雪歩「ユキポックス -リローデッド- 」(474)

─とあるビル 地上200㍍──

ヒュゥゥゥゥ……

真ちゃんが、アスファルトに向かって真っ逆さまに堕ちていく。

真「はは……ボクはここまでみたいだ……」

粉々に散ったガラスの破片が舞う。

真「最期に、仲直りしたかったな」

口の端から血の泡を吹き出しながら、苦しそうに微笑む。

真「ごめんよ、雪歩」



待って、真ちゃ──。



……グシャッ……

鈍い音と共に、真っ赤な噴水があがった。

雪歩「あ゛ぁ゛!!!」ガバッ

雪歩「はぁ……はぁ……今の……!」ドックンドックン……

真「うぅん……むにゃ……」

雪歩「ユメ……?」

真「でへへ~……そんなぁ……むにゃ……」

また、またあの光景だ……。
真ちゃんが死んじゃう夢。すごく生々しくてリアルな夢。

雪歩「真ちゃん……」

真「んん……雪歩、どうしたの? またトイレに行けなくなった?」

雪歩「……ううん、何でも無いよ。少し外の空気吸ってくるね」

仮想現実の世界から抜け出して、このAIに支配された現実に戻ってきて……

そして、救世主、萩原ネオ歩になってからもう数日が過ぎました。

少しずつ、何かが変わり始めている気がします……。

──現実世界 765プロ跡地 メインルーム──

響「それにしても本当に上手くいくのかな」カチカチカチ

貴音「問題ありません。必ず成功します」

響「うぅん……でも一筋縄ではいかないヤツらばっかりだぞ」カチカチカチ

貴音「響、ひとつ聞いておきたいことがあります」

響「ん……?」ピタッ

貴音「わたくしに付いてきて、後悔していませんか?」

響「……うん!」ニコッ

貴音「では、わたくしを信じてくださいますか?」

響「……そんなの言うまでも無いさー!」

貴音「ふふっ、そうですか。頼りがいのある親友がいてくれて、わたくしは果報者ですね……」

響「ユキポックスへの転送準備を始めるぞ。雪歩と真を呼んで来てくれ」カチカチカチ

──現実世界 765プロ跡地 休憩室──

雪歩「ね、ねぇ。真ちゃん、お茶っぽい飲物煎れたんだけどいるかな。食用オイルを配合させたんだけど……」

真「あ、ありがとう雪歩。色々と凄いね……」ズズ……

雪歩「えへへ、名付けて『萩茶』ですぅ!」

真「……」ズズ……

雪歩「真ちゃん?」

真「雪歩、目にクマが出来てる。最近ずっとだ」

雪歩「ちょっと最近眠れなくて……大丈夫、すぐに治るよ」

真「……悩み事があるなら相談してよ」

雪歩「……」

真「それとも、ボクじゃ信用できない?」ジィ……

雪歩「うっ……(その王子モードの眼差し、卑怯だよ真ちゃん……)」

雪歩「あ、あのね」

雪歩「私、一体何をすればいいのか全然わからないんだ」

真「……」

雪歩「こんなひんそーでちんちくりんな私が、救世主になった意味って何なのかなって」

雪歩「それだけなんだよ。それが分かれば……」

真「雪歩、焦っちゃダメだよ」

真「今に預言者、あずささんからから連絡がくる」

雪歩「……」

預言者の占いによると……。
救世主が現れた時、この永い永い闘いが終わる、そうです。
みんなは、ただそれだけを頼りにMIN-GOSと闘ってきました。

響「あーここにいたのか! 雪歩、真ぉ! 遅刻だぞ!」

真「さぁ、行こう。お茶はもう片づけるよ」カチャッ

雪歩「……うん」

なんだか、私の心だけがおいてきぼりです。

──ユキポックス 地下室──

冬馬「俺が掴んだ情報によると、機械たちは現在、高速で移動を始めてるらしい」バサッ

<961プロ支部 リーダー 天ヶ瀬冬馬 趣味:フィギュア集め>

冬馬「目標はトーゼン人類最後の拠点、バンナムだ」

凛「防御網を無理やり突破するつもり?」

<モバマス支部 リーダー 渋谷凛 趣味:犬の散歩>

冬馬「何でも、新型のユキドリルで壁を掘り進んでるらしいぜ」

涼「う、うわぁぁ……突破されたら、どれくらいの数がバンナムに……?」

<876プロ支部 リーダー 秋月涼 趣味:女装>

冬馬「へっ、そうなったら25万の量産型キサラギとショーブだな」

涼「ぎゃ、ぎゃおおおおん! そんなの絶対勝てないですよ!」

凛「……あり得ない数。数値は正確なの?」

ひかり「ちょ、ちょっと! 25万って……オーバーキルにも程があるわ!」

<こだまプロ支部 リーダー ひかり(青髪ロング) 趣味:やよいじめ>

麗華「バンナムの人口はたった5万。えげつないわね……」

<東豪寺プロ支部 リーダー 東豪寺麗華 趣味:お菓子作り(ウソ)>

冬馬「それでも闘うしかねぇんだよ」

涼「そ、そんなの自殺行為ですよ」

コツ……コツ……

貴音「何をいまさら。死地は山ほどくぐってきたではありませんか」

<765プロ支部 リーダー 四条貴音 趣味:らぁめん>

冬馬「遅かったな」

「お、おい見ろよ……ウワサの銀色の王女だ……」ヒソヒソ

貴音「申し訳ありません。 解決策を練ってきたゆえ」

ピリィィ……!

雪歩「……うっ……(空気が張り詰めて……)」オドオドオド

すごい、ほとんどの支部のリーダーが勢ぞろいしてる。
これからとっても、とっても大事な会議が始まるんだ……。

冬馬「ほぉ、言ってみな。この天ヶ瀬冬馬の前でなっ!」

凛「この人の言うことが正しければ、72時間後に25万の敵が押し寄せる」

涼「武器も余り無いんですよ。どうやって止めるんですか……?」

貴音「それは……」スッ

雪歩「へっ……?!」ズイッ

貴音「この、萩原雪歩が闘いを終わらせてくれます」

雪歩「えっえっえっ?!」

冬馬「コイツが噂の……?!」

ひかり「この頼りなさそーな小動物が……?」

じぃぃぃ……

雪歩「あ、あの……救世主はじめました……萩原雪歩17歳ですぅ……」オドオドオド

一同「……」

シィィィン……。

冬馬「ジョーダンだろ?」

貴音「ふふっ、わたくし、ジョークは苦手なのです」

貴音「わたくし達は、一度バンナムに戻り、支援を要請します」

凛「持ち場を離れる気? 重大な命令違反になる」

貴音「我々が、今こうしてここにいるのは服従が苦手だからでしょう?」

凛「……!」

冬馬「あんた変わらねぇな……。おっさんが手を焼くハズだぜ」

雪歩「……」ピクッ

貴音「雪歩、どうかしましたか?」

雪歩「……誰か来ました。プログラムの異常変動を感じますぅ」

タッタッタ!

貴音「お、おまちなさいっ! 雪歩っ! 話はまだ……」

麗華「あれが、世界を救う救世主さま……ねぇ」

貴音「ゆきぽ……」

──ユキポックス 地下室入口──

タッタッタッタァン

雪歩「……っ!」

モブF「どうしたんですか? 今は会合中じゃ……」

雪歩「あのっ! 今、誰かここに来ませんでしたか?」

モブF「どうしてわかったんですか……? 貴方に贈り物、みたいですよ」ガサッ

雪歩「ふぇ! 贈り物ですか?」

ガサッ……

雪歩「キャラメル……?」

モブF「それで、伝言も頼まれててですね。何でも……」




モブF「『"個性"をありがとう』って」

雪歩「……」

──現実世界 移動船内──

グォォォン……

雪歩「す……すごい……船が浮いてる……」

窓から外を見渡すと、草木の枯れた、荒廃したビルが立ち並んでいました。
煙とガスがしゅうしゅうと吹き出ていて、至るところにケーブルがミミズのように這ってる。

そう、まさに灰色の世界……。
ユキポックスで眠ってる間に、こんなにも変わったなんて……。

響「磁力を反発させてるんだ。鉄はどこにでもあるから、なんくるないさー」カチカチ

真「雪歩、ところで記憶は相変わらず……」

雪歩「う、うん。大体思いだしたんだけど、やっぱりちょっとオカシイかな」

雪歩「説明しにくいけど……記憶が断片的なんだ……」

真「うぅん、時間が立てば戻ってくると思ったんだけどなぁ」

雪歩「でもね、記憶の切れ目の部分はいつも同じなんだ。決まって……」

雪歩「白い光に包まれる思い出なんだよ」

真「……?」

雪歩「……」

響「みんな、長旅おつかれさま! バンナムに着くさー!」

<ゲート3を通過後 ベイ7へ>

ゴゴゴゴゴ……

大きな分厚い鉄の扉が軋みながら開いていきます。

ここがユキポックスから目覚めた人だけで建てた……

雪歩「って、ここって……」

響「やーここ来るといつもライブの時を思い出すなー!」

雪歩「東京ドーム……だよね……」

貴音「えぇ、ここが通称、人類最後の砦バンナム。 ここに収容できる人数が、自由な人間の【きゃぱしてぃ】です」

扉の先の光景は、鉄クズで固められたドームでした。ドーム。

──バンナム 港──

プシュゥゥゥゥ……

響「ん~~! やっぱこの匂い嗅ぐと落ちつくなー!」ガナハァー!

雪歩「うっうぅ……きぼぢわるいですぅ……」フラフラ

真「だ、大丈夫かい雪歩……。着地酔いは誰でも経験するから……」サスサス

???「ちょーっと待ちなさい!アンタたち!」

貴音「なにやつっ!」

舞「ゆっきーたち! 長旅お疲れさん! ゆっくりしてってね!と言いたいところだけど……」

雪歩「だ、誰ですか……」ヒソヒソ

真「日高舞さん、伝説のアイドルだよ……。バンナムの警備長を任されてる」ヒソヒソ

舞「あいにく、違反行為だからねー。偉い人がお話を聞きたいそうよ」

貴音「……響、あとは任せました。出発準備は怠らぬよう」ドサッ

貴音「……あの、いんすたんとらぁめんは……」スタスタ

舞「もう無い!」スタスタ

貴音「……」しじょぅ……

響「あーあー貴音、また喧嘩しなければいいけどなー」

雪歩「えっ……?」

真「多分、黒井社長のところに連れていかれたんだよ。元961支部リーダー、今は司令官やってる」

雪歩「四条さんと仲悪いの……?」

真「……貴音と響は元々961プロ支部担当だったんだよ」

雪歩「えっ!」

真「貴音と方針の違いで大ゲンカしてさ。響と一緒に765プロ支部に独立したんだよ」

響「……」

──おっさんが手を焼くハズだぜ。

雪歩「な、なるほどですぅ……」

真「よしっ……それじゃ行こっか……」コソコソ

雪歩「……あの、真ちゃん。何でそんな隠れるように歩くの?」

真「ボクにも、会う準備が必要な子がいるからだよ……」コソコソ

雪歩「えっ、それってどういう……」

──クゥ~~ン!

真「い゛ぃ゛!! き、来たぁ!」

美希「まっことクゥ~ン! 久しぶりだね!」ガバッ

真「うっうあああ! いきなり抱きつくなっ!」

美希「も~! どうしてミキが真クンと一緒の支部じゃないのかな」

真「あ、あはは、は。 人出不足なんだから、仕方ないだろ?」ヒクヒクッ

雪歩「あ、美希ちゃん……」

響「美希は、雪歩以外で唯一夜を往くエージェントと互角以上に戦えるんだ。天才って呼ばれてる。」

美希「真ク~~ン! ミキね、この前エージェント2人も倒しちゃったの! 褒めて褒めて~!」

真「わ、わかったから。ははっ、ミキは偉いなぁ」ナデナデ

雪歩「……ぐぬぬぅ……」

響「雪歩、何でぐぬ歩になってるんだ?」

雪歩「な、何でもないですぅ……」

美希「あっ、雪歩も目が覚めたんだよね! 久しぶりなの~」

雪歩「あ、うん、ミキちゃん、変わってないね。えへへ……」

美希「うん、だけど~~……雪歩は変わったね」

雪歩「えっ、そうかな。スモッグいっぱい吸ったから、ちょっと声は変わったかも……」

美希「……ふぅん」ジィ……

美希「……ミキね、雪歩にもぜぇ~~ったい負けないよ! ショーブなのっ!」

美希「真クン! 今度ね、またユキポックスのお仕事あるんだよ! 最近は~お仕事楽しいからミキ、頑張っちゃうの!」

美希「ずっと見ててゼッタイだよ☆」

タッタッタ

雪歩「行っちゃった……」ポカーン

真「……疲れたぁ」ガクーン

おはよう昼ごはん
すぐ戻ります

──現実世界 バンナム指令室──

貴音「……」

黒井「貴音ちゃぁん、釈明の言葉は考えてきたのかね」

貴音「釈明することなど、何もありません」

黒井「ノンノンノン、持ち場を離れるなど言語道断なのだよ。この間に機械が攻めてきたらどうするつもりなのだね」

貴音「黒井殿、これも預言者のお告げに従うためなのです」

黒井「戯言は聞きたくない! 何が預言者だ! 救世主だ!」ドンッ

貴音「……」

黒井「1秒でも長く、バンナムのために生き延びるために、レッスンでもするのが賢明ではないかね!」

貴音「お言葉ですが、街を救う方法は1つしかありません」

黒井「ウィ?」

貴音「……萩原雪歩です」

黒井「またかっ……! 誰も君のように絵空事を信じていないのだよ!」

貴音「……」

黒井「貴音ちゃぁん、君は……チェックメイトだ」トンッ

貴音「と、申しますと」

黒井「765プロ支部のリーダーを解任する。郵便局員でもやっていたまえ」

貴音「それは、あなたの権限では決められません」

黒井「……!」

ガチャッ

高木「まぁまぁまぁ、少し落ちつかないかね」

貴音「高木殿……お元気そうで」

黒井「高木ィっお前の息がかかったせいで、貴音ちゃんが電波になった!」

貴音「いえ、わたくしは、己の意思で選んだのです」

高木「四条君、次の評議会では何を話すのかね?」

貴音「……真実。全てをです。恐れることなど何も無いでしょう」

黒井「フン、混乱が起きるに決まってる」

高木「いやはや、平和を願う気持ちは皆同じなのだね」

──バンナム エレベーター内──

ガー……

響「よっし、それじゃ、自分は部屋に戻るさー! みんなー待ってろよー」

雪歩「……」

真「……」

ティーン

雪歩「ね、ねぇ。もっとお話ししよ、真ちゃん (うぅ~……何で私こんな緊張してるんだろ……)」ドキドキ

真「うん……同じこと思ってた……」ドキドキ

雪歩「あ、あのね。私ね、真ちゃんといっぱいいっぱいお話して、一緒にいると凄くワクワクする」

真「そうだね、こうやってゆっくり出来るのは、初めてかも」

みんなが、真ちゃんが居てくれたから、辛いことあっても、なんとか頑張ってこれたんだよ。
感謝の気持ち、伝えたい。ここでは、二人っきりだから。

雪歩「……真ちゃん」

真「……雪歩?」

雪歩「……」スッ

真「ゆきほ、どうしたんd……」

ガー!

ガチムチA「あっ!ようこそふるさと村区域へ! 756プロの雪歩さん!」ガチガチ

雪歩「」

ガチムチB「救世主さん! 聞いてくださいっ!」ムチムチ

ゾロ……ゾロ……

雪歩「ひ……ひぃ~~! 男の人がいっぱい……!」サァァァ……

ガチムチC「俺の息子が、ユキポックスに取り残されてるんです……」

雪歩「へっ……」

ガチムチD「嫁が……担当してる支部から連絡が無くて……」

ガチムチE「どうか、守ってやってくれませんか? 救世主さん……」

雪歩「……」

そ、そっか……。私って、こういう立場なんだ。
私が、バンナムの人たち皆の命を背負ってる……。

だけど、答えが見つかりません。意味がわかりません。
白いウサギを追ったその日から、ここにいる事を選んだハズなのに。

雪歩「あの……あの……」

真「……」スッ

雪歩「あっ真ちゃん……」

真「いいんだ。みんなの話を聞いてあげてよ」

雪歩「……」

真「あはは、大丈夫、ボクはどこにも行かないよ」スタスタ

雪歩「あっ……」

ガチムチA「救世主さん、どうか、どうか平和を……」

こんなこと思ったら、ワガママだなって思われるかもですけど……。

雪歩「は、はい……。あの、お一人ずつ……お願いします……」

私は、この時は、ただ真ちゃんとお話したかった、です。

──バンナム 居住区──

響「みんなぁ~! はいさぁぁぁぁい!」

ワニ子「ぐあぁ! ぐあぁ!」ウィンウィン

ねこ吉「にゃーん!」ウィンウィン

響「あははっ待たせてごめんねっ。今、オイルさしてあげるからなっ」

いぬ美「……」

響「いぬ美、どうしたんだ?」

いぬ美「……」ツーン

響「また他の支部に移れって、そう言いたいのか?」

いぬ美「……ばぅ」

響「いぬ美、わかってくれ。 ハム蔵は、その、事故だったんだ……」

いぬ美「……」シュン

いぬ美「ばう!」

響「わかってる。家族を失うのは誰だって辛いよね」ナデナデ

いぬ美「ばうわう!」

響「でも、自分は貴音を……その……」

響「信じてるんだ。ハム蔵もそう言ってた」

いぬ美「……」

響「そんな悲しい顔するな~。いぬ美ぃ~」ワシャワシャ

響「大丈夫、自分は完璧だ。絶対ぜぇ~~~~ったい生きて戻ってくるっ! じゃないと皆の世話は誰がするのさー。あはは!」

響「うん、もう会議が始まる。そろそろ行かないと」スッ

いぬ美「……」

響「……心配してくれて、ありがと」ギュッ

いぬ美「……ばぅ……」

──バンナム メインホール──

雪歩「はぁ……はぁ……待ってぇ~。 寝癖が……」タッタッタ

真「早く早くッ、雪歩っ君もステージにあがるんだからっ」

雪歩「えっ! そ、そんなの聞いてないよ……何するの……?」

真「こらこら雪歩ぉ。ボクたちの本業忘れちゃったの?」

……。

高木「それでは、四条君、任せたよ」ポンッ

ガヤ……ガヤ……

雪歩「ふわぁ、満員のドームですぅ……」

貴音「ここに居る、自由を選択したバンナムのものたちよ、聞いてください」

シィィィン……

貴音「真実は、聞いた通りです。MIN-GOSは総力を結集し、この街に近付きつつあります」

貴音「我々の前には、困難が待ち構えているのです……」

ざわ……ざわ……

黒井「ほら見ろ。うろたえるに決まってる」

貴音「みなの心を覆う闇は、晴れることは無いでしょう」

貴音「ですが、恐れることはありません。わたくしは近頃、眠る時の体の震えが止まりました」

雪歩「……(四条さん、やっぱり無理してたんだ)」

貴音「それは何故か。わたくしが誰も信じないことを信じているからでしょうか?」

貴音「……違います」

貴音「私を導いたのは、過去に吸い込まれた未来ではなく……」

貴音「100年以上、前を向いて歩いてきた道なのです!」

貴音「1世紀に及ぶ戦いで、変わらずに、一番大事なことは……」

貴音「……」

貴音「今を生きるということですっ!」

──……しじょっ……──

一同「……」

シィィィン……

黒井「……」

パチ……パチ……

ワァッ……

雪歩「はぁぁ、四条さん、カッコいいですぅ……」ポォー

ワァァアアアアアアアァァァ!!!

貴音「さぁ! 存分に踊りましょう! 今宵、生命を燃やすのですっ!」

ワァァアアアァア!!!

響「たかねぇナイスMC! 延々と食のスピーチとかしないか心配だったさー」

ワァアアアアアァ!!!

真「さっ雪歩、出番だよ。100年ぶりだけど振り付けは覚えてるよね」

雪歩「……」

雪歩「ま、まさか」ヒクッ

満員のドーム……ステージ衣装……二つの符号が意味するものは一つですぅ……

冬馬「……」スゥゥゥゥ

冬馬「い く ぞ お お お ぉ ぉ ぉ ぉ お お お ! ! !」


☆*:・'`★。自分 REST@RT :*:・'`★*:.。:*


美希「昨日までの生き方を 否定するだけじゃなくて」

(ハイ! ハイ! ハイ!)

真「これから進む道が 見えて きた !」

(フォウフォゥフォゥフォゥ!!)

雪歩「よ、弱いだけの女より……」

ふわぁ、懐かしい……。
キラキラのステージ。音に合わせて揺れる人の波。
怖いこととか、辛いこととか、どこかに飛んでいっちゃう。

そっか、どんだけ時間がたっても、変わらないものもあるんだね。

(ワァァアアアアア!!!)

雪歩「…っ…」ウルッ

──夢だけでは終わらせたくない

ごめんなさい、一点だけ修正

どんだけ時間がたっても

どれだけ時間がたっても

──暗い中あるくよりも……

真「……雪歩っこっそり抜け出しちゃお」グイッ

雪歩「ダ、ダメだよ、まだ曲の途中だよ……」

真「ボクと一緒にいいことしよっ」ニコッ

雪歩「えっ」ドキッ

いいこと……?

……。

雪歩「はぁ……はぁ……!」

真「うっ……そこ気持ちいい……ゆきほぉ……!」ヌルヌル

雪歩「えへへ、ここがいいのかな……真ちゃん……!」ヌルッ

真「うんっ、凄くいいよ! はぁぁん……!」






雪歩「真ちゃん、疲れとれたかな?」ヌルヌル

真「うん、雪歩のオイルマッサージは利くなぁ~」ホッコリ

雪歩「……」

真ちゃんの背中には、傷跡がいくつも残っていました。

──はは……ボクはここまでみたいだ……

雪歩「……うっ……!」

真「うっうわぁあ! 雪歩っ何で泣いてるの!?」

雪歩「私は、四条さんとは違う……怖いんだよ……」

雪歩「せっかく、思いだせたのに……!」

真「……」

雪歩「また……真ちゃんのこと失いたくない……!」

真「……言っただろ? ボクはどこにも行かない。約束するよ」

雪歩「……うぅっ……ぐす……」

真「も~雪歩は泣き虫だなぁ~」ナデナデ

雪歩「ごめんね……もう泣いちゃダメだよね……」

雪歩「だって、私は、救世主だもんね……!」

真「……」

──ユキポックス 機密施設内──

プルルルル……

美希「はぁ……はぁ……!」フラフラ

ボタボタッ

美希「ウソ……なの……あんなエージェント今まで見たことないっ……!」フラフラ

プルルルル……

美希「逃げないと……! みんなに伝えないと……!」

ガチャッ

美希「ッッ……お願いっ! 転送開始して……」

……ドスッ……

美希「あ゛っ゛……!」

ギ……ギュィィィィィ…ギギギ……

冬馬『おい、どうしたんだよ! 返事しろっ!』

美希「──が……このゲームのメインヒロイン……なの……?」ガクガク

──ん~メインヒロインなんて必要無いよ。

美希「……っ」

──だって私たち……

ギギギィン……。

…。

美希「……仲間だもんげ」ガチャッ

冬馬『何かあったのか?』

美希「ん~ん、何でも無いの。 それより転送お願い」

<転送開始>

キュィィィン……

──現実世界 バンナム──

雪歩「……痛っ!」

真「うぅん……むにゃ……カーチャン……」

雪歩「? 何だろ……今の頭痛……」ズキズキ

……。

貴音「おや、雪歩も夜風に当たりに来たのですか?」

雪歩「えへへ、残念ながら今日も曇り空ですね」

貴音「……」

雪歩「四条さん?」

貴音「雪歩、わたくしの夢を聞きたいですか?」

雪歩「ユキポックスからの解放……ですか?」

貴音「ふふっ、そんな大義ではなく、ささやかな夢です……」

貴音「わたくしは、月を眺めながら、ひっそりとこの世を去りたいのです」

雪歩「えっ……」

貴音「この曇天は、遙か昔から続いています」スッ

雪歩「へっ……どうしてですか……」

貴音「太陽を遮断するため、です。暴走を一時的にでも止めるためにはこうするしか無かったのです」

雪歩「あっ……(ソーラー発電……)」

貴音「ゆえに、この世界は草木も生えぬ荒野になってしまいましたが……」

貴音「今やMIN-GOSはユキポックスの発電こそが、生命線なのです」

雪歩「……」

貴音「それと、わたくしたちが何故、老いないか知っていますか?」

雪歩「……延命治療ですか?」

貴音「そうです。そして前に話しましたね。死んだ人間は養分になる、と」

雪歩「……もしかして」

貴音「……はい、この体は、あらゆる犠牲のもとに生きながらえているのです」

──わたくしの死に場所はここでは無かった……。

四条さんを救出した時の言葉を思い出しました。

貴音「この夢現をあなたの手で、終わらせてください」

雪歩「……」

貴音「雪歩、覚悟はできていますか?」

雪歩「……覚悟、ですか?」

貴音「はい、実は先ほど預言者からの指令が届きました」

雪歩「えっ……」

貴音「さぁ、あなたの出番がついに来ました」

貴音「今宵、星のかけらを探しにいきましょう」ニコッ

いよいよ……私の役割を果たす時が来るんですね……。

──バンナム 港──

響「ふわぁぁ……昨日はず~っと動物たちのメンテナンスしてたぞ……」スタスタ

真「ず~~っと女の子のダンスの相手してた……」スタスタ

雪歩「……うぅ……心の準備が……」ドキドキ

貴音「皆、寝不足のようですね。わたくしもですが……」スタスタ

美希「待って!」

真「う、うわぁ!ミキィ! 構ってる時間は無いんだってば……」

美希「雪歩、出発するの?」スッ

真「えっ……」

貴音「あの星井美希が、真を【するー】するなどと……」ポカン……

響「真、なんか怒らせたのか? おにぎり勝手に食べたとか……」

真「な、何もしてないよ……」

雪歩「もうちょっとゆっくりして行きたかったんだけど……ごめんね」

美希「あはっ。お別れの挨拶がしたかっただけだよ。じゃあね」

雪歩「う、うん。じゃあね」ギュッ

美希「あっやっぱり~。『またね』にしておくね」

雪歩「えっ……」

美希「きっとまたすぐに会えるの。それじゃバイバ~イ」

スタスタ

雪歩「……どういう意味だろう?」

──現実世界 765プロ跡地──

響「よ~し、それじゃ雪歩、気をつけて行ってくるさー!」

ビリィィィィ!

雪歩「フヒィ!」

──ユキポックス 公園──

雪歩「潜入しましたぁ……」

久々のユキポックス。
ここでは、21世紀の変わらない日常が流れていました。
目の前の、ベンチに座ってカラスに餌をあげている女性……。
今でも信じられません、まさか、あのあずささんが預言者さんなんて……。

あずさ「あらあら~、雪歩ちゃん、見間違えたわ~」

雪歩「あの……」

あずさ「眠れないその身を苛む煩悩について聞きたい?」

あずさ「それとも、あなたから離れない焦燥感について?」

雪歩「……やっぱり、なんでもお見通しなんですね」

あずさ「うふふ~。今日は座って話さないかしら~?」

雪歩「……私が座ることも知ってるんですよね」スッ

あずさ「まずは、分かることからお話してちょうだい~」

雪歩「萩原ネオ歩になって、初めて気づいたことがあります」

雪歩「あの、今の私の目では、ユキポックスが緑色の記号の流れに見えるんです」

サァァァア……

L9Q08NアコΘ……これがあそこのフェンスのコード……

あずさ「……続けて」

雪歩「その中で、あずささんだけ、金色に輝いてる。こんなの見たこと無いです」

ピカァァァ……。

雪歩「あずささんは、MIN-GOS側のプログラム。私や四条さんのような法則から外れた……人間じゃ無い……」

あずさ「うふふ、今のところ正解よ」

雪歩「……っ」ギュッ

雪歩「ユキポックスのシステムの一部……」

あずさ「正解ね~」

雪歩「どうして人間の味方をするんですか? あの、その……信用していいんですか?」

あずさ「うぅん……困ったわね~」

雪歩「あの、困ってるのは私のほうですぅ……」

あずさ「だけど、これまでとそんなに変わらないんじゃないかしら~」

雪歩「えっ……」

あずさ「だって、私を受け入れるかを選ぶのは雪歩ちゃん自身でしょう~」

あずさ「雪歩ちゃん、黒飴舐めるかしら~」ガサッ

あずさ「うふふ。私、黒飴って大好きなの。ついつい小さい子を見たらあげたくなっちゃうわ~」

雪歩「……私がこの徳用黒飴を舐めることも知ってるんですよね。 どうして聞くんですか?」

あずさ「うぅん、雪歩ちゃん、選択することの大切さは分かったみたいだけれど……」

あずさ「足りないのはその次のステップ、その意味を知ることよ~」

雪歩「……」

あずさ「例えば、雪歩ちゃん」

あずさ「遠い彼方へ旅立った人を、待ち続ける気持ちってわかるかしら?」

雪歩「へっ」

あずさ「待ち続けたあの場所に、二度と来ないと知っていても……」

あずさ「それでも、人は待つことを選択してしまうの。不思議ね~」

雪歩「……」

あずさ「あ、私はそんな運命の人募集中です~」ニコニコ

雪歩(……本当に、あずささんはただのプログラム……?)

あずさ「うぅん。私はちょっと特別なプログラムなの。きっと後で分かるわ。それより……」

雪歩「は、はいぃ」

あずさ「……私は使命を果たすわ~。雪歩ちゃんがするべきことを伝えるわね」

あずさ「目的地はユキポックスの中枢。メインソースよ」

雪歩「えっ……!?」

あずさ「そこで、あなたは白い光に包まれる。そこで答えが見つかるわ」

白い……光……記憶の切れ目……。

雪歩「あの、私、知りたいです! 答えを!」

あずさ「うふふ~、雪歩ちゃんは普段は引っ込み思案だけど……大切選択は決して間違わないわね~」

雪歩「そうだ……あの、あずささん……」

あずさ「何でも聞いてちょうだい~」

雪歩「私、最近変な夢を見るんです……」

あずさ「真ちゃんがビルから落ちる夢……?」

雪歩「は、はい……だけど、いつも同じところで目が覚めちゃって……」

あずさ「雪歩ちゃん、あなたも預言者になったのね~」

雪歩「えっ……じゃあ私が見たのは……」

あずさ「そう、未来よ」

雪歩「……!」

あずさ「続きを見れないのは、雪歩ちゃんが理解することを拒んでるから」

雪歩「……覚悟しなくちゃダメってことですか。真ちゃんが死ぬことを」フルフルフル……

あずさ「……雪歩ちゃん辛いかも知れないけれど」

雪歩「い、いやですっ! そんなの理解したくないっ!」

あずさ「でも、しなかったらバンナムが滅びると言ったら……?」

雪歩「ふぇ……?」

あずさ「あら……ごめんなさい。もう時間がないから、することだけ伝えさせてもらうわね」

あずさ「メインソースに行くためには、音無さんを探してちょうだい~」

雪歩「えっ!えぇ!? あ、あの2×歳の音無さんですかっ?!」

あずさ「えぇ、事務員として姿を隠してたんだけれど……生憎、もう掴まってしまったの」

雪歩「だ、誰にですか? エージェント?」

あずさ「いいえ~、「情報」を司っている、色々な意味でユキポックスで一番危険なプログラムよ」

雪歩「危険……?」

あずさ「いつも悪い知らせばかりで、ごめんなさいね~」

雪歩「……」

あずさ「あなたの真っ白な雪のような心が、染まらないことを祈っているわ」

そう言って、あずささんは去っていきました。
また、疑問ばかりを私に残していって……。

雪歩「……うぅ~……どうしよぅ~~……穴掘って埋まりたいですぅ~」

バサバサバサッ……

突如、カラスが一斉に飛び立つ音が公園に鳴り響きました。

雪歩「ひっ! だ、だれ……えっ……?」

コツ……コツ……

──私流格言その……

春香「……70562……あいパックには気をつけよう……」コツ……コツ……

春香「雪歩ぉ、会いたかったよぁ」コツ……コツ……

雪歩「春香ちゃん……どうして……?」

春香「キャラメル美味しかった? あれって、データじゃない手作りなんだよ」コツ……コツ……

雪歩「……」

どうして……私が、消滅させたハズなのに……

春香「ん~~~。それは雪歩自身がよく分かってるんじゃないかなぁ」

──現実世界 765プロ跡地──

貴音「……響、この雪歩に近付いているプログラムは一体?」

響「わ、わからない、だけどエージェントの反応は出てない……」

──ユキポックス 公園──

春香「私流格言1071だよ。雪歩、記憶が戻ったせいで手加減したでしょ?」コツ……コツ……

雪歩「……」

春香「完全に私のデータを消滅できなかった、それで復活できたんだよ。えへへ」

雪歩「……(春香ちゃんは……まだ敵……? わからない)」

春香「雪歩、ほんっと~にありがとう!」ニコッ

雪歩「えっ……?」

春香「私ね、自由になれたんだよ! MIN-GOSから解放されたんだ!」

雪歩「そ、そうなんだ。お、おめでとう(もしかして、黒くない春香ちゃん……?)」

春香「もうこのシステムのエージェントじゃないんだよっ!」コツ……コツ……

春香「だから、もう「オーバーマスター」計画も、どうでもよくなっちゃったんだよ!」

雪歩「……おーばーますたーけいかく?」

春香「私はどこにでも行けるんだよ。だけど、私はここに来たんだ。雪歩にお礼したくて」ピタッ

雪歩「わ、私に……?」

雪歩「は、春香ちゃん……お礼って何……?」

春香「うん、素敵な"個性"をありがとう」ニコッ

ガチャッ

背後のドアが開く音がしました。
振り向いた先には……

春香No,2「インストールされた時に、雪歩のデータも上書きされちゃったみたいなんだよ」コツ……コツ……

雪歩「ダ……ダブルはるかちゃん……?」

ガチャッ

春香No.3「私が特に気にいったのはコピー機能……」コツ…コツ…

雪歩「な……なにこれ……」

ガチャ……ガチャ……

4人目……5人目……更にいっぱいいっぱいの春香ちゃん……

春香No.1「雪歩、もう1つプレゼントだよ。受け取って」

雪歩「……(囲まれちゃった。うぅ、逃げたほうがいいのかな……)」

春香No2「きっと後悔なんてしないよ」ピタッ

雪歩「えっ……えっと……それじゃ受け取るね」

春香No3「今ーその全身全霊にー」ピタッ

雪歩「……(音程が直ってますぅ。前より改良されてる……?)」

春香No4「無窮の愛と」

春香No5「……強い支配を刻むのよ」ニッ

……ドスッ……

雪歩「う"っ"……!」

春香No1「じゃじゃじゃーん! プレゼントはなんと、わた春香さんですよっ!」

<コピー開始>

ギ……ギュィィィィィ…ギギギ……

雪歩(やっぱり敵でしたぁ……)

雪歩「ぁっ……!」

ギギギ……

お腹に突き刺された手から、真っ黒な泥のようなプログラムが広がっていきました。

春香「動かないでね、すぐに終わるから」

ギギィ……ギギィ……

泥が体中を這っていく、肩へ、頬へ……。

この感覚……覚えてる……。

視界が暗くなって、ぼーっとしてくる。72号室のあの時の感覚にそっくり。

ダメ……!

<コード反転>  ピーッ!

サァアァァァ……

春香No1「コピーデータが引いていく……雪歩、もしかして抵抗してる?」

雪歩「……うぅぅぅっ……!(まだ、まだ死ねないよ……!)」

<コピー不可能>

春香No1「……っ!」ズボッ

雪歩「……っ…はぁ!」

春香No2「ッッ……ヴぁい!」ヒュォッ

雪歩「──(背中から殺気ッ)」

スパァン!

春香No2「うっ……!」クラッ

春香No3 春香No4「大人しく……ッ!」ガシッ

雪歩「──!(左右から──回し蹴りですぅ!)」グァッ

パパパァン!

春香No3 春香No4「わっほい!」ズサー

春香No1「……わぁ雪歩すごい。私と駅で戦った時の200倍は強いよ」パチパチ

雪歩「だったら……降参したほうがいいよ!」キリッ

雪歩(うぅ痛いのは苦手ですぅ……)

春香No1「ダイジョブだよ。だったら……200人の私とレッスンしてもらうから」パチン

ガチャ ガチャガチャガチャガチャ

春香No7「たくさんのっ」春香No8「わた春香さんが!」
春香No9「私の個性ですよ!」春香No10「個性!!」

春香No1「囲んじゃってー!」

春香No7,8,9,10「取ったりぃー!」グァッ

雪歩「──(順番は──9.7,10,8──最小の動きで──)」

スパァン!ゴスッ!ヒュッ!グシャッ!

ドサドサドサドサッ……

雪歩「──(崩れ落ちる前に、10番目の春香ちゃんを──蹴り抜けますぅ!」

春香No10「わ"っ"ほ"……!」ゴッ……

春香No1「へっ……こっちへ……」

……ゴスッ……!

雪歩「ッッ……いぇぃ!」ビシィッ

雪歩「はぁ……残りは……!」

春香No5「ここだよ!」ゲシッ

雪歩「うっ……(踵落とし……あ、意識が……)」クラッ

春香No5「スキありィ!」ヒュォッ

雪歩「──(……! 倒れる反動を利用して……)」ガクッ

雪歩「えぇぃ!(胴回し回転蹴りですぅ!)」

グルンッ!  ゴスッ……!

春香No5「」ドサッ

春香No6「油断大敵!」

雪歩「──ッ!(二回転ッッ!)」

グルンッ! グシャァ……!

雪歩「これで10人抜きですぅ!」スタッ

ガチャガチャガチャ!

春香No20「ホップ!」トスッ

春香No25「ステップ!」レシーブッ

春香No28「ジャァァンプ!逝ってみよおぉぉ!」ヒュォォォ

雪歩「……」

スパァ……ァァン……

春香No28「見ないで裏拳……?」ガクッ

雪歩「えっと…ッ!倒した……ッ! ひっ!春香ちゃんが11人で……」ヒュッシュッ

ガチャッガチャッ

春香No43「よいドーン!」ダダッ

雪歩「うぅ……いつ途切れるんだろ……」

春香No37「つーかまえーた! 腕は掴んでるから今のうちに!」ガシッ

雪歩「っ……!」

春香No25「ヴぁい!」ゴスッ

雪歩「はぅぅっ……!」メキッ

春香No34「ッッ……ヴァイヴァイヴァイヴァイ!!!」

ドゴドゴドゴ!

雪歩「…っ…同じパターンは効かないよ」

シュゥゥゥ……

春香No34「……足で……!」

雪歩「──(一本背負いですぅ!)」グァッ!

春香No37「うわっ!」

ゴスッ……!

バタバタバタバタバタバタバタ……!

雪歩「ひぃ~~ん! 春香ちゃんは犬と同じくらい怖いですぅ~~!」

──ユキポックス 公園入り口──

キュィィィン <強制ハッキング>

翔太「オーケー 例の雪歩さんを発見。捕まえにいくよ」ダッ

春香No55「ストーップ!」ガシッ

翔太「うわっ、え……春香さん…う"っ"…?」 ……ドスッ……

春香「そう、わた春香さん」

<コピー開始>

翔太「……!」

ギ……ギュィィィィィ…ギギギ……

春香No55「わた春香さん……わた春香さん……」

<コピー完了>

春香No56「そして、わた春香さん」シュゥゥゥ……



春香No55 春香No56「「……START!!」」キッ

──ユキポックス 公園──

……。

春香No76「」

グオォォォォ……!

雪歩「じゃ、ジャイアントスイングのスキルが役に立つ思ってませんでしたぁ!」グルングルングルン

ゴスッ……ゴスッ……ゴスッゴスゴスッ!

春香No46.34.89「わっほい!」ズサー

雪歩「も、もう帰ってこないでくださぁぁい!」パッ

ヒュォォォォ……

──ユキポックス 公園 徒歩5分 歩道──

春香No76「」

ズ……ズザァァァァア……

春香No76「……」ムクリ

春香No76「まだまだぁ!」ダダッ

──ユキポックス 公園──

春香No122「もうお疲れじゃないかな、雪歩」

雪歩「はぁ……はぁ……」

雪歩(何か……武器は……)

雪歩「」ティン!

雪歩「……!」ガシッ

春香No122「ポールを握って……んん……?」

<プログラム改変> キュィィィィン……

春香No125「へぇ……雪歩そんなことも出来るんだ……」

チキチキチキ……!

雪歩「……ふぅぅぅ……」スゥゥゥ……

雪歩「……ふぁっ!!!」ふぉっ……

ふぉんふぉんふぉんふぉんっ!

雪歩「スコップですぅ……!」ピタァ……!

雪歩「……あ、あのね、もう降参しないかな……」ピタッ……

春香No136「……私流格言その1、急がばまっすぐ……」

春香No142「進んじゃおっ!」ダッ

バァッ

雪歩「ッッ穴掘って──」グァッ

ヒュォォォォ──

春香No136,142「───っ!」

──カッッ──

──……コォォォンッ……!──

雪歩「──埋めてあげますぅ!!!」ふぉぉ……ん!


春香No136,142「」ドサッドサッ

………。

……。

カコォンカコォカコカコォン!!!

雪歩「161人目!162人目!163人目!」

春香No174「まだまだ」春香No180「まだまだまだまだ」
春香No183「まだまだまだまだだよ雪歩ぉ!」

雪歩「──(スコップを支柱にしての……)」グルンッ

雪歩「──(360度の回転蹴りですぅ!)」ドゴゴゴゴゴゴッ

雪歩「……ッッぇぃ!」スタッ

春香No187「……雪歩、パンツ見えるよ?」

雪歩「へっ!う、うそっ!」バッ

春香No187「なんちゃって! みんな乗れー!」

ドサッドサッドサッドサッドサッドサッドサッ!

雪歩「うっ……!お、重い……!」

春香No196「えへへ! 天海山の出来あがりですよ!」ドサドサッドサッ

雪歩「……ッッ!(潰されちゃいますぅ……!)」

──現実世界 765プロ跡地──

響「うぅ~……何が起こってるのかわからないぞ……」カチカチ

真「雪歩、早く逃げて……!」

貴音「ふふっ問題ありません、雪歩は……【すーぱーまん】なのですから」

──ユキポックス 公園──

春香No198「200人の私を、全部背負ってくれるのかな……?」

キュィィィン……

<重力解除 浮遊プログラム開始>

雪歩「……うぅぅぅ……!」ググググッッ……

春香No198「う……うそ……持ちあがる……?」

雪歩「ッッ……!イェェェエエエイ!!!」グァッ……!

……。

P「ん……?」

春香No198「……っ……!」

P「何だあれ……たくさんの同じ顔の女の子が空に舞い上がってる……」

ドサッドサドサッドサッドサッ

雪歩「……せぇのッ……!」

キュュゥゥゥゥゥ……!

雪歩「萩原雪歩! そ、空をと、飛びますぅ!」フワッ

<浮遊開始> ゴゥ……!

キィィィィィン……!

……。

──ユキポックス 公園──

春香No198「あー逃げられちゃったかぁ」

春香No200「……ねっみんな、帰りに美味しいカフェ寄ってこうよ!」

春香No199「あっ賛成っ喉乾いちゃったよ……えへへ……」

バタン、バタンバタンバタンバタンバタン……

シィィィン……

どっと疲れた
夕飯食べてきマス

──現実世界 バンナム会議室──

黒井「こんな大規模な攻撃は初めてだ。なにかの予兆に決まってる!」

凛「相手は私たちの5倍の数。対応を誤れば、ゲームオーバー……」キィ……キィ……

高木「うぅんこれは困ったねぇ。何か防御手段は無いのかな」

涼「あの……ところで、765プロ支部の方からの連絡は……?」

黒井「ノン、なにも無い」

高木「では、765プロ支部に応援を要請したまえ。救世主の安否の確認を頼むよ」

黒井「……ふざけるなっ!これ以上支部を手薄にできん!」ドンッ

冬馬「……待ちな、おっさん。 俺が行ってやる」

黒井「なっなんだとぉ……?!」

冬馬「俺もバカバカしい賭けにノッてみたくなったぜ」

黒井「私の961プロだぞっ……!」

冬馬「あんたはもう隠居したんだろ。今は俺がリーダーだ。隅っこでオセロでもやってな」

黒井「ぐぬぅ……! だが、探索は一隻の船では足りん……!」

冬馬「チッ……」

高木「他に志願者はいないかね」

のぞみ「こだまプロ。新幹少女、志願します」スッ

ひかり「はっはぁ!? 何勝手に……」

のぞみ「だって、だって……765プロには真さまがいるじゃない~~!」キュピピピピーン

ひかり「そ、そんな理由で……!」

のぞみ「わかってるけど、好きなの……!」

高木「決まりだね、それでは閉会……」

──待って!

高木「星井君……どうしたのだね……?」

美希「きっと人出、足りなくなっちゃうんじゃないかな。ミキもついていくの」

──ユキポックス 超高層ビル──

ティーン! <74階へ参ります>

貴音「ここに、ユキポックス一危険なプログラムが居るのですね」

真「雪歩、何が見える?」

雪歩「なんだかこのビル変だよ。コードが違う……」

雪歩「暗号化されてるけど……各階に強力な爆弾……『inferno』が仕掛けられてる……」

貴音「【いんふぇるの】ですか。たった一つでこのビル全てが燃えて灰になりますね」

真「……どうしてそんなものが……」

雪歩「わからない……だけど多分、何かを守ってる……」

ティーン!

貴音「おや、ついたようですよ。いよいよご対面ですね」

──ユキポックス 超高層ビル・高級レストラン──

──あー、待ってましたよー。

雪歩「……」

──好きなもの食べてくださいねー!お肉でも何でも注文してくださいー!

真「……」

雪歩「あ、あの……世界一危険なプログラムって……」

貴音「見かけに騙されてはいけませんよ、雪歩」



やよい「うっうー! 今日はですねー高級なもやしをフンダンに使ってるんですよ」

雪歩「やよいちゃん……?」

やよい「あ、雪歩さんって……もと……救世主になったんですねー。おめでとうございますー!」ガルーン

貴音「高槻やよいも、MIN-GOSに完全に支配されている【ぷろぐらむ】です」

やよい「えへへー。実は雪歩さんが、きゅーせーしゅになったのはずっと前から知ってるんです」

やよい「ところで、今回で雪歩さんは何人目ですかぁー?」

雪歩「えっ……何人目って……?」

やよい「はわっ、それは秘密でした」

長介「……」

やよい「弟の長介です、ほらっ長介っちゃんと挨拶しなさいっ」グイグイッ

長介「……」

やよい「もーそんな事してるとご飯抜きにするよ」

雪歩(やよいちゃんだけど、やよいちゃんじゃない……)

雪歩(このやよいちゃん……目がどろどろにニゴってる……!)

やよい「ゆっくりしていってくださいね」

貴音「生憎、する暇は無いのです。小鳥嬢の居場所を教えてください」

やよい「んーとですね。それはちょっと無理かなーって」

貴音「何故ですか?」

やよい「私、最近ことわざの勉強してるんです」

真「……」

やよい「お似合いの言葉がありますよぉー」

やよい「……」

やよい「小鳥さんは、貴音さんたちにとってぇ、猫にご飯ですよぉ」ドヤァ……

雪歩(……)

やよい「うぅん、ことわざで罵るのって快感かもー! ダブルのトイレットペーパーでお尻を拭く気分ですー!」

長介「……ね、姉ちゃん……もうやめて……」カァァァ……

貴音「用件はすでに知っているのなら、取引の条件も承知しているのでしょう」

やよい「はいっ! 私は情報をし……司るプログラムですっ! ユキポックスの事なら何でも知ってますよぉ」エッヘン!

やよい「えっと、小鳥さんで何をするつもりなんですか?」

雪歩「もちろんそれも、知ってるよね」

やよい「雪歩さんは知ってるんですか?」

雪歩「えっ……それは……」ビクッ

やよい「私、世の中で一番高いものは何かなーって考えたことがあるんです」

やよい「お寿司ですかぁ? ステーキですかぁ?」

やよい「ぶっぶー、外れですぅー!」

やよい「答えは……情報ですよぉ……」ドヤァ……

やよい「……」ドヤドヤドヤァ……!

雪歩(色々と危険って意味が解った気がしますぅ……)

貴音「高槻やよい、取引に応じる気は?」

やよい「んー……無いかなーって」

貴音「何故ですか……?」

やよい「ユキポックスで悟っちゃったんですよぉ!」

やよい「私が今、一番好きなのは何っスか?」

やよい「……お金しか無いっしょぉ!」

長介「……」

やよい「選ぶ権利を持つのは、お金がある方なんですよぉー」

やよい「というわけでぇ、取引はしませぇん!」

やよい「あずささんに、このことわざを伝えてくれませんかぁ?」

やよい「……」

やよい「お金の切れ目が、ミドリの切れ目なんですよぉ……!」ドヤァ……

雪歩(……)

ティーン! <1階へ参ります>

真「危険だったね……」

雪歩「う、うん、色々な意味でギリギリだったね……」

真「それにしても、失敗だったね。うぅん、どうしよ」

貴音「ふふっ、三浦あずさの占いに間違いはありません」

雪歩「えっでも小鳥さんには会えなかったですよね」

ティーン! <50階に止まります>

長介「……お姉ちゃんたち着いてきて」

長介「会わせてあげるよ、小鳥おb……お姉さんに」クルッ

雪歩「……あっ……」

貴音「ほらっ、言った通りでしょう」スタスタ

──ユキポックス 超高層ビル・男子トイレ──

真「うぅ……こんなとこ入ったら通報されちゃうよ……」コソコソ

貴音「……面妖な」

長介「昔はあんなんじゃ無かったんだ」

長介「でも、ボク達を助けるためにMIN-GOSと取引したんだよ。やよい姉ちゃんがそう言ってた」

長介「昔は、お姉ちゃんたちにそっくりだったよ?」

雪歩「……」

長介「小鳥お姉さんの居場所を教える、だけど条件があるんだ」

雪歩「条件……?」

長介「……その」モジモジ

長介「ボクとちゅーしてよ……雪歩お姉ちゃん……」モジモジ

雪歩「えっ」

貴音「なっ」

真「う、うええええぇぇ?!」

雪歩「えっと、どうして……意味はあるのかな……?」

長介「あ、あるよ……お姉ちゃんが意味を探してるみたいに、ボクにも理由がある」

雪歩「な、なに……?」

長介「したいから」

真「……」

雪歩「どうしよう、真ちゃん」

真「な、何でボクに聞くんだよっ!」ドギマギ

貴音「ゆきほ、あなたの選択は……?」

雪歩「……う、うぅ……わかりましたぁ……」

真「!」

雪歩「私、救世主だもんね……世界を救うためならキ、キスくらい……」

貴音「……」

真「……ぐぬぬ……」

救世主だもんげ

雪歩「それじゃ、目瞑ってね……?」

長介「うん、本気じゃないとダメだよ」

雪歩「……ぇぃ」

……ちゅっ……

長介「頬っぺた……?」

雪歩「……はぁ! すっごく緊張しちゃいましたぁ!」ドキドキドキドキドキ

長介「ふぅん、その程度の覚悟だったんだ。さっきの話は忘れて」スタスタ

雪歩「えっ……」

長介「今どき中学生だって喜ばないよ、じゃあね」

雪歩「まっまっ待って!」

長介「……」

雪歩「……(めっし滅私メッシ滅私ですぅ……)」

雪歩「……」スゥ……

雪歩「どこにKissして欲しい?」

いやでもこれ仮想現実の世界だから・・・ノーカンでお願いします

真「…っ…!」

貴音「Oh...」

……ちゅっ……!

長介「……」

雪歩「……」

長介「……そっか、今の段階だと、そっちなんだね」

雪歩「えっ」

長介「試したんだよ、白い光の中での、お姉ちゃんの選択はどっちか」

長介「小鳥お姉さんに会わせてあげる」チャキッ

雪歩「鍵……?」

真「……」

もう本日は閉店したいでござる

許さないでござる

超久々の休みなんで、起きたらすぐに書きマス
これで三分の一から半分くらい
読んでくれた人、ありがとうございました


落ちてたら立て直してでも書いてくんろ

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

起きろ

おはようございます
遅くなってすいません
栄養補給したら再開します

──ユキポックス 超高層ビル・料理室──

長介「このドアだよ」

貴音「こんな場所に小鳥嬢が?」

長介「うん、この鍵は小鳥お姉さんに作ってもらったんだ」

真「だ、だってこの先はただのベランダじゃないか」

長介「まぁ見てて。一度ドアを閉める」

バタンッ

長介「そして鍵を差し込む」チャキッ

長介「あとは、簡単。開けるだけ」

ギィィィ

雪歩「?! う、うそっ……」

扉の先は、彫刻がたくさん置かれている美術室のような部屋でした。
さっきまでは確かにベランダだったのに……。

──現実世界 765プロ跡地──

響「んん? 雪歩たちのコードを見失ったぞ」カチカチカチカチ……

──ユキポックス 超高層ビル・隠し部屋──

小鳥「う"ぅ"~お家帰りたい~……乙女ロード行きたいぃ……」カチカチカチ……

雪歩「……音無さん?」

小鳥「……」

小鳥「ピヨー!!! 雪歩ぢゃぁぁん待ってたわぁぁあ!」

小鳥「ってあら? なんだかちょっと雰囲気変わったかしら?」

雪歩「……あの、この鍵は音無さんが作ったんですか」

小鳥「え、えぇ! そうよ! これがあれば自宅からすぐに事務所に行けるの、名付けてどこでも……」

貴音「話をしている暇はありません。脱出しましょう」グイッ

小鳥「ひぃ~~~座りっぱなしで腰痛いの~~!」

──ユキポックス 超高層ビル・美術室──

真「出口はこっち?」タッタッタ

小鳥「ぜぇ……ぜぇ……ちょっと休憩しましょう……」タッタッタ

貴音「……なにやつっ!」ピクッ

ガチャッ

やよい「あ~~長介何やってるの!」

長介「お姉ちゃん……」

やよい「コラッどうしてこんなことしたのか言いなさい!」

長介「原因と結果だよ」

やよい「げーいんとけっか……ちゃ、ちゃんと分かりやすく言わなきゃダメッ!」

長介「お姉ちゃん、ボクのプリン勝手に食べたでしょ」

やよい「はわっ……! そ、それは唯のイタズラというか~」ギクッ

長介「じゃ、これもイタズラだよ、楽しんで」スタスタ

やよい「うぅ~~……。長介、反抗期なんだ……」

雪歩「そ、それじゃこれで……」ソソクサ

やよい「人のモノ取ったらドロボーって学校で教わりませんでしたかぁ」

やよい「逃がさないですよぉ……」

やよい「みんな、カモ~~~~~ン!!!」クルクル

ガチャガチャ

亜美「おうぃぇーす! ようやく亜美たちの出番だねっ!」

真美「メチャビックリしたっしょ?!」

真「……」スッ

パァン

真美「う、うわっ! まだ自己紹介がっ……」

ヴヴヴヴ……

真美「」スルッ……

雪歩「えっ……?」

真美ちゃんが幽霊のように透けて、弾丸がすり抜けてしまいました。
これも、法則から外れた特殊なプログラムの一種なんだ……。

真美「もー! いきなり発砲するなんてまこちん鬼畜ですのぅ」……ヴン!

やっぱりか

亜美「あみまみちゃん その2」

真「くっ……!」パァンパァンパァン

真美「ゆうたいりだつ~」

ヴヴヴヴヴヴ……

スルスルスルルッ……

貴音「なるほど、やるようですね」

真美「真美と亜美はムテキなんだYO!」……ヴン!

ガチャッ

かすみ「やよい姉ちゃんを守れー!」

浩太郎・浩司・浩三「「「おー!!!」」」

雪歩「……あ、あの、この場はわ、私に任せてください……。四条さんと真ちゃんは小鳥さんを」スッ……

小鳥「ひぃ~~!」スタコラ

真「あ、雪歩……その……」

雪歩「あっ……」

真「……っ! 行こう貴音!」タッタッタ

貴音「それでは、また後ほど! ご武運を祈ります!」タッタッタ

真美「んっふっふ→ 逃がさないYO」ヴヴヴヴ……

亜美「亜美たちはピヨちゃん担当ね→ 亜美発進だYO!」

フワァァァ……!

雪歩「……させないっ!」グァッ!

スルッ……

雪歩「うっ……!(全部すり抜けちゃうんだ……)」

……。

やよい「イタズラ好きな亜美と真美にはピッタリなテクニックですねぇ~」

雪歩「……」

やよい「雪歩さんっ! 5対1ですよぉ 勝ち目あるんですかぁ?」

雪歩「……」

やよい「こっちでお勉強しましたよぉ……戦いは数、だそうですよ。えへへー」

雪歩「……」

やよい「それとですね~。 でりーとするには~ピストルが一番手っ取り早いみたいですね~」

やよい「みんな構えて~!」クルクル

チャキチャキッチャキッチャキッ!

やよい「え、えっと~。メイドさんの土産に言うことはありますかぁ?」ドヤッ!

雪歩「……」

やよい「何も無いですかぁ。それじゃみんな、射撃開始~~!」

ガガガガガガガガガガガ!!!!

雪歩「無駄だよ」スッ

<プログラム 改変> キュィィィン

……ピタッ……

ピタピタピタピタピタピタピタピタ……

やよい「えっと、そ、それは反則かなーって……」ズルッ……

やよい「うぅ~~! それじゃ思いっきり体を動かしちゃいましょ~!」

やよい「スマイル体操、はーじまるよー!」

かすみ・浩太郎・浩司・浩三「「「「いっけー!!!!」」」」グァッ!

雪歩「あ、あのお手柔らかにお願いしますぅ……」ペコリ

──っ!

──ユキポックス 駐車場──

貴音「はぁ……!小鳥嬢、鍵を閉めてくださいっ!」

小鳥「わ、わかったわ!」ガチャッ

真「ふぅ、これでしばらくは……」

──ずぅぁんねぇぇん!!

スァァァァ……

貴音「なっ……! 壁までをも……」

亜美「いよっっとぉ!」ゴロンッ

貴音「仕方ありませんね、真、【ぴすとる】を借りますよ」スッ

真「ッ……! たかねぇ!それはダメだっ!」

貴音「止まりなさいっ! 女性に手をあげるとは、恥を知りなさいっ!」ギュッ

亜美「?!」

パァンパァン!

ビスッビスッ!

真美「……えっ……?」

貴音「おや、外してしまいました」

真「たかねぇ……まだ銃扱えなかったのか……」ガクーン

真美「チャ、チャ、チャ、チャーンス!」ガシッ

真「うぐっ、しまっ!」

真美「お姫ちん、その銃捨てないと……まこちんを性転換手術しちゃうよ?」キラッ……

小鳥「ひぃ……メス……?!」

真美「手をあげて、ついでに脇みせて」

貴音「……わかりました」スッ……

真「たかね、ダメだっ!」

カラァン……

貴音「……」チラッ

亜美「オーケーオーケー。それじゃぁピヨちゃんを……ってあれ?」キョロキョロ

貴音「双海亜美、真美……わたくし、重火器の類は扱えませんが……」

小鳥「たかねちゃんっ!」バッ

貴音「──ッ!」パシッ シュラッ……!

──キィィィン──

真美「っ……ぶなぁ!」……ヴン!

貴音「刀の扱いは、得意なのです」カザハナッ

真「っ……貴音、車出すよっ! 小鳥さんっ鍵をっ!」ダッ

亜美「んっふっふ→お姫ちんちょっ~~と良いトコ取りしすぎじゃん?」

貴音「何処からでも、かかっておいでなさい」シュラァ……!

真美「それじゃ……遠慮なくぅ!」バッ

貴音「──ッ はぁっ!」グルン

真美「う、うわっと!」ヒュッ

貴音「──取ったッ!」ヒュォッ

亜美「ッ!」ヴヴッ……!

スルッ……

亜美「……YOU往MY進……じゃなかった、危機一髪ぅ」……ヴン!

貴音「はて、これは厄介ですね」トントンッ

真「貴音ェ! 飛び乗って!」

ブォォオオオン!

貴音「ッ……はぁ!」ゴロンッ

真「お疲れ様……はは……ちゃんと銃の練習もしてたのになぁ」   ブォォォン

貴音「何事も、才というものがあります……」ショボン

真「そ、そんなに落ち込まないでよ」

小鳥「ピヨッ! 真ちゃんっまえまえッ!」

真美「ここから先は通さないってもんよ!」

真「このまま通過するよ」

ブオォォォ……

小鳥「へっ……ちょっ、ぶつかっ……」

真美「まこちんの首、もらっ──」ヴヴヴヴヴヴ……

真美「──たぁっ!!!」ヴ……   スルッ……

ォォォオオンッ……!

真美「ん~騙されなかったかぁ。イタズラ失敗」……ヴン!

──ユキポックス 美術室──

雪歩「ここから先は、萩原ネオ歩の提供でお送りしますぅ!」グァッ!

かすみ「ひゃっ──!」

やよい「うっ!」

……ドッ……

かすみ「」ガクッ

雪歩「ふぅ……!」カラン……カラン……

やよい「さすが、最後の雪歩さん……翼の無い大天使さんですねぇ……」

雪歩「やよいちゃん、一体何を知ってるのかな?」

やよい「……言いましたよね。ぜぇぇ~~~んぶですよぉ!! それじゃ、みんなま~たね~!」タッタッタ

雪歩「あっ、やよいちゃん待って!」

バタンッ

雪歩「話をちゃんとし……」ガチャッ!

雪歩「っ……えっ……?!」

扉を開けた先は……さっきの超高層ビルは跡かたも無く消えていて……
小さな小さなカラオケ店の光景が広がっていました……。

──ユキポックス 駐車場──

雪歩「はぁ……はぁ……! 四条さんと真ちゃんは……」タッタッタ

真美「あっゆきぴょんが来たよ。亜美ど→する→?」

雪歩「ひぃ~~ん、その扉入りますぅ~~」タッタッタ

亜美「……んっふっふ→ ゆきぴょん、ごゆっくりぃ」ギィィィ……

雪歩「す、す、すとっぷですぅ~~」ダダダダッ

バタッ……

雪歩「──ッ!」

ガチャッ!

雪歩「???!!! っ……ぁぅ……!」

雪歩「ひ、響ちゃん……ここってもしかして……」 ガチャッ

響『う、うん……沖縄だ……』



ザァァン……ザァァァン……

すぐ近くで、綺麗なちゅら海の波音が……聞こえてきてますぅ……

雪歩「……うぅ……四条さんと真ちゃんはここからどれ位離れてるのかな」

響『えっと、東へ1600キロメートル。飛行機だと2時間30分かかる……』

雪歩「……わかりましたぁ」

響「えっ雪歩待っっ──」

プツン……

雪歩「ふぅぅぅ……」フワリ……

<浮遊開始>

雪歩「ふぁっ!!!」ゴゥ……!

キィィィィィィン!

雪歩(ま、待っててね、真ちゃん、四条さん……!)

雪歩「フルスロットルで飛ばしますぅぅぅぅぅ!!!」キュウゥゥゥン

ゴオォォォォォ!

──現実世界 765プロ跡地──

響「はは……今の雪歩だったら自分、ダンス負けるかも……」カチカチカチ

──ユキポックス 一般道路・車内──

ブォォォン……。

貴音「響、一番近い出口はどこにありますか?」

響『え、えっと……それが相当遠回りになる……』

貴音「この近くですと、直線で通れる【はいうぇい】があるでしょう」

響『?! たったかねぇ! ハイウェイはダメだ……自分、一度も案内したことない……』

貴音「響っ! わたくしはあなたを信じていますっ! あなたはどうですかっ!」

響『っ……わかった。すぐに準備する』

真「……ハイウェイ走るの?自殺行為だよ」

貴音「真、【のんすとっぷ】で行ってください」ニコッ

真「ははっ……よ~し! 父さんの血が騒ぐなぁ……!」ギュッ

真「行き先はハイウェイ! ジャンジャンバリバリいっくよ~~!」ギュウウウウォン

小鳥「ピ、ピ~~ヨ~~!!!」

──ユキポックス ハイウェイ──

<時速120キロ>

ウォォォォン!

小鳥「ひぃぃ~お~~ろしてぇ~~! 彼氏が出来るまでまだ死ねないのぉ~」ジタバタ

貴音「小鳥嬢……どうか、大人しくしてください……」

真「……ッ! 二人とも伏せてッ!」

貴音「っ小鳥嬢ッ!!」グィッ

ガッ……

ガガガガガガガガ……!

小鳥「い、いやぁぁ~~! 追ってきたわぁぁ!」ピヨピヨピヨピヨ

──真からの後方車両 3両目──

亜美「ハチの巣にしてやれぇぇい! 真美ィィ!」ブォォン

真美「ぉーぃぇーす!!! 悪ふざけしまくろうYO!」チャキッ

シュゥゥゥ……

小鳥「うっ……ひぐっ……車が穴だらけ……肉抜きしすぎよ……ミニ四駆じゃないんだから……」ブツブツ

ブォォォン……

貴音「真、車の調子は?」

真「……走れるけど、もうブレーキが全然ダメだ」

貴音「ならば、何も問題ありませんね」

小鳥「……うぅ……音無小鳥……思えば華の無い人生でした……」

真「ッッ! 貴音っ今度は前から来る!」

──真からの前方車両 2両目──

亜美「真美、レッツゴー!」

真美「いつもより多く震えておりますぅ→!」ヴヴヴヴ……

……

真「何をする気なんだ……?」

真美「」スルッ……

フワァァァ……

──真からの前方車両 1両目──

スルッ……

──真車両──

真「……わかっ! たかねぇ、後ろだっ!」

貴音「後ろ……?」

……ヴ……。

──さぁて、ここでクイズです。

真美「今、お姫ちんの後部座席にいるのは亜美でしょーか! それとも真美でしょーか!」……ヴン!

貴音「しまッ……!」

真美「答えは……」






真美「天国で確認よろよろ→!」ギラッ!

真「……させないッ!」ガシッ

真美「う゛っ!」ガクンッ

真「幽体離脱すると、すり抜けちゃうんだろ? この手は離さない」ググッ……

真美「んっふっふ→ 片手で運転できるのかな? まこちん」

貴音「っはぁ!」ビィィィ!

真美「シートベルト……?」

グルグルグルッ!

真美「うっ……考えたね、お姫ちん……」グググ……

貴音「これで、片手は使えないでしょう。かくごっ!」ゴッ!

真美「はぐっ……!」グラッ

貴音「面妖な!面妖な!」ゴッゴッ!

真美「……おひめちっ……さっき女性に手をあげるなって……」クラクラッ

貴音「ふふっ、あれはジョークです」

貴音「本当は、わたくしはジョークは得意なのですっ!」

真美「じ、じどーぎゃくたい……」グラッ

響『たったかねぇっ! すぐ近くに来てるッ!ボンネットに飛び乗られるぞっ!』

貴音「ッ……ふっ……何がですかっ?」ゴッゴッ!

響『……エージェントだっ!』


──……ゴシャッ……!──


オォォォ……オォォ……

北斗「チャオ☆ お久しぶりですね、お嬢さんたち」

真「……やっぱハイウェイは最悪だ……!」

<時速150キロ>

ブオォォォォォオオオ!!!

真美「あぁぁ~も~! このシートルベト外してYO!!」グイグイ

貴音「っ……! 真、左右にハンドルをっ!」

真「りょーかいっ!」グッ……!

小鳥「きゃ、きゃぁぁ~~~カ、カオスよ~~~!!!」

キキィィィ!!!

北斗「おっと、ボク、ダンスは苦手なんですよ、やめてください」グラグラッ

真「……くっ! 一瞬だけハンドル離すよっ!」スッ

パァンパァンパァンパァンパァンパァン!!!

北斗「おっと」スッ

グィングィィングィングィィィ………

貴音「マリオネットの心……」

真「だ、ダメだ……全部避けられる……」

真「……!」グッグッ

真「くっくそっ! ブレーキ利いてよっ!」グッグッ

北斗「アデュー☆」グァッ!

真「……ぅぁああああ!」グッ!

<時速 60キロ>

キキィィィィィ……!

北斗「なっ……!」グラッ

ズッ……ズササアアァァ……!

北斗「Guilty!」ズザァァ!

……。

亜美「いたたっ……!」

真「やーりぃ! 貴音、刀をッ!」

貴音「……勝機っ!」……シュラッ!

……ドスッ……

真美「」

貴音「……ッ手ごたえが……」



真美「ふぅ~今のはヤバかったYO!」ヴヴヴヴヴ……

フワァァァ……

……。

貴音「ふぅ小鳥嬢、無事でしたか?」

小鳥「う……うぅ……この歳で……失禁なんて……」

貴音「はて、どれにしてもどうやって倒せばいいのでしょうか」ズボッ

──真からの後方車両 6両目──

……ヴン!

亜美「おかえりぃ真美。 どーだったどーっだった?」

真美「……働いてるの真美ばっかじゃんよ!」

──ユキポックス ハイウェイ 出口──

ガチャッ

貴音「真、あの【ばいく】で小鳥嬢を、鍵を用意してもらってください」

真「わ、わかったけど、貴音は……?」

貴音「わたくしは、ここで双海姉妹を止めます。刀だけ頂きます」シュラッ……

真「……わかった」タッタッタ

……。

亜美「あれあれ、お姫ちんあそこでボーっと突っ立って何してんのさ」

真美「目も瞑ってるね、もしかしてお眠ですかぃ?」

ブオォォォン……!

貴音「……」

真美「このまま轢いちゃえー!」

ブオォォォン……!

貴音「……」

ブオォォォン……

貴音「……萩原雪歩……救世主のために死ねるのなら本望です……」

貴音「……わたくしは、もう死を恐れておりません……」

亜美「残り20メートルゥ!」

貴音「……ですが……」

真美「お姫ちん、さら──」

激突の瞬間に、体をひねり、車体ごと──

貴音「──ッ」

───── 一 閃 ──────

ブオォォォォ……

亜美「」バチ……バチバチ……!  真美「」バチ……バチバチ……!

貴音「わたくしはまだ、あなた様のために死ぬわけにはいかぬのです」……チンッ……


──……しじょっ……──



──ユキポックス ハイウェイ出口──

メラメラメラ……

亜美「」 真美「」

貴音「もしもし、響。 困ったことに出口までの車がありません」

響『え、うーんと……それじゃ、貴音にピッキングと運転のプログラムを……』

貴音「えぇ、お願いします。……おや?」ピクッ

貴音「響、その必要は無くなりました」

響『えっ、なんでだ?』

──条さぁん!

雪歩「し、四条さぁん、待たせてごめんなさぁい! 手をっ!」キィィィン……!

貴音「どうやら、わたくしの……救世主が来てくれたようですから」スッ

雪歩「このまま、空から向かいますぅ!」ゴゥッ

──現実世界 765プロ跡地──

響「はぁぁ……今回ばっかりは心臓がいくつあっても足りなかったぞ……」グデーン……

<音無小鳥 救出成功>

中盤戦……終了……
すいませんほんのちょっとだけ休憩します

──現実世界 バンナム──

黒井「敵はどこまで迫っているのだね」

楓「恐らく、残り9時間で到着します」カチカチカチ

楓「新型のユキドリルの突破速度が想定より速い……」

黒井「チィ……あの底辺支部はバンナムをほったらかして、なぁにをやっているのだ」

──ユキポックス 765プロ・社長室──

小鳥「え、えっと、あの超高層ビルには不思議な階があるの」

小鳥「そこの階は真っ白な通路で、ドアが並んでて様々な場所に通じてるのね」

小鳥「だけどその中に、1つだけ特別なドアがあって……」

小鳥「そこが、ユキポックスのメインソースよ(ちょっとカッコイイ役割だわ……)」キリッ

貴音「なるほど……合点がいきました……」

雪歩「あ、あの各階に仕掛けられた『inferno』は……」

冬馬「メインソースを守るためってことかよ」

ひかり「どーせ、侵入する奴がいたらビルごとボカン……ってことでしょ」

小鳥「えぇ、だけどどんなシステムにも、必ず弱点はあるの」

小鳥「あの大規模なビルを運用するためには、他のシステムに依存するしか無い」

貴音「……他のシステム」

真「……」

ひかり「電力でしょ」

小鳥「『inferno』じゃなく、大元をたってしまえばいいのね」

冬馬「……だけど、どーすんだよ。街が丸ごと停電することになるぜ」

小鳥「えぇ、こんなことは誰も考えはしなかったわ」

雪歩「電力をストップさせるには……」

小鳥「答えは単純。発電所をまるまる破壊すればいいわ」

冬馬「……なるほどな。分かりやすくていいぜ」

小鳥「それと、緊急システムもオフにする必要があるわね」

小鳥「それから復旧までの猶予は5分」

小鳥「その間に、雪歩ちゃんがメインソースに入るのよ」

雪歩「……はい」

──現実世界 765プロ跡地──

真「あっ……雪歩……」

雪歩「……あっ……」

真「隣いいかな」ドサッ

雪歩(うっ、何だろう……キスの時から、何だか気まずい……)

真「いよいよ、闘いが終わるんだね」

雪歩「う、うん……そうだね。 私はずっと夢の中にいたけど、真ちゃん達はずっとずぅっと闘ってた」

真「へへーん! ボクはこのためにトレーニングしてきたんだ。 明日は誰よりも頑張らなくっちゃ」グッグ

雪歩「ねぇ、真ちゃんお願いがあるの……」

真「なになにっ? 何でも言ってよ」

雪歩「今回の作戦には、真ちゃんは加わらないで欲しい……」

真「……」

真「えっ……?」

真「なにそれ……どういうこと……?」

雪歩「何があっても、ユキポックスには入らないで……」

真「はは、ジョーダンきついな」

雪歩「真ちゃん、お願い」

真「……っ……何で! 説明してよ!」ガシッ

雪歩「ひっ!」

真「ボクだってみんなを守りたい! そのために、今日まで生きてきたんだよっ!」ユサユサッ

──はは……ボクはここまでみたいだ……。

雪歩「ッッ……!」

雪歩「ごめんね、ごめんね真ちゃん。理由は……言えない……」

真「何だよそれ……納得いかないよ……」

雪歩「……」

真「ボクだけ、今さら命が惜しいなんて思わないよ」

真「……ボクは参加するよ」スッ

雪歩「まっ……待って……」ギュッ……

真「……」

雪歩「ダメ……絶対にダメ……」

真「……ッ! 雪歩、ボクってもう足手まといなのかな」

雪歩「えっ……?」

真「アイドルやってた頃は、ボクが雪歩を何度も守ってあげたじゃないか……」

真「もう、もう雪歩は救世主になったから、ボクなんていらなくなっちゃったの?」

雪歩「……」

真「何で黙るんだよ……雪歩……」ギュッ

雪歩「……」

真「何か言ってよ……」

雪歩「ま……まことちゃんは……」ギュッ

どうしよう、声、震えてる。

雪歩「今回……ひ……必要ない……よ……」

真「……っ!」

雪歩「わ……私だけで……大丈夫だから……」

真「……ッ……ゆきほの……」

真「わからずやっ!」

バタンッ……

雪歩「……」

雪歩「……」

雪歩「……ぅっ……」ギュッ

──ユキポックス 超高層ビル──

貴音「雪歩、何やら顔色が優れませんが?」

雪歩「だ、大丈夫です……四条さん……私は救世主なんですから……えへへ……」

──ユキポックス  発電所──

<侵入者 発見>

ビー!ビー!

冬馬「さぁ~って、人暴れするぜ」コキ……コキ……

──ユキポックス 緊急システム 警備所──

ひかり「みんな、行くわよ こだまプロが1番ってトコを見せてやるんだから」

つばめ「えぇ、大運動会でのリベンジを果たすわ」

のぞみ「あれぇ~、ところで今回真さまは?」

──現実世界 765プロ跡地──

響「えっと、地図を出して……次は座標を補足……」カチカチカチカチ

真「……」

しえ

──ユキポックス 発電所 外──

冬馬「ま、こんなもんだな。765プロばっかにいい顔させてたまるかよ」

冬馬「予定時刻……だな。スイッチを押すぜ!」

冬馬「それにしてもアイツ……一体、何しに来たんだ?」カチッ

──カッ──

ボカァァァァアアアアン!!!

<全電力ダウン> ……フッ……

──ユキポックス 超高層ビル──

貴音「街の灯りが消えましたね」

小鳥「それじゃ、道は教えた通り、開けるのはこの鍵よ」チャキッ

雪歩「……それじゃ、メインソース目指していきますぅ!」

ガチャッ

──現実世界 765プロ跡地──

響「雪歩と貴音の反応が消えた。秘密の階に入ったみたいだ」カチカチカチ

真「……うん」

orz

>>353
どうした

──ユキポックス 緊急システム 警備所──

ひかり「警備員は?」カチカチカチ

つばめ「大丈夫、全員倒したよ」

のぞみ「えっと……ハッキングは後何分で終わるの?」

ひかり「あと1分よ。これで完璧に街の電力は切れる」

<ハッキング60% 完了>

──ユキポックス 秘密の部屋──

雪歩「小鳥さんの言った通り……細い通路にドアがいっぱい……」タッタッタ

貴音「なるほど、まさにユキポックスの【でばっぐるーむ】といったところでしょう」

雪歩「ユキポックスにこんな特別な場所があったなんて……」

カツ……

雪歩「あ、あれ? 四条さん今何か聞こえませんでしたか?」

貴音「有り得ません。ここにわたくし達以外で入れるものなど……」

カツ……カツ……

雪歩「や、やっぱり……足音が聞こえますぅ……」

カツ……カツ……

雪歩「近付いてくる……」

──あれあれ、奇遇だねぇ

貴音「なっ……」



春香「なんちゃって。ここは行き止まりだよ」

雪歩「……ッ!」

貴音「エージェント……ハルカ……何故ここに……」

春香「なんだか楽しそうなことやってるね」

春香「私を、ほったらかしにするなんて……も~ひどいなぁ」

雪歩「……(どうしようっ……!)」

──ユキポックス 緊急システム 警備所──

ひかり「あと30秒……」カチカチカチ

のぞみ「私、この闘いが終わったら真さまに告白するんだから」

つばめ「新米オペレーター! エージェントの反応は無いんでしょうね!」

<ハッキング80% 完了>

──現実世界 こだまプロ跡地──

──ポチッ

<全システム シャットダウン>

ブゥゥゥン……

──ユキポックス 緊急システム 警備所──

ひかり「もうすぐ終わ──」

プツンッ……

ひかり「」ガクンッ のぞみ「」ガクンッ つばめ「」ガクンッ

<ハッキング 中断>

……ピー……

oh・・・

──現実世界 765プロ跡地──

響「あ、あれ、ハッキングが止まってる」ピタッ

真「どうしたの、響?」

響「こだまプロの様子がおかしいぞ……その場から一歩も動いてない……」

真「ほっ……本当だ……」

響「緊急システムが切れてないってことは……『inferno』はまだ生きてる……」

真「……それじゃ扉を開けたら!」

響「う、うん。雪歩がメインソースの扉を開けた瞬間……ハジマル……」

真「ッ連絡は!」

響「無理だ……今は秘密の階にいるんだぞ……」

真「……ゆきほっ……たかねっ……!」

──ユキポックス 秘密の階──

春香「いつ来るのかと思って、待ちくたびれちゃったよ」カツ……カツ……

雪歩「は、春香ちゃん……何が目的なの……?」

春香「んー雪歩、最近体動かしてばっかりだし、ポエムとかまた書いたほうがいいよ」コツ……コツ……

春香「雪歩とおんなじだよ」

貴音「同じ……?」

春香「I want It ALL! ……全部が欲しいんだよ!」カッカー!

貴音「この鉛弾もですかっ」チャキッ

春香「……貴音さん、射撃苦手なんですよね」

貴音「この距離なら外しませんよ」カチィ

──現実世界 765プロ跡地──

響「うぎゃあああ! 雪歩はあと数分で到着するぞ!」カチカチカチ……

響「うぅぅぅこだまプロ支部の連絡がど~して取れないんだっ……!」

響「……! 冬馬は……ダメだっ。間に合わないっ……!」カチカチカチ

真「……」

真「……響、大丈夫だよ」ポンッ

響「えっ……」

真「……」





真「ボクが緊急システムを止めにいく」

──ユキポックス 秘密の階──

貴音「……ッ!」ドクン……ドクン……

春香「えへへ、貴音さんひとつ質問しますよ」スッ

貴音「……動かないでくださいっ!」ドックン……ドックン……

春香「私の良いとこ述・べ・よ?」ニコッ

貴音「かくごッ!」

パァ……ン……!

春香「」ドサッ

貴音「……倒したのですか……?」

雪歩「来るッ……!」

ガチャガチャチャガチャガチャチャガチャ!

春香No570「プロデューサーさん!」春香No587「私ですよ!」
春香No610「わたし!」春香No605「!!!」

ガチャガチャガチャガチャガチャ……!

雪歩「……!」

──ユキポックス 緊急システム 警備所──

プルルルルル……

真「響、侵入したよ」ガチャッ

響『え、えっと。そのまま右へ進んで。こだまプロの皆がいるハズだ』

真「わかった、すぐに向かうよ」

警備員A「ちょっと待ってください。ここは立ち入り」

真「ごめんなさい、ちょっと急いでるので」

トンッ……!

警備員A「」ドサッ

真「菊地真……急げっ……!」タッタッタ

──ユキポックス 秘密の階──

貴音「雪歩、背後は任せましたッ!」ヒュォッ

春香No654「うわっと」

雪歩「はっはいっ!」

貴音「ふふっ、こうしてあなたに背中を預ける日が来るとは……」

雪歩「……アイドルやってた頃じゃ、信じられませんね」

貴音「いいえ、わたくしは、信じていましたよ……」

雪歩「──っっふぁっ!(足払いですぅ!)」ブァッ

春香No520「う、うわっ」コケッ

バタンバタンバタンッ

春香No453「ちょ、ちょっとみんな狭いよ~~」 春香No676「お尻が……お尻がひっかかる……」

春香No562「ヴぁい!」グァッ

メキィ……

貴音「…うぅッ…!」

雪歩「しm四条さぁん!」

oh,,,また気になる誤字...

雪歩「しm四条さぁん!」

雪歩「し、四条さぁん!」

貴音「……っ!」ガクッ

春香No454「これで2連敗ですね」ガシッ

春香No643「えっと、貴音さんもメインヒロインになりたいですか?」ガッ……

貴音「なっ……!」

……ドスッ……

<コピー開始>

ギ……ギュィィィィィ…ギギギ……

貴音「こ、これは……はぁ……はぁぁあん……」

ギギギ……

春香No643「今ならもれなくリボンも付いてきますよっ!」

貴音「……ッ……!」ガクガクッ

──ヒュッ──

……パカァァン!

春香No643「」ガクン

雪歩「させないですぅ……!」シュゥゥゥ……

──ユキポックス 緊急システム・警備室──

ガチャッ

真「ッッ! 響、ここの部屋のコンピューターであってるよねっ!」

ひかり「」 のぞみ「」 つばめ「」

真「み、みんな……」タタッ

真「……外傷が全然ない……」

真「現実とユキポックスとのリンクが……切れたんだ」ギュッ

真「……くそっ……」

真「……ッッ!」バッ

真「お願い、間に合って……」カチカチカチカチ……

<ハッキング 再開> ピー……

──ユキポックス 秘密の階──

雪歩「四条さんっ! 私の後ろにっ!」ガシッ

春香No754「うわっ」

貴音「な、何をするのですか」ピトッ

雪歩「このまま、強攻突破しますっ!」グググッ……

<浮遊開始>

雪歩「……うぅぅぅううう……!!!!」グググッ……

春香No543「ま、まさか……このまま……」

雪歩「……うぅううううう……!!!」ググググッ……

春香No654「私たち全員とお相撲するつもりじゃ……」

雪歩「わ、わたし! ひんそーだけど頑張りますぅぅぅ!」

グァッ!

春香No453「──まッ!」

ズドドドドドドドドドドドドドド……!

……ゴシャァァ……!

雪歩「ふぅー!ふぅー!」

貴音「なんと……」ポカーン

雪歩「そこのドアですっ! 四条さんっ!」

貴音「はっはいっ!」ガシッ

──ユキポックス 緊急システム・警備室──

真「いっけぇぇえええ!」ポチッ

<ハッキング 完了>

ピー

──ユキポックス 秘密の階──

春香No543「させな──ッ!」

バタンッ!

……。

貴音「ぶ、無事に入りましたね……」ズルズル……

雪歩「作戦成功……ですぅ……」ズルズル……

──ユキポックス 緊急システム・警備室──

響『真、貴音の反応が見えたっ! 雪歩は無事にメインソースに辿り着いたみたいだ』

真「……」

真「よ、良かったぁぁぁぁ……」ホッ

響『エージェントにも見つかってない。これでパーフェクトコミュニケーションさー。出口まで案内するぞ』

真「うん、わかった。お願い、響」

真「……雪歩、無事で良かったなぁ」

真「……うん」

真「……ボクが自分勝手だったんだ。 やっぱり……雪歩に謝ろう」

コツ……コツ……

──私流格言……

真「えっ……?」

──ユキポックス 秘密の部屋──

雪歩「……」ドキドキ……

この扉がメインソースへの入り口。ユキポックスの中枢。
私が、ここに辿り着けば、闘いが終わる。

雪歩「……」チャキッ

<認証完了 メインソースへ アクセス>

パァァァ……

雪歩「ふわぁ……キレイ……」

扉の隙間から真っ白な光が溢れ出しました。

段々と……辺り一面が光に包まれて……

雪歩「ぁっ……」フッ……

まるで糸が切れたように、意識を失いました

………

……



雪歩「……うっ……」

目を開けると、無数のモニターが並んだ部屋が、視界に飛び込んできました。
一つ一つのモニターには、お花屋で働く人、事務仕事をしてる人、ステージで踊っている人……
全部違う画面だ。

雪歩「ここが……」

──ユキポックス メインソース──

雪歩「……」

見ると、中央にポツンと机と長椅子が置かれていました。誰か座ってる……。

──おめでとう、ここがゴールよ。

雪歩「──ちゃんが……」

千早「えぇ、私が、このゲームの"設計者"の役割を与えられたの」

あずささんと同じ、黄金のプログラムだ……。

千早「私が、MIN-GOSに命じられてこのユキポックスを創ったの」

雪歩「……」

千早「ユキポックスで大分意識が変化したみたいけど……あくまで萩原さんは人間側ね。良かった」

千早「ここには、あなたの求めていた答えが全てあるわ」

雪歩「……」

千早「最初の質問は?」

雪歩「どうして、千早ちゃんが"設計者"なの……」

千早「私への質問でいいのかしら……? それは意外だった」

千早「それは、私が『アイドルマスター』のバーチャルシミュレーションに最初に協力した人間だったから」

雪歩「……えっ……ど、どうして……?」

千早「もう一度、優に会いたかった」

雪歩「……」

千早「次の解決したい問題は?」

雪歩「……闘いを終わらせる方法……ですぅ……」

千早「それには順を追って話す必要があるわね」

雪歩「……?」

千早「そして、それは萩原さんの抱いている疑問全てに繋がる」

雪歩「……」

千早「どうして、ここがあなたの名を冠した"ユキポックス"と名付けられているか知っているかしら」

雪歩「えっ……」

千早「あえてそんな名前にしたの。そうすれば、あなたは、ここまで答えを求めたがると思って」

雪歩「な、何を言ってるの……?」

千早「単刀直入に言いましょう、萩原さん」

千早「今のユキポックスの人間が電池 私がマザーボードだとしたら……」

雪歩(機械に詳しい……やっぱりMIN-GOSに支配されてるんだ……)

千早「……」

千早「あなたの存在は、OSといったところね」

雪歩「えっ……?」

しえ

雪歩「ど、どういうこと……?」

千早「あなたは自分で選択してここに来たと思ってるみたいだけれど……」

千早「それは違う。意図的に来させられた」

雪歩「……!」

千早「知っての通り、MIN-GOSは最初に、完璧な神ゲーの世界を造った」

千早「それは完全に失敗した。何故なら人は機械では無いから」

千早「だから、少しだけこのゲームに手ごたえを与える試みをしたの」

千早「すると不思議ね。99%の人間がユキポックスを受け入れたわ」

千早「その時に、偶然生まれた人間の心理を研究するプログラムが……」

雪歩「預言者のデータ……ですか?」

千早「えぇ、彼女がユキポックスのキング……王だとしたら私に使用されているデータは姫といったところね」

雪歩「……」

千早「だけど、それも欠陥があったの。それは、1%のバグを生んでしまったこと」

雪歩「それが……」

千早「えぇ、四条さんや萩原さんのような、ユキポックスを仮想現実だと気づくバンナムの人間よ」

千早「MIN-GOSは悩んだ」

千早「たった1%でも放置すれば重大なシステムエラーを引き起こす可能性がある」

千早「現に、MIN-GOSでコントロールできないあなた達には随分手を焼いたわ」

千早「どうして、バグのない世界を作れないのか」

千早「答えは簡単だった」

千早「……人の心が余りにも不安定だから。AIだけで心を構築するには限界があったわ」

雪歩(……イヤな、予感がする……)

千早「MIN-GOSは考えた」

千早「ならば、その1%の不確定要素を、人間の手で完全にしてもらおう」

雪歩「……」ドキッ

千早「1%を無理やり削除するより、あえて利用する方法を選んだ」

雪歩「……」ドックン……ドックン……

千早「動悸が早まってるようね、萩原さん。だけど耳は塞がない」

千早「……あなたの、そのいかにも不安定で、弱くて強かで、人間的な性格は」

千早「格好の被検体だった」

雪歩「……ッ!」

わかってきたっ……私がここに来た意味……すべての答え……!

千早「MIN-GOSは決めた。長期的な観測をしようと」

千早「……預言者を人間に協力させることにした」

千早「バンナムの人間は、預言者からの選択にすがる。これも必然ね」

千早「それくらいに、MIN-GOSは強大だったから」

雪歩「ま……まさか……」ドックン……ドックン……

千早「預言者は、バンナムの人間にこう言った」

雪歩「や、やめてください……聞きたくない……」

千早「辛いことから逃避しようとする……おろかね……」

千早「……」



千早「『いつか、救世主が現れて、この世界を救う』と」

雪歩「……!」

ウソだ……そんなのウソだよ……!

千早「否定は無駄よ。ここにはあなたの求めていた回答しか無い」

雪歩「ウソだよ……私は……」

千早「そして1%の人間を、MIN-GOSの用意したエージェントと闘わせる」

雪歩「私は……」

千早「ユキポックスに足りない不確定要素を集めさせる」

雪歩「は、萩原……」

千早「収集したデータを、あなた一人に集中させる」

千早「頃合を見計らって、あなたを使ってユキポックスをバージョンアップ」

千早「あなたの記憶が断片的なのは、そのせいよ」

雪歩「ネォ……」

千早「今は……確か『アイドルマスター17』ね。予想より多くなってしまったわ」

千早「だけど、βバージョンは今回で終了する」

千早「行動パターンの分析を完了させて、あなたを救世主にさせる準備が出来たから」

全部……MIN-GOSに仕組まれてたって、ことですか……?

千早「大体は、予想通りに事は運んだわ。かなり危ない橋を渡ることになったけれど」

雪歩「……」

千早「さて、そんなプログラムを越えた人間となった萩原さんがするべき事は……」

千早「あそこに2つの扉があるわね」

雪歩「えっ……」

千早「右がメインソースへの入口よ」

千早「そこで、あなたの現在保持しているデータを全てばらまいて、あなたのプログラム改変機能を使ってバグを修正する」

千早「これで、MIN-GOSは不確定要素すらもコントロール可能にさせた、完全なユキポックスが完成する」

雪歩「……」

千早「これが、あなたの求めてた答え。救世主システム。そして……」

千早「オーバーマスター計画よ」

これが……私が救世主になった意味……。

千早「メインソースへ、どうぞ」

雪歩「……」フルフル

千早「えぇ当然、拒否する。だけど貴方はできない」

雪歩「えっ……?」

千早「あなたの救世主の能力は、MIN-GOSにとって危険すぎる」

千早「何が何でも、保持データを渡してもらうわ」

雪歩「……しなかったら、どうなるんですか」

千早「ユキポックスは、致命的なパラドックスを起こし崩壊……」

千早「つまり……今ユキポックスにリンクされている数十億の人間が、泡沫の夢のように一瞬で……」スッ

パァン!

雪歩「ひっ……」

千早「死ぬわ」

雪歩「……!」ゾッ……

千早「あなたの性格上、拒否することは出来ない」

雪歩「……」

千早「はずだったのだけれど……」

雪歩「えっ……」

千早「メインソースに行く時に気付くでしょうから、教えておくわ」トンッ

不意に、モニターが切り替わりました。
その画面全てに写ったのは……

雪歩「えっ……」

真『はぁ……はぁ……! 逃げなくちゃ……!』

雪歩「ま、真ちゃん……?」

千早「あなたはこれから、覚悟しなければいけないわ」





千早「真一人を救うか、人類全体を救うか」

──ユキポックス 緊急システム・警備室──

真「うっうぁあああ!!!」チャキッ

パァンパァンパァン!

春香「あー無駄だよー」

グィィングィィグングィン……

真「くっ……!」フラフラッ

春香「真、もう足元フラフラだよね。肋骨折れてるよ」スタスタ……

真「……ッせぇぃ!」ヒュッ

春香「無理無理。絶対、勝てないよ」パシッ

春香「ヴぁい!」ゴッ

メキィ……

真「ぁぐっ……!」ゴプッ

春香No2「えへへ、どーしようかなーコピーしようかなー。どっちのほうが雪歩にとっていいんだろ」

真「……ゆ……き……ほっ……!」ガクガク……

真「はぁ……はぁ……」フラッ

春香「さぁ、後ろはもう窓ガラス。 もう後がないよ」ジリ……ジリ……

真「はは……雪歩……」

真「やっぱりボクは……君が好きだ……」

春香「決めたっ……コピーしてあげるよっ……!」ダダッ

真「……ッ!」

──ユキポックス メインソース──

千早「右の扉がメインソース 左の扉は今のユキポックスの世界」

千早「論理や理性を取る? それとも希望や愛を取る?」

千早「それこそ、AIには理解できない心、ね」

雪歩「……」

千早「萩原さん」

雪歩「……」

千早「覚悟を聞かせてもらうわ」

雪歩「……決めました」

真「せめて……一人だけでも……!」クルッ

ガシャァァァアアアン!

春香「うわっっとっと!」スカッ

……。

──地上200メートル──

ヒュゥゥゥゥ……

真ちゃんが、アスファルトに向かって真っ逆さまに堕ちていく。

真「はは……ボクはここまでみたいだ……」

粉々に散ったガラスの破片が舞う。

真「最期に、仲直りしたかったな」

口の端から血の泡を吹き出しながら、苦しそうに微笑む。

真「ごめんよ、雪歩」

………

……

──現実世界 765プロ跡地──

<異常値 検出>ピピピピピ……!

響「……車が空を舞ってる……? 何だこれ……ハリケーン……?」

貴音「これほど速い物体が、この世にあるのでしょうか……」

──ユキポックス 地上20メートル──

ヒュゥゥゥ……

真「さよなら──」

雪歩「待って! 真ちゃぁぁぁん!」

──もっと速くっ!──間に合って……──

──間に合って!!!!



……パシッ……


雪歩「っっ……! 良かった。もう、離さないよ」ギュッ

真「ゆき……ほ……?」

ヒュゥゥゥ……

春香「雪歩……そっかぁ……そうなんだぁ……」

ヒュゥゥゥ……

春香「……嬉しいなぁ……」ニヤッ

……グシャッ……

──地上 0メートル──

春香「」バチ……バチバチバチ……

──ユキポックス ビル ヘリポート──

アスファルトの上へ、真ちゃんを優しく横たわらせました

雪歩「ま、真ちゃん大丈夫?! 凄いケガ……!」

真「ど、どうして……」

雪歩「私はね、救世主の前に……ダメダメなアイドル、萩原雪歩17歳なんだよっ……」

雪歩「もしも、真ちゃんが死んじゃったら……」

真「……」

雪歩「うっ……ひぐっ……すっごくすっごく悲しいんだよ……!」

真「……ゆきほ……泣かないで……」

雪歩「うっ……ぅん……私泣き虫だから……真ちゃんが居ないとダメなんだよ……」

真「雪歩……ひどいこと言ってごめん……」ドクンッ……ドクンッ……

雪歩「ううん……いいんだよ……!」

雪歩「……弾丸が体に残ってる」

真「……うぅっ……」

雪歩「真ちゃん、お願い、絶対に動かないで……今、抜くから」ピタッ

真「……ぇっ……」

私は、真ちゃんのわき腹に手を添えました
大丈夫……怖くない……。手は震えてない。

──皮膚……血管……骨……細胞のひとつひとつを……

<プログラム改変>

ズプッ……

真「ぅぐっぁぁ……!」

右手が、真ちゃんの体にどんどんと埋まっていく。
出血しないように、人体のプログラムを再構築する
多分、弾はここらへん……

雪歩「……ッ……!」ズボッ

キュィィィン……

雪歩「っっ! ほらっ、取れたよ……」スッ

雪歩「良かった、ちゃんとできたよ……」

真「……雪歩……」

雪歩「……どうしたの」

真「……」

真「ラスト……笑顔……合いたかった……」

雪歩「えっ……何言ってるの……?」

真「……悲しませて……」

真「……」

真「……ごめんね」

雪歩「真ちゃん……?」

<心拍数 0>

ピー

真「」

雪歩「……」

雪歩「……っ」

溢れ出る涙を、手の甲で乱暴に拭いました

雪歩「……真ちゃん、聞こえてるかな」スッ

雪歩「大丈夫、心配いらないよ」

雪歩「私はもう、選んだ。覚悟したよ」

雪歩「……絶対に死なせない」

今度は、胸に手を……温かい。
真ちゃんの温もり。取り戻したい。

──雪歩!今日もダンスレッスンいこう!

もう一度、あの頃のようにそばにいたい


<プログラム 改変>

……キュィィ……ィィ……

──現実世界 765プロ跡地──

<異常値 検出> ピピピピピ……!

貴音「響……これは……」

響「スゴすぎるぞ……」

貴音「一体……何が起こってるのですか……」

響「廃ビルの時と同じ数値……雪歩が……真に蘇生コードを流し込んでる……」

響「……こんなの……救世主どころじゃないぞ……」

響「これじゃまるで……」

──ユキポックス ヘリポート──

<心拍数 60> ピー

私は……真ちゃん……

雪歩「えへへ、真ちゃん。これでおあいこだね……」

真「……ゆきほ?」

ただ、あなたからの愛が、欲しいだけ

……ギュッ……

──現実世界 765プロ跡地──

貴音「面妖な……」

貴音「全てやるべきことはやったハズです……」

貴音「【めいんそーす】に行けば、戦いは終わると……」

雪歩「24時間以内に……なんとかしないと……バンナムもユキポックスも崩壊します」

真「どうして分かるの?」

雪歩「そう言われたんです。多分、嘘じゃ、無いです」

貴音「それは聞き捨てなりませんね。三浦あずさの言葉とは違います」

雪歩「……ウソなんです」

貴音「……今、なんと……?」

雪歩「預言は全部、ウソだったんです。四条さん」

しえ

貴音「そんなハズは」

雪歩「救世主システムも、全部MIN-GOSに操られていたんです」

貴音「……私は信じません!」

……四条さんから、私を信じないってセリフ。初めて聞きました。

雪歩「でも、実際に戦いは終わってません……」

貴音「……ッ!」

真「じゃあ……これからどうすれば……」

雪歩「……」

雪歩「わ、わからない……」

響「……そんな……」

<緊急事態>

ビー!ビー!

真「!」

雪歩「な、なに……?」

響「……量産型のキサラギだ……近付いてるの、気づかなかった……」カチカチカチカチ

貴音「撃退できますか?」

響「数キロ先から、ここへ向けて『inferno』を発射したらしい」

雪歩「えっ……!」

響「もちろんユキポックスのヤツより威力はずっと低いけど……」カチカチカチ

響「この765プロ支部が吹き飛ぶくらいの威力はあるぞ……」カチカチカチ

貴音「……!」

響「ッッ……みんなっすぐに脱出するぞっ!!!」

──現実世界 停船所──

響「早くッ早くッ! 1発目が来るぞっ」タッタッタ

雪歩「はぁ……はぁ……」タッタッタ

ヒュルルルルルルル……

カッ……!

雪歩「──っ──!」

突如、765プロの方角から、爆音と共に、火の柱が噴き上がりました。

メラメラメラ……

真「ボ、ボクたちの765プロが……」

貴音「跡かたも無く灰に……」

貴音「この100年は……全て……泡沫の夢だったのでしょうか……」ガクッ

響「…っ…みんなぁ、2発目がくるぞ! 狙いはここの船だっ!!!」

響「だから、貴音、走ってくれ……!」ユサユサッ

貴音「わたくし達に望みはもう……」

響「うぎぎぎ……!早くぅ……!」ズルズル……

貴音「預言を……次の預言を……」ブツブツ……

真「たかねっ……!」

雪歩「……」

何だろう……この感覚……。

真「雪歩、何してるんだよ! 貴音を運ぶのを手伝って!」

雪歩「……」

感じる……胸騒ぎがする……。

雪歩「……南から、来る」

ヒュルルルルル……

真「『inferno』……ッ!!!」

どうして……わかったんだろう……。




響「に、逃げろおぉぉぉおお!!!」

雪歩「……」

ヒュルルルルルル……

雪歩「……」スッ

私は、手を爆弾の向かってくる方向にかざしました。
仮想世界で弾丸を止めるように。

雪歩「……」

どうしてだろう、ここは現実世界。
私はただのダメダメな何も出来ない……救世主じゃないのに……。

──だけど、私はみんなを、真ちゃんを……

雪歩「……守るよ」ボソッ

真「ゆ、ゆきほおぉぉおおお!!!」

カッ……!

真「……ッ……!」

真「……」

真「……えっ……?」

バチ……バチバチバチ……

雪歩「……ッッ!」

響「『inferno』が……空中で……」

真「止まってる……?」

バチバチ……バチバチ……!

シュゥゥゥン……

爆弾は、不発となって地面に転げ落ちました。

……良かった……本当に……

雪歩「……良かった」   フッ……

……ガクッ……

真「ゆきほっ!」ダッ

雪歩「」

──961プロ支給 船内──

……



冬馬「やれやれ、救助が間に合って良かったぜ」

ピ……ピ……ピ……

雪歩「……」

<脳波 不安定>

真「雪歩の状態は……?」

冬馬「深いこん睡状態ってとこだな、いつ目が覚めるか検討もつかねぇ」

真「……」

冬馬「お前も休んだらどうだ。ナリはそんなだが、女なんだろ」

真「ボクは、雪歩の傍にいるよ」ギュッ

冬馬「そうか……」

冬馬「ところでよ、お前、こだまプロの連中に会ったんだろ」

真「う、うん。皆リンクが断絶されてた」

冬馬「だろうな……俺が救助に行ったんだがよ、ひどい有様だったぜ」

真「……」

冬馬「で、その件だ。一人だけこだまプロ支部の中で生存者がいたんだよ」

真「えっ……?」

冬馬「お前らのよく知ってるヤツだよ」

冬馬「……」

真「誰……?」






冬馬「星井美希だよ」

………

……

http://www.youtube.com/watch?v=At-g4g8-AI0

ユキポックス -リローデッド- THE END

………

……



千早「人は新たに生まれ変わる……MIN-GOSの手で……」

貴音「ついに、戦争が始まってしまうのですね……」

あずさ「うぅん、私って……ウソつきねぇ……」

春香「いよいよ"革命"が始まるんだね。楽しみだなぁ」



真「雪歩……お願いだ……目を醒ましてよ……」

雪歩「……」



Next 『ユキポックス -レボリューションズ-』

次回、完結

書いてて思った、雪歩って天使じゃないか!
読んでくれた人、支援してくれた人本当にありがとうございました

本日は閉店です

久々の長期戦で、リポビタンの消費がやヴぁい
じゃあの

伊織の出番アルヨ
おやすみ

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