【安価】男「俺が『言霊遣い』だって?」 (35)
言霊とは言葉に宿る霊の力
言霊遣いとは言霊の霊を従え、使役する者のことである
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学校
男「好きです! 付き合ってください!」
女「……」フイ
男「あ……」
クラスメート「まーたフラれた! おんなじ相手に何度告白すりゃ気が済むんだよ」
男「女さん! 俺、諦めませんから!」
女「」スタスタ…
クラスメート「我が校が誇る無口ビューティー、『女』さんにお前は釣り合わないって」
男「でも昔は俺のこと好きって言ってましたし!」
クラスメート「幼なじみとはいえ昔のことだろ。諦めろって」
男「いーや、次こそ良いとこ見せて告白を成功させます!」
男「『好き』って言ってもらうぞー!!」
クラスメート「やれやれ……女さんも大変だな」
クラスメート(男も女さんへの変な執着がなければ勉強もスポーツもそこそこできて顔も……まあ悪くないんだから他の女の子が寄ってくると思うんだけどな)
夕方 公園
幼女「わーん! ふうせんが木にひっかかっちゃったよぉ」
幼女の母「もう、手を離しちゃうから。諦めなさい」
幼女「でも……」
幼女の母「ほーらっ、行きましょ」
幼女「……うん……『あきらめr」
男「待ってください!」
幼女「!」
男「これしきの木……」ヨジヨジ
男「」パシッ
幼女「わあ!」
男「ほらっ! どうぞ」
幼女「ありがとう!」
幼女の母「どうもありがとうございます」
男「いえ! 俺、諦めが悪いので! こういうの見ちゃうと居ても立っても居られなくなっちゃって」
男「おっと、もう時間だ。またね!」
幼女「ばいばーい!」
病院
男「面会時間ぎりぎりセーフ!」
祖父「おお、男か」
男「具合はどうですか?」
祖父「ま、ぼちぼちじゃな。で、どうじゃ。鍛錬の方は」
男「はいっ! 毎日かかさずやってます!」
祖父「よろしい。明日はお前の16の誕生日じゃったな」
男「はいっ!」
祖父「『約束の日』が訪れるということか……」
男「はい……教えてください、おじいさん。女さんの『無口』を治す方法を――!」
男の幼き日
幼少期女「はい! これ!」
幼少期男「シロツメクサの指輪?」
幼少期女「けっこんゆびわだよ! 大人になったらけっこんしようね! だいすきだよ!」
幼少期男「え……えへへ……」
ぬら…
幼少期男「!」
幼少期女「どうしたの?」
幼少期男「う、うしろに! しろいおばけ!」
幼少期女「え? どこにいるの?」キョロキョロ
化物「ぅ ま そ」
幼少期男「あぶない!」
化物「ぃ た だき まぁ す」ぐぁん
ぱくっ
幼少期女「あ」
幼少期男「女ちゃん! 女ちゃん!」
幼少期女「」ムク
幼少期女「……!」パク パク パク
幼少期男「どうしたの? なにか言いたいの?」
幼少期女「……! ……!」パク パク
幼少期女「」ポロ…ポロ…
幼少期女「」タッ
幼少期男「女ちゃん!」
病院
男「――言葉を失った女さんは俺をだんだんと避けるようになった」
祖父「化物に『言葉』を喰われた、か」
祖父「その化物の正体を今、教えてやろう」
祖父「奴らの名は『黙(だんまり)』。人の言葉を喰らう怪異じゃ」
祖父「お前には霊力があり、あの娘が食われるところを目撃できた」
男「霊力……?」
祖父「そう、黙に対抗できる唯一の力、『言霊』の霊力じゃ」
祖父「お前はその『言霊』を操る力を持つ『言霊遣い』じゃ」
俺「俺が言霊遣いだって?」
期待してあげないこともないんだからねっ!
祖父「16になる今、肉体が安定し『言霊』を安定して使うことができるようになっている」
男「鍛錬もそのためのものだったんですね」
祖父「飲み込みが早いな」
男「ええ。全ては女さんを救う為に、ですから」
男「そして女さんにもう一度『好き』って言ってもらいたいんです!」
祖父「フフ……俗っぽいな。じゃが、それでいい」
祖父「『諦めるなよ』ッ!」バシッ
男「あ痛っ! それでその『言霊』の使い方とは?」
祖父「」
男「おじいさん?」
葬儀場
男(結局、おじいさんは俺が『言霊遣い』であることだけしか教えてくれなかった)
男(それにしてもおじいさんの葬式にこんなに人が集まるなんて)
眼鏡「……」
長髪「……」
髭「……」
帽子「……」
男(変な格好した人たちもいる……若いし……おじいさんの何の知り合いだろう)
女「……」
男「女さん! 来てくれてありがとうございます!」
女「……」ペコ
男(こうしておじいさんの葬儀はしめやかに行われる――)
男(はずだった)
僧侶「〜〜〜」
男「……」
男「」ゾクッ
男「なんだこの感覚!」
男「あっちか!」ダッ!
葬儀場の人「あっ! 喪主が席を立っては――!」
葬儀場前
だんまり「ぁ ぅまそ なの みぃっ け」
男「これが……だんまり! なんでここに!」
だんまり「ぃただ き まぁす」バクァッ
シュバッ
男「危な……っ!」
男(鍛錬が役に立った)
男「!」
男(駐車場のコンクリートを抉っている! 食べるのは人間の『言葉』だけじゃないのか!?)
だんまり「ぅまそ ぅまそ」ビュッ!! ヒュッ!! ガブリッ!!
男「ぐ……離……せ! 腕……千切れ……る……」ブヂ…ュ
だんまり「くゎせ ろォ」
男「こんな時『言霊』が使えれば……!」
カァ……ッ!!
男「手……熱っ……!! これは――ッ!!」
↓1 男が掴み取った言霊(五十音)は
わ
男「熱い……これが『言霊』か?」
ジュウッ!!
だんまり「ぃ ぃだぃ!!」バッ
男(だんまりが言霊の熱に灼かれた! この力は確かに『効く』!)
男(それに胸に湧き上がってくるこの『文字』は――)
男「これに従えばいいんですね、おじいさん!」
男「『開(カイ)』! 『立(リツ)』! 『外つ空二つ座の国より来たれ、言霊』!」
男「『わ』!」
ブヂュ…ズ…
男(だんまりに噛みつかれた腕の肉が治っていく)
男(これが『わ』……『和』の力か!)
男(それにこの拳に纏った『言霊』の気のようなもの。これで殴ればだんまりを倒すことができそうだ)
男(『わ』の力は治癒の力……怪我は気にする必要はない)
男「うおぉぉぉッ!!」
ゴッ
だんまり「ぎゃ」
だんまり「ぉおぉ」ガブゥッ
男「好きなだけ噛みつくといい……俺はその程度では諦めない」
だんまり「ぐ ぅうぅ」
だんまり「ヒィッ!!」ビャッ
男「逃がさないッ!」
男「言霊が声を伝うなら――俺の声は『弾丸』にもなるはず!」
スゥ…ッ
男「……『破』ッ!!」
だんまり「」パンッ
だんまり「」ドチャ
男「……はあ、はあ……勝った、のか?」
男「いけない! 葬儀場に戻らないと! うわ、喪服がぼろぼろだ! 服までは直らないか!」
男(だんまりを倒しても女さんの無口は治ることはなかった)
男(俺が倒した個体と昔、女さんを襲った個体は別らしい)
男(俺はこれからも女さんの言葉を返すために戦っていこう)
男(絶対に諦めない必ずやり遂げてみせる)
男(そして告白を受け入れてもらうんだ……)
僧侶「〜〜」
学校 屋上
男「女さん!」ガラッ
女「!」
男「こんなところにいたんですね。ひとりで……なにしてたんです?」
女「……」
男「皆と話せないからですか?」
女「……」
男「さびしく、ないんですか」
女「……」
男「俺が必ず助けますから。必ず皆と楽しく話せるようにします」
女「……」
男「だから―」
男「俺の愛の告白を!」
女「」プイ
男「やっぱりだめか」
教室
担任「今日は皆さんに新しいクラスメイトを紹介します」
眼鏡「眼鏡だ、以上」
男「あっ!(おじいさんの葬式に来てた人!)」
担任「男くんの隣の席が空いてるので、そこに座ってね」
眼鏡「はい」
眼鏡「」スタスタ
男「……先日はども」
眼鏡「……」
男(無視されちゃった)
放課後
男「あれ、女さんがいないぞ」
クラスメート「また告白か?」
男「もちろん! 受け入れてくれるまで何度でもやりますよ!」
クラスメート「お前自分が異常なの分かってる?」
男「もちろん! でも僕は……」
男「守りたいから……守れなかったから……」
クラスメート「闇が深そうだからもう聞かないけど程々にな」
男「おーい、女さーん」
クラスメート「オレが友達でいることに感謝しろよな、って聞いてないか」
校舎裏
ペチャ…ペチャ…
女子生徒「いや……」
ペチャ…ペチャ…
女子生徒「来ないで……」
だんまり「ぅまそぅ な こえ だ」
女子生徒「いやぁあああ――」
ばくん
女子生徒「……」
女子生徒「!」
女子生徒「!!」
だんまり「いい声ね。こんな美味しいものをくれてどうもアリガト」
女子生徒「!!」
だんまり「あなたの『言霊』とっても美味しかったわ。甘くて、すこし酸っぱくて」
だんまり「言葉を喰われた感触ってどうかしら」
だんまり「あなたはこれからどんどん自分を失っていくわ」
だんまり「『言霊』を失った人間は、人としての『器』を保てなくなっていく」
だんまり「ゆっくりゆっくり崩壊し、そして、消える」
女子生徒「!!」
だんまり「どれだけ叫んでも無駄よ。もう何も喋れないんだから、誰にも言葉は届かない」
眼鏡「そこまでだ」
だんまり「……んん?」クルッ
だんまり「あなたは……誰?」
眼鏡「『言霊遣い』だ、以上」
↓1 眼鏡が掴み取った言霊(五十音)は(わ 以外)
お
女子高生に、「戦え」と言霊で命令する
眼鏡「「『開(カイ)』、『立(リツ)』、『外つ空二つ座の国より来たれ、言霊』」
眼鏡「『お』!」
ジャラジャラジャラ…
だんまり「なによ……その鎖!」
眼鏡「『お(於)』は『留め』、『縛る』力」
眼鏡「貴様に教えられることは以上だ」
ジャラジャラジャラッ!!
ビシィッ!!
ギチッ ギチッ
だんまり「くる……し」
ギヂ…
だんまり「たすけて! たすけて! わかった! 喰った言霊は返す! だから!」
眼鏡「覚えたばかりの言葉で命乞いをするとは、なんと醜い。その口、塞いでしまおう」
ギヂヂッ!
眼鏡「潰れろ」
だんまり「あ゛」ぶぢゅ
女子生徒「……あ! あ! もどった! 『声』が戻った!」
眼鏡「良かったな。『言霊』が消化されたら、その声は元に戻らない」
女子生徒「ありがとう!」
眼鏡「礼を言う必要はない。『忘(ボウ)』」ポォ…
女子生徒「」ガクッ
眼鏡「礼を言われる筋合いもない。このことは全て忘れてしまうのだから」
女子生徒「」スゥ…スゥ…
眼鏡「以上、だ」
眼鏡(思わぬ邪魔が入ったが本来の任務に戻らねば)
学校 屋上
ガラッ
女「!」
眼鏡「……」
女「!!」
眼鏡「お前を殺しに来た」
女「……!?」
眼鏡「父の仇……ッ!」ジャラッ!!
男「待って!」
眼鏡「来たか、『わ』の『言霊遣い』」
↓1
1男「女さんを殺させはしない!」(眼鏡と敵対)
2男「とにかく事情を聞かせてください!」(話をそらし時間を稼ぐ)
3その他
2
男「その感じ、あなたも『言霊遣い』なんですね?」
眼鏡「この女を殺す。それが僕の役目」
男「とにかく事情を聞かせてください!」
眼鏡「……お前、祖父から何も聞かされてなかったのか」
男「え?」
眼鏡「だんまりに言霊を喰われた者は緩やかに死んでいく」
眼鏡「それなのに、この女は言霊を喰われ10年以上生きている」
眼鏡「この女は言霊遣いの家系外から偶然生まれた極めて強い『言霊力(コトダマリョク)』の持ち主だ」
眼鏡「だからお前に護らせていた」
男「!」
眼鏡「だが守れなかった。そうだろう」
男「……」
眼鏡「この女は成長するに従って言霊力が強くなっていく。謂わばだんまりの良い餌だ」
眼鏡「この街にだんまりが増えているのも、この女のせい」
眼鏡「そして僕の父が死んだのも、この女のせい」
眼鏡「だから僕ら言霊遣いは彼女を殺すことを決めた」
眼鏡「もう一度言う。以上だ。お前に止める資格はない」
男「それでも……!」
キャア――ッ!!
眼鏡「!」
男「!」
だんまり「わあ」「ぐふふ」「ひひ」「おいしそ」
学校の人々「なんだあれ!」「逃げろ!」「たすけてぇっ」
眼鏡「チッ、無駄話の間に奴らが集まってきた!」
男「4匹、これくらいなら僕だってやっつけられます!」バッ!!
眼鏡「待てっ、お前程度一人では太刀打ちできない!」
眼鏡「……っ、人をだんまりから守るのが言霊遣いの使命。行かなければ」ポイッ
女「」ドサッ
眼鏡「貴方を殺すのは後回しだ」
男「おりゃあっ!!」ブォンッ!!
ボゴォッ!!
だんまり「ぎっ! いたい いたいなあ」
男(俺のパンチが聞いていない?)
男「ならもう一度……ッ! ォラアッ!」
ボギッ
男「が、ぁ(拳が割れた……か。でも『わ』の力なら)」
男「どれだけ傷付いても、傷付く度に治せば……!」
ボゴッ、ボゴッ!! ドドドドドド
男「おりゃあああああ―――ッ!!」
だんまり「あ あ あ あ あ」
ぱんっ!!
男「破裂した! まずは一匹!」
眼鏡「なんて野蛮な戦い方だ……」
眼鏡「はぁッ!!」ジャラッ
ジャリジャリジャリッ
ギチチッ
眼鏡「フンッ!」
だんまり「くる ぢ」
ミヂヂ…ブシュッ!!
だんまり「げぁ!!!」グチャ!!
眼鏡「この程度、僕にとっては……しかし」
「来るなァ!」「イヤアァ!」「たすけて!!」
眼鏡「さっきよりだんまりの数が増えている」
眼鏡「きりがない」
↓1 コンマ
偶数 倒しきった
奇数 守りきれなかった
ゾロ目 救援がきた!
あ
男「学校にだんまりがッ!」
眼鏡「しまった!」
キャア――ッ
眼鏡(早くあの女を始末しなかったから――)
眼鏡「クソッ! とにかく今は目の前のだんまりを倒すぞ!」
男「……」
眼鏡「お前に言ってるんだ! 『わ』の言霊遣い!」
男「あ、はいっ!」
「「ウオォォッ!!」」
眼鏡(奴め、なんて無茶な戦い方だ)
眼鏡(自分の身体が文字通りぐちゃぐちゃになるまで殴り続けては言霊で回復している)
眼鏡(痛覚はないのか……? それとも―)
眼鏡(そこまでしてあの女を守りたいのか!?)
…
次の日
男(『集団失語事件』)
男(某県某市某校で校内にいた生徒、教員含めた数十名が突如失語症に陥った)
男(原因は目撃者全員が発話及び表現する方法を忘れたかのような振る舞いを見せているため不明)
男「……か」
男(学校も臨時休校)
↓1
1男(女さんの無事を確かめに行かなくちゃ)
2男(昨日のだんまりを狩らないと)
3その他
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