透「隣人部ですか?」夜空「そうだ」 (182)

 高屋奈月先生原作「フルーツバスケット」と平坂読先生原作の「僕は友達が少ない」のクロスオーバーSSです。
 本編は、フルーツバスケットの主人公本田透を主人公にしてお話が進んでいきます。
 基本的には台詞のみで展開していく予定ですが、時折透の心理描写を挟んでいきたいと思います。
 また、舞台は僕は友達が少ないの聖クロニカ学園です。
 僕は友達が少ないからはほぼ全て。
 フルーツバスケットは本田透、草摩由希、本田今日子、魚沼ありさ、花島咲等が登場予定です。

 Q 透君と小鷹は結ばれるんですか?
 A フラグすら立たない予定です。

 Q 十二支の呪いは存在するんですか?
 A します。が、登場するかは未定。
 
 Q 透君は友だちが少ないんですか?
 A 原作初期なので少ないです。草摩との関わりもないので。

 Q 今日子さんが生きてますが
 A 健在です。透は自宅から登校しています。

 Q ありさと咲がクロニカ学園にいないのですが。
 A 高校受験の際に別れてしまいました。ですが友情は健在です。

 Q 由希と星奈はどちらが頭がいいんですか?
 A 肉です。勉強ができるという点では。

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 本田透です。
 聖クロニカ学園に入学して一年が経過しました。
 私の頭がわるいせいで、ほとんど勉強とアルバイトで過ごしていました。
 
 そうそう、今日は転校生の方が来るみたいなんです。
 ホームルームが終わっても姿を表さず、何か事故にでも遭われたのでしょうか。
 我が身に起こったわけではありませんが心配になります。

 そう思っていた一時間目の授業の途中、ようやくその転校生さんが登場するのです。

小鷹「……羽瀬川小鷹です」

 怖っ!
 怖いです! 目を細めて睨みつけるみたいにしながら
 声色はひたすら低く、ぼそぼそとした喋り方です。
 まるで現役の時のうおちゃんみたいです!
 
 髪の毛を染められているようですから、おそらくはヤンキーの方なのかもしれません。
 しかも羽瀬川さんが案内されたのは私の隣の席!
 どどどど、どうしましょう!? ここはやはり、椅子をお引きするべきでしょうか?

小鷹「……? ありがとう?」

透「い、いえ! そ、その、なんと申しますか、クラスの番長を世話する立場と申しましては! 椅子をお引きして待ち受けるのが当然かと!」

小鷹「あ、いや、番長って誰?」

透「は、羽瀬川さんです! そ、その髪! その目付き! その声色! 全てが番長として相応しいと思います!」

小鷹「い、いや、俺、普通の生徒なんだけど?」

透「お隠しいただかなくても結構です! 私のお母さんもお友達も現役の時には怖かったと言います、その道中の羽瀬川さんと申しましては、番長に相応しいです!」

小鷹「いや、この髪の毛は地毛で……」

 羽瀬川さんから説明を受けました。
 あのような恐ろしい目つきも生まれつきのもので、声色も緊張をしてのものだったと。
 髪の毛も染めたのではなく、なんとハーフの方だそうです。

 その普通の羽瀬川さんになんという失礼な行いをしてしまったのでしょう!
 こ、これは!

透「失礼しました! 血判状でも根性焼きでもなんでもします! 申し訳ございません!」

小鷹「いや、それはいいから授業中なんだから静かにしようぜ?」

 授業が終わって。

小鷹「はあ、本田透さん」

透「はい、本田透です! 先程は本当に失礼しました、私はヤ○ザの方かと思いまして!」

小鷹「……はあ」

透「羽瀬川さんとお話して、普通の方だと理解しました、何十分前の自分を殴りたいです、というか殴ります!」

小鷹「いやいや、暴力は良くないから」

透「本当、人を見た目で判断するなんて困った人間です私、ダメダメです……」

小鷹「こっちにも非があったんだから、もうこの話題は水に流そう、な?」

透「温情をかけて頂いて申し訳ありません! 私にできる事ならなんでもしますから、誓いもたてますから!」

小鷹「わかった、じゃあ……そうだな、ちょっと恥ずかしいけど、友達にならないか?」

透「友達? ええ、なります! そのような対等な立場にあって宜しいのかわかりませんがどうかよろしくお願いします!」

 羽瀬川さんは、言葉通りの普通の方でした。
 むしろ、真面目な方のようで授業を受ける態度も真剣そのものです。
 ですがその目つきが、獲物を狙い肉食獣のようで先生もこちらに近づいては来られません。

 どうしましょう。
 話してみると普通の方なのに、私には一体何ができるでしょう。
 
先生「本田、本田? 聞いているのか本田!」

透「へい! あ、いえ、はい、き、聞いています!」

 私の受け答えをクラスの方に笑われてしまいました……。
 隣の席も羽瀬川さんも笑っておられます。
 ですがその表情はまるでサタンのようです……怖いです。

透「……うう、情けないです」

小鷹「気にするな、な?」

透「は、はひ! ええ、気にしません!」

 休み時間からは私の席の周りを……確か、三日月さんでしたか。
 が、グルグルと回るようになりました。
 まるで、何かに気がついて欲しいみたいです。

 ……見当がつきません。
 話しかけたことがない上に、クラスでも有数の成績上位者である三日月さんとは関わりがありません。
 しかも羽瀬川さんもどうやら気がついていないご様子です。

透「あ、あの! 三日月さん!」

夜空「……なんだ?」

透「わ、私に話しかけてくれようとしたんですか?」

夜空「違う、私は誰とも話しかけようとしてはいない」

 ですが、その目は羽瀬川さんの方に向いています。
 こ、これは、もしや三日月さんは転校生である羽瀬川さんとお話したいのではないでしょうか?
 ということは、私は邪魔ということになりますね。

透「羽瀬川さん、私、トイレに行きます!」

小鷹「え、あ、どうぞ?」

透「その間は三日月さんと会話をしていて下さい! それでは!」

透ちゃんはいいこやなー

ところでメル欄はsageじゃなくsagaのほうがいいですよ

 廊下に抜け出して、ドアから中を覗います。
 すると三日月さんと羽瀬川さんは一定の距離を保ったまま微動だにしません。
 あれ? でも確かに、お知り合いになりたいな、という空気はあったような気がするのですが。

 そのまま休み時間の終了を告げるチャイムが鳴ります。
 慌てて、私も席に戻ります。

小鷹「なあ、本田さん、三日月さんって、誰だ?」

透「へあ!? 大事なことを忘れていました!」

 そうでした、羽瀬川くんが三日月さんをしらないのは当たり前。
 その紹介を損なうなんてなんて不出来なのでしょう!

透「あのですね、あの真ん中の席の方の、黒くて長い髪の綺麗な方、いらっしゃいますよね?」

小鷹「んー? ああ、いるな」

透「あの方が三日月夜空さんでして、三日月さんがどうやらこちらをうかがって話しかけたそうにしておりましたので、僭越ながらトークタイムでも、と」

小鷹「話しかけられなかったけど? 本田さんの勘違いじゃないか?」

 そうなのでしょうか。
 私には必死にこちらに訴えかけるような視線を感じたのですが……。

 昼休みです。
 私は手作りのお弁当を広げます。

透「わぁ、羽瀬川さん、綺麗なお弁当ですね、どなたかに作っていただいたんですか?」

小鷹「いや、俺が作った、妹の分と一緒に」

透「妹さんがいらっしゃるのですか! しかもご自身で作られたのですか! はぁー」

小鷹「本田さんは、誰かに作ってもらったのか?」

透「いいえー、私は自分で作りました、一人っ子ですけど」

小鷹「そうなのか、その……本田さんも、上手にできてると思うぞ?」

透「お褒め頂きまして光栄です! その、あのですね、ですが味はうまく出来たかわかりませんよ!?」

小鷹「毎日自分で作ってるんじゃないのか?」

透「あ、そうでした……」
 
 ふと、また視線を感じたのでそちらを見ると、三日月さんがこちらを見ているような気がして。
 ですが振り返ってしまい、廊下に出られるようです。
 私はなぜだか追いかけなければいけない衝動にかられました。

透「ちょっと、羽瀬川さん、私のお弁当を食べていて下さい! 急用を思い出しました!」

小鷹「え? あ、ちょっと……行っちまった」

 私は三日月さんを追いかけます。
 歩いてらしたのですぐに追いつきます。

透「ちょ、ちょっとお待ちを! 三日月さん!」

 歩くスピードが速くなりました。
 やっと追いつけると思ったのですが。

透「す、少しお話が! お話が! 三日月さん!」

夜空「私には無い!」

透「私にはあるので、と、止まっては頂けませんか!」

夜空「断る! 私に関わるな!」

透「お話しを、お話しを聞いて頂くだけでいいですから!」

夜空「あーうるさいうるさい! お前はタカと食ってればいいだろう!」

 タカ……? 私と今日関わったのは、羽瀬川さんだけ……。
 ということは、羽瀬川さんがタカさん!?

透「ダメです! 三日月さんも一緒じゃなきゃダメです!」

夜空「黙れと言ってるだろう、しまいには殴るぞ!」

透「殴って、三日月さんの気が治まるなら構いません! どうかお話しを!」

夜空「ちっ! ここじゃ人目につく、ついてこい本田透」

透「はい!」

 と、案内されたのは屋上へと向かう階段。
 確かにココでは人目につくことはないでしょう。

夜空「で、なんだ、なんで私に関わる」

透「それは、とても羽瀬川さんと仲良くしたそうだったからです!」

夜空「それはお前の勘違いだ、幻想だ、残念だったな」

透「でも、先ほどタカって、それは、羽瀬川さんのアダ名ではないのですか?」

夜空「違う、お前の聞き間違いだ、どうせ空耳でも聞いたのだろう、とにかく私に関わるな」

透「関わります! 聞き間違いでもないし、親しげにしたそうだったのも分かりました!」

夜空「……お前に何がわかる、どうせ分かった気がするだけだろう?」

透「分かった気がするだけじゃ、いけませんか?」

夜空「はあ?」

透「お話してくれないなら、深く関われないなら、分かった気がするだけでも、上々じゃないでしょうか」

夜空「偽善か、反吐が出るな」

透「偽善でもなんでも、私は、私は三日月さんの言葉が聞きたいです!」

夜空「私はお前の話を聞くだけの約束ではなかったのか?」

透「そうでしたが、私は三日月さんの言葉が聞きたくなりました! 聞かせて頂きませんか?」

夜空「断る、お前には関わりのないことだ」

透「関わります! 人と仲良くできる事なら関わります! だって、だって、それはとても素敵なことじゃないですか!」

夜空「うるさい! お前に私の何がわかる! 分かったような気になって説教か! お前は神か何かか!」

とりあえずここまでで一旦終了です。
アドバイスありがとうございます!

乙ー

乙ありがとうございます。
再開します。

透「神ではありません! こんなの、こんなの、誰だってできることです!」

夜空「ああ!?」

透「自分から追いかければ、必ず!」

夜空「おまえ、不愉快な奴だな、不愉快だ、二度と私に話しかけるな、いいな!」

 そう仰られて三日月さんは、私の前から去って行きました。
 二度と話しかけるな……ですか。
 でも、諦めなければきっと、きっと羽瀬川くんともお友達になれると思うんです。

 私は意気消沈しながら教室に戻り、すごすごと自分の席に座りました。
 教室には三日月さんの姿はありません、きっとどこかに行かれたんでしょう。

小鷹「本田さん、弁当、食べないわけ?」

透「羽瀬川さん……私、自分が不甲斐ないです」

小鷹「いや、それはいいからお弁当」

透「はい、食べます……」

 今日は羽瀬川さんと出会えた日だというのに、喧嘩してしまうなんてなんて馬鹿なのでしょう。
 暗い気持ちを抱えながら、家に帰る途中で。

咲「……透君の電波発見」

ありさ「お前携帯電話の位置検索サービスできんじゃね?」

咲「いやだありさ、私ができるのは透君オンリーよ」

ありさ「透はできんのか」

透「うおちゃん、はなちゃん! どうしたんですか? 通っているところからは時間が」

ありさ「サボった」

咲「透くんの憂鬱な電波を感じ取った私はいてもたってはいられなかったわ……」

ありさ「サボりたかったのを透に責任を押し付けんのはやめろ」

 はなちゃんの電波情報はとにかく、この二人は私の中学からのお友達です。
 高校になってから別れる形になってしまいましたが、時折こうして会いに来てくれます。
 三人でこうして帰るのも久しぶりですね、私も自然と笑顔になってきます。

ありさ「んで、透、歩きながら暗い顔をしてたのはなんでだ?」

咲「そうね、電波を」

ありさ「それはもういい」

透「あは、二人にはバレバレですね、どうしてでしょう」

ありさ「ったり前だろ、友人同士、分からないことなんかないってね」

透「実はですね……」

 今日学校で起こったことを二人に話すことにしました。
 べらべらとお話するのは心苦しかったのですが、
 ここで話さないと友情を反故にしてしまうと、思ったからです。

ありさ「なんだそりゃ、構ってちゃんか?」

透「いえ! 私が、私が余計な世話を焼いたせいです、あんなに怒らせてしまうとは」

咲「その家に毒電波を送って」

ありさ「それはやめろ、そんな奴に透が構うことはねえって、ほっとけほっとけ」

透「……放ってはおけません、私がもっと努力をすれば」

咲「それはともかく」

ありさ「ああ、問題はそっちじゃなかったな」

透「?」

咲「羽瀬川小鷹……許すまじ」

ありさ「そうだ、転入初日に親切にするたあ透らしいといえば透らしい、だが!」

透「だが?」

ありさ「恐らくその男が、透に好意を抱くのは近いな」

咲「……ええ、透君はこんなに可愛らしいんだもの」

透「そそそそそ、そんな! 滅相もない! 羽瀬川さんはですね、今時珍しい眼力というかですね、ヤンキーと申しますかね!」

ありさ「そいつヤンキーじゃないんだろ? まあ、喧嘩になったら容赦はしねえが」

透「喧嘩はしちゃダメです! 羽瀬川さんはああ見えて、誠実そうな方なんですから!」

ありさ「言っとくけど、ヤンキーって言ったのは透だからな?」

ありさ「明日にでもそいつの住所を聞いとけ、あたしらが突入して透の友人に相応しいか見定めてやる」

咲「……あら、いいわねありさ、なんだったら、み、なんとかの住所も」

透「羽瀬川さんはともかく、三日月さんの住所は訊けません! それに教えて頂けるかどうか」

ありさ「花島、三日月夜空だ、み、なんとかとか言うな、透がうまくいきゃ、あたしらの友人にもなるかもしれないんだぞ」

咲「そうね、透君が友達になりたいというのなら、応援をしてあげなくっちゃね」

透「あはは……」

 今のところは、そんな可能性は微塵も感じられません。
 ただ少しでも、お友達になれるのなら。
 それはとても素敵だと思うのです。

 なぜならばお友達は。
 こうして一緒にお話しながら帰ることができるのですから。

 いま、三日月さんも、羽瀬川さんも一体何をしておられるのでしょう。
 もしもたった一人で家に帰っているのでしたら。
 手を差し伸ばしたいと思うのは、
 
 私の勝手な満足なのでしょうか。

 翌日。
 登校していた羽瀬川さんに話しかけます。

透「あの、突然ですが、ご住所を教えては頂けませんでしょうか」

小鷹「は?」

透「とても不躾なお願いであるのは分かっています、ですがお友達になった記念といたしまして」

小鷹「ちょ、ちょっと待って、俺と本田さんって……その、友達なのか?」

透「はい?」

小鷹「昨日話しかけて貰っただけだよな?」

透「ふああああああああ!? 私ったらとてつもない勘違いを! 申し訳ございません! 私が勝手に! 勝手にそう思ったのです!」

小鷹「あ、いや」

透「確かに、昨日話しかけただけで友達面とは、とんでもない思い違いでした! 申し訳ございません!」

小鷹「……参ったな」

透「いいえ! 困らずともよいのです、全ては、全ては私の勘違い! 思い上がりでした! どうか先程の言葉を取り消し」

小鷹「はは、いいよ、友達、こんな俺で良ければ」

夜空「ちょっと待て羽瀬川小鷹」

小鷹「あんたは確か……昨日本田さんが追いかけてった、三日月さんだったか?」

夜空「私は夜空と呼び捨てで呼ぶがいい、私もお前を呼び捨てで呼ぶ」

小鷹「あ、ああ、そうか、夜空」

夜空「私には全く関係のない話だが、小鷹、見ず知らずの女に住所を聞かれて、お前は勝手に答えるのか?」

小鷹「見ず知らずじゃないぞ、友達だ」

透「羽瀬川さん……」

夜空「ふん、こんなぼやっとした女の何がいいのだ、それに、友達でもなんでも、急に女に住所など聞かれて怪しいとは思わないのか?」

 三日月さんがこちらに恐ろしく冷徹な視線を向けられて来られます。
 恐ろしく怒っておられるご様子です。
 昨日のことも、もちろんあるんでしょうが……。

小鷹「逆よりはマシだと思うけどな、確かに怪しいけど」

透「わ、わけをお話しいたします! それをお聞き頂ければきっとご満足頂けると思うのです!」

夜空「黙れ本田、お前など、今年度の最初の頃みたいに孤独に過ごしていればいいのだ」

小鷹「孤独って、そうなのか本田さん」

透「はあ、私頭がかなり不出来でして、勉強についてこれず、友達も作れなかったのです」

夜空「ふん、滑稽だな、お前は友だちをつくるよりも先にやることがあるんじゃないのか? そ」

小鷹「そっか、確かにここレベル高いもんな、妹もひいこら言ってたよ」

透「羽瀬川さん妹さんがいらっしゃったのですか!?」

夜空「小鷹お前妹がいたのか!?」

小鷹「なんだその驚きよう。とにかく、いいよ、俺もそんなに頭の良いほうじゃないけど、勉強なら付き合うぞ?」

透「そ、そんな! そんなことまでして頂いて宜しいのですか!?」

夜空「そうだ! この女にそこまでの価値はない、それにだな何を隠そう、私は成績上位者だ勉強の面倒なら、私が見るぞ、小鷹にだけな」

小鷹「いや、俺は自分でやるからいいって、そんなに頭が良ければ本田さんに勉強を教えてあげろよ」

夜空「なぜ私がこんな奴の面倒を見なければいけないのだ?」

小鷹「俺はよくて、本田さんがダメな理由をむしろ教えてくれ」

夜空「……それは、私がコイツを生理的に受け付けないからだ」

小鷹「酷っ!」

透「いいのです、羽瀬川さん、人それぞれ好き嫌いあって当然なのです、私は三日月さんが羽瀬川さんの勉強を見て貰えるのなら」

小鷹「いや、それは本末転倒だろう、というか話題が変わってる。ウチの住所だったら」

夜空「だから少し待てと言っているだろう、この女は何を考えているのか分からない、ひょっとすると詐欺にでも」

透「つ、使いません! 友達が住所を知りたいと!」

小鷹「ん、本田さん、友達がいるのか?」

透「はい、この高校には通っていませんが、中学のお友達が、羽瀬川さんのことをお話したら是非にと」

小鷹「俺のことを話して是非に……ちょっと照れるな」

夜空「待て小鷹、コイツのいうことを簡単に信用するな、友達といってもろくでもない奴かもしれないぞ、ヤンキーとか」

透「うおちゃんはたしかにヤンキーでしたが、もう現役ではありません!」

小鷹「ヤンキーではあったんだな」

夜空「ほら見てみろ、ろくでもないやつじゃないか、不良なんて」

小鷹「まあ、いまはヤンキーではないんだろ?」

夜空「どうだかな、こんなぽやーっとした女、騙すのも簡単そうだからな、裏で何をやっているか」

透「うおちゃんはそんな人じゃありません! 確かに道は踏み外してしまったかもしれません
  でもそこから必死に這い上がって、普通に生活をして、大事な、大事な友だちです!」

夜空「過去に悪行を尽くした奴をなぜ信用するんだ、よっぽどまじめに生きてきたほうが素晴らしいだろう?」

透「そんなことはありません! もちろんまじめに生きるのはいいことです! でも、でも! 悪いことをしない人なんているんですか
  一度も嫌な気持ちを考えない人がいるんですか! 人生の少しの時間道を外れてしまっただけで一生悪い人のままなんですか!」

小鷹「……そうだな、そのとおりだと、俺も思う、会ったこともない人をそんな風に言うのは良くない」

夜空「だが小鷹、こうも考えられるだろう、この女が必死にお前の住所を聞き出そうとしている
    得体も知れない友人が聞きたがっているという理由でだ、こいつを信用するのか?」

小鷹「そりゃあ、家の中で暴れられたら困るけどな? そんなことはしないだろ?」

透「……」

小鷹「そこで黙らないでくれよ!?」

透「うおちゃんとはなちゃんは、羽瀬川さんが私の友達にふさわしいかを見ると……言ってました」

夜空「つまり、友人にふさわしくないと考えればタコ殴りと」

透「否定出来ません……!」

小鷹「そこは嘘でも否定してあげてくれよ! 友達なんだろ!」

夜空「ふん、やはりろくでもない奴にはろくでもない奴が近づくんだ、それでだな小鷹
    この女よりも私のほうが友達がいのある人間だ、なんといっても成績も優秀だしな、勉強もよくできるからな」

小鷹「いや……俺はそんな理由じゃ友達は作らない、夜空もなんでそこまで言うのかはわからないけど、俺は俺がしたいようにする」

透「羽瀬川さん……!」

夜空「分かった、分かった、譲歩しよう、小鷹、私にも住所を教えろ、その日、私も行く」

小鷹「なんで!?」

夜空「なんでもだ、おっと、予鈴だ、また後で聞きに来る、それと本田、あまり調子に乗るなよ?」

透「は、はい! わかりました!」

小鷹「本田さんもそこまでペコペコする必要はないと思うぞ、クラスメートなんだから」

これにてひとまず投下終了です。


なんという俺得ss

なんと、自分得のSSと思ったら。
完結できるように頑張ります。
では、再開します。

 日曜日。
 私はうおちゃんとはなちゃんと一緒に、羽瀬川と書かれた表札の前に立っていました。
 
ありさ「見た目は普通の家だな」

咲「ええ」

透「どういう見た目を想像してたんですか」

ありさ「そりゃあ、目つきがヤンキー級と言やあ」

咲「もっと事務所ビルみたいな」

透「どこの御曹司ですか!?」

ありさ「御曹司ではねえが」

咲「ともかくインターホンを押しましょう?」

透「ああ、はなちゃん! そんなに連打をしてはいけません!」

ありさ「あはは! おもしれえ花島! もっと出てくるまで連打しちまえ!」

透「うおちゃんものせないで下さい!」

小鷹「……はい?」

 インターホン越しに聞こえた声は、ひどく不機嫌そうな声でした。
 その声を聞いて、うおちゃんがちょっと引いてました。
 珍しい光景を見た気がします。

咲「私は花島咲、さっさと開けないと、電波を送るわ」

小鷹「!?」

透「羽瀬川さん! 本田透です! もしよろしければドアを開けていただきたいのですが」

小鷹「あ、ああ、本田さんか、ちょっと待って」

ありさ「第一印象は悪だったが、とりあえず、上がれそうだな」

咲「透君のアップルパイも、無駄にならずにすみそうね」

ありさ「お前のために作ったんじゃねえぞ?」

咲「……」

ありさ「黙るなよ!」

 ひと通りの会話もすみまして、家の中に上がることになりました。
 
ありさ「綺麗な家だな」

咲「そうね」

透「羽瀬川さんは家事も得意だそうなんですよー」

小鷹「まあ、誰もしないから、勝手に」

ありさ「聞いた話じゃ妹がいるそうじゃないか、連れてこいよ」

小鷹「連れ!? いや、人見知りの激しい妹でな、今日は部屋に引きこもってるんだ」

透「そうですよ、無理やり、連れてくるというのも良くないですよ」

咲「そうよ、ありさ、アップルパイがもったいないわ」

ありさ「お前は多く人よりも食いたいだけだろ」

透「でも、このアップルパイは、食べて頂きたいですね」

小鷹「いいよ、後で俺が届け」

透「いいえ! せっかく家に招いて頂いたんですから、私が直接届けに行きます!」

ありさ「おー、そうせいそうせい」

咲「私達は、彼にいろいろ聞きたいこともあるしね、そう……色々」

小鷹「何かほじくらられる!?」

透「では私は、小鳩さんの所にアップルパイを届けに行きますね!」

小鷹「ああ、本田さん!?」

ありさ「はいはい、止めんなプリン頭ヤンキー」

小鷹「魚沼さんはなんですか!?」

透「さて、小鳩さんの部屋は……」

 羽瀬川さんが言うにはちょっと変わっているとお聞きしましたが、
 どのような女の子なんでしょうか。
 ドアをノックします。

透「私、本田透と申します、よろしければドアを開けては頂けないでしょうか?」

 返事はありません。
 もしかして眠っていらっしゃるのでしょうか?

透「あのー、アップルパイがあるのですが」

小鳩「アップルパイ!? ふ、ふふふ……ククク、我の名はレイシス・ヴィ・フェリシティ・煌、偉大なる夜の血族の真祖なり……」

透「そうだったのですか!? これは失礼しました、レイシスさん、扉を開けても宜しいでしょうか?」

小鳩「ククク……構わない」

透「分かりました、レイシスさん、不束者ですが、どうかよろしくお願いします!」

 レイシスさんの部屋は、綺麗に整えられているようで、棚には沢山の本が入っていました。
 それがチラホラと、主にベッドの上などに乗っていて、
 少しウズウズとします。

透「わぁー、その、素敵なお部屋ですね」

小鳩「ほんまに!? あ、ククク……当たり前だ、我の魔力によっていつも綺麗にかたされている」

透「そうなんですかー、いま下にいる友達は、電波を飛ばせるんですよ!」

小鳩「え?」

透「でも、電波と魔力ってどちらが強いんでしょうかね?」

小鳩「は、……ふふふ、我のほうが強いに決まっている」

透「あ、これはいけませんでした、こちら、私の作りましたアップルパイです」

小鳩「う、うむ、ご苦労である、我は食する故な、さっさと出て行くが良い」

透「いいえー、ゆっくりとお話しましょう。私、気になることがあるんです」

小鳩「気になること?」

透「そうです、いまの小鳩さんからは寂しい寂しいという声が聞こえてきます」

小鳩「あ、あんたも電波使いなんか!? あ、我の名はレイシス」

透「小鳩さん、小鳩さんを愛して下さったご両親の付けられた名前を否定するのはよくありません」

小鳩「うっ」

透「小鳩さん、とても素敵なお名前です。レイシスさんでなくても、とても素敵です」

小鳩「うん……」

透「その格好、どなたからの貰い物ですか?」

小鳩「ううん、買うてもらってん、うちのお父さんから」

透「素敵なお召し物ですよね、私にはとても似合いそうもありません」

小鳩「そんなことないと思うんよ? きっと似合う」

和むなー

透「そのドレスは、どなたが洗ってらっしゃるんですか」

小鳩「あんちゃんが洗っとるばい」

透「羽瀬川小鷹さんですね、いい、お兄さんですよね」

小鳩「うん……うちも、うちもそう思う……」

透「ここ最近、独り占めをしてしまいました、申し訳ございません」

小鳩「え?」

透「新生活になって、不安にもなられますよね、考慮が足りませんでした」

小鳩「そ、そんなことなか! 不安なんか感じてへん!」

透「羽瀬川さんは仰ってました、ここ最近小鳩さんの表情が暗いと」

小鳩「あんちゃんが、そんなことを?」

透「ええ、そう聞いて、私はぴんと閃いたのです、小鳩さんはきっと寂しいのでしょうと」

透「二人で暮らしていて、もしももう片方がお話を聞いてくれなかったらどうしよう
  私なら、とても寂しく思います、寂しくないとは思えないと」

小鳩「でも、うち、中二やし、しっかりせんとあかんと思うて」

透「一人ぼっちで寂しいという気持ちには、年齢は関係はないと思います
  ましてや、自分を支えて育ててくれた親御さんはいないのですから」

小鳩「ん……」

透「もっと、甘えてもいいと思いますよ、羽瀬川さんだけではなく、私にも、下にいる私の友だちにも
  人との交流って、そんなふうに生まれるんだと思います、広がると思います」

小鳩「見ず知らずの人に甘えてもええん?」

透「もう、私達は見ず知らずじゃないですよ、お友達の妹さんなら、もうお友達も当然です」

小鳩「友達? 友達なん?」

透「はい、ですから、ここで一人ぼっちでお食事をしないで、下でみんなで食べましょう、大丈夫です
  みんないい人ばかりです」

小鳩「わかった……ちょっと待っとってん、着替える」

透「はい、分かりました!」

 しばらく、小鳩さんは部屋から出るまで私は待っていました。
 そして、ドアから出てきた小鳩さんは。
 金髪に両の目が青い、とても可愛らしい女の子でした。

透「小鳩さん、可愛いです! 大好きです!」

小鳩「わあ! 急に抱きしめんと!」

 しばらく抱きしめた後で下の階に降ります。
 そしてリビングに入ると、

透「は、は、羽瀬川さん!?」

小鳩「あんちゃん! なんで白くなっとると!?」

咲「……美味しい」

ありさ「おー、そいつが小鷹の妹か、美少女だなあ」

小鷹「……お、おお、小鳩、俺なら、なんともない、ちょっと電波が」

小鳩「電波!?」

これで今日は投下終了でしょうか。
感想ありがとうございます。なごみ系の物語ですので、これからもこんなかんじで進んでいきます。

乙ー

実に面白いから期待
透ちゃんと夜空は仲良くなってほしいな。夜空はツンツンだしな透と仲良くなってほしい

奇妙な組み合わせだ
俺得だけど

Q 透君と夜空は仲良く出来るんですか?
A ラスボスは中々、でも、裏ボスもいますから!

Q ところでこの話し終わるんですか?
A 大丈夫です。

Q キャラの登場順は? 
A 小鷹 夜空 小鳩 ケイト マリア 幸村 星奈 理科 の予定です。

それではスタートします。

 お昼ごろになって三日月さんが到着すると、
 場の空気がとても冷えました。

夜空「ほう、これはまたとてつもない組み合わせだな」

ありさ「ああ? 初対面の客に向かってなんだ、テメエどっかで愛想ってもん買ってこいや!」

夜空「ふん、ならば貴様は品ってものをコンビニにでも買ってくるがいい、これだからヤンキーというのは」

ありさ「あ? 過去とはいえレディースの過去背負って立ってられっか? ああん?」

夜空「古臭いヤンキーはともかくとして、そっちの黒い女」

咲「……?」

夜空「不思議そうな顔でこっちを見るんじゃない、黒って自覚はないのか」

咲「……ああ、そうね、そうだったわね、あなたの髪が真っ黒だったものだからつい」

夜空「ついなんだ!」

咲「つい、電波を」

小鷹「花島さんお願いだからそれはやめて下さい」

夜空「全く本田透にはまともな友人はいないのか、おい、そこの」

小鳩「!?」

夜空「おまえは何だ、本田透の一味か?」

小鷹「ああ、俺の妹だよ」

夜空「はあ!? ちょっと待て小鷹、これがお前の妹だと?」

小鷹「なんだその驚きよう、不思議な点でもあんのか」

夜空「全然似てないじゃないか、強いていうなら髪の毛の色くらいじゃないか、顔など面影もないじゃないか」

小鷹「お前もコンビニで失礼ってものを買ってこよう、な?」

ありさ「あたしが言うのもなんだけど、お前性格悪いな」

夜空「ヤンキーよりはマシだ、どうせ過去にも暴力行為で警察の厄介になっているのだろう?」

ありさ「警察が怖くて族なんかやってられっか! 地元警察はあたしの庭だ!」

小鷹「そこは虚勢を張るところじゃないと思います魚沼さん」

夜空「それで、本田透は?」

小鷹「台所で昼食を作ってもらってるよ」

夜空「通い妻気取りか? 一度の来訪で厚かましい女だな」

ありさ「おう、だったらお前は昼食食うなや」

咲「安心して、私が全部食べるから」

小鳩「はなねーちんが言うと、うちらの分まで全部食べてしまいそうじゃ」

咲「ふふふ」

小鷹「そこは否定しましょう? ね? いい笑顔で笑うところじゃないですよ」

夜空「……ところで、本田透は料理はできるのか?」

ありさ「食べないお前が味を心配したってしょうがないだろ」

夜空「馬鹿か貴様は、えげつないものを食べて体調不良になるのを忍びないと心配してやっているというのに」

小鷹「そこは安心しろ夜空、本田さんは俺よりも断然料理上手だ」

咲「……いい、奥さんよね」

ありさ「お前なんか全く料理ができなさそうだもんな」

夜空「それの何が悪い」

咲「食べるの専門なのね」

夜空「人を食い気の張った人間みたいに言うな」

ありさ「今どき料理もできないと、嫁にもいけねえぞ? せっかくの顔が台無しだな」

夜空「ヤンキーに料理ができるのか?」

ありさ「ったり前だろ、誰が親父の食事の面倒を見てると思ってんだ」

夜空「母親ではないのか?」

ありさ「母親がどこの家庭にでも存在すると思ってんなよお前」

小鷹「……それはそうだな」

小鳩「うん」

夜空「は? まあ、お前らの事情は何でもいいが」

咲「……ちなみに言っておくけれど、両親が健在なのは私の家だけよ」

夜空「お前が一番いなさそうだと思った」

咲「あら、いやだ、私の両親はなかなか侮れなくってよ」

ありさ「そうだなー、花島のところの両親は理想の家族って感じだよな」

夜空「子どもが全く理想的じゃないと思うのは私の気のせいか?」

咲「……そうね、あまりまともではないわね」

ありさ「花島も恵も、世間の一般常識からはちょっとかけ離れてるなー」

小鷹「ちょっと……?」

咲「……そうよ、ちょっとよ、電波、またくらいたいのかしら」

小鷹「すみません、すごく勘弁して下さい」

小鳩「はなねーちんの弟も、電波飛ばせるん?」

咲「そんなことは出来ないわ、あえて言うなら、そう……人を呪うことだけね」

小鳩「めっちゃ怖いやないけ!?」

ありさ「安心しろ小鳩、あとは呪詛返しを更に返すことくらいだ」

小鷹「そこ、明るく言うところじゃないですよね?」

夜空「な、なんだこの頭の痛くなる会話は、やはりろくでなしにはろくでなしが集うのか」

ありさ「おうおう、じゃあ帰れや、あたしらは昼飯食ってから遊ぶからよ」

小鷹「人の家をさも自分の家のように!?」

ありさ「ばっかオメー、透に昼食を作ってもらってるんだ、それくらいはしろよ」

小鳩「うおねーちんが作ってるのとちゃうよね!?」

咲「三日月夜空だったかしら、そんな所に突っ立ってないで座ったら? ……怖がってないで」

夜空「私は怖がってなどいない、下劣菌が伝染るのが嫌なだけだ」

咲「ひどく、ナイーブな電波を飛ばしていてよ、どうしてあなたはそこまで」

透「おまたせしましたー、あれ、三日月さん、ご到着ですか? どうぞどうぞお座り下さい」

夜空「断る」

小鷹「いや、壁に背を預けて立ってられるのも困るし、こっちに来て食えよ夜空」

小鳩「美味しい……」

小鷹「本当、美味しいよ本田さん」

透「いえ! とんでもございません! これは羽瀬川さんの家にあったものを利用して作ったもの
  ということは、羽瀬川さんの手柄といっても過言ではないでして」

夜空「そこはその通りだ、家にあるものを使って料理するくらいなら誰でもできる」

ありさ「おう、じゃあ、今からお前も同じ物を作ってこいや」

透「うおちゃん、いいんですよ、誰でもできることですよ!」

ありさ「すまん、出来なさそうな奴がほとんどここに揃ってるんだが、あと花島、食ってないで喋れ」

咲「あら、ありさ、これほど美味しいものを前にしてお喋りに花を咲かせるというのかしら、それは透君に失礼よ」

ありさ「食いながら喋るのも思いっきり失礼だけどな」

小鷹「このめんつゆ、本田さんの手作り?」

透「はい、麺以外は、あー、いえ、付け合せもと申しますか、めんつゆは手作りです、はい」

小鳩「お姉ちゃんは料理上手やんな、あんちゃんよりも上じゃ」

小鷹「それは俺も認めるが、食べながら喋るのはやめような小鳩」

透「ささ、三日月さんもどうぞ」

夜空「毒などは入っていないだろうな?」

透「毒など! そんな失礼なものは入っておりませんでして、はい!」

ありさ「三日月の発言のほうが思いっきり失礼だからな?」

夜空「ふん、この女、腹では何を考えているか分からない、毒などに警戒するのは当然のことだろう」

小鷹「平然と食べてる俺達は何なんだ」

夜空「若い身で毒慣れしている連中」

透「うおちゃんもはなちゃんも毒には慣れていませんよ!?」

小鷹「ついでにいうが、俺も小鳩も毒を食して平然としているほど、根性は強くない」

咲「そうね……飛ばせるのは、毒電波だけ……」

小鷹「はい、ストップ、ストップして下さい花島さん」

夜空「仕方ない、食べてやるか、おい本田透、薬味を用意しろ」

透「はいー、ただいま!」

夜空「言っておくが、ネギみょうがしょうがわさび七味等々は嫌いだ」

小鷹「何用意させるんだよ」

透「卵などはいかがでしょう」

夜空「……卵も苦手だ」

ありさ「思いつかなかったな?」

咲「思いつかなかったのね……」

夜空「断じて違う、もういい、何も入れない」

小鷹「本田さん、まだ考えてるぞ、あと小鳩、無心で食いまくるのはやめろ、俺が夕飯で悩む」

小鳩「だって、うまいんやし……」

咲「そうね……とても美味しいわよね、そう簡単に透君は越えられるとは思わないことね」

小鷹「あれ、なんでか俺が怒られてる?」

 昼食も終わりまして、まったりとした時間が流れるかと、思いきや。

ありさ「なんだこのゲーム機、見たことねえぞ」

咲「これは……ファミコン?」

透「いいえ! スーパーファミコンかもしれません!」

小鳩「これはプレイステーション3じゃ」

ありさ「プレイステーション? 駅でなにするんだ?」

咲「そうね……電車を待つことかしら」

小鷹「3人はゲームとかはやらないんですか?」

ありさ「ゲーム感覚で人は殴ってたが」

咲「ゲーム感覚で電波は飛ばしていたわ」

透「家にゲーム機などという文明の利器は無いものでして! ああ、なんとすごいんでしょう、ふーふーしなくてもいいんですね!」

小鷹「あれ、3人って俺達と同い年だよな」

夜空「原始人か何かか、まったく、これだから馬鹿な人間は」

小鳩「こう、コントローラーを持ってな、技を入力するんじゃ」

透「すごいです! 指の動きが見えません!」

咲「ええ、それを利用すればきっと、呪いを」

小鷹「妹に妙なこと教えないで下さい」

夜空「しかしゲーム機やDVDが揃っているな、やはりインドアで無ければな」

小鳩「妙なところで納得されても嬉しないわ」

透「DVD……? DVDとはなんでしょう」

ありさ「言葉の響きからして、アメリカ製だな!」

咲「あら、アルファベットが並んでいるからといって、そう考えるのは早計よありさ」

小鷹「すみません、地上アナログ放送が終了したのは三人とも知ってますよね?」

透「そうです! 急にテレビがつかなくなってお母さんが怒りました!」

ありさ「ああ、あの時の今日子さんはおっかなかった、赤い蝶の再来かと思ったな」

咲「知っているわ……でも何故か、家のテレビは何もしなくても映っているわ」

小鷹「何受信してるんですかそのテレビ」

透「それ以来家のテレビは映らなくなって、はなちゃんの家でテレビは見させていただいているんですよね」

ありさ「そうそう」

小鷹「すみません、今度俺がお二人の家を尋ねるので、デジタルチューナーというものを買っておいて下さい」

咲「そんなことをしなくても電波を」

小鷹「どこの系列かわからない電波をうちのテレビに乗せないでくださいね!?」

小鳩「ともかく、こうでこうで、こうじゃ」

透「ほほう……こうでこうでこう、あれ?」

ありさ「貸してみろ透、こういうのは無茶苦茶にやっときゃ技が出るんだよ」

小鳩「わー、うおねーちん! コントローラーを乱雑に扱わんといて!」

咲「そうよ、文明の利器は壊れやすいものだわ……」

小鷹「文明の利器を超えた超能力で何とかしようとするのはやめてくださいね」

夜空「ところで、赤い蝶というのはなんだ? 毒虫か?」

透「いえ、お母さんの現役時代の名前です!」

小鷹「本田さん、そんな明るく……」

夜空「げ、現役? お前の母親もヤンキーだったというのか?」

ありさ「いや、今日子さんはそんなヤンキーとか一括りで囲めるようなものじゃなかった、伝説だよ伝説」

咲「そうね、あのデコトラは素晴らしいわ」

小鷹「デコトラとか実在するんですか」

透「今度見に来られますか?」

小鳩「デコトラって美味しいん?」

ありさ「たいへん味はあるな」

小鷹「魚沼さんやめて下さい、小鳩、デコトラっていうのはデコレーショントラックの略でそうだな……
    俺も実際に見たことはないが、華美な装飾を施されたトラックのことだ」

小鳩「へえ……」

透「小鳩さんも是非に見てきて下さい、ご近所でも評判なんですよ」

夜空「悪評の間違いじゃないのか」

透「そんなことはありませんよ、皆さん目を止めて口をあんぐりと開くんです」

夜空「そりゃそうだろう、お前の家はどうだか知らんが時代遅れのデコトラなど」

ありさ「ああん? 時代に合ってりゃ偉いのかよ、昔の歌手も言ってるだろう、時代遅れの男になりたいって」

咲「ありさ、恐らく誰ひとり元の歌手は知らないと思うわ……」

小鷹「お二人は女性ですよね?」

小鳩「お姉ちゃんは、ゲームやDVDを見ないでも平気なんか?」

透「はい?」

小鳩「うち、ゲームは楽しいと思うし、アニメも面白いと思うし、こういう生活からは離れなれんと思ってるん」

咲「それは、少し不健康ね」

ありさ「壮絶に不健康そうな花島が言うな、でもそうだなあ、ゲームとやらはほとんどやったことねえなあ」

透「そうですねえ、アルバイトもありますし」

小鳩「アルバイト?」

小鷹「本田さんも魚沼さんも失礼ですが、生活が苦しいんですか?」

透「そんなことはありませんよ、でも、高校を卒業をしたら一刻も早く就職をして、お母さんに楽をさせたいですー」

ありさ「小鳩、高校生活というのは勉強じゃなくてアルバイトをするために高校に入るんだよ」

小鷹「ただでさえちょっと、学力が心配な妹を労働の道へと進ませないでくださいませんか!?」

小鳩「お姉ちゃんも、うおねーちんも、働くのって楽しいんか?」

透「楽しいですよー、精一杯頑張ってお仕事をしてお給料を頂いて、こんなに素晴らしいことはありません」

ありさ「大変なこともあるけどなー、給料を貰えば、まあ、なんとかなるもんだよ」

咲「そうね、なんとかなるわね……」

ありさ「お前はバイトしてないだろ」

小鳩「労働……」

夜空「お前らはさっきから頭の痛い話を、いいか、羽瀬川小鳩」

小鳩「うん?」

夜空「働くというのは楽しくもないし、素晴らしいことでもないし、良いことでもない、働かなくていいならそれほど素晴らしいことはない」

小鷹「夜空は小鳩に変なこと教えんなよ!?」

夜空「まあ待て小鷹、労働というのはだな仕方がなくてやっているのが大半だ、できるなら働かない方がいい」

小鳩「透お姉ちゃんはどう思うん?」

夜空「そこで本田透に行くのか!?」

ありさ「どう考えても人徳だろ」

咲「そうね、人徳の差ね」

透「そうですね……もちろん、羽瀬川さんが行なっている家事も労働の一種ですね、掃除炊事洗濯、家の中で行えることも
  たくさんあると思います」

小鳩「あ、あんちゃんは仕事をしておったんか!?」

透「もちろんそこに、労働という意識はないことでしょう、ですが毎日早起きをしてお弁当を作り、お食事を作り、学校生活を取り組まれ
  私のようにアルバイトをしている暇など無いかもしれません」

小鷹「安心しろよ小鳩、俺は別に負担だと思って家事をしているわけじゃないからな? そこだけは勘違いするなよ」

透「この通り、無償です。苦にも思ってないかもしれません、それどころか働いているという意識もないかもしれません
  でも、羽瀬川さんも人間です、時には休憩をしたい時も、あるかもしれません」

小鳩「あんちゃん……うちのためにすごく苦労してるん?」

小鷹「あー、いや、そんなことは」

透「でも、そんな苦労を一発で吹き飛ばせる手段があります」

小鳩「ほんまに!? あんちゃんの苦労を吹き飛ばせるん?」

透「はい、お掃除していたり、お料理を作ってくれたら、まず感謝をするんです、ありがとうって
  そうしたら疲れなんて、一発で吹き飛んでしまいますよ」

小鳩「て、手伝ったりしなくてもええんか? 苦労してるならあんちゃんの力になりたいんよ!」

透「小鳩さんには、小鳩さんのできる事があると思います。例えばですね、小鳩さんの周りにたくさんの洗濯物があるとしまして」

小鳩「洗濯物?」

透「はい、そのとてつもない量の前に、小鳩さんは大変不安になるかもしれません、ですが、その足元に転がっている一枚一枚を洗濯を
  して行くしかありません、そうして疲れたら休憩をすればいいんです」

小鳩「足元に転がっておる洗濯物……」

透「一つ一つできること、自分のできる事があると思います、お手伝いというのはそういうものだと、私は思います」

小鷹「悪いな小鳩、だけど、俺はお前が手伝ってくれることよりも、とりあえず勉強を頑張って欲しいと思うよ、俺のことなら心配いらないからな」

小鳩「あんちゃん……」

夜空「綺麗事を言うことだけはいっちょまえだな、本田透、もちろんお前もそれに言うに相応しい人間なのだろうな」

咲「相応しくなければ、言ってはいけないのかしら、三日月夜空」

夜空「当たり前だろう、説得力の欠片もない発言をたらされて嬉しい奴がいるか?」

咲「相応しい、相応しくない、そんなことに囚われて、楽しいかしら……そうだとしたら、滑稽ね」

夜空「はあ?」

咲「相応しいとか、相応しくないとか、秤にかけて、こちらの発言は説得力があって相応しいから納得する
  こちらの発言は相応しくないから聞かない、果たして本当にアドバイスになることは、どちらなのかしら?」

ありさ「言葉ってのはそんなもんじゃねえんだよ三日月、誰の発言だってよ、自分の栄養になるんだよ
    肩書きや地位や立場で決まるもんじゃねえだろ、言葉ってのは」

夜空「世迷言だ」

咲「そうね、そうかもしれないわね、でも、見た目や人種や人柄で発言の全てが決まるのなら、それこそ世迷言だと思うわ」

夜空「ふん、勝手にするがいい、どうせそんな考えなど、世の中の前では潰されてしまうのだからな」

透「小鳩さん、羽瀬川さんは勉強を頑張って欲しいと仰られました、では、小鳩さんのなさりたいことは、なんでしょう」

小鷹「本田さん!?」

小鳩「うちは、うちのできる事をしたい、勉強も頑張る、でも、あんちゃんの力になりたい」

小鷹「小鳩……でもな」

おもいっきり途中ですが、ここでいったん投下終了です。
次回の時刻は未定。

乙ー

この三人の家は時代が止まってるのか?

3人の家は……はなちゃんの家は確実に時間が止まってるかもしれませんww
後の二人はテレビにはあまり興味が無いのでしょう。
特別裏設定はありません。疎いだけで。

では、スタートします。

透「羽瀬川さん、ひょっとして小鳩さんに【間違い】などを犯して欲しくないのですね」

小鷹「間違いというか、なんてーかなあ……」

透「何度間違えても、本人に立ち上がる意思がある限り、私は、間違った道など無いと思います」

夜空「矛盾しているぞ」

小鳩「あんちゃん、とりあえずやらせてもらえん?」

小鷹「仕方ないな、言っとくけど、勉強も忘れるなよ」

夜空「私の発言は無視か」

ありさ「人徳の差だろ」

咲「人徳ね」

夜空「お前ら相応しい相応しくないとか言っておきながら……!」

透「ね、とにかく、頑張ってみましょう、例えそれが一番の道でなくても、です!」

小鳩「あんちゃん、うち頑張るよ!」

 というわけで、色々ありましたが私は家に帰って参りました。

透「お母さん、ただいまです……お、お母さん、どうしましたか!?」

今日子「う、うう……今日は、休日だから透の手作り料理を楽しみに……」

透「ふぉぉぉぉぉ!? 申し訳ありません! 今すぐ! 今すぐ作りますから!」

今日子「透の手料理が食べたい! 今すぐ食べたい!」

透「しばらくお待ちくださいね、いますぐ作りますからね!」

 というわけで料理を作り始めます。
 その最中に電話がかかってきました。

今日子「おお……私と透の愛の巣を邪魔をするたあいい度胸だ!」

透「あんまり、ひどい態度はとらないでくださいね!?」

今日子「うおちゃんやはなちゃんは、気を使って電話しないだろうし、どうせ勧誘の電話だろ、はいはいもしもし? うん? おうおう、また一時間後にかけ直せ、うん」

透「お母さん!?」

今日子「羽瀬川小鳩って名乗ってたな」

透「小鳩さんですか!?」

今日子「へえ、知り合いか、礼儀がなっちゃいねえから、そのまま切るところだったよ」

透「切ってましたよね!? おもいっきり切ってましたよね!?」

今日子「まあ心配しないの、大丈夫、多分一時間後にかかってくるから」

透「多分ですか、多分ですか!? 小鳩さん、人見知りが激しいと聞いています!」

今日子「心配するな、どうしても聞いて欲しければあっちからかけてくる」

透「お母さん!?」

今日子「だいじょうぶだいじょうぶ、さあ、御飯食べる食べる」

透「食べますが、食べますが!」

 先ほどの電話から一時間後。
 電話がかかってきました。

透「今度は私が出ますからね? お母さんは休んでいていいですからね?」

今日子「はいはい」

透「はいもしもし、本田ですが、あ、小鳩さんですね、先ほどはお母さんが失礼しました」

今日子「失礼してないしてない」

小鳩「お姉ちゃんか? お姉ちゃんなんか?」

透「はいー、怖くないですよー、怖いことはありませんよ」

今日子「怖くない、怖くない」

小鳩「あんな、ちょっと聞いてほしいことがあってん」

透「はい、不肖この本田透、積極的にお悩み相談する次第です!」

今日子「不肖じゃない、不肖じゃない」

小鳩「今日、怖い姉ちゃんにあんちゃんと似てないと言われたと?」

透「ああ、そうですね、三日月さんはそんな事を仰ってましたね」

小鳩「うち、あ、家に、そんなに親が帰ってこないし、うちな、よくお母さんの顔も覚えてへん」

透「そうなのですか……それは、お辛いですね」

小鳩「悲しくはないんよ? あんちゃんもおるし、父ちゃんもたまに帰ってくるん」

透「はい」

小鳩「でも、でもな、うち、あんちゃんに似てないって言われたら、もしかしたら」

透「本当は違う方の娘だと?」

小鳩「うん……」

今日子「ちょっと、透貸せや」

透「わ、お母さん!?」

今日子「もしもし、さっきは失礼したね、透の母親の今日子さんだよ」

小鳩「わ、いきなり何で変わると!?」

今日子「小鳩ちゃんだったか、いま透に言ったことをもう一度繰り返してみそ?」

透「お、お母さん、や、優しくしてくださいよ!?」

小鳩「う、うんな、今日、人に家族と似てないって言われてん」

今日子「ほうほう」

小鳩「それを聞いたら、もしかしたらあんちゃ……お兄ちゃんと血の繋がりがないんとちゃうかと」

今日子「ほう、まあ、そりゃ人間誰しも、血の繋がりがないのかと思う時もあるわな」

小鳩「え? 誰しも? 透お姉ちゃんもか?」

今日子「透がそうだったら、私は死ぬ覚悟だ」

小鳩「さっきと言ってるのと違うんよ」

今日子「まあ、気にしない、気にしない」

小鳩「それで、うちがな」

今日子「大丈夫だよ、血の繋がりがあってもなくても、家族は家族だ」

小鳩「え?」

今日子「逆に血の繋がりがあったって、捨てられる奴は捨てられるよ」

小鳩「あっても?」

今日子「そうさ、実際私も、捨てられた口だからね、底まで落ちたさ、うおちゃんから聞いた、赤い蝶の話」

小鳩「伝説になってるってのは聞いてるん」

今日子「あはは、伝説か、まあ、うおちゃんはそう言ってるねえ」

小鳩「笑いながら言うことなん?」

今日子「笑い話だよ、大人になって振り返っちまえば、さ、その当時じゃ、どうにもならないことでも」

今日子「嫌な話をしようか、覚悟はいいかな?」

小鳩「も、もちろんじゃ、頑張って聞くんよ!」

今日子「いま、小鳩ちゃんが感じている気持ちが、例え最低で最悪だって気持ちでもさ、でもまだ、序の口なんだよ
     人生まだまだ嫌なことが沢山あってさ、それでも続いていくんだよ」

小鳩「つ、続いていくと? こんな気分が!?」

今日子「そうさ、でもさ、受け止めてくれる人ってのは必ずいるんだよ、私でもいい、透でもいい、うおちゃんはなちゃん
     お兄さんでもいいさ、自分一人で平気に、まあ、なれる人もいるけどさ」

小鳩「ん……」

今日子「でも、でもね、孤独でいい人間なんて一人だっていやしないのさ、一人で生きていこうなんて思うもんじゃないよ
     まあ、私の娘に相談したのは良い判断だよ、それは褒めたる、でも」

小鳩「でも?」

今日子「お兄さんを、信用してやんな、まあ、透よりかは劣ってるかもしれないけど、でも、真剣に答えてくれると思うよ
     大切に思ってる人から、頼りにされないってのは、悲しいもんだからさ」

小鳩「ん、そう、してみる……」

今日子「あ、でもお兄さんじゃ解決できないなら、いつでもおいで、透の手料理でも食べて、一緒に笑おうじゃない?」

透「小鳩さん、代わりました、透です」

小鳩「ん、お姉ちゃん、今夜はありがとう、それと、ごめんなさい」

透「いいえ! そんなことはありません、こちらこそお力にもなれず!」

小鳩「うち、自分のことしか思ってなかってん、そうやん、あんちゃんがおるのすっかり忘れとった」

透「ああ、でも、羽瀬川さんにもお話しにくいこともあるでしょうし、私に相談するのはいつでも大歓迎ですゆえ!」

小鳩「うん、うん、嬉しい、でも今日は、おやすみなさい」

透「ああ、はい、おやすみなさい……です?」

 そういって電話は切れました。
 お母さんのほうを見ると、おいでおいでをするのでそちらによります。

今日子「透、親ってのはいてもいなくても、不安になることはあるし、寂しいもんだよね」

透「そうですね、でも、私にはお母さんがいますから」

今日子「そうだね……私には、透がいるからね……」

 いつまでもいつまでも。
 ふたりでくっついて、いるのでした。

はい、ここまでです。
途中動画を見てたら、投稿するのを忘れました、失礼しました。それでなくても直書きなのに。
それではまた。

 寝たら調子も楽になりましたので、できうる限り頑張りましょう!
 投下の再開です。

 朝、登校してみると、三日月さんがこちらに近づいていらっしゃるのでした。
 
夜空「本田透、私は使えるものはなんでも使う主義でな」

透「あ、もしや、テスト勉強ですか!? 頑張ります! この命に替えましても」

夜空「違う、屁の役にも立たないお前の頭脳などいらん、別件だ」

透「そうなのですか、なにゆえ私の助力を?」

夜空「うむ、部活を作ろうと思ってな」

透「部活ですか! それは素敵ですね! なんという部活なのでしょう」

夜空「隣人部だ」

透「……隣人……部?」

夜空「『キリスト教の精神に則り、同じ学校通う仲間の善き隣人となり友誼を深めるべく、誠心誠意、臨機応変に切磋琢磨する』部活動だ」

透「わぁー、これも、天下太平の技術なんですか?」

夜空「コピペだがメタネタはよせ」

透「とにかく、その隣人部には私も入部」

夜空「そうではない、ポスター制作と顧問教師の発掘、活動場所の確保をして貰いたい」

透「分かりました、不肖この本田透が見事成し遂げてみせましょう!」

夜空「ふん、まあせいぜいあがくといい、あ、期限は設けないが、愚鈍な人物はあまり好きではない」

透「大丈夫です、私、そういうのは得意です!」

夜空「ではな、任せたぞ本田透」

 もしかしたらこれをきっかけをして仲良くできるかもしれません。
 あ、そういえば、ポスターの紙はどこで貰えるのでしょうか。
 やはり生徒会室ででしょうか。

小鷹「あれ、なんかごきげんだね本田さん」

透「はい! この本田透、命に替えても成し遂げるのです!」

小鷹「まあ……その、頑張って」

 勉強の間の休み時間には、生徒会室は開いていなかったので、
 昼休みになってから改めて訪ねることにしました。

透「では、この本田透、行ってまいります!」

小鷹「どこへ、あとお弁当は?」

透「食べておいて下さい!」

小鷹「ってまたか、またそのパターンなのか!」

 昼休みになった直後に生徒会室に赴きます。
 中には、生徒会長さんが待っていました。

日向「あら? 生徒会室に何かよ……」

透「お仕事中に失礼します! この本田透、部活を作るためのポスターを頂きに参りました!」

日向「そうなの、こんな時期に珍しいわね、ええと、どこにあったかしら……」

透「私もお探ししましょう! 頼み事をしたのは私ですから、このような事務作業は私の得意範囲です!」

日向「いや、大丈夫よ、大丈夫だから、そこに座って待っていて」

日向「へえ、隣人部、どんな活動をするの?」

透「いえー、私は部員ではないので、あ、でも、活動理念は知っていますよ
  キリスト教の精神に則り、同じ学校通う仲間の善き隣人となり友誼を深めるべく、誠心誠意、臨機応変に切磋琢磨する部活動です」

日向「え、どうして部員でない貴女が、ポスターを?」

透「頼まれましたから!」

日向「頼まれたからって、そんなまたいい笑顔で、そういえば貴女、二年生?」

透「はい、そうですよ、二年生です……なんとか、二年生になることが出来ました」

日向「そう、まあ、それとして、草摩由希くんは知ってて?」

透「あ、一年生の時に同じクラスでした、お話する機会はありませんでしたが」

日向「そっか、一年生の時、か」

透「何か頼み事ですか? 私バリバリに頑張ってしまいますよ!」

日向「次期会長として、何度か誘っているんだけれどいつも逃げられてしまってね、
    彼は成績も優秀だし、なにより男子が生徒会長というのもい……って、説明しても詮ないわね」

透「ああ、ここはもともと女子校でしたからね、男の子の数も少ないですしね、確かに草摩くんが生徒会長なら素敵かもしれませんね」

日向「ごめんなさい、確かにそうですが、貴女に話しても仕方なかったわ
    なんだろう、貴女って話したくなる空気が出ているのよね」

透「大丈夫です! お話を聞くことはいつでもできますから! あ、それとポスターの紙ありがとうございました!」

日向「ええ、部活……頑張ってね……といえばいいのかしら?」

 複雑な表情をした生徒会長に見送られながら、教室に帰ります。
 その道中で、あれ? 子どもが歩いています。
 シスターの格好をしておられるので、先生、なんでしょうか。

透「と、その前に教室に戻らなくてはいけませんね!」

 教室に戻ると、早速おべ

小鷹「ああ、本田さん、大変なんだ、夜空が全部弁当を」

夜空「ああ、本田透、お前が食べないというので私が食ってやったぞ、感謝しろ」

透「ああ、そうだったのですか、美味しかったですか?」

夜空「ふん、コンビニ弁当よりもマシだな」

小鷹「どちらの評価にも失礼だぞ夜空」

透「そうですかー、美味しく頂いたのであったのなら、それは良かったです」

小鷹「本当に全部食いやがったからなコイツ、俺が止めてるのに」

夜空「ふん、お前が託された分を私が食ってやったんだぞ、むしろ感謝しろ」

小鷹「どうやったらお前に感謝できるのか、俺には難問過ぎて分からねえよ」

透「あ、三日月さん、ポスター貰って来ましたよ、家に帰ったら、頑張って仕上げたいと思います!」

夜空「そうか、ご苦労だったな、あとは顧問教師と活動場所の確保を忘れるなよ」

小鷹「あ、何の話だ?」

夜空「小鷹にはまだ関係のないことだ、まだ、な」

透「三日月さんは部活をお作りになるんですよー、それを私がお手伝いなのです」

小鷹「おまえ、なに本田さんにやらせてんだよ、自分で作るなら自分でやれよ」

透「いいえー、私もお手伝いさせて頂くのもいいですし、こういうことは嫌いじゃないですし」

夜空「本人がやりたいというのならやらせるなら、そこに救いの手を差し伸べるのが私だ」

小鷹「本田さんを見ていると、本気でやりたげだからな……複雑だ」

 さて、放課後です。
 部活の顧問をしていない先生というのは、この時期にいらっしゃるのでしょうか。
 とにかく職員室に入ってみましょう。

透「失礼します」

教師「本田じゃないか、どうした?」

透「はいー、部活顧問の先生を探していまして」

教師「この時期にはなあ、シスターの中で選んでみたらどうだ? 確か部活を受け持っていない人もいたはずだ」

透「シスターさんですか! それはいいことを聞きました、ありがとうございます先生!」

教師「ところでなんのぶか……行ってしまったな」

 善は急げです。
 私にも時間に限りがあるので、早速探してまいりましょう。
 シスターの方といえば確か。

透「あれ!? 授業を取り持っている先生は職員室にいるはずでは!?」

 あ、でも、職員室に居らっしゃる方はもしかしたら、部活を持っているのかもしれません。
 
透「どこかにお暇そうな方は……」

 校内を歩いていると、シスターの方を一人見つけました。
 この方は確か……高山先生ですね。

透「高山先生!」

ケイト「おっと、うん、なんだい迷える子羊……っていうか、本当に路頭にくれてそうだね」

透「いいえー、実は私、部活の顧問の先生を探しておりまして」

ケイト「部活の顧問かい? 職員室の先生には頼まなかったの?」

透「いえ、職員室には行ったのですが、シスターの先生が手が開いているやもと」

ケイト「はあはあ、そうだねえ、手が開いているといえば、シスターのほうが多いだろうね、ましてや新規部活とあれば、ね」

透「はいー、高山先生はなにか部活を担当していらっしゃいますか?」

ケイト「うんにゃ、でも、面倒くさいなあ……」

透「そこをなんとか!」

ケイト「よしよし、じゃあ条件を出そう、私の妹にねマリアというのがいるんだよ」

透「マリアさんですか」

ケイト「その、マリアには手を焼かされていてね、という表現は適当ではないか」

では、まだ途中ですが投下終了です。
時間が、時間がほしい……失礼いたしました。

乙ー


今さらだが今日子さん生きてるのか……
喜ばしい限りだ

身体がミシミシ言っている気がします。
それでは投下を再開します。

透「そのマリアさんがどうかなさいましたか、もしやご病気ですか!?」

ケイト「んー、私が言うのも何だけど、マリアってのは天才児なわけだよ」

透「天才児さんですか」

ケイト「身内の贔屓目なしで、勉強はガチだね、教鞭振るえるレベル、十歳で」

透「十歳でですかー!?」

ケイト「まあ、そうなんだけども、ちょっくら色々あったもんで、いまは私の手駒……シスター見習いとして
    働いているわけなんだけど、ちーっとも私や他のシスターのことを聞いちゃくれなくてね」

透「はあ」

ケイト「そこでだ、マリアがよく昼寝で使っている部屋を明け渡してもらって、かつ、私の言うことを聞く
    ようにしてくれたら、顧問になってもいいよ」

透「わかりました!」

ケイト「談話室4って書いてあるところにいると思うから、まあ、期待しないで待ってるよ、あはは
    こりゃ、任せる前に言っちゃあいけないね」

 というわけでやってまいりました。
 談話室4と、書いてありますね。

透「失礼しますー」

マリア「うお!? なんだオマエは! 人がポテチ食ってる忙しい中で入るなんて失礼だぞ!」

透「ああ! 申し訳ありません! どうしてもお願いしたいことがございまして!」

マリア「めんどい、やだ!」

透「そこを何とかお願します!」

マリア「うーん、まあ、お願い次第だぞ、変なこと言ったら出て行ってもらうからな!」

透「はい、そのお願いと申しますのは、高山先生の」

マリア「オマエはババアの手先か! このうんこ! 出てけ!」

透「ほへあ!? お、お待ちを! 譲歩を! 譲歩をお願いします!」

マリア「んー、マリア大先生様、どうかお願いしますと言ったら、聞いてやらないこともないぞ!」

透「マリア大先生様、どうかお願いします!」

マリア「このうんこ! まったくプライドってもんがないのかー!」

透「プライド?」

マリア「きょとんってすんなー! なにこのわけのわからないことを聞きましたみたいな表情は!
    ワタシの周りにいた連中はみんな持っていたぞ!」

透「はあ、でも、そんな御大層なものは私には備わっていないものでして」

マリア「プライドがない!? お、オマエ正気か!? 人間じゃないんじゃないのか!?」

透「もし、私にもそのようなプライドなるものが備わっているとすれば、必要のない時には捨てちゃいます」

マリア「捨てる捨てられるようなもんじゃないぞ! オマエ変な奴だな、それでババアが、あんだって?」

透「はい、もしよろしければでいいのですが、他のシスターの先生や高山先生のお手伝いをですね」

マリア「断る! だいたいワタシは、そんなことをするためにここに来たんじゃないぞ!」

透「え、では、何用でこの場所に?」

マリア「え、んー、わかんない! なんかとりあえずここに連れて来られて手伝いをしろって言われた!」

透「それは困りましたね」

マリア「そうなのだ、困ったババアどもなのだ」

透「そもそも何故そうなったのでしょう?」

マリア「ワタシは前まで、お勉強がよく出来たので飛び級をして勉強をしていたんだけども
    天才たるゆえか、嫉妬と妬みの最中に巻き込まれたのだ! それを聞いたババアが
    強制的にここに連れてきたのだ!」

透「ふむふむ、なるほど」

マリア「でも、ワタシは仕事なんかに興味はないし、手伝う気もないのだ、メシもまずいし
     とんでもない所に連れて来られたのだ!」

透「学校でいじめられてたんですね?」

マリア「いじめ? 弱い犬はよく吠えるなあとは思っていたがいじめられてたなんて思ってないぞ?」

透「それは嘘ですよ、人から何を言われても平気じゃない人なんていませんから」

マリア「ワタシは平気だぞ!」

透「そうやって、自分を守ろうとしたんですよね、平気だ、平気だって思うことで」

マリア「オマエはワタシを馬鹿にしているのか!?」

透「誰にも心配をかけさせたくなんか、無かったんですよね」

マリア「誰が心配などするんだ?」

透「それはもちろん、高山先生やご家族がです」

マリア「アイツら心配なんてするのか?」

透「そうですよ、現に高山先生は私をここに来させたじゃないですか」

マリア「ババアどもが心配……そんなことないな!」

透「あります! これは確証できます! でなければマリアさんをここに連れてきたりはしません!」

マリア「意味もわからずに連れて来られたぞ!? 心配なんてするわけない!」

透「それはきっと、マリアさんの気持ちを汲んだからです」

マリア「ワタシの気持ち?」

透「だって、いじめられてないと思ってないマリアさんを、いじめられて嫌がらせを受けているから
  この学園に連れて来たなんて言えないではないですか」

マリア「……」

透「いじめられている、なんて言えませんよね……いじめられてるなんて恥ずかしくて
  もしかしたら傷つけてしまうと思って、ずっと胸の中にしまって、でもそれがバレてしまった」

マリア「だーかーらー、ワタシはそもそも!」

透「バレてしまったら、自分が悪いような気がして、その気持ちすら我慢して
  どうしたら良いのかわからなくて、反発をして、しまうんですよね?」

マリア「分かったような口をきくなー! この、この! だからババアの手先は! 無駄に、無駄に説教臭いのだ!
     説教……くさい……のだ」

透「もしも誰にも頼ることが出来ないなら、私のこの薄っぺらな胸で泣いて下さい!」

マリア「ふん! まあ、オマエの説教は、他のシスターよりも面白かったから、お願いだけは聞いてやるぞ、ババアの手伝いだな」

透「そうです! お手伝いです!」

マリア「オマエのお願いだからしてやるんだからな! 自主的にするんじゃないからな!」

透「はいー、お達者でー」

マリア「んげ! ババア! なんでここにいるのだ」

ケイト「迷える子羊を見に来たんだよ、マリアはさっさと草むしりでもしていろ、私は中にいる生徒と話があるからね」

マリア「ふん! ばーかばーかババア!」

ケイト「はは、驚いた、まさか本当に出てくるとはね」

透「高山先生、聞いてたんですか?」

ケイト「まあね、様子を見るのは当然だろう、これでも、お姉さんなんだからさ」

透「心配だったんですね」

ケイト「はは、まあね、私の気持ちなど分からなくてもいいと思ってたけど
    これもまた、プライドなのかねえ」

透「うわああ! 大変です、私もアルバイトの時間が! アルバイトが!」

ケイト「はは、お達者で、顧問の件は引き受けた」

透「はい、ありがとうございます! では、私はアルバイトがありますので!」

ケイト「ああ、いってらっしゃい、透姉さん」

 アルバイトにも無事間にあいまして、
 それも終わろうとする時間のことでした。

透「よいしょっと」

 このゴミを片付ければ帰っていいことになっています。
 
透「あれ?」

 小さな男の子が座っておられます。
 あ、もしかしたら女の子かもしれませんが。
 こちらに気が付かれてじーっとこちらを見て、

透「あ、申し訳ありません! あまりにも可愛らしい子が座っていましたので
  ついつい見入ってしまいました、小生意気にもほどがありました!」

紅葉「あはは! いいよいいよ、気にしないで、それにしてもボク、そんなに可愛いかな?」

透「もしかして男の方でしたか!? これは大変失礼を致しました! とても格好良いです!」

紅葉「きにしないきにしない、落ち着いて、あなたは、ここにアルバイトをして長いの?」

透「はい、高校に入った頃からはじめまして、もう一年とそこいらと申しますか」

紅葉「えへへ、ここねー、ボクのパパのビルなんだ!」

透「パパさん?」

紅葉「そうー! シャチョーさん! ってやつだね! あ、でも今日はもう帰んないとね、そうだ」

透「はい?」

紅葉「ボクの名前は草摩紅葉、あなたの名前は?」

透「あ、はい、私は本田透と申します、よろしくお願いします紅葉さん」

紅葉「うん! 縁があったら、また会おうねー! バイバイトール!」

 不思議な男の子でした。
 あ、仕事に戻らないと、帰りが遅くなるとお母さんが心配します。

透「あれ、そういえば、草摩……って」

 草摩由希くんと何か関係があるのでしょうか?

 はい、ここで投下終了です。
 まだまだマリアの攻略は完了していませんが、これからこれから。
 それでは、また今度の更新で。

 翌日のことです。

夜空「本田透、部活の案件についてはどうだ?」

透「お任せ頂いた通り、顧問の先生と場所を確保をしました! ポスターも描きましたよ」

夜空「無駄に仕事だけは出来るんだな、ふん、まあいい、顧問と部室を教えろ」

透「はい、顧問は高山ケイト先生でして、部室は談話室4です」

夜空「高山……ケイト? あの、シスターのか?」

透「はい、活動理念や部活のことを説明出来ませんでしたが、バイトもありましたので」

夜空「うむ、よくやった、ポスターは自分で貼っておけ、私は部員候補を探す」

透「はい! わかりましたー!」

小鷹「夜空、今日もなにかやらせてんのか?」

夜空「使えるものはなんでも使う、それが私の主義だ」

小鷹「ナチュラルにもの扱いしてんじゃねえよ」

 休み時間に早速ポスターを貼っていると。

日向「あら、本田透さん、休み時間に熱心ね」

透「はい、隣人部ですよ!」

日向「昨日も思ったけれど、どんな部活動なのかさっぱりわからないわね
    とにかく、できれば私達の仕事は増やさないでね」

透「っ!? はい! もちろんです。問題活動など全く起こしませんでして、ああでも、私は部員ではないので」

日向「ごめんなさい、割と本気で悪かったわ、でも」

透「でも?」

日向「部員じゃないのに、こうしてポスターを貼って、部員集めもしてるの?」

透「いえ、顧問の先生と活動場所は私が探しましたけど」

日向「(立派に部員としての仕事を果たしている気がするのは気のせいかしら……)」

日向「とにかく、まあ、頑張って」

透「はい、頑張ります! 力の限り!」

透「ふふふんふふん♪」

小鷹「何か機嫌良さそうだな、本田さん」

透「ええ、なんとポスターを生徒会長様が褒めてくださったのですよ、これで部員もウハウハ
  三日月さんもアハアハという感じです!」

小鷹「夜空がアハアハ笑う姿は全く想像できないけど、そういえば、本田さんは部員にならないの?」

透「私はアルバイトがありますので、それほど時間は取れないのですよ、それでも良ければ参……」

夜空「悪かったな本田透、我が隣人部は帰りのHR終了から、帰宅時間まで行う立派な部活動だ
    途中帰宅など言語道断だ、有意義な活動のためだ仕方ないな」

透「そうですよねえ、私も奔走させて頂けただけでも嬉しいですし、ああそうだ、羽瀬川さんは入らないんですか、隣人部」

小鷹「え、ああ、まあ、夜空から誘われてるけど、小鳩のこともあるしなあ」

夜空「妹のことなどどうでも良いではないか」

小鷹「よくねえよ、最近はアニメも見ないで勉強もしてるし、兄としては応援したいんだよ」

透「小鳩さん、頑張っていらっしゃるんですね」

小鷹「ああ、あんなに真面目なのはアニメの設定資料集見てる時だけかと思ったけど
    勉強もやろうとすれば出来るんだな、親父の血かもしれないな」

透「羽瀬川さんのお父様はどのようなお仕事をなさっているんですか?」

小鷹「考古学者、あんまり勉強のできるイメージはないんだけどな……」

透「学者先生であられるのですか!? はあ……それは素晴らしいです!」

小鷹「いや、まあ、そこまで尊敬されるのもアレだが、うん」

夜空「とにかくだ、本田透が奔走して作った部に参加しないわけには行かないよなあ、小鷹」

小鷹「ん……確かに、そう言われると、そうなのかもしれないな……」

透「私のことはいいですからはせ……」

夜空「部員不足で廃部にでもなってしまえば、本田透の努力も全部無に帰ってしまうなあ、なあ小鷹」

小鷹「分かった、分かったよ、入ればいいんだろ、入れば、小鳩には帰りが遅くなることを了承してもらってからな」

 昼休みになりました。
 お弁当を食べてから外を歩いていると、ポスターの前に人が経っているのが見えました。

透「わあ、すごいです、自分の作ったポスターの前に人が立っておられます……!」

星奈「ん? このポスター、あんたが書いたの?」

透「そうです、活動理念は私の頭ではよくわかりませんが、とにかく聞いたとおりに」

星奈「その、あたし流に解釈すると、友だちを作りましょうって感じなんだけど、本当なの?」

透「さあ……そこまでは、私はポスターを描いて、活動場所と顧問の先生を頼んだだけですので」

星奈「頼んだだけって部員じゃないの!?」

透「部員じゃないですよ、あ、そうそう、帰りのホームルームから下校時刻まで活動するようですよ」

星奈「部員でもないのに何やってんのよ! あんた利用されてるだけじゃないの、バカじゃないの!?」

透「……?」

星奈「何その言っている意味がよくわかりませんみたいな顔! あんたねえ、プライドってもんがないの?
    利用されて、あとはポイなんて、バカで騙されてる所業よ!?」

透「プライドがないのかとは、昨日も聞かれましたね、縁がありますね」

星奈「のほほんとしてんじゃないわよ! ……まあ、とにかく、友達を作る部活なのね」

透「そうなのかもしれませんね」

星奈「あんたも、利用されないようにヘラヘラしてんじゃないわよ? このあたしが忠告してんだから聞きなさいよ?」

透「はあ、分かりました」

星奈「本当の本当よ! じゃあね!」

 あ、そういえば名前を伺うのを忘れていました。
 自己紹介もできませんでしたね。
 今度は気をつけな……

透「わっ!」

幸村「わー」

 どなたかとぶつかってしまいました。
 でも、随分と軽い衝撃でしたね……と、納得している場合ではありません。

透「大丈夫ですか! お怪我はありませんか! ぶつかってしまって申し訳ありません」

幸村「……いえ、わたくしはなんのもんだいもありません」

夜空へのイライラが肉と幸村で癒されるなー

夜空も早くデレてほしいな

透「すみません、考え事をしておりまして……でも、一年生の方なのに二年の教室になにかご用ですか?」

幸村「はい、うわさをみみにしたところ、このがくねんには、あかいちょうの娘様がいらっしゃると」

透「あ、それお母さんの現役時代の名前です! ここでも有名なんですねえ、お母さんすごいです」

幸村「あはは、ごじょうだんを」

透「冗談じゃないです!?」

幸村「あかいちょうといえば、ヤンキーの中のヤンキー、もうそれは名前を聞くだけで震え出すほどの伝説の存在です」

透「伝説かどうかはわかりませんけど、お母さんは昔そのように呼ばれていましたよ」

幸村「あはは、ごじょうだんを」

透「先ほどと同じように!?」

幸村「わたくしは男ですが、女だてらに数々のぶゆうでんをお作りになった存在、その娘様には誠心誠意お世話を」

透「いいえ、私にはお世話などは必要ないですから」

幸村「あくまであかいちょうの娘様だとしゅちょうなさるのですね」

透「主張ともうしますか、事実と申しますか」

幸村「あかいちょうの娘様というなら、けんかもそうとうにおつよいはず、わたくしとしょうぶをいたしましょう」

透「ええ!? け、喧嘩はよくないですよ! どうにか別の道を探しましょう!?」

幸村「だいじょうぶです、てかげんはいたしません」

透「手加減を望んでいるんですけど!?」

由希「ちょっとまった、そこの男子生徒」

幸村「あなたは?」

透「あ、草摩由希君ではないですか! こんにちは!」

由希「こんにちは本田さん、それと、君、女の子相手に喧嘩は良くない……というか、男として恥ずかしいぞ」

幸村「女顔の方にいわれたくはありません」

由希「いや、ちょっと待って、顔で言うなら君も充分女の子みたいな顔しているから、俺以上に」

幸村「あはは、それはごじょうだんを」

由希「冗談じゃないから! とにかく、本田さんに喧嘩を売るのは止めるんだ、ね?」

 一年生の男子の方は草摩君の説得(?)が通じたのか。
 本日のところは引き上げますという捨て台詞を残されていきました。

由希「本田さん、大丈夫だった?」

透「大丈夫ともうしますか、はい、大丈夫ですね!」

由希「そっか、ならいいんだ。しかし、今時珍しいね、ああいう手法のナンパもあるのか」

透「ななな、ナンパだったんですか!?」

由希「うん、俺はそう思ったんだけど、違った?」

透「さあ……私はお母さんのことを聞かれたのでその通りですと言っても信じてくれなかっただけで」

由希「本田さんのお母さんは有名な人なの?」

透「はい! この辺りでは知らないほどの赤い蝶という二つ名を持つ立派な不良さんでした!」

由希「(そんないい笑顔で……)」

透「あ、草摩くんといえば、昨日、草摩紅葉さんという方と出会いましたよ、ご親戚の方ですか?」

由希「紅葉に? まあ、親戚というか、似たようなものというか、とりあえずは知っているよ、紅葉がどうかした?」

透「いえ、同じ草摩という名字でしたので、もしかしたら弟さんかと」

由希「はは、知り合いだよ、それこそ草摩という名字は結構溢れて……」

透「それはそうでした! 大変失礼を、どうしました? 顔色があまり良くないですが」

由希「大丈夫、ちょっと弟と聞いて思い出したくない物を思い出しただけ」

透「し、失礼しました!? そうですよね、言葉には気をつけなければなりませんよね、私ってば本当おっちょこちょいで」

由希「気にしないで、またあの男子生徒に絡まれるようなら、今度は助けを呼ぶんだよ、それじゃ」

 でも、草摩くんにはそう言われましたが、ぜひお母さんにはあって欲しいですね。
 ええと……あ、また名前を聞くのを忘れてしまいました!?
 私というのはバカです、大バカです!

透「そういえばなんで、廊下に出たんでしたっけ?」

 あ、マリアさんがちゃんとお仕事を手伝っているかどうか見に行こうと思ったんでした。
 ですが、その時間も無さそうです。
 仕方なく教室に変えることにします。

小鷹「どうした、本田さん、表情が冴えないけど」

透「いえ、自分の大バカ加減を思い知りまして……」

 ここで投下終了です。
 ……夜空、デレるのかな。年少組(小鳩・マリア・ケイト・幸村)はちゃんとデレるところまで考えているんですが。
 それでは次回投下まで。

このままだと夜空はタダの嫌な奴にしか見えないからねー

にしても透ちゃんマジ聖人

夜空クズすぎ…


どっちも見てる俺としては期待するしかないな

>>1頑張って完結してくれ!!

年少組と肉のおかげで夜空が一段とクズい…
いいぞもっとやれ

フルバの三人娘も大概おかしいなwww小鷹が完全に土下座キャラになっとるwww
けど今日子さんが息災なだけですっげー安心するわ。

夜空はほら、依鈴(午)みたいな感じで。あちらは声が桑島法子さんですが。
日高日向役の日笠陽子さんですが、ドラマCDの前まで夜空のイメージは日笠さんでした。
では、投下を開始します。

 放課後のことです。

透「では、羽瀬川さんは小鳩さんに許可を取りに帰られるんですね」

小鷹「なんでも、学校じゃ集中できへん、らしい、本読むと頭でも痛くなるのか」

透「小鳩さんはとても可愛らしい方ですからねえ、さぞかし学校でも人気なのでしょう」

小鷹「そういったことは聞いたことがなかったな、小鳩が人気……うーん」

夜空「何をしているんだ小鷹部員、さっさと部活に行くぞ」

小鷹「いや、だから小鳩に許可を取りに行くと言ったぞ?」

夜空「そんなものはメールでもなんでもいいじゃないか、妹のアドレスすら入ってないのか?」

小鷹「妹のアドレスしか入ってねえよ、悪かったな」

透「ああ、お二方とも抑えて抑えて、ああ、そうだ、三日月さん」

夜空「なんだ?」

透「本日入部希望者が来るかもです、ポスターを見つめている方がいらっしゃいましたし」

夜空「何!?」

小鷹「良かったじゃないか、今日はそいつと過ごせよ」

夜空「あんなクズみたいなポスターで部員が集まるとはな……」

小鷹「クズって、描かせたのは自分だろうに」

透「三日月さんも部室に向かっては? 顧問の先生も、部員候補の方もお待ちかもしれませんよ?」

夜空「ふん、お前に指図なんかされないでも行ってやる、感謝しろ本田透」

透「はい!」

小鷹「そこ違う、笑顔で返事するところじゃない」

 家までの帰り道です。
 今日は家に帰ったらすぐにアルバイトです。

透「あれ?」

 道の隅で身体を丸めた……

透「黄色い猫さんです!?」

 なんという事でしょう。
 黄色い縞模様の入った猫さんです。
 可愛らしいです。

透「はいー、猫さーん、こちらを向いてくださーい」

 すると赤い瞳がこちらを向きます。
 ああ、やっぱり可愛らしいですね。

透「ナデてもよろし……」

 手を伸ばそうとした瞬間。
 私の手は見事に猫さんの口の中に、
 放り込まれてしまったのでありました。

透「ふうおあああああ!? いったくないような、いったいような! そんな感じのものでして!」

紅葉「あれあれ、そこにいるのはトール!」

透「あ、紅葉さん! ね、猫さんに、猫さんが!」

紅葉「んー? あ、き……黄色い猫だね! ほら、手を離しなさい、ね、ね?」

 紅葉さんがそういうと、猫さんは口を開いてプイっと顔を背けました。

透「この猫さん、どうしましょう、こんなトコロにいたら車に轢かれてしまうやもしれません」

紅葉「だいじょーぶ! まっかせといてよトール! この子のことはボクに任せて!」

透「ですが、紅葉さんもなにかご用があったのでは?」

紅葉「いいのいいの、トールはこれからバイト?」

透「あ、そうなのです、急いで帰らなければ!」

紅葉「そうそう、ダッシュダッシュ! ゴーホーム!」

 家に帰ってから着替えて、手に応急処置をした後バイト先へ向かいます。
 さあ、今日も元気よく働いていきましょう!

 しばらく働いていると、ビルの中に何方かが入ってこられました。
 でも、スーツ姿の男性はさほど珍しいことではありません。
 むしろよくあることです。

 ほとんどは素通りを。

はとり「失礼、本田透くんというのは、君かな?」

透「は、はい! ど、ど、どうなさいましたでしょうか、道にお迷いですか!?」

はとり「いや、君に用があってきた、災難にも先ほど……猫に手を噛まれてしまったそうだな」

透「やや、何故ご存知で!?」

はとり「紅葉から聞いた、急いで助けろというんで駆けつけたんだ、少し、手を見せるといい」

 私が返事をする前に、手を取られ診察を受けます。
 私の応急処置で貼り付けられたものは取り外されて、お薬を塗られた後に
 包帯でグルグルと巻かれます。

透「こ、これではさぞかし重傷のようです!?」

はとり「重傷なんだ」

 そう言い残した後、スーツの男性はそのまま立ち去ろうとします。

透「ああ、待って下さい、お代を!」

はとり「流れの医者なんだ、気にするな」

透「そうだったのですか!? では、むしろお金が必要なのでは!?」

 といった私の言葉も届かず。
 スーツ姿の男性はどんどんと遠くに行かれるのでした。

透「紅葉さんにも感謝をしなければ」

 お会いできる時にはぜひお代を渡しましょう。

 
 とにかくアルバイトの終わりの時間まで、私は精一杯働くのでありました。 

 家に帰ると。

今日子「あ、透おか……その手! 手はどうしたの? 喧嘩した!?」

透「いえ、その、下校中に猫に噛まれまして」

今日子「ねこぉ? 猫の割りにはすごく重傷そうだぞぉ? 何か隠してない?」

透「隠してないです! バイトの途中で流れの医者さんに出会いまして治療はしてもらいましたが」

今日子「ごめん、状況が胡散臭すぎる、順を追って話して」

 今日の放課後に起こったことをお話します。

今日子「へえ、黄色い縞模様の猫……それって、虎じゃね?」

透「虎ですか!? 小さかったですよ!?」

今日子「いや、どう考えてもタイガーだって、手をまるまる放り込まれたんでしょ?」

透「はいー……」

今日子「まったく、捨て虎なんて、しかも私の娘に……畜生……飼い主め、会ったらただじゃおかねえ……」

透「お母さん顔が怖いですよ!?」

今日子「あ、そうだ、私もねミカン頭の男の子に会ったよ」

透「み、ミカン頭? 妙な被り物をしているんですか?」

今日子「昔から髪の毛がオレンジだったからね、だからミカン頭、いやあ、成長してたしてた、身体は」

透「お母さん、その方とはお知り合いだったんですか?」

今日子「うん、透がまだ小さいころ、ちょっとした話し相手でね、しばらく会ってなかったけど」

透「そうなのですか、オレンジ色の髪の毛……」

今日子「うおちゃんやはなちゃんと一緒に、さんざからかったら、どっかに行っちゃったけど」

透「さんざんいじっちゃダメです!? うおちゃんもはなちゃんも一緒だったんですか!」

今日子「透から学校のことは聞いているけど、なんでも、とんでもない性悪がいるそうじゃないか」

透「しょうわる? どなたでしょう、あ、そういえば今日はお母さんのことを知っている方に会いましたよ?」

今日子「私の?」

透「なんでも、赤い蝶に憧れていると、私が娘だといっても信じて頂けませんでした……お母さんの写真を持ち歩いていれば」

今日子「やめて、私も透も恥ずかしいからやめて」

透「それで、しょうわるとは?」

今日子「うーん、私としては別に性格が悪いことくらいは気にしないんだけど」

透「だけど?」

今日子「透を傷つけたらなあ、ちょーっと、容赦できないかなあ」

透「ダメですお母さん、本日二回目ですが、すごい顔が怖いです!?」

今日子「あはは、まあ、きにしないきにしない、透も嫌なことがあったらいえよお?
     言わなかったらはなちゃんけしかけるからね」

透「さすがのはなちゃんでも心までは読めませんよ!? ちょっと電波を飛ばせるだけで」

今日子「ちょっと電波を飛ばせる人間はこの世に何人いるか……」

 放課後。
 あたしは理不尽な仕打ちにワナワナと身体を震わせるしか無かった。
 ドアを蹴り飛ばしてみても、いくらノックしても中から人が出てきやしない。

ケイト「ちょっとちょっと、いくら理事長の娘でもドアを壊そうとするのはやめてくれないかな」

星奈「なによ、ケイトじゃない、何か用?」

ケイト「せめて、シスターとつけるか、先生と呼んでよ、学校なんだから」

星奈「嫌よ面倒くさい」

ケイト「まあいいけど、どうしたんだい? ここ隣人部の部室だよね」

星奈「なんであんたが知ってんの?」

ケイト「私が部活の顧問だからだよ、部員届け出すんなら、今だよ」

星奈「えー、ちょちょいと書いちゃってよ」

ケイト「顧問に何を頼もうとしてんの、それで? この中には確か二人の部員がいるはずだけど?」

星奈「え、一人しかいなかったわよ? なんか目つきの悪い奴」

ケイト「あれー? 部員は三日月夜空に羽瀬川小鷹で提出されてるけど」

星奈「あ、やっぱり、あのヘラヘラ女はいないのね」

ケイト「透姉さんのことかい? そうだね、アルバイトで忙しいんだろう、私としては
     なんとも残念なことだけどね」

星奈「あんたにしては珍しいわね、他人を褒めるなんて」

ケイト「星奈さんほどじゃないさ、でも、透姉さんはいい人だよ、マリアはまだ懐いてないけど時間の問題だね」

星奈「マリアってあんたの妹ね、引きこもってんでしょ? パパから聞いたわよ」

ケイト「はは、身内の不祥事を指摘されるのは厳しいね、でも、その引きこもってるマリアを出したのが透姉さんだよ」

星奈「他のシスターや先生が説得しても頑なだったのに? へえ、やるわね」

ケイト「まあ、そりゃいいや、とにかく、ドアを開けてあげるよ」

夜空「な、何故開けた! どうやって開けた……って、シスター・ケイトじゃないか」

ケイト「簡単に年下扱いするんじゃない、まったく、新入部員が入ろうとしてるのに鍵を閉めるなんて」

星奈「そうよ、このあたしが入ってあげるって言ってるのに、気安く閉めるんじゃないわよ!」

夜空「シスター・ケイトはこの隣人部の目的はちゃんと教えたじゃないか、そこの女はこの部には不適格だ」

ケイト「入部届提出してもらったらその時点で部員なんだよ、不適格かそうじゃないかは、まあ、私が決めるさ」

夜空「何!? 部長の意向を無視しては!」

ケイト「しかも星奈さんとは、相性が最悪そうだね」

星奈「まあいいわよ、他にも部員はいるんでしょ?」

ケイト「男子生徒だけどね、ところで、その羽瀬川君とやらはどこにいるんだい? そこの冷蔵庫の中?」

夜空「イリュージョニストか! 今日はいない」

星奈「いないの!?」

ケイト「え、幽霊部員なの? 困るなあ、活動理念はまあ、知らんとしても、ちゃんとした部として成立させてくれないと」

夜空「大丈夫だ、心配ない、それにまだ一日じゃないか」

ケイト「その一日目に一人で引きこもってる時点で心配なの、あーあ、せっかく引き受けたんだけどなあ」

夜空「顧問を投げ出すというのか!?」

ケイト「投げ出したくもなるよ、これでも忙しいの」

星奈「あんたよくパパと釣りに行ってるじゃない」

ケイト「私にも休日くらいあるよ、仕事の日は忙しいの」

夜空「ふん、まあ、小鷹部員も、そこの女も部員として認めてやる」

星奈「認めてやるって何よ! 偉そうね!」

ケイト「はいはい、どっちもどっちだから、ああ、いい忘れてた」

夜空「ん、なんだ?」

ケイト「透姉さん、部活に入れてあげなよ? 何考えているのかしらないけど、立役者なんだからね」

夜空「善処はしておく」

ケイト「それじゃあ、後は頼んだよ、ちょいと様子に見に来ただけだから」

星奈「え、あたしこいつと二人っきりになるの?」

ケイト「嫌なら帰ればいいじゃない」

夜空「ふん、そうだ、リア充には必要のない部活だろう?」

星奈「だからあたしは友達がほしいって言ってるじゃない」

夜空「何が友人だ、お前はクラスの男子に囲まれてるじゃないか」

星奈「男子は別よ、あれは下僕。あたしが欲しいのは女友達」

夜空「お前に作れるのか?」

星奈「あんたに言われたくないわよ!?」

ケイト「それじゃあ、頑張ってくれたまへ、私は帰るからね」

星奈「ちょ、ケイト! ケイトー!?」

ここで投下終了です。
次回更新まで。

乙ー

十二支の呪いを夜空にやれば丸くなる確率があるのかな?

夜空が草摩になったら、慊人さんに心を潰されると思います。
アッキー女の子嫌いですからね。もう、子に生まれたとあったら。

 翌日のことでありました。

夜空「小鷹部員、妹の説得には成功したか、してなくてもイエスと言え」

小鷹「偉そうだなおい! 条件は付けられたが」

夜空「は、条件? 小生意気にも、因縁をつけるつもりか、小鷹の妹と言えども」

小鷹「俺も、しまいにゃ入らねえぞ、んで条件というのは、自分も入ることと」

夜空「まあ、妹ならよくないこともないが」

小鷹「あと、本田さんを入れること」

透「私もですか!?」

夜空「ええい、なんだなんだ、本田透は魔女かなにかか!」

小鷹「……何かあったのか?」

夜空「どいつもこいつも本田透本田透と! 本田透村の住人か!」

透「ええ、私が村長さんですか!?」

夜空「そういえば、本田透、その手はどうした、ヘラヘラと笑いながら歩いてて転んだりもしたか?」

小鷹「ヘラヘラって」

透「いいえー、昨日、虎さんに噛まれまして」

夜空「虎!?」

小鷹「え、よく食いちぎられなかったな」

透「子どもの虎でしたので、それにしてもうかつに撫でるは良くないですね、流れの医者さんがいなければ大変でした」

小鷹「本田さんの交友範囲が時折よく分からない……」

夜空「それでな、顧問もお前を入れろとのことだ、まったく、口うるさい奴を選びやがって」

小鷹「真っ当な顧問としては正当な意見だと思うぞ」

夜空「しかも、お前のポスターを見て入ってきた奴が、生意気のなんのって」

小鷹「自虐してんのか?」

夜空「なので、そういう奴対策として、お前を盾にすることを決めた、感謝しろよ」

透「はあ、部活ですか、あまり参加できないですが」

小鷹「おお、入ってもらえるのか、小鳩も喜ぶ」

夜空「ふん、鬱陶しい、ヘラヘラ笑ってるんじゃない!」

透「嬉しいです、私も部活に参加するというのは、はじめてでして」

小鷹「本田さんは、部活参加したことなかったの?」

透「ええ、家事担当は私でしたからね、お母さんにも負担をかけさせたくなかったですし」

夜空「なんだお前は、マザコンか何かか?」

透「お母さんが大好きという点ではそうだと思います、私などをここまで育ててくださって、
  今も、働いて、貰ってますし、本当、早く卒業して働きたいですね!」

小鷹「俺もアルバイトでも」

夜空「おーっと、小鷹部員、言い忘れていたが、男子部員はお前だけだ、そこでだな本田透
   小鷹に相応しい部員を決めて来てもらおう」

透「わかりました! 羽瀬川さんに相応しい相手……相手?」

小鷹「いや、いいんだって、そこは」

夜空「本田透、よく考えてもみろ、男子生徒がいない中で一人孤独な小鷹部員の姿を」

小鷹「勝手に憐れむなよ、可能性はあるだろ友達!」

透「うう、分かりました! 是が非でも羽瀬川さんに相応しい方を選んできます!」

小鷹「本田さんに泣かれているのが一番堪える!」

夜空「というわけで、本田透、期限は今日の放課後までだ、部員探し、励めよ」

透「了解しました! 不肖本田透、羽瀬川さんに相応しい方を探します!」

小鷹「あ、ここ諦めたほうがいい流れだな?」

 はて、羽瀬川さんに相応しい方とはどんな方でしょう。
 そうですねえ……。
 とにかく探してみましょうか。

透「とにかく、お知り合いからお話してみることにしましょう」

 というわけで隣のクラスへと向かいます。

透「草摩さん!」

由希「あれ、どうしたの本田さん、そういえば昨日は災難だったね、猫に噛まれたんだって?」

透「あ、紅葉さんから聞いたのですね、それがなんとお母さんの見立てでは、アレは虎だったのではないかと」

由希「あはは……寅ね、寅だったら、災難だね、でも、猫だと思うよ、俺」

透「猫ですかあ……意見が真っ二つですねえ、あ、そうだ、草摩くん部活に入りませんか?」

星奈「ちょっと待った! あんた、草摩由希を隣人部に入れるつもり!?」

透「あ、えーっと、私本田透と申します、こちらは草摩由希くんです」

星奈「ああ、ありがとうあたし、柏崎星奈って知ってるわよ! 草摩由希って言ったばかりでしょうが!」

由希「ごめん、俺、色々と忙しくて部活は出来そうにないんだ」

星奈「そうなの、そうなのよこの、草摩由希はリア充だから! 生徒会からの信任も篤いから!」

透「羽瀬川さんに相応しい方を入れよと、三日月さんに頼まれたのですが、そういえば柏崎さんはどなたかご存じないですか」

星奈「あの陰険キツネ目に? またこき使われてんの? しまいにゃ呆れられるわよ? あたしとか」

由希「とにかく、男子部員を探すなら、早く行ったほうが良いんじゃないかな、時間も限られてるし」

透「あ、そうでした! すみませんお時間を取らせてしまって、では、他の男の子に頼んできます!」

星奈「せいぜい、私に相応しい人間にするのよ? 下僕にしかなれないような男子じゃなくてね」

由希「柏崎さんも頼むんだ……」

星奈「うるさいわね、黙りなさいよ草摩由希、あんたのおかげで学校一の美少女の座が危ういのよ」

由希「俺を美少女のカテゴリーに入れるんじゃない」

 草摩さんは圧倒的一位だったのですが、他にめぼしい男の方も知りませんし。
 どうし……!?

透「きゃ!?」

幸村「わー」

透「おや、その声は先日の」

幸村「そのこえはきのうの」

透「こんにちは、私本田透って言います。また、赤い蝶さんの娘さん探しですか」

幸村「いいえ、きのうはたいへんしつれいをしました、透のアネキ」

透「あ、ねき?」

幸村「じつはきのう、アネキを後ろから見守っておりました、するとですねヤンキーの方にからまれまして」

透「それは大変です!? お身体は平気ですか?」

幸村「はい、そのヤンキーの方から、アネキはあかいちょうの一人娘だと聞きました、うたがってしまいもうしわけありません」

透「そ、そんな、こちらこそ、覇気がなくて申し訳ありません。お母さんはすごかったそうですから、そう思うのも無理はありません」

幸村「わたくしにできる事でしたら、なんでもいたします、指でも脚でももっていってください」

透「いいえ! そん……あっ! 部活に入りませんか?」

幸村「それがアネキのお願いですか?」

透「はい、談話室4という場所で行われている部活でして、隣人部という名前です」

幸村「かしこまりました、アネキのこころねのままに」

 ペコリと頭を下げていかれました。
 それにしても、わざわざ私を探しに来られるなんて律儀な方です。
 とてもいい方なので、きっと羽瀬川さんともとても仲良しになれることでしょう。

小鷹「あ、本田さん、今日もお弁当を食べないで、身体壊すよ?」

透「聞いて下さい羽瀬川さん! 早速男子部員さんゲットです!」

小鷹「隣のクラスに行ったっていうのは聞いたけど、隣のクラスの人?」

透「あ、一年生のですね……あっ! 名前を聞くのを忘れてしまいました!?」

小鷹「年下か……俺、年下からも年上からも距離をとられるんだよな……」

 放課後になりました。
 羽瀬川さんが小鳩さんを迎えに行かれるということでしたので、私も同行します。

ケイト「あれ、透姉さんじゃないか、隣にいるのは彼氏?」

透「あわわ!? 違います! この方は転校生の羽瀬川小鷹さんです!」

ケイト「羽瀬川小鷹? ああ、隣人部の部員の、君の入部届は見させてもらったよ、随分達筆だね」

小鷹「いや、俺、入部届書いてないんですけどね」

ケイト「……私また問題発言聞いた気がするんだが、聞かなかったことにしよう、透姉さん、ちょっと頼み事があるんだけどいいかな」

透「あ、どど、どうしましょう!?」

小鷹「いいよ、小鳩なら俺が迎えに行くから、この後部室にいけば小鳩も喜ぶだろうし」

透「では、そのお言葉に甘えまして、高山先生、何でしょうか」

ケイト「うん、また妹の件で申し訳ないんだけどね」

透「マリアさんがお仕事をしていないんですか?」

ケイト「サボることはあるけど、以前に比べたら順調、今回はそうじゃなくてね」

透「あ、すみません、話の腰を折ってしまいまして」

ケイト「ん、子どもなら……まあ、私も子どもだけど、よくあると思うけど、あの子の偏食に困っていてね」

透「偏食ですか、でも、子どもの頃ならよくあるのでは?」

ケイト「うん、好き嫌いならいいんだけど、食べないのが困るんだ、お菓子ばかり食べていてね」

透「ああ、お菓子ですね、あの年齢の子だとお菓子は好きですよね」

ケイト「精進料理っていうのがあるでしょ、まあ、シスターもそんな食事をしていてね、マリアはそれを嫌がっているんだ」

透「シスターさんというのは大変なのですね……」

ケイト「無理やり食べさせるのも無理だし、手を焼いているんだ、というわけで頼まれてもらえないかな」

透「私にできる事でしたら!」

 というわけでマリアさんの元へ向かいます。

透「失礼しますよー」

マリア「うおっ、なんだオマエか、何か用か、ご高説でも賜りに来たのか?」

透「いえ、聞きましたよ、マリアさんお菓子ばかり食べられているとか」

マリア「うんこババアに聞いたのか! フン! 言っとくがな、ワタシが食べさせられている食事はまずいのだ
    うんこと一緒なのだ! それならお腹も膨らむお菓子のほうが美味しいのだ」

透「でも、ちゃんと栄養を取らないといけませんよ、あ、お話をしましょう」

マリア「突然何なんだ!?」

透「私もですね、昔は好き嫌いがありまして、それはお母さんに怒られたものです」

マリア「うむ、大人は理不尽なのだ、嫌いなものを食べさせようとする理不尽ババアなのだ」

透「その時にお母さんが話しました、命のお話しです」

マリア「命?」

透「この世の中では、どんなものでも、命が宿っているのだと」

マリア「どんなものでもか!? スゲー! 確かに夜中に勝手に動き出す話は知ってるぞ!」

透「はい、マリアさんの嫌いな食べ物にも、もちろん命が宿っています」

マリア「食事をする前にお祈りはするが、主に主への感謝だがな!」

透「日本では、食べる前にいただきますと言います、ご存知でした?」

マリア「ああ、知ってるぞ、お祈りもしない不精人めーと思う!」

透「あれは、食べ物の命を頂いています、ありがとうございますという挨拶なのです
  食べ物への感謝を忘れず、命のリレーのバトンを受け取っているのです」

マリア「でも、嫌いなものは嫌いなのだ」

透「もし、もしマリアさんが食べ物だったとして、せっかく自分の命を捧げようとした相手に嫌いだから
  苦手だから、と言って捨てられてしまったら、どう思われますか?」

マリア「うっ、命を捧げる……」

透「それは、とても悲しいことだと思いますよ」

マリア「でもでも、まずいのだ! まずいのが良くないぞ!」

透「食べ物は、マリアさんのことが大好きなんですよ?」

マリア「へ?」

透「嫌いな相手に、命を捧げますか? 栄養を捧げますか? 犠牲に、なろうとしますか?」

マリア「しない……確かにしない……」

透「マリアさんが大好きな人から、嫌いです、近付かないでと言われたらどう思われますか?」

マリア「ワタシに大好きな人なんていないぞ?」

透「残念です、私は大好きなのに、思わずギューっと抱きしめたいです」

マリア「ワタシはオマエのって、いいと言う前に抱きつくなー!」

透「人を大好きになることは、人に大好きって言われてはじめて、気がつくものだと、私は思います」

マリア「そうなのか?」

透「そうです、大好きになるのは難しいです、だって、大好きという気持ちがなんなのか、最初はわかりませんから」

マリア「んー、天才のワタシでも、確かにわからないな」

透「私の大好きな気持ち、伝わってますか?」

マリア「よく分からない……けど、ちょっとだけ安心する」

透「そうです、その気持ちです、私の大好きが少しでも伝わっていて嬉しいです」

マリア「そっか、大好きっていうのは、安心するような感じなのか」

透「食べ物はこうして抱きしめなくても、大好きという気持ちを伝えてくるんです、まずいと言っては、可哀想です」

マリア「そんな気持ち感じたこと無いぞ?」

透「そうですね、もしかしたらこれからわかるのかもしれません」

マリア「よくわからないぞ?」

透「食べ物の大好きっていう気持ちを無視して、自分の大好きばっかり押し付けているとですね、
  人間はバチが当たって病気になるんです」

マリア「バチって知ってるぞ、怖いやつだ!」

透「そうです、とてもとても怖い病気になってしまいます、そんなの嫌ですよね?」

マリア「うう……」

透「健康である時には感じないかもしれません、でも、食べ物のバチはやがて蓄積していって」

マリア「蓄積していって?」

透「死んじゃいます」

マリア「死ぬのはヤダ! 怖いぞ!」

透「人はいずれ死んでしまいますが、けれど……けれど、やり残したことや、出来なかったことがあっては嫌じゃないですか
  それに、死んでしまったら周りの人が泣いちゃいます」

マリア「ワタシが死んでも誰か泣くのか?」

透「私はすごく泣きますよ、ケイトさんも他のシスターの先生もです」

マリア「ウッソだー! ババア達が泣くわけないぞ」

透「泣きますよ、だって、マリアさんにたとえ嫌われても、マリアさんに長生きをして欲しいから
  苦手なものを食べさせようとしているんですから」

マリア「もしかして、全部ワタシのためなのか?」

透「ええ、もちろん、自分のために人に嫌いなものを食べさせようとしますか? そんなの何の得にもなりません」

マリア「そう言われてみれば確かに……」

透「人の愛情も、冷たくしていると、バチが当たっちゃいますよ?」

マリア「わ、分かった、でも、ババアのためじゃなくて、バチが当たりたくないから食べるんだからな? ホントだぞ!」

透「それは良かったです、きっと他の」

ケイト「ババアで悪かったなあ、マリア」

マリア「んげー!? そういえばコイツがババアの手先だって忘れてた!」

透「あ、高山先生落ち着いて……」

 とりあえず、苦手なものを食べる約束をマリアさんはしてくださいました。

透「そういえば、部活はどうなっているでしょうか」

 マリアさんのいた隣の部屋が部室です。
 なぜだか不思議なほど静かなのが気になります。

透「失礼しますー透……」

小鳩「お姉ちゃんじゃ! お姉ちゃんが来てくれおった!」

幸村「アネキ、来てくださいましたか」

星奈「はあ、やっときたわね本田透、全く使えないわねえ」

夜空「使えないのは同意だが、お前もちょっとは口を慎め乳牛」

星奈「誰が乳牛よ! このキツネ目があ!」

小鷹「本田さん……本当、来てくれてよかった、俺にはどうしようもなかった」

 なんだかとても大変な状況であったようです。

 ここまでで投下終了です。
 さあ、ここから小鷹君はハーレムラブコメの主人公になれるのでしょうか!
 なる予定なんですが、なんだろうこの不安感。

どっからどう見ても部員その1レベルの存在感ですね>小鷹

現在、少し気分が低下しているので、しばらく更新が途絶えます。20日くらいには復帰したいなあ、と。

何があったのかは知らんが元気出せよ、待ってるからなー

時にはお休みも必要だよね

ご心配をお掛けしまして申し訳ありませんでした。
それでは投下を開始します。

全裸待機してた

 日曜日です。
 私は少々緊張をしております。
 なぜならば。

今日子「おお、ここが透をたぶらかした、羽瀬川小鷹君の家か」

透「たぶらかされてなどおりませんよお母さん!?」

 そうなのです。
 今日はお母さんと一緒に羽瀬川さんの家にやって来ました。

ありさ「しっかし、相変わらずでかい家だよな、考古学者って儲かるのか?」

咲「……そうね、きっと、お話の都合上じゃないかしら?」

 はなちゃん、どこかを見ながらいうのはよしてください。
 その視線の先に何があるのか私は少々不安です。

ありさ「よし花島! 今日子さんもいるんだ、遠慮せずぶちかましてやれ!」

咲「もちろん、私のピンポンの腕前、見せてあげるわ」

 家の中に入ると、幸村さんが出迎えてくれました。
 正座をしながら、こちらに向かって頭を下げて。

幸村「ようこそいらっしゃいました、アネキ、あ」

ありさ「あ、お前は透をストーカーしてた奴じゃねえか、なんでここにいるんだ」

幸村「なにゆえかともうしますと、わたくしはアネキの舎弟ですゆえ」

今日子「あれ、うおちゃん舎弟作ったの?」

ありさ「違いますよー、透です透。透の舎弟なんだって」

今日子「おお!? さすがは私の血を引いていることはある、さすが私の透!」

透「あはは……幸村さん、ご紹介しますね」

 というわけで、お母さんを含めてみんなを紹介します。

幸村「なんと、あなたさまが、あかいちょう」

今日子「あっはっは、しかし私に憧れてねえ、ちょいと細腕過ぎやしない?」

ありさ「女みたいに細っちいもんなあ」

幸村「このような細腕でも、アネキを慕う気持ちは本物、どうかよろしくお願いします」

咲「……細腕なのは当然ね、この子、女性だわ」

透「ふええ!?」

ありさ「おいおい、まてよ花島、今も男子の制服だし、この前見た時もこの制服だったぞ?」

咲「……気になるのなら、胸を触っても構わなくってよ」

今日子「それじゃあ遠慮なく」

咲「私じゃないです今日子さん」

今日子「ごめんごめん冗談、透、おっぱいを触ってみな!」

ありさ「なんか面白そうだ、やれ、透!」

透「あ、あの、それでは、胸を触っても宜しいですか?」

幸村「アネキが望むのでしたら、わたくしは構いません」

 それでは触ってみます。
 制服越しとはいえ、男性の胸を触るというのは少々緊張しますね。

透「……あれ?」

今日子「どうしたの透」

透「いえ、確かに柔らかいと、男性の胸を触ったことがないのでわかりませんが、まるで女性の胸のような」

幸村「失礼しましたアネキ、わたくしはまだまだ修行不足で胸板が厚くないのです」

ありさ「ちょいと待ちな……ん、確かに、胸があるぞおい! お前女じゃないか!」

咲「だから言ったでしょう」

幸村「ごじょうだんはよして下さい、わたくしは正真正銘の男子です」

ありさ「いやいや、胸あるって、あーでもちょっと待て」

透「どうなさいました?」

ありさ「いや、確か性同一性障碍だったか? 男の身体に生まれてきても精神的には女だと思っているとか」

今日子「確かに、そういうのはあるね、はなちゃんはどう思う?」

咲「……そういった電波は感じられない、あるとすれば育てられ方」

透「育てられ方とは?」

幸村「わたくしは男子として恥ずかしくないように育てられてきました、このように見た目こそ
    中性的かもしれませんが、中身は立派なもののふです」

ありさ「……育てられ方、か」

今日子「ねえ、幸村くんさあ、親に対してなにか思うことある? 嫌だとか、そういうの」

幸村「不満はありません、わたくしをここまで育てて頂き大変ありがたい事と思っております」

今日子「仮に自分が女の子で、親の勝手で男子として育てられたとしても?」

幸村「親の勝手とは、どのような意味でしょう、わたくしにはよくわかりません」

今日子「そっか、幸村くんは親を尊敬しているんだね、でも、それはまやかしだよ」

幸村「まやかし?」

今日子「親っていうのはさ、例えばお金を与えて、食事させて、学校行かせるのだけが親じゃない
     物で満足させるような親は、親としては落第さ」

幸村「わたくしの母は、愛情を込めてわたくしを育ててくれましたが?」

今日子「愛情は大事だ、私も透を愛情を込めて育ててきたつもりさ、私の自慢の娘さ」

ありさ「そして、あたしらの大事なダチだ」

咲「……ええ、透君は大事な友だちね」

透「お母さん、うおちゃん、はなちゃん」

幸村「確かにアネキは尊敬できる立派な方ですが」

今日子「うん、うちの娘をそう思ってくれるのは嬉しい、でもね、幸村くんは女の子だ、女の子を男の子として育てる
     たとえそれが愛情なのだとしても、どう思われるかな?」

幸村「仮にわたくしが女子だとして、男として育てられてきたとしたら……確かに周囲は何を考えているのかと
    思われるかと思います」

今日子「その通り、もちろん周囲の目を気にしない生き方もあるし、幸村くんが男の子だと思うのなら、それは止めない
     だけど、一度聞いてみるといい、自分の性別ってものを」

幸村「はい、かしこまりました、大姉御。みなさまがたも、家へとおあがり下さい、お茶菓子をご用意しますゆえ」

ありさ「今日子さん、大姉御だって、大御所みたいっすね」

今日子「私はてっきり親分とでも呼ばれるかと思ったよ」

小鷹「で、俺は何故正座させられているのでしょうか」

 そうなのです。
 家に上がって早々、リビングではお母さんとうおちゃんによる尋問が行われていました。
 ちなみにはなちゃんと小鳩ちゃんは幸村さんが用意してくれたお茶菓子を食べています。

今日子「それはもちろん」

ありさ「お前のヘタレっぷりにはほとほと呆れ返るぜ、金玉ついてんのか、ああん?」

小鷹「今日は、隣人部の活動について来られたんですよね?」

今日子「おうおう、コイツは全然わかってないねえ」

ありさ「いっぺんシメてわかりさせましょう、おい、花島、出番だぞ」

小鷹「すみません、なんでも言うことを聞きますので花島さんだけは勘弁して下さい」

今日子「さて、冗談はここまでにして、小鷹くんは隣人部についてどう思う?」

小鷹「目がマジだったんですけど、隣人部ですか。そうですね……変な部活だとは思いますが」

ありさ「テメエ透が尽力して作り上げた部活が変な部活だァ? その鼻っ面折ってさらに見られない顔にすっぞ」

小鷹「魚谷さんは、冗談なのかマジなのかわからないので勘弁して下さい」

今日子「透から聞いたよ、その隣人部、随分個性的なメンバーが揃ってるそうじゃないか」

小鷹「そうですね(さすがに花島さんを越える人はいないけど)」

咲「……ふっ」

小鷹「俺の心読みました!? 読みましたよね!?」

ありさ「しかも、部員がいるのにろくに会話もないとか、んなとこに透放り込んでただで済むなよ?」

小鷹「本田さんを部員にするのを推薦したのは俺じゃないですよ!?」

ありさ「どっちでもいいんだよタコ! 男ならよ、状況を改善するとか考えるもんだろ、透なんか考え過ぎで熱出したんだぞコラァ!」

透「いいえ! あれは自分の体調管理の至らなさがありまして!」

小鷹「あ、この前休んだのはそういう……」

今日子「というわけで、一番責任がありそうな小鷹くんにぜひ挨拶をと思ってね、なあ、うおちゃん」

小鷹「理不尽だ……理不尽だ……」

ありさ「前に会った、三日月夜空だっけ、お前分かってっか?」

小鷹「何がです?」

ありさ「どう考えてもお前を意識してる、てか、その隣人部もどうせお前のために作ったんだろ」

咲「そうね、彼女ならそれくらいやりかねないわね」

小鷹「夜空とはこの前一回しか会ってないですよね!?」

今日子「いや、透の話を聞いていると、そうとしか思えないのさ、直接会ったことはないけど
     どうしても必要な理由があって部活を作ったみたいだね」

ありさ「しかもその性悪、透を利用するとか許さねえ、今度家にバイクで突っ込んで」

咲「あら、だめよありさ、証拠が残るわ」

小鷹「本気だ……!」

今日子「その小鷹くんは理由がわからないわけだねえ、夜空さん、そうだなあ、ソラちゃんとでも呼ぼうか」

小鷹「……ソラ?」

ありさ「お、なんか思い出したぞコイツ、CM入れとくか?」

透「うおちゃん!?」

小鷹「いや、確かにソラっていう奴ですよ、夜空とは関係なく、幼なじみというか、親友がいました
    でもそいつ、男ですよ?」

透「それが女性だったという可能性はないのでしょうか」

小鷹「俺、そいつと殴り合いとかもしたし、喧嘩っ早いし、夜空とは重なる気配がないな……」

ありさ「小鷹、おまえ三日月の携帯の番号とかしらんの? ちょっとかけてみろよ」

小鷹「かけても出ないと思いますけどね」

透「三日月さんならきっと出ると思いますよ、もうそれは、すごい勢いで」

今日子「(透が感じ取るんだから相当だね)」

ありさ「(ニブチンなんですかね?)」

今日子「(それはわからないけど、愛情を向けられるのに慣れてないのかもしれないね)」

ありさ「(確かに、いままでヤンキーだったら、突然出てきて愛情を向けられても理解しづらいかもしれませんね)」

咲「あら、小鳩ちゃん、ハメ技はこうするのよ」

小鳩「前までコントローラーを持ったことすら無かったのになんでそんなに上手くなっとるん!?」

ありさ「よし、じゃあ小鷹、第一声は久しぶり、ソラ、で行け」

小鷹「これで違ったら俺がすごい恥ずかしいんですけど」

今日子「大丈夫大丈夫、違ったら小鳩ちゃん貰って行くから」

透「お母さん!?」

小鷹「……もしもし、ソラか。その、タカだけど」

今日子「どう来るかね」

ありさ「楽しみっすね、どっちに転んでも」

透「うおちゃんも、それほど楽しんじゃダメですよ!?」

ありさ「大丈夫だって透、あたしが推測するに、間違いなく三日月は小鷹を意識してるし、その要因も今聞いた
    間違いないって」

小鷹「やっぱりソラだったのか、ん? なんで思い出したかって、それ……」

今日子「ポチっとな」

小鷹「ああ、まだ話の途中!?」

ありさ「アホか! お前はアホか!」

小鷹「な、なんでですか!」

ありさ「お前せっかくの幼なじみの再会だぞ、そこに他者の名前を出すんじゃねえよ!」

今日子「そうだぞ小鷹くん、自分の痛みに鈍感なのはいいけど、人の気持ちを推し量れないのはダメだ」

咲「……例えるなら、恋人と話す時に他の女の名前を出すのと同じ行為ね」

小鷹「こ、恋人!? そんなんじゃないですよ、友達ですよ」

咲「例えだと言っているでしょう」

透「三日月さんは、羽瀬川さんの出会いから別れまでを覚えていて、ずーっと待っていたのでしょうね」

今日子「まあ、そのために私の娘を利用したのは許せないから今度落とし前は付けてもらうけど」

透「お母さん!?」

幸村「さすが大姉御、逆らうものには報復を、りっぱです」

透「幸村くんものせないで下さい!?」

 色々ありましたが、帰り道です。

透「ですがお母さん、なぜ三日月さんのアダ名がソラだと分かったのですか?」

今日子「いや、私がアダ名つけるならソラちゃんだなって、バッチリ当てはまるとは思わなかったけど」

ありさ「でも今日子さん、これであの小鷹がどうしようもないニブチンだと、透にダメージが」

透「え、なんで私にダメージなんですか、うおちゃん」

ありさ「だって、明らかに嫌がらせしてんじゃん、透に、小鷹に話しかけただけだぜ?」

咲「転校初日に隣同士になって会話をしたら恨まれた、とんだ迷惑者ね」

透「はあ、でも、隣人部には沢山の部員も集まりましたし、これから仲良くなればよいのですよ」

今日子「なんでも一人で背負い込むじゃないぞ、透、でないと、また小鷹君がお説教を受けるからね?」

透「それはいくら何でも羽瀬川さんが理不尽です!?」

ありさ「(これで小鷹が透に惚れようもんなら)」

咲「(下手したら怪我をさせられかねないわ……)」

 翌日になりました。

幸村「お迎えに上がりました、アネキ」

透「おはようございます幸村さ……せ、制服! 制服が!?」

幸村「はい、昨日母上と話し合いました。わたくしの性別についての話も、男として育てられた理由も」

透「それでは幸村さんはやはり?」

幸村「はい、母上との間に確執などはありません、今も尊敬しておりますし、感謝もしています。ですが、わたくしの身体は女子
    なれば、女子として過ごすのが当然のこと、もちろん強くなることは今後も忘れてはいませんが」

透「そうなのですか、ところで純粋な疑問なのですが、なぜ、私の迎えを?」

幸村「はい、今のことを一番に報告したかったのと、わたくしの目標とすべき方はやはりアネキだと」

透「お母さんじゃなくてですか?」

幸村「はい、アネキです、それにアネキといると胸がどきどきするのです」

透「大変です、ご病気では?」

幸村「いいえ、これはとても良いものです。どうかこれからもよろしくお願いします、アネキ」

 あたしが部室に入ると、先週まで男子の制服を着ていた奴が女子の格好をして、
 夜空と小鷹が異様に仲良くなっていた。

星奈「え、ごめん、この状況どういうこと、本田透」

透「幸村さんは女の子だったんですよ」

星奈「女顔だとは思ってたけど、まあ、それはいいや、で、夜空と小鷹はなんで仲良くなってるの?」

透「幼なじみだからですよ」

星奈「はあ!? だって、今までそんな仕草全然なかったじゃない、なんでまた突然」

透「昨日色々とありまして」

星奈「ありすぎでしょ、いや、ありすぎでしょ、何、人間ってこんなに簡単に変われるもんなの?」

透「あはは」

星奈「いや、あははじゃない、そこ笑うところじゃない、てことは、あたし一人、誰とも関わりがないじゃないの!」

 そうすると本田透は困ったようにふにゃふにゃとした顔を作る。
 しょげたいのはこっちの方よ。
 でも、やられっぱなしのあたしじゃないわよ、絶対友だちを作ってやるんだからね。

ここで投下終了です。
ここからようやく、僕は友達が少ない方面の物語に入ってきます。

乙ー

乙ー
理事長としぐれさんの絡みとかみてみたいな

知らない間に夜空さん大勝利じゃないですか、やったー!

あれ、もうはがないの問題ってだいたい解決してない?

ざ、残念ながらぐれさんは未登場なのです……今後登場予定は、今までに登場済みのメンバー以外だと
杞紗・夾……くらいかな、りっちゃんさんや依鈴とかマブダチトリオとか登場させたいなとは思うんですけどorz
というわけで、投下開始です。

 ある日の昼休みのことです。

夜空「本田透、お前邪魔だからどっか行って食え」

小鷹「そんな言い方はないだろうソラ」

夜空「私達のような真の友情を深めた友人同士を邪魔するものは死より重い罰を与えられるものだ」

小鷹「ないって」

透「いいえ、構いませんよ、どうぞ私の席をお使い下さい」

夜空「なんかばっちそうだからちゃんとハンカチでふいとけよ」

透「あ、そうでしたね、ちゃんと拭いていきませんと」

小鷹「本田さん……」

夜空「早くしろ、10秒以内だ」

透「お任せ下さい、私はビルの清掃員なのです、掃除はお手のものです!」

 というわけで教室を移動します。
 そういえば、隣のクラスの柏崎さんはどうしているでしょうか。

透「柏崎さん」

星奈「あ、何よ?」

透「一緒にお弁当を食べませんか?」

 クラスでざわめきが起こります。

星奈「い、一緒にお弁当!? ま、まあ、してあげなくもないけど」

透「ありがとうございます、あ、どなたか席を貸して頂けると助かるのですが」

男子A「どうぞ! 星奈様のご友人でしたら!」

透「ありがとうございます」

星奈「……それで、なんであんたこのクラスに?」

透「羽瀬川さんと三日月さんのお邪魔をしたくなかったのです、はい」

星奈「え、あいつら恋仲なの? 妙に仲良くなったと思ったけど」

透「友人同士だとは聞きましたが、あ、お二人は幼なじみ同士なんですよ」

星奈「幼なじみねえ、それでこの学校で再会して、仲よくねえ」

透「素敵ですね」

星奈「でも、最初の方の小鷹は気がついていない風だったけど?」

透「それは色々と事情がありまして……」

 この事がもしも、三日月さんに知れたら、恐らく大変なことになってしまうでしょう。
 柏崎さんには悪いですが、黙っておきましょう。

星奈「アイツ鈍そうだもんね、大方、誰かに脅されたんでしょ」

透「なぜそれを!?」

星奈「脅したんかい! って、ツッコませないでよ」

透「申し訳ありません……」

星奈「ところで、その弁当あんたの手作り?」

透「そうです、柏崎さんもお弁当は手作りですか」

星奈「作れるか! こんな懐石料理みたいなの作れるか!」

透「そうですか? 夜中に仕込みをしておけば作れないこともないですよ」

星奈「そう、夜中に仕込みをってやるか! やらないわよ! なんであたしが料理なんか」

透「料理を作れるようになれば、お友達を作れるかもですよ?」

星奈「友達……ふ、ふん! なんでこのクラスのバカ女子なんかに料理なんか振る舞うのよ」

透「そうでなくても、料理は楽しいですよ、誰かのためになることって、嬉しいです」

星奈「はあ、そんなもんなのかしらねえ」

透「そうで……」

幸村「ここにおられましたか、アネキ」

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