アリス「いつも、いつまでも」忍「もちろん」 (128)

アリス(寒い寒い、この季節)

アリス(楽しい思い出は、あっという間)

アリス(だからこそ、しっかり頭に刻みつけたい――ああ)

アリス(この平和な時間が、いつも、いつまでも続けばいいのに――)


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1387951125

夏海「これまでも、これからも」雪子「私も」
夏海「これまでも、これからも」雪子「私も」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1387959793/)

どちらもクリスマスssです、あわせてお楽しみください

0

~火曜日、教室~

アリス「♪♪♪」

綾「アリス、おはよう……って、あれ?」

アリス「あ、綾、おはよう」

綾「なに聴いてたの?」

アリス「はい」

John Lennon「imagine」

綾「John Lennonか。いいわね」

アリス「国民的大スターだからね」

綾「あら、このCD持ってるの?」

アリス「イギリスから持ってきたやつだよ」

綾「日本ではプレミア価格ついてるのよ、これ」

綾「CD貸してくれないかしら」

アリス「いいよー、明日持ってくるね」

綾「ありがと」

忍「ねえねえ、何の話してたんですか?」

綾「CDの話よ」

アリス「明日貸してあげるんだよ」

忍「そうなんですか! もしかして、いつも聴いてるあれですか?」

アリス「そうだよー」

陽子「おはよー」

カレン「おはよーデス!」

忍「おっと、みんな揃ったようですね」

忍「今年もやりましょー!」

アリス「クリスマス会!」

綾「ああ、やるのね」

忍「綾ちゃん冷めてますねー。そんなんじゃダメですよ!」

カレン「そうデス! 日本のクリスマス、楽しいネ!!」

陽子「もうそんな季節か……」

綾「二学期もあと二週間で終わりね」

忍「あっと言う間でしたね……」

カレン「去年はシノの家でやったので、今年は私の家でする事になりマシタ」

陽子「そう言えばカレンの家って行ったことないんだよね」

綾「おっきな家よね」

カレン「そうデス! いっぱいおもてなししマスから、覚悟しててクダサイネ!」

カレン「忘れないうちに言っておきマス。クリスマス会で、プレゼント交換するデス!」

カレン「みなさん、準備しておいてクダサイ」

陽子「うん、わかった」

1 アリス「素直に」


カレン「日本のクリスマスといえば、恋人と過ごす日デス!」

陽子「……まあ私たちとは無縁の話だけどな」

カレン「さて、どうデショウカネ?」

綾「……」ジーッ

陽子「え? ……まさかカレン、彼氏いる感じ?」

カレン「わ、私はいマセンよ」

陽子「あやしいな……」ニヤニヤ

綾「……」ポッ

アリス(そうだよね、恋人――)

忍「アリスー」ギュッ

アリス「い、いきなりぎゅってしないでよ!」///

忍「アリスがかわいいのが悪いんですよー」

アリス「……」ドキドキ

アリス(胸が高鳴ってる、ずきずき、痛いほどに)

アリス「えへへー、お返しだよ!」ギューッ

忍「やめてくださいアリス、痛いですよ!」

アリス「……違う」

忍「へ? 何が違うんですか?」

アリス(素直じゃないなあ、私)

アリス「ううん、なんでもないよ」

カレン「……」

~大宮家~

忍「アリス、クリスマス会のプレゼント、どうします?」

アリス(シノ、去年みたいに石をプレゼントにしないかな)

アリス(まずいよね)

アリス「週末に見に行こうよ! 私が選んであげるよ」

忍「そうですね! じゃあ二人で行きましょうか!」

アリス「二人っきり……」

忍「アリスとデート……楽しみです!」

アリス「デート……」///

忍「アリス顔赤いですよ、大丈夫ですか」

アリス「う、うん、大丈夫」

アリス(シノは冗談で言ってるんだよね……)

忍「もう遅いし、寝ましょう」

アリス「うん」

忍「電気消しますね」パチッ

アリス「……」

アリス(シノの部屋……シノの香り)

アリス(シノ……シノが気になって、眠れないよ……)

アリス(もう最近はずっとこうだよ……)

アリス「シノ……」

シノ「zzz」

アリス(……私、シノのことが好きなんだ)

アリス(likeじゃない、loveの方で)

アリス(それなのに、その思いを伝えられず、フレンドリーな感じで接してしまう)

アリス(もう! シノはこんなに近くにいるのに……それなのに)

アリス(遠いよ……シノと、私の気持ちの距離は)

~次の日~

忍「えー。無理ですよ」

カレン「いやいや、ここはシノのストーリーテリング力を生かしてもらって……」

綾「カレン、何の話してるの?」

カレン「クリスマス会の予定を立てていたところデス」

カレン「プレゼント交換の後に、シノに物語を聞かせてもらおうと思って」

陽子「おお、またあの魂を揺さぶる語りを味わえるのか!」

忍「まだやるなんて決まってませんよー」

アリス「絶対やったほうがいいよ!」

忍「……そうですか? うーん」

綾「楽しみにしてるわよ」

忍「みんながそこまで言うなら……なにか、考えておきますね」

アリス「あそうだアヤ、CD持ってきたよ」

綾「ありがと、アリス」ニコニコ

綾「ああ、この復刻版のジャケットがまた、年代を感じさせるわ……」

アリス「アヤ、音楽好きなの?」

綾「まあ、洋楽はちょっと聴くわね」

アリス「どんな曲?」

綾「Zepとか、QUEENとか。もちろんThe Beatlesも好きよ。最近のバンドだとRadioheadなんかが好きだわ」

アリス「UKロックだね。マムがQUEENの大ファンで。DVDとかいろいろ持ってたよ」

綾「ホントに?」

アリス「今度帰省したときに借りてきてあげるよ」

忍「しかし、寒いですねー」ブルブル

陽子「朝の教室って寒いよね。暖房もついてないし」

カレン「イギリスの方が寒いデスネ」

忍「そうですよね。やっぱり二人とも、寒さには慣れてるんですか?」

アリス「わ、私寒いの苦手だよ」

カレン「アリスは昔からそうデシタネ。冬場に雪が積もってるのに、外で遊びたがらない子デシタ」

忍「じゃあ私が温めてあげますよ」ギュッ

アリス「……」///

アリス(幸せ……なんだけど)

アリス(違うんだよシノ、そういう風じゃなくて……)

アリス「シノ、離してよ」ブン

忍「アリス……? アリスは私が嫌いになったんですか?」

アリス「そうじゃないけど……」

カレン「……」ニヤリ

カレン「アリス、お悩みのようデスネ」

アリス「はわわ、カレン!?」

カレン「ふっふっふ……私は恋のキューピッドなのデス」

アリス「恋……」///

カレン「その悩み、聞いてしんぜよう」

アリス「カレンには隠し事できないね」

カレン「エッヘン」

アリス「そう、私はシノのことが好き……」

カレン「正直でヨロシイ」

アリス「中学の時、シノがうちにきたときからずっと……」

アリス「私が日本に来て、二人の距離は縮まったはずなのに」

アリス「私の気持ちは、シノからは依然遠いままなんだよ」

カレン「シノは鈍いデスヨ」

アリス「私本当はシノのことが好きなんだけど、その気持ちを偽ってまるで気にしていないかのように、フレンドリーに振る舞ってしまうんだよ」

カレン「その気持ち、すごく分かりマース」

アリス「それが、なんだかシノに嘘ついてるみたいで申し訳なくて、それでも好きな気持ちを伝えるのには勇気が足りなくて」

カレン「ふーむ……」

カレン「大丈夫デス! 勇気を出して告白するのデス!」

カレン「ちょうどクリスマスが近づいていマス。良い機会デス」

アリス「うん、そう思って、実は去年のクリスマス会の時にも告白しようと思ってたんだけど」

アリス「結局できなくて……」

カレン「そうデスか……」

カレン「……アリス、あれは五年前のクリスマスの日デシタ」

カレン「私アリスにあげるつもりだったプレゼントの手作りクッキーを、間違えて食べてしまいマシタ」

カレン「ごまかして他のプレゼントをあげればいいんデスケド、そうするのも何か悪い気がして」

カレン「それをアリスに正直に言ったら、アリスは許してくれマシタ」

カレン「そして一緒にクッキー焼きマシタよね?」

アリス「そんなこと、あったっけ」

カレン「そんな! アリス、ひどいデス。私の中では大切な思い出なんデスよ」

カレン「……まあ、いいデス。私は正直にアリスに言って、良かったと思っていマス」

カレン「アリス、自分に素直になってもいいんじゃないデスカ? 無理して気持ちを抑えこんでたら、自分が可哀想デスよ」

アリス「うん……」

アリス「……週末、シノと二人で買い物に行くんだ。その時に、頑張って告白してみるよ」

カレン「その気になりマシタか」

アリス「うん……カレン、ありがとね」ニコッ

カレン「……ドウイタシマシテ」

~金曜日、放課後~

アリス「シノ、帰ろうよ」

忍「そうですね。カレン、は今日も早く帰りましたね」

アリス「そうだね。最近早く帰るよね、カレン」

陽子「あやしい」

陽子「まさか、本当に彼氏ができたんじゃないのか……?」

忍「ええっ!? そそそそんな、私のカレンが、獣のような男なんかに……」

アリス「わ、私のカレンって、どういうこと!?」プンプン

綾「しかし、本当に彼氏ができたとなると……クリスマス会もドタキャンとかにならないかしら」

陽子「心配だな……」

~帰り道~

陽子「じゃあね、しの、アリス!」

忍「また月曜日ー!」

アリス「行こっ、シノ」

忍「はい!」

アリス「ところで、明日はどこへ買い物に行くの?」

忍「そうですね、……」

~夜~

忍「zzz」

アリス(いよいよ、明日か……今から緊張してきたよ)

アリス(眠れそうにないや……)

忍「zzz」

アリス(シノ……寝顔もすっごくかわいいよ……)

アリス(この寝顔を、私だけのものにしたい……)

アリス(私、シノの彼女に……なりたい)

~次の日~

忍「ふぁ……あ、おはようございます、アリス。って」

忍「アリスが私より遅く起きるなんて、珍しいですね……」

アリス「zzz……シノ……」

忍「うふふ……夢の中で、私と会ってるんですかね……」

忍「アリス……かわいいです。食べちゃいたいくらいに」

……

忍「まずはあっちの雑貨屋さんに行ってみましょう!」

アリス「うん!」

忍「この大通り、人多いですね。やっぱりクリスマスが近いからですかね」

忍「迷子になるといけないから、アリスに首輪付けてきたら良かったですね」

アリス「ひどいよシノ!」

忍「えー、ペットみたいでかわいいのに……」

忍「仕方ない、手を繋ぎましょう」

アリス「う……うん」///

ギュッ

アリス(シノの手、あったかいよ)

忍「わー、やっぱりクリスマスグッズがたくさん」

忍「プレゼントを何にするか、迷いますね……」

アリス「この雪だるまのぬいぐるみ、かわいいよ!」

忍「うーん、いまいちですね……」

忍「あっ! これいい!! 私これにします!!」

アリス(ガラス細工の……石ころ!?)

アリス(シノ……石ころになんの思い入れがあるんだろう……)

アリス「それはやめといた方がいいかも……」

忍「そ、そうですか?」

アリス「シノ、これにしときなよ」

忍「いや、それよりはこっちの方がいいと思います!}

アリス(こんどは浮き輪……夏のお土産だよ!)

アリス「じゃあ、こっちは?」

忍「うーん……」

忍「もうひとつの方のお店に行きましょう!」

アリス「そ、そう? じゃあ私、ここで買っちゃうから先に行ってて」

忍「はい、分かりましたー」

アリス「これと、それから、これもください……」

忍「買い物は済みましたか?」

アリス「シ、シノ!? もしかして、見てた?」

忍「いいえ、店の前でずっと待ってましたけど……」

アリス「よかった……」

忍「え、どうしたんですか?」

アリス「なんでもないよ」

忍「じゃあ、行きましょうか」

アリス「う、うん」

アリス(シノとのデート、ぼーっとしてたらすぐに終わっちゃう)

アリス(早く、告白しないと……)

アリス「ね、ねえシノ」

忍「どうしましたか?」

アリス「あ、あのね……」モジモジ

アリス「帰りにさ、喫茶店に寄っていこ?」

忍「え? まあ、いいですけど……」

忍「こっちの方が、品ぞろえが良かったですね」

忍「決めました! 私これにします!」

アリス「あ、それはいいかも」

忍「そうですよね! やっぱり!」

忍「じゃあ、喫茶店に行きましょうか」

アリス「うん」ドキドキ

アリス(緊張しすぎて、心臓が破裂しそうだよ……)

忍「アリス?」

アリス「な、なんでもないよ。早く行こっ」///

忍「喫茶店の空気って落ち着きますよねー」ホヘー

アリス(力の抜けたシノの顔も、かわいいよ)

忍「紅茶届きましたね。飲みましょう」

アリス「う、うん」

アリス「やっぱりダージリンティーだよ。この香り、癖になるよね」

忍「そうですか」

アリス「私は香りを楽しみたいからストレート派だけど、意外と本場イギリスでは色々混ぜて飲むことが多いんだよ」

アリス「お勧めはハチミツ。癖のない茶葉で、ロシアンティーみたいに舐めながら楽しむのもいいかもね」

忍「はあ……」

アリス(だめだ、緊張して、どうでもいいことばっかり喋っちゃうよ……)

アリス(もう半分以上、飲んじゃった)

アリス(早くしないと……)

アリス(カレン、せっかくカレンにもらった勇気を、無駄にしちゃいけないよね)

アリス「ねえ、シノ」

忍「はい?」

アリス「驚かないで、聞いてくれる?」

忍「あ、はい」

アリス「私、シノのことが……好き」

忍「……うそ」

アリス「シノ?」

忍「私も、ずっと好きでした……初めて会ったときから」

アリス「え……」

忍「その時から今日まで、ずっと私もアリスに恋心を抱いていました」

忍「でも、素直になれなくて……照れくさくて、その気持ちを抑え込んで、わざとフレンドリーな感じでスキンシップをとったりして」

アリス「シノ……私たち、両想いだったの?」

忍「ふふっ……そうですね」

忍「じゃあ、アリス。今日から私とアリスは恋人同士ですね!」

アリス「シノ……!」

アリス(ああ、打ち明けて、良かった……)

忍「じゃあ、帰りましょっか」

アリス「ふんふんふーん」ブンブン

忍「アリス、そんなに腕振らないで下さいよ! ちぎれそうです」

アリス「だってうれしいんだもん♪」

アリス「シノ、折角恋人になったんだからさ……」

忍「わ、わかりました」

ギュッ

アリス(ああ……幸せ)

アリス(シノと初めての、恋人繋ぎ)


1 おわり

2 陽子「綾が彼女……?」


~月曜日~

陽子「今日から半日登校だ!! やったぜ!!」

綾「はしゃぎすぎだと思うけど……」

陽子「いやいや、半ドンなめちゃいけないよ」

陽子「あの、昼前に下校するときの解放感! 想像しただけでたまらないよ」

忍「その気持ち、すっごくわかりますー」

アリス「いいよねー、半日登校」

忍「ねー、アリス」

アリス「シノ、シノー!」

陽子「なんか暑苦しさが増してないか……?」

綾「いいじゃない、暖かいんだから」

カレン「アヤヤもヨーコと、ベタベタしたらどうデス?」ニヤニヤ

綾「な……そんなこと、できるわけないじゃない!」///

陽子「私は別にいいけどね」

陽子「綾ー! 今日も寒いねー!」ピトッ

綾「な、ななな……触らないでよっ!」ブン

陽子「つれないなあ」

綾「フン!」

陽子「でさ綾、もうプレゼント交換のやつ、買った?」

綾「ま、まだだけど……」

陽子「ちょうど良かった! 今日一緒に買いに行かない?」

綾「今日はごめん、お昼から委員会の仕事があるから」

陽子「そっか……じゃあ、明日行こう」

綾「明日だったら、いいわよ」

綾「って、二人きり、よね!?」

陽子「あ、ああそうだけど」

綾「やった……なんて思ってないんだからね!」

陽子「お、おう」

~夕方~

綾「はあ……疲れた」

綾「お茶のも……はっ!」

綾(そういえば、アリスに借りたCD、持ってきてたんだったわ)

綾(返しそびれちゃったわね……まあ、明日でいっか)

カレン「♪~」

綾「あら、カレン」

カレン「げげっ、アヤヤ! 見つかってしまいマシタ!」

綾「なにしてたの?」

カレン「それは、その……ちょっと、用事があって……」

綾「あらそう。なんでもいいけど」

カレン「ホッ……」

カレン「その手に持ってるCDはなんデスか?」

綾「これ? これはアリスに借りたCDよ」

カレン「へえ……じゃあ借してクダサイ」

綾「じゃあの使い方おかしいわよ……まあ、いっか。はい」

カレン「アリガトウゴザイマース。John Lennonデスか。なかなか渋いデスネ」

カレン「また聴き終わったら返しマス」

綾「ええ、よろしく」

カレン「折角だから、一緒に帰りマショウ!」

綾「いいわね」

カレン「アヤヤと二人で帰るの初めてデース。ドキドキシマス」

綾「え?」

カレン「冗談デース。でも私がヨーコだったら、アヤヤは心臓ドッキドキデスネ」

綾「そ、そんなこと……ないわよ」///

~帰り道~

カレン「アヤヤ、なにか隠してることはないデスか?」

綾「べ、別にないと思うけど……」

カレン「まあ、いいデス」

綾「……」

カレン「お悩みごとがあったら、いつでもカレンに相談してクダサイネ」

カレン「特に、ヨーコのこと」

綾「……っ!」

カレン「にひひー、私の目は誤魔化せマセンよ?」

綾「……」

カレン「まあ、綾から言い出さない限り、私の方からは特に言うことはアリマセンが」

綾「……ええ」

カレン「クリスマスまでに、いっちゃいたいところデスネ」

綾「……なによ」

カレン「え?」

綾「私のこともてあそんで、面白がってるつもり? やめてよ、そういうの」

カレン「ア、アヤヤ、私はそういうつもりじゃ……」

綾「もう……」

カレン「……ゴメンナサイ」

綾(こっちは、真剣なんだから)

~夜~

綾(もう……私ってば、最低)

綾(カレンまで、傷つけちゃって……)

綾(私が、素直になればいいだけなのに……)

綾(ああ、陽子……)

綾(陽子と、私付き合いたい)

綾(私は陽子と長い間過ごしてきた)

綾(でも……なにか、私には陽子と付き合えるだけのものが足りない気がする)

綾(釣り合わないっていうのかな……)

綾(それに、女の子同士だし……こんな感情持つのはおかしいのかも知れない)

綾「……」

綾「もやもやして、眠れないわ」

綾(ああもう、悩むのやーめた!)

綾(悩んでも仕方がないわ、もうさっぱり忘れてしまいましょう)

ppp、prrrrr……

陽子「もしもし? どうしたんだ、綾」

綾「……はっ! ぼーっとしてたら、知らない間に電話を!?」

綾(どうしようどうしようどうしよう、こんな夜遅くに電話かけて、やっぱりなんでもないじゃ済まないし……)

綾「あ、あの、その……」///

陽子「ん?」

綾「あの、陽子……好きです」

綾(……えー!!?? 言っちゃったー!?)

陽子「……そっか。じゃあ明日は初デートだな」

綾「……え?」

陽子「いいよ。付き合ったげる」

綾「……え? 何言ってるの、陽子」

陽子「綾が告白してきたんだろうが!」

綾「え、嘘、そんなことって……」グスン

陽子「な、泣くなよ綾、どうしたんだよ」

綾「いえ、その……なんでもない、なんでもないわ! 言いたかったのはそれだけだから。それじゃあね」ブツッ

綾「はあ、はあ……」

綾(これって、告白成功…… だよね)

綾「……」グスン

綾(これまで想いを打ち明けられずに悩んできたのはなんだったのよ!)

~九条家~

ppp……

カレン「あれ、綾からデス」

カレン(恋の相談、する気になったんデスかね……)

pi

カレン「もしもし」

綾「カレン、やったわ! 私、ついに陽子に、告白出来て……OK貰っちゃった!!」

カレン「な、なんと……」

綾「嬉しくて仕方がなくって、カレンに電話しちゃった」

カレン「予想外デス……」

綾「私も驚いてるのよ! 全く、こんなに簡単なことが、どうして今まで出来なかったんだか……」

カレン「と、とにかく、おめでとうと言ってオキマス」

綾「うん! ありがと」

pi

カレン(めちゃくちゃ驚きマシタ……)

カレン(まさかあのアヤヤが、自分から告白しに行けるなんて……)

カレン(アヤヤのこと、ちょっと見返したデス)

~次の日~

綾「……」

綾(陽子、遅いわね……)

綾(まあ私も、待ち合わせ時間30分前に来たんだけどね)

綾「……はあ」

綾(よくよく考えると、あんな軽いノリで告白だなんて……バカバカしい)

綾(昨日の話、陽子はきっと冗談だと受け取ってるに違いないわ)

綾(だとしたら……余計、本当の気持ちを伝えづらくなっちゃったわね)

陽子「お待たせー」

綾「遅いじゃない! 早く行くわよ」パアァ

陽子「満面の笑顔!」

陽子(街にカップルが増えてきたなー、クリスマスだもんな)

陽子(って、よく考えたら私たちもカップル……だよな)

陽子「……」スッ

綾「……っ! ななななに、その手は」

陽子「手、繋ご?」

綾「……わ、分かったわよ。陽子が言うなら、繋いであげるわ」

ギュッ

陽子(綾の手って、結構あたたかいんだよな……)

陽子「綾、これなんかどう?」

綾「ところで陽子、プレゼント交換するのに、プレゼントを相談するのっておかしいと思わない?」

陽子「それもそうだな……」

陽子「よし! じゃあこの店の中でお互いに秘密でものを買おう!」

綾「私は最初からそのつもりだったんだけどね」

陽子「いやー、いいのがあったよ!」

綾「陽子のプレゼント、包装大きすぎない?」

陽子「ふっふーん、中身は当日のお楽しみ、だよ」

綾「うん、そうね」

陽子「あそうそう、クリスマスだから、お小遣いいっぱい貰いました」

綾「え?」

陽子「いろいろ街を見て回らない? ぶらぶらとさ」

綾「わ、わかったわ」///

綾(本当の、デートみたい)

綾(って、私と陽子は恋人同士だもの、当たり前よね)

綾(でも……陽子は、そう思ってない、かもしれない)

綾「あ、ここの服、値段の割に良い生地の服揃ってるのよ」

綾「そうよ陽子、陽子の服コーディネートしてあげるわ!」

陽子「そういうのも、いいかもね」

綾「じゃあ……これなんかどうかしら?」

陽子「え、それ着るの……? 女の子っぽいのはちょっと……」

綾「いいからいいから。試着室あっちよ」

陽子「……」///

綾「かわいいじゃない!」

陽子「やっぱりいい!」

綾「あら、似合ってるのに……」

陽子「うーん、こっちにすべきか」

綾「そっちの方がいいと思うわよ」

陽子「うん、綾が言うならそうするわ。ありがとな」ニコッ

綾「……」///

陽子「あそうだ。折角だからさ、恋人っぽい、ペアルックってやつ? やろうよ」

綾「え……」

……

陽子「あー、今日は楽しかったわ。ありがとな、綾」

綾「……別に、いいわよ」

陽子(今日一日、綾のことを本当に彼女だと思って過ごした)

陽子(初めはそんな気になれず、無理やり自分に言い聞かせて来たけど)

陽子(なんでだろうか、綾と恋人同士として過ごす時間が、すごく心地よかった)

陽子「……なあ、昨日の、本当に、本当に本気なんだよな?」

綾「もうその話は……やめて」///

陽子「なあ……」

綾「本気に、決まってるでしょ」

綾「陽子は冗談だと思ってるのかもしれないけどさ」

綾「でも私、今日は本当に陽子と、その……恋人のつもりで、過ごしたから」///

陽子(この、照れた表情の綾が――)

陽子(可愛い、と思えてきたんだよな)

陽子「綾」

綾「なによ」

陽子「今日のデートで決めた。私、綾の彼女になる」

綾「え……なに言ってるのよ、女の子同士よ!」

陽子「いいんだ。その――」

陽子「私も、綾のこと、好きになったから」

綾「嘘……」///

陽子「はは、なんか照れくさいな」

綾「……」グスン

陽子「綾?」

綾「ごめん……嬉しすぎて、つい」

陽子「泣くなよ……」

綾「ごめん……」

陽子「じゃあ私こっちだから。それじゃ」

綾「うん……」

陽子「最後に、笑った顔、見せてよ」

綾「うん」ニコッ

陽子(だめだ……可愛い)

陽子「綾」

綾「え」

ギュッ

綾「え……あ……」///

綾(私、陽子に抱き締められてる……)

陽子「じゃな!」

綾「もう……ばか」///


2 おわり

3 カレン「皆にプレゼント!」


~次の日~

カレン「あと三日で学校とオサラバデース!」

綾「おさらばって……三学期はどこ行ったのよ」

カレン「そんなこと、知ったこっちゃアリマセーン」

陽子「もう気持ちがうわついて仕方ないな」ウズウズ

陽子「早く冬休みになって、綾といろんなところ行きたいなー」

綾「そ……そうね」///

アリス「私も、シノと……」

忍「ええ、行きましょう!」

カレン「クリスマス会を忘れてもらっちゃ困りマース」

陽子「そ、そうだった。どう、予定の方は立ってるの?」

カレン「ちょっと怪しいところはアリマスが……おおむねよし、デス」

カレン「シノ、物語の方は準備どうデスか?」

アリス「シノったら、毎晩遅くまでノートにお話を書いてるんだよ」

忍「なんだか書き始めちゃったら止まらなくなって……」

陽子「おお、楽しみだ」

忍「なんとかクリスマス会までには終わらせます、お楽しみに」

カレン(後は、私の準備だけデスね……)

~職員室~

烏丸「すいません久世橋先生、被服室のカギ持ってますか? 事務室に尋ねたら持出し中ということだったので」

久世橋「ああ、被服室なら空いてますよ」

烏丸「え? そうなんですか? 半日登校になって、家庭科の授業はないでしょう?」

久世橋「ええ、実は九条さんが、中で作業をしていて」

烏丸「へえ、九条さんが? 居残りですか?」

久世橋「いえ。実は……」

―――

~一週間前の水曜日~

カレン「クゼバシシショー! 私にぬいぐるみ作りを教えてクダサイ!」

久世橋「師匠じゃなくて先生です。――どうして?」

カレン「実は、私の家でクリスマス会をするデス」

久世橋「いつもの五人で?」

カレン「そうデス」

カレン「そこで、五人分のぬいぐるみを作って見せたいのデス」

久世橋「あの、大宮さんに聞いたらどう? あの子相当上手いけど」

カレン「他の子には内緒にしていたいのデス。サプライズネ」

久世橋「なるほど……。それじゃ、まず」

カレン「まず?」

久世橋「まずはそのくだけた服装をなんとかしなさい。それから、毎朝宿題をしっかり出すこと。全く……」

カレン「あーあーあー、聞こえないデスヨ」

久世橋「なるほど、五人を模したぬいぐるみを作るのね」

カレン「ハイ」

久世橋「どのくらいの大きさで?」

カレン「これくらいデス」

久世橋「けっこう大きいわね……でも九条さん、いつもマスコット作ってるわよね? あれと要領は同じよ」

カレン「そうデスか」

久世橋「まずは型紙を作って……」

カレン「ふむふむ、これに綿をつめれば良いんデスね?」

久世橋「ああ、そんな乱暴に……」

カレン「こういうのは勢いデスヨ」グイグイ

久世橋「はあ……先が思いやられる」

カレン「疲れマシタ~」

久世橋「あら、もうこんな時間。今日はこのへんにしておきましょうか」

カレン「そうデスね」

久世橋「でも、もうすぐ一体出来そうじゃない。この調子ならすぐよ」

カレン「ハイ……クゼバシ先生」

久世橋「なに?」

カレン「私一人にここまで付き合ってくれて、アリガトウゴザイマス」

久世橋「……」

久世橋「早く解放してほしいから、さっさと作っちゃってください」

カレン「ハイ!」

~次の日~

久世橋「じゃあ毛糸を頭のてっぺんに縫いつけて、帽子をかぶせたら出来上がりよ」

カレン「ハイ……」

カレン「できマシタ!」

久世橋(ところどころ、ゆがんではいるけれど……まあ、愛嬌の範疇よね)

久世橋「よくできました。もう後は同じ作業の繰り返しよ。だから一人でやれるでしょう?」

カレン「えぇー、先生いないと寂しいデース……」

久世橋「そんなこと言ったって、私にも仕事があるの……」

カレン「寂しい、デスヨ……」ジーッ

久世橋「っ、分かった分かった。じゃあ日に一度だけ見に来ますから。それでいい?」

カレン「ハイ!」

~次の日~

カレン「あ! クゼバシ先生! コンニチハー!!」

久世橋「そんなに大きな声で言わなくても聞こえてますよ……」

久世橋「どう? 進んだ?」

カレン「へっヘーん。どうデスか、これ」

久世橋「あら。もう二体目が完成したの。早いわね」

カレン「クゼバシシショーの教授の賜物デス」

久世橋「腕ぐらぐらですけどね」

カレン「NOー!」

~次の週、火曜日~

カレン「クゼバシ先生。もう今日からは、来なくても良いデスよ」

久世橋「あら、もう五体完成したのね」

カレン「そうデス。でももう少し、手直しがしたいデス」

久世橋「分かりました。じゃあ被服室のカギだけ開けておくから」

カレン「アリガトウゴザイマス」

―――

久世橋「ということなんですよ」

烏丸「久世橋先生、優しいところあるじゃないですか。九条さんの頼みを聞いてあげるなんて」

久世橋「別に、九条さんだから、というのでは……教えるのが、好きなだけですから」

烏丸「うふふ。じゃあ私、被服室に行ってきますね。九条さんとも挨拶してきます」

烏丸「おじゃましまーす」

カレン「げげっ!」ササッ

烏丸「あら、作業続けてて大丈夫よ」

カレン「ハ、ハイ」

烏丸「クリスマスプレゼント作ってるんですって? 九条さんは友達想いね」

カレン「えへへー。照れマスヨ」///

烏丸「えっと……これだ。これを持って来いって、先生に言われたんですよ」

カレン「そうデスか」

烏丸「じゃあ、失礼しました―」ガラッ

カレン「フー」

~教室~

アリス「今日もカレン、早く帰ったね」

陽子「うーむ……彼氏と、まさか毎日会ってる訳でもないだろうし……」

綾「一回電話してみたら?」

陽子「それだ。よし」

ppp、prrrrr……

陽子「通じない」

綾「ま、まさか、なにか悪いことでもしてるんじゃないでしょうね」

忍「ああ、私のカレンが悪に染まってしまった……」

アリス「」プンプン

~次の日~

カレン「すっっっっごくいい曲デシタね!」

綾「そうでしょ? やっぱりこの季節には、ぴったりよね」

陽子「おはよー。まだしのとアリスは来てないみたいだね」

陽子「何の話?」

カレン「このCDの話デス」

カレン「そうだ、ヨーコにも貸してあげるデース」

陽子「あ、うん。……John Lennon。普段音楽聞かない私でも、この人くらいは分かるよ」

陽子「わかった、聞いてみる」

カレン「ドーゾドーゾ」

綾「一応それアリスのなんだけど……いっか」

~職員室~

カレン「クゼバシシショー! ミッションコンプリート! シマシタ!」

久世橋「そう、全部できたのね」

カレン「ひとえにクゼバシシショーのこ教授のおかげデス」

久世橋「その変な言葉づかいなんとかならないのかしら……」

久世橋「お疲れ様。お友達も喜ぶと思うわ」

カレン「クリスマス会、楽しみデス」

~金曜日~

陽子「終わったーっ!」

カレン「ついに冬休みデスネ!」

陽子「ここまで長く苦しい戦いだったな……」

カレン「それももうおしまいデース! これから私たちは、休みという名のパラダイスに身を委ねる――」

綾「宿題はちゃんとしなさいよ」

忍「さあ、帰りましょっか!」

アリス「うん!」

~帰り道~

綾「すごくどうでもいい話なんだけどね」

陽子「なに?」

綾「昨日不思議な夢を見たのよ」

綾「すっごい田舎の村で、私たちよりちょっと小さいくらいの子たちが集まってクリスマス会をしてるの」

忍「ふむふむ」

綾「その中に、ひとりだけ男の子がいてね……彼はギターがとても上手で、クリスマス会でQueenの微妙なギターチョーキングまで完璧にコピーしたのを披露していたの」

アリス「音楽の話?」

綾「いや、ほんとに不思議な夢でね。ボヘミアンラプソディのギターソロを弾いてたんだけど、それを見てるみんなの笑顔が、やたら記憶に残って――」

綾「そこで夢から覚めたの」

アリス「もしかしたら、予知夢かもしれないね」

綾「そうね、これから、どこかで起こることなのかもね」

陽子「かなりどうでもいい話だったな」

綾「ごめんね」

陽子「まあ、話すことないからいいんだけどなー」

トコトコ……

忍「学期が終わった後の開放感あふれる帰り道、好きです」

アリス「私もだよー!」

~12月24日~

カレン「さて……ちょっと出かけるデス」

~職員室~

烏丸「今日はクリスマスイブですね」

久世橋「そうですね」

烏丸「久世橋先生、彼氏とか作らないんですか?」

久世橋「わ、私は今のところ仕事一筋ですので」

烏丸「カタブツですねー」

烏丸「もっとくだけていかないと」

久世橋「じゃ、じゃあ烏丸先生は彼氏いるんですか?」

烏丸「……この話はやめましょっか」

カレン「お邪魔するデース!」

久世橋「こら、職員室に入るときは、失礼します、でしょ」

カレン「まあまあ。細かいことはいいっこなしデスヨ」

久世橋「そういう細かなところから、日常生活の乱れが来るんです。いいですか九条さん、全く……」

カレン「あーあーあー、聞こえないデスヨ」

烏丸「その手に持ってるのは、なに?」

カレン「ふっふっふー、ナント」

カレン「クリスマスイブも忙しいお二人に、カレンサンタからクリスマスプレゼントデース!」

烏丸「え、ええー!? いいの、九条さん」

カレン「良いのデス。どうぞ受け取ってクダサイ。ほらクゼバシ先生も」

久世橋「はあ……」

カレン「それでは。お邪魔シマシタ」

久世橋「あ、開けてみましょうか……」スルスル

久世橋「こ、これは……」

烏丸「私たちの、人形、ですね」

久世橋「全く、九条さんたら……私に隠れて、こんなこと……」ニヤッ

烏丸「あ、今久世橋先生嬉しそうな顔しましたね」

久世橋「し、してません」

烏丸「久世橋先生笑うとかわいいですよ。素直に笑えばいいんじゃないですか?」

久世橋「う、嬉しくなんてありません。喜んで……ません」ニコニコ


3 おわり

4 アリス「いつも、いつまでも」


~夜~

アリス「お邪魔しまーす」

陽子「うわっ、このマンション、広すぎ……」

カレン「ドーゾドーゾ。こっちデス」

綾「またサンタの衣装なのね……」

カレン「はまりマシタ」

カレン「ふむふむ……」

カレン(アヤヤと陽子は、お揃いのマフラーデスネ)

綾「ん? 私に何かついてる?」

カレン「いや、なんでもないデスヨ」

アリス「あわわわ……」

忍「なんですか、この料理は!? すごすぎですー!」

カレン「エッヘン。カレンの手にかかれば、このくらいはお茶の子さいさいデス」

陽子「やっぱカレンてお嬢様だわ……」

綾「普段そんな感じぜんぜんしないけど、こうして見ると……」

陽子「カレン様ー!」

忍「カレン様ー!」

カレン「や、やめてクダサイ」

カレン「それじゃまず、これを食べてから、ケーキの登場デス」

忍「ケーキ、きっとケーキも豪華なんでしょうね……」

カレン「パパの知り合いのパティシエさんに作ってもらったデス」

忍「ああ、頭がくらくらします……私、カレンのヒモになりたいですー」

アリス「」プンプン

陽子「頂きまーす! これもらうよ、あとこれも、そうこれも好きなんだよね!」

綾「……」

……


綾「ごちそうさまでした」

陽子「美味しかったー! つい食べ過ぎちゃったよ、苦しい」

忍「はあ、これからなにするんですか、カレン」

カレン「それではお待ちかね、プレゼント交換の時間デース! Yeah! ぱんぱかぱーん!」

忍「イエー!」

カレン「それでは各プレゼントに番号を振って……」

カレン「くじ引きで引いた数字のプレゼントをGETデス!」

……

カレン「準備できマシタ! 一発目、ではアヤヤ!」

綾「あ、うん」

綾「これ……2番だわ」

カレン「OH! いきなり2番を引けてしまうとは! アヤヤ今日はついてマスネ!」

綾「これ、カレンの?」

カレン「開けてみてクダサイ」

綾「うん……。これは、ブレスレット?」

カレン「ただのブレスレットじゃナイデスよ。それは2万円の……」

綾「……ディスプレイ用にするわ」

陽子「おいしの! なんだよこれ! たわしじゃないか!」

忍「陽子ちゃん、それただのたわしじゃないんです。ほら、ここの部分に、こけしのマークが……」

陽子「結局たわしじゃないか!」

アリス「良いと思ったのに……」

アリス「私はヨーコの、大きなぬいぐるみだったよ」

陽子「いいでしょ?」

アリス「抱きついちゃいたいよー!」

忍「私は、綾ちゃんのペンケースでした! かわいい!」

綾「よかったわ」

カレン「では、私はアリスのやつデスネ……」

カレン「WOW! これは、あの時の……」

アリス「それ、カレンに届いて良かったよ!」

カレン「アリス……」グスン

カレン「アリース!」ギュッ

忍「なんの変哲もない、ウサギのアップリケが付いたエプロンみたいですけど……」

カレン「五年前のあの時、私が着せてもらったのがウサギのエプロンデシタ……」

アリス「思い出したんだよ、カレン」

カレン「ありがとうアリス、最高デス」ベタベタ

忍「むぅ……カレン、そんなにひっつかないでください!」

忍「これから、どうするんですか? プレゼント交換は終わりましたけど……」

カレン「まだプレゼントは終わってナイネ! ジャジャーン!」

アリス「なにそれ……私たちの、人形?」

カレン「この日のために、作っておいたのデス」

カレン「毎日毎日、鬼教師クゼバシのもとで悪戦苦闘!」

綾「え……、え!?」

カレン「どうしたデス?」

綾「カレン、最近早く家に帰ってたんじゃなかったの?」

カレン「そうデス。秘密にしててゴメンナサイ」

陽子「はあー。よかったー」

カレン「え? え? どうしマシタカ」

陽子「てっきりなにか危ないことしてるんじゃないかって心配してたんだぞ」

カレン「OH、スミマセーン……」

カレン「はい、一人一つずつ、自分のを取ってクダサイ」

忍「わー! すごいですー! ありがとう、カレン」

綾「これ、腕取れそうなんだけど……」

カレン「おおーっと、それはご愛嬌デス」

アリス「私こんなにちっちゃくないよー!」

カレン「さて……それでは。いよいよデスよ。いよいよ! ついに!」

陽子「引っ張るなよ」

カレン「そうデスね……じゃあ、シノ! よろしくお願いシマス!」

忍「ああ、私の出番ですか……」

忍「それでは、お粗末ながら……」

これは二人の、恋の物語です――。

……

「私と、結婚してください」お嬢様は声高にその兵士に呼びかけます、しかし兵士は――
「お嬢様! それはできません。私たちは身分が違いすぎるのです。それに、近々戦争が――」

綾「始まって五分もたたないうちに、もうこれだけ引きこまれているわ……」

陽子「ふむ、ふむ……」

……

しかし彼らの国は、戦をすれば負け、戦をすれば負け、戦火は彼らの国中に広がっていきました――
兵士はある砦の警護に回っていました。いよいよ、彼のいる砦も、敵が攻めてくる状況に立たされてしまいます――
ある日。戦いの火ぶたは、突然切ってとられました。兵士は休む間もなく戦い続けました――


アリス「すごいよ、すごいよシノ……」

カレン「うっ、うっ」

陽子「多分泣くのはまだ早いと思うよ」

……

兵士はすぐそばで、友人たちが一人、また一人と倒れて行くのを見ていました。
「いやだ。こんな戦争――そもそも、私たちの国が敵国にちょっかいをかけなければ、よかったんだ」
兵士がいくら叫んだところで、誰も彼の声に耳を傾けはしません――

その砦も、守りの限界が来ました。隊長が、いよいよ全軍突撃命令を出して最期にひと花咲かせる決意を固めていました――

そのとき――

兵士は敵軍が退いていくのを、何度目をこすって見たことか――


綾「え……」

陽子「これは、すごい展開だな」

……

戦いが唐突に終わりをつげ、兵士はくたくたになってお嬢様のいるお城へ帰りました。

お嬢様はいいました。
「戦いは、終わったのよ――私たちの国は、敵国に降伏しましたから」
兵士はその場に膝をつき、涙が枯れるまで泣き続けました。

「生きて――生きて帰ってきました。お嬢様――」
「もう私はお嬢様ではないわ。あなたと私の間にあったいまわしい身分制度は、いまや完全に取り払われたのよ――」
「それでは――」
「ええ、改めて言うわ。私と、結婚してください」

二人はおじいちゃん、おばあちゃんになっても共に暮らし、今は一緒のお墓に眠っています――

忍「おしまいです」

綾「……」ポロポロ

陽子「……」ズズー

忍「以上です、お粗末さまでした……って、あれ? どうして皆さん、そんなにしんみりしてるんですか?」

アリス「よかったよ……よかったよ、シノー!」ギュッ

カレン「うっ、うっ……」

忍「ティッシュここにありますよ、鼻水拭いたらどうですか?」

カレン「後は自由時間デス、好きなように過ごしてクダサイ」

忍「分かりました! みなさん、トランプしましょう!」

陽子「私UNO持ってきたよー」

アリス「私UNOすごく強いんだよー」

綾「UNOってしばらくやってないとルール忘れちゃうよね」

忍「えー、トランプはー?」

……

カレン「そう言えば……このCD……」

アリス「あれ? どうしてカレンがそれ持ってるの?」

カレン「細かいことは、良いんデスよ……」

陽子「私は借りたカレンにちゃんと返したからな」

綾「私のせい!?」

カレン「このCD、かけマショウ」

アリス「聞き終わったら返してね」

カレン「よいしょ……と」

陽子「スピーカーも豪華だな」

John Lennon「Happy Xmas(War Is Over)」

アリス「……やっぱり、いつ聞いてもいい曲だよ」

忍「クリスマスソングの中で、一番好きかもしれません」

陽子「War is over,if you want it ほら綾、続けて」

綾「War is over, now 私が歌下手なの知ってて振ってるでしょ」

陽子「下手だけど、綾っぽくて可愛いよ」

綾「……っ」///

忍「アリス……」

アリス「シノ……」ドキドキ

カレン(クリスマスに、恋人カップルが二組……これはめでたいデスネ)

……

アリス(寒い寒い、この季節)

アリス(楽しい思い出は、あっという間)

アリス(だからこそ、しっかり頭に刻みつけたい――ああ)

アリス(この平和な時間が、いつも、いつまでも続けばいいのに――)

忍「あ、もうこんな時間ですか!」

アリス「これ以上カレンの家にいさせてもらうのも悪いよね」

カレン「いえいえ、まだまだいて欲しいところなんデスが……」

カレン「皆さん、これから忙しいデスモンネ」ニヤリ

忍「……」///

綾「え……それって……」

陽子「する?」

綾「し、しししししないわよ、そんなこと……」//////

~帰り道~

陽子「楽しかったな!」

綾「え……ええ」

陽子「……」

綾「ね……ねえ陽子」

陽子「ん?」

綾「陽子って、いつも好きなものから先に食べるのね」

陽子「え?」

綾「私も、同じ」

綾「私、陽子と同じところ見つけられて、よかった」

陽子「……ああ、そう?」

綾「私、前は陽子のこと、雲の上って程じゃないけど、ちょっと見上げてた」

綾「私よりも運動できるし、優しいし、誰に対しても元気、裏のない性格……」

綾「なんだか私とは釣り合わない気がしてた」

陽子「……」

綾「それでも、似通っているところもいっぱいあるのよね」

綾「私、きょうのでもっと陽子のこと好きになっちゃった」ニコッ

陽子「……」

ギュッ

綾「陽子……」

陽子「キス、しよう」

綾「うん……」


チュッ

綾「それじゃあね、陽子」

陽子「うん。冬休みのうちにさ、いろんなとこへ遊びに行こうよ」

綾「ええ!」

陽子「綾……大好きだよ」

綾「私も……!」

~大宮家~

忍「疲れましたね」

アリス「うん、でもなんだか、まだ寝たくはないな」

忍「私も、同じです」

アリス「シノ、実はね、シノに渡したいものがあるんだ」

忍「え? プレゼントですか? もうプレゼント交換の時に出したんじゃないんですか?」

アリス「実はシノと買い物に行ったときに、二つ、買ってあったんだよ。ほら」

忍「綺麗な、ハート型の石が入った、ネックレス……」

アリス「シノ、付けて」

忍「はい……わぁ……素敵です!」

アリス「喜んでもらえて、嬉しいな」

忍「アリス……アリス、もう私、アリスを食べちゃいたいです! 我慢できません!」

アリス「え、ちょっと、シノ……」

忍「アリス……今夜は、寝かせませんよ?」

アリス「なに、するの……?」

忍「十分間、ギューの刑です」ギュー

アリス「……なんだ。十分でいいの?」


4 おわり

アリス(いつも、いつまでも)

アリス(私たちの絆は、繋がっている――)

アリス「私たち、どこにいても、ずっと仲間だよね!」

忍「はい!」


おわり

読んでいただきありがとうございました
なんとか25日中に終わらせることができてよかったです

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom