全ての始まりを語るのはやる夫には無理だお……パニック初期後半辺りのとーちゃんとの別れを話すお。
VIP駅 ニュー速タウン行き乗り場
やる夫「とーちゃん……しっかりするお!今すぐオイラが……」
匂坂 郁紀「やる夫、すまない」
とーちゃんは医者だったお。
医者だったからパニック初期前半辺りからとーちゃんは準備をしていたが……まさか黒い雨を浴びた人間がゾンビもどきになるとはとーちゃんでも予想出来なかったお。
郁紀「やる夫……俺は感染している」
やる夫「そんなハズないお?!とーちゃんは黒い雨に触れたことは」
郁紀「違うんだ、ほら」
やる夫「……ッ」
とーちゃんが指差した左の前腕に引っ掻き傷があったお。
VIP駅に着く前にゾンビもどきに襲われたやる夫を庇って付いた傷だお。
黒い雨は一定量、肌に触れることで人間を死に至らしめ……目や口と身体に傷がある場合はそこから感染確実だお。
やる夫「とーちゃん……すまないお……やる夫が不甲斐ないばっかりに」
郁紀「気にするな。やる夫が無事ならそれでいい」
とーちゃんはいつもと同じように優しい口調でやる夫なぐさめてくれたお。
郁紀「やる夫、最期になるかも知れないからこれを渡しておく」
やる夫「これはなんだお?」
郁紀「封筒の中を開けてごらん」
ボロボロの封筒の中には赤茶髪をした何故が左のもみあげだけ長い14歳ぐらいの少女が、白い毛布に丸まってねている写真が入っていたお。
郁紀「その子が……やる夫の父親違いの妹だ」
パニックが始まる前まで知らなかった父親違いの妹の存在をこのとき始めて写真でしることになったお。
やる夫「とーちゃん、いったいこれは」
郁紀「今まで黙っていて本当にすまない」
やる夫「もしや」
このときやる夫の頭には幼い時に病死したかーちゃんの顔が浮かんだお。
やる夫「かーちゃんは……本物のかーちゃんじゃないのかお?」
郁紀「そういうことになるが沙耶がやる夫を愛していたのは事実だからそこはわかってくれ………」
だんだん、とーちゃんの声が弱々しくなっていったお。
郁紀「やる夫………一つ頼みがある」
やる夫「なんだお?」
郁紀「この線路を前に辿って行けばニュー速タウンに着く」
「そこに、必ずその子がいる筈だ」
やる夫「会ってどうしろと言うんだお」
郁紀「その子は……最後の希望だ」
やる夫「最後の希望?」
郁紀「そうだ。本人は自覚していないがその子なら黒い雨を止められる」
とーちゃんは黒い血を吐きながらをドッグタグを渡してきたお。
郁紀「これを……彼女に……渡してくれ」
やる夫「妹にかお?」
郁紀「そうだ。そうすればタグに書かれているものの解析ができる」
やる夫「わかったお」
郁紀「それと……やる夫」
やる夫「どうしたお?」
郁紀「愛している」
やる夫「オイラもだお……」
父親違いの妹の写真を握り締めて、そのまま線路に降りニュー速タウンを目指して歩き始めたお。
これがやる夫の始まりだお。
数時間後再開します。
数ヶ月後……
ニュー速タウン イヤ~ン区
やらない夫「やる夫、起きろ」
やる夫「う~ん……とーちゃんまだ6」
やらない夫「誰がとーちゃんだ」
やる夫「おわっ?!」
やる夫「ニュー速タウンに来て間もない頃に知り合った元サラリーマンと名乗る40歳代のおっさん、やらない夫と今は一緒に行動しているお」
やらない夫「誰に話してんだ?」
やる夫「気にしないでくれお」
やらない夫「まぁ……そんなことよりも別の区に移らないとだろ」
やる夫「どこに移るんだお?」
やらない夫「ウム……」
常に移動し続ける。
これは、ゾンビもどき共にやる夫達がなるべく会わない為に必要な事だとやらない夫に最初に教わったことだお。
やらない夫「よし……チンピラ区にしよう」
やる夫「チンピラ区って確かニュー速タウンで一番危ない所なんじゃ」
やらない夫「一昔前までそうだったが今は自警団の活躍で治安が少し良くなったんだ」
少しだけしか治安が良くならない所にやらない夫何故向かおうとしたのかこのときはまだ、わからなかったお……でも
それが功を成す事となったお。
チンピラ区 タカハシメンジン商店街
ギャル夫「いや~本当に助かったッス!!アンタ達のおかげで大半の感染者と盗賊を始末できたっす」
「気にしないで下さい。オレ達は大した事してないのだ」
ギャル夫「いやいや、アンタ達が居なきゃ俺っちを含めたチンピラ区の住人全員がヤバいことになってたっす」
「それよりもオレ達いなくても大丈夫ですか?」
ギャル夫「大丈夫ッスよ!!俺っちを含めた商店街の連中はそんなにやわじゃないっす」
「そうですか……ではお気を付けて」
ギャル夫「そっちも、目的を果たす為に頑張るッスよ!!」
「それで……」
「ちょっと待った」
「教授………どうしたんですか?」
スティール(教授)「キミ確か、ニュー速タウンの住人全員の顔覚えているって言ったよね?」
ギャル夫「ええ……そうっすよ」
スティール「じゃあ、この一枚の白黒写真に写っている人物に見覚えは?」スッ
ギャル夫「うーん……右側の高級スーツを着た若い色男みたいな奴は見覚えないっすけど」
スティール「けど?」
ギャル夫「左側のスーツ姿で手袋をした綺麗な女の人は」
スティール「何故……性別がわかった?」ギロッ
ギャル夫「いや……その……」
「落ち着いて下さい教授。ギャル夫さんどうして左側の女性の性別がわかったんですか?」
ギャル夫「実は……らんこ区で仕事で行って時に財布を紛失したっすその時に」
ギャル夫「左側の女の人が追いかけて返してくれたっす」
「二言だけ会話した時にやけに綺麗な声だったからなんとなく女だと思ったっすよ」
スティール「それか……悪かった」
ギャル夫「気にしてないから心配するなっす」
スティール「世話になった。行くぞレイン」
レイン「御協力と寝床の提供感謝します」
ギャル夫「いやいや~こちらこそ武器やらなんやらして貰って感謝してるっす!!それと」
レイン「なんですか?」
ギャル夫「もし、らんこ区に向かうならイヤ~ン区から行った方が近いっすよそれと」
「らんこ区は暴走族や右翼と左翼が殺し合いをしてたり噂ではアメリカのPMCの連中まで居るみたいだから気をつけるッス」
レイン「忠告ありがとうございます」
ブォン!
レイン「そろそろ、時間ですのでこれで」
ガチャガチャッバタン
ギャル夫「健闘を祈るッス~」フリフリ
レイン「」フリフリ
ギャル夫「さぁ……ここを死守するっすよ」
チンピラ区の住人はレイン達のおかげで一つにまとまったお。
レイン達は気付かぬうちにこの世界の救世主になってしまったお。
チンピラ区行き高速道路
やらない夫「まさか、高速道路を逆に歩くとは思わないだろ常識的に考えて」
やる夫「車が大量に道を塞いで居るのかと思いきやなんと」
「まさかの8台しかないだお!!」
やらない夫「さっきのやる夫みたいな考えの奴が大量に居たんだな~まさに風評被害様々だろ」
隣のイヤ~ン区行きはほぼ満杯という有り様なのに対しチンピラ区行きの8台という数はチンピラ区の治安の悪さをまさに示しているようだったお。
やらない夫「まあ………それでも奴らが居る可能性があるから気をつけろ常識的に考えて」
やる夫「わかったお」
また、チンピラ区を目指して歩き始めたお。
高速道路から見えるニュー速タウンの景色は………
黒く、澱んでいたお。
止まっている車内の中にはミイラ化した死体や死んでまだ間もないモノもあったお。
多分、この中からゾンビもどき化するのもあるだお。
バリン!!
やらない夫「なっ?!」
ゾンビもどき「うがぁぁああ! !」
やる夫「やらない夫!」
8台目を通り過ぎようとしたとき、隣の車群からいきなりゾンビもどきが一体やらない夫に襲いかかったお。
やらない夫「クッソ!!やる夫やれ!!」
やらない夫は噛み付こうとして来るゾンビもどきの攻撃を紙一重でかわしていたお。
やる夫は………ゆっくりとゾンビもどきの背後に立ちリュックサックに入れた金属バッドを静かに取り出したお。
一撃だったお。
グシャッ!!
やらない夫「うわっ?!」
脳味噌が潰れ、眼球が飛び出し頭が金属バッドによって凹みやらない夫の顔に脳の破片が飛び散ったお。
始めてではないものの………やはりいい気はしないお。
明日、書けたら書きます。
やる夫「やらない夫、無事か お!?」
やらない夫「ああ……悪いが立たせてくれないか」
やる夫「わかったお」
やる夫がやらない夫に手を差し伸べてその時………
ヴォオオ~キィィイイン……ガシャン!!
これがレイン達との出会いだお。
意識が朦朧とする中……声がきこえたお。
「やっちまった?!奴らと間違えてサハイバーを轢くなんてクソ!!」
「あんちゃん……やっちまったものは仕方ないからとりあえず後部座席に二人を載せようね」
やる夫とやらない夫はレイン達に抱きかかえられて車に載せられたお。
「救急パック使っていい?」
「ああ~好きに使ってくれ」
後々、聞いてわかったことはレインはスティールの事をプライベートでは『あんちゃん』と呼び仕事では『教授』と呼んでいたお。
やる夫はこの時まだ二人の関係は『親子』だと思っていたお。
車内
パチパチッ
やる夫「うっ……」
スティール「おーい」
やる夫「とーちゃん、まだ深夜の……」
スティール「起きろ」チャキッ
やる夫「ヒイィッ?!だ、誰だお?」
スティール「誰かって………そりゃ通りすがりのRONINに決まってんだろ」
やる夫「はぁ?」
意識が戻った時、目の前に居たのはやる夫にH&KUSP50タクティカルの銃口を向けた銀色のスーツに身を包んだ眼鏡の若い男……それと
レイン「教授……いきなり銃突きつけたらダメですって」
スティール「5秒ルールだ。5秒で起きなきゃ顔面に強化50AE弾を撃ち込む」
レイン「LSDのルールは社会の非常識」
スティール「ルールは厳守してこそのものだろ?」
レイン「社会の……」
スティール「世紀末になった世界では法律は無意味だ」
車を運転しながら若い眼鏡をかけた男とコントを繰り返す、黒のロングレザージャケットと中に黒のランニングシャツを着てボロボロのブルージーンズ穿いた幼い娘この2人がスティールとレインだお。
やらない夫「いててて……ここはどこだ?」
レイン「10年型BMW M5 E60の車内です」
やらない夫「そうなのか……ところであんたら誰だ?」
スティール「ブライアンでもドミニクでもお好きに」
レイン「彼はスティールで、オレがレインです」
スティール「おいおい……せっかく格好つけたのによ~」
レイン「あれで格好つけてたんですか?」
スティール「そうだ、悪いかよ」
やる夫「あの~」
スティール「何だ白餅頭?自己紹介でもしてくれるのか」
やる夫「そうじゃなくて、レインさんにお話があるお」
レイン「オレに……ですか」
やる夫「そうだお。実は」
スティール「レイン~車止めてくれ」
キィィッ
やらない夫「どうした?急に車を止めて」
レイン「これから向かうらんこ区という所は……」
スティール「右翼と左翼がドンチャン騒ぎをしているらしてるんだ」
やる夫「祭りか何かをこんな時にしているのかお?」
レイン「あ、ある意味しています」
やらない夫「なるほどな~」
この時スティールが言った『ドンチャン騒ぎ』の意味がやる夫はわからなかったお。
ただ、やらない夫は薄ら理解していたお。
らんこ区行き高速道路
ガチャッ
スティール「フ~何つかう?」
やる夫「凄いお……」
やらない夫「良くこんだけの銃を集めたな」
レイン「自慢じゃありませんが、人を殺す道具なら大量にあります」
慣れた手付きでトランクから取り出したスコープを装着したセージ・インターナショナル M14 EBR Mod.1に弾倉を差し込み、笑いながらズボンに入れていたS&W M5906をやる夫に手渡してきたお。
やる夫「これは……」
スティール「自分の身は自分で守れ。まあ~安全装置は外してるから銃口向けたら撃てる」
やる夫「無茶ぶりすぎるお~」
スティール「安心しろ!俺はお前を信じている!!」
やらない夫「なぁ………スティールはいつもあんな感じなのか?」
レイン「今日はまだマシです」
スティール「それだけじゃ心ともないからこれも渡しておく」スッ
やる夫「アサルトライフルもかお……」
こうしてやる夫はK-VAR GP1975(改)とS&W M5906(改)という拳銃と自動小銃を生まれて始めて握るハメになったお。
スティールに心構えを聞いたら
スティール「奴らは人間じゃない……街を徘徊しているバケモノどもと同じだって思えばいい」
とのことだお。
レイン「あなた方はどちらに向かうつもりだったんですか?」
やらない夫「チンピラ区だ……知り合いがそこで暮らしているからだ」
レイン「もしかして……ギャル夫さんの事ですか」
やらない夫「どうしてギャル夫の事知っているんだ?」
スティール「俺達、チンピラ区で“ゴミ処理”してたんだよ」
レイン「その時現地で知り合ったのが地元自警組織のリーダーを務めていたギャル夫さんだったんです」
やらない夫「いやはやまさか、あんな所でゴミ共を全員始末するなんて恐れいる」
スティール「もしや“斬り込み隊長のやらない夫”ってアンタのことか?」
やらない夫「ああ……その通り俺がやらない夫だ」
スティール「ヒュー!マジかよこれはスッゲー!!」
レイン「所で白餅さんの名は?」
やる夫「白餅じゃなくて……やる夫だお」
レイン「これは失礼しました」
やる夫はこの時に……『実は見せたいものが……見覚えありますかお?』とレインに言いたかったお。
でも、心構えが出来てなかったお。
そんなこんなで“狩り”が始まったお。
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