こう側は墓地だったらしい! どうやらわしらは既にご案内されておったようだ!」

ディオ「……!」ハッ

ジョナサン「……」ズオオオオ

ディオ「ジョジョ!」

ジョナサン「しばらくだね、ディオ」

SPW「ジョ……!」

ジョナサン「おや、スピードワゴンもいるじゃあないか。隣の派手な帽子の人は? 誰なんだい?」

SPW「ジョースターさん……!」

ツェペリ「奴がジョジョか」

ツェペリ「なんという……穏やかな顔をした吸血鬼だ」


ポコ「お、おいらは? なにをしてたんだい? ここはどこ? あんたたちは誰だい?」

ツェペリ「だが! 人間の子どもに催眠術をかけてわしらを自分の戦いやすい時と場所におびき出した、その狡猾さよッ!」

ツェペリ「なるほど、生前は聡明な男だったのかもしれんが、今はそれが奴の邪悪さを手に負えないものにしておる」

ツェペリ「石仮面の力は間違いなく奴に宿っているッ! なんとしてでもあの男を消滅させねばならん!」




ゾンビ「ウウグオオオオオオ!!」ドドドドドド

ポコ「ゲッ!」

ポコ「ヒイイイイイーー!!」

ディオ「おい小僧、名は」

ポコ「ポ……ポコ」

ディオ「よし、家族には伝えておいてやるから心置きなく死ね」

ポコ「イヤアアーー!!」

ツェペリ「こらディオ」

ツェペリ「すまんねスピードワゴンくん、少しの間彼を頼むぞ」

SPW「お、おれぇー!? 冗談だろ、ツェペリのおっさん!」


ツェペリ「どうやらこの墓地の騎士達のゾンビどもだな! いくぞディオくん」

ディオ「ジョジョのところへ一気に駆け上がるか……いいだろう」

ディオツェペリ「コオオオオオオ……」

ポコ「お、おにいちゃーん!」

SPW「くっ、し、しかたねえ! 任せろ! ジョースターさんならこういうとき真っ先に守ってやったはずだ!」

ツェペリ「山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)!」

ディオ「ズームパンチ!!」

SPW「ハンマーだ! くらええい!」グチャア

ゾンビ「ウワ゛アアアアアア……!」ボシュー



ツェペリ「ジョナサン・ジョースター……あだ名はジョジョか」

ジョナサン「……」ビシ

ツェペリ「個人的には貴様のことは知らん……だが、貴様の脳を目覚めさせた石仮面に対してあえて言おう」

ツェペリ「とうとう会えたな!」

ジョナサン「……」

ジョナサン「……ディオ。きみはその人からその不思議な技を習ったのかい」

ツェペリ「ヘイ! 根っからの英国紳士か? 紹介者がおらんと話も出来んというわけか?」

ジョナサン「火傷の傷も随分と治癒できた……あとはこの、女神像に刺さった傷だけだ。……ツェペリとかいったかな。
ぼくにとって最上の薬は淑女の手当てのみだが、最後の消毒は仕様がない、彼で済ますとしよう!」


ツェペリ「!」

SPW「……ううッ」

SPW(ジョースターさん……何を言っている? まさか今のはあんたが言ったのか!? 考えられねえ! おれにはとても信じられねえ!)

ツェペリ「貴様――いったい何人の生命をその傷のために吸い取った?」

ジョナサン「……」

ディオ「どけィ、ツェペリ……聞くだけ無駄だ。おまえは今まで食ったパンの枚数を覚えているのか? そういうことだ」

ツェペリ「」グッ

ディオ「そしてジョジョ! きさま勝手に話を進めるんじゃあない!」

ディオ「きさまを始末するのはこのディオをおいて他におらん!」ダンッ

ツェペリ「ディオ! 先走るな!」

ディオ(構うものか! ジョジョはまだ『波紋』のことは知らん! 一気に決めてくれる!)コオオオオ

ディオ「流し込む! 太陽の波紋『山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)』!!」

 
 ボゴオオオッ


SPW「ああ! やった! 波紋がジョースターさんの腕を伝わって行くッ!」

ディオ「勝った! 貴様の負けだジョジョー!」


 ガシイィッ


ディオ「!? おれの拳を掴んできた……!?」

ジョナサン「この力で……切り裂きジャックを溶かしたのか?」




 バッシイインッ
 ギインッ


ディオ「なんだとォー!? ジョジョの腕が! 凍っている!」

ディオ「ハッ!」ピシピシ

ディオ「ぐうわああーー!!」ボンッ

SPW「ディオの野郎の腕が裂けた!?」

ツェペリ「ただ裂けたのではない……血管から何らかの力で膨張し破裂させられたのだ!」

SPW「血管を狙った攻撃……!? ということは、ジョースターさんは! ディオの攻撃が血液に関係すると見抜いていたのかッ!?」


ディオ「な、なぜ……」ドクドク

ディオ「なぜ貴様が『波紋』のことを知っている……!? ジョジョォー!」

ジョナサン「さあね……なぜだろうな、わからないだろうな、きみには……」


ツェペリ「ここまで落ちてきたディオの血が……凍っておる!」

ツェペリ(なるほど……吸血鬼は自身の肉体を自由に操ることができる! ジョジョはディオの触れた箇所の水分を気化させたのか! 
水分は気化されるとき同時に熱を奪っていく! 血管ごと瞬時に凍らせれば波紋エネルギーは奴を通らん! 考えたな……)


SPW「おっさん! あんたとディオ! 二人で二倍の波紋パワーなら!」

ツェペリ「いいや! 奴の技は血管自体を凍らせる! いくら波紋を練ろうとやつには届かん! なによりディオとは呼吸が合わんのだ!」

SPW「なんだってェー!?」




ジョナサン「ディオ、きみの成長を認めよう。今まで君なりに努力したのがとてもよく伝わる拳だ」

ディオ「パブリックスクールの教師かきさまはァ……腹が立つだけだ。……フン、きさまはむしろ劣化した!」

ジョナサン「ところでディオ、ぼくがきみならいつまでも、ぼくの手に触れていないがね……」

ディオ「!」

ディオ(グゥ! 離れん! 幼いころ凍った金属に触れて皮を剥がした馬鹿者がいたが……今のおれはまさにそれ!)

ジョナサン「UREEYYYYY!!!」グオッ

SPW「やばい! 空いたほうの手で殴りかかる気だ! 吸血鬼の腕力、一発でも食らったらお終いだーッ!」

ツェペリ「ぬう! ディオ!」ダンッ

ツェペリ「食らえ! 波紋をこめた蹴りッ!」

ジョナサン「……フンッ」
 

 ブギンッ


ツェペリ「ぐおお!」

ディオ「何! ツェペリ!」

SPW「ツェペリのおっさんの脚を指でチョッピリ突っついただけで! そ、そしてやはり波紋は流れていねえ!」

ジョナサン「スピードワゴン!」ブンッ

SPW「うおおおーッ!? ふたりまとめて投げやがった!」


 ドスン ドスン


SPW「ツェ、ツェペリのおっさん大丈夫か! ディオ!?」

ディオ「……わめくな」

ディオ(腕が完全に凍っているッ! クソッ! このままでは血が通わずに最悪切り離さなければならないッ!)




ジョナサン「スピードワゴン……きみには恩がある。人間だった時の恩が」

SPW「ハッ……!」

ジョナサン「よってきみだけは助けてあげよう。その役立たずたちを置いてすぐに帰るんだ……
と言いたいところだけど、きみがまた彼らの仲間を連れてこないとも限らないし、やはり殺すことにしたよ、今決めた」

ジョナサン「きみは弱いが意志まで薄弱な男じゃあない。因縁を引き摺るつもりはない。やはり殺す!」グアッ

SPW「う、うううッ!」


SPW「このドス黒い気分は……悲しみと交じり合うこの気分は何だッ! 汗がふき出すッ! 
奴はもはや『ジョースターさん』などと呼べる奴じゃあない……それなのにジョースターさんの記憶を奴は持っている!」

SPW「だがただ一つだけ分かるぜ……! やつだけは生かしちゃあおけねえ! あんな痛々しい存在を放っておいちゃあいけねえ!」


??『UREEYYY……!』ゴゴゴゴゴゴ

ツェペリ「ハッ!?」

ディオ「岩盤が……揺れている」


 ズゴォォンッ


SPW「なんだァーー!!? 岩盤の下にゾンビが! し、しかも指の一本であんな大岩を支えていやがるッ!」

??「ジョジョ様……あなたはこのような下らん輩に構っていてはならんお方だァ……」

??「左様! このタルカスと黒騎士ブラフォードにこいつら虫けらの始末はお任せくださいますよう……!」

ディオ「タルカス……黒騎士ブラフォードだと!?」

SPW「知ってるのかディオ!?」

ディオ「脳ミソがカスかきさまは! 教科書にも載っている偉人だぞ!」

SPW「教科書なんざ読んだこともねーよおれぁ!」

ディオ「チッ……向上心のない馬鹿め」

ディオ「しかしジョジョ! 考古学に熱中していた奴なら、薄々こういうこともするだろうとは思っていたが、よりにもよってこの英雄どもをとは!」




ブラフォード「もはやジョジョ様と奴らの勝負は決したも同然」

タルカス「後始末! どうぞこやつら血の詰まった皮袋ども我々におゆだねくださいますよう!」

ジョナサン「……」

ジョナサン「いいだろう。そうだな、やっつけてしまえ」


ディオ「ジョジョ! きさま逃げる気か!」

ジョナサン「きみと戦う意義はもうないと言っているのだ」

ジョナサン「『波紋』というものの力も見せてもらった。ちょっぴり脅威に感じていたのは、どうやら買いかぶりだったようだ。もはやぼくがここにいる必要はなしッ!」ザッ

ディオ「待て、ジョジョ! ジョジョーッ!」

ジョナサン「しかしディオ……きみは、ずいぶんとちっぽけになったものだなァ」

ディオ「……!」ギリッ

ディオ「ジョジョ、ごときが……このディオを見下すだと……! おのれェ! この屈辱、忘れはせんぞッ!」








 TO BE CONTINUED⇒




ここまで
予選待機

ジョナサンはジャックの例も有るからブラオード、タルカスの戦いを見守っているかも。

第二部でカーズから赤石を掠め取り、
ジョナサン「どんな手を使おうが…最終的に勝てばよかろうだったね」
カーズ「ジョジョォォォォォーーー(断末魔)」
ジョナサン太陽を克服



 ドドドドドドドド


タルカス「」グワ

ブラフォード「」グオオッ

SPW「な、なんていう覇気だ! こいつらはただの屍生人じゃねえ! 
何か、圧倒的なものを秘めている! 多くの人間を見てきたおれにはわかる!」

ディオ「十六世紀エリザベスⅠ世暗殺を企て、斬首の刑に処せられた悲運の女王メアリー・スチュアートに仕えた男ども……」

ディオ「世を恨み! 人を憎み! 怨念だけが暴走している! もはやただの復讐鬼か!」


 ドッヒャアアア


ツェペリ「ぬうぅ!」ドスドスドス

SPW「ツェペリのおっさん!」

ツェペリ「黒騎士ブラフォード……こやつ、髪の毛から血を吸い取るのかッ!」ズギュンズギュン

ツェペリ「ハッ!」

タルカス「」ズゴゴゴゴ

SPW「やべえ! あの屍生人ども二人ともツェペリのおっさんに向かっていっている! ディオ!」

ディオ「……!」


ディオ(このままではジョジョに完全に逃げられてしまうッ……! おのれ、ツェペリなどどうでもいい……! 
だが奴は! 奴だけは! のがすわけにはッ!)


ディオ「おいそこのガキ!」

ポコ「えっ? お、おいら?」

ディオ「そぉだ貴様だ! こっちに来い!」

ポコ「な、なんで……」

ディオ「いいから来いィ! そして脱げ!」

ポコ「なんでェェ!?」

ディオ「いいから言うとおりにしろォーッ!」




ツェペリ「左手にためる波紋! 波紋疾走(オーバードライブ)ゥーー!!」ボシュウゥッ

ブラフォード「!」

SPW「自分の腕を殴って髪の毛を焼ききった!?」


SPW(そうか……ツェペリのおっさんにも譲れないものがある! 何十年越しの信念と、未来への希望が!)

SPW(おれたちの希望が!)


ブラフォード「老兵というものが最前線に赴く時ィ……それは必ず理由があるものだァ……」

ブラフォード「どんな若き力にも流されぬ! ある強さがあるものだァ!」

ブラフォード「そしてそれを貴様にも感じるぞ……根性の座った男よォ……気高い良い目をしている……!」

ブラフォード「このブラフォードの三百年ぶりのウォーミングアップにはちょうどいいィ相手だァッ!」

タルカス「……」ズゴゴゴゴ

SPW「ツェペリのおっさんは強い! だが相手は二対一……! それにあのタルカスとかいう巨漢はまだ手の内を見せていねえ、それがまた不気味だぜッ!」

ポコ「うわああああああーー!!」

SPW「ハッ!?」

ツェペリ「!」



ポコ「いい、いたい! 痛いよ! やめてくれよぉぉーー!!」

ディオ「喚くんじゃあない、じっとしていろ!」

SPW「なッ、何をやっていやがんだ! テメー!」

ディオ「見れば分かるだろうが……溶かすッ! 凍った腕にガキの腹の体温は高くてちょうどいい……!」

SPW「やめろ! こいつに凍傷が残っちまう!」

ディオ「火傷が何だというのだ! このままジョジョを逃すつもりか!」

SPW「て、てめえ~~……!」

ポコ「う、ううう……もういやだぁ……姉ちゃぁーん……」

SPW「こんなガキまで食い物にしやがるか……! このクズヤロー!」

ディオ「じゃあどうしろというのだ? 正々堂々やれと? このおれに? フンッ」

ディオ「何を勘違いしているか知らんが、このディオはジョジョさえ倒せればあとはどうでもいいのだ! ガキが死のうが知ったことではない!」

SPW「う……う……うおおおおおーー!!」

SPW「テメエーーッ!! てめえがそんなんだからジョースターさんはーー!!」バギッ

ディオ「ぐう!?」

ディオ「き、貴様……きさまごときがこのディオに……!」

SPW「黙れーッ!」ボゴッ

ディオ「ぬぐうゥ! この!」ドゴッ

SPW「やるか!」

ディオ「きさま!」


ツェペリ「スピードワゴンくん! ディオ! そんなことをやっとる場合では……!」ハッ

ブラフォード「URRRYYY!!」

タルカス「UYYYYYRRRR!!」



ツェペリ「ぬぐおおおお!!」ドガァァッ


 ドサッ


SPW「ツェペリのおっさん!」

ディオ「!」

ツェペリ「こ……こ……この大馬鹿者どもがァ!」バキィーッ

ディオ「ぐええ!」

SPW「うぐッ!?」

ツェペリ「何一つわかっておらん!」

ツェペリ「いいか! 二人とも!」

SPW「……!」

ディオ「……ッ」


ツェペリ「……」グッ

ツェペリ「黙ってみていなさい。そこでじっとしているのだ」

ディオ「何ィ……」

SPW「無茶だおっさん! あんた一人であのゾンビどもを相手じゃあ!」

ツェペリ「いいから黙ってみとれぃ!」

ディオSPW「」ビクッ

ツェペリ「どうやらキミたちには言葉で言っても何も伝わらんようだ……ならば実地で教えるしかあるまいて」

ブラフォード「……」

ブラフォード「タルカス。おまえは下がっていろォ……こいつはおれ一人で相手する。その資格がある奴と見たァ」

タルカス「……フンッ。よかろう。ジョジョ様はおれとおまえにこの場を一任したのだからな」

SPW「む、無茶だ……おっさん……!」

ディオ(このディオがわかっていないだと……? 何をわかっていないというのだ……)

ツェペリ「コオオオオオ……」



 ドドドドドドドドドドドドド



ブラフォード「URYYYAAAAHHHHHHーー!!」

ツェペリ「!」



SPW「な、なんだァ!? 両腕を後ろに回しているぞ!? どういうつもりだあの野郎!」

ディオ「急所をさらけ出すような姿勢! どっちの腕で攻撃するつもりだ、それとも脚か!?」


 ――意外! それは髪の毛ッ!


ツェペリ「ぬおおお!!」

SPW「なんだァー!? 髪で剣を操っているー!?」

ディオ「あれはまさか『死髪舞剣(ダンス・マカブヘアー)』!」

SPW「それも教科書かよ」

ディオ「いや……ジョジョの持っていた文献だ。単なる伝説と思っていたが本当だったとは……!」

ディオ「生前猛騎士ブラフォードが使ったワザのひとつ! 第三の手として振り回して物を絡みつかせる『ダンス・マカブヘアー』」

SPW(髪で剣を振り回すこともできるし……たとえ髪の攻撃をかわせたとしても死角からの突きや蹴りで相手を仕留めるってえことか……!)

SPW(よけることは実質不可能! ツェペリのおっさんにとってこれは相当……かなり苦しい! クソッ)


ツェペリ「なるほど、確かによけるのはむずかしかろーて」

ツェペリ「だが、よける必要などはない!」

ブラフォード「!?」

SPW「ば、ばかなツェペリのおっさん! 逆に刃物に向かっていくぞーーッ!?」



 ドスゥッ



SPW「ああ! 反射的にかざした手の平に剣がッ!」

ツェペリ「ぬぐう……!」

ブラフォード「チッ……首を切り落とそうとしたが……向かってくるのに驚いてほんのちょっぴり目測を誤ったか」

ブラフォード「だが同じこと! このまま手の平から腕、腕から胴へと真っ二つにおまえを裂いてくれるゥ!」

ツェペリ「ぐううう……!」

ブラフォード「……!」

ブラフォード「き、斬れぬ!? これは一体ィ……!」

ディオ「血液か……ッ!」

ディオ(血液を流れる波紋が刃先を弾いているのだ……!)

ブラフォード「引くこともできんだと! まるで何かにくっつけられたように……こ、これは!」

ツェペリ「言っただろう! よける必要はないのだ!」コオオオオオ

ツェペリ「鋼を伝わる波紋疾走!」


ツェペリ「『銀色の波紋疾走(メタルシルバーオーバードライブ)』ーー!!」


ブラフォード「!!」ブシュォッォォ



SPW「ブラフォードの腕が溶けた! 波紋が伝わっている!」

ブラフォード「……あえて!」

ブラフォード「あえてこのブラフォードに斬りかからせたか……! 恐れることなくこのブラフォードの剣にその身を晒したというのか……! 
ジョジョ様がこのおれに生命を与えてくださり、この男と闘わせてくれたことに感謝とこの上ない名誉を感じる!」


ブラフォード「UUURRAHHHHーーッ!!」ドワァァン

ディオ「髪が伸びた!?」

SPW「何ィー!? 奴の髪の毛! 伸縮自在かッ!!」

SPW「髪の毛が襲ってくる! ツェペリのおっさん! 波紋だ! 波紋で蹴散らせ!」


ツェペリ(! いや……この量! たとえオーバードライブを連打したとしても手数で負ける!)

ツェペリ(よけるのもだめだ! こいつの髪はどこまでもわしを追ってくるだろう! 捕まえられたら必ず絞め殺される! こうなっては……)

ツェペリ「これしかない!」

ブラフォード「!?」

SPW「ブラフォードのほうに飛び込んで行ったー!?」

ディオ「だが奴は当然『ダンス・マカブヘアー』で迎え撃つぞッ」

ブラフォード「やけになったか!」ブオオオオ

ツェペリ「こおおおおおお……!」

ツェペリ「当たる面積を最小にして波紋防御!」

ブラフォード「なに!?」

SPW「う、うまい! 髪の毛とは言えど屍生人の一部! 波紋でダメージを食らうぞ!」

ディオ「更に波紋ガードの範囲を最小にした分、その威力は強烈ッ! 生半な波紋なら溶けるのも構わず縛り上げられていたろうが、これは……!」

ブラフォード「UMUOOHHHH!!」




ブラフォード「オレの髪が……弾かれる! 溶けていく! 奴の体がおれの『ダンス・マカブヘアー』を潜り抜けていくーッ!」

ツェペリ「るオオオオォォォ!!」

ツェペリ「『山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)』ーー!!」ドバドバドバドバッ

ブラフォード「……!!」


 ギュッキュゥゥゥーーン


SPW「やったッ! この音! ブ厚い鉄の扉に流れ弾の当たったような音……いつも聞く波紋の流れる音だ!」

SPW「さすがだぜおっさん!」

ツェペリ「ハア、ハア……」

ブラフォード「おれは……」ヨロ…

ディオ「ヌムッ!?」

SPW「ハッ!」

ブラフォード「おれは黒騎士ブラフォード……これしきの痛み! へこたれぬわッ!」

ディオ「立った……!」

SPW「見苦しいぜブラフォード! そんなに醜くなってまでもよォ! ゾンビとしての殺意が消えず襲ってくるなんてよ!」

ツェペリ「……」グオオオオ

ディオ「!?」

SPW「何ィー!? ツェペリのおっさん!? 何しているッ! かわすか攻撃するかしろーッ!」

ディオ(なぜ動かない!? まさか血を吸われて動けんのか!?)


 ピタァーーッ


ツェペリ「……」

ブラフォード「……」

SPW「と、とめた……ブラフォードが自ら、剣を……これは一体……二人とも一体!?」

ディオ「いや! 油断するな、必ず何か仕掛けてくる……そのはずだ」



ツェペリ「戦った者にしか分からぬこともある」

ツェペリ「きみはもう戦うつもりはない。……きみは今『これしきの痛み』と言った。『痛み』と……。きみは『痛み』を感じている」

ツェペリ「それはきみの人間としての『痛み』だ。きみはもう屍生人ではない……高潔な人間としての魂を取り戻しておるのだから」

ブラフォード「」ドサアッ


SPW「ブラフォードの顔!」

ディオ「!」

SPW「あの顔は! さっきまでの怒りと憎しみに歪んだ顔ではないッ! 母親と会話する息子のように安らいでいる顔だ!」


ブラフォード「……さっき」

ブラフォード「おまえに……うそをついた」

ツェペリ「……」

ブラフォード「おまえがおれの第一撃を手の平で受けたとき……おれは『驚いて』剣先をぶれさせたのではない……『脅威』を覚えたのだ」

ブラフォード「ちっぽけな人間であるのに……つよい決意を宿した目をしていた……おのれのやることにも……その結果にも決して後悔はしないという……」

ブラフォード「そして今度は、さっきまで死闘を繰り広げていた相手を……おれの人間の魂を信じると言う」

ブラフォード「信用して攻撃してこなかった! そこまで人間を信用できるのか!」

ブラフォード「ぐあうぅう」ズキィッ

ブラフォード「フフ……この『痛み』こそ『生』のあかし……この『痛み』あればこそ『喜び』も感じることができる……」

ブラフォード「これが人間か……」


SPW(人間……そうだ……こいつらはもともと人間……)

SPW(ジョースターさんだってそうだ。あんなに誇り高い人物を! 高貴なる心を持つ人間を! ドス黒い狂気に変える憎むべきは石仮面ッ!)

SPW(あれがある限り犠牲は増える……ジョースターさんの魂も呪われたままだ)

SPW(わかりかけて……きたぜ。ツェペリの旦那の言いたいことが……)

ディオ「……」



ブラフォード「奇妙な安らぎをおれは今感じる……もう世への恨みはない……こんな素晴らしい、こんなあたたかな心に最後の最後に触れられたのだから……」

ブラフォード「我が女王のもとへ旅立とう……」

ツェペリ「ブラフォード……!」

ブラフォード「」ボオシュゥゥ…


 ガシャン


ツェペリ「……くッ!」

SPW(なんという皮肉! なんという奇妙な運命なんだ! 魂を救うために……殺さなくちゃあいけねえなんてよォ!)

ディオ「……」ハッ

ディオ「ツェペリ! うしろだ!!」

ツェペリ「タルカス!」

タルカス「」ズオオオオオオオ


 ドッガァァーーン


ディオ「!」

ツェペリ「!?」

SPW「な、なんてことを! 友人ブラフォードの遺品とも呼べる甲冑を無常にも踏みにじりやがったッ!」



タルカス「この腰抜けが! 騎士の恥さらしよ!」

タルカス「MUOOOOOOOHHHHHHHHHHHーーーッ!!!」



 バギャアアア

 ビシビシビシ



SPW「な、なんていうビッグサーベル! そいつで崖を削りやがった!」


 ボッゴォッォォ


SPW「うわあああ! お、落ちちまうーッ!」

ディオ「ヌウウ!」

ツェペリ「! こどもが!」ガシッ

ポコ「ヒぃッ!」


 ドドーーン


SPW「ツェペリのおっさん! ディオ!」

ツェペリ「わしらは平気じゃ!」

ディオ「だがここは……おれたちはどこに落ちたのだ?」

SPW「ゲッ!」


 バアアアアアア


SPW「あ、あぶねえ! 落ちたすぐ傍にこんな絶壁が! もうちょいと前に落ちてたらおれたちゃ真っ逆さまだったぜ!」

ポコ「む……昔の、き……騎士たちの修行場だよッ! 遺跡なんだ! おばけが出るって村じゃ誰も近づかないけど!」

ディオ「遺跡……か」

SPW「それにしてもタルカス! むちゃくちゃなヤロウだぜ。こんな小さい子どもまで巻き添えに殺すつもりだったのか!」

タルカス「そりゃ! 当然!」

一同「!!」

ポコ「で、出たぁぁーー!!」



タルカス「どいつもこいつもズタボロの皆殺しにしてくれるゥ!」ズンズンズン

SPW「襲ってくるぞ! 後ろは絶壁! のがれようもねえ!」

ツェペリ「……! この葉っぱ」

ツェペリ「ディオ! わしの呼吸に合わせろ!」

ディオ「チッ! やむをえんか!」

ディオツェペリ「コオオオオオオ……!」

ディオツェペリ「生命磁気への波紋疾走!」ブアアア

タルカス「UOHHHHH!!」

ツェペリ「スピードワゴンくん! ポコ! つかまれ!」


 ドッギャアアアアアン


ポコ「どっひゃああああ~~!」

SPW「落ち葉の生命磁気を波紋でパワーアップさせくっつけ合ったのか! それでムササビのように風に乗って飛んでいる! いつもながら信じられねえことするぜーッ……!」



ポコ「すごいや! こんなことができるなんて!」

ディオ「やかましいぞ……おれの後ろで喚くなッ」

ポコ「は、はい」

ポコ(いったい何者なんだろう……まさか! 人間じゃあない? それとも悪魔か何か?)

SPW「おいポコ! 氷の火傷は平気か?」

ポコ「う、うん、スゴク痛いけど……死ぬよりはマシかな」

SPW「そうかよ……なあ、ツェペリのおっさん。おれたちの一番やらなくちゃあいけねえことはジョースターさん……ジョナサン・ジョースターを倒し石仮面を叩ッ壊すことだ」

SPW「それは充分すぎるほどわかったぜ! だがどうしても謎に感じる」

SPW「あんた! どうしてこんなディオの野郎なんかに波紋法を教えッちまったんだ? 賭けてもいい! こいつは絶対悪用するぜ!」

ディオ「……チッ」

ツェペリ「うむ。わたしもそう思うよ。わたしの師なら……おそらくはディオ、きみに波紋など教えなかったに違いない」

ツェペリ「だがわたしはキミの執念ともいえる欲望と飢えは、あるいはジョジョをも超える力を生み出すのではないかと思った」

SPW「正気かおっさん! こいつはジョースターさんの父親を……ジョースターさんをも殺そうとしたんだぜ!?」

ツェペリ「もちろん、それを許すつもりはない」

SPW「じゃあなぜ波紋を教えるような事をしたんだ! 適任だったら他にもいたんじゃあねえか!?」

ディオ「贖罪か?」



ディオ「おれに償えと言うのか? ジョジョのことを! ジョースター邸でのことを! ジョジョを殺すことで?」

ツェペリ「思い上がらんことだ。そんなもんで償えるものじゃあないよ」

ディオ「!」

ツェペリ「きみは最初から捻じ曲がっている。今更無理やり正義の道を進ませようとしたところで、まだ妙な方向に捻じ曲がるだけだ。はっきり言って、君に更正の目処はない」

ツェペリ「わたしがきみに波紋法を教えた一番の理由は……きみがジョジョに殺されるのが見ていられなかったってだけさ」

ツェペリ「きみは吸血鬼でも屍生人でもない、人間だったからの」

SPW「……ツェペリのおっさん」

ディオ「……」ギリッ

ツェペリ「だがの、ディオくん」

ツェペリ「口ではこんなことを言っとるが、わしは心のどこかできみに星を見て欲しいとも思っているんだよ。
罪のない子どもを踏みつけにするような……泥沼の勝利に救いはない。きみはもう少し空を見上げるべきだ……監獄でだってキミの見るのは壁ばかりだったろう」


ディオ「……今さらだ」

ツェペリ「……そうか」


ディオ(空を見ろだと……!? ふざけるな、おれは……)

ディオ(おれは……!)


SPW「空だ!」

ディオ「やかましい!」

SPW「そうじゃあねえ! 空からタルカスがーーッ!!」



 ゴババア





ツェペリ「む、無茶な奴だ! あの高さから身を投げて突っ込んでくるとは!」

ツェペリ「建物に飛び移れ! 地面に叩きつけられるぞ!」バッ


 ドガーンッ


ポコ「ひ……ひえええ……」

SPW「タルカスのやつ、あの高さから石壁に直撃かッ!」

ツェペリ「いくらゾンビとはいえ骨肉はバラバラじゃろう! 石仮面をかぶったジョジョとは違い肉体の再生能力はないからもう動けんはず……!?」



 ボギン ボギン

 ズル……ズル……



SPW「の、登ってくるぜ! 話が違うじゃあねえか!」

ツェペリ「なんてやつだ……闘うのが生きがいか! 骨はボキボキに砕けているはずなのに!」

ツェペリ「放っておくわけにもいかぬし、追ってくるなら仕方あるまい! タルカスのやつはここでかたづける!」


ディオ「おい、ガキ」

ポコ「は、はい?」

ディオ「貴様がいるのは邪魔だ。建物の中に入っていろ……迎えに来てやるかは分からんがなァ」

ポコ(ま、またそんな怖い事を~~! もう嫌だ! このおにいちゃんは嫌だよォー!)



 ガゴンッ



ディオ「!」

ディオ(なんだこの扉は! おかしな手ごたえ!)

ディオ(そういえばここは修練場とか言っていたが……)



 シュル シュル

 ガッシィィンッ



ディオ「!?」

ツェペリ「ディオ!?」



 バターンッ




ポコ「にいちゃん!?」

SPW「な、なんだ? ディオがこの扉の向こうに引きずり込まれた!? しかも扉にひとりでに鍵が! 開かねえ!」


ディオ「こ、これはッ!」

タルカス「」ズルゥゥリィ

ディオ(崖側の明り取りの穴からタルカスがッ!)

タルカス「う……む……なつかしい……双首竜の間チ……チェ~~~ン…………デス……マッチ」

タルカス「三百年……ぶり……に……やってみる……か」バチン

ディオ「く……!」


 ドッゴォォン


SPW「やめてくれツェペリのおっさん! ……ブ厚すぎるぜ」ガシッ

ポコ「ひ、ひでえ、あのおじさん、拳がグチャグチャに裂けちまうまで……」

ツェペリ「わ、わしが修行して会得した『波紋法』はあくまで『対生物』を目的としたもの……! 
レンガ程度は割れてもこの鉄の扉は破壊できん……そしてディオもあのチェーンを切断することは不可能なのだ……」

SPW「クソォ! ディオの野郎! なんだって不用意にこんな怪しいドアを開けやがったんだ!」

ポコ「……!」

ポコ「う、うう……!」









 TO BE CONTINUED⇒



ここまで

あれ、一ヶ月で落ちるのかと思って二部書いてた
今日書けたら投下するよ…



ポコ「あ……あ……」ガタガタ

ポコ「ううう……!」


タルカス「双首竜の間! チェーンネックデスマッチ!」

ディオ「ヌゥ……!」

タルカス「きさまの……その首輪……外すことのできる鍵は……」

タルカス「おれの首輪についておるッ!」

タルカス「おれの首輪の鍵も同じ……。つまり、相手の首をふっ飛ば……して、勝った者のみが……」

タルカス「自由となれるルールよッ!!」


ドォォンッ


ディオ「うぐえェッ!」ゴォンッ

ディオ「死、死ぬ……」

ディオ「こんな……パワー比べ……このおれが、勝てるわけが……」メキメキメキ

SPW「あの野郎さっそく宙吊りになってやがる!」

ツェペリ「い、いかん! 長くはもたんぞッ!」

SPW「ツェペリさんあのレバーだ! あれを動かせば扉は開く……が! この扉の中からしか開けられねえようになってるらしい」

SPW「何とか中に入りたいところだが……抜け穴らしきものはねえ!」

SPW「あそこの明かり窓もだめだ! 小さすぎる……ネコか……子どもなら入れるだろうがよお!」

ツェペリ「子ども……」

ポコ「」ギクッ

ポコ「う……うう……」

SPWツェペリ「……」

SPW「……くッ」

SPW(だめだ。さすがのおれも言えやしねえ。てめーを怪我させた相手を助けるために、命を張れなんてことはよぉ……!)


ツェペリ「扉が開かないのなら仕方ない……タルカスの入った明かり窓から入るしかない!」

SPW「いったん絶壁をおりなきゃあいけねえんだぞ、じ、時間がかかりすぎるぜ!」

ディオ「うぐおおお……!」ギリギリ

タルカス「このまま……首の骨をへし折ってくれるッ!」グィィッ

ポコ「……」ガタガタガタ



 いじめっこA『おい! ポコォーッ! この野郎、目ーーそらしてんじゃあねーぜッ』

 いじめっこB『ギャハハハッ! こいつビビッとるぜーッ!』

 いじめっこC『タバコの火で気合入れてやれーッ』

 ポコ『や、やめろ……よォ……』

 いじめっこA『ああーッ!!?』

 ポコ『うう……』ブルッ
 

  ・ ・ ・


 いじめっこA『う、うわああ……! 助けてくれ、ガボガボッ……!』

 ポコ『!』

 ポコ『(あそこの川は深いところがよくわからねえよーになってんだ……足を取られたのか……!)』

 いじめっこA『た、たすけ……ガボッ、ゴボッ……』

 ポコ『……うう、う……』

 ポコ『や、やめろよぉ……、なんでおれを見るんだよぉ……』
 

  バッ
  ボォッチャァーンッ


 ポコ姉『掴まりなさい!』

 いじめっこA『!』

 ポコ『ね、ねえちゃん!?』


 

 ポコ姉『ポコ……あんたどうして何もしなかったの』

 ポコ『……うう……お、おれっ、おっ』

 ポコ『おれのプライドの問題だよッ!』

 ポコ姉『……』

 ポコ『あいつはおれをいじめてたんだ……そ、そんなやつ助けるなんて、お、おれの心が許さない』

 ポコ姉『……あきれるわ』

 ポコ姉『あんたって自分の時でも他人の時でも何もできないのね』

 ポコ『や、やれらあ! やらないってのが……仕返しなんだ……』

 ポコ姉『じゃあ、どうしてわたしがあの子を助けるのを邪魔しなかったの?』

 ポコ『それは……』

 ポコ姉『そうやってあんた、いつまでも何もしないつもり?』

 ポコ『や、やるさ…………あ、あした、やって……やらあ』

 ポコ姉『あしたっていつのあしたよ?』

 ポコ『あ、あしたさ……』

 ポコ姉『ポコ、あんた一体どうして、あの子を助けられなかったの?』

 ポコ『……』

 ポコ『う、ううう……』ポロポロ

 ポコ姉『……まったく。ほら、もう泣かないの、弱虫さん。おうちに帰りましょう……』

 ポコ姉『とうさんには言わないでおいてあげるから……』 



ポコ「うううう……!」

SPW「ハッ!?」



SPW「お、おいまさかッ……! やめろ、バカッ!」

SPW「小僧! 行くんじゃあねえ! 危険だッ!!」

ポコ「」ズルッズルッ


ポコ(も……亡者どもが町へ行った時のことを考えるんだ)

ポコ(あのニーチャンが死んじまったら町が襲われる……姉ちゃんが襲われる!)

ポコ(今何とかできるのはおれだけだ! あの時みたいに……何もしないままじゃあダメだ!)


 バッ


ポコ「ねーちゃん! あしたっていまさッ!」



ディオ「ぐ……おお……」ギリギリ

ディオ(なんだ……なぜあのガキが中に……何かわけのわからん事を叫んで……)

ディオ(意識がモーローとしているせいか……つじつまの合わない幻覚を見ているのか……?)


タルカス「UYYYRYYY!! 決闘の邪魔はゆるさんッ!」ドドドドド

ポコ「ハッ!」

SPW「ポコォーーッ!!」



 グシォォオッ!



SPW「うわああああーっ!!!」

ポコ「……」ピク

ポコ「う……」

タルカス「虫けらが……まだ息があるか」

ポコ(あ、あいつが……ここまで吹っ飛ばしてくれたおかげで……レバーの近くに……)ズル、ズル

ポコ「へ、へへ……へへ……」

ポコ「でも……礼は、言わない、ぜ……」


 ガグンッ


ツェペリ「レバーを押した! 扉が開くぞ!」

SPW「ポコォォォーーーッ!!」


 ババァーン!


タルカス「ぬう!」スルッ

ディオ「ぐおお!」ドサザッ

ディオ「ぐ、ぐはッ……!」

ディオ「な、なんだ、なぜ急に鎖を絞める手を緩めた……?」


ディオ(タルカス……何かに気を取られている? ツェペリ! なぜここに……SPWは……あそこか。あのガキ、怪我を負ったのか? なぜだ……まさか)

ディオ(幻覚ではない! 現実だ!)

ディオ(あのガキが何かをして……それでツェペリたちが部屋に入ってこれたのだ!)


SPW「ポコ! ポコォーッ!」

ポコ「」

SPW「う、ううーッ!」

ディオ「バカが……身の程知らずなマネを……」ゼエゼエ

ツェペリ「……」

SPW「ツェペリのおっさん……」


SPW「頼む、やつをやっつけてくれ! おもいっきしやっつけてやってくれーッ!」

ツェペリ「」ゴオオオ





 『古からの死臭漂う密室で……』

 『幼子が門をひらく時!』

 『鎖でつながれた若き獅子を未来へとき放つため!』

 『おのが自身はその傷を燃やし! しかるのちに残酷な死を迎えるであろう』






ツェペリ「……ついに」

ツェペリ「ついにきたか。あの予言の時が」

SPW「え?」

ツェペリ「これが運命なら、あるがまま受け入れよう」

SPW「……ツェペリさん? あんた、今なんて……」

ツェペリ「」ズンズンズン


ツェペリ(わが師……トンペティはあの日……わたしの死期を予言した!)

ツェペリ(『古からの死臭漂う密室で』!)

タルカス「ぬう!」

ツェペリ(『幼子が門をひらく時』!)

SPW「ツェペリのおっさん!」

ツェペリ「……」

SPW「……」

SPW「気をつけろよ、おっさん!」

ツェペリ「……」ザッ!ザッ!


ツェペリ(『鎖でつながれた若き獅子を未来へとき放つため』!)

ディオ「……ツェペリ」

ツェペリ「」グオオオオ

ツェペリ「いくぞ! ディオ!!」

タルカス「来ォい! てめえら波紋とやらをわしに送りたいか!」

タルカス「ふぬけどもにゃあ――……指一本とて…………」

タルカス「わしにふれることはできん!」


 ドグワッ




ツェペリ「おおおりゃああああ!!」

ツェペリ「くらえタルカス! 波紋乱渦疾走(トルネーディオ-バードライブ)ーーッ!!」

タルカス「」スウ

ディオ「!」

SPW「な! ばかなタルカス! あの巨体であの身のこなし! 飛び上がって蹴りをよけた――ッ!」

ツェペリ「うっ! 上からか!?」

SPW「違うツェペリのおっさん!」

ディオ(下から……鎖が……!)

ツェペリ「!」


 ギャオオオオ


タルカス「上と下からの同時攻撃」

タルカス「必殺技! 天地来蛇殺(ヘルヘブンスネーキル)!!」


ツェペリ「うっ! く、鎖が体に!」

ディオ「ぬぐおッ!」バーンッ

タルカス「ふたり同時に絞め殺すッ!」



 バギバギバギバギ



ツェペリ「……!」



 ベギャベギャベギャベギャ



ディオ「ごッ……!」ゴギッ

SPW「うっ」



 ボギ
 バギ バギィ



SPW「う、うわああああああ!!」



SPW(そんな……そんな……!)

SPW(ツェペリのおっさんの体が……まっぷたつに……!)

ツェペリ「ディ……」

ディオ「」

ツェペリ「……」



 ドッ
 ドッサァッ



SPW「うわああああーーッ!!」

タルカス「ジョジョ様……命令どおり。始末……いたし……ました……」

ツェペリ「」ピク



ツェペリ「……ディ……」ズル、ズル

タルカス「むう……ぬぬう」

タルカス「こやつ、まだ生きているのか……」

ツェペリ「わ……」

ツェペリ「わたしは……あの子どもの…………おかげで……ここにいる……」

ツェペリ「おまえも……そうなのだ、ディオ……おまえも…………」

タルカス「とどめをさしてくれるわ!」ザッ

ツェペリ「こおおおお……!」

ツェペリ「『究極! 深仙脈疾走(ディーバスオーバードライブ)』!!」



 ボッゴァァアアア!



ディオ「!」ゴアッ

ツェペリ「フフ……それだけだ……ディオ」

ツェペリ「それ……だけを…………知るのだ……」

ツェペリ「おまえの……」


SPW「こ……こんな! こんなこと! 残酷すぎる! お……おっさん!」

SPW「ツェペリのおっさあーーんッ!!」

ツェペリ「」ガクッ



タルカス「面妖な……! 一瞬にして白髪の老人に変わっただと」

タルカス「だが構うものか! てめえらふたりとも! わしの足底でズタボロと化せいーー!!」



 ギャン



タルカス「ぐ!?」

タルカス「な、なに……わしの鎖が引っ張られる! だ、誰が吊り上げた……このわしの超重量級の体を……!?」

SPW「ああ……!」



 ゴゴゴゴゴゴゴ

 ゴゴゴゴゴゴゴ



ディオ「……」

SPW「ディオ!」

タルカス「こ、こいつゥ……首の骨を折ったのに……」

ディオ「……ツェペリ……!」



ツェペリ「」

ディオ「おれを助けるために入ってきただと……」

ポコ「」

ディオ「おれはもはや放って置かれるだろうと思っていたのだ……」

ディオ「きさまのことだ! ヤツ程度倒せんようではジョジョとは戦えんとか何とか……」

ディオ「……」

ディオ「だがなぜここにいる。きさま……ツェペリも、あのガキも、カスのスピードワゴンすらッ」

ディオ「いったい何なのだきさま等は……なぜそんなことができるのだッ?」

ディオ「『石仮面』への執着か!? 吸血鬼への恨みか!? 人間としての使命感か!? いったいどんな下らない理由でそこまで出来るのだッ?」

ディオ「ゾンビどもの方がまだ共感できるというものだ、おれには何もわからん、おれは……」

タルカス「何をブツブツ言ってる! こわっぱがーッ!」ビュオンッ

ディオ「だからこれは敵討ちなどではないッ!」



 バァッシィッ



タルカス「!?」

SPW「な! 受けとめた!? 鞭のような鎖での攻撃を!」 

ディオ「うぬおおおお!」

ディオ「新しい力を試してみるだけのことよッ!」



 ドッスゥゥ




タルカス「ぬぐお……」

タルカス「こ、こいつ、わしの腕に指を……」

タルカス「動かん……おのれ業師がッ、小賢しくもわしの筋肉を固定しているかッ」

ディオ「フン! 腐った肉達磨め、予想通り貧弱な強度よ。血は通っているのか? 波紋を流して確かめてみるか?」

タルカス「ほざけーッ!」ブンッ

ディオ「!」

SPW「蹴りッ!」



 ガァッシィィンッ



SPW「こ、こっちも受け止めたー!」

ディオ「フンッ」



 ブシュォォォオ



タルカス「ぬううッ! 足にまで波紋法を!」


SPW(つ……強い! 明らかに今までのディオとは違う! 力だけじゃあねえ、動きも圧倒的に速いぞ!)

SPW(ツェペリのおっさんの生命波紋が宿ったんだ! ふたりの力の相乗作用! ……首の骨折を治癒するほどの!)



ディオ「フハハハハー……! 波紋パワーが溢れてくるぞ! いくらでも力が湧いてくる!」

タルカス「ぐぐ……」

ディオ「タルカス」ビシィッ

ディオ「『おれがおまえならいつまでもおれの手に触れてないがね』……」

タルカス「!」

タルカス「WWWRRRYYYYーーーッ!!」

ディオ「やぶれかぶれかァ! 少なくとも頭に血は通っていないようだなマヌケがァーッ!」



 ビビーーー



SPW「た、タルカスの腕をまっぷたつに!」

タルカス「ANGYAAAAH!!」

ディオ「こおおおお……!」



 バム デゲン



タルカス「UW UW HOH――!」

SPW「拳の波紋を顔面に! 決まったー!」

タルカス「」ボシュウウウ



 ガラン ガラン



ディオ「……ふう」



ディオ「……スピードワゴン。鍵を取れ」

SPW「……くッ」

SPW「てめえで取りな」

ディオ「……ああ」



SPW「……ツェペリのおっさん」

ツェペリ「……」

SPW「! ま、まだ息があるぞ!」

ディオ「だから何だというのだ」ガチャッ

ディオ「その怪我だ、どの道助からん」

SPW「うッ……」



SPW「おっさん……」

SPW「ツェペリのおっさん、あんたがいなくなったら、おれらはどうすりゃあ……!」

ツェペリ「……ディ……オ」

ディオ「……」ガチャッ

ツェペリ「おまえならわかっているだろう……。早く……行け。ジョジョを……倒すのだ」

ツェペリ「石仮面を破壊するのだ……!」

ディオ「……」ガチャッ

ツェペリ「わしは……自分の運命に満足しておるよ」

ツェペリ「わしは……波紋法を学ぶため……老師トンペティに師事するため……石仮面のため……家族を捨てた」

ツェペリ「だけども……自分の運命に満足しておる……全て受け入れておる」

SPW「おっさん……!」

ツェペリ「二人とも……。まるで手のかかる息子と友人を同時に持ったような気持ちだぞ」


ツェペリ「ディオ、そしてわしは、これからおまえの中で生きるんじゃ……」

ディオ「フン、ありがたく使わせてもらうぜ……この力は」ガチャッ

ディオ「……ツェペリ、おまえは……」

ディオ「……」

ディオ「おまえはこうするためにここまで来たと考えろ」

ツェペリ「……」フッ



SPW「おっさん……!」

SPW「ぐうう……! ディオーッ!!」

ディオ「だまっていろ能無しが!」ガチャガチャ

SPW「……!」

ディオ「くそ……! なんだこの鍵は……! なぜこんな厄介な形なのだ! おかげで上手く鍵穴に入らないだろうが!」ガチャッ ガチャッ

ディオ「くそ!」

SPW「ディオ……」

SPW「くッ……!」


SPW(そうだ。悲しんでる場合じゃあねえ、おれたちは……)


SPW「もたついてんじゃあねえよ!」バッ

ディオ「……!」

SPW「このくらい、とっとと外してやらあ! そんで一気にジョジョのところに行くぞ!」ガチャッ

ディオ「偉そうに仕切るなよ、……きさま」


SPW(あばよ……ツェペリの旦那……)




 愛してその人を得ることは最上である

 愛してその人を失うことはその次によい

   ――――ウィリアム・M・サッカレー(19世紀英国作家)





ポコ姉「……」



 「うう……ううう……」

 「うう、うあああ……ああー……!」



ポコ姉「……ねえ、あなた」

ポコ姉「あなたのことよ……こっちを見てよ」

ポコ姉「あなた……何を泣いているの?」

ジョナサン「……!」グオオオオ







 TO BE CONTINUED⇒





ここまで
>>219 あんただれです?

このSSまとめへのコメント

1 :  ZJMO   2014年09月29日 (月) 09:29:28   ID: 6z19_v1H

あんただれですw

2 :  SS好きの774さん   2015年08月07日 (金) 18:51:44   ID: LPpgGfp8

設定だけの出オチネタかと思ったらすごい読み応えあってびっくりした
本当は続きが欲しいがここまででも楽しかった

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