ジャン「勇者たちの凱歌」(222)

アルミン「総合戦技評価演習?」

キース「いわば卒業試験のようなものでな。三年間の訓練生活の集大成として行われる毎期恒例の演習だ」

マルコ「教官!演習とは一体どのようなものなのでしょうか!」

キース「うむ、内容は至極単純」

キース「貴様らには赤軍、青軍に別れ戦争を行ってもらう」

アルミン「せっ、戦争だって!?」

キース「とは言っても、実際に殺し合いをさせるわけではない」

キース「演習内容の詳細はこれより配布する用紙に記載されている。各自目を通しておけ」

キース「……では」

キース「両軍の編成を発表する!!」

●赤軍
ライナー・ブラウン
ベルトルト・フーバー
エレン・イェーガー
ジャン・キルシュタイン
アルミン・アルレルト
他75名
計80名

●青軍
ミカサ・アッカーマン
アニ・レオンハート
マルコ・ボット
コニー・スプリンガー
サシャ・ブラウス
クリスタ・レンズ
ユミル
他73名
計80名

マルコ「……赤軍に成績上位者が固まっているね」

アニ「でも成績トップ10以内の人間の数は青軍が多いよ。なにより一位のミカサがいる」

ライナー「……ッチ。ミカサとアニが相手かよ。闘りづらいヤツが相手側に固まってるな」

エレン「ミカサは敵側か……。絶対に負けねぇからな!!」

ミカサ「勝利を譲るわけにはいかない。たとえエレンが相手だとしても」

●ルール
・両軍はそれぞれ一名ずつ総大将を選定する

・ブレードは真剣ではなく模造刀を使用する

・勝利条件は以下の4つ
①敵軍兵士を全て撃破する
②敵軍総大将を撃破する
③敵軍総大将より降伏の申し入れを受ける

・撃破の条件は以下の2つ
①戦闘により、相手の意識を奪う
②立体機動装置に取り付けられたリボンを奪う(リボンが首級の代わりとなる)

・演習期間は5日間。決着がつかない場合は5日終了時点での残存兵数によって勝敗を決める

マルコ「……というわけで、青軍の総大将になったマルコ・ボットです。みんなよろしくね」

サシャ「よろしくお願いします!」

コニー「難しいことはわからねぇ!指揮は任せたぜマルコ!」

マルコ「簡単に言ってくれるなぁコニーは」

ミカサ「大丈夫。マルコならできる」

アニ「ああ、あんたが私たちの指揮をとることに異存はないよ」

マルコ「ミカサ、アニ……。うん、ありがとう」

マルコ「……みんな、この闘い絶対に勝とう!!」

クリスタ「うんっ!頑張ろー!」

「うおおおおっ!!」

ユミル「……盛り上がってるところ悪いんだけどよ」

ユミル「赤軍も青軍に負けず劣らずの実力者が揃ってる。なにか策はあるのか?」

ミカサ「確かに。考え無しで勝てるほど赤軍は甘くない」

マルコ「……うん。そのことなんだけど、僕に考えがある」

マルコ「みんなちょっと聞いてくれないかな……?」

ベルトルト「……静かだね」

ジャン「そうは言ってもまだ開始から40分だ。お互い持ち場についたってところがせいぜいだろ」

ライナー「ぐぐぐ……納得いかん。なぜ俺が大将なんだ……」

エレン「決まったことだろ。満場一致でお前が指名されたんだから諦めろよ」

ライナー「くっ……」

ライナー「……だが、正直俺には自信がない」

ジャン「なに言ってんだよライナー」

ベルトルト「そうだよ。僕たちもフォローはしっかりするから、そんなに気に病まなくても大丈夫だって」

ライナー「お、おぅ。すまねぇ……」

アルミン「ライナー、部隊の配置が完了したよ」

ライナー「おう、報告ご苦労」

アルミン「各部隊10人ずつ6部隊を本陣を中心に扇型に配置した」

アルミン「そして本陣は僕たち20人」

ベルトルト「可もなく不可もなく、無難な配置といったところだね」

ライナー「さて、ここからどう動くか」

アルミン「そのことなんだけど……いや、僕の考え過ぎかな……」

ライナー「ん?なんだ?どうかしたかアルミン?」

アルミン「さっき部隊配置を指揮してした時、青軍側の森から一斉に鳥が飛んでいったんだ」

ライナー「ッ!?なんだと!?」

アルミン「そう、もしかしたら青軍はもう……

\ワァァァッ/

ライナー「始まったか!?」

アルミン「くっ、先手を取られた!!奇襲だ!!」

ライナー「クソッ!どこだ!?どこが襲われた!?」

アルミン「喚声が上がった方角からして、本陣正面に配置した3班と4班だ!!」

アルミン「すぐに両翼の2班と5班を救援に……

ライナー「行くぞお前ら!!青軍を迎撃だっ!!」

「おおおっ!!」

アルミン「まっ、待つんだライナー!大将が軽々しく動いちゃ……っ」

コニー「ッハァ!!弱過ぎんぞお前らぁ!!」ズバッ

サシャ「緒戦このまま青軍大勝とさせて貰いますよっ!!」ズバッ

赤軍A「早い!いくらなんでも早過ぎるだろ!?」

赤軍B「マルコのヤツ……先鋒にコニーとサシャを寄越してきやがった!!」

赤軍C「森の中で狩猟経験者と闘りあうなんて無茶……ぐわっ!!」

赤軍A「怯むな!!コニーとサシャだ!!あの2人を倒せば敵の勢いは止まる!!」

赤軍B「4班5班連携して2人を倒すぞっ!!」

赤軍4班5班「うおおおっ!!」

???「させない」ズバッ

???「甘いねっ」ズバッ

赤軍D「うわぁぁっ!」バタン

コニー「ふっふっふ……マルコを甘く見るんじゃねーぞお前ら」

サシャ「脚の早い私とコニーが先行し、敵軍を索敵」

コニー「そのまま戦闘に入り、後続に場所を教える。まぁそのアレだ。いりょくていさつってヤツだ」

サシャ「あくまで私たちは前座に過ぎません」

ミカサ「そして本命は……」チャキッ

アニ「私とミカサが率いる後詰め隊35人」チャキッ

コニー「悪いが……」チャキッ

サシャ「あなたたちには全滅して貰いますよ?」チャキッ

赤軍E「ひっ、ひぃぃぃぃ!?」

赤軍F「むっ、無理だ……4班5班だけじゃとても太刀打ちできない……」

クリスタ「戦闘が始まったね」

ユミル「すげぇな接敵した場所、さっきお前が予想した地点じゃねぇか」

マルコ「赤軍にはアルミンがいるからね。用兵に関しては彼の意見が採用されると思ったから、彼の思考を想像してみただけさ」

ユミル「お前……えげつねぇな」

クリスタ「緑の煙弾を確認。後詰め隊が先遣隊と合流」

ユミル「完璧じゃねぇか……。これはこのまま決まっちまうんじゃないのか?」

マルコ「まだだ。赤軍の総大将はライナーだ」

マルコ「彼の性格からして自らが救援に赴くはず」

ユミル「なるほど……それで私たちの出番か」

マルコ「……うん」ニヤッ

マルコ「クリスタ、ユミル!君たちはそれぞれ5人を率いてライナー率いる赤軍本隊の後方を衝くんだ!!」

ミカサ「とった……っ!」シュッ

赤軍F「やぁだぁぁぁぁ!!」

???「おおおっ!!」

ギンッ

ジャン「へっ、間に合ったみたいだな」

ミカサ「ジャン……っ!!」

アルミン「みんなっ!!大丈夫かっ!!」

ライナー「ジャンっ!!下がれっ!!ミカサは俺が抑える!」

ライナー「ベルトルトはアニ!エレンはコニーを!サシャはトーマスとミーナの二人がかりで抑えるんだっ!!」

ベルトルト「了解っ!」

エレン「おうっ!」

トーマス「サシャ、覚悟っ!!」

ミーナ「いくらサシャでも二対一ならっ!!」

ウォォォ!!

キンッ!ガキンッ!!

アルミン「(……よし、これでなんとか膠着状態に持ち込めた)」

アルミン「(……危なかった。もしライナーの決断が遅れていたら3班と4班は間違いなく全滅だった)」

アルミン「(あの時はライナーの行動を軽率だと思ったけど、結果的には間違っていなかったのかもしれな……)」

アルミン「(……ッ!?)」

ジャン「アルミン!!」スタッ

アルミン「ジャン!!」

ジャン「戦闘中にすまねぇ。だが聞いてくれ」

ジャン「……マルコは間違いなくまだ策を打っている」

ジャン「……根拠は無いんだがそう思えてならない」

ジャン「アルミン、お前はどう思う?」

アルミン「……うん、僕もそう思うよ」

ライナー「ぐっ……」

ミカサ「ライナー……なかなかやる」

ガギンッガギンッガギンッ!!

ライナー「(さすがミカサだ……一撃一撃がハンパなく重い……)」

ライナー「(さっきはカッコつけてあんなこと言っちまったが、こりゃ勝てそうにないな……)」

ギンッ!!キンッ!!

ライナー「(……だが、俺は勝てなくてもいい)」

ライナー「(このままココで持ちこたえていれば、異変を察知した1、2、5。6班が駆け付けてくるはず)」

ライナー「(いくらミカサ達と言えど、囲んでしまえばどうとでもなる)」

ギンッ!!ガギンッ!!

ライナー「ハッ!軽い斬撃だなぁっ!!」

ライナー「(耐えろっ……耐えるんだっ!!)」

ライナー「守ってばかりは性にあわねぇ!今度はこっちの番だ!」

ミカサ「くっ……!」

ジャン「うおおおっ!!」ビュオオッ

ギンッ

ミカサ「ちっ……」

ライナー「ジャン!?邪魔をするな!!」

ジャン「落ち着けライナー!!頭を冷やせ!!」

アルミン「ライナー!一度後退するべきだ!!」

ライナー「馬鹿な!?何を言っている!!」

アルミン「増援を待っているのは僕たちだけじゃない!!」

ライナー「なっ!?」

アルミン「マルコのことだ。おそらく別動隊を派遣して僕らの後ろをとるつもりだ!!」

ジャン「そうなっちまったらもうおしまいだ!撤退して後続に備えるべきだ!!」

ライナー「くっ……」

ライナー「(先手を取ったのは青軍。とすれば、どちらの増援が先に到着するかは明白……)」

ライナー「……全軍、本陣まで撤退だ!!」






ライナー「何人、何人本陣に辿りついた……?」

ベルトルト「……21人。両翼の1、2、5、6班は健在だから、残りの兵は61人だ」

ライナー「青軍の損害は?」

アルミン「おそらく10人もいないだろう……」

ライナー「……そうか」

ライナー「クソっ、クソっ!!」ドンッ

エレン「落ち着けライナー!!お前に落ち度は何もねぇよ!!」

ベルトルト「そ、そうだよ!あれはマルコの用兵を褒めるべきであってライナーが責められるようなことじゃない!」

ライナー「死んだ仲間たちにも同じことが言えるのかよっ!?」ドンッ

ジャン「……ッ!!」

ライナー「敵がすごかったです!僕たちも頑張ったんだけどダメでした。仕方ないね」

ライナー「そんなこと言えると思ってんのかよ!!」ダンッ

エレン「ライナー!落ち着けって!!」

アルミン「そうだよ!!確かにライナーの言いたいことはわかるけど、それとこれとは話が別なハズだ!!」

ライナー「……」ハァッハァッ

ライナー「……すまない。冷静じゃなかった」

ベルトルト「ライナー……」

ライナー「……みんなに話したいことがある」

ライナー「もうすぐ陽も落ちる。さすがに今日は夜襲もないだろう。1、2、5、6班を本陣に呼び戻してくれ」

ライナー「みんな、聞いてくれ」

ライナー「初日にして俺たち赤軍は致命的な損害を被ってしまった」

ライナー「それもこれも俺の甘さが原因だ。本当にすまない」

ライナー「……だが、悪いニュースだけじゃない」

ライナー「今日の緒戦で、俺は感じた」

ライナー「やはり俺は人を率いることが得意ではない」

ライナー「そして同時に、俺は見つけた」

ライナー「指揮官としての適性が俺より高い人間を」

ライナー「……」

ライナー「……ジャン、アルミン。お前たちだ」

ジャン「……はっ?」

アルミン「えっ、えええええ!?」

ライナー「……俺は赤軍総大将の座を退く」

ライナー「後任の総大将はジャン、アルミンは副将兼参謀として働いてもらいたい」

ライナー「……ああいや、『もらいたい』じゃねぇな」

ライナー「いいか二人とも、これは総大将としての命令だ。やれ」

ライナー「お前たちなら……俺よりも赤軍をよい方向へ導けるはずだ」

ライナー「他のヤツらも異論はないだろ!?」

「ああ」

「乱戦の中二人だけは先の展開を見据えて動いていたからね」

「頼んだぜ、ジャン、アルミン」

ジャン「お前ら……」

アルミン「みんな……」

ジャン「あー……、ゴリラ野郎に変わって赤軍総大将になったジャン・キルシュタインだ。よろしくな」

ジャン「勝負事なら誰だって負けたくないよな。俺だってそうだ、負けたくない」

ジャン「……お前ら、絶対に勝つぞ」

アルミン「えーっと……、ライナーから副将と参謀を任命されたアルミン・アルレルトです。よろしくね」

アルミン「僕もみんなと一緒に勝ちたいです。頑張りましょう」

ジャン「というわけで早速だが、アルミンより今後の作戦行動について説明がある。よく聞け……」

サシャ「初日の戦果としては上々でしたね」

ユミル「私たちの奇襲が決まれば決着はついたんだけどな。惜しかったよ本当に」

クリスタ「さすがにそこまで思い通りにはいかないよ」

マルコ「……」

アニ「どうしたんだいマルコ?浮かない顔をして」

マルコ「……いや、僕の予測ではユミル隊とクリスタ隊も戦闘に入るはずだったんだ」

マルコ「アルミンがすぐに危険を察知するのは想定の範囲内だったんだけど、ライナーを説得するのにもう少し時間がかかると思ったんだ」

ミカサ「アルミンがライナーを説得するのが予想以上に早かったから、ユミルとクリスタが合流する前に撤退されてしまったということ?」

マルコ「そういうこと」

マルコ「……」

マルコ「(……まさか……いや……)」

マルコ「(……君なのかい、ジャン?)」

アルミン「マルコはとても冷静で慎重な男だ」

アルミン「コツコツと周りを固めていって勝利を揺るぎないものにしてから戦いをしかけるような人間だ」

アルミン「だからまさか奇襲をかけてくるとは思わなかった。本当に驚いたよ」

アルミン「マルコからすればあの奇襲は100%成功するものだったんだろうね。まぁいいや、過ぎた話さ」

アルミン「今後の青軍の動きだけど……」

アルミン「まず間違いなく、守りを固めてくるはずだ」

アルミン「時間切れによる判定勝ち」

アルミン「マルコが狙っているのはおそらくそれだ」

アルミン「青軍に守りを固められてしまえば正攻法じゃどうしようもなくなる」

アルミン「この単位での集団戦闘で10人近い人数差をひっくり返すことはかなり難しい」

アルミン「じゃあ僕たちはどうすればいい?」

アルミン「……簡単な話だ」

アルミン「目には目を」

アルミン「……奇襲には奇襲を」

アルミン「ではいつ奇襲をかけるのか」

アルミン「今晩?」

アルミン「赤軍の疲弊が激しい上、青軍も警戒しているだろう。却下だ」

アルミン「残りの日数を休息にあてて、最終日に全てをかける?」

アルミン「時間は平等だ。僕たちが休息をとっている間に青軍は対する備えが完璧になされてしまうだろう。却下」

アルミン「僕たちが最低限の体力を回復させ、青軍が今日の勝利の余韻から完全に醒めきっていない時」

アルミン「……明日、二日目の夜だ」

アルミン「……とは言ってもマルコのことだ」

アルミン「彼は常に奇襲の可能性を考慮しているだろう」

エレン「じゃあ無理じゃねえか」

アルミン「そうでもないんだよ」

ライナー「どういうことだ」

アルミン「ひとつ。マルコと周囲の人間の思考の温度差」

アルミン「人間っていうのは大きな成功をすると気が緩んでしまうものさ」

アルミン「総大将であるマルコは厳しく自分を戒めているだろうけど、その思考が末端の兵士まで行き届いているとは思えない」

ベルトルト「……そうか。その思考の温度差が」

ジャン「……有事の際の対応速度に直結する」

アルミン「そういうこと」

アルミン「そしてもうひとつ」

アルミン「奇襲の仕方だ」

ベルトルト「……なるほど」

ライナー「そういうことか」

エレン「あ?どういうことだ?」

アルミン「身を隠すだけが奇襲じゃないってことさ」

ジャン「敵が攻めてきているのはわかっているがどうしようもない」

ジャン「そんな状況を作り出すってことだろ?」

アルミン「その通り」

マルコ「(二日目……)」

マルコ「(さすがに昨日の晩は何もなかったか)」

クリスタ「マルコ、今日の部隊配置なんだけど……」

マルコ「うん、昨日と変わらず索敵を重視していてくれ」

マルコ「なにかあったらすぐに煙弾での連絡をするようにね」

クリスタ「了解!」

ミカサ「……マルコ」ザッ

マルコ「ミカサか。どうしたんだい?」

ミカサ「昨日と同じくコニーとサシャによる威力偵察を具申する」

ミカサ「あの二人の機動力で混乱する赤軍を私が刈り取ってみせよう」

ミカサ「どうか、私に許可を」チャキッ

マルコ「その提案はとても魅力的だ」

マルコ「……でも、その言を容れるわけにはいかない。却下だ」

ミカサ「くっ……どうして!?」

マルコ「なに、簡単なことさ」

マルコ「赤軍にはアルミンがいる」

マルコ「彼に同じ手は二度通用しないと思うんだけど……」

マルコ「彼の親友のミカサはどう思う?」

ミカサ「くっ……」

ミカサ「……私も、その通りだと思う……」

マルコ「ミカサ、訓練とはいえこれは戦争だ。耐えて欲しい」

ミカサ「……出過ぎた真似をした。ごめんなさい」

マルコ「いやいや、いいんだよ。むしろ意見や提案はもっと積極的にして欲しいぐらいさ」

ミカサ「……うん」

マルコ「……」

マルコ「ミカサ、聞いてくれ」

マルコ「知っているとは思うけど、青軍の総大将がライナーからジャンに変わったという通達があった」

ミカサ「うん」

マルコ「僕は、これが青軍にとってとても良くないニュースだと思っている」

ミカサ「……?」

マルコ「……おそらくジャンは104期訓練兵の中で最も指揮官としての才能があると思う」

マルコ「ジャンが己の才能を余すところなく発揮し、アルミンの知略がジャンをサポートする」

マルコ「そして総大将の肩書から解放されたライナーは思う存分暴れ回ることができるようになる」

マルコ「加えてエレンとベルトルトの戦闘能力」

マルコ「これらの歯車が全て噛み合い、僕たちを襲ってくるとしたら……」

ミカサ「……両軍の被害は計り知れないものとなる」

マルコ「……僕の見立てでは3日目の夜が怪しいと睨んでいる」

マルコ「……決戦の日は必ずくる」

マルコ「その時は……よろしく頼むよ」

ミカサ「……任せて」

ライナー「……日が沈んだな」

ベルトルト「……二日目の夜だ」

アルミン「……作戦は昨日話した通りだ。変更はない」

ジャン「準備はいいかお前ら」

ジャン「これから俺たち赤軍61名は、青軍の本陣に夜襲をしかける」

ジャン「成功すれば俺たちの勝利、失敗すれば俺たちの負け」

ジャン「0か100かのわかりやすい話だろ?」

ジャン「……」

ジャン「お前ら、両手を見ろ」

ジャン「今お前たちが握っているもの、それはなんだ?」

ジャン「そう、巨人どもをぶち殺すための《鋼刃》だ」

ジャン「本来人間に向かって振るうもんじゃない」

ジャン「だが、今俺たちはその刃を仲間たちに振り下ろそうとしている」

ジャン「それはなぜか」

ジャン「それは、今俺達が行っているこの訓練こそが、巨人どもをぶち殺すための技術の工事中に繋がると知っているからだ」

ジャン「……訓練兵団を卒業したら俺たちは離れ離れになる」

ジャン「その背に背負うのは《誇り高き一角の幻獣》か《人の世の春の象徴》か《自由の翼》か」

ジャン「いずれにしても、今この時の経験は今後必ず生きてくるはずだ」

ジャン「……この戦い、絶対に勝とうぜ」

「うおおおー!!」

ジャン「目標、敵青軍本陣!!」

ジャン「青軍総大将マルコ・ボットの首を貰いに行くぞ!!」

ジャン「赤軍、全軍出撃ぃ!!」

ジャン「アルミン!青軍の兵の配置は!?」

アルミン「青軍の兵力はおよそ70!」

アルミン「本陣に10!本陣前にミカサとアニがそれぞれ15ずつ!」

アルミン「そして戦場の中央部、僕たち赤軍との前線部にコニー、サシャ、クリスタ、ユミルが率いる30!」

アルミン「この30は人からなる防衛ラインは索敵を重視しているためかなり広範囲に展開している!!」

アルミン「マルコらしい堅実な配置。予想通りだ!!」

ジャン「よし!両翼陽動部隊!」

右翼陽動隊「了解!」バシュッ

左翼陽動隊「囮は任せろ!」バシュッ

クリスタ「ッ!?敵襲!!」

ユミル「マルコのヤツ……夜襲が来るのは3日目って言ってたじゃねーか。一日早いたぁどういうことだ!?」

サシャ「相手も人間です。全てがマルコの思い通りには行きませんよ」

コニー「篝火の数からして片翼15、両翼で30!!俺たちとほぼ同数だ!!」

クリスタ「私たちも隊を二分して……」

ユミル「……いや、違う!」

クリスタ「……えっ?」

ユミル「あれは陽動だ!騙されるな!赤軍本隊は間違いなく青軍本陣への最短ルートであるここを通ってくる!!」

クリスタ「じ、じゃあどうすれば……」

ユミル「隊を三等分するんだ!!」

ユミル「左翼防衛部隊はナック、右翼防衛部隊はミリウスが指揮をとれ!」

ユミル「無理に殲滅を狙うな!適当にあしらっておけばいい!」

ナック「わかった!」バシュッ

ミリウス「了解!!」バシュッ

クリスタ「私たちはここを防衛だね!頑張ろう!」

ユミル「いや。クリスタ、お前は本陣へ戻れ」

クリスタ「えっ!?ど、どうして!?」

ユミル「夜は煙弾を使えねぇ。口頭伝達の方が確実だ」

ユミル「ミカサ隊、アニ隊、本陣のマルコに赤軍の攻勢を知らせてくれ」

ユミル「事態は一刻を争う。頼む」

クリスタ「……」コクン

クリスタ「みんな……武運を!!」バシュッ

サシャ「これで残るは9人ですね」

コニー「おいおい……これっぽっちで大丈夫なのかよ?」

ユミル「あぁ、大丈夫だ」

ユミル「赤軍は陽動で両翼あわせて30程度の兵を割いている。仮に残像兵力全てが襲ってきても精々30程度」

ユミル「それぐらいの戦力差なら遅滞戦術を展開しつつ後方のミカサやアニと合流すれば充分返り討ちにできる数字だ」

サシャ「それでも激戦は免れませんね」

ユミル「仕方ねぇさ。赤軍は今日勝負をかけるつもりだろうしな」

ユミル「敵本命は恐らく篝火を使わず徒歩でくるはずだ!!サシャ!コニー!お前らの夜目が頼りだからな!!」

サシャ「はいっ!」

コニー「任せておけ!」

ナック「敵陽動部隊発見!戦闘に入る!!」

ナック「行く……ぞっ……!?」

赤軍右翼陽動隊A「おーおー!釣られたバカどものお出ましだ!!」

赤軍右翼陽動隊B「ひいふうみい……ハハッ、俺たち3人のお出迎えに10人お出ましとは恐れ入るな!!」

赤軍右翼陽動隊C「15人はいると思った?ハイ、種明かしー!」

ナック「(松明を5本くくりつけた木の台座を背負っていたのか!?)」

赤軍右翼陽動隊A「この様子じゃあ反対側も上手くいってそうだな」チャキッ

赤軍右翼陽動隊B「……とすれば、俺たちはもうお役御免だな」チャキッ

赤軍右翼陽動隊C「まぁその前に……何人か道連れにしてやるからよ、付き合えよ」チャキッ

ナック「……くっ!!」

コニー&サシャ「」ピクッ

ユミル「来たか。兵数はどれぐらいだ?」

コニー&サシャ「んー……」

コニー&サシャ「……ッ!?」

コニー「……おいおい、どういうことだよブス」

サシャ「……50は確実にいますよ、あれ」

ユミル「なっ、なんだとぉっ!?」

コニー「もう来るぞっ!」

ユミル「ああクソっ!総員着剣!戦闘準備っ!!」チャキッ

ユミル「玉砕覚悟で足止めするぞ!!!」

ライナー「うおおおっ!!」

エレン「どぉぉけぇぇぇ!!」

ユミル「くっ!!」ギンッ

コニー「チッ!!」ガギッ

サシャ「ふんっ!!」キンッ

ジャン「松明に火をつけろ!ここから立体機動装置の使用を許可する!!」

ジャン「防衛部隊は相手にするな!!敵本陣へ突き進めぇっ!!」

ユミル「あいつら……ッ!!私たちを無視するつもりか!?舐めやがって!!」

サシャ「すぐに後を追いかけましょう!!」

コニー「っていっても俺たち以外はみんなやられちまったみたいだぞ?」

ユミル「構わねぇ!!すぐにヤツらを追うぞ!!」

???「……いや、それは困るんだよね」ザッ

ユミル「!?」

ヒュンッ

ユミル「くっ!?」ギンッ

ユミル「……お前」

ベルトルト「総大将の命令でね。君たちをここで足止めさせてもらうよ」

ユミル「……はっ、何言ってんだお前」

ユミル「サシャ!コニー!こいつは私がやる!お前らは先に行け!!」

サシャ「わ、わかりまし……

ヒュバッ

サシャ「うひゃぁっ!?」ギンッ

コニー「サシャ!?」

ヒュッ

コニー「うわっ!!」ガギンッ

ベルトルト「……人の話を聞いていなかったのかい?」

ベルトルト「悪いけど、『君たち』をここで足止めさせてもらうよ」

ユミル「野郎……」

ユミル「……芋女、チビ、前言撤回だ」

ユミル「三人でベルトルさんを殺るぞ」チャキッ

サシャ「……しょうがないですね」チャキッ

コニー「……仕方ねぇな」チャキッ

ベルトルト「……」チャキッ

ユミル「てめぇ……私ら三人を相手にしてただで済むと思うなよ」

ベルトルト「……」

ベルトルト「……ハァ」

ベルトルト「……君たちの方こそ」

ベルトルト「三人集まったくらいで僕に勝てると思ったのかい?」

ユミル「ッ!?」ゾクッ

ガギンッガギンッガギンッ

ベルトルト「(……くっ)」

サシャ「はあっ!」ヒュッ

コニー「オラッ!」ヒュバッ

ベルトルト「(この二人……やはり強い……)」

ベルトルト「チッ!」ガガギンッ

サシャ「完璧に同じタイミングだったのに……!?」

コニー「あれが防がれんのかよ!?」

ユミル「二人ともどけっ!あああっ!!」ザンッ

ベルトルト「ぐっ!」ギィィンッ

ベルトルト「(そしてそれ以上に危険なのが)」

ベルトルト「はっ!」ヒュバッ

ユミル「おっと危ねぇっ!!」キンッ

ベルトルト「(彼女……ユミルだ)」

ベルトルト『僕が足止めを……?』

アルミン『うん。僕の策が上手くいった場合、コニー、サシャ、ユミル、クリスタの4人が最初の障害になると思う』

アルミン『ここで時間をかけるわけにもいかないから、僕たち本隊はこの4人を無視して突き進んでいきたい』

ベルトルト『……追撃をはかる4人を僕が足止めするということかい』

アルミン『うん、そういうこと』

ベルトルト『ははは、アルミンも無茶を言うなぁ』

アルミン『本当にごめん。無茶を言ってるのは重々承知なんだけど……』

ベルトルト『……うん、わかった。僕に任せてよ』

アルミン『ありがとうベルトルト!!』

ベルトルト『と言ってもどれだけ持ちこたえられるかわからないけどね』

アルミン『10分……いや、15分は欲しい』

ベルトルト『ふふふ、正直だね』

アルミン『嘘を言ってもしょうがないからね』

ベルトルト『ははは、確かに』

ベルトルト『……さっきも言ったけど、自分でもどれだけ持ちこたえられるかわからない』

ベルトルト『それは自分に自信がないからというわけじゃなく、相手側の実力が未知数だからなんだ』

アルミン『……うん、ユミルだね?』

ベルトルト『正解』

キンッキンッ!!

ベルトルト「(今僕が相手をしているのは3人)」

ベルトルト「(アルミンの想定ではクリスタもいたはずだ)」ガギンッ

ベルトルト「(でも、彼女はここにはいない)」

ベルトルト「(それはなぜか)」ギィィンッ

ベルトルト「(……恐らく全てを察したユミルが伝令に行かせたんだろう)」

ベルトルト「(ユミルの実力は統率、戦闘、知略の全ての面で僕たちの想定の上を行っている)」ガキンッ

ベルトルト「(……彼女は危険だ。彼女はここで釘付けにしなければならない)」

ベルトルト「(……それが、今の僕の……『兵士』としての僕の役目)」

ベルトルト「……はぁぁぁぁっ!!」ヒュバッ

ジャン「アルミン!!さっきの戦闘での脱落者は!?」

アルミン「ベルトルトを含め4人だ!残存兵数は51!作戦の遂行に問題はない!!」

ジャン「もうすぐミカサ隊、アニ隊と接敵するはずだ!!総員、全方位警戒を怠るな!!」

「了解!!」

「ミカサ、アニを確認!!このまま進めば戦闘に入ります!!」

アニ「……来たね」

ミカサ「クリスタが来てから8分。赤軍の展開が予想以上に早い」

アニ「絶対にここを抜かせるわけにはいかないね」チャキッ

ミカサ「私たちで死守する」チャキッ

「ミカサ隊、アニ隊!着剣を確認!」

ジャン「ようし!ライナー!エレン!サムエル!任せたぞ!!」

ライナー&エレン&サムエル「了解!!」

サムエル「サムエル隊総勢10人!!ミカサ隊、アニ隊に突貫せよっ!!」

ミカサ「サムエル隊は囮!敵本隊はそのまま本陣へ向かうつもり!?させないっ!!」

ライナー「うぉらぁぁぁっ!!」ゴウッ

ミカサ「ッ!?」ギィィンッ

ライナー「……よぅミカサ。この前の続きと行こうぜ」チャキッ

ミカサ「くっ……ライナー!!」チャキッ

アニ「ミカサっ!?」

エレン「お前の相手は俺だぁぁぁぁっ!!」ヒュンッ

アニ「ちぃぃっ!!」キンッ

ジャン「行けっ!行けっ!突き進めぇぇぇっ!!!」

ミカサ「……ライナー、そこをどいて」

ライナー「はっ!どけと言われてどく馬鹿なんているわけねぇだろ!」

ミカサ「いる。今私の目の前に」

ライナー「おおお俺はそんなに馬鹿じゃねぇぞっ!!」

ミカサ「……ライナー、私も今なら怒らない。だからどいて?」

ライナー「おっ、俺をビビらせようったってそうはいかないからな!!」

ミカサ「……」

ライナー「ミカサも疲れたろ?な?お互いちょっと休憩でもしようじゃないか?」

ミカサ「……ライナー、もう一度言う」

ミカサ「……そこをどけ」

ライナー「……はっ、茶番はおしまいか」

ライナー「……いいぜ、何度だって答えてやる」

ライナー「誰がどくかよ、馬鹿野郎」

ライナー「俺はなミカサ。ジャンやアルミン、赤軍のみんなにこの役割を託されたんだよ」

ライナー「仲間からの信頼を裏切るような真似、男は絶対できねぇんだよ」チャキッ

ミカサ「……そう、わかった」

ミカサ「……ライナー、あなたは馬鹿だ」

ミカサ「……でも、ただの馬鹿じゃない。あなたは愛すべき馬鹿」

ミカサ「……そんな愛すべき馬鹿のためだ。苦しまないよう一瞬で逝かせてあげよう」チャキッ

ライナー「……おいおい、なんだよそれ。殺す気満々じゃねぇかよ」

ミカサ「そんなことはない。少し眠ってもらうだけ」

ライナー「それも勘弁だけどな!」

ミカサ「……お喋りはおしまい」

ライナー「……いくぜ」

アニ「……完璧に出し抜かれたみたいだね」

エレン「だな」

アニ「……発案はアルミンかい?」

エレン「おう。でもアルミン一人じゃ成功しなかったはずだ」

エレン「ジャンの野郎の指揮やライナー、ベルトルト、みんなの賛同があったからこそ、俺たちはここまで来ることができたんだ」

エレン「……今、赤軍のみんなは自分に与えられた役割を果たそうと懸命に闘っている」

エレン「その意思の流れを俺が止めるわけには行かない」

エレン「だから、さ……」

エレン「ここで足止めさせてもらうぜ、アニ」

アニ「……」

アニ「認めよう」

アニ「あんたたちは兵士なんかじゃない」

アニ「あんたたちの一人一人が、世界を変えうる力を持つ勇者たちだ」

アニ「私はあんたたち一人一人を尊敬する」

アニ「……ただ」スッ

アニ「それとこれとは話が別だ」ガチャガチャ

アニ「悪いけど……」ガシャン

アニ「あんた達の英雄譚に付き合ってる暇はないんだ。本陣に戻らせてもらうよ」スッ

エレン「立体機動装置を……お前、素手で闘るつもりか?」

アニ「勘違いしないでよね。ハンデなんかじゃない。私はこっちの方が強いんだよ」

エレン「そうかい」チャキッ

アニ「……じゃあいくよ」

アニ「そこを……どきなっ!!」

ごめん眠い

ガギンッガギンッ

ミカサ「ふんっ」ビュン

ライナー「くっ……!!」ガギンッ

ライナー「オラァッ」ブンッ

ミカサ「おっと危ない」スカッ

ライナー「(……始めは全く見えなかったミカサの斬撃が見えるようになってきた)」

ライナー「(……いける!俺はまだいけるぞ!!)」

ライナー「……へっ、どうしたミカサ?疲れて剣が鈍くなってきてるんじゃないのか?」

ミカサ「……そんなことはない体力はまだ余裕がある」

ミカサ「そう感じるようになったのは、おそらくライナーの目が私の剣に慣れてきたからだ」
ライナー「……ははは、そうかい(そこまでお見通しってわけかよ……くそ!!)」

ライナー「その割りには随分と余裕こいてるじゃねぇか」

ミカサ「……問題ない」

ミカサ「斬撃が見えるようになったところで、それを止めることが出来なければ意味がない」

ミカサ「見えるけど反応できない、どうしようもない」

ミカサ「そんな一撃を放てばいい」

ミカサ「……ただ、それだけのこと」チャキッ

ライナー「……クソっ、化け物め」チャキッ

ライナー「(もう少しだ……、もう少しだけもってくれよ俺の身体よ……っ!!)」

ゴウッ!!

ライナー『俺がミカサと一騎打ち……?』

アルミン『そうだ。君がミカサを、エレンがアニを押さえている間にジャンと僕たちが青軍本陣まで一気に突破し、マルコを打ち倒す』

ライナー『短時間での電撃作戦か……成功するのか?』

アルミン『正直言ってわからない。ただ……』

ライナー『……俺たちが勝つにはもうこれしかない。そういうことだろ?』

アルミン『……』コクリ

ライナー『……だよなぁ』

アルミン『陽動、足止め役の人間に大きな負担がかかる作戦だっていうのは承知している』

アルミン『おそらく君たちはこの作戦中に戦死判定となるはずだ』

アルミン『それでも、僕たちは勝利のためこの作戦をとらざるを得ない』

アルミン『……すまない、ライナー』

ライナー『……謝る必要なんかねぇよ』

アルミン『しかし!』

ライナー『……アルミン、今のお前の肩書はなんだ?

ライナー『俺たち赤軍の命運を担う副将兼作戦参謀。そうだったはずだ』

ライナー『ウダウダと詫びのことばなど必要ない』

ライナー『俺に対してお前はただ一言、こう言えばいい』

ライナー『……ミカサの足止めを頼む、とな』

ライナー『そして俺は、お前の言葉に対しひざまずきこう答えてやる』

ライナー『参謀殿の仰せのままに、ってよ』

アルミン『ライナー……』

スッ

ライナー『さぁアルミン、俺はもうひざまずいた。後はお前の言葉だけだ』

ライナー『……参謀殿、俺に命令を』

アルミン『……』

アルミン『ライナー・ブラウン!!』

アルミン『今晩行われる夜襲作戦において、君は青軍ミカサ・アッカーマンに対し一騎打ちをしかけるべし!』

アルミン『なお、この一騎打ちは相手を打ち倒すことを目的としていない!』

アルミン『ミカサ・アッカーマンの目を青軍本陣急襲隊から逸らし、青軍本陣を孤立させるためのものである!』

アルミン『全身全霊の勇をもって、この陽動任務を遂行して欲しい!』

ライナー『……』

ライナー『……全ては』

ライナー『参謀殿の仰せのままに』

ライナー『このライナー・ブラウン、』

ライナー『非才の身ではございますが、必ずや参謀殿の期待に応えてみせましょう』

ライナー『……ミカサは、絶対に俺が止めてみせる!!』

ライナー「(……そう、俺は約束したんだ)」

ミカサ「ふっ」ヒュンッ

ライナー「軽いっ!!」ギンッ

ミカサ「はぁぁっ!!」ブンッ

ライナー「ブレードの斬撃はフェイク!本命は回し蹴りだろ!?」ゴスッ

ミカサ「なっ……防がれた!?」

ライナー「(だから、ここは絶対に死守しなければならない!!)」

ライナー「とったぁ!!」ブオンッ

ミカサ「チィッ!!」ガギンッ

ライナー「(男が約束を違えるようなダセェ真似できるわけねぇだろうが!!!)」

エレン「オラァッ!!」ヒュンッ

アニ「……シッ」ブンッ

エレン「しまっ……ブレードがっ……」バキッ

アニ「……シッ、シッシッ」ブンブンブンッ

エレン「ぐっ……、がはっ……!!」ドガッドガガッ

エレン「くっそ……やっぱり強ぇなお前」

アニ「……あのさ」

エレン「あん?」

アニ「普通私が素手で闘おうとしてんだから、アンタもそれにあわせてブレードを捨てるもんなんじゃないの?」

エレン「……は?何言ってんだお前?」

エレン「物語の中の話じゃないんだから、そんなことするわけないだろ?」

エレン「そもそも俺よりお前の方が強いじゃん。そんなヤツを相手にするんだからなりふりなんて構ってらんねぇよ」

アニ「……そうかい」

アニ「(マズイね……エレンのヤツ、想像以上に本気でしかも冷静だ)」

脱落者

さるってた
あと>>127はミス

ジャン「アルミン!戦況を報告してくれ!!」

アルミン「うん!まずば作戦通り、ライナー、エレン、サムエル隊10人の計12人が足止めのため脱落」

アルミン「加えてミカサ隊、アニ隊を突破する際の小競り合いに捕まり13人が脱落。思っていた以上に被害が出てしまった……」

ジャン「ミカサとアニが率いる青軍主力に正面から突っ込めばそうもなるさ、仕方ねぇ!!」

アルミン「残存兵数は26人!青軍本陣に残っているのは10人前後だと思われるから、依然僕たちが有利な状況は変わらない!!」

アルミン「注意すべきはクリスタ!残った面子の中ではマルコに次いで指揮官の適性が高い!!」

アルミン「クリスタが残兵を指揮し時間稼ぎに徹してきたら逆に俺たちが危なくなる……!!」

ジャン「……全員、ガスの残量を気にせずとばしまくれ!!」

ジャン「帰りのことなんて考える必要はない!速攻をかけて青軍に態勢を整えるヒマを与えるな!!」

「おおおおーっ!!」

>>135
アルミンの一人称が俺になってた
スマンコ

コニー「……ゼェッ、ゼェッ」

サシャ「三人がかりで……突破口すら見つからないなんて……」

コニー「……これがっ……ベル、トルトの……本気のかよっ……」

ユミル「コニー!一旦下がれ!呼吸を整ええろ!!」

コニー「……い、いやっ、そんな余裕なん……

ベルトルト「……そんな暇を僕が与えると思ってるのかい?」ヒュバッ

コニー「しまっ……」

ゴスッ

サシャ「あ、あぁ……」

ユミル「コニィィィィィ!!!」

ベルトルト「……敵将、コニー・スプリンガー」

ベルトルト「このベルトルト・フーバーが討ち取った……!!」

ベルトルト「……次は君たちだ」チャキッ

ユミル「……クッ、クッソォォォォォォ!!」ゴオオッ

サシャ「ユ、ユミルッ!?」

ユミル「うおおおっ!!」

ガギンッガギンッ

ベルトルト「……」

サシャ「うわぁぁぁっ!!」

ガギンッガギンッ

ユミル「ちくしょうっ!全部っ!全部いなされるっ!!」

サシャ「ベルトルトが……こんなに強かったなんて……」

ユミル「てめぇ……どうしてその実力を隠していやがった!!」

ベルトルト「うぅん、別に隠しているつもりはないんだけどね」

ベルトルト「披露する機会が無かっただけだと言うか……」

ユミル「ッ!?」

ベルトルト「ユミル、コニーの次は君の番だ」ヒュバッ

ユミル「(……あぁ、今理解した)」

ユミル「(……ベルトルさんはよく自分の意思がないと言われるが、それは誤りだ)」

ユミル「(恐らくベルトルさんは誰よりも強く固い意思もその胸に秘めている)」

ユミル「(訓練中のベルトルさんの主体性のなさは、ただ単純に興味がなかっただけなんだろう)」

ユミル「(どういう訳だか知らねぇが、今回の訓練ではベルトルさんは自分の意思の下動いているようだ)」

ユミル「(……これが本当のベルトルさん。ベルトルさんの強さなんだろうな)」

ユミル「(……まぁ、そんなことよりだ)」

ユミル「(いつになったらこのスローモーションの世界が終わって、ベルトルさんの刃が私を切り裂くのだろうか)」

ユミル「(……すまない、クリスタ、マルコ)」

ユミル「(……私はここまでだ)」

ザシュッ!!

ユミル「」

サシャ「くっ……!!」

ベルトルト「……さぁ、サシャ。残るは君一人だ」

ベルトルト「降伏して首級を差し出すというなら手荒な真似はしないけど……どうする?」

サシャ「……」

サシャ「……ひとつ」

サシャ「ここであなたに背を向け、本陣へ撤退を謀る」

ベルトルト「それはオススメしない。君が背を向けた瞬間僕が斬り掛かる」

サシャ「でしょうね。よしんば私が帰還できたとしても、あなたを健在なままこの森に解き放つことになってしまう」

サシャ「これは我々青軍にとって大きなリスクになります」

ベルトルト「……じゃあどうするつもりだい?」

サシャ「……ふたつ」

サシャ「……足りない頭で色々考えましたが、やっぱりこれしかありませんでした」シャキンッ

サシャ「……ベルトルト」

サシャ「あなたをここから先に行かせるわけにはいきません」

サシャ「なんとしても、この場で足止めさせていただきます」

サシャ「……ふふふ。さっきと立場が逆になってしまいましたね」

ベルトルト「……君一人で勝てると思っているのかい?」

サシャ「女の子には負けるとわかっていても退けない時があるんですよ」

ベルトルト「……そっか」チャキッ

サシャ「……さぁ、もうお喋りはいいでしょう」

サシャ「……かかってこんかい!!!!」





ベルトルト「……」

コニー「」

ユミル「」

サシャ「」

ベルトルト「……ははは、なんとかなったかな」

ベルトルト「僕も意外にやるもんだなぁ……。驚いたよ……は、はは……」グラッ

バタンッ

ベルトルト「ライナー……ジャン……アルミン……」

ベルトルト「後は……任せたよ……」

ベルトルト「……最後にいい思い出が出来てよかった」

ベルトルト「これで……僕は心おきなく……戦士になれ……」

ベルトルト「」

\ウォァァァァァッ!!/

ライナー「(あの方角……ベルトルトっ!!)」

ライナー「(あの方角から女の咆哮が聞こえたのは二回目っ……。おそらく、一回目はユミル、二回目はサシャ……っ!!)」キィンッ

ライナー「(やったんだな……ベルトルトっ!!)」ニヤッ

ミカサ「……」スッ

ライナー「……ん?どうした、休憩か?」

ミカサ「今の声……、おそらくユミルたちがやられた」

ライナー「あぁ、だろうな。ちなみにやったのはベルトルト一人だ」

ミカサ「そう」

ライナー「じきにあいつもここに来るだろう」

ライナー「そうすればお前を倒すこともできるはずだ」

ミカサ「確かに。その状況は私にとってとても困る」

ミカサ「ので、ライナーには早急に死んでもらわなければならない」チャキッ

ライナー「……そう簡単にやられるつもりはねぇよ」チャキッ

ミカサ「いや、できる。今の私ならあなたを瞬殺することができる」チャキッ

ミカサ「私は、強い」

ミカサ「とてもとても、強い」

ミカサ「その強さは今期の訓練兵団の中でもナンバーワンであると自負している」

ミカサ「そんな私が、今また強くなった」

ミカサ「……いや、現在進行形で強くなっている」

ミカサ「……あなたのおかげ」

ミカサ「ライナー、あなたとの闘いを通じて私は更に強くなることができた。礼を言う」

ミカサ「せめてもの心付として、一撃であなたを昏倒させよう」

ミカサ「」ヒュッ

ライナー「な……っ!?消え……」

ザンッ!!

ライナー「が……!!」

バタンッ

ミカサ「……ふぅっ」

ミカサ「……ライナー、ありがとう」ナムナム

ミカサ「エレン……はアニなら大丈夫なはず」

ミカサ「やはり今は大将のマルコが心配」

ミカサ「一度本陣に戻るべきか……」

ガシッ

ミカサ「ッ!?」

ライナー「つれ……ねぇじゃないかミカサ……」ズルッズルッ

ライナー「まだ……勝負はついてねぇだろ?」

ミカサ「くっ!!」

ミカサ「はぁっ!!」ザンッ

ライナー「ぐぁっ!!」

ミカサ「ふっ!!」ビュン

ライナー「ぐふっ!!」

ミカサ「…………!!」

ライナー「ハァ……ハァッハァッ……どう、した?もうおしまい……か?」

ミカサ「ライナー……あなた、なぜ……」

ライナー「なぜだって?そんな……野暮なこと……聞くんじゃ、ねぇ、よ……」

ライナー「あいつらと……約束したからに……決まってんだろうが……」

ミカサ「ッ!?」

ミカサ「……でも、これ以上私の攻撃を受けたらあなたは……っ!!」

ライナー「……あぁ、本当に死ぬかもしれないな。だがそれがどうした?訓練中の事故死なんて珍しいもんじゃねぇだろ?」

ミカサ「ライナー……自分が今なにを言っているのかわかっているの!?」

ライナー「わかってるさ……わかってるよそれぐらい……」

ライナー「……確かに死ぬのは怖い。怖いけどよ……」

ライナー「……俺にとってはさ」

ライナー「仲間との約束を破ることの方が何倍も何十倍も怖いんだよぉぉぉ!!」

ライナー「うおおおぉぉぉっっっ!!!!」ブォンッ

ミカサ「チィィィッ!!」ダッ

ライナー「うおおおぉぉぉっっっ!!」ザシュッ

ミカサ「くっ!!」ヒュッ

ライナー「ああぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!!!」ビュン

ミカサ「チッ!!」

ライナー「ハァッ……まだ、まだだっ……ハァッ、ハァッ……」

ミカサ「……」

ミカサ「……わかった」

ミカサ「ライナー、私の負けを認めよう」

ミカサ「今の私では、あなたを打ち負かすことはできない。あなたの勝ちだ」

ミカサ「……ただ、それは私たち二人の勝負の話」

ミカサ「この演習は『私たち』が勝たせてもらうっ!!」ダンッ

ヒュンッ

ライナー「しまっ……背後を……!?」

ミカサ「そのリボン(くび)貰い受けるっ!!」

……シュルッ

ライナー「……ハァッ、ハァッ」

ミカサ「……ハァッ、ハァッ」

ライナー「……俺は、死んだのか」

ミカサ「……そう、あなたは死んだ」

ライナー「……そうか」

ミカサ「……うん」

ライナー「……本陣、行けよ」

ミカサ「……今はまともに動けない。呼吸が回復したらすぐにでも行く」

ライナー「……この状況ですげえ冷静だな」

ミカサ「……この状況での判断ミスは許されないから」

ライナー「……そうか」

ミカサ「……うん」

ライナー「……」

ミカサ「……」

ミカサ「……呼吸が回復した。行ってくる」

ライナー「……そうか」

ライナー「……言っちゃ悪いが、もう間に合わないと思うけどな」

ミカサ「……間に合う」

ライナー「……?」

ミカサ「あなたたち奇襲部隊は松明を片手におっかなびっくりの行軍だった。……まぁ夜だから仕方ない」

ミカサ「でも私は本陣までの道のりを完璧に覚えている。昼間と変わらない速度で移動できる」

ミカサ「今ならまだ、追いつける」

ライナー「……そうか」

ライナー「……敵であるお前にこんなことを言っちゃマズイのかもしれんが、頑張れよ」

ミカサ「……ありがとう」

ライナー「おう」

ミカサ「……行ってくる」バシュッ

ライナー「……行ったか」

ライナー「……」

ライナー「……」

ライナー「……」

ライナー「……クソッ!!」ダンッ

ライナー「……ちくしょう……ちくしょうっ!!」グスッ

クリスタ「赤軍奇襲隊と思われる松明群、本陣からおよそ1200!!」

マルコ「総員戦闘準備!!」

マルコ「すぐにミカサ隊とアニ隊が戻ってくる!!」

マルコ「それまで持ちこたえれば僕らの勝ちだ!!」

「おおおおっ!!」

クリスタ「松明群、500まで接近!!森を抜けてきますっ!!」

ザバッ、ザバッザバッ

ジャン「っ!!」ズザーッ

ジャン「よぉマルコ……」

ジャン「その首貰いにきたぜ……」ニヤッ

マルコ「……よく来たねジャン」

マルコ「疲れているだろう?ゆっくりしていきなよ?」ニヤッ

クリスタ「マルコ!あなたは下がって!!」

クリスタ「……すぅぅ」

クリスタ「青軍本陣守備隊の精鋭たちよ!!」

クリスタ「我々青軍本陣は高みにあり、赤軍奇襲隊を見下ろす形にあります!!」

クリスタ「いにしえより戦場では高きを利としています!!」

クリスタ「我々は寡兵なれど、憶することはありません!!」
クリスタ「このまま高低の利を維持し、攻め寄せる赤軍を討ち払いなさい!!」

ジャン「いいかてめぇら!ようく聞け!!」

ジャン「青軍の連中の数を数えてみろ!!大将のマルコ含め11人だ!!」

ジャン「大して俺たちは何人だ!?青軍のおよそ倍の20人だ!!」

ジャン「今この場に限った話をすれば、俺たち赤軍が圧倒的に有利だ!!」

ジャン「だが、この有利な状況も長くは続かない!!」

ジャン「こうやって話をしている今もなお!ミカサ隊、アニ隊の残存兵が俺たちを背後から狙ってきているはずだ!!」

ジャン「故に!勝負は今、ここで決める!!決めなければならない!!」

ジャン「脱落していった仲間の想いに応えるのは今だ!!」

クリスタ「総員……」

ジャン「かかれぇぇぇぇ!!」



「うおおおぉぉぉっっっ!!」

ジャン「うおおおっ!!」ガギンッ

青軍A「きゃっ!!」ガンッ

青軍A「くっ……、私じゃジャンに太刀打ちできない!!」

ジャン「どぉぉぉけぇぇぇ!!」

青軍A「しまっ……」

クリスタ「させないっ!!」キンッ

ジャン「チッ、クリスタか!?」

クリスタ「二人一組でペアを作って!お互いの死角をフォローし合うようにするのよ!!」

青軍A「はぁぁっ!!」ビュンッ

ミーナ「ジャン!危ないっ!!」

ジャン「そんなんくらうかよっ!!」キンッ

ジャン「ミーナ、今だ!!青軍の連中が固まっている隙に防衛ラインを突破しろ!!」

ミーナ「了解っ!!」ダッ

クリスタ「……しまった!!マルコ!危ない!!」

ミーナ「はぁぁぁっ!!」ダダダッ

マルコ「……」チャキッ

ミーナ「マルコ、覚悟っ!!」ヒュンッ

ザンッ

ミーナ「……」

マルコ「……」

ミーナ「……あぅっ」フラッ

バタンッ

ジャン「ミーナ!!」

マルコ「ふふふ、やだなぁみんな」

マルコ「僕だって伊達に訓練兵団第7位を名乗っているわけじゃないよ?まぁ暫定だけどね」

マルコ「一対一の闘いなら……ジャン、君が出てこないとどうにもならないよ?」

ジャン「くっ……」

ジャン「上等だ!一騎打ちといこうじゃねぇか!!」チャキッ

トーマス「落ち着けジャン!あれはマルコの挑発だ!冷静になれ!!」

ジャン「俺は冷静だ!お前こそ落ち着けトーマス!!」

ジャン「戦闘が長引いて不利になるのは俺たちなんだぞ!?」

トーマス「ミカサ隊とアニ隊のことか!?だがそれにしたってもう少し猶予はあるはずだ!!」

\ウワァァァ/

\キャァァッ/

トーマス「隊の後方から!?まさかっ!?」

ミカサ「……ギリギリセーフ。なんとか間に合った」ダッ

アニ「主役は遅れて到着するもんだよね」ダッ

クリスタ「ミカサ!アニ!良かった!!」

ミカサ「アニ、私はクリスタ隊の救援に入る。あなたは……」

アニ「……任せな。ジャンは私が討ち取ってみせる」

ミカサ「……健闘を祈る」ダッ

アニ「……アンタもね」ダッ

ジャン「ミカサとアニ、二人とも健在だと!?ライナーとエレンはどうした!?」

トーマス「そんなことはどうでもいい!来るぞ!ジャンっ!!」

ミカサ「はぁっ!!」ヒュンッヒュンッ

赤軍G「うわっ!!」ズバッ


赤軍H「ぐぇっ!!」ザンッ

トーマス「ジャン!下がれっ!!」ヒュンッ

アニ「邪魔だよっ!!」ビュオッ

トーマス「ごふっ……」ザンッ

ジャン「トーマスっ!!」

アニ「ジャン……貰ったっ!!」ビュン

ジャン「ちっ……まだだぁっ!!」ガギンッ

マルコ「(良かった……ミカサとアニが間に合って……)」

マルコ「(じきにミカサ、アニ両隊の後続も合流してくるだろう)」

マルコ「(こうなってしまえばあとは赤軍を包囲しておしまいだ)」

マルコ「(……)」

マルコ「(本当に、本当に紙一重だった……)」

マルコ「(それもこれも、ジャンの指揮とアルミンの知略があってこそだ)」

マルコ「(やっぱり君たちは本当にすごいよ。ジャン、アルミン)」

マルコ「(ん?そう言えばアルミンの姿が……)」

ガサッ

クリスタ「ッ!?マルコ!!後ろっ!!」

アルミン「はぁぁぁっ!!」ザシュッ

キース「二日とかからないとは……総合戦技評価演習史上最短の結果だったな」

エルヴィン「……だが、内容の濃さも史上最高のものだった」

ナイル「聞けば赤軍青軍の総大将は共に憲兵団を志望しているらしいじゃないか。憲兵団としても彼らのような優秀な若者は大いに歓迎したい」

ピクシス「朱に染まれば赤くなるという言葉もあるが……大丈夫なのかね?ドーク団長」

ナイル「……彼らのような志の高き若者が、今の憲兵団の体質を変えてくれるかもしれません」

ピクシス「部下に期待するだけではなく、団長が自ら範を示すべきだとワシは思うがな」

エルヴィン「我々としては……、やはり首席のミカサ・アッカーマンが気になります」

エルヴィン「彼女の実力は今の調査兵団の中でもトップクラス。ああいったスタンドプレイヤーは歓迎したいところです」

ピクシス「ああ、あの娘っ子か。あやつはウチも欲しいのぉ」

ナイル「……まぁ、ここで誰が欲しいと論じたところで結局は本人の意思だからな。取らぬ狸の皮算用だよ」

エルヴィン「……ふっ、違いないな」

ピクシス「まぁいいものが見れた。エルヴィンも言っていたが、今年の総合戦技評価演習はとても見応えのあるものだったよ」

キース「……では、今日は解散ということで」

ナイル「……ああ」

エルヴィン「……うむ」

ピクシス「……ああそうそう思いだした。アルミン・アルレルトじゃ!」

ピクシス「あの小僧、お主らの力を使ってなんとか中央政権にねじ込めないか?あやつは天才だ!!」

ナイル「(……おい、まだ続くのかエルヴィン)」ヒソヒソ

エルヴィン「(……諦めろ)」ヒソヒソ

アニ「……」イライラ

ベルトルト「……お、おはようアニ……?」

アニ「……」ギロッ

ベルトルト「……ひっ」

アニ「……おはよう」プイッ

ベルトルト「……ほっ」

ライナー「アニのやつまだ機嫌悪いのか」

ベルトルト「……みたいだね」

ライナー「そんなに悔しかったのかね、この前の総合戦技評価演習の負けが」

アニ「……ッ!!」ギロッ

ベルトルト「ら、ライナー!!」

マルコ「うぅーん……」

ジャン「なんだマルコ、まだグダグダ言ってんのか?」

マルコ「あ、ジャン。だってさ、本当にあとちょっとだったんだよー」

ジャン「あぁ。背後から奇襲をかけたアルミンを返り討ちにしたのはすげぇと思ったよ」

マルコ「それで安心したのがいけなかったよね」

ジャン「アルミンを含め青軍本陣を迂回して背後にまわったやつは6人いたからな」

マルコ「初日に僕たちが打った策をそのまま完全におうむ返しとはね。やられたよ」

ジャン「おう、アルミン様々だよ本当に」

マルコ「……いや、僕は赤軍の勝利はジャンのおかげだと思うけどね」

ジャン「俺?馬鹿言うな、俺は何もしてねぇ」

マルコ「卑屈になったり謙遜してるわけでもなく」

マルコ「自然とそんな言葉が出ちゃうんだから恐ろしいね君は」ハァ

ジャン「??」

マルコ「とにかく、これでわかっただろう」

マルコ「君は指揮官としての適性がずば抜けて高いのさ」

ジャン「……なんだかピンと来ないけどな」

マルコ「ははは、今はまだそれでいいんじゃないのかな」

マルコ「……ただ、いつか必ず来るよ」

マルコ「みんながジャンの力に頼らなければいけない。そんな日が」

サシャ「……で?あの日結局エレンは何をしてたんですか?」

エレン「……陽動だよ、陽動。アニのな」

コニー「おまっ、アニの相手をしてたのか!?もしかしてタイマンだったのか!?」

エレン「あぁ!?どうだっていいだろそんなこと」

コニー「なぁいいじゃねぇか教えてくれよー」ユサユサ

エレン「だぁぁぁっ!やめろって!!」

アニ「……一対一だったよ」

サシャ「あ、アニ」

エレン「ばっ、馬鹿っ!お前っ!!」

コニー「おお!それで!?結局どっちが勝ったんだよ!?」

アニ「私」

アニ「しかも瞬殺」

アニ「あんだけ威勢のいいこと言ってたのにね」ニヤッ

エレン「……」ズーン

ライナー「(アニのやつ……鬱憤の晴らし方がまるで子供じゃねぇか)」

コニー「お前……瞬殺って……」

サシャ「いやいや、アニの戦闘力はかなりのものですから」

アニ「『……今、赤軍のみんなは自分に与えられた役割を果たそうと懸命に闘っている』」ボソッ

エレン「」ビクッ

アニ「『ここで足止めさせてもらうぜ、アニ』」ボソッ

エレン「くっ、くそう……」プルプル

コニー「あぁー……」

サシャ「エレンが得意顔で喋ってる姿が容易に想像できますね」

エレン「うっ、うるせえなぁ!!あの時は必死だったんだよ!!馬鹿にすんな!!」

サシャ「あははは……」

ベルトルト「……三人ともそれぐらいにしておいてあげなよ」

コニー&サシャ「」ビクッ

コニー「おおおおおうベルトルト!!きききき今日もいい天気だな……ですね!!」ガクブル

サシャ「ベベベベベベルトルトさんはお身体など悪くなされたりさていませんかかかかか!?」ガクブル

ベルトルト「……?」

エレン「なんなんだコイツら?」

クリスタ「あ、みんなー!何をお話ししてるの?」

ベルトルト「あ、クリスタにユミル」

ユミル「」ビクッ

ユミル「おおおおう、ベルトルトルトルトルさんじゃねぇか。げげげ元気か?」ガクブル

クリスタ「……?」

ライナー「いつつ……」

アニ「……怪我、まだ痛むのかい?」

ライナー「おおアニか」

アニ「ミカサに散々やられたらしいね」

ライナー「ああ、やっぱりあいつは強かったよ」

ベルトルト「それでもライナーはよくやってくれたよ」

ベルトルト「ライナーが赤軍のMVPなんじゃないかな」

アニ「……そうだね。私もそう思うよ」

ライナー「お、お前ら……」ウルッ

アニ「こういう言い方もおかしいけれどさ」

アニ「総合戦技評価演習、楽しかったね」

ライナー「……ああ」

ベルトルト「……あの演習を通じてみんなと心を通わせることができたと思うよ」

ライナー「どいつもこいつも立派な兵士……いや、勇者だった」

アニ「……三年間の訓練兵生活」

アニ「最後の最後に『兵士』としていい思い出ができたね」

ライナー「……ああ」

ベルトルト「……そうだね」

ライナー「明日の解散式をもって、俺たちはまた『戦士』にもどる」

ベルトルト「……」コクリ

アニ「……」コクリ

ライナー「かつて仲間だったものとしてせめてもの手向けだ」

ライナー「……手を抜かず、全力でやろう」

ベルトルト「……あぁ」

アニ「……わかったよ」





ベルトルト「……」

ベルトルト「(これから僕は、トロスト区の門を破壊する)」

ベルトルト「(僕の行いによって多くの人が死ぬことになる)」

ベルトルト「(……当然、その中にはかつての仲間たちも含まれる)」

ベルトルト「(……)」

ベルトルト「(誇り高き104期訓練兵団の勇者たちよ)」

ベルトルト「(君たちと過ごした三年間は決して忘れない)」

ベルトルト「(君たちと共に味わった喜び、苦しみ、悲しみを決して忘れない)」

ベルトルト「(総合戦技評価演習で唄った凱歌を決して忘れない)」

ベルトルト「(……さようなら、勇者たちよ)」

ベルトルト「(この惨劇により流されるで人々の恐怖と怨嗟の声を……)」スッ

ベルトルト「(……君たちに贈る鎮魂歌としよう)」ガリッ!!

カッ!!

(おわり)

誤字が多いけど許して
脳内で補完してください

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年05月02日 (金) 15:15:12   ID: EJ0abwmV

これすごい好きだ
みんな格好良い

2 :  SS好きの774さん   2014年08月31日 (日) 21:22:41   ID: 1suSdtMZ

かっけぇし後日談もいい感じだ。全然違和感がない。
疾走感あるのに読みごたえもあってかなりの良スレだと思う。
当てられやすそうな雰囲気の中の自分に酔っているような痛い台詞の数々、超ツボだわ……

3 :  なぎ   2014年12月16日 (火) 18:36:38   ID: JbPrgZKs

青軍応援してた…

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