めだかボックス×NEEDLESS
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やぁ、球磨川くん。
愛しの愛しの安心院さんだよ。
君ってやつは、また性懲りもなく死んだのかい?
いやいや、責めている訳じゃないさ。
君と会えることは僕の唯一の楽しみと言っても過言ではないのだから。
……何? 笑顔が嘘くさいだって?
そりゃ、もちろん嘘だからね。
まぁ、僕にとっては嘘も真実もどちらも同じく平等でしかないんだけれど。
だいたい、『大嘘憑き』を持つ君に嘘くさいだなんて言われたくはないよ。
さて、冗談はこの辺にして。
君のことだからもう察しがついているかもしれないし、これっぽっちもついていないかもしれないが。
うん、「また」なんだ。
第二回、安心院ゲーム!
ドンドンパフパフ!
なんだい、そのげんなりした顔は。
君は女の子に振り回されるジャンプのラブコメ主人公に憧れていたと記憶しているんだけれど、記憶違いだったかい?
まぁ、どうでもいいんだけれど。
これは僕の暇潰し兼嫌がらせだし。
それじゃあ第二回安心院ゲームのルールを説明しよう。
自由度の高いゲームはつまらないというのが僕の持論だけれど。
とはいってもゲームマスターとしてルールを設定したところで、君にしっちゃかめっちゃかにされるのは水槽学園での一件、つまるところの第一回安心院ゲームで学んだからね。
今回はいつも通り君が面白おかしく巻き込み巻き込まれるのを見物させてもらうことにしたよ。
君は好き勝手やりたいようにやってくれればいい。
つまりフリーダム、アンリミテッドだ。
『例外のほうが多い規則』だ。
とか言って。
ゲームの舞台だけれど、ある異世界に行ってもらう、というか強制的に送り込む。
君に貸し出している『手のひら孵し』を除いた、7932兆1354億4152万3222個の異常性と4925兆9165億2611万642個の過負荷、合わせて1京2858兆519億6763万3864個のスキルを応用すれば異世界に人一人を飛ばすくらいならなんとかできなくもないんだぜ。
あぁでも、異世界といってもいわゆるハイ・ファンタジーな世界じゃない。
2130年の日本だ。
ちょっとした時間旅行という訳さ。
まぁ、あくまで異世界であって、僕たちがいるこの世界の未来ではないんだけれどね。
だから探してみればあっちにはあっちの安心院さんがいるかもしれないよ。
その安心院さんが僕と同じように君に優しいかは保証しないけれど。
さぁ、説明はもういいだろう。
ゲームってのは得てして、前情報が多いほど興醒めなものだからね。
大丈夫大丈夫、本当にヤバくなったら僕がこちらの世界に呼び戻してあげるから。
だから安心したまえ(安心院さんだけに)。
それじゃあ、これが球磨川くんにとって善き旅にならんことを祈って。
イタい子イタい子とんでけ~☆
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どこかの下水道
球磨川『いたた……』
球磨川『いくらなんでもあの掛け声はひどいだろ……。あれじゃあまるで僕がイタい子みたいじゃないか。心外だぜ、人外だけに』
球磨川『それにしてもここは……下水道? こんなところに飛ばすなんて安心院さんもつくづく性格悪いなぁ』
球磨川『僕が、瞳先生以外が握ったおにぎりは食べられないくらい潔癖症だってことを知っての仕打ちなのかな』
球磨川『まぁ、とりあえずは外に出て……』
ドゴォォォォン!!
球磨川『な、なんだ……?』
クルス「う、うわぁぁぁぁぁ!?」
テスタメント「ココハ立入禁止区域デス。衛星基準法ニ基ヅキ、侵入者ヲにーどれすトミナシ駆除シマス」
クルス「も、もうダメだ……! 殺される……っ!」
球磨川『……おいおい。早速巻き込まれてない、僕?』
クルス「ひ、人……!? もしかしてレジスタンスの人ですか!?」
球磨川『え、いや違いますけど』
クルス「じゃ、じゃあシメオンの!?」
球磨川『え、いや違いますけど』
テスタメント「侵入者ヲ二名確認。全テ駆除シマス」ガシャン
球磨川『うわっ、本格的に巻き込まれた』
球磨川『全く……。僕は平和主義者なのに……』バッ
ザクザクッ
クルス「ね、螺子!?」
球磨川『こうなったらもう、実力で螺子伏せるしかないじゃないか』ゾンッ
テスタメント「」ギギギ
球磨川『人間相手にはついぞ勝ったことのない僕だけれど、それでもさすがに機械ごときに負ける球磨川禊じゃあないぜ』
テスタメント「」バキッ…ウィィィィン
球磨川『仕掛けてきたのはそっちだ。僕には自衛する権利がある。だから、僕は悪くな……テスタメント「駆除シマス」グシャァッ
クルス「なんか決め台詞っぽいの言おうとして吹っ飛ばされたーーっ!?」
球磨川『い、いや別に決め台詞とか言ってないけど?』ガクガク
クルス「だ、大丈夫ですか!?」
球磨川『ぜ、全然平気だし……。幼なじみのあいつの平手打ちの方が痛いくらいだし』ボロン
クルス「内臓的な物がはみ出てますけど!?」
球磨川『え? いやいや、ほら。僕って普段からわりとこんな感じでしょ?』ドバァッ
クルス「普段から内臓飛び出てるならそれはそれで大変ですよ!!」
テスタメント「駆除シマス」ウィィィィン
クルス「ひぃっ!?」
クルス(神様……っ!)
チャリッ
クルス(十字架……?)
「ずいぶん厄介なもんに追われてるじゃねぇか」
クルス「神父、様……!?」
「おらぁっ!!」
ゴンッ
クルス「蹴りでテスタメントを止めた!?」
テスタメント「」ウィィィィン…ガシャ
「ちっ、マンシンガン装備の最新型か! 伏せろ!!」
クルス「ひぃっ!」バッ
ダダダダダダ
「走れ!」
クルス「は、はい!」ダッ
「小僧、貴様のフラグメントはなんだ!?」
クルス「え!? ぼ、僕はニードレスじゃ……」
球磨川『ニードレス? なんだい、それ』ヒョコッ
クルス「ってうわぁ!? ぶ、無事だったんですね! よかった……!」
球磨川『置いていこうとしたきみが言えるセリフじゃないぜ、それ。まぁ、無視されるのは慣れているけれど。もはや僕の特技といってもいい』
クルス「だ、だって内臓出てたしもう死んじゃったのかと……」
クルス(あれ……? 傷がない……?)
「てめぇら二人ともニードレスでもないのにこんなとこ潜り込んでんのか!」ポイッ
ドカァァァァァン
テスタメント「駆除シマス」
「ちっ! この程度じゃ傷つきもしねぇか」
球磨川『聖書の中に手榴弾とか、絶対神父じゃないよね。きみ』
ドシュッ
クルス「うわぁぁっ!!」
ドォォォォン!
球磨川『マンシンガンにランチャー……。なんでもありかよ』
「だがランチャーが出たってことは、弾切れだな」ニィ
クルス「え……?」
「ハッハァーッ!!」バッ
テスタメント「」バカッ
「おら、出してみろよ! てめぇのとっておきをなぁ!!」
ドシュッ
「ふんっ!」ガシッ
クルス「ランチャーを素手で……!? 無茶です神父様!!」
「返すぜワン公!!」ドカッ
ドォォォォン!
「ちっ……」ボロッ
クルス「手が……! 神父様!」
球磨川『ふぅん……』
「脳ミソ丸見えだなぁ!」ガシッ
「判決・死刑!!」ブチブチブチ
クルス(姉さんでも傷一つつけられなかったテスタメントを、フラグメントも使わずに……! この人何者なんだ!?)
「」フラッ
クルス「し、神父様!? 大丈夫ですか!?」ガシッ
「大丈夫に見えるのかよ……。ったく、ニードレスじゃないんなら助けて損したぜ。ぐっ……」
「いいか、よく聞け……。S33地区の、教会に……ぐはっ」ドサッ
クルス「神父様!!」
球磨川『ほらほら、早くその教会とやらに連れてってやらないと死んじゃうぜ? その教会が死んだ仲間を蘇生させる場所って意味なら話は別だけれど』
クルス「あ、あの、あなたもしかして治癒のフラグメントを持ってるんじゃないんですか!?」
球磨川『治癒のフラグメント?』
クルス「だって、あんな怪我をしてたのに平気な顔してるじゃないですか! お願いします、神父様を……!」
球磨川『そのフラグメントってのが何かは知らないけれど、確かに僕はその傷をなかったことにすることができる』
クルス「じゃあ……!」
球磨川『でもさぁ、このまま死んだ方がこの人カッコいいと思うんだよね』
クルス「は……?」
球磨川『見ず知らずの少年を魔の手から救った破戒神父。だが彼もまたその戦いの傷で命を落としてしまう……。神父から十字架を受け継いだ少年は今、世界を守るために立ち上がるのだった!』
球磨川『……とか言って。なんだか週間少年ジャンプみたいでテンション上がらない?』
クルス「ふ、ふざけないでください! 命がかかってるんですよ!?」
球磨川『僕はいつだって真剣だよ。失礼なやつだな』
クルス「神父様は何もできなかった僕たちを守ってくれたのに、よくそんなこと言えますね……!」
球磨川『何もできなかった僕たち? おいおい、果敢に立ち向かって力及ばず敗北した僕と、わーきゃーわめくことしかできなかったきみを一緒にするなよ』
球磨川『僕は負け犬だけれど、闘わなければ男は負け犬にすらなれやしないんだ』
球磨川『おっと、これはジャンプSQだった。僕としたことが、大失態だぜ』
球磨川『きみにその「自分は守られる側だ」って考えが染み付いたのは、きっといつも守ってくれる誰かがいたからなんだろうね』
クルス「……っ!」
球磨川『自分が危なくなっても守ってくれる人がいる。多少無茶をしても助けてくれる人がいる。そんなぬるい環境が今のきみを作ったんだろう』
球磨川『そしてそういう奴は決まって「次は僕が守るんだ」とか言うものだけど、結局は最後の最後まで守られっぱなしでその誰かを失うんだよね』
クルス「ち、違う……。僕は、そんな……!」
球磨川『でも、いいんだよそれで。恥ずかしがることはないさ。何もしなくても守ってもらえて生きていけるなんて誰にでも真似できることじゃあない』
球磨川『楽して生きようとするその根性、尊敬の念すら湧いてくるね。安心していい、僕が保証しよう。きみはきみのままでいいんだよ』
球磨川『きみは悪くない』ゾンッ
クルス(なんなんだこの人……! 気持ち悪い……! ただただ気持ち悪い!)
クルス(このBSですら、ここまで狂ってる人は見たことがない……!)
クルス(この人に頼むのは無理だ。早くS33地区に……)ズリッ…
球磨川『あれ、行っちゃうの? 僕この世界に詳しくないんだ。一緒に連れてってくれよ』
球磨川『あ、今のRPGで無理矢理ついてくる迷惑なパーティーメンバーのセリフっぽくなかった?』
クルス「……」ズリッ…ズリッ…
球磨川『……やれやれ。嫌われ者は辛いぜ』
とりあえず今日はこれだけ
不定期・鈍行ですが悪しからず…
S33地区 教会
クルス「すー……すー……」
「ここまでお前が運んできたらしいな。やるじゃねぇか」
クルス「んっ……、すー……」
「ま、助けてやった分はこれでとんとんにしといてやるよ」
球磨川『じゃあ僕がきみを殺してトータルマイナスにしよう』バッ
「……っ!」ガシッ
「てめぇ……、下水道にいた奴か。どういうつもりだ」
球磨川『やだなぁ、本気にしちゃった? きみの実力を試しただけだよ。来るべき戦いのためにさ』
「あぁ? 戦いだと?」
球磨川『そう、きみの大事なものをかけた戦いの……ね。アダム・ブレイド』
ブレイド「てめぇどこで俺の名前を……!」
球磨川『いや、普通にここのおじいさんに教えてもらっただけだけれど』
ブレイド「……ちっ、そうかよ。それで、戦いってのはどういうことだ?」
球磨川『あぁ、えっとなんだっけ』
球磨川『そうそう! 今日の晩御飯のおかずをかけた戦いできみが一番の強敵になると思ったから今のうちに調べておいたんだよ!』
球磨川『いやぁ、やっぱり強いなぁ。これはもしかしたら今夜のおかずはなしになるかもしれないぞ』
ブレイド「……馬鹿にしてんのか? だいたいなんでお前がおかず争奪戦に参加することが前提なんだよ」
球磨川『え、だってここ教会でしょ? 行く宛のない僕を助けてくれたりしないの?』
ブレイド「知るか。勝手にのたれ死ね」
球磨川『あー、ひどいんだー。人に死ねとか言っちゃいけないんだぞー』
ブレイド「殺す言ってたてめぇに言われたかねぇな」
ドッドッドッドッ…
ブレイド「助けて欲しかったら俺みたいに大怪我でも負ってから出直し……」
「おーい! ブレイドー!」ブォン
球磨川『ぶふっ!?』メコッ
ガシャァァァン!
「おかえりブレイド! どこ行ってたんだよー!」
ブレイド「おい、イヴ。お前今バイクで人ひいたの気づいてるか」
イヴ「えー、なんの話……」
球磨川『』ドクドク
イヴ「ひどいっ!? 誰がこんなことを!?」
ブレイド「だからお前だ」
球磨川『こ、これで助けてくれるかな……?』ブシャァァ
イヴ「うえ、気持ち悪っ」
球磨川『きみがやったんだけどね……』ブシャァァ
クルス「ん……?」ムクッ
イヴ「あれ、もう一人知らない奴がいる」
クルス「ね、姉さん!?」バッ
イヴ「はぁ?」
クルス「あ、違う人……」
イヴ「誰が姉さんじゃコラァ!!」ギュゥゥ
クルス「く、首が……、絞まるぅ……!」
ブレイド「やめぃ。1日に二人も殺す気か」
球磨川『勝手に殺すなよ』ブシャァァ
ギド「ご苦労じゃったな、少年」
クルス「いえ、僕こそ助けていただいて……。ありがとうございました」
ブレイド「俺はブレイド。こっちがギドで俺を治したのもこのジジイだ」
イヴ「ぼくはイヴ・ノイシュヴァンシュタイン。長いからイヴ・ノイシュヴァンシュタイン様でいいよ」
ブレイド「増えてる増えてる」
クルス「く、クルス・シルトといいます……」
球磨川『僕は球磨川禊。長いからクマーって呼んでよ』
イヴ「じゃあ略して山田と竹田ね!」
球磨川『あれ、僕の自己紹介何一つ聞こえてなかったのかな?』
ブレイド「……で、なんであんなもんに追われてたんだ?」
球磨川『僕は追われてたんじゃないけどね』
イヴ「もう! お前めんどくさいから黙ってろよ!」
球磨川『なんだかきみだけには言われたくない気がするなぁ』
クルス「……実は僕、レジスタンス『解放軍』のメンバーだったんです。シメオン総帥に奇襲を仕掛けたんですけど、失敗して……」
ギド「レジスタンスじゃと!?」
イヴ「お前のせいかーーっ!!」バキッ
クルス「ぐぇ!? な、何するんですか!」
イヴ「そのシメジってやつらが、犯人を探してあちこち襲ってるんだよ! 地区ごと焼き払われたところもあるんだぞ!」
ブレイド「シメオンです」
イヴ「お前たちがそんなバカなことするからだ!」
クルス「ば、バカだって!? 僕たちはシメオンのBSに対する干渉と搾取を……!」
イヴ「うるさい!!」バキッ
クルス「ぐぇっ!?」
イヴ「訳のわからないことを言うな山田!」
クルス「クルスです……」
イヴ「黙れ山田!」
球磨川『じゃあ、この子をそのシメオンってとこにつき出せば解決なんじゃないの? ねぇ、アダムちゃん』
ブレイド「アダムちゃんってのは俺のことか? やめろ気持ち悪い」
球磨川『じゃあブレイドちゃん?』
ブレイド「そこを変えろっつったんじゃねぇよ」
クルス「アダムだって……!?」
ブレイド「あ? 言ってなかったか? 俺はアダム・ブレイドだ」
クルス「……! そのチョーカー……!!」
ブレイド「あぁ? これがどうしたんだよ」
クルス「そ、そうか! あんたもシメオンの手先だったんだな!?」
ブレイド「おい、何を言って……」スッ
クルス「さ、触るなっ!!」パシッ
クルス「うわぁぁぁぁぁ!!!」ダッ
ブレイド「なんだあいつ……」
イヴ「ぼくあいつ嫌いだ」
球磨川『……』
IDが安定しないのでトリつけます
廃墟
クルス「姉さんたちも仲間に裏切られて殺されたんだ……! もう騙されないぞ……!」
クルス「姉さん……っ」
球磨川『お姉さんが恋しいのかい?』
クルス「うわぁっ!? い、いつからそこに!?」
球磨川『いつからだっけ、覚えてないなぁ。で、それがきみのお姉さん? 守ってくれてたのもその人なのかな?』
クルス「……あなたには関係ないでしょう」
球磨川『関係ないだって!? おいおい、共に死線をくぐり抜けた仲じゃないか! そんな冷たいこと言うなよ!』
クルス「さっきは一緒にするなって言ってたくせに……。だいたい、なんで僕を追ってきたんですか」
球磨川『僕はね、何かあったらいつも一番弱い者の味方をすることに決めてるんだ。それに、きみをこんな腑抜けにしたお姉さんに敬意を払って代わりに守ってあげようかなとか思ったりね』
クルス「……っ! またそんなこと言って……! 信じないぞ! あなただってシメオンかもしれない! そうじゃないっていう証拠はあるんですか!」
球磨川『証拠ねぇ。そもそも僕はそのシメオンがなんなのかすら知らないんだけれど、そうだね。僕はあの機械に内臓がはみ出るような攻撃をされた訳だけれど、それでもまだ疑うのかい?』
クルス「それは……確かにそうですけど……」
球磨川『そしてそれはあの神父も同じだろ。そろそろ教会に戻ろうぜ。きっとみんな待ってるよ』
「ほう、それはいいことを聞いた」
クルス「なっ!?」
カフカ「神父はこの先の教会にいるのか。まぁ、当然といえば当然だな」ズルゥ
球磨川『うわぁ。天井に張り付くって……お前本当に人間かよ』
カフカ「ふっ。愚問だな。私はニードレスだ」
クルス「ニードレス……!! まさかアークライトの!」
カフカ「その通り」
ニードレス
球磨川『“役立たず”ねぇ。まさに僕のことじゃないか』
カフカ「貴様もニードレスだと? 面白い、ならどちらが強いか試してみるか?」
球磨川『ニードレスさで僕と張り合おうなんて、百年早ぇよ』
球磨川『というかさぁ、お前なんだか……』
球磨川『序盤であっさり倒されるけど後々実は強キャラだったことが明かされそうな顔だよな(笑)』
カフカ「なっ……!」
カフカ「貴様ァ!! よくそんな人の心を抉ることが言えるなぁ!!」
カフカ「後付けで本当は強かったって言われることほど情けないことはないんだぞ!!」
カフカ「テンペストスレッド!!」ドガッ
クルス「た、建物が!?」
球磨川『っ! 糸……?』
カフカ「そう……、だがただの糸ではない! かつて神が地獄の罪人を救うためにさしのべたという糸だ! 全てを切り裂き、決して切れることはない!」
カフカ「もしこの糸を切れる者がいるとしたらそれは……」
カフカ「神だけだ!!」
球磨川『大声で能力解説って、週間少年ジャンプかよ。いやでもきみの見た目はどう見ても少年誌の敵キャラじゃないから、ウルトラジャンプ辺りかな』
カフカ「何を訳のわからないことを! カンダタストリング!」
球磨川『……その糸の弱点、見えたぜ』スッ
ザクザクッ
カフカ「何っ!?」
クルス「糸を螺子で地面に縫い付けた……!」
球磨川『斬糸ってのはピンと張るか強く巻き付けてこそ切れ味が出るものだ。こうして地面に螺子込んで弛ませてしまえば脅威じゃないのさ』
球磨川『「お母さんのたしなみ(マザーズタスク)」ならぬ、「敗者のたしなみ(ルーザーズタスク)」……とか言って』
球磨川『まさか昔瞳先生を密かにストーキングしてたことがこんなところで役に立つなんて思わなかったぜ』
カフカ「ちぃっ! ならこれでどうだ!」
カフカ「テンペストスレッド!!」ズアッ
球磨川『僕は聖闘士じゃないけれど、同じ技は二度も通用しない……っ!』
カフカ「気づいたか? 私の狙いは貴様ではない! レジスタンスの小僧だ!」
クルス「う、うわぁぁぁっ!!」
ドォォォォン
クルス「え……?」
球磨川『いてて……。いろいろされてきたけれど、さすがに全身を糸で貫かれるのは初めてだなぁ』
球磨川『これでちょっとは信用する気になったかな……? 僕は……悪くな……』ドサッ
クルス「く、球磨川さん!! そんな……、球磨川さん!!」
カフカ「ハーッハッハッハ!! ガキ一人庇うために命を捨てるとは、なかなか格好いいじゃないか!」
カフカ「まぁ……、そのガキもすぐに後を追うことになるがなぁ!」
クルス「ひっ……!」
カフカ「安心しろ、後で神父も送ってやる」
ブレイド「へぇ……。で、その神父ってのは……こんな顔、してなかったか?」
クルス「し、神父様……!」
イヴ「男ならシャキッとしなさいよ、山田!」
ブレイド「てめぇが何勘違いしたのか知らねぇが、土下座して俺を崇めるなら許してやってもいいぜ」
クルス「イヴさん、神父様……。球磨川さんが、球磨川さんが!」
カフカ「これはこれは……。そちらから来てくれるとは、訪ねる手間が省けたよ」
ブレイド「あぁ? 俺に何か用かよ」
カフカ「その通りだ……カンダタストリング!!」バッ
ブレイド「ぐはっ……!?」
カフカ「その糸は神にしか切れぬ糸。このままくびり殺されるがいい!」ギリギリ…
クルス「神父様ぁ!」
ギド「よかったのぉ、ブレイド。相性はよさそうじゃぞ」
クルス「な、何を言ってるんですか! このままじゃ神父様まで殺されちゃうよ!」
ブレイド「いいから黙ってろ……。神にしか切れない糸ねぇ。なら……」
ブレイド「俺は神より強ぇ!!」ブチブチブチ
カフカ「何ぃ!?」
ブレイド「覚悟はできてるんだろうなぁ!!」
カフカ「く、来るな! このガキも殺すぞ!」
ブレイド「やってみろよ」
カフカ「はっ……! いいだろう!」バッ
バキッ
カフカ「な……!?」
クルス(?)「汚い手で触るんじゃねぇよ、この貞夫が」
カフカ「貞夫って誰だよ!?」
カフカ(あのガキにこんな力はなかったはず……! 何が……)
クルス「ど、どうして僕があそこに!?」
カフカ「っ!? ガキがもう一人……! そうか、お前は……!」
クルス(?)「そう……。これがぼくのフラグメント……!」シュゥゥゥ
イヴ「『変身(ドッペルゲンガー)』!!」
イヴ「食らえ! イヴキャノ……うわぁっ!?」グルグル
カフカ「かかったな……! カンダタストリング!!」
イヴ「ぐぁぁ!!」ズバッ
クルス「イヴさん!!」
カフカ「危ない危ない……。油断していた。まさか単体で『変身』を持つニードレスがいるとは……。だが、私がなんの準備もなく神父に襲いかかったと思ったのか?」
カフカ「神父と小僧が話している隙に私の周囲に糸を張り巡らせておいた。蜘蛛の巣のようにな」
カフカ「お前はその巣に飛び込んできた間抜けな蝶なんだよ!」
『ほう、それはいいことを聞いた』
ザクザクザクッ
カフカ「こ、これは……!」
クルス「球磨川さんの螺子!!」
『きみの糸は全て地面に螺子込ませてもらったよ』
カフカ「な、なぜだ……!? 貴様はさっき確かに……!」
『あぁ、自己紹介がまだだったね』
『僕は球磨川禊』
『全てをなかったことにする取り返しのつかない過負荷、「大嘘憑き(オールフィクション)」を持つどうしようもない男さ』
『「大嘘憑き」』
『僕の絶命を』
球磨川『「なかった」ことにした』ゾンッ
クルス「球磨川さん……! 無事だったんですね!」
カフカ「バカな! 生き返ったとでもいうのか!!」
球磨川『きみたちは本当に人の話を聞かないよね。生き返ったんじゃなく、死という事実をなかったことにしたんだよ』
カフカ「ぐっ……! だったらもう一度殺すまでだ!!」
カフカ「テンペストスレッド!!」ズアッ
ブレイド「……!」
ドドドド!
カフカ「はぁ……はぁ……、どうだ!」
球磨川『だからさぁ、そう何度も同じ技を食らうかよ』
カフカ「……っ!」
ブレイド「イヴ!」ダッ
カフカ「しまった……!」
ブレイド「大丈夫か?」ブチブチ
イヴ「ごめん、ブレイド……」
カフカ「またしても私のカンダタストリングを……!」
ブレイド「糸を切る時はな、同じ糸を何本か絡めて引っ張ればいいんだよ」
カフカ「私の糸同士を絡ませたとでも言うのか……!」
ブレイド「さぁ、これで三対一だ。どうする?」
カフカ「ちぃっ……! ならば!!」バッ
クルス「跳び上がった!?」
カフカ「貴様ら全員まとめて切り刻めばいいだけの話! 私の全力だ……! 今までのように避けられると思うなよ!!」
カフカ「テンペストスレッド!!!」ズアッ!!
ギド「さっきまでとは糸の量が段違いじゃ!」
クルス「うわぁぁぁっ!!」
ブレイド「ふん……! “覚えた”!!」
カフカ「何!?」
クルス「え!?」
ブレイド「こうか? テンペストスレッド!!」ズアッ
ドドドドドドド!
カフカ「まさか、貴様のフラグメントは……!」
ブレイド「ハッハァ! その通り! 相手の能力を『覚える力(ZERO)』!!」
カフカ「ぐっ……! だが、同じ技が拮抗した時、勝つのは持続力の高い方! 覚えたばかりの貴様に負けるはずがない!」
イヴ「違うな」バサッ
カフカ「っ!?」
イヴ「同じ技が拮抗した時……、勝つのは仲間のいる方だ!!」
カフカ「翼……!? それほどの『変身』の使い手だと!?」
イヴ「さぁ、神の裁きを受けろ!」
イヴ「イヴキャノン!!」バキッ
カフカ「しまっ……!」
ブレイド「因果応報! テンペストスレッド!!」ズアッ
カフカ「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」
カフカ(『ZERO』に『変身』……。これではまるで……、まるで!)
ブレイド・イヴ「判決・死刑!!!」
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クルス「く、球磨川さん」
球磨川『ん? どうしたの?』
クルス「あの、ありがとうございました……」
球磨川『おいおい、この僕に礼を言うなんて正気かよ』
クルス「あの時球磨川さんが守ってくれなかったらどうなってたか……。僕はあんなに疑ってたのに」
球磨川『気にするなよ。いわれなき暴力やあどけない迫害には慣れてるからね』
球磨川『まぁ、今回に限っては恨まれる理由が思い当たらないでもないんだけれど、いや僕は悪くないけれど』
球磨川『それでもやっぱり、僕がきみを庇ったのはきみを腑抜けのままでいさせるためなのさ』
球磨川『それに、安心院さんはこういう主人公みたいなことをさせたくて僕ときみを接触させたんだろうし』
クルス「安心院さん……?」
球磨川『こっちの話だよ』
球磨川『で、きみはこれからどうするの?』
クルス「どうするって……」
球磨川『身寄りとかあるの?』
クルス「いえ……。唯一の肉親だった姉さんももう……」
球磨川『……じゃあさ、絶対ブレイドちゃんに居候させてもらえる方法教えてあげようか?』
クルス「え、そんなのあるんですか?」
球磨川『僕はご覧の通り弱いからね、弱さという弱さを知り尽くしているんだよ。だから相手の弱点が、突くべき隙が、よーくわかるのさ。そしてそれはもちろん、ブレイドちゃん相手でも変わらない』
クルス「神父様には弱点なんてないように見えますけど……」
球磨川『いや、ある。致命的な弱点が一つある。それは……』
クルス「それは……?」
球磨川『女の子、だ』
クルス「……はい?」
球磨川『ブレイドちゃんはかわいい女の子に病的に弱い! だからその弱点を攻める!』
クルス「攻めるって、僕たち二人とも男じゃないですか」
球磨川『いやいや、これはきみだからこそできる戦略だ。よかったね、腑抜けから脱却できるかもしれないぜ』
クルス「……! わ、わかりました。何でもやります! 教えてください!」
球磨川『そう言ってくれると信じてたよ。それじゃあ、耳を貸して』
クルス「は、はい」ヒョコッ
球磨川『かくかくしかじか』
クルス「えっ、えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
クルス「む、無理です! 無理ですよぉ!」
球磨川『ん? 今何でもやるって言ったよね?』
クルス「言いましたけどぉ! 無理なものは無理ですぅ!」
球磨川『おや、こんなところに僕の通ってた水槽学園の制服が。ちょうどいい、これにしよう』
クルス「なんでそんな都合よく女子用の制服持ってるんですか!? いやっ、ちょっ……! いやぁぁぁぁぁぁ!!」
ブレイド「結構便利じゃねぇか、このフラグメント」みょーん
ギド「こらやめんか! 糸で髪をむしるんじゃない!」
球磨川『おーい、ブレイドちゃーん』
ブレイド「だからその呼び方やめろ」
球磨川『ちょっとブレイドちゃんに見てほしいものがあるんだけど』
ブレイド「あ? んだよ、くだらねぇもんだったらぶっ飛ばすぞ」
球磨川『まあまあ、きっと喜んでくれるから。ほら、出てきなよ』
クルス「……えっと」きょりーん
※イメージ
http://i.imgur.com/BMmzd9u.jpg
ブレイド「なっ……!? こっ、これは……」
クルス「ひぃぃ、やっぱり引いてますよぉ」
球磨川『いいから見てなよ』
クルス「うぅ……、神父様……?」ウルッ
ブレイド「」ズキューン
ブレイド「付き合ってください!!」バッ
クルス「え……?」
クルス「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
ブレイド「竹田ァ! どこのどなただ、この麗しいお嬢さんは!」
球磨川『球磨川だけど……。紹介するよ。クルスちゃんの女装、山田ちゃんだ』
クルス「名前それなんですか!?」
ブレイド「山田……? そん……な……」ドサッ
クルス「神父様!?」
ブレイド「お母さん……」
クルス「なんか絶対言いそうにないこと言ってるーーーっ!?」
球磨川『ほら、お願いしないと』
クルス「い、いいんでしょうか……」
クルス「あの、神父様……」
ブレイド「はい……」
クルス「しばらく教会にいさせてもらえませんか……? 僕にできることなら、お手伝いでもなんでもしますので……」
ブレイド「なんでも……?」
クルス「あっ! いや、そのっ……」
球磨川『さっきも同じこと言ってそんな目に合ってるのに、クルスちゃんも馬鹿だなぁ』
ブレイド「じゃあ毎晩添い寝してください!!」ガバッ
クルス「えぇっ!? で、でも僕男ですよ!?」
ブレイド「可愛ければそれでいいと、俺の中の天使が囁いている」
クルス「それ普通悪魔の仕事じゃないんですか!?」
球磨川『よかったね、クルスちゃん。これで解決だ』
ブレイド「ただし竹田! てめぇはダメだ!!」
球磨川『えー』
ブレイド「えー、じゃねぇよ」
球磨川『……仕方ない。これはあまり言いたくなかったんだけれど……』
ブレイド「あ?」
球磨川『僕の今のトレンドは……、「全裸に靴下」だ』
ブレイド「……」
球磨川『……』
ガシッ
クルス「握手!? なんか分かり合っちゃった!!」
ブレイド「いいだろう! 貴様ら二人の居候をこの俺様が特別に許可してやる!」
クルス(……姉さん)
クルス(とても頼もしい人たちに助けてもらいました。これからも、なんとかやっていけそうです)
クルス(人として、男として、何か大切なものを見失いそうですが……)
今日はこれだけ
カフカは過去編とか見る限りもっと戦えたはず
出番が早すぎたんだ…
あと山田はやっぱりこうじゃないと
クルス「ひっ……」
「ハァ……ハァ……。もう逃げられんぞ……」
クルス「や、やめ……!」
ブレイド「添い寝してください山田ァ!!」ズアッ
クルス「勘弁してくださいぃ~!」
イヴ「全く……、あいつが来てから毎日毎日騒がしいんだよ」
球磨川『嫉妬かい、イヴちゃん』
イヴ「うるさい竹田!」
球磨川『球磨川だけど……、もういいや』
イヴ「竹田、ちょっと手出して」
球磨川『え!? なになに!? おっぱい触らせてくれるの!?』
イヴ「死ね。じゃなくて、ほれ」チャリンチャリン
球磨川『ん……? お金?』
イヴ「スーパーゲル状デロドロンドリンク買ってこい竹田ァ!」キシャーッ
球磨川『人使いが荒いなぁ。どこかの人外を思い出すよ』
ガタンッ
クルス「あ、神父様、誰か懺悔室に来たみたいですよ」
ブレイド「誰が神父だコラァ!」
球磨川『きみだよ、きみ』
ブレイド「ちっ……」
ガタンッ
ブレイド「……何か用か」
「アダムって神父を殺しにきたんだが……、ここにいるか?」
クルス「っ!」
ギド「まさか、もうここが嗅ぎ付けられたのか!」
クルス「神父様、いないって言ってください!」ヒソヒソ
ブレイド「あぁ?」
バキバキバキッ
ブレイド「俺がアダムだ!」
クルス「言っちゃったーっ!?」
「そうかそうか……。てめぇがアダムか。俺の名は照山最次!」
ブレイド「知らねぇな」
照山「てめぇが知らなくても俺はてめぇを知ってる! 仲間の仇、討たせてもらうぜ!」
照山「リトルボーイ!!」ボウッ
ギド「い、いかん! ここでおっぱじめるつもりか!」
ギド「イヴ! クルスくんと球磨川くんを連れて逃げるんじゃ!」
イヴ「クルス? 球磨川? 誰?」
ギド「早くせんか!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
廃墟
クルス「はぁ……、はぁ……。ここまで来ればもう大丈夫ですかね……」
「何が大丈夫なんだい?」
ドスッ
イヴ「ぐはっ……!?」
クルス「イヴさん!?」
「イッツアマジ~~~~ック!」
クルス「う、浮いてる……!?」
球磨川『……きみは、シメジの何かかい?』
「シメジ……? 僕はシメオン四天王の一人、右天!」
クルス「まさか、こっちにもシメオンの追手がいるなんて……」
右天「こっちにも? なんだ、左天のやつ、もう来てるのか。絶対僕が先だと思ったのに」
イヴ「シメジのくせになめた真似してくれるじゃない……!」シュゥゥ
右天「へぇ。お姉さん、自己修復できるんだ。じゃあ、もう少し遊べそうだね」
右天「……ところで解放軍の生き残りがいるはずなんだけど、一緒じゃないのかな?」
球磨川『気づかれてないみたいだぜ。よかったね』ヒソヒソ
クルス「よくないですよぉ……」ヒソヒソ
右天「ま、いっか。お姉さんたちが神父の仲間なのは間違いないみたいだし。ちょっとは楽しませてよね。解放軍みたいにあっさりやられないでよ?」
クルス「え……? そ、そうだ、こいつ……!」
クルス「イヴさん! こいつ、解放軍を一瞬で壊滅させた奴らの一人です! 勝てっこないですよ! に、逃げましょう!」
イヴ「ハッ! オロオロガタガタ言ってんじゃねぇよ」
イヴ「ヤサが知られたんだ。どの道こいつを生きて帰す訳にはいかない。それに……」
イヴ「戦わざる者には死あるのみ、これがBSの掟だ!!」ダッ
球磨川『前から思ってたんだけれど、なんできみたちそんなに物騒なの?』
イヴ「イヴキャノン!!」ブゥン
ガキンッ
イヴ「何!?」
クルス「防がれた!? バリアか……!?」
右天「違う違う。イッツアマジ~~~~ック!」
右天「……シメオンに歯向かう者には死を。これもBSの掟だ」
右天「バミューダアスポート!!」
ダダダダッ
イヴ「あぁぁぁぁ!!」グサグサッ
クルス「ナイフ!? いつの間に……!」
イヴ(なんだ今の攻撃……! 速すぎて全く見えなかったぞ!?)
球磨川『仕方ないなぁ……。今回だけだぜ、力を貸すのは』
イヴ「竹田……」
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『謎のバリアをなかったことにした』
右天「なっ!?」
イヴ「でかした竹田!」ブゥン
イヴ「イヴキャノン!!」
ガキンッ
クルス「え!? 消えてない!?」
球磨川『……あれ?』
イヴ「竹田のアホーっ!! くそっ! 連打ァ!!」
ガガガガッ
右天「ハハハ! ただのはったりじゃないか! 全く、焦って損したよ」
イヴ「なんなんだ、このバリアは!?」
右天「そんな攻撃じゃ、カフカは倒せても僕は倒せないよ?」
右天「バミューダアスポート!!」
イヴ「ちっ!」バッ
右天「ブー、外れ~」
クルス「イヴさん! 上です!!」
イヴ「え……? てっ、鉄球!?」
ゴシャッ
イヴ「っぶねー……」
クルス「そんな……。あんな大きなものさっきまでなかったのに……」
球磨川『空中浮遊にバリア、超高速の攻撃、その上物体の構築ねぇ。なんだよお前、安心院さんかよ』
クルス「フラグメントは一人に一つが原則なのに……。これじゃまるで……!」
右天「神、みたいだろ?」ファサッ
右天「ミッシングリンクって知ってる?」
クルス「ミッシングリンク……?」
右天「ニードレスは人間が神へと進化する途中の段階なのさ。その中でも飛び抜けて神に近い存在が、人間と神のミッシングリンク」
右天「そして、僕こそがそのミッシングリンクだ!」
球磨川『神と人間の中間とか、ガキがいっちょまえに厨二病かよ(笑)。そういうのは中学に入ってから存分に語ってな』
右天「ふふっ。その強がりがどこまで続くか見ものだね、お兄さん」
右天「これを見ても、まだそんなことが言えるなら誉めてあげるよ!」
右天「バミューダイリュージョン!!」カッ
クルス「……っ!? ゆ、床が消えた!?」
右天「そう。今僕はきみたちが立ってる場所以外の床を全て消し飛ばし、代わりに針のむしろを構築した」
球磨川『……本当みたいだね。下の方に針山が見えるよ』
右天「自在に物質を消滅させ構築する。これが僕のフラグメント、『創世』さ!」
クルス「そんな……! こんなやつに、勝てる訳がない……!」
クルス「僕のせいだ……。僕と会ったせいで、イヴさんも球磨川さんも殺されるんだ……!」
球磨川『腑抜けもここに極まれり、って感じだね。いいんだよクルスちゃん。きみはそこで震えてればいいさ』
球磨川『まぁ、ここは僕に任しておけよ。これでも僕は、神に等しい存在を封印した男だぜ?』
イヴ「そうだ……! まだ負けた訳じゃない! ぼくも戦える!」
イヴ「だから山田! お前は考えろ! あいつのフラグメントが一体なんなのか!」
イヴ「ニードレスの能力は一人に一つ。例外はない! ビビってんじゃねぇよ、相手はただの手品師だ!」
クルス(そうだった……。僕は姉さんを犠牲にして生き残ってしまった! だから、姉さんの分もなんとしても生きなきゃいけないんだ……!)
クルス(球磨川さんの言う通り、僕は守られてばかりの弱虫だ……。だけど、守られているからこそ、戦いを冷静に観察できるからこそやれることはあるはず……!)
クルス(考えろ……! 絶対、全ての条件を満たす能力がある!)
右天「言ってくれるねぇ。それじゃあ、シンキングタ~イム。バミューダアスポート!」バッ
ダダダダッ
イヴ「『変身』ァ!」ブゥン
右天「へぇ、体を硬質化させての防御か。お姉さんやるぅ。でもエネルギーの消耗が激しい『変身』、どこまでもつかな?」
イヴ(こいつ、『変身』の弱点を知ってる!? くそ、早く決着を着けないと……。竹田はどうなってる?)チラッ
球磨川『ぐふっ!?』グサグサッ
イヴ「っておい竹田! 何お前普通に攻撃食らってんだよ!?」
球磨川『いやいや。雑魚と言ったら魚に悪いとまで言われる僕が、こんな見えない攻撃防げる訳ないじゃないか』
イヴ「大口叩いてたのはなんだったんだよ!」
球磨川『僕の言うことを一々信じてたら、痛い目見るぜ』
イヴ「そういやさっきも『なかったことにした』とか適当なこと抜かしやがって! 全てをなかったことにするんじゃなかったのかよ!」
球磨川『僕にもよく分からないんだよね……。ぐふっ……。「大嘘憑き」も万能じゃなくていくつか条件があるからさ。ぐはっ!』
球磨川『多分僕がバリアを正しく認識できてなかったせいだと思うんだけれど。ぱぶはっ』
クルス「攻撃受けながら喋らないでくださいよ!?」
クルス(……でも待てよ。認識できない……? もし……、もしあの鉄球やナイフが突然現れたんじゃなくて目に見えていなかっただけだとしたら……)
クルス(……)ゴクッ
ソーッ…ペタッ
クルス(っ! やっぱりそうか! わかったぞ!)
クルス「イヴさん、球磨川さん! 解けがナゾました!!」
イヴ「はぁ!? 頭おかしくなったのか!? 死ね!」
クルス「そ、そうじゃなくて……! この攻撃、速すぎるんじゃありません! 見えないだけなんです!」
イヴ「はぁ?」
クルス「この床だってそうです! こんな風に……」ダッ
右天「や、やめろ! 落ちて死ぬぞ!」
スタッ
クルス「見えなくなってるだけで、ちゃんとあるんですよ!」
球磨川『なるほど……』
クルス「お前のフラグメントは物質を透明にする能力! そうだな、右天!!」
右天「ぐっ……!」
クルス「ナイフや鉄球は見えなくしていただけで全部元々あったものだったんだ!」
イヴ「じゃあ、あいつが宙に浮いてるように見えるのも……」
クルス「はい。きっと、小部屋か何かを丸ごと見えなくしてそう見せかけてるだけです! そして、謎のバリアは恐らくただのコンクリートの壁!!」
クルス「今は見えませんが、窓がついていてそこから攻撃してるんだと思います!」
球磨川『あるのは壁だけで、右天ちゃんの張ったバリアなんてものは存在しない。存在しないものは、なかったことにはできない。そういうことか』
イヴ「なぁんだ。意外とちゃちい能力だな、三流マジシャン」
右天「だ、だったらどうだというんだ! もうお前たちの死は決まって……!」
球磨川『僕の「大嘘憑き」は』
右天「っ!」
ノンフィクション フィクション
球磨川『本来“ 事実 ”を“ 虚構 ”にするものなんだけれど』
フィクション ノンフィクション
球磨川『今回ばかりはきみのその“ 手品 ”を“ 現実 ”にしてみせよう』
右天「な、何を……」
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『床を、壁を、この建物を』
球磨川『なかったことにした!』ゾンッ
フワッ
クルス「え……!?」
右天「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
球磨川『あ、それではみなさんご唱和ください――』
球磨川『It's All Fiction!!』
グサグサグサッ
クルス「っ……!」
クルス「……あれ? 生きてる……?」
イヴ「全く、竹田のアホ!!」 バサッ
クルス「い、イヴさん!」
イヴ「『変身』がなかったらぼくたちまで串刺しになるところだったじゃないか!」
クルス「す、すごい……。空を飛んでる……!」
イヴ「あぁ。それもさっきの田中みたいな見かけ倒しじゃないぞ」バサッ
クルス「田中って誰ですか……。って、あれ? 球磨川さんは……?」
イヴ「落ちた」
クルス「えぇぇぇぇぇぇ!?」
イヴ「だって二人も抱えて飛べないし」
クルス「そんな、じゃあ早く助けないと!」
イヴ「もう死んでるんじゃない?」
クルス「それでもですよ!!」
イヴ「仕方ないなぁ……」バッサバッサ
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
クルス「く、球磨川さん!」
球磨川『』チーン
イヴ「うわー、穴だらけ」
クルス「しっかりしてください!」
球磨川『……死人にしっかりしろってのはちょっと無理難題が過ぎるんじゃないのかい、クルスちゃん』ムクッ
イヴ「本当に生き返るんだな、お前……」
球磨川『だから生き返るなんてプラスなスキルじゃないんだけどね。見解の相違だ』
球磨川『で、右天ちゃんは?』
イヴ「お前と同じで全身串刺しだよ。自分のトラップにかかって死ぬなんて、考えてもなかっただろうな」
球磨川『はぁ。そっか、相討ちか……。また勝てなかった』
球磨川『なんで勝てないのかなぁ』
クルス「生きてるんだから勝ちでいいと思いますけど……」
球磨川『それこそ見解の相違だね』
ドォォォン!
クルス「っ!? 教会の方だ……!」
イヴ「急いで戻るぞ!」ダッ
球磨川『一応僕、病み上がり……もとい黄泉上がりなんだけれど……』ダッ
教会前
照山「覚悟しやがれ! アダム・アークライト!!」
ブレイド「は?」
照山「え?」
ブレイド「アークライトって誰」
照山「えっ。お前アダム・アークライトだろ?」
ブレイド「アダム・ブレイドだけど」
照山「えっ。人違い?」
照山「あ、ごめん……」
イヴ「うぉぉぉぉ!! イヴキャノン!!」バキッ
照山「はいっ」ゴフッ
球磨川『いけー! イヴちゃーん!』
イヴ「イヴキャノン! イヴキャノン!」バキッバキッ
照山「はいっ!? はいっ!?」ゴフッゴフッ
クルス「イヴさんかっこいいー!」
イヴ「デッドリーメイルストロム!!」ギュルルル
照山「ぎゃああああああ!!」
イヴ「よしっ! 途中で5000㌔㌍のスーパーゲル状デロドロンドリンク飲んだから元気百倍だぜ!」
イヴ「ブレイド! 危なかったね! でもぼくが来たからもう大丈夫だよ!」
ブレイド「ふぅ……」
ブレイド「話の……とちゅうだったんだけどねー!」カキーン
イヴ「にゃぁぁぁぁ!?」
クルス「い、イヴさーん!」
照山「何すんだこのアマァ!!」
イヴ「なんでぼくに攻撃するんだよ!!」
ブレイド「黙れ黙れ! 逆らうやつは全員死刑!!」
ギド「えぇい静まれぃ!!」
球磨川『……きみたちを見てると僕って割りとまともなんじゃないかと思えてくるよ』
クルス「いや、それはないです」
ブレイド「あぁめんどくせぇ! カンダダストリング!」
照山「ぬぉぉ!?」グルグル
ブレイド「とりあえず中でてめえに話を聞こうか」
イヴ「おら! キリキリ吐きやがれ!」ゲシッ
ブレイド「……とその前に、タバコとスーパーゲル状デロドロンドリンク買ってこい竹田ァ!」
球磨川『未成年にタバコ買いに行かせるなんて非常識にもほどがあるぜ』
ブレイド「あ? ミセイネン?」
クルス「ま、まぁまぁ。僕も一緒に行きますよ」
ブレイド「山田コラァ! お前は俺様に膝枕する仕事があるだろうがぁ!」
イヴ「死ね」
クルス「だから僕男ですってばぁ!」
ブレイド「男でも 可愛きゃそれで いいじゃない!!」
イヴ「意味不明。5点」
ブレイド「さぁ、俺様に膝を差し出せ山田ァ!」
クルス「い、いやぁぁぁぁぁぁ!!」
今日はこれだけ
ぶっちゃけ>>65がやりたかっただけだったり
西暦20XX年、第三次世界大戦勃発!
東京を初めとする各都市は、爆撃の標的となり紅蓮の業火に包まれた。
それから半世紀、汚染されたかつての爆心地は、今も『街(シティ)』から隔離され、日本の夜景に黒い穴を作り出していた。
通称、Black Spot!
その荒れ果てた大地に、いつの間にか住み着く者が現れた。
彼らを『街』の人々は不要者扱いしたが、その中に不思議な能力を操る者たちがいた。
火、風、重力……。
超自然の力を操る能力、すなわちフラグメントを持つ彼らを、人は畏怖の念と共にこう呼んだ。
ギド「ニードレス!!」
イヴ「ど、どうしたギド。いきなり語りだして……」
ギド「いや、何だか言わなければならない気がしてのう……」
照山「……まぁ、つまりそれが俺の知ってるニードレスの全てだ」
球磨川『ふぅん……。ニードレスにフラグメントねぇ』
ブレイド「おい雑魚」
照山「雑魚じゃねぇ! 俺は『炎』のニードレス、照山最次だ!」
イヴ「じゃあ略して内田ね!」
照山「はぁ!? だから照山だっつってんだろ!?」
イヴ「で、内田。なんでブレイドを襲ったのよ」
照山「だから照山……ちっ! 勘違いしたんだよ! お前とシメオンのボスを!」
照山「一年くらい前にシメオンの連中が俺の仲間を何人も『ニードレス狩り』と称して殺しやがった……! そして、その犯人を探すうちにシメオンのアダム・アークライトという男にたどり着いた」
照山「で、最近とある情報屋から、そいつは長身で教祖みてぇなふるまいで……首に鋼鉄のチョーカーをはめてるっつー情報を得たんだよ」
イヴ「確かに、その情報だとブレイドっぽいな……」
照山「だからよぉ、むしろこっちが聞きたいぜ。お前何モンだ?」
ブレイド「あ?」
照山「似てるんだよ、お前! シメオン総帥アダム・アークライトに!」
球磨川『そういえば、クルスちゃんもこの前ブレイドちゃんのこと「シメオンの手先で性根の腐ったハリガネムシのアルデンテだ!」って言ってたね』
クルス「えっ!? ちょっ、そこまでは言ってな……」
ブレイド「ほう……。いい度胸だ……」バキボキッ
クルス「ひぃっ!」
ブレイド「罰として一週間“全裸に靴下”じゃああああ!!」
クルス「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
イヴ「イヴキャノン!!」バキッ
ブレイド「げふぅっ!」
クルス「あ、あの、僕は直接アークライトを見たんですけど、あいつも神父様と同じチョーカーをしてたんです!」
クルス「教えてください神父様! 神父様は何者なんですか!?」
ブレイド「……この『ZERO』のせいかは知らんが、俺は昔のことを覚えてねぇ」
ブレイド「だが、ただ一つ知ってるのは……」
ブレイド「俺はある人体実験の失敗作らしい。このチョーカーはその時の名残だってことだけだ」
クルス「人体……実験……」
ブレイド「だからそのアークライトとやらのことは知らねぇ」
クルス「そうですか……」
ギド「しかし、『街』の企業であるシメオンにここまでニードレスが揃っておるとは……。こちらも相手の情報を集めないとこのままでは防戦一方じゃな」
クルス「じゃ、じゃあこの辺りの人に聞き込みでもしてみますか?」
イヴ「バカね。そんなことしても魔界から目薬じゃない」
ブレイド「お前の頭が魔界だ」
照山「どんな状況を指す言葉だよ」
~魔界から目薬想像図~ ※NEEDLESS ZERO参照
亜式「おい、ナラカ。ジルジースを呼べ」
ナラカ「は、はい。『暗黒冥穴(クリシュナ・バイタラニー)』……!」
ズズズ…
ジルジース「我が主、何かご用でしょうか」
亜式「これを頼む」つ凸
ジルジース「……目薬、ですか?」
亜式「あぁ。いくぞ」
ジルジース「え、ちょっ……」
亜式「見えるぜ、貴様の罪が! 『第2の視覚(セカンドサイト)』!!」カッ
ズォォォォォッ
ジルジース「あっ、あぁ!? 我が主! 吸い込まれてる! 我吸い込まれてますから!」
亜式「あ、すまん……」
クルス「ってこれ冥界から目薬!!」
ブレイド「ふん。そんなまどろっこしいことしなくても、こいつが情報を買ったっつー情報屋に聞けばいいじゃねぇか」
球磨川『あれ? 今の何?』
クルス「なるほど!」
球磨川『ねぇねぇ。今クルスちゃん思いっきりつっこんでたよね? ね?』
イヴ「おい、内田! その情報屋はどこにいるんだ!?」
球磨川『僕「大嘘憑き」使ったっけ? なかったことになってない?』
照山「それが……俺も知らねぇんだ。ディスクって名乗ってることと戦前から生きててゆうに百歳を越えてるらしいってこと以外、何も分からねぇ」
ブレイド「ちっ。使えねーな」
クルス「ディ、ディスク!?」
ギド「……! 知っとるのか!」
クルス「はい。アークライトがBSに来るって情報を解放軍に売ったのも確かディスクって人です!」
イヴ「じゃあ、山田と内田に情報を売ったのは同じ人間……?」
クルス「クルスです」
照山「内山……じゃねぇ! 照山だ!」
ブレイド「で、そいつはどこにいるんだ?」
クルス「そ、それが僕も……。姉さんなら知ってたかもしれないけど……」
イヴ「この役立たずがーーっ!」ゲシッ
クルス「うわっ!? あぁ! 姉さんからもらったペンダントが!」カランコロン
イヴ「こっぺろー!」キシャーッ
照山「鬼だ……」
クルス「っ!? な、なんだこれ!」
球磨川『どうかした?』
クルス「ロケットの写真の裏に、こんなものが……」
ギド「そっ、それは……! データチップか!」
教会地下 ギドの研究所
ギド「ふむ……。16進法か……」
カチャカチャ…ピーッ
ギド「ぃよぉし。解析完了じゃ」
ブレイド「よくやったギドじじい」
イヴ「で、中身はなんだったの?」
ギド「あぁ、解放軍の極秘名簿じゃったよ」
クルス「……! そんな大事なものを僕に渡してたなんて……。姉さん……」
球磨川『……』
イヴ「そのディスコとかいう情報屋は乗ってるの?」
照山「ディスクな」
ギド「今調べとる。……お、あったぞ!」
ギド「何々……。アイアンマウンテン? そうか、アイアンマウンテンか!」
クルス「知ってるんですか?」
ギド「大戦前、『街』の市民の情報全てを管理しておったところじゃ。戦火でとっくになくなったもんじゃと思っとったが……」
ブレイド「確かに、そんな情報の山を持ってりゃ情報屋を開くかもな」
照山「ビンゴ!」
ブレイド「よっしゃあ雑魚ども! 明日はアイアンマウンテンまで遠足だ!!」
球磨川『遠足?』
その日の夜 教会地下
ギド「むぅ……。おかしい……。神の設計図に関する情報が少なすぎる……」
ギド「まさか、データチップは一つではないのか……?」
ギド「くそっ、せっかく神への道が見えたというのに……!」
球磨川『おいおい、この世界ではおじいさんまで厨二病なのかよ(笑)』
ギド「っ!! 球磨川くん……! いつから、そこにおったのかね?」
球磨川『いつからだっけ、覚えてないなぁ』
ギド「今の話は忘れた方が君の身のため……」
ザクザクッ
ギド「っ!!」
球磨川『僕の身のため……ねぇ』
球磨川『老人なら攻撃されないと思った?』
球磨川『黒幕ぶってれば安全だと思った?』
球磨川『おしゃべりの最中なら死なないと思った?』
球磨川『甘ぇよ』
グシャッ
球磨川『……が』
球磨川『その甘さ、嫌いじゃあないぜ』
ギド(なぜここでいいセリフを!?)
ギド(い、いや、それよりも今球磨川君の螺子は私の額を貫通したはず……!)
ギド(これがイヴの言っておった『大嘘憑き』か……!)
ギド「な、何が目的だ……!」
球磨川『何がって言われてもなぁ。僕は地下の暗くてジメジメしたとこで寝るのが好きだからこうして降りてきただけなんだけれど』
球磨川『……ま、でもデータチップごときであんなに驚く博士を見たら気にもなっちゃうよね。他の人はなんとも思ってないみたいだけど』
ギド「ぐっ……」
球磨川『それで、その神の設計図ってのは何かの比喩かい?』
ギド「う、うぉぉぉぉ!」ダッ
ブスッ
球磨川『痛っ!? 注射……!?』
ギド「……万が一の時に備えて培養しておった高純度の“神の種(エデンズシード)”だ。ニードレスなら誰もが持っているものだが、常人には猛毒となる。そら、今に体が崩れるぞ」
球磨川『なっ!?』ドロォ
ギド「……冥土の土産だ。教えてやろう。神の設計図とはまさに言葉の通り、全知全能の神となるための情報」
ギド「世界最古にして最強のニードレス、キリストセカンドの因子を最も多く含んだフラグメントを持つ者に浮かび上がる“聖痕(スティグマータ)”を正しい位置に並べかえるために必要となるものだ」
ギド「私はそれを手にいれて神となり、必ず香澄をこの手で……!」
球磨川『あ、お話終わった?』
ギド「何!? な、なぜ何事もなかったかのように……!」
球磨川『ようにじゃないぜ。何事もなかったんだよ』
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『僕の中のエデンズシードとやらをなかったことにした』ゾンッ
ギド「で、でたらめすぎる……!」
ギド(アダムシリーズ本来の力を取り戻すための鍵は今左天くんが持っている……。このままの体では簡単に殺されてしまう……!)
球磨川『まぁそう構えないでよ。別に取って食ったりはしないって』
球磨川『ねぇ、ギド博士。つまりその神になればなんでもできるんだよね?』
ギド「ハッ……! 神になるには他のフラグメントを“覚える”必要がある! 貴様には不可能だ!」
球磨川『その言い方だとギド博士は覚える力を持ってるんだね』
ギド「……!」
球磨川『いや、別に僕は神になりたい訳じゃないよ。神になるくらいなら生徒会副会長になる方がマシだ』
球磨川『だからさ、取り引きをしよう』
ギド「取り引き……だと?」
球磨川『そう。僕はきみの神になる(笑)っていう抱腹絶倒ものの野望を他の人たちには黙っててあげるから、代わりにギド博士は僕の願いを1つ叶えてよ』
ギド「……願いとはなんだ」
球磨川『僕を元の世界に戻してほしい』
ギド「元の世界……!?」
球磨川『僕は本来この世界の人間じゃないんだ。安心院さんっていう全知全能の性悪さんにちょっかいの一環としてここに送り込まれただけでね』
ギド「異世界……全知全能……! まさか貴様、“天使”か!?」
球磨川『……。今まで僕を悪魔だのなんだのと呼んだ人たちは数知れずいるけれど、天使なんて言われたのはさすがにきみが初めてだぜ』
球磨川『頭大丈夫?』
ギド「“門(ゲート)”を通ってきたのではないのか……?」
球磨川『どうだろう。目が覚めた場所を考えると通ったのは配水管くらいじゃないかと思うけれど』
球磨川『安心院ゲームとか言って送り込まれたはいいけれど、よくよく考えたらクリア条件すら聞いてないんだよね。まさか一生こっちにいさせるつもりじゃあないとは思うけれど、安心院さんのことだしなぁ』
球磨川『だから、帰る手段は確保しておきたいのさ。悪い話じゃないと思うけど』
ギド「……わかった。その取り引き、受けよう」
ギド(今ブレイドやイヴにこのことを知られるのはまずい。神の力さえ手にいれれば、こんな男との約束など守る必要はない)
ギド(それに最悪、左天君にこの男を始末してもらう手もある)
ギド(大丈夫、まだ終わってはいない……!)
球磨川『それはよかった! これでも僕は生まれてこのかた、約束を破ったことは二万七千八百九十三回しかないんだ!』
球磨川『だから安心してよ!』
ギド(……。大丈夫、だよな……?)
今日はこれだけ
多分今年はこれで最後
イヴ「ねー! アイアンマウンテンまだー?」
ギド「そう焦るな。もうじきじゃ」
球磨川『もうじきじゃ、って(笑)。昨日の凛々しいしゃべり方はどうしたの、ギド博士』
クルス「昨日?」
球磨川『やっぱり神様には威厳のある口調ってものが……』
ギド「く、くくく球磨川くん! ちょっとこっちに!」グイッ
球磨川『おっとっと』
ギド「貴様、約束を守る気はあるのか!?」ヒソヒソ
球磨川『当たり前だろ? きみに願いを叶えてもらわないと僕は帰れないかもしれないんだ』
ギド「なら余計なことを口走るんじゃない!」ヒソヒソ
球磨川『あんまり目くじら立てるなよ。皺が増えるぜ?』
ギド「貴様……! まぁ、いい……。頼むから大人しくしててくれ」
球磨川『そう言われると大人しくしたくなくなるのが僕だけれど……。仕方ない、ギド博士を困らせるのは本意じゃないからね。きみの頼みを聞いてあげることにしよう』
ギド(偉そうに……!)
「きゃああああああああ!!」
球磨川『……!』
照山「なんだ……?」
クルス「あそこです!」
ゴロツキ1「ぬいぐるみなんて大事そうに抱えちゃって可愛いねぇ」
「いやぁぁぁ!」
ゴロツキ2「へへへ……。叫んだって誰も来ねぇよ!」ガシッ
クルス「女の子が襲われてる!」
ブレイド「ぬぁにぃぃぃ!? 許せん!!」ダッ
ギド「い、いかん! ブレイドの悪い癖じゃ……!」
球磨川『悪い癖じゃ(笑)』
ギド「おい球磨川ァ!!」
イヴ「ぎ、ギド……?」
ギド「あ、いや、なんでもない……」
ブレイド「待て!!」
(かかった……!)
ゴロツキ1「あぁ!?」
ゴロツキ2「何モンだてめぇ!」
ブレイド「その薄汚い手を放せ! クズどもが!!」
ブレイド「リトルボーイ!!」ボゥッ
ゴロツキ2「ぎゃあああああ!!」ブチッ
クルス「あ! あれって照山さんの……」
照山「あぁ。あの野郎、俺の技二つとも一瞬で盗みやがった」
ブレイド「次は貴様だ……」
ゴロツキ1「ま、待ってくれ! 金ならいくらでも出す! だからい、命だけは……」
ブレイド「バカめ!! 人は金のみで生きるにあらず!!」
ブレイド「例えば彼女とか! お姉様とか!」
ブレイド「あと特に妹とかぁぁぁ!!」バキッ
ゴロツキ1「えぇぇぇぇぇぇ!?」グシャッ
イヴ「だめだビョーキだ」
球磨川『真黒ちゃんだ……。真黒ちゃんがいる』
ブレイド「お嬢さん、お名前は?」
「未央っていいます! ありがとっ、おにーちゃん!」
ブレイド「はうぁっ!」ズキューン
ブレイド「君は僕が守る!」
イヴ「死ね」
球磨川『ねぇ、未央ちゃん。きみみたいなか弱い女の子がどうしてこんなところに一人でいるんだい?』
未央「え、えっと……」
球磨川『近くに住んでるのかな? だったらこの辺りは治安が悪いことくらい知ってそうなものだけれど』
球磨川『それともここに来るのは初めてなのかな? こんなところに女の子が一人で来なくちゃいけない理由ってなんだろう。例えばシメ……』
未央「えっと! み、未央、“きおくそうしつ”なんですっ! だから名前以外何も思い出せなくて……」
球磨川『……へぇ。じゃあ僕がその記憶喪失をなかったことにしてあげよう。もし記憶喪失っていうのが嘘だったらきみの記憶の方がなかったことになるかもしれないけれど、恨まないでね。僕は悪くないんだから』ジリ…
未央「ひっ……」
ブレイド「リトルボーイ!!」ボゥッ
球磨川『ぶっ!?』バキッ
ブレイド「未央たんをいじめてんじゃねぇ!!」
クルス「うわーーーっ! 球磨川さーーん!!」
球磨川『』チーン
クルス「また死んでるーーーっ!!」
照山「お、おいブレイド! いくらなんでもやりすぎだろ!!」
照山「……って、また?」
球磨川『……僕はあたふたする女の子を眺めるのが好きなんだけれど、あたふたするクルスちゃんも存外悪くないね』ムクッ
照山「うおぉ!? 死んだんじゃなかったのか!?」
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『僕の絶命をなかったことにした』
照山「なかったことにって……」
ブレイド「ちっ。しぶとい野郎だ」
球磨川『今本気で舌打ちしなかった?』
ブレイド「それにしてもなんなんだ、てめぇのそれは。全く覚えられん」
球磨川『ま、これはフラグメントじゃないからね』
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ギド「ここが、アイアンマウンテンじゃ」
クルス「なんだか遺跡みたいですね……」
ギド「実際に使われておったのは半世紀以上前じゃからのぉ」
照山「ここから入れそうだぜ」
未央「おぉー。ぼうけんだね!」
イヴ「って、なんでまだこのガキがいるのよ!」
未央「だ、だって一人じゃこわいし!」
ブレイド「そうだそうだ!」
イヴ「くっ……! おい、山田!」グイッ
クルス「えっ……?」
イヴ「いいのかブレイド! 山田がお前をとられて寂しがってるぞ!」
クルス「えぇっ!?」
イヴ「背に薔薇は添えられん。お前の方がマシだ」
クルス「“背に腹は代えられない”じゃないんですか……? なんか無駄に優雅になってますけど……」
球磨川『そうだぜブレイドちゃん。体を売ってまできみの側にいようとしたクルスちゃんを蔑ろにするのかよ』
クルス「言い方、言い方!」
ブレイド「た、確かに……!」
クルス「神父様も確かに、じゃないですよ!」
未央(クルス……ちゃん? 解放軍の生き残りっておとこのこだよね……? あれ?)
ブレイド「ぐぬぬ……ぬぅぅぅぅ!」
照山「本気で悩んでやがる……」
イヴ「アホだな」
未央(……まぁいっか!)
ブレイド「ぬぁぁぁぁぁぁ!!」
ブレイド「未央たん!」ガシッ
未央「およ?」
ブレイド「山田ァ!」ガシッ
クルス「わわっ!」
ブレイド「二人とも……大好きだーーーーっ!!!」
照山「最低だ……」
球磨川『両手に花とは妬けるね、ブレイドちゃん』
イヴ「片っぽ菊の花だけどな」
照山「やめろ!!」
ブレイド「よし。行くぞ雑魚ども!」
バコーンッ
照山「何事もなかったかのように……」
イヴ「はぁ……。もういいや」
ギド「いつものことじゃしの……」
未央「ごめんね、イヴちゃん」
イヴ「あー、もういいって。どうでも」
球磨川『やさぐれてるなー。やっぱりイヴちゃんってブレイドちゃんのこと……』
イヴ「イヴキャノン!」バキッ
球磨川『ぶはっ!』
クルス「イヴさん、いくら生き返るからって思いっきり殴っちゃダメですよ……」
球磨川『みんな僕の扱いがぞんざいになってきてるよね。いや慣れてるけどさぁ』
ガシャン…
イヴ「っ! 今の音……!」
ブレイド「下がれ!!」
チュイン…ドォォォン
照山「っ! テスタメントか!!」
ブレイド「行くぞ内田ァ!!」
照山「誰が内田じゃ!!」
ブレイド・照山「Wリトルボーイ!!!」
ドォォォォン
ギド「こ、これは……! 技を重ねることで威力を二倍ではなく二乗にしおった!」
球磨川『二乗って(笑)。神様がそんなアバウトでいいのかよ』
ギド「くぅまぁがぁわぁぁぁぁ!!」ダンダンッ
イヴ「ぎ、ギド……? 大丈夫か……?」
ギド「な、なんでもないんじゃ、なんでも……」
ギド「このテスタメント、戦前に使われておった旧型じゃな。しかも改造されておる」
ブレイド「ディスクとかいうジジイめ、やっぱりここにいやがるな」
球磨川『……どうやら、僕ら大歓迎されてるみたいだぜ』
ガシャン…ガシャン…
クルス「っ! 囲まれた!!」
照山「次から次へと……!」
ブレイド「しゃらくせぇ! リトルボーイ!!」
ドォォォン!
未央「きゃあ!?」
イヴ「デッドリーメイルストロム!」ギュルル
照山「ヴァルカンショックイグニション!!」
ブレイド「今だ走れ!!」
ダダダダッ
未央「お兄ちゃんは何もしないの?」
球磨川『僕はああいうド派手な立合いには向いてないからね』
クルス「あはは……。でも球磨川さんの能力がある意味一番派手……」カチッ
バカッ
クルス「えっ……うわぁぁぁ!? 落とし穴ぁぁぁ!?」
未央「クルス君!!」バッ
バシッ
未央「んぃ!」ヒョイッ
クルス(え……? 今軽々僕を……)
ブレイド「ナイスだ未央たん!」
未央「んい! ありがとっ」
イヴ「扉が見えた!」
ブレイド「閉まるぞ! 駆け込め!!」
ガシャン!
アイアンマウンテン最深部
ブレイド「全員無事か……? 未央たん!」
未央「んい!」
ブレイド「山田!」
クルス「は、はい!」
ブレイド「よぉし、全員いるな!」
照山「俺たちも聞けよ!!」
ギド「しかし、改造テスタメントに落とし穴とは……」
球磨川『ディスクって人はろくなじいさんじゃなさそうだね』
「ろくなじいさんじゃなくて悪かったわね」
クルス「っ!!」
「よくここまで来られたわね。私がディスクよ」
球磨川『……女の子?』
今日はこれだけ
狂月ももう終わりですね
クルス(ディスクさんは、なんと見た目女の子で実年齢百歳以上の半機械(ハーフ)でした)
クルス(アイアンマウンテンの情報と今まで生きてきた記憶を全てデータとして記録しているディスクさんは、神父様を一目見て“アダムプロジェクトの失敗作”と言いました)
クルス(アダムプロジェクトとは、かつて戦後の日本を復興に導いたキリストセカンドのクローンをつくろうとした極秘プロジェクトだそうです。当の神父様はキリストセカンド自体知らなかったみたいですが……)
クルス(キリストセカンドは片腕で巨大な瓦礫を持ち上げ、手をかざすとどんな怪我や病気も治してしまったといわれています。今日ニードレスたちが持っている能力を全て一人で持っていたのです)
クルス(ニードレスはキリストセカンドの能力を一つずつ受け継いでいるそうです。キリストセカンドの力の欠片、すなわちフラグメント)
クルス(それを聞いた時、球磨川さんは『安心院さんだ……。それ絶対安心院さんだ』って言ってましたけど……。安心院さんって誰なんでしょうか。そもそも人なのか……?)
クルス(そんな話をディスクさんから聞いていた時、アイアンマウンテンにシメオンの新たな刺客が現れました。警護していたテスタメントを次々破壊していく二人のニードレスを止めるため、神父様、イヴさん、そして照山さんが迎撃に向かいました)
クルス(『速(スピード)』のニードレスをイヴさんが、『香(フレグランス)』のニードレスを神父様がそれぞれ迎え撃つ中、イヴさんから不吉な連絡が入りました)
クルス(『敵は三人いる』……と)
ブレイド・イヴ戦闘中
クルス「球磨川さん、ちょっといいですか?」ヒソヒソ
球磨川『ん?』
クルス「あの、未央ちゃんのことなんですけど……」
球磨川『あぁ、あの子ね。実は僕も気になってたんだ』
クルス「……! じゃあやっぱりあの子……!」
球磨川『うん……。すごく可愛いよね』
クルス「……はい?」
球磨川『彼氏とかいるのかなぁ。今ならブレイドちゃんもいないしアタックしてみようかなぁ』
クルス「……あの、真面目な話なんですけど」
球磨川『僕はいつだって真面目だよ。そう言っただろ?』
クルス「いいから、話を聞いてください!」
クルス「……未央ちゃんが、三人目の敵かもしれません」
球磨川『ふーん……。で、どうしてまたあんなかわいこちゃんが?』
クルス「あの子、僕のことをクルス“君”って呼んだんです」
球磨川『……ん?』
クルス「球磨川さんは僕のことを“クルスちゃん”って呼びますし、イヴさんたちに関しては本名ですら呼んでくれません」
クルス「なのに僕を君付け呼んだ、つまり男として扱った。今の僕を見たって男だと思うはずがないのに……!」
球磨川『……自分が男に見られない自覚があるとは、クルスちゃんも男の娘が板についてきたね』
クルス「甚だ不本意なんですけどね?」
球磨川『でも、全員君付けで呼んでるのかもしれないぜ。僕だってブレイドちゃんって言ったりしてるし』
クルス「いえ、イヴさんのことはちゃんと“イヴちゃん”と呼んでいました」
クルス「それに……」
球磨川『それに?』
クルス「僕が落とし穴に落ちた時、あの子は僕を片腕で持ち上げたんです。確かに僕はひょろっちいですけど、あんな女の子が軽々と持ち上げられるとは思えない……」
球磨川『……つまり、ニードレスだと?』
クルス「はい……」
球磨川『わかった。僕も目を光らせておくよ。もっとも、僕も可愛い女の子には目がないからそもそも光らせるものがないかもしれないけれど』
クルス「あはは……。お願いしますね」
球磨川『任されよう。僕はクルスちゃんにだけは優しくしてあげようと決めてるからね』
クルス(僕に……だけは?)
球磨川『それにしても、助けてくれた人を真っ先に疑うなんてクルスちゃんもなかなか染まってきたね』
クルス「……? 何がですか?」
球磨川『……いいや。なんでもないよ』
ディスク「OK! 今最高レベルのセキュリティを作動させた!」
ディスク「これでもう敵は入ってこれないわ。ブレイド、イヴさん、お疲れ様。戻って大丈夫よ」
クルス「終わったみたいですね」
未央「……るよ。……が……るみたい……」ボソボソ
球磨川『……』
未央「……った。クル…………ていくね」ボソボソ
クルス「球磨川さん? どうかしました?」
球磨川『……いや』
未央「ねぇねぇ」
ディスク「ん? 何?」
未央「未央、おトイレ行きたくなっちゃった……」モジモジ
ディスク「あぁ……。じゃあトイレまでの道は開けておくわね」
未央「ねぇ、クルス君。一人じゃ怖いから、一緒に行こ……?」
クルス「う、うん……」
クルス(まただ……。また、クルス君って……)
クルス「く、球磨川さんも一緒に……」
球磨川『おいおい。女の子二人のトイレについていくなんてそれじゃあまるで変態みたいじゃないか』
クルス「え、ちょっ、僕は女の子じゃ……」
未央「早く行こーよー」グイッ
クルス「そんな……! 球磨川さぁぁぁん!」
トイレ前
未央「あ、おトイレあった! 行ってくるねー」
クルス(もう……! 球磨川さん目を光らせておくって言ってたのに……!)
クルス(あの人僕の話ちゃんと聞いてたのかな……)
未央「ねぇ、クルス君」
クルス「は、はい!」
未央「これ、ちょっと持っててもらっていい?」
クルス「え、あぁ。ぬいぐるみか……」スッ
クルス(最悪危なくなったらダッシュで逃げてイヴさんか神父様に……)
ズシッ
クルス(……ずしっ?)
ズドォォォォン
クルス「なっ!? このぬいぐるみ、重っ……!?」メキメキッ
クルス「ま、まさか!」
未央「んい! 未央はシメオン少女部隊だよ! フラグメントは『力(パワー)』!」
クルス「うわぁぁぁ!?」
クルス(やられる……!)
フワッ
クルス(……! 手が動く!?)バッ
未央「っ!? そんな! そのウサちゃんは未央にしか持ち上げられないはずなのに!」
クルス「これウサちゃんだったの!? ってそうじゃなくてこれは……!」
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『そのぬいぐるみの重さを、なかったことにした』
クルス「球磨川さん!」
球磨川『ほらクルスちゃん。今のうちに逃げな。彼女は僕が引き受ける』
クルス「は、はい! すぐに神父様たちを呼んできますから!」ダッ
クルス(走れ……! 早く助けを呼ばないと! 球磨川さんがいつまで堪えてくれるか……)
ヒュン……ドカァァァン
球磨川『ぐはっ!』
クルス「って、もう負けてるーーーっ!?」
未央「もーっ! クルス君ひとぢちにしなきゃいけないんだから邪魔しないでっ!」
クルス「人質だって……!?」
クルス(何が狙いなんだ……? レジスタンスの生き残りなんてさっさと殺せばいいのに……)
クルス(レジスタンス……、そうか! 解放軍の極秘名簿!)
未央「ごめんね、クルス君!」
クルス「しまっ……!」バッ
未央「未央ちゃんパーンチ!」
ピタッ
>>125
訂正
未央「なんでここに……」
球磨川『ごめんね。さっきは言い忘れたけれど、僕は女の子のトイレについていく変態なんだ』
球磨川『ほらクルスちゃん。今のうちに逃げな。彼女は僕が引き受ける』
クルス「は、はい! すぐに神父様たちを呼んできますから!
クルス(走れ……! 早く助けを呼ばないと! 球磨川さんがいつまで堪えてくれるか……)
ヒュン……ドカァァァン
球磨川『ぐはっ!』
クルス「って、もう負けてるーーーっ!?」
未央「もーっ! クルス君ひとぢちにしなきゃいけないんだから邪魔しないでっ!」
クルス「人質だって……!?」
クルス(何が狙いなんだ……? レジスタンスの生き残りなんてさっさと殺せばいいのに……)
クルス(レジスタンス……、そうか! 解放軍の極秘名簿!)
未央「ごめんね、クルス君!」
クルス「しまっ……!」バッ
未央「未央ちゃんパーンチ!」
ピタッ
クルス(……え?)
未央「な、なんで……!?」
クルス(未央ちゃんの拳はいつまで経っても僕を殴り飛ばすことはなく、咄嗟に突き出した僕の左手の数センチ手前で止まっていた)
クルス(どうして……?)
未央「天使様……」
クルス「え?」
球磨川『あれくらいで僕を螺子伏せられると思ったら大間違いだぜ』
未央「っ!」
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『僕の絶命をなかったことにした』
クルス(女の子に殴られただけで死んでたのか……)
未央「むぅ~! 未央ちゃんキーック!」バキッ
球磨川『ぶはっ!』グシャ
球磨川『……まだまだ』
未央「未央ちゃんヒップアタック!」
球磨川『ぐわらっ!』
球磨川『……むしろご褒美だね』
未央「未央ちゃんけろけろロケット!!」
球磨川『あべしっ!』
球磨川『……これは短時間で何回死ねるかギネス記録が狙えるかもしれない』
未央「なんで起き上がってくるの!?」
球磨川『うん、まぁ腕のいい医者を知っていてね』
未央「もう怒ったもん! 未央ちゃーん……」
ブレイド「メイデンリストリクション!!」ブワッ
球磨川『っ!』しびびびび
未央(これ、くちなしの……!)しびびびび
ブレイド「そこまでだ、未央たん。俺の下僕どもに何をしている」
クルス「神父様!」
球磨川『あ、ブレイドちゃん的には僕って下僕なんだ……』
未央「おにーちゃん……」
ブレイド「降伏しろ。さもなければ俺たち全員と戦うことになるぞ」
照山「やっと俺様の出番だぜ」ザッ
イヴ「ディスクの罠にひっかかってた雑魚が何言ってんだ」
照山「雑魚って言うな!」
未央「……ん。いーよ!」
クルス「……え?」
未央「未央、こーふくするね」
クルス「そんなあっさり……」
未央「あ、でもセツナたちが心配しちゃうから連絡していい?」
ブレイド「……あぁ」
ピッ
未央「やっほー、セツナ?」
セツナ『未央! 作戦はうまくいった?』
未央「ごめんね、未央ひとぢち捕まえるの失敗しちゃった」
セツナ『そんな、未央が失敗するなんて……! 解放軍の生き残りってニードレスだったの!?』
未央「ううん。でもね、クルス君を傷つけちゃいけない気がしたの」
セツナ『は……?』
未央「未央が攻撃しようとした時、天使様がクルス君を守ったの。天使様が、クルス君を死なせちゃダメって言ってる気がする」
セツナ『何を言ってるの……? 天使なんていないわ!』
未央「でも……!」
セツナ『……もういいから、早く合流しましょう。離瑠様には怒られるかもしれないけど、一旦退いて態勢を……』
未央「……? 未央、おにーちゃんたちにこーふくしちゃったから帰れないよ?」
セツナ『えぇぇぇぇ!?』
ブレイド「未央、もう心も体もおにーちゃん色に染められちゃった」ボソボソ
未央「未央、もう心も体もおにーちゃん色に染められちゃった」
セツナ『は!? え、ちょっ……!』
ブレイド「もうおにーちゃんなしじゃ生きていけないの……」ボソボソ
未央「もうおにーちゃんなしじゃ生きていけないの……」
ブレイド「おにーちゃんのこと考えるだけで体が熱く……」
照山「何言わせとんじゃボケェ!!!」バキッ
ブレイド「ぶはぁっ!」
セツナ『ちょっと未央!? 神父に何されたの!? すぐに助けに……』
球磨川『はぁい、お電話代わりました球磨川でーす』
セツナ『っ!?』
球磨川『大事なお子さんはこちらで預かってるけれど、後日そちらにお送り申し上げるから心配しないでね』
球磨川『ただブレイドちゃんやイヴちゃんがお宅のやんちゃ坊主たちにずいぶんお世話になったし、ついでにそのお礼もたっぷりさせてもらうから楽しみにしててよ』
セツナ『何を……!』
球磨川『じゃ、また明日とか』
ピッ
クルス「なっ、球磨川さん何言ってるんですか!?」
球磨川『うん。ちょっと宣戦布告をね』
クルス「宣戦布告って……」
球磨川『だってさぁ。このままいつ来るか分からない刺客に怯えるくらいならいっそこっちから攻めこんで一網打尽にした方が手っ取り早いじゃん』
クルス「で、でも……」
ブレイド「いや。雑魚にしてはいいアイディアだ。俺もその方が性に合ってる」
ブレイド「それに、シメジの本拠地ともなればニードレスがわんさかいるんだろ?」
クルス「だ、だから危険なんじゃないですか!」
イヴ「バカね。ブレイドの能力を忘れたの?」
クルス「敵の能力を覚える能力……?」
ブレイド「そうだ。つまり、ニードレスのたまり場、それすなわち俺様の餌場!!」
球磨川『たまり場ってそんなチンピラみたいに……』
ブレイド「そうと決まれば……シメジ狩りじゃああああ!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ディスク「ふーん……。じゃああなたたち、シメオンのBS支社に向かうのね」
ブレイド「あぁ。そういう訳だからシメジの情報、ありったけ教えてもらおうか」
ディスク「ふふっ。いいえ、その必要はないわ」
ブレイド「あ?」
イヴ「てめぇ、この期に及んで『タダじゃ教えられない』とか抜かすつもりじゃないだろうな!」
ディスク「違うわよ。もっといい方法を教えてあげるって言ってるの」
クルス「いい方法……?」
ディスク「私も、あなたたちに付いていくことにしたわ」
ギド「なんじゃと!?」
球磨川『……でも、半機械って言ってもニードレスじゃないんでしょ? 足手まといなだけじゃないの?』
ディスク「あら、私もニードレスなのよ?」
イヴ「何……!?」
ブレイド「……そういえば、くつしたと戦った時すぐに敵のフラグメントを見破ってやがったな」
未央「くつした?」
ディスク「そう。私のフラグメントは『分析(スキャン)』! 敵の能力や身体データを見抜くことができるわ」
ディスク「確かに戦闘向きじゃないけど、何かと役に立てると思うわよ? このアイアンマウンテンの情報もあるし」
照山「なるほど。そりゃいいかもしれねぇな!」
ブレイド「……貴様のそのフラグメント、敵のスリーサイズも見抜けるのか!?」
ディスク「もちろんよ」
ブレイド「よぉし! その言葉が聞きたかった!!」
クルス「え!? 重要なのそこですか!?」
今日はこれだけ
やっぱり地の文とかで戦闘描写しないとわかりにくいですかね
自分としては今以上に書くのに時間かかりそうだしどうかなーと思ってしてなかったんですが…
ディスク「みんなー! 新しくブレイド軍団に仲間入りしたディスクちゃんよー!」きゃるーん
ブレイド「イエーイ!」
ディスク「フラグメントは『分析』! 戦闘向きじゃないけど、一生懸命サポートするからね!」
球磨川『イエーイ!』
ディスク「あなたもスキャンしちゃうゾ☆」
ブレイド「お願いしまーす!!」
ディスク「でも百歳!!」
ブレイド「ぐっはぁ!!」ドサッ
クルス「神父様ーーっ!?」
ブレイド「見た目幼女なのに……。ババアだなんて……あんまりだ……!」
ディスク「失礼ね」
球磨川『ははは。で? それがどうしたっていうんだよ』
ディスク「っ!?」
ブレイド「てめぇまさか……!」
球磨川『それくらいでディスクちゃんの可愛らしさを受け入れられなくなるなんて、ブレイドちゃんもまだまだだね』
ブレイド「ロリババア肯定派……だと……?」
球磨川『そもそも僕の初恋相手は見た目幼女の29歳(当時)だったし、最後に好きになった子なんてロリでこそなかったけれど三兆歳は軽く超えていたからね。百歳くらいどうってことないよ』
ブレイド「貴様、それほどとは……!」
ディスク「侮っていたわ……。まさかこんな強者がいたなんて……!」
イヴ「お前らバカだろ」
クルス「ていうか今さらっとものすごいこと言いませんでした? 三兆歳とかなんとか」
照山「ともかく……。これからどうすんだよ?」
ギド「まずは教会に戻って今後の計画を練るとするかのう。攻めるにしてもまずは準備をせんことには……」
未央「未央もそれ付いていっていーい?」
照山「は!? い、いや、お前シメオンだろ!?」
未央「でも未央、おじちゃんたちにこーふくしたよ?」
照山「それは……そうだけどよ……。というかブレイドはおにーちゃんで俺おじちゃんかよ」
未央「セツナたちも帰っちゃったし、未央行くところないんだもん」
照山「う、裏切るつもりかもしれないだろ!?」
未央「えー? 未央そんなことしないもん!」
照山「スパイまがいのことしといてよく言うぜ……」
球磨川『ギド博士はどう思う?』
ギド「な、なぜワシに聞くんじゃ……?」
球磨川『いやぁ、なんか裏切りには一家言ありそうな顔してるし』
ギド「いい加減にしろよ、球磨川てめぇ」
クルス「お、おじいさん……?」
ギド「ぐっ……。そ、そういう球磨川くんはどう思うんじゃ?」
球磨川『僕? 僕みたいな人の期待を裏切ることしか能のない人間に聞いても仕方ないと思うけれど……』
球磨川『ま、大丈夫だと思うよ。通信機は没収したし、ディスクちゃんも他には持ってないみたいだって言ってたしね』
球磨川『ブレイドちゃんもあんな調子だし』
ブレイド「未央たーん! 腕ひしぎ十字固めしていーい!?」
未央「いーよ!」
ブレイド「よーし、いっくぞー!」
未央「未央ちゃん腕ひしぎ十字固め!!」バキッ
ブレイド「ぐぼぁ!! 未央たんそれジャーマンスープレックス……」
ブレイド「でも“覚えた”!!」
照山「あー……。もういいや」
球磨川『でしょ?』
クルス「あれ……? 神父様、あの空の光る板みたいなもの、なんでしょう?」
ブレイド「あ?」
照山「なんだ、UFOか?」
ブゥン
アークライト『BSの諸君、ごきげんよう。私がシメオン製薬総裁、アダム・アークライトだ』
クルス「……! 空に映像が!」
未央「あ、ぱぱだー!」
照山「何ィ!?」
ブレイド「マジか未央たん!?」
ディスク「違うわよ。あり得ないから」
ギド(本当にアダムシリーズの子供ならこれ以上ない研究対象だったんだがな……)
アークライト『先日ついにシメオン製薬BS支社のビルが落成した。これもひとえに諸君らの協力の賜物である』
アークライト『そこで、明日正午シメオン製薬支社落成イベントを行おうと思う。参加者には食料と物資を提供しよう』
照山「けっ。誰がシメオンのお情けなんて受けるかよ」
アークライト『なお、参加できぬ者は有害なニードレスと見なし全て排除させてもらう』
クルス「なんだって!?」
球磨川『……』
アークライト『ご家族ご友人をお誘い合わせの上、ふるって参加してくれたまえ』
ブゥン
照山「なめやがって……!」
ブレイド「……なるほどな」
イヴ「ブレイド?」
ブレイド「ディスク。てめぇ最初から分かってたってことか?」
ディスク「……えぇ。そうね」
ディスク「彼……アダム・アークライトはあなたと同じキリストセカンドのクローンよ」
照山「何……!?」
ブレイド「ハッ! つまり野郎と俺は同じ実験で生み出された兄弟って訳だ」
ギド「……」
クルス「排除って……。ど、どうしましょう、球磨川さ……」
球磨川『……!』ゴゴゴゴゴ
クルス「っ!?」ビクッ
クルス(な、なんだ……!? こんなに感情を露にしてる球磨川さんは初めて見る……!)
球磨川『……クルスちゃん。カフカや右天ちゃんもそうだったけれど、シメジの連中はみんなあんな風に君たちを見下したような態度なのかい?』
クルス「え……? そ、そうですね……。まぁ、シメオンというよりは『街』に住んでる『市民(シチズン)』全般がそうなんでしょうけど……。少なくとも未央ちゃんみたいな子は初めて見ました」
球磨川『なるほど……。じゃあ心置きなくぶっ潰せそうだね』
クルス「え!?」
球磨川『僕はね、人を支配しようとするエリートってやつをこの世から残さず消し去るのが生き甲斐なんだ』
球磨川『戦争を起こしたのは? 君たちをこんな不毛の大地に追い込んだのは? そう、全部エリートだ。弱者を苦しめるのはいつもエリートだ』
球磨川『ならそんなやつらはいなければいい。エリートを皆殺しにして、バカだけになった世界はきっと平和だよ』
クルス「でも、そんな……皆殺しなんて……」
球磨川『何事も生み出すより破壊する方が容易い。より簡単に平和を実現できるならそれは願ってもないことだ』
球磨川『前に言っただろ? 僕は平和主義者なんだ』ゾンッ
クルス(……やっぱり、この人はどこかおかしい。人として致命的な何かが欠けてる)
クルス(でもどうしてだろう……。前ほど気持ち悪いとは思わない)
クルス(いや、むしろこの気持ち悪さが心地いい)
クルス(……そうか。僕もとっくに何かが欠けてしまっているのかもしれない。大事な何かが……)
クルス(姉さんを失ってなお、誰かに守られることでしか生きていけない僕が、欠陥品でない訳がない)
クルス(だから、より不完全な……そしてより負完全な球磨川さんが近くにいることがこんなに心地いいんだ)
クルス(このままでいいのかな……。変わらなきゃいけない……んだろうな)
クルス(でも……)
球磨川『……ふふっ』ニィッ
教会
ディスク「ふむふむ……。イヴさんの『変身』は大幅に質量を変えない限り無機有機に関わらず様々なものに変身できるのね」ジー
イヴ「あ、あぁ……」モジッ
ディスク「だけどエネルギー消費が激しくて長時間の戦闘には不向き、か。敵地に潜入する以上、この弱点はちょっと問題ね……」ジー
イヴ「そ、そのジロジロ見られるのは結構恥ずかしいな……」
ディスク「あ、これ? ごめんなさいね。でも、これは単に性的欲求からくるものだから気にしないで」
イヴ「余計気になるわ!」
ディスク「いつもはスーパーゲル状デロドロンドリンクでエネルギー補給してるのよね? んー……」
ディスク「よし。これとこれとこれと……」ピーガガガガ
クルス「うわ、出力機能まで付いてるんですかディスクさん……」
ディスク「ギド博士、ここに書いてあるものを貸してもらえるかしら」ピッ
ギド「ふむ……。おぉ、これなら研究室にあったはずじゃ。少し待っとってくれ」
ギド「未央くん、機材を運ぶのを手伝ってくれるかのう」
未央「んい! いーよー」
ディスク「あと内田、近所の市場を回ってありったけのスーパーゲル状デロドロンドリンクをかき集めてきてちょうだい」
照山「照山だ! なんで俺がそんなことしなくちゃならねぇんだよ」
イヴ「早く行け。三十秒な」
照山「無理に決まってるだろ!? ったく、しゃーねぇなぁ……」テクテク
クルス「そういえば、神父様はどこに行ったんでしょう?」
イヴ「ギルドに行くって言ってたわよ」
球磨川『ギルド?』
クルス「BSの何でも屋みたいなところですよ」
球磨川『ところで、イヴちゃんのその「変身」って質量を変えない限りは体の形を変えられるんだよね?』
イヴ「……? そうだけど」
球磨川『じゃあ、そのおっぱいも他のところから質量を集めてきた可能性が……』
イヴ「イヴキャノン!!」バキッ
球磨川『ぐへっ!』
球磨川『……ひどいなイヴちゃん。僕は可能性の話をしただけじゃないか』シュゥゥゥ
ディスク「……」ガシャコン
球磨川『あ、もしかして僕の「大嘘憑き」を分析しようとしてる?』
球磨川『無駄だよ。僕は……、というか僕たち過負荷は無意味で、無関係で、無価値で、何より無責任だ』
球磨川『君たちのフラグメントとは根本からして違うものだからね。分析は不可能だと思うよ』
ディスク「……どうやら、そのようね」
ディスク(でも……何かしら、この不気味な感じは。調べようとしても思わず目を反らしてしまいそうになる)
ディスク(……考えすぎか。下ネタ好きに悪い人はいないものね)
未央「ディスクちゃーん。持ってきたよー?」
ディスク「え? あぁ、ありがとう。そこに置いてくれる?」
未央「んい!」ポイッ
ギド「こ、コラ! 投げちゃいかん!」
クルス「あ、そうだ。球磨川さん」
球磨川『ん?』
クルス「まだお礼を言ってなかったなと思って。アイアンマウンテンでは助けてもらってありがとうございました」
球磨川『まぁ、助けたというよりは代わりにサンドバッグになったって感じだけどね』
クルス「それもですけど、僕が未央ちゃんに殴られそうになった時攻撃を防いでくれましたよね?」
球磨川『……? なんのことだい?』
クルス「あれ? 球磨川さんが未央ちゃんのパンチを止めたんじゃないんですか?」
球磨川『止められるならわざわざタコ殴りにされはしないよ』
クルス「え……。じゃああれは……?」
球磨川『……案外、未央ちゃんの言う通り本当に天使様が助けてくれたのかもね』
クルス「ははは……、そんなまさか……」
球磨川『攻撃を止める……か』
クルス「球磨川さん?」
球磨川『いいや、なんでもない』
今日はこれだけ
ちょっと諸事情で次来れるのは一週間、場合によっては二週間後くらいになるかもしれません
書き溜めはできるだけしておきますので、許してヒヤシンス
翌日 シメオンBS支社前
ザワザワ
未央「わーっ! 人がいっぱいいるー!」
クルス「思ったより大勢来てますね」
照山「昨日の放送でみんなブルッちまってるみてぇだな。まぁ、食料もらえるってんで喜んでる奴もいるが」
ディスク「それだけじゃないでしょうね。きっと残ったレジスタンスも紛れ込んでるはずよ」
クルス「そうか。アークライトを倒すチャンスですもんね」
ギド「わかっておるじゃろうが、ワシらは今日はあくまで様子見。決して勝負をしかけてはいかん」
球磨川『様子見?』
ディスク「私の『分析』で敵の能力を調べるのよ。これだけのイベントだもの。きっと向こうも幹部クラスを揃えてきてるはず」
ギド「敵の能力さえ分かれば作戦も立てられるし今後の襲撃にも備えやすくなる。努々先走るでないぞ」
ディスク「先走る……」フヒッ
ゴゴゴゴゴ
球磨川『……どうやら、お山の大将がお出ましみたいだぜ』
アークライト「諸君、シメオン製薬BS支社落成イベントへようこそ」
ブレイド「おーおー、手下連れてゾロゾロと。マジでお山の大将じゃねぇか」
イヴ「ぼくが戦ったやつもいるな」
アークライト「まずはっきりさせておこう。諸君らの前には二つの道がある」
アークライト「私の下僕となるか、私と敵対するか、だ」
ザワッ
球磨川『……』
アークライト「私の下僕となるならば、BSでの生活を保証しささやかながら援助もしよう。だが、敵対するというのならばその者には……」
アークライト「消滅を与えよう」
照山「なんて野郎だ……!」
「坊っちゃんは『街』に帰んな!」
クルス「っ!」
ディスク「レジスタンスね……」
「『市民』にBSは渡さねぇ! 覚悟しやがれ! 行くぞてめぇらぁ!」
「「「おう!!」」」
アークライト「……自己紹介がまだだったな。そう、私が……」
ドスッ
「え……?」
アークライトの背中から触手のようなものが飛び出し、襲いかかろうとしたレジスタンスの人達を次々と貫きました。
その姿はあまりに恐ろしく、人間というよりむしろ……。
アークライト「神だ!!」
球磨川『ぷっ、くふふふ……。ね、ねぇ、ギド博士。ライバル出てきちゃったけどどうする? ねぇどうする?』
ギド「やかましい!!」
「ぐっ……! 化け物……!」
アークライト「そうだ。貴様ら人間からすれば一つ上の存在である私は理解の範疇を超えているだろう」
アークライト「そして私は神となり、食物連鎖の頂点へと立った!」
バキバキ…
クルス「ま、まさか……!」
アークライト「消滅せよ!!」
アークライトの胸部に口のような物ができ、今しがた捕らえたレジスタンス達を飲み込んでいきました。
それは食物連鎖の頂点というにふさわしく、人間を食らっているようでした。
照山「マジかよ……!」
アークライト「ふむ……。『念動力(サイコキネシス)』」ヒョイ
「きゃぁぁぁぁぁ!」
クルス「女の子が……!」
アークライト「貴様、ニードレスの資質があるな。シメオンに迎え入れてやろう」
クルス「ど、どうしましょう!? イヴさん!」
イヴ「うろたえんな、山田。今あの子供一人助けたって何も変わらない。ぼくたちはシメジの力を見極めなくちゃいけないんだ」
クルス「……! そ、そうですよね……」
クルス(堪えるんだ……! かわいそうだけど、あの女の子には犠牲になってもらうしか……!)
クルス(ん……? 女の子?)チラッ
ブレイド「あんの触手野郎……! ぶっ殺す!!」ダッ
クルス「うわーーーっ!! 神父様ーーー!?」
ドカァァァン
アークライト「っ!」
ブレイド「お食事中すみません!」
イヴ「あの馬鹿……!」
セツナ「アークライト様! そいつがカフカを破った神父です!!」
ブレイド「俺様の前で幼女に手ぇ出すたぁ、いい度胸してるじゃねぇか。よぉ、兄弟!!」
アークライト「……! 額の白毫に鋼鉄のチョーカー……!」
アークライト「なるほど、まさか探していた神父が私と同じキリストセカンドのクローンとは……!」
アークライト「面白い! 貴様ならば私の新たな体として申し分ない!」
アークライト「貴様を食らうことで『アダムプロジェクト』は完成するだろう……!」
ブレイド「ハッ! イエスロリータ……!」ボゥッ
ブレイド「ノータッチィィィィィィィ!!」
変な叫びとともに神父様が放ったのはリトルボーイ。
拳に灼熱の炎を灯して相手を殴る照山さんの超単純な必殺技です。
照山「おい山田、なんか失礼なこと考えてねぇか?」
神父様の拳はアークライトの顔面に入ったかのように見えました。
アークライト「……ふっ」
……が、当たる直前でアークライトに止められていました。
燃える拳をつかんだというのに、アークライトの顔に苦痛の色は見られません。
アークライト「“覚えた”」
ブレイド「っ!」
アークライト「イエスロリータ、ノータッチ!」ボゥッ
ブレイド「がっ……!」バキッ
照山「それ技の名前じゃねぇから!!」
アークライトが覚えたリトルボーイは照山さんや神父様が使うものよりも激しい炎が上がっていたように見えました。
気のせい……でしょうか。
ブレイド「ちぃっ! テンペストスレッド!!」ズアッ
次いで神父様が繰り出した斬糸の嵐がアークライトを一瞬で縛り上げます。
ブレイド「この糸は神にしか切れねぇ! 細切れになりやがれ!!」
クルス「やった……!?」
アークライト「笑わせる……!」ブチブチッ
ブレイド「何!?」
アークライト「私が神だということを忘れていないかね?」
ブレイド「……てめぇこそ笑わせるぜ。神になりたいならネットにエロ画像でもアップしてろよ」
球磨川『だってさギド博士』
ギド「もうやめてほんと。お願いだから」
その後も凄まじい攻防が続きました。
神父様が『香』のフラグメントで生成したメイデンリストリクションをアークライトは『速』のフラグメントでかわし、マッハ2の連打、DDFH(ディーンドライブフォックスハウンド)で反撃します。
それにも怯まず神父様はカンダタストリングを飛ばしますが、見知らぬフラグメントで弾かれてしまいました。
アークライト「エターナルディストーション!」キュイン
ブレイド「ぐおっ!?」
ドカァァァン
照山「さっきから全然攻撃が当たってねぇ!」
イヴ「あいつ、フラグメントの数がブレイドより遥かに多い……!」
クルス「そんな……。神父様……!」
クルス「っ! そ、そうだ! 球磨川さん、敵の弱点が分かるって言ってましたよね!? アークライトの弱点は……」クルッ
クルス「……あれ? 球磨川さん……?」
ディスク「どうしたの、クルス君?」
クルス「球磨川さんがいなくて……。まさか……!」バッ
昨日、球磨川さんはシメオンに対して異常なほど怒りをあらわにしていました。
だからもしかして神父様に続いてアークライトに襲いかかるつもりなんじゃないかと思ったのですが……。
果たして、球磨川さんはいつの間にかアークライトの背後に回り込んで螺子を突き立てようとしていました。
アークライト「……『念動力』」
ピタッ
球磨川『……おっかしいなぁ。完全に死角を突いた攻撃だったはずなんだけど』
アークライト「神に死角などない。レインレーザー!!」チュイン
球磨川『ぐあっ!』
ヒュゥゥゥ…ドサッ
水系のフラグメントの技で吹き飛ばされた球磨川さんがこちらに落ちてきました。
クルス「く、球磨川さん!」
どうやらウォータージェットのような物で貫かれたらしく全身に風穴が空いています。
なんかこの人……。
球磨川『なんか僕、穴だらけになってばかりじゃない?』ムクッ
クルス「……僕もちょうどそう思ってたところです」
球磨川『気が合うね。付き合う?』
クルス「なんで男を口説いてるんですか?」
球磨川『それにしても、あの男僕の弱点を突く攻撃がまるで通じない。めだかちゃんみたいなやつだぜ』
クルス「通じないって……。弱点がないってことですか?」
球磨川『いいや。弱点自体はある。アークライトにも、彼の持つフラグメントそれぞれにもね。その辺りはめだかちゃんとは違うな』
クルス「さっきからめだかちゃんって誰ですか……?」
球磨川『あ、聞きたい? 話すと長くなるんだけれど、僕の……』
クルス「あぁ、やっぱりいいです! いいですから早くアークライトの話を!」
球磨川『そうだったね。弱点そのものはある。じゃあどうしてそれを突けないのか』
球磨川『アークライトはその弱点をカバーできるフラグメントをきちんと把握して覚えている。それを絶妙に操ってあらゆる弱点を即座に埋めてるんだ。つまり本来チームプレーなんかでやることを自分一人で補完しちゃってる訳』
球磨川『弱点を見つけてつけこんでも、次の瞬間には弱点じゃなくなってるなんてずるいよね』
クルス「堂々と弱点を狙い打ちしてる球磨川さんも十分ずるいんじゃ……」
球磨川『失敬な。弱点を狙うのは立派な戦法だよ』
クルス「弱点を無くそうとするのも立派な戦法じゃないですか?」
球磨川『……ああ言えばこう言う。きみはどっちの味方なんだい?』
クルス「球磨川さんが変なこと言うから……」
イヴ「竹田! 大丈夫だったか!?」
球磨川『まあね。頑丈なのだけが取り柄だから』
照山「アークライトに向かっていくたぁ、なかなかやるじゃねぇか」
ディスク「でもこれで球磨川君もマークされたでしょうね。そして多分、こうして集まってる仲間の私たちも」
ギド「そうなると、これ以上下手に動くのは危険かもしれんのう」
クルス「そもそも無事に帰してもらえるかも怪しくなってきましたよね……」
球磨川『なんだよなんだよ。皆して僕が悪いみたいに』
イヴ「いや悪いだろ」
ディスク「……まぁ、ブレイドが先に飛び出してるしどのみち目はつけられてたかもしれないけどね」
アークライト「テンペストスレッド!」ズアッ
ブレイド「ちぃっ!」バッ
ドドドドド
アークライト「……ふん。少女部隊」
セツナ「はっ、はい!」
アークライト「後は任せる」
ブレイド「おやおやぁ? ビビって逃げんのか!? 『街』のお坊ちゃんよぉ!」
アークライト「舐めるな。貴様の相手をしてやったのは私の体にふさわしいか調べるためだ」
アークライト「私を殺したければ彼女たちを倒してみろ」
ブレイド「ハッ! 誰がみすみすてめぇの罠にひっかかるかよ!」
梔「……」キュッキュー
梔(スケッチブック)【ついてきたら全裸に靴下が見放題!……かもしれない】
ブレイド「……よっしゃぁぁぁぁぁ!! どこへでも連れていきやがれぇぇぇぇ!!」ピョーン
クルス「えぇぇぇぇぇぇ!?」
ゴゴゴゴゴ…
照山「ビルが閉まった!」
クルス「ど、どどどどどうしましょう!? 神父様中に入っちゃいましたよ!?」
イヴ「どうするもこうするも助けるしかないだろ」
照山「けどよ、入り口は閉まっちまったぜ?」
球磨川『ビルなんだから玄関くらいあるでしょ。あるよね? 未央ちゃん』
未央「んい! 未央知ってるよ」
イヴ「よし、そこから行くぞ。案内しろ」
ギド「ま、待て待て! まだ奴らの戦力すら分かっとらんのに……」
イヴ「敵の手の内が分からないから仲間を見殺しにするのか!? そんなの男のすることじゃない!」
球磨川『イヴちゃん女の子だけどね』
照山「よく言った! 敵がどれだけ強かろうが全部叩き潰しゃいいんだよ!」
イヴ「行くぞ雑魚ども! 正面突破だ!!」
「……どうやらあいつら神父の仲間みたいだな」
「そのようですね」
「ボクたちも出るぞ」
「えぇ」
時間ができたので
今日はこれだけ
さすがに今回のを説明口調でやるのはくどいと思ってクルス目線で地の文いれてみました
わかりやすいとかイラネとか教えてもらえるとありがたいです
シメオンBS支社 第3シェルター
ブレイド「ここは……家具でかっ! ぬいぐるみでかっ!!」
セツナ「ここがあなたの墓場よ、神父。この第3シェルターはどんな攻撃にも耐えられるようにできてるの」
セツナ「アークライト様には多少の損壊は許可するって言われてるから、全力でいたぶってあげるわ」
ブレイド「んなことより全裸に靴下はどうしたよ。見せてくれるんじゃなかったのか?」
梔【私たちに勝ったら好きなだけ見せてやる……可能性は0じゃないかもしれない】
セツナ「ちょっ、梔……!」
ブレイド「ハッハァ! なら瞬殺してやるからそこに並べ!!」
セツナ「……DDFH!!」ヒュンッ
ブレイド「ごはっ!!」
ブレイド(速ぇ……! こりゃ、速すぎて見えねぇ分覚えるのに時間がかかりそうだな……)
セツナ「あんたのせいで未央が……! 未央の恨み、私たちが必ず晴らす!!」
シメオンBS支社 正面玄関
未央「ここだよー!」
ディスク「……今さらだけど、あなた大丈夫なの? シメオンの一員なんでしょ?」
未央「んー……。アークライト様も離瑠様もセツナもくちなしも好きだけど、シメオンは別にどうでもいいかなぁ」
未央「おにーちゃんたちといる方が楽しいし! あと天使様にも会いたいし」
ディスク「……? ほんとよく分からない子ね……」
ピーッ
未央「ほい、開いたー」
クルス「まさか真正面からシメオンに侵入することになるなんて……」
「ほんと、こんな堂々とした侵入者初めて見たわ」
照山「っ!!」
「ようこそ、シメオンBS支社へ。私たち少女部隊が丁重におもてなしいたしますわ」
未央「あ、七海ちゃんと美咲ちゃんだー」
七海「未央……。あんた裏切ったのね」
美咲「だから言ったのよ。あんたたちはシメオン幹部にはふさわしくないって」
ギド「エントランスホールいっぱいに敵が……!」
球磨川『ざっと四十人ってところかな』
クルス「ひぃぃぃぃ! やっぱり無謀だったんですよぉ!」
イヴ「しゃきっとしろ山田! ヤベーなんだからこれくらい当たり前だろ!」
ディスク「もしかして:アウェー」
クルス「で、でもいくらイヴさんたちでもこんな大勢相手に……!」
球磨川『……内田ちゃん』ヒソヒソ
照山「照山だっつーの! ……で、なんだ?」ヒソヒソ
球磨川『彼女たちの後ろ、階段があるだろ?』
照山「あぁ。けど、そこまで行くには少女部隊を全員ぶっ倒す必要があるぜ」
球磨川『何も全員倒さなくてもいい。とりあえずここを抜けて狭い廊下にでも出れば各個撃破に持ち込める』
照山「なるほど……」
球磨川『一点突破だ。内田ちゃんができるだけでかい攻撃で階段までの道を作る。後は僕がその道を維持するから一気に駆け抜けよう』
照山「よっしゃ、乗ったぜ! でかいの一発ぶちかましゃいいんだな!?」
七海「……! 何か企んでるわね!?」
照山「遅ぇよ! VSI(ヴァルカンショックイグニション)!!」
ゴウッ
少女部隊たち「きゃああああ!?」
球磨川『……いい感じに蹴散らしてくれたね』
ザクザクッ
クルス「螺子で道が……!」
照山「今のうちに走れ!」ダッ
七海「させるか……! 来たれ、水のエレメント! 『アクアコーラル』!!」ブワッ
照山「ハッハァ! 燃素爆発(フロギストン)!!」
ドォォォン
七海「そんな……! 蒸発した!?」
照山「俺の炎を消したけりゃ、今の百倍は持ってくることだな!」
美咲「じゃあこれならどう!? 来たれ、土のエレメント! 『フェルゼンザント』!!」ゴッ
イヴ「デッドリーメイルストロム!!」ギュルルル
美咲「きゃあ!?」
イヴ「おいおい、おっぱじめるならぼくにも教えてよ」
球磨川『えー。でもイヴちゃんすぐスタミナ切れするんでしょ? 温存しないと』
ディスク「ふっふっふ。それはどうかしら?」バッ
イヴ「ちょっ!? 急に服めくるな!」
ディスク「ご覧の通り、ディスクちゃん特製☆濃縮還元スーパーゲル状デロドロンドリンクをイヴちゃんに埋め込んであるから、今日一日戦い続けてもエネルギーが切れることはないわ!」
球磨川『うわ、グロ……』
クルス「よし、階段に着いた!」
イヴ「全員来たか!?」
照山「竹田がまだだ!」
ディスク「急いで、球磨川君!」
球磨川『……いや。ここで一旦お別れだ』
ザクッ…ガラガラガラッ
そう言った球磨川さんは、螺子で階段入り口の天井を壊し、階段への道を塞いでしまいました。
照山「てめぇどういうつもりだ!?」
球磨川『ブレイドちゃんを助けるんだろ。なら、四十人を各個撃破している暇なんてない』
球磨川『ここの女の子たちは僕がまとめて面倒見てあげるから、君たちは先を急ぎな』
クルス「そんな、無茶です!」
球磨川『僕は一応不死身みたいなもんだからね。心配するなよ』
ディスク「球磨川君……」
イヴ「……行くぞ」
クルス「でも……!」
イヴ「竹田の覚悟を無駄にする訳にはいかないだろ!」
イヴ「絶対追いかけてこいよ、竹田!!」
球磨川『……女の子にそんなことを言われちゃあ、男の子としては頑張らない訳にはいかないなぁ』
照山「くそ……! 死んだら承知しねぇからな!! 男の約束だ!!」
球磨川『あー、今のでやる気なくなった』
照山「なんでだよ!?」
ギド「……仕方ない。辛いが先へ進もう、クルスくん」
球磨川『またまた。心にもないことを』
ダッダッダッ…
七海「かっこつけちゃって。今さら泣いても許さないわよ」
球磨川『どうも僕はかっこつけの癖があるみたいでね。ま、男の子だからしょうがないよね』
美咲「それであの子たちを逃がしたつもりかもしれないけど、あんたを倒しちゃえばそんな瓦礫、私の『フェルゼンザント』でどうにでもなるんだからね?」
球磨川『へぇ。僕を倒せると思ってるんだ』
七海「……あんた、この戦力差わかってる?」
球磨川『僕はいつだって負け戦を戦ってきた。こんなのそれらに比べたら屁のカッパだよ』
球磨川『それにね。僕は勝ったことは一度もないけれど……』
球磨川『負けなかったことならあるんだぜ』ゾンッ
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
七海「はぁ……、はぁ……。なんで倒れないの……!?」
球磨川『四十人がかりでそんなものかよ。まだ未央ちゃん一人の方が僕を殺した回数は多かったぜ』
美咲「馬鹿にして……っ! 『フェルゼンザント』!!」
ドドドドド!
球磨川『……わかってないなぁ。きみたちがそんな派手な攻撃するから他の子たちが僕に近づけないんだよ』
美咲「くっ……!」
七海「あいつは攻撃しても攻撃しても起き上がってくる! だったら全員で取り押さえて拘束するのよ!」
七海「かかれ!!」
少女部隊たち「はい!!」バッ
球磨川『ついにはやけっぱちの特攻かい? そんな一点に集まったりしたら弱点が丸見えに……』
「ジャイルグラビティション!!!」
カッ
少女部隊たち「きゃああああ!!」
球磨川『……これから僕がかっこよく一掃するところだったのに』
「そうなのか? それはすまなかった。ボクたちに気づいていたから敵を挑発して仕留めやすくしてくれたのかと思ったよ」
「ボクはセト。ブレイドとは腐れ縁でね。こうして応援に来たんだ。こっちはソルヴァ」
ソルヴァ「初めまして、ソルヴァです」
球磨川『僕は球磨川禊。イヴちゃんたちが先行してブレイドちゃんを探してるから、彼を助けたいならまずはそれを追いかけるといい』
セト「そうは言っても道が塞がってるみたいだが……」
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『天井の崩壊をなかったことにした』
ソルヴァ「……おぉ」
球磨川『僕はちょっと休んでから行くよ。さすがに四十人相手の時間稼ぎは疲れた』
セト「わかった。じゃあ先に行かせてもらう」
ソルヴァ「では球磨川さん、お気をつけて」
「……仲間を先に進ませるために一人残るだなんて、君らしくないんじゃないのかい?」
「それとも、四十人の女の子に囲まれてちょっとしたパラダイスを楽しみたかっただけなのかな?」
球磨川『……どうかな。もしかしたら、四十人の中に意中の女の子がいたから、二人っきりになりたくて残っただけかもしれないぜ』
球磨川『ねぇ……。安心院さん?』
なじみ「はっはっは。やっぱり気づかれてたか」
球磨川『僕は一キロ先からでも安心院さんを見つける自信があるよ』
なじみ「気持ち悪いこと言うなよ、球磨川君」
球磨川『全く……、冗談はよしこちゃんだぜ。なんでダンジョン序盤の雑魚モンスターの中にラスボスが混じってるんだよ』
なじみ「一京分の一のスキル、『腑罪証明(アリバイブロック)』で僕は好きな時に好きな場所にいることができるからね」
球磨川『それはよく知ってるよ。嫌というくらい』
球磨川『なんでわざわざこのタイミングで来たのか、そう聞いたんだよ』
なじみ「僕が君に会いにくるのに理由がいるのかい? ……なんて言ったらまた君は嘘くさいとか言うんだろうけれど」
なじみ「僕が来た理由はいくつかあるが、さしあたって一番重要なのはこれだろう」
なじみ「そろそろ教えてあげようと思って来たのさ。君も気にしていた、クリア条件ってやつを……ね」
今日はこれだけ
七海と美咲が生きてるのはいないと少女部隊が名無しばっかになっちゃうからで、別に大した意味はありません
>>183
ディスクのセリフで訂正
× イヴちゃん
○ イヴさん
次から投下
球磨川『クリア条件ねぇ。それは是非とも教えてもらいたいもんだけれど』
なじみ「まぁ、厳密にはクリア条件というより、クリア方法と言った方がいいのかもしれない。元の世界へと帰る方法だ」
球磨川『安心院さんがまたスキルで飛ばしてくれるんじゃないの?』
なじみ「別にそれでもいいけれど、その場合僕を納得させられる活躍をしてもらわないと」
球磨川『具体的には?』
なじみ「アダム・ブレイドを完膚なきまでに叩きのめすとか」
球磨川『……遠慮しておこう』
なじみ「では話を戻そう。この世界には別次元の宇宙と繋がっている“門”と呼ばれる存在があってね」
球磨川『また急に壮大な話だ』
なじみ「このBSが戦争によって生まれたことはもう聞いただろう? じゃあ、爆撃される前にBSの中心、つまり現在シメオン製薬BS支社があるこの場所にかつて何があったか知っているかい?」
球磨川『知る訳ないじゃないか。安心院さんは僕のことを菅原道真の生まれ変わりだとでも思ってるの?』
なじみ「……道真公は君ほどひねくれてはいなかったよ」
球磨川『だろうね』
なじみ「君と話していると本当に話の腰を折られてばかりだ……。まぁ、端末たちは基本的に僕に対してはイエスマンばかりだから新鮮ではあるけれど」
なじみ「で、だ。BSの中心には、国立宇宙開発局という施設があった。といっても宇宙開発とは名ばかりで、そこでは核に代わる強力な次元兵器の開発が行われていたんだ」
なじみ「これはもともとはSFなんかでよく出てくるワームホール航法という技術の応用なんだけれど、完成すれば国ごと消し去ることもできるような代物だった」
球磨川『……そんなものがあったら日本は負けないんじゃない?』
なじみ「そうだね。だが完成まで後わずかというところで敵国の妨害を受け兵器は暴走……。爆撃の最中、敵国はその兵器を逆手にとってこの国を消し去ろうとしたんだ」
球磨川『なんて……、なんてひどい連中なんだ!』
なじみ「うん、君もしょっちゅういろんなものをなかったことにしてるけれどね? まぁ結局、その作戦も失敗してこうして日本は残ってる訳だが」
球磨川『なんだよ、めでたしめでたしじゃないか』
なじみ「今のどこがめでたいのかじっくり聞いてみたいものだけれど、今は置いておこう。残りはしたが、その兵器自体は作動していたのさ」
なじみ「そうして、この世界で初めて“門”が開いた」
なじみ「別次元の宇宙、地球をはるかに超えた文明を持つ世界とリンクしてしまったんだ」
球磨川『ふぅん……。でもそれが僕の帰る方法とどんな関係があるの?』
なじみ「その“門”はこの世界における特異点になってるんだよ。異世界とこの世界を結ぶね」
なじみ「つまり、ちょちょいと手を加えれば僕たちの世界に繋ぐこともできるって寸法だ」
球磨川『……安心院さんが手を加えるなら、結局スキルで飛ばしてもらうのと同じにならない?』
なじみ「こういうのは形が大事なんだよ。門をくぐって異世界に、なんて王道中の王道じゃないか」
球磨川『行きはあっさり飛ばしたくせに……』
なじみ「それに、簡単に門を通れるとは思わない方がいいぜ」
球磨川『……? 門番でもいるの?』
なじみ「門番という言い方は若干語弊があるが……。“門”は決して一方通行ではないのさ」
球磨川『向こう側から来る者もいるってことか。そう言えばギド博士が天使がどうのって言ってたっけ』
なじみ「そう、天使。早い話が地球外生命体だ。彼らもまた、こちらに干渉する機会をうかがっている」
なじみ「“門”を開いたらすぐにでも侵攻してくるだろう。彼らは僕並みに全知全能でね。……まぁ、オツムの具合はどう見ても僕より優れてるとは思えないんだが」
なじみ「それでもキリストセカンドを目指してる程度の人間では歯が立たないほどの能力差があるだろうね」
球磨川『……まさかそれを倒せとは言わないよね?』
なじみ「おいおい、僕をなんだと思ってるんだ? 安心院さんだぜ?」
球磨川『そうだよね。いくら人をいきなり下水道に飛ばすくらい性格が破綻してて人間は全部カスだと思ってる腹黒い安心院さんでも、さすがにそんな無茶なことは言わないよね』
なじみ「……ハハッ」
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球磨川『』チーン
なじみ「一糸報いるくらいでミッションクリアにしてあげようと思っていたけれど、気が変わった。天使を行動不能にすれば“門”を開いてあげることにしよう」
球磨川『ちょっと待った、ちょっと待った! 今完全院さん出てなかった!? 僕の封印はどうしたの!?』
なじみ「あれくらいの封印、君をいたぶる分には何の問題もないんだけれど……。どうもこの世界では封印が弱まってるみたいだ」
なじみ「まぁ、でもほら。君の夢の中でも僕は割と全盛期と変わらない力を持っていただろう? それと同じようなものだろうね」
球磨川『それは確かにそうだったけれど……』
なじみ「あの時は君たちの心の中の僕を寄り代にしていたから、君たちの思う安心院さん像がかなり影響していたんだけれど、今はこの世界の安心院さんを寄り代にしているんだ」
なじみ「だからなのか、なかなかに調子がいい。ただ、こっちの安心院さんは色々取り込んだり取り込まれたりしてたからだいぶ僕とは違う姿形をしていたよ。今は一京分の一のスキル、『身気楼(ミラージュブナイル)』でごまかしているけれど」
球磨川『……え、ってことは今誰かの体を乗っ取ってるって訳?』
なじみ「端的に言うとそうなる」
球磨川『うわぁ……。誰だか知らないけど御愁傷様』
なじみ「僕みたいな美少女にとり憑かれるんだ。むしろ祝福してあげるべきじゃないかな」
球磨川『……「身気楼」がある限り安心院さんが本当に女の子なのかも怪しいところだと僕は思うけれど』
なじみ「……ハハッ」
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球磨川『』チーン
なじみ「うん。やっぱりすこぶる調子がいい」
なじみ「だがこうなるとずっとここにいるのもいいかもしれない。やれやれ、もしかしたら君の封印を破ることが僕の『できない』ことなのかもしれないと思ったこともあったけれど、この分だと案外そのうちスルッと解けちゃいそうだな」
球磨川『……それは、ダメだ。すぐにでも帰ろう』
なじみ「ん? あぁ、心配しなくても冗談だよ。条件さえ満たせば元の世界に帰してやるって」
球磨川『でも今の安心院さんはやろうと思えば何でもできる状態なんだろう?』
なじみ「完全院さんという異名は伊達じゃないことを証明できるくらいには全知全能だね」
球磨川『じゃあ、ダメだ。一刻も早く僕は戻るよ』
なじみ「おいおい、今さら僕のことが怖くなったのかよ?」
球磨川『……そうだね。僕には今のきみが何でもできてしまうことが、何より怖いよ』
なじみ「球磨川禊を恐れされることができるだなんて、また一つ僕の『できない』ことが減ってしまった」
球磨川『……きみは僕をなんだと思ってるんだ』
球磨川『まぁ、いいさ。帰る手立てが見つかったならそれでいい』
なじみ「今からでも“門”に向かうかい?」
球磨川『……いや。まだやり残したことがある』
なじみ「やり残したこと……。あぁ、あの男の娘のことかい? やけに気に入っているようだけれど、その子……娘? も可哀想に」
なじみ「君みたいな過負荷に目をつけられたばかりに、同じ道に堕ちようとしている」
なじみ「朱に交われば赤くなるとは言うけれど、君たちの場合負に交わればもはや手遅れなのだから質が悪い」
球磨川『人聞きの悪いことを言わないでくれよ。気づいてるんだろ? 彼は初めからこちら側の人間だ』
球磨川『劣等感に溺れ、理不尽に喘ぎ、己の無力にうちひしがれる。それでもクルスちゃんは世界を変えようと戦った』
球磨川『ま、結局は守られてばかりだったみたいだけれど。でもそれが一層彼のマイナス化を助長した』
球磨川『過負荷に対抗するには過保護を、って話を聞いたことがあるけれど……』
球磨川『過負荷に堕とすのもまた、過保護なんだよね』
球磨川『彼は間違いなく過負荷だ。あと足りないのは自覚だけ』
球磨川『彼はきっと、どうしようもなく最低な過負荷を見せてくれるよ』
球磨川『安心院さんにはもうクルスちゃんの過負荷はわかってるんじゃないの?』
なじみ「……確かに、彼はすでに過負荷の片鱗を見せてはいる。でもね、多分球磨川くんが考えている彼の過負荷は多分間違っているよ」
球磨川『え……?』
なじみ「彼の過負荷は攻撃を無効化するスキルではない」
なじみ「うーん……。球磨川くんには教えておいてあげた方がいいかもしれないなぁ」
なじみ「彼の過負荷はかつての相棒にも関わらず君が無残に螺子伏せた須木奈佐木咲さんにも匹敵する強力なスキルだ」
なじみ「そうだな、僕のスキルを名付けるスキルでこう名付けておこう」
なじみ「彼の過負荷は――」
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球磨川『……それはそれは。思わぬ大物を釣り上げちゃったもんだな』
なじみ「用心することだ。もしかしたら、君もすでに彼の術中にはまっているのかもしれないのだから」
球磨川『それならそれで本望だよ。僕は気に入った相手とならどこまででも堕ちて逝きたい』
球磨川『それが僕主導か相手主導かなんてことは些細な問題だ』
なじみ「……君のその謎の破滅願望には慣れたものだけれど、過負荷である君に慣れてしまうだなんてゾッとしないね」
なじみ「ま、この慣れというのも君の封印の副作用なのかもしれないが」
なじみ「さぁ、ロードの時間はそろそろ終いだ。ゲームを進めようじゃないか」
なじみ「ブレイド軍団に合流するつもりなら第3シェルターという場所を目指すといい。出血大サービスだぜ、この情報は」
球磨川『……向かうといい、って言ったってそれがどこにあるのかすら知らないんだけど』
なじみ「そこまでは面倒見切れないな。まぁ、君のことだ。適当に歩いていれば最長距離でたどり着けるだろうさ」
なじみ「それじゃあ僕は……というか僕の体がこれから用があるんでね。お先に失礼させてもらうよ」ヒュンッ
球磨川『行っちゃったよ……。どうせなら送ってくれればいいのに』
第3シェルター
梔【メイデンリストリクション!】
ブレイド「ぐっ……!」
ブレイド(やられた! 体が動かねぇ!)
セツナ「これでトドメよ。DD……」
セツナ「RT(ロケットスレッド)!!」ドッ
ブレイド(まじぃ……!!)
ソルヴァ「特殊磁界・反発(マグネティックワールド・アンチ):【『速』の能力者】!!」
キンッ
セツナ「そんな!?」
ドカァン
セツナ「ぐっ……! マッハ9の私を弾き返すだなんて……!」
ブレイド「遅かったじゃねぇか、この雑魚どもが!!」
イヴ「ボロボロのくせによく言う」
セト「久しぶりに会ったあいさつがそれか。全く、失礼なやつだな」
ブレイド「しっかしまたぞろぞろと」
クルス「セトさんとソルヴァさんとはさっき合流したんです。球磨川さんを助けてくれたらしくて」
ブレイド「その竹田はどこ行ったんだよ」
クルス「僕たちを先に行かせるために一人残って少女部隊と……。でも、少し休んだら追いかけてくるそうです!」
ブレイド「けっ! あの野郎一人でいい思いしやがって……」
ブレイド「だが、なかなか男じゃねぇか」
セツナ「神父の仲間ね……!」
梔【さすがにこの人数相手は不利】
セツナ「でも、私たちはこれ以上失敗する訳には……っ!」
「おいおい。なんだぁ、これは」
セツナ「……!」ゾクッ
セツナ(この声は……!)
「“死神”とまで言われた少女部隊最精鋭が、ちょっと欠けただけで神父一人狩れないとはな」
セツナ「そ、それは……!」
「もういい。てめえら退がってな」
セツナ「……はい」
クルス「そんな! あ、あいつは……!」
ディスク「シメオン四天王の一人、左天!」
左天「さぁ、始めようか。こっからが本番だ」
左天(ついさっきまでの記憶がないんだけど俺何してたんだろう……。なんかめっちゃ怖いんですけど)
未央「セツナー! くちなしー! ひさしぶりー」
セツナ「未央……!」
梔【おひさしブリーフ】
左天「なんだ未央、裏切ったのか? あんまし浮気してっとお兄さん悲しくなっちまうぜ」
ブレイド「ハッ。怪我人はすっこんでろよ」
左天「まぁそう言うなって。お前さんも俺みたいな奴の方が戦いやすいだろ?」
クルス「そ、そうか……! 神父様は大の女の子好き! 女の子を殴れないからあんなにボロボロになっていたのか!」
照山「いや普通に押されてただけじゃねーの」
ブレイド「聞こえてるぞ内田ァ!」
左天「そういう訳だから、おとなしく俺に倒されてくれや」
ブレイド「もう勝ったつもりかァ!? てめえなんぞ、さっさとフラグメントを奪って沈めてやらぁ!」
左天「ほう。じゃあ……、やってみせてもらおうか!」ゴッ
クルス「……!」ガタガタ
イヴ「何怯えてんだ山田! ぼくたちがついてるんだ、シャキッとしろ!」
クルス「ち、違うんです……!」
イヴ「はぁ?」
クルス「確かに怖いのもあるんですけど……。なんだか、寒いんです」
気がつけば、吐く息が白くなっています。
左天を中心に、床がどんどん凍っていきました。
ブレイド「てめえ、『氷(アイス)』のニードレスか……!」
左天「さぁ、どうだろうな?」
ブレイド「だったら……、こいつで消し飛ばしてやんよ!」
ブレイド「VSI!!」
神父様が巨大な炎の塊を、左天に向かって放ちました。
氷は炎に弱い……、これなら!
左天「おぉ、怖い怖い。こりゃ相性悪いなぁ」
左天「ま、俺が本当に氷使いだったら、だが」スッ
バシュゥゥゥゥ…
ブレイド「何……!?」
ギド「攻撃が吸収されたじゃと!?」
左天の突き出した掌に吸い込まれるようにVSIが消えてしまいました。
そんな……、氷のフラグメントでこんなことができるのか……?
左天「来ないのか? ならこっちから行かせてもらうぜ?」バッ
ブレイド「チィッ!」
左天「食らいな……!」
左天「第 四 波 動!!」
ゴッ!
ブレイド「なっ……!?」
ドォォォォン
クルス「い、今の攻撃……!」
ディスク「炎……だったわね」
セト「馬鹿な! 奴は複数のフラグメントを持っているとでも言うのか!?」
ディスク「フラグメントは一人に一つ。それが大原則……のはずよ」
ギド「じゃが、現に今『凍結』『攻撃吸収』『炎』の三つの能力を使った……」
照山「そんな奴相手に戦えんのかよ!?」
ブレイド「ピーチクパーチクうるせぇ!!」
クルス「っ!」
ブレイド「能力の数なんざ関係ねぇんだよ! カンダダストリング!!」
神にしか切れない糸が左天の体を絡めとります。
左天「……同感だ」
ブレイド「あん?」
左天「勝敗を決めるのは能力をいくつ持っているか、じゃない」
ブチブチブチッ!
イヴ「カンダダストリングが……!」
左天「能力を使いこなしているかどうか、だ」
左天「神もニードレスの出現までは予期してなかったようだな」
ブレイド「ハッ! だからどうしたァ!」
ブレイド「メイデンリストリクション!!」
今度は『香』のフラグメントで左天の動きを止める作戦でしょうか。
でもよく考えるとあれって神父様の体臭なんですよね……。
左天「あっさりフラグメント覚えられやがってまぁ……」スッ
左天「ストリームディストーション!!」ゴゥッ
クルス「うわっ!?」
ディスク「今度は風……!?」
照山「『香』がこっち飛ばされてきやがった!」しびびびび
ブレイド「チッ……」
ソルヴァ「これで四つ、能力を使いましたね……」
ギド「あり得ん……! なんじゃ、このフラグメントは……!」
セト「ここまで訳のわからないフラグメントじゃ、ブレイドの奴覚えられないんじゃないのか……?」
照山「どういうことだよ?」
セト「あいつはボクらの攻撃を見る、もしくは直接体験することで仕組みを理解して覚えるんだ」
クルス「つまり、仕組みのわからないフラグメントは覚えられない……?」
ディスク「少なくとも、時間はかかるでしょうね」
照山「お前の『分析』で何かわからないのか?」
ディスク「……ごめんなさい。分析すると言ってもすぐに答えが出る訳じゃないの。単純なフラグメントならともかく、こんな前列のないフラグメントじゃ……」
クルス「じゃ、じゃあやっぱり左天の能力を解明しないと勝てないじゃないですか!」
ディスク「……いえ、そうとも限らないわ」
クルス「何か作戦があるんですか!?」
ディスク「作戦と言うほどのものでもないけど……。ブレイドの額にある白毫、あれが何のためについているか、わかる?」
照山「……? キャラデザにインパクトを持たせるためか?」
ディスク「黙れ内田。あれはね、実は脳に直結していて、相手の額に接触させることで直接能力を覚えることができるのよ」
クルス「ほ、本当ですか!?」
ディスク「えぇ……。そうよね、ギド博士……」
ディスク「いえ、アダムプロジェクト研究員の六道銀博士?」
クルス「なっ……!?」
ギド「……」
ギド(なんか今さらな気がするのう……)
ギド「……あぁ。確かにその方法で能力を覚えることが可能じゃ」
イヴ「じゃあ……!」
ディスク「白毫から左天の能力を覚えることができれば……。全ての能力を使いこなすことは無理でも、あの強力な第四波動という攻撃さえ使えれば五分五分に持っていけるんじゃないかしら」
セト「……だそうだ。ブレイド」
ブレイド「ハッハァ! いっちょてめえらの案に乗ってやるとするかァ!」
左天「作戦会議は終わりか? なら行くぜ……!」
左天「第 四 波 動!!」
ドンッ!
ブレイド「DDFH!!」バッ
左天の第四波動は威力は高いですが、直線的です。
神父様はそれを『速』のフラグメントで横にかわし、そのままのスピードで左天へと突っ込んでいきました。
左天「なっ!?」
ガシッ!
神父様が左天の懐に入った……!
ブレイド「もらうぜ、てめえのフラグメント! オラァ!!」
ゴッ!
激しい音を立てて神父様が頭突きをかましました。
うわぁ……、痛そう……。
ブレイド「“覚えた”!!」
ブレイド「自分の技で吹っ飛びやがれ……!」
ブレイド「因果応報!! 第四波動!!」
シーン…
クルス「え……?」
セト「何故第四波動が撃てないんだ!?」
ソルヴァ「覚えられなかったんじゃ……」
ディスク「それはないわ! 確かに白毫を接触させたもの!」
照山「じゃあ言い方が悪かったんじゃねぇのか!?」
イヴ「んな訳あるかボケ!」
左天「それもある」
イヴ「あるのかよ!」
左天「が、一番の原因はな……。お前は俺の能力を覚えはしたが、理解をしていないんだよ」
ブレイド「何……!?」
左天「お前は俺の愛車に憧れて同じものを買ったはいいが、免許どころかそれが何に使うものかさえ分かっちゃいねぇのさ」
ブレイド「……要するに、てめえの玩具を自慢してぇってか?」
左天「あぁ、そうだ。こいつは俺以外に使いこなせないじゃじゃ馬なんだよ」
ブレイド「そうか……。なら、もうてめえに用はねぇ!!」
ザッ
左天「……!」
左天の周りをイヴさん、照山さん、セトさん、ソルヴァさんが囲みました。
さすがに未央ちゃんは行けませんでしたが、それでも五対一、戦力差は圧倒的です。
左天「ほう……」
ブレイド「俺がてめえと戦ってやったのは能力を覚えるためだ。それができねぇんなら、てめえは全員で瞬殺してやらぁ!」
左天「ハッ……。こいつぁ敵わねぇな……」
左天「だが、俺もこう見えて臆病者でね。端からお前さん達全員を相手にしようなんざ思ってねぇのさ」
左天「スペシャルゲストの登場だ。拍手で出迎えてやってくれや」
ゴゴゴゴゴ…
仮面の女「……」ザッ
クルス「あ、あれは……!?」
ディスク「仮面……!?」
左天「右天、離瑠姉さん、俺……。そしてこいつが四天王最後の……」バタンッ!
球磨川『やっほー!! クルスちゃん久しぶり!! 遅れ馳せながら球磨川禊、ただいま参上だぜ!!』
クルス「あ……」
左天「……」
仮面の女「……」
球磨川『……あれ?』
今日はこれだけ
書き溜めが……
これから一層投下が不定期になるかもしれません
球磨川『えー、なになに? なんだよこの空気ー。僕が空気読めない奴みたいじゃん』
仮面の女(読めてねぇよ)
球磨川『せっかくのブレイド軍団復帰なのにさー、なんか水差されてさー』
仮面の女(こちとら初登場だよ)
球磨川『やんなっちゃうなー。ねー、クルスちゃん』ポンッ
クルス「あはは……。でも、無事で本当に良かったです」
仮面の女(あああああ! クルスに気安く触れるんじゃねぇぇぇぇぇ!!)
仮面の女(ていうかあれクルス? クルスだよな? 何あの格好。男のくせに)
仮面の女(可愛すぎるんですけど)
仮面の女(私も前から思ってた。あの子絶対化粧とか似合うって)
仮面の女(実際したし。あの子が寝てる間にメイクしたし。ついでにフリフリのパジャマとか着せたし)
仮面の女(もうマジかわ。激マブ。死ぬかと思った。興奮しすぎて一瞬全身の分子振動マックスにしちゃった)
仮面の女(思い出すだけで……。あ、鼻血出そう)
左天「……大丈夫か?」
仮面の女「あぁ……」
仮面の女(……そうだ。こんなこと考えている場合じゃない。覚悟はもう決めたはずだ)
仮面の女(私は……クルスを、殺す)
左天「ともかく……。こいつの姿を見たからには全員ここで死んでもらうぜ」
ブレイド「ハンッ! 一人増えたくらいで随分強気じゃねぇか」
ディスク「でも実際、アークライトに次ぐ実力を持つ四天王二人を相手にするなんて……。ちょっと厳しいわよ」
球磨川『おいおい、いつになく弱気だね。進撃のディスクと呼ばれたきみはどこへ行ったんだい?』
ディスク「そんな呼ばれ方されたことないけど」
球磨川『呼ばれてるさ。僕に心の中でね』
ディスク「えっ、なにそれ気持ち悪い」
球磨川『ははっ。またまたー』
仮面の女「おしゃべりしている余裕があるのか?」
ドンッ
ディスク「きゃあっ!?」
球磨川『あっつ! なにこれ?』
照山「てめえ……!」
仮面の女「貴様らの相手は私がしてやろう。……いや、貴様らのような低級ニードレスでは相手にすらならんか?」
セト「ボクたち全員を相手に勝てると?」
仮面の女「勝てるさ。それほどまでにミッシングリンクである私と貴様ら雑魚との差は大きい」
照山「上等!」
ソルヴァ「ぺしゃんこにしてやるぜ! このウーパールーパーの佃煮がァ!!」
球磨川『うわっ。キャラ変わりすぎ……』
左天「あっちは始まったようだな。俺たちもそろそろ再開しようぜ?」
ブレイド「二対一、あっちに関しては四対一だ。勝てると思ってんのか?」
左天「おっと。その計算は間違ってるぜ」
ヒュン……ドカンッ
照山「ぐっはぁ!」
イヴ「えー……。弱ぁ……」
ブレイド「やられんの早ぇよ」
照山「俺だって好きで吹っ飛ばされたんじゃねぇよ!」
左天「な? この通りだ。あっちはすぐに終わる」
照山「俺まだ終わってねぇかんな!?」
ブレイド「ハッ! じゃあてめえをさっさとぶっ飛ばして俺とイヴがあっちに加勢すりゃいいだけの話じゃねぇか!」
イヴ「ぼくとブレイドのタッグなんだ。お前なんか5分で叩きのめしてやる!」
左天「お前たちもつくづくわかんねぇ奴らだな……。俺との実力差が理解できねぇとは」
左天「だいたい、お前たちはまだ俺のフラグメントがなんなのかすらわかっちゃいねぇ」
イヴ「ふんっ! そんなもん、山田がすぐに暴いてくれる!」
イヴ「そうだろ、山田!!」
クルス「えっ、えぇ!?」
イヴ「前と同じだ! 複数のフラグメントを持つニードレスなんて存在しない!!」
クルス「は……、はい!!」
クルス(そうだ……! イヴさんは僕を信じてくれているんだ!)
クルス(戦えない代わりに考える……! それが僕の役目だ!!)
イヴ「デッドリーメイルストロム!! 」ギュルルル
ブレイド「リトルボーイ!!」
左天「挟み撃ちか。だが、不用意に近づくと危険だぜ?」
ガシッ
ブレイド「何!? リトルボーイが……」
ピキピキ……
イヴ「……! 手が凍ってる!?」
ギド「『攻撃吸収』と『凍結』を同時にじゃと!?」
ディスク「あなたシメオンだったんだから、何か知らないの!?」
未央「ん~、わかんない! えへへー」
ディスク「……まぁ期待はしてなかったけども」
左天「ここらで景気よく一発いっとくか?」
左天「二 重 第 四 波 動!!!」ドンッ
イヴ「うぉわっ!」
ブレイド「ぎっ……!」
クルス「強すぎる……!」
ディスク「やっぱりあの第四波動だけでもなんとかしないと……。強力すぎて今のブレイドのフラグメントじゃ防ぎきれないわ!」
ディスク「ブレイドが覚えて相殺できれば……」
クルス(ん……? 確かに、あの第四波動だけでも十分すぎるくらい強力だ……。それこそあれだけでも勝てるくらいに)
クルス(なのに、左天は初めから自分の力を誇示するかのように次々と異なる能力を使ってみせた。手の内はできるだけ伏せた方が有利なはずなのに……)
クルス(……いや、違う。次々と使わざるをえないんだったとしたら……!)
クルス「ディスクさん!」
ディスク「な、何?」
クルス「左天がここに来てからとった行動、順番にあげてもらえませんか!?」
ディスク「左天の行動……? ちょっと待ってて。記憶してあるから……」
ピーガガガガガ
クルス「出た! ディスクさんの必殺プリントアウト!」
ディスク「……もうちょっと名前捻りなさいよ。はい、これよ」ピッ
クルス「床を凍結、VSIを吸収、第四波動、カンダタストリングを粉砕、ストリームディストーション、第四波動、リトルボーイを吸収、イヴさんを凍結、二重第四波動……」
クルス「やっぱり……! イヴさん! 神父様! 左天の能力がわかりました!!」
左天「……!」
イヴ「本当か!?」
クルス「はい! 神父様は左天の能力をちゃんと覚えていたんです。ただ、手順が間違っていた!」
ブレイド「手順だと?」
クルス「左天は第四波動を撃つ前に必ず炎の吸収や凍結を行っています」
照山「だからそれはいろんな能力を使ったってだけだろ!?」
クルス「いいえ、これらの能力には共通点があるんです」
球磨川『……なるほど。そういうことか』
イヴ「わかったのか!?」
球磨川『「熱を吸収する能力」……。そうだろ? クルスちゃん』
クルス「はい。その通りです!」
ディスク「そうか……! こんなことに気づかなかったなんて!」
ディスク「熱エネルギーを吸収することで炎を消したり床を凍らせたりしていた! 第四波動はそのエネルギーを増幅して撃ち出す技だったのね!」
イヴ「じゃあ風は!? あとカンダタストリングはどうやったんだよ!?」
ディスク「台風の原理と同じよ。気温の差を生み出すことで気流を発生させていた」
ディスク「カンダタストリングに関しても、急激な温度差を加えられれば大抵のものは脆くなる……。それを利用していたのね」
左天「……ご名答。だがわかったところでどうする? 俺の能力を解き明かしても、お前たちに対抗する術はない」
球磨川『違うな、間違っているよ』
左天「何……?」
球磨川『熱を吸収して攻撃に変える。つまり熱がないときみは攻撃できない訳だ』
フッ
イヴ「……?」ブルッ
クルス「きゅ、急に寒気が……」ガクガク
ディスク「また左天の熱吸収!?」
左天(違う……! 俺はまだ何もしていない! なんだこの気温は!)
左天(まさか……!)
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『この部屋の温度を、なかったことにした!』
左天「なっ……!」
ブレイド「寒いわボケぇ!」
イヴ「ぼくらを巻き込む使い方するなって言ってるだろぉ!!」
球磨川『えー……。せっかく無力化してあげたのに文句いうなよ……』
左天「無力化、ね……。ま、惜しかったよ」
球磨川『……? 負け惜しみはみっともないぜ』
左天「いやいや。実際いい手だ。俺はこれをされると何もできなくなる」
左天「ただ……」
仮面の女「『炎神の息吹(アグニッシュワッタス)』……!」
ゴッ
セト「なんだ……!? 今度は急に暑く……!」
左天「相方の能力を考慮してなかったな」
仮面の女「この程度で手も足も出なくなるとは情けない。それでも四天王の一人か」
左天「まぁそう言うなよ。世の中ギブアンドテイクだ」
仮面の女「貴様に何かしてもらった覚えはないな」
ソルヴァ「くっそ暑ぃ……! あいつを先に倒さないとダメだな」
セト「あぁ。そうすればもう一度左天を止められる」
照山「よっしゃ行くぞォ!!」
セト「ジャイルグラビティション!!」ガッ
セトさんのフラグメント『重力(グラビトン)』が、仮面の女に強力な重力を加えます。
仮面の女「ぬるい!」バッ
セト「っ!? 消えた……!?」
クルス「セトさん! 上です!!」
セト「なっ……!」
仮面の女「自らの生み出した重力で押し潰されるがいい!」
ズドンッ
セト「がはっ!」
ソルヴァ「ちっ……! 特殊磁界(マグネティックワールド):【内田】ァ!!」キンッ
照山「おぉ!? おぉぉぉぉ!?」
ガシッ
ソルヴァ「そのまま特殊磁界・反発:【内田】ァ!!」
ソルヴァ「内田爆弾じゃい!!」
照山「どぉぉぉぉぉぉ!?」ビュンッ
照山「くそったれぇぇ! リトルボーイ!!」ボウッ
やけくその照山さんが仮面の女に突っ込んでいきます。
仮面の女「ふん。そんな攻撃、簡単に避けて……」ズンッ
仮面の女「何……!?」
セト「『重力(グラビトン)』……!」メキメキッ
仮面の女「貴様、自分ごと……!」
セト「今だ! やれ、内田!!」
照山「照山じゃぁぁぁぁぁぁ!!」
バキッ
仮面の女「がっ……!!」
クルス「決まった!」
ピシッ
ディスク「四天王の仮面にひびが……!」
照山「さぁ、拝ませてもらおうか! 能面女さんの面をよぉ!」
ピシピシ……パリーン!
クルス「え……?」
仮面じゃない女「……」
クルス「そんな、まさか……!」
クルス「アルカ……姉さん……!?」
ギド「なんじゃと!?」
ブレイド「あれが山田の姉……!?」
球磨川『ふぅん……。この人がね……』
クルス「そんな……、姉さんはあの時テスタメントにやられたはずじゃ……!」
アルカ「……私が、テスタメントごときに負けると思っていたのか?」
クルス「……! う、嘘だ……! レジスタンスだった姉さんがシメオンの四天王だなんて!」
アルカ「忘れたのか? 解放軍は内部の裏切り者によって壊滅した」
アルカ「その裏切り者が……私だ」
クルス「嘘だ……! 嘘だ嘘だ嘘だ! だって、あの時僕を逃がしてくれたじゃないか!」
アルカ「……あの下水道へ逃げるよう指示した本当の理由を教えてやろう」
アルカ「BSにおける下水道とは、ギルドやシメオンの手も行き届いていない無法地帯……。私はお前を殺すためにそこへ行かせたんだよ」
クルス「……っ」
アルカ「解放軍を皆殺しにするよう言われていた……。だが、肉親であるお前だけはこの手で殺せなかった」
アルカ「だから、自分で殺さずに済むようあそこへ逃がしたのに……」
アルカ「お前は生き延び、仲間を集めてこうして私の前に立ち塞がってしまった」
アルカ「もう迷いはない。貴様を殺し、シメオン四天王としての私の汚点を今、この手で消し去る!!」ダッ
照山「っ! 山田を守れ!!」バッ
アルカ「どけ、雑魚ども!!」
球磨川『まぁ、そうカッカするなよ』スッ
クルス「……! 球磨川さん……」
球磨川『きみの汚点はクルスちゃんが生きていること……。つまりそう言いたい訳だ? 汚点を晴らすにはクルスちゃんを殺すしかないと』
アルカ「……それがどうした!」
球磨川『どうしたもこうしたもないさ。僕はね、これでも慈悲深さには自信があるんだ』
球磨川『だからその役目、僕が引き受けよう』
ザクッ!
クルス「……え?」
一瞬でした。
どこからともなく螺子が現れたかと思うと、その平たい先端が僕の皮膚を、頭蓋を、脳髄を抉るように貫いていきました。
痛いと声をあげる暇すらなく、僕の意識はブラックアウトしてしまいました。
球磨川……さん……?
ドサッ
イヴ「山田ぁぁぁぁぁぁ!!!」
ブレイド「竹田、てめえ……!!」
球磨川『おいおい、待てよ。きみたちは姉が弟を殺すなんて悲しい場面が見たかったのか?』
球磨川『そんな訳ないだろ! そんな悲劇、僕は決して認めない! あっちゃいけないんだ!!』
球磨川『……だから僕が代わりに殺した。これで姉弟の殺しあいは起きない』
球磨川『僕は二人を悲劇から救ったんだ』
球磨川『だから、僕は悪くない』ゾンッ
今日はこれだけ
キャラ集めすぎてさばききれない…
ディスク「クルスくん……!」
イヴ「くそ……っ! 竹田、そこ動くなよ!!」
球磨川『はいはい』
イヴ「ひどい……! 額から後頭部まで貫通してる……」
ディスク「イヴさん! あなたの『変身』で細胞を送り込んで治癒することはできる!?」
イヴ「……無理だ。他の部位ならともかく、他人の脳を再生するなんて……!」
イヴ「くそっ!!」
アルカ「クルス……、クルス!」ダッ
照山「お、おいてめえ!」
アルカ「クルス……!」
イヴ「……なんだよ。今さら姉貴ぶって悲しもうってのか?」
イヴ「山田はなぁ! お前のことが大好きで……! 毎日ロケットに入れたお前の写真を見て泣くくらい、お前のことが……大好きで……」
ディスク「イヴさん……」
アルカ「……っ」
アルカ(脳のほとんどが抉られている……。こんな状態ならメングロウズがクルスの脳に埋め込んだデータチップも粉々だろう……)
アルカ(覚悟はしていた。あのチップがアークライトの手に渡るくらいなら、クルスを殺した方がマシだと)
アルカ(アークライトがあれを手に入れていたら人類は滅亡していた。その危機を未然に防ぐことができたんだ)
アルカ(覚悟していたはずだろう……。これでよかったんだ。これで……)
アルカ「これで……いい訳、ないだろう……!」
アルカ(私ができることは本当にクルスを殺すことだけだったのか……!?)
アルカ(違う……! 私はアークライトの力を恐れる余り自分の手でクルスを守るという選択肢を放棄していた!)
アルカ(私がとるべきだったのは、その道だったんじゃないのか!?)
アルカ(何がミッシングリンクだ。何が神の右手だ……!)
アルカ(一番大切な弟すら守れなかったじゃないか!!)
アルカ「私は……大馬鹿者だ……!」
球磨川『せっかく僕がきみの汚点を拭ってやったのに、なんて顔をしてるんだ』
アルカ「……っ!」
球磨川『笑えよ。さっきまでみたく凄惨に、笑ってみせろよ』
アルカ「黙れ……! 黙れぇぇぇぇぇ!!」
アルカ「炎神の閃光(アグニッシュ・アーカーシャ)!!!」ドンッ
球磨川『おわっ!』
アルカ「炎神の閃光!! 炎神の閃光!! 炎神の閃光ァァァァ!!!」
ディスク「ちょっ、ちょっと……」
球磨川『どうして怒るんだよ? これはきみが望んだことだろ?』
球磨川『イヴちゃんの言う通りだ。今さら姉貴面してんじゃねぇよ』
アルカ「ぐぅぅ……! あぁぁぁぁぁぁ!!」
アルカ「ハァ……、ハァ……。ハハッ……! ハハハハハ!!」
アルカ「アークライト!! 聞いているんだろう!?」
アルカ「貴様が欲しがっていたデータチップの一つは失われた!! クルスの脳に埋め込まれていたからな!!」
アルカ「これでもう貴様の野望は叶わない!! ハハッ、ざまあみろだ!!」
アルカ「悔しかったら私を殺せ!! 私を殺して、クルスの元へ送ってくれ……!」
左天「お前、なんてことを……」
ギド「なんてことをしてくれた!!!」
イヴ「ギド……?」
ギド「チップが失われただと……!? ふさげるな!!」
ギド「それでは神の力は……! 香澄はどうなる!!」
左天「落ち着け、ギド!!」
ブレイド「おい、ジジイてめえ……。どういうことだ! 神の力ってのは何のことだよ!?」
ディスク「香澄……もしかして荻葉香澄? 確かアダムプロジェクトの研究員にそんな名前の女性がいたはず」
ディスク「でも記録では事故で死んだことになってるけど……?」
ギド「……そうだ、彼女は事故に巻き込まれて命を落とした。“天使”の干渉事故に巻き込まれて……!」
左天「ギド!」
ギド「うるさい……! もはやこれまでだ。チップがなくなった以上、“聖痕”を正しく並び替えることは不可能……」
ギド「神の力なくして“天使”に対抗することなどできはしない!」
ギド「我々の今日までの努力は無へと帰したのだよ……」
ギド「……ん? 無……?」
左天「ど、どうしたんだよ……」
ギド「あーーーーっ!! 球磨川!!」
ギド「お前! 『大嘘憑き』!! ある!!!」
球磨川『なんだよ、急に壊れたラジオみたいに……』
ギド「『大嘘憑き』を使え! 今すぐ! クルス・シルトの死をなかったことにしろ!!」
イヴ「……!!」
球磨川『えー。僕の好意なんて国宝並みに珍しいものをなかったことにしろって?』
ギド「私と貴様には契約がある! このままでは貴様も帰れないぞ!」
球磨川『実はさぁ、帰る方法はついさっき見つかったんだよね。だからもう僕にはきみとの取引を継続する理由はなかったりするんだ』
ギド「何を勝手なことを……! いいから生き返らせるんだ!!」
アルカ「生き……返る? クルスは生き返るのか!?」
球磨川『……まぁ、ね。僕にはクルスちゃんを助ける術がある』
アルカ「た、頼む……! クルスを、クルスを生き返らせてくれ!」
球磨川『生き返らせてくれって……。きみさっきまでクルスちゃんのことなんて言ってたか覚えてる? 汚点って言ってたんだよ、汚点』
アルカ「うっ……」
球磨川『さっきの話を聞く限り、クルスちゃんを殺そうとしたのにも理由がありそうだけれど、クルスちゃんはそんなこと知らない訳だよね。きみに守られっぱなしだったことをあれだけ悔いていたクルスちゃんに対して言うに事欠いて汚点とか……』
球磨川『僕くらいになると、そういう理不尽な虐げはもうBGMみたいなものだけれど、クルスちゃんにとってはとてつもない衝撃だっただろうね』
アルカ「……」
球磨川『それも最愛の姉から存在を否定されたんだ。その苦しみは想像を絶するというものだろう』
球磨川『そんな苦痛を与えておきながら、いざ目の前からいなくなると返してくれと騒ぎ出す。ちょっとさぁ、我が儘が過ぎるんじゃないの?』
球磨川『クルスちゃんはお前の所有物じゃねぇんだよ』
アルカ「……確かに、私は自分勝手だ」
球磨川『おや、自覚がおありで』
アルカ「クルスの気持ちを考えもせず……自分が正しいと思ったことばかり優先して……。そのくせ自分は安全な場所に居続けようとした」
球磨川『立派なクズだね。いつでも過負荷の世界においでよ、歓迎するぜ』
アルカ「我が儘なのは分かってる……。クルスはもう二度と私の顔を見たくないかもしれない……」
アルカ「それでも……! 私はクルスにちゃんと謝りたい! 今度こそ私の手で守り通したい!」
アルカ「私にやり直すチャンスを与えてくれ……!!」
球磨川『甘々だな』
アルカ「っ!」
球磨川『謝りたいなんて自己満足だ。そんな甘っちょろい考えで我を通せると思ってるだなんて、世の中舐めてるとしか思えない』
球磨川『……が』
球磨川『その甘さ、嫌いじゃあないぜ』スッ
クルス「……あれ? 姉さん……?」ムクッ
アルカ「クルス……!?」
球磨川『「大嘘憑き」』
球磨川『クルスちゃんの死をなかったことにした』
ギド「っしゃオラァ!!」
左天「ギド!?」
アルカ「あぁ……! 夢みたいだ……! クルス!!」ギュッ
クルス「わっ!? 姉さん……!?」
アルカ「すまない、クルス……! 私が間違っていた! 私が馬鹿だった!」
アルカ「お前と一緒にいたいって、その気持ちを裏切るくらいなら私はどんな罪も背負える……! どんな敵と相まみえたとしても、きっと平気だ!」
アルカ「お前が側にいてくれさえすれば……!」
アルカ「もう一度、お前を愛してもいいか……? もう一度、お前を守ってもいいか……?」
クルス「……姉さん」ギュッ
クルス「当たり前だよ……! 姉さんは、いつだって僕の姉さんだもの!」
アルカ「信じて、くれるのか……?」
クルス「僕を小さい時から守ってくれたのは姉さんじゃないか……! 信じるに決まってるよ!」
アルカ「クルス……。ありがとう……! ありがとう……!」
ディスク「良かったわね、クルス君……」
セト「全く、一時はどうなることかと……」
球磨川『僕にはこうなることは初めから分かっていたけどね! これぞ姉弟の愛だ!』
イヴ「適当ぶっこいてんじゃねぇよ!」
球磨川『いやいや……。アルカちゃんの様子を見れば一目瞭然だったよ。彼女の弱点が未だクルスちゃんだってことはね』
球磨川『だから僕が二人の仲を繕うために憎まれ役を買って出たんじゃないか』
クルス「球磨川さん……」
イヴ「言ってやれ、山田! お前あいつに殺されたんだからな!」
クルス「球磨川さんのおかげだったんですね!!」
イヴ「……は?」
クルス「そっかぁ、球磨川さんはそこまで分かってて僕を殺したんですね……。やっぱり球磨川さんはすごいです!」
クルス「殺してくれてありがとうございました!」
球磨川『礼には及ばないよ。当然のことをしたまでだ』
イヴ「お、おい待てよ……。山田、お前おかしいぞ……?」
クルス「え? 何がですか?」
イヴ「何がって……! 殺されたんだぞ!?」
クルス「……? 生きてるじゃないですか」
イヴ「それは……」
クルス「おかしなイヴさんですね」クスッ
イヴ「……っ」ゾクッ
左天「……つまり、アルカ。お前も裏切るってことでいいんだな?」
アルカ「裏切るも何も初めからアークライトに忠誠など誓っていない」
ブレイド「裏切るって言やぁギドてめえ! なんで左天と仲良くしてやがんだ!!」
セト「アークライトの欲しているのと同じものを狙っていたようだし……。説明してもらえるか?」
ギド「ぐっ……」
球磨川『ギド博士は神様になりたいらしいよ。どうも昔の女に未練たらしくこだわって生き返らせたいみたい。女々しー』
ギド「全部喋りやがった!!」
左天「それだけじゃねぇ。多分こいつ、その女の妹で脳を半分移植してあるイヴから脳を分離させるためにブレイドの脳の『変身』を司る部分をさらに移植したりしてる」
ギド「捕捉しやがった!!」
イヴ「ギド……。今の話本当なのか?」
ギド(もはや隠し通すことはできんか……)
ギド「……あぁ」
ブレイド「てめえ……! つまり昔から騙してたってことか!」
ギド「知られる訳にはいかなかった……。このことを話せばお前はイヴを私から遠ざけただろうからな」
ブレイド「ったりめぇだ、このハゲちゃびん!」
イヴ「ブレイド……」
ギド「だが知られてしまった以上仕方ない。イヴ以外はここで始末するしかなかろう」
左天「ブレイドの体は残しておかなくていいのか? あいつが欲しがってるぜ」
ギド「……奴はよく働いてくれた。“聖痕”も半分以上揃ったしな。もう用済みでよかろう」
左天「……りょーかい」
左天「んじゃ、俺は弟くんの持ってるデータチップと首から上を回収すりゃいい訳だ」
球磨川『あ、そのことなんだけどさ。きみたちなんか勘違いしてない?』
ギド「何?」
球磨川『僕がなかったことにしたのは「クルスちゃんの死」であって、「クルスちゃんの額に螺子を螺子込んだという事実」ではない』
球磨川『つまり、僕の螺子がデータチップを粉砕したという事実は変わらず存在してるんだよ』
左天「なっ……!?」
ギド「ハ、ハッタリだ! 貴様の言う事など信じられるか!!」
ギド「そうだ……! どの道クルス君の脳を調べれば分かること!」
左天「とりあえずやる事は変わらねぇ訳か」
ギド「左天君、鍵を! いざというときのために私も本来の体へと戻る! 装置はここにも置いてあるだろう?」
左天「そりゃあるにはあるが……。いいのか?」
ギド「すぐさま寿命が来る訳でもあるまい……! 私の準備が終わるまでにゴミ掃除は終わらせておいてくれ」
左天「人使いが荒いねぇ……。ほらよ」ポイッ
ギド「頼んだぞ」パシッ
ブレイド「黙って聞いてりゃ……。人をゴミだのなんだの舐め腐りやがって」
イヴ「五人相手でも音を上げてたくせに、アルカも加わったぼくたちに勝てると思ってるのか?」
左天「あぁ……。確かに、これだけの人数を相手にするのは厳しいかもな」
左天「……だが、俺が全力を出せば話はまた別だ」
クルス「……!」
左天「エデンズシード、解放……!」カッ
左天の両腕の包帯が弾けとび、素肌が露になります。
そこには、何やら痣のようなものが浮かび上がっていました。
アルカ「まずい……! 伏せろ!!」
左天「喰らいな、別次元の衝撃……!」
左天「二 重 第 五 波 動!!!」ドンッ
姉さんが咄嗟に僕を押し倒したのではっきりとは見えませんでしたが、真っ黒な何かが一瞬で部屋全体を埋め尽くしたように思えました。
顔を上げた時には、僕と姉さん、そしてイヴさん以外は全員が吹き飛ばされていました。
イヴ「な……っ!」
左天「これで残り三人だ。さっさと終わらせようぜ?」
今日はこれだけ
伏線とか……何も考えてなかったです……
勘弁してください……
クルス「そんな……! 球磨川さん! 神父様!」
左天「そう焦らずとも、すぐに同じところへ送ってやるよ」
ダンッ
ブレイド「……ハンッ! ふざけたこと抜かしてんじゃねぇよ……! これくらいで俺様のタマァ取れると思ったら大間違いだ!」
左天「ふっ……。しぶとい野郎だ」
セト「『重力』!」
左天「おっと……!」ズンッ
照山「オラァ! VSI!!」ゴウッ
左天「学習しろっての。熱吸収!」バシュゥゥゥ…
ディスク「燃料与えてどうするの、バカ!」
ソルヴァ「死ね! このカマドウマの佃煮が!」
照山「す、すまん……」
クルス「みなさん……!」
アルカ「クルス、私の後ろに。……安心しろ。お前はこの身に代えても守り抜く!」
クルス「う、うん……!」
アルカ「神父! ちょっと顔を貸せ!」
ブレイド「あ? んだよクレイジーサイコブラコン」
アルカ「語呂が悪い! いいからこっちに来い!」
ブレイド「何を悠長に……」スタスタ
アルカ「いや何、今までクルスを守ってくれた礼をしようと思って……な!」ゴツンッ
ブレイド「どっ!?」
クルス「えぇぇぇぇぇ!?」
な、何を思ったか姉さんが神父様に思いっきり頭突きをしました。
えっ、何……?
ブレイド「ってぇなこの野郎!!」
アルカ「貴様ほどの変態が、こんなにもぷりちーなクルスの側にいて何もしない訳がないからな。天罰だと思え」
クルス「ぷりちーって姉さん……」
アルカ「……それとついでだが。今、私の『炎神の息吹』を渡した。左天の『第四波動』とは相性が悪いが、ないよりはマシだろう」
ブレイド「ハッ……。素直じゃねぇな」
アルカ「うるさい!」
左天「第 四 波 動!!」ドンッ
セト「ぐあっ!」
イヴ「『重力』の力が……!」
未央「いくら左天ちゃんでも、クルスくんを殺すなんて許さない! 未央ちゃんパーンチ!!」
左天「バカ正直に突っ込んできたら危ないぜ?」パシッ
未央「およ?」
球磨川さんを一撃で絶命させるほどの(まぁ、あの人を殺すのにそれほど強力な攻撃が必要とも思えませんが)未央ちゃんのパンチを、左天は手首を掴むことでいなし、その勢いで未央ちゃんを地面に叩きつけました。
未央「んにゃあ!?」
左天「合気道って知ってるか? 仔猫ちゃん」
未央「『最近どう?』……!?」
左天「いや、それは俺も知らんけど」
ソルヴァ「特殊磁界:【未央】!!」キンッ
未央「おぉ~!」ビュンッ
ブレイド「DDFH!」シュンッ
神父様が左天の背後をとりました……!
アルカ「合わせろ、神父!」
ブレイド「ハッハァ! 誰に命令してやがる! てめえが合わせろ!」
アルカ 「炎神の閃光!!!」
ブレイド「炎神の閃光!!!」
ドンッ
左天「がっ! 前後からだと……!?」
左天「だが……! 俺の『第四波動』の前では炎の攻撃は無意味だ!」バシュゥゥゥ…
クルス「……確かに『第四波動』と姉さんの『炎神の息吹』は相性最悪です」
クルス「だけど、何事にもキャパシティというものがある! このまま熱吸収を続ければいつか必ず限界が来るはずです!」
左天「何……!?」
ブレイド「そォいうことだ! てめえのキャパがどんくらいのもんか知らねぇが、とことん付き合ってやるぜ!!」
左天「ぐっ……! キャパシティ……だと……!?」
左天(そういやこんな状況になったことがねぇから考えたこともなかったが……、無限にエネルギーを吸収できる訳ねぇわな……)
左天(このままだといつか 取り込んだ熱エネルギーが暴走する。だが、かといって熱吸収をやめればいくら俺でもこの熱量には耐えきれねぇ)
左天「ちっ……。めんどくせぇ……」
左天「ギドは確か、奴さんはすでに用済みだって言ってたっけか……」
左天「ならもう、こいつを隠す必要はねぇ訳だ!」ビッ
おもむろに、左天が顔を覆う包帯を引き剥がしました。
その下に隠れていたのは……
ブレイド「っ!? てめえ、それは……!!」
イヴ「白毫!?」
左天「『念動力』!!」
フッ
ブレイド「……!?」
アルカ「炎神の閃光が消えた……! まさか、本当に『念動力』を!?」
左天「そう……。最強のフラグメントである『念動力』は、念じるだけでいかなる物も操ることができる」
左天「『炎神の息吹』で増幅させた分子振動を止めるくらい造作もねぇ事だ」
アルカ「馬鹿な! それは離瑠のフラグメント……! 貴様が使えるはずがない!」
アルカ「貴様……! 何者だ!!」
左天「何者だ、ってか。いい質問だ。教えてやるよ……」
左天「俺が、本物のアダム・アークライトだ!」
球磨川『なっ、何ぃぃぃぃぃ!?』
クルス「あ、無事だったんですね」
球磨川『ついさっきまで死んでたけどね』
ブレイド「てめえがアークライトだってンなら、あのひょろっちい方のアークライトはなんなんだよ!?」
ディスク「ひょろっちい方て……」
左天「あれはギドが作った俺のクローンだ。何かと忙しい身だったもんでね、代わりに面倒事をやらせていたのさ」
左天「ま、あいつはそんなこと知る由もなかったがな」
ディスク「一体何のためにそんな……!」
左天「おっと、そいつァ企業秘密だ。……ま、どうせここで死ぬんだ。気にすんな」
ブレイド「馬鹿言え! 死ぬのはてめえの方だろうが!」
ブレイド「ジャイルグラビティション!!」ガッ
左天「ふん……。“覚えた”」
ブレイド「……!」
左天「ジャイルグラビティション!!!」ズガッ
ブレイド「がはっ!?」
ブレイド「な、なぜだ……! 同じ技のはずなのに、威力が増している……!?」
左天「ポテンシャルが違うんだよ」
アルカ「そうか! 貴様の『ZERO』はアークライトと同じ……!」
左天「だから俺がアークライトであっちがクローンだっての」
左天「俺の『ZERO』は覚えた技を増幅して返すフラグメント……! 『PF・ZERO(ポジティブフィードバック・ゼロ)』!」
ディスク「『PF・ZERO』ですって……!?」
照山「なんだそりゃ!?」
ディスク「PFっていうのは、核分裂に代表されるようなある反応が増幅促進される現象のことよ」
ディスク「左天の言う通り、『PF・ZERO』が敵の技を増幅ものだとしたら、常に敵より強い攻撃ができるということ……! ある意味無敵のフラグメントよ!」
いや、左天は別の解放軍の奴からチップを
奪って神の設計図について知ったから
クルスが死んでも問題はないだろ
ギドも既に解放軍の生き残りを知ってるし
照山「んなもん相手にどうすりゃいいんだよ!?」
ブレイド「どうするもこうするも……! ぶっ倒すしかねぇだろうが!」
ブレイド「『速』プラス『力』!!」シュンッ
ブレイド「惑星砕き!!!」
左天「DDBB(ディーンドライブブラックバード)!」バッ
ドガンッ
ブレイド「ちっ……!」
ソルヴァ「特殊磁界:【左天】!!」キンッ
左天「『炎神の息吹』!」
ピタッ
ソルヴァ「お……!?」
左天「お前の『特殊磁界』は自らを特殊な磁石とするフラグメント。磁石ってのはな、高熱にさらされると分子配列が狂って機能しなくなるんだよ」
左天「エターナルディストーション!」ドンッ
ソルヴァ「ぶはっ!!」
突然ソルヴァさんの体が浮き上がり、近くにいたセトさんや照山さん、未央ちゃんを巻き込んで吹き飛ばされてしまいました。
左天「さぁ、次はどいつだ?」
イヴ「この……! イヴキャノン!」
左天「メイデンリストリクション」ブワッ
イヴ「しまっ……!?」しびびびび
左天「お前は生かしとかなきゃならねぇんだ。大人しくしててくれや」
ブレイド「てめえ……! テンペストスレッド!!」ズアッ
左天「『風(ウィンド)』……! エレガントサイクロン!!」ゴッ
クルス「風で『カンダタストリング』の糸が……!」
ディスク「当然といえば当然だけど、私達の知らないフラグメントまで持ってるのね……!」
左天「『氷』プラス『炎神の息吹』」
左天「アトミックヘイルスパーク!!」ゴバアッ
ブレイド「ぐぉぉぉぉっ!?」
クルス「神父様ぁぁぁ!!」
クルス「圧倒的すぎる……!」
左天「そろそろその首をもらおうか、弟くん?」
アルカ「させると思うか!?」
左天「はいはい、『念動力』」クイッ
アルカ「なっ……! ぐあっ!?」ドガッ
クルス「姉さん!」
左天「もう諦めろって。普段の俺にも一人じゃ勝てなかっただろうが」
アルカ「クルス……! 神の左手だ!」
クルス「え……?」
左天「お別れの時間だ。悪く思う……がっ!?」ザクッ
球磨川『もしかしてだけどさぁ、僕のこと忘れてない?』
クルス「球磨川さん……!」
左天「お前……!」
球磨川『僕にあっさり死角を突かれるなんて、クローンとやらの方がよっぽど強いんじゃないの?』
左天「なんだと……!? ふざけるな!」
左天「レインレーザー!!」チュインッ
球磨川『おっと』バッ
球磨川『だから、そう何度も同じ技をくらう球磨川禊ではないって』
左天「ちっ! 金剛無情拳!!」
球磨川『ぐあっ……!』
球磨川『……いいかい、クルスちゃん。よく聞いて』
クルス「え……?」
左天「伝導・炎神の息吹!!」
球磨川『がっ……!? 受け入れることだよ、クルスちゃん』
球磨川『劣等感を、理不尽を、己の無力さを。愛しい恋人のように受け入れることだ』
球磨川『そうすればきっと、僕みたいになれるよ』
左天「何を訳の分からないことを……!」
左天「第 四 波 動!!!」ドンッ
球磨川『がはっ……!』ドサッ
クルス「球磨川さぁぁぁん!!」
左天「ハァ……、ハァ……。なぁ、どんな気分だ?」
左天「なんの力もないくせに、ただ守られて仲間が倒れていくのを眺めてるってのは」
左天「全員、お前を守るために傷ついていったんだ。お前のために! お前のせいで!」
左天「だったらもう、お前も死ぬしかないよなぁ!!」バッ
クルス「ひっ……!」
球磨川『違うだろ……?』
クルス(球磨川さん……!?)
球磨川『誰あろう、この僕が保証してやったじゃないか』
クルス(そうだ……。球磨川さんは言ってくれた……)
球磨川『きみは……』
クルス「僕は……悪くない!!!」
ドンッ
今日はこれだけ
>>298
あれ……そんな設定ありましたっけ……?
何か見落としてます……?
左天「ぐおっ!?」
僕の中で何かが弾けるような感覚がした次の瞬間、左天の体が後方へと大きく吹き飛びました。
クルス「えっ!?」
アルカ「目覚めた……! それがお前の力だ! クルス!」
クルス「僕の力……!?」
ディスク「そんな……! 今のはフラグメント!? まさか、クルス君がニードレスだったなんて!」
球磨川『……そっちが先だったか。いや、過負荷が完全覚醒したからこそ、このフラグメントが目覚めたのかな』
クルス「な、何か知ってるんですか!?」
球磨川『きみこそ、その力のこと分かるかい?』
クルス「い、今初めて使ったのに分かる訳……」
クルス「いや……、知ってる……? これは……、僕の力は、『女神の盾(シールド・オブ・イージス)』……!」
クルス「手をかざした方向からの攻撃を弾くフラグメント!」
クルス「僕にこんな力があったなんて!」
球磨川『フラグメントは極限状態で自衛本能が働くことによって覚醒するらしい。だよね、ディスクちゃん?』
ディスク「……えぇ。確かに、そう言われているわ。実際私もそんな感じだったし」
ディスク「その状態を“自我に目覚める”って表現することもあるわ」
球磨川『クルスちゃんは今、これまで役立たずと否定してきた“守られる自分”を肯定した』
球磨川『自己肯定というのは立派な自我形成の一つだ。だから、きみの中に眠っていたニードレスとしての資質が目覚めた訳だね』
クルス「じゃ、じゃあさっき球磨川さんが言った過負荷っていうのは……? 球磨川さんの『大嘘憑き』も過負荷なんですよね?」
球磨川『いかにも。過負荷とはいわば欠点にしかならない才能のことだ。あらゆる物事をなかったことにして台無しにする才能なんてない方がいいに決まってるからね』
アルカ「それがクルスにもあるというのか……?」
球磨川『ある。クルスちゃんが今日までBSで生き残ってこれたのはこの過負荷のおかげ……いや、この過負荷のせいと言っても過言ではない』
クルス「ぼ、僕の過負荷って一体……?」
球磨川『きみの過負荷は、その名も『蝶よ花よ(レッドデータアンダードッグ)』(命名・安心院さん)。一言で言うなら、“庇護を強制する過負荷”だ』
クルス「庇護……?」
クルスちゃん
球磨川『そう。“ 弱者 ”を庇い護るよう周囲の人間を操るスキルってところかな』
球磨川『オンオフのない常時発動型の過負荷だろう。自覚なしに使っていた頃にはアルカちゃんのような裏切り者も出ちゃってたみたいだけれど』
アルカ「うぐっ……」グサッ
球磨川『覚醒したからにはきみの守護者がきみに仇なすことはないだろうね』
球磨川『現に今きみは、フラグメントにすら護られている』
クルス「……!!」
ディスク「待って……。誰からも庇護されるっていうのなら、決して攻撃を受けることはない……! そんなの、反則級の能力じゃない!」
ディスク「どこが欠点にしかならないっていうのよ!?」
球磨川『きみは、人を使うばかりで自分では何もしない人間性が欠点でないとでもいうのかい?』
ディスク「っ!」
球磨川『それに、誰にでも護られるというほど都合のいいスキルでもないだろう。今の左天のように明白な敵意を持っている相手には効果がないようだ』
球磨川『……ただ、使い方次第でとてつもなく強力なスキルになるのは間違いないだろうけれど』
左天「くそっ!」ガバッ
左天「なんだ、今のは……!? フラグメントか!?」
球磨川『違うぜ』
左天「っ!?」
球磨川『今のクルスちゃんの力は、僕の「大嘘憑き」と同じ過負荷と呼ばれるものだ』
球磨川『きみのご大層な「PF・ZERO」とやらで覚えるのは不可能だよ』
左天「なんだと……!?」
クルス「球磨川さん……? 今のはフラグメントって話だったんじゃ……」ヒソヒソ
球磨川『左天に「女神の盾」を覚えられたら厄介だろう? それはできるだけ先延ばしにした方がいい』ヒソヒソ
クルス「なるほど……」
球磨川『だから、今後もよっぽど危険にならない限り「女神の盾」は使わないようにね』
クルス「わ、わかりました……!」
ガラッ
ブレイド「どこ見てんだバッタもんがァ!」
ブレイド「第 四 波 動!!!」ドンッ
左天「まぁだ生きてやがったか……! 『氷』のフラグメント!!」ガキンッ
ブレイド「てめえの『第四波動』がなけりゃ危なかったかもなァ……!」
左天「アトミックヘイルスパークの『炎神の息吹』を吸収したのか……。この短時間で『第四波動』をモノにするとはな」
ブレイド「ハッ! 何様だよてめえ! 『香』のフラグメント!」ブワッ
左天「『速』のフラグメント!」シュンッ
左天「今さらそんなもん喰らうかよ」
ブレイド「馬鹿め! イヴ! 他の雑魚どもの治療だ!」
イヴ「わかってる! 助かったよブレイド!」ダッ
左天「しまった……! 今の香りはメイデンリストリクションを中和するものか!」
ブレイド「オラ、とっとと続けようぜ!」
第3シェルター 外部
離瑠「本当に行かれるのですか」
アークライト「あぁ。奴の言葉の真偽を確かめねばならない」
アークライト「もし本当に私が奴に利用されていたのだとしたら……! この手で左天を葬り、どちらが本物かを白日の下へ晒すのだ!」
アークライト「……離瑠。お前は、どうしたい」
離瑠「どうしたい、とは……」
アークライト「私が左天のクローンであるかもしれないと知って、奴の下へと行きたくはならないのか?」
離瑠「……っ!」
離瑠「……いくらアークライト様のお言葉といえど、今のは私、我慢なりませんわ」
離瑠「私が主と心からお慕いしたのは貴方様だけ……。何があろうと、私はアークライト様の一部でございます!」
アークライト「……そうか。よくぞ言ってくれた。それでこそ我がイヴだ」
離瑠「もったいないお言葉です」
アークライト「では、行こう。離瑠」
離瑠「はい。アークライト様」
第3シェルター 内部
ブレイド「おおおおお!! 『力』! 惑星砕き!!」
アルカ「ヒート・エクスプロージョン!!」
左天「エターナルディストーション!」ドンッ
ブレイド「ぐぉっ!」
ゴゴゴゴゴ…
クルス「……! あ、あれは……!」
アークライト「諸君!」ザッ
神父様たちと左天の激戦が続く中、シェルターの壁が開きアークライトとその側近らしき女性が入って来ました。
来ました、が……。
ブレイド「まだまだぁ! VSI!!」ゴウッ
アルカ「炎神の閃光!!」ドンッ
左天「ふんっ! 熱吸収!!」バシュゥゥゥ…
左天「第 四 波 動!!!」
アルカ「がはっ!!」
クルス「……あ、あれ?」
あの、アークライト来てますけど……。
アークライト「……」
離瑠「……」
アークライト「諸君!!」
セト「すまない、遅くなった! 行くぞソルヴァ!」
ソルヴァ「おうァ!」
セト「『重力』!!」
ソルヴァ「特殊磁界・反発:【左天】!!」
セト 「プレデタークロス!!」
ソルヴァ「プレデタークロス!!」
ゴッ
左天「ちぃ……っ! 『重力』プラス『炎神の息吹』!!」
パンッ
セト「打ち消された……!」
ディスク「やはり隙がないわね……!」
クルス「あの、だからアークライトが……」
アークライト「エターナルディストーション!!!」
ドンッ!!
ついに怒髪天を衝いたアークライトが神父様たちをまとめて吹き飛ばしました。
いや、これはしょうがないですよ……。
アークライト「私が! いるということを! 忘れていないかね!?」
クルス「うわー……、決め台詞がちょっと変わっただけで物凄く悲しい感じに……」
球磨川『あ、さんざん威張ったのに実は偽物だったクローンライトさんじゃないですか! どうしたんですか、クローンライトさん!』
クルス「ちょっ、球磨川さん!」
アークライト「……左天。これは反逆行為と考えていいのだな?」
左天「まだそんなこと言ってんのかよ? だからな、俺は左天じゃなくてアークライトだって」
ブレイド「黙れよ左天」
イヴ「めんどくさい奴だな、左天は」
球磨川『空気読めよ左天』
左天「えぇー……。なんかすみません……」
左天「離瑠、お前はいつまでそっちにいるつもりだ? お前が仕えるべき相手は俺だと分かっただろう」
離瑠「黙りなさい、逆賊が。私の王はこのお方ただお一人!」
離瑠「その王位が偽りだと言うのならば、我々臣下が真の王位を献上するまで!!」
離瑠「セツナ! 梔!」
セツナ「はっ!」
梔【はっ!】
左天「おいおい、お前らまでそっちに付くのかよ」
梔【当然だ】
セツナ「シメオンをここまで率いてきたのも、私たちを育ててくださったのも、こちらのアークライト様よ! あんたじゃない!」
アークライト「お前たち……」
未央「うぅ~」ウズウズ
イヴ「ほら、行ってこい」ポンッ
未央「イヴちゃん……」
イヴ「大好きなんだろ、あいつらが」
未央「うん……! ありがと、イヴちゃん!」ダッ
ブレイド「あーん! 未央たーん!」
セト「自重しろ、変態」
未央「あの、えっと……」モジモジ
離瑠「……未央」
未央「っ!」ビクッ
未央(怒られる……!)
離瑠「此度のスパイ任務、ご苦労でしたわ」
未央「え……?」
アークライト「よくぞ無事に戻ってきた。これからも私のために尽力したまえ」
未央「んい……!」グスッ
セツナ「おかえり、未央」
梔【梔のここ、空いてますよ】
未央「ただいまっ!!」
アークライト「神父」
ブレイド「あん?」
アークライト「ここは一つ、同盟といかないか?」
ブレイド「同盟だァ? 俺とてめえが?」
アークライト「貴様たちは左天からあの少年を守りたい。私たちは、左天にデータチップを渡す訳にはいかない」
アークライト「利害は一致しているだろう」
ブレイド「……だがてめえらも左天を倒したら山田の命を狙うんだろうが」
アークライト「左天のように力尽くで奪うような真似はしないと約束しよう。シメオンの科学力を駆使すれば、脳を傷付けずにチップを取り出すことなど容易なことだ」
アークライト「……まぁ、そちらのアルカが抵抗しなければ、だが」
アルカ「……」ギロッ
ブレイド「……一時休戦、ってだけだ。いいな?」
アークライト「いいだろう。左天を倒すまではお互い攻撃はせず、協力する。邪魔はしてくれるなよ」
ブレイド「ハッハァ! てめえらこそ、俺たちの邪魔すんじゃねぇぞ!」
ディスク「すごい……! まさかこんなことが起こるなんて!」
ディスク「ブレイド・アークライト同盟の結成よ!!」
アークライト「……いや、そこはアークライト・ブレイド同盟だろう」
ブレイド「あァ!? ブレイド・アークライトに決まってんだろうが!!」
アークライト「アルファベット的にはAが先だ」
ブレイド「語呂はこっちの方がいいじゃねぇか!」
クルス「どっちでもいいですよ!」
今日はこれだけ
スキル名がダサいとか言わない
左天「偽物さんよ。あんた、肝心なこと忘れてるんじゃないかい?」
アークライト「なんだと……?」
左天「シメオンの最終目標のことだよ」
アークライト「……“神の種”を持ったクローンを世界にばら蒔き、世界を“神の種”で満たすための人間爆弾として利用するという計画の話か?」
イヴ「えでんずしーど……?」
離瑠「“神の種”とは、ニードレスなら誰もが多かれ少なかれ体内に持っている暗黒物質(ダークマター)のことですわ。それこそがニードレスをニードレス足らしめている……」
球磨川『だが、普通の人間には猛毒となる……。だろ?』
離瑠「ほほ。その通りです」
照山「じゃあ何か!? シメオンは世界規模でテロをやらかそうとしてたって訳か!?」
ブレイド「てめえらンなこと企んでやがったのか!!」
ディスク「もしそんな計画が実行されたら、人類は絶滅するわ……!」
アルカ「……いや、絶滅ではない。計算では約0.0000008%が生き残るとされている」
ディスク「……! そうか、ニードレスの資質を持つ者……!」
アークライト「そうだ。我々は、来るべき脅威のためにニードレスだけの世界を作ろうとしていた」
クルス「脅威……?」
球磨川『……』
左天「そうそう、そのことだよ」
左天「シメオンはある時はどんな部位としても移植できる万能細胞として、またある時は理想の子供や兵士として、クローンを全世界に売りさばいている」
左天「シメオンの技術で作られたクローンは皆一様に遺伝子レベルである命令を与えられている」
左天「アダム・アークライトの合図があれば、“神の種”を周囲数キロにわたって撒き散らす人間爆弾となれ、という命令をな」
アークライト「それがどうしたというんだ」
左天「分からねぇか? じゃあ、もっと分かりやすく言ってやるよ」
左天「シメオンのクローン技術はは、ギドが俺のクローンを作った時の物と同じなんだよ」
離瑠「……っ! まさか……!!」
左天「そう……。あんたもそのクローンどもと同じ人間爆弾に過ぎない。そして、アダム・アークライトとは俺のことだ」
左天「弾けな、バッタもん!」パチン
パンッ!
クルス「……!?」
イヴ「何も、起きない……?」
左天「何故だ……!?」
離瑠「……ほほ」
左天「っ!」
離瑠「クローンへの命令は『念動力』のサイエネルギーによる電波のようなもの……。全く同じものをぶつければ相殺できますのよ」
左天「ちっ……!」
アークライト「すまない、離瑠。以後は私が自分でやろう」
離瑠「はい、アークライト様」
ディスク「だけど左天の『念動力』は『PF・ZERO』で強化されたもののはず。よくオリジナルの離瑠で止められたわね……」
ソルヴァ「何度も繰り返すのは厳しいからアークライトが自分でやると言ったのでは?」
球磨川『なるほど、未央ちゃんの時といい身内の女には優しい男という訳だ』
クルス「そういう言い方したら身も蓋もありませんけど……」
左天「さすがに俺のクローンを含めてこの人数を一人で相手するのは骨が折れそうだ」
ブレイド「骨が折れるだけかよ。舐めくさりやがって……!」
左天「それだけ俺とお前たちに差があるってこった。……まずはさっさとチップを頂いておくか」
左天「炎神の閃光!!!」ドンッ
照山「やべぇ……! でかいぞ!」
アークライト「うろたえるな」ザッ
僕と左天の間に、アークライトが立ち塞がりました。
その背中は神父様と同じくらい大きくて……。
アークライト「熱吸収!!」バシュゥゥゥ
クルス「あ、ありがとうございます……。アークライト……さん」
アークライト「ふん……」
球磨川『「蝶よ花よ」の真骨頂その1』
クルス「……!」
球磨川『「敵意の反対は無関心」』
球磨川『きみの「蝶よ花よ」は、きみを好意的に思う人物はもちろんのこと、きみを歯牙にもかけていない者すら操ることができる』
球磨川『今もきみを虫けら同然くらいにしか見ていなかったはずのアークライトに守られているだろう?』
球磨川『彼が自分から同盟を申し出たのもきみの影響かもね』
クルス「僕の、影響……」
左天「ふっ……。なぁ、偽物さんよ。知ってるか?」
左天「俺の『第四波動』にはキャパシティってのがあるらしいぜ」
左天「二重炎神の閃光!!!」
ドンッ
セト「もう一発だと……!?」
セツナ「アークライト様!」
アークライト「ぐっ……!」
ブレイド「ハッハァ! ざまぁねぇな兄弟!!」
ブレイド「熱吸収!!」
左天「なっ!」
バシュゥゥゥ……
ディスク「吸収しきった……!」
アークライト「……礼は言わんぞ、神父」
ブレイド「ハッ! てめえの礼なんざ気色悪くて受け取れるかよ!」
ブレイド「……ブレイドだ。アダム・ブレイド」
アークライト「そうか。では、反撃と行こう。ブレイド」
ブレイド「イエア!!」
アークライト「二 重 第 四 波 動!!!」
ブレイド 「二 重 第 四 波 動!!!」
ドンッ!!
左天「ぐおっ!」
左天「ちっ……。腐っても神のクローンどもって訳か。めんどくさいことになっちまったもんだ、全く……」
左天「恨むぜ、ギド」
ブレイド「どうしたァ!? ビビってもう攻撃できねぇってか!?」
ブレイド「ならこっちから行くぜ! 雑魚ども、一斉攻撃だ!!」
「「「Wリトルボーイ+デッドリーメイルストロム+ジャイルグラビティション+特殊磁界+ヒート・エクスプロージョン+螺子+Wエターナルディストーション+DDFH+クラウンマリオネット+未央ちゃん剛速Q!!!」」」
クルス「名前長っ!!」
クルス「ていうか球磨川さん螺子って!!」
ドドドドドド!!
イヴ「やったか……!?」
球磨川『おいおいイヴちゃん、そういうこと言うなよ。フラグ立っちゃうじゃん』
猛攻撃の後に立ち込めた砂煙が次第に晴れていきました。
クルス「……!? 左天がいない!?」
照山「ハッハァ! 跡形もなく吹き飛んだか!?」
左天「勝手に殺すなよ」
クルス「声が……!」
イヴ「野郎、どこ行きやがった!?」
離瑠「アークライト様、これは……」
アークライト「あぁ、まずいな。全員すぐにその少年を囲め。奴は姿を透明にしているぞ」
ブレイド「透明だと?」
ザッ
怪訝な顔をしながらも、神父様たちが僕の周りを固めました。
透明にするって、どこかで似たような話を聞いたような……。
左天「くくく……。ご明察、俺が今使っているのは『バミューダアスポート』だ」
クルス「えっ……!?」
球磨川『「バミューダアスポート」……。右天ちゃんが持ってたフラグメントか』
イヴ「右天……!? 一体どんな奴なんだ!?」
クルス「いやいやいや、イヴさんと球磨川さんで倒したじゃないですか……」
球磨川『だけど、右天ちゃんは自分を透明にするなんて芸当はできなかったはずだぜ。あの性格だ、使えるならさぞ自慢気に使ってきただろうに』
アークライト「右天はまだ成長途中にあるニードレスだった。本来なら『バミューダアスポート』はもっと強力なフラグメントなのだ」
左天「そういうこった。さぁ、見えない恐怖にどこまで堪えられるかな?」
ドンッ
セト「がっ!?」
ソルヴァ「セト!? ……ぶはっ!!」
照山「何が起きてやがんだ!?」
クルス「こ、攻撃されてる……?」
ブレイド「左天の奴があちこち動きまわってんのか!?」
セト「違う……! 見えなかったが、ボクがくらったのは確かに第四波動だった……!」
ソルヴァ「私はカンダタストリングでした……」
ディスク「フラグメントによる攻撃まで透明化できるということ!?」
セツナ「厄介ね……!」
そこからは一方的でした。
僕を守るために動けない皆に左天は見えない攻撃でダメージを与えていきます。
イヴさんが回復に回りましたが、とても追い付きません。
クルス「こんなの、どうすればいいんだ……。このままじゃやられる……!」
梔【弱音を吐くな。舐め回すぞ】
クルス「舐め!?」
アルカ「そうだ。落ち着け、クルス。落ち着いて、考えるんだ」
アルカ「お前ならこの状況を打開できるはずだ!」
クルス「ぼ、僕が……!?」
イヴ「お前は一度この能力を破ったんだ! 自分を信じろ!」
クルス「自分を……」
ドンッ
照山「だっ……! なんでもいいから早くなんとかしてくれ!」
そうだ……。
こうしている間にも、皆傷ついていってるんだ。
僕もできることをしないと……!
クルス(左天の姿は見えない……。攻撃してくる方向が分からない以上、事前にそれを防ぐのは難しい)
クルス(ならまずは左天自身を捕捉しないと。何か方法があるはずだ……。神父様たちのフラグメントを考えて……)
ソルヴァ「ちっ……! 『特殊磁界』で引き寄せてやればいいんじゃねぇか!?」
クルス「……いえ、恐らくまた『炎神の息吹』で無効化されてしまいます。それに、ソルヴァさんが手をかざした方向に左天がいなければいけませんし……」
クルス「全方位に仕掛けられれば……」
クルス(やっぱり罠を張るのが一番手っ取り早いか……? でもそんなフラグメント……)
クルス(いや、待てよ……。あの時あの人は……!)
クルス「神父様! アークライトさん! ちょっといいですか!?」
ヒソヒソヒソ……
ブレイド「……だとよ」
アークライト「ふむ……。試してみる価値はありそうだな」
ブレイド「じゃあどっちが奴をやるよ?」
アークライト「決まっている。貴様の『ZERO』では奴に押し返されるのが関の山……。私のサポートをしているのがお似合いだ」
アークライト「左天は……私がやる!」バッ
ブレイド「あっ、てめえ!!」
アークライトさんが重力を遮断して大きく飛び上がりました。
アークライト「左天! 貴様がどこにいるのかわからないのならば、この部屋全てを一度に制圧すればいいだけの話だ!!」
アークライト「テンペストスレッド!!!」ズアッ
左天「何かひそひそ話してると思えば……。ずいぶんお粗末な解決策だな」
左天「こんなもん、同じ技をぶつければ……」
グルグルグル!
左天「何!? これは……カンダタストリング!?」
左天「ブレイドか……!!」バッ
ブレイド「かかったな、馬鹿め」
左天「なぜ俺の居場所が分かった……!」
ブレイド「分からねぇさ。だから、この部屋の床全体にカンダタストリングを張り巡らせた」
ブレイド「蜘蛛の巣みてぇにな!」
イヴ「そうか……! これは僕がやられたのと同じ……!」
クルス「はい。あの時、カフカは予想外な方向からのイヴさんの攻撃に罠を仕掛けることで反応してみせました」
クルス「それと同じことが、今回有効だと思ったんです!」
イヴ「カフカ……!? 誰だそれは!」
クルス「今思い出してませんでした!?」
左天「くそっ! こんなもの……!」ブチブチッ
ブレイド「いいのか? 俺の糸の相手しててよ」
左天「はっ……! しまった!」
神父様の罠を引き剥がしている間に、アークライトさんのテンペストスレッドは左天の目の前まで達していたようです。
左天(間に合わねぇ……!!)
ブレイド「判決……!」
アークライト「死刑!!」
ドドドドドド!!!
セツナ「やった……!?」
球磨川『だから、フラグ立っちゃうから止めてってば。きみ、ちょっとイヴちゃんと被ってるよ?』
セツナ「なっ! 関係ないでしょ!?」
左天「はぁ……っ、はぁ……っ!」
クルス「……っ!」
左天は、まだ生きていました。
全身を貫かれながらも、急所だけはなんとか防いだようでした。
左天「ぐっ……! おぉぉぉぉぉ!!」ボコボコボコッ
力を振り絞るように声を上げると、左天の傷が塞がっていきます。
ディスク「まさかあれは……!」
イヴ「『変身』!?」
照山「左天の野郎、『変身』まで覚えてやがったのか!」
アークライト「いや、違う。『変身』はアダムシリーズに元から備わっている力だ」
アークライト「貴様は自分のイヴに分け与えてしまったから使えないようだがな、ブレイド」
ブレイド「……」
クルス「あ……、さっき左天が言ってた……」
左天(ぐっ……! くそっ! こんな無様な姿を晒すはめになるとはな……!)
ブゥンッ
ギド(左天君。聞こえるか?)
左天(『念動力』の意思受信(テレパシー)か……。聞こえてるぜ。あんたまで左天呼ばわりするのかよ)
ギド(こちらの準備は整った。そちらはずいぶんと手間取っているようだな)
左天(ハッ……。おかげさまでね)
ギド(そちらはもういい。一度合流しよう)
左天(もういいって……。チップは諦めるのかよ?)
ギド(あるかどうかわからない物より、あるとはっきりわかっている物を使った方が効率がいいとは思わんかね?)
左天(あるとわかっている物……? なっ、あんたまさか……!)
ギド(そうだ。繭の中の“天使”を取り込んで、“全能者”へとなる)
左天(だが、あれはキリストセカンドの聖骸と同じく、こちらの世界と同化しすぎている……! 取り込んだところで“全能者”になれるかはわからないぞ!)
ギド(もはや手段を選んでいる場合ではなかろう。やるしかないのだ)
左天(……ちっ。分かったよ。あんたは今向かってるのか?)
ギド(あぁ。君もすぐ来てくれ)
左天(はいはい。分かりましたよっと)
ブゥンッ
ブレイド「どォしたよ!? もう動けねぇってか!?」
左天「……なに、ちょっと先にやることができたんでね。おいとまさせてもらうぜ」
イヴ「逃げるのか!?」
左天「戦略的撤退だ。ま、追いかけてきたかったらくればいいさ。俺たちは地下にいるぜ」ヴンッ
クルス「消えた……!?」
離瑠「『念動力』の空間移動(テレポーテーション)ですわね」
ディスク「地下に何があるというの……?」
アークライト「奴らめ、あれを使う気か……!」
ブレイド「あれってなんだよ!」
アークライト「説明は後だ! 急いで奴らを追うぞ! ついてこい!!」
今日はこれだけ
球磨川ほど存在感のあるキャラなんてそうそういないのに、戦闘になるとすぐ影が薄くなる……
必殺技とかないから使いにくいんですよね
申し訳ない
もうほんと申し訳ない
鯖落ちとリアルの用事が重なって巡回をサボってました
ちゃんと完結させますので、「しゃーねぇなぁ、今回は勘弁してやるよ」という方は今後ともなにとぞ……
ほんと申し訳ない
次から投下
ブレイド「で、地下に何があンだよ?」
エレベーターが止められていたので、階段を駆け降りながら神父様がアークライトさんに尋ねます。
関係ないですが、シメオン総帥なのに支社の階段を走っているアークライトさんは、それはそれはシュールなものがありました。
アークライト「……そうだな。貴様たちには知る権利があるだろう」
アークライト「このシメオン製薬BS支社は、単にBSを乗っ取るために建てたのではない。BSの中心に当たるここに埋まっている、あるものを発掘するために建てられたのだ」
ディスク「あるもの……?」
アークライト「異次元からの侵略者……、我々は“天使”と呼んでいるがな」
クルス「天使……!?」
未央「天使様いるの!?」
アークライト「あぁ。だが恐らくお前が思っているような……」
未央「ほーら! ほーら、天使様いた! セツナの負け~!」
セツナ「はいはい、私の負けでいいわよ……」
アークライト「では話を戻すが、その“天使”というのは……」
ブレイド「はいっ! それでは負けたセツナさんには罰ゲーム!!」
セツナ「えっ!?」
球磨川『気になる罰ゲームは! 強制全裸に靴下でーす!』
セツナ「はぁ!? い、嫌よ! そんなの着る訳……!」
梔【クラウンマリオネット!】ブワッ
セツナ「っ!? 裏切ったわね梔!!」
セツナ「嫌っ! 体が勝手に!?」ヌギッ
ブレイド「そーれ、ぬーげ! ぬーげ!」
ディスク「ぬーげ! ぬーげ!」
球磨川『ぬー……』
アークライト「エターナルディストーション!!!」
ドンッ!
アークライト「少しは話を聞く気になったかね?」
ブレイド「ちっ……。後ちょっとだったのに……」
クルス「もう、神父様!」
セト「それで、その“天使”というのは?」
アークライト「あぁ。我々とは異なる次元、異なる宇宙に存在して我々のものを遥かに超えた文明を持つ種族だ」
イヴ「そんなものがいるのか……?」
ディスク「異次元というのは比喩とかじゃなく言葉通りって訳なのね」
クルス「でも、それがどうして僕たちの世界に?」
アークライト「WWⅢ以前、この場所には国立宇宙開発局という施設があった。だが、そこで研究されていたのは次元兵器という核以上の力を持つとされる兵器だった」
ディスク「次元兵器……!? そんな荒唐無稽なもの、都市伝説だと思ってたわ……」
アークライト「実際に研究されて完成まで後一歩というところだったのだよ。だが敵国のスパイによって兵器は暴走……、敵国はあわよくばそれを利用してこの国ごと消し飛ばそうとした」
球磨川『なんて……、なんてひどい連中なんだ!』
イヴ「なんかお前が言うと釈然としない……」
アークライト「その計画は結局失敗に終わったが、次元兵器によって世界で初めて“門”が開いた」
クルス「“門”……?」
アークライト「異次元とこの世界を結ぶ“門”だ。そして、そこから二体の“天使”がこちらへやってきたのだ。奴らは我らの想像する神に比類する力を持っていた」
アークライト「だが、その二体も“門”を通った際に力を使い果たしたのか、一体は地中深くで眠りにつき、もう片方は人間と融合し回復しようとした」
ディスク「……! まさかそれがキリストセカンド!?」
アークライト「そうだ。私は……いや、アダム・アークライトはキリストセカンドを取り込んだが、真に神の力を得るには及ばなかった。人間の組織と同化しすぎていたのだ」
クルス「取り込む……!?」
離瑠「アダムシリーズに備わる最も原始的な能力ですわ。取り込んだ相手の力を己のものとすることが可能なのです」
ブレイド「それでレジスタンスの連中を喰ってやがったのか」
アークライト「ふん……。あの程度のニードレスではほんの足しにしかならんがな」
セト「お前たちはその地中で眠っているという“天使”の片割れを掘り起こしたという訳か」
アークライト「あぁ。恐らく左天たちはその“天使”を取り込もうとしている」
イヴ「なっ!? じゃあヤバいんじゃないのか!?」
アークライト「私もいずれ取り込むつもりだったが……。奴らが“天使”を取り込み“全能者”へと進化してしまえば、今の我々では到底敵わないだろうな」
照山「ど、どうすんだよ!?」
ブレイド「だァから今こうして地下に急いでんだろうが!」
球磨川『厄介なことになる前に止めないとね。僕もこれ以上変な敵が増えるのは勘弁してほしいし』
クルス「……?」
ディスク「っ!? 前方に超高温の何かを感知したわ! 来るわよ!!」
ドンッ
ブレイド「熱吸収ゥ!!」バシュゥゥゥ
アルカ「今のは、炎神の閃光!?」
照山「左天か!?」
ロリアルカ「……」ザッ
イヴ「なっ……!?」
クルス「小さい……姉さん!?」
アークライト「奴らめ、クローンを動かしたか……」
セト「クローンだと!?」
離瑠「シメオンは配下のニードレスの遺伝子情報を採取し、そのクローンを生み出すことに成功しているのです」
ディスク「先の大戦では日本のクローン部隊が世界を戦慄させたものだけれど、ここまで進んでいるなんてね……」
アルカ「待て! 私は聞いていないぞ!!」
クルス「姉さん……」
アルカ「何故だ……! 何故!!」
アルカ「何故私のクローンがこんなロリロリしているんだ!!!」
クルス「えっ!? そこ!?」
アルカ「他のクローンはほぼオリジナルと同じ姿だったではないか! 説明しろ、アークライト!」
アークライト「あー……。それは、だな……」
ディスク「あのアークライトが言い淀むなんて……」
離瑠「アークライト様の趣味ですわ」
アークライト「り、離瑠!?」
セツナ「……ロリコンだ」ボソッ
ディスク「ブレイドと同じ遺伝子を持っているだけはあるわね」
イヴ「死ね」
アークライト「誤解だ!!!」
ロリアルカ「……」ゾロゾロ
球磨川『馬鹿なこと言ってる間にどんどん増えてるぜ』
ブレイド「幼女大行進!?」
アルカ「くたばれ変態……!」
アークライト「ぐっ……」
セト「とにかく、突破するぞ! ジャイルグラビティション!!」
離瑠「エターナルディストーション!!」
ガッ
ロリアルカ「……っ」グシャッ
クルス「うっ……!」
姉さんと同じ姿をした少女たちが次々と潰されていきました。
むごい……!
アルカ「ちっ……」
ブレイド「くっ」
アークライト「むう……」
ソルヴァ「山田とアルカが尻込むのはわかるがてめえら二人も戦えや!!」
ブレイド「だって幼女だし……」
アークライト「せっかく作らせたのに……」
離瑠「……恥をお知りあそばせばよろしいのに」ボソッ
アークライト「離瑠!?」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ロリアルカ「……っ」ズシャ
照山「ぃよぉし!」
イヴ「『念動力』がいるからわりかし楽に倒せたな」
離瑠「当然ですわ」
クルス「……」
アルカ「クルス……。お前が気に病む必要はない」
クルス「でも……」
ディスク「深く考えてはダメよ。クローンが何者かなんて、専門家が百年近く議論しても答えが出ないんだもの」
クルス「……はい」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
アークライト「階段はここまでだ」
照山「地下なんてねぇじゃねぇか。あいつらどこ行きやがったんだ!?」
アークライト「まぁ聞け。地下にはエレベーターしか通じていない」
球磨川『でもエレベーターは止められてるんじゃなかったっけ?』
「お待ちしておりました、アークライト様」
アークライト「……! プリマリアか」
プリマリア「左天様より、地下へご案内するよう承っております」
プリマリア「地下へつながるエレベーターのロックは解除してあります。どうぞ、こちらへ」スッ
球磨川『時間を稼ぐだけ稼いで唯一の道はこれ見よがしに開けておく、ね』
ブレイド「……誘われてやがるな」
照山「舐めやがって!」
アークライト「だが好都合だ。罠か知らんが進ませてもらうとしよう」
プリマリア「では、ご案内します」
エレベーター前
ゾロゾロ
アークライト「私が最後か」スッ
ビー!
アークライト「っ!」ビクッ!
アークライト「な、何事だ!」
プリマリア「重量オーバーでこざいます」
アークライト「は!?」
プリマリア「アークライト様は、ご自分で床に穴を開けるなりしてお越しください」
アークライト「えっ、ちょっ! 待ちたまえ!!」
プリマリア「ドア、閉まります」
アークライト「待て! プリマリ……」
ウィーン…ガシャン
球磨川『ぷっ……! 「進ませてもらうとしよう(キリッ」とか言っといて重量オーバー……!』プルプル
クルス「あ、あんまり笑うと可哀想ですよ……」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
ウィーン
プリマリア「地下フロアでございます。お気をつけていってらっしゃいませ」
離瑠「ご苦労ですわ」
アークライト「お、遅かったな」ゼーゼー
ブレイド「うわ……」
イヴ「全力で先回りしたなこいつ」
球磨川『くふっ!』
クルス「く、球磨川さん!」
アークライト「ふぅ……。では、行こうか」
照山「もう威厳もくそもあったもんじゃねぇな」
地下フロア
ディスク「ずいぶん広そうな空間ね……」
アークライト「あぁ。『街』にあるシメオン本社の地下とも繋がっているからな」
ブレイド「で、肝心の左天どもはどこだよ」
アークライト「天使のもとにいるとするならばこちらに……」
ボゥッ
セト「がっ……!?」ドサッ
ソルヴァ「セト!?」
イヴ「敵襲か!?」
セト「ち、違う……! なんだか、急に体が熱く……!」
ボゥッ
照山「おぉ!?」ドサッ
ソルヴァ「なっ……!」ドサッ
クルス「照山さんにソルヴァさんまで!? っ! 熱っ……!」
ブレイド「なんだ!? 何が起こってやがる!」
離瑠「まさか、これは……。アークライト様!」
アークライト「あぁ。よもや、こんな偶然があろうとはな」
アークライト「“聖痕”が……目覚める!」
カッ!
クルス「左手の甲に何かが……!」
アルカ「それが“聖痕”だ、クルス」
クルス「“聖痕”……!?」
照山「うぉぉぉぉ!? 俺も右肩に何かあんぞ!? イカすじゃねぇか!!」
セト「私もだ」
ソルヴァ「ちょっとどことは言えませんけど」
ブレイド「そんなエロいところに!?」
ディスク「原作にでてないからよ」
クルス「メタ発言止めてください!!」
アークライト「最もキリストセカンドの因子を強く引き継いだ能力を持つ者に表れる証。それが“聖痕”」
離瑠「『それさえあれば何でもできる』と言われるほど強力なものですわ」
アークライト「ここは“門”に最も近い場所……。すなわち、“神の種”の濃度が最も高い場所だ」
アークライト「この環境に、貴様たちのニードレスとしての力が呼応しているのだろう」
照山「ど、どういうことだ? なんで“門”に近いと“神の種”が濃くなるんだよ?」
アークライト「“神の種”がニードレスを産み出していることは話したな。これがどこから来たと思う?」
ディスク「それは……。戦時中、同時に日本に落とされた数々の爆弾や化学兵器が化学反応を起こして生まれた未知の物質じゃ……」
アークライト「違う。“門”から来たのは“天使”だけではなかったのだ」
クルス「なっ……!?」
球磨川『別の宇宙から来た暗黒物質……』
アークライト「そう……。それこそが“神の種”だ」
ディスク「そんな……!!」
アークライト「“神の種”などと名付けられたのは比喩や誇張ではない」
アークライト「神の如く尋常ならざる力を持つ“天使”の世界から来た物質……」
アークライト「ニードレスの能力とは、神の力そのものなのだよ」
アークライト「見ろ」ヌギッ
クルス「ぎゃあああああ!!」
イヴ「何全裸になってんだてめぇ!」
アークライト「この完成された肉体を見られることになんの羞恥を感じる必要がある」
球磨川『いよいよめだかちゃんみたいなことを……』
セト「……! “聖痕”がいくつも!?」
アークライト「私は今まで六人の“聖痕”保有者……『念動力』、『炎神の息吹』、『第四波動』、『創世』、『氷』、そして『雨乞い(レインメーカー)』のニードレスを配下とし、私自身ももともと二つの“聖痕”を保有していた」
アルカ「私は配下になった覚えはないがな」
球磨川『左天にもこっぴどくフラれてたし』
アークライト「……とにかく。12ある“聖痕”の内、8つをシメオンは手にしていた」
アークライト「そして今……」
照山「1……」
セト「2?」
ソルヴァ「3……!」
クルス「4! 全部揃ってる!」
アークライト「そうだ。これならば、奴らにも対抗できるやもしれん」
ブレイド「なるほどな。なら話は早ぇ」
ガシッ
照山「へ?」
ブレイド「“聖痕”よこせオラァ!!」ゴッ
照山「ぎゃあああああ!?」
神父様のヘッドバットが照山さんにクリーンヒットしました。
せめて一言かけましょうよ……。
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アークライト「……やはり、『女神の盾』はそう簡単には覚えられんか」
ブレイド「内田やセトたちのはすぐ覚えられんのに……」
アークライト「“聖痕”を宿す能力には『炎』や『氷』、『重力』のように単純だからこそ強力なものと『第四波動』や『炎神の息吹』のように複雑かつ強力であるものの二種類がある」
アークライト「『女神の盾』は今まで見たフラグメントのどれよりも使用している脳の部分が複雑なようだ。私でも全く覚えられない」
離瑠「ですがそれでも11個もの“聖痕”が集まりましたわ」
アークライト「あぁ。万が一奴らが“天使”の吸収を終えていたとしても、これならば十分に戦える」
照山「へっ! まぁ、てめぇらがダメでもこの新生照山最次様がぶっ飛ばしてやんよ」
イヴ「雑魚がよく言う」
照山「雑魚って言うな! ……なんだか力がどんどん沸いてきやがるんだよ」
セト「あぁ。ボクも最高に調子がいい」
ソルヴァ「これならあのチョウチンアンコウの佃煮どもにも通用しそうだぜ!」
セツナ「私がこんな奴らに負けるなんて……!」
未央「せつな……」
アークライト「セツナ。お前は今のままでも十分私の力になっている。卑下する必要はない」
セツナ「アークライト様……。ありがとうございます……!」
ブレイド「ハッハァ! じゃあ万全整ったっつー訳で……」
ブレイド「行くぞ、雑魚ども!!!」
「「「おう!!!!」」」
球磨川『あ、待って』
ズザァァァァァ!
アークライトさんも神父様も、それはそれは見事な転び芸でした。
ブレイド「ンだよ!?」
球磨川『今思い出したんだけどさ、ギド博士が前に“聖痕”には正しい配置がある、みたいなことを言ってたんだよね』
アークライト「正しい配置だと……!?」
球磨川『だから、もしかしたらきみたちのその“聖痕”の位置は間違ってるのかもしれないぜ』
ディスク「正しい配置……ということは、その配置でないと“聖痕”の真の力を引き出せないのかもしれないのかしら」
照山「なっ!? ど、どうすんだよ!?」
球磨川『ギド博士はチップにその配置が書いてあるって言ってたけど、それは僕が壊しちゃったしねぇ』
イヴ「ここまできて……! くそっ!」
クルス「……」
クルス(僕のこの“聖痕”……。手のような形をしてる……?)
クルス(姉さんの“聖痕”も……。まさか……!)
クルス「ディスクさん! それぞれの“聖痕”を並び替えられるようにコピーしてもらえませんか!?」
ディスク「え……? え、えぇ……」
ディスク「シュツリョクチュウ、シュツリョクチュウ……」ピーガガガガ
クルス「なんか前時代的!?」
ディスク「こんなところかしら」ピラッ
クルス「ありがとうございます!」バッ
離瑠「な、何を……」
アルカ「まさか、分かったのか!?」
クルス「確信はありません……。でも、偶然にしては出来すぎてる……!」
クルス「『ZERO』が頭、肋骨が『第四波動』、腰が『雨乞い』、右手が『炎神の息吹』、左手が『女神の盾』、右肩が『炎』、左肩が『氷』、右膝が『念動力』、左膝が『特殊磁界』、右足が『重力』、左足が『創世』、そして、『変身』を翼だとすれば……」
セト「こ、これは……!」
クルス「人の形に……見えませんか?」
ディスク「確かに偶然にしては出来すぎね……!」
アルカ「これが、正しく“聖痕”を並べた姿……?」
イヴ「すごいぞ山田!」
ブレイド「雑魚にしちゃ上出来だ、山田!!」
クルス「え、えへへ……」
アークライト「奴らはこれを知らないはず……! これは勝機が見えてきたのではないか?」
ブレイド「よっしゃ……! “聖痕”を並び替えたら今度こそ突撃だ!」
ブレイド「行くぞ、雑魚ども!!!」
「「「おう!!!!」」」
今日はこれだけ
クマーが全体的に少ない……
カイン『ひれ伏せ!』
都城「ぐっ!」
宗像「君はなぜ殺人衝動を抑えていられる」
大神「弥都波ちゃんの記憶のおかげさ」
ここまでは妄想した。
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