【ガルパン】みほ「……キス……1回だけ……」 (11)

沙織「うひょー! お泊りだー!」

麻子「うるさいぞ沙織」

華「もう夜も遅いですし、みほさんに御迷惑ですよ」

沙織「いーじゃんちょっとくらい。みぽりんだって楽しそうなんだしさ」

みほ「うん。みんなが私の部屋へ泊まりに来てくれて、すっごく嬉しいよ」

華「そうは言っても……」

みほ「大丈夫。隣は階段だし、もう片方の隣は空き部屋だし」

優花里「あ、そういえばここは角部屋だったですね」

みほ「飛んだり跳ねたりしない限り、大丈夫だと思うよ」

麻子「そんな奴はいないけどな」

華「もう寝る仕度してますしね」

みほ「女子高生みたいで楽しい。友達が集まって、お泊りでパーティーするなんて」

麻子「いや、女子高生だから」

みほ「みんなのパジャマ姿、すっごく新鮮」

沙織「さー、パジャマパーティーだー!」

華「沙織さん。はしゃいでないで、お布団敷くのを手伝ってくださいな」

みほ「お布団、人数分なくてごめんね」

優花里「全く無問題であります!」

みほ「雑魚寝で、うまく分け合ってもらうしかないんだけど」

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沙織「ゆかりん、寝袋持ってきてるでしょ」

優花里「え。武部殿、どうして分かるんですか?」

沙織「そりゃ、ゆかりんのノリを考えれば」

麻子「で、それは迷彩柄だろ」

優花里「うっ、冷泉殿まで。いきなり披露して羨望の的になろうと思ってたのに」

沙織「別に羨ましくないけど」

優花里「あ、何ということを。これはあらゆる天候に耐えるスグレモノで……」

沙織「私はこれからのトークに備えて、お菓子を用意しなくちゃっ」

華「優花里さん、それなら寝袋用にスペースを空けておきましょう」

優花里「恐縮です、五十鈴殿。あ、そっちの隅の方でいいです」

麻子「布団の配置は、大体こんなものか」

華「各人がどう寝るかは、成り行き任せですね」

みほ「部屋が狭くてごめんなさい」

沙織「もー、みぽりん、さっきから謝り過ぎだよ」

みほ「あの、嫌じゃなければ……」

麻子「ん?」

みほ「私のベッドに、もう一人寝られるよ?」

沙織「……」

みほ「私と一緒に寝ることになっちゃうから、嫌じゃなければ、なんだけど」

華「……」

優花里「……」

麻子「……」

みほ「え? みんな、どうしたの? 私、何か変なこと言った?」

沙織「それは……」

華「それは、遠慮申し上げますわ」

優花里「ここは西住殿の部屋なんですよ?」

沙織「みぽりんは、普段どおりに寝なくちゃ駄目」

麻子「私たちはお邪魔してる立場だ」

みほ「……みんな……」

優花里「何ですか?」

華「どうしましたか」

沙織「何ウルウルしてるの?」

みほ「……気を遣ってくれて、ありがとう……」

優花里「気を遣ってくださってるのは、西住殿の方じゃないですか」

華「いろいろと心配りが足りないかもしれないのは、わたくしたちです」

麻子「私は相変わらず、気を遣えてないんだろうが」

沙織「さー、そんなことはいいから、全員真ん中に集まれー!」

みほ「……でも、さっきのは一体、何だったんだろ?」


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優花里「冷泉殿、そっちのお菓子取ってもらえませんか」

麻子「これか。幾つ欲しい?」

優花里「じゃあ二つください」

みほ「このお菓子おいしいな。初めて食べる味」

華「うわ、これ甘いですねえ」

麻子「五十鈴さんは、甘いものは駄目か」

華「好きですけど、余り甘いのはちょっと……」

優花里「これですね。さっき食べましたけど、確かにすごく甘いです」

みほ「華さんは、塩味とかの方が好きなの?」

華「甘いものと同じくらい好きです。辛いのも大丈夫ですよ」

優花里「このすごく甘いもの、誰のチョイスでしたっけ」

みほ「私……」

麻子「西住さんだったか」

みほ「このくらいの甘さ、普通だと思ったけどなあ」

華「逆にみほさんは、塩味や辛いものは……」

みほ「辛いものは駄目。食べられないよ」

優花里「なるほど」

麻子「こういう時に、それぞれの好みが分かる」

華「面白いですね」

沙織「……さて」

みほ「何? 沙織さん」

優花里「改まって、どうしました?」

沙織「お泊り、パジャマパーティーと言えば、ガールズトークだよね」

華「ガールズトークという言葉、聞いたことがあります」

沙織「で、ガールズトークといえば、恋バナだよね」

みほ「こいばな?」

麻子「恋の話、恋愛話。略して恋バナらしい」

華「麻子さんは何でも知ってますね」

麻子「沙織の知り合いを長くやってると、こういうことまで憶えてしまう」

沙織「何それ。とにかく全員、お泊りでこうやって集まってるんだし」

みほ「うん」

沙織「今夜のトークで語り合うのは、恋バナしかないでしょー!」

みほ「……」

華「……」

優花里「……」

沙織「あ、あれ?」

麻子「沙織」

沙織「何?」

麻子「学園艦にいる私たちに、そういう話題を期待するのか」

沙織「そんなこと言ったって、分からないよ?」

麻子「何が」

沙織「実は、我がチームに彼氏持ちがいましたー!なんてことになったら、大ニュースじゃん?」

麻子「みんなの今の沈黙で、分かりそうなものだ」

沙織「でも、彼氏がいる子って、どのクラスにも大抵いるよね」

優花里「私のクラスにもいます。話を詳しく聞いたことはありませんけど」

沙織「ほら見なよ。みんなに訊くだけ訊いてみても、いいんじゃない?」

麻子「好きにしろ」

沙織「じゃあ……今、彼氏がいて、ラブラブな人ー!」

みほ「……」

華「……」

優花里「……」

沙織「あ、あれ?」

麻子「それ見ろ」

沙織「……みんな、嘘つかなくていいんだよ?」

みほ「嘘なんて、つくわけないよ」

華「そんな嘘をついたって、追及されたらすぐバレます」

優花里「そもそも、嘘をつく必要がないですし」

沙織「……」

麻子「おい。沙織」

沙織「何?」

麻子「そう言う、沙織自身はどうなんだ」

みほ「あ」

華「麻子さん」

優花里「それは、言っては……」

沙織「……」

優花里「あーあ……。武部殿、落ち込んじゃいました」

みほ「麻子さん、駄目だよ」

華「こういう話題の時に、沙織さんに訊くのは……」

優花里「それがタブーなのを、冷泉殿が知らないはずありません」

麻子「もちろん知ってる。でも、余りうるさい時はお灸をすえた方がいい」

華「確かに、一人ですごく盛り上がってますけど……今夜の沙織さんは」

沙織「……ふ、ふーんだ。じゃあ、もう一回訊きまーす!」

優花里「お?」

みほ「もう復活した」

華「今回は立ち直りが早いですね」

沙織「質問をちょっと変えまーす!」

麻子「まあ何度訊いても同じだろうが」

沙織「今までに、彼氏がいた人ー!」

みほ「……」

華「……」

優花里「……」

麻子「それ見ろ……ん?」

優花里「武部殿が……笑ってます」

華「今までに見たことのない笑みですね」

麻子「正直、気味が悪い」

沙織「……ふっふっふ……」

みほ「……」

沙織「見たぞ、みぽりん……」

みほ「……え……? な、何を……?」

沙織「その手がちょっと、動くのを……」

みほ「……」

沙織「嘘をつかない、嘘をつけない性格……さすが、私たちの信頼する隊長だよね」

優花里「西住殿……!」

麻子「思わず、手を挙げそうになってしまったのか」

みほ「……」

華「と、いうことは……」

麻子「昔、彼氏がいたんだな。西住さんに」

華「こんなに可愛らしいかたですから、全然、不思議ではありませんけど……」

優花里「今、問題なのは……」

麻子「今夜の沙織に、格好のエサを与えてしまったことだ」

沙織「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふ。みぽりん……」

みほ「……な……何……?」

沙織「どうしたの? 何をそんなに怯えてるの?」

みほ「……だって……」

華「この状況は……」

優花里「肉食獣に追い詰められた、小動物も同然です……」

沙織「ね、みぽりん。これから、私たちの訊くことに……」

みほ「……」

沙織「ほんの少しだけ、答えてくれないかなあ……?」

麻子「“私たち”と言っても、どうせ訊くのは沙織だけだが」

沙織「悪いようにはしないから、ね?」

みほ「……」

華「“悪いようにはしない”というのは……」

優花里「悪いようにする時のセリフですね」

麻子「どこかの漫画家も、そんなことを書いてたな」

沙織「それで? いつだったの?」

みほ「……中2の時」

沙織「前にいた学校って、中高一貫の女子校じゃなかったっけ?」

みほ「お姉ちゃんは中学から黒森峰だったけど、お母さんが“みほには外の世界も見せる”とか言って……」

沙織「みぽりんは違ったのね」

みほ「中学までは、普通の学校に通った。近所にある公立の学校で……」

沙織「じゃ、もちろん共学だよね」

みほ「うん。戦車道の備品や施設がないから、それはずっと、うちでやってて……」

沙織「その彼は、同じクラスの男子? それとも先輩?」

みほ「……同じクラス……」

華「みほさんが、詳しく話し始めてしまいました」

麻子「やはり西住さんは、訊かれたら、素直に答えるしかない人なんだな」

優花里「さっき武部殿が言ったとおりですね。演技や駆け引きをするのは試合の時、対戦相手にだけです」

華「みほさんは、学校や戦車道の方に話をそらそうとしたみたいですけど……」

麻子「沙織には無駄な抵抗だった。あいつは、こういう話題だとブレないから」

沙織「で? で?」

みほ「……何?」

沙織「どうだった?」

みほ「どうだった、って……何が?」

沙織「何が、って? 決まってんでしょうが。ああ?」

優花里「……武部殿がヤバいです。もはや別人格です」

華「沙織さんは、何を訊いているんでしょうか」

麻子「具体的な行為だろう。恋人同士がするような」

優花里「いきなりですね。怖いくらいに」

華「こういう場合、どうしたらいいんでしょう」

麻子「分からない。こんなモードの沙織は初めて見る」

華「……沙織さん」

沙織「何?」

華「思ったんですけど」

沙織「だから何よ、華」

華「お話の順序が違うんじゃないでしょうか」

沙織「順序?」

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