雪ノ下雪乃「比企谷君、その…少し、相談があるのだけれど」 (358)

「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」の2次創作SSです。
最新刊までのネタバレを含みます。
ゆっくりやっていくスタイル。

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雪ノ下雪乃は、珍しく遠慮がちに、言葉を区切りながら、比企谷八幡へ向かってそう言った。

「……は?」

特別棟の中にある、奉仕部の部室。その中でいつものように雪ノ下と1人と1人(2人ではない。ぼっちは何人いても1人だ。ちなみに由比ヶ浜が来れば2人と1人になる。)で過ごしていたところ、急に雪ノ下が本を閉じ、言葉を発した。

まぁ、ここまではよくあることではあるのだ。

問題はその発言の内容であって。

基本的に雪ノ下がそういう時に発する言葉は比企谷君がキモイとか比企谷君がウザいとかそんな感じの言葉なのだが。くそっ、悲しくなってくる。…まぁいい。

その雪ノ下雪乃が、今日は俺に「相談」があるといったのだ。



「えーと……雪ノ下、さん?」

「……何かしら?」

あくまでもいつも通りに振舞おうとしているのか、その長い黒髪を手で梳きながら、何でもないように答える雪ノ下。

だが、明らかに俺から目を逸らし、せわしなく姿勢を変えている雪ノ下は、普段の「雪ノ下雪乃」とは全く違うものであった。

というかまるでその姿は恋する乙女が好きな人の前でそわそわしているみたいでめちゃくちゃ可愛いじゃねぇかおい。うわやべぇ、雪ノ下ってこんなに可愛かったっけ。

「……比企谷君?」

「お、おう!?」

「…どうしたの?」

「………別に」

なんとなく俺も目を逸らして答える。

「……そう、ならいいのだけれど」

そう言ったきり、黙りこくる雪ノ下。



いやマジで今日は本格的におかしい。いつもなら攻撃…もとい口撃が1つや2つや3つや4つ飛んできそうなものなのに。

それから、2人とも黙ってしまう。

時計の針が、時を刻む音だけが部室に響く。

流石に埒があかない、そう思って、とにかく話だけでも聞いてみようと、口を開く。

「その、さっきの――「やっはろー!」

ぼっちの固有スキル・間の悪さ発動!

ということで、俺の質問は相手に届く前に頭の悪そうな―いや、頭の悪い挨拶に遮られた。

さてその頭の悪い張本人、やっはろーを得意とする由比ヶ浜結衣は、どうやら特技の空気を読む能力で俺達の―というか雪ノ下のいつもと違う様子を感じ取ったのか。

「あ、あれー……私、もしかしてお邪魔だったかなー……?な、なんてー…」

と、非常に空気を読んだ一言を、恐る恐る発した。



そんな殊勝な態度の由比ヶ浜に、流石の俺も話を遮られたことに対して怒れず、というか俺の話が遮られることなんて日常茶飯事過ぎて怒る気にもなれず。

「あー…いや、別に気にすんな、全く問題ねぇよ。………あと10分遅く来てくれてたらな」

「全然歓迎されてないじゃん!?」

やっぱりなんか腹が立ったので一言付け加えてしまっていた。

「も、もうヒッキーはいいよ!ゆきのん、ゴメンね?」

何がいいんだ何も解決してねぇじゃねぇかという疑問は胸にしまう。えてして女子なんて会話の中で問題の解決など求めていないのだ。

さてその話を振られた雪ノ下は、というと。

「私も、特に気にしてはいないわ。…………あと15分遅く来てくれれば、ね」

「ゆきのんからも歓迎されてない!?てゆーか時間増えてるじゃん!」

と、また雪ノ下らしくない返答。あいつが俺に追随するなんて本当に珍しい。



これで、奉仕部において俺・雪ノ下VS由比ヶ浜という構図が完成した。この構図超レアだぞ。

……負ける気せぇへん。

ふと、我らが千葉の球団に敗北した大阪の球団のファンの言葉が脳裏をよぎる。

閑話休題。

というか、やっぱ雪ノ下がおかしい。

俺を罵らない雪ノ下とか限定SHOPを進めてこない事務員みたいなものだ。

そう思って、雪ノ下へと視線をやる。

「………その、後で、ね?」

少しだけ上目遣いで、大凡俺に見せたことの無いような顔と聞かせたことの無いような声で呟いた雪ノ下。

うわなんだこいつめっちゃ可愛い。俺これが雪ノ下じゃなかったら惚れてたわ。一発KOだわ。今までの雪ノ下に対するトラウマが俺をぎりぎり引き止めたわ。

「あ、後っ!?後って何!?何なの!?」

つまらないことを考えている俺の横で、由比ヶ浜が手をバタバタさせながら何かを言っていたようだが、雪ノ下雪乃の誘惑にひたすら耐えていた俺には聞こえなかった。

「…とりあえず、奉仕部の活動を始めましょう」

その雪ノ下の鶴の一声というべき言葉で今日も、いつも通りの奉仕部が始まる。



                  ×  ×  ×


沈みかけの太陽が部室を赤く照らす時間。

奉仕部の活動は今日も特に何もなく、滞りなく終了を告げた。のだが。

奉仕部の面々は部活動が終了したというのに誰も帰ろうとしない。

「………めっちゃ気になるんだけど…」

むー。とリスのように頬を膨らませて、帰る事を何故か拒む由比ヶ浜。

「…だから、ただ相談をするだけだって、言ってるじゃない」

その由比ヶ浜をあしらう雪ノ下。

なんかお母さんが夜出かけるときについていきたがる子供みたいな構図だなぁ…。なんて、益体もない事を考えていると。

「だ、だってさー……ゆきのんが相談とか、珍しいし………」

どうやら向こうでは会話が進み始めたらしい。



「て、ていうかさ!相談なら、私にしてくれれば…」

由比ヶ浜はそう続ける。…ふむ、案外悪くない提案なのではないだろうか。

俺は厄介事に関わらなくていい。それに――

由比ヶ浜は、きっと少しでも雪ノ下の力になりたいのだろう。

文化祭の時の、由比ヶ浜の言葉を思い出して、そんなことを考える。

――ならば、だ。

ぼっちはさっさと去ってやるべきであろう。

比企谷八幡はクールに去るぜ。

俺は、鞄に手をかけて、部室を去ろうと――

「いえ………その、比企谷君でないとダメなのよ」

瞬間、静寂。いや、元々そこまで煩くは無かったが。

というか俺なんて言葉を発してすらいなかったが。…まぁ、それはいい。

俺も由比ヶ浜も、完璧に絶句していた。



「………?」

あれ、何か私おかしいこと言った?みたいな表情の雪ノ下。

おかしいよ。おかしすぎるよ。今一瞬お前の中に戸塚が入ってるんかと思ったくらいだわ。

だって俺じゃないとダメって言われた女子なんて戸塚だけだし。

心の底から可愛いと思えるのもやっぱり戸塚だし。

…ん?待て。この説って案外有力じゃないか?

だって俺を罵らないのなんて正直戸塚くらいだし。

っかー。人気者はつれーわー。っかー。どこ言っても嘲られるか罵られるかそもそもいないものにされるもんなー俺。

というわけで今日の雪ノ下の中身は戸塚。論拠は俺に対する扱い。Q.E.D.

「……ゆ、ゆき…のん、それって、その…どういう意味?」

そんな人気者の俺をよそに、由比ヶ浜が慎重に言葉を紡ぐ。




「……ゆ、ゆき…のん、それって、その…どういう意味?」

そんな人気者の俺をよそに、由比ヶ浜が慎重に言葉を紡ぐ。

「?……どういう意味もなにも、そのままの意味よ」

「そのまま…って、それじゃ…その…」

「……はっきりしないわね。由比ヶ浜さん、言いたいことがあるなら、ちゃんと言うべきだわ」

「あ、えと…だって……」

「………だから、はっきりと」

多少苛ついた様子を隠そうともせず、由比ヶ浜へと意思を伝える雪ノ下。

その瞬間。

「こっ!こっこっこっこっこここ……!」

いきなり、謎の咆哮。

由比ヶ浜結衣が鶏になった。

童貞風見鶏大岡に次ぐ新しいキャラ、ビッチ一番鶏由比ヶ浜の誕生の瞬間である。



いやこんなことはどうでもいいんだが。こってマジでなんだよ。

こんな考えを俺がしている間も、「こここ…」と続ける由比ヶ浜。

「……由比ヶ浜さん?」

急かすような雪ノ下の声に、由比ヶ浜が観念したのか。

「こ、っこく!こく!はく………とか!?じゃないのか……な…なんて、あは…?」

こく!はく!…ってなんだ?……濃く吐く?平塚先生の婚活パーティーの後の姿か何かか?

…想像したらめっちゃ可哀想になった。誰か貰ってやれよ。俺が貰ってしまいそうだ。

「………告白、とでも言いたいのかしら?」

雪ノ下が、いつもの冷めた声で由比ヶ浜に問う。

「う…うん」

その問いに、おずおずと由比ヶ浜が首を縦に振る。



こく…はく……告白…?

雪ノ下が、俺に?

おいおい、ってことは……今日の態度は、もしかしてそういうことなのか。

そして普段のあいつの態度は…て、照れ隠しだったりするのか…?

い、いや……まぁあり得ないとは思うが…もし本当だったならこいつ嫌な奴だけどべ、別に付き合ってもいいかな。いや!ほら!戸塚には悪いが俺もやぶさかではないというか…

「呆れた………そんな事を考えていたの?こんな男に告白するくらいならまだ死んだ魚のほうがマシだわ」

はいノーマル雪ノ下入りました。これでこそ雪ノ下雪乃。

ですよねー。俺の淡い期待は、戦闘空域に侵入する前に撃沈した。

つーかお前それはそれで危ないだろ。死んだ魚に話しかける雪ノ下を想像して、頭の中で突っ込みを入れる。

「あ、あっはは……だよねー。ゆきのんがヒッキーとかマジあり得ないよねー」

露骨な安堵感を示す由比ヶ浜。

なんだお前。あれか、小学校の時俺みたいな奴にもやさしくしてくれた隣の席の高橋さんが俺に向かって「…ごめん、比企谷くんと喋ってると皆から無視されるから…」って言って離れていった時周りにいたクラスの女子みたいな顔しやがって。「よかった。クラスメイトをハブることにならなくて…」みたいな心情なのか?あぁん?




「…ん。じゃあま、そういうことなら私は帰るね」

「…そう。それじゃあね、由比ヶ浜さん」

「うん。ばいばい!ゆきのん!」

そう言って、由比ヶ浜はさっきと一転。爽やかな笑顔で去って行った。

おーい、こら、由比ヶ浜お前1人にしか挨拶してないぞー。小学校の時皆に挨拶しましょうって言われたろ。ああ、皆というカテゴリに俺が入ってないのか。

というかよく考えたら俺は今日も全く会話には入れてないな。横で話聞いてただけじゃん。そりゃ挨拶もされないか。

そしてまた、訪れる静寂。

紅く染まった、時計の進む音だけが響く教室で。

「……それで、相談ってなんだよ」

「ええ、実は――」

そういえば、俺、人から直接俺個人に相談なんかされるの初めてじゃん…。

人生初の感動を心の底で噛みしめつつ、雪ノ下の相談を聞く、俺、比企谷八幡であった。



「………私に、姉がいるでしょう?」

「ん?ああ…陽乃さんか」

強化外骨格付けてる怖い人ね。はいはい。

「その…その、姉に、姉の」

「……姉の、誕生日が近いのよ」

「…はあ。誕生日ね」

それはまたすごい祝われようなのだろうな、あの人なら。

何十人もの人間を侍らせながら、自らの誕生日を祝わせる姿が容易に想像できる。

俺は、誕生日なんて親にも祝われたことがあまりないから気持ちまでは想像できないが。友達に誕生日を祝われたことなど皆無と言っていい。

いや…そういえば小4の時中村君と誕生日が一緒だからって中村君のお母さんから家に呼ばれて祝われたっけ…。俺、中村君のお母さんにしかおめでとうって言われなかったけど。それどころかケーキ俺の分なかったけど。中村君俺の名前知らなかったし。



「……聞いているのかしら?比企谷君」

「…あ、ああ、すまん、聞いてる」

あぶねぇ、俺の誕生日に関するトラウマ100選を選び始めるところだった。つーか100以上もトラウマあるのか俺。それはそれで自慢できそうだぞ。

にしても、今日の雪ノ下は本当に口撃が少ない。

いつもは俺があいつの話を聞いてないときなんて、とりあえずけなしまくるというのに。

「…それで」

雪ノ下はそのまま俯いて、控えめに続ける。

消え入りそうな声で、ゆっくりと。

「………私も………」

控えめすぎて聞き取れなかった。本当に消え入るなよ。

「……聞こえないんだが」

俺がそう言って、暗に聞こえるように喋れと促す。

こういうことも、普段の雪ノ下からは考えられないことであり、強烈な違和感を覚える。

そんな違和感をよそに、俺の言葉を受けた雪ノ下は、俯かせた顔を少しだけ上にあげ、俺の目を見て、今度はしっかりと耳に届くように、その言葉を投げかけた。



「…私も…その、姉に誕生日の贈り物をしようと思っているのよ」

「え……?」

それは、全く予想だにしない言葉だったといってもいい。少なくとも、俺の死んだ目を見開かせるくらいには。s

雪ノ下が、陽乃さんに…?

「…勘違いしないでほしいのだけれど、私はただ文化祭の時の借りを返しておきたいだけよ。邪魔もされたけれど、結果的にはあの人のおかげで良くなった部分もあるのだし、それに…」

最後のステージも、そうだったわ。と、あの時の光景を思い出すようにしながら。

文化祭実行委員長相模南が失踪して、俺がその相模南を見つけるまでの時間稼ぎのステージ。

雪ノ下と、由比ヶ浜と、陽乃さん…………あ、後平塚先生。

体育館中の誰もを惹きつけるようなあのステージを引っ張ったのは、間違いなく陽乃さんであっただろう。



「…だから、贈り物をしたいの。あの人に借りを作ったままなんて、私にとって耐えられるものではないから」

なるほどな…陽乃さん関係ということなら、俺に話をした理由がわかる。

由比ヶ浜は陽乃さんと仲悪いからな。

しかし非常にめんどくさいことになりそうだ。

「……で、俺にいったい何をしてほしいんだ?」

そう、まさか雪ノ下が最近の女子よろしく「わたしぃ~あの子に贈り物したいんだけどどう思うぅ~?☆」「え~いいんじゃない絶対いいよ誕プレとかマジA子やっさし~」みたいな会話を求めているわけではあるまい。雪ノ下はそもそも「相談」だといったのだから。

「……その贈り物を選ぶのを手伝ってほしいの」

「は?…おい、マジかよ」

よりによってそんな役を俺に振るのか。



「…私だってあなたにこんな事を頼むのなんて非常に遺憾よ。ただ、一人で選ぶよりは誰かに頼った方がいいのは明らかだもの」

「…………」

驚いた。素直に。あの雪ノ下がこんなことを言うなんて。俺が知っている雪ノ下雪乃は、たとえそれが賢い選択だと知っていても、俺みたいな人間に頼るなんてことをよしとしなかったはずだ。

あいつも、変わり始めているのか、それとも――

「あなたに頼るなんて全くもって非常に大変すごくとっても残念なのだけど」

と、明らかに見下した眼で述べた雪ノ下。

――俺の信頼度が上がったとかじゃないらしかった。

「…お前やめろよその眼。中学の時の調理実習で『あ…比企谷君は…その、卵、割ってくれるかな?』って言われた時思い出すだろうが」

「……相変わらず残念すぎる半生を送っているのね貴方は」

「うっせ。お前だってたいして変わらんだろうが」

「いえ、私は全くそんなことはなかったわ。少なくとも調理実習においては」

…なんだと。こいつまさか料理スキルを利用して輪の中に入れたとでもいうのか。俺なんて料理スキルを利用しようとして卵片手で割ったら『…うわ、やっぱナルヶ谷だぜ』って言われまくったんだぞおい。

「……私が1人で班に割り当てられた課題をすべてこなしていたもの」

「……………」

ああ、そうだった。そういやこいつそういう奴だったわ。

容易に想像がつく図だ。後ろで班の女子が楽しくお喋りしてるあいだ黙々と1人料理してたんだろうな。




「………それで、誕生日のプレゼントだっけ?」

「…ええ」

これ以上の会話はお互いに傷を穿り返す結果にしかならないだろうから、むりやり本題に入る。

「そのさ…別に1人で選んだって、いいんじゃないのか?」

断じてめんどくさいからとかそういう理由ではないが、とりあえず遠まわしに断ろうという姿勢を出してみる。

だって正直陽乃さんの好みとかわからんしな。

「…最初は、そう考えていたのだけれど」

でも、と続ける。

「…自分だけのセンスでは、限界があるもの。2人以上の意見を取り入れて贈り物を選ぶというのは、とても重要だと思うから。……由比ヶ浜さんの時もそうだったじゃない」

その言葉で、小町と3人で買い物に行った時の事を思い出す。

「…確かに、そうかもな」

「でしょう。………それに………」

やっぱり、少しでも喜んで欲しいから。そう、聞こえるか聞こえないかのとても小さな声で雪ノ下は言った。




――そうか、こいつは、変わろうとしてるのかもしれないな。

だとしたら、俺も少しでも変わってやろう。少なくとも、今くらいは。

そんなことを、柄にもなく考えて。

「…うし。わかった。手伝うよ」

若干、声に気合を入れてそう答えた。

が、雪ノ下は何言ってるんだこいつといった顔で。

「…いえ、あなたではなく、小町さんに手伝ってほしいのだけれど」

「……さいですか」

そう、いつもの冷ややかな調子で当然のように告げたのだ。

…くそ、勘違いさせんじゃねぇよ。もう俺めっちゃ頼られてるとか思ってたのに。

結局小町か。小町目当てなのかよ。俺はただの小町との仲介役でしかないのか。

また『比企谷小町ちゃんのお兄さん』という称号を頂くのか。

哀れなピエロ、比企谷八幡がそこにいた、というわけなのか。



なんて心で毒づいていると、少しだけ顔を逸らして、髪を指で弄りながら、雪ノ下が言う。

「……まぁ…」

「…別に比企谷君がついて来ようと、構わない、けれど」

…………。

うわ。やばい、今惚れそうになったわ。

だいたい俺が誘われるときは『………い、行く?』とかだからほんとマジで今感動で泣きそうになるレベルだったわ。

しかし…。

「…何かしら?」

「…いや…それで、いつ行くんだ?買い物」

やっぱり、こいつは素直じゃないな。

なんて、思ったのだ。




                                    ① やはり、雪ノ下雪乃はツンデレである。    了

今日の分は終わり。続きは今度。
違和感とかなんとか、文句があれば遠慮なく。

一応言っとくとあねのんの誕生日は7月7日だから文化最後の話だとするとちょっと矛盾が出る
まぁSSなんだから俺は特に気にしないけど
期待しているので頑張ってください

これは期待
でもキーボードを担当しためぐり先輩のことも思い出してあげてください

>>27
あちゃー。マジか。あねのんの誕生日知らんかったから適当にやってもうた。
…まぁ、書いてしまったもんはどうしようもないね。クッソにわかでごめんなさい。
>>29
…素で忘れてた。すまないめぐり先輩。

なんか予想の何倍も反応多くて嬉しいです。
続き落とします。すいませんが陽乃さんの誕生日はよくわからないけど文化祭後ってことで脳内補完お願いします。


② だから、比企谷小町は悩んでいる。




「……ほほう、お兄ちゃん…雪乃さんとデートとは、やるねーっ!このこのっ!いいね!そういうの小町的にはめっちゃポイント高いよー!」

「…お前俺の話聞いてないだろ」

雪ノ下が一緒に陽乃さんの誕生日プレゼントを買いに行きたいらしい。そう小町に伝えただけなのにこの反応である。

わが妹ながら全く人の話を聞かない奴だ。たぶんこいつは通知表に毎回先生の話をきちんと聞きましょうとか書かれていたに違いない。

ちなみに俺は毎回友達はいるのかということを遠まわしに心配されていた。別に友達の数だけで学校生活の楽しさなんか変わるわけではないというのに。

…嘘です。凄く違います。

「んでー!いったいぜんたいいつなんだいデートはっ!」

テンションたっけぇなこの妹…。

正直少し引くレベルだ。



「………今週の日曜、この前由比ヶ浜のプレゼント買い言った時と同じとこで、だよ」

「ほっほーう!いやいやー、楽しみだねー!」

こいつはそんなに雪ノ下と出かけるのが楽しみなのか?

いや、別にそれならそれでもいいんだが。

雪ノ下と小町がずっと話しておけば俺に攻撃の矛先向かないしな。

とりあえずこのテンションでは埒があかなそうなので、簡潔に用件だけを伝えようとして。

「…とにかく、お前も予定開けとけよ」

「は?」

至極まっとうな事を言ったつもりだったのだが、ものすごい怪訝な顔をされた。

具体的には俺が中1の時に「…今日、掃除当番頑張ろうな!」ってクラスメイトに言った時みたいな顔を。




「…何言ってんのお兄ちゃん、小町に付いてきて貰わなきゃデートもできないほどのダメ人間だったの?」

「……アホかお前は。陽乃さんのプレゼント、お前も選ぶんだよ」

何も理解していない妹に、国語学年3位の俺がわかりやすい日本語で伝える。

…兄の鑑だな。俺は。

「………あー……そういう…」

というと、流石の妹もやっと理解したのだろう。

だが、なぜかさっきと一転、つまらなそうな顔になる。

「……んー………」

そしてそのまま、何かを考えるポーズをとって。

「…ごめんお兄ちゃん!その日予定あるんだった!」

俺に向かって、そう告げた。




「…予定、って…」

しかし、雪ノ下が今回必要としているのは他ならぬ小町の知識と見解だ。

「…じゃあ、雪ノ下に日程ズラして…」

「それはダメだよお兄ちゃん!」

俺がまたまっとうな意見を言おうとして、遮られた。

「雪乃さんだって忙しいと思うし、だいたい1回決まった予定を覆すとか小町的にはポイントめっちゃ低いよ!」

「…でもな、あいつはお前の意見を」

必要としているんだぞ、と言おうとしたが、小町が食い気味に続ける。

「…じゃあ!日曜までに小町が陽乃さんの好きそうな物で誕プレっぽいのまとめてリストアップしたげるから!それでいいっしょ!?ね!」

…こいつやけに協力的だな、雪ノ下には。




「…いや、そんなら別に明日学校ででもそれ渡して…」

「あー!小町土曜までにやらなきゃいけないことがあるからリストはそのくらいじゃないと作れないなー!」

「お前な…」

「そういうわけでっ!お兄ちゃん、ちゃんと雪乃さんのエスコートしなきゃダメだよ!」

「……お、おう」

結局、押し切られてしまった。

…雪ノ下に何て言えばいいんだよ。あいつ俺と二人とか知ったら最悪来ない可能性あるぞ。

そのまま、小町は自分の部屋に帰ろうとする。




「あ、おい、待てぃ!」

その後ろ姿を、俺は引き止める。

「…んー…もー、何さ、お兄ちゃん。小町忙しいんだってば!」

めんどくさそうに後ろを向いた小町。

だが、俺にはやらなければいけないことがある。

「…お前、日曜の予定ってなんだ?まさか、デートとかじゃねぇだろうな!」

…特にあの川崎大志相手だったりしたら許さん。相手を。

「……………あー…いやー…そんなんじゃないから」

「…お兄ちゃんは心配しなくて大丈夫だよ」

心底どうでもいいことを聞いた、という風な態度で、小町は答える。




「…そうか、ならいいぞ」

帰って良し。というジェスチャーをとる。

良かったな川崎大志。姉の岡島ともども命があることに感謝するがいいわ。…ん?川島だっけ?

「………はぁ……」

小町が大きなため息をつく。

「どうしたんだよ」

「……お兄ちゃんって、ほんとお兄ちゃんだよねー」

「はぁ?」

わけがわからん。俺なんてそうそう世にいるものじゃないぞ。

つーか比企谷八幡が何人もいたら確実に世界の光量が下がるね。間違いない。

と、俺がそんな益体もない事を考えているうち、いつのまにか小町は消えていた。


                  ×  ×  ×


「……お兄ちゃん本気でヤバいんじゃないかなぁ」

自分の部屋で先の兄とのやりとりを思い出しながら、独り言をつぶやく、比企谷小町。

「……いやまぁ、あそこまで死んだ魚思考だとそれはそれで凄いのかもしれないけどさー」

そこまで言って、彼女は携帯と筆記用具、そしてメモ用紙を取り出す。

「さってと…陽乃さんの誕プレ、考えますかっ!」

そう言って、ペンを持つ。その時、ブブブ、と彼女の手に持った携帯が震えた。

「わひゃあ!…もー…誰だこんな時にー…こういうの小町的にはポイント低いんだけどなー」

彼女はそんなことを言いながら携帯を開く。そこには。

『From:結衣さん
TITLE:nontitle
あ、あのさー…( ゚Д゚)
今日、ヒッキーがゆきのんから相談受けてたみたいなんだけど…
小町ちゃんは、ヒッキーから何か聞いてたり…しない?(´・ω・`)』

静かに携帯を閉じ、項垂れる。

「…………うあー………お兄ちゃんのアホー……」

そのまま、部屋の中央で頭を抱えた。


                                    ② だから、比企谷小町は悩んでいる。  了

今日はここまで。次から本当にゆっくりやる。
意見批判脱字誤字報告大歓迎です。それでは。

…うーん、投下。


③ たまには、由比ヶ浜結衣も空気を読まない。


部室。そこにはいつもの奉仕部の面々が集っていた。

いつもの面々とはつまり、俺、比企谷八幡、雪ノ下雪乃、由比ヶ浜結衣のことである。

まぁ、ここに材木座や彩加が加わることもあるが。今はとりあえず3人だ。

そしていつも通り俺は本を読み、その横で由比ヶ浜が同じように読書をする雪ノ下にちょっかいをかけている。

…というのが、日常。なのだが。

今日は由比ヶ浜がやけに静かだ。なのにそわそわしている。

この表現は一見矛盾しているが、こう言う他ないのである。


由比ヶ浜はたださっきから何をするでもなく、携帯を開閉したりうーとかあーとか唸るばかり。

雪ノ下もそんな由比ヶ浜に疑問を覚えているようだ。

「……比企谷くん、あなた、また由比ヶ浜さんになにかしたの?」

と、急に耳元で囁かれ、思わずドキッとする。

「いきなりなんだよ…つーかまたってなんだまたって。俺が前科あるみたいじゃねーか」

お返しとばかりに、俺も雪ノ下の耳元で囁く。

……内緒話なんていったい何年ぶりにしたんだろう、俺は。

なんて悲しい事を考えながら。



「………っ。あら、間違っていたのかしら?」

一瞬間があって、雪ノ下が答える。

「いや、お前な――

俺はそういうリスクとリターンの釣り合わないことなんてしないんだよ、と言おうとした時。

「…………………むー」

こちらを見つめる2つの目に遭遇した。

頬を膨らませてこちらを見ていて。

「……なんだよ」

「…………ゆきのんとヒッキー、最近仲良いよね」

なんてことを言われた。



「なんじゃそりゃ…」

「絶対最近仲良いよ、2人とも」

そう、確認するように再び由比ヶ浜が呟いた。

「だってさ、昨日もゆきのん、ヒッキーに相談とか言って…」

「それは、残念だけど彼しか適役がいなかったからよ」

間髪入れずに雪ノ下が言う。

「…別に、お姉さんのことなら私に言ってくれても良かったじゃん」

それは、由比ヶ浜が知らないはずの事で。


「…何で知って…まさか」

雪ノ下が俺へ責めるような視線を向ける。

「いやいや、俺は由比ヶ浜に言ってなんてないぞ」

本当に見覚えがないので、きっぱりと答える。

「…でも、それ以外に知る方法なんて」

ないじゃない。おそらくはそんなことを言おうとした雪ノ下を遮って。

「ごめん!あたしが小町ちゃんに無理言って聞いたの!」

詳しくは教えてくれなかったけど。そう小さい声で付け加えて。


「…やっぱり、気になってさ。ゆきのんが相談なんて珍しくて、どうしても、気になったの」

「………そう」

雪ノ下は、こんな時どうすればいいのかわからない。そんな顔だった。

誰かが親身になって、こんなにも自分を心配してくれる、そんな経験がないのだろう。

だが、少しだけ俯いて、すぐに顔を上げた雪ノ下は、微笑んで。

「ありがとう、由比ヶ浜さん」

きちんと、お礼を言った。

心配してくれた友達に、贈るそれを。



「……そ、そりゃーゆきのんのためだからね!…無理矢理な事して、嫌じゃなかった?」

けれど、やはり由比ヶ浜は小町経由で話を聞いたことに後ろめたさがあるのだろう。若干声のトーンを下げて、質問する。

「…いいえ。…嫌では、ないわ。むしろ、とても嬉しい」

「よかった…!」

その言葉に感動のあまり由比ヶ浜は半泣きになって、雪ノ下へ抱き着いた。

「ちょっと、由比ヶ浜さん…」

「ゆきのーん、大好きっ!」

「………………もう」

ふっ、と。

仲の良い2人を見ていたら、思わず笑みが零れた。


「そうだ、由比ヶ浜にも付いてきて貰えばいいんじゃないか?」

雪ノ下へ、そう提案する。

「え?なになに?何の話?」

…そういや、小町は詳しくは教えてない、って言ってたっけ。

「実は――」

今週の日曜、雪ノ下と陽乃さんの誕生日プレゼントを買いに行くのだと、簡潔に伝える。

「なるほど、お姉さんのためにかー…よし、あたしも手伝うよっ!ゆきのん!」

「由比ヶ浜もこう言ってるしさ」

雪ノ下も、由比ヶ浜がいた方が良いだろう。

「………ええ、そうね。3人で行きましょう。正直比企谷くんと2人なんて嫌だったから」



「やったっ!ありがと、ゆきのん!」

「………ひ、ヒッキーも…誘ってくれて、ありがと」

「…ヒッキー?」

由比ヶ浜が俺を呼ぶ。

「あ、ああ、すまん」

「どしたん?」

「…いや、何でもない」

嘘だ。

俺は、驚いていた。

さっき、雪ノ下が是と答えた際、僅かだが、不快感を表した事に。

由比ヶ浜は気付いてないようだが、俺にはわかった。

それは皮肉にも、俺がずっと体験してきたことだから。

だがそれは、俺みたいな奴が遊びに参加したときに起こる感情であり。

雪ノ下が由比ヶ浜にそんな感情を表す理由などないのに。

そのわだかまりは、俺の胸から消えることはなく。

今日も何事もなく、奉仕部の活動は終了した。



                  ×  ×  ×

彼女を心配するようで。

その実、本当は違うことを見ていて。

なのに、彼女は自分を信じてくれて。喜んでくれて。

その結果、自分にとって都合の良い方向に話が進んで。

それで、少しだけ後ろめたさを感じながらも。

喜んでいる、自分が嫌いだ。



                     ③ たまには、由比ヶ浜結衣も空気を読まない。 了

…なんか足んねぇよなぁ?
やっぱ急ぐとダメだね、出来が酷くてごめん、今日はここまで。

書き込めるかな?

あ、できた。何で書き込めなかったんだろう。ごめんね、カーチャンSS書くのはじめてでテンポ悪くてゴメンね。
忙しいから土日まで次の話かけない。ごめんなさい。違和感、言ってくれてありがとね。修正頑張るね。

原作に似せようとしてるのはわかるんだけど正直薄ら寒い
どうせ劣化二番煎じなんだからもっと読みやすくしたら?

>>94
すまんな、次書くときはト書きにしてみる、意見サンキューです。

やっと暇になった。今から書いて明日には投下します。遅くて本当にごめん。



④ 言うなれば、彼の知り合いとクラスメイトが修羅場すぎる。



千葉にある、ショッピングモール。その一角に、俺はいた。

「帰りてぇ…」

俺は、人混みの真ん中をゆっくりと待ち合わせ場所へ向かって歩いていた。

正直、由比ヶ浜がついてくると決まった時点で、後は由比ヶ浜に任せ、俺は家でのんびりしようというフェードアウト計画を練っていたのだが。

その素晴らしい計画はわが妹、比企谷小町によって阻まれた。

有体に言えば、さっさと行って来いと家を追い出された。

我が家では小町に両親が味方するため、俺は結局家を出ることを余儀なくされ、今こうして待ち合わせ場所へと歩いているのである。

 

けれども、いくらなんでも家を出るのが早すぎた。

待ち合わせの時間が11時だというのに、今はまだ10時の半ばに差し掛かろうかという時刻。

少し本屋にでも寄って時間を潰すのもいいか。そんなことを思っていたのだが。

「…雪ノ下?」

念の為、と一応覗いてみた待ち合わせ場所にいたのは雪ノ下。

もう秋も深く、冬も近いというのに、薄手の、少し肌が見えるような服装をして。

「あら」

早かったのね。

いかにも興味なさげに、そう淡々と続ける。



「お前ほどじゃねーよ」

「…今日の買い物は私の我儘で決まったことだもの。遅れるわけにはいかないでしょう」

「そうか」

「ええ」

「…………」

「…………」

そして、会話が途切れる。

基本的にぼっちの会話はこういうものである。

最低限、必要な分しか会話をしないのも、また特徴。

人と話さないことも、人と話すことも。ともすればどちらもぼっちは嫌いなのだ。

………なんつーか悲しいな、おい。

まぁ、ここに雪ノ下の悪意でも混じれば俺ももう少し反応できるが、今日はその成分も薄めなようだから、本当に会話が続かない。



「…………」

「…………」

ざわざわと、忙しなく蠢く人混みの中央で。ただ2人黙って立つ。

その沈黙は、不思議と嫌な感じではなく。

むしろ、心地いいとさえ思えた。

奉仕部の部室に2人でいる時の、あの空間のようで。

近いわけではない、けれど全く離れているわけでもない。

そんな距離感が。

「…比企谷くん」

「…な、なんだよ?」

そんな事を考えていた時に、いきなり雪ノ下に話しかけられ、つい焦り、どもってしまう。




そんな様子がおかしかったのだろうか。雪ノ下は少し微笑んで。

「…ふふ。相変わらず、人と話すのが苦手なのね。…鏡に向かって自分と喋る練習でもしていたら?」

「お前…それ精神崩壊するって聞いたぞ」

「物は試し、よ。いいじゃない、少しくらい壊れても」

「心の傷は一生消えねーって小学校の時習わなかったのかよ」

「あら、その理論なら比企谷くんの心は消えない傷だらけでしょうね」

…いや、お前もだろ。

どうやら俺がそれを口に出す前に自分の言葉がブーメランになって返ってきていると理解したらしく、雪ノ下は少しだけ哀しげな顔をした。

こいつ案外馬鹿なんじゃないだろうか。




「…で、結局何が言いたかったんだ?」

まさか俺を罵るためだけに話しかけたんじゃあるまいし…いや、雪ノ下ならその可能性も十分あり得るか。

「…そうだったわね」

そう言うと、雪ノ下は何か考え込むように俯いて。

「……参考、程度に…聞きたいのだけれど、その…比企谷くんは、私の今日の服について…どう、思うかしら?」

小さな声で、俺に言った。

「…服?」

「え、ええ…やはり、自分で評価できない部分もある、し…同年代の異性に、服を見せる機会なんて…中々…無い、事だから」

その言葉に、驚いた。こいつも周りの評価を人並み程度には気にするのか、と。



「あ、ああ…似合ってる、と、思う」

もちろん、俺に気の利いたことを言えるはずもなく。

驚きが抜けないまま、ただ、そう答えることしかできなかった。

「…そう」

雪ノ下はその返答が気に入らなかったのか、また俯いて、しばらく顔を上げることがなかった。

そんな沈黙を、破る声がした。

「お、ヒッキーにゆきのんだー!早いねー!やっはろー!」

挨拶で誰だかわかるというのは、結構便利かもしれない。

なんというか、朝から元気な奴だった。




「…お前は相変わらず頭悪そうだな」

元気すぎるからなんとなくムカついたので、とりあえず馬鹿にしてみた。

「会っていきなりそれは酷くない!?」

「てへっ、つい思ったことそのまま言っちゃったよん」

「…キモっ」

…自分で思っていた以上にキモかった。これは何か言われても仕方ない。

つーかあれだ。キモイという言葉はむしろ最近割と+方向に捉えられるようになった。現実逃避とかじゃなくて。

「キモイ」はまだ冗談交じりなのだが、「気持ち悪い」はマジで引いてる時に使う言葉だと気付いたからである。

こう…友達どうしで馴れ合うようなニュアンスが「キモイ」には内包されている気がする。




「ゆきのーん、ヒッキーなんてほっといて行こうよー」

「…ええ、そうね、そうしましょうか」

なんて考えている間に、女子2人が動き出そうとする。

流石に置いて行かれるのは嫌なので、その後ろに付いて歩き出した時。

ふと、先程の雪ノ下とのやりとりを思い出し、何か反射的に言葉が出た。

「…由比ヶ浜」

由比ヶ浜が、俺の呼びかけに不思議そうに振り返る。

「ん?どしたん、ヒッキー?」




「その服、似合ってるな」

「…へっ!?あ、え…う、うん。ありが…とう」

俺の言葉を聞いた由比ヶ浜は、非常に驚いた様子で、忙しなく体を動かしながらそう答えた。

「あ、ああ…うん、ど、どういたしまして」

なんとなく、「キモッ」とかまた言われるかと身構えていた身としては、その予想外の反応に困惑してしまう。

それっきり、会話は途切れ。

「………そっかー…ヒッキーはこういう服が…」

それからしばらく、由比ヶ浜は何事かを独り小さく呟きながら歩き。

俺は、前を歩く女子2人の後ろにただ付いて歩き。

雪ノ下は、最初より少しだけ速く歩いていた。


                      
                               ④ 続

眠い。ダメだね。すまん。




そもそも、買い物とは一人で行くものではないだろうか。

自分のために物を買うにしても、誰かのために物を買うにしても。

この前のように、俺も由比ヶ浜に何か買うつもりだった―というような状況ならばともかく、今回は雪ノ下の陽乃さんへのプレゼントを選ぶのを手伝っているだけで、俺も由比ヶ浜も特に買いたい物はない。

それなのに、選ぶ手伝い云々~、という理由で買い物に付き添う、というのはとても無駄な事であるように思える。

結局どんなアドバイスをもらったところで、決めるのは自分だ。

特に、今回のようなケースであれば。

誰かの助言を鵜呑みにして買ったプレゼントには、果たして自分の心が籠っているのだろうか。




かといって、連れてきた人間の言葉を全く聞かないのではそれでは一緒に買い物に来た意味はないだろう。

故に、連立って買い物に行く。なんて物は、ただの自己満足に過ぎない。

而して。

「帰りてぇ……………」

「…ヒッキー、ここまで来たら諦めようよ…」

俺の呟きを、聞いた由比ヶ浜が、呆れ気味にそう言う。

まぁ、つまり、俺はとても帰りたかったのだ。

「いや…俺だって諦めてたけどさ…」

前を歩く、雪ノ下と由比ヶ浜を見る。




おそらく、この2人は黙っていればかなりの美人だろう。

雪ノ下は言わずもがな。由比ヶ浜も…まぁ、うん、可愛い。

そんな2人と一緒に歩く男は、当然注目されるのが相場だ。

どうにもそういう視線が嫌なのである。

別に、「なんだよアイツ調子のってんな」みたいな視線を浴びることを苦にしてる、というわけではなく。

プラスだろうがマイナスだろうが、目立ちたくはないだけだ。

常に±0で、誰にも注目されない。そんな存在こそが、ぼっちが目指すべき頂点であるからだ。

「…比企谷くん?」

「え?」

突然呼ばれて、意識が思考の海から浮かび上がる。




目の前には、こちらを向いて不思議そうな顔をしている女子2人。

「いきなり話しかけるな、びっくりするだろーが」

とりあえず抗議の姿勢を見せる。が。

「さっきから、呼びかけているのだけれど…」

「…ヒッキー、もう目的の場所着いたよ?」

…どうやら、俺は相当くだらないことを考えるのに夢中になっていたらしい。

「そうか。そりゃすまんかった」

「相変わらず誠意が感じられない謝り方ね…」

「…悪かったな」

そもそも、誠意が感じられる謝り方ってなんなんだろうな。

ある著名人も誠意は言葉ではなくなんとやらとか言ってたし、やっぱり品物と同時に渡すことが大切なのかね。

>>141 品物を→品物も


「ヒッキーヒッキー!」

その時後ろから、煩い声が響く。

「ね、ね!これ、どうかな…!?」

由比ヶ浜が何かを手に嵌めて、こちらを窺う。

それは何やらフリフリした、厚めのミトン。

「…ん、似合ってんじゃねーの」

最近はミトンまでオシャレグッズになってんのか。なんて思いつつ、答える。

まぁ由比ヶ浜らしいっちゃらしい、頭の悪――いや、かわいらしいもので、お世辞ではなく、似合っていると思った。

「そ、そうかなー…じゃ、じゃあ…これ、買おうかなー…」

つーかこいつ今日の買い物の目的忘れてないだろうな。




「いやお前な…、今日は陽乃さんのプレゼント買いに来たんだぞ」

「お、覚えてるし!それでも別に自分の買い物したっていいじゃん!」

「そうだけどさ…そもそもお前、ミトンなんて買ったって使う機会ねーだろ」

料理しねーんだから。という言葉は留めておく。

「…みとん?」

だが、俺の言葉に由比ヶ浜はまるで初めて聞いた言葉であるかのように首をかしげる。

「………それ、お前が手に嵌めてるやつ。イットイズミトン」

「へぇー…この手袋、ミトンって言うんだー…通りで普通の手袋とちょっと違うと思ったよー」

「なんていうか、暖かさが違うよね!」

………ああ、そうか。こいつバカだった。料理しない人でも普通そのくらい知ってるだろ…。

なんかもう訂正するのもアホらしくなったので、へーとかふーんとか言いながらミトンを弄っている由比ヶ浜は放っておく。



とりあえずこのままじゃいつまで経っても買い物が終わらなそうだから、雪ノ下を探す。

そして、すぐに見つけた…が。

「……………………ふふ」

「……………」

「……………………ふふふ」

「…お前はお前で何やってんだよ」

「はっ!?」

雪ノ下が注視していたのは、『パンさんパジャマ~あなたもパンさんになれる~』というパンさんの等身大パジャマ。

「…いえ、別にこれを着たらどんな風になるか…なんて考えていたわけではないわ」

…俺の知り合いがこんなにファンシーな思考をしているはずがない。

そもそも雪ノ下がこれ着た図とかシュールすぎて想像できん。

「…小町から貰ったリストの商品、適当に見ていくぞ」

「ええ、わかったわ……………」

口ではそう言いつつも、視線をパジャマから離そうとしない。

どんだけ好きなんだよ、パンさん…。




                  ×  ×  ×

それからは特に何もなく、雪ノ下がペットショップへといきなり移動するくらいで買い物はだいたい終了し。

これからどうするか、なんて考えていたところ、由比ヶ浜が突然『ご、ごめん!優美子たちにカラオケ誘われた!』と言って慌ただしく去っていき、解散となった。

本当、リア充って大変だよな…自分の時間を他人に管理されているみたいで。

「……さて、俺たちも帰るか」

「ええ。そうしましょうか」

そのまま別れようとした時、思い出したように、雪ノ下が言う。

「小町さんに、ありがとうと言っておいてちょうだい」

「それと…もちろん、あなたにも感謝しているわ」

付け加えるように、そう告げる。

「…おう、わかった」

お前も誠意を表すの下手じゃなねーかよ。なんて心の中で毒づいて。




それじゃ。そう言って踵を返した。

「………待って。比企谷くん」

雪ノ下の声が、そんな俺を呼び止める。

「…どうした」

振り返らずに、前を向いたままで答える。

「その………」

雪ノ下は、そんな俺の正面へ回り込んで。

「………これを、受け取って欲しいの」

小さな箱を、差し出した。




「…おいおい、俺は陽乃さんじゃないし、誕生日はまだ先だぞ、それに―」

「受け取って、欲しいの」

言葉を遮り、有無を言わさぬ、といった口調で、雪ノ下は俺へとそれを差し出す。

「……いや、昔から比企谷家では『タダより高い物はない』が家訓でな、理由がない贈り物なんて受け取れねーんだよ」

言って、進もうとする俺を雪ノ下が止める。

「理由なら、あるわ」

そして先程までの口調で続ける。

「ねーよ、んなもん。…少なくとも、俺には覚えがない」

「…文化祭」

そう一言言って、さらに続ける。




「……比企谷くんに、結果として損な役回りをすべて、押し付ける形になったわ」

「あれは、全部私の――」

「違う」

それを遮ろうとした俺の言葉は、自分で思っていたよりもずっと強い口調になっていた。

訂正というより、拒絶。そんな口調。

雪ノ下の体が、少し強張る。

「…俺が、ただ単に空気を読めなかっただけだ。礼を言われるようなことも、謝罪されるようなこともしちゃいない」

「でも――」

「それだけなんだよ、雪ノ下。だから、それは受け取れない」

そのまま、俺は雪ノ下を追い越して、歩く。





「…それでも、…それでも、私は――」

けれど、なおも食い下がる。

「………別に、お前が副委員長じゃなくても、きっと俺は、孤立してた」

それだけ告げて、俺は歩き出す。

いつかの、いつかあった時のように。

そう。別に俺は雪ノ下を助けたわけじゃない。

だから、感謝なんてされる謂れもない。

雪ノ下は、今どんな顔をしているのだろう。

好意を無碍にされて、怒っているだろうか。

それとも、俺みたいな奴に贈り物をしようとしたことに対して、後悔しているのだろうか。




雪ノ下を見ずに歩き出した俺には、わからない。

「………私は」

ただ。

「…比企谷くんは、私が副委員長だったから、孤立したって……そう、思って……いえ、そう、思いたいの」

俺の背中へ投げかけられたその言葉だけは、しっかりと記憶に残った。

それから、家に帰るまでの事はよく覚えていない。

気が付いたら、小町が目の前にいた。

無駄に、疲れた一日だった。

④ 言うなれば、彼の知り合いとクラスメイトが修羅場すぎる。    終

タイトル詐欺やね。なんかアレな文章でほんとごめん。
長すぎて削ってたらわけわからんことなった。ここまでです。

長すぎても大丈夫だと思う。むしろ長い方がいい。面白いから、期待してる。

>>153-154 レスありがとうございます。
削ったんは最後の所の地の文と買い物シーンです、ほぼ買い物シーンだけど。
なんかずっと買い物してるだけだったから超削りました。その代わり場面転換が酷く急になってしまって泣きそう。

遅くてすいません。
月曜日には完成させます、続き。後1回か2回で終わりです。

全然書けんな、参った。とりあえず生存報告がてら。
次書くことがあったとしたら絶対ト書きにする。


⑤ いつしか、彼は――

時間の流れは、いろいろな事を変えてしまう。

ならば、雪ノ下も変わってしまったのだろうか。

そして、俺も変わってしまったのだろうか。

そんなくだらない事を考えて、現実から逃げていた。

というのに。

「ごらー!お兄ちゃん起きろー!ごらー!」

妹の襲来により無理矢理現実に引き戻された。

「…なんだよ小町、お前が早く起きてるなんて珍しいな」

「やっだなー!お兄ちゃん、小町は毎日毎日成長を続けるエブリデイなんだよー!も・ち・ろ・ん…お兄ちゃんのために!あ、今の小町的にポイント」

「高くないし意味わかんねーよ」

人の気も知らずなんかわけのわからんことを喚く妹の能天気さを、今は少しだけ羨ましいと思いながら、もう一度布団をかぶる。



「お?おにーちゃーん、今日は学校だぞー」

「わり、腹痛いから休むわ」

「…いまどき小学生でももうちょいまともな言い訳考えるよ?」

「いや、マジで痛すぎてもう動けないくらいなんだ」

顔を背けて、答える。

俺は学校に行きたくないと背中で小町に語る。

「…あんさー、お兄ちゃん、もしかして学校で嫌な事でもあった?」

「……………………」

結構当たっているので何も言い返せない。

小町はその沈黙を肯定と取ったらしく、続ける。

「……お兄ちゃんが休みたくなるほどの嫌な事って小町にはぜんぜんわかんないけどさー」

「それでも、そうやって逃げるのって、お兄ちゃんらしくないよ。小町的にポイント最低値だねー」

「…ま、最終的に決めるのはお兄ちゃんだけどね」

それだけ言って、部屋から出ていく。

「お、そういや朝ごはん、テーブル置いてるからねー」

最後にそれだけ付け加えて。

            
      ×  ×  ×



「………………はぁ」

通学路には、いつものように大量の人はいない。

自転車をこぎながら、ちらりと時計を見る。

10時13分。どう考えても遅刻の時間だ。

それでも、俺は学校に向けて自転車をこいでいる。

断じて、妹の説得に応じたというわけではないが。

なんとなく、学校に行きたくなっただけだ。

そう、なんとなく。

なんとなく、雪ノ下の事が気になったから。行こうと思ったんだ。

つか、朝ごはんと称して生食パンを重ねて積み上げるのは如何なものかと思うぞ。

お前は一人暮らしの大学生か、妹。

なんて考えているうちに到着し。

そして、その後はもちろん遅刻の罰として平塚教諭に殴られた。

やっぱり学校なんて来るんじゃなかった。




来てほしくない時間ほど、来るのが早いような気がする。

いつもあれだけ苦痛に感じる授業時間はあっという間に過ぎ、放課後になり。

いつものように俺は奉仕部の部室にいた。

「…………………」

紙を捲る音だけが響く。

特別棟の奉仕部の部室には、静寂が流れていた。

そこにいるのは、比企谷八幡と由比ヶ浜結衣。

1人はただ本を読んでいた。

もう1人は気まずそうに辺りを窺って、頻りに入口を気にしていた。

「……ヒッキー、ゆきのんさ、今日来ないね」

「そうだな」

「……何かあったのかな?」

「そうかもな」

「……何か知らない?」

「何も」

「…そっか」

会話は続かない。

言葉は壁に当たっては落ちていく。

「……………」

「……………」

由比ヶ浜は、ただ気まずそうに座っている。

俺は、1割も頭に入らない文庫本をただ眺めていた。

恒心と言えんね、この文量だと…。
なんかすっごい詰まった。明日頑張る。

よし投下、推敲するほど出来が悪くなる不思議現象




「…何か、あったんでしょ」

横目でこちらを窺いながら、由比ヶ浜がまた俺に言う。

「だから、何も」

先程と同じようにそう答えるが、由比ヶ浜は

「…じゃあ」

「ん?」

「じゃあさ、あの後、私が帰った後、何があったか教えてよ」

「…聞いてどうするんだよ、そんな事」

「いいから!」

「…あ、ああ」

そう強い剣幕で押してくる由比ヶ浜の気迫に負け、つい返事をしてしまう。

「つっても…いや、本当に、あれからすぐに解散したしな」




「…そう、なんだ」

それを聞いて、あからさまに落胆する。

「ん…ああ、そういや」

一つだけ思い当たる事を見つけて、言おうかどうか迷う。

「やっぱり何かあったの!?」

そんな俺の逡巡を見抜いたのか、すかさずといった具合に声を掛けてくる由比ヶ浜。

「…あ、ああ……その、実は――」

その勢いに負け、ついプレゼントの件を話してしまった。

「………なに、それ…」

俺の話を聞き終わった由比ヶ浜は、何か嫌なものでも見るような表情で俺を見上げる。



そして、いきなり叫んだ。

「……信じらんないっ!」

「おい、どうしたんだよ」

「信じらんないって言ってんの!」

俺を睨み付けながら、叩きつけるように言葉を放つ。

「…何が」

「全部だよっ!そんなことが出来るヒッキーの薄情さも、それを私の前で平気で言える無神経さも!全部信じらんない!」

「……由比ヶ――」

「なんでヒッキーはそんな事できるの!?」

「なんで、って…アイツに貸しを作るのが嫌で」

「そういう事じゃないじゃん!」




「ヒッキーは、いつもそうやって…」

…面倒くさい事になりそうだ、と心の中で呟き、ついでに舌打ちなんかも加えて、この場をやり過ごす方法を考える。

弁明しても聞いてもらえないだろうし、誤解を解くのも難しそうだ。

「…わかった、俺が悪かったよ」

「今度雪ノ下には俺からしっかり謝る。だからもう今日はそれでいいだろ」

「そんなに気になるなら、お前が雪ノ下の家にでもお見舞いに行ってやれ」

こう言えば、多分由比ヶ浜なら怒って出ていくはず。

だが、その俺の予想は外れて。

「…………なんで」

「…なんで、ヒッキーはそうやって、全部わかってるのに何もわからないふりをするの?」

由比ヶ浜は、悲しそうに、そう言っただけだった。




「…なんで、ゆきのんのプレゼント、受け取ってあげなかったの?」

沈黙する俺に、畳みかけるように続ける。

「…そりゃ、俺は、そうやってアイツに貸しを作るのが嫌で…」

「…またそれ。嘘だよ、そんなの」

「……嘘じゃねえ」

「…嘘だよ」

俺の目を正面から見て、言葉を投げかけてくる。

そんな由比ヶ浜に、なぜか後ろめたさのようなものを感じた。

「…由比ヶ浜、違う」

最後まで言い終わる前に、言い返される。

「違わないよ、ヒッキーが考えてることくらい、わかるから」




「………なんだよ、そりゃ…」

わかるわけねーだろ、と反論する俺の言葉を聞いて、由比ヶ浜が俯く。

そして、両手を握り、力を籠めて…絞り出すように呟いた。

「わかる、よ……」

そう言って、今度は大きく息を吸い込んで。

「わかる…わかるに決まってるよ!そんなことくらい!」

「…だって、私は―」

「私はずっと、ヒッキーを見てたから」

俺の目を見て、俺に言い聞かせるようにそう言った。




「ゆ、由比ヶ浜…?」

意味を理解できず、ただ目を白黒させる俺に向けて、由比ヶ浜は続ける。

「…ヒッキー…あたしさ、文化祭の時、言ったよね」

「…自分から、……ってさ」

「…だから………だから…あたしは…」

もう一度大きく息を吸い込み、何かを伝えようとする。

けれどその時、ガタッ、と大きな音を立てて奉仕部の扉が開き。

…そこには、雪ノ下が珍しく驚愕の感情を貼り付けて立っていた。




「………あ……その」

いつもは饒舌な雪ノ下は、言葉を詰まらせながら。

「ご、ごめんなさい、覗くつもりは…その、無かったの」

辛うじて、という様子でただそれだけ言って。

「お、おい、雪ノ下――」

「――っ!」

俺が声を掛けた瞬間、雪ノ下は踵を返して部室から出ていった。


                       続く

短くてすまん…すまん…
多分次かその次で流石に終わり。

ながらくすいません、ちょっと今立て込んでまして書けていません。
絶対更新しますので。

やっと一段落したので。今週中には書きます。
大学の試験でどうしても手が離せませんでした。

すいません、PC逝ってしまいました
青画面の後再起動後メニュー画面のアプリ表示全部消えたり色々あばばばばしました
素直に修理に出したほうがいいんでしょうかねー…
win8よーわからん…とりあえず実家にあるデスクトップを使って投稿します、短いですけどね…>>1 無能

eモバ連投規制ってマジですかい
すいません、連投出来ないので携帯から間に一つレス挟みます


雪ノ下が出ていった後の部室には、沈黙だけが残された。

追いかけて、説明しないと。

そんな考えが俺の頭を回る。

でも、どうやって?なんて説明する?

…わからない。これほどまでに自分のコミュ力の低さを呪ったことは………結構あった。

…そうだ。今まではこうやってあらぬ誤解を受けたとしても、面倒くさいと流してきた。

それが、今まで俺にとって普通だった。

けど、今は雪ノ下の誤解を、何としても解きたかった。

何故、なんだろう。

連投対策




「……ヒッキー!」

「おうっ!?」

そんな思考を遮る、甲高い声。

「…やーっと気付いた…」

「ゆ、由比ヶ浜…いたのか」

「いるに決まってんじゃん!」

「…だよな」

正直本気で存在を忘れかけてた、とは言わないでおく。

連投対策




「…………はぁ」

思い切り溜息をついて、俺から視線を外す由比ヶ浜。

「……で、ヒッキー…どうするの?ゆきのんのこと」

「…いや、どうするって…そりゃ、誤解を解くしかないだろ」

「………誤解を、解く…」

俺としては至極まっとうな発言をしたつもりだったが、なぜか由比ヶ浜は俺の発言に対して、少し考えるような仕草を取る。

「…?いや、そりゃ解かなきゃダメだろ。…そうだ、由比ヶ浜、今からお前が追いかけて――」

「ヒッキー、さ」

外した視線をもう一度投げかけて、由比ヶ浜は俺へ向けて言う。

「なんだよ…」

「……普段、こんな時にそこまで焦らないよね」

連投対策



「…どういうことだよ」

「そのままの意味だよ、…いつもならきっと、ヒッキーは…」

明日でいいよ、めんどくさい、とか言いそうだもん。そう小さな声で続けてから。

その言葉とともに俺を見つめる由比ヶ浜は、まるで俺の思考の全てを見透かしているような目をしていた。

俺は何も言えず、目を逸らす。

そんな俺を見て、由比ヶ浜は、息を大きく吸い込んで言った。

「…ねぇ……ヒッキー」

まるで、なんでもないことのように。

「このまま、誤解、解かなくていいんじゃない?」

「…由比ヶ浜、何言って」

「いくらヒッキーでも…いや、ヒッキーだから、私がさっき言いたかったことの続き、わかるでしょ?」

呟きながら、一歩、一歩と、俺との距離を詰めてくる。

短くてごめんなさい、ここまでです。
PC逝くと精神的なダメージヤバイです。
続きはすぐ書きます。



「…ならさ、ヒッキーにもわかりやすいように言ってあげるね」

真っ直ぐ俺を見つめて、由比ヶ浜は言う。

「私たち、本当に付き合っちゃおうよ」

「……ね?そうすればいいよ」

なんでも無い事のように、そんなことを言う由比ヶ浜から、俺は目を逸らせなかった。

「…意味がわからん、こんな時に冗談言ってんじゃねーよ」

わかってるくせに。そう、小さく由比ヶ浜は呟く。

「私、本当はさ」

「わかるんだ、ヒッキーがずっと……誰を見てたか」

「…でもほら、私馬鹿だから、諦め切れなくて」




「…ヒッキーは……」

「由比ヶ浜、それは……違う、お前は、勘違いしてる」

なぜか、その先の言葉を聞きたくなくて。咄嗟に口を挟んだ。

自分でもなんとなくわかってるその感情は、指摘されるともう止まらなくなりそうだったから。

「…まだ、認めないんだ」

「……認めるも、何も」

そんな俺の思いが通じたのか、由比ヶ浜は言葉を止め、その代わり、また俺の方へと近づいてくる。

「じゃあ、さ」

「…ヒッキーは私でも、いいの?」




「…それ、どういう意味―っ!?」

言い終わる前に、手を握られて。

「……好きだよ、ヒッキー」

呆けた俺に、由比ヶ浜が迫って来て。

俺はただ突っ立ってることしかできなくて。

視界が、由比ヶ浜の顔だけになる。

「…………っ!」

そのまま触れようとした、その瞬間に。

『……………』

雪ノ下の寂しそうな表情が、なぜか浮かんで。

俺は、とっさに由比ヶ浜を振り払った。




「……ほら、やっぱり」

「なんで避けたのか、ヒッキーにはわかってるんでしょ?」

由比ヶ浜の表情に、影が差す。

「い、いや…これは……」

「…いーよ、知ってたもん」

言ったじゃん、わかってたって。さ。

寂しそうに笑って、由比ヶ浜は続ける。

「ヒッキーはずっと、ゆきのんを見てたんだもんね」

「……………それは」

否定しようとしたけれど、口が動かない。

…そうか、やっぱり、俺は――




「……ほら、行きなよ!」

と、考え事をする俺に、叫ぶようにそう言って、ドアの方へ押していく由比ヶ浜。

「っ…、お、おい!」

「さっさとゆきのんの所いって、そのままヒッキーなんか振られちゃえ!」

「のわっ!」

想像以上に強い力で、部室の外へ押し出される。

「…ばーか!ヒッキーのばーか!」

「ぜったい!ちゃんとゆきのんと話してこなくちゃ怒るからね!」

そしてバシン、と強く扉を閉められた。

「………なんつー女だ」

「……………………ありがとな」

俺は、小さくそう言って、駆け出した。

雪ノ下を、探しに。




                  ×  ×  ×


「………ほんとに、ばか」

「ヒッキーなんて、振られちゃえ」

「……ぅ……」

「………ばーか……」

夕日の差し込む奉仕部の部室で。

一人、泣いている少女がいた。

ここまでです。PCの修理期間と青画面で書き溜め吹っ飛んでやる気がうんたら
すいませんでした。

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7:男「暇だから安価やるか」
8:ちひろ「新約!」モバP「うちの超能力アイドル!」
9:【聖杯戦争】都市伝説達は願いを懸けて戦うようです 2【ない夫達化物】
10:めぐり「比企谷く?ん!生徒会室にゴム忘れてたよ?」
11:【安価】長門「ながもん荘だがっ……@」瑞鳳「よしよし」【艦これ】
12:【安価】苗木「今日から2年生か・・・」【ダンロン1 2】
13:男「コンマでヒロインの年齢が決まる?」3歳目
14:苗木「…え? この人が校医?!」霧切「ドクターKよ」
15:【安価】幻想郷彷徨記【コンマ】
16:春香「麗しのプロデューサー」
17:安価でポケットモンスター
18:DQ5「遺言状で勇者探せと言われた」第十四巻
19:魔王「さあ…殺れ!」勇者「命を大切にしない奴なんか大嫌いだっ!」
20:[まど☆マギ]まどか「えっと....相談があるんだけど....」
21:【艦これ】提督「ちっさくなってる!?」
22:【艦これ】提督「……え?俺が提督?」【安価】
23:【咲】京太郎「阿知賀で過ごす九年間」穏乃「22年!ゾロ目って奴?」【安価】
24:棟方愛海「こんなに苦しいなら…胸などいらんっっ!!」
25:モバP「愛梨は甘い匂いがするな」
26:【安価】京太郎「プロになったはいいけれど……」 第21位【アラフォーマース】
27:P「そこに春香のリボンがある。さぁ、どうする?」
28:モモタロス「時を超え…」杏子「アタシら…参上!!」
29:千早「キサラギ放送局」
30:とある窒素と禁書目録
31:提督「へえ・・・女豹の艦娘達かぁ・・・。」(安価 R18あり)
32:アイチ「ヴァンガードファイトしようよ!」
33:一条楽「はぁ?……」
34:ソードアート・オンライン・クロス
35:女「せっかくだしコワイ話してください」
36:【俺ガイル】比企谷八幡 「やはり俺は手作りバレンタインに弱い」
37:【安価】
38:八幡「殺してやる !殺してやるぜ?????雪ノ下?
39:【安価】男「ヤンデレ彼女がいるのにモテまくる呪いかけられた」神「期間は100日」
40:モバP「サイレント」
41:律子「SIGNAL」
42:垣根「俺はあの男を安価でぶっ潰す」フィアンマ「やれるものならやってみろ」
43:響「なにしてるんだ?」P「ん?」
44:【破】ゲンドウ「久しぶりだな、シンジ」【3スレ目】
45:【安価】進行選択ゲーム×仮面ライダー鎧武【オリジナル世界観】
46:【安価】ドキッ☆まるごとミサカのミサーカス!図鑑もあるよ!【孤独のグルメ】
47:葉隠「ヤンデレ学園生活・改だって?!」苗木「2週目その 不二咲「2だねヒロくん!」?
48:映司「パンツ!?」古子「ズボンです!」
49:猿夢「次は?ひき肉?」光彦「!」
50:【安価と】レッツゴー仮面ライダー!【コンマで】テストプレイ SECONDGA ME
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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年11月05日 (水) 19:23:12   ID: AkDMCMe7

ここからだろ!続きはよ(´・ω・`)

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