千夜「お前を監視する」武内P「?」 (36)
注意事項
・武内Pもの
・武内Pもの
ちとせ「ねえ、千夜ちゃん」
千夜「はい、なんでしょうかお嬢さま」
ちとせ「CPのプロデューサーさんなんだけど……」
千夜「……あの男がどうかしましたか?」
ちとせ「……ううん。何でもない♪」
千夜「……」
千夜(何でもないわけが無かった)
千夜(わずかに覗かせた物憂げな表情は、お嬢さまの透き通るような白い肌と淡い月光と相まって、絵画のように美しく――そして儚かった)
千夜(うっかり漏れてしまった言葉を否定する笑顔は、切なさで私の胸をしめつける)
千夜(ああ――お嬢さまは恋をしている)
千夜(お嬢さまの年齢を考えれば、何もおかしいことではない。ただこれまではお嬢さまに釣り合う男がいなかったに過ぎない)
千夜(しかし……あの男が釣り合うとは思えない)
千夜(お前などしょせん、アイドルのことを第一に考えて自分のことは二の次で、アイドルのためならば役員に意見もするし、アイドルを守るための企画を立案して実現した程度の気概と実力があるだけでしょう)
千夜(それに相手が同性ならばある程度まともに話せるのに、年頃の少女が相手になると弱腰になる場合が見られる。さらにぴにゃこら太のような愛ら――憎らしい容姿です)
千夜(容姿といえばあの体つきだ。お嬢さまに相応しい相手は、やはり背が高くスタイルが良い男性でしょう。あれは背が高いを通り越して巨人だ、熊だ。私のように不愛想で地味な女なら問題無いが、お嬢さまのように華やかさと儚さを万華鏡のように煌《きらめ》かせる幻想的な美女があの男と並べば、誰であってもお嬢さまを心配します。私なら問題ありませんが)
千夜(挙句の果てにお嬢さまを惑わすとは……いよいよもって見下げ果てた奴だ)
千夜(とはいえ、たとえ気まぐれであってもお嬢さまが気にかけたのは事実)
千夜(いいでしょうCPのプロデューサー。お前がお嬢さまに相応しい相手か見極めてあげます)
千夜(――この白雪千夜が!!!)
pixivのリクエスト機能を利用して、CHeF氏に挿絵を描いていただきました。
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黒埼ちとせ
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※ ※ ※
武内P「……」テクテク
千夜「……」テクテク
武内P「……あの」
千夜「気にしないようにと、先ほども言ったはずです」
武内P「……失礼しました」
武内P「……」テクテク
千夜「……」テクテク
武内P(先ほどから白雪さんが私のあとをついて回ります。理由を尋ねても“気にするな”の一点張り)
武内P(もしかしたら相談したいことでもあるのでしょうか……?)チラッ
一般通過呪術師(三歩後ろを歩かれへん女は背中を刺されて死んだらええ。その点千夜ちゃんは立派やね。強がっとるけど自分は女やと心底理解しとる)
武内P(何でしょう今の金髪で和服の男性は? 登場してわずか一話で、ありとあらゆる死亡フラグを乱立させた芸人に似ていましたが……)
千夜「……」
千夜(CPのプロデューサー。年齢は三十歳で、お嬢さまとは十一歳も離れている。私とは十三歳差だがこれは問題な――関係ありません)
千夜(先日実施された社内の健康診断では身長190.5㎝体重94.0㎏。体重は去年より2㎏減少したが、これは仕事が忙しくて運動不足が原因だそうです。なぜ運動不足で体重が減るのです。お前はアスリートか)
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドッ
武内P「……ッ」
千夜「……ん?」
千夜(何かが近づいてきている? しかし大きすぎる音が反響して、前後のどちらの曲がり角から来ているかわからない。この事務所にはバッファローの群れでもいるのでしょうか?)
武内P「白雪さん。私から離れて壁ぎわに立ってください」
千夜「待ってください。何が起きて――」
武内P「危険です」
千夜「……ッ」トゥンク
千夜(ずるいぞお前。普段は情けないのに、いざとなれば真剣な表情と有無を言わさない口調)
千夜(……いけない。変なことを考えたせいか体が熱く――ん、この熱気は?)
茜「ボンバアアアアアアアアアアアァァァッ!!!」ドドドドドドドドドッ
日野茜
http://i.imgur.com/4S6b1vq.jpg
千夜(人間大の熱気が猛烈な勢いで目の前を通過したかと思えば、そのままの勢いであいつにぶつかっていきました)
千夜(あいつはというと、ぶつかった瞬間に片足を後ろにスライドさせて衝撃を緩和させている)
千夜(なるほど、日常的にこのような暴力が襲いかかるのならば、アスリート同様体は資本でしょう。それなのに食事が最近おざなりなようですね。お嬢様に用意するついでに、低脂質高たんぱくなお昼を用意してあげないことも――)
千夜「あげないことも……何をしているのですか、お前」
武内P「あの……日野さん」
茜「お・は・よ・う! ございまあああああああぁぁっっす!」グリグリ
千夜「……」
武内P「ええ、おはようございます。ですがその挨拶の仕方は止めましょうと、以前にも言いましたよね?」
千夜(口調は困っている。表情も困っている。だが本当に困っているのですか? 快活で太陽のように明るい美少女に全力で抱きつかれて、本当に困っているのですかお前は)ゴゴゴゴゴゴッ
茜「はい、聞きました! 私はプロデューサーにこうやって飛びつくのが大好きなのに、なぜかプロデューサーにダメだと言われてとても悲しかったです!」
武内P「悲しい想いをさせたのは申し訳ないですが……どうか聞き入れてほしいのです」
茜「ふっふっふ~。プロデューサー、私を子どもだと見くびらないでください!」
武内P「は、はあ」
千夜(呆気に取られていないで、まずは距離を取れ。やはり満更でもないでしょうお前)ゴゴゴゴゴゴッ
茜「時子様が教えてくれたんです!」
武内P「ざ、財前さんが……? いったい何と」
茜「男の人が言う『止めてくれ』には二種類あると。一つは本当に止めてほしいこと。そしてもう一つは――」
茜「本当はしてほしいけど、立場上仕方なく『止めてくれ』と言っていること!!!」
武内P「え……?」
千夜(……ほう)
茜「時子様は言いました! 男が口には出せない本当はして欲しいことを、ガンガンするのが淑女の嗜《たしな》みだと! これで私もルエェディィの仲間入りです!」
武内P「ま、待ってください!」
茜「はい、なんでしょう!」
武内P「あのですね、日野さん。色々と言いたいことはありますが……まず第一に、私は本当に飛びつくことを止めてほしいと思っています」
茜「――――――――――え?」
武内P「理由はこれまでも何度か言いましたが、貴方はアイド――『嫌い……なんですか?』……え?」
茜「私のことが……嫌いなんですか? 私にこうしてくっつかれるのは……不愉快なんですか」ガタガタ
武内P「……ッ!!?」
千夜(明るい陽気を分けへだてなく与える太陽の権化のような少女が、途端に顔を青ざめて震える様子は見ていて胸が苦しくなります)
千夜(一連の流れを見ていて事情を知っている私だが、つい責める目であいつを見てしまう)
千夜(相手は年頃の女の子です。もう少し言葉を選べないのですか、ばか)
武内P「け、決してそのようなことはありません! 私は日野さんのように、元気で明るい女の子に慕われて嬉しいと思っています!」
茜「!!?」
武内P「しかしですね、貴方はアイド――『つまり本当は飛びついて欲しいんですね!? 嫌がっているフリをしているだけなんですね!?』……あの」
茜「わかりました! あくまで嫌がっている“フリ”だから、これからは淑女として気にせずにドンドンと飛びつきます!」グリグリ
武内P「チギャウ……チギャウ……」
千夜(だからもう少し言葉を選べと)
茜「違うだなんてエへへへへへ♪ 欲しがり屋さんですねえ、プロデューサーは!」
千夜「……」
茜「ハッ!? 名残惜しいですがそろそろ時間でした! 行ってきます!」
武内P「はい……気をつけて行ってください」
<┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ドッ、ボンバアアアアァッ!
武内P「……」
千夜「……」
武内P「あの……違うのです」
千夜「違うというのは何のことです? 元担当アイドルにされるがままに翻弄され、満更でもない顔で抱きつかれていたことでしょうか? それとも嫌がるフリをして茜さんを煽り、次回以降も熱烈な抱擁を催促したことですか?」
武内P「……情けない姿を見せてしまい、申し訳ありません」
千夜「はぁ……お前は普段から、あのようにアイドルと接触しているのですか?」
武内P「そ、そのようなことは」
千夜「どうでしょう。お前なりになんとか言い聞かせようとするがあっさりと押し切られ、さらに状況が悪化する様子がありありと目に浮かびます」
武内P「う」
千夜「図星ですか」ハァ
武内P「何とかしなければと、常日頃から感じてはいるのですが……」
千夜「……」
千夜(大きな体を意気消沈とさせるその様子は情けないと思うと同時に、この男は愛らしいアイドルとあそこまで触れ合うことを役得ではなく、罪悪感を覚えていることを教えてくれます)
千夜(その誠実さと、情けない姿と相反する屈強な体つきが結びつき、ある衝動に襲われた)
千夜(この衝動は何でしょう? 悪戯心だ。悪戯心に違いありません)スゥ
武内P「し、白雪さん」
千夜「何とかしたいと思うのなら、少しは隙を無くしたらどうです。簡単に抱きつけましたよ、ばーか」
千夜(そう、これはきっと悪戯心。私は初めての悪戯心に戸惑っているに過ぎない――――――――――はず)
※ ※ ※
千夜(……気がつけば随分と長い時間あいつに抱きついていました)
千夜(五分か? ひょっとしたら十分かもしれません。誰かが近づく足音のおかげで我に返り、あの場から走って逃げましたが――なぜ私はあのようなことをしでかしたのでしょう?)
千夜(悪戯心……そうです、悪戯心であいつを試したのでした。その甲斐あって、あいつは少女の戯れを振り払うこともできない情けない男だと判明しました。お嬢さまにはまるで相応しくない)
千夜(……まあ誠実で真面目な男であることも確認できましたが、そんなことは前からわかっていたことです)
千夜(お嬢さまのためにもさらなる監視が必要です!)
コンコン、ガチャ
千夜「入りま――何をしているのですか、お前は」
武内P「……これはですね」
小梅「千夜さん……こんにちは」ニッコニコ
千夜(部屋に入るとあいつだけではなく、小梅さんもいました)
千夜(……あいつの膝の上で、幸せそうな表情で)
千夜「お前……ロリコンだったのですね」
武内P「そう誤解されても仕方ないのですが……白坂さんがここに座りたがって、私が拒否できなかった結果なんです」
小梅「……うん♪ プロデューサーさんはダメって言うけど……ここはもう前から、私の場所だもん。ここに座っている間は……プロデューサーさんが私だけを意識してくれて…まるで独占しているみたいで、とっても嬉しいの」
千夜「お前は中学生にまで押し切られるのですか……ん?」
千夜(あまりの情けなさにこちらまで頭を抱えたくなっていると、あることに気がついてしまいます)
千夜「前から私の場所……? 小梅さん、確かこいつが貴方のプロデューサーになった時は、貴方はまだ小学生でしたよね」
小梅「うん、そうだよ」
千夜「ほう……随分と長いこと膝の上を許しているのですね、ロリコンプロデューサー」
武内P「」
小梅「ち、違うよ千夜さん」
千夜「小梅さん。小学生の頃から世話になった相手だと信頼しているのはわかります。それでもお願いですからその男から離れましょう。危険です」
千夜(このような危険人物、まったくもってお嬢さまには相応しくない! もちろん小学生や中学生にも近づかせてはいけない。ここは高校生の私がこのダメ人間に言って聞かせなければ)
白坂小梅
http://i.imgur.com/rN7g11g.png
武内P「さ、さあ白坂さん。白雪さんの言う通りにしましょう」
小梅「……待って。このままじゃプロデューサーさんが誤解されたままだよ」
武内P「大丈夫です。白雪さんも本気で私をロリコンだとは思っていませんから……多分」
千夜「……お前がアイドルと仕事に誠実であることぐらい、私だって知っています。仕事で親御さんから預かっている幼いアイドルを、そのような目で見ることなど間違ってもあり得ない」
武内P「白雪さん……」
千夜「だがそれとこれは別でしょう。たとえ下心が無くても、いくら懐いている女の子が望んでいるとしても、中学生の女の子を膝の上に乗せるなんてあってはいけません。私が誤解しなくても、他の人に誤解されたら意味が無いのですから」
小梅「……ううん。やっぱり千夜さんは誤解しているよ」
千夜「え……?」
小梅「私はね、プロデューサーさんに懐いているんじゃなくて――」
小梅「愛してるの」
武内P「しらさか……さん?」
千夜「……」
千夜(きっとお前からでは、膝の上に腰かけ私を見ている小梅さんの表情はうかがえないでしょう)
千夜(子どもの戯言と切って捨てることなど許されない、陶酔した表情と色香。己の想いを全て一人の男に捧げることへの喜びと悦《よろこ》びに満ち満ちた、女の顔)
千夜(そしてなぜそれをこの場で言ったのか。朴念仁に聞かせるためか? それもある。でもそれだけじゃない。それが主目的ではない。なぜなら小梅さんはこいつを見ないで、私の目を見て想いを告げた)
千夜(――宣戦布告だ)
千夜(誰への宣戦布告か? 当然私にではありません。なぜなら私はこいつのことを、これっぽっちも想っていません。この歳で女の顔ができる小梅さんが、そのことを見抜けないはずがありません)
千夜(彼女は私を通して、お嬢さまに宣戦布告をしたのです)
小梅「……正直にならないと、私には……ううん、誰にも勝てないよ」
千夜「……何のことです?」
小梅「わらかないならいいよ。……それじゃあ離れるように言われたし、今日はもう行くね」
千夜(そう言うと小梅さんは、あいつの太ももをねっとりとなでながら膝からおりた)
小梅「じゃあね……バイバイ」
ガチャ、バタン
千夜「……」
小梅『ここに座っている間は……プロデューサーさんが私だけを意識してくれて…まるで独占しているみたいで、とっても嬉しいの』
千夜(私だけを意識……独占)
武内P「ところで白雪さんは何の用件で来られたのですか?」
千夜(……さて、先ほどはこいつが幼いアイドルを性的な目で見るなどありえないと言いました。これは正直な気持ちだったのですが、小梅さんの年齢に似つかわしくない色香を見てしまったあとでは不安が残ります)
千夜(たとえ元はロリコンではなくとも、小梅さんにあそこまで迫られたらロリコンになってしまいかねない。お嬢さまのためにも、こいつがロリコンかどうか確かめなければいけません)
武内P「白雪さん?」
千夜「ん、失礼。少し考えごとをしていました」
武内P「……? それで何かあったのでは?」
千夜「そうでした。確かめたいことがあったので、少し下がってもらっていいですか。いえ、椅子に座ったまま……はい、そこで結構です」
武内P「いったい何をする『失礼します』……あの、白雪さん?」
千夜「どうかしましたか、お前」
武内P「なぜ……私の膝に座るのですか?」
千夜「……ほう。そうですか、そうですか。小梅さんは乗っていいが、私のように不愛想な女は乗せたくないというわけですね」
武内P「ちが……っ、違います!」
千夜「そんなに慌てるな、ばか」
千夜(……背中が暖かくて、安心できる。私の背中を打つ鼓動が心地よい。こんなにも心臓が鳴っているのは、こいつの心臓が大きいからか。それとも私が膝の上に乗ってきたことにそんなに驚いたのか? それとも……ドキドキしてる?)トゥンク
千夜(……いけない。慣れないことをしたせいか、私の心臓までうるさくなってきた)
千夜(それにしても……)
武内P「あの……白雪さん。そろそろ事情を説明してください」
千夜「……」
サワサワ、サスリサスリ
武内P「……ッ!」
千夜(ほんの少し……いや、少しとは言えないかもしれない。ねっとりと太ももを撫でただけで面白いぐらい反応する)
千夜(嗚呼――膝の上に座ることがこれほど面白いとは。こいつがこれ以上なく私を意識して、一挙一動に振り回される)
千夜(小学生の頃にこれを覚えてしまった小梅さんが、どれだけ注意されても続けるのは仕方ない。悪いのはエッチなお前じゃないか。まったくもって、お嬢さまに相応しくない)
武内P「白雪さん……なぜ、このようなことを」
千夜「……?」
千夜(なぜ……なぜでしょう? 私はお前がお嬢さまに相応しいか見極める必要があって……お嬢さまの相手にロリコンなど論外であって……そうだ、だから私は……)
千夜「念のためにお前が本当にロリコンでないか、確かめているだけです。私への反応を見た限り、一応お前は正常なようです」
千夜(そうでした。こいつがロリコンがどうか確かめるためでした。けっしてお前の膝の上に座ってみて、未成年のアイドルを決してそういう目で見ようとしないお前を、独占してみたかったわけではない)
千夜「ただ先ほども言いましたが、小梅さんを膝に乗せたらロリコンだと疑われて当然です。今後はちゃんと止めるべきです」
武内P「ええ、白雪さんの言う通りです」
千夜「もし……」
武内P「……?」
千夜「もし小梅さんを膝の上に乗せられなくなって……膝の上が寂しくなったのなら、私を呼びなさい」
武内P「え……?」
千夜「考えてあげなくも……ない」
※ ※ ※
千夜(――あの後、自分が何を口にしているかわからなくなり、突然のことに呆けてしまったあいつを放って逃げ出した)
千夜(なぜ私はあんなことを口にしたのでしょう?)
千夜(……そうでした、あいつをロリコンにするわけにはいきません。今はロリコンではありませんが、小梅さんの妖しい色香にかかればどう転ぶかわかりません)
千夜(これ以上あいつの膝の上に小梅さんが座らないようにするためには、仕方なく、まったくもって業腹ですが、私が身を挺《てい》するしかないではありませんか)
千夜(こうして落ち着いて考えてみると、私は至極合理的な判断をしていたのですね)
千夜(……よし。恥ずかしくてあいつに合わせる顔が無いと勘違いしていましたが、まったくの杞憂でした。引き続き監視を続行しましょう)
千夜(さてあいつはどこに……いた。でかい図体のおかげで簡単に見つけられ――」
「兄さま」
千夜「……ッ!?」
千夜(あいつのでかい図体で隠れて見えませんでしたが、どうやら誰かと話していたようです)
千夜(しかし“兄さま”とは? あいつの家族関係は把握していませんが、同じ事務所に妹がいるのなら話題になりそうなものです。いったい相手は誰でしょうか?)
千夜(とりあえずここは隠れて様子を見ましょう)
武内P「鷺沢さん、どうかしましたか?」
千夜(文香さん……?)
※ふみふみは武内Pの妹である。古事記(おきてがみ)にもそう書かれている。
武内P「姉を望んだ末路」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1563177051
武内P「ホモのショックで記憶が」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1593212226
武内P「魔神が生まれた日」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1597086263
武内P「ノンケの証明」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1602379126
武内P「神崎さんが反抗期になってしまいました……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1608413995
武内P「私にマーキングしたい?」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1615806377
千夜(文香さんがあいつの妹だった……? いえ、そうだとしたら“鷺沢”と苗字で呼ぶのはおかしい)
一般通過呪術師(武内さんの妹……あんま似てへんな)
千夜(つまり、血がつながっていないのに文香さんが“兄さま”と呼んでいる)
千夜(あいつは大人しく内気な美少女に、自分を“兄さま”と呼ぶように強制している……ッ!!)
千夜(変態だ……まごうことなき変態だ!!)ワナワナ
文香「兄さまにお尋ねしたいことがあるのですが……」
武内P「私にですか? 何でしょう」
文香「兄さまには普段からたいへんお世話になっています。アイドルとしても勿論ですが、男性に不慣れな私が話しやすいようにと兄として振舞っていただき、感謝しかありません」
千夜(……ん?)
鷺沢文香
http://i.imgur.com/dH7qtcx.jpg
文香「そこで兄さまのために何かできることはないかと、考えていました」
武内P「そのようなことは。私はたいしたことはしていないので、気にしないでください」
文香「そうは行きません。兄さまと呼ばせてほしいという、荒唐無稽な私の願いを聞き入れてくださっているのですから」
千夜(文香さんに強制しているわけではなく、文香さんからの申し出たことのようですね)
千夜(そうですか、ふーん。十九歳の美しい現役女子大生アイドルに、兄と慕われているわけですかお前は)ゴゴゴゴゴゴッ
文香「兄さまにできることはないかと悩んでいたところ、時子様が教えてくれたんです」
武内P「……財前さんが?」
文香「はい」
文香「男が血のつながっていない妹にしたいことは、一つだけだと」
武内P「」
文香「しかし時子様はそこから先は教えてくれず、自分で兄さまに聞くように促され……兄さま、どうか教えてください。兄さまが私にしたいことは何なのですか?」
武内P「その……何なのでしょうね」
文香「?」
千夜(血のつながっていない妹にしたいこと……? 何なのかはわかりませんが、あいつのうろたえ方を見るに、ろくなことではないのでしょう)
千夜(茜さんにあいつに抱きつくように促したり、時子さんはいったい何を考えている……?)
文香「兄さま、教えてくれないのですか?」
武内P「いえ……その……何のことなのか、見当がつかなくて」
文香「そのようには見せませんが……あ」
千夜(文香さんの今の反応。ろくでもないことに気がつき――)
文香「私では……文香では、妹として不十分なのですね」シュン
千夜(そちらで受け止めましたかあ)
武内P「……ッ!? け、決してそのようなことはありません」
文香(兄さまは優しいからそう言ってくれますが……先ほどの反応を見るに、男が血のつながっていない妹にしたいことへの心当たりはあるようです。それを私に教えてくれないということは、私にはそれができないと見たか、あるいは……私程度の妹にはしてほしくはないということ)
文香(兄さまはこんなにも私に優しいのに、妹として何と私は不甲斐ないのでしょう。兄さまに恥じない妹でなければいけないのに、私は……私はっ)
文香(兄さまのためにも……もっと、もっと勇気を出して……偽ることなく、本当の自分を!))
文香「あの……兄さま。実は恥ずかしくて、これまでずっと嘘をついていたことがあるんです」
武内P「鷺沢さんが嘘を……? 何のことかはわかりませんが、世の中にはついていた方がいい嘘もあります。無理に話さなくてもいいのですよ」
文香「いえ、これは単に私が恥ずかしいあまりについていた嘘なんです」
千夜(何が起きようとしている? 自分は妹として不甲斐ないと判断してしまった文香さんは、いったい何を告白するつもりなのでしょう?)
文香「む、胸のサイズを……本当より小さく」
武千夜『』
文香「実は……その……あまり大きいと見られるのではと思って、本当より小さい数字にしてもらったんです!」ワタワタ
武内P「お、落ち着いてください鷺沢さん」
文香「う、嘘だと思うのでしたら! はは、計ってもらっても……恥ずかしいですけど兄さまにでしたら」ワタワタ
武内P「し、信じます! 前から数字が違うと思っていましたから!」
文香「……前から?」ピタッ
千夜(前から?)
武内P「あ」
文香「兄さまは以前から……私の胸を、気にしていたのですね」
武内P「ちが……違いますっ」
文香「///」
千夜(B72)「……」ペタペタ
千夜(そうか……あいつは胸の大きさを気にするくだらない男だったのですか。そしてどうやら大きいのがご所望のようですね。お嬢さまも大きい方だが……そのように胸で相手を選ぶ男はお嬢さまに相応しいとは、とても、とても、とても言えない。たとえAカップでも、大切な者の胸ならば愛おしいという男でなければ。たとえAカップでも!)
千夜(矯正だ……矯正しなければ)ゴゴゴゴゴゴッ
比較画像
http://i.imgur.com/Pdvgz6U.png
http://i.imgur.com/bt1UxPV.png
文香(に、兄さまが以前から私の胸を気にしていただなんて……え、もしかして?)
文香(女性の胸を気にする
↓
性的な目で見ていた
↓
血のつながっていない妹と“男”)
この時、ふみふみの脳内で点と点がつながってしまい――
文香「……ッ」ボンッ
武内P「さ、鷺沢さん!?」
自分が何を言っていたかを察してしまい、頭が一瞬にして沸点に達した。
文香「に、兄さま……わわ、私はそのようなつもりはなく……はしたない申し出を……」
武内P「わかってます! わかってますから!」
何もわかっていないが、とにかく肯定する武内Pであった。
タタタタタタタッ
武内P「ん?」
ありす「そこまでです! ドクターストップです!」
文香「あ……ありすちゃん。私は……」
ありす「大丈夫です。みなまで言わなくてもわかります。文香さんは立派に戦いました。さ、手を貸しますのでいったん部屋に戻りましょう」
千夜(どうやら私とは反対側から事態を見守っていたようですね」
武内P「橘さん、鷺沢さんをお願いします」
ありす「もちろんです。あ、ところでCPのプロデューサーさん」
武内P「はい、なんでしょう」
ありす「Fです」
武内P「F……? F!?」
千夜(F……? Fとはいったい……まさか!?)
千夜(F……カップ……だと?)
文香「ありすちゃん……?」フラフラ
ありす「すみません、お待たせして。もう少し私に体重をかけてもらって大丈夫です。ゆっくり行きましょう」
文香「はい、お願いします。それでは兄さま。お恥ずかしいところを見せてしまいましたが……もしよければ、今のことは忘れてください」
武内P「……わかりました。どうかお大事に」
<ありすちゃん……応援してくれたのに、ごめんなさい
<いいえ、そんなことありません! 想定とは違いましたが、これも悪くない結果ですよ。
武内P「……」
武内P(F……F……忘れてくださいと言われましたが、衝撃が強すぎて)
武内P(ダメだ! 忘れることは無理でも、このことについて考えるのは止めなければ……っ)
「兄さま?」
武内P「鷺沢さん!? 部屋に戻ったのでは――」クルッ
千夜「残念ながら白雪です、ばーか」
武内P「……ッ!?」
千夜「しかし兄さまには驚きました。文香さんの気が弱いことを良いことに、自分を兄さまと呼ぶように強制するとは。兄さまの人として許されない醜態に、千夜は涙が出そうです」
武内P「ご、誤解です白雪さん!」
千夜「アイドルに兄さまと呼ばれ、満更でもない態度をとっていながら言い訳ですか。見下げ果てた男だとは思っていましたがまだまだ下げ止まりがこないとは、逆に見直しましたよ兄さま」
武内P「そ、そう思われても仕方がない状況だったとは思います。ですが、違うんです」
千夜「……違うと。まあ途中から見てしまった私から見ても、文香さんがイヤイヤやっているようには見せませんでした」
武内P「わかっていただけて何よりです。……ところで」
千夜「何でしょう兄さま?」
武内P「なぜ……白雪さんまで私を兄さまと呼ぶのですか?」
千夜「フッ。そんなこともわからないのですか、おま――兄さまは」
千夜「どのような経緯で文香さんに兄さまと呼ばれるようになったかは知りません。そして現状を文香さんも嫌がっていない以上、私が口出しする必要はないのかもしれません。しかし私にはある懸念が生まれました」
武内P「懸念?」
千夜「兄さまがどれだけアイドルのために一生懸命なのかは、私も多少なりとも知っているつもりです。寝る間も惜しんで現場を走り、上司に意見し、アイドルのケアもする。そんな忙しい毎日を過ごしていたら、多少性格が歪んでしまっても……アイドルに兄と慕われたいと考えるだけでは飽き足らず、それを実行に移してしまっても仕方ないでしょう」
武内P「ちが……違います!」
千夜「落ち着いてください。私は兄さまを責めているわけではありません。仕方ないと言っているでしょう?」
千夜(そもそも話を持ちかけたのは文香さんからということを、私は知っているわけですが)
千夜「まあ仕方ないとはいえ、そして文香さんも現状を楽しんでいるとはいえ、兄さまが文香さんという妹一人では満足できずに別のアイドルに妹を求めるかもしれません。そしてそのアイドルが、歪んでしまった兄さまの欲望を受け止められるとは思えません」
千夜「私だって本当は嫌ですが、お前が歪んでしまった経緯を知り、そして他のアイドルが毒牙にかかるぐらいならば私がお前を兄さまと呼びましょう」
武内P「違うんです白雪さん……話を聞いてください」
千夜「……なんですか? 文香さんに兄さまと呼ばれるのがよくて、私に兄さまと呼ばれるのは嬉しくないというのですか?」プクー
武内P「そういうわけでは……」
クス、クスクスクスクス
武千夜『!?』
ちとせ「そっかー。CPのプロデューサーさんはフフ、魔法使いじゃなくて千夜ちゃんのお兄ちゃんだったんだーアハハハッ」
千夜「お、お嬢さま!?」
ちとせ「いいなあプロデューサーさんは。千夜ちゃんにそんなに甘えてもらえて。千夜ちゃんったら私には全然甘えてくれないのに」
武内P「は、はい」
千夜「お、お嬢さま。これは……これは」
ちとせ「ん、これは?」
千夜(まずいです! お嬢さまは何かの間違いでこいつを想っている。私はこれまでの観察でこいつはお嬢さまに相応しくないと確信していますが、それをまだお嬢さまに説明できていません)
千夜(お嬢さまから見れば今の私は、自分の想い人を横からさらおうとしている泥棒ネコではありませんか!)
千夜(違うのです、お嬢さま。私はただ……ただ? なぜ私はこいつを兄さまと呼んでしまった?)
千夜(文香さんに兄さまと呼ばれ、満更でもない様子で親しげに話すこいつに、私は……私は……)
ちとせ「千夜ちゃん、千夜ちゃん」チョイチョイ
千夜「は、はいっ」
ちとせ「耳を貸して♪」
千夜「……?」
千夜(どうやらお嬢さまは機嫌を損ねていないようです。私のことをよく理解されているお嬢さまのことです。私がお嬢さまに都合の悪いことをするはずがなく、こいつを兄さまと呼んだことも何か理由があると信頼してくれ――――――――――)
ゴニョゴニョ
千夜「……え?」
武内P「?」
ちとせ「だーかーら、ゴニョゴニョ♪」
千夜「し、しかし……」
ちとせ「だって魔法使いさんの反応はいまいちだったでしょ? つまりそういうことなの」
千夜「……この、変態が」
武内P「あの……何のことでしょうか?」
武内P(黒埼さんに何を耳打ちされたのでしょうか? 蔑むような眼をするのは止めてほしいのですが……)
千夜「に……」
武内P「に?」
千夜「にぃに」
武内P「」
千夜「……まったく、私は十七なんですよ? “兄さま”という呼ばれ方に慣れてしまったからと、このような幼子がするような呼び方を求めるとは、にぃにの性癖には呆れてものも言えません」
武内P「」
千夜「とはいえ、ここで私がしてあげなければ気の弱いアイドルに無理強いするか、意味を理解できていない幼く無邪気なアイドルを騙しかねません。ここは私がお前をにぃにと呼んであげましょう」フンッ
武内P「」
千夜「どうしたのですか? にぃにが口に出せない恥ずかしい願いを私が叶えてあげたというのに」
武内P「」
千夜「……? お嬢さま?」
ちとせ「~~~~~っっっ」プルプルプル
千夜「お嬢さま!?」
ちとせ「アハ……ハハッ。千夜ちゃんが……プフッ……にぃにって……お腹……痛い」
千夜「なっ……なっ……なっ……」
千夜「お前えええええぇぇぇ~っ!!」ポカポカポカ
千夜(お嬢さまにからかわれたことを知り、あいつが無言で立ち尽くす理由を察した私にできることは、八つ当たりとはわかっていてもあいつの胸板を叩くことだけでした)
千夜(……別に本気で叩いたわけではありません。ですが私の握った手などを何ともしないその分厚い胸板の感触と、呆然としたまま私にされるがままのあいつの様子)
千夜(それがほんの少しだけ楽しかったのは……お嬢さまにも内緒です)
※ ※ ※
千夜「失態でした……まさかお嬢さまに見られてしまうとは」ハァ
千夜(落ち込んでいても仕方ありません。これまでの観察結果をまとめるとしましょう)
千夜「……変態だな」
千夜(茜さんの件だけでもお嬢さまに相応しくない。異常なまでに押しに弱いという欠点が見られ、あまりに隙だらけで私でも簡単に抱き着ける。ここまでならまだ救いがあります)
千夜(しかし次の小梅さん。小学生の頃から、そして中学生となって妖しい色香を漂わせるようになっても膝に乗せていたとは。私自身をもってあいつがロリコンではないことを証明できたからいいものを、傍から見ればロリコンの変態です)
千夜(最後の止めには文香さんだ。内気な美女に自分だけ“兄さま”と親しみをもって接してもらうことが、そんなに嬉しいのですか? 文香さんから持ちかけた話なんでしょうが、お前の満更でもない様子をはっきりとこの目で見ました。しかも私に兄さまと呼ばれても呆気に取られるだけで――胸か!? 逆サバができるほど豊満な胸がそんなに良いのか!? これは変態です!!)
千夜(……しかし決して悪い男ではありません。押しに弱いのはそれだけ相手を慮《おもんぱか》るからでしょう。それに子どもに懐かれる人間が悪人なはずが……子ども? 女の顔ができる小梅さんを子ども扱いしていいのでしょうか……?)
千夜(まあそれはさておき、あれだけ凶悪な顔つきと体をしているのに、男性に不慣れな文香さんが親しく話せる相手でもあります。変態ではあっても、根は良いやつなんでしょう)
千夜(きっと最初から変態であったわけではなく、あまりに忙しい仕事に取組むうちに、段々と歪んでしまったのでしょう。誰かが矯正してあげなければ。そう、誰かが)
千夜「……さて、お嬢さまを説得できるだけの材料はそろいましたが……これは逆にそろいすぎました。こんな変態に想いを寄せてしまったなど知れば、繊細なお嬢さまには一生モノのトラウマになりかねません」
千夜(別に全てを話す必要はありませんが、いくら信頼する私の言葉とはいってもすぐに想いを振り切れないでしょう。ただでさえ同じ事務所でよくよく顔を合わせるのです。知らず知らずのうちに目を向けてしまい、そしてあいつの変態っぷりを知ってしまいショックを受けてしまうでしょう)
千夜(お嬢さまをやんわりと説得しつつ、あいつを誰かが元の真人間へと矯正しなければいけません。しかしそんな都合の良い誰かはいるのでしょうか?)
千夜(例えば茜さん。彼女は今のままのあいつが好きなんでしょう。矯正する必要性を感じてくれない)
千夜(例えば小梅さん。彼女は矯正するどころか、むしろあいつを少女好きへと歪めようとするだろう)
千夜(例えば文香さん。彼女自身に悪意はないのですが、血のつながっていない男を兄さまと慕って歪めようとしている側だ)
千夜「……やはりそんな都合の良い人はいませんね」
千夜「ハァ、まったくもって仕方ない。少しも気が乗りませんが、これもお嬢さまのためです。仕方なく、イヤイヤですが、私が何十年かかってでも矯正――」
「昨日も打ち合わせだって言って、CPのプロデューサーと二人っきりで何をナニしてたの?」
千夜「……」
千夜(曲がり角の向こう――休憩所の方から、聞き捨てならない言葉が聞こえてきました)
千夜(生真面目なあいつが職場でふしだらな行為に及ぶとは思えません。思えませんが……念のため、誰が話しているか確認はしておきましょう)ゴゴゴゴゴゴッ
千夜(場合によっては……)コソッ
由里子「いい加減ノンケのフリは止めるんだじぇ!!」
まゆP「……いい加減にするのはお前の方だろ」
大西百合子
http://i.imgur.com/AHAZfkl.jpg
千夜「」
千夜(先ほどの声は……由里子さんのものでした。つまり由里子さんは、あいつとまゆPが……そういう仲だと言っている?)
由里子「あのね、ユリユリもまゆPの立場はわかっているんですよ」
まゆP「俺もお前が、これっぽっちも俺の立場を理解していないことはわかっているよ」
由里子「最近は認められつつあるけど、まだまだ同性愛への風当たりは強いのが現状です」
まゆP「そういう良識のある立場を取っている風をよそおって、人にレッテルを貼るのを止めろってんだよ」
千夜(そんなわけがありません。あいつが男色なはずが……)
由里子「特にまゆPの場合、同性愛だと知られたら担当アイドルがどれだけショックを受けるかわかりません。だからノンケのフリをするのも仕方ないとも言えます」
まゆP「俺がノンケのフリをしているっていう言いがかりに、説得力を乗せるの止めてくんねえかなあぁ!?」
由里子「 し か し ! ! 」
まゆP「うるせえよ」
千夜(ですが、茜さんのように快活で明るい美少女に、あそこまで無邪気に懐かれたら普通は……いえ、茜さんの無邪気さに手を出すことへの罪悪感が勝ったかもしれません)
由里子「まゆPがそうやってノンケのフリをする度に、自分の立場を守る度に、どれだけCPのプロデューサーが傷ついているかわかっていますか!?」
まゆP「俺とあいつがお前の言いがかりにどれだけ傷つけられているか、わかっていますか?」
由里子「CPのプロデューサーはまゆPがノンケのフリをする度に『ああ、私との関係を知られたくないんだ。私との関係を恥ずかしいと思っている……私のことを、本当に愛してはくれていない』……という感じで傷ついているんだじぇ!」
まゆP「あいつなら『なぜ大西さんは私をホモだと思うんでしょう? しかも一部の人はそれを信じてしまって……』という感じで困ってたぞ。そしてそれは俺も同じだ」
千夜(小梅さんの妖しい色香に屈していないのも、相手はまだ子どもだからだと自分に言い聞かせて、何とか自制できたと見れます)
由里子「というわけでまゆP! 自らの罪の認識したのなら、今すぐCPのプロデューサーの元へと駆け寄り! 人目をはばからず熱い抱擁を――――――――――あっ」
まゆP「ん?」クルッ
まゆ「……」ニッコリ
まゆP「あっ」
千夜(しかし文香さんは……文香さんだけは一切の言い訳ができません。茜さんと小梅さんに手を出していないだけでも苦しいのに、そのうえ文香さんにも手を出さないのは……やはり……ホモ……という、ことに)
まゆ「ハイクを詠め」
まゆP「ま、まゆ……ちょっと落ち着こうよ。な?」
由里子「……ノンケとは まだ運命を 知らぬだけ」(腐女子あるある川柳2020)
まゆ「イヤーッ!」
由里子「グワーッ!」
まゆP「……インガオホー」
千夜(そんなはずが……そんなはずがありません! 今すぐ由里子さんに今の言葉は否定――)
千夜「……なんですかこれは? ツキジめいた光景です」
千夜(私が考え事をしている間に何が起きたのでしょうか? 何か言い争っていたような気はしましたが、考え事に夢中でぼんやりとしか覚えていません)
由里子「う……うう」
千夜「由里子さん!? まだ息が」
由里子「CPのプロデューサーは……受け」ガクッ
千夜「……ッ」
千夜(そう最後に言い残して、由里子さんは気を失ってしまいました)
千夜(とりあえず休憩所のソファーに彼女を横たえてから、考えをまとめます)
千夜「今際《いまわ》の際《きわ》まで彼女はあいつをホモだと主張した……嘘をついているとは思えない」
※本気でそうだと思い込んでいるだけです
千夜「つまりあいつの正体は、快活で明るい少女に抱きつかれる日々をなし崩しで受け入れ、もう中学生になった少女をそれでも膝の上に乗せ続け、血のつながっていない女子大生に兄としてコミュニケーションをとる」
千夜「さらに、ホモ」
千夜「フフ……フフフフフフフ」
千夜「また一つ、矯正が必要な点が増えてしまったか」
千夜(そうだ。男が好きだなんて許せない。許せ………………………なぜ?)
千夜(好きになる相手を選べるのなら苦労はしません。男が男を好きになっても、それは責められることでも、改めなければいけないことでもありません。それなのになぜ許せない?)
千夜(わからない……わからない……でも、許せない)
千夜(だって……だって……好きになる人は、選べないんだから)
千夜(たとえ許されない年齢差でも。アイドルとプロデューサーでも。そして、大切な人と同じ――)
千夜「ちが……私は……お嬢さまのために……」
千夜「何を……私は考えている? 私はお嬢さまのために……そうです、お嬢さまのためです」
千夜「こんなことを考えてしまうのも、あいつのせいです。早くあいつを矯正すれば、こんなことを考えなくてよくなる」
千夜「しかし……どうやって同性愛者を異性愛者に?」
――力が欲しいですか?
千夜「……ッ!?」
――力が欲しいのでしたら
千夜「貴方は……」
――くれてやる!!
※ ※ ※
武内P「……」カタ、カタカタカタッ
コンコン、ガチャッ
千夜「失礼します」
武内P「白雪さん、どうしましたか?」
千夜「……」
ガチャン、カチッ
千夜「お前をねぎらおうと思いまして」
武内P「……え?」
千夜「今日一日お前を観察していましたが、想像していたより……というよりも、想定していなかった形で振り回されて哀れに思いました」
武内P「あ、哀れ……」
千夜「体よりも心の方が疲れているでしょう。暖かいお茶でもと思って、差し入れを持ってきました」
武内P「それは……お気遣いいただきありがとうございます」
千夜「――と、その前に」
武内P「……それは?」
千夜「先ほど知り合いからいただいた薬です。疲れている時に飲むべきものだそうで、本当は1000倍に希釈するのですが……お前は人より体が大きいですし、たいへん疲れています。本当なら五滴ぐらいなんですが、七滴にしておきましょう」
ポチャン、ポチャン
千夜「……さあ、どうぞ」
武内P「ありがとうございます。ちょうど喉が渇いていたところなので、いただきます」
ゴクリ、ゴクリ
千夜「……飲みやすいように少し温《ぬる》めにしましたが、温すぎましたか?」
武内P「いえ、ちょうどいい飲みやすさです」
千夜「そうでしたか。一気に飲んでもらえて助かります」
武内P「助かる……?」
千夜「失礼、こちらの話です。ところで椅子に座っていると危ないので、ソファーに移動した方がいいですよ」
武内P「……椅子は危ないんですか?」
千夜「ええ、危ないです」
武内P(何かの健康法でしょうか? 私をねぎらうと言ってくれていますし、ここは大人しく言うことを聞きますか)ガタッ
――ドクンッ
武内P「……ッ!?」フラッ
千夜「ほら、危ないと言ったじゃないですか。さあ、手を握ってください。ソファーへ行きましょう」
武内P「は、はい……?」
フラフラ~、ドサッ
武内P「あの……白雪さん? これは……?」
千夜「感度3000倍です」
武内P「……え?」
千夜「感度3000倍になる薬です」
武内P「…………え?」
千夜「感度3000倍になる薬を薄めてお前に飲ませました」
武内P「……………………え?」
千夜「私は男を知りませんが、男がどのような生き物であるか知識では知っています」
千夜「今日一日見ていただけで、あんなにも可愛らしい女の子たちと触れ合って、何度も何度も手を出すのを我慢していたでしょう」
千夜「それが今日だけでなくこれまでも、そしてこれからも続いたらお前はおかしくなってしまいます」
千夜「……いえ、おかしくなる前に何とかしようと、本当は女が好きなのに自分は男が好きだと言い聞かせたのかもしれません」
武内P「白雪さん……いったい……何を……言って」
千夜「疲れすぎて歪んでしまったお前を、矯正しようとしているんです」
千夜「安心してください。お前は何も悪くない。未成年のアイドルに手を出すわけにはいかないと、数えきれないほど我慢してきたんでしょうが、薬を盛られて意識がもうろうとしているお前は被害者です」
千夜「何の罪悪感もなく、溜まりきった欲望を吐き出せばいい」
武内P「ま……待ってくださ……」
千夜「天井のシミでも数えていなさい。それまでに終わりますから」
武内P「この部屋に……シミは……」
千夜「――それなら」
ガシッ
武内P「!?」
千夜「私の顔を……見ていてください。初めてで怖いが……お前が見ていてくれるのなら、頑張れる」
武内P「白雪さん……」
千夜「さあ、始め――」
ガチャ、バタン
茜「プロデューサー! 文香ちゃんを呼んで来ましたよ!」
文香「兄さま、いったいどういった……」
武千夜『』
ふみあか『』
茜「ちちち、千夜ちゃん!? いったいなんでプロデューサーの上に乗って……乗って!? ソファーで!? え? え? え? こここここ、これは文香ちゃん噂に聞く!?」
文香「……」フラッ
茜「文香ちゃん!?」ガシッ
文香「に、兄さまが……私の兄さまが、穢され……ウウッ」
茜「ケガ!? 怪我はしてませんよ、安心してくだい文香ちゃん!」
千夜(おかしい……私は部屋に入ったあと、しっかりと鍵をかけたはず。それがいつの間にか外されていた)
千夜(それに二人の様子を見るに、誰かに言われてこの部屋に来たようです。その誰かが、私がかけたはずの鍵を外した……?)
文香「……千夜さん。“私の”兄さまから離れてもらっていいですか?」
茜「ふ、文香ちゃん? 何だか顔が怖いですよ? 落ち着いてください!」
千夜「……これは必要なことなので、離れるつもりはありません。こいつを矯正するのに邪魔になるので、二人の方こそ部屋から離れてもらっていいですか?」
文香「……」
千夜「……」
茜「あの……二人とも……プ、プロデューサー!」
武内P「ハァ……ハァ……」
茜「プロデューサー?」
武内P(体が熱い……服が体をこする感覚がもどかしい。白雪さんが私の胸に乗せた手が心地いい)
武内P(部屋に入ってきたのは誰でしょう? 視界がぼやけてわからない……この元気な声は日野さんで、もう一人は……兄さま? 鷺沢さんでしょうか)
武内P(いけない……普段は大丈夫なのに……声を聴いているだけで……ぼんやりとその体が見えるだけで……体が……体が……)
文香「矯正? 兄さまは優しくて頼もしい方です。矯正の必要などありませんし、それに……それに! 矯正の方法がそのようなもので、兄さまにどうしても必要だというのでしたら……わ、わわ……私が!」
千夜「文香さんではかえって歪みを強くしてしま―――――――――ん?」
文香「どうしましたか……?」
千夜「いえ、お腹に何か熱いモノが当たって――――――――――」
『!!?』
それは、チ〇ポというにはあまりにも大きすぎた
大きく、分厚く、重く、そして大雑把すぎた
それは正に鉄塊だった
【武内君の年齢の数字】センチのP<ドドドドドドドドドッ
ふみあかちよ『』
三人は生まれて初めて見る臨戦態勢のPに、心の底から震えあがった
真の恐怖と決定的な挫折に……
恐ろしさと絶望に涙すら流した。これも初めてのことだった
ふみあかちよは、戦意を喪失してしまった
※ ※ ※
ちとせ「千夜ちゃんうまくやれてるかな~?」
ちとせ(少し強めにたきつけないと、千夜ちゃんは自分の気持ちに気づけなさそうだったからね)
ちとせ(フフッ。千夜ちゃんったら私が魔法使いさんのこと好きだって、完全に騙されちゃって。まあ好きな方であるから、まったくの嘘でもないけど)
ちとせ「ん?」
小梅「……あ」
ちとせ(考え事をしながら歩いていたら、壁に隠れながら向こう側を覗き見ている小梅ちゃんと出会った)
ちとせ「小梅ちゃん、何してるの?」
小梅「……あのね。今向こうには行かない方が……というより、ここから逃げた方がいいよ」
ちとせ「んんっ? そんなこと言われたらかえって気になっちゃうなあ。小梅ちゃんみたいに隠れながら見る分には構わないでしょ?」
小梅「……止めておいた方が、いいのに」
ちとせ「まあまあ♪ 何か怖いモノでもあるの? それなら小梅ちゃんと一緒だから大丈夫――」
後に黒埼ちとせはこう語った。
“特級”だったと。
卯月・時子『 ゲ ラ ゲ ラ ゲ ラ ゲ ラ ゲ ラ ゲ ラ 』
ちとせ「」
小梅「……ほらね」
※ ※ ※
――翌日
武内P(……アレから一時間ほどして意識がハッキリした頃には、部屋には誰もいませんでした)
武内P(昨日起きたことは果たして現実だったのでしょうか? 気にはなるのですが、確かめるのは怖くて三人にはまだ会っていません)
武内P(しかし確かめないわけにもいかず、悩んでいるところへ――)
コンコン、ガチャ
千夜「失礼します」
武内P「……白雪さん」
千夜「昨日は失礼しました」
武内P「いえ、あの……正直何が起きたのか、わからないのですが」
千夜「……そうですか。それを聞いて少し安心しました。ですがやはり、謝るべきだと思います。申し訳ありませんでした」
武内P(頭を下げる彼女の姿が、昨日起きたことは現実だったと教えてくれます)
武内P「あの……白雪さん」
武内P(彼女に何と言っていいのか。わからないままに声をかけた私に、彼女は下げていた頭を上げます。すると驚いたことに彼女の瞳は、穏やかな決意で満ちていました)
千夜「……日本人の平均は13センチ。お前は体が大きいからそれを上回るとは思っていましたが……予想が甘かったです」
武内P「白雪さん……?」
千夜「しかしお前がどれだけ凶悪なモノを抱えながらアイドルと接しているのか、昨日この目で確認できました。次はしくじりません」
武内P「白雪さん……!?」
千夜「覚悟ができたら今度こそお前を矯正します。それまで首を洗って待っていてください」
ガチャ、バタン
武内P「……いったい、どうしろと」
※ ※ ※
千夜(……廊下を歩く足取りが、驚くほど軽い。昨日はあんなに醜態をさらしてしまったというのに)
千夜(重荷が無くなったからでしょう。もう偽る必要は無い。自分に嘘をつかなくていい。自分を敵にしなくていいことが、こんなにも心を軽《かろ》やかにするなんて)
千夜(好きになる人は選ぶことをできない。ならば、好きになってしまった自分を受け入れるしかない)
千夜(この先そのせいで悲しい目に遭うかもしれない。誰かを辛い目に遭わせるかもしれない。けど今の自分なら、それも受け入れられる)
千夜(お腹の底から力がとめどなく溢れてくるこの感触を、何と言い表せばいいのでしょう?)
千夜「ああ、そうでした」
千夜(薬をくれたあの人が言っていましたね)
千夜「へそ下辺りが、むずがゆい……っ」
~おしまい~
お・ま・け
~フェスブラン小梅ちゃん奉納SS~
それは事務所の廊下で移動中のことだった。
「プロデューサーさん……どうしたの?」
「白坂さん……?」
眉間に手を当ててうつむくプロデューサーさんを見かけて、思わず声をかけながら駆け寄った。
私の声に振り向いたプロデューサーさんは、何とも哀愁の漂う表情をしている。
「その……ありふれた話ではあるのですが」
そう前置きをしながら、プロデューサーさんは近くの曲がり角を指さす。
「そこでばったりと……多分事務所に来たばかりのアイドル候補生だったと思います。ぶつかりそうになってしまったので、謝ろうとしたのですが……」
「あ……ああ、うん」
そこから先は聞かなくてもわかっちゃった。
まだ一度もプロデューサーさんを見たことがなかった子が、曲がり角で急に視界に写ったプロデューサーさんに驚いてしまったんだろう。
その子も心配だけど、私にはプロデューサーさんの方が心配だった。
ただ廊下を歩いていただけで、年頃の女の子に怯えられたら……傷つくよね?
「……プロデューサーさん」
「はい」
「頭を下げて」
「……こう、ですか?」
「ううん。もっと、頭をかがめて」
急な私の言葉に不思議そうにしたけれど、それでもプロデューサーさんは素直に頭を下げてくれる。
けどそれは会釈みたいな下げ方でまだ足りなかったから、もっとかがんでもらった。
……うん、これならよし。
「よし、よし」
これなら小さな私でも、大きなプロデューサーさんの頭をなでられるもんね♪
「あの……白坂さん?」
「大丈夫だよ……プロデューサーさんが怖いのは、見た目だけだって……みーんな知ってるから」
「……ありがとうございます」
中腰のまま困った顔をしていたプロデューサーさんだけど、やんわりとだけどほほ笑んでくれた。
……うん、良かった。気分が少し晴れたみたい。
「それにプロデューサーさんは……フランケンシュタインみたいで、カッコいいから」
「……フランケンシュタイン、ですか」
……あれ? 前から思っていたことを言ったら、これは嬉しくなかったみたい。
少し肩が落ちたように見える。
「あのね……あのねプロデューサーさん!」
これはいけない!
フランケンシュタインは大きくてカッコいいだけじゃないんだって教えてあげなきゃ。
「フランケンシュタインはね、怖くてカッコいいのは見た目だけで……内面は、人間と変わらないんだよ」
「……そうなのですか?」
フランケンシュタインはジェイムズ・ホエール監督の映画『フランケンシュタイン』の影響で、ほとんど知能が無い異形の大男というイメージを持たれてしまっている。
けれど原作では……
「フランケンシュタインはね……言葉を話せるし難しい本だって読める、人間と変わらない知性があったの。……だけどカッコいい見た目を理由に迫害されて、人間と変わらない心は……傷ついていっちゃうの」
プロデューサーさんに説明しながら、やっぱりプロデューサーさんはフランケンシュタインだなって感じてしまう。
だってプロデューサーさんは私たち皆に優しくて一生懸命なのに、見た目のせいで何度もひどい目にあっている。
けど――プロデューサーさんとフランケンシュタインには、決定的な違いが一つだけあった。
「やがて絶望したフランケンシュタインは、生みの親であるヴィクター・フランケンシュタインにあるお願いをしたの。そのお願いは――」
『自分はひとりで、そしてみじめだ。人は誰も交わりを持とうとしない。だが自分と同じくらいに醜く恐ろしい生き物なら、自分を拒むことはないだろう。自分の伴侶は自分と同じ種族のもので、同じ欠陥を持たねばならぬ。そういう生き物を創ってもらわなくてはならぬ』
※メアリ・シェリー著、森下弓子訳『フランケンシュタイン』(創元推理文庫、1984)より。
「……というお願い」
「……しかしその願いは」
フランケンシュタインの一番有名なシーンを聞いて、その先の展開を思い出したのかな……? プロデューサーさんの顔が曇ってしまう。
ヴィクター・フランケンシュタインは怪物の“花嫁”を創ることを引き受けたのに、怪物と怪物の間に子どもが生まれることを恐れ、ほとんど完成していた花嫁を破壊してしまう。
「この先の展開は怪物でも可哀そうだと感じましたが……怪物が人間と変わらない心を持っていたと知ると、切ないですね」
「うん……でも、プロデューサーさんは大丈夫だよ」
「え……?」
わからないのか、プロデューサーさんは不思議そうな声をあげる。
だから私は自分を指さしてみせた。
「……白坂さんが、どうしましたか?」
「……むぅ」
ここまで言って、ヒントも出したのにどうしてわからないかな?
「あの……どうか怒らないでください」
「……フンだ」
焦るプロデューサーさんの姿がおかしくて、別に怒っていないのにわざと頬を膨らませる。
そんな私のわざとらしい様子に、からかわれていることに気づいたプロデューサーさんがほっと胸をなで下ろした。
……うん。今はまだ、これでいい。
この人には全部言わないと伝わらないんだろう。
でも全部伝えたら、困らせてしまう。
だから伝えるのは、私が大人になってから。
プロデューサーさんはフランケンシュタインと同じで、外見のせいで辛い目にあっている。
そしてフランケンシュタインには、絶望する自分を支えてくれる花嫁がいなかった。
けれどプロデューサーさんには――
――私がいるから。
~おしまい~
http://i.imgur.com/MYJQew6.png
最後まで読んでいただきありがとうございました。
挿絵は前回に引き続きCHeFさんにリクエストで依頼したものです。
よく見ると千夜ちゃんの頬がかすかに赤らんでいて可愛らしいです。
リクエスト内容は「ワンピースの初期チョッパーのように、体を隠しているつもりなのにまったく体を隠せていない千夜ちゃんと、それにビックリする武内P」の一枚絵でした。
意味不明なリクエスト内容でCHeFさんを困らせてしまった!
ごめんなさい!
ちなみに今回のSSのプロットはこんな感じで作られました。
①三月末のブランフェスに小梅ちゃん来そうだな~
②四月中旬のノワールフェスでふみふみの可能性も普通にあるなあ
③っていうか四月初めの限定に、四週目茜ちゃんが来る可能性も無くはないなあ
④よし! 小梅ちゃん、ふみふみ、茜ちゃんメインのSS書くか!
⑤な ぜ か 千 夜 ち ゃ ん 大 暴 れ
これまでのおきてがみ(黒歴史)デース!
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武内P「私がロリコンで熟女好きのホモ?」
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まゆP「ホモになるぞ!」武内P「その手がありました……ッ!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1502777106/)
武内P「絶対にアイドルに手を出したりしませんッ!!」
武内P「絶対にアイドルに手を出したりしませんッ!!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1509169274/)
武内P「眠る私に口づけをしたのは」
武内P「眠る私に口づけをしたのは」 - SSまとめ速報
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武内P「パッションな皆さんとの平穏な日常」
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楓「初めましてお義母様」武内P「」
幸子「孕まされてお腹がパンパンです♪」武内P「」
武内P「私が童貞ではなかったせいで」
武内P「私の愛が重い?」
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武内P「姉を望んだ末路」
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武内P「桃太郎」
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モバP「輝子が魔王になってしまった」輝子「Welcome to this crazy Time!!!」
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武内P「私をドキドキさせたい?」小梅「……うん」
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楓「つまり私が彼女ということですね!」武内P「え?」
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武内P「素直じゃないプロポーズ」
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武内P「まゆのお悩み相談室?」まゆ「はぁい」
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武内P「島村さんが私の?」卯月「お気に入りですよね!?」
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茜「さいきっく・おいろけビーム!!!」武内P「!!?」
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武内P「ホモのショックで記憶が」
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武内P「魔神が生まれた日」
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武内P「ノンケの証明」
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仁奈「ノンケの気持ちになるですよ!」武内P「!?」
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武内P「神崎さんが反抗期になってしまいました……」
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楓「恋と呼ぶのでしょう」
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武内P「私にマーキングしたい?」
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乙
ゆりゆり「君、ホモやろ?
ノンケアピール以外はそんな怖ない
そんでノンケアピするにはアイドルの嫁が要る
言わんでも分かるやろ
『詰み』やで君
ホモの三段論法やめろ
あなたを待っていた…
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