南光太郎vs仮面ライダークウガ (158)

仮面ライダーBLACK×仮面ライダークウガのssになります。
よろしければどうぞお読みください。

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1988年9月某日―――


四国の瀬戸内海・播磨灘にある小豆島

その日、僕たちのヒーロー南光太郎はこの小豆島を訪れていた。

何故彼が遠路遥々この島を訪れたのか?それはある人物と会うためにあった。


「光太郎さん。よく来てくれたね。」


「いらっしゃい。光太郎さん。」


小豆島を訪れた光太郎をある親子が暖かく出迎えてくれた。

大門明とその息子の輝一。

父親の明は有名なオートレーサーで息子の輝一も相当な腕の持ち主だ。

そんな大門親子が何故この小豆島にいるのか?

その事情は今から一年前まで遡る。

大門明の父であり機械工学の権威でもある大門洋一博士が何者かによって殺害された。

大門博士を殺害したのは暗黒結社ゴルゴム。

博士はゴルゴムから文明破壊用バイク・ロードセクターの改造を任されていた。

だがその企みに反対した博士はロードセクターの在り処を息子の明に託して

ゴルゴムの要求には決して応じなかった。そのせいで博士はゴルゴムに殺害された。

生き残った明と輝一の親子はロードセクターを打倒ゴルゴムに燃える南光太郎に託した。

それから自分たちはゴルゴムの追っ手から身を隠すためこの小豆島に逃れていた。



「大門さんご報告します。遂にゴルゴムを壊滅させることに成功しました。」


「ありがとう光太郎さん!よく父の敵を討ってくれた!」


「これで世界は平和になるんだね。」


「ああ、ゴルゴムは滅んだ。もう恐れるものは何もないんだ。」


光太郎からゴルゴム壊滅の報せを受けて明と輝一はようやく念願が叶ったと大喜びした。

肉親の敵であるゴルゴムが討ち果たせた。これであの世にいる父も安らかに眠れるだろう。

ところで光太郎だがゴルゴム壊滅の報告以外にも大門親子に用事があった。

彼はあるモノを持ってきていた。それは一台のバイク。

これまでゴルゴムとの戦いを支えてくれた頼れる仲間ロードセクターだ。


「大門さん、僕がゴルゴムに勝てたのはロードセクターのおかげです。」


「その言葉、死んだ父に聞かせてあげたいですな。きっとあの世で親父も喜んでますよ。」


「それでなんですが…このロードセクターをお返しに上がりました。」


光太郎の申し出に大門は思わず驚いてしまった。

何故ならロードセクターは並の人間に乗りこなせるマシンではない。

このマシンは元々光太郎に譲るつもりで託したものだ。それを何故…?

そんな光太郎だが俯いた表情であることを語りだした。



「僕にはロードセクターの他に頼れるバトルホッパーという仲間がいた。けれど…」


ゴルゴムとの最終決戦時、バトルホッパーは傷つき倒れた。

仲間の最期を見届けた光太郎はゴルゴムを壊滅することに成功した。

だが…彼には何も残らなかった…

平和を取り戻しても…愛する人も…戦友も…誰も…

彼にとってこの勝利は虚しいものでしかなかった。


「それならせめてロードセクターだけでも…これはキミのものだ。」


「いや、ロードセクターは元々あなたから借りたモノだ。
それに僕の身近にいればロードセクターもいずれは…だから…」


光太郎の意思を大門は察した。

このまま光太郎の手元にあればいずれロードセクターもバトルホッパーの二の舞になる。

大事な戦友をこれ以上失いたくない。だから彼はロードセクターを返却すると望んでいた。



「わかりました。ロードセクターは私がこの手で守ります。」


「ですが覚えていてください。」


「こいつはあなたの相棒だ。いつの日か必ずあなたの元へ還るはずだ。」


そう言うと大門は光太郎からロードセクターを預かった。

戦士にも休息の時が必要だ。彼はもう十分戦った。

今はこれでいい。こうしてロードセクターは大門明の所有するガレージに収容された。



「光太郎さん!こっちだよ!」


その夜、光太郎は明と輝一に連れられてこの小豆島で行われている祭りに参加した。


「そいやっ!そいやっ!」


大門親子は先に祭りの広場にある神輿を見ようと行列を潜っていった。

まるで世界に平和が戻ったことを表すかのように祭りは活気だっていた。

街道には屋台が出店して

半被を着た若衆が神輿を担いで賑わい大人も子供も盛り上がっていた。


「これが平和なんだな。」


この様子を見て今まで暗く俯いていた光太郎の心に少しばかりの明るさが戻った。

親友秋月信彦の死を未だに受け入れずにいるがそれでも落ち込んでばかりはいられない。

この平穏な一時を自分たちも楽しもう。

光太郎もまた気持ちを切り替えて会場の中央広場と足を運ぼうとした時だ。



………うわぁぁぁぁぁッ!?


それはこの会場にいる人たちの耳には誰も伝わらない叫び声。

だが南光太郎は改造人間だ。彼は通常の人間では聞き取れない音を感知することができる。

祭りの会場を抜け出した光太郎は急いで叫び声のする方へと向かった。

そこは祭りの場から近い断崖絶壁の岩ばかりが立ち並ぶ海岸。


「誰かぁぁ!助けてぇぇぇぇっ!?」


この海岸に助けを求める声が響いた。

襲われているのは大門の息子の輝一だ。どうやら父親とはぐれてしまったようだ。

そんな輝一だがなにやら誰かに襲われようとしていた。

この様子を目撃した光太郎はすぐにこの輝一の元へと駆けつけた。


「やめろ!何をしているんだ!?」


すぐに輝一を逃がした光太郎は

この正体不明の何者かに何故こんな真似をするのかと問い質した。

すると夜空に浮かぶ月明かりにより照らされこの者の正体が暴かれた。



「お前は…怪人…?」


なんとそこにいたのは明らかに人間ではない異形の姿をした怪人だ。

まるでサメのごとく獰猛な魚類の姿に腰元に金属のベルトらしきモノを装着させた怪人。

この怪人を一目見て光太郎は察した。ヤツは人間を躊躇なく殺すと…


「答えろ!お前はゴルゴムの怪人か!?」


まさかゴルゴムの怪人が生き残っているのか?

いや、ありえない。ゴルゴムは創世王諸共光太郎がこの手で滅ぼしたはずだ。

だが現に怪人はこうして光太郎の目の前にいる。それではこの怪人は何者なのか…?

それでも今は怪人の所在については後回しだ。こいつが人間を襲うのは明らか。

そうなる前になんとしても倒さなければならない。

覚悟を決めた光太郎は拳を握り締め体内にある神秘の石キングストーンを発動させた。



「変…んん…身っ!」


その掛け声と同時にキングストーンの力により

光太郎の身体を強化皮膚リプラスフォームが包んだ。

光太郎の姿から緑のバッタ人間へと変わりやがて黒い戦士へと変化していく。

そして変身の際に使ったエネルギーが身体の関節部から蒸気として吹き出しながら

彼は自らの名を叫んだ。


「仮面ライダ――――ッ!BLACK――――ッ!!」


仮面ライダーBLACK

かつて暗黒結社ゴルゴムは南光太郎に改造手術を施した。

光太郎は世紀王ブラックサンに改造された。

だが囚われの身となった親友の信彦を救うため

彼は人類の自由と平和を守る戦士、仮面ライダーBLACKとしてゴルゴムと戦った。

そして戦いが始まった。怪人は自らの爪と牙を用いてライダーに襲いかかる。

その獰猛さはゴルゴムの怪人たちと引けを取らない強さだ。

だがライダーも負けてはいない。

これまで多くのゴルゴム怪人を倒し歴戦の勇者でもあるライダーは

得意のジャンプ力を活かして怪人の繰り出す攻撃を難なく交わしてみせた。

次第に苛立ちが募りだしたのか怪人は腹いせにこの海岸にある岩をぶち壊しこう叫んだ。


「クウガ…ギベ…クウガ!」


正直この怪人が何を言っているのかライダーには理解が出来ない。

どう聞いても日本語でもなく他国の言語ですらない。恐らくこの怪人特有の言語だろう。

唯一わかったのは自分のことを『クウガ』と呼んでいることくらいだ。

このクウガという言葉が何を指すのかはわからない。

だが怪人がクウガという言葉を忌み嫌っているのだけは理解できた。

この苛立ちで怪人に僅かな隙が生じたことによりライダーは攻撃に転じた。



「ライダーチョップ!」


そして鋼鉄をも切り裂く鋭利なライダーチョップが怪人の胸元を切り裂いた。

このダメージを受けて怪人は思わず怯んでしまう。今こそ仕掛ける時だ。

仮面ライダーはベルトに埋め込まれているキングストーンの力を発動。

その力はライダーの拳に漲った。


「ライダ――――ッ!パ――――ンチッ!!」


仮面ライダーのライダーパンチが怪人に命中!

その威力は凄まじく怪人はすぐに吹っ飛ばされてしまう。

なんとか立ち上がろうにも今の一撃で怪人は身体の自由を奪われ思うように動けない。

まずい…なんとしても動かなければ…そうでないとやられる…

そんな怪人の意思とは裏腹にこのチャンスを逃すライダーではない。

すかさずトドメの一撃を与えるために大地を蹴って大ジャンプを繰り出す。

そして空中で回転すると全パワーを自らの足へと集中させ渾身の必殺技を放った!


「ライダ――――ッ!キ――――ック!!」


そして仮面ライダーBLACKの必殺技ライダーキックが決まった。

必殺の一撃を受けた怪人は断崖絶壁のこの岸から海へと吹っ飛ばされた。


戦いが終わり変身を解いた光太郎は先ほど怪人が落ちた周囲を見渡した。

既に怪人の身体はどこにも見当たらない。どうやら海の底深くに落ちたのだろう。

こんな真夜中だ。これ以上の捜索は不可能。

それにライダーの必殺技を受けたからにはもう助かりはしない。

ところであの怪人は一体何者だったのか?

ゴルゴムにしてはどうも異質過ぎる。それでは別の組織の怪人か?

まさかゴルゴムの他に改造人間を作る技術のある組織がいるとは思えない。

それにこんな小島で怪人が何を企むというのか?

どう考えてもこの島で悪事を企む理由がない。

とにかくもう終わったことだ。光太郎は今もまだ賑わう祭りの会場へと戻っていった。


ここは小豆島の人間でもほとんど知る者がいない海岸の洞窟にある祠。

いつ誰が作ったのか不明だがもう何千年も…

いや、ひょっとしたら何万年も前から存在している古の時代から続く秘密の祠だ。


「ア…ウゥ…」


そこへ先ほどの戦いで傷ついた怪人が命辛々帰ってきた。

ここは彼の住処。もう何万年もこの地に居続けている。

本来なら彼はこの地の住人ではなかった。

だが一族の長に逆らい故郷を追放されこの地へとたどり着いた。

彼は人を狩ることをゲームの遊びのように愉しむ残酷な一族の出身だった。

故に彼もその習性に従いこの地で人を狩ろうとしていた。

そんな時、彼はこの祠を見つけた。



「バ…ミ…ジョ…」


この祠にはあるモノが納められている。彼はそれを祭壇として称して奉っていた。

祭壇は彼がこの地を訪れるよりもさらに前の時代から存在していた。

怪人の力が備わっている彼にはこの祭壇に神秘的な力が宿っているという直感があった。

この祭壇には神が宿っている。

それまで信仰心を持たなかった彼は唯一この祭壇に宿る神の存在を信じた。

ある日、試しにこの地にいる人間を襲いその者の血肉を祭壇に宿る神へと捧げた。


『………』


すると祭壇から声が聞こえてきた。

不気味さな気配を漂わせるがそれでいてどこか神々しさを感じさせる唸り声だ。

この声を聞いて彼はこう思った。神は自分が生贄を捧げてくれたことを悦んでくれたと…

このことがきっかけで彼はこの地で生きていくことを決めた。そしてある行いを始めた。

それは彼の一族が古来から行ってきた狩りだ。

自ら掟を作りそれに従い狩りを行う。彼も一族の掟に従い狩りを行った。

彼が決めた掟とは一年に一度だけこの島で行われる祭りの時だけ人を生贄として拐うこと。

生贄を祭壇の前で殺してその血肉を供物として捧げる。

そしていつの日か祭壇に祀られている神が自分の想いに応えてくれると信じていた。

だがライダーとの戦いに敗れてその命は風前の灯…

この長い歳月を掛けて大勢の命を祭壇に捧げたというのに応えることは決してなかった。

それだけが心残りと自らの命が朽ち果てようとした時だ。



『………』


声だ。どこからともなく声が聞こえてきた。

誰が発しているのかわからないが明らかに声が頭の中に響いてきた。

この声は聞き覚えがある。あの日、もうずっと昔一度だけ聞いた神の声だ。

まさか…神がようやく自分に応えてくれたのか…?

その期待に応えようと最期の力を振り絞り祭壇の前まで駆け寄った。

するとどうだろうか?祭壇の中から何かが自分の身体を包み出した。

このまとわり付くモノはなんだ?だが不思議と甘美な心地良さを感じてしまう。

怪人は思った。きっと神が自分に力を与えてくれるのだろうと…

ああ、これでゲゲルを続けられる。

古の時代、かつて自分たちグロンギと呼ばれる一族が行ってきたリントを狩るゲゲル。

かつて自分を追放した一族の長。ン・ダグバ・ゼバ

以前は一族から追放されたことを深く恨んでいた時期もあった。

だが今は一族から追放してくれたことを感謝すらしている。

そのおかげで自分は神と出会えた。そんな満足していると深い眠気に陥ろうとしていた。

どうやら強靭な身体を得るのに長い年月を費やさなければならないようだ。

いいだろう。いつまでも待ってみせる。伊達に何万年も待ち続けていたわけじゃない。

待ち続けてやる。そして神の力を得た時こそあの黒いクウガを倒す。

彼はそう心に誓いながら深い眠りについた。

それから12年の歳月が流れた。

――――――――

――――――

――――

とりあえずここまで
続きはぼちぼちやっていきます
それではよいお年を…

RX?



2000年9月某日―――


ここは神戸港。四国と本土を行き来するフェリー乗り場である船が停船していた。

この船は東京都から出航して本来ならもう四国の高松市に着く予定だった。

だが航行中、思わぬエンジントラブルが発生。

そのため急遽この神戸港に停船して修理作業に取り掛かっていた。


「どうやら面倒なことになってしまったね。」


「そうみたいですね。」


「まあ仕方ないさ。こんなこともある。」


船長が乗客に停船した事情を説明している中で三人の男たちが話していた。

一人は葦原和雄。彼らの中で一番の年上で人の良さそうな温和な性格の持ち主だ。

もう一人は木野薫。職業は医者で

先ほどある少年が暴力沙汰を起こそうとした時は身体を張って止めた正義感の強い男だ。

そして最後の一人は…



「まいったな。早く高松に行ってこの手紙の謎を解きたいのに…」


『津上翔一』と宛てられた封筒に象形文字の描かれた手紙を持って頭を悩ませる青年。

青年の名は沢木哲也。彼には雪菜という姉がいた。だが雪菜は自殺した。

姉は死ぬ直前、津上翔一なる人物に奇妙な手紙を残していた。

もしかしたら姉の死は単なる自殺ではないのだろうか?

そう疑問に思った哲也はこの津上翔一なる人物が居る四国の高松市を訪ねようとしていた。

それにしても厄介なのはこの手紙だ。

先ほど医者の木野にも見せたがこんな文字は見たこともないという。

この手紙は姉が生前遺した唯一の遺品。

なんとか手掛かりになればと思っていた時だ。



「あの…ひょっとしてその手紙に書かれているのは…古代文字ですか…?」


そんな哲也の背後からある青年が声を掛けた。

年歳は哲也と同じくらいか少し上くらいだろうか。

ラフな格好でとてもじゃないが隣にいる木野ほど博識そうには見えない。

それにしてもこの青年はとてもいい笑顔をしていた。

唯一の肉親である姉を失った哲也にしてみればそれが少々恨めしくも思うくらいだ。

元々哲也もこの青年ほどでもないが陽気な性格の持ち主だった。

だが姉の死後、哲也から笑顔は失われた。

そのせいで他人の笑顔を拝むのがどうしても煩わしく思えてしまった。


「え~と…この文字の内容がわかるんですか…?」


「うん、そうだね。俺はわからないけど…
知り合いに大学の考古学者がいてその人ならわかると思うんだ。」


その話を聞いて哲也は思った。

さすがに初対面の青年を頼るのはどうかと疑ってしまった。

木野のような頼もしい人ならいい。

だが見るからに軽薄そうでおまけにどんな人間かもわからない男を信用していいのか?

思わず疑いの目を向けてしまった。



「大丈夫、彼は信じられるよ。」


そこへもう一人の青年が現れた。

こちらはキチンとしたスーツに身だしなみを整えた如何にもお硬そうな仕事人間。

一見何の繋がりも見受けられない二人の男たちはどういう関係なのか?


「あの…まだお名前を聞いてないんですけど…?」


「ああ、失礼した。警視庁の一条薫といいます。」


一条と名乗った男は哲也に警察手帳を見せて自らが警察官であることを示した。

それでは隣にいる青年も警察官なのか?明らかに警官には見えないが…

そんな青年だが哲也に対してある名刺を手渡した。


[夢を追う男 2000の技を持つ男 五代雄介]


見るからに胡散臭い名刺だ。今時詐欺師だってこんなモノは使わない。

やはりこんな男に手紙を読ませるべきではない。そう思って封筒にしまおうとした時だ。



「大事な手紙なんだよね。」


「え…まあそうですね…姉が最期に残したものですから…」


「俺もさ、子供の頃に父親がいなくなったんだ。」


五代は初対面の哲也に自らの生い立ちを語った。

子供の頃、五代の父は亡くなってしまった。当時まだ幼い五代には余りにもつらい現実だ。

そんな時に彼は恩師にこんなことを言われた。



『お父さんが亡くなって、確かに悲しいだろう。』


『だがそんな時こそ、お母さんや、妹の笑顔のために頑張れる男になれ。』


『いつでも誰かの笑顔のために頑張れるって、すごく素敵な事だと思わないか。』


誰かの笑顔…そう言われて哲也は姉が自殺する直前のことを思い出した。

あの頃、姉は何か思いつめていた。普段は優しい姉から笑顔は消えていた。

何故姉は笑顔を失ったのだろうか?その答えは今も謎のままだ。

だが五代の話を聞いてこうも思った。ひょっとしたら守れたのかもしれない。

もっと自分が姉に対して親身になっていれば姉の笑顔は守れたのではないか。

そう思うと後悔せずにはいられなかった。


「どうしてそんな話を…俺に…」


「ごめんね。お姉さんのことは哀しい。けどキミが笑顔を失うのは間違っていると思う。
俺は思うんだ。今は無理かもしれないけどいずれキミも誰かの笑顔を守る時が来る。
その時のためにキミ自身も笑顔でいてほしい。」


五代はとても優しい笑顔でそう言ってくれた。いつか誰かのために…

今の哲也にとってそんな相手はいない。それでも…



「ところで警視庁の刑事さんがフェリーに乗るなんてもしかして未確認生命体が絡んでいるんですか?」


そんな哲也と五代の会話を遮るように木野が思わずそんな質問をした。

その質問を聞いて乗客たちが思わずどよめいた。


――――未確認生命体


長野県九郎ヶ岳から出現した謎の生命体。

その出自は未だ不明で各地に出没する怪人集団のことだ。

ヤツらはまるでゲームのように人間を殺戮する危険な存在。

最近では都内に出没するようでこんな四国の高松市までは未確認など現れない。

だからこのフェリーの乗船客も安心して旅行していた。

だがあの未確認生命体が現れるとなれば話は別だ。

このことから乗客たちは動揺を顕にしていた。


「いえ、そんなことはありません。何かあれば我々警察が動きますから安心してください。」


とりあえず船の中でパニックを起こすのはまずい。

一条はなんでもないと乗客たちを落ち着かせてひとまずその場は静まった。

そんな時、一条の携帯に連絡が入った。どうやら上層部からの指示が出たようだ。



「五代、この船を降りるぞ。」


「え?けど船で四国まで向かうんじゃなかったんですか?」


「その予定だったが修理に時間が掛かりすぎる。俺たちはヘリで向かうことになった。」


こうして警察上層部の指示で五代と一条はこの神戸港であかつき号から降りた。

どうやら彼らは急用らしくこのまま船の修理を待つ余裕はないらしい。

急いでこの神戸港にあるヘリポートに向かおうとした時だ。


「あの、手紙。これ書き写したヤツです。よかったら調べてもらえますか。」


そこへ哲也が駆け足でたった今書き写した手紙を持ってきた。

ぜえぜえと全速力で息を切らせながら走って五代に駆け寄りながら彼はこう言った。


「この手紙は姉が遺したモノです…俺…まだ姉さんの死に納得してない…」


「せめて…どうしてそんな真似に及んだのか知りたい…」


「初対面の人にこんなこと言うのは変かもしれないけど…」


「俺もせめて姉さんのことを笑顔で見送りたんです。」


「だからどうかお願いします。」


今の自分が出来ること。それは姉を笑顔で見送りたい。

哲也の意志を知った五代は彼から託された手紙を大切に預かった。

去り際、五代は親指を立ててサムズアップで応えた。

この手紙に書かれた意味を解き明かしてみると哲也に誓ってみせた。



「オォーッ!ヘリコプターだ!」


「落ち着け。別に乗るのは初めてじゃないだろ。長野で乗っていたじゃないか。」


「あの時は怪人と飛び移って戦ってたから満喫してる状況じゃなかったですからね。」


待機していたヘリコプターに乗り込むと

五代と一条は四国の瀬戸内海を渡りある場所を目指した。

この瀬戸内海に位置する小豆島。

数日前に警視庁未確認生命体対策班にある目撃情報が寄せられた。

海岸にある文字が刻まれていた。その文字は未確認生命体が扱うグロンギ文字。

五代の友人で城南大学の考古学研究者佐渡桜子が解読したが

それは挑戦状とも取れる意味が記された文字でどうやら小豆島で戦いを望んでいるようだ。

未確認生命体の存在が確認された以上、グズグズしているわけにはいかない。

さっそく一条は協力者の五代雄介を連れて小豆島へと向かった。



「けど一条さん。都内に居る未確認を放っておいて大丈夫なんですか?」


「まあ心配だが本部には杉田さんや桜井さんがいる。
それに第41号を倒してまだ間もない。ヤツらもそうすぐには動かないだろう。」


今なら遠出も可能で未確認生命体を叩くことが出来る。

とにかく小豆島にいる人たちを守らなくてはならない。

五代は拳を握り締めて改めて決意を固めた。


「小豆島か。懐かしいな…」


するとヘリのパイロットがぼそっとそんなことを呟いた。

ちなみに今回だが急な要請だったため警察のヘリは間に合わなかった。

そのため偶然神戸港に居合わせた民間のヘリをチャーターすることになった。



「改めまして、佐原航空の南光太郎です。以後よろしくお願いします!」


このヘリを操縦するのは12年の歳月を経てヘリのパイロットとなった光太郎だ。

ゴルゴムとの戦いの後、光太郎は親戚の叔父の元に身を寄せていた。

あれから光太郎は様々な敵と戦い勝利を収めてきた。

長い戦いを終わらせた光太郎は再びヘリのパイロットとして平和を満喫していた。


「初めまして、俺は五代雄介です。それで…南さんは…」


「ああ、俺のことは光太郎でいいよ。
俺も昔小豆島に行ったことがあってね。そういえば今の時期は祭りがあったな。」


「この時期に祭りですか?」


「ええ、12年前に一度だけ参加したけど賑やかな祭りでしたよ。」


光太郎は五代と一条と会話を交わしながら一路小豆島を目指した。

これより戦いの舞台となる小豆島。そこで彼らは大いなる存在と対峙することになる。

ここまで
戦士たちの邂逅でした
ちなみに光太郎さんはクライシスとの戦いが終わっていて
クウガ側は41号=ゴ・バダー・バを倒した直後になります
本編でも空白の期間がその辺になるんでそんな都合です



~PM12:00~


「お待ちしていました。警視庁の一条警部補ですね。自分は香川県警の氷川誠です!」


光太郎の操縦するヘリが

小豆島のヘリポートに着陸するとそこには若い制服警官が待機していた。

彼の名は氷川誠。今年香川県警に配属された新米の警察官だ。


「上司からの命令で自分が一条刑事の案内役になります。どうぞよろしくお願いします。」


彼は礼儀正しく一条に敬礼すると同時にあるモノを用意した。

それは一条が前もって香川県警に要請したモノだ。

TRCS2000A。警察が新しく配備した新型の白バイだ。



「一条さんこれってトライチェイサーじゃないですか!」


「ああ、TRCS2000の量産タイプだ。現地ではこれを使ってくれ。」


未確認生命体と戦う五代雄介はこれまで警察の次世代バイクTRCS2000で戦ってきた。

だが未確認生命体との度重なる激戦と

先日の41号との死闘でTRCS2000は金属疲労を起こしてしまう。

そして新たに得た力、ビートチェイサー2000で41号を追い詰めた。

だが今回は本土を跨いで移動したためにバイクの輸送は出来なかった。

そこで一条は代用品として量産タイプのTRCS2000Aを用意しておいた。

ちなみにこのTRCS2000Aは

経費削減のため五代が使っていた試作品のトライチェイサーよりも性能は落ちている。

それでも何もないよりはマシだ。

五代はさっそくエンジンキーになるトライアクセラーを装着して試乗してみた。


「悪くありません。これなら行けそうです。」


「すまない。本当ならBTCS2000があれば心強いはずなのに…」


「そんな、謝らないでください。このバイクでも十分戦えますよ。」


五代は明るい笑顔を絶やさず一条を励ましてくれた。だが一方で一条の心境は複雑だ。

未確認生命体との戦いは常に命の危険が伴う。

それなのに満足な装備を用意させられないまま五代を死地に赴かせることは

一条にとってみれば心を痛めることでしかない。それに心配事はそれだけではなかった。



「一条刑事、これはどういうことですか。」


「氷川くんか。どういうこととは…質問の意図がわからないが…?」


「惚けないでください!何故警察の装備を一般人に託すんですか!?」


一条は何故氷川が不機嫌なのかようやく理解できた。

事情を知らない氷川にしてみれば一条の行いは警察官としては逸脱している。

それにTRCS2000Aはまだ警察に配備されたばかりの新装備だ。

そんな貴重な装備を民間人の五代に惜しげもなく貸し出している。

それを思うと氷川が自分を追求するのも仕方ないのだろう。



「ここにいる五代雄介は警察の協力者だ。
このことは警視庁の未確認対策班も了承している。香川県警にも伝えていると思うが…」


「ですが…民間人に警察の車輌を貸し出すなんて問題行動ですよ。」


「構わない。何かあったら俺が責任を取る。それでいいな。」


「了解しました。けど僕は…納得できません。」


一条がどんなに説得に努めようと氷川は納得した様子を見せなかった。

まだ新米の氷川にとっては警察の規律こそが第一だ。

それは規律を重んじる警察官としては正しい姿勢であり

そんな氷川の言動を一条が注意すること自体が間違っている。

今でこそ五代は一条の所属する警視庁の未確認生命体対策班の刑事たちと

良好な関係を築けているがそれ以前は彼も未確認と同等の危険な存在として扱われていた。

それを思うと五代の素性を知らない氷川が自分を批難する気持ちもわからなくもない。

だが今は非常時だ。警察官としての規律など重んじている場合ではない。



「氷川さん大丈夫ですよ!俺もしっかりやりますからお互い頑張りましょう!」


そんな氷川も最後はマイペースな五代に押し切られてしまった。

とにかくこんなところでグダグダしても始まらない。

一条は氷川と共にパトカーに乗り込み、五代もTRCS2000Aに乗ると出発していった。

ここまで

クウガもRXもどっちも好きだから楽しみ


光太郎はそんな彼らの出発を見送ると徒歩である場所へと向かった。

自分もこの島を探索するためにも乗り物が必要だ。

そのためバイクを調達するために近隣のバイク屋を訪れた。


「光太郎さん久しぶりですね。」


「ええ、ご無沙汰しています。大門さん。」


彼が訪ねたのはかつてゴルゴムとの戦いを支援してくれた大門明が営むバイク屋だ。

大門はゴルゴム壊滅後もこの地に留まりバイク屋を営んでいた。

光太郎は大門に事情を説明して手頃なバイクをレンタルすることにした。

そこで大門は店の奥にいる若いスタッフに声を掛けた。



「なあ、何か使えるマシンはないか?」


「使えるマシン?それならHONDAのXR250がありますよ。」


「オフロード系か。光太郎さんそれでも構わないか。」


「ええ、むしろこうした島ならオフロードの方が扱いやすいですからね。」


光太郎が普段乗るバイクは主にスピードの出るフルカウル系のマシンだ。

だが今回に限ればオフロードのマシンでもちょうどいいのかもしれない。

あの二人、五代雄介と一条薫。

詳しい事情はわからないがどうやら彼らは

この島にいると思われる未確認生命体について捜索しに来たと言っていた。

未確認生命体については光太郎も新聞やTVのニュースで連中の存在を把握しているが

今年に掛けてから謎の怪人が各地に出没して一般人を殺害しているとのこと。

まさにかつてのゴルゴムの怪人そのものだ。

光太郎が仮面ライダーとして最後の戦いを終えてからかなりの年月が過ぎた。

その間に世界は平和を取り戻したはずなのに、今またそれを乱す者たちが現れた。

これを座視することは出来ない。

光太郎も彼らに協力してこの地に潜伏している未確認生命体を倒すつもりだ。



「オーナー持ってきました。こいつでいいですか。」


そこへこの店のスタッフが、光太郎が乗るマシンを持ってきてくれた。

ちなみにマシンを持ってきてくれたスタッフだが…

茶髪のロン毛とまさに今風の若者だ。

よく見るとかなり若い。まだ十代の少年で恐らくは高校生くらいの年齢だろうか。

こんな少年がバイク屋で働いているとはどういう経緯なのか?


「紹介します。こいつは乾巧。先月からうちで働いてもらっているんですよ。」


「どうも、乾です。」


「俺は南光太郎だ。よろしくな。」


光太郎は握手しようと手を差し出すが巧はそんなことは無視して店の奥へと戻っていった。

先ほどの明るい五代と比較すると素っ気ない態度で影のある少年だ。

まるで他人と触れ合うことを避けているようなそんな印象すら感じた。



「大門さん、彼はどうしてあの歳で働いているんですか?」


「さあね。年齢はうちの輝一よりもちょっと下の16歳くらいだそうです。
本当なら高校に通っている歳なんですが自分探しってヤツなんですかね。
これまでずっとバイクで一人旅をしていたらしいですよ。」


大門は学校にも行かずフラフラしている巧のことをあまりよく思ってはいない。

こんなところにいないでちゃんと学校に行って将来について真面目に考えるべきだ。

そう何度か説得を試みたが何故か聞く耳持ってくれなかったそうだ。

別に十代で自分探しとは珍しいことじゃない。

だが光太郎は巧からそれ以外の何かを感じ取った。

あれは自分探しなんて類ではない。他人との触れ合いを極端に避けている節がある。

初対面だというのに何故かそんな気がしてならなかった。

ここまで
>>36
ありがとうございます。頑張って完結させます。



~PM13:00~


五代と一条、それに付き添いの氷川は

先ほどヘリで光太郎から聞かされたこの小豆島で行われている祭りの広場へと訪れていた。

未確認生命体が人を襲うのなら賑わっているこの広場で行うはずだ。

既に会場は警備のために20人近くの香川県警の警察官が配備されている。

例年通りの祭りならこの人数でも問題ない。だが未確認が襲撃するとなれば話は別だ。

恐らく警官が100人配備されても連中には太刀打ち出来ないだろう。


「一条刑事、本当に未確認生命体がこの広場に現れるんですか?」


「可能性は高い。
これまでの事件からしてヤツらは殺戮を楽しんでいる節がある。
それに現れるとしても一体だけではないかもしれない。」


「それは…どういう意味ですか…?」


一条はある写真を氷川に見せた。この島に設置されている防犯カメラに写っていた写真だ。

そこには奇妙な装いをした十数人ほどの若い男女たちが撮られていた。

このような辺鄙な島において明らかに場違いな格好だ。



「この小豆島に来る前に取り寄せてもらったが島の防犯カメラに撮られていた。
恐らくこの連中は未確認生命体。
ここからは俺の推測だが連中はここで大規模な狩りを行うはずだと思う。」


一条の推測を聞いて氷川に緊張感が走った。

氷川も新米とはいえ警察官。未確認生命体の危険性は十分聞いている。

連中は一体だけでも機動隊すら難なく蹴散らす圧倒的強さを誇っている。

そんな危険な存在が十体以上もこの島に潜伏しているとなれば…


「まさか…この広場にも未確認が紛れ込んでいるのでは…」


氷川は思わず携帯している拳銃に手を触れようとした。

この場で一般市民を相手に銃を翳すわけにはいかない。

そんなことは十分わかっている。だが一条の推測が当たっていれば事態は深刻だ。

その焦りと緊張感からどうしても動揺せずにはいられなかった。



「氷川さ~ん!一条さ~ん!差し入れ持ってきました~!」


そんな氷川の元へ五代が駆け寄ってきた。

見ると五代は屋台で売られているかき氷や焼きそばを食べながら祭りを満喫していた。

この状況で呑気にはしゃぐ五代を見て先程までの緊張感が解かれてしまった。


「五代さん!この非常時に不謹慎な行動は謹んでください!」


「まあまあ、張り詰めたって仕方ないですよ。今はリラックスしましょう。」


「五代の言う通りだな。
俺たちが動揺してしまえば敵の思うツボだ。下手に焦ればミスを犯すこともある。」


憤りを感じる氷川とは対照的に

五代の行動に慣れた一条も差し入れを食べて気を落ち着かせていた。

一条の言うように自分一人動揺しても始まらない。

とにかく今はこの島の人々を守ることに全力を尽くそう。そう決意したところに…



「やあ五代くん。それに一条さんに氷川くんも一緒か。」


「あっ!光太郎さんも祭りに来たんですか!」


「まあね、二人は俺のお客さんだから俺だけ先に帰るわけにはいかないだろ。」


祭りの広場で五代たち一行と合流する光太郎。そんな光太郎だが連れを伴っていた。


「まったく…何で俺が…」


一人は先ほど大門のバイク屋で知り合った巧。もう一人は…


「ほら、弦太郎くん。みんなに挨拶してくれ。」


「よぅっ!おれ弦太郎!よろしくな!」


光太郎と巧に連れられた5歳くらいの幼い元気で活発な男の子。

この子の名前は弦太郎。

実は大門は知り合いの子供である弦太郎を預かっていた。

だがこんな島で子供の遊ぶ場所などほとんどないので

光太郎に伴われて巧と共にこうして祭りの広場にやってきた。



「なあ巧!祭りっておもしれーな!」


「…うるせえ。それよりはぐれるなよ。迷子になったら俺が怒られるからな。」


ぶっきらぼうな態度だが幼い弦太郎が迷子にならないように手をギュッと握る巧。

そんな巧を見て光太郎も彼は決して悪い人間ではない。

恐らく不器用な性格が災いしているだけだろう。

それが人見知りになっているのではないかと思った。


「そっか、弦太郎くんか。俺は五代雄介。よろしくね。」


「オーッ!おれたちダチだな!」


「ダチ?ああ、友達のことだね。うん!俺たち友達だよ。それに一条さんや氷川さんもだ。」


弦太郎は友達になった証に五代たちと拳を交わして友情の印を交わした。

これでずっと友達だ。そう笑顔で自慢する弦太郎にこの場に漂う緊張感が少しだけ解れた。


「まったくお前はさっきからそればっかりだな。」


「こうするとみんなとダチになれるんだ!巧もやろうぜ!」


「やなこった。面倒臭い。」


そんな弦太郎を鬱陶しがる巧。

これだけ積極的な弦太郎からの申し出すら拒むとは相当な筋金だと察する光太郎。

ところで巧だがこの祭りの会場である変化に気づいた。



「なあ、なんか妙な連中が紛れてないか。」


その言葉に光太郎に五代、それに一条と氷川も周囲を見渡した。

なにやら正面からぞろぞろと奇妙な服装をした集団が姿を現した。

雰囲気からして明らかにこの祭りを楽しもうとする感じではない。

それに氷川は気づいたがあれは先ほど一条が見せてくれたこの島に現れた不審人物たちだ。

さらに驚くべきはその人数だ。


「嘘だ…百人も…いるなんて…」


氷川の額に一筋の冷や汗が垂れた。

たった一体だけでも一度暴れたら数十人の被害者を出す未確認生命体。

それがこんな小島に百体も出没したとなれば大事態だ。

先ほど一条から見せてもらった防犯カメラの映像よりも人数が増えてるなんて予想外だ。

しかもこの事実を知るのはここにいる自分たちだけ。

他はまだ誰も知らない。

この祭りの会場には何も知らず笑顔で祭りを楽しむ人たちが大勢いる。

そんな人々をこの未確認生命体たちから守り抜けるのか。

氷川の緊張感はまさに頂点に達していた。



「大丈夫。きっとなんとかなるから。」


そんな氷川を落ち着かせるかのように五代が笑顔で応えてみせた。

だがこの状況でどうやって…


「全員配置についてくれ。今からこれを起動させる。」


そんな時、一条はこの島に持ち込んできたある装置を起動させた。

警視庁が開発した超音波発生装置。

この装置は元々未確認生命体3号(ズ・ゴオマ・グ)の対策に作られた装置。

同じく未確認生命体に使用すれば攪乱に使用出来ると判断して用意していた。


「グ…ウガァァァ…」


一条が装置を起動させたと同時にこの超音波に先ほどの集団が突如として苦しみだした。

今がチャンスだ。一条はこの隙に氷川と現場にいる警官に祭りの参加者の避難を徹底した。

一条の指示を受けてすぐさま行動に出る氷川たち香川県警だが…


「リント………ガァァァァァッ!!」


だが獲物を目の前にしてみすみす取り逃がす未確認生命体ではない。

彼らは身体を変化させて怪人の姿へと変貌させた。

この事態を目撃した参加者たちは大パニックを起こした。

未確認生命体が目の前に出現したのだから当然だ。

なんとか警官たちが宥めているがそれにも限界がある。

このままでは殺される。なんとかしてくれとそう訴えた。



「どうしたら…このままじゃ…」


この事態に氷川は思わず不安に陥った。

これでは市民に被害が及ぶ。どうしたらいいのかと…


「任せて!俺がいます!」


そんな時、五代が怪人たちの前に乗り出した。


「何を考えているんですか!危険だから下がって!」


一体何を考えているのかとすぐに呼び止めようとするが…


「大丈夫、だって俺…クウガだから!」


その五代だが怪人たちの前に飛び出すとポーズを取った。

すると彼の腹部から奇妙なベルトが出現。

光り輝くそのベルトは神秘の霊石アマダム。そして五代は構えながらこう叫んだ。



「変身ッ!」


すると彼の全身は赤い甲冑に覆われた。

次の瞬間、そこには燃え盛る炎を纏った真っ赤な戦士が現れた。

その姿を目撃した氷川は思わずこう呟いた。


「あれは…四号…未確認生命体…第四号…」


未確認生命体第四号―――

人々を惨殺する未確認生命体の中で唯一人だけ人間の味方をする謎の戦士。

当初、未確認生命体はすべて抹殺対象だった警察も

何故か四号だけは味方であるかのような対応を取っていた。

この対応に何故なのかと氷川も疑問を抱いたこともあった。

だが今の光景を見てすべて納得した。

五代雄介、彼こそが四号であり人々の味方なのだと…



「ヒィィィッ…クウガ…クウガ…!?」


五代雄介の変身するクウガの出現にグロンギたちは思わず怯みだした。

まさかこんなところにクウガが現れるとは予想していなかったようだ。


「オリャァァァッ!」


みんなを守るために拳を握り締め立ち向かうクウガ。

赤い姿が特徴のクウガ・マイティフォーム。

その五体を駆使した徒手空拳でグロンギの怪人たちを次々となぎ払った。

そんなクウガの活躍にグロンギの怪人たちは戸惑うばかり。

これではせっかくのゲゲルが台無しだ。

とにかくゲゲルを完遂させるためにも人間たちを襲わなくてはならなかった。



「そうか。五代くんが新たな仮面ライダーだったのか。」


そんな五代の変身した姿を見て

光太郎は思わず新たな仮面ライダーの出現を目の当たりにしていた。

出会った当初から何かを感じさせる青年だとは思っていたが…

巷で噂になっている第四号が新たな仮面ライダーだとは予想外だった。

だが喜んでばかりもいられない。

未確認生命体の出現に辺りは大パニックを起こしていた。

このままでは人々が怪人たちの餌食にされてしまう。


「光太郎さん!どうすんだよ!」


そんな光太郎に思わず詰め寄る巧。

彼の手は幼い弦太郎を離すまいとギュッと握り締めていた。

そうだった。とにかく今は怪人たちをなんとかしなくてはならない。


「わかった。悪いが巧とそれに弦太郎にも協力してもらうぞ。」


いきなり名前で呼ばれて戸惑う巧と弦太郎を連れて光太郎は急いである場所へと向かった。



「ハァァァッ!」


一方クウガはトライチェイサーを駆使してグロンギの怪人たちを翻弄させていた。

いくら量産型とはいえ優れた性能を持つトライチェイサーだ。

その特性を活かした突進攻撃での打撃に怪人たちは太刀打ち出来ずにいた。


「よし、今のうちだ!応戦しろ!」


一条も香川県警の警官たちと共に銃で怪人たちの動きを牽制していた。

警官の銃では強固な外皮に覆われたグロンギにダメージを負わすことは出来ない。

それでもクウガのサポートに徹することは可能だ。

それに超音波発生装置のおかげで怪人たちの動きはかなり限定されている。

さらにグロンギの苦手なガス弾を用いて怪人たちを徹底的に追い詰めた。


「みなさん落ち着いて避難してください!大丈夫、慌てないで!」


氷川もこの間に市民の避難誘導に回っていた。

本来なら氷川も一条たちと共に戦闘に加わりたかった。

だがまだ新米の自分にはそれだけの力は備わってはいない。足でまといになるのがオチだ。

それでも戦闘に参加しなくても人々を守ることは出来る。

この場にいる誰もが人々を守る。唯そのために行動を起こしていた。



「一条さん!こいつら第三号よりも弱いです!これなら行けます!」


この場にいるグロンギと拳を交えてクウガは察した。

確かに数こそ多いが個々の戦闘力はそれほどでもない。

何故ならこの場にいるグロンギの怪人たちはズよりも下の階級が最下層の者たち。

これなら武装した警官でもなんとか太刀打ちすることが可能だ。

クウガの助言を受けて

一条は警官たちに的確な指示を出しながら怪人たちが逃げられないように包囲した。


「超変身ッ!」


そう叫ぶとクウガのベルトは青く光り出した。

クウガの甲冑は赤から青へと変化。

さらにクウガは会場に落ちていた屋台の棒を持つとそれがドラゴンロッドへと変化する。

クウガ・ドラゴンフォーム。

警官たちが包囲したグロンギの怪人たち目掛けて

ドラゴンロッドに封印エネルギーを集中させ、必殺技のスプラッシュドラゴンを放った。


「グワァァァァ!?」


鋭い突き技を受けて一気に10体の怪人たちが爆散した。

好戦ムードなクウガたちだが油断は禁物だ。まだ怪人たちは相当な数を残している。



「ボソグ…ジャデデジャス…ッ!」


そんな最中、ある怪人が背中から羽を出現させて上空へと飛んだ。

そして空から避難している人々目掛けて襲いかかった。


「おぎゃぁぁぁぁッ!?」


空を飛ぶ怪人が参加者の赤ちゃんを捕まえて飛び立とうとした。

そうはさせまいとクウガはなんとかジャンプして応戦しようとするが

敵は空を自由に飛ぶことが出来るが生憎とクウガには飛行能力は備わっていない。

いくら戦闘力が低くてもクウガが苦手とする空中戦に持ち込まれたら分が悪い。

だが目の前で幼い赤ちゃんが殺されるのを見過ごすことは出来ない。

一体どうしたらいいのか。



((バタバタバタッ!))


そこへ空から何か響く音が聞こえてきた。これは怪人たちの羽ばたく音ではない。

エンジンのモーター音。これには聞き覚えがあった。

間違いない。これは光太郎が操縦するヘリの音だ。


「五代くん乗れ!ヤツを追うぞ!」


操縦席で叫ぶ光太郎に言われてクウガはすぐさま光太郎のヘリに飛び移った。

そしてクウガを乗せてヘリは怪人たちの追跡を開始。


「オイオイ光太郎さん…大丈夫なのかよ…」


「スゲーな!ヘリコプターに乗るの初めてだ!」


「任せておけ。それよりもスピードを出すから二人ともしっかり捕まってろよ!」


ヘリには巧と弦太郎も同乗していた。

初めてのヘリコプターにウキウキする弦太郎とは裏腹に戸惑うばかりの巧。

そうこうしている内に怪人との距離を詰めていった。

今なら射程内だ。そう確信したクウガは…



「弦太郎くん、その銃を貸して!」


クウガに頼まれて弦太郎は祭りの屋台で買った玩具の銃を手渡した。

銃を手渡されたクウガは緑が特徴的なペガサスフォームへと超変身。

同時に弦太郎から手渡された玩具の銃もペガサスボウガンへと変化する。


「よし…これで………いや…ダメだ…!?」


ペガサスボウガンの一撃を放とうとするがその直前でクウガは躊躇した。

何故なら高度が高すぎるからだ。

ここで怪人を倒せたとしてもヤツが捕らえている人質がそのまま落下する恐れがある。

もう少し低ければなんとか受け止めることも可能だが…

既に上空100m以上も上昇しているこの状況では

いくらクウガでもこの高度から落ちた赤子を受け止めることは至難の業だった。



「大丈夫だ五代くん。撃て!」


「光太郎さん…けど赤ちゃんが…」


「任せろ。人質は俺が助ける。巧、キミは操縦桿を握っていてくれ。絶対離すなよ!」


「え…おい…待てよ!?」


そんな時、光太郎がヘリの操縦を巧に任せてヘリから飛び降りてしまった。

こうなればもう躊躇している場合ではない。

クウガはすぐにペガサスボウガンによる必殺技ブラストペガサスを放った。


「グガァァァァッ!?」


ブラストペガサスの一撃を喰らって怪人は撃破された。

だが同時に捕らえられていた人質の赤ちゃんは地上へと落下。

このままでは赤ちゃんの命が危ない。



「よし、掴んだ!もう大丈夫だ!」


そんな時、先ほどヘリから飛び降りた光太郎が赤ちゃんをキャッチした。

赤ちゃんを守ろうと大事に抱き抱える光太郎。

だがこのままでは二人揃って地面に激突する。

もう時間がない。一体どうしたらいいのか…?


「変…んん…身ッ!」


その瞬間、光太郎の身体は眩い光に包まれた。

光に包まれながら光太郎は何事もなく地面に着地した。

そのすぐ後にクウガも地面に着地して急いで光太郎の元へと駆け寄った。

普通の人間があんなところから着地して無事でいられるはずがない。そう思っていたが…

しかしそこに光太郎の姿はなかった。代わりに一人の戦士がいた。

黒いボディに真っ赤な目を宿したまるでバッタの姿をした戦士。

動揺するクウガに対して彼はこう名乗った。



「五代くん。いや…クウガ。今の俺は仮面ライダーBLACKRX。
かつて暗黒結社ゴルゴム、それに異次元からの侵略者クライシス帝国と戦った者だ。」


仮面ライダーと聞いてクウガも朧げだがそんな都市伝説をあったことを思い出した。

その昔、巷で噂されたバイクに乗って颯爽と現れる仮面のヒーロー。

かつては何人かの仮面ライダーの目撃情報が巷で飛び交った。

だがこの数年はそんな目撃情報などなく誰もがその存在を忘れかけていた。

そんな伝説のヒーローが自分の目の前に現れるとは驚かずにはいられなかった。


「まさか光太郎さんが仮面ライダーだったなんて…」


「驚かせてすまない。けどキミもその姿からして新しい仮面ライダーなんだろ。」


「俺は…ライダーなのかと言われてもまだピンと来なくて…
けど光太郎さんがクウガと同じ力を持っているなんて心強いです。
お願いです。どうかこの島に居る未確認からみんなを守るのを協力してください!」


「ああ、元よりそのつもりだ。こちらこそよろしくな。」


ライダーたちは邂逅を経て改めて固い握手を交わすクウガとそれにRX。

二人の仮面ライダーがこの小豆島に巣食う未確認生命体を倒すために力を合わせる。

まさに心強い光景だ。

だが二人はまだ気づいていなかった。この事件の裏に邪悪な存在が潜んでいることに…

ここまで

クウガだけかと思ってたらえらいドリームタッグになってた……期待



「状況はどうなっている!」


「各地の被害報告はまだか!」


「怪我人はこちらへ!医者の手配を急いで!」


「おい!県警本部との連絡はまだ繋がらないのか!?」


光太郎と五代、それと巧と弦太郎が祭りの会場に戻ると辺りは騒然としていた。

残っていた怪人たちは会場を抜け出して島の何処かへと散開。

現場では一条とそれに香川県警の警察官たちが事後処理に追われていた。

幸いにも死者は出なかったものの、怪我人は多数出ている状況。

市民は先ほどの恐怖とそれに傷の痛みで怯えきっており

そんな市民を守る警察官たちも対応に追われて現場は混乱した状況が続いていた。



「一条さんどうですか。」


「見ての通り対応に追われている。だが幸いにも死者は出なかった。
それに未確認たちも散開したとはいえ個々の能力はかなり低い。
これなら我々が総動員で捜索に当たればなんとか対処出来るはずだ。」


一条は戻ってきた五代に現在の状況を簡単に説明すると

すぐに先ほど散らばった未確認生命体の捜索に乗り出すつもりだ。

確かに一条の言うように先ほど出現したグロンギの怪人たちは大したことはなかった。

これなら警官を総動員させてクウガの力も合わせれば十分に対応出来る。


「一条さんの言う通りだ。五代くん今度は俺も協力するぞ。」


さらに光太郎も五代たちに全面的に協力すると申し出た。

クウガとRXが力を合わせれば怖いものなどない。

こちらの体制は万全だが…



「あの…ちょっといいですか。俺…気になっていることがあるんです。」


「五代、気になることとは何だ?」


「はい。俺…思うんですけど…まだ本当の敵が潜んでいるはずなんです。」


「本当の敵だと…?」


「そうです。考えてみるとおかしいんですよ。
さっき現れた未確認のヤツらは俺が変身したクウガに怯えていましたよね。
俺たちがこの島に来た経緯を思い出してください。
あいつらが挑戦状を叩きつけてきたんですよ。」


「なるほど、そういうことか。
敵はクウガに挑戦状を叩きつけたのは腕に自信があるからだ。
それなのにさっき現れた怪人たちはそのクウガを見て逃げ出した。
つまりさっき現れた怪人たちと五代くんと一条さんをこの島に誘い出した怪人は別にいるわけだな。」


五代の意図を理解した光太郎。

そんな二人の話を聞いて一条は改めて対応を検討し直した。

恐らく五代の不安は的中している可能性が高い。

一条も未確認生命体とは何度も渡り合っている。

獰猛で残忍、それでいて人を襲うことをまるで狩りのように楽しむ怪人たちだ。

それがわざわざこの島に呼びつけたのだからこんな簡単に終わるはずがない。

もしもここで対応を誤れば大惨事を招く。

だからこそどんな事態にも対応出来るよう備えておく必要があった。



「待ってください!いくらなんでも憶測で語るのは早計です!」


そんな一条たちの話し合いに氷川が待ったをかけた。

先ほどの戦闘で五代たちが協力者であることは十分理解できた。

だが彼らは警察の人間ではない。そんな一般人の意見を警察官が鵜呑みにするのは問題だ。


「今はそんな事を言っている場合じゃない。一刻も早く対処しないと最悪の事態を招くぞ。」


「けどここは島ですよ。敵に逃げ場なんてありませんよ。」


「いや、逃げ場がないのは俺たち人間の方かもしれないだろ。」


一条の言葉を聞いて氷川もようやく気づいた。

先程まで戦勝ムードで浮かれていたがここは本土と離れた離島。

県警からの応援もすぐには要請出来ない場所だ。

つまり五代の不安が的中しているのだとすれば追い込まれているのは人間の方だ。

その事実に気づいた氷川もまた急に不安になりだした。

いくら死者が出なかったとはいえこちらには負傷した怪我人もいる。

それに怪人たちに立ち向かうことすらできない一般人までいる。

それなのに先程よりもさらに強い怪人に攻め込まれたら…



「光太郎さん、あなたのヘリで負傷者だけでも運ぶことは可能ですか。」


「まあ出来なくはないが…それでも俺のヘリじゃ精々4~5人が限度だ。それ以上は…」


一条は光太郎のヘリで負傷者の移送を頼んだ。

だが光太郎のヘリはあくまで民間用であり大勢の人間を…

ましてや救助ヘリみたく負傷者を運べるような代物ではない。

ピストン移送するにしてもその間に怪人が攻めてくる可能性が高い。

だからこそ負傷者を逃がすなら一度に行う必要があった。


「こうなれば海上保安庁に連絡を取ろう。」


最早グズグズしている暇はない。急いで応援を呼ぶべきだ。

そう判断した一条はすぐ香川県警本部に連絡を取ろうとした。



「待ってください。それは…」


だがそんな一条を何故か氷川は遮ろうとした。

一刻の猶予もないという事態で一体どうして…?

そんな氷川だがなにやら険しい顔で一条に対してあることを告げた。


「すいません。応援は呼べません。」


「ふざけんな!これを見ろよ!みんな傷ついてんだぞ!それなのに何でだよ!?」


「すまない。警察としても事情があるんだ。」


「こんな時にどんな事情があるんだ!言ってみろよ!」


氷川に対して堪らず巧が声を荒らげてしまった。

そんな巧を光太郎がなんとか宥めるが無理もない。

氷川の事情はわからないが巧からしてみれば

どんな事情であれこの非常時に救援を呼べないなどありえないことだ。

そんな大人たちを見て子供の弦太郎もまた不安を隠せずにいた。

不安になる弦太郎を五代が大丈夫だよと優しく諭していた時だった。



「ガァァァァァッ!」


辺り一帯に獣の雄叫びが響いた。

急いで確認するとそこには先ほど退散したはずのグロンギの怪人たちがいた。

どうやら体制を立て直して再び襲い掛かりに来たようだ。


「こいつら…また…五代、それに光太郎さん。ヤツらの相手を頼む!」


「わかりました。光太郎さんお願いします!」


「あぁっ!いくぞ!」


「 「変身ッ!」 」


南光太郎と五代雄介。二人の戦士が変身。

次の瞬間、仮面ライダーBLACKRXと仮面ライダークウガがこの場に現れた。

先ほどの戦闘で数は減ったが敵は相変わらずの獰猛さで人々に襲いかかろうとした。



「こいつらの目的は一体何なんだ!?」


「わかりません。けどみんなを守らないと…」


「よし、こうなれば一気に行くぞ!」


RXが加勢に入ってくれても敵は複数で襲ってくる。

いくらライダーが二人掛かりとはいえまともに相手をするにはかなり厳しい。

そこでRXは少しでも相手の数を減らそうとキングストーンの力を発動。

眩い光に身体が包まれてさらなる姿へと変わった。


「俺は悲しみの王子!RX!ロボライダー!ボルティックシューター!!」


強固なメタルボディのロボライダーへとフォームチェンジすると

自慢の銃でもあるボルティックシューターを取り出して

集まったグロンギの怪人たちに必殺のハードショットを撃ち込んだ。

強烈な一撃を喰らった怪人たちは次々に爆散。


「よし、このまま一気に行くぞ!」


ロボライダーの攻撃で怪人たちは途端に怯み形勢は一気にこちらのものとなった。


「五代!銃だ!」


「ハイッ!超変身!」


クウガも一条から銃を受け取ってペガサスフォームで迫り来る怪人たちに発砲した。

二人のライダーたちによる攻撃で怪人たちは徐々にその数を散らしていく。

これなら怪人たちも一気に全滅させられる。


だがここである変化が起きた。

海からドドドドと大きな波が押し寄せてきた。

大津波だ。それがこの会場の人々を飲み込んだ。


「 「うわぁぁぁぁぁぁ!?」 」


幸いにも被害は少なかった。だが一体誰がこんなことを…?

すると波が引いてそこから一体の怪人が姿を現した。

それはサメの姿を模した怪人。

この怪人を目の当たりにしたRXはかつての出来事を思いしだした。


「お前は…あの時の…まさか生きていたのか…!?」


そう、この怪人こそ88年に仮面ライダーBLACKが倒したはずのグロンギの怪人だった。

あの当時、トドメを刺したと思い安心していたが…

だが実際はそうではなかった。あれから12年という月日が流れた。

さすがのRXも当時のことなどすっかり忘れていた。

だがこの怪人にしてみればあの時の屈辱は決して忘れることはなかった。

その証拠に怪人の胸元には大きな古傷があった。

それは12年前に仮面ライダーBLACKにやられた傷だ。

この傷は決して癒えることのない恨みと憎しみの印。

いつの日かこの雪辱を晴らそうと待ち構えていた。



「クウガ…ガァァァァァァッ!!」


そして怪人はRXとクウガに襲いかかった。

怪人は12年前と比べて明らかにパワーとスピードが桁外れに強化されている。

それだけでなくライダーたちにとって不利なのはこの場所だ。

先ほど押し寄せた津波は引いたがそれでもまだ膝下まで海水が浸かっている。

そのため地面は糠ってジャンプ力を活かした技を繰り出すことが出来ずにいた。


「このままじゃやられる…こうなれば…!」


この状況が不利だと判断したRXはさらなるフォームチェンジを行った。

先ほどのロボライダーとは異なる蒼く透き通った姿へと変わった。


「俺は怒りの王子!RX!バイオライダー!」


バイオライダーはその特性を活かして自らの身体を液状化させて怪人を翻弄させた。


「超変身ッ!ハァッ!」


同時にクウガもドラゴンフォームとなって二人はこの状況にも対応した戦闘を見せた。

初めての連携だというのに息のあった攻撃に怪人は次第に追い詰められていった。


「トドメだ!バイオブレード!」


そしてバイオブレードの刀身が蒼白く輝き必殺技のスパークカッターが一撃が放たれた。



「ヌ゛ウァァァァッ!」


だがその瞬間、怪人の全身から突如として電流が流れ出した。

それだけではない。同時に怪人の身体にも変化が起きた。

電流に包まれながら身体の部分がさらに禍々しく変化していった。

これを見てクウガは思った。自分と同じだと…


「これはひょっとして…金の力…?」


以前に怪人との戦闘で心肺停止まで追い込まれた五代は

その処方として強烈な心臓ショックを行うために体内に電流が流れた。

それがきっかけとなりクウガはライジングフォームの力を手に入れた。

だからこそわかった。これは自分と同じ力だ。


「ガガ、ゲゲルンザジラシザ。」


変化を終えた怪人は不気味な笑みを浮かべると

身に付けていた小さなアクセサリーらしきモノを取り外してそれに力を込めた。

するとそれは武器へと変化。刺叉の鉾だ。



「ギベ!クウガ!」


怪人の鉾がクウガに向かって振るわれた。

すぐにドラゴンロッドでガードしようとするが…

それも虚しくドラゴンロッドをいとも容易く真っ二つにへし折られてしまう。


「クウガ!危ない!」


咄嗟にバイオライダーが援護に入ってくれたがそれでも防戦一方の状況だ。

無理もない。バイオライダーはスピードに特化した戦士。

だが目の前に立ちはだかる怪人は単なる特化型ではない。

すべてに置いて上位に立つ万能型の戦士。

これに対抗するには並大抵の攻撃では跳ね返されるのがオチだ。

そう感じたクウガはすぐにトライチェイサーに乗り込んだ。


「こうなったら…これで…!」


トライチェイサーのアクセルを全開にしてタックルを仕掛けようとする。

この攻撃ならどんな怪人だろうとたじろぐはずだ。

そしてウィリー走行でバイクの前輪を怪人にぶつけようとした時だ。


「ヌンッ!」


だが怪人はそんなタックルの反動などビクともしなかった。

逆に片腕でバイクの前輪を余裕で掴む始末。それだけではなく…


「ボンバ…ゴロヂャ…グゾグギダ…」


不気味なグロンギの言葉を囁くと同時に怪人は片手のまま

トライチェイサーを頭上に持ち上げてそのフレームを簡単にへし曲げてしまった。

逆に吹っ飛ばされてしまうクウガ。

この状況に一条たち警官隊も銃で応戦しようとするが

どんなに銃弾を撃ち込んでもまるで蚊に刺されたかのような感じで気にもとめずにいた。


「リント…ジャ…ラ…ザ…」


それどころか身体に生える鱗を投げつけて警官たちに次々と深手の重傷を負わせていた。



「なあ…巧…俺たち…大丈夫だよな…」


そんな中、弦太郎はこの状況に不安を感じていた。無理もない。

ライダーたちが苦戦を強いられているこの状況では幼い子供が不安になるのは当然だ。


「わからねえよ。とにかく離れるな。」


巧もこの緊迫した状況でろくに身動きを取れずにいた。

民間人の自分たちに出来ることなど何もない。

警官でもましてやライダーでもない。戦う術など持ち合わせてはいないのだから。

弦太郎はこの状況で唯一頼れる巧の手を力強く握るしかなかった。

そんな中で巧は嫌な気配を感じ取った。

RXとクウガが戦っている隙を伺って他の怪人たちが巧たちに近づいてきた。



「アァァ…リント…」


まるで餌を求めるハイエナのように涎を垂らしながら迫ろうとする怪人たち。

そんな怪人たちを前に幼い弦太郎は恐怖で巧に縋るしかなかった。

巧はすぐに誰かに助けを求めようとしたがタイミングが悪かった。

ライダーたちは未だに苦戦中でこの戦闘で警官たちも大勢の負傷者が出た。

そのせいですぐ助けに駆けつけることは出来ずなかった。


「クソ!舐めるな!」


なんとか応戦しようと巧は怪人たちに殴りかかった。

だが単なる人間のパンチなどグロンギの怪人たちに通じるはずもない。

それどころか怪人がそんな巧のパンチを振り払っただけで吹き飛ばされる有様だ。


「チクショウ…弦太郎…逃げろ…」


吹っ飛ばされた巧は恐怖で呆然とする弦太郎に逃げろと叫んだ。

だが恐怖心から弦太郎はその場から逃げることも出来ず怯えて気を失ってしまう。

これを見て満足した怪人たちは弦太郎を連れ去ろうとした。



「やめろ…弦太郎を離せ…」


弦太郎が連れ去られようとする状況で巧は痛みを堪えてなんとか立ち上がった。

このままでは弦太郎が殺される。

しかし敵は未確認生命体。普通の人間ではまともに太刀打ちなど出来るはずもない。

だがそれはあくまで普通の人間だけ…


「ハァァ…」


巧は拳に力を込めて全神経を集中させた。本能をむき出しにして感情を高ぶらせた。

そうするとある変化が起きた。巧の顔が不気味なモノへと変わりつつあった。

そして一気に力を解放させようとした時だ。


「ヒィィ…化物…」


その場にいたこの祭りの参加者が巧の顔を見てそう呟いた。

これを聞いて巧は水面に映る自分の顔を覗いた。

そこには確かに化物にしか見えない自分の顔が映っていた。

これが人間の顔か。どう見ても化物でしかない。

すぐに変化をやめた巧はその場に立ち尽くした。


「ちがう…俺は人間だ…化物なんかじゃない…」


まるで言い訳でもするかのように自分自身に対して言い聞かせた。

その間にも弦太郎が連れ去られたと知らず…



~PM15:35~


祭りの会場は先程よりもさらに状況が悪化した。

今までは警官が無事だったのである程度の余裕があった。

だが今度は警官にも大勢の負傷者が出た。

下手をすれば命の危険が伴う重傷者までいる有様だ。

あの後、ライダーたちが防戦してくれたおかげで辛うじて死者は出なかった。

だがグロンギの怪人たちは確実にこの場にいる人たちを追い詰めている。

このままではジリ貧だ。今は無事でもいずれは殺される。

誰も口にはしないがこの場にいる誰もがそんな不安に怯えていた。


「すいませんでした!」


そんな中、唯一人無事だった氷川が一条の前でひたすら謝罪を繰り返していた。

何故氷川が謝罪しなければならないのか?

実はそれには今回の香川県警における事件への捜査体制に深く関わっていた。

何故なら海上保安庁の巡視艇が

保安庁幹部の幼なじみである警視庁の警視正を迎えに行っているとのこと。

いくら幹部職員だろうと組織を私物化するのは問題だ。

さらに言えば事件は既に警察へ予告されていたものであり防ぐ手段はあった。

それを疎かにして私用を優先することなど許されるべき行いではない。



「それじゃあキミはこのことを事前に知っていたのか。」


「はい…僕だけでなく香川県警の人間は全員…」


氷川の気まずそうな返答に一条はやりきれなさを感じずにはいられなかった。

今回の事件で市民に一人でも死者が出ればそれは間違いなく自分たち警察の責任だ。

恐らく香川県警は未確認生命体の恐ろしさをわかっていなかったのだろう。

未確認生命体との攻防において常に最前線に身を置く一条たち対策班でもなければ

精々暴徒程度の存在くらいにしか把握していなかったのかもしれない。

その杜撰な対応によってこのような結果が生じた。

もっと人員と装備があれば今回の事態にも対応は出来たはずだ。

氷川はこれを自らの責任と感じているが警察は組織で動いている。

今この場で氷川を批難することは出来ない。彼は上司の命令に沿った行動を行っただけ。

責めるべきは今回の杜撰な対応を取った香川県警の幹部。

だが責任問題など後回しだ。今はこの事態をどう対処すべきかそれが問題だ。


「それでどうする?海上保安庁の救援を求められないなら民間の船を使うか。」


「それも…無理です…この港には…大勢の人たちを乗せられる船はありません。」


「今から本土に救援を求めるにしても時間が足りない。どうすれば…」


民間人を批難させるにしても移送する手段がなければ話にならない。

もしも仮に船を用意できたとしても未確認生命体がいる。

あのリーダー格の怪人。仮にC1号と名付けるとしよう。

C1号を倒すにしても先ほどの戦闘でクウガたちはかなり押され気味だった。

それにあの戦闘で民間人の少年が人質に取られたと報告も聞く。

この島から負傷者を避難させ人質の少年を救い出し怪人たちを倒す。

すべてをこなすにしてもまずはやはり救援が来なければどうしようもなかった。



「あの…あかつき号に頼んだらいいんじゃないですか…?」


そこへ先ほどの戦闘を終えた五代が現れた。

あかつき号と聞いて一条は神戸でのことを思い出していた。


「だがあの船はエンジントラブルを起こしていたはずだ。」


「それに五代さん。あかつき号の航路はこの島じゃなく高松の港ですよ。」


「けどあれから時間が経って
修理も終わっているだろうしこんな事態だからきっと力を貸してくれるはずですよ。」


五代が笑顔でそう告げると一条はとにかく連絡を取ることにした。

無線を取り出してなんとかあかつき号が出航していることを祈った。

するとすぐに無線から応答が出た。

どうやらあかつき号は既に修理を終えて出航しているようだ。

一条はあかつき号の船長に救援に来てくれるように頼んだ。

船長もまたこの事態を知ってすぐ小豆島へ向かうと約束してくれた。

これでなんとか救援の目処が立った。

こんな状況だがこれでようやく一筋の光明が見えた。



一方でこんな非常時に唯一人で行動しようとする人間がいた。巧だ。

彼は光太郎が借りたはずのXR250のバイクに乗り込んで何処かへ出発しようとしていた。


「巧、何をしているんだ。」


するとそこへ光太郎が駆け寄ってきた。

こんなグロンギの怪人たちが潜んでいる状況で何処へ行こうとするのか?

その理由を尋ねた。


「決まってんだろ。弦太郎を助けに行く。」


「やめろ。危険すぎる。ここは俺たちに任せておけ。」


「いいや、俺が行く。あいつが捕まったのは俺のせいだからな…」


弦太郎は巧の目の前で連れ去られた。

何も出来ず唯呆然と見ているだけだった。それが悔しかった。

これは自分の責任だからこそ一人で行こうと決意していた。



「………死ぬかもしれないんだぞ。」


「かもな。けど俺が巻いた種だ。俺が摘み取る。」


「頑固なヤツだな。わかった。俺が一緒に行く。けど覚悟しろよ。本当に危険なんだ。」


「わかってるよ。けど黙って見過ごすよりはマシだ。」


巧の意思を汲み取った光太郎は代わってバイクの運転席に座り巧を後部席に座らせた。

エンジンを更かして出発しようとした。

そこへ先ほど話を終えた五代たちが現れた。


「光太郎さん、もう行くんですね。」


「そっちも話し合いは終わったようだな。」


「ええ、もうすぐあかつき号が救援に駆けつけてくれます。それであなたには…」


「わかっている。弦太郎の救出は俺と巧で行う。キミたちは人々の避難を頼む。」


五代と一条の申し出に光太郎はすぐに応じた。

こうなれば取るべき手段はひとつ。

怪人たちと戦えるRXとクウガが二手に分かれて行動するしかない。

RXは弦太郎の救出、クウガは人々の避難。これを同時に行う必要があった。



「せっかくの戦力が分散なんてかなりリスクが高いですね。」


この行動に氷川は不安を抱いた。

いくら仕方がないとはいえせっかくの戦力を分散させるのは好ましいやり方ではない。

敵はこの島に大勢潜伏している。

本来ならライダーたちが一丸となって対処すべきなのかもしれない。


「だが今は他に方法がない。動ける人間が動かなければ助けることも出来ないからな。」


そんな氷川に一条はそう言ってのけた。確かにこちらの戦力は乏しい。

動ける人間も限られている。それでも人々を守るために動かなければならない。

こうして光太郎と巧は弦太郎の救出へと向かった。

残った五代たちも人々を避難させるため行動を開始した。



~PM16:00~


五代と氷川は小豆島の港へと訪れていた。そろそろ陽が落ち始める時刻だ。

一条は光太郎から頼まれてとある場所へと趣いていた。

空はまだ快晴で晴れ晴れとした天気で海には波一つ漂うこともない穏やかさを保っていた。

これで未確認生命体がいなければまさに最高の観光気分を味わえただろう。

港には既に避難する人々で溢れている。

香川県警の警官たちは人々を誘導して不安にならないよう促した。

あかつき号がやってきたらまず重傷者を先にこの島から逃がさなければならない。

怪人を倒すのはその後だ。


「五代さん…その…実は…」


そんな人々を見守る中で氷川は五代に対して気まずそうにあることを話そうとしていた。

それは先ほど一条にも打ち明けた自分たち香川県警の失態だ。

そのせいで五代にこのような過酷な戦いを強いることに対しての申し訳なさしかなかった。



「氷川さん!ごめんなさい!」


「え?何であなたが謝るんですか。」


「だって俺…バイク壊しちゃって…本当にすいません!」


そういえばと氷川は先ほどの戦闘で

香川県警で用意したトライチェイサーが怪人によって破壊されたことを思い出した。

それにしても謝るつもりが逆に謝られるとは…

先程まで思いつめていた雰囲気が一気に拍子抜けしてしまった。


「アハハ、気にしないでください。
バイクなんてここにいる人たちの命が守られたんです。
そう思えばバイクの損害くらい安いものですよ。
それに謝るのは僕の方です。僕がしっかりしていればこんなことには…」


「そんな、氷川さんはしっかりやっていますよ。けどおまわりさんも大変ですよね。」


「これでも宮仕えですからね。
上司から命じられたらそれに殉じなければならない。
それなのに自分の意思を曲げずに貫き通す一条さんの方がしっかりしてますよ。」


そんな氷川の言葉に五代も少し思うところがあった。

未確認生命体関連の事件で一条は常に自分のバックアップを最優先に徹底してくれている。

その裏では警察上層部と何度かひと悶着あったかもしれない。

それを思うと一条には苦労させてばかりだなと申し訳なさを感じていた。



「ところで五代さん。あなた宛てにFAXが届いてましたよ。何なんですか?」


「ありがとうございます。
実はさっきあかつき号で知り合った人に頼まれ事をされたんです。」


これからやってくるあかつき号には沢木哲也が乗っているはずだ。

実はグロンギの怪人たちが出没する直前に

五代は東京にいる城南大学の沢渡桜子と連絡を取って頼まれた手紙の解読を頼んでいた。

その解読を終えた桜子からこうして返事を受け取っていた。


「それじゃあ船にはその人が乗っているんですね。」


「はい、だから直接渡すつもりです。
よかった。彼思い悩んでいたみたいで早く見せてあげたいな。」


こんな大事な時にも会ったばかりの他人のことを考えているとは…

能天気なのかそれとも純粋というべきなのだろうかわからない。

そのあかつき号だが無線での連絡によるとまもなく到着のはずだ。

すると瀬戸内海の遠くから一隻の船が見えた。

その船に五代は見覚えがあった。あかつき号だ。

これで人々を避難させられる。そう思った時だ。



「何だ…あれ…?」


そこには奇妙な光景があった。

こんな雲一つない天候であかつき号が暴風雨に晒されていた。

まるで台風のような豪雨と荒波に晒されてあかつき号は今にも沈没する勢いだ。


「こんなの…ありえない…これも未確認生命体の仕業ですか!?」


思わず氷川に問われたが五代はそれに対して即答出来なかった。

何故なら五代もこれまで戦ってきた怪人たちには

常人には考えられないような異能の力を用いる怪人たちがいた。

だがこんな天候を操る怪人なんて今まで遭遇したこともない。


「ちがう…未確認じゃない…けど…助けに行かなきゃ…」


とにかくあかつき号の救助に出向かなくてはならない。

すると海から奇怪な唸り声が響いてきた。



「アァァァァ…クウガ…ボンゾボゴ…ボソグ…」


そこに現れたのはグロンギの怪人たちだ。

C1号とその仲間たちが海から現れて五代たちの行く手を阻もうとしていた。


「未確認生命体が現れたぞ!」


「こんな時に…冗談じゃない…」


「もう…おしまいだわ…」


海中から次々と現れる未確認生命体たちを見て人々は恐怖した。

当然だ。これでようやく助かると思っていたのがまさかこの土壇場で襲撃してくるとは…

まさに最悪の展開だ。


「クッ…どうしたら…」


ここで五代は迷った。あかつき号の救援と怪人たちとの交戦。

どちらかを行うのは可能だが両方はさすがに無理だ。

ここで怪人たちを見逃すなんてすれば人々に被害が出る。

だがあかつき号は今にも荒波に飲まれて沈没する勢いだ。

一条が戻ってくるにしてもまだ時間が掛かるはず。

これではどうにもならないと苦渋の決断を強いられた。



「五代さん、未確認の連中を引きつけてください。あかつき号の救助は僕が行います。」


「氷川さん…任せていいんですね。」


「はい。僕は警察官です。人々を守る義務があります。」


氷川の決意に満ちた眼差しを見て今の彼なら任せられると信じた。

それから氷川はあかつき号救助のため急いで港にある漁船に乗り込み発進した。

漁船のエンジン音に気づいた怪人たちが今度は発進した漁船をターゲットにする。

そうはさせない五代は自ら海へと飛び込んだ。


「変身ッ!」


クウガドラゴンフォームになって漁船に近づこうとした怪人たちを阻んだ。

その間に漁船はあかつき号へと向かっていく。

クウガの出現にC号は群れを統率してクウガを包囲する。

敵は形状からして海中戦を得意とするはずだ。

それに対して唯でさえ不利なクウガは単身での戦いを余儀なくされた。

だが怯んでいる暇はない。ドラゴンロッドを固く握り締め単身敵に挑んでいった。



~PM16:15~


港でクウガたちが交戦している頃、光太郎は巧を連れてある場所へと趣いていた。

そこは12年前の1988年に光太郎がC1号と戦った海岸。

何故この場所にやってきたのか?

ひょっとしてこの近辺にC1号の住処があるのではないかという憶測に基づいての推測だ。


「不気味だな。本当にこんなところにヤツの住処があるのかよ?」


「わからない。だが昔あいつはここから逃げ延びた。
あの深手を負っていたんだ。そう遠くには逃げられなかったはずだ。
だからヤツの住処はこの近くにあると思うんだ。」


「こんなところにかよ…」


巧は思わず愚痴るほどこの海岸は自然の険しい断崖絶壁にあった。

とてもじゃないがこんな場所を住処にするなんて生き物が生きていける場所じゃない。

だがあんな不気味な未確認生命体が長年住処としていたのだから

まともな場所に住んでいたとも思えない。

そう考えるとやはりこのような場所を好むのかと逆に理解するほどだ。



「それで弦太郎のヤツはまだ生きてるよな?」


「ああ、必ずな。ヤツはその場で殺すことも出来たのに敢えて人質に取った。
思えばヤツは必ず子供をターゲットにしていた。あれは何か目的があっての行動だ。
単純に獲物を狩ろうとしているわけじゃない。」


怪人たちの目的が何なのかはわからない。

だが幼い子供を攫ったからには恐らくろくでもない目的のはずだ。

とにかく今は無事であるのならそれでいい。あとは助けに行けば済む話だ。

こうして海岸を隈なく捜索するがふと巧は光太郎に対してあることを問いかけた。


「それで光太郎さん。アンタって普通の人間じゃないんだよな。」


「…まあな。ちょうどお前くらいの頃だったな。
ゴルゴムという組織に拐われて改造手術を受けてライダーの力を得た。
昔この島に来た時はその組織を倒して心身共にボロボロだった。」


「それなのに今は立ち直ってるんだな。」


「ああ、あれから頼れる仲間に出会ってな。みんないい人たちだよ。」


「そうか…いい仲間だったんだな…」


光太郎の言葉に巧は何か思うところがあった。

その反応を見て光太郎は巧のことがどうにも気になった。

出会った当初からどこか寂しげな雰囲気を漂わせる少年。

何故孤独に生きようとするのか?それはひょっとしたら…



「なあ巧…お前もそうなんだろ…」


「なんだよ。どうかしたのか光太郎さん。」


「この際だからハッキリさせたい。お前も俺と同じなんじゃないのか。」


光太郎は真剣な表情で巧にそう問いかけた。

そのことを問われて巧は思わず光太郎から目を背けてしまう。

確かに光太郎の言う通りだ。


「ああ、俺はアンタの言うように普通の人間じゃない。」


「やはり…けどそれならどうして…」


「何でさっきは戦わなかったのかって?恐かったからさ!」


「それは敵の怪人たちが…ではなくて…自分が恐いからだな。」


何もかもが光太郎に見透かされて巧はつい気恥ずかしさを感じてしまう。

別に巧が悪いわけじゃない。これは光太郎も一度は通った道だからだ。


「そうさ。ずっと恐かった。」


「ガキの頃に死にかけて妙な力に目覚めた。」


「けど力を使ったことは一度もない。もしも使ったら後戻り出来ないような気がしてな…」


これは恐らく誰にでもわかるような悩みではない。

光太郎でも巧の悩みに対して正解な答えなんて出せやしないだろう。

何故ならこれは巧自身の問題だ。



「巧、俺はそのことについてとやかく言うつもりはない。
何故ならこれはお前自身が見つけださなければならないことだ。
だがひとつだけ言わせてもらうなら今は弦太郎を助けることを考えろ。
ひょっとしたらその先に何か答えが見つかるかもしれないな。」


こうして話を終えた二人はその後も海岸沿いの捜索を続けた。

すると海岸の岩場から何かの匂いが…これは血の匂いだ。


「まさか…弦太郎が…クソッ!」


弦太郎の身に何か起きたと感じた巧は急いで駆け出した。

それを追う光太郎だがその際に足元から何か嫌な感触がした。

こんな時に一体何を踏んづけたのか?

すぐに足元を見るとそこにはとんでもないモノがあった。


「これは…生首…それも怪人の…!?」


なんとそこにあったのは先ほど戦闘を行ったC1号が引き連れていた怪人の首だった。

それもひとつだけではない。

三つ、四つ、いやそれ以上のモノがゴミのように散乱していた。

まさか仲間割れ?いや、ちがう。この連中はこれでも凶暴な怪人だ。

いくら同士打ちでもこうはならない。

考えられるとすれば新たな第三者の介入があったということ。

すぐに光太郎は巧の後を追った。

もしもこの島に新たな脅威が現れたのであれば敵は強大な力の持ち主。

それはパワーアップしたC1号よりも恐ろしい存在である可能性が高い。



「巧!大丈夫か!?」


「ああ…それよりもあれを見てくれよ…」


岩場にいた巧はその奥を指すとそこには一人の青年がいた。

白い服装に身を包んだ青白い肌の青年だ。

年齢は恐らく五代と同世代くらいの見た目は普通の青年だが…

しかし普通ではない。何故ならその青年の手には怪人の首が握り締めていた。


「ダグベ…デブセ…」


怪人の言葉はわからないが言っていることはなんとなくだが理解出来た。

恐らく怪人は目の前にいる青年に助けてくれと命乞いしているようだ。

そんな怪人からは敵ながら憐れさすら感じるほどだ。

だが青年はニコリと笑うのみ。笑顔を絶やさずにずっと怪人に対して微笑んでいる。

その微笑みは光太郎と巧からしても思わず不気味さを感じた。

そして次の瞬間…


「ギャァァァァッ!?」


青年は怪人の首をグシャリと握り潰した。

まるで柔らかいトマトをグチャッと潰したような感じに青年の手は怪人の血にまみれた。

この光景を目の当たりにして光太郎は危機感を抱いた。

こいつはさっきまでの怪人たちとはちがう明らかに異質な存在だ。



「キサマ!何故こんな惨酷なことをする!?」


「だってみんな勝手な真似をするからだよ。だから懲らしめたんだ。」


少年は無邪気な笑顔でそう答えた。

光太郎にはこの青年の言っている意味がまるで理解出来なかった。

ちなみにこれはグロンギのゲゲルに関係がある。

ゲゲルとはリント(人間)を狩る殺人ゲーム。

だがこれは単純に殺戮を行えばいいわけではない。

ゲゲルにはある一定の掟が存在している。

『一度に一人しか挑戦できない』 『挑戦者以外はリント(人間)を殺害してはならない』

だがこの場に集まったグロンギの怪人たちは下層階級の者たちばかり。

上位のゴや中位のメみたく簡単にゲゲルの挑戦権を与えられることは決してありえない。

これではいつまでたっても下っ端のままだ。

上の階級に昇りたくてもゲゲルに参加できない以上は昇格も望めない。

もうどうにもならないとそんな行き詰まった彼らの前に現れたのがC号だった。


『この島で密かにゲゲルを行え!』


C1号は彼らを唆した。

この地でなら口うるさいラ・バルバ・デ(薔薇のタトゥの女)の介入もない。

そう安心していた。だがそれは大きな間違いだった。

ゲゲルの掟に反する者は誰であろうと決して許されない。

そして彼らを処刑するためにある男が遣わされた。それがこの青年だった。



「これで一通り終えたかな。そういえば奥にまだ一人いるね。リントの子かな。」


青年が岩場の奥にある洞窟を指すと光太郎と巧はそれが弦太郎のことだと気づいた。

このままでは弦太郎が危ない。

そう察した光太郎はすぐに身構えていまだに動揺する巧に対してこう指示を促した。


「こいつは俺が相手をする!お前は今すぐ弦太郎を助けてこの場から避難しろ!」


「けど光太郎さん…こいつは…」


「いいから急げ!グズグズしているとみんな殺されてしまうぞ!?」


光太郎は戸惑う巧に怒鳴りながらも指示を出した。

よく見ると光太郎は額から一筋の冷や汗が垂れ落ちていた。

これで巧も察した。目の前にいるこの男は明らかに強敵だ。

恐らく光太郎といえどもタダでは済まされない。

そして巧は洞窟へと駆け足で走り出した。

そんな巧など青年は気にもせず青年は光太郎にのみ鋭い眼光を向けていた。



「キミなんだか強そうだ。クウガもこの島に来ているようだね。」


「今はまだ戦う時じゃない。けどみんな弱くて退屈だったんだ。」


「ねえ、キミが相手してくれるよね。」


淡々と言葉を交わすと青年の身体は不気味な怪人へと変化した。

その姿は若干ながらクウガに似ていた。

雪のように真っ白な身体に黄金の装飾を全身に施した怪人。

それは仮面ライダーBLACKの宿敵だった世紀王シャドームーンを彷彿とさせる姿。

光太郎は知らないがこの怪人こそグロンギの頂点に立つ王。ン・ダグバ・ゼバだ。


「変身ッ!仮面ライダーBLACK!RX!!」


同時に光太郎もRXに変身。RXとダグバは無言のまま対峙した。

黒き太陽の王子と白い闇。

暫くの無言が続いた後、二人は互いに歩き出した。

そして固く握り締めた拳がぶつかり合い火花を散らした。

仮面ライダーBLACKRXvsン・ダグバ・ゼバ

この小豆島にてまさかの最強同士の対決が始まった。



~PM17:00~


「ハァァァッ!」


港ではクウガがグロンギの怪人軍団を相手に孤軍奮闘していた。

だが相手はどれも海中戦に長けた怪人たちばかり。

対するクウガはドラゴンフォームで対抗するのがやっとの状態。

さらに今日だけで三回以上も連続変身している。身体的負担は相当なものだ。


「ゾグギダ!ゴンデギゾバ!」


C1号は海中でクウガを軽くあしらいながら挑発した。

まるで子供を手玉に取るかのように弄ばれている。

このまま時間が経つほどこちらは不利になる。

唯一逆転できるとしたらそれは金の力を使うことだ。だが金の力は30秒しかもたない。

今の状況でC1号を30秒以内に撃破するのはかなり難しい。

それにドラゴンフォームで金の力を使うにしてもヤツを倒すには攻撃力が足りない。

あの強固な外皮を貫くにはもっと強力な力が必要だ。



~PM17:00~


「ハァァァッ!」


港ではクウガがグロンギの怪人軍団を相手に孤軍奮闘していた。

だが相手はどれも海中戦に長けた怪人たちばかり。

対するクウガはドラゴンフォームで対抗するのがやっとの状態。

さらに今日だけで三回以上も連続変身している。身体的負担は相当なものだ。


「ゾグギダ!ゴンデギゾバ!」


C1号は海中でクウガを軽くあしらいながら挑発した。

まるで子供を手玉に取るかのように弄ばれている。

このまま時間が経つほどこちらは不利になる。

唯一逆転できるとしたらそれは金の力を使うことだ。だが金の力は30秒しかもたない。

今の状況でC1号を30秒以内に撃破するのはかなり難しい。

それにドラゴンフォームで金の力を使うにしてもヤツを倒すには攻撃力が足りない。

あの強固な外皮を貫くにはもっと強力な力が必要だ。



「ガァァァァッ!」


そこへC1号が全身の鱗をまるで弾丸のように発射させてきた。

無数に飛び散る鋭利な鱗をドラゴンロッドで弾こうとするが

逆にロッドを吹き飛ばされてしまいクウガは無防備状態となってしまう。


「ギラザ!ジャセ!」


この隙にC1号は仲間の怪人たちに命じてクウガの全身を掴ませて動きを封じさせた。

こんな海中だ。動きを封じられたらどうしようもない。

そしてC1号はクウガにトドメを刺すため鉾を取り出した。狙いはクウガの首!

仲間たちが拘束するクウガ目掛けて鉾を突き刺そうとした時だ。


(( ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ ))


遠くから激しい音が聞こえてきた。一体何が近づいている?

怪人たちはそれぞれ動きを止めて海上へと浮上して辺りを見回した。

すると港から何かが猛スピードでこちらへと接近してきた。

それは拘束されているクウガの方へと真っ直ぐ突き進んできた。



「五代!大丈夫か!」


なんと駆けつけたのは一条だ。

一条は赤いバイクに乗り込みクウガの救援に駆けつけてくれた。

そして一条のバイクによって怪人たちは吹き飛ばされてクウガの拘束が解かれた。


「一条さん助かりました。けどこのバイクはどうしたんですか。」


「こいつはロードセクター。以前光太郎さんが使っていたバイクらしい。」


そう、このマシンこそかつての仮面ライダーBLACKの愛車ロードセクター。

12年前、ゴルゴムとの戦いを終えた光太郎は大門親子に愛車を返却した。

そのため本来なら大門の所有するガレージに眠っているはずだった。

だが先ほどの戦闘でバイクを大破されたクウガを見て

光太郎はかつての愛車をクウガに預けることを思い至った。



「これなら存分に戦えるはずだ。頼んだぞ!」


「はい!まかせてください!」


一条から運転席を代わるとクウガはアクセルを回した。

この感触ですぐにわかった。こいつはこれまで乗ったどのバイクよりも早い。

これなら行ける。そう確信したクウガはゴウラムを召喚。

すると空からゴウラムが現れてパーツが分離するとロードセクターの車体に装着された。

ロードゴウラムの完成だ。


「オォォォォッ!」


アクセルを最大にしてロードセクターのアタックシールドを展開。

最大時速で怪人たちに突撃した。


「 「ギャァァァァァッ!?」 」


その突撃によりC1号以外の怪人たちが次々と撃破された。

最高時速960キロのロードセクターで

さらに強化されたロードゴウラムならそのスピードは1000キロを超えている。

そんな最高時速1000キロの突撃など喰らえば並みの怪人などひとたまりもなかった。



「ア…ウ…グゥゥ…」


そんなロードゴウラムの攻撃にC1号は唯一人生き延びた。

だが今の攻撃でC1号の肉体はかなりの深手を負った。

全身の骨はヒビだらけで内蔵は破裂しており立つことも容易ではなかった。

苦しい。息をするのがやっとの状態だ。

そんなボロボロの状態でC1号はなんとか海岸へとたどり着くとフラフラ歩き出した。


「バリジョ…ギラギヂゾ…パセビヂバサゾ…」


こうなればもう一度神に力を与えてもらおう。

今度こそ完璧な力を…クウガを超えて…そしてダクバをも倒せる力を…

だがそれは叶わぬ願いだった。



「C1号…逃がさない…!」


そんなC1号の目の前にバイクに乗ったクウガが駆けつけた。

クウガはロードゴウラムから降りると

トライアクセラーを手に持ちC1号の方にゆっくりと歩み出した。


「ヒィ…ヒィィィ…!?」


そんなクウガに威圧され恐怖したC1号はすぐに鱗を撃ちだした。

この近距離だ。全部命中させたとそう思われたが…


「超変身ッ!」


だがその攻撃はクウガに傷一つ付くことはなかった。

攻撃が当たる直前にクウガはベルトを紫に変えてタイタンフォームの力で防御した。

強固な生体装甲に覆われトライアクセラーはタイタンソードへと形を変えた。

徐々に距離を縮ませて距離1mまで詰めると

クウガはタイタンソードをC1号の胸元へと突き刺した。


「オリャァァァァッ!」


クウガは渾身の力をタイタンソードに込めた。

もうこの島で二度と悲劇が起きないようこの怪人を今度こそ倒さなくてはならない。

対してC1号もまたなんとか抗おうともがいていた。

このまま死にたくない。まだ何もやり遂げてはいない。

これまでせっかく生き延びてきたのに…すべてが無駄に終わる…

古の時代よりグロンギ一族から追放されてこの地にたどり着いた。

12年前、仮面ライダーBLACKに深手を負わされても生き残れた。

あれから傷を癒し下層のグロンギたちをまとめてこの島で徒党を組みクウガを誘き出した。

ここまで気の長い年月が過ぎた。

だからこそせめて成し遂げたいとその無念の想いに駆られていた。

だが刺された部位には既にクウガの封印の紋が刻まれていた。

これがベルトまで達すれば自分は跡形もなく吹っ飛ぶ。

嫌だ。このまま死にたくない。その未練がC1号にわずかな力をもたらした。



「ハァ…ハァ…ウォォォ…」


突き刺されたタイタンソードを自力で引っこ抜くとそのまま海へと飛び込んだ。

だが島から離れたわけではない。そのまま海岸沿いに逃走していた。

行き先は恐らく自分の住処だ。


「一条さん、俺はヤツを追います。」


「わかった。俺は人々の避難を徹底する。」


変身を解いた五代はそのまま海岸からC1号の追跡を行った。

幸いにも怪人から飛び散った血が目印となり追跡するのは可能だ。

五代を見送ると一条は人々のいる港へと戻ろうとするが…



「あの光は…何だ…?」


そこへ何かの光が先ほど五代とC1号が向かった海岸の先へと真っ直ぐ飛び出した。

その光は先ほど沈没寸前だったあかつき号から発せられたものだ。

これで島に居る大半の未確認生命体は倒された。

だがまだ事件は終わっていない。

ここまで
次回の更新でたぶん最後です

RXvsン・ダグバ・ゼバとかクウガwithロードセクターとかクライマックスが連発しててすごいことになってる!



~PM18:00~


港での戦闘が終わった頃、この海岸ではRXとダグバの激しい戦いが繰り広げられていた。

だが凄まじいプレッシャーに襲われてRXは迂闊に近づくことすら許されない状況だ。

グロンギたちの頂点に立つダグバは圧倒的な潜在能力を秘めている。

それはかつてRXが戦ったどの敵よりも凌ぐほどだ。

ひょっとしたらあのシャドームーンすら上回る力の持ち主だとRXの直感が告げた。


「ほらほら、もっと僕を楽しませてよ。」


さらに厄介なのは突如発生する謎の発火現象だ。

これも恐らくはダグバの能力の一端。

周囲の物質を操作してプラズマ化させ対象を発火させるパイロキネシス。

単純な火炎攻撃ではないので防ぎようもなくさらにとてつもない高温のため

バイオライダーは勿論のこと、

火力に強いロボライダーでも太刀打ち出来ない不利な戦況が続いていた。



「キサマ…何が目的だ!」


そんな戦いの最中、RXはダグバに対して何故この島を訪れたのか問い質した。

いくらグロンギの掟に背いたからといって一族の長が

下層の者たちを相手に直々に粛清を行うために遥々こんな島まで訪れるだろうか?

ひょっとしたら何か別の目的があるのではないか。


「そうだね、ちょっとだけ話してあげるよ。昔ここには神さまがいたんだ。」


これはダグバもグロンギの長老たちから聞いた言い伝え。

その昔、神は自分と同じ姿を象った人を創った。神は自分の子である人を愛した。

だが…


「神さまは人が力を持つことを恐れた。何で恐れたのかは知らない。」


「けどそのせいなのかな。僕たち一族は神から嫌われた。」


「この地には僕たちを嫌ったその神さまが眠っているんだって。」


「僕がここに来た理由はその神さまを壊すためだよ。」


「何故だって?僕たちを嫌う神さまなんて必要ないからさ。」


ダグバがこの地を訪れた本当の理由だった。この地に神が眠っている?

そんな話など聞いたことがない。だが嘘とは思えなかった。

しかしこれが本当の話だとすればダグバは神殺しを行うつもりだ。



「ひとつ聞かせろ。もしも神を殺せたとしてその後はどうするつもりだ。」


「その後?決まっているだろ。リントを殺すのさ。」


「そして僕は究極の闇をもたらす…」


ダグバは笑顔でそう答えた。その答えを聞いてRXは思わずゾッとした。

これで理解した。ダグバには善悪といった感情がない。

目的のために何のためらいもなく遂行しているにしか過ぎない。

そう、人を殺すという悦びを得たいがために…


「そうはさせん!ハァッ!」


こうなれば一気に勝負をつける。

覚悟を決めたRX空高くジャンプしてダグバに攻撃を決めようとした。

だがそんな動きなど最初から見破っていたのか

ダグバは自らの手をかざしてこれまでにない爆炎を放った。


「うわぁぁぁぁぁっ!?」


この海岸一帯にとてつもない勢いで炎が燃え広がった。

そして辺り一帯が大爆発。

いくらRXといえどもこれでは爆死は免れない。ダグバは自らの勝利を確信した瞬間だった。



「トゥァッ!RXキ――――ック!!」


ダグバの目の前にRXが出現して必殺キックを放った。

突然の出来事にさすがのダグバも防御もままならず攻撃をまともに喰らってしまう。

それにしても先ほどの攻撃をどうやって回避したのか。

実はダグバがパイロキネシスを発動させる瞬間のこと。

RXはバイオライダーに瞬間変身して

身体を液状化させて爆破する寸前にその場から脱出することに成功。

そして隙を突いて攻撃を行えた。


「へぇ、やるねえ。」


RXの必殺キックを受けてダグバは思わず吐血した。

並みの怪人ならこれで致命傷に至るはずだが戦闘狂のダグバにとってこれは愉悦だ。

グロンギの王である自分にこうも傷を負わせた男は初めてだ。

これはクウガと戦うよりも面白くなりそうだと悦に浸っていた。

逆にRXはそんなダグバを不気味に感じた。

まさか渾身の一撃を喰らってビクともしないとは…

両者共に目の前にいる敵は相討ち覚悟で仕掛けなければ決して倒せない敵だと確信した。

これよりさらなる死闘が行われる。そう予感させたが…



「うわっ!?」


だがそこに奇妙な蒼白い光が現れた。

それは先ほど一条が目撃したあかつき号から発せられた光だ。

その光はRXとダグバの戦いをまるで遮るかのように洞窟の中へと入って行った。


「なんか興ざめしちゃった。もういいや。」


そんな光景を目の当たりにするとダグバは変化を解いて人間態へと戻った。

先ほどみたいな強烈なプレッシャーはもう感じられない。

覇気も消え去りまるで植物のような穏やかだ。

これが先程までグロンギの怪人たちを

殺戮していた男とは思えないほどの変貌ぶりに変身を解いた光太郎は驚きを隠せずにいた。


「クウガもこっちに向かっているようだしあとはキミたちに任せるよ。」


そう言い残すとダグバは何処かへといなくなった。

同時に海岸から人影がこっちに近づいてくる。C1号との戦闘を終えた五代だ。



「五代くん無事だったか。」


「はい、C1号以外の未確認はすべて倒しました。
それでヤツがこっちに逃げてきたので後を追っていたんですけど…
どうやら見失ってしまったようです。」


「ヤツならきっとこの洞窟の奥だ。さあ、行こう。」


光太郎は合流した五代と共に洞窟へと潜入した。

こうしてRXとダグバの戦いは意外な形で幕を閉じた。

この数ヶ月後、ダグバは九郎ヶ岳にてクウガと激しい死闘を演じることになる。

いずれ両者は雌雄を決するのだがそれはまだ先の話だ。

それに戦いはまだ終わっていない。

この奥には今まさに永い時を経て最悪の敵が蘇ろうとしていた。



~PM18:30~


「弦太郎!起きろ!」


「ふえ?巧…ここはどこだ?」


「寝ぼけてんじゃねえ!早く逃げるぞ!」


一方、先に潜入した巧は洞窟奥深くで寝そべっていた弦太郎を発見。

幸いにも弦太郎はかすり傷ひとつなく眠っていただけだった。


「うわっ!どうなってるんだよ!?」


目覚めた弦太郎が辺りを見回すとそこには不気味な光景が広がっていた。

なんとそこには無数の白骨化した死体が散乱していた。

死体はどれも子供のものばかり。中には赤子のものまで混じっている始末。


「馬鹿!見るんじゃねえ!」


「けど巧…どうしてガイコツだらけなんだよ…」


「知らねえよ。趣味の悪いアンティークじゃねえのか。」


巧は適当に答えるがこれが趣味なら最悪だ。

とにかくこんな不気味な場所からは一刻も早く逃げ出そう。

だが弦太郎は恐怖でまともに動くことが出来ない。

そのため巧がおんぶして連れ出そうとした時だ。



「ラ…デ…」


前方から薄気味悪い声が聞こえてきた。

ライトを点けて見てみるとそこにはクウガとの戦闘でボロボロになったC1号がいた。

辛うじて生きてはいるがそれも時間の問題。

先ほどの戦闘で受けたクウガの封印エネルギーがベルトまで達すれば死んでしまう。

なんとか必死の思いでここまで這い蹲るようにたどり着いたがもう限界だった。


「巧!危ない!」


そこへRXとクウガが二人の元へ駆けつけた。

ライダーたちは巧と弦太郎を保護すると戦闘体勢で瀕死のC1号を警戒した。


「もう諦めろ。これで終わりだ。」


RXはC1号に最後の警告を促した。

C1号はクウガとの戦闘で仲間を失い肉体は限界寸前。

これ以上は無駄な悪あがきはやめて大人しく降参しろとそう告げた。

だがC1号はそんなRXの警告など知ったことかと鼻で嘲笑った。

この圧倒的不利な状況で何故…?

そんな疑問を抱いているとC1号は洞窟の奥で膝をついた。

そこは先ほどまで弦太郎が眠っていた白骨死体の山になっている場所だ。

C1号は膝をつくとこの場に火を点けると明かりが灯されて辺りを見回した。

よく見ると白骨死体の山に何やら奇妙な異物が備わっていた。


「光太郎さん…あれは何ですか…?」


「俺にもわからない。だがあれは自然の産物というわけではなさそうだ。」


それは明らかに人の手が加えられたモノだが形状からしてかなりの年月が過ぎた代物だ。

これを言い表すとすれば遺跡だ。

太古の昔より創造された遺跡がこの洞窟で長いこと眠り続けていたのだろう。

どうやらC1号はこの遺跡を住処としていたようだ。

そしてC1号はこの遺跡を前にして何かを訴えるかのように叫んでみせた。



「バリジョ!レザレダラゲ!」


「パセビヂバサゾ!」


「ダグバゾロボゲス!ビュグビョブボヂバサゾガダゲデブセッ!」


グロンギの言葉で何を言っているのかわからないが

それでもC1号がこの遺跡に対して何かを求めているのはわかる。

恐らくC1号はこの遺跡が自分になんらかの力を与えてくれると信じている。

だが瀕死のC1号が何度訴えても遺跡は無反応のままだ。

このままでは命が尽きるのも時間の問題。

ライダーたちもこの場から立ち去ろうとしたその時だった。



『お前は…何者だ…』


何処からともなく声が聞こえた。

これはグロンギの怪人たちのような獰猛さを感じさせない。

むしろ透き通った声だ。

一体どこからこの声が聞こえてくるのか?


『答えろ。お前は何者だ…』


もう一度声が聞こえてきた。今度はハッキリと聞き取れた。

間違いない。遺跡から声が出ている。


「オ…オォ…バリジョ…ジョグジャブ…」


その声を聞きC1号は思わず涙を流した。

ライダーたちにしてみれば怪人が涙を流すなどありえない光景だ。

だがC1号にとってこれは実に喜ばしいことだった。

何故ならC1号はこの島に流れ着いてから遺跡…いや…祭壇の前で生贄を捧げ続けた。

それは気の遠くなる年月だった。いつの日かきっと神が目覚める。そう信じていたから…

そしてその願いはようやく叶った。

さあ、今こそ願いを叶えて欲しい。さらなる力を得たい。

それこそあのダグバをも超える究極の力を…

そしてこの問いに対してC1号は高らかにこう叫んだ。



『パセボゴ!グロンギンゴグザッ!』


我こそがグロンギの王だとそう叫んだ。

だがそれだけだ。それ以外は何の反応もない。

暫くの間、沈黙が続くと遺跡からある声が発せられた。


『そうか…お前は…人ではないのだな…』


その瞬間、それまで澄んでいた声に変化が起きた。

先ほどとはちがって声に感情が篭っている。

それも負に満ちた感情。これは怒りや憎しみに満ちたドス黒いモノ…


『…やはりお前は…』


すると遺跡の方に先ほどこの洞窟に放たれた光が現れた。

その光からは一人の青年が姿を現した。クウガはこの青年に見覚えがあった。

それはあかつき号で会った青年。沢木哲也だ。

現れた哲也はライダーたちを前にして武術における残心に似た構えを取った。

同時に彼の腹部から奇妙なベルトが出現。



「変…身…」


哲也がそう呟くとベルトのバックルに収まっている石が輝きだした。

ベルトの輝きは哲也の身体を包み込むと彼の姿はまるで別の姿へと変化した。


「あれは…クウガ…?」


この変身を目の当たりにしたクウガはそれが自分と瓜二つの姿だと認識した。

金色に輝くボディに頭部に二本の角を生やしたクウガに似た金色の戦士。

だがクウガとはひとつだけ異なる部分があった。

それは目の部分が漆黒に覆われたブラックアイの状態だった。

まるでその魂に邪悪な存在でも宿っているかのような雰囲気を出していた。


「オォ…バリジョ…ヅギビレザレダボザバ…」


金色の戦士の出現にC1号は喜びよろめきながら駆け寄った。

遂に神が復活を遂げた。今こそ我が野望が達成される。そう信じた矢先のことだった…



「ガハッ…」


突然腹部が強烈な痛みに襲われた。

すぐに見てみると戦士の手刀がC1号の腹部を貫いていた。

腹部からは大量出血により

血が噴水のように吹き出し口からもかなりの吐血を起こしていた。

一体何故…?どうしてこんなことが起きた?

神への忠誠を示すためこれまで生贄を欠かしたことは一度としてなかった。

すべては神の復活のため…すべてを捧げてきたはずなのに…どうして…

C1号は貫かれながら

何故自分が忠誠を誓った神からこのような仕打ちを受けたのか理解できずにいた。

そんなC1号に対して戦士は一言こう言い放った。


『人を殺してはならない。』


その言葉を聞いてC1号はわけがわからなかった。一体何を言っているのかと…?

だがこの言葉こそ彼が崇めていた神とやらの本心だった。

そう、先ほどダグバが語っていたように神は人を愛していた。

古の時代、神は戦いで力を使い果たしこの地で深い眠りについた。

それからは自らが生み出した人を愛し見守ってきた。そこへC1号が現れた。

C1号は何を勘違いしたのか島に住む人間を生贄として捧げてきた。

これまで何人もの罪なき者の命を屠ってきた。

この行為をC1号は神のためと称していたがそれはまったくの逆だった。

神はこの行為を疎ましく思っていた。何故このような酷い行いをするのか。

C1号が生贄を連れて殺める度に嫌悪感を募らせていた。

どんなに止めたく思っても今の自分は遺跡で眠り続けるだけの存在。

これを止める術はなかった。そんなある日のこと、奇妙な変化が起きた。

それは12年前、仮面ライダーBLACKとの戦闘でC1号が敗北しながら帰ってきたことだ。

この男はどういうわけか瀕死の重傷を負っていた。勿論見捨てることも出来たが…

それでもひとつだけ気になることがあった。C1号は古の時代に存在したグロンギの一族。

並大抵の人間が立ち向かえる相手ではない。

そんなC1号にここまで傷を負わせたということは…

そこで神はある試みを行うべくC1号に力を授けた。

すべてはC1号に恩恵を与えるためではなく自らが愛した人を確かめるために。


『お前は人を殺しすぎた。』


神がその手刀を引っこ抜くと同時にC1号の体をまるでゴミのように投げ飛ばした。

この光景にクウガとRXに緊張感が走った。

あのC1号をこうも容易く瞬殺する金色の戦士が現れた。

だがそんなことなど今はどうだっていい。問題なのはこの戦士が敵なのか味方なのかだ。



「答えろ。お前は何者だ。」


RXから問われた金色の戦士はこの場を見渡した。

そこには明らかに人を超えた存在が居た。


『やはり…人が人を超えてしまったか…』


金色の戦士はまるで悔やむようにそう呟いた。

人を超えた存在。それは紛れもなくこの場にいるライダーたちのことだ。

暗黒結社ゴルゴムの改造手術を受けて、さらに太陽の力を得たRX。

古代の一族リントの霊石アマダムにより現代に蘇った戦士クウガ。

二人とも人知を超えた力を宿した存在。本来ならこの世界に存在してはならない者たち。

神は人を愛した。だが人が神の力を超えることを恐れていた。


『人は人のままであればいい。』


ライダーたちの問いかけにそう答える金色の戦士。

その言葉には間違いなく敵意が感じられた。


やはり目の前にいるこの男は敵だ。そう確信した二人は一斉に飛びかかった。

RXとクウガはタイミングを合わせて金色の戦士にダブルパンチを放った。


「何ッ!?」


だがそのダブルパンチを金色の戦士は片手で弾いた。

決して手加減などしていない渾身の一撃だったのにそれをいとも容易く弾かれた。

それどころか逆に衝撃波を放たれて二人の身体は吹っ飛ばされた。

この一撃が効いたのか二人とも変身が解かれその場に倒れ伏した。


「光太郎さん…大丈夫ですか…」


「ああ…だがヤツは何者なんだ…何故こんな力を…」


「わかりません…彼の身に何があったんだ…」


五代は数時間前に哲也と出会ったことを思い出していた。

神戸港で会った哲也は何か悩みを抱えていたがそれ以外はどこにでもいる普通の青年だ。

それがこの数時間で彼は異形の戦士へと変貌を遂げた。

自分と別れてからこの数時間で彼の身に何があったのか五代にはまったくわからなかった。


『人を超えた力を持つことは決して許さない。』


だが考えている時間はなかった。

五代と光太郎にトドメを刺そうと金色の戦士が近づいてきた。

急いで立ち上がり体勢を立て直さなくては…

だがさっきの一撃を受けたせいか身体が思うように動かない。

これまでの連戦による疲労、それに今の攻撃によるダメージ。

二人の身体はまるで鉛でも載せてあるかのように重く感じられた。

このままではやられる。思わずそう覚悟したが…



「やめろ――――ッ!」


そんな時、幼い弦太郎がこの金色の戦士に唯一人立ちはだかった。

恐怖で身体が震えながらも両手で遮りその行く手を阻んでいた。


「バカッ!離れろ!お前なんかがどうにか出来る相手じゃない!」


「けどダチがやられているのに黙って見てられるかよ!」


そんな弦太郎を巧がこの場から下がらせようとするが弦太郎は頑なに拒んだ。

ダチがピンチな時こそ助ける。それがダチだとそう教えられたから…

だが今はそんなことを言っている場合ではない。

得体の知れない敵が自分たちを襲おうとしている。

それに対して抗う術など持ち合わせてなどいないのだから…


『…』


しかし奇妙なことに金色の戦士は弦太郎を見てその歩みを止めた。

まさかこんな小さな子を…

そう思った光太郎と五代はなんとか立ち上がろうとするが何か様子がおかしい。


『そうか。いずれはお前も…』


「なんだよ!かかってこいよ!」


『お前もいずれ人が触れてはならない力を手に入れる。それは決してあってはならない。』


金色の戦士はまるで弦太郎の未来を暗示するかのような発言を呟いた。

勿論弦太郎自身にはそれがどういう意味なのかはわからない。

そして金色の戦士が自らの手で弦太郎を殺めようとした。



「弦太郎下がれ!」


間一髪、そんな弦太郎を巧が庇ってみせた。

だがこれで終わったわけではない。まだ金色の戦士は殺意に満ちたままだ。

それに光太郎と五代も満足に動ける状態ではない。

つまりこの状況で立ち向かえるべき戦士はいない…


「巧!戦え!」


この状況で巧に戦えと…光太郎はそう促した。

それでも巧はまだ狼狽えたままだ。

無理もない。相手はライダーたちを圧倒した正体不明の戦士。

普通の人間がまともに戦える相手ではないのだから。



「巧!戦え!」


この状況で巧に戦えと…光太郎はそう促した。

それでも巧はまだ狼狽えたままだ。

無理もない。相手はライダーたちを圧倒した正体不明の戦士。

普通の人間がまともに戦える相手ではないのだから。


「俺には無理だ…俺はアンタたちみたく戦えない…俺には大切なヤツなんて…」


巧は思った。光太郎たちが戦えるのは大切な人間がいるからだ。

だが自分には大切な人などいない。

これまで誰かを傷つけたくないから孤独に生きてきた。

そんな自分に守るべき人間などいるはずもないと巧は思っていた。


「そうじゃない。巧、お前にだって守るべき大切な人がいる。」


「その手にちゃんと掴んでいるじゃないか。」


「お前にも守るべき大切な人がいるんだ!力はそのためにあるんだ!」


光太郎に言われて気づいたが巧はずっと弦太郎の小さな手を掴んでいた。

守るべき大切な人。それが隣にいる弦太郎なのかはわからない。

だが今は光太郎の言うように戦うしかない。

そう決意した巧は全身に力を込めた。

そして身体が人間から異形の姿へと変貌していく。

全身はまるで死をイメージした灰色で野生の狼を象った姿。

そんな変貌を遂げた巧を見て金色の戦士は一言こう呟いた。



『オルフェノク…そうか…もう目覚めた者がいるのですね…』


―――オルフェノク。それが巧の真の姿だった。

一度死んだ人間が覚醒し蘇ることで生まれる人の進化した姿。

幼い頃、巧は死の経験をしたことによりオルフェノクとして蘇った。

同時にその時から自らの姿に恐怖してこの力を隠して孤独に生きてきた。

本来なら巧はこの力を使わずに過ごすはずだった。

だが目の前の危機によりこれまで封じていたオルフェノクの力を解き放った。


「ガァァァァッ!」


荒々しい雄叫びを上げながらウルフオルフェノクは金色の戦士に襲いかかった。

その攻撃方法は金色の戦士のような鮮麗された動きとはちがい

拳に付いたメリケンサックのような突起を扱った喧嘩殺法。

狼の形状通り身体の俊敏さを活かして目にも止まらぬ速さで素早い攻撃を行った。


「クソ…当たらねえ…」


だが金色の戦士は巧の攻撃などまるで最初からすべて予測したかのように華麗に弾いた。

どんなに素早くて力強い攻撃でも当たらなければ意味がない。

さらに言うなら巧は今日が初めての戦いだ。

そんな巧では戦闘能力が未知数な金色の戦士を相手するには余りにも荷が重すぎた。



「このままでは巧が…やられてしまう…やはり俺が…」


そんな巧の加勢に入るべく光太郎はなんとか立ち上がろとした。

だが足に力が入らない。これでは変身など出来やしない。

それでもやらなければ…となんとか拳を握り締めて生身のままでも立ち向かおうとした。


「やめろ…やめるんだ…」


だが光太郎よりも一歩先に五代が動いていた。

五代は防戦一方で圧倒的不利に追い込まれているウルフオルフェノクと

極めて優勢な金色の戦士の間に立ってその戦闘を阻んだ。


「こんなことしちゃダメだ。キミがやりたかったのはこれじゃないだろ。」


五代は目の前にいる金色の戦士に向かって説得を試みた。

いや、金色の戦士ではなくてあのあかつき号で出会った沢木哲也という青年に対してだ。

大切な人を失った彼がどうして異形の戦士と化したのかはわからない。

それでもまだ哲也の心が残っていれば説得の余地がある。


『オォォッ!』


そんな五代を煩わしく思ったのか金色の戦士が拳を振るった。

五代はなんとかその拳を受け止めようとするが…

拳を受け止めると同時に何かが伝わってきた。



「そうか…キミは…悲しいんだね…」


五代が哲也から感じたのは悲しみだった。

最愛の姉の死…突然の別れ…

もう自分には守るべき大切な人などいない。

その傷ついた心の隙をこの遺跡に封じられた神によって支配された。


「そうだ…キミから頼まれたモノがあるんだ。今ここで読み上げるよ。」


五代は懐からあるモノを取り出した。

それは先ほど東京の城南大学にいる桜子から送られてきたFAXの用紙だ。

数時間前、五代は哲也からあることを頼まれていた。

それは死んだ姉が唯一遺した古代文字が記された手紙。

その解読された文章を五代は読み上げてみせた。





はじまりは、テオスだった。



テオスは闇から光を、夜から昼を、地球から大地を、

海から陸を分け、世界を創造した。



そして、テオスはエルとマラークを創り、

さらにマラークの姿を象り動物を、自らの姿を象り人を創った。



その頃の世界は楽園であった。



人が繁殖し、再び地球を満たす、ずっと以前の事。



人は言った。我々の姿は、テオスもの。故に我々はマラークやエルよりも上位にある。

我々はマラークに似せて創られた動物達を支配し家畜にしよう。



マラークたちは言った。

見よ、人が動物を支配し、彼らの家畜としている。

ならば、人を我々の家畜とし、支配をさせよ。さもなくば、彼らを滅ぼさん。



こうして、マラークと人の戦争が勃発。共にその数2億。



戦いは40年間に及んだ。



それが手紙の内容だった。

手紙の内容を知って哲也もそれに光太郎や巧、弦太郎も唖然としていた。

何故なら内容が余りにも理解しがたいものだったからだ。

そんな中でこの手紙の意味を一人だけ理解していた者がいた。

哲也が変身する金色の戦士に宿る神と讃えられる存在だ。

これは古の時代に起きた伝承。遥か昔、神々の戦いがあった。

そこでは二つの神が人の存在を巡って激しく争いを繰り広げていた。

人を支配しようとする闇と人を認めて力を与えようとする光。

戦いは人を支配しようとする闇の存在の勝利に終わった。

だが光の存在は死の間際、人に力を与えた。

すべての人に希望の種を与えてその芽が出るのを待ち続けた。



「俺にはこの手紙の意味はわからない。」


「けど今キミに起きていることを考えるとたぶんだけど…」


「お姉さんはキミを守ろうとしたんじゃないか!」


それは五代なりの考えて出した結論だ。

実は哲也の姉である沢木雪菜は哲也と同じ力を発現した。

だがそれは雪菜に扱える力ではなかった。

雪菜はいつしか力を抑えきれなくなりそのせいで彼女は自ら命を絶った。

それが真相だった。


「お姉さんは命を懸けてキミを守ろうとした!」


「その行いが正しいなんて言うつもりはない。」


「けど俺たちには力がある。だから!」


「今度はキミが守るんだ!お姉さんが守り抜いたものを!」


「誰かのために!そしてキミ自身のためにも!」


五代は必死にしがみつきながら金色の戦士=哲也にそう訴えた。

その訴えが通じたのだろうか。金色の戦士が静止した。



『もう…制御できない…これでは…』


身体中が熱く、そして苦しい。

次の瞬間、金色の戦士に憑依した何かが抜け落ちた。

それと同時に戦士の眼に光が宿った。

クウガやRXと同じ正義の意志を宿した赤い眼だ。


『おのれ…アギト…』


アギトと…遺跡に戻った闇の存在が金色の戦士のことをそう呼んだ。

正気を取り戻したアギトは自分を操っていた遺跡に目を向けた。


「ハァァァ…」


頭部にあるグランドホーンが展開された。

それと同時にアギトの足元に何かの紋章が出現し攻撃の態勢に入った。

これを見て光太郎と五代はすぐに察した。

アギトはこの遺跡を破壊しようとしていることを…



「行くぞ五代くん!チャンスは今しかない!」


「わかってます!これを逃すわけにはいきませんからね!」


二人ともこれが最後のチャンスだとわかっていた。

この得体の知れない存在を倒すにはこの機会を置いて他にはない。

だからこそ二人は最後の力を振り絞り立ち上がった。


『このままでは…こうなれば…仕方ないか…』


苦肉の策だった。本来ならやりたくもないが…

闇の存在は先ほどゴミのように投げ捨てたC1号の遺体に力を与えた。


「ガァァァ…」


するとC1号が蘇り光太郎たちに襲いかかろうとしてきた。


「こいつまだ生きているのか!」


「けどこいつはもう正気じゃありません。理性がもう欠片もない!」


そう、闇の存在はC1号の望み通り力を与えた。

だがその副作用なのか理性をすべて失い獣としての本能で暴れ出した。


「うわぁぁぁぁ!?」


さらには傷ついた巧や幼い弦太郎にまで襲い出す始末。

こうなればもう一切容赦する必要はない。

こちらも最後の力を振り絞って戦うのみだと覚悟を決めた。



「 「変身ッ!!」 」


「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RXッ!!」


変身したRXはすぐに巧たちを襲うC1号から二人を守った。

理性を失ったことで怪人として本能のまま行動するその姿は最早単なる怪物でしかない。

神に利用されたことに関しては

同情の余地があるかもしれないが情けを掛けるつもりはない。

何故ならC1号はこの地で人を殺め続けた。

すべては12年前の光太郎の不手際が原因だった。ならば…!


「リボルケインッ!」


RXはベルトのサンバイザーから光の剣リボルケインを取り出した。

同時に眩く光る剣の矛先をC1号の腹部へと突き刺した。


「グギャァァァァ!?」


RXのリボルクラッシュが決まりC1号は凄まじい悲鳴を上げた。

全身にリボルケインのエネルギーが送り込まれ腹部からは激しい火花が吹き出した。



「 「変身ッ!!」 」


「俺は太陽の子!仮面ライダーBLACK!RXッ!!」


変身したRXはすぐに巧たちを襲うC1号から二人を守った。

理性を失ったことで怪人として本能のまま行動するその姿は最早単なる怪物でしかない。

神に利用されたことに関しては

同情の余地があるかもしれないが情けを掛けるつもりはない。

何故ならC1号はこの地で人を殺め続けた。

すべては12年前の光太郎の不手際が原因だった。ならば…!


「リボルケインッ!」


RXはベルトのサンバイザーから光の剣リボルケインを取り出した。

同時に眩く光る剣の矛先をC1号の腹部へと突き刺した。


「グギャァァァァ!?」


RXのリボルクラッシュが決まりC1号は凄まじい悲鳴を上げた。

全身にリボルケインのエネルギーが送り込まれ腹部からは激しい火花が吹き出した。



「超変身ッ!ハァァッ!」


RXに続いて変身したクウガも遺跡に対して攻撃を行おうとした。

超変身してドラゴンフォームになると全身に雷が走った。

これまでの戦いで温存していた金の力。それを発動させた。


「オリャァァッ!」


ライジングドラゴンになったクウガは

ライジングドラゴンロッドを武器にライジングスプラッシュドラゴンを放った。

スピードを活かした斬撃で遺跡にいくつものヒビが入った。



「ハァッ!」


続いてライジングペガサスによる

ライジングペガサスボウガンを駆使したライジングブラストペガサス。

先ほど攻撃した斬撃に弾を撃ち込み遺跡にさらなる亀裂を負わせた。


「まだだッ!」


金の力の制限時間は30秒。

今の状況でその時間を過ぎればクウガはもう立ち上がることすらできない。

だがここが正念場、弾を打ち込んだ直後にライジングタイタンへとフォームチェンジ。

そして破損した亀裂にライジングタイタンソードを突き刺した。



「よし!今だッ!」


最後にクウガはライジンゴマイティにフォームチェンジ。

構えを取り右足にある足甲部のマイティアンクレットに渾身の力を込めた。

同時にアギトも右足にすべての力を収束させて両者共にジャンプ!


「 「オォォォォッ!!」 」


クウガ、アギトによるライダーキックが炸裂。

ライジングフォームによる四連攻撃に加えて二人のライダーによるダブルキック。

その凄まじい攻撃力で遺跡は最早原型を留めることも出来ず砕け散ろうとしていた。



『そんな…人が…私を超えるなんて…これでは未来が…』


ライダーキックを受けて遺跡は崩壊寸前に陥った。

もうこの崩壊は防げない。これでは人は神を超える存在になる。

そうなればこの世界は破滅だ。

人が神を超える力を手にすれば必ずやこの世界は混沌に染まる。

先ほど闇の存在は巧や弦太郎を通して未来を見た。この先の未来にあるのは絶望だ。

力に飲み込まれた人が破壊の限りを尽くす恐怖と破壊だけの世界。

それだけはなんとか阻止しなくてはと抗おうとした。


「そうはさせない!」


「これ以上俺たちの未来をお前に指図されるわけにいかない!」


「人の未来は俺たち自身で決める!!」


そして最後にRXがトドメの一撃かのように

リボルクラッシュで貫いて爆発寸前のC1号の身体を遺跡にぶつけてみせた。

その瞬間、洞窟内は大爆発を起こした。

半径3キロにも渡る爆発により洞窟は埋もれてしまいすべては闇に葬られた。



~PM21:00~


あの洞窟での大爆発が起きた直後、香川県警の応援が到着。

だが既に小豆島に潜んでいた未確認生命体はすべて殲滅した後だった。

その間に氷川はあかつき号の乗組員を単独で救助。

こうして事件は解決した。


「一条刑事、お疲れ様です。」


「氷川くんこそ大活躍だったな。」


「…いえ…自分は…活躍なんて…」


確かにあかつき号の遭難者たちは救助することは成功した。

だが…今回の事件は元を正せば香川県警の杜撰な対応に問題があった。

それに一条や五代の活躍に比べたら自分の行いなど大したものではないと痛感した。



「今回僕は足でまといでした。
一条さんたちがいなければ市民にも被害が及んでいたかもしれない。
そう思うと僕に称賛なんてされる資格はありません。」


「そう卑下するな。キミはたった一人であかつき号の乗客を救った。立派なことだ。」


「それでも…全員救えたわけじゃありません…」


氷川は悔やむように呟いたが

実は救助されたあかつき号の乗客には一人だけ行方不明者がいた。

沢木哲也。五代があかつき号で知り合ったあの青年だ。

乗客たちの話によると哲也は嵐の中で海に放り出されてしまい行方知れずとのこと。

氷川は乗客たちに事故当時のことを問い質したが

何故か全員青ざめた顔でろくに話をしようともしない。

まるで何か恐ろしいモノでも目撃したかのような様子だった。


「俺たちは人間だ。すべてが万事うまくいくわけじゃない。」


「それでも…自分の力不足を否めません…もっと僕に力があれば…」


「そう思うならもっと精進しろ。
いずれキミも最前線に出て戦う時が来る。その時はみんなを助けられる警官になれ。」


一条からの励ましの言葉を受けて氷川は敬礼した後に本部への報告に戻った。

近いうちに氷川も自分と同じく第一線で活躍する警察官になるだろう。

彼ならきっと素晴らしい警察官になれる。そう期待しながら一条は氷川を見送った。



「ありがとうロードセクター。」


一方で光太郎は久しぶりに再会を果たしたロードセクターを労っていた。

かつて宿敵ゴルゴムを倒した仲間。

12年前に永遠の別れを告げたはずだったが…

今回のピンチに活躍してくれたことで改めて感謝していた。

それに洞窟での死闘で力尽きた光太郎たちを大爆発の中、救い出してくれた。

かつてロードセクターを返却する際に大門はこう言っていた。


『―――いつの日か必ずあなたの元へ還るはずだ。』


その言葉通りロードセクターは光太郎の元へ還ってきてくれた。

今回の騒動でそれがなによりも嬉しく思えた。



「光太郎さん、巧くんはどこへ行ったんですか?」


「あいつは…もうここには戻ってこないだろう。」


駆け寄ってきた五代に巧の所在を聞かれた光太郎はそう答えた。

あの戦いの後、巧は忽然と姿を消した。

見たところXRのバイクもないようで恐らくあれに乗って何処かへいなくなったのだろう。


「巧はまだ自分を受け入れることが出来ていないんだ。」


「そうですか。きっと時間が掛かるでしょうね。」


「ああ、いつかあいつにも守るべき大切な人たちが出来るはずだ。」


巧の悩みが解決されるにはまだ時間が必要だ。

それでも二人は願った。いつか巧にも大切は人が現れることを…


「巧ー!俺たちはいつまでもダチだからな!!」


そんな何処かへいなくなった巧を弦太郎が海に向かってそう叫んだ。

いつか友情の印を誓い合って今度こそ本当のダチになる。そう決意して…



「それで光太郎さん。今回のことについてどう思いますか。」


「恐らく新たな物語が始まっているのかもしれないな。」


「新しい物語…つまり…それって…」


「俺たちの知らないところで次なる敵が動き出しているということだ。」


光太郎に新たな敵の存在を告げられたが五代もなんとなくその気配を感じていた。

あの沢木哲也が変身したアギトという名の戦士。それに遺跡に封じられていた存在。

それは間違いなく未確認生命体とは全く異なる新たなる脅威だ。


「やっぱり…なんですね…未確認を倒しても戦いは終わらないのか…」


五代は自分の手を見つめながらそう呟いた。

この手で今まで何体もの未確認生命体を屠ってきた。

連中を殴る度、この手に嫌な感触が過ぎってばかりいる。

本当は相手を傷つける行為なんてしたくはなかった。

それがグロンギの怪人たちであっても…



「俺…未確認を倒したら戦いは終わるのかと思ってました…
けどちがう…ヤツらを倒しても戦いは終わらない…いや…
これから始まっていくんですね…」


五代はこれから訪れる未来に不安を感じていた。その予感は正しかった。

何故ならこの後、世界はいくつもの混乱が訪れようとしていた。

今回の戦いはそれを予感させる序章にしか過ぎなかったのかもしれない。


「確かに俺も何度か同じ思いをしたよ。何度悪を倒してもキリがないってな…」


「これからも戦いは続くんですね。長く苦しい戦いが…」


「それでも誰かがやらなきゃならないんだ。」


わかってはいたことだ。それは決して他人には負わせられない自分たちの宿命。

決して避けることなど赦されない運命。

そんな過酷な運命でも一筋の希望はあった。



「だが俺は今回の戦いを通じて感じた。それは俺たちにも頼れる仲間がいるということだ。」


それは五代も今回の戦いで密かに感じ取っていた。

今回は自分たちライダーの力だけでは決して解決には至らなかった。

そこには頼れる人たちの協力があればこそだ。


「確かに俺たちの戦いは厳しいものだ。それでも信じられる仲間が居る。」


「そうですね。みんながいるから俺たちは戦える。」


「そうだ。希望は確かに存在するんだ。」


こうして南光太郎と五代雄介はこの先の未来に不安を抱きながらも

そこに希望の光もまた存在することを感じていた。

未来においてその希望は確かに存在した。


氷川誠=彼は今回のあかつき号救助の功績が認められて警視庁G3ユニットへと栄転。

そこで仮面ライダーG3として未知なる敵アンノウンとして戦うことになる。

沢木哲也=この数日後、彼は瀬戸内海沖で救助される。

だが持ち物の封筒に『津上翔一』の名が記されていたことから

彼は本名ではなく津上翔一と名乗ることになった。

そして彼もまた仮面ライダーアギトとしてアンノウンとの戦いに加わることになる。

乾巧=大企業スマートブレインが牛耳る人類の進化形態オルフェノクと戦うため

彼は仮面ライダーファイズとして

自らと同類のオルフェノクたちと戦う過酷な運命に身を投じた。

如月弦太郎=高校生に成長した彼は天ノ川学園高校へと転校。

そこでゾディアーツと呼ばれる謎の怪人たちから学園を守るため

彼は仮面ライダーフォーゼとなって守りぬくことになる。

確かに未来は決して明るいことばかりではない。だが希望は存在した。

いずれ彼らもまた仮面ライダーとして人々を守る存在となるだろう。

南光太郎と五代雄介は

次なる希望がこの世界を守り続けることを信じて改めて戦い続けることを誓った。

~終~




~エピローグ~


小豆島での戦いから二年の月日が流れた。

あの後、五代雄介=仮面ライダークウガが

未確認生命体第0号ことン・ダグバ・ゼバとの死闘に勝利したことで

未確認生命体による一連の事件は幕を閉じた。

それでもあのような脅威がまた起きるとも限らない。

そこで警視庁は未確認生命体への対策としてG3ユニットを設立。

あかつき号事件の英雄である氷川誠を装着者としてプロジェクトは動き出した。

そんな束の間の平和が訪れていたある日のことだった。


「ねえ…あれは何…?」


沖縄県の与那国島海岸で住民があるモノを発見した。

それは残骸。あの小豆島でRXとクウガによって破壊されたはずの遺跡の残骸だった。

この報告を受けて国はこの残骸を調べるためオーパーツ研究機関を設立。

本来なら海の藻屑として終わるはずがこうして人の世に現れた。

それは新たな戦いが始まる前触れでもあった。


南光太郎vs仮面ライダークウガ 【完】


これにて終わりです。お粗末でした。

乙でした。
最後の下りは何に続く話なんだろう。

>>153
要するにこのお話は平成ライダーの物語の前日談なんです
本来ならRXとクウガだけで物語を成立させるのが筋なんですけど…
クロスssとなるとどちらかに問題を与えなきゃならないわけで
けど光太郎さんと五代さんは二人とも本編の時点でヒーローとして完成されてるので
どちらかを落とすやり方はいけないなと思いましてそれではどうしたらいいのかと考えた結果
よし、問題のありそうな平成ライダーを二人にぶつけてその悩みを解決してもらおうと思った次第です。
それで挙げられたのがアギトの翔一くんと氷川くん。それに555のたっくんとフォーゼの弦太郎でした。

それでこのお話なんですけど読んでもらえばわかると思いますが
このお話の舞台裏には実はアギトのあかつき号事件が関わっています。
あかつき号事件が何なのかわからない人はあとでご自分で調べてもらえればわかりますが
劇中だとあの事件が発生したのはクウガがグロンギの怪人と戦っていたのとほぼ同時期なんですよね。
それでこの事件の背景にRX×クウガでクロスssやってみたら面白いんじゃないかと思ったのです。
なので時代設定に合わせて登場キャラもその当時の年齢になっています。

翔一くん⇒20歳 氷川さん⇒22歳 たっくん⇒16歳 弦太郎⇒6歳



あとたっくんと弦太郎を絡ませた理由は…
まあたっくんはオルフェノクとして孤独な道を歩んでいたのが理由で
弦太郎は特撮お馴染みの騒がせキャラに丁度いいなと思ったので登場させました。
ちなみにこの物語の弦太郎はまだほんのガキンチョなので戦うことはできません。
応援するのが精々だったかな
それで最後にエピローグはこの物語がアギト第一話に続くということになります。
このssに出てきたあのラスボスがアギトの敵アンノウンの黒の青年だということです。

面白かった乙

それにしてもフォーゼがまだ子供……全然想定もしてなかったから変なところで精神的ダメージ受けてしまった
そうか……そんな時間差が……

>>闇の存在
ねじれこんにゃく!なあねじれこんにゃくだろお前!?カテゴリーエース置いてけ!

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