ロッチ中岡「俺ってドラゴンやんか」 (10)
一人の男(コカド)が板付き。
スーツ姿に、片手にグラスを持っている。
上手側に「赤劇小同窓会」と書いてある看板がある、どうやらここは同窓会の会場らしい。
そこに別な男(中岡)が上手側から走って入ってくる。
上着がボロボロだがこちらもスーツだ。
コカド「おぉ、おぉおぉぉお!?」
派手なエントリーに、大仰に驚いてみせる。
中岡「はぁ、はぁ……遅なったあ、ごめんごめん……」
コカド「何そんな慌ててんねん!」
中岡「もう始まるか思て……はぁ、あれ……あ……」
お互いに指差し。
コカド「え?……お前、中岡?」
中岡「はぇ?コカド?」
コカド「うわー!もう20年とか会うてへんのに、お前ほんまなんも変わってへんやん!」
中岡「そお?お前もあんま変わってへんよ」
コカド「いやいやいや変わった、変わった。前よりちょい太ったし」
中岡「えー?そんなことないやん、お前木の枝よ」
コカド「そんなこと……あれ?お前だいぶ太ったんちゃう?」
中岡「わかる?そうやねんなあ、何回も牛になったし」
コカド「……あ?牛になった?どういうこと?」
中岡「いや、飯食ったあとすぐ横になったら牛になるって言うやん?」
コカド「それ例えな!?物事の!」
中岡「牛になってんねん」
コカド「なってないねん、牛みたいにデカなるかもしれんけどまだお前中岡やで」
中岡「やから中岡、かつ、牛やろ?」
コカド「自分できっしょいこと言うてんのわかってる?」
中岡「だからもう中岡兼牛、かつ、鉛やねんな俺は」
コカド「なんか増えてってない!?」
中岡「体が重いのよ、太って、鉛になって」
コカド「太ったから、鉛のように、な!?」
※相変わらず書き溜めはありません
※マイペース投稿をお許しください
※ご存知の方は、お久しぶりですね
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中岡「まあ俺のことはええやん」
コカド「全然良くないけど」
中岡「そんなことより、ほんま何年ぶり?俺ら会うの」
コカド「あー……二十歳になった時にみんなで集まったやん、梶本とかも入れて。そん時ぶりやから、」
中岡「20年くらい会ってへんのかあ」
コカド「ああ、そうよ。そんだけ経つと人間、こうなんねんな」
中岡「何がいな」
コカド「お前そんなんやったっけ?」
中岡「ええ?俺は前からこんなんやったって、やんちゃで元気で」
コカド「それ自分で言うの、悲しくない?」
中岡「イノシシやったし」
コカド「また(笑)真っ直ぐしか走られへんかったとかそういうことやろ?」
中岡「近所のおばあちゃんの畑行って、じゃがいも掘って食うてた」
コカド「マジのアカンやつや」
中岡「めっちゃ怒られたし」
コカド「まあ犯罪やからな」
中岡「美味かったで?褒めたんやで?」
コカド「よお捕まらんかったね、その倫理観で」
中岡「野山も走り回ってたし」
コカド「例えとか関係なく?!どんな子供やってんお前!?」
中岡「ノミや」
コカド「は!?」
中岡「俺は子供の頃はノミやったわ……」
コカド「なんの例えやねん!小さいってこと!?」
中岡「ビビリ」
コカド「ノミの心臓ってこと!?伝わらへんで、そこまで説明してくれんと!」
中岡「けどまあそっからはスクスク!」
コカド「成長?そこで止める人なかなかいてないのよ」
中岡「そう考えると、あの頃の俺は風の子やったわ!」
コカド「元気な子ね?」
中岡「足早かったから、稲妻やったし」
コカド「稲妻のような速さ、はあ」
中岡「諦め悪いから、納豆やった」
コカド「あー、粘り強い的なこと?」
中岡「けど宿題は嫌いやってん」
コカド「おお」
中岡「やから、子供の頃の俺はー……」
コカド「え?」
中岡「いや、つまり総括するとやで?」
コカド「何を総括しようとしてんねん」
中岡「風雷納豆ナマケイノシシやな」
コカド「ふうらいなっとうなまけいのしし!?」
中岡「あ、違うわ」
コカド「さすがに違ってくれ、例えやと分かってんねんけど、きしょい生物誕生させんな」
中岡「疾風迅雷のノミ納豆ナマケイノシシや」
コカド「二つ名みたいにしてもアカンで?」
中岡「事実やで?」
コカド「その『ノミ納豆』の部分が死ぬほどダサくてキモいねんよ」
中岡「事実なのに?」
コカド「事実でもないけどな」
中岡「そう言うコカドは昔どんなんやってん」
コカド「は?俺?俺は特になんも」
中岡「何もってことはないやろ」
コカド「いや、至って普通やって。勉強そこそこ、体育もそこそこ」
中岡「そんな普通やった?」
コカド「お前が覚えてへんだけよ、俺の小学生時代なんてほんま普通すぎんねんから」
中岡「顔とかデカぁならんかった?」
コカド「なんの例えそれ?怖いわ突然そういうの来ると!」
中岡「それにしても普通、普通て。何やねんお前」
コカド「ほんまのことやししゃあないやん……」
中岡「お前あれか」
コカド「なに?」
中岡「テンプレか」
コカド「テンプレ」
中岡「普通やった、なんもなかった、つまり子供の頃のお前はテンプレや」
コカド「テンプレート?」
中岡「そ。定型文みたいな子供時代……はっ!
テンプレケンタロウってことか!!!」どやぁぁぁぁぁぁ!!!
コカド「ドツキ回すぞ?」
中岡「……え?ちょっと待って?」
コカド「何やねんさっきっから!」
中岡「ほな大人になるまでめっちゃ足怪我したんちゃうん?」
コカド「ずっと何言うてるのお前?」
中岡「茨の道歩いてきたんやろ?」
コカド「あれ物理的な障害のことちゃうねん」
中岡「え!?違うの!?」
コカド「……おお、そこは普通に勘違いしてただけなん!?難しいなお前!?」
中岡「俺も足めっちゃ怪我しながらおっきなったから、そうなんかと思ってたわ」
コカド「足を怪我?どういうこと?」
中岡「やから、茨の道やんか」
コカド「それはたとえであって、ホントの茨のある道行けってことちゃうんやって」
中岡「ええ?俺それ知らんからさ」
コカド「なんで誰も教えてやらんねん」
中岡「大人になるまで、ずっと茨歩いてたで?」
コカド「それでよお怪我残らんかったな!?」
中岡「毎日よ?」
コカド「うわ、痛い」
中岡「毎日、足が血だらけになって」
コカド「うわ痛い痛い、お前もお前の足もどっちもイタい」
中岡「結果俺の足は鋼」
コカド「皮膚エグいくらい強なってる!」
中岡「もう茨くらいじゃ傷付かへんから」
コカド「アホやこいつ……」
中岡「つまりダイアモンドでもあるってことやな」
コカド「めちゃくちゃすぎるわ」
中岡「鉛かつ、鋼かつ、ダイアモンドや」
コカド「……ていうかそんなん、なんで親に聞かんねん」
中岡「はぇ?」
コカド「おとんとか、おかんに聞けたやろ。これどういう意味?って」
中岡「いや、聞いてん」
コカド「え?ちゃんと聞いた?」
中岡「聞いたら、『自分で調べてごらん』って言われてな」
コカド「めっちゃ当たり前のこと言われてる」
中岡「けど俺、その頃『疾風迅雷のノミ納豆ナマケイノシシ』やんかぁ」
コカド「さも当然のようにその気持ち悪い生物の名前出すなや」
中岡「略して『シノナシ』やんか」
コカド「分からんもんを分からん言語に変換すんのやめてもらえる?」
中岡「シノナシやから、図書館行って調べたりすんの面倒くさかってんな?」
コカド「そこと天秤にかけて怪我し続けるなら調べろや!」
一旦休憩ですね
中岡「けど俺がシノナシであったおかげで、」
コカド「おい中岡」
中岡「足が強靭になったわけやから」
コカド「さも当たり前のようにその言葉使うな」
中岡「捨てたもんやないやろ?」
コカド「それは捨ててええやろ」
中岡「おかげで今の俺があるわけや」
コカド「キショすぎる生物になってるけど……」
中岡「それにな、俺もまあまあ頑張ってんねんで」
コカド「なにが?」
中岡「ほら、俺とお前は20年ぶりに会ったやろ」
コカド「おう、そうやな……」
中岡「お前、俺今何してるか知ってる?」
コカド「え?あ、そういえば……」
中岡「社長やで」
コカド「社長……」
中岡「おう」
颯爽と名刺を取り出す中岡。
コカド「うわ、ほんまや!社長なってるやん、すご」
中岡「そうやろ?」
コカド「まさかやったわ」
中岡「今俺、なんて呼ばれてるか知ってる?」
コカド「え?シノナシ?」
中岡「シノナシは小学生の時よ」
コカド「今はなに?」
中岡「うなぎ」
コカド「うなぎ」
中岡「おう、登ってってるって言われた」
コカド「鰻登りの『うなぎ』部分の話してる?」
中岡「しかも、しかもよ?」
コカド「まずお前は中岡であってうなぎではないし」
中岡「まあ落ち着けって。俺はほんますごいねんから」
コカド「いや、むしろなんでお前そこまで落ち着けんねんな」
中岡「社長やからかな」
コカド「死ぬほどムカつく顔してんな」
中岡「ていうかな、コカド、聞いてくれ」
コカド「何がよ!」
中岡「俺ってトラやん」
コカド「なんて!?」
中岡「なんか言われんねん」
コカド「誰に!何を!」
中岡「それに俺って馬やし」
コカド「はあ!?」
中岡「俺ってドラゴンやんか」
コカド「なんて!?」
中岡「いや言われんねんよ」
コカド「なにを!」
中岡「虎の威かってますね~って」
コカド「それバカにされてるで?」
中岡「馬脚も現れてますし~って」
コカド「バカにされてますよね?」
中岡「竜の頭で尻尾ヘビですやーんって!」
コカド「全部バカにしてんのよ!それ!」
中岡「はぃ?」
コカド「『虎の威を借る狐』、『馬脚を現す』、『竜頭蛇尾!』」
コカド「強いやつに頼って威張ってる、実力無いのがバレてもうてる、見た目派手やけど先っぽなんも良くない!」
コカド「全部よ!全部お前があかんってことを言う例え!ことわざ!!」
中岡「え?これ褒めてんちゃうの?」
コカド「ちゃうわ!」
中岡「虎飼ってるって言われて喜んでたわ」
コカド「そのちょいちょいマジで知らんのなんやねん!!」
中岡「まあええわ、社長なんは事実やし」
コカド「そんで余裕やな!?」
中岡「それに俺ダイアモンドやし」
コカド「それはなってへんねん」
中岡「まあええねん、社長はマジやから!マジやからぁ!!」
コカド「お前それの一本槍でやってくつもりか」
中岡「社長かつ槍になったわ今」
コカド「槍にはなってへんねん!……うわ、めんど、お前そんなダルいやつやったっけ?」
中岡「いや、これはこの何年かでやってんねんな」
コカド「は?どういうこと」
中岡「うん、いやな、何年か前に言われてん」
コカド「……なんて」
中岡「もらったものは全部吸収していきなさいって」
コカド「すでにそこから間違ってんねん!」
中岡「やからその人からも吸収したしな」
コカド「こわ!?言い方怖いから考えろってぇそれ」
中岡「全部吸収した……」
コカド「こわいこわい!なんで突然怖なんねん!!」
中岡「けど大事やねんて、人からもらったものを吸収するのは」
コカド「もうええってそれ!忘れろ全部!」
中岡「そんな言うなや、せめてこれだけ聞いてくれって」
コカド「もうええもうええ、お前もうめんどいって!」
中岡「いや、俺が革命になった話をやな……」
コカド「めんどぉーーー!!」
一年ぶりなので初投稿です。
また一週間後とかに書けるようなSSになりたいです。
キングオブコント、楽しみですね。
また思いついた頃に。
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