門矢士「魔法少女の世界か……」 (117)

亀更新だと覚えて貰えば結構です
仮面ライダーディケイドこと門矢士が魔法少女まどかマギカの世界を旅するものとなります
過度な期待は禁物ですのでどうぞよろしく

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382829416

仮面ライダーディケイド――門矢士は道に迷っていた。

彼の周りには誰一人として、ネズミ一匹たりともいない。

それどころか自分が旅をした世界にこのような場所は無かった、

ネガの世界も、世界大戦の世界も、いずれもまだ人が居る形跡、足跡、軌跡、

そういうものが見られたが、この世界はまるで違っている。

そこら辺から海東大樹でも現れて『ここは魔界だよ、士』とでも言われてしまえば、

なるほど、と納得してしまうほど、人の世界の原形を留めてはいない。

彼はとりあえず、といった風に周りを確認して。

「ふむ、迷ったか」

彼には元々として旅の道標はないにも等しいものだが、

それでも、自分がどのような状況に陥っているかは見るまでも無く分かる。

「とりあえずは、この妙な空間から抜け出すか」

彼の周りには誰一人としていない。

誰一人として、ネズミであろうとも一匹も、

但し、生物とも言えない、表現するのなら『ぬいぐるみ』、

ショッカーやファンガイア、ミラーワールドのモンスターとも、グロンギでも、

オルフェノクでも、アンノウンでも、イマジンでも、アンデットでも、ワームでも、魔化魍でも、

全てと違っている、それどころか、そういったものとは違う次元に居るとさえ思う。

「~~~~~~~~~~~」

と、その『ぬいぐるみ』は喋った、恐らくは喋ったのだろう、

しかしおかしい。

今まで総ての世界の怪人を見、

グロンギを始めとした全ての怪人の言語、それは門矢士には全て理解できていた、だが、

それでも、聞き取れない、理解が追い付かない。

「~~~~~~~~~~~」

薔薇の茎枝のような腕らしきものに、剪定鋏のようなものが握られている。

「……ほう、囲まれてる、か」

四方八方に蜘蛛の子をまき散らしたように多くの『それ』は居た。

「他の世界に来て早々に戦いとは、世界の破壊者らしくなってきたと、言う所か」

カメラを構え悠長に『それ』を撮る。

歪む事は分かっていても、習慣となってしまっていることをやめられはしない。

幾つか写真を撮り終えた士は、大きく、一つ溜息を吐き、

右手で左腰に付けているライドブッカ―の中からディケイドのライダーカードを手にする。

「~~~~~~~~~~~」

「うるさい、変身」

ライダーカードをディケイドライバーに投げ込み、何時も通りに、これまでと同じように、変身する。

手慣れたようにしてディケイドに変身した士は二回手を合わせる様にして埃を払う様に手を鳴らす。

これも何時の間にか習慣になってしまっている――。

「まずはこいつらにこれが効くか調べなきゃな」

アタックカード『ディケイドブラスト』。

何時の間にかライドブッカ―をガンモードへと移行させていたディケイドは、

銃身を分身させたライドブッカ―の銃口を『それ』に向ける。

幾つもの銃口から発されたエネルギー弾は、確かに『それ』を捉えた。

「――現代アート作品みたいだな」

よく分からない表現ではあったが、穴が幾つも空いた『それ』を見れば、効力は一目瞭然といったものだろう。

「とりあえずは効くらしい」

と、咄嗟に振り返り目前にまで迫った剪定鋏をライドブッカ―の銃身で受け流す、

そのまま茨のような腕らしき所を左腕で掴み取り、反対の方面へ無造作に投げ飛ばす。

そして流れる様に銃口を右へと振り被る様にして、弾幕を張る如くに撃つ。

「次はコイツだ」

確認する様に取り出したアタックカード『ディケイドスラッシュ』を人差し指で鳴らす、

電子音と共に、すぐさまライドブッカ―をガンモードからソードモードへと移行した瞬間、

跳びかかってきた『それ』の剪定鋏を持つ腕をライドブッカーの刀身、ブッカ―ソードで薙ぎ払う。

「~~~~~~~~~~~~~~~」

叫び声にも似た悲鳴のように甲高い声を上げた『それ』に更におまけと言わんばかりにして、

叩き落とすように刀身を振り下ろす。

分身した刀身は『それ』を直ぐに見るも無残な姿へと変える。

「こっちも問題は無いな」

流石に仲間が三匹も倒されている光景を目の当たりにすれば、

『それ』も少しはたじろいだのだろう。

先程の様に跳びかかって来るものはいない。

それどころか逃げようと少しずつディケイドとの距離を離そうとするものも見られる。

「こっちでなにか起こされたら面倒だ……きちんと倒しておくか」

ガンモードで威嚇射撃ついでに『それ』を巻き込めるように撃ったエネルギー弾は、

偶然的にも三匹を巻き込んで――ディケイドの言う『現代アート』に仕上げる。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~」

その攻撃がついに『それ』の理解能力を打ち壊したのか、自棄になった『それ』は、

ディケイドに食い掛かる。

右から来る相手にブッカ―ソードで叩き、左から跳びかかる相手をそのまま左腕で来た方向へと殴り飛ばし、

群れている場所にアタックカード『ディケイドブラスト』を使い、

半自動で撃たれる弾幕のようなエネルギー弾で殲滅する、その姿は悪魔と称される、

ディケイドには相応しくも忌々しくもある。

「――これで全部か」


見る者が見れば『それ』というものは一瞬で『魔女の手下』だという事が分かるはずだ。

明らかにこの世の物ではない構造をしたその『空間』を見れば一瞬で『魔女の結界』だと分かるはずだ。

だが、この全身を特殊スーツに身に纏った仮面ライダーという存在は知らない筈だ、

何故ならば、この世界には仮面ライダーは存在しない。

存在してはいけないのだ。

そこに、仮面ライダーディケイドという存在が加わるという事は、



破壊か、それとも――。



「俺はこの世界で教師という役目だそうだ」


「半熟でも何でもいいじゃない!」


「べっつにー」


「夢オチー……?」


「通りすがりの仮面ライダーだ」


「かめん、らいだー?」


全てを破壊し全てを繋げ!

へー、アレ、ブッカ―ソードって言うんだ……と思った次第です。
ライドブッカ―の中は異次元に繋がっていてカードは無限に入れられるとかなんとか、
何でもありだなと思いました、ブッカ―ソードの刃は未知の鉱石でできているから
折れず曲がらずよく切れるらしいですし、流石チートライダー、こんなんチーターや。
来週は更新出来ると思いますので、また来週にでも。


マシンディケイダーのクラインの壷や、ディケイドライバーの秘石トリックスターにQBが目をつけそうだな

ライダーにはてつをやアマゾンみたいにエントロピーを余裕で越えてる奴がいるからな

何時ぐらいのディケイドなんだろう?
ウィザードと戦った後の話しかね?それともSH大戦後?

>>10
一体どれほどのエネルギー量なのでしょう……もしかするとまどか以上だったりして

>>11
てつおは……やばい……まど山も余裕で倒しそうで怖い……

>>12
あのお祭り騒ぎ、嫌いじゃない。
ウィザードでの復活記念とまどマギ映画記念も兼ねていますので
ウィザードの世界以降の話となっております、気が向いたらウィザードとかのライダーカードとかも出すかも……?
W真っ二つに出来たから大丈夫だよね……?

マミ「やられたらやり返すシャルロッテに十倍――」

ほむら「あっっまーい!やる前にやる、やられる前にやり返す、やられていなくてもやり返す」

        「誰彼構わず(主にQB)八つ当たりだ!!」

まどか「私の下着、盗ったのだぁれ?」

ほむら「…………」

何度も見たような同じ風景、破壊の限りをされ尽くしたと言えようビルがこの目の限りに広がっている。

初めて来た場所だと思う、だが何度も見たような風景、異形といえるその風景は確かに初めての筈だ。

目を凝らして遠くを見つめると初めて、

――しかしこれまでに何度も遭ったかのような強大な『存在』が騒がしく佇んでいる。

それはまさにこの世の悪という悪を飲み込んだような、しかしどうしてかその姿は悲しくも写る。

その強大な『存在』に立ち向かおうとしている、少女の姿も見える、

腕に何か盾のようなものを付けているのが特徴的で、綺麗な黒髪が穏やかに靡いている。

遠すぎてその程度にしか分からないが、それでも部分的にだがハッキリとわかるのはどうしてか。

しかし、何処かこの光景に違和感を覚える――初めて見た夢なのに、

明らかに違う、それは確信を持って言える。

感覚的、そうとしか言えないし自分でもどうしてそう思ったかは分からないが、首を傾げてしまうが、

どうしてか、少女は何かがおかしいと思う、――まるで歯車が外れたような、道を間違えてしまったようで、

それに気付かないような、そんな違和感。

不安心が高まり、不自然を見つけ出そうと辺りを見回す、

初めて見たのに、そうそう見つかるものだろうか――と、辺りを見回していると。

「やれやれ、ボクもこんなことは初めてだよ」

その声に息を呑む。

振り返るとそこには、白いぬいぐるみが喋っていた。

そうとしか表現が出来ない、狐にも似ていて犬のようでもあって猫の要素もあり狸のような雰囲気で、

それでいてそれらとは絶対に違うと言える、そういうもの。

「今迄にも何回かは似たようなことは沢山あったけれどね、それでもこんなイレギュラーは初めてだよ」

そう言って大きな溜息を吐いたぬいぐるみは、疲れ切った熟年のサラリーマンの様にしてその場に崩れてしまう。

「ほら、見て御覧、あれは『ワルプルギスの夜』、最悪の魔女、この世の全てを破壊する魔女」

――ワルプルギスの夜。

――最悪の魔女。

――全てを破壊、する。

その単語を耳にした途端に地震の様な揺れが少女達を襲う、

それはあの黒髪の少女も同じのようで、体勢を立て直すために近くのビルにしがみ付いている。

「本当にこんなイレギュラーは初めてだよ……」

再三溜息を吐くぬいぐるみは罰が悪かったように悪びれてその場を後にしようとする。

入れ替わりに、擦れ違って登場した誰かが口笛を鳴らす。

それと同時に大きな咆哮が轟く。

「なるほど、大体わかった」

上を見上げると赤く大きな龍が、それでいて機械仕掛けともみえるその姿が少女の目に映っている。

「なに……これ……」

その赤い龍に続く様に黒い龍や大きな屋敷を亀の甲羅にしたような竜、空中を奔る電車、

大きな蝙蝠の様なモノまでいる。

爆発音やそれに続き大きなバイクやそれに近いエンジン音が耳に這入って来る。

耐えきれなくなり恐る恐るといった風に下を見下げてみると、

幾つものバイクやそれに乗った多くの者が、あの『ワルプルギスの夜』に向かって奔って行く。

――どうして、最初にそう思った。勝てるかどうかも分からない、

そんな戦い、そんな戦争に、立ち向かっていく彼らの事が分からない、と。

どうしてか涙で目が霞む、目の前が真っ暗になって何も分からなくなっていく。

絶望にも似たそれは、少女の身体を蝕むように包み込んでいく。

――もうこのまま終わってしまうかもしれない。

例え勝ったとしても、その後がどうなるか分かったものではない。

と、

頭に何時の間にか手が置かれている、温かく、破壊や絶望、それらとは真逆の様な、

そんな優しさに満ちているかのような、そんな手が。

「安心しろ、俺が世界を救ってやる」

少女の耳に、そう呟く声が、しかし確かにハッキリと聞こえる。

『ワルプルギスの夜』を倒すと。

確かに聞こえる。

無茶だ、そんな事が出来る筈が無い。

「無茶だよ……こんなの、勝ってこないよ……」

何時の間にか声に出ていたようでそのまま内心が出てしまう。

声に出すと、更に現実が見え、どうしようもないのが目に映る。

「こんな事になるんなら、いっそ――」

そこまで声に出して頭を優しく撫でるように叩かれる。

「諦めるな、大丈夫だ、絶対に俺が救って見せる」

絶対に――と、確信を持つように言う、否、根拠があり、それに絶対な信頼、そういうものがよく見られる。

男は立ち上がり少女にサムズアップを見せる。

間近に居るのにあの遠くの少女よりも見え辛い、だが、どうしてか見えないのにその姿に安心する。

「貴方は一体――」

首だけを振り向く様にして右手で何かカードの様な物を見せる。

「通りすがりの仮面ライダーだ、別に覚えなくてもいい」

そこで少女の意識は途切れ――。

少女が居たのは見慣れた天井、見慣れた部屋と見慣れたぬいぐるみ、つまり自宅だった。

「…………えぇー、夢オチー……?」

少女は鹿目まどかという、予期された『ワルプルギスの夜』を果たして、

彼女の目にどう映るのか。

「かめん、らいだー?」

幾度かその単語を口の中で魔法の言葉の様に詠唱する。

不意に目にやった時計。

「あっ」

何時もと同じ家、何時もと同じ同級生、変わらない同じ学校。

「ん?はてはてー……誰か屋上に居ない?」

鹿目まどかと同じクラスの美樹さやかは遠くを見つめる様にして、

大袈裟なポーズを取りつつ、やや斜め上、屋上の方を見つめる。

「え?」

夢と同じように目を凝らすと、確かに、屋上に男性の姿が見える。

だれだろうか。

――でも、何処かで見たような、気が。

「うーん、思い出せない」

「んぇ?なにが?」

ハッとして、また口に出したのかと、――また?

分からない、分からないなりに鹿目まどかは照れ笑いを同級生たちに向ける。

「ふーん、……はっ、まさか白馬の王子様的なあれか!?許さん、許しませんぞー」

と言いつつ美樹さやかは鹿目まどかに思いっきり抱き着く。

大切な宝物に縋る様に離さない。

「そ、そんなんじゃないよ」

ゆるさーん、と結構大きな声で駄弁って居る少女達をみて、

屋上に居る門矢士は溜息を漏らす。

「――どうやら、俺はこの世界で教師という役目だそうだ」

面倒な役になった――、誰にも聞かれない事をいい事に毒づく。

「――半熟でも何だって良いじゃない!」

「何が変わるっていうの!そんなもので、価値観、なんてぇ!」

クラス中に轟き渡る早乙女和子の声は何時もの二割増しで響く。

クラスの中には既に疲れ切ったような表情をする生徒、

騒ぎ立てるような生徒や、前後で日常会話を繰り広げる生徒も見え始める。

各自各自でそれぞれの自己が開いていく、騒がしくも楽しくもある日常。

「なぁくぁっじぃまぁぁきゅぅぅぅん!?どう思う!」

中島と呼ばれた生徒が突然指名された事に対し狼狽えている。

「えっと、どうでもいいと……」

「そう!どうでもいい!どうだって良いのよ本当は!」

肩で少しばかり息をした後、スッキリしたような面持ちで人が変わったかのように話し始める。

「今日は転校生と新しくこのクラスの副担任になった人を紹介します」

落ち着いた表情で先程まで愚痴っていた人とは到底思えない。

中島という生徒は肩を落として疲れた表情を見せる。

「転校生の暁美ほむらちゃんと、このクラスの副担任になった門矢士くん、入って来て」

長髪の黒髪が似合う少女と首から二眼レフのトイカメラをぶら提げている男性がクラスに足を踏み入れる。

暁美ほむらは無表情というよりも少し苛立っているような表情で、

対照的に門矢士は自信に満ち溢れているような表情である。

「暁美ほむら――」

教卓を強く叩き、自信に満ち、シニカルな笑いをした門矢士は、

暁美ほむらの台詞を遮って名乗る。

「門矢士だ、今日から副担任としてこの学校に赴任してきた」

「特に言う事も無いし質問も受け付けない、以上」

黒板に名前も書かずにそのまま颯爽と教室から出て行った門矢士を、

早乙女和子は一瞬遅れて追いかけて行く。

「……暁美ほむらよ…………」

教室は一瞬だけ凍りつきその後直ぐにざわつきを取り戻した。

―――――――――

―――



一時限目が終わり束の間の休み時間が過ぎて行く。

鹿目まどかは美樹さやかと談笑していた。

「あはは、災難だったね」

「ありゃーあたしでも同情するよ……」

苦笑いなのか照れ笑いなのかを混ぜたような表情を浮かべる。

――と、話題の中心だった暁美ほむらが鹿目まどかの近くに寄ってくる。

「鹿目さん、保健室に行きたいのだけれど」

「あなた、保険委員でしょう?」

長髪の黒髪を靡かせ、少女、暁美ほむらはそう言った。

廊下を歩いている、が、若干急ぎ足になっている為か、暁美ほむらの方が脚が早い、

――転校生なのに?、と鹿目まどかは思う。

少し距離があり、自分が急がなければ離されてしまいそうだとも思う、

――転校生なのに、この学校の事を何度も歩いた熟年の教師のような歩調で、歩く。

「えぇーっと、暁美、さん?保健室の場所、知っているの……?」

「ほむらでいいわ……先生が教えてくれたのよ」

先行している理由は話したが、まるでそれは、予め用意されていた台詞を、

ただ読み上げたような、至極まともで、機械的にさえ感じてしまうその台詞に、

違和感を覚える。

「……えぇーっと、災難、だったよね?」

「――朝の、アレ」

――かどやつかさ、先生。

如何してか消え入るような口調で喋ってしまう。

同級生と話しているのに、全くそんな感じが見えない、年上、というか、

目上、それが鹿目まどかの感じた暁美ほむらだったからか。

その台詞を聞いた途端に、力強く暁美ほむらは黒髪を靡かせて振り返った。

「あんなモノは、イレギュラーよ」

吐き捨てるように言った台詞にまたもや違和感を覚えざるを得ない、

それと――デジャビュ。

何処かで聞いた事があるようなそれに、再三違和感を覚える、

――なんだか最近は違和感を覚える事が多すぎる。

ここ数日がおかしい。

というか、今日。

「いやぁー朝のアレは悲惨だったけどそれにしても素晴らしいですなぁ」

右手の指を折り数えながら細々と何かを囁く、

「文武両道、才色兼備、ドジッ娘、黒髪美人……くぅー何処まで全乗せするつもりだぁ!」

と、一人嘆く美樹さやかは多少よろける演技を見せる。

「べっつぅにー?うらやまけしからんなんてことは無きにしも非ずって感じですけどー?」

放課後となり帰り道で話していた三人の内、鹿目まどかだけは頭を今だ抱えていた、

奇妙な夢、正夢にも似たそれについて、頭を抱えている。

「まどか、どかした?」

美樹さやかが尋ねても少し上の空から抜け切れない鹿目まどかは少し唸った後、

「うぅん、副担任の先生、とか、ほむらちゃん、とか、前に何所かで会った、様な」

美樹さやかは少し考える仕草をした後、二人に向かって、

「えーっと、副担任の先生って……」

間髪入れずにクラスメイトである志筑仁美が答えを正す。

「かどやつかさ先生」

「そうそう!それそれ!」

ナーイスと、独特なイントネーションで発音した美樹さやかは、また頭に疑問符を浮かべて、

「ん?朝の時にも言ってたよね」

またも苦笑いと照れ笑いが雑じり合ったような表情を浮かべた鹿目まどかは、

「うへへ……何所かで会った事、あるのかな」

親友二人はそれを見て「さぁー?」と同時に呆ける仕草をする他になかった。

時刻は夕方を過ぎていた、既に夕日は沈みかかり、

街灯の光の方がより綺麗に見えるほどには、時間が立っていた。

白いマスコットのようなぬいぐるみは、対照的にも見える黒髪の少女の前に座っていた。

黒髪の少女の左腕には特徴的な機械仕掛けの盾の様なものが見える、

衣装も普通の私服とは言い難い様なものを着ているのが見える。

その辺の壁を背凭れとして使い、腕を組み挑発的な目線を白いぬいぐるみに送ると、声を掛けた。

「それで、話と云うのは一体どんなものなのかしら、インキュベーター」

鋭く睨みつけられるような目線を物ともせずに、白い、インキュベーターと呼ばれたぬいぐるみは問いを返す。

「キミにやってもらいたい事があるんだよ、暁美ほむら」

にこりとした無機質な笑顔に対して顔を歪める暁美ほむらは即座に返答する、

忌々しいと思うが、冷静を装って、返答した。

「お断りだわ」

お返しと言わんばかりにインキュベーターも間髪を入れずに言う。

丸い硝子細工のような瞳で、暁美ほむらという存在を目視して、またしてもにこりと笑いながら、

妙な足音を鳴らし響かせて、悪魔の囁きの様にして、短く纏めた言葉を、言う。

「鹿目まどかの為でもあるのに?」

『鹿目まどか』というクラスメイトの名前を聞いた瞬間、動揺を隠せ切れなかったのか、

暁美ほむらの身体そのものが少し揺れた、インキュベーターはその揺れを見逃さなかった。

「手短に、詳しく話しなさい」

何時の間にか右手に持っていた銃をインキュベーターの額に突き付けながら話す。

「おいおい、ボクのストックの事も、勿論知っているんだろう?」

話し終わると同時に銃声が辺りに響き、弾丸一発とは到底思えないほどの威力を発揮して、

インキュベーターの頭そのものを消し飛ばした暁美ほむらは、

自分の足元に転がった約二十発の薬莢を見てから、自分の真後ろを見遣る。

「やれやれ、やっぱり分からないや、人間っていうのはどうしてそうも端的なんだい?」

溜息を大きくついたインキュベーターは仕方なく、といった風に話し始めた。

「暁美ほむら、キミは仮面ライダーという存在を知って居るかい?」

またも顔を歪ませた暁美ほむらはこれまた仕方なくといった風に小さく「いいえ」

と、自身の黒髪を靡かせるように頭を大きく横に振って、インキュベーターの居た、

というか、亡骸を蹴り飛ばしてそこに腰を掛ける。

「そうか、じゃあまずはそこからの説明が必要だね」


「いいかい、世界というのはこの世界だけじゃあないんだ、

 キミが考えている以上に、世界というものは複雑で、そして単純だ

 この世界というのはまず根本的な処から違うんだ、

 まず今言った、仮面ライダーという奴らが居る世界にはには、

 魔女はいないし、遵って魔法少女という概念がまずない、

 代わりに怪人と呼ばれる奴らがうようよと居るけれど、

 それにしたって、こっちのモノとは比べ物にはならないほどの強さを誇っている、

 それを倒すために仮面ライダーはいるのだけれど、要は規模や大きさが違うだけで、

 向こうも此方とは何ら変わりがない世界だ、

 勿論些細な差はあるし、そんな怪人も、魔女も何も存在しない世界も、

 逆に既に滅んだ世界だって幾つもある。

 でも決定的に違いが無いのは、絶対にそれらが『交わらない事』なんだ

 そんな異質なものが入ってきたら堪ったものじゃないよ、

 でもそれが起こってしまった、どうしようもなく最悪の事態が今、起こりつつあるんだ」


「彼は仮面ライダーディケイド――門矢士」

暁美ほむらの眼が変わり、握っていた拳がさらに強く握られる。

インキュベーターは首を傾げ、

「どうかしたのかい?」

と尋ねると、今まで間髪入れずに即座に対応してきた暁美ほむらは少し経ってから、

「……いいえ、なんでもないわ、早く話しなさい」

逆の方に首を傾げたインキュベーターはその首を傾げている体制の中で話を続けた。

「彼はとても異質な能力を持っていたんだよ、正に異形とも言える能力を、

 彼は世界の狭間というものに捉われるという事が無いんだ、世界の中だけでなく、

 世界という全ての世界を巡る事が出来る『次元戦士』と呼ばれるライダー、それがディケイドだよ」

暁美ほむらの表情が、歪んだ表情から疑問を抱いたような表情となる。

「それで、インキュベーター、その仮面ライダーとやらに、私はどうすればいいのかしら」

「話を急がせないで欲しいよ」

「私は急いでいるの」

苛立ちを隠しきれずにいる暁美ほむらを赤い硝子細工のような瞳で捉えたインキュベーターは、

やれやれ、と呟いてから用件を話す。

「キミにはある物を取って来て欲しいんだ、

 ディケイドの持っているドライバーに埋め込まれた秘石『トリックスター』を取って来て欲しい」


「……何故?」

溜め込んだ空気を吐き出すように大きく溜息を吐く暁美ほむらに対して、

インキュベーターはにこりと笑いながら理由を話した。

「それは勿論、その『トリックスター』に秘められたエネルギー量が、途轍もない物だからだよ」

それこそ――鹿目まどかのそれよりも大きいかも知れない。

と、二人の間には沈黙が長く続く。

「それさえあれば、ボクは鹿目まどかから手を引こう」

――とても残念だけどね、と付け加えたインキュベーターを見て、

奥歯を噛みしめる、信用にならない。

「……本当に、彼女から手を引くのね」

それに対しインキュベーターは再三笑顔で受け答えをする、まるでそれが素顔であるかのように、

無邪気に返す。

「本当ならどちらも手に入れたいんだけれどね、ディケイドが厄介でそれも儘為らなくなるから、

 キミに依頼しているんじゃないか、暁美ほむら」

依頼、その言葉がどうしても気に入らない、

「依頼ではないわ、交換条件よ、決して私はあなたの味方でも何でもないわ」

「……ふぅ、やれやれ、やっぱり分からないや」

奇妙な足跡と共に、インキュベーターはゆっくりと闇に包まれるように消えて行く、

その姿を見て、暁美ほむらは、苦虫を噛み潰すような思いでいた。



誰にとも無く、インキュベーターは喋っている。

夜の街を見下すように、人を、全てを見下したようなその硝子細工のような眼で、

人間観察の様に、人を見下す。

「やれやれ、ボクの言葉ってそんなにも信用にならないのかな」


「折角親切で教えてあげようっていうのにさ」


「それにしても、仮面ライダーディケイド、本当に厄介だよ」


「相手が魔女であろうとなんであろうと、グリーフシードの欠片も残さずに『破壊』してしまうなんて」


「やめてほしいなぁ、本当に、見返りも何もなしに代償も何もなしに跡形も無く『破壊』だなんて」


「魔法少女要らずじゃあないか」


「こっちとしても確かに『トリックスター』は魅力的だけど、それがどの位のエネルギー量なのかもわからない」


「鹿目まどかのエネルギー量と、『トリックスター』のエネルギー量」


「どっちの方が大きいんだろうね」


巴マミはその身に煌びやかな衣装を纏い、『魔法少女』としての役目を果していた、

相手は魔女では無く、手下である『使い魔』ではあったものの、

素人を二人守りながらの戦闘であった為か、何時もよりも慎重な足運びで『使い魔』を倒していく。

どうやらその心中では、後輩に対しての失望を買わないように、という事もあったようだが、

それでも巴マミは自らのマスケット銃を片手に持っては撃った直後に放り捨てるというスタイルで、

着実に一体一体を倒していた。

「危ない所だったわね」

変身を解きながら巴マミは鹿目まどか達に微笑みかける。

「あっありがとうございます」

「いいのよ、それよりも、この位の……白い猫みたいなの、見なかった?」

深々と頭を下げる二人に尋ねた巴マミは、人差し指を口に当てて少し考える仕草をする。

何か困っていると言うよりかは、不思議なものを見たとでもいう様な顔で、

二人は同時に顔を見合わせてから首を傾げた。

「いや……私達は、なにも」

「迷子か何かですか?」

少しの間顔を下げた後に巴マミは首を小さく振った、

「いえ、見ていないのならそれで良いのよ、迷子とかじゃないから安心して」

語尾に小さく多分、と付け直して巴マミは本当に困ったような顔をする。


「マミ、ボクはここだよ」

少し高い声を聴いてから巴マミは後ろに振り返る、二人は釣られて巴マミの後ろを見遣る、

そこには白い、猫にも似た、犬にも似た、狐や栗鼠にも似たような、

生き物のようなぬいぐるみが、こじんまりと座っていた、居座っていた。

「きゅ……」

何かを喋ろうとした巴マミは直ぐに口を自らの右手で塞ぐ、そうしてから二人に罰が悪いような顔を見せて、

そそくさと白いぬいぐるみを――インキュベーターを、連れ帰ろうとする。

なるべく不自然に見えないようにして、逆に二人にはぎこちなく、不自然極まりの無い物だったが。

「大丈夫だよ、マミ、二人にボクは見えてるから」

何かを察したのか、インキュベーターはマミに告げ口をする、

するとまたもや罰が悪い顔を今度はインキュベーターに見せてから、二人へと向き直る。

「えっと、紹介……した方がいいのかな?」

「お願いするよ、ボクから言うとどうも誤解が生じちゃうみたいだからね」

眼を閉じて全てを任せたと言わんばかりのインキュベーターを横目に咳払いを一つした。

「この子はキュゥべぇ、貴女達の一つの願いを叶える代わりに、

 貴女達を魔法少女にする、ソウルジェムを作る『契約』を行っているわ」


「貴女達にも見えるっていう事は、その資格を持つ事に値する人として、選ば――」

巴マミが言い終わる直前で三人の(そして一匹)中間に一人の少女が割り這入って来る。

正に三人が三人とも同時に瞬きをした瞬間を狙って目前に現れたようにして、

颯爽と瞬間的に、眼の前に現れたその少女とは、暁美ほむらだった。

睨みつけるその眼の先にはインキュベーターが居た、

黒い黒曜石にも似た瞳が真っ直ぐにインキュベーターを捉えている。

「ほむらちゃ――」

「話が違うわ」

「違ってなんかいないよ」

分からない、

と気難しそうな顔をしたインキュベーターは、不貞腐れた様にその場に猫のように丸くなった。

「ボクはまどかを魔法少女にはしていない、契約にはちっとも支障をきたしてなんかいないよ?」

「近づく事自体が交換条件に違反しているわ」

交換条件、と訂正してから反論をする――否、暁美ほむらは自身でもこれは反論でも何でも無い事くらいは分かっていた。

只警戒をしているだけだ、インキュベーターという存在そのものを。

「はい、そこまでよ」

何時の間にか魔法少女として変身を終えていた巴マミがその間を裂いた。

「貴方達が一体どんな契約をしているのかは知らないけれど、

 これ以上ここでそんな話をするのなら、黙っているというのは無理な相談よ」

満点の笑みを浮かべた巴マミは先輩として、ベテランとしての目線で語る。

「何が言いたいの」

「鈍いわね、見逃してあげるって言っているのよ」

表情を崩さない巴マミとは対照的にその無表情を崩した暁美ほむらは、

二秒程目を閉じ、踵を返して今度は視界に映る様にして闇に消えて行く。

辺りは既に暗くなっていた。

程なくして暗闇の中からディケイドが変身を解きつつ現れる。

アタックカード『インビジブル』

身体の透明化のアタックカード。

「なるほど……大体わかった」

「しかし、俺が狙われているとなると厄介だな、『魔法少女』って奴が

 俺の攻撃を受け切るとは到底思えん……」

かといって攻撃はできない、悪意があって刃向って来るグロンギ達怪人とは訳が違うのだ、

更に門矢士の脳裏にはとある黒髪の少女が浮かんでは消える。

「……」

門矢士は左手にディケイドドライバーを構え、腹部の少し下に当てる。

それと同時に右手に持っていたライダーカード『ディケイド』を人差し指で二回鳴らして見せる。

「コイツが欲しいのか?」

規則正しい足音が鳴り始め、暗闇から誰かが銃を向けて此方へと歩みを向けるのが分かる、

無論、門矢士にはその正体も。

「短気は損気だぞ?」

ディケドドライバーからの機械音を聞いた直後に、ディケイドはライダーカードを構えた――

その瞬間、魔法少女は時を停めた。



「薔薇の魔女……!」


「え?酷くない?」


「気持ち悪い……」


「『ライダーは助け合い』、だと」


カメンライド!『スーパータトバ』!


全てを破壊し全てを繋げ!

龍騎も最初みた時はダサいと思ったけど途中でかっこいいと思った。ディケイドはそれに通ずる所があると思う、もやしがなんだと言うんだ!

長いですね、私もそう思います。
さぁ、ほむらちゃん、時間操作のチート魔法で超チートライダーに勝てるのでしょうか?
正直言って無理ゲーなのは見え見えですね、それでもきっと頑張ってくれることでしょう、
頑張れほむらちゃん、負けるなほむらちゃん、明日の勝利の為に。


セリフが一々、士の顔を思い浮かべさせてくれるな

>>43
もやしだって栄養価は高いんだ!
コンプリートフォームだって……うん……うん

>>45
そう言って頂けると嬉しいですね

言い忘れていたので、また再来週にでも

>>42
カメンライドじゃねーわ、フォームライドだしOOO最強フォームだから多分変身できねーわ
どないしよ、なんとかします

^U^

>>54
ニーサンは大人しくしててくださいw
次回も楽しみに待ってます!

>>50
それどころかガンダムライド・フフフフリーダム!だのウルトライド・メメメメビウス!だのやりかねない。

スーパータトバどうするんかな

・ケータッチ召喚
・通りすがりの海東が召喚
・映司「ライダーは助け合いでしょ!」スーパータカ!スーパートラ!スーパーバッタ!
・そのとき不思議なことが起こった

整合性ブン投げるのもある意味ディケイドの売りだし…

ウィザード最終話見るにスーパータトバが最強フォーム扱いならコンプ召喚はやれそう…かなぁ

電王だってライナーだったのがいつの間にか超クライマックスになってたし
オーズもコンプリートで出るのはスーパータトバだべ

戦隊や昭和ライダー世界みたく平成以外だとその世界の連中使ったFFRやFAR使えない的な縛りはあるかもしれない
烈火大斬刀もあれFARじゃなくてアタックライドだし

>>54
^U^

>>55
^U^<申し訳ありません、この様な更新速度で

>>56
流石にコラボでもしないと無理ですかねwwww

>>57
オーズ最強フォーム確定なのでケータッチで呼び出しもきついですね、
いっその事RXのAR『キングストーン』で奇跡でも起こしますかね……
現実的には他のライダーの高速移動系で済ませるつもりです

>>58
流石の士もただの少女同然のほむらちゃんに最強コンプリートフォームを使う畜生ではないはず……
多分、

>>59
大人の事情ですな

>>61
ストロンガーをFFRできたりしたのでもしかしたら昭和ライダーは出来るけどしないだけかもしれませんね、
魔法少女をFFR出来るとは思えませんがwwww

エターナルでもフリーズでもないww
やっぱ二週間って長いもんですかね、一話分投稿したいものだけれど
どうにも上手く行きません、
取り敢えず没になったほむほむVSディケイドオーズ:スーパータトバを置いておきます。

「短気は損気だぞ」

呟いたディケイドの右手には、二枚のライダーカードが握られている。

カメンライド『オーズ』

奇抜な色をしたライダーに変身をすると同時に、

ディケイドは更にもう一枚ディケイドドライバーにカードをセットした。

フォームライド『スーパータトバ』

最強フォームにして最終のフォーム、オーズ:スーパータトバ。

「……ッ」

その奇抜さには少しながら驚いたものの、少なくとも硬直するまでには至らなかった暁美ほむらは、

冷静に、時間を操るという自身の魔法を使い、時間停止を図る。

少女は時を止めた。

距離を取り、幾つもの銃口を向け、何十発という常人からして見れば絶対に避けられる筈の無い弾幕を張る。

――常人からして見れば。

しかし、ディケイドからして見れば、それは違った。

正確に言えば、少しの違和感を覚え、感じ取る、それだけであり、それ以上も、それ以下でもなかったが。

それでも、それだけで十分なのだ、


『スーパータトバ』の固有能力――時間停止能力を使えば。


それだけで十二分に、十全なのだ。


――一瞬、それこそ、一瞬の出来事だった。

時間停止能力を使ったので、それは最早言うまでもなく当然のことであるが、

それでも、一瞬の出来事だった。

暁美ほむらの目からしてみれば、それは正しく自身の能力と同じく、『時を戻した』ように見えただろう。

しかし、ディケイドの足元に転がる弾丸を見てから、考えを改める。

――恐らく、時間を操るという点に関しては合ってはいるはず。

問題は、どれほど関われるのか、ということ。

意を決し、暁美ほむらが次に時間停止をして、取った手段とは。

「相手が避けてしまうのなら、『避けれない』ようにするだけよ」

零距離射撃だった。


――ディケイドオーズ:スーパータトバの時間停止能力は異様に異常に短い。

持って数秒、十秒も持たずにその能力は消え去ってしまう。

しかし、ディケイドは暁美ほむらが自身の時間停止能力を解除する瞬間、

その瞬間を狙って、時間停止能力を発動する。

違和感、それを覚え、感じ取った瞬間に、発動し、大きく鋭利なトラクローソリッドを使い、

その弾丸を掃う様に、切り裂いたのだ。

「あるライダーが言っていた、『ライダーは助け合いだ』、とな」

ってな感じで、多少早足で(途中風呂に入りつつ)お送りしました。
もっと多くの文章、展開を考えていたりしたのですが、忘れました、一週間前位に。
大体こんな感じだったかな、って思いです。
今週分は今日の深夜位にお送りしますので明後日の夜にでも気軽に見てやって下さい。

ってな感じで、多少早足で(途中風呂に入りつつ)お送りしました。
もっと多くの文章、展開を考えていたりしたのですが、忘れました、一週間前位に。
大体こんな感じだったかな、って考えながら書きました。
今週分は今日の深夜位にお送りしますので明後日の夜にでも気軽に見てやって下さい。


時間が止まった中で二人とも同時に動けるんじゃなくて、交互に時間止めてる感じなの?
超銀河王戦は同時に動いてたっぽかったけど

>>76
考えとしてはほむほむの時間停止が終わる直前にディケイドが動き出すみたいな感じですね、
同時に動いたら完全にディケイドに勝ち目は無いと思います、
まあ士はもうちょっとしてから時間停止だと知るわけですが尺が足りませんでした。
カブトのタキオン粒子みたいにスーパータトバのスーパータカヘッドには何らかの粒子が流れており、
静止状態でも敵が見えるみたいな感じの設定があればいいな、凄く助かる。
感覚的に言えばジョジョのDIOVS承太郎戦みたいな感じですかね、
DIOのザ・ワールドの時止めが終わる寸前にスタープラチナによる時止めが始まる、みたいな。


ディケイドは苦戦していた、『魔法少女』という存在に苦戦していた。

仮面ライダーとしての性能から言わせると戦闘能力、戦闘のセンスそのものは、

ディケイドと暁美ほむらという魔法少女の差は歴然としており、象と蟻、天と地の差、月と銀河系程の差がある。

――しかし、だからこそ、ディケイドは苦戦を強いられていた。

何故ならば、ディケイドは全てを破壊する『世界の破壊者』だからだ、

当然、当然過ぎるほどに『魔法少女』という存在そのものを跡形も無く消す事が出来るだろう。


だが、今度という今度は訳が違うのだ。

暁美ほむらは倒してはいけない存在だからこそ、ディケイドは防戦一方を騙るしかなかった。

象が蟻を潰さないように道を歩く――その精密さをディケイドは求められていたのだ。


「――強すぎるってのも厄介だ、勿論、弱すぎる方にも問題点はあるがな」


時は遡る。

「短気は損気だぞ」

と忠告はした。

変身した直後にディケイドは新たにライダーカードを入れる。

カメンライド『カブト』

ベルトから変身音が鳴り響きディケイドの姿が仮面ライダーカブト:ライダーフォームの姿に変わる。

すると、暁美ほむらを挑発する様に右手を天に掲げた。

一部始終を見ていた暁美ほむらは信じられない、と思っていた。

「(事前に聞いてはいたものの、実際に見てみると恐ろしい)」



ディケイド――全ての破壊者。


――時間停止。

暁美ほむらの良く使う自身の魔法『時間操作』を応用した技。

この魔法を使い一瞬の内に魔女や使い魔を幾つも葬ってきた――が、

今度の相手は違う、世界の破壊者『ディケイド』なのだ、

それはもはや、ワルプルギスやそれ以上を相手取るものと等しい。

世界を敵に回したような気分に、暁美ほむらは陥っていた。

「まずは様子見……ッ」

幾つもの銃から発砲される銃弾、軽く数十発の弾丸で弾幕を作り、時間を元の状態に戻す。

それが今の暁美ほむらに出来る最善策だったが、しかし欠点があった。

弾幕を作ったという事はそれほど離れなければならなかったという事で、

即座に対応できる術を、ディケイドは持ち合わせていないと判断したからである。

ディケイドが既に持っていたライダーカードに気付けなかったのは、失敗だったと言えよう。

アタックカード『クロックアップ』


アタックカード『クロックアップ』

瞬間的に時間の流れを操るアタックカード。

少し前に暁美ほむらの魔法少女としての魔法を『インビジブル』で見ていたディケイドは、

超高速系の魔法、若しくはそれに類似したものだと仮定していた。

だからこそこちらもそれに横走したライダーで対話をするつもりだった。

しかし、種を明かしてしまえば、それすらも違う事が分かる。

ディケイドがカブトへと変身をして『クロックアップ』を使用するまでの時間は一秒にも満たない、

そして、『クロックアップ』を使った瞬間には、既に自身と暁美ほむらの距離は元の二倍以上離れており、

逆に目前に未知の弾丸が迫っている。

そして当の暁美ほむらはこの高速化された世界には居ない。

彼女の眼がタキオン粒子で出来ていないのならば自分の姿を目視すらできていないだろう――と考える。

そしてディケイドはアタックカード『ディケイドスラッシュ』を使い、眼の前の弾幕を切り捨てた。


正に一瞬の内、と言った所だった。

暁美ほむらには少なくともそのように見えただろう、

まずディケイドが消え、一瞬の内に自らが張った弾幕が壊され、

次の瞬間には二倍以上も離れていた距離が元の位置に戻されている。

「――まさか、時間を戻した」

――と考えに至り、それが違うものだと考え直す。

それならば自分の位置が戻るはずだ、よく見ればディケイドの少し後ろには弾丸が幾つも転がっている。

明らかに自分の撃った弾を、斬ったか、それとも何かで弾いたのか。

それでも自分と類似した能力を、ディケイドは所持していた、と考えるのが妥当だろう。

「――くっ」


――――――――――――――

――――――――

――――

――五回、それがその後暁美ほむらが時間停止をした回数だった。

しかしそれでも、ダメージどころかディケイドには消耗は見られなかった。

繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し、

ディケイドから離れ、弾丸を撃ち、弾かれ、距離を詰められる。

ディケイドから離れ、弾丸を撃ち、弾かれ、距離を詰められる。

ディケイドから離れ、弾丸を撃ち、弾かれ、距離を詰められる。

ディケイドから離れ、弾丸を撃ち、弾かれ、距離を詰められる。

ディケイドから離れ、弾丸を撃ち、弾かれ、距離を詰められる。



繰り返した結果、暁美ほむらには一つの疑問が浮かんでいた。

――どうして攻撃されないのか。

どう考えても劣勢なのはこちらだ、幾度も魔法を使い、時間を停めても勝つ気配が無い、

しかし、向こうは攻撃の手段やそういった何かを見せる事が無いのだ。

力を試されているのか、それとも何か攻撃できない理由があるのか、しかし現時点では打開策も何もない。

結果から言えば、確かにこの時、ディケイドは暁美ほむらの力、魔法を、試していた。

ディケイドは暁美ほむらとの和解をするために、この世界の事を知るために、彼女の魔法を知る必要があった。

ディケイドは常にディケイドドライバーにアタックカード『クロックアップ』をセットして、

暁美ほむらが魔法を使った瞬間に――

ディケイドの感覚で言えば、目の前に異物が入った、違和感を覚え、感じ取った瞬間に、

『クロックアップ』して弾丸を切り捨てる、これを神業のように繰り返していた。

何度目かの魔法を使った直後に。

「――なるほど、大体分かった」

と言ったディケイドは弾丸を切り捨てた後に、ライダーカードを二枚、ライドブッカ―から取り出した。

カメンライド『ブレイド』 アタックカード『マッハ』

即座に仮面ライダーブレイドに変身したディケイドは『マッハ』を使い、弾丸を避けた――

「――ッ」

驚愕だった、今までに無い行動を取ったディケイドには勿論だったが、

それ以上に、自身の『魔法』が使えなくなっているという事が、彼女にとっては一番の驚きだっただろう。

何が起こったかが分からない、

ソウルジェムにはまだ相当の輝きが見える、魔法が使えなくなるという事態にはならない筈だ。

それとも、ディケイドが。


ディケイドは暁美ほむらの『魔法』は時間に関わるものだと予測した。

ならばどうするか、その時間そのものをどうにかしてしまえばいいのだ。

仮面ライダーブレイドに変身したディケイドは、アタックカード『マッハ』を使い、

銃弾を避けてから、アタックカード『タイム』を使用した。

その効力を無効化する白い布を暁美ほむらの長い黒髪に巻き付けて。


「――案外、簡単だったな」

悠長にのんびりと歩きながら確認する様に言葉を発したディケイドは、

暁美ほむらに向き直すようにして歩き始める。

「流石のお前も停められた時間内じゃ更に時は止められないみたいだな」

鎌をかけたつもりだったが、悔しそうに、苦い顔をした表情を見て確信する。

――やっぱりか、

「何が目的だ?金か?相手が悪かったな」

「……違う」

「じゃあこれか」

ディケイドドライバーのバックルを二度指で鳴らす。

暁美ほむらの表情がさらに歪むのを見て少し満足そうに笑うディケイドは。

「……なるほど、だが、これはやれん」

――旅の必需品なんでな。と口にした。

「これには色々と詰まってる、旅の思い出も、戦闘の記憶も、――俺が失う前の全ても」

――仲間との思い出も。と口にするディケイドはどこか懐かしい思い出に浸るような、

少しのもどかしさと、それに伴って憑いてくる諦めの様な物が見えた。


「それさえあれば……私の友達が……最愛の友達が……救えるの」

「知らん……知りたくも無い」

眼に涙を溜め、暁美ほむらは少し愚図りながら少しずつ少しずつ話を始める。

「そのエネルギーが有れば……私の友達は救われるの、救えるの……」

「このまんまじゃ、どうしても、どうやっても私じゃ、まどかは救えないの……」

――だから。

「――お前はそれでいいのか?」

ディケイド――門矢士の声に、我に返った暁美ほむらは、自身が既に魔法少女の姿では無い事に気付く。

ディケイドも何時の間にか変身を解いており、アタックカード『タイム』の効力も、いつの間にか消えていた。


「お前が仮に――まあ、到底無理な話だが、仮に、だ」

「仮に俺からコイツを取って食ったとして、一体何が変わる」

「自慢じゃないが俺は幾つもの世界が終わる瞬間を見てきた、世界が滅びる寸前の世界を、だ」

身振り手振りを交えて魔法少女からただの少女へと成り損なった少女に、訴えかける様に言う。

「恐らく、この世界にもそれが近づいている筈だ――」

世界の終りと言う言葉に暁美ほむらは――ワルプルギスの夜を思い出す、

「世界の終りを、俺は食い止めるために来た」

「――そうよ、ここの周辺は、もう少しで終わりを迎える」

「何度も……何度も何度も!それにあの子は犠牲になった……ッ」

感情が高ぶり、自分でも何を言っているのかが分からない。

「自分を犠牲にして!それでも何度も立ち向かって!立ち向かって……自分を、犠牲に……」

「――だったら、俺が世界を救ってやる」

「ある一人の仮面ライダーはこう言った、『ライダーは助け合い』だと」

「世界は違えど初めて会ったライダーを信用したり、

 そいつに何の利益も無いのに仮面ライダーとして戦っていた奴だ」

「幾度も騙されたり死にそうになっても、仮面ライダーを止める事無く、

 世界の終末と最後まで戦い抜いた」

「お前は知らないだろうが、他の世界には多くのライダーがそれぞれの正義に乗っ取って戦っている」

「世界線が違うお前も、そいつの為に幾度も戦ったはずだ」

「お前はその正義に乗っ取って、戦っていた」

「お前は魔法少女だが、存在理由は俺達仮面ライダーとなんら変わらない」

「お前が一人で苦戦を強いられているのなら、誰かに助けを求めろ、

 魔法少女一人で勝てないのなら、他の存在を頼れ」

「教師ってのは生徒から助けを乞われるもんだ」

門矢士はそう言いつつシニカルに笑った。



何時の間にか暁美ほむらは彼の言葉に耳を傾ける様になっていた、

期待する様に、その言葉を待つように。

「もしお前にそれが出来ないんなら、そいつが世界の終りの犠牲になる前に、俺が世界の終りを破壊する」

「そんなこと――」

「やってみせる、何せ俺は『世界の破壊者』とまで呼ばれた男だからな」

門矢士は懐から一枚の写真を取り出し、暁美ほむらの元に投げつける。

その写真はあり得ないほどに歪み切ってはいたが、そこには『魔女の使い魔』が写っていた。

「俺が教えてやる、お前のそれはただの逃げで、ただの一時的な現実逃避でしかないってな」

「貴方は――一体」

門矢士は振り返ると軽く右手をぶらぶらと振って、

「『世界の破壊者』――と言いたい所だが、今はただの通りすがりの教師みたいなもんだ、覚えておけ」



「よし、下克上だ」

――十倍返しだ。いや、百倍の方がいいか……。

と、元気に出て行った母を照れ笑いで見送り、鹿目まどかは自宅を急いで出る。

学校に間に合わせるためだったが、それ以上に昨夜の事を美樹さやかに話したかったのだ。

『魔法少女』について。

【おっ、まどかー私サイキッカーになったよー】

【さ、さやかちゃん……それ、キュゥべえのでしょ?】

表情だけで不貞腐れているので隣に居た志筑仁美からは不審に思われていた。

どうやら美樹さやかはそれに気付いては居ないようだったが。

【ボクが近くに居る時はこうやって情報のやり取りもできるんだ】

【なんだよぅキュゥべえ、もっと夢見たっていいじゃんかよー】

【さやかちゃん……キュゥべえ、連れて来たんだ……】

三人の中では口も動かさずに意気投合している二人と、

それを不思議そうに見つめる一人と言う不思議な図上が出来上がっていた。

【大丈夫だって、他の人には見えないらしいから、ほら、仁美とか、気付いてないし】

不意に美樹さやかは志筑仁美に顔を向ける、

完全に気まぐれだったのだが、今の今までの二人を見ていた志筑仁美は自分にも何かを訴えかけているのか、

と、不安に煽られる。

「ああっ、私の知らぬ間に二人が眼と眼で会話が出来るようになっているなんてっ、

 私と別れた後の時間で一体何が……」

昨日の美樹さやかの様に(とは言ってもあれは演技であり、これは最早本当に心を折ったような感じだったが)

よろける、本当によろける。

「私とは遊びだったのね……遊びだったのねぇ……」

と言い残して走り去ってしまった。

【いや、遊びでしょ、友達なんだし】

と、冷静な美樹さやかのツッコミは響かなかった。

「声、出てないよ……」

「えぇ!うっそ本当に!」

「……便利過ぎるのも、少し不便だね」

そう会話した二人の足元には、バックが一つ多く置かれていた。


【ねぇ、さやかちゃん、昨日の、どう思う?】

【んぇ?昨日のって?】

魔女の使い魔か、それとも暁美ほむらと言う少女の存在か、

――それとも、『魔法少女』と言う存在か。

【全部、かな。色々と有りすぎて何が何だか……】

その言葉に――その思考に、美樹さやかは不機嫌そうに頬を膨らませる。

魔法少女、暁美ほむら。

黒髪の似合う少女。

【いけすかない奴だったなー、最初からそうか】

【まどかも気を付けなよ、アイツ、どう見ても敵だから】

――と、何処からか声が聞こえる。

少し高いハイトーン、キュゥべえを通じて聞こえてくる声。

【大丈夫よ、二人とも】

聞き慣れはしない声だったものの、昨日の今日で忘れられる筈も無いその声は、

巴マミのものであった。

魔法少女、巴マミ。


「二人とも、魔法少女の練習、みたいなのしてみない?」

放課後、巴マミの自室に二人は居た。

高層マンションの一室、巴マミはここで一人暮らしを行っている。

――それにしては、広い。

広すぎる、一戸家族が住めるほどの部屋の数、

一人暮らしにしては、どうにも不自然で、不可解だった。

しかし鹿目まどか達はそれには気付かずに。

目の前に置かれている、ティーカップに淹れられた紅茶を半分ほど飲み切っていた。

飲み切っていた所で、巴マミは二人にそう呼びかけた。

「仮、魔法少女、ってことで、私の活動を見てから決めても遅くはないと思うわ」

「それでも大丈夫でしょう?キュゥべえ?」

白いインキュベーターは左耳を大きく動かした後で猫が飛び移るように、

大きく跳躍して自身の身長よりも高い位置にある、テーブルの上へと乗り移った、後。

「ボクとしてはどちらでもいいけどね、勿論早く契約してくれることに越した事はないんだけれどね」

「それでキミ達が僕と契約する気になるのなら、喜んでそれに賛成しよう」

無機質に笑うインキュベーターは、本当にただのぬいぐるみのようで、

しかし何処か、怪しさを感じさせる。



――深夜の学校には不気味な静けさがある。

騒がしくしていればいいというものではないけれど、少なくとも無音で自分の足音だけが響くというのは、

心地の良い物ではないだろう。

しかしだからといって、二人で居れば怖くは無くなるとも言い難い、

相手を限る話になってしまうし、そういう時は自然と友好の深い仲を選んでしまうからである。

自分の信頼を置ける相手を選ぶ、安心できる相手を選ぶ。

勿論深夜の学校と言う限られ過ぎる限定的な場所ではなくともいい、何処でもそうだ。

仲の悪い友達と一緒には居たくない、気に食わない、いけ好かない奴の隣は嫌だ。

暁美ほむらにとって、親の仇にも似た相手であるインキュベーターはそういう相手だったという訳なのだ。

場所は深夜の学校の屋上、暁美ほむらは、インキュベーターと共に、そこに居た。

「話って、一体何なのかしら」

暁美ほむらはそういう相手に、そういう目を向けて話す。

嫌悪感を抱き、憎悪感を抱き、醜悪に目を向け、最悪に語る。

あくまで、冷静に、一定の緊張感を以てして、語る。

「キミに朗報だよ、暁美ほむら、

 ボクとしても君一人にディケイドを押し付けるような真似をしていて、とても心苦しかったんだ」

――心苦しい。

心苦しい?

「インキュベーター、あなたにそんな機能は無いでしょう?

 人間を語るような、――騙るような真似はやめておきなさい」

痛い目を見るわよ。

次の瞬間には既に新しいインキュベーターは何処からともなく現れる、

これを殺してもまた湧いて出るのだろう、それこそ、湯水のように。

――一体何処から、どうやって出現するのかしら。

彼女にとってして見ればごく一般の、ごく当たり前な風景だったので、特に疑問には思わなかったが、


どうしてか、危機感も無くそんな事を思っている。



どうしてだろうか?


「キミに朗報だよ、この町に新しく魔法少女がやってくる」

しかし、そんな思想も、一瞬の内に崩れる。

「――随分と早いご到着ね」

「手回ししたからね」

胸を張る様ににっこりと笑うインキュベーターを見て、またもや銃口を向けるが、

直ぐに考えを改めなおす。

ディケイドとの戦闘で弾丸も精神も、使い過ぎたのだ。

――それにしても、早すぎる。

これまでも幾度かは彼女が予想を超え、早くこの町に辿り着いた事はあったけれど、

それでも、まだ『薔薇の魔女』すら倒してはいないのに。

それだけ、――それだけこの町に危機が迫っているという事か?

ディケイドの、所為で……?

――本当に?


思考がループする。

考えが纏まらない。

思考がルーズ過ぎる。

考えが落ち着かない。

ディケイドの言っていたことが本当だとするのならば、

『世界の終り』――『終末』が、迫っている。

格段に、速く。

「暁美ほむら」

名前を呼ばれ、顔を向ける。

「…………私の方から、彼女には接触しておくわ」

「――キミは何処までも知っているんだね」

「――ええ、私はどんな事でも知っているわ」

挑発するように言った台詞で、完全に我に返った暁美ほむらは、

直ぐにフェンスの上に移動し、その場を飛び下りた。

歩いて帰る途中に、対向車線の向こう側に、彼女は、鹿目まどかを見た。

――私は貴女が笑って居られるなら、なんだってする。

例え好まれなくとも、偽善であろうと、独善であり続ける。

例えこの命を神に孵そうとも、悪魔の手に、既に堕ちていたとしても。

例え世界の破壊者と、呼ばれようとも。

例え私の傍に、誰も居なくても。

私は、どんなことでもする。

貴女が笑ってくれるのなら。

だから。




「…………………………まどか、まどか」


「なんっていうかさ」

昼休み、昨夜ここに居たインキュベーターを除き、二人は話し始めた。

「まどかは……お願い事とか、決まった?」

話しかけられた少女は俯いたまま暫く間を置いて、首を振る。

「……ううん」

フェンスに手を掛けた美樹さやかは何処か遠い目をしていた、

何処か、他の何かを見つめるような仕草に、鹿目まどかは気付いていた。

そしてそれが一体どんなものに向けられているのかも、気付いていた、

だからこそ、何も言わずに只々顔を伏せていた。

「……そっか、そうだよね」

「あーあ、これが本当の一生のお願い、って感じになっちゃうって考えると、ね」

――仕方ないよ。

諦めを感じさせるその物言いに、少し、疑問を感じた。

嘘、偽り、騙り、――驕り?

「…………」


放課後、二人は巴マミの部屋に再度来ていた。

魔法少女を、体験するために、体感する為に。

「二人とも、準備は良いのかしら?

 魔法少女っていう仕事はね、とっても大変だし、すごく危ないの」

美樹さやかは待ってましたと言わんばかりの表情になり、

昼間のころとは裏腹に学校指定ではない大きなバックから、金属バットを持ち出した。

「……えらく現実的なものを持ってきたのね」

予告ホームランのポーズを取った美樹さやかは得意な顔を全面的に出した。

「……えっと、私は、これを……」

おずおずと差し出した両手には一つのノートブックが握られている。

「――これは、絵?」

ハラハラと捲られたページの項には様々な少女のデフォルメされた、

お世辞にも上手いとは言えないような、絵がびっしりと詰め込まれていた。

「一応……そうなれたらいいかなーって……」

むず痒いのか照れ笑いを浮かべた鹿目まどかは、お茶を濁すように紅茶とショートケーキを口にする

「わはははー可愛いぞー流石私の嫁!」

「え?」

「『え?』って……え?酷くない?」


「補修はしてあげるし、貴方達が危なくなったら結界で守ってあげるからね」

時は既に魔女の結界内である。

巴マミの手から離れたリボンが金属バットに絡みつき、奇妙な形へと変貌を遂げる。

その光景に二人は息を呑み、声を揃えて歓声を上げる。

「おほぉー」

三分ほど歩いた所で巴マミは二人を右手で静止する。

「――気を引き締めた方がいいわ、現れたみたいよ」

1、2、3――8匹。

少ないのか多いのか、初心者の二人にとってしてみればもちろん多く見えただろうが、

熟練者である巴マミは疑問に思っていた。

――少な過ぎる。と。

思考は回転しても、身体は休むことなく動き続ける。

マスケット銃で幾つも創り出し、片手で狙いを定め、確実に一匹づつを葬り去る。

――右斜め上前、当たった。

――左斜め前、当たった。

――左斜め上後ろ、あた、らない、仕方ない、銃体で殴打しよう。

全方位から来る幾つもの攻撃に、初心者二人を抱えていながらも、

流石はベテランと言うべきものか、傷一つなく華麗なステップで相手を躱し、

マスケット銃で撃ったり打ったりしながらを繰り返し、

右からの敵を明確に打ち抜きその勢いで後ろに居た『魔女の使い魔』を叩く、殴打する。

と同時に左でに持ったマスケット銃で逃げようとする使い魔を的確に打ち抜く。

両手に持ったマスケット銃を放棄して帽子から二本のマスケット銃を取り出す瞬間に、

足元の一匹を撃つ。

――どうやら一匹位は倒せたのね。

左手に持て余したマスケット銃を放り捨てて、二人を誘導し、先に進む。


「あれは……『薔薇の魔女』……!」

奥の奥、『魔女』はそこに居た。

禍々しく、毒々しく、女々しく、なによりも、凶悪そうに。

融けたアイスクリームのような部分と、辛うじて薔薇だと分かる花、

跳べそうにも無い毒々しい羽根が小さく羽ばたく。

周りに生い茂る茨に囲まれる様にして、『魔女』はそこに居た。

「気持ち悪い……」

それが美樹さやかの印象だったが、無理も無いだろう、

それは、童話の中に存在した『魔女』とは全く違うタイプの生き物なのだから。

どちらかというと、もっと違うクリーチャーのような存在、それが美樹さやかたちの印象だった。

巴マミは何の躊躇も無く跳び降りると、着地と同時にスカートの端を上品に持ち、

深く、深くお辞儀をする。

持ち上げたスカートからは十本のマスケット銃が現れた。

こちらに向かってきた茨の鞭の様な物を、マスケット銃で器用に弾く、弾く、弾く。

常人ではできないスピードで撃ち放たれるそれに二人は息を呑む。

軽々しく見えるその攻撃はとても二人にはできない芸当だ。

魔法少女故のその力で大きく跳躍した巴マミは、

両方の翼らしき何かをマスケット銃よりも少し大きめの銃で撃ち抜く。

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

声にならない悲鳴を上げると、それを聞いた巴マミは一つのマスケット銃に力を集中させ始めた、

マスケット銃は何十倍もの大きさ以上になり、そのまま、

「ティロ・フィナーレ!」

『薔薇の魔女』を打ち抜いた。

「……ほう、あれが『魔女』って奴か、随分と不細工な格好をしているな」


「ほら、こうすれば、ソウルジェムの濁りは消えて行くのよ」

と二人に見せる様にしてソウルジェムの濁りを、魔女の卵へと移し替えておく。

「…………忠告した甲斐があったわ」

誰にも聞かれないように、小さな声で、巴マミはそういった。

「大丈夫よ、貴女は少し悪い夢を見て居ただけ、

 明日からはちゃんと生きる事の出来る人間よ、大丈夫、何があっても大丈夫よ」

「魔法少女って凄いんだね」

鹿目まどかは巴マミを羨ましそうに見つめている、

それを知ってか知らずか、その雰囲気を壊すように、

「いっっやーあたしにあんなの出来るかねぇー」

でへへーと笑う親友の姿を見て、鹿目まどかも笑った。


「もう何も怖くない……!」


「うぇぇぇ……吐きそ」


「忠告したはずよ、暁美ほむら」


「これが魔法少女の現実よ……」


「これって……魔女の……!」


「佐倉杏子」


全てを破壊し、全てを繋げ!

正直こんな二話で>>100行くと思ってなかったのでビックリしてる、
多分十話も行かずに終わると思うので(それでも長いけれど)暇潰しに見てやって下さい。
他にはプリズマ☆イリヤの世界とかにも言ってみたいなとか考えてる。
まあ、それなりに頑張るので、また再来週くらいにでも。

募金した金が悪い方向へとか、自分の戦争に巻き込まれた時の話を掠め取られそうになったとか
そういうので何となくお人好しのイメージが強く、こういう言い回しになってしまいました
気に障ったのなら申し訳ない……

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