鋭太「夏休みの登校日か…」
真涼「…」
鋭太(真涼、明らかにイライラしているな。いや、原因はわかってるんだが)
生徒A「これ彼氏と遊園地に行って買って貰ったんだー」
生徒B「いいなー」
生徒A「やっぱりこういうのは金額より、思い出だよ思い出!」
生徒A「これを見るとね…えへへ。彼氏と楽しかったのを思い出すんだー」
生徒B「いいなー」
生徒A「それに遊園地に行ったお金ね、彼氏がバイトで頑張って稼いでくれたんだ!」
生徒A「私の為だって…きゃーーーー」
生徒B「羨ましいなぁー」
鋭太(俺と真涼は恋愛アンチだからこういう会話を聞くだけで…)
真涼「」ギロッ
鋭太(こっち見んな)
■帰り道
真涼「一緒に帰る…というか、会う自体が久々ね」
鋭太「そりゃあ夏休みだし。会う必要もないしな」
真涼「…私のメール無視してるわね」
鋭太「10通に1通は返信してるだろ?」
真涼「私はあなたの彼女なのに、クラスの子みたいにデートに行っていないわ」
鋭太「偽彼氏(フェイク)だしな」
真涼「…実は黙っておくつもりだったのだけど」
鋭太「ん?」
真涼「最近また告白してくる連中が増えたの。鋭太じゃ役不足だって」
鋭太「ま、まあ、そうかもな」
真涼「それに最近あなたが私を放置しているのが噂になっているのよ。それで…」
鋭太「やだ。デートには行かない。俺はこの夏すべての呪縛から解放されて、勉強するって決めてるんだ」
真涼「…」
真涼「はぁ~。わかったわ。もうっ」
鋭太「…」
鋭太(な、なんなんだ!?)
鋭太(なんでそんな悲しげな顔するんだよ)
鋭太(いつも通り、ノートで脅せばいいだけなのに)
真涼「…」シュン
鋭太(あ~~~~~~~~~~もう!)
鋭太「わかった!1日!1日だけだからな!」
真涼「ほ、ほんとう?」
鋭太「ただし、デートは1回1日だけだからな!」
真涼「約束してくれるかしら?」
鋭太「ああ、約束してやるよ。絶対に1回行く。命かけてもいいぜ」
真涼「ふふっ。ありがとう鋭太」
鋭太「え?あっ、ああ」
鋭太(や、やっべぇ。久々にこいつのこんな笑顔見たら…俺までニヤけそう…に…)
役不足?
………
鋭太「あ?なんで?」
真涼「私の為にバイト頑張ってね。鋭太」
鋭太「俺と違う方向に帰ろうとするな!納得してないぞ!」
真涼「今日のクラスの恋愛脳共の話を聞いていなかったの?」
鋭太「…ああ、彼氏と遊園地に行ったのどうのって話か?」
真涼「ええそうよ。その話の中で…」
鋭太「そういえば『遊園地に行ったお金は、彼氏がバイトをして稼いだ』とかどうのこうの言ってたな」
真涼「ええそうよ。それで」
鋭太「もしかしてお前もああいうのに憧れるの?」
真涼「え?は?…………はあ?」
鋭太「じょ、冗談だ!だからそんな怖い顔すんな!」
真涼「怖い顔だなんて…」プクー
鋭太「まあ、お前の事だから『彼氏からのプレゼントをみんなに見せつければ、変な虫が寄ってこなくなります』とか言うんだろ?」
真涼「…それでいいわ。じゃあ期待してるわよ鋭太」
鋭太「あーはいはい。バイトはしねーけどな」
■次の日
愛衣「え?どこで!?季堂くんどこでバイトするの!?」
カオル「バイト?いいんじゃないかな?」
鋭太「え?なんで?」
カオル「バイトって社会勉強になりそうだし、大学への進学の時に少しは役に立つかもだよ?」
鋭太「う~ん。そうか?」
愛衣「教えて!ねえ!愛衣ちゃん通うから!通い妻になるから………妻だって、キャーーー」
カオル「それに少しでも貯金しておけば。ほら、大学生活で…いくら奨学金付きでもバイトは必要になるでしょ?」
鋭太「ああ、その時に楽になるかもな」
カオル「そうだよ。下手すると大学で勉強とバイト…勉強も医学部なら今まで以上に大変だろうし」
愛衣「愛衣ちゃんまた大勝利しちゃう?しちゃうかも?」
俺修羅ssとか俺得 見てるぜ
鋭太「勉強で忙しいから、勉強とバイトの両立の練習も兼ねた方がいいって事か」
カオル「うん、そういう事」
愛衣「夏休みのバイトは申請が必要なの!私が学校側に提出しておいてあげるから、ここにバイト先の住所を書いて!」
鋭太「…」
愛衣「タッくん?ねえタッくんってば!」
鋭太「うっせええええええええええ!」
愛衣「って、ここ図書館よ!静かにしないとダメじゃない」
鋭太「お前が言うな!」
カオル「あははは。あーちゃんは元気だなー」
http://i.imgur.com/NwFPdfy.jpg
愛衣ちゃんだいしょうりー
愛ちゃん大勝利していいんだぜ
愛衣「で、どこでバイトするの?」
鋭太「教えたらどうする気だ?」
愛衣「だって、ウエイターのタッくん…えへへ。紳士的な顔で…キリッてして…えへへ」
カオル「あっ、それいいかも」
鋭太「おい!変な妄想してるんじゃねええぇ!」
■数日後
鋭太「いらっしゃいませー…って」
千和「えへへ、来ちゃった」
姫香「エイタがマグロナルドのコスプレしてる」
鋭太「コスプレじゃねーよ。あっ今から昼飯か?」
千和「うん。えーくんの初バイトを応援しにきたんだ」
姫香「わたしこういうお店初めて。楽しみ」
鋭太「ありがとうな二人とも。じゃあ今日は俺の奢りな」
千和「ううん、いいよ。えーくんは自分の為に頑張ってるんだもん。足引っ張りたくないし」
姫香「うん。わたしも」
鋭太「まあ、そう言わずにさ」
千和「じゃあ、肉2倍盛り魔王バーガー10個」
姫香「わたしはシェイーク100個。旅館のお客様へのお土産にする」
鋭太「おい!!」
………
鋭太「ったく、あいつら普通のセットを頼みやがった…せっかく奢ってやるのに」
先輩「いい友達じゃんか」
鋭太「先輩!?」
先輩「お金が必要でバイトしてるんだろ?それをわかってくれるいい友達だと思うぞ」
鋭太「あ、ありがとうございます」
鋭太(この先輩、俺と声が似てるんだよなー)
………
愛衣「」ニコニコ
鋭太「えーと、ご注文は?」
愛衣「キリッっとして」
鋭太「へ?」
愛衣「キリッとして『お嬢様、ご注文は?』って言って。紳士みたいに」
鋭太「はぁ~」
鋭太「お、お嬢様、ご注文は?」キリッ
愛衣「あ…あぅぅぅぅぅぅ//」
鋭太「あ、あーちゃん!?」
愛衣「愛衣ちゃんお外走ってくるうぅぅぅぅ!」
鋭太「ち、注文は!?」
………
鋭太「いらっしゃいませー」
真涼「ふーん。頑張ってみるみたいね」
鋭太(ああ、この流れは全然予想できた。予想通り)
真涼「じゃあ、スマイルをお持ち帰りで」
鋭太「どこにだよ!」
真涼「もちろん家に…って何を言わせるのよキャッ」
鋭太「なにが『キャッ』だ!気持ち悪いわ!」
真涼「えーじゃあー、べ、別に鋭太の事なんて好きじゃないけど、一人寂しそうだからお持ち帰りしてあげるわっ」
鋭太「ツンデレ風に言うな!っていうか寂しそうってなんだよ!寂しそうって!」
真涼「だって、毎晩一人でさびしく」
鋭太「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
真涼「さて、冗談はさておき…そうね。サラダを頂こうかしら」
鋭太「ありがとうございます。280円になります」
真涼「じゃあ、カードで」
鋭太「すみません。当店ではクレジットカードはご使用できません」
真涼「…え?」
鋭太「…」
真涼「あ、あら?」
鋭太(真涼が真っ青になってる…初めて見るぞ。こんな真涼)
真涼「そうね…」
鋭太「はぁ~。ほら奢ってやるから食べていけよ」
真涼「…いえ、帰るわ」
鋭太「いいから奢られろって、ったくみんな拒否すんだよなー。せっかく奢ってやるって言ったのに」
真涼「みんな?」
鋭太「ああ、千和にヒメに冬海。みんな拒否っちまいやがった」
真涼「…じゃあ、頂くわ。ご馳走になるわ鋭太」
鋭太「え?お、おう。食べてけ」
真涼「ふふっ。私が鋭太の初めて…悪い気分じゃないわね」
鋭太「なんだよ。それ……」
■バイト最終日
鋭太(1週間の短期とは言え疲れた…)
鋭太(それにしてもお金を稼ぐってこんなに大変だったんだな)
鋭太(確かにこれはこれで大切な社会勉強になるな)
鋭太「いらっしゃいませー」
真涼「ふふっ。今日もスマイルのお持ち帰りで」
鋭太「お客様?それはできないといつもって」
千和「えーくん、今日が最終日でしょう?だから来たよー…って、夏川?」
真涼「あらあら、どっかのチワワさんが肉の匂いに釣られてきたようですね」
千和「へぇ~、どっかの小悪女さんは毎日えーくんのバイトの邪魔してるの?彼女からストーカーにランクアップしたらどう?」
鋭太「お、おい。レジ前でやめてくれ」
愛衣「タッくん~。今日も食べに来たわよー。って別にタッくんがいるから来たわけじゃないんだからねっ」
姫香「エイタ。今日はマスターと来た。ギュっとして?」
真涼「あら?あなた達は…」
千和「あっ。みんなーこっちこっちー」
鋭太「おい。いい加減に注文してくれ…」
…
真涼「というわけで乙女の会の活動を行います」
姫香「おー」パチパチパチ
愛衣「ちょっと!私忙しいんだけど!」
千和「この新発売、勇者バーガーも中々美味しいねっ」
鋭太「俺の休憩時間がー」
また愛衣ちゃんが大勝利してしまうのか
真涼「今回のお題はいかにナンパされるかです。モテカワたるものナンパの一つや二つされないといけません!」
愛衣「あーでも、ナンパって相手が面倒なのよねー。いちいち断るのがね」
姫香「さすがマスター。わたしは一度しかされた事がない」
千和「…」モグモグ
鋭太「でも、真涼もそんなに言うほどされた事ないよな?」
真涼「いえそんな事はありません。世の中の男性達は私を見た瞬間に濡れ濡れです」
愛衣「へー、意外だなー。告白はあんなにされてたのにね?」
千和「やっぱり、見ただけで性格が悪いのがわかるのかな?」
姫香「会長が?信じられない」
鋭太「ああ違うんだ。こいつってさ、あまりに美人だから敬遠されてるんだよ」
千和「っ!?」
愛衣「学校ナンバーワンは伊達じゃないわね」
姫香「さすが会長。わたしとは次元が違う」
真涼「ええ、実を言うとその通りなんです。だからナンパについては冬海さんから説明をお願いします」
愛衣「どうやってされるかかー。そうねー。普通にやっていればされるんだけどね」
姫香「さすがマスター。マスターもわたしと次元が違う」
愛衣「そうね。他には…」
真涼「はぁ~…私とした事が、どうやらお題を間違ったようですね」
鋭太「…」
愛衣「そうとも言えないわよ?」
愛衣「ナンパされるって事は、服装や身なりを普段から気をつけてるって事でしょう?」
愛衣「常に周りの視線を気にするのって重要だと思うわ」
愛衣「だって、いつどこで運命の人と会うかわからないしね」
真涼「そうですね。ちょっと近くのコンビニまでジャージで行って、会ってしまったでは最悪な結果になりますしね」
姫香「なるほど、勉強になる」
鋭太「あっ、休憩終わりだ。じゃあな、みんなゆっくりしていけよ」
真涼「ええ、あと8時間ほどゆっくりしていくつもりです」
鋭太「ゆっくりしすぎだ!!」
■その夜
鋭太「よう」
真涼「どういう風の吹きまわしかしら?鋭太が私を呼び出すなんて」
鋭太「いや、最近のお前なんか変だから気になってな」
真涼「そうだったかしら?」
鋭太「乙女の会はグダグダだし」
真涼「そうね。否定しないわ」
鋭太「食事はあまり好きじゃないのに俺のバイト先に顔を出すし」
真涼「それは鋭太で遊びたかった……会いたかったから」
鋭太「さ、最後に、偽恋人(フェイク)のくせに俺と…俺が稼いだお金でプレゼントやデートに行きたいって言ったところかな」
真涼「それは冒頭で言った通り、学校で言い寄る男が増えたせいよ」
鋭太「夏休み中に増えるわけがねーよ。そもそもな」
鋭太「真涼…本当はさびしかったんだろう?」
真涼「…私の偽彼氏(フェイク)ごときが何を言ってるのかしら?」
鋭太「だったらさ、その偽彼氏(フェイク)ごときにバレナイようにしっかり演じろってんだ」
真涼「…」
鋭太「ほらよっ。これ」
真涼「え?」
鋭太「プレゼントだよ。欲しかったんだろう?」
真涼「時計…」
しえ
鋭太「俺のバイト代で買った時計だ。初めてなんだから大切にしてくれよ」
鋭太「あとついでに、さびしくなったらそれを見て思い出してほしい」
鋭太「お前は一人じゃない。俺もいるし、自演乙のメンバーだってお前の事を仲間として認めているって」
真涼「…」
真涼「ばーか」
鋭太「へ?」
真涼「だれがこんな安物を大切にしてあげるもんですか」
鋭太「なっ」
真涼「…でも、偽彼氏(フェイク)からの初めてのプレゼント…」
真涼「偽恋人(フェイク)を演じる上で大切だから、仕方なく大切にしてあげるわ」
鋭太「おい」
真涼「ふふふっ♪デザインは中々いいわね。プレゼントをくれた本人は間抜け面なのにね」
鋭太「おいいい!!!!」
真涼「ほら、今度はデートに連れて行ってくれるんでしょう?計画を練りましょう」
鋭太「あっ、それに関しては提案があってだな」
真涼「あら?グズ太にしては珍しく積極的ね」
鋭太「なんだよ!グズっておい!」
真涼「で、どこなのかしら?」
鋭太「図書館で勉強とかどうだ?真涼も好きな本が読めるし、俺は勉強が出来る」
鋭太「さらに冷房もある!これ以上の良物件はないぜ?」
真涼「ふふっ。いいわよそこで」
鋭太「だよなー。冗談…って、何だと!?」
真涼「私は鋭太と一緒ならどこでもいいって言ってるの。図書館デート楽しみね」
鋭太「な、なななななななな!」
鋭太(こ、こいつ冗談で言ってないのか…)
鋭太「じ、実は今のは冗談で、本当は遊園地にだな」
真涼「あら?鋭太は図書館以外も行きたいのね?」
鋭太「はあ?」
真涼「鋭太は私と遊園地に行きたいの?」
鋭太「あー、はいはい。そうですよ。行きたいなー真涼さんとー」
真涼「ふふっ。男が照れても可愛くないわよ」
鋭太「ってか、お前が連れていけって言ったんだろうが!」
真涼「あら?そうだったかしら?」
鋭太「あーわかったよ。日時は………………でいいか?」
真涼「ええ、用事があるけど、空けておくわ。鋭太の為に」
鋭太「っ!?」
真涼「あら?ゆでダコみたいよ?」
鋭太「うっせえ」
■帰り道
真涼「じゃあ、遊園地の前に図書館デート楽しみにしてるわよ」
鋭太「ああ、勉強の邪魔をしないなら誘うさ」
真涼「何か弁当を作ってくるわね」
鋭太「俺が作るからそれは止めろ」
真涼「ふふっ。鋭太の手作り弁当楽しみね」
鋭太「しまった…無駄な労力が」
真涼「わざわざ家まで送ってくれてありがとう」
鋭太「ああ」
鋭太(というか初めて家まで送ったぜ。いつも拒否るからな)
真涼「じゃあ、おやすみなさい鋭太」
鋭太「おやすみ真涼」
願わくばホテルまで
真涼「あっ、そういえば忘れていたわ」
鋭太「ん?」
真涼「プレゼントありがとう鋭太。末代まで大切にするわね」
鋭太「偽彼氏(フェイク)からのプレゼントなのにか?」
真涼「鋭太からだからよ」
………
鋭太(『鋭太からだからよ』と言った時の真涼…)
鋭太(今日一番の笑顔だった…)
鋭太(俺は皮肉にも少しだけ…)
鋭太(ずっとそばでその笑顔を見たいと思ってしまった)
鋭太(ああ、これからもずっと…)
終わり
これにて終わりになります!
支援&見てくれてありがとうございました!
また機会があればよろしくお願いします!
乙
続きもまた書いてくれ
乙
おつ
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