「じゃあまた明日な」
「うん。送ってくれてありがとう。明日待ってるからね」
「明日こそは早起きしてお前を起こしにいくぜ。期待しててくれよな」
「うふふっ、がんばって。おやすみなさい。
気をつけてね」
「おぅよ。おやすみ」
その日、おれたちが探検から戻ったのは暮れ方をとうに過ぎたころだった。
仲間のブースターを無事に住み処まで送り届け、別れのあいさつを交わしたあと、おれは夜道へと足を踏み入れていった。
おれの大好きな闇の世界。
寄り道せずに住み処に戻るつもりはもちろんない。
明日会う約束もしたことだし、あとはやるべきことをやって寝るだけだ。
「……」
おもむろに夜空を見上げる。
昼間は眩しかった太陽も、時間がたつといずれ姿を隠す。
そいつはすなわち、夜の帳がおりたことを意味する。
お楽しみはこれからが始まりなのだ。
(行くか)
行くといってもルートを特に決めているわけではなく、ただ適当にその辺を歩きまわるだけ。
おれ以外のポケモンが同じことをやったらつまんねぇだけだろうが、おれにとっては生きる楽しみの1つといっても過言ではない。
夜空には無数の小さな星と、大きな満月が煌々と輝いている。
月明かりに照らされた夜道は少しだけ明るい。
この不気味感漂うムードの中を徘徊するのがおれの日課だ。
で、ある程度歩きまわったら最後は湖に出向き、1日の溜まった精液を抜くのがお約束。
日中はブースターと一緒にいるからオナニーなんて無論不可能なわけで、抜く機会は1匹でいる時――つまり夜間だけということになる。
オナニーする楽しみも兼ねた夜の散歩は実にいいものだ。
昼間はあらゆる場所でポケモンたちがのどかに過ごしているが、今はどこにも姿は見当たらない。
それもそのはず。
ガキはとっくに寝てる時間だし、夫婦や恋人は愛の営みにふけている最中だろう。
おれとブースターはまだそういった関係には進展していない。
友達以上恋人未満ってとこかな。
出会ってこのかた会わなかった日はねぇけど、肉体的な交わりっつーのは残念ながらまだなんだよなぁ。
まぁおれは幽霊だし、純粋で優しくて、尚且つ毛並みのきれいなあいつとセックス願望を持つこと自体、おこがましいか。
そうだ、別にエッチができなくたってあいつと生涯をともにできればそれでいいんだ、それで。
気を取り直して夜の散歩を楽しむ。
耳に入ってくるのはホーホーやヤミカラスたちの静かに響く鳴き声だけ。
おかしなことに、この大きな森には数多くの種類のポケモンが生息してるってのに、ゴースト系のポケモンはなぜだかおれしか存在しない。
みんな安住の地を求めて新たな地方に旅立っていったんだろうと勝手に思いこんでる。
ウヨウヨしてたらそれはそれで考え物だが、同種の遊び仲間が1匹もいねぇっつーのは時には寂しくなるもんだ。
ブースターがオバケだったらって思ったことは幾度もある。
けれど、あいつはああだからいいんだよな。
もしあいつがゴーストタイプだったら、あのふさふさの毛皮も生えてねぇだろうし、なによりあんなかわいらしい顔つきしてねぇだろうし。
と、そうこう考えているうちに住み処と湖の境目までやってきた。
「さあて、あとは抜くだけ――」
言いかけて立ちどまる。
明日こそは絶対にあいつより先に起きるって決意したんだ。
性欲のおもむくままにオナニーして、変に眼が冴えて眠れなくなっちまうのはちょっとまずいな。
だが抜いとかねぇと次の日にムラムラしちまいそうだ。
「……」
満月を見やり、考えこむ。
射精して一時の満悦感に浸るか、抜かずに寝て朝を迎えるか、どうしたもんかな。
今まで徘徊のあとは必ず抜いてたから意識したことはなかったが、一晩とはいえ禁欲したら次の日どうなるんだろう?
即断できず、おれはしばらくその場で悩んだ。
苦悩した結果、おれが出した結論は……。
(今日はやめとくか)
おとなしく帰ることにした。
翌朝、勃起するのは免れられねぇだろうけど、よくよく考えてみればそこまで思い煩うことじゃなかった。
明日は早起きするんだからブースターを起こしにいく前にどっか適当な場所で抜けばいい話だ。
夜に抜くか抜かないかはその時になってから決めればいい。
溜めこむと身体に毒ってよくいうけど、おれはどく属性も備わってるから一晩抜かなかったぐらいで精神に異常をきたす心配はない。
元々体内に毒素が循環してるようなもんだし。
そう、朝立ちしようが、はたまた抜きたい衝動に駆られようが、なんら問題はねぇんだ。
あいつより“先に起きたら”の話だけど。
(……いや、明日は絶対に起きてやる。起きるといったら起きるんだ。寝坊は許されねぇぞ)
心の中で何度も自分に言い聞かせる。
とにかく今夜は帰って早く休もう。
おれはまわれ右して住み処へと歩を進める。
住み処にしているしげみへ入り、寝転がる。
歩き回って体力を消耗しているものの、眠気はまだ襲ってこない。
こんなんでほんとに明日、自分でちゃんと起きれるのかな。
恥ずかしい話だが、生まれてこのかたブースターより先に眼をさましたことが1度もない。
そもそも夜型のおれが朝型のブースターより先に起きるなんてこと自体、不可能に近ぇのかもしれないけどさ。
そんな寝ぼすけのおれが何故ここまで早起きに執着しているかというと、理由はいとも単純。
1回ぐらいあいつに頼らずに自力で起きて、寝ているあいつのところに行って、満面の笑みで「おはよう」って言ってみてぇからだ。
だから明日こそは早起きして、あいつを起こしに行きたいんだ。
しかし、今まで何度も決意してきて結局は不発に終わってばっかだから正直不安の方が大きい。
メタボゴースト♂×ケモ♀…新しすぎるので支援
ゲンガーの体形的に床オナしかできないイメージを強いられている!!
こうして考え事をしている間にも時間はどんどん過ぎていく。
(もう寝よう。心配してたらキリがねぇ)
明日は朝メシを一緒に食う約束もしてるんだ。
寝坊だけはなんとしても避けたい。
今日は散歩を早めに切りあげたし、なによりオナ禁してまで睡眠時間を確保したんだ。
ここで夜更かししたらオナニーをガマンした意味がなくなる。
眼をとじ、お腹で息を繰り返す。
(夢精しねぇかな……)
ふとそんな不安が脳裏をよぎる。
一晩抜かなかっただけで夢精っておこるもんなのかな?
やらかしたことがねぇから無論わかるはずもない。
精通して以来、毎晩欠かさず抜いてるから身体がそれに慣れちまって、寝てる間に勃起して、無意識に精液が飛び出たりして。
起きたら下半身が精液まみれで周囲にはおれ特有のザーメン臭……想像しただけでおぞましい。
うーん……やっぱ抜きに行った方がいいのかな。
悶々としながら眠りにつくよりは出してすっきりした方がいいような気もする。
だがしかし、1回寝転んだら再び起きあがるのは非常にめんどくさい。
確かに手が股間まで届くのか疑問ではある
( ・ω・)フム…
( ・ω・)っ④"
「あぁっ! めんどくせぇ! 寝よ寝よ!」
今日はなにがなんでもオナニーはしない、そう心に決めた。
万が一夢精してしまっても湖で洗い落とせばいいだけのこと。
くどいようだが、明日はブースターより先に起きるんだから何事も心配無用なんだ。
(おやすみ、ブースター)
心ん中でブースターの顔を思い浮かべ、身体の力を抜く。
頑なに眠ることを決意したのが効いたのだろうか。
おれは眼をつぶって数分もたたないうちに眠りの世界へと足を踏みこんでいった。
「好きだよ、ゲンガー」
しゃぶっているチンコから口を離し、ブースターは満面の笑みでおれを見上げる。
唾液でベトベトになった肉棒は爆発寸前だ。
出る寸前でやめられたら願望はただ1つ。快楽的絶頂しかない。
「チンコが痛ぇよぉ」
早くイきたいあまり、チンコをブースターの鼻先に押しつける。
顔射するつもりはねぇが、あまり焦らされるとブースターの顔にチンコをこすりつけてしまいそうだ。
「大丈夫だよ。すぐに気持ちよくしてあげるからね」
ブースターはそう言って、大きく口をあけてペニスを根元まで咥えこむ。
そのまま舌を動かし、執拗に舐めまくる。
全身にたちまち快感が襲いかかる。
「おおぅ! 興奮するぜ」
一方的に攻め立てるブースターの口撫に、おれの性感は急上昇する。
口内に発射するのも時間の問題だろう。
「ねぇ、ゲンガー」
「ん?」
ブースターはチンコを頬張りながらおれを見上げる。
「ゲンガー、ゲンガーってば」
「聞こえてるぜ。どうした?」
疑問を抱きつつ聞き返すが、ブースターはどういうわけか、何度もおれを呼び続ける。
さては寸止めを繰り返しておれをいじめようって魂胆だな。
もう、ほんとに焦らすのが好きだなぁ……ってあれ?
フェラしていたはずのブースターがいない。
いや、ブースターどころか、おれの周りには物1つ見当たらない。
いつの間にか眼の前に広がっているのはなにもないただの白。見渡す限りの真っ白な世界。
チンコは痛ぇほどギンギンだが、今はそれどころじゃなかった。
ブースターが夢の中だけなのか
リアルに起こしに来てるのか(今のゲンガーの視界に見えてないだけ)
のどちらかで展開が色々となんたら
「ブースター、どこだよぉ……」
「わたしはここにいるよ」
「えっ……あっ!」
突如耳元で聞こえた声に、はっとなって眼をさます。
咄嗟に顔をあげると、眼の前にはブースターが4本の足を揃えて座っていた。
寝る時、おれは上を向いて寝たはずだが、起きた時はうつぶせになっていた。
夜中に寝返りをうったらしい。
んっ?っつーことは、さっきまでのは……全部夢?
200%夢だ。純真なブースターがあんなに淫乱なワケがねぇ。
おれときたら昨日抜かなかったがためにブースターとエッチする夢を見ちまってたらしい。
願望が夢の中で実現するなんて皮肉もいいところ。
じゃあ、今眼の前にいるブースターはやっぱり……。
「ブ、ブースター、なんでここに……」
愚問だった。
そんなの、理由は1つに決まってる。
「なんでって、ゲンガーを起こしにきたんだよ。
いつまでたってもこないんだもん」
予想通りの答えが返ってくる。
また今日もダメだった。
どんなにがんばっても、ひとりエッチの時間を削ってまで早寝しても、ブースターより先に起きれない。
いい雰囲気
「わ、悪ぃ。起こしに行くって約束してたのに……」
今日こそは!と昨晩は早めに寝たのに、また寝坊しちまった。
一体これで何度目の失敗だよ、おれのバカやろうめ。
ああ、有言実行できないおれをブースターは呆れているにちがいねぇ。
おれってなんてだらしないんだろう……。
自分がすごく惨めに感じてくる。
不安になってブースターの顔色をうかがう。
大きくて黒い瞳がおれを見据えている。
眼をそらさないと吸いこまれてしまいそうだ。
軽蔑の眼差しを向けているものと思いこんでいたが、予想に反してブースターはニコっと笑顔を浮かべる。
「気にしなくていいよ。ゲンガーが朝は弱いのはよーく知ってるからね」
「ほんとにごめん。おれから言い出したってのに……」
「いいってば。しょげるなんてゲンガーらしくないよ。
元気出して。
ゲンガーは笑ってる時の顔が一番素敵なんだから」
しょげ返るおれをブースターは一生懸命励ましてくれる。
普段となんら変わらない、明るくて癒される笑顔。
おれを一切咎めようとせず、さらにわざわざ起こしにきてくれるなんて、ブースターときたらどこまでもいいやつだ。
まだ気分は沈んでいるが、ここは無理にでも笑おうと決めた。
いつまでも暗い顔をしてたらせっかく元気づけてくれたブースターに申し訳ねぇ。
「サンキュ、ブースター」
口角をあげてキシシと笑ってみせると、ブースターは安心したのか、おれの横に身を動かす。
嫌われてねぇみたいだしよかった。
「あっ」
「?」
ブースターはなにかを思い出したかのように大きな声を出す。
顔をじっと見ていると、ブースターは意外なことを言い出した。
「ゲンガーの寝顔、すっごくかわいかったよ」
「っ!」
クスクスとおかしそうに笑う。
いきなりそんなこと言われたらさすがのおれも恥ずかしさを隠せない。
「な、なに言ってんだよ。おれはオバケだぞ。
オバケにかわいいもクソもあるか」
ブースターがからかうつもりで言ってないのはわかってるが、否定せずにはいられなかった。
「ゲンガーったら顔真っ赤になってるよ」
「う、うっせぇ!」
前言撤回。おれ、からかわれてるらしい。
羞恥心のあまり、顔を背ける。
かわいいっつー言葉はな、オスがメスに使う言葉なんだぞ。
なのになんでオスのおれがよりによってメスのブースターから言われちまうんだよ……。
今に始まったことじゃねえけど、寝顔をばっちり見られるのって想像してみたらすげぇ恥ずかしいこと極まりない。
うぅっ、穴があったら今すぐ潜りてぇ。
あんなやらしい夢を見たあとだから余計にそう感じてしまう。
こう…容姿とかじゃないんだよ…
スケベと純情の間で葛藤する時が
男が一番可愛い時だと思うんだ
「っ!!」
おれはとんでもないことに気がついた。
チ、チンコが勃ってやがる……。
目覚めた直後は寝坊した罪悪感に捕われていたからまるで違和感がなかったが、意識がはっきりしている今は……股間が痛い。
きっと、いや、淫夢を見たのが100%原因だ。
朝立ちに伴ってカッチカチに勃起している性器。
こうなるってわかってたから寝過ごすのだけは免れたかったのに、ちくしょう。
でも下を向いて寝てたのが不幸中の幸いだった。
もし寝返りせずに上を向いたまま寝ていたらと思うと……。
「どうしたの?」
「なな、なんでもねぇよ! それよりさあ!」
バレると甚だやばいなんてレベルじゃないので慌てて話をそらす。
「最近、全然雨降らねぇよな」
「うん。わたしにとってはありがたいことだけど、みずポケモンは大変だよね。
湖の水量も少なくなってきてるし」
「ああ、ほんとかわいそうだよな。うん、やつらも大変だよなぁ」
うんうんと頷くも起きあがろうとしないおれの様子に、ブースターは疑問を持ったようだ。
「ねぇゲンガー、どうかしたの?」
横から顔を覗きこんでくる。
「いや、別に……」
寝坊した立場なんだからいつまでもこうしてるワケにはいかねぇ。
が、今はまず局部の暴れん坊をスリットにしまい込むのを優先すべきだ。
もしブースターに見られたらおれはこの先、生きていく自信がねぇ。
とにかくここは時間を稼いで心を鎮めよう。
「なあ、ブースター。お前っていっつもおれを見送ってからすぐに寝てるのか?」
「少ししてからね。前にも言ったけどあまり夜は好きじゃなくてね」
「そういやそうだったな」
夜が大好きなおれとは対照的に、ブースターは夜間が苦手らしい。
探検の時も薄暗い場所や洞窟には絶対に入りたがらないから、夜というより暗闇そのものが嫌いなんだろう。
おれが毎回ブースターを住み処まで送ってる理由はこれだ。
事情を知ってる以上、夜道を1匹にさせるわけには当然いかない。
探検が終わってはいサイナラなんて薄情な仕打ちができるほど、おれはカスじゃねぇ。
「ごめんね。夜いつも送ってもらっちゃって」
「なに水臭ぇこと言ってんだよ。お前がおれにしてくれてることに比べたら全然苦じゃねぇよ。
気にすんな」
好意でやってることだから迷惑と感じたことはこれっぽっちもない。
むしろ喜ばしい限りだ。
帰り道をゆっくり歩くことで、一緒にいる時間が増えるわけだし。
「今日も探検から帰る時はまた……よろしくね」
「もちろん。そんなにひかえめにならなくていいって」
「うん、そうだよね。ありがとう」
安心させるように言うと、ブースターは先ほどのかわいらしい笑顔をおれに向ける。
視線をあわせて数秒間見つめあったあと、クスクスと笑い出すブースター。
やっぱりブースターは笑ってる時が一番かわいいな。
(おっ、やっとフニャチンになったか)
しゃべっている間に股間のモノはようやく縮まったようだ。
スリットの中に収まっていくのがわかる。
ふぅっ、一時はどうなることかとひやひやしてたがこれでもう一安心だな。
重たい身体をおこして立ちあがる。
念のため周辺のニオイを何度も嗅いでみるが、精子の香りはどこからも漂っていない。
ブースターがほんのちょっとでもおれを起こすのが遅かったら危なかった、ほんとに。
これからはちゃんと毎日ヌキヌキしよう。
今回のある意味貴重な経験を決して無駄にしてはならない、おれはそう思った。
「んんーっ、よく寝たぁ」
草むらから出て身体を大きく伸ばす。
「あっ」
伸びをしたと同時に、おれの腹の虫がぐううぅとマヌケな音を発する。
お腹の音って自分の意思とは無関係に鳴るから憎らしい。
食い意地はってると思われてねぇかな……。
不安になって振りかえる。ブースターはなにも言ってこない。
聞かれてなかったみてぇだが、腹が減ってるのは事実。
「メシ食おうぜ」
「うん。でも先に顔洗ってきなよ」
顔を洗いに行けだって?
んなジャマくせぇことやってられっか。
「そんなのあとでいいじゃんかよ。メシにしようぜメシ」
「ダメだよ。顔を洗うのが先だよ」
「えーっ……」
あからさまに嫌な声をあげると、ブースターは眼をつりあげ、にらんできた。
目つきの悪いおれがこわい顔をしてもたいして表情は変わらねぇだろうが、温厚なこいつが怒った顔をするのは結構ビビる。
あぁもう、かわいらしい顔立ちがもったいねぇ。
「毎朝やってることじゃない。ほらっ、行こう。
わたしも一緒に行くから」
ブースターは頭で背中を押してくる。
「ちょっ、お、おい、押すなよぉ」
「じゃあちゃんと自分で歩いて」
「あとで洗いに行くから、なっ? 先にメシにしようぜ」
「ダメ。食べおわったら『腹いっぱいで動けねぇ』とか言ってごまかすつもりでしょ。
ごはんはちゃんと顔を洗ってから」
ちっ、バレてたか。
さすがはブースター。鋭いな。
「めんどくせぇだけじゃん。顔なんざ洗わなくたって生きてけるだろ?
1回怠ったくらいで死ぬわけじゃあるまいし」
「もうっ、またおおげさなこと言って。毎日してることなんだから、いい加減習慣づけてよね」
押されるがままに無理矢理歩かされるおれはブースターと言いあうが、許してくれない。
まるでおれが駄々っ子で、ブースターが一生懸命言いきかせる親みてぇだ。
ちくしょう、おれはガキじゃねーんだぞ。
かわいくて優しいところがブースターの美点なんだけど、マジメすぎるのが欠点なんだよなぁ。
「ブースター、頼むよぉ。腹が減って死にそうなんだよぉ」
ゴーストタイプのくせになにバカなことを抜かしてんだと自分でも思う。
ブースターも内心、同じことを思ってるだろうな。
オバケが飢え死に、か。ちゃんちゃらおかしいぜ。
「冷たい水で顔を洗えばきっと気持ちいいよ。気分もさっぱりするし。
だから行こうよ、ねっ?」
ブースターは優しく説得しながらもおれの背中をしっかりと押しつづける。
澄明な湖の水で顔をバシャバシャすれば眠気が吹っとぶし、気分爽快で元気もでる。
それは同感だし、おれのためを思って言ってくれてるのはわかってる。
わかってるんだが、やっぱり億劫なんだよな、足を運ぶのが。
「頼む、ブースターさま。先にメシを食わせてくれ!
お願いだ! この通り!」
「ダメ」
おれなりにがんばって(土下座までする勢いで)丁寧に懇願したというのに、あっさり却下された。
おれの要求を受けいれる様子は微塵もねぇ。
そういやこいつ、水が大の苦手のくせして顔は毎朝きちんと洗ってるんだっけ。
イーブイだった頃の習慣が身についてるってことなのかな。
はぁーっ。こりゃマジで湖へ出向かねぇ限り、いつまでたっても朝メシを食えそうにねぇな。
「あーもう! わかったわかった! 行けばいいんだろ行けば!
ちっ、くそっ……」
半ばやけくそになって折れるおれ。
思わず舌うちしちまったが、ブースターは特に気にする様子もなく、おれの前を歩きはじめた。
どうあがいても最後は結局、おれがブースターに従う運命にあるらしい。
全く、こいつにはかなわねぇ。
「行こうよ」
ブースターはおれに向き直り、声をかけてくる。
「ったく……」
「機嫌なおしてよ。怒った顔なんてゲンガーには似合わないよ」
「誰のせいだよ誰の! 朝っぱらからいちいちうるせぇんだよ!」
空腹のイライラもあって、つい罵声をあびせてしまった。
「あっ……」
おれはしまったと思った。
ブースターの顔つきが明らかに変わったからだ。
おれたちの間に気まずい空気が流れる。
「す、すまねぇ。言いすぎた」
「……ううん」
すぐに謝ったが、ブースターは笑いもせずに首を横にふるだけだった。
言ってしまってからではいくら後悔してもおそい。
ブースターの心に大きなダメージを与えてしまった。
唯一の仲間であるこいつにキレちまうなんて、おれとしたことがとんだ失態だ。
ニタニタしてないと落ちつかねぇおれでも、こういう状況ではさすがに笑い顔は保てそうになかった。
「確かにわたし、ちょっと強引すぎたよね。ゲンガーのこと全然考えてなかった。
ごめんなさい」
「いや、お前は謝らなくていい。悪いのは全部おれだ。
お前はおれのためを思って言ってくれてたのにおれときたら自分のことばっかり……。
ブースター、ごめんよ」
深く頭をさげて詫びる。
そう、ブースターはなんら悪くねぇんだ。
聞き分けの悪いおれがうだうだ言うからブースターの気持ちを踏みにじる結果になっちまったんだ。
ゴースの頃から身体はずいぶんでかくなったってのに、精神はガキ以下だなぁ、おれって。
「……」
「……」
この沈黙がすごくつらい。
こういう時、どんな顔をすればいいんだろう。
いつもみてぇに笑いながら「元気出せよ」って励ますべきなのか、もう一度真心をこめて謝罪するべきなのか。
「朝ごはん食べよっか。食べ終わったら顔、洗いに行こうね」
ブースターはそう言ったあとすぐにおれの横を通り過ぎる。
おい、なにボケッと突っ立ってんだバカ。
はやく引きとめろよ。
ブースターに悲しい思いをさせたままでメシなんか食えるかよ。
「……お前の言ってることの方が正しいよな」
「えっ?」
おれがボソッとつぶやいた言葉に、ブースターは振りかえる。
「ブースター、ごめん。おれが間違ってたよ。
お前の言うとおりだ。めんどくせぇからってずるけるのはよくねぇよな。
行ってくるよ。湖にさ」
「でも、お腹すいてるんじゃ……」
「オバケは腹なんか減らねぇんだぜ……つーのはウソだけど、メシなんざいつでも食えるしな。
それに、ぎくしゃくしたまま1日を過ごすわけにはいかねぇだろ?」
「ゲンガー……」
ブースターの瞳に光が戻る。
「ブースター、こんなことを言うのは心苦しいが、湖までついてきてくれねぇか?
1匹だと退屈だしさ」
「もちろんそのつもりだよ」
「サンキュ。戻ったら朝メシ食おうぜ。一緒にさ」
「うん。ありがとう」
「ほんとにごめんな」
「ううん」
一時はどうなるかと思ったが、ブースターは元気と笑顔を取りもどしてくれたみてぇだ。
おれも白い歯を見せてキシシと笑う。
お互いに笑いあい、嫌な空気が流れてた雰囲気は一変して親密な雰囲気へと変わった。
雨ふって地固まるってのはきっとこういうことを言うんだろうな。
とにかくよかった。無事に仲直りできて。
「行くか」
「うん」
ブースターはおれの横にたつ。
一声かけたあと、おれたちは森の中央に位置している湖へと向かった。
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
「……」
「……」
互いに一言も言葉を発しないまま、湖へつづく道を歩く。
仲直りはできたものの、普段のようにしゃべりながらってわけにはいかないらしい。
さっき、感情を思いきりぶつけたせいかな。
なにか話そうと思ってはいるんだが、考えこむとてんでダメだ。なんにも思い浮かんでこねぇ。
耳をすますと風でざわめく葉っぱの音が辺り一帯から聞こえてくる。
近くからポケモンの気配はしない。
湖には確実に近づいているが、相変わらずブースターは口を開こうとせず、ただ黙々と歩いている。
横目で顔色を窺うが、表情からはなにも読みとれない。
一体どうしたんだろう、ブースターのやつ。
歩いてる時は大概話しかけてくるのに珍しいこともあるもんだ。
……いや、暴言を吐いておいて“どうしたんだろう”はねぇよな。
きついこと言っちまったし。
顔に出さねぇだけで、心の中ではまだ落ちこんでいるかもしれねぇ。
よし、おれの所為である以上、ここはやっぱしおれからなにか話題をふらねぇとな。
「…………」
ダ、ダメだ。何一つ面白い話が浮かばねぇ。
湖畔につくまでまだ結構かかるのに、無言で歩行するとかどこの熟年夫婦だよ……。
なにか珍しいポケモンでも飛んでねぇかなと期待して真っ青な空を見上げる。
ちぎれ雲は1つも存在せず、あるのはぽつんと浮かんでいる太陽だけ。
珍しいポケモンどころか普通の鳥ポケモン1匹見当たらねぇ。
くそっ、普段はやかましく飛び回ってるくせしてなんでこんな時に限っていねぇんだよ。
エロい夢見て夢精しそうになるし、寝坊して朝立ちがバレそうになるし、今日は朝からほんとにロクなことがねぇ。
自分の運のなさを心の中でぼやき、太陽に鋭い目つきをむけた。
「まぶしっ!」
まばゆい朝の陽射しにたえられず、すぐさま眼をそむける。
直視したらまぶしいのは当たり前だ。
雨が降るとブースターが出歩けねぇから天気がいいにこしたことはないが、ここまで快晴っつーのも参るな。
「大丈夫?」
眼をやられたと勘違いしたんだろうか。
ブースターが心配そうに顔を覗きこんでくる。
「大丈夫だ、気にすんな」
まだ視界はぼやけているが、近くの景色ぐらいは認識できる。
目線を前にもどし、なるべく上を見ないように注意しながらゆっくり歩く。
どうもお日さまっつーのは好きになれねぇ。
満月とちがって必要以上に照らしやがる。
おれみたいなオバケはやっぱ、漆黒の闇の中を徘徊してる方が性にあってるんだろうな。
ガキのころに身についた習慣ってのはどれだけ時が経過しても繰り返されるものなんだ。
(そういえば……)
空中を漂ってるころの記憶が頭をよぎり、おれはふと昔のことを思い出した。
「なあ、ブースター」
隣を歩くブースターを見やる。
「なに?」
視線があう。
こうして横にブースターがいると、昔にタイムスリップしたような錯覚に陥る。
「おれとお前が出会ってからずいぶんたったよな」
「?」
おれが口にした唐突のセリフに、ブースターは首をかしげる。
湖に到着するまでの話のたねがようやくできそうだ。
( ・ω・)フムフム
「いきなりどうしたの?」
「いや、ちょっとガキのころを思いだしてさ」
顔を前にむけ、遠い昔の記憶を思いおこす。
あれはおれがまだゴーストにすら進化してなかった時のこと。
昼下がり、いつものように湖周辺を徘徊している時、湖水を飲んでる1匹のポケモンを見つけた。
初めて見かけたそいつになにか惹きつけられるものを感じたおれは、後ろからそーっと近づいて声をかけたんだ。
振り向いたポケモンはかわいらしい眼をしたイーブイ――そう、言わずもがな今隣にいるブースターだ。
そん時はイーブイというポケモンがどんな種族かもよく知らなかったから、ただ喉が渇いて水を飲みにきたんだなぁ程度に思ってた。
初めはおれの姿に戸惑った様子のイーブイだったけど、逃げようとはしなかった。
おれから話しかけた以上、なにか話さなきゃと思って他愛のない会話を始めたっけか。
そのあとは軽く自己紹介しあって、余ったきのみをもらって食べて……。
勇気を出して遊びに誘ったら、二つ返事してトコトコと後ろをついてきてくれたんだっけ。
今思うとすげぇ大胆な行動だったと我ながら感心する。
このまま別れたくない、やつをほっとけない。その時は何故かそう思ったんだ。
その日をきっかけにおれたちはちょくちょく会うようになって、少し遠くまで一緒に冒険に行ったり、どっちかの住み処でメシを食う仲にまでなった。
時々がやがて毎日になり、ヒマさえあれば一緒に行動するのがいつしかおれたちの中では普通になっていた。
まさかここまで深い関係になるなんて当初は思いもしなかったけど。
あの日――ブースターと出会った日の出来事は今でも決して忘れたことはない。
「こうしておれとお前が並んでるとなんか、昔に戻ったみたいだよな」
「うん。身体はおっきくなっちゃったけど」
「お前、ちっちゃかったもんなぁ」
「まだこどもだったからね。ゲンガーだってまんまるだったじゃない」
確かにそうだ。
ガキのころから気性も目つきの悪さもいささか変わらねぇおれだが、図体だけはずいぶん変貌を遂げたものだ。
ゴーストに進化したら手と耳が、さらに今の姿に成長したら今度は足まで生えてきたし。
2足歩行が可能になったかわりに宙をさ迷う能力は失われたが、おかげでブースターとこうして一緒に歩けるわけだから、
後悔をしたことは今のところはない。
“カミサマ”ってやつからの賜物だと思ってる。
「……」
改めてブースターを視界にいれる。
おれの変わりように比べたらブースターはほとんど原形を保ってると思う。
4足歩行なのは昔っからだし。
強いて言えばほのおタイプに属性が変化したことぐらいかな。
体毛の色と身体の大きさももちろん変わったけど、どことなくイーブイの面影が残ってるんだよなぁ。
知り合ってしばらくしてからブースターに教えてもらったことだが、イーブイ族は性別にかなり偏りがあるようで、
メスの存在というのは極めて珍しいらしい。
そんな希少なポケモンと出会えたのはものすごい偶然か、運命か、それとも……。
「なんかさ、オバケのおれと見た目が普通のお前がこうして一緒に歩いてるのって変な感じだよな」
最近になって思っていたことを口にする。
今では当たり前のようにブースターと毎日を過ごしているが、時折疑問に感じることがある。
おれみたいなゴーストやろうが容姿の美しいブースターと仲良くしてていいのか。
サンダースやグレイシアなどの同じ系統のやつらと戯れてる方が、ひょっとしたらブースターには似合ってんじゃないか、と。
「なにが変なの?」
「だからその……お前にはもっとふさわしい相手が……」
「ふさわしい相手?」
最後まで言い切れず、口をつぐむおれをブースターはじっと見つめてくる。
さっきからなにを言ってるの?とでも言いたそうだ。
ふさわしい相手ってなんだろう?
自分で言ってて意味不明状態なのだから、ブースターが不可解な顔をするのも無理はない。
イーブイ系統の仲間? 同じメスポケモン? 毛並みが整っているほのおタイプ?
それらの条件を満たしたポケモンがブースターにとって“ふさわしい相手”なのか?
仲間ってそういう関係のことを言うのか?
じゃあ1つも当てはまってないおれは……ブースターといちゃダメなのか?
「ゲンガー、言ってる意味がよくわからないんだけど、どういう意味?」
「えっと……」
やはりと言うべきか、ブースターも理解に苦しんでいるようだ。
納得のいく説明ができず、返答につまってしまう。
「わたしはあなたと一緒にいて変って感じたことは1度もないよ。
出会えてよかったって思ってるし」
それはおれだって同感だ。ブースターとの出会いには感謝してる。
見た目がどうとか種族がどうとかそんなのは関係ない。
なのにおれは、どうしてこんなに悩んでいるんだろう。
「ゲンガー、まださっきのこと気にしてるの?
そんなに思いつめた顔しないでよ。あれはわたしにも非があったんだし」
「あ、ああ、ありがと。たださ……」
「ただ……なに?」
ただ、ただ……。
考えこめば考えこむほど答えは遠ざかっていく。
合点がいく言い回しはどうやらできそうにない。
「……うまく言えねぇや。まあとにかく、あれから今まで色々あったよな」
「あっ、うん。そう…だね」
歯切れの悪い返事をするブースターだったが、それ以上なにも聞いてくることはなかった。
考えすぎかな。自分が一体なにに思い悩んでるのかわからなくなってきた。
これ以上突きつめると頭がパンクしそうだ。
頭を素早くふって邪念を追い払う。もうあれこれ考えるのはよそう。
おれにはブースターがいる。
今はそれだけで幸せなんだ。他にはなにもいらない。
「見えてきたよ!」
ブースターが叫ぶ。
眼の前には壮大な湖が広がっていた。
会話しているうちにいつの間にか到着したらしい。
しゃべりながら歩いてると、どんなに距離が長くてもあっという間に着くもんなんだな。
ブースターは一足先に湖まで駆けていく。
「ゲンガーも早くおいでよ」
「おう、今行く」
手をあげて返事したあと、空を見上げる。
ブースターに話したおかげで心の迷いは少しだが消え去った。
クヨクヨしてても仕方ねぇよな。
ちょっとばかり周りの眼を気にしすぎてただけだ、たぶん。
(ごめんなブースター。変なこと言っちまって)
心の中でブースターに謝り、走っていくブースターに眼をむける。
昔の思い出、そして今のブースターへの想いを胸にしまいこんで、おれはブースターのあとを追いかけていった。
フンッ!フンッ!
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
顔を洗いおえ、横でちょこんと座っているブースターを見据える。
(……ブースターはおれのこと、どう思っているんだろう?)
不意にそんな疑問が頭に浮かぶ。
おれはこいつと単なる幼なじみとか遊び仲間とか、そういう関係で終わりたくないと思ってる。
ゆくゆくは恋人に……まではいかなくても、友達以上の関係になりたいのが本意だ。
だけど、おれがそうだからといってブースターも同じ気持ちを抱いてるとは限らない。
ブースターは一体どういう眼でおれを見ているんだろう。
ただの相棒か、気のあう友達か、かっこいい言い方をすればボーイフレンドだが……。
「なにか顔についてる?」
ブースターは怪訝な顔をしておれを見返す。
「いやいや! なにも!」
慌てて眼をそらして湖水に顔を突っこむ。
どうもあの澄んだ眼で見つめられると直視できず顔を背けちまう。
やれやれ、この大げさな挙動はどうにかなんねぇもんかな。
おれみたいなヤツってうそをついてもすぐ見破られるんだろうな、うん。
(……そうだ)
顔をあげて今朝気になっていたことをたずねてみる。
「なあ。お前って水が大の苦手だよな? なのになんで毎朝きちんと顔を洗ってるんだ?」
こういう謎は当人に教えてもらうのが一番手っ取り早い。
「ずっとやってることだからね。確かに水は嫌いだけど洗わないと気持ちわるいし」
「怖くなったりとかしねぇのか?」
「うん、平気。あっ、いきなり顔にみずでっぽうとか撃たれたらもちろん気を失っちゃうけどね」
「ふーん。そういうもんなのか」
大体予想してたとおりの答えが返ってくる。
心構えをしているのとしてないのとでは心に受ける負担はまるっきりちがうらしい。
“ずっとやってることだから”か。
おれが毎晩出歩いてヌキヌキする心理と似たようなもんか。昨日は初めて抜かずに寝たけど。
危うく大惨事を引きおこすところだったぜ、全く。
よし、今夜は徘徊するのは後回しにして真っ先にオナニーしよう。
夜になるまではやらしい妄想をしてチンコをおったてねえよう、平常心を心がけねぇとな。
「戻って朝ごはんにしよっか」
「ああ」
何度もうなずき、きた道を戻る。
ずいぶん長い道のりだったが、これでようやく朝メシにありつける。
住み処に戻ったおれたちは向かい合わせで地面に座りこむ。
「はい、これ。ゲンガーの分」
「いつも悪ぃな。ありがと」
ブースターが用意してくれたきのみを受けとる。
怠け者のおれのためにブースターは毎日毎日食料を調達してくれている。
おおかた今日だって熟れたてのきのみを求め、わざわざ遠くまで探しに行ってくれてるんだ。
感謝の気持ちを決して忘れてはならねぇ。
「いただきます」
「いた、いただきます」
ブースターに倣い、食べる前のあいさつをすます。
早く食べたいのは山々だが、ブースターが先に食べるまでは絶対に口をつけない。
おれなりに考えついたルールだ。
ブースターは姿勢を低くして地面においたきのみを食べ始めた。
できるだけ音をたてないように気を配っているのか、食べる音はあまり聞こえてこない。
気品のある食べ方にただただ感服するばかりだ。
おれにはそんな食べ方、到底マネっこできそうにねぇ。
ブースターが食べたのを見届け、きのみにかぶりつこうと口を大きくあけたその時、
「っ!」
大きな歯型を発見し、眼を見開いた。
四つ足でしか歩けないブースターはキバできのみをくわえてここまで運んでくるわけだから、
歯型がつくのはごく自然的なことだ。
今に始まったことじゃねぇ。なのに、おれはどうしてこんなにドキドキしているんだろう。
(これって間接キス……?)
ごくりと唾を飲みこむ。胸の鼓動が激しくなってとまらない。
眼の前にはキバの跡……紛れもなくブースターが噛んだ跡。
ブースターの口とおれの口が重なり、唾液が混ざり、お互いの荒い鼻息。
口をこじ開けて舌を侵入させて、ブースターの頭を優しく撫でてあげて――
「食べないの?」
「えっ!? あ、いや、た、食べるさ! いっただっきまーす!」
ブースターの声ではっと我にかえり、咄嗟に笑ってごまかす。
手に持ったきのみを口に押しこみ、乱暴にかじる。
危ねぇ危ねぇ、完全に自分の世界に浸ってた。
油断は最大の敵だ。気をつけねぇと。
おれは邪な妄想を頭から追い出し、食べることだけに専念する。
チンコに精液が溜まったままなんだから、いつまた再発するかわかったもんじゃねぇ。
「ふぅ、食った食ったぁ」
あっという間に平らげてその場に寝そべる。
腹が満たされて大満足。心も身体も癒される。
これで悩みも吹っ飛んでったら最高なんだけどな。
「少ししたら行こっか」
「そうだな。今日はちょっと遠くまで行ってみねぇか?」
「いいね」
快く承諾したブースターはおれのそばで身体を丸める。
おれたちはしばらくの間、寝転がったまま談話を楽しんだ。
続きはまだなの
はよ続き
「そろそろ行かない?」
ブースターがそう言ったのは陽がかなり昇ってからのことだった。
夢中でしゃべってると時間がたつのがすげぇ早く感じる。
「行くか。ついつい話しこんじゃったな。よいしょっと」
重たい身体を起こしてのそのそと立ちあがる。
本音を言うともうちょびっとだけ休んでいたかったけど、いつまでもごろごろしてるわけにもいかねぇしな。
「いい天気だね」
「いい天気すぎるぜ……」
草むらに射しこむ陽射しが眩しくて眼を細める。
陽光はやっぱ苦手だ。
常時満月が照らしてりゃ万々歳だが、そうなったらそうなったで今度はブースターが困るんだよな。
はぁっ、世の中そんなに都合よくいかねぇか。
くだらない考えを頭から追い出し、ブースターに続いて茂みから外に出る。
「珍しいものがあるといいね」
「そうだな」
相槌をうつ。
おれたちはとりあえず湖を目指すことにした。
行き先は湖畔のさらに向こう、まだ足を踏み入れたことのない大地だ。
先頭をブースターに譲り、おれは後ろからついていく。
空の下を歩くと直射日光をもろに浴びるだろうから、日没まではなるべく木陰を歩こうと頼んである。
文句1つ言わず付き合ってくれるブースターは本当に心が広い。
「んっ?」
出発してから少しして、なにげなく上方に眼をやったおれは、仲良さそうに空をとんでいる2匹の鳥ポケモンに気がついた。
時々見かけるオスとメスのカップルだ。
やつらは何周も同じところをとび回ったあと樹の枝にとまり、身体を寄り添わせている。
普段なら別に気にも留めねぇんだが、今日はブースターとのことで色々思い悩んでいるのもあって、ちょっくら観察してみることにした。
「?」
なにやら2匹でゴソゴソしだした。
下からだとなにをしてるのかよくわからない。エサを啄んでいるのかな?
その場に佇んで見上げていると、おれの熱い眼差しを感じ取ったのか、オス鳥のポケモンがおれに振りかえる。
ヤツらから眼を離せずにいたので必然的にそいつと視線があう。
樹の枝から見下ろすオス鳥はちらりと横に眼をむけたが、またすぐおれに目線を戻す。
おれとオス鳥は数秒間、じっと見つめあう。
鋭い眼つきで黙って見続けていると、オス鳥はふっと口角をあげた。
同じオスのおれでさえ惚れ惚れしちまいそうなかっこいい笑い方だった。
『お前もがんばれよ』
ヤツの眼はそう言っていた。間違いなく言っていた。
……もしかしてあいつ、おれとブースターがこうして歩いてるのをいつも樹の上から見守ってくれてたのかな?
意味ありげに含み笑いしたオス鳥はおれから顔を背け、メス鳥にぴったりと身を寄せて太陽を一緒に眺めていた。
肩に手を回すかのごとく大きな羽でメス鳥を抱擁していた。
ったく、見せつけてくれるなぁ。昼間っからイチャイチャしやがって。
おれなんかまだブースターと手をつないだことすらねぇのにさ。
まぁ、2本足で歩けないブースターとは一生叶えられそうにない願望なんだけどな。
でも、ああいうのを見てると鳥ポケモンはうらやましいなぁとしみじみ思う。
おれにもし、あいつらみたいに羽がはえてて空を自由にとぶことができるなら、ブースターを乗っけて空の散歩に連れてってやれるのに。
ゴース、ゴーストの頃は宙に浮かぶことができてたのになんで今はとべなくなっちまったんだか。
これじゃあ進化じゃなくて劣化じゃねぇか。
翼を持つあいつらが憎らしいぜ、ちきしょう。
「あの2匹、すごく仲がいいんだね」
しんみりとした様子でブースターが言った。
睦まじい光景に見入っていたのはおれだけではなかったようだ。
ぼやいてる場合じゃねぇな。あいつらに負けてられるか。
おれたちだってすごく仲がいいんだぞってところをあのオス鳥に証明してやるぜ。
「ブースター、おんぶしてやるよ」
触発されたおれはブースターに背を向け、思い切って誘ってみる。
「えっ?」
おれの突然の呼びかけに眼をぱちぱちさせるブースター。
いきなりなにを言いだすの?と、顔が表現している。
「乗れよ、おんぶしてやるから。たまにはこういうのもいいだろ?」
身体をかがめて、後ろ手にした指を動かしてブースターを誘う。
おんぶするのは初めてだが、よたよたせずに歩きさえすれば問題ないだろう。
手をつなぐのが無理なら背負ってやればいい。そう思ったのだ。
考えてみたら、首回りの毛皮を堪能する絶好のチャンスだし。
「気持ちはうれしいけど遠慮しとくよ。わたし、重たいし」
やんわりと断るブースターはその場から動こうとしない。
せっかく勇気を出して誘ってんだから、素直に喜んでくれよなぁ。
「おんぶごときでへたばるおれじゃねぇよ。遠慮すんなって」
「ゲンガーったらどうしたの? ほんとに悪いからいいよ」
「なーに水臭ぇこと言ってんだよ。おれたち、パートナーだろ?」
「そうだけど、でも……」
ブースターはそのまま口をつぐむ。
全然乗り気じゃない。うなずく様子は微塵も感じられねぇ。
なんでわたしがあんたみたいなオバケに……って内心思ってんのかな。
喜んでもらえると胸を膨らませていたが、どうやらおれは1匹で思いあがってたらしい。
「おれみてぇなオバケに乗るのは嫌か? そうか、そうだよな。気持ち悪いよな。
大事な毛皮が汚れちまうもんな」
「ち、ちがう。そんなんじゃない。嫌なんかじゃないの。
ただ、わたし……ほんとに重たいからゲンガー大変だろうなって……」
「はっきり言っていいんだぜ。所詮おれは毒まみれのゴーストポケモン。
一言で言えば醜い化け物。
普通のヤツらとはちがうんだから」
立ちあがり、ブースターに背を向けたままそっけなく言い放つ。
なにをひねくれてるんだろう、おれは。
ブースターがうそをつくようなポケモンじゃねぇことは、ガキのころから一緒にいるおれが一番わかってるハズなのに。
「……」
「……」
静まりかえるおれたち。
沈黙に耐えられず、無言でブースターの横を通りこす。
「行こうぜ」
ブースターの返事を聞かずに歩き出す。
上からの視線が痛いほど突き刺さるが、今はそんなのどうでもよかった。
「ま、待って」
慌てた様子でブースターが追いかけてくるが、おれは一切振り向かずに先へ先へと歩いていった。
夕陽は沈む寸前で、森全体は暗闇に包まれそうになっていた。
おれの好きな夜の帳が間もなくおりてくる。
探検に出かけてからなにをしたのか、どこまで行ったのか、ほとんど覚えてねぇ。
気づけばおれは、ブースターの住み処である草むらの前へときていた。
1日ももうおしまいか。早いもんだ。
「いつも送ってくれてありがとう。すごく感謝してる」
「気にすんな。おれがお前にできることと言ったらこれぐらいしかねぇし」
「また明日も行こうね」
「ああ、行こうぜ」
どことなくよそよそしい会話はそこで終わる。
せっかく今日は遠出したってのに、ブースターには悪いことしちまったな……。
「……」
訪れる静寂。今日はこんな展開ばっかだ。
茜色の夕焼けをバックにしたおれってブースターの瞳にはどう映ってるのかな。
もしおれが見知らぬポケモンだったらきっと怯えた眼をむけてるんだろうなぁと、どうでもいいことを考える。
ずっと黙ってるわけにもいかないので、おれから話を切り出す。
「今日は起こしにきてくれてありがとな。
明日こそは絶対にお前より先に起きてみせるからな」
昨日も同じことを言った気がする。
一体いつになったらブースターに“おはよう”を言いにいくことができるんだろう。
「待ってるからね。それと……」
「?」
「昼間はその……ごめんなさい」
ブースターは申し訳なさそうに頭をさげる。
昼間? あぁ、おれがおんぶしてやるよって言ったアレのことかな。
なにも悪いことしてないのにブースターのやつ、なんで謝るんだ?
アレはおれが勝手に言い出したことであって、思い通りにいかなかったからふて腐れてただけなのに。
表情から察するに、ブースターは少しばかり罪悪感を胸に抱いていたらしい。
「じゃあ明日な。おやすみ」
「……うん。おやすみ」
おれはそのことにはふれず、別れの挨拶を簡単にすませた。
一瞬ブースターと眼があったが、すぐさま顔を背ける。
直視できなかった。また沈黙が訪れるのが嫌だったから。
湖に向かって歩行し始めてすぐ、後方から突如おれを呼びとめる声が響いた。
「待って! ゲンガー、待って!」
いきなりかけられた声にびっくりしたおれは、身体をビクッと震わせる。
驚いて振りかえると、ブースターは慌てた様子で駆け寄ってきた。
明日も会う約束はきちんとしたはずだが、なんか言い忘れたことでもあるのかな。
「どうした?」
「……」
問いかけたがなにも答えず、ブースターは大きな黒眼でおれを見つめている。
言いたいことがある。でも躊躇して言えない。
おれにはそんな風に見えた。
言いやすい空気にできるよう、ブースターを促す。
「顔になんかついてるか?」
「ううん、そうじゃないの。あのね、ゲンガー」
ブースターは一呼吸おいたあと、思いもよらないことを言い出した。
「ゲンガーさえよければでいいんだけど、今日……わたしのところで休んでいかない?」
「えっ!」
唐突なお誘いに、思わず大きく声をあげてしまった。
決して聞き間違いではなくはっきり聞こえたため、驚きのあまり眼を見開く。
「ど、どういう意味だ?」
予想外の展開に動揺を隠せない。
ブースターの口からそんな言葉が出てくるなんて、本当に不意打ちにもほどがある。
やった再開してた♪
④"
④④"
④④④"
( ^ω^)っ④④④④
あれ…もう再開はないと思ってたのにきてた!
この2匹は可愛いから好き
④"
(・ω・)ノ
早く続き書けよ
続きお願いしますm(_ _)m
気になって仕方ないのです
どうなっても知らんぞ
「ゲンガー、いつも送ってくれてるからね。そのお礼にと思って」
「ここで休むっつーことは、つまりその……お前と……」
それ以上先が言えない。
オスのおれがメスのブースターのねぐらに泊まる。
それが一体どういう状況を示すのか、ブースターだってガキじゃねぇんだから当然わかってるはずだ。
口ごもるおれに代わり、ブースターが落ちついた口調で話す。
「今日は泊まっていってよ。わたしのところの芝生、柔らかいから寝にくいってことはないと思うし」
無理して作った感じのブースターの笑顔が眼界に映る。
いきなりの誘いに面食らったおれは、いつものように白い歯を見せて笑うことができない。
だが……戸惑う反面、ものすっげぇうれしい気持ちがあるのも事実だった。
まさかブースターと同じ寝床で一夜を過ごせる日がやってくるなんて思ってもなかったし。
生きてて(半分死んでるようなもんだが)初めて誰かと一緒に過ごす夜。
しかもその相手はというと、幼なじみで且つ思いを寄せているブースターだ。
本音を言わせてもらうと喜びのあまり、小躍りしたくなる気分だった。
まぁほんとに踊っちまうとドン引きされるかもしれねぇから、足が勝手に動かないよう踏ん張っているけど。
でもめちゃくちゃうれしいのは確かだ。
ブースターはその場に座りこんでおれの答えを待っている。
満面の笑みを浮かべてすぐにでも親指をたてたいところだが、二つ返事していいものかどうか、正直ためらった。
おれとブースターは現状はただの仲間であって、寝る時まで一緒になるような関係じゃねぇ。
細やかな愛情で結ばれた家族や恋人が寄り添って寝るのとはわけがちがう。
たとえどれだけ仲がよかろうと、おれたちは誰もが認めるようなお似合いのカップルとはちがう……ちがうんだ。
本心とは裏腹に、おれの口は素直な気持ちを決して述べようとはしなかった。
「いやいや、本来お礼をしなきゃいけねぇのはおれの方なんだぜ。
ほぼ毎朝起こしにきてもらってるし食料の調達だってブースターに任せっきりだし。
それに比べたらおれがお前にしてることなんて全然たいしたことじゃねぇんだ。
お前が礼をする必要なんざどこにもねぇだろ?」
どうにか理由をつけて遠回しに断ろうとするが、ブースターの眼は真剣そのものだった。
「それはわたしが好意でやってることなんだから気にしなくていいよ。
前から悪いなぁって思ってたの。
わたしが『帰り道がこわい』って言って以来ずっと、ここまでわざわざ送ってくれてるゲンガーに」
まるでおれが拒絶するのを見越してたのか、ブースターは間髪をいれずにスラスラと言う。
「さっき言っただろ? おれがお前にしてやれることといったらそれぐらいしか……」
「うん。その気持ちはすごくうれしいよ。だからこそわたしもなにかしたいの。
ゲンガーになにかしてあげたいの。
わたしと一緒なら朝はゆっくり寝られると思ったから……」
「で、でもよぉ……」
互いに意見をぶつけ合うも、珍しくブースターは一歩も引き下がろうとしない。
言い返そうとするも、気後れして言い淀んでしまう。
なんか言わねぇと……と考えれば考えるほど、言葉選びを気にしてしまって結局なにも言えそうになかった。
……いや、これ以上頑なに拒み続けるのは控えた方が賢明かもしれない。
ここまで信念を貫き通すブースターのことだ。
どれだけ帰るって言い張っても、ブースターはなんとしてもおれを引きとめようとするだろう。
直感的に、おれはそう思った。
「ごめんね。でもこのまま別れるのはなんだか嫌なの……」
ブースターは物悲しそうに顔を下にむける。
耳まで垂らして今にも泣き出してしまいそうな面持ちだ。
少しばかりなんてレベルじゃねえ。
ブースターのやつ、ひょっとして昼間のことを相当引きずってんのか?
尋常でないくらいブースターの眼はどんよりしていた。
「……」
なんとも帰りづらい空気になってしまった。
ここでブースターの誘いを振りきったらきっと、いや間違いなくブースターは一晩中思いつめることだろう。
そうなったら明日、ブースターの表情から笑顔が消えてしまうのは必定だ。
この先元気なブースターを一生見ることができなくなっちまったら、完全におれの責任だ……。
おれがおんぶしてやるよなんてあの時言い出さなかったら、ブースターはここまで悩まずにすんだんだし。
泊まるか泊まらないかの決定権はおれにある。
しかし、もはや選択肢は1つしかなかった。
再開して嬉しい♪
でもここで止めるなんて
④"
④④"
④④④"
(;´д`)っ④④④④"
おぅふ(-.-;)
焦らすねぇ
おれはブースターに歩み寄り、頭部に生えた体毛の上にそっと手を置く。
ビクッと身を震わせたブースターはおずおずと顔をあげる。
こわがるブースターも結構かわいいと思ったのは内緒だ。
「お前の気持ちはよくわかった、ブースター」
「それじゃあ……」
「ああ。お言葉にあまえて今夜はお前んとこで休ませてもらうぜ。
ありがとな」
心から礼を言って、頭を優しく撫でてやった。
「ありがとう……」
「いいってことよ」
満面の笑顔でかっこよくきめる。
“みらいよち”を使えるエスパーポケモンでもない限り、この選択が正しいのかはわからねぇし、知る由もねえ。
でも結果がどうであれ、これでいいんだ、これで。
今おれができるのはブースターのそばにいてあげること、それしかねぇんだ。
第一、無理して断ること自体、不本意だしな。
「ほら、元気出せって」
「うん。無理言っちゃってごめんね」
頭をポンポンと叩くと、ブースターは照れ臭そうに笑う。
潤いが消えていたおっきな瞳に僅かだが眼光が蘇った気がした。
とにかく今はブースターを安心させてやらねぇとな。
「いきなり誘われたもんだからつい戸惑っちまってさ。
だがうれしいぜ。今日はお前と一夜をともにできるわけだし」
心情を包み隠さず表に出す。
ほんと、僥倖っつーのはいつどこからやってくるのかわからねぇもんだな。
「わたしもゲンガーといる時間が増えてうれしいよ。ありがとう」
ブースターの顔が綻びる。
いつもおれにむけている純粋で、癒される笑顔。
あんな淀んだ眼はもう2度と見たくない。
ブースターの笑った顔を見てるとつくづくそう思う。
「なんつーか、今日は色々あって疲れちまったな」
「そうだね」
同じことを思ってたのか、ブースターはすぐにうなずく。
朝起きて顔を洗い、メシを一緒に食べ、昼過ぎまで食休みしてから探検に出かけ、夕暮れ以降にブースターの住み処に戻る。
今日も至って普通の1日だったかもしれないけど、葛藤やらいざこざが多くて大変だったな。
それもこれも原因はおれにあるわけだが……。
でもまぁ、過ぎたことを今さら悔やんでも仕方ないか。
このまましげみに入って遅くまで語り合いたいところだが、おれにはまだやるべきことが残っている。
そう。毎晩行っている2つのお楽しみだ。
徘徊はともかく、オナニーは今夜は絶対にすましとかねぇとやべえんだよな。
(……よし)
一呼吸おいたあと、ブースターに声をかける。
「ブースター、疲れてるだろ? もう今日は休んでろよ」
「うん。ゲンガーももう寝るの?」
おれは黙って首を横にふる。
そういやブースターはおれが毎晩出歩いてるのを知らないんだっけ。
言う必要もなかったから今まで言わずにいたけど、訝られないためにも、ここはちゃんと話しておこう。
「ちょっくら散歩してくるよ。行っとかねぇと寝れねぇ体質でさ」
オナニーすることはもちろん黙っておく。
純情なブースターに下品なセリフを聞かせるわけにはいかねぇしな。
「そうなんだ。わかった、気をつけて行ってきてね」
特に疑う様子もなく、ブースターは理解してくれる。
「あっ、わたしも付きあおうか?」
「無理すんな。夜道苦手だろ?
しばらくしたら戻るから先に寝てていいぜ」
徘徊はおれがやるから楽しいんだ。
ブースターがついてきたところでなにも面白くねぇだろうし、それに、ブースターは女の子だ。
不気味感漂う森の中に連れてくわけにはいかない。
「……うん。じゃあ気をつけて行ってきてね」
「おう。あっ、夢に入りこんでイタズラしたりしねぇから安心してくれよな」
指をたててウインクする。
ゴース族は眠ってるポケモンの夢を食うイタズラ好きだと思われがちだが、あいにく誰かの夢へ勝手に侵入して嫌がらせするような悪趣味はない。
そんな幼稚な悪行をするほどおれはヒマじゃねぇ。
「ゲンガーがそんなことするポケモンじゃないことくらい、ちゃんとわかってるよ。
楽しんできてね」
「おぅよ。じゃあ行ってくるな」
ブースターはわざわざ道に出て見送ってくれる。
雰囲気も元に戻ったし、これで心置きなく散歩と自慰を楽しめる。
おれは何度も振りかえってブースターに手をふりながら、湖へ続く道を歩いていった。
④
続きはよ
支援
続き来てたー(T∀T)
追いついた、4円
支援
1です。色々あって未だに続きが書けてません。
次投下するのはまだ先になりそうです。
ここまで支援してくれてる人、読んでくれている人ごめんなさい。
完結してくれればそれで良いです
④
待ってる( ・ω・)っ④"
姿が見えなくなった場所までやってくると、おれは駆け足で森の脇道を通っていった。
行き先は言うまでもなく湖のほとりだ。
徘徊する前にまずは抜こう。今朝、顔を洗った時に決めていたことだ。
ブースターの前では平静を装っていたが、早くオナりたくて正直ウズウズしていた。
よって、今は抜くことしか頭にない。
もし今日もオナニーせずに寝ちまったら夢精しちまう可能性は100%。
目覚めたブースターが異臭に気づき、横にいるおれに眼をむけたらたぶん……いや、間違いなく発狂する。
最悪の事態にならないためにも一刻も早く溜まっている毒液を出さねぇとな。
木々を駆け抜けてるうちに、周辺はどんどん暗くなっていく。
静かな夜道を走る場合、普通ならなるたけ足音をたてないように注意するものだが、おれは生まれつき備わってる特性の“ふゆう”の効果で、この姿に成長した今でも音1つたてずに疾走することができる。
おかげでガキたちの安眠を妨げずにすむからすげぇ助かる。
うっかりして木にぶつからないように気をつけながら目的地へと急ぐ。
湖に着いたころには空はすでに真っ暗になっていた。
到着するやいなや、辺りを睥睨する。
気配こそ感じないが、どこで誰が見てるかわからねぇから一応隠れてやるつもりだ。
万が一森中に変なウワサがたっちまったらすこぶるまずい。
おれは別にいいとして、一緒にいるブースターまで変な眼で見られるのは耐えられない。
変態コンビとして一生笑い者にされるに決まってる。
ただでさえあいつには迷惑ばっかかけてるんだ。
これ以上は絶対に迷惑をかけるわけにはいかなかった。
近くの草むらに身を潜め、足を広げて座り、下半身に眼をおとす。
スリットからにょきっと顔を出した“モノ”は、昨日出さなかったゆえにギンギンに膨らんでいた。
くる途中にやらしいことばっか考えてたせいで、着くまでに勃っちまったんだ。
ピカチュウみたいなチビとちがい、おれの体格だと思いきり身体を曲げないと手がチンコに届かないのがつらいところだ。
ジャマなツメが生えてないだけマシなのかもしれないが……って今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
身体をかがめてチンコに手をのばし、指先でしっかりと握る。
精液が溜まってるからかすげぇ熱い。
さあ、早いとこシコって性欲も精液も吐き出してしまおう。
オカズにするのはもちろんあいつだ。
頭ん中でブースターの姿を思い浮かべる。
……おれのチンコを根元まで口に含み、よだれを垂らす勢いでしゃぶりまくる。
唇でチンコを挟んで前後して、じゅぽっ、じゅぽっと卑猥な音をたたせながら尖端をぺろぺろするものだから、おれの性器はあっという間に勃起していく。
さらには咥えられたままチューチューとあまえるように吸われ、全身に快感が走る。
妄想の中のブースターはとてつもなく淫乱だ。
(……ガマンできねぇ)
出したい衝動を抑えられず、屹立したチンコを握りしめ、目一杯扱く。
これがもし現実で繰り広げられてたら、ものの数秒でアクメを迎えてるんだろうな。
でも妄想には妄想なりの性感が得られるから1人エッチも捨てたもんじゃない。
息を乱しながら夢中でチンコを扱きまくる。
ブースターとエッチする妄想はだんだんとエスカレートしていく。
絶頂を迎えたおれは、ブースターの口内にたんまりと精液を注ぎこむ。
そのあと、ブースターの頬をチンコで叩いてお掃除フェラを要求。
快く承知したブースターはザーメンで汚れたチンコを再び咥えこみ、執拗に舐め回す。
上目遣いで「おいしい」と口をもごもご動かすブースターの笑顔に、おれの性感は急上昇。
射精を終えたばかりのチンコをまたすぐに固くさせて快感に身を委ね、ブースターの頭を優しく撫でる。
性器という名の汚チンチンを綺麗にしてもらい、今度はおれがブースターを気持ちよくさせてあげるんだ。
おれが合図すると、ブースターは自ら仰向けになって足を広げ、おれを誘う。
あらわになった膣口を舌先でなぞり、分泌されるあっつあつの愛液を賞味する。
顔を赤くするブースターは足をとじようとするが、おれが陰部に顔をうずめてるからどうすることもできず、されるがままだ。
くぱぁっと陰唇を指で広げ、舌で丁寧に愛撫してたっぷり唾液を染みこませる。
十分濡らして挿入準備が整ったところで、ペニスを求めてひくつく膣にカッチカチの肉棒をあてがう。
空想とはいえ、ブースターと1つになった場面を想像するだけで出したいという気持ちは一層強くなった。
精液がすさまじい勢いでこみ上げてきてるのを身体で感じる。
(ブースター……このまま出しちゃうぞ)
想像でのブースターは拒むわけもなく、すんなりと受け入れてくれる。
根元までインサートした肉棒を激しく前後させ、陰唇から下品な音がたつ。
おれに犯されて気持ちよくなってるブースターの顔を思い描きながらモノをこする。
(で、出る……!)
はぁはぁと息を荒らげつつピストンを繰り返し、それに伴ってブースターが「はぁっ……!あんっ!ゲンガぁ……!」なんて甲高い嬌声をあげて――
4足歩行のブースターが仰向け…だと…エロすぎるだろ
支援
ちょっとブースターとゲンガー育てて来る
「っ……!」
脳裏で行われている交尾が終結を迎える前に、おれの興奮は最高潮に達した。
グググッと膨れあがったチンコの先から勢いよく白濁液が飛び出す。
思ってた以上に溜まってたらしく、飛距離と量はいつもとはまるで比べものにならない。
大量に放たれた毒々しい液体は曲線を描き、葉っぱに降り注ぐ。
2度、3度とその後も断続的に粘液がほとばしった。
最初に飛び出た時より勢いは弱まったが、まだ出んのかと自分でも驚くほど精液はドロドロと溢れ出てくる。
大抵は妄想の中のおれが膣内射精すると同時に果てるんだが、今日はいつもより出るのが早ぇな。
まあ昨日は抜かなかったんだし、別に普通か。
それにしてもおびただしい量の精液だ。
我ながらすげぇ幽霊だなと感心する。
一晩抜かなかっただけで毒汁ってこんなに溜まるもんなのか。
2日ぶりに得られた快感は想像を遥かにこえていた。
「ふぅっ……」
あまりの心地よさに思わず声を漏らす。
出したいという欲望が恍惚に変わるこの瞬間がたまらねぇ。
脈打つペニスの先っぽからは依然として精液が流れ出ていた。
エロいチンコを見続けてるのも……結構興奮する。
「はぁっ、気持ちかったぁ……」
いっぱい発射したからほんとに気持ちよかった。
一度の射精でこんなに出たのは初めてだ。
出したあとの解放感にすっかり心を奪われたおれはしばらくの間、その場に座りこんで余韻に浸っていた。
中々エロいな
時間がたつにつれ、高揚していた気分が鎮まっていく。
無垢なブースターをオカズにしてしまった罪悪感。
手淫を終えて冷静になった頭が、ひとりエッチがいかに虚しい行為であるかを主張している。
抜いたあとはいっつもこうだ。
今ごろブースターは1匹で心細く寝てるってのに、おれは一体なにをやってんだろう。
こうして抜き終わると、どうも散歩を口実にオナニーした気がして後ろめたくなってくる。
確かクールに振る舞ってたと思うが、内心はオナる気満々だったっけ、行く前のおれ。
とはいえ抜いてくるなんて言えるわけねぇし、散歩してくるってのも別にうそで言ったんじゃない。
それはおれ自身がよくわかってる。
仕方ないよな。溜まってたのは事実だし、今日抜かなかったら朝が悲惨だし。
散々ブースターの眼を盗んでオナニーしてきたんだから今さらバチは当たらねぇよな。
……いや、そうじゃねぇな。おれが後ろめたさを感じてるのはあいつをオカズにしたからだ。
仲間であるブースターを欲望のはけ口にしたことに良心が痛んでるんだ。
だけどおれは女遊びにはまるっきり縁のないポケモンだし、なにしろブースター以外のメスというものを知らない。
よしんば女のオバケとこの先出会うことがあったとしても、いまさらそいつと仲良くしようなんて気はサラサラねぇし、目移りもしねぇ。
それだけは自信をもって言える。
おれのパートナーはあいつ――ブースターしかいねぇんだ。
だからブースター、お前を勝手に性の対象にする、こんな惨めなおれをどうか許してほしい。
しげみの中はオス汁独特の香りが未だに漂っている。
葉っぱを伝ってゆっくり落ちていく精液を眺めながら、今日の出来事を思い返す。
「早起きしてお前を起こしにいくぜ」って豪語してたくせに寝坊して、危うく朝勃ちがバレそうになって、寝坊した分際でメシ食おうメシ食おうってわがまま言って。
挙げ句の果てにはブースターを怒鳴りつけて。
……朝っぱらからロクなことがねぇ。だらしない自分に心底嫌気がさす。
毎度毎度起こしてもらわないと起きれないくせしてなにが早起きだ。
おれがブースターの立場だったらたたき起こして説教してるとこだぜ。
これ以上思い出しても自分が情けなくなるだけなので、今朝の記憶を頭から追い払う
しかし、実に不思議だ。
なんだってブースターは今日、泊まっていけなんて頓に言い出したんだろう。
いくら昼間のことを引きずってたからって異性のおれを自分のねぐらに誘うなんて大胆な行動をとるもんだ。
なんだか思いつめてる表情だったし、おれがあんな態度とってたから自分が嫌われてると思いこんでたのかな。
あのまま別れるのはこわくておれを引きとめずにはいられなかったってところか。
んー、ちょっと深読みしすぎかな。
ほんと、心配性だよな、ブースターのやつ。
悪いのは全部おれなんだからあいつが胸を痛めることなんかねぇのにな。
あいつはなんにも気にしなくていいのに……おれのせいでつらい思いさせちまったな。
「……」
心配性なのはおれも同じかもしれない。
急にブースターのことが心配になってきた。
もう寝てるとは思うが、おれの帰りを待ってくれてるとしたらまだ起きてる可能性はある。
いずれにしろ早いとこ徘徊をすませて、あいつのところへ戻ろう。
そうと決まったらこうしちゃいられねぇ。
立ちあがり、しげみから外に出る。
精液にまみれたチンコを湖で洗い、ついでに顔も洗って気持ちを切りかえる。
夜空を見上げてふぅっと一息ついたあと、おれは夜の森へ消えていった。
ブースターに見送ってもらってからどれぐらいが経過しただろうか。
夜の森には相変わらず夜行性ポケモンたちの鳴き声が響いている。
楽しい徘徊を終え、満月に照らされた夜道を黙々と歩く。
途中、間違って自分ちの方向へ足を進めそうになったが、今日の夜はいつもとちがうんだ。
おれは早足でブースターのところへと向かう。
そういや昼間見かけたオス鳥とメス鳥はどうしてるんだろう。
ラブラブだったし、今ごろどっちかの巣で仲良く交尾してんのかな。
あいつらってどんな体勢でエッチするんだろう?
ヤツらが交わってる光景を思い浮かべてみる。
……うーん、羽がジャマで挿入するのがすっげぇ難しそうなイメージしかわかない。
つーかあのオス鳥、自慰する時はどうやってチンコ扱いてるんだろう。
羽で握ったり挟んだりなんて到底無理だろうし、となると地面にこすりつけるしか方法はなさそうだが、それってかなり痛そうだ。
それ以前にあいつにチンコなんて生えてんのか?
オバケのおれですらついてんだし、やっぱりあいつにも立派なブツがあんのかな?
考えれば考えるほど、疑問は次から次へと浮かんでくる。
鳥類に直接聞き出せばいい話だが、おれには鳥類の知り合いなんていない。
いつかあいつらと話せる機会があったらオス鳥にそれとなく聞いてみよう。
おれはそう心に決めた。
歩行のペースを早めてるうちに、あっという間にブースターんちの前までやってきた。
まだ起きてるかな、あいつ。
がさつに草を掻き分けると耳障りだろうから、できるだけ音をたてないように注意してしげみの中に踏みこむ。
奥へ奥へ進むと、地面に横たわるブースターの姿が眼に映った。
身体を器用に丸め、前足に頭を置いて眼をとじている。
ブースターは寝姿まで上品だ。
「ブースター、おれだ、ゲンガーだ。
ブースター……ブースター?」
小声で何度か呼びかけてみたが反応はない。
起きて帰りを待ってくれてるかもとちょっとだけ期待してたが、どうやら既に眠りについてるみてぇだ。
残念だが仕方ない。きっと疲れてたんだろう。
おれと話してる時もしんどそうだったし。
気を取り直し、寝ているブースターを見やる。
こうして見てみると、ブースターのシッポっておっきいんだな。
ふさふさしてて柔らかそうで、さわったら気持ちよさそうだ。
バフッと思いきり飛びこんでみたい。
そんなことしたらびっくりして眼をさますだろうから、冗談でもやろうって気は毛頭ないが。
呑気なことを考えながら隣に座ろうとした、その時だった。
「……帰ったのかと思っちゃった」
「ひゃっ!」
不意にかけられた声に、おれは驚愕して飛びあがりそうになった。
びっくりしすぎてなんともマヌケな声が勝手に出ちまった。
反射的に声のした方向へ顔を向けると、大きな瞳がおれをとらえている。
言ったのが誰なのかは明らかだった。
「ブ、ブースター、起きてたのか……」
寝ていると完全に思いこんでたからほんとに驚いた。
ブースターは身体を丸めたままだが、眼はしっかりと開いていた。
本来オバケというのは誰かをおどかす側だというのに逆におどかされちまうなんて、おれとしたことが情けねぇ。
よりによってブースターにあんな声聞かれちまうなんて……。
恥ずかしくてまともに眼の焦点をあわせられない。
「ちょっと考え事をしててね。ずいぶん長いこと歩いてたんだね」
囁くような小さい声で口を動かすブースター。
「ショ、ションベンするのに格好な場所探してたらやたらと時間かかっちまってさあ」
オナニーしてたなんて言えるわけもないので適当にごまかしたつもりだが、いかにもわざとらしい説明口調になってしまった。
これじゃあうそついてますって自分で認めてるようなもんだ。
余計なこと言わないで普通にうなずいとけばいいのに、おれってどうしてこうもうそをつくのが下手くそなんだろう。
「そうなんだ。そのあとはずっと歩いてたの?」
「あ、ああ」
「楽しかった?」
おれ、やっぱり不審を抱かれてる?
ブースターは立て続けに質問してくる。
ここはあまり余計なことを口走らない方がよさそうだ。
「まあな。暗闇ん中を歩き回るのは気持ちいいもんだ」
心を落ちつかせて答える。
別の意味の気持ちよさに酔いしれてたことは口が裂けても言えない。
「そっか。また明日も行くの?」
「もちろんさ。生来行かなかった日はねぇんだぜ」
いつもの調子で笑ってみせる。
明日も明後日もその次の日も、生きている限りおれはずっと徘徊を満喫するつもりだ。
ブースターに理解してもらえなくたっていい。
自分が楽しければそれでいいんだし。
自己満足なんてそういうもんだろ?
「……」
「どうした?」
「えっ? あっ、ううん、なんでもない」
急に押し黙るもんだから声をかけたが、ブースターは首を横にふる。
なんか様子がおかしいな。
そう感じて顔を覗きこんでみたが、ブースターは不思議そうにおれを見返すだけだった。
他にかわった様子はなさそうだし気のせいかな。
「……ゲンガーの顔見たら安心して眠たくなってきちゃった。
わたし、そろそろ寝るね。
ゲンガーはまだ起きてるの?」
「いや、おれも寝るよ。疲れたし」
1匹で起きててもやることがないので休むことにした。
歩いたおかげで心のわだかまりもある程度消え去ったし、出すもんも出したし、今宵はいい夢が見れそうだ。
「ちょっと窮屈だけどごめんね」
「平気さ。じゃあ横、失礼するぜ」
ブースターの隣に陣取り、寝転がる。
普段のように上をむいて寝そべるわけにいかないので、お腹を下にして身体を伸ばす。
これならブースターも気にせずに寝れるハズだ。
「わたし、ゲンガーが寝るところ見るの初めて」
「そういやおれもお前の寝姿見たの初めてだっけ。
ブースターって身体柔らかいんだな」
「4足歩行のポケモンはみんな大体そうだよ」
「へぇっ。おれはその体勢で寝るの、逆立ちしても無理だな絶対」
何度かそんな会話をかわし、おれもブースターも眠気が限界になってきたので眼をつぶる。
ブースターのねぐらで初めて一夜を過ごす。
それなのに胸がドキドキしないのはどうしてだろう。
抜いたから感情が落ちついてんのかな。
「おやすみ。ゆっくり休んでね」
ブースターは優しい言葉をかけてくれる。
「ブースターもな。おやすみ」
一声かけてお腹で息を繰り返す
おれは次第に闇の中へ意識が吸いこまれていった。
「んっ……」
ふと眼をさます。
草と草の隙間から明るい光が差しこんでくる。
この不快に感じる光は朝の陽射し……っつーことはもう朝か。
昨日はあれからすぐに寝たんだっけ。
夜中に眼をさました記憶はないからどうやら眠りこけてたらしい。
うつぶせの体勢のままだし寝返りもうってねぇな、よし。
首をおこしてあたりを見回す。
ぼやけた視界に映るのは、自分のねぐらとは少しちがった光景。
昨晩ブースターんとこに泊まったんだなぁと改めて実感する。
あいつと一緒に迎える朝なんて今までなかったからなんだか新鮮な感じがした。
「……あれっ?」
意識がはっきりしてなかった故に気づかなかった。
ブースターがいない。
起きあがって周りを確認するが、姿はどこにもなかった。
先に起きて顔洗いに行ったのかな。
相変わらず早起きだなぁ、ブースターのやつ。
横で寝てたらついに「おはよう」と言える日がきたわけだが、世の中そんなにあまくないらしい。
ブースターを見習って早く起きれるよう、おれもがんばらないとダメだな。
湖に行こうと思ったけど、入れ違いになっても困るのでとりあえずブースターが戻るまで待つことにした。
足を広げてだらけていると、前方からガサガサと草を掻き分ける音が耳に入る。
「あっ、起きてたんだね。おはよう」
タイミングよくブースターが帰ってきた。
大きなシッポをふりふりさせながら近寄ってくる。
「おぅ、おはよう」
「よく眠れた?」
「おかげさまで。顔洗いに行ってたのか?」
「うん。今日もいい天気だよ」
こっちまでうれしくなるような笑みを浮かべるブースター。
昨日とは打って変わって晴れ晴れとした顔つきだ。
おれの知ってるブースターで安堵する。
……と、ブースターの背中に乗ったきのみが眼界に映る。
おれははっとなって眼を見開いた。
「……お前、ひょっとして、きのみを取りに行ってたのか?」
「うん。早く行かないと他のポケモンにおいしいの持ってかれちゃうからね。
いつも顔洗ったあとに探しに行ってるんだよ」
「いつもって……こんな朝早くから?」
「うん」
ブースターは普通に答える。
「……」
おれはなにも言えなかった。
ブースター、毎日こんなに早くから食料を調達しに行ってくれてたのか。
のらりくらりと過ごしてるおれのために。
そんな苦労を露知らず、おれは毎朝遅くまで寝て、自分のやりたいことばかりやって、のほほんと生きてきたわけだ。
長い間ブースターと行動を共にしてきたというのに、おれは一体、ブースターのなにを知っていたんだろう。
「め、面目ねぇ……」
感謝してもしきれない。
昨日の朝、独りよがりな行動をとったことを恥じる。
ここまで自己中なクソオバケ、他にいるだろうか。
「おれ、昨日逆ギレしてブースターに怒鳴っちまったよな。……ごめん。
コジキの分際で身の程を弁えてなかったよ……」
「やめてよ、コジキだなんて。
好意でやってることだしって昨日言ったでしょ?」
「うん……」
優しい言葉をかけられるのがまた辛い。
1度自己嫌悪に陥ったら抜け出すのは中々難しい。
「気にしなくていいってば。わたしだってあなたに何度も助けてもらってるし。ねっ?
お互い様だって思えば少し気が楽にならない?」
「……」
「そんな顔しちゃダメだよ。ゲンガーは笑ってる時が一番かっこいいんだから。
ほら、いつもみたいに笑ってよ」
ブースターは笑顔を絶やさない。
しょげ返るおれを懸命に励ましてくれてる。
かっこいいと言われて悪い気はしねぇ。
おもむろに顔をあげ、ブースターと眼をあわせる。
「……ありがと」
「うん。やっぱりゲンガーは笑顔が似合うね」
この状況で笑えるわけねぇと思ってたのに、自然と笑みがこぼれる。
ブースターっていいヤツだな、ほんとに。
「元気出た?」
「ああ。ありがとな」
お互いに笑いあう。
クヨクヨしてちゃダメだよな。
もっと爽やかにいかねぇと。ブースターのためにも。
「顔洗いに……あっ、先にごはんにする?」
ブースターは慌てた感じで言い直す。
昨日のこともあっておれに気をつかっているんだろう。
こんな立場でメシにしようなんてとても言えない。
「いや、湖行ってくる。すぐ戻るから待っててくれよ」
メシを食う前は清潔にするのが礼儀だ。
ブースターから教わったことを無駄にしてはいけない。
「あっ、待って。わたしも行くよ」
「いいって。今戻ってきたばっかなのに悪いじゃんか」
ついてきてほしいのが本音だが、ブースターに負担をかけたくなかった。
「わたしなら大丈夫だよ。待ってるのも退屈だし」
「……無理してないよな?」
「うん」
「そ、そうか、わかった。一緒に行こうぜ、ブースター」
「うん。早く行こ!」
ブースターはご機嫌な顔でしげみから出ていく。
メシのことはさておき、ブースターが元気になったみたいでなによりだ。
かわいらしい仕草でおれを癒してくれる。
やっぱり昨日は帰らなくてよかった。
おれは改めてそう感じた。
顔を洗い終えてブースターの住み処に戻り、向かい合わせで座る。
「いただきます」
「いた、いただきます」
食べる前のあいさつをすませる。
毎回噛んじまうのは慣れてないせいだ。
「ねぇ、ゲンガー」
「んっ?」
食べ始めてしばらくして、ブースターが話しかけてくる。
「昨日の夜のことなんだけど、ちょっといいかな?」
昨日の夜? 夜ってぇと……なんかあったっけ。
ブースターんとこに泊まったこと以外は特になにもなかったと思うけど。
「昨日の夜がどうかしたのか?」
「ほら、散歩に行ってたでしょ?
ゲンガー、毎晩寝る前は森の中を歩いてるって言ってたよね」
「ああ、言ったけど……」
食べるのを一旦やめてブースターの眼を見る。
行く理由は昨日説明したし、その時ブースターはちゃんと納得してたのに、どうしてまた聞いてくるんだろう。
「いつもどの辺を歩いてるの?」
興味があるのか、ブースターはまじめな顔つきで聞いてくる。
「別に行き先は決めてねぇよ。その時の気分で湖まで行ったり枝道をぶらぶらするんだ」
「……わたしだけかもしれないけど、夜に出歩くのってこわくなったりしない?」
「全然。むしろ楽しいぞ。
おれと夜行性のヤツら以外、みんな死んでんじゃねぇの?って思いたくなるあの気味の悪さがたまんねぇんだよ。
全身がゾクゾクとしてきてさぁ」
「そ、そうなんだ」
「あっ、いや、だからって寝てるヤツらの夢を食ったりガキをいじめたりはしてねぇぞ。
誰にも迷惑をかけないようにちゃんと心がけてるよ」
「うん」
ブースターが軽く引いてたのですかさず言い足しておく。
興奮してつい熱く語っちまった、危ねぇ危ねぇ。
「昨日みたいに結構時間をかけるのが普通なの?」
「まあな。案外面白いんだぜ。昼とはまたちがった雰囲気を味わえるし」
「ちがった雰囲気?」
「ああ。っつっても仮にブースターがおれと同じことしてもなにが楽しいのか全く理解できないと思うぞ。
ゴースト……いや、たぶんおれしか楽しめない趣味だと思う」
「そうなんだ。楽しいから毎晩行ってるんだ……」
どういうわけか、ブースターはいまいち納得がいってない様子だった。
聞かれたから丁寧に答えただけなのに、訝しそうな眼つきでおれを見てくる。
ますます意味がわからねぇ。怪訝な顔をしたいのはおれの方だ。
「なんだよ。うそついてると思ってんのか?」
平静を装ってたずねる。
まさかオナニーしてるのがバレたんじゃあ……と心のうちではビクビクしていた。
手が震えているのが自分でもわかる。
「ううん、そうじゃないけど……」
「じゃあなんなんだよ」
ちょっと怒り気味にじろりとブースターをにらみつける。
無論やりたくてやってるわけじゃない。
これ以上掘り下げて聞かれるのが困るからだ。
このブースター見た目だけじゃなくて、中身も可愛いな
この2匹好きだよ
途端にブースターは怯えた顔つきになって、おれから眼をそらす。
「……ただどんなものなのか知りたかっただけなの。
夜に歩き回るのってそんなに楽しいのかなって。
変なこと聞いてごめんね」
「いや、謝らなくていいけどさ、急にどうしたんだよ。
昨日は興味なさげだったじゃんか」
「うん。ちょっとね……」
言葉を濁すブースターの声は小さくて聞き取りにくかった。
おれの鋭い眼つきに怖じけづいてしまったのか、口をつぐんでなにも言ってこない。
さっきまでよくしゃべってたのにいきなり物静かになったりと、感情の起伏が激しいヤツだ。
おれもあまり言える立場じゃないけどさ。
ブースターはしばらくの間うつむいてたが、おれの視線を感じたのか、パッと顔をあげる。
「食べよっか。ごはんのジャマしちゃってごめんね。
早く食べて食休みしようよ」
「あ、ああ」
にこやかにそう言われ、仕方なくうなずく。
わざと元気なふりをしてるようにしか見えなかったけど、問いつめるのはやめておいた。
様子が変なのは別に今回に限ったことじゃないし、疑われてなかったらそれでいいやって思ったんだ。
ただ単に興味があったから聞いてきただけだろう。
どんなものなのか知りたかっただけだって本人も言ってたし。
ブースターはその後何事もなかったかのようにきのみを食べている。
見ていてもしょうがないので、おれもメシを再開することにした。
「……」
「……」
向かい合って座ってるというのにお互い一言も口を聞かず、食べる音だけが周りに響く。
元の空気に戻ったように思われたが、戻ったどころかいっそう悪くなった気がする。
会話を交わさずに食うメシってなんて味気ないんだろう。
ブースターが用意してくれてるんだから難癖つけるつもりは一切ないが、何故か全然おいしいと感じない。
倦怠期のカップルってこんな感じでいつもメシを食ってるんだろうか。
時折ブースターに目線を向けてみるが、下を向いて食べていてこっちを見ようとしないので、なにか話題をふろうって気にもなれない。
……あぁもう、めんどくせぇ。
こんな時に無理して話をしたって盛り上がらないのは目に見えてるし、だったらいっそのこと向こうがなんか言ってくるまで沈黙を貫いてやる。
おれはそう心に決めて残りのきのみをさっさと平らげる。
腹は満たされたのに気分が晴れないのは今までなかったが、この状況じゃ仕方のないこと。
ごちそうさまだけ言ってその場に寝そべる。
「もうちょっと陽が昇ってから行く?」
「そうだな」
「今日も暑いからなるべく陽が当たらないところを歩こうね」
「ああ、ありがと」
「うん」
やっと交わした会話はそこで途絶え、またすぐに沈黙が訪れる。
この気詰まりな雰囲気は食休み以降も続くこととなった。
昼下がり、おれたちは昨日と同じく木陰を歩いていた。
前を歩くおれの後ろをブースターがトコトコとついてくる。
ブースターは歩くのがそんなに速くないので、というよりおれが歩くのが速いので、おれがブースターの歩幅にあわせる必要があった。
歩行ペースが速いと大変だろうとおれなりに配慮してるつもりだ。
チラチラと後方に眼をやりつつ、ブースターと一定の距離を保つ。
あれから状況は変わっておらず、おれもブースターも一言もしゃべらないまま、歩き慣れた道筋をただ歩いていた。
さすがに森を出歩いてる時くらいは話した方がいいよなと何度も思ったが結局行動に移せず、前を向いてひたすら歩を進める。
一体どこに向かっているのか、自分でもよくわからない。
状況的におれが先導してる立場だし、やみくもに歩くのはまずいな。
方向を変え、脇道を抜けていく。
行き先に迷った時はとりあえず湖に行くのが無難だ。
ブースターはなにも言わず、黙って後ろをついてくる。
並んで歩く気にはなれなかった。
なんだか今日は少し距離を置いた方がいい、そんな気がしたんだ。
ブースターも同じような気持ちなのだろう。
横にこようとする気配が全然ない。
傍から見ればケンカしてる風に見えるんだろうが、周りの眼を気にするのもいい加減うんざりしていた。
おれたちは元々ちぐはぐな組み合わせなんだから、いまさら周囲にどう思われようが痛くもかゆくもない。
そう思うと僅かだが気持ちが楽になれる。
(あいつ、またおれたちのこと見下ろしてんのかな)
樹の上を仰ぎ見る。
昨日いちゃついてた鳥のカップルは見当たらない。
どうやら今日はちがう場所でデートらしい。
オス鳥のやろう、おれに余裕かましてやがったし、昼間っからメス鳥と交わってる可能性もあるな。
バカップルめ、おれとブースターがこんな状態だってのに気楽でうらやましいぜ、くそっ。
「……ねぇ、ゲンガー」
湖畔に到着する直前で、突如ブースターが押し殺したような声で話しかけてきた。
「なんだ?」
前を向いたまま返事する。
無視こそしないが、オス鳥に嫉妬してるのが顔に出ていそうで振り向くわけにはいかなかった。
「今日ね、その……」
ブースターはなにか言いかけてすぐに黙りこむ。
自分から声をかけておいて躊躇するなんておかしなヤツだ。
今に始まったことじゃないから取り立てて思うことはないけどさ。
あっ、メシん時におれが脅すような態度で迫ったもんだから機嫌が悪いと思ってるんだ、きっと。
あの時怒った顔をしたのはあくまでも演技だ。
本心でやったんじゃない。
そのことをちゃんと謝ってなかったおれにも原因があるんだし、ここは話しやすい空気を作ってあげるべきだろう。
「なに遠慮してんだ? おれとお前の仲じゃねぇか。
朝のことならちっとも怒ってねぇよ。どうした?」
明るい口調でたずねる。
だったらちゃんと眼を見て話せと自分に突っこみを入れつつ、返答を待つ。
安心したのか、ブースターはしばらくたってからようやく口を開いた。
「今日の夜ね、わたしも行っちゃダメ……かな」
「へっ……?」
言葉の意味を把握できず、足をとめて振りかえる。
いきなりなにを言い出すんだと顔に書いているんだろう。
ブースターはおれから視線をそらさない。
「……夜のお散歩、わたしも行きたい」
「えっ? あっ……」
唐突な申し出に一瞬意味がわからなかったが、すぐに理解できた。
要するに、夜になったらおれと森を出歩きたいとブースターは言ってるのだ。
おれが嬉々として話してたのを聞いて、自分も行きたくなったってわけか。
それなら今朝ブースターの方から話を持ち出してきたのもうなずける。
でもおかしくないか?
ブースターは夜道もとい暗闇が苦手なハズだ。
徘徊の内容を聞いてた時だって怖そうにしてたし。
なのに自分からわざわざ同行を希望するなんて、普通はありえない。
「なんで?」
「うん、ちょっと……」
心境がよくわからず、一応理由を聞いてみるが、ブースターは曖昧な返事をする。
ここしばらくちょこちょこ更新されてて嬉しい
( ´-`)っ④"
なにか明確な理由があるにちがいないのに本心を明かそうとしない。
言いにくい事情があるんだろうか。
もしかしてあれか? こわいもの見たさってやつか?
好奇心に駆られて夜の不気味さを実際に自分の眼で確かめたくなったのか?
……うーん、おれだったら嫌いな場所に自分から出向いたりなんか絶対にしたくねぇけどなぁ。
あくタイプやエスパータイプの巣窟が近くに存在したとして、そんな場所に足を踏み入れる勇気なんておれにはない。
だがおれがそうだとしても、ブースターはそうじゃないのかもしれねぇな。
オスよりメスの方が度胸があるって言うし。
おれがそばにいるから心強いってのもあるだろう。
他に考えられる所以は現時点では思いつかない。
ブースターの本意なんてつまるところ本人に聞かないとわかりっこないんだ。
とはいえ、単刀直入に聞き出してもブースターはおそらく言いはぐらかすので、遠回しに真意を探ってみることにした。
「メシん時にも言ったけどさ、散歩っつってもほんとにただ適当に徘徊するだけだから、お前がきてもつまんねぇだけだと思うぞ。
昼間に比べて夜の森は冷えるし、月が出てなかったら真っ暗だし。
おれはそういう雰囲気が好みだから毎晩行ってるけど」
オナニーするのに差し障りがあるからとか決してそんなくだらない理由ではなく、ブースターの身を案じて言ってることだ。
視界が悪いのは本当のことだし、夜行に慣れてないブースターが誤って水に落ちでもしたら大変だ。
それに、徘徊なんて所詮ただの自己満足だからブースターが得られるものなんて何1つない。
そう思ってそれとなく拒否の意思を示すが、ブースターは引き下がろうとしなかった。
「それでもいいの。わたしも行きたい。ゲンガー、連れてって。お願い」
すごく真剣な眼で何度も懇願してくる。
こんなに必死なブースターは初めて見る気がする。
一体なにがブースターをここまでさせるんだ?
つまらないのをわかった上で頼みこむなんて、どういう心持ちなんだろう。
女心って全然わからねぇ。
(あっ、ひょっとして……)
ふと思い出す。
寝る前に徘徊の話を聞いてなにか考え事をしてたり、メシの時に納得してなさそうな表情を浮かべてたのは、一緒に行ってみたいと心の中で思ってたからか。
だからやけに掘り下げて聞いてきたんだ。
おれは今になってそのことに気がついた。
「うーん……すぐ帰りたくなるだろうからやめといた方がいいと思うけどなぁ。
それにさ、夜更かしなんてしたら身体に悪いぞ」
理由は定かではないが、やはりブースターみたいな普通のポケモンが徘徊なんてするもんじゃない。
ついてこいとはどうしても言えなかった。
物柔らかに言ったつもりだが、ブースターは悪い意味にとらえちまったようだ。
「……わたし、ジャマってこと?」
「いやいやいや! そうじゃねぇって。
面白くねぇからやめとけってことを言いたかったんだよ」
声を大きくして否定する。
そりゃおれだってできることならブースターの気持ちに応えてやりたいさ。
でも安全なんて保証はどこにもないんだ。
ブースターだって夜の森が昼間と全然ちがうことぐらい、わかってると思うんだけど……。
「そっか、わかった。じゃあやめとく」
珍しく愛想のない言い方で答えたブースターはおれの横を通り過ぎ、先へ先へと歩いていく。
まるでおれを完全無視してるかのような早い足取りだ。
……おれ、なんか気に障ること言ったか?
「お、おい、待てよ」
追い縋りたいところだが、毛並みがきれいなブースターにさわるのは抵抗があった。
仕方なく後ろを追いかける。
「なに怒ってんだよ。待てって」
「……」
「待てって言ってんだろ」
こちらを振り向こうともしないので、素早く前に回りこんでブースターに立ちはだかる。
眼をあわせてもブースターは少しも笑おうとしなかった。
立ちどまり、真顔で見つめ合う。
眼つきが悪いせいでにらんでると思われてないか心配だが、このまま突っ立ってるわけにはいかない。
「なんで怒るんだよ。おれはお前のためを思って言ってんだぞ」
「怒ってないよ。ゲンガーがわたしを心配して言ってくれてるのだってちゃんとわかってる」
「じゃあ、なんで……」
「ただ一緒に行きたかっただけ。
どんなにこわくてもゲンガーがいてくれるなら平気だもん。
危険なのは承知の上だし」
「……」
言いたいことはあるが、今は聞き役に徹する。
真剣に話してるのに口を挟むのは野暮というものだ。
「……わたしも夜の世界を冒険してみたかったの。
ゲンガー、すごく楽しそうに話してたからね。
でも、一番の理由は……ゲンガーと一緒にいたかったからなの。
あなたと一緒に夜の森を歩いてみたかった。
わたしをいろんな場所に連れていってほしかった。
だからわたし……あなたについていきたかったの」
ブースターは心中に隠していた想いを洗いざらい話したようだった。
悲しそうな表情を前にして、なにも言えずに黙りこむ。
不明だった理由が今はっきりとわかった。
どうりでさっき、おれがなにを言っても意志を曲げなかったわけだ。
――ゲンガーと一緒にいたかったから――
なんでこんな単純な答えがわからなかったんだろう。
頭を固くして思い巡らせた結果、一番納得のいく理由を導き出すことができなかった。
徘徊が面白い面白くないは関係ない。
ブースターはただ、おれと一緒にいたかったんだ。
続きマダー?
不穏な空気が流れる。
この状況を打開するにはどうすりゃいいんだ。
「そんな顔すんな。元気出せよ」って慰めるべきか。
いや、カッコつけてそう言ったところでブースターが元気になるとは到底思えない。
ここはやっぱりブースターの気持ちに気づいてやれなかったことを謝るべきか。
「……」
黙るな。とにかくなんか言え、言うんだ。
後先のことなんて考えてるゆとりはねぇぞ。
「……わかった。今夜は一緒に行こう。
楽しもうぜ、ブースター」
見慣れた表情の方が安心するだろうと考え、おれは笑いながら言った。
夜の世界を冒険して、それでブースターの気がすむならと思ったんだ。
連れてくのは少し緊張するが、ブースターと話しながら徘徊を楽しむのもいいかもしれないと思い始めていた。
オナニーはブースターと別れたあとに適当な場所でやれば全く問題ない。
これで無事に仲直りできる、そんな期待を抱いていた。
だが、そんな簡単に良好な関係に戻れるほど、現実はあまくなかった。
「……ううん、もういいの。今日は戻ったらすぐ寝るよ。
気分悪くさせてごめんなさい」
ブースターはおれの身体をよけて湖の方へ歩いていく。
喜んだブースターにやっと笑顔が戻って、つられておれもキシシと笑って……なんてのは愚かな考えだったらしい。
(ブースター……)
あとを追うことができず、その場に佇む。
……おれたちの間に生じていた亀裂は消えるどころか、ますます広がってしまった。
今まで積み上げてきた関係がガラガラと音をたてて崩れ落ちていく。
「……」
もうなにも言う気力はなかった。
おれはうつむいたまま、ブースターの気持ちを踏みにじってしまったことを深く後悔していた。
昼間のことが原因で、結局おれとブースターは夜になってもほとんど口をきかなかった。
こんな日に探検なんてできるはずがなく、ずっと湖の周りをうろついていただけだ。
ブースターはというと、毛づくろいをしたり、時には陽光を浴びたりして時間をつぶしてたようだ。
おれはそんなブースターを遠くから眺めていた。
でもいつまでも湖にいるわけにはいかなかったので、おれから思いきって声をかけ、住み処に戻ることにしたのだ。
今は帰路だが、もう陽はとっぷりと暮れ、空は闇に覆われていた。
夕陽と入れかわった満月が、夜空にぽつんと浮かんでいる。
「あ、あのさ」
「……なに?」
「明日もその……また行こうな」
「うん……」
気のない返事。
ブースターは帰り道を歩いてる時もこんな調子だった。
自分からは全然話しかけてこず、時折おれが声をかけても今みたいに弱々しい声で答えるだけ。
もう笑った顔なんてずっと前から見てないような錯覚にさえ陥る。
自分のせいでブースターがこうなっちまったのは、本当につらいことだった。
「……」
「……」
重苦しい空気が流れるなか、おれたちは真っ暗な森の中を歩いていた。
まるで誰かに時空を歪める技をかけられたみたいに足取りが重い。
ねぐらにしている草むらの前を通りかかった時に、ふと思い立ったおれは、つとめて明るい口調で言った。
「な、なあ、ちょっと寄ってけよ。
せっかくだから話でもしようぜ」
「なにを話すの?」
ブースターはおれの顔をじっと見つめる。
あんたなんかと話すことはなにもない。
そんな口ぶりに聞こえたのは間違いなく気のせいだと思いたい。
「えっと、ほら、明日のこととか色々さ」
「……気持ちはうれしいけど、今日はもう帰るよ。
徘徊のジャマしちゃ悪いし」
「そ、そうか」
ほのかな期待を寄せていたが、あっさり断られる。
まぁ断るだろうなと半分予想はしてたからそれほどショックは大きくないけど、思いつきで行動するもんじゃねぇな。
帰ると言ってることだし、無理に引きとめはしない。
今はあれこれ考えるのはやめて、ブースターを住み処へ送り届けてあげよう。
「じゃあ送ってくよ」
別れ際に今日のことを心から深く謝って、ちゃんと仲直りしよう。
明日もし早く起きれたら、ブースターを起こしに行こう。
そう意気込んでいたが……。
「いいよ、1匹で帰れるから」
どういうわけか、ブースターは信じられないことを言い出す。
「えっ、でも……」
予想外のセリフに、言葉をつまらせてしまう。
「いつまでもゲンガーにあまえてるわけにいかないからね。
わたしだってもうこどもじゃないんだし。
夜道くらい、1匹で歩けるようにならなくちゃ…ね。
じゃあ……おやすみ」
口ごもっている間に、ブースターは言い終えてしまった。
すいと背をむけ、夜道に足を踏み入れていく。
心なしかその後ろ姿はすごく寂しそうに見えた。
そういやブースターをこうして見送るのって初めてだな。
今まではおれが見送られる側だったから新鮮な感覚だった。
……なんて、呑気に見届けてる場合じゃなかった。
このままボケッと突っ立ってるつもりか、バカやろう。
(早く呼び戻せ。取り返しがつかなくなっちまうぞ!)
心の中に潜んでいる善心が、行動を促してくる。
もう迷いなんてなにもなかった。
「ブースター!」
立ち去ろうとするブースターを大声で呼びとめる。
ブースターはビクッと身体を反応させ、振りかえる。
「びっくりした。なに?」
「今日はおれんとこに泊まってけよ! なっ?」
「えっ?」
おれがそんなことを言うのが意外と思ったのか、ブースターは何度もまばたきしている。
我ながら勇気のある発言だったと思う。
だけど、このまま帰らせたらもう昨日までの関係には絶対に戻れない。
そうなったらもう2度とブースターと会えない。
そんな気がしてならなかったんだ。
「昨日泊めてもらったお礼にと思ってさ。
今夜はおれんとこで休んでけよ。
一緒に寝ようぜ」
「……悪いよ。気、つかわせちゃうし」
露骨に嫌な顔をしたらどうしようと不安だったが、ブースターは突然の誘いに困惑してる様子だった。
安心するのはまだ早い。
「おれなんか散々お前に気、つかわせてきたんだぞ。
些細なこと気にすんなって。
それにさ、ほんとは1匹で帰るの、こわいんだろ?」
「……」
ブースターは眼を伏せて黙りこむ。
暗い場所を厭うブースターが、平然と夜道を歩けるわけがない。
嫌々1匹で帰ろうとしてることぐらい、おれだってわかってる。
「遠慮すんなって。お互い様だと思えばどうってことないだろ?
ほらっ、戻ってこいよ。
お前みたいなかわいい女の子が夜道を1匹で歩いちゃダメだぞ」
一息にまくし立てて全力で説得する。
なんとしてでも引きとめるんだ。
帰るという選択肢を絶対に与えてはいけない。
「でも……」
踏ん切りがつかないのか、ブースターは中々うなずこうとしない。
やむをえず、少々強引な手段をとることにした。
「あぁもう! 泊まりてぇのか泊まりたくねぇのかどっちだ!
はっきりしろよ!」
真っ赤な眼をつりあげてヒステリックを演じる。
怖がりなブースターには十分な迫力だろう。
これで断固拒否されたらぶっちゃけお手上げだったが、そんな心配は無用だったようだ。
「……泊まりたい。でも、ほんとに迷惑じゃない?」
「迷惑だったら自分から誘うわけねぇじゃんか。
ブースター、早くこっちこいよ」
歯を見せて笑いながら手招きする。
「うん。じゃあ……おじゃまします」
ブースターはまだ少しためらっていたが、やっと決心がついたらしく、戻ってきてくれた。
ブースターに先を譲り、続けておれも草むらに入る。
続き来てた(o^∀^o)支援
④ ④
\(・ω・)/
④④④④④④④④④④④④④
しえん
「昨日のゲンガーの気持ちがわかったよ。
いきなり誘われたら素直にうなずけないものなんだね」
「だろ? ちょっと強引だったけどこうでも言わねぇと返事しにくいだろうと思ってよ。
怒鳴っちまって悪かった。ごめんな」
「……ううん」
思いこみの激しいブースターはたぶん気にしてるだろうから、忘れずに謝っておく。
当惑することなく呼びとめることができたのは、昨日ブースターの寝床で休んだおかげだ。
おれの気持ちがわかったってブースターは言ってたけど、同じ立場になったおれも、昨日のブースターの気持ちがわかった気がする。
なにはともあれ、ブースターと離れ離れにならずにすんでほっとした。
並んで地面に座り、夜空を見上げる。
日中にあんなことがなかったら、いつもどおりブースターを住み処まで送り届け、そこで別れていただろう。
昨日といい今日といい、夜だというのに隣にブースターがいるのは変な感じだった。
うれしいような落ちつかないような、複雑な気分だ。
「……」
「どうしたの?」
さりげなくブースターから離れたが、すぐに気づかれてしまった。
「あっ、いや、寒いだろうなって」
「体質のことを言ってるの?」
「お、おう」
なぜかはわからないが、おれの身体はたまに周りの温度をさげてしまうことがあるんだ。
取り分けこうやって誰かのそばにいると、その効果が出てしまいやすい。
ブースターはほのおタイプだから基本的に寒いのはダメだ。
そう思ってなるべくくっつかないように間をあけたんだが、今日のブースターはとことん予想外の行動をしてくる。
「大丈夫だよ。体毛があたためてくれるから」
「わっ、ちょっ……」
ブースターは自分からぴったりと身を寄せてきた。
首回りの橙色の体毛が頬にあたり、胸の鼓動が高まる。
「冷えないから大丈夫だよ。だからね」
「お、おい」
「ごめん。でももう少しこのままでいさせて……」
4つの足を揃えて座り、おれにもたれかかるブースター。
身体を預けると同時に、特徴のある大きなシッポでおれの下半身を包みこんでくる。
温もりを与えてくれる豊富な毛皮は、うっとりするほどいい心地だった。
(……モフズリしてくれって頼もうかな)
なんだかケツを撫でられてるような感覚を覚え、やらしい方向へ想像が行ってしまう。
首回りの毛皮でモフズリされながらフェラされたら数秒で――いけねぇいけねぇ。
最近はちょっとしたことですぐエロ妄想に頭が働いちまうんだよな。
あまり意識すると股間のモノが反応しちまいそう――すでに細隙から顔を出しつつあるので、無理矢理別のことを考える。
本人の言うとおり、羽毛のように柔らかい毛皮は身も心もあたためてくれるようだった。
周りの温度をさげるおれと、ふさふさの毛皮を纏って体温を保っているブースター。
うまくバランスがとれてるもんだなと思う。
ブースターはおれに寄りかかり、眼をつぶっている。
「……」
勇気を出してブースターに手を伸ばそうとしたが、できなかった。
引け目を感じたからだ。
あのオス鳥がこういう状況ならメス鳥をぐいっと抱き寄せるんだろうが、あいつとおれとでは次元がちがう。
おれとブースターは種族もタイプも異なるし、身体のつくりだって根本的にちがう。
ましておれは肉体の存在しない幽霊だ。
ブースターを抱擁するなんて洒落たマネ、とてもできない。
ブースターの方から身を寄せてくれるだけでも幸せだと思わねぇと。
……こんな姿じゃなかったら、同じ種族あるいはウインディやロコンのような4足ほのおタイプだったら、堂々と寄り添うことができるのに。
親密なムードでいい感じなのに、このもどかしい気持ちは一体なんなんだろう。
「……あのさ、今日はごめん――」
「……ごめんね、ゲンガー」
「えっ?」
昼間のことを謝ろうとした時、おれの言葉を遮るようにブースターが口を開いた。
声がこもってて聞こえてなかったらしい。
それにしても今『ごめん』って言ってた気がするが、なんか謝られることあったっけ。
ヤッター更新来てたー
続きも頑張って下さいo(`▽´)o
ワーイ♪
④"
( ^ω^)ノ
「わたしがあれからずっと元気なかったから心配してくれてたんだよね。
さっきも気遣って声かけてくれたの、わかってたんだよ。
それなのにわたしったらそっけない返事して……。
ごめんね……ほんとにごめんね……」
「なに言ってんだよ!」
まなじりを決して反発する。
急にでけぇ声を出したもんだからブースターは驚いているが、聞き流すわけにいかなかった。
「そうやってすぐ自分が悪いって思いこむのやめろよ。
ブースターが一体なにしたってんだよ」
「だって、ゲンガーがせっかく『一緒に行こう』って言ってくれたのに、ひどい態度とったし……。
さっきだってうそついて1匹で帰ろうとしたし……」
「そりゃ徘徊の件に関しては確かにショックだったけど、だからってお前が罪を感じるのはおかしいだろ。
おれがしょうもねぇことばっかグダグダ抜かすから不安になったんだろ?
『ゲンガーはわたしがジャマなんだ。一緒に行きたくないんだ』って」
「……」
「お前が心を痛めることなんかねぇよ。
ブースターの気持ちに気づいてやれなかったおれが悪いんだから」
ブースターは顔を下にむけ、泣きそうになっている。
「頼むからそんな顔をするのはやめてくれ。早くいつものブースターに戻ってくれよ……」
なんでこんな必死に抗弁してるのか、自分でもわからない。
だけど、もうブースターの暗い表情なんて眼に入れたくなかった。
この気まずい空気を少しでも浄化したかった。
その2つの思いが気持ちを掻き立てているのかもしれない。
「……ごめんなさい」
「だからなんで謝るんだよ。悪いことなんて何一つしてねぇだろ?」
「うん……」
「元気出せって。暗闇が嫌いなお前が暗い顔してどうすんだよ。
ほのおタイプらしく明るくいこうぜ」
背中を撫でてあげながら、懸命に励ます。
ブースターが、しょぼくれるおれを元気づけてくれたみたいに。
ぎゅっと抱きしめてあげたかったが、やはり容姿のコンプレックスが付き纏うせいか、撫でるのが精一杯だった。
ブースターは抑えられなくなったらしく、すすり泣きを始めた。
ずっとガマンしていたんだろう。
見られるのが恥ずかしいのか、下をむいて顔を隠している。
星空を見上げて意味もなく星を数え、気づかないそぶりを見せる。
おれにできる、せめてもの配慮だ。
「おれとお前はこうして一緒にいる。今はそれだけでいいじゃんか。
思い悩むのはやめようぜ。なっ?」
背中をポンポン叩くと、ブースターは「うん……」とか細い声でうなずく。
できる限りのことはやったんだ。
時間がたてば、ブースターもきっと元気になる。
笑顔を取り戻し、以前みたいに明るく微笑んでくれる時がくる。
おれはそう信じて、すすり泣くブースターの背中を優しくさすりながら夜空を眺めていた。
支援
続きも楽しみに待ってます(o^∀^o)
フンフンッ
( ・ω・)っ≡④ ≡④ ≡④
( ̄ω ̄)ツヅキマダ~?
マダカナマダカナ~
でもゲンガーとブースターは卵グループが違うwwwwwwwww
まだかなー
つ支援
つ死炎
この前VIPでメタモン×ゲンガー書いたのって>>1?文体とかゲンガーのキャラがめっちゃ似てる
――しばらくして。
「ゲンガー、もう大丈夫だよ。ありがとう」
「ちょっとは気分もマシになったか?」
「うん。心配かけてごめんね」
ブースターは先ほどよりも口調がはきはきしていた。
頬に涙のあとが残っているが、大きな瞳には消えかけていた眼光が戻っていた。
まだ完全には立ち直れてないだろうけど、今後はもう今日のことで落ちこんだり悲しんだりしないだろう。
少しは表情も明るくなったみたいで一安心する。
「ゲンガー、わたしのことなら気にせずに行ってきてね」
ブースターはそう言って、にっこり笑う。
主語を言わなかったが、徘徊のことを指してるのはすぐにわかった。
おれが出歩きに行くのを笑顔で見送るつもりでいるのだろう。
ほんとは一緒に行きたいんだろうに、そういった思いをおくびにも出さないのは、昼間のような重苦しい空気になるのをおそれているからだと思う。
でも今夜は1匹で行こうとは思っていない。
ブースターに「お前も一緒に行こうぜ」っておれから誘うつもりだ。
「そろそろ行く?」
「ああ……」
低い声で返事すると、ブースターはおれを包んでいる柔らかいシッポをのける。
一緒に行くような言い方をしたものだからついてくるのかと一瞬思ったが、送り出そうとしている様子を見ると、やはりここに残るつもりらしい。
まあブースターが行くか行かないか、今はどっちでもいい。
徘徊に行く前に、1つはっきりさせておきたいことがあるからだ。
おれはおもむろに立ちあがって前へと進み、夜空を見上げる。
うっとうしい太陽はどこかに姿を隠しているから、眼を細めずに煌めく星空を見ることができる。
幻想的な雰囲気を醸し出す大きな満月と無数の星が、おれにほんの少しの勇気を与えてくれた。
おかげで胸の中にあった重苦しい気持ちが、わずかだが消え去った。
ふぅっと息を吐いたあと、ブースターに向き直る。
「ブースター、ちょっといいか?」
「なに?」
「お前に1つ聞きたいことがあるんだ」
「聞きたいこと?」
「ああ。すげぇ大事なことなんだ。だからどうか正直に答えてほしい」
ブースターは怪訝な顔をしていたが、おれの真剣な眼差しを見て察したのか、すぐにうなずいた。
「うそはやめてくれよ。はぐらかしたりごまかしたりっつーのも一切ナシだぜ」
まじめなブースターに限ってそんなことはしないと思うが、一応念を押しておく。
「約束する。正直に答えるよ。それで、聞きたいことって?」
ブースターは4つの足を揃えて座り、おれが話し出すのを待っている。
これから話す内容は割と覚悟のいることだ。
いい関係にようやく戻れたこのタイミングで言っていいものか、正直迷った。
だけど、確かめる機会はこの先あるかわからないし、あやふやなまま毎日を過ごすのは嫌だった。
だから、今のうちに聞いておこうと思ったのだ。
深呼吸して気持ちを落ちつかせる。
バックには頼もしい味方がいるんだから大丈夫。
そう自分に言い聞かせ、張りつめた心をほぐす。
……これがきっかけでまた気まずい関係になったりしませんように。
そんな一抹の不安を抱きつつ、おれは思い切ってブースターにたずねた。
「ブースターはおれのこと、ぶっちゃけどう思ってるんだ? 一言で教えてくれ」
「えっ?」
「色々あるだろ? その、友達とか仲間とか、好きとか嫌い……とかさ……」
段々と声が小さくなってるのが自分で言っててわかる。
「どうしてそんなこと聞くの?」
ブースターは意味がよくわからないといった語調で聞き返す。
当然の反応だ。
いきなりこんな質問されたら、誰だってそう聞き返すに決まってる。
口には出せないが、おれはブースターのことが好きだ。
幼なじみだからとか気が合うからとか、そういう理由だけじゃない。
優しいし、かわいいし、笑顔を見るだけで疲れなんか吹っ飛んでいくし、なにより一緒にいて楽しいし。
だからこれからもずっと一緒にいたい。ブースターと生涯を共にしたい。
心からそう思えるほど、おれはブースターが大好きだ。
なんだかんだ言っても付き合いが長いのは、おれがブースターにそういった恋愛感情を抱いているからだと思う。
しかし、そう思っているのはおれだけで、ブースターは単におれのことをただの幼なじみとしか見てないかもしれない。
ブースターがおれを一体どういう眼で見てるのか……本当は聞き出すのがこわい。
「……ゲンガー、大丈夫?」
押し黙っていると、ブースターは心配そうに声をかけてくる。
「ああ、大丈夫だ。悪い……」
せっかくブースターが元気になったのに、今度はおれが暗い顔つきになっちまってるようだ。
打ち明けるべきかためらった。
笑ってごまかして徘徊に行こうかとさえ思った。
だが、すごく大事なことだからと言った自分が、話を途中でやめるわけにはいかない。
おれはありったけの勇気を奮い起こして、重くなりがちな口を開いた。
続き来てた(≧∇≦)
ちくしょうイイ所で…
「最近思うことが多いんだ。ブースターがおれなんかと一緒にいてていいのかって。妖怪みてぇなおれと一緒に歩いてていいのかって」
ブースターはおれの眼をじっと見つめ、黙って話を聞いてくれている。
ここまで言った手前、もう後にひけない。
意を決したおれは、胸に秘めていた思いを全て告白しようと心に誓った。
「……ずっと悩んでたんだ。お前にはもっとふさわしい相手がいるんじゃないかって。
おれより別のポケモンと一緒にいる方が幸せなんじゃないかって。
この森は広いからお前に合うやつらなんて探せばいくらでもいそうだし」
「……あっ」
ブースターはなにかを思い出したかのような声を出したが、おれは構わず話を続ける。
続けざまにしゃべらないとまた迷いが生じてしまう気がしたのだ。
「たとえばそう……おんなじイーブイ系統のやつらとか。あとはウインディみてぇな4足で歩くやつとかさ。
そいつらの方がおれなんかよりよっぽど容姿いいし、かっこいいし、毛並みも整ってるし」
おれは言っている途中で無意識のうちに眼を下にむけていた。
「……そういうポケモンたちと戯れてる方がブースターもきっと楽しいと思うし。
おれとお前が一緒にいたら、滑稽に見えるだけだろうし……だから……」
『おれといるヒマがあったら素敵なパートナーを見つけに行ってこいよ』
喉まで出かかったそんな言葉をぐっと飲みこむ。
たとえ本音じゃなくても、口にしてしまうと本当にそうなってしまいそうでこわかった。
以前から抱いていたコンプレックスを洗いざらい打ち明けたことで、心の溝はますます深まってしまった。
湧き出る不安で胸が押し潰されそうになる。
「わたしとあなたは見た目が釣り合わなかいから、こうやって一緒にいるのはおかしい。絶対におかしい。
そう言いたいの?」
否定も肯定もできずに黙りこんでいたが、それはその通りだと言ったのと同じことだった。
「『お前にはもっとふさわしい相手が……』って言ってたのは、そういうことを考えてたからだったの?」
おれは眼を伏せたままうなずく。
昨日の朝のことを言ってるのだろう。
湖へ向かってた時におれが歩きながら話したことを、ブースターは覚えていたようだ。
あの時は結局納得のいく言い回しができずに言葉を濁して終わったが、今回はここまで言っちまった以上そういうわけにいかない。
それに、今はっきりさせておかないと、きっとまた同じことの繰り返しになっちまう。
おんぶの時だって、さっき言ったような考えが頭の片隅にあったから、無理してブースターと仲良くしようと張り切ってたのかもしれない。
……今思えば、おんぶの時のやり取りがギクシャクし始めたきっかけになった気がする。
……ダメだ。いろんな出来事が頭の中を渦巻いて思考がまとまらない。
ちらっと前を見ると、ブースターはなにか考えこんでいるような表情で地面を見つめている。
おれは笑うことも忘れ、なにも言えずにいた。
言わなきゃよかったと今になって後悔するが、全部言ってしまったあとではもうおそい。
「……ゲンガーっておかしな考え方してるんだね」
しばしの沈黙のあと、ブースターは意外なことを言い出した。
「えっ? お、おかしい……?」
真っ向から否定されたことに驚きを隠せず、思わず顔をあげる。
「うん。ゲンガーのその考え方は100%間違ってると思うな」
ブースターはまじめな顔つきできっぱりと言う。
なにが間違ってるというんだろう。
おれとブースターが見た目も種族もタイプも全くちがうのは疑いようのない事実なのに。
そんなおれたち2匹がガキのころからずっと一緒にいて、しかもお互い同じ種族のやつらと全く面識がないこと自体、おれからすれば不思議でしょうがない。
しかし、ブースターはそうは思っていないようだった。
「確かにわたしとあなたじゃ姿が全然ちがうから、見た目に関しては不釣り合いかもしれないね。
わたしはイーブイ系統のポケモンで、あなたは幽霊の姿をしたポケモンなんだし。
わたしたちの関係を知らないポケモンがわたしたちを見たら『珍しい組み合わせだな』って感じると思う。
ゲンガーが思ってるみたいにね。
でも、だからってそれが一緒にいちゃいけない理由には全く結びつかないじゃない」
それはそうかもしれないが、周りの眼を意識すると見た目というのはやっぱり気になってしまうものだ。
こんな姿だからなおさらそう思う。
「だっておれは所詮……」
「オバケだしって言いたいの?
オバケだからなに? 普通のポケモンとちがうからなに? 姿がわたしと全然ちがうからなに?
オバケ同士じゃないと一緒にいたらダメなの? わたしは同じ種族としか戯れちゃいけないの?
なにか正当な理由がないとわたしはゲンガーと一緒にいたらダメなの?」
「い、いや、そ、そういうわけじゃねぇけど……」
一方的に質問責めされてたじろぐおれに、ブースターはさらにたくさんの質問をぶつけてくる。
「ゲンガー、よく考えてみてね。
わたしがあなたを嫌いだったら毎朝起こしに行くと思う?
ゲンガーのために毎日食料を調達しにいくと思う?
昨日、呼びとめてまであなたを誘ったと思う?」
「それは……」
ブースターが言ってることはどれも辻褄があってて、言い淀んでしまう。
言われてみれば確かにその通りだった。
もしブースターがおれのことをひどく嫌っていたら、わざわざここに足を運んだり、朝早くから食料を調達しに行ったり、自分から徘徊についていきたいなんて言い出したりしない。
それ以前に、一緒に過ごそうなんてまず思わない。
逆の立場になって考えてみればすぐにわかることだ。
おれは体裁ばっか気にして、こんな簡単なことに全く気づかなかったらしい。
今まで思い煩ってたのはなんだったんだろう……。
「いくらわたしでも、好きでもない相手と一緒に寝たりしないよ。
さっきだってわたしからゲンガーに身を寄せたけど、嫌いな相手にそんなことすると思う?」
「……ごめん」
なにも反論できず、ただ謝るしかなかった。
別に怒られているわけではないが、今はブースターに対する申し訳なさでいっぱいだったのだ。
「……さっきのゲンガーの質問、まだ答えてなかったね」
不意にブースターが言った。
そういえばそうだった。
自分の心境を言っただけで、肝心のブースターの気持ちを聞いてなかった。
が、ブースターはすぐには答えず、一呼吸おく。
一体どんな答えが返ってくるんだろう。
正直に言うと約束してくれたとはいえ、優しいブースターのことだからおそらく、おれがキズつかねぇような言い回しをするだろう。
「全然嫌いなんかじゃないよ」とか、「いい友達だと思ってる」とか、そういった感じの言葉を密かに期待していた。
でも案に相違して、ブースターは信じがたいセリフをつぶやいた。
「……わたし、好きだよ、ゲンガーのこと。大好き」
「えっ!?」
驚きのあまり眼を見開く。
耳を疑いたくなる言葉だった。
「ほ、ほんとに……? 優しいうそとかじゃなくて?」
「正直に言うって約束したじゃない。わたし、ゲンガーのこと大好きだよ。
これからもずっと一緒にいたいって思ってる」
ブースターは顔を赤らめながらも、大きな声ではっきりと言う。
本当に信じられなかった。
こんな鈍感でだらしなくて、あまつさえ容姿だって醜いおれをどうやったら好きになるんだ?
惚れる要素なんてゼロに等しいはずなのに……。
「だ、だけど、おれ……眼つき悪いし、見るからに悪人面だし、そのうえ短足だし、おまけにデブだし……」
どうしても素直に喜べず、必要以上に自分を卑下してしまう。
この森林一帯にザングースの群れが生息してなくてよかった。
もし今のセリフを聞かれてたら、憤激したやつらに100%襲われてるよ、おれ。
「眼つきの悪いところとか、ふくよかなところとか、そういうのも含めて全部好きだよ。
誰にどう思われたって、おかしいやつだって思われたって構わないよ。
ゲンガーが大好きって気持ちは変わらないもん。
だから、これからもずっとゲンガーのそばにいたい。
毎日一緒にいたい。一緒に森やいろんなところをゲンガーと歩きたい」
「ブ、ブースター……!」
おれはガマンできなくなって、座っているブースターに抱きついた。
うれしかった。
心の底からうれしかった。
泣きたいぐらい本当にうれしかった。
こんな感情は生きてて初めてかもしれない。
エンダァァァァァァァァイヤァァァァァァァァ(;∇;)
待ってるよ
まだ待ってる
毎日更新チェックしてます
ぐあああああああ、続きが気になって眠れねェええええええ
age
「そんなにゲンガーが1匹で悩んでたなんて全然知らなかった。
わたし、ゲンガーのことわかってるつもりでなんにもわかってなかった。
ごめんね……」
「……おれこそ昨日も今日も冷たい態度ばっかとって悪かった。
お前に寂しい思いさせちまったよな……ごめん……」
「ううん。でもこれでもう大丈夫だよね。わたしたち、これからもずっと一緒にいられるよね?
離れ離れになったりしないよね?」
「ああ。これからもずっと……」
そう言いながら、後ろ足で立つブースターをぎゅっと引き寄せる。
自分からこうやったのは多分初めてだ。
こんなことができる日がやってくるなんて、ほんとに人生っつーのはなにがあるかわからねぇもんだとつくづく思う。
「愛してるぜ、ブースター……」
ずっと言いたかった言葉が自然と口から出てきた。
普段のおれだったらこんなセリフ、恥ずかしくて絶対に言えなかっただろう。
でも今は恥ずかしさとか後悔とか、そういうのは一切感じなかった。
なんでかな? 自分でもよくわからねぇや。
「ゲンガー、大好きだよ……」
ブースターはおれの胸元に顔をうずめ、うれしそうにシッポをふっている。
胸に当たってる肉球が柔らかくて結構気持ちいい。
こんな姿のおれを愛してくれるなんて……って、いつまでも卑屈になってちゃダメだよな。
こういう時は素直に喜ぶべきだよな、うん。
おれは地面に座りこみ、抱き寄せたブースターの頭を優しく撫でる。
夜空を見上げると、無数の星がキラキラと輝いていた。
それはまるで、おれの恋が叶ったことを祝福してくれているかのようだった。
「ゲンガー」
「んっ?」
「今日はほんとにありがとう。一緒にいられてすごくうれしい」
ブースターはそう言ってにっこりと微笑む。
釣られておれもキシシと笑う。
お互い屈託のない笑顔を浮かべてることだと思う。
だってもう、しがらみは消えてなくなったんだから。
「徘徊なんだけどさ……」
おれは夜空を見上げたままボソッとつぶやく。
「さっきまでは行く気満々だったけど、やっぱ今日は行かないことにしたよ」
「えっ? どうして?」
ブースターは驚いておれを見る。
おれがこんなことを言い出すとは思ってもなかっただろうから、驚くのも無理はない。
「せっかくお前とこうして一緒にいるんだし、そんな時にまで趣味を優先するのもどうかと思ってさ。
考えてみりゃ徘徊なんていつでも行けるしな」
「でも行かないと寝れないんじゃ……」
「1日ぐらいどうってことねぇさ。どうしても寝れなかったらお前が寝たあと歩きに行けばすむ話だし。
あっ、お前に遠慮してとか全然そんなんじゃねぇからな。そこんとこ勘違いしないでくれよ。
自分で決めたことだからさ」
「……うん」
「それに今日は徘徊なんかよりもさ……」
そこまで言って、おれは言葉を切った。
先を言うのがためらわれたからだ。
――今日は徘徊なんかよりも他にやりたいことがある。
おれはその“やりたいこと”を今からブースターに話さないといけない。
「……あのさ、ブースター」
「なに?」
「……」
自分から話しかけておいて黙りこんでしまう。
躊躇したら余計言いづらくなるのはわかっているが、中々踏ん切りがつかない。
言うべきか、やっぱりやめとこうか……。
ブースターを一瞥すると、おれが話すのをじっと待っている。
……これ以上ウジウジしててもカッコ悪いだけだ。
言わなかったら絶対に後悔するし、それならいっそのこと言っちまえ。
「その、おれ風情がお前にこんなこと言うのもなんだけど……いや、それ以前にオバケのおれがこんなこと言うのも滑稽なわけだけど……」
「?」
ブースターは『なにを言ってるの?』とでも言いたそうな顔をしている。
自分でもなにが言いたいのかわからない。
極度に緊張しているせいか、心臓が激しく鼓動していた。
深呼吸をして気持ちを落ちつかせ、ブースターの眼をじっと見つめる。
ダメで元々だ。早く言っちまおう。
変に予防線を張るぐらいなら、はっきりと思いを伝えた方がいい。
続きが来てたー!!!!待ってましたー!!!!
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
「あのさ、ブースター。エ、エッチしないか?」
思い切ってそう言った途端、ブースターの顔つきが明らかに変わった。
戸惑いを隠せないのか、何度も瞬きしている。
やっぱいきなりはまずかったか? さすがにストレートすぎたか?
こういうのってたぶん、事前のムードが大事なんだろうなぁ。
でも童貞のおれに雰囲気作りなんてできるわけがねぇからこう言うしかなかったわけで……。
「お前とその、肉体的に交わってみてぇなって。
オバケの分際でなに言ってんだって思われるかもしれねぇけど、おれだって一応、オスだしさぁ……」
ちゃんと言わなきゃ気持ちが伝わらないってのに、ところどころ声が上ずってしまう。
バカ。これじゃ下心丸出しだと思われるだけじゃねぇか。
あぁもうほら、ブースターが言葉を失ってるじゃんかよ。
やべえ、どうしよう。絶対にドン引かれたよ……。
「や、やっぱ嫌だよな。ヘドが出るよな。
大体オバケがどうやって交わるんだって話だよな。
身の程知らずもいいとこだよな。ははっ、悪ぃ……」
力なく笑ったその直後、ブースターは驚きの言葉を口にした。
「全然嫌なんかじゃないよ」
「えっ!?」
予想外の返答に面食らったおれは、つい大声を出してしまった。
うそだろ? 絶対断られると思ったのに……。
悪い冗談なのかと一瞬勘繰ったが、ブースターが冗談で言ったようには聞こえなかった。
えっ? じゃあつまり……マジってこと?
口を開いたままでいると、ブースターは落ちついた口調で話し始めた。
「ごめんね。そんなこと言われると思ってなかったからどんな顔したらいいのかわからなかったの。
でもね、ゲンガーがそう言ってくれてほんとはとってもうれしいんだよ」
「えっ……?」
「わたしのこと、ほんとに好きでいてくれてるんだなぁって。
それにね、わたしもいつかゲンガーとそういうことやってみたいなって思ってた。
夜は別々になっちゃうから無理なのかなって半分諦めてたけど、ゲンガーから誘ってくれるなんて思ってなかった。
ゲンガー、ありがとう。
交尾なんて初めてだからちょっと緊張するけど、今夜はよろしくね」
「そ、それじゃあ……」
「うん。わたし、ゲンガーとエッチしたいな」
ブースターは微笑みながらそう言った。
おれは驚きのあまり、笑いもせず喜びもせず、ただただブースターを見つめていた。
そりゃ嫌な顔をされたり拒否されるよりはずっといいが、おれなんかが初めての相手で本当にいいのだろうか……?
「マ、マジでいいの? ほんとに? ほんとにいいのか?」
「うん」
念のために何度も確認するが、ブースターははっきりとうなずく。
これは決して淫夢なんかじゃない。当然妄想でもない。
おれ、今からブースターとエッチできるってことなのか?
現実でその行為ができるとは思ってなかっただけに、いまいち実感がわいてこない。
「ゲンガーこそわたしなんかでいいの? わたし、交尾なんてしたことないからもしかしたらゲンガー、満足できないかもしれないよ」
「そんなことねぇよ。お前とヤれるだけで心が踊るってもんだ。
それによ、未経験なのはおれだって一緒なんだぜ」
「お互い初めてかぁ。えへへっ、なんだかドキドキしちゃうね」
その気持ちはすごくわかる。
緊張はもちろんするが、心のどこかで興奮している自分がいるのも事実だ。
ブースターと初のエッチか。
ようやく実感がわいてきたぜ。
「ほんとにおれとエッチしちゃってもいいんだよな?」
「ゲンガーじゃなきゃ嫌。だから早くやろ?」
「お、おう。じゃあ、やるか」
ブースターに向き直ったおれは、これから始まる性行為に胸が高鳴っていた。
慣れない者同士とはいえ、ここはやはりオスのおれがリードするべきだろう。
(……あれっ?)
さあやるぞと意気込んだのはいいものの、いざやるとなるとなにからすればいいのかわからない。
最初が肝心だってのに、これだから童貞は困る。
ベロチューだっけ? うーん、いきなりそんな濃厚な口づけしていいものなのかな?
なんだかためらってしまう。
いや、チューよりもまずは前戯をだな……んっ? そもそも前戯ってどういうことをするんだ?
フェラしてもらったらいいんだっけ?
いや待てよ、最初から口で頼むのってまずくないか? 初めは前足でじっくり愛撫してもらった方がいいんじゃないか?
かと言っていきなり『チンコ撫でてくれ』なんて面とむかって言えねぇよなぁ。
……えーっと、やることが全くわからないわけだが、どうすりゃいいんだっけ。
前戯ってなんだっけ。っていうか、エッチって一体なんだっけ……?
妄想での出来事が今まさに現実で繰り広げられようとしているのに、おれは突っ立ったまま考えこんでいた。
「ゲンガー、どうしたの?」
「……なにすればいいんだっけ?」
ブースターが心配そうに聞いてきたので、思わず助言を求めてしまう。
ああくそ、こんなことならあのオス鳥を取っ捕まえて色々聞き出しとくんだった。
せっかくの見せ所だってのに、ブースターに頼ってしまう自分が非常に情けない。
もし相手がビッチなメスだったら小バカにされてるとこだぜ。
「自分のやりたいようにやってみたらどうかな?」
「やりたいようにか……。やりたいこと……うーん……」
「なんでもいいじゃない。こういうのは楽しんでやらなきゃ。
わたしになにかできることがあれば遠慮せずに言ってね」
ブースターがそう言ってくれたおかげで1コ思いついたことがあった。
ずっとやってみたいやってみたいと、ひそかに思ってたアレだ。
「じゃあさ、お腹を上にして寝転んでくれないか?」
「えっ?」
ブースターは嫌な顔こそしないが、若干困った顔をしている。
おれの言ってることがどういう意味か、瞬時に理解したのだろう。
4足歩行のブースターが上をむいて寝たらどういう格好になるか……それはつまり、服従の体勢だ。
だからって屈服させてやろうとか、そんなことはもちろん考えてない。
ふさふさの毛皮に顔をうずめて心地よさを堪能したいとか、においを嗅ぎたいとか、そういった願望を果たしたいだけだ。
「早速お言葉にあまえさせてもらうぜ。モフズリしてくれよ」
「モ、モフズリ? なにそれ?」
ブースターは聞き慣れない単語に当惑しているようだ。
おれはモフズリしてもらう光景を想像しているうちに、段々テンションがあがってきた。
口と手が勝手に動く。
「お前の首回りの毛皮に顔をうずめるからさ、両方の前足で毛皮をぎゅっと寄せてくれよ」
ブースター♀の仰向け…想像しただけで勃つな…
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
まだー?
age
age
「つまり、えっと……仰向けになってゲンガーの顔を毛で挟めばいいってこと?」
「そうそう。一度でいいからその気持ちよさそうな毛皮に頭を突っこんでみたかったんだ」
「で、でも……」
いきなりこんなことをお願いされるとは思ってなかったのか、ブースターはかなり困惑している様子だった。
――『わたしにできることがあれば遠慮せずに』なんて言っちゃったけど、そんな恥ずかしい格好だけは絶対にしたくない。
おおかた今のブースターの心中はそんなとこだろう。
気持ちはわからなくもないが、初エッチに羞恥心は付き物だ。
おれは引き下がらなかった。
「頼むよ、この通り。ちょっとだけでいいから。なっ?」
両手を合わせて懇願する。
なんでそんなに必死なのと思われたって構わない。
せっかくのチャンスを無駄にしてたまるか。
「……わかった。ゲンガーがそれを望むんなら、わたし……やるよ」
熱意が伝わったらしく、ブースターは二つ返事こそしなかったものの、承諾してくれた。
顔色をうかがうが、どうやら本気で嫌というわけではなさそうだ。
とりあえずほっとする。
「あっ、そっちでしてくれても全然オッケーだぜ」
大きなシッポを指さす。
シッポに顔を突っこんで、気づかれないよう恥部に口元を寄せてぺろぺろ……なんてことはもちろん企んでいない。
ぜーんぜん企んでいない。
「……余計恥ずかしいよ。首の方でお願い」
「それもそっか。じゃあブースター、頼む」
おれが促すと、足を揃えて座っていたブースターはおもむろに後ろに倒れこむ。
まだ少しためらってる様子だったが、やがて覚悟を決めたのか、後ろ足を広げて服従の体勢をとった。
お腹だけでなく恥部までがまる見えになる。
初めて眼にする、上をむいて寝転んだブースターの姿。
おれはブースターの周りを歩きながらじっくりとその愛らしい姿を眺める。
「へぇ、お腹とかは首回りに比べてツルツルなんだ」
てっきりお腹や胸の部分にもふさふさの体毛があるものだと思いこんでたが、生えているのは頭部とシッポと首回りだけのようだ。
んっ? ってことは、仰向けになった今、ブースターは恥部をさらけ出したも同然……。
こんなエロい体勢、おれが頼まなかったら絶対してなかっただろうな。
なんたってブースターは恥ずかしがりやさんだから。
「……そんなに見ないでよ、ゲンガーったら」
まじまじと観察していると、ブースターはさりげなくシッポでお腹と局部を隠す。
いまさら隠してもばっちり見ちまったからあまり意味はないと思うが、まぁ凝視されたら隠したくなるのが本能ってもんだろう。
「そんなに恥ずかしいか?」
「……」
ブースターは顔を赤らめながらうなずく。
そのはにかむ仕草さえも今はおれに興奮をもたらしてるわけだが、言うのはやめとこう。
「ちょっとだけだって。ちょっと堪能して満足したらすぐ終わるからさ」
「……うん」
ブースターは相変わらずシッポで腹部周辺を隠しているが、しばらくしたあと自ら前足を広げる。
どうしても羞恥心を拭えないのか、顔の色が真っ赤っ赤だ。
「ゲンガー、早く……」
滅多に見せることのない色っぽい仕草でせかすブースター。
おれを誘っているんだろうか。
そんな大きな黒眼で見つめられたらチンコも挟んでほしくなる。
仰向けのブースターに跨がって、首回りの体毛にチンコうずめて咥えられたら瞬時にイっちまうな、たぶん。
なんてエロいことを考えてるせいで、股間のモノが徐々にでかくなっていく。
今日はまだ抜いてねぇんだから普通の現象だが、今は抜きたい気持ちよりもブースターと戯れたい気持ちの方が強かった。
「失礼するぜ」
仰向けに寝転んだブースターの上で四つん這いになる。
「っ……!」
四つん這いになった瞬間、勃起したチンコにふさふさのシッポが軽く当たり、全身がふるえる。
刺激的すぎて思わず声を出しそうになっちまった。
撫でられたような気がするのは考えすぎだろうけど……正直今のは気持ちよかった。
そんなことされたら『シッポにチンコ突っこませてくれ』ってお願いしたくなるじゃんか、もうっ……。
(……ガマンできねぇ)
理性を失いつつあるおれは、声もかけずに勢いよくブースターの首の毛皮に頭を突っこんだ。
不意打ちをくらったブースターはビクッと身をふるわせたが、しっかりとおれを受けとめる。
顔全体を包みこむ柔らかい体毛が、おれに至福の時を与えてくれた。
「あったけぇ。それにすっげぇいいにおいだぁ……」
ブースターの体毛に顔をうずめたまま、何度も息を吸いこむ。
草木の香りに土の香り、それから毛皮特有の香わしいにおい。
この上ない快楽がおれを極限まで癒してくれる。
気持ちよさのあまり寝ちまいそうだ。
「んっ……はぁっ……」
おれの荒い息遣いがしげみの中に響く。
「ちょっと、ゲンガー。そんなに嗅がないでよ、恥ずかしいよ」
ブースターが前足で頭をのけようとするが、おれは構わず体毛に頭を押しつけ、執拗ににおいを嗅ぐ。
こどもが母親にあまえてる時ってこんな感じなんだろうか?
ってことはおれは今、ブースターにあまえてるのかな。
……別にいいよな。おれだってあまえたい時くらいあるんだ。
こういう時にしかできねぇことは、存分に楽しまないと損だよな。
「ブースタぁ、お前最高だよ……」
おれは体毛に顔をうずめながら歓喜の声を漏らす。
こんな快感を味わった幽霊って世界中探してもおれだけだろうな、きっと。
ブースターと出会えて本当によかったぜ。
「そろそろ頼むよ」
「……モフズリ?」
「うん、それそれ」
間髪いれずに答えると、ブースターは毛皮をぎゅっと顔に寄せてきた。
「こんな感じでいいの?」
「おう。もっとしてくれ」
「わ、わかった」
ブースターは毛皮でおれの顔を挟むようにして、前足を左右に動かす。
「おぉっ……!」
かつて味わったことのない快感に思わず声が出る。
不慣れなためかやり方がぎこちないが、それが逆にいい感じに刺激されて気持ちいい。
おれは自然とブースターの首筋に手を回していた。
でかい図体でブースターを圧迫しないように気をつける。
(はぁーっ、幸せ……)
ちょっと堪能したら終わるなんて言ったけど、思ってた以上に気持ちがいいのでもっとやってほしい。
むしろこれだけじゃ物足りない。
「おれを窒息死させる勢いでおもっきしやってくれ。
おれ、このまま死んでもいい」
「ゲンガーったら。なに言ってるの」
ブースターはそう言いながらも先ほどより少し強めに毛皮を押しこんでくる。
文句1つ言わず、わがままを聞いてくれるこいつはほんとにいいやつだ。
恥ずかしい格好させてる上にこんなことまでさせて若干申し訳ない気持ちもあるが、これで生きる楽しみがまた1つ増えた。
実にいいことだ。
欲を言えばチンコも気持ちよくしてほしいなぁ……。
あけおめ!更新きてたー!
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
「なあ、ついでにチンコも頼むよ」
「えっ!?」
「……あっ! いやいや! うそだようそ。本気にすんなって」
慌てて前言を取り消す。
いっけねぇ。調子に乗ってうっかり言葉にしちまってたぜ。
もちろんチンコも毛皮で包みこんでほしいのが本音っちゃ本音だけど、初体験でそれを頼むのは無茶ぶりってもんだよな。
……あーあ、今ので頭がちぃっとばかし冷静になっちまった。
醜態を演じる前にここらで一旦やめといた方がよさげかな。
おれは体毛から顔を離してブースターに微笑む。
「サンキュ、ブースター。我を忘れるくらい気持ちよかったぜ。
お世辞じゃねぇぞ。
徘徊とはちがった意味で癒されたよ。
ありがとな、また気がむいたら頼むぜ」
「う、うん、もちろん。そんなに喜んでもらえると思ってなかったからうれしいよ。
してほしい時はいつでも言ってね」
絶賛されて悪い気はしないのか、ブースターは意外にも喜んでいる様子だ。
まあ苦笑いされるよりはずっといいのだが……。
ブースターも段々気分が乗ってきたのかもしれない。
それにしても初エッチって緊張するもんだと思いこんでたけど、いざやってみると案外楽しいもんなんだな。
相手がブースターだからなおさらそう思う。
さあて、望みも叶ったことだし、次はなにをお願いしようかな。
さっきからチンコが痛ぇし、ブースターに抜いてもらうのも悪くない。
でもさすがにチンコに関しては、軽はずみな言動は慎むべきだろう。
見せてって言われたらそりゃ見せるけど、自分から見せつけるのはなんかアレだし、『ぺろぺろしてくれ』とも頼みにくい。
それにせっかくこの体勢なんだから、ブースターの恥部を見てみたいという願望もある。
(うーん、どうしよう……)
初エッチゆえにやってみたいことが多くて中々決まらない。
おれはブースターの上で四つん這いになったまま、なにをしたいか考えていた。
(……よし、チンコは後回しだ)
悩んだ結果、おれが出した結論は……。
「あの、ゲンガー。そろそろ座ってもいい?」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
起きあがろうとしたブースターを、ぐいっと地面に押しつける。
ブースターは『えっ?』とでも言いたそうに何度も瞬きしている。
悪いがもう少しだけおれのわがままを聞いてもらおう。
そう考えたんだ。
「ブースター、シッポどけてくれよ。お前の全てを見せてくれ」
「えっ、ちょ、ちょっと」
ブースターの腹部にのそのそと顔を持っていく。
不意の行動にブースターは戸惑っているようだ。
お腹を覆うようにして垂れてるシッポを手でどける。
これでおれの視界にはブースターの腹部がまる見えになった。
恥じらいを捨てられないのか、ブースターは後ろ足をジタバタさせている。
が、上をむいた体勢なのでうまく動けないみてぇだ。
(……んっ?)
ブースターのお腹に眼をさらしたその時、おれは小さな突起物の存在に気がついた。
(っ! これは……)
乳首だ。しかも複乳という、ご褒美ともいえるようなオマケつき。
ミルタンクやバルキーに乳首があることは知ってるが、ブースターにもついてるとは驚きだ。
顔を近づけ、ごくりと唾をのむ。
「あっ、ダ、ダメ! そこは……!」
おれがなにを見てるのか気づいたらしく、ブースターは前足でおれの頭を押さえつける。
愛するブースターの乳頭部を眼の前にして、おれは肉欲を抑制することができなかった。
オスの本能に火がついた今、自分ではどう足掻いてもとめられそうにない。
「ひぁんっ!」
べろの先っちょで乳首を撫でてみると、ブースターはわかりやすいほど敏感に反応する。
同時に、頭を押さえている前足に力がこめられた。
ひょっとしたら、いや、間違いなく性感帯の一部だろう。
たった今ブースター自身がそう教えてくれた。
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
つまんね
続き期待!
焦らすね~w
age
age
age
age
age
age
もう諦めたら?
これだけ期間空いてるんだから>>1もとっくに投げてるでしょ
「や、やだっ、ゲンガーったらどこ舐めて……」
「ごめんな、いきなりこんなことしちまって。どぎまぎしちゃうよな。
でもさ、もうおれ……ガマンできねぇんだ。
おれ、お前がほしい。お前の全てを味わいたい」
口がベラベラと勝手に動く。
すでにおれの頭の中は欲望に支配されつつあるのかもしれない。
「いとぁ、いただきます」
大事なところで噛んでしまうが、今はそんなのどうでもいい。
おれは再びブースターの腹部にべろを伸ばし、乳首を攻め立てた。
赤ん坊のようにチューチュー吸ってみたり、また舌先でくすぐったり。
これでもかっつーくらい執拗に舐め回して舌触りを楽しむ。
だんだん乳首が熱くなってきたのは、ほのおタイプ特有の反応なんだろうか。
べろがヤケドしちまいそうなほど熱いので一旦口を離す。
今度は指で押したり挟んだりしていじくってみる。
さわり心地も意外と良好。
まるで赤ちゃんプレイをしてるみたいでものすっげぇ興奮する。
ブースターは見てわかるほど顔が火照っている。
初めて眼にするその艶っぽい表情におれはすっかり魅了されていた。
『早く精液を出したい』と股間のモノが必死に訴えているが、無視して淫行を続ける。
「やぁん……ダメぇ……」
「自分のやりたいようにって言ったのはブースターだぞ」
「そうだけど……でも……」
「恥ずかしがることねぇじゃんか。かわいらしいぜ」
「ぁんっ!」
いじくってるうちにだんだん固くなってきたのですかさず噛むと、ブースターは全身をビクっとさせる。
恥部を攻められるのってそんなに刺激的なんだろうか。
それともただブースターが敏感なだけかな?
まあ無反応よりかはずっといいんだけど。
どっちにしろ、おれもチンコを舐めてもらったら気持ちがわかるかもしれない。
でも初エッチでフェラなんて頼んでいいものなのか非常に迷う。
やってほしい願望はもちろんあるが、清楚なブースターに幽霊チンコを咥えさせるのはどうしても気が咎めてしまう。
やっぱりよした方がいいか……いや、思いきって言ってみるか。
散々悩んだが、どうも決められそうにないので今は心行くまで乳首をいじくり回すことにした。
ブースターのお腹に顔をうずめ、上から下までまんべんなく口と指でかわいがる。
相変わらず熱がこもってて舌がひりひりする。
「ぁっ、ふああぁん……」
指でクリックリッといじくるたびに聞こえる嬌声。
ちらりと前を見ると、ブースターは前足で両眼を覆っている。
いまさら隠したって意味ないのにかわいいなと思う。
そういうそぶりを見るとますます反応を楽しみたくなるのが心理だが……
「気持ち悪いか?」
なんとなく不安になったので聞いてみる。
合意の上でのセックスなのに不快感を与えてしまっては元も子もない。
「そんなんじゃないけど恥ずかしいよ……。こんなの初めてだし……」
つーことは、ブースターにこういうことをしたのはおれが初ってわけだ。
ほんとに経験ないんだなぁとわかってすごく安心する。
よかった。ブースターがおれ以外の男を知らなくて。
「いちいち恥ずかしがってたらキリがないぜ。エッチしてるんだから見られて当然って割り切らねぇと」
「それはわかってるんだけど、でも……」
「あれこれ考えるのはやめようぜ。おれだって初めてなんだし。なっ?」
「……うん」
ブースターは弱々しくうなずく。
ちょっと無理矢理だったかもしれないけど、おれは別に間違ったことを言ったとは思ってない。
相手の身体を見なかったら交尾なんてできっこねぇのは事実だし。
とはいえ、ブースターはまだ完全に羞恥心を捨てきれてないだろう。
まあ直に慣れるはずだ、たぶん。
おれが破廉恥なだけというのは置いといて、これで心置きなくエロいことができるぜ。
えっと、次はなにをしよう?
クンニしようか、それとももうしばらく乳首の舌触りを満喫しようか。
なんだか未知の世界を冒険してるみたいで胸が躍る気分だった。
こういったワクワク感を味わえるのが初体験の醍醐味なのかもしれないな。
「あ、あの、ゲンガー」
もっかい乳首を舐めようと舌を伸ばしかけたその時、ブースターが慌てた感じで声をあげた。
「なんだ?」
「その、楽しんでるところ悪いんだけど……一旦座ってくれない?」
「へっ……?」
顔をあげると、大きく澄んだ眼がおれを捕らえていた。
今納得したばかりなのになにを言い出すんだろう。
ブースターは押し黙っているが、なんか言いたいことがありそうな顔をしている。
「おれ、もうちょっとここ舐めてぇんだけど」
「あとにしてほしいの。だから……」
「……どうしてもダメ?」
「ゲンガー、お願い……」
「わ、わかったよ」
泣きそうな眼差しで懇願されたので、仕方なく立ちあがる。
未練が残る思いだが、一蹴するのもかわいそうだしひとまずブースターの言うとおりにしよう。
ブースターはおれが離れたのを確認すると、申し訳なさそうに身体をおこす。
おれは言われたとおり、地面に足を広げて座りこむ。
紫色のスリットから顔を出してるムスコを無理矢理引っこめる。
別に隠す必要なんてないが、今は見せるタイミングじゃない。
状況的にそう思った。
にしても、おれを座らせてどうするつもりなんだろう。
まさかとは思うが、フェラしてくれたりして。
さっきおれがあんなことを言ったから自分もやる気になったとか?
……いくらなんでもそれはねぇか。
よっぽどの物好きじゃない限り、自ら進んでオバケのチンコを舐めるやつなんてまずいない。
妄想世界のブースターぐらいだろう、喜んで咥えるのは。
そんなことを考えながら座っていると、ブースターは不意に前足をあげておれにもたれかかる。
「えっ? ちょっ……」
ブースターは力強く体重をかけてくる。
抵抗もままならず、おれは地面に押し倒された。
仰向きになったのはいいが、背中のトゲトゲがジャマでうまく寝転がれない。
「どうしたんだよ、急に」
おれはわけがわからずブースターを見つめていた。
ブースターはなにも言わず、横たわるおれのお腹に跨がった。
前足で身体を支えながら顔を寄せてくる。
顔と顔が近いせいか、おれの胸がドックンドックンと鳴り響いている。
「……わたしもやりたい」
「んががっ!」
どういう意味か聞き返すことができなかった。
ブースターが出し抜けに唇を重ねてきたからだ。
「んーーーっ!」
うなるおれを黙らせるかのように、ブースターは更に唇を密着させる。
口をこじ開けられると同時に熱々のべろが口の中に侵入してくる。
これじゃまるで逆レイプ……じゃなかった、まるでキスしてるみてぇだ。
いや、“みてぇ”じゃねぇ。
完全にキスだ、これ。
今までチューしたことがなかったせいで、状況を理解するのにしばらくかかった。
「……」
ブースターは口を離しておれの顔をじっと見つめている。
前もってチューするってわかってたら心の準備もできてただろうけど、なんせいきなりだったから頭ん中が真っ白だ。
「なんで……」
自分からこんな大胆なことをするブースターを呆然と見つめる。
ほんとにもう、わけがわからない。
「……わたしばっかり嫌なんだもん」
まだ気持ちの整理がついてないというのに、ブースターはまたおれの口に自分の口を重ねてくる。
普通、ファーストキスを交わしたのが好きな相手だったら喜ぶべきなんだろうけど、おれは気恥ずかしさ故に手足をばたつかせていた。
おそらく顔は情けないほど赤く染まってるにちがいない。
ブースターが乳首を舐められてた時、なんであんなに恥ずかしがってたのかがちょっとだけわかった。
一方的にされたら自然と恥ずかしいと感じてしまう。
だからってこのままされっぱなしは嫌なので適当に舌を動かしてみるが、あまり意味はなさそうだった。
チューって具体的になにをするんだ?
やり方が全然わからねぇ。
ブースターもそれは同じらしく、おれの口内に再びべろを入れてひたすら舐め回している。
思わずブースターの背中を叩きそうになるほど口の中が熱いが、眼をギュッとつぶって耐える。
せっかくのファーストキスを途中で終わらせたくない。
心のどこかでそう思っていたからか、おれは知らず知らず自分から舌を絡めていた。
ブースターの熱い舌とおれの長いべろがもつれて口の中に唾液が溜まっていく。
初めてのキスなんだし、どうせなら堪能したかったが、じっくり味わってる余裕はなかった。
口をふさがれているのでだんだん息苦しくなってくる。
ブースターは鼻で息をできるからいいが、おれには鼻がないので結構きつい。
だからといって窒息死することはないんだけど。幽霊だから。
……なんて、冷静に考えてる場合じゃなかった。
「んぐっ……んっ……」
口の中にどんどんブースターの唾液が注ぎこまれる。
おれは口でなんとか息をしながらそれを飲みこむ。
やっぱりヤケドするくらい熱い。
普段から控えめなブースターがこんなに積極的になるなんて、どういう風の吹き回しだろう?
終始おれに身を任せるものだと思ってただけに驚きを隠せない。
ブースターは鼻息を荒くしながらおれの口内を攻め続けている。
おれはもうじたばたするのはやめて、ブースターに身を任せようと決めた。
ブースターの背中に手を回し、やおら眼を閉じる。
……どくタイプのおれの唾液を口に含んで大丈夫かな、ブースター。
もし急にうめき声をあげたらどうしよう。
チューに専念するつもりだったが、ブースターのことが気がかりで心から楽しめそうもない。
あぁもう、なんでこんな時でさえブースターの身を案じなきゃならねぇんだ。
忌ま忌ましい毒を持ってる自分がつくづく嫌になる。くそっ。
頼むから毒に冒されないでくれよ……。
おれはやきもきしながら、ブースターの唇に自分の口を押し当てていた。
ブースターがようやく舌を引き抜いたころには、おれの口の周りはべとべとだった。
ブースターを見ると、同じく口の周りが濡れている。
おれの唾液を飲んだのは間違いないが、ブースターにおかしな兆候はない。
ひとまずほっとする。
「お前……」
言いたいことは山ほどあるのに、それ以上なにも言葉がでてこない。
「……わたしばっかりされるの、嫌だったんだもん」
ブースターはさっき言ってたことを強調する。
近くで見るブースターの顔は体色以上に赤かった。
おれもたぶん、同じような顔色をしていることだと思う。
いくらやり返したかったからって、べろちゅーなんて淫らな行為をするブースターには恐れ入るばかりだ。
でも、キスを終えて1つだけはっきりしたことがある。
それは、ブースターがおれを愛してくれてるってこと。
そうでなきゃブースターの方からチューなんて絶対にしてこなかったわけだし。
その確信が徐々に頭の中に染みこみ、気分が高揚していく。
と、不覚にも勃起したチンコがブースターのケツに軽く当たった。
気分が高まったんだから当然といえば当然なのだが、せっかく余韻に浸ってたのに実にタイミングが悪い。
途端に抜きたい衝動に駆られる。
こうなっちまうともうどんなに頑張っても引っこめられそうになかった。
ブースターと視線があう。
「あの、おしりに当たってるのってもしかして……」
ブースターはすぐさまケツに違和感を覚えたようだ。
眼を尻目にしているが、こわくて振りむけないのか顔を動かそうとしない。
おれは黙ってブースターを見つめる。
ブースターは言葉にこそしないが、ケツに当たってる物体の正体がなんなのかが明らかにわかっている顔つきをしていた。
「……」
言うなら今しかない。
おれは勇気を出して口を開いた。
「……舐めてくれよ」
「えっ?」
「初めての時にこんなことお願いするのはアレだけど……その……チンコ、咥えてくれよ」
「……うん」
おれがこういうことを頼むのを半ば予想していたのかもしれない。
ブースターは意外にもすぐにうなずいてくれた。
「じゃあ、頼む」
おれは足を広げて座り、ブースターに固くなったチンコをさらけ出した。
見られること自体は別になんてことないが、いざ舐められるとなるとさすがに胸がドキドキする。
向かい合って座ったブースターは、身体をかがめて興味ありげにチンコを凝視していた。
「これ……見んの初めてか?」
「……小さいころにたまたま見て以来かな。もちろんゲンガーのは初めて見るけど」
「気持ち悪かったら無理に咥えなくていいんだぜ」
嫌々させたくないので一応念を入れておく。
「大丈夫。ただちょっと戸惑ってるだけ……」
ブースターはそう言いながらも、鼻先をチンコに近づけてクンクンしている。
悪臭がしないか確かめているんだろうか。
口に入れるわけだしなんら不自然ではないが、そんなことされたらますます興奮しちまうよ……。
おれの気持ちに応えるかのように、勃起したチンコは更に大きさを増していく。
幽霊は基本的にどの部位も無臭だ。
無論チンコも例外ではない……はずなのだが、ブースターがやたら長いこと嗅いでるので、ひょっとして臭うんじゃないかと勘ぐってしまう。
自分のにおいって案外気づかないらしいしな。
「……臭いか?」
おそるおそる聞いてみる。
「ううん」
ブースターは首を横にふる。
顔色を窺うが、不快な表情は少しも見せない。
珍しい物などを見た時にまず嗅いで正体を確認しようとする、4足歩行特有の習性が機能しただけだろう。
どうやらおれの思い過ごしだったみてぇだ。
ふぅっと胸を撫でおろす。
「うまくできるか自信ないけどがんばるよ、わたし。歯、当たっちゃったらごめんね」
「気にすんな。お前こそ、どうしても無理って思ったらすぐに言えよ」
「うん」
ブースターは返事したあと、しばらくチンコをじっと見つめていた。
なにか心の中で考えてるようだったが、やがて決心したのか、口を大きくあけておれの肉棒を口に含んだ。
「んぁっ……!」
熱々のべろが尖端に当たって声がうわずる。
今まで自分しかさわったことのなかったチンコ。
自分でしか慰めたことのなかったチンコ。
それをまさかブースターに咥えられる日がくるなんて思わなかった。
おれはごくりと唾を飲みこんで、ブースターの頭部を見やる。
……夢じゃねぇんだよな、これ。
そう思った矢先に先端の穴をぺろぺろされて、全身を貫くような性感が走る。
ブースターがまさしく舌でチンコを舐めているのが局部から伝わってくる。
こんなに生々しい感覚が夢であるはずがねぇ。
これは間違いなく現実なんだと改めて実感する。
「んっ……ああぁっ……」
なるたけ黙ろうと努力してはいるんだけど、今まで味わったことのない快感にどうしても声を抑えられない。
オバケで且つオスなのに、こんな声を出しちまってすこぶる恥ずかしい。
ついついブースターに眼をおとしたが、ブースターは特になにも言わず、おれのチンコを頬張ったままだ。
慣れないモノを舐めててそれどころではないらしい。
ぎこちないフェラだが、それが逆にいい感じに刺激されてうっとりする。
正直言わせてもらうと、ブースターにフェラされてるってだけですぐにイっちまいそうだった。
だけどせっかく舐めてもらったばっかなのに、あっけなく果てるのだけは絶対に嫌だった。
こんなとこで射精するのはあまりにももったいない。
できる限り我慢して、押し寄せてくる快感から逃れる。
「いてっ!」
眼をつぶろうとしたその時、チンコになにか鋭い物が刺さって激痛が走る。
どうやらブースターのキバが刺さったらしい。
おれはあまりの痛みに耐えられず、ブースターの頭を力強く掴んだ。
「ご、ごめんなさい。大丈夫?」
ブースターは慌てた様子で、キバが刺さった場所を舌で丁寧に舐める。
ほんの少しだが痛みが和らぐ。
続ききてたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!
約5カ月待った甲斐があったもんだ。
まだ、全部読んでないけど、家に帰ってゆっくり読も。
「ほんとにごめんね……」
「いや、なんてことねぇよ、いきなりうまくできるわけねぇんだしさ。気にすんな」
「……うん。ありがとう」
ほんとはまだ痛いけど、ブースターが泣きそうな顔をしてたのでとっさに笑顔を作る。
やはり夢や妄想のようにスムーズにはいかないか。
でもこういうちょっとしたハプニングがあった方が初エッチっぽくていいかもしれねぇな。
「あのさ、ブースター」
「なに?」
「無理を承知で頼むけど、その……途中でやめないでほしいんだ」
「えっ?」
「もしまたガブってしちまっても、今度は最後まで頼むぜ」
「……うん」
ブースターは少し間をおいて返事したあと、再びおれの股間に顔をうずめてチンコを口に含んだ。
おれの言ったことの意味がわかっててうなずいたのかはわからない。
欲情したチンコが極限に達したら果たしてどうなるか。
ブースターだってもうガキじゃねぇんだし、それくらいは知ってると思うが……。
できるだけキバをたてないように配慮しているのか、ブースターは舌を中心に使った口撫で攻めてくる。
うっかりしてまた変な声を出さないよう、歯を食いしばってこらえるおれ。
どことなく心地よさを感じるのは、好きな相手とエッチしてるからかな?
痛みがたちまち快感にかわっていく。
もっと……もっとこの快楽に溺れたい。
気づけばおれは、ブースターの頭を手で押さえつけていた。
「ブ、ブースター。もっと思っきしぺろぺろしてくれ」
「んっ……」
ブースターは文句1つ言わず、チンコを根元まで咥えこむ。
暴れ回るチンコを唇でしっかりと挟み、熱気がこもったべろで尿道口をチロチロしてくる。
敏感な部分ということもあって、おれはたまらず喘いだ。
ブースターはそんなおれの顔をチラチラ見つつ、今度はカリに舌を這わせる。
さっきの失敗から学んだのか、やり方1つ1つがものすごく丁寧で且つ慎重だ。
強烈な刺激が一気に襲いかかってきて理性を失っちまいそうだ。
「ここを舐められるのってそんなに気持ちいいものなの?」
ブースターは肉棒を頬張ったまま、上目遣いでそう聞いてきた。
なんともなまめかしいその表情に魅惑されそうになる。
ちょっくらいじわるしてやろうと企んだおれはわざと聞き返した。
「どこのことを言ってんだ?」
「えっ? だからその、オ、オチ……オチン……」
口ごもるブースター。
モノはしゃぶれるくせして名前を口にするのは恥ずかしくてできないらしい。
全くブースターときたら、かわいいやつめ。
「お前にも分けてやりてぇくらい気持ちいいよ。だからもっと……」
「っ……!」
おれは両手を地面に置いて身体を支え、腰を前に突き出した。
ブースターの喉にギンギンに勃起したチンコをあてがう。
焦らされたら余計やってほしくなるのはどうやら妄想も現実も同じらしい。
ブースターは少々戸惑っていたが、特に嫌がる様子もなく再びチンコをぺろぺろし始めた。
おれは陶然とした表情で、局部から伝わってくる快感に身を委ねていた。
自慰では決して得られないこの感覚。
勇気を出して頼んだ甲斐があったってもんだ。
「なんか出てる……」
ブースターの言うとおり、おれのチンコからはガマン汁が分泌されている。
ブースターにフェラされて興奮してる証拠だ。
おれがなにも言わなくてもブースターはその粘液を舌で舐め取る。
うれしい反面、心配だった。
微量とはいえ毒が含まれてるんだから害がないとは言い切れない……が、いちいち気遣ってる余裕はなかった。
おれが感じてるとわかった途端、ブースターはますますチンコを攻め立ててきたからだ。
まるごと頬張ったチンコを舌先で執拗に舐め回したり、一旦口から抜いて前足の肉球で先っぽの穴をスリスリこすったり……。
つまるところ徹底的にいじってくる。
気持ちいいが故に、おれは早くも絶頂寸前になった。
チンコから熱い液体が込みあげてくるのを感じる。
……やべぇな。そろそろ理性を保てなくなってきた。
早く出したい。快感に浸りながら思いっきり精液を発射したい。
頭の中がその欲望でいっぱいになる。
「……出ちまいそうだ」
すぐに射精するのだけはなんとしても免れたかったけど、どうやら無理っぽい。
やつはもうそこまできている。
パンパンに膨らんだチンコが悲鳴をあげているようだ。
身体に力を入れて踏ん張るが……ダメだ。もう我慢できない。
更新お疲れ様です!
ブースター♀のエロシーンは珍しいので
最後まで完走してほしいです!
頑張ってくださいっ!
「あっ、や、やべっ、出る!」
おれは大急ぎでブースターの頭を掴み、チンコから引き離そうとした。
……が、間に合わなかった。
「きゃっ!」
引き離したと同時のタイミングで、チンコから勢いよく精液がほとばしる。
ブースターは驚いて眼をつむったが、膨張したおれのチンコは容赦なくブースターの顔目がけて毒々しい液体を発射し続ける。
オナニーで出す時とは比べものにならない量だ。
おれはブースターの頭を掴んだまま射精してしまったので、顔だけでなく体毛にも大量の精液が飛び散った。
顔中にへばりついた液の残渣が、ブースターの鼻先からどろっと垂れさがる。
「わ、悪ぃ、顔に……」
イったことによって得られた満悦感は、すぐさま後悔へとかわる。
わずかに残ってた理性でブースターを横に押しやろうとしたがダメだった。
よりによって顔射しちまうなんてとんだ失態だ。
これならいっそのこと口内発射した方がマシだったかもしれない。
「なに……これ?」
ブースターは顔にかかった白濁液を前足で掬い、複雑な表情で見つめている。
実に淫猥な光景だった。
こんな状況の時でさえ、そういうことを思ってしまう自分に心底嫌気がさす。
「ガマンしてたんだけど口はダメだって思って……。出さねぇように頑張ってたんだけど間に合わなくて……」
しどろもどろに言い訳するが、やってしまったあとではなにを言ってもおそい。
ブースターの自慢の毛皮に、おれの汚ぇ毒液がべったりとはりついている……。
申し訳なさでいっぱいだった。
「……ごめん。ほんとに悪かった」
おれは自分の犯した過ちを深く反省し、ブースターに謝った。
「ほんとにごめんな……」
「……いいよ、もう」
何度謝罪したかわからないくらい、おれは射精を終えてからもなお平謝りしていた。
そんな愚かなおれをブースターは一切責めようとしなかった。
心の中では気持ち悪いと思ってるにちがいないのに、おれに遠慮しているんだろう。
その気遣いが余計に心苦しくなる。
「ねぇ、ゲンガー。この粘ついたの……なに?」
ブースターは白濁液が付着した前足を差し出す。
正体が気になるらしい。
「こ、これはだな……」
性に疎いブースターに教えていいものなのか迷ったが、眼の前で出してしまった以上、ごまかすのは到底無理な気がした。
それに、顔射した罪悪感も少なからずあったので、おれは正直に話そうと決めた。
「――つーわけで、おれがさっきやったのは“射精”だ。で、こいつが精液。快感が極致に達したら、チンコから出てくるんだ」
おれは指に絡めた精液を見せながらブースターに細かくレクチャーした。
こんなことを説明するのはもちろん初めてだから恥ずかしかったけど、結局包み隠さずに全てを話した。
タマゴができるもとだって言ったら納得してたけど、実物を見るのは初めてだったようだ。
まあ当然といえば当然だが。
「……」
ブースターは姿勢を低くして、チンコにへばりついた精液を物珍しそうに凝視している。
おれは足を広げて座りこんだ体勢のままブースターを見下ろしていた。
アクメを迎えた直後なので頭がぼーっとする。
ちなみにチンコはというと、さっきあれだけ出したのに依然として勃ったままだった。
まだまだ出し足らないと言いたそうに絶え間なくひくついている。
こんな現象今までなかったので若干戸惑う。
視線を感じたのか、不意にブースターが顔をあげたので眼があう。
なにか心の中で思ってるみたいだが、読心術の心得など持ってないのでブースターが一体なにを感じているのか、知る由もない。
「じゃあ……」
ブースターは沈黙を破る。
「ゲンガーはわたしにオチンチン舐められて、気持ちよくなってたってこと?」
「ま、まあ、そういうことになるかな」
なにカッコつけてんだ、バカ。
快感に浸って我を忘れてたくせに。
挿入はまだですかー
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
「……」
「……」
見つめ合うおれとブースター。
いつもなら出したあとは余韻に浸ってるところだが、今回は状況が状況なだけにそうもいかない。
「ごめんな、顔にかけちまって」
「……ううん」
ブースターはかぶりをふる。
おれのことを気遣ってか、不快そうな表情は少しも見せなかった。
どうしてそんなにおれに優しくするんだ。
頼むから怒ってくれ。でねぇとますます辛くなるじゃんかよ……。
「気持ち悪いだろ? 湖ですぐ洗おう。なっ?」
いたたまれなくなったおれは立ちあがり、ブースターに声をかける。
だがブースターはその場に座ったまま、動こうとしない。
「ブースター? 早く行こうぜ」
「あとで行くから大丈夫。それより……続きやろ?」
「えっ……?」
おれは口をポカンと開けて立ち尽くす。
「な、なに言ってんだ? すぐ洗わねぇとカピカピになって取れなくなるぜ」
それに毛皮だって臭くなっちまうぞと思った。
「ちゃんと洗うから心配しないで。大体、今洗いに行ってもまたすぐに身体、汚れちゃうんだし。
どうせ洗うんだったらわたしとしては1回ですませたいからね」
1回ですませたい、か。
水が嫌いなブースターが言うとものすごく説得力がある。
でも……
「ほんとにいいのか? 気持ち悪くねぇのか?」
「うん。顔に白いのかけられた時、正直最初は嫌な気分になったけど今はそうでもないから。それに……」
「……それに?」
「“最後まで”って約束したじゃない」
「いや、アレは別にそういう意味で言ったんじゃ……」
『最後まで頼む』。
おれが言ったその言葉の意味を、ブースターはどういう風に解釈したんだろう。
「わたしね……」
「っ!?」
ブースターはおもむろに後方へと身体を倒し、自ら仰向きの体勢になった。
毛づくろいしてる時のような格好だ。
しかもシッポを身体からどけているので、お腹だけでなく、うっすらと線が入った局部の割れ目までまる見えだった。
そこを見た瞬間、欲情したチンコがピクンと跳ねる。
「もっとあなたと色々なことがしたいの。あなたといっぱいエッチなことがしたいの。だから……ゲンガーの好きにしていいよ」
「……」
ブースターの恥部に眼を奪われてなにも考えられない。
心臓がどっくんどっくんと鳴り響く。
おれの意思に応えるように、ますます頭をもたげていくチンコ。
今思っきし扱いたらすぐに精子が飛び出しそうなくらいカッチカチだ。
「こんな格好、ゲンガーの前でしかやらないんだからね」
「ブ、ブースター……」
「きて、ゲンガー」
ブースターは艶っぽい表情を浮かべておれを誘う。
それまで保っていた理性が一瞬にして吹っ飛んだ。
自分が自分じゃなくなるような感覚……。
気がつけば、おれはブースターをガバッと押し倒し、全身を覆いかぶせていた。
「あとで一緒に身体洗いに行こうな」
「うん」
「それにしても、すっげぇコリコリになってるな、ここ」
「んっ……!」
おれは再びブースターの乳首を攻めていた。
また指でグイグイ押したり指先で挟んだりして徹底的にいじくる。
でもやっぱり指だけでは物足りないので、勇気を出して乳頭部に舌先を当ててみる。
思わず舌を引っこめそうなほどあっつあつだったが、ゆっくりやればなんとかいけそうだ。
チロチロと適度に舐めつつ、両手の指で空いてる乳首を万遍なく愛撫する。
ブースターは何度も小さな声で喘いでいたが、最初の時よりはさほど恥じらいを感じていないようだった。
チューとフェラをしたことで、だいぶ吹っ切れたのかな?
「ブースター、ちょっと失礼するぜ」
おれは乳首をたっぷりかわいがったあと、顔を下へ持っていき、ブースターの両足を掴んだ。
そのままぐいっと持ちあげる。
眼の前でひくついてる膣口からは液体がわずかに分泌されていた。
確証はないけど、これがおそらく愛液ってやつだな。
今すぐにでも舐め回してぇところだが、クンニするのは後回しだ。
「なにをするつもりなの?」
ブースターが質問してくる。
おれはなにも答えず、掴んだ片方の後ろ足を口元に引き寄せ、はむっと咥えた。
指先や指と指の間、それから肉球にたっぷり唾液を染みこませる。
「んっ……んむっ……」
「や、やだっ、ゲンガーったらどこ舐めて……」
おれが足を舐めることまでは想定してなかったらしく、ブースターは足を引っこめようとする。
が、おれはしっかりとブースターの後ろ足を握りしめ、もう片方の後ろ足も同じようにぺろぺろ舐めた。
足の裏に舌をつーっと這わせると、ブースターはくすぐったいのか、おれの口淫から逃れようと身をよじらせる。
いきなりこんな戸惑わせるようなことをして悪いなとは思ったが、だからってやめるつもりはない。
暴れる足にべろを伸ばして柔らかい肉球を執拗にねぶる。
ぷにぷにした肉の実は舌触りが良好だ。
「や、やめてよ。そんなとこ舐めるなんて……」
「言ったろ? お前の全てを味わいたいって」
「だからって……」
赤面するブースターを無視して足を舐め続ける。
草の香り、土の香り、それとブースター自身のにおい。
様々な香気を放っているブースターの後ろ足は、おれをすっかり虜にしていた。
足を舐めてみようと思いついたのはほんの数秒前だが、いざやってみたら思いのほかよかった。
汚いなんて全然思わなかった。
足とはいえブースターの味にはちがいないんだから、むしろもっと堪能したいとすら思う。
おれは夢中になってブースターの後ろ足を心行くまでしゃぶる。
足愛撫とは・・・・>>1は分かっているなw
「んっ……んちゅっ……」
「ゲンガーったら……」
すっかり調子づいたおれは、その後も足を口に入れてはむはむしたり、ふさふさのシッポにチンコをこすりつけたりして淫行を楽しんだ。
ブースターは最初のうちはずっと抵抗していたが、やがて観念したのか、いつしか足の力を抜いていた。
肉球はもちろんのこと、指の先、それから指と指の間もしっかり唾液で濡らす。
隅々まで舐め尽くしてひとまず満足したので足から手を離した。
だらりと伸びたブースターの後ろ足は完全におれの唾液でべとべとだ。
「金輪際なにをされても取り乱さないって決めてたのに、思いもよらないところを舐めてくるんだもん……」
「好きにしていいよって言ったのはブースターだぜ。
それにほら、おれだってチンコしゃぶってもらったんだからお互い様だろ?」
「それはそうだけど……」
「それよりさ、こっちも味わわせてくれよな」
おれはブースターの陰部に顔を近づける。
周りに付着している透明の液体は、月の光に照らされて煌めいていた。
ブースターはお腹を上にむけた体勢のまま、両方の前足でおれの頭を掴んでくる。
「ちょ、ちょっと。顔近すぎだって……」
「なに言ってんだよ。こうしねぇと味わえねぇじゃんか」
言いながら、しっとりと濡れた女陰に口元を寄せていく。
べろを伸ばし、スリットを線に沿ってゆっくりなぞってみる。
「ひゃんっ!」
舌先を軽く当ててるだけなのに、ブースターは全身をビクンと震わせて反応する。
どうやらここは乳首以上に敏感な場所のようだ。
もう一度、膣の表面をべろで撫でると、ブースターは後ろ足をじたばたさせながら嬌声をあげていた。
その声に一層興奮を覚えたおれは、口角をあげながら何度も女陰を舌で愛撫した。
「くすぐったいよ……」
頭に置かれている前足にグッと力が入る。
やはりブースターは、おれの長いべろに翻弄されて感じてるらしい。
ある程度やったあと、今度は舌をべちゃっと陰唇に押し当てて愛液ごと舐める。
唾液が染みこんだからなのか、体液がさらに分泌されているのか、もしくは両方か。
ブースターの恥部はあっという間にびちょびちょになった。
暴走するおれの情欲はとどまるところを知らない。
「中、見てもいいか?」
「中って……?」
「ここん中だよ」
「きゃっ!」
陰唇に指を押し当てて目一杯広げると、ヒクヒクしているピンク色の粘膜が姿をさらけ出した。
ねっとりとした液体が中から溢れている。
「すげぇ……」
おれは今まで一度もまんこというものを見たことがなかったので、初めて拝むメスの生殖器はきれいだなぁという印象が強かった。
指で愛液を掬い、ペろりと舐める。
予想通り、熱湯のような熱さだ。
味の方はというと……無味だった。
甘いとか苦いとかそんなことはなく、ほんとに全く味がしない。
おいしい味を期待してただけにちょっとだけ残念だったが、ブースターだって先走り汁をなにも言わずに飲みこんでくれたんだから贅沢は言わねぇ。
気を取り直し、膣から流れ出る液体をありがたくいただく。
いちいち指に絡めて舐めるのはめんどくさいので、開いた陰唇に直接口をつけて愛液をチューチューと吸い取った。
「ふああぁぁんっ……」
吸いこむ度に聞こえる、ブースターのなまめかしい声。
ちゃんと感じてくれてるみたいでなによりだ。
この際だからシックスナインもしてみたかったけど、体型的に100%できそうにないので「一緒にしようぜ」とはどうしても言えなかった。
こういう時、シャワーズとかリーフィアなどのイーブイ進化系がうらやましく思う。
ブースターと同じ系統のあいつらなら舐めっことか余裕でできるんだろうなぁ……。
まあでも、オバケのおれがブースターとこうしてエッチしてるだけでも十分幸せなことだよな。
そう思うと、歯痒いとかもどかしいとかは全く感じない。
陰唇を舐められるのは事前に察知していたからか、ブースターはそんなに拒否反応を示さなかった。
それでも顔は見てわかるほど赤いけど。
(っ・ω・)っ≡④≡④≡④
>ふさふさのシッポにチンコをこすりつけたりして
ゲンガーさん何してるんすかw
(……んっ?)
シッポのすぐそばにある小さな穴が眼に入る。
場所からしてケツの穴かな?
毛皮が豊富なブースターだが、穴の周りだけはあまり毛が生えてなかった。
ついでだし、こっちも愛撫しておくか。
ブースターに気づかれないようにさりげなく手を下に持っていく。
「はぅっ……!」
穴を撫であげた途端、ブースターの首が反り返る。
不意打ちは見事に成功したようだ。
間髪を入れず、しりの穴に指を差しこむ。
中は意外にもヌメヌメだった。
すっぽりと入った指を動かすと、穴からぬぷっ、ずちゅっと下品な音が漏れる。
ブースターの後ろ足はピンと張っていて、しかもシッポの毛まで逆立っていた。
予想以上の反応のよさに、おれは穴を犯しながらほくそ笑む。
穴から指を抜き、やめたと見せかけて表面を撫で回す。
「やああぁんっ……そこ、ダ…メぇ……」
ブースターは足をバタバタさせながらおれに訴える。
初めはくすぐったくてただ暴れてるだけだろうと思っていたが、どうやらちがうみてぇだった。
なんだか本気で嫌がってるように見える。
……ちょっと悪ふざけが過ぎたかな?
面白がるとすぐ調子に乗るのはおれの悪いクセだ。
もう少し愛撫してぇけど、ブースターがかわいそうになってきたのでこの辺でやめておくことにした。
せめてものお詫びにシッポを優しく撫でる。
ブースターは潤んだ黒眼を半開きにしておれを見ていた。
「ごめん、ついやり過ぎちまった。そんなにくすぐったかったか?」
「んっ……」
ブースターは弱々しく首をふる。
『もっとやってほしい』と言いたそうに見えるのは、ブースターがエムだからとか決してそんなんじゃなかった。
「……なあ、ブースター。おれ、もう、ガマンできねーんだけど」
「えっ? あっ……」
立ちあがったおれの股間に眼を落としたブースターは顔色がかわった。
おれがなにを言いたいか、ブースターもわかっていることだと思う。
物欲しげにひくついてる陰唇を眼の前にして抑えられるはずもなく、おれのチンコは出す前とかわらないくらいギンギンに膨れあがっていた。
「おれ、お前に挿れたい。ここにチンコ挿れたい」
陰唇を指でさす。
他に言い方がなかったからとはいえ、あまりにも単刀直入だったのは否めない。
初めての時ってどう言うのが理想的なんだろうな。
エッチするって事前にわかってたら徘徊中にでも言い回しの練習できたのになぁ……。
保守
早くぶーちゃんが喘いでいるところを見たいよおおおおおおおお
age
「オチンチンを……わたしの中に……?」
ブースターは怒張したおれのチンコを食い入るように見つめている。
「おれ、やり方とか全然わかんねぇから、お前を気持ちよくしてやれねぇかもしれねぇけど……」
「……」
「……やっぱ、嫌か?」
「ううん。でも……入るのかな?」
「大丈夫…だと思う」
おれのは別にデカチンって呼べるほど立派なモノでもねぇし(かと言ってガキのチンコほど小さくもないが)、挿入自体は可能なはずだ。
ただ、一体どれほどの痛みが伴うのか、お互い初めてだからそれが全くわからない。
すんなり入るとは思えねぇし、下手すりゃ途中でつっかえてしまう可能性もある。
なるたけブースターに痛い思いはさせたくないが、うまくできる自信はなかった。
……考えれば考えるほど不安だけがいや増していく。
そもそも、おれみてぇな体型のやつが四つ足タイプのブースターと1つになりたいと願望を抱くこと自体、間違ってるのかもしれねぇ。
だけど……おかしいとはわかってるけど、ここまでこぎつけたんだから……やっぱり最後は挿れたい。
沸きあがる肉欲はもはや抑えられそうになかった。
「いいよな? なっ?」
返事も聞かず、ブースターの上で素早く四つん這いの体勢になる。
これでもうブースターはおれがどかない限り、起きあがることはできない。
もし股間を蹴りあげられでもしたら悶絶するだろうが、ブースターがそんな暴力的なことをするポケモンじゃないのは長いこと付き合ってきたおれが一番わかってる。
でも慌てるだろうな、きっと。
おれの眼は今、飢えたケモノのように血走ってるだろうから。
そう思ってブースターを見ていたが、意外なことにブースターは寝転んだまま、微動だにしない。
おれの顔と勃起したチンコに眼を交互に動かしている。
不意を食らって抵抗することさえ忘れたのだろうか。
まあいい。その方がおれにとっちゃ好都合だ。
後先のことは挿入してから考えればいいさ。
おれはそう自分に言い聞かせ、いきり立ったチンコをブースターの恥部に軽く押し当てた。
ほんの少しふれただけで、ブースターの体内がいかに熱いかがチンコから伝わってくる。
「……しいな」
ちょうどその時、ブースターがなにかつぶやいたが、声が小さいので聞き取れなかった。
ブースターの口元に耳を近づける。
「悪ぃ、聞こえなかった。なんて言ったんだ?」
「……ほしいの」
「なにがほしいんだ?」
「……」
「あっ、考える時間がほしいのか?」
今はそんな時間を与えることすら惜しいと感じたが、そういうわけではなさそうだった。
「そうじゃなくて、えっとね……」
ブースターは一旦そこで言葉を切ったあと、ぼそぼそと口を開いた。
「……オチンチン、ほしい」
「えっ……?」
「わたし、ゲンガーのオチンチン……ほしいな」
「今……なんて?」
耳を疑ったおれはもう一度聞き返した。
聞き間違いか? いや、断片的ではあったがはっきり聞こえたから決して聞き間違いではないと思うが……。
でも聞き間違いじゃないとすると、やっぱり今ブースターが言ったのって……。
「わたし、ゲンガーと1つになりたい。だからその、オ、オチンチン……ちょうだい」
おれの心の中の疑問に答えるように、ブースターは再び驚きのセリフを繰り返す。
顔が真っ赤っ赤なのはもちろんのこと、耳まで赤くなってるのが見てわかった。
おれはあまりに衝撃的なブースターの発言に、しばらく言葉を失った。
ブースターの口からそんな言葉が出てくると思わなかったから当たり前だ。
「あっ……こう言った方が気兼ねなくできるかなって……」
ブースターは不安混じりの声でそう言った。
オチンチンほしい発言におれがドン引きしたと思ったようだ。
もちろんドン引きなんかしてないが、正直どう返せばいいのかわからなかった。
そりゃおれだって最初の方に『ブースターがほしい』って勢いで言ったけど、いざ自分がそういうことを言われると反応に困っちまうな……。
(……あれっ?)
おれはふと、あることに気がついた。
「なあ、ブースター。今のって本心で言ったのか? それとも雰囲気的に『言わなきゃ!』って思って無理して言ったのか?」
「……もちろん本心だよ」
「それじゃあ……」
ブースターは黙ってうなずく。
「わたし、もう心の準備はできてるから。そう言われるの、なんとなくわかってたし」
「い、挿れてもいいのか? ほんとに?」
「もう、また言わせるつもり? それに『挿れたい』って言ったのはゲンガーだよ」
「そりゃそうだけど……オバケと繋がることになるんだぜ。ほんとにいいのか?」
半ば強引に挿し入れようと企んでたのに、冷静になって聞いてしまう。
おれみてぇなやつは結局、無理矢理挿入なんてできないんだよなぁ……。
「オバケだろうとなんだろうと、わたし、ゲンガーのことを愛してるから。わたしにはあなたしかいないから。
だから……入れてもいいよ。ううん、入れてほしいな、オチンチン」
ブースターの表情には決意のようなものが感じられた。
実際、もうブースターは心構えができているようだ。
あんな痴女めいた発言をするなんて、すごく勇気がいっただろうと思う。
でも恥を捨ててまでおれのために言ってくれたことが、なによりうれしかった。
ブースターを好きになってほんとによかった。
「……ありがとな」
お礼の言葉が自然と出る。
もうためらうことなどなにもない。
おれは再び性器を膣口に近づける。
「じゃあ、挿れるぞ」
「うん。あっ、わたし、おしり向けた方がいいかな?」
「いや、寝転んだままでいてくれ」
「えっ? でも……」
「バックからだと無理矢理してるみたいで気がひけるんだ。頼む、ブースター」
「……わかった」
ブースターは一切不満を言わず、おれの要求に応えてくれた。
寝転んだままにさせたのは正常位で挿れるためだ。
ブースターのような4足タイプと交尾する場合、普通は後背位でするのが一番やりやすいんだろうけど、それだとブースターの顔が見えないから嫌だった。
おれの身勝手な理由で恥ずかしい体勢のままにさせてしまって、ブースターには本当に申し訳ない。
「ゲンガー、自分がやりたいようにやってね」
「お、おうよ」
返事をしつつ、大きくなった肉棒を膣口にあてがう。
いよいよ妄想が現実になる時がきたわけだ。
身体は小さくふるえ、心臓はどっくんどっくんと鳴り響いている。
「出そうになったら抜くからな」
抜くと言っても、もちろん精子のことではない。
「抜くって?」
ブースターは間髪入れずに聞いてきたが、おれはなにも答えず、陰唇をチンコで押し開いた。
出そうになったらなにを抜くか。
それは言わずもがな、性器のことだ。
おれたちは種族もタイプも根本的に異なるから受精自体しないってか不可能だろうけど、確証はないので無責任なことはできない。
今、ブースターを孕ませるわけにはいかねぇんだ。
全裸待機中 続きはよっ!
「ゆっくりいくぜ。力抜いてた方が楽だぞ、たぶん」
「……うん」
「ちょっと緊張するな……」
「……うん」
「じゃあ……今度こそほんとにいくぞ」
おれはゆっくりとブースターに身体を密着させる。
チンコを力強くグッと押し当てると、大きく開いた陰唇からにゅぷにゅぷっと卑猥な音がたつ。
「んくっ……! 結構きついな……」
ある程度は覚悟していたが、ブースターの膣内は思ってた以上に狭い。
なんとか半分ほど入りはしたが、そっから中々奥へ行かず、案の定つっかえてしまう。
おまけに膣の内壁がチンコを締めあげてくるのでとても痛い。
「一旦抜いた方がいいか?」
「っ……」
ブースターは何度も激しく首をふる。
大丈夫だと言ってるのだろう。
「……よし、もっと奥までいくぞ」
おれは再び腰に力を入れてチンコを押し進める。
相変わらず痛いが、お互いの性器が濡れているのが幸いしてか、今度は途中でとまることはなかった。
ゆっくり、だが確実に、肉棒が徐々に膣の奥へ奥へと呑みこまれていく。
「んっ……はぁっ、はぁっ……」
ブースターは両眼をぎゅっとつぶって苦しそうに息をしている。
おれも似たような状態だった。
苦痛をこらえるのに精一杯で『大丈夫か?』の一声をかけてやることもできない。
「ぅおっ! あ、熱い……!」
おれは思わず叫んだ。
まだ途中までしか入ってないのに、膣内の熱さがチンコの尖端からもろに伝わってきたからだ。
追い出そうとする膣に抵抗するようにますます膨らんだチンコが、びくんびくんと膣内で跳ね回る。
さっき出したばかりなのに早くも2度目の射精をしたくなる。
だが今は挿れることに心を集中させる。
ここでイくのはあまりにも呆気ない。
「あぁっ……お、おっきぃ……!」
ブースターは顔をしかめながら声を張りあげる。
一度進み出すと意外なほどなめらかに侵入していく肉棒。
締めつけてくる内壁を押しのけてズズズッと中へ入りこんでいく。
「もうちょっとだ……がんばれ……」
「んっ……」
ブースターはただただうなずいている。
やがて、チンコが膣の奥深くまで到達したことをおれは感じた。
「は、入った……全部入ったぜ……。ブースター、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫だよ……」
根元まで見事にすっぽり入った陰茎は、ブースターの膣内でうごめいていた。
挿れるまでは辛かったが、入っちまえば痛みはだいぶマシになった。
ブースターも少しは楽になったのだろう。
強張ってた表情がずいぶん和らいでいる。
「わたしたち、やっと1つになれたね……。長かったね……」
「ああ。だけどこれでもうお前は……おれのもんだ……」
「……うん。もうどこへも行かないで。そばにいて、ずっと……」
ブースターは前足でおれを抱きしめる。
「よし……一気にいくぞ」
「……うん」
おれは深呼吸し、それから一気に自らを引き抜いた。
「あぁっ!」
ブースターが苦しそうな声を出す。
「痛いか? やっぱり一旦……」
「だ、大丈夫……大丈夫だから遠慮しないでやって……」
「……ほんとに大丈夫か?」
「うん。これくらいなんてことないから……」
「……わかった。もう出るまでやめないぞ」
おれは口を閉ざし、モノを勢いよく差しこんだ。
そのまま腰を振り続けてチンコを何度も出し入れする。
柔らかい肉にチンコがこすれてたまらなく気持ちいい。
「ぁっ……くぅっ……あぁん!」
ブースターは身をよじらせながら高い声で喘いでいた。
腰を動かすたびに結合部からぐちゅ、ぬちゅっと下品な音が漏れている。
「うっ……あぁっ……!」
さすがは体内温度が高いだけのことはあって、ブースターの膣内はものすっげぇ熱さだった。
肉厚な膣がチンコをきゅうっと締めつけてくる。
初めて体験するその強烈な快感に、おれは夢中でペニスを前後させる。
「はぅっ! あっ、あっ……!」
「んっ……はぁっ……はぁっ……」
お互いの声が響く中、おれの腰を動かすスピードはどんどん速くなっていく。
ブースターと行うセックスは想像を絶する気持ちよさだ。
「うぅっ……」
身体に熱いものが滾ってきた。
もう少し突きたかったけど、これ以上は耐えられそうにない。
「ブースター、そ、そろそろ出るぞ……」
「い、いいよ、出しても……」
「よし、チンコ抜くぞ……。あっちに出すからな……」
それを聞いたとたん、ブースターは怪訝な顔をする。
「中で出さないの……?」
「だ、だって外に出さねぇとお前が……あっ、ちょっ、で、出る……」
もはや迷っている余裕はない。
「ダ、ダメだ、もう出るっ!」
おれは膣から勢いよくモノを引き抜いた。
だがそれが間違いだった。
「ゔっ……!」
「きゃっ!?」
身体を横へ向けるよりも前に、チンコからおびただしい量の毒液が発射された。
仰向きのブースター目がけて一直線に飛んでいく。
「あっ、あっ……」
慌ててチンコを手で押さえるが時すでにおそし。
ドクドク出続ける精液は指と指の間を抜けてブースターに飛びつく。
ブースターのお腹や毛皮、そして顔までもがあっという間におれの体液で白く染まっていく。
……またやっちまった。1度ならず2度までも。
「あっ……はぁっ……」
おれはそのまま後ろにぺたんと座りこむ。
ブースターは唖然とした表情でおれのことをずっと見つめていた。
ゲンガーがヘタレになりすぎててワロタww
実に素晴らしい。
――事後を迎えてしばらく経過した今もなお、おれは地面にケツをつけたままだった。
足に力が入らないせいで起きあがることができないのだ。
「……どうして外に出したの?」
ブースターは寝転んだまま首だけをおこして聞いてくる。
ある意味おそれていた質問だった。
まともに精液をかけちまった気まずさ故に、おれはよその方向を見ながら答えた。
「だって……中に出したらお前が毒に蝕まれちまうかもしれねぇだろ?
どくやはがねタイプならともかく、お前には免疫力なんて全く備わってないんだし」
…………いや、ちがう。
それも確かに理由の1つではあるが、真意ではない。
本当の理由……おれの本当の気持ちは……。
「……一緒にいられる時間が減るだろ?」
「えっ?」
「おれの精子でお前が孕むことはねぇと思うけど、万が一できちまったら……お前と一緒にいられる時間が減るだろ?
だからその……中出しはどうしてもしたくなかったんだ。おれ、もうちょっとお前と2人っきりで過ごしたいからさ……」
「ゲンガー……」
ブースターの膣からは血が流れ出ていた。
きっと無理に挿入したから処女膜が裂けたんだろう。
相当出血したのか、シッポの根元までもが赤く染まっている。
「痛かっただろ? おれが下手なせいでつらい思いさせちまって……ごめんな……」
「……ううん、謝ることない」
起きあがり、歩み寄ってきたブースターはぎゅっとおれに抱きついてきた。
「ど、どうしたんだよ急に」
「……ありがとう」
「えっ……?」
「さっきの言葉がすごくうれしかったの。ゲンガーはわたしのこと、ほんとに愛してくれてるんだなって」
「……当たり前じゃんか。おれにはお前しかいねぇんだから」
「……うん」
ブースターはおれの胸元に顔をうずめる。
グッと抱き寄せて頭を撫でてあげるとうれしそうにシッポをふっていた。
時折見せる愛くるしい仕草がすごくかわいい。
これからもずっとブースターを大事にしていきたい。
おれはそう思った。
「わたしたちの身体……すごいことになってるね」
「ああ……」
ブースターを抱擁から解放し、お互い身体を見比べる。
おれは主に股間周辺だけがべとべとだったが、ブースターは全身がひどいことになっていた。
艶やかだった毛皮は、もはやおれの精液まみれだ。
こりゃ早いとこ洗わねぇと臭いが染みついちまうな、絶対。
あー、ぶーちゃん可愛すぎ。俺もぶーちゃんと犯りてー。
「ひとまず身体洗おうぜ。清潔にしねぇとな」
「そうだね」
ブースターもおれの意見に賛成のようだ。
重たい身体をおこしてどうにか立ちあがる。
まだ体力は完全に戻っていないが歩くことくらいはできそうだ。
こんな姿を誰かに見られるわけにはいかないので、おれたちは物音1つ1つに注意を払いながら湖を目指して歩いた。
湖に到着してから周りをざっと見渡したが、夜おそくということもあってか、おれたち以外のポケモンの姿はどこにもなかった。
ブースターに先を譲り、後ろで見守る。
ほのおタイプが全身を冷水に浸からせるなんてはっきり言って拷問そのものだろうけど、ここは我慢してもらうしかない。
ブースターが無事に岸にあがったことを確認し、続けておれも湖に入る。
股間を入念に洗うとチンコはようやくスリットの中に収まった。
いっぱい精液を吐き出して満足しただろうし、今夜はもう顔を出すことはないだろうな。
後ろを見ると、ブースターが舌で毛並みを整えていた。
湖からあがって声をかける。
「あのさ、ブースター」
「なに?」
ブースターは毛づくろいを中断しておれに視線をむけた。
「……さっきはあんなこと言っちまったけどさ、仮におれとお前がいつか子作りに励んでも……お前がタマゴを産むことはねぇと思う。
ほら、おれたちってお互い身体の造りも見た目も全くちがうだろ? だからその、身も蓋もない言い方するけど、受精は間違いなく無理だと思う……」
「……」
ブースターが大きな黒眼でじっと見つめてきたのでつい眼をそらす。
この先もしブースターがこどもがほしいと願ったとしても、それは叶わぬ願いだ。
奇跡でもおこれば別だが、そんなごく僅かな可能性に期待するのは虚しくなるだけだ。
悲しい話だけど、それが現実なんだってことをブースターに理解してもらう必要がある。
「子作りって普通は同じ系統のポケモン同士でするものだもんね。
だから元々珍しい組み合わせのわたしたちがいくらがんばったところで無駄な行為かもしれないよね。
それは仕方のないことだって割り切るしかないと思う。でも……」
ブースターはそこまで言って眼を伏せる。
じっと見つめていると、やがて顔をあげたブースターはにこやかに微笑んだ。
「たとえこどもができなくてもゲンガーがずっとそばにいてくれるなら……わたしは今のままでも十分幸せだよ。
なにも後悔なんてしてない。だってわたし、自分の意思であなたを選んだんだから」
「……ごめんな」
「どうして謝るの?」
「いや、その、遺伝子残せないのをわかっててお前に交尾を持ちかけたからさ……」
「気にしないで。ゲンガーが誘ってくれた時、すごくうれしかったもん。
子作りできないのはちょっぴり残念だけど、わたしたちみたいなカップルって他にもたくさんいるんじゃないかな。
でもそんなポケモンたちはきっと、今を大切にして一緒に生きてるんだと思うよ」
「……」
「そんなに思いつめた顔しないでよ。ゲンガーはなんにも悪いことしてないんだから。ねっ?」
ブースターは一生懸命おれを励ましてくれる。
タマゴを産めないと聞いてさぞ悲しむだろうなと思っていたが、考えすぎだったようだ。
どちらかといえば悲観的に考えてたのはおれの方らしい。
「……そうだな、そうだよな。クヨクヨしたって仕方ねぇよな」
「うん。わたしはゲンガーとこれからも一緒にいたい。ゲンガーと一緒に生きていきたい。
その気持ちはこの先もずっとかわらないよ」
ブースターがそう言ってくれたおかげでだいぶ気が楽になった。
おれはなにをそんなに思い悩んでいたんだろう。
「ありがとな、ブースター。ちょっと元気が出たよ」
「ほんと? よかった。やっぱりゲンガーは笑顔が一番ステキだね」
「そ、そうか?」
照れ臭くなって頭をポリポリ掻く。
「ねぇ、帰ろうよ。あなたのところに」
「ああ、帰ろう」
横に並んで歩き、今きた道を引き返す。
初体験を終えてお互い心身ともに疲れていたんだろう。
住み処に戻ったおれたちは寄り添って座っているうちに、いつしか眠ってしまったようだった。
次の日の朝、おれが眼をさましたのはまだ太陽が昇り始めたころだった。
草むらに入ってくる陽射しが眩しくてうつぶせになる。
「……」
まだ意識はぼんやりしているが、昨日なにがあったかはちゃんと覚えてる。
眼をつぶりながら昨夜の出来事を思い出す。
身体を洗ったあと、結局徘徊せずにあのまま帰って寝たんだっけ。
寝つけなかったら歩きに行くつもりだったけど案外すぐに寝たんだよな、確か。
なんでだろ。疲れてたせいかな?
それとも……徘徊を凌駕する素晴らしい体験ができたからかな。
おもむろに顔をあげて周りを見る。
昨日はブースターを泊めたはずだが、どこにも姿が見当たらない。
先に起きて顔を洗いに行ったのかな。
「あっ、おはよう、ゲンガー」
ちょうどその時、おれを呼ぶ声とともに草むらがガサガサと揺れ動いた。
音がした方を見やるとブースターがひょっこりと姿を見せた。
口に大きなきのみを咥えている。
おれは一瞬で意識がはっきりした。
ブースターはまた朝早くから食料を調達しに行ってくれてたようだ。
「お前、ほんとに朝はえぇな……」
「うん。朝の陽射しを浴びるのはすごく気持ちいいからね」
言ってることはわかる気がする。
しかし、どうやらおれが思ってた以上にブースターは起きるのが早いな……。
おれがブースターに「おはよう」と言える日がやってくるのは、まだまだ先のことになりそうだ。
「メシ探しに行ってくれてありがとな」
「どういたしまして。それより顔洗いに行かない? わたしも今日はまだ洗ってないの」
「へぇ、珍しいな。じゃあ一緒に行くか。よいしょっと」
しげみから出て空を見上げる。
「……」
眩しい太陽に眼を細めつつ、昨夜のことを改めて思い出す。
交尾とは一生縁のなさそうなおれが昨夜ブースターとエッチしたなんて、なんだか夢みてぇだ。
でも……やったことやしてもらったこと、そして1つになったことは決して妄想の出来事なんかじゃない。
ブースターとのキスの味、フェラしてもらった心地よさ、胸や足を舐めた時の舌ざわり、それから……膣に挿入した時のかつてない快感。
実際に経験したこと1つ1つが鮮明に記憶の中に残っている。
ブースターと繰り広げた性行為。
夢のようだけど、夢じゃないんだよな。
「どうしたの?」
ブースターが横から覗きこんでくる。
「いや、昨日は最高の1日だったなって思ってさ」
「うん。きっと生涯忘れられない1日になるよね」
ブースターは満面の笑みでそう言った。
「あ、そうだ。ねぇ、ゲンガー。しゃがんでくれない?」
「へっ?」
「ねぇ、早く」
「な、なんで?」
「いいからいいから」
ブースターがせかしてくるので仕方なく言われたとおりにする。
ブースターはトコトコと歩いておれの後ろに回りこんだ。
「えへへっ……えいっ!」
「わわっ!」
ブースターは姿勢を低くしたおれの背中に後ろから飛びついてきた。
おれはびっくりしてよろめく。
「ど、どうしたんだよ、いきなり」
「湖までおんぶしてもらおうと思ってね。ねっ、早く行こうよ」
ブースターはニコニコしながらおれが歩き出すのを待っている。
(あっ……)
おれは鳥のカップルを見たあとの、あのやり取りを思い出してはっとなった。
「ごめん、迷惑だった?」
「いやいや! まさか! 全然迷惑なんかじゃねぇよ。むしろ……サンキュ」
「ゲンガー……」
ブースターはぎゅっとおれにしがみつく。
見かけによらず重たいので若干足元がふらつくが、気合いを入れてしっかりと立つ。
おれは心のどこかで安心していた。
だってあの時ブースターが頑なにおんぶを断ってたのは、おれにさわるのが嫌だからじゃなくて、ほんとに自分の体重を気にして遠慮してたんだってわかったから。
「大丈夫か? 痛くねぇか?」
背中のトゲトゲがお腹に刺さってないか心配だった。
「大丈夫だよ。全然痛くない。ゲンガーこそ大丈夫? わたし、重たくない?」
「平気さ。これくらいでへこたれるゲンガーさまじゃねぇぜ」
「よかった。でもあまり無理しないでね」
「おうよ。よし、歩くからしっかり掴まってろよ」
「うん」
ブースターはおれの背中にぴったりと身体を密着させた。
背中に当たった柔らかい毛皮は、身体の芯から癒してくれるようだった。
おれはブースターを背負いながらゆっくりと歩を進めていく。
湖へ向かってる途中、おれはブースターに言った。
「なあ、ブースター。今日の夜、一緒に歩きに行こうな」
「えっ?」
「徘徊だよ徘徊。お前も一緒に行こうぜ」
「い、いいの?」
ブースターは驚いた様子で後ろから覗きこんでくる。
「もちろん。お前もいた方が絶対に楽しいしな」
「でも……ほんとにいいの?」
「遠慮すんなって。おれとお前の仲じゃんか。おれと夜の世界を冒険したいんだろ?」
「……うん。ありがとう。すごくうれしい」
ブースターの表情は喜色満面だった。
なんだかこっちまでうれしくなる。
「徘徊から戻ったら、また今夜も一緒に寝ようね?」
「ああ」
「……今度は中で出していいからね」
「えっ? それって……」
ブースターはそっからなにも言わなかったが、その意味深な言葉がなにをさしているかはすぐにわかった。
「……ありがとな」
歩きながら礼を言っておく。
今夜もたくさんの楽しい出来事が待ち構えているかと思うと胸が躍る気分だった。
「……んっ?」
上から視線を感じたので樹の枝を見上げると、メス鳥を抱擁しているオス鳥がおれを見下ろしていた。
やつはブースターをちらっと見たあと、またすぐにおれに眼を戻してにやりと笑った。
やつの眼がなにを言っているかはわかる。
迷わずおれも、にやりと笑って見せた。
『お互いがんばろうぜ!』
心の中でオス鳥にそう告げ、顔を前に戻す。
「ブースター、こんなおれだけど、これからもよろしくな」
「うん。わたしこそよろしくね!」
ブースターは元気な声で返事してくれる。
太陽は今日も空の上で輝いていた。
おしまい
これでおしまいです。こんなに長くかかりましたが完結できて本当によかったです。
今まで読んでくれた人、そしてレスしてくれた人、どうもありがとうございました。
よくぞ完結してくれた!惜しみない乙を送ろう
( ^ω^)っ≡乙 ≡乙 ≡乙
乙
初見で一気読みできた俺はものすごく幸運だ
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