蒲原「サンタさんに会いにいくぞー!」衣・豊音・成香「おー!!」 (95)

ID:ZxB7QmVv0

クリスマス・イヴ


蒲原「ワハハ、今年もこの季節が来たなー」

衣「サトミ、どうしたんだ。急に呼び出して」

蒲原「うん、実は今年こそは本物のサンタさんに会いたいと思ってな」

衣「おお!!」

蒲原「これから探しに行こうかと思ってるんだが、衣も一緒にどうかと思ってな」

衣「もちろん一緒に行くぞ!!」

蒲原「ワハハ~、衣ならそう言ってくれると思ったぞ」

衣「それで、今度は長野のどこを探すつもりなんだ?」

蒲原「それなんだがな。今回は長野じゃなくて別の場所を探すつもりにしてるんだ」

蒲原「さすがにサンタさんが長野にいるのは都合がいい気がするしな」

衣「ん? だが去年は長野の商店街にいたような気がするぞ?」

蒲原(あー、衣は知らないのか。あのサンタさんの正体が萩原さんだったってこと)

衣「だがあの後気がついたらトーカの屋敷にいたから、もしかしたら衣の夢だったのかも……」

蒲原「まあどっちにしても、長野だけに絞っても会えない可能性が高いと思うんだ」

衣「それは分かったが、それならどこに探しに行くんだ?」

蒲原「ワハハ~、決まってるだろう?」

蒲原「サンタさんは寒い地方の人だ。いるとしたら寒い地方、つまり北に行けば会えるということだ!!」

衣「おお!! サトミ、天才だぞ!!」

蒲原「ワハハ、そんなに褒めないでくれ」

衣「そうと決まったら、早く行くぞ!!」

蒲原「そうだな。私の愛車で北に向かうとするか」

衣「おー!!」

――――――――――

豊音「みんなが集まるのって、ちょー久しぶりだよねー?」

塞「そういえばそうね」

胡桃「みんな同じ大学だけど、学部もバラバラだし」

塞「それにエイちゃんは国に帰っちゃったしね」

白望「……だるい」

塞「ほらシロ、ちゃんと歩いて!」

豊音「でもエイスリンさん、明日やるクリスマスパーティーに参加するって言ってたし!」

胡桃「久しぶりにエイちゃんに会えるね」

白望「……エイスリン、元気かな?」

豊音「あー、早く明日にならないかな」

衣「わー、一面真っ白な雪だな!!」

蒲原「……」

衣「そういえばトーカ達とやった雪合戦はとても楽しかったぞ」

蒲原「……」

衣「ん? どうしたんだサトミ?」

蒲原「ワハハ、すまない衣……道に迷った」

衣「なんだと!?」

蒲原「どうやら間違って違う道に入ってしまったみたいだ」

衣「それは困ったな……」

蒲原「うーん、誰かに道を訊くしかないな」

衣「智美、あそこに人がいるぞ!!」

蒲原「ちょうどいいな。あの人たちに道を訊くとするか」

蒲原「すいません、ちょっとよろしいでしょうか」

塞「はい?」

豊音「わっ!? もしかして天江さんじゃないかなー!?」

衣「そうだが?」

豊音「あの、あの、さ、サイン下さい!!」サッ

衣「サインだと!?」

白望「トヨネ……」ハァ

胡桃「いきなりそんなこと言ったらびっくりしちゃうでしょ!」

豊音「でもでも、あの天江さんだよ? 今年のインターハイでも凄かったし!!」

胡桃「トヨネ……めっ!!」ビシッ

豊音「ご、ごめんなさい……」

蒲原「ワハハ、衣有名人だな」

衣「えっと、この色紙に書けばいいんだな」サラサラ

豊音「いいの!? わー、ちょー嬉しいよ!!」

衣「うむ、出来たぞ」

豊音「ありがとうございます!! 宝物にしますね!!」

胡桃「ってかなんでこんな完璧なサインが書けるの?」

衣「ふふん、麻雀を打つ者として、サインを書けないとダメだと聞いたからな。頑張って練習したんだ」

蒲原(あー、確かそんなこと衣に言ったことあったっけ)

塞(……私も帰ったら練習しようかな)

豊音「それで天江さんはどうして岩手にいるのかなー?」

衣「そうだった! 衣たちはサンタさんに会うために来たんだった!」

胡桃「…………………………えっ?」

蒲原「北に行きたいんだが、どう行けばいいのか教えてくれないか?」

胡桃「ちょっと待って! 今サンタに会うとかなんとか……」

衣「そうだ。今日はクリスマスイヴだ! サンタさんに会える絶好の日だからな!!」

胡桃「…………バカみたい」

衣「なんだと!?」

胡桃「サンタなんて現実にいるわけないでしょ!」

蒲原「そんなことはないぞ。サンタさんはいるんだ」

胡桃「サンタを信じてるなんて、子供なの!?」

衣「子供じゃない!! 衣だ!!」

ギャーギャー

白望「……はたから見ると、小学生がケンカしてるみたい」

塞「シロ、それは言わないであげて」

白望「でもサンタか……さすがに今は信じてないけど」

白望「塞もそうでしょ?」

塞「と、当然じゃない!」アセアセ

塞(えっ、嘘でしょ!? サンタさんって実際にいるんじゃないの!?)

塞(でもこの空気の中で、サンタさんがいるだなんて言えないしな……)

胡桃「見た目が子供なら、中身も子供なの!?」

衣「そっちこそ、子供じゃないか!」

胡桃「誰が子供よ!! こっちはれっきとした大学生だよ!!」

蒲原「……! 飛び級小学生か!?」ハッ

胡桃「誰が飛び級小学生だ!!」

胡桃「ほら、トヨネも言ってあげなよ!!」

豊音「うん!! サンタさんは絶対にいるよ!!」

胡桃「そうでしょう! サンタさんは絶対にいる……って、あれ?」

衣「おおー、そうだぞ! サンタさんは絶対にいるんだ!!」

豊音「そうだよねー。サンタさんは絶対いるよね」

蒲原「ワハハ、同志がいてくれて嬉しいぞ」

豊音「胡桃、サンタさんがいないなんて、そんなことちょーありえないよー」

胡桃「……」

豊音「それで二人は、サンタさんに会うために岩手まで来たんだよね?」

蒲原「そうだぞ。私の調べでは、北の方――つまり北海道にいるんじゃないかと思ってる」

豊音「わー、凄いよ!! ……いいなー」

塞「……行ってきなよトヨネ」

白望「……さ、塞?」

塞「道案内が必要みたいだしね。それに、トヨネもサンタさんに会いに行きたいんでしょう?」

豊音「……い、いいの?」

塞「もちろん」

豊音「でもでも、明日のパーティーの準備とかあるし……」

塞「それくらい私たちでやっとくからさ」

豊音「私なんかがいたら、天江さんたちに迷惑になっちゃうし……」

衣「そんなことないぞ!!」

蒲原「ワハハ、サンタを信じる同志を迷惑に思うわけないぞー」

衣「一緒にサンタさんに会いに行くぞ!」

豊音「わぁ、ちょー嬉しいよ!!」パァ

豊音「それじゃあみんな、明日のパーティーまでには帰ってくるね」

塞「いってらっしゃい豊音」

豊音「うん! いってきます!!」

蒲原「ワハハ、出発進行!」

ブロロー


白望「……行っちゃった」

胡桃「考えてみたら、あの純粋なトヨネがサンタ信じてないわけないよね……」

塞「さーて、トヨネの分も準備頑張ろっか!」

塞(本当は私も一緒に行きたかったけどね。トヨネ、私の分も頑張ってきてね!)

ブロロー キキー

豊音「えっとね、こっちの道をまっすぐ行って」

蒲原「ワハハ、了解」

ブロロー キュルキュル

豊音「次の道を左に曲がって」

蒲原「左だな。それ」

ブロロー ガガガ

豊音「あっ、次の交差点は右だよー」

蒲原「今度は右か。よっと」

ブロロー バキバキ

――――――――――

衣「おお、一面海だぞ!!」

蒲原「これが津軽海峡か、絶景だな」

豊音「ワハハさんの運転、ちょースリルがあって楽しかったよ!」

衣「そうだろう!! サトミの運転は最高だ!!」

蒲原「ワハハ、二人ともありがとうな」

衣「それでこれからどうするのだ?」

蒲原「フェリーで車ごと乗って北海道に行くぞ」

豊音「わー、フェリーにまで乗れるなんて……ちょー楽しみだよー!!」

衣「衣もだ!!」

蒲原「ワハハ、そろそろ出向の時間だな。行くとするか」

――――――――――

爽「いいねいいね、やはりユキにはピッタリ合うと思ったよ」

揺杏「クリスマス用の衣装、間に合ってよかった~」

成香「あの……もしかして先輩たち、それだけの為に来たんですか?」

爽「当然だ! 私には卒業してもユキをポスト瑞原はやりにする義務がある!」

誓子「あはは……爽は相変わらずだね」

由暉子「あの……今日は練習しないんですか?」

揺杏「ん? ああ、今日は先輩たちに衣装のお披露目したかっただけだよ~」

成香「なんとはた迷惑な……」

誓子「まあまあいいじゃない。たまにはこんな日があってもね」

成香「まぁ、久しぶりにちかちゃんに会えたのは嬉しいですけど」スリスリ

爽「……あれ、私は?」

由暉子「そういえば先輩方、今日はクリスマスイヴですがここにいてよろしいのですか?」

爽「ん? それはどういう意味だ?」

由暉子「一般的に今日という日は恋人同士が愛を育むのに最も適した日であるはずです」

由暉子「なのに先輩方はここで時間を潰していて問題ないのですか?」

爽「ははは、恋人がいたらそもそもここに来てるわけがない」キッパリ

誓子「うーん、なかなかいい人がいなくてね」

揺杏「今は恋人作るより衣装を作ってたいな~」

成香「……いないです。欲しいですけど……」

爽「ユキは?」

由暉子「いえ、私もお付き合いをしてる方はいませんが」

爽「なるほど、つまり私たちは悲しい独り身ばかりというわけか」

由暉子「そうなりますね」

成香「さすがにサンタさんでも、恋人はお願いできないですしね」

誓子「……ん?」

成香「はぁ、一度でいいからクリスマスを恋人と過ごしてみたいです」

誓子「なるか、もう一度今のセリフ言ってもらえるかな?」

成香「えっ? えっと――はぁ、一度でいいからクリスマスを恋人と過ごしてみたいです」

誓子「そっちじゃなくて、一つ前のやつ」

成香「一つ前? 確か――さすがにサンタさんでも、恋人はお願いできないですしね――だったかな?」

誓子「……うん、私の聞き間違えじゃなかったみたいだね」

由暉子「先輩、まさかサンタクロースの存在を信じているのではないでしょうね?」

成香「えっ!? 信じるも何も、サンタさんは実在の人物じゃないですか」

由暉子「確かにアメリカの新聞社、ニューヨーク・サンに掲載された
『サンタクロースは実在するのか』という社説の中で
記者のフランシス・チャーチがサンタクロースはいるということを
説いています。
しかし実際にサンタクロースが存在するのなら不特定多数の子供たちに
一晩の間にプレゼントを配るということが果たして可能なのでしょうか?
日本だけでも15歳以下の人口は1000万人以上います。
世界中ともなれば、その数値は億単位になるでしょう。
その子供たちに一晩という限られた時間の中でプレゼントを配ることは
現実的に考えて不可能でしょう。
仮にサンタクロースが一人ではなく、複数存在したとしても同じことです。
一晩で億単位の子供たちにプレゼントを配るためには、それこそ何万何億もの
サンタクロースが存在しなければ実行はできないでしょう。
しかしそんなにサンタクロースが存在しているとしたら、そもそも
サンタクロースの存在自体があやふやになる訳がありません。
職種の一つとしてサンタクロースが存在していなければおかしいです。
あと、社説の中にサンタクロースはいつまでも死なないと説かれていますが
もしそうだとしたら、その方の存在が明らかになっていないというのにも
私は疑問を――」

爽「もうやめろユキ、成香のライフはゼロだ!!」

成香「ひっく、えぐっ……」グスグス

誓子「なるか、泣かない泣かない」ナデナデ

成香「だ、だって、ひっく、サンタさんが、ぐすっ、いないって」グスグス

誓子「サンタさんはいるよ。だから泣かないで」

由暉子「先輩、さっきも言いましたが、サンタクロースは――」

揺杏「うん、ユキ、少し黙ってようか」

成香「サンタさんはいますもん……」

誓子「うん、そうだね。サンタさんはいるよね」

成香「去年だって、サンタさんはプレゼントをくれました……」

由暉子「それはサンタクロースではなく、親――」

揺杏「ユキ、それ以上しゃべったら今度の衣装ほぼ裸同然のものにするよ」

由暉子「別にかまいませんが」

揺杏「かまえよ!!」

ドーン!!!

爽「ん? 何か外で大きな音がしなかったか?」

揺杏「見てこようか」


蒲原「ワハハ、さすがに危なかったぞ」

衣「ふみゅ~」

豊音「衣さん、大丈夫?」

蒲原「いやー、どうも滑って運転がしにくいな」

揺杏「おい、大丈夫か?」

蒲原「ワハハ、なんとか大丈夫みたいだ」

豊音「ぶつかったのが雪でよかったよー」

誓子「なんとか無事みたいだね」

蒲原「すまないな。迷惑をかけたみたいで」

揺杏「いや、とくに壊れてるところはなさそうだし、気にしないでいいよ~」

蒲原「さて、目的地まであと少しだ。出発しようか」

衣「早くサンタさんに会いたいぞ!!」

豊音「うー、ワクワクしてきたよー」

成香「!? い、今、サンタさんに会いに行くって……!?」

蒲原「ワハハ、そうだぞ。私たちはサンタさんに会うために遠路はるばるここまで来たんだ」

誓子「遠路はるばるって、どこから来たの?」

衣「衣とサトミは長野からで、トヨネは岩手からだ!」

揺杏「うわー、さすがにそれは驚くね~」

蒲原「それじゃあ私たちは先を急ぐので失礼するぞ」

成香「ま、待って下さい!!」

蒲原「ワハ?」

成香「私も連れて行って下さい!!」

豊音「えっと、あなたもサンタさんに会いに行きたいの?」

成香「はい!! お願いします!!」

蒲原「ワハハ、もちろん答えは決まってるぞー」

衣「一緒に行くぞ!」

豊音「仲間がまた増えたよー」

成香「あ、ありがとうございます!!」

蒲原「同志が増えたところで、サンタさんに会いにいくぞー!!」

衣・豊音・成香「おー!!」

ブロロー…

誓子「なるか、よかったね。サンタさんを信じてる人に会えて」

揺杏「それにしても、成香以外にあんなにサンタを信じてる人がいるなんてね~」

由暉子「仮に存在していても、日本にサンタクロースがいるわけ――」

爽「ユキ」

由暉子「はい?」

爽「別にいいじゃないか、サンタさんが日本にいようがいまいが」

爽「サンタさんは日本にいる……その方が夢があっていいだろう?」

由暉子「そういうものですか?」

爽「そういうものだ」

由暉子「なるほど……そうですね」

爽「まあ実際サンタさんは北欧にいるから、北海道で会うのは難しいと思うがな」ハハハ

誓子・揺杏「えっ!?」

爽「ん?」

ブロロー

蒲原「ワハハ、四人になって賑やかになったな~」

豊音「衣さん、おかし食べるかな?」

衣「食べる~」ポリポリ

成香「……」

豊音「ん? どうしたの本内さん? 気分でも悪いのかなー?」

成香「いえ、そうではないんです」

蒲原「ならどうしてそんなに落ち込んでるんだ?」

成香「…………実は先ほど、後輩の子にサンタさんはいないと断言されてしまって……」

成香「皆さんと一緒に行って、本当に会えるのかどうか、不安になってしまって」

蒲原「なるほどな~」

成香「あの蒲原さん! これから向かう場所に行けばサンタさんに絶対会えますよね!?」

蒲原「ワハハ~、それは分からないな」

成香「えっ!?」

蒲原「あくまで私が調べた場所に向かっているから、そこでサンタさんに会えるかどうかは微妙だな」

成香「な、ならなぜ北海道まで探しに来たのですか!? そんな曖昧な情報で!?」

蒲原「決まっているだろう。――サンタさんに会いたいからだよ」

成香「はい? で、でもさっき会えるかどうか微妙だって……?」

蒲原「ワハハ、今回は会えないかもしれない。だがそれなら来年。それもダメなら再来年探しに行くさ」

蒲原「だってサンタさんは……実際にいるんだからな」

成香「……」

蒲原「だから少しでも可能性があるなら北海道だろうと、いると信じて探しに行くよ」

蒲原「成香だって信じてるから、私たちについてきたんだろう?」

成香「それは……そうですけど……」

蒲原「周りの人がいないと言ったとしても、少なくともここにいるのは皆サンタさんを信じてる仲間なんだ」

成香「仲間……」

衣「そうだ!! サンタさんは絶対にいる!!」

豊音「うん。会ってサインを貰うんだ!」

蒲原「だから私たちはいると信じて進む。ただそれだけなんだ」

成香「……私、皆さんに出会えて本当によかったです」

成香「そうですよね……諦めたらそこで終わりなんですから!」

成香「私もう迷いません! たとえ他の誰かがサンタさんの存在を否定しても、私は信じ続けます!!」

蒲原「ワハハ、元気になったみたいで安心したぞ」

衣「ナルカ、よろしくな」

成香「はい!」

蒲原「さて、日が暮れる前に行くとするか。少し飛ばすぞ」

ギュイーン!!!!

成香「えっ、ちょ」

ギュイーン!!! キュルキュル

蒲原「ワハハ、飛ばすぞ飛ばすぞ!」

衣「サトミ、もっと速く速く!!」

豊音「うわー、ちょー楽しいよ」

成香「あわわわわわわ」ガタガタ

ギャルルーン!!!! ゴゴゴゴ

蒲原「よーし、目的地まであと少しだ」

衣「サンタさんにいよいよ会えるのか!?」

豊音「楽しみだねー」

成香「あわわわわわわ」ガクガク

ギュンギュンギュン!!! プップー

蒲原「あらよっと」クルッ

衣「さすがサトミだ!! 前から来たトラックを華麗にかわしたぞ!」

豊音「ちょーカッコいいよー!」

成香「あわわわわわわ」チョロ…

――――――――――

蒲原「ふぅ、ようやく着いたな」

衣「さ、さささ寒い」ガタガタ

豊音「衣さん大丈夫? ほら、私のマフラー使っていいよー」

衣「た、たた助かるぞトヨネ」プルプル

成香「」チーン

成香(し、死ぬかと思いました……)

成香(少し……漏らしてしまいました……////)

衣「ふぅ……少しはマシになったぞ」

豊音「それでワハハさん。この山にサンタさんがいるの?」

蒲原「ああ。この山奥にある建物に、この時期になるとサンタさんらしき人物が訪れるという噂があってな~」

衣「なるほど。では早く行くぞ!」

豊音「大丈夫、本内さん? 車に酔っちゃったのかなー?」

成香「い、いえ……大丈夫です」ガクブル

成香(こうして私たち四人は、山奥にある建物を目指して進みました)

成香(みんなでサンタさんに会えたら何を話そうか、何がしたいか話しながら歩いていきました)

成香(その時間は私にとって、最高に楽しいひとときでした)

成香(この幸せな時がずっと続けばいいな……そう思っていました)

成香(そして現在――)


ヒョオォォォォー!!!

成香「す、すごい吹雪です!!!」

蒲原「わ、ワハハ……これはマズイな……」

豊音「うわー、衣さんが消えちゃったよー!」

蒲原「何!? おーい衣、どこだ!?」

衣「もがもが」バタバタ

成香「あっ、いました! 雪に埋もれてました!」

豊音「今助けてあげるよー」ザッザッ

衣「もがが――ぷはっ、死ぬかと思った……」

蒲原「よかったぞ無事で」

成香「しかしこの吹雪で方向が分からなくなってしまいましたね……」

豊音「まさか私たち、遭難しちゃったの!?」

蒲原「『そうなん』です、なんてな」

衣「ぷっ、あはは! サトミ面白すぎるぞ!!」ケタケタ

豊音「本当だー。ちょー面白いよー」クスクス

成香(……二つの意味でまったく笑えないのですが)

蒲原「せめて目的地の建物まで着けたら、何とかこの雪をしのげるんだがな」

成香「蒲原さん、そこまでまだ着かないのですか?」

蒲原「うーん、近くまで来てるとは思うんだが……」

蒲原「何しろこの吹雪で方向を見失ったからな……」

成香「でも早く何とかしないと、みんな凍え死んじゃいますよ!」

衣「あれ……父様に母様……衣に会いに来てくれたのか……?」

成香「天江さん!? 起きて下さい!! 目を開けないと!!」バンバン

豊音「あー、死んだ曾ばあちゃんだー。久しぶりだねー」

成香「姉帯さん!? そっちに行ってはダメです!!」バシバシ

蒲原「おーモモか? ゆみちんはどうしたんだ? 珍しいな、一緒じゃないなんて」

成香「蒲原さん!? おそらくその人は死んでないはずです!!」ビシビシ

成香(もうダメだ……このままでは全滅です……)

成香(……最後に、一目でいいからサンタさんに会いたかったです……)

ピカッ

成香「……あれ? 今何か光ったような……」

成香(もしや誰かがいるのでは!?)

成香「と、とにかく行ってみましょう……」


成香「……こ、これは……湖?」チャプ

成香「いや熱いです! もしやこれは……温泉!?」

成香「そうです、吹雪が止むまで温泉にいれば助かるはずです!!」

成香「さっそく皆さんをこの中に入れないと!!」

――――――――――

蒲原「あー、生き返ったぞー」

衣「温かくて気持ちいいな」

豊音「ちょー温まるよー」

成香「ふぅ……よかった間に合って」

成香(それにしても、あの明かりはなんだったんでしょうか?)

蒲原「成香のおかげで助かったぞ、ありがとうな」

成香「えっ!? そ、そんな、当然ですよ!」

衣「衣にもお礼を言わせてくれ。ナルカ、ありがとう」

豊音「本内さんは命の恩人だよー」

成香「あ、あうぅ……////」ブクブク

成香(正面からお礼を言われると、なんか照れますね……)

衣「それにしてもトヨネ、そのおもち見事だな」

豊音「えー、そんなことないよー」プルン

蒲原「ワハハ……」ペターン

成香「……」ペターン

衣「……」ツルペターン

豊音「あはは……」

蒲原「まあ私は気にしてないからいいけどな」

成香(……羨ましいです)ジー

衣「うー!! 衣もトヨネみたいにボンキュッボンになりたいぞ!」

豊音「大丈夫だよ衣さん! 衣さんはこれからが成長期なんだから、きっと大きくなるよー」

衣「本当か!?」

蒲原「ワハハ、そうだな」

成香(あれ? 天江さんって高校生なのでは……?)

蒲原「おっ、雪が止んだみたいだな」

衣「そうだな」

豊音「みんなー、こっちにタオルと着替えがあるよー」

蒲原「おお、ありがたいな。持ち主には申し訳ないが、使わせてもらおうか」

成香「ちょちょちょ、待ってください!?」

成香「都合よくタオルと着替えがあるなんておかしくないですか!?」

蒲原「そうか? ここは温泉みたいだし、誰かの忘れ物じゃないか?」

衣「この服、衣にピッタリだ!! しかも温かくて気持ちいいぞ」ホカホカ

豊音「本当だー、ちょー温かいよー」ヌクヌク

成香「……」

成香(あれ……私の方が間違っているのですか?)

蒲原「さて、雪も止んだし体も温まったな」

衣「あれ……?」

豊音「よーし、サンタさんの家に向かって出発だよー」

衣「なあナルカ」

成香「はい? どうかしたんですか天江さん?」

衣「あそこに何か見えないか?」

成香「あそこですか?」

衣「ほら、そこだ」

成香「えっと――はっ!? 蒲原さん、もしやあれが目的の建物じゃないですか!?」

蒲原「何だって!? なんと、この温泉と目と鼻の先じゃないか」

豊音「ちょーラッキーだね」

衣「ということはあそこに……」

成香「サンタさんがいると言うことですね!!」

蒲原「よしみんな、行くぞ!!」

衣・豊音・成香「おー!!」

蒲原「おお、近くで見ると凄いぞ……」

衣「この家、サンタさんの本で見たことあるのと同じだ!」

豊音「いよいよだね……ちょードキドキしてきたよ」

成香「やっと……やっとサンタさんに会えるんですね」

蒲原「よし、みんなでノックをするぞ」

トントン

?「あー、どちらさんだー?」

豊音「わっ!? 今声がしたよ!!」

ガチャ

?「ん?」

成香(私たちの前に現れた御方は、本やテレビで見た、赤と白の衣装に身を包んでました)

成香(そして白い髭を顎に生やしてた、お年寄りの方でした)

成香(……そのお姿は、何度も何度も想像していた……サンタさんと同じでした)

蒲原「あ、あの……本物のサンタクロースさんでしょうか?」ドキドキ























?「いや、ワシは大沼秋一郎という、ただの雀士だ」

四人「……………………えっ?」

大沼「あー、そんなことより娘さん方、中に入りなさい」

四人「あ……はい(うん)……」


蒲原「ワハハ……そうか、本物のサンタさんじゃなかったのか……」

大沼「すまないな、お目当ての人物じゃなくて」

成香「で、でもなんでそんなサンタさんみたいな格好をしてるんですか!?」

大沼「少し前にプロ麻雀せんぺいのカードのクリスマス限定版の撮影があってな」

大沼「そん時着たこの服が思いの他温かくってだな。そのまま部屋着として使っているんだ」

衣「ここはサンタさんの家じゃないのか……?」

大沼「残念ながらな。ここはワシの別荘だ。この時期になるとノンビリここで年末を過ごすようにしてるんだ」

豊音「あ、あのあの……」モジモジ

大沼「ん? どうした、長身のお嬢ちゃん?」

豊音「大沼プロ、さ、サイン下さい!!」サッ

大沼「サインか? いいぞ」サラサラ

豊音「わぁ……ありがとうございます!!」

蒲原「よかったな豊音」

豊音「うん!」

成香「でも結局サンタさんには会えませんでしたね……」

衣「そうだな……」

大沼「さっきから気になってたが、お前さんたちサンタを探してここまで来たのか」

蒲原「ワハハ、そうだぞ」

成香「笑うなら笑ってもいいですよ……でも私たちは本気でサンタさんを信じてるんですから」

大沼「笑う? おかしなことを言うなぁ」

成香「えっ!?」

大沼「ワシはお前さんたちより長く生きているが、それでもサンタの存在を否定せんよ」

大沼「この世は広い。不思議なことの一つや二つあったっておかしくはない」

大沼「いいじゃないか、サンタがいたって。ワシはいると思うしその方が面白い」

豊音「そうですよね!! サンタさんはいますよね!!」

成香(嬉しいですね……そう言ってくれる人がいるというのは)

衣「ふみゅ……」コクリコクリ

蒲原「衣、大丈夫か?」

衣「だ、大丈夫だ……ちょっと眠いだけ……」ウツラウツラ

豊音「すっかり遅くなっちゃったねー」

成香「そうですね……どうやって帰りましょうか……」

ハギヨシ「ご心配にはおよびません」シュタ

成香「ひっ!?」ビクッ

蒲原「おー、萩原さんじゃないか」

ハギヨシ「お迎えに上がりました。近くに龍門渕家の自家用ジェット機が用意してあります」

蒲原「それはありがたいが、私は愛車を置いて帰るわけにはいかないからな……」

ハギヨシ「大丈夫です。そちらも一緒にお運びいたします」

蒲原「本当か? それは助かるぞー」

ハギヨシ「はい。さすがに普通のタイヤの車でお帰りになるのは危険ですから」

蒲原「しまった。タイヤを変えるのすっかり忘れてたよ」ワハハ

成香(……どうりで凄く滑ると思ったら……)

ハギヨシ「もしよろしければ皆様、本日は龍門渕家にお泊りされてはいかがでしょうか?」

ハギヨシ「吹雪の中を歩かれてお疲れでしょうし、ゆっくり体を休めて下さい」

成香(あれ……なんでそれを知ってるんでしょうか……)ハッ

成香(もしや私たちを温泉に導いた光の正体は……)ジッ

ハギヨシ「……」ニコニコ

成香(それならタオルと着替えが用意してあったのも納得できますね)

豊音「あのー、凄く嬉しいんですけど、私明日までに岩手に帰らないといけないので……」

ハギヨシ「ご安心下さい。明日の朝、私が責任を持ってジェット機でお送りいたします」

豊音「それでしたら、お邪魔しますね」

成香「えっと……私もいいんですよね?」

ハギヨシ「もちろんです」ニコッ

大沼「娘さん方、気を付けて帰りな」

蒲原「ワハハ、お邪魔しました」

豊音「サイン、一生大事にしますね!」

成香「あの、色々ありがとうございました!」

大沼「今度また遊びに来な。そん時は別荘自慢の温泉を味あわせてやる」

成香(あの温泉、大沼プロの別荘のでしたか……)

ハギヨシ「それでは皆様、参りましょうか」オンブ

衣「くぅ……」ZZZ

龍門渕家 衣の部屋


蒲原「すまないな、みんなで衣の部屋で寝かしてほしいなんて言って」

ハギヨシ「いえ、それは問題ないのですが、よろしいのですか? 皆様ベットでなくお布団で?」

豊音「うん、大丈夫だよー」

成香「今日は寝るまで、みんなと一緒に過ごしたいんです」

ハギヨシ「そうですか。それではおやすみなさい」

バタン

蒲原「ワハハ、結局今年もサンタさんに会えなかったな」

豊音「でもでも、大沼プロに会えたし、それにワハハさんや衣さん、本内さんと友達になれたよ!!」

成香「そうですね。サンタさんに会えなかったのは残念ですけど、私、今日という日を一生忘れません」

蒲原「よーし、来年もサンタさんを探しに行くぞ!!」

豊音「今度はどこを探しに行こうかなー?」

蒲原「今回が北だったし、来年は東あたりへ探しに行こうか」

成香「なんか部活動みたいですね」

蒲原「いいな、それ」

成香「えっ?」

蒲原「サンタさんを信じる同志が集まってサンタさんに会いに行く……名付けて『サンタ部』というのはどうだ?」

豊音「わー、ちょー面白そうだよ!」

成香「サンタ部……ふふ、なんかいいですね」

衣「……すぅ……」ZZZ

蒲原「明日起きたら衣にも聞かしてあげような」

成香「そうですね」

豊音「衣さんの寝顔、ちょー可愛いよ」

衣「……サンタさん……握手してほしいぞ……」ZZZ

蒲原「おっ、衣のやつ、夢の中でサンタさんに会ってるな~」

豊音「幸せそうな顔だねー」

成香「また来年も皆さんと一緒に過ごしたいですね」

豊音「来年こそはサンタさんに会いたいね」

蒲原「ワハハ、そうだな」

成香「あっ、もう25日ですね」

蒲原「本当だな」

蒲原・豊音・成香「メリークリスマス」

衣「ふみゅ……」










蒲原「サンタさんに会いにいくぞー!」衣・豊音・成香「おー!!」  カン

この時期になるとなぜか書きたくなったので書いてしまった。
支援、代行ありがとうです。

知ってる人いたら嬉しいけど、ちょうど一年前に書いたワハころの出会い編

蒲原「よーし、本物のサンタさんに会いにいくぞー!」衣「わーい!」

以下、蛇足的なおまけ

おまけ ~ワハころサイド~


蒲原「ワハハ、二人とも気をつけてな」

豊音「うん……」グスッ

成香「はい……」グスリ

蒲原「二人とも、そんなに泣かなくてもいいだろ?」

豊音「だって、せっかく仲良くなれたのに……」

成香「もっと一緒にいたかったです……」

衣「うぅ……衣だってもっとトヨネとナルカと遊びたかった」グシュグシュ

蒲原「あらら衣まで……」

蒲原「大丈夫だ。いざとなったら私が車でそっちに遊びに行くからな」

豊音「本当に!?」

蒲原「もちろんだ」

蒲原「だからそんな悲しい顔しないでくれ」

豊音「う、うん」ゴシゴシ

成香「そうですね」

豊音「じゃあねワハハさん、衣さん!! また会おうねー!!」

成香「失礼します。智美さん。こ、ころちゃん……////」

衣「ころちゃん!?」

蒲原「ワハハ、いいな、ころちゃん」

豊音「私もー。ころちゃん、またね!」

衣「ころちゃんなんて呼び方、まるで子供みたいじゃないか!!」

蒲原「いいじゃないか。友達なんだから」

衣「友達……!! そうだな!!」

ハギヨシ「それでは姉帯様、本内様。出発します」

蒲原「……行っちゃったな」

衣「トヨネとナルカも衣の友達か……嬉しいな」

蒲原「そうだ衣、これ」スッ

衣「なんだ?」

蒲原「クリスマスプレゼントだ」

衣「い、いいのか!?」

蒲原「安物で申し訳ないけどな」

衣「でも、衣はサトミに何も用意してないぞ……」

蒲原「ワハハ、気にしないでいいぞ~」

衣「サトミ……ありがとう。さっそく開けてみてもいいか!?」

蒲原「もちろんだ」

ガサガサ

衣「わあ……可愛い手袋だ!!」

蒲原「衣にピッタリだと思ったんだが、どうだ?」

衣「最高だ!! 温かくて気持ちいいぞ!!」

蒲原「ワハハ、喜んでくれて私も嬉しいぞ」

衣「サトミー!!」ギュッ

蒲原「おっと、どうしたんだ衣?」

衣「サトミも温かいな!」

蒲原「衣だって温かいぞ」

衣「来年は衣もプレゼントを用意しておくから、楽しみにしておいてくれ!」

蒲原「ワハハ、楽しみに待ってるぞ~」


ワハころサイド  カン

~豊音サイド~


パン!! パン!!

豊音「メリークリスマス!!」

塞「さっ、今日は腕によりをかけて作ったから、どんどん食べてね!!」

エイスリン「シロ、アーン」

白望「あむ……」モグモグ

胡桃「そこ、いちゃつかない!!」

塞「それにしても残念だったね豊音。サンタさんに会えなくて」

胡桃「だから言ったじゃない! サンタなんていないって!」

豊音「確かにサンタさんには会えなかったけど、友達が増えたよー!!」

塞「そっか。よかったね豊音」

エイスリン「サンタサン、イル!!」

豊音「エイスリンさんもそう思うよね!!」

胡桃「エイちゃんまで!」

塞「いいじゃない胡桃。サンタさん信じたって」

胡桃「塞まで……」

塞「それとも胡桃は、あんなに楽しそうにしてる二人に対して、まだいないなんて言えるの?」

エイスリン「……」カキカキ バッ

豊音「わー、サンタさんだー!! ちょー上手いよー!!」パチパチ

胡桃「うぅ……」

胡桃「……今日だけは、サンタ信じたげる……」

塞「うん!」

豊音「いっぱい友達がいて、ちょー幸せだよー!!」


~豊音サイド~  カン

~成香サイド~


由暉子「先輩、昨日は失礼しました」ペコリ

成香「いえ、お気になさらないで下さい」

由暉子「あの後色々考えまして、サンタクロースの存在を信じることにしたんです」

成香「ほ、本当ですか!?」

成香(あんなにサンタさんの存在を否定していたユキちゃんが……驚きですね)

由暉子「はい。その方が夢がある、そう教わりましたので」

爽「ふんふふ~ん」

由暉子「それで先輩にお願いがあるのですが」

成香「なんですか、何でも聞いてください!!」

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