翠星石 「不良入門?」 (36)

大学生ジュンの下宿・夜

大学生ジュン 「はぁ」

翠星石 「どうしたのです?でかじゅん」

大学生ジュン 「うん… また嫌な事があってさ…」

翠星石 「ふーん… 翠星石に話してみるですよ?
    どんな事がありました?」

大学生ジュン 「うん… それがさ…」

翠星石 「ふむふむ」

大学生ジュン 「ってなに人形にお悩み相談してるんだよ僕…」

翠星石 「つまり電車の中で変なおじさんにからまれてしまったと」

大学生ジュン 「そうなんだよ 僕が何したって言うんだよホント…」

翠星石 「それでバイト先でも店長に」

大学生ジュン 「僕の事ストレス解消に使ってるからな あいつ…
        マジむかつく…」

翠星石 「帰り道では車にクラクションを鳴らされたのが頭にきたと」

大学生ジュン 「白いワンボックスってクズみたいな奴しか乗ってないのな
       僕が弱そうだから煽ったんだよ クソ…」

翠星石 「ふうん…」

翠星石 「それは良くありませんね」

大学生ジュン 「そうだろ」

翠星石 「心身ともに余計な負荷がかかってしまうのです」

大学生ジュン 「なんでなんだろうな なめられやすいんだよな 僕…
        もっと強そうな奴だったら
        あいつら絶対おんなじようには振舞わないんだ
        ちくしょう…」

翠星石 「かわいそうにです…」よしよし

大学生ジュン 「最近電車の中とかでさ そういう嫌な思い出が
        突然かっと出て来るんだよ
        くそう!あいつら!って… それで叫びたくなる
        ぐってこらえるんだけど」

翠星石 「あー… そこで叫んじゃったらだめですもんね…」

大学生ジュン 「うん…」

翠星石 「どうやってストレス解消してますか?
     ため込んだままはよくないのですよ?」

大学生ジュン 「まあ… 帰りに駅近くのカラオケとか…
        ファミレスでお酒飲んだり… それくらいかな…」

翠星石 「それでさっぱりしますですか?」

大学生ジュン 「うん… 実はあんまり効果ないよな
       その場しのぎみたいな ちょっとだけ落ち着くけど
       根本的な解決にはなってないし
       だって次の日からまたなめられるもん」

翠星石 「…」

大学生ジュン 「…」

翠星石 「じゃあ翠星石が教えてあげるのです」

大学生ジュン 「え?何を?」

翠星石 「なめられない方法について、ですよ!」

大学生ジュン 「え?そんなのあるのか?」

翠星石 「翠星石は何年生きてると思ってますか? 
     そのくらい良く知ってるのです」

大学生ジュン 「おー!じゃあ教えてくれよ!」

翠星石 「じゃ じゃあ 翠星石の不良にゅうもん~ ですっ☆」

大学生ジュン 「うわあー ぱちぱち… って何やってんだ僕…」ズーン

翠星石 「あれ…」

大学生ジュン 「だってお人形とお話してるんだよ?僕20歳だよ?
       そりゃなめられるよなこんな…」

翠星石 「ストーップですっ 趣味は誰だって好きな事をしたらいいんですよ
    そんなこと誰にも文句をいう権利はないのです
    それとなめられない事は全く別の話なのですよ」

大学生ジュン 「そうかなあ やっぱり内面がにじみ出るって事
        あるんじゃないかなあ
        周りの人は僕の事見て『お人形と話してそうなオーラww』
        とか思ってるんだろうな
        ていうか趣味って言わないでくれ…」

翠星石 「あれ?趣味じゃなかったですか?」

大学生ジュン 「ちがうよ!」

翠星石 「え…?翠星石のこときらいです…?」

大学生ジュン 「え ええー! ちょっ… やめろよー!」カアア…



翠星石 「こほん!でははじめますよ!」

大学生ジュン 「う うん…」

翠星石 「まずは理論からなのです」

大学生ジュン 「り 理論?」

翠星石 「理論は大事ですよ」

翠星石 「ではまず本当に
    道行く人に、お店の人に、車を運転している人に、
    なめられているのか?という問題です
    単にでかじゅんの思い込みという可能性もありますよね…
    でもこれは違うのです
    世の中にはなめられる人となめられない人が確実にいるのです」

大学生ジュン 「うんうん!だよなー!人は見た目が9割とかいう本もでてたし…」

翠星石 「うーん… 自己啓発本に頼るのはあまりよくありませんよ?
     まあまあ ではつづきです
     じゃあなめられるかどうかはどこで決まるのでしょうか?
     ほとんどそれは服装なのですよ」

大学生ジュン 「服装?顔とかじゃなくて?」

翠星石 「そーなのです」

翠星石 「でかじゅんはいつもチェックのシャツを着ていますね
     しかもズボンから出してるのです
     これでは大学生という事がはっきり分かってしまいます
     そしてもっと悪い事に」

大学生ジュン 「え」

翠星石 「もっと悪い事にですね
    こーゆー恰好をしていると『勉強は適当に遊んでいる学生』
    という風に取られるのです
    でかじゅんの場合は…そーですねー
    まあちょーっとだけかっこいいですから?
    あっ これは別に翠星石がかっこいいと思ってるとかそんなんじゃ
    ないですよっ!
    まあちょっと整ってるという…
    ですから要はリア充だと思われるのです
    学生身分で彼女もいて遊びまわりやがって、むかつく!
    と一瞥しただけでそこまで思われる訳です」

大学生ジュン 「え ええー! 僕そんなんじゃないのに」

翠星石 「でも周りの人からすれば外見で判断するしかないのですよ」

大学生ジュン 「じゃあどうすりゃいいんだよ…」

翠星石 「たとえばシャツをズボンに入れて
    スーツ用とかの硬い感じのベルトで止めましょう
    これだけで『遊んでる』感じはなくなりますよ
    大学生だけど真面目なんだなあ、という感じになるのです
    ほんとにこれだけでぜーんぜん違うのです」

大学生ジュン 「ほんとかよ… それだけで変わったら苦労しないって…」

翠星石 「いえいえ 真面目そう、というのは大事なんですよ
    だってリア充っぽいのがなぜ嫌われるかというと
    女を作ってあそんでそうなのがむかつくから
    嫌われるのです
    だから真面目そう、勉強してそう、っていうのは
    とっても大事なんですよ」

大学生ジュン 「へー… お前なんでそんなこと知ってるんだよ…」

翠星石 「あとこことか ボタンはちゃんととめるです…」ぎゅっ

大学生ジュン 「ちょ!? わわっ?! 自分でやるよー!」

翠星石 「だいいちぼたんまで止めてるとよりよいのです
    もちろん帰りで疲れている時は一つくらい外してもいいでしょう」

大学生ジュン 「も もう… 急に登ってこないで…」

大学生ジュン 「じゃあそれでもなめられたらどうすんだよっ
       あと僕の今までの気持ちはどこにぶつけたらいいんだっ」

翠星石 「それでもなめられたら?
    ふうん… まあでかじゅんはちょっと女々しいですからね…
    男らしい感じの人ですとシャツをきちっとするだけでいいのですが
    でかじゅんはちょっとひ弱な感じになっちゃうかもしれませんです」

大学生ジュン 「だよなー… はあ… 店長とかはどうしようもないし…」

翠星石 「でも安心していいのですよ? 実はまだ方法があるのです」

大学生ジュン 「そんな都合のいい…あるのかな…」

翠星石 「それがあるのですよ えーっと 確かこのへんに」ごそごそ

翠星石はぽっけをさぐっている

大学生ジュン 「?」

翠星石 「あっ ありましたよ これ黒眼鏡ですが
    ちょっとかけてみるです よいしょ」

大学生ジュン 「ふわあ!? ちょ ちょっとー!
       急に登るのはやめてくれよ! だって登られたら
       抱っこして下ろす訳にもいかないし
       何にもできなくなるからー!」

翠星石 「あわわっ ぐらぐらしないでぇ ほい!かかったです」

大学生ジュン 「ふ ふう… あのなあ…」

翠星石 「うーん なかなかコワモテになりましたよ」

大学生ジュン 「なにこれサングラス? こんなのかけられる訳ないだろ…」

翠星石 「黒眼鏡もかけれないのですか?
    いくじなしですねえ…
    でもそれはシャツインでもなめられる場合に持っとくといいですよ」

大学生ジュン 「えー… だって僕…」

翠星石 「どうしてかといいますと
    そっち系のニオイが少しでもする場合
    ほとんどの人は出来るだけ接触を避けるようになるからです
    あっ そんな悲しそうな顔してたらだめですぅ
    黒眼鏡をかけるときの表情はですねえ…」

大学生ジュン 「どんな顔してこんなのかけてりゃいいんだよ…
       僕絶対似合わないって…」

翠星石 「そーでもありませんよ?
    コツとしては…
    黒眼鏡をかける時はまず真面目な表情になるです」

大学生ジュン 「真面目? 不良っぽい感じじゃなくて?」

翠星石 「不良っぽいのは所詮子供でしかありません
    本当に怖い人というのはすごく真面目で渋い顔をしてるのですよ
    えーっと もうちょっと眉を普通にして…
    おー!いいですよ かっーこいいですう!」

大学生ジュン 「そ そうかな…」

翠星石 「それに少しだけニヒルな笑いを加えてもかまいませんし
     遠くを見てるような眼をしていてもより一層良いでしょう」

大学生ジュン 「なんだそれ…」

翠星石 「それは翠星石の黒眼鏡ですけど
    メガネ屋さんに探しに行っても良いのです
    今の時代は色んなデザインのがあって楽しいですよ
    おすすめはメガネの田中ですね
    良いメガネを選んでくれますし店員さんが丁寧なのですよ
    ビジョンメガネはだめですよ」

大学生ジュン 「そ そう… 僕いっつも近いからビジョンにしてた…
       ていうかなんでお人形のくせにメガネ屋に詳しいんだよお前…」

翠星石 「それで『若者らしいシャープな感じの黒眼鏡』とでも
     伝えて選んで貰えばいいのですよー
     どうです?これならファッションですし
     何より怒ったりするんじゃなくても解決できるですよ」

大学生ジュン 「そ そっかー… ふうん…
       そういうのもありなのかな…」

翠星石 「そーですよ! 今の時代自分の身は自分で守らんといかんのです
    そうやって身なりに気を使ってみるのも大事な事なのですよ
    そんなにお金もかからないですし…」

大学生ジュン 「身を守るためのファッションってことか」

翠星石 「ええ 昆虫とかが派手な色をしてたりしますよね?
    つまりカモフラージュなのです
    真面目な恰好をしてみたり、ちょっといかつい感じにしてみたり…
    本来どんなかっこをしようと自由のはずですが
    世知辛い現代を生きるためには
    時にはそういった工夫も大事なのです」

大学生ジュン 「ふうん そう… そうかもなー…
       なんとなくそんな気がしてきたよ…」

DJ 「でもそれでももし変な奴がからんできたらどうしよう…」

翠星石 「はあ 心配症ですねえ…
    あのですねえ 怒る時には怒らないといけません
    これは大事な事なのですよ?」

DJ 「ええ… 怒るって苦手だなあ… 僕…
   例えばどんな風に怒ればいいんだYO?」

翠星石 「そりゃあ自分の思った事をそのまま端的に言えばいいのです
    『なんだとこら』『ああ?』『なんやねんお前』
    と こういう感じでですね ストレートに表現してみましょう」

DJ 「怖すぎワロタ…」
     

DJ 「よし そろそろ寝ようかな 僕
    今日はありがとう」

翠星石 「そうですね そろそろ寝た方がいいのかもしれないですう」

DJ 「じゃあおやすみ
    クソコテのトゥモエさん大丈夫かな…
    何か僕は柏葉巴ちゃん!とか連呼してたけど…」

翠星石 「そ そーですねえ 大丈夫なんでしょうか…」

-END-

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