茄子「七福神と♪」藍子「お賽銭と!」歌鈴「包囲網?」 (146)

モバマス、鷹富士茄子さんと道明寺歌鈴さんの誕生日記念SSです。
ある程度書き溜めが出来たのでゆっくりやっていきます。

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12月29日 午後10:30 道明寺 境内

ホー・・・ホー・・・

歌鈴「はうぅ・・・またご祈祷の練習でかんじゃった・・・」シュン

歌鈴「で、でも、今年は頑張らないと!折角Pさんやユニットメンバーの藍子ちゃんと茄子さんが遊びに来てくれるんだからいいとこ見せたいし・・・」

歌鈴「そ、それに上手くいったらきっとPさんも・・・」ホワホワ

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P(歌鈴、よく頑張ったな。思わずときめいてしまったぜ!)

歌鈴(Pさん・・・歌鈴は、歌鈴は立派なアイドルなれましたか?)

P(もちろんだ、俺の自慢のアイドルだよ!)

茄子(歌鈴ちゃん、すごかったですよっ!

藍子(私も歌鈴ちゃんみたいになれるように頑張りますね!

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歌鈴「・・・え、えへへ♪」ニヘラ

歌鈴「うん、頑張るぞ!私だって成長してるし、きっと本番は大丈夫!」グッ

ガサ

歌鈴「ひゃうっ!?な、何!?」

シーン・・・

歌鈴「あ、あれ?猫だったのかな?」

ガサガサ

歌鈴「ひゃ、ひゃう!?だ、誰かいるよぉ・・・」

ガサガサ

歌鈴「ひぅっ!?」ペタン

ガサッガサガサ

歌鈴「こ、怖くて腰が・・・お、お父さん、Pさん、助けてぇ・・・」

ガサァ

大黒?「・・・」キョロキョロ

歌鈴「ふぇ?・・・大きな袋と、小槌?ひょっとして、大黒様?」

大黒?「!」ジロリ

歌鈴「ひうっ!?こ、こっち見た!?」

大黒?「・・・」トコトコ

歌鈴「こ、来ないで・・・」

大黒?「・・・」トコトコ

歌鈴「い、いやぁぁぁあああぁぁぁっ!!!」

大黒?「・・・!?」

歌鈴「」パタ

大黒?「・・・」ジー

歌鈴「」キュウウ

父「歌鈴、今の悲鳴はどうしたんだ!?」

大黒?「・・・!!」クルッ

タタタ

父「こら歌鈴、こんな夜更けに大声を出してどうしたん・・・歌鈴?」

歌鈴「」キュウウ

父「歌鈴!しっかりしなさい、歌鈴!!!」

ホー・・・ホー・・・

12月30日 午前09:00 道明寺 山門

トコトコ

茄子「ほらプロデューサー、早く来て下さいっ♪」

藍子「歌鈴ちゃん、きっと首を長くして待ってますよ?」

P「はぁ、はぁ、茄子、藍子、待ってくれ・・・」ヘロヘロ

茄子「もう、昨日あれだけ注意したのに程々で止めないからですよっ!」

藍子「き、昨日はそんなに飲んだんですか?」

茄子「そうなんですよっ!明日から正月三が日まで歌鈴ちゃんのご実家でお世話になるから程々でやめておいて下さいね、って言ったのに"まだいける、まだいける"って!」

P「やばいとは思ったが衝動を抑えられなかった・・・今は反省している・・・」

藍子「Pさん、大丈夫ですか?」ポンポン

P「ああ。大丈夫だ、問題ない。」ゲッソリ

藍子「そんな真っ青な顔で言っても説得力がありません!少し休みましょう?」

P「・・・そうする。」ペタン

茄子「しょうがない人ですね。はい、お水です。」

P「・・・すまない、恩に着るよ二人共。」

P「・・・」グビグビ

藍子「でも、こうして年末年始にお休みがとれたなんて夢みたいです!おかげで歌鈴ちゃんのご実家で新年を迎える事が出来ますし。」

茄子「はいっ!そこはプロデューサーに感謝、ですね♪」

P「ふぅ、俺自身は大した事はしていない。礼ならスケジュール調整を手伝ってくれた社長やちひろさんに言ってあげてくれ。」

藍子「そんな事ありません!」

茄子「プロデューサーがとっても頑張ってくれたおかげですよっ!」

P「ありがとう、そう言って貰えるとプロデューサー冥利に尽きる。」

茄子「でも、なんで歌鈴ちゃんは先に帰省したんでしょう?プロデューサーは何か知ってますか?」

P「元々、彼女をプロデュースする時にご両親とした約束があるんだ。それを果たす為に先に出発してもらったんだよ。」

茄子「約束?」

P「ああ、歌鈴の実家は神社だろう?だから、"年に一度巫女としての修行をする時間を確保する事"と"年末年始は家業を手伝う事"という約束をしているんだ。」

藍子「じゃあ、歌鈴ちゃんは今何をしているのでしょうか?」

P「多分、今は修行の真っ最中だと思う。明日からは実家の手伝いがあると言っていたな。」

茄子「大変ですね、折角のお正月なのにゆっくり出来ないなんて・・・」

藍子「それに元日は歌鈴ちゃんのお誕生日でもあるはずですよね、何とかできないでしょうか・・・?」

P「忙しいのは年末の夜中から年始の明け方までだから、元日の昼以降はゆっくりできるだろう。」

藍子「本当ですか!?」

P「ああ、ちゃんとご両親にも許可を取ってある。誕生日は皆でお祝いしよう!」

茄子「ぷろでゅーさー、私の誕生日はどうなっているんですか~?」プクー

P「茄子の誕生日もきちんとお祝いするよ。まぁ、同じ日だから一緒にお祝いって形になる事だけは許してほしいけど・・・」

茄子「全然OKですっ!!わーい♪」ピョンピョン

藍子「ふふっ♪Pさん、その後の二日間は皆でお出かけしてもいいですか?」

P「ああ、もちろんだ。行ってくれれば好きな場所まで送っていくよ。三人でゆっくりしてくるといい。」

茄子「プロデューサーも、ですよ!」

P「俺もか?」

藍子「Pさんも仲間じゃないですか。」

P「・・・ありがとう、二人共。そういう事なら意地でも休みを確保しないとな!」

茄子「はい!皆で歌鈴ちゃんのお手伝いして早く終わらせましょう♪」

藍子「そうですね。その時はPさんも協力して下さいね?」

P「もちろんだ!さて、大分楽になったしそろそろ行こうか。」

藍子「わかりました!」

茄子「はいっ!でも、出発する前にこれ飲んで下さいねっ!」

P「ん?これは・・・漢方薬?」

茄子「二日酔いによく効きますよっ♪」

P「なんだ、こういうのがあるなら先に出しておいてほしかっ・・・苦ッ!!?」

茄子「そうやって、薬に頼ってはいけませんよ?あくまで体調を崩さない為の最終手段なんですからねっ!」

P「はい・・・」

茄子「ちゃんと、わかりました?」

P「・・・身に沁みる程、よくわかりました。」

茄子「はい、わかればよろしいっ♪じゃあ行きますよっ!」

P「ああ、行こうか。」

藍子「あ、Pさん。その前にこれを舐めていて下さい。」

P「ん?これは、飴か?」

藍子「口直しには甘い物がいいんです。それに甘い物も二日酔いに効果があるそうですよ♪」

P「助かる。おぉ、甘くて美味い!」

茄子「あー!藍子ちゃん、だめですよっ!この人は甘やかすと反省しないんですから!!」

P「君は俺の母親かッ!」

藍子「ふふふっ♪茄子さんとPさんは仲がいいんですね!」

茄子「え!?あ、えっと・・・///」

P「・・・何故そこで照れるんだ?」

藍子「・・・茄子さん。」

茄子「藍子ちゃんわかります?これさえなければ完璧なんですけどね。」

藍子「そうですね、私達で何とかしないと!」

茄子「はいっ!頑張りましょうねっ!」

P「何だよ、二人して・・・俺が何かしたのか?」

藍子「Pさんの鈍感!」

茄子「プロデューサーの唐変木っ!」

P「い、いきなり何を言い出すんだ!?って、もうこんな時間じゃないか!歌鈴も待っているだろうし、そろそろ行くぞ!」

茄・藍「「はーい!」」

トコトコ

12月30日 午前09:30 道明寺 境内

トコトコ

茄子「到着ですっ!」

藍子「・・・Pさん、大丈夫ですか?」

P「ああ、さっきよりはだいぶ楽だよ。だが、ちょっと疲れた。」

茄子「でもいくら二日酔いだったとは言っても、この程度の運動で疲れるなんて、日頃の運動不足もあるんじゃないですか?」

P「まさか、そんなはず・・・ないとは言い切れないな。ここのところはデスクワークばかりだったし。」

藍子「じゃあ、今度、私達と一緒にレッスンを受けませんか?運動不足の解消にいいと思いますよ!」

P「そうだな、偶にはそれもいいかな?」

藍子「本当ですか!?」

茄子「それじゃあ一緒にマストレさんのレッスンを受けましょうね♪」

P「・・・やっぱり、やめてもいいか?俺、あの人のスペシャルドリンクだけは飲みたくない。」

藍子「駄目です♪」

茄子「言質もとりましたしねっ♪」

P「はぁ・・・仕方ないな。」

茄子「ところでプロデューサー、歌鈴ちゃんがいませんよ?」キョロキョロ

P「ん?それは変だな。以前聞いた話だと、この時間は境内の掃除をしているはずなんだが・・・」

バタバタ

藍子「それに、なんだか慌ただしいですね。」

P「年末だからな色々と準備があるんだろう。」

茄子「ひょっとしたら、歌鈴ちゃんもお手伝いで忙しいのかもしれませんねっ!」

?「もし・・・」

藍子(あれ?・・・凄く綺麗な女の人ですけど、誰でしょう?)

?「もし・・・」

茄子「プロデューサー、呼ばれてますよ?」クイクイ

P「ん?誰だ・・・って!?お母様!?」

茄子「え!?お、お母様って!?」

P「そうか、茄子達は初めて会うのか。こちらの女性は歌鈴のお母様だ。」

藍子「歌鈴ちゃんのお母様!?この綺麗な女の人が!?」

母「初めまして、可愛らしいお嬢様方。それと、大変ご無沙汰しておりますプロデューサー様。」ペコリ

P「此方こそ、大変ご無沙汰してます。」ペコリ

茄子「は、初めまして!鷹富士茄子と申します!」ペコリ

藍子「お、同じく高森藍子です!」ペコリ

母「ふふ、かしこまらないで下さいな。いつも歌鈴と仲良くしてくださってありがとうございます。」

茄子「そ、そんな!」

藍子「友達ですから当然です!」

P「それとプロデューサー様、いつも歌鈴を大切にしてくださってありがとうございます。」

P「いえ、担当プロデューサーとして当然の事をしているだけですよ。」

母「またまたご謙遜を。歌鈴を見ていればプロデューサー様があの子をどれだけ大切にしているかわかりますわ♪」

P「そ、そうですか?」

母「ええ、親として心よりのお礼を申し上げますわ。いつも歌鈴を大切にして下さってありがとうございます。」

P「きょ、恐縮です。」

藍子「あの・・・それで、歌鈴さんは今どちらに?」

母「歌鈴は・・・その、自室に閉じこもっておりまして・・・」

P「・・・お母様、それは一体どういう事でしょうか?」

母「昨夜の事になります。歌鈴がいつものようにご祈祷の練習を終えて自室に戻る途中の事だったのですが・・・」

P「・・・何か事件にでも?」

母「その、不審者と遭遇してしまったようで・・・」

茄子「ええ!?そ、それで歌鈴ちゃんは無事なのですかっ!?」

母「夫がすぐに駆け付けたお蔭か、幸にも外傷はありませんでした。ですが、意識を取り戻してからは自室から出たがらないのです・・・」

P「無理もありません。もしよろしければ歌鈴さんにお会いしてもよろしいでしょうか?気の合う友人に会えば、彼女も気分が晴れると思いますし。」

母「ありがたいお言葉です。どうか歌鈴をお願いいたします。」ペコリ

P「もちろんです。茄子、藍子、すまないが協力して貰えるか?」

茄子「もちろんですっ!」

藍子「行きましょう!」

タタタ

12月30日 午前09:50 道明寺 離れ

P「確かこの部屋だよな?」

茄子「はい!先ほどお手伝いさんにも確認しましたから間違いありませんっ!」

P「よし、それじゃあ・・・」

コンコン

歌鈴「は、はいっ!」

P「歌鈴、俺だ。入ってもいいか?」

歌鈴「Pさん、ですか?えっと、どうぞ・・・?」

ガラ

P「失礼す――「歌鈴ちゃん!変な人に襲われたって聞きましたけど、大丈夫でした!?」おい、茄子!」

藍子「歌鈴ちゃん!怪我は、怪我はしてませんか!?」

P「藍子まで・・・二人共少し落ち着け!いきなり押しかけたら歌鈴もびっくりするだろう!」

歌鈴「か、茄子さん・・・それに、藍子ちゃんも・・・」

茄子「歌鈴ちゃん、もう大丈夫ですよっ!変な人はプロデューサーがやっつけてくれますから!」

歌鈴「ほ、本当・・・ですか・・・?」グス

藍子「もちろんです!だから、どんな人だったか教えて下さい。」

茄子「後でプロデューサーに見つけてお仕置きしてもらいます!」

P「あのさぁ、お二人さん?お仕置きするのは別にいいんだが、俺の都合は無視ですか?」

茄・藍「「プロデューサー(Pさん)は黙ってて下さいっ!」」

P「あ、はい。」

歌鈴「・・・だ・・・」ポロポロ

藍子「だ?」

歌鈴「大黒様が、大黒様がぁ・・・」ポロポロ

藍子「大黒様?」

茄子「大黒様って、あの七福神の大黒天様ですか?」

歌鈴「はぃ・・・」グス

茄子「よしよし、よく出来ました♪」ナデナデ

藍子「歌鈴ちゃん。何があったのか順を追って教えてくれますか?」

P「俺も気になる。歌鈴、話せる範囲でいいから説明を頼む。」

歌鈴「・・・あれは昨日の夜中の話なんですけど・・・」

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歌鈴「―――と言う事があって・・・」

茄子「そこから先は?」

歌鈴「気絶しちゃって、覚えてないんです・・・」

藍子「Pさんはどう思います?」

P「ふむ、大黒天の格好をした不審者か。俺がそいつの立場だったら、目的は『歌鈴』か『金品』だな。」

歌鈴「わ、私ですかっ!?どどど、どうしよう~っ!?」

茄子「プロデューサー!適当な事を言わないで下さいっ!」

P「俺は至って本気だぞ?だが流石に本命は金品だろう、歌鈴を盗むには流石にリスクが多すぎるからな。」

茄子「リスク?」

P「現役の人気アイドルが拉致されたとあれば警察は全力で捜索に当たるだろう?そうなればそこいらのコソ泥では逃げ切れないさ。」

藍子「それこそルパン三世みたいな大泥棒でもなければ難しいでしょうね。」

茄子「あ、ルパン様なら私も盗んでもらいたいです♪」

P「何を言っているんだ君は・・・それで、実際に何か盗まれたりは?」

歌鈴「と、特には・・・」

P「・・・それで、警察には連絡したのか?」

歌鈴「それが・・・」

P「その反応を見ると駄目だったのか。まぁ仕方のない事かもしれないが・・・」

藍子「えっ!?どういう事ですか?」

茄子「変な人が出たなら警察は助けてくれるんでしょう?」

P「時と場合による。今回の場合は犯罪の痕跡がないから動いてくれないのだろう。」

茄子「そんなっ!肝心な時に助けてくれないなんて、警察は一体何をしているんですかっ!!」ガー

P「茄子、落ち着け!そいつが何か盗んだという確証はないんだ。何もしてない人間を咎める事は警察にも出来ないだろう?」

茄子「でも、何かあってからじゃ遅いんですよっ!」

P「その意見には同意するが"疑わしきは罰せず"が世の中の基本ルールだ。いくら怪しかろうと、証拠も痕跡もない以上は警察は動けないんだ。」

茄子「それじゃあ、歌鈴ちゃんはいるかどうかもわからない不審者に怯えて過ごせって言うんですかっ!」

P「まさか!歌鈴がここにいる間は俺が歌鈴を護る。」

藍子「Pさんが!?」

P「ああ。これでも実戦経験はあるし、俺の実力は茄子も知っているだろう?」

茄子「ま、まあ・・・私も何度か護ってもらいましたし・・・」

P「そういう事だ。すまないが歌鈴、しばらくの間行動を共にさせてもらう。窮屈な思いをさせるけれど我慢して欲しい。」

歌鈴「い、いえ!よ、よろしくお願いしっ・・・」

歌鈴(また、噛んじゃった・・・)

P「歌鈴、落ち着け。もしまた不審者が現れたら俺が捕まえるし、仮に逃がしたとしても、その時は警察も動いてくれると思う。だからそれまでの辛抱だ!」

歌鈴「は、はい!」

茄子「・・・」

P「どうした茄子?急に黙り込んだりして・・・」

茄子「プロデューサー。警察が動いてくれないなら、私達でなんとかしましょう!」

P「はい?」

藍子「え、えっと・・・?」

茄子「だから、私達でその変な大黒天様を見つけて捕まえるんですっ!」

P「見つけて捕まえるって・・・この数日の間で?いくらなんでもそれは無理だと思うぞ?」

茄子「何を言っているんですかっ!そんな弱気じゃ男がすたりますよ!?」

P「男がすたるって言われてもなぁ・・・難しいものは難しいぞ?」

茄子「そこをなんとかするのが私達のプロデューサーですっ!それにあんまり弱腰ですと、歌鈴ちゃんに嫌われちゃいますよ?」

歌鈴「そ、そそそそんな事ないですよ!?」

P「それは困るな。よし、とりあえずやるだけやってみるか!」

茄子「むぅ~」プクー

P「なんで怒っているんだ?」

茄子「なんでもありませんっ!」プイッ

P「なんでも無い訳ないだろう。」

藍子「・・・Pさんはもう少し乙女心を勉強して下さい。」

P「ひょっとして君達は俺が鈍感だと思っているのか?」

茄子「違うと思うなら歌鈴ちゃんにも聞いてみたらどうです?」

P「・・・歌鈴もそう思うか?」

歌鈴「・・・!」コクコク

P「わ、わかった。今後は気を付ける!」ペコリ

藍子「でも、本当に犯人を捕まえられると思いますか?もちろん私もそれが一番だと思いますけど・・・」

P「まぁ、俺も捕まえられるとは思っていないけど、仮に犯人まで辿り着けなくても皆の安全には繋がってくるだろう?それに・・・」

藍子「それに・・・?」

P「大事な担当アイドルに"お前なら出来る"と言わせておいて、何もしないのはプロデューサー失格だ!」

茄子「えへへ~♪プロデューサーのそういう情熱的な所、私は大好きですよっ!」

P「そ、そうか?なんだか照れるな・・・」

藍子(単純、の間違いな気がしますけど・・・)

茄子「はい!昔から"友達にするなら六分の侠気と四分の情熱を持った人がいい"って言うじゃないですかっ!かっこいい男の人は、皆仁義に厚い情熱家ですよっ♪」

藍子「・・・あの、Pさん。『きょうき』ってなんですか?」

P「『侠気』と言うのはだな、簡単にと言うと"弱きを助け強きをくじく心意気"の事だ。余談だが、さっき茄子の言った"六部の侠気云々"は『人を恋うるの歌』という詩の一小節でな、興味があったら今度教えてあげよう。」

藍子「へぇ~」

歌鈴「べ、勉強になります・・・!」

P「・・・だが茄子。侠気云々って、君は一体いつの時代の人間なんだ?」

茄子「ごく一般的な二十歳の女の子、ですよっ♪」

P「ごく一般的な二十歳の女の子は与謝野鉄幹なんてまず知らないぞ。まさかとは思うが、プロフィールの年齢サバ読んでるんじゃないだろうな?」

茄子「ぷ、ろ、でゅう、さぁ♪」ゴゴゴ

P「・・・悪かった、謝るからその剣呑な鬼気を心の箪笥にしまってくれ。」

茄子「もうっ!」

藍子「でも、その・・・失礼かもしれないけれどちょっと意外でした。茄子さんは文学にも明るいんですね!」

茄子「ふふ♪賢くて驚きました?私の強さは『運』だけじゃないんですよっ!」

P「いい事じゃないか。歌鈴も藍子も、茄子を見習って勉強に励んでくれよ?」

藍・歌「はい!」

P「うん、いい返事だ!昔から"なくていいのは悪事と借金と胸の大きさ"とも言うしな!はっはっはっ!!」

スパーン

茄子「セクハラ発言してると叩きますよっ!この、すけべ大魔王!!」プンスカ

P「せめて叩く前に言って欲しかった・・・」

藍子「・・・」ペタペタ

歌鈴「藍子ちゃん、どうかしたの?」

藍子「な、なんでもないですよ!?」

P「ともかく、やると決まった以上はすぐに行動しよう!出来れば藍子と歌鈴にも協力して欲しい、頼めるか?」

歌鈴「も、もちろんでしゅ!・・・また、噛んじゃったよぉ・・・」

藍子「ふふ♪大切な友達の為ですからね。一緒に頑張りましょう!」

P「よし、まずは情報収集から始めようか。」

藍子「はい!でもどこから探しましょう・・・」

P「そうだな、手始めに付近の祭祀施設から調査しないか?」

歌鈴「祭祀施設、ですか?」

藍子「あの祭祀施設って?」

茄子「祭祀施設と言うのはお寺や神社の事ですよ。プロデューサー続きをお願いしますねっ♪」

P「ああ。歌鈴の見た『大黒天の格好をした変質者』とやらがここ道明寺に現れたという事は、他の祭祀施設でもそいつが現れた可能性がある。取っ掛かりとしては十分な理由だろう。」

藍子「でも、なんで七福神の格好をしていたのでしょうか?」

P「あくまで俺の推測だが、カモフラージュの一種だろう。暗い場所では顔より全体像の方が印象に残りやすいし、仮に見つかったとしても年末の祭祀施設であれば、ただのコスプレで通せるだろうしな。」

歌鈴「た、確かにそうですね!」

茄子「じゃあ、まずは付近の神社やお寺を調べて見ましょう!」

藍子「でも、時間はあまりないと思いますよ?年末年始を過ぎたら、七福神の格好もただの怪しい恰好になりますから、多分それ以降は現れないと思います。」

P「そうだな、俺もそこが一番の問題だと思っているんだ。京都ほどではないとはいえ、奈良県も祭祀施設が多いから、一つ一つ見て回るには時間が足りないし・・・」

?「・・・話は聞かせてもらいました。」

P「だ、誰だ!?」

ガラ

父「ご無沙汰しております、プロデューサーさん。」

歌鈴「お父さん!」

P「大変ご無沙汰しております、お父様!先ほどはお父様とは知らず、失礼を致しましたッ!!」ペコリ

茄・藍「「お父様!?」」

父「いえいえ、お気になさらないで下さい。それと初めまして歌鈴の父です。」

茄子「は、初めまして!鷹富士茄子と申します!」

藍子「高森藍子です、よろしくお願いします!」

父「ご丁寧にありがとうございます。プロデューサーさん、いつも歌鈴を大切にしてくださってありがとうございます。」ペコリ

P「いえ、私自身は特別な事などしていません。当たり前の事をしているだけに過ぎません。」

父「そうでしょうか?歌鈴は帰る度、"お仕事が楽しいのはプロデューサーさんのおかげ"といつもいつもプロデューサーさんの話ばかりしていますよ。」

歌鈴「お、お父さんっ!///」

P「そ、そうなのですか?」

父「ええ、大切にされているとわかる反面、親として少々複雑な気持ちになりますよ。」

P「いやぁ、ははは・・・」

茄子「むぅ・・・」

藍子「え、え~と。それで歌鈴ちゃんのお父様はどうしてここに?」

父「話がそれてしまいましたね。実は、私も歌鈴の見た『大黒天の恰好をした変質者』が気になっていまして・・・」

P「と、言う事はお父様の方でも調査を?」

父「ええ理解が早くて助かります。今、個人的なツテを利用して県内の祭祀施設を中心に、七福神の格好をした人間の目撃情報を集めております。じきに結果がわかるでしょう。」

P「なるほど、では結果が判明次第こちらにも連携していただいてもよろしいでしょうか?」

父「もちろんです。」

P「ありがとうございます。それじゃあ俺達は結果を待つ間に現場の調査をしよう!何か犯人につながるものが見つかるかもしれないしな。」

茄子「はい!」

父「・・・それと、プロデューサーさん。少し相談したい事があるのですが、お時間はよろしいでしょうか?」

P「相談ですか?私で良ければどうぞ。」

父「まだ先の話ではありますが・・・いずれは歌鈴もよその男に嫁いでしまうでしょう?」ゴゴゴ

P「・・・ええ、複雑な心中お察しします。ですから、まずはその殺気を心の鞘に収めて下さい。」

父「申し訳ありません。それで話を戻しますが、嫁ぐ事を避けられないのであれば歌鈴を生涯護り通せる誠実な男性と結ばれて欲しいと思うのです。」

歌鈴「・・・お父さん。」

茄子「そうですねっ!」

藍子「大切な家族ですから、頼れる人が一番です!」

父「その点、貴方なら安心して歌鈴を任せられます。どうでしょうか、うちの娘は?歌鈴も貴方の事を慕っているようですし。」

藍子「え?」

茄子「・・・はい?」

歌鈴「お!?おおお、お父さんっ!!」

P「え!?どういう事?」

父「単刀直入に言います。歌鈴と婚姻を結びませんか?」

P「・・・・・・・・・・・・え?」

茄子「」ポカーン

歌鈴「」パクパク

藍子「か、茄子さん!歌鈴ちゃん!しっかりして下さい!」

父「娘をどうかよろしくお願いします。」ペコリ

P「は?はははははぃい!?お、おおおおおぉお!?」

藍子「Pさん、まず落ち着いて下さい!はい、深呼吸!!」

P「すーはー。お父様、彼女はアイドルですよ?恋愛は元より結婚など御法度です。」

父「今すぐにとは言いません、歌鈴が引退してからで結構です。」

P「いやいや、そういう問題ではないでしょう!!」

父「では、宮司としてここで修行しませんか?プロデューサーさん程の方であればすぐにでも一人前になれると思いますよ?」

P「いやいやいや、もっと駄目ですよ!私にはプロデューサーという大事な仕事があるのですから!」

父「修行は歌鈴と同じ年末のみで構いません。それに、正式に宮司となった暁には三食、昼寝付き、残業なしの生活をお約束しますよ?」

P「え!?三食、昼寝、しかも残業なし・・・!?」

茄・藍「「プロデューサー(Pさん)!!」」

P「い、いや!俺・・・じゃない!私には彼女達をトップアイドルに導くという使命と約束が・・・」

父「そうですか・・・そこまで頑なに否定するという事は、歌鈴には異性としての魅力がないとお思いなのですか?」

P「まさか!私のアイドルは全員結婚したい位、魅力的な女性ですよッ!!」

歌鈴「・・・ふぇ?///」

茄子「ぷ、プロデューサー・・・///」

藍子「Pさん・・・///」

父「では問題ないでしょう。親の私が言うのもなんですが、歌鈴ほどの出来た女性はいないと思いますよ?」

P「た、確かにそうですね。ドジっ子ですが努力家ですし、やさしいし、可愛いし・・・」

茄子「・・・ぷーろーでゅーさーっ!?」ゴゴゴ

P「で、ですが彼女もまだ17ですし。まだアイドル活動もこれからですし?この先俺よりイイ男に巡り合う可能性もありますし・・・そういうのはまだ早いと思いますよ!?」アタフタ

父「・・・わかりました。今はそういう事にしておきましょう。」

茄子「ほらっ!時間もないんですから、すぐにでも調査に行きましょうっ!歌鈴ちゃん、藍子ちゃん、行きますよっ!」グイグイ

歌鈴「えっ!?はわわわわ・・・」ズルズル

藍子「あっ、茄子さん待って下さい!まだ支度が・・・」ズルズル

P「お、おい・・・」

茄子「プロデューサー!置いてっちゃいますよっ!?」

P「すみません、失礼します!」ペコリ

タタタ

父「・・・やれやれ、どうやら歌鈴には強力なライバルがいるようだね。」

12月30日 午前10:30 道明寺 境内

茄子「もうっ!あそこはしっかりと断って下さいっ!!」

P「いや、そうは言ってもな・・・」

茄子「言い訳無用ですっ!」プンスカ

P「・・・確かにプロデューサーとしてあるまじき行動だった、申し訳ない。」ペコリ

茄子「ちゃんと反省して下さいねっ!」

歌鈴「あ、あの・・・お父さんが変な事を言ってごめんなさい!」

茄子「歌鈴ちゃんは気にしなくていいんですよ?この人が優柔不断なのがいけないんですっ!」

P「茄子の言う通りだ、こちらこそ気を使わせてすまなかった。」

歌鈴「で、でもお父さんがあんな事を言わなかったら、Pさんも怒られませんでしたし・・・」

P「いや、茄子に怒られたのは俺が原因だから本当に気にしなくていい。それに、手段に少々問題はあったが歌鈴の事を大切に考えているいいお父さんじゃないか。俺も将来あんな風な父親になりたいと思うぞ。」

歌鈴「あ、ありがとうございます!」

藍子「あの・・・Pさん、ちょっといいですか・・・?」

P「どうした?」

藍子「Pさんはプロデューサーというお仕事が嫌なんですか?」

P「・・・さっきの事なら本当にすまなかった。」ペコリ

藍子「いえ、私は気にしていませんよ?でも、Pさんが辛いと思うのなら・・・その・・・」

P「・・・正直に言えば大変な仕事だとは思う。残業は多いし、得意先にも怒鳴られてばかりだしな。」

藍子「じゃあ・・・」

P「だがそれ以上にやりがいのある仕事だ。こんな仕事他の誰にもやらせたくなんかないぞ!」

藍子「本当ですか・・・?」

P「ああ。」

藍子「でも、さっきは心が動いてましたよね?」

P「そ、それは仕方のない事だろう!残業が無いというのは非常に理想的な事なんだぞ!?そこは大目に見て欲しい!」

藍子「・・・わかりました。これからもずっと一緒にいてくれるなら許してあげます。」

P「お安い御用だ。」

歌鈴「わ、私ともずっと一緒にいてくだたい!」

P「落ち着け歌鈴、君達が望む限りはそのつもりだ。」

茄子「私も同じ気持ちです、約束ですからねっ♪」

P「ああ、約束する!」

藍子「えっと。それじゃあ、この後はどうしましょうか?」

P「そうだな、茄子が皆を引っ張って行ったんだから、何か作戦があるんだろう?」

茄子「え!?えーと・・・」

P「考えていなかったのか?」

茄子「ご、ごめんなさい・・・」シュン

P「じゃあ、俺が気になっている所から調べてもいいだろうか?」

藍子「気になっているところ、ですか?」

歌鈴「ど、何処ですか?」

P「賽銭箱だ。」

歌鈴「御賽銭箱?」

藍子「何故そんなところを?」

P「話は変わるが、そもそも歌鈴の見た不審者はなぜ大黒天の格好をしていたと思う?」

茄子「捕まりにくくするための変装でしょう?」

P「まぁそれもあると思うが、本来は別の目的があったと思うんだ。」

藍子「別の目的?」

P「そもそも変装の為だけなら、わざわざ大黒天の格好をする必要なんてないだろう?七福神は他にもいるんだしな。」

茄子「そうですね。大きな袋といい、小槌といい、荷物が多くて動きにくそうですっ!」

P「だが、逆に考えれば『荷物が多くても目立ちにくい格好』であるとも言えるよな?」

藍子「あ、だから御賽銭を!」

茄子「大黒天様は財福を司る神様ですから、たくさんのお金を持っていても怪しまれにくいですし!」

歌鈴「むむむ。皆さんのお賽銭を盗むなんて、許せません!」

P「まぁ、あくまで推測の域を出ない話ではあるが・・・」

藍子「でも、今の所は他の手がかりもありませんし、とにかく調べてみましょう!」

P「そうだな、もしこれで何か痕跡でも見つかれば警察が動くきっかけになるかもしれないし、やるだけやってみようか!」

茄子「はいっ!そうと決まれば早速行動ですよ!」

歌鈴「が、頑張りましょう!」

P「それじゃあ歌鈴、案内を頼む。」

歌鈴「はい、こっちですよ!」

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P「歌鈴、ここか?」

歌鈴「はい。これが一番大きい御賽銭箱です!」

P「それでは失礼して・・・」

歌鈴「Pさん?」

P「えーと、確か扉はこの辺に・・・お、あった!」ガサゴソ

歌鈴「ぴ、Pさん!?」

P「ふむ、ここは南京錠で施錠するタイプか。調べやすくて助かるがセキュリティ的に大丈夫か?」

藍子「大丈夫か?じゃないですよっ!」

歌鈴「な、なななんでそんな事を知ってるんですか!?」

P「落ち着け歌鈴、まず深呼吸だ。」

歌鈴「ふーはー。それでPさん、なんで開け方を知っているんですか?」

P「遠い昔だがな、近所の住職様と賽銭箱を巡る熱い戦いがあったんだよ。そこでだな・・・」

茄子「プロデューサーの武勇伝はいいですから、早く調べて下さい!」

P「ここからが面白い所なんだが・・・」

茄子「いいから調べるっ!」

P「はいはい、と言っても既に調べ終わっているけどな。」

スパパーン

茄子「真面目にやっていただけます?」

P「・・・はい、ごめんなさい。」

藍子「でも、もうわかったんですか?」

P「ああ。結論から言うと、ここ数日の間に南京錠を開けようとした痕跡はあった。だが、実際に開けたかどうかまではわからなかったよ。」

茄子「やったぁ♪手掛かり確保、ですねっ!」

P「手掛かりと呼ぶにはちょっと弱い気がするな、もう少し情報が欲しい。」

藍子「それじゃあ、手分けして調査しましょうか?」

P「そうだな、じゃあ藍子と俺は境内の裏手を調査する。茄子と歌鈴は境内を調査してくれるか?」

藍子「私でいいんですか?」

P「ああ、藍子がいい。」

藍子「えへへ♪」

茄子「むぅ、私もプロデューサーがいいです。」

P「それだと歌鈴が藍子と一緒になるが、あの二人で昼食に遅れず戻って来れると思うか?」

茄子「も、戻って・・・」チラ

藍子「?」ニコニコ

歌鈴「え、えっと?」キョロキョロ

茄子「歌鈴ちゃん、私と行きましょう!」

歌鈴「は、はい。」

P「よし!じゃあ昼に再集合だ。一旦そこで結果報告して、その後の事はそこで決めよう。」

茄子「はいっ!また後で会いましょう!」

12月30日 午後00:10 道明寺 境内

茄子「ただいまー!」

藍子「おかえりなさい!」

P「二人共、お疲れ!」

歌鈴「もう戻っていたんですか?」

P「ああ、一応成果もあったぞ。」

茄子「こっちもありましたよっ!」

P「じゃあ報告の前に昼食にしよう。皆は何か希望はあるか?」

歌鈴「あ、あの・・・」

藍子「私、にゅうめんが食べたいです!」

茄子「プロデューサー、今は茄子田楽が美味しいですよっ♪」

P「にゅうめんに田楽か。よし、今日の昼食はその二つを出すお店にしようか。」

茄子「あれ?プロデューサーは、食べたいものはないんですか?」

P「ああ、特に希望はない。」

藍子「じゃあ、気になる奈良名物はありますか?」

P「そうだな、個人的にはめはり寿司を食べてみたいと思っているんだが、道明寺の周辺では出してくれる店が少ないらしいんだ。」

藍子「どんな料理なんですか?」

P「柿の葉でくるんだおにぎりらしい。目を見張るくらい大きいからめはり寿司と呼ぶんだそうだ。」

藍子「へぇ~おいしそうな料理ですね。」

茄子「もし、どこかで見かけたら食べましょうねっ!」

歌鈴「あのっ!」

P「お、おう!?どうした歌鈴?」

歌鈴「わ、わわわ私がご馳走しますっ!」

藍子「歌鈴ちゃんが、ですか?」

茄子「ひょっとして、めはり寿司をですか?」

歌鈴「あの、えっと・・・めはり寿司じゃないんですけど、歌鈴が腕によりをかけて奈良名物を御馳走しますっ!」

茄子「奈良名物ですか?なんていう料理なんです?」

歌鈴「はいっ!『おかいさん』という料理です!」

藍・茄「「おかいさん?」」

歌鈴「え、えっと・・・『おかいさん』と言うのは・・・」

母「『おかいさん』というのは『大和の茶粥』という奈良の郷土料理ですよ。簡単に言うとお茶の葉で作ったおかゆです。」

歌鈴「あ、お母さん!」

母「皆さんもよろしければ御馳走になって下さいな。味は私が保証いたしますよ?」

P「お申し出はありがたいのですが、流石にそこまでお世話になるわけには・・・」

母「いえ、これは皆さんへのお礼です。そうよね歌鈴?」

歌鈴「はいっ!」

P「そういう事であれば、よろしくお願いいたします。茄子、藍子、折角だからお言葉に甘えようか。」

藍・茄「「はい!」」

母「では少々お待ち下さい、今用意いたしますので。歌鈴、お手伝いよろしくね。」

歌鈴「はいっ!!」

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P「ご馳走様、非常においしかったよ。」

茄子「ご馳走様でした♪」

藍子「おいしかったです!」

歌鈴「お、お粗末様です。」

P「それで、茄子と歌鈴の方はどうだった?」

歌鈴「はいっ!御守りが見つかりました!」

藍子「御守り?」

茄子「歌鈴ちゃんが見た大黒天様がいた茂みの中に落ちていたんです。」

P「・・・茂みの中って、そんな探しにくい場所からこの短時間でよく見つけたな。」

茄子「私の『運』は伊達じゃないですよっ!」

藍子「茄子さん凄いです!」

P「それで御守りに何か犯人につながりそうなものは入っていたか?」

茄子「えっと、まだ見てないです。今から調べます?」

P「そうだな、貴重な手がかりだし調べてみよ・・・」

歌鈴「だ、ダメです!中身は見ちゃだめです!!お守りの効果がなくなってしまいますっ!!」

P「そ、そうか。じゃあ、せめて何処で作られているかはわかったか?」

歌鈴「えっと、それが・・・」

茄子「お手製の御守りだったのでわかりません・・・」シュン

P「手掛かりなしか。まぁ、そう簡単に見つかるとは思ってないさ、あんまり気にするな。」

藍子「歌鈴ちゃん、他には何か見つかりました?」

歌鈴「それが、ゴミばかりだったんですっ!」

藍子「ゴミ?」

歌鈴「もう、ひどいんですよっ!カップめんの容器とか空き缶とか!見えない所だからって汚くしていい道理はありませんっ!」

茄子「本当ですよっ、"帰る前より綺麗に"精神が欠けてますっ!」

藍子「か、歌鈴ちゃん、茄子さん落ち着いて・・・」

茄子「プロデューサー、見て下さいっ!こんな危ないものまで落ちていたんですよっ!」

P「危ないもの?」

歌鈴「これですっ!」

P「どれ、針金か・・・」

茄子「もぉー怒りましたよ!私、激おこぷんぷん丸ですっ!」

歌鈴「今度ゴミを捨てる人がいたらお説教ですっ!!」

P「まぁ、落ち着いてくれ茄子、それに歌鈴。それではむしろご褒美になってしまうぞ?」

茄子「え、そうなんですか?」

P「ゴミのポイ捨てなんて事をするのは大抵の場合男だからな。茄子や歌鈴みたいな可愛い女の子に説教されたら"もっと怒られたい!"、"罵って欲しい!"等と、逆に反省しなくなると俺は思う。」

歌鈴「か、かわっ!?///」

茄子「えへへ、プロデューサーに可愛いって言ってもらえました~♪」

藍子(茄子さん・・・それでいいんですか・・・?)

P「だが、その問題は捨て置けないな。後で対策を考えておこう。」

歌鈴「そ、そういえばPさんの方は何かわかりました?」

P「こっちは境内へどこから忍び込んだか探していたんだ。」

藍子「人気の少ない裏手を中心に探しましたけれど、忍び込んだ形跡はありませんでした。」

歌鈴「そうですか・・・」

茄子「結局、手掛かりになりそうなものはありませんでしたね。」

P「・・・いや、そうでもないぞ?」

茄子「プロデューサー、何か見つかったんですか?」

P「茄子達が見つけてきたこの針金、恐らく不審者の持ち物だろう。」

歌鈴「ええっ!?」

P「そして、賽銭箱をこじ開けようとしたのもこの針金だと思う。」

歌鈴「なんでそんな事がわかるんですか!?」

P「太さも鍵穴と同じくらいだし、なにより鍵穴に差し込んだ時にできる独特の曲がり具合がある。」

藍子「そうじゃなくて!なんでそんな事を知っているんですかっ!!」

P「昔、近所の住職様と賽銭箱を巡って闘ったという話をしただろう?その時に覚えたんだ。まぁ、"若気の至り"ってやつだな。」

藍子「その技術、今まで使ってないですよね?」

P「使う機会がなかったからな。」

藍子「・・・お願いですからこの先も絶対に使わないで下さいね。」

P「ああ、流石に早苗さんの元同僚さんの世話にはなりたくない。」

歌鈴「じゃ、じゃあ・・・Pさんの言う事が本当なら、皆さんのお賽銭が・・・」

P「いや、これを見る限り不審者は途中でこじ開けるのを断念したと思う。こじ開けるのに成功したのであればもっと先端が複雑に折れ曲がっているはずだしな。」

歌鈴「ほ、本当ですか?」

P「俺の記憶が正しければそのはずだ。嘘だと思うなら同じ型の南京錠と針金で実践するが?」

藍子「・・・Pさん、さっき使わないって約束しましたよね?」

P「い、いや。犯罪行為に当たらない範囲なら見逃してほしいんだが・・・」

藍子「許しません!冗談でもやっていい事と悪い事があります!」

P「そんな殺生な、ちょっとは大目に見てくれよ。」

藍子「言う事を聞かないなら社長からもお説教してもらいますよ!」

P「社長に言うのはやめて下さいお願いします!そんな事されたらプロデューサーからプー太郎になってしまう!!」

茄子「同じプーさんでも大きな違い、ですね♪」

P「茄子!?な、何を言ってるんだ君は!?」

茄子「ふふふ♪なかなか洒落が効いていると思いません?」

P「思わない!君は面白いと思っているんだろうけど、ちっとも面白くないからな!?」

歌鈴「あの・・・話を戻しませんか?」

P「あ、ああ済まない。それで何処まで話をしていたっけ?」

藍子「歌鈴ちゃんの見た大黒様がその針金で御賽銭泥棒をしようとしていたかもって所まで話していましたよ。」

歌鈴「本当なんですか?」

P「確証はないけれどそう考えると辻褄が合うんだ。さっき調べた賽銭箱は境内にある訳だし、大黒天もどきは茂みの中から出てきたんだろう?」

歌鈴「そうです!こう、ガサガサって!」

P「多分、鍵を開けてる最中に歌鈴の足音を聞きつけて隠れたんだろうな。針金はその時に落としたんだろう。」

藍子「そこを歌鈴ちゃんに見つかっちゃったんですね。」

茄子「でも、何もなくてよかったです。運が悪ければ大黒天さんにあんな事やこんな事をされていたかも・・・」

歌鈴「ひぅっ!?」

P「・・・一体君は何を考えているんだ?」

茄子「セクハラっ!」

P「い、今のは悪くないだろう!?」

茄子「いーえ、重罪です!反省して下さいっ!!」

P「はい・・・大変申し訳ありませんでした・・・」ペコリ

藍子「でも、実際気絶してなかったらどうなっていたんでしょう?」

P「まぁ君達が何を想像していたのはわからないけど、実行したとしても逃走時間を確保するための人質にするくらいだろう。」

茄子「そうなんですか?歌鈴ちゃんをさらってしまう可能性は?」

P「その可能性はない。そんな事をしたら警察が全力で動いてしまうだろう?」

藍子「そうなったら泥棒さんもすぐにお縄になってしまいますね。」

歌鈴「よ、よかったぁ・・・」

藍子「話を戻しますけど、その針金がここに落ちているという事は、その日は家に帰ったんでしょうか?」

P「そうとは限らないぞ?この針金は大抵のホームセンターで売られている代物だから替えはすぐに用意できる。だから懲りずに別の場所に現れた可能性はあると思うな。」

藍子「そんな事まで調べていたんですか・・・?」

P「このくらい常識だぞ?」

茄子「プロデューサーの常識はあてになりません!」

藍子「・・・Pさん、そんな悪い事ばかりしているとお巡りさんに捕まっちゃいますよ?私は嫌です、そんなお別れの仕方。」

P「大丈夫だ、君達の前以外ではちゃんと自重するから。」

?「・・・ふふふ、話は聞かせてもらいましたよ。」

藍子「だ、誰ですか!?」

ガラ

父「どうも、私です。」

歌鈴「お、お父さん!」

P「お父様!?」

父「さて、プロデューサーさん。随分とやんちゃな事をしているようですね?」

P「ええ、聞かなかった事にしていただけると助かります。」

父「わかりました、私の胸の内にしまっておきましょう。その代わり・・・」

P「・・・宮司に転職する以外であれば何でもします。」

父「では、交渉決裂ですね。」

P「やっぱりそうなるのですか!」

歌鈴「・・・お父さんっ!」

父「・・・歌鈴?」

歌鈴「Pさんを困らせるのはいい加減にして!次にそんな事をしたら、もう一緒にお風呂入ってあげないっ!」プイ

P「な!?歌鈴それってどういう・・・」

父「さて、本題に入りましょうか。」

P「待って下さい!今、非常に聞き捨てならない話があった気が――「プロデューサー!今はお父様のお話を聞きましょう!」あ、はい。」

父「まず、歌鈴の見た大黒天ですがここ道明寺以外での目撃情報はありませんでした。」

茄子「プロデューサーの山勘は外れちゃいましたね。」

P「心外だな。俺は常に最悪の状況を想定しているだけで、決して勘で動いているわけじゃないんだぞ?」

茄子「そういう事にしておきます♪」

父「話を戻してもよろしいでしょうか?」

P「申し訳ありません、続きをお願いします。」

父「大黒天は見かけませんでしたが他の七福神は見かけたと情報がありました。」

茄子「え?」

父「しかも、その場所では犯罪が起きているようです。」

藍子「ええ!?」

P「・・・死傷者は!?」

父「怪我人や死者はいません。ですが金品等を盗まれるないし奪われているようです。」

P「具体的には?」

父「恵比寿を見かけたという神社ではスリが多発していると騒ぎになっています。」

歌鈴「スリ!?」

父「毘沙門天が出没したという寺では毘沙門天に現金を脅し取られたと連絡が来ています。」

藍子「きょ、恐喝ですか・・・?」

父「さらに、布袋が出現した神社では多数の置き引きが報告されているそうです。」

茄子「どれも道明寺の件とは無関係とは言いづらい事件ですねっ!」

父「ええ。この七福神達が犯罪を犯したという報告は来ていませんが、恐らく事件に何らかの形で関係があると私は見ています。」

P「それで、警察の動きは?」

父「道明寺で似たような事件が起きている事もあり、ここも含めて調査をして頂いております。」

P「そうですか・・・最初に考えていた道程とは違いましたが、これで歌鈴達の安全を確保できそうですね。」

茄子「よかったです!」

P「しかし、発端の大黒天が賽銭泥棒で、恵比寿がスリ師、毘沙門天が恐喝犯、とどめに布袋が置き引き犯とは・・・世も末だな。」

歌鈴「・・・本当ですよっ!神様の名前と姿を語って悪い事をするなんて!許せません!!」

P「む・・・?歌鈴が怒るなんて珍しいな。やはり神社の娘としては捨て置けない話なのか?」

歌鈴「当たり前ですっ!Pさん、私達もその人達を探して捕まえましょう!」

P「いや、調査はこれで終わりだ。襲われる可能性がなくなった以上、無闇に首を突っ込む事を許可できない。」

歌鈴「Pさんっ!」

P「だが、情報収集くらいなら続けてもいいと思う。もちろん俺が同行する事が条件だけどな。」

歌鈴「Pさん!ありがとうごじぃます!!」

P「はは、落ち着け歌鈴。」

茄子「それじゃあ、明日から本格的に聞き込み開始ですね!」

歌鈴「やりますよ!」

父「歌鈴、やる気を出すのはいいけどうちの手伝いは?」

歌鈴「あ・・・」

父「言っておくけど、うちのお手伝いが優先だからね。」

茄子「そ、それじゃあ・・・」

藍子「少なくとも年末年始は道明寺からは動けませんね・・・」

茄子「プロデューサー、お父様を説得できませんか・・・?このままだと歌鈴ちゃんは・・・」

P「残念だが、約束がある以上不可能だ。」

茄子「諦めないで下さい!どんなに困難な事でも何とか出来るのがプロデューサーじゃないですかっ!」

P「人を『不思議なポッケをもった青狸』みたいに言わないでくれ。まぁ、策がないわけではないが・・・」

茄子「・・・」クイクイ

歌鈴「・・・」ウルウル

藍子「・・・」ジー

P「・・・お父様、一時間ほど時間を下さいますか?」

父「ええ、構いませんよ?」

P「それと、三人もしばらく席を外して貰えるか?少し準備をする。」

茄子「わかりました。歌鈴ちゃん、藍子ちゃん、行きましょう!」

ガラ ピシャ

P「・・・この手だけは使いたくなかったが、背に腹は代えられないな。」ピッピッ

P「もしもし、ちひろさんですか?実は折り入って相談したい事が・・・ええ、出来れば社長にも話を・・・」

12月30日 午後04:20 道明寺 離れ

コンコン

茄子「プロデューサー、入ってもいいですか?」

P「ああ、待たせて済まなかったな。」

ガラ

父「さて、プロデューサーさんの策を聞きましょうか。」

P「結論から言えば、敵を誘い出す事にしました。」

父「誘い出す?」

P「お父様の話からすると手段こそバラバラであれ、全員参拝客の金品を狙って行動しているのがわかりました。」

父「ええ、そうですね。」

P「で、あるのならば多くの参拝客をここに集めて敵を誘い出し、目的を果たして帰る際にまとめて取り押さえようと思います。」

父「なるほど包囲網を敷こうというのですね。それで、肝心の参拝客はどうやって集めるつもりですか?」

P「その話の前に、二つ確認させて下さい。まず、歌鈴、茄子、藍子、君達はこの策に協力してくれるか?」

歌鈴「当然です!」

茄子「もちろんです!」

藍子「当たり前じゃないですか!」

P「では、もう一つ。お父様、茄子と藍子を歌鈴さんと同様に神社のお手伝いをさせていただけますか?」

父「え?彼女達はアイドルでしょう?そこまでの予算は・・・」

P「報酬は不要です、事務所にも許可はとってあります。」

父「そう言った話であれば私共には断る理由がありません。それとプロデューサーさん、参拝客を集める方法とはひょっとして・・・」

P「ええ、彼女達の知名度を利用します。しかし、周囲の祭祀施設の参拝客まで奪う訳にはいかないので宣伝方法をどうするかを考えなくてはなりませんが・・・」

父「いえ、御心配には及びません。皆、この不届き者共に怒り心頭です、きっと協力してくれるでしょう。」

P「では問題はありませんね。皆、年末まで仕事をさせて申し訳ないが力を貸してほしい。」ペコリ

歌鈴「き、気にしないで下さい!そもそも、私がお願いしたんですから協力するのは当然です!」

藍子「それに去年も同じようにお仕事をしていましたからね。」

茄子「いつもの年末ですよ♪」

P「そういってもらえると助かるよ。」

藍子「でも、Pさん。取り押さえるといってもどうやって捕まえるんですか?逃げられるかもしれないんですよ?」

P「ここからの逃げ道は入り口の長い階段しかない、だからそこで張っていればそう難しくはないはずだ。」

茄子「なるほど、入り口に集中してきたところを一網打尽にするんですねっ!でも、裏手の方から逃げる可能性はありませんか?」

歌鈴「茄子さんそれはないです。裏手は急斜面だからゆっくり下りないといけないし、転げ落ちたら命を落とす危険もありますから!」

P「さっきの調査では侵入の形跡もなかったし、このタイミングでルートを変更するとも考えづらいしな。」

茄子「なら、そっちも問題なさそうですね!」

父「では、茄子さんと藍子さんの担当を決めなくてはなりませんね。」

P「ええ、お願いします。」

茄子「担当、ですか?」

父「茄子さんと藍子さんは年末のお手伝いをする予定がありませんでしたので、お手伝いの担当範囲を決めなくてはならないのですよ。」

藍子「どこをお手伝いする事になるのでしょうか?」

父「恐らくは御守りの授与や参拝客への差し入れになると思います。詳細は後ほどご連絡いたしますよ。」

P「ありがとうございます。」

父「では、私はこれで・・・」

P「さて、他に質問はあるか?」

歌・藍・茄「「「ありません!」」」

P「では話もまとまったところで、今日は解散にしよう。」

歌・藍・茄「「「はーい!」」」

12月30日 午後11:05 道明寺 境内

P「・・・」

トコトコ

歌鈴「あの・・・Pさん?」ヒョコ

P「・・・ん、歌鈴か?」

歌鈴「はい・・・えっと・・・その・・・あの・・・」

P「どうした、何か用があるんだろう?」

歌鈴「さ、差し入れでしゅ!」

P「ああ、わざわざすまないな。」

歌・P「「・・・」」

歌鈴「え、えっと、こんなところで何をしているんですか!?」

P「入口から不審者が入ってこないか見張っているんだ。」

歌鈴「ぴ、Pさん一人でですか!?」

P「今の時間はな。あと二時間もすれば道明寺の宮司さんと交代する事になっている。」

歌鈴「そ、そうなんですか。で、でももし裏手から来たら・・・」

P「裏手は急な崖になってるって言ってなかったか?それに念の為に即席の鳴子を仕掛けてきたからすぐにわかる。」

歌鈴「そ、それならだいじょうぶですねっ!」

歌・P「「・・・」」

歌鈴「そ、そういえば福禄寿様と寿老人様、それと弁天様はいませんでしたね。」

P「弁財天はともかく、福禄寿と寿老人は知名度が低いから変装の対象から外したんだろう。」

歌鈴「わからない人にとってはただの怪しい格好ですもんね!」

歌・P「「・・・」」

歌鈴(か、会話が続かないよぉ・・・)

P「・・・歌鈴。」

歌鈴「ひゃ、ひゃい!?」

P「折角の休暇に怖い思いをさせて済まない、だが何があろうと君達は俺が護る。」

歌鈴「Pさん・・・」

P「・・・あまり信頼できないかな?」

歌鈴「そんなことないですっ!」

P「歌鈴?」

歌鈴「アイドル活動はいつだって怖くていつだって大変だったけど、Pさんがいてくれたから乗り越えてこれました。」

P「・・・」

歌鈴「だから、今回も大丈夫です!歌鈴は大丈夫ですっ!Pさんも大丈夫です!!」

P「・・・そうか。」

歌鈴「・・・Pさん?」

P「その言葉を聞いて安心した。次に大黒天が現れたら昨日の分までお仕置しておいてやる!」

歌鈴「だ、ダメですよ!ほどほどにしておいてください!!」

P「歌鈴のお願いじゃあしょうがない、諦めよう。」

歌鈴「ふぅ・・・それじゃあ私は戻りますね。Pさん、また明日あいまし・・・」

P「・・・」

歌鈴「・・・///」

P「くっくっくっ・・・」クスクス

歌鈴「~っ!!///」ベシベシ

P「痛い痛い!悪かったよ!!」

歌鈴「もうPさんなんて知りませんっ!Pさんのばかぁぁぁぁぁぁっ!!」

タタタ

P「あ、行ってしまった・・・明日あったら謝っておこう。」

P「そういえば、差し入れってなんだったんだろうか?」ガサゴソ

P「ん?これは・・・めはり寿司か。」

(個人的にはめはり寿司を食べてみたいと思っているんだが、道明寺の周辺では出してくれる店が少ないらしいんだ。)

P「食べたいって言った事を覚えていてくれたのか・・・歌鈴、ありがとう。」

P「さて、交代までもうひと頑張りしますか!」

12月31日 午前10:20 道明寺 客間

チュンチュン

P「む・・・朝か。」ムク

P(あれから交代まで大黒天は現れなくて、その後捕まえるための作戦を練っていたら寝てしまったんだよな・・・)

タタタ

P「・・・皆はもう今日の準備をはじめているのか、俺も早く手伝わないと。」

P「あれ・・・そういえば時計がない?しまった!今は一体何時だ!?」

茄子「そうね、だいたいね~♪」

P「・・・」

茄子「~♪」カチャカチャ

P「・・・今何時?」

茄子「ちょっとまってって~Wowowo♪」カチャカチャ

P「・・・・・・今何時?」

茄子「ま~だ、は~や~い~♪」カチャカチャ

ガラ

P「茄子、夏と呼ぶにはまだ半年以上早くないか?」

茄子「きゃっ!まだ早いって言ったじゃないですかっ!!」

P「どう考えてもツッコミ待ちにしか見えなかったぞ。それで君は何をしていたんだ?」

茄子「プロデューサーの朝御飯を用意していたんですっ!」

P「朝御飯?」

茄子「もう朝の十時ですよ?お腹ペコペコじゃないですか?」

P「十時って・・・もうそんな時間だったのか!?」

茄子「はいっ!珍しくお寝坊さんですね♪」

P「面目ない・・・」

茄子「偶にはいいと思いますよ。それよりそこで待っていてください、今用意しますね!」

P「あ、いや茄子。実は・・・」

茄子「おぞおに♪おぞうに♪おいしいなぁ~♪」カチャカチャ

P(実は昨日の差し入れでお腹はすいていないのだが・・・)

茄子「るるる~ん♪ ぽぽぽぽーん!!」カチャカチャ

P(この楽しそうに支度をする姿を見て朝食を断る奴がいるか?いや、いない!)

茄子「はいっ♪できましたよ。お雑煮です!」

P「・・・茄子さん、どう見てもコレ『ぜんざい』にしか見えないんですが?」

茄子「これは『小豆雑煮』です。島根のお雑煮はこれですよっ!」

P「そうなのか?」

茄子「そうなんですっ!」

P「そうか、そういう事なら頂きます!」

茄子「召し上がれ♪」

P「・・・」モグモグ

茄子「ど、どうですか?」

P「・・・東京のぜんざいとは全然違うな、こっちのほうがおいしい。」モグモグ

茄子「本当ですかっ!」パァァ

P「ああ、とてもおいしい。毎日でも食べたいくらいだ!」モグモグ

茄子「・・・」

P「ん、どうした?」モグモグ

茄子「何でもありません!プロデューサー流の褒め言葉として受け取っておきますねっ♪」

P「・・・?まぁ、いいか。御馳走様でした。」

茄子「お粗末様でした♪」

P「それで、茄子はこの後の予定は?」

茄子「夜からはお手伝いがありますけど、それまではプロデューサーと一緒にいたいです♪」

P「一緒にいるのはいいけど、お手伝いの準備はいいのか?」

茄子「はい、もう終わらせてきました!」

P「早いな。ちなみに何のお手伝いなんだ?」

茄子「御守りの授与ですっ!御守りと一緒に私の『幸運』もおすそ分けしますよ♪」

P「そうか。茄子から幸運をおすそ分けしてもらえれば、一年無事に過ごせそうだな。」

茄子「ふふふっ♪本当は御朱印をやってみたかったんですけど、担当の方がいらっしゃったので断念しました。」

P「ん?御朱印ってことは、茄子って書道も得意だったりするのか?」

茄子「プロデューサー。私の特技、忘れちゃいました?書道も私の芸の一つですよ♪」

P「君は一人で何でも出来るんだな。」

茄子「ふふ、二人じゃないと出来ない事もいっぱいありますよ♪来年はそっちを頑張りたいですっ!」

P「二人じゃないと出来ない事?」

茄子「何だと思います?」ニコニコ

P「うーん、トップアイドルになる事かな?」

茄子「ふふっ、プロデューサーらしい回答ですねっ♪あ、そうだ。折角ですから約束をしませんか?」

P「約束?」

茄子「来年の大晦日までにトップアイドルになったら、一つお願いを聞いてください♪」

P「わかった、約束する。」

茄子「やったー♪」

P「よし!お腹も膨れたところで藍子と歌鈴の様子を見に行くか。茄子も一緒にどうだい?」

茄子「ご一緒させて頂きます♪」

キリがいいので今日(昨日?)はここでいったん終わりにします。
続きは起きてから書き始めます。

投稿すると予告してからだいぶ遅れてしまい申し訳ありません!
完成したのでいまから順次あげていきます!

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藍子「ふんふふんふ~ん♪」

茄子「藍子ちゃ~ん!」

P「随分と楽しそうだな?」

藍子「あ、Pさんに茄子さん。おはようございます!」

P「おはよう。それで、藍子は何をしているんだ?」

藍子「お手伝いのお礼に甘酒を頂いたので温めていたんです、お二人もよろしければどうぞ♪」

茄子「わーい、頂きます♪」

P「気持ちはありがたいが、俺は甘酒が苦手なんだ。二人で飲んでくれ。」

藍子「まぁまぁ、一杯どうぞ♪」トクトク

P「お、おい藍子。春奈ばりの強引さをここで発揮しないでくれ。」

藍子「ふふ、私も甘酒は苦手だったんですけど、これは美味しかったです。何でも出来かけのお酒からアルコール分を飛ばしたものではなくて、お酒の元から作った甘酒なんだそうですよ!」

P「だけど、なぁ・・・」

藍子「飲んでも美味しくなかったら、その・・・き、キスしてあげます!///」

P「・・・」グビィ

藍子「ど、どうですか?」

P「う、美味い!」

茄子「よかったですねっ、プロデューサー♪」バシバシ

P「痛い痛い!茄子さん目が笑ってない、目が笑ってないから!!」

茄子「もうっ!プロデューサーのすけべ!えっち!変態!」バシバシバシバシ

P「ま、待ってくれ茄子!その発言には明らかな誤りがある!俺は助平でも変態でもないぞ!」

茄子「へぇ~反証があるとでも?」

P「もちろんだ!」

茄子「では、どうぞ?」

P「・・・藍子にあそこまで言わせておいて、行動を起こさないのは男としてあり得ないッ!」

茄子「有罪♪」

P「異議あり!その判決はいくらなんでも理不尽だろう!?」

茄子「異議を却下します。あんまり文句を言うとちひろさんにセクハラされたって言いつけますよ?」

P「本気でやめて!!ちひろさんはある意味、社長よりも厄介なんだから!!」

藍子「茄子さん、その辺で許してあげて下さい。それにPさんは例え美味しくなくても"美味しい!"って言ってくれたと思いますよ?」

茄子「・・・しょうがないですね。今回は藍子ちゃんに免じて許してあげます。」

P「藍子様、本当にありがとうございました。」ペコリ

藍子「やっぱり、プロデューサーというお仕事は大変なんですね。」

P「まぁ、この位で済むなら全然苦にならないけどな。それより藍子は何処をお手伝いする事になったんだ?」

藍子「私は境内で甘酒を振る舞うお仕事です♪」

P「そうか、混雑が起きないといいが・・・」

藍子「混雑?」

茄子「プロデューサー!その言い方だと藍子ちゃんがどんくさいって言っているように聞こえますよっ!!」

P「い、いや、そういう意味で言ったんじゃ・・・」

藍子「わかっていますよ。それで、どういう事なんですか?」

P「いや、藍子と話しているとついつい時間の感覚を忘れてしまうだろう?悪い事ではないんだが、人集りが起きやすくなる思ってな・・・」

藍子「そ、そうなんですか?全然知らなかったです・・・」シュン

P「まぁ、それだけ周りに楽しい時間を提供しているという事だ。胸を張っていい事だと思うぞ!」

藍子「はい、ありがとうございます!」

茄子「でも、昨日はちゃんとお昼に間に合っていましたよね?」

P「時間厳守は仕事の基本だぞ?」

藍子「・・・プロデューサーというお仕事は本当に大変なんですね。」

P「どうしたんだ急に?まぁ、ゴミの件と合わせて対策を考えておくよ。」

藍子「あ、そういえば今日は色々な人に声を掛けられました。うまく行けば沢山参拝のお客さんが来そうですよ!」

P「そうなのか?ちなみに誰に声を掛けられたんだ?」

藍子「商店街の皆さんです!今朝、買い出しのお手伝いで歌鈴ちゃんと近くの商店街に行ったんですけど、『今日は何やるの~?』とか『ご祈祷楽しみにしてるよ~!』って声を掛けられたんです!」

P「それは喜ばしい事だが・・・買い出しって結構時間がかかるだろう?君達は何時に起きたんだ?」

藍・茄「「六時ですけど?」」

P「本当にごめん・・・腑抜けたプロデューサーでごめんなぁ・・・」ショボーン

藍子「気にしないで下さい♪」

茄子「偶にはゆっくり休むのも大事ですよっ!」

P「・・・すまない。だけどそこまで話が通っているのは意外だった、やはり地元ネットワークは侮りがたいな!」

茄子「ふふっ♪歌鈴ちゃんがそれだけ人気ってことですよね♪」

P「歌鈴だけじゃない、藍子と茄子も同じくらい人気と言う事だ。」

茄子「えへへ~♪うれしいですっ!」

藍子「今年に頑張った成果がこういう形で見えてくるとうれしいですね!」

P「藍子の言うとおりだな。あ、今年の成果と言えば、藍子の来年の目標みたいなものは決めたのか?」

藍子「目標、ですか?いきなり言われてもピンときませんね・・・」

P「参考までにだけど、茄子の場合は一人じゃ出来ない事をがんば・・・痛ァ!?」

茄子「どうしてっ!そこでっ!!ばらしちゃうんですか~っ!!」ベシベシベシベシ

P「痛い痛い!いいじゃないか、別に問題はないだろう!?」

茄子「大問題ですっ!この変態プロデューサーっ!!」ベシベシベシベシ

P「酷い!あだだだだ!!ゴメン、本当に悪かった!!」

藍子「ふふふっ♪あ、お二人を見ていたら来年の目標が決まりました!」

茄子「・・・え?」

P「そ、そうか?差支えなければ教えてほしい。」

藍子「茄子さんと歌鈴ちゃんとPさん、それとファンの皆さんと笑って過ごすことです♪」

茄子「・・・」

P「・・・藍子は、アイドルの鑑だな。」ナデナデ

藍子「わわ!・・・えへ♪」ニコニコ

茄子「・・・私の方が年上なのに、藍子ちゃんの方が大人な気がしてきました。」シュン

P「安心しろ、今の藍子と比べたら殆どの人間が子どもみたいなものだ。」

藍子「そ、それは言いすぎですよ!」

P「言い過ぎなものか。特に、神様を騙って悪さをする馬鹿者共には、爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ!」

茄子「でも、プロデューサー。そのお馬鹿さん達は本当に来ると思いますか?」

P「ここまで御膳立てをしたんだ、奴らは絶対に来る。今年の悪事は今年の内に清算しておかないとな!」

藍子「ふふっ♪なんだかPさんがそう言って下さると来そうな気がしてきました!」

茄子「よーし!やられた分はきっちりお返しですよっ♪」

藍子「倍返しです♪」

P「君たちが言うと冗談に聞こえないな・・・頼むからやりすぎないでくれよ?」

タタタ

巫女長「あ!茄子さん、藍子ちゃん。ちょっといい?」

茄子「あ、巫女長さん!」

巫女長「悪いけど精進料理の方を手伝ってもらってもいいかしら?手が足りないのよ~!」

藍子「わかりました!」

茄子「プロデューサー、行ってきますね!」

P「ああ、行ってらっしゃい。」

タタタ

P「さて、俺は歌鈴の様子を見に行くとしますか。」

12月31日 午前11:40 道明寺 本堂前

歌鈴「・・・」ショボン

P「どうした歌鈴?」

歌鈴「ひゃう!?・・・あ、Pさん。」

P「元気ないな、どうしたんだ?」

歌鈴「・・・」

P「あ、そうだ!昨日のめはり寿司とても美味しかったよ、ありがとな。」

歌鈴「ほ、本当ですか!?よかったぁ・・・」

P「ああ、機会があればまた作ってほしい。」

歌鈴「は、はい!いつでも作ってあげますっ!えへへ・・・♪」ニコニコ

P「元気が出たようで何よりだ。それで、何を悩んでいたんだ?」

歌鈴「え、えっと・・・」

P「・・・すまない、言い辛い事だったよな。今の話は忘れてくれ。」

歌鈴「そ、そうじゃないんでしゅ!」

P「落ち着け・・・もし、話してくれるなら何でも聞くぞ?」

歌鈴「ほ、本当ですか?」

P「ああ。」

歌鈴「・・・実は、ご祈祷がうまく行かなくて。」

P「うまく行かない?」

歌鈴「と、途中でお経を噛んじゃって・・・」

P「そうか・・・傍から見た意見だけど難しそうだもんな。」

歌鈴「私、こんな状態で皆さんのご祈祷をしてもいいのかなぁって・・・」

P「そうだなぁ、俺は途中で躓くことがあっても歌鈴にご祈祷してもらいたいな。」

歌鈴「え?・・・わ、私がしてもいいんですかっ?し、し、失敗するかもしれませんよ!?」

P「俺だって失敗ばかりだし、茄子も藍子も失敗の方が多いぞ?」

歌鈴「ほ、本当ですか?」

P「でも、失敗するってことは本気で取り組んでいるって事だろう?その姿勢は必ず誰かの心に届くはずだ。」

歌鈴「・・・」

P「それに昔から言うだろう『為せば成る。』って。百回でも、千回でも、出来るまで続けてみないか?歌鈴はちゃんと成長しているのだからさ。」

歌鈴「Pさん・・・」グス

P「ほらほら!アイドルは笑顔が大事だぞ、笑顔が!」グニー

歌鈴「ふぇぇぇ・・・やへへくらふぁい~!」

P「あはははは!」

歌鈴「むぅ~っ!Pさんのばかばかぁっ!!」ポカポカ

P「痛い痛い、悪かった。」

歌鈴「あ、あのPさん。話は変わるんですけど、この後用事は・・・」

P「特にないけど?」

歌鈴「じゃ、じゃあ話を聞いてくれたお礼に、歌鈴がお昼を御馳走しますっ!」

P「いや、さすがにそれは・・・」

P(正直、これ以上食べられそうにないし・・・)

歌鈴「・・・」ウルウル

P(・・・覚悟を決めるか・・・)

P「・・・わかった、御馳走になる。」

歌鈴「は、はい!今用意しますねっ!」

タタタ

P「・・・七福神を懲らしめる前に俺が倒れそうな気がしてきた。」

12月31日 午後00:40 道明寺 客間

P「・・・御馳走様でした。」

歌鈴「お粗末様でしたっ!」

P(うぷっ・・・流石にしんどい・・・)

歌鈴「あ、あの!奈良のお雑煮はどうでしたか・・・?」

P「・・・そうだな。みそ味の雑煮にきな粉がついてきたのは意外だったがおいしかったよ。」

P(お腹いっぱいでなければ、もっと美味しく頂けたんだがなぁ・・・)

歌鈴「あ、明日はおせちを御馳走しますから、楽しみにしていて下さいね!」

P「ああ、非常に楽しみだ・・・うぷっ!」

歌鈴「ぴ、Pさん!?」

P「あ、ああすまない。実は、少し食べ過ぎたみたいで・・・」

歌鈴「たたたたた大変ですっ!えええええっと救急車は・・・」

P「お、落ち着け歌鈴!胃薬、胃薬でいいから!!」

歌鈴「わわわわかりました!今持ってきますっ!」

タタタ

バタ

P「うぅ・・・気を抜いたら苦しくなってきた・・・」

タタタ

歌鈴「はいっ、お薬とお水です!ゆっくり飲んで下さい!」

P「すまないな・・・」ムク

P「・・・」ゴクゴク

歌鈴「・・・落ち着きました?」

P「ああ・・・」

歌鈴「えへへ♪Pさんが無事で何よりです。」ニコニコ

P「・・・」

P(いつも慌てている姿しか見ていなかったから気付かなかったが、この子は可愛いと言うより美人と呼ばれる方の女性だったのか。)

歌鈴「お、起きてるのは辛いですよねっ?せ、折角ですから歌鈴が膝枕してあげます!///」

P「ひ、膝枕!?」

P(ま、まずいぞ!?意識したら非常にドキドキしてきた!!と言うか照れるくらいならやらないでくれ!)ドキドキ

歌鈴「そ、それじゃあ失礼しますね・・・」

P「お、おう。」

P(馬鹿ッ!何流されてるんだ俺は!?しかも、年下の高校生相手に!!)ドキドキ

歌鈴「えへへ。なんだか嬉しいです♪」ニコニコ

P「そ、そうか?」ドキドキ

P(お、おおおお、落ち着け俺!こういう時は話の主導権を握るんだ!)ドキドキ

P「あ!?え~と、歌鈴?」

歌鈴「は、はい?」

P「今年はもうすぐ終わるけど来年の抱負は決めたかな?」

歌鈴「も、目標ですか?」

P「い、いや、思いつきで言った事だから余り気にしなくていいぞ!」

歌鈴「あ、あります!すっごく大事な目標ですよっ!」

P「そ、そうか。差支えなければ聞かせてもらってもいいか?」

歌鈴「来年は・・・ドジをなくしたいですっ!」

P「え?それは・・・う~ん・・・」

歌鈴「な、なんで悩むんですかっ!」

P「いや、ドジは歌鈴の魅力の一つだろう?ファンとしては『それを捨てるなんてとんでもない』的な意見がきっとあると思うんだ。」

歌鈴「た、例えファンの皆さんが望んでいても、ドジな歌鈴じゃ駄目なんですっ!」

P「そ、そうか?じゃあ来年は少しずつでもドジの回数を減らせるように頑張っていこうか。」

歌鈴「はいっ!Pさんも協力して下さい!一緒に頑張りましょう!」

P「も、もちろんだ。」

P(歌鈴には悪いけど、ドジの回数を3割位減らす方向で許してもらおう。)

歌鈴「あ、もうこんな時間。き、着替えてこないと・・・」

P「あ、それなら退くよ。」ムク

歌鈴「す、すみませんっ!それじゃあ失礼し・・・!」

P「歌鈴、慌てない慌てない。あ、着替えのついでに頼みたいことがあるんだけどいいか?」

歌鈴「ひゃ、ひゃい!?」

P「実はな・・・」

12月31日 午後04:25 道明寺 客間

P「・・・さて、そろそろか。」

コンコン

茄子「プロデューサー、入りますよ?」

P「ああ、入ってくれ。」

茄子「失礼しますね。」

藍子「何か渡したいものがあるって聞きましたけど。」

P「まぁ、そこで待っていてくれ。すぐに届く。」

コンコン

歌鈴「Pさん、さっきお願いされた物を持ってきました。」

P「歌鈴、ありがとう。雑用みたいな真似をさせて済まないな。」

歌鈴「そ、そんな!この位なんでもないですよっ!!」

茄子「歌鈴ちゃん、何を持ってきたんですか?」

歌鈴「これです!」バサァ

茄子「わぁ~♪」

藍子「こ、これって巫女服ですか?わ、私たちが着てもいいんですか!?」

P「ああ、歌鈴のご両親に用意して貰ったんだ。折角神社のお手伝いをするんだ、どうせなら本格的な方がいいだろう?」

茄子「わーい♪」

藍子「で、でもどうやって着れば?」

P「それは、そこにいる巫女さんに聞いてくれ。」

歌鈴「わ、わわわ私ですか!?」

P「他に誰がいるんだ?大丈夫、君なら出来るさ。」

歌鈴「わ、わかりました!茄子さん、藍子ちゃん、行きましょう!」

茄子「はーい!」

藍子「行ってきますね!」

P「ああ、行ってくるといい。」

ガラ ピシャッ

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P「・・・」

コンコン

歌鈴「あ、あの。Pさん、出来ましたよ?」

P「そうか、空いてるから入ってくれ。」

歌鈴「わ、わかりました!」

ガラ

歌鈴「し、失礼します!」

茄子「プロデューサー♪似合ってます?似合ってます?」ピョンピョン

藍子「ど、どうですか?」モジモジ

P「・・・・・・・・・・・・」

茄子「プロデューサー?」

藍子「あ、あの・・・Pさん?」

P「・・・黄金郷(ジパング)はここにあったのか・・・」

歌鈴「ジパング?」

茄子「ここは日本ですよっ?」

藍子(・・・多分、違う事を考えている気がします。)

P「・・・ハッ!?俺は一体!?」

茄子「プロデューサー、しっかりして下さい!」ユサユサ

P「あ!?ああ、すまない。皆よく似合っているよ。」

茄子「わーい♪」

藍子「あ、ありがとうございます!」

歌鈴「え、えへへ♪」

P「あ、そうそう。藍子、ちょっといいか?」ゴソゴソ

藍子「私ですか?」

P「そうだ、前に歌鈴が言ったゴミの件なんだが、その対策を君にお願いしたい。」スッ

藍子「え?これってゴミ袋ですか?」

P「甘酒を配るついでにこれを持って呼びかけてくれればいい。恐らくそれだけでポイ捨ては減るだろう。」

藍子「わ、わかりました。」

P「それともう一つ。巫女さんと宮司さんの何人かが参拝客の誘導係として君の側に配置される事になった。ありえないとは思うけど、宮司さんに告白されてもちゃんと断るんだぞ!」

藍子「わ、わかっていますよ!」

茄子「プロデューサー、あんまり過保護だと嫌われちゃいますよ?」

P「そ、そうか。今後は気を付けるよ。」

藍子「あ、でも心配してくれるのはうれしいんですよ!?」

P「そ、そうなのか?」

歌鈴「あ、あの!」

P「か、歌鈴!?君はどうしたんだ?」

歌鈴「え、えっと、今日の作戦を教えてほしいです!」

P「作戦か・・・それぞれの仕事を全うする。以上だ!」

茄・藍・歌「「「え、ええ~っ!?」」」

P「さらに言うと、除夜の鐘が鳴る前に決着をつけたい。俺が犯人なら年が明けた時に起きる騒ぎに紛れて逃亡するだろうからな。」

歌鈴「そ、そうじゃなくて!どうやって犯人を見つけるのか聞いているんですっ!!」

P「そこは俺の仕事だ、誰かに危害を加えようとしてれば気配でわかるからな。奴らが仕事をできる状況にするのが君たちの仕事だ!」

茄子「う~ん、複雑な気分ですねっ!泥棒さんを捕まえるために泥棒さんのお手伝いをするなんて。」

P「そう言われると悪い事をしているように聞こえるけど、要は参拝客のが楽しんでもらえるようにすればいいという事だ。」

藍子「あ、そういうことなら頑張ります!」

巫女長「歌鈴ちゃーん、藍子ちゃーん、茄子さーん、出番ですよー!」

P「お呼びのようだな。それじゃあ皆、それぞれの持ち場で頑張ってくれ。」

茄・藍・歌「「「はいっ!」」」

12月31日 午後06:20 道明寺 境内

藍子「甘酒はどうですか?甘くておいしいですよ!」

藍子「はい、ありがとうございますっ!あ、ゴミはこちらにお願いしますね♪」

藍子(あれからしばらく経ちましたけど、本当に来るんでしょうか?)

参拝客A「あ、七福神だ!」

藍子「え!?」

参拝客B「七福神様、写真を撮りましょ~♪」

恵比寿「~♪」

布袋「~」

毘沙門天「~!!」

大黒天「・・・」

参拝客B「はいはい、笑って笑って~♪」

(ほ、本当に来た!急いでPさん達に連絡しないと・・・)

参拝客A「おーい、藍子ちゃん!こっちにも甘酒おかわり~!!」

藍子「あ、はいっ!今行きますね♪」

タタタ

藍子「はいっ、たっぷり入れておきますねっ!」

参拝客A「お、悪いね~!」

藍子「・・・」チラ

藍子(やっぱりもういませんか・・・)

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P「あいこ~!」

藍子「あ、Pさん!」

P「どうだい、調子は?」

藍子「はいっ!とっても楽しいです♪」

P「そうか、それは良かった!あ、そろそろ休憩の時間だから呼びに来たよ。客間で年越しそばを用意してくれてるそうだ。」

藍子「え?い、今って何時ですか?」

P「八時半過ぎだな。頑張って仕事すると時間がたつのも早く感じるな!」

藍子「そ、そんなに経っていたんですか!?たたた、大変です!」

P「大変って何が?」

藍子「七福神が来たんです!」

P「そうか、ここまでは台本通りの展開だな。じゃあ、今のうちに晩御飯にするとしよう。」

藍子「そうか、ってそんなにのんびりしてないで下さい!もう被害にあってる人がいるかもしれないんですよ!?」

P「ここに来る前に見回りをしてきたがそういった報告も犯罪を起こそうとする気配もなかった。多分これからだろう。」

藍子「これから、ですか?結構人も来てますけど、まだ人が来る見込みがあるってことですか?」

P「ああ、むしろ忙しくなるのはこれからだ。今後に備えて英気を養うってことも大事だぞ?」

藍子「わかりました、ゆっくり休んでその後頑張りますね!」

P「その調子だ。それじゃあ行こう、あんまり遅くなると茄子が怒るからな。」

藍子「ふふっ♪そうですね!」

12月31日 午後10:25 道明寺 境内

トコトコ

恵比寿「さってさって今日も大漁大漁♪いやいや、こんなにカモが集まるとはアイドル様様だねぃ!」

恵比寿「まさか警察も泥棒がこんなに目立つ格好をしてるとは思うまい。後はマイスウィートハニーの元に戻るだけさぁ!ぐふふぅ♪」

ガヤガヤ

恵比寿「む!あそこの人だかり・・・もう少し稼いでいくとしますかぁ!」ニヤァ

ススス

恵比寿「さってさって、お宝いっただき・・・」

藍子「あ、そこの恵比寿様!甘酒はいかがですか?」

恵比寿「ヒッ!?あ、あっしですかい?」ダラダラ

藍子「はいっ♪」ニコニコ

恵比寿「い、いや~あっしは先を急いでますし・・・」ソソクサ

藍子「だめ、ですか?」ウルウル

恵比寿「し、仕方がありやせんね。・・・ちょっとだけよ?」

藍子「はいっ!ありがとうございます!」トクトク

恵比寿「お、イイ注ぎっぷりだねェ!大盤振る舞いってのはあっしの好物でさぁ!」

藍子「ふふ、さぁ冷めないうちにどうぞ♪」

恵比寿「・・・」グビグビ

恵比寿「くぅ~っ!!この一杯の為に生きてるぜぇ!」

藍子「ふふ、いい飲みっぷりですねっ!もう一杯どうぞ!」

恵比寿「お、イイのかい?あっしはタダなら何倍でも飲んじゃうよ?」

藍子「大丈夫です!沢山ありますから!!」トクトク

恵比寿「ふっふっふ~その言葉後悔しますよぉ~?」

恵比寿「・・・」グビグビ

恵比寿「ぷはぁ!いやぁ丁度いい甘さだねェ!」

藍子「甘いものに飽きたらこちらもどうぞ♪」スッ

恵比寿「お、煎餅かい?いやぁここは至れり尽くせりだねェ!!」ボリボリ

藍子「ふふ、ゆっくりしていって下さいね♪」

------------------------------------

恵比寿「う~ん、御嬢さんといると癒されますねぇー!」ボリボリ

藍子「ありがとうございます!もう一杯いかがですか?」トクトク

恵比寿「おほぉう!これは嬉しいですねぇ!」

恵比寿「・・・」グビ

藍子「ところで、それは何の袋なんですか?」

恵比寿「プハァ!これはね、今日の戦利品でさぁ。よければお嬢さんも一つどうだい?」ボリボリ

藍子「恵比寿様、悪い事はしちゃダメですよ!それは今すぐ元の場所に戻してきた方がいいと思います。」

恵比寿「何を言ってんだい、こいつはまっとうな手段で稼いできたもんだよ。ふぃ~ごっそさん!」

藍子「それならいいんですけど・・・」

恵比寿「そうそう、人間まっとうに生きるのが一番!あばよ、可愛い御嬢さん!」

刑事A「おう、オッサン。その意見には同意するが・・・アンタには言われたくねぇな。」

刑事B「うそつきは泥棒の始まりですよ?ああ、既に泥棒でしたっけ。」

恵比寿「な、刑事さん!?」

刑事A「泥棒風情が犯行現場でのんびり茶の湯とは、随分と余裕だな?」

刑事B「全くです。貴方を発見してから三十分以上待っていましたが、今まで気づきもしないとは・・・。」

恵比寿「な、何を言うんです刑事さん!あっしはただのパンピーでさぁ、泥棒などではありやせんぜぃ!?」

刑事A「しらばっくれるな。アンタがのんびり甘酒と煎餅を堪能している間に、その荷物調べさせてもらった。」

恵比寿「いィッ!?」

刑事B「ええ、先ほどスリの被害に会われた方の身分証が貴方の持ち物にありました。残念ながら言い逃れはできませんよ?」

恵比寿「・・・さいなら!」

刑事A「逃がさねぇよ、署でたっぷりお話ししようじゃねえか。ガシ」

恵比寿「た、助けてぇぇぇ!」ズルズル

刑事B「うるせぇ!きりきり歩け!」グイグイ

藍子「・・・」

刑事B「高森藍子さんですね、捜査へのご協力感謝します!」

藍子「私は何もしてません、それより・・・」

刑事B「あの男が気になりますか?」

藍子「はい。」

刑事B「そうですね、残念ですが実刑は避けられそうにないと思います。」

藍子「・・・」

刑事B「ですが、根っからの悪人ではなさそうですし、近いうち出所できると思いますよ。」

藍子「・・・だといいですけど。」

刑事B「ふふ、優しい人なんですね。私は貴女達アイドルの事を誤解していたかもしれません。」

藍子「そうですか?」

刑事B「はい。アイドルとは、私が思っている以上に優しくて強い女性だけがなれる職業だと知りました。これからは一人のファンとして応援させていただきますね!」

12月31日 同時刻 道明寺 御守り授与所

茄子「はい、安産祈願の御守りですね♪五百円になります!」

茄子「ありがとうございましたっ!よいお年を~♪」

茄子「・・・あれ?もう御守りがありませんね。」

茄子「すみませーん!予備の御守りってありますか?」

巫女長「茄子さん、予備の御守りは裏の倉庫にあるの。悪いけど手が離せないからとって来てもらえる?」

茄子「はいっ!わかりました。」

タタタ

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布袋尊「くっくっくっ、今日も今日とて大漁大漁!ウハウハ気分で新年を迎えられそうだ。」

布袋尊「さて、足がつく証拠品の分別は終わったし、後はこの荷物を裏手の崖から放り投げて下で回収するだけ。クッ、我ながら無駄のない作戦で寒気がするぜ。」

布袋尊「恵比寿のアイツは見栄っ張りだから、警察の視線を掻い潜って目標を達成するなどと馬鹿げた信条で動いているが俺は違う!素早くブツを盗み出し安全に逃げ出す、これが重要よ!それ以外の事なんざどうでもいいッ!」

タタタ

茄子「巫女服って意外と動きやすいんですねっ!走るのも楽々です♪」

布袋尊「ん?なんだぁ、この能天気な声は・・・?」

茄子「あ、布袋様!こんな所で何をしているんですか?」

布袋尊「な!?ここに人が来るはずがないのに!?・・・と、とにかく逃げる!」

タタタ

茄子「あ、待って下さい!荷物を忘れてますよっ!!」

キキーッ

布袋尊「あぁん!?・・・って、それは!!」

茄子「あれ?免許証にお財布って・・・布袋様はスリ師なんですか!?」

布袋尊「違う!俺は置き引き・・・ムグ!?」

茄子「むぅ・・・さては、貴方が昨日ここの近くの神社で悪さをした人ですねっ!」ピッピッピッ

布袋尊「な、何をしたんだ!?」

茄子「私が一番信頼する人に連絡しました!もう少し経てば応援が来ます、大人しく自首するなら許してあげますよ?」

布袋尊「誰が自首なんかするか!こうなったらお前を・・・」ジリジリ

茄子「わ、私をどうするつもりですかっ!!」

布袋尊「ヘッ、決まっているだろ?カマトトぶるんじゃねェよ!」ニヤニヤ

茄子「い、一応聞きますけど。え、エッチな事じゃないですよね!?」

布袋尊「くっくっくっ、嬢ちゃんもいい年なんだから当然それに決まってんだろッ!!」ニタニタ

茄子「・・・貴方と言う人は最低ですね!もう許してなんかあげませんっ!!」

布袋尊「うるせぇ!何も出来ねェくせして粋がるな!」

茄子「私にだって出来ることはありますっ!鷹富士茄子のかくし芸、その真髄を篤と味わってもらいますよっ!!」

布袋尊「バカがッ、芸如きで何が出来るッ!!」ダッ

茄子「・・・っ!」

茄子(怒らせて、これを乱すっ!)

布袋尊「うおォォお!!」

ガシ

布袋尊「ぬ!?」

茄子「はぁっ!!」

グルン

布袋尊「ぬぉう!!?」

ビターン

布袋尊「ガハッ!?」

茄子「かくし芸の一つ、『元警察官仕込みの格闘術その1』です。貴方を捕まえられなくても自分の身くらいは護れますよっ!」

布袋尊「け、警察仕込みだと!?」

茄子「さぁ、大人しく観念して下さいっ!」

布袋尊「チッ!ここは分が悪いッ!!」

タタタ

茄子「あ!待ちなさいっ!!」

ダダダ

P「かぁぁぁこぉぉぉぉぉぉ!!」

茄子「プロデューサーっ♪」

布袋尊「なッ!?」

P「オラァッ!!」

ビターン

布袋尊「」キュゥゥ

P「茄子ッ、無事か!?」

茄子「はいっ!大丈夫です!!」

P「そうか・・・よかったぁ・・・」ヘナヘナ

茄子「だ、大丈夫ですか?」

P「あ、安心して気が抜けてしまっただけだ。それより、そこの布袋はひょっとして?」

茄子「はいっ、置き引きの布袋様でしたよっ!!」

P「そうか、勢いで投げ飛ばしてしまったがよかったよ。よく犯人を見つけたな!」

茄子「はいっ!ちょうど予備の御守りを取りに行く最中でしたので運が良かったです♪」

P「あぁそいつは本当に運がなかったな、まぁ茄子に見つかった以上当然の結果だが。」

茄子「むぅ~!その言い方だと、まるで私が不幸を呼ぶ女の子みたいじゃないですかっ!」プンスカ

P「違う違う。」

茄子「何が違うんですかっ!」

P「俺の女神様は頑張り屋の味方だ。人様の物を盗む悪党に幸運を分けたりなんかしないだろう?」

茄子「え・・・?ええっ~!!!///」カァァ

P「ん?何かおかしなことでも言ったか?」

茄子「ぷ、ぷろでゅーさーにはキザな台詞なんて似合いませんっ!ふ、普通の言葉で話して下さいっ!!//」プィッ

P「・・・そんなにキザだったか?まぁ、いいか。俺は警察の人にコイツを引き渡してくる、茄子は先に戻っていてくれ。」

茄子「わかりましたっ!それではまた後で!」

P「よっこいせっと!」

トコトコ

茄子「ふぅ・・・あっ!?」

ペタン

茄子「え、えへへ・・・腰が抜けちゃいました・・・」

茄子(・・・ありがとうございます、早苗師匠。お蔭で大切な物を護り抜く事が出来ました♪それと、約束を破ってごめんなさい・・・)

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早苗「・・・護身術を教えてほしい?」

茄子「はいっ!」

早苗「言っておくけど、かくし芸のレパートリーにするつもりならお断りよ。」

茄子「ち、違いますっ!私は・・・」

早苗「冗談よ。茄子ちゃんが思いつきでそんなこと言うとは思えないしね。何か目的があるんでしょ?」

茄子「・・・プロデューサーの足手まといになりたくないんです。」

早苗「バカね、彼はそんなに弱くないわよ。それに女の子を護るのは男の甲斐性よ。」

茄子「・・・でも。」

早苗「しょーがないわね、簡単なものでよければ教えたげる♪」

茄子「ほ、本当ですかっ!?」

早苗「ただし、三つ約束しなさい。」

早苗「一つ目は、今から教える技は貴女の身を護る為だけ使う事。」

早苗「二つ目に、危険な事に自分から首を突っ込まない事。」

早苗「そして三つ目、危険な目に遭いそうな時は必ずP君を呼ぶ事。以上よ!」

茄子「プロデューサーを、ですか?」

早苗「そうよ。大事なアイドルだもの何があっても最優先で助けに来てくれるわ。」

茄子「そうでしょうか・・・」

早苗「何よ、あたしの言う事が信じらんないの?」

茄子「そうじゃないですっ!ただ、私はよくお小言を言ったりするから目障りだと思われていないか心配で・・・」

早苗「自覚はあったのね。大丈夫よ、自分の担当アイドルだもの大切に思ってない訳ないわ。」

茄子「・・・」

早苗「それよりも貴女の身に何かあった方がよっぽど辛いはずよ。彼の性格なら自分の人生を捨ててでも貴女に詫び続けるかもしれないわ。」

茄子「そ、そんなっ!」

早苗「だから!貴女は何が何でも自分の身を護り抜く必要があるの。その為に必要な事はあたしが全部教えてあげるわ!」

茄子「早苗さん・・・」

早苗「じゃ、早速特訓よ!これから、あたしの事は師匠と呼びなさいっ!」

茄子「はいっ、早苗師匠!」

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茄子「ふふ、でも兵法にまで詳しいのは意外だったです♪ちょっと失礼かもしれませんけど・・・」

P「何が意外なんだ?・・・って大丈夫か?どこか怪我でもしていたのか!?」

茄子「プロデューサー!?どうしてここに?」

P「茄子が心配になって戻ってきたんだ。それよりどこか怪我でもしたのか!?」

茄子「あ・・・その、腰が抜けてしまって・・・えへへ・・・」

P「ひょっとして、あの布袋とやりあったのか?」

茄子「・・・」プイッ

P「嘘が下手だな、君は。」

茄子「うぅ・・・」

P「茄子、悪いけど少しの間我慢してくれ。」ヒョイ

茄子「ひゃっ!?ぷ、プロデューサー!?///」バタバタ

P「こ、こら!暴れるな、落としそうになる。」

茄子「は、はい!」///

茄子(お、お姫様だっこされてます・・・///)ドキドキ

茄子「あ、あの!布袋様はどうしたんですか!?」

P「アイツなら近くにあった杉の木に縛りつけておいた。後で警察の人にでも回収してもらうさ。」

茄子「そ、それならいいんです!」///

P「・・・」

茄子(プロデューサーって思っていたより逞しいんですね・・・///)ドキドキ

P「・・・茄子ごめんな、怖い思いをさせて。」

茄子「い、いいんですよっ!私が好きでしたんです!!」

P「それでもだ。担当アイドルを護るのが俺の仕事だから、俺の不手際で君に怖い思いをさせたなら謝るのは当然のことだ。」

茄子「・・・プロデューサーは私がアイドルだから護ってくれるんですか?」

P「それは難しい質問だな。」

茄子「答えて下さいっ!」

P「そうだな、もし茄子が普通の女の子だったとしても同じように全力で護ると思う。」

茄子「・・・ど、どうしてですか?」

P「女の子が襲われているのを黙って見過ごせないからに決まっているだろう。特に茄子みたいな綺麗で可愛い女の子ならなおさらだ!」

茄子「き、きれい・・・?///」ボフン

P「それより危ない真似はこれっきりにしてくれよ?何度もされたんじゃこっちの心臓が持たないからな。」

茄子「はい、ごめんなさい・・・」シュン

P「まぁ、今回は助かったよ。よく頑張ったな!」

茄子「はいっ♪」ギュー

P「か、茄子!?」

茄子「えへへ~♪今年は最後にいいことがありました~♪来年もいい年になりそうですっ!」ギュー

P「ああもう!暴れられるとまっすぐ歩けないだろう!歩くか大人しくしてるかどちらかにしてくれ!!」

茄子「ふふふっ♪おとなしくしてま~す!」ニコニコ

P「・・・そうしてくれ、それじゃあ歌鈴達の元に急ぐか。」

茄子「は~い!」

タタタ

12月31日 午後11:15 道明寺 本堂前

歌鈴「さ、さっきの夕ご飯で七福神様が来ているって言ってたけど、何処にいるんだろう・・・」キョロキョロ

歌鈴「Pさぁん・・・・早く来てぇ・・・」キョロキョロ

タタタ

歌鈴「ひゃっ!?」

大黒天「・・・」

歌鈴「だ、だだだ大黒様!?」

大黒天「・・・」

歌鈴(お、おおおお落ち着いて歌鈴!こ、こここ、こういう時はまず説得よ!)

歌鈴「あ、あ、あの!だ、大黒様っ!泥棒なんかしちゃダメです!お、大人しくお縄についてくださいっ!」

大黒天「・・・」

歌鈴「え、えっとぉ~?」

大黒天「・・・・・・」

歌鈴「う、うぅ・・・」

大黒天「・・・・・・・・・」ペコリ

歌鈴「・・・ふぇ?」

大黒天「・・・」クルッ

タタタ

歌鈴「あ!ま、まま、待って下さいっ!」

大黒天「・・・!」クルッ

歌鈴「え、えっと・・・ど、どどど、どうしよ~っ!」アタフタ

タタタ

P「歌鈴!」

茄子「歌鈴ちゃ~ん♪」

藍子「歌鈴ちゃん!」

歌鈴「あ、皆!・・・って茄子さん!?何でお姫様だっこされてるんですか!?」

P「歌鈴、無事・・・って大黒天!?」

茄子「あ、本当に大黒天様そっくりですっ!」

藍子「・・・Pさん、歌鈴ちゃんの質問にも答えてあげて下さい。」

P「わ、わかった。歌鈴、俺が茄子をだっこしているのは彼女がぎっくり腰を・・・あだだだだ!?」

茄子「ぷーろーでゅーさーぁ!?」ギリギリ

P「だ、大体あってるだろう!?そ、それよりそこの大黒天!歌鈴に狼藉を働いていないだろうな!?もしそうなら、ただじゃあおかないぞ!」

大黒天「・・・」

P「お、おい!そこは何か言うところだろう!?」

大黒天「・・・」

歌鈴「あ、あのPさん!その人は悪い人じゃないんですっ!」

P「・・・どういう事だ?」

茄子「えっと、泥棒さんじゃないってことですか?」

藍子「その・・・わからないけど悪い人じゃないんですっ!」

茄子「え、えっと?」

藍子「ごめんなさい、よくわからないです・・・」

大黒天「・・・」

P「・・・ひょっとして。茄子、降りてくれ。」

茄子「は、はいっ!」

P「・・・」サラサラ

茄子「プロデューサー?」

P「ほい、おっさん。」スッ

大黒天「・・・」カキカキ スッ

P「ありがとう。・・・ふんふん、やはりそうか!」

藍子「あの、どういうことですか?」

P「三人共、この人は『ろう者』だ。何らかの理由で耳が聞こえない人なんだよ。」

藍子「あ、だから筆談を!」

茄子「プロデューサー、そう言う事なら任せて下さい!」

P「ん?任せるって、何を?」

茄子「私は手話も出来るんですっ!鷹富士茄子のかくし芸を篤とご覧あれ~♪」

P「そうか。じゃあ手始めにここに忍び込んだ目的を聞いてほしい。」

茄子「えっと、ここに来た目的を教えて下さい。」バババ

大黒天「・・・」サササ

茄子「なるほど、ここに来た理由は『歌鈴ちゃんに謝りたかったから』だそうです。」

藍子「わ、私にですか?」

茄子「はいっ!『一昨日の夜、怖い思いをさせてごめんなさい。』だそうです。」

大黒天「・・・」ペコリ

P「・・・思っていたより礼儀正しい人だな。本当にこいつは賽銭泥棒なのか?」

大黒天「・・・」サササ

茄子「えっと、後は『御賽銭箱を盗もうとしてごめんなさい、これから自首して罪を償います。』だそうです。」

P「・・・こんな礼儀正しい人まで泥棒しなければいけないとは、いやな世の中だな。」

茄子「本当ですねっ!」

藍子「あ、あれ?Pさん、大黒さんは『御賽銭箱を盗もうとした』って言ってませんでした?」

P「そ、そうだったっけ?でも、もしそうなら変だよな。茄子、大黒天はなんて言っていたっけ?」

茄子「はい、『御賽銭箱を盗もうとしてごめんなさい』って言ってましたっ!」

P「・・・茄子、盗みを働こうとした理由を聞いてもらってもいいか?」

茄子「はいっ!『なんでこんな事をしようとしたんですか?』」バババ

大黒天「・・・」サササ

茄子「・・・え?」

大黒天「・・・」サササ

茄子「う、うぅぅぅ・・・」グス

大黒天「・・・」サササ

茄子「う・・・うぇぇぇぇ・・・ぷろでゅーさぁー!」ポロポロ

P「ど、どうした?」

茄子「だ、大黒天様、可哀想です・・・お仕事もクビになって、でも病気の奥さんの為にまとまったお金が必要だからって・・・」ポロポロ

P「それで、賽銭箱を盗み出そうという事になったのか。」

藍子「でも、なんで道明寺の御賽銭箱なんでしょうか?」

茄子「・・・ぐす。なんでも、とあるお金持ちの人が道明寺の御賽銭箱を欲しがっているみたいで・・・」

P「大金と引き換えに盗みをしろって事か。大黒天のおっさん、そうなんだよな!?」

茄子「ぐす・・・っ」バババ

大黒天「・・・」コクコク

歌鈴「う、うちの御賽銭箱をですか!?ど、どどどど、どうして!?」

茄子「・・・」バババ

大黒天「・・・」サササ

茄子「え゛!?」

P「茄子、通訳。」

茄子「・・・依頼した人は『歌鈴ちゃんが毎日お掃除してる物だから、グッズとしてこれ以上貴重な物はない、ぐへへ。』と言っていたそうです。」

歌鈴「・・・ひぅ!?」

藍子「さ、寒気がしてきました・・・」

歌鈴「あ、あの・・・Pさん。」

P「どうした?」

歌鈴「こ、この人を許してあげてほしいです!」

藍子「すごく親切な人みたいですし、私も何とかしてあげたいです!」

茄子「プロデューサー!」

P「まぁ、お父様にも聞いてみないと駄目だろうけど、歌鈴が許すって言うならいいんじゃないか?」

歌鈴「ほ、本当ですか!?」

P「未遂とは言え実際の所は何も盗んでないし、情報提供してくれた事もあるから情状酌量の余地は十分あると思うぞ。」

歌鈴「よ、よかったぁ・・・」

P「・・・茄子、大黒天のおっさんに『依頼人と仲間、全員の素性を話せば見逃してくれるぞ。』って伝えてくれるか?」

茄子「・・・」バババ

大黒天「・・・」フルフル

P「何故だ?」

大黒天「・・・」サササ

茄子「『私に仲間はいません、全部一人でやりました。』だそうです。」

藍子「あの、Pさん。どう考えても・・・」

P「嘘だな。あんまり気は乗らないが、奥さんの件をネタに吐かせるかなさそうだな・・・」

藍子「そ、そんなの駄目です、そんな事したら!それって脅迫になってしまうじゃないですか!」

P「だから気が乗らないんだ。だけど、奴らを放置する事と天秤にかけた場合、どっちが優先されるかは明らかだろう?」

藍子「でも・・・」

歌鈴「あ、あの!私に任せてください!!」

P「歌鈴が・・・?」

歌鈴「は、はいっ!歌鈴にお任せあれですっ!」

P「・・・わかった。任せたぞ!茄子、通訳を頼む。」

茄子「頼まれました♪」

大黒天「・・・」

歌鈴「あ、あの・・・私にはお父さんがいるんです。」

大黒天「・・・」

歌鈴「・・・いつもは変な置物を買ってきたりしてお母さんに怒られてばかりなんですど・・・」

P(あれ・・・?なんだか悲しくなってきた・・・)

茄子「心当たりがあるからじゃないですか?『人の振り見て我が振り直せ』ですよ♪」

P「人の心を読まないでくれるか?」

藍子「二人共!」

P・茄「「はい・・・」」

歌鈴「それでも、いつも私の一番の味方でいてくれる大事なお父さんなんですっ!だから、お父さんが私の為に悪い事をして捕まったら悲しいです・・・」グス

大黒天「・・・」

歌鈴「だ、大黒様はとても優しいから、捕まったらきっと誰かが悲しみます!だから・・・」ポロポロ

茄子「よしよし♪よく頑張りましたっ!」

P「なぁ、大黒天のおっさん・・・」

藍子「大黒天さん!」

大黒天「・・・」サササ

茄子「『もし私に何かあった場合、妻の事を任せてもいいのなら・・・』だそうです。プロデューサーもちろんいいですよね?」

P「話してくれれば絶対そんな状況にはさせない。だから悪さをしている下手人共の情報を教えてくれ!」

茄子「・・・♪」バババ

大黒天「・・・」サササ

茄子「ふんふん、『仲間は全部で七人いる』そうですよっ!」

P「そうか。で、そいつらの居場所は?」

茄子「・・・」バババ

大黒天「・・・」サササ

茄子「『ここにきているのは四人だけで、残りは裏手の崖下で待機している』そうです。そう言えば、布袋様も裏手の崖の側にいましたね!」

P「なるほど、金目の物だけをそこから落とそうとしていたって訳か。問題はここにいる連中がどのくらい残っているかだが・・・」

藍子「えっと、私は恵比寿様を見ました。」

P「茄子は布袋を見たし、大黒天はここにいるよな。」

歌鈴「じゃ、じゃあ残りは一人ですね。誰でしょうか・・・」

毘沙門天「・・・俺だ。」

茄子「び、毘沙門天様!?」

大黒天「・・・!」

茄子「ど、どうかしたんですか!?」

大黒天「・・・!」バババ

茄子「え?『一番厄介な人が来た!』ですって!?」

毘沙門天「・・・恵比寿も布袋も連絡がつかないから不思議に思っていたが、テメェ裏切りやがったな!?」

歌鈴「ち、違いますっ!大黒様は悔い改めただけです!」

P「歌鈴の言うとおりだ、言葉は正しく選ぶものだぞ毘沙門天。ただでなくとも武神は脳筋扱いされる傾向にあるんだからさ。」

毘沙門天「う、ウルセェッ!!」

P「おっと、図星だったか?さて、お前は昨日ここらで悪さをしていた毘沙門天だな。」

毘沙門天「だったらなんだ?大人しく金目の物を差し出すかァ!?」

P「まさか。今年の悪事をここで精算してもらうのさ!助けてくれるとは思えないけど、神様にお祈り位はしたらどうだ?」

毘沙門天「抜かせ!!」

P「茄子、全員を連れて境内まで走れ!そして大黒天のおっさん、さっきの話を警察に伝えてくれ!」

茄子「プロデューサーは?」

P「コイツを折檻する。」

歌鈴「そ、そんな!」

藍子「危険です!」

茄子「・・・わかりました、懲らしめて差し上げなさい♪」

P「はっ!」

茄子「皆、行きますよっ!」

歌鈴「・・・大黒様、こっちです!」

タタタ

毘沙門天「行かせ「おっと!お前の相手はこっちだ!」チィッ!!」

P「言っただろう?折檻するって。大人しくしていれば痛い目には合わないぞ?」

毘沙門天「黙れ!もう容赦しねェ、テメェは俺の槍でボロ雑巾にしてやるッ!覚悟しろッ!!」

P「毘沙門天、一つ訂正しろ。」

毘沙門天「なんだぁ?謝るってんなら、もう遅せェぞッ!!」

P「その武器は槍じゃない。ここの神社の娘さんに教えてもらったんが、それは『宝棒』と言うらしいぞ?」

毘沙門天「いちいち細かいんだよッ!!」ブンッ

P「おっと。」ヒョイ

毘沙門天「このッ!ちょこまかちょこまかとッ!!」ブンッブンッ

P「よっと。」ヒョイ

------------------------------

毘沙門天「オラァッ!!」ブンッ

P「・・・」チラ

毘沙門天「余所見すんなッ!」ブンッ

P「む、危ない。」ヒョイ

毘沙門天「クソッ!」ブンッブンッ

P「・・・残り十五分か。時間稼ぎはもう十分だな。」

毘沙門天「だからどうしたッ!!」ブンッ

P「さて、茶番はこれで終わりにしよう。今のお前じゃ何時までやっても俺には勝てないからな。」ヒョイ

毘沙門天「な、何を根拠に言いやがるッ!」ブンッ

P「理由は・・・お前が元婦警のお姉さんより弱いからだッ!!」ガシッ

毘沙門天「な!?槍が・・・!?」

P「『宝棒』だ、ちゃんと覚えろ!」バキィ

毘沙門天「何!?」

P「くらえッ!」

ゴツン

毘沙門天「ぬぅぅ・・・」フラフラ

バタン

P「そもそも戦いに武器を持ち込んだ時点でお前の負けだ。『近接戦闘においては徒手空拳こそ最強』、とその人は言っていたぞ?」

12月31日 午後11:55 道明寺 境内

歌鈴「・・・Pさん。」ギュッ

茄子「大丈夫です、プロデューサーはすぐ来ますから。」

歌鈴「ほ、本当ですか?」

茄子「はい♪プロデューサは出来ない事を言いませんからねっ!」

藍子「あ、そうだ!茄子さん、歌鈴ちゃん。ちょっと出かけてきますね。」

歌鈴「え?」

茄子「はいっ♪早く戻って来て下さいね!」

藍子「わかりました!」

タタタ

P「おーい!」

歌鈴「あ、Pさん!」

茄子「プロデューサー♪」

タタタ

P「毘沙門天は懲らしめておいた。茄子の方はどうだ?」

茄子「はいっ!報告しておきました♪依頼人も泥棒も捕まるのは時間の問題だそうですよっ!」

P「それはよかった。後は大黒天のおっさんなんだが・・・」

茄子「歌鈴ちゃんの口添えもあって無罪放免でした♪それに鍵開けの能力を見込まれて再就職先も決まったそうです♪」

P「それは何よりだ。あれ、そういえば藍子は?」

茄子「えっと、藍子ちゃんは今・・・」

タタタ

藍子「歌鈴ちゃーん、茄子さーん!」

茄子「あ、来ましたっ!ってすごい荷物ですっ!!」

P「藍子、その荷物は持つよ。」ヒョイ

藍子「ふぅ、ありがとうございます!」

歌鈴「あの、藍子ちゃん。その荷物って?」

藍子「もうすぐわかりますよ♪」

歌鈴「もうすぐ?」

藍子「あ、Pさん。カウントダウンを♪」

P「よし来た。カウント5からスタートするぞ!」

歌鈴「・・・」

藍子「・・・」

茄子「・・・」

P「5、4、3、2、1・・・」

ゴーン・・・

ゴ-ン・・・

ゴ-ン・・・

茄子「あ、除夜の鐘ですねっ!ごわ~ん、ごわ~ん、ごわ~ん♪」

P「新しい年の始まりだな。」

藍子「はいっ!今年もよろしくお願いしますね♪」

歌鈴「よ、よろしくお願いしましゅっ!・・・うぇぇ、ドジしないって決めたのにぃ・・・」

P「ははは、少しずつでいいさ。それより茄子、それと歌鈴お誕生日おめでとう。」

藍子「お誕生日おめでとうございます、茄子さん、歌鈴ちゃん♪」

茄子「あ、憶えていてくれたんですね♪」

歌鈴「か、歌鈴感激です!」

P「それだけじゃないぞ、ちゃんとプレゼントも用意してある。」

茄子「本当ですか!?」

P「ああ、客間においてあるから後で渡すよ。」

藍子「ふふっ、そうだろうと思ってさっき取ってきちゃいました♪」

茄子「わぁ~!」

歌鈴「藍子ちゃんすごい!」

P「何の荷物だろうかと思ったがそういう事だったのか、俺も将来は藍子みたいな気遣いのできる奥さんが欲しいな。」

藍子「ふふっ、Pさんが良ければそれでもいいですよ♪」

歌鈴「ふぇ!?」ビクッ

茄子「・・・」プクー

P「お、おいおい。あんまりからかうんじゃ・・・痛い!?」

茄子「・・・」グリグリ

P「か、茄子さん。すっごく痛いんですけど・・・?」

茄子「ふんだっ!もうプロデューサーなんて知りませんっ!」プィッ

P「な、なんだかよくわからないけど、頼むから機嫌を直してくれよ・・・」アタフタ

藍子(Pさん、そういう時は・・・)ヒソヒソ

P(ん?ふんふん、そんな感じの台詞でいいのか?)ヒソヒソ

藍子(はい♪)ヒソヒソ

P「茄子。」

茄子「・・・なんですか?」

P「藍子も歌鈴も気遣いのできる女性だけど、俺は茄子ほど気遣いのできる女性はいないと思うぞ。」

茄子「え?えぇぇぇぇ!?」

P「何かおかしなことでも言ったか?俺は思ったことを言っただけなんだが・・・」

茄子「べ、別に何でもないですっ!・・・えへへ~♪」

藍子(Pさん、よかったですねっ!)ヒソヒソ

P(ああ、助かったよ。)ヒソヒソ

歌鈴「え、えっと。それでプレゼントってなんですか?」

P「そうだったな。じゃあ、藍子から渡してくれるか?」

藍子「はいっ!まず、茄子さんはコレです!」

茄子「わぁ、きれいな簪ですねっ!ありがとうございます♪」

藍子「それと歌鈴ちゃんにはコレです!」

歌鈴「わぁ♪可愛いリボンだ~!ありがとう、藍子ちゃん!」

P「じゃあ俺の番だな。まず、茄子にはコレだ。」

茄子「・・・これって何の箱ですか?」

P「開けてみるといい。」

茄子「は、はい。」ビリビリ

茄子「よいしょっ!」パカ

茄子「わぁ・・・♪」

藍子「こ、これってなんですか?」

P「振り袖用のコートだ。去年の初詣の時に寒いって言ってたからな、着物の上から着ても不恰好にならない防寒具を探してみたんだ。」

茄子「わ、私・・・すっごく嬉しいですっ!!えへへ~♪」

P「喜んでもらえてよかったよ。じゃあ、次は歌鈴のプレゼントだ。」ゴソゴソ

歌鈴「な、なんだか大きいですね!」

P「まぁ、大きさに反比例して軽いものなんだがな。さぁ、開けてみるといい。」

歌鈴「は、はい!」ビリビリ

歌鈴「え、えいっ!」パカッ

歌鈴「こ、これは・・・」

藍子「た、竹箒!?」

茄子「・・・プロデューサー!見損ないましたよっ!!」

P「な、なんでそこまで言われなくちゃならないんだ!?これは竹箒の職人さんに最高級の素材で作ってもらった一品ものなんだぞ!?」

茄子「なんでこんなものを大事な誕生日に贈るんですかっ!」

藍子「そうですよ、女の子の誕生日は貴重なんですよ!」

歌鈴「・・・」ポンポン

P「いやいや、歌鈴の趣味は『境内の掃除』だろう?なら、普段使うのに便利な物を送った方が喜ぶと思ったんだ。間違いではないだろう?」

茄子「だからって、いくらなんでも色気がなさすぎですっ!」

藍子「まったくですっ!」

歌鈴「・・・」サッサッ

P「だ、大体それは君たちの評価だろう?ひょっとしたら歌鈴には好評かもしれないじゃないか!」

茄子「いーえ、そんな事はありえませんっ!」

藍子「女の子が誕生日に竹箒なんか送られたら、千年の恋だって冷めちゃいますっ!」

歌鈴「・・・」フルフル

P「よーし!そこまで言うなら白黒つけようじゃないか。」

茄子「望むところですよっ!」

藍子「歌鈴ちゃん!」

歌鈴「は、はい!?」

茄子「正直に答えてくださいねっ!」

藍子「その竹箒をもらって、どう思いました?」

歌鈴「・・・か。」

茄子「か?」

歌鈴「か、歌鈴感激しましたっ!これならお掃除が今まで以上に捗ります!!」

P「そうだろう?軽くて扱いやすいし何より丈夫だからな!」

歌鈴「はいっ!ありがとうございますっ!」

茄子「すっごく、なっとくいかないです・・・」プクー

藍子「同感です・・・」

P「あ、それとこれはついでだ。」

歌鈴「わっ!茄子さんのと同じ大きさの箱ですね。」

茄子「むぅ・・・歌鈴ちゃんだけ二つですか?」

P「予算的には同じくらいだから許してくれ。」

茄子「まぁ、そう言う事なら・・・」

歌鈴「あ、開けてみます!」パカッ

茄子「こ、これって・・・?」

歌鈴「ち、千早です!」

藍子「ちはや?」

P「千早と言うのは巫女が神事や巫女舞の時に羽織る衣装の事だ。それは外見をそのままに防寒用として改良したものだけどな。」

茄子「でも何でそんなものを?」

P「765プロを代表する歌姫『如月千早』と同じ名前だろう。歌鈴も彼女のように素晴らしいアイドルになってほしいと願いを込めて用意させてもらったんだよ。」

歌鈴「ぴ、Pさん!歌鈴大感激です!!ありがとうごじゃいましゅっ!!」

P「どういたしまして。」

茄子「・・・プロデューサー、何でそっちを先に出さなかったんですか?」

P「え?」

茄子「どう考えても、そっちが本命ですよ!何で竹箒なんか先に出したんですかっ!!」

藍子「そうです!だからPさんはダメダメなんですよ!」

P「えぇぇぇぇ!?その言いようはひどくない?」

茄子「これでも足りないくらいですっ!」

藍子「本当です!丁度いい機会ですから洗いざらい聞いてもらいますよ!」

P「い、いやちょっと・・・」

茄子「問答無用っ!大体プロデューサーは・・・!」クドクド

P「え、あ、ちょっと!?藍子さん!?」

藍子「Pさん、黙って聞いてください!」

P「か、歌鈴!?」

歌鈴「え、えっと・・・ごめんなさい。」

P「そ、そんな~!」

茄子「プロデューサーっ!」

ギャーギャー

12月31日 午後11:55 道明寺 境内

P「あー疲れた。茄子と藍子のお説教やら何やらで、もう夜中の二時じゃないか!とっとと寝よ寝よ・・・」

P「そういえば七福神を書いた紙を枕元に忍ばせるといい夢が見れると聞いたが・・・」

P「・・・」

P「やめた!七福神は嫌になるくらい見たし、茄子の事を考えながら寝たほうがよっぽど効果がありそうだからな。おやすみ!」

バタ

P「Zzzzz・・・」

-----------------

?「社長・・・社長!」

P「へ?」

藍子「社長、目は覚めましたか?」

P「ん、藍子か?なんだ、その事務員みたいな恰好は?」

藍子「みたいな、ではなくて事務員です!ひょっとして、まだ目が覚めていないんですか?」

P「え?いや・・・ごめん・・・」

藍子「ふふっ・・・社長はプロデューサーの時から全く変わっていませんね。」

P「す、すまない・・・」

藍子「いいえ、そこが社長、いえPさんのいいところですから♪」

P「そ、そうか?」

藍子「では改めて本日のスケジュールを説明しますね、まず・・・」

P(・・・あれ?何でこんなことになったんだっけ?)

藍子「・・・その後は・・・」

P(確か布団に入って・・・あ、そうか。これは夢なんだな。)

藍子「・・・ちょう・・・しゃち・・・」

P(だが夢にしてはリアリティがありすぎないか?)

藍子「社長!」

P「あ!?ああ。大丈夫だ、問題ない!」

藍子「本当ですか?じゃあ、昼食後の予定を説明してください。」

P「・・・ごめんなさい、もう一度お願いします。」

?「もうっ!この人ったら相変わらず藍子ちゃんに迷惑をかけてばかりですねっ!」

藍子「茄子さん!」

茄子「おひさしぶりです、藍子ちゃん♪」

P「茄子?」

茄子「あなた。今日、お弁当を忘れて行ったでしょう?それなのに、何も連絡しないでお昼はどうするつもりだったの?」

P「え?いや・・・その・・・」

P(あなた?貴方?・・・この呼び方で普段と違う口調。ひょっとしなくても、その、アレだよな?)

茄子「あなた?」

P「あ、ああ。大丈夫だ!」

茄子「・・・本当に大丈夫?」

藍子「茄子さん、Pさんはさっきから上の空なんです。疲れているんでしょうか?」

茄子「そうですね。あなた、仕事が忙しくないなら家でゆっくりしたらどう?」

P「え、え~と・・・それは・・・」

藍子「今日は打合せもありませんからいいですよ♪」

茄子「やったっ♪さ、夫婦水入らずで過ごしましょうね~♪」

P(やっぱりかっ!これ本当に俺の夢なのか!?)

茄子「ささ、帰りましょ~♪」

P「わ、わかった。」

タタタ

歌鈴「あ、あのPさんという方はこちらに・・・?」

P「か、歌鈴?」

歌鈴「え?そちらの方は・・・?」

茄子「初めまして、私はPの妻の鷹富士茄子と申します。失礼ですが、どちら様でしょうか?」

P(歌鈴を知らない!?・・・なんだか嫌な予感が・・・)

歌鈴「わ、私は道明寺歌鈴と言います!ぴ、Pさんとはこ、恋人としてお付き合いさせて頂いています!!」

茄子「・・・あなた?」

P「お、俺はそんなの知らないぞ?」

歌鈴「う、嘘ですっ!昨夜はあんなに激しく愛してくれたのに・・・」

P「ブフーッ!?」

P(おいッ!これ俺の夢だろ!?どうなっているんだ俺の頭は!!?)

茄子「愛してって・・・あなた、どういうことなの!?」

歌鈴「Pさん!答えて下さい!」

P「待ってくれ!俺は・・・俺は・・・」

歌・茄「「Pさん(あなた)!!」」

P「俺は何もしていない――――――――――!!」

-----------------

ガバッ

P「はっ!?・・・夢、か。」

P「ふぅ、なんだが目が冴えてしまったな。」チラ

P「四時過ぎ・・・もうすぐ夜明けか、折角だしちょっと出るか。」

ガラ

P「うぉ!?寒い!」

トコトコ

藍子「あ、Pさん。あけましておめでとうございます♪」

P「あ、あけましておめでとう、今年もよろしく!それより、こんな朝早くにどうしたんだ?」

藍子「私は朝のお散歩です♪Pさんこそどうしたんですか?」

P「・・・実は夢見が悪くて眠れないんだ。散歩、付き合ってもいいだろうか?」

藍子「はい♪」

トコトコ

藍子「あの・・・夢見が悪かったって、どんな夢を見たのですか?」

P「・・・聞かないでくれ。」プィ

藍子「じゃあ、夢に茄子さんは出てきました?」

ドンガラガッシャーン!

藍子「だ、大丈夫ですか!?」

P「大丈夫じゃない・・・もうその話はしないでくれ・・・」

P(『初夢で担当アイドル同士の修羅場を見ちゃいましたテヘペロ☆』なんて口が裂けても言えるか!)

藍子「わ、わかりました!でも残念ですね。」

P「・・・何が残念なんだ?」

藍子「茄子さんが夢に出てきたなら、きっと今年はよい年になりますよっ!」

P「まぁ、鷹と富士と茄子だからな。縁起物そろい踏みだけど・・・」

藍子「だけど・・・」

P(いくら縁起物が出てこようと、初夢の中で修羅場を味わって来年がいい年になるとは思えないな・・・)

藍子「・・・Pさん?」

P(はぁ、去年は最後の最後にとんでもない事件に巻き込まれたしな。今年は初夢とは違って平穏無事であってほしい・・・)

藍子「Pさん!」ユサユサ

P「あ、ああ!すまない。で、どうした?」

藍子「それはこっちのセリフですよ!急に黙り込んでしまったので体調が悪いのかと思いました!」

P「し、心配するな。本当に大丈夫だか・・・」

タタタ

茄子「ぷろでゅーさーぁ♪」ギュー

歌鈴「え、えーい!」ギュー

P「ひゃぁぁぁぁ!?」

茄子「きゃぁ!?」

歌鈴「は、はわわわわ!?」

ドンガラガッシャーン!

藍子「み、皆さん大丈夫ですか!?」

P「いてて・・・」

茄子「あ、あの・・・ごめんなさい。」シュン

歌鈴「そ、そこまで驚かすつもりはなかったんです。」シュン

P「い、いや。大丈夫だ・・・それより、茄子と歌鈴は一緒にいたみたいだが、どうしたんだ?」

茄子「えっとですね、二人同時に目が覚めちゃいまして・・・」

歌鈴「それで、茄子さんが御来光を見に行こうって誘ってくれたんですっ!」

茄子「それと、藍子ちゃんも起きていたみたいだから一緒に誘おうと思ったんですけど、一緒にプロデューサーの姿も見えたので・・・」

P「・・・飛び込んできたのか。」

茄子「はい・・・」

P「・・・」

P(・・・はは、何をビクビクしていたんだ。所詮夢は夢だよな!歌鈴と茄子があんな事になるなんてありえないよな!)

茄子「あの・・・プロデューサー。大丈夫ですか?」

P「ああ、大丈夫だ!さて、茄子、歌鈴、それに藍子。早速だけど出発するぞ!」

茄子「え?行くって、どこに?」

P「御来光を見に行くんだろう?歌鈴、よく見える場所を知っているなら案内してくれないか?」

歌鈴「はいっ!それなら境内がいいと思います!ちょうど入口の方から日がのぼってくるんですよっ!」

P「それじゃあ、境内に移動だな。」

茄子「よーし!境内まで競争ですよっ!」

歌鈴「はいっ!」

歌鈴「負けません!」

タタタ

P(まぁ初夢みたいなのは死んでも御免だが。今年もこうして皆が笑顔で過ごせるなら、とんでもない事が偶にあっても悪くないのかもしれないな・・・)

茄子「プロデューサー、早く早くっ♪」

藍子「Pさん!もうすぐ日が昇ってしまいますよ?」

歌鈴「い、行きましょう、Pさん。」

P「ああ、今行くよ。」

年の瀬に起きた不思議な事件はこうして幕を閉じた。

俺はその後、彼女達の笑顔と同じ数だけ妙なトラブルに巻き込まれる事になるのだが・・・

それはまた、別のお話。

終わり

駄文失礼いたしました。
それと投稿詐欺について大変申し訳ありません。
確認してくださった方々、御足労を掛けまして申し訳ありませんでした!

最後に、ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます!

ここからは、この話の後日に起きたおまけを収録しておきます。
よろしければお付き合いして下さるとうれしいです。

おまけ『二十歳の勉強事情』

P「・・・」

ちひろ「プロデューサーさん、お仕事が進んでいないようですけど大丈夫ですか?」

P「あ、ちひろさん。すみません少し考え事をしていまして・・・」

ちひろ「プロデューサーにしては珍しいですね。でも、あんまり時間がかかるようでしたら誰かに相談した方がいいですよ?」

P「お気遣いありがとうございます。ですが、仕事は全部片付いているんですよ。で、ちょっと前々から気になっていた事を考えていまして・・・」

ちひろ「気になる事ですか?」

P「まぁ、今すぐ彼女達に影響するような話ではないと思いますけど、今後の事を考えると早いうちに片づけておいた方がいいのかなぁと・・・」

ちひろ「プロデューサーさん!そういう事こそどんなに小さなことでも話して下さい!それが大事かどうかは皆で決めるべきですよ!!」

P「そ、そうですね。すみませんでした・・・」ペコリ

ちひろ「反省しているなら話して下さい。ひょっとしたら話している中で解決策が見つかるかもしれませんよっ!」

P「わかりました。事の発端は年末年始の休みにあった雑談なんですけど・・・」

------------------------------------

ちひろ「『人を恋うる歌』ですか。」

P「ちひろさんはご存知でした?」

ちひろ「ええ、私は全文朗読させられましたからね。今でも一字一句間違えずに言えると思いますよっ!!」

P「それは素晴らしいですね!それで、茄子は『人を恋うる歌』を知っていたんですけど、藍子と歌鈴はそれだけでなく『与謝野鉄幹そのもの』を知らなかったようで、こっちに戻ってきた時に少し勉強を見てあげたんです。」

ちひろ「それはいい事だと思いますけど、それがどうかしたんですか?」

P「ええ、彼女達の学力は今のところ全国平均値を確保できていますけど、今後の事を考えると本格的に彼女達の学習サポートをしてあげた方がいいのかなと思いまして。」

ちひろ「確かに、アイドルはレッスンや営業で勉強する時間を持って行かれることが多いですからね。今後は仕事がたくさん入ってくる見込みですし、いい考えなのかもしれませんね!」

P「ですが、一人一人に家庭教師を付けられるほど、うちに財政余裕はありませんし・・・どうしようかと悩んでいるんですよ。」

ちひろ「何言っているんですか!プロデューサーさんがやるに決まっているでしょう!?」

P「お、俺達ですか!?」

ちひろ「幸にもうちの事務所のプロデューサーは全員理系・文系大学の卒業生ですし、それぞれの専攻分野も分かれています。ちょっと勉強すれば何とかなりますよ!」

P「な、なんとかって言われてもですね・・・」

ちひろ「プロデューサーさん!大切なアイドルの為ですよっ!一肌二肌喜んで脱げないで何が男ですかっ!!『六部の侠気、四部の熱』ですよっ!!」

P「・・・わかりました。一応皆にも話してみます。」

ちひろ「はいっ♪」

P「ま、まぁ学生組の方はそれでいいとして、問題は成人組です。」

ちひろ「そうですねぇ、今更学校に行くという訳にもいきませんしねぇ。」

P「ええ。何より最近は『バラエティで出演するアイドルは皆お馬鹿さん』といった風潮がありますから、ここで家庭教師など付けたら風潮が真実味を帯びてしまいます。」

ちひろ「プロデューサーさん達が勉強を見るというのは?」

P「手が足りませんよ。」

ちひろ「そこでコレの出番ですよっ!」スッ

P「スタドリでどうにかなるなら過労死と言う言葉は存在していません。いい加減にしないと怒りますよ?」

ちひろ「じょ、冗談ですよ冗談!と、とにかく実際に聞いてみたらどうですか?」

P「実際に聞く?」

ちひろ「はいっ!ちょうど茄子ちゃんと同じ二十歳のアイドルがレッスンや営業で事務所に着ています。そこでクイズっぽく問題を出して反応を見てはどうでしょうか?」

P「なるほど。それなら時間も取らせないで済みますし、バラエティの練習にもなりますね!ちょっと行ってきます!」

ちひろ「はいっ、いってらっしゃ~い♪」

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P「よう親友!少し時間をもらってもいいか?」

同期P「おうP!俺とお前の仲じゃないか、何でも言ってみろよ!」

P「実は、斯々然々・・・」

同期P「OKわかった!ちあきー!ゆきー!」

千秋「・・・何かしら?」

同期P「あれ、千秋だけか?友紀はどうしたんだ?」

千秋「友紀ならもうすぐ来るわ。それより何か用?」

同期P「ああ、千秋なら問題はないと思うが、今後バラエティ番組に出演する為の予行練習としてクイズをしてみようと思ってな。」

P「すまないが少しの間協力して欲しい。」

千秋「そういう事なら喜んで協力するわ。いつでもどうぞ?」

P「では問題!『六部の侠気、四部の熱』と言う歌詞が印象的な曲の名前は?」

千秋「六部の侠気?ひょっとして、与謝野鉄幹の『人を恋うる歌』かしら?」

P「流石は千秋、お手本のような解答だ。」

千秋「褒められる事ではないわ、このくらいは常識よ。」

同期P「俺の自慢のアイドルだから当然さ。お前のとこのなんちゃってクールアイドルとは格が違うんだよ格がッ!」

P「・・・テメェ!言っとくけど茄子はノリがいいだけで基本はクールなんだぞ!?せめてキュート系クールアイドルって言え!!」

同期P「何言ってやがる、それならパッションの藍子ちゃんの方がよっぽどキュート系クールアイドルじゃないか。お前のアイドルの属性、見直した方がいいんじゃないのかなァ?」ニヤニヤ

P「よろしい!ならば戦争だッ!!」クワッ

ギャーギャー

千秋「はぁ、全くこの人達は・・・」

友紀「千秋、おはよ~っ!」

千秋「おはよう友紀。朝から騒がしくてごめんなさいね。」

友紀「なになに、乱闘騒ぎ?ひょっとして、プロデューサーがPさんに向かって暴投でもしたの?」

千秋「ええ、過去最低の大暴投よ。友紀、来て早々申し訳ないけどお願いできる?」スッ

友紀「任されたっ!」ヒョイ

スパーン スパパーン

P・同期P「「痛ァ!?」」

千秋「頭は冷えたかしら?」

P・同期P「「はい・・・」

友紀「ん~今日も絶好調!」

P「あたた・・・随分と容赦のないケツバットだな。」

同期P「イタタ・・・野球関係の他にバラエティでも行けそうだろ?」

P「ああ、コレをやられる芸人さんに同情するよ。そういえば友紀にもクイズを出したいんだがいいか?」

友紀「いいよ!バッチこーいっ!!」

P「問題!『六部の侠気、四部の熱』と言う歌詞が印象的な曲の名前は?」

友紀「う~ん、キャッツの応援歌にそんな歌詞はなかったし・・・」

千秋「友紀、国語の問題よ。」

友紀「ええ~っ!?わからないよ~!!」

P「はい、時間切れ。罰ゲームとして与謝野鉄幹について勉強してくる事。」

同期P「よーし、友紀は後で千秋とマンツーマンでお勉強だな!」

千秋「そうね、ちょうどいい機会だし日本の文学をたっぷり理解してもらおうかしら?」

友紀「い~や~!プロデューサー、ちあき~ゆるして~!!」

P「じゃあ俺は先輩のところに行く。またな!」

同期P「ああ、またな!」

P「あ、そうだ千秋。一つお願いしたいことがあるんだけどいいか?」

千秋「何かしら?」

P「そこのお調子者もついでに指導しておいて欲しいんだ。頼めるか?」

千秋「そうね、私のプロデューサーを名乗るのならもっと教養が欲しいところだし、承るわ。」

同期P「え、ちょっ!?」

P「頼むよ、またな三人共!」

同期P・友紀「「この、ひとでなし~!!」」

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P「先輩!少しいいですか?」

先輩P「なんだい?」

P「実は、斯々然々・・・」

先輩P「なるほど、皆の教養レベルが知りたいという事だね。」

P「まぁ、そこまで高尚な目的ではなく単純な興味なんですけどね。」

先輩P「良い事じゃないか。知っていれば問題はないし、知らなければこれを機に勉強に取り組んでもらえるしね。」

先輩P「比奈!クラリス!ちょっといいかい?」

比奈「呼んだっスか?」

クラリス「プロデューサー様、一体どういった御用事ですか?」

先輩P「ちょっと二人にクイズの練習をしてもらおうと思ってね。」

比奈「いいっスよ。」

クラリス「プロデューサー様のお心のままに・・・」

P「問題!『六部の侠気、四部の熱』と言う歌詞が印象的な曲の名前は?」

比奈「わかったっス!」

P「早い!?ち、ちなみに俺にだけこっそり教えてくれるか?」

比奈(与謝野鉄幹の『人を恋うる歌』っスよね?)ヒソヒソ

P「正解。比奈も即答か・・・うちの事務所は才女ばかりだな。」

クラリス「六部の侠気・・・ですか。三部の侠気でしたらわかるのですが・・・」

比奈「菜根譚っスね、シスターらしい愛読書っス。」

クラリス「ふふ、比奈さんは博識ですねっ♪」

P・先輩P「「さいこんたん?」」

比奈「中国の道徳書っスよ。」

先輩P「ちゅ、中国の!?」

P「大丈夫かそれ!?」

クラリス「プロデューサー様、P様、見かけで判断してはいけませんわ。菜根譚は聖書にも匹敵する素晴らしい書物ですよ。」

先輩P「そ、そうなのかい?」

クラリス「はい、『人が人である為の道を守り、素直な心を持って生きなさい』と言う思いが、記された言葉の節々から伝わってくる、そんな素晴らしい書物ですわ♪」ニコニコ

先輩P「へ、へぇ~」ダラダラ

P「ほ、ほぉ~」ダラダラ

比奈「信用できないっスか?」

先輩P「クラリスが嘘を言うとは思えないけど・・・」

P「少なくとも俺のイメージではありえないな。」

比奈「昔は昔、今は今っス。日本だって昔は諸外国に向かってありえないくらいやんちゃしてた頃があったでしょ?」

先輩P「確かにそうだね。」

P「先入観で物事を捕えちゃいけないな・・・」

比奈「やれやれ、プロデューサー達こそ勉強が必要っスね。」

先輩P「うぐ!?」

P「否定出来ないな・・・」

クラリス「ふふっ♪教養は心を豊かにしますわ。皆様の人生に素晴らしき言の葉が共にありますように・・・」

先輩P「で、君の判定はどうかな?」

P「比奈は文句の付け所がありませんし、クラリスも正解ではありませんでしたが問題ないでしょう。」

先輩P「それはよかった。」

P「じゃあ俺は行きます。お時間ありがとうございました!」

クラリス「P様の行き先に幸がありますように・・・」

比奈「今度はもっと面白い問題をお願いするっス。」

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P「後輩、少しいいだろうか?」

後輩P「先輩?私が何か・・・?」

P「実は、斯々然々・・・」

後輩P「なるほど、わかりました。確かにそれは大事な事ですね!」

P「時間を取らせて済まないな、すぐに終わらせるようにするよ。」

後輩P「美世さん、洋子さん!」

美世「はーい!」

洋子「どうしたの?」

後輩「バラエティ番組に出演するにあたってクイズの練習を、と思いまして。」

美世「うん、いいよっ!」

洋子「よーし、頑張るぞっ!」

P「問題!『六部の侠気、四部の熱』と言う歌詞が印象的な曲の名前は?」

美世「六部の侠気・・・?」キョトン

洋子「四部の熱・・・?」キョトン

後輩P「・・・」

美世「プロデューサーさん、『きょうき』って何?」クイクイ

洋子「プロデューサー!侠気って体にいいの?」クイクイ

後輩P「・・・」ブワッ

美世「ぷ、プロデューサーさん!?だ、大丈夫?」ナデナデ

洋子「な、泣かないでよプロデューサー!」

後輩P「・・・せんぱい・・・」ポロポロ

P「安心しろ後輩。この子達の反応は普通だ、周りが悉く勉強しすぎなんだ。」ポンポン

後輩P「・・・」ピク

P「大体、この問題も正解したのは千秋と比奈だけだ。殆どが知らないんだぞ?何もそこまで落ちこ・・・」

後輩P「・・・先輩。私は決めました。」ゴゴゴ

P「お、おう?」

後輩P「美世さんと洋子さんに日本の文学を徹底的に叩き込みます。ええ、憶えるまでは帰しませんよ!」ゴゴゴ

美世「ええ~っ!?」

洋子「そ、そんな~!」

P「い、いやだからな?」

後輩P「・・・折角です、先輩も付き合いますか?」ゴゴゴ

P「・・・ちょっと仕事があるんでな、悪いけどまた今度で。」

美世「ずるいっ!」

洋子「ひきょうもの~!」

P「まぁ頑張れ!骨は拾ってやるからさ!」

タタタ

美世「ま、待ってよ~っ!」

洋子「助けてよ~!」

後輩P「さぁ、まずは清少納言の枕草子からです!その次は紫式部ですよッ!!」

美・洋「「勘弁してぇぇぇぇ!!」」

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P「ふぅ・・・」

ちひろ「どうでした?」

P「問題が悪かったせいか余り正答率は芳しくありませんでしたね。」

ちひろ「そうでしたか・・・じゃあ、場所と日を改めて実施しないとですね!」

P「え?まだやるつもりなんですか?」

ちひろ「いいですか?統計と言うものは複数回実施した結果の平均をとるものです!一回きりの結果じゃ、参考になんかなりませんよ!」

P「・・・まぁその意見には一理ありますね。」

ちひろ「安心してくださいっ!今度は私がちゃーんと問題を用意しておきますから♪」

続く・・・かも?

これで本当にお終いです。
おつきあいくださいまして大変ありがとうございました!

後ほどHTML化依頼を出しておきます。

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