勇者「俺は、勇者じゃない……」 (27)


「くそっ、此処までか……」


俺は勇者。

自分から名乗った覚えは無いけど、旅を続ける内、勇者と呼ばれるようになった。

本名はありふれたものだし、それ程目立つ方じゃない。

初めて行った町で、俺を知っている人がいた時は驚いた。こっちは知らないのに、向こうは俺を知っているのだ。

俺には、それがとても怖ろしい事のように感じた。

世界を平和にしたい、人々を助けたい。

そんな単純な理由で旅に出た。

別に有名になりたかったわけでも無いのに、時には妬まれたりもした。

でも、俺は旅を続けた。


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少しでも魔物を減らし、世界中に笑顔を取り戻したい……その一心で。


「それなのに、何でこんな……」


俺を追いつめているのは、魔物じゃない。

魔物など比べ物にならない程、怖ろしい生物だ。

奴等は執拗に俺を狙い、気付けば其処にいる。

幾ら周囲に気を張ろうと、奴等は人混みに紛れ、此方を見ているのだ。

たがら、最近はずっと野宿していたのだが、無駄だった。

纏わりつく視線から逃れる為、変装もした。なのに、なのに、なのに!!

奴等は、必ず俺を見つけ出し、追ってくる。

奴等には剣も魔法も役に立たない。為す術は、無い。

ヤンデレか


「何故だ!! 何故、俺を付け狙う!?」


以前も同じ質問をしたが、返ってくる言葉は決まってる。

見てくれが違っても、奴等は必ず、それを口にするんだ。


「勇者様に、私の想いを伝えたくて……あのっ!!」

「ひっ!! いきなり大きい声出すな!! バカ!! アホ!!」


こえぇ、超こえぇ、マジでこえぇ。

何がこえぇって、まず目がこえぇんだよ。

何か、光がねえっつーか……上手く言えねーけど、とにかく、こえぇんだよ!!

これってストーカーって奴だろ? こんなのが沢山沢山居るんだぜ? 沢山沢山沢山居るんだぜ?


だから怖くてさ、その時滞在してた街の兵士に話したんだよ……


お願いします、助けてくださいって。

土下座して、地面に額擦り付けて、涙と鼻水を流しながら、そりゃ必死にお願いしたさ。

そしたらさぁ、


『いやぁ、羨ましい限りですな。流石は勇者!! はっはっは!!』


だってさ……


『はっはっは!!』


だってさ!!

ふざけんな!! 耳腐ってんの!? その勇者様が鼻汁垂らしてお願いしてんだよ!?

あなたは兵士でしょ!! 助けてよ!! って言ったらさ……


『あの、お連れ様が待っていますよ?』




連れなんていねーよ……



でも、コイツはあの時の奴じゃない。

確かコイツは……コイツは……

えーっと、ああっ!! そうだそうだ!!

親父さんが病気で、それを治す薬草は魔物が多数生息する山中にあると言う。

母親は早くに亡くなったらしく、二人暮らし。かなり切迫した状況のようだった。

その話しを聞いた俺は、その山へ行き、薬草を取ってきた。

親父さんは無事快方に向かい、コイツも笑顔を取り戻したんだ。


それでいいじゃん。

それでいいじゃん?

それでいいじゃん!!

そ・れ・で・い・い・だ・ろ!?

それで、いいじゃねーか……


「あの、勇者様……聞いてますか?」

「ひっ!! ち、ちょっと待って!! 実は色々準備中」


「何で? 私、頑張って勇者様を追い掛けて来たのに……」



来る!! 奴等が最も得意とする……


「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で………」



「はぁはぁ……ねえ? な・ん・で?」


ほら出た。

これさぁ、滅茶苦茶こえぇよ? 一回やられてみ?

ちびるよ? または縮むよ? 股は縮むよ? 


ごめん、調子乗った。



「大変だったね、そうだよねー、頑張ったよねー。息、大丈夫?」

「はい、大丈夫です。やっぱり、勇者様は優しいですね」


よく、息続くね。海女さんにでもなったら?

つーかさぁ……

ねえ、何でこうなったの? ねえ、君に何があったの?

明るい笑顔は、何処に行ったの?

その吸い込まれそうな仄暗い瞳の底には何がいるの? 貞子?


「……そこにいるのは誰? 邪魔する気?」

「黙れ、悪辣なストーカーめ!! 僕の勇者様に、手を出すな!!」



誰の物でもなーい、誰の物にもならなーい、君の物では決してなーい。


海女(仮)と僕(剣士)は、互いに武器を取った。

海女は鉈を、剣士は剣を手に睨み合っている。

彼女達が発する気で、森はざわめき、木々は震えに震えた。


「ストーカー? ストーカーは、貴方でしょ? 勇者様も怖がってるもん。なら、排除しないと……」

「やれやれ、君には、言葉が通じないようだね」


そして、遂にぶつかり合う。

足場が悪いにも拘わらず、二人はバランスを崩す事は無い、鋭く振るわれる鉈と剣が火花を散らす。

海女(仮)が振るう鉈の威力は凄まじいが、剣士はそれを直接受けず、華麗に流す。


力と技のぶつかり合い。

両者の力量は拮抗している。

何故、剣士相手に素人である海女が着いて行けるのか?

理由は単純。

海女は、愛しの勇者を追う道中、数多の魔物を葬ってきたのだ。

それも、鉈一つで、だ。

勇者に対する変わらぬ想い、揺るがぬ愛が、彼女を勇敢な戦士に変えた。


「貴方は、勇者様に相応しく無い」

「ふん。僕を、なめるな!!」

「きゃっ!!」


受けに徹していた剣士だが、此処へ来て攻めに転じた。

今までのやり取りで太刀筋を見極めた剣士は、海女に斬り掛かる。

彼女は負けられない。


彼女もまた、勇者を愛しているのだから……


「めろ……めてくれ」


俺は、こんな事を望んじゃいない。

みんなが笑顔で暮らせるように、その為に頑張って来た。

それなのに何で、そんな顔で斬り合う? 海女(仮)だって、あの時は笑顔だったのに……

何が、彼女達を変えたんだ?

つーか、剣士の方、全く知らないんだけど……


「くそっ、なにが、なにが勇者だ!!」


勇者ってのは、俺がやってきた事の結果なんだろう。

俺の頑張りが評価されて、親しみや願いを込めて、皆は、俺を勇者と呼ぶのだろう。

泣いてる人は見たくない。笑顔でいて欲しいんだ。

そう!! 俺には、やるべき事があるんだ!!




「逃げよう」



「ふーっ、今日は疲れたな……」


俺は逃げた。

現在は、宿屋のベッドでくつろいでる。

だって、だって、あいつ等怖いんだもん。

だから逃げた、エストマして、トラエストして、ヴァニシュして、何度も何度もルーラした。


「風呂に行くか」


流石に追っては来れないだろう。此処は、辺境の村だ。

少なくとも、今日中に追い付かれる事は無い。

しかし、いずれ奴等は現れる。

何故この村を選んだかと言うと、誰も救ってないし、女性に好かれる要素がないから。

それに割合、お年寄り方が多いし、若者は少ない。

女性より男性の方が多いくらいだ。なら、安心出来る。

久々に、ゆっくり眠れそうだ。

>>3 分かってても言わないで。予想当てられた人の気持ち考えて。

結構、キツいんだよ……

今日はこの辺で!!

ちょっと書いたから、今日はそれで区切る。


「くそっ、此処までか……」


俺は勇者。

自分から名乗った覚えは無いけど、旅を続ける内、勇者と呼ばれるようになった。

本名はありふれたものだし、容姿だって、それ程目立つ方じゃない。

初めて行った町で、俺を知っている人がいた時は驚いた。こっちは知らな いのに、向こうは俺を知っているのだ。

俺には、それがとても怖ろしい事のように感じた。

世界を平和にしたい、人々を助けたい。

そんな単純な理由で旅に出た。

別に有名になりたかったわけでも無いのに、時には妬まれたりもした。

でも、俺は旅を続けた。


少しでも魔物を減らし、世界中に笑顔を取り戻したい……その一心で。


「それなのに、何でこんな……」


俺を追いつめているのは、魔物じゃない。

魔物など比べ物にならない程、怖ろしい生物だ。

コイツ等は執拗に俺を狙い、気付けば其処にいたんだ。

剣も魔法も役に立たない。為す術は、無い。


「何故だ!! 何故、俺を付け狙う!?」


何度も同じ質問をしたけど、返ってくる言葉は決まってる。

見てくれが違っても、奴等は必ず、それを口にするんだ。


「勇者様に、オレの[ピーーー]を伝えたくて……あのっ!!」

「ひっ!! いきなり大きい声出すな!! バカ!! ホモ!!」


こえぇ、超こえぇ、マジでこえぇ。

何がこえぇって、まず目がこえぇんだよ。

何か、ギラギラっつーか……上手く言えねーけど、とにかく、こえぇんだ よ!!

これってホモっやつだろ?  こんなのが沢山沢山居るんだぜ?


目の前に、沢山沢山沢山居るんだぜ?



だから怖くてさ、風呂から脱出してすぐに、村の兵士に話したんだよ……

お願いします、助けてくださいって。

土下座して、地面に額擦り付けて、涙と鼻水を流しながら、そりゃ必死に お願いしたさ。

そしたらさぁ


『いやぁ、羨ましい限りですな。流石は勇者!! はっはっは!!』


だってさ……


『はっはっは!!』


だってさ!!

ふざけんな!!  耳腐ってんの!? その勇者様が鼻汁垂らしてお願いしてんだよ!?

あなたは兵士でしょ!! 助けてよ!! って言ったらさ……

ん? ちょっと待て、羨ましい? 羨ましいって何だ?


『あの、私のモノは……どうです?』



お前もなのかよ……




勇者は戦う。



「うおぉぉぉぉぉ!!!」



生きる為、人々の笑顔を取り戻しす為、戦い続ける。



「よし、ホモとストーカーは、居ないな……」



後、安住の地を求めて世界をさまよう。


しかしその道中、思わぬ人物が勇者を待ち受けていた……





続く


勢いありきだし、この辺で終わった方が良さそうなんで依頼出す。

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