美優「良かったですね。シン・仮面ライダー」
瞳子「特撮映画は初めてだったけど、楽しめたわ」
留美「……」
美優「血の出る描写も多かったですけど、それほど凄惨ではなかったし」
瞳子「疫病をモチーフとする相手を意外とあっさり倒したのはアフターコロナへ向けての、メッセージかも知れないわね」
留美「……違うわ」
美優「え?」
瞳子「なにが、かしら」
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留美「2人とも感じなかった? あの映画を見ていて感じた、違和感を!」
美優「違和感?」
瞳子「どういうこと?」
留美「いいえ違和感じゃない……はっきり言うわ。あなたたちも感じたはずよ! そう、既視感を!!」
美優「既視感……つまりデジャブですか?」
瞳子「既視感なんてそんな……うっ!」
美優「と、瞳子さん!?」
留美「思い出したようね。過去の自分を」
瞳子「2人きりの出発……状況もわかにないのにいきなり囲まれて、周りは敵ばかり……」
留美「そうよ。あの冒頭部は、不穏な船出と2人の向かう先は困難な道となることを暗示しているのよ!」
瞳子「ああ……あ……!」
美優「え、でも、あの……ロードムービーってそういうものじゃないです?」
留美「自分は用意周到な人間だと思っていたのに、次々と予想外の事態にまきこまれる……」
美優「はうっ!」
留美「同行者の男はなんとなく頼りにならなく感じて、でも段々と頼りにし始めて好感までもってしまって」
瞳子・美優「あああーーー!!!」
留美「私たちも経験したはずよ」
美優「友達とまでは思っていなかったけど親近感を持っていて、でも自分とは違うと感じていた同姓の知り合い……」
瞳子「でも親しげな口調からは信じられないような敵意を向けられて……」
留美「そして忘れてはならないのが、ちょっと好意を持ち始めた男の行動」
美優「そうなんですよ、なんで彼女の実家に行く前なのにいつもの格好で、それも私が言わないとシャワーも着てるものの洗濯もしないんですか!?」
瞳子「実家に案内しているのにあの人、手ぶらだったわよね? 普通なにか手みやげとか持参するものではないかしら!?」
留美「身内は身内で、ジョークで場を和ますつもりかも知れないけど『もう妹とは寝たのか?』とか質問するデリカシーのなさ!!」
瞳子「カレシもそれを真剣に受け取って『そんな関係じゃない!』とか叫んでガチギレして兄につかみかかるし!!」
美優「そうですよ! そんな関係じゃないってどういうことですか!? 寝たじゃないですか一緒に!! だだっ広い場所で!!!」
※映画内での話です
留美「しかも久々に実家に帰ったら、自分はそれまで引きこもりだったくせに、お前もそろそろ身を固めたらどうか……とか言い出して、別の男を紹介しようと呼んでるし!」
瞳子「しかもその人、地味にスペック高いのよね! カレシより」
美優「そんなの修羅場になるに決まってるじゃないですかぁ~」グスッ
留美「なるわよね。男って単純な生き物だから」
瞳子「しかもひとしきり殴り合うと、なんだか急に仲良くなったりするし。カレシと」
留美「なるわよね。男って単純な生き物だから」
美優「それで私はのけ者で、3人だけでなんか会ってるんですよ~」ジタバタ
留美「わからないわよね。男のああいうところ……」
瞳子「しかもまたなんか3人だけで仲良くなってるのよ!」
留美「わからないわよね。男のああいうところ……」
美優「心配して連絡して、合流しましょうか? って聞いたら~」
瞳子「ここは狭いからとか適当なこと言われてやんわりと断られて!」
留美「今回、このシン・仮面ライダーで私たちは多くの気づきを得たわ」
美優「そうですね」
瞳子「この映画で描かれていたこと、他山の石にしなくてはならないわ」
留美「そう。プロ……いえ、男の人を家族に紹介する時、私たちは万全を期さねばならないわ」
美優「自分は用意周到とか慢心せず」
瞳子「そして男の人にも万全の注意を払うのね!」
留美「そうでないと泡と消えてしまうかも知れないのよ。私たちの未来が」
美優「映画の中の2人のように……」
瞳子「繰り返せないわ。もうあんなことは……」
神谷奈緒「ん? あれ、留美さんに美優さんに瞳子さん」
荒木比奈「奇遇っスね」
関裕美「もしかしてみんな、映画を見た帰り?」
留美「え?」
美優「そ、そうだけど」
瞳子「もしかして、あなたたちも?」
奈緒「ああ! シン・仮面ライダーは外せないだろ、ってさ」
比奈「オタクの聖典っスからね庵野秀明監督は」
裕美「私も、奈緒さんと比奈さんが楽しみにしてるから、一緒にって思って」
留美「駄目よ!」
奈緒「え?」
美優「3人にシン・仮面ライダーはまだ早いわ!!」
比奈「いや、シン・仮面ライダーはPG12指定っスけど、アタシたち3人とも大丈夫っスよ?」
瞳子「3人には、まだ……恋愛に憧れや夢をもっていて欲しいのよ !!!」
裕美「言ってる意味が……え? ええ?」
留美「知ってる? 男の人に夢を持つとね、時々すっごく切なくなるけど、時々すっごく熱くなるらしいの。私には男運がない。だけど、あなたたちのその夢を守ることは出来る」
比奈「ちょ、ちょっと押さないで欲しいっス!」
瞳子「人が映画を勧めていいのは、自分の手が直接届くところまでなんじゃないかって」
裕美「えー? え、映画見たいよー!!」
留美「男の人のために! これ以上誰かの涙を見たくない! みんなに笑顔でいてほしいんです! だから見ないでいてください。庵野秀明監督の!! シン・仮面ライダー!!!」
奈緒・比奈・裕美「ええええええーーーっっっ!?!?!?」
終
-おまけのそのあと-
奈緒「いや、まさか一旦事務所まで連れ返されるとは思わなかったよな」
比奈「まあそれからまた行って、無事に見られたわけっスけど」
裕美「面白かったよね。こう、パンチとかキックとか」ブンブン
奈緒「あはは、様になってるぞ裕美ちゃん」
比奈「裕美ちゃんはカンフー映画を見たら、アチョーとか言って盛り上がっちゃうぐらいノリがいいっスもんね」
裕美「えへへ。あ、でもちょっと気になったんだけど」
奈緒「お、なんだ? 映画鑑賞後の考察会か?」
比奈「いやーオタク冥利に尽きるっスね。こういうの」
裕美「あのね、蝶オーグの人が言ってた『妹とはもう寝たのか?』ってどういう意味?」
奈緒「え……?」
比奈「う……?」
裕美「なんで本郷猛さんはそれで怒っちゃったの?」
奈緒「えっと……」
比奈「それは……」
裕美「なんで『そんな関係じゃない』って言ったの?」
奈緒「……」
比奈「……」
裕美「寝てたよね? 2人で。なんかひろーい所で」
奈緒「あ、そろそろ帰らないとな!」
比奈「一旦、事務所に戻ったから遅くなったっスしね!」
裕美「え? あの」
奈緒「帰るぞー!」
比奈「明日もロケで早いっスからねー!」
裕美「え? あの、その前に妹と寝たのかってどういう意味なのかを……」
奈緒「あたしは帰る。人間として、アイドルとして!」
比奈「さぁ、帰宅タイムだ!
裕美「妹と寝たのか、ってどういう意味なのーーー!?!?!?」
シン・終
以上で終わりです。おつき合いいただきまして、ありがとうございました。
おつおつ
C・S「むしろ14にもなって「寝る」の意味がわからないなんて、なんてネンネなウブな人なんですかね」
「裕美さんは千e……富山の方言の『抱いてやる』すら平気でテレビのインタビューで使ってそうで怖いです」
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