【艦これ】五十鈴牧場始末記 (11)

私の名前は「33号」

この鎮守府では新規着任した艦娘は改装されるまで番号で呼ぶ習慣になっている。

最初は憤慨したが、すぐに慣れた。

待遇は悪くない、レベル1の私を即戦力にするべく常に練習巡洋艦がついて面倒を見てくれる。

毎日2回の演習では旗艦を任され、高レベルの戦艦や空母がサポートしてくれる。

装備も改修MAXの15.5cm砲に水上レーダー、いたれりつくせりといったところ

「なるべく攻撃当ててMVP取ってね」

そんなこと言われても初心者の私の攻撃は中々当たるものじゃない

演習相手は戦艦と空母がなぎ払ってしまい、私は見てるだけの置物にすぎない

経験値だけ貰ってしまうのが申し訳ないくらいだ。

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「33号さん、演習お疲れさま、次はバシー海域に出撃よ」

演習の疲れを癒す間もなく、名前もまだ覚えてない軽空母が出撃を催促する。

私が旗艦だがバシーの方角さえわからない、戸惑っていると水上機母艦が露骨に舌打ちする。

「おい!30号。こっちだ急げ」

軽巡の天龍が私の手を引き、戦場へと導く。

「天龍さん、案内してくれるのはいいけど私は33号です」

ちゃんと五十鈴という名前はあるが一応訂正しておく。

「ああ?もう33号なのかよ、なんでオレには21号まわしてくれーねーのかなあ」

天龍の言葉の意味を考えているうちに敵艦隊と遭遇、私が戦闘準備を命じる間もなく軽空母の攻撃で敵は全滅した。

その後も随伴艦を換えながらバシーで連戦、旗艦の私は赤疲労だが出撃は夜遅くまで続いた。

「お疲れさん、早くレベルアップしてくれよ。期待してるから」

ぐったり疲労していたが、提督の言葉に救われた気がした。

ここで私は必要とされている、私に期待してくれている人がいる。

絶対に強くなって支えてくれたみんなにお返しするんだ。

疲れた体を引きずるようにして軽巡寮に向かう。

五十鈴のネームプレートを見つけ、ドアノブに手をかけたところで後ろから声がかかる。

「33号さん、そこはあなたの部屋じゃありませんよ」

香取が有無を言わせず私とドアの間に割りこむ。

「はあ?だって私の名前が書いてあるじゃない?」

私がネームプレートを指差すと、香取は表情を変えず淡々と告げた。

「その部屋は冷暖房が故障しています、代わりの部屋は明石が用意してますので工廠に行ってください」

強引すぎる香取の態度に不審なものを感じたが、ここは黙って従っておくことにする。

「軽巡寮のあなたの部屋は別の艦娘が使ってるの。こっちの来客用の部屋を使ってね」

案内された部屋は薄汚れた3段ベッドが置いてあるだけだったが、疲れきった私は気にすることもなく眠りに落ちた。

窓から差し込む朝日に起こされた私は狭いベッドの上で伸びをする。

それにしても粗末な部屋だ、ベッド以外の家具は無いし窓には鉄格子がはまっている。

まるで刑務所だなと思いながらドアを開けようとすると開かない。

ガチャガチャと音をさせていると、明石が外から鍵を外してくれた。

「ごめんなさいね、防犯のために施錠してるの」

朝食前の点呼とミーティング、朝食を20分で済ませ演習。

休む間もなく鎮守府近海の対潜哨戒に出撃、随伴した駆逐艦は私よりはるかにベテランだった。

手際よく敵潜水艦を片付ける姿に感嘆の声をあげると、駆逐艦は誇らしげに胸をはる。

「すごいでしょ、がんばったら提督が4連装酸素魚雷くれるって約束したのよ」

この鎮守府ではがんばり具合に応じて装備も良い物をくれるらしい。

今の私は駆逐艦の後をついていくだけ、がんばらないと。

演習と対潜哨戒でレベル12になった、促成栽培もいいとこだが早速提督に報告に向かう。

「お疲れさん、やっとレベル12になってくれたか。すぐに改造だ」

執務室をでると待ち構えてたように天龍が私の腕をとる。

「ほら21号、工廠はこっちだ。改造おめでとう」

工廠の場所はしっているから案内の必要はなかったが、改造を祝福されるとうれしくなってしまう。

「天龍さん、私は21号じゃなくて33号で・・・改造終わったら五十鈴って呼んでくださいね」

天龍は私の話が聞こえているのか、貰える予定の装備自慢話を続けている。

工廠についたが騒がしい、いったい何がおこってだろう。

慌てた様子で工廠から顔をだした明石が天龍を工廠内に引っ張り込む。

「天龍、手を貸して!改修材料の32号が暴れてるの!押さえつけて!」

放置され手持ち無沙汰な私は工廠の横に回り、中の様子を窺ってみる。

工廠で暴れていたのは私だった。いや、正確には改造された五十鈴改だった。

装備を剥ぎ取られ、キズだらけになって暴れている五十鈴改が叫んでいた。

「私は改修素材になんか、なりたくない!深海棲艦と戦うために訓練に耐えたのよ!消えたくない!」

明石と天龍が手足を押さえつけ、巨大なミンチ製造機へ五十鈴改を引っ張りながら説得する。

「五十鈴改二がいるから、32号ちゃんは必要ないの。他の艦娘を強化するのは名誉なことよ。戦場で死ぬのも素材になるのも同じことなんだから」

私は工廠の壁際にヘタヘタと座り込んだ。

やっとわかった、私は戦力として期待されてたんじゃない、ただの材料だったんだ。

他の艦娘を強化するために改造装備を剥ぎ取られ、近代化改修の素材になる消耗品。

ここにいれば暴れている32号と同じになるだけだ。でもどうすればいい、どこにいけばいい。

検問を突破して街中に出るか。いや、街に出ても住民登録がなければ食糧の配給すらもらえない。

この先の運命など考えられない、この世界のどこにも私の居場所はない。

私はフラフラと立ち上がり、演習用として貸与された艤装を身に着ける。

あてもなく鎮守府内を歩き始めたが、足は自然に海に向かっていた。

「33号さん、近代化改装の予定時刻です。至急工廠までお越しください」

鎮守府内放送の呼び出しにビクリと身を震わせる。

やさしい口調だったが、今の私には恐怖しか感じなかった。

「33号さん、すぐに出頭してください。緊急の用件です」

私は海に向かって走り始めた。

「全艦娘、緊急招集!脱走事案発生!33号を追跡せよ!容姿は長良型軽巡五十鈴」

遮蔽物のない海上に出て、港湾入り口を抜けた途端に銃弾が頬をかすめる。

どうやら鎮守府は私を無傷で捕らえるつもりはないらしい。大口径砲弾の水柱が体をずぶ濡れにしてしまう。

軽巡の高速なら逃げ切れると思ったのは甘い考えだった。

改修を重ねた高レベル艦で編成された艦隊はみるみる距離を詰めてくる。

昨日まで演習を共に戦った正規空母の攻撃が私を狙う。

九九艦爆の爆撃をギリギリでかわすが、損傷は次第に増えていく。

もう逃げ切れない、覚悟を決めた私を救ったのは深海棲艦の攻撃だった。

突如あらわれた深海棲艦部隊に追撃部隊は混乱し、撤退していった。

呆然と立ちすくむ私を見つめる深海棲艦、言葉は通じずとも瞳の奥にある思いは同じだった。

復讐を!私を騙した艦娘たちに復讐を!海の底に引きずり込め!



こうして私は深海棲艦になった。


END

おつ

ちょっと物足りない

次も期待


おつ

スカスカ
もっと肉付けしないとメモ書き

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