昔話風・短編ですよ
昔々ある所にツラオクというお面職人がいました。
彼が作るお面は人々から「ツラオクの作るお面には魂が宿っている」と評されるほどに精巧でした。
そして彼もまたいつも何かしらのお面を付けていました。
そんな彼は人当たりが良く村の人々、それも子供達は彼が作るお面を心待ちにしていました。
ある日、とある子供は何故いつもお面を付けているのかと問いました。
ツラオクは「お面を付けているとお面の心が分かるんだよ。それはお面を作るときにとても大切なものなんだ」
と答えました。
またある日、とある人は何故お面を作るのかと問いました。
ツラオクは「お面を作ることで自分でもお面に魂を込める事が出来るからさ。そうして出来たお面には心が宿るんだよ」
と答えました。
またまたある日、とある老人は何故そんなにも素晴らしいお面が作れるのか問いました。
ツラオクは「素晴らしいお面を作ろうとはしていない。お面の声に耳を傾ければ自ずと形が出来てくるものだよ」
と答えました。
そう言いながら作られたお面は狐でも天狗でもどこか嬉しそうに見えました。
そして素晴らしい腕前のお面職人がいるという噂を聞きつけたお殿様は何かお面を作れとツラオクに命じました。
どうやらお殿様はそれを自分のお屋敷に飾るつもりのようです。
しかしツラオクは「お面は被ってこそのものです。飾るものなどではありません」とこれを断りました。
それを聞いたお殿様は大笑いし、今度は自分が被るためにお面を作るように命じました。
これにはツラオクも快諾し火男のお面を献上しました。
これを被った殿様は酒の席で滑稽な舞を披露し、今までよりも親しみある君主となりました。
そして時は流れ、桜が三回ほど散った頃隣の国の大国が攻めてきました。
攻め込まれた小さな国は戦いましたがどうにも劣勢です。
戦火はツラオクが住む村にまで迫ってきました
心優しいお殿様は悩みました。
しかし終には民衆も戦いに駆り出されることになりました。
ツラオクは戦うことを頑なに拒みました。平穏を壊したくなかったからです。
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