聖杯「ドキッ、俺の嫁だらけの聖杯戦争」 (26)
汚れた聖杯は、意志を持ち、世界を観測し、そして人々の描いた想像を、妄想を、覗き見た
第四次聖杯戦争において、本来呼ばれるべき英霊では無く、呼ばれるべきでない物語の英霊達が召喚され、各陣営は混乱した
結果として、聖杯が願いを叶える事はなく、溢れた泥が街を焼いた
そして、再び満たされた聖杯により、第五次聖杯戦争が幕を上げる
このSSは、いろいろな作品のクロスオーバーSSです、ネタバレが苦手な人、駄文が苦手な人は、読まない事をオススメします
元ネタ作品
ヴァルキリープロファイル
CHAOS;HEAD
キノの旅
トトリのアトリエ
ファイアーエムブレム暁の女神
ファイアーエムブレム蒼炎の軌跡
Fate/staynight
Fate/zero
ブラック★ロックシューター
魔法少女まどか☆マギカ
メルルのアトリエ
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衛宮士郎は戸惑っていた
眼前に広がる、見知ったはずの校庭は、数時間前に生徒達のいた校庭とは思えない、戦場になっていた
校庭に大きな痕を抉りながら、車輪が唸りをあげている
暗い夜の校庭では、その巨大なナニカの全貌は見えない、ただ見えるのは、車輪と、人形の様に白い口
そのナニカは、対象を轢き殺そうとしては、避けられ、また轢き殺そうとしては避けられている
衛宮士郎からは、その対象が見えない
遠坂凛にとって、現状は打開すべきものであったが、良案は無かった
敵サーヴァントの気配を見つけ、誘い込まれている事をわかった上で、この夜の校庭で、ライダーを相手に戦闘を始めた
とても高いステータスを持つランサーであれば、相手の力量を測って、撤退するくらい、何の問題も無いと、思っての事だった
だが、状況と相性が、そうはさせてくれない
結界こそ張っているからバレてはいないものの、校舎の一部はライダーの突撃で崩れている
私達が逃げれば、ライダーは道中の家々を轢き潰しながら追って来るだろう
また、ランサーは徒歩だ、そのクラスの通り、チャリオットのような物に乗っているライダーとは違い、瞬間的な敏捷性に秀でているが、長期的に速さを保つ事においては、ライダーに敵わないだろう
油断、慢心、心の贅肉だ
ある程度選べたという以前の聖杯戦争とは違い、現状運に任せるしかない今の聖杯戦争で、彼女、ランサーのようなサーヴァントを召喚できたからといって、安易に動くべきでは無かった
遠坂凛は、進展のない戦闘を、ただ見守る事しか出来ていない自分に苦悩する
一体何度、ナニカの突撃を、衛宮士郎は見ることが出来たのだろうか
現実離れしすぎた光景から、やっと衛宮士郎は目を離す
現状を何とか把握した彼を次に襲ったのは恐怖だった
逃げなければならない
そう考えた瞬間、思考を恐怖が占領する
慌てて、一歩、後ろへ下がる、だが、思考に追いつけない脚は、あっけなくもつれ、体は倒れる
途端に、鳴り響いていた轟音が止んだ
どうせ放置するんだから書くなよ
話まとまるわけないだろ常識的に考えて
遠坂凛とランサーを狙い続けた攻撃が止んだ
キリリリリと耳障りな金属音と共に、ライダーが校庭の隅の一点目指す
凛が何をと呟こうと口を開いた時、ランサーの声が響いた
「マスター、あそこに誰かいるわ」
言うが早いか、ランサーもライダーを追う
ライダーは目撃者を[ピーーー]ために
ランサーはそれを阻むために
自分が追いつくのは事が終わった後と分かった上で、凛もまたその後を追いかけた
メール欄にsagaって入れれば規制が解除されますよ
sageじゃなくてsagaです。
予想通り、凛が追いついた時には、全て終わっていた
ライダーはもうすでにそこには居ず、ランサーは申し訳なさそうな顔でそこに佇んでいる
その足元には、血の池を広げていく、倒れ伏した男
「まだかろうじて息があるわ、治してあげる事は出来る?」
ランサーの言葉に頷く、俯けに倒れている男の背中には、心臓にまで達している傷があった
逆に言えば、心臓にまでしか達していない傷なのだ
多少の代償はあるものの、人を一人助けられるなら、許せる程度だろう
それよりも気になるのは……
「ライダーは、間違いなく彼を殺す気だったわ、でも、突然消えた」
凛の意図を察してか、ランサーが言う
「……多分、令呪よ」
ランサー自身、何故ライダーがそうしたのかわからない、目の前でその姿を見ていた彼女はその瞬間、男がライダーの手にした剣に貫かれるのを確信していた
だから、サーヴァントの意図にない命令、令呪だと結論をした
それを聞いていた凛も、その事実を認識すれど、理解は出来なかった
治療を施すと、男の息は随分と落ち着いた
こんな時間まで学校にいた人間は、一体誰だと疑問に思い、凛が男の顔を覗き込むと、それは見覚えのある、衛宮士郎のものであった
納得と後悔と安堵、彼ならこの時間に居てもおかしくない、彼を巻き込んでしまった、彼を助けることが出来て良かった
くすりと笑い、凛は士郎を横たえたまま立ち上がる
放っておくの? というランサーの問いに、凛は微笑みながら、ええ、と答える
どのみち、これ以上何かしても、違和感が残る
傷も服も元通りにした、彼は夢と思う以外に、この出来事を消化する方法が無い
「なら、マスター、今後の方針だけれど」
それよりも、と凛がランサーに話しかけようとしたら、先を越されてしまった
凛もランサーも今回の戦いで、感じたのだ
たとえ強さに自信があろうと、出し惜しみをしていては敗北すると
ランサーの宝具、二人の錬金術師によってそれぞれ作られた二本の槍、それらの力無くして勝利は無いと
とりあえずここまで
>>7
あざっす、最近書いてなかったから忘れてた
とりま乙したー
行間を空けてくれると嬉しいかな
それにしても、とんでもねぇ風呂敷やな・・・
衛宮士郎は校庭の片隅で目覚めた
一瞬、体に痛みが走ったが、どこをどう確認しても、怪我などは無い
ただ校庭で寝ていた、その状況以外には、何もおかしい所は無い
何かを見ていた気がするが、ぼんやりとした記憶は、はっきりとしない
とりあえず、いつまでもここに居る訳にはいかないと、彼は家へと歩きだした
衛宮士郎が半ば夢を見ているような心持で歩いている後ろを、一人の男が歩いていた
明らかに現代の服装ではない彼に、衛宮士郎は気づかない、気配遮断のスキルを持つアサシンに、気づけるはずも無い
もっとも、アサシンのクラスを与えられこそしたが、彼にとって気配遮断が特別得意というわけでは無い上に今は気を抜いているので、サーヴァントがこの場にいれば、彼を知覚する事は容易だ
煙草をふかしながら後をつけていると、やがてターゲットが家の門を開けた
「チッ、結局何も無しかよ。つまんねぇ任務だ」
彼をランサーのマスターが助けた事を、ライダーが彼を殺さなかった事を、彼のマスターは疑問に思い、助けられた少年に何かあるのでは無いかと考えた
また、魔術師然とした考えの彼のマスターは、関係ない目撃者は殺して然るべきだと考えた
だからこそ、家に帰るまで、衛宮士郎を見逃した
もっとも、その任務ももうすぐ終わるのだが
「せっかくなら、もっとボインボインな姉ちゃんとかが、マスターだと良かったんだがなぁ」
そんな事を言いながら、彼は銃を構える
言ってから、せめてもう少しマシなマスターに鞍替えするのも、案外アリだとアサシンは考えた
何にせよ、さっさと任務を終わらせよう
狙いをつけるよりも、数撃ちゃ当たると考えるアサシンに、そのマスターは、あまり撃つなと命令した
とりあえず、と言わんばかりに、適当に構えたアサシンが引き金を引く
パラララと、乾いた連射音が響く、放たれた銃弾たちの多くは、衛宮士郎の脚を貫いた
衛宮士郎にとって、突然の銃声と、自分の体の状態は、夢の続きのように思えた
だが、頭に先ほどの記憶は無いが、体は比較的覚えていたらしく、必死で逃げる選択肢を条件反射のように選ぶ
右足は、右足の形をしていない
左足は、少なくとも途中までは、足の形をしている
ただひたすらに、衛宮士郎は這って進む
アサシンは、驚いた顔で自分の銃を見ていた
サーヴァントとして呼ばれた以上、人ならざる力になっている事は分かっていたものの、まるで風船を撃つかの如く、人間の体が弾け飛ぶとは思っていなかった
もっともエインフェリアにった時点で、そもそも人では無かったが
「なんか、おもしろくねぇな」
さっさと終わらせようと、再びターゲットを視界に収める
這って庭にある建物にたどり着いた男の姿を見て、もう一度ぼやく
「あーあ、つまんねえ」
しんとした土蔵の中に、衛宮士郎の息づかいが響く
何か、状況を打開するものは無いかと、探していると、土蔵の扉の所に男が現れる
直感的に、それが先程の攻撃の相手だと、衛宮士郎は感じた
「ワリィな」
アサシンが銃を構えるのと、衛宮士郎ががむしゃらにその場にあった物を強化するのは、同時だった
そして、銃弾が銃口から飛び出すのと、衛宮士郎が青い光につつまれるのもまた、同時だった
銃弾と、衛宮士郎の間に、少女が現れる
少女は銃弾を避ける事なく、アサシンへと走り、当然のように銃弾の雨をその身に受けた
だが、少女の華奢な身体は、衛宮士郎のように弾け飛び、貫かれる事はなく、銃弾の傷跡も、瞬く間に治っていた
「でやああああああっ!!!」
衛宮士郎が少女の存在を知覚するよりも速く、アサシンが状況を理解し撤退するよりも速く、少女の白いマントは翻り、少女の剣がアサシンを貫く
ここまで、多分夜にも書きます
「くっ……!?」
と咄嗟に急所から攻撃をずらしたアサシンが呻く
よろけながらも、迫る追撃を避け、扉から外へと飛び出す
アサシンから見て、対峙する相手の剣筋は甘い、速さに任せた無茶苦茶な攻撃だ
だが、手負いの自分には荷が重い、だからアサシンは、敵の姿をしっかりと確認してから姿を消した
「あーあ、マスターに何言われるかわかったもんじゃねェ」
そう呟きながら
衛宮士郎の意識が消え行く中、白いマントが翻り、少女が衛宮士郎へ駆け寄る
君は、と掠れた声で衛宮士郎が問うと、少女は笑いながら言った
「あたしはさやか、正義の魔法少女、美樹さやかだよっ!」
痛みすら感じなくなっていた脚に、ゆっくりと感触が戻るのを感じながら、衛宮士郎は青い光の中で、眠った
目が覚めた時、衛宮士郎はいつもの様に部屋で寝ていた
一体何処までが夢だったのか不安になり、慌てて起きると、両脚はたしかに、健全な形で繋がっていた、意思の通りに動きもする
だが、昨日から着たままらしい制服のズボンは、昨日の記憶のまま無残な姿になっており、乾いた血がついていた
なら、と衛宮士郎はあたりを見回す
昨日、自分を助けてくれた少女もまた、居るはずだと
探す手間などほとんど無く、むしろ気を抜けば気づかず通り過ぎてしまうような光景の中に、彼女は居た
というか、当然のように居間でテレビを見ていた
「あ、起きた? おはよう、マスター」
煎餅を手に持ちながら、衛宮士郎見てそう言う彼女に、衛宮士郎は膠着する
「いやぁ、他人の回復なんて、あたしも初めてだったからさ、マスターが起きなくて結構心配だったんだよね。でも無事みたいだし、これもサーヴァントになった影響ってやつ? それとも、さやかちゃんの元々の実力ってやつ? 何にせよ、マスターが無事で良かったぁ」
衛宮士郎は、屈託の無い笑顔で話す彼女の言葉の内容はよく分からなかったもの、自分を案じてくれていた事は理解し、彼女と同じ様に席につく
「マスターの名前は何て言うの?」
席につき、一体何から聞けばいいのか戸惑っていた衛宮士郎に、美樹さやかは言った
「衛宮士郎だ。君は……たしか昨日はミキ……」
「そう、美樹さやか。よろしくね、えっと……衛宮、さん?」
「士郎で良いよ。その、君に聞きたい事が、いっぱいあるんだけど……」
「あはは……だよねぇ、えっと、何から話せば良いのやら……」
苦笑いをする彼女は、どこをどう見ても普通の少女だ。
それでも何故か、その延長線上に、凛々しい昨日の彼女がちゃんと居る、そんな気がした
聖杯戦争とは、魔術師と魔術師に召喚されたサーヴァントのチーム七つが戦い、最後の一チームになった時に、なんでも願い事を叶える聖杯に願いを叶えてもらう戦い
そして、昨晩士郎を狙った男は、サーヴァントの一人、おそらくアサシン
サーヴァントには七つのクラスがある、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、そしてバーサーカーの七つ、それらにはそれぞれ名前の通りの特徴がある
本来の聖杯戦争には、歴史上の英霊が召喚されていたが、何らかの理由によって、空想上のキャラクターが召喚されるようになってしまった
美樹さやかは衛宮士郎に召喚されたサーヴァントであり、治癒の祈りで魔法少女になった少女である
「じゃあ、昨日見たあれも、夢なんかじゃ無くって……」
美樹さやかから説明を聞いていた衛宮士郎が、夢だと思っていた光景を思い出す
「どういう事?」
美樹さやかの問いに、衛宮士郎は記憶を掘り起こしながら、あの時の事を語った、巨大なナニカ、それと対峙する人影
ただし、聞こえた気がする遠坂凛の声については、何も言わなかった
「なるほどねぇ……何であたしが召喚された時に、それまで無関係の士郎が襲われてたのかわからなかったけど、戦闘を見て、誰かに回復してもらってたんじゃ、無関係なんかじゃないもんね」
アサシンに撃たれた傷は、さやかが治してくれた
では、ナニカを見た時、身体にあった痛み、その傷は、誰によって治された?
衛宮士郎の中に思い浮かぶのは、遠坂凛の顔
少なくとも、一度会ってみなければならない、そう衛宮士郎は感じた
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