男「俺はこの力で異能戦争に勝ち、願いを叶える」 (181)

妹「」

医者「残念ながら妹さんには回復の見込みがありません」

妹「」

医者「これ以上はもう入院していてもあまり意味がないかと……。……では」スタスタ

男「おい! ちょっと待ってくれ! おい! 待てって! おい!」

妹「」

男「何だよこれ……。何なんだよ! ふざけるな!」



そんなとき俺は神に出会った。この町で起きる異能力者たちとの戦争に勝ち、そして最後まで生き残れれば、何でも一つ願いを叶えてくれるらしい。

……当然やるさ。俺は植物状態になってしまった妹を救うためなら……、何でもしてやるさ。


たとえ俺は地獄に落ちたとしても。
妹だけは救ってみせる。

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展開唐突すぎワロタ

期待

そう意気込んでいる俺だが、異能戦争はいつから始まるのか、そもそもこの戦争には一体何人参加しているのか等、まだまだ分からないことだらけだ。

とりあえずは、神に貰ったルールが記されている紙を熟読しよう。そしてルールを頭に叩き込むんだ。少しでも戦争を有利にするためにも。

男「よし、読んでみるか」ペラッ

まずは諸君らに挨拶をしておこう。私が神だ。今後ともよろしく。

さて、君達はこの世界の中でも、特に欲が強い者たちだ。それは良くも悪くもな。……今の欲と良くはわざと掛けたんだけど、わかってくれたかな? そうかわかってくれたか! やったー!

……すまない、話がずれてしまった。では本題に戻ろう。

私は欲深い人間が好きだ。タダで願いを叶えてやりたいと思うほどな。だがそうはいかない。私にとって諸君らが思い付くような願い事は、叶えるのなど朝飯前だ。しかし、願いをただ叶えてやるだけでは意味がない。

正確に言うなれば、私は欲深く、自分の欲のために努力や犠牲を惜しまない人間が好きなのだ。

能力は安価か?

だから私は諸君らにチャンスを与える!

諸君の願いが叶う大チャンスだ!



え? どうすればいいかって? 簡単さ。命を懸けた、バトルロワイヤルで勝てばいい。

もちろん、ただ戦うだけではつまらない。人間が素手や凶器を持ってワーキャーやってんの見てたって、こっちはなんも面白くないからな。


だーかーら! もうほんと出血大サービスで! 諸君らに力を与える。

まさに異能と呼ぶべきような力だ。


その力で、諸君らの欲から生まれた願いを叶えるために戦うのだ。

まら?

では、そろそろ口上はこの辺で仕舞いとして、ルールを説明しよう。


バトルロワイヤルで、諸君らはそれぞれに与えた力を使い、敵を倒していく。最終的に、生き残っていた一名の願いのみが、私に叶えてもらえるのさ。

どんなものでも構わないぞ。億万長者になりたいでもいい、不老不死でもいい。

……現代医学では治せない怪我人だって、生きてさえいれば傷痕ひとつ、後遺症ひとつ残さず、治してやれる。

まあさすがに、死人を生き返らせるのだけは無理なんだがな。あいにく私は全知全能じゃないんだ。神だけどね。……ここ笑うところね。

まずは戦争の場所を説明しよう。
舞台は都市Aの全域。……広いな。だけど大丈夫さ。能力者たちはスタンド使いのように引かれ会う。

ちなみにこの範囲内でしか能力は使えないからな。気をつけて。


続いて相手をこの戦争から脱落させる方法だ。
それは、相手がリタイアを認めるか、相手を殺害するか、指輪の宝石が割れて能力が使えなくなるか(下記参照)の3つのみ。
リタイアを認めたときや能力が使えくなったときは、その時点で戦争への参加資格を失うよ。

さっきもいったけど、死んだら復活させられないからね。もし戦争で死んでもそれは自己責任だ。

さーて、ついに能力の説明だ。

諸君らには一人にひとつの能力が与えられる。
……ちょっと同封してある箱を開けてみてくれ。そうそうそれそれ。
中には少し大きめの宝石がついた指輪が入っていると思う。人差し指にはめてみてくれ。サイズはピッタリの筈だ。

その指輪は、とても大切なものだ。四六時中常にはめておいてくれたまえ。


うん、勘のいい諸君らならわかっているかもしれないが……。それは戦争の参加者だということを示す他に、諸君らの能力を発動するときに媒介となるものであり、さらに言うならば能力そのもののような物だ。

小林よしのりの異能戦士思い出した

ひゃー

指輪を人差し指にはめたら、そのままその手を頭の辺りまで持っていけ。


男「……うっ!?」ビクッ


いきなり頭のなかに情報が入ってきてビックリしたか? その情報を頭のなかで閲覧してみるといい。



男「指輪についた宝石は能力そのもの……。これが割れてしまうと能力が使えなくなるのですなわち強制的にリタイアとなる」

男「能力発動時には、自分の能力名を発声しなくてはならない」



ここからが一番大切な所だ。心して聴くように。

男「能力を使うたびに、D値が溜まる。これの量は宝石に穢れと言う形で諸君らにも見えるようになっている」

男「これが百パーセントまで溜まりきってしまうと……、宝石は割れてしまう。則ちデットエンドだ。死にゃしないけど、普通にリタイアするより穢れのせいで宝石が割れたときのほうがちょっと辛い目に遭うから気をつけて……か」

男「穢れは他の誰かの宝石を割ることで取れるけど、一回で完全回復するから、穢れをとるタイミングはよく考えておくといい」

男「なるほど。……で、俺の能力は何なんだ?」


もう頭のなかの情報はこれで全部だし。と思っていたら、貰った紙にまだ続きがあった。

面白い!続けて

君の能力は…………。これだ。

男「これか。……あれ? ……かなりいい能力じゃねえか」

ちなみに諸君らの能力は、諸君らの生きざまもしくは業または祈り等から生まれた物だ。

男「……まあ確かにな……」

今ならお試しで一回だけ能力が穢れなしで使える。試してみるといい。

男「なかなかに緊張するな……。……よし」

男「『嘘八百万(カウントレスライ)っ! 今日はなんてひどい雨なんだ』」

瞬間、さっきまで雲ひとつない晴天だった空に黒い雲が生まれる。その雲は空一杯に広がり、すぐにどしゃ降りとなった。

他人の宝石も使えるの?

強ぇな

男「は、ハハ……。すげえ、すげえぞこの能力! 辺り一面大雨だ!」

男「いける。この能力なら戦争に勝てるぞ!」

男「待ってろよ妹……。お兄ちゃんが必ず救ってやるからな」

このタイミングから戦争は始まった! 諸君らの健闘を祈る。

能力ナンバー002

『嘘八百万 カウントレス・ライ』レベル1


男の能力。直訳は「数えきれないほどの嘘」。ついた嘘が本当のことになる。継続する嘘の場合、効果時間は最長で5分。本当にした嘘の、周りを巻き込む規模が大きければ大きいほど、または効果時間を長くすれば長くするほど、穢れはより溜まる。
今男は周囲一帯に雨を5分間降らせたが、その場合宝石は約70%の穢れを溜め込むことになる。

ちょっと燃費が悪いことと、相手にどんな能力かバレやすい能力だということ以外は、かなりの高スペック。

>>5
安価はない予定です

>>17
他人の能力は基本的に使えないです

同時刻

女「ふふ、ふふふ……。待っててね男君、君は私だけの物だから……」

女「行きなさい『悲哀機能(アライブマシーン)』。私の愛しの、私だけの男君に危害が加えられないように見張ってて」

悲哀機能「—————」コクッ

レオンまたもかぉXpourwq.








スタンドみたいのktkr

期待

男「もう戦争は始まってるんだよな……。くそ、気が張っちまってどうにもこうにも……」

男「あとこの指輪。ずっとつけてなきゃいけないらしいけど、こんなのはめてたら能力者だって言いながら歩いてるようなもんだよな……」

男「何か視線を感じる気もするし……」

男「駄目だ駄目だ。初日からこんなんじゃ身が持たねえ。……家帰って風呂にでも浸かりながらこの能力で出来そうなことでも考えるか」

そう思い、俺は家に帰ろうと今いる路地を抜けて大通りに出て———

友と出会った。

友「よう男! 出不精のお前がこんな日曜の真っ昼間からどうしたんだ?」

男「あー、いや、ちょっと用事があってな」

まずい。よりによって友に出会うとは。

友「へー。珍しいな……。ってかさ、さっきいきなり雨が降りだしたんだよ。直ぐに止んだけど」

男「ふーん。俺はあそこの本屋に居たから気付かなかったわ。……そうだ、本屋と言えばさ、今さっきそこの本屋でお前が大好きなマドンナちゃんっぽい人を見かけたぞ」

勿論嘘だ。俺は本屋になど居なかったのだから、マドンナちゃんなど見ていない。しかし今は一刻も早くこいつの前から消えたいのだ。……この指輪を見られたくないからな。

そして友の性格なら……

友「マジで? じゃあまだ居るかもしんねえ。ちょっと話しかけてくるぜ。情報提供サンキューな、じゃあまた明日学校で」

やはりこうなった。

男「おう、じゃーな」

左手を友に振り見送った。
……ふう、友はいいやつだがちょっと気が利きすぎるし勘も鋭すぎる。あのままでは直ぐに指輪のことがバレただろう。
バレたから何だってこともないんだが、まあ少しでも不利になりそうな情報は出さないのが吉だろう。

……自分でもこんな損得勘定を第一に優先して動くような性格は嫌だと思っているんだが、な。
常にこんな考え方だから、能力も嘘を本当にするとかいうやつなんだろう。


俺はもうこれ以上めんどくさいことになりたくないので家路を急いだ。

——バトルロワイヤル、初日目終了。




いにしえのしんでん最上階

天使「神様ー、あんなことして大丈夫なんですかー?」

神「あ? さあな、知らんよ」

天使「でもでもー、あんな能力者たちが町で戦えば、巻き込まれてとばっちりでいーっぱい人が死んじゃうと思うんですけどー」

神「いや、だから知らんって。いいだろ? 俺の世界だ。俺の好きにヤらせろよ」

天使「は、はいー。わかりましたー」




———リタイア0名、戦死0名。

こんな感じでゆっくりと書いていこうと思います。眠くならなければ今日の深夜にでもまた更新します。

まさに自分の自慰SSですが、よろしくお願いします。

たとえ独裁者だろうが億万長者だろうが異能力者だろうがどんな人間にも平等に朝はやって来る。

というわけで朝だ。

男「両親なんかとっくに死んでるし、やっぱ妹が居ないと寂しいな……」

もそもそとパンを二枚焼いて食べた。



男「行ってきます」

俺の台詞に返事は帰ってこない。誰も居ないから当然だが。


さて、学校に行きながら、ちまちまと昨日考えたことを頭のなかでまとめてみるか。

まず『嘘八百万(カウントレス・ライ)』について。この能力を持ったときに真っ先に思い付いたのは、「妹が植物状態ではなくなった」という嘘を本当にする事なのだが、出来なかった。どうやら万能って訳でもないらしい。この分では、敵の前で「お前は俺に絶対に勝てない」という嘘を本当にしたりも出来ないんだろう。あくまで神様は、俺たちにまともに戦争をしてもらいたいようだ。

それと指輪のことだが、右手の中指ごと人差し指と指輪を包帯でくるんだ。昨日一日考えてでた結論は、「怪我をしたことにしよう」だった。

友には怪しまれるかもしれない(昨日会ったときには俺は包帯を巻いていなかったから)が、まあそれこそだから何だってこともない。まさか包帯をとったりはしないだろう。


……おや。何だかんだでもう校門の前だ。一応俺の通っている高校は進学校だから、まともに授業を受けていないと直ぐに置いてかれる。勉強脳に切り替えよう。……ってそうだ、月曜日だから朝は集会だった。めんどくせえ。

なーんかこの語り手口調が滑ってて苦笑いしちまうわ

特に何事もなく放課後になった。俺は帰宅部なので全力で家に帰ろうと思う。……思っていたが、二階から一階への階段の踊り場で誰かに声をかけられた。

?「やあ、君は1-Cの男君だね」

男「……失礼ですが、どちら様でしょうか」

?「ああ、すまない。まずは自分の紹介をしなくてはいけないね」

……いや、結構です……。早く家に帰りたいので。

生徒会長「私は生徒会長だ。こう言えばわかるかな?」

男「ああ、あの……」

頭脳明晰、容姿端麗、運動神経は抜群、素行は完璧と噂の生徒会長か。しかし、何故そんな人が俺に声をかけるんだ?

……やな予感がする。

そして次の瞬間、俺は自分の勘が当たったことを知る。

生徒会長「君の右手」

男「…………」

生徒会長「怪我をしているらしいね」

……何故そんなことを知っている? どう対応するべきなんだ……?

生徒会長「君は次に、「それがどうかしましたか、悪いんですが急いでいるので……」と言う」

男「それがどうかしましたか、悪いんですが急いでいるので……」

男「……はっ!?」

ヤバい。洞察力に優れているとか、そういったレベルじゃない。これはまさか……。

男「まさか……」

生徒会長「ご明察。私は能力者だ」

声をかけられたときは、生徒会長は確かに二階にいた。だから一階と二階の踊り場にいた俺とは階段十二段分の距離があったはず。だが、そのあったはずの俺との距離はいつの間にか詰められていて、生徒会長は俺の目の前に立っていた。

……違う、これは能力じゃない。緊張していた俺が、一瞬で距離を詰められたと錯覚しただけだ。

生徒会長「悪いが、私の野望のために死んでくれ」

生徒会長の右手に握られているのは……ナイフ!?

……逃げろっ!

男「『嘘八百万(カウントレス・ライ)! 俺は屋上にいる!』」


まずは緊急避難しなくてはいけない。
俺は屋上にいるという嘘を本当にして、ナイフを手に襲いかかってくる生徒会長から逃げ出した。




生徒会長「…………」

生徒会長「やはり、[ピーーー]と言われれば逃げるだろう。私の能力である『世界演算(ジーニアスマスター)』で予測した通り、男君は能力で屋上に逃げた……。屋上は普段封鎖されているせいで誰も見ていないし逃げ場もない、戦うにはちょうどいい」

生徒会長「追いかけるか」

面白くてニヤシヤする

ニヤニヤ、でした

……やられた。

俺は屋上でそう思った。

恐らく生徒会長は俺を[ピーーー]気なんかない。宝石を割るだけでもリタイアはさせられるのだから、わざわざ[ピーーー]ことなんてない。めんどくさいことになるだけだ。だがあえてそう言うことで、俺をわざと逃げさせた。

てんぱってたせいでこんな場所に逃げ込んでしまった……。『嘘八百万(カウントレス・ライ)』は一度使うと再使用まで一分間のインターバルが必要になる。直ぐには逃げられない。

多分生徒会長の能力は予測……それも未来予知とかその辺だろう。

くそっ、想定が甘すぎた。学校では襲われないなんて誰が決めたんだよ。油断しすぎだ、俺。

メ欄にsagaいれろ

屋上のドアが開いた。生徒会長が入ってくる。……鍵がかかっているはずだがな。おおかた生徒会長はマスターキーか何かを持っているんだろう。

生徒会長「ドアが開いたことには驚かないのか。なかなか聡明なようだね。まあそれはともかく……。やはり君の能力は、連発が出来ないようだ。そうでなければ逃げられるはずだからな」

男「…………」

生徒会長「私の能力もそうなんだ。連発出来ない。使い勝手が悪くて困るよ」

何か逆転できる方法はないのか? 何か、何か……。

生徒会長「じゃあ無駄話はこの辺にしておいて、さっさと君の宝石を壊すとするか……」

生徒会長はいつの間にかナイフをトンカチに持ち変えていた。

生徒会長「指も折れてしまうかもしれないが、死ぬよりはマシだろう?」

どうしようもないのか……。くっ、くそおっ!

生徒会長「ふむ、丸腰で真っ直ぐ突っ込んでくるか……。しかしそれは勇気ではない。ただの蛮勇だ。そして君と私の間の距離はおよそ5メートル、接近までには時間がかかる」

生徒会長「その時間は、私が君の行動を予測するために能力を使うまでの時間には充分すぎる……『世界演算(ジーニアスマスター)』!」

万事休すか! 

生徒会長「君は私の直前で向かって左にフェイントをかける。私はそれに対応しようとして首を食いちぎられるっ!」

……は?

生徒会長「え? ————」

生徒会長はデュラハンになった。

男「…………、は?」

生徒会長「あぁああああああ」

首から上がきれいになくなった生徒会長は、そのまま糸がきれた操り人形のように前に倒れた。


……理解が追い付かない。

男「『嘘八百万(カウントレス・ライ)……。俺は落ち着いている』」

……一分経っていた。能力で強制的に心を落ち着かせる。

もしかして序盤にでてたヤンデレの女の能力か?

生徒会長を食い殺したのは、全長10メートルはあるだろうか。巨大な蛇のような化物だった。漆黒の鱗で体がおおわれていて、顔には眼はない。が、こちらを見ている気がする。

そいつはこっちを向いたまま動かない。……敵対の意思はないのか? つーかこれはなんなんだ? また能力者なのか? 生徒会長はどうすんだ?

……と、開け放たれたままのドアから、また一人誰かが屋上に入ってきた。

未来日記と聖杯戦争をまぜたようなかんじかな?
期待

ドアから入ってきた誰かは、蛇のような化物と突っ伏している生徒会長を交互に見て、

女「私の男君に手を出すから……」

ボソッと呟いた。

男「誰だ? って君は……」

同じクラスの女だ。あまり目立つ方ではないが、ルックスは素晴らしいので隠れファンも多い。しかし何故ここに? ……ああ、そういうことか。

男「この化物は、君の能力か」

女「ええ。『悲哀機能(アライブマシーン)』って言うの。可愛いでしょ」

可愛いくは無いがな。

女「それよりも、ずいぶんと落ち着いているようね」

男「ああ、まあな……。それよりも、えーっと、女さん? 君は、俺とは敵対するつもりはないってことでいいのかな」

もし本当に俺を殺そうとしていたならば、スキだらけだったさっきの間にいくらでも殺せるはずだ。しかしそれをしなかったということは……。

どういうことだろう。

メ欄にsaga
sageじゃなくてsaga
sageは板を下げてsagaは殺すとかそのへんかけるようになる

女「勿論よ。敵対するつもりなんてあるはずない。むしろ仲良くなりたいと思っているわ。一緒にこの戦争を勝ち抜きましょう」

……これは予想外。

男「うーん……、でも君の願いが何であれ、叶えるためなら結局は俺とは戦わなくちゃいけないし……」

俺の言葉に、女は俺のほうにゆっくりと近づきながら……

女「いや、それは大丈夫。だって私の願いは……」




女「君と結ばれたい、だから」



と答えた。いろいろ聞きたいことはあるが……、まずはその蛇をしまってほしい。恐い。



女「君と結ばれたい」

二回言ったぞこの女。

男「うん、それは解らないけど判った。でもこの状態を何とかしよう」

女「この状態?」

生徒会長が首なしになって倒れてる状態だよ。

女「それなら大丈夫」

いやどー考えても大丈夫じゃ……、……あれ? ……生徒会長の首から血が流れてないぞ?

女「またくっ付けられるから」

何と。

女「私の『悲哀機能(アライブマシーン)』は人を殺せないの」

女「契約に基づき、私が敵と見なしたものを全て食い契る」

女「男君、君のためにね」

おうふ。今までの発言でわかってきたことがいくつかある。生徒会長は死んでいない。女さんの能力は多分かなり強い。そして……、何故かは理解出来ないが、女さんは俺の事が好きだ。

……困った。こんな状態で何を言ってんだって感じだが、素直に嬉しい。

いやだって。生まれてから今まで、同年代の異性に好意を持たれたことなんて多分一度も無かったし。

……問題は、女さんはおそらくヤンデレだということか。

食い契るってなかなか中二だな

まあとにかく、死んでいないと言うのなら早く助けてあげてほしい。

女「何故? 私はこのままでいいと思うのだけど」

……いやいや。どう考えてもこれをこのまま放置はマズいだろ。

女「だって私の男君に手を出したのよ? 本来なら極刑でも足りないわ」

おうふ。照れるぜ。……じゃ無くて。

男「いやこの光景はさ、俺の精神的にちょっとクるものがあるし」

首なし死体(死んでないけど)は見ていて気持ちが良いものじゃあない。

男「助けてあげてくれるかな?」

女「それなら仕方がないわね」

……女さんは従順だー。なにかに目覚めそうな気がする。

女「えっと、敵を倒したら宝石を奪えばいいのだったかしら……」

そう言いながら、生徒会長がはめていた指輪を外す女さん。
あ、そうだ。能力を使ったから穢れを確認しなくては。……包帯をほどいて見てみると、俺の宝石はちょっとしか穢れが溜まっていなかった。たぶん10%位。

と、ちょうど女さんは生徒会長から指輪をはずし終わった所だった。

女「……よし、あとは……。『悲哀機能(アライブマシーン)』、首をくっつけるから顔を出して」

悲哀機能『————』オエッ

蛇の口の中から出てくる女性の生首。…………。

女「このクソ女……本当なら殺してやるのに……。男君の寛大な心に感謝しなさい」

……………………。まあいいか。

そのあと俺と女さんは、生徒会長の宝石を落っこちてたトンカチで割って、穢れを取った。女さんはあんなでかい化物を召喚し使役しているのだから、それはもう沢山溜まっているのかと思いきや、穢れは全然溜まっていなかった。
そして生徒会長の顔を首にくっつけて、生き返らせた(死んでないけど)。生徒会長は目を覚ましたあとすぐに事態を把握したようで、願いが叶えられず残念そうな顔をしながらも「君たちの武運を願うよ」と言ってくれた。


結局俺と女さんは共同戦線を組むことになった。俺としては戦力の大幅アップはとても助かるし、……ぶっちゃけ今のままじゃ『悲哀機能』に勝てる気がしない。女さんも俺と一緒に戦う事で親密度を上げたいとのことで、とりあえずは両者共に得なWINWINの関係を築くことが出来たと言えよう。



今日は疲れた。家に帰ったらゆっくりしよう……。

同日 夜 とある駅前の商店街




青年「てめえのせいで大勢の罪のない人が死んだ! 死んだ人は決して生き返らないんだぞ!」

少年「へー。で? だから何?」

青年「……てめえは屑だ、生きていちゃあいけない人間だっ!」

少年「だったら何だってのさ」

青年「この場で俺が殺すっ!」

少年「おお怖い怖い」

青年「行くぞっ!」

少年「……アンタもさ」

青年「燃えろオレの魂! 熱くなれオレの血潮!」

少年「……そこに転がってる奴等みたいに」

青年「ヒートヒートヒートッ!」

少年「……腐らせてやるよ!」

青年「『正義憤概(バーニングハート)』っ!」

少年「『昇天劇薬(グッドラック)』っ!」

——バトルロワイヤル、二日目終了。



いにしえのしんでん最上階

神「よーやく動き始めたか」

神「しかしまあ、あっさりと『世界演算』がリタイアになるとはなあ……いきなり番狂わせかよ、面白れえ」

神「おっ……。こっちも決着がついたか」
神「あーこいつ死んじまったか……。自分の能力に過度に期待しすぎだったなこいつは」

神「まあこいつはどうせ天国には来ねえし、能力を没収して……と」

神「地獄で頑張れや。グットラック、『昇天劇薬(グッドラック)』」



———リタイア一名、戦死一名。

能力ナンバー005

『世界演算 ジーニアスマスター』

生徒会長の能力。自分の周囲に起きる事象すべてを予測し演算する事で、99%以上の精度の未来予知を可能とする。
発動した時間から10秒までの間なら、その予知は確実なもので決して覆らない。
最大で100秒先までを視ることができる。
対能力者の戦闘においては、相手の能力のおおまかな予測ができるだけでもかなり有利となる。そのため予知の出来る『世界演算』は、本来ならば(世界演算の能力者である生徒会長自体も高性能なため)戦闘面ではトップクラスの性能を誇る能力であった。

敗北の原因は、生徒会長の油断と慢心。あと相手が悪かった事。

能力ナンバー015

『昇天劇薬 グッドラック』

少年の能力。様々な物を腐らせることの出来る粉を、口から噴霧する。人の体にかかると肉や骨がグズグズになってしまう。
息で噴き出すため飛距離は短いが音はないため不意討ちには最適。

その辺歩いてた一般人に能力を試していたところを、同じ能力者である青年に目撃され戦闘になり殺された。
能力のランクは下の上らへん。

男「……おかしいな」

……何で目が覚めたら隣に女さんが寝ているんだろう。

昨日は女さんと帰り道の途中で別れて、そのまま家に直帰。飯食って風呂入ってすぐに寝たはずなのだが。

女「スウ……ムニャ……」

可愛い。……いや違う。そうじゃなくて。

まずは起こすか。

男「……おはようございまーす……」ユサユサ

遠慮がちに女さんの体を揺する。ゆさゆさ。

女「……ムニャ。……おはよ、う男君」

起きてくれたようだ。……って当然のようにおはようと返事された。

男「……何で俺のベッドに?」

女「何でって? 付き合っている人の家にいくのはいけないことかしら」

男「…………」

……ううむ……。これは困った。女さんとは話し合う必要がありそうだ。

まだか

男「目、覚めました?」

女「一応」

男「ちょっとお訊ねしたいことが」

女「いいわよ」

男「女さんは何故一緒に俺とベッドで寝ているんですか?」

女「寝たかったからよ」

俺の質問が悪かったかな……。質問を変えよう。

男「えっと……何で俺の家がわかったのでしょうか?」

女「好きな人の住所ぐらい知っていて当然じゃないかしら?」

いやいやいやいや。その理屈はおかしい。うちの高校の連絡網には住所は載ってないぞ。

男「つまり昨日別れたあと……」

女「ええ。引き返して追いかけたわ」

男「俺が飯とか食っている間は?」

女「外のマックで待機してたのよ。電気が消えたのを見計らって家に入ったわ」

男「……ドアの鍵は?」

女「? 空いてたわよ。開けっ放しじゃ危ないわ。いつ泥棒が入るかわからないのだから気を付けなくちゃ」

男「……………………」

……俺の中の女さんのイメージはもっと落ち着いている人って感じだったんだけどなあ……。

男「ずいぶんアグレッシブ、だね?」

女「えへへ」

照れて髪を弄くる女さん。可愛い。……じゃなくて。

ていうか、女さんの頭のなかで、いつの間に俺と女さんは付き合ってることになったんだろう。俺はそんなつもりないんだけど。……まさか昨日結んだ、共に戦うっていう約束が女さんの中では付き合うに変換されてるとか?

……ヤンデレの思考回路は理解不能だ。

男「……まあ」

いいか。付き合おう。付き合うって言っても具体的に何すりゃいいのかわからんが。

男「……それより朝食を食べなくちゃ。学校に遅れるし」

さて、何を作るか。……ってそうだ、女さんはどうするんだろう。朝ごはん。俺が二人前作るか?

男「女さんも朝食食べる?」

女「それなら昨日の夜に作っておいたわ。男君のぶんも一緒に作ったから、食べてほしいんだけど……」

何てこった。




女さんが作った朝食。
味噌汁とご飯、焼き鮭に卵焼き。ホウレン草のお浸し。

…………。

女「お口に召したかしら?」

もぐもぐ。
……………………。

男「うまい」

女「それは何よりだわ」

いや何これ超うまい。俺も親いないし自炊してるから料理にはちょいとばかし自信があるけど、女さんのほうが数倍上手だ。

男「そういえば調理実習でも活躍してたね女さん」

女「そうかしら」

そうです。

顔は良い、器量は良い、体も出るとこ出てる……。よく考えると女さんって素晴らしい女性じゃないだろうか。

……あれ?

男「……女さん」

女「何かしら」

男「どうして女さんって、俺のことを好きになったの?」

ここが気になった。別に俺は、自分を客観的に見てもそんなに良いとこないと思うんだけど。

女「——それは」

女さんが答えようとした瞬間、テレビがニュースを知らせた。

テレビ『大事件です! 昨日の深夜に、駅前商店街を通りがかったたくさんの人間が忽然と消失してしまいました!』

男「……え? 女さんちょっとテレビの音量大きくしてくれる?」

女「……ええ」

テレビ『——消えてしまったのは、モブ1さん、モブ2さん、モブ3さん、少年さん、以下8名です——』

男「…………」

女「…………」

テレビ『辺りには腐臭が立ち込めており——』

テレビ『——また、警察はこの件に関して』

テレビ『さらに現場には謎の指輪が——あ、これ駄目? 箝口令……?』

テレビ『……失礼しました。それでは一旦スタジオにお返しします』

男「……これ、どう思う?」

女「普通に考えればただの失踪事件ね、けれどもこれはもしかしたら……」

男「もしかするかも知れない……ってことか」

腐臭、……指輪。能力者の仕業……か?

……ってヤバい!

男「時間! 学校!」

女「……遅刻しちゃうわよっ!」



ほぼ同時刻 とある駅前の商店街



部下「困るんすよ、あーゆーことされると。きちんとこちらから渡した情報のみを流してくれないと……」

アナウンサー「す、すみません。情報が錯綜してまして」

刑事「まあそんなに言ってやるなよ、部下。たまにはそんなこともあるさ」

部下「あっ刑事さんお疲れ様っす。……そんなことより向こうの仏さん、見ましたっすか?」

刑事「ああ。……ありゃひでえな。全身腐りきってやがる。身元の判別を急がせたいところだが……」

部下「あれじゃあ難しいっすね……。あれ? これって……何すかね」

刑事「ああ? ……灰だな……」

部下「……灰っすね……」

刑事「なーんでこんなとこに灰が積もってんだあ……? おい鑑識ぃ! これも持ってけ」

鑑識「ういっす」

刑事「……あとよ、部下。……こっち来い、耳貸せ」コソコソ

部下「……何っすか?」コソコソ

刑事「……ほら、あれだよ。あの指輪。貸せ」

部下「……怒られんの俺っすよ……っつかばれたらヤバいんですからね!」

刑事「大丈夫大丈夫。すぐ返すから。見せろ」

部下「……わかりましたっす。はい」

刑事「サンキュな」




刑事「この事件、やっぱ能力者がらみか……。宝石は取られてる。一人脱落したってことか」

刑事「さて、どうすっかねえ……。まあ、何とかなるか、な」

刑事「俺としちゃあ潰し合ってもらって、最後の生き残りを倒して願いを叶えるってのが一番良いんだがなあ。そう上手くは行かないかねえ……」

さらにほぼ同時刻 とある探偵事務所



探偵「成る程。つまりあなた方は消えたご家族の安否を知りたいと。」

モブ8「ええ、お金ならいくらでも出します。どうかうちの子を……」

探偵「わかりました引き受けましょう。ただし条件です。成功報酬で構いませんが、その代わり芳しい結果が出なかったとしても私を恨まないで下さい。」

モブ5「何でも良いです。お願いします……」

探偵「はいはい頼まれました。……では……。」バタン





探偵「……また戦争おっ始めようってのか。」

探偵「死人は生き返らねえし、戦争には何の意味もねえって事ぐらいそろそろ解っても良いんじゃないの? なあ。」

探偵「……見てんだろ? 神。」



探偵「チッ……。だんまりかよ。」

まだか

まだか




うちのクラスの担任が、朝学活で開口一番こんなことを言い出した。

教師「お前ら、転校生だ」

珍しいこともあるもんだ。こんな時期に転校生か。

友「おい男、転校生だってよ。美少女だといいな」

男「友、お前ははマドンナさん一筋じゃなかったのかよ」

友「まあそうだけどよ、美人さんが増えるのは嬉しいじゃん? まあすでにマドンナさんとか女さんとか綺麗な娘や可愛い娘は居るけどさ」

男「あ。俺と女さん付き合うことになったから」

友「ふーん……、ん? は!?」

隣の席の友と喋っていると、教室の前のドアがガラッと開いた。

教師「はい全員注目。転校生さんです」

転校生「隣町から引っ越してきた転校生です。……宜しくです」

そう言って転校生さんはぺこりと頭を下げた。自然と皆は拍手。

友「自己紹介そんだけかよ」

同感だけど口に出すんじゃねえよ……。しかし、転校生さん……。整った顔つきをしていてけっこう可愛いけど。

影が薄い。

こんなに影が薄い、存在感がない娘は初めて見る。

スンマセン随分日が空いてしまいました

あと他のスレ見たら皆さん始まりに投下しますとか終わりに以上ですとか書き込んでるんですね
知らんかったです

次から気を付けます

教師「転校生さんは父親の仕事の関係でこんな時期に転校してきたんだ、お前ら仲良くしてやれよ」

転校生「……どうもです」

教師「じゃああのアホそうな顔してるアイツのとなりの席が空いてるから、転校生さんはそこに座って下さい」

と言って教師は、友のとなりの席を指差した。

友「……アホそうな顔してるアイツって俺の事かよ!?」

教師よ、同感だけど口に出すんじゃねえよ……。つーか友はあれだからな、顔はこんなだが頭はクラストップレベルの良さだからな。

転校生「こんにちは」

友「こんにちは。君可愛いね、今度お茶でもどうよ。まあ俺はお茶にはこだわりがあるから静岡までお茶っ葉を摘みに行くところから始まるけどね」

出たよ友の「可愛い子にはテンパって意味わかんないギャグを飛ばす」悪い癖が。だからマドンナさんにも想いが一方通行のままなんだって。それがなきゃ面倒見もいいしそれなりにモテると思うんだけどな。

転校生「…………」

……そりゃ引かれるわ。しかし以外にも、

転校生「…………ふふっ。面白い人ですね、友君は」

ウケたみたいだ。笑いの沸点が低いのか? ああちなみに俺は嘘をついてるかどうかは(能力とか関係なく)大抵見破れる。これはややウケとはいえ心から笑っている。そういう顔だ。

友「あっ、うえっ、そうかな」

テンパりすぎだ。まさか笑ってもらえるとは思ってなかったらしい。

……じゃあやんなきゃいいのに……。

転校生「今後とも宜しく、です」

友「よ、よよ」

転校生「……よよ?」

いやマジでテンパりすぎだって。全くもう……。見てらんないよ。助け船を出してやるか。

男「よろしく……って言いたいみたいだよ、友は」

転校生「あ、そうですか。成る程です。……えっと?」

男「俺は男って言うんだ、よろしく」

転校生「男君ですね、よろしくです」


教師「おーい、後は休み時間とかにしろー。じゃあこれで朝学活は終わりだ。起立」

日直「きをつけ、礼」


しかし。転校生さん、いい人そうだけど……。

やっぱり影が薄い。

取り敢えず投下終わりです
眠くなかったらまた深夜あたりに投下します

えっと、今まで書き溜めしてなかったんでグダッてる所いっぱいありますけども、次からは書き溜めしてみようと思います……多分しないだろうけど

読んでるから頑張れ

寝落ちするまでは投下します



男「あっという間に放課後だ」

転校生さんはどうやらクラスの皆とは上手く打ち解けられたようだ。

女「それは何よりね」

…………。
いつの間に隣に。そしてナチュラルに思考を読まれてるし……。

男「女さん、家来るの?」

女「ええ」

男「まあ良いか。作戦会議もしたかった所だし」

俺の家から学校までの距離は直線距離で大体一キロ弱位。いつも歩きか自転車で通学している。今日は急いでたので自転車登校だ。ちなみに女さんも俺の家から登校したので、今日は自転車である。

歩道にしては広い道を俺と女さんで並走しないように気を付けながら家に帰る。
十五分とかからずに家につく。
つくはずだったが。

少女「『天星引力(フォールスカイ)』」

ズドン!

突然空から墜ちてきた少女によって、そうもいかなくなってしまった。

俺の目の前に着地した少女は、まだ状況を把握できていない俺に向かって親指を下に向けて立てて、

少女「潰れろ」

と言った。

男「……っ!?」

体が、……動かない。

上からまるで巨大な手に圧迫されているかのように、体が自力では立てないほど重くなっている。自転車から降りられない。

しまった……。能力者か!

少女「一昨日、あなた能力で雨を降らせてたでしょ」

ヤバい、完全に先手をとられた。身動きがとれない。

少女「天候操作系だとすると、雷とか落とされたらどうしようもないもの。だから、先にあなたの動きを封じさせてもらったわ」

男「…………」

口を開けない。嘘がつけない。つまり、能力が使えない!

男「…………っ」

少女「指輪は貰うわ。私はあなたを殺す気はないわ。……早めにリタイアした方がいいわよ」

そう言って少女は、俺の包帯を巻いた方の指に手を伸ばした。

…………馬鹿だな。迂闊だよ。

女「『悲哀機能(アライブマシーン)』!! 私の男君に、何してんのよこの糞アマ!!」

こっちにはもう一人、能力者がいるんだ。

縺翫▽縺翫▽

ふむ

まだかな

今日からまたちまちま投下します

女「喰い契れ『悲哀機能』!」

女さんの影から、大蛇が放たれた銃弾のように一直線に少女へ向かって飛び出した。

悲哀機能『—————』グワッ

大口を開けて少女に迫る悲哀機能。

少女「きゃあっ!?」

それは少女にとって予想もしていなかった攻撃ではあっただろうが、少女はすんでのところで後ろに飛びすさり、噛みつきを回避した。

少女「そ、そんなの聞いてないって!」

女「大丈夫男君!?」

俺のもとに駆け寄ってくる女さん。

男「ああ、大丈夫。動けるようになったよ、助かった……ありがとう女さん」

女「……えへへぇ」

女さんは可愛いなあ本当に! ……ってそうじゃない。

……売られた喧嘩は買わなきゃな。戦闘開始だ。

まだー?

待ってるよー

じゃあまずは敵の能力の考察をしなきゃな。と、その前に……。

男「『嘘八百万(カウントレス・ライ)、周囲三十メートルには当事者以外誰もいない!』」

これでオッケーだ。現在進行形で暴れている悲哀機能に、他人を巻き込まなくてすむ。

男「よし、存分に戦える。でも俺の能力は五分しか持たないから……」

女「わかったわ。それまでにケリをつけましょう」

嘘八百万の再使用までの規制時間は一分間、つまりその間は俺は戦力外だ。女さんに任せつつ、相手の能力の解析をしよう。

女「もう一度突撃よ悲哀機能!」

再び少女へ突進する悲哀機能。

少女「さっきはびっくりしたけど……もう見切れるわ!」

それに対して少女は、大きくジャンプをしてかわした。……というよりは。

女「飛び越えた!?」

期待

悲哀機能『———……!?』

少女「よっし成功!」

タイミングを合わせてジャンプすることで、悲哀機能を飛び越えた少女は、そのまま加速しつつこちらに駆けてくる。

って今の動きは人間に出来る事なのか!? 明らかに跳躍力や加速力が人の限界を越えている。

少女「今度は手加減しないわよ……」

瞬時に距離を詰めた少女は、悲哀機能が遠くにいて無防備な女さんの体を、

少女「吹っ飛べ!」ゴッ

両手で思いっきり突き飛ばした。

女「きゃあぁああああ——」

ドンッ……と勢いよく押された女さんの体は、まさに文字通り地面と水平に「吹き飛んだ」。

ヤバい、このままじゃ壁に激突する……!
男「危ないっ!」

俺はとっさに女さんと壁の間に体を割り込ませた。
女さんを抱き止める。
止まらない……!

壁に衝突した。ダメージをもろに受ける。脳が揺れた。

……俺は意識を手放した。

頭のおかしい女をヤンデレとかリアルで言わねーだろ
キャラクターの性格を行動でなくト書きで示すとかシネ
クソSSにありがちなことだから
あと生徒会長のジョセフパクリはやめろマジ寒いから
ジョジョ好きだから余計ムカつくわカス

だがそれら以外は面白いので訴訟は取り下げる

おつー、見てるよーん

いつまでも色を上げ続ける能力 バイクで縮退圧を超える能力・銃の強化 女性化 虚化 合計熱量に対する消火能力

……ん? どこだここ。

神『おーい』

ってうおっ!? 神様……!?

神『そうそう神様だよ』

何の用ですか?

神『伝え忘れた事があってね』

伝え忘れた事……?

神『昨日の戦闘で、生徒会長ちゃんの宝石を割ったのは君だよね』

はい。そうですが。

神『えーと、能力者を撃破した者にボーナスを与えます。穢れの回復だけじゃなくて、「能力のレベルアップ」が自動で行われます』

神『これは一人撃破するごとに一段階アップするので、君の能力は今レベル2だね』

……レベルが上がると何が起きるんですか?

神『出力がアップしたり、効果範囲が広くなったり、能力使用時の穢れの溜まる量が減ったり色々さ』

神『君には期待してるから、「嘘八百万(カウントレス・ライ)レベル2」はレベル1と何が違うのかを特別に教えてあげよう』

神『レベル2は、「君の嘘が敵の能力への干渉力を持つようになる」だ』

干渉力……? それってどういう意味ですか?

神『それを教えちゃつまらないよ。ちなみにレベルを上げていくと能力がへ……。あ、これも言っちゃ駄目だった』

え? へ……?

神『忘れなさい。時が来たらいずれわかるから、後のお楽しみという事で。じゃあそろそろ体に戻りなさい』

神『はい、3、2、1。どーん』


……俺はそんな神様のやる気のなさげな掛け声とともに、意識を取り戻した。

男「…………ぐっ、痛ってえ」

目を覚ますと、目の前に女さんの顔があった。

女「良かった! 目が覚めたのね」

身体中が痛てえ……。いや、そんな事よりもっと先に確認することがあるか。

男「俺はどのぐらい気を失ってたの……?」

女「ほんの十秒ぐらい……。大丈夫? 私のせいで……」

十秒か……。そんなもんなのかな。

男「ああ、大丈夫だ。心配かけちゃったな。……って後ろ!」

向こうから近付いてくる影。間違いなく少女だ!


少女「女の人を守る為に行った行動を見て判ったわ。貴方の瞬時の判断力と行動力は、普通の人の比じゃない」

少女「……もう手加減はしないといったわよね。私が本気を出したら貴方の体は大気圏外まで吹っ飛ぶわ。私は貴方を殺したくないの、リタイアしてくれないかしら」

…………。

男「……悪いけど俺には叶えなくちゃいけない願いがあるんだ、そんな頼みは聞けない」

男「それに、だ。心配するなら自分の体の心配をしたほうが良いぜ? 俺はすでに君の能力が何なのか、大体の目星をつけている」

少女「……!? ……ハッタリね。それに判ったからってなんだってのよ」

神様の言った干渉の力、それが俺の考えの通りなら。

男「君に勝てる。……いくぞ」

……そろそろ一分経ったはずだ。

男「『嘘八百万(カウントレス・ライ)レベル2! 俺の周囲一帯の』」

少女「……くっ! 『天星引力(フォールスカイ)』! 吹っ飛べ!」

少女は再び能力を発動した。俺の体が空中に浮く。でももう遅い!

男「『重力は1Gで固定される!』」

浮いた体が、地面に落ちた。……ふう。

男「やっぱりか。君の能力は、『重力を操る』能力だ」

少女「……何で」

かすれた声で言う少女。恐らく、何で判ったのかと聞きたいんだろう。

男「まずは戦闘開始の時の君の登場の仕方。君は空から降ってきた。次に俺の動きを制限した攻撃。あれは何かが重たくのし掛かってくるような感じだった」

男「更に悲哀機能の突進をかわしてこちらへ突っ込んでくるときの人間離れした動き。まるで君の体がとても軽くなったかのようだった……」

男「そしてその動きには見覚えがあった。……思い出したんだ。君の動きが何に似ているか。そう、君の動きはまるで『重力が地球の六分の一の』月面で飛び跳ねている宇宙飛行士のようだったんだ」

男「……そこまでわかればもう楽勝だ。君の吹き飛ばす能力も、重力操作で説明がつく」

本当は色々不安な所もあったし、そもそも敵の能力への干渉が成功しなかったら意味無かったんだけどな……。

男「Q・E・D。証明終わりだ」

まあ、結果オーライだな。

あとは……。

男「さて、後ろを見てくれ」

少女「…………」クルッ

振り向く少女。

悲哀機能『…………』バア

いつの間にか少女の真後ろに接近している悲哀機能。

少女「…………」

男「言いたいこと、判るよな?」

少女「…………。はぁ、仕方ないわね」

そう言うと少女は人差し指にはめた指輪を外し、こちらに放り投げた。

少女「全く……。こんなに早くに負けるとはね。前回は良いとこまで行ったのに。……死んだら困るし、もうこれで終わりにしようかしら」

よし、宝石ゲットだ。これで穢れの回復ができる。

……ん? 今なんて言った?

男「前回……? ちょっと待て、どう言うことだ?」

少女「ああ、貴方はこの戦争は初めてなのね」

男「初めても何も……昔もこの戦争が有ったのか?」

少女「ええ、丁度一年前にね。今回で異能戦争は私の知る限りでは5回目よ。ひょっとしたらもっと昔から有ったかも知れないし」

……何だろう、この感覚は。

男「つまり君は……」

少女「そう。前回の異能戦争の経験者よ」

背筋に氷柱をぶちこまれたような、暗く冷たい感覚は。

少女「まあ、残り八人位の所で負けちゃったんだけどね」

俺は今すごく大切な話を聞いている気がする……。

少女「優勝した女の人が滅茶苦茶強くてね、一瞬で倒されちゃったのよ」

男「…………」

610,000Lp9 233,000Lp11 過電圧能力 ワープ 左手だけ 幻想殺し とまあ炎細胞量程度の能力

乙!

面白いよ

期待

男「それで……、 !?」

更に少女に先を促そうとした途端、なんの前触れもなしに俺の前にいきなり神様が現れた。それと同時に時が止まり、世界が瞬く間に白一色に染まる。

神『本日二度目だねーっと』

男「……神様」

えっと……? 何故このタイミングで神様が出てくるんだ?

神『どうしてかって? こっちにも色々事情があってね』

事情ですか。

神『まあそんなことはどうでもよくて。君がこれ以上少女ちゃんの話を聞くのは禁止です』

……はあ。

神『いやあ危ない危ない。前も言ったと思うけど、俺がこの戦争を起こすのって楽しいからなんだよね。でもここでこれ以上色々ネタバレしちゃうとつまらなくなっちゃうからさ。それに君が知らなくていいことも有るしね。まあ、以上の理由で少女ちゃんの話を聞くのは禁止。解りましたか?』

はい。

神『それじゃあね』

と一方的にまくし立てて帰ろうとする(どこに?)神様だったが、急に立ち止まるとこちらに振り返った。

神『あ、良いこと思い付いた』

神『ふふふ。でもこのままじゃちょっと君が可哀想だからね、一つだけ君へ神様からの有難い言葉をば』

神様は何を言ってくれるのだろうか。……もしかして戦争の参加者の人数を教えてくれるとか?

……しかし、神様の言葉は俺の予想を大きく裏切るものだった。

神『女ちゃんを』

女さんを?



神『 信 用 す る な 』



……え?

神『はいこの話は終わりー。質問の類いは一切受け付けませーん』

神『それじゃ、今度こそばいならー』

お、おいちょっと待ってくれ!

が、そんな俺の願いもむなしく神様はさっさと立ち去ってしまった。

呆然とした俺など知ったことかとでも言うように、世界が色を取り戻し、時が動き出す。

男「……あれ?」

動き出した世界には、目の前にいたはずの少女が居なかった。

男「少女は?」

俺が振り返りながら女さんに尋ねると、

女「それが……、しっかり見張っていたはずなのにいきなり消えてしまったのよ」

女さんはこう答えた。……ああ、なるほど。

男「神様が俺たちから少女を遠ざけたってことか」

女「……どう言うこと?」

男「どうも神様が俺たちに少女の話を聞かせたくなかったらしいんだ。ほらあの去年も異能戦争があったとか」

女「そう。ちょっと残念ね、有益な話が聞けるかと思ったのに」

男「でもまあ、今回も無事勝てたな……って痛てて。そうだ完全に無事って訳でもなかったんだった」

コンクリートの壁にぶつけた腰が痛い。

女「だ、大丈夫? 私をかばったから怪我しちゃったのよね」

男「あー、いや別に大丈夫だから気にしなくていいよ」

女「いやダメよ、病院いかなくちゃ」

…………。こんなに心配してくれている女さんを信じるなだって? なにか嘘をついている雰囲気はないし、逆に信頼できない要素が無いぞ。

でも神様がわざわざ言った事だ、少し警戒しておくべきかもしれないな。

女「…………? どうかした? やっぱり痛む?」

男「……いや、そうじゃなくて……。……うん、取り敢えずは宝石を割らないと」

少女の指輪から宝石を外し、生徒会長から貰ったトンカチで叩き割る。
……あ、レベルの話を女さんに言うの忘れてた……。まあ仕方ないか。

二人の宝石の穢れをとって(俺の宝石は40パーセント位穢れを溜め込んでいた。能力に干渉する嘘は普通の嘘よりもより力を使うみたいだ)女さんが悲哀機能を影のなかに戻すのを見てから、自転車をとりに行った。

……あ、病院と言えば。

男「……やっぱ病院行くか」

女「ええ、そうしましょう」

男「いや、俺が診察してもらうんじゃなくて……」

いつの間にか人がちらほらと見えてきた。どうやら五分経ったらしい。こんな濃密な五分は俺の人生のなかでは初めてかも知れない。……ま、そんなことはどうでもよくて。
自転車の向きを病院の方角に変えながら、俺は女さんに言った。



男「入院してる妹の様子を見にいくんだ」

期待

まーだかなー

面白いから待ってるよー

すみませんテスト期間中なので来週末までほぼ更新できません
書ききるつもりではあるのでHTML化はしないでください
次に更新するときは一気にたくさん話を進められるように書き溜めておきます
以上です

期待

お願いだからなるべく>>1以外はsageで
勘違いしちゃうから

ま、まだか?

大変長らくお待たせしました
前回の更新からかなり時間が空いてしまって本当に申し訳ないです

ご飯食べたりなんだりしたら、寝るまで必ず更新します


前回までのあらすじ

神が主催し、最後まで勝ち残ればなんでも一つ願いを叶えられるという異能戦争。それに妹の命を救うために参戦した男は、嘘を本当にする「嘘八百万(カウントレス・ライ)」という能力を手に入れる。

戦いのなかで、男を何故か溺愛する女と共同戦線を張る事になり、学校の屋上で未来を読む生徒会長を、学校の帰り道で重力を操る少女をそれぞれ撃破した。

妹の見舞いのため女と共に病院に行く途中で、女に戦う理由を話そうと決心したところから

物語は再開する。

キタ━━(゚∀゚)━━!!!

男「そもそも俺がこの戦争に参加した理由、つまり叶えたい願いなんだけど」

病院に向かって自転車を漕ぎながら、女さんに話しをする。話しておくべきだと思うんだ。俺の戦う理由を。

男「……妹を何とかして助けてやりたいんだ」

男「実は俺の妹は、色々……えっと、事故に遭って植物状態になっててさ……。目覚める確率は限りなく低いらしくて」

女「…………」

男「例え目が覚めたとしても、確実に脳に障害が出来てしまって、しかもそれを取り除くのは今の医療じゃ難しいんだそうだ」

……嘘だけど。いや、植物状態だという事と、治らないという事は本当だ。でも、事故に遭ったってのは本当じゃない。嘘だと言い切れはしないけど、少なくとも事実とは少し違う。真実とはかなり違う。

……女さんを信用してないわけではないけど、まだ言えない……。女さんは俺を信頼してくれてるだろうに。
俺は卑怯だな。いや、でもそれでこそ俺って感じもするけど。……最近の俺はちょっとどうにかしてたかもしれない。体をはって女さんを守ったり。そんな主人公みたいな行動は、俺のやることじゃないよな、全く。



俺は生粋の嘘つき。心の根っこから腐りきった、口先三寸でその場だけは何とかなるように取り繕う、自分だけよければ良い、虚栄の張りぼてで周りを囲んだただの厨二病な嘘つきなんだ。

……よし。危ないところだった。このまま「俺らしくないこと」を無意識のままに続けていたら、きっといつか綻びが生まれて、そこから何かが壊れてしまっていただろう。うん。俺は俺だ。勘違いしちゃいけない。俺の戦う理由は「妹を救うため」だ。ただそれだけだ。

 ??『——お兄ちゃんは——』

……またか。……うるさい、お前じゃない、お前じゃない、お前じゃない、お前じゃないお前じゃないお前じゃないお前じゃないお前じゃないお前じゃないお前じゃないお前じゃないお前じゃない! 俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない!

 ??『——ひとごろ、し——』

違う! うるさいうるさいうるさい! 黙れ、出てくるな!!

続き期待


俺は……。俺は……っ!

『……お「れは——○○を殺してなんか「○○——」それに『俺の』戦う理ゆうは——』○○じゃない!」!


ギュギュギュギュギュン!!


——
————

…………。

女「……男君? 大丈夫!?」

男「……ん? あ、ああ。えっと、俺今どうなってた……?」

女「話の途中で急に黙ったと思ったら、いきなり自転車から転げ落ちそうになってた……」

男「そ、そうか……」

女「もしかして、やっぱりあんまり話したくないことだったりしたかな? それなら無理には聞かないけど」

男「いや、大丈夫だよ」

男「えーっと、まあ言っちゃえば妹を助けたいって、ただそれだけの理由でさ。昔両親が早くに死んじゃって、家族って言えるのは妹ぐらいしか居ないからさ」

男「妹を救えるチャンスが有るなら、俺はどんなに危険だろうとそれに挑戦したいんだ」

女「……やっぱり男君は優しいわね」

男「そう、かな。……あ、もうすぐ病院に着くよ。そこの角を右に曲がって」



……病院に到着した。今の時間は午後の五時ぐらい。太陽が沈み始めている。



その時、俺は気づかなかった。病院の二階の窓から、誰かがじっと俺たちを見つめていることに。そして何故か、さっき綺麗に穢れをとったはずの俺の右手の包帯の下の宝石が、少し黒ずんでいることに。

きてたー、見てるよー



男「面会に来たんですが」

病院の受付「はい、妹さんですね。どうぞ」

俺は面会証を二人分もらって、そのうちの片方を女さんに渡す。

男「……じゃあ、女さん。病室は六階だから……」

女「あっちのエレベーターに乗るのね」

先導をしようとしたら、女さんは迷いない足取りでエレベーターの方向に向かって歩いていった。

……ん?

男「あれ? 女さんってこの病院、もしかして来たことあるの?」

女「……、ええ。まあ……来たことはあるけど、一度だけね」

男「そっか」

この辺りだと一番大きい病院だし、別に変でもないか。うーむ、ちょっと疑心暗鬼になってるかも知れないな。どれもこれも全部神が無駄な助言をするのがいけない。女さんを信用するな、か。うーん……。

女「(……急に黙り込んで考えるのは男君の癖なのかしら……。あ、エレベーター来た)」

ピンポーン

男「ま、いいか」

俺はエレベーターが一階に到着したのを区切りに思考を止め、エレベーターに乗り込んだ。

男「(考えても結論がでないことを考えたってしょうがないしな)」

てか男の能力使えば妹の復活余裕じゃね?

>>148
>>32見ろよ。妹は復活させられないらしい



妹の病室前


男「……さて、どんなもんかな」

女「私は……」

一緒に病室に入ろうとする女さんに、俺はストップをかけた。

男「あ、ちょっと女さんはドアの前で待っててくれる? ほら、着替えとか色々あるし。あと、俺泣いちゃうかもしれないから、ね?」

女「……わかったわ」

女さんは、律儀にもドアの前にたつ俺から少し離れてくれた。……こういう気遣い、すごく助かるなあ……。

……よし。

男「じゃあ、入るぞー」コンコン

ノックして、声をかけてから病室に入る。返事が来るわけないって、解ってるはずなんだけどな……。


……目の前には、つい何日か前お見舞いに来たときと全く変わらない姿でベッドに横たわる妹がいた。

ま、そりゃそうだよな。いきなり何か変わってたら、そっちの方が驚きだよな……。

☆10 At 5000 Df 5000 神魔族 効果モンスターの効果だけ受けない 普通の剣 この程度は効果なしモンスター

男「…………」

妹「」

妹の体には——点滴のためだったりなんだりするんだろうけど——何本ものチューブが刺さっていた。医療ドラマとかでよく見る心電図や血圧を図る四角い機械や、呼吸器でガチガチに固められた妹を見るのは、やっぱりキツいものがある。

男「ふう……。すっかり痩せちゃってまあ」

妹「」

……………………。クソッ。

男「待ってろよ妹。お兄ちゃんが絶対救ってやるから」



——と、その時。妹の指が、ほんの少しだが、ほんのわずかだが。動いて——



医者「『黒白医術(ブラックジャック)』」

男「……っ!?」

医者「ちょっとだけ寝ててください」

——後ろ——いつの間に——不味い——

鈍い音がなる。頭を強く打って、ドサッという音を立てながら男が倒れた。



ほんの少し前、病室のドアの付近


男が病室に入ったのを確認した私は、ため息をついて壁に寄りかかった。

女「ふう……男君の妹さんか……」

女「家族……、私には家族なんてもう……、……?」

少し考え事をしていた私は、明らかにこちらに向かって歩を進める白衣を身に纏った医者を見つける。

……一応警戒するべきかしら。

女「…………どちら様です?」

医者「ああ。私かい? 私は妹さんの主治医だよ」

女「あっ、そうなんですか」

医者「君は男君の付き添いかい? なら今男君は面会中ってわけか」

女「そうですよ」

……何でこの人、こんなに私に話しかけるのかしら。何で、なん……、で……。っ!?

私ははっとあることに気づいた。……おかしい。

医者「? どうかしたのかい?」

女「おかしいわね」

医者「……おかしい? それっていったい何がかな?」

女「やっぱり、おかしい。病院だからそこまでうるさい音は鳴らないにしても……」
私はぐるりと周りを見る事で、疑念を確証に変えて言った。


女「『無音』っていうのは、あり得ないわ」


耳をすませても、辺りから人の会話の声が聞こえてこない。かろうじて機械音は鳴っているものの、それだけだ。

マダー?

と言うことは……、何らかの能力ね。それにしても、いったい誰が……。はっ!

…………。……周りみんな、人っ子一人居ないような静けさなのに、それならばいったいなぜ、

この医者は私と『会話をしている』の?

それは何故ならこの医者が異能力者だから、この医者が異能を使った張本人だから! だから自分は能力の干渉を受けていないという、そういう事ね。

……………………。うん。

女「……出てきて『悲哀機能(アライブマシーン)』!」

医者「残念だけど、気づくのが遅いかな……。とっくに能力は発動済みだ」

こういうの好きなんで書いてください楽しみにしてます。

女「……何で?」

悲哀機能が出ない!? ……しまった。

『私の影を踏まれている』……!

女「どきなさいよ……っ」

医者「君の能力は悲哀機能。自らの影から化け物サイズの大蛇を産み出して戦う能力……でも」

医者「影を踏まれると召喚ができない……んだよね?」

何で何もかもバレてるの!? ……だったら!

場所を変えようとするものの、

医者「移動なんてさせると思う? 立っている場所が悪かったね、ドアを背にして僕と向き合っている状態だと、身動きがとれないだろう」

……くっ、じゃあ他の……、っ?

甘い香りが鼻をくすぐる。と、不意に脳が思考を停止した。体が思ったように動いてくれない。

あれ、何でこの医者は私を見下ろしているの?

……違う、私が倒れて……。

医者「私の能力、『黒白医術(ブラックジャック)』は医療技術を拡大解釈して周囲に影響を与える。さっき君の能力を分析したのは、相手を見透かす「レントゲン」。今君に、いやこの病院全体にかけているのは強制的に意識を手放させる「麻酔」。ちょっとのあいだ眠っていてもらうよ」

待ちなさ……い……。

医者「おやすみなさい。……さて、あとは病室内の男君だけか」

やめ……、男……君…………。

————
————————



医者「(……まずは病室内の妹君の体を「電気ショック」で少しだけ動かして、男君の意識をそちらに向ける)」

医者「(その間に僕が気配を殺して後ろから近づき、「麻酔」で眠らせる)」

医者「簡単な作業だ」


こっそりとドアを開ける。……案の定男君は、私に気づいていない。完璧だ。

医者「『黒白医術(ブラックジャック)』」

男「………っ!?」

おやすみなさい、だ。

医者「ちょっとだけ寝ててください」



……鈍い音がなる。頭を強く打って、ドサッという音を立てながら、男が倒れた。

『男』が、倒れた。

……男は男だが、倒れたのは、……白衣を着た男の方。すなわち、

巡航速度 ☆11 At 3500 Df 3500 位 つまり 無能の心臓 タルミタリナイ 堕天使族 なだけ


続きが気になる

期待してます

モチベーションが上がらず、またやることも多かったため放置してきましたが、更新しようと思います。



俺が振り返りつつ放った渾身の回し蹴り。それをモロに頭に食らい、床に目を回しながら倒れた医者をちらっと見て、俺は『二つの意味で』安堵のため息をついた。

男「…………。はあっ、ふぅーっ……」

危なかった。今回は本当の本当に危なかった。

男「やべえ……冷や汗が止まらない。……はあっ」

男「でもまあ、まさか」


男「女さんの裏切りを警戒して発動しておいた『嘘八百万(カウントレス・ライ)』が別の獲物を引っ掛けるとは……」

……思わなかったなぁ。



……神様の「女さんを信用するな」発言に対して、俺は幾つかの仮説をたてた。そうしてそのうちの最悪の結論である『女さんは俺を裏切る』という仮定を前提とした作戦をひとつ立てたんだ。


つまりだな、その作戦とは……『わざと隙を作って女さんの裏切りを誘発させて、その上で女さんを迎撃する』……といったものだ。

だからこそ俺はついさっき病室前で、わざと女さんに向かって「無防備な状態になるかもしれない、それを見られたくないから先に病室に入る。女さんにはここで待っていてほしい」……と言ったんだ。

わざと別れて、さらに個室に入る。……もし女さんが俺を後ろから襲うのなら、これ以上無いという位のチャンスだと思うのだがどうだろうか。

……そして女さんがドアから少し離れたのを確認してから、ドアをノックする音に紛れて能力を発動した。


『今から五分たつまでの間に、俺の背後で能力を使用した相手を無条件で回し蹴りで攻撃する』……と。


無論、勘違いで不発だということもあるだろう。が、それならそれでいい。失敗しても、少ない穢れしか溜まらないような『軽い嘘』だからだ。

……まあ、今になってよく考えてみると、「女さんが能力を使わずに俺を攻撃したらこの嘘は効果を発揮しない」だとか、「回し蹴りを回避された場合、能力を発動してから再使用までのインターバル一分間、迎撃の手段を持たないまま女さんと相対することになる」だとか色々反省すべき点は有ったが……。

男「ま、結果オーライだな」

医者「」

男「で、誰だ? こいつは……。って」

床に伏せる男の顔を確認した俺は、おもわず驚きの声をあげた。

男「……回復の見込みが無いって言ったあの医者じゃないか」

こいつは俺が異能戦争に参加する理由を作った医者だ。

男「……まさかこんな奴まで戦争の参加者だとはな」

俺は医者の指から指輪を抜き取り、即座に宝石を叩き割った。……トンカチ常備の高校生って。職質されたらアウトじゃないのかな?

そんな下らないことを考えていた俺は、ふと大切なことを失念していたと気付いた。

すぐに医者の体を揺り起こし、覚醒させる。

男「おい、起きろ、コラ」

若干強めに肩をゆさゆさしたため、医者はあー……と言いながらすぐに目を覚ました。

医者「…………?」

男「妹の指が少し動いたんだ! ほら、はやく診てやってくれ」

興奮して言う俺に対して、まだ状況をよく理解していない医者は、なにも考えずに俺の質問に答えた。

医者「…………あ、それ、僕の能力で動かしただけだから、別に回復の兆しがとかじゃ無いんだ……」



…………は?

真紅眼覇王龍 ☆7 At 2400 Df 2500 闇属性 龍族

…………?

なんだ? つまり、俺の命より大切な妹がようやく回復する兆しが見えたかと思ったら、それはただのぬか喜びだったと。

へえ。

ふうん。

……ふうん。


……ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ……。
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ!



男「…………っ! ……やべぇ。危うく『出る』とこだった」

あっぶねえ。相変わらずオレは、……じゃなくて俺は妹のことになると……。

……落ち着いた。そうだな、別にそこまでキレる事じゃ無かったな。うん。例え妹が戦闘に利用されたとしても、そんなキレる事じゃ無い。

…………ぞぞぞ。

……いやもう良いんだよ。出てくるな。今出たところで状況が悪化するだけっつうか何の意味も無い。解るよな? 「オレ」。

……ようし、いい子だ。

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