ミーナ「サーニャさんへチェック!」サーニャ「……///」 (234)

たったら、まったり

501JFWロマーニャ基地

執務室

ミーナ「………」カキカキ

ミーナ「………」

ミーナ「………」コト

ミーナ「…ふぅ」

ミーナ「……やめた。…少し休憩しましょう」スッ

ミーナ「……!(コーヒーがもう無いわ)」

ミーナ「…………(面倒くさいわね)」

ミーナ「…よいしょ」ガタ


カツカツカツ

ガチャ… バタン

ごめん、早速まちがえたz

カツカツカツ → ツカツカツカ

宿舎 食堂

美緒「……ズズズー…」


ツカツカツカ


ミーナ「…あら、美緒?」

美緒「ん? ……ミーナか」

ミーナ「どうしたのこんな所で?……ひとりでティータイムかしら?」

美緒「なに、少し考え事をな。…ミーナこそ腹でも減ったのか?」

ミーナ「違うわ。見てわからない? これよ」

美緒「……コップがどうした?」

ミーナ「んもぅ……コーヒーのおかわりよ」ツカツカ

美緒「? ……今日は執務室に篭っているんじゃなかったのか?」

ミーナ「あのね美緒…。篭るって言ったのは言葉の綾で……流石に外には出るわ」

美緒「いや、そうではなく。基地本部にも給湯所は有るだろう? わざわざ宿舎までを往復しているのか?」

ミーナ「ええ。 …私がやたらに出入りすると基地員達も休めないでしょうし、…歩けば気分転換にもなるわ」カチャカチャ

美緒「しかし茶一杯でこの距離は少々面倒ではないか?」

ミーナ「まあ……そうね。 ブリタニア基地の頃はまだ近くて良かったのだけれど…」

美緒「給仕でも雇うか?」

ミーナ「冗談言わないで」

美緒「わっはっは!」

ミーナ「……それより、美緒は何を考えていたの?」

美緒「ん?」

ミーナ「貴女が変に軽い時はいっつも何か隠してるのよね?」

美緒「おいおい、勘繰るな。 やましい事はないぞ」

ミーナ「あら、どうかしら…?」

美緒「本当だぞ? ……宮藤について少し思案していたんだ」

ミーナ「宮藤さん?」

美緒「うむ。震電の乗りこなしに今一歩苦戦しているようでな……特に接近戦での切返しと急旋回時に振り回されるきらいがある」

ミーナ「意外とピーキーな機体みたいね」

美緒「随分慣れはしたようだが、やはり技術的な未熟がたたっているな。……まだまだ手を焼きそうだ」

ミーナ「あらあら。 嬉しそうに言うのね?」

美緒「なんだ? 今日はやけに意地が悪いぞ?」

ミーナ「宮藤さんに嫉妬しちゃうわ」

美緒「おいおい」

ミーナ「うふふ、冗談よ? ……でも楽しそうな貴女を見ていると、少し羨ましく思うわ…」

ミーナ「…私も弟子をとろうかしら…?」

美緒「……ミーナ? 疲れているなら無理はするな」

ミーナ「…なんちゃってね。これも冗談よ」

美緒「……」

ミーナ「さて、私はもう行くわね。 夜まで動けないと思うから何かあったら執務室までお願いね」

美緒「ああ。夕食にはちゃんと顔を出せよ?」

ミーナ「もちろんよ」

ツカツカツカツカ


美緒「……ふむ」

さるたいさく

基地本部 廊下


ミーナ「……」ツカツカ

ミーナ(……やっぱり後輩の面倒を観るのって楽しいものなのかしら…?)

ミーナ(美緒は気質なんでしょうけど、シャーリーさんやトゥルーデも"あの2人"の世話に満更でもない感じだし……)ツカツカ



モブ兵「――!(うおっ!ヴィルケ中佐だ!)」

ミーナ「……」

モブ兵(……な、なんか難しい顔してんな。くわばらくわばら)

ミーナ「……」ツカツカ

モブ兵「っ……」ビシッ

ミーナ「ブツブツ……」


ツカツカツカ


モブ兵「…………何かあったのだろうか?(なんかブツブツ言ってたような…)」

ミーナ「もし……仮に弟子をとるなら誰がいいかしら?」ツカツカ

ミーナ(密かに目をかけていたのはリーネさん…)

ミーナ「……だけど彼女は501の解散後は除隊して復興支援をする意向だし…」

ミーナ「……しかも私生活に手のかかる余地も無いわ」ムム

ミーナ「……」

ミーナ(…少しお寝坊さんではあるけど…)

ミーナ「……でもどうなのかしら?プライベートに手を焼きすぎても、頭が痛いだけのような気がするけ―― !」ピタッ

ミーナ「あら、あれは…」


サーニャ「……」フラフラ


ミーナ(…足取りが危ういわね。 寝起き?

サーニャ「……」ヨロヨロ

ミーナ「サーニャさん?」

サーニャ「! ……?」クル

サーニャ「……ミーナ隊長…。…おはよう…ございます……」

ミーナ「おはよう。 どうしたの……ハンガーに何か忘れ物?」

サーニャ「ぁ……ぃぇ…」ヨロ

ミーナ「?」

サーニャ「ストライカーの調子が…少し気になって……」

ミーナ「サーニャさんのストライカーが?」

サーニャ「……はい…」ウトウト

ミーナ「……」

サーニャ「……」ウトウト

ミーナ「……私のでよければ、これ飲む? 少し苦いけど」

ミーナ「ここだとお行儀悪いからそこの部屋で座りましょう。…少し話も聞きたいわ」

サーニャ「…はぃ」


――――
――



ミーナ「なるほど。 少し右脚が咳き込むのね?」

サーニャ「……昨晩から急に気になったので、整備の人に聞いてみようと思って…」

ミーナ「昨夜の飛行中に何か異常はあった?」

サーニャ「えっと……問題は特にありませんでした。…でも、その…気になっちゃうんです」

ミーナ「静かな夜空をひとりで飛んでるんだもの。 仕方ないわ」

サーニャ「……」

ミーナ「とはいえ、集中を散らされるのは問題ね。 特にサーニャさんの任務においては重大だわ」

ミーナ「……それ、飲み終わったら整備班へ報告しに行きましょう」

サーニャ「…ぇ?」

ミーナ「……あら? 何か変な事言っちゃったかしら?」

サーニャ「ぁ、いえ……ミーナ隊長はお忙しいのに…いいんですか?」

ミーナ「気にしなくていいのよ。 私が言えばすぐに見てもらえるし……それにね?」

ミーナ「…今はあんまりやる気が出ないの♪」

サーニャ「……!?」キョトン

ミーナ「うふふ。 内緒よ?」

サーニャ「…はい。 ありがとうございます…」コクコク

サルタイサク

その後

執務室


ミーナ「……」カキカキ

ミーナ「……」ペタン

ミーナ「……」コト

ミーナ「………やだ、終わっちゃったわ…!」

ミーナ「……」ペラペラ

ミーナ「見落としもないし、……まさか夕方に終わるなんてね」

ミーナ「……こんな事ばかり上達して…はぁ…」ガクッ

ミーナ「……」

ミーナ「……」

ミーナ「……」

ミーナ「………デスクワークに追われていないとやる事が無いなんて悲し過ぎるわ…」ギシ

ミーナ「……」ガラッ

ミーナ「……」ジー

ミーナ(偶にはスコアでも並べようかしら…)

ミーナ「……」

ミーナ「……」ヨイショ


――――
――



ミーナ「……」コト

ミーナ(ラスカーの詰め方はユニークね……より俯瞰して展開を見ないと読めないわ)

コッ……コッ…


ミーナ「……?(…何かしら?今物音が…)」


コッ……コンッ


ミーナ「!(あ、ノックだったのね!?)」

ミーナ「ご、ごめんなさい! …誰かしら?」ワタワタ

『あの……サーニャです…』

ミーナ「あら、サーニャさん? どうぞ入って頂戴」

『失礼します…』


ガチャ パタン


サーニャ「……」トテトテ

ミーナ「…どうかしたのかしら?」

サーニャ「あの……コーヒーをいただいたお礼に、ココアを淹れたんですけど…」スス

ミーナ「あら!私に…?」

サーニャ「どうぞ…」

ミーナ「まあ、ありがとう! …ここまで持って来るの大変だったでしょう?」

サーニャ「…いえ //」

ミーナ「書類も片付いてひと息ついていた所だから丁度良かったわ。 いただきます」スッ

ミーナ「……」コクン

サーニャ「……」

ミーナ「……まだ温かいし、すごく美味しいわ!」

ミーナ「それに……ん~、なんだか品のある香り。 …シナモンかしら?」

サーニャ「はい。 …前にエイラが淹れてくれて、とても美味しかったので」

ミーナ「紅茶に入れた事はあったけどこれは初めてねぇ」

ミーナ「ん……」コクコク

サーニャ(喜んでくれた……よかった…)

サーニャ「……」チラ

サーニャ「!」ピク

ミーナ「…?」

サーニャ「……(チェスだ…!)」

サーニャ(確か…ポーン? …ポーンが音符の形で可愛い…)ジー

ミーナ「…サーニャさん、チェスわかるの?」

サーニャ「ぇっ! ぁ…い、一応は……」オドオド

サーニャ「昔、お父様からルールを習いましたけど……その時以来触った事はありません」

ミーナ「そうなの…」

サーニャ「……」

ミーナ「……私もね、特に興味があるわけでも無かったんだけど。 …戦略研究のつもりで始めてみたら、いつの間にか馴染んじゃって」

サーニャ「……ミーナ隊長、上手そうですよね…」

ミーナ「そんな事ないわ。…こんな風に他人のスコアを並べるだけで、私もあまり人とやることはないの」

ミーナ「……私が執務室にこんな物を持ち込んでるなんて、多分誰も知らないわ」ウフフ

サーニャ「……」

ミーナ「…………ねぇサーニャさん? 今、時間は空いてるかしら?」

サーニャ「ぇ? ……はい」

ミーナ「折角だから私とやってみないかしら? チェス」

サーニャ「!」


――――
――



サーニャ「……………」スッ

ミーナ「……」

サーニャ「…………」コト

ミーナ「…おしいわね」スッ

ミーナ「チェックメイト」コト

サーニャ「ぇ…?………あ!」

ミーナ「うふふ」

サーニャ「…な、なんで?」

ミーナ「ごめんなさい。 実はここの所の形には定石があって、…サーニャさんは私の3手前で詰んでたのよ」

サーニャ「3手前……」ジー

ミーナ「えぇっと……この形ね?」カチャカチャ

サーニャ「……」

ミーナ「サーニャさんは4手前でこうしたけど、キングから見てここと…この位置が塞がれているとそれは悪手なのよ」

サーニャ「…………でも、こう行けば…」コト

ミーナ「その場合も……」コト

サーニャ「……」コト

ミーナ「……」コト

サーニャ「………ぁ」

ミーナ「…こういう事よ?」

サーニャ「……じゃあ4手前に…?」

ミーナ「最適解かは自信無いけど、こっちを動かせば良かったんじゃないかしら?」コト

サーニャ「……難しいですね。 すみません、これじゃあ相手になりませんよね…」

ミーナ「何を言ってるのよサーニャさん。 今の勝負は単純に知識の差よ?」

ミーナ「むしろ初めてのプレイでこれだけ出来る方が驚きだわ…!」

サーニャ「……そう…なんですか?」

ミーナ「おかげでとても楽しめたわ、ありがとう」

サーニャ「……はい。…私も楽しかったです」

ミーナ「うふふ、サーニャさんがよければまた相手を頼めるかしら?」

サーニャ「はい」

夕食後 ミーティング室


ミーナ「……ふぅ」トスン

ミーナ「……」

美緒「――ん? …今日はもう休めるのか、ミーナ」スタスタ

ミーナ「美緒…。 貴女はお風呂いいの? 皆行ったわよ?」

美緒「私は食事前に済ませた。……そういうお前も、せっかく時間があるなら入ってきたらどうだ?」

ミーナ「そうね…後でゆっくり浸かるわ」

美緒「…あまり遅いと露天はかえって身体を冷やすぞ?」

ミーナ「その時はサウナにするわ。 ……ねぇ美緒?」

美緒「ん? なんだ?」

ミーナ「宮藤さんが初飛行でネウロイと交戦した時……あなたどう思った?」

美緒「…何だ、急に?」

ミーナ「なんとなくね、気になったの」

美緒「……そうだな、あの時はあいつの力を信じて賭けたが…正直かなり驚いた。 いきなりストライカーで飛び出して来た事も含めて」

ミーナ「随分危なっかしかったみたいね。 ……不安だった?」

美緒「いや、それ以上に楽しみに心踊ったな。 こいつは期待できる…鍛え甲斐のある奴だとな」

美緒「まぁーその時点ではまだ入隊の承諾は得ていなかったんだがな。 はっはっは!」

ミーナ「……同じね…」

美緒「? 何がだ?」

ミーナ「ふふっ、ないしょ!」

美緒「おいおい、その言い草では気になるぞ?」

ミーナ「だめよ、まだ秘密」ウフフ

美緒「…やれやれ、今日の中佐は本当に意地が悪いな」フゥ

数日後 夕方前


執務室

ミーナ「……」ペタン

ミーナ「……」コト

ミーナ(…終わった…)

ミーナ「……」

ミーナ(最近デスクワークの処理速度が随分上がったわね…)

ミーナ「このまま明日に廻した分もやっちゃおうかしら……?」チラ


ズズーン ←書類の山


ミーナ「……やめた」

ミーナ「……」ガサガサ

ミーナ「……」トントンッ


ペラッ


ミーナ「?」


パサッ


ミーナ「……この間のサーニャさんとのスコア(をメモしたいらない書類…)!」

ミーナ「やだ、ずっとしまい忘れてたの?」ペラ

ミーナ「……」ジー

ミーナ(…サーニャさん、強かったわね。 定石を知らない分戦術面では劣った筈なのに)

ミーナ(中央の支配も堅実で、序盤のアドバンテージは取られているわね…)

ミーナ(あくまでチェスの戦術を知らないだけで、…ルールをよく理解して彼女なりの戦略が機能しているわ)

ミーナ「ん~、これはもしかすると……」スッ

ミーナ「…!(あら、もうコーヒーないのね)」

ミーナ「……」

ミーナ「よいしょ…」ガタッ






宿舎 廊下

ミーナ「……」ツカツカ

ミーナ「珍しく静かね…」

ミーナ(宮藤さん達は美緒と訓練。…トゥルーデとフラウは非番でクリスさんの御見舞い)

ミーナ(シャーリーさんは確かハンガー。 ルッキーニさんも……一緒にいるか寝てるかね)

ミーナ「……サーニャさんは部屋にいるかしら?」

エイラ「――おーい!」タッタッタ

ミーナ「! ……エイラさん」

エイラ「中佐ー!」

ミーナ「…丁度良かったわエイラさん、サーニャさんは部屋にいるかしら?」

エイラ「……なんだよ~、中佐もサーニャ探してるのか?」

ミーナ「という事は部屋にはいないのね…」

エイラ「私が洗濯してるうちにどっか行っちゃったんだ」

エイラ「一緒にタロットやった後サウナに入ってから夕食を仲良く食べて、食休みに少し談笑してから手を繋いで一緒に夜空を飛ぼうと思ったのに~」モヤモヤ

ミーナ「…結構な予定だけど、今日の夜間飛行の申請出てませんよ?」

エイラ「…………あっ!」ガーン

ミーナ「……」

エイラ「……えっとミーナ中佐 、お願いなんだけど…」ウヘヘ

ミーナ「…体調に問題なければ、夕食までに申請書を提出して頂戴」ハァ

エイラ「うぉ 、ありがとう中佐 !」

ミーナ「希望するのは構わないから、忘れずに申請してね?」ピシッ

エイラ「おう!」

ミーナ(不安だわ…)

エイラ「…ところで、中佐はサーニャに何の用なんだ?」

ミーナ「え…?」

ミーナ「ん~そうねぇ……」

エイラ「……」

ミーナ「内緒♪」

エイラ「…えっ!?」ポカン

ミーナ「うふふ」

エイラ「おい、なんだよそれ!? 気になるぞ! サーニャに何すんだ中佐!?」アセアセ

ミーナ「~♪」ツカツカ

エイラ「あっ!おい、待ってくれぇー!!」

基地本部 廊下


ミーナ「……あら?」

サーニャ「……」ヨロヨロ

ミーナ「サーニャさん!」

サーニャ「…ぁ……ミーナ隊長…」グッタリ

ミーナ「大丈夫? なんだか弱ってるけど…何かあったの?」

サーニャ「すっ……ストライカーのエンジンが…気になって…」

ミーナ「またなの!? ……一度オーバーホールした方が良さそうね」

ミーナ「でも今ハンガーへ行くのはやめた方がいいわ!」

サーニャ「はい……シャーリーさんがエンジンテストしていました…」

ミーナ「あ…やっぱりもう行ってきたのね。 それでこんな…」

サーニャ「……へ、平気で…す」ヨロ

ミーナ「……取り敢えずこっちへいらっしゃい」

執務室


ミーナ「落ち着いた?」

サーニャ「はい。…すみません、またコーヒーいただいちゃって…」

ミーナ「いいのよ。 惰性というか習慣で淹れてきただけだから」スク

ミーナ「……でも、そうねぇ。 …じゃあ代わりと言ってはなんだけど」ツカツカ

サーニャ「?」

ミーナ「……」ガラッ

ミーナ「……」ガタ

ミーナ「また、どうかしら?」


――――
――

ミーナ「……」

ミーナ「……」コト

サーニャ「……!」ピクッ

サーニャ「………」

サーニャ「……………っ」

ミーナ(やっぱり……局面は見えてもまだひとつひとつの読みが浅いわ。 なかなか思うようにいかないって顔してるわよ?)ウフフ

サーニャ「~っ……」グヌヌ

ミーナ(ふふっ……かわいいわね)アラアラ

サーニャ「………」

サーニャ「……(どうしよう)」

サーニャ「えっと…(こうきて…こうきて……それから…)」

サーニャ「………」

サーニャ「……」スッ

サーニャ「……」コト

ミーナ「うふふ」

サーニャ「!」ビクッ

ミーナ「……サーニャさん? 私が今ある一手を打てば、貴女は詰んでしまうのだけど…分かるかしら?」

サーニャ「……ぇ?」

サーニャ「……?………??」ジー

ミーナ「…ナイトをここへ」コト

サーニャ「………?」

サーニャ「…これ、終わってるんですか……?」

ミーナ「自分の中で少し先まで動かしてみて?」

サーニャ「……(えっと…)」

サーニャ「………」ウーン

サーニャ「……………ぁ!」

サーニャ「…ぇ?……でも…(こうやれば…?)」

ミーナ(……うふふっ)ニコニコ

サーニャ「……」

ミーナ「…どうかしら?」

サーニャ「はい…多分、ムリです…」

サーニャ「……負けました…」シュン

ミーナ「あらあら、そんなに気落ちする事ないわ? …ここを読み切るのはなかなか難しいし」

サーニャ「……」

ミーナ「……この前もそうだったけど、序盤は中々良かったと思うわよ? けど中盤以降は必ず後手になってしまっているわね」

サーニャ「…はい。 思うような形にならなくて…」

ミーナ「何故だかわかる?」

サーニャ「ぇ!………えっと…私が下手だから…?」

ミーナ「違うわ、もっと具体的」

サーニャ「…………」

ミーナ「……短期的な戦闘技術が無かったからよ」

サーニャ「短期的…?」

ミーナ「サーニャさんは局面がよく見えていて、私が大局的に裏をつく事は殆どできなかったわ」

ミーナ「…恐らく自分なりに戦略目標も見えていたんだと思う。 けどそれを達成するための"腕力"が無かったから徐々に押し切られてしまったのよ?」

サーニャ「……(なるほど…)」

ミーナ「…まぁルールを理解しているとはいえ、経験が無いんだもの……仕方ないわ」

ミーナ「戦略と戦術は相互関係にあるから、戦術を覚えればサーニャさんの戦略センスもより冴えるわね!」ピッ

サーニャ「……(確かに…ここが取れてれば……きっとこうなって…)」スッ

サーニャ「……」カチャカチャ

ミーナ(あらあら…)ウフフ

ミーナ「……どうかしらサーニャさん?」

サーニャ「ぇ? …は、はい」ピタッ

ミーナ「…少し、私と学んでみない?」

サーニャ「! ……はい、…やってみたいです」

ミーナ「そう、よかったわ! …丁度これぐらいには今後時間が取れるようになると思うから、また一緒にやりましょう?」

サーニャ「…はい」

ミーナ「あ! それと、もしよければ……」スク

ミーナ「えーっと……」ツカツカ

ミーナ「ああ、ここだわ。 ……この辺りにスコアや定石が乗った文献もあるから、好きな物持って行っていいわ」

サーニャ「わぁ…!」テテテ

サーニャ「……」キョロキョロ

サーニャ「…!(資料に混じって…音楽書もある)」

サーニャ(チェス盤もそうだし……この部屋、さりげなくミーナ隊長の遊び心があるんだ…)

サーニャ「……」グイ

ミーナ「…上の方で取りたい物あったら言ってね? 梯子もあるから」

サーニャ「あの…ミーナ隊長?」

ミーナ「なぁに?」

サーニャ「関係無いんですけど……これもお借りしていいですか…?」スッ

ミーナ「あら! 見つかっちゃったわね」

ミーナ「……好きに読んで頂戴。 その音楽史の本は読みやすくてお勧めよ?」

サーニャ「ありがとうございます(やった…!)」

ミーナ「……」チラ

ミーナ「………サーニャさん、少し手を見せてもらえるかしら?」

サーニャ「えっ? …手…ですか?」キョトン

ミーナ「ええ。 さっきのチェスの時から気になってたのだけど…いいかしら?」

サーニャ「…はい……」スイ

ミーナ「……」ジー

サーニャ「……」

ミーナ「…かわいい手ね?」

サーニャ「ぇ…?///」ドキ

ミーナ「……」ニギッ

サーニャ「ぁっ…///」ドキンコ

ミーナ「とっても小さいし…綺麗だわ…」サワサワ

サーニャ「……///」

ミーナ「なのにピアノはあんなに上手。 ……オクターブとかどうやって弾いてるのかしら?」マジマジ

サーニャ「ぁ…えっと……///」


バタンッ


エイラ「中佐ぁ!! まだいるよなっ!?? 申請書かいたぞ!」デデン

エイラ「……」

エイラ「…………あ?」

サーニャ「……エイラ…?」

ミーナ「…エイラさん、もっと静かに入って頂戴。 それとノックもね?」

エイラ「……な…」

ミーナ「……な?」

エイラ「なななななぁーーっ!!?」クワァー

エイラ「なにやってんだサーニャ!? こんな所でぇ!!?」

サーニャ「え? …なにって――」

エイラ「なんで中佐と手握って…か、顔を紅くしてたんだっ!? なんでちょっと艶っぽいんだ!?? ドキドキしゅるじゃないかぁ!!!」ダバダバー

ミーナ(……錯乱してるわね)

ミーナ「エイラさん落ち着いて。 ここは本部執務室よ?」

エイラ「ずっとここにいたのか!? 私が探してたのにぃ!? だから中佐は内緒ってぇぇえ!??」グニャー

サーニャ「違うわエイラ…!」

ミーナ「たいへん、変な誤解が発生したわ」アラアラ

エイラ「なぜだぁぁあ!サーニャぁぁあ !!」

ミーナ「ふぅ………」

ミーナ「……エイラさん、落ち着きなさい! 今夜の飛行許可出しませんよっ!?」

エイラ「っ!」ピタッ

サーニャ「エイラ…誤解よ」ススス

エイラ「……」

サーニャ「…エイラが私のこと探してたって本当に知らなかったの」

エイラ「……う、うん………そこは…まぁ……わかってる」

ミーナ(うぅーん、サーニャさんもちょっとズレてるわ…)ガク

ミーナ「エイラさん、安心して? サーニャさんには音楽書を貸すためにここへ来てもらったのよ」

エイラ「…じゃあなんで、あ…あんなことになってたんだよ?」ジト

ミーナ「ちょっと時間ができたからピアノのお話をしてたのよ。 その流れで手を見せてもらってただけよ?」

ミーナ「貴女が想像した様なことは一切ありません」

エイラ「……サーニャ見つけたなら私にも言ってくれよ中佐~…」ムー

ミーナ「貴女が申請書出しに来るはずだから、こうして2人で待っていたのよ……ね?」

サーニャ「ぇ?………えっと…はい」

エイラ「……そっか~。 全く紛らわしいぞ2人してぇ!」プンスカ

ミーナ「うふふ、ごめんなさい」

サーニャ(なんでちょっと誤魔化したんだろう……チェスは内緒なのかな??)

ミーナ「…エイラさん?」スッ

エイラ「ほい」ペラ

ミーナ「………はい、結構です。 今夜の哨戒任務への随行を許可します」

エイラ「やったー!」ヒャッホー

サーニャ「エイラ…睡眠大丈夫?」

エイラ「平気だ! 先に起きたけど私もサーニャと同じくらいまで寝てたんだからな?」

ミーナ「……さてと、そろそろ夕食の時間ね」

ミーナ「私は観測班と記録班に急用ができたから、2人は先に行って頂戴?」ピラ

サーニャ「はい…失礼します」

エイラ「ありがとなー、中佐」




次の日 午後

執務室

ミーナ「……」カキカキ


コッ……コッ…


ミーナ「……」カキカキ


…コッ


ミーナ「!」ピタ

ミーナ「……サーニャさんかしら?」

『…はい』

ミーナ「どうぞ、入って頂戴」

『……失礼します』


ガチャ パタン


サーニャ「……」トテトテ

ミーナ「おはようサーニャさん。 どうしたのかしら?」

サーニャ「あの……ぇと…」モジモジ

ミーナ「…?」

サーニャ「…こ、これなんですけど…」スッ

ミーナ「昨日の…! もう読んだの!?」

サーニャ「…ぇ?」

ミーナ「……熱心なのは嬉しいけど、ちゃんと睡眠は取らなくちゃダメよ? 」

サーニャ「……ぃゃ………あの…」

ミーナ「参ったわね。 夜まで寝かせた方がいいかしら…?」ブツブツ

サーニャ「あの…ミーナ隊長っ」トン

ミーナ「えっ?」ピク

サーニャ「…違うんです。その…さっき読み始めたんですけど、……ちょっと難しくて」

ミーナ「あら! …ごめんなさい、勘違いしちゃったわね。 私ったら」アセ

ミーナ「…でも、それそんなに難解だったかしら? サーニャさんなら問題なく読めるかと思ったけど…」

サーニャ「………その…で、できれば……チェスセットもお借りできたりしますか…?」

ミーナ「え?…………あっ!!」

ミーナ「そうよね!? ごめんなさいっ、ウッカリしてたわ!///」

ミーナ「え…え~っと、ちょっと待って頂戴?///」ガラッ

ミーナ「よいしょ……このチェスボード、少し重いけど大丈夫?」ゴトッ

サーニャ「はい……多分」

ミーナ「……」ガサガサ

ミーナ「………いけない、そういえば入れ物がないわ。 流石にこのままは……ピース(駒)もあるし」

サーニャ「…あの、…ここでやっても……」オズオズ

ミーナ「え…?」

サーニャ「……ぃぇ。ごめんなさぃ…」シュン

ミーナ「……そうねぇ。 こんな所でサーニャさんがよければ、…私は平気よ」

サーニャ「!」ピクン

ミーナ「うふふ。 特別ですからね?」ウィンク

サーニャ「…はい!」

――――
――



ミーナ「……」カキカキ

サーニャ「……」

ミーナ「……」カキカキ

サーニャ「……」スッ

ミーナ「……」ペタン

サーニャ「……」コト

ミーナ「……」ペラ

サーニャ「……」

サーニャ「…………」

サーニャ「……」チラ

ミーナ「……」ペラ

サーニャ「………」

ミーナ「……ふぅ」ガタッ


ツカツカツカ


サーニャ「……?」

ミーナ「ちょっと席を外すわね。 資料を取ってくるわ」

ミーナ「サーニャさんはそのままゆっくりしてて平気だからね? 誰か来ても出なくていいわ」

サーニャ「…はい」

ミーナ「貴女なら心配ないけど、机の物には触っちゃダメよ?」

サーニャ「…はい」


ガチャ パタン

サーニャ「………」

サーニャ(ミーナ隊長、ずーっと書類お仕事……大変そう)チラ

サーニャ「………」

サーニャ「…!(そうだ)」スク

サーニャ「……」テテテ

サーニャ「……」ジー

サーニャ(…もうほとんど無い)

サーニャ(今のうちに飲み物のおかわりを淹れておけば……)スッ

サーニャ「ぁ…!」ピタッ


(ミーナ『机の物には触っちゃダメよ?』)


サーニャ「………」

サーニャ「ぅ……」ガッカリ

サーニャ「……」

サーニャ「……」トテトテ

サーニャ「…………」トスン




それから数日後 午後


宿舎 食堂

サーニャ「~♪」カチャカチャ

芳佳「――あ! やっぱりサーニャちゃん起きてた!」テテテ

サーニャ「~? ……芳佳ちゃん」

芳佳「! …わぁーなんだか良い匂い!これって紅茶?」

サーニャ「うん……ペリーヌさんに色々教えてもらって。 茶葉も少し分けてもらったの」

芳佳「へぇ~! 綺麗な色だね?」

サーニャ「でも上手に入れないと、色は付いても味と香りが薄くなっちゃうみたい」

サーニャ「毎日淹れてるんだけどなかなか上手くできないの……」

芳佳「そうなんだ……でもサーニャちゃんが淹れたコレは良い匂いするし、美味しそうだよ!」

サーニャ「ありがとう…」

芳佳「…あ、そうだ! サーニャちゃんの分のお昼とっておいたんだけど…どうだった? 冷めて硬くなってなかった?」

サーニャ「うん。 美味しかったよ、ありがとう」

芳佳「…サーニャちゃん前までは早朝とお昼過ぎに寝てたのに、最近はこの時間に起きてるよね? 朝ごはんも一緒だし」

サーニャ「うん…。 夜間哨戒から帰って来て、それから今ぐらいまで寝るようにしたの」

芳佳「へー。 何かあったの?」

サーニャ「……」モジ

芳佳「…あ、ごっごめん! 別に無理に言わなくていいよ!」ワタワタ

サーニャ「ううん……実は、少し楽しみができたの」

芳佳「…へぇ~! 新しい趣味とか?」

サーニャ「…うん。 そんな感じかな…」

サーニャ「今は教えてもらってるんだけど、夜中とか朝に暇なのは私だけだから…」

芳佳「サーニャちゃん、偉いね!」

サーニャ「ぇ…そんなこと……///」カァ

芳佳「ねえ、今度私にも教えてよ?」

サーニャ「あ…うん。 じゃあ私が自分の道具を揃えたらやろう?」

芳佳「わぁーい! 約束だよ?」

サーニャ「うん」

サーニャ「……じゃあ、そろそろ行くね?」カチャ

芳佳「あっ、うん。ごめんね、引き留めちゃって」

サーニャ「じゃあまたね、芳佳ちゃん」

芳佳「またねー、サーニャちゃん!」

サーニャ「……」ススー


トテトテトテ

芳佳「…楽しみだな~」

芳佳「………あれ? そういえば何するのか聞いてないや!?」

芳佳「…エイラさんの事だからタロットかな…? 占いとか…」ムー

エイラ「――! ……おい宮藤?」スタスタ

芳佳「あ、エイラさん!」

エイラ「サーニャを見なかったか? ここんとこ毎日この時間から見なくなっちゃうんだよな~」

芳佳「……え? あれ?」

エイラ「? …どーした?」

芳佳「エイラさん。 今、部屋から来ました?」

エイラ「おお」

芳佳「あれぇ? …ここに来る間に会いませんでしたか?」

エイラ「からかってんのか? 見てないから宮藤に聞いてるんだぞー?」

芳佳「……じゃあ違う人の所に行ったんだ。 …私てっきりエイラさんなのかと……そうするとサーニャちゃんの新しい趣味って何だろ?」ムムー

エイラ「おい、サーニャの居場所知ってんのか?」

芳佳「え? …えっと、多分」

芳佳「さっきここでお茶を2杯淹れていきましたから、誰かの所へ持って行ったんじゃないかと思いますけど…」

エイラ「……何だって?」ピク

エイラ「…………」

エイラ「!」キュピーン

エイラ「……まさか…」ガクガク

芳佳「エイラさん?どうかしたんですか?」

エイラ「……む」

芳佳「……む?」

エイラ「むぁああぁあ!! サーニャの純血がぁぁあ!!!」クワァ

芳佳「っ!?」ビクッ

エイラ「まままっ!また艶っぽいサーニャがぁあっ!!! ………まった!…そ、それも良いかも…?」ゴクリ

エイラ「……ダメだ!違うっ!! サーニャは真っ白なんだ!!汚れを知らないんだ!!! た、例えそうなってもその時は私が……わた…わたしが…」グニャー

芳佳「え…エイラさん……? あの~…」

エイラ「うわぁぁああ!! 私の知らないサーニャがぁあぁああ!!?!」ダバダバ

芳佳(どうしよう、変なスイッチ入ってる…………魔法で治るかな?)

エイラ「わぁあぁあ!! サーニャぁあああ!!!」

芳佳「……エイラさん! 頭をこっちに出してください!!」フィィイン ピョコ

エイラ「ぬぁああ!! 今直ぐ助けるぞぉお! サーニャー!!!」

芳佳「今直ぐ治療しますから!! エイラさんっ!!」

エイラ「ぶぉぉおおおお!!!!」ダダッ

芳佳「あ! 待ってください!! 私の魔法で頭を…」

エイラ「うぉぉおおお!!!」ダダダ


ゴチンッッ


エイラ「ぎゃふんっ!」ドテッ

芳佳「エイラさん!?」シュルル

美緒「……何を騒いどるか、お前達」

芳佳「坂本さん!?」

エイラ「いてて……しょ、少佐…?」サスサス

芳佳「あ、戻った…!」

美緒「いくらなんでも騒ぎすぎだ。 主にペリーヌから苦情が出ているぞ?」ジロ

芳佳「す、すみません…」

美緒「…宮藤、こっちに来い」

芳佳「……は、はいっ」テテテ


ゴチンッ


芳佳「あぶっ!!」

芳佳「…う~……」サスサス

美緒「…2人とも基地外周コースを10周だ」

芳佳(うぅ…今日は折角非番だったのに……リーネちゃんごめん)シクシク

美緒「……返事はどうした?」

芳佳「はっ、はいぃっ!!」

エイラ「…ま、まってくれ少佐!? 私はサーニャを助けに――」アワアワ

美緒「20周がいいか?」ゴゴゴゴ

エイラ「う゛っ…!」

美緒「つべこべ言わずに急げっ!!!!」

本部 執務室

ミーナ「……」カキカキ


コッ……コッ…


ミーナ「……サーニャさんね? 入って平気よ」

『…失礼します』


ガチャ パタン


サーニャ「あの…紅茶を入れて来ました」スッ

ミーナ「いつも悪いわね。 気を使わせちゃって…」

サーニャ「いえ…毎日お邪魔してますし……色々お借りしてますし」

ミーナ「……ありがとう。 いただくわね」カチャ

ミーナ「……」コクン

ミーナ「…あら?(今日は上手に淹れてあるわ! 良い香りに豊かな甘みね)」

サーニャ「……」ドキドキ

ミーナ「……今日のミルクティーは特に美味しいわ」

サーニャ「!」パァア

ミーナ「……」カチャン

ミーナ「…今日はちょっと処理することが多くて、まだ時間がかかるからゆっくりしていて?」

サーニャ「はいっ…!」

サーニャ「……♪」トテトテ

サーニャ「ぇっと……」ジー

ミーナ「うふふ…(すっかり居着いちゃったわね。 チェスに触る他に、本も持ち出さずにここで読んでいく様になっちゃって)」

サーニャ「…!(あった)」スイ

サーニャ「……♪」テテテ

ミーナ(…サーニャさんは静かだし、見ていて私も和むから特別ね)ウフフ

ミーナ「……さてと」

ミーナ「……」カキカキ

――――
――



数時間後

サーニャ「……」コト

ミーナ「………」スッ

ミーナ「……」コト

サーニャ「……」スッ

サーニャ「……」コト

ミーナ「…………」

ミーナ(…驚いたわ。 この子、今日も随分上達してるのね…)

ミーナ(短期的な攻め合いが互角になってきて、サーニャさんの手が中盤以降にも伸びるようになってきてるわ…)スッ

ミーナ「……」コト

サーニャ「……」スッ

ミーナ(序盤に昨日までの勢いは無かった様だけど……何か考えてるのかしら?)チラ

サーニャ「……」コト

ミーナ(……今日は大局の読み合いかしらね?)


――――
――



サーニャ「……」

サーニャ「……」コト

ミーナ「……」

ミーナ「……………」

ミーナ(……なにかしら? この奇妙な感じ)スッ

ミーナ(…攻めも守りもいまいち決め切れない。 ……どころか上手く切り返されるし、誘いへの乗りも悪いわ)コト

サーニャ「……」スッ

ミーナ「…!(まさか全部読まれてる? ……そんな)」

ミーナ(未来を視てる訳じゃないんだから……ましてやここまで複雑に読み切るのは熟練者の経験が無いと無理だわ)

サーニャ「……」コト

ミーナ「………(ここまでもつれ込んでも悩まず打ってるの…?)」ピク

ミーナ「……(なにか、おかしいわね?)」スッ

ミーナ「……」コト

サーニャ「……」スッ

サーニャ「……」コト

ミーナ(……ずっと緊張してるわね…?)

ミーナ「……」ジロ

サーニャ「……」チラ

ミーナ「……」ジー

サーニャ「っ……」ドキドキ

ミーナ「…………!(もしかして私がっ…!?)」ハッ

ミーナ「っ…(しまったわっ! 何で今まで気づかなかったのかしら!? )」スッ

ミーナ(……今更打ち方を変えてなんとかできるかしら…!?)

ミーナ「……」コト

サーニャ「!(ぇ……こっちが入ってきた?)」

サーニャ「………(どうしよう…知らないのだけど)」

サーニャ「……(こ、ここまで来れば…)」

サーニャ(………勝ちたい!)ムン


――――
――

サーニャ「……チェックメイト…です」コト

ミーナ「………参ったわ」ハァ

ミーナ「…ついに負けちゃったわね。 おめでとうサーニャさん」

サーニャ「~っ!///(や、やった!)」パァア

サーニャ「…ありがとうございますっ!」

ミーナ「うふふ。 急にどうしたのかと驚いたけど、まんまと乗せられてたみたいね?」

サーニャ「……やっぱり…気づいていたんですか…?」

ミーナ「終盤でようやくね。 テンポは良いのに貴女が随分と慎重に打ってたから気付いたけど、…遅すぎたわね」

サーニャ「……」

ミーナ「序盤に勢いが無かったのも、劣勢を餌にして私を誘ったのね? 私に"自分の打ち方"をさせるために」

ミーナ「好調な出だしを取れた……と言うより取らされた私は、自分の筋に迷いなく打ち続ける…」

ミーナ「でもそれは、今日までの連戦で研究を重ねたサーニャさんにとっては最も読みやすい……いわば"知ってる問題"だったということね?」

ミーナ「私は貴女がマスタークラス並に広い読みを発揮したのかと錯覚したけど、実際に読んでたのは今日まで私がやった2~3筋」

ミーナ「だからサーニャさんは内心いつイレギュラーが起こるかハラハラしてた……」

ミーナ「……と、私の推測はこんな感じだけど。 どうかしら?」

サーニャ「…はい……すみませんでした」シュン

ミーナ「あらあら、そんな悲しい顔しないで? 謝る必要なんてないのよ!?」ポム

ミーナ「サーニャさんの初勝利、とても素敵だったわ」

サーニャ「ミーナ隊長…」

ミーナ「私は盤上を見ていたけど、サーニャさんは人も見ていた。 …私はこの1戦を見ていたけど、サーニャさんは今日までの連戦を見ていたの」

ミーナ「より広くて柔軟な貴女の戦略が、今日の結果を生んだの!」

サーニャ「私が…?」

ミーナ「(美緒はこういう時…)見事……て言うのかしらね? おめでとう」ニッコリ

サーニャ「…はいっ///」


ギュッ


サーニャ「あっ…///」

ミーナ「ごめんなさい……でも、なんだか私もとっても嬉しくて…」

サーニャ「……」

サーニャ「……ありがとうございます、ミーナ隊長…」





その時

基地外周


タッタッタッタ


エイラ「――っ!?……ぜぇ…はぁっ……さ、サーニャ!!?」キュピィィイン

芳佳「…はぁ…ひぃ……へっ…?」ゼェゼェ

エイラ「ぜはっ……やばいっ…サーニャがあぶっ……危にゃい…ぜぇっ…!」グワングワン

芳佳(?? …どうしよう、エイラさんまた発作が…。 やっと10周目なのに)ガーン

芳佳「はぁふ……え、エイラさん…また坂本さんに……怒られちゃいますっ…から……けほっ!」

エイラ「サーニャは……わらっ…わたひぎゃ……わた…はぁっ…」

芳佳「えっ……エイラさ…ぜぇっ……」

エイラ「うわぁあぁああっ……っ!ゴッホゲェホッ…!!」

芳佳「はぁっ……ふぅ…っはぁ…(サーニャちゃん助けて~!!)」

その夜

基地ハンガー


ゴォォオ


ミーナ「オーバーホールしたてだけど、大丈夫そうね?」

美緒「ああ。 うちの整備も流石に優秀だな」

美緒「サーニャー!! いけそうかー!?」


サーニャ「…はい、問題ありません」ゴォォオ


美緒「エンジン音で何を言ってるのか全く聞こえんぞっ!!」

ミーナ「『大丈夫です』って言ってるわ、美緒?」

美緒「……お前聞こえるのか?」

ミーナ「なんとなくわかるのよ」ウフフ

美緒「ほう…」ニヤリ

ミーナ「な、なに……? 大丈夫よ整備士長も問題ないって言ってたし」

美緒「…いや、なんでもない」

ミーナ「なにそれ? 気になるじゃない!」


ガザッ


『こちら管制。 発信進路、電波共にクリア! いつでも出れます』

美緒「お呼びだ、中佐」

ミーナ「もう!……了解」

ミーナ「サーニャさーんっ!」


サーニャ「……」チラ


ミーナ「……」グッ


サーニャ「……」コク

サーニャ「…サーニャ・リトヴャク、これより夜間哨戒へ発進します」ゴォォオ


ガシャン

ブゥゥウン


ミーナ「……」

美緒「……あまり無理をさせるなよ? 見たところウィッチの任務に支障はないようだが」

ミーナ「…えっ?」

美緒「なんだ? 違うのか?」

ミーナ「違うって……何が?」

美緒「サーニャを秘書にして"愛でて"いるんじゃないのか?」

ミーナ「っ!! ちょっと、なによそれ!?///」

美緒「基地員達の噂になってるぞ? 毎日、甲斐甲斐しく茶を酌んで執務室を訪れるサーニャを見るそうだ」

ミーナ「!!」ギクッ

美緒「それで耳を澄ますと、時折2人の"楽しそうな声"が聞こえるとかで――」

ミーナ「!! …………ぇ!???」

美緒「……まぁ、なんだ? あまり感心はできないが、…サーニャの同意を得ているなら私からは――」

ミーナ「まっ、まってぇ美緒!!! 誤解!! 誤解ですっ!!!///」アワアワ

美緒「しかし、さっきの以心伝心はやはりキマシt――」

ミーナ「そんなわけ無いでしょっ!!?///」ズイ

美緒「…では、どういうわけなんだ? お前の為に茶を持って行ってるのは私も知ってるぞ?(エイラも騒いでいるしな)」

ミーナ「それは……その。 ちょっとチェスの相手をしてもらってるだけよ? 別にやましい事なんて…//」

美緒「チェス? ……ああ、欧州将棋か」

ミーナ「…それ他所で言うと怒られるわよ?」

美緒「盤上で王将を取り合うんだろ? 同じではないか!」ワッハッハ

ミーナ(違うわ……)

ミーナ「……初めは私の我侭に付き合ってもらってたの」

ミーナ「そしたら本人も居心地良かったみたいで……最近では私の暇を待つ間も執務室で本を読んでるわ」

ミーナ「毎日紅茶を淹れてくれるのも、彼女なりのお礼なのよ……」

美緒「なるほどな。 まぁサーニャはああいう奴だから、普通に上官と打ち解けているならむしろ喜ばしいことだ」

ミーナ「そうよ、…もぅ! だいたい、なんでそんな荒唐無稽な噂…」

美緒「はっはっは! まぁ男子軍人集まればそういう話も出るさ、娯楽の一種だ! あまり酷く叱ってやるな」

ミーナ(美緒ってこんなに大人だったかしら……?)ビックリ

ミーナ「…随分と基地員事情に詳しいわね、坂本少佐?」

美緒「ああ、501の構成員には施設班を始め扶桑海軍兵も多いしな。 それと私やシャーリーは基地本部の給湯所もよく利用するから、その際の談話で聞いたりもする」

ミーナ「…シャーリーさんはハンガーにいることが多いし、貴女はこっちの仕事や訓練でも来るものね……」ハァ

美緒「まあな。 ルッキーニも菓子をねだりによく来るそうなんだが、私が叱っておいたから大丈夫だろう」

ミーナ「ああ、もぅ……(結成当時まで規律水準戻そうかしら?)」グッタリ

美緒「そうそう、先ほどの言葉もそこで習得したんだ! えっと、キマ――」

ミーナ「それは俗語よ美緒っ!! 忘れなさい!」

美緒「そうか? せっかく覚えたのだが…」ムゥ

ミーナ(純朴ってこうして汚されていくのね。 ……エイラさんの気持ちがわかったわ)アタマイタイ

美緒「しかし本当に給仕を雇うとは驚いたぞ? 冗談だったんだがな」ワッハッハ

ミーナ「……その給仕とか秘書とかって言うのも誤解よ! さっき言ったでしょ?」

美緒「すまんすまん、この前のお返しにと少しふざけ過ぎたな」ワハハ

ミーナ「もうお相子でいいわ……」

ミーナ「……」

ミーナ「………でも、私は本気だったかも…」ボソ

美緒「…なに?」

ミーナ「……あの時、弟子をとろうかって言ったでしょ?」

美緒「とるのか…!?」

ミーナ「………誘ってみようかなって…」


美緒「……キ――」

ミーナ「やめてっ!」


美緒「うむ……ミーナが弟子とはなぁ」

ミーナ「……美緒が宮藤さんに期待するのとはまた違う形だけど、あの子も将来多くを助けてあげられるウィッチになると思うの」

ミーナ「今回のことでその才能を感じたわ」

美緒「ミーナの跡継ぎとは……名誉と苦労の抱き合わせだな」

ミーナ「ふふっ、なぁにそれ? 別にまだ決まったわけじゃないわよ?」

美緒「………無理強いはダメだぞ、ミーナ?」

ミーナ「……ええ、わかってるわ」

次の日 午後


執務室

ミーナ「……」カキカキ


コッ……コッ…


ミーナ「……入っていいわ」

『…失礼します』


ガチャ パタン


ミーナ「いらっしゃい。 今日はいつもより早く片付きそうよ?」

サーニャ「はい…」ススッ

ミーナ「ありがとう」カチャ

ミーナ「……」コクコク

ミーナ「…サーニャさんのおかげですっかりミルクティーが気に入っちゃったわ」ウフフ

ミーナ「仕事中はコーヒーじゃないと物足りなかったのに、…こんなに軽くて飲み応えのある紅茶があるなんて知らなかった」

サーニャ「……もう葉が無くなりそうなので、よければ同じ物を買ってきます」

ミーナ「あら、もう? やっぱり美味しいから皆飲んでるのね」

サーニャ「ぇ、えっと………はい…」

ミーナ「ん…、おかげでまだ頑張れそうだわ」カチャ

ミーナ「…それじゃぁ、もう少し待っていて頂戴ね?」

サーニャ「はい」


――――
――



ミーナ「……さてと」トスン

ミーナ「今日はサーニャさんが白だったわね?」

サーニャ「はい、よろしくお願いします」ペコ

ミーナ「……ねぇ、サーニャさん?」

サーニャ「?」

ミーナ「私がチェスを始めた理由、…覚えてるかしら?」

サーニャ「? はい。……戦略研究のためって…」

ミーナ「そうね。…うふふっ、こんなゲームと戦争が同じなわけ無いけど――」

ミーナ「例えばこの盤上を今、私達の戦場に例えると……少し違って見えてくるのよ」

サーニャ「……」

ミーナ「そうねぇ~、ちょうど色が同じだから…黒がネウロイ。……そして白が私達ウィッチ」トンッ

ミーナ「海上戦という設定でポーンは洋艦、なんて考えたこともあったわね。 …うふふ、笑っちゃうでしょ?」

サーニャ「……いえ」

ミーナ「あくまでチェスだし……ひとりで弄ってたから、そういうのも偶には面白かったりするのよね…」

サーニャ「……」

ミーナ「…」チラ

ミーナ「なんてね? …ごめんなさい、始めましょうか」

サーニャ「…はい」


――――
――



サーニャ「っ…………」

ミーナ「……」

サーニャ「………」タジタジ

ミーナ(サーニャさんは本当に素直ね。 私の意図を知ってか知らずか、すっかり"その気"で打ってるわ)

サーニャ「……」

サーニャ「っ……」スッ

サーニャ「~っ……」

ミーナ(随分怯えてるようね。 …でもそれで良いのよ、サーニャさん?)

サーニャ「……」コト

ミーナ(…ごめんなさいね。 ちょっと試させてもらうわ)


――――
――



サーニャ「…………」

サーニャ「っ…」コト

ミーナ「……(すっかり弱腰、…昨日までの強さは見る影も無いわ)」スッ

ミーナ(………たとえ想像でも、初めて"戦争の指揮"を執ってるんだから無理もないわよね)

ミーナ「……」コト

サーニャ「……」

サーニャ「…………………」スッ

サーニャ「…」コト

ミーナ「……(準備できたわ。 …少し気が引けるけど、ごめんなさいね)」スッ

サーニャ「…!(キング?)」

ミーナ「……」コト

サーニャ「!?」

ミーナ「……(サーニャさんがこのチャンスを生かす方法は"ひとつ"しか無いけど……?)」チラ

サーニャ「っ…!」ピクッ

ミーナ(多分気付いてるわね)

サーニャ「…………(ど、どうしよう)」

サーニャ(ミーナ隊長、…もしかしてわざと……なんで…?)

サーニャ「……」

サーニャ(…今なら勝てるけど……でも…)

サーニャ「っ……(でも…っ!)」ギュッ

サーニャ「……」スッ

サーニャ「…………」コト

ミーナ「っ!」ピクッ

サーニャ「………」

ミーナ「……サーニャさん?」ジロ

サーニャ「………は、はい…」

ミーナ「どうしてチェックメイトしなかったのかしら?……気付いてたんでしょう?」

サーニャ「……」オドオド

ミーナ「あなたがこっちを出せば、コンビネーション〈※駒の犠牲を払う戦術〉の形でチェックメイトできたはずよ?」

サーニャ「………」

ミーナ「どうしてかしら?」

サーニャ「…………」

ミーナ「こたえなさい」

サーニャ「っ…」ビクッ

ミーナ「……」

サーニャ「…………」

サーニャ「……わ、私の所為で死なせる…なんて……でき…ま…せん」フルフル

ミーナ「…ここを逃せば、後に多くの駒を取られるかもしれないわよ?」

サーニャ「……でもっ…わたし…っ…」

ミーナ「……今この戦いの命題は キングを墜とすこと。 貴女も駒も、そのために戦っているのよ?」

サーニャ「……がぃ……す…」ボソ

ミーナ「……」

サーニャ「…ち……ちがいますっ!」

ミーナ「……なにがかしら?」

サーニャ「わ…私は……私達は――」

ミーナ「……」

サーニャ「皆をまっ…まもる為に戦ってま…す……っ」ウル

ミーナ「……」

サーニャ「ぅっ……グスッ…、ごめん…なさぃ……」シクシク

ミーナ「……(いけない、やり過ぎかしら…)」スク

ミーナ「…サーニャさん」スッ

サーニャ「ひっ……!」ビクッ


ポン

サーニャ「っ………?」

ミーナ「……ごめんなさい」ナデナデ

サーニャ「……?」

ミーナ「…貴女みたいな仲間を持てて、私は本当に誇らしいわ」

サーニャ「……グスッ…。…ミーナ隊長…?」

ミーナ「意地悪してごめんなさい? 貴女がどう答えるか知りたかったの…」

ミーナ「…その、泣かれちゃうとは思わなかったから……」ゴソゴソ

ミーナ「本当にごめんなさい…」スッ

サーニャ「ん……い、いぇ…私の方こそ…」グシグシ

ミーナ「私もまさかあそこまで本気で入り込んじゃうとは思わなかったから、…ちょっとだけビックリしちゃったわ」

サーニャ「…///」

ミーナ「うふふ。その素直な所も、貴女の良い所よ?(ちょっとだけ心配だけど)」

サーニャ「そ、そんなこと……//」モジ

ミーナ「……」

ミーナ「…………さてと。 それじゃあ私の番だったわね」

サーニャ「…ぇ?」

ミーナ「……」

ミーナ「………サーニャさん」

サーニャ「ぇ……はい…」

ミーナ「…その………っ」

ミーナ「………」モジ

サーニャ「…………?」

ミーナ「……(らしくないわ、私っ…)」ゴクリ

ミーナ「…指揮官を目指してみない?……私の下で」

サーニャ「ぇ…!?」

ミーナ「貴女には才能があるの。 局面を正当に評価する目と大局を見るセンス……なにもマインドスポーツだけで使える物じゃないわ」

ミーナ「固有魔法だって私と同じ……いいえ、私以上に戦場の俯瞰視に長けているのよ?」

サーニャ「……わたしが…?」

ミーナ「サーニャさんの才能はこの先の戦いで多くの仲間を導く力になるわ」

ミーナ「私が、今度はウィッチの指揮戦術を教えてあげる…!」

サーニャ「……」

ミーナ「……」スッ

サーニャ「…!」

ミーナ「…」コト

サーニャ「………」

サーニャ(……キングを前に…? …でも、これ…私の番で取られちゃうんじゃ…?)

ミーナ「…貴女がよければ、ヴェネツィアのネウロイを掃討後に私が大尉昇進を推薦するから……501解散後は私の"参謀"として付いて来て欲しいの!」

サーニャ「っ!!?」ビックリ

ミーナ「一緒に欧州を取り戻しましょう……きっと貴女の御両親を見つける近道にもなると思うし、護ってあげる事にだってなるわ」

サーニャ「ミーナ隊長……」

ミーナ「…さあ。 貴女の番よ、サーニャさん?」

サーニャ「……………」

ミーナ「……取るかどうかは、あなたの自由よ?」

サーニャ「………」

サーニャ「………」






サーニャ(…お父様……お母様…)









サーニャ(……………エイラ…)

 

サーニャ「………」スッ

サーニャ「……」ピタッ

ミーナ「っ!」

サーニャ「…………」

サーニャ「……」スス

サーニャ「………負けました」ペコリ

ミーナ「っ……」ギュ

サーニャ「……」

ミーナ「…………そぅ…」

サーニャ「……すみません。 私…約束したんです…。 一緒に探すって…」

ミーナ「……」

サーニャ「その……だから…」シュン

ミーナ「…。 あらあら」ニコ

サーニャ「!」

ミーナ「分かっているわ。 貴女がこのキングを取れない事も」ウフフ

サーニャ「…ミーナ隊長……」

ミーナ「どお? 今日は私の勝ちよ?」

サーニャ「……」

ミーナ「サーニャさんもまだまだねぇ~!」ウフフ

サーニャ「ぅ………ごめ…なさっ…」グスッ

ミーナ「あらやだ、どうしたの? 折角拭いたのにまた泣いちゃって…」アラアラ

サーニャ「…はぅ……うっ…」ポロポロ

ミーナ「……」

ミーナ「……ありがとう、サーニャさん…」

サーニャ「…~っ……」


――――
――

ミーナ「それじゃあ悪いけど、宮藤さん達に夕食に着くのは遅れるって伝えておいて頂戴?」

サーニャ「はい…」

ミーナ「食器の片付けまで頼んじゃってごめんなさいね?」

サーニャ「い、いえ…。 ……あの…?」

ミーナ「大丈夫よ……早く行きなさい。 夕飯が冷めちゃうわよ?」

サーニャ「………はい。 失礼しました」トテトテ


ガチャ パタン


ミーナ「……」

ミーナ「……………優しい子ね、…本当に」


ガチャ


ミーナ「…!」ピク

美緒「…失礼するぞ?」パタン

ミーナ「美緒……!」

美緒「……ふられたな?」

ミーナ「……」

美緒「…まあ、こればかりは仕方ない。 本人の意思だからな」スタスタ

ミーナ「……聞いてたの?」ジト

美緒「馬鹿を言え、見張りだ。 あんな所また誰かに聞かれでもしたら困るんだろ? ましてや訪ねて来る奴がいたら水をさすからな」

ミーナ「…貴女はデリカシーは有るのに不器用すぎよ……まったく」

美緒「ふっ……今日のお前ほどではないと思うがな?」

ミーナ「……」

美緒「……」

ミーナ「……」

美緒「……ショックか?」

ミーナ「…………そうね」

美緒「……」

ミーナ「……美緒は…」

美緒「ん?」

ミーナ「…宮藤さんが除隊したとき、不安じゃなかったの?」

美緒「不安…?」

ミーナ「愛弟子が……ウィッチを辞めるのよ? 貴女の手を離れて」

美緒「別に無いな」キッパリ

ミーナ「……」

美緒「必要とされればあいつは飛ぶさ、たとえ誰が止めようともな? そういう奴だ」

美緒「ネウロックの一件や今回の再結成……そういえば初飛行の時もそうだったな?」ワハハ

ミーナ「……」

美緒「……"力のある者は最もその力を必要としている場所に導かれる"」

ミーナ「それって……?」

美緒「私の勧誘文句だ。 ……使ったのは1度くらいだが」

美緒「…大丈夫だ。 サーニャにその力があるなら、いずれそうなる日が来るさ」

ミーナ「……」

美緒「それが私達、ストライクウィッチーズだろ? ミーナ隊長」

ミーナ「…そう……ね」

美緒「なんだ? やっぱり悲しいのか?」

ミーナ「………ほんのちょっとよ…」

美緒「ふむ……」

ミーナ「……」

美緒「……」

ミーナ「…嘘ね……結構悲しわ…」

美緒「……ミーナ」スタスタ

ミーナ「ぅふふ……ふふっ…。 …もう二度と来てくれないかしらね?」フフフ

ミーナ「変なこと言ってあの子を困らせて……結局、隊の風紀を乱しただけ…」

ミーナ「はは…。 何をやっているのかしらね? 私…」ケタケタ

美緒「よせミーナ」グイッ

ミーナ「っ!」

ミーナ「…み…ぉ……」

美緒「すまん……悪かった」

ミーナ「っ……~美緒ぉ!」バフッ


ギュッ…


ミーナ「…うっ……ぅくっ…」

美緒「安心しろ。 もう何も聞かんし、何も見ない」

ミーナ「………ぁあああ…っ」ポロポロ

数日後


執務室

バルクホルン「――以上で報告は全部だ」

ミーナ「お疲れ様。 被害無く倒せたようで安心したわ」

バルクホルン「そうでもない。 少佐とミーナがいないだけでこうも私が苦労するとは……」

バルクホルン「コアを探すのも手探りだし、なにより隊の締まりがいまいちだ」

ミーナ「ごめんなさい。 坂本少佐は出張でいないし、戦力的にトゥルーデとシャーリーさんに率いてもらう方がよかったから…」

バルクホルン「しかし今回はミーナの作戦に助けられたが、…私とあいつで共同指揮など絶対に噛み合わん!」フン

ミーナ「そう? あなた達2人にしか実行できないと判断したから、私が残ったんだけど?」ウフフ

バルクホルン「そっ…それは戦力の都合だと今自分で言っただろ、ミーナ!?//」

ミーナ「あら、そうだったかしらね?」スッ

ミーナ「……」コクコク

バルクホルン「まったく……ん?」

ミーナ「? …どうしたの?」

バルクホルン「いや、ちょっとな。 ミーナがこの頃紅茶にハマっていると先日耳にしたんだが、…やはりコーヒーのようだな?」

ミーナ「……前の話よ? 自分で淹れても美味しくならないもの」

バルクホルン「……なんだか知らんが、…アレは私の勘違いか」

ミーナ「アレって?」

バルクホルン「昨日の買出しでサーニャが茶葉を探していたんだ。 それがまた随分と貴重な物だったので、卸し屋にまで足を運ぶこととなったがな」

ミーナ「……なんですって…!」

バルクホルン「ミーナの話も出ていたし、3月摘みの葉に拘っていたようだからてっきりミーナへの土産なのかと思ったが」

ミーナ「3月って………えっ!(私の誕生月…?)」

バルクホルン「まぁ私やハルトマンではなく、サーニャがミーナの誕生日を知ってるのは考え難いしな」

バルクホルン「………そういえばサーニャと宮藤は同じ誕生日だったな? 去年は一緒に祝ったが――」

バルクホルン「――まて? 確かあと1ヶ月半ほどじゃないか…? しまった! 急いでプレゼントの準備を……!!」

バルクホルン「買出しの翌日に気づくとは、なんと間の悪いっ……!! ミーナ! 報告は済んだから私は失礼するぞ?」

ミーナ「え? ええ、ご苦労様…」キョトン

バルクホルン「どうする……予算に心配は無いがやはり値段の問題では…――」ブツブツ


スタスタスタ

ガチャ バタン


ミーナ「……」

ミーナ「……」

ミーナ「……はぁ」

ミーナ「……」ガサガサ

ミーナ「……」

ミーナ「……」カキカキ


コッ…


ミーナ「……」カキカキ


……コッ…………コンッ


ミーナ「!……誰かいるの?(トゥルーデ?)」

『……ぁ…』

ミーナ「?」

『………あの…サーニャです…』

ミーナ「…えっ? サーニャさん!?」

『…紅茶を……淹れたんですけど…』

ミーナ「…!」

『よかったら…ぁの…』

ミーナ「……」

『…その……』

ミーナ「………うふふっ」ガタ


ツカツカツカ

 

『…えっと――』


ガチャッ


サーニャ「――ぁ……!」

ミーナ「……いただくわ」ニコ



おわり?










(・×・)<マテ!もうちょっとだけ続くんだナ

【エピローグ】 ~春摘みのアッサム~


ある日の買出し

ローマ市内 某雑貨店

シャーリー「おおっ、マジだ! 本当にレンチも置いてる!」

ルッキーニ「ね? あたしの言った通りでしょー?」

シャーリー「前来た時は気づかなかったな~…ぅお!? しかもミリ規格まで揃ってるし! すげぇー!!」

ルッキーニ「ここはなーんでも揃ってるよぉー!」

エイラ「…なあ、ルッキーニ。 シナモンはどこだ? シナモン」

ペリーヌ「こんな狭いお店にそんな何でも揃うわけありませんでしょう? ましてや時期外れの1番摘みなんて…」ブツブツ

サーニャ「……」キョロキョロ

バルクホルン「――お前達っ!我々は宿舎資材の調達任務中だぞ!? 非番時の買い物と混同するな?」

芳佳「わぁ~、皆でお買い物ってなんだかワクワクしますね? バルクホルンさん!」

バルクホルン「……宮藤、今私が言ったことを聞いていないのか? 遊びに来たんじゃないんだぞ」

シャーリー「別にいいじゃんか。楽しく買ったって結果は同じだろ~?」フンフーン

バルクホルン「お前がそんなだから私が監督役として付いてきたんだっ! なぜ買出しにウィッチの過半数も来なければならんのだ!!」

バルクホルン「いいか!? 今のお前は資材の運搬役として随行を許されたに過ぎないんだからなっ!?」ズイッ

シャーリー「はいはい、反省してるよ。 もうしないよなぁルッキーニ?」

ルッキーニ「しなーいっ!」

バルクホルン「くっ……こいつらのせいで無駄な動員が増える一方だ!」バリバリ

芳佳「ま、まぁバルクホルンさん。 私達じゃローマはわかりませんし、2人とも反省してますから……」

バルクホルン「………反省…?」チラ


シャーリー「やばいっ!このジャージかわいい………げぇ!? たっけぇ~!!」

ルッキーニ「あ!シロップ! うじゅじゅー、ムシ捕りに使えそー!!」ポイポイ

エイラ「おいこらルッキーニ! シナモンはどこだよっ!?」グイグイ

ルッキーニ「にゃははー!これも買っちゃおー!」ポイポイ


バルクホルン「……あれでか?」

芳佳「あはは……」

――――
――



サーニャ「……」ジー

ペリーヌ「――サーニャさん、アッサムの茶葉はありまして?」スタスタ

サーニャ「…はい。 でも……」

ペリーヌ「ん~やはりどれもセカンドフラッシュ……夏摘みですわね」

サーニャ「……」シュン

芳佳「…どうしたんですか? ペリーヌさん、サーニャちゃん?」ヒョコ

シャーリー「…珍しい組み合わせだな?」ヒョコ

ペリーヌ「きゃ!? ちょっとあなた達、びっくりさせないでくださいなっ!」

サーニャ「……」ショボーン

バルクホルン「……紅茶か。 リーネの注文か?」ズイ

サーニャ「ぁ……いえ…」

芳佳「自分で買うんだよね? サーニャちゃん!」

サーニャ「ぅ、うん…」

バルクホルン「ほぉー!」

シャーリー「けっこう拘るんだな?」

芳佳「ペリーヌさんに教わったんだよねー? すっごく淹れるの上手なんですよ!」

サーニャ「そ…そんなこと……///」

ペリーヌ「まっ! 私が教示したのですから~? 当然といえば当然ですわね~!」オホホ

バルクホルン「なんにしても、とりあえず別会計ならば先に買ってしまった方がいいぞ?」

サーニャ「……」

シャーリー「…ん?どうしたんだ?」

サーニャ「探しているものが……無いみたいで…」

シャーリー「ん~、そっかー……他の所も見に行くか?」

バルクホルン「この後は食料の買い付けもあるからな。 一緒に回るならついでになるが…」

シャーリー「いいよ、あたしが連れてくから。 …どんなやつなんだ、サーニャ?」

バルクホルン「おい!それでは誰がトラックを運転するんだ!?」

シャーリー「あたしなら多少この辺歩きなれてるし、どうせルッキーニの分離行動はお前が許さないんだろ?」

バルクホルン「お前はいつもそうやって――」ズイ

シャーリー「なんだよ? わからない奴だな――」ズイ


ギャーギャー


芳佳「わぁああ、喧嘩はやめてくださ~い!」

サーニャ「あの…」オロオロ

ペリーヌ「――おふたりともっ!!ここは店内でしてよっ!!?」ピシャン


ピタッ


ペリーヌ「…市民の方々の目にも触れますのよ? わたくし達の上官として恥ずかしくない姿でいてくださいな!」プンスカ

バルクホルン「むう……そうだな」イソイソ

シャーリー「……すみません…」イソイソ

芳佳「ペリーヌさん、すごい…! いつもより頼もしい!」

ペリーヌ「そもそも、この時期に"ファーストフラッシュ"の茶葉なんてそう簡単に見つかるものではありませんわ!」

サーニャ「……」

シャーリー「…なんだ、そうなのか?」

芳佳「そんなに珍しいんですか? その~えっと…」

ペリーヌ「ファーストフラッシュ! だいたい3~4月の春先に摘んだ紅茶葉のことですわ」

ペリーヌ「紅茶の摘む時期は基本的に1年中ですけど、摘む時期によって品質や趣向も変わるんですのよ?」

芳佳「へぇー、そうなんだぁ!」

バルクホルン「……では今は時期外れということか」

ペリーヌ「そうです。 今でしたらまだ後期に採れたものの残りがあるかも知れませんけど、普通の保存包装では香りは殆ど飛んでしまっているはずです」

シャーリー「おいおい、それじゃーはなっからダメってことだろ!?」

ペリーヌ「……一応。ちゃんとしたものが無いこともないんです」

芳佳「…! もしかして、この前サーニャちゃんが淹れてた紅茶が!?」

サーニャ「うん……3月に摘まれたアッサムティー…」

シャーリー「3月ぅ!?」

バルクホルン「その茶葉は鮮度を保ってたのか?」

ペリーヌ「サーニャさんがこの間まで淹れていらした茶葉は、例のロマーニャ皇女様から頂いた物資の中にあったものですの」

ペリーヌ「特別な保存法と包装によって半年は香りを維持できる高級品で……しかも比較的時期外れで一流品質が採れ難い3月摘み1番茶葉の最良品ですわ」

シャーリー「マジかよ……まさか同じの探してるのか?」

バルクホルン「そんな王室御用達のものが市街地の店どころか、一般に流通しているのかも疑わしいが…」

ペリーヌ「で、ですから一応と最初に申しましたわ! わたくしも実際に売っている所など本国でも見たことありませんもの!」

芳佳「……あれ? でも確かペリーヌさんに分けてもらったって、サーニャちゃんが…」

ペリーヌ「あぁああっ!! あのあのっ! そ、それはその~あまりにも珍しかったので1袋だけつい~……お、オホホホホ~」アセアセ

サーニャ(ペリーヌさん……そんな貴重なものを私に…)

サーニャ「…ありがとう、ペリーヌさん」コソ

ペリーヌ「へ?…えっ? えぇ、どういたしまして……?」キョトン

バルクホルン「…はっきり言って入手は絶望的だが、どうするサーニャ? 旬のものじゃ嫌なのか?」ガサ

サーニャ「……でも、あれが気に入ってもらえたから…」ボソ

ペリーヌ「理由は知りませんけど、3月摘みにこだわりがあるようでしてよ? わたくしに『紅茶に季節はあるのか』と訊ねにいらした時も3月に決めていたようでしたし」

ペリーヌ(……そういえば、あの時はハルトマン中尉も一緒でしたわね? あれは何だったのかしら?)

シャーリー「ならダメもとでも、もうちょっと探してみないか?」

芳佳「そうですよ! …サーニャちゃん、私も手伝うよ!?」ムンッ

サーニャ「ありがとう、芳佳ちゃん……」

バルクホルン「しかしどうする? 闇雲に探すわけにもいかないぞ」

シャーリー「とりあえず流通の有無を確かめる。 会計ついでにここの店主から聞き込みだ」


――――
――

ルッキーニ「うじゅー! これもおもしろそー!」ポイポイ

エイラ「ルッキーニ! シナモン全然みつかんねーぞ!? いい加減教えろぉー!!」グイグイ




バルクホルン「……いったい何をやっているんだ、あいつらは」ピキピキ

ペリーヌ「品性の欠片もありませんわ…」

シャーリー「まぁ、ルッキーニは馴染みの店だしな」

芳佳「エイラさん、お店の人に聞けばいいのに…」

サーニャ「……(恥ずかしい…)」




ルッキーニ「おじちゃーん!これも後で一緒にお願いね?」ドサッ

店主「あいよー」

エイラ「おい!聞けよっ!!」

ズカズカズカ

ズイッ


バルクホルン「……すまない店主、これは後で戻しておく。 こちらだけ会計を頼む」グイ

ルッキーニ「に゛ゃー!なにすんのー!?」ガーン

店主「……いいんですか?」

バルクホルン「かまわん」キッ

ルッキーニ「あぁ~~んっ!!なんでぇー!!?」

シャーリー「…諦めろルッキーニ」スタスタ

サーニャ「エイラ。 あまり騒いだらお店に迷惑よ…?」トテトテ

エイラ「サーニャ!!」ガーン

芳佳「エイラさん、探し物はお店の人に聞くのが一番いいと思いますよ?」

シャーリー「……なあ、おっちゃん! 春に摘んだ紅茶ってまだ手に入るかな?」

ペリーヌ「あの~できれば香りの飛んでない特別保存の物がいいのですけど……?」

店主「さっきそこで話してたやつかい?」

シャーリー「ここで取り寄せか、どこか置いてる店知らないか?」

店主「う~ん、皇室から賜った物ですよねぇ? 生憎うちも含めてこの辺の店で扱うのは無理だなぁ」

シャーリー「やっぱりそうなのかぁ…」

サーニャ「そんな……」

バルクホルン「待ってくれ。 ということは具体的な品物に心当たりはあるのか?」

店主「ええ。多くの皇室品は専門の卸し口があるんですよ。 その仕入先も皇室専用に生産されている物が大半で、…お金を積んだ所で一般の店から発注はまず不可能だねぇ」

バルクホルン「王室住みでもないと飲めない代物だったか…」

ペリーヌ「あ……あわあわわ…」ヒエー

ルッキーニ「なになにー?なんの話ー!」ピョン

芳佳「あ、ルッキーニちゃん。 実はね――」カクカク シカジカ

ルッキーニ「……なーんだ。 じゃあマリアに頼んでまた貰えばいいじゃん?」

ペリーヌ「な!? 何をおっしゃいますのあなたっ!?」クワッ

シャーリー「こいつの中じゃ皇女様も完全に友達感覚だからなぁ。 あっははは!」

ルッキーニ「だって友達だもんっ!」ムッ

シャーリー「はいはい」ナデナデ

ルッキーニ「ムジュ~~!」

店主「あははっは! フランカ嬢ちゃん流石だな、遂に皇女姫様とお友達とは!」

ルッキーニ「あ~っ!おじちゃん信じてないでしょーっ? ホントだかんねぇー!?」プンプン

ペリーヌ(このお国の方々は政権ラジオをお聞きにならないのかしら…!?)ガク

店主「わっははは! …んまぁどっちしたって今の時期王女様に謁見なんて無理な話さ」

バルクホルン「…と、いうことらしい。 残念だったなサーニャ?」

サーニャ「…はい……」シュン

ルッキーニ「にゃ? …サーニャどしたの? 元気だして?」

サーニャ「……うん…」ションボリ

ルッキーニ「むぅ~っ……おじちゃーん!マリアの紅茶売ってよぉー!?」ムガー

芳佳「ちょっ、ルッキーニちゃん!?」

シャーリー「やめろルッキーニ!無理なんだって!」ガシッ

バルクホルン「すまないな店主、とりあえず会計を頼む。……これで足りるか?」ジャラ

店主「まいど」

ルッキーニ「うじゅー!」ジタジタ

シャーリー「こら、おっちゃんを困らせるなよ?」グィー

エイラ「――なに騒いでんだよ?」スタスタ

芳佳「あ、エイラさん!」

エイラ「…なぁオヤジ? シナモンの在庫は――ってわぁああっ!!どうしたサーニャ!?」

サーニャ「……」ショボボーン

エイラ「だ、だれだぁ!サーニャを悲しませた奴はぁ!!?」

芳佳「えぇ!? エイラさん違います!落ち着いてください!」

エイラ「くそぉ!かわいいじゃないかぁあ!!……あ、いや…そうじゃなくて~…」グワングワン

芳佳「どうしよう、また!? ……エイラさん、頭を出してくださいっ!」フィィン ピョコ


ギャーギャー

バタバタバタ


バルクホルン「……本当にすまない。せめて釣りはとっておいてくれ(私の給金で埋め合わそう……)」

店主「あっはっはぁ!フランカ嬢ちゃんが来るといつも店が活気付いていいねぇ~!」

ペリーヌ「申し訳ありません…」シクシク

店主「………それより。 さっきの紅茶どうしても欲しいなら、直接卸し屋に交渉してみるのはどうです?」

サーニャ「っ!」ピク

芳佳「えっ?」ピタッ

ペリーヌ「そ、そんなこと……!?」

バルクホルン「…できるのか、店主?」

店主「さっき言った通り、大金積んだ所で普通は無理だけど……」

店主「欧州の英雄、ロマーニャの守護魔女様……501のウィッチのお願いなら聞いてくれるかもなぁ? …俺たちは商人だが、ロマーニャ人は愛国民ですからね! なあフランカ嬢ちゃん!」

ルッキーニ「うじゅ? …あったぼーぅ! にゃははははっ!」

シャーリー「いい街だなぁー! やっぱあたしローマ好きだ、あははは!」

バルクホルン「…よし! ならば食糧買出しの折に寄って行こう。 ……いいか、サーニャ?」

サーニャ「…はいっ!」パァア

芳佳「やったね! サーニャちゃん?」

ペリーヌ「まだ安心できなくてよ?」

エイラ「……おいなんだよ? 意味わかんないぞ?? 私を置いてサーニャと盛り上がるなー!!」ムキー

店主「………ここへ行ってみてください。 責任者は顔馴染みなんで、俺の名前とこいつを見せれば話は聞いてくれるはずですよ」ペラ

バルクホルン「いろいろ世話をかけたな店主。 ……お前達! 物資をトラックに積み込むぞ!?」

芳佳ペリーヌ「は、はいっ!」テテテ

シャーリー「へーい。……ほら、お前らも手伝えよ?」ガシッ

エイラ「ちぇ、わかったよ…」トボトボ

ルッキーニ「えぇ~~! マリアの紅茶はどうなったのぉー!?」ズリズリ

シャーリー「後で説明してやるから……ほれ、これ持ってけ?」

やいの やいの


店主「………いいねぇ、元気で」

店主「…あれならネウロイも逃げだすわなぁ」ハハハ

サーニャ「ぁ……あのっ…」ヒョコ

店主「………ん?」

サーニャ「……あ…ありがとうございます…!」

店主「ははは! ここの所、嬢ちゃん達のおかげで儲かってるからなぁ! …それに俺達の国を命懸けで守ってくれてるんだ。 お安い御用さ!」

サーニャ「……」

店主「……まぁ難しいとは思うが、頼れそうな姉さん達もいるし…大丈夫だろ」

店主「頑張りな」

サーニャ「…はいっ」

サーニャ「………?」チラ

サーニャ「ぁ…!」

店主「…お? それかい?」

サーニャ「チェスセット…!」

店主「前に妻が貰ってきた物なんだが、生憎俺もあいつも知らないんでね。 店のインテリアさ」

サーニャ「……きれい…」ジー

店主「なんて言ったか、あ~……名の有る彫刻師が削り出したチェスセットらしいが、…俺にはよくわからん」

サーニャ「………」

店主「…………よければ持ってくかい?」

サーニャ「えっ…!?」ドキッ

店主「客は食いつくんだが売り物にはできないし、……欲しいなら嬢ちゃんにプレゼントするよ?」

サーニャ「ぁ……でも…」

店主「へーきへーき!お得意様の連れにあげたって言えばあいつも怒らないさ」

サーニャ「……っ」オロオロ

店主「まってな? 今ケース出してくるから!」ガタ

サーニャ「あっ……!」

サーニャ「………(いいのかな…?)」





――――
――

店頭前

サーニャ「……すみません。 お待たせしました…」トテテ

ルッキーニ「サーニャずるーい! あたしらちゃんと荷物運んだのにー!」

エイラ「なにいってんだよお前? サーニャにスプーンより重いもの持たせたらダメなんだぞ?」

シャーリー「どうした? 結局なんか買ったのか?」

バルクホルン「言わんことではないな。 先に会計を済ませておけと言ったぞ?」

エイラ「なにいってんだ大尉? 何人もサーニャのペースには合わせないとダメなんだぞ?」

サーニャ「えぇ……と、その…」

ペリーヌ「あら! ずいぶん高そうなケースですわね? 何をお買いになりましたの?」

芳佳「サーニャちゃん! それもしかしてこの前話してくれた、新しい趣味の道具?」

サーニャ「うん。 ……チェスセット」ポソ

エイラ「え? サーニャ、私知らなかったんだけど…?」

芳佳「チェス……て、確か欧州の将棋だっけ?」

バルクホルン「宮藤。 無闇にその台詞は吐かないほうがいい」

ルッキーニ「チェスー!? みせてみせてー!」

シャーリー「…ルッキーニお前っ! チェスわかんのか!?」ガーン

ルッキーニ「なんだよシャーリ~! チェスぐらい知ってるよ! あたしは興味なかったけどみ~んなやってたもん!」

シャーリー「……あ、なんだ。 わかるってそういうことね…」

バルクホルン「しかし始めたばかりなんだろ? 装飾ケースとはいきなりいい物を選んだな?」

芳佳「バルクホルンさん、やったことあるんですか?」

バルクホルン「まぁ、小さい頃に家に置いてあったのでな? 妹と偶に遊んだ程度で、大して強くもない」

バルクホルン「昔ミーナと打った際には一方的にやられてしまったよ」

シャーリー「………まぁ頭脳派と脳き――」

バルクホルン「黙れ」

サーニャ(バルクホルンさんもチェスできるんだ…!)

芳佳「……じゃあサーニャちゃんが教わってた人って、…もしかしてミーナ中佐!?」

サーニャ「うん。 そうだよ…?」キョトン

ペリーヌ「ちょっと宮藤さん? ガリア貴族のわたくしが嗜んでいるという線を何故考慮しないんですのっ!?」

エイラ「ツンツンメガネは強くも弱くもなさそうだな?」

ペリーヌ「……そういうペリーヌさんはどうなんですの!?」

エイラ「は? 私はそんなめんどくさい事はやらないぞ? ……まぁサーニャが始めたんならやってみてもいいかもな?」

ペリーヌ「ならばこのわたくしが直々に鍛えて差し上げてもよくってよ?」ドヤァ

エイラ「あ? 嫌だよ。 私はサーニャと一緒にやる」

ペリーヌ「い、嫌ですってぇえ!!?」

サーニャ「……」

サーニャ「ぁ…!(チェスのことって言ってもよかったのかな…!?)」

シャーリー「――…そろそろ次の買い物行かねーとやばいか?」

バルクホルン「そうだな。 ……お前達、次に移動するぞ! 荷台に乗れ」

バルクホルン「宮藤は私と助手席だ! 必要な食料を確認しておきたい」

芳佳「あ! はいっ」パタパタ

シャーリー「え~。 …宮藤とルッキーニなら入ったけど、お前で入るかなぁ?」スタスタ

ルッキーニ「あたしが前じゃないの? シャーリー道わかんの~?」トテテ

ペリーヌ「わたくしは荷台なんて二度と御免ですわ!! 宮藤さん、お退きなさい」ズンズン


ワイワイ


サーニャ「……」

エイラ「……サーニャ、いくぞ? 早くしないと大尉がうるさいぞ?」

サーニャ「うん…」

サーニャ「……」

サーニャ「…エイラ?」

エイラ「ん? どうした?」

サーニャ「……501の任務が終わって、…お父様とお母様に会って――」

サーニャ「その後、私……どうすればいいかな?」

エイラ「…? サーニャ?」

サーニャ「……」

エイラ「……」

サーニャ「……」

エイラ「………サーニャはどうしたいんだ?」

サーニャ「……そ、それは…」

エイラ「サーニャのしたいことなら、私は文句言わないぞ?」

サーニャ「…エイラ…」

エイラ「…その代わり、何処へだろうと私も付いていくかんな?」ムフフ

サーニャ「うん。 ……エイラ、私ね?――」

サーニャ「私、……もし自分に力があって…それで多くの人の役に立てるなら――」

サーニャ「――また、戻ってこようと思う」

エイラ「……そっか…」

サーニャ「……」

エイラ「…………んじゃ、そうしよう!」ダッ


タッタッタッ


サーニャ「……ありがとう。 エイラ」

サーニャ「……」

サーニャ(いつか戻った時も、また紅茶を淹れて"あの人"に持っていこう。 …感謝の印に)

『サーニャッ!何をしている!? お前の紅茶の件もあるんだ、急げ!!』

サーニャ「!」

サーニャ「……はいっ」トテテ







(・×・)<おわりだゾ

ねむい

ストパンは年長連中が良い。ミーナさんももっと人気出ていい

(・×・)ノ <キョウダケ おまけ ダカンナー



買出しの帰り

道中


ブォオーン


シャーリー「~♪」

バルクホルン「……とばし過ぎだ。スピードを落とせ」

シャーリー「これ以上落とすと4速になるんだけど?」

バルクホルン「お前は死にたいのかっ!よく見ろ!!崖道だぞっ!?」

シャーリー「いや、このスピードだと飛び越えられな――」

バルクホルン「道の上を走れぇーーー!!!」グワァー

シャーリー「~~っ! わ、わかったよぉ。 耳元で怒鳴るなって…」キーン

バルクホルン「まったく……なんだこの有様は? 買出しにでたのに荷台のほとんどが人だぞ?」

バルクホルン「なんの為にお前まで連れてトラックを出したんだか……」

シャーリー「…まぁー皆楽しんでるし、いいんじゃない?」

バルクホルン「私が言っているのは、お前達がそんなせいで不必要な――」クドクド

シャーリー「へいへい! それは何度も聞きましたよ大尉~♪」

バルクホルン「右から左へ流すのを聞いたとは言わん!」

シャーリー「カリカリしてんなぁー。 …バルクホルンはつまんなかったのか?」

バルクホルン「そもそも任務は楽しむものではないだろ? ……はぁ~」グッタリ

シャーリー「任務だろうと何だろうと、人間なんだから何かしら感じるだろ? あたしは楽しかったぞ~?」

バルクホルン「………ん。 まぁ、悪くはなかった…な //」プイ

シャーリー「あはは」

バルクホルン「笑うな」

シャーリー「楽しいんだよ」

バルクホルン「…お前な――」


『キャーキャー』

『ワイワイ』


シャーリー「あっははは! 後ろも楽しそうだな?」

バルクホルン「……もういい。 私は休む」

シャーリー「なんだよ? つまんないなー」

バルクホルン「そうか。 それはなによりだ」フン

シャーリー(あらら……やり過ぎちゃったか?)

バルクホルン「いいか? 絶対飛ばすなよ?」

シャーリー「はいはい、おやすみ」

支援本当にありがとうございました。今年もストパンを応援しましょう

シャーリーが大好きです

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