小蒔「友人帳?」(60)

西村「夏目って麻雀できるか?」

夏目「麻雀かぁ……やったことないな」

北本「まぁやりそうなタイプには見えないな」

西村「最近将棋とかばっかりだったからさ、田沼も呼んで麻雀やらないか?」

夏目「いいけど、難しいんじゃないのか? ルールを覚えられる自信ないぞ?」

西村「大丈夫、慣れるまで複雑なルール抜きでやるから。それに基本を押さえれば結構簡単に覚えられるぞ」

夏目「そういうことなら、まぁ」

北本「じゃあ俺田沼に声かけてくるわ」

西村「おう、頼んだ」

夏目(麻雀かぁ……そういえばテレビでよく中継してるけど、ちゃんと見たことないな)

夏目(仲間とやるゲームって、縁がなかったし……)

北本「おーい、田沼の家、自動卓あるってよ」

西村「お、マジ!?」

田沼「あぁ、親父が麻雀好きでな、たまに檀家の人と打ってるぞ」

西村「よし、じゃあ今日は田沼の家に集合だな!」

夏目「いいのか?」

田沼「問題ないよ、親父も喜ぶと思うぜ? 相手が増えるからな」

夏目「そういうもんなのか……」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


西村「ツモ! 1000・2000!」

北本「あっぶねー、振り込むところだった」

田沼「ほれ、2000」チャラ

夏目「えーっと、はい」チャラ

西村「いやぁ、今日はついてるぜ! この調子なら役満も出せるかもな」

北本「もうお前に運はこねえよ……ここからは俺の独壇場だ」

西村「おもしれぇ、やってみろ!」

夏目「これがこう……」

田沼(理牌のクセが丸分かりだけど、まあいいか)

夏目(表を見ながらだからなんとかやれてるけど、やっぱり難しいなコレ)

夏目(…………ん?)

「…………」ジー

夏目(妖が西村の手を覗いてる……)

「ん?」

夏目(やば、目が合った)

北本「どうかしたか、夏目?」

夏目「いや、なんでも」

「おい、こいつ二索待ちのスッタンだぞ」

夏目(りゃんそう? すったん? なんだそれ)

「まぁ気をつけるこったな」

夏目(どっかいった……それにしても何だったんだ)

夏目(りゃんそうって確かこの竹みたいなヤツが二つ書いてあるのだよな? これで西村が和了れるってことか?)

夏目(……じゃあこっちを捨てるか)コト

北本「……」コト

夏目(あ、あれ二索じゃ……)

西村「くっ……くくく」

北本「……おい、マジかよ」

西村「ああそうだ、ロン! ひざまづけ!」パタン

北本「っ! ぐあああああああああ! うそだろおおおおおお!?」

田沼「おいおい、本当にすごいな今日は」

夏目「そんなにすごい役なのか?」

田沼「まぁ役満は滅多にお目にかかれないからな、特にこれは四暗刻単騎だし」

夏目(すーあんこーたんき…………だからスッタンなのか)

西村「ダブルはアリでいいんだったよなぁ? 親のダブルはきっついぜ?」

北本「トんだどころの話じゃねえだろコレ……」

西村「いやぁ稼いだ稼いだ! あれ、北本くんの箱に何も入ってないように見えるのは気のせいかな?」

北本「お前覚えてろよ」

田沼「そういえば夏目はGWはどうする予定なんだ?」

夏目「ああ、実は藤原さんたちと鹿児島へ旅行へ行ことになってさ」

北本「え、マジ?」

西村「おいおい、俺なんて鹿児島どころか市外へ出る予定もないっていうのに」

田沼「そうか……藤原さんたちと一緒に旅行に行くのは初めてじゃないか?」

夏目「そうだな……滋さんと陶芸の人の所へ遠出したのだけだった」

田沼「良かったな」

夏目「…………うん」

西村「あ、俺のお土産黒豚一匹で!」

北本「アホかお前は」

田沼「鹿児島といえば練り物が有名だよな」

夏目「そうか、薩摩揚げって鹿児島だもんな」

田沼「ニャンニャン先生が喜びそうだな……あれ、先生はどうするんだ?」

夏目「家においてはいけないからって、滋さんがペット可のところを予約してくれたんだ」

田沼「飲み過ぎないように言っておいたほうがいいんじゃないか?」

夏目「確かに」ハハハ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


滋「済まない、貴志」

夏目「いえ、仕事なら仕方ないですよ」

塔子「貴志くんがいいのなら、ひとりで鹿児島へ行ってきても良いんじゃないかしら」

夏目「そんな、二人がいけないのに俺だけなんて……」

滋「いや、もうすでに予約してしまっているからね、私と塔子さんの分は仕方ないが、貴志の分まで無駄にすることはないと思うんだ」

塔子「鹿児島は行ったことがないんでしょう? いいところだから、一人で羽を伸ばしてくるのも悪くないわよ」

夏目「そうですか……ならお言葉に甘えて、行かせてもらいます」

塔子「よかった、若いうちに色々な場所へ行っておくのは、いい経験になると思うの」

滋「社会人になると、そう簡単に遠出ができなくなってしまうからな」

夏目「ありがとうございます」

滋「そういえば、鹿児島でまた新しい遺跡が発掘されたそうだ」

夏目「そういえば、ニュースでちょっと見ました」

滋「ポンペイ遺跡のように、火山灰で埋もれてしまった場所だったようだ。直接入って見ることはできないだろうが、遠目に眺めてくるのも良いかもしれないな」

塔子「何年かしたら、整備されて観光名所になるのかしらね」

滋「そうだな、今のうちに見ておいて、観光地化されてから行くとまた面白いかもしれない」

夏目「じゃあその時は一緒に行きましょう」

塔子「ふふ、そうね、楽しみだわ」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


先生「つまり私と夏目の二人旅というわけか」

夏目「一人と一匹な」

先生「にゃにおう!?」

夏目「先生、移動時間は長くないけど、大人しくしてるんだぞ」

先生「私が今まで大人しくしていなかったことがあったというのか?」

夏目「両手で数えられないくらいは」

先生「ふん! まぁせいぜい向こうで上手い練り物を私に捧げることだな」

夏目「酔っ払って問題起こすんじゃないぞ、馴染みのある土地じゃないんだから」

先生「なぁに、旅の恥は掻き捨てと言うだろう」

夏目「……連れて行かないぞ」

先生「というのは冗談でだな」

夏目「はぁ、今から心配だ……」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「じゃあ行ってきます」

塔子「あ、貴志くん、ちょっと待ってね」

昼に食べた地獄みたいに辛い麻婆麺のせいで腹がやばいからちょっと席をはずします

夏目「え?」

塔子「はいこれ、お土産代」

夏目「え……こんなにたくさんって、何人分買ってくればいいんですか?」

塔子「もう、これはね、お土産代っていう名前のお小遣いだから」

夏目「そんな、こんなに頂けませんよ」

塔子「旅行先では結構お金を使う場面があるから、とにかく持っていくだけでも、ね?」

夏目「……ありがとうございます、お土産たくさん買ってきます!」

塔子「ふふ、気をつけて行ってらっしゃい」



夏目「お土産か……何を買っていけばいいんだろう」

先生「酒だ酒! 鹿児島と言ったら芋焼酎だろう!」

夏目「俺は未成年だぞ、先生」

先生「なら私が化けて買ってやる、だから金をよこせ」

夏目「あ、電車きたぞ」

先生「こらー! 聞いてるのか夏目ー!」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「さてと……宿には無事についたけど……」

夏目(一人旅なんてしたことないから、何をすればいいのかわからないな……)

夏目「なぁ先生、旅行って普通何をするものなんだ?」

先生「昔は半分命懸けというのもあったからな、『可愛い子には旅をさせよ』というのは、まぁ修行みたいな意味合いもあったというようにな」

先生「しかし現在は手軽に旅行できるようになったからな、観光名所を回ったり、うまいものを食べたりするくらいじゃないのか?」

夏目「なるほど……じゃあとりあえず、今日は適当にうまいものを探して、そのへんを歩いてみようか」

先生「途中で薩摩揚げを買うのだ!」

夏目「気が向いたらな」

先生「なんだとー!?」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「小蒔ちゃん……あれほど携帯とお財布を持っておくように言い聞かせたのに……」

巴「姫様は霧島市からほとんど出たことがないですからね……」

霞「とにかく探しましょう、霧島にいる娘たちも呼んで、なんとしても見つけなきゃ!」

巴「はい!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔(どうしましょう……迷ってしまいました)

小蒔(せっかく分家のみんなが集まる日だから、美味しいものを買おうと思っていたのに……)

小蒔(疲れた……それに……お腹が減りました……)グゥー

小蒔「うぅ……霞ちゃん……」グスッ



夏目「あの……大丈夫ですか?」

小蒔「……え?」

夏目「何かお手伝いできることがあれば……」

小蒔「あ、あの……えっと……」

夏目「もしかして、道に迷ってたり?」

小蒔「あ、はい」

夏目「僕も旅行できてるから、そんなに詳しくはないんですけど、地図ならありますから案内しましょうか?」

小蒔(えっと……これはどうしたら良いんでしょう)

小蒔(知らない人について言ったら行けないって、霞ちゃんに言われているし……あ)

小蒔「あの……よろしければ携帯電話を貸していただけないでしょうか」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「はい……はい、お願いします」

小蒔「ふぅ……ありがとうございます」

夏目「いえ、お役にたてて良かったです」

小蒔「ここまで迎えに来てくれるそうなので、もう大丈夫です。本当に助かりました」

夏目「そうですか……どこからいらっしゃったんですか?」

小蒔「いえ、その……生まれも育ちも鹿児島なんですけど……霧島からあまり出たことがなくて……」

夏目「そうだったんですか」

小蒔(あ、あの袋は……つけ揚げの……)ゴクリ

小蒔「……」ジー

夏目(なんだろう、袋にものすごい視線を感じる)

ギュルル

小蒔「あっ」

夏目「……」

小蒔「……///」

夏目「あの、食べますか?」

小蒔「え?」

先生(にゃんだとおおおおお!?)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「……」ハムハム

夏目「神代小蒔さんですか」

小蒔「……んぐ、はい、高校2年生です」

夏目「あ、僕も高校2年生なんです」

小蒔「夏目さんも……じゃあ私たちおんなじなんですね」

夏目「そうみたいですね」

先生「おい夏目! 私のさつま揚げをホイホイ行きずりの女に貢ぐんじゃない!」ヒソヒソ

夏目「貢ってなんだ」ヒソヒソ

小蒔「その猫ちゃんも一緒に連れてきたんですか?」

夏目「ええ、まぁ……着いて行くって聞かなくて」

小蒔「ふふふ、可愛い猫ちゃんですね」

夏目(かわいい……?)チラ

先生「何か文句があるのか」ヒソヒソ

小蒔「あの……これも、いいですか?」

夏目「ああ、どうぞどうぞ」

先生「なっ! あのチーズ入りだけは渡してはならん!」ヒソヒソ

夏目「うるさいなぁ、またあとで買えばいいだろ!」ヒソヒソ

先生「夏目貴様、私の楽しみをなんだと思っているー!」ヒソヒソ

夏目「うわっ、やめっ!」ジタバタ

ドサッ

小蒔「ふぇ?」モキュモキュ

小蒔(何かカバンから落ちて……)

小蒔「友人帳?」

夏目「!? そ、それはっ」

小蒔「あ、すみません……つい手にとってしまって……」

夏目「い、いえ、ありがとうございます」サッ

小蒔「お友達の連絡先とかが書いてあるんですか?」

夏目「まぁそんなところです……はは」

夏目「おっと、もうこんな時間か……もう旅館の方で夕食の時間なので失礼します」

小蒔「あ、このお代は……」

夏目「ああ、気にしないでください、大丈夫ですから」

小蒔「でも、そういうわけには……」

夏目「じゃあ、もしもまた会えたら、おいしいお店を紹介してください、じゃあさよならっ」

小蒔「あっ……行っちゃいました」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「まったく……先生がわがまま言って暴れるから、友人帳を関係ない人に見せちゃったじゃないか」

先生「ふん! あれは全面的にお前が悪い!」

夏目「はぁ……まぁ普通の人だったから助かったけど」

先生「……それはどうかな」

夏目「え?」

先生「あの小娘、常人とは比べ物にならないほどの力を持っていたぞ」

夏目「神代さんが?」

先生「霧島から来たと言っていたな……あそこには霧島神宮がある。そこの巫女なのかもしれんな」

夏目「霧島神宮?」

先生「ニニギを祀っている由緒ある神宮だ、めちゃくちゃ大物だぞ」

夏目「そうなのか? 全然知らなかった」

先生「だが一応神として存在しているからな、信仰が弱くなった今はかつて程の力を持ってはいないだろう」

夏目「前から気になってたんだけど、先生とかは別に信仰されているわけじゃないけど力があるんだよな? どうして神様は信仰が関係してくるんだ?」

先生「そうだな……神や妖には様々な形態があるため、キッチリ分類するのは難しいのだが、強いて言うなら神は人が作り出したものだからだ」

夏目「人が?」

先生「正確には人が肉付けしたと言うべきか……ニニギなどの神は、元を正せば巨大なエネルギーのようなものなのだ」

先生「そこで人間が、何か大いなるものとしてそのエネルギーを崇め奉る。その際に人間のイメージがエネルギーに形を与えるのだ」

先生「それゆえ、信仰する人間がいなくなった神は、形を失ってもとのエネルギーに戻ってしまうのだ」

夏目「へぇ……そうだったのか」

先生「まぁ零落して妖になったりするのもいるし、逆に妖が信仰を得て神になることもあるから、一概には言えないがな」

先生「それより明日こそはちゃんとさつま揚げを買って食べるんだぞ?」

夏目「そうだな、今の話を聞いてたら霧島神宮に行きたくなってきたな……明日行ってみよう」

先生「おいぃ!? それよりも薩摩揚げのほうが大切だろう!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「……ということなんです」

霞「あらあら、そうだったの」

巴「その夏目という方に、きちんとお礼をしないといけませんね」

小蒔「はい、でも連絡先を知らなくて……」

巴「神宮の方の着信履歴を見れば、電話番号はわかると思いますけど」

小蒔「あ、そうですね!」

霞「じゃあ、明日になったらこちらからお電話を差し上げて、正式に……あら? おばあ様から電話だわ」

巴「あぁ、姫様のことで大分心配をかけてしまいましたからね」

小蒔「すみません……」

霞「ちょっと失礼しますね……もしもし、はい、何事もなく…………え?」

霞「はい……わかりました、もうすぐそちらにつきますので、はい……」

巴「……どうかしたんですか?」

霞「……大変なことになったわ」

小蒔「え?」

霞「運転手さん、すみませんがもう少し急いでいただけますか? なるべく早く大鳥居の向こう側まで」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夏目「随分山奥まで来たな……」

先生「まさに秘境というかんじでいいではないか」

夏目「っていうか先生、途中に鳥居があったけど大丈夫だったのか?」

先生「私ほどになると……と言いたいところだが、やはりいささか応えたな、まぁこの姿だから通り抜けられたが」

夏目「へぇ……やっぱりすごい所なんだな」

先生「まぁなんとかなるだろう、さっさと見て回って、別の店で薩摩揚げを食うのだ!」

夏目「さっきあれだけ食べただろ……まったく」

「おや、こんなところで会うとは……奇遇ですね」

夏目「え? ……あっ!?」

的場「お久しぶりです、夏目貴志くん」

夏目「な、なんで的場さんがここに……」

的場「仕事ですよ、昨日の夜早急に来て欲しいと頼まれまして、文字通り飛んできたのですが」

夏目「仕事……このあたりで妖が?」

的場「ふむ、本来なら部外者の君に教えることはできないのですが……まぁいいでしょう」

的場「霧島神宮に使える巫女が、昨夜何者かに襲われて、意識不明の状態だそうです」

夏目「なっ……」

的場「随分やっかいな相手だということで、私が来ることになったのですが……ひょっとして夏目くんが連れてきた妖の仕業ですか?」

夏目「っ! そんなことはしません!」

的場「冗談ですよ、怒らないでください……とにかくそういうことで、しばらくはここで仕事をすることになりそうですね」

夏目「そうなんですか……」

的場「夏目くんも手伝いますか?」

夏目「遠慮しておきます」

的場「そうですか、残念ですね」

夏目「……あの、その襲われたひとの名前、わかりますか?」

的場「どうしました? もしかして知り合いがいるのですか?」

夏目「いえ、その……」

スーパー夜食タイム

的場「……襲われたのは、明星という娘だそうです」

夏目(神代さんじゃないのか……良かった、というべきなのかな?)

的場「知り合いがいるなら、なおさらその力を使うべきではないですか?」

夏目「……」

先生「おい夏目、こんないかがわしいヤツの戯言に耳を傾けるな」

夏目「先生……」

的場「酷い言われようですねぇ」

先生「ふん、そもそもこのような霊験あらたかな場所に貴様のような払い屋がいれば、この青瓢箪の力など必要なかろう」

的場「さぁ、それはどうでしょうね」

先生「もういい、夏目、帰るぞ」トコトコ

夏目「あ、先生……」

的場「気が変わったらいつでもここに来てくださいね」

夏目「……」タッタッタ

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「小蒔ちゃん、着いてきてはいけないと言ったでしょう!」

小蒔「で、でも私たちのために来てくださった人をお迎えするのは、当然のことだと……」

霞「それで小蒔ちゃんが危険な目にあったら、元もこもないでしょう!」

巴「まぁまぁ、落ち着いてください」

初美「いざという時は私たちがなんとかして、姫様を逃がすのですよー」

霞「そんなのは当たり前です!」

春「もう少し気を楽に……」

初美「そんなにシワを寄せたら老けちゃうのですよー、ただでさえ……」

霞「」ギロ

初美「ひっ」

巴「あ、ほら! あの人たちじゃないですか?」

初美「あれが……」

春「的場一門の長……」ポリポリ

小蒔「あれ……あの人……」

霞「小蒔ちゃん?」

小蒔「……っ夏目さん!」ダッ

巴「ちょっ!?」

初美「ひめさまー!?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


小蒔「夏目さん!」

夏目「え……あれ、神代さん!?」

先生「……っ、いかん夏目! なにかヤバイのが来るぞ!」

夏目「えっ」

ズオォオ

小蒔「ひっ!」

霞「小蒔ちゃん!」

夏目「くっ!」ダッ

小蒔「いやぁ!」

初美「姫様がっ!」

夏目「離せぇ!!」ブン

バキッ

グオオオオオオオオオオオオ

夏目(っ!)ズキッ

夏目(い、今のは……)

小蒔「ぁ……」ドサ

夏目「! 神代さんっ」

霞「小蒔ちゃん!」

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


霞「本当にありがとうございました」ペコリ

夏目「いえ、僕を追いかけてきてしまったからあんな目に……」

初美「あの人ただのグーパンでアレを撃退しちゃいましたよー」

春「異常……」ポリポリ

巴「一体なんなのかしら、あの人」

霞「それと、昨日も小蒔ちゃ……姫様がお世話になったそうで」

夏目「気にしないでください、本当に大したことはしてないですから」

霞「今すぐに正式な形でお礼を、と申し上げたいところなのですが、あいにく、この状態でありまして……」

夏目「……神代さんは?」

霞「少し当てられてしまっただけのようですすので、奥で寝かせております」

夏目「そうですか、良かった……」

霞「……あの、夏目さんは的場一門の方なのでしょうか?」

夏目「え? いえ、僕は……」

的場「夏目くん、ちょっといいですか」

夏目「……はい、今行きます」



的場「どうやら、あのお姫様と知り合いだったようですね」

夏目「まぁ、そうですけど」

的場「さて、夏目くんはこれからどうするのですか?」

的場「知り合いの女性が標的にされているこの状況で、鹿児島観光を続けるのか」

夏目「……」

的場「それとも……」

夏目「分かりました、協力します」

的場「そう言ってくれると信じてましたよ」ニコ

夏目「あの、一ついいですか」

的場「なんでしょう?」

夏目「ここはとても由緒ある、力のある神を祀っていると聞いているんですけど、ここの人たちだけで祓うことはできなかったんですか?」

的場「ふむ……なるほど」

的場「確かにここに使えている方々は、皆高い妖力……霊力と言ったほうがいいかもしれませんが、そういう力を持っています」

的場「そして彼女らが降ろす神もまた、非常に力がある。それは事実です」

的場「しかし、実際に妖との戦闘をする際に使えるか、と言われたら、そうではない」

夏目「……どういうことですか?」

的場「いくら力があっても、戦うためのノウハウがなければ役に立たないということです」

的場「例えるなら、大量の鉄や火薬を持っていて、フライパンや花火を作るのが得意だからといって、刀や銃が作れるわけではない、ということです」

的場「ましてやその武器を実際に使うことなど、訓練抜きでは到底成し得ません」

夏目「で、でも俺はいつも殴るだけで……」

的場「それが私にもよくわからないんですよ、夏目くんが規格外すぎて原理が不明なんです」

夏目「そう、なんですか……」

的場「……もともと江戸以前には、朝廷や将軍付きの払い屋集団が存在していました」

的場「神社などは、問題ごとが起こるとそういった組織に頼んで解決してもらっていたそうです」

的場「明治政府設立時にも、一応は同じような部署が設けられていたそうですが、時代の流れの中力を持つ者が減ってしまい、GHQの下で完全に

解体されてしまったと聞いています」

的場「神や妖の中には、自らを信仰する者がいなくなると衰える、というモノもいるようですが、人間もそういったものを信じなくなることで、

力を失ってしまったのかもしれませんね」

的場「そういうわけで、民間で払い屋を続けていたウチに依頼が来た……これで納得していただけましたか?」

夏目「はい、大体は……」

的場「一応君はウチの一員ということにしておきます。そのほうが素性をいちいち説明しなくてもいいでしょう」

夏目「……はい」

的場「では私は色々と準備があるので一旦失礼します。夏目くんの役割が決まり次第連絡をしますので」

夏目「わかりました」



夏目(ここに泊まり込むことになるのかな)

夏目(旅館の方、どうしようか……)

ちょっとねむすぎるんでアウトします

また今日の夜同じスレタイで立てます

おやすみ

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