雪ノ下「もしも由比ヶ浜さんが奉仕部に入部しなかったら……」 (92)

奉仕部

ガチャ

八幡「うっす」

雪ノ下「こんにちは、引きニート君。相変わらず目が腐ってるわね」

八幡「お前は相変わらずの罵倒だな……ほら、この前お前に借りた本返す」

雪ノ下「あら?もう読んだのね」

八幡「お前が他人に勧めるだけあるな。良かったよ」

雪ノ下「詳しい感想は紅茶でも飲みながらしましょうか。待ってて、いま淹れるわ」

八幡「ああ、悪いな」

雪ノ下(比企谷君が奉仕部に入部して半年、か……)

雪ノ下(彼と過ごす時間が、こんなにも自分を満たしてくれるなんて、最初は全く思いもしなかったわね)

雪ノ下(私と同じように独りで、群れるのを拒み、嘘を嫌う。似ているようで……でも全く違う。それが比企谷君)

雪ノ下(彼が入部して以来、いくつもの依頼が奉仕部に寄せられた。その中には私では解決出来なかった依頼もあった)

雪ノ下(でも彼は、比企谷君は私には出来ない方法で、それらの依頼を解決していった)

雪ノ下(決して誉められた方法ではなないものも、中にはあった……でも、だからこそ、彼は解決できた)

雪ノ下(私に似ているのに、私にはないものを持ってて……それでいて、私を理解してくれる)

雪ノ下「……比企谷君」

八幡「あっ? どうかしたか?」

雪ノ下「いえ……ただ呼んでみただけよ」

八幡「なんだそりゃ……」

雪ノ下「それより……紅茶淹れたわよ。はい、どうぞ」

八幡「おっ、サンキュー」

雪ノ下(最初は互いに離れていた定位置も、今では隣り合わせね)

八幡「ふぅ、相変わらずお前の淹れた紅茶は旨いな」

雪ノ下「そう……ふふっ」

――――
――

雪ノ下「今日はそろそろ終わりにしましょうか」

八幡「今日も依頼こなかったな。まあ、その方がいいがな」

雪ノ下(ええ、だって比企谷君とずっと二人きりで居れるもの)

八幡「ふぁあ、ねみぃ……」

雪ノ下「あら? 寝不足かしら?」

八幡「お前に借りた本ずっと読んでたからなあ……帰ったら、寝るわ」ウトウト

雪ノ下「……ねぇ、比企谷君」

八幡「なんだ?」

雪ノ下「その……そんなに眠いのなら、少し寝ていったらどうかしら」

八幡「寝ていくって……ここでか?」

雪ノ下「他にどこがあるのかしら」

八幡「寝る場所がねえだろ……硬い机に伏して寝るなら帰ってふかふかのベッドで寝るわ」

雪ノ下「……硬くなければ、いいのかしら?」

八幡「言っておくが鞄を枕に、ってのはなしだぞ? あれ結構かてえんだよなあ……」

雪ノ下「あ、安心しなさい……硬くはないわ」

八幡「鞄じゃないなら何を……」

雪ノ下「……」ポンポン

八幡「えっ……」

雪ノ下「膝枕じゃ……だめ、かしら」

いろはすのは柔らかかったぞ

八幡「いや、だが……」

雪ノ下「嫌、なのかしら」

八幡「ち、ちげえよ……別に嫌では……」

雪ノ下「なら、問題ないわ」

八幡「……いい、のか?」

雪ノ下「何度も言わせないで。ほら、早く」ポンポン

八幡「あ、ああ……なら、少し、膝借りるぞ」

雪ノ下「んっ……少し、チクチクするわ」

八幡「わ、悪い……」

雪ノ下「気にしないで、あなたは眠りなさい」ナデナデ

八幡「お、おい! なんのつもりだ?」

雪ノ下「こうすれば、眠りやすいと思ったのだけど……」

八幡「ガキじゃねえっつうの……ったく」ウトウト

雪ノ下(そう言いながらも、今にも寝そうじゃない。素直じゃないわね)ナデナデ

八幡「……Zzz」

雪ノ下「おやすみなさい、比企谷君」ナデナデ

雪ノ下「……比企谷君」ナデナデ

八幡「……Zzz」

雪ノ下(普段は腐っている目のせいで気付きにくいけど、改めて見るとやはり整った顔立ちをしてるわね)

雪ノ下(もし……目が腐っていなければ、見た目だけであなたに好意を寄せる人も、いたのかもしれない)

雪ノ下「……良かったわ、比企谷君の目が腐っていて」

雪ノ下(比企谷君を本当に理解していない人なんかに、渡したくないもの)

雪ノ下「……あなたの側にいるのは、あなたを理解している人だけでいい」ナデナデ

雪ノ下「ねえ、比企谷君。前にあなたが私に友達になろうと言った時、何故私がそれを断ったか、分かるかしら?」

八幡「……Zzz」

雪ノ下「私もあなたも、群れるのを拒み、嘘を嫌う……だから、友達だなんて、そんな曖昧な関係にはなれない」

雪ノ下「……いえ、違う」

雪ノ下「私は……あなたとそんな曖昧な関係になりたくない」

八幡「……」

雪ノ下「私にとって、あなたは特別なの……初めてなのよ、私をこんなにも理解してくれる人は」

雪ノ下「だから、友達なんて関係じゃ不安なの。足りないの……もっと、深く、絶対で、壊れない関係を……」

八幡「……」

雪ノ下「ねえ、比企谷君。あなたは私をどう思っているの?」

雪ノ下「私とあなたは似ているけど、違う」

雪ノ下「でも、独りで、群れるのを拒む私たちが、こうして今日まで一緒に過ごしてこれたのは……共通する想いがあるからだと、私は思う」

雪ノ下「もし、もしも、私のあなたに対する想いが共通するものなら……私は」

八幡「……共通する想い、だなんてものこそ、お前の嫌う曖昧な関係と同じだろ」

雪ノ下「 ひ、比企谷君!? あ、あなた、起きて……」

八幡「頭撫でながら独り言、言われ続けて寝れる訳ないだろ」

雪ノ下「ご、ごめんなさい……睡眠を邪魔してしまったわね」

八幡「別に気にしてねえよ。寝心地は良かったし……」

雪ノ下「そ、そう……」

八幡「……」

雪ノ下「……」

雪ノ下「その、比企谷君……」

八幡「なんだ」

雪ノ下「さっきの言葉は、どういう、意味かしら」

八幡「どうもこうもないだろ。そのままの意味だ。互いに認識していない想いなんて曖昧だろ」

雪ノ下「……っ!」

雪ノ下(そんな、比企谷君……あなたは……)

八幡「その、だからなんだ……曖昧だから、言葉にして、はっきりさした方がいいだろ」

雪ノ下「!?」

八幡「俺は……お前が、その、す、好き、だ」

雪ノ下「……っ」

八幡「」

途中で書き込んでしまった

八幡「……雪ノ下」

雪ノ下「……な、なにかしら」ビク

八幡「俺は……その、お前が、す、好き、だ」

雪ノ下「……っ」

八幡「こ、これで、その、はっきりしたな」

雪ノ下「……まだよ」

八幡「なに?」

雪ノ下「まだ、私があなたの想いを言葉にしていない。これでは曖昧なままよ」

八幡「も、もういいだろ。こっちは言ったばかりで恥ずかしいんだよ、いま言われたら……」

雪ノ下「そ、そんなの、私だって同じよ。だから、あなたは黙って聞きなさい!」

八幡「ぐっ……」

雪ノ下「比企谷君、私も、あなたが――――」

――――
――

八幡「な、なあ、雪ノ下」

雪ノ下「なにかしら、比企谷君」

八幡「お前なんで俺の膝の上に座ってんの?」

雪ノ下「いいじゃない。この前は私があなたに膝を貸したのだから」

八幡「そういう問題じゃねえだろ……」

雪ノ下「でも嫌じゃないでしょ?」

八幡「……うっせ」

雪ノ下「素直じゃないのね」

八幡「お前が積極的すぎんだよ……接し方変わりすぎだろ」

雪ノ下「はっきりとした方がいいと言ったのはあなたでしょ?」

八幡「まあ、そう、だが……」

雪ノ下「ねえ、比企谷君」

八幡「んだよ」

雪ノ下「好きよ」

八幡「だ、だから積極的すぎるだろ!


雪ノ下「あなたは?」

八幡「…………俺も好きだよ」

雪ノ下「ふふっ、なら問題ないじゃない」

八幡「ぐっ……やっぱお前には敵わねえな」

雪ノ下(さらに一歩踏み出した私と彼とのこの関係は、この奉仕部があったからだと思う)

雪ノ下(私と彼が二人きりで過ごし、互いに認識し、理解できたからこそ、築けた唯一無二の関係)

雪ノ下(そこに第三者はいない。私と彼だけ。それだけで十分な関係、それだけで成り立つ関係)

雪ノ下(他者から見れば、特異な関係かも知れない。二人だけしか許容できず、他の介入を許さないこの関係は間違っているかも知れない。でも……これが私と彼の青春なのだから仕方ないじゃない)

雪ノ下(だから、私と彼の青春は間違っていない)

終わりです
支援保守ありがとうございました

雪ノ下「はっきり…いい……ぐへへ」zzZZ

八幡「そっとしておこう…」
由比ヶ浜「ゆきのん…」

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom